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特表2022-531468ハニカムフィルタ体及びそれを含む微粒子フィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ体及びそれを含む微粒子フィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20220629BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20220629BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20220629BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
C04B38/00 303Z
F01N3/022 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565962
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-05
(86)【国際出願番号】 US2020030899
(87)【国際公開番号】W WO2020227040
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/845,070
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】タンドン,プシュカル
【テーマコード(参考)】
3G190
4D019
4D058
4G019
【Fターム(参考)】
3G190AA02
3G190AA12
3G190AA13
3G190BA26
3G190CA03
3G190CA13
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BD01
4D019BD02
4D019CA01
4D019CB04
4D058JA38
4D058JB06
4D058SA08
4G019FA15
(57)【要約】
ハニカムフィルタ体は、クリーンフィルタ圧力損失(P)及びクリーン濾過効率(FE);第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体を含み、該多孔質セラミックハニカム体は、ベースクリーンフィルタ圧力損失(P)及びベースクリーン濾過効率(FE);並びに、多孔質セラミックハニカム体の壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムフィルタ体であって、
クリーンフィルタ圧力損失(P)及びクリーン濾過効率(FE)、
第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体であって、ベースクリーンフィルタ圧力損失(P)及びベースクリーン濾過効率(FE)を含む、多孔質セラミックハニカム体、並びに
前記多孔質セラミックハニカム体の前記壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層
を含み、ここで、
前記ハニカムフィルタ体の全体的な性能パラメータが、式(I)に従う「X」として定義され:
【数1】
濾過性能が、式(II)に従う「F」として定義され:
【数2】
Xが1.75以上であり、Fが0.25以上である、
ハニカムフィルタ体。
【請求項2】
Xが2以上である、請求項1に記載のハニカムフィルタ体。
【請求項3】
ハニカムフィルタ体であって、
第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体、
前記多孔質セラミックハニカム体の前記壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層であって、平均気孔率(ε)、マイクロメートル単位の平均粒子サイズ(d)、及び厚さtを含む、多孔質無機層
を含み、ここで、
前記多孔質無機層の形態パラメータが、式(IV)に従う「Y」として定義され:
【数3】
Yが0.02以上である、
ハニカムフィルタ体。
【請求項4】
Yが0.03以上である、請求項3に記載のハニカムフィルタ体。
【請求項5】
前記多孔質無機層が、2マイクロメートル以下の平均粒子サイズ(d)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容全体がここに参照することによって本願に援用される、2019年5月8日出願の米国仮特許出願第62/845,070号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、ハニカムフィルタ体、該ハニカムフィルタ体を含む微粒子フィルタ、及びこのようなハニカムフィルタ体及び微粒子フィルタを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
セラミックウォールフロー型フィルタは、燃焼機関の排気などの流体排気流から微粒子を除去するために用いられる。例として、ディーゼルエンジン排ガスから微粒子を除去するために用いられるセラミックスートフィルタ;及び、ガソリンエンジン排ガスから微粒子を除去するために用いられるガソリン微粒子フィルタ(GPF)が挙げられる。ウォールフロー型フィルタでは、濾過される排ガスは、入口セルに入り、セル壁を通過し、出口チャネルを介してフィルタから出る。ガスが横断してフィルタから出るときに、入口セルの壁の上又は内部に微粒子が捕捉される。微粒子は、煤及び/又は灰から構成されうる。灰及び/又は煤の蓄積は、通常、エンジンの排気ガスに長時間曝露された後に、フィルタの内部で発生しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジン排気システム用のガソリン微粒子フィルタなどの微粒子フィルタのFEを改善し、より低い圧力損失を実現することが、今もなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、ハニカムフィルタ体は、クリーンフィルタ圧力損失(P)及びクリーン濾過効率(FE)、並びに、第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体を含み、該多孔質セラミックハニカム体は、ベースクリーンフィルタ圧力損失(P)及びベースクリーン濾過効率(FE)、並びに、多孔質セラミックハニカム体の壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層を含み、ここで、ハニカムフィルタ体の全体的な性能パラメータは、式(I)に従う「X」として定義され:
【0006】
【数1】
【0007】
濾過性能は、式(II)に従う「F」として定義され:
【0008】
【数2】
【0009】
Xは1.75以上であり、Fは0.25以上である。
【0010】
別の態様では、ハニカムフィルタ体は、第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体と、多孔質セラミックハニカム体の壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層とを含み、該多孔質無機層は、平均気孔率(ε)、マイクロメートル単位の平均粒子サイズ(d)、及び厚さtを含み、多孔質無機層の形態パラメータは、式(IV)に従う「Y」として定義され:
【0011】
【数3】
【0012】
Yは0.02以上である。
【0013】
追加の態様は、ハニカムフィルタ体に無機材料を施す方法を含む。
【0014】
追加の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その説明から当業者に容易に明らかとなり、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含めた本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されよう。
【0015】
前述の概要及び以下の詳細な説明はいずれも、さまざまな実施形態を説明しており、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図していることが理解されるべきである。添付の図面は、さまざまな実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれて、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載されるさまざまな実施形態を例証しており、その説明とともに、特許請求の範囲の主題の原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本明細書に開示され、説明された実施形態によるハニカムフィルタ体の概略図
図2】本明細書に開示され、説明された実施形態による、煤負荷を伴ったハニカムフィルタ体の概略図
図3】本明細書に開示され、説明された実施形態による、微粒子フィルタの概略図
図4図3に示された微粒子フィルタの断面図
図5】1つ以上の実施形態による、微粒子フィルタを試験するための実験装置を示す概略図
図6】実施形態についての圧力損失の増加に対する濾過効率のグラフ
図7】実施形態についての圧力損失の増加に対する濾過効率のグラフ
図8】実施形態についての圧力損失の増加に対するパラメータ「X」のグラフ
図9】実施形態についての圧力損失の増加に対するパラメータ「X」のグラフ
図10】実施形態についてのパラメータ「Y」の増加に対するパラメータ「X」のグラフ
図11】実施形態についての圧力損失の増加に対する濾過効率のグラフ
図12】実施形態についての圧力損失の増加に対する濾過効率のグラフ
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、その実施形態が添付の図面に示される、多孔質無機層をその上に有する多孔質ハニカム体を含むハニカムフィルタ体の実施形態を詳細に参照する。可能な場合はいつでも、同一又は類似した部分についての言及には、図面全体を通して同じ参照番号が用いられる。実施形態では、ハニカムフィルタ体は、第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体と、ハニカム体の壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層とを含む。ハニカムフィルタ体は、クリーンフィルタ圧力損失(P)及びクリーン濾過効率(FE)を有する。多孔質無機層を含まない多孔質セラミックハニカム体は、ベースクリーンフィルタ圧力損失(P)及びベースクリーン濾過効率(FE)を有する。多孔質無機層は、平均気孔率(ε)、マイクロメートル単位の平均粒子サイズ(d)、及び厚さ(t)を含む。本明細書における「クリーン」圧力損失及び「クリーン」濾過効率とは、本体に煤又は排気微粒子のトラップがない状態で、それぞれのハニカムフィルタ体又は多孔質セラミックハニカム体に分析が行われることを意味する。
