(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ヒンジドメインを介したポリペプチド及びキメラ抗原受容体の増強
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220629BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220629BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220629BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220629BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220629BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220629BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220629BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220629BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220629BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220629BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220629BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220629BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220629BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220629BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20220629BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20220629BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20220629BHJP
C12N 15/866 20060101ALN20220629BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20220629BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220629BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220629BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N1/15
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K48/00
A61K38/16
A61K35/12
A61K35/76
A61K31/7088
A61P35/04
A61K45/00
A61K39/00 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/866 Z
C12N5/0783
C12N15/12
C12N15/13
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565752
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 US2020031728
(87)【国際公開番号】W WO2020227446
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ロビー ジー.マズナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスタル エル.マッコール
(72)【発明者】
【氏名】ルーエイ ラバニー
(72)【発明者】
【氏名】スカイラー ピー.リートベルク
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA05
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA57X
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4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
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4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA41
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA04
4C085BB01
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
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4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
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4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、概して、とりわけ、CD28由来のヒンジドメインと、所望によりCD28由来ではない共刺激ドメインを含む新規キメラポリペプチド及びキメラ抗原受容体(CAR)に関する。本開示は、そのような分子の製造に有用な組成物及び方法、並びに癌などの疾患の検出及び治療のための方法をも提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原を結合することができる細胞外ドメイン(ECD)を含む第1のポリペプチドセグメント、
CD28に由来するヒンジドメインを含む第2のポリペプチドセグメント、
膜貫通ドメイン(TMD)を含む第3ポリペプチドセグメント、及び
所望により、1つ以上の共刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン(ICD)を含む第4のポリペプチドセグメントであって、前記1つ以上の共刺激ドメインがCD28由来ではない、第4のポリペプチドセグメント、
を含む、キメラポリペプチド。
【請求項2】
前記ICDが、CD3ζ ICDをさらに含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
前記キメラポリペプチドが、キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項1~2のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
前記抗原が、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原である、請求項1~3のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
前記抗原が、グリピカン2(GPC2)、IL-13受容体α1、IL-13受容体α2、アルファ‐フェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD123、CD93、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、粗大嚢胞性疾患内容液タンパク質(GCDFP-15)、ALK、DLK1、FAP、NY-ESO、WT1、HMB-45抗原、タンパク質melan-A(Tリンパ球によって認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、神経細胞特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼアイソザイムタイプM2の二量体(腫瘍M2-PK)、CD19、CD20、CD5、CD7、CD3、TRBC1、TRBC2、BCMA、CD38、CD123、CD93、CD34、CD1a、SLAMF7/CS1、FLT3、CD33、CD123、TALLA-1、CSPG4、DLL3、IgGκ軽鎖、IgAλ軽鎖、CD16/ FcγRIII、CD64、FITC、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(上皮成長因子バリアントIII)、EGFR及びそのアイソバリアント、TEM-8、精子タンパク質17(Sp17)、メソテリン、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、プロステイン、NKG2D、TARP(T細胞受容体γ代替リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1)、異常なrasタンパク質、異常なp53タンパク質、インテグリンβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2 Kirstenラット肉腫ウイルス腫瘍遺伝子)、並びにRal-Bからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
前記抗原が低密度で発現している、請求項1~5のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
前記抗原がグリピカン2(GPC2)、ヒト上皮成長因子受容体2(Her2/neu)、CD276(B7-H3)、又はIL-13-受容体αである、請求項1~6のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
前記共刺激ドメインが、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、共刺激CD27ポリペプチド配列、共刺激OX40(CD134)ポリペプチド配列、共刺激誘導性T細胞共刺激(ICOS)ポリペプチド配列、及びCD2共刺激ドメインからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項9】
前記共刺激ドメインが、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項10】
前記TMDが、CD28 TMD、CD8α TMD、CD3 TMD、CD4 TMD、CTLA4 TMD、及びPD-1 TMDに由来する、請求項1~9のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項11】
前記キメラポリペプチドが、N末端からC末端方向に、
CD19抗原を結合することができるECD、
CD28に由来するヒンジドメイン、
CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1に由来するTMD、
4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD、及び
CD3ζドメイン
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項12】
前記TMDがCD8由来である、請求項11に記載のキメラポリペプチド。
【請求項13】
前記キメラポリペプチドが、N-末端からC-末端方向に、
CD19抗原を結合することができるECD、
CD28に由来するヒンジドメイン、
CD8由来のTMD、及び
CD3ζドメイン、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項14】
前記キメラポリペプチドが、N-末端からC-末端方向に、
HER2抗原を結合することができるECD、
CD28に由来するヒンジドメイン、
CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1に由来するTMD、
4-1BB由来のコスティミュレーションドメインを含むICD、及び
CD3ζドメイン、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項15】
前記キメラポリペプチドが、N-末端からC-末端方向に、
GPC2抗原を結合することができるECD、
CD28由来のヒンジドメイン、
CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1のTMD、
4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD、及び
CD3ζドメイン、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項16】
前記キメラポリペプチドが、N-末端からC-末端方向に、
B7-H3抗原を結合することができるECD、
CD28由来のヒンジドメイン、
CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1のTMD、
4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD、及び
CD3ζドメイン、
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項17】
配列番号13、配列番号27、配列番号39、配列番号53、及び配列番号67からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子。
【請求項19】
前記核酸配列が、配列番号14、配列番号28、配列番号40、配列番号54、及び配列番号68からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項18に記載の組換え核酸分子。
【請求項20】
前記組換え核酸分子が、異種核酸配列に動作可能に連結されている、請求項18~19のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項21】
前記組換え核酸分子が、ベクター内の発現カセットとしてさらに定義される、請求項18~20のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項22】
前記ベクターがプラスミドベクター又はウイルスベクターである、請求項21に記載の核酸分子。
【請求項23】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、又はレトロウイルスに由来する、請求項22に記載の核酸分子。
【請求項24】
請求項1~17のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド;及び/又は
請求項18~23のいずれか1項に記載の核酸分子、
を含む組換え細胞。
【請求項25】
前記組換え細胞が真核細胞である、請求項24に記載の組換え細胞。
【請求項26】
前記組換え細胞が免疫系細胞である、請求項24~25のいずれか1項に記載の組換え細胞。
【請求項27】
前記免疫系細胞がTリンパ球である、請求項26に記載の組換え体細胞。
【請求項28】
a)タンパク質を発現することができる宿主細胞を提供すること、及び
b)前記提供された宿主細胞に、請求項18~23のいずれか1項に記載の組換え核酸を導入して、組換え細胞を製造すること、
を含む、組換え細胞の製造方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法で製造された組換え細胞。
【請求項30】
請求項24~27のいずれか1項に記載の少なくとも1つの組換え細胞、及び培養液を含む細胞培養物。
【請求項31】
薬学的に許容される担体、並びに
a)請求項1~17のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド、
b)請求項18~23のいずれか1項に記載の核酸分子、及び/又は
c)請求項24~27及び29のいずれか1項に記載の組換え細胞、
を含む、医薬組成物。
【請求項32】
前記組成物が、請求項18~23のいずれか1項に記載の組換え核酸と、薬学的に許容される担体と、を含む、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記組換え核酸が、ウイルスキャプシド又は脂質ナノ粒子に封入されている、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記組成物が、請求項24~27及び29のいずれか1項に記載の組換え細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
状態を予防及び/又は治療することを必要とする対象者の状態を予防及び/又は治療する方法であって、前記方法は対象者に、
a)請求項1~17のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド、
b)請求項18~23のいずれか1項に記載の核酸分子、
c)請求項24~27及び29のいずれか1項に記載の組換え細胞、及び/又は
d)請求項31~34のいずれか1項に記載の医薬組成物、
を含む組成物、を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記状態が癌である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記癌が、膵臓癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、乳癌、尿路上皮癌、肝癌、頭頸部癌、肉腫、子宮頸部癌、胃癌、胃癌、メラノーマ、ぶどう膜メラノーマ、胆管癌、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、及び膠芽腫である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記投与された組成物が、前記被験者におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)及び/又はインターロイキン2(IL-2)の産生を増加させる、請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記投与された組成物が、前記被験者における前記癌の腫瘍成長又は転移を阻害する、請求項35から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が、第1の療法として個別に、又は第2の療法と組み合わせて被験者に投与される、請求項35~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、及び手術からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の療法と前記第2の療法とが同時に投与される、請求項40~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の療法が前記第2の療法と同時に投与される、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の療法及び前記第2の療法が順次投与される、請求項40~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記第1の療法が前記第2の療法の前に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第1の療法が前記第2の療法の後に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の療法が、前記第2の療法の前及び/又は後に投与される、請求項40~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記第1の療法と前記第2の療法が交互に投与される、請求項40~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の療法及び前記第2の療法が単一の製剤で一緒に投与される、請求項40~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
状態を診断、予防、及び/又は治療することを必要とする対象の状態を診断、予防、及び/又は治療するためのキットであって、
a)請求項1から17のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド、
b)請求項18から23のいずれか1項に記載の核酸分子、
c)請求項24から27及び29のいずれか1項に記載の組換え細胞、及び/又は
d)請求項31から34のいずれか1項に記載の薬学的組成物、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、腫瘍学及び免疫治療学の分野に関し、特に、新規ポリペプチド、例えば、CD28由来のヒンジドメイン及び所望によりCD28由来ではない共刺激ドメイン、を含むキメラ抗原受容体に関する。また、本開示は、そのような分子を製造するのに有用な組成物及び方法、並びに疾患(例えば、癌)等の状態の検出及び治療のための方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所の助成金(1P01CA217959)及び米国国立がん研究所の助成金(U54 CA232568-01)の政府支援を受けてなされた。米国政府は本発明について一定の権利を有している。
【0003】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月7日に出願された米国仮特許出願第62/844,683号の優先権の利益を主張する。前記出願の開示は、図面を含むその内容全体を参照により、本明細書に明示的に援用される。
【0004】
配列表の組み込み
添付の配列表に記載の内容は、参照により本出願に援用される。078430-506001WO-Sequence Listing.txtというファイル名の添付の配列表のテキストファイルは、2020年4月20日に作成され、80KBである。
【0005】
近年、キメラ抗原受容体(CAR)が免疫療法の有望なアプローチとして浮上し、多くの製薬会社やバイオテクノロジー企業が実施した臨床試験が大きな話題となっている。CARは、抗原特異的な組換え受容体であり、1つの分子の中で、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マクロファージ等の多数の免疫細胞の特異性や機能を変える。例えば、CAR-T細胞療法において、がん免疫療法でCAR-T細胞を使用する一般的な前提は、腫瘍を標的としたT細胞を迅速に生成し、能動免疫の障壁及び漸進的動態を回避し、抗原認識におけるMHC制限を排除することである。CARがT細胞に発現すると、CARで修飾されたT細胞は超生理的な特性を獲得し、即効性と長期的な効果の両方を発揮する「生きた薬」として機能する。CARの設計に重要とされる抗原結合部分と細胞内シグナル伝達モジュールに主に焦点を当て、数多くのCARが開発されてきた。エフェクターT細胞を活性化し、反応性を高め、存続性を高めるために、適切な共刺激シグナルを達成するためには、多くの異なる種類の共刺激受容体を単独で、複数組み合わせて、又は、より大きなアレイ状に組み込まれることができる。しかし、ヒンジドメインや膜貫通(TM)ドメインなどの非シグナル性の細胞外モジュールが、導入されたT細胞の増殖やCARの治療効果に及ぼす影響については、ほとんど明らかになっていない。
【0006】
CARの効能は、特に固形癌ではしばしば制限されることが報告されている。これは、標的抗原密度の低さや微小環境における免疫抑制因子が原因であることが多い。その結果、これらの障害を克服して、これらの治療薬の適用範囲をより多くの疾患に広げ、より多くの患者を治療するために、より効能の高いCARが必要とされている。本明細書に記載の本発明は、これらの障害に対処するための解決策を提供し、さらに追加の利点も提供する。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、概して、強化ポリペプチド及びキメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫治療薬、並びに疾患(例えば、癌)などの様々な状態の治療に使用するための治療薬を含む医薬組成物の開発に関するものである。以下に詳述するように、ヒンジドメイン(別名:ヒンジ領域)の様々な改変は、CARの効能や低抗原密度の認識に劇的な影響を与えることが分かっている。特に、共刺激ドメインを含まないか、CD28に由来しない共刺激ドメインを含むポリペプチド又はCARに、CD28のヒンジドメインを組み込むことで、驚くほど機能性が向上する可能性があることが判明している。さらに、CD28ヒンジドメインを有するCARは、市販されている他の製品よりも優れていることが、本明細書に記載の実験結果より明らかになった。
【0008】
一態様において、本明細書で提供されるのは、(i)抗原を結合することができる細胞外ドメイン(ECD)を含む第1のポリペプチドセグメント;(ii)CD28に由来するヒンジドメインを含む第2のポリペプチドセグメント;(iii)膜貫通ドメイン(TMD)を含む第3ポリペプチドセグメント;及び(iv)所望により、1つ以上の共刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン(ICD)を含む第4のポリペプチドセグメントであって、前記1つ以上の共刺激ドメインがCD28由来ではない、第4のポリペプチドセグメント、を含む種々のキメラポリペプチド、である。
【0009】
