(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】多層電極-電解質部品およびそれらの生成方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20220629BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220629BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220629BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220629BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220629BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220629BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220629BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220629BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220629BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220629BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20220629BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20220629BHJP
H01B 1/08 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/505
H01M4/38 Z
H01M4/40
H01B1/06 A
H01B1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564993
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 CA2020050586
(87)【国際公開番号】W WO2020223799
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パオレラ, アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】サヴォワ, シルヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】ジラール, ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】フォラン, アメリ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェルフィ, アブデルバスト
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA12
5G301CA16
5G301CA19
5G301CA25
5G301CD01
5G301CE01
5G301CE02
5H029AJ06
5H029AJ11
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK04
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029EJ04
5H029EJ08
5H029HJ02
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5H029HJ15
5H050AA12
5H050AA14
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050CA01
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5H050CA11
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5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA14
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA02
5H050FA17
5H050GA07
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
ポリマーを含まない状態でセラミック粒子を共に含む固体電解質層および固体電極層を含む多層部品、ならびにそれらを含む電気化学セルについて、記述される。ホットプレスステップを使用する、これらの多層部品を調製するためのプロセスについても記述される。一態様によれば、固体電極層および固体電解質層を含む多層部品を調製するためのプロセスは、少なくともa)セラミック粒子を圧縮することにより固体電解質層を調製するステップ;b)少なくとも電気化学的活物質、セラミック粒子、および電子伝導材料を含む混合物であって、前記混合物は溶媒を含まない混合物を調製するステップ;c)(b)で得られた混合物を(a)で調製された固体電解質層上に塗布して二重層材料を得るステップ;d)(c)で得られた二重層材料を少なくとも50kg/cm2の圧力および約400℃から約900℃の範囲内の温度で加圧するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電極層および固体電解質層を含む多層部品を調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、少なくとも:
a) セラミック粒子を圧縮することにより前記固体電解質層を調製するステップ;
b) 少なくとも電気化学的活物質、セラミック粒子、および電子伝導材料を含む混合物であって、前記混合物は溶媒を含まない、混合物を、調製するステップ;
c) (b)で調製された前記混合物を、(a)で調製された前記固体電解質層上に塗布して、二重層材料を得るステップ;および
d) (c)で得られた前記二重層材料を、少なくとも50kg/cm
2の圧力および約400℃から約900℃の範囲内の温度で加圧するステップ
を含む、プロセス。
【請求項2】
ステップ(a)が、溶媒の添加を除外する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(a)が、リチウム塩の添加を除外する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記固体電解質層および前記電極層が、ステップ(d)の後でポリマーを含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(a)の前記セラミックが、式Li
1+zAl
zM
2-z(PO
4)
3のものであり、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、zは0<z<1になるような、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
MがGeである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
MがTiである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(a)が、酸素の存在下(例えば、空気中)で実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(a)における前記粒子の圧縮が、100kg/cm
2から5000kg/cm
2の範囲内の圧力で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(d)が、不活性雰囲気中(アルゴンまたは窒素など)で実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(d)が、50kg/cm
2から5000kg/cm
2、または100kg/cm
2から5000kg/cm
2、または300kg/cm
2から2000kg/cm
2の範囲の圧力で実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップ(d)が、約450℃から約850℃、または約600℃から約700℃の範囲内の温度で実施される、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
