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▶ イネート バイオロジックス リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】免疫調節用組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220629BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20220629BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20220629BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/195
C12N15/31
A61P29/00
A61P17/00
A61P1/00
A61P19/00
A61K38/02
A61K47/55
A61K47/54
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564998
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 US2020030958
(87)【国際公開番号】W WO2020223601
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/841,312
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521478119
【氏名又は名称】イネート バイオロジックス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】モンディクス ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マンデル ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ スルビ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC41
4C076DD55
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA08
4C084BA22
4C084CA04
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZA66
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB11
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドを含むコンストラクトを含む方法および組成物が本明細書に提供されている。前記コンストラクトを含む医薬組成物およびそのようなコンストラクトを投与することに基づく、炎症性障害の処置方法もまた提供されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドを含むコンストラクトであって、各切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドが、対応する全長T3SS細菌エフェクターポリペプチドの一部を含む、コンストラクト。
【請求項2】
前記切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドが、対応する全長T3SS細菌エフェクターポリペプチドの1種以上の活性を維持する、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項3】
T3SS細菌エフェクターポリペプチドが、E3ユビキチンリガーゼ、RhoGTPase調節因子、システインメチルトランスフェラーゼ、亜鉛メタロプロテアーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、O-GlcNacトランスフェラーゼ、およびLRRモチーフ結合および捕捉ポリペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項4】
前記E3ユビキチンリガーゼがIpaH7.8またはIpaH9.8であり、前記RhoGTPase調節因子がYopEであり、システインメチルトランスフェラーゼがOspZまたはNleEであり、前記亜鉛メタロプロテアーゼがNleCであり、前記アセチルトランスフェラーゼがYopJであり、前記O-GlcNacトランスフェラーゼがNleBであり、かつ前記LRRモチーフ結合および捕捉ポリペプチドがYopMである、請求項3に記載のコンストラクト。
【請求項5】
切断型T3SSシステインメチルトランスフェラーゼポリペプチドに連結した切断型YopMポリペプチドを含む、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項6】
前記切断型T3SSシステインメチルトランスフェラーゼポリペプチドが、配列番号3に示すアミノ酸配列を有するOspZポリペプチドの一部を含む、請求項5に記載のコンストラクト。
【請求項7】
前記切断型OspZポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸226~446位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のコンストラクト。
【請求項8】
前記切断型OspZポリペプチドが、配列番号3のアミノ酸226~446位に示すアミノ酸配列を有する、請求項7に記載のコンストラクト。
【請求項9】
配列番号23に示すアミノ酸配列を含む、請求項5に記載のコンストラクト。
【請求項10】
切断型T3SS亜鉛メタロプロテアーゼポリペプチドに連結した切断型YopMポリペプチドを含む、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項11】
前記切断型T3SS亜鉛メタロプロテアーゼポリペプチドが、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するNleCポリペプチドの一部を含む、請求項10に記載のコンストラクト。
【請求項12】
切断型NleCポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸2~187位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載のコンストラクト。
【請求項13】
前記切断型NleCポリペプチドが、配列番号5のアミノ酸2~187位に示すアミノ酸配列を有する、請求項12に記載のコンストラクト。
【請求項14】
配列番号24に示すアミノ酸配列を含む、請求項10に記載のコンストラクト。
【請求項15】
切断型T3SS O-GlcNacトランスフェラーゼに連結した切断型YopMポリペプチドを含む、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項16】
前記切断型T3SS O-GlcNacトランスフェラーゼが、配列番号9に示すアミノ酸配列を有するNleBポリペプチドの一部を含む、請求項15に記載のコンストラクト。
【請求項17】
前記切断型NleBポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸2~226位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載のコンストラクト。
【請求項18】
前記切断型NleBポリペプチドが、配列番号9のアミノ酸2~226位に示すアミノ酸配列を有する、請求項17に記載のコンストラクト。
【請求項19】