【0018】
本明細書におけるハニカムフィルタ体は、以下のパラメータのうちの1つ以上を単独で又は組み合わせて有する:
式(I)に従う「X」として定義されたハニカムフィルタ体の全体的な性能パラメータ:
【0019】
【数4】
【0020】
ここで、Xは1.75以上である;
式(II)に従う「F」として定義されたハニカムフィルタ体の濾過性能:
【0021】
【数5】
【0022】
ここで、Fは0.25以上である;
式(III)に従う「P」として定義された圧力損失性能:
【0023】
【数6】
【0024】
ここで、Pは0.25以下である;かつ
式(IV)に従う「Y」として定義された前記多孔質無機層の形態パラメータ:
【0025】
【数7】
【0026】
ここで、Yは0.02以上である。
【0027】
さまざまな実施形態では、コージエライトハニカムモノリス構造をGPFに使用することができる。コージエライトハニカムモノリス構造の壁には、人工膜又は無機多孔質層を適用することができる。層は壁への煤の浸透を防ぎ、それによって、深層への煤の浸透に起因する圧力損失の増加を排除又は低減する。この層は、結果的に、それ自体が効果的な濾過媒体として作用することにより、フィルタの濾過効率性能の改善をもたらす。しかしながら、このような層は、チャネルの水力直径を縮小することによって、及び/又はフィルタの有効長を短くすることによって、(膜層の一部が入口チャネルの後端にプラグを形成していることに起因して)フィルタ全体にわたる圧力損失を増加させる可能性がある。好ましくは、層は、結果的に、濾過効率性能の向上及び層に起因する圧力損失ペナルティのわずかな増加をもたらす。幾つかの実施形態では、このような層は、チャネル長を部分的にしか覆わない。本明細書のハニカムフィルタ体は、高い濾過効率(特に、クリーン又は非常に低い煤又は灰負荷において)、及びこのような高い濾過効率における低い圧力損失を示す。
【0028】
ハニカムフィルタ体及びこのようなハニカムフィルタ体の製造方法のさまざまな実施形態が、添付の図面を特に参照して本明細書に記載される。幾つかの実施形態では、微粒子フィルタが提供され、該微粒子フィルタは、構造の入口端から出口端まで延びる複数のチャネルを画成する多孔質壁面を含む複数の交差する多孔質壁を含む閉栓された多孔質セラミックハニカム構造を含むハニカム体を含み、該複数のチャネルは、出口端又はその近くで封止され、ある表面積を有する入口チャネルと、入口端又はその近くで封止され、ある表面積を有する出口チャネルとを含み、入口チャネル及び出口チャネルは濾過面積を画成し、ここで、入口チャネルを画成する1つ以上の多孔質壁面は、ベース壁部分と、該ベース壁部分上に配置された濾過材料の堆積物とを含み、該濾過材料の堆積物は、ベース壁部分上に配置される。
【0029】
幾つかの実施形態では、濾過材料の堆積物は、好ましくは、微粒子フィルタの閉栓されたハニカム構造を通る高いガス流に起因する、及び/又は機械的振動に起因するなどの移動又は再配置に対して耐性があるなど、機械的に安定している。1つ以上の実施形態では、濾過材料の堆積物は、水に晒されたときに安定であり、したがって、堆積物はセル壁上の場所又は位置を維持する。言い換えれば、幾つかの実施形態によれば、濾過材料の堆積物は、多孔質セラミックベース壁に結合される。幾つかの実施形態では、堆積物は、物理的結合による結合だけでなく、化学的に結合される。例えば、幾つかの実施形態では、火炎熱分解濾過材料の堆積物は、多孔質セラミックベース壁に融合又は焼結される。加えて、幾つかの実施形態では、火炎熱分解濾過材料の堆積物は、互いに融合又は焼結されて、多孔質無機材料の層を形成する。
【0030】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「又は」という用語は、内容が明確に別段の指示をしない限り、「及び/又は」を含むその意味で一般に用いられる。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「有する」、「有している」、「含む」、「含んでいる」、「備える」、「備えている」などは、オープンエンドの意味で用いられており、一般に「含むがそれらに限定されない」ことを意味する。
【0032】
本明細書で言及されるハニカム体は、チャネルを画成するセルを形成するための交差する壁の成形セラミックハニカム構造又はマトリクスを含む。セラミックハニカム構造は、形成、押出、又は成形することができ、任意の形状又はサイズのものでありうる。例えば、セラミックハニカム構造は、コージエライト又は他の適切なセラミック材料から形成することができる。
【0033】
本明細書で言及されるハニカム体はまた、ハニカム構造の壁面に施され、ガス流から微粒子物質を濾過するように構成された、少なくとも1つの層などの表面処理を有する成形セラミックハニカム構造を指しうる。ハニカム構造の同じ位置に複数の層が施されていてもよい。層などの表面処理は、無機又は有機、あるいはその両方でありうる。例えば、ハニカム体は、1つ以上の実施形態では、コージエライト又は他のセラミック材料から形成することができ、コージエライトハニカム構造の表面に施された多孔質無機層を有する。層は、「濾過材料」であってよく、これは、壁を通じて及び壁に局所的に、並びにハニカム体を通じて全体的に、高められた濾過効率を提供することである。濾過材料は、排気流のガス状混合物の成分と反応しないという点で、触媒的に活性であるとは見なされない。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「未焼成」又は「未焼成セラミック」は同じ意味で用いられ、特に明記されていない限り、未焼結の材料を指す。
【0035】
1つ以上の実施形態のハニカム体は、ハニカム構造と、該ハニカム構造の1つ以上の壁に配置された層とを含みうる。幾つかの実施形態では、層は、ハニカム構造内に存在する壁の表面に施され、この壁は、複数の内部チャネルを画成する表面を有する。内部チャネルは、存在する場合には、例えば、円、楕円形、三角形、正方形、五角形、六角形、又はこれらのいずれかのモザイク式の組合せなど、さまざまな断面形状を有することができ、任意の適切な幾何学的構成で配置することができる。内部チャネルは、存在する場合には、離散していても交差していてもよく、ハニカム体を通って、その第1の端部から該第1の端部の反対側にある第2の端部まで延在しうる。
【0036】
次に、図1を参照すると、本明細書に示され、説明される1つ以上の実施形態によるハニカム体100が示されている。ハニカム体100は、実施形態では、複数の内部チャネル110を画成する複数の壁115を含みうる。複数の内部チャネル110及び交差するチャネル壁115は、ハニカム体の第1の端部105と第2の端部135との間に延在する。ハニカム体は、第1の端部105及び第2の端部135の一方又は両方が閉栓した1つ以上のチャネルを有しうる。ハニカム体の閉栓したチャネルのパターンは限定されない。幾つかの実施形態では、ハニカム体の一方の端部の閉栓しているチャネルと閉栓していないチャネルのパターンは、ハニカム体の一方の端部の交互のチャネルが閉栓しているチェッカーボードパターンでありうる。幾つかの実施形態では、ハニカム体の一方の端部の閉栓したチャネルは、他方の端部に、対応する閉栓していないチャネルを有しており、ハニカム体の一方の端部の閉栓していないチャネルは、他方の端部に、対応する閉栓したチャネルを有している。したがって、幾つかの実施形態では、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)などの微粒子フィルタは、多孔質セル壁によって境界され分離された平行チャネルのアレイによって形成されたハニカム構造を含み、このチャネルの一部はブロック又は閉栓されており、例えば幾つかのチャネルはフィルタ入口で閉栓されており、残りのチャネルはフィルタ出口で閉栓されている。したがって、濾過される排ガスは、閉栓されていない入口チャネルに入り、チャネル壁を通過し、閉栓されていない出口チャネルを介してフィルタから出る。ガスがフィルタを横断するときに、入口チャネル壁の上又は内部に微粒子が捕捉される。
【0037】
1つ以上の実施形態では、ハニカム体は、コージエライト、チタン酸アルミニウム、頑火輝石、ムライト、フォルステライト、コランダム(SiC)、スピネル、サフィリン、及びペリクレースから形成することができる。概して、コージエライトは、式(Mg,Fe)Al(SiAlO18)に従った組成を有する固溶体である。幾つかの実施形態では、例えばセラミック原材料の粒子サイズを変化させることによって、セラミック材料の細孔径を制御することができ、セラミック材料の気孔率を制御することができ、かつセラミック材料の細孔径分布を制御することができる。加えて、ハニカム体を形成するために用いられるセラミックバッチに、細孔形成剤を含めることができる。
【0038】
幾つかの実施形態では、ハニカム体の壁は、25μm以上~250μm以下、例えば45μm以上~230μm以下、65μm以上~210μm以下、65μm以上~190μm以下、又は85μm以上~170μm以下の平均厚さを有しうる。ハニカム体の壁は、バルク部分(本明細書ではバルクとも呼ばれる)と表面部分(本明細書では表面とも呼ばれる)とからなるベース壁部分を有するものと説明することができる。壁の表面部分は、ハニカム体のバルク部分に向かって、ハニカム体の壁の表面から壁内へと延びる。表面部分は、ハニカム体の壁のベース壁部分に0(ゼロ)から約10μmの深さまで延在しうる。幾つかの実施形態では、表面部分は、壁のベース壁部分内へと約5μm、約7μm、又は約9μm、延在しうる(すなわち、深さ0(ゼロ))。ハニカム体のバルク部分は、表面部分を差し引いた壁の厚さを構成する。したがって、ハニカム体のバルク部分は、次式によって決定することができる:
全体-2t表面
ここで、t全体は壁の全厚であり、t表面は壁の表面の厚さである。
【0039】
1つ以上の実施形態では、ハニカム体のバルクは、7μm以上~25μm以下、例えば12μm以上~22μm以下、又は12μm以上~18μm以下のバルク平均細孔径を有する。例えば、幾つかの実施形態では、ハニカム体のバルクは、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、約15μm、約16μm、約17μm、約18μm、約19μm、又は約20μmのバルク平均細孔径を有しうる。概して、所与の材料の細孔径は、統計的分布で存在する。したがって、「メジアン細孔径」又は「D50」という用語は、すべての細孔の統計的分布に基づいて、細孔の50%以下の細孔径、及び細孔の残りの50%の細孔径を指す。セラミック体の細孔は、次のうちの少なくとも1つによって製造することができる:(1)無機バッチ材料の粒径及びサイズ分布;(2)炉/熱処理の焼成時間及び温度スケジュール;(3)炉の雰囲気(例えば、低い又は高い酸素及び/又は水分含有量)、並びに;(4)例えば、ポリマー及びポリマー粒子、デンプン、木粉、中空無機粒子、及び/又はグラファイト/炭素粒子などの細孔形成剤。
