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2022-531454ムチン-16に対するヒト化抗体およびそれを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ムチン-16に対するヒト化抗体およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220629BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220629BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220629BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220629BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220629BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220629BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220629BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20220629BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220629BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20220629BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20220629BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K16/30
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/04
A61P15/00
A61P11/00
A61P1/18
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61K35/17 Z
A61K47/68
A61K51/10 200
A61K51/10 100
A61K45/00
G01N33/574 A
G01N33/536 B
G01N33/536 C
G01N33/536 D
G01N33/536 E
G01N33/53 Y
G01T1/161 D
A61B5/055 383
G01T1/161 E
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565883
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 US2020031886
(87)【国際公開番号】W WO2020227538
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/845,065
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】511071522
【氏名又は名称】エウレカ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【弁理士】
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】スプリッグス デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】タピ ダルマラオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ス
(72)【発明者】
【氏名】リウ チェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4C096
4C188
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC29
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA12
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA05
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC411
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085HH05
4C085KA03
4C085KA29
4C085KB07
4C085KB76
4C085LL18
4C087AA01
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087NA14
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA81
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC41
4C087ZC75
4C096AA11
4C096AD19
4C096FC14
4C188EE01
4C188EE25
4C188EE27
4C188FF04
4C188FF07
4C188MM08
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
ムチン16(MUC16)のエピトープに免疫特異的に結合する抗ムチン16(MUC16)因子が関与する組成物、方法および使用が、本明細書において提供される。また、陽性MUC16発現と関連する障害、例えば、がんおよび疾患を管理、処置または予防するための使用および方法が、本明細書において提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムチン16(MUC16)ポリペプチドを免疫特異的に認識する抗体部分を含む抗ムチン16(MUC16)構築物であって、前記抗体部分が、
(a)
(i)それぞれ配列番号17、18および19の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3、および、それぞれ配列番号136、137および138の重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2およびHC-FW3を含む可変重(VH)鎖であって、配列番号136のアミノ酸位置1、3、5、11および19、配列番号137のアミノ酸位置5、7、8および9、および配列番号138のアミノ酸位置12、14、18、22および23から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号124、125および126のマウスHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3に対してヒト化されている、可変重(VH)鎖、および
(ii)それぞれ配列番号14、15および16の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3、およびそれぞれ配列番号120、121、122および123の軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む可変軽(VL)鎖であって、配列番号120の位置3、9、15、18および22、配列番号122のアミノ酸位置7および27、および配列番号123のアミノ酸位置3および9から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号104、105、106および107のマウスLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4に対してヒト化されている、可変軽(VL)鎖、または
(b)
(i)配列番号4もしくは5を含む可変重(VH)鎖、および
(ii)配列番号2もしくは3を含む可変軽(VL)鎖、または
(c)
(i)それぞれ配列番号35、36および37の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3、および、それぞれ配列番号175、176、177および178の重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む可変重(VH)鎖であって、配列番号175のアミノ酸位置10、11、12、13、15、19および23、配列番号177のアミノ酸位置5、14、16、18、22および23、および配列番号178のアミノ酸位置6から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号159、160、161および162のマウスHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4に対してヒト化されている、可変重(VH)鎖、および、
(ii)それぞれ配列番号32、33および34の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3、および、それぞれ配列番号155、156、157および158の軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む可変軽(VL)鎖であって、配列番号155の位置7、9、11および18、配列番号156のアミノ酸位置5、および配列番号157のアミノ酸位置9および18から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号139、140、141および142のマウスLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4に対してヒト化されている、可変軽(VL)鎖、または
(d)
(i)配列番号22もしくは23を含む可変重(VH)鎖、および
(ii)配列番号20もしくは21を含む可変軽(VL)鎖
を含み、
VH鎖およびVL鎖がヒト化され、MUC16ポリペプチドがヒトMUC16であってもよい、前記抗MUC16構築物。
【請求項2】
(a)(i)のHC-FW1が配列番号130を含み、
(a)(i)のHC-FW2が配列番号131を含み、
(a)(i)のHC-FW3が配列番号132を含み、
(a)(ii)のLC-FW1が配列番号112を含み、
(a)(ii)のLC-FW2が配列番号113を含み、
(a)(ii)のLC-FW3が配列番号114を含み、および/または
(a)(ii)のLC-FW4が配列番号115を含む、請求項1に記載の抗MUC16構築物。
【請求項3】
(a)(i)のHC-FW1が配列番号133を含み、
(a)(i)のHC-FW2が配列番号134を含み、
(a)(i)のHC-FW3が配列番号135を含み、
(a)(ii)のLC-FW1が配列番号116を含み、
(a)(ii)のLC-FW2が配列番号117を含み、
(a)(ii)のLC-FW3が配列番号118を含み、および/または
(a)(ii)のLC-FW4が配列番号119を含む、請求項1に記載の抗MUC16構築物。
【請求項4】
(c)(i)のHC-FW1が配列番号167を含み、
(c)(i)のHC-FW2が配列番号168を含み、
(c)(i)のHC-FW3が配列番号169を含み、
(c)(i)のHC-FW4が配列番号170を含み、
(c)(ii)のLC-FW1が配列番号147を含み、
(c)(ii)のLC-FW2が配列番号148を含み、
(c)(ii)のLC-FW3が配列番号149を含み、および/または
(c)(ii)のLC-FW4が配列番号150を含む、請求項1に記載の抗MUC16構築物。
【請求項5】
(c)(i)のHC-FW1が配列番号171を含み、
(c)(i)のHC-FW2が配列番号172を含み、
(c)(i)のHC-FW3が配列番号173を含み、
(c)(i)のHC-FW4が配列番号174を含み、
(c)(ii)のLC-FW1が配列番号151を含み、
(c)(ii)のLC-FW2が配列番号152を含み、
(c)(ii)のLC-FW3が配列番号153を含み、および/または
(c)(ii)のLC-FW4が配列番号154を含む、請求項1に記載の抗MUC16構築物。
【請求項6】
抗体部分が、MUC16のエクトドメインに、または配列番号44のアミノ酸配列を含むMUC16 c114ポリペプチドに免疫特異的に結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項7】
抗体部分が全長抗体、モノクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fv(scFv)であり、scFvが配列番号53~68のうちいずれか1つを含んでもよい、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項8】
Matrigel浸潤アッセイにおいてMUC16を発現する腫瘍細胞のin vitro浸潤を阻害し、MUC16を発現する腫瘍細胞が卵巣腫瘍細胞であってもよい、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項9】
MUC16が、好ましくは、配列番号44に対してN24またはN30でグリコシル化される、請求項8に記載の抗MUC16構築物。
【請求項10】
抗体部分がヒト由来重鎖定常領域および軽鎖定常領域を含み、前記重鎖定常領域がガンマl、ガンマ2、ガンマ3およびガンマ4からなる群から選択されるアイソタイプを有してもよく、前記軽鎖定常領域がカッパおよびラムダからなる群から選択されるアイソタイプを有してもよい、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項11】
抗体部分が、2つの同一な重鎖および2つの同一な軽鎖を含む免疫グロブリンであり、前記免疫グロブリンがIgGであってもよい、請求項1~10のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項12】
MUC16構築物が単一特異性、多重特異性または二重特異性であり、前記多重特異性または二重特異性抗MUC16構築物が抗CD3抗体部分を含んでもよい、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項13】
(i)タンデムscFv、任意に、ペプチドリンカーによって連結された2つのscFvを含んでもよいタンデムscFv、(ii)ダイアボディー(Db)、(iii)一本鎖ダイアボディー(scDb)、(iv)二重親和性再標的化(DART)抗体、(v)F(ab’)2、(vi)二重可変ドメイン(DVD)抗体、(vii)ノブ・イントゥ・ホール(KiH)抗体、(viii)ドック・アンド・ロック(DNL)抗体、(ix)化学的に架橋された抗体、(x)ヘテロ多量体抗体または(xi)ヘテロコンジュゲート抗体である、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項14】
多重特異性または二重特異性抗MUC16構築物が、MUC16を免疫特異的に認識する第1の抗体部分および第2の抗原を免疫特異的に認識する第2の抗体部分を含む、請求項12~13のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項15】
第2の抗原がT細胞の表面上で発現される抗原であり、前記第2の抗原がCD3γ、CD3δ、CD3εおよびCD3ζからなる群から選択されるCD3ポリペプチドであってもよく、および/または抗MUC16構築物が配列番号42、69~75および88~95のうちいずれか1つを含んでもよい、請求項14に記載の抗MUC16構築物。
【請求項16】
(i)共刺激ドメイン、(ii)CD3ゼータ(ζ)鎖細胞質シグナル伝達ドメイン、(iii)配列番号53~68のうちいずれか1つのscFv、または(iv)配列番号80~87および97~103のうちいずれか1つのうち少なくとも1つを含むキメラ抗原受容体(CAR)である、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項17】
ペプチド因子、検出因子、造影剤、治療剤または細胞傷害性因子にさらにコンジュゲートされる、請求項1~16のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物。
【請求項18】
アルファ放射体、オージェ放射体、ベータ放射体、ガンマ放射体、陽電子放射体またはX線放射体にコンジュゲートされており、前記陽電子放射体が89Zr-デスフェリオキサミンB(DFO)であってもよい、請求項17に記載の抗MUC16構築物。
【請求項19】
配列番号2~5、10~13、20~23および28~31のうち1つもしくは複数のアミノ酸配列または請求項1~18のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項20】
請求項19の1つまたは複数のポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項21】
プロモーターに作動可能に連結した請求項20に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項22】
請求項1~18のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物、請求項19に記載のポリペプチド、請求項20に記載のポリヌクレオチドまたは請求項21に記載のベクターを含む細胞であって、哺乳動物細胞、免疫細胞、リンパ球、T細胞またはB細胞であってもよい、前記細胞。
【請求項23】
請求項1~18のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物、請求項19に記載のポリペプチド、請求項20に記載のポリヌクレオチドまたは請求項21に記載のベクターまたは請求項22に記載の細胞の治療上有効な量、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項24】
それを必要とする患者においてMUC16関連疾患または障害を処置する方法であって、前記患者に、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物または請求項23に記載の医薬組成物の治療上有効な量を投与することを含み、前記MUC16関連疾患または障害が、がんである、前記方法。
【請求項25】
がんが、転移性がんおよび/または卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管もしくは原発腹膜のがんである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
医薬組成物が患者において転移を阻害または低減し、前記患者がヒト患者であってもよい、請求項24~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
エフェクター細胞を産生する方法であって、請求項1~18のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物または請求項19に記載のポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸を用いて細胞を遺伝子改変することを含む、前記方法。
【請求項28】
請求項1~18のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物または請求項19に記載のポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸を、患者から単離された1つまたは複数の初代細胞中に導入すること、および、前記1つまたは複数の核酸を含む細胞を患者に投与することを含み、前記初代細胞がリンパ球またはT細胞であってもよい、処置方法。
【請求項29】
細胞を拡大増殖すること、および、その後細胞を患者に投与すること、をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
さらなる治療剤の治療上有効量を患者に投与することをさらに含む、請求項28~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
試料においてMUC16を検出する方法であって、(a)試料を請求項1~18のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物と接触させるステップ、および(b)試料中の抗MUC16構築物とMUC16ポリペプチドの間の直接または間接結合を検出するステップを含み、前記抗MUC16構築物が、発色標識、酵素標識、放射同位体標識、同位体標識、蛍光標識、毒性標識、化学発光標識および核磁気共鳴造影剤の中から選択される検出可能な標識にコンジュゲートされてもよい、前記方法。
【請求項32】
MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、
a)請求項1~13のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物の有効量を個体に投与すること、および
b)個体において抗MUC16構築物とMUC16ポリペプチドの間の直接または間接結合のレベルを決定すること、
を含み、閾値レベルを上回る直接または間接結合のレベルが、個体がMUC16関連疾患または障害を有することの指標となる、前記方法。
【請求項33】
MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、
a)個体に由来する細胞を含む試料を、請求項1~13のいずれか1つの抗MUC16構築物と接触させるステップ、および
b)抗MUC16構築物に結合した試料中の細胞数を決定すること、
を含み、閾値レベルを上回る抗MUC16構築物に結合した細胞数の値が、個体がMUC16関連疾患または障害を有することを示すステップ
を含む、方法。
【請求項34】
請求項1~18のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物、マウス抗MUC16抗体またはその抗原結合性断片および使用のための説明書を含むキットであって、前記マウス抗MUC16抗体または抗原結合性断片は、
(a)それぞれ配列番号17、18および19の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖、およびそれぞれ配列番号14、15および16の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖、または
(b)それぞれ配列番号35、36および37の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖、およびそれぞれ配列番号32、33および34の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖、
を含む、前記キット。
【請求項35】
マウス抗MUC16抗体または抗原結合性断片が、抗MUC16構築物を用いる処置に対して応答性である患者を同定するために使用される、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
マウス抗MUC16抗体または抗原結合性断片が、ウエスタンブロッティング、免疫組織化学、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫沈降または免疫電気泳動によって患者から得た試料においてMUC16を発現する腫瘍を検出するために使用される、請求項34または35に記載のキット。
【請求項37】
in vivoで対象においてがんを検出する方法であって、
(a)対象に請求項1~17のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物の有効量を投与するステップであって、MUC16を発現するがん細胞に局在するように前記抗MUC16構築物が構成され、放射性同位元素で標識されている、ステップ、および
(b)参照値よりも高い、抗MUC16構築物によって放射される放射活性レベルを検出することによって対象における腫瘍の存在を検出するステップであって、前記放射性同位元素が89Zr-デスフェリオキサミンB(DFO)であってもよい、ステップ
を含む、前記方法。
【請求項38】
抗MUC16構築物によって放射された放射活性レベルが、陽電子放射型断層撮影法または単一光子放射コンピューター断層撮影法を使用して検出される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
対象に放射性核種にコンジュゲートされた請求項1~17のいずれか1項に記載の抗MUC16構築物を含む免疫複合体の有効量を投与するステップをさらに含む、請求項37~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
放射性核種が、アルファ粒子放射性同位元素、ベータ粒子放射性同位元素、オージェ放射体またはそれらの任意の組合せである、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示内容が組み込まれる2019年5月8日に出願された米国仮特許出願第62/845,065号の利益および優先権を主張する。
政府の支援の声明
本発明は国立衛生研究所によって授与されたP01 CA190174-01、P01 CA190174-02およびP01 CA190174-03の下で政府の支援を受けて行った。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
ムチンは、細胞ホメオスタシスおよび上皮表面の保護のための重要な生体分子である。がん、例えば、卵巣がんにおけるムチンの発現の変化は、診断、予後および処置のためのバイオマーカーとして有用である(Singh AP, et al., Lancet Oncol 2008; 9(11): 1076-85)。MUC16は、ほとんどの卵巣癌細胞で過剰発現されるムチンであり、卵巣がんの検出および進行の確立された代替血清マーカー(CA-125)である(Badgwell D, et al., Dis Markers 23(5-6):397410 (2007)、Bast RC, Jr, et al.、Int J Gynecol Cancer 15 Suppl 3:274-81 (2005)、Fritsche HA, et al., Clin Chem 44(7): 1379-80 (1998)およびKrivak TC et al., Gynecol Oncol 115(1):81-5 (2009))。
【0003】
MUC16は、切断および放出される大きな細胞外ドメイン(CA-125)と、保持されるドメイン(MUC-CD)(図1)から構成される高度にグリコシル化されたムチンである。MUC-CDは、切断部位の近位の非反復細胞外ドメイン(MUC16エクトドメイン)、膜貫通ドメインおよび潜在的リン酸化部位を有する細胞質尾部を含む。切断部位の遠位の、放出される細胞外ドメイン(CA-125)は、156個のアミノ酸の16~20のタンデムリピートを含有し、各々、多数の潜在的グリコシル化部位を有する(O'Brien TJ, et al., Tumor Biol 22(6):348-66 (2001))。MUC16抗原は、そうでなければ、子宮、子宮内膜、卵管、卵巣および腹腔および胸腔の漿膜の正常組織では低レベルでしか発現されないので、MUC16は、がんの標的化および処置を含む免疫ベース療法の魅力的な標的である可能性が高い。
MUC16の細胞外ドメインのかなりの部分は、切断され、分泌され(すなわち、CA-125)、これがMUC16のこの部分が卵巣癌上の標的抗原として使用されるという有用性を制限する。多数の報告されたMUC16モノクローナル抗体は、糖タンパク質の大きな分泌されるCA-125画分上に存在するエピトープに結合し、残存するMUC16エクトドメインには結合しない(Bellone S Am J Obstet Gynecol 200(1):75 el-10 (2009)、Berek JS. Expert Opin Biol Ther. 4(7): 1159-65 (2004); O'Brien TJ, et al., Int J Biol Markers 13(4): 188-95 (1998))。したがって、診断および治療目的のために、減らされないMUC16の領域に対する新規抗体の作製が必要である。
【発明の概要】
【0004】
MUC16媒介性障害、例えば、がんを管理または処置するための、ムチン16(MUC16)に免疫特異的に結合し、MUC16の発現および/または活性をモジュレートする抗体部分を含む抗ムチン16(MUC16)構築物の組成物、方法および使用が、本明細書において提供される。
ある特定の実施形態では、ムチン16(MUC16)ポリペプチドを免疫特異的に認識する抗体部分を含む抗ムチン16(MUC16)構築物が本明細書において提供され、抗体部分は、4H11または18C6マウスモノクローナル抗体のヒト化重鎖可変ドメインおよびヒト化軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗体部分は、(a)(i)それぞれ配列番号17、18および19の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3と、それぞれ配列番号136、137および138の重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2およびHC-FW3であって、配列番号136のアミノ酸位置1、3、5、11および19、配列番号137のアミノ酸位置5、7、8および9、および配列番号138のアミノ酸位置12、14、18、22および23から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号124、125および126のマウスHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3に対してヒト化されている、重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2およびHC-FW3とを含む可変重(VH)鎖、(ii)それぞれ配列番号14、15および16の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3と、それぞれ配列番号120、121、122および123の軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4であって、配列番号120の位置3、9、15、18および22、配列番号122のアミノ酸位置7および27、および配列番号123のアミノ酸位置3および9から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号104、105、106および107のマウスLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4に対してヒト化されている、軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4とを含む可変軽(VL)鎖、または(b)(i)配列番号4もしくは5を含む可変重(VH)鎖および(ii)配列番号2もしくは3を含む可変軽(VL)鎖または(c)(i)それぞれ配列番号35、36および37の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3と、それぞれ配列番号175、176、177および178の重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4であって、配列番号175のアミノ酸位置10、11、12、13、15、19および23、配列番号177のアミノ酸位置5、14、16、18、22および23、および配列番号178のアミノ酸位置6から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号159、160、161および162のマウスHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4に対してヒト化されている、重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4とを含む可変重(VH)鎖、(ii)それぞれ配列番号32、33および34の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3と、それぞれ配列番号155、156、157および158の軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4であって、配列番号155の位置7、9、11および18、配列番号156のアミノ酸位置5、および配列番号157のアミノ酸位置9および18から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号139、140、141および142のマウスLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4に対してヒト化されている、軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4とを含む可変軽(VL)鎖、または(d)(i)配列番号22もしくは23を含む可変重(VH)鎖および(ii)配列番号20もしくは21を含む可変軽(VL)鎖を含む。
【0005】
一部の実施形態では、(a)(i)のHC-FW1は、配列番号130を含み、(a)(i)のHC-FW2は、配列番号131を含み、(a)(i)のHC-FW3は、配列番号132を含み、(a)(ii)のLC-FW1は、配列番号112を含み、(a)(ii)のLC-FW2は、配列番号113を含み、(a)(ii)のLC-FW3は、配列番号114を含み、および/または(a)(ii)のLC-FW4は、配列番号115を含む。一部の実施形態では、(a)(i)のHC-FW1は、配列番号133を含み、(a)(i)のHC-FW2は、配列番号134を含み、(a)(i)のHC-FW3は、配列番号135を含み、(a)(ii)のLC-FW1は、配列番号116を含み、(a)(ii)のLC-FW2は、配列番号117を含み、(a)(ii)のLC-FW3は、配列番号118を含み、および/または(a)(ii)のLC-FW4は、配列番号119を含む。
【0006】
一部の実施形態では、(c)(i)のHC-FW1は、配列番号167を含み、(c)(i)のHC-FW2は、配列番号168を含み、(c)(i)のHC-FW3は、配列番号169を含み、(c)(i)のHC-FW4は、配列番号170を含み、(c)(ii)のLC-FW1は、配列番号147を含み、(c)(ii)のLC-FW2は、配列番号148を含み、(c)(ii)のLC-FW3は、配列番号149を含み、および/または(c)(ii)のLC-FW4は、配列番号150を含む。一部の実施形態では、(c)(i)のHC-FW1は、配列番号171を含み、(c)(i)のHC-FW2は、配列番号172を含み、(c)(i)のHC-FW3は、配列番号173を含み、(c)(i)のHC-FW4は、配列番号174を含み、(c)(ii)のLC-FW1は、配列番号151を含み、(c)(ii)のLC-FW2は、配列番号152を含み、(c)(ii)のLC-FW3は、配列番号153を含み、および/または(c)(ii)のLC-FW4は、配列番号154を含む。
【0007】
一部の実施形態では、抗体部分は、ヒトMUC16を免疫特異的に認識する。一部の実施形態では、抗体部分は、配列番号53のヒトMUC16ペプチドを免疫特異的に認識する。一部の実施形態では、抗体部分は、配列番号44のアミノ酸配列を含むMUC16 c114ポリペプチドに免疫特異的に結合する。一部の実施形態では、MUC16は、グリコシル化される。一部の実施形態では、MUC16は、Asnl800またはAsn1806でN-グリコシル化される。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗ムチン16(MUC16)構築物の抗体部分は、(a)(i)配列番号12もしくは13を含む重鎖および(ii)配列番号10もしくは11を含む軽鎖、または(b)(i)配列番号30もしくは31を含む重鎖および(ii)配列番号28もしくは29を含む軽鎖を含む。
【0008】
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗ムチン16(MUC16)構築物の抗体部分は、MUC16のエクトドメインに免疫特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体部分は、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fv(scFv)である。一部の実施形態では、抗体部分は、一本鎖Fv(scFv)であり、scFvは、配列番号53~68のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、VH鎖およびVL鎖は、ヒトVH鎖およびVL鎖である。一部の実施形態では、抗体部分は、モノクローナル抗体である。
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、Matrigel浸潤アッセイにおいてMUC16を発現する腫瘍細胞のin vitro浸潤を阻害する。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、卵巣腫瘍細胞である。
【0009】
一部の実施形態では、抗体部分は、ヒト由来重鎖および軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域は、ガンマ1、ガンマ2、ガンマ3およびガンマ4からなる群から選択されるアイソタイプを有する。一部の実施形態では、軽鎖定常領域は、カッパおよびラムダからなる群から選択されるアイソタイプを有する。一部の実施形態では、抗体部分は、2つの同一な重鎖および2つの同一な軽鎖を含む免疫グロブリンである。一部の実施形態では、免疫グロブリンは、IgGである。
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、単一特異性である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、多重特異性である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、二重特異性である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、タンデムscFv、ダイアボディー(Db)、一本鎖ダイアボディー(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体、F(ab’)2、二重可変ドメイン(DVD)抗体、ノブ・イントゥ・ホール(KiH)抗体、ドック・アンド・ロック(DNL)抗体、化学的に架橋された抗体、ヘテロ多量体抗体またはヘテロコンジュゲート抗体である。一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、ペプチドリンカーによって連結された2つのscFvを含むタンデムscFvである。一部の実施形態では、MUC16を免疫特異的に認識する抗体部分は、第1の抗体部分であり、抗MUC16構築物は、第2の抗原を免疫特異的に認識する第2の抗体部分をさらに含む。一部の実施形態では、第2の抗原は、T細胞の表面上の抗原である。一部の実施形態では、第2の抗原は、CD3である。一部の実施形態では、第2の抗原は、CD3γ、CD3δ、CD3εおよびCD3ζからなる群から選択される。一部の実施形態では、第2の抗原は、CD3εである。一部の実施形態では、多重特異性または二重特異性抗MUC16構築物は、抗CD3抗体部分を含む。一部の実施形態では、多重特異性または二重特異性抗MUC16構築物は、配列番号42、69~75および88~95のいずれか1つを含む。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、キメラ抗原受容体(CAR)である。一部の実施形態では、CARは、共刺激性ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、CD3ゼータ(ζ)鎖細胞質シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号53~68のうちいずれか1つのscFvを含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号80~87および97~103のうちいずれか1つを含む。
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物は、ペプチド因子、検出因子、造影剤、治療剤または細胞傷害性因子にさらにコンジュゲートされる。
また、ある特定の実施形態では、配列番号2~5、10~13、20~23および28~31のうち1種もしくは複数のアミノ酸配列または本明細書において提供される抗MUC16構築物のアミノ酸を含むポリペプチドが、本明細書において提供される。
また、ある特定の実施形態では、配列番号2~5、10~13、20~23および28~31のうち1種もしくは複数のアミノ酸配列または本明細書において提供される抗MUC16構築物のアミノ酸を含む1種または複数のポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、プロモーターに作動可能に連結した本明細書において提供されるポリヌクレオチドを含むベクターが本明細書において提供される。
【0011】
また、ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物、本明細書において提供されるポリペプチド、本明細書において提供されるポリヌクレオチドまたは本明細書において提供されるベクターを含む細胞が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。一部の実施形態では、細胞は、免疫細胞である。一部の実施形態では、細胞は、リンパ球である、一部の実施形態では、細胞はT細胞またはB細胞である。
また、ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物、本明細書において提供されるポリペプチド、本明細書において提供されるポリヌクレオチドまたは本明細書において提供されるベクターの治療上有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が、本明細書において提供される。
【0012】
また、ある特定の実施形態では、それを必要とする患者において、MUC16関連疾患または障害を処置する方法であって、前記患者に、本明細書において提供される抗MUC16構築物、本明細書において提供されるポリペプチド、本明細書において提供されるポリヌクレオチドまたは本明細書において提供されるベクターの治療上有効量を含む医薬組成物を投与することを含む方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、MUC16関連疾患または障害は、がんである。一部の実施形態では、がんは、卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管または原発腹膜のがんである。一部の実施形態では、がんは転移性がんである。一部の実施形態では、医薬組成物は、患者において転移を阻害または低減する。一部の実施形態では、患者は、ヒト患者である。
また、ある特定の実施形態では、エフェクター細胞を産生する方法であって、細胞を、本明細書において提供される抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を用いて遺伝子改変することを含む方法が本明細書において提供される。
また、ある特定の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16構築物をコードする1つまたは複数の核酸を、患者から単離された1つまたは複数の初代細胞中に導入すること、および、1つまたは複数の核酸を含む細胞を患者に投与することを含む方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、本方法は、細胞を拡大増殖すること、その後細胞を患者に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、初代細胞はリンパ球である。一部の実施形態では初代細胞はT細胞である。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書において提供される治療の方法は、さらなる治療剤の治療上有効量を患者に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、治療剤は抗がん剤である。一部の実施形態では、治療剤は化学療法剤である。
また、ある特定の実施形態では、試料においてMUC16を検出する方法であって、(a)試料を本明細書において提供される抗MUC16構築物と接触させること、および(b)試料中に存在する抗MUC16構築物とMUC16の間の結合を直接的または間接的に検出すること、を含む方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16構築物は検出可能な標識にコンジュゲートされる。一部の実施形態では検出可能な標識は、発色因子、酵素因子、放射性同位体因子、同位体因子、蛍光因子、毒性因子、化学発光因子、核磁気共鳴造影剤である。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は検出可能な標識を検出することによって直接的に検出される。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は二次抗体を使用して間接的に検出される。
【0014】
また、ある特定の実施形態では、MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、a)本明細書において提供される抗MUC16構築物の有効量を個体に投与すること、およびb)個体において抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合のレベルを直接的または間接的に決定することを含み、閾値レベルを上回る結合のレベルが、個体がMUC16関連疾患または障害を有することの指標となる方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16構築物は検出可能な標識にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、検出可能な標識は、発色因子、酵素因子、放射性同位体因子、同位体因子、蛍光因子、毒性因子、化学発光因子、核磁気共鳴造影剤である。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は、検出可能な標識を検出することによって直接的に検出される。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は二次抗体を使用して間接的に検出される。
【0015】
MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、a)個体に由来する細胞を含む試料を、本明細書において提供される抗MUC16構築物と接触させること、およびb)抗MUC16構築物に結合した試料中の細胞数を決定することを含み、閾値レベルを上回る抗MUC16構築物に結合した細胞数の値が、個体がMUC16関連疾患または障害を有することの指標となる方法が提供される。一部の実施形態では、抗MUC16構築物は、検出可能な標識にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、検出可能な標識は発色因子、酵素因子、放射性同位体因子、同位体因子、蛍光因子、毒性因子、化学発光因子、核磁気共鳴造影剤である。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は、検出可能な標識を検出することによって直接的に検出される。一部の実施形態では、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合は二次抗体を使用して間接的に検出される。
【0016】
また、ある特定の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の治療のための、本明細書において提供される抗MUC16構築物、抗MUC16ポリペプチド、抗MUC16構築物または抗MUC16ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクターまたは任意のポリペプチドおよびそのポリヌクレオチドを含む細胞の使用が本明細書において提供される。一部の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害は、がんである。
また、ある特定の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の治療のための医薬の製造における、本明細書において提供される、抗MUC16構築物、抗MUC16ポリペプチド、抗MUC16構築物または抗MUC16ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクターまたは任意のポリペプチドおよびそのポリヌクレオチドを含む細胞の使用が本明細書において提供される。一部の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害はがんである。
【0017】
また、ある特定の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の診断のための、本明細書において提供される抗MUC16構築物、抗MUC16ポリペプチド、抗MUC16構築物または抗MUC16ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクターまたは任意のポリペプチドおよびそのポリヌクレオチドを含む細胞の使用が本明細書において提供される。一部の実施形態では、陽性MUC16発現と関連する疾患または障害はがんである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1Aは、MUC16の構造の概略図を示す図である。図1Bは、MUC16 c114(配列番号44)と呼ばれる、MUC16の切断型形態の概略およびアミノ酸配列を示し、58個のアミノ酸のエクトドメイン、25個のアミノ酸の膜貫通ドメインおよび31個のアミノ酸の細胞質尾部を含む。図中の番号付けは、Muc16を同定する元の刊行物、Yin and Lloyd (2001) J Biol Chem 276: 27371-27375に基づいている。
図2図2は、野生型MUC16-C114(配列番号44)およびN30変異体MUC16-C114(配列番号50)エクトドメインの間のアミノ酸アラインメントを示す図である。
