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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】後部左脚係合
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/37 20060101AFI20220629BHJP
   A61N 1/04 20060101ALN20220629BHJP
   A61N 1/362 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
A61N1/37
A61N1/04
A61N1/362
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564942
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2020023525
(87)【国際公開番号】W WO2020226754
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/844,513
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/815,133
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ,スバム
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053BB35
4C053KK02
4C053KK10
(57)【要約】
システムおよび方法は、心臓治療の送達中に電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視し、監視された電気的活動に基づいて、後部左脚係合の程度を決定し得る。システムおよび方法は、後部左脚係合の程度に基づいて、心臓治療を調整し得る。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
患者の後部からの電気的活動を監視するための複数の後部電極を備える電極装置と、
処理回路を備え、かつ前記電極装置に連結されたコンピューティング装置であって、
心臓治療の送達中に前記複数の後部電極を使用して前記患者の心臓の電気的活動を監視し、
心臓治療の送達中に前記監視された電気的活動に基づいて、電気的不均一性情報(EHI)を生成し、
前記生成されたEHIに基づいて、後部左脚係合の程度を決定するように構成されている前記コンピューティング装置と、を備える、システム。
【請求項2】
心臓治療の送達中に前記監視された電気的活動に基づいてEHIを生成することが、前記後部電極によって監視された代理後部電気的興奮到達時間の平均を生成することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記生成されたEHIに基づいて後部左脚係合の程度を決定することが、前記後部電極によって監視された代理後部電気的興奮到達時間の前記平均が30ミリ秒以下である場合、前記左脚が十分に係合され、前記後部電極によって監視された代理後部電気的興奮到達時間の前記平均が30ミリ秒より大きく50ミリ秒未満である場合、前記左脚が中程度に係合され、または前記後部電極によって監視された代理後部電気的興奮到達時間の前記平均が50ミリ秒以上である場合、前記左脚が十分に係合されない、ことを決定することを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
心臓治療の送達中に前記監視された電気的活動に基づいてEHIを生成することが、早期活性化閾値未満である、前記後部電極によって監視された代理早期活性化電気的興奮到達時間のパーセンテージを生成することを含む、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記早期活性化閾値が、最大35ミリ秒である、請求項3~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記生成されたEHIに基づいて後部左脚係合の程度を決定することが、代理早期活性化電気的興奮到達時間の前記パーセンテージが75%を超える場合、左脚が十分に係合され、代理早期活性化電気的興奮到達時間の前記パーセンテージが50%以上および75%以下の場合、左脚が中程度に係合され、または代理早期活性化電気的興奮到達時間の前記パーセンテージが50%未満の場合、左脚が十分に関与されない、ことを決定することを含む、請求項3~5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記心臓治療が、心房から心室への(VfA)ペーシング治療である、請求項1~6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記コンピューティング装置が、後部左脚係合の程度を増加させるために、前記心臓治療を調整するようにさらに構成される、請求項1~7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の後部電極が、前記患者の後部の胴体の皮膚に近接して配置されるようにアレイに位置付けられた複数の表面電極を含む、請求項1~8のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、心臓治療によって後部左脚係合を決定することにおける使用のためのシステムおよび方法に関する。
【0002】
植込み型ペースメーカー、心臓除細動器、除細動器、またはペースメーカー-心臓除細動器-除細動器などの植込み型医療デバイス(IMD)は、心臓に治療的電気刺激を提供する。IMDは、徐脈に対処するためにペーシングを、または頻脈もしくは細動などの頻脈性不整脈を停止させるためにペーシングまたはショックを提供する場合がある。いくつかの事例では、医療デバイスは、心臓の内因性脱分極を感知し、内因性脱分極(またはその欠如)に基づいて不整脈を検出し、内因性脱分極に基づいて不整脈が検出された場合、心臓への電気刺激の送達を制御し得る。
【0003】
IMDは、ペーシングの一形態である心臓再同期治療(CRT)を提供する場合も得る。CRTは、左心室、または左心室および右心室の両方へのペーシングの送達を含む。心室へのペーシングパルスの送達のタイミングおよび位置は、心室収縮の協調および効率を改善するように選択され得る。
【0004】
医療デバイスを植込むためのシステムは、植込み型医療デバイス自体に加えて、ワークステーションまたは他の機器を含み得る。いくつかの事例では、これらの他の機器は、医師または他の技術者が心臓上または心臓内の特定の位置に心臓内リードを配置するのを支援する。場合によっては、機器は心臓の電気的活動と心臓内リードの場所に関する情報を、医師に提供する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載された例示的なシステムおよび方法は、心臓治療(例えば、心臓伝導系ペーシング治療、従来の非伝導系ペーシング治療など)によって患者の後部左脚係合を評価すること(例えば、患者の後部左脚が係合されているかどうか)においてユーザ(例えば、医師)を支援するように構成され得る。より具体的には、例えば、例示的なシステムおよび方法は、監視された電気的活動に基づいて後部左脚係合の程度を決定するために使用され得る。監視された電気的活動は、後部左脚係合に向けられた電気的不均一性情報を生成または計算するために使用され得る。さらに、本明細書に記載された例示的なシステムおよび方法は、心臓治療による患者の後部左脚の係合の評価に基づいて、心臓治療を調整することにおいてユーザ(例えば、医師)を支援するように構成され得る。
【0006】
1つ以上の実施形態では、システムおよび方法は、非侵襲的であると記載され得る。例えば、いくつかの実施形態では、システムおよび方法は、心臓治療によって患者の後部左脚の係合を評価することにおける使用のために、患者の組織から電気的活動(例えば、複数の心臓信号)を監視、または取得するためのリード、プローブ、センサー、カテーテル、植込み型電極などの植込み型デバイスを必要としないか、または含み得ない。代わりに、システムおよび方法は、例えば、患者の胴体の周りの患者の皮膚に取り付けられた複数の外部電極を使用して、非侵襲的に行われる電気的測定を使用することができる。1つ以上の実施形態では、システムおよび方法は、かかるシステムおよび方法が、心臓治療による患者の後部左脚の係合を評価することにおいて使用するために電気的活動を監視するための植込み型電極を利用し得るという点で、侵襲的であると記載され得る。加えて、いくつかの実施形態では、侵襲的および非侵襲的装置およびプロセスの両方が同じ時間にまたは同時に使用され得ることを理解されたい。
【0007】
本開示は、例えば、VfAペーシング治療などの心臓治療を送達するときに、後部左束の係合に関する定性的および定量的フィードバックを提供すると記載され得る。VfAペーシング治療の目的の1つは、電気的活性化の迅速な伝播のために後部左束を係合することであり得る。本明細書に記載された例示的なシステムおよび方法は、「体表面」活性化マップ上で電気的活性化を視覚化するのを助ける表面マッピングツールとして使用され得る電極装置(例えば、「ECGベルト」)を含み得る。
【0008】
本開示は、例えば、VfAペーシング、左脚(LBB)ペーシングなどの心臓治療中の後部束の係合の程度を反映するであろう開示された様々な測定基準を提供する。したがって、ペーシング電極位置、後部束の完全な係合のペーシング閾値、および他のペーシングパラメータ(例えば、ペーシングベクトル、ペーシング振幅、ペーシングパルス長、AV遅延およびVV遅延などのタイミング遅延など)は、心臓ペーシング治療ペーシングからの左後部束(例えば、リードレスまたはリード付きデバイスを使用したVfAペーシング)の「完全な」または最大係合を得る、または提供するように調整され得る。これらのペーシング閾値およびパラメータは、従来の心筋組織の捕捉のために使用するペーシング閾値およびパラメータとは異なり得る。
【0009】
本開示は、後部束または後部LBBの係合に基づいて、より効率的な再同期(例えば、VfAペーシング、LBBペーシング、左心室中隔基底ペーシングなどを使用すること)を提供するシステムおよび方法を記載し、これが成功すると、代理興奮到達時間マップに反映されるように、体の後面の完全な事前活性化をもたらすはずである。さらに、本明細書に開示される新しい測定基準はまた、左後部束の係合を最大化するために、使用され、ペーシングの滴定の概念に結び付けられ得る。
【0010】
電気的不均一性情報(EHI)の例示的な測定基準は、後部電極(例えば、患者の後部胴体など、患者の後部に近接して配置された電極のサブセット)の平均興奮到達時間であり得、これは、平均後部興奮到達時間(MPAT)と呼ばれ得る。EHIの別の例示的な測定基準は、特定の時間閾値(例えば、35ミリ秒)よりも早く活性化する後部電極のパーセンテージであり得、これは、体の後面における早期活性化の広がりの程度を示す、早期後部活性化のパーセンテージ(PEPA)と呼ばれ得る。
【0011】
EHIのそのような例示的な測定基準は、例えば、VfAペーシングなどの心臓治療中の後束の係合の程度を反映するために使用され得る。例えば、30ミリ秒(ms)以下のMPATおよび75%以上のPEPAは、完全な後部束係合の反映であり得る。さらに、30ms~50msであるMPATおよび50%~75%であるPEPは、中間の後部束係合の反映であり得る。さらに、MPATおよびPEPAの他の値は、不十分な後部束係合の反映であり得る。
【0012】
例示的なシステムおよび方法は、1つ以上の心臓治療パラメータ(例えば、ペーシング出力、ペーシングベクトル、ペーシングの部位などのペーシングパラメータ)を調整するために、EHIの例示的な測定基準を利用し得る。したがって、1つ以上の心臓治療パラメータは、MPATのより低い値およびPEPAのより高い値によって示される完全な後部束係合に向けた目標をもって「調整」され得る。さらに、心臓治療パラメータは、後部左束の係合の程度を最大化するように設定され得る。例示的な心臓治療システムまたはデバイスは、そのような心臓治療パラメータをメモリに格納し得、それに応じて、それによって送達される心臓治療についての基本的な組織捕捉閾値を超える安全マージンを設定し得る。
【0013】
さらに、例示的なシステムおよび方法は、初期の活性化については赤の色合いで、後期の活性化については緑/青の色合いでコード化された後部マップ上の色に関して、係合の程度を定性的に示し得る。ベルトの後部マップ上の完全な赤は、完全な係合を意味し得る。後部マップの赤の程度が小さいほど、後部束の係合の程度が小さいことに対応する。
【0014】
例えば、VfAペーシングを使用した再同期の成功は、左心室の後部/後外側部分における活性化の急速な伝播をもたらす後部左束の係合の程度に部分的に依存し得る。本明細書に記載された例示的なシステムおよび方法は、効果的な心臓治療を提供することを助け得る、電極装置との非侵襲的後部左束の係合の程度を査定する方法を提供する。
【0015】
1つの例示的なシステムは、患者の後部からの電気的活動を監視するための複数の後部電極を含む電極装置と、処理回路を備えており、電極装置に連結されたコンピューティング装置と、を含み得る。コンピューティング装置は、心臓治療の送達中に複数の後部電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視し、心臓治療の送達中に監視された電気的活動に基づいて電気的不均一性情報(EHI)を生成し、生成されたEHIに基づいて後部左脚係合の程度を決定するように構成され得る。
【0016】