本開示のキメラポリペプチドの非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、前記ICDは、CD3ζICDをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記キメラポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの実施形態では、前記抗原は、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異抗原である。いくつかの実施形態では、前記抗原は、グリピカン2(GPC2)、ヒト上皮成長因子受容体2(Her2/neu)、CD276(B7-H3)、IL-13受容体α1、IL-13受容体α2、アルファ‐フェトプロテイン(AFP)、癌胎児抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮性腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD123、CD93、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、粗大嚢胞性疾患内容液タンパク質(GCDFP-15)、ALK、DLK1、FAP、NY-ESO、WT1、HMB-45抗原、タンパク質melan-A(Tリンパ球によって認識されるメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、神経細胞特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1、ピルビン酸キナーゼアイソザイムタイプM2の二量体(腫瘍M2-PK)、CD19、CD20、CD5、CD7、CD3、TRBC1、TRBC2、BCMA、CD38、CD123、CD93、CD34、CD1a、SLAMF7/CS1、FLT3、CD33、CD123、TALLA-1、CSPG4、DLL3、IgGκ軽鎖、IgAλ軽鎖、CD16/ FcγRIII、CD64、FITC、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、GD3、EGFRvIII(上皮成長因子バリアントIII)、上皮成長因子受容体(EGFR)及びそのアイソバリアント、TEM-8、精子タンパク質17(Sp17)、メソテリン、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、プロステイン、NKG2D、TARP(T細胞受容体γ代替リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1)、異常なrasタンパク質、異常なp53タンパク質、インテグリンβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2 Kirstenラット肉腫ウイルス腫瘍遺伝子)、並びにRal-Bからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記抗原は低密度で発現している。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記抗原は、GPC2、Her2/neu、CD276(B7-H3)、又はIL-13-受容体αである。いくつかの実施形態では、前記共刺激ドメインは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、共刺激CD27ポリペプチド配列、共刺激OX40(CD134)ポリペプチド配列、共刺激誘導性T細胞共刺激(ICOS)ポリペプチド配列、及びCD2共刺激ドメインからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記共刺激ドメインは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、前記TMDは、CD28TMD、CD8αTMD、CD3TMD、CD4TMD、CTLA4TMD、及びPD-1TMDに由来する。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記キメラポリペプチドは、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28に由来するヒンジドメイン;(iii)CD28、CD8、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1に由来するTMD;(iv)4-1BBに由来する共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメインを含む。いくつかの実施形態では、前記キメラポリペプチドは、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28に由来するヒンジドメイン;(iii)CD8に由来するTMD;(iv)4-1BBに由来する共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン、を含む。いくつかの実施形態では、前記キメラポリペプチドは、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8由来のTMD;及び(iv)CD3ζドメイン、を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記キメラポリペプチドは、N末端からC末端方向に、(i)HER2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD28、CD8、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記キメラポリペプチドは、N末端からC末端方向に、(i)GPC2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD28、CD8、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン、を含む。いくつかの実施形態では、前記キメラポリペプチドは、N末端からC末端方向に、(i)B7-H3抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記キメラポリペプチドは、配列番号13、配列番号27、配列番号39、配列番号53、及び配列番号67からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0015】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、本明細書で開示される前記キメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む種々の組換え核酸分子である。前記組換え核酸分子の非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、前記核酸配列は、キメラポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、前記キメラポリペプチドはCARである。いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、(i)抗原を結合することができるECD、(ii)CD28由来のヒンジドメイン、(iii)TMD、及び(iv)1つ以上の共刺激ドメイン、を含むICDを含むキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含み、1つ以上の共刺激ドメインはCD28由来ではない。いくつかの実施形態では、前記核酸配列は、CD3ζドメインをさらにコードする。いくつかの実施形態では、前記抗原は、腫瘍関連抗原又は腫瘍特異抗原である。いくつかの実施形態では、前記抗原は、グリピカン2(GPC2)、ヒト上皮成長因子受容体2(Her2/neu)、CD276(B7-H3)、又はIL-13-受容体αである。いくつかの実施形態では、前記共刺激ドメインは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、共刺激CD27ポリペプチド配列、共刺激OX40(CD134)ポリペプチド配列、共刺激誘導性T細胞共刺激(ICOS)ポリペプチド配列、及びCD2共刺激ドメインからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記共刺激ドメインは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、前記TMDは、CD28TMD、CD8αTMD、CD3TMD、CD4TMD、CTLA4TMD、及びPD-1TMDに由来する。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン、を含むキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28に由来するヒンジドメイン;(iii)TMDはCD8に由来する;(iv)4-1BBに由来する共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン、を含むキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD、(ii)CD28由来のヒンジドメイン、(iii)CD8由来のTMD、及び(iv)CD3ζドメイン、を含むキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、N末端からC末端方向に、(i)HER2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン、を含むキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、N末端からC末端方向に、(i)GPC2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン、を含むキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、N末端からC末端方向に、(i)B7-H3抗原を結合することができるECD、(ii)CD28由来のヒンジドメイン、(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD、(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD、及び(v)CD3ζドメイン、を含むキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、配列番号13、配列番号27、配列番号39、配列番号53、及び配列番号67からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記核酸配列は、配列番号14、配列番号28、配列番号40、配列番号54、及び配列番号68からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも80%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、異種核酸配列に動作可能に連結されている。いくつかの実施形態では、前記組換え核酸分子は、ベクター内の発現カセットとしてさらに定義される。いくつかの実施形態では、前記ベクターはプラスミドベクターである。いくつかの実施形態では、前記ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、前記ウイルスベクターは、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、又はレトロウイルスに由来する。
【0020】
別の態様では、本開示のいくつかの実施形態は、(a)本明細書に記載のキメラポリペプチド;及び/又は本明細書に記載の核酸分子、を含む組換え細胞に関するものである。いくつかの実施形態では、前記組換え細胞は、真核細胞である。いくつかの実施形態では、前記組換え細胞は、免疫系細胞である。いくつかの実施形態では、前記免疫系細胞は、Tリンパ球である。
【0021】
別の態様では、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、(a)タンパク質発現が可能な宿主細胞を提供すること、及び(b)前記提供された宿主細胞を本開示の組換え核酸で形質転換して組換え細胞を製造すること、を含む、組換え細胞を製造する方法、に関する。したがって、関連する態様において、本明細書では、本開示の前記方法によって製造される組換え細胞も提供される。さらに関連する態様において、本開示のいくつかの実施形態では、本開示の少なくとも1つの組換え細胞と培養液とを含む細胞培養物を提供する。
【0022】
別の態様では、本開示のいくつかの実施形態は、薬学的に許容される担体と、(a)本開示のキメラポリペプチド;(b)本開示の核酸分子;及び/又は(c)本開示の組換え細胞の1つ以上とを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、組成物は、本開示の組換え核酸及び薬学的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態では、前記組換え核酸は、ウイルスキャプシド又は脂質ナノ粒子に封入されている。いくつかの実施形態では、前記組成物は、本開示の組換え細胞及び薬学的に許容される担体を含む。
【0023】
さらに別の態様では、本開示のいくつかの実施形態は、それを必要とする対象の状態を予防及び/又は治療するための方法に関し、前記方法は、以下の1つ以上を含む組成物を前記対象に投与することを含む:(a)本開示のキメラポリペプチド、(b)本開示の組換え核酸、(c)本開示の組換え細胞、及び(d)本開示の医薬組成物。前記開示された方法の好ましい実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、前記状態は増殖性疾患である。いくつかの実施形態では、前記増殖性疾患は、癌である。いくつかの実施形態では、前記癌は、膵臓癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、乳癌、尿路上皮癌、肝癌、頭頸部癌、肉腫、子宮頸部癌、胃癌、胃癌、メラノーマ、ぶどう膜メラノーマ、胆管癌、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、及び膠芽腫である。
【0024】
いくつかの実施形態では、投与された組成物は、前記対象におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)及び/又はインターロイキン2(IL-2)の産生を増加させる。いくつかの実施形態では、前記投与された組成物は、対象の癌の腫瘍成長又は転移を阻害する。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記組成物は、第1の療法として、又は第2の療法と組み合わせて、前記対象に個別に投与される。いくつかの実施形態では、前記第2の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、及び手術からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記第1の療法と前記第2の療法は随伴的に行われる。いくつかの実施形態では、前記第1の療法は前記第2の療法と同時に行われる。いくつかの実施形態では、前記第1の療法と前記第2の療法が順次に行われる。いくつかの実施形態では、前記第1の療法は前記第2の療法の前に行われる。いくつかの実施形態では、前記第1の療法は前記第2の療法の後に行われる。いくつかの実施形態では、前記第1の療法は、前記第2の療法の前及び/又は後に行われる。いくつかの実施形態では、前記第1の療法と前記第2の療法は、ローテーションで行われる。いくつかの実施形態では、前記第1の療法と前記第2の療法は、単一の製剤で一緒に行われる。
【0026】
別の態様では、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示された前記方法の実施のための種々のキットを提供する。いくつかの実施形態は、それを必要とする対象における状態の診断、予防、及び/又は治療の方法のためのキットであって、本開示のキメラポリペプチド;本開示の組換え核酸;本開示の組換え細胞;及び本開示の医薬組成物のうちの1つ以上を含むキット、に関する。
【0027】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、状態の診断、予防、及び/又は治療のための、本開示のキメラポリペプチド、本開示の組換え核酸、本開示の組換え細胞、及び医薬組成物のうちの1つ以上の使用である。いくつかの実施形態では、前記状態は、増殖性疾患である。いくつかの実施形態では、前記増殖性疾患は、癌である。
【0028】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、状態の予防及び/又は治療のための医薬品の製造における、本開示のキメラポリペプチド、本開示の組換え核酸、本開示の組換え細胞、又は本開示の医薬組成物のうちの1つ以上の使用である。いくつかの実施形態では、前記状態は、増殖性疾患である。いくつかの実施形態では、前記増殖性疾患は、癌である。
【0029】
前述の発明の概要は例示的なものであり、いかなる意味でも限定的であることは意図されていない。本明細書に記載の好ましい実施形態及び特徴に加えて、本開示のさらなる態様、実施形態、目的及び特徴は、図面及び詳細な説明及び特許請求の範囲から完全に明らかになるであろう。
【0030】
本明細書に記載の各態様及び実施形態は、実施形態又は態様の文脈から明示的又は明確に除外されない限り、一緒に用いることができる。
【0031】
本明細書中では、種々の特許、特許出願、及びその他の種類の出版物(ジャーナル記事、電子的なデータベースエントリなど)が参照される。本明細書で引用されているすべての特許、特許出願、及びその他の刊行物の開示内容は、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】現在FDAで承認されている臨床用抗CD19キメラ抗原受容体の模式図である。
【
図2】CD28ヒンジをCD19 CAR(CD19-28Hi-28TM-41BBz)に統合した結果、CD19-CD8Hi-CD8TM-41BBz(Kymriah)と比較して、CD19
low細胞の殺傷力及び種々のCD19抗原密度に応じたサイトカイン産生が増強され、CD19-28zCAR(Axi-Cell)と比較して有利であることを示す実験結果をグラフにまとめたものである。
図2Aは、963分子の表面CD19を発現するNALM6クローンを、CD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζのいずれかのCAR T細胞と1:1の比率で共培養し、インキュサイトアッセイで腫瘍細胞の殺傷力を測定した。異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表例である。統計的解析は反復測定ANOVAで行った。
図2Bは、CD19-CD28、CD19-4-1BB、又はCD19-CD28H/T-4-1BB CARのT細胞を、様々な量のCD19を発現しているNALM6クローンと24時間共培養し、ELISAにより上清中のIL-2を測定した。異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表例である。統計的比較は、CD19-4-1BBζ CAR T細胞とCD19-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞との間で、スチューデントのt検定(両側)により行った。
【
図3】CD19
low白血病のインビボモデルを用いて、CD19-CD28Hi-CD28TM-41BBzがCD19-CD8Hi-CD8TM-41BBzと比較して、低抗原密度に対して優れた機能性を有することを示唆する実験結果を模式的にまとめたものである。
図3Aは、100万個のNALM6-CD
192,053細胞を尾静脈注射によりNSGマウスに移植した。4日後、マウスに300万個のCD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞を注入した。腫瘍の進行を生物発光測光法で測定し、Living Imageソフトウェアを用いてフラックス値(光子/秒)を算出した。個々のマウスの定量化された腫瘍のフラックス値を示す。統計的解析は反復測定ANOVAで行った。
図3Bは、
図3Aで処理されたマウスの生存曲線である。統計的解析は、ログランク検定を用いて行った。
図3Aと
図3Bで示された結果は、異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表例である(1グループあたりn=5匹のマウスを使用)。
【
図4】白血病罹患マウスに治療量以下のCAR T細胞を投与するインビボストレステストモデルで判定した結果、CD19-CD28Hi-CD28TM-41BBzは、CD19-CD8Hi-CD8TM-41BBzと比較して、正常な(ネイティブな)抗原密度において優れた機能性を有することを示唆する実験結果をグラフ化したものである。
図4Aは、100万個のNALM6-野生型細胞を尾静脈注射によりNSGマウスに移植した。3日後、マウスに2.5×10
5個のCD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞を注入した。腫瘍の進行を生物発光測光法で測定し、Living Imageソフトウェアを用いてフラックス値(光子/秒)を算出した。個々のマウスの定量化された腫瘍のフラックス値を示す。統計的解析は反復測定ANOVAで行った。
図4Bは、(f)で処理されたマウスの生存曲線である。統計的解析は、ログランク検定を用いて行った。
図4Aと
図4Bで示された結果は、異なるT細胞ドナーを用いた2回の実験の代表例である(1グループあたりn=5匹のマウスを使用)。
【
図5-1】脾臓及び骨髄組織におけるCD19を標的とするCARの機能性を評価するために行った実験の結果を模式的にまとめたものである。100万個のNALM6-野生型細胞を尾静脈注射によりNSGマウスに移植した。3日後、マウスに500万個のCD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞を注入した。CAR T細胞処理後、+9日目、+16日目、+29日目(+29日目は脾臓のみ表示)に処理マウス(各群n=5)の脾臓(
図5A~5C)と骨髄(
図5D~5E)を得た。CAR陽性T細胞の存在をフローサイトメトリーで評価した。1回実施した(各時点でCAR構築物ごとにn=5)。統計的な比較は、表示されたグループ間でマンホイットニーにより行われた。インビトロの実験では、エラーバーはSDを表し、インビボの実験では、エラーバーはSEMを表す。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値はアスタリスクで以下のように示される:p>0.05、有意でない、NS;
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、及び
****p<0.0001。
【
図5-2】脾臓及び骨髄組織におけるCD19を標的とするCARの機能性を評価するために行った実験の結果を模式的にまとめたものである。100万個のNALM6-野生型細胞を尾静脈注射によりNSGマウスに移植した。3日後、マウスに500万個のCD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞を注入した。CAR T細胞処理後、+9日目、+16日目、+29日目(+29日目は脾臓のみ表示)に処理マウス(各群n=5)の脾臓(
図5A~5C)と骨髄(
図5D~5E)を得た。CAR陽性T細胞の存在をフローサイトメトリーで評価した。1回実施した(各時点でCAR構築物ごとにn=5)。統計的な比較は、表示されたグループ間でマンホイットニーにより行われた。インビトロの実験では、エラーバーはSDを表し、インビボの実験では、エラーバーはSEMを表す。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値はアスタリスクで以下のように示される:p>0.05、有意でない、NS;
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、及び
****p<0.0001。
【
図6】様々な腫瘍モデル及びCAR構造におけるHer2を標的としたCARの機能性をインビボで評価するために行った実験の結果を模式的にまとめたものである。
図6Aは、CD28のヒンジ-膜貫通領域と4-1BBの共刺激ドメインを含むHer2 CAR(Her2-CD28H/T-4-1BBζ)の模式図である。統計的解析は、ログランク検定で行った。
図6Bは、100万個の143b骨肉腫細胞をNSGマウスの後肢に同所移植した。7日後、マウスを1000万個のHer2-4-1BBζ CAR T細胞、Her2-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞、又は未導入の対照T細胞(MOCK)で処理した。脚の測定は週2回、デジタルキャリパーを用いて行った。個々のマウスの測定値を示す。統計的解析は反復測定ANOVAで行った。
図6Cは、
図6Bと同様に処置したマウスの生存曲線である。統計的解析は、ログランク検定を用いて行った。
図6B~6Cに示された結果は、異なるT細胞ドナーを用いた2つの実験の代表例である(1グループあたりn=5匹のマウス)。
【
図7】さまざまな腫瘍モデル及びCAR構造において、B7-H3を標的とするCARの機能性を評価するために行った実験の結果を模式的にまとめたものである。
図7Aは、CD28ヒンジ-膜貫通領域及び4-1BB共刺激ドメインを含むB7-H3 CAR(B7-H3-CD28H/T-4-1BBζ)の模式図である。
図7Bは、100万個のCHLA255神経芽細胞腫細胞をNSGマウスに尾静脈注射で移植し、転移性神経芽細胞腫モデルとした。6日後、マウスに1000万個のB7-H3-4-1BBζ CAR T細胞、B7-H3-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞、又は未導入の対照T細胞(MOCK)を注入した。腫瘍の進行は生物発光測光法で測定し、Living Imageソフトウェアを用いてフラックス値(光子/秒)を算出した。代表的な生物発光画像を示す。
図7Cは、
図7Bと同様に処置した個々のマウスの定量化された腫瘍フラックス値。統計的解析には反復測定ANOVAを用いた。
図7Dは、
図7Bのように処置したマウスの生存曲線である。統計的解析は、ログランク検定を用いて行った。
図7B~7Dに示した結果は、異なるT細胞ドナーを用いた2つの実験の代表例である。インビトロ実験の場合、エラーバーはSDを表し、インビボ実験の場合、エラーバーはSEMを表す。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値は以下のようにアスタリスクで示される:p>0.05、有意でない、NS;
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、及び
****p<0.0001。
【
図8】CD28ヒンジドメインが、(第1世代のCAR構築物において)共刺激がない場合でも、CAR T細胞の有効性を高める原因となっていることを示唆する実験結果をグラフ化したものである。
図8Aは、CD8又はCD28のヒンジ-膜貫通領域のいずれかを有する例示的な第1世代のCD19 CAR(CD19-CD8H/T-ζ及びCD19-CD28H/T-ζ)の概略図である。
図8Bは、963分子又は45851分子の表面CD19を発現するNALM6クローンを、CD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、CD19-CD28H/T-ζ、又はCD19-CD8H/T-ζのいずれかのCAR T細胞と1:1の比率で共培養し、Incucyteアッセイで腫瘍細胞の殺傷力を測定した結果を示す。異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表例である。統計的解析は、CD19-CD28H/T-ζとCD19-CD8H/T-ζの間で反復測定ANOVAにより行った。
図8Cは、CD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、CD19-CD28H/T-ζ、及びCD19-CD8H/T-ζのCAR T細胞を、様々な量のCD19を発現するNALM6クローンと24時間共培養し、分泌されたIL-2をELISAにより上清中で測定した。異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表的な結果である。統計的比較は、CD19-CD28H/T-ζとCD19-CD8H/T-ζとの間で、スチューデントのt検定(両側)により行った。
【
図9A】本開示のいくつかの実施形態に従った4つの例示的なCARの設計の概略構造を示す。
【
図9B】本開示のいくつかの実施形態に従った4つの例示的なCARの設計の概略構造を示す。
【
図9C】本開示のいくつかの実施形態に従った4つの例示的なCARの設計の概略構造を示す。
【
図9D】本開示のいくつかの実施形態に従った4つの例示的なCARの設計の概略構造を示す。
【
図10】
図9A~
図9Dに記載されたCARの設計の発現を示すフロープロットである。すべてのCARは、ヒンジドメイン及び膜貫通ドメインにかかわらず、T細胞の表面上で同様に発現した。
【
図11】CD28ヒンジドメインがCARの機能性の向上に関与していることを示唆し、CD28Hi-CD8TMの組み合わせがより強力なものとなり得ることをさらに示唆する実験結果を模式的にまとめたものである。
図11Aは、量が増加するCD19を発現するNALM6クローンとの共培養に応じたIFNγの産生を示す。
図11Bは、量が増加するCD19を発現するNALM6クローンとの共培養に応じたサイトカインIL-2の産生を示す。
【
図12】CD19
low白血病に対する細胞殺傷効果の増強にCD28ヒンジドメインが関与していることを示唆する実験結果を模式的にまとめたものである。
【
図13】CD28ヒンジTMDが、より効率的な受容体クラスタリング、T細胞の活性化、及び腫瘍細胞の殺傷をもたらすことを説明するために行われた実験の結果を図式的にまとめたものである。
図13A~13Bは、CAR T細胞とNALM6細胞をマイクロウェルプレートに低密度で播種し、1つの腫瘍細胞と1つのCAR T細胞を含むウェルをスキャンした。実験は2つの異なるT細胞ドナーで6回行われた。
図13Aは、単一細胞のマイクロウェル殺傷実験の代表的なウェルを示す。CAR T細胞及びNALM6白血病細胞は、それぞれCellTrace Far Red(偽色のマゼンタ)及びGFP(偽色のシアン)ラベルによって区別された。細胞死は、細胞不透過性のヨウ化プロピジウム色素(PI、偽色の黄色)の流入によって決定された。溶解性接合体は、1つのT細胞と1つのNALM6細胞が閾値の距離内に留まり、NALM6細胞が死んだ(PIを取り込んだ)事象と定義した。非溶解性接合体とは、T細胞と腫瘍細胞が相互に作用するが、NALM6細胞が死ななかった(PIを取り込まなかった)接合体を表す。DICは、Differential interference contrast(微分干渉コントラスト)の略であり、Epiは、epifluorescence(エピ蛍光)の略である。
図13Bは、CAR構築物ごとに1つの腫瘍細胞と1つのT細胞を含むウェルで、T細胞/腫瘍細胞の相互作用からPI流入までの時間を測定した。全6回の実験(400~600ウェル)からのプールデータを示す。エラーバーはSDを表す。統計解析はスチューデントのt検定(両側)で行った。
図13Cは、T細胞の死をもたらした非溶解性接合体(T細胞と腫瘍細胞は相互作用したが、NALM6細胞は死ななかった接合体)の割合を、6回の実験のそれぞれで測定した。
【
図14-1】CD28ヒンジTMDが、特に標的抗原密度が低い場合に、より効率的な受容体クラスタリング、T細胞の活性化、及び腫瘍細胞の殺傷をもたらすことを説明するために行った追加実験の結果を模式的にまとめたものである。
図14Aは、TIRF(全反射照明蛍光顕微鏡)イメージングの図である。CD19-CD28H/T-4-1BBζ及びCD19-4-1BBζ CAR T細胞を刺激するために、CAR T細胞を、ビオチン-ストレプトアビジン-ビオチンブリッジで結合した自由に拡散するCD19タンパク質で機能化した平面支持脂質二重層(SLB)に暴露した。リガンドと受容体が結合すると、リガンドと結合した受容体がマイクロクラスターに再編成され、チロシンキナーゼZAP70(GFPと融合、この図には示されていない)が細胞質から細胞膜にリクルートされ、マイクロクラスターの求心的な移動が細胞周辺部から細胞中心部へと促される。これらの事象は、TIRF顕微鏡で可視化される(蛍光:CAR-mCherry、ZAP70-GFP、Streptavidin-Alexa647)。平面支持脂質二重層におけるリガンド密度は、小さな一枚膜小胞(SUV)を含むビオチン-PEの濃度によって制御される。様々な発現レベルを示す細胞間のリクルートメントレベル/クラスタリングの度合いを評価するために、分散の指標(標準偏差を各細胞の蛍光強度の平均値で割った正規化分散、詳細は方法を参照)を用いた。
