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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ガス生成用反応器
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20220629BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20220629BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20220629BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20220629BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B9/60
C25B9/77
C01B3/02 H
C01B13/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565128
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 CZ2019050058
(87)【国際公開番号】W WO2020224683
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】PV2019-276
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521479057
【氏名又は名称】エイチ2 ソリューション スポレチノスト エス ルチェニム オメゼニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アル アンサリ,クサイ
【テーマコード(参考)】
4G042
4K021
【Fターム(参考)】
4G042BA10
4G042BA11
4G042BA33
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA15
4K021DB06
4K021DB46
4K021DB49
(57)【要約】
本発明は反応器に関し,該反応器は,互いに離隔して配置され,プレートの少なくとも1枚がカソードプレートであり,該プレートの少なくとも1枚がアノードプレートであり,該プレートの少なくとも1枚は中性プレートであり,前記カソードプレートと前記アノードプレートとの間に配置されるように,電流源に取り付けるように適合された,相互に平行な複数のプレートと,複数のフレームであって,該複数のフレームの各フレームは,前記プレートの少なくとも1枚に隣接する空洞を円周方向に囲むように配置される複数のフレームと,水及び電解質を前記空洞に供給するための導管,及び前記空洞で形成された生成ガスで富化した液体を前記反応器から導くための導管とを含み,前記反応器は更に,前記アノードプレート及び前記カソードプレートに面する前記アノードプレートのその側で相互に間隔を置いて配置された前記中性プレートに取り付けられた少なくとも1つの永久磁石又は複数の永久磁石を更に備え,前記永久磁石のN極側が前記カソードプレートに面している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス生成用反応器であって,該反応器は,
- 互いに離隔して配置され,プレートの少なくとも1枚がカソードプレート(1)であり,該プレートの少なくとも1枚がアノードプレート(2)であり,該プレートの少なくとも1枚は中性プレート(3)であり,前記カソードプレート(1)と前記アノードプレート(2)との間に配置されるように,電流源に取り付けるように適合された,相互に平行なプレートのセット(1,2,3)と,及び
- 複数のフレーム(7)であって,該複数のフレーム(7)の各フレーム(7)は,前記プレート(1,2,3)の少なくとも1つに隣接して延びる空洞を円周方向に囲むように配置される複数のフレーム(7)と,
- 水と電解質を含む液体を前記空洞に供給するための導管,及び前記空洞で形成された生成ガスで富化した液体を前記反応器から導くための導管とを含み,
前記反応器は更に,