【0040】
幾つかの実施形態では、ハニカム体のバルクは、水銀圧入ポロシメトリーで測定して、コーティングを除いて、50%以上~70%以下のバルク気孔率を有しうる。表面気孔率を測定するための方法には、走査型電子顕微鏡(SEM)が含まれ、この方法は、特に、互いに独立した表面気孔率及びバルク気孔率の測定に役立つ。1つ以上の実施形態では、ハニカム体のバルク気孔率は、例えば、70%未満、65%未満、60%、58%未満、56%未満、54%未満、又は52%未満でありうる。
【0041】
1つ以上の実施形態では、ハニカム体の表面部分は、7μm以上~20μm以下、例えば8μm以上~15μm以下、又は10μm以上~14μm以下の表面メジアン細孔径を有する。例えば、幾つかの実施形態では、ハニカム体の表面は、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、又は約15μmの表面メジアン細孔径を有しうる。
【0042】
幾つかの実施形態では、ハニカム体の表面は、層の適用前に、SEMで測定して、35%以上~50%以下の表面気孔率を有しうる。1つ以上の実施形態では、ハニカム体の表面気孔率は、例えば、65%未満、例えば60%未満、55%未満、50%未満、48%未満、46%未満、44%未満、42%未満、40%未満、48%未満、又は36%未満でありうる。
【0043】
次に図3及び図4を参照すると、微粒子フィルタ300の形態をしたハニカム体が概略的に示されている。微粒子フィルタ300は、ガソリンエンジンから放出される排ガス流などの排ガス流350から微粒子物質濾過するためのウォールフロー型フィルタとして使用することができ、この場合、微粒子フィルタ300はガソリン微粒子フィルタである。微粒子フィルタ300は、概して、入口端302と出口端304との間に延在し、全体の長さLを画成する、複数のチャネル301又はセルを有するハニカム体を含む。微粒子フィルタ300のチャネル301は、入口端302から出口端304まで延在する複数の交差するチャネル壁306によって形成され、かつそれらによって少なくとも部分的に画成される。微粒子フィルタ300はまた、複数のチャネル301を取り囲む外皮層305も含みうる。この外皮層305は、チャネル壁306の形成中に押し出されてもよく、あるいは、チャネルの外周部分に外皮用セメントを施すことなどによって、後で施された外皮層として後の処理において形成されてもよい。
【0044】
図3の微粒子フィルタ300の軸方向断面が図4に示されている。幾つかの実施形態では、ある特定のチャネルが入口チャネル308として指定され、ある特定の他のチャネルが出口チャネル310として指定される。微粒子フィルタ300の幾つかの実施形態では、チャネルの少なくとも第1のセットは、プラグ312で閉栓されうる。概して、プラグ312は、チャネル301の端部(すなわち、入口端又は出口端)に近接して配置される。プラグは、概して、図3に示されるチェッカーボードパターンなど、予め定義されたパターンで配置され、チャネルは1つおきに端部が閉栓される。入口チャネル308は、出口端304又はその近くで閉栓されてよく、出口チャネル310は、図3に示されるように、入口チャネルには対応していないチャネルの入口端302又はその近くで閉栓されうる。したがって、各セルは、微粒子フィルタの一方の端部又はその近くでのみ、閉栓されうる。
【0045】
図3は、概して、チェッカーボードの閉栓パターンを示しているが、別の閉栓パターンを多孔質セラミックハニカム物品に使用してもよいものと理解されたい。本明細書に開示される実施形態では、微粒子フィルタ300は、1平方インチあたり最大で約600チャネル(cpsi)までのチャネル密度で形成されうる。例えば、幾つかの実施形態では、微粒子フィルタ100は、約100cpsi(約15.5セル/cm)~約600cpsi(約93.0セル/cm)の範囲のチャネル密度を有しうる。幾つかの他の実施形態では、微粒子フィルタ100は、約100cpsi(約15.5セル/cm)~約400cpsi(約62.0セル/cm)、又はさらには約200cpsi(約31.0セル/cm)~約300cpsi(約46.5セル/cm)の範囲のチャネル密度を有しうる。
【0046】
本明細書に開示される実施形態では、微粒子フィルタ300のチャネル壁306は、約4ミル(101.6μm)を超える厚さを有しうる。例えば、幾つかの実施形態では、チャネル壁306の厚さは、約4ミルから最大で約30ミル(762μm)の範囲でありうる。幾つかの他の実施形態では、チャネル壁306の厚さは、約7ミル(177.8μm)~約20ミル(508μm)の範囲でありうる。
【0047】
さまざまな実施形態では、ハニカム体は、ガス流から微粒子物質を濾過するように構成される。したがって、ハニカム体のバルク及び表面の両方のメジアン細孔径、気孔率、形状、及び他の設計の態様は、ハニカム体のこれらの濾過要件を考慮して選択される。一例として、図2の実施形態に示されるように、ハニカム体200の壁210は、その上に配置された層220を有し、該層は、好ましくは、焼結又は熱処理による他の方法で結合される。層220は、ハニカム体200の壁210上に堆積された粒子225を含み、例えば煤及び灰などの微粒子物質がガスの流れ230とともにハニカム体から出るのを防ぐのに役立ち、かつ微粒子物質がハニカム体200の壁210のベース壁部分を詰まらせるのを防ぐのに役立ちうる。このように、実施形態によれば、層220は、一次濾過成分として機能することができ、一方、ハニカム体のベース壁部分は、例えばこのような層のない従来のハニカム体と比較して、圧力損失を最小限に抑えるように構成することができる。本明細書で用いられる場合、圧力損失は、差圧センサを使用して測定され、フィルタの軸方向長さ全体にわたる圧力の降下を測定する。層220の細孔径はベース壁部分の細孔径よりも小さいことから、この層は小さいサイズの微粒子物質の大部分を濾過するが、ハニカム体フィルタの壁のベース壁部分は、大きいサイズの微粒子物質の一部を濾過するのに効果的であると予想される。本明細書にさらに詳細に説明されるように、ハニカム体は、該ハニカム体の壁の少なくとも幾つかの表面上に薄く高多孔性の層を形成することを可能にする適切な方法(例えば、火炎堆積法など)によって形成することができる。
【0048】
1つ以上の実施形態では、ハニカム体の壁に配置された層の気孔率は、SEMで測定して、50%以上、例えば55%超、例えば60%超、例えば65%超、例えば70%超、例えば75%超、例えば80%超、例えば90%超である。他の実施形態では、ハニカム体の壁に配置された層の気孔率は、92%以上、例えば93%以上、又は94%以上である。さらに他の実施形態では、ハニカム体の壁に配置された層の気孔率は、95%以上、例えば96%以上、又は97%以上である。さまざまな実施形態では、ハニカム体の壁上に配置された層の気孔率は、99%以下、例えば、97%以下、95%以下、94%以下、又は93%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下である。ハニカム体の壁上の層の気孔率は、その上に層を含まない同一のハニカム体の圧力損失と比較して、ハニカム体の圧力損失に大きな影響を与えることなく、層をハニカム本体に施すことを可能にする。SEM及びX線トモグラフィは、表面気孔率及びバルク気孔率を互いに独立して測定するのに有用である。密度計算による気孔率の取得には、無機層の重量とその厚さを測定して層密度を取得すること、次式に従って層の気孔率を計算することが含まれる:層気孔率=1-層密度/無機材料密度。一例として、ムライトを含む層では、「無機材料密度」はムライトの密度である。
【0049】
上記のように、ハニカム体の壁上の層は、ハニカム体の壁のベース壁部分の厚さと比較して非常に薄く、この層は、気孔率及び浸透率も有している。以下にさらに詳細に説明するように、ハニカム体上の層は、その層を非常に薄い層でハニカム本体の壁の表面に施すことを可能にする方法によって形成することができる。実施形態では、ハニカム体の壁のベース壁部分の層平均厚さは、0.5μm以上~30μm以下、例えば、0.5μm以上~20μm以下、0.5μm以上~10μm以下、例えば、0.5μm以上~5μm以下、1μm以上~4.5μm以下、1.5μm以上~4μm以下、又は2μm以上~3.5μm以下である。
【0050】
上に論じられているように、層は、無機層が小さいメジアン細孔径を有することを可能にする方法によって、ハニカム体の壁に施すことができる。この小さいメジアン細孔径は、図2を参照して上で説明したように、層が微粒子を高い割合で濾過し、ハニカムに浸透してハニカムの細孔内に定着することを防止することができるようにする。実施形態による層の小さいメジアン細孔径は、ハニカム体の濾過効率を高める。1つ以上の実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、0.1μm以上~5μm以下、例えば0.5μm以上~4μm以下、又は0.6μm以上~3μm以下のメジアン細孔径を有する。例えば、幾つかの実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、約0.5μm、約0.6μm、約0.7μm、約0.8μm、約0.9μm、約1μm、約2μm、約3μm、又は約4μmのメジアン細孔径を有しうる。
【0051】
ハニカム体の壁上の層は、実施形態では、ハニカム体の内部チャネルを画成する壁面の実質的に100%を覆うことができるが、他の実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、ハニカム体の内部チャネルを画成する壁面の実質的に100%未満を覆う。例えば、1つ以上の実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、ハニカム体の内部チャネルを画成する壁面の少なくとも70%を覆う、ハニカム体の内部チャネルを画成する壁面の少なくとも75%を覆う、ハニカム体の内部チャネルを画成する壁面の少なくとも80%を覆う、ハニカム体の内部チャネルを画成する壁面の少なくとも85%を覆う、ハニカム体の内部チャネルを画成する壁面の少なくとも90%を覆う、又はハニカム体の内部チャネルを画成する壁面の少なくとも85%を覆う。
【0052】
