(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】疎水性被膜のコーティング組成物及び疎水性表面を有する物品
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220629BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20220629BHJP
C09D 123/00 20060101ALI20220629BHJP
C09D 127/12 20060101ALI20220629BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220629BHJP
C09D 191/06 20060101ALI20220629BHJP
C09C 1/28 20060101ALI20220629BHJP
C09C 3/12 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/62
C09D123/00
C09D127/12
C09D5/02
C09D191/06
C09C1/28
C09C3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565994
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 US2020028332
(87)【国際公開番号】W WO2020226865
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】グ、フェン
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA18
4J037CB23
4J037EE03
4J037EE11
4J037FF21
4J038BA212
4J038CB001
4J038CD091
4J038HA446
4J038KA03
4J038KA15
4J038MA07
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA07
(57)【要約】
本発明は、コーティング組成物に関する。コーティング組成物は、疎水化シリカ粒子と、被膜形成性結合剤と、溶媒とを含み得る。疎水化シリカ粒子は、約80Å以上の細孔直径を有する多孔質シリカ粒子であって、処理されてその表面上に疎水性コーティングが形成された、多孔質シリカ粒子を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物であって、
疎水化シリカ粒子と、
被膜形成性結合剤と、
溶媒とを含む、コーティング組成物であって、
前記疎水化シリカ粒子が、約80Å以上の細孔直径を有する多孔質シリカ粒子であって、処理されてその表面上に疎水性コーティングが形成された、多孔質シリカ粒子を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
前記コーティング組成物中の、前記疎水化シリカ粒子の、前記被膜形成性結合剤に対する重量比が、少なくとも約1:2.5である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記溶媒が、1種以上の有機溶媒又は水を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記多孔質シリカ粒子のBET表面が、約800m
2/g未満である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記多孔質シリカ粒子の前記BET表面が、約750m
2/g未満である、請求項5に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記多孔質シリカ粒子のメジアン粒径が、約0.5μm~約50μmの範囲である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記多孔質シリカ粒子の前記メジアン粒径が、約1μm~約15μmの範囲である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記多孔質シリカ粒子の前記表面上の前記疎水性コーティングが、前記多孔質シリカ粒子の表面シラノール基と化学反応する少なくとも1つの反応性官能基を含有する疎水性シラン又はシロキサンと、前記多孔質シリカ粒子を接触させることによって形成される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記疎水性シラン又はシロキサンが、少なくとも200ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記疎水性シラン又はシロキサンが、(ペルフルオロ)アルキルシラン、(ペルフルオロ)アルキルシロキサン、又はこれらの混合物である、請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記疎水性シラン又はシロキサンが、オクタデシルトリメトキシシラン、ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、ポリジメトキシシラン、又はシラノール末端ポリジメチルシロキサンである、請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記多孔質シリカ粒子が、溶液による改質プロセス、乾燥による改質プロセス、又はミル粉砕及び改質プロセスによって、前記疎水性シラン又はシロキサンと接触させられる、請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
前記ミル粉砕及び改質プロセスにおいて、前記多孔質シリカ粒子がミル粉砕され、前記疎水性シラン又はシロキサンと共に螺旋ジェットミル内で改質されて、前記疎水化シリカ粒子を得る、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記疎水化粒子が、約0.5~約50μmの範囲のメジアン粒径を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
前記疎水化シリカ粒子が、約1~約15μmの範囲のメジアン粒径を有する、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
前記疎水性シロキサンが、ポリジメトキシシランである、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
前記被膜形成性結合剤が、C
2~C
6ポリオレフィン、C
8~C