ステップ(d)が、0時間よりも長く10時間未満の期間、または30分から5時間の間、または30分から2時間の間、実施される、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップ(b)における前記混合物の調製が、ボールミリングによって実施される、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記電極が陽極である、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記電気化学的活物質が、リン酸塩(例えば、LiM
aPO
4であり、式中、M
aがFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、酸化物および複合酸化物、例えばLiMn
2O
4、LiM
bO
2(M
bは、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、およびLi(NiM
c)O
2(M
cは、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素状硫黄、元素状セレン、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、およびヨウ素から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記電気化学的活物質が、式LiM
aPO
4のリン酸塩であり、式中、M
aはFe、Mn、Co、またはこれらの組合せ(例えば、LiFePO
4)であり、前記電気化学的活物質は、炭素で必要に応じてさらに被覆された粒子から作製される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記電子伝導材料が、カーボンブラック、Ketjen
TMブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンファイバー、またはナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記電子伝導材料が、カーボンファイバー(VGCFなど)を含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップ(b)の前記セラミック粒子が、式Li
1+zAl
zM
2-z(PO
4)
3のセラミックを含み、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である、請求項1から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
MがGeである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
MがTiである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項23】
ステップ(a)の前記セラミックおよびステップ(b)の前記セラミック粒子が同一である、請求項1から22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
固体電極層および固体電解質層を含む多層部品を調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、少なくとも:
a) セラミック粒子およびポリマーの混合物を第1の支持体上に塗布することにより、電解質組成物層を調製するステップ;
b) 少なくとも電気化学的活物質、セラミック粒子、電子伝導材料、および必要に応じてポリマーを含む混合物を、調製するステップ;
c) ステップ(b)で調製された電極材料混合物を:
i. (a)で調製された前記電解質組成物層上に塗布して二重層材料を得るか;または
ii. 第2の支持体上に塗布して、その後、前記塗布した電極材料混合物の表面を、前記電解質組成物層の表面と接触させて;
二重層材料を得るステップ;
d) (c)で得られた前記二重層材料を、少なくとも50kg/cm
2の圧力、および約400℃から約900℃の範囲内の温度で、加圧するステップ
を含む、プロセス。
【請求項25】
ステップ(a)が、溶媒の添加を除外する、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
ステップ(a)がさらに、溶媒を含み、塗布の後に前記混合物を乾燥することを含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項27】
ステップ(a)がさらに、前記第1の支持体を除去することを含む、請求項24から26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
ステップ(a)が、リチウム塩の添加を除外する、請求項24から27のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項29】
ステップ(a)および存在する場合にはステップ(b)の前記ポリマーが、出現するごとに独立して、フッ素化ポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)など)、ポリ(アルキレンカーボネート)(ポリ(エチレンカーボネート)またはポリ(プロピレンカーボネート)など)、ポリビニルブチラール(PVB)、またはポリビニルアルコール(PVA)から選択される、請求項24から28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記ポリマーが、ポリ(アルキレンカーボネート)(ポリ(エチレンカーボネート)またはポリ(プロピレンカーボネート)など)である、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記固体電解質層および前記電極層が、ステップ(d)の後でポリマーを含まない、請求項24から30のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項32】
ステップ(a)の前記セラミックが、式Li
1+zAl
zM
2-z(PO
4)
3のものであり、式中、MがTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である、請求項24から31のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項33】
MがGeである、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
MがTiである、請求項32に記載のプロセス。
【請求項35】
ステップ(a)がさらに、酸素の存在下(例えば、空気中)で前記混合物を加圧することを含む、請求項24から34のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項36】
前記加圧することが、100kg/cm
2から5000kg/cm
2の範囲内の圧力で実施される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記プロセスがステップ(c)(ii)を含み、前記プロセスが、接触前に前記第1の支持体および前記第2の支持体を除去することを含む、請求項24から36のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項38】
前記プロセスがステップ(c)(ii)を含み、前記プロセスが、接触後かつステップ(d)の前に前記第1の支持体および前記第2の支持体を除去することを含む、請求項24から36のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項39】
前記プロセスがさらに、ステップ(d)の前に、ロール間に前記二重層材料を積層するステップを含む、請求項24から38のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項40】
ステップ(b)がさらに溶媒を含み、ステップ(c)がさらに、前記塗布した電極材料を乾燥することを含む、請求項24から39のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項41】
ステップ(b)が、前記電気化学的活物質、セラミック粒子、および電子伝導材料を乾燥混合すること、得られた混合物をポリマーと共に溶媒中に懸濁させることを含み、ステップ(c)はさらに、前記塗布した電極材料を乾燥することを含む、請求項24から39のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項42】
ステップ(d)が、不活性雰囲気中(例えば、アルゴン、窒素下)で実施される、請求項24から41のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項43】