図14Bは、
図14A~
図14Iの実験において、異なるCD19密度での各CAR構築物について、免疫シナプスにリクルートされたCAR分子のクラスタリングの度合い(分散の指標)を示したものである。
図14Cは、高濃度(~6.0分子/μm
2;上段)及び低濃度(~0.6分子/μm
2;下段)のCD19を含む平面支持脂質二重層上で活性化されたZAP70-GFPでトランスフェクトされた単一のCD19-CD28H/T-4-1BBζ-mCherry(左段)及びCD19-CD8H/T-4-1BBζ-mCherry(右段)のCAR T細胞の代表的な画像である。
図14Dは、4つの異なるCD19密度において、各CAR構築物の免疫シナプスにリクルートされたZAP70-GFPのクラスタリングの度合い(分散の指標)を示している。
図14Eは、
図14DからプールされたZAP70のクラスタリングの度合い(分散の指標)データを、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットした図である。
図14Fは、リガンド密度に対する用量反応曲線としてプロットされた、活性化された細胞の割合(閾値以上のZAP70リクルートメント)。
図14Gは、4つの異なるCD19密度で各CAR構築物の免疫シナプスにリクルートされたリガンド-受容体複合体のクラスタリングの度合い(分散の指標)。
図14Hは、(h)からのプールされたリガンド-受容体複合体のクラスター化の度合い(分散指数)データを、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットしたものである。
図14Iは、リガンド-受容体複合体をリクルートする細胞の割合(閾値以上)を、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットしたもの。
図14A~Iに示される結果(平均値±SDで示す)は、異なるT細胞ドナーを用いて行った2つの実験のうち、1つの実験の代表的な結果である。条件ごとにn>100である。統計的解析は、両側t検定で行った。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値は以下のようにアスタリスクで示される:p>0.05、有意でない、NS;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。データは、異なるT細胞ドナーを用いた2回の実験の代表例である。条件ごとにn>100である。統計的解析にはスチューデントのt検定を用いた。
【
図14-2】CD28ヒンジTMDが、特に標的抗原密度が低い場合に、より効率的な受容体クラスタリング、T細胞の活性化、及び腫瘍細胞の殺傷をもたらすことを説明するために行った追加実験の結果を模式的にまとめたものである。
図14Aは、TIRF(全反射照明蛍光顕微鏡)イメージングの図である。CD19-CD28H/T-4-1BBζ及びCD19-4-1BBζ CAR T細胞を刺激するために、CAR T細胞を、ビオチン-ストレプトアビジン-ビオチンブリッジで結合した自由に拡散するCD19タンパク質で機能化した平面支持脂質二重層(SLB)に暴露した。リガンドと受容体が結合すると、リガンドと結合した受容体がマイクロクラスターに再編成され、チロシンキナーゼZAP70(GFPと融合、この図には示されていない)が細胞質から細胞膜にリクルートされ、マイクロクラスターの求心的な移動が細胞周辺部から細胞中心部へと促される。これらの事象は、TIRF顕微鏡で可視化される(蛍光:CAR-mCherry、ZAP70-GFP、Streptavidin-Alexa647)。平面支持脂質二重層におけるリガンド密度は、小さな一枚膜小胞(SUV)を含むビオチン-PEの濃度によって制御される。様々な発現レベルを示す細胞間のリクルートメントレベル/クラスタリングの度合いを評価するために、分散の指標(標準偏差を各細胞の蛍光強度の平均値で割った正規化分散、詳細は方法を参照)を用いた。
図14Bは、
図14A~
図14Iの実験において、異なるCD19密度での各CAR構築物について、免疫シナプスにリクルートされたCAR分子のクラスタリングの度合い(分散の指標)を示したものである。
図14Cは、高濃度(~6.0分子/μm
2;上段)及び低濃度(~0.6分子/μm
2;下段)のCD19を含む平面支持脂質二重層上で活性化されたZAP70-GFPでトランスフェクトされた単一のCD19-CD28H/T-4-1BBζ-mCherry(左段)及びCD19-CD8H/T-4-1BBζ-mCherry(右段)のCAR T細胞の代表的な画像である。
図14Dは、4つの異なるCD19密度において、各CAR構築物の免疫シナプスにリクルートされたZAP70-GFPのクラスタリングの度合い(分散の指標)を示している。
図14Eは、
図14DからプールされたZAP70のクラスタリングの度合い(分散の指標)データを、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットした図である。
図14Fは、リガンド密度に対する用量反応曲線としてプロットされた、活性化された細胞の割合(閾値以上のZAP70リクルートメント)。
図14Gは、4つの異なるCD19密度で各CAR構築物の免疫シナプスにリクルートされたリガンド-受容体複合体のクラスタリングの度合い(分散の指標)。
図14Hは、(h)からのプールされたリガンド-受容体複合体のクラスター化の度合い(分散指数)データを、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットしたものである。
図14Iは、リガンド-受容体複合体をリクルートする細胞の割合(閾値以上)を、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットしたもの。
図14A~Iに示される結果(平均値±SDで示す)は、異なるT細胞ドナーを用いて行った2つの実験のうち、1つの実験の代表的な結果である。条件ごとにn>100である。統計的解析は、両側t検定で行った。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値は以下のようにアスタリスクで示される:p>0.05、有意でない、NS;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。データは、異なるT細胞ドナーを用いた2回の実験の代表例である。条件ごとにn>100である。統計的解析にはスチューデントのt検定を用いた。
【
図14-3】CD28ヒンジTMDが、特に標的抗原密度が低い場合に、より効率的な受容体クラスタリング、T細胞の活性化、及び腫瘍細胞の殺傷をもたらすことを説明するために行った追加実験の結果を模式的にまとめたものである。
図14Aは、TIRF(全反射照明蛍光顕微鏡)イメージングの図である。CD19-CD28H/T-4-1BBζ及びCD19-4-1BBζ CAR T細胞を刺激するために、CAR T細胞を、ビオチン-ストレプトアビジン-ビオチンブリッジで結合した自由に拡散するCD19タンパク質で機能化した平面支持脂質二重層(SLB)に暴露した。リガンドと受容体が結合すると、リガンドと結合した受容体がマイクロクラスターに再編成され、チロシンキナーゼZAP70(GFPと融合、この図には示されていない)が細胞質から細胞膜にリクルートされ、マイクロクラスターの求心的な移動が細胞周辺部から細胞中心部へと促される。これらの事象は、TIRF顕微鏡で可視化される(蛍光:CAR-mCherry、ZAP70-GFP、Streptavidin-Alexa647)。平面支持脂質二重層におけるリガンド密度は、小さな一枚膜小胞(SUV)を含むビオチン-PEの濃度によって制御される。様々な発現レベルを示す細胞間のリクルートメントレベル/クラスタリングの度合いを評価するために、分散の指標(標準偏差を各細胞の蛍光強度の平均値で割った正規化分散、詳細は方法を参照)を用いた。
図14Bは、
図14A~
図14Iの実験において、異なるCD19密度での各CAR構築物について、免疫シナプスにリクルートされたCAR分子のクラスタリングの度合い(分散の指標)を示したものである。
図14Cは、高濃度(~6.0分子/μm
2;上段)及び低濃度(~0.6分子/μm
2;下段)のCD19を含む平面支持脂質二重層上で活性化されたZAP70-GFPでトランスフェクトされた単一のCD19-CD28H/T-4-1BBζ-mCherry(左段)及びCD19-CD8H/T-4-1BBζ-mCherry(右段)のCAR T細胞の代表的な画像である。
図14Dは、4つの異なるCD19密度において、各CAR構築物の免疫シナプスにリクルートされたZAP70-GFPのクラスタリングの度合い(分散の指標)を示している。
図14Eは、
図14DからプールされたZAP70のクラスタリングの度合い(分散の指標)データを、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットした図である。
図14Fは、リガンド密度に対する用量反応曲線としてプロットされた、活性化された細胞の割合(閾値以上のZAP70リクルートメント)。
図14Gは、4つの異なるCD19密度で各CAR構築物の免疫シナプスにリクルートされたリガンド-受容体複合体のクラスタリングの度合い(分散の指標)。
図14Hは、(h)からのプールされたリガンド-受容体複合体のクラスター化の度合い(分散指数)データを、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットしたものである。
図14Iは、リガンド-受容体複合体をリクルートする細胞の割合(閾値以上)を、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットしたもの。
図14A~Iに示される結果(平均値±SDで示す)は、異なるT細胞ドナーを用いて行った2つの実験のうち、1つの実験の代表的な結果である。条件ごとにn>100である。統計的解析は、両側t検定で行った。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値は以下のようにアスタリスクで示される:p>0.05、有意でない、NS;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。データは、異なるT細胞ドナーを用いた2回の実験の代表例である。条件ごとにn>100である。統計的解析にはスチューデントのt検定を用いた。
【
図14-4】CD28ヒンジTMDが、特に標的抗原密度が低い場合に、より効率的な受容体クラスタリング、T細胞の活性化、及び腫瘍細胞の殺傷をもたらすことを説明するために行った追加実験の結果を模式的にまとめたものである。
図14Aは、TIRF(全反射照明蛍光顕微鏡)イメージングの図である。CD19-CD28H/T-4-1BBζ及びCD19-4-1BBζ CAR T細胞を刺激するために、CAR T細胞を、ビオチン-ストレプトアビジン-ビオチンブリッジで結合した自由に拡散するCD19タンパク質で機能化した平面支持脂質二重層(SLB)に暴露した。リガンドと受容体が結合すると、リガンドと結合した受容体がマイクロクラスターに再編成され、チロシンキナーゼZAP70(GFPと融合、この図には示されていない)が細胞質から細胞膜にリクルートされ、マイクロクラスターの求心的な移動が細胞周辺部から細胞中心部へと促される。これらの事象は、TIRF顕微鏡で可視化される(蛍光:CAR-mCherry、ZAP70-GFP、Streptavidin-Alexa647)。平面支持脂質二重層におけるリガンド密度は、小さな一枚膜小胞(SUV)を含むビオチン-PEの濃度によって制御される。様々な発現レベルを示す細胞間のリクルートメントレベル/クラスタリングの度合いを評価するために、分散の指標(標準偏差を各細胞の蛍光強度の平均値で割った正規化分散、詳細は方法を参照)を用いた。
図14Bは、
図14A~
図14Iの実験において、異なるCD19密度での各CAR構築物について、免疫シナプスにリクルートされたCAR分子のクラスタリングの度合い(分散の指標)を示したものである。
図14Cは、高濃度(~6.0分子/μm
2;上段)及び低濃度(~0.6分子/μm
2;下段)のCD19を含む平面支持脂質二重層上で活性化されたZAP70-GFPでトランスフェクトされた単一のCD19-CD28H/T-4-1BBζ-mCherry(左段)及びCD19-CD8H/T-4-1BBζ-mCherry(右段)のCAR T細胞の代表的な画像である。
図14Dは、4つの異なるCD19密度において、各CAR構築物の免疫シナプスにリクルートされたZAP70-GFPのクラスタリングの度合い(分散の指標)を示している。
図14Eは、
図14DからプールされたZAP70のクラスタリングの度合い(分散の指標)データを、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットした図である。
図14Fは、リガンド密度に対する用量反応曲線としてプロットされた、活性化された細胞の割合(閾値以上のZAP70リクルートメント)。
図14Gは、4つの異なるCD19密度で各CAR構築物の免疫シナプスにリクルートされたリガンド-受容体複合体のクラスタリングの度合い(分散の指標)。
図14Hは、(h)からのプールされたリガンド-受容体複合体のクラスター化の度合い(分散指数)データを、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットしたものである。
図14Iは、リガンド-受容体複合体をリクルートする細胞の割合(閾値以上)を、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットしたもの。
図14A~Iに示される結果(平均値±SDで示す)は、異なるT細胞ドナーを用いて行った2つの実験のうち、1つの実験の代表的な結果である。条件ごとにn>100である。統計的解析は、両側t検定で行った。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値は以下のようにアスタリスクで示される:p>0.05、有意でない、NS;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。データは、異なるT細胞ドナーを用いた2回の実験の代表例である。条件ごとにn>100である。統計的解析にはスチューデントのt検定を用いた。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示は、概して、とりわけ、CD28由来のヒンジドメインと、所望により、CD28ヒンジドメインと異種の共刺激ドメイン、例えば、CD28由来ではない共刺激ドメインとを含むキメラポリペプチド及びキメラ抗原受容体(CAR)に関する。本明細書に開示される種々のキメラポリペプチド及びCARは、共刺激ドメインを含まず、一方、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARの他のものは、CD28由来ではない1つ以上の共刺激ドメインを含む。本開示は、そのようなポリペプチド及びCARの製造に有用な組成物及び方法、並びに疾患(例えば、癌)などの状態の検出及び治療のための方法も提供する。
【0034】
キメラ抗原受容体は、通常のフォーマットにおいて、T細胞のエフェクター機能に抗体の特異性を移植する組換え受容体構築物です。キメラ抗原受容体では、ヒンジドメインは概して標的部位とT細胞の細胞膜の間に位置するポリペプチド構造、すなわち標的部位と細胞内ドメインの間に配置されたポリペプチド構造を指す。これらの配列は、概してIgGサブクラス(IgG1やIgG4など)、IgD及びCD8ドメインに由来し、中でもIgG1が最も広く使用される。近年、ヒンジドメインに関するいくつかの研究は、主に以下の点に焦点を当てている:(1)Fcγ受容体への結合親和性を低下させることにより、ある種のオフターゲット活性化を排除すること;(2)一本鎖可変フラグメント(scFv)の柔軟性を高めることで、腫瘍抗原を標的とする特定のエピトープとCARの抗原標的部分との間の空間的制約を緩和すること;(3)scFvと標的エピトープの間の距離を短くすること;及び(4)抗Fc試薬を用いたCARの発現の検出を容易にすること。しかし、CAR T細胞の生理機能にヒンジドメインが与える影響はよく理解されていない。
【0035】
以下に詳述するように、CAR T細胞におけるヒンジドメインの効果をよりよく理解するために、CD8α又はCD28に由来するヒンジドメインを有しない、又は有する、いくつかの種類のCARが設計され構築された。その後、ヒンジドメインの有無が、CAR T細胞の成長速度、サイトカイン産生、及び細胞毒性に及ぼす影響を、エクスビボ及びインビボで系統的に評価した。そして、CAR構築物にCD28ヒンジドメインを組み込むことで、細胞の殺傷力を実質的に高め、腫瘍に反応してサイトカイン、例えばIFNγやインターロイキン2(IL-2)の産生を高めることができることが判明した。また、CD28ヒンジドメインを有する抗CD19 CAR T細胞と有さない抗CD19 CAR T細胞の発現量は同程度であるのに対し、CD28ヒンジドメインを有することで、抗CD19 CAR T細胞のインビボ抗腫瘍活性を高めることができることも判明した。
【0036】
本明細書で示す実験結果は、いくつかのCAR設計に組み込まれたCD28ヒンジドメインが、対応するCAR T細胞の抗腫瘍効果を高めることができることを示している。これらの結果は、既存の免疫療法アプローチを補完する、より効果的なキメラ抗原受容体を設計するための新しい戦略の可能性を示唆している。
【0037】
これらのポリペプチド及びCARをコードする核酸分子も提供される。本開示は、このようなポリペプチド及びCARを製造するのに有用な組成物及び方法、並びに癌などの状態の予防及び/又は治療のための方法をも提供する。
【0038】
本開示で言及されているすべての出版物及び特許出願は、個々の出版物又は特許出願が参照により援用されることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
一般的な実験手順
本発明の実施には、特に断らない限り、当業者によく知られている分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来の技術が採用される。これらの技術は、Sambrook,J.,&Russell,D.W.(2012)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(4th ed.).Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Laboratory and Sambrook,J.,&Russel,D.W.(2001).Molecular Cloning:A Laboratory Manual (3rd ed.).Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Laboratory(本明細書ではまとめて「Sambrook」と記載);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology.New York,NY:Wiley(2014年までの補足を含む);Bollag,D.M.et al.(1996).Protein Methods.New York,NY:Wiley-Liss;Huang,L.et al.(2005).Nonviral Vectors for Gene Therapy.San Diego:Academic Press;Kaplitt,M.G.et al.(1995).Viral Vectors:Gene Therapy and Neuroscience Applications. San Diego,CA:Academic Press;Lefkovits,I.(1997).The Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques.San Diego,CA:Academic Press;Doyle,A.et al.(1998).Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology.New York,NY:Wiley;Mullis,K.B.,Ferre,F.&Gibbs,R.(1994).PCR:The Polymerase Chain Reaction.Boston:Birkhauser Publisher;Greenfield,E.A.(2014).Antibodies:A Laboratory Manual(2nd ed.).New York,NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press;Beaucage,S.L.et al.(2000).Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry.New York,NY:Wiley,(2014年までの補足を含む);及びMakrides,S.C.(2003).Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells.Amsterdam,NL:Elsevier Sciences B.V.などの文献で充分に説明がされており、その開示内容は参照により本明細書に援用される。必要に応じて、市販のキットや試薬の使用を伴う手順は、通常、特に断りのない限り、メーカーが定めたプロトコルやパラメータに従って実施される。
【0040】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語、表記、及びその他の科学用語や専門用語は、本開示が関連する技術分野の当業者が共通して理解している意味を有することを意図する。場合によっては、共通に理解されている意味を有する用語は、明確にするため、及び/又は、容易に参照できるように、本明細書で定義されており、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも、当技術分野で共通に理解されていることに対する実質的な違いを示すと解釈されるべきではない。本明細書に記載又は参照される技術及び手順の多くは、当業者が従来の方法論を用いてよく理解し、共通して採用しているものである。
【0041】
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに他のものを指さない限り、複数が参照されることを含む。例えば、「a cell(細胞)」という用語は、その混合を含む、1つ又は複数の細胞を含む。「A及び/又はB」は、本明細書において、以下のすべての選択肢:「A」、「B」、「A又はB」並びに「A及びB」を含むために使用される。
【0042】
本明細書で使用されている「約」という用語は、およそという通常の意味を持っています。文脈から近似の程度が他に明らかでない場合、「約」とは、提供された値のプラスマイナス10%以内、又は最も近い有効数字に丸めることを意味し、いずれの場合も提供された値を含む。範囲が指定されている場合は、境界値を含む。
【0043】
本明細書では、「抗体」という用語は、抗原分子に特異的に結合する免疫グロブリンとして一般的に知られているクラスのタンパク質を指す。抗体という用語には、免疫グロブリンFc領域を含むIgG2モノクローナル抗体などの完全長モノクローナル抗体(mAb)が含まれる。抗体という用語には、二重特異性抗体、ダイアボディ、一本鎖抗体断片(scFv)、及びFab、F(ab’)2、Fvなどの抗体断片が含まれる。抗体が二重特異性抗体である場合、二重特異性抗体は多くの異なる形式をとることができる。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり、宿主を免疫して血清を採取する方法(ポリクローナル)、連続的なハイブリッド細胞株を調製して分泌タンパク質を採取する方法(モノクローナル)、又は天然抗体の特異的結合に必要なアミノ酸配列を少なくともコードするヌクレオチド配列又はその変異体をクローニングして発現させる方法など、当業界でよく知られている技術によって調製することができる。このように、抗体は、完全な免疫グロブリン又はその断片を含んでいてもよく、この免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3、IgMなどの様々なクラス及びアイソタイプが含まれます。その断片としては、Fab、Fv及びF(ab’)2、Fab’などを挙げることができる。さらに、特定の標的(例えば、CD19、GPC2、又はHER2)に対する結合親和性が維持される限り、免疫グロブリン又はその断片の凝集体、ポリマー、及び接合体を適切に使用することができる。
【0044】
「細胞」、「細胞培養物」、「細胞株」という用語は、特定の対象となる細胞、細胞培養物、細胞株だけでなく、そのような細胞、細胞培養物、細胞株の子孫又は潜在的な子孫を、培養における移入又は継代の回数に関係なく指す。すべての子孫が親細胞と完全に同一ではないことを理解すべきである。これは、突然変異(例えば、意図的又は偶然の突然変異)又は環境の影響(例えば、メチル化又は他の後成的な修飾)のいずれかに起因して、後続の世代で特定の修飾が生じる可能性があるためであり、子孫は実際には親細胞と同一ではないかもしれないが、子孫が元々の細胞、細胞培養物、又は細胞株の機能と同じ機能を保持する限り、本明細書で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。
【0045】
本明細書では、「キメラ抗原受容体」(CAR)という用語は、少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、TMD、及び細胞質シグナル伝達ドメイン(「細胞内シグナル伝達ドメイン」又はICDとも呼ばれる)を含むポリペプチド構築物を意味する。場合によっては、細胞質内シグナル伝達ドメインは、刺激分子に由来する機能的なシグナル伝達ドメインを含む。刺激分子は、T細胞受容体複合体に関連するゼータ鎖であることが多い。所望により、ICDは、例えば、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27、及び/又はCD28などの、少なくとも1つの共刺激分子に由来する1つ以上の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含むことができる。
【0046】
概して、本開示のCARは、宿主の細胞壁によりそれぞれ定義されるエクトドメインとエンドドメインとを含む。これに関して、「エクトドメイン」又は「細胞外ドメイン」という用語は、概して、細胞の外側又は膜状脂質二重層の外側にあるCARポリペプチドの部分を指し、これには、抗原認識結合ドメイン、任意のヒンジドメイン、及び膜を物理的にまたぐアミノ酸残基の外側にある任意のスペーサードメインが含まれ得る。逆に、「エンドドメイン」又は「細胞内ドメイン」という用語は、概して、細胞の内部又は膜状脂質二重層の内部にあるCARポリペプチドの部分を指し、この部分には、物理的に膜をまたいでいるアミノ酸残基の内側にある任意のスペーサードメイン、及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、ITAM含有配列、共刺激ドメインなど)からなるICDも含まれることがある。
【0047】
当業者であれば、核酸分子やポリペプチド分子に関連して使用される「由来」という用語は、その分子の起源又は出所を意味し、天然由来、組換え、未精製、又は精製された分子が含まれることを理解するであろう。核酸又はポリペプチド分子は、機能ユニットを生成するように組み立てられた部分又は要素を含む場合、「由来」とみなされる。部分又は要素は、進化的に保存された機能を維持する限り、複数の供給源から組み立てることができる。いくつかの実施形態では、誘導体核酸又はポリペプチド分子は、ソース核酸又はポリペプチド分子と実質的に同じ配列を含む。例えば、本開示の誘導体核酸又はポリペプチド分子は、ソース核酸又はポリペプチド分子に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有していてもよい。
【0048】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、及び核酸アナログを含むDNA又はRNA分子から構成される核酸分子を含む、RNA及びDNA分子の両方を指す。核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖)であり得る。核酸分子は、従来とは異なる又は修飾されたヌクレオチドを含んでよい。本明細書で使用される「ポリヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は、交換可能にポリヌクレオチド分子の配列を指す。本明細書に開示されているポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、37CFR§1.82)に記載されているように、ヌクレオチド塩基及びアミノ酸の標準的な略号を用いて示されており、この略号は、WIPO標準ST.25(1998)、付録2、表1-6の参照により援用される。
【0049】