切断型の第2のT3SS E3ユビキチンリガーゼに連結した切断型の第1のT3SS E3ユビキチンリガーゼポリペプチドを含む、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項20】
第1および第2の切断型T3SS E3ユビキチンリガーゼポリペプチドが異なっている、請求項19に記載のコンストラクト。
【請求項21】
切断型の第1のE3ユビキチンリガーゼが、配列番号11に示すアミノ酸配列を有するIpaH9.8ポリペプチドの一部を含む、請求項19に記載のコンストラクト。
【請求項22】
前記切断型の第1のIpaH9.8ポリペプチドが、配列番号11のアミノ酸56~228位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項20に記載のコンストラクト。
【請求項23】
前記切断型の第2のE3ユビキチンリガーゼが、配列番号13に示すアミノ酸配列を有するIpaH4.5ポリペプチドの一部を含む、請求項22に記載のコンストラクト。
【請求項24】
前記切断型の第2のIpaH4.5ポリペプチドが、配列番号13のアミノ酸62~270位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項23に記載のコンストラクト。
【請求項25】
システインメチルトランスフェラーゼに連結したRhoGTPase調節因子を含む、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項26】
前記RhoGTPase調節因子が、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するYopEポリペプチドである、請求項25に記載のコンストラクト。
【請求項27】
前記システインメチルトランスフェラーゼが、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するOspZポリペプチドである、請求項26に記載のコンストラクト。
【請求項28】
切断型アセチルトランスフェラーゼポリペプチドに連結した切断型YopMポリペプチドを含む、請求項1に記載のコンストラクト。
【請求項29】
前記切断型アセチルトランスフェラーゼが、配列番号9に示すアミノ酸配列を有するYopJポリペプチドの一部を含む、請求項28に記載のコンストラクト。
【請求項30】
前記切断型YopJポリペプチドが、配列番号9の172位のシステインにおいて点突然変異を含む、請求項28に記載のコンストラクト。
【請求項31】
前記切断型YopMポリペプチドが、配列番号19に示すアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載のコンストラクト。
【請求項32】
切断型YopMポリペプチドが、配列番号19に示すアミノ酸配列を有する、請求項31に記載のコンストラクト。
【請求項33】
タンパク質形質導入ドメインをさらに含む、請求項1~32のいずれか1項に記載のコンストラクト。
【請求項34】
前記タンパク質形質導入ドメインが、YopMタンパク質形質導入ドメインである、請求項27に記載のコンストラクト。
【請求項35】
前記YopMタンパク質形質導入ドメインが、配列番号17に示すアミノ酸配列を有する、請求項34に記載のコンストラクト。
【請求項36】
前記タンパク質形質導入ドメインが、IpaH9.8タンパク質形質導入ドメインである、請求項27に記載のコンストラクト。
【請求項37】
IpaH9.8タンパク質形質導入ドメインが、配列番号11のアミノ酸2~56位に示すアミノ酸配列を有する、請求項27に記載のコンストラクト。
【請求項38】
融合タンパク質を含む、請求項1~37のいずれか1項に記載のコンストラクト。
【請求項39】
2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドがリンカーにより連結されている、請求項1~38のいずれか1項に記載のコンストラクト。
【請求項40】
前記リンカーが切断可能なリンカーである、請求項39に記載のコンストラクト。
【請求項41】
切断可能なリンカーが、pH感受性リンカーである、請求項40に記載のコンストラクト。
【請求項42】
前記pH感受性リンカーが、ヒドラジン、ホスホロアミデートベースのリンカーまたはチオマレイン酸を含む、請求項41に記載のコンストラクト。
【請求項43】
前記リンカーが共有結合である、請求項39に記載のコンストラクト。
【請求項44】
請求項1~43のいずれか1項に記載のコンストラクトをコードする核酸。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか1項に記載のコンストラクトおよび薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項46】
炎症性障害を有する対象を処置する方法であって、請求項45に記載の医薬組成物を治療的有効量投与することを含む、方法。
【請求項47】
前記炎症性障害が、皮膚障害、胃腸管障害、または筋骨格障害である、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、35 U.S.C. §119(e)(1)の下で、2019年5月1日出願の、米国仮特許出願第62/841,312号からの優先権を主張するものであり、その内容は参照により本明細書中に組み込まれる。
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。前記ASCIIコピーは、2020年5月1日に作成され、名称はG6113-00029_SL.txtであり、サイズは60,849バイトである。
技術分野
本発明は、炎症性状態の処置に使用するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、有害であり得る刺激、例えば病原体、刺激物または損傷細胞の認識および除去のための生理学的な防御機構である。炎症は急性または慢性のいずれかに分類される。急性炎症は、身体の即座の免疫応答を指し、さらなる外傷を防止し、治癒を促進する。急性炎症は、典型的には自己限定性である。いくつかの環境下において、炎症プロセスは連続的なものになり、これは慢性炎症の発達をもたらす。慢性炎症は、慢性疼痛、発赤、腫れ、硬直および正常組織への損傷をもたらす。慢性炎症は、世界中で多大な罹患率および死亡率を有する広い範囲の障害、例えば関節炎および関節疾患、心血管疾患、アレルギー、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、炎症性腸疾患および癌と関連している。炎症性状態を処置する新しい有効な方法は必要とされ続けている。
【発明の概要】
【0003】
2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドの組成物を含むコンストラクトが記載されている。本明細書で提供するコンストラクトは、全長細菌エフェクターポリペプチドYopE、YopJ、YopM、NleE、NleC、NleB、OspZ、IpaH4.5、IpaH7.8およびIpaH9.8の一部を含む2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドを含んでいてもよい。前記コンストラクトは、タンパク質形質導入ドメインをさらに含んでいてもよい。コンストラクトは、炎症性状態の処置における使用のための医薬品として製剤化されてもよい。
これらおよび本発明の他の特徴ならびに利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明に記載され、これにより明らかになり、これは添付の図面と併せて考慮されるものであり、図面において、類似の番号は類似の部分を指し、さらに以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸およびヌクレオチド配列のリストである。