ステップ(d)が、50kg/cm
2から5000kg/cm
2、または100kg/cm
2から5000kg/cm
2、または300kg/cm
2から2000kg/cm
2の範囲の圧力で実施される、請求項24から42のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項44】
ステップ(d)が、約450℃から約850℃、または約600℃から約750℃の温度で実施される、請求項24から43のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項45】
ステップ(d)が、0時間よりも長くかつ10時間未満、または30分から5時間の間、または30分から2時間の間の期間にわたり実施される、請求項24から44のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項46】
ステップ(b)における前記混合物の調製が、ボールミリングにより実施される、請求項24から45のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項47】
前記電極層が陽極層である、請求項24から46のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項48】
前記電気化学的活物質が、リン酸塩(LiM
aPO
4などであり、式中、M
aがFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、酸化物および複合酸化物、例えばLiMn
2O
4、LiM
bO
2(M
bは、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、およびLi(NiM
c)O
2(M
cは、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素状硫黄、元素状セレン、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、およびヨウ素から選択される、請求項24から47のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項49】
前記電気化学的活物質が、式LiM
aPO
4のリン酸塩であり、式中、M
aはFe、Mn、Co、またはこれらの組合せ(例えば、LiFePO
4)であり、前記電気化学的活物質は、炭素で必要に応じてさらに被覆された粒子から作製される、請求項48に記載のプロセス。
【請求項50】
前記電子伝導材料が、カーボンブラック、Ketjen
TMブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンファイバー、またはナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せから選択される、請求項24から49のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項51】
前記電子伝導材料が、カーボンファイバー(VGCFなど)を含む、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
前記電子伝導材料が黒鉛を含む、請求項50に記載のプロセス。
【請求項53】
ステップ(b)の前記セラミック粒子が、式Li
1+zAl
zM
2-z(PO
4)
3のセラミックを含み、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である、請求項24から52のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項54】
MがGeである、請求項53に記載のプロセス。
【請求項55】
MがTiである、請求項53に記載のプロセス。
【請求項56】
ステップ(a)の前記セラミックおよびステップ(b)の前記セラミック粒子が同一である、請求項24から55のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項57】
請求項1から56のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、多層部品。
【請求項58】
固体電極層および固体電解質層を含む、多層部品であって:
前記固体電解質層がセラミック粒子を含み;
前記固体電極層が、電気化学的活物質、セラミック粒子、および電子伝導材料を含み;かつ
前記固体電極層および前記固体電解質層が、電解質ポリマーおよびポリマー結合剤を含まない、
多層部品。
【請求項59】
前記固体電解質層内の前記セラミックが、式Li
1+zAl
zM
2-z(PO
4)
3のものであり、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である、請求項58に記載の多層部品。
【請求項60】
MがGeである、請求項59に記載の多層部品。
【請求項61】
MがTiである、請求項59に記載の多層部品。
【請求項62】
前記電極層が陽極層である、請求項58から61のいずれか一項に記載の多層部品。
【請求項63】
前記電気化学的活物質が、リン酸塩(例えば、LiM
aPO
4であり、式中、M
aがFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、酸化物および複合酸化物、例えばLiMn
2O
4、LiM
bO
2(M
bは、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、およびLi(NiM
c)O
2(M
cは、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素状硫黄、元素状セレン、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、およびヨウ素から選択される、請求項58から62のいずれか一項に記載の多層部品。
【請求項64】
前記電気化学的活物質が、式LiM
aPO
4のリン酸塩であり、式中、M
aはFe、Mn、Co、またはこれらの組合せ(LiFePO
4など)であり、前記電気化学的活物質は、炭素で必要に応じて被覆された粒子から作製される、請求項63に記載の多層部品。
【請求項65】
前記伝導材料が、カーボンブラック、Ketjen
TMブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンファイバー、またはナノファイバー、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項58から64のいずれか一項に記載の多層部品。
【請求項66】
前記電子伝導材料が、カーボンファイバー(VGCFなど)を含む、請求項65に記載の多層部品。
【請求項67】
前記電子伝導材料が、黒鉛を含む、請求項65に記載の多層部品。
【請求項68】
前記固体電極層内の前記セラミック粒子が、式Li
1+zAl
zM
2-z(PO
4)
3のセラミックを含み、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である、請求項58から67のいずれか一項に記載の多層部品。
【請求項69】
MがGeである、請求項68に記載の多層部品。
【請求項70】
MがTiである、請求項68に記載の多層部品。
【請求項71】
前記固体電解質層内の前記セラミック粒子および前記固体電極層内の前記セラミック粒子が同一である、請求項58から70のいずれか一項に記載の多層部品。
【請求項72】
前記固体電解質層と前記固体電極層との間の界面に、高接触を含む、請求項57から71のいずれか一項に記載の多層部品。
【請求項73】
前記多層部品の少なくとも1つの層が、理論密度の少なくとも90%の密度を有する、請求項57から72のいずれか一項に記載の多層部品。
【請求項74】
陰極、陽極、および電解質を含む、電気化学セルであって、前記電解質および陽極が一緒になって、請求項57から73のいずれか一項に記載の多層部品を形成する、電気化学セル。
【請求項75】
前記陰極が、リチウムまたはリチウム合金被膜、ならびに前記リチウムまたはリチウム合金被膜と前記固体電解質層との間のポリマー中間層を含む、請求項74に記載の電気化学セル。
【請求項76】
前記ポリマー中間層が、ポリエーテルポリマーおよびリチウム塩、例えば、必要に応じて架橋されたPEOベースのポリマーおよびリチウム塩(例えば、LiTFSI)を含む、請求項75に記載の電気化学セル。
【請求項77】
電気化学セルを調製するためのプロセスであって:
(i) 請求項1から56のいずれか一項に記載のプロセスにより、多層部品を調製するステップ;および