図3A図3A~3Eは、MUC16カルボキシ末端に結合する抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図3Aは、4つの別個の領域:N末端ドメイン、タンデムリピート[TR]領域、SEA(精子タンパク質、エンテロキナーゼおよびアグリン)ドメインおよび膜近傍[JM]領域またはエクトドメインおよび膜貫通[TM]領域を含むカルボキシ末端ドメインを強調するMUC16超構造の分子レイアウト模式図表示を示す。エクトドメイン領域内に見られる、本研究において試験される抗体の標的結合部位であるMUC16ペプチド-2の配列が支援されている。
図3B図3A~3Eは、MUC16カルボキシ末端に結合する抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図3Bは、2種のリード抗体候補の放射標識された変種の飽和結合アッセイから得られた結果を示すグラフを提供する。対照抗体(点線)に対する[89Zr]Zr-DFO-9C9(左)および[89Zr]Zr-DFO-4H11(右)(実線)の結合親和性曲線が示されている。
図3C図3A~3Eは、MUC16カルボキシ末端に結合する抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図3Cは、[89Zr]Zr-DFO-4H11対[89Zr]Zr-DFO-9C9の細胞内部移行プロファイルを例示し、SKOV3c114細胞における、4℃でいずれの抗体でも最小取り込みを示すが、[89Zr]Zr-DFO-9C9の遅い取り込みに対して、比較的に迅速な37℃での[89Zr]Zr-DFO-4H11の取り込みを示す。
図3D図3A~3Eは、MUC16カルボキシ末端に結合する抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図3Dは、[89Zr]Zr-DFO-4H11対[89Zr]Zr-DFO-9C9の同等のin vitro血清安定性を示すグラフ表示を提供する。
図3E図3A~3Eは、MUC16カルボキシ末端に結合する抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図3Eは、過剰の非標識9C9抗体の存在下でのストレプトアビジン官能化された磁性ビーズ上に捕捉されたビオチン化MUC16ペプチド-2への[89Zr]Zr-DFO-4H11結合の遮断を示すグラフ表示を提供する(遮断されていない(中央のバー)を、遮断された(右のバー)と比較するため;MUC16ペプチド-2を含まない対照試料も示されている(左のバー))。
図4A図4A~4Dは、[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11の放射性薬理学的プロファイルのin vivo特性決定を例示する図である。図4Aは、SKOV3c114異種移植片における[89Zr]Zr-DFO-9C9(外側尾静脈を介して注射された200μLのキレックス処置PBS中に懸濁された170~200μCi;6.29~7.4MBq)の代表的な一連のPET画像[上部:冠状スライス;底部:最大強度投影(MIP)]を提供し、注射後(p.i.)24時間での腫瘍(T)描写およびp.i.96時間までの腫瘍における活性の漸増する取り込みを示す。早期の時点で肝臓(L)および腎臓(K)において見えるが、後の時点で徐々に低減した高濃度の活性。
図4B図4A~4Dは、[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11の放射性薬理学的プロファイルのin vivo特性決定を例示する図である。図4Bは、SKOV3c114異種移植片における[89Zr]Zr-DFO-4H11(外側尾静脈を介して注射された200μLのキレックス処置PBS中に懸濁された170~200μCi;6.29~7.4MBq)の代表的な一連のPET画像[上部:冠状スライス;底部:最大強度投影(MIP)]を提供し、注射後(p.i.)24時間での腫瘍(T)およびリンパ節(LN)を描写し、腫瘍におけるPETシグナル強度は、p.i.96時間まで漸増した。[89Zr]Zr-DFO-4H11を用いて高コントラストPET画像が得られ、肝臓(L)およびリンパ節(LN)は、後の時点でバックグラウンド活性を示す唯一の非腫瘍組織であった。
図4C図4A~4Dは、[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11の放射性薬理学的プロファイルのin vivo特性決定を例示する図である。図4Cは、SKOV3c114異種移植片における[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11のin vivo体内分布のグラフを提供し、両放射性免疫複合体と関連する活性の高い、同等の腫瘍取り込みを示す。SKOV3c114腫瘍における[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11の取り込みは、抗体のそれぞれの放射標識変種と同時注射された過剰の非標識抗体の存在下で遮断することができ、アイソタイプ対照のものよりも有意に高かった。非腫瘍組織におけるin vivo活性濃度間の相違は、腎臓および腋窩リンパ節(LN)間で最も顕著であった。[89Zr]Zr-DFO-9C9は、[89Zr]Zr-DFO-4H11およびアイソタイプ対照よりも腎臓において有意に高い活性濃度を示したが、[89Zr]Zr-DFO-4H11は、[89Zr]Zr-DFO-9C9またはアイソタイプ対照を注射されたマウスのLNにおいて有意に高い活性濃度を示した。**はp値≦0.005を示し、***はp値≦0.0005を示し、****はp値≦0.00005を示す。
図4D図4A~4Dは、[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11の放射性薬理学的プロファイルのin vivo特性決定を例示する図である。図4Dは、目的の重要臓器における活性濃度の腫瘍対バックグラウンド(T:B)比から評価されるような、[89Zr]Zr-DFO-9C9対[89Zr]Zr-DFO-4H11のin vivo放射性薬理学的プロファイル間の比較を示す棒グラフを提供する。
図5A図5A~5Eは、ヒト化4H11抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図5Aは、DFOがコンジュゲートしているヒト化4H11抗体(DFO-hu4H11)の模式図表示を提供する。
図5B図5A~5Eは、ヒト化4H11抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図5Bは、DFO-hu4H11の、SKOV3細胞(点線)への結合がないことに対する、SKOV3c114細胞(またはSKOV3+細胞、実線)への結合を示す、フローサイトメトリー分析からのヒストグラムを提供する。
図5C図5A~5Eは、ヒト化4H11抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図5Cは、89Zr標識されたhu4H11抗体([89Zr]Zr-DFO-hu4H11)の模式図表示を提供する。
図5D図5A~5Eは、ヒト化4H11抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図5Dは、粗標識反応物対サイズ排除精製された放射性免疫複合体の即時薄層クロマトグラフ分析での高い放射化学純度を示す[89Zr]Zr-DFO-hu4H11の品質管理を提供する。
図5E図5A~5Eは、ヒト化4H11抗体のin vitro特性決定を例示する図である。図5Eは、ストレプトアビジン官能化DynaBeadsで捕捉されたビオチン化MUC16ペプチド-2に対する、低い非特異的結合および[89Zr]Zr-DFO-hu4H11の高い(>90%)免疫反応性割合のグラフを提供する。大過剰の非標識DFO-hu4H11の存在下での磁性ビーズ上のMUC16ペプチド-2への[89Zr]Zr-DFO-hu4H11結合の遮断によって標的結合の特異性が確立された。
図6A図6A~6Cは、ヒト化4H11抗体の放射性薬理学的プロファイルのin vivo特性決定を例示する図である。図6Aは、SKOV3c114異種移植片における[89Zr]Zr-DFO-hu4H11(外側尾静脈を介して注射された200μLのキレックス処置PBS中に懸濁された200μCi;7.4MBq)の代表的な一連のPET画像[上部:冠状スライス;底部:最大強度投影(MIP)]を提供し、36時間での腫瘍(T)の明確な描写と、それに続く、p.i.96時間での腫瘍における注射された活性の大部分の漸進的な増大を示す。
図6B図6A~6Cは、ヒト化4H11抗体の放射性薬理学的プロファイルのin vivo特性決定を例示する図である。図6Bは、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11のin vivo体内分布を例示し、腫瘍における高い活性濃度を示し、骨および腋窩リンパ節を除くほとんどの非腫瘍バックグラウンド臓器は、≦8%ID/gを有する。活性の腫瘍取り込みは、40倍過剰の非標識DFO-hu4H11の同時注射によって遮断できた。**は、p値≦0.005を示す。
図6C図6A~6Cは、ヒト化4H11抗体の放射性薬理学的プロファイルのin vivo特性決定を例示する図である。図6Cは、目的の重要臓器における活性濃度の腫瘍対バックグラウンド(T:B)比から評価されるような、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11のin vivo放射性薬理学的プロファイルを示す棒グラフを提供する。
図7A図7A~7Dは、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11の体内分布のin vivoおよびex vivo分析を例示する図である。図7Aは、両側性異種移植片(左肩:SKOV3c114腫瘍;右肩:SKOV3腫瘍)における[89Zr]Zr-DFO-hu4H11(外側尾静脈を介して注射された200μLのキレックス処置PBS中に懸濁された250μCi;9.25MBq)の代表的な一連のPET画像[上部:冠状スライス;中央:横断スライス;底部:最大強度投影(MIP)のPET-CTオーバーレイ]を提供し、SKOV3c114腫瘍における優先的な、標的化された取り込みを示す。
図7B図7A~7Dは、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11の体内分布のin vivoおよびex vivo分析を例示する図である。図7Bは、回収した両側性腫瘍(図7Aに示されるマウスから)のex vivo分析からの代表的なオートラジオグラフィー画像を提供し、同一カセット中のオートラジオグラフィーのために曝露されたSKOV3腫瘍中の任意のシグナルがほとんどないものと比較した、SKOV3c114腫瘍におけるシグナルのより高い、不均一な分布を示す(破線の円:高活性ホットスポット破線の三角:低活性~活性なしコールドスポット)。
図7C図7A~7Dは、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11の体内分布のin vivoおよびex vivo分析を例示する図である。図7Cは、腫瘍切片(7Bに示される)のヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を提供し、壊死の範囲(破線の三角)対活発に分裂する腫瘍細胞の巣を有する範囲(破線の円)を示す。
図7D図7A~7Dは、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11の体内分布のin vivoおよびex vivo分析を例示する図である。図7Dは、ホルマリン固定パラフィン包埋SKOV3c114(左)対SKOV3(右)腫瘍の比較H&E染色を提供し、腫瘍を含む細胞の腫瘍構造および形態学における別個の相違を示す。
図8A図8A~8Bは、MUC16発現細胞株およびHGSOC患者由来異種移植片モデルにおける[89Zr]Zr-DFO-hu4H11のPETイメージングを例示する。図8Aは、右肩に皮下に異種移植されたMUC16陽性OVCAR3腫瘍を有するヌードマウスにおけるp.i.72時間での、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11(外側尾静脈を介して注射された200μLのキレックス処置PBS中に懸濁された150μCi;5.55MBq)の代表的なPET画像[左:冠状スライス;右最大強度投影(MIP)]を提供する。
図8B図8A~8Bは、MUC16発現細胞株およびHGSOC患者由来異種移植片モデルにおける[89Zr]Zr-DFO-hu4H11のPETイメージングを例示する。図8Bは、右肩にHGSOC腫瘍のPDXを有する2個体のマウスにおけるp.i.72時間での、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11(外側尾静脈を介して注射された200μLのキレックス処置PBS中に懸濁された150μCi;5.55MBq)の代表的なPET画像[MIP]を提供し、腫瘍(T)における高活性濃度および心臓および下行大動脈を含む血液プール(BP)における幾分かの持続性活性を示す。
図9A図9A~9Dは、FACS分析による、4H11および18C6マウスmAbおよびヒト化抗体の、MUC16 c344およびc114ペプチドを発現するMUC16+ OVCAR3細胞株および形質転換体細胞株へのin vitro結合、および対照MUC16- A2780およびSKOV3細胞株へ結合しないことを例示する図である。図9Aは、4H11および18C6マウスmAb抗体の、アッセイされた細胞株への結合の平均蛍光を示す。
図9B図9A~9Dは、FACS分析による、4H11および18C6マウスmAbおよびヒト化抗体の、MUC16 c344およびc114ペプチドを発現するMUC16+ OVCAR3細胞株および形質転換体細胞株へのin vitro結合、および対照MUC16- A2780およびSKOV3細胞株へ結合しないことを例示する図である。図9Bは、4H11および18C6マウスmAb抗体の、アッセイされた細胞株への結合の陽性細胞蛍光パーセンテージを示す。
図9C図9A~9Dは、FACS分析による、4H11および18C6マウスmAbおよびヒト化抗体の、MUC16 c344およびc114ペプチドを発現するMUC16+ OVCAR3細胞株および形質転換体細胞株へのin vitro結合、および対照MUC16- A2780およびSKOV3細胞株へ結合しないことを例示する図である。図9Cは、4H11および18C6ヒト化抗体の、アッセイされた細胞株への結合の平均蛍光を示す。
図9D図9A~9Dは、FACS分析による、4H11および18C6マウスmAbおよびヒト化抗体の、MUC16 c344およびc114ペプチドを発現するMUC16+ OVCAR3細胞株および形質転換体細胞株へのin vitro結合、および対照MUC16- A2780およびSKOV3細胞株へ結合しないことを例示する図である。図9Dは、4H11および18C6ヒト化抗体の、アッセイされた細胞株への結合の陽性細胞蛍光パーセンテージを示す。
図10A図10Aおよび10Bは、FACS分析による、4H11ヒト化抗体の、MUC16 c344およびc114ペプチドを発現するMUC16+ OVCAR3細胞株および形質転換体SKOV3細胞株へのin vitro結合、および対照MUC16- SKOV3細胞株へ結合しないことを例示する図である。
図10B図10Aおよび10Bは、FACS分析による、4H11ヒト化抗体の、MUC16 c344およびc114ペプチドを発現するMUC16+ OVCAR3細胞株および形質転換体SKOV3細胞株へのin vitro結合、および対照MUC16- SKOV3細胞株へ結合しないことを例示する図である。
図11図11は、Matrigel浸潤アッセイにおいて未処置細胞と比較される、4H11ヒト化抗体が、MUC16+ OVCAR3、OVCA-433およびCAOV3細胞株の浸潤を阻害することを例示する図である。
図12図12は、Matrigel浸潤アッセイにおいて未処置細胞と比較される、4H11ヒト化抗体がMUC16 c344およびc114ペプチドを発現する形質転換体SKOV3細胞株の浸潤を阻害することを例示する図である。変異体MUC16ペプチドN123mut c114を発現するSKOV3細胞株を浸潤の陰性対照として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願は、一態様では、抗MUC16抗体作用因子、例えば、MUC16のエピトープ、例えば、MUC16の保持される細胞外ドメイン(MUC16エクトドメイン)のエピトープを特異的に認識する抗体部分を含む抗MUC16構築物を提供する。
ファージディスプレイ技術を使用して、ヒトMUC16の保持される細胞外ドメインに特異的であるscFvが同定された。フローサイトメトリーアッセイによって、これらの抗体がMUC16発現性がん細胞系を認識することが実証された。したがって、本出願は、抗MUC16抗体作用因子、例えば、MUC16に免疫特異的に結合する抗体部分を含む抗MUC16構築物を提供する。抗MUC16抗体作用因子として、例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体およびその抗原結合性断片、抗MUC16 scFv、抗MUC16抗体融合タンパク質(例えば、抗MUC16 Fc融合タンパク質およびキメラ抗原受容体(CAR))、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体およびその抗MUC16抗体コンジュゲート(すなわち、抗MUC16イムノコンジュゲート)が挙げられる。
【0020】
別の態様では、抗MUC16抗体作用因子、例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体およびその抗原結合性断片、抗MUC16 scFv、抗MUC16抗体融合タンパク質(例えば、抗MUC16 Fc融合タンパク質およびキメラ抗原受容体(CAR))、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体およびその抗MUC16抗体コンジュゲート(すなわち、抗MUC16イムノコンジュゲート)をコードする核酸が提供される。
【0021】
別の態様では、抗MUC16抗体作用因子、例えば、全長抗MUC16抗体およびその抗原結合性断片、抗MUC16 scFv、抗MUC16抗体融合タンパク質(例えば、抗MUC16 Fc融合タンパク質およびキメラ抗原受容体(CAR))、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体およびその抗MUC16抗体コンジュゲート(すなわち、抗MUC16イムノコンジュゲート)を含む組成物、例えば、医薬組成物が提供される。
また、がんを処置するためなどの抗MUC16抗体作用因子および抗体を作製および使用する方法、および、このような方法にとって有用なキットおよび製造品が提供される。
また、少なくとも1種の本技術の抗MUC16抗体作用因子またはその機能的変種(例えば、置換変種)および使用のための説明書を含む、MUC16関連病態を検出および/または処置するためのキットも本明細書において開示される。ある特定の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、1つまたは複数の検出可能な標識につなげられる。一実施形態では、1つまたは複数の検出可能な標識は、放射性標識、蛍光標識または発色性標識を含む。
【0022】
さらにまたはあるいは、一部の実施形態では、本キットは本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子に特異的に結合する二次抗体をさらに含む。一部の実施形態では、二次抗体は放射性標識、蛍光標識または発色性標識からなる群から選択される少なくとも1つの検出可能な標識につなげられる。
定義
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。以下の参考文献は本技術において使用される用語の多くの一般的定義を当業者に提供する: Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al., (eds.), Springer Verlag (1991); and Hale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別に指定されない限り、以下のそれらに起因する意味を有する。本明細書において使用される技術用語は単に特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、本開示の制限であるように意図されるものではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「MUC16」または「MUC16ポリペプチド」または「MUC16ペプチド」という用語とは、Yin BW and Lloyd KO, 2001, J Biol Chem. 276(29):27371-5に記載されるようなMUC16繋留ムチンタンパク質を指す。GenBank(商標)受託番号NP_078966.2(配列番号1)は、例示的ヒトMUC16核酸配列を提供する。GenBank(商標)受託番号NP078966.2(配列番号1)は、例示的ヒトMUC16アミノ酸配列を提供する。天然MUC16は、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、推定切断部位の近位のエクトドメインおよび12~20リピート、各156個のアミノ酸長の大きな重度にグリコシル化された領域を含む(図1A)。「未熟」MUC16とは、配列番号1を指し、MUC16シグナル配列(配列番号1のアミノ酸残基1~60)を含む。「成熟MUC16」とは、細胞表面に発現されるような、すなわち、細胞性プロセシングによってシグナル配列が除去されている天然MUC16、例えば、配列番号1の最初の60個のアミノ酸残基が除去されている配列番号51を指す(すなわち、配列番号1は、MUC16の「未熟」形態である)。
【0024】
配列番号44のアミノ酸配列によって表されるポリペプチドは、本明細書においてMUC16 C114と呼ばれ、成熟MUC16のC末端の114個のアミノ酸残基からなる(配列番号51は、成熟MUC16の配列である)。MUC16 C114は58個のアミノ酸のエクトドメイン、25個のアミノ酸の膜貫通ドメインおよび31個のアミノ酸の細胞質尾部を含む(図1B)。MUC16c114は、配列番号44の1、24および30位(元のMUC16刊行物Yin BW and Lloyd KO, 2001, J Biol Chem. 276(29):27371-5に従って、アミノ酸位置Asnl777、Asnl800およびAsnl806とも呼ばれる)のアスパラギンアミノ酸残基でNグリコシル化されることが可能である。
【0025】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が別に明確に示さない限り、複数形を同様に含むものとする。
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、数値または数的範囲を改変するために使用される場合、値または範囲の5%~10%上および5%~10%下の逸脱が、列挙される値または範囲の意図される意味内のままであることを示す。
本明細書で使用される場合、対象への薬剤の「投与」という用語は、その意図される機能を実施するために対象に薬剤を導入または送達する任意の経路を含む。投与は、それだけには限らないが、静脈内、筋肉内、腹膜内、皮下および本明細書において記載されるような他の適した経路を含む任意の適した経路によって実施され得る。投与は、自己投与および別のものによる投与を含む。
【0026】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸、および天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸ミメティクスを指す。天然にコードされるアミノ酸は、20種の一般的なアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリン)およびピロリシン(pyrolysine)およびセレノシステインである。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同一の基本的化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合したα炭素を有する、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド主鎖を有するが、天然に存在するアミノ酸と同一の基本的化学構造を保持する。一部の実施形態では、ポリペプチドを形成するアミノ酸はD型である。一部の実施形態では、ポリペプチドを形成するアミノ酸はL型である。一部の実施形態では、ポリペプチドを形成する第1の複数のアミノ酸はD型であり、第2の複数のアミノ酸はL型である。
【0027】
アミノ酸は、その一般的に公知の3文字記号またはIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される一文字記号のいずれかによって本明細書において参照される。ヌクレオチドは同様に一般的に許容される一文字コードによって参照される。
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において同義的に使用される。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび1個または複数のアミノ酸残基が天然に存在しないアミノ酸、例えば、アミノ酸類似体であるアミノ酸ポリマーに当てはまる。これらの用語は、全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、アミノ酸残基は共有結合ペプチド結合によって連結される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトな抗体分子だけでなく、免疫原結合能を保持する抗体分子の断片も意味する。このような断片はまた、当技術分野で周知であり、in vitroおよびin vivo両方で定期的に使用される。したがって、本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトな免疫グロブリン分子だけでなく、周知の活性断片F(ab’)2およびFabも意味する。インタクトな抗体のFc断片を欠くF(ab’)2およびFab断片は、循環からより迅速に排除され、インタクトな抗体のより少ない非特異的組織結合を有し得る(Wahl et al., J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983))。本技術の抗体は、天然抗体全体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化(camelised)抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、Fab、Fab’、一本鎖V領域断片(scFv)、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディおよび単一ドメインラクダ類抗体)、VNAR断片、二重特異性T細胞エンゲージャー抗体、ミニボディ、ジスルフィド結合Fv(sdFv)および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、細胞内抗体、融合ポリペプチド、非従来抗体および上記のいずれかの抗原結合性断片を含む。特に、抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち、抗原結合性部位を含有する分子を含む。免疫グロブリン分子は、任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスのものであり得る。
【0029】
ある特定の実施形態では、抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)および重鎖定常(CH)領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)および軽鎖定常CL領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する。各VHおよびVLはアミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(Cl q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。本明細書で同義的に使用される場合、抗体の「抗原結合性部分」、「抗原結合性断片」または「抗原結合性領域」という用語は、抗原に結合し抗体に抗原特異性を付与する抗体の領域または部分、抗原結合性タンパク質の断片を指し、例えば、抗体は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片を含む(例えば、ペプチド/HLA複合体)。抗体の抗原結合性機能は、全長抗体の断片によって実施され得ることが示されている。抗体の「抗体断片」という用語内に包含される抗原結合性部分の例として、Fab断片、VL、VH、CLおよびCHIドメインからなる一価断片、F(ab)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片、VHおよびCHIドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., Nature 341 : 544-546 (1989))および単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0030】
抗体および抗体断片は、全体的にまたは部分的に、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ヤギ、モルモット、ハムスター、ウマ、マウス、ラット、ウサギおよびヒツジ)または非哺乳動物抗体産生動物(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ヘビ、有尾両生類)に由来し得る。抗体および抗体断片は、動物において産生される場合も、動物の外側で、例えば、酵母またはファージから(例えば、単一抗体もしくは抗体断片として、または抗体ライブラリーの一部として)産生される場合もある。
さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、それらがVLおよびVH領域対が一価分子を形成する単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって、組換え法を使用して、それらは接合され得る。これらは、一本鎖Fv(scFv)として公知である、例えば、Bird et al., Science 242:423-426 (1988)およびHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85: 5879-5883 (1988)を参照されたい。これらの抗体断片は当業者に公知の従来技術を使用して得られ、断片はインタクトな抗体と同一の方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0031】
「単離された抗体」または「単離された抗原結合性タンパク質」は、その天然環境の成分から同定され、分離され、および/または回収されているものである。「合成抗体」または「組換え抗体」とは、一般に、当業者に公知の組換え技術を使用して、またはペプチド合成技術を使用して作製される。
本明細書で使用される場合、「一本鎖可変断片」または「scFv」という用語は、VH:VLヘテロ二量体を形成するように共有結合によって連結された免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重(VH)および軽鎖(VL)は、直接的に接合されるか、またはVHのN末端とVLのC末端またはVHのC末端とVLのN末端を接続する、ペプチドをコードするリンカー(例えば、約10、15、20、25個のアミノ酸)によって接合される。リンカーは、普通、可動性のためにグリシンに富み、溶解性のためにセリンまたはトレオニンに富む。リンカーは、細胞外抗原結合性ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域を連結し得る。
【0032】
定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は元の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Huston, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA、85:5879-5883 (1988))によって記載されるように、VH-およびVL-コード配列を含む核酸から発現され得る。米国特許第5,091,513号、同5,132,405号および同4,956,778号および米国特許公開第20050196754号および同20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Zhao et al., Hybridoma (Larchmt) 27(6):455-51 (2008)、Peter et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle (2012)、Shieh et al., J Imunol 183(4):2277-85 (2009)、Giomarelli et al., Thromb Haemost 97(6):955-63 (2007)、Fife et al., J Clin Invst 116(8):2252-61 (2006)、Brocks et al., Immunotechnology 3(3): 173-84 (1997)、Moosmayer et al., Ther Immunol 2(10):31- 40 (1995)を参照されたい。刺激活性を有するアゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Peter et al., J Biol Chem 25278(38):36740-7 (2003)、Xie et al., Nat Biotech 15(8):768-71 (1997)、Ledbetter et al., Crit Rev Immunol 17(5-6):427-55 (1997)、Ho et al., Bio Chim Biophys Acta 1638(3):257-66 (2003)を参照されたい)。
【0033】
本明細書で使用される場合、「抗原」とは、抗体(またはその抗原結合性断片)が選択的に結合できる分子を指す。標的抗原は、タンパク質、炭水化物、核酸、脂質、ハプテンまたは他の天然に存在するもしくは合成化合物であり得る。一部の実施形態では、標的抗原は、ポリペプチド(例えば、MUC16ポリペプチド)であり得る。抗原はまた、動物において免疫応答を生じさせるために動物に投与され得る。
「抗原結合性断片」という用語は、抗原への結合に関与するポリペプチドの部分を有する免疫グロブリン構造全体の断片を指す。本技術において有用な抗原結合性断片の例として、scFv、(scFv)2、scFvFc、Fab、Fab’およびF(ab’)2が挙げられるが、それに制限されない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「生体試料」または「試料」という用語は、生存細胞に由来する試料材料を意味する。生体試料は、対象から単離された組織、細胞、タンパク質または細胞の膜抽出物および生物学的流体(例えば、腹水または脳脊髄液(CSF))および対象内に存在する組織、細胞および流体を含み得る。本技術の生体試料として、それだけには限らないが、乳房組織、腎組織、子宮頸部、子宮内膜、頭頸部、胆嚢、耳下腺組織、前立腺、脳、下垂体、腎臓組織、筋肉、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺組織、心臓組織、肺組織、膀胱、脂肪組織、リンパ節組織、子宮、卵巣組織、副腎組織、精巣組織、扁桃腺、胸腺、血液、毛、頬側、皮膚、血清、血漿、CSF、精液、前立腺液、精液、尿、糞便、汗、唾液、痰、粘液、骨髄、リンパおよび涙から採取した試料が挙げられる。生体試料はまた、内臓の生検から、またはがんから得ることができる。生体試料は、診断もしくは研究の対象から得ることができる、または対照として、もしくは基礎研究のために非疾患個体から得ることができる。試料は、例えば、静脈穿刺および外科的生検を含む標準法によって得ることができる。ある特定の実施形態では、生体試料は、ニードル生検によって得られた組織試料である。
【0035】
「二重特異性抗体」または「BsAb」とは、本明細書で使用される場合、別個の構造を有する2種の標的、例えば、2種の異なる標的抗原または同一標的抗原上の2種の異なるエピトープに同時に結合できる抗体を指す。さまざまな異なる二重特異性抗体構造が、当技術分野で公知である。一部の実施形態では、二重特異性抗体中の各抗原結合性部分は、VHおよび/またはVL領域を含み、一部のこのような実施形態では、VHおよび/またはVL領域は特定のモノクローナル抗体において見られるものである。一部の実施形態では、二重特異性抗体は2つの抗原結合性部分を含有し、各々、異なるモノクローナル抗体に由来するVHおよび/またはVL領域を含む。一部の実施形態では、二重特異性抗体は、2つの抗原結合性部分を含有し、2つの抗原結合性部分のうち一方、第1のモノクローナル抗体に由来するCDRを含有するVHおよび/またはVL領域を有する免疫グロブリン分子を含み、もう一方の抗原結合性部分は第2のモノクローナル抗体に由来するCDRを含有するVHおよび/またはVL領域を有する抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fd、Fv、dAB、scFvなど)を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲートされた」という用語は、当業者に公知の任意の方法による2つの分子の関連を指す。適した種類の関連として、化学的結合および物理的結合が挙げられる。化学的結合には、例えば、共有結合および配位結合が含まれる。物理的結合には、例えば、水素結合、双極性相互作用、ファンデルワールス力、静電相互作用、疎水性相互作用および芳香族スタッキングが含まれる。
本明細書で使用される場合、「対照」は、比較目的の実験において使用される代替試料である。対照は、「陽性」または「陰性」であり得る。例えば、実験の目的が特定の種類の疾患の治療のための治療剤の有効性の相関を決定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を示すことが公知の組成物)および陰性対照(療法を受け取らない、またはプラセボを受け取る対象または試料)が通常使用される。
本明細書で使用される場合、「コンセンサスFR」という用語は、コンセンサス免疫グロブリン配列中のフレームワーク(FR)抗体領域を意味する。抗体のFR領域は抗原に接触しない。
【0037】
本明細書において、「有効量」という用語は、所望の治療的および/または予防的効果を達成するのに十分な量、例えば、本明細書において記載される疾患もしくは状態または本明細書において記載される疾患もしくは状態と関連している1つもしくは複数の徴候もしくは症状の予防もしくは減少をもたらす量を指す。治療的または予防的適用に関連して、対象に投与される組成物の量は、組成物、疾患の程度、種類および重症度に、および個体の特徴、例えば、全身の健康、年齢、性別、体重および薬物に対する耐性に応じて変わる。当業者ならば、他の因子に応じて適当な投与量を決定できるであろう。組成物はまた、1種または複数の追加の治療用化合物と組み合わせて投与できる。本明細書において記載される方法では、治療用組成物は、本明細書において記載される疾患または状態の1つまたは複数の徴候または症状を有する対象に投与できる。本明細書において、組成物の「治療上有効な量」とは、疾患または状態の生理学的効果が改善または排除される組成物レベルを指す。治療上有効な量は、1回または複数の投与で与えられ得る。
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセスおよび/または転写されたmRNAがその後ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合には、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。遺伝子の発現レベルは、細胞または組織試料中のmRNAまたはタンパク質の量を測定することによって決定され得る。一態様では、ある試料からの遺伝子の発現レベルは、対照または参照試料からの遺伝子の発現レベルと直接比較され得る。別の態様では、ある試料からの遺伝子の発現レベルは、本明細書において開示される組成物の投与後の同一試料からの遺伝子の発現レベルと直接比較され得る。「発現」という用語はまた、以下の事象のうち1つまたは複数を指す:(1)細胞内でのDNA配列からの(例えば、転写による)RNA鋳型の生成、(2)細胞内でのRNA転写物のプロセシング(例えばスプライシング、編集、5’キャップ形成、および/または3’末端形成による)、(3)細胞内でのRNA配列のポリペプチドまたはタンパク質への翻訳、(4)細胞内でのポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾、(5)細胞表面でのポリペプチドまたはタンパク質の提示および(6)細胞からのポリペプチドまたはタンパク質の分泌または提示または放出。
「リンカー」という用語は、2つの配列を接続または連結する、例えば、2つのポリペプチドドメインを連結する合成配列(例えば、アミノ酸配列)を指す。一部の実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸配列を含有する。
本明細書において、非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類由来の超可変領域残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリンである。一部の実施形態では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中、またはドナー抗体中に見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能、例えば、結合親和性をさらに精緻化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常、2つの可変ドメイン(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2またはFv)のうち実質的にすべてを含み、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト免疫グロブリンコンセンサスFR配列のものであるが、FR領域は結合親和性を改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を含み得る。FR中のこれらのアミノ酸置換の数は、通常、H鎖中に6以下、L鎖中に3以下である。ヒト化抗体はまた免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、通常、ヒト免疫グロブリンのものを含んでもよい。さらなる詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986); Reichmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。例えば、Ahmed & Cheung, FEBS Letters 588(2):288-297 (2014)を参照されたい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に「相補性決定領域」もしくは「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、VL中のおよそ残基24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)あたり、およびVH中のおよそ31~35B(H1)、50~65(H2)および95~102(H3)あたり(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))および/または「超可変ループ」由来の残基(例えば、VL中の残基26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)、およびVH中の26~32(H1)、52A~55(H2)および96~101(H3)(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含む。
本明細書で使用される場合、「F(ab)」とは、抗原に結合するが、一価でありFc部分を有さない抗体構造の断片を指し、例えば、酵素パパインによって消化された抗体は、2つのF(ab)断片およびFc断片(例えば、重(H)鎖定常領域;抗原に結合しないFc領域)をもたらす。
【0039】
本明細書で使用される場合、「F(ab’)2」とは、IgG抗体全体のペプシン消化によって生成した抗体断片を指し、この断片は、2つの抗原結合性(ab’)(二価)領域を有し、各(ab1)領域は、2つの別々のアミノ酸鎖、抗原を結合するためのS-S結合によって連結されたH鎖および軽(L)鎖の一部を含み、残りのH鎖部分は、一緒に連結されている。「F(ab’)2」断片は、2つの個々のFab’断片に分けることができる。
本明細書で使用される場合、「CDR」は、免疫グロブリン重および軽鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域アミノ酸配列として定義される。例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th U. S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)を参照されたい。一般に、抗体は、可変領域中に3つの重鎖および3つの軽鎖CDRまたはCDR領域を含む。CDRは、抗体の抗原またはエピトープへの結合のための接触残基の大部分を提供する。ある特定の実施形態では、CDR領域は、Kabatシステムを使用して詳述される(Kabat, E. A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242(1991))。
【0040】
本明細書で使用される場合、「定常領域」または「定常ドメイン」という用語は、互換的であり、当技術分野で一般的なその意味を有する。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接的に関与しないが、種々のエフェクター機能、例えば、Fc受容体との相互作用を示すことができる抗体部分、例えば、軽および/または重鎖のカルボキシル末端部分である。免疫グロブリン分子の定常領域は、一般に、免疫グロブリン可変ドメインと比較してより保存されたアミノ酸配列を有する。
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、当技術分野における用語であり、抗体が免疫特異的に結合できる抗原の局在化された領域を指すことができる。エピトープは、例えば、ポリペプチドの連続するアミノ酸(線状または連続エピトープ)である場合もあり、またはエピトープは、例えば、ポリペプチド(単数または複数)の2つもしくはそれより多い不連続領域から合わさる場合もある(コンホメーション、非線状、非連続的または不連続エピトープ)。
本明細書で使用される場合、「リガンド」という用語は、受容体に結合する分子を指す。特に、リガンドは、別の細胞上の受容体に結合して細胞対細胞認識および/または相互作用を可能にする。
【0041】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は結合力の尺度を意味する。理論に捉われようとは思わないが、親和性は、抗体結合部位と抗原決定基の間の立体化学的適合の近さに、それらの間の接触区域の大きさに、および荷電基および疎水基の分布に応じて変わる。親和性はまた、可逆性複合体(例えば、一価または多価のいずれか)の形成後の抗原-抗体結合の力を指す「アビディティー」という用語を含む。抗原に対する抗体の親和性を算出する方法は、当技術分野で公知であり、親和性を算出するための結合実験の使用を含む。機能アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)における抗体活性も、抗体親和性を反映する。抗体および親和性は、表現型によって特性決定され、機能アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)を使用して比較され得る。本明細書において開示される対象において有用な核酸分子は、ポリペプチドまたはその断片をコードする任意の核酸分子を含む。ある特定の実施形態では、本明細書において開示される対象において有用な核酸分子は、抗体またはその抗原結合性部分をコードする核酸分子を含む。このような核酸分子は内因性核酸配列と100%同一であることを必要としないが、通常、実質的な同一性を示す。内因性配列に対して「実質的な相同性」または「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、通常、二本鎖核酸分子の少なくとも一方の鎖とハイブリダイズ可能である。「ハイブリダイズする」とは、ストリンジェンシーの種々の条件下で相補的ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書において記載される遺伝子)またはその部分間で対形成して二本鎖分子を形成することを意味する(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger, Methods Enzymol. 152:399 (1987); Kimmel, A. R., Methods Enzymol. 152:507 (1987)を参照されたい)。
【0042】
本明細書で使用される場合、「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」および「特異的に認識する」という用語は、抗体との関連で類似の用語であり、当業者によって理解されるような抗原結合性部位を介して抗原(例えば、エピトープまたは免疫複合体)に結合する抗体およびその抗原結合性断片を指し、抗体または抗原結合性断片の他の抗原との交差反応性を排除しない。
「実質的に相同な」または「実質的に同一の」という用語は、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書において記載されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書において記載される核酸配列のうちのいずれか1つ)に対して少なくとも50%またはそれより大きい相同性または同一性を示すポリペプチドまたは核酸分子を意味する。例えば、このような配列は、比較のために使用される配列(例えば、野生型または天然配列)に対してアミノ酸レベルまたは核酸で、少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%または約99%相同または同一である。一部の実施形態では、実質的に相同なまたは実質的に同一のポリペプチドは、比較のために使用される配列に対して1つまたは複数のアミノ酸アミノ酸置換、挿入または欠失を含有する。一部の実施形態では、実質的に相同なまたは実質的に同一のポリペプチドは、相同配列を置き換えるために、D-アミノ酸およびレトロインベルソアミノ酸を含む1つまたは複数の非天然アミノ酸またはアミノ酸類似体を含有する。