図2】YopEポリペプチドおよびOspZポリペプチドを含むコンストラクトを示す図である。
図3】切断型YopMポリペプチドおよび切断型OspZポリペプチドを含むコンストラクトを示す図である。
図4】切断型YopMポリペプチドおよび切断型NleCポリペプチドを含むコンストラクトを示す図である。
図5】全長IpaH9.8ポリペプチドおよび全長IpaH4.5ポリペプチドのドメインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
好ましい実施形態のこの説明は、添付の図面と関連して読まれることを意図するものであり、これは本発明の全体の記載の一部であると考えられる。図面は、必ずしも縮尺されているものではなく、本発明の特定の特徴は、縮尺で、または明快さおよび意識のために、何らかの概略的な形式で誇張して示されている場合がある。記載において、相対的な用語、例えば「水平」、「垂直」、「上」、「下」、「頂部」および「底部」ならびにその派生語(例えば、「水平に」、「下向き」、「上向き」等)は、議論下の図面で記載されているか、または示されている方向を指すと理解されるべきである。これらの相対的な用語は、記載の便利さのためのものであり、通常、特定の方向を必要とすることを意図するものではない。「内向き」対「外向き」、および「縦」対「横」等を含む用語は、適宜、互いに対して相対的であるか、または伸長軸または回転の軸もしくは中心に対して相対的であり得ると解釈されるべきである。付着、および連結等に関する用語、例えば「結合した」および「相互結合した」は、構造が介在する構造を介して直接的または間接的に、互いに対して固定されるか付着されている関係、ならびに特段の記載がない限り、可動または硬直した付着または関係の両方を指す。「作動可能に結合した」という用語は、適切な構造が前記関係により意図されるように作動することを可能にする、そのような付着、連結または結合である。単一の機構のみを示す場合、「機構」という用語は、個々で、または共同で本明細書において論ずる任意の1種以上の方法を実施するための指示のセット(または複数のセット)を実行する任意の機構の集合を含むものと解するものとする。特許請求の範囲において、ミーンズ・プラス・ファンクション節は、使用される場合、構造的に同等なものだけでなく、同等の構造を含む、記載する機能を実施するための、記載または図面により記載、提示または明らかにされている構造を包含することを意図するものである。
【0006】
炎症性状態の処置のための組成物および方法が、本明細書で開示されている。前記組成物は、2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドを含むコンストラクトを含み得る。細菌エフェクターポリペプチドは、感染の過程の間に、通常III型分泌システム(T3SS)を介して宿主細胞に注入される。そのようなポリペプチドは、宿主炎症性シグナル伝達経路を標的とすることにより、宿主免疫応答を阻害するか、または無力化し、病原体が細菌生存を確実にするための宿主防御を弱めることが可能になる。本明細書に記載する組成物および方法は、免疫調節活性を有し、そのため、炎症性状態の処置に有用である。切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドは、処置有効性を上昇させるための増強した薬物動態学的性質および生物学的利用可能性を提供し得る。
【0007】
本明細書で提供するコンストラクトは、T3SS全長細菌エフェクターポリペプチドの一部を含む、2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドを含み得る。T3SS全長細菌エフェクターポリペプチドは、生物学的活性、例えばE3ユビキチンリガーゼ活性、RhoGTPase調節活性、システインメチラーゼ活性、亜鉛メタロプロテアーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性またはO-GIcNacトランスフェラーゼ活性を有し得る。本明細書で提供するコンストラクトは、全長細菌エフェクターポリペプチドYopE、YopJ、YopM、NleC、NleB、OspZ、IpaH4.5、IpaH7.8およびIpaH9.8の一部を含む2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドを含み得る。2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドは、同一であっても、または異なっていてもよい。例示的なコンストラクトは、切断型YopEポリペプチドおよび切断型OspZポリペプチド、切断型YopMポリペプチドおよび切断型OspZポリペプチド、切断型YopMポリペプチドおよび切断型NleCポリペプチド、切断型YopMポリペプチドおよび切断型NleBポリペプチド、ならびに切断型IpaH9.8ポリペプチドおよび切断型IpaH4.5ポリペプチドを含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供するコンストラクトは、全長細菌エフェクターポリペプチドYopE、YopJ、YopM、NleC、NleB、OspZ、IpaH4.5、IpaH7.8およびIpaH9.8の一部を含む切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドの任意の1つを除いてもよい。
【0008】
有用な細菌エフェクターポリペプチドは、生物化学的活性、標的特異性および表1に示すような細胞効果を有し得る。
【0009】
【表1】
【0010】
組成物
本明細書に記載のコンストラクトは、2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドを含む。切断型細菌エフェクターポリペプチドは、参照全長ポリペプチドの連続的または連続した一部(例えば、10アミノ酸長のポリペプチドの断片は、前記ポリペプチド中の任意の10の連続した残基であり得る)。したがって、切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドは、参照全長ポリペプチド内にあり得る。切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドは、参照全長ポリペプチドよりも、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上のアミノ酸残基より短くてもよい。いくつかの実施形態において、切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列は、参照全長ポリペプチドに対してC末端の1、2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上のアミノ酸残基を欠く。いくつかの実施形態において、切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列は、参照全長ポリペプチドに対してN末端の1、2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上のアミノ酸残基を欠く。
【0011】
いくつかの実施形態において、切断型細菌エフェクターポリペプチドは、参照全長細菌エフェクターポリペプチドの1種以上の活性を維持する。例えば、切断型E3ユビキチンリガーゼは、参照全長E3ユビキチンリガーゼのE3ユビキチンリガーゼ活性の全てまたは実質的に全てを維持し得る。いくつかの実施形態において、切断型細菌エフェクターポリペプチドは、参照全長細菌エフェクターポリペプチドの1種以上の活性を欠くか、または実質的に欠く。
【0012】
