(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】膨張装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/958 20130101AFI20220629BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20220629BHJP
【FI】
A61F2/958
A61M25/10 544
A61M25/10 550
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564938
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 US2020030858
(87)【国際公開番号】W WO2020227032
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500332814
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、ニティン
(72)【発明者】
【氏名】グプタ、プラティーク
(72)【発明者】
【氏名】ライアン、フランク
(72)【発明者】
【氏名】トマール、ピユーシュ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA07
4C267AA41
4C267BB27
4C267CC08
4C267DD01
4C267EE03
4C267EE11
(57)【要約】
血管内バルーンを膨張させるための膨張装置(10)である。膨張装置は、バレル(12)及びバレル内に移動可能に配置されたプランジャー(24)を含む。プランジャーは、らせんねじ(40)を含む。ハウジング(20)は、プランジャーに結合される。ナット(38)は、ハウジング内に配置される。ナットは、ナットの第1の側に沿った第1のねじ領域(54)及びナットの第2の側に沿った第2のねじ領域(56)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内バルーンを膨張させるための膨張装置であって、膨張装置は、
バレルと、
前記バレル内に移動可能に配置されたプランジャーと、
前記プランジャーがらせんネジを含むことと、
前記バレルに連結されたハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたナットであって、前記ナットの第1の側に沿って第1のねじ領域と、前記ナットの第2の側に沿って第2のねじ領域とを有する前記ナットと、
前記ナットは、前記第1のねじ領域及び前記第2のねじ領域が前記らせんねじに嵌合された第1の形態と、前記第1のねじ領域及び前記第2のねじ領域が前記らせんねじから離脱された第2の形態との間で移動するように構成されていることと、
前記ナットを前記第1の形態と前記第2の形態との間で移動させるアクチュエータと、
を備える、血管内バルーンを膨張させるための膨張装置。
【請求項2】
押し下げ可能部材は、前記アクチュエータに連結され、前記押し下げ可能部材の作動は、前記ナットを前記第1の形態と前記第2の形態との間で移動させる、請求項1に記載の膨張装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは第1のカム部材を含む、請求項1又は2に記載の膨張装置。
【請求項4】
前記ナットの第1の側は、前記第1のカム部材に相互作用するように設計された第1のカム面を含む、請求項3に記載の膨張装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、第2のカム部材を含む、請求項4に記載の膨張装置。
【請求項6】
前記ナットの第2の側は、前記第2のカム部材に相互作用するように設計された第2のカム面を含む、請求項5に記載の膨張装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記ハウジング内で第1の位置と第2の位置との間で移動するように設計されている、請求項6に記載の膨張装置。
【請求項8】
前記アクチュエータに取り付けられた1つ以上のばねをさらに備え、前記1つ以上のばねは、前記アクチュエータを第1の位置に向けて付勢する、請求項7に記載の膨張装置。
【請求項9】
前記アクチュエータが前記第1の位置にあるとき、前記ナットは前記第1の形態をなす、請求項7又は8に記載の膨張装置。
【請求項10】
前記アクチュエータが前記第2の位置にあるとき、前記ナットは前記第2の形態をなす、請求項7~9のいずれか一項に記載の膨張装置。
【請求項11】
前記アクチュエータが前記第2の位置にあるとき、前記第1のカム部材は、前記第1のカム面に係合する、請求項7~10のいずれか一項に記載の膨張装置。
【請求項12】
前記アクチュエータが前記第2の位置にあるとき、前記第2のカム部材は、前記第2のカム面に係合する、請求項11に記載の膨張装置。
【請求項13】