36アルキル基を含有するエチレン性不飽和モノマーのホモポリマー、及びC4~C36アルキル基と、C1~C36アルキルビニルエーテルと、C
1~C
36カルボン酸のビニルエステルと、それらと共重合可能なエチレン性不飽和コモノマーとを含有するエチレン性不飽和モノマーのコポリマー、天然ワックス、及び合成ワックスからなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項18】
前記被膜形成性結合剤が、フッ素含有ポリマーを含み、前記溶媒が1種以上の有機溶媒を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
前記フッ素含有ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、アルコキシフルオロエチレンのコポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、又はこれらを組み合わせたものである、請求項18に記載のコーティング組成物。
【請求項20】
前記被膜形成性結合剤を架橋するための架橋剤を更に含む、請求項18に記載のコーティング組成物。
【請求項21】
前記コーティング組成物が、開始剤を更に含み、前記架橋剤が2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む、請求項20に記載のコーティング組成物。
【請求項22】
前記被膜形成性結合剤がゲル化剤を更に含む、請求項18に記載のコーティング組成物。
【請求項23】
前記被膜形成性結合剤が、水性ワックスエマルション又は前記疎水性ポリマーの水性エマルションを含み、前記溶媒が水を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項24】
前記コーティング組成物が、界面活性剤の存在下で、前記疎水化シリカ粒子を水中に分散させて、前記疎水化シリカ粒子の懸濁液を形成し、次いで、前記疎水化シリカ粒子の懸濁液と、前記ワックスエマルション又は前記疎水性ポリマーのエマルションとを混合することによって調製される、請求項23に記載のコーティング組成物。
【請求項25】
前記被膜形成性結合剤が、前記コーティング組成物の重量に基づいて、約1~約30重量%の量で存在する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項26】
前記コーティング組成物が、少なくとも1種の噴射剤を更に含むエアゾールの形態である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項27】
請求項1に記載の前記コーティング組成物から形成される疎水性被膜であって、室温で脱イオン水に対して約140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点とを示す、疎水性被膜。
【請求項28】
前記疎水性被膜が、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ドローダウン、ブラシコーティング、及びこれらの混合したものからなる群から選択される方法によって製造される、請求項27に記載の疎水性被膜。
【請求項29】
コーティング組成物から本質的になる、少なくとも1つのぬれにくい表面を備える物品であって、前記コーティング組成物が、
疎水化シリカ粒子と、
被膜形成性結合剤と、
溶媒と、を含み、
前記疎水化シリカ粒子が、約80Å以上の細孔直径を有する多孔質シリカ粒子であって、処理されてその表面上に疎水性コーティングが形成された、多孔質シリカ粒子を含む、物品。
【請求項30】
前記ぬれにくい表面が、室温で脱イオン水に対して約140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点とを示す、請求項29に記載の物品。
【請求項31】
前記物品が、ガラス、金属、プラスチック、木材、コンクリート、布地、セルロース系材料、及び紙からなる群から選択される材料を含む、請求項30に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ぬれにくい性質を有する表面を生成するための疎水性粒子の製造及び使用に関する。特に、本発明は、疎水化シリカ粒子、これらの疎水化シリカ粒子を含むコーティング組成物、これらのコーティング組成物を使用してコーティングされたぬれにくい表面、及びこのようなぬれにくい表面を生成するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
通常の表面は、一般に、水などの液体によってぬれる。ぬれの程度は、液体の凝集力と、液体と表面との間の付着力との間の相互作用の結果である。
【0003】
多くの場合、表面が液体によってぬれていることは望ましくない。例えば、表面を水でぬらした結果、その表面上に水滴が保持され、更にそれらの水滴が蒸発すると、水に懸濁又は溶解した固体が、その表面上に見苦しい残留物として残ることになる。この問題は、特に雨水に暴露された表面について存在する。表面が水でぬれているということは、しばしば、その表面の腐食を誘発するものとなり、又は微生物及び、藻類、地衣類、コケ、二枚貝類などの増殖物による侵襲を誘発するものとなる。
【0004】
液体の包装及び貯蔵容器の文脈では、包装容器又は保管容器が空になったときに、液体が全く残っていないか又は少量しか残っていないようにするため、内側表面のぬれ性が低いことが望ましい。装置及びプラント建設の分野では、液体と接触する構成要素のぬれ性が低いことが望ましい。もし実際に、構成要素のぬれ性が高い場合、被覆物及び付着物の形成が増大するおそれがある。更に、ぬれ性が高くなると、一般に、パイプライン中の液体の流れ抵抗が増加するという結果となる。
【0005】
親水性液体による表面のぬれ性は、表面の疎水性コーティングによって低減され得ることが知られている。この文脈における好適なコーティング材料の例としては、疎水性ワックス、ポリアルキルシロキサン、及びペルフルオロポリマー、特に極めて疎水性の高いポリテトラフルオロエチレン(Teflon)が挙げられる。コーティングは、液体とぬれた表面との間の付着力を低減する。
【0006】
更に、構造化された疎水性表面を有することが好ましいことが判明している。この種類の表面構造は、一般に、ナノメートル又はマイクロメートルスケールの規則的又は不規則な隆起部又は凹部を有する。これらの構造は、多くの場合、表面粗さと呼ばれ、水などの液体をはじくために空気を関与させる。以下にキャシーバクスター式を示す:
【数1】
【0007】
式中、θCBは、水滴に対する、コーティングされた層内の特定の疎水性材料で作製された粗面の接触角であり、θは、水滴に対する、平滑な表面材料自体の接触角であり、fは、総表面積に対する水が接触している表面積の比率であり、したがって(1-f)は、水が接触していない領域(空気ポケット)の総表面積に対する比率である。180°に近いθCBを達成するために(すなわち、cosθCBが-1に近く、cosθが0に近いとき)、非常に小さいf値を有することが望ましい。