図1を参照して上で説明したように、ハニカム体は、第1の端部及び第2の端部を有しうる。第1の端部と第2の端部とは、軸方向長さによって分離されている。幾つかの実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、ハニカム体の軸方向の全長に延在しうる(すなわち、軸方向長さの100%に沿って延在する)。しかしながら、他の実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、軸方向長さの少なくとも60%に沿って延在し、例えば、軸方向長さの少なくとも65%に沿って延在し、軸方向長さの少なくとも70%に沿って延在し、軸方向長さの少なくとも75%に沿って延在し、軸方向長さの少なくとも80%に沿って延在し、軸方向長さの少なくとも85%に沿って延在し、軸方向長さの少なくとも90%に沿って延在し、又は軸方向長さの少なくとも95%に沿って延在する。
【0053】
実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、ハニカム体の第1の端部からハニカム体の第2の端部まで延在する。幾つかの実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、ハニカム体の第1の表面からハニカム体の第2の表面までの距離全体に延在する(すなわち、ハニカム体の第1の表面からハニカム体の第2の表面までの距離の100%に沿って延在する)。しかしながら、1つ以上の実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、ハニカム体の第1の表面とハニカム体の第2の表面との間の距離の60%に沿って延在し、例えば、ハニカム体の第1の表面とハニカム体の第2の表面との間の距離の65%に沿って延在し、ハニカム体の第1の表面とハニカム体の第2の表面との間の距離の70%に沿って延在し、ハニカム体の第1の表面とハニカム体の第2の表面との間の距離の75%に沿って延在し、ハニカム体の第1の表面とハニカム体の第2の表面との間の距離の80%に沿って延在し、ハニカム体の第1の表面とハニカム体の第2の表面との間の距離の85%に沿って延在し、ハニカム体の第1の表面とハニカム体の第2の表面との間の距離の90%に沿って延在し、又はハニカム体の第1の表面とハニカム体の第2の表面との間の距離の95%に沿って延在する。
【0054】
1つ以上の実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、連続コーティングとして壁面上に配置される。本明細書で用いられる場合、「連続コーティング」とは、領域のどの部分も実質的にむき出しになっていない領域であるか、又は層材料を含まない。1つ以上の実施形態では、層の少なくとも50%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置され、例えば、層の少なくとも60%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置され、層の少なくとも70%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置され、層の少なくとも80%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置され、層の少なくとも90%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置され、層の少なくとも92%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置され、層の少なくとも94%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置され、層の少なくとも96%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置され、又は層の少なくとも98%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置される。他の実施形態では、層の100%が連続層としてハニカム体の壁面上に配置される。
【0055】
1つ以上の実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、離散的な堆積物又は不連続なコーティングの表面処理として、壁面上に配置される。この不連続なコーティングは、層が存在しないむき出しの壁の個別のセクションを有しうる。全体として、不連続コーティングは、各離散セクションによるカバレッジの合計に基づいて、壁に合計で70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97.5%以上、99%以上のカバレッジを提供しうる。
【0056】
上述のように、特定の理論に縛られはしないが、ハニカム体上の層は、ハニカム体の設計をより柔軟に行うことができるハニカム体の一次濾過成分であることから、実施形態のハニカム本体によって低い圧力損失が実現されると考えられる。実施形態によるハニカム体上の層の薄い厚さ及び気孔率と組み合わせて低い圧力損失を有するハニカム体を選択することにより、従来のハニカム体と比較した場合に、実施形態のハニカム体が低い圧力損失を有することを可能にする。実施形態では、層は、ハニカム体上で0.1~30g/Lの範囲である。実施形態では、層は、0.2~20g/L、0.3~25g/L、0.4~20g/L、1~10g/Lの範囲で存在しうる幾つかの実施形態では、ハニカム体全体にわたる圧力損失(すなわち、煤又は灰のないクリーン圧力損失)は、薄い多孔質無機層のないハニカムと比較して、10%以下、例えば9%以下、又は8%以下である。他の実施形態では、ハニカム体全体にわたる圧力損失は、7%以下、例えば6%以下である。さらに他の実施形態では、ハニカム体全体にわたる圧力損失は、5%以下、例えば4%以下、又は3%以下である。
【0057】
上述のように、特定の理論に縛られはしないが、ハニカム体の壁上の層の小さい細孔径により、ハニカム体は、該ハニカム体に灰又は煤の蓄積が起こる前でも、良好な濾過効率を有することが可能となる。ハニカム体の濾過効率は、本明細書では、Tandon et al., 65 Chemical engineering Science 4751-60 (2010)に概説されているプロトコルを使用して測定される。本明細書で用いられる場合、ハニカム体の初期濾過効率とは、測定可能な煤又は灰の負荷を含まない、新しい又は再生されたハニカム体など、クリーンな状態のハニカム体を指す。実施形態では、ハニカム体の初期濾過効率(すなわち、クリーン濾過効率)は、70%以上、例えば80%以上、又は85%以上である。さらに他の実施形態では、ハニカム体の初期濾過効率は、90%超、例えば93%以上、又は95%以上、又は98%以上である。
【0058】
実施形態によるハニカム体の壁上の層は、薄く、ある気孔率を有しており、幾つかの実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、良好な化学的耐久性及び物理的安定性も有している。特に、層材料がハニカム体の壁に施された後に、固化、焼結、又は他の方法でハニカム体の表面に結合される場合について、以下により詳細に論じられる。ハニカム体上の層の化学的耐久性及び物理的安定性は、実施形態では、ハニカム体をバーンアウトサイクル及び老化試験を含む試験サイクルに供し、試験サイクルの前後の初期濾過効率を測定することによって決定することができる。例えば、ハニカム体の化学耐久性及び物理的安定性を測定するための1つの例示的な方法は、ハニカム体の初期濾過効率を測定する工程;シミュレートした動作条件下でハニカム体に煤を負荷する工程;蓄積した煤を約650℃で焼尽させる工程;1050℃及び10%の湿度で12時間の老化試験に供する工程;及び、ハニカム体の濾過効率を測定する工程を含む。煤の蓄積及び焼尽サイクルを複数回行うことができる。試験サイクル前から試験サイクル後までの濾過効率のわずかな変化(ΔFE)は、ハニカム体上の層のより良好な化学的耐久性及び物理的安定性を示唆している。幾つかの実施形態では、ΔFEは5%以下、例えば4%以下、又は3%以下である。他の実施形態では、ΔFEは2%以下、又は1%以下である。
【0059】
幾つかの実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、SiO、Al、MgO、ZrO、CaO、TiO、CeO、NaO、Pt、Pd、Ag、Cu、Fe、Ni、及びそれらの混合物からなる群より選択されるセラミック成分など、セラミック成分の1つ又は混合物から構成されうる。したがって、ハニカム体の壁上の層は、酸化物セラミック又はケイ酸アルミニウムを含みうる。以下により詳細に論じられるように、実施形態によるハニカム体上の層を製造する方法は、所与の用途のための層組成物のカスタマイズを可能にしうる。これは、例えば、ハニカム体の物理的特性(例えば、熱膨張係数(CTE)及びヤング率など)に一致するようにセラミック成分を組み合わせることができ、これにより、ハニカム体の物理的安定性を改善することができることから、有益でありうる。幾つかの実施形態では、ハニカム体の壁上の層は、コージエライト、チタン酸アルミニウム、頑火輝石、ムライト、フォルステライト、コランダム(SiC)、スピネル、サフィリン、及びペリクレースを含みうる。幾つかの実施形態では、コージエライト、チタン酸アルミニウム、頑火輝石、ムライト、フォルステライト、コランダム(SiC)、スピネル、サフィリン、及び/又はペリクレースは、合成である。1つ以上の実施形態では、無機層は、合成ムライトを含む。ムライトは、希少なケイ酸アルミニウム鉱物であり、一般構造xAl・ySiOに従って、2つの化学量論的形態、3Al・2SiO又は2Al・SiOを形成しうる。合成ムライトの調製には、1.5≦x/y≦2を目標とするプロセス制御、又は2.9~3.8の範囲のAl/Si質量比を目標とするプロセス制御が含まれる。
【0060】
幾つかの実施形態では、ハニカム体の壁上の層の組成は、ハニカム体の組成と同じである。しかしながら、他の実施形態では、層の組成は、ハニカム体の組成とは異なっている。
【0061】
層は、1つ以上の実施形態によれば、≧10-15の浸透率を有する。幾つかの実施形態では、層は、≧10-14、例えば≧10-13、又は≧10-12の浸透率を有する。
【0062】
幾つかの実施形態では、層は、ムライトで構成されており、5nm以上~3μm以下の平均粒子サイズを有する。このような実施形態では、層の厚さ及び気孔率は、ハニカム体の所望の特性に応じた厚さでありうる。
【0063】
幾つかの実施形態では、層は、アルミナで構成されており、10nm以上~3μm以下の平均粒子サイズを有する。幾つかの実施形態では、平均粒子サイズは、100nm以上~3μm以下、例えば、500nm以上~3μm以下、又は500nm以上~2μm以下である。このような実施形態では、ハニカム体の層の厚さ及び気孔率は、ハニカム体の所望の特性に応じた厚さでありうる。
【0064】
層の特性、ひいてはハニカム体全体の特性は、小さいメジアン細孔径を有する薄い多孔質層をハニカム体に施す能力に起因するものである。
【0065】