参照全長T3SS細菌エフェクターポリペプチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号21に示すアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施形態において、参照全長T3SS細菌エフェクターポリペプチドは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号21に示すアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し得る。
コンストラクトは、第1の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列および第2の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列を含む融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、第1の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列および第2の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列とは連続していてよく、第1の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列および第2の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列は、ペプチド結合により連結されていてよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、第1の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列および第2の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列は、リンカーにより結合されている。リンカーは、切断可能なリンカーであり得る。切断可能なリンカーは、pH感受性リンカー、例えばヒドラゾン、ホスホロアミデートベースのリンカー、チオマレイン酸、プロテアソーム特異的リンカー、例えばPhe-Lysジペプチドリンカー、Val-Cit-PABCリンカー、酵素特異的リンカー、例えばグルクロニド-MABCリンカーまたはβ-グルクロニドリンカー、ジスルフィドリンカー、例えばジチオシクロペプチドリンカー、s Nfo-SPDBリンカーまたはSPDBリンカー、金属補助リンカー、例えばパラジウムリンカーまたは鉄リンカー、光切断可能なリンカー、例えばニトロベンジルリンカーまたはジ6-(3-スクシンイミジルカルボニルオキシメチル-4-ニトロ-フェノキシ)-ヘキサン酸ジスルフィドジエタノールエステル(SCNE)リンカーを含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、リンカーは、少なくとも1つのアミノ酸残基を含んでいてもよく、少なくとも、または約2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、30、40、または50アミノ酸残基のペプチドであってもよい。リンカーが単一のアミノ酸残基である場合、任意の天然に存在するまたは天然に存在しないアミノ酸(例えば、Gly、Cys、Lys、Glu、またはAsp)または、2つのそのような残基を含むジペプチド(例えばGly-Lys)であってもよい。リンカーが短ペプチドである場合、グリシンリッチなペプチド(可撓性である傾向がある)、例えば[Gly-Gly-Gly-Gly-Ser]nの配列を有し、nが包含的に1~6の整数である(配列番号25)ペプチド、またはセリンリッチなペプチドリンカーである。セリンリッチなペプチドリンカーは、式[X-X-X-X-Gly]yのものを含み、式中、2までのXはThrであり、残りのXはSerであり、yは、包含的に1~5の整数である(配列番号26)、(例えば、Ser-Ser-Ser-Ser-Gly(配列番号27)、式中yは1超である)。他のリンカーは、堅いリンカー(例えば、PAPAP(配列番号28)および(PT)nP、式中、nは2、3、4、5、6または7(配列番号29)である)およびα-ヘリックスリンカー(例えば、A(EAAAK)nA、式中、nは、1、2、3、4または5(配列番号30)である)である。リンカーがコハク酸である場合、その1つのカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成してもよく、その他のカルボキシル基は、例えば、ペプチドまたは置換基のアミノ基とアミド結合を形成してもよい。リンカーがLys、Glu、またはAspである場合、そのカルボキシル基は、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成してもよく、そのアミノ基は、例えば、置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成してもよい。Lysをリンカーとして使用する場合、さらなるリンカーをLysのε-アミノ基と置換基との間に挿入してもよい。さらなるリンカーは、コハク酸であってもよく、これは、Lysのε-アミノ基および置換基中に存在するアミノ基とアミド結合を形成し得る。一実施形態において、さらなるリンカーは、GluまたはAspである(例えば、これは、Lysのε-アミノ酸とアミド結合を形成し、置換基内に存在するカルボキシル基と他のアミド結合を形成する)、すなわち、置換基は、Nε-アクリル化リジン残基である。
【0015】
本明細書で開示されるコンストラクトは、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)、すなわち、細胞膜を通過する移動を介在するアミノ酸配列をさらに含み得る。有用なタンパク質形質導入ドメインは、YopMタンパク質形質導入ドメインおよびIpaHタンパク質形質導入ドメインを含む。例示的なYopMタンパク質形質導入ドメインは、配列番号17に示すアミノ酸配列を有し得る。例示的なIpaH9.8形質導入ドメインは、配列番号11のアミノ酸1~57位に示すアミノ酸配列を有し得る。タンパク質形質導入ドメインと第1の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチド配列および第2の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチド配列を含むコンストラクトとは、融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、タンパク質形質導入ドメインおよび第1の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列と、第2の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列とは連続していてもよく、タンパク質形質導入ドメインおよび第1の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列および第2の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列はペプチド結合により連結されている。いくつかの実施形態において、タンパク質形質導入ドメインおよび第1の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列および第2の切断型細菌エフェクターポリペプチドのアミノ酸配列は、リンカー、すなわち上述の任意のリンカーにより結合されている。
【0016】