バルーンカテーテルに係合するように設計された遠位端領域と、近位端領域とを有するバレルと、
前記バレル内に移動可能に配置されたプランジャーと、
前記プランジャーはらせんネジを含むこととと、
前記バレルの近位端領域に結合されたハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたナットであって、前記ナットは、前記ナットの第1の側に沿った第1のねじ領域と、前記ナットの第2の側に沿った第2のねじ領域とを有することと、
前記ナットは、前記第1のねじ領域及び前記第2のねじ領域がらせんねじに嵌合された第1の形態と、前記第1のねじ領域及び前記第2のねじ領域がらせんねじから離脱された第2の形態との間で移動するように設計されていることと、
前記ナットを前記第1の形態と前記第2の形態との間で移動させる為のアクチュエータと、
を備える膨張装置。
【請求項14】
前記アクチュエータは、第1のカム部材を含み、前記ナットの第1の側は、前記第1のカム部材に相互作用するように設計された第1のカム面を含み、前記アクチュエータは、第2のカム部材を含み、前記ナットの第2の側は、前記第2のカム部材に相互作用するように設計された第2のカム面を含む、請求項13に記載の膨張装置。
【請求項15】
前記アクチュエータは、前記ハウジング内で第1の位置と第2の位置との間で移動するように設計され、前記ナットは、前記アクチュエータが前記第1の位置にあるとき、前記第1の形態をなし、前記ナットは、前記アクチュエータが第2の位置にあるとき、前記第2の形態をなし、前記第1のカム部材は、前記アクチュエータが第2の位置にあるとき、前記第1のカム面に係合し、前記第2のカム部材は前記アクチュエータが第2の位置にあるとき、前記第2のカム面に係合する、請求項14に記載の膨張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器、及び医療機器を製造するための方法に関する。より詳細には、本発明は、血管内バルーンと共に使用されるための膨張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な体内医療機器が血管内使用などの医療用に開発されてきている。これらの装置には、ガイドワイヤー、バルーンカテーテルなどが含まれる。これらの装置は、さまざまな異なる製造方法の任意の1つによって製造され、さまざまな方法の任意の1つに従って使用される。公知の医療機器及び方法には、それぞれに特定の利点と欠点とがある。代替的な医療機器、ならびに医療機器を製造及び使用するための代替的な方法を提供することについて継続的なニーズがある。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、医療機器の設計、材料、製造方法、及び代替的用途を提供する。例示的な医療機器は、血管内バルーンを膨張させるための膨張装置を含む。膨張装置は、バレルと、バレル内に移動可能に配置されたプランジャーと、プランジャーはらせんねじを含むことと、レルに連結されたハウジングと、ハウジング内に配置されたナットであって、ナットは、ナットの第1の側に沿った第1のねじ領域と、ナットの第2の側に沿った第2のねじ領域とを有することと、ナットは、第1のねじ領域及び第2のねじ領域が、らせんねじに嵌合された第1の形態と、第1のねじ領域及び第2のねじ領域が、らせんねじから離脱された第2の形態との間で移動するように設計されていることと、第1の形態と第2の形態との間でナットを移動するためのアクチュエータとを備える。
【0004】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、押し下げ可能部材は、アクチュエータに連結されており、押し下げ可能部材の駆動は、ナットを第1の形態と第2の形態との間で移動させる。
【0005】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータは、第1のカム部材を含む。
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、ナットの第1の側は、第1のカム部材に相互作用するように設計された第1のカム面を含む。
【0006】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータは、第2のカム部材を含む。
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、ナットの第2の側は、第2のカム部材に相互作用するように設計された第2のカム面を含む。
【0007】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータは、ハウジング内で第1の位置と第2の位置との間で移動するように設計されている。
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータに結合された1つ以上のばねをさらに含み、1つ以上のばねは、アクチュエータを第1の位置に向けて付勢するように設計されている。