【0043】
配列相同性または配列同一性は、通常、配列分析ソフトウェア(例えば、Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue、Madison、Wis. 53705の配列分析ソフトウェアパッケージ、BLAST、BESTFIT、GAPまたはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用して測定される。このようなソフトウェアは、相同性の程度を種々の置換、欠失および/または他の改変に割り当てることによって同一または類似配列をマッチさせる。同一性の程度を決定する例示的アプローチではBLASTプログラムを使用してもよく、e-3e-100の間の確率スコアは密接に関連する配列を示す。
本明細書で使用される場合、「類似体」という用語は、参照ポリペプチドまたは核酸分子の機能を有する構造的に関連するポリペプチドまたは核酸分子を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含む本明細書において開示される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片の結合特徴に大幅に影響を及ぼさない、または変更しないアミノ酸改変を指す。保存的改変は、アミノ酸置換、付加および欠失を含み得る。改変は、当技術分野で公知の標準技術、例えば、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発によって、本明細書において開示される抗MUC16抗体またはその抗原結合性断片のヒトscFv中に導入され得る。アミノ酸は、その物理化学的特性、例えば、電荷および極性に従って群に分類され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同一群内のアミノ酸と置き換えられるものである。例えば、アミノ酸は電荷によって分類され得る:正電荷を有するアミノ酸として、リシン、アルギニン、およびヒスチジンが挙げられ、負電荷を有するアミノ酸として、アスパラギン酸、およびグルタミン酸が挙げられ、中性電荷を有するアミノ酸として、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンが挙げられる。さらに、アミノ酸は、極性によって分類され得る:極性アミノ酸として、アルギニン(塩基性極性)、アスパラギン、およびアスパラギン酸(酸性極性)、グルタミン酸(酸性極性)、グルタミン、ヒスチジン(塩基性極性)、リシン(塩基性極性)、セリン、トレオニンおよびチロシンが挙げられ、非極性アミノ酸として、アラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファンおよびバリンが挙げられる。したがって、CDR領域内の1個または複数のアミノ酸残基は、同一群由来の他のアミノ酸残基と置き換えられてもよく、変更された抗体は、本明細書において記載される機能アッセイを使用して保持された機能(すなわち、上記の(c)~(l)に示された機能)について試験され得る。ある特定の実施形態では、指定の配列またはCDR領域内の1個以下、2個以下、3個以下、4個以下、5個以下の残基が変更される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「異種核酸分子またはポリペプチド」という用語は、細胞または細胞から得られた試料中に普通は存在しない核酸分子(例えば、cDNA、DNAまたはRNA分子)またはポリペプチドを指す。この核酸は別の生物に由来する場合も、例えば、細胞もしくは試料中で普通は発現されないmRNA分子である場合もある。
本明細書で使用される場合、「モジュレートする」という用語は、正または負に変更することを指す。例示的モジュレーションとして、約1%、約2%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%または約100%の変化が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「増大する」という用語は、それだけには限らないが、約5%、約10%、約25%、約30%、約50%、約75%、または約100%正に変更することを含めて、少なくとも約5%正に変更することを指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「低減する」という用語は、それだけには限らないが、約5%、約10%、約25%、約30%、約50%、約75%、または約100%負に変更することを含めて、少なくとも約5%負に変更することを指す。
本明細書で使用される場合、「単離された」ポリヌクレオチドまたは核酸分子は、核酸分子の天然供給源中に(例えば、マウスまたはヒト中に)存在する他の核酸分子から分離されているものである。さらに、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、組換え技術によって生成される場合には他の細胞性材料もしくは培養培地を実質的に含まない、または化学合成される場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであり得る。例えば、「実質的に含まない」という言語は、約15%、10%、5%、2%)、1%)、0.5%)または0.1%)未満の他の材料、例えば、細胞性材料、培養培地、他の核酸分子、化学的前駆体および/または他の化学物質を有するポリヌクレオチドまたは核酸分子の調製物を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、細胞に天然に付随する分子性および/または細胞性構成成分から分離されている細胞を指す。
本明細書で使用される場合、「新生物」という用語は、細胞または組織の病的増殖およびそのその後の遊走または他の組織もしくは臓器の浸潤を特徴とする疾患を指す。新生物成長は、通常、制御されないものであり、進行性であり、正常細胞の増殖を誘発しない、または正常細胞の増殖の休止を引き起こす条件下で生じる。新生物は、それだけには限らないが、膀胱、結腸、骨、脳、乳房、軟骨、膠細胞、食道、卵管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、胸膜、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、泌尿生殖器管、尿管、尿道、子宮および膣からなる群から選択される臓器またはその組織もしくは細胞種を含む、さまざまな細胞種、組織または臓器に影響を及ぼし得る。新生物は、がん、例えば、肉腫、癌腫または形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)を含む。
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬品投与と適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌性および抗真菌性化合物、等張性および吸収遅延性化合物などを含むよう意図される。薬学的に許容される担体およびその処方物は当業者に公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (20th edition, ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa.)に記載されている。
【0048】
本明細書で使用される場合、「組換え体」という用語は、例えば、細胞または核酸、タンパク質またはベクターへの言及とともに使用される場合、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入または天然核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていること、あるいは材料がそのように改変された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態内では見られない遺伝子を発現する、またはそうでなければ異常に発現される、発現不足である、もしくは全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0049】
本明細書で使用される場合、「別個の」治療的使用という用語は、同時の、または異なる経路による実質的に同時の少なくとも2種の有効成分の投与を指す。
本明細書で使用される場合、「逐次的」治療的使用という用語は、異なる時間、同一であるかもしくは異なっている投与経路での少なくとも2種の有効成分の投与を指す。より詳しくは、逐次的使用とは、有効成分のうち1種の投与全体、その後、他のもの(単数または複数)の投与が開始することを指す。したがって、有効成分のうち1種を数分、数時間または数日にわたって投与し、その後、他の有効成分(単数または複数)を投与することがあり得る。この場合、同時治療はない。
【0050】
本明細書で使用される場合、「同時の」治療的使用という用語は、同一経路による、同時のまたは実質的に同時の少なくとも2種の有効成分の投与を指す。
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」または「患者」という用語は、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物またはヒトであり得る。一部の実施形態では、個体、患者または対象は、ヒトである。
「処置すること」または「処置」とは、本明細書で使用される場合、対象、例えば、ヒトにおける本明細書において記載される疾患または障害の処置に及び、(i)疾患もしくは障害を阻害すること、すなわち、その発生を停止すること、(ii)疾患もしくは障害を緩和すること、すなわち、障害の退縮を引き起こすこと、(iii)障害の進行を減速させること、および/または(iv)疾患または障害の1つもしくは複数の症状の進行を阻害、緩和または減速させることを含む。一部の実施形態では、治療とは、疾患と関連する症状が、例えば、軽減、低減、治癒される、または緩解の状態に置かれることを意味する。
【0051】
本明細書において記載されるような障害の処置の種々の様式は、全治療だけでなく全治療未満も含み、いくつかの生物学的にまたは医学的に関連する結果が達成される「実質的」を意味するように意図されることは理解されたい。処置は、慢性疾患のための連続した長期の治療である場合も、急性状態の治療のための単回もしくは数回の投与である場合もある。
【0052】
抗MUC16抗体作用因子
MUC16に免疫特異的に結合する抗MUC16抗体作用因子が本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子はMUC16の保持される細胞外ドメインに免疫特異的に結合する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、MUC16に免疫特異的に結合する抗体部分を含む抗MUC16構築物である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は抗MUC16抗体(例えば、全長抗MUC16抗体またはその抗原結合性断片)である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子はMUC16発現性細胞(例えば、MUC16発現性がん細胞)に結合する。
抗MUC16抗体作用因子、例えば、抗MUC16抗体またはその抗原結合性断片は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え産生された抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体(BsAb)を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2つの重鎖および2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖抗体重鎖対、細胞内抗体、単一ドメイン抗体、一価抗体、一本鎖抗体または一本鎖可変断片(scFv)、ラクダ化抗体、アフィボディおよびジスルフィド結合Fv(dsFv)、Fc融合タンパク質、イムノコンジュゲートまたはその断片を含み得る。このような抗体および抗原結合性断片は当技術分野で公知の方法によって作製され得る。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、MUC16に特異的に結合する全長抗体(例えば、全長IgG)またはその抗原結合性断片である。
一部の実施形態では、MUC16に免疫特異的に結合する抗体作用因子への言及は、抗体作用因子が、非標的に対するその結合親和性の少なくとも約10倍である(例えば、少なくとも約10、102、103、104、105、106または107倍のいずれかを含む)親和性でMUC16に結合することを意味する。一部の実施形態では、非標的はMUC16ではない抗原である。結合親和性は、当技術分野で公知の方法、例えば、ELISA、蛍光活性化セルソーター(FACS)分析または放射性免疫沈降アッセイ(RIA)によって決定され得る。Kdは、当技術分野で公知の方法、例えば、Biacore機器を利用する、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイまたは例えば、Sapidyne機器を利用する結合平衡除外法(kinetic exclusion assay)(KinExA)によって決定され得る。
【0053】
ヒト配列(例えば、ヒトCDR配列を含むヒト重および軽鎖可変ドメイン配列)を含有する抗MUC16抗体作用因子が本明細書において広く論じられているが、非ヒト抗MUC16抗体作用因子も企図される。一部の実施形態では、非ヒト抗MUC16抗体作用因子は、本明細書において記載されるような抗MUC16抗体作用因子に由来するヒトCDR配列および非ヒトフレームワーク配列を含む。非ヒトフレームワーク配列は、一部の実施形態では、例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ウシ(例えば、雌ウシ、雄ウシ、バッファロー)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、マーモセット、アカゲサル)などを含めて、本明細書において記載されるような1つまたは複数のヒトCDR配列を使用して合成重軽鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインを作製するために使用され得る任意の配列を含む。一部の実施形態では、非ヒト抗MUC16抗体作用因子は本明細書において記載されるような1つまたは複数のヒトCDR配列を、非ヒトフレームワーク配列(例えば、マウスまたはニワトリフレームワーク配列)上に移植することによって生成した抗MUC16抗体作用因子を含む。
【0054】
例示的ヒトMUC16の完全アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、またはからなる。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、ヒトMUC16内のエピトープを特異的に認識する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、ヒトMUC16の保持される細胞外ドメイン内のエピトープを特異的に認識する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、MUC16エクトドメインに免疫特異的に結合する(図1)。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、ヒトMUC16を発現する細胞に免疫特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、組換えMUC16ポリペプチドを発現する細胞に免疫特異的に結合する。一部の実施形態では、MUC16ポリペプチドは配列番号43に示されるアミノ酸配列を有するMUC16-c344である。一部の実施形態では、MUC16ポリペプチドは配列番号44に示されるアミノ酸配列を有するMUC16-c114である。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子はヒト以外の種に由来するMUC16ポリペプチドと交差反応する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子はヒトMUC16に対して完全に特異的であり、種または他の種類の非ヒト交差反応性を示さない。
【0055】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、がん細胞(固形腫瘍など)の細胞表面上で発現されたMUC16を特異的に認識する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、卵巣がん細胞、乳がん細胞、前立腺がん細胞、結腸がん細胞、肺がん細胞、脳がん細胞、膵臓がん細胞、腎臓がん細胞、卵管がん細胞、子宮(例えば、子宮内膜)がん細胞、原発腹膜がん細胞またはMUC16を発現する任意の他の組織のがん細胞のうち1種または複数の細胞表面上で発現されたMUC16を特異的に認識する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、がん細胞系、例えば、卵巣がん細胞系、例えば、OVCAR3、OVCA-432、OVCA-433およびCAOV3の細胞表面上で発現されたMUC16を特異的に認識する。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、MUC16タンパク質の少なくとも1つの対立遺伝子変種またはその断片と交差反応する。一部の実施形態では、対立遺伝子変種は、天然に存在するMUC16またはその断片と比較した場合に、最大約30、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30のいずれかのアミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子はMUC16タンパク質の任意の対立遺伝子変種またはその断片と交差反応しない。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、MUC16タンパク質の少なくとも1つの種間変種と交差反応する。一部の実施形態では、例えば、MUC16タンパク質またはその断片は、ヒトMUC16およびMUC16タンパク質の種間変種またはその断片であり、そのマウスまたはラット変種である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子はMUC16タンパク質の任意の種間変種と交差反応しない。
【0056】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子のいずれかによれば、抗MUC16抗体作用因子は、MUC16に特異的に結合する抗MUC16抗体部分を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、ヒト化18C6抗MUC16抗体の抗体重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインを含む。
【0057】
ヒト化4H11抗MUC16抗体作用因子
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、4H11抗MUC16重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインの1つまたは複数のフレームワーク領域の1個または複数のアミノ酸残基が、ヒト抗体重鎖フレームワーク領域(HC-FW)または軽鎖フレームワーク領域(LC-FW)中の対応するアミノ酸に改変されている、4H11抗MUC16抗体(PCT公開番号WO2011/119979)の抗体重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインを含む。
【0058】
一部の実施形態では、マウス4H11抗MUC16重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個またはそれより多いアミノ酸残基が、ヒト抗体HC-FWおよび/またはLC-FW中の対応するアミノ酸に改変される。一部の実施形態では、ヒトLC-FWは、免疫グロブリンカッパ可変4-1(IGKV4-1)遺伝子または免疫グロブリンカッパ接合2(IGKJ2)遺伝子に由来する。一部の実施形態では、ヒトHC-FWは、免疫グロブリン重可変3-21(IGHV3-21)遺伝子に由来する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、よりマウス様であり、これは、マウス4H11抗MUC16重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域の約10個またはそれより少ないアミノ酸残基がヒト抗体HC-FWまたはLC-FW中の対応するアミノ酸に改変されることを意味する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、よりヒト様であり、これは、マウス4H11抗MUC16重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域の10個またはそれより多いアミノ酸残基がヒト抗体HC-FWまたはLC-FW中の対応するアミノ酸に改変されることを意味する。一部の実施形態では、マウス4H11抗MUC16抗体配列に関して行われたヒトアミノ酸置換が多いほど、ヒトに投与された場合に抗MUC16抗体作用因子についてより低い免疫原性が予測される。一部の実施形態では、抗体の構造および/または活性を維持するために、マウス配列に関して1個または複数のアミノ酸が未改変であり得る。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号4または5の1、2または3つのHC-CDRを含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号4または5の重鎖可変ドメインのHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号17、18および19に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0059】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号124、125および126に示される重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2およびHC-FW3を含む重鎖可変ドメインを含み、HC-FW1、HC-FW2および/またはHC-FW3中の1個または複数のアミノ酸残基は、それぞれヒトHC-FW1、HC-FW2および/またはHC-FW3中の対応するアミノ酸に改変される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号124、125および126の重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2およびHC-FW3を含む重鎖可変ドメインを含み、HC-FW1、HC-FW2および/またはHC-FW3中の1個または複数のアミノ酸残基は、それぞれ配列番号127、128および129に示されるヒトHC-FW1、HC-FW2および/またはHC-FW3中の対応するアミノ酸に改変される。
【0060】
さらにまたはあるいは、一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号136、137および138に示されるHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号136の1位のXはSまたはEであり、配列番号136の3位のXはKまたはQであり、配列番号136の5位のXはQまたはVであり、配列番号136の11位のXはFまたはLであり、配列番号136の19位のXはKまたはRであり、配列番号137の5位のXはSまたはAであり、配列番号137の7位のXはEまたはGであり、配列番号137の8位のXはMまたはKであり、配列番号137の9位のXはRまたはGであり、配列番号138の12位のXはTまたはSであり、配列番号138の14位のXはHまたはYであり、配列番号138の18位のXはGまたはNであり、配列番号138の22位のXはSまたはAであり、および/または配列番号138の23位のXは、GまたはEである。
【0061】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号130、131および132のHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号130、131および132のHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3を含む重鎖可変ドメインまたは最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号130、131および132に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号133、134および135のHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号133、134および135のHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3を含む重鎖可変ドメインまたは最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号133、134および135に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。
【0062】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号4または5を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号4または5に示される重鎖可変ドメインを含む。
【0063】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号2または3の1、2または3つのLC-CDRを含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号2または3の軽鎖可変ドメインのLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分はそれぞれ配列番号14、15および16に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号2または3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号2または3に示される軽鎖可変ドメインを含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号104、105、106および107に示される軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含み、LC-FW1、LC-FW2、LC-FW3、および/またはLC-FW4中の1個または複数のアミノ酸残基は、それぞれヒトLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3および/またはLC-FW4中の対応するアミノ酸に改変される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号104、105、106および107のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含み、LC-FW1、LC-FW2、LC-FW3および/またはLC-FW4中の1個または複数のアミノ酸残基は、それぞれ配列番号108、109、110および111に示されるヒトLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3および/またはLC-FW4中の対応するアミノ酸に改変される。
【0064】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号120、121、122および123に示されるLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含み、配列番号120の3位のXはEまたはVであり、配列番号120の9位のXはSまたはDであり、配列番号120の15位のXはAまたはLであり、配列番号120の18位のXはKまたはRであり、配列番号120の22位のXはSまたはNであり、配列番号122の7位のXはTまたはSであり、配列番号122の27位のXはLまたはVであり、配列番号123の3位のXはPまたはQであり、および/または配列番号123の9位のXはVまたはIである。
【0065】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号112、113、114および115のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号112、113、114および115のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインまたは最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号112、113、114および115に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号116、117、118および119のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号116、117、118および119のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインまたは最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号116、117、118および119に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。
【0066】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号4または5の重鎖可変ドメインのHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号2または3の軽鎖可変ドメインのLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号17、18および19に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインおよびそれぞれ配列番号14、15および16に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号4または5を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号2または3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号4または5に示される重鎖可変ドメインおよび配列番号2または3に示される軽鎖可変ドメインを含む。
【0067】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号130に示されるHC-FW1、配列番号131に示されるHC-FW2、配列番号132に示されるHC-FW3を含む重鎖可変ドメイン、配列番号112に示されるLC-FW1、配列番号113に示されるLC-FW2、配列番号114に示されるLC-FW3および/または配列番号115に示されるLC-FW4を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号133に示されるHC-FW1、配列番号134に示されるHC-FW2、配列番号135に示されるHC-FW3を含む重鎖可変ドメイン、配列番号116に示されるLC-FW1、配列番号117に示されるLC-FW2、配列番号118に示されるLC-FW3および/または配列番号119に示されるLC-FW4を含む。
【0068】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号17、18および19に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3、およびそれぞれ配列番号130、131および132に示されるHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3を含む重鎖可変ドメイン、およびそれぞれ配列番号14、15および16に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3、およびそれぞれ配列番号112、113、114および115に示されるLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0069】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号17、18および19に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3、およびそれぞれ配列番号133、134および135に示されるHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3を含む重鎖可変ドメイン、およびそれぞれ配列番号14、15および16に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3、およびそれぞれ配列番号116、117、118および119に示されるLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含む。
一部の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号4または5のアミノ酸配列または最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号4または5に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。一部の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号2または3のアミノ酸配列または最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号2または3に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。
【0070】
ヒト化18C6抗MUC16抗体作用因子
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、18C6抗MUC16重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインの1つまたは複数のフレームワーク領域の1個または複数のアミノ酸残基が、ヒト抗体重鎖フレームワーク領域(HC-FW)または軽鎖フレームワーク領域(LC-FW)中の対応するアミノ酸に改変されている、18C6抗MUC16抗体(PCT公開番号WO2016/149368)の抗体重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインを含む。
一部の実施形態では、マウス18C6抗MUC16重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個またはそれより多いアミノ酸残基が、ヒト抗体HC-FWおよび/またはLC-FW中の対応するアミノ酸に改変される。一部の実施形態では、ヒトLC-FWは、免疫グロブリンカッパ可変2-28(IGKV2-28)遺伝子または免疫グロブリンカッパ接合4(IGKJ4)遺伝子に由来する。一部の実施形態では、ヒトHC-FWは、免疫グロブリン重可変2-5(IGHV2-5)遺伝子に由来する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、よりマウス様であり、これは、マウス18C6抗MUC16重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域の約10個またはそれより少ないアミノ酸残基がヒト抗体HC-FWまたはLC-FW中の対応するアミノ酸に改変されることを意味する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子は、よりヒト様であり、これは、マウス18C6抗MUC16重鎖可変ドメインおよび/または抗体軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域の10個またはそれより多いアミノ酸残基がヒト抗体HC-FWまたはLC-FW中の対応するアミノ酸改変されることを意味する。一部の実施形態では、マウス18C6抗MUC16抗体配列に関して行われたヒトアミノ酸置換が多いほど、ヒトに投与された場合に抗MUC16抗体作用因子についてより低い免疫原性が予測される。一部の実施形態では、抗体の構造および/または活性を維持するために、マウス配列に関して1個または複数のアミノ酸が未改変であり得る。
【0071】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号22または23の1、2または3つのHC-CDRを含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号22または23の重鎖可変ドメインのHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号35、36および37に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0072】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号159、160、161および162に示される重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む重鎖可変ドメインを含み、HC-FW1、HC-FW2、HC-FW3および/またはHC-FW4中の1個または複数のアミノ酸残基は、それぞれヒトHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3および/またはHC-FW4中の対応するアミノ酸に改変される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号159、160、161および162の重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む重鎖可変ドメインを含み、HC-FW1、HC-FW2、HC-FW3および/またはHC-FW4中の1個または複数のアミノ酸残基は、それぞれ配列番号163、164、165および166に示されるヒトHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3および/またはHC-FW4中の対応するアミノ酸に改変される。
【0073】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号175、176、177および178に示される重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む重鎖可変ドメインを含み、配列番号175の10位のXはGまたはTであり、配列番号175の11位のXはIまたはLであり、配列番号175の12位のXはLまたはVであり、配列番号175の13位のXはQまたはKであり、配列番号175の15位のXはSまたはTであり、配列番号175の19位のXはSまたはTであり、配列番号175の23位のXはSまたはTであり、配列番号177の5位のXはSまたはTであり、配列番号177の14位のXはFまたはVであり、配列番号177の16位のXはKまたはTであり、配列番号177の18位のXはAまたはTであり、配列番号177の22位のXはTまたはPであり、配列番号177の23位のXはAまたはVであり、および/または配列番号178の6位のXはSまたはLである。
【0074】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号167、168、169および170のHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号167、168、169および170のHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む重鎖可変ドメインまたは最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号167、168、169および170に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号171、172、173および174のHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号171、172、173および174のHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む重鎖可変ドメインまたは最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号171、172、173および174に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。
【0075】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号22または23を含む重鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号22または23に示される重鎖可変ドメインを含む。
【0076】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号20または21の1、2または3つのLC-CDRを含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号20または21の軽鎖可変ドメインのLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号32、33および34に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号20または21を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は配列番号20または21に示される軽鎖可変ドメインを含む。
【0077】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号139、140、141および142に示される軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含み、LC-FW1、LC-FW2、LC-FW3、および/またはLC-FW4中の1個または複数のアミノ酸残基は、それぞれヒトLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3および/またはLC-FW4中の対応するアミノ酸に改変される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号139、140、141および142のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含み、LC-FW1、LC-FW2、LC-FW3および/またはLC-FW4中の1個または複数のアミノ酸残基は、それぞれ配列番号143、144、145および146に示されるヒトLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3および/またはLC-FW4中の対応するアミノ酸に改変される。
【0078】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号155、156、157および158に示されるLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含み、配列番号155の7位のXはAまたはSであり、配列番号155の9位のXはPまたはLであり、配列番号155の11位のXはVまたはLであり、配列番号155の18位のXはSまたはPであり、配列番号156の5位のXはRまたはKであり、配列番号157の9位のXはRまたはSであり、および/または配列番号157の18位のXはRまたはKである。
【0079】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号147、148、149および150のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号147、148、149および150のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインまたは最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号147、148、149および150に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号151、152、153および154のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号151、152、153および154のLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインまたは最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号151、152、153および154に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。
【0080】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号22または23の重鎖可変ドメインのHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメイン、および配列番号20または21の軽鎖可変ドメインのLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号35、36および37に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む重鎖可変ドメイン、およびそれぞれ配列番号32、33および34に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号22または23を含む重鎖可変ドメインおよび配列番号20または21を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号22または23に示される重鎖可変ドメインおよび配列番号20または21に示される軽鎖可変ドメインを含む。
【0081】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号167に示されるHC-FW1、配列番号168に示されるHC-FW2、配列番号169に示されるHC-FW3、配列番号170に示されるHC-FW4を含む重鎖可変ドメイン、配列番号147に示されるLC-FW1、配列番号148に示されるLC-FW2、配列番号149に示されるLC-FW3および/または配列番号150に示されるLC-FW4を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、配列番号171に示されるHC-FW1、配列番号172に示されるHC-FW2、配列番号173に示されるHC-FW3、配列番号174に示されるHC-FW4を含む重鎖可変ドメイン、配列番号151に示されるLC-FW1、配列番号152に示されるLC-FW2、配列番号153に示されるLC-FW3および/または配列番号154に示されるLC-FW4を含む。
【0082】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号35、36および37に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3、およびそれぞれ配列番号167、168、169および170に示されるHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む重鎖可変ドメイン、およびそれぞれ配列番号32、33および34に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3、およびそれぞれ配列番号147、148、149および150に示されるLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、それぞれ配列番号35、36および37に示されるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3、およびそれぞれ配列番号171、172、173および174に示されるHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む重鎖可変ドメイン、およびそれぞれ配列番号32、33および34に示されるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3、およびそれぞれ配列番号151、152、153および154に示されるLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0083】
一部の実施形態では、抗体重鎖可変ドメインは、配列番号22もしくは23のアミノ酸配列または最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号22もしくは23に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。一部の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号20もしくは21のアミノ酸配列または最大約5(例えば、約1、2、3、4または5のいずれか)のアミノ酸置換を含む、もしくは配列番号20または21に対して少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含む。
【0084】