幾つかの本明細書に開示され、説明された実施形態によるハニカム体の製造方法は、層前駆体をガス状キャリア流体によって運ぶことができるように、層前駆体を噴霧、気化、又は霧状にする工程;噴霧された、気化された、又は霧状の層前駆体をセラミックハニカム構造上に堆積する工程;及び、噴霧された、気化された、又は霧状の層前駆体をセラミックハニカム構造に結合して、セラミックハニカム構造上に層を形成する工程を含む。実施形態では、ガス状キャリア流体は、例えば、空気、酸素、又は窒素でありうる。幾つかの実施形態では、層前駆体は、該層前駆体が噴霧され、気化され、又は霧状になる前に、溶媒(メトキシエタノール、エタノール、水、及びそれらの混合物からなる群より選択される溶媒など)と組み合わせることができる。層前駆体は、1つ以上の実施形態では、セラミックハニカム構造の内部チャネルに吹き込まれる。層前駆体粒子は、層前駆体がセラミックハニカム構造上に堆積された後に、水分(例えば、蒸気又は湿度など)、熱、又は放射(例えば、マイクロ波など)を層前駆体に適用することを含む適切な方法によって、セラミックハニカム構造に結合することができる。
【0066】
幾つかの本明細書に開示され、説明された実施形態によるハニカム体の製造方法は、セラミックハニカム構造への層の火炎熱分解堆積を含み、これは、気孔率及び小さいメジアン細孔径を有する非常に薄い層の堆積をもたらす。実施形態では、ハニカム体の製造方法は、層前駆体を気化ガスと接触させることにより、層前駆体を気化させて気化層前駆体を形成する工程(層前駆体は、前駆体材料及び溶媒を含みうる);気化層前駆体を火炎と接触させることによって気化層前駆体を分解する工程;気化層前駆体をセラミックハニカム構造上に堆積させる工程;及び、気化層前駆体を焼結してハニカム体を形成する工程を含み、該ハニカム体は、セラミックハニカム構造の壁の少なくとも一部をコーティングする層を含む。1つ以上の実施形態では、層前駆体は、CaO、Ca(OH)、CaCO、MgO、Mg(OH)、MgCO、SiO、Al、Al(OH)、アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0067】
幾つかの実施形態では、ハニカム体を形成する方法は、セラミック前駆体材料及び溶媒を含む層前駆体を形成又は得る工程を含む。層前駆体のセラミック前駆体材料は、例えば、SiO、Al、TiO、MgO、ZrO、CaO、CeO、NaO、Pt、Pd、Ag、Cu、Fe、Niなどの供給源として機能する従来のセラミック原材料を含む。例えば、幾つかの実施形態では、セラミック前駆体材料は、オルトケイ酸テトラエチル、マグネシウムエトキシド及びアルミニウム(III)トリsec‐ブトキシド、トリメチルアルミニウム、AlCl、SiCl、Al(NO、アルミニウムイソプロポキシド、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びそれらの混合物からなる群より選択される。層前駆体に用いられる溶媒は、溶媒内のセラミック前駆体材料の懸濁液を維持することができる限り、特に制限されず、該溶媒は200℃未満の温度で気化させることができる。実施形態では、溶媒は、メトキシエタノール、エタノール、水、キシレン、メタノール、酢酸エチル、ベンゼン及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0068】
幾つかの実施形態では、層前駆体は、該層前駆体を気化流体と接触させることによって気化されて、気化層前駆体を形成する。1つ以上の実施形態では、気化流体は、酸素(O)、水(蒸気、HO)、窒素(N)、及びそれらの混合物からなる群より選択される。気化流体は、層前駆体の流量と比較して高い流量で流れ、その結果、気化流体が層前駆体に接触すると、層前駆体は、気化流体によって分子レベルへと気化される。例えば、実施形態では、気化流体は、3L/分以上~100L/分以下、例えば、4L/分以上~6.5L/分以下、又は25L/分以上~35L/分以下の流量で流れるガスである。他の実施形態では、気化ガスは60L/分以上~70L/分以下の流量で流れる。
【0069】
ガス状気化流体の流量は、実施形態では、層前駆体の流量より大きい。したがって、1つ以上の実施形態では、層前駆体は、1.0mL/分以上~50mL/分以下、例えば、3mL/分以上~5mL/分以下、又は25mL/分以上~35mL/分以下の流量で流れる。気化流体の流量及び層前駆体の流量は、層前駆体が気化流体と接触したときに気化するように制御することができる。
【0070】
幾つかの実施形態によれば、層前駆体が気化流体と接触して気化層前駆体を形成すると、該気化層前駆体を火炎と接触させることによって気化層前駆体が分解される。火炎は、例えば、酸素、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、又はそれらの混合物などの適切な燃焼ガスを燃焼させることによって形成することができる。気化層前駆体が火炎に接触すると、火炎からのエネルギーによって気化層前駆体が原子レベルの成分へと分解し、溶媒は燃焼して、例えば、水素(H)、二酸化炭素(CO)、及び一酸化炭素(CO)などのガスとなる。この燃焼により、ガス中に十分に分散されたセラミック前駆体材料の元素成分が提供される。1つ以上の実施形態では、火炎温度は800K以上~2500K以下までである。これにより、気化層前駆体をハニカム体の方へと容易に導き、ハニカム体上に堆積させることができる。実施形態では、1つの火炎を使用して層前駆体を分解することができるが、他の実施形態では、2つ以上の火炎を使用して層前駆体を分解することができるものと理解されたい。さらに他の実施形態では、気化層前駆体は、火炎によって分解されない。
【0071】
1つ以上の実施形態では、流体に十分に分散している気化層前駆体は、風洞又は差圧などを使用して気化層前駆体をハニカム体に導くことなどによって、ハニカム体へと導かれる。それによって、気化層前駆体はハニカム体上に堆積される。幾つかの実施形態では、ハニカム体は、該ハニカム体への気化層前駆体の堆積中、例えばハニカム体の第1の端105部などの一方の端部が閉栓された1つ以上のチャネルを有しうる。閉栓されたチャネルは、幾つかの実施形態では、層前駆体の堆積後に除去することができる。しかしながら、他の実施形態では、チャネルは、層前駆体の堆積後でも閉栓されたままでありうる。ハニカム体の閉栓チャネルのパターンは限定されず、幾つかの実施形態では、ハニカム体のすべてのチャネルは、一方の端部で閉栓されうる。他の実施形態では、ハニカム体のチャネルの一部のみを一方の端部で閉栓させることができる。このような実施形態では、ハニカム体の一方の端部の閉栓しているチャネル及び閉栓していないチャネルのパターンは限定されず、例えば、ハニカム体の一方の端部の交互のチャネルが閉栓しているチェッカーボードパターンであってもよい。気化層前駆体の堆積中にハニカム体の一方の端部でチャネルのすべて又は一部を閉栓することによって、気化層前駆体をハニカム体100のチャネル110内に均一に分布させることができる。
【0072】
気化層前駆体は、幾つかの実施形態では、非晶相としてハニカム体上に堆積される。例えば、上に論じられているように、セラミック前駆体材料は、分解層前駆体の元素レベルへと分解することができる。元素成分は、ハニカム体に堆積されるときに元素レベルで一緒に混合することができる。例えば、図3Aは、ハニカム体の表面に堆積された5SiO・2Al・2MgO分解層前駆体の非晶相の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、図3Bは、ハニカム体の表面に堆積された2SiO・3Al分解層前駆体の非晶相のSEM画像であり、図3Cは、ハニカム体の表面に堆積された2SiO・5Al・4MgO分解層前駆体の非晶相のSEM画像であり、図3Dは、ハニカム体の表面に堆積されたAl・MgO分解層前駆体の非晶相のSEM画像である。図3A~3Dの各々に見られるように、元素レベルの粒子は、ハニカム体上の非晶相に分散している。この非晶相では、ハニカム体上に堆積されている分解層前駆体は、例えば、層の密度対層の無機材料の密度に従って計算して、95%以上、例えば96%以上、又は97%以上の気孔率を有する。他の実施形態では、非晶相分解層前駆体は、98%以上、又は99%以上の気孔率を有する。
【0073】
非晶質気化層前駆体の気孔率及び細孔径、並びに最終的には、ハニカム体上の層気孔率及び細孔径は、幾つかの実施形態では、気化層の平均粒子サイズによって変更することができる。気化層の平均粒子サイズは、層前駆体の流量によって制御することができる。例えば、図4A~4Dに示されるように、気化層前駆体の平均粒子サイズは、層前駆体の流量が増加するにつれて増加する。図4Aは、3mL/分の層前駆体流量で堆積された非晶質5SiO・2Al・2MgO分解層前駆体の透過電子顕微鏡(TEM)画像であり、図4Bは、1mL/分の層前駆体流量で堆積された非晶質5SiO・2Al・2MgO分解層前駆体のTEM画像であり、図4Cは、1mL/分の層前駆体流量で堆積された非晶質2SiO・3Al分解層前駆体のTEM画像であり、図4Dは、1mL/分の層前駆体流量を有する両方の火炎を用いた二重炎を使用して堆積された、非晶質5SiO・2Al・2MgO分解層前駆体及び非晶質2SiO・3Al分解層前駆体のTEM画像である。図4A~4Dに示されるように、分解層前駆体の元素は、原子レベルで混合され、層前駆体の流量に応じて、さまざまな粒子サイズを有する均質な相を形成した。しかしながら、実施形態では、気化層前駆体の平均粒子サイズは、5nm以上~3μm以下、例えば、100nm以上~3μm以下、又は200nm以上~1μm以下である。他の実施形態では、気化層前駆体の平均粒子サイズは、15nm以上~500nm以下、例えば、20nm以上~200nm以下、又は25nm以上~100nm以下である。
【0074】
上記のように、化学的耐久性及び物理的安定性を、幾つかの本明細書に開示され、説明された実施形態によるハニカム体の壁上の層に付与することができる。これらの特性を改善するために、気化層前駆体は、1つ以上の実施形態では、ハニカム体上に堆積された後に焼結又は他の方法でハニカム体に結合されて、ハニカム体の少なくとも一部をコーティングする結晶相として層を形成することができる。実施形態によれば、気化層前駆体を焼結することは、気化層前駆体を、それがハニカム体上に堆積された後に、950℃以上~1150℃以下、例えば、1000℃以上~1100℃以下、1025℃以上~1075℃以下、又は約1050℃の温度に加熱することを含む。焼結の持続時間は、幾つかの実施形態では、20分以上~2.0時間以下、例えば、30分以上~1.5時間以下、又は45分以上~1.0時間以下である。気化層前駆体を焼結してハニカム体を形成した後、層は結晶相である。例えば、図5Aは、ハニカム体上に堆積された、焼結された結晶相5SiO・2Al・2MgOセラミック層のSEM画像であり、図5Bは、ハニカム体上に堆積された、焼結された結晶相2SiO・3Alセラミック層のSEM画像であり、図5Cは、ハニカム体上に堆積された、焼結された結晶相2SiO・5Al・4MgOセラミック層のSEM画像であり、図5Dは、ハニカム体上に堆積された、焼結された結晶相Al・MgOセラミック層のSEM画像である。実施形態によれば、焼結された結晶相層は、SEMで測定して、90%超、例えば、91%以上、又は92%以上の気孔率を有する。他の実施形態では、焼結された結晶相層は、93%以上、例えば、94%以上、又は95%以上の気孔率を有する。さらに他の実施形態では、焼結された結晶相層は、96%以上、例えば、97%以上、又は98%以上の気孔率を有する。
