(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】腫瘍の処置に使用するためのPD-L1アンチセンスオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220629BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/113 110Z
C12N15/113 140Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565085
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2020062264
(87)【国際公開番号】W WO2020225186
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519125450
【氏名又は名称】セカルナ・ファーマシューティカルズ・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ヤシンスキー
(72)【発明者】
【氏名】リヒャルト・クラール
(72)【発明者】
【氏名】タマラ・セルマン
(72)【発明者】
【氏名】ズヴェン・ミシェル
(57)【要約】
本発明は、PD-L1をコードする配列番号1とハイブリダイズする10~20ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドに関し、オリゴヌクレオチドの潜在的オフターゲット結合部位の数は根本的に減少しており、その結果オフターゲット効果に対する危険性が著しく減少している。更に、本発明は、そのようなオリゴヌクレオチド及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1をコードする配列番号1とハイブリダイズする10~20ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドであって、前記オリゴヌクレオチドが、配列番号1の15400位~22850位の領域内又は配列番号1の3100位~19500位の領域内でハイブリダイズする、オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドが、0個のミスマッチで標的RNAとだけハイブリダイズする、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドが、オフターゲットヌクレオチド配列に対して少なくとも2個のミスマッチを有し、2個のミスマッチを有する最大20個のオフターゲット結合を有する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドが、1つ又は複数の修飾ヌクレオチドを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記オリゴヌクレオチドが、LNA、c-ET、ENA、ポリアルキレン酸化物-、2'-フルオロ-、2'-O-メトキシ-、FANA及び/又は2'-O-メチル-修飾ヌクレオチドを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記修飾ヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの5'-若しくは3'-末端、又は5'-及び3'末端に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号7、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及びその組合せからなる群から選択される配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号50、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76及びその組合せからなる群から選択される配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号7、配列番号50、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76及びその組合せからなる群から選択される配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドが、
+G*+T*+T*T*A*G*T*T*T*G*G*C*G*A*C*+A*+A (A03063H)、+G*+T*+T*A*G*G*T*T*C*A*G*C*G*A*+T*+T*+A (A3108HI)、+T*+T*+A*C*C*A*C*T*C*A*G*G*A*C*+T*+T*+G (A03058H)、+A*+T*+G*C*T*G*G*A*T*T*A*C*G*T*+C*+T*+C (A03059H)、+A*+A*+T*G*C*T*G*G*A*T*T*A*C*G*+T*+C*+T (A03060H)、+A*+T*G*+A*T*T*T*G*C*T*T*G*G*+A*G*G*+C (A03061H)、+G*+G*+C*G*A*C*A*A*A*A*T*T*G*T*+A*+A*+C (A03062H)、+C*+A*+C*A*A*C*G*A*A*T*G*A*G*G*+C*+T*+T (A03064H)、+T*+A*+G*A*C*T*A*T*G*T*G*C*C*T*+T*+G*+C (A03065H)、+T*+G*+A*G*T*A*G*A*C*T*A*T*G*T*+G*+C*+C (A03066H)、+T*+G*+G*A*T*T*A*C*G*T*C*T*C*+C*+T*+C (A03067H)、+T*+G*+C*T*G*G*A*T*T*A*C*G*T*+C*+T*+C (A03068H)、+C*+G*+A*G*C*T*A*G*C*C*A*G*A*G*+A*+T*+A (A03069HI)、+C*+T*+A*G*A*C*C*A*T*C*G*C*+G*+T*+T (A03070HI)、+A*+A*+T*C*G*C*G*C*C*T*G*G*A*G*+G*+A*+A (A03071HI)、+A*+C*+T*G*A*A*T*C*G*C*G*C*C*+T*+G*+G (A03072HI)、+T*+A*+C*C*T*A*T*C*C*T*A*T*A*C*+T*+A*+C (A03073HI)、+T*+G*+G*A*C*C*T*G*C*T*T*A*G*C*+G*+C*+A (A03074HI)、+A*+C*C*G*G*T*T*A*A*A*C*T*T*C*C*+T*+T (A03075HI)、+T*+A*+T*G*G*C*C*T*A*C*T*C*T*G*+G*+T*+G (A03076HI)、+G*+G*+A*A*T*A*G*C*G*A*T*G*G*C*+A*+T*+T (A03077HI)、+T*+C*+C*G*T*C*T*A*T*C*C*T*G*T*+A*+G*+A (A03078HI)、+T*+C*C*G*T*C*T*A*T*C*C*T*G*T*A*+G*+A (A03079HI)、+T*+C*+C*A*A*A*C*T*G*A*C*G*T*A*+G*+A*+A (A03080HI)、+C*+A*+C*C*T*T*A*C*C*A*A*A*C*C*+G*+T*+A (A03081HI)、+A*+T*+C*G*T*A*A*A*T*G*C*G*G*A*+T*+G*+T (A03082HI)、+T*+C*+C*T*A*T*T*A*C*A*A*T*C*G*+T*+A*+A (A03083HI)、+G*+A*+G*C*T*T*G*A*C*C*A*C*A*A*+T*+T*+G (A03084HI)、+A*+T*+C*G*A*T*G*C*C*A*C*G*T*A*+T*+A*+T (A03085HI)、+A*+C*+T*A*A*T*C*G*A*T*G*C*C*+A*+C*+G (A03086HI)、+T*+C*+A*A*C*T*A*A*T*C*G*A*T*G*+C*+C*+A (A03087HI)、+T*+A*+G*T*T*A*C*A*G*G*C*C*G*T*+G*+A*+A (A03088HI)、+T*+A*+T*A*G*T*T*A*C*A*G*G*C*C*+G*+T*+G (A03089HI)、+T*+C*+A*T*T*G*C*G*T*A*A*A*G*T*+A*+G*+A (A03090HI)、+T*+A*+T*C*T*G*G*T*C*G*G*T*T*A*+T*+G*+T (A03091HI)、+A*+T*+C*A*C*T*T*T*A*T*C*T*G*G*+T*+C*+G (A03092HI)、+C*+A*+C*A*G*C*G*T*T*T*A*T*A*A*+A*+T*+C (A03093HI)、+A*+T*+T*G*G*C*A*C*A*G*C*G*T*T*+T*+A*+T (A03094HI)、+A*+C*+T*G*A*C*G*G*A*C*C*T*A*A*+T*+A*+A (A03095HI)、+C*+C*+G*A*G*G*A*A*C*T*A*A*C*A*+C*+T*+C (A03096HI)、+T*+A*+C*C*G*A*G*G*A*A*C*T*A*A*+C*+A*+C (A03097HI)、+G*+G*+T*C*A*A*T*A*C*C*G*A*G*G*+A*+A*+C (A03098HI)、+A*+C*+G*C*C*A*T*T*G*C*A*G*G*A*+A*+A*+T (A03099HI)、+G*+A*+T*T*G*A*T*G*G*T*A*G*T*T*+A*+G*+C (A3100HI)、+G*+C*+C*T*G*A*T*A*T*T*T*G*C*G*G*+A*+T (A3101HI)、+A*+T*+C*A*G*T*G*C*C*G*G*A*A*G*+A*+T*+T (A3102HI)、+A*+T*C*A*G*T*G*C*C*G*G*A*A*G*+A*+T*+T (A3103HI)、+A*+C*+C*A*T*C*A*G*T*G*C*C*G*G*+A*+A*+G (A3104HI)、+G*+G*+T*T*G*C*C*T*T*G*T*T*C*T*+A*+A*+G (A3105HI)、+T*+T*+G*C*A*T*A*T*G*G*A*G*G*T*+G*+A*+C (A3106HI)、+A*+A*+G*C*T*A*T*G*T*T*A*C*C*A*+C*+A*+C (A3107HI)、+T*+G*+T*T*A*G*G*T*T*C*A*G*C*G*+A*+T*+T (A3109HI)、+A*+C*+A*G*C*A*G*T*C*G*A*T*T*T*+G*+G*+T (A3110HI)、+G*+A*+A*T*G*A*C*A*G*C*A*G*T*C*+G*+A*+T (A3111HI)、+A*+C*+T*C*G*A*T*A*G*T*A*G*C*A*+G*+T*+A (A3112HI)、+A*+G*+T*A*C*T*C*G*A*T*A*G*T*+A*+G*+C (A3113HI)、+T*+A*+G*T*A*G*T*A*C*T*C*G*A*T*+A*+G*+T (A3114HI)、+T*+T*+G*T*A*G*T*A*G*T*A*C*T*C*+G*+A*+T (A3115HI)、+A*+G*+T*G*C*T*A*A*T*T*G*T*A*G*+T*+A*+G (A3116HI)、+A*+T*+A*C*G*T*A*C*A*C*C*A*G*A*+G*+G*+T (A3117HI)、+A*+G*+A*C*C*T*C*G*C*A*G*T*G*T*+T*+A*+T (A3118HI)、+A*+T*+T*A*G*A*C*C*T*C*G*C*A*G*+T*+G*+T (A3119HI)、+T*+A*+C*T*T*A*A*T*T*A*G*A*C*C*+T*+C*+G (A3120HI)、+T*+A*+T*C*G*G*C*C*A*C*T*G*T*A*T*+G*+A (A3121HI)、+G*+A*+T*T*A*A*G*A*T*A*C*G*T*+A*+G*+T (A3122HI)、+C*+A*+T*A*A*C*T*A*A*G*G*A*C*+G*+T*+T (A3123HI)、+A*+T*+C*G*T*C*A*T*A*A*C*T*A*A*+G*+G*+A (A3124HI)、+T*+A*+T*G*T*T*C*C*T*G*G*T*G*A*+T*+A*+C (A3125HI)、+C*+A*+T*G*G*T*G*T*T*G*G*A*T*T*+G*+C*+C (A3126HI)、+C*+T*+G*T*T*G*C*T*A*A*T*C*T*G*+A*+C*+C (A3127HI)、+A*+C*+A*C*C*G*T*C*C*T*G*G*A*T*+T*+A*+T (A3128HI)、+T*+C*+T*G*T*T*C*A*C*A*A*C*A*C*+C*+G*+T (A3129HI)、+A*+A*+T*A*C*C*T*G*A*G*G*A*C*T*+C*+G*+T (A3130HI)、+C*+T*+A*G*T*A*G*C*C*T*A*C*A*G*+T*+A*+C (A3131HI)、+G*+C*+T*T*G*C*A*C*A*G*T*A*C*C*+A*+C*+A (A3132HI)、+C*+T*+G*G*A*A*T*G*G*C*G*A*G*A*+T*+A*+C (A3133HI)、+T*+C*+A*G*A*C*G*G*T*G*G*A*G*G*+A*+G*+T (A3134HI)、+T*+C*+A*G*A*C*G*G*T*G*G*A*G*G*A*+G*+T (A3135HI)、
及びその組合せからなる群から選択され、
+がLNA修飾ヌクレオチドを示し、*がホスホロチオエートを示す、請求項1から9のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項12】
悪性腫瘍及び良性腫瘍のリストから選択される疾患又は障害を予防及び/又は処置する方法に使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド又は請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記腫瘍が、固形腫瘍、血液性腫瘍、白血病、腫瘍転移、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、化膿性肉芽腫、乾癬、星状細胞腫、芽細胞腫、ユーイング腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、血管芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、中皮腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、松果体腫、網膜芽細胞腫、肉腫、精上皮腫、及びウィルムス腫瘍、胆管癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳がん、気管支癌、腎臓の癌腫、子宮頸がん、絨毛膜癌腫、脈絡膜癌腫、嚢胞腺癌、胎児性癌、上皮癌、食道がん、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮体がん、胆嚢がん、胃がん、頭部がん、肝臓癌、肺癌、髄様癌、頸部がん、非小細胞性気管支/肺癌、卵巣がん、膵臓癌、乳頭癌、乳頭腺癌、前立腺がん、小腸癌腫、前立腺癌、直腸がん、腎細胞癌、皮膚がん、小細胞型気管支/肺癌腫、扁平上皮細胞癌、脂腺癌、睾丸癌腫及び子宮がんからなる群から選択される、請求項12に記載の使用のためのオリゴヌクレオチド又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PD-L1をコードする配列番号1とハイブリダイズする10~20ヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドに関し、オリゴヌクレオチドは、配列番号1の特定の領域とハイブリダイズし、オリゴヌクレオチドの潜在的オフターゲット結合部位の数は根本的に減少しており、その結果オフターゲット効果に対する危険性が著しく減少している。更に、本発明は、そのようなオリゴヌクレオチド及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
この数十年間のがん研究の間、免疫系が、有効な抗腫瘍応答を始動し、解放するのに不可欠であることが明らかになった。したがって、それは、一般的ながん療法に統合される必要がある。しかしながら、がん細胞は、例えば、HLA分子を下方調節して正常に機能しない抗原提示をもたらすことによって、IL-10若しくはアデノシンのような阻害性可溶性メディエータを分泌することによって、又はT細胞阻害性リガンドを発現することによって抗腫瘍免疫応答を回避する機序を発達させた。
【0003】