本明細書において提供されるヒト化4H11および18C6抗体作用因子の例示的抗体配列は、以下の表中に示されている。表1中の例示的CDR配列はIgBLASTアルゴリズムを使用して予測される。例えば、その開示内容がその全文で参照により本明細書に組み込まれる、Ye J. et al., Nucleic Acids Research 41:W34-W40 (2013)を参照されたい。当業者ならば、抗体重鎖および軽鎖可変領域中のCDR位置の予測のための多数のアルゴリズムが公知であり、本明細書において記載される抗体に由来するCDRを含むが、IgBLAST以外の予測アルゴリズムに基づく抗体作用因子が本技術の範囲内にあることは認識するであろう。
例示的抗体重鎖および軽鎖可変領域配列は、国際免疫遺伝学情報システム(INTERNATIONAL IMMUNOGENETICS INFORMATION SYSTEM)(登録商標)(IMGT)に従って区切られる。例えば、その開示内容がその全文で参照により本明細書に組み込まれる、Lefranc, M.-P. et al., Nucleic Acids Res., 43:D413-422 (2015)を参照されたい。当業者ならば、本明細書において記載される抗体に由来するVHまたはVL配列を含むがIMGT以外のアルゴリズムに基づく抗体作用因子が本技術の範囲内にあることは認識するであろう。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、IgG1重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、IgG2重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、IgG3重鎖定常領域を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分はIgG1重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、重鎖定常領域は配列番号8、9、26、27または47のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0088】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分はIgG4重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、IgG4重鎖定常領域は配列番号48のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
【0089】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分はラムダ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、軽鎖定常領域は配列番号6、7、24、25または49のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分はカッパ軽鎖定常領域を含む。
【0090】
全長抗MUC16抗体
抗MUC16抗体作用因子は、一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体である。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMである。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は、IgG定常ドメイン、例えば、その変種を含むIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のいずれかの定常ドメインを含む。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体はラムダ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体はカッパ軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は全長ヒト抗MUC16抗体である。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体はマウス免疫グロブリンのFc配列を含む。一部の実施形態では、全長抗MUC16抗体は増強された抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)または補体依存性細胞傷害性(CDC)エフェクター機能を有するように変更されているか、またはそうでなければ変化しているFc配列を含む。
【0091】
したがって、例えば、一部の実施形態では、IgG1またはIgG4定常ドメインを含む全長抗MUC16抗体が提供され、抗MUC16抗体は腫瘍細胞上のMUC16に特異的に結合する。一部の実施形態では、IgG1はヒトIgG1である。一部の実施形態では、IgG1はヒトIgG4である。一部の実施形態では、抗MUC16重鎖定常領域は配列番号8、9、26または27のアミノ酸配列を含むか、または前記配列からなる。一部の実施形態では、抗MUC16軽鎖定常領域は、配列番号6、7、24または25のアミノ酸配列を含むか、または前記配列からなる。一部の実施形態では、抗MUC16重鎖定常領域は配列番号8、9、26または27のアミノ酸配列を含むか、または前記配列からなり、抗MUC16軽鎖定常領域は、配列番号6、7、24または25のアミノ酸配列を含むか、または前記配列からなる。一部の実施形態では、抗MUC16抗体の、MUC16発現性細胞(例えば、MUC16発現性がん細胞)への結合は、腫瘍成長もしくは腫瘍の転移を阻害し、または腫瘍の退縮を誘導する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体の、MUC16発現性細胞(例えば、MUC16発現性がん細胞)への結合は、MUC16発現性細胞のin vitroでのMatrigel浸潤を阻害する。
【0092】
一部の実施形態では、IgG1またはIgG4定常ドメインを含む全長抗MUC16抗体が提供され、抗MUC16抗体は、a)配列番号4または5を含む重鎖可変ドメイン、およびb)配列番号2または3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、IgG1はヒトIgG1である。一部の実施形態では、IgG4はヒトIgG4である。一部の実施形態では、抗MUC16重鎖定常領域は配列番号8または9のアミノ酸配列を含むか、または前記配列からなる。一部の実施形態では、抗MUC16軽鎖定常領域は配列番号6または7のアミノ酸配列を含むかまたは前記配列からなる。一部の実施形態では、抗MUC16抗体は配列番号12または13を含む重鎖および配列番号10または11を含む軽鎖を含む。
一部の実施形態では、IgG1またはIgG4定常ドメインを含む全長抗MUC16抗体が提供され、抗MUC16抗体は、a)配列番号22または23を含む重鎖可変ドメイン、およびb)配列番号20または21を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、IgG1はヒトIgG1である。一部の実施形態では、IgG4はヒトIgG4である。一部の実施形態では、抗MUC16重鎖定常領域は、配列番号26または27のアミノ酸配列を含むか、または前記配列からなる。一部の実施形態では、抗MUC16軽鎖定常領域は配列番号24または25のアミノ酸配列を含むかまたは前記配列からなる。一部の実施形態では、抗MUC16抗体は配列番号30または31を含む重鎖および配列番号28または29を含む軽鎖を含む。
【0093】
キメラ抗MUC16構築物
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、MUC16に特異的に結合する抗MUC16キメラ抗原受容体(CAR)またはその変種である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は抗MUC16CARである。CARは当技術分野で周知であり、抗MUC16抗体作用因子は本技術において使用するために、その開示内容が明確に本明細書に組み込まれるSadelain et al., Nature 545: 423- 431 (2017)に記載されるような、当技術分野で公知の任意のCARに従うCARであり得る。
「キメラ抗原受容体(CAR)」という用語は、本明細書で使用される場合、膜貫通ドメイン(例えば、免疫細胞共刺激シグナル伝達分子膜貫通ドメイン)に直接的または間接的に連結され、これが、次に細胞内免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)シグナル伝達ドメインに直接的または間接的に連結される、人工的に構築されたハイブリッド単鎖タンパク質または細胞外抗原結合性ドメインの一部として単鎖可変断片(scFv)を含有する単鎖ポリペプチドを指す。細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)は、抗原依存性のTCR関連T細胞活性化分子に由来する一次シグナル伝達配列、または一次免疫細胞シグナル伝達配列、例えば、CD3ζ、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bまたはCD66dの細胞内ドメインの一部分)を含む。ISDは共刺激シグナル伝達配列、例えば、抗原独立性の共刺激分子、例えば、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンドなどの細胞内ドメインの一部分をさらに含み得る。CARの特徴として、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、MHC拘束性様式(TCR模倣抗体の場合)またはMHC非拘束性様式で(細胞表面タンパク質に対する抗体の場合)、免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)特異性および反応性を選択された標的に再度向ける能力が挙げられる。MHC非拘束性抗原認識は、CARを発現する免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)に、抗原プロセシングとは独立して、したがって、腫瘍エスケープの主要な機序を迂回して、抗原を認識する能力を与える。
一部の実施形態では、抗MUC16CARは、本明細書において記載される抗MUC16抗体部分のいずれかに従う抗MUC16抗体部分を含む。例えば、一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分を含む抗MUC16CARが提供される。一部の実施形態では、抗MUC16CARの抗MUC16抗体部分は、a)配列番号4または5を含む重鎖可変ドメイン、およびb)配列番号2または3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号4または5のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号2または3のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するその変種を含む。一部の実施形態では、抗MUC16CARは配列番号80~83または97~99の中から選択される配列を含む。
【0094】
一部の実施形態では、抗MUC16CARの抗MUC16抗体部分は、a)配列番号22または23を含む重鎖可変ドメイン、およびb)配列番号20または21を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号22または23のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含み、軽鎖可変ドメインは配列番号20または21のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するその変種を含む。一部の実施形態では、抗MUC16CARは、配列番号84~87または100~103の中から選択される配列を含む。
【0095】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、T細胞受容体(TCR)膜貫通ドメインを含む抗MUC16キメラ受容体である。例えば、一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、PCT特許出願公開番号WO2017070608に記載されるような抗体-T細胞受容体(abTCR)であり、その開示内容は、本技術において使用するために、および本明細書における1つまたは複数の特許請求の範囲に含める可能性のために本明細書に明確に組み込まれる。一部の実施形態では、抗MUC16abTCRは、本明細書において記載される抗MUC16抗体部分のいずれかに従う抗MUC16抗体部分を含む。例えば、一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分を含む抗MUC16abTCRが提供される。
【0096】
一部の実施形態では、抗MUC16abTCRの抗MUC16抗体部分は、a)配列番号4または5を含む重鎖可変ドメイン、およびb)配列番号2または3含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16abTCRの重鎖可変ドメインは、配列番号4または5のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号2または3のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するその変種を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16 abTCRの抗MUC16抗体部分は、a)配列番号22または23を含む重鎖可変ドメインおよびb)配列番号20または21を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、抗MUC16 abTCRの重鎖可変ドメインは、配列番号22もしくは23のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号20もしくは21のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するその変種を含む。
【0097】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、MUC16に特異的に結合する抗MUC16抗体部分および共刺激性シグナル伝達ドメインを含むキメラ共刺激性受容体である。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、MUC16に結合するとその表面でそれが機能的に発現される免疫細胞を刺激可能である。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、機能的一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠く。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は任意の一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠く。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、抗MUC16抗体部分、膜貫通ドメインおよび共刺激性シグナル伝達ドメインを含む単一ポリペプチド鎖を含む。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、第1および第2のポリペプチド鎖は一緒に、抗MUC16抗体部分、膜貫通モジュールおよび共刺激性シグナル伝達ドメインを含む共刺激性シグナル伝達モジュールを形成する。一部の実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖は、別々のポリペプチド鎖であり、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、多量体、例えば、二量体である。一部の実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖は、共有結合によって、例えば、ペプチド結合によって、または別の化学的連結、例えば、ジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって連結される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体部分は、Fab、Fab’、(Fab’)2、Fvまたは一本鎖Fv(scFv)である。一部の実施形態では、抗MUC16 scFvは、配列番号53~68のいずれか1つから選択される配列を含む。
【0098】
本技術の抗MUC16キメラ共刺激受容体において使用するための共刺激免疫細胞シグナル伝達ドメインの例として、キメラ受容体(例えば、CARまたはabTCR)と協力して作用して、キメラ受容体会合後にシグナル伝達を開始することができるT細胞受容体(TCR)の共受容体の細胞質配列、およびこれらの配列の任意の誘導体または変種および同一の機能的能力を有する任意の合成配列が挙げられる。
TCR単独によって生成されたシグナルは、T細胞の完全活性化にとっては不十分であること、および二次的または共刺激性シグナルも必要であることは公知である。したがって、T細胞活性化は、2つの別個のクラスの細胞内シグナル伝達配列:TCRによって抗原依存性一次活性化を開始するもの(本明細書において「一次免疫細胞シグナル伝達配列」と呼ばれる)および抗原依存的に作用して、二次的または共刺激性シグナルを提供するもの(本明細書において「共刺激性免疫細胞シグナル伝達配列」と呼ばれる)によって媒介されると言われることがある。
【0099】
刺激性に作用する一次免疫細胞シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含有し得る。ITAMを含有する一次免疫細胞シグナル伝達配列の例として、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79bおよびCD66dに由来するものが挙げられる。「機能的」一次免疫細胞シグナル伝達配列は、適当な受容体に作動可能につなげられる場合に免疫細胞活性化シグナルを形質導入可能である配列である。一次免疫細胞シグナル伝達配列の断片または変種を含み得る「非機能的」一次免疫細胞シグナル伝達配列は、免疫細胞活性化シグナルを形質導入できない。本明細書において記載される抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、機能的一次免疫細胞シグナル伝達配列、例えばITAMを含む機能的シグナル伝達配列を欠く。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、任意の一次免疫細胞シグナル伝達配列を欠く。
共刺激性免疫細胞シグナル伝達配列は、例えば、CD27、CD28、4-1BB (CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンドなどを含む、共刺激性分子の細胞内ドメインの部分であり得る。
一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体の抗MUC16抗体部分は、a)配列番号4または5を含む重鎖可変ドメイン、およびb)配列番号2または3を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号4または5のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号2または3のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するその変種を含む。
一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激受容体の抗MUC16抗体部分は、a)配列番号22または23を含む重鎖可変ドメインおよびb)配列番号20または21を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号22もしくは23のアミノ酸配列または少なくとも約95%(例えば、少なくとも約96%、97%、98%または99%のいずれか)の配列同一性を有するその変種を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号20もしくは21のアミノ酸配列または少なくとも約95%の配列同一性を有するその変種を含む。
【0100】
一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、免疫細胞において発現される。一部の実施形態では、抗MUC16キメラ共刺激性受容体は、別のキメラ受容体を発現する免疫細胞において発現される。一部の実施形態では、他のキメラ受容体はCARまたはabTCRである。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、MUC16に結合する。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、MUC16に結合しない。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、MUC16の高発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがんと関連する抗原に結合する。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、本明細書において記載されるがんのいずれか(例えば、腎臓がん、子宮頸がん、前立腺がん、乳がん、結腸がん、脳がんまたは膵臓がん)と関連する抗原に結合する。一部の実施形態では、他のキメラ受容体は、腎臓がんと関連する抗原に結合する。一部の実施形態では、腎臓がんは、腎細胞癌(RCC)である。一部の実施形態では、RCCは、転移性RCCである。一部の実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、免疫細胞における抗MUC16キメラ共刺激性受容体の発現は誘導可能である。一部の実施形態では、免疫細胞における抗MUC16キメラ共刺激性受容体の発現は、他のキメラ受容体を介したシグナル伝達の際に誘導可能である。
【0101】
結合親和性
結合親和性は、Kd、Koff、KonまたはKaによって示され得る。「Koff」という用語は、本明細書で使用される場合、動態学的選択設定から決定されるような、抗体作用因子/抗原複合体からの抗体作用因子の解離の解離速度(off-rate)定数を指すものとする。「Kon」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体作用因子/抗原複合体を形成する、抗体作用因子の抗原への会合の会合速度(on-rate)定数を指すものとする。平衡解離定数「Kd」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体作用因子-抗原相互作用の解離定数を指し、平衡の抗体作用因子分子の溶液中に存在する抗体結合性ドメインのすべての2分の1を占めるために必要な抗原の濃度を説明し、Koff/Konに等しい。Kdの測定は、すべての結合剤が溶液中にあることを前提とする。抗体作用因子が細胞壁に繋留される場合には、例えば、酵母発現系において、対応する平衡速度定数は、EC50として表され、これは、Kdの良好な近似をもたらす。親和性定数、Kaは、解離定数、Kdの逆数である。
【0102】
解離定数(Kd)は、抗原に対する抗体部分の親和性を示す指標として使用される。例えば、さまざまなマーカー因子を用いて印がつけられた抗体作用因子を使用するスキャッチャード法によって、およびBiacore(Amersham Biosciencesによって製造された)を使用する、ユーザーズマニュアルおよび付属のキットに従う表面プラズモン共鳴による生体分子相互作用の分析によって容易な分析が可能である。これらの方法を使用して導くことができるKd値は、M(モル)の単位で表される。標的に特異的に結合する抗体作用因子は、例えば、≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M、≦10-10M、≦10-11M、≦10-12Mまたは≦10-13MのKdを有し得る。
抗体作用因子の結合特異性は、当技術分野で公知の方法によって実験的に決定され得る。このような方法として、それだけには限らないが、ウエスタンブロット、ELISA-、RIA-、ECL-、IRMA-、EIA-、BIAcore試験およびペプチドスキャンが挙げられる。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子の結合親和性は、表面にMUC16を発現する細胞(例えば、HepG2細胞)に対する抗MUC16抗体作用因子の結合親和性を試験することによって測定される。
【0103】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、標的MUC16(例えば、nMUC16)に、約10-7M~約10-13M(例えば、約10-7M~約10-13M、約10-9M~約10-13Mまたは約10-10M~約10-12M)のKdで特異的に結合する。したがって、一部の実施形態では、抗nMUC16抗体作用因子とnMUC16の間の結合のKd、抗sMUC16抗体作用因子とsMUC16の間の結合のKdまたは抗MUC16抗体作用因子とMUC16(任意の形態)の間の結合のKdは、約10-7M~約10-13M、約1×10-7M~約5×10-13M、約10-7M~約10-12M、約10-7M~約10-11M、約10-7M~約10-10M、約10-7M~約10-9M、約10-8M~約10-13M、約1×10-8M~約5×10-13M、約10-8M~約10-12M、約10-8M~約10-11M、約10-8M~約10-10M、約10-8M~約10-9M、約5×10-9M~約1×10-13M、約5×10-9M~約1×10-12M、約5×10-9M~約1×10-11M、約5×10-9M~約1×10-10M、約10-9M~約10-13M、約10-9M~約10-12M、約10-9M~約10-11M、約10-9M~約10-10M、約5×10-10M~約1×10-13M、約5×10-10M~約1×10-12M、約5×10-10M~約1×10-11M、約10-10M~約10-13M、約1×10-10M~約5×10-13M、約1×10-10M~約1×10-12M、約1×10-10M~約5×10-12M、約1×10-10M~約1×10-11M、約10-11M~約10-13M、約1×10-11M~約5×10-13M、約10-11M~約10-12Mまたは約10-12M~約10-13Mである。一部の実施形態では、抗nMUC16抗体作用因子とnMUC16の間の結合のKdは、約10-7M~約10-13Mである。
【0104】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子と非標的の間の結合のKdは、抗MUC16抗体作用因子と標的の間の結合のKdよりも大きく、一部の実施形態では、標的(例えば、細胞表面に結合したMUC16)に対する抗MUC16抗体作用因子の結合親和性は、非標的に対するものよりも高いと本明細書において言及される。一部の実施形態では、非標的は、MUC16ではない抗原である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子(nMUC16に対する)と非MUC16標的の間の結合のKdは、抗MUC16抗体作用因子と標的MUC16の間の結合のKdの少なくとも約10倍、例えば、約10~100倍、約100~1000倍、約103~104倍、約104~105倍、約105~106倍、約106~107倍、約107~108倍、約108~109倍、約109~1010倍、約1010~1011倍または約1011~1012倍であり得る。
【0105】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、約10-1M~約10-6M(例えば、約10-1M~約10-6M、約10-1M~約10-5Mまたは約10-2M~約10-4M)のKdで非標的に結合する。一部の実施形態では、非標的は、MUC16ではない抗原である。したがって、一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子と非MUC16標的の間の結合のKdは、約10-1M~約10-6M、約1×10-1M~約5×10-6M、約10-1M~約10-5M、約1×10-1M~約5×10-5M、約10-1M~約10-4M、約1×10-1M~約5×10-4M、約10-1M~約10-3M、約1×10-1M~約5×10-3M、約10-1M~約10-2M、約10-2M~約10-6M、約1×10-2M~約5×10-6M、約10-2M~約10-5M、約1×10-2M~約5×10-5M、約10-2M~約10-4M、約1×10-2M~約5×10-4M、約10-2M~約10-3M、約10-3M~約10-6M、約1×10-3M~約5×10-6M、約10-3M~約10-5M、約1×10-3M~約5×10-5M、約10-3M~約10-4M、約10-4M~約10-6M、約1×10-4M~約5×10-6M、約10-4M~約10-5Mまたは約10-5M~約10-6Mである。
【0106】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子が、標的MUC16(例えば、細胞表面に結合したMUC16)を高結合親和性で特異的に認識し、非標的に低結合親和性で結合することを言及する場合には、抗MUC16抗体作用因子は、標的MUC16(例えば、細胞表面に結合したMUC16)に、約10-7M~約10-13M(例えば、約10-7M~約10-13M、約10-9M~約10-13Mまたは約10-10M~約10-12M)のKdで結合するであろう、また非標的に、約10-1M~約10-6M(例えば、約10-1M~約10-6M、約10-1M~約10-5Mまたは約10-2M~約10-4M)のKdで結合するであろう。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子が細胞表面に結合したMUC16を特異的に認識することを言及する場合には、抗MUC16抗体作用因子の結合親和性は、対照抗MUC16抗体作用因子に対して比較される。一部の実施形態では、対照抗MUC16抗体作用因子と細胞表面に結合したMUC16の間の結合のKdは、本明細書において記載される抗nMUC16抗体作用因子と細胞表面に結合したMUC16の間の結合のKdの少なくとも約2倍、例えば、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約10~100倍、約100~1000倍、約103~104倍、約104~105倍、約105~106倍、約106~107倍、約107~108倍、約108~109倍、約109~1010倍、約1010~1011倍または約1011~1012倍であり得る。
【0107】
抗MUC16抗体作用因子の機能的活性
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、MUC16ポリペプチドを組換え発現する細胞のin vitroでのMatrigel浸潤を阻害する。一部の実施形態では、MUC16は、配列番号44(MUC16 c114)を含む。ある特定の実施形態では、グリコシル化されたMUC16 c114を組換え発現する細胞は、SKOV3細胞である。ある特定の実施形態では、MUC16ポリペプチドは、グリコシル化される。ある特定の実施形態では、MUC16ポリペプチドのグリコシル化形態は、アミノ酸残基Asn30(成熟MUC16(配列番号1)のAsnl806に対応する)でNグリコシル化である。ある特定の実施形態では、MUC16ポリペプチドは、アミノ酸残基Asn24およびAsn30(成熟MUC16(配列番号1)のそれぞれAsnl800およびAsnl806に対応する)でNグリコシル化される。ある特定の実施形態では、MUC16ポリペプチドは、配列番号44のアミノ酸残基Asn1、Asn24およびAsn30(Yin and Lloyd (2001) J Biol Chem 276: 27371-27375では、それぞれAsn1777、Asn1800およびAsn1806とも呼ばれる)でNグリコシル化される。ある特定の実施形態では、グリコシル化は、N結合型キトビオースを含む。ある特定の実施形態では、グリコシル化はN結合型キトビオースからなる。ある特定の実施形態では、Matrigel浸潤は、対照抗体(例えば、MUC16を標的としない抗体)を用いて処置された細胞のin vitroでのMatrigel浸潤と比較して、少なくとも1.25、1.5、1.75、2、3、4、5、6、7、8、9または10倍阻害される。ある特定の実施形態では、Matrigel浸潤は、対照抗体(例えば、MUC16を標的としない抗体)を用いて処置された細胞のin vitroでのMatrigel浸潤と比較して、約1.25、1.5、1.75、2、3、4、5、6、7、8、9または10倍阻害される。
【0108】
Matrigel浸潤のMUC16抗MUC16抗体作用因子または抗原結合性断片によって媒介される阻害を決定するアッセイは、当業者に公知である。例えば、BD BioCoat(商標)Matrigel(商標)浸潤インサートまたはチャンバー(24ウェルプレート中のカタログ番号354480)および対照インサート(24ウェルプレート中のカタログ番号354578)は、BD Biosciences、MAから購入できる。Matrigel浸潤アッセイは、製造業者のプロトコールのとおりに実施され得る。手短には、24ウェルプレート中のMatrigelチャンバー(-20℃で保存された)および対照インサート(4℃で保存された)は室温に戻される。両インサートは、インサートにおいて、および24ウェルプレートの外側のウェルにおいて、37℃ 5% CO2加湿インキュベーターで2時間、0.5mLの血清不含培地で再水和される。培養されたSKOV3細胞は、トリプシン処理され、培養培地で洗浄される。100万個の細胞が別の遠心管中に分けられ、血清不含培地で3回洗浄される。これらの細胞は、0.5mLの血清不含培地中で5,000個の細胞を与えるように後に調整される。再水和されたインサート中の培地が除去され、インサートは、ウェル中に0.75mLの、化学誘引物質として働く10%ウシ胎児血清(FBS)含有培養培地を含有する新しい24ウェルプレート中に移された。直ちに、血清不含培地中の0.5mLの細胞(5,000個細胞)がインサートに付加される。インサートおよび外側のウェル中に気泡が閉じ込められないことを確かめるために適切な注意が払われる。24ウェルプレートは、37℃ 5% CO2加湿インキュベーター中で48時間インキュベートされる。インキュベーション後、綿棒をMatrigelまたは対照インサート中に挿入し、綿棒の先端を膜表面上で動かしながら穏やかに圧力を加えることによって「こすり洗い」することにより、膜の上側表面から非浸潤細胞が除去される。培地で湿らせた第2の綿棒を用いてこすり洗いが反復される。次いで、インサートは、0.5mLの蒸留水中の0.5%クリスタルバイオレット染色液を含有する新しい24ウェルプレートにおいて30分間染色される。染色後、インサートは、過剰の染色液を除去するために3ビーカーの蒸留水ですすがれる。インサートは、新しい24ウェルプレート中で風乾される。浸潤した細胞は、200×の倍率の倒立顕微鏡下で手作業でカウントされる。3連の膜のいくつかの視野がカウントされ、図中に記録された。
【0109】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、マウスモデル研究において転移を阻害または低減可能であり、腫瘍成長を阻害可能であり、または腫瘍退縮を誘導可能である。例えば、腫瘍細胞系を胸腺欠損ヌードマウスに導入することができ、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片を1回または複数回胸腺欠損マウスに投与することができ、数週間および/または数か月の期間にわたって注射された腫瘍細胞の腫瘍進行をモニタリングすることができる。一部の場合には、胸腺欠損ヌードマウスへの抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片の投与は、腫瘍細胞系の導入の前に生じてもよい。ある特定の実施形態では、MUC16 c114を発現するSKOV3細胞は本明細書において記載されるマウス異種移植モデルのために利用される。
【0110】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%または100%、マウスモデルにおいて腫瘍成長を阻害するか、または腫瘍退縮を誘導する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約25%または35%、任意に約75%、マウスモデルにおいて腫瘍成長を阻害するか、または腫瘍退縮を誘導する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍または100倍、マウスモデルにおいて腫瘍成長を阻害するか、または腫瘍退縮を誘導する。偽処置マウスは、例えば、リン酸緩衝生理食塩水または対照(例えば、抗IgG抗体)で処置され得る。
【0111】
腫瘍成長阻害または腫瘍退縮を決定することは、例えば、一定期間にわたって腫瘍の大きさをモニタリングすることによって、例えば、触知可能な腫瘍の物理的測定または他の視覚的検出法によって評価され得る。例えば、腫瘍細胞系は、可視化剤、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼを組換え発現するように作製されてもよく、次いで、顕微鏡検査によってGFPのin vivo可視化を実施してもよく、また異種移植マウスにルシフェラーゼ基質を投与すること、およびルシフェラーゼ基質をプロセシングするルシフェラーゼ酵素による発光を検出することによってルシフェラーゼのin vivo可視化を実施してもよい。GFPまたはルシフェラーゼの検出の程度またはレベルは、異種移植マウスにおける腫瘍の大きさと相関する。
【0112】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して腫瘍異種移植モデルにおける動物の生存を増大し得る。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%、腫瘍異種移植モデルにおけるマウスの生存を増大する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、腫瘍異種移植モデルにおいて偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約25%または35%、任意で、約75%、腫瘍異種移植モデルにおいてマウスの生存を増大する。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、腫瘍異種移植モデルにおいて偽処置マウスと比較して、本明細書において記載されるか、または当業者に公知の方法によって評価されるように、少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍または100倍、腫瘍異種移植モデルにおいてマウスの生存を増大する。生存は、例えば、腫瘍細胞系注射後の時間(例えば、日または週)に対する生存マウス数の生存曲線をプロットすることによって決定され得る。偽処置マウスは、例えば、リン酸緩衝生理食塩水または対照(例えば、抗IgG抗体)を用いて処置され得る。
【0113】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、細胞を、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片と接触させるとMUC16ポリペプチドを発現する細胞中に内部移行される。「内部移行された」または「内部移行」とは、細胞によって内部移行される分子へ言及する場合には、細胞膜の細胞外表面と接触している分子の、細胞膜を通る細胞膜の細胞内表面への、および/または細胞の細胞質中への通過を指す。ある特定の実施形態では、グリコシル化されたMUC16 c114を組換え発現する細胞は、SKOV3細胞である。ある特定の実施形態では、MUC16 c114のグリコシル化形態は、例えば、配列番号44のAsn1、Asn24およびAsn30(Yin and Lloyd (2001) J Biol Chem 276: 27371-27375における、それぞれAsn1777、Asn1800およびAsn1806とも呼ばれる)でNグリコシル化される。ある特定の実施形態では、グリコシル化は、N結合型キトビオースを含む。ある特定の実施形態では、グリコシル化は、N結合型キトビオースからなる。
【0114】
例えば、放射標識された抗体を使用するといった、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片の、細胞への内部移行を決定するアッセイは、当業者に公知である。例えば、89Zr標識された抗体の内部移行は、MUC16 c114を発現するSKOV3細胞で調査され得る。手短には、およそ1×105個細胞が12ウェルプレートに播種され、37℃ 5% CO2インキュベーターで一晩インキュベートされる。一定容量の放射標識されたタンパク質が各ウェルに付加され、37℃および4℃で1、5、12および24時間プレートがインキュベートされる。各インキュベーション期間の後、培地が収集され、細胞が1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ですすがれる。細胞を4℃の1mLの100mM酢酸および100mMグリシン(1:1、pH3.5)で洗浄することによって表面に結合した活性が収集される。次いで、1mLの1M NaOHを用いて接着細胞が溶解される。各洗浄物が収集され、活性についてカウントされる。洗浄物すべての総活性に対する最終洗浄物の活性の割合を使用して、内部移行%を決定する。ある特定の実施形態では、アッセイは、37℃で実施される。ある特定の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片とともにインキュベートされた細胞の少なくとも1、2、3、5、6、7、8、9または10パーセントにおいて内部移行される。ある特定の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片とともにインキュベートされた細胞の約1、2、3、5、6、7、8、9または10パーセントにおいて内部移行される。ある特定の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、細胞の抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片との接触の1、2、3、4、8、12、16、20または24時間以内に内部移行される。
【0115】
核酸
抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)をコードする核酸分子も企図される。一部の実施形態では、本明細書において記載される全長抗MUC16抗体のいずれかまたはその抗原結合性断片を含む全長抗MUC16抗体をコードする核酸(または核酸のセット)が提供される。一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子をコードする核酸(または核酸のセット)は、ペプチドタグ(例えば、タンパク質精製タグ、例えば、His-タグ、HAタグ)をコードする核酸配列をさらに含み得る。
また、抗MUC16抗体作用因子を含む単離された宿主細胞、抗MUC16抗体作用因子のポリペプチド構成成分をコードする単離された核酸または本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子のポリペプチド構成成分をコードする核酸を含むベクターが、本明細書において企図される。
本出願はまた、これらの核酸配列の変種を含む。例えば、変種は、抗MUC16抗体作用因子(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)、その抗原結合性断片または本出願の抗MUC16抗体部分をコードする核酸配列と、少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。
本技術はまた、本技術の核酸が挿入されるベクターを提供する。
手短に要約すると、抗MUC16抗体作用因子をコードする天然または合成核酸による抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片の発現は、核酸が、例えば、プロモーター(例えば、リンパ球特異的プロモーター)および3’非翻訳領域(UTR)を含む5’および3’調節エレメントに作動可能に連結されるように、核酸を適当な発現ベクターに挿入することによって達成され得る。ベクターは、真核生物宿主細胞における複製および組込みにとって適したものであり得る。通常のクローニングおよび発現ベクターは、所望の核酸配列の発現の調節のために有用な転写および翻訳ターミネーター、開始配列およびプロモーターを含有する。
本技術の核酸はまた、標準遺伝子送達プロトコールを使用する核酸免疫治療および遺伝子療法のために使用され得る。遺伝子送達のための方法は、当技術分野で公知である。例えば、その全文で参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,399,346号、同5,580,859号、同5,589,466号を参照されたい。一部の実施形態では、本技術は、遺伝子療法ベクターを提供する。
【0116】
核酸は、いくつかの種類のベクター中にクローニングされ得る。例えば、核酸は、それだけには限らないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドを含むベクター中にクローニングされ得る。特に目的のベクターとして、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシーケンシングベクターが挙げられる。
さらに、発現ベクターはウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は当技術分野で周知であり、例えば、Green and Sambrook (2013, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)に、および他のウイルス学および分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用であるウイルスとして、それだけには限らないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスが挙げられる。一般に、適したベクターは少なくとも1種の生物において機能的である複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位および1種または複数の選択マーカーを含有する(例えば、WO01/96584、WO01/29058および米国特許第6,326,193号を参照されたい)。
【0117】
哺乳動物細胞への遺伝子導入のためにいくつかのウイルスベースの系が開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための好都合なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は当技術分野で公知の技術を使用してベクター中に挿入、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。組換えウイルスは、次いで、単離され、in vivoまたはex vivoのいずれかで対象の細胞に送達され得る。いくつかのレトロウイルス系が当技術分野で公知である。一部の実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。いくつかのアデノウイルスベクターは、当技術分野で公知である。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。レトロウイルス、例えば、レンチウイルスに由来するベクターは、それらが導入遺伝子の長期の安定な組込みおよび娘細胞におけるその増殖を可能にするので長期遺伝子導入を達成するための適したルーツである。レンチウイルスベクターは、それらが非増殖性細胞、例えば、肝細胞を形質導入できるという点でオンコレトロウイルス、例えば、マウス白血病ウイルス由来のベクターを上回る付加された利点を有する。それらはまた、低い免疫原性という付加された利点を有する。
さらなるプロモーターエレメント、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。通常、これらは、開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは最近、同様の開始部位の下流に機能的エレメントを含有するとわかった。プロモーターエレメント間の間隔はしばしば柔軟であり、その結果、エレメントが互いに対して逆転されるか、または移動される場合にプロモーター機能が示される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーターエレメント間の間隔は50bp離れるところまで増大することができ、その後、活性が低下し始める。
【0118】
適したプロモーターの一例として、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列がある。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動可能な強力な構成的プロモーター配列である。適したプロモーターの別の例として、伸長増殖因子-1α(EF-1α)がある。しかし、それだけには限らないが、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長い末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、鳥類白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターおよびヒト遺伝子プロモーター、例えば、それだけには限らないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターを含む他の構成的プロモーター配列も使用され得る。さらに、本技術は、構成的プロモーターの使用に制限されてはならない。誘導可能プロモーターも本技術の一部として企図される。誘導性可能プロモーターの使用は、このような発現が望まれる場合に作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにすることが可能な、または発現が望まれない場合に発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。誘導可能プロモーターの例として、それだけには限らないが、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子の発現は誘導可能である。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子をコードする核酸配列は、本明細書において記載される任意の誘導可能プロモーターを含む誘導可能プロモーターに作動可能に連結される。