例示的なコンストラクトおよびそのようなコンストラクトのアミノ酸配列は、図3および図4に示す。図3は、YopMタンパク質形質導入ドメイン、切断型YopMポリペプチド、および切断型OspZポリペプチドを含む融合タンパク質を示す。図3に示す融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号23である。図4は、YopMタンパク質形質導入ドメイン、切断型YopMポリペプチド、および切断型NleCポリペプチドを含む融合タンパク質を示す。図4に示す融合タンパク質のアミノ酸配列は配列番号24である。
【0017】
本明細書で提供するポリペプチドは、ネイティブポリペプチドアミノ酸配列に対して1以上のアミノ酸付加、減少、置換を有していてよく(本明細書において「バリアント」T3SSポリペプチドとも称する)、本明細書に記載するように作製および改変し得る。いくつかの場合において、アミノ酸置換は、(a)置換領域におけるペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖の嵩高さの維持に対する影響が有意に異なっていない置換を選択することにより作製し得る。例えば、天然に存在する残基を、側鎖の性質に基づいた群、(1)疎水性アミノ酸(ノルロイシン、メチオニン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン)、(2)中性親水性アミノ酸(システイン、セリンおよびスレオニン)、(3)酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸)、(4)塩基性アミノ酸(アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジンおよびアルギニン)、(5)鎖配向に影響を及ぼすアミノ酸(グリシンおよびプロリン)、および(6)芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニン)に分類し得る。これらの群において作製される置換は、保存的な置換とみなすことができる。有用な保存的な置換の非限定的な例は、バリンのアラニンへの置換、リジンのアルギニンへの置換、グルタミンのアスパラギンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、セリンのシステインへの置換、アスパラギンのグルタミンへの置換、アスパラギン酸のグルタミン酸への置換、プロリンのグリシンへの置換、アルギニンのヒスチジンへの置換、ロイシンのイソロイシンへの置換、イソロイシンのロイシンへの置換、アルギニンのリジンへの置換、ロイシンのメチオニンへの置換、ロイシンのフェニルアラニン(phenyalanine)への置換、グリシンのプロリンへの置換、スレオニンのセリンへの置換、セリンのスレオニンへの置換、チロシンのトリプトファンへの置換、フェニルアラニンのチロシンへの置換、および/またはロイシンのバリンへの置換を含み得るが、これらに限定されない。
【0018】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、1つ以上の非保存的な置換を含み得る。非保存的な置換は、典型的には、上述するクラスの1つのメンバーと他のクラスのメンバーを交換することを伴う。そのような産生は、大量または代替的な実施形態のそのようなコンストラクトを提供するのに望ましいものであり得る。アミノ酸変化が機能的なポリペプチドをもたらすかどうかは、ペプチドバリアントの特定の活性を評価することにより決定され得る。
【0019】
本明細書で提供するポリペプチドは、ポリペプチドをコードする組換え核酸の発現または化学合成により得ることができる。例えば、本明細書で提供するポリペプチドをコードする発現ベクターを使用した組換え技術を使用してもよい。次いで、得られるポリペプチドを、例えば親和性クロマトグラフィー技術およびHPLCを使用して精製し得る。精製の程度は、任意の適切な方法によって測定することができ、これらは、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、または高速液体クロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない。本明細書で提供するポリペプチドは、ポリペプチドが精製されること(例えば、親和性マトリクス上に捕えられること)を可能にするタグ配列を含むように設計または操作されていてもよい。例えば、タグ、例えば、c-myc、ヘマグルチニン、ポリヒスチジンまたはFlag(商標)タグ(Kodak)は、ポリペプチド精製を補助するのに使用し得る。そのようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかを含むポリペプチド内の任意の場所に挿入されていてよい。
【0020】
本明細書で開示されるポリペプチドは、宿主細胞の内部または外部、または前記細胞が培養されている培地から単離され、実質的に純粋かつ均質なポリペプチドとして精製され得る。実質的に純粋なポリペプチドは、例えばその宿主細胞または、それが産生された培地から取り出されたポリペプチドであってよく、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%純粋な、すなわち、非関連ポリペプチド、脂質、核酸または炭水化物などの他の構成要素を含まないか、または実質的に含まないものであってよい。ポリペプチドは、例えばカラムクロマトグラフィー、濾過、限外濾過、塩析、溶媒沈澱、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点分画、透析および再結晶を適宜選択および組み合わせることによって単離および精製され得る。クロマトグラフィーは、例えば親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィーおよび吸着クロマトグラフィーを含む。クロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLCおよびFPLCを用いて実行され得る。
【0021】
本明細書で提供するポリペプチドは、薬学的に許容される非毒性賦形剤または担体と混合して医薬組成物として製剤化され得る。そのような組成物は、炎症性状態を処置するのに有効な量で、それを必要とする対象に投与し得る。医薬組成物は、経口または非経口投与、例えば経鼻、舌下、頬側、動脈内、関節内、心臓内、皮内、筋肉内、眼内、骨内、腹腔内、髄腔内、静脈内、小胞内、硝子体内、皮下、経皮、血管周囲、脳内、経粘膜投与のために調製し得る。関節内投与は、関節の炎症性状態を処置するのに有用であり得る。非経口投与用に製剤化された組成物は、水性生理学的緩衝溶液中の液体の液剤または懸濁剤の形態であってよく、経口投与用には、特に錠剤またはカプセル剤の形態、または鼻腔内投与用には、特に散剤、点鼻剤またはエアゾール剤の形態であり得る。
【0022】
賦形剤または担体は、製剤化および投与経路によって変動し得る。薬学的な担体は、Remington's Pharmaceutical Sciences(E. W. Martin)およびUSP/NF (United States Pharmacopeia and the National Formulary)に記載されている。例示的な賦形剤は、糖、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップおよびメチルセルロースを含み得る。いくつかの実施形態において、製剤は、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、保存剤、甘味料または香味料を含み得る。
【0023】