本明細書で使用される「動作可能に連結され」という用語は、2つ以上の要素、例えば、ポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列の間の物理的又は機能的な連結を示し、それらが意図された様式で動作することを可能にする。例えば、目的のポリヌクレオチドと調節配列(例えば、プロモーター)との間の動作可能な連結は、目的のポリヌクレオチドの発現を可能にする機能的連結である。この意味で、「動作可能に連結された」という用語は、調節領域が関心のあるコーディング配列の転写又は翻訳を調節するのに有効であるように、調節領域と転写されるコーディング配列とが位置していることを指す。本明細書に開示されるいくつかの実施形態において、「動作可能に連結され」という用語は、調節配列が、mRNAをコードするポリペプチド、ポリペプチド、及び/又は機能性RNAの発現又は細胞内局在を指示又は調節するように、ポリペプチド又は機能性RNAをコードする配列に対して適切な位置に置かれる構成を示す。したがって、プロモーターは、核酸配列の転写を媒介することができれば、核酸配列と動作可能に連結している。動作可能に連結された要素は、連続していても、非連続であってもよい。ポリペプチドの文脈において、「動作可能に連結されている」とは、ポリペプチドの記載された活性を提供するための、アミノ酸配列(例えば、異なるドメイン)間の物理的連結(例えば、直接的又は間接的に連結されている)を意味する。本開示では、本開示の組換えポリペプチドの様々なドメインは、細胞内の組換えポリペプチドの適切なフォールディング、プロセシング、ターゲティング、発現、結合、及び他の機能的特性を保持するために、動作可能に連結されてもよい。本開示の組換えポリペプチドの動作可能に連結されたドメインは、連続していても、非連続であってもよい(例えば、リンカーを介して互いに連結されている)。
【0050】
2つ以上の核酸又はタンパク質の文脈で本明細書で使用される「パーセント同一性」という用語は、後述のデフォルトパラメータを用いたBLAST若しくはBLAST 2.0の配列比較アルゴリズムを用いて、又は手動でのアラインメントと目視によって測定して、同じであるか、又は同じであるヌクレオチド若しくはアミノ酸の指定された割合(例えば、比較ウィンドウ又は指定された領域での最大の対応のために比較及びアラインメントされたときに、約60%の配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の同一性)を有する2つ以上の配列又はサブ配列という文脈で用いられる。例えば、NCBIのWebサイト(ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)を参照。以下、このような配列は「実質的に同一」と呼ぶ。この定義は、配列の相補性についても言及し、適用し得る。また、この定義には、欠失や付加がある配列や、置換がある配列も含まれる。配列の同一性は、GCSプログラムパッケージ(Devereuxら、Nucleic Acids Res.12:387、1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschulら、J Mol Biol 215:403、1990)などの、公表された技術及び広く利用可能なコンピュータプログラムを用いて計算することができる。配列の同一性は、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(1710 University Avenue,Madison,Wis.53705)のGenetics Computer GroupのSequence Analysis Software Packageなどの配列解析ソフトウェアを用いて、そのデフォルトパラメータで測定することができる。アミノ酸置換は、例えば、CDR配列中の非必須アミノ酸残基における保存的アミノ酸置換であってもよい。「保存的アミノ酸置換」とは、元のアミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものと理解される。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で公知である。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐した側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0051】
本明細書で使用される「組換え」核酸分子、ポリペプチド、及び細胞という用語は、人間の介入によって改変された核酸分子、ポリペプチド、及び細胞を意味する。非限定的な例として、組換え核酸分子は以下のような:1)例えば、化学的若しくは酵素的手法又は核酸分子の組換えを用いて、インビトロで合成若しくは修飾されたもの;2)天然には結合されていない結合されたヌクレオチド配列を含むもの;3)天然に存在する核酸分子の配列に関して1つ以上のヌクレオチドを欠くように、分子クローニング技術を用いて設計されたもの;及び/又は4)分子クローニング技術を用いて操作され、天然に存在する核酸配列に対して1つ以上の配列変更又は再配列を有するものである。組換えタンパク質の非限定的な例は、本明細書で提供されるキメラ抗原受容体である。
【0052】
本明細書では、「被験者」又は「個体」は、ヒト(例えば、ヒト被験者)及びヒト以外の動物などの動物を含む。いくつかの実施形態では、「被験者」又は「個体」は、医師のケアを受けている患者である。したがって、被験者は、対象の疾患(例えば、癌)及び/若しくは疾患の1つ以上の症状を有する、有するリスクがある、又は有する疑いがあるヒトの患者又は個体であり得る。また、被験者は、診断時又はそれ以降に関心のある状態のリスクがあると診断された個体でもよい。「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物、例えば哺乳類、例えばげっ歯類、例えばマウス、及び非哺乳類、例えば非ヒト霊長類、例えばヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
【0053】
本明細書では、「ベクター」という用語は、別の核酸分子を移入又は輸送することができる核酸分子又は配列を指すために使用される。例えば、ベクターは、遺伝子を細胞内に移入するための遺伝子送達ビヒクルとして使用することができる。移入された核酸分子は、一般的に、ベクター核酸分子に連結され、例えば、挿入される。概して、ベクターは、適切な制御要素と関連している場合、複製することができる。「ベクター」という用語には、クローニングベクター及び発現ベクターのほか、ウイルスベクター及び統合ベクターが含まれる。「発現ベクター」とは、調節領域を含むベクターであり、それによってインビトロ及び/又はインビボでDNA配列及び断片を発現させることができる。ベクターは、細胞内での自律的な複製を指示する配列を含んでいてもよいし、宿主細胞のDNAに統合するのに充分な配列を含んでいてもよい。有用なベクターとしては、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、バクテリア人工染色体、及びウイルスベクターが挙げられる。有用なウイルスベクターには、例えば、複製欠陥のあるレトロウイルス及びレンチウイルスが含まれる。いくつかの実施形態では、ベクターは、遺伝子送達ベクターである。
【0054】
本明細書に記載の開示の態様及び実施形態には、「を備える」、「からなる」、及び「から本質的になる」の態様及び実施形態が含まれることが理解される。本明細書で使用されるように、「を備える」は、「を含む」、「を含有する」又は「を特徴とする」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の未列挙の要素又は方法ステップを除外するものではない。本明細書で使用される「からなる」は、請求された組成物又は方法で特定されていない要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書で使用される「から本質的になる」は、請求された組成物又は方法の基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えない材料又はステップを除外しない。本明細書において、特に組成物の成分の説明、又は方法のステップの説明において、「からなる」という用語を記載することは、本質的に記載された成分又はステップからなる、それらの組成物及び方法を包含すると理解される。
【0055】
見出し、例えば、(a)、(b)、(i)などは、単に明細書及び特許請求の範囲を読みやすさのために提示されている。明細書又は特許請求の範囲で見出しを使用することは、ステップ又は要素をアルファベット順若しくは数字順、又はそれらが提示されている順序で実行されることを必要としない。
【0056】
当業者であれば理解されるものと思われるが、本明細書に記載のすべての範囲は、説明文を提供するという点など、あらゆる目的のために、あらゆる可能な小範囲とその小範囲の組み合わせをも包含する。記載されている任意の範囲は、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解することを充分に説明し、可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書に記載の各範囲は、下位3分の1、中間3分の1、上位3分の1などに容易に分解することができる。また、当業者であれば理解されるものと思われるが、「~まで」、「少なくとも」、「~より大きい」、「~より小さい」などの言葉は、記載されている数を含み、その後、上述のように小範囲に分解できる範囲を指す。また、当業者であれば理解されるであろうと思われるが、範囲には個々の要素が含まれます。したがって、例えば、1~3個の物品を有するグループとは、1個、2個、又は3個の物品を有するグループを指す。同様に、1~5個の物品を有するグループは、1個、2個、3個、4個、又は5個の物品を有するグループを意味するなどである。
【0057】
本明細書では、数値の前に「約」という言葉を付けて、特定の範囲を示す。本明細書では、「約」という用語は、その用語が先行する正確な数値、及びその用語が先行する数値に近い又は近似する数値に対する文字通りの支えを提供するために使用される。ある数字が具体的に言及された数字に近いか近似しているかを判断する際、言及されていない近い数字又は近似している数字は、それが提示されている文脈において、具体的に言及された数字と実質的に等価なものを提供する数字であってもよい。
【0058】
明確にするために別々の実施形態の文脈で説明されている本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本開示の様々な特徴も、別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。本開示に係る実施形態のすべての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、あたかもそれぞれの組み合わせが個別に明示的に開示されているかのように、本明細書に開示されている。さらに、様々な実施形態及びその要素のすべてのサブコンビネーションも本開示に具体的に包含され、そのようなサブコンビネーションの一つ一つが本明細書に個別に明示的に開示されているかのように、本明細書に開示されている。
【0059】
本開示の組成物
以下でより詳細に説明するように、本開示の一態様は、CD28由来のヒンジドメインを含む新規のキメラポリペプチド及びキメラ抗原受容体(CAR)に関する。いくつかの実施形態では、本開示のCARは、CD28ヒンジドメインと異種の共刺激ドメイン、例えば、CD28由来ではない共刺激ドメインをさらに含む。また、そのようなキメラポリペプチドをコードする組換え核酸、及び本明細書に開示されているようなキメラポリペプチドを発現するように設計され、がん細胞などの目的の細胞に対して指向性を有する組換え細胞も提供される。
【0060】
キメラポリペプチド
一態様では、本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、(i)抗原を結合することができるECDを含む第1のポリペプチドセグメント、(ii)CD28由来のヒンジドメインを含む第2のポリペプチドセグメント、(iii)TMDを含む第3のポリペプチドセグメントを含むキメラポリペプチドに関する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の共刺激ドメインを含むICDを含む第4のポリペプチドセグメントをさらに含み、ここで、1つ以上の共刺激ドメインはCD28からのものではない。ECDのそれぞれの標的への結合は、標的抗原の天然リガンドと競合的又は非競合的な様式のいずれかであり得る。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、ECDのその標的抗原への結合は、リガンドをブロックするものであり得る。他のいくつかの実施形態では、ECDのその標的抗原への結合は、天然リガンドの結合をブロックしない。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、天然では連結されていない第2のポリペプチドセグメントに動作可能に連結された少なくとも1つのポリペプチドセグメントを含む。キメラポリペプチドセグメントは、通常は別々のタンパク質に存在するが、本明細書で開示されるキメラポリペプチドで一緒になってもよく、又は、通常は同じタンパク質中に存在するが、本明細書で開示されるキメラポリペプチドで新しい配置になってもよい。本明細書に開示されているキメラポリペプチドは、例えば、化学合成によって、又は、ポリペプチドセグメントが所望の関係でコード化されているキメラポリヌクレオチドを作成し、翻訳することによって作成することができる。
【0061】
ポリペプチドのセグメントを「第1」、「第2」、「第3」、「第4」のいずれかに指定することは、キメラポリペプチド内での「第1」、「第2」、「第3」、「第4」のポリペプチドセグメントの特定の構造的配置を意味するものではない。加えて、又は代わりに、キメラポリペプチドは、標的抗原に結合することができる1つ以上のポリペプチドセグメント、及び/又は、それぞれが同じ標的抗原に結合することができるか若しくは異なる標的抗原に結合することができる少なくとも2つのポリペプチドセグメントを含んでもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドセグメントの少なくとも2つが互いに直接連結されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドセグメントのすべてが互いに直接連結されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドセグメントのうち少なくとも2つが、少なくとも1つの共有結合を介して互いに直接連結されている。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのポリペプチドセグメントは、少なくとも1つのペプチド結合を介して互いに直接連結されている。いくつかの実施形態では、本開示のキメラポリペプチドは、2つ以上のポリペプチドセグメントを一緒に結合する1つ以上のリンカーを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドセグメントの少なくとも2つがリンカーを介して互いに動作可能に連結されている。本明細書に記載のキメラポリペプチドで使用できるリンカーには特に制限はない。いくつかの実施形態では、リンカーは、例えば、化学的架橋剤などの合成化合物リンカーである。市販されている適切な架橋剤の非限定的な例としては、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(Sulfo-EGS)、ジスルホスクシンイミジルタートレート(DST)、ジスルホスクシンイミジル酒石酸塩(sulfo-DST)、ビス[2-(スクシンイミドオキシーカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、及びビス[2-(スクシンイミドオキシーカルボニルオキシ)エチル]スルホン(sulfo-BSOCOES)が挙げられる。
【0063】
リンカーはリンカーペプチド配列であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、ポリペプチドセグメントの少なくとも2つが、リンカーペプチド配列を介して互いに動作可能に連結されている。原則として、リンカーペプチド配列の長さ及び/又はアミノ酸組成には特に制限はない。いくつかの実施形態では、約1~100個のアミノ酸残基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などのアミノ酸残基)を含む任意の単鎖ペプチドを、ペプチドリンカーとして使用することができる。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、約5~50、約10~60、約20~70、約30~80、約40~90、約50~100、約60~80、約70~100、約30~60、約20~80、約30~90のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、約1~10、約5~15、約10~20、約15~25、約20~40、約30~50、約40~60、約50~70個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、約40~70、約50~80、約60~80、約70~90、又は約80~100のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーペプチド配列は、約1~10、約5~15、約10~20、約15~25のアミノ酸残基を含む。
【0064】
キメラ抗原受容体(CARS)
上記のように、本開示のキメラポリペプチドは、(i)抗原を結合することができるECD、(ii)CD28由来のヒンジドメイン、(iii)TMD、及び(iv)1つ以上の共刺激ドメインを含むICDを含み、前記1つ以上の共刺激ドメインはCD28由来ではない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチドは、キメラ抗原受容体(CAR)として構成される。CARは、抗体に由来する細胞外抗原結合部分がヒンジドメイン及びTMDに結合した組換え受容体構築物であり、これはさらにT細胞受容体の細胞内T細胞シグナリングドメインに結合している。このように、CAR T細胞は、抗体の特異性とT細胞の細胞障害性及び記憶機能を組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、開示されたCARは、共刺激ドメインを含まない。これらのCARは、第1世代CARと呼ばれる(例えば、配列番号39及び
図8Aを参照)。いくつかの実施形態では、開示されるCARは、1つ以上の共刺激ドメインを含み、前記1つ以上の共刺激ドメインはCD28に由来しない。
【0065】
細胞外ドメイン(ECD)
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のキメラポリペプチドのECDは、1つ以上の標的リガンドに対する結合親和性を有している。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、細胞表面に発現しているか、そうでなければ、キメラポリペプチドに機械的な力を及ぼすことができるように、固定化、不動化、又は拘束されている。このように、特定の理論に拘束されるものではないが、本明細書で提供されるキメラポリペプチドのECDを細胞表面リガンドに結合させることは、必ずしも標的リガンドを標的細胞表面から除去するのではなく、代わりにキメラポリペプチドに機械的な引っ張り力を作用させる。例えば、他の方法では可溶性のリガンドが表面に結合している場合や、細胞外マトリックス中の分子に結合している場合には、そのリガンドを標的とすることができる。いくつかの実施形態では、標的リガンドは、細胞表面リガンドである。適切なリガンドタイプの非限定的な例としては、表面に結合している細胞表面受容体、接着タンパク質、炭水化物、脂質、糖脂質、リポタンパク質、リポ多糖、インテグリン、ムチン、及びレクチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、リガンドはタンパク質である。いくつかの実施形態では、リガンドは、炭水化物である。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチドのECDは、1つ以上の標的抗原に結合する抗原結合部位を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、抗体の1つ以上の抗原結合決定基又はその機能的抗原結合断片を含む。当業者は、本開示の記載により、「その機能的フラグメント」又は「その機能的バリアント」という用語が、フラグメント又はバリアントが由来する野生型分子と共通の量的及び/又は質的な生物学的活性を有する分子を意味することを容易に理解するであろう。例えば、抗体の機能的フラグメント又は機能的バリアントは、機能的フラグメント又は機能的バリアントの元となった抗体と同じエピトープに結合する能力を本質的に保持しているものである。例えば、細胞表面の受容体のエピトープに結合できる抗体は、N末端及び/又はC末端で切断し、当業者に公知のアッセイを用いて、そのエピトープ結合活性の保持を評価することができる。いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、抗体、抗原結合フラグメント(Fab)、一本鎖可変フラグメント(scFv)、ナノボディ、ダイアボディ、トリアボディ、ミニボディ、F(ab’)2フラグメント、F(ab)フラグメント、VHドメイン、VLドメイン、一本鎖可変フラグメント(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、VNARドメイン、VHHドメイン、又はそれらの機能的フラグメント。いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、scFvを含む。
【0067】
抗原結合部位は、天然のアミノ酸配列を含むことができ、また、所望の特性及び改善された特性、例えば、結合親和性を提供するように、エンジニアリング、設計、又は修正することができる。概して、抗体又は抗原結合部位の標的抗原(例えば、CD19抗原又はGPC2抗原)に対する結合親和性は、Frankel et al.,Mol.Immunol,16:101-106,1979に記載されているスキャッチャード法によって算出することができる。いくつかの実施形態では、結合親和性は、抗原/抗体の解離速度によって測定することができる。いくつかの実施形態では、高い結合親和性は、競合ラジオイムノアッセイによって測定することができる。いくつかの実施形態では、結合親和性は、ELISAによって測定することができる。いくつかの実施形態では、抗体の親和性は、フローサイトメトリーによって測定することができる。標的抗原(CD19やHER2など)に「選択的に結合する」抗体とは、標的抗原に高親和性で結合し、他の無関係な抗原には有意に結合しないが、高親和性で、例えば、平衡定数(KD)が100nM以下、例えば、60nM以下、30nM以下、15nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、100pM以下で抗原に結合する抗体のことである。
【0068】
当業者は、本開示のキメラポリペプチドを発現するように遺伝的に改変された細胞の所望の局在又は機能に基づいてECDを選択することができる。例えば、HER2抗原に特異的な抗体を含むECDを有するキメラポリペプチドは、HER2を発現している乳がん細胞に細胞を標的化することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチドのECDは、腫瘍関連抗原(TAA)又は腫瘍特異的抗原(TSA)を結合することができる。当業者であれば、TAAは、腫瘍細胞上及び正常細胞上、又は多くの正常細胞上に存在するが、腫瘍細胞上よりもはるかに低い濃度の、例えばタンパク質などの分子を含むことを理解するであろう。一方、TSAは、概して、腫瘍細胞には存在するが正常細胞には存在しないタンパク質などの分子を含む。
【0069】
抗原
原則として、好適な標的抗原に関しては、特に制限はない。本開示のいくつかの実施形態では、ECDの抗原結合部分は、腫瘍細胞によって発現される抗原、すなわち腫瘍関連抗原に存在するエピトープに特異的である。腫瘍関連抗原は、例えば、膵臓癌細胞、大腸癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、中皮腫細胞、乳癌細胞、尿路上皮癌細胞、肝癌細胞、頭頸部癌細胞、肉腫細胞、子宮頸部癌細胞、胃癌細胞、メラノーマ細胞、ぶどう膜癌細胞、胆管癌細胞、多発性骨髄腫細胞、白血病細胞、リンパ腫細胞、及び膠芽腫細胞に関連する抗原であり得る。いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、組織特異的抗原に存在するエピトープに特異的である。いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、疾患関連抗原に存在するエピトープに特異的である。
【0070】
適切な標的抗原の非限定的な例としては、グリピカン2(GPC2)、ヒト上皮成長因子受容体2(Her2/neu)、CD276(B7-H3)、IL-13受容体α1、IL-13受容体α2、α-フェトプロテイン(AFP)、カルシノエンブリオニック抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮腫瘍抗原(ETA)などが挙げられます。他の適切な標的抗原には、チロシナーゼ、メラノーマ関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD123、CD93、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、総嚢胞性疾患流体タンパク質(GCDFP-15)、ALK、DLK1、FAP、NY-ESO、WT1、HMB-45抗原、タンパク質melan-A(Tリンパ球が認識するメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋特異的アクチン(MSA)、ニューロフィラメント、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書に開示されたキメラポリペプチド及びCARに適し得る追加の抗原には、ピルビン酸キナーゼアイソザイムタイプM2(腫瘍M2-PK)の二量体、CD19、CD20、CD5、CD7、CD3、TRBC1、TRBC2、BCMA、CD38、CD123、CD93、CD34、CD1a、SLAMF7/CS1、FLT3、CD33、CD123、TALLA-1、CSPG4、DLL3、Kappa軽鎖、ランバ軽鎖、CD16/ FcγRIII、CD64、FITC、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、GD3、EGFRvIII(上皮成長因子バリアントIII)、EGFR及びそのイソバリアント、TEM-8、精子タンパク質17(Sp17)、メソセリンが含まれるが、これらに限定されない。適切な抗原のさらなる非限定的な例としては、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、プロステイン、NKG2D、TARP(T細胞受容体ガンマ代替リーディングフレームタンパク質(T cell receptor gamma alternate reading frame protein))、Trp-p8、STEAP1(前立腺の6回膜上皮抗原1)、異常rasタンパク質、異常p53タンパク質、インテグリン3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2 Kirsten rat sarcoma viral oncogene(V-Ki-ras2カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子))、及びRal-B。いくつかの実施形態では、抗原は、グリピカン2(GPC2)、CD19、ヒト上皮成長因子受容体2(Her2/neu)、CD276(B7-H3)、又はIL-13-受容体アルファである。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗原は標的細胞上で低密度で発現され、例えば、細胞あたりの標的抗原の分子数が約6000未満である。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞あたりの標的抗原の約5000分子未満、約4000分子未満、約3000分子未満、約2000分子未満、約1000分子未満、又は約500分子未満の密度で発現される。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞あたりの標的抗原の約2000分子未満、例えば、約1800分子未満、約1600分子未満、約1400分子未満、約1200分子未満、約1000分子未満、約800分子未満、約600分子未満、約400分子未満、約200分子未満、又は約100分子未満の密度で発現する。いくつかの実施形態では、抗原は、細胞あたりの標的抗原の約1000分子未満、例えば、約900分子未満、約800分子未満、約700分子未満、約600分子未満、約500分子未満、約400分子未満、約300分子未満、約200分子未満、又は約100分子未満の密度で発現される。いくつかの実施形態では、抗原は、例えば、細胞あたり約5000分子~約100分子の標的抗原の範囲の密度で発現される。約5000分子~約1000分子、約4000分子~約2000分子、約3000分子~約2000分子、約4000分子~約3000分子、約3000分子~約1000分子、約2000分子~約1000分子、約1000分子~約500分子、約500分子~約100分子の細胞あたりの標的抗原の密度で発現される。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、GPC2に結合する抗原結合部分を含むECDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチド及びCARは、CD19に結合する抗原結合部分を含むECDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチド及びCARは、HER2に結合する抗原結合部分を含むECDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチド及びCARは、B7-H3に結合する抗原結合部分を含むECDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、配列番号3、配列番号17、配列番号31、配列番号43、又は配列番号57に対して少なくとも80%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する抗原結合部分を含むECDを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、配列番号3、配列番号17、又は配列番号31の配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、配列番号43の配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、抗原結合部分は、配列番号57の配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。