【0008】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータが第1の位置にあるとき、ナットは第1の形態をなす。
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータが第2の位置にあるとき、ナットは第2の形態をなす。
【0009】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータが第2の位置にあるとき、第1のカム部材は第1のカム面に係合する。
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータが第2の位置にあるとき、第2のカム部材は第2のカム面に係合する。
【0010】
膨張装置が開示されている。膨張装置は、バルーンカテーテルに係合するように設計された遠位端領域と近位端領域とを有するバレルと、バレル内に移動可能に配置されたプランジャーと、プランジャーがらせんねじを含むこととと、バレルの近位端領域に結合されたハウジングと、ハウジング内に配置されたナットであって、ナットの第1の側に沿って第1のねじ領域と、ナットの第2の側に沿って第2のねじ領域とを有することと、ナットは、第1のねじ領域及び第2のねじ領域がらせんねじに嵌合された第1の形態と、第1のねじ領域及び第2のねじ領域がらせんねじから離脱された第2の形態との間で移動するように設計されていることと、第1の形態と第2の形態との間でナットを移動させるためのアクチュエータとを備える。
【0011】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータは、第1のカム部材を含み、ナットの第1の側は、第1のカム部材に相互作用するように設計された第1のカム面を含む。
【0012】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータは、第2のカム部材を含み、ナットの第2の側は、第2のカム部材に相互作用するように設計された第2のカム面を含む。
【0013】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータは、ハウジング内で第1の位置と第2の位置との間で移動するように設計され、アクチュエータが第1の位置にあるとき、ナットは第1の形態をなし、アクチュエータが第2の位置にあるとき、前記ナットは第2の形態をなす。
【0014】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、第1のカム部材は、アクチュエータが第2の位置にあるとき、第1のカム面に係合し、第2のカム部材は、アクチュエータが第2の位置にあるとき、第2のカム面に係合する。
【0015】
バルーンカテーテルを備えた膨張装置を使用するための方法が開示されている。この方法は、膨張装置をバルーンカテーテルに取り付ける工程を含み、膨張装置は、バレルと、バレル内に移動可能に配置されて、らせんねじを含むプランジャーと、バレルに結合されたハウジングと、ハウジング内に配置されて、ナットの第1の側に沿って第1のねじ領域と、ナットの第2の側に沿った第2のねじ領域とを有するナットであって、ナットは、第1のねじ領域及び第2のねじ領域が、らせんねじにねじ式に嵌合された第1の形態と、第1のねじ領域及び第2のねじ領域が、らせんねじから離間された第2の形態との間で移動するように構成されているナットと、ナットを第1の形態と第2の形態との間で移動させるためのアクチュエータとを含み、ナットが前記第1の形態にある間、バレル内のプランジャーを遠位方向に前進させる工程と、アクチュエータを作動させてナットを第1の形態から第2の形態に移動させる工程とを含む。
【0016】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、バレル内でプランジャーを近位方向に後退させる工程をさらに含む。
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータを作動させてナットを第1の形態から第2の形態に移動させる工程は、アクチュエータに連結されたボタンを押す工程を含む。
【0017】
上記の実施形態のいずれかに代替的又は追加的に、アクチュエータは第1のカム部材を含み、ナットの第1の側は、第1のカム部材に相互作用するように設計された第1のカム面を含み、アクチュエータは、第2のカム部材を含み、ナットの第2の側は、第2のカム部材に相互作用するように設計された第2のカム面を含み、アクチュエータは、ハウジング内で第1の位置と第2の位置との間で移動するように設計されており、第1のカム部材は、アクチュエータが第2の位置にあるとき、第1のカム面に係合し、第2のカム部材は、アクチュエータが第2の位置にあるとき、第2のカム面に係合し、アクチュエータを作動させてナットを第1の形態から第2の形態に移動させる工程は、アクチュエータを第1の位置から第2の位置に移動させる工程を含む。