抗原提示細胞及びがん細胞の表面に発現される最も顕著な阻害性リガンドは、プログラム細胞死リガンド1及び2(PD-L1/PD-L2)である。分化抗原群274(CD274)又はB7ホモログ1(B7-H1)としても公知のプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、ヒトにおいてCD274遺伝子にコードされるタンパク質である。PD-L2(B7-DC又はCD273)は、プロフェッショナル抗原提示細胞(B細胞及び樹状細胞等)上で主に発現されるが、PD-L1は、実質細胞、ウイルス感染細胞及び腫瘍細胞等の非リンパ系細胞、並びに他の免疫細胞で発現される。2つのリガンドは、活性化型T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞及び末梢における骨髄性細胞等いくつかの免疫細胞で発現される受容体プログラム細胞死1(PD-1)と相互作用する。
【0004】
ヒトにおいて、PD-1をコードする遺伝子(PDCD1)の遺伝子変質は、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、グレーヴス病及び強直性脊椎炎のようないくつかの自己免疫性疾患に対する罹病性の増大と関連する。しかしながら、他の負の免疫調節因子とは別に、PD-1欠損は、抗原特異的自己免疫反応に特異的に及びそれだけに影響を及ぼすが、他の負の調節因子の欠損は、全身的、非抗原特異的自己免疫性表現型をもたらす。
【0005】
現在まで、モノクローナル抗体による又はPD-1発現の遺伝子操作によるPD-1/PD-L1相互作用の遮断は、腫瘍根絶の増強をもたらした。更に、臨床データは、腫瘍におけるPD-L1発現の増強が、異なるがん患者のより低い生存予後と相関することを示唆する。これら結果は、PD-1又はPD-L1のいずれかを標的とするいくつかの異なる完全ヒト化モノクローナル抗体の開発をもたらした。それら抗体の適用は、例えば、非小細胞肺がん、黒色腫、腎細胞癌及びホジキンリンパ腫の臨床試験においてヒトで正の奏功率を示したが、患者の一部には薬物関連有害事象を示した。にもかかわらず、PD-1経路の治療的遮断は、現在のところクリニックにおける免疫学的抗腫瘍療法の最も強力な標的である。
【0006】
しかしながら、相当数のがん患者(>70%)が、モノクローナル抗体療法を使用するPD-1又はPD-L1の治療的遮断にあまり応答しない。これらデータは、薬剤を使用して、相加的及び/若しくは相乗的効果を有する可能性がある追加の負の調節因子を遮断し、又は正の調節因子を活性化し、それにより抗腫瘍免疫療法を改善する組合せ療法を利用する重要性を示唆する。mRNAレベルでPD-L1発現を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドと他の公知の負の(例えば、LAG-3; TIM-3; 2B4; CD160)又は正の(例えば、CD137; CD40)免疫調節経路を標的とする療法との併用の適用は、PD-1/PD-L1経路を単独で標的とするより優れた治療有効性を提供する可能性がある。いくつかの研究は、がん患者の血清中にPD-L1の免疫阻害性可溶形態(sPD-L1)の存在を示し、重症度及び負の患者生存予後と相関する。したがって、PD-L1の可溶形態は、PD-L1に対して作られた従来通りのモノクローナル抗体によって全身的レベルでは完全には捕捉され得ない可能性が非常に高い。
【0007】
更に、抗体は、分子サイズが巨大であり、したがって、多くの異なる腫瘍の場合のように高密度で詰まった組織に発現される標的には到達しない可能性がある。したがって、PD-L1を標的とすることは、異なるがんに対する新規の免疫療法を開発し、改善するための有望な手法になると思われるが、それを達成する満足な解決策は、いまだ見つかっていない。したがって、PD-L1発現及び/若しくは活性を減少させる又は阻害する治療的薬剤に対する科学的並びに医学的必要性は今なお高い。したがって、標的の発現の阻害は、異なるがんに対する新規の免疫療法を開発し、改善するのに従来の抗体療法より有望な手法である可能性がある。現在のところ、競合する2つの技術:アンチセンスオリゴヌクレオチド及びsiRNAが、mRNA発現の特異的抑制のために主に使用されている。
【0008】
二本鎖の性質のため、siRNAは、単独で細胞膜を横断せず、そのin vitro及びin vivo活性には送達系が必要とされる。in vivoで肝臓細胞にsiRNAを効率的に送達するsiRNAの送達系は存在するが、腫瘍のような肝外組織に充分な有効性でin vivoでsiRNAを送達できる系は現在のところ存在しない。したがって、PD-L1を標的とするsiRNA手法は、現在のところex vivo手法、例えば樹状細胞に基づく腫瘍ワクチンの生成用に限定されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、細胞培養における有効性は、トランスフェクション試薬又はエレクトロポレーションを使用するトランスフェクション後に一般に決定される。PD-L1に対して作られたアンチセンス手法については、例えば、WO2006/042237若しくはWO2016/057933、又はMazanetら、J. Immunol. 169 (2002年) 3581~3588頁に記載されている。更に、2',4'-LNA(例えばWO2014/154843A1を参照のこと)又は拘束性エチル架橋核酸(constrained ethyl bridged nucleic acids)(c-ET)等いわゆる第3世代の化学物質によって修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが、in vitro及びin vivoで送達系なしに細胞に侵入して、標的の下方調節を達成できることが最近発見された。加えて、二本鎖RNA分子(WO2011/127180を参照のこと)及び5'末端を介して連結された2つのアンチセンス構築物を含むいわゆる「第3世代アンチセンス化合物」(WO2016/138278を参照のこと)が、PD-L1阻害剤として試験されてきた。
【0009】
しかしながら、先行技術に記載されている一部の手法では、中程度の標的抑制レベルしか達成されておらず、効果的な標的抑制には比較的高濃度のオリゴヌクレオチドが必要とされた。例えば、米国特許第8,563,528号において濃度10μMが、ちょうど70%の標的阻害をもたらした。トランスフェクション試薬を含まない第3世代オリゴヌクレオチドのIC50値は、一般に300~600nMの範囲である[Zhangら、Gene Therapy (2011年) 18、326~333頁]。in vivoでの全身的投与後は、関連する標的組織において比較的低いオリゴヌクレオチド濃度しか達成され得ない。したがって、低濃度で高い最大標的抑制に達するアンチセンスオリゴヌクレオチドが、治療的効果の増強を明らかにもたらすことになる。WO2018/065589A1及びWO2017/157899A1は、異なるがんに対する新規の免疫療法を開発し、改善するための手法としてPD-L1発現の阻害を示す第3世代のアンチセンスオリゴヌクレオチドについて記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2006/042237
【特許文献2】WO2016/057933
【特許文献3】WO2014/154843A1
【特許文献4】WO2011/127180
【特許文献5】WO2016/138278
【特許文献6】米国特許第8,563,528号
【特許文献7】WO2018/065589A1
【特許文献8】WO2017/157899A1
【特許文献9】米国特許第4,704,295号
【特許文献10】米国特許第4,556,552号
【特許文献11】米国特許第4,309,406号
【特許文献12】米国特許第4,309,404号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Mazanetら、J. Immunol. 169 (2002年) 3581~3588頁
【非特許文献2】Zhangら、Gene Therapy (2011年) 18、326~333頁
【非特許文献3】Chackalamannil, Rotella, Ward, Comprehensive Medicinal Chemistry III Elsevier, 03.06.2017
【非特許文献4】OncoImmunology 1:3; 2012