-前記アノードプレート(2)及び前記セットの前記カソードプレート(1)に面する前記アノードプレート(2)のその側で相互に間隔を置いて配置された前記中性プレート(3)に取り付けられた少なくとも1つの永久磁石,好ましくは複数の永久磁石(10)を含み,該永久磁石(10)のN極側が前記カソードプレート(1)に面していることを特徴とするガス生成用反応器。
【請求項2】
前記プレート(1,2,3)及び前記フレーム(7)は,前記液体を供給するための前記導管を形成する相互に整合した第1の貫通孔(8)と前記空洞内に形成された生成ガスで富化した前記液体を導くための前記導管を形成する相互に整合した第2の貫通孔(9)を備えており,前記各フレーム(7)は,前記第1の貫通孔(8)をそのフレーム(7)によって囲まれた各空洞に接続する通路と,前記第2の貫通孔(9)をそのフレーム(7)によって囲まれた前記それぞれの空洞に接続する通路とを備えることを特徴とする請求項1記載の反応器。
【請求項3】
前記反応器が,
- 複数の膜(11)であって,各膜(11)は2枚の隣接するプレート(1,2,3)の間に配置され,前記空洞を2つの副空洞に分割し,該2つの副空洞のそれぞれは,前記2枚の隣接するプレート(1,2,3)の1枚に沿って延びている複数の膜(11)を更に含み,前記反応器からの前記空洞内に形成された生成ガスで富化された液体を導くための2つの別個の導管が存在することを特徴とする請求項1又は2記載の反応器。
【請求項4】
前記各フレーム(7)は2つの部分を含み,その間に前記膜(11)が固定され,前記プレート(1,2,3)及び前記フレーム(7)は,相互に整合された第3の貫通孔(16)を備え,前記空洞内に形成された生成ガスで富化された液体を導くための別の導管を形成し,フレーム(7)の各第1の部分は,前記第2の貫通孔(9)を,前記フレーム(7)のその第1の部分によって囲まれた前記それぞれの副空洞と接続する通路を備え,フレーム(7)の各第2の部分は,前記第3の貫通孔(9)を前記フレーム(7)のその第2の部分によって囲まれた各副空洞と接続する通路を備えていることを特徴とする請求項2及び3記載の反応器。
【請求項5】
前記永久磁石は
-ネオジム磁石であり,及び/又は
-直径が7~13mm,好ましくは9~11mmの範囲内の円盤形状であり,及び/又は
-厚さが0.4~1.5mmの範囲であることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の反応器。
【請求項6】
前記プレート(1,2,3)はステンレス鋼製であり,及び/又は前記プレート(1,2,3)の少なくとも一部に擦過傷,好ましくは水平及び垂直の擦過傷が付いていることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の反応器。
【請求項7】
前記プレート(1,2,3)間の間隔が均一であり,それが2.3~2.9mm,好ましくは2.6~2.8mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載の反応器。
【請求項8】
前記プレート(1,2,3)は,少なくとも1つのセットを形成するように配置され,これは,カソードプレート(1),複数の中性プレート(3),アノードプレート(2),複数の中性プレート(3),及びカソードプレート(1)の配列を含むことを特徴とする請求項1~7いずれか1項記載の反応器。
【請求項9】
前記アノードプレート(2)の片側にある前記中性プレート(3)の枚数は,前記アノードプレート(2)が前記セットの中央に配置されるように,前記アノードプレート(2)の反対側にある前記中性プレート(3)の枚数と同じであることを特徴とする請求項8記載の反応器。
【請求項10】
前記反応器は,少なくとも2つの電気絶縁性及び防水性の端部材(4)を含み,前記プレート(1,2,3)及び前記フレーム(7)は,前記端部材(4)の間にクランプされていることを特徴とする請求項1~9いずれか1項記載の反応器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電気分解によるガス生成用反応器に関し,該反応器は,生成ガス用の少なくとも1つの排気部と,互いに離隔して配置され,複数の相互に並行なプレートの少なくとも1つはカソードプレートであり,プレートの少なくとも1つはアノードプレートであり,かつ,プレートの少なくとも1つは中性であり,カソードプレートとアノードプレートとの間に配置されるように,電流源に取り付けられるように適合された複数のプレートを含み,アノードプレート及び中性プレートは,1つの磁石又は複数の磁石を備え,個々のプレートは,相互から所定の距離を維持するために,かつ,プレート間に水密空洞を形成するために,ゴムフレームによって分離されている反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分解を使用してガスを生成するための反応器は,当該技術分野では周知である。