【0008】
超疎水性表面とは、水滴による接触角が150°を超える表面であり、一般に、超疎水性表面が疎水性の材料及び疎水性の表面粗さの両方を必要とすることが認識されている。本質的に、超疎水性及び自己洗浄特性を有するハスの葉のモノ微細構造モデルは1997年に報告され(Barthlott,W.;Neinhuis.C.「Purity of the sacred lotus,or escape from contamination in biological surfaces,」Planta 1997,202(1),1-8)、マイクロスケールの乳頭状突起及び疎水性クチクラ外ワックスによって生じるものとして記載されている。
【0009】
米国特許出願第2017/0121530号は、物体上に超疎水性表面を付与する塗料を開示している。塗料は、ポリマー結合剤中の疎水性粒子及び可塑剤の、溶媒又は混合溶媒による懸濁液である。粒子は、フッ素化アルキルシラン又はアルキルシランで表面官能化されたシリカ粒子などの金属酸化物である。シリカ粒子は、35~65 m2/gの範囲内の比表面積及び50~110nmの範囲の直径を有し得る。
【0010】
米国特許第6683126号は、ぬれにくい表面を製造するためのコーティング組成物を開示している。コーティング組成物は、疎水性表面と、BET表面積が少なくとも1m2/gであることによって特徴付けられる多孔質構造とを有する少なくとも1つの微細粉末、及び表面張力が50mN/m未満であることによって特徴付けられる少なくとも1種の被膜形成性結合剤を含み得る。粉末の結合剤に対する重量比は、少なくとも1:4である。
【0011】
米国特許出願公開第2009/0018249号は、自己洗浄性の疎水性コーティング組成物を開示している。コーティング組成物は、組成物と溶媒又は溶媒混合物との総重量に基づいて最大5.0重量%の有効量で、1000~4,000ナノメートルの範囲のサイズの疎水性ヒュームドシリカを含み得る。コーティング組成物は、少なくとも165度の水による接触角を有するコーティング表面をもたらすが、これに対して、コーティングされていない表面上では、水による接触角は10~15度である。
【発明の概要】
【0012】
本明細書では、特定の粒径及び細孔直径を有し、しかも疎水性有機分子又はポリマーによって疎水化されている多孔質シリカ粒子と、少なくとも1つの疎水性ポリマー結合剤と、を含むコーティング組成物を開示する。
【0013】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、疎水化多孔質シリカ粒子と、被膜形成性の疎水性結合剤と、溶媒と、を含む。疎水化多孔質シリカ粒子は、約100A以上の細孔直径を有し、かつ疎水性有機分子又はポリマーで改質されたシリカ粒子を、その多孔質シリカ粒子の表面上に含む。
【0014】
本発明の別の例は、物品である。その物品は、本発明の一実施形態によるコーティング組成物から本質的になる、少なくとも1つのぬれにくい表面を含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、本開示の技術的解決策に対するより良好な理解を当業者に提供するために、付随する実施形態を参照して更に詳細に説明するものである。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される以下の用語は、以下の定義を有する。
【0017】
本明細書において「約」により修飾された数値範囲は、数値範囲の上限及び下限がその10%だけ変化し得ることを意味する。本明細書における「約」により改質された数値は、数値がその10%だけ変動し得ることを意味し得る。
【0018】
用語「疎水化された」は、本明細書では、長鎖炭化水素、ペルフルオロカーボン、又はシロキサン基を含む疎水性分子又はポリマーで改質されているシリカ粒子を指すために用いられている。
【0019】
用語「疎水性」は、水でぬらすことが困難な表面、被膜、又はコーティングに言及するものである。表面は、少なくとも90°の静的な水接触角を示した場合には、疎水性であると見なされ、少なくとも110°の静的な水接触角を示した場合には、高疎水性と見なされるであろう。用語「超疎水性」は、水で極めてぬれにくい表面、被膜、又はコーティングに言及するものである。超疎水性表面又はコーティングは、通常、130°を超える、多くの場合140°を超える静的な水接触角を有する。
【0020】
用語「多孔質」は、粒子が、少なくとも0.1cc/gの窒素細孔容積を有すること(BJH法により測定。なお、Barrett et al,J.Am.Chem.Soc.,73,373-380,1951を参照)を指して用いられる。
【0021】
用語「細孔直径」(PD)は、円筒形モデルに基づいて、PD(Å)=40,000*PV/SAとして定義され、ここで、PVは、粒子の窒素細孔容積(単位はcc/g)を表し、SAは、BET表面積(単位はm2/g)を表す(Bmnauer et al,J.Am.Chem.)。Soc.,60,309-319,1938を参照)。
【0022】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、i)疎水化多孔質シリカ粒子、ii)疎水性被膜形成性結合剤、及びiii)溶媒を含む、ぬれにくい表面を生成するための組成物、特にコーティング組成物の形態の組成物を提供する。一実施形態において、疎水化シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子であって、処理されてその表面上に疎水性コーティングを形成された、多孔質シリカ粒子を含む。多孔質シリカ粒子は、疎水化前に、約80Å以上、好ましくは約90Å以上、より好ましくは約100Å以上の細孔直径を有する。一実施形態において、細孔直径は、約80Å~約1000Å、好ましくは約100Å~約500Å.の範囲に及ぶ。疎水化シリカ粒子の被膜形成性結合剤に対する重量比は、少なくとも1:2.5、好ましくは少なくとも1:2である。一実施形態では、溶媒は、1種以上の有機溶媒又は水を含む。
【0023】