(ii) ステップ(i)の前記多層部品を、陰極層と共に組み立てるステップ
を含む、プロセス。
【請求項78】
前記陰極層が、リチウムまたはリチウム合金被膜、ならびに前記リチウムまたはリチウム合金被膜と前記固体電解質層との間のポリマー中間層を含む、請求項77に記載のプロセス。
【請求項79】
前記ポリマー中間層が、ポリエーテルポリマーおよびリチウム塩、例えば必要に応じて架橋されたPEOベースのポリマーおよびリチウム塩(LiTFSIなど)を含む、請求項78に記載のプロセス。
【請求項80】
少なくとも1つの請求項74から76のいずれか一項に記載の電気化学セルを含む、バッテリー。
【請求項81】
前記バッテリーが、リチウムバッテリーまたはリチウムイオンバッテリーである、請求項80に記載のバッテリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用法の下、2019年5月3日および2019年12月31日にそれぞれ出願された米国仮特許出願第62/842,963号および第62/955,679号の優先権を主張するものであり、その内容は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
技術分野は一般に、電極層および電解質層を含む固体状態多層素子を調製するためのプロセス、これらのプロセスにより得られた素子、ならびにそれらを含む電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0003】
技術背景
リチウムイオンバッテリーで広く使用される、エチレンまたはジエチルカーボネートなどの可燃性液体をベースにした液体電解質は、例えばセル内の温度が上昇したときに発火する可能性があり(Guerfi et al., J. Power Soruce 195, 845-852 (2010))、したがって、安全ではないバッテリーをしばしばもたらす。これらの液体電解質は、樹状結晶も形成させ、効果がまちまちなセパレーターの使用が必要である。
【0004】
固体電解質は、例えばポリマー(主にポリエチレンオキシド系、Commarieu et al., Curr. Opin. Electrochem. 9, 56-63 (2018)参照)、またはセラミック、例えばガリウムがドープされた立方晶Li7La3Zr2O12(LLZO)(Rawlence et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 10, 13720-13728 (2018)参照)、NASICON型Li1.5Al0.5Ti1.5(PO4)3(LATP)(Soman et al., J. Solid State Electrochem. 16, 1761-1766 (2012)参照)、NASICON型Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3(LAGP)(Zhang et al., J. Alloys Compd. 590, 147-152 (2014)参照)、およびLi4-xGe1-xPxS4チオ-LISICON(Kanno & Murayama, J. Electrochem. Soc. 148, 742-746 (2001)参照)をベースにしたものが開発されてきた。セラミックおよびポリマーをベースにした混成固体電解質も、改善された機械的強度およびイオン伝導度を得るのに使用され得る(Wang et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 9, 13694-13702 (2017))。
【0005】
固体電解質の稠密化は、リチウム金属樹状結晶の形成を遮断する際の、重要な要素である。ツールとしてのホットプレスの使用は、LLZO電解質において粒界抵抗を低減させる可能性があることが示された(David et al., J. Am. Ceram. Soc. 1214, 1209-1214 (2015)参照)。しかしながら、提示される最良の結果は、1100℃まで到達することが可能な温度で得られた。一部のグループは、NASICON型LAGP固体電解質を稠密化するホットプレス法を報告した。20MPaの圧力でのアルゴン下、600℃でのホットプレスを行い、その後、8時間にわたる800℃の空気中での焼結ステップを行ってLAGPロッドを形成する、LAGPを稠密化するための多段階プロセスが記述されてきた(Kotobuki et al., RSC Adv.,11670-11675 (2019)参照)。次いでロッドは、ダイヤモンドワイヤーでスライスされて、薄い電解質被膜が提供される。
【0006】
それにも関わらず、固体状態カソードの最終調製は、酸素の存在下でのカソード材料の焼結が、存在するあらゆる炭素を焼き切ってしまう可能性があるので、依然として難しい。2018年、別のグループは、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3をベースにした完全リン酸塩系バッテリーについて記述した(Yu et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 10, 22264-22277 (2018))。この場合、著者は、冷間プレスおよびその後の空気雰囲気中1100℃での焼結により、LATP電解質ペレットを調製した。次いで電解質層は、LiTi2(PO4)3、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3、カーボンブラック、および結合剤としてのエチルセルロース(45:25:15:15)を、溶媒としてのNMP中に懸濁させたものから構成される懸濁液を、数回繰り返されるスクリーン印刷により塗り広げ、それを乾燥させることによって、調製した。カソードは、LiTi2(PO4)3をLi3V2(PO4)3により置き換えて、同じ方法に従い調製した。次いでバッテリーを、504MPaで30秒間の冷間静水圧プレスに供し、120℃で再度乾燥した。
【0007】
固体電解質および固体電極の調製のための冷間焼結プロセスは個々に、じつに様々な結果をもたらす様々な材料を使用して、Liu et al., J. Power Sources 393, 193-203 (2018)でも検討された。
したがって、固体状態バッテリー部品を調製するための新規なプロセスであって、これらのプロセスが前述のプロセスの少なくとも1つの態様を改善するものであるプロセスが、求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Guerfi et al., J. Power Soruce 195, 845-852 (2010)
【非特許文献2】Commarieu et al., Curr. Opin. Electrochem. 9, 56-63 (2018)
【非特許文献3】Rawlence et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 10, 13720-13728 (2018)
【非特許文献4】Soman et al., J. Solid State Electrochem. 16, 1761-1766 (2012)
【非特許文献5】Zhang et al., J. Alloys Compd. 590, 147-152 (2014)
【非特許文献6】Kanno & Murayama, J. Electrochem. Soc. 148, 742-746 (2001)
【非特許文献7】Wang et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 9, 13694-13702 (2017)
【非特許文献8】David et al., J. Am. Ceram. Soc. 1214, 1209-1214 (2015)
【非特許文献9】Kotobuki et al., RSC Adv.,11670-11675 (2019)
【非特許文献10】Yu et al., ACS Appl. Mater. Interfaces 10, 22264-22277 (2018)
【非特許文献11】Liu et al., J. Power Sources 393, 193-203 (2018)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願明細書は、多層部品およびそのような部品を含む電気化学セルを調製するためのプロセス、それから調製された多層部品、ならびにそれらを含有する電気化学セルおよびバッテリーに関する。
一態様によれば、固体電極層および固体電解質層を含む多層部品を、調製するためのプロセスは、少なくとも:
a) セラミック粒子を圧縮することにより固体電解質層を調製するステップ;
b) 少なくとも、電気化学的活物質、セラミック粒子、および電子伝導材料を含む混合物であって、前記混合物は溶媒を含まない、混合物を、調製するステップ;