本発明の目的は,かかる反応器の効率を高めることである。これは,電気分解の過程で電子を加速することによって,入力アンペア数を増加することなくガスの生成を加速する磁場を使用することによって実現される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の内容はガス生成用反応器であって,前記反応器は,互いに離隔して配置され,プレートの少なくとも1枚がカソードプレートであり,該プレートの少なくとも1枚がアノードプレートであり,該プレートの少なくとも1枚は中性プレートであり,前記カソードプレートと前記アノードプレートとの間に配置されるように,電流源に取り付けるように適合された,相互に平行な複数のプレートを含む。前記反応器は,複数のフレームを更に含み,前記複数のフレームの各フレームは,前記複数のプレートの少なくとも1つに隣接する空洞を円周方向に囲むように配置され,前記反応器は,水及び電解質を前記空洞に供給するための導管と,前記空洞で形成されたガスで富化した液体を前記反応器から導くための導管とを更に含む。本発明の前記反応器は更に,前記アノードプレート及び前記カソードプレートに面する前記アノードプレートのその側で相互に間隔を置いて配置された前記中性プレートに取り付けられた少なくとも1つの永久磁石,好ましくは複数の永久磁石を含み,該永久磁石のN極側が前記カソードプレートに面していることを特徴とする。好ましい実施形態では,前記反応器の各フレームは,2つのプレートの間に配置され,前記フレーム及び前記2つの隣接するプレートで囲まれた空洞を形成し,又は,前記反応器は複数の膜を更に含み,各フレームは2つの部分を含み,前記フレームの各部分は,プレートと膜との間に配置され,前記フレームの前記部分,前記プレート,及び前記膜によって囲まれた空洞を形成する。磁場は,1つの永久磁石によって,又は好ましくは複数の永久磁石によって生成され得る。前記永久磁石は,好ましくはネオジム磁石であり,及び/又は,直径が7~13mm,好ましくは9~11mmの範囲内の円盤形状を有し,及び/又は,厚さが0.4~1.5mmの範囲である。前記プレートは好ましくはステンレス鋼製である。別の好ましい実施形態では,前記複数のプレートの少なくとも一部に擦過傷,好ましくは水平及び垂直の擦過傷が付いている。前記プレート間の間隔が好ましくは均一であり,2.3~2.9mm,好ましくは2.6~2.8mmの範囲内にある。更に別の実施形態では,前記プレートは,少なくとも1つのセットを形成するように配置され,これは,カソードプレート,複数の中性プレート,アノードプレート,複数の中性プレート,及びカソードプレートの配列を含む。前記アノードプレートの片側にある中性プレートの枚数は,好ましくは前記アノードプレートがセットの中央に配置されるように,前記アノードプレートの反対側にある前記中性プレートの枚数と同じであり,前記アノードプレートの各側における中性プレートの好ましい枚数は5枚である。本発明の反応器は,好適には少なくとも2つの電気絶縁性及び防水性の端部材を備え,前記プレート及び前記フレームは,前記端部材の間にクランプされている。
【0004】
本発明の典型的な実施形態を添付図面に示す。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本発明の第1の典型的な実施形態を示す。
図2図1の反応器の一部の詳細図を示す。
図3】第1の典型的な実施形態のプレート上の磁石の配置を示す。
図4】溝を備えたプレートの写真を示す。
図5】本発明の第2の典型的な実施形態を示す。
図6図5の反応器の一部の詳細図を示す。
図7】第2の典型的な実施形態の個々のプレート,フレーム,及び膜を示す。
【0006】
発明を実施するための形態
図1及び図2に示される反応器の第1の実施形態は,酸水素すなわち水素と酸素の混合物(HHO)の生成に適合している。
【0007】
