(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】原油増進回収のための硬度の低い高塩分濃度の水を得るための海水処理
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20220629BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C02F1/44 D
B01D61/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565914
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2020027957
(87)【国際公開番号】W WO2020226853
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】201911018156
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430716
【氏名又は名称】ビーエル テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントノポウロス,ニック
(72)【発明者】
【氏名】ドープ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カナガサバイ,タミザ・アルビ
(72)【発明者】
【氏名】カパ,ラビ・チャンドラ・レディ
(72)【発明者】
【氏名】エルヤノー,アービング
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006KA01
4D006KA52
4D006KA54
4D006KA57
4D006KB14
4D006KE02Q
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB03
(57)【要約】
海水などの高塩分濃度の供給水を処理し、逆浸透(RO)濃縮物及びRO濾過生成物を生成する。任意に、RO濃縮物の一部又は全てを濾過して、ナノ濾過(NF)濾過生成物を生成することができる。任意に、幾分かの供給水を濾過して、RO処理によって最初に濃縮されることなくNF濾過生成物を生成することもできる。NF濾過生成物、又はRO濾過生成物とNF濾過生成物との混合物を用いて、原油回収を高めるために含油貯留槽に注入するための生成水を生成することができる。任意に、生成水は、供給水よりも高い塩分濃度、又は少なくとも30g/Lを有することができる。生成水は20mg/L未満の硬度を有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を処理する方法であって、
供給水の一部を逆浸透により処理して、RO濾過生成物及びRO濃縮物を生成することと、
前記RO濃縮物の一部をナノ濾過により処理して、NF濾過生成物を生成することと、
任意に、前記供給水の一部をナノ濾過によって処理して、追加のNF濾過生成物を生成することと、
前記NF濾過生成物若しくは前記RO濾過生成物又はそれらの混合物を、含油組成物に注入する水として使用することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記供給水が、高い、例えば、35g/L以上のTDSを有するか、又は前記供給水が海水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生成水が、30g/L以上のTDS又は40g/L以上のTDSの塩分濃度を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記供給水が海水を含み、前記生成水がCaCO
3として20mg/L未満の硬度を有する、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
水処理システムであって、
ROシステム、
NFシステム
を含み、
前記ROシステムへの入口が供給水源に接続され、前記ROシステムの濃縮物出口が前記NFシステムの供給入口に接続される、
システム。
【請求項6】
前記NFシステムへの入口が前記供給水源に接続される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記NFシステムからの濾過生成物出口が注入システムに接続され、前記ROシステムからの濾過生成物出口が前記注入システムに接続される、請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
前記注入システムが、RO濾過生成物及び/又はNF濾過生成物を含む水を含油貯留槽に注入するように適合されており、前記NF濾過生成物が、処理されたRO濃縮物を少なくともいくつかの時点で含むことができる、請求項5~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記システム内の種々の流量比が、任意に自動的に又はコントローラを介して任意に経時的に変えられるように、パイプ及びバルブ又は他の流量制御装置の適切な配置を有する、請求項5~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