【0074】
ヒンジドメイン
上述したように、キメラ抗原受容体において、「ヒンジドメイン」という用語は、一般的に、標的部位とTMDの間に配置された柔軟なポリペプチドコネクター領域を意味する。これらの配列は、一般的にIgGサブクラス(IgG1及びIgG4など)、IgD及びCD8ドメインに由来し、その中でもIgG1が最も広く使用されている。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、フランキングポリペプチド領域に構造的な柔軟性を提供する。ヒンジドメインは、天然又は合成のポリペプチドからなっていてもよい。当業者であれば、ヒンジドメインは、抗原結合部分とそれによって認識される抗原の部分との関係において、抗原結合部分の最適な位置を促進することによって、CARの機能を向上させることができることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、最適なCARの活性に必要とされない場合があることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、短いアミノ酸配列からなる有益なヒンジドメインは、例えば、抗体の結合速度を変化させる可能性のある立体的な制約を緩和することによって、抗原結合を促進することにより、CARの活性を促進する。ヒンジドメインをコードする配列は、抗原認識部分とTMDの間に配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗原結合部分の下流及びTMDの上流に動作可能に連結されている。
【0075】
ヒンジ配列は、概して、任意の適切な分子に由来する又はそれから得られる任意の部分又は配列であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ヒンジ配列は、ヒトCD8α分子又はCD28分子、及びフランキング領域に柔軟性を提供する同様の機能を提供する任意の他の受容体に由来し得る。ヒンジドメインは、約4アミノ酸(aa)~約50aaの長さを有することができ、例えば、約4aa~約10aa、約10aa~約15aa、約aa~約20aa、約20aa~約25aa、約25aa~約30aa、約30aa~約40aa、又は約40aa~約50aaの長さを有することができる。適切なヒンジドメインは、容易に選択することができ、1アミノ酸(例えば、Gly)~20aa、2aa~15aa、3aa~12aa、4aa~10aa、5aa~9aa、6aa~8aa、又は7aa~8aaを含む数多くの適切な長さのいずれかであり、1、2、3、4、5、6、又は7aaであり得る。適切なヒンジドメインの非限定的な例としては、CD8ヒンジドメイン、CD28ヒンジドメイン、CTLA4ヒンジドメイン、又はIgG4ヒンジドメインが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、ヒトCD8α(別名:CD8a)分子又はCD28分子に由来する領域、及びフランキング領域に柔軟性を提供する同様の機能を提供する任意の他の受容体を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARは、CD8αヒンジドメインに由来するヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αヒンジドメインの1つ以上のコピーを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるCARは、CD28ヒンジドメインに由来するヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD28ヒンジドメインの1つ以上のコピーを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、配列番号5、配列番号19、配列番号33、配列番号45、又は配列番号59の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号5、配列番号19、配列番号33、配列番号45、又は配列番号59の配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。
【0076】
共刺激ドメイン
概して、本明細書で開示されるキメラポリペプチド、例えばCARに適した共刺激ドメインは、当技術分野で公知の共刺激ドメインのいずれかであり得る。サイトカイン産生を高めることができ、適切な共刺激ドメインの例としては、4-1BB(CD137)、CD27、CD28、OX40(CD134)、及び共刺激誘導性T細胞共刺激(ICOS)ポリペプチド配列に由来する共刺激ポリペプチド配列が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARの共刺激ドメインは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、共刺激CD27ポリペプチド配列、共刺激CD28ポリペプチド配列、共刺激OX40(CD134)ポリペプチド配列、及び共刺激誘導性T細胞共刺激(ICOS)ポリペプチド配列からなる群から選択される。一部の実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列に由来する共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチド及びCARは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチド及びCARは、共刺激CD28ポリペプチド配列に由来する共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチド及びCARは、共刺激CD28ポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、配列番号9、配列番号23、配列番号49、又は配列番号63の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、配列番号9、配列番号23、配列番号49、又は配列番号63の配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する共刺激ドメインを含む。
【0077】
本開示のいくつかの実施形態では、開示されたCARのICDは、例えば、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)、及び/又は免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)など、リン酸化の基質として機能する保存されたアミノ酸モチーフを含む。いくつかの実施形態では、開示されたCARのICDは、リン酸化の基質として機能するITAMモチーフ、ITIMモチーフ、又は関連する細胞内モチーフから選択された、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つの特定のチロシンベースのモチーフを含む。本開示のいくつかの実施形態では、開示されたCARのICDは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つのITAMを含む。概して、ITAMを含む任意のICDは、本明細書に記載のキメラポリペプチドの構築に好適に使用することができる。ITAMは、概して、多くの免疫細胞で発現するシグナル分子の尾部にしばしば存在する保存されたタンパク質モチーフを含む。このモチーフは、6~8個のアミノ酸で区切られたアミノ酸配列YxxL/Iの2つの繰り返しを含むことができ、各xは独立して任意のアミノ酸であり、保存されたモチーフYxxL/Ix(6-8)YxxL/Iを生成する。シグナル分子内のITAMは、細胞内のシグナル伝達に重要であり、シグナル分子の活性化後にITAM内のチロシン残基がリン酸化されることによって、少なくとも部分的に仲介される。また、ITAMは、シグナル伝達経路に関与する他のタンパク質のドッキング部位としても機能する可能性がある。いくつかの実施形態では、CD3ζ、FcRγ、及びそれらの組み合わせに由来するITAMから独立して選択された、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は少なくとも5つのITAMを含むICDである。いくつかの実施形態では、開示されたCARのICDは、CD3ζ ICDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、配列番号11、配列番号25、配列番号37、配列番号51、又は配列番号65の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するCD3ζ ICDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、配列番号11、配列番号25、配列番号37、配列番号51、又は配列番号65の配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するCD3ζICDを含む。
【0078】
膜貫通ドメイン(TMD)
概して、本明細書に開示されているキメラポリペプチド及びCARに適した膜貫通ドメイン(膜貫通領域ともいう)は、当技術分野で知られているTMDのいずれか1つとすることができる。理論に拘束されることなく、TMDは、細胞膜を横断し、CARを細胞表面に固定し、ECDをICDに接続し、その結果、細胞表面でのCARの発現に影響を与えると考えられている。適切なTMDの例には、CD28 TMD、CD8α TMD、CD3 TMD、CD4 TMD、CTLA4 TMD、及びPD-1 TMDが含まれるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態では、TMDは、CD28 TMD、CD8α TMD、CD3 TMD、CD4 TMD、CTLA4 TMD、及びPD-1 TMDに由来する。いくつかの実施形態では、TMDは、CD28 TMD、CD8α TMD、CD3 TMD、CD4 TMD、CTLA4 TMD、及びPD-1 TMDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、CD8αに由来するTMDを含む。一部の実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチド及びCARは、CD8αTMDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチド及びCARは、CD28に由来するTMDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチド及びCARは、CD28 TMDを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、配列番号7、配列番号21、配列番号35、配列番号47、又は配列番号61の配列に対して少なくとも80%の配列同一性を示すアミノ酸配列をTMDとして含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるキメラポリペプチド及びCARは、配列番号7、配列番号21、配列番号35、配列番号47、又は配列番号61の配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を示すアミノ酸配列をTMDに含む。いくつかの実施形態では、ICDは、特定の理論に拘束されることなく、T細胞の活性化中に下流のシグナル伝達を媒介すると考えられているCD3ζICDを含む。
【0079】
細胞外スペーサー
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARは、ECDとヒンジドメインの間に配置される1つ以上の介在アミノ酸残基を含む細胞外スペーサードメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞外スペーサードメインは、ECDに対して下流側に、ヒンジドメインに対して上流側に動作可能に連結されている。原則として、細胞外スペーサーの長さ及び/又はアミノ酸組成には特に制限はない。いくつかの実施形態では、約1~100個のアミノ酸残基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などのアミノ酸残基)を含む任意の単鎖ペプチドを細胞外スペーサーとして使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞外スペーサーは、約5~50、約10~60、約20~70、約30~80、約40~90、約50~100、約60~80、約70~100、約30~60、約20~80、約30~90のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、細胞外スペーサーは、約1~10、約5~15、約10~20、約15~25、約20~40、約30~50、約40~60、約50~70個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、細胞外スペーサーは、約40~70、約50~80、約60~80、約70~90、又は約80~100のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、細胞外スペーサーは、約1~10、約5~15、約10~20、約15~25個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、細胞外スペーサーの長さ及びアミノ酸組成は、CARの所望の活性を達成するために、ECD及びヒンジドメインの向き及び/又は互いへの接近を変化させるように最適化することができる。いくつかの実施形態では、ECD及びヒンジドメインの向き及び/又は互いへの近接性は、CARの効能を高める又は低減する「チューニング」ツール又は効果として、変化及び/又は最適化することができる。いくつかの実施形態では、ECD及びヒンジドメインの向き及び/又は互いの近接性を変化させ、及び/又は最適化することで、CARの完全機能バージョン又は部分機能バージョンを作成することができる。いくつかの実施形態では、細胞外スペーサードメインは、IgG4ヒンジドメイン及びIgG4 CH2-CH3ドメインに対応するアミノ酸配列を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、N-末端からC-末端方向に(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端方向に、以下を含む:(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8由来のTMD;及び(iv)CD3ζドメインを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、N-末端からC-末端方向に、(i)HER2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン。
【0082】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、N-末端からC-末端方向に、(i)B7-H3抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン。
【0083】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、N-末端からC-末端方向に、(i)GPC2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iii)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(iv)CD3ζドメイン。
【0084】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0085】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号27のアミノ酸配列に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0087】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号53のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号53のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号53のアミノ酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号53のアミノ酸配列に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0088】
いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号67のアミノ酸配列に対して100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0089】
当業者であれば、本開示のキメラポリペプチド又はCARの完全なアミノ酸配列を使用して、逆翻訳遺伝子を構築できることを理解するであろう。例えば、所定のキメラポリペプチド又はCARをコードするヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、所望のCAR又は抗体の一部をコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、次いでライゲーションすることができる。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には、相補的な組み立てのための5’又は3’のオーバーハングを含む。
【0090】
組換え分子生物学的技術によって改変された核酸分子の発現を介して、所望のキメラポリペプチド又はCARを生成することに加えて、本開示に従った対象のキメラポリペプチド又はCARは、化学的に合成することができる。化学的に合成されたポリペプチドは、当業者により日常的に生成されるものである。
【0091】
(合成、組換え方法、部位特異的変異誘発、又は他の適切な技術によって)いったん組み立てられると、本明細書で開示されているキメラポリペプチド又はCARをコードするDNA配列は、発現ベクターに挿入され、所望の形質転換された宿主におけるキメラポリペプチド又はCARの発現に適切な発現制御配列に動作可能に連結される。適切に組み立てられているかは、ヌクレオチド配列決定、制限マッピング、及び適切な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認することができる。当技術分野で知られているように、宿主においてトランスフェクトされた遺伝子が高い発現レベルとなるためには、その遺伝子が、選択された発現宿主において機能する転写及び翻訳発現制御配列に動作可能に連結されていることを確実にするよう配慮すべきである。
【0092】
核酸分子
一態様において、本明細書で提供されるのは、本開示のキメラポリペプチドをコードする核酸配列を含む種々の核酸分子(発現カセットを含む)、及び、宿主細胞又はエクスビボ無細胞発現系でのキメラポリペプチドのインビボ発現を可能にする、例えばレギュレーター配列等の異種核酸配列に動作可能に連結されたこれらの核酸分子を含む発現ベクターである。
【0093】
本開示の核酸分子は、任意の長さの核酸分子であり得、概して約0.5Kb~約50Kbの核酸分子、例えば約0.5Kb~約20Kb、約1Kb~約15Kb、約2Kb~約10Kb、又は約5Kb~約25Kb、例えば、約10Kb~15Kb、約15Kb~約20Kb、約5Kb~約20Kb、約5Kb~約10Kb、若しくは約10Kb~約25Kbの核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、約1.5Kb~約50Kb、約5Kb~約40Kb、約5Kb~約30Kb、約5Kb約20Kb、又は約10Kb~約50Kb、例えば、約15Kb~30Kb、約20Kb~約50Kb、約20Kb~約40Kb、約5Kb~約25Kb、若しくは約30Kb~約50Kbである。
【0094】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、(i)抗原を結合することができるECDを含む第1のポリペプチドセグメント;(ii)CD28由来のヒンジドメインを含む第2のポリペプチドセグメント;(iii)TMDを含む第3のポリペプチドセグメント、を含むCARをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸配列によってコードされるCARは、共刺激ドメインを含むICDを含む第4のポリペプチドセグメントをさらに含み、前記共刺激ドメインはCD28由来ではない。
【0095】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、N-末端からC-末端方向に、以下を含むCARをコードする核酸配列を含む:(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD。いくつかの実施形態では、核酸配列によってコードされるCARは以下をさらに含む:(iv)4-1BB由来の共刺激ドメイン及び/又は(v)CD3ζドメインを含むICD。
【0096】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、N-末端からC-末端方向に、以下を含むCARをコードする核酸配列を含む:(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、N-末端からC-末端方向に、以下を含むCARをコードする核酸配列を含む:(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン。
【0097】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、N-末端からC-末端方向に、以下を含むCARをコードする核酸配列を含む:(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8由来のTMD;及び(iv)CD3ζドメイン。
【0098】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、N末端からC末端方向に、以下を含むCARをコードする核酸配列を含む:(i)HER2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン。
【0099】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、N-末端からC-末端方向に、以下を含むCARをコードする核酸配列を含む:(i)B7-H3抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメイン。
【0100】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、N末端からC末端方向に、以下を含むCARをコードする核酸配列を含む:(i)GPC2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iii)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(iv)CD3ζドメイン。
【0101】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号14、配列番号28、配列番号40、配列番号54、及び配列番号68からなる群から選択される核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号14、配列番号28、配列番号40、配列番号54、及び配列番号68からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号14の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号14の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号14の核酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号14の核酸配列に対して100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号28の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号28の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号28の核酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号28の核酸配列に対して100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号40の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号40の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号40の核酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号40の核酸配列に対して100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号54の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号54の核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号54の核酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号54の核酸配列に対して100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号68の核酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号68の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号68の核酸配列に対して、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、配列番号68の核酸配列に対して100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、組換え核酸分子は、異種核酸配列に動作可能に連結されている。
【0108】
いくつかの実施形態では、組換え核酸分子は、発現カセット又はベクターとしてさらに定義される。発現カセットは、概して、コーディング配列と、インビボ及び/又はエクスビボでの受容細胞におけるコーディング配列の適切な転写及び/又は翻訳を指示するのに充分な調節情報とを含む遺伝物質の構築物を含むことが理解されるであろう。一般的に、発現カセットは、所望の宿主細胞や個体に向けてベクターに挿入することができます。このように、いくつかの実施形態では、本開示の発現カセットは、本明細書に記載のキメラポリペプチドのコード配列を含み、このコード配列は、プロモーターなどの発現制御要素、及び所望により、コード配列の転写又は翻訳に影響を与える任意の他の配列又は他の核酸配列の組み合わせに動作可能に連結されている。