前記反応器は,相互に離隔して配置された相互に平行なプレートを含み,隣接するプレート間の相互間隔は均一であり,かつ,3mm以下,好ましくは3mm未満であり,2.3mmよりも長く,より好ましくは2.6~2.8mm,最も好ましくは2.67mmである。
【0008】
プレートは,正方形,矩形,台形,円形などの形状であれば良く,正方形又は矩形の形状が好ましい。プレートは,316Lなどのステンレス鋼から成る。一実施形態では,プレートは,180mm(高さ)×180mm(幅)である。
【0009】
使用前に,プレートを特定の方法で処理することが好ましい。かかる処理では,プレートの各側が一方向に水平に擦過されてから,プレートの底面から上面に垂直に再びこの一方向にのみ擦過される。擦過溝の深さは,10-3mm~10-1mm,好ましくは10-3mm~2.10-2mmである。擦過溝の深さは10-3mm~10-2mmである。擦過プレート,又はの写真を図4に示す。次に,プレートは,エタノールなどのアルコール中に少なくとも約24時間保存される。この処理は,ガスをセルから導出し,表面から油膜を除去することにもプラスの影響を及ぼす。
【0010】
図1及び図2に示すこの特定の実施形態では,26枚のプレートがあり,プレートのうちの4枚がカソードプレートであり,プレートのうちの2枚がアノードプレートであり,残りのプレートが中性プレートであるように電流源に取り付けられている。プレートの特定の配置では,13枚のプレートの2セットが以下の特定の順序で配置され,すなわち,カソードプレート,5枚の中性プレート,1枚のアノードプレート,5枚の中性プレート及び1枚のカソードプレートの順に配置される。したがって,各セットは,セットの中央に配置された1枚のアノードプレートを含み,更に,セットの各側には1枚のカソードプレートが配置され,常に前記アノードプレートと前記カソードプレート間に5枚の中性プレートが配置される。
【0011】
個々のプレートは,ゴムフレームによって相互に分離されており,その外周面は,プレートの外周面に実質的に対応している。各フレームは,近隣のプレートの対を離間して維持し,相互に絶縁させ,前記プレート間の空間を囲み,隣接プレートの間に閉じた/漏れのない空洞を形成する。
【0012】
図面1及び2に示す反応器は,上記のプレートのセット及びフレームをそれらの相互位置に固定するように適合された端部材を更に含む。端部材を締めてプレート及びフレームを相互に緊密に押し付けたままにする張力バー(図示せず)によって提供され得,その結果,空洞からの水及び電解質の漏れが防止される。
【0013】
上記のプレートのセットの間に,水及び電解質を反応器に供給するための入口通路と,酸水素富化流体を反応器から導くための酸水素出口通路とを含む流体誘導部材14が存在する。
【0014】
端部材及び流体誘導部材14は,ポリ(メチルメタクリレート)などの防水性及び電気絶縁性の材料から成る。
【0015】
上記のように,空洞が閉じており,それらのそれぞれは,反応器内のフレーム及び2つの相互に隣接するプレートによって区切られている。前記空洞は,液体及びガスが自由に通過できるように流体連通している。この特定の例では,プレート,及びフレームのそれぞれは,ある空洞から別の空洞へ電解質と共に水を通過させるための第1の貫通孔を備えている。第1の貫通孔は,互いに整合し,流体誘導部材14の入口通路の出口開口部と整合して,入口通路から各空洞への水及び電解質のための導管を形成する。フレームは,それぞれの空洞と流体連通するそれらの第1の貫通孔を有する。
【0016】
更に,プレート,及びフレームのそれぞれは,ある空洞から別の空洞へ,又はむしろ個々の空洞から酸水素出口通路へ,酸水素により富化された液体(水)を通過させるために第2の貫通穴9を備えている。第2の貫通孔は互いに整合し,流体誘導部材14の酸水素出口通路の入口開口部と整合して,空洞内に形成された酸水素により富化された液体用の導管を形成し,酸水素出口通路への通過を可能にする。この効果により,フレームは,それぞれの空洞と流体連通している第2の貫通孔も有する。
【0017】
プレート又はフレーム内の第1の貫通孔及び第2の貫通孔は,プレート又はフレームの対角線上で反対側の角に配置されている。しかし,他の相互の配置も可能である。好ましくは,第1の貫通孔は,プレートの下部に形成され,第2の貫通孔は,プレートの上部に形成される。