本発明の組成物を調製するために使用される多孔質シリカ粒子は、様々な粒径を有し得る。語句「粒径」は、動的光散乱法により測定された、粒子が水中又はアセトン若しくはエタノールなどの有機溶媒でスラリー化される場合の、メジアン粒径(D50、50体積パーセントの粒子のサイズがこの数より小さく、50体積パーセントの粒子のサイズがこの値より大きい体積分布である)を指す。一般に、多孔質シリカ粒子は、約0.5μm~約50μmの範囲のメジアン粒径を有し、特に好ましくは約1μm~約15μmの範囲である。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態による組成物を調製するために使用される多孔質シリカ粒子は、疎水化前の初期比表面積によって特徴付けられる。比表面積は、DIN 66131に従って決定されるBET表面積である。多孔質シリカ粒子は、領域内において、好ましくは少なくとも5m2/gの、特に少なくとも10m2/gの、特に好ましくは少なくとも20m2/gのBET表面積を有する。特に、多孔質シリカ粒子のBET表面積は5~1000m2/gの範囲であり、特に好ましくは10~800m2/gの範囲であり、特に非常に好ましいのは20~750m2/gの範囲である。
【0025】
一実施形態では、多孔質シリカ粒子は、その粒子の表面にて疎水性分子又はポリマーで改質され、疎水化シリカ粒子を形成する。疎水性分子又はポリマーは、シリカ粒子の表面に対して、物理的にコーティングされても、又は化学的に改質されてもよい。好ましくは、疎水性分子又はポリマーは、粒子の表面上に共有結合される。シリカ粒子の表面上の疎水性コーティングは、シリカ粒子を、少なくとも1つの反応性官能基を含有し、シリカ粒子の表面シラノール基と化学反応する、疎水性シラン又はシロキサンと接触させることによって形成され得る。
【0026】
疎水性分子又はポリマーは、非極性有機分子を含んでもよい。疎水性分子又はポリマーの例としては、ワックス、シラン、及びシロキサンポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、疎水性分子は、多数のアルキル基(-CH2-)又は(ペル)フルオロアルキル基(-CF2-)を有するシランを含む。アルキル基又は(ペル)フルオロアルキル基は、少なくとも4個の炭素原子を含んでもよい。一実施形態では、疎水性ポリマーは、ポリジアルキルシロキサン基(-OSi(R2)-、例えば、ポリジメチルシロキサン基(-OSi(Me)2-)を含むシロキサンポリマーであり、これは、例えば共有結合によって、シリカ粒子と結合し得る。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態による疎水化シリカ粒子は、多孔質シリカ粒子を、アルキルシラン、ペルフルオロアルキルシラン、及び/又は酸化物担体粒子の表面のシラノール基と化学反応をすることができるシロキサンポリマーで処理することによって一般に得られる。アルキルシラン又は(ペルフルオロ)アルキルシランは、少なくとも200ダルトンの重量平均分子量を有し得る。ポリジアルキルシロキサンは、少なくとも800ダルトンの重量平均分子量を有し得る。疎水性シラン又はシロキサンの例としては、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、ポリジメトキシシラン、又はシラノール末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0028】
疎水化シリカ粒子は、溶液による改質プロセス、乾燥による改質プロセス、又はミル粉砕及び改質プロセスによって調製され得る。一実施形態では、疎水化シリカ粒子は、一種類の有機溶媒中又は複数種の有機溶媒の混合物中の疎水性シラン及び/又はシロキサンの溶液との混合を伴う、溶液による改質プロセスによって調製される。その後、混合物を、シリカ粒子上の表面のシラノール基と疎水性シラン及びシロキサン上の官能基との間の反応を可能にするのに十分な時間及び温度で、撹拌しながらブレンドする。好ましくは、混合物は、約5~約20時間、最も好ましくは少なくとも8時間にわたり、周囲温度~約120℃の範囲の温度でブレンドされる。
【0029】
別の実施形態では、疎水化シリカ粒子は、乾燥による改質プロセスによって調製されてもよく、これは、溶媒の存在なしで、粒子と液体シラン及びシロキサンとの連続混合を伴う。混合は、好ましくは、シリカ粒子上の表面のシラノール基と疎水性シラン及びシロキサン上の官能基との間の反応を達成するのに十分な時間及び温度で、例えば、約5~約20時間にわたり、周囲温度~約120℃の範囲の温度で実施される。好ましくは、乾燥結合された混合物は、高温、例えば120℃で、約5~約15時間にわたって加熱される。
【0030】
更に別の実施形態では、疎水化シリカ粒子は、連続的な混合及びミル粉砕プロセスによって、好ましくは螺旋ジェットミルプロセスを使用して調製される。シリカ粒子をミル粉砕し、疎水性シラン又はシロキサンポリマーで改質して、所望の粒子サイズを有する疎水化シリカ粒子を得る。
【0031】
一般に、疎水化シリカ粒子は、約0.5μm~約50μmの範囲のメジアン粒径を有する。好ましい実施形態では、疎水化シリカ粒子は、約1μm~約15μmの範囲のメジアン粒径を有し得る。
【0032】
本発明において有用な被膜形成性結合剤は、所望の最終用途に応じて異なり得る。被膜形成性結合剤は、典型的には、表面上に固体被膜を形成し得るワックスなどの有機ポリマー又は他の疎水性有機物質である。被膜形成性結合剤は、例えば、組成物が粉末として、又は成形物品を製造するために使用されるときに、コーティングされる基材の表面上に粉末粒子を固定する、又は粉末の表面どうしを互いに固定する役割を果たす。結合剤によって形成される被膜は、十分に疎水性であり得る(すなわち、少なくとも80°の水接触角を有し得る)。しかしながら、耐久性が良好なコーティングされた被膜では、ポリマー又は他の有機基材の種類が重要である。いくつかの実施形態では、ポリマー又は有機物質は、いくつかの架橋剤の存在下で架橋することができ、架橋後、コーティングされた被膜は非常に大きな耐久性を持ち得る。
【0033】
結合剤の疎水性は、その表面張力を用いて特徴付けられる。これは、例えば、結合剤でコーティングされた滑らかな表面上の水の静的接触角を測定することによって決定することができる。疎水性結合剤は、水の静的接触角が少なくとも80°であることを特徴とする。
【0034】
一実施形態において、被膜形成性結合剤は、表面張力が50mN/m未満であることによって特徴付けられる。また、被膜形成性結合剤は、C2~C6ポリオレフィン、C8~C36アルキル基を含有するエチレン性不飽和モノマーのホモポリマー、C4~C36アルキル基と、C1~C36アルキルビニルエーテルと、C1~C36カルボン酸のビニルエステルと、それらと共重合可能なエチレン性不飽和コモノマーとを含有するエチレン性不飽和モノマーのコポリマー、天然ワックス、及び合成ワックスからなる群から選択される。
【0035】
結合剤は、有機溶媒に対して可溶性を有する熱可塑性ポリマーを含んでもよい。あるいは、結合剤は、小さい粒径形態(50nm~1mmの範囲の粒径を有する)では、イオン性又は非イオン性界面活性剤を有する又は有さない、水又は他の溶媒中に分散させることもできる。使用される結合剤はまた、熱、酸化、又は光化学的硬化プロセスによって架橋され、粒子により固体コーティングを形成する有機プレポリマーを含んでもよい。