非経口投与用製剤は、一般的な賦形剤として無菌水または生理食塩水、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、植物起源の油、および水素化ナフタレン等を含み得る。特に、生体適合性、生体分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、またはポリオキシエチレン(polyoxethylene)-ポリオキシプロピレンコポリマーは、in vivoでポリペプチドの放出を制御するための賦形剤の例である。他の適切な非経口送達システムは、エチレン-ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋込型輸注システムおよびリポソームを含み得る。吸入投与用の製剤は、ラクトースのような賦形剤を所望により含み得る。吸入製剤は、例えば、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココレートおよびデオキシコレートを含む水性液剤であっても、または点鼻剤の形態の投与用油性液剤であってもよい。所望により、化合物は、鼻腔内適用するためのゲル剤として製剤化され得る。非経口投与用の製剤はまた、頬側投与用のグリココレートを含み得る。
【0024】
経口投与用に、錠剤またはカプセル剤は、慣用的な手法により、薬学的に許容される賦形剤、例えば結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)と共に調製し得る。錠剤は、当技術分野で公知の方法により被覆し得る。経口投与用の製剤はまた、化合物の徐放を提供するように製剤化されてもよい。
経鼻製剤は、液体形態または乾燥産物として示されてもよい。噴霧された水性懸濁剤または液剤は、pHおよび/または張性を調整するための担体または賦形剤を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、有効成分の放出を調節するように製剤化されてもよい。医薬組成物はまた、患者への投与後に、有効成分の迅速な、持続されたまたは遅延化した放出を提供するように製剤化されてもよい。本明細書で提供するポリペプチドは、持続放出剤形として製剤化され得る。例えば、ポリペプチドは、徐放製剤に製剤化され得る。いくつかの実施形態において、被覆、エンベロープまたは保護マトリクスは、本明細書で提供するポリペプチドを1つ以上含むように製剤化され得る。いくつかの実施形態において、そのような被覆、エンベロープおよび保護マトリクスは、留置デバイス、例えばステント、カテーテルおよび腹膜透析管を被覆するのに使用し得る。いくつかの場合、本明細書で提供するポリペプチドは、ポリマー性物質、リポソーム、マイクロエマルジョン、マイクロ粒子、ナノ粒子またはワックスに取り込まれ得る。
【0025】
本明細書で開示される任意のコンストラクトをコードする核酸もまた提供されている。単離された核酸は、由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて、(1つは5’末端上、1つは3’末端上において)直接的に連続している配列の両方と直接連続していない核酸を指す。例えば、単離された核酸は、任意の長さの組換えDNA分子であってよいが、これに限定されず、ただし通常、天然に存在するゲノムにおいて組換えDNA分子に直接隣接して見出される核酸配列の1つは、除去されているか、または存在しない。したがって、単離された核酸は、他の配列から独立した、分離された分子として存在する組換えDNA(例えば、PCRまたは制限エンドヌクレアーゼ処理によって産生されるcDNAまたはゲノムDNA断片)ならびに、ベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)、または原核生物または真核生物のゲノムDNAに組み込まれた組換えDNAを含むが、これらに限定されない。さらに、単離された核酸は、ハイブリッドまたは融合核酸配列の一部である組換えDNA分子を含み得る。
【0026】
単離された核酸は、天然に存在しない任意の核酸をもまた含み、これは、天然に存在しない核酸配列は天然で見られず、天然に存在するゲノム中に直接連続した配列を有さないためである。例えば、天然に存在しない核酸、例えば操作された核酸は、単離された核酸と考えられる。操作された核酸(例えば、配列番号23および配列番号24に示すアミノ酸配列を含むか、またはこれからなるポリペプチドをコードする核酸)は、分子クローニングまたは化学核酸合成技術を使用して作製し得る。単離された天然に存在しない核酸は、他の配列から独立していても、またはベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例えばレトロウイルス、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)または原核生物または真核生物のゲノムDNAに組み込まれてもよい。さらに、天然に存在しない核酸は、ハイブリッドまたは融合核酸配列の一部である核酸分子を含み得る。数百~数百万の他の核酸中に存在する核酸、例えば、cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリー、またはゲノムDNA制限消化物を含むゲル切片、は、単離された核酸とはみなされない。
【0027】
核酸は、RNAおよびDNA、例えばmRNA、cDNA、ゲノムDNA、合成(例えば化学合成)DNAおよび核酸アナログであり得る。核酸は、二本鎖または一本鎖であってよく、一本鎖は、センス鎖であっても、またはアンチセンス鎖であってもよい。さらに、核酸は環状であっても、または線状であってもよい。核酸アナログは、塩基部分、糖部分またはホスフェート骨格部分で、例えば核酸の安定性、ハイブリダイゼーション、または可溶性を改善するように改変されていてもよい。塩基部分における改変は、デオキシチミジンからのデオキシウリジン、およびデオキシシチジンからの5-メチル-2’-デオキシシチジンおよび5-ブロモ-2’-デオキシシチジンを含む。糖部分の改変は、2’-O-メチルまたは2’-O-アリル糖を形成するためのリボース糖の2’ヒドロキシルの改変を含み得る。デオキシリボースホスフェート骨格は、モルホリノ核酸を産生するために改変されていてもよく、ここで各塩基部分は、6員のモルホリノ環またはペプチド核酸に連結されており、デオキシホスフェート骨格は、シュードペプチド骨格により置換されており、4塩基が維持されている。さらに、デオキシホスフェート骨格は、例えば、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート骨格、ホスホロアミデートまたはアルキルホスホトリエステル骨格により置換されていてもよい。
【0028】
本明細書で提供する核酸は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20または配列番号22に示す配列に示す任意の核酸配列を含むか、またはこれらからなっていてもよい。いくつかの実施形態において、核酸は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20または配列番号22の任意の切断型核酸を含み得る。
【0029】
第1の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチド配列および第2の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチド配列をコードする核酸は、コドン最適化されているものを含む。例えば、核酸は、ベクター(例えばプラスミドまたはウイルスベクター)に組み込まれていてもよく、そのようなベクターは、本発明に包含される。核酸は、原核生物または真核生物のシステムのいずれかで使用するために適切な調節領域に作動可能に連結されていてもよい。具体的な実施形態において、調節領域は、例えばプロモーターまたはエンハンサーであり得る。有用なプロモーターは、細胞種特異的なプロモーター、組織特異的なプロモーター、構成的活性なプロモーターおよび広範に発現するプロモーターを含む。本発明のポリペプチドを発現するベクターを含む宿主細胞もまた本発明に包含され、これらの細胞は原核生物(例えば細菌)または真核生物(例えば哺乳動物)のものであってよい。