【0018】
各アノードプレートは,特定のセットの最も近いカソードプレートに面するアノードプレートの側に取り付けられた複数の永久磁石10を備え,永久磁石10のN極側は,カソードプレートに面する。この特定の実施形態では,アノードプレートはプレートのセットの中央にあり,永久磁石10が各アノードプレートの両側に配置されている。
【0019】
また,中性プレートのそれぞれは,その特定のセットに属する最も近いカソードプレートに面する側に複数の永久磁石10を備え,磁石10のN極側はカソードプレートに面する。
【0020】
磁石10の個数及びサイズは,アノードプレートのサイズに比例し,その目的は,全領域にわたって(可能な限り)均一な磁場を形成することであり,磁石の例示的な配置を図3に示す。永久磁石10のそれぞれは,中性プレート又はアノードプレートに取り付けられており,他のプレートに接触していない。
【0021】
好ましくは,永久磁石10はネオジム磁石であるが,代わりに,磁場を提供する任意の他のタイプの材料を使用することができる。
【0022】
永久磁石10は,接着剤又は他の任意の適切な手段によって,アノードプレート及び中性プレートに取り付けられ得る。
【0023】
もちろん,上記の特定の好ましい実施形態は,本発明の範囲から逸脱することなく,多くの方法で変更することができる。セット内の中性プレートの数は変更することができ,プレートの上記で指定されたセットの数,及びプレートのサイズは,反応器の必要な出力に基づいて適合させることができる。フレームはゴムフレームとして記載されてきたが,他の材料をフレームに使用してもよい。
【0024】
図5及び図6に示す第2の具体的な実施形態では,反応器は,水素(H2)の生成,言い換えれば,2つの別個のガスすなわち水素及び酸素の生成に適合されている。この実施形態では,プレートのうちの4枚がカソードプレートであり,プレートのうちの2枚がアノードプレートであり,残りのプレートが中性プレートであるように電流源に取り付けられた26枚のプレートが存在する。プレートの特定の配置は,次の特定の順序で配置された13枚のプレートの2つのセットが存在するようになり,カソードプレート,5枚の中性プレート,アノードプレート,5枚の中性プレート及びカソードプレートである。このため,各セットは,セットの中央に配置された1枚のアノードプレートを含み,更に,セットの各側に配置された1枚のカソードプレートと,常に前記アノードプレートと前記カソードプレートとの間に配置された5枚の中性プレートとが存在する。この場合も,隣接プレートの間に空洞を囲むためのフレームがある。更に,酸素から水素を確実に分離するために,個々のプレートの間に膜11が存在する。各膜11は,一対の隣接するプレートの間に形成された空洞を2つの副空洞に分割し,それらの1つはプレートの一方に沿って延び,もう1つは対からプレートのもう一方に沿って延びる。膜11は,水素に対してのみ透過性がある。個々のプレートは,ゴムフレームによって相互に分離されており,その外周面は,プレートの外周面に実質的に対応している。この実施形態では,フレームは2つの部分の形態であり,膜11のそれぞれは,フレームの2つの部分の間に保持されている。膜を取り付ける他の手段も可能である。
【0025】
セットの個々の構成要素の順序は,図5に示すように以下の通りである:カソードプレート,第1のゴムフレームの第1の部分,膜11,第1のゴムフレームの第2の部分,中性プレート,第2のゴムフレームの第1の部分,膜11,第2のゴムフレームの第2の部分,中性プレート,第3のゴムフレームの第1の部分,膜11,第3のゴムフレームの第2の部分…という具合である。
【0026】
図5及び図6に示す反応器は,上記のプレートのセット,フレーム及び膜11をそれらの相互位置に固定しておくように適合された端部材を更に含む。プレート,フレーム及び膜11を互いに緊密に押し付けたまま端部材をクランプする張力バー(図示せず)によって固定することができ,その結果,空洞からの水や電解質の漏れを防ぐ。端部材自体もまた,ゴムフレームによってカソードプレートから分離されている。
【0027】
上記のプレートのセットの間に,流体誘導部材14が存在し,これは,水及び電解質を反応器に供給するための入口通路,水素により富化された液体を反応器から導くための水素出口通路12,及び酸素により富化された液体を反応器から導くための酸素出口通路13を含む。