【0109】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、発現ベクターに組み込まれる。「ベクター」という用語は、概して、宿主細胞間の移動のために設計された組換えポリヌクレオチド構築物を指し、形質転換、例えば、異種DNAの宿主細胞への導入の目的で使用され得ることが、当業者には理解されるであろう。このように、いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどのレプリコンであることができ、その中に別のDNAセグメントが挿入されて、挿入されたセグメントの複製をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、統合ベクターであることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは、ウイルスベクターであり得る。当業者に理解されるように、「ウイルスベクター」という用語は、概して核酸分子の移入又は細胞のゲノムへの統合を促進するウイルス由来の核酸要素を含む核酸分子(例えば、移入プラスミド)、又は核酸の移入を媒介するウイルス粒子のいずれかを指すために広く用いられる。ウイルス粒子は、一般的に、核酸に加えて、様々なウイルス成分や、時には宿主細胞成分も含むことになる。ウイルスベクターという言葉は、細胞内に核酸を移すことができるウイルス又はウイルス粒子を指す場合と移入された核酸そのものを指す場合がある。ウイルスベクター及び転送プラスミドは、主にウイルスに由来する構造的及び/又は機能的な遺伝子要素を含む。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、又はレトロウイルスに由来するベクターである。「レトロウイルスベクター」という用語は、主にレトロウイルスに由来する構造的及び機能的な遺伝要素又はその一部を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。「レンチウイルスベクター」という用語は、レトロウイルスの一種であるレンチウイルスに主に由来するLTRを含む構造的・機能的な遺伝要素又はその一部を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるキメラポリペプチドに対して少なくとも約80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書では、配列番号13、配列番号27、配列番号39、配列番号53、及び、配列番号67のいずれか1つに対して少なくとも約80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子が提供される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号13に対して少なくとも約80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号27に対して少なくとも約80%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号39に対して少なくとも約80%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号53に対して少なくとも約80%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、核酸分子は、配列番号67に対して少なくとも約80%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。
【0112】
キメラポリペプチドをコードする核酸配列は、目的の宿主細胞での発現に最適化することができる。例えば、前記配列のG-C含量は、宿主細胞で発現する既知の遺伝子を参照して計算した、所定の細胞宿主の平均レベルに調整することができる。コドン使用量を最適化する方法は当技術分野で公知である。本明細書に開示のキメラ型受容体のコーディング配列内のコドン使用量は、特定の宿主細胞での発現のために、コーディング配列内のコドンの約1%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、又は最大100%が最適化されているように、宿主細胞での発現を高めるように最適化することができる。
【0113】
提供される核酸分子は、天然に存在する配列、又は天然に存在する配列とは異なるが、遺伝暗号の縮退により、同じポリペプチド、例えば、抗体をコードする配列を含み得る。これらの核酸分子は、RNA若しくはDNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA、又はホスホラミダイトベースの合成によって生成された合成DNA)、又はこれらのタイプの核酸内のヌクレオチドの組み合わせ若しくは修飾からなることができる。さらに、核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか)であることができる。
【0114】
核酸分子は、ポリペプチド(例えば、抗体)をコードする配列に限定されるものではなく、コード配列(例えば、キメラ受容体のコード配列)の上流又は下流にある非コード配列の一部又は全部を含むこともできる。分子生物学の当業者は、核酸分子を単離するための常法に精通している。それらは、例えば、ゲノムDNAを制限エンドヌクレアーゼで処理することによって、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の実施によって生成することができる。核酸分子がリボ核酸(RNA)の場合には、例えば、インビトロでの転写により分子を生成することができる。
【0115】
組換え細胞及び細胞培養
本開示の核酸分子は、ヒトT細胞又は癌細胞などの細胞に導入して、核酸分子を含む組換え細胞を産生することができる。したがって、本開示のいくつかの実施形態は、(a)タンパク質発現が可能な宿主細胞を提供すること;及び提供された宿主細胞に本開示の組換え核酸を導入して組換え細胞を産生することを含む、組換え細胞を作成する方法に関する。本開示の核酸分子の細胞への導入は、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、接合、原形質体融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、パーティクルガン技術、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクション、ナノ粒子媒介核酸デリバリーなどのような当業者に公知の方法によって達成することができる。
【0116】
したがって、いくつかの実施形態では、核酸分子は、当技術分野で公知のウイルス又は非ウイルス送達ビヒクルによって宿主細胞に導入され、人工細胞を生成することができる。例えば、核酸分子は、宿主ゲノムに安定的に組み込まれるか、エピソーム的に複製、すなわち安定的若しくは一過性の発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞に存在することができる。したがって、本明細書に開示のいくつかの実施形態では、核酸分子は、エピソーム単位として組換え宿主細胞内で維持され、複製される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、組換え細胞のゲノムに安定的に組み込まれる。安定的な組み込みは、古典的なランダムゲノム組換え技術を用いて、又は、亜鉛フィンガータンパク質(ZNF)、ガイドRNA指示のCRISPR/Cas9、DNAガイドエンドヌクレアーゼゲノム編集NgAgo(Natronobacterium gregoryi Argonaute)、又はTALENゲノム編集(transcription activator-like effector nucleases)を用いるなどのより精密なゲノム編集技術を用いて完了させることができる。
【0117】
核酸分子は、ウイルスキャプシドや脂質ナノ粒子に封入することができ、又は、ウイルス若しくは非ウイルスの送達手段やエレクトロポレーションなどの当技術分野で知られている方法で送達することができる。例えば、核酸の細胞への導入は、ウイルスによる形質導入によって達成することができる。非限定的な例では、バキュロウイルスウイルス又はアデノ随伴ウイルス(AAV)は、ウイルス導入を介して標的細胞に核酸を送達するように設計することができる。いくつかのAAV血清型が記載されており、既知の血清型のすべてが、複数の多様な組織型の細胞に感染することができる。AAVは、生体内で様々な生物種や組織を形質導入させることができ、毒性の証拠はなく、自然免疫反応や適応免疫反応も比較的穏やかである。
【0118】
レンチウイルス由来のベクターシステムは、ウイルス導入による核酸デリバリーや遺伝子治療にも有用である。レンチウイルスベクターは、遺伝子導入媒体として以下のような魅力的な特性を有している:(i)宿主ゲノムへの安定したベクターの組み込みによる持続的な遺伝子送達;(ii)分裂している細胞と分裂していない細胞の両方に感染する能力;(iii)遺伝子治療や細胞治療の重要な標的細胞を含む幅広い組織屈性;(iv)ベクター導入後にウイルスタンパク質が発現しないこと;(v)ポリシストロニック配列やイントロン含有配列などの複雑な遺伝子要素を導入する能力;(vi)潜在的により安全な組み込み部位のプロファイル;並びに(vii)ベクターの操作及び製造が比較的容易なシステム。
【0119】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、例えば、宿主細胞のゲノムの一部に相同な核酸配列を含むウイルスベクター若しくは相同組換え用ベクター、又は目的のキメラポリペプチドを発現させるための発現ベクターであり得る、本願発明のベクター構築物等により遺伝子操作(例えば、形質転換又はトランスフェクション)することができる。宿主細胞は、形質転換されていない細胞、又はすでに少なくとも1つの核酸分子でトランスフェクトされている細胞のいずれかであり得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、組換え細胞は、原核細胞又は真核細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はインビボである。いくつかの実施形態では、細胞はエクスビボである。いくつかの実施形態では、細胞はインビトロである。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、動物細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は、哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は、マウス細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、非ヒト霊長類細胞である。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、免疫系細胞、例えば、B細胞、単球、NK細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、好塩基球、好酸球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、制御性T細胞、ヘルパーT細胞(TH)、細胞傷害性T細胞(TCTL)、記憶T細胞、ガンマデルタ(γδ)T細胞、他のT細胞、造血幹細胞、又は造血幹細胞前駆体である。
【0121】
いくつかの実施形態では、免疫系細胞は、リンパ球である。いくつかの実施形態では、リンパ球はTリンパ球である。いくつかの実施形態では、リンパ球はTリンパ球前駆体である。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、CD4+T細胞又はCD8+T細胞である。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、CD8+T細胞傷害性リンパ球細胞である。本明細書に開示される組成物及び方法に適したCD8+T細胞傷害性リンパ球細胞の非限定的な例としては、ナイーブCD8+T細胞、セントラルメモリCD8+T細胞、エフェクターメモリCD8+T細胞、エフェクターCD8+T細胞、CD8+ステムメモリT細胞、及びバルクCD8+T細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、Tリンパ球は、CD4+Tヘルパーリンパ球細胞である。適切なCD4+Tヘルパーリンパ球細胞の例として、ナイーブCD4+T細胞、セントラルメモリーCD4+T細胞、エフェクターメモリーCD4+T細胞、エフェクターCD4+T細胞、CD4+ステムメモリーT細胞、及びバルクCD4+T細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
上で概説したように、本開示のいくつかの実施形態は、(a)タンパク質発現が可能な宿主細胞を提供すること;及び前記提供された宿主細胞を本開示の組換え核酸で形質転換して組換え細胞を産生すること、を含む、組換え細胞を作製するための様々な方法に関する。組換え細胞を作製するための開示された方法の非限定的な好ましい実施形態は、以下の特徴の1つ以上をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、対象から得られたサンプルに対して行われる白血球穿刺によって得られ、細胞はエクスビボで形質導入される。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、ウイルスキャプシド又は脂質ナノ粒子に封入されている。いくつかの実施形態では、本方法は、産生された細胞を分離及び/又は精製することをさらに含む。したがって、本明細書に開示された方法によって生産された組換え細胞も、本開示の範囲内である。
【0123】
上記のような多種多様な宿主細胞や種を形質転換する技術は、当技術分野で公知であり、技術文献や科学文献にも記載されている。例えば、DNAベクターは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術により真核細胞に導入することができる。細胞を形質転換又はトランスフェクションするための適切な方法は、Sambrookら(2012、前掲)及び他の標準的な分子生物学実験マニュアルに記載されており、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、トランスダクション、スクレイプローディング、バリスティック導入、ヌクレオポレーション、ハイドロダイナミックショック、及び感染などが挙げられる。いくつかの実施形態では、核酸分子は、形質導入手順、エレクトロポレーション手順、又はバイオリスティック手順によって宿主細胞に導入される。したがって、本明細書に開示されているような少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物も本出願の範囲内である。細胞培養物の生成及び維持に適した方法及びシステムは、当技術分野で公知である。
【0124】
一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、(a)本明細書に記載のキメラポリペプチド及び/又は本明細書に記載の核酸分子を含む組換え細胞に関する。いくつかの実施形態では、本開示の組換え細胞は、(i)抗原を結合することができるECDを含む第1のポリペプチドセグメント;(ii)CD28からのヒンジドメインを含む第2のポリペプチドセグメント;(iii)TMDを含む第3のポリペプチドセグメント、を含むCARをコードする核酸分子、を含む。いくつかの実施形態では、前記核酸配列によってコードされる前記CARは、(iv)共刺激ドメインを含むICDを含む第4のポリペプチドセグメントをさらに含み、前記共刺激ドメインはCD28由来ではない。
【0125】
いくつかの実施形態では、前記組換え細胞は、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメインを含むCARをコードする核酸分子を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、前記組換え細胞は、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメインを含むCARをコードする核酸分子を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、前記組換え細胞は、N末端からC末端方向に、(i)CD19抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8由来のTMD;及び(iv)CD3ζドメインを含むCARをコードする核酸分子を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、前記組換え細胞は、N末端からC末端方向に、(i)HER2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメインを含むCARをコードする核酸分子を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、前記組換え細胞は、N末端からC末端方向に、(i)B7-H3抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iv)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(v)CD3ζドメインを含むCARをコードする核酸分子を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、前記組換え細胞は、N末端からC末端方向に、(i)GPC2抗原を結合することができるECD;(ii)CD28由来のヒンジドメイン;(iii)CD8、CD28、CD3、CD4、CTLA4、又はPD-1由来のTMD;(iii)4-1BB由来の共刺激ドメインを含むICD;及び(iv)CD3ζドメインを含むCARをコードする核酸分子を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、組換え細胞は、配列番号13からなる群から選択されたアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するCARをコードする核酸配列を含む核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、配列番号27からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するCARをコードする核酸配列を含む核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、配列番号39からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するCARをコードする核酸配列を含む核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、配列番号53からなる群から選択されるアミノ酸配列に少なくとも80%の配列同一性を有するCARをコードする核酸配列を含む核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、配列番号67からなる群から選択されるアミノ酸配列に少なくとも80%の配列同一性を有するCARをコードする核酸配列を含む核酸分子を含む。
【0132】
関連する態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示の少なくとも1つの組換え細胞と、培養液とを含む細胞培養に関するものである。概して、培養液は、本明細書に記載の細胞培養に適した培養液のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、本明細書に記載のキメラポリペプチド又はCARを発現する。したがって、本明細書に開示された少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物も本願の範囲内である。細胞培養物を生成及び維持するのに適した方法及びシステムは、当技術分野で公知である。
【0133】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、本開示のキメラポリペプチド、キメラ抗原受容体(CAR)、核酸、組換え細胞、及び/又は細胞培養物は、医薬組成物を含む組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、一般的に、本明細書に記載のキメラポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、及び/又は細胞培養物と、薬学的に許容される担体とを含む。したがって、一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、健康状態、例えば増殖性疾患(例えば、癌)を治療、予防、改善、低減、又は発症を遅延させるための医薬組成物に関する。
【0134】
したがって、本開示の一態様は、薬学的に許容される担体と、以下の1つ又は複数を含む医薬組成物に関する:(a)本開示のキメラポリペプチド;(b)本開示の核酸分子;及び/又は(c)本開示の組換え細胞。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)本開示の組換え核酸と、(b)薬学的に許容される担体とを含む。いくつかの実施形態では、組換え核酸は、ウイルスキャプシド又は脂質ナノ粒子に封入されている。いくつかの実施形態では、組成物は、(a)本開示の組換え細胞と、(b)薬学的に許容される担体とを含む。
【0135】
ある実施形態では、本明細書に開示のいくつかの実施形態の医薬組成物は、それを必要としている個人に投与する前に、洗浄、処理、結合、補充、又はその他の方法で変更することができる細胞培養物を含む。さらに、投与は、様々な用量、時間間隔、又は複数回の投与であってもよい。
【0136】
本明細書で提供される医薬組成物は、組成物を個体に投与することができる任意の形態であることができる。いくつかの特定の実施形態では、医薬組成物はヒトへの投与に適している。本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府又は州政府の規制機関によって承認されるか、又は動物、より具体的にはヒトに使用するために米国薬局方又は他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。担体は、医薬組成物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルであり得る。生理食塩水、デキストロース及びグリセロールの水溶液も、注射剤を含む液体キャリアとして採用することができる。適当な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。適切な医薬担体の例は、E.W. Martinの「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、個体に投与するために無菌的に製剤化される。いくつかの実施形態では、個体はヒトである。当業者であれば、製剤が投与方法に適していることを理解するであろう。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、個体への意図された投与経路に適するように製剤化される。例えば、医薬組成物は、非経口投与、腹腔内投与、大腸投与、腹腔内投与、及び腫瘍内投与に適するように製剤化されてもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内、経口、腹腔内、気管内、皮下、筋肉内、局所、又は腫瘍内への投与に適するように製剤化されてもよい。
【0138】
注射に適した医薬組成物には、無菌の水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び無菌の注射用溶液又は分散液をその場で調製するための無菌の粉末が含まれる。静脈内投与に適したキャリアとしては、生理的食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、パーシッパニー、ニュージャージー州)、又はリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合も、組成物は無菌状態であり、容易にシリンジできる程度の流動性があることが望ましい。製造及び保管の条件下で安定しており、細菌や真菌などの微生物による汚染から保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合は必要な粒子径の維持、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムの使用等によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤や抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成できる。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトールなどの多価アルコール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどを組成物に含めることが一般的であろう。注射用組成物の長時間の吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を組成物に含めることでもたらされ得る。
【0139】
滅菌された注射剤は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上に挙げた成分の1つ以上と一緒に適切な溶媒に入れ、その後、ろ過滅菌することで調製できる。概して、分散液は、基本的な分散媒体と必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射剤用の無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これらの方法では、事前に滅菌濾過した溶液から活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。
【0140】
治療方法
本明細書に記載された治療組成物のいずれか1つ、例えば、キメラポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物の投与は、増殖性疾患(例えば、癌)などの関連する状態の診断、予防、及び/又は治療に使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、増殖性疾患(例えば、癌)などの1つ以上の健康状態を有する、有することが疑われる、又は発症するリスクが高い可能性がある個体を予防及び/又は治療する方法に使用するための療法及び治療剤に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、個人は、医師の治療を受けている患者である。
【0141】
増殖性疾患の例として、これらに限定されないが、血管新生疾患、転移性疾患、腫瘍性疾患、新生物性疾患、及び癌が挙げられる。いくつかの実施形態では、増殖性疾患は、癌である。いくつかの実施形態では、癌は、小児癌である。いくつかの実施形態では、癌は、膵臓癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、乳癌、尿路上皮癌、肝癌、頭頸部癌、肉腫、子宮頸部癌、胃癌、胃癌、メラノーマ、ぶどう膜メラノーマ、胆管癌、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、及び膠芽腫である。
【0142】
いくつかの実施形態では、癌は、多剤耐性癌又は再発癌である。ここに開示された組成物及び方法は、非転移性の癌及び転移性の癌の両方に適していることが企図されている。したがって、いくつかの実施形態では、癌は非転移性の癌である。他のいくつかの実施形態では、癌は転移性の癌である。いくつかの実施形態では、被験者に投与される組成物は、被験者における癌の転移を阻害する。いくつかの実施形態では、投与された組成物は、被験者における腫瘍の成長を阻害する。
【0143】
したがって、一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、それを必要とする被験者における状態の予防及び/又は治療のための方法に関し、本方法は、被験者に、本開示のキメラポリペプチド、本開示の組換え核酸、本開示の組換え細胞、及び/又は本開示の医薬組成物のうちの1つ以上を含む組成物を投与することを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物、例えば、ポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、白血病を有する、有すると疑われる、又は白血病を発症するリスクが高い可能性のある個体を治療する方法に使用することができる。これらの例では、白血病は概して任意のタイプの白血病であり得る。本明細書に記載の組成物(例えば、ポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物)を用いて治療することができる適切な白血病には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ芽球性B細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性骨髄芽球性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、急性単芽球性白血病、急性赤芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ球性白血病、急性未分化白血病、慢性骨髄球性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、及び毛状細胞白血病が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、白血病はAMLである。