1つの例示的な方法は、心臓治療の送達中に複数の後部電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視することと、心臓治療の送達中に監視された電気的活動に基づいて電気的不均一性情報(EHI)を生成することと、生成されたEHIに基づいて後部左脚係合の程度を決定することと、を含み得る。
【0017】
1つの例示的なシステムは、患者の後部からの電気的活動を監視するための複数の後部電極を含む電極装置と、処理回路を備えており、電極装置に連結されたコンピューティング装置と、を含み得る。コンピューティング装置は、心臓ペーシング治療の送達中に複数の後部電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視し、監視された電気的活動に基づいて後部左脚係合の程度を決定し、左脚係合の決定された程度に基づいて心臓ペーシング治療の1つ以上のペーシング設定を調整するように、構成されている。
【0018】
上記の要約は、本開示の各実施形態またはすべての実施態様を記載するようには意図されていない。添付の図面と併用される以下の発明を実施するための形態および特許請求の範囲を参照することにより、より完全な理解が明らかになり、かつ理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電極装置、表示装置、およびコンピューティング装置を含む例示的なシステムの図である。
図2】胴体表面電位を測定するための例示的な外部電極装置の図である。
図3】胴体表面電位を測定するための例示的な外部電極装置の図である。
図4】心臓治療による後部左脚の係合の評価およびそのような心臓治療の調整の例示的な方法のブロック図である。
図5A】十分な後部左脚係合を示す、例示的な前部および後部の電気的活性化マップを描写する。
図5B】部分的な後部左脚係合を示す、例示的な前部および後部の電気的活性化マップを描写する。
図5C】不十分な後部左脚係合を示す、例示的な前部および後部の電気的活性化マップを描写する。
図6A】電極表現を含み、十分な後部左脚係合を示す、例示的な前部および後部の電気的活性化マップを描写する。
図6B】電極表現を含み、部分的な後部左脚係合を示す、例示的な前部および後部の電気的活性化マップを描写する。
図6C】電極表現を含み、不十分な後部左脚係合を示す、例示的な前部および後部の電気的活性化マップを描写する。
図7】患者の心臓内に植込まれた心臓内医療デバイスと、患者の心臓の外側に位置付けられた別個の医療デバイスとを含む、例示的な心臓治療システムの概念図である。
図8図7の心臓内医療デバイスおよび患者の心臓の解剖学的構造の拡大概念図である。
図9】本明細書に記載された例示的なシステムおよびデバイスとともに使用するための様々な電極植込み位置を示す左心室の標準的な17セグメントビューにおける患者の心臓のマップの概念図である。
図10】例えば、本明細書に記載された機能および治療を提供するために、図7図8の医療デバイスのハウジング内に封入され得る例示的な回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
例示的な実施形態の以下の発明を実施するための形態では、本明細書の一部を形成し、かつ例示として実施され得る特定の実施形態が示されている図面の添付の図が参照される。他の実施形態が利用され得、構造的変化は、それらによって提示される本開示の範囲から逸脱することなく(例えば、依然としてその範囲内に入るように)加えられ得ることを理解されたい。
【0021】
例示的なシステムおよび方法は、図1図10を参照して記載されるものとする。一実施形態からの要素またはプロセスが他の実施形態の要素またはプロセスと組み合わせて使用されること、および本明細書に記載された特徴の組み合わせを使用するそのようなシステム、方法、およびデバイスの可能な実施形態が、図に示されるおよび/または本明細書に記載される特定の実施形態に限定されないことが当業者には明らかであろう。さらに、本明細書に記載された実施形態が必ずしも原寸に比例していない多くの要素を含み得ることが認識されるであろう。なおさらに、本明細書のプロセスのタイミングならびに様々な要素のサイズおよび形状が依然として本開示の範囲内に入るように修正され得るが、ある特定のタイミング、要素の1つ以上の形状および/もしくはサイズ、または要素のタイプが他のものよりも有利であり得ることが認識されるであろう。
【0022】
様々な例示的なシステム、方法、およびグラフィカルユーザインターフェースは、心臓治療による後部左脚係合の評価および/または評価に基づく心臓治療の構成(例えば、最適化)においてユーザー(例えば、医師)を非侵襲的に支援するために、外部電極、表示装置、およびコンピューティング装置を含む電極装置を使用するように構成され得る。電極装置110、コンピューティング装置140、および遠隔コンピューティングデバイス160を含む例示的なシステム100が、図1に描写されている。
【0023】
示されるように、電極装置110は、患者114の胸部または胴体の周りに巻かれたバンド内に組み込まれるまたは含まれる複数の電極を含む。電極装置110は、分析、評価などのために、電気信号を電極の各々からコンピューティング装置140に提供するために、コンピューティング装置140に(例えば、1つまたは有線電気接続、無線などを通じて)動作可能に連結されている。例示的な電極装置は、2014年3月27日に出願され、2016年3月26日に発行された「Bioelectric Sensor Device and Methods」と題する米国特許第9,320,446号に記載され得る。さらに、例示的な電極装置110は、図2~3を参照してより詳細に記載される。
【0024】
コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160は、それぞれ、例えば、電気信号(例えば、心電図データ)、電気的興奮到達時間、電気的不均一性情報などのデータを表示するように構成され得る、表示装置130、170を各々含み得る。例えば、電極装置110によって収集または監視された電気信号によって表された、複数の心周期または心拍のうちの1つの心周期または1つの心拍は、後部左脚係合の査定および評価に関連し得る興奮到達時間および電気的不均一性情報を含む1つ以上の測定基準について分析および評価され得る。より具体的には、例えば、単一の心周期のQRS群は、1つ以上の測定基準、例えば、QRS開始、QRS消失、QRSピーク、電気的興奮到達時間などの様々な電気的不均一性情報(EHI)、左心室または胸部電気的興奮到達時間標準偏差(LVED)、興奮到達時間標準偏差(SDAT)、平均左心室または胸部代理電気的興奮到達時間(LVAT)、および最早期興奮到達時間に対する参照、QRS持続期間(例えば、QRS開始とQRS消失との間の間隔)、平均左側代理興奮到達時間と平均右側代理興奮到達時間との間の差異、相対または絶対QRS形態、興奮到達時間のより高いパーセンタイルとより低いパーセンタイルとの間の差異(より高いパーセンタイルは90%、80%、75%、70%などであり得、より低いパーセンタイルは10%、15%、20%、25%、および30%などであり得る)、他の中心傾向の統計的尺度(例えば、中央値または最頻値)、ばらつき(例えば、平均偏差、標準偏差、分散、四分位偏差、範囲)などについて評価され得る。さらに、1つ以上の測定基準は各々、位置特異的であり得る。例えば、いくつかの測定基準は、例えば、患者の左側、患者の右側などの患者の選択された領域の周りに位置付けられた電極から記録または監視された信号から演算され得る。
【0025】
少なくとも一実施形態では、コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の一方または両方は、サーバ、パーソナルコンピュータ、またはタブレットコンピュータであり得る。コンピューティング装置140は、入力装置142(例えば、キーボード)から入力を受信し、出力を表示装置130に伝送するように構成され得、遠隔コンピューティングデバイス160は、入力装置162(例えば、タッチスクリーン)から入力を受信し、出力を表示装置170に伝送するように構成され得る。コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の一方または両方は、例えば、電極装置110によって捕捉された複数の電気信号を分析するために、EHIを決定するために、QRS開始、QRS消失、中央値、最頻値、平均値、ピークまたは最大値、バレーまたは最小値を決定するために、電気的興奮到達時間を決定するために、心臓治療による後部左脚係合を評価するために、患者が左心室または右心室の遅延またはブロックを有しているかを決定するために、心臓治療のペーシング設定に対する1つ以上の調整が後部左脚係合を増加させ得るかを決定するために、1つ以上のペーシングパラメータまたは設定、例えば、ペーシングレート、心室ペーシング速度、房室間隔、心室間間隔、ペーシングパルス幅、ペーシングベクトル、マルチポイントペーシングベクトル(例えば、左心室ベクトルクワッドリード)、ペーシング電圧、ペーシング構成(例えば、両心室ペーシング、右心室のみペーシング、左心室のみペーシングなど)、ならびに不整脈検出および治療、心拍適合設定およびパフォーマンスなどの構成時にユーザを非侵襲的に支援するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースを起動するために、処理プログラムもしくはルーティンおよび/または1つ以上の他のタイプのデータへのアクセスを可能にし得るデータ記憶装置を含み得る。
【0026】
コンピューティング装置140は、入力装置142および表示装置130に動作可能に連結され得、例えば、入力装置142および表示装置130の各々との間でデータを伝送し得、遠隔コンピューティングデバイス160は、入力装置162および表示装置170に動作可能に連結されて、例えば、入力装置162および表示装置170の各々との間でデータを送信する。例えば、コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160は、例えば、アナログ電気接続、デジタル電気接続、無線接続、バスベースの接続、ネットワークベースの接続、インターネットベースの接続などを使用して、入力装置142、162および表示装置130、170に電気的に連結され得る。本明細書にさらに記載されるように、ユーザは、1つ以上の心臓治療構成情報、後部左脚係合情報(例えば、後部左脚係合の程度、後部左脚係合が心臓治療によって十分に、部分的に、または不十分に係合されているかどうかの表示など)、および電気的不均一性情報を見る、および/または選択するために、入力装置142、162に入力を提供し得る。
【0027】
描写されるように、入力装置142がキーボードであり、入力装置162がタッチスクリーンであるが、入力装置142、162が、入力をコンピューティング装置140およびコンピューティングデバイス160に提供して本明細書に記載された機能、方法、および/または論理を行うことが可能である任意の装置を含み得ることを理解されたい。例えば、入力装置142、162は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチスクリーン(例えば、容量性タッチスクリーン、抵抗性タッチスクリーン、マルチタッチスクリーンなど)などを含み得る。同様に、表示装置130、170は、ユーザに情報を表示することができる任意の装置、例えば、電極状態情報、電気的興奮のグラフィカルマップ、1つ以上の心拍にわたる外部電極の複数の信号、QRS群、様々な心臓治療シナリオ選択領域、心臓治療シナリオの様々な順位付け、様々なペーシングパラメータ、電気的不均一性情報(EHI)、テキスト命令、人間の心臓の解剖のグラフィック描写、患者の心臓の画像またはグラフィック描写、1つ以上の電極の位置のグラフィック描写、人間の胴体のグラフィック描写、患者の胴体の画像またはグラフィック描写、植込まれた電極および/またはリードのグラフィック描写または実画像などを含むグラフィカルユーザインターフェース132、172を含み得る。さらに、表示装置130、170は、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードスクリーン、タッチクスリーン、陰極線管ディスプレイなどを含み得る。
【0028】
さらに、コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160が、本明細書に記載された機能を行うまたは実行するように、複数の異なる方法で互いに動作可能に連結され得ることを理解されたい。例えば、示される実施形態では、コンピューティングデバイス140は、間に生じる無線信号線によって描写されるように、遠隔コンピューティングデバイス160に無線で動作可能に連結され得る。加えて、無線接続とは対照的に、コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の1つ以上は、1つまたは有線電気接続を通じて動作可能に連結され得る。
【0029】
コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160によって格納および/または実行される処理プログラムまたはルーティンは、計算数学、行列数学、分解アルゴリズム、圧縮アルゴリズム(例えば、データ圧縮アルゴリズム)、較正アルゴリズム、画像構成アルゴリズム、信号処理アルゴリズム(例えば、様々なフィルタリングアルゴリズム、フーリエ変換、高速フーリエ変換など)、標準化アルゴリズム、比較アルゴリズム、ベクトル数学、または本明細書に記載された1つ以上の例示的な方法および/もしくはプロセスを実施するために使用される任意の他の処理のためのプログラムまたはルーティンを含み得る。コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160によって格納および/または使用されるデータは、例えば、電極装置110からの電気信号/波形データ(例えば、複数のQRS群)、電極装置110からの電気的興奮到達時間、音響センサーからの心音/信号/波形データ、グラフィック(例えば、グラフィカル要素、アイコン、ボタン、ウィンドウ、ダイアログ、プルダウンメニュー、グラフィックエリア、グラフィック領域、三次元グラフィックなど)、グラフィカルユーザインターフェース、本明細書の開示に従って用いられる1つ以上の処理プログラムまたはルーティンからの結果(例えば、電気信号、電気的不均一性情報など)、または本明細書に記載された1つおよび/または1つ以上のプロセスもしくは方法を実行または行うために使用され得る任意の他のデータを含み得る。
【0030】
1つ以上の実施形態では、例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、例えば、処理能力、データ記憶装置(例えば、揮発性または不揮発性メモリおよび/または記憶素子)、入力デバイス、および出力デバイスを含むコンピュータなどのプログラマブルコンピュータ上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムを使用して実装され得る。本明細書で説明するプログラムコードおよび/または論理は、本明細書で記載される機能を行い、所望の出力情報を生成するために、入力データに適用され得る。出力情報は、本明細書に記載されるように、または既知の様式で適用されるであろうように、1つ以上の他のデバイスおよび/または方法への入力として適用され得る。
【0031】
本明細書に記載されたシステム、方法、および/またはインターフェースを実装するために使用される1つ以上のプログラムは、任意のプログラマブル言語、例えば、コンピュータシステムとの通信に好適な高レベルの手続き型および/またはオブジェクト指向型プログラミング言語を使用して提供され得る。任意のかかるプログラムは、例えば、本明細書に記載された手順を行うために好適なデバイスが読み取られたときにコンピュータシステムを構成して動作させるためのコンピュータシステム(例えば、処理装置を含む)上で実行される汎用または特殊用途プログラムによって読み取り可能な任意の好適なデバイス、例えば、記憶媒体に記憶され得る。言い換えれば、少なくとも1つの実施形態では、例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、コンピュータプログラムとともに構成されたコンピュータ可読記憶媒体を使用して実装され得、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータに、特定かつ所定の様式で動作させて、本明細書に記載された機能を行う。さらに、少なくとも1つの実施形態では、例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、実行のためのコードを含む1つ以上の非一時的な媒体にエンコードされ、かつプロセッサまたは処理回路によって実行されると、本明細書に記載された方法、プロセス、および/または機能などの動作を行うように動作可能である論理(例えば、例えば、オブジェクトコード)によって実装されると記載され得る。
【0032】
コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160は、例えば、任意の固定またはモバイルコンピュータシステム(例えば、コントローラ、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、ミニコンピュータ、タブレットコンピュータなど)であり得る。コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の正確な構成は、限定的ではなく、本質的には、好適な演算能力および制御能力(例えば、信号分析、数学関数、例えば、中央値、最頻値、平均値、最大値決定、最小値決定、勾配決定、最小勾配決定、最大勾配決定、グラフィック処理など)を提供することができる任意のデバイスが使用され得る。本明細書に記載されるように、デジタルファイルは、本明細書に記載されたコンピューティング装置140よび遠隔コンピューティングデバイス160によって読み取り可能および/または書き込み可能であり得るデジタルビット(例えば、2進法、3進法などでエンコードされたもの)を含む任意の媒体(例えば、揮発性または不揮発性メモリ、CD-ROM、パンチカード、磁気記録可能媒体など)であり得る。また、本明細書に記載されるように、ユーザ可読形式のファイルは、ユーザによって読み取り可能および/または理解可能な任意の媒体(例えば、紙、ディスプレイなど)上に提示可能なデータ(例えば、ASCIIテキスト、2進数、16進数、10進数、グラフィックなど)の任意の表現であり得る。
【0033】
上記を考慮して、本開示による1つ以上の実施形態に記載される機能が当業者に知られているであろう任意の様式で実装され得ることが容易に明らかになるであろう。したがって、本明細書に記載されたプロセスを実装するために使用されるコンピュータ言語、コンピュータシステム、または任意の他のソフトウェア/ハードウェアは、本明細書に記載されたシステム、プロセス、またはプログラム(例えば、かかるシステム、プロセス、またはプログラムによって提供される機能)の範囲を限定するものではない。
【0034】
例示的な電極装置110は、患者114の体表面電位、より具体的には、患者114の胴体表面電位を測定するように構成され得る。図2に示されるように、例示的な電極装置110は、外部電極112のセットまたはアレイ、ストラップ113、およびインターフェース/増幅器回路116を含んでもよい。電極112は、ストラップ113に取り付けられ得るか、または連結されて得、ストラップ113は、電極112が患者の心臓を取り囲むように、患者114の胴体の周りに巻き付けられるように構成され得る。さらに例示されるように、電極112は、患者114の胴体の後側、外側、後外側、前外側、および前側位置を含む、患者114の外周の周りに位置付けられ得る。
【0035】
例示的な電極装置110は、患者114からの音(例えば、患者の胴体からの心音)を測定または監視するようにさらに構成され得る。図2に示されるように、例示的な電極装置110は、ストラップ113に取り付けられたまたは連結された音響センサー120のセットまたはアレイを含んでもよい。ストラップ113は、音響センサー120が患者の心臓を取り囲むように、患者114の胴体の周りに巻き付けられるように構成され得る。さらに例示されるように、音響センサー120は、患者114の胴体の後側、外側、後外側、前外側、および前側位置を含む、患者114の外周の周りに位置付けられ得る。
【0036】
さらに、電極112および音響センサー120は、有線接続118を介してインターフェース/増幅器回路116に電気的に接続され得る。インターフェース/増幅器回路116は、電極112および音響センサー120からの信号を増幅し、その信号をコンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の一方または両方に提供するように構成され得る。他の例示的なシステムは、無線接続を使用して、電極112および音響センサー120によって感知された信号をインターフェース/増幅器回路116に送信し、次いで、例えば、データのチャネルとして、コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の一方または両方に送信することができる。1つ以上の実施形態では、インターフェース/増幅器回路116は、例えば、アナログ電気接続、デジタル電気接続、無線接続、バスベースの接続、ネットワークベースの接続、インターネットベースの接続などを使用して、コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の一方または両方に、電気的に連結され得る。
【0037】
図2の実施例では、電極装置110がストラップ113を含むが、他の例では、様々な機構のうちのいずれか、例えば、テープまたは接着剤が用いられて、電極112および音響センサー120の間隔決めおよび配置を支援することができる。いくつかの例では、ストラップ113は、弾性バンド、一片のテープ、または布を含んでもよい。さらに、いくつかの例では、ストラップ113は、例えばTシャツなどの衣類の一部であり得、またはそれと統合され得る。他の例では、電極112および音響センサー120は、患者114の胴体に個別に配置され得る。さらに、他の例では、電極112(例えば、アレイに配置される)および音響センサー120(例えば、同様にアレイに配置される)の一方または両方は、電極112および音響センサー120を患者114の胴体に固定するパッチ、ベスト、および/または他の様式の一部であり得、またはその内部に設置され得る。なおさらに、他の例では、電極112および音響センサー120の一方または両方は、2つの材料セクションまたは2つのパッチの一部であり得、またはその内部に設置され得る。2つのパッチの一方は、患者114の胴体の前側に設置され得(例えば、患者の心臓の前側を表す電気信号を監視するために、患者の心臓の前側を表す代理心臓内電気的興奮到達時間を測定するために、患者の前側の音を監視または測定するために、など)、他方のパッチは、患者114の胴体の後側に設置され得る(例えば、患者の心臓の後側を表す電気信号を監視するために、患者の心臓の後側を表す代理心臓内電気的興奮到達時間を測定するために、患者の後側の音を監視または測定するために、など)。さらに、他の例では、電極112および音響センサー120の一方または両方は、患者114の後側から患者114の左側を横切って患者114の前側に延びる上列および下列に配置され得る。その上なおさらに、他の例では、電極112および音響センサー120の一方または両方は、脇の下の領域の周りの曲面に配置され得、他の残りの領域よりも右胸部で低密度である電極/センサー密度を有し得る。
【0038】
電極112は、患者114の心臓を取り囲み、かつ信号が患者114の胴体を通って伝播した後に心臓の脱分極および再分極と関連付けられた電気信号を記録または監視するように構成され得る。電極112は各々、心臓信号を反映する胴体表面電位を感知するために単極構成で使用され得る。インターフェース/増幅器回路116は、単極感知のために各電極112と組み合わせて使用され得る戻り電極または不関電極(図示せず)にも連結され得る。
【0039】
いくつかの例では、患者の胴体の周りに空間的に分布した約12~約50個の電極112および約12~約50個の音響センサー120が存在し得る。他の構成は、より多いまたはより少ない電極112およびより多いまたはより少ない音響センサー120を有する場合がある。電極112および音響センサー120は、患者114の周り全体にまたは患者114の周りに完全に延びるアレイに配置されないまたは分布しない場合があることを理解されたい。代わりに、電極112および音響センサー120は、患者114の周りの一部にのみまたは患者114の周りに部分的に延びるアレイに配置され得る。例えば、電極112および音響センサー120は、電極および音響センサーがほとんどまたは全く右側(患者の右側の後領域および前領域を含む)に近接していない状態で、患者の前側、後側、および左側に分布され得る。
【0040】
コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の一方または両方は、電極112によって感知された胴体表面電位信号および音響センサー120によって感知された音響信号を記録および分析し得、これらは、インターフェース/増幅器回路116によって増幅/調整される。さらに、コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の一方または両方は、本明細書にさらに記載されるように、電極112からの電気信号を分析して、患者の心臓からの心電図(ECG)信号、EHIのような情報、またはデータを提供するように構成され得る。さらに、コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160の一方または両方は、音響センサー120からの電気信号を分析して、患者の身体および/または患者に植込まれたデバイス(左心補助デバイスなど)からの音声信号、情報、またはデータを提供するように構成され得る。
【0041】
加えて、コンピューティング装置140および遠隔コンピューティングデバイス160は、電極装置110に関連する様々な情報および電極装置110を使用して収集または感知されたデータを示するグラフィカルユーザインターフェース132、172を提供するように構成され得る。例えば、グラフィカルユーザインターフェース132、172は、電極装置110を使用して得られた電気的活性化マップおよびEHIを示し得る。例えば、グラフィカルユーザインターフェース132、172は、電極装置110を使用して得られたQRS群を含むECGおよび音響センサー120を使用して得られた音波を含む音声データ、ならびにそれに関連する他の情報を描写され得る。例示的なシステムおよび方法は、電極装置110を使用して収集された電気情報および音響センサー120を使用して収集された音響情報を非侵襲的に使用して、患者の心臓の健康を評価し、患者に提供される心臓治療を評価および構成することができる。より具体的には、例示的なシステムおよび方法は、電極装置110を使用して収集された電気情報を非侵襲的に使用して、患者の後部左脚が心臓治療によって係合されているかどうか、例えば、患者の後部左脚がどの程度係合されているかを決定することができる。
【0042】
