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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】かみそりカートリッジ用潤滑性部材
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20220629BHJP
   B26B 21/44 20060101ALI20220629BHJP
   C10M 145/40 20060101ALI20220629BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20220629BHJP
   C10M 107/36 20060101ALI20220629BHJP
   C10M 145/28 20060101ALI20220629BHJP
   C10M 145/30 20060101ALI20220629BHJP
   C10M 105/12 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220629BHJP
   A61Q 9/02 20060101ALI20220629BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20220629BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220629BHJP
   C10N 50/08 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
C10M169/04
B26B21/44 B
C10M145/40
C10M107/34
C10M107/36
C10M145/28
C10M145/30
C10M105/12
A61K8/73
A61K8/86
A61Q9/02
C10N40:00 Z
C10N30:06
C10N50:08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565026
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 US2020032300
(87)【国際公開番号】W WO2020231899
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/846,224
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316015877
【氏名又は名称】ザ ジレット カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE GILLETTE COMPANY LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アリソン フィオナ ステフェンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョイア キリン スプーナー-フレミング
【テーマコード(参考)】
4C083
4H104
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC242
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD271
4C083AD272
4C083CC21
4H104CB14A
4H104CB14C
4H104CB16C
4H104CB19A
4H104CB19C
4H104CJ02C
4H104CJ03A
4H104DA02C
4H104DA06A
4H104EA03A
4H104EA07C
4H104LA03
4H104PA50
4H104QA11
(57)【要約】
本発明は、カルボキシメチルセルロースを含む潤滑性部材を有するかみそりカートリッジ用潤滑性部材に関する。このかみそりは、a.潤滑表面を有するハウジングと、b.少なくとも刃先端を備え、当該刃先端が、ハウジングの当該潤滑表面上に露出しており、c.当該ハウジングの潤滑表面上に位置する潤滑性部材であって、当該潤滑性部材は、ポリエチレンオキシドとカルボキシメチルセルロースとの混合物を含む潤滑性材料を含み、当該カルボキシメチルセルロースが少なくとも1つの離散粒子を形成する、潤滑性部材と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かみそりであって、
a.潤滑表面を有するハウジングと、
b.刃先端を有する少なくとも1つの刃であって、前記刃先端が前記ハウジングの前記潤滑表面上に露出している、少なくとも1つの刃と、
c.前記ハウジングの前記潤滑表面上に位置する潤滑性部材であって、前記潤滑性部材は、ポリエチレンオキシドとカルボキシメチルセルロースとの混合物を含む潤滑性材料を含み、前記カルボキシメチルセルロースが少なくとも1つの離散粒子を形成する、潤滑性部材と、
を含む、かみそり。
【請求項2】
前記離散粒子が、600マイクロメートル未満、好ましくは約250マイクロメートル未満の粒径を有する、請求項1に記載のかみそり。
【請求項3】
前記カルボキシメチルセルロースの少なくとも50%が、前記潤滑性部材内に複数のカルボキシメチルセルロース粒子を形成する、請求項1又は2に記載のかみそり。
【請求項4】
前記複数のカルボキシメチルセルロース粒子が、約600マイクロメートル未満の平均粒径を有する、請求項3に記載のかみそり。
【請求項5】
前記カルボキシメチルセルロースが、30,000ダルトン超、好ましくは約50,000ダルトン超の平均分子量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のかみそり。
【請求項6】
前記カルボキシメチルセルロースが、以下の式:
【化1】
(式中、前記セルロースは、繰り返し単位当たり3個のR基を有し、前記R基は、Ra又はRbから選択される)を有する、請求項1に記載のかみそり。
【請求項7】
前記カルボメチルセルロースが、0.001~0.2の範囲である平均疎水性部分置換度を有する、請求項6に記載のかみそり。
【請求項8】
前記カルボキシメチルセルロースが、約0.75~約0.95のカルボメチル置換度を有する、請求項6に記載のかみそり。
【請求項9】
前記カルボキシメチルセルロースが木材由来である、請求項1~8のいずれか一項に記載のかみそり。
【請求項10】
前記ポリエチレンオキシドが、2MMダルトン超から最大10MMダルトン、好ましくは約3MMダルトン~5MMダルトンの平均分子量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のかみそり。
【請求項11】
前記潤滑性部材が、1種を超えるポリエチレンオキシドの混合物を含む、請求項10に記載のかみそり。
【請求項12】
1:1~約7:3、最も好ましくは65:35~55:45の範囲のカルボキシメチルセルロース対水溶性ポリマーの比率を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のかみそり。
【請求項13】
前記潤滑性部材が脂質相を更に含み、前記脂質相が、
a.前記潤滑性部材の約10重量%~約70重量%の親油性構造化剤と、
b.ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びシリコーンの混合物を含むシリコーンポリエーテルブロックコポリマーを含む、約10%~約70%の液相と、
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のかみそり。
【請求項14】
前記親油性構造化剤が、
a.セチルアルコール、ステアリルアルコール、又はこれらの混合物、及び
b.微結晶性ワックス
からなる群から選択される、請求項13に記載のかみそり。
【請求項15】
前記シリコーンポリエーテルブロックポリマーが、20:65:15のポリエチレンオキシド単位とポリプロピレンオキシド単位とシリコーン単位との比率、及び約10000~約19000の分子量を有する、請求項13に記載のかみそり。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