【0030】
典型的には、本明細書で提供する単離された核酸は、少なくとも10ヌクレオチド長(例えば、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、200、300、350、400またはそれ以上のヌクレオチド長)である。全長よりも短い核酸分子は、例えばプライマーまたはプローブとして使用し得る。単離された核酸分子は、分子クローニングおよび化学核酸合成技術により産生し得る。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用し得る。単離された核酸はまた、単一の核酸分子(例えば、ホスホロアミデート技術を用いた3’から5’方向の自動DNA合成を使用する)または一連のオリゴヌクレオチドとして化学合成されてもよく、次いでベクター中にライゲーションされてもよい。
【0031】
処置方法
本明細書で開示される任意のコンストラクトを含む医薬組成物を治療的有効量投与することにより、炎症性状態を有するか、またはそのリスクがある対象を処置する方法もまた提供されている。いくつかの実施形態において、処置を必要とする対象(例えばヒト患者)は、炎症性状態と診断されるか、炎症性状態を有する疑いがあるか、または炎症性状態のリスクがある。例示的な炎症性状態は、関節炎および関節疾患、例えばリウマチ性関節炎および骨関節炎、心血管疾患、アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患、クローン病および回結腸炎(iliocolitis)、癌、例えば、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、肝細胞癌、膵臓癌、結腸癌、肺癌、および中皮腫、慢性腎疾患およびアルツハイマー病に見られる炎症性状態を含むが、これに限定されない。
【0032】
一般的に、処置は、疾患、状態もしくは障害の病態または総体症状を経験しているか、または示している個体における炎症性状態を阻害すること(すなわち、病態および/もしくは総体症状のさらなる進行を停止すること)の1つ以上を含み得る。処置はまた、疾患、状態もしくは障害の病態または総体症状を経験しているか、もしくは示している個体における炎症性状態を寛解すること(すなわち、病態および/もしくは総体症状を逆転させること)、例えば疾患の重症度を低下させること、または疾患の1種以上の症候を低減もしくは緩和することを含み得る。
【0033】
対象は、ヒトまたは非ヒト動物であり得る。例示的な非ヒト種は、非ヒト霊長類、家畜、例えば、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウスまたはラットを含むが、これらに限定されない。処置に適切な対象は、炎症性状態に一般的に関連する症候、例えば疼痛、疲労、胃腸管症候、例えば便秘、下痢、および呑酸、体重増加、および頻繁な感染の検出により特定し得る。処置に適切な対象はまた、研究室的な試験、例えば血清タンパク質電気泳動(SPE)、高感度C-反応性タンパク質、フィブリノーゲンおよび炎症促進性サイトカインの検出により特定し得る。
治療的有効量は、研究者、獣医師、医師または他の臨床家により、組織、システム、動物、個体またはヒトにおいて求められている生物学的または医学的応答を発揮する活性化合物または医薬剤の量であり得る。
【0034】
本明細書で提供する組成物は、関節炎および関節疾患、例えば、リウマチ性関節炎および骨関節炎、心血管疾患、アレルギー、喘息、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、胃腸管疾患、例えば、炎症性腸疾患、クローン病、および回結腸炎(iliocolitis)、癌、例えば、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、肝細胞癌、膵臓癌、結腸癌、肺癌および中皮腫、慢性腎疾患、およびアルツハイマー病のための処置を含む、1つ以上の慣用的な治療剤と組み合わせて投与し得る。
【0035】
発明の特徴
一般的に、本発明は、フルレングス細菌エフェクターポリペプチドの一部を含む2つ以上の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドを含み得るコンストラクトを特徴とする。一局面において、コンストラクトは、切断型T3SSシステインメチルトランスフェラーゼポリペプチドに連結した切断型YopMポリペプチドを含み得る。切断型YopMポリペプチドは、配列番号19に示すアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し得る。切断型YopMポリペプチドは、配列番号19に示すアミノ酸配列を有し得る。切断型T3SSシステインメチルトランスフェラーゼポリペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列を有するOspZポリペプチドの一部を含み得る。切断型OspZポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸226~446位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し得る。切断型OspZポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸226~446位に示すアミノ酸配列を有し得る。コンストラクトは、タンパク質形質導入ドメイン、例えば配列番号17に示すYopMタンパク質形質導入ドメインをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、配列番号23に示すアミノ酸配列を含む。
【0036】
他の局面において、コンストラクトは、切断型T3SS亜鉛メタロプロテアーゼポリペプチドに連結した切断型YopMポリペプチドを含み得る。切断型YopMポリペプチドは、配列番号19に示すアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し得る。切断型YopMポリペプチドは、配列番号19に示すアミノ酸配列を有し得る。切断型T3SS亜鉛メタロプロテアーゼポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するNleCポリペプチドの一部を含み得る。切断型NleCポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸2~187位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施形態において、切断型NleCポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸2~187位に示すアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施形態において、切断型NleCポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸2~187位に示すアミノ酸配列を有する。コンストラクトは、タンパク質形質導入ドメイン、例えば配列番号17に示すYopMタンパク質形質導入ドメインをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、コンストラクトは、配列番号24に示すアミノ酸配列を有する。
【0037】