c) (b)で得られた混合物を、(a)で調製された固体電解質層上に塗布して、二重層材料を得るステップ;
d) (c)で得られた二重層材料を、少なくとも50kg/cm2の圧力および約400℃から約900℃の範囲内の温度で加圧するステップ
を含む。
【0010】
一実施形態では、ステップ(a)は、溶媒の添加を除外する。別の実施形態では、ステップ(a)は、リチウム塩の添加を除外する。さらなる実施形態では、固体電解質層および電極層は共に、ステップ(d)の後にポリマーを含まない。別の実施形態によれば、ステップ(b)は、溶媒の添加も除外する。一部の実施形態によれば、混合するステップ(b)は、ボールミリングによって実施される。
【0011】
別の実施形態によれば、ステップ(a)のセラミックは、式Li1+zAlzM2-z(PO4)3のものであり、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、zは、0<z<1になるようなものである。一実施形態では、MがGeである。別の実施形態では、MがTiである。さらなる実施形態によれば、ステップ(a)は、酸素の存在下(例えば、空気中)で実施される。さらに別の実施形態では、ステップ(a)は、100kg/cm2から5000kg/cm2の間の圧力で実施される。
【0012】
さらなる実施形態では、ステップ(d)は、不活性雰囲気(例えば、アルゴン、窒素)中で実施される。別の実施形態では、ステップ(d)は、50kg/cm2から5000kg/cm2の間、または100kg/cm2から5000kg/cm2の間、または300kg/cm2から2000kg/cm2の間の圧力で実施される。さらに別の実施形態では、ステップ(d)は、約450℃から約850℃の間、または約600℃から約700℃の間の温度で実施される。別の実施形態では、ステップ(d)は、0時間よりも長く10時間未満の期間、または30分から5時間の間、または30分から2時間の間、実施される。
【0013】
一実施形態では、電極層が陽極層である。実施形態では、電極層内の電気化学的活物質は、リン酸塩(例えば、LiMaPO4であり、式中、MaがFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである)、酸化物および複合酸化物、例えばLiMn2O4、LiMbO2(Mbは、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、およびLi(NiMc)O2(Mcは、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素状硫黄、元素状セレン、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、およびヨウ素から選択される。例えば、陽極の電気化学的活物質は、リン酸塩LiMaPO4であってもよく、式中、MaはFe、Mn、Co、またはこれらの組合せ(例えば、LiFePO4)であり、前記電気化学的活物質は、炭素で必要に応じてさらに被覆された粒子から作製される。
【0014】
他の実施形態によれば、電極層内の電子伝導材料は、カーボンブラック、KetjenTMブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンファイバーまたはナノファイバー(例えば、VGCF)、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択され、例えば電子伝導材料は、カーボンファイバー(VGCFなど)を含む。
【0015】
別の実施形態では、ステップ(b)のセラミック粒子は、式Li1+zAlzM2-z(PO4)3セラミックを含み、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である。一例において、MはGeである。別の例では、MがTiである。
【0016】
目的の変形例では、ステップ(a)のセラミックおよびステップ(b)のセラミック粒子が同一である。
【0017】
別の態様によれば、本願明細書は、固体電極層および固体電解質層を含む多層部品を、調製するためのプロセスに関し、前記プロセスは、少なくとも:
a) セラミック粒子およびポリマーの混合物を第1の支持体上に塗布することにより、電解質組成物層を調製するステップ;
b) 少なくとも電気化学的活物質、セラミック粒子、電子伝導材料、および必要に応じてポリマーを含む混合物を、調製するステップ;
c) ステップ(b)で調製された電極材料混合物を:
i. (a)で調製された電解質組成物層上に塗布して二重層材料を得るか;または
ii. 第2の支持体上に塗布して、その後、塗布した電極材料混合物の表面を、電解質組成物層の表面に接触させて;
二重層材料を得るステップ;
d) (c)で得られた二重層材料を、少なくとも50kg/cm2の圧力、および約400℃から約900℃の間の温度で、加圧するステップ
を含む。
【0018】
一実施形態では、上記プロセスのステップ(a)は、溶媒の添加を除外する。あるいは、上記プロセスのステップ(a)は、溶媒をさらに含み、塗布の後に混合物を乾燥することをさらに含む。別の実施形態では、ステップ(a)は、第1の支持体を除去することをさらに含む。さらに別の実施形態では、ステップ(a)は、リチウム塩の添加を除外する。実施形態によれば、ステップ(a)およびステップ(b)のポリマーは、存在する場合、出現するごとに独立して、フッ素化ポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)など)、ポリ(アルキレンカーボネート)(ポリ(エチレンカーボネート)またはポリ(プロピレンカーボネート)など)ポリビニルブチラール(PVB)、またはポリビニルアルコール(PVA)から選択される。例えばポリマーは、ポリ(アルキレンカーボネート)(ポリ(エチレンカーボネート)またはポリ(プロピレンカーボネート)など)である。
【0019】
さらなる実施形態によれば、固体電解質層および電極層は、ステップ(d)後にポリマーを含まない。
【0020】
別の実施形態では、ステップ(a)のセラミックは、式Li1+zAlzM2-z(PO4)3のものであり、式中、Mは、Ti、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である。一実施形態では、MがGeである。別の実施形態では、MがTiである。さらなる実施形態では、ステップ(a)はさらに、酸素の存在下(例えば、空気中)で、例えば100kg/cm2から5000kg/cm2の間の圧力で、混合物を加圧することを含む。
【0021】
さらなる実施形態では、上記プロセスはステップ(c)(ii)を含み、該プロセスは、電極材料層を固体電解質層に接触させる前に第1および第2の支持体を除去することを含む。あるいは、上記プロセスはステップ(c)(ii)を含み、該プロセスは、電極材料層を固体電解質層に接触させた後に第1および第2の支持体を除去することを含む。
【0022】
さらに別の実施形態では、上記プロセスは、ステップ(d)の前にロール間に二重層材料を積層することをさらに含む。
【0023】
他の実施形態によれば、ステップ(b)は溶媒をさらに含み、ステップ(c)は、塗布した電極材料を乾燥することをさらに含む。別の実施形態では、ステップ(b)は、電気化学的活物質、セラミック粒子、および電子伝導材料を乾燥混合すること、得られた混合物をポリマーと共に溶媒中に懸濁させることを含み、ステップ(c)はさらに、塗布した電極材料を乾燥することを含む。
【0024】
別の実施形態では、ステップ(d)は、不活性雰囲気で(例えば、アルゴン、窒素中で)実施される。他の実施形態では、ステップ(d)は、50kg/cm2から5000kg/cm2の間、または100kg/cm2から5000kg/cm2の間、または300kg/cm2から2000kg/cm2の間の圧力で実施される。さらに別の実施形態では、ステップ(d)は、約450℃から約850℃の間、または約600℃から約750℃の間の温度で実施される。別の実施形態では、ステップ(d)は、0時間よりも長くかつ10時間未満、または30分から5時間の間、または30分から2時間の間の期間にわたり実施される。
【0025】
一実施形態では、電極層が陽極層である。実施形態では、電極層内の電気化学的活物質は、リン酸塩(例えば、LiMaPO4(式中、MaはFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである))、酸化物および複合酸化物、例えばLiMn2O4、LiMbO2(Mbは、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、およびLi(NiMc)O2(Mcは、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素状硫黄、元素状セレン、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、およびヨウ素から選択される。例えば、陽極の電気化学的活物質は、リン酸塩LiMaPO4(式中、MaはFe、Mn、Co、またはこれらの組合せ(LiFePO4など)である)であってもよく、前記電気化学的活物質は、必要に応じて炭素で被覆された粒子から作製される。