剃毛中に潤滑効果を提供するためのかみそり刃上の剃毛補助剤の使用は既知であり、例えば、米国特許第7,121,754号、同第6,298,558号、同第5,711,076号、同第5,134,775号、同第6,301,785号、米国特許出願公開第2009/0223057号、同第2006/0225285号、同第2016/0143836A1号、同第2018/0133139A1号、及び同第2017/0002288A1号を参照されたい。かかる剃毛補助剤は、典型的には、構造的一体性を提供するための非水溶性マトリックス材料と、水溶性ポリマーが剃毛中に存在する水との溶液を一旦形成すると、剃毛中に潤滑性を提供するための、ポリエチレンオキシド(ポリオックス)などの水溶性ポリマーと、を含む。ポリエチレンオキシドポリマーは限定的ではないわけではないにも関わらず、ポリオックスが剃毛潤滑剤として導入されて以降、当該分野における開発はほとんどなされていない。
【0002】
例えば、低分子量又は高分子量を有するポリエチレンオキシドポリマーを利用することにより、潤滑性を改善することができるが、典型的に使用中に形成される残留物及び又は水溶液の糸引き状態若しくは他の態様に関してトレードオフをもたらす場合もある。結果として得られる水溶液の粘度も上昇し、例えば、特に潤滑剤の場合、ユーザの剃毛感に関して悪い印象となる特性をもたらす場合があると考えられる。これらの性能属性のバランスをとるために、高分子量のポリエチレンオキシドポリマーと低分子量のポリエチレンオキシドポリマーとの組み合わせも記載されている。それでも、こうした組み合わせはまた、その性能を改善する能力の点では限定的であり、及び/又はその他の否定的な性能特性という問題がある。
【0003】
ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)及びヒドロキシエチルセルロース(「HEC」)を含む、特定のセルロース材料を剃毛補助剤に添加することが知られている。例えば、米国特許第5,113,585号を参照されたい。HPC及びHECは、本質的に熱可塑性であり、すなわち、標準環境条件で固体であり、より高温に曝されるにつれて軟化/融解することを意味する。現在の潤滑性部材の押出加工条件で使用される場合、HPC/HEC成分は、押出中に、任意のポリエチレンオキシドと共に溶融相の一部を形成する。熱可塑性セルロースを使用する問題の1つは、押出工程中に潤滑性部材の溶融粘度が変化する可能性があることである。これは、熱可塑性セルロースの分子量が増加するにつれて特に問題となり得る。したがって、実証された潤滑性を提供するが、熱可塑性セルロースに生じる問題を回避することができるような、特定のポリマーを見出すことが望まれている。
【0004】
カルボキシメチルセルロース(「CMC」)は、剃毛の分野で使用するために開示されている別のタイプのセルロース系材料である。CMCは熱可塑性ではなく、従来の押出温度下で溶融しない(これは、150℃、180又は200℃の高さであり得る)。例えば、米国特許第2,838,442号には、カルボキシメチルセルロースを含むがポリエチレンオキシドを含有しない固体剃毛スティックブロックが記載されている。米国特許出願公開第2012/0087981A1号は、カプセル材料としてCMCを使用することができる、潤滑及びカプセル封入された芳香剤を送達するための、かみそり上で使用するための剃毛補助剤を開示している。剃毛用途におけるCMCのこれらの特定の使用にもかかわらず、当該技術分野におけるセルロース材料の既知の用途に関する問題のうちの1つ以上を回避しつつ、潤滑を改善する方法を見出す必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,121,754号
【特許文献2】米国特許第6,298,558号
【特許文献3】米国特許第5,711,076号
【特許文献4】米国特許第5,134,775号
【特許文献5】米国特許第6,301,785号
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0223057号
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0225285号
【特許文献8】米国特許出願公開第2016/0143836A1号
【特許文献9】米国特許出願公開第2018/0133139A1号
【特許文献10】米国特許出願公開第2017/0002288A1号
【特許文献11】米国特許第5,113,585号
【特許文献12】米国特許第2,838,442号
【特許文献13】米国特許出願公開第2012/0087981A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様はかみそりに関し、このかみそりは、潤滑表面を有するハウジングと、刃先端を有する少なくとも1つの刃であって、刃先端がハウジングの当該潤滑表面上に露出している、少なくとも1つの刃と、当該ハウジングの潤滑表面上に位置する潤滑性部材であって、当該潤滑性部材は、ポリエチレンオキシドとカルボキシメチルセルロースとの混合物を含む潤滑性材料を含み、当該カルボキシメチルセルロースが少なくとも1つの離散粒子を形成する、潤滑性部材と、を含む。カルボキシメチルセルロースは、以下の式:
【0007】
【化1】
(式中、セルロースは、繰り返し単位当たり3個のR基を有し、当該R基は、Ra又はRbから選択される)を有し得る。
【0008】
本発明の別の態様は除毛装置に関し、この除毛装置は、
潤滑表面を有するハウジングと、当該ハウジングの潤滑表面上に配置された潤滑性部材であって、当該潤滑性部材は、約10%~約70%の、ポリエチレンオキシドを含む水溶性ポリマーと、約5%~30%のカルボキシメチルセルロースと、を含み、当該カルボキシメチルセルロースは少なくとも1つの離散粒子を形成する。
【0009】
あるいは、この潤滑性部材は、約20%超、約30%超、約40%超、又は約50%超の、ポリエチレンオキシドを含む水溶性ポリマーを含んでもよい。この潤滑性部材は、約70%未満、約60%未満、約50%未満、又は約40%未満の、ポリエチレンオキシドを含む水溶性ポリマーを含んでもよい。この潤滑性部材は、約20%超、約30%超、約40%超、又は約50%超のカルボキシメチルセルロースを含んでもよく、当該カルボキシメチルセルロースは少なくとも1つの離散粒子を形成する。この潤滑性部材は、約70%未満、約60%未満、約50%未満、又は約40%未満のカルボキシメチルセルロースを含んでもよく、当該カルボキシメチルセルロースは少なくとも1つの離散粒子を形成する。
【0010】
ポリエチレンオキシドを含む水溶性ポリマーと、カルボキシメチルセルロースとは、潤滑性部材中に、1:1の比率で、又はカルボキシメチルセルロースがより優勢な構成成分となるよう1:1超の比率で存在してもよい。例えば、カルボキシメチルセルロースの水溶性ポリマーに対する比率は、60:40又は70:30であってもよい。
更に別の態様は、ポリエチレンオキシドを含む水溶性ポリマーと、粒子状カルボキシメチルセルロースとを含む潤滑性部材、及び担体を提供し、この水溶性ポリマー及びカルボキシメチルセルロースは、担体材料内に分散される。担体材料は、非水溶性ポリマーであり得る。非水溶性ポリマーは、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)若しくはエチレン-酢酸ビニル(EVA)、又は任意の他の好適な非水溶性ポリマーを含んでもよい。
【0011】
あるいは、この担体は、潤滑性部材に使用するのに好適な非水溶性ワックス及び油の混合物を更に含んでもよい。好適な非水溶性ワックス及び油の非限定例としては、米国特許出願公開第2017/0002287号及び同第2017/0002289号に開示されているものが挙げられる。一実施形態では、潤滑性部材は、a)約10重量%~約70重量%の親油性構造化剤(セチルアルコール、ステアリルアルコール、又はこれらの混合物など、又は微結晶性ワックスなど)と、約10重量%~約70重量%の、シリコーンポリエーテルブロックポリマーを含む液体相とを含む脂質相、b)PEO、及びc)CMCを含む。PEOは、10重量%まで低くてもよく、例えば約10重量%~約30重量%であり得る。CMCは、10%~約30%であってよく、好ましくはより高い範囲の約20%~約30%であり得る。液相は、様々な油及び脂肪を更に含んでよく、例えば天然油、合成油、天然バター、トリグリセリド、ワセリン、シリコーン、及びこれらの混合物などであり得る。シリコーンポリエーテルブロックコポリマーは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びシリコーンの混合物を含む(例えば20:65:15の単位の比率で、好ましくは約10000~約19000の分子量を有する)。
【0012】
更に別の態様は、除毛装置上で使用するための潤滑性部材を形成する方法であって、この方法は、ポリエチレンオキシドを提供する工程と、固体形態のカルボキシメチルセルロースを提供する工程と、当該ポリエチレンオキシドを当該カルボキシメチルセルロースと接触させて混合物を形成する工程と、当該混合物から潤滑性部材を形成する工程であって、当該カルボキシメチルセルロースが、当該潤滑性部材内に離散粒子を形成する、工程と、を含む。特に、この潤滑性部材は、成形又は鋳造によって形成されてもよく、必ずしも押出成形されなくてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