【0036】
更に、結合剤は、8個超の炭素原子を有する脂肪酸、特にエチレン性不飽和脂肪酸、及びそれらのエステルで、例えばグリセロール、エチレングリコール、プロパンジオール、ソルビトール、グルコース、スクロース、又はトリメチロールプロパンなどの多官能アルコールを有するものであり得る。それらの脂肪酸及びそれらのエステルは酸化的に硬化するので、プレポリマーの部類に含まれる。結合剤として好適であるのは、例えばパラフィンワックス、蜜蝋、カルナウバ蝋、羊毛蝋、キャンデリラ蝋などの天然ワックス、例えばモンタン酸ワックス、モンタンエステルワックス、アミドワックス(例えば、ジステアロイルエチレンジアミン)、フィッシャー・トロプシュワックス、及びエチレン及びプロピレンのワックス様ポリマー(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)である。上述のように、これらのワックスは、特定の界面活性剤と共に水中に分散されたワックス粒子であり得る。
【0037】
被膜形成性結合剤は、C2~C24オレフィン、C5~C8シクロオレフィン、フルオロオレフィン、フルオロクロロオレフィン、ビニル芳香族、ジオレフィン(例えばブタジエン、イソプレン、及びクロロブタジエンなど)、及び少なくとも1つのC2~C36アルキル基を含有する、様々なモノエチレン性不飽和モノマーなどから選択される、疎水性モノマーから形成されてもよい。
【0038】
好ましい疎水性モノマーの例は、C2~C24オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテン、n-ヘキセン、n-オクテン、イソオクテンn-デセン、イソトリデセン)、C5~C8シクロオレフィン(例えばシクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン)、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン及びα-メチルスチレン)、並びにまた、フルオロオレフィン及びフルオロクロロオレフィン(例えば、ビニリデンフルオリド、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン)、2~36個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルカンカルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、及びステアリン酸ビニル)、直鎖又は分枝鎖C2~C36アルカノールを有するアクリル酸及びメタクリル酸のエステル(例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート)、並びに、C2~C36アルカノールのビニルエーテル及びアリルエーテル(例えば、n-ブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテルなど)、フッ素化モノマーである。
【0039】
被膜形成性結合剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブテン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチルメタクリレート、ポリ-n-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリ-tert-ブチルメタクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリ(2-エチルヘキシルメタクリレート)、ポリエチルアクリレート、ポリ-n-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリ-tert-ブチルアクリレート、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、及びマレイン酸とC3~C6オレフィン、C1~C36アルキルビニルエーテル、及び脂肪族C1~C36カルボン酸のビニルエステルから選択される少なくとも1つの疎水性モノマーとのコポリマーが挙げられ得る。
【0040】
更なる好適な被膜形成性結合剤としては、ポリC1~C4アルキレンオキシド(例えば、ポリオキシメチレン、ポリプロピレンオキシド、及びポリブチレンオキシド)、ポリテトラヒドロフラン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、及び例えばポリジメチルシロキサン(シリコーン)などの直鎖又は分枝鎖ポリジアルキルシロキサンが挙げられる。シリコーンは、触媒としてスズ錯体化合物を用いてオルトケイ酸テトラエチルで架橋することができる。
【0041】
更なる好適な被膜形成性結合剤としては、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸、及び脂肪族及び/又は芳香族ジオールから作られる部分的に芳香族のポリエステル、例えば、2~18個の炭素原子を有する脂肪族ジアルコール(例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール)と、3~18個の炭素原子を有するジカルボン酸(例えば、アジピン酸及びデカンジカルボン酸など)とから合成されるポリエステルが挙げられ、また、ビスフェノールA及び3~18個の炭素原子を有する上記ジカルボン酸から合成されるポリエステルや、テレフタル酸と、2~18個の炭素原子を有する脂肪族ジアルコールと、3~18個の炭素原子を有するジカルボン酸と、から合成されるポリエステルも挙げられる。
【0042】
それらのポリエステルは、任意選択的に、例えば2-エチルヘキサノール又はオクタデカノールなどの、4~24個の炭素原子を有する長鎖モノアルコールによって末端化されてもよい。更に、ポリエステルは、4~24個の炭素原子を有する長鎖モノカルボン酸、例えばステアリン酸で末端化されてもよい。
【0043】
被膜形成性結合剤ポリマーの重量平均分子量は、広範囲にわたって変化してもよく、一般に、1000~1000万g/モルの範囲、好ましくは2500~600万g/モル、特に2500~500万g/モルの範囲である(粘度法により測定)。結合剤ポリマーがポリオレフィン、特にポリイソブテンである場合、その重量平均分子量は、3万~600万g/モルの範囲であることが好ましく、又は50万~500万g/モルの範囲であることが好ましい。ポリオクタデシルビニルエーテルの場合、分子量は2000~1万g/モルの範囲であることが好ましく、特に2500~5000g/モルの範囲であることが好ましい。
【0044】