【0075】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、微粒子フィルタは、濾過効率によって特徴付けられ、流入するガス流から特定の割合の微粒子を除去する能力を表す。微粒子は、それらの質量濃度又はそれらの数濃度によって特徴付けることができる。両方の値は通常、密接に相関する。単位微粒子質量又は単位体積あたりの数で一般的な濃度C微粒子を使用すると、濾過効率FEは、通常、次式から得られる:
【0076】
【数8】
【0077】
濾過効率の実験的測定にはさまざまな手段が存在する。一般的な実験装置の概略図が図20に示されている。一般的な実験装置は、規定流量に調整されたガス供給、例えば空気、粒子発生器、例えばある特定の速度及び濃度で煤粒子を生成するもの、試験されるフィルタ試料、並びにフィルタ試料の入口及び出口にある2つの微粒子分析器を含む。
【0078】
実験は、制御された温度、例えば室温で行われる。本明細書で用いられる場合、「室温」とは、20℃の温度を指す。実験中、ガスの流れは一定の流量に調整される。次に、微粒子がガスに追加される。フィルタ試料全体にわたり、微粒子のある特定の部分が濾過によって除去され、これが入口及び出口の粒子濃度の差として測定される。このような実験の例は、従来の試料(比較)に対してプロットされた、本明細書に記載される実施形態に従って作られた2つの実験試料A及びBについて、図21に示されている。示されている例では、粒子は煤発生器で生成された煤粒子であり、体積流量は21m/時であった。試験は、室温及び大気圧で実施した。実験時間に対する、式(1)に従って入口及び出口の濃度から計算された濾過効率がプロットされている。t=0秒で粒子の投与が開始され、濾過効率が記録されている。異なるフィルタ試料について、濾過効率の異なる値が観察されている。
【0079】
図21に示されるように、すべての事例の濾過効率は時間とともに増加する。その理由は、蓄積された粒子自体(この事例では煤)が濾過媒体として機能し、全体的な効率が向上することである。これをより効果的に説明するためには、時間の代わりに、蓄積された煤の質量の関数として濾過をプロットすることが有益である。煤の質量は、時間の経過による、フィルタに入る煤とフィルタから出る煤の質量との差として得られる。この形式の図21のデータが、図22に提供されている。
【0080】
t=0秒又は0g/Lの煤負荷に等しい時間である開始時の濾過効率は、通常、「クリーン」又は「フレッシュ」濾過効率と呼ばれ、フィルタ試料の特性によってのみ決定される。濾過理論に基づき、濾過プロセスは、主に粒子のサイズに応じて、さまざまな機構に基づいて行われる。濾過媒体を説明する一般的なモデルは、ユニットコレクタのアセンブリの概念である。上記の実験の煤発生器によって生成された煤では、支配的な濾過機構は、小さい煤粒子のブラウン運動に基づくものである。ブラウン運動機構ηBMに基づくユニットコレクタの収集効率は、次のように説明することができる:
【0081】
【数9】
【0082】
は、主に気孔率ε及びペクレ数であるPeに依存するパラメータである。ペクレ数は、細孔空間内の流体速度u/εと、ブラウン運動DBMのコレクタ直径dと拡散係数との間の比に比例する。
【0083】
【数10】
【0084】
この収集機構の粒子サイズd及び温度T依存性は、ブラウン拡散係数DBM~(T/d )を介して導入される。濾過媒体の微細構造に依存するすべてのパラメータを単一の変数K微細構造に組み合わせると、式(2)は式(4)のように書き直すことができる:
【0085】
【数11】
【0086】
流体速度uは、体積流量を断面積又は濾過面積で割ることによって決定される。したがって、微細構造の特性に加えて、所与の流量及び粒子サイズでの濾過性能は、フィルタの濾過面積に比例する。したがって、異なる微細構造を有する材料を比較するために、濾過効率は濾過面積によって正規化される。交互に閉栓されたチャネルを有するハニカムウォールフローフィルタでは、m単位の濾過表面積FSAは、式(5)から得ることができる:
【0087】
【数12】
【0088】
式(5)では、GSAは、フィルタの体積あたりの幾何学的表面積であり、Vフィルタはフィルタ試料の体積である。係数1/2は、チャネルの半分のみが、ガスが多孔質フィルタ壁に入り、流れる入口チャネルを表すという事実に由来する。濾過面積(又は総濾過)は、総入口セル面積+総出口セル面積=総面積になるであろう。言い換えれば、式(5)では、総入口セル面積=総出口セル面積の場合、総入口セル面積は、総面積を2で割ることによって計算することができる。しかしながら、総入口セル面積が総出口セル面積と等しくない場合は、これを反映するように、方程式の分母を変更する必要があるであろう。
【0089】
濾過性能に加えて、フィルタは、一般に、流れに対する抵抗によって特徴付けられ、これは通常、所与の体積ガス流量での試料全体にわたる圧力損失として言及される。多くの場合、より高い濾過性能は、圧力損失又は流れに対する抵抗の増加と一致する。用途の観点からは、圧力損失は通常、ポンプ損失を意味するため、通常、できるだけ低い圧力損失を有することが望ましい。自動車用途では、これは、車両を推進するために利用可能な電力の低下、又は燃料効率の低下をもたらす。
【0090】
フィルタ試料の圧力損失挙動は、通常、所与の体積流量でフィルタ試料の上流と下流の圧力差を測定することによって評価される。実験室での測定では、これは室温及び異なる流量で行うことができる。
【0091】
1つ以上の実施形態によれば、本明細書に記載される実施形態に従って調製された微粒子フィルタは、入口チャネルの濾過面積に対して正規化された高い濾過効率を示す。したがって、1つ以上の実施形態によれば、本明細書に記載される微粒子フィルタは、自動車製造業者の工場で車両に取り付けられた直後に、新鮮な(新しい)状態で高い濾過効率を提供する。幾つかの実施形態では、この高い濾過効率は、低い圧力損失で提供される。
【0092】
本開示の特許請求の範囲は特定の理論によって制限されるべきではないが、微粒子フィルタの圧力損失は5つの主要な要因から構成されると考えられている。これらの要因には、フィルタの入口及び出口でのガス流の収縮及び膨張、入口及び出口チャネルに沿ったガス流の摩擦損失、並びに多孔質チャネル壁を横切るガス流の圧力損失が含まれる。
【0093】
概して、フィルタ全体にわたる圧力損失は、部品の直径、長さ、チャネルの水力直径、開口面積率などの巨視的な幾何学的パラメータ、並びに多孔質フィルタ壁の浸透率の影響を受ける。後者は唯一の材料特性であり、微細構造、例えば、気孔率、有効細孔径、及び細孔接続性によって規定される。細孔を通るガスの流れは層流であることから、壁を横切る摩擦損失は、多孔質壁を横切る経路全体によって決定される。
【0094】
圧力損失の入口及び出口の寄与は、次式によって説明することができる:
【0095】
【数13】
【0096】
ここで、Δpは圧力損失、ρはガスの密度、Qは体積流量、Vフィルタはフィルタの容積、Lはフィルタの長さ、OFAはフィルタの開口面積率、並びにζin及びζoutは、それぞれ経験的な収縮係数及び膨張係数である。
【0097】
フィルタ内部の圧力損失については、SAE Technical Paper2003-01-0842で式(26)として提供され、本明細書では式(8)として示されている式を使用することができる。
【0098】
【数14】
【0099】
ここで、新しい変数μは動的粘度、Q実効は実効体積流量、dは水力チャネルの直径、tは壁厚、Fは摩擦係数(正方形のチャネルではF=28.45)、及びκ有効は壁の有効透過率である。実効体積流量は、入口及び出口チャネルに沿った流量分布を考慮した因子による総流量とは異なる。Q実効=1.32*Qは、実験結果のより良好な説明をもたらすことが経験的にわかった。
【0100】
実験で測定された総圧力損失は、式(7)及び式(8)に記載される寄与の合計になるであろう。式(7)及び(8)では、すべてのパラメータが知られており、壁材料の有効浸透率を除いて容易に決定することができる。
【0101】
有効浸透率κ有効は、式(7)及び(8)を使用して実験データから抽出することができる。この目的のために、入口の収縮及び出口の膨張に起因する圧力損失の寄与である式(7)が実験的な圧力損失値から差し引かれ、式(9)が得られる。
【0102】
式(9):Δp(2,3,4)=Δp実験-Δp(1,5)
式(9)を式(8)と組み合わせて、有効壁浸透率κ有効収量について解く:
【0103】
【数15】
【0104】
押出成形されたハニカム体の多孔質壁の浸透率κは、通常、どちらも水銀ポロシメトリーで決定した、気孔率εと有効メジアン細孔径D50の2乗との積を66.7で割ることによって、かなりよく説明することができる。
【0105】
【数16】
【0106】
浸透率κの多孔質壁の「押出成形されたままの」ベース壁部分にコーティング又は他の変更を適用すると、浸透率は、新しい有効浸透率値κ有効に変化し、これは、例えば式(10)を使用して実験的な圧力損失値から決定することができる。ハニカム壁の押出成形されたままのベース壁部分の浸透率に対するこの浸透率の変化は、「正規化された浸透率値(NPV)」によっても説明することができ、これは、変更されていない元の微細構造の浸透率に対する有効浸透率の比率を表す。
【0107】
式(12) NPV=κ有効/(ε D50 /66.7)むき出し
フィルタ試料のΔp実験を決定するための実験的な圧力損失測定は、所与の体積流量でフィルタ試料の上流と下流の圧力差を測定することによって評価することができる。実験室での測定では、これは室温及び異なる流量で行うことができる。
【0108】
上に論じられているように、微粒子フィルタは、濾過効率によって特徴付けられ、流入するガス流から特定の割合の微粒子を除去する能力を表す。微粒子は、それらの質量濃度又はそれらの数濃度によって特徴付けることができる。両方の値は通常、密接に相関する。単位微粒子質量又は単位体積あたりの数で一般的な濃度C微粒子を使用すると、濾過効率FEは、通常、上記式(1)から得られる。
【0109】
微粒子フィルタが室温、一定の流量で試験され、次に微粒子がガスに添加される、一般的な実験装置の概略図を使用して、図20に示されている。フィルタ試料全体にわたり、微粒子のある特定の部分が濾過によって除去され、これが入口及び出口の粒子濃度の差として測定される。