水溶性ポリマー
本発明によれば、潤滑性部材は、潤滑性部材の約1重量%~約99重量%、好ましくは少なくとも約15重量%、より好ましくは少なくとも約20重量%、最も好ましくは少なくとも約25重量%、かつ最大約70重量%、好ましくは最大約60重量%の水溶性ポリマーを含む潤滑性材料を含む。
【0014】
水溶性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)を含んでもよい。他の追加の好適な水溶性ポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリビニルイミダゾリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
好ましい水溶性ポリマーは、POLYOX(Union Carbide Corporationから入手可能)又はALKOX(明成化学工業株式会社(日本、京都)から入手可能)として一般的に既知のポリエチレンオキシドである。水溶性ポリマー(特にこれらのポリエチレンオキシド)は、少なくとも約20,000、好ましくは少なくとも約50,000、より好ましくは少なくとも約100,000、又は約100,000~約800万、好ましくは約300,000~約800万、より好ましくは約100万~約500万、更により好ましくは約200万の平均分子量を有し得る。特に好ましいポリエチレンオキシドは、約40%~80%の、約500万の平均分子量を有するポリエチレンオキシド(例えば、POLYOX COAGULANT)と、約60%~20%の、約300,000の平均分子量を有するポリエチレンオキシド(例えば、POLYOX WSR-N-750)とのブレンドを含む。ポリエチレンオキシドのブレンドはまた、有利なことに、最大約10重量%(例えば約5重量%)の、PEG-100などの低分子量(すなわち、分子量<10,000)のポリエチレングリコールを含有することができる。
【0016】
カルボキシメチルセルロース
本発明によれば、潤滑性部材はカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。CMCは、例えば潤滑性部材の約5重量%~約30重量%、好ましくは約10重量%~約20重量%の様々な濃度で含まれ得る。一実施形態では、潤滑性部材が脂質相を含み(概要で簡単に考察されている)、CMCの量は、例えば潤滑性部材の20%~約30%などのより高い範囲であり得、したがってPEOの量は、10%~30の範囲などのように低くすることができる。PEO及び非水溶性ポリマーを含む押出潤滑性部材などの実施形態では(非限定的な例としては、高耐衝撃性ポリスチレン又はエチレン酢酸ビニルを含む)、CMCの濃度は、例えば約5%~約20%などの、より低い範囲であり得る。
【0017】
本発明の一実施形態は、PEO及びCMCを含むかみそりカートリッジ用潤滑性部材に関し、これは更に約20重量%~約90重量%の脂質相を含み、この脂質相は、潤滑性部材の約10重量%~約70重量%の親油性構造化剤を含む。好適な親油性構造化剤の非限定的な例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、又はこれらの混合物、又は微結晶性ワックスが挙げられる。脂質相は、潤滑性部材の約10重量%~約70重量%の液相を更に含み、当該液相は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及びシリコーンのブレンドを含むシリコーンポリエーテルブロックコポリマーを含む。好適なシリコーンポリエーテルブロックコポリマーの非限定的な例としては、20:65:15のポリエチレンオキシド単位とポリプロピレンオキシド単位とシリコーン単位との比率、及び約10000~約19000の分子量のものが挙げられる。一実施形態では、当該潤滑性部材は、発泡性石鹸又は発泡性界面活性剤を実質的に含まない。
【0018】
好適なカルボキシメチルセルロースは、以下の式に従った構造を有する。
【0019】
【化2】
【0020】
セルロースは、繰り返し単位当たり置換可能な3つの基(R)を有する。カルボキシメチルセルロースとしては、各R基は、Rを含むセルロースの繰り返し単位当たりのR基の平均数として定義される、「置換度」を有するR又はRのいずれかを含む。R部分は、カルボキシメチル置換基である。カルボキシメチルセルロースは、0.6~0.9、好ましくは0.7から好ましくは0.8までの平均カルボキシメチル置換度を有する。
【0021】
理論に束縛されるものではないが、Na+は、組成pHを下げることによってその場で生じ得る水素原子によって置き換えられ得ると考えられる。
【0022】
カルボキシメチルセルロースは、次の構造に従った疎水性部分で更に置換して、疎水変性カルボキシメチルセルロースとすることが好ましい場合がある:
【0023】
【化3】
式中、各R基は、R、R、R、又はRのいずれかを含み、R及びRは、5~22個の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル鎖から独立に選択される。R部分は、カルボキシメチル置換基である。R及びR部分は、疎水性置換基である。「カルボキシメチル置換度」は、Rを含むセルロースの繰り返し単位当たりのR基の平均数として定義される。カルボキシメチルセルロースは、0.6~0.9、好ましくは0.7から好ましくは0.8までの平均カルボキシメチル置換度を有する。「疎水性部分置換度」は、R及び/又はRを含むセルロースの繰り返し単位当たりのR基の平均合計数として定義される。好ましくは、平均疎水性部分置換度は、0.001~0.2の範囲である。
【0024】
カルボキシメチルセルロース(CMC)の置換度(DS)を決定するための典型的な方法は、より詳細に以下に記載する。カルボキシメチルセルロース(CMC)のブロック度(DB)を決定するための典型的な方法は、より詳細に以下に記載する。
【0025】
本発明で使用するのに好適なCMCとしては、CP Kelco製のセルロースガムを含むセルロースを挙げることができ、これには、限定するものではないがCekolが含まれ、これにはCekol 30000P(典型的な粒径0.75mm超(最大20%)、及び0.25mm未満(最大0.5%)が含まれる。CMCは、粒状又は微粉砕することができる。一実施形態では、本発明で使用されるCMCは、約75マイクロメートル~約425マイクロメートルのCMC粒径、100マイクロメートル~約175マイクロメートルの平均粒径を有する供給原料から得ることができる。一実施形態では、微粉砕CMCは、CMCのほとんど又は全てが粒径100マイクロメートル未満で、かつ少なくとも70%が50マイクロメートル未満である。
【0026】
更なる好適なタイプのCMCとしては、Blanose及びAqualonの名でAshlandにより製造されているいくつかのCMCが挙げられる。非限定例としては、Ashland Blanose 9H4F(粘度2500~4000mPa・s、置換度0.8~0.95)、及びAshland Aqualon 7HF PH(粘度1500~3000mPa・s、置換度0.7)が挙げられる。これらの材料の両方が、分子量40,000以下である可能性が高いと考えられる。
【0027】
カルボキシメチルセルロースの合成
カルボキシメチルセルロースの製造方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、T.G.Majewicz and T.J.Podlas,Kirk-Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology,4th edition,Chapter 「Cellulose Ethers」,Volume 5,pp445-465に開示されている。「ブロック度」を制御するための方法は、V.Stigsson et al.,Cellulose,2006,13,pp.705-712に開示されている。
【0028】
疎水変性カルボキシメチルセルロースを生成するための様々な方法が、欧州特許第EP998498号(C.P.Kelco)、I.Srokova,V.Tomanova,A.Ebringerova,A.Malovikova,and T.Heinze,Macromolecular Materials and Engineering,2004,289(1),pp.63-69、及びI.Srokova,P.Talaba,P.Hodul,and A.Balazova,Tenside,Surfactants,Detergents,1998,35(5),pp.342-344に開示されている。