【0145】
いくつかの実施形態では、投与された組成物は、同じ組成物を投与されていない参照被験者と比較して、被験者におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)及び/又はインターロイキン2(IL-2)の産生を増加させる。
【0146】
いくつかの実施形態では、投与された組成物は、標的癌細胞の増殖を阻害し、及び/又は対象における癌の腫瘍成長を阻害する。例えば、標的細胞は、その増殖が低減される場合、その病理学的又は病原性の挙動が低減される場合、その細胞が破壊又は死滅される場合などに阻害され得る。阻害には、測定された病理学的又は病原性の挙動が、少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%減少することが含まれる。いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に開示された組換え細胞の有効数を個体に投与することを含み、組換え細胞は、組換え細胞を投与されていない被験者における標的細胞の増殖及び/又は標的癌の腫瘍増殖と比較して、被験者における標的細胞の増殖及び/又は標的癌の腫瘍増殖を阻害する。
【0147】
本明細書で使用される「投与」及び「投与する」という用語は、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、及び局所投与、又はそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない投与経路による生物活性組成物又は製剤の送達を意味する。医療従事者による投与、自己投与なども含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
本明細書に記載の組成物、例えば、ポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物の投与は、免疫応答の刺激に使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、化学療法による癌の寛解の誘導後、又は自家若しくは同種造血幹細胞移植後の個体に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された組成物は、本明細書に開示された治療組成物の1つを投与されていない被験者におけるこれらの分子の産生と比較して、治療された被験者におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)及び/又はインターロイキン2(IL-2)の産生を増加させることを必要とする個体に投与される。
【0149】
本明細書に記載の組成物、例えば、ポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物の有効量は、目的とする目標、例えば、腫瘍の退縮に基づいて決定される。例えば、既存の癌を治療する場合、投与する本明細書に開示された組成物の量は、組成物の投与が癌の予防のためである場合よりも多くてもよい。当業者であれば、本開示を考慮して、投与すべき組成物の量及び投与の頻度を決定することができるであろう。投与する量は、治療回数と投与量の両方によるが、治療を受ける個体、個体の状態、及び所望の保護にも依存する。組成物の正確な量もまた、施術者の判断に依存し、各個人に特有のものである。投与の頻度は、施術者の判断に応じて、1~2日、2~6時間、6~10時間、1~2週間又はそれ以上の範囲であり得る。
【0150】
予防を目的とする場合は、投与間隔を長くし、組成物の量を少なくすることができる。例えば、1回の投与量は、進行中の疾患の治療で投与される量の50%とし、1週間の間隔で投与してもよい。当業者であれば、本開示を参考にして、有効な組成物の量及び投与頻度を決定することができるであろう。この決定は、部分的には、存在する特定の臨床状況(例えば、癌の種類、癌の重症度)に依存するであろう。
【0151】
ある実施形態では、本明細書に開示の組成物の連続的な供給を、治療される対象、例えば、患者に提供することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、関心領域(腫瘍など)の連続的な灌流が好適であり得る。灌流の期間は、臨床医が特定の対象及び状況に対して選択するであろうが、時間は、約1~2時間、2~6時間、約6~10時間、約10~24時間、約1~2日、約1~2週間又はそれ以上の範囲であり得る。一般的に、連続灌流による組成物の投与量は、単回又は複数回の注射によって与えられるものと同等であり、投与量が投与される期間に合わせて調整される。
【0152】
いくつかの実施形態では、投与はボーラス注射によって行われる。いくつかの実施形態では、投与は静脈内注入によって行われる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている組成物は、1日あたり約100ng/kg体重~1日あたり約100mg/kg体重の用量で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、1日あたり約0.001mg/kg~約100mg/kg体重の投与量で投与される。いくつかの実施形態では、治療薬は単回投与で投与される。いくつかの実施形態では、治療剤は、複数回の投与、(例えば、1週間に1回以上、1週間以上)で投与される。いくつかの実施形態では、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日又はそれ以上の日数ごとに投与される。いくつかの実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の総投与量がある。いくつかの実施形態では、4回の投与が行われ、投与間隔は3週間である。
【0153】
当業者であれば、本開示の組成物を個体に投与するための技術に精通しているだろう。さらに、当業者であれば、個体に投与する前にこれらの組成物を調製するために必要な技術及び医薬試薬に精通しているであろう。
【0154】
本開示の特定の実施形態では、本開示の組成物は、本明細書に記載のキメラポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物のうちの1つ以上を含む水性組成物となる。本開示の水性組成物は、本明細書に開示された組成物の有効量を、薬学的に許容される担体又は水性媒体に含む。したがって、本開示の「医薬製剤」又は「医薬組成物」は、任意及びすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことができる。医薬活性物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が本明細書に開示の組換え細胞と非適合性がない限りにおいて、医薬組成物の製造におけるその使用が企図される。補助的な活性成分も組成物に組み込むことができる。ヒトに投与する場合、製剤は、食品医薬品局の生物学的センターが要求する無菌性、発熱性、全般的な安全性、及び純度の基準を満たすべきである。
【0155】
当業者であれば、生物学的材料を広範囲に透析して望ましくない低分子量の分子を除去したり、必要に応じて凍結乾燥して所望のビヒクルに容易に配合したりすべきであることを理解するであろう。本明細書に記載の組成物、例えば、ポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、次に、概して、非経口投与などの任意の既知の経路による投与のために製剤化される。投与される組成物の量の決定は、当業者によってなされ、部分的には、癌の程度及び重症度、並びに組換え細胞が既存の癌の治療又は癌の予防のために投与されるかどうかに依存するであろう。本開示のキメラポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物を含む組成物の調製は、本開示を参照し当業者に公知となるであろう。
【0156】
本開示の組成物は、製剤化されると、投与形態に適合した方法で、治療上有効な量で投与される。組成物は、上述のタイプの注射用溶液など、様々な剤形で投与することができる。非経口的に投与する場合、本明細書に記載の組成物は適切に緩衝されるべきである。以下に詳述するように、本明細書に記載の組成物は、他の免疫療法又は化学療法など、個人の治療レジメンの一部である他の治療剤と一緒に投与することができる。本明細書に記載されたキメラポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、本明細書に開示された治療組成物のいずれかを投与されていない被験者における腫瘍の成長又は転移と比較して、治療された被験者における癌の腫瘍の成長又は転移を阻害するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、インターフェロンガンマ(IFNγ)及び/又はインターロイキン2(IL-2)並びに他の炎症性サイトカインの産生を誘導することを介して、腫瘍に対する免疫応答を刺激するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載された抗体、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物を使用して、本明細書に開示の治療組成物の1つを投与されていない被験者におけるこれらの分子の産生と比較して、治療を受けた被験者におけるCAR T細胞の増殖及び/又は殺傷能力を刺激することができる。インターフェロンγ(IFNγ)及び/又はインターロイキン2(IL-2)の産生は、本明細書に開示の治療用組成物のいずれかを投与されていない被験者におけるインターフェロンγ(IFNγ)及び/又はインターロイキン2(IL-2)の産生と比較して、約20倍まで、例えば約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、若しくは20倍のいずれか、又はそれ以上を産生するように刺激することができる。
【0157】
被験者への遺伝子組み換え細胞の投与
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ここで提供される組換え細胞の有効量又は数を、それを必要とする対象に投与することを含む。この投与ステップは、当技術分野における移植送達の任意の方法を用いて達成することができる。例えば、組換え細胞は、被験者の血流中に直接注入するか、又は他の方法で被験者に投与することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示の方法は、所望の効果が得られるような所望の部位に導入された細胞の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路によって、組換え細胞を個体に投与(この用語は、「導入」、「移植」、及び「移植」という用語と互換的に使用される)することを含む。組換え細胞又はその分化した子孫は、投与された細胞又は細胞の成分の少なくとも一部が生存している個体の所望の場所に送達されることになる任意の適切な経路によって投与することができる。被験者に投与した後の細胞の生存期間は、数時間、例えば24時間から数日のように短いものから数年、又はその個体の寿命までのように長いもの、すなわち長期的な移植が可能である。
【0159】
予防的に提供される場合、本明細書に記載の組換え細胞は、治療すべき疾患又は状態の症状が発生する前に、対象者に投与することができる。したがって、いくつかの実施形態では、組換え細胞集団の予防的投与により、疾患又は状態の症状の発生を防ぐことができる。
【0160】
いくつかの実施形態で治療的に提供される場合、組換え細胞は、疾患又は状態の症状又は兆候の発症時(又は後)に提供され、例えば、疾患又は状態の発症時に提供される。
【0161】
本明細書に記載の種々の実施形態で使用するために、本明細書に開示の組換え細胞の有効量は、少なくとも102細胞、5×102細胞、103細胞、5×103細胞、104細胞、5×104細胞、105細胞、2×105細胞、3×105細胞、4×105細胞、5×105細胞、6×105細胞、7×105細胞、8×105細胞、9×105細胞、1×106細胞、2×106細胞、3×106細胞、4×106細胞、5×106細胞、6×106細胞、7×106細胞、8×106細胞、9×106細胞、又はその倍数であり得る。組換え細胞は、1人以上のドナーに由来することができ、又は自己由来源から得ることができる。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、それを必要とする被験者に投与する前に、培養で拡大される。
【0162】
いくつかの実施形態では、組換え細胞組成物(例えば、本明細書に記載の細胞のいずれかに従った複数の組換え細胞を含む組成物)を方法又は経路によって被験者に送達することにより、所望の部位における細胞組成物の少なくとも部分的な局在化がもたらされる。組換え細胞を含む組成物は、対象における効果的な治療をもたらす任意の適切な経路で投与することができ、例えば、投与により、対象の所望の部位に送達され、送達された組成物の少なくとも一部、例えば、少なくとも1×104個の細胞が、一定期間、所望の部位に送達されることになる。投与の態様には、注射、輸液、インスティルが含まれる。「注射」には、これらに限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、心室内、カプセル内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管内、皮下、関節内、カプセル内、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、胸骨内注射、注入が含まれる。いくつかの実施形態では、経路は静脈内である。細胞の送達については、注射又は注入による送達が標準的な投与様式である。
【0163】
いくつかの実施形態では、組換え細胞は、全身に、例えば、輸液又は注射によって投与される。例えば、組換え細胞の集団は、被験者の循環系に入り、したがって、代謝及び他の類似の生物学的プロセスを受けるように、標的部位、組織、又は器官に直接投与される以外の方法で投与される。
【0164】
疾患又は状態の予防又は治療のために本明細書で提供される組成物のいずれかを含む治療の有効性は、当業者が決定することができる。しかし、当業者であれば、疾患の徴候、症状、又はマーカーのいずれか1つ又はすべてが改善又は改良された場合に、予防又は治療が有効であると考えられることを理解するであろう。有効性は、入院や医療介入の必要性が減少したことで評価されるように、対象が悪化しなかったことによっても測定することができる(例えば、疾患の進行が停止したか、少なくとも遅くなった場合)。これらの指標を測定する方法は、当業者に知られており、及び/又は本明細書に記載されている。治療は、被験者又は動物(いくつかの非限定的な例は、ヒト、又は哺乳類を含む)における疾患の任意の治療を含み、(1)疾患を抑制すること、例えば、症状の進行を阻止する、若しくは遅らせること、又は(2)疾患を緩和すること、例えば、症状の退行を引き起こすこと、及び(3)症状の発症を予防する、若しくはその可能性を低減すること、を含む。
【0165】
有効性の測定は、治療対象となる疾患や経験した症状に応じて選択されたパラメータに基づいて行われる。概して、医学界で受け入れられている、又は使用されているパラメータのように、疾患の程度又は重症度と相関することが知られている又は受け入れられているパラメータが選択される。例えば、固形癌の治療において、適切なパラメータには、転移の数及び/又は大きさの減少、無増悪生存月数、全生存期間、疾患のステージ又はグレード、疾患進行率、診断バイオマーカーの減少(例えば、限定されないが、循環腫瘍DNA又はRNAの減少、循環無細胞腫瘍DNA又はRNAの減少など)、及びそれらの組み合わせが含まれ得る。有効量及び有効性の程度は、概して、単一の被験者及び/又は被験者のグループもしくは集団に関連して決定されることが理解されるであろう。本開示の治療方法は、症状及び/又は疾患の重症度及び/又は疾患のバイオマーカーを、少なくとも約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100%減少させる。
【0166】
上述したように、治療上有効な量とは、疾患を有する、その疑いがある、又は疾患のリスクがあるなどの対象者に投与されたときに、特定の有益な効果を促進するのに充分な量の治療用組成物の量を意味する。いくつかの実施形態では、有効量は、疾患の症状の発症を予防又は遅延させる、疾患の症状の経過を変える(例えば、疾患の症状の進行を遅らせるが、これに限定されない)、又は疾患の症状を逆転させるのに充分な量である。適切な有効量は、当業者であれば、日常的な実験により決定できると理解されよう。
【0167】
追加の療法
上述したように、本明細書に開示されているような組成物、例えば、キメラポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物のいずれか1つを、単一の治療(例えば、単剤療法)として、それを必要としている対象者に投与することができる。追加的に又は代替的に、本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のキメラポリペプチド、CAR、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、1つ以上の追加の療法、例えば、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの追加の療法と組み合わせて対象に投与することができる。本開示の組成物と組み合わせて投与するのに適した療法には、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び外科手術が含まれるが、これらに限定されない。他の好適な療法には、化学療法剤、抗がん剤、抗がん療法などの治療剤が含まれる。
【0168】
1つ以上の追加療法との「併用」投与には、同時(コンカレント)及び任意の順序での連続投与が含まれる。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、及び手術からなる群から選択される。本明細書で使用される化学療法という用語は、抗がん剤を包含する。種々のクラスの抗癌剤が、本明細書に開示の方法に好適に使用できる。抗がん剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、ポドフィロトキシン、抗体(例えば、モノクローナル又はポリクローナル)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブ(グリベック(登録商標)又はグリベック(登録商標)))、ホルモン治療、可溶性受容体、及び他の抗悪性腫瘍剤が挙げられる。
【0169】
トポイソメラーゼ阻害剤もまた、本明細書で使用することができる別のクラスの抗がん剤である。トポイソメラーゼは、DNAのトポロジーを維持する必須の酵素である。I型又はII型トポイソメラーゼの阻害は、適切なDNAのスーパーコイルを乱すことによって、DNAの転写及び複製の両方を妨害する。I型トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、イリノテカンやトポテカンなどのカンプトテシン類がある。タイプIIの阻害剤の例としては、アムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩、テニポシドなどがある。これらは、アメリカハッカクレン(Podophyllum peltatum)の根に天然に存在するアルカロイドであるエピポドフィロトキシンの半合成誘導体である。
【0170】
抗悪性腫瘍剤には、免疫抑制剤のダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、イホスファミドなどがある。抗悪性腫瘍剤は、一般的に細胞のDNAを化学的に修飾することで作用する。
【0171】
アルキル化剤は、細胞内に存在する条件で多くの求核性官能基をアルキル化することができる。シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチンはアルキル化剤である。これらは生物学的に重要な分子のアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、リン酸基と共有結合を形成して細胞機能を損なう。
【0172】
ビンカアルカロイドは、チューブリンの特定の部位に結合し、チューブリンが微小管に集合するのを阻害する(細胞周期のM期)。ビンカアルカロイドとしては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、及びビンデシンが挙げられる。
【0173】
代謝拮抗剤はプリン(アザチオプリン、メルカプトプリン)やピリミジンに類似しており、細胞周期のS期にこれらの物質がDNAに組み込まれるのを防ぎ、正常な発生と分裂を停止させる。代謝拮抗薬はRNA合成にも影響を与える。
【0174】
植物アルカロイドやテルペノイドは、植物から得られる物質で、微小管の機能を阻害することで細胞分裂を妨げます。微小管は細胞分裂に不可欠なものであるため、微小管がなければ細胞分裂は起こらない。主な例として、ビンカアルカロイドやタキサンなどがある。
【0175】
ポドフィロトキシンは植物由来の化合物で、消化を助ける作用が報告されているほか、エトポシドとテニポシドという2種類の細胞増殖剤の原料としても使われている。これらの薬剤は、細胞がG1期(DNA複製の開始時期)に入るのを防ぎ、DNAの複製(S期)を防ぐ。
【0176】
タキサン系には、パクリタキセルとドセタキセルがある。パクリタキセルは天然物であり、元々はタキソールとして公知であり、タイヘイヨウイチイ(Pacific Yew)の樹皮から初めて抽出された。ドセタキセルは、パクリタキセルの半合成類似物質である。タキサン系は、微小管の安定性を高め、後期における染色体の分離を防ぐ。
【0177】
いくつかの実施形態では、抗がん剤は、レミケード、ドセタキセル、セレコキシブ、メルファラン、デキサメタゾン(デカドロン(登録商標))、ステロイド、ゲムシタビン、シスプラチン、テモゾロミド、エトポシド、シクロホスファミド、テモダール、カルボプラチン、プロカルバジン、グリアデル、タモキシフェン、トポテカン、メトトレキサート、ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))、タキソール、タキソテール、フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、ゼローダ、CPT-11、インターフェロンアルファ、ペグインターフェロンアルファ(例えば、PEG INTRON-A)、カペシタビン、シスプラチン、チオテパ、フルダラビン、カルボプラチン、リポソーマルダウノルビシン、シタラビン、ドキセタキソール、パシリタキセル、ビンブラスチン、IL-2、GM-CSF、ダカルバジン、ビノレルビン、ゾレドロン酸、パルミトロネート、ビアキシン、ブスルファン、プレドニゾン、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標))、ビスホスホネート、三酸化ヒ素、ビンクリスチン、ドキソルビシン(ドキシル(登録商標))、パクリタキセル、ガンシクロビル、アドリアマイシン、エストラインスチンリン酸ナトリウム(エムシート(登録商標))、スリンダック、エトポシド、及びそれらのいずれかの組み合わせから選択することができる。
【0178】
他の実施形態では、抗がん剤は、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン、ドキソルビシン、インターフェロン-アルファ、レナリドミド、メルファラン、ペグ化インターフェロン-アルファ、プレドニゾン、サリドマイド、又はビンクリスチンから選択することができる。
【0179】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の予防及び/又は治療の方法は、免疫療法をさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫療法は、1つ以上のチェックポイント阻害剤の投与を含む。したがって、本明細書に記載の治療方法の一部の実施形態は、1つ以上の免疫チェックポイント分子を阻害する化合物の投与をさらに含む。免疫チェックポイント分子の非限定的な例として、CTLA4、PD-1、PD-L1、A2AR、B7-H3、B7-H4、TIM3、及びそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の免疫チェックポイント分子を阻害する化合物は、拮抗抗体を含む。本明細書に開示の組成物及び方法に適した拮抗抗体の例として、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、トレメリムマブ、及びアベルマブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
いくつかの態様では、1つ以上の抗がん剤治療は、放射線治療である。いくつかの実施形態では、放射線療法は、がん細胞を死滅させるための放射線の投与を含むことができる。放射線は、DNAなどの細胞内の分子と相互作用して、細胞死を誘導する。放射線は、細胞膜や核膜などの小器官を損傷することもある。放射線の種類によって、DNA損傷のメカニズムは異なり、相対的な生物学的効果も異なる。例えば、重粒子(陽子、中性子)はDNAに直接損傷を与え、生物学的効果が高いとされている。電磁波は、主に細胞内の水のイオン化によって生成される短命のヒドロキシルフリーラジカルを介して間接的なイオン化をもたらす。放射線の臨床応用には、外部から放射線を照射する外照射と、患者の体内に放射線源を埋め込んだり挿入したりして照射する小線源照射療法がある。外部からの放射線は、X線やガンマ線であり、一方、小線源照射療法は、アルファ粒子やベータ粒子、ガンマ線を放出する放射性原子核を用いている。本明細書で想定される放射線には、例えば、放射性同位元素をがん細胞に向けて照射することも含まれる。本明細書では、マイクロ波や紫外線照射など、他の形態のDNA損傷因子も企図されている。
【0181】
放射線は、1回の投与でもよいし、線量分割したスケジュールで少量ずつ連続して投与してもよい。本明細書で企図される放射線の量は、約1~約100Gyの範囲であり、例えば、約5~約80、約10~約50Gy、又は約10Gyを含む。総線量は、分割レジームで適用されてもよい。例えば、2Gyの分割された個別線量が含まれていてもよい。放射性同位元素の投与量の範囲は、同位元素の半減期、放出される放射線の強度や種類によって大きく異なる。放射線が放射性同位体の使用を含む場合、同位体は、放射性ヌクレオチドを標的組織(例えば、腫瘍組織)に運ぶ治療用抗体などの標的剤に結合してもよい。
【0182】
本明細書に記載されている手術には、癌組織の全部又は一部を物理的に除去、行使、及び/又は破壊する切除が含まれる。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除去することをいう。腫瘍の切除に加えて、手術による治療には、レーザー手術、凍結手術、電気手術、及び顕微鏡で制御された手術(モーズ手術)が含まれる。本明細書では、前がん細胞や正常組織の除去も想定されている。
【0183】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、本明細書に開示の組成物を、単一の療法(例えば、単剤療法)として対象者に個別に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、第2の療法と組み合わせた第1の療法として被験者に投与される。いくつかの実施形態では、第2の療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、及び手術からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第1の療法及び第2の療法は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、第1の療法は、第2の療法と同時に投与される。いくつかの実施形態では、第1の療法及び第2の療法は、順次に投与される。いくつかの実施形態では、第1の療法は第2の療法の前に投与される。いくつかの実施形態では、第1の療法は第2の療法の後に投与される。いくつかの実施形態では、第1の療法は、第2の療法の前及び/又は後に投与される。いくつかの実施形態では、第1の療法と第2の療法は、ローテーションで投与される。いくつかの実施形態では、第1の療法と第2の療法は、単一の製剤で一緒に投与される。
【0184】
キット
本明細書では、本明細書に記載の方法を実施するための種々のキットが提供される。特に、本開示のいくつかの実施形態は、被験者における状態の診断のためのキットを提供する。他のいくつかの実施形態は、それを必要としている被験者における状態の予防のためのキットに関する。他のいくつかの実施形態は、それを必要としている被験者における状態を治療する方法のためのキットに関する。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、本明細書で提供及び記載のキメラポリペプチド、組換え核酸、人工細胞、又は医薬組成物の1つ以上を含むキット、並びにそれらを製造及び使用するための指示書である。
【0185】