【0026】
さらなる実施形態では、電極層内の電子伝導材料は、カーボンブラック、KetjenTMブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンファイバーまたはナノファイバー(例えば、VGCF)、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される。一実施例では、電子伝導材料は、カーボンファイバー(VGCFのような)を含む。別の実施例では、電子伝導材料は、黒鉛を含む。
【0027】
さらに別の実施形態では、ステップ(b)のセラミック粒子が、式Li1+zAlzM2-z(PO4)3(式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である)のセラミックを含む。一実施例では、MがGeである。別の実施例では、MがTiである。
【0028】
興味深い変形例では、ステップ(a)のセラミックおよびステップ(b)のセラミックが同一である。
【0029】
別の態様によれば、本願明細書は、本明細書で定義されるプロセスにより得られる多層部品に関する。
【0030】
さらなる態様によれば、本願明細書は、固体電極層および固体電解質層を含む多層部品に関し、ここで:
該固体電解質層はセラミック粒子を含み;
該固体電極層は、電気化学的活物質、セラミック粒子、および電子伝導材料を含み;かつ
該固体電極層および該固体電解質層は、ポリマー電解質およびポリマー結合剤を含まないものである。
【0031】
一実施形態では、固体電解質層内のセラミックは、式Li1+zAlzM2-z(PO4)3のものであり、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である。一実施例では、MがGeである。別の実施例では、MはTiである。
【0032】
一実施形態では、電極が陽極である。一実施形態では、電気化学的活物質が、リン酸塩(例えば、LiMaPO4(式中、MaはFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである))、酸化物および複合酸化物、例えばLiMn2O4、LiMbO2(Mbは、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、およびLi(NiMc)O2(Mcは、Mn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素状硫黄、元素状セレン、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、およびヨウ素から選択される。例えば、陽極の電気化学的活物質は、リン酸塩LiMaPO4(式中、MaはFe、Mn、Co、またはこれらの組合せである(LiFePO4など))であってもよく、電気化学的活物質は、炭素で必要に応じて被覆された粒子からなる。
【0033】
さらなる実施形態では、電子伝導材料は、カーボンブラック、KetjenTMブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンファイバーまたはナノファイバー(例えば、VGCF)、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せからなる群から選択される。一実施例では、電子伝導材料は、カーボンファイバー(VGCFなど)を含む。別の実施例では、電子伝導材料が黒鉛を含む。
【0034】
さらに別の実施形態では、固体電極層内のセラミック粒子が、式Li1+zAlzM2-z(PO4)3のセラミックを含み、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である。一実施例では、MがGeである。別の実施例では、MがTiである。
【0035】
好ましい実施形態では、固体電解質層内のセラミック粒子および固体電極層内のセラミック粒子が同一である。
【0036】
さらなる実施形態では、本明細書に記述されるまたは本明細書に記述されるプロセスにより調製された多層部品は、固体電解質層と固体電極層との間の界面で高接触を含み、即ち密接に融着した界面を含む。
【0037】
さらに別の実施形態では、本明細書に記述されまたは本発明のプロセスの1つにより調製された、多層部品は、例えば高密度を有し、多層部品の少なくとも1つの層は、理論密度の少なくとも90%の密度を有し、例えば多層部品は理論密度の少なくとも90%の密度を有する。
【0038】
さらなる態様では、本願明細書は、陰極、陽極、および電解質を含む電気化学セルであって、電解質および陽極が一緒になって、本明細書に定義される多層部品を形成するものについて記述する。一実施形態では、陰極は、リチウムまたはリチウム合金被膜、ならびにリチウムまたはリチウム合金被膜と固体電解質層との間のポリマー中間層を含む。例えば、ポリマー中間層は、ポリエーテルポリマーおよびリチウム塩を含み、例えば必要に応じて架橋されたPEOベースのポリマーおよびリチウム塩(例えば、LiTFSI)を含む。
【0039】
別の態様によれば、本発明は:
(i) 本明細書に定義されるプロセスに従い多層部品を調製するステップ;および
(ii) ステップ(i)の多層部品を陰極層と共に組み立てるステップ
を含む、電気化学セルを調製するためのプロセスに関する。
【0040】
一実施形態では、陰極層は、リチウムまたはリチウム合金被膜、ならびにリチウムまたはリチウム合金被膜と固体電解質層との間のポリマー中間層を含む。例えば、ポリマー中間層は、ポリエーテルポリマーおよびリチウム塩、例えば必要に応じて架橋されたPEOベースのポリマーおよびリチウム塩(LiTFSIなど)を含む。
【0041】
さらなる態様は、本明細書に定義された少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリー、例えばリチウムバッテリーまたはリチウムイオンバッテリーに関する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、本発明のプロセスの実施形態を概略的に示す。
【0043】
【
図2】
図2は、1000℃で焼結する前の(a)LAGPおよび焼結した後の(b)LAGPの、X線回折パターンを示す。
【0044】
【
図3】
図3は、100μAの電流でサイクル動作させたときの、本発明のプロセスの実施形態により調製されたセルの最初の2つの充放電曲線を示す。
【0045】
【
図4】
図4は、実施例2に記述される実施形態により調製されたセルの、充放電曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
以下の詳細な説明および実施例は、例示であり、本発明の範囲をさらに限定すると解釈すべきではない。
【0047】
本明細書で使用される全ての技術的および科学的な用語および表現は、本発明の技術に関する場合、当業者により一般に理解されるものと同じ定義を有する。それにも関わらず、使用される一部の用語および表現の定義は、明瞭にする目的で以下に提示される。
【0048】
本明細書で「約」という用語が使用される場合、およそ~、~の辺り、および~の周りを意味する。「約」という用語が数値に関して使用される場合、それは数値を修飾し、例えばその名目値の上および下に10%の変動幅がある。この用語は、実験測定値または数値の丸めにおいて、ランダム誤差の可能性を考慮に入れることもできる。
【0049】
「ポリマーを含まない」、「ポリマー結合剤を含まない」、「ポリマーを除外する」、または「ポリマー結合剤を除外する」という表現は、同等であり、電解質または電極のいずれかである特徴付けられた材料が、電解質中でまたは電極材料結合剤として一般に使用されるポリマー(例えば、PEOベースのポリマー、フッ素化ポリマー、ポリ(アルキレンカーボネート)、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなど)を含有しないことを意味する。しかしながらこの表現は、電極材料において電子伝導材料として働く可能性のある炭素ベースの高分子(グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーなど)を除外するものではない。
【0050】