さらに、電極装置110は、例えば患者114の胴体下部の周りに位置付けられるようになる参照電極および/または駆動電極をさらに含み得、これらはシステム100によってさらに使用され得る。例えば、電極装置110は、3つの参照電極を含んでもよく、これらの3つの参照電極からの信号が組み合わせられて、参照信号を提供することができる。さらに、電極装置110は、3つの尾側参照電極を使用して(例えば、ウィルソン中央端末で使用される標準参照電極の代わりに)、3つの尾側に位置する参照信号を平均することにより、より少ないノイズの「真の」単極信号を得ることができる。
【0043】
図3は、患者114の心臓を取り囲み、かつ信号が患者114の胴体を通って伝播した後に心臓の脱分極および再分極に関連する電気信号を記録または監視するように構成された複数の電極112と、患者114の心臓を取り囲み、かつ信号が患者114の胴体を通って伝播した後に信号に関連する音声信号を記録または監視するように構成された複数の音響センサー120とを含む、別の例示的な電極装置110を例示する。電極装置110は、複数の電極112および複数の音響センサー120が取り付けられ得、または電極112および音響センサー120が連結され得るベスト114を含み得る。少なくとも1つの実施形態では、複数の電極112またはアレイを使用して、例えば、代理電気的興奮到達時間などの電気情報を収集することができる。図2の電極装置110と同様に、図3の電極装置110は、有線接続118を介して電極112および音響センサー120の各々に電気的に連結され、かつ電極112および音響センサー120からの信号をコンピューティング装置140に送信するように構成されたインターフェース/増幅器回路116を含んでもよい。例示されるように、電極112および音響センサー120は、例えば、患者114の胴体の後側、外側、後外側、前外側、および前側位置を含む、患者114の胴体にわたって分布され得る。
【0044】
ベスト114は、布で形成され得、電極112および音響センサー120が布に取り付けられている。ベスト114は、患者114の胴体上の電極112および音響センサー120の位置および間隔を維持するように構成され得る。さらに、ベスト114は、患者114の胴体の表面上の電極112および音響センサー120の位置を決定するのを支援するように印付けされ得る。いくつかの例では、患者114の胴体の周りに約25~約256個の電極112および約25~約256個の音響センサー120が分布してもよいが、他の構成は、より多いまたはより少ない電極112およびより多いまたはより少ない音響センサー120を有する場合がある。
【0045】
本明細書に記載された例示的なシステムおよび方法は、VfA心臓ペーシング、左心室中隔-基底心臓ペーシングなどの心臓治療による後部左脚係合の評価および査定においてユーザに非侵襲的支援を提供するために使用され得る。さらに、本明細書に記載された例示的なシステムおよび方法は、現在患者に送達されている心臓治療の構成で使用することができる(例えば、VfAペーシングデバイスなどの植込み型医療デバイスによって)。例えば、例示的なシステムおよび方法は、心臓治療を調整することおよび/または心臓治療を自動的に調整することにおいてユーザにガイダンスを提供することによって、後部左脚活性化の改善においてユーザを支援するために使用され得る。
【0046】
後部左脚係合および心臓治療の調整を評価する例示的な方法200が、図4に描写されている。概して、例示的な方法200は、心臓ペーシング治療の実施中の外部電気的活動(例えば、患者の後部胴体領域からの)を分析し、そのような電気的活動を使用して、心臓治療が後部左脚係合をもたらすかどうか、さらにはどの程度までもたらすかを決定するために使用され得る。
【0047】
示されるように、方法200は、電気的活動を監視すること202を含み得る。一実施形態では、電気的活動は、患者の外部で測定され得る。言い換えれば、電気的活動は、患者の体外の組織から(例えば、皮膚)から測定され得る。例えば、方法200は、例えば、図1図3に関して示され、および記載されるような複数の外部電極を使用して、電気的活動を監視または測定することを含み得る。一実施形態では、複数の外部電極は、患者の胴体の周りに設置されるベストまたはバンドの一部であってもよく、またはそれらに組み込まれてもよい。より具体的には、複数の電極は、患者の胴体の皮膚に近接して設置されるように構成されたアレイに位置付けられた外部表面電極であると記載され得る。複数の外部電極を使用する場合、監視プロセス202が、複数の心電図(ECG)、患者の心臓の脱分極および再分極を表す信号、および/または複数の興奮到達時間を提供し得ると説明され得る。より具体的には、複数のECGを使用して、次に、心臓の脱分極を表す代理興奮到達時間を生成し得る。
【0048】
電気的活動は、患者の胴体の後部の周りに、またはその近くに配置された電極の後部サブセットから監視され得る202。電極の後部サブセットから捕捉された電気的活動、または電気信号は、後部繊維束または後部左脚などの患者の心臓の1つ以上の後部領域を表し得る。一実施例では、電極の後部サブセットは、患者の胴体の後部および後外側領域に配置され得る。
【0049】
方法200は、患者の心臓の1つ以上の領域(area)または領域(region)にペーシングまたは電気ペースを送達することを目的とした植込み型または非植込み型デバイスを使用する心臓ペーシング治療などの心臓治療の送達204を含み得る。心臓ペーシング治療は、心房から心室への(VfA)ペーシング治療、左心室基底中隔ペーシング治療、ヒス束ペーシング治療、および中隔内左心室心内膜ペーシング治療を含み得るが、これらに限定されない。
【0050】
VfAペーシング治療は、図7図10に関して本明細書でさらに記載および示されている。VfAペーシング治療は、左脚および右脚の領域、左心室の1つ以上の領域、右心房の1つ以上の領域などを含むがこれらに限定されない、心臓伝導系の1つ以上の領域に電気的ペースを送達するように構成され得る。
【0051】
心臓伝導系ペーシング治療の別の実施例は、例えば、「His Bundle and Bundle Branch Pacing Adjustment」と題された、 2018年10月17日に出願された米国特許出願第16/163,132号に記載されているようなヒス束ペーシング療法であり得る。心臓伝導系ペーシング治療のさらに別の実施例は、例えば、「Pacing Method and Apparatus」と題された、2007年2月13日に発行された米国特許第7,177,704号に記載されているような中隔内左心室心内膜ペーシング治療であり得る。
【0052】
心臓ペーシング治療の送達204中、電気的活動は、引き続き監視され得202、電気的不均一性情報(EHI)を生成する206ために使用され得る。EHI(例えば、データ)は、心臓の機械的同期もしくは同期不全および/または心臓の電気的同期または同期不全のうちの少なくとも1つを表す情報として画定され得る。言い換えれば、EHIは、患者の心臓の実際の機械的および/または電気的機能の代理を表し得る。少なくとも1つの実施形態では、EHIの相対的変化(例えば、ベースライン不均一性情報から治療不均一性情報に対する、第1の不均一性情報セットから第2の治療不均一性情報セットに対する、など)を使用して、血行動態的応答の変化を表す代理値(例えば、LV圧力勾配の急激な変化)を決定し得る。左心室圧は、典型的には、患者の心臓の左心室に設置された圧力センサーを用いて侵襲的に監視され得る。したがって、左心室圧を表す代理値を決定するためのEHIの使用は、左心室圧センサーを使用した侵襲的監視を回避し得る。
【0053】
少なくとも1つの実施形態では、EHIは、例えば、図1図3に関して本明細書に記載される電極装置110の外部電極のうちのいくつかまたはすべてを使用して測定された心室内興奮到達時間の標準偏差を含み得る。さらに、局部的または局所的なEHIは、胴体のある特定の解剖学的領域に設置された電極を使用して測定された興奮到達時間の標準偏差および/または平均を含み得る。例えば、患者の胴体の後側にある外部電極は、局部的または局所的な後部EHIを演算するために使用され得る。さらに、例えば、局部的または局所的な左側EHIを演算するために、患者の胴体の左側にある外部電極を使用し得る。
【0054】
EHIは、1つ以上の様々なシステムおよび/または方法を使用して生成され得る。例えば、EHIは、2012年11月8日に公開された米国特許出願第2012/0283587 A1号、表題「ASSESSING INRA-CARDIAC ACTIVATION PATTERNS AND ELECTRICAL DYSSYNCHRONY」、2012年11月8日に公開された米国特許出願第2012/0284003(A1)号、表題「ASSESSING INTRA-CARDIAC ACTIVATION PATTERNS」、および2012年5月15日に発行された米国特許出願第8,180,428(B2)号、表題「METHODS AND SYSTEMS FOR USE IN SELECTING CARDIAC PACING SITES」に記載されるように、表面電極アレイまたは複数の表面電極および/または画像化システムを使用して生成され得る。
【0055】
EHIは、患者の胴体の後部および後外側領域から測定された代理興奮到達時間に焦点を合わせた、またはそれに向けられた1つ以上の測定基準または指標を含み得る。例えば、電気的不均一性の測定基準または指標の1つは、患者の胴体の後部および/または後外側領域の周りに配置された後部電極によって監視される代理後部電気的興奮到達時間(MPAT)の平均または平均であり得る。いくつかの例では、MPATは、モデル心臓の表面上の推定心臓内興奮到達時間を使用して計算され得る。電気的不均一性または同期不全の別の測定基準または指標は、患者の胴体の後部および/または後外側領域の周りに配置された後部電極によって監視される代理早期活性化電気的興奮到達時間(PEPA)のパーセンテージであり得る。
【0056】
MPATおよびPEPAは、「後部」電極と称され得る、患者の後側に近接する電極によってのみ測定された電気的活動から決定され(例えば、計算され、演算され、生成され、生産され、など)得る。後部電極は、患者の脊椎の後ろの体または胴体領域を含む、患者の心臓の後側に近接して設置された任意の表面電極として画定され得る。一実施形態では、後部電極は、患者の後部にあるすべての電極を含み得る。別の実施形態では、後部電極は、患者の後部にあり、患者の脊椎と患者の左側との間に配置されたすべての電極を含み得る。さらに別の実施形態では、後部電極は、患者の胴の周りに配置された様々な対応する表面電極に投影され得る、画像化装置(例えば、X線、透視室など)を使用して決定された心臓の後部の輪郭に基づいて指定得る。
【0057】
例示的な方法200は、MPATおよびPEPAの一方または両方などの生成されたEHIに基づいて、後部左脚係合を決定すること208をさらに含み得る。例えば、生成されたEHIは、後部左脚係合の程度を決定するために、分析され得る。
【0058】
一実施形態では、後部左脚係合の程度は、完全な後部左脚係合から不十分な後部左脚係合までの範囲であり得る。完全な後部左脚係合は、心臓治療によって係合されている後部左脚のすべてまたは実質的にすべてとして画定され得る。十分な後部左脚係合は、効率的および十分な左心室機能を提供するために、心臓治療によって係合されている後部左脚の量として画定され得る。部分的な後部左脚係合は、部分的に効率的なおよび部分的に十分な左心室機能を提供するために、心臓治療によって係合されている後部左脚の一部のみとして画定され得る。不十分な後部左脚係合は、非効率的および不十分な左心室機能を提供するために、心臓治療によって係合されている後部左脚のごく一部としてのみ画定され得る。したがって、方法200は、心臓治療が完全な後部左脚係合、十分な後部左脚係合、部分的な後部左脚係合、または不十分な後部左脚係合をもたらしたかどうかを決定し得る。
【0059】
1つ以上の実施形態では、後部電極(MPAT)によって監視された代理後部電気的興奮到達時間の平均は、後部左脚係合を評価するために使用され得る。MPATは、後部左脚が係合された程度を決定するために、1つ以上の閾値または範囲と比較され得る。例えば、MPATが30ミリ秒以下の場合、左脚が十分に係合されたと決定され得る。さらに、MPATが30ミリ秒より大きく50ミリ秒未満である場合、左脚が部分的に係合されたと決定され得る。さらに、例えば、MPATが50ミリ秒以上である場合、左脚が十分に係合されていないと決定され得る。この実施形態におけるそのような閾値および範囲は、一例に過ぎず、他の同様の閾値および範囲は、本開示によって企図されることが理解されるべきである。
【0060】
1つ以上の実施形態では、後部電極(PEPA)によって監視された代理早期活性化電気的興奮到達時間のパーセンテージは、後部左脚係合を評価するために使用され得る。後部電極、または後部電極によって監視された活性化が早期活性化を構成するかどうかを決定するために、興奮到達時間は、早期活性化閾値と比較され得る。早期活性化閾値以下の興奮到達時間を測定する電極は、早期活性化を有する電極として示され得、一方、早期活性化閾値よりも長い興奮到達時間を測定する電極は、早期活性化を有さない電極として示され得る。早期活性化の閾値は、約15ミリ秒~約50ミリ秒であり得る。一実施形態では、早期活性化閾値は、35ミリ秒である。他の実施形態では、早期活性化閾値は、約15ミリ秒以上、約25ミリ秒以上、および約30ミリ秒以上、および/または約50ミリ秒以下および約40ミリ秒以下であり得る。
【0061】
したがって、早期活性化閾値によって決定されるような、早期活性化電極は、PEPAを提供するために後部電極の総量で除算され得、次いで、PEPAは、後部左脚係合の程度を決定するために使用され得る。例えば、PEPAが75%を超える場合、左脚が十分に係合されたと決定され得る。さらに、例えば、PEPAが50%以上および75%以下である場合、左脚が部分的に係合されたと決定され得る。さらに、例えば、PEPAが50%未満である場合、左脚が十分に係合されていないと決定され得る。