コントローラが流量制御又は他の装置を操作して、(a)前記NFユニットに対する前記ROユニットの入口に流れる供給水の相対量、(b)前記NFユニットに流れるRO濃縮物があればその量、(c)生成水中のRO濾過生成物及びNF濾過生成物の相対量、の1つ以上を変化させることができる、請求項5~9のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年5月7日に出願したインド特許出願第201911018156号の利益を主張するものであり、これを参照により援用する。
【0002】
本明細書は、含油貯留槽に注入するための水を製造するための海水の処理に関する。
【背景技術】
【0003】
国際公開第2019/053092A1号「Method of Controlling Salinity of a Low Salinity Injection Water」は、含油貯留槽の異なる領域にある2つの注入井に注入するための低塩分濃度の水の2つの混合物を製造することを含む方法を記載する。混合物は、海水のような高塩分濃度の供給水を濾過することにより生成される、様々な量のナノ濾過濾過生成物及び逆浸透濾過生成物を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載された方法では、海水などの高塩分濃度の供給水を処理して逆浸透(RO)濃縮物及びRO濾過生成物を生成する。RO濃縮物(あるいは廃棄物と呼ばれる)は、濾過されて、ナノ濾過(NF)濾過生成物を生成する。任意に、幾分かの供給水を濾過して、RO処理によって最初に濃縮されることなくNF濾過生成物を生成することもできる。NF濾過生成物、又はRO濾過生成物とNF濾過生成物との混合物を用いて、含油貯留槽に注入するための生成水を製造することができる。生成水は、30g/L以上、例えば、30g/L~50g/Lの範囲の塩分濃度を有し得る。任意に、生成水は、供給水よりも高い、例えば、海水(典型的には約35g/L TDS又は40g/L TDSを超える)よりも高い塩分濃度を有し得る。生成水は20mg/L未満の硬度を有することができる。生成水の塩分濃度及び硬度は、任意に時間と共に変化することがあり、又は供給水の変化にもかかわらず、例えば、RO濃縮物であるNF処理により加工された供給水の割合を変化させること、及び/又は生成水中のRO濾過生成物とNF濾過生成物との混合比を変化させることにより、ほぼ一定に保ってもよい。
【0006】
本明細書に記載されたシステムはROシステム及びNFシステムを有する。ROシステムへの入口は、供給水源に接続される。NFシステムへの入口は、供給水源に接続される。ROシステムの濃縮物出口は、NFシステムの供給入口に接続される。NFシステムからの濾過生成物出口は、例えば、保持タンクを介して注入システムに接続される。ROシステムからの濾過生成物出口は、例えば、保持タンクを介して注入システムに接続される。注入システムは、RO濾過生成物及び/又はNF濾過生成物を含む水を含油貯留槽に注入するように適合されており、ここで、NF濾過生成物は、処理されたRO濃縮物を少なくともいくつかの時点で含むことができる。このシステムは、システム内の種々の流量比が、任意に自動的に、又は任意に経時的にコントローラにより変えられるように、パイプ及びバルブ(又は他の流量制御装置)の適切な配置を有する。例えば、コントローラは、流量制御又は他の装置を操作して、(a)NFユニットに対するROユニットの入口に流れる供給水の相対量、(b)NFユニットに流れるRO濃縮物があればその量、(c)生成水中のRO濾過生成物及びNF濾過生成物の相対量、の1つ以上を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
水は、多くの原油増進回収(EOR)及び化学的原油増進回収(CEOR)技術における重要な成分であり、陸上又は沖合で採用されることがある。塩分濃度及び硬度などの重要なパラメータは、注入のための有用な流体を生成するために許容範囲内に維持することが好ましい。異なる含油貯留槽及び同じ貯留槽内の異なる攻法段階は、塩分濃度の異なる注入水を必要とすることがある。水処理システムは、理想的には、手作業による介入を最小限にするか、又は全く行わずに、異なる塩分濃度の生成水を提供することができることが好ましい。供給水はほとんどの場合海水である。海水は回収時には典型的には35g/L(総溶解固形物、TDSとして測定)以上の塩分濃度を有するが、懸濁固体を除去するために前処理される場合、その塩分濃度は40mg/L以上であることがある。海水の硬度(CaCO3としての全硬度)は6500mg/L以上の場合があり、もしあるとしても前処理で除去されることはほとんどない。
【0009】
いくつかの例において、本明細書に記載されたシステムを用いて、様々な塩分濃度の処理水を製造することができる。このシステムは、様々な塩分濃度レベル、例えば、35g/l~50g/l又は40g/l~50g/lのTDSの供給水を処理し、20mg/l未満の硬度(CaCO3としての全硬度)を有し得る生成流体を生じるために使用され得る。任意に、システムは、供給水の塩分濃度が変化する期間にわたって、概ね一定の排水塩分濃度を維持することができる。生成水の塩分濃度は、30g/lのTDS~50g/lのTDSの間であることができ、これは、少なくとも世界のいくつかの含油貯留槽で使用することが望ましい。いくつかの例では、このシステムは塩分濃度の異なる生成水を異なる時間で生成する能力を持つ。任意に、システムをモジュール化して、場所から場所へより容易に移動できるようにするか、又はサイズを縮小拡大できるようにすることができる。このシステムは、パイプ、ポンプ、タンク、バルブ及び他の制御装置、センサ、及び1つ以上のコントローラなどの適切な補助装置と共に、ROシステム及びNFシステムを備えることができる。