【非特許文献5】Gastroenterology; 2010; 139(3): 1030~1040頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、腫瘍疾患の効果的な予防及び/又は処置に使用するには、改善されたオリゴヌクレオチド、特に標的領域への結合において特異性を増大させ、したがって副作用を有意に減少させ、とりわけ、毒性の減少をもたらすアンチセンスオリゴヌクレオチドの必要性が今なお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、PD-L1をコードする配列番号1(GRCh38_9_5447492_5473576)とハイブリダイズする10~20ヌクレオチドを含む又はそれからなるオリゴヌクレオチドに関し、オリゴヌクレオチドは、配列番号1の15400位~22850位の領域内又は配列番号1の3100位~19500位の領域内でハイブリダイズする。更なる選択がない場合、オリゴヌクレオチドは、意図した標的配列だけでなく、特定の配列相補性を示す他の配列にも更に結合し、オフターゲット効果の危険性を増大させる潜在性が存在する。本発明のオリゴヌクレオチドは、この危険性を強力に減少させるように選択される。
【0014】
任意選択で、本発明のオリゴヌクレオチドは、0個のミスマッチで標的RNAにだけ結合する。オリゴヌクレオチドが、0又は1個のミスマッチで結合できる場合、オフターゲットRNAは存在せず、オリゴヌクレオチドが、2個のミスマッチで結合できる場合、最大20個のオフターゲットが存在する。
【0015】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば1つ又は複数の修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、例えばLNA、c-ET、ENA、ポリアルキレン酸化物-、2'-フルオロ-、2'-O-メトキシ-、FANA及び/又は2'-O-メチル-修飾ヌクレオチドを含む。修飾ヌクレオチドは、例えばオリゴヌクレオチドの5'-若しくは3'-末端、又は5'-及び3'末端に位置する。
【0016】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12及びその組合せからなる群から選択される配列を含み、又は本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76及びその組合せからなる群から選択される配列を含む。
【0017】
別法として、本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76及びその組合せからなる群から選択される配列を含む。
【0018】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えばTable 1(表1)、Table 2(表2)のオリゴヌクレオチド及びその組合せからなる群から選択される。本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド及び薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物に更に関する。本発明のオリゴヌクレオチド、本発明の医薬組成物又はその組合せは、例えば悪性腫瘍及び良性腫瘍のリストから選択される疾患又は障害を予防及び/又は処置する方法に使用される。腫瘍は、例えば、固形腫瘍、血液性腫瘍、白血病、腫瘍転移、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、化膿性肉芽腫、乾癬、星状細胞腫、芽細胞腫、ユーイング腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、血管芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、中皮腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、松果体腫、網膜芽細胞腫、肉腫、精上皮腫、及びウィルムス腫瘍、胆管癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳がん、気管支癌、腎臓の癌腫、子宮頸がん、絨毛膜癌腫、脈絡膜癌腫、嚢胞腺癌、胎児性癌、上皮癌、食道がん、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮体がん、胆嚢がん、胃がん、頭部がん、肝臓癌、肺癌、髄様癌、頸部がん、非小細胞性気管支/肺癌、卵巣がん、膵臓癌、乳頭癌、乳頭腺癌、前立腺がん、小腸癌腫、前立腺癌、直腸がん、腎細胞癌、皮膚がん、小細胞型気管支/肺癌腫、扁平上皮細胞癌、脂腺癌、睾丸癌腫及び子宮がんからなる群から選択される。
【0019】
本明細書において引用又は参照した全ての文書(「本明細書において引用した文書」)、及び本明細書において引用した文書中で引用又は参照した全ての文書は、本明細書又は参照により本明細書に組み込まれた任意の文書に記載の任意の産物に関する任意の製造業者の指示、説明、製品仕様及び製品印刷物と合わせてここで参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施に利用され得る。より具体的には、参照される全ての文書は、個々の文書が、参照により組み込まれるために具体的且つ個別に示されているかのように同程度で参照により組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】PD-L1発現の阻害を試験するHDLM-2細胞における本発明のオリゴヌクレオチドの効率のスクリーニングを示す図である。PD-L1発現値は、HPRT1発現値に対して標準化され、模擬処理細胞に対して設定された。
図1Aは、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与後のHDLM-2細胞におけるPD-L1発現の阻害を示す。
【
図1B】PD-L1発現の阻害を試験するMDA-MB-231細胞における本発明のオリゴヌクレオチドの効率のスクリーニングを示す図である。PD-L1発現値は、HPRT1発現値に対して標準化され、模擬処理細胞に対して設定された。
図1Bは、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与後のMDA-MB-231細胞におけるPD-L1発現の阻害を示す。
【
図2】HDML-2細胞において本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドA03062H(配列番号6)、A03063H(配列番号7)、A03077HI、A03084HI(配列番号27)、A03107HI(配列番号49)及びA03108HI(配列番号50)をそれぞれ投与した後のPD-L1 mRNA発現の用量依存的阻害を示す図である。各オリゴヌクレオチドは、濃度10μM、2.5μM、625nM、157nM、39nM、10nM、2.5nMで投与された。
【
図3】PD-L1 mRNAとハイブリダイズする先行技術のアンチセンスオリゴヌクレオチドと比較して、本発明のA03063H(配列番号7)及びA03108HI(配列番号50)の肝臓毒性試験を示す図である。毒性を、5、9及び12日後に試験し、本発明のオリゴヌクレオチドの毒性は非常に低い。
【
図4】0個のミスマッチ(0mm、オリゴヌクレオチドが、オフターゲットヌクレオチド配列に対して100%の配列相同性を有することを意味する)、1個のミスマッチ(1mm、オリゴヌクレオチドが、オフターゲットヌクレオチド配列に対して((n-1)/n×100)%の配列相同性を有することを意味する)又は2個のミスマッチ(2mm、オリゴヌクレオチドが、オフターゲットヌクレオチド配列に対して((n-2)/n×100)%の配列相同性を有することを意味する)でオフターゲットに結合する長さnヌクレオチドのオリゴヌクレオチド数を示すミスマッチ試験の概要の提示を示す図である。
【
図5】
図5A及び
図5B。HDLM-2細胞(
図5A)並びにMiaPaCa細胞(
図5B)におけるASO A03063H(配列番号7)及びA03108HI(配列番号50)の用量依存的PD-L1タンパク質ノックダウンを示す図である。
【
図6】ASO A03063H(配列番号7)及びA03108HI(配列番号50)をそれぞれ使用した樹状細胞におけるPD-L1タンパク質ノックダウンを示す図である。
【
図7】
図7A及び
図7B。ASO A03063H(配列番号7)及びA03108HI(配列番号50)をそれぞれ使用したHDLM-2細胞におけるPD-L1タンパク質ノックダウンの持続性を示す図である。
図7Aは、HDLM-2細胞の急速な増殖を証明し、