【0062】
十分な後部左脚係合を示す前部および後部電気的活性化マップは、図5Aに描写され、部分的な後部左脚係合を示す前部および後部電気的活性化マップは、図5Bに描写され、不十分な後部左脚係合を示す前部および後部電気的活性化マップは、図5Cに描写されている。各図は、左に前部活性化マップ、右に後部活性化マップ、および各後部マップの下に描写された後部EHI、つまりMPATを含む。
【0063】
図5Aに示されるように、後部マップは、均質な、早期活性化を示し、関連するMPAT、すなわち、21ミリ秒(ms)は、十分な後部左脚係合を示す、30ms未満である。図5Bに示されるように、後部マップは、部分的な早期活性化を示し、関連するMPAT、すなわち、44ミmsは、部分的な後部左脚係合を示す、50ms未満であるが30ミリ秒を超える。図5Cに示されるように、後部マップは、少量の早期活性化を示し、関連するMPAT、すなわち、80msは、不十分な後部左脚係合を示す、50msより大きい。
【0064】
同じ前部および後部電気的活性化マップが、図6A図6Cに描写されている。しかしながら、これらのマップはまた、患者の後部胴領域の周りの対応する電極の位置の相対的な位置を示す、後部電気的活性化マップ上に重ねられた電極表現220を含む。例示的な早期活性化閾値である35ms未満の早期活性化が測定された電極は、クロスハッチング(例えば、クロスハッチングされた塗りつぶし)を有する円によって表され、例示的な早期活性化閾値である35ms以上の早期活性化が測定された電極は、クロスハッチングのない(例えば、塗りつぶしのない)円で表される。
【0065】
さらに、各図は、各後部マップの下に描写かれる後部EHI、すなわちPEPAを含み、これは、本明細書に記載されるように、早期活性化を有する電極のパーセンテージである。電極は電極表現220によってグラフで描写されているので、PEPAは、クロスハッチングされた電極表現220を後部電極の総数で除算されたものとして記載され得る。図6Aに示されるように、後部マップは、均質な、早期活性化を示し、関連するPEPA、すなわち、78%(50個の電極のうち39個)は、十分な後部左脚係合を示す、75%より大きい。図5Bに示されるように、後部マップは、部分的な早期活性化を示し、関連するPEPA、すなわち、54%(50個の電極のうち27個)は、部分的な後部左脚係合を示す、75%未満であるが50%を超える。図5Cに示されるように、後部マップは、少量の早期活性化を示し、関連するPEPA、すなわち、14%(50個の電極のうち7個)は、不十分な後部左脚係合を示す、50%未満である。
【0066】
1つ以上の後部EHI測定基準は、後部左脚係合を決定するために、組み合わせて、または一緒に使用され得る。一実施形態では、MPATは、後部左脚係合を決定するために、PEPAとともに使用され得る。例えば、PEPAが75%を超え、MPATが30ミリ秒以下の場合、左脚が十分に係合されたと決定され得る。さらに、例えば、PEPAが50%以上および75%以下であり、MPATが30ミリ秒より大きく50ミリ秒未満である場合、左脚が部分的に係合されたと決定され得る。さらに、例えば、PEPAのいずれかが50%未満であり、MPATが50ミリ秒以上である場合、左脚が十分に係合していないと決定され得る。
【0067】
例示的な方法200が後部左脚係合を決定208した後、方法200は、例えば、より効果的な心臓機能を提供しようとして後部左脚係合を増加させるために、心臓治療を調整または修正すること210をさらに含み得る。後部左脚係合は、心臓治療を調整するときに考慮すべき唯一の要因であり得、したがって、後部左脚の係合に関して記載された心臓治療調整は、本明細書に記載されていない他の要因と組み合わせて利用され得ることが理解されるべきである。
【0068】
方法200は、様々な方法で心臓ペーシング治療を調整208し得る。例えば、心臓ペーシング治療は、調整され得る複数の異なるペーシング設定またはパラメータを含み得るか、または画定し得る。複数のペーシング設定は、ペーシング電極の位置、ペーシング電極の角度、ペーシングの振幅または電力、AV遅延、VV遅延、およびペーシングパルス長などのペーシング時間、1つ以上のペーシング電極の使用、および/または1つ以上のペーシングベクトルの使用を含み得るが、これらに限定されない。言い換えれば、1つ以上のペーシング設定は、心臓ペーシング治療の調整208中に変更され得る(例えば、増加され、減少され、移動され、など)。
【0069】
心臓ペーシング治療を調整208した後、方法200は、新たに調整された心臓ペーシング治療中に監視された電気的活動からEHIの生成206に戻り得る。次いで、方法200は、心臓ペーシング治療を再び調整210し、EHIを生成206し、後部左脚係合を決定208し、各々が少なくとも1つの異なるペーシングパラメータを有する複数の異なる心臓ペーシング治療構成が試みられるまでループを続け得る。一実施形態では、ペーシング設定は、特定の設定ごとに可能なパラメータの範囲にわたって「スイープ」するように、ステップまたはパーセンテージによって段階的に調整され得る。例えば、AV遅延は、患者の固有のAV遅延の70%に等しいレベルで開始し得、事前画定された最小の60msまで、約10msから約20msのステップで徐々に減少され得る。加えて、例えば、ペーシングされた設定は、ペーシング電極の位置または角度であり得、ペーシング電極の位置または角度は、異なる位置および角度の範囲を提供するために、移植者によって漸進的に調整され得る。
【0070】
プロセス206、208、210は、「閉ループ」を画定すると記載され得る。例えば、プロセス206、208、2010は、複数の異なるペーシング設定または構成について、ループを継続し得、複数の異なるペーシング設定または構成の各々について、EHI情報は、生成され206得、後部左脚係合は、決定され208得る。次いで、複数の異なるペーシング設定または構成について生成されたEHI、および次に、後部左脚係合の決定は、心臓ペーシング治療の選択されたペーシング設定を決定212するために、使用され得る。心臓伝導治療のために選択されたペーシング設定は、いくつかの実施形態では、例えば、最も完全な後部左脚係合を提供するペーシング設定が選択され得るとして、「最適な」ペーシング設定と呼ばれ得る。しかしながら、最も完全な後部左脚係合を提供するペーシング設定は、例えば、治療を行うデバイスのバッテリー寿命など、後部左脚係合以外の考慮事項が存在するために選択されるであろうペーシング設定であるとは限らないことを理解されたい。したがって、心臓ペーシング治療のために選択された、または最適なペーシング設定は、後部左脚係合を含む多くの要因のバランスを表し得る。
【0071】
例えば、MPATは、心臓ペーシング治療のために選択されたペーシング設定を決定212するために、利用され得る。したがって、複数の異なるペーシング設定を利用することができ、210、およびMPATは、複数の異なるペーシング設定2018のそれぞれに対して生成することができる。この実施例では、最も低いMPATは、心臓ペーシング治療のための最も完全な後部左脚係合を示し得、したがって、最も低いMPATを有する、またはそれに対応する心臓ペーシング治療の設定は、心臓ペーシング治療とともに使用されるように選択212され得る。
【0072】
心臓ペーシング治療を最適化するためのさらなる例示的なシステム、方法、およびプロセスは、「Evaluation of Ventricle from Atrium Pacing Therapy」と題された、2019年3月23日に出願された米国特許出願第15/ 934,517号、および「Adaptive VFA Cardiac Therapy」と題された、2018年8月31日に出願された米国仮特許出願第62/725,763号で記載され得る。
【0073】
例示的な心房から心室への(VfA)心臓治療システムは、例えば、図1図6に関して本明細書に記載されたシステムおよび方法とともに使用されるように構成され得る、図7に描写される。本開示がリードレス植込み型医療デバイスおよびリードを有する植込み型医療デバイスの一方または両方を利用し得ることが理解されるべきであるが、図7の例示的な心臓治療システムは、シングルチャンバまたはデュアルチャンバ治療用に構成され得、および患者の心臓8内に植込まれるリードレス心臓内医療デバイス10を含む。いくつかの実施形態では、デバイス10は、シングルチャンバペーシング用に構成され得、例えば、シングルチャンバペーシングとマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)との間で切り替え得る。本明細書で使用される場合、「心臓内」は、例えば、心臓治療を提供するために、患者の心臓内に完全に植込まれるように構成されたデバイスを指す。デバイス10は、標的植込み領域4における患者の心臓8の右心房(RA)内に植込まれて示されている。デバイス10は、標的植込み領域4における心房心内膜に対してデバイス10の遠位端を固定する1つ以上の固定部材20を含み得る。標的植込み領域4は、ヒス束5と冠状静脈洞3との間に位置してもよく、三尖弁6に隣接してもよく、またはその隣に位置してもよい。デバイス10は、例えば、デバイス10が、概して右心房内に配置されている間に、心室の一方または両方(例えば、状況に応じて、右心室、左心室、または両心室)からの電気的活動の感知およびそれへの治療の提供の一方または両方を行うまたは実行し得るため、心房からの心室へのデバイスとして記載され得る。具体的には、デバイス10は、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域内に植込まれ得る組織貫通電極を含み得る。
【0074】
デバイス10は、リードレス植込み型医療デバイスとして記載され得る。本明細書で使用される場合、「リードレス」は、患者の心臓8から延在するリードがないデバイスを指す。さらに、リードレスデバイスがリードを有し得るが、そのリードは、患者の心臓の外側から患者の心臓の内側に延在しないであろう、または患者の心臓の内側から患者の心臓の外側に延在しないであろう。いくつかのリードレスデバイスは、静脈を通って導入され得るが、一旦植込まれると、デバイスは、いずれの経静脈リードも含んでいないまたは含まない場合があり、いずれの経静脈リードも使用することなく心臓治療を提供するように構成され得る。さらに、特に、リードレスVfAデバイスは、デバイスのハウジングが心房内に位置付けられたときに、心室内の電極に動作可能に接続するためにリードを使用しない。加えて、リードレス電極は、電極とハウジングとの間にリードを使用することなく、医療デバイスのハウジングに連結されてもよい。
【0075】
デバイス10は、デバイス10の遠位端領域から延びる真っ直ぐなシャフトを画定するまたは有するダーツ電極アセンブリ12を含んでもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、心室心内膜または心外膜表面を完全に穿孔することなく、心房心筋および中心線維体を通って心室心筋14内に、または心室中隔に沿って配置されてもよく、または少なくとも配置されるように構成されてもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、シャフトの遠位端領域に電極を有してもよく、または含んでもよく、これにより、電極が心室心筋内に位置付けられて、心室信号を感知し、心室ペーシングパルスを送達する(例えば、左心室および/または右心室を脱分極して、左心室および/または右心室の収縮を開始する)ことができるようになる。いくつかの例では、シャフトの遠位端領域における電極は、ペーシングおよび感知のための双極電極対において使用するために提供された陰極電極である。例示される植込み領域4は、ダーツ電極アセンブリ12の1つ以上の電極が心室心筋内に位置付けられることを可能にし得るが、本明細書に開示される態様を有するデバイスは、マルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)、マルチチャンバ感知を備えたシングルチャンバペーシング、シングルチャンバペーシングおよび/もしくは感知、または必要に応じて他の臨床治療および用途のために、他の位置に植込まれてもよいことが認識される。
【0076】
デバイス10がシングルダーツ電極アセンブリを含むと本明細書で説明されているが、デバイス10が、心室心内膜または心外膜表面を完全に穿孔することなく、心房心筋および中心線維体を通って心室心筋14内に、または心室中隔に沿って配置された、または配置されるように構成された2つ以上のダーツ電極アセンブリを含んでもよいことを理解されたい。加えて、各ダーツ電極アセンブリは、シャフトの遠位端領域に、または他の領域(例えば、近位または中央領域)に沿って、複数の電極を有してもよく、または含んでもよい。
【0077】
心臓治療システム2はまた、患者の心臓8の外側(例えば、皮下)に配置され得、心臓治療を送達するために患者の心臓8に作動可能に連結され得る、別個の医療デバイス50(図7に図式的に描写される)を含み得る。一例では、別個の医療デバイス50は、血管外ICDであってもよい。いくつかの実施形態では、血管外ICDは、除細動電極を含むまたは有する除細動リードを含んでもよい。治療ベクトルは、除細動リード上の除細動電極とICDのハウジング電極との間に存在してもよい。さらに、ICDの1つ以上の電極は、患者の心臓8に関する電気信号を感知するために使用されてもよい。ICDは、1つ以上の除細動または電気的除細動ショックを含むショック治療を送達するように構成されてもよい。例えば、不整脈が感知された場合、ICDは電気リード線を介してパルスを送信し、心臓にショックを与え、正常なリズムを回復してもよい。いくつかの例では、ICDは、心臓内にリード線を配置したり、心臓に直接電線を取り付けたりすることなく、ショック治療を提供してもよい(皮下ICD)。本明細書に記載されたシステム2とともに使用され得る血管外皮下ICDの例は、2016年3月8日に発行された米国特許第9,278,229号(Reinkeら)において説明され得る。