【0028】
閉じた空洞があり,それらのそれぞれは,フレーム及びプレート,又はによって区切られ,反応器内の膜11によって分割されている。前記空洞は,液体及びガスの自由な通過を可能にするために流体連通している。この特定の例では,プレート,及びフレーム(両方の部分)及び膜11のそれぞれは,ある空洞から別の空洞に電解質と共に水を通すための第1の貫通孔を備えている。第1の貫通孔は,互いに整合し,流体誘導部材14の入口通路の出口開口部と整合して,入口通路から各空洞への水及び電解質のための導管を形成する。フレーム(両方の部分)は,それぞれの空洞と流体連通する第1の貫通孔を有する。
【0029】
更に,プレート,フレーム及び膜11のそれぞれは,酸素(又はむしろ酸素により富化された液体)を通過させるための第2の貫通孔と,水素(又はむしろ水素により富化された液体)を通過させるための第3の貫通孔16を備えている。第2の貫通孔は,互いに整合し,流体誘導部材14の酸素出口通路13の入口開口部と整合して,空洞内に形成された酸素により富化された液体のための導管を形成し,出口通路13へのその通過を可能にし,第3の貫通孔16は,互いに,及び流体誘導部材14の水素出口通路12の入口開口部と整合して,空洞内に形成された水素により富化された液体のための導管を形成し,出口通路12を通過することができる。
【0030】
この効果により,アノードプレートにより近い膜11のその側に配置された個々のフレームの第1の部分は,それぞれの空洞と流体連通するそれらの第2の貫通孔を有し,膜11の反対側に配置された,すなわちカソードプレートにより近い個々のフレームの第2の部分は,それぞれの空洞と流体連通する第3の貫通孔16を有する。
【0031】
好ましい実施形態では,反応器は,該反応器内の電解質の温度を35℃未満に維持するために,ファンなどの冷却手段を備えている。好ましくは,反応器は,電解質の温度を監視するための感知手段を備え,感知手段は,該感知手段から提供される情報に基づいて冷却手段を制御するための制御ユニットに接続される。
【0032】
各アノードプレートは,カソードプレートに面するアノードプレートの側に取り付けられた複数の永久磁石10を備えており,該永久磁石10のN極側は,それぞれのセットの最も近いカソードプレートに面している。また,中性プレートのそれぞれは,その特定のセットに属する最も近いアノードプレートに面する側に複数の永久磁石10を備え,該磁石10のN極側は,前記カソードプレートに面する。
【0033】
好ましくは,永久磁石10はネオジム磁石であるが,代わりに,磁場を提供する他のタイプの材料のいずれかを使用することができる。永久磁石10は,接着剤又は他のいずれかの適切な手段によってアノードプレート及び中性プレートに取り付けられ得る。
【0034】
磁石10の数及びサイズは,アノードプレートのサイズに比例し,好ましい実施形態によれば,永久磁石10は,直径10mm及び厚さ1mmを有する円盤形状を有し,それらの軸(又は磁力作用の軸)がプレートに垂直になるように,アノードプレート又は中性プレートに取り付けられる。代わりに,厚さ0.5mmなど,他のタイプとサイズの磁石を使用することもできる。
【0035】
磁石10の好ましい数は,式1に従って,以下のように数えることができる:
式中,Mnは磁石10の個数である。
aは,mmで測定された正方形のプレートの長さ/高さであり,Fは,mm単位で測定された磁場範囲である(値は磁石の仕様から取得できる。又は,2つの磁石を並べて,一方の磁石をもう一方の磁石に向かって動かし,もう一方の磁石が動き始めるだけで,概算値を測定できる。2つの磁石間の正確な距離が測定され,測定された距離(mm)を2で割り,その結果が磁場範囲Fになる)。
Mdは磁石の直径(mm)である。
【0036】
上記式及び第1又は第2の実施形態の仕様を用いて,アノードプレートの両側及び中性プレートに配置された永久磁石10の数は,以下のように計算される。
アノードプレートの寸法a:180mmx180mm
磁石10の磁場範囲F:7.5mm
磁石の直径10Md:10mm
この場合,永久磁石10の最適な個数は8個であろう。
【0037】
好ましくは,磁石は,実質的に均一な磁場がプレート間の領域に提供されるように配置される。
【0038】
永久磁石10はアノードプレートに配置され,それらのN極側は常にそれぞれのカソードプレートに面しているので,磁場はガス生成を増加させ,その増加は反応器の動作の開始直後から観察され得る。