図7Bは、PD-L1発現に対するASO A03063H(配列番号7)又はA03108HI(配列番号50)の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、PD-L1発現の成功した阻害剤を提供し、阻害剤は、配列番号1のPD-L1のmRNA前駆体配列(GRCh38_9_5447492_5473576)とハイブリダイズし、PD-L1の発現及び活性をそれぞれ阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドのようなヒトオリゴヌクレオチドである。配列番号1のmRNA前駆体は、PD-L1のエクソン及びイントロンを含む。本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号1のエクソン領域又はイントロン領域のいずれかとハイブリダイズし、非常に標的特異的にハイブリダイズする。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドのオフターゲット効果は非常に低く、その結果、副作用は有意に減少し、毒性は有意に減少しているので、オリゴヌクレオチドは、PD-L1発現及び活性がそれぞれ増大している障害を予防し、並びに/又は処置する方法に使用するための興味深く、高効率なツールを表す。
【0022】
本発明のオリゴヌクレオチドは、配列番号1の15400位~22850位の領域内又は配列番号1の3100位~19500位の領域内でハイブリダイズし、領域の開始及び終了点、すなわち3100位、15400位、19500位及び22850位は、領域に含まれる。
【0023】
本発明のオリゴヌクレオチドは、阻害剤機能を有し、すなわち、PD-L1の転写及び発現をそれぞれ阻害する。本発明による阻害は、例えば、PD-L1とハイブリダイズするアンチセンスヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドの投与がない細胞と比較してPD-L1の転写及び発現それぞれの任意レベルの減少を含む。
【0024】
本発明の長さnヌクレオチドのオリゴヌクレオチドは、配列相補性100%(すなわち、オリゴヌクレオチドは、いかなるオフターゲットヌクレオチド配列に対しても0個のミスマッチを有する)でいかなるオフターゲットヌクレオチド配列にも結合せず、また配列相補性((n-1)/n×100)%(すなわち、オリゴヌクレオチドは、いかなるオフターゲット配列にも1個のミスマッチを有する)でいかなるオフターゲットヌクレオチド配列にも結合しない。本発明のオリゴヌクレオチドは、配列相補性((n-2)/n×100)%(すなわち、オリゴヌクレオチドは、それぞれのオフターゲットヌクレオチド配列に対して2個のミスマッチを有する)で非常に限られた数のオフターゲットヌクレオチド配列にだけ結合する。したがってこれら条件を満たす本発明のオリゴヌクレオチドは、オフターゲット効果を誘導する危険性が、配列番号1のPD-L1 mRNA前駆体とハイブリダイズするが、これらの条件を満たしていないオリゴヌクレオチドと比較して有意に減少する。本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば配列番号1の15400位~22850位の領域又は配列番号1の3100位~19500位の領域とハイブリダイズする。これら領域のうちの1つとハイブリダイズするが、本発明によるミスマッチに関する上述の厳しい条件を満たさないオリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチドとしてオフターゲット効果を誘導する危険性の有意な減少を表さない。配列相補性((n-2)/n×100)%でオフターゲットヌクレオチド配列に結合する本発明のオリゴヌクレオチドのオフターゲット部位の数は、それぞれ、最大5、最大10、最大15、最大20、最大25、最大30、最大35又は最大40個のオフターゲット結合及び効果に限定される。
【0025】
オフターゲット効果は、意図した位置及び/又は生物学的標的と異なり、それではないオリゴヌクレオチドの生物学的活性である。オフターゲット効果は、例えば、核酸配列における異なる位置又は異なる標的核酸配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のようなオリゴヌクレオチドの結合を含む。オフターゲット効果は、意図されたもの若しくは意図されていないものであり、例えば生理的並びに/若しくは生化学的効果を有し、又は無変化であり、すなわち、細胞、組織、器官及び/若しくは生物に対して測定可能ないかなる効果もない若しくは少なくとも測定可能でない。例えば、オフターゲット効果は、毒性のような副作用の一因となる。
【0026】
アンチセンスオリゴヌクレオチドには、siRNAと比較して有意な利点がある。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、in vitroでトランスフェクト試薬なしにトランスフェクトされ得、したがって、トランスフェクションは、siRNAのトランスフェクションに必須のトランスフェクト試薬を使用するトランスフェクションよりin vivo条件に近い。in vivoでのsiRNA投与が、例えば肝臓におけるGalNAcのような送達系に左右されるのに対して、アンチセンスオリゴヌクレオチドのin vivoでの全身投与は、異なる組織において可能である。更に、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、siRNAより短く、したがって、合成及び細胞への取り込みにおいてより複雑でない。siRNAは、siRNAを同様に始動し得るパッセンジャー鎖のオフターゲット効果を定期的に示す。パッセンジャー鎖は、意図しない標的に対してRNAi活性を指令し、有毒な副作用をもたらす可能性があるので、パッセンジャー鎖のRISC積載は、RNAi薬物に関する重大な懸念である(Chackalamannil, Rotella, Ward, Comprehensive Medicinal Chemistry III Elsevier, 03.06.2017を参照のこと)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、パッセンジャー鎖を含まない。
【0027】
以下において、本発明の要素が、更に詳細に記載されることになる。これら要素は、特定の実施形態と共に挙げられるが、それら要素を任意の様式及び任意の数で組み合わせて、更なる実施形態を作成できることを理解すべきである。さまざまに記載された例及び実施形態は、明確に記載された実施形態だけに本発明を限定するものと解釈されるべきでない。この説明は、明確に記載された実施形態を任意の数の開示された要素と組み合わせる実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。更に、文脈上別段の指示がない限り、この出願に記載される全ての要素の任意の順列及び組合せが、本出願の説明によって開示されているとみなされるべきである。
【0028】
この明細書及び請求項の全体を通じて、文脈上別段の解釈を要する場合を除き、単語「含む(comprise)」、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形は、記載されているメンバー、整数若しくは工程又はメンバー、整数若しくは工程の群の内包を意味するが、他の任意のメンバー、整数若しくは工程又はメンバー、整数若しくは工程の群の除外を意味しないと理解されることになる。本明細書に示される又は脈絡によって明らかに否定されない限り、本発明について記載する文脈(特に請求項の文脈)において使用される用語「a」及び「an」及び「the」並びに類似の参照は、単数と複数の両方を網羅するものと解釈されることになる。本明細書における値の範囲の説明は、範囲内にある各別々の値について個々に言及する略記法として用いられることを単に意図する。本明細書に示されない限り、各個々の値は、本明細書に個々に列挙されるかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に示される又は脈絡によって明らかに否定されない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書に提供されるあらゆる例、又は典型的な文言(例えば、「のような」、「例えば」)の使用は、本発明をよりよく例示することを単に意図するものであり、それ以外で請求されている本発明の範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる文言も、本発明の実行に必須の請求されていない任意の要素を示すものと解釈されるべきでない。