【0018】
いくつかの実施形態の上記の概要は、開示された各実施形態又は本開示のすべての実施を説明することを意図したものではない。以下の図面及び詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示するものである。
【0019】
本発明は、添付の図面に関連して以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【0021】
本発明は、様々な修正形態及び代替形態が可能であるが、それらのうちの特別なものが、例を示すことを目的として図面に示され、且つ詳細に説明されている。しかしながら、その意図は、本発明をその説明した特定の実施形態に限定することではない。むしろ、その意図は、本発明の趣旨及び範囲に含まれるすべての変更物、均等物、及び代替物を網羅することにある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の定義された用語については、特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所で異なる定義が与えられていない限り、これらの定義が適用される。
本明細書では、すべての数値は、明示されているかどうかにかかわらず、「約」という用語によって修飾されることが想定されている。「約」という用語は、一般に当業者が列挙された値と同等であると考える(例えば、同じ機能又は結果を有する)数値の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に四捨五入される複数の数値が含まれ得る。
【0023】
終点による数値範囲の列挙には、その範囲内のすべての数値が含まれる(例えば、1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が含まれる)。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「ひとつ(a)」、「ひとつ(an)」、及び「その(the)」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「又は(or)」は、内容が明確に他のことを指示しない限り、「及び/又は(and/or)」を含む意味で一般に使用される。
【0024】
本明細書における「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、記載された実施形態が1つ以上の特定の要素、構造、及び/又は特性を含み得ることを示すことに留意されたい。しかし、そのような記載は、必ずしもすべての実施形態が特定の要素、構造、及び/又は特徴を含むことを意味しない。さらに、特定の要素、構造、及び/又は特性が一実施形態に関連して説明される場合には、そのような要素、構造、及び/又は特性は、明示的に説明されているか否かに拘わらず、明示的に反対のことが説明されてない限り、他の実施形態に関連して使用されてもよいことを理解されたい。
【0025】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれたい。異なる図面の類似する要素には同一番号が付されている。図面は、必ずしも縮尺通りではないが、例示的な実施形態を示しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0026】
血管間状態を診断したり治療したりするために、多くの医学的介入が利用されている。これらの介入のいくつかには、経皮経管的冠動脈形成術(PTCA)、ステント送達/配備(例えば、ステントを拡張させるためのバルーンの拡張を含む展開を含む)などが含まれる。バルーンを利用するこれらのような介入は、バルーンを膨張/収縮させるための膨張装置の使用を含む。一般に、そのような膨張装置は、プランジャーを前進させて膨張媒体をバルーン内に移動させること(例えば、バルーンを膨張させる)及びプランジャーを後退させて膨張媒体をバルーンから引き抜く(例えば、バルーンを収縮させる)ことができる注射器又は注射器様装置を含む。
【0027】
図1は、例示的な膨張装置10を示す斜視図である。膨張装置10は、バレル12(例えば、注射器バレル)を含む。いくつかの場合には、圧力計又は計器14はバレル12に連結される。管状部材16は、バレル12に連結されてバレルから延びる。コネクタ18は、管状部材16の遠位端領域に配置される。一般に、コネクタ18は、膨張装置10を別の装置(例えば、PTCA装置、ステント送達カテーテル、カテーテルなど)に連結するように設計される。これにより、膨張装置10を使用して、膨張媒体をバルーンに移動させたり、膨張媒体をバルーンから引き出したりすることができる。
【0028】