【0119】
誘導可能プロモーター
誘導可能プロモーターの使用は、このような発現が望まれる場合に作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにすることが可能な、または発現が望まれない場合に発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。真核細胞において使用するための例示的誘導可能プロモーター系として、それだけには限らないが、ホルモン調節性エレメント(例えば、Mader, S. and White, J. H. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5603-5607 (1993)を参照されたい)、合成リガンド調節性エレメント(例えば、Spencer, D. M. et al 1993) Science 262: 1019-1024を参照されたい)および電離放射線調節性エレメント(例えば、Manome, Y. et al., Biochemistry 32: 10607-10613 (1993)、Datta, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1014- 10153 (1992))が挙げられる。in vitroまたはin vivoで哺乳動物系において使用するためのさらなる例示的誘導可能プロモーター系は、Gingrich et al., Annual Rev. Neurosci 21:377-405 (1998)に概説されている。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子を発現させるために使用するための誘導可能プロモーター系として、Tet系がある。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子を発現させるために使用するための誘導可能プロモーター系として、大腸菌(E. coli)に由来するlacレプレッサー系がある。
本技術において使用するための例示的誘導可能プロモーター系として、Tet系がある。このような系は、Gossen et al., (1993)によって記載されるTet系に基づいている。例示的実施形態では、目的のポリヌクレオチドは、1つまたは複数のTetオペレーター(TetO)部位を含むプロモーターの制御下にある。不活性状態では、Tetレプレッサー(TetR)は、TetO部位に結合し、プロモーターからの転写を抑制する。活性状態では、例えば、誘導因子、例えば、テトラサイクリン(Tc)、アンヒドロテトラサイクリン、ドキシサイクリン(Dox)またはその活性類似体の存在下では、誘導因子はTetOからのTetRの放出を引き起こし、それによって転写が起こることが可能となる。ドキシサイクリンは、1-ジメチルアミノ-2,4a,5,7,12-ペンタヒドロキシ-11-メチル-4,6-ジオキソ-1,4a,11,11a,12,12a-ヘキサヒドロテトラセン-3-カルボキサミドの化学名を有する抗生物質のテトラサイクリンファミリーのメンバーである。
【0120】
一実施形態では、TetRは、哺乳動物細胞、例えば、マウスまたはヒト細胞における発現のためにコドン最適化されている。ほとんどのアミノ酸は遺伝暗号の縮重のために2つ以上のコドンによってコードされ、核酸によってコードされるアミノ酸配列の変更を全く伴わない、所与の核酸のヌクレオチド配列の相当な変動が可能となる。しかし、多数の生物は「コドンバイアス」(すなわち、所与のアミノ酸の特定のコドン使用についてのバイアス)としても公知のコドン使用頻度の相違を示す。コドンバイアスは、特定のコドンのtRNAの優勢な種の存在と相関することが多く、これは、次いで、mRNA翻訳の効率を高める。したがって、特定の生物(例えば、原核生物)に由来するコード配列を、コドン最適化によって異なる生物(例えば、真核生物)における発現の改善のために調整することができる。
【0121】
Tet系の他の特定の変種には、以下の「Tet-Off」および「Tet-On」系が含まれる。Tet-Off系では、転写は、TcまたはDoxの存在下で不活性である。その系では、単純ヘルペスウイルスに由来するVP16の強力なトランス活性化ドメインに融合されたTetRから構成されるテトラサイクリン制御性トランス活性化因子タンパク質(tTA)は、テトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)の転写制御下にある標的核酸の発現を調節する。TREは、プロモーター(一般に、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)前初期プロモーターに由来する最小プロモーター配列)に融合されたTetO配列コンカテマーで構成されている。tTAはTcまたはDoxの不在下でTREに結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。tTAはTcまたはDoxの存在下でTREに結合できず、標的遺伝子からの発現は不活性のままである。
逆に、Tet-On系では、転写は、TcまたはDoxの存在下で活性である。Tet-On系は、リバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子、rtTAに基づいている。tTA同様、rtTAは、TetRレプレッサーおよびVP16トランス活性化ドメインから構成される融合タンパク質である。しかし、TetR DNA結合性部分における4つのアミノ酸変化がrtTAの結合特徴を変更し、その結果、Doxの存在下で標的導入遺伝子のTRE中のtetO配列のみを認識できる。したがって、Tet-On系では、TRE調節性標的遺伝子の転写がDoxの存在下でrtTAのみによって刺激される。
【0122】
別の誘導可能プロモーター系として、大腸菌由来のlacレプレッサー系がある(Brown et al., Cell 49:603-612 (1987)を参照されたい)。lacレプレッサー系は、lacオペレーター(lacO)を含むプロモーターに作動可能に連結した目的のポリヌクレオチドの転写を調節することによって機能する。lacレプレッサー(lacR)は、LacOに結合し、したがって、目的のポリヌクレオチドの転写を妨げる。目的のポリヌクレオチドの発現は、適した誘導因子、例えば、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導される。
ポリペプチドまたはその部分の発現を評価するために、細胞中に導入されるべき発現ベクターはまた、ウイルスベクターを介してトランスフェクトまたは感染しているように求められる細胞の集団からの、発現している細胞の同定および選択を促進する選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子のいずれか、または両方を含有する場合もある。他の態様では、選択マーカーはDNAの別々の小片上に保持され、同時トランスフェクション手順で使用される場合もある。選択マーカーおよびレポーター遺伝子の両方とも、宿主細胞における発現を可能にするために適当な調節配列を隣接させることができる。有用な選択マーカーとして、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えば、neoなどが挙げられる。
【0123】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされている可能性がある細胞を同定するために、また調節配列の機能性を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織によって存在しないか、または発現されない、また、その発現がいくつかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によって示されるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞中に導入された後、適した時間でアッセイされる。適したレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌されたアルカリホスファターゼまたは緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子が含まれ得る(例えば、Ui-Tel et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。適した発現系は周知であり、公知の技術を使用して調製するか、または商業的に入手できる。一般に、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小の5’隣接領域を有する構築物は、プロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域はレポーター遺伝子に連結され、プロモーター駆動性転写をモジュレートする能力について物質を評価するために使用され得る。
【0124】
一部の実施形態では、本明細書において記載される全長抗MUC16抗体のいずれかに従う全長抗MUC16抗体をコードする核酸が提供される。一部の実施形態では、核酸は、全長抗MUC16抗体の重および軽鎖をコードする1つまたは複数の核酸配列を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の核酸配列の各々は、別々のベクター中に含有される。一部の実施形態では、核酸配列の少なくとも一部は同一ベクター中に含有される。一部の実施形態では、核酸配列のすべては、同一ベクター中に含有される。ベクターは、例えば、哺乳動物発現ベクターおよびウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスに由来するもの)からなる群から選択され得る。
細胞中に遺伝子を導入し、発現させる方法は、当技術分野で公知である。発現ベクターとの関連で、ベクターは、当技術分野における任意の方法によって宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母または昆虫細胞中に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的または生物学的手段によって宿主細胞中に移され得る。
【0125】
宿主細胞中にポリヌクレオチドを導入するための物理的方法として、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、電気穿孔などが挙げられる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を生成する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Green and Sambrook (2013, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York)を参照されたい。一部の実施形態では、宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクションによって実施される。
宿主細胞へ目的のポリヌクレオチドを導入するための生物学的方法は、DNAおよびRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特に、レトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞中に遺伝子を挿入する最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス1、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなどに由来するものであり得る。例えば、米国特許第5,350,674号および同5,585,362号を参照されたい。
宿主細胞中にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段として、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズおよび水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。in vitroおよびin vivoでの送達ビヒクルとして使用するための例示的コロイド系として、リポソーム(例えば、人工膜小胞)がある。
【0126】
非ウイルス送達系が利用される場合には、例示的送達ビヒクルはリポソームである。宿主細胞中に核酸を導入する(in vitro、ex vivoまたはin vivo)ために脂質処方物の使用が企図される。別の態様では、核酸は、脂質と会合させてもよい。脂質と会合している核酸は、リポソームの水性内部に被包すること、リポソームの脂質二重層内に分散させること、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方と会合している連結分子によってリポソームに付着すること、リポソーム中に捕捉すること、リポソームと複合体形成すること、脂質を含有する溶液中に分散させること、脂質と混合すること、脂質と組み合わせること、脂質中に懸濁液として含有すること、ミセルに含有するか、またはミセルと複合体形成すること、または別の方法で脂質と会合することができる。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターと会合している組成物は、溶液中で任意の特定の構造に制限されない。例えば、それらは、二層構造で、ミセルとして、または「崩壊した」構造を有して存在し得る。それらはまた、簡単に溶液中に分散させることができ、おそらくは、大きさまたは形状が均一ではない凝集体を形成する。脂質は、天然に存在する脂質または合成脂質であり得る脂肪性物質である。例えば、脂質には、細胞質中に天然に存在する脂肪滴および長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコールおよびアルデヒドを含有する化合物のクラスが含まれる。
【0127】
宿主細胞中に外因性核酸を導入するための、またはそうではなく、本技術の阻害剤に対して細胞を曝露するために使用される方法に関わらず、宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために、種々のアッセイが実施され得る。このようなアッセイとして、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCR、「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)によって、または本技術の範囲内に入る薬剤を同定するための本明細書において記載されるアッセイによって例えば、特定のペプチドの有無を検出することが挙げられる。
【0128】
抗MUC16抗体作用因子および抗MUC16抗体部分の調製
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、モノクローナル抗体であるか、またはモノクローナル抗体に由来する。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、モノクローナル抗体に由来するVHおよびVLドメインまたはその変種を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、モノクローナル抗体に由来するCH1およびCLドメインまたはその変種をさらに含む。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法を含む当技術分野で公知の方法を使用して、または組換えDNA法を使用して調製され得る。さらに、例示的ファージディスプレイ法は、本明細書において、および以下の実施例において記載されている。
【0129】
ハイブリドーマ法では、通常、ハムスター、マウスまたは他の適当な宿主動物が、免疫治療剤を用いて免疫治療されて、免疫治療剤に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生可能であるリンパ球を誘発する。あるいは、リンパ球が、in vitroで免疫治療される場合もある。免疫治療剤として、目的のタンパク質のポリペプチドまたは融合タンパク質を挙げることができる。一般に、ヒト起源の細胞が望まれる場合には末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、または非ヒト哺乳動物供給源が望まれる場合には、脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、適した融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを使用して免疫治療された細胞系と融合されてハイブリドーマ細胞を形成する。免疫治療された細胞系は、普通、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシおよびヒト起源の骨髄腫細胞である。普通、ラットまたはマウス骨髄腫細胞系が使用される。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合されていない不死化された細胞の成長または生存を阻害する1種または複数の物質を含有する適した培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合には、ハイブリドーマの培養培地は、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(「HAT培地」)を含み、これは、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる。
【0130】
一部の実施形態では、不死化細胞系は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性である。一部の実施形態では、不死化細胞系はマウス骨髄腫系であり、これは、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、カリフォルニア州、サンディエゴおよびAmerican Type Culture Collection、バージニア州、マナサスから入手できる。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロミエローマ細胞系もヒトモノクローナル抗体の生成のために記載されている。
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は、次いで、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはin vitro結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着測定(ELISA)によって決定され得る。このような技術およびアッセイは、当技術分野で公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード解析法によって決定され得る。
【0131】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンは、制限希釈手順によってサブクローニングされ、標準方法によって増殖され得る。Goding、前掲。この目的のための適した培養培地として、例えば、「ダルベッコ改変イーグル培地」およびRPMI-1640培地が挙げられる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物において腹水としてin vivoで増殖され得る。
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって培養培地からまたは腹水から単離または精製され得る。
【0132】
一部の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子のいずれかによれば、抗MUC16抗体作用因子は、抗体ライブラリー(例えば、scFvまたはFab断片を提示するファージライブラリー)から選択されたクローンに由来する配列を含む。クローンは、所望の活性(単数または複数)を有する抗体断片についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特徴を有する抗体についてこのようなライブラリーをスクリーニングするためのさまざまな方法が当技術分野で公知である。このような方法は、例えば、Hoogenboom et al., Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, N.J., 2001)に概説されており、例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554; Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991)、Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992)、Marks and Bradbury, Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, N.J., 2003)、Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004)、Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004)、Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004)およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004)にさらに記載されている。
【0133】
ある特定のファージディスプレイ方法では、Winter et al., Ann. Rev. Immunol.、12: 433-455 (1994)に記載されるように、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリー中でランダムに組換えられ、これが、次いで、抗原結合性ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、通常、抗体断片をscFv断片として、またはFab断片のいずれかとしてディスプレイする。免疫処置された供給源から得られたライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なく免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993)によって記載されるように、免疫処置を全く伴わずに広範囲の非自己および自己抗原に対する抗体の単一供給源を提供するナイーブレパートリーがクローニングされ得る(例えば、ヒトから)。最後に、ナイーブライブラリーはまた、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)によって記載されるように、幹細胞から再構成されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度に可変性のCDR3領域をコードし、in vitroで再構成を達成することによって合成によって作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリーを記載する特許刊行物として、例えば、米国特許第5,750,373号および米国特許公開第2005/0079574号、同2005/0119455号、同2005/0266000号、同2007/0117126号、同2007/0160598号、同2007/0237764号、同2007/0292936号および同2009/0002360号が挙げられる。
【0134】
抗MUC16抗体作用因子は、ファージディスプレイを使用して、標的MUC16(例えば、nMUC16)に対して特異的な抗MUC16抗体部分についてライブラリーをスクリーニングして調製され得る。ライブラリーは、少なくとも1×109(例えば、少なくとも約1×109、2.5×109、5×109、7.5×109、1×1010、2.5×1010、5×1010、7.5×1010または1×1011のいずれか)の固有のヒト抗体断片の多様性を有するヒトscFvファージディスプレイライブラリーであり得る。一部の実施形態では、ライブラリーは、すべてのヒト重および軽鎖サブファミリーを包含する、健常ドナーから得たヒトPMBCおよび脾臓から抽出されたDNAから構築されたナイーブヒトライブラリーである。一部の実施形態では、ライブラリーは、種々の疾患を有する患者、例えば、自己免疫疾患を有する患者、がん患者および感染性疾患を有する患者から単離されたPBMCから抽出されたDNAから構築されたナイーブヒトライブラリーである。一部の実施形態では、ライブラリーは、半合成ヒトライブラリーであり、重鎖CDR3は、完全にランダム化されており、すべてのアミノ酸(システインを除く)は、任意の所与の位置に等しく存在する可能性が高い(例えば、Hoet, R.M. et al., Nat. Biotechnol. 23(3):344-348, 2005を参照されたい)。一部の実施形態では、半合成ヒトライブラリーの重鎖CDR3は、約5~約24(例えば、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24のいずれか)個のアミノ酸長を有する。一部の実施形態では、ライブラリーは、完全合成ファージディスプレイライブラリーである。一部の実施形態では、ライブラリーは、非ヒトファージディスプレイライブラリーである。
【0135】
標的MUC16(例えば、nMUC16)に高親和性で結合するファージクローンは、ファージの、固相支持体(例えば、溶液パニングのためのビーズまたは細胞パニングのための哺乳動物細胞など)結合した標的MUC16への反復性結合と、それに続く、結合していないファージの除去および特異的に結合したファージの溶出によって選択され得る。次いで、結合したファージクローンは溶出され、発現および精製のために適当な宿主細胞、例えば、大腸菌XL1-Blueに感染させるために使用される。細胞パニングの一例では、細胞表面でMUC16を過剰発現するHEK293細胞が、ファージライブラリーと混合され、その後、細胞が収集され、結合したクローンが溶出され、発現および精製のために適当な宿主細胞に感染させるために使用される(すべて実施例を参照されたい)。パニングは、標的MUC16に特異的に結合するファージクローンについて濃縮するために、溶液パニング、細胞パニングまたは両方の組合せを用いて複数(例えば、約2、3、4、5、6またはそれより多くのいずれか)ラウンドについて実施され得る。濃縮されたファージクローンは、例えば、ELISAおよびFACSを含む当技術分野で公知の任意の方法によって標的MUC16への特異的結合について試験され得る。
【0136】
モノクローナル抗体はまた、組換えDNA法、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されたものによって作製され得る。本技術のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、シーケンシングされ得る。上記のようなハイブリドーマ細胞または本技術のMUC16特異的ファージクローンは、このようなDNAの供給源として働き得る。一度単離されると、DNAは、発現ベクター中に入れることができ、これは、次いで、そうでなければ、免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または骨髄腫細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成が得られる。DNAはまた、例えば、相同非ヒト配列の代わりにヒト重および軽鎖定常ドメインおよび/もしくはフレームワーク領域のコード配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., 前掲)、または免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてもしくは一部を共有結合によって接合することによって改変され得る。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本技術の抗体作用因子の定常ドメインと置換され得る、または、本技術の抗体作用因子の1つの抗原結合部位の可変ドメインと置換されて、キメラ二価抗体作用因子を作出できる。
【0137】
抗体は一価抗体であり得る。一価抗体を調製する方法は、当技術分野で公知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖および改変された重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、重鎖架橋を防ぐために一般にFc領域中の任意の点で末端切断される。あるいは、架橋を防ぐために、関連システイン残基が別のアミノ酸残基と置換されるか、または欠失される。
in vitro法も一価抗体を調製するのに適している。その断片、特に、Fab断片を生成するための抗体の消化は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して達成され得る。
所望の結合特異性(抗体抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合され得る。融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとである。一部の実施形態では、軽鎖結合にとって必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合物のうち少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合物を、および必要に応じて免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクター中に挿入され、適した宿主生物中に同時トランスフェクされる。
【0138】
ヒトおよびヒト化抗体
抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片は、ヒト化抗体作用因子またはヒト抗体作用因子であり得る。非ヒト(例えば、マウス)抗体部分のヒト化形態は、通常、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvまたは他の抗体の抗原結合性部分配列)である。ヒト化抗体部分は、レシピエントのCDRに由来する残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラットまたはウサギのCDRに由来する残基によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(レシピエント抗体)を含む。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体部分はまた、レシピエント抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、少なくとも1つの、通常、2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み得る。
【0139】
一般に、ヒト化抗体作用因子は、非ヒトである供給源に由来する、それに導入された1個または複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と呼ばれることが多く、通常、「移入」可変ドメインから取られる。一部の実施形態によれば、ヒト化は、げっ歯類CDRまたはCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列と置換することによって、本質的に、Winterおよび共同研究者の方法(Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature、332: 323-327 (1988)、Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988))に従って実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体部分は、実質的にインタクトなヒト可変ドメイン未満が非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている抗体部分である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体部分は、通常、一部のCDR残基およびおそらくは一部のFR残基がげっ歯類抗体中の類似の部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体部分である。
【0140】
ヒト化の代替法として、ヒト抗体部分が作製され得る。例えば、免疫処置の際に、内因性免疫グロブリン産生の不在下で、ヒト抗体の全レパートリーを産生可能であるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を生成することが現在可能である。例えば、マウスにおけるキメラおよび生殖系列変異体中の抗体重鎖接合領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失が、内因性抗体産生の完全阻害をもたらすということが記載されている。ヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの、このような生殖系列変異体マウスへの導入は、抗原曝露の際にヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovits et al., PNAS USA, 90:2551 (1993)、Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993)、Bruggemann et al., Year in Immunol., 7:33 (1993)、米国特許第5,545,806号、同5,569,825号、同5,591,669号、同5,545,807号およびWO97/17852を参照されたい。あるいは、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウス中に導入することによって作製され得る。チャレンジすると、遺伝子再構成、アセンブリーおよび抗体レパートリーを含むあらゆる点でヒトにおいて見られるものと密接に似ているヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、同5,545,806号、同5,569,825号、同5,625,126号、同5,633,425号および同5,661,016号およびMarks et al., Bio/Technology, 10: 779-783 (1992)、Lonberg et al., Nature, 368: 856-859 (1994)、Morrison, Nature, 368: 812-813 (1994)、Fishwild et al., Nature Biotechnology, 14: 845-851 (1996)、Neuberger, Nature Biotechnology, 14: 826 (1996)、Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol., 13: 65-93 (1995)に記載されている。
【0141】
ヒト抗体作用因子はまた、in vitro活性化されたB細胞によって(米国特許第5,567,610号および同5,229,275号を参照されたい)またはファージディスプレイライブラリーを含む当技術分野で公知の種々の技術を使用することによって生成され得る。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991)、Marks et al.、J. Mol. Biol.、222:581 (1991)。Cole et al.およびBoerner et al.の技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である。Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985) and Boerner et al., J. Immunol., 147(1): 86-95 (1991)。
【0142】
抗MUC16抗体作用因子変種
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)のアミノ酸配列変種またはその抗原結合性断片が企図される。例えば、抗体作用因子の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することは望ましいものであり得る。抗体作用因子のアミノ酸配列変種は、抗体作用因子をコードするヌクレオチド配列中に適当な改変を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。このような改変は、例えば、抗体作用因子のアミノ酸配列内の残基からの欠失および/またはそれへの挿入および/またはその置換を含む。最終構築物が所望の特徴、例えば、抗原結合性を有するという条件で、最終構築物に到達するために欠失、挿入および置換の任意の組合せを行うことができる。
【0143】
一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗MUC16抗体作用因子変種が提供される。置換性変異誘発の目的の部位として、HVRおよびFRが挙げられる。アミノ酸置換は、目的の抗体作用因子中に導入され、生成物は、所望の活性、例えば、抗原結合性の保持/改善、免疫原性の低下またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
【0144】
保存的置換は、以下の表3に示されている。
【表3】
【0145】
アミノ酸は、共通の側鎖特性に従って異なるクラスにグループ化され得る:疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;酸性:Asp、Glu;塩基性:His、Lys、Arg;鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;および芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスと交換することを含む。
例示的置換性変種として、例えば、ファージディスプレイベースの親和性成熟技術を使用して好都合に生成され得る親和性成熟抗体作用因子がある。手短には、1個または複数のCDR残基が変異され、変種抗体部分が、ファージ上にディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。例えば、抗体親和性を改善するために、HVRにおいて変更(例えば、置換)が行われてもよい。このような変更は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの際に高頻度で変異を起こすコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照されたい)および/または特異性決定残基(SDR)において行われる場合があり、得られた変種VHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築すること、およびそれから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al., in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001).)に記載されている。
【0146】
親和性成熟の一部の実施形態では、さまざまな方法のいずれか(例えば、エラー-プローンPCR、鎖シャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指定変異誘発)によって成熟について選択された可変遺伝子中に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作出される。次いで、ライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体作用因子変種を同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化されるHVR指定アプローチを含む。抗原結合性に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して特異的に同定され得る。CDR-H3およびCDR-L3は、特に標的化されることが多い。
【0147】
一部の実施形態では、置換、挿入または欠失は、このような変更が、抗体作用因子の、抗原に結合する能力を実質的に低減しない限り、1つまたは複数のHVR内で生じてもよい。例えば、HVRにおいて結合親和性を実質的に低減しない保存的変更(例えば、本明細書において提供されるような保存的置換)が行われてもよい。このような変更は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側である場合もある。上記で提供される変種VHおよびVL配列の一部の実施形態では、各HVRは、変更されないか、または、1つ以下、2つ以下または3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
変異誘発のために標的化され得る抗体作用因子の残基または領域を同定する有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085に記載されるように「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基または標的残基の群(例えば、電荷を有する残基、例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGlu)が同定され、中性または負電荷を有するアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体作用因子の抗原との相互作用が影響を受けるか否かを決定する。最初の置換に対して機能的感受性を実証するアミノ酸位置に、さらなる置換が導入される場合もある。あるいは、またはさらに、抗体作用因子と抗原の間の接触点を同定するために、抗原-抗体作用因子複合体の結晶構造が決定され得る。このような接触残基および隣接する残基は、置換の候補として標的化または排除され得る。変種は、スクリーニングされて、それらが所望の特性を含有するか否かが決定され得る。
【0148】
アミノ酸配列挿入は、1個の残基~100個またはそれより多い残基を含有するポリペプチドの長さの範囲のアミノ-および/またはカルボキシル-末端融合物および単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体作用因子が挙げられる。抗体作用因子分子の他の挿入性変種として、酵素(例えば、ADEPTの)または抗体作用因子の血清半減期を増大するポリペプチドへの、抗体作用因子のN-またはC-末端への融合が挙げられる。
【0149】
Fc領域変種
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体または抗MUC16Fc融合タンパク質)のFc領域中に1つまたは複数のアミノ酸改変が導入され、それによって、Fc領域変種が生成され得る。一部の実施形態では、Fc領域変種は、増強されたADCCエフェクター機能を有し、Fc受容体(FcR)への結合と関連することが多い。一部の実施形態では、Fc領域変種は低下したADCCエフェクター機能を有する。エフェクター機能を変更し得るFc配列の変化または変異の多数の例がある。例えば、WO00/42072およびShields et al., J Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)には、FcRへの結合が改善または減少された抗体変種が記載されている。それら刊行物の開示内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0150】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)は、腫瘍細胞に対する治療抗体の作用機序である。ADCCは、免疫系のエフェクター細胞が、標的細胞(例えば、がん細胞)を活発に溶解し、その膜表面抗原が特異的抗体(例えば、抗MUC16抗体)によって結合している細胞媒介性免疫防御である。典型的なADCCは抗体によるNK細胞の活性化を含む。NK細胞はFc受容体であるCD16を発現する。この受容体は標的細胞の表面に結合した抗体のFc部分を認識し結合する。NK細胞の表面上の最も一般的なFc受容体はCD16またはFcγRIIIと呼ばれる。抗体のFc領域へのFc受容体の結合は、NK細胞活性化、細胞溶解性顆粒の放出および結果として標的細胞アポトーシスをもたらす。腫瘍細胞死滅へのADCCの寄与は、高親和性FcRでトランスフェクトされているNK-92細胞を使用する特異的試験を用いて測定され得る。結果はFcRを発現しない野生型NK-92細胞に対して比較される。
【0151】
一部の実施形態では、本技術は、一部であるが、すべてではないエフェクター機能を有するFc領域を含み、これによって、in vivoで抗MUC16抗体作用因子の半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(例えば、CDCおよびADCC)は不要であるか、または有害である適用の望ましい候補になる抗MUC16抗体作用因子変種(例えば、全長抗MUC16抗体変種)を企図する。CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認するために、in vitroおよび/またはin vivo細胞傷害性アッセイが実施され得る。例えば、抗体作用因子がFcγR結合(したがって、ADCC活性を欠く可能性が高い)を欠くが、FcRn結合能を保持することを確実にするために、Fc受容体(FcR)結合アッセイが実施され得る。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991)の464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの限定されない例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom, I. et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986)を参照されたい)およびHellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985)、米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987)を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射活性アッセイ法が使用され得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射活性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology、Inc. Mountain View、Calif.およびCytoTox 96(商標)非放射活性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、Wis.)を参照されたい。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞として、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998)において開示されるものなどの動物モデルにおいて評価され得る。抗体作用因子がC1qに結合できず、したがって、CDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合アッセイもまた実施され得る。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402におけるC1qおよびC3c結合性ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイは、実施され得る(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)、Cragg, M. S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003)およびCragg, M. S. and M. J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照されたい)。当技術分野で公知の方法を使用してFcRn結合性およびin vivoクリアランス/半減期決定も実施され得る(例えば、Petkova, S. B. et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006)を参照されたい)。
【0152】
エフェクター機能が低減された抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327および329のうち1個または複数の置換を有するものが含まれる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、残基265および297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうち2つまたはそれより多くに置換を有するFc変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
FcRへの結合が改善または減少されたある特定の抗体作用因子変種が記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照されたい。)
【0153】
一部の実施形態では、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む変種Fc領域を含む抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)変種が提供される。一部の実施形態では、変種Fc領域は、置換が変種Fc領域の298、333、および/または334位においてである(残基のEU番号付け)、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)変種は、その変種Fc領域中に以下のアミノ酸置換:S298A、E333AおよびK334Aを含む。
【0154】