【0078】
ショック治療(例えば、除細動リードの除細動電極によって提供される除細動ショック)の場合、別個の医療デバイス50(例えば、血管外ICD)は、制御回路を含んでもよく、この制御回路は、治療送達回路を使用して、前縁電圧、傾斜、提供されるエネルギー、パルス位相などを含むいくつかの波形特性のうちのいずれかを有する除細動ショックを発生させる。治療送達回路は、例えば、単相、二相、または多相波形を生成し得る。加えて、治療送達回路は、異なる量のエネルギーを有する除細動波形を生成し得る。例えば、治療送達回路は、皮下除細動のために合計およそ60~80ジュール(J)のエネルギーを提供する除細動波形を生成し得る。
【0079】
別個の医療デバイス50は、感知回路をさらに含んでもよい。感知回路は、電極の1つ以上の組み合わせを介して感知された電気信号を取得し、かつ取得された信号を処理するように構成されてもよい。感知回路の構成要素は、アナログ構成要素、デジタル構成要素、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。感知回路は、例えば、1つ以上の感知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、アナログ-デジタル変換器(ADC)などを含んでもよい。感知回路は、感知された信号をデジタル形式に変換し、処理および/または分析のためにデジタル信号を制御回路に提供してもよい。例えば、感知回路は、感知電極からの信号を増幅し、増幅された信号をADCによってマルチビットデジタル信号に変換し、その後、デジタル信号を制御回路に提供してもよい。1つ以上の実施形態では、感知回路は、処理された信号を閾値と比較して、心房または心室脱分極(例えば、P波またはR波)の存在を検出し、心房脱分極(例えば、P波)または心室脱分極(例えば、R波)の存在を制御回路に示してもよい。
【0080】
デバイス10と別個の医療デバイス50は、患者の心臓8に心臓治療を提供するために、協働し得る。例えば、デバイス10および別個の医療デバイス50を使用して、頻脈を検出する、頻脈を監視する、および/または頻脈関連治療を提供することができる。例えば、デバイス10は、別個の医療デバイス50と無線で通信して、別個の医療デバイス50を使用してショック治療を誘発してもよい。本明細書で使用される場合、「無線で」とは、デバイス10と別個の医療デバイス50との間の金属導体を使用しない動作的連結または接続を指す。一例では、無線通信は、デバイス10によって提供される特有の、信号送信する、またはトリガする電気パルスを使用してもよく、この電気パルスは、患者の組織を通って伝導し、別個の医療デバイス50によって検出可能である。別の例では、無線通信は、デバイス10の通信インターフェース(例えば、アンテナ)を使用して電磁放射を提供してもよく、この電磁放射は、患者の組織を通って伝播し、例えば、別個の医療デバイス50の通信インターフェース(例えば、アンテナ)を使用して検出可能である。
【0081】
図8は、図7の心臓内医療デバイス10および患者の心臓8の解剖学的構造の拡大概念図である。具体的には、デバイス10は、電気的活動を感知するおよび/またはペーシング治療を提供するように構成されている。心臓内デバイス10は、ハウジング30を含んでもよい。ハウジング30は、密閉された内部空洞を画定してもよく、この内部空洞内には、図10と併せて概して記載される感知回路、治療送達回路、制御回路、メモリ、遠隔測定回路、他の任意のセンサー、および電源などのデバイス10の内部構成要素が備わっている。ハウジング30は、例えば、チタンまたはチタン合金、ステンレス鋼、MP35N(非磁性ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金)、白金合金、または他の生体適合性金属もしくは金属合金などの導電性材料を含んでもよい(例えば、それから形成されてもよい、またはそれを形成してもよい)。他の例では、ハウジング30は、セラミック、ガラス、サファイア、シリコーン、ポリウレタン、エポキシ、アセチルコポリマープラスチック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、または他の生体適合性ポリマーを含む非導電性材料を含んでもよい(例えば、それから形成されてもよい、またはそれを形成してもよい)。
【0082】
少なくとも1つの実施形態では、ハウジング30は、例えば、カテーテルの送達を容易にするために、遠位端領域32と近位端領域34との間に延びており、かつ概して円筒形状を画定していると説明され得る。他の実施形態では、ハウジング30は、本明細書に記載された機能および有用性を行うために、角柱形状または任意の他の形状であり得る。ハウジング30は、デバイス10の植込み中に送達ツールと係合するために、例えば、近位端領域34に画定または位置付けられた送達ツールインターフェース部材26を含んでもよい。
【0083】
ハウジング30のすべてまたは一部が、心臓治療中に感知および/またはペーシング電極として機能し得る。示される例では、ハウジング30は、ハウジング30の近位部分(例えば、遠位端領域32よりも近位端領域34に近い)を取り囲む近位ハウジングベース電極24を含む。ハウジング30がチタン合金または上に列記される他の例などの導電性材料である(例えば、それを画定する、それから形成される、など)場合、ハウジング30の一部は、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または他の生体適合性ポリマーのコーティングなどの非導電性材料によって電気的に絶縁されてもよく、導電性材料の1つ以上の個別領域を露出させたままにして、近位ハウジングベース電極24を形成または画定する。ハウジング30がセラミック、ガラス、またはポリマー材料などの非導電性材料である(例えば、それを画定する、それから形成される、など)場合、チタン、プラチナ、ステンレス鋼、またはそれらの合金などの導電性コーティングまたは層がハウジング30の1つ以上の個別領域に適用されて、近位ハウジングベース電極24を形成することができる。他の例では、近位ハウジングベース電極24は、ハウジング30に取り付けられるまたは組み立てられるリング電極などの構成要素であってもよい。近位ハウジングベース電極24は、ハウジング30が非導電性材料である場合、例えば、導電性ハウジング30または導電体を介してデバイス10の内部回路に電気的に連結されてもよい。
【0084】
示される例では、近位ハウジングベース電極24は、ハウジング遠位端領域32よりもハウジング近位端領域34の近くに位置しており、それ故に、近位ハウジングベース電極24と称され得る。しかしながら、他の例では、ハウジングベース電極24は、ハウジング30に沿った他の位置、例えば、示される位置に対してより遠位に位置してもよい。
【0085】
遠位端領域32で、デバイス10は、遠位固定および電極アセンブリ36を含んでもよく、これは、1つ以上の固定部材20および等しい長さまたは等しくない長さの1つ以上のダーツ電極アセンブリ12を含んでもよい。示されるかかる一例では、シングルダーツ電極アセンブリ12は、ハウジング遠位端領域32から離れて遠位方向に延びるシャフト40と、シャフト40の自由遠位端領域にまたはその近くに先端電極42などの1つ以上の電極要素とを含む。先端電極42は、鋭いまたは斜めのエッジを有する鋭い先端または針状の先端を使用することなく組織層内にかつ組織層を通って貫通するように比較的狭い先端直径(例えば、約1ミリメートル(mm)未満)を有する円錐形または半球形の遠位先端を有してもよい。
【0086】
ダーツ電極アセンブリ12は、1つ以上の組織層を貫通して、先端電極42を所望の組織層、例えば、心室心筋内に位置付けるように構成されてもよい。したがって、シャフト40の高さ47または長さは、予想されるペーシング部位の深さに対応してもよく、シャフト40は、植込み領域4に対してかつその内部に押し付けられたときに横方向または半径方向への曲げに抵抗するように、その長手方向軸に沿って比較的高い圧縮強度を有してもよい。第2のダーツ電極アセンブリ12が用いられる場合、その長さは、予想されるペーシング部位の深さに等しくなくてもよく、ペーシングエネルギーを組織に提供するおよび/または組織から信号を感知するために不関電極として機能するように構成されてもよい。一実施形態では、例えば、ダーツ電極アセンブリ12を標的植込み領域内の組織内に前進させるように長手方向押圧力をハウジング30の近位端34に加えることによって、長手方向軸力が先端電極42に対して加えられ得る。
【0087】
シャフト40は、例えば、組織運動に伴う一時的な屈曲を許容するように、長手方向に非圧縮性である、および/または横方向または半径方向力にさらされたときに横方向または半径方向に弾性的に変形可能であると説明され得るが、横方向力が減少したときにその通常の真っ直ぐな位置に戻り得る。したがって、シャフト40を含むダーツ電極アセンブリ12は、弾力性であると説明され得る。シャフト40がいかなる外力にもさらされていない場合、またはその長手方向の中心軸に沿った力のみにさらされている場合、シャフト40は、示したように真っ直ぐな線形位置を保持してもよい。
【0088】
言い換えれば、ダーツ電極アセンブリ12のシャフト40は、通常は真っ直ぐな部材であってもよく、剛性であってもよい。他の実施形態では、シャフト40は、比較的剛性であるが、依然として横方向に制限された可撓性を有すると説明され得る。さらに、シャフト40は、心臓運動に伴ういくらかの横方向屈曲を可能にするように非剛性であってもよい。しかしながら、弛緩状態では、いずれの外力にもさらされていない場合、シャフト40は、少なくともシャフト40の高さ47または長さだけハウジング遠位端領域32から離間して先端電極42を保持するように、示されるように真っ直ぐな位置を維持してもよい。
【0089】
1つ以上の固定部材20は、通常は湾曲した位置を有する1つ以上の「タイン」と説明され得る。タインは、送達ツール内の遠位方向に延ばされた位置で保持されてもよい。タインの遠位先端は、制限された深さまで心臓組織を貫通し、その後、送達ツールから解放されると、(示される)通常の湾曲した位置に近位方向に再び弾性的または弾力的に湾曲してもよい。さらに、固定部材20は、例えば、2017年6月13日に発行された米国特許第9,675,579号(Grubacら)、および2015年9月1日に発行された米国特許第9,119,959号(Rysら)に記載された1つ以上の態様を含んでもよい。
【0090】
いくつかの例では、遠位固定および電極アセンブリ36は、遠位ハウジングベース電極22を含む。マルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)および感知のためにデバイス10をペースメーカーとして使用する場合、先端電極42は、リターン陽極電極として機能する近位ハウジングベース電極24と対になった陰極電極として使用されてもよい。あるいは、遠位ハウジングベース電極22は、心室信号を感知し、かつ心室ペーシングパルスを送達するために、先端電極42と対になったリターン陽極電極として機能してもよい。他の例では、遠位ハウジングベース電極22は、心房信号を感知し、かつ標的植込み領域4における心房心筋にペーシングパルスを送達するために、陰極電極であってもよい。遠位ハウジングベース電極22が心房陰極電極として機能する場合、近位ハウジングベース電極24は、心室ペーシングおよび感知のために先端電極42と対になったリターン陽極として、かつ心房ペーシングおよび感知のために遠位ハウジングベース電極22と対になったリターン陽極として機能してもよい。
【0091】
この図に示されているように、いくつかのペーシング用途における標的植込み領域4は、概してAV結節15およびヒス束5よりも下側の心房心内膜18に沿っている。ダーツ電極アセンブリ12は、心室心内膜表面17を穿孔することなく、標的植込み領域4内の心房心内膜18を通り、中心線維体16を通って、心室心筋14内に貫通するように、シャフト40の高さ47または長さを少なくとも部分的に画定してもよい。ダーツ電極アセンブリ12の高さ47または長さが標的植込み領域4内に完全に前進すると、先端電極42は心室心筋14内に留まってもよく、遠位ハウジングベース電極22は、心房心内膜18と密接に接触してまたはそれにごく近接して位置付けられてもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、様々な例では、約3mm~約8mmの先端電極42とシャフト40とを組み合わせた高さ47または長さを有してもよい。シャフト40の直径は、約2mm未満であってもよく、約1mm以下、または約0.6mm以下であってもよい。
【0092】
図9は、患者の心臓の二次元(2D)心室マップ300(例えば、上から下に見た図)であり、標準的な17セグメントビューにおける左心室320および右心室322を示している。マップ300は、人間の心臓の異なる領域に対応する複数の領域326を画定するまたは含む。例示されるように、領域326は、1~17で数字的にラベル付けされている(これは、例えば、人間の心臓の標準的な17セグメントモデルに対応する、人間の心臓の左心室の17セグメントに対応する、など)。マップ300の領域326は、基底前領域1、基底前壁中隔領域2、基底下壁中隔領域3、基底下領域4、基底下外側領域5、基底前外側領域6、中央前側領域7、中央前壁中隔領域8、中央下壁中隔領域9、中央下側領域10、中央下外側領域11、中央前外側領域12、頂端前側領域13、頂端中隔領域14、頂端下側領域15、頂端外側領域16、および頂端領域17を含んでもよい。右心室322の下壁中隔領域および前壁中隔領域、ならびに右脚(RBB)25および左脚(LBB)27も例示されている。