【0029】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、10~25ヌクレオチド、12~22ヌクレオチド、15~20ヌクレオチド、16~18ヌクレオチド又は15~17ヌクレオチドからなる又はそれを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。例えば、オリゴヌクレオチドは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は25ヌクレオチドからなる又はそれを含む。本発明のオリゴヌクレオチドは、修飾されるヌクレオチドを少なくとも1つ含む。例えば、修飾ヌクレオチドは、ロック核酸(LNA、例えば、2',4'-LNA)、cET、ENA、ポリアルキレンオキシド-、2'-フルオロ-、2'-O-メトキシ-、FANA及び/若しくは2'-O-メチル-修飾ヌクレオチドのような架橋されたヌクレオチド又はその組合せである。一部の実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、同じ又は異なる修飾を有するヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、修飾されたリン酸塩骨格を含み、例えば、ホスファートは、ホスホロチオエートである。
【0030】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、オリゴヌクレオチドの3'-及び/若しくは5'-末端並びに/又はオリゴヌクレオチド内の任意の位置で1つ若しくは複数の修飾ヌクレオチドを含み、修飾ヌクレオチドは、1、2、3、4、5若しくは6個の修飾ヌクレオチドの列で続く、又は修飾ヌクレオチドは、1つ若しくは複数の無修飾ヌクレオチドと組み合わせられる。以下のTable 1(表1)及びTable 2(表2)は、修飾ヌクレオチド、例えば(+)によって示されるLNA及び(*)によって示されるホスホロチオエート(PTO)を含み、第1のヌクレオチドにより(§)によって示されるGRCh38_9:5447492-5473576内の所与の位置に結合するオリゴヌクレオチドの実施形態を示す。Table 1(表1)及びTable 2(表2)の配列からなる又はそれを含むオリゴヌクレオチドは、それぞれ、他の任意の修飾ヌクレオチド並びに修飾及び無修飾ヌクレオチドの他の任意の組合せを含んでもよい。Table 1(表1)のオリゴヌクレオチドは、ヒトPD-L1のmRNA前駆体のエクソン領域とハイブリダイズする:
【0031】
【0032】
Table 2(表2)のオリゴヌクレオチドは、ヒトPD-L1のmRNA前駆体のイントロン領域とハイブリダイズする:
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
Table 1(表1)及びTable 2(表2)は、本発明のオリゴヌクレオチドのアンチセンス配列5'-3'を示し、その配列は、LNA修飾のようなヌクレオチドの異なる修飾を含む。これら表において、LNA修飾ヌクレオチドは、「+」によって示され、ホスホロチオエートは、「*」によって示される。
【0038】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、ヒト、ラット又はマウスPD-L1発現等のPD-L1の発現を、例えば、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%阻害する。
【0039】
本発明のオリゴヌクレオチドは、ナノモル又はミクロモルの濃度、例えば濃度0.1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900若しくは950nM又は1、10若しくは100μMでPD-L1の発現を阻害する。
【0040】
本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、濃度1、3、5、9、10、15、27、30、40、50、75、82、100、250、300、500若しくは740nM、又は1、2.2、3、5、6.6若しくは10μMで使用される。
【0041】
本発明のPD-L1オリゴヌクレオチドは、例えば1回、又は繰り返し、例えば、数週間、数カ月間若しくは数年間の間、12時間毎、24時間毎、48時間毎に投与される、又はそれは、毎週、2週間毎、3週間毎又は毎月投与される。
【0042】
本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド並びに例えば薬学的に許容可能な担体、賦形剤及び/又は希釈剤を含む医薬組成物に更に関する。一部の実施形態において、医薬組成物は、化学療法薬、別のオリゴヌクレオチド、抗体、小分子又はその組合せを更に含む。
【0043】
本発明のオリゴヌクレオチド又は医薬組成物は、例えば、障害を予防及び/又は処置する方法に使用するためのものである。一部の実施形態において、障害を予防及び/又は処置する方法における本発明のオリゴヌクレオチド若しくは医薬組成物の使用は、放射線療法と組み合わせられる。放射線療法は、化学療法(例えば、プラチナ、ゲムシタビン)と更に組み合わされてもよい。障害は、例えばPD-L1の平衡異常によって特徴付けられ、すなわち、PD-L1レベルが、正常で健康な細胞、組織、器官又は対象におけるレベルと比較して増大している。PD-L1レベルは、例えば、PD-L1発現及び活性それぞれの増大によって増大する。PD-L1レベルは、当技術に熟達した者に公知の、免疫組織化学、ウエスタンブロット、定量的リアルタイムPCR又はQuantiGeneアッセイのような任意の標準的な方法によって測定され得る。
【0044】
本発明のオリゴヌクレオチド又は医薬組成物は、局所的又は全身的に、例えば経口、舌下、経鼻、皮下、静脈内、腹膜内、筋肉内、腫瘍内、くも膜下腔内、経皮及び/若しくは直腸投与される。更なる投与経路には、エレクトロポレーション、表皮内、表皮への押印、動脈内、関節内、頭蓋内、真皮内、病巣内、筋肉内、鼻腔内、眼内、くも膜下腔内、前房内、腹膜内、前立腺内、肺内、脊椎内、膀胱内、体腔内留置、鼻肺吸入(例えば、粉末若しくはエアロゾルの吸入又は通気による、ネブライザーによるものを含める)、皮下、局所(眼並びに経腟及び直腸送達を含めた粘膜を含む)又は経皮投与があるが、これに限定されない。別法として又は組み合わせて、ex vivo処理した免疫細胞が投与される。オリゴヌクレオチドは、単独で、或いは本発明の別のオリゴヌクレオチドと組み合わせて、任意選択で本発明とは異なる別のオリゴヌクレオチド、抗体若しくはFab断片のようなその断片、HERA融合タンパク質、リガンドトラップ、ナノボディ、BiTe、小分子及び/又は化学療法薬(例えば、プラチナ、ゲムシタビン)のような別の化合物と組み合わせて投与される。一部の実施形態において、他のオリゴヌクレオチド(すなわち、本発明の一部でない)、抗体及び/又は小分子は、自己免疫不全、例えば自己免疫性関節炎、若しくは炎症性腸疾患(IBD)若しくは大腸炎等の胃腸性自己免疫性疾患、免疫不全、例えばHIV感染等の慢性ウイルス感染症による免疫疲弊、心臓血管障害、炎症性障害、例えば慢性気道炎症、細菌、ウイルス及び/若しくは真菌感染症、例えば敗血症若しくはマイコバクテリウムボービス感染症、肝臓障害、慢性腎臓障害、精神障害(例えば、統合失調症、双極性障害、アルツハイマー病)及び/若しくはがんの予防並びに/又は処置に有効である。例えば、本発明のオリゴヌクレオチド又は医薬組成物は、固形腫瘍若しくは血液学的腫瘍を予防及び/又は処置する方法に使用される。本発明のオリゴヌクレオチド若しくは医薬組成物を使用することにより予防可能な及び/又は処置可能ながんの例は、固形腫瘍、血液性腫瘍、白血病、腫瘍転移、血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、化膿性肉芽腫、乾癬、星状細胞腫、芽細胞腫、ユーイング腫瘍、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、血管芽細胞腫、ホジキンリンパ腫、中皮腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、松果体腫、網膜芽細胞腫、肉腫、精上皮腫、及びウィルムス腫瘍、胆管癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳がん、気管支癌、腎臓の癌腫、子宮頸がん、絨毛膜癌腫、脈絡膜癌腫、嚢胞腺癌、胎児性癌、上皮癌、食道がん、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮体がん、胆嚢がん、胃がん、頭部がん、肝臓癌、肺癌、髄様癌、頸部がん、非小細胞性気管支/肺癌、卵巣がん、膵臓癌、乳頭癌、乳頭腺癌、前立腺がん、小腸癌腫、前立腺癌、直腸がん、腎細胞癌、皮膚がん、小細胞型気管支/肺癌腫、扁平上皮細胞癌、脂腺癌、睾丸癌腫及び子宮がんである。