【0010】
本明細書に記載された方法において、水は、RO膜及び/又はNF膜で処理され、異なる出口流を生成する。異なる出口流は、異なる割合で混合され、選択された特性を有する生成水を生成することができる。供給水は、例えば、膜を保護するために、1つ以上の固液分離ユニットで前処理してもよい。
【0011】
生成水はポリマーで処理してもよい。生成水は、特定の含油貯留槽及びポリマー混合物の要件に従って生成され得る。このシステムは、任意に、流体特性を追跡するか、又は異なる流れの混合を調節するためのデジタル制御を含む。
【0012】
このシステム及び方法は、選択された量のRO濃縮物をNFシステムに供給する。これは、RO濾過生成物とNF濾過生成物との任意の可変混合とともに、生成物のTDSの変更することを可能にするのに役立つ。RO濃縮物を用いることで、TDSと同様に硬度を高める。しかし、NFユニット(複数回通過、すなわち3回通過)は、望ましい一価塩分濃度(すなわちNaCl)の大部分を維持しながら、硬度(及び典型的には硫酸塩のような他の考えられるスケーリングイオン)を除去する。
【0013】
生成水は、(a)CaCO3として20mg/L未満又は10mg/L未満の全硬度、硫酸塩として10mg/L未満の全硬度の1つ以上を、(b)30,000mg/Lより大きい、又は35,000mg/Lより大きいTDSと共に有することができる。このシステムは、生成水に塩を添加する必要なく、硬度の低い高TDS生成水を生じさせる。
【0014】
図1に水処理システムの例を示す。一番上のラインでは、供給水の一部がライン3を流れ、海水RO(SWRO)ユニットに至る。この例の供給水は濾過され、海水が用いられるが、他の供給水源及び他の前処理が用いられることもある。海水ROユニットからの濾過生成物(SWRO濾過生成物)は、汽水RO(BWRO)ユニットでさらに処理される。これは、汽水RO濾過生成物(BWRO濾過生成物)を生成する。BWROユニットの使用は任意であり、省略することができる。別の選択肢において、SWRO濾過生成物の選択された部分がBWROユニットを迂回するように、BWROユニットの周りのバイパスラインは、任意に1つ以上の制御可能なバルブを備えていてもよい。一般的に言えば、SWROユニットは、約1000mg/LのTDS又は塩分濃度で、ほとんど硬度のない濾過生成物を生成することができる。BWROユニットは、ほとんど塩分がなく、硬度がほとんどない濾過生成物(すなわち、濾過生成物は飲むことができる)を生成することができる。BWROユニットの存在若しくは非存在、又はそれが迂回される程度は、RO濾過生成物の品質を変化させるために使用され得る。任意に、SWROユニット及びBWROユニットは、1つ以上の段階を有してもよい。
【0015】
供給水の一部は、任意にライン5を流れ、1つ以上のNFユニットに至る。ライン3とライン5との間の供給水の分割は、好ましくは制御可能であり、例えば、ライン3又はライン5において0~100%の間の範囲で変動可能である。いくつかの例では、ある時期又は常に、ライン3を通る流れがないか、又はライン5を通る流れがない場合がある。いくつかの例では、必ず、ライン3を通る少なくとも幾分かの流れがある。NFユニットはまた、ライン21からSWRO廃棄物を選択的に受け取ることができる。示されていない別の選択肢では、NFユニットはBWRO濃縮物を選択的に受け取ることもできる。もしあれば、NFユニットに送られたRO濃縮物の量は、変化させることができる。いくつかの例では、少なくとも幾分かのRO濃縮物、例えば、SWRO濃縮物は、ある時期又は常にNFユニットに送られる。
【0016】
NFシステムは1つ以上の段階を有することができる。図の例では、トリプルパスROシステムを使用してもよい。NF濾過生成物の一部又は全部(ライン9において)を、RO濾過生成物の一部又は全部(ライン16若しくは25又はその組み合わせ)と混合して最終生成水を作り出すことができる。最終生成水は、原油回収を増強するために、任意に1種以上の化学物質と混合された後、含油組成物に注入されることができる。
【0017】
一般的に言えば、
図1のシステムの任意の要素及び/又は制御可能な要素を用いて、最終生成水において1つ以上の品質を作り出すことができる。最終生成水は、例えば、CaCO
3として硬度20mg/L未満など、硬度が低いことが通常望ましい。しかし、最終生成水の塩分濃度(又はTDS)の要件は時間又は場所によって異なることがあり、供給水の塩分濃度よりも高い場合も低い場合もある。
図1に示したシステムは、典型的には、通常前処理された海水(すなわち、浄化器、溶存空気濾過ユニット、媒体フィルター及び精密濾過又は限外濾過膜又は類似の処理ユニットのうちの1つ以上により処理された海水)を供給した場合、硬度が20mg/L未満の最終生成物水を生成することができる。
図1に示したシステムはまた、50g/Lまでの塩分濃度の供給水を受け取り、供給よりも塩分濃度の高い、低い、又は同じ塩分濃度の最終生成水を生成することができる。
【国際調査報告】