【0029】
カルボキシメチルセルロース(CMC)のカルボキシメチル置換度(DS)を決定する方法
全ての有機材料を除去するために、CMCを強熱して、高温(650℃)で45分間炭化することによってDSを決定した。残存した無機灰を、蒸留水に溶解し、メチル赤色を添加した。溶液がピンクになるまで、試料を0.1Mの塩酸で滴定した。以下の式を使用して、滴定した酸の量(b mL)及びCMC(G g)の量からDSを算出した。
DS=0.162{(0.1b/G)/[1-(0.080.1(b/G)]}
【0030】
代替的に、置換セルロースのDSは、電気伝導度測定又は13C NMRによって測定してもよい。両アプローチに関する実験プロトコルは、D.Capitani et al,Carbohydrate Polymers,2000,v42,pp283-286に記載されている。
【0031】
カルボキシメチルセルロース(CMC)のブロック度(DB)を決定する方法
置換セルロースの場合、DBは、特定の市販のエンドグルカナーゼ酵素(Econase CE、AB Enzymes(Darmstadt,Germany))で酵素加水分解後に放出された非置換グルコース単位の量(A)を、酸加水分解後に放出される非置換グルコース単位の合計量(A+B)で除算したものに相当し得る。酵素活性は、別の非置換グルコース単位に直接結合しているポリマー鎖中の非置換グルコース単位に対して特異的である。置換セルロースブロックの更なる説明及び測定は、V.Stigsson et al.,Cellulose,2006,13,pp705-712に詳細に提供されている。
【0032】
酵素分解は、pH4.8、50℃で3日間、緩衝液中の酵素(Econase CE)を使用して実施する。25mLの置換セルロース試料には、酵素250μLが使用されている。分解は、試料を90℃に加熱し、15分間熱く保持することによって停止する。置換パターン及びブロック度の両方についての酸加水分解は、過塩素酸(室温の70%HClO4中で15分及び120℃の6.4%HClO4中で3時間)で行う。試料は、パルス電流検出(PAD検出器:BioLC50(Dionex(Sunnyvale,California,USA)))を備えたアニオン交換クロマトグラフィを使用して分析する。HPAEC/PADシステムは、13C NMRによって較正する。酢酸ナトリウムを(30分で酢酸ナトリウムを0Mから1Mに)増加させながら、溶出液として100mMのNaOHを使用して、PA-1分析カラム上で0.2mL/分の流量を使用して、35℃で単糖を分離する。各試料を3~5回分析し、平均を計算する。少なくとも1つの置換グルコースに直接連結された非置換グルコースの数(A)と、置換グルコースに直接連結されていなかった非置換グルコースの数(B)とを推定し、置換セルロース試料のDBを計算する、(DB=B/(A+B))。
【0033】
疎水変性カルボキシメチルセルロース(CMC)の疎水性部分置換度を決定する方法
疎水性部分の置換度は、I.Srokova,V.Tomanova,A.Ebringerova,A.Malovikova,and T.Heinze,Macromolecular Materials and Engineering,2004,289(1),pp.63-69、及び I.Srokova,P.Talaba,P.Hodul,and A.Balazova,Tenside,Surfactants,Detergents,1998,35(5),pp.342-344に記述されているように、FT-IR分光法を使用して決定される。
【0034】
PEO及びCMCを含む潤滑性部材
本発明は、PEOとCMCとの混合物を含む潤滑性部材を含む。この潤滑性部材は、材料のマトリックスを形成し、CMCは、このマトリックス内に少なくとも1つ、好ましくは複数の離散粒子を形成する。いくつかの実施形態では、このマトリックスは、PEO単独か、PEOと他の任意の潤滑剤を含むか、あるいは、非水溶性ポリマー、非水溶性及び/又は疎水性ワックス及び油、疎水性結合剤などの担体を含むがこれらに限定されない他の成分を含み得る。
【0035】
CMCは、600マイクロメートル未満、約425マイクロメートル未満、約250マイクロメートル未満、又は100マイクロメートル未満の粒径を有する少なくとも1つの離散粒子を形成する。代替的な一実施形態では、当該複数のカルボキシメチルセルロース粒子は、約600マイクロメートル未満、好ましくは約400マイクロメートル未満、好ましくは約300マイクロメートル未満の平均粒径を有する。一実施形態では、平均粒径は、100マイクロメートル未満、又は更にはより小さいものとすることができる。
【0036】
一実施形態では、CMCの少なくとも10重量%が、当該離散粒子を形成し、好ましくは少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%が当該離散粒子を形成する。より多量のCMCが当該離散粒子を形成することが望ましい場合があり、CMCの90%、95%に達して、又は更には約99%~最大100%が当該離散粒子を形成することが望ましい場合がある。
【0037】
一実施形態では、潤滑性部材は、CMC対水溶性ポリマーの比率が1:1~約7:3、最も好ましくは55:45~65:35の範囲である。
【0038】
理論に束縛されるものではないが、CMCは、カートリッジの下により粘稠な潤滑溶液及び層を実現し、これが消費者にとって有益であると考えられる。CMCはPEOほど粘弾性ではないが、これも、消費者にとってマイナスとなる糸引き状態及び残留物の属性を減少させる。正味、PEO及びCMCの両方を含む潤滑性部材は、皮膚に対するマイナスの徴候を減少させながら、潤滑性、保護の感覚を改善すると考えられる。
【0039】
任意のシリコーンポリエーテルコポリマー
本発明の一実施形態によると、この潤滑性材料は、約0.1重量%~約70重量%、好ましくは約1重量%~約20重量%、より好ましくは約1重量%~15重量%、更により好ましくは約1重量%~約5重量%、又は代替的に約40重量%~約60重量%、より好ましくは約45重量%~約55重量%のシリコーンポリエーテルコポリマー又はこれらの混合物を更に含む。
【0040】
シリコーンポリエーテルコポリマーは、約1重量%~50重量%のポリエチレンオキシドと、約20重量%~約90重量%のポリプロピレンオキシドと、約1重量%~約20重量%のシリコーンと、を含む。好ましくは、シリコーンポリエーテルコポリマーは、少なくとも約40重量%、より好ましくは少なくとも約50重量%、最も好ましくは少なくとも約60重量%のポリプロピレンオキシドを含む。加えて、シリコーンポリエーテルコポリマーは、好ましくは少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約15重量%、最も好ましくは約15重量%~30重量%のポリエチレンオキシドを含む。更に、シリコーンポリエーテルブロックコポリマーは、1重量%~20重量%、好ましくは10重量%~20重量%、より好ましくは約15重量%のシリコーンを含む。
【0041】
シリコーンポリエーテルブロックコポリマーが発泡、脱泡、湿潤、脱気、及び潤滑性などの多くの利益をもたらすことは当該技術分野において既知であるが、ここで、驚くべきことに、20重量%~90重量%のポリプロピレンオキシドと1%~50%のポリエチレンオキシドとを有するシリコーンブロックコポリマーを選択すると、予想外にも、ポリプロピレンオキシドがより少ないか又はポリプロピレンオキシドを全く有さず、かつより多くのポリエチレンオキシドを有するシリコーンポリエーテルブロックコポリマーと比べて、必要なレベルの水分散性及び/又は水溶性を確保しながら改善された潤滑性がもたらされることが見出された。更に、かかるシリコーンブロックコポリマーの使用により、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのコポリマーなどの代替材料と比べて、皮膚への接着性が向上する。更に、ポリマーにおいて低レベルで存在するにも関わらず、シリコーンポリエーテルブロックコポリマーが、シリコーンを1重量%~20重量%含有することにより、驚くべきことに所望のレベルの潤滑性が提供される。
【0042】
コポリマーはブロックコポリマーであり、ペンダントグラフト構造又は線状構造を有してもよい。シリコーンポリエーテルブロックコポリマーは、1重量%~50重量%、好ましくは10重量%~20重量%、より好ましくは約20重量%のポリエチレンオキシドを含む。シリコーンポリエーテルブロックコポリマーは、20重量%~90重量%、好ましくは40重量%~90重量%、より好ましくは約50重量%~80重量%、最も好ましくは約65重量%のポリプロピレンオキシドを含む。シリコーンポリエーテルブロックコポリマーは、1重量%~20重量%、好ましくは10重量%~20重量%、より好ましくは約15重量%のシリコーンを含む。