【0110】
上に論じられているように、t=0秒に等しい時間又は0g/Lの煤負荷である、最初の濾過効率は、通常、「クリーン」又は「フレッシュ」濾過効率と呼ばれ、フィルタ試料の特性によってのみ決定される。濾過理論に基づき、濾過プロセスは、主に粒子のサイズに応じて、さまざまな機構に基づいて行われる。濾過媒体を説明する一般的なモデルは、ユニットコレクタのアセンブリの概念である。上記の実験の煤発生器によって生成された煤では、支配的な濾過機構は、小さい煤粒子のブラウン運動に基づくものである。ブラウン運動機構ηBMに基づいたユニットコレクタの収集効率は、式(2)で表すことができる。上に論じられているように、ペクレ数は、上記式(3)に示されるように、細孔空間内の流体速度u/εと、ブラウン運動DBMのコレクタ直径dと拡散係数との間の比に比例する。
【0111】
SAE Technical Paper2012-01-0363は、「ランダム」な多孔質微細構造を備えたコーティングされていない押出成形フィルタでは、クリーン濾過効率を、式(13)の微視的及び巨視的フィルタ特性に比例する濾過特性パラメータA濾過と相関させることができると説明している:
【0112】
【数17】
【0113】
新しい変数として、式(13)は、フィルタ構造のセル密度としてCPSIを有している。クリーン濾過効率とこの濾過特性パラメータ(A濾過)との相関関係を、Y軸にクリーン濾過効率、X軸に濾過特性パラメータ(A濾過)を示すグラフにプロットすることができる。
【0114】
微細構造パラメータ、気孔率、及びメジアン細孔径からの寄与を、有効微細構造係数EMFと組み合わせることができる。有効気孔率及びメジアン細孔径が不明な材料では、この新しいパラメータを使用して、微細構造の有効特性を特徴付けることができる。この変数によって、実際の微細構造において、濾過が必ずしもフィルタ壁横切る細孔の全長に沿って起こるのではなく、かなりの程度、粒子の収集及び堆積に好ましい条件が存在する位置、例えば狭い開口部を備えた通路(「細孔ネック」)で、局所的に起こることを考慮することができる。幾つかの粒子が収集されるとすぐに、それらはこの細孔ネックをさらに狭くし、濾過プロセスをさらに加速する。したがって、新しいパラメータにより、不均質であり、かつランダムな細孔設計を有しない微細構造を考慮することができる。
【0115】
圧力損失に対して行われたことと同様に、新しい微細構造パラメータEMFを考慮するだけでなく、ランダムな微細構造を有する押出成形されたフィルタ体のベース壁部分のベース微細構造の特性について正規化することもまた有用である。後者の場合、EMFは、気孔率ε0.43をメジアン細孔径D50で割った値の5/3乗の比率として得られる。この正規化により、新しい正規化された微細構造濾過値NMFVが得られ、微細構造の濾過特性が次のように説明される:
式(14): NMFV=EMF/(ε0.43/D50 5/3ベース壁特性
1つ以上の実施形態によれば、例えば、クリーンな濾過の向上と組み合わせた、圧力損失を低く(変化)させる材料など、良好な(例えば、高い)正規化浸透率値(NPV)をもたらすと同時に、正規化された微細構造濾過値(NMFV)の増加をもたらす微粒子フィルタが提供される。
【0116】
上記のような濾過効率並びに圧力損失性能を、広範囲のフィルタ試料、並びに入口チャネルを画成する多孔質壁表面の複合微細構造(すなわち、入口チャネルは、本明細書の1つ以上の実施形態に従って記載されるような濾過材料堆積物から構成される)を備えた本開示に従って製造された多数の試料について試験した。濾過では、21m/時の流量での初期又はクリーン濾過効率(%単位)が考慮される。圧力損失は、室温及び357m/時の最高流量で評価された。
【0117】
ハニカム体及びハニカム体の製造方法が本明細書に記載されている。実施形態では、ハニカム体は、該ハニカム体の少なくとも1つの表面上の層を含む。層は、実施形態では、結晶構造、例えば50%以上の気孔率を有し、この層は、0.5μm以上~10μm以下の厚さを有するなど、薄層として施される。上述したさまざまな実施形態では、「ハニカム体」はセラミック「ハニカム体」であってよく、「層」は、セラミック「層」でありうるものと理解されたい。
【0118】
本明細書に開示及び記載される、番号が付された実施形態がここに提供される。
【実施例
【0119】
以下の実施例によって実施形態がさらに明らかになるであろう。
【0120】
実施例1
高い濾過効率及び低い圧力損失をもたらす微粒子フィルタの多孔質無機層の特性が提示される。P及びFEを、下層の多孔質セラミックハニカム体(多孔質無機層は存在しない)のクリーンな圧力損失及び濾過効率性能として定義し、かつP及びFEを、多孔質セラミックハニカム体及び多孔質無機層を含むクリーンなハニカムフィルタ体のクリーンな圧力損失及びクリーンな濾過効率性能として定義し、フィルタの性能に対する層の影響は、パラメータX=(FE-FE)P/(P-P)/FEによって特徴付けられる。パラメータXの定義において、微粒子フィルタのクリーンな状態は、煤の負荷がゼロに近い状態を表す。幾つかの実施形態では、層を備えた微粒子フィルタの性能は、X>2として記載されている。他の実施形態では、層を備えた微粒子フィルタの性能は、X>3として記載されている。さらに他の実施形態では、層を備えた微粒子フィルタの性能は、X>4として記載されている。さらに他の実施形態では、層を備えた微粒子フィルタの性能は、X>5として記載されている。幾つかの実施形態では、層の結果としての微粒子フィルタの圧力損失の増加は、25%未満である。他の実施形態では、層の結果としての微粒子フィルタの圧力損失の増加は、20%未満である。さらに他の実施形態では、層の結果としての微粒子フィルタの圧力損失の増加は、10%未満である。多孔質無機層形態パラメータYを、Y=(層気孔率^(6.5/Sqrt(層粒子サイズ)))*(1-層気孔率)/Sqrt(層粒子サイズ)として定義すると、層形態パラメータYと、層性能パラメータXを有する微粒子フィルタとの間に良好な相関関係が存在することが示される。これらの結果に基づいて、幾つかの実施形態では、層形態パラメータYは0.03超である。他の幾つかの実施形態では、層形態パラメータYは0.04超である。さらに他の実施形態では、層形態パラメータYは0.05超である。
【0121】
モデリングによって分析された実施形態が表1に列挙されている。表1の実施形態は、CPSIが200、壁厚が8.5μm、壁の気孔率が56%、壁の平均細孔径が13μmである、直径5.66インチ、長さ6インチのガソリン微粒子フィルタについて、気孔率、細孔径、及び層厚の異なる組合せを有するガソリン微粒子フィルタを表している。100kg/時の排気流量及び450℃で濾過効率及び圧力損失性能を評価した。
【0122】
【表1-1】
【0123】
【表1-2】
【0124】
図6~7では、表1の実施形態についての濾過効率と圧力損失の増加のグラフが提供されている。図7は、図6の圧力損失が最大で50%増加したことを示している。
【0125】
図8~9は、表1の実施形態のパラメータ「X」対圧力損失のグラフである。膜を備えた微粒子フィルタの性能は、X=(FE-FE0)*P0/FE0/(P-P0)として定義される性能パラメータXによって特徴付けられる。図9は、図8の圧力損失が最大で50%増加したことを示している。
【0126】
図10は、表1の実施形態における、膜形態パラメータY=(膜気孔率^(6.5/Sqrt(膜粒子サイズ)))*(1-膜気孔率)/Sqrt(膜粒子サイズ)と、微粒子フィルタ性能パラメータX=(FE-FE)*P/FE/(P-P)との間の相関関係である。
【0127】
実施例2
フィルタチャネルを部分的に覆い、高い濾過効率及び低い圧力損失をもたらす、微粒子フィルタの多孔質無機層の特性が提示される。P及びFEを、下層の多孔質セラミックハニカム体(多孔質無機層は存在しない)のクリーンな圧力損失及び濾過効率性能として定義し、かつP及びFEを、多孔質セラミックハニカム体及び多孔質無機層を含むクリーンなハニカムフィルタ体のクリーンな圧力損失及びクリーンな濾過効率性能として定義し、微粒子フィルタの性能に対する層の影響は、パラメータX=(FE-FE)P/(P-P)/FEによって特徴付けられる。パラメータXの定義において、微粒子フィルタのクリーンな状態は、煤の負荷がゼロに近い状態を表す。幾つかの実施形態では、層を備えた微粒子フィルタの性能は、X>1.7として記載されている。他の実施形態では、層を備えた微粒子フィルタの性能は、X>2として記載されている。さらに他の実施形態では、層を備えた微粒子フィルタの性能は、X>3として記載されている。さらに他の実施形態では、層を備えた微粒子フィルタの性能は、X>4として記載されている。幾つかの実施形態では、層の結果としての微粒子フィルタの圧力損失の増加は、25%未満である。他の実施形態では、層の結果としての微粒子フィルタの圧力損失の増加は、20%未満である。さらに他の実施形態では、層の結果としての微粒子フィルタの圧力損失の増加は、10%未満である。幾つかの実施形態では、チャネル壁の多孔質無機層カバレッジは70%超である。他の実施形態では、チャネル壁の多孔質無機層カバレッジは80%超である。さらに他の実施形態では、チャネル壁の多孔質無機層カバレッジは90%超である。
【0128】
モデリングによって分析された実施形態が表2に列挙されている。表2の実施形態は、CPSIが200、壁厚が8.5μm、壁の気孔率が56%、壁の平均細孔径が13μmである、直径5.66インチ、長さ6インチのガソリン微粒子フィルタについて、層のカバレッジ、気孔率、細孔径、及び層厚の異なる組合せを有するガソリン微粒子フィルタを表している。100kg/時の排気流量及び450℃で濾過効率及び圧力損失性能を評価した。
【0129】
図11~12では、表2の実施形態についての濾過効率と圧力損失の増加のグラフが提供されている。図12は、図11の圧力損失が最大で50%増加したことを示している。
【0130】
【表2-1】
【0131】
【表2-2】
【0132】
【表2-3】
【0133】
【表2-4】
【0134】
【表2-5】
【0135】
特許請求の範囲に記載の主題の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態にさまざまな修正及び変更を加えることができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本明細書は、このような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入る限り、本明細書、に記載されるさまざまな実施形態の修正及び変更に及ぶことが意図されている。
【0136】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0137】