いくつかの実施形態では、被膜形成性結合剤は、光化学的及び/又は熱架橋性結合剤であるが、それらは、放射線硬化性コーティング材料を調製するために使用される、エチレン性不飽和二重結合を有するポリマー及びオリゴマーである。これらの結合剤としては、例えば、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアリレート、ポリウレタンアクリレート、縮合無水マレイン酸単位を有するポリエステル、及びエポキシ樹脂(例えば芳香族エポキシ樹脂)の流動性配合物が挙げられる。なお、これらのオリゴマー及び/又はポリマーは、所望に応じて、それらの流動性を向上させるために、溶液中、有機溶媒中、及び/又は反応性希釈剤中に存在する。反応性希釈剤としては、低分子量のエチレン性不飽和液体が挙げられ、このエチレン性不飽和液体が架橋されると、エチレン性不飽和ポリマーと共にコーティングを形成する。
【0045】
また、被膜形成性結合剤として、ビスフェノール系エポキシ樹脂系を用いることもできる。これらの樹脂は、アミン及びジアミンで架橋及び硬化させることができ、特に、それらのアミン及びジアミンは、長い炭化水素鎖(>6)からなり、硬化したエポキシ表面を疎水性にすることができる。
【0046】
放射線硬化性結合剤、及びこれらの結合剤を含む配合物は、当業者に周知であり、例えば、P.K.T.Oldring(Ed.)「Chemistry and Technology of UV & EB Formulation for Coatings,Inks & Paints」,Vol.2,1991,Sita Technology Londonから周知であり、例えば商標Laromer(登録商標)P084F、Laromer(登録商標)LR8819、Laromer(登録商標)PE55F、Laromer(登録商標)LR8861、BASF Aktiengesellschaft、Ludwigshafenで市販されている。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態による結合剤としては、C2~C6ポリオレフィン、特にポリイソブテン、アタクチックポリプロピレン、イソタクチックポリプロピレン、及びシンジオタクチックポリプロピレン、ポリエチレン、また、C4~C36アルキル基、特にC8~C22アルキル基を含有するエチレン性不飽和モノマーのホモポリマー及びコポリマー、所望であればそれらと共重合可能なエチレン性不飽和コモノマー、更にC3~C4ポリアルキレンオキシドが挙げられる。これらのうち、C8~C36アルキルビニルエーテル、例えばポリオクタデシルビニルエーテルの、ホモポリマー及びコポリマーが特に好ましい。
【0048】
一実施形態では、被膜形成性結合剤はフッ素含有ポリマーを含み、溶媒は1種以上の有機溶媒を含む。フッ素含有ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、アルコキシフルオロエチレンのコポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、又はこれらを組み合わせたものであってもよい。
【0049】
一実施形態において、コーティング組成物は、被膜形成性結合剤を架橋するための架橋剤を更に含む。一実施形態では、コーティング組成物は、開始剤を更に含み、架橋剤は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を含む。一実施形態では、被膜形成性結合剤は、ゲル化剤を更に含む。
【0050】
一実施形態では、被膜形成性結合剤は、水性ワックスエマルション又は疎水性ポリマーの水性エマルションを含み、溶媒は水を含む。一実施形態では、コーティング組成物は、界面活性剤の存在下で、疎水化シリカ粒子を水中に分散させて、疎水化シリカ粒子の懸濁液を形成し、次いで、疎水化シリカ粒子の懸濁液と、ワックスエマルション又は疎水性ポリマーのエマルションとを混合することによって調製される。一実施形態では、被膜形成性結合剤は、コーティング組成物の重量に基づいて、約1~約30重量%の量で存在する。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態に従って所望される、ぬれ性を低くする効果を達成するために、組成物中における、i)疎水性シリカ粒子の、ii)結合剤に対する重量比は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%であってよく、特に好ましくは少なくとも40%、非常に特に好ましくは少なくとも50%であってよい。この重量比は、好ましくは、75%の値、特に80%の値を超えない。非常に特に好ましくは、i)とii)との重量比が、40~60%の範囲内である。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によるコーティング組成物は、乾燥形態で使用され得るが、それはすなわち、i)微粉化疎水性粒子と、ii)疎水性ポリマー結合剤との両方を含む粉末配合物として使用され得ると言うことである。
【0053】
一実施形態では、コーティング組成物は、処理温度では流体である形態で使用される。コーティング組成物は、当然のことながら、配合物の性質に応じて、室温、及び例えば、0~150℃の範囲内の温度といった室温より高い又は低い温度の両方で、処理され得る。
【0054】
流体形態では、本発明のいくつかの実施形態のコーティング組成物は、一般に、i)粉末及びii)結合剤だけでなく、所望であれば、希釈剤又は溶媒を含むが、好ましくは、ポリマー結合剤を溶解させるがi)微粉化された粉末を溶解させない溶媒がよい。あるいは、結合剤はまた、1種以上の界面活性剤の助けを借りて、溶媒又は水に均質に分散させることもできる。これにより、コーティングの形成が改善される。
【0055】
好適な溶媒は、コーティングの塗布後に、加熱することにより又は加熱することなく、蒸発する揮発性有機溶媒又は水であり、それにより、結合剤ポリマーの均一な被膜の形成を可能にする。好適な溶媒の例は、アセトン及びエチルメチルケトンなどのケトン、酢酸エチル及び酢酸n-ブチルなどの酢酸の揮発性エステル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、並びに例えばテレビン油、石油、石油スピリット、トルエン、及びキシレンなどの脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素である。極性溶媒も使用することができる。例えば、疎水性熱可塑性ポリウレタンはジメチルホルムアミド(DMF)中にのみ溶解することができるが、この場合には、DMFを配合物中に使用することができる。
【0056】
液体配合物では、固形分の含量(配合物の総重量に基づいた、i)粒子及びii)ポリマー結合剤の総重量)は、0.5~80重量%の範囲である。コーティング組成物において、固形分の含量は、しばしば10~50重量%の範囲内であり得る。噴霧可能なコーティング材料の場合、上記の含量はまた、上記のレベル未満、例えば、0.5~10重量%の範囲であり得る。