【0043】
シリコーンポリエーテルブロックコポリマーは、好ましくは、3.0対0.1、好ましくは0.6対0.25の、ポリエチレンオキシド単位のポリプロピレンオキシド単位に対する比率を有する。シリコーンポリエーテルブロックコポリマーは、好ましくは、20:65:15の、ポリエチレンオキシド単位とポリプロピレンオキシド単位とシリコーン単位との比率を有する。
【0044】
シリコーンポリエーテルコポリマーは、約10000~約19000、より好ましくは約10000~15000の分子量を有し得る。
【0045】
好適なシリコーンポリエーテルコポリマーは、Momentiveから、L7210を含むSilwets商標の製品として入手可能である。好ましくは、シリコーンポリエーテルブロックコポリマーは、スプレーコーティング製造方法用に液体の形態で提供され得るように、25℃で液体である。融点は、ASTM D5440-93に従って決定する。
【0046】
一実施形態では、潤滑性部材は、シリコーンポリエーテルブロックコポリマー及び水溶性ポリマー、好ましくはポリエチレンオキシドを含み、その重量比は、1:5~5:1、好ましくは1:3~3:1、より好ましくは1:2~2:1である。
【0047】
任意の疎水性化合物
本発明によれば、潤滑性部材は、疎水性化合物又はこれらの混合物を更に含み得る。一実施形態では、潤滑性部材は、1重量%~40重量%、好ましくは5重量%~40重量%、より好ましくは約10重量%~約40重量%、更に好ましくは約12重量%~約30重量%の疎水性化合物及び又はその混合物を含む。好適な疎水性化合物としては、天然油及び又はワックス及び又は脂肪、合成ワックス又は油、トリグリセリド、皮膚活性剤、感覚剤、フレグランスオイル、シリコーン及びこれらの混合物が挙げられる。疎水性材料は、潤滑性、肌触り、及び冷感などの、使用中に得られる多くの効果を提供することができる。
【0048】
疎水性化合物は、酢酸ビタミンE及びニコチン酸トコフェロールを含むビタミンE誘導体などの油溶性ビタミン、パルミチン酸レチニルなどの油溶性ビタミンA誘導体、ラノリン、セラミド、ステロール、及びステロールエステル、サリチル酸、樟脳、ユーカリプトール、精油、ハッカ油、イソEスーパー[(1-(1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-ナフタレニル)エタノン]、並びにこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない、皮膚活性剤を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、疎水性化合物は、1種以上の感覚剤を含む。天然起源又は合成起源の多数の冷却剤化合物が知られている。最もよく知られている化合物は、ハッカ油である。合成冷却剤の中でも、その多くは、メントールの誘導体であるか、又はメントールと構造的に関連している。すなわち、シクロヘキサン部分を含み、カルボキサミド、ケタール、エステル、エーテル、及びアルコールを含む官能基で誘導体化されている。非限定的な例としては、シュウ酸メチルエチルアミド(emthylamido)(Symriseより商品名Frescolat X-coolで入手可能)、乳酸メンチル(Symriseから入手可能なFrescolate ML Naturalなど)、及びメンチルPCAとしても知られるカルボン酸メンチルピロリドン(Givaudanから商品名Questicesで入手可能)が挙げられる。
【0050】
疎水性化合物は、カプリン酸及び又はカプリル酸トリグリセリド、ブドウ種子油、オリーブ油、マイクロクリスタリンワックス、シアバター、カカオバター、ラノリン、精油、ハッカ油、イソヘキサデカン、ワセリン、(ジメチコン、フェニル化シリコーン、及びこれらの混合物から選択される)ワックス及び油を含むシリコーンポリマー、並びにこれらの混合物から選択され得る。
【0051】
更なる任意の潤滑性成分
潤滑性材料は、ポリエチレンオキシド(PEO)とポリプロピレンオキシド(PPO)とのコポリマーを更に含んでもよい。PEO/PPOコポリマーは、典型的には、潤滑性材料又は潤滑性部材の0.01重量%~50重量%、好ましくは0.01重量%~50重量%、より好ましくは2重量%~40重量%、更により好ましくは3重量%~25重量%、なお更により好ましくは4重量%~20重量%、最も好ましくは5重量%~10重量%の量で存在する。
【0052】
PEO/PPOコポリマーは、少なくとも5,000、好ましくは10,000~20,000、より好ましくは11,000~15,000、更により好ましくは12,000~13,000、なお更により好ましくは12,250~12,750の範囲の平均分子量を有し得る。理論に束縛されるものではないが、十分な分子量のPEO/PPOコポリマーの含有により、特に更なる水溶性ポリマー(特にポリエチレンオキシド)と組み合わせたときに水性条件下の潤滑性部材の潤滑特性を更に改善し、ひいては使用する際の望ましくない感触を防ぐと考えられる。
【0053】
PEO/PPOコポリマーは、有利なことに、ブロックコポリマーであってもよく、好ましくは、PEO-PPO-PEOの配列を有するトリブロックコポリマーであってもよく、後者は、BASFからPluracare、及びSigma-AldrichからPluronicなどの商品名で市販されている。
【0054】
PEO/PPOコポリマーは、PEO対PPO(すなわち、エチレンオキシド繰り返し単位対プロピレンオキシド繰り返し単位)の重量比が、1000:1~1:1000、又は100:1~1:100であり得る。
【0055】
任意の疎水性結合剤
潤滑性部材はまた、疎水性結合剤などの非水溶性材料を更に含み得る。こうした成分は、機械的に壊食する傾向を減少させることによって、潤滑性材料の寿命を向上させることができる。有利には、疎水性結合剤は、標準温度及び標準圧力で固体である。好適な疎水性結合剤としては、二価金属カチオンステアレート、好ましくはマグネシウムステアレート、カルシウムステアレート、亜鉛ステアレート、又はこれらの混合物、より好ましくは、マグネシウムセパレート(magnesium separate)、エチルセルロース、ポリカプロラクトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブタジエン-スチレンコポリマー(例えば、中耐衝撃性ポリスチレン及び高耐衝撃性ポリスチレン)、ポリアセタール、アクリロニトリルブタジエン-スチレンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、及びポリプロピレン/ポリスチレンブレンドのようなブレンド、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましい非水溶性材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、中耐衝撃性ポリスチレン及び高耐衝撃性ポリスチレン、ポリアセタール、アクリロニトリルブタジエン-スチレンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、並びにこれらの混合物を含む、ブタジエン-スチレンコポリマーである。潤滑性材料は、約1~約50重量%、好ましくは約10重量%~約40重量%、より好ましくは約20重量%~約40重量%の疎水性結合剤を含み得る。疎水性結合剤は、本明細書で使用する疎水性化合物の定義に該当することがあり、かかる場合、疎水性化合物又は混合物の重量基準での量を決定する目的で含められるべきである。
【0056】
疎水性結合剤は、潤滑性部材に対して約22重量%~約40重量%、好ましくは約26重量%~約40重量%のEVAの濃度であってもよい。EVAの量はまた、約25%~約32%、又は約26%~約30%の濃度で選択され得る。一実施形態では、EVAは、約18%以下、できる限り約12%未満などの約18%未満の酢酸ビニル%(VA%)を有するように選択される。一実施形態では、酢酸ビニル%は、約2%~約5%、好ましくは約2.5%~4%の低さであってもよい。酢酸ビニル%はまた、約8%~約15%、又は約10%~約13%の濃度で選択されてもよい。「約」は、EVA濃度及び酢酸ビニル%に関して本明細書で使用するとき、±0.1%を意味し得る。
【0057】