本明細書で使用される「支持体」という用語は、表面にスラリーなどの混合物が塗布される、一般に被膜または箔の形をとる材料を定義する。支持体材料は、その表面に塗布される混合物に対して反応性がない。支持体として使用される材料の例には、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびその他の不活性ポリマーなどのポリマー支持体が含まれる。
【0051】
本明細書で使用される「リチウム塩」という用語は、電気化学セルの固体電解質中で使用することができる任意のリチウム塩を指す。リチウム塩の非限定的な例には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノ-イミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、硝酸リチウム(LiNO3)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウムLi[PF3(CF2CF3)3](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウムLi[B(OCOCF3)4](LiTFAB)、またはビス(1,2-ベンゼンジオラト(2-)-O,O’)ホウ酸リチウムLi[B(C6O2)2](LBBB)が含まれる。
【0052】
本願明細書は、固体多層電極-電解質部品の調製に関する。このプロセスは、最終材料の、電解質中のまたは電極の結合剤としてのポリマーの使用を回避する。このプロセスの2つの変形例が本明細書に記述される。第1の変形例は、多層の調製中にポリマーを含まず、一方、第2は、ホットプレスステップ中に使用されるポリマーを除外する。溶媒は一般に、プロセスの第1の変形例で必要とされない。
図1は、プロセスの一実施形態を示し、固体電極および電解質層が一緒にホットプレスされることを示す。
【0053】
酸素下の高温で、カソード材料を焼結することにより、カソード材料の一部を燃焼させ得るが、LAGPおよびLATPは、不活性雰囲気下で焼結されたときに強力に影響を受けることがわかった。これらのセラミックの場合、気状酸素が容易に失われる可能性があり、それによってゲルマニウム(II)またはチタン(II)酸化物とリン酸リチウム不純物が形成される(
図2参照)。
【0054】
したがって本明細書は、電気化学的適用例で使用される、セラミックをベースにした電解質および電極層を含む少なくとも2層を含む部品を調製するための、新しいプロセスを提示する。プロセスは、単純であり非常に短い。変形例の1つは、毒性および/または可燃性溶媒の使用も回避する。電解質および電極固体層の間の界面での良好な接触も確実にし、2層は互いに緊密に結合(融着)されている。電極-電解質固体部品は、電気化学セルでのその使用に適切な密度も保有する。
【0055】
多層部品を調製するためのそのようなプロセスの例は、少なくとも:
a) セラミックを含む粒子を圧縮することによって固体電解質層を調製するステップ;
b) 少なくとも電気化学的活物質、セラミック粒子、および電子伝導材料を含み、かつ溶媒を含まない混合物を、調製するステップ;
c) (b)で調製された混合物を、(a)で調製された固体電解質層上に塗布して、二重層材料を得るステップ;
d) (c)で得られた二重層材料を、少なくとも50kg/cm2、または50kg/cm2から5000kg/cm2の間の圧力で、および約400℃から約900℃、または約450℃から約850℃、または約600℃から約700℃の範囲の温度で、加圧するステップ
を含む。
【0056】
例えば、本発明のプロセスのステップ(a)は、溶媒および/またはリチウム塩の使用を回避する。部品の固体電解質層および固体電極層は、ポリマー(即ち、固体ポリマー電解質またはポリマー結合剤のポリマー)を含まない。
【0057】
本発明のプロセスは、当業者に公知の任意のセラミックを使用してもよく、選択されたセラミックは、電解質セラミックとして適切でありかつ本発明のプロセス条件下で安定である。例えば、固体電解質層のセラミックは、式Li1+zAlzM2-z(PO4)3(式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である)のものであってもよい。一実施例によれば、MはGeである。別の実施例によれば、MはTiである。例えばzは、0.25から0.75、または0.1から0.9、または0.3から0.7、または0.4から0.6の範囲内、または約0.5である。セラミックは、NASICON様構造を有していてもよい。
【0058】
固体電解質層は、1mmよりも下の、または50μmから1mm、または50μmから500μm、または50μmから200μmの範囲内にある、最終厚さ(ステップ(d)の後)を有していてもよい。
【0059】
固体電解質層は、好ましくは、外部加熱なしでかつ酸素の存在下(例えば、空気中)、ステップ(a)で圧縮される。電極層混合物を添加した後の二重層材料は、好ましくは、不活性雰囲気中(例えば、アルゴン窒素下)で、ステップ(d)でホットプレスされる。
【0060】
例えば、ステップ(a)は、100kg/cm2から5000kg/cm2の範囲内の圧力で実施されてもよい。
【0061】
ホットプレスステップ(d)は、0時間よりも長く10時間未満の期間、または30分から5時間の間、または30分から2時間の間にわたって実施されてもよい。ホットプレスステップは、二重層材料の少なくとも片面に圧力を加える間、オーブン、炉などの加熱チャンバー内で行われてもよい。好ましくは、ホットプレスステップは、ホットプレス炉、ホットプレスダイ、および同様のものを使用して実施される。二重層材料は、一般に金型に含まれ、圧力は一軸方向に加えられる。
【0062】
本発明のプロセスにおける混合ステップ(b)は、ボールミリング、遊星ミキサーなど、当技術分野で公知の任意の方法によって行われてもよい。例えば、混合ステップは、ジルコニア(二酸化ジルコニウム)ボールを使用するボールミリングによって実施されてもよい。
【0063】
あるいは、固体電極層および固体電解質層を含む多層部品を調製するためのプロセスは、少なくとも:
a) セラミック粒子およびポリマーの混合物を第1の支持体上に塗布することにより、固体電解質層を調製するステップ;
b) 少なくとも電気化学的活物質、セラミック粒子、電子伝導材料、および必要に応じてポリマーを含む混合物を、調製するステップ;
c) ステップ(b)で調製された電極材料混合物を:
i. (a)で調製された固体電解質層上に塗布して二重層材料を得るか;または
ii. 第2の支持体上に塗布して、その後、塗布した電極材料混合物の表面を固体電解質層の表面に接触させて;
二重層材料を得るステップ;
d) (c)で得られた二重層材料を少なくとも50kg/cm2の圧力および約400℃から約900℃の間の温度で加圧するステップ
を含む。
【0064】
上記プロセスのステップ(a)は、溶媒の添加を除外してもよい。あるいは、上記プロセスのステップ(a)は、溶媒と、塗布の後に混合物を乾燥するステップをさらに含む。一実施例において、ステップ(a)はさらに、第1の支持体を除去することを含む。好ましくはステップ(a)は、リチウム塩の添加を除外する。
【0065】
ステップ(a)および必要に応じてステップ(b)(存在する場合)で使用され得るポリマーの非限定的な例には、出現するごとに独立して、フッ素化ポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)など)、ポリ(アルキレンカーボネート)(ポリ(エチレンカーボネート)またはポリ(プロピレンカーボネート)など)、ポリビニルブチラール(PVB)、またはポリビニルアルコール(PVA)が含まれ、例えばポリマーは、ポリ(アルキレンカーボネート)(ポリ(エチレンカーボネート)またはポリ(プロピレンカーボネート)など)である。固体電解質層および電極層は、ステップ(d)後にポリマーを含まない。
【0066】
ステップ(a)のセラミックは、例えば、式Li1+zAlzM2-z(PO4)3のものであり、式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、zは、0<z<1になるような値である。ステップ(a)は、酸素の存在下(空気からの酸素など)、例えば100kg/cm2から5000kg/cm2の間の圧力で混合物を加圧することをさらに含んでいてもよい。
【0067】
一実施例では、上記プロセスはステップ(c)(ii)を含み、該プロセスは、電極材料層を固体電解質層と接触させる前に第1の支持体および第2の支持体を除去することを含む。あるいは、上記プロセスはステップ(c)(ii)を含み、該プロセスは、電極材料層を固体電解質層に接触させた後、第1の支持体および第2の支持体を除去することを含む。
【0068】
上記プロセスは、好ましくは、ステップ(d)の前にロール間に二重層材料を積層することをさらに含む。
【0069】