一部の実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642およびIdusogie et al., J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)に記載されるように、変更された(すなわち、改善されたまたは減少されたのいずれか)C1q結合性および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす変更は、Fc領域において行われる。
一部の実施形態では、半減期を増大し、および/または新生児Fc受容体(FcRn)への結合を改善する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む変種Fc領域を含む抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)変種が提供される。半減期が増大され、FcRnへの結合が改善された抗体は、US2005/0014934(Hinton et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する、1つまたは複数の置換を中に有するFc領域を含む。このようなFc変種には、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうち1つまたは複数での置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)を有するものが含まれる。
Fc領域変種の他の例に関するDuncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号およびWO94/29351も参照されたい。
本明細書において記載されたFc変種のいずれかまたはそれらの組合せを含む抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)が企図される。
【0155】
グリコシル化変種
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片は、抗MUC16抗体作用因子がグリコシル化される程度を増大または減少するように変更される。抗MUC16抗体作用因子へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作出または除去されるように、抗MUC16抗体作用因子またはそのポリペプチド部分のアミノ酸配列を変更することによって好都合に達成され得る。
抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片が、Fc領域を含む場合には、それに付着された炭水化物も変更され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、通常、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合によって一般に付着される分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al., TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照されたい。オリゴ糖には種々の炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトースおよびシアル酸および二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに付着したフコースが含まれ得る。一部の実施形態では、ある特定の改善された特性を有する抗MUC16抗体作用因子変種を作出するために、本技術の抗MUC16抗体作用因子におけるオリゴ糖の改変が行われる場合がある。
【0156】
FcのCH2ドメインに付着したN-グリカンは不均一である。CHO細胞において生成された抗体またはFc融合タンパク質は、フコシルトランスフェラーゼ活性によってフコシル化される。Shoji-Hosaka et al., J. Biochem. 140:777- 83 (2006)を参照されたい。普通、ヒト血清において少ないパーセンテージの天然に存在する無フコシル化(afucosylated)IgGが検出され得る。FcのN-グリコシル化は、FcγRへの結合にとって重要であり、N-グリカンの無フコシル化は、FcγRIIIaへのFcの結合能を増大する。増大されたFcγRIIIa結合は、ADCCを増強でき、これは、細胞傷害性が望ましいある特定の抗体作用因子治療適用において有利であり得る。
【0157】
一部の実施形態では、増強されたエフェクター機能は、Fc媒介性細胞傷害性が望ましくない場合有害であり得る。一部の実施形態では、Fc断片またはCH2ドメインは、グリコシル化されない。一部の実施形態では、CH2ドメイン中のN-グリコシル化部位は、グリコシル化から防ぐために変異される。
一部の実施形態では、Fc領域に付着している炭水化物構造が、低減されたフコースを有するか、またはフコースを欠き、それがADCC機能を改善し得るFc領域を含む抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)変種が提供される。具体的には、野生型CHO細胞において産生された同一抗MUC16抗体作用因子上のフコースの量と比較して低減されたフコースを有する抗MUC16抗体作用因子が本明細書において企図される。すなわち、それらは、そうでなければ、天然CHO細胞(例えば、天然グリコシル化パターンを産生するCHO細胞、例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞)によって産生される場合に有するであろうものよりも低量のフコースを有することを特徴とする。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、その上のN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%または5%未満がフコースを含むものである。例えば、このような抗MUC16抗体作用因子中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であり得る。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子は、その上のN結合型グリカンのうちフコースを含むものがない、すなわち、抗MUC16抗体作用因子が完全にフコースを伴わない、またはフコースを有さない、または無フコシル化されているものである。フコースの量は、例えば、WO2008/077546に記載されるようなMALDI-TOF質量分析によって測定されるような、Asn297に付着しているすべての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297とは、Fc領域中の約297位に位置する(Fc領域残基のEU番号付け)アスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における微量な配列変動のために、297位の上流または下流の約±3アミノ酸に、すなわち、294から300位の間に位置する場合もある。このようなフコシル化変種は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開番号US2003/0157108(Presta,L.)、US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.、Ltd)を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体作用因子変種に関連する刊行物の例として、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al., J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004)、Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生可能な細胞系の例として、タンパク質フコシル化を欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al., Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986)、米国特許出願番号US2003/0157108、Presta, LおよびWO2004/056312、Adams et al.,特に実施例11で)およびノックアウト細胞系、例えば、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al., Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)、Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006)およびWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
【0158】
抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)変種には、二分枝オリゴ糖がさらに提供され、例えば、抗MUC16抗体作用因子のFc領域に付着している二分岐オリゴ糖は、GlcNAcによって二分される。このような抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)変種は、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。このような抗体作用因子変種の例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、US2005/0123546(Umana et al.)およびFerrara et al., Biotechnology and Bioengineering, 93(5): 851-861 (2006)に記載されている。Fc領域に付着しているオリゴ糖中に少なくとも1個のガラクトース残基を有する抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)変種も提供される。このような抗MUC16抗体作用因子変種は、改善されたCDC機能を有し得る。このような抗体作用因子変種は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju、S.)およびWO1999/22764(Raju、S.)に記載されている。
一部の実施形態では、Fc領域を含む抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)変種は、FcγRIIIに結合可能である。一部の実施形態では、Fc領域を含む抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)変種は、ヒトエフェクター細胞(例えば、T細胞)の存在下でADCC活性を有するか、またはその他の点では同一の、ヒト野生型IgG1Fc領域を含む抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)と比較して、ヒトエフェクター細胞の存在下で増大されたADCC活性を有する。
【0159】
システイン操作された変種
一部の実施形態では、1個または複数のアミノ酸残基がシステイン残基で置換されている、システイン操作された抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片を作出することが望ましいものであり得る。一部の実施形態では、置換される残基は、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片の到達可能な部位で生じる。それらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基がそれによって抗MUC16抗体作用因子の到達可能な部位に配置され、抗MUC16抗体作用因子を、他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー-薬物部分にコンジュゲートして、本明細書においてさらに記載されるような抗MUC16免疫複合体を作出するために使用され得る。システイン操作された抗MUC16抗体作用因子(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0160】
誘導体
一部の実施形態では、本明細書において提供される抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片は、当技術分野で公知の、容易に利用可能であるさらなる非タンパク質性部分を含有するようにさらに改変され得る。抗MUC16抗体作用因子の誘導体化に適した部分として、それだけには限らないが、水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーの限定されない例として、それだけには限らないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のために製造において利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであってよく、また、分岐していても分岐していなくてもよい。抗MUC16抗体作用因子に付着しているポリマーの数は変わる場合があり、2つ以上のポリマーが付着している場合には、それらは、同一分子である場合も異なる分子である場合もある。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/または種類は、それだけには限らないが、改善されるべき抗MUC16抗体作用因子の特定の特性または機能を含む考慮に基づいて決定することができ、抗MUC16抗体作用因子誘導体は、定義された条件下などで療法において使用される。
【0161】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片と、放射線に対する曝露によって選択的に加熱され得る非タンパク質性部分のコンジュゲートが提供される。一部の実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kam et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 11600-11605 (2005))。放射線は任意の波長のものであってよく、それだけには限らないが、普通の細胞を害さないが、非タンパク質性部分を、抗MUC16抗体作用因子-非タンパク質性部分に近接する細胞が死滅する温度に加熱する波長を含む。
【0162】
抗体コンジュゲート
ある特定の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片コンジュゲートが本明細書において提供され、前記抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、1種または複数の薬剤、例えば、造影剤または細胞傷害性因子にコンジュゲートされる。また、二重特異性抗体コンジュゲートが本明細書において提供され、前記二重特異性抗体は、1種または複数の因子、例えば、造影剤または細胞傷害性因子にコンジュゲートされる。また、抗体重鎖コンジュゲートが本明細書において提供され、前記抗体重鎖は、1種または複数の薬剤、例えば、造影剤または細胞傷害性因子にコンジュゲートされる。また、抗体軽鎖コンジュゲートが本明細書において提供され、前記抗体軽鎖は、1種または複数の薬剤、例えば、造影剤または細胞傷害性因子にコンジュゲートされる。また、融合タンパク質コンジュゲートが本明細書において提供され、前記融合タンパク質は、薬剤、例えば、造影剤または細胞傷害性因子にコンジュゲートされる。ある特定の実施形態では、薬剤は、共有結合によって、または非共有結合によってコンジュゲートされる。
ある特定の実施形態では、造影剤は、検出可能な標識、例えば、発色因子、酵素因子、放射性同位体因子、同位体因子、蛍光因子、毒性因子、化学発光因子、核磁気共鳴造影剤または他の標識である。
【0163】
検出可能な基は、検出可能な物理的または化学的特性を有する任意の材料であり得る。このような検出可能な標識は、イムノアッセイおよびイメージングの分野では十分に開発されている。一般に、このような方法において有用なほとんどの任意の標識は、本技術において適用できる。したがって、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能な任意の組成物である。本技術の実施において有用な標識として、磁性ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射標識(例えば、3H、14C、35S、125I、121I、131I、112In、99mTc)、他の造影剤、例えば、マイクロバブル(超音波イメージングのための)、18F、11C、15O、89Zr、89Zr-DFO(陽電子放射型断層撮影のため)、99mTC、111In(単一光子放射断層撮影のため)、酵素(例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAにおいてよく使用される他のもの)および熱量測定標識、例えば、コロイド金または着色ガラスまたはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズが挙げられる。このような標識の使用を記載する特許として、米国特許第3,817,837号、同3,850,752号、同3,939,350号、同3,996,345号、同4,277,437号、同4,275,149号および同4,366,241号が挙げられ、各々は、その全文で参照により、およびすべての目的のために本明細書に組み込まれるHandbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (6th Ed., Molecular Probes, Inc., Eugene OR.)も参照されたい。
【0164】
標識は、当技術分野で周知の方法に従うアッセイの所望の成分に直接的または間接的につなげることができる。上記で示されるように、多種多様な標識を使用でき、標識の選択は、必要な感度、化合物とのコンジュゲーションの容易さ、安定性必要条件、入手可能な機器および処分規定などの因子に応じて変わる。
適した発色性標識の限定されない例として、ジアミノベンジジンおよび4-ヒドロキシアゾ-ベンゼン-2-カルボン酸が挙げられる。
適した酵素標識の限定されない例として、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母-アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロールホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0165】
適した放射性同位体は、当業者には周知であり、ベータ-放射体、ガンマ-放射体、ポジトロン-放射体およびX線放射体が挙げられる。適した放射性同位体性標識の限定されない例として、3H、18F、111In、125I、131I、32P、33P、35S、11C、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、223Ra、223Ra、89Zr、177Luおよび109Pdが挙げられる。ある特定の実施形態では、111Inは、肝臓における125Iまたは131I標識抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片の脱ハロゲン化の問題を避けるのでin vivoイメージングのための好ましい同位体である。さらに、111Inは、イメージングのためのより都合のよいガンマ放出エネルギーを有する(Perkins et al, Eur. J. Nucl. Med. 70:296-301 (1985)、Carasquillo et al., J. Nucl. Med. 25:281-287 (1987))。例えば、1-(P-イソチオシアナトベンジル)-DPTAを用いてモノクローナル抗体につなげられた111Inは、非腫瘍性組織、特に、肝臓では取り込みをほとんど示さず、したがって、腫瘍局在性の特異性を増強する(Esteban et al., J. Nucl. Med. 28:861-870 (1987))。
【0166】
適した非放射性同位体標識の限定されない例として、157Gd、55Mn、162Dy、52Trおよび56Feが挙げられる。
適した蛍光標識の限定されない例として、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、緑色蛍光タンパク質(GFP)標識、o-フタルデヒド標識およびフルオレサミン標識が挙げられる。
化学発光性標識の限定されない例として、ルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、オキサレートエステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識およびエクオリン標識が挙げられる。
【0167】
核磁気共鳴造影剤の限定されない例として、重金属核、例えば、Gd、Mnおよび鉄が挙げられる。
上記の標識を、前記抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖および融合タンパク質にコンジュゲートするための当業者に公知の技術は、例えば、Kennedy et al., Clin. CMm. Acta 70: 1-31 (1976)およびSchurs et al, Clin. CMm. Acta 81: 1-40 (1977)に記載されている。後に記載されるカップリング技術として、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸法、ジマレイミド法、m-マレイミドベンジル-N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル法があり、それらの方法のすべては、参照により本明細書に組み込まれる。
細胞傷害性因子の限定されない例として、細胞分裂停止または細胞破壊剤、放射性金属イオン、例えば、アルファ-放射体および毒素、例えば、シュードモナス外毒素、アブリン、コレラ毒素、リシンAおよびジフテリア毒素が挙げられる。
【0168】
ある特定の実施形態では、薬剤は診断剤である。診断剤は、抗原を含有する細胞を位置付けることによって疾患を診断または検出することにおいて有用な薬剤である。有用な診断剤として、それだけには限らないが、放射性同位体、色素(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を用いる)、造影剤、蛍光化合物または分子および磁気共鳴イメージング(MRI)のための増強剤(例えば、常磁性イオン)が挙げられる。米国特許第6,331,175号には、MRI技術およびMRI増強剤にコンジュゲートされた抗体の調製が記載されており、参照によりその全文が組み込まれる。好ましくは、診断剤は、放射性同位体、磁気共鳴イメージングにおいて使用するための増強剤および蛍光化合物からなる群から選択される。抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片に、放射性金属または常磁性イオンを負荷するために、それを、イオンを結合するための多様なキレート化基が付着している長い尾部を有する試薬と反応させることが必要であり得る。このような尾部は、ポリリシン、多糖などのポリマー、または例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス-チオセミカルバゾン、ポリオキシムおよびこの目的のために有用であると公知の同様の基などのキレート化基が結合し得るペンダント基を有する他の誘導体化もしくは誘導可能な鎖であり得る。キレートは、標準化学を使用して抗体につなげられる。キレートは、普通、免疫反応性の最小の喪失および最小の凝集しか伴わずに、分子への結合の形成を可能にする基によって抗体に連結され、および/またはキレートを抗体にコンジュゲートするための内部架橋する他のより普通ではない方法および試薬は、1989年4月25日に発行された「Antibody Conjugates」と題されたHawthorneの米国特許第4,824,659号に開示されており、その開示内容は、参照によりその全文で本明細書に組み込まれる。特に有用な金属-キレート組合せは、2-ベンジル-DTPAおよびそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体を含み、ラジオイメージングのために診断用同位体とともに使用される。同一キレートは、非放射性金属、例えば、マンガン、鉄およびガドリニウムと複合体形成されると、本明細書において提供される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片とともに使用される場合に、MRIにとって有用である。
【0169】
大環状キレート、例えば、NOTA、DOTAおよびTETAは、さまざまな金属および放射性金属と、最も特には、それぞれ、ガリウム、イットリウムおよび銅の放射性核種と併用すると有益である。このような金属-キレート複合体は、環の大きさを目的の金属に合わせて調整することによって極めて安定にすることができる。RAITのための核種、例えば、223Raを安定に結合するための他の環状キレート、例えば、目的の大環状ポリエーテルが本明細書に包含される。
【0170】
医薬組成物
また、抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片、抗体作用因子をコードする核酸、抗体作用因子をコードする核酸を含むベクターまたは核酸もしくはベクターを含む宿主細胞を含む組成物(例えば医薬組成物、本明細書において処方物とも呼ばれる)が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子および、任意的に、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0171】
抗MUC16抗体作用因子(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片の適した処方物は、所望の程度の純度を有する抗MUC16抗体作用因子を、任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤と混合することによって凍結乾燥処方物または水溶液の形態で得られる(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、バッファー、例えば、リン酸、クエン酸および他の有機酸、アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質、保存料(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、ヘキサメトニウムクロリド、塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール、アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾール)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン、親水性ポリマー、例えば、オリビニルピロリドン、アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン、単糖、二糖およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物、キレート化剤、例えば、EDTA、糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール、塩形成性対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体)および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。例示的処方物は、参照により本明細書に明確に組み込まれるWO98/56418に記載されている。皮下投与に適応している凍結乾燥処方物は、WO97/04801に記載されている。このような凍結乾燥処方物は、適した希釈剤で高タンパク質濃度に再構成することができ、再構成された処方物を本明細書において治療されるべき個体に皮下に投与できる。リポフェクチンまたはリポソームを使用して、本技術の抗MUC16抗体作用因子を細胞中に送達できる。
【0172】
本明細書における処方物はまた、処置されている特定の適応症のために必要に応じて、抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片に加えて1種または複数の活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない補完的活性を有するものを含有し得る。例えば、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片に加えて、抗新生物剤、成長阻害剤、細胞傷害性因子または化学療法剤をさらに提供することが望ましい場合がある。このような分子は、意図される目的のために有効である量で組合せ中に適宜存在する。このような他の薬剤の有効量は、処方物中に存在する抗MUC16抗体作用因子の量、疾患または障害または治療の種類および上記で論じられた他の因子に応じて変わる。これらは、一般に、本明細書において記載されるものと同一の投与量で、および投与経路を用いて、または従来使用された投与量の約1~99%で使用される。
抗MUC16抗体作用因子(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片はまた、それぞれ、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド性薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に捕捉され得る。徐放性調製物も調製することができる。
【0173】
抗MUC16抗体作用因子(例えば、抗MUC16抗体、例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片の徐放性調製物を調製できる。徐放性調製物の適した例として、抗体作用因子(またはその断片)を含有する固体疎水性ポリマーの半透明マトリックスがあり、マトリックスは、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドから構成される注射用ミクロスフェア)およびポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。ポリマー、例えば、エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸は、100日にわたる分子の放出を可能にするが、ある特定のヒドロゲルは、タンパク質をより短い期間の間放出する。被包された抗体作用因子が長期間身体中にとどまる場合、37℃で水分に対する曝露の結果として、それらは変性または凝集する場合があり、結果として、生物活性が喪失し、免疫原性が変化する可能性がある。関与する機序に応じて抗MUC16抗体作用因子の安定化のために合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機序が、チオ-ジスルフィド相互交換による分子間S-S結合形成であると発見される場合には、安定化は、スルフヒドリル残基を改変すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分含量を制御すること、適当な添加物を使用すること、および特定のポリマーマトリックス組成物を開発することによって達成され得る。
【0174】
一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)またはその抗原結合性断片は、クエン酸、NaCl、酢酸、コハク酸、グリシン、ポリソルベート80(Tween 80)または前記のものの任意の組合せを含むバッファー中で処方物化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、約100mM~約150mMグリシンを含むバッファー中で処方物化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、約50mM~約100mM NaClを含むバッファー中で処方物化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、約10mM~約50mM酢酸を含むバッファー中で処方物化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、約10mM~約50mMコハク酸を含むバッファー中で処方物化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、約0.005%~約0.02%ポリソルベート80を含むバッファー中で処方物化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、約5.1~5.6の間のpHを有するバッファー中で処方物化される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、10mMクエン酸、100mM NaCl、100mMグリシンおよび0.01%ポリソルベート80を含むバッファー中で処方物化され、処方物は、pH5.5である。
in vivo投与のために使用されるべき処方物は、無菌でなくてはならない。これは、例えば、無菌濾過膜を通した濾過によって容易に達成される。
【0175】
抗MUC16抗体作用因子を使用して処置する方法
ある特定の実施形態では、対象においてがんを、特に、対象においてMUC16陽性がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片の治療上有効量を投与することを含む方法が本明細書において提供される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、治療上有効用量、例えば、本明細書において記載される用量で投与される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、本明細書において記載されるような方法に従って投与される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、1種または複数のさらなる薬学的に活性な薬剤と組み合わせて投与される。
特定の種の対象における抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片の使用のために、その特定の種のMUC16に結合する抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片が使用される。例えば、ヒトを治療するために、ヒトMUC16に結合する抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片が使用される。一部の実施形態では、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は免疫グロブリンである。
【0176】
さらに、特定の種の対象における抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片の使用のために、抗MUC16抗体作用因子、好ましくは、抗MUC16抗体作用因子の定常領域またはその抗原結合性断片は、その特定の種に由来する。例えば、ヒトを治療するために、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、免疫グロブリンである抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片を含むことができ、免疫グロブリンはヒト定常領域を含む。一部の実施形態では対象はヒトである。
一部の実施形態では、MUC16陽性がんは、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がん、原発腹膜がんまたはMUC16受容体を発現する任意の他の組織のがんである。
【0177】
一部の実施形態では、治療は、それだけには限らないが、検出可能または検出不能に関わらず、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の状態を安定化すること(すなわち、悪化させないこと)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の寛解または緩和および緩解(部分または完全に関わらず)を含む有益な、または所望の臨床結果を達成することであり得る。特定の実施形態では、「治療」はまた、治療を受けていない場合に予測される生存と比較して、生存を延長することであり得る。一部の実施形態では、がん(例えば、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がんまたは原発腹膜がんまたはMUC16受容体を発現する任意の他の組織のがん)を有する対象への、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子もしくはその抗原結合性断片または本明細書において記載される医薬組成物の投与は、以下の効果のうち少なくとも1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多くを達成する:(i)がんの1つまたは複数の症状の重症度の低減または寛解、(ii)がんと関連する1つまたは複数の症状の期間の低減、(iii)がんと関連する症状の再発の防止、(iv)対象の入院の低減、(v)入院の長さの低減、(vi)対象の生存の増大、(vii)別の療法の治療効果の増強または改善、(viii)がんと関連する1つまたは複数の症状の発生または発症の阻害、(ix)がんと関連する症状の数の低減、(x)当技術分野で周知の方法によって評価されるような生活の質の改善、(x)腫瘍の再発の阻害、(xi)腫瘍および/またはそれと関連する1つもしくは複数の症状の退縮、(xii)腫瘍および/またはそれと関連する1つもしくは複数の症状の進行の阻害、(xiii)腫瘍の成長の低減、(xiv)腫瘍の大きさ(例えば、体積または直径)の減少、(xv)新規に形成される腫瘍の形成の低減、(xvi)原発性、局所性および/または転移性腫瘍の予防、根絶、除去または管理、(xvii)転移の数または大きさの減少、(xviii)死亡率の低減、(xix)無再発生存期間の増大、(xx)腫瘍の大きさが維持され、増大しないか、または当業者にとって利用可能な従来法、例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)、ダイナミックコントラスト強調MRI(DCE-MRI)、X線およびコンピューター断層撮影(CT)スキャンまたは陽電子放射型断層撮影(PET)スキャンによって測定されるような標準療法の投与後の腫瘍の増大よりも少なく増大する、および/または(xxi)患者における緩解の長さの増大。治療は、前記のうち1つまたは複数を達成することであり得る。
【0178】
本明細書において提供される方法に従って治療される対象は、任意の哺乳動物、例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、霊長類またはヒトなどであり得る。一部の実施形態では対象はヒトである。一部の実施形態では、対象はイヌである。本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は同義的に使用される。
ある特定の実施形態では、本明細書において提供される方法に従って治療される対象は、それだけには限らないが、卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管または原発腹膜がんまたはMUC16を発現する任意の他の組織のがんを含む、MUC16陽性がんを有すると診断されている。
【0179】
診断的使用
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、本明細書において記載される状態(例えば、MUC16陽性がん細胞が関与する状態)を検出、診断またはモニタリングする診断目的で使用され得る。ある特定の実施形態では、診断目的で使用するための抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、標識される。
【0180】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される状態を検出する方法であって、(a)本明細書において記載される1種または複数の抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片を使用して対象の細胞または組織試料においてMUC16またはその断片の発現をアッセイすること、および(b)MUC16またはその断片の発現のレベルを、対照レベル、例えば、正常組織試料(例えば、本明細書において記載される状態を有さない対象から得た、または状態の発症の前の同一患者から得た)におけるレベルと比較することを含み、それによって、MUC16またはその断片の発現の対照レベルと比較したMUC16またはその断片の発現のアッセイされたレベルの増大または減少が、本明細書において記載される状態の指標となる方法が本明細書において提供される。
【0181】
本明細書において記載される抗体は、本明細書において記載されるような、または当業者に公知のような(例えば、Jalkanen et al., J. Cell. Biol. 101: 976-985 (1985)およびJalkanen et al., J. Cell. Biol. 105:3087-3096 (1987)を参照されたい)古典的免疫組織学的方法を使用して生体試料においてMUC16またはその断片のレベルをアッセイするために使用され得る。タンパク質遺伝子発現を検出するのに有用な他の抗体ベース法として、イムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。適した抗体アッセイ標識は、当技術分野で公知であり、酵素標識、例えば、グルコースオキシダーゼ、放射性同位体、例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)およびテクネチウム(99Tc)、発光標識、例えば、ルミノールおよび蛍光標識、例えば、フルオレセインおよびローダミンおよびビオチンを含む。一部の実施形態では、アッセイ標識は、直接検出のために本明細書において提供される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アッセイ標識は、本明細書において提供される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片に結合する二次抗体にコンジュゲートされる。二次抗体の種類は、一次抗体(例えば、IgGまたはIgM)のクラス、供給源宿主および好ましい標識の種類に従って選択される。一部の実施形態では、二次抗体はクラス特異的またはアイソタイプ特異的抗体(例えば、IgG、IgM、IgA、IgEまたはIgG)である。一部の実施形態では、二次抗体はサブクラス特異的抗体(例えば、IgG1、IgG2、IgG2、IgG4、IgA1またはIgA2)である。一部の実施形態では、二次抗体は、抗体の1つまたは複数のクラスまたはサブクラスに結合する。一部の実施形態では、二次抗体は一次抗体の重鎖に結合する。一部の実施形態では、二次抗体は一次抗体の軽鎖に結合する。一部の実施形態では、二次抗体は一次抗体のカッパ軽鎖に結合する。一部の実施形態では、二次抗体は一次抗体のラムダ軽鎖に結合する。一部の実施形態では、二次抗体は抗Fcまたは抗F(ab)または抗(Fab’)2断片抗体である。一部の実施形態では、二次抗体は、ウサギ、マウス、ヤギ、ロバまたはニワトリ抗体である。
【0182】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される状態(例えば、MUC16陽性がん)のモニタリングは、最初の診断後一定期間、診断法を反復することによって実施される。
標識された分子の存在は、in vivoスキャニングのための当技術分野で公知の方法を使用して対象において(すなわち、in vivoで)検出され得る。当業者ならば、特定の標識を検出するのに適当な方法を決定できるであろう。本技術の診断方法において使用され得る方法およびデバイスとして、それだけには限らないが、コンピューター断層撮影法(CT)、全身スキャン、例えば、ポジトロン断層撮影法(PET)、磁気共鳴イメージング法(MRI)および超音波検査が挙げられる。
また、in vivoで対象においてがんを検出する方法であって、(a)対象に本明細書において開示される抗MUC16構築物のいずれかの有効量を投与するステップであって、抗MUC16構築物がMUC16を発現するがん細胞に局在するように構成され、放射性同位元素で標識される、前記ステップ、および(b)参照値よりも高い、抗MUC16構築物によって放射される放射活性レベルを検出することによって対象における腫瘍の存在を検出するステップであって、放射性同位元素が89Zr-デスフェリオキサミンB(DFO)であってもよい、前記ステップ、を含む方法が本明細書において開示される。一部の実施形態では、対象は、がんを有すると診断されるか、または有する疑いがある。さらにまたはあるいは、一部の実施形態では、抗MUC16構築物によって放射された放射活性レベルは陽電子放射型断層撮影法または単一光子放射コンピューター断層撮影法を使用して検出される。前記の実施形態のいずれかでは、本方法は対象に放射性核種にコンジュゲートされた本技術の抗MUC16構築物を含む免疫複合体の有効量を投与するステップをさらに含む。放射性核種は、アルファ粒子放射性同位元素、ベータ粒子放射性同位元素、オージェ放射体またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0183】
抗MUC16抗体作用因子の送達
本明細書において記載されるような抗MUC16抗体作用因子もしくはその抗原結合性断片または本明細書において記載される抗体もしくはその抗原結合性断片を含有する組成物またはそれを発現する細胞はさまざまな経路によって対象に送達され得る。これらとして、それだけには限らないが、非経口、鼻腔内、気管内、経口、皮内、局所、筋肉内、腹腔内、経皮、静脈内、腫瘍内、結膜および皮下経路が挙げられる。例えば、吸入器または噴霧器およびスプレーとして使用するためのエアロゾル化剤を有する処方物の使用によって肺投与も使用され得る。一実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片または組成物は対象に非経口的に投与される。一部の実施形態では、前記非経口投与は静脈内、筋肉内または皮下投与である。
【0184】
状態の治療および/または予防において有効であるであろう、抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片または組成物の量は、疾患の性質に応じて変わり、標準臨床技術によって決定され得る。
組成物中に使用されるべき正確な用量はまた、投与経路およびがんの種類に応じて変わり、医師の判断および各対象の状況に従って決定されるべきである。例えば、有効用量はまた、投与の手段、標的部位、患者がヒトであるか、もしくは動物であるかに関わらず、患者の生理学的状態(年齢、体重および健康状態を含む)、処置が予防的であるか、もしくは治療的であるかに関わらず、投与される他の薬物適用に応じて変わり得る。処置投与量は、安全性および有効性を最適化するように最適に用量設定される。
【0185】
ある特定の実施形態では、最適投与量範囲を同定するのに役立つようにin vitroアッセイが使用される。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から導かれた用量応答曲線から推定され得る。
抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片について、投与量は、約0.0001~100mg/患者の体重1kg、より普通は、0.01~15mg/患者の体重1kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/体重1kg、10mg/体重1kgまたは1~10mg/kgの範囲内、または言い換えれば、70kgの患者に対して、それぞれ、70mgまたは700mgまたは70~700mgの範囲内であり得る。一般に、ヒト抗体は、ヒト身体内で、外来ポリペプチドに対する免疫応答のために他の種に由来する抗体よりも長い半減期を有する。したがって、ヒト抗体のより少ない投与量およびより少ない頻度の投与が可能であることが多い。
【0186】
ある特定の実施形態では、例えば、抗体またはその抗原結合性断片またはCARを発現する操作された細胞の投与では、対象は、約100万個~約1000億個の細胞、例えば、100万個~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞または前記の値のうち任意の2つによって定義される範囲)など、約1000万個~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞または前記の値のうち任意の2つによって定義される範囲)など、一部の場合には、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値の範囲で対象に投与される。一部の実施形態では、総細胞の用量および/または個々の小集団の細胞の用量は、104または約104~109または約109個細胞/1キログラム(kg)体重の間、例えば、105~106個細胞/体重1kgの間の範囲内、例えば、1×105または約1×105個細胞/kg、1.5×105個細胞/kg、2×105個細胞/kgまたは1×106個細胞/kg、2×106個細胞/kg、5×106個細胞/kgまたは10×106個細胞/体重1kgである。例えば、一部の実施形態では、細胞は、104または約104~109または約109個のT細胞/体重1キログラム(kg)の間、例えば、105~107個のT細胞/体重1kgの間で、またはその誤差のある特定の範囲内で投与される。
抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、複数の機会で投与され得る。単一投与量の間の間隔は、1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、1年または2年であり得る。
【0187】
併用療法
一部の実施形態では、対象においてがん(例えば、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がんまたは原発腹膜がん)を処置するための本明細書において提供される方法であって、それを必要とする対象に、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を投与することを含む方法は、対象に1種または複数のさらなる治療剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、さらなる治療剤は、対象においてがん(例えば、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がんおよび原発腹膜がん)を処置するためのものである。一部の実施形態では、さらなる治療剤は、処置の任意の副作用を本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片を用いて処置するためのものである。