一実施形態では、潤滑性部材は、約18%以下の酢酸ビニル%を有するエチレン酢酸ビニルを含む。一実施形態では、潤滑性部材は、潤滑性部材の約0.2重量%~最大7.5重量%、好ましくは約0.4重量%~約5.75重量%の総酢酸ビニル濃度を有する。一実施形態では、潤滑性部材は、潤滑性部材の約50重量%~約78重量%の水溶性ポリマーと、約20重量%~約40重量%、好ましくは約26重量%~約32重量%のエチレン酢酸ビニルとを含み、当該エチレン酢酸ビニルは18%未満の酢酸ビニル%を有する。本発明で使用するのに好適なこれら及び他の種類のEVAは、米国特許公開第2016//0143836号及び米国特許第2018/0133139号に記載されている。
【0058】
いくつかの実施形態では、潤滑性材料は、市販の剃毛補助剤部材で一般的に見出される任意のその他の成分を含み得る。したがって、潤滑性部材は、例えばポリエチレングリコールなどの低分子量水溶性放出促進剤(分子量<10,000、例えば、1~10重量%のPEG-100)、例えば架橋ポリアクリルなどの水膨潤性放出促進剤(例えば、2~7重量%)、着色剤、例えば水溶性カチオンポリマーなどの肌触り/スキンケア活性物質、界面活性剤、石鹸(遮断石鹸(interrupted soaps)を含む)、酸化防止剤、防腐剤、皮膚軟化剤、髭軟化剤、収斂剤、薬剤、可塑剤、追加の潤滑剤、脱毛剤/角質溶解材料、粘着付与剤、皮膚鎮静剤、芳香剤、相溶剤、抗炎症剤、止痒/反対刺激材料など、及びこれらの混合物などの他の従来の剃毛補助剤成分を含有し得る。これら成分は、本明細書で使用する疎水性化合物の定義に該当することがあり、疎水性化合物の量を決定する目的で含められるべきである。
【0059】
製造/加工方法
潤滑性部材は、射出成形、加圧成形、含浸、スプレーコーティング、カレンダリング及び押出成形、成形並びに鋳造などの、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して成形することができる。潤滑性部材の成分の全ては、成形又は押出成形の前に配合することができる。最良の結果を得るためには、成分が乾燥していることが好ましい。
【0060】
概要に記載されるような脂質相を有する一実施形態では、CMCは、熱溶融した疎水性相に混合され得る。疎水性相内に分散させるのは、CMCの離散粒子であり得る。次いで、この混合物を冷却し、鋳造するか、又はハウジング(かみそり又は別個の容器上に直接)に入れる。
【0061】
要約すると、本方法は、PEO及びCMCを含む供給原料を提供する工程と、この供給原料を成形、加圧成形、含侵、スプレーコーティング、カレンダリング、及び/又は押出成形して、固形潤滑性部材を形成する工程と、を含む。追加の任意選択的な工程は、利用される製造のプロセスに応じて、例えば、当該供給原料を約120℃~約200℃の温度に加熱することを含んでもよい。
【0062】
例えば、ブレンドされた成分の押出成形を、Haake System90、直径インチの押出成形機を通して、約1000~2000psiのバレル圧力、約10~50rpmのローター速度、約150°~185℃の温度、及び約170°~185℃のダイ温度で押出成形してもよい。あるいは、1インチのシングルスクリュー押出成形機を、175°~200℃、好ましくは185°~190℃の処理温度、20~50rpm、好ましくは25~35rpmのスクリュー速度、及び1800~5000psi、好ましくは2000~3500psiの押出圧力で採用してもよい。押出成形された部材を、約25℃まで空冷する。潤滑性部材を射出成形するために、最初に粉末ブレンドをペレットへと押出成形することが好ましい。これは、1又は1インチのシングルスクリュー押出成形機で、120°~180℃、好ましくは140°~150℃の温度で、20~100rpm、好ましくは45~70rpmのスクリュー速度で行うことができる。次にペレットを、単一材料成形機又は多材料成形機(シングルキャビティであってもマルチキャビティであってもよく、任意選択的にホットランナーシステムを備えていてもよい)で成形する。処理温度は、165°~250℃、好ましくは180°~225℃であってよい。射出圧力は、フラッシングを作り出すことなく部品を完全に充填するのに十分である必要がある。キャビティのサイズ、構成、及び数量に応じて、射出圧力は、300~2500psiの範囲とすることができる。サイクル時間は、同じパラメータに依存し、3~30秒の範囲とすることができ、最適には通常約6~15秒の範囲である。
【0063】
潤滑性部材は、ホットメルトプロセスを用いて製造され得る。そのようなプロセスでは、ワックスを水浴中で85℃の温度で融解し、完全に融解するまで撹拌する。次に、液体シリコーンポリエーテルブロックコポリマーを加えて攪拌する。次いで、撹拌しながら残りの成分を加えるとき、温度を約55℃まで下げる。次いで、融解材料を金型に注ぎ込み、圧力を付与する。部材は、冷却してから金型から取り外す。
【0064】
別の実施形態では、潤滑性部材は、圧縮粉末の形態で代替的に提供されてもよい。そのような実施形態に関して、水溶性ポリマー及び他の固形乾燥成分を粒子として提供し、混合することで潤滑性部材を製造することができる。粒子材料は、25℃で固体であり、好ましくは30℃以上の融点を有する。したがって、潤滑性部材は、10重量%~90重量%の水溶性ポリマーの粒子材料又はこれらの混合物を含んでもよい。供給原料の液体成分はまた、圧縮前に粉末上にスプレーコーティングされ得る。
【0065】
用語「圧縮及び/又は圧縮成形」又は「圧縮凝固」は、本明細書で使用するとき、圧力を印加することによって粒子又は粉末の嵩密度を減少させて、固体の錠剤を形成するプロセスを指す。典型的には、これは、外部せん断力又は熱を加えることなく実施される。好ましくは、圧縮凝固は、少なくとも1つの、好ましくは全ての粒子成分の融点未満、好ましくは25℃の周囲温度で実施される。こうして粒子は、圧縮プロセス後にその一体性を保持して、典型的には、圧縮プロセスが完了した後に肉眼で可視である。
【0066】
特定の実施形態では、粒子間結合を増大させ、また得られた潤滑性部材の剛性を増大させるために圧縮中又は圧縮後に熱などの追加のエネルギー源を加えてもよいが、熱は粒子材料のいかなる実質的な融解をももたらさないことが好ましい。しかしながら、好ましくは、本方法は、押出成形工程若しくは射出成型工程又は熱などのエネルギー源の付与を必要としない。
【0067】
潤滑性部材は、粒子由来の圧縮粉末形態で提供されてもよい。好ましくは、粒子は、約50~1250マイクロメートル、好ましくは約300~1250マイクロメートル、より好ましくは約1000マイクロメートルの平均粒径分布を有する。あるいは、粒径は、粒子の90%が20メッシュスクリーンを通過するものであり、すなわち、粒子の90%は、直径が841マイクロメートル未満である。潤滑性部材は、典型的には1KNを超える圧縮力で、プリフォーム又は容器へと直接圧縮されることが好ましい。これは、ダイプレスなど当該技術分野で既知の任意の方法及び設備を用いて達成してよい。粒子材料の圧縮前の嵩密度は、一般的には約300~600kg/mであり、圧縮後は約1000~1200kg/mに増加する。したがって、嵩密度は圧縮後約200%~約400%上昇し得る。理論に束縛されるものではないが、粒子圧縮製造法、好ましくは粒子冷間圧縮法(すなわち、25℃以下)を使用して潤滑性部材を形成することで、水溶性ポリマーの水溶性及び膨潤性能に悪影響を及ぼすことなく、内部に高潤滑性成分を組み込むことが可能になることが判明した。これはまた、結果として得られる潤滑性部材のサイズの柔軟性を実現し、複数のかみそりカートリッジに使用することができる。
【0068】
除毛ヘッド
本発明のいくつかの実施形態によれば、潤滑性部材は、除毛装置に対して特定の応用が可能である。除毛装置は、一般に、除毛ヘッドと、除毛ヘッドを設置するハンドル、つまり把持部と、を含む。除毛装置は、手動であっても電動であってもよく、湿潤及び/又は乾燥用途で用いてよい。除毛ヘッドは、脱毛剤と共に使用される除毛装置などの幅広の掻き取り面を含んでよく、あるいは装置が剃毛かみそりの場合、かみそりカートリッジ又はフォイルであってよい。除毛ヘッドは、取り替え可能及び/又は駆動可能にカートリッジ連結構造体へ、そして順番に又は独立して(例えば、完全に固定して)ハンドルに接続されてよい。いくつかの実施形態では、カートリッジ連結構造体は、除毛ヘッドを解除可能に係合するために少なくとも1つのアームを含む。
【0069】