【0045】
オリゴヌクレオチドが全身的に投与されたとしても本発明のオリゴヌクレオチドが、腫瘍内で検出可能であり、有効であることは、本発明の大きな優位性である。
【0046】
一部の実施形態において、本発明の2つ又はより多くのオリゴヌクレオチドは、同時に、例えば、1つの医薬組成物で若しくは別々に、又は間隔をずらして一緒に投与される。他の実施形態において、本発明の1つ又は複数のオリゴヌクレオチドは、別のオリゴヌクレオチド(すなわち、本発明の一部でない)、抗体、小分子及び/若しくは化学療法薬のような別の化合物と同時に、例えば、1つの医薬組成物で若しくは別々に、又は間隔をずらして一緒に投与される。これら組合せの一部の実施形態において、免疫抑制復帰オリゴヌクレオチドは、免疫抑制性因子の発現及び活性のそれぞれを阻害し、他のオリゴヌクレオチド(すなわち、本発明の一部でない)、抗体若しくはFab断片のようなその断片、HERA融合タンパク質、リガンドトラップ、ナノボディ、BiTe及び/又は小分子は、同じ及び/若しくは別の免疫抑制性因子を阻害(アンタゴニスト)又は刺激(アゴニスト)する。免疫抑制性因子及び/若しくは免疫刺激性因子並びに/又は免疫刺激性因子。例えば、免疫抑制性因子は、IDO1、IDO2、CTLA-4、PD-1、PD-L1、LAG-3、VISTA、A2AR、CD39、CD73、STAT3、TDO2、TIM-3、TIGIT、TGFβ、BTLA、MICA、NKG2A、KIR、CD160、Chop、Xbp1及びその組合せからなる群から選択される。例えば、免疫刺激性因子は、4-1BB、Ox40、KIR、GITR、CD27、2B4及びその組合せからなる群から選択される。オリゴヌクレオチド及び医薬組成物のそれぞれは、例えば、カプセル剤、錠剤及び丸剤等の形態で用量単位としてそれぞれ処方され、例えば、それは、微結晶セルロース、ゴム、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸、甘味料、香料及びその組合せからなる群から選択される化合物を含有する。カプセル剤の場合、用量単位は、例えば、脂肪油のような液状担体を含有する。任意選択で、糖又は腸溶剤のコーティングは、用量単位の一部である。
【0047】
非経口、皮下、真皮内又は局所投与の場合、オリゴヌクレオチド及び/又は医薬組成物は、例えば無菌の希釈剤、緩衝液、毒性調節因子及び抗菌剤を含む。好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチド又は医薬組成物は、制御放出特性を持つ植込錠若しくはマイクロカプセルを含めた分解又は体外への即時排出から保護する担体と共に調製される。静脈内投与の場合、担体は、例えば生理的食塩水又はリン酸緩衝食塩水である。経口投与用のそのようなオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチド及び/又は医薬組成物には、例えば、粉剤若しくは顆粒剤、マイクロ微粒子剤、ナノ粒子剤、懸濁剤若しくは水溶剤、又は非水性媒体剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、小袋剤、錠剤若しくは小型錠剤がある。非経口、くも膜下腔内、前房内若しくは心室内投与用として含むオリゴヌクレオチド及び/又は医薬組成物は、例えば、緩衝液、希釈剤及び/若しくは浸透促進剤のような他の適切な添加物を任意選択で含有する滅菌水溶液、担体化合物並びに/又は他の薬学的に許容可能な担体若しくは賦形剤を含む。
【0048】
薬学的に許容可能な担体は、例えば液体又は固体であり、核酸及び所与の医薬組成物の他の成分と組み合わせた場合に所望の体積、密度等を得るように、例えば、念頭に置いた投与の計画的様式で選択される。典型的な薬学的に許容可能な担体には、結合剤(例えば、予めゼラチン化されたトウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース等);充填材(例えば、ラクトース及び他の糖、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート又はリン酸水素カルシウム等);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、金属的ステアリン酸塩、硬化植物油、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等);崩壊剤(例えば、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム等);又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等)があるが、これに限定されない。徐放性経口送達系及び/又は経口投与投薬形態のための腸溶コーティングについては、米国特許第4,704,295号;第4,556,552号;第4,309,406号;及び第4,309,404号に記載されている。アジュバントは、これらのフレーズの下に含まれる。
【0049】
免疫抑制性因子は、例えば、その発現及び/又は活性が、細胞、組織、器官若しくは対象内で増大する因子である。免疫刺激性因子は、そのレベルが、細胞、組織、器官又は対象及びその個々の条件に応じて細胞、組織、器官又は対象において増減する因子である。
【0050】
本発明のオリゴヌクレオチド又は医薬組成物と組み合わせる抗体は、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体又は二重特異性抗体である。本発明のオリゴヌクレオチド又は医薬組成物と組み合わせる小分子は、例えばARL67156(OncoImmunology 1:3; 2012)又はPOM-1(Gastroenterology; 2010; 139(3): 1030~1040頁)である。本発明の対象は、例えば哺乳動物、鳥又は魚である。哺乳動物は、例えばウマ、イヌ、ブタ、ネコ又は霊長類(例えば、サル、チンパンジー又はキツネザル)を含む。齧歯動物は、例えばラット、ウサギ、マウス、リス又はモルモットを含む。
【実施例】
【0051】
以下の例は、本発明を更に例示するために用いられることになり、同時に、しかしながら、そのいかなる限定も構成しない。これに反して、本発明の範囲が、本明細書の説明を読んだ後に本発明の精神から逸脱することなく当業技術者に示唆し得る他の様々な実施形態、修飾及びその等価物のことを指すことは明らかに理解される。
【0052】
(実施例1)
ヒトがん細胞系におけるPD-L1アンチセンスオリゴヌクレオチドの単回用量の有効性スクリーン
ヒトPD-L1に特異性を持つアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計するために、配列GRCh38_9_5447492_5473576(配列番号1)を使用した。15、16及び17merを、標的遺伝子に対する特異性に焦点を強くおいて研究室内の基準にしたがって設計した。Neg1(例えば、WO2014154843A1に記載される)を対照オリゴヌクレオチドとして使用した。
【0053】
in silico設計したPD-L1アンチセンスオリゴヌクレオチドのノックダウン有効性を調査するために、有効性スクリーニングを、ヒトがん細胞系HDLM-2及びMDA-MB-231において実行した。したがって、細胞を、2μM(HDLM-2)又は10μM(MDA-MB-231)の濃度でそれぞれのアンチセンスオリゴヌクレオチド又は対照オリゴヌクレオチドを用いてトランスフェクション試薬を使用せずに3日間処理した。細胞を、処理3日後に溶解し、PD-L1及びHPRT1 mRNA発現をQuantiGene Singleplexアッセイ(ThermoFisher)を使用して分析した。PD-L1発現値を、HPRT1発現値に対して標準化し、模擬処理細胞に対して設定した。結果を、