【0093】
いくつかの実施形態では、本開示の組織貫通電極のいずれかが、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域に植込まれてもよい。特に、組織貫通電極は、右心房のKoch三角領域から、右心房心内膜および中心線維体を通って植込まれてもよい。植込まれると、組織貫通電極は、左心室心筋の基底領域および/または中隔領域などの標的植込み領域4(図7~8)内に位置付けられてもよい。マップ300を参照して、基底領域には、基底前領域1、基底前壁中隔領域2、基底下壁中隔領域3、基底下領域4、中央前領域7、中央前壁中隔領域8、中央下中隔領域9、および中央下壁領域10のうちの1つ以上が含まれる。マップ300を参照して、中隔領域には、基底前壁中隔領域2、基底前壁中隔領域3、中央前壁中隔領域8、中央下壁中隔領域9、および頂端中隔領域14のうちの1つ以上が含まれる。
【0094】
いくつかの実施形態では、組織貫通電極は、植込まれたときに左心室心筋の基底中隔領域に配置されてもよい。基底中隔領域は、基底前壁中隔領域2、基底下壁中隔領域3、中央前中隔領域8、および中央下中隔領域9のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、組織貫通電極は、植込まれたときに、左心室心筋の高い下側/後側基底中隔領域に配置されてもよい。左心室心筋の高い下/後基底中隔領域は、基底下壁中隔領域3および中央下壁中隔領域9のうちの1つ以上(例えば、基底下壁中隔領域のみ、中央下壁中隔領域のみ、または基底下壁中隔領域および中央下壁中隔領域の両方)の一部を含んでもよい。例えば、高い下/後基底中隔領域は、概して破線境界として例示される領域324を含んでもよい。示されるように、破線境界は、高い下/後基底中隔領域が位置するおおよその場所を表しており、これは、特定の用途に応じていくらか異なる形状またはサイズをとる場合がある。
【0096】
回路のブロック図は、一例による心臓信号を感知する機能、捕捉を決定する機能、および/またはペーシング治療を送達する機能を提供するために、デバイス10のハウジング30内に封入され得る、または本明細書に記載された任意の他の医療デバイスのハウジング内に封入され得る、図10に描写される。図7に示されるような別個の医療デバイス50は、同様の方法で構成され得るいくつかまたはすべての同じ構成要素を含み得る。ハウジング30内に封入された電子回路は、心房および心室電気心臓信号を協働的に監視する、心臓系の捕捉が起こったかを決定する、心臓治療が必要な時期を決定する、および/またはプログラムされた治療モードおよびパルス制御パラメータに従って患者の心臓に電気パルスを送達するソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアを含み得る。電子回路は、制御回路80(例えば、処理回路を含む)、メモリ82、治療送達回路84、感知回路86、および/または遠隔測定回路88を含み得る。いくつかの例では、デバイス10は、患者の1つ以上の生理学的機能、状態(state)、または状態(condition)に相関する信号を生成するための1つ以上のセンサー90を含む。例えば、センサー90は、ペーシング治療の必要性の決定および/またはペーシングレートの制御に使用するための患者活動センサーを含み得る。言い換えれば、デバイス10は、治療送達回路84によって提供される電気刺激治療を提供するかの決定および/またはその制御に使用するための、患者からの信号を感知するための他のセンサー90を含み得る。
【0097】
電源98は、必要に応じて、構成要素80、82、84、86、88、90の各々を含むデバイス10の回路に電力を供給し得る。電源98は、1つ以上の充電式または非充電式電池などの1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含んでもよい。電源98と構成要素80、82、84、86、88、90の各々との間の接続(図示せず)は、例示される概略ブロック図から当業者に理解され得る。例えば、電源98は、治療送達回路84内に含まれる保持コンデンサを充電するために使用される電力を供給するための治療送達回路84内に含まれる1つ以上の充電回路に連結されてもよく、保持コンデンサは、例えば、DDI(R)などのデュアルチャンバペーシングモードに従って、ペーシングパルスを送達するための制御回路80の制御下で適切な時点で放電される。電源98は、様々な回路に電力を供給するために、感知回路86、例えば、感知増幅器、アナログ-デジタル変換器、スイッチング回路など、センサー90、遠隔測定回路88、およびメモリ82の構成要素にも連結されてもよい。
【0098】
図10に示された機能ブロックは、デバイス10に含まれた機能性を表し、本明細書に記載された医療デバイス10に起因する機能を生成することが可能なアナログおよび/またはデジタル回路を実施する任意の個別および/または集積電子回路構成要素を含み得る。様々な構成要素には、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、プロセッサ(共有、専用、またはグループ)、および1つ以上のソフトウェアまたはファームウェアプログラムを実行するメモリ、組み合わせ論理回路、状態機械、または記載される機能を提供する他の好適な構成要素もしくは構成要素の組み合わせなどの処理回路が含まれてもよい。本明細書に開示される機能を実装するために用いられるソフトウェア、ハードウェア、および/またはファームウェアの特定の形態は、主に、医療デバイスに用いられる特定のシステムアーキテクチャによって、かつ医療デバイスによって用いられる特定の検出および治療提供方法によって決定されるであろう。
【0099】
メモリ82には、任意の揮発性、非揮発性、磁気、または電気的非一時的コンピュータ可読記憶媒体、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、または他のメモリデバイスが含まれてもよい。さらに、メモリ82は、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体を含み得、この非一時的コンピュータ読み取り可能媒体は、1つ以上の処理回路によって実行されると、制御回路80および/または他の処理回路が、後部左脚係合を決定し、および/またはシングル、デュアル、またはトリプルチャンバでの較正されたペーシング治療(例えば、シングルチャンバペーシングまたはマルチチャンバペーシング)、またはデバイス10に起因する他の心臓治療機能(例えば、感知するまたは治療を提供する)を行う。命令を記憶する非一時的コンピュータ可読媒体は、上に列記される媒体のうちのいずれかを含んでもよい。
【0100】
制御回路80は、例えば、データバスを介して、治療送達回路84および感知回路86と通信して、心臓電気信号を感知し、感知された心イベント、例えば、P波およびR波、またはそれらの不存在に応答して、心臓電気刺激治療の提供を制御することができる。先端電極42、遠位ハウジングベース電極22、および近位ハウジングベース電極24は、電気刺激パルスを患者の心臓および感知回路86に送達するために、および心臓電気信号を感知するために、治療送達回路84に電気的に結合され得る。
【0101】
感知回路86は、心房(A)感知チャネル87および心室(V)感知チャネル89を含んでもよい。遠位ハウジングベース電極22および近位ハウジングベース電極24は、心房信号、例えば、心房心筋の脱分極に付随するP波を感知するために、心房感知チャネル87に結合されてもよい。2つ以上の選択可能な遠位ハウジングベース電極を含む例では、感知回路86は、利用可能な遠位ハウジングベース電極のうちの1つ以上を、心房感知チャネル87に含まれる心臓イベント検出回路に選択的に結合するためのスイッチング回路を含んでもよい。スイッチング回路は、スイッチアレイ、スイッチマトリックス、マルチプレクサ、または感知回路86の構成要素を選択された電極に選択的に結合するのに好適な任意の他のタイプのスイッチングデバイスを含み得る。先端電極42および近位ハウジングベース電極24は、心室信号、例えば、心室心筋の脱分極に付随するR波を感知するために、心室感知チャネル89に結合され得る。
【0102】
心房感知チャネル87および心室感知チャネル89は各々、それぞれの感知チャネルによって受信された心臓電気信号から、それぞれ、P波およびR波を検出するための心イベント検出回路を含んでもよい。チャネル87および89の各々内に含まれる心イベント検出回路は、心臓電気イベントを検出するために、選択された電極から受信された心臓電気信号を増幅、フィルタリング、デジタル化、および整流して、信号品質を改善するように構成されてもよい。チャネル87および89の各々内の心イベント検出回路は、1つ以上の感知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、コンパレータ、アナログ-デジタル変換器(ADC)、タイマー、または他のアナログもしくはデジタル構成要素を含んでもよい。心イベント感知閾値、例えば、P波感知閾値およびR波感知閾値は、例えば、制御回路80によって決定される、メモリ82に記憶される、および/または制御回路80および/もしくは感知回路86のハードウェア、ファームウェア、および/もしくはソフトウェアによって制御されるタイミング間隔および感知閾値に基づいて、制御回路80の制御下で各それぞれの感知チャネル87および89によって自動的に調整されてもよい。
【0103】
感知閾値交差に基づいて電気的心イベントを検出した時点で、感知回路86は、制御回路80に送られる感知イベント信号を生成してもよい。例えば、心房感知チャネル87は、P波感知閾値交差に応答して、P波感知イベント信号を生成してもよい。心室感知チャネル89は、R波感知閾値交差に応答して、R波感知イベント信号を生成してもよい。感知イベント信号は、心臓ペーシングパルスをスケジュールするために使用される基本時間間隔を制御するペーシングエスケープ間隔タイマーを設定するために、制御回路80によって使用されてもよい。感知イベント信号は、特定のプログラムされたペーシングモードに応じて、ペーシングパルスをトリガまたは阻止してもよい。例えば、心房感知チャネル87から受信されたP波感知イベント信号は、制御回路80に、スケジュールされた心房ペーシングパルスを阻止させ、プログラムされた房室(房室(A-V))ペーシング間隔で心室ペーシングパルスをスケジュールさせもよい。房室ペーシング間隔が終了する前にR波が感知された場合、心室ペーシングパルスが阻止されてもよい。制御回路80が心室感知チャネル89からR波感知イベント信号を受信する前に房室ペーシング間隔が終了した場合、制御回路80は、治療送達回路84を使用して、感知されたP波に同期されたスケジュールされた心室ペーシングパルスを送達してもよい。
【0104】
いくつかの例では、デバイス10は、徐脈ペーシング、心臓再同期治療、ショック後ペーシング、および/または特にATPなどの頻脈関連治療を含む様々なペーシング治療を送達するように構成されてもよい。例えば、デバイス10は、非洞性頻脈を検出して、ATPを送達するように構成されてもよい。制御回路80は、心臓イベント時間間隔、例えば、心房感知チャネル87から受信された連続するP波感知イベント信号間のP-P間隔、心室感知チャネル89から受信された連続R波感知イベント信号間のR-R間隔、およびP波感知イベント信号とR波感知イベント信号との間で受信されたP-Rおよび/またはR-P間隔を決定してもよい。これらの間隔は、非洞頻脈を検出するために頻脈検出間隔と比較され得る。頻脈は、検出された頻脈検出間隔数閾値に基づいて、所与の心腔内で検出され得る。
【0105】
治療送達回路84は、心房ペーシング回路83および心室ペーシング回路85を含んでもよい。各ペーシング回路83、85は、充電回路、1つ以上の低電圧保持コンデンサなどの1つ以上の電荷蓄積デバイス、出力コンデンサ、および/またはそれぞれのペーシング回路83、85に連結されたペーシング電極ベクトルにペーシングパルスを送達するために保持コンデンサがいつ出力コンデンサを横断して充電および放電されるかを制御するスイッチング回路を含んでもよい。先端電極42および近位ハウジングベース電極24は、例えば、心房同期された心室ペーシングおよび基本的なより低い心室ペーシングレートを提供するために制御回路80によって設定された房室または心室間(V-V)ペーシング間隔の終了時に、心室ペーシングパルスを送達するための双極陰極および陽極対として心室ペーシング回路85に連結され得る。
【0106】
心房ペーシング回路83は、心房ペーシングパルスを送達するために遠位ハウジングベース電極22および近位ハウジングベース電極24に結合されてもよい。制御回路80は、プログラムされたより低いペーシングレートに従って1つ以上の心房ペーシング間隔を設定するか、またはレート応答センサーが示したペーシングレートに従って設定される一時的なより低いレートを設定してもよい。心房ペーシング回路は、P波感知イベント信号が心房感知チャネル87から受信される前に心房ペーシング間隔が終了した場合、心房ペーシングパルスを送達するように制御されてもよい。制御回路80は、送達された心房ペーシングパルスに応答して房室ペーシング間隔を開始して、同期されたマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)を提供する。
【0107】