他の例では、ステップ(b)は溶媒をさらに含み、ステップ(c)は、塗布した電極材料を乾燥することをさらに含む。例えばステップ(b)は、電気化学的活物質、セラミック粒子、および電子伝導材料を乾燥混合すること、得られた混合物をポリマーと共に溶媒中に懸濁させること、その後、塗布した電極材料を乾燥することを含むことができる。
【0070】
ステップ(d)は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン、窒素下)で実施されてもよい。このステップは、50kg/cm2から5000kg/cm2の間、または100kg/cm2から5000kg/cm2の間、または300kg/cm2から2000kg/cm2の間の圧力で実施されてもよい。ステップ(d)で加えられる温度は、約450℃から約850℃、または約600℃から約750℃の範囲内であってもよい。このステップは、好ましくは、0時間よりも長くかつ10時間未満の期間、または30分から5時間の間、または30分から2時間の間で実施される。
【0071】
固体電解質層は、1mmより薄い、または50μmから1mm、または50μmから500μmの、または50μmから200μmの範囲の最終厚さを有していてもよい。電極層および電解質を含む二重層材料を合わせた厚さは、好ましくは1mmよりも薄く、または50μmから1mm、または50μmから600μm、または100μmから400μmの範囲内である。
【0072】
本発明のプロセスのいずれかにおいて、多層部品の電極層は、好ましくは陽極である。例えば電極層は、電気化学的活物質を約25wt%から約60wt%の間、セラミック粒子を約25wt%から約60wt%の間、および電子伝導材料を約5wt%から約15wt%の間で含有し、合計で100%になる。
【0073】
電気化学的活物質の非限定的な例には、リン酸塩(例えば、LiMaPO4(式中、MaはFe、Ni、Mn、Co、またはこれらの組合せである))、酸化物、および複合酸化物、例えばLiMn2O4、LiMbO2(Mbは、Mn、Co、Ni、またはこれらの組合せである)、およびLi(NiMc)O2(McはMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zr、またはこれらの組合せである)、元素状硫黄、元素状セレン、フッ化鉄(III)、フッ化銅(II)、ヨウ化リチウム、およびヨウ素が含まれる。一部の実施例では、陽極の電気化学的活物質は、リン酸塩LiMaPO4(式中、MaはFe、Mn、Co、またはこれらの組合せである)(LiFePO4など)であり、前記電気化学的活物質は、炭素で必要に応じてさらに被覆される粒子から作製される。
【0074】
電極層に含まれる電子伝導材料は、カーボンブラック、KetjenTMブラック、アセチレンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンファイバーまたはナノファイバー(例えば、VGCF)、カーボンナノチューブ、およびこれらの組合せから選択されてもよい。例えば、電子伝導材料は、カーボンファイバー(VGCFなど)または黒鉛を含む。
【0075】
例えば、電極層のセラミック粒子は、式Li1+zAlzM2-z(PO4)3(式中、MはTi、Ge、またはこれらの組合せであり、0<z<1である)の化合物を含む。一実施例において、MはGeである。別の実施例において、MはTiである。例えば、zは0.25から0.75の間であり、またはzは約0.5である。
【0076】
一部の実施例では、固体電解質層内のセラミックおよび固体電極層内のセラミック粒子は、同じ化合物を含む。
【0077】
本発明のプロセスにより得ることが可能なまたは得られる多層部品は、本明細書でも企図される。例えば、多層部品は、固体電解質層と固体電極層との間で緊密に融着した界面を含む。固体電解質層および固体電極層はそれぞれ、高密度を保有する。例えば、2層の少なくとも1つのそれぞれの密度は、理論密度の少なくとも90%のものである。
【0078】
本願明細書は、陰極、陽極、および電解質を含む電気化学セルにも関し、電解質および陽極は、本明細書で定義されるまたは本発明のプロセスにより得られる多層部品を形成する。例えば陰極は、リチウムまたはリチウム合金被膜、ならびにリチウムまたはリチウム合金被膜と固体電解質層との間のポリマー中間層を含む。ポリマー中間層は、例えば、必要に応じて架橋されたPEOベースのポリマーおよびリチウム塩(例えば、LiTFSI)などのポリエーテルポリマーおよびリチウム塩を含んでいてもよい。
本明細書で定義される電気化学セルを調製するためのプロセスも企図される。そのようなプロセスは:
(i) 本明細書で定義されるプロセスにより、多層部品を調製するステップ;および
(ii) ステップ(i)の多層部品を陰極層と共に組み立てるステップ
を含む。
【0079】
例えば陰極層は、リチウムまたはリチウム合金被膜、ならびにリチウムまたはリチウム合金被膜と固体電解質層との間の上述のようなポリマー中間層を、含む。
【0080】
本発明の記述は、本明細書で定義される少なくとも1つの電気化学セルを含むバッテリーについても記述する。例えば、バッテリーは、リチウムまたはリチウムイオンバッテリーである。
【0081】
本発明の技術はさらに、例えば携帯電話、カメラ、タブレット、またはラップトップなどのモバイルデバイス、電気自動車またはハイブリッド車、あるいは再生可能エネルギー貯蔵における、本発明の電気化学セルおよびバッテリーの使用にも関する。
【実施例】
【0082】
下記の非限定的な実施例は、例示的な実施形態であり、本発明の範囲をさらに限定すると解釈すべきではない。これらの実施例は、添付図を参照しながら、より良く理解されよう。
実施例1
(a) 固体電解質-カソード部品
【0083】
Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3(0.75g、LAGP)粉末を、5トン(5000kg)の重量の16mmチタン-ジルコニウム-モリブデン(TZM)金型内で、空気中で冷間プレスして、LAGP電解質ペレットを形成する。炭素で被覆されたLiFePO4(45wt%)、LAGP(45wt%)、および気相成長カーボンファイバー(VGCF、10wt%)を含有する混合物、0.75gの量を、LAGP電解質ペレットに添加して、二重層材料を形成する。次いでこの二重層材料を、不活性雰囲気中、2トン(2000kg)の圧力で、1時間にわたり650℃のホットプレスで加圧して、固体電解質-カソード部品を得る。
(b) 全固体電気化学セル
【0084】
(a)で得られた固体電解質-カソード部品を、金属リチウム被膜、ならびに金属リチウムアノードとセラミック電解質との間にあるPEOおよびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)(O/Liモル比が20:1である。)を含む保護層と共に、組み立てる。
【0085】
セルを100μAでサイクル動作させ、その充放電結果は、サイクル動作の50時間後に100%効率を示す。
図3は、最初の2サイクルに関する容量の関数としての電位を示す。
実施例2
【0086】
LAGP(85wt.%)およびQPAC(登録商標)25(ポリ(エチレンカーボネート)、15wt.%)を、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルホルムアミド:テトラヒドロフラン(1:1)混合物中に分散させた。得られた混合物を、ポリプロピレン被膜上にドクターブレードにより塗布した。次いで被膜を50℃で2時間乾燥した。
【0087】
カソードを、混合型陽極材料が得られるようにSPEX(登録商標)ミキサーを使用して、LAGP(45%)、LiFePO4(45%)、および黒鉛(10%)を混合することにより調製した。この混合型陽極材料(85%)およびQPAC(登録商標)25(15%)を、N,N-ジメチルホルムアミドまたはN,N-ジメチルホルムアミド:テトラヒドロフラン(1:1)混合物中に分散させた。得られた混合物を、ポリプロピレン被膜上にドクターブレードにより被膜として塗布した。このように形成されたカソードを、50℃で2時間乾燥した。
【0088】
次いで自立型LAGP電解質およびカソード被膜をポリプロピレン被膜から分離し、80℃で一緒に積層して、多孔度を低減させかつ100から400μmの間の厚さを有するセラミック-カソード被膜を得た。次いで被膜をパウンス処理し、112MPaの圧力を1時間加えることにより700℃でホットプレスした。ホットプレスされた固体セラミック電解質-カソード部品を、リチウム金属と共にサイクル処理し、その結果を表4に示す。
【0089】
数多くの改変を、本発明の範囲から逸脱することなく上述の実施形態のいずれかに行うことができる。本出願で言及される全ての参考文献、特許、または科学文献資料は、それらの全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】