ハウジング20は、バレル12に連結される。押し下げ可能部材22は、ハウジング20に連結される。押し下げ可能部材22は、バルーン内における圧力の維持を補助するために使用されるロック/解除機構の一部をなし、本明細書でより詳細に説明するように、必要に応じて、臨床医がバルーンを急速に収縮できるようにする。プランジャー24は、バレル12に連結される。プランジャー24を前進させて、バレル12内に配置される膨張媒体をバルーン内に移動させることができるとともに(例えばバルーンを膨張させるため)、ブランジャ24を後退させて、膨張媒体をバルーンから引き抜くことができる(例えばバルーンを収縮させるため)。
【0029】
膨張媒体がバルーンに移動されるにつれて、膨張装置内の圧力/力は増加する。そのような圧力/力は、プランジャーに付与される。いくつかの場合には、これらの力は「自己解放」して(例えば、ロック/解除機構がより高い圧力に耐えられないとき、圧力が意図せず解放される結果、バルーンの収縮を引き起こし得る)、プランジャーの変形、ロック機構などの活性化/不活性化にするのに必要とされる力の増加をもたらし得る。膨張装置10は、より高い圧力に耐えるとともに、より高い圧力に対応する増加した力を適切に処理するように設計されている。これは、膨張装置10にいくつかの望ましい特徴を付与し得る。例えば、膨張装置10は、(a)「自己解放」する可能性が低くなること、(b)ロック/解除機構を作動させるために使用者が必要とする力の量を低減させること、(c)プランジャー24の変形を低減させること、(d)より高い圧力/力に耐えること、ができ、及び/又は追加の望ましい特徴を付与し得る。
【0030】
図2は、膨張装置10の分解図である。ここで、膨張装置10のいくつかの構成要素を確認できる。例えば、ハウジング20は、第1の部分26及び第2の部分28を含む。しかしながら、ハウジング20は、単一の部品又は2つ以上の部品/部分から形成されてもよい。アクチュエータ30は、押し下げ可能部材22に連結され、少なくとも部分的にハウジング20内に配置される。1つ以上の付勢部材、すなわちばね32は、アクチュエータ30に取り付けられる。ベース部34は、ハウジング20内に配置される。ピン部材36は、ベース部34に連結されて、ナット38をベース部34に固定するために使用される。プランジャー24は、バレル12に対して(例えば、バレル12内に)移動/摺動可能に配置される。プランジャー24は、ねじ領域40及びハンドル42を含む。いくつかの場合には、シール部材、すなわちOリング44をプランジャー24に隣接して配置することができる。
【0031】
押し下げ可能部材22、アクチュエータ30、ばね32、及びナット38(及び/又は膨張装置10の他の構成要素)は、ロック/解除機構の一部を構成する。一般に、ナット38上のねじ山は、プランジャー24のねじ領域40に係合できる。係合されると、プランジャー24を移動させて(例えば、回転及び/又は遠位方向に前進させて)、膨張媒体を前進させることができる。すると、圧力がバルーン及び/又は膨張装置10内に蓄積される。ナット38とプランジャー24のねじ領域40との間のねじ式の係合は、プランジャー24の近位方向の動きに抵抗するように設計されている(例えば、プランジャー24が反対方向に回転されない限り)。いくつかの場合には、バルーンを急速に収縮させることが望ましい場合がある。ロック/解除機構は、臨床医が押し下げ可能部材22を押すことによってバルーンを迅速に収縮できる。これにより、アクチュエータ30を作動させて、ナット38上のねじ山をプランジャー24のねじ領域40から離脱させることにより、プランジャー24を後退させ(例えば、必要に応じて急速に後退させる)、バルーンを収縮させることができる。押し下げ可能部材22が解放されると、ばね32がアクチュエータ30を移動させるため、ナット38上のねじ山は、プランジャー24のねじ領域40に係合できる(例えば、「再係合する」、又は「ロックする」)。ロック/解除機構の使用に関していくつかのさらなる詳細が本明細書に開示されている。
【0032】
ナット38は、
図3,4に示すように、第1の形態と第2の形態との間で移動するように設計される。第1の形態と第2の形態との間の移動は、ナット38のねじ山がプランジャー24のねじ領域40とねじ式に係合された、「ロック」姿勢と、ナット38上のねじ山が、プランジャー24のねじ領域40から分離又は離脱された、「離脱された」姿勢、又は「迅速離脱」姿勢との間で移動することである。第1及び第2の形態間の移動は、ナット38上のいくつかの構造的要素とアクチュエータ30、プランジャー24などとの相互作用を含む。例えば、