【0057】
本発明の別の例は、本発明の一実施形態によるコーティング組成物から形成された疎水性被膜であり、その疎水性被膜は、室温で脱イオン水に対する約140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点を示す。一実施形態では、疎水性被膜は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ドローダウン、ブラシコーティング、及びこれらの混合したものからなる群から選択される方法によって製造される。
【0058】
ぬれにくい表面を製造するために、本発明のいくつかの実施形態によるコーティング組成物は、コーティングされる基材に従来の方法で塗布される。原則として、全ての従来の表面は、本発明のコーティング組成物でコーティングされてもよい。従来の表面の例は、木材、金属、ガラス、及びプラスチックの表面である。本発明のコーティング組成物は、言うまでもなく、例えばコンクリート、石膏、紙、織布などの、粗い及び/又は多孔質の表面をコーティングするためにも使用されてもよい。例としては、衣類、傘、テント、及び大天幕用の織物織布、同等の用途の織物織布、並びに皮革及び毛髪も同様にコーティングされるために使用されてもよい。
【0059】
コーティングされる表面(以下では、基材とも呼ばれる)へのコーティングの塗布は、コーティング組成物の実施形態及び基材の性質に応じて、コーティング技術において慣例的に実行されている塗布技術に従ってなされる。溶媒を含有する流動性コーティング組成物の場合、塗布は、一般に、刷毛による塗布や、例えばエアブラシによるスプレーや、浸漬や、又はローリングによって行われ、その後、コーティングが乾燥されるが、その間に溶媒が蒸発する。
【0060】
使用されるii)結合剤が、熱的、酸化的、又は光化学的に架橋可能なプレポリマーである場合、コーティング組成物は、多くの場合、溶媒を添加しない状態でさえ流動性を有しており、上記技術によって塗布されてもよく、場合によってはその塗布は、反応性希釈剤で希釈した後に実施され得る。この場合、実際のコーティングは、プレポリマーの熱的、酸化的、又は光化学的な硬化(架橋)によって形成される。1つのとりわけ好適な例は、エポキシプレポリマー及びエポキシポリマーの硬化である。
【0061】
所望の効果を達成するために、コーティング組成物は、コーティングされる表面に、コーティング組成物の固体の構成成分に基づいて、好ましくは少なくとも0.01g/m2、特に少なくとも0.1g/m2、とりわけ少なくとも0.5g/m2、好ましくは1000g/m2以下の量で塗布される。この文脈における固体の構成成分は、本質的に構成成分i)及びii)である。これは、揮発性成分の蒸発後、少なくとも0.01g/m2、特に少なくとも0.1g/m2、とりわけ少なくとも0.5g/m2の、コーティングの実重量に相当する。多くの場合、コーティングは、コーティングされる表面に対して、最大100g/m2の量(固体の構成成分に基づいて)で塗布されるが、他の形態の塗布では、より多くの量のコーティング組成物が塗布されるであろう。例えば、コンクリート用塗料の形態のコーティングの場合、又はコンクリート屋根葺きスラブのコーティングの文脈においてそのように適用されるであろう。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態による別の一実施形態は、ぬれにくい表面を有する成形物品を製造するための組成物の使用に関する。一実施形態では、物品は、本発明の一実施形態によるコーティング組成物から本質的になる、少なくとも1つのぬれにくい表面を含む。そのぬれにくい表面は、室温で脱イオン水に対する、約140°以上の静的接触角、及び0~3のスケールで少なくとも1の、ローリング評点を示し得る。物品は、ガラス、金属、プラスチック、木材、コンクリート、布地、セルロース系材料、及び紙からなる群から選択される、少なくとも1種の材料で作製されてもよい。
【0063】
本発明に従ってコーティングされた表面と同じ有利な特性はまた、本発明の組成物から製造される成形物品によっても保有されている。更に、成形物品は、驚くべきことに、例えばそれらの表面が、粗い扱い又は引っ掻きによって、破壊される場合であっても、これらの特性を失うことはない。この特性により、表面が経年劣化しても、有利な表面特性を再生することが可能となる。
【0064】
更に、液体、特に水及び水溶液の流れ抵抗は、本発明のいくつかの実施形態によるコーティングでコーティングされたパイプ、毛管、又はノズルを通って流れるときに低減される。それらの有する特性に基づいて、本発明の組成物は、多様な用途に塗布することができる。
【0065】
例えば鋼鉄補強コンクリートを含むコンクリート、木材、又は金属などの、腐食を受けやすい材料は、本発明のコーティング組成物でコーティングすることにより、腐食に対して効果的に保護され得る。本発明のいくつかの実施形態による組成物は、更に、紙、カード、又はポリマー被膜の表面仕上げに好適である。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態による組成物が提供されている布地、特に織物布地は、高レベルの不透過性と、低レベルの吸水性と、汚れをはじくことと、に注目すべきである。本発明のいくつかの実施形態による組成物での処理により、布地は、全くの撥水性になる。汚れの粒子は、水を有意に吸収することなく、容易に水で洗い流すことができる。したがって、本発明のいくつかの実施形態による組成物は好適であり、例えば、衣類、テント、大天幕、ターポリン、傘を製造するため、例えば自動車産業では、コンパートメント(例えば自動車の車内)の裏打ちをするため、座席エリアの裏打ちをするために使用することができる布地用の撥水性及び防汚性仕上げとして使用することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態による組成物で処理された皮革は、撥水性及び防汚性といった特性を有する皮革製衣類及び靴を製造するのに好適である。化粧品の分野では、本発明のいくつかの実施形態による組成物は、ヘアトリートメント組成物として使用されてもよく、例えば、化粧用として適合性のあるi)結合剤、例えば、この目的のために一般的に用いられるポリマーを含むならば、ヘアスプレーの形態で使用され得る。構成要素及び成形物品は、同様の方法で使用することができる。