【0039】
水の電気分解中に,2H2Oは2H2+O2に分離される。
【0040】
水(2H2O)を考慮すると,水素の酸化状態は+1,酸素の酸化状態は-2である。
【0041】
電気分解により,水素は電子を獲得し,反対側では酸素が2つの電子を失い,それらの電子はアノード側に移動する。そのため,アノード側の磁石10はこれらの電子を加速し,供給される電力エネルギーを増加させることなく生成を加速する。したがって,電子が加速され,反応器の効率が向上する。
【0042】
水及びNaHCO3(好ましくは水中の10%NaHCO3),酢酸,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,炭酸カリウムを含む水の溶液などの様々な電解質を使用することができる。
【0043】
例えば,水中のNaHCO3の10%水溶液を使用する場合,半反応で負電荷を有するイオンは次のようになる。
2H2O+2e-=H2+2HO-
【0044】
磁場は重炭酸ナトリウムにも大きな影響を及ぼし,重炭酸ナトリウムはナトリウムカチオン(Na+)及び重炭酸アニオン(HCO3 -)からなる塩であるため,永久磁石10はNa+に力を与え,その性能を向上させ,力は次の式を使用して計算できる。
F=qvBsinθ
F=力
q=粒子の電荷
v=速度(イオンの速度は,ウォーターポンプの圧力,反応器に出入りする管の長さ,及び時間から取得できる)
B=磁場強度(テスラ)
θ=荷電粒子の磁場ベクトルと速度ベクトルとの間の角度。
【0045】
磁場の異なる位置で,力は,反応器の上記の特定の好ましい実施形態についてこの式を使用して計算することができ,Na+に関して計算された力は,800N~820Nの間であり,これは,疑いなく電気分解プロセスは非常に効率的であることを意味する。
【0046】
例えば,ナトリウムイオン(Na+)は0.851m/秒で移動し,すべての磁石の磁場の強度は0.245Tである(この係数は,磁石の仕様又は磁石測定器「ガウスメーター」から取得できる)。この磁場は,移動するときに様々な角度からイオンに影響を与える。ここでの例では,ナトリウムイオンの移動中の平均角度として51.0°を取る。セル間を移動する水の量は約100cm3で,Na+の濃度は3.00x1020イオン/cm3である。
q(Na+の場合)=1.6x10-19
v=0.851m/秒
B=0.254T(テスラ)
θ=51.0o
このため,1イオンあたりの力:F=(1.60x10-19C)(0.851m/秒)(0.254T)sin(51.0o)F=2.69x10-20
イオン数N=(3.00x1020イオン/cm3)(100cm3)N=3.00x1022イオン
ゆえに,総力F=(2.69x10-20N/1イオン)(3.00x1022イオン)
F=807ニュートン
【0047】
比較測定は,水中の10%溶液NaHCO3からなる電解質を用いて(配置された永久磁石を有し,永久磁石を伴わない)酸水素を生成するための反応器の上記の特定の第1の例示的な実施形態を使用して行われた。
磁石による消費電力:
DC電圧:17V~18V
DCアンペア:18A~20A
生成ガス:8リットル/分
磁石なしの消費電力:
DC電圧:28V
DCアンペア:40A
生成ガス:2~3リットル/分
【0048】
上記の測定値は,磁石を備えた反応器での酸水素ガスの生成が著しく高い一方で,そのための供給電力(電圧,電流)がはるかに低いことを示している。
【0049】
本発明による反応器の機能性及び有効性は,認可された研究所(セルビアのベオグラードの一般物理化学研究所)によって試験及び承認された。更に,反応器はまた,廃棄物を生成することなく,環境に優しいことがわかった。
【0050】
上記で指定された反応器は,パイプラインを介して,当技術分野で知られているようにガスを洗浄及び/又は乾燥するためのさらなる装置に接続された,ガスのためのそれらの出口を有し得る。
【0051】
以上,複数の例示的な実施形態が記載されているが,当業者がそれらの実施形態に対するさらなる可能な代替案を容易に理解するであろうことは明らかである。したがって,本発明の範囲は,上記の典型的な実施形態に限定されず,むしろ添付の請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】