一局面において、コンストラクトは、切断型T3SS O-GlcNacトランスフェラーゼに連結した切断型YopMポリペプチドを含み得る。切断型YopMポリペプチドは、配列番号19に示すアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し得る。切断型YopMポリペプチドは、配列番号19に示すアミノ酸配列を有し得る。切断型T3SS O-GlcNacトランスフェラーゼは、配列番号9に示すアミノ酸配列を有するNleBポリペプチドの一部を含み得る。切断型NleBポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸2~226位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し得る。切断型NleBポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸2~226位に示すアミノ酸配列を有し得る。コンストラクトは、タンパク質形質導入ドメイン、例えば配列番号17に示すYopMタンパク質形質導入ドメインをさらに含み得る。
【0038】
一局面において、コンストラクトは、切断型の第2のT3SS E3ユビキチンリガーゼに連結した切断型の第1のT3SS E3ユビキチンリガーゼポリペプチドを含み得る。第1および第2の切断型T3SS E3ユビキチンリガーゼポリペプチドは異なっていてもよい。切断型の第1のE3ユビキチンリガーゼは、配列番号11に示すアミノ酸配列を有するIpaH9.8ポリペプチドの一部を含み得る。切断型の第1のIpaH9.8ポリペプチドは配列番号11のアミノ酸56~228位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。切断型の第2のE3ユビキチンリガーゼは、配列番号13に示すアミノ酸配列を有するIpaH4.5ポリペプチドの一部を含む。切断型の第2のIpaH4.5ポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸62~270位に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。コンストラクトは、タンパク質形質導入ドメイン、例えば配列番号11のアミノ酸1~57位に示すIpaH9.8タンパク質形質導入ドメインをさらに含み得る。
【0039】
一局面において、コンストラクトは、システインメチルトランスフェラーゼに連結したRhoGTPase調節因子を含んでいてよく、RhoGTPase調節因子は、pH感受性リンカーによりシステインメチルトランスフェラーゼに連結している。RhoGTPase調節因子は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するYopEポリペプチドであり得る。システインメチルトランスフェラーゼは、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するOspZポリペプチドであり得る。pH感受性リンカーは、ヒドラジン、ホスホロアミデートベースのリンカーまたはチオマレイン酸を含む。
一局面において、コンストラクトは、アセチルトランスフェラーゼに連結した切断型YopMポリペプチドを含み得る。切断型YopMポリペプチドは、配列番号19に示すアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有し得る。切断型YopMポリペプチドは、配列番号19に示すアミノ酸配列を有し得る。アセチルトランスフェラーゼは、172位のシステインに突然変異を含む、配列番号9に示すアミノ酸配列を有するYopJポリペプチドであり得る。
【0040】
一局面において、コンストラクトは、アセチルトランスフェラーゼに連結した切断型YopEポリペプチドを含み得る。切断型YopEポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するYopEポリペプチドの一部を含み得る。コンストラクトは、タンパク質形質導入ドメイン、例えば、配列番号11のアミノ酸1~57位に示すIpaH9.8タンパク質形質導入ドメインをさらに含み得る。
一局面において、コンストラクトは、タンパク質形質導入ドメインをさらに含み得る。タンパク質形質導入ドメインは、YopMタンパク質形質導入ドメインであり得る。YopMタンパク質形質導入ドメインは、配列番号19に示すアミノ酸配列を有し得る。タンパク質形質導入ドメインは、IpaH9.8タンパク質形質導入ドメインであり得る。IpaH9.8タンパク質形質導入ドメインは、配列番号23のアミノ酸1~56位に示すアミノ酸配列を有し得る。
【0041】
一局面において、任意のコンストラクトは、融合タンパク質を含んでいてもよい。第1の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドおよび第2の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドはリンカーにより連結され得る。リンカーは、切断可能なリンカーであり得る。切断可能なリンカーは、pH感受性リンカーであり得る。pH感受性リンカーは、ヒドラジン、ホスホロアミデートベースのリンカーおよびチオマレイン酸からなる群から選択し得る。
一局面において、本明細書で開示される任意のコンストラクトをコードする核酸もまた提供されている。
【0042】
一局面において、コンストラクトは、コンストラクトおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤化され得る。
一局面において、本出願は、炎症性状態を有するか、またはリスクがある対象を処置する方法であって、前記対象に、第1の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドおよび第2の切断型T3SS細菌エフェクターポリペプチドを含み得るコンストラクトならびに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を治療的有効量投与することを含む、方法を特徴とする。前記方法は、対象を特定するステップを含み得る。炎症性状態は、胃腸管障害、筋骨格障害、自己免疫障害または皮膚障害であり得る。一局面において、炎症性状態は、炎症性腸疾患、クローン病、リウマチ性関節炎、骨関節炎、癌、アレルギー、心血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、および糖尿病を含み得る。
【実施例
【0043】
(実施例1)
発明者らは、E3ユビキチンリガーゼIpaH7.8およびIpaH9.8のTHP-1細胞からのサイトカイン放出に対する影響を解析した。THP-1細胞を、量を上昇させた(0.25μg、0.5μgおよび1.0μg)組換えIpaH7.8またはIpaH9.8の存在下または非存在下で培養した。IpaH7.8については、タンパク質0.25μgは約3.87nMである。IpaH9.8については、タンパク質0.25μgは約4.0nMである。培養物を次いでリポポリサッカライド(LPS)を用いて処理し、サイトカイン放出を誘発した。
表2に示すように、組換えIpaH7.8は、IL-1β、TNF-α、MCP-1、IL-6、IL-8、IL-23の放出を阻害した。表3に示すように、組換えIpaH9.8は、IL-1β、TNF-αおよびMCP-1、IL-6、IL-8、IL-23の放出の用量依存的な阻害をもたらした。これらのデータは、低いナノモル濃度のE3ユビキチンリガーゼIpaH7.8およびIpaH9.8が、THP-1細胞におけるサイトカインレベルを効率的に下方調節し得えたことを示した。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図1-10】
図1-11】
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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【国際調査報告】