図3に示す第1の形態にある時、アクチュエータ30の第1のカム部材、すなわちフランジ46は、ナット38の側面65に隣接して配置及び/又は係合されており、第1のカム部材46は、ナット38の第1のカム面48から間隔をおいて配置され、すなわちナット38の第1のカム面48に嵌合されていない。同様に、アクチュエータの第2のカム部材50は、ナット38の側面67に隣接して配置され及び/又は係合されており、第2のカム部材50は、ナット38の第2のカム面52から間隔をおいて配置され、すなわちナット38の第2のカム面52嵌合されてない。したがって、第1の形態では、カム部材46,50は、ナット38の側面部分65,67に係合することにより、ナット38がより小さな形状又は圧縮された形状をとることを許容する。そのように構成/配置されると、ナットの第1の側に沿った第1のねじ領域54及びナット38の第2の側に沿った第2のねじ領域56の双方は、プランジャー24のねじ領域40に係合する。いくつかの場合には、ねじ領域54,56はナット38に対向する側面にある。しかしながら、別の構成も考えられる。いくつかの理由から、2つの部位/側面でねじ切りすることが望ましい場合がある。例えば、プランジャー24のねじ領域40を複数の側で係合させることは、プランジャー24が変形して(例えば、圧力のために)ナット38のねじ領域54,56から離脱される可能性を低減することに役立つ。さらに、ナット38が第1の形態にあるとき、アクチュエータ30の表面76,78は、ナット38の内面73,75に隣接して配置される。いくつかの場合には、これには、アクチュエータ30の表面76,78がナット38の内面73,75から間隔をおいて配置されることが含まれる。
【0033】
押し下げ可能部材22が押されると、アクチュエータ30は、(例えば、
図3に示す初期又は第1の位置から、
図4に示す第2の位置に、押し下げ可能部材22によって促されて)移動して、その結果、
図4に示すように、第1のカム部材46は、一般に、第1のカム面48に追従及び/又は嵌合し、第2のカム部材50は、一般に、第1のカム面52に追従及び/又は嵌合する。さらに、アクチュエータ30の表面76,78は、ナット38の内面73,75に向かって移動して係合する(例えば、
図4は、内面73,75に向かって移動した表面76,78を示し、実際には、表面76,78は、内面73,75に係合することに留意されたい)。これが起こると、ナット38は拡大/拡張されるため、第1のねじ領域54及び第2のねじ領域58は、プランジャー24のねじ領域40から離脱される。これにより、プランジャー24を必要に応じて迅速に引き抜くことができ、その結果、そのバルーンを収縮させることができる。押し下げ可能部材22が解放されると、アクチュエータ30を第1の位置に付勢し得るばね32は、アクチュエータ30を第1の位置に復帰させる(例えば、
図3に示すように)。
【0034】
例えばナット38を利用する膨張装置10は、より高い圧力に耐え得る。例えば、膨張装置10は、「自己解放」することなく、10~80気圧以上、又は20~60気圧以上、又は20~50気圧以上、又は30~40気圧以上、又は25気圧を超える圧力、又は45気圧を超える圧力に耐えることができる。さらに、押し下げ可能部材22を押すのに必要な力は、85N未満、又は65N未満、又は50N未満、又は約30~60N又は約45~55Nである。
【0035】
膨張装置10のその他の要素を
図5-7に示す。例えば、
図5は、ベース34を示す斜視図である。ここで、ベース34は、1つ以上の湾曲した棚58a,58bを含む。ベース34はまた、チャンネル60を含む。
図6は、ナット38を示す斜視図である。ナット38は、成形品(例えば、好適な金属、ポリマー、複合材料などで形成される)である。ここで、ナット38は、その内部に形成された開口部64を有する環状領域62を含む。ナット38はまた、1つ以上の上部66a,66b,68a,68bを含む。上部66a,66b,68a,68bは、一端において(例えば、環状領域62に隣接して)結合されて、上部開口部72を有するナット38の2本のアームの上部である(例えば、「アーム」は互いに分離されている)。ナット38は、1つ以上の側面65a,65b,67a,67bを含み(例えば、
図3-4に示す側面65,67は、側面65a,65b,67a,67bの対として配置/構成される)。ナット38はまた、1つ以上の内面73a,73b,75a,75bを含む(例えば、
図3-4に示す表面73,75は、内面73a,73b,75a,75bの対として配置/構成される)。ナット38はまた、1つ以上の起伏のある領域70a,70bを含む。
図7は、ベース34に連結されたナット38を示す。
【0036】
図8は、形状及び機能がナット38に類似している別の例示的なナット138を示す。ナット138は、上部開口部172によって分離された上部166,168を含む。ナット138はまた、第1のねじ領域154及び第2のねじ領域158を含む。ナット138は、ナット138が第1の形態(例えば、ねじ領域154、158がプランジャー24のねじ領域40に係合している場合)と第2の形態(例えば、ねじ領域154,158が、プランジャー24のねじ領域40から離脱されている場合)との間で移動し得るという点で、ナット38と同様に機能し得る。
【0037】
本発明は、多くの点で、単なる例示であることを理解されたい。本発明の範囲を超えることなく、詳細において、特に形状、サイズ、及び工程の構成に関して変更を行うことができる。これは、適切な範囲で、1つの例示的な実施形態の要素の任意の使用が他の実施形態で使用されることを含み得る。言うまでもないが、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の記載の文言で定義される。
【国際調査報告】