【0188】
一部の実施形態では、さらなる薬剤は、卵巣がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、膵臓がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、肺がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、乳がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、卵管がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、子宮(例えば、子宮内膜)がんを処置するために使用される薬剤である。一部の実施形態では、さらなる薬剤は、原発腹膜がんを処置するために使用される薬剤である。
【0189】
本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片は、さらなる治療剤とともに同時に、または逐次的に投与され得る(前および/または後)。抗体またはその抗原結合性断片およびさらなる治療剤は、同一または異なる組成物中で、同一または異なる投与経路によって投与され得る。第1の療法(本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片、またはさらなる治療剤である)は、第2の療法(本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片またはさらなる治療剤)の、がん(例えば、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がんおよび原発腹膜がん)を有する対象への投与の前に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間または12週間前)、それと同時に、またはその後に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間または12週間後)投与され得る。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片と組み合わせて対象に投与されるさらなる治療剤は、同一組成物(医薬組成物)中で投与される。他の実施形態では、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片と組み合わせて投与されるさらなる治療剤は、対象に、本明細書において記載される抗MUC16抗体作用因子またはその抗原結合性断片とは異なる組成物中で投与される(例えば、2種またはそれより多い医薬組成物が使用される)。
【0190】
製造品およびキット
本技術の一部の実施形態では、高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置にとって、または抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)を、MUC16をその表面に発現する細胞に送達するのに有用な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、容器および容器上のもしくは容器に付随するラベルまたは添付文書を含み得る。適した容器として、例えば、ビン、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、さまざまな材料、例えば、ガラスまたはプラスチックから形成され得る。一般に、容器は、本明細書において記載される疾患または障害を処置するために有効である組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能な栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1種の活性薬剤は、本技術の抗MUC16抗体作用因子である。ラベルまたは添付文書は、組成物が特定の状態を処置するために使用されることを示す。ラベルまたは添付文書は、抗MUC16抗体作用因子組成物を患者に投与するための使用説明書をさらに含む。本明細書において記載されるコンビナトリアル療法を含む製造品およびキットも企図される。
【0191】
添付文書とは、このような治療製品の使用に関する適応症、用法、投与量、投与、禁忌症および/または警告についての情報を含有する治療製品の市販のパッケージ中に習慣的に含まれる使用説明書を指す。一部の実施形態では、添付文書は、組成物が、がん(例えば、HCC、黒色腫、肺扁平上皮癌、卵巣癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、神経芽細胞腫、胆芽腫、ウィルムス腫瘍、精巣非セミノーマ生殖細胞腫瘍、胃癌または脂肪肉腫)を処置するために使用されることを示す。
さらに、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば、静菌性注射水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに含み得る。他のバッファー、希釈剤、フィルター、針およびシリンジを含む、商業的およびユーザー観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0192】
種々の目的のために、例えば、高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、または抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)を、任意に製造品と組み合わせて、MUC16をその表面上に発現する細胞に送達するために有用であるキットもまた提供される。本技術のキットは、抗MUC16抗体作用因子組成物(または単位投与形および/または製造品)を含む1つまたは複数の容器を含み、一部の実施形態では、別の薬剤(例えば、本明細書において記載される薬剤)および/または本明細書において記載される方法のいずれかに従って使用するための使用説明書をさらに含む。キットは、処置に適した個体の選択の説明をさらに含み得る。本技術のキット中に供給される使用説明書は、通常、ラベルまたは添付文書上の書面の使用説明書(例えば、キット中に含まれる紙のシート)であるが、機械によって読み取り可能な使用説明書(例えば、磁気または光学保存ディスク上に保持される使用説明書)も許容される。
【0193】
例えば、一部の実施形態では、キットは、抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)を含む組成物を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体作用因子を含む組成物およびb)有効量の少なくとも1種の他の薬剤であって、抗MUC16抗体作用因子の効果(例えば、処置効果、検出効果)を増強する他の薬剤を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体作用因子を含む組成物およびb)高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、抗MUC16抗体作用因子組成物を個体に投与するための使用説明書を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体作用因子を含む組成物、b)有効量の少なくとも1種の他の薬剤であって、抗MUC16抗体作用因子の効果(例えば、処置効果、検出効果)を増強する他の薬剤およびc)高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、抗MUC16抗体作用因子組成物および他の薬剤を個体に投与するための使用説明書を含む。抗MUC16抗体作用因子および他の薬剤は、別々の容器中に存在する場合も、単一容器中に存在する場合もある。例えば、キットは、1種の別個の組成物を含む場合もあり、1種の組成物が、抗MUC16抗体作用因子を含み、別の組成物が、別の薬剤を含む2種またはそれより多い組成物を含む場合もある。
【0194】
一部の実施形態では、キットは、抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)をコードする核酸(または核酸のセット)を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体作用因子をコードする核酸(または核酸のセット)およびb)核酸(または核酸のセット)を発現するための宿主細胞を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体作用因子をコードする核酸(または核酸のセット)およびb)i)宿主細胞において抗MUC16抗体作用因子を発現させる、ii)抗MUC16抗体作用因子を含む組成物を調製する、およびiii)高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、抗MUC16抗体作用因子を含む組成物を個体に投与するための使用説明書を含む。一部の実施形態では、キットは、a)抗MUC16抗体作用因子をコードする核酸(または核酸のセット)、b)核酸(または核酸のセット)を発現するための宿主細胞およびc)i)宿主細胞において抗MUC16抗体作用因子を発現させる、ii)抗MUC16抗体作用因子を含む組成物を調製する、およびiii)高MUC16発現および/または高い好気的解糖を特徴とするがん(例えば、腎臓がん、子宮頸がんまたは前立腺がん)の処置のために、抗MUC16抗体作用因子を含む組成物を個体に投与するための使用説明書を含む。
また、本技術の抗MUC16構築物、マウス抗MUC16抗体またはその抗原結合性断片および使用のための説明書を含むキットが本明細書において開示され、マウス抗MUC16抗体または抗原結合性断片は、(a)それぞれ配列番号17、18および19の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖およびそれぞれ配列番号14、15および16の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖または(b)それぞれ配列番号35、36および37の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖、およびそれぞれ配列番号32、33および34の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖を含む。マウス抗MUC16抗体または抗原結合性断片(例えば、US9,169,328に記載されるもの)は、抗MUC16構築物を用いる処置に対して応答性である患者を同定するために使用され得る。一部の実施形態では、マウス抗MUC16抗体または抗原結合性断片はウエスタンブロッティング、免疫組織化学、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫沈降または免疫電気泳動によって患者から得た試料においてMUC16を発現する腫瘍を検出するために使用される。
【0195】
本技術のキットは、適したパッケージング中にある。適したパッケージングとして、それだけには限らないが、バイアル、ビン、ジャー、柔軟なパッケージング(例えば、密閉されたMylarまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。キットは、さらなる構成成分、例えば、バッファーおよび解釈情報を提供してもよい。本出願はまた、したがって、製造品を提供し、これとして、バイアル(例えば、密閉バイアル)、ビン、ジャー、柔軟なパッケージングなどが挙げられる。
【0196】
抗MUC16抗体作用因子組成物の使用に関する使用説明書は、一般に、意図される処置のための投与量、投薬スケジュールおよび投与経路についての情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)または部分単位用量であり得る。例えば、個体の有効処置を長期間、例えば、1週間、8日、9日、10日、11日、12日、13日、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3カ月、4カ月、5カ月、7カ月、8カ月、9カ月またはそれより長くのうちいずれかの間、提供するために、本明細書において開示されるような抗MUC16抗体作用因子(例えば、全長抗MUC16抗体)の十分な投与量を含有するキットが提供され得る。キットはまた、抗MUC16抗体作用因子および医薬組成物の複数回単位用量および使用のための使用説明書および薬局、例えば、病院薬局および調剤薬局において保管および使用するのに十分な量にパッケージングされたものを含み得る。
当業者ならば、本技術の範囲および趣旨内でいくつかの実施形態があり得るということは認識するであろう。本技術を、ここで、以下の限定されない例を参照することによってより詳細に説明する。以下の実施例は、本技術をさらに例示するが、もちろん、決して、その範囲を制限すると解釈されてはならない。
【実施例
【0197】
本技術を以下の実施例によってさらに例示するが、これは、いかなる意味でも限定と解してはならない。以下の実施例は、本技術の例示的抗MUC16抗体の調製、特性決定および使用を実証する。以下の実施例は、本技術のヒトおよび二重特異性抗体の生成およびそれらの結合特異性およびin vivo生物活性の特性決定を実証する。
(実施例1)
MUC16のカルボキシ末端への抗体結合のin vitro特性決定
マウスモノクローナル抗体は、MUC16カルボキシ末端のエクトドメイン(膜近傍)部分中のペプチド配列(「ペプチド-2」と本明細書において呼ばれる)に対して以前に開発された。この実施例は、MUC16への差次的結合を示したこれらのマウスモノクローナル抗体のうち6種の試験を記載する。研究の目的は、ヒト化およびクリニックにおける翻訳の可能性にとって最良の抗体候補を同定することであった。研究は3相に分けられた。第1相では、6種の抗体を、比較in vitroスクリーニングプロセスの結果に基づいて評価した。研究のこの相の目的は、以下の3つのパラメータ:1)抗体のバイオコンジュゲーションへの従順さ、2)放射化学収率およびモル活性を含む抗体の放射標識の結果、および3)免疫反応性割合の決定、飽和結合および細胞内部移行を含む、細胞ベースのアッセイにおける放射性免疫複合体の性能、に基づいてin vivo分析のための2種のリード候補を選択することであった。
【0198】
研究の第2相では、in vitroスクリーニングプロセスから同定された2種のリード候補のin vivo腫瘍標的化および放射性薬理学的プロファイルを評価した(実施例2を参照されたい)。
【0199】
最後に、研究の第3相では、先行する相から同定されたリードMUC16カルボキシ末端結合性抗体のヒト化を実施した。次いで、ヒト化変種を、そのin vivo腫瘍標的化および放射性薬理学的プロファイルについて評価した(実施例3を参照されたい)。
【0200】
この研究において選択された抗体のうち3種、9C9、4H11および4A5は、そのそれぞれのハイブリドーマの培養物から得た上清を用いる酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ヒトFc抗体ドメインに融合されたエクトドメインMUC16カルボキシ末端の58個のアミノ酸残基を含有する精製組換えpFUSE MUC16c114を用いるウエスタンブロッティング、MUC16を発現するOVCAR3細胞を用いるフローサイトメトリー分析および飽和結合アッセイを含む種々の分析方法を使用して、MUC16カルボキシ末端への頑強な、高親和性結合をこれまでに実証していた。2種の他の抗体、4C7および29G9は、ELISAおよびウエスタンブロット分析によってMUC16への結合を示した。最後の抗体、4A2はELISAのみにおいて陽性を示した。
【0201】
その物理的(減衰)半減期(t1/2=72.4時間)を含む89Zrの理想的な特徴は、抗体による腫瘍標的化の生物学的半減期およびin vivo薬物動態と、内部移行後細胞内に残留させるその能力と組み合わせて、十分に対応し、このために、89Zrは、種々のMUC16カルボキシ末端結合性抗体を放射標識するための、およびそのin vitroおよびin vivo放射性薬理学的プロファイルを評価するための最適な同位体となった。89Zrは、89Y(p,n)89Zr反応によってTR19/9サイクロトロン(Ebco Industries Inc.)でMemorial Sloan Kettering Cancer Centerにて製造され、精製されて、196~496MBq/mgの比活性を有する89Zrを得た。活性測定は、CRC-15R Dose Calibrator (Capintec)を使用して行った。活性の定量化のために、試料をAutomatic Wizardガンマカウンター(Perkin Elmer)でカウントした。即時薄層クロマトグラフィー紙(Agilent Technologies)を使用してリガンドの放射標識をモニタリングし、Winscan Radio-TLCソフトウェア(Bioscan Inc.)を使用してBioscan AR-2000 radio-ITLCプレートリーダーで分析した。
【0202】
89Zrを用いて抗体を放射標識するために、デスフェリオキサミンのイソチオシアネート官能化変種(p-SCN-Bn-DFO)をコンジュゲートして、同一反応条件を使用して6種の抗体すべてのDFO-免疫複合体を生成した。目的は、二官能性キレート剤のリシン残基上のイプシロン-アミン(抗体の構造中に無作為に分布している)とのバイオコンジュゲーションを促進することである。手短には、抗体を、2~3mg/mLの平均濃度でクエン酸バッファー(25mMクエン酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム)に懸濁した。抗体を、キレックス処置PBSを用いて予め平衡化した使い捨てのSephadex G-25 PD10脱塩カラム(17085101;GE Healthcare、Life Sciences)を使用してバッファー交換し、50,000分子量カットオフを有する遠心フィルターユニット(Amicon Ultra 4 Centrifugal Filtration Units、Millipore)を使用して濃縮して12~15mg/mLの最終濃度を得た。抗体溶液のpHは、0.1M Na2CO3を使用して8.5~9.0に調整した。その後、10モル当量のイソチオシアネート-デスフェリオキサミン(p-SCN-Bn-DFO)(B-705;Macrocyclics、Inc.)を、10mg/mLの濃度でDMSO(41640; Sigma Aldrich)に溶解した。反応物を、500rpmに設定したサーモミキサー上で37℃で1時間をインキュベートした。DFOがコンジュゲートされた抗体を上記のようにPD10脱塩カラムを使用して精製し、遠心フィルターユニットを使用して濃縮した。
【0203】
89Zrは、MSKCCのRadiochemistry and Molecular Imaging Probesコアによって、1Mシュウ酸に溶解された[89Zr]Zr-オキサレートとして提供された。溶液を1M炭酸ナトリウムを用いて中和して、pH約7に達した。キレックス処置PBS pH7.4に溶解した各免疫複合体を、中和された89Zrとともに37℃で1時間インキュベートした。放射標識の進行を、0.5μLの粗反応混合物をシリカゲル含浸ガラス-マイクロファイバーペーパーストリップ(iTLC-SG;Varian)上にスポットすることによって放射即時薄層クロマトグラフィー(放射-ITLC)介してモニタリングし、移動相のための溶媒として50mM EDTA pH5.5を使用してITLCスキャナー(AR-2000;Bioscan Inc.)で分析した。ITLCの際、89Zr標識された放射性免疫複合体である複合体は開始点のままであったが、遊離89Zrは移動相中のEDTAによって取り込まれ、溶媒フロントとともに移動した。粗放射化学収率は、放射-ITLCデータを使用して算出した。次いで、PD10脱塩カラムを使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって89Zr-放射性免疫複合体を精製し、続いて遠心濾過して、最終容量を濃縮して、トレーサー用量を準備した。精製された放射性免疫複合体の放射化学純度を放射-ITLCによって確認し、その後、動物実験のためにそれらを使用した。
【0204】
血清安定性を決定するために、各放射性免疫複合体100μLを、ヒト血清(H4522;Sigma Aldrich)900μLとともにインキュベートし、37℃に設定したサーモミキサーで一定に撹拌した。0、1、3、5および7日目に、各微量遠心管から試料を採取し、放射-ITLCによって分析した。すべての試料を3連で分析した。放射性免疫複合体の血清安定性を、放射-ITLCストリップの開始点に保持された89Zrのパーセンテージとして測定し、未変化%として報告した。
【0205】
89Zr-DFO-抗体の免疫反応性割合は、Lindmo et al. (1984) J Immunol Methods 72:77-89)によって記載された手順に従って改変細胞結合アッセイを使用して決定した。この目的のために、微量遠心管中で、SKOV3c114細胞を、500μLの1% BSAを補給したPBS(pH7.4)に5.0×105~5.0×106個細胞/mLの範囲の濃度で懸濁した。種々の放射性免疫複合体のアリコート-1μCi/mLストック50μLを各管に添加し、その後、管あたりの細胞および放射性免疫複合体の最終容量を500μLとした。試料を37℃および500rpmに設定したサーモミキサーで60分間インキュベートした。次いで、処置した細胞を遠心分離(1400rpmで4分間)によってペレットにし、上清を吸引除去し、ペレットを氷冷PBSを用いて3回洗浄し、その後、上清を除去し、細胞ペレットと関連する放射活性をカウントした。活性データをバックグラウンド補正し、適当な対照試料におけるカウントの総数と比較した。正規化された細胞濃度の逆数に対してプロットされた総/結合された放射活性の線形回帰分析によって、免疫反応性画分を決定した。さらに、ビーズベース結合アッセイにおいてリード抗体[89Zr]Zr-DFO-4H11の免疫反応性を評価した(図5を参照されたい)。
【0206】
SKOV3c114細胞を生成するために、American Type Cell Culture(ATCC、バージニア州、マナサス)から購入したSKOV3細胞を、MUC16のカルボキシ末端からの114個のアミノ酸をコードするプラスミド、phrGFP-MUC16c114でトランスフェクトした。トランスフェクトされていないSKOV3(野生型)細胞もまた培養し、実験において陰性対照として使用した。細胞を1.5mMのL-グルタミン、100ユニット/mLのペニシリンGおよび100μg/mLのストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清および800μg/mLのジェネテシンG418を含有するように改変されたRPMI McCoyの5A培地において培養した。細胞をウォータージャケット付きインキュベーター中、37℃で維持し、5% CO2を供給した。細胞株を、カルシウムおよびマグネシウムを含まないハンクス緩衝塩溶液中の、0.25%トリプシン/0.53mM EDTAを使用して、週に1回T-150フラスコ(1:5)に分けることによって継代した。MUC16を発現するOVCAR3細胞は、ATCCから入手し、熱不活化ウシ胎児血清(20% v/v、GIBCO、Life Technologies)、2mM L-グルタミン、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、4.5g/Lのグルコース、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、0.01mg/mLのウシインスリン(Gemini Bio-Products、700-112P)、100ユニット/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを補給したRPMI1640培地を使用して培養した。
【0207】
飽和結合研究のために、6つの濃度0.1、1、5、10、25、50および100nMのMUC16カルボキシ末端結合性抗体の89Zr標識変種を、1% BSAを添加したPBSに懸濁した500,000個のSKOV3c114細胞とともに37℃でインキュベートした。同時に並行設定を準備し、抗体のSKOV3c114細胞への非特異的結合について分析した。後者は、MUC16カルボキシ末端結合性抗体の89Zr-放射性免疫複合体変種および100nMのそれぞれの非標識抗体を、SKOV3c114細胞の混合物に添加することによって準備した。すべての実験は3連で実施した。
【0208】
種々の放射性免疫複合体の内部移行をSKOV3c114細胞を使用して調査した。およそ1×105個細胞を12ウェルプレートに播種し、一晩インキュベートした。放射性免疫複合体(1mLあたり1μCiのSKOV3c114培地)の2mLの容量を各ウェルに添加した。プレートを、37℃対4℃で1、4、12および24時間インキュベートした。各インキュベーション期間の後、細胞上清を収集し、細胞を1mLの氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて2回すすいだ。1mLの100mM酢酸+100mMグリシン(1:1、pH3.5)で細胞を洗浄することによって、表面に結合された活性を収集した。次いで、1mLの1M水酸化ナトリウムを用いて接着細胞を溶解した。各洗浄物を収集し、活性についてカウントした。内部移行した活性パーセントを、溶解物の活性と、培地、PBS、酸および塩基洗浄物からの総活性の比として算出した。
【0209】
同一条件下での免疫複合体のバイオコンジュゲーションおよび放射標識の実施にもかかわらず、1.16MBq/nmol(0.21mCi/mg)~31.8MBq/nmol(5.74mCi/mg)の範囲の放射性免疫複合体の可変的放射化学収率およびモル活性が得られた(表4)。1種の抗体、4A2は、他の5種の抗体のバイオコンジュゲーションおよび放射標識に使用した同一条件下で放射標識できず、さらなる分析から外した。抗体29G9および4A5は、89Zrを用いる放射標識の際に低いモル活性をもたらした。具体的には、[89Zr]Zr-DFO-4A5の極めて低いモル活性は、MUC16を発現するOVCAR3細胞に対して効率的な結合親和性(KD=7.3±1.1nM)をこれまでに実証した(Dharma et al. (2010) Appl Immunohistochem Mol Morphol. 18:462-472)、同一抗体の放射ヨウ素標識された変種と比較して不十分であった。もっともらしくは、4A5中のリシン残基は、4A5の放射ヨウ素標識のためにより容易に到達可能である可能性があるチロシン残基と比較して、溶媒到達可能ではなく、アミンベースのコンジュゲーションに適していない可能性があり、したがって、抗体を放射標識するために使用される2つの方法間の放射化学収率の相違につながる。低い免疫反応性割合は低いモル活性と関連付けることができ(より高い非標識割合)、これは、標的への放射標識抗体の接近を遮断し得る。総じて、低い放射化学収率および不十分なモル活性故に、29G9および4A5もこの研究においてさらに探求されなかった。
【0210】
【表4】
【0211】
提示されたすべてのデータは平均±SDとして表されている。適用できる場合、統計的差異は、対応のない、両側スチューデントのt検定(記載される場合にはウイルチ補正を伴う)によって分析した。95%信頼レベル(P<0.05)での差異は統計的に有意と考えられ、アスタリスクによって示されている。
【0212】
残りの3種の抗体、9C9、4H11および4C7の中で、4C7の放射性免疫複合体が最小のモル活性をもたらし、最低の免疫反応性割合を示した。これらの結果は、飽和結合アッセイから導かれた比較的に高い結合親和性(>10nM)と組み合わされて、スクリーニングワークフローの第2相からの4C7の排除につながった。
【0213】
したがって、9C9および4H11を、2種のリードMUC16カルボキシ末端結合性抗体として同定した。その89Zr標識された変種-[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11は、高いモル活性、≧80%の免疫反応性割合および5~11nMの範囲の結合親和性を含む都合の良いin vitro特徴を示した(表4および図3B)。本研究における飽和結合アッセイから導かれた結合親和性値は、9C9および4H11の放射ヨウ素標識された変種を用いて実施された同様の実験において得られたこれまでに報告された値と一致している(Dharma et al. (2010) Appl Immunohistochem Mol Morphol. 18:462-472)。
【0214】
注目すべきことに、9C9および4H11の89Zr放射性免疫複合体は、MUC16カルボキシ末端ドメイン中のペプチド-2に対するその同等の結合親和性にもかかわらず、異なる速度の細胞取り込みプロファイルを示した(図3C)。両放射性免疫複合体のSKOV3c114細胞への結合は、4℃では少なく同等であった。しかし、37℃では、[89Zr]Zr-DFO-4H11は、放射活性のより多い取り込みを示し、正規化された適用された活性の12.47±3.02%が4時間以内に内部移行され、それに続いて、24時間で遅い蓄積が14.09±1.34%に達した(図3C)。他方、[89Zr]Zr-DFO-9C9は、1時間までに内部移行された5.22±1.34%によって示される、比較的に遅い細胞取り込みと、それに続く、24時間で11.89±2.21%に達した漸進的な蓄積を示した。2種のリード抗体候補によって達成された細胞取り込みの速度および最大細胞内部移行値のこのような差異は、抗体クラスにおけるアミノ酸の組成によって影響を受け得る放射性免疫複合体の全体的な電荷または9C9対4H11由来のscFvの結合ポケットの結晶構造から推定され得るMUC16ペプチド-2への結合の幾何学の差異を含む2つ以上の因子に起因する可能性がある。両リード抗体候補の放射性免疫複合体は、血清中でのインキュベーションの際に同等の高い安定性を示した(図3D)。興味深いことに、CAR T細胞を開発するための9C9および4H11の一本鎖可変断片(scFv)の使用の探索を目的とする無関係の研究が、これらの抗体両方に由来するscFvの配列は同一である(示されていないデータ)ということを示し、これは、両抗体は、MUC16エクトドメインの膜近傍領域内のペプチド-2配列中の同一エピトープへの結合によって、MUC16上に同一の分子フットプリントを有し得るということを示唆する。これは、過剰の非標識9C9抗体の存在下でビオチン化ペプチド-2への[89Zr]Zr-DFO-mu4H11結合の遮断を達成することによって本研究において実験的に確認された(図3E)。
【0215】
(実施例2)
MUC16のカルボキシ末端への抗体結合のin vivo特性決定
9C9および4H11を2種のリード候補として同定し、これらの抗体を用いて研究の第2相を実施した。この第2相は、これらの抗体の腫瘍標的化能および全体的な放射性薬理学的プロファイルのin vivo特性決定を含んでいた。この目的のために、放射性免疫複合体、高い放射化学純度および高いモル活性を有する[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11を合成し、皮下に異種移植されたSKOV3c114腫瘍を有するマウスにおいてPETイメージングおよび体内分布研究によって試験した。
【0216】
8~10週齢nu/nu雌マウスをCharles River Laboratoriesから購入した。動物を換気されたケージに収容し、食物および水を自由に与え、およそ1週間順応させ、その後、腫瘍細胞を播種した。SKOV3c114腫瘍を、新鮮培地/BD Matrigel(356234、BD Biosciences)の1:1混合物の150μLの細胞懸濁液中の5×106個細胞の皮下注射によって各マウスの右肩に植え込んだ。実験を、SKOV3c114細胞の注射後およそ3週間実施した。両側性腫瘍モデルを生成するために、8~10週齢の雌のnu/nuマウスの、右肩に5×106個SKOV3細胞を播種し、2週間後に、左肩での5×106個のSKOV3c114細胞の播種を続けた。6~8週齢の雌のヌードマウスの右肩において10×106個OVCAR3細胞を植え込んだ。HGSOC患者由来異種移植のためのシードはMSKCC抗腫瘍評価コアによって提供され、皮下異種移植片として継代および拡大増殖された。
【0217】
PETイメージング実験は、Inveon PET/CTスキャナー(Siemens Healthcare)で実施した。その右肩に皮下に異種移植されたSKOV3c114腫瘍を有するマウスに、リードMUC16カルボキシ末端結合性抗体の89Zr標識された放射性免疫複合体変種(200μLのキレックス処置PBS中の150~260μCi;5.55~9.62MBq)を静脈内尾静脈注射によって投与した。動物を2%イソフラン(Baxter Healthcare)および医療用空気ガス混合物の吸入によって麻酔し、スキャナーベッド上に置いた。各マウスのPETデータは、放射性免疫複合体の注射後さまざまな時点での静的スキャンによって記録した。画像をASIPro VMソフトウェア(Concorde Microsystems)を使用して分析した。両側性腫瘍モデルのPET画像は、Inveon PET/CTスキャナー中のマウスホテルを使用して獲得し、画像をAMIDEソフトウェアを使用して分析した。手短には、3次元順序付きサブセット期待値最大化(3D OSEM)再構成画像を、トレーサーの用量について較正し、1.5の半値幅(FWHM)の値を適用することによってガウス関数を使用して平滑化し、その後、PETおよびCT画像をオーバーレイした。
【0218】
SKOV3c114+腫瘍の皮下異種移植片を有する雌のヌードマウスにおいて、リードMUC16カルボキシ末端結合性抗体の89Zr標識された変種を使用して体内分布研究を実施した。マウスに、200μLのPBSに懸濁した各放射性免疫複合体の21~30μCi;0.77~1.11MBqを片側尾静脈注射によって投与した。遮断アームのためには、動物に50倍過剰の非標識抗体と同時注射した。マウスにおける注射後さまざまな時点で、動物(群あたりn=4)をCO2窒息によって安楽死させて、放射性免疫複合体の体内分布を分析した。安楽死後、重要臓器、例えば、血液、心臓、肺、肝臓、脾臓、胃、膵臓、大腸、小腸、膵臓、卵巣、卵管および子宮を含めた生殖器、腎臓、骨、筋肉、尾、腋窩リンパ節および腫瘍を回収し、秤量し、89Zrについて較正されたガンマカウンターで放射活性についてアッセイした。既知標準から作成された較正曲線を使用してカウントを活性に変換した。カウントデータを注射の時間に対してバックグラウンドおよび減衰補正し、マウスあたりの注射された総活性に対して正規化することによって各組織試料の1グラムあたりの注射された用量パーセント(%ID/g)を算出した。
【0219】
放射性免疫複合体の注射後(p.i.)24時間の間隔での[89Zr]Zr-DFO-9C9の一連のPETイメージング(図4A)は、24時間での皮下腫瘍と、それに続く、p.i.96時間までの時間の進行に伴う腫瘍における活性の漸進的な増大を描写した。[89Zr]Zr-DFO-9C9は、p.i.24時間ほどの早期に肝臓において高い放射活性濃度を示し、後の時点でこの組織からのシグナルの明白な洗い流しがあった。中でも注目すべきことに、[89Zr]Zr-DFO-9C9は、腎臓において比較的に高い放射活性濃度を示した。これは、身体によるクリアランスのための腎濾過カットオフを上回る分子量を有する全長抗体ベースの放射性免疫複合体について予期しない観察結果である。さらに、マウスの腎臓は、この臓器における抗体の存在を正当化するMUC16またはMUC16膜近傍カルボキシ末端ドメインの類似体を発現するとわかっていない。さらに、[89Zr]Zr-DFO-9C9を注射されたマウスの長軸方向PET研究から得た最大強度投影(MIP)画像は、放射性免疫複合体のp.i.24時間~96時間の間で腎臓からの活性の漸進的な洗い流しを示す。もっともらしくは、早期の時点でのマウスの肝臓および腎臓における高い放射活性濃度は、高度に灌流されるこれらの臓器と9C9抗体の遅いin vivo薬物動態との組合せに起因し得る。[89Zr]Zr-DFO-9C9のp.i.72および96時間のMIP画像において見られる心臓および大動脈弓におけるPETシグナルによって証明される全身循環における活性の持続は、腫瘍によって提供される標的病巣の存在にも関わらず、この抗体の極めて遅いin vivo薬物動態プロファイルを示唆する。これらのin vivo観察結果は、この研究の先行する相において9C9抗体によって実証された比較的に遅いin vitro細胞取り込みプロファイルを裏付けた。
【0220】
他方、放射性免疫複合体の注射後24時間の間隔での[89Zr]Zr-DFO-4H11の一連のPETイメージング(図2B)は、p.i.24時間での皮下SKOV3c114腫瘍を描写した。[89Zr]Zr-DFO-9C9対[89Zr]Zr-DFO-4H11の一連のPET画像の1対1の比較によって、最も早期の時点でのSKOV3c114腫瘍における[89Zr]Zr-DFO-4H11の放射活性濃度が、[89Zr]Zr-DFO-9C9のものよりも高かったことが示唆される。[89Zr]Zr-DFO-4H11はまた、p.i.24時間での肝臓における放射活性の取り込みを示し、しかし、この臓器における活性濃度は後の時点で低下し、一方で、腫瘍における活性の増大は放射性免疫複合体のp.i.96時間まで漸進的に増大した。腫瘍(抗体の一次標的病巣)および肝臓(外因性免疫グロブリンのクリアランスの部位)に加えて、[89Zr]Zr-DFO-4H11を注射されたマウスのMIP画像は、腋窩リンパ節において両側対称性PET病巣を示した。この異常とは別に、[89Zr]Zr-DFO-4H11のin vivo放射性薬理学的プロファイルは、その対応物[89Zr]Zr-DFO-9C9よりも好ましかった。[89Zr]Zr-DFO-4H11は、24時間ほどの早期でのSKOV3c114腫瘍における比較的に迅速な取り込み、および後の時点で全身循環および肝臓を除くバックグラウンド臓器において最小活性しか残らなかったために高コントラストPET画像をもたらした。
【0221】
PETイメージングからの観察結果は、目的の腫瘍および臓器が、皮下SKOV3c114異種移植片における放射性免疫複合体のp.i.96時間で回収された独立体内分布研究によって裏付けられた(図6C)。抗体結合の特異性および腫瘍における活性取り込みを検証するために、両放射性免疫複合体のin vivo体内分布研究に遮断アームを含めた。皮下SKOV3c114異種移植片を50倍過剰(質量)の非標識9C9または4H11抗体と同時注射して、それぞれ[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11の特異的取り込みを遮断した。放射性免疫複合体の標的媒介性取り込みおよびその関連活性は低下すると予測されるが、非特異的取り込みを示す組織における活性濃度は未変化のままであると予測される。しかし、腫瘍における放射性免疫複合体の標的媒介性特異的取り込みの効率的な遮断は、心臓、肺、肝臓、脾臓および腎臓を含む十分に灌流された非標的バックグラウンド臓器においけるわずかに増大した活性濃度として現れることが多い可能性がある。これは、腫瘍によって提供される標的が豊富なシンクの遮断のために、全身循環中に存続する相当量の放射性免疫複合体に起因し得る。
【0222】
総じて、[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11の体内分布プロファイルは、両放射性免疫複合体のPETイメージングプロファイルと一致していた。PETイメージング研究において注記された少数の症例固有の例外を除いて、ほとんどの非標的バックグラウンド臓器における活性の取り込みは、同等であり、低かった(≦5%ID/g)。具体的には、[89Zr]Zr-DFO-9C9は、腎臓において高い活性濃度(11.2±2.35%ID/g)を示し、これは、この臓器における[89Zr]Zr-DFO-4H11の取り込み(4.3±1.00%ID/g;p値=0.0016)および[89Zr]Zr-DFO-アイソタイプIgG(4.9±0.57%ID/g;p値=0.002)の取り込みよりも有意に高かった。50倍過剰の非標識9C9抗体と同時注射されたSKOV3c114異種移植片は、腎臓において[89Zr]Zr-DFO-9C9からの活性の取り込みの遮断を示さず(13.3±2.64%ID/g)、これは、この臓器における活性の取り込みは、非特異的であり得るということを示唆した。
【0223】
興味深いことに、PET画像とは異なり、比較体内分布研究によって、p.i.96時間でのSKOV3c114異種移植片の肝臓における放射活性濃度は、2種のMUC16標的化放射性免疫複合体([89Zr]Zr-DFO-9C9の9.1±2.49%ID/g対[89Zr]Zr-DFO-4H11の6.3±1.41%ID/g;p値=0.099)またはアイソタイプIgG(6.4±1.02%ID/g;p値=0.091)の間で有意に異なっていなかったことが確認された。[89Zr]Zr-DFO-9C9(4.2±0.48%ID/g;p値=0.002)またはアイソタイプIgG(3.4±0.40%ID/g;p値=0.001)に対する、[89Zr]Zr-DFO-4H11を注射されたSKOV3c114異種移植片の腋窩リンパ節における活性の濃度の上昇(11.5±2.80%ID/g)にもかかわらず、50倍過剰の非標識4H11抗体と同時注射されたマウスにおいて遮断できなかった(13.2±2.72%ID/g p値=0.43)ので、これらの組織における取り込みは非特異的であった。[89Zr]Zr-DFO-4H11を注射されたSKOV3c114異種移植片から得た回収されたPET-および体内分布-陽性リンパ節のH&E染色された切片のさらなる組織学的分析は、新生細胞の存在を明らかにしなかった。最後に、[89Zr]Zr-DFO-9C9(18.7±2.37%ID/g)および[89Zr]Zr-DFO-4H11(17.4±2.51%ID/g)の腫瘍取り込みは同等であり、アイソタイプIgG(4.7±0.42%ID/g;それぞれp値=0.00002および0.00006)よりも有意に高かった。さらに、[89Zr]Zr-DFO-9C9および[89Zr]Zr-DFO-4H11の腫瘍取り込みは、MUC16によって標的化される放射性免疫複合体が、50倍過剰のそのそれぞれの非標識変種と同時注射された場合には遮断できなかった(6.8±1.81%ID/gおよび7.4±2.18%ID/g)(図4C)。
【0224】
総合すると、SKOV3c114におけるMUC16のエクトドメインを標的化する2種のリード抗体と関連する放射活性の腫瘍対バックグラウンド臓器取り込み比を比較するためのin vitro研究およびPETイメージングおよび体内分布研究を使用するin vivo評価からの結果(図4D)は、[89Zr]Zr-DFO-4H11が比較的に良好なin vivo放射性薬理学的プロファイルをもたらすことを明らかにした。これらの知見は、HGSOCおよび小葉乳がん患者から得られたホルマリン固定されパラフィン包埋された外科的検体の免疫組織学的染色において優れた性能をこれまでに実証した4H11抗体のマウス変種の臨床有用性に信憑性を与える。
【0225】
(実施例3)
ヒト化4H11抗体
マウス4H11を、MUC16c114に対するヒト化変種の結合親和性への最小の妥協を確実にするようにヒト化した。ヒト化重鎖の配列は、配列番号4として提供され、ヒト化軽鎖の配列は、配列番号2として提供される。前臨床設定におけるin vitro標的結合能およびin vivo薬理学的プロファイルの保持を検証するために、4H11のヒト化変種(「本明細書において以下、hu4H11と呼ばれる」)を、マウス変種についてこれまでに記載されたようにDFOとコンジュゲートした(図5A)。免疫複合体のMALDI-ToF分析によって、抗体あたりのコンジュゲートされた約1のDFOが明らかとなった。放射標識の前に、SKOV3c114細胞対SKOV3細胞を使用するフローサイトメトリーによって、DFO-免疫複合体を標的結合について試験した。
【0226】
蛍光ピークのヒストグラムのX軸上で右へのシフトは、DFO-hu4H11免疫複合体のSKOV3c114細胞への陽性結合を示したが、未染色細胞および二次抗体のみで染色された細胞と比較されて蛍光ピークのシフトがないことは、SKOV3(wt)細胞への結合がないことを示した(図5B)。注目すべきことに、SKOV3(wt)細胞株は、卵巣明細胞癌、MUC16の発現に依存するとわかっていないOvCaサブタイプをより代表するものである。続いて、89Zrを用いるDFO-hu4H11の放射標識によって、放射性免疫複合体の高い放射化学収率および純度が一貫して得られ、23.6MBq/nmolのモル活性を有していた(n=9)(図5C~D)。[89Zr]Zr-DFO-hu4H11の標的結合性割合は、96±0.53%であるとわかり、ビーズベースの放射リガンド結合アッセイにおいて大過剰の非標識4H11抗体の存在下で、放射性免疫複合体の、ストレプトアビジン磁性ビーズ上に捕捉されたビオチン化MUC16ペプチド-2への結合を部分的に遮断できた(図5E)。
【0227】
in vitro標的結合能を特性決定すると、hu4H11免疫複合体を試験して、そのin vivo体内分布および放射性薬理学的プロファイルを評価した。そのマウス前身長軸方向PETイメージング研究によって示されたin vivoプロファイルと一致して、hu4H11は、放射性免疫複合体の注射後早期の時点で皮下に異種移植されたSKOV3c114腫瘍を明確に描写できた(図6A)。p.i.72時間の中間の時点で全身循環において幾分かの活性の持続が観察されたが、注射された活性の大部分は、p.i.144時間まで腫瘍において見られた。体内分布研究から得た結果は、PET画像からの観察結果と一致し、血液プールにおけるバックグラウンド活性の低下と同時にSKOV3c114腫瘍における活性の漸進的な増大を示した(図6B)。[89Zr]Zr-DFO-hu4H11の腫瘍取り込みは、マウスが40倍過剰(質量で)の非標識hu4H11抗体と同時注射され、p.i.72時間でのin vivo体内分布について評価された遮断アームにおいて抑制された(22.4±3.65対14.3±1.50%ID/g;p値=0.006)。そのマウス前身とは異なり、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11は、SKOV3c114異種移植片においてPET陽性腋窩リンパ節を示さなかった。しかし、体内分布研究において両側腋窩リンパ節を回収することによって、p.i.36時間での7.9±1.23%ID/g~p.i.144時間での10.3±4.04%ID/gの間の範囲の活性濃度が明らかとなった。注目すべきことに、遮断アームにおいてマウスのp.i.72時間での腋窩リンパ節において放射活性濃度の抑制がないことは、この組織における取り込みは、非特異的であり得るということを示唆した。放射性トレーサーとして、[89Zr]Zr-DFO-hu4H11は、優れた腫瘍対バックグラウンド臓器比を実証した(図6C)。このような都合の良いin vivoプロファイルは、免疫PETおよび標的化された放射線療法のための放射性医薬品を含むhu4H11ベースの薬物の将来の開発の良い前兆になる。
【0228】
MUC16カルボキシ末端を発現する細胞への[89Zr]Zr-DFO-hu4H11結合のin vivo特異性のさらなる試験を、右肩に移植されたSKOV3腫瘍に対する、SKOV3c114細胞がnu/nuマウスの左肩に移植された両側性腫瘍モデルにおいて実施した。[89Zr]Zr-DFO-hu4H11は、この腫瘍における放射活性の高い腫瘍取り込みと、対するSKOV3腫瘍における最小の非特異的取り込みによって示されるように、SKOV3c114細胞によって発現された標的への結合について優れた特異性を実証した(図7A)。後者は、通常、不十分にしか血管新生されない固形腫瘍組織における全長抗体ベースの造影剤のin vivoでの増強された透過性および保持に起因する。
【0229】
89Zr]Zr-DFO-hu4H11を注射したマウスからの両側性腫瘍のex vivo分析によって、MUC16カルボキシ末端を発現するSKOV3c114腫瘍の細胞周囲空間および健常な腫瘍細胞が豊富な領域における放射活性の病巣蓄積が明らかとなった(図7Bおよび7C;破線の円)。他方、SKOV3c114腫瘍の壊死領域(図7Bおよび7C;破線の三角)は、放射活性がないことが明らかとなった。両側性腫瘍モデルにおける[89Zr]Zr-DFO-hu4H11のPET画像と一致して、標的陰性SKOV3腫瘍は、放射活性の最小の蓄積を示した(図7B)。両側性腫瘍のH&E染色による病理組織学的分析によって、SKOV3細胞、卵巣明細胞癌を代表する細胞株に特有である明細胞質の通常の細胞形態学とは著しく別個であった構造および形態学的特徴を有するSKOV3c114腫瘍が明らかとなった(図7D)。これまでの報告によって、NIH/3T3細胞におけるMUC16のカルボキシ末端ドメインの発現が、形質転換を誘導し、この細胞株における転移特性を増強するのに対し、SKOV3細胞におけるカルボキシ末端ドメインの異所発現はin vitro細胞運動および侵襲性およびin vivo腫瘍形成能を増大させたことが示されている。
【0230】
MUC16ペプチド-2を人工的に過剰発現しないモデルにおいて4H11ベースの放射性トレーサーの有用性を試験するために、本発明者らは、HGSOCの代表的な細胞株であり、多量のMUC16を天然に発現するOVCAR3細胞を使用する皮下異種移植モデルを開発した。このモデルにおける[89Zr]Zr-DFO-hu4H11のPET画像は、p.i.72時間の中間の時点でのOVCAR3腫瘍における高い放射活性濃度を実証した(図8A)。最後に、クリニックにおいて免疫PET剤として[89Zr]Zr-DFO-hu4H11を使用するために実現可能性を探索し、概念実証を実証するために、本発明者らは、HGSOCを代表する患者由来異種移植(PDX)モデルを使用した。このモデルにおける[89Zr]Zr-DFO-hu4H11のPET画像は、p.i.72時間でのPDX腫瘍における高い放射活性濃度を明らかにした。注目すべきことに、OVCAR3およびPDXモデルからのPET画像は、マウスの心臓および下行大動脈を含めた血液プール(BP)において持続するバックグラウンド活性を明らかにした。これは、ヒト化4H11抗体を用いたこれまでの実験から得た観察結果と一致し(図5~7)、腫瘍によって提供される標的病巣容量と独立している現象であると思われる。全身循環における活性の持続はin vivoでの抗体の薬物動態的および生物学的半減期の特徴的な特徴を示し得る。
【0231】
研究は、抗体ベースの薬物の開発の際に最良候補を同定する放射性薬理学的スクリーニングの有用性を強調した。結合親和性および細胞内部移行の速度を含む抗体の重要な特性を特性決定するための、いくつかの核および標識を含まない生物物理的および生化学的分析の方法の進化にもかかわらず、これらの技術は、リード抗体候補のin vivo挙動を予測または特性決定する能力に制限されたままである。in vitro放射測定アッセイに由来する結果を、リード抗体候補をより良好にスクリーニングおよび特性決定できる戦略として非侵襲性核イメージングおよび体内分布研究によって明らかにされたin vivo放射性薬理学的プロファイルと組み合わせて使用できる。放射性薬理学的スクリーニングは、抗体のin vivo薬物動態の可視化、トレーサビリティおよび定量的評価という特有の利益を提供し、そのすべては、マイクロドージングに関わらず高感度で達成できる。この情報を有することは、その同族標的を用いた場合の抗体の到達性および会合のより良好な理解および特性決定に寄与し、一方で、潜在的毒性につながり得る、非標的臓器との、有し得る任意の異常な相互作用を同時に概説して、薬物としてのその効力を規定できる。