除毛ヘッドは、典型的には、第1の末端部と第2の末端部との間に通常位置する1つ以上の細長い刃を含み、かかる1つ以上の細長い刃は、かかる第1の末端部に向かって延びる先端部を典型的に含む。除毛ヘッドがかみそりカートリッジの場合、1つ以上の細長い刃(edges)は刃(blades)を含んでよい。例えば、米国特許第7,168,173号は、The Gillette Companyから市販され、複数の刃を有するかみそりカートリッジを含む、FUSION(登録商標)かみそりを概して説明している。更に、かみそりカートリッジは、ガード及び潤滑性部材を含んでよい。様々なかみそりカートリッジを本発明に基づいて使用することができる。フィン、ガード、及び/又は剃毛補助剤を伴い、かつこれらを伴わない好適なかみそりカートリッジの非限定的な例には、The Gillette CompanyによってFUSION(登録商標)、VENUS(登録商標)製品ラインで販売されるもの、並びに米国特許第7,197,825号、同第6,449,849号、同第6,442,839号、同第6,301,785号、同第6,298,558号、同第6,161,288号、及び米国特許出願公開第2008/060201号に開示されるものが挙げられる。当業者であれば、潤滑性部材を、2枚、3枚、4枚若しくは5枚の刃を有するものを含む、任意の現在販売されているシステム又は使い捨てかみそりと共に使用することができることを理解するであろう。このような場合、除毛装置はかみそりであり、除毛ヘッドはかみそりカートリッジであり、かつ1つ以上の細長い刃(edges)は刃(blades)である。除毛装置の別の実施例は、除毛組成物、すなわち脱毛剤と共に使用するための掻き取り具である。
【0070】
いくつかの実施形態では、当該少なくとも1つの潤滑性部材は、除毛プロセス中に皮膚と接触するカートリッジの部分上の、刃の前方及び/又は後方に位置する。1つ以上の細長い刃の「前方」にある機構は、例えば、除毛装置で処理される表面が細長い刃と接触する前にその機構に接触するように配置される。細長い刃の「後方」にある機構は、除毛装置で処理される表面が細長い刃と接触した後にその機構に接触するように配置される。1つを超える潤滑性部材が除毛装置上に提供される場合、潤滑性部材は、物理的形状/構造及び/又は化学組成の点において同じ(同一)でも異なっていてもよく、また潤滑性部材の1つ以上がスプレーコーティングされた粒子を含んでもよい。
【0071】
いくつかの特定の実施形態では、同じ組成を備える又は異なる組成を備える第1の潤滑性部材を有する、複数の(例えば、2つ、第1及び第2の)潤滑性部材が除毛ヘッド上に提供され得る。これらの潤滑性部材は、細長い刃(例えば、かみそりカートリッジの刃)の前方又は後方に集合的に(例えば、互いに隣接して)、例えば並べて、又は1つが細長い刃の前方で他方が後方になるように個別に、配置されてもよい。
【0072】
潤滑性部材は、接着剤などの好適な取り付け手段を利用して自立していてよく、又は容器内部に少なくとも部分的に収容されていてよい。
【0073】
容器は、典型的には、基部と、当該基部から垂直に、好ましくは直角に延在する少なくとも1つの側壁と、皮膚接触面とを有する。好ましい実施形態では、当該容器は、基部、及び少なくとも2つの側壁、より好ましくは少なくとも4つの側壁を備え、この側壁が基部を完全に包囲することが好ましい。典型的には、壁の各対は実質的に平行であり、好ましくは、一対の壁は少なくとも2つの刃と実質的に平行である。あるいは、基部は一片の単一の壁によって包囲されてもよい。容器は、実質的に矩形又は楕円形などの任意の形状を形成してよい。容器は、典型的には、刃に隣接する前壁と、好ましくは刃に実質的に平行でありかつ当該刃から最も遠い後壁と、を有する。
【0074】
容器は、使用中に潤滑性部材を皮膚上に分注するための少なくとも1つの分注オリフィスを更に備えることが好ましい。一実施形態では、容器は、側壁(単数又は複数)から実質的に垂直に延在する上面を備える。容器は、かかる実施形態では、典型的には、潤滑性部材を受容するための受容領域を有する。上面は基部と実質的に平行であってもよく、あるいは上面は、刃から容器までの距離が増加すると刃平面から上面までの距離が増加又は減少するような角度で提供されてもよい。一実施形態では、刃から容器までの距離が増加すると、容器上面の高さは刃面からの距離で増加する。代替的な一実施形態では、刃から容器までの距離が増加すると、容器上面の高さは刃面からの距離で減少する。
【0075】
オリフィスは任意の形状であってよく、また、例えば、約0.00324~約1.613cmの断面積を有し得る。小さなオリフィスはまた、約0.0324~約0.324cm、又は約0.0645~約0.16135cmの断面積を備えていてよい。より大きなオリフィスは、約0.324~約1.613cm、又は約0.645~約1.29cmの断面積を有し得る。容器は、大きくても小さくてもよい、単一のオリフィス又は複数のオリフィスを備え得る。一実施形態では、容器は少なくとも2つのオリフィスを備える。所望の分配速度及び潤滑性部材を水に曝露させる量に応じて、小さなオリフィスと大きなオリフィスとの組み合わせを、同じ潤滑性部材上に、又は同じカートリッジ上の別個の部材上に提供することもできる。一実施形態では、容器の上面は、1つ、好ましくは2つのオリフィス、より好ましくは互いに隣接する2つの実質的に同一のオリフィスを備える。
【0076】
容器の潤滑表面は表面積を有する一方、少なくとも1つのオリフィス(すなわち、複数存在する場合は全てのオリフィスの合計)は断面積を有し、表面積と断面積は、約50:1~約1:1、又は約25:1~約2:1、又は約10:1~約3:1の比率となる。
【0077】
いくつかの実施形態では、当該容器の少なくとも一部分は、直線状ではなく、例えば角度が付いているか又は曲線状である。本明細書で定義される曲線状とは、少なくとも一部分が直線を形成せずに湾曲していることを意味する。少なくとも2つの容器が提供される場合には、容器はまた、互いに対して直線を形成しないように位置付けられてよい。あるいは、湾曲した又は角度の付いた性質とは、少なくとも部分的なリングを形成するようなものである。本明細書で定義される場合、部分的なリングとは、構造が、内部領域を形成する凹部である、少なくとも2つの湾曲した、又は角度の付いた区分を有することを意味する。部分的なリングは、当該内部領域に対して凸状に位置付けられた湾曲した又は角度の付いた部分も含むことができる。当該容器のうち1つ以上は、完全なリングを形成するように互いに対して配置されてよい。
【0078】
容器は、様々な材料から形成され得る。容器は、例えば、通常の使用中に劣化又は融解しないような非水溶性材料から提供され得ることが好ましい。
【0079】
容器は、典型的には、潤滑性部材全体に適切な機械的強度を提供するために、最初に製造されたとき、及び大量の潤滑性部材が容器外に浸出した後のいずれにおいても、十分な機械的強度及び剛性を有する。代替的に又は追加的に、更なる補強部材を利用してよい。いくつかの実施形態では、容器は、基部と1つ以上の側壁とを備えて、その上に又は中に潤滑性材料が配置される受容領域、つまりチャネルを形成する。
【0080】
側壁は、(容器の基部から遠ざかるように延在する方向に測定して)同じ高さであってもよく、そうでなくてもよい。側壁のうちの少なくとも1つは、約0.1cm~約1cm、好ましくは約0.2cm~約0.4cmの高さを有することができる。側壁の対を、壁が基部から離れる方向に延在するに従って、互いから離れるように付勢することができ、又は互いに向かうように付勢することができる。少なくとも1つの壁は、基部から垂直方向に延在し、好ましくは刃面(P)と直角をなす。容器の一端又は両端を、例えば、米国特許第7,581,318号に記載のとおり包囲してもよい。本明細書で使用するとき、用語「少なくとも1つの壁の最大高さ」は、少なくとも2枚の刃に好ましくは実質的に平行かつ刃に最も近い第1の前壁を指すか又は少なくとも2枚の刃から最も遠い後壁を指す。一実施形態では、少なくとも1つの壁は、少なくとも2枚の刃に最も近い。代替的な実施形態では、少なくとも1つの壁が、少なくとも2つの壁から最も離れている。一実施形態では、前壁の、後壁に対する高さの比率は、5:1~1:5、より好ましくは2:1~1:2であり、より好ましくは、前壁の高さは、後壁よりも高い。壁は、0.1cm~1.0cm、好ましくは0.3~0.5cmの厚さを有する。
【0081】
容器は、非水溶性ポリマー、特に熱可塑性樹脂から作製され得る。熱可塑性樹脂は、ある形状に押出成形又は成形できる材料であり、水との接触、より適切に言えば、通常家庭の高温水温度(例えば、最高125℃まで)、使用中の消費者による通常の摩損、装置の組み立て及び出荷などの通常の環境条件下で弾力的である。担体内で使用するための好適な熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、高耐衝撃性ポリスチレン(ポリスチレン-ブタジエン)、ポリプロピレン、充填ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、エチレン酢酸ビニル、及び70%ナイロン/30%ポリエチレンオキシド、60%ポリスチレン/40%ポリエチレンオキシドブタジエンスチレンコポリマー、ポリアセタール、アクリロニトリル-ブタジエンスチレンコポリマーなどのブレンド、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましい樹脂は、高耐衝撃性ポリスチレン、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)、及びこれらの混合物である。