プログラムされたペーシング電圧振幅のための心房または心室ペーシング回路83、85の保持コンデンサの充電、およびプログラムされたペーシングパルス幅のためのコンデンサの放電は、制御回路80から受信された制御信号に従って治療送達回路84によって行われ得る。例えば、制御回路80内に含まれるペースタイミング回路は、様々なシングルチャンバもしくはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルもしくはトリプルチャンバペーシング)モードまたは抗頻脈ペーシングシーケンスと関連付けられた基本ペーシング時間間隔を制御するために、制御回路80のマイクロプロセッサによって設定されたプログラマブルデジタルカウンタを含んでもよい。制御回路80のマイクロプロセッサは、メモリ82に記憶されたプログラムされた値に基づき得る心臓ペーシングパルスの振幅、パルス幅、極性、または他の特性も設定してもよい。
【0108】
心イベントを感知し、かつペーシング治療の提供を制御するために制御回路80によって利用される制御パラメータは、通信インターフェースとしても説明され得る遠隔測定回路88を介してメモリ82にプログラムされ得る。遠隔測定回路88は、無線周波数通信または他の通信プロトコルを使用してプログラマまたはホームモニタなどの外部デバイスと通信するためのトランシーバおよびアンテナを含む。制御回路80は、外部デバイスからダウンリンク遠隔測定を受信し、かつ外部デバイスにアップリンク遠隔測定を送信するために遠隔測定回路88を使用してもよい。いくつかの事例では、遠隔測定回路88を使用して、患者に植込まれた別の医療デバイスに/から通信信号を送信および受信することができる。
【0109】
IMD10、デバイス50、コンピューティング装置140、およびコンピューティングデバイス160、および/または様々な構成要素に起因するものを含む、本開示に記載された技法は、少なくとも部分的に、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせに実装され得る。例えば、それらの技法の様々な態様は、医師もしくは患者プログラマなどのプログラマ、刺激装置、画像処理デバイス、または他のデバイスに具現化される、1つ以上のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または任意の他の同等の集積または個別論理回路、ならびにかかる構成要素の任意の組み合わせを含む、1つ以上のプロセッサ内に実装され得る。「モジュール」、「プロセッサ」、または「処理回路」という用語は、概して、前述の論理回路のうちのいずれか(単独でまたは他の論理回路と組み合わせて)、または任意の他の同等の回路を指し得る。
【0110】
かかるハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアは、本開示に記載された様々な動作および機能をサポートするために、同じデバイス内または別個のデバイス内に実装され得る。加えて、記載されているユニット、モジュール、または構成要素のいずれも、個別であるが相互運用可能な論理デバイスとして一緒にまたは別個に実装され得る。モジュールまたはユニットとしての異なる特徴の描写は、異なる機能的側面を強調するよう意図されており、必ずしもかかるモジュールまたはユニットが別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを意味するとは限らない。むしろ、1つ以上のモジュールまたはユニットと関連付けられた機能は、別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって行われ得、または共通のもしくは別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素内に統合され得る。
【0111】
ソフトウェアに実装される場合、本開示に記載されたシステム、デバイス、および技術に起因する機能は、RAM、ROM、NVRAM、EEPROM、フラッシュメモリ、磁気データ記憶媒体、光学データ記憶媒体などのコンピュータ可読媒体上の命令として具体化され得る。命令は、本開示に記載された機能の1つ以上の態様をサポートするために、処理回路および/または1つ以上のプロセッサによって実行されてもよい。
【0112】
本明細書において引用されたすべての参考文献および刊行物は、組み込まれた任意の態様が本開示と直接矛盾する範囲までを除いて、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0113】
本明細書において使用されるすべての科学的および技術的用語は、別段の定めがないかぎり、当技術分野において一般的に使用される意味を有する。本明細書において提供される定義は、本明細書において頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0114】
別段の定めがないかぎり、明細書および特許請求の範囲において使用された特徴のサイズ、量、および物理的特性を表すすべての数値は、「正確に」または「約」という用語のいずれかによって修正されると理解されてもよい。したがって、逆の定めがないかぎり、前述の明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本明細書に開示された教示を利用して当業者によって得られることが求められる所望の特性に応じて、または実験誤差の典型的な範囲内で変化することができる近似である。
【0115】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に含まれるすべての数値(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)およびその範囲内の任意の範囲を含む。本明細書において、「最大で」ある数またはある数「以下」という用語(例えば、最大で50)は、その数(例えば、50)を含み、ある数「以上」という用語(例えば、5以上)は、その数(例えば、5)を含む。
【0116】
「結合された」または「接続された」という用語は、直接に(互いに直接接触して)または間接的に(2つの要素の間にそれらの2つの要素を取り付ける1つ以上の要素を有して)互いに取り付けられた要素をいう。いずれの用語も、「動作的に」かつ「動作可能に」という用語によって修飾されてもよく、これらは互換的に使用されて、その連結または接続が、少なくともいくらかの機能を実行するために複数の構成要素が相互作用することを可能にするように構成されていると説明することができる(例えば、第1の医療デバイスが別の医療デバイスに動作的に連結されて、データ形式の情報を送信するまたはそれからデータを受信することができる)。
【0117】
「上」、「下」、「側方」、および「端」などの向きに関連する用語は、構成要素の相対位置を説明するために使用され、企図される実施形態の向きを限定するようには意図されていない。例えば、「上」および「下」を有すると説明される実施形態は、別途内容が明確に指示しない限り、様々な方向に回転したその実施形態も包含する。
【0118】
「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、または「いくつかの実施形態」などへの言及は、その実施形態に関連して説明された特定の特徴、構成、組成物、または特性が、開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、全体を通して様々な場所でのそのような表現の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構成、組成物、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0119】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または」という用語は、別途内容が明確に指示しない限り、「および/または」を含むその意味で概して用いられる。
【0120】
本明細書で使用される場合、「有する(have)」、「有している(having)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」などは、それらの制限のない意味で使用されており、概して、「含むが、これらに限定されない」を意味する。「から基本的になる」、「からなる」などは、「含む」などに含まれることが理解されよう。
【0121】
「および/または」という用語は、1つまたはすべての列記された要素、または列記された要素のうちの少なくとも2つの組み合わせを意味する。「のうちの少なくとも1つ」、「のうちの少なくとも1つを含む」、および「のうちの1つ以上」という語句に後続するリストは、リスト内の項目のうちのいずれか1つおよびリスト内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0122】
例示的な実施形態
実施形態1:システムであって、
患者の後部からの電気的活動を監視するための複数の後部電極を備える電極装置と、
処理回路を備え、かつ電極装置に連結されたコンピューティング装置であって、
心臓治療の送達中に複数の後部電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視し、
心臓治療の送達中に監視された電気的活動に基づいて、電気的不均一性情報(EHI)を生成し、
生成されたEHIに基づいて、後部左脚係合の程度を決定するように構成されているコンピューティング装置と、を備える、システム。
【0123】
実施形態2:方法であって、
心臓治療の送達中に患者の後部からの複数の後部電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視することと、
心臓治療の送達中に監視された電気的活動に基づいて、電気的不均一性情報(EHI)を生成することと、
生成されたEHIに基づいて、後部左脚係合の程度を決定することと、を含む、方法。
【0124】
実施形態3:心臓治療の送達中に監視された電気的活動に基づいてEHIを生成することが、後部電極によって監視された代理後部電気的興奮到達時間の平均を生成することを含む、実施形態1~2のうちの1つに記載のシステムまたは方法。
【0125】
実施形態4:生成されたEHIに基づいて後部左脚係合の程度を決定することが、後部電極によって監視された代理後部電気的興奮到達時間の平均が30ミリ秒以下である場合、左脚が十分に係合され、後部電極によって監視された代理後部電気的興奮到達時間の平均が30ミリ秒より大きく50ミリ秒未満である場合、左脚が中程度に係合され、または後部電極によって監視された代理後部電気的興奮到達時間の平均が50ミリ秒以上である場合、左脚が十分に係合されない、ことを決定することを含む、実施形態1~3のうちの1つに記載のシステムまたは方法。
【0126】
実施形態5:心臓治療の送達中に監視された電気的活動に基づいてEHIを生成することが、早期活性化閾値未満である、後部電極によって監視された代理早期活性化電気的興奮到達時間のパーセンテージを生成することを含む、実施形態1~4のうちの1つに記載のシステムまたは方法。
【0127】
実施形態6:早期活性化閾値が、35ミリ秒である、実施形態5に記載のシステムまたは方法。
【0128】
実施形態7:生成されたEHIに基づいて後部左脚係合の程度を決定することが、代理早期活性化電気的興奮到達時間のパーセンテージが75%を超える場合、左脚が十分に係合され、代理早期活性化電気的興奮到達時間のパーセンテージが50%以上75%以下の場合、左脚が中程度に係合され、または代理早期活性化電気的興奮到達時間のパーセンテージが50%未満の場合、左脚が十分に関与されない、ことを決定することを含む、実施形態5~6のうちの1つに記載のシステムまたは方法。
【0129】
実施形態8:心臓治療が、心房から心室への(VfA)ペーシング治療である、実施形態1~7のうちの1つに記載のシステムまたは方法。
【0130】
実施形態9:コンピューティング装置が、後部左脚係合の程度を増加させるために、心臓治療を調整することを実行するようにさらに構成されるか、または方法が、後部左脚係合の程度を増加させるために、心臓治療を調整することをさらに含む、実施形態1~8ののうちの1つに記載のシステムまたは方法。
【0131】
実施形態10:システムであって、
患者の後部からの電気的活動を監視するための複数の後部電極を備える電極装置と、
処理回路を備え、かつ電極装置に連結されたコンピューティング装置であって、
心臓ペーシング治療の送達中に複数の後部電極を使用して患者の心臓の電気的活動を監視し、
監視された電気的活動に基づいて、後部左脚係合の程度を決定し、
決定された左脚係合の程度に基づいて、心臓ペーシング治療の1つ以上のペーシング設定を調整するように構成されているコンピューティング装置と、を備える、システム。
【0132】
実施形態11:心臓ペーシング治療が、心房から心室への(VfA)ペーシング治療、ヒス束ペーシング治療、および中隔内左心室心内膜ペーシングのうちの1つ以上を含む、実施形態10に記載のシステム。
【0133】
実施形態12:複数の電極が、患者の胴体の皮膚に近接して設置されるようにアレイに位置付けられた複数の表面電極を含む、実施形態1~11のうちの1つに記載のシステムまたは方法。
【0134】
本開示は、例示的な実施形態を参照して提供されており、限定的な意味で解釈されるようには意図されていない。前述のように、当業者であれば、他の様々な例示的な用途が、本明細書に記載された技法を使用して、本明細書に記載された装置および方法の有益な特徴を利用することができることを認識するであろう。例示的な実施形態の様々な修正、ならびに本開示の追加の実施形態が、本記述を参照することにより明らかになるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】