【0232】
(実施例4)
ヒト化4H11抗体の表面プラズモン共鳴(SPR)特性決定
ビオチンCAPチップを用いるBIACore-X100機器(GE Healthcare)を使用する表面プラズモン共鳴によって、4H11ヒト化抗体(H1L1、H1L2、H2L1、H2L2)の相対的な結合親和性を比較した。アッセイ形式は、ストレプトアビジンコートされたセンサー上にビオチン化MUC16ペプチド-2(TLDRSSVLVDGYSPNRNE;配列番号52)を捕捉することおよびシングルサイクル動態を使用して種々の濃度で抗体上に流すことからなっていた。0.5μg/mlのビオチン化MUC16ペプチド-2を1分あたり5μlの速度で65秒間流すことによって、リガンド捕捉を実施した。次いで、4H11ヒト化抗体を種々の試験濃度(150nM、75nM、37.5nM、18.8nMおよび9.4nM)でその上に流した。添加した抗体の効果を測定するために使用したアッセイ条件は以下のとおりとした:2分の会合時間、10分の解離時間および1分あたり30μlの流速。
【0233】
4種の抗体すべての相対的結合親和性は同等であり、1~3nMのKDを有していた(表5)。マウスIgG 4H11のセンサーグラムはヒト化抗体(示されていない)と同様の傾向を示した。しかし、特に高濃度で、動態学的オフステップについて付着性が観察された。
【表5】
【0234】
(実施例5)
ヒト化18C6抗体の表面プラズモン共鳴(SPR)特性決定
CM5チップを用いるBIACore-X100機器(GE Healthcare)を使用する表面プラズモン共鳴によって、18C6ヒト化抗体(H1L1、H1L2、H2L1、H2L2)の相対的結合親和性を比較した。アッセイ形式は、飽和付近の条件下で、抗マウスIgGでコートされたCM5チップ上に4種のヒト化抗体H1L1、H1L2、H2L1、H2L2を、または抗ヒトIgGでコートされたCM5チップ上に親マウス18C6を捕捉することおよび種々の濃度でMUC16ペプチド-2グリコペプチド(TLDRSSVLVDGYSPNRNE;配列番号52)をその上に流すことからなっていた。
【0235】
飽和条件下でヒト化抗Muc16抗体18C6 H1L1、18C6 H1L2、18C6 H2L1、18C6 H2L2)および親の18C6マウス抗体を、それぞれのチップ上に流すことによって、リガンド捕捉を実施した。次いで、MUC16ペプチド-2を種々の試験濃度(150nM、75nM、37.5nM、18.8nMおよび9.4nM)でその上に流した。グリコペプチドの効果を測定するために使用したアッセイ条件は、以下のとおりとした:2分の会合時間、10分の解離時間および1分あたり30μlの流速。
【0236】
試験した4種の抗体すべての相対的結合親和性は互いに同等であり、親の18C6マウス抗体と同様であった(表6)。
【表6】
【0237】
(実施例6)
蛍光活性化セルソーター分析によるヒト化4H11および18C6抗体の特性決定
この実施例では、MUC16-陽性細胞(OVCAR3)またはMUC16ペプチドを発現する細胞(SKOV3およびA2780トランスフェクタント)に結合する能力を評価した。
【0238】
OVCAR3、SKOV3およびA2780細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC、バージニア州、マナサス)を介して入手し、供給元の使用説明書に従って培養物で維持した。緑色蛍光タンパク質融合タンパク質を生成するVitality phrGFPベクター発現系(Stratagene、カリフォルニア州、ラホヤ)を使用して、MUC16陰性ヒト卵巣癌細胞株(SKOV3およびA2780)を、腫瘍促進効果にとって必須であるC末端MUC16の配列要素を用いてトランスフェクトすることによって、MUC16を発現する細胞株を作出した(A2780-phrGFP-MUC16c344およびSKOV3-phrGFP-MUC16c344)。そのそれぞれの培養培地においてジェネテシン(G418、Invitrogen、ニューヨーク州、グランドアイランド)を使用して安定な細胞株を選択し、緑色蛍光タンパク質の発現によって単離した。それぞれその培養培地中のG418で安定なトランスフェクタントを日常的に維持した。ΔMUC16c114トランスフェクタントは、カルボキシ末端の推定切断部位(アミノ酸1776~1890)からのMUC16タンパク質の細胞表面発現を有する。ΔMUC16c344トランスフェクタントは、アミノ酸1547からカルボキシ末端(アミノ酸1890)のMUC16タンパク質の細胞表面発現を有する。
【0239】
接着標的細胞を0.05%トリプシンおよび0.1%EDTAによってはがし、洗浄し、血球算定器によってカウントした。細胞を、管あたり少なくとも0.5~1×106個細胞で複数のエッペンドルフ管に分配した。細胞を1%FCSおよび0.025%ナトリウムアジドを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(FACSバッファー)で洗浄した。内部FACS染色のために、エッペンドルフ管中の細胞を、1:10希釈したFACS透過処理溶液2(BD BioSciences、カリフォルニア州、サンノゼ)を用いて、室温で10分間透過処理し、次いで、氷冷FACSバッファーで2回洗浄した。表面FACS染色のために、細胞を1mg/管の、Alex Fluor 647にコンジュゲートされた4H11もしくは18C6マウスmAbまたは4H11もしくは18C6ヒト化抗体を伴わずに、またはそれとともに氷上で30分間インキュベートした。すべての細胞をFACSバッファーで3回洗浄した。4H11または18C6マウスmAbで標識された細胞を、1mg/管の第2の抗体ヤギ抗マウスIgG2b-PE(フィコエリトリン)とともに氷上で30分間さらにインキュベートし、次いで、FACSバッファーで3回洗浄した。細胞をFACS Calibur機械によって分析した。4H11または18C6マウスmAbアッセイの平均PE蛍光およびPE陽性細胞パーセンテージのデータは、図9Aおよび9Bに示されている。4H11または18C6ヒト化抗体アッセイの平均Alexa-647蛍光およびAlexa-647陽性細胞パーセンテージのデータは、図9Cおよび9Dに示されている。H1L2ヒト化4H11抗体およびH1L1ヒト化18C6抗体のデータが示されている。
【0240】
別個の実験では、4H11抗体のヒト化重および軽鎖可変領域の異なる組合せを含む全長ヒト化4H11抗体(IgG1-Fc)を、アッセイした。MUC16ペプチドを発現するMUC16陽性OVCAR3またはSKOV3トランスフェクタント細胞の蛍光染色のために、抗ヒトIgG1-Fc-PE抗体を使用した。図10Aおよび10Bは、アッセイされた4H11 H1L1、H1L2、H2L1およびH2L2抗体の平均PE蛍光およびPE陽性細胞パーセンテージのデータを提供する。
【0241】
4H11 L1、L2、H1およびH2、可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2、3、4および5として本明細書において提供されている。18C6 L1、L2、H1およびH2、可変領域のアミノ酸配列は、配列番号20、21、22および23として本明細書において提供されている。
【0242】
(実施例7)
Matrigel浸潤アッセイによるヒト化4H11および18C6抗体の特性決定
その全体が参照により組み込まれるRao, et al. (2017) ACS Chem. Biol. 12 (8): 2085-2096によって以前に記載されたように、Matrigel浸潤チャンバー中で基底膜浸潤の抗体阻害を決定した。浸潤に必要であるMUC16のC末端部分を発現するSKOV3細胞株を、上記のように生成した。トランスフェクトされた細胞および野生型MUC16を発現する卵巣がん細胞(OVCAR3、OVCA-433およびCAOV3)を、4H11抗体のヒト化重および軽鎖可変領域の異なる組合せを含む全長ヒト化4H11抗体(IgG1-Fc)を用いずに、または用いて前処理し、その後、Matrigel浸潤チャンバーに曝露した。浸潤している細胞の数をカウントした。図11は、MUC16陽性OVCAR、VCA-433およびCAOV3細胞株の例示的データを示し、図12は、MUC16を発現するSKOV3細胞株および親のSKOV3細胞株の例示的データを示す。変異体MUC16ペプチドN123mut c114を発現するSKOV3細胞株は、浸潤の陰性対照として使用した。
【0243】
(実施例8)
抗MUC16二重特異性抗体の生成
この実施例は、ヒト化 4H11および18C6抗MUC16 scFvからの抗MUC16二重特異性抗体(BsAb)の生成を記載する。N末端に抗MUC16 scFvを、C末端にマウスモノクローナル抗体の抗ヒトCD3ε scFvを含む一本鎖BsAbを生成する。標準DNA技術を使用して親のクローンL2Kに由来する抗MUC16 scFvおよび抗ヒトCD3ε scFv抗体をコードするDNA断片を発現ベクター中にクローニングすることによって4H11 抗MUC16 BsAbおよび18C6抗MUC16 BsAbを生成する。抗体精製および検出のためにC末端の抗MUC16 BsAbの下流にヘキサヒスチジン(His)タグを挿入する。例示的4H11抗MUC16 BsAbの配列は、配列番号44、69~71および88~91に提供されている。例示的18C6抗MUC16 BsAbの配列は、配列番号72~75および92から95に提供されている。
【0244】
メチオニンスルホキシイミン(MSX)、グルタミンシンセターゼ(GS)ベースの方法(Fan, et al., Biotechnology Bioengineering. 109 (4), 1007-1005 (2012))を用いる標準薬物選択によって、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を抗MUC16 BsAb発現ベクターでトランスフェクトし、安定発現を達成する。分泌された抗MUC16 BsAb分子を含有するCHO細胞上清を収集する。FPLC AKTAシステムによってHisTrap HPカラム(GE healthcare)を使用して抗MUC16 BsAbを精製する。手短には、CHO細胞培養物を清澄化し、低イミダゾール濃度(20mM)を有するカラム上にロードし、次いで、均一濃度の高イミダゾール濃度溶出バッファー(500mM)を使用して結合された抗MUC16二重特異性抗体タンパク質を溶出する。SDS-PAGEによってBsAbのバンドが観察され、BsAbが成功裏に精製されたことが示された。
【0245】
(実施例9)
抗MUC16 BsAb-MUC16+細胞特異性
この実施例では、MUC16を発現するがん細胞への結合について、4H11および18C6抗MUC16 BsAbの特異性を評価する。1つの研究において、2つの標的細胞株、MUC16+ OVCAR3細胞株およびMUC16- SKOV3細胞株が使用される。OVCAR3およびSKOV3細胞株は、American Type Cell Culture(ATCC、バージニア州、マナサス)を介して入手し、ATCC文献に従って培養物で維持する。2つの標的細胞株への抗MUC16抗体結合のFACS分析を実施して、MUC16+ OVCAR3細胞株を用いた場合にのみ抗体結合が観察されることを確認する。SKOV3またはOVCAR3細胞株を、抗MUC16 Abと、それに続いて二次抗体とともに、または対照として二次抗体単独とともにインキュベートする。MUC16+OVCAR3細胞株は対照細胞を上回って結合の増大を示し、一方でSKOV3は低シグナルを示すか、または示さないと予測される。
【0246】
(実施例10)
抗MUC16 BsAbによって指示される細胞傷害性
この実施例では、4H11および18C6抗MUC16 BsAbの、MUC16特異的細胞傷害性を誘導する能力が評価される。4H11抗MUC16 BsAbおよび18C6抗MUC16 BsAbを、約0.2μg/mlの濃度で、5:1のエフェクター:標的(E:T)比でMUC16+OVCAR3標的細胞株またはMUC16-SKOV3標的細胞株のいずれか、およびヒト活性化T細胞とともに16時間インキュベートする。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイによって細胞傷害性を測定する。BsAbはOVCAR3細胞の細胞溶解を誘導できると予測され、一方で、SKOV3の細胞溶解は最小であると予測され、これは、T細胞活性化にはMUC16+標的特異性が必要であるということを示す。実験は、4H11および18C6 抗MUC16 BsAbが、MUC16+がん細胞株の強力なおよび特異的な死滅を誘導できることを実証する。
【0247】
(実施例11)
NSGマウスにおけるヒトMUC16+転移性卵巣がんの療法
この実施例では、転移性卵巣がんのマウス異種移植モデルにおける4H11および18C6抗MUC16 BsAbのin vivo治療効力を評価する。6~8週齢の間の雌のNSGマウスに、0日目(D0)に腹膜内に(i.p.)、3×106個の、MUC16-C114およびGFP-LUCを発現するように改変されているSKOV3-MUC-CD腫瘍細胞を注射する。次いで、これらのマウスを、7日目(D7)に1×107個のヒトT細胞を用いて静脈内(i.v.)に5μgの4H11または18C6 抗MUC16 BsAbを用いてi.p.処置する。合計6回のBsAb処置のために、5μgのBsAbを用いるさらなる処置をD9、D11、D14、D16およびD18にi.p.投与した。動物をD14、D21、D28およびD42に画像化する。
【0248】
抗MUC16 BsAbを用いて処置した動物は、未処置マウスまたはT細胞単独を用いて処置されたマウスと比較して疾患進行の遅延を示すと予測される。抗MUC16 BsAbを用いる処置はT細胞のみの療法または処置なしと比較して腫瘍保有マウスにおいて生存を有意に延長すると予測される。T細胞および抗MUC16 BsAbを用いて処置された腫瘍保有マウスもまた、処置の7日後に有意に上昇したレベルの全身IL-2およびIFN-γを示すと予測され、これは、抗腫瘍免疫応答の誘導を示す。これらの結果は、抗MUC16 BsAbの投与がMUC16+転移性卵巣がんの異種モデルにおいて疾患進行を遅延し、生存を改善することを実証する。
【0249】
(実施例12)
抗MUC16キメラ抗原受容体(CAR)の生成
この実施例は、ヒト化4H11および18C6抗MUC16 scFvからの抗MUC16キメラ抗原受容体(CAR)の生成を記載する。抗CD19 scFvを含むCARを発現するCAR T細胞は、標準組換え技術を使用して以前に作製されており、それらを作出し、その活性を特性決定する方法に関する最初の刊行物が記載されている(Brentjens et al., Sci. Trans. Med. 5(177):177ra38 (2013), Pegram et al. Leukemia 29(2):415-22 (2015))。4H11および18C6抗MUC16CAR T細胞は同様に作製され、特性決定されるであろう。
【0250】
4H11および18C6抗MUC16 scFv配列(例えば、配列番号53~56または61~64(4H11)および57~60または65~68(18C6)のうちいずれか1つを含むscFv配列)を利用して、CARの抗原結合性ドメインを生成する。scFvの重鎖可変および軽鎖を(Gly4Ser)3リンカーを介して接続する。局在性のためにリーダーペプチド(例えば、CD8シグナル配列;例えば、配列番号76)をscFvのN末端に付加する。代替実施形態では、フローサイトメトリーによるCARの検出を可能にするためにc-Mycタグを付加できる。CD8膜貫通ドメイン(例えば、配列番号77)が、抗原結合性ドメインに続く。CARの細胞質側では、4-1BB CART細胞の持続性の増大のために、共刺激要素として4-1BB(例えば、配列番号78)が使用される(Oka et al. PNAS. 101:13885-90 (2004))。必要に応じて、CD8膜貫通ドメインの上流にスペーサードメインを含むようにCARを最適化できる。CARをコードする核酸を、4-1BBシグナル伝達(例えば、配列番号78)およびCD3ζ活性化ドメイン(例えば、配列番号79)を含有するSFGレトロウイルスベクター中にクローニングして、第2世代CARを形成できる(Brentjens et al. Clin Cancer Res. 13(18 Pt 1):5426-35 (2007))。CARの検出を可能にする抗イディオタイプmAbを生成できる、c-Mycタグを含まない臨床等級構築物も生成できる。
【0251】
これまでに記載されたように(Curran et al. American Society of Gene Therapy 23(4):769-78 (2015))、安定HEK293Tウイルス産生細胞株を生成し、サブクローニングし、初代ヒトT細胞に形質導入するために使用する。形質導入後、抗MUC16 scFvを検出するために抗イディオタイプ抗体を使用するフローサイトメトリーによってCAR発現を検証する。
【0252】
(実施例13)
抗MUC16キメラ抗原受容体(CAR)の特性決定
この実施例では、4H11または18C6抗MUC16 scFvを含むCARを発現するCART細胞の、MUC16特異的細胞傷害性を誘導する能力が評価される。活性化4H11抗MUC16 CART細胞または18C6抗MUC16 CART細胞を、5:1のエフェクター:標的(E:T)比でMUC16+OVCAR3標的細胞株またはMUC16-SKOV3標的細胞株のいずれかとともに16時間インキュベートする。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイによって細胞傷害性を測定する。4H11抗MUC16 CART細胞または18C6抗MUC16 CART細胞はOVCAR3細胞の細胞溶解を誘導できると予測され、一方で、SKOV3の細胞溶解は最小であると予測され、これは、T細胞活性化にはMUC16+標的特異性が必要であるということを示す。実験は、4H11抗MUC16 CART細胞または18C6抗MUC16 CART細胞がMUC16+がん細胞株の強力なおよび特異的な死滅を誘導できることを実証する。
【0253】
(実施例14)
NSGマウスにおけるヒトMUC16+転移性卵巣がんの療法
この実施例では、転移性卵巣がんのマウス異種移植モデルにおける4H11または18C6抗MUC16 scFvを含むCARを発現するCART細胞のin vivo治療効力を評価する。6~8週齢の間の雌のNSGマウスに、0日目(D0)に腹膜内に(i.p.)、MUC16-C114およびGFP-LUCを発現するように改変されている3×106個のbSKOV3-MUC-CD腫瘍細胞を注射する。次いで、これらのマウスを、1×107個の4H11抗MUC16 CART細胞または18C6抗MUC16 CART細胞または対照T細胞を用いて静脈内(i.v.)処置する。複数回投与のために、4H11抗MUC16 CART細胞または18C6抗MUC16 CART細胞を用いるさらなる処置を、その後の間隔で静脈内に投与できる。動物をD14、D21、D28およびD42に画像化する。
【0254】
4H11抗MUC16 CART細胞または18C6抗MUC16 CART細胞を用いて処置した動物は、未処置マウスまたは対照T細胞を用いて処置されたマウスと比較して疾患進行の遅延を示すと予測される。4H11抗MUC16 CART細胞または18C6抗MUC16 CART細胞を用いる処置は、T細胞のみの療法または処置なしと比較して腫瘍保有マウスにおいて生存を有意に延長すると予測される。4H11抗MUC16 CART細胞または18C6抗MUC16 CART細胞を用いて処置された腫瘍保有マウスは処置の7日後に有意に上昇したレベルの全身IL-2およびIFN-γを示すと予測され、これは、抗腫瘍免疫応答の誘導を示す。これらの結果は、4H11抗MUC16 CART細胞または18C6抗MUC16 CART細胞の投与がMUC16+転移性卵巣がんの異種モデルにおいて疾患進行を遅延し、生存を改善することを実証する。
【0255】
例示的実施形態
本開示は、以下の限定されない実施形態の観点から記載され得る:
【0256】
実施形態1:本出願は、一態様では、ムチン16(MUC16)ポリペプチドを免疫特異的に認識する抗体部分を含む抗ムチン16(MUC16)構築物を提供する。一部の実施形態では、抗体部分は、(a)(i)それぞれ配列番号17、18および19の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3、およびそれぞれ配列番号136、137および138の重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2およびHC-FW3を含む可変重(VH)鎖であって、配列番号136のアミノ酸位置1、3、5、11および19、配列番号137のアミノ酸位置5、7、8および9、および配列番号138のアミノ酸位置12、14、18、22および23から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号124、125および126のマウスHC-FW1、HC-FW2およびHC-FW3に対してヒト化されている、可変重(VH)鎖、(ii)それぞれ配列番号14、15および16の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3、およびそれぞれ配列番号120、121、122および123の軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む可変軽(VL)鎖であって、配列番号120の位置3、9、15、18および22、配列番号122のアミノ酸位置7および27、および配列番号123のアミノ酸位置3および9から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号104、105、106および107のマウスLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4に対してヒト化されている、可変軽(VL)鎖、または(b)(i)配列番号4もしくは5を含む可変重(VH)鎖および(ii)配列番号2もしくは3を含む可変軽(VL)鎖、または(c)(i)それぞれ配列番号35、36および37の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3、およびそれぞれ配列番号175、176、177および178の重鎖フレームワーク領域1(HC-FW1)、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4を含む可変重(VH)鎖であって、配列番号175のアミノ酸位置10、11、12、13、15、19および23、配列番号177のアミノ酸位置5、14、16、18、22および23、および配列番号178のアミノ酸位置6から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号159、160、161および162のマウスHC-FW1、HC-FW2、HC-FW3およびHC-FW4に対してヒト化されている、可変重(VH)鎖、および(ii)それぞれ配列番号32、33および34の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3、およびそれぞれ配列番号155、156、157および158の軽鎖フレームワーク領域1(LC-FW1)、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4を含む可変軽(VL)鎖であって、配列番号155の位置7、9、11および18、配列番号156のアミノ酸位置5、および配列番号157のアミノ酸位置9および18から選択される1個または複数のアミノ酸が、それぞれ配列番号139、140、141および142のマウスLC-FW1、LC-FW2、LC-FW3およびLC-FW4に対してヒト化されている、可変軽(VL)鎖、または(d)(i)配列番号22もしくは23を含む可変重(VH)鎖、および(ii)配列番号20もしくは21を含む可変軽(VL)鎖を含む。
実施形態2:(a)(i)のHC-FW1が配列番号130を含み、(a)(i)のHC-FW2が配列番号131を含み、(a)(i)のHC-FW3が配列番号132を含み、(a)(ii)のLC-FW1が配列番号112を含み、(a)(ii)のLC-FW2が配列番号113を含み、(a)(ii)のLC-FW3が配列番号114を含み、および/または(a)(ii)のLC-FW4が配列番号115を含む、実施形態1の抗MUC16構築物。
実施形態3:(a)(i)のHC-FW1が配列番号130を含み、(a)(i)のHC-FW2が配列番号131を含み、(a)(i)のHC-FW3が配列番号132を含み、(a)(ii)のLC-FW1が配列番号112を含み、(a)(ii)のLC-FW2が配列番号113を含み、(a)(ii)のLC-FW3が配列番号114を含み、(a)(ii)のLC-FW4が配列番号115を含む、実施形態1の抗MUC16構築物。
実施形態4:(a)(i)のHC-FW1が配列番号133を含み、(a)(i)のHC-FW2が配列番号134を含み、(a)(i)のHC-FW3が配列番号135を含み、(a)(ii)のLC-FW1が配列番号116を含み、(a)(ii)のLC-FW2が配列番号117を含み、(a)(ii)のLC-FW3が配列番号118を含み、および/または(a)(ii)のLC-FW4が配列番号119を含む、実施形態1の抗MUC16構築物。
実施形態5:(a)(i)のHC-FW1が配列番号133を含み、(a)(i)のHC-FW2が配列番号134を含み、(a)(i)のHC-FW3が配列番号135を含み、(a)(ii)のLC-FW1が配列番号116を含み、(a)(ii)のLC-FW2が配列番号117を含み、(a)(ii)のLC-FW3が配列番号118を含み、(a)(ii)のLC-FW4が配列番号119を含む、実施形態1の抗MUC16構築物。
実施形態6:(c)(i)のHC-FW1が配列番号167を含み、(c)(i)のHC-FW2が配列番号168を含み、(c)(i)のHC-FW3が配列番号169を含み、(c)(i)のHC-FW4が配列番号170を含み、(c)(ii)のLC-FW1が配列番号147を含み、(c)(ii)のLC-FW2が配列番号148を含み、(c)(ii)のLC-FW3が配列番号149を含み、および/または(c)(ii)のLC-FW4が配列番号150を含む、実施形態1の抗MUC16構築物。
実施形態7:(c)(i)のHC-FW1が配列番号167を含み、(c)(i)のHC-FW2が配列番号168を含み、(c)(i)のHC-FW3が配列番号169を含み、(c)(i)のHC-FW4が配列番号170を含み、(c)(ii)のLC-FW1が配列番号147を含み、(c)(ii)のLC-FW2が配列番号148を含み、(c)(ii)のLC-FW3が配列番号149を含み、(c)(ii)のLC-FW4が配列番号150を含む、実施形態1の抗MUC16構築物。
実施形態8:(c)(i)のHC-FW1が配列番号171を含み、(c)(i)のHC-FW2が配列番号172を含み、(c)(i)のHC-FW3が配列番号173を含み、(c)(i)のHC-FW4が配列番号174を含み、(c)(ii)のLC-FW1が配列番号151を含み、(c)(ii)のLC-FW2が配列番号152を含み、(c)(ii)のLC-FW3が配列番号153を含み、および/または(c)(ii)のLC-FW4が配列番号154を含む、実施形態1の抗MUC16構築物。
実施形態9:(c)(i)のHC-FW1が配列番号171を含み、(c)(i)のHC-FW2が配列番号172を含み、(c)(i)のHC-FW3が配列番号173を含み、(c)(i)のHC-FW4が配列番号174を含み、(c)(ii)のLC-FW1が配列番号151を含み、(c)(ii)のLC-FW2が配列番号152を含み、(c)(ii)のLC-FW3が配列番号153を含み、(c)(ii)のLC-FW4が配列番号154を含む、実施形態1の抗MUC16構築物。
実施形態10:抗体部分がMUC16のエクトドメインに免疫特異的に結合する、実施形態1~7のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態11:MUC16がヒトMUC16である、実施形態1~9のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態12:抗体部分が、全長抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fv(scFv)である、実施形態1~11のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態13:抗体部分が一本鎖Fv(scFv)であり、scFvが配列番号53~68のうちいずれか1つを含む、実施形態12の抗MUC16構築物。
実施形態14:VH鎖およびVL鎖がヒト化VH鎖およびVL鎖である、実施形態1~13のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態15:抗体部分が配列番号44のアミノ酸配列を含むMUC16 c114ポリペプチドに免疫特異的に結合する、実施形態1~14のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態16:Matrigel浸潤アッセイにおいてMUC16を発現する腫瘍細胞のin vitro浸潤を阻害する、実施形態1~15のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態17:腫瘍細胞が卵巣腫瘍細胞を含み得る、実施形態16の抗MUC16構築物。
実施形態18:MUC16がグリコシル化され得る、実施形態16または17の抗MUC16構築物。
実施形態19:MUC16が配列番号44に対してN24またはN30でNグリコシル化される、実施形態18の抗MUC16構築物。
実施形態20:抗体部分がモノクローナル抗体である、実施形態1~19のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態21:抗体部分がヒト由来重鎖定常領域および軽鎖定常領域を含む、実施形態1~20のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態22:重鎖定常領域がガンマl、ガンマ2、ガンマ3およびガンマ4からなる群から選択されるアイソタイプを有する、実施形態21の抗MUC16構築物。
実施形態23:軽鎖定常領域がカッパおよびラムダからなる群から選択されるアイソタイプを有する、実施形態21または22のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態24:抗体部分が、2つの同一な重鎖および2つの同一な軽鎖を含む免疫グロブリンである、実施形態1~23のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態25:免疫グロブリンがIgGである、実施形態24の抗MUC16構築物。
実施形態26:単一特異性である、実施形態1~24のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態27:多重特異性である、実施形態1~24のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態28:多重特異性である、実施形態1~24のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態29:多重特異性または二重特異性抗MUC16構築物が抗CD3抗体部分をさらに含み得る、実施形態21または実施形態28の抗MUC16構築物。
実施形態30:タンデムscFv、ダイアボディー(Db)、一本鎖ダイアボディー(scDb)、二重親和性再標的化(DART)抗体、F(ab’)2、二重可変ドメイン(DVD)抗体、ノブ・イントゥ・ホール(KiH)抗体、ドック・アンド・ロック(DNL)抗体、化学的に架橋された抗体、ヘテロ多量体抗体またはヘテロコンジュゲート抗体である、実施形態1~24のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態31:ペプチドリンカーによって連結された2つのscFvを含むタンデムscFvである、実施形態30の抗MUC16構築物。
実施形態32:MUC16を免疫特異的に認識する抗体部分が第1の抗体部分であり、抗MUC16構築物が第2の抗原を免疫特異的に認識する第2の抗体部分をさらに含む、実施形態27~31のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態33:第2の抗原がT細胞の表面上の抗原である、実施形態 の抗MUC16構築物。
実施形態34:第2の抗原がCD3である、実施形態33の抗MUC16構築物。
実施形態35:第2の抗原がCD3γ、CD3δ、CD3εおよびCD3ζからなる群から選択される、実施形態34の抗MUC16構築物。
実施形態36:第2の抗原がCD3εである、実施形態36の抗MUC16構築物。
実施形態37:配列番号42、69~75および88~95のうちいずれか1つを含む、実施形態36の抗MUC16構築物。
実施形態38:キメラ抗原受容体(CAR)である、実施形態1~19のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態39:CARが共刺激ドメインを含む、請求項 の抗MUC16構築物。
実施形態40:CARがCD3ゼータ(ζ)鎖細胞質シグナル伝達ドメインを含む、実施形態38または39の抗MUC16構築物。
実施形態41:CARが配列番号53~68のうちいずれか1つのscFvを含む、実施形態38~40のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態42:CARが配列番号80~87および97~103のうちいずれか1つを含む、実施形態38~41のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態43:ペプチド因子、検出因子、造影剤、治療剤または細胞傷害性因子にさらにコンジュゲートされる、実施形態1~42のいずれか1つの抗MUC16構築物。
実施形態44:配列番号2~5、10~13、20~23および28~31のうち1つもしくは複数のアミノ酸配列または実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
実施形態45:実施形態44の1つまたは複数のポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
実施形態46:プロモーターに作動可能に連結した実施形態45のポリヌクレオチドを含むベクター。
実施形態47:実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物、実施形態44のポリペプチド、実施形態45のポリヌクレオチド、実施形態46のベクターを含む細胞。
実施形態48:哺乳動物細胞である、実施形態47の細胞。
実施形態49:免疫細胞である、実施形態48の細胞。
実施形態50:リンパ球である、実施形態49の細胞。
実施形態51:T細胞またはB細胞である、実施形態50の細胞。
実施形態52:実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物、実施形態31のポリペプチド、実施形態45のポリヌクレオチド、実施形態46のベクターまたは実施形態47~51のうちいずれか1つの細胞の治療上有効量および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
実施形態53:それを必要とする患者において、MUC16関連疾患または障害を処置する方法であって、前記患者に実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物または実施形態52の医薬組成物の治療上有効量を投与するステップを含む、前記方法。
実施形態54:前記MUC16関連疾患または障害が、がんである、実施形態53の方法。
実施形態55:がんが卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管または原発腹膜のがんである、実施形態41の方法。
実施形態56:がんが転移性がんである、実施形態41または55の方法。
実施形態57:医薬組成物が、患者において転移を阻害または低減する、実施形態53~56のいずれか1つの方法。
実施形態58:患者がヒト患者である、実施形態53~57のいずれか1つの方法。
実施形態59:エフェクター細胞を産生する方法であって、実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物または実施形態44のポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸を用いて細胞を遺伝子改変することを含む、前記方法。
実施形態60:実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物または実施形態44のポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸を、患者から単離された1つまたは複数の初代細胞中に導入すること、および1つまたは複数の核酸を含む細胞を患者に投与することを含む、処置方法。
実施形態61:細胞を拡大増殖すること、その後細胞を患者に投与することをさらに含む、実施形態60の方法。
実施形態62:初代細胞がリンパ球である、実施形態60または61の方法。
実施形態63:初代細胞がT細胞である、実施形態62の方法。
実施形態64:さらなる治療剤の治療上有効量を患者に投与することをさらに含む、実施形態53~63のいずれか1つの方法。
実施形態65:抗MUC16構築物が実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物である、請求項 のいずれか1つの方法。
実施形態66:試料においてMUC16を検出する方法であって、(a)試料を実施形態1~31のいずれか1つの抗MUC16構築物と接触させるステップ、および(b)試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合を直接的または間接的に検出するステップを含む、前記方法。
実施形態67:抗MUC16構築物が検出可能な標識にコンジュゲートされる、実施形態 の方法。
実施形態68:検出可能な標識が、発色剤、酵素剤、放射性同位体剤、同位体剤、蛍光剤、毒性薬剤、化学発光剤、核磁気共鳴造影剤である、実施形態 の方法。
実施形態69:検出可能な標識を検出することによって試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合が直接的に検出される、実施形態67または68の方法。
実施形態70:二次抗体を使用して、試料中の抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合が間接的に検出される、実施形態66の方法。
実施形態71:MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、a)実施形態1~31のいずれか1つの抗MUC16構築物の有効量を個体に投与すること、およびb)個体において抗MUC16構築物と任意のMUC16の間の結合のレベルを直接的または間接的に決定することを含み、閾値レベルを上回る結合のレベルが、個体がMUC16関連疾患または障害を有することの指標となる、前記方法。
実施形態72:MUC16関連疾患または障害を有すると疑われる個体を診断する方法であって、a)個体に由来する細胞を含む試料を、実施形態1~31のいずれか1つの抗MUC16構築物と接触させるステップ、およびb)抗MUC16構築物に結合した試料中の細胞数を決定し、閾値レベルを上回る抗MUC16構築物に結合した細胞数の値が、個体がMUC16関連疾患または障害を有することを示すステップを含む、前記方法。
実施形態73:陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の処置のための、実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物、実施形態44のポリペプチド、実施形態45のポリヌクレオチド、実施形態46のベクターまたは実施形態47~51のいずれか1つの細胞の使用。
実施形態74:陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の処置のための医薬の製造における、実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物、実施形態44のポリペプチド、実施形態45のポリヌクレオチド、実施形態46のベクターまたは実施形態47~51のいずれか1つの細胞の使用。
実施形態75:陽性MUC16発現と関連する疾患または障害の診断のための、実施形態1~31のいずれか1つの抗MUC16構築物の使用。
実施形態76:陽性MUC16発現と関連する疾患または障害が、がんである、実施形態62~75のいずれか1つの使用。
実施形態77:がんが卵巣がんである、実施形態76の使用。
実施形態78:実施形態1~43のいずれか1つの抗MUC16構築物、マウス抗MUC16抗体またはその抗原結合性断片、および使用のための説明書、を含むキットであって、前記マウス抗MUC16抗体または抗原結合性断片は、(a)それぞれ配列番号17、18および19の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖、およびそれぞれ配列番号14、15および16の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖、または、(b)それぞれ配列番号35、36および37の重鎖相補性決定領域1(HC-CDR1)、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む可変重(VH)鎖、およびそれぞれ配列番号32、33および34の軽鎖相補性決定領域1(LC-CDR1)、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む可変軽(VL)鎖を含む、前記キット。
実施形態79:マウス抗MUC16抗体または抗原結合性断片が、抗MUC16構築物を用いる処置に対して応答性である患者を同定するために使用される、実施形態78のキット。
実施形態80:マウス抗MUC16抗体または抗原結合性断片が、ウエスタンブロッティング、免疫組織化学、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫沈降または免疫電気泳動によって患者から得た試料においてMUC16を発現する腫瘍を検出するために使用される、実施形態79のキット。
実施形態81:抗MUC16構築物が、アルファ放射体、オージェ放射体、ベータ放射体、ガンマ放射体、陽電子放射体またはX線放射体にコンジュゲートされ、前記陽電子放射体が89Zr-デスフェリオキサミンB(DFO)であってもよい、実施形態68の抗MUC16構築物。
実施形態82:in vivoで対象においてがんを検出する方法であって、(a)対象に実施形態1~31のいずれか1つの抗MUC16構築物の有効量を投与するステップであって、抗MUC16構築物が、MUC16を発現するがん細胞に局在するように構成され、放射性同位元素で標識されるステップ、および(b)参照値よりも高い、抗MUC16構築物によって放射される放射活性レベルを検出することによって対象における腫瘍の存在を検出するステップであって、放射性同位元素が89Zr-デスフェリオキサミンB(DFO)であってもよいステップ、を含む前記方法。
実施形態83:対象が、がんを有すると診断されるか、またはがんを有する疑いがある、実施形態82の方法。
実施形態84:抗MUC16構築物によって放射された放射活性レベルが、陽電子放射型断層撮影法または単一光子放射コンピューター断層撮影法を使用して検出される、実施形態82または83の方法。
実施形態85:対象に放射性核種にコンジュゲートされた請求項1~31のいずれか1つの抗MUC16構築物を含む免疫複合体の有効量を投与するステップをさらに含む、実施形態82~84のいずれか1つの方法。
実施形態86:放射性核種が、アルファ粒子放射性同位元素、ベータ粒子放射性同位元素、オージェ放射体またはそれらの任意の組合せである、実施形態82~85のいずれか1つの方法。
【0257】
同等物
本技術は、本出願において記載される特定の実施形態に関して制限されるべきではなく、これらは、本技術の個々の態様の単一の例示として意図される。当業者には明らかであろうが、その趣旨および範囲から逸脱することなく、本技術の多数の改変および変法を行うことができる。本明細書において列挙されたものに加えて、本技術の範囲内の機能的に同等の方法および装置は、前記の説明から当業者には明らかとなろう。このような改変および変法は、本技術の範囲内に入るものとする。本技術は、特定の方法、試薬、化合物組成物または生物学的系に制限されず、もちろん、変わり得るということは理解されるべきである。また、本明細書において使用される技術用語は、単に特定の実施形態を説明する目的のためであって、制限であるようには意図されないということも理解されるべきである。
【0258】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの観点で説明される場合、当業者は、それによって、本開示が同様に、マーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点で記載されると認識するであろう。
当業者によって理解されるであろうが、ありとあらゆる目的のために、特に書面の説明を提供することに関して、本明細書において開示されるすべての範囲はまた、ありとあらゆるあり得る部分範囲およびその部分範囲の組合せも包含する。任意の列挙された範囲は、同範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されると十分に記載され、それを可能にすると容易に認識され得る。限定されない例として、本明細書において論じられる各範囲は、下部3分の1、中央の3分の1および上部3分の1などに容易に分割され得る。同様に当業者に理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より多い」、「より少ない」などといったすべての言語は、列挙された数を含み、その後上記で論じられるような部分範囲に分割され得る範囲を指す。最後に、当業者に理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3つのセルを有するグループは、1、2または3つのセルを有するグループを指す。同様に、1~5つのセルを有するグループは、1、2、3、4または5つのセルを有するグループなどを指す。
【0259】
本明細書で参照または引用されているすべての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲で、すべての図および表を含めて、その全体が参照により組み込まれる。
【0260】
表7: 配列の表
【表7-1】
【0261】
表7続き
【表7-2】
【0262】
表7続き
【表7-3】
【0263】
表7続き
【表7-4】
【0264】
表7続き
【表7-5】
【0265】
表7続き
【表7-6】
【0266】
表7続き
【表7-7】
【0267】
表7続き
【表7-8】
【0268】
表7続き
【表7-9】
【0269】
表7続き
【表7-10】
【0270】
表7続き
【表7-11】
【0271】
表7続き
【表7-12】
【0272】
表7続き
【表7-13】
【0273】
表7続き
【表7-14】
【0274】
表7続き
【表7-15】
【0275】
表7続き
【表7-16】
【0276】
表7続き
【表7-17】
【0277】
表7続き
【表7-18】
【0278】
表7続き
【表7-19】
【0279】
表7続き
【表7-20】
【0280】
表7続き
【表7-21】
【0281】
表7続き
【表7-22】
【0282】
表7続き
【表7-23】
【0283】
表7続き
【表7-24】
【0284】
表7続き
【表7-25】
【0285】
表7続き
【表7-26】
【0286】
表7続き
【表7-27】
【0287】
本開示は、本出願において記載される特定の実施形態に関して制限されるべきではなく、これらは本開示の個々の態様の単一の例示として意図される。本開示の種々の実施形態のすべては本明細書において記載されない。当業者には明らかであろうが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく本開示の多数の改変および変法を行うことができる。本明細書において列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に同等の方法および装置は、前記の説明から当業者には明らかとなろう。このような改変および変法は添付の特許請求の範囲の範囲内に入るものとする。本開示は、添付の特許請求の範囲の条項およびこのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲によってのみ制限されるべきである。
本開示は、特定の使用、方法、試薬、化合物、組成物または生物学的系に制限されず、それらは当然変化する可能性があるということは理解されるべきである。また、本明細書において使用された技術用語は単に特定の実施形態を説明する目的のものであって、限定するように意図されないということも理解されるべきである。
【0288】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループの観点で説明される場合、当業者は、それによって、本開示が同様にマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点で記載されると認識するであろう。
当業者によって理解されるであろうが、ありとあらゆる目的のために、特に書面の説明を提供することに関して、本明細書において開示されるすべての範囲はまたありとあらゆるあり得る部分範囲およびその部分範囲の組合せも包含する。任意の列挙された範囲は、同範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されると十分に記載され、それを可能にすると容易に認識され得る。限定されない例として、本明細書において論じられる各範囲は、下部3分の1、中央の3分の1および上部3分の1などに容易に分割され得る。同様に当業者に理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より多い」、「より少ない」などといったすべての言語は、列挙された数を含み、その後上記で論じられるような部分範囲に分割され得る範囲を指す。最後に、当業者に理解されるように、範囲は各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3つのセルを有するグループは、1、2または3つのセルを有するグループを指す。同様に、1~5つのセルを有するグループは1、2、3、4または5つのセルを有するグループなどを指す。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11
図12
【配列表】
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【国際調査報告】