図1及び表1に示す。HDLM-2細胞において試験したアンチセンスオリゴヌクレオチドのうち8つは、ノックダウン有効性>80%を有した(相対的PD-L1 mRNA発現<0.2によって表される)(
図1A)。MDA-MB-231細胞において試験したアンチセンスオリゴヌクレオチドのうち4つは、ノックダウン有効性>70%を有した(相対的PD-L1 mRNA発現<0.3によって表される)(
図1B)。
【0054】
これらオリゴヌクレオチドの阻害効果を、以下のTable 3(表3)及びTable 4(表4)に示す:
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
(実施例2)
用量-応答相関の調査及び選択したPD-L1アンチセンスオリゴヌクレオチドのIC
50値の決定
PD-L1アンチセンスオリゴヌクレオチドによるPD-L1 mRNA発現の用量依存的ノックダウンを、HDLM-2細胞において調査し、それぞれのIC
50値を算出した。したがって、HDLM-2細胞を、以下の濃度:それぞれのアンチセンスオリゴヌクレオチド10μM、2.5μM、625nM、157nM、39nM、10nM、2.5nMでトランスフェクション試薬を使用せずに3日間処理した。細胞を、処理3日後に溶解し、PD-L1及びHPRT1 mRNA発現をQuantiGene Singleplexアッセイ(ThermoFisher)を使用して分析した。PD-L1発現値を、HPRT1発現値に対して標準化し、模擬処理細胞に対して設定した。試験した全てのPD-L1アンチセンスオリゴヌクレオチドでPD-L1 mRNAの用量依存的ノックダウンが、以下のTable 5(表5)に示すナノモル範囲のIC
50値で観察された[
図2、Table 5(表5)]:
【0060】
【0061】
(実施例3)
選択したアンチセンスオリゴヌクレオチドの肝臓毒性のin vivo判定
アンチセンスオリゴヌクレオチドA03008H及びA03028(WO2018/065589A1に記載される)、並びに本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドA03063H(配列番号7)及びA03108HI(配列番号50)の肝臓毒性の能力を決定するために、マウスを、それぞれのアンチセンスオリゴヌクレオチドの反復注射(20mg/kg)で処理した。アラニントランスアミナーゼの血清レベルを、異なる時点で決定した。
図3に示すように、WO2018/065589A1の試験した2つのアンチセンスオリゴヌクレオチドの両方による処理は、ALTの増大をもたらし、処理したマウスのうち数匹は、屠殺しなければならなかった。それに対し、試験した2つのアンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれによる処理も、媒体対照と比較してALTの増大をもたらさなかった。
【0062】
(実施例4)
潜在的オフターゲット結合部位の調査
異なる2つのデータベースをin silicoでスクリーニングして、本発明のオリゴヌクレオチドによるオフターゲット効果を試験した。これらデータベースは、スプライスされたRNAの配列を含むRefSecRNA及びスプライスされていないRNAの配列を含むENSEMBLであった。Table 6(表6)及びTable 7(表7)に示されるオリゴヌクレオチドは、0個のミスマッチ、すなわち、オフターゲット配列に対して配列相補性100%(0mm)で、又は1個のミスマッチ、すなわち、オフターゲット配列に対して配列相補性((n-1)/n×100)%(1mm)でいかなる潜在的オフターゲット結合部位も持たない。2個のミスマッチ、すなわち、配列相補性((n-2)/n×100)%(2mm)を有する本発明のオリゴヌクレオチドの潜在的オフターゲット部位の数は、最大20個に限定される[Table 6(表6)及びTable 7(表7)、RefSeq(遺伝子Id)、2mmを参照のこと]。
図4は、ミスマッチ試験の原理を示す。
【0063】
Table 6(表6)及びTable 7(表7)は、本発明のオリゴヌクレオチドに対するミスマッチ試験の結果を図示する。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
(実施例5)
異なる2つの細胞系における用量依存的PD-L1タンパク質ノックダウン及びIC
50値
異なる2つのがん細胞系を、ASO A03063H(配列番号7)及びA03108HI(配列番号50)のPD-L1タンパク質ノックダウン有効性の調査に使用した。したがって、HDLM-2細胞(ヒトホジキンリンパ腫細胞)又はMiaPaCa-2細胞(ヒト膵臓癌細胞)を、トランスフェクション試薬を使用せずに[ジムノチックトランスフェクション(gymnotic transfection)]異なる濃度の示したASOで3日間処理した。MiaPaCa-2細胞においてPD-L1の発現を誘導するために、IFNγを、ASOによる処理開始の2日後に細胞へ添加した。ASO処理の開始3日後に、PD-L1タンパク質の発現を、PD-L1特異的抗体を使用してフローサイトメトリーで評価した。タンパク質発現の尺度であるPD-L1の蛍光強度中央値(MFI)を、それぞれの濃度でそれぞれのASOを用いて細胞を処理した後のHDLM-2(
図5A)及びMiaPaCa-2細胞(
図5B)について示す。Table 8(表8)(HDLM-2細胞)及びTable 9(表9)(MiaPaCa-2細胞)は、それぞれの濃度におけるIC
50値及びノックダウン有効性を示す。
【0068】
【0069】
【0070】
(実施例6)
樹状細胞におけるPD-L1タンパク質ノックダウン
ここでは、PD-L1 ASO A03063H(配列番号7)及びA03108HI(配列番号50)のノックダウン有効性を、ヒト樹状細胞(DC)において調査した。したがって、DCを、3日間プロトコールで生成した:ヒト単球を、末梢血単核細胞(PBMC)から精製し、インターロイキン-4(IL-4)及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を添加することによって未成熟のDCに分化させ、サイトカインカクテル及びtoll様受容体リガンドを添加することによって、DCに成熟させた。細胞を、DCの生成の間ASOで処理しない(模擬)、終濃度5μMで対照オリゴヌクレオチド(R01011、配列番号78)又はPD-L1特異的ASO A03063H(配列番号7)若しくはA03108HI(配列番号50)のいずれか1つで処理した。
図6に示すように、R01011は、模擬処理細胞と比較して残存するPD-L1タンパク質発現に対してほとんど影響がなかった。非常に対照的に、A03063H又はA03108HIによる処理は、PD-L1タンパク質発現の>90%の減少をもたらした(残存するPD-L1タンパク質発現<0.1によって表される)。
【0071】
(実施例7)
高増殖性細胞におけるPD-L1タンパク質ノックダウンの持続性
更に、PD-L1 ASO処理した、高増殖性HDLM-2細胞においてPD-L1タンパク質ノックダウンの持続性を調査した。したがって、HDLM-2細胞(ヒトホジキンリンパ腫細胞)を、処理しない(模擬処理細胞)、終濃度5μMの対照オリゴneg1(配列番号77)又はPD-L1特異的ASO A03063H(配列番号7)若しくはA03108HI(配列番号50)で処理した。3日後に、細胞を厳しく洗浄してASOを除去し、細胞増殖染料で染色した。ASOを洗い流した0、3、5、7、10及び12日後に細胞を、増殖(
図7A)及びPD-L1発現についてフローサイトメトリーで分析した(
図7B、同日の模擬処理細胞と比較した残存するPD-L1タンパク質発現として示す)。
図7Aにおいて経時的な増殖染料の均質な希釈によって示されるように、HDLM-2細胞の均質な、強い増殖が、ASOを洗い流した3、5、7、10及び12日後に観察された。PD-L1タンパク質発現に対するneg1の負の影響は、観察されなかった。非常に対照的に、PD-L1特異的ASO A03063H又はA03108HIによる細胞の処理は、ASOを洗い流した7日後まで有効性>50%でPD-L1タンパク質発現の強く、持続的な減少をもたらした。
【0072】
結果は、細胞の強力な増殖、したがってASOの急速な希釈にもかかわらず、PD-L1タンパク質発現の強い阻害が、多くの日数、すなわち7日目まで検出可能であったことを驚くべきことに示す。
【配列表】
【国際調査報告】