実施形態1
ハニカムフィルタ体であって、
クリーンフィルタ圧力損失(P)及びクリーン濾過効率(FE)、
第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体であって、ベースクリーンフィルタ圧力損失(P)及びベースクリーン濾過効率(FE)を含む、多孔質セラミックハニカム体、及び
前記多孔質セラミックハニカム体の前記壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層
を含み、ここで、
前記ハニカムフィルタ体の全体的な性能パラメータが、式(I)に従う「X」として定義され:
【0138】
【数18】
【0139】
濾過性能が、式(II)に従う「F」として定義され:
【0140】
【数19】
【0141】
Xが1.75以上であり、Fが0.25以上である、
ハニカムフィルタ体。
【0142】
実施形態2
Xが2以上である、実施形態1に記載のハニカムフィルタ体。
【0143】
実施形態3
Xが3以上である、実施形態2に記載のハニカムフィルタ本体。
【0144】
実施形態4
Xが4以上である、実施形態3に記載のハニカムフィルタ本体。
【0145】
実施形態5
Xが5以上である、実施形態4に記載のハニカムフィルタ体。
【0146】
実施形態6
Fが0.5以上である、実施形態1から5のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0147】
実施形態7
Fが0.75以上である、実施形態1から6のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0148】
実施形態8
Fが1.0以上である、実施形態1から7のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0149】
実施形態9
Fが1.25以上である、実施形態1から8のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0150】
実施形態10
前記ハニカムフィルタ体の軸方向距離が、前記ハニカムフィルタ体の第1の端部から第2の端部までに及び、前記多孔質無機層が、前記軸方向距離の70%以上を覆う、実施形態1から9のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0151】
実施形態11
前記多孔質無機層が、前記軸方向距離の80%以上を覆う、実施形態10に記載のハニカムフィルタ体。
【0152】
実施形態12
前記多孔質無機層が、前記軸方向距離の90%以上を覆う、実施形態11に記載のハニカムフィルタ本体。
【0153】
実施形態13
前記多孔質無機層が、前記軸方向距離の95%以上を覆う、実施形態12に記載のハニカムフィルタ体。
【0154】
実施形態14
前記多孔質無機層が、前記軸方向距離の99%以上を覆う、実施形態13に記載のハニカムフィルタ体。
【0155】
実施形態15
ハニカムフィルタ体であって、
第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体、
前記多孔質セラミックハニカム体の前記壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層であって、平均気孔率(ε)、マイクロメートル単位の平均粒子サイズ(d)、及び厚さtを含む、多孔質無機層
を含み、ここで、
前記多孔質無機層の形態パラメータが、式(IV)に従う「Y」として定義され:
【0156】
【数20】
【0157】
Yが0.02以上である、
ハニカムフィルタ体。
【0158】
実施形態16
Yが0.03以上である、実施形態15に記載のハニカムフィルタ体。
【0159】
実施形態17
Yが0.04以上である、実施形態16に記載のハニカムフィルタ本体。
【0160】
実施形態18
Yが0.05以上である、実施形態17に記載のハニカムフィルタ体。
【0161】
実施形態19
前記多孔質無機層が、2マイクロメートル以下の平均粒子サイズ(d)を含む、実施形態1から18のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0162】
実施形態20
前記平均粒子サイズ(d)が1マイクロメートル以下である、実施形態19に記載のハニカムフィルタ体。
【0163】
実施形態21
前記平均粒子サイズ(d)が0.4マイクロメートル以下である、実施形態20に記載のハニカムフィルタ体。
【0164】
実施形態22
前記多孔質無機層が、0.7以上の平均気孔率(ε)を含む、実施形態1から21のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0165】
実施形態23
前記平均気孔率(ε)が0.8以上である、実施形態22に記載のハニカムフィルタ体。
【0166】
実施形態24
前記平均気孔率(ε)が0.9以上である、実施形態23に記載のハニカムフィルタ本体。
【0167】
実施形態25
前記平均気孔率(ε)が0.95以上である、実施形態24に記載のハニカムフィルタ体。
【0168】
実施形態26
式(III)に従う「P」として定義された圧力損失性能をさらに含み:
【0169】
【数21】
【0170】
Pが0.25以下である、
実施形態1から25のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0171】
実施形態27
Pが0.20以下である、実施形態26に記載のハニカムフィルタ体。
【0172】
実施形態28
Pが0.15以下である、実施形態27に記載のハニカムフィルタ体。
【0173】
実施形態29
Pが0.10以下である、実施形態28に記載のハニカムフィルタ本体。
【0174】
実施形態30
Pが0.05以下である、実施形態29に記載のハニカムフィルタ体。
【0175】
実施形態31
前記多孔質無機層の厚さ(t)が、0.5マイクロメートル以上~30マイクロメートル以下の範囲である、実施形態1から30のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0176】
実施形態32
複数の閉栓された端部を含む、実施形態1から31のいずれかに記載のハニカムフィルタ体。
【0177】
実施形態33
ハニカムフィルタ体に無機材料を施す方法であって、該方法が、
第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体と流体連通しているダクトに前記無機材料を供給する工程であって、前記多孔質セラミックハニカム体が、ベースクリーンフィルタ圧力損失(P)及びベースクリーン濾過効率(FE)を含む、工程、
前記多孔質セラミックハニカム体上に前記無機材料を堆積する工程、及び
前記無機材料を前記多孔質セラミックハニカム体に結合し、前記多孔質セラミックハニカム体の前記壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層を形成して、前記ハニカムフィルタ体を形成する工程
を含み、
前記ハニカムフィルタ体が、
クリーンフィルタ圧力損失(P1)及びクリーン濾過効率(FE1);
式(I)に従う「X」として定義された、前記ハニカムフィルタ体の全体的な性能パラメータ:
【0178】
【数22】
【0179】
式(II)に従う「F」として定義された濾過性能:
【0180】
【数23】
【0181】
を含み、ここで、
Xは1.75以上であり、Fは0.25以上である、
方法。
【0182】
実施形態34
ハニカムフィルタ体に無機材料を施す方法であって、該方法が、
第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体と流体連通しているダクトに前記無機材料を供給する工程であって、前記多孔質セラミックハニカム体が、ベースクリーンフィルタ圧力損失(P)及びベースクリーン濾過効率(FE)を含む、工程、
前記多孔質セラミックハニカム体上に前記無機材料を堆積する工程、及び
前記無機材料を前記多孔質セラミックハニカム体に結合し、前記多孔質セラミックハニカム体の前記壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層を形成して、前記ハニカムフィルタ体を形成する工程
を含み、
前記多孔質無機層が、
平均気孔率(ε)、マイクロメートル単位の平均粒子サイズ(d)、及び厚さ(t)、並びに
式(IV)に従う「Y」として定義された、前記多孔質無機層の形態パラメータ:
【0183】
【数24】
【0184】
を含み、ここで、
Yは0.02以上である、
方法。
【0185】
実施形態35
ハニカムフィルタ体に無機材料を施す方法であって、該方法が、
第1の端部、第2の端部、及び複数の内部チャネルを画成する壁面を有する複数の壁を含む多孔質セラミックハニカム体と流体連通しているダクトに前記無機材料を供給する工程であって、前記多孔質セラミックハニカム体が、ベースクリーンフィルタ圧力損失(P)及びベースクリーン濾過効率(FE)を含む、工程、
前記多孔質セラミックハニカム体上に前記無機材料を堆積する工程、及び
前記無機材料を前記多孔質セラミックハニカム体に結合し、前記多孔質セラミックハニカム体の前記壁面の1つ以上に配置された多孔質無機層を形成し、前記ハニカムフィルタ体を形成する工程であって、前記多孔質無機層が、平均気孔率(ε)、マイクロメートル単位の平均粒子サイズ(d)、及び厚さtを含む、工程、
を含み、ここで、
前記ハニカムフィルタ体及び/又は多孔質無機層の設計が、少なくとも部分的に次のパラメータ:
式(I)に従う「X」として定義されたハニカムフィルタ体の全体的な性能パラメータ:
【0186】
【数25】
【0187】
(ここで、Xは1.75以上である);
式(II)に従う「F」として定義されたハニカムフィルタ体の濾過性能:
【0188】
【数26】
【0189】
(ここで、Fは0.25以上である);
式(III)に従う「P」として定義された圧力損失性能:
【0190】
【数27】
【0191】
(ここで、Pは0.25以下である);及び
式(IV)に従う「Y」として定義された前記多孔質無機層の形態パラメータ:
【0192】
【数28】
【0193】
(ここで、Yは0.02以上である)
のうちの1つ以上に基づいている、方法。
【符号の説明】
【0194】
100 ハニカム体
105 第1の端部
110 複数の内部チャネル
115 交差するチャネル壁
135 第2の端部
200 ハニカム体
210 壁
220 層
225 堆積された粒子
230 ガスの流れ
300 微粒子フィルタ
301 チャネル
302 入口端
304 出口端
305 外皮層
306 交差するチャネル壁
308 入口チャネル
310 出口チャネル
312 プラグ
350 排ガス流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】