【0082】
いくつかの実施形態では、カートリッジは、ユーザの皮膚に係合するための少なくとも1つの細長い可撓性突出部を備えるガードを含む。少なくとも1つの可撓性突出部は、1つ以上の細長い刃に対して略平行な可撓性フィンを含んでよい。当該少なくとも1つの可撓性突出部は、1つ以上の細長い刃に対して略平行ではない少なくとも1つの部分を備える可撓性フィンを、追加的に又は代替的に備える場合がある。好適なガードの非限定的な例としては、現在のかみそり刃で用いられているものが挙げられ、また、米国特許第7,607,230号及び同第7,024,776号(エラストマー/可撓性のフィンバーを開示する)、米国特許出願公開第2008/0034590号(湾曲したガードフィンを開示する)、同第2009/0049695(A1)号(上面と下面との間に延在する少なくとも1つの経路を形成するガードを有するエラストマーのガードを開示する)に開示されているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、当該潤滑性部材は、カートリッジ上でガードの後方及び当該細長い刃の前方に配置される。別の実施形態では、潤滑性部材は、カートリッジ上のガードの前方に配置される。本実施形態は、ガードと接触する前に潤滑性部材を供給するのに特に有用であり得る。
【0083】
I.処方実施例
【0084】
【表1】
供給元:Momentive、**Dow Chemicals、***Ashland、$Dow Corning、#Sonnenborn
処方実施例1~4を、以下のとおり調製した。
1.全ての器具を消毒する
2.水浴/槽のジャケットのスイッチをオンにして、75℃にする
3.親油性構造化剤(セチルアルコール又はステアリルアルコール、ラウリン酸)を加え、完全に融解するまでオーバーヘッド撹拌機で撹拌する
4.油相成分(Silwet、ワセリン)を添加し、完全に液体になるまで混合する
5.60℃まで温度を下げ、粉末成分(Polyox、Cekol)が完全に分散するまで加える
6.混合物を成形型又は容器に流し込む
7.部品をかみそりカートリッジに組み立てる
【0085】
【表2】
供給元:Dupont、**Dow Chemicals、***Perstorp
【0086】
処方実施例5を、以下のとおり調製した。
本発明の潤滑性部材は、押出成形、又は射出成形、圧縮成形、圧粉、超音波若しくは高周波焼結、及びスロットコーティングなどの別の高温処理によって製造される。高温処理は、水溶性ポリマー(PEO)及び追加の有益成分を劣化/分解する。潤滑性部材中にEVAグレードのElvax660(Dupontから購入)を含む一実施形態では、押出処理温度は110℃まで下げる。一実施形態では、耐熱性スキンケア活性剤を含む潤滑性部材を、別の潤滑性部材で更にコーティング又は積層化してもよい。一実施形態では、高分子量PEO及び低分子量PEOの混合物を含む、ストリップの全ての構成要素は、成形又は押出前に単体で又は他の成分と組み合わせて混合され得る。構成要素は、自由流動粉末であることが好ましい可能性があるが、しかしながら、液体皮膚活性剤が、ストリップ内の粉末形態の他の構成要素の1つ以上に吸収されてもよい。
【0087】
追加の成分が望ましい場合、PEO供給原料を第2の供給原料と組み合わせてもよい。1つ又は複数の供給原料を混合し、ダイを介した押出工程により加工して、潤滑性部材として使用するのに好適な潤滑性部材を形成することができる。以下で説明するように、当該押出工程は、当該混合物を約1000psi~約7500psiの圧力及び/又は約100℃~約160℃の温度に晒すことを含み得る。
混合された構成成分は、約500~1000psiのバレル圧、約10~50rpmのローター速度、並びに約100°~160℃の温度及び約100°~160℃のダイ温度で、18mm径の押出成形機Rondol18を通して押出成形されてもよい。あるいは、1インチの単軸スクリュー押出成形機を、100~160℃、好ましくは110~130℃の処理温度、20~50rpm、好ましくは25~50rpmのスクリュー速度、及び1800~7500psi、好ましくは4000~6500psiの押出圧力で採用してもよい。他の押出条件を使用してもよい。押出成形されたストリップを約25℃まで冷却する。ストリップを射出成形するために、最初に粉末混合物をペレットへと押出成形することが好ましい。これは、1又は1インチの短軸スクリュー押出成形機で、100°~140℃、好ましくは110°~130℃の温度で、20~100rpm、好ましくは45~70rpmのスクリュー速度で行うことができる。次いで、ペレットを、シングルキャビティであってもマルチキャビティであっても数個取りであってもよく、任意選択的にホットランナーシステムを備えていてもよい、単一材料成形機又は多材料成形機のいずれかで成形する。処理温度は、100°~185℃、好ましくは、110°~145℃であってもよい。射出圧力は、フラッシングを作り出すことなく部品を完全に充填するのに十分である必要がある。キャビティのサイズ、構成、及び数量に応じて、射出圧力は、300~2500psiの範囲とすることができる。サイクル時間は、同じパラメータに依存し、3~30秒の範囲とすることができ、最適には通常約6~15秒の範囲である。一実施形態では、1つ以上の供給原料を予熱することができる、又はそれらを周囲温度で投入することができる。
【0088】
一実施形態では、方法は、潤滑性部材の受容領域(第1の層又は基部又はシースの一部など)を提供し、当該潤滑性部材の受容領域に(第2の層又はコアを形成するために)所定量のPEO供給原料を分配する工程を更に含む。シース及びコアシステムを使用する場合、成形によってシースを実現してもよく、その後、当該PEO混合物を流体又は流動性形態(液体又は粉末など)で提供することによってコアをシース内に形成してもよく、次に、例えば当該潤滑性部材の受容領域内でこのPEO供給原料を加圧、加熱、及び/又は超音波圧縮することによって凝固する。このような潤滑性部材の形成方法の非限定的な例は、米国特許第6,298,558号又は同第7,581,318号並びに国際公開第2011/047221号に開示されている。
【0089】
【表3】
【0090】
処方実施例6~7を、以下のとおり調製した。
上記の表中の潤滑性材料(PEO、Cekol)は、実施例中の成分を乾燥混合し、使用される場合には、粉末ブレンド上にsilwetを噴霧コーティングすることによって製造される。次いで、得られた混合物の適量を、約5秒間2.2KNでダイプレスを使用して、潤滑性部材容器に圧縮凝固した。
【0091】
本明細書で使用される場合、分子量(mol.wt.s)は、統一原子質量単位、ダルトン、又はg/molで提供される。本明細書の全体をとおして与えられる全ての最大数値限定は、それよりも小さい全ての数値限定を、かかるより小さい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているかのように含むものと理解すべきである。本明細書の全体をとおして与えられるあらゆる最小数値の限定は、それよりも大きいあらゆる数値限定を、かかるより大きい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているかのように含むものである。本明細書の全体をとおして与えられるあらゆる数値範囲は、かかるより広い数値範囲内に含まれるあらゆるより狭い数値範囲を、かかるより狭い数値範囲があたかも本明細書にいずれも明確に記載されているかのように含むものである。同様に、本発明のそれぞれの特定の実施形態のそれぞれの特徴は、それぞれの他の特定の実施形態に、あたかもかかる全ての組み合わせが、これらの組み合わせが具体的に除外されているか、又は関連する特徴が本質的に不適合(例えば、特徴が正反対)でない限り、本明細書に明示的に記載されているかのように独立して適応されてもよいことを理解するべきである。
【0092】
本書の明細書、実施例、及び特許請求の範囲において、全ての部、比、及び百分率は、特に指定のない限り、潤滑性部材の重量基準であり、全ての数値限定は、当該分野により提供される通常の程度の精度で使用される。
【0093】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【国際調査報告】