いくつかの実施形態では、本開示のキットは、提供されるキメラポリペプチド、組換え核酸、人工細胞、又は医薬組成物のいずれか1つを個体に投与するのに有用な1つ以上の手段をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、本開示のキットは、提供されるキメラポリペプチド、組換え核酸、人工細胞、又は医薬組成物のいずれか1つを個体に投与するために使用される1つ以上のシリンジ(プレフィルドシリンジを含む)及び/又はカテーテル(プレフィルドシリンジを含む)をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、所望の目的のために、例えば、それを必要とする被験者の状態を診断、予防、又は治療するために、他のキット構成要素と同時に又は連続的に投与することができる1つ以上の追加の治療剤を有することができる。
【0186】
上記のキットは、1つ以上の追加試薬をさらに含むことができ、そのような追加試薬は、希釈緩衝液、再構成溶液、洗浄緩衝液、コントロール試薬、コントロール発現ベクター、ネガティブコントロールポリペプチド、ポジティブコントロールポリペプチド、キメラポリペプチドのインビトロ生産に適した試薬から選択することができる。
【0187】
いくつかの実施形態では、キットの構成要素は、別々の容器に入れることができる。他のいくつかの実施形態では、キットの構成要素は、単一の容器に組み合わせることができる。
【0188】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に開示された方法を実践するためにキットの構成要素を使用するための説明書をさらに含むことができる。方法を実践するための説明書は、一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙やプラスチックなどの基材に印刷することができる。説明書は、パッケージの挿入物としてキット内に存在することができ、キットの容器又はその構成要素(例えば、パッケージ又はサブパッケージに関連する)のラベリングに存在することができるなどである。指示書は、CD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブなどの適切なコンピュータ可読記憶媒体上に存在する電子記憶データファイルとして存在することができる。いくつかの例では、実際の指示書はキットに含まれないが、指示書を遠隔地のソース(例えば、インターネット経由)から取得する手段を提供することができる。本実施形態の例としては、説明書を見ることができる、又は説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットが挙げられる。説明書と同様に、この説明書を得るための手段は、適切な基板に記録することができる。
【0189】
本明細書に引用されている文献が先行技術であることを認めるものではない。引用文献の考察は、その著者が主張する内容を述べたものであり、本発明者は、引用文献の正確性及び適切性に異議を唱える権利を有する。本明細書では、科学雑誌の記事、特許文献、教科書などの多くの情報源が参照されているが、この参照は、これらの文献のいずれかが当該技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではないことを明確に理解されるであろう。
【0190】
本明細書で与えられた全般的な方法の議論は、例示のみを目的としている。他の代替方法及び代替案は、本開示を検討すると当業者には明らかとなり、本出願の精神及び範囲内に含まれるであろう。
【実施例】
【0191】
追加の実施形態は、以下の例でさらに詳細に開示されるが、これらの例は説明のために提供され、本開示又は特許請求の範囲を限定することを何ら意図しない。
【0192】
実施例1
CD19 CAR(CD19-28Hinge-28TM-41BBz)にCD28ヒンジを組み込んだところ、CD19low細胞の殺傷力とサイトカイン産生が増強された
本実施例では、CD19 CAR(CD19-28Hinge-28TM-41BBz)へのCD28ヒンジの組み込みにより、CD19-CD8Hinge-CD8TM-41BBz(Kymriah)と比較して、CD19low細胞の殺傷力及び様々なCD19抗原密度に対するサイトカイン産生が増強され、CD19-28z CAR(Axi-Cell)と比較して良好な結果が得られたことを実証するために行った実験について説明する。
【0193】
図2Aに示すように,示された構造を有するCD19 CARをコードするレトロウイルスベクターを商業的に合成し、標準的な方法でクローニングした。レトロウイルスプラスミドを一過性にトランスフェクションした後、293GP細胞でウイルス上清を産生した。NALM6
low細胞は、CRISPR-Cas9技術を用いてNALM6腫瘍株からCD19をノックアウトした後、レンチウイルスベースのベクターを用いてタンパク質のトランケートバージョン(細胞外及び膜貫通部分のみ)を再導入することによって生成した。細胞をFACSで選別し、シングルセルクローニングを行い、CD19抗原密度の異なるクローンのライブラリーを作成した。CD19 CARはヒトT細胞に導入された。CD3/CD28ビーズで活性化した後、ウイルス上清で初代ヒトT細胞を形質導入した。示された構造を有するCD19 CARを、非常に低レベルのCD19を発現するNALM6細胞(細胞あたり約1000分子)と共培養し、GFPを測定することにより、Incucyteで経時的に残っている腫瘍細胞(生存率)を測定した(NALM6細胞はGFPを発現している)。
図2Aに示すように、963分子の表面CD19を発現するNALM6クローンを、CD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζのいずれかのCAR T細胞と1:1の比率で共培養し、Incucyteアッセイで腫瘍細胞の殺傷力を測定した。異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表例である。統計解析には反復測定ANOVAを用いた。4-1BB及びCD3-ゼータエンドドメインを含むCD19 CARにCD28ヒンジ及びCD28 TMDを含めることで、従来のCD19-41BB-ゼータ CARと比較して、従来のCD19-CD28-zeta CARと同様に、抗原密度の低い腫瘍に対する細胞溶解機能が向上することが確認された。4-1BB及びCD3-ゼータエンドドメインを含むCD19 CARにCD28ヒンジ及びCD28 TMDを含めることで、従来のCD19-41BB-ゼータ CARと比較して、従来のCD19-CD28-ゼータ CARと同様に、抗原密度の低い腫瘍に対する機能が向上することが確認された。
【0194】
4-1BB共刺激ドメインを含むCD19 CARは、CD28ヒンジドメインを含む場合にのみ、低濃度の抗原の認識が増強されることを示すため、追加の実験を行った。
図2Bに示すように、CD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζのCAR T細胞を、種々の量のCD19を発現するNALM6クローンと24時間共培養し、ELISAにより上清中のIL-2を測定した。異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表例である。CD19-4-1BBζ CAR T細胞とCD19-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞との間で、スチューデントのt検定(両側)により行われた統計的比較。
【0195】
実施例2
CD19-CD28Hi-CD28TM-41BBzはCD19-CD8Hi-CD8TM-41BBzに比べて機能が優れている
本実施例では、CD19-CD28Hi-CD28TM-41BBzが、CD19-CD8Hi-CD8TM-41BBzと比較して、低抗原密度に対するCAR機能が優れていることを、CD19-low白血病のインビボモデルを用いて実証する実験を行った。
【0196】
これらの実験では、
図3Aに示すように、100万個のNALM6-CD
192,053細胞を尾静脈注射によりNSGマウスに生着させた。その4日後、マウスに300万個のCD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζのCAR T細胞を注入した。腫瘍の進行を生物発光測光法で測定し、Living Imageソフトウェアを用いてフラックス値(光子/秒)を算出した。個々のマウスの定量化された腫瘍のフラックス値を示す。統計解析には反復測定ANOVAを用いた。
図3Bは、
図3Aで処理したマウスの生存曲線である。統計分析は、ログランク検定で行った。
図3A~
図3Bに示す結果は、異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表例である(1グループあたりn=5マウス)。
【0197】
実施例3
CD19-CD28Hi-CD28TM-41BBzは、CD19-CD8Hi-CD8TM-41BBzと比較して、ネイティブな抗原密度において優れた機能性を発揮する
本実施例では、CD19-CD28Hi-CD28TM-41BBzが、インビボストレステストモデルで判定される通常の(ネイティブな)抗原密度において、CD19-CD8Hi-CD8TM-41BBzと比較して優れた機能性を有することを実証するために行った実験について説明する。
【0198】
この実験では、
図4Aに示すように、100万個のNALM6-野生型細胞を尾静脈注射によりNSGマウスに生着させた。その3日後、マウスに2.5×10
5個のCD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζのCAR T細胞を注入した。腫瘍の進行を生物発光測光法で測定し、Living Imageソフトウェアを用いてフラックス値(光子/秒)を算出した。個々のマウスの定量化された腫瘍のフラックス値を示す。統計解析には反復測定ANOVAを用いた。
図4Bは、(f)で治療したマウスの生存曲線である。統計分析は、ログランク検定で行った。
図4A~
図4Bに示した結果は、異なるT細胞ドナーを用いた2つの実験の代表例である(1グループあたりn=5匹のマウス)。
【0199】
実施例4
CD19-CD28Hi-CD28TM-41BBzは、CD19-CD28Hi-CD28TM-28zに比べて、CD19-CD8Hi-CD8TM-41BBに比べて、持続性を高める効果を発揮する
本実施例において、CD19-CD28Hi-CD28TM-41BBzがT細胞にCD19-CD28Hi-CD28TM-CD28z CARよりも優れた持続性を与えることを、インビボNalm6実験の骨髄及び脾臓サンプルを用いたフローサイトメトリーで確認するために行った実験について説明する。
【0200】
図5A~
図5Eは、脾臓組織及び骨髄組織におけるCD19を標的とするCARの持続性を評価するために行った実験の結果を模式的にまとめたものである。100万個のNALM6-Wild型細胞を、尾静脈注射によりNSGマウスに生着させた。3日後、マウスに500万個のCD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、又はCD19-CD28H/T-4-1BBζのCAR T細胞を注射した。処置したマウス(1群あたりn=5)の脾臓(
図5A~
図5C)及び骨髄(
図5D~
図5E)を、+9日目、+16日目、及び+29日目(CAR T細胞処置後)に得た。CAR陽性T細胞の存在をフローサイトメトリーで評価した。一回実施した(各タイムポイントでCAR構築物ごとにn=5)。統計的な比較は、表示されたグループ間でMann Whitneyによって行われた。インビトロの実験では、エラーバーはSDを表し、インビボの実験では、エラーバーはSEMを表す。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値は以下のようにアスタリスクで示される:p>0.05、有意でない、NS;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【0201】
実施例5
CD28Hi-CD28TMは、いくつかの腫瘍モデルとCAR構築物において高い反応性を示す
図6A~
図6Cは、さまざまな腫瘍モデル及びCAR構築物においてHer2を標的とするCARの機能性を評価するために行った実験の結果を模式的にまとめたものである。
図6Aは、CD28ヒンジ-膜領域及び4-1BB共刺激ドメイン(Her2-CD28H/T-4-1BBζ)を含むHer2 CARの概略図である。
図6B:100万個の143b骨肉腫細胞を、NSGマウスの後脚に同所的に移植した。7日後、マウスを1000万個のHer2-4-1BBζCAR T細胞、Her2-CD28H/T-4-1BBζCAR T細胞、又は未導入のコントロールT細胞(MOCK)で処理した。脚の測定は週2回、デジタルキャリパーを用いて行った。個々のマウスの測定値を示す。統計解析には反復測定ANOVAを用いた。
図6C:
図6Bのように処置したマウスの生存曲線:ログランク検定で行った統計分析。
図6B~
図6Cに示された結果は、異なるT細胞ドナーを用いた2つの実験の代表例である(1グループあたりn=5匹のマウス)。
【0202】
図7A~
図7Dは、種々の腫瘍モデル及びCAR構築物において、B7-H3を標的とするCARの機能性を評価するために行った実験の結果を模式的にまとめたものである。
図7Aは、CD28ヒンジ-膜貫通領域及び4-1BB共刺激ドメイン(B7-H3-CD28H/T-4-1BBζ)を含むB7-H3 CARのシェーマである。
図7B:転移性神経芽腫モデルにおいて、100万個のCHLA255神経芽腫細胞を尾静脈注射によりNSGマウスに生着させた。6日後、マウスに1000万個のB7-H3-4-1BB CAR T細胞、B7-H3-CD28H/T-4-1BBζCAR T細胞、又は未導入のコントロールT細胞(MOCK)を注入した。腫瘍の進行は生物発光測光法で測定し、Living Imageソフトウェアを用いてフラックス値(光子/秒)を算出した。代表的な生物発光画像を示す。
図7C:
図7Bと同様に処理した個々のマウスの定量化された腫瘍フラックス値。統計解析には反復測定ANOVAを用いた。
図7D:
図7Bの方法で治療したマウスの生存曲線。統計分析は、ログランク検定を用いて行った。
図7B~
図7Dに示した結果は、異なるT細胞ドナーを用いた2つの実験の代表である。インビトロの実験では、エラーバーはSDを表し、インビボの実験では、エラーバーはSEMを表す。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値は以下のようにアスタリスクで示される:p>0.05、有意でない、NS;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【0203】
図8A~
図8Cは、CD28ヒンジドメインが、(第1世代CAR構築物において)共刺激がない場合でも、CAR T細胞の有効性の増強に関与することを示唆する実験結果をグラフ化したものである。
図8A:CD8又はCD28ヒンジ-膜貫通領域のいずれかを有する好ましい第1世代CD19 CAR(CD19-CD8H/T-ζ及びCD19-CD28H/T-ζ)の概略図である。
図8B:963分子又は45,851分子の表面CD19を発現するNALM6クローンを、CD19-CD28ζ、CD19-4-1BBζ、CD19-CD28H/T-ζ又はCD19-CD8H/T-ζのいずれかのCAR T細胞と1:1の比率で共培養し、Incucyteアッセイで腫瘍細胞の殺傷を測定した。異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表例。統計分析は、CD19-CD28H/T-ζとCD19-CD8H/T-ζとの間の反復測定ANOVAで行った。
図8C:CD19-CD28、CD19-4-1BBζ、CD19-CD28H/T-ζ、及びCD19-CD8H/T-ζのCAR T細胞を、様々な量のCD19を発現するNALM6クローンと24時間共培養し、分泌されたIL-2をELISAにより上清中で測定した。異なるT細胞ドナーを用いた3回の実験の代表的な結果である。統計的比較は、CD19-CD28H/T-ζとCD19-CD8H/T-ζの間で、スチューデントのt-検定(両側)を用いて行った。
【0204】
実施例6
CD28又はCD8αに由来するヒンジドメインと膜貫通ドメインの組み合わせを変えたCD19 CARの機能性を評価する
ヒンジドメインとTMDの異なる組み合わせを有するCD19 CARの機能性を調べるために、4つの追加のCD19 CARが設計され、試験された(例えば,
図9A~
図9Dを参照)。それぞれの新しいCAR設計は、抗ヒトB細胞CD19抗体(クローンFMC63)に由来する抗原結合部分、4-1BBに由来する共刺激ドメイン、CD3-ゼータドメイン、及びCD28又はCD8αのいずれかに由来するヒンジドメインとTMDの異なる組み合わせを含んでいた。次に、4つのCD19標的CAR設計の発現を分析した(
図10A~10B)。
【0205】
示された構造のCD19 CARをコードするレトロウイルスベクターは、市販のものを合成し、標準的な方法でクローニングした。レトロウイルスプラスミドを一過性にトランスフェクションした後、293GP細胞でウイルス上清を産生した。CD3/CD28ビーズで活性化した後、ウイルス上清を用いて初代ヒトT細胞を形質導入した。その結果、上述の4種類のCARは,ヒンジドメインや膜貫通ドメインにかかわらず、すべて同様の方法でT細胞の表面に発現することが確認された。CARの発現は、FMC63を認識する抗イディオタイプ抗体を用いて検出した。
【0206】
図11A~
図11Bは、CD28ヒンジドメインがCARの機能性の向上に関与していることを示唆する実験結果をまとめたものであり、さらにCD28Hi-CD8TMの組み合わせがより強力なものとなり得ることを示唆している。
図11Aに記載の実験では、示された構造を有するCARを、増加する量のCD19を発現する白血病株と24時間共培養し(各クローンは増加する量のCD19を表す:z=約1000分子/細胞;F=約2500分子/細胞;11=約6000分子/細胞;6=約40000分子/細胞)、上清中のIFN-γを測定した。
図11Aに示すように、4-1BB共刺激ドメインを含むCD19 CARは、CD28ヒンジドメインを含む場合にのみ、低濃度の抗原の認識強化を示した。
【0207】
図11Bで説明した実験では,指示された構造を有するCARを,増加する量のCD19を発現する白血病株と24時間共培養し(各クローンは増加する量のCD19を表す:z=約1000分子/細胞,F=約2500分子/細胞,11=約6000分子/細胞,6=約40000分子/細胞),上清中のIL-2を測定した。4-1BB共刺激ドメインを含むCD19 CARは、CD28ヒンジドメインを含む場合にのみ、低濃度の抗原の認識が増強されることがわかった。
【0208】
図12は、CD28ヒンジドメインが、低抗原発現細胞の殺細胞効果の増強に関与していることを示唆する実験結果をまとめたものである。これらの実験では、示された構造を有するCD19 CARを、非常に低いレベルのCD19を発現するNALM6細胞(細胞あたり約1000分子)と共培養し、GFPを測定することにより、Incucyte内に残っている腫瘍細胞を経時的に測定した(NALM6細胞はGFPを発現する)。
【0209】
実施例7
CD28のヒンジドメインがCARの活性を高める
本実施例では、CD28 Hinge-TMDが、特に低い標的密度において、より効率的な受容体のクラスター化、T細胞の活性化、及び腫瘍細胞の殺傷をもたらすことを実証するために行った実験について説明する。
【0210】
図13A~
図13Bにまとめたように、CAR T細胞とNALM6細胞をマイクロウェルプレートに低密度で播種し、1つの腫瘍細胞と1つのCAR T細胞を含むウェルをスキャンした。実験は2つの異なるT細胞ドナーで6回行った。
図13Aに示すように、単一細胞マイクロウェル殺傷実験からの代表的なウェルが示されている。CAR T細胞及びNALM6白血病細胞は、それぞれCellTrace Far Red(偽色のマゼンタ)及びGFP(偽色のシアン)ラベルによって区別された。細胞死は、細胞不透過性のヨウ化プロピジウム色素(PI、偽色の黄色)の流入によって決定された。溶解性コンジュゲートは、1つのT細胞と1つのNALM6細胞が閾値の距離内に留まり、NALM6細胞が死滅した(PIを取り込んだ)事象と定義した。非溶解性コンジュゲートとは、T細胞と腫瘍細胞が相互に作用するが、NALM6細胞が死ななかった(PIを取り込まなかった)コンジュゲートを表す。DICは、Differential interference contrast(微分干渉コントラスト)の略であり、Epiは、epifluorescence(エピ蛍光)の略である。
図13Bに示すように、CAR構築物ごとに1つの腫瘍細胞と1つのT細胞を含むウェルにおいて、T細胞と腫瘍細胞の相互作用からPI流入までの時間を測定した。全6回の実験(400~600ウェル)から得られたデータをまとめて示した。エラーバーはSDを表す。統計解析はスチューデントのt検定(両側)で行った。
図13Cに示すように、6回の実験のそれぞれにおいて、T細胞死をもたらした非溶解性接合体(T細胞と腫瘍細胞は相互作用したが、NALM6細胞は死ななかった接合体)の割合を測定した。本実施例に記載された実験結果は、CD28 Hinge/TMがCAR T細胞に、標的との結合後、より早く死滅させる能力を与えることを示している。
【0211】
実施例8
Her2抗原を標的にしたCARにおけるCD28ヒンジの機能性を評価する
本実施例では、ヒト143b型骨肉腫細胞(Her2low)におけるHer2を標的としたCARの機能性を、細胞キリングアッセイで評価するために行った実験について説明する。
【0212】
これらの実験では、100万個の143b骨肉腫細胞をNSGマウスの後肢に同所的に移植した。7日後、マウスを1000万個のHer2-4-1BBζ CAR T細胞、Her2-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞、又は未導入のコントロールT細胞(MOCK)で処理した。脚の測定は週2回、デジタルキャリパーを用いて行った。個々のマウスの測定値を示す。統計解析には反復測定ANOVAを用いた。
図6Cは、
図6Bのように処置したマウスの生存曲線を示しており、統計分析はログランク検定で行った。
図6B-
図6Cに示された結果は、異なるT細胞ドナーを用いた2つの実験の代表例である(1グループあたりn=5マウス。CD28のHinge-TMドメインは、Her2を認識するものを含むCARSに、従来のCARアーキテクチャでは死ななかった腫瘍細胞をインビボで殺す能力を与えている)。
【0213】
実施例9
B7-H3抗原を標的にしたCARにおけるCD28ヒンジの機能性を評価する
本実施例では、CD28由来のヒンジドメインが、B7-H3抗原を標的とするCARの機能性を高めることができることを実証するために行った実験について説明する。
【0214】
これらの実験では,従来のB7-H3-41BBz CAR T細胞(CD8ヒンジ領域を含む)と、CD28ヒンジ領域及び4-1BBzエンドドメインを含むB7-H3 CAR T細胞とを、神経芽細胞腫腫瘍株CHLA255に対するIncucyteアッセイでの延命殺傷試験で比較した。
図20Aに示すように、CD28ヒンジ領域及び4-1BB共刺激ドメインを含むB7-H3 CARを、標準的なクローニング技術により作製した。
【0215】
T細胞にB7-H3-4-1BBζ CAR T細胞又はB7-H3-CD28H/T-4-1BBζ CARのいずれかを導入した。続いて、これらのCAR T細胞を、神経芽腫腫瘍株CHLA255(赤色蛍光タンパク質で形質導入された)と、エフェクターと腫瘍の比率が1:4になるように共培養し、Incucyteを用いた延命殺傷アッセイで比較した。この実験では、転移性神経芽腫モデルとして、100万個のCHLA255神経芽腫細胞をNSGマウスに尾静脈注射で生着させた。その6日後、マウスに1000万個のB7-H3-4-1BBζ CAR T細胞、B7-H3-CD28H/T-4-1BBζ CAR T細胞、又は未導入のコントロールT細胞(MOCK)を注入した。腫瘍の進行は生物発光測光法で測定し、Living Imageソフトウェアを用いてフラックス値(光子/秒)を算出した。代表的な生物発光画像を示す。
図7Cに示すように、
図7Bのように処理した個々のマウスの定量化された腫瘍フラックス値を示す。統計分析は反復測定ANOVAで行った。
図7Dに示すように、
図7Bのように処置したマウスの生存曲線。統計分析は、ログランク検定で行った。
図7B~
図7Dに示す結果は、異なるT細胞ドナーを用いた2つの実験の代表である。インビトロの実験では、エラーバーはSDを表し、インビボの実験では、エラーバーはSEMを表す。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値は以下のようにアスタリスクで示される:p>0.05、有意でない、NS;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。
【0216】
図7B~
図7Dに示すように、CD28ヒンジドメインと4-1BB-zetaエンドドメインを含むB7-H3 CAR T細胞は、従来のCD8ヒンジドメインと4-1BB-zetaエンドドメインを含むものが腫瘍細胞を駆逐したのに対し、CD28ヒンジドメインと4-1BB-zetaエンドドメインを含むものは腫瘍細胞を駆逐せず、その結果、マウスの生存率が向上した。
【0217】
実施例10
CD28のヒンジ-TMドメインを有するCARは、抗原に反応してクラスター化し、近位のシグナル分子をリクルートする効率が高い
本実施例では、CD28由来のヒンジ-膜間ドメインがCAR T細胞の免疫シナプス形成を促進し、その結果、特に抗原密度が制限される環境下で有効性が向上することを実証するために行った実験について説明する。
【0218】
図14A~
図14Fは、CD28 Hinge-TMDがより効率的な受容体クラスタリング、T細胞の活性化、及び腫瘍細胞の殺傷をもたらすことを説明するために行った追加実験の結果を模式的にまとめたものである。イメージングベースのCAR T細胞活性化アッセイの図を
図14Aに示す。CD19-CD28H/T-4-1BBζ及びCD19-4-1BBζCAR T細胞を刺激するために、CAR T細胞を、ビオチン-ストレプトアビジン-ビオチンブリッジによって結合された自由に拡散するCD19タンパク質で機能化された平面支持脂質二重層(SLB)に曝した。リガンドと受容体が結合すると、リガンドと結合した受容体がマイクロクラスターに再編成され、チロシンキナーゼZAP70(GFPと融合、この図には示されていない)が細胞質から細胞膜にリクルートされ、マイクロクラスターの求心的な移動が細胞周辺部から細胞中心部へと促される。これらのイベントは、TIRF顕微鏡で可視化されている(蛍光:CAR-mCherry、ZAP70-GFP、Streptavidin-Alexa647)。平面支持脂質二重層におけるリガンド密度は、小さな一枚膜小胞(SUV)を含むビオチン-PEの濃度によって制御される。発現レベルの範囲を示す細胞間でのリクルートメントのレベル/クラスタリングの度合いを評価するために、分散の指標(すなわち、標準偏差を各細胞の蛍光強度の平均値で割ったものに等しい正規化分散、詳細は方法を参照)を用いた。
図14Bに示すように、
図14C~
図14Iの実験において、異なるCD19密度での各CAR構築物について、免疫シナプスにリクルートされたCAR分子のクラスター化の度合い(分散の指標)である。
図14Cは、高濃度(~6.0分子/μm2;上パネル)及び低濃度(~0.6分子/μm2;下パネル)のCD19を含む平面支持脂質二重層上で活性化されたZAP70-GFPでトランスフェクトされた単一のCD19-CD28H/T-4-1BBζ-mCherry(左パネル)及びCD19-CD8H/T-4-1BBζ-mCherry(右パネル)のCAR T細胞の代表的な画像である。
図14D:4つの異なるCD19濃度で各CAR構築物の免疫シナプスにリクルートされたZAP70-GFPのクラスタリングの度合い(分散の指標)。
図14E:リガンド密度に対する用量反応曲線としてプロットされた、
図14DからのプールされたZAP70のクラスター化の程度(分散の指標)データを示す。
図14Fは、リガンド密度に対する用量反応曲線としてプロットされた、活性化された細胞の割合(閾値以上のZAP70リクルートメント)を示す。
図14Gは、4つの異なるCD19密度における各CAR構築物について、免疫シナプスにリクルートされたリガンド-受容体複合体のクラスタリングの程度(分散の指標)を示す。
図14Hは、(h)からのプールされたリガンド-受容体複合体のクラスター化の程度(分散の指標)データを、リガンド密度に対する用量反応曲線としてプロットしたものである。
図14Iは、リガンド-受容体複合体をリクルートしている細胞の割合(閾値以上)を、リガンド密度の用量反応曲線としてプロットしたものである。
図14A~
図14Iに示す結果(平均値±SDとして示す)は、異なるT細胞ドナーを用いて行った2つの実験のうち、1つの実験を代表するものである。条件ごとにn>100。統計解析は、両側t検定を用いて行った。p<0.05は統計的に有意であると考えられ、p値は以下のようにアスタリスクで示される:p>0.05、有意でない、NS;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001。データは、異なるT細胞ドナーを用いた2回の実験から得られた代表的なものである。条件ごとにn>100。統計解析にはスチューデントのt検定を用いた。
【0219】
本開示の特定の代替案を開示してきたが、様々な修正や組み合わせが可能であり、添付の特許請求の範囲の真の精神と範囲内で企図されていることを理解されたい。したがって、本明細書に提示された正確な要旨及び開示に制限を加える意図はない。
【配列表】
【国際調査報告】