【0068】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示を目的として提示されたものであり、包括的であることを意図するものでも、開示された実施形態に限定されるものでもない。記載された実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの変更及び変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場で見出される技術に対する実用的又は技術的改良、又は当業者が本明細書に開示される実施形態を理解できるようにするために選択された。
【0069】
以下、本発明について、実施例を参照してより詳細に述べる。但し、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0070】
材料
メジアン粒径を、Malvern Instrument Ltd.から入手可能なMalvern Mastersizer 2000又は3000を使用して、ASTM B822-10に準拠したレーザー光散乱法によって測定した。メジアン粒径D50を報告した。
【0071】
粒子の「BET表面積」は、Brunauer Emmet Teller窒素吸着法(Brunauer et al,J.Am.Chem.Soc.,1938,60(2),309-319)によって測定され、窒素細孔容積は、DIN66134に記載されるBarrett-Joyner-Halenda(BJH)窒素多孔度を使用して測定される、複数の粒子の平均細孔容積を指すものである。
【0072】
粒子の炭素含有量は、LECO Corp.から入手可能なLECO Carbon Analyzer SC-632を使用して測定した。
【0073】
表1は、実施例で使用されるシリカ粒子の、メジアン粒径(PS)D50、BET表面積(BET)、細孔容積(PV)、(40,000 x PV/BET SA(Å)として計算された)細孔直径(PD)などの特性を列挙する。2種類のシリカが実施例に含まれ、これらはシリカゲル(ゲル)及び沈降シリカ(ppt)である。
【表1】
【0074】
表1において、P-1、P-2、P-3、P-4及びP7~P12はシリカゲル粒子であり、P-5、P-6、P-13~P16は沈降シリカ粒子である。P-2、P-4、P-6、P-8、P-10、P-12及びP-16は、10時間の高温(900℃)の熱分解を経たシリカサンプルである。熱処理後、BET及びPVの両方が低減されている。
【0075】
表2は、実施例で使用されるいくつかの市販の疎水化シリカ粒子の、メジアン粒径(PS)D50、BET表面積(BET)、細孔容積(PV)、細孔直径(PD)及びC%含有量(改質したサンプルのみ)などの特性を列挙する。
【表2】
【0076】
表2では、P-17は、W.R.Grace&Co(メリーランド州、Columbia)から市販されている未改質沈降シリカ粒子である。P-18(Elementis Specialties、ミズーリ州、St.Louis,MO)、P-20、P-21はEvonik(ドイツ、Essen)から市販されている疎水性シリカ粒子である。P-18、P-20及びP-21は、例えば、米国特許第8614256.号に記載されているように、シリカ粒子と市販のシリコーンオイル又はポリジメチルシロキサン(PDMS)との反応によって調製されたと考えられる。これらの粒子は、更に化学改質をせずに直接使用した。P-19は、全ての有機物を燃焼除去して、粒子中にSiO
2のみを残した、焼成P-18(空気中500℃にて一晩加熱)であり、その更なる改質を以下の実施例に記載した。
表3は、シリカ粒子の改質に使用した疎水化剤を列挙する。
【表3】
【0077】
表3では、CRTV944は、Momentive Performance Materials(ニューヨーク州、Waterford)により供給された市販のシリコーンオイルであり、C18及びF13シランは、Gelest Inc.(ペンシ、ルベニア州Morrisville)又はSigma-Aldrich(ミズーリ州、St.Louis,MO)による市販のシランであった。
疎水化粒子の改質手順
溶液による改質:
【0078】
100mLのNalgene(登録商標)ボトルに、オーブンで乾燥させた2gの未改質粒子(表1より)と、0.2gのシラン(表3のC18又はF13シラン)と、40mLの無水トルエンとを充填した。ボトルのキャップをしっかりと閉じた。次いで、ボトル内部の材料を、Cole-Parmer社製のRoto-Torqueモデル7637などの機械的回転機で混合した。混合を一晩(少なくとも10時間)継続した。次いで、生成物をコーティング配合物に直接使用した。
乾燥による改質:
【0079】
500mL丸底フラスコ及び出発粒子の両方を、例えば120℃で約12時間にわたってオーブンで乾燥させた。フラスコに、オーブンで乾燥させた出発粒子を充填する。次に、ピペットを使用して特定量のPDMSをフラスコに添加し、その一方で、出発粒子及びPDMSを可能な限り均質に混合した。シリコーン油が粘稠すぎる場合、少量のトルエンを使用してPDMSを溶解し、次いで溶解させたPDMSを添加した。PDMSと粒子との混合物を、回転蒸発装置で、少なくとも約5時間~約12時間にわたり室温で回転させた。次いで、PDMSと粒子との混合物を結晶皿に移し、次いで、数時間にわたってドラフト内に載置して、トルエンを使用する場合は蒸発させた。最後に、PDMSと粒子との混合物を含有する結晶皿をオーブンに入れ、120℃で約12時間にわたって焼成する。
ミル粉砕及び改質:
【0080】
8個の0.011インチの研削孔を有する10インチの螺旋ジェットミルを使用した。この螺旋ジェットミルの粉砕チャンバは、0.8mmのノズルを研磨リング壁の外側から内側に挿入することができるように修正した。このノズルを、PDMS中の測定に使用した計量ポンプに接続した。
【0081】
具体的には、結合手順は、以下の工程を含む。最初に、ミル過熱器を、例えば、300F~340Fの範囲の温度に上げた。Acrison Loss-in-weightフィーダーには、粉砕する粒子が充填された。フィーダーを、40lb/時間の一定速度に設定した。結合中、ミル粉砕過熱器の温度は、制御システムによって常に調節されて、ミル出口温度を300~340Fに維持し、ミルの粉砕圧力及び射出圧力を、それぞれ18及び80psiに制御した。次いで、予め較正された計量ポンプをオンにして、ノズルを通してミル粉砕チャンバ内にPDMSを注入した。したがって、粒子及びPDMSは、同時にミルに添加された。所望の量のミル粉砕された疎水性生成物が生成されるまで、このプロセスを継続した。
コーティング組成物の調製
【0082】
疎水性改質/結合粒子を、いくつかの溶媒中で5種類の異なる種類の被膜形成性結合剤と別々に混合してコーティング配合物を作製し、これらの結合剤及び配合物を以下に列挙する。
結合剤系1:
【0083】
フッ素含有ポリマー、例えば、フルオロ-エラスマー(例えば、Daikin America,Inc.(ニューヨーク州、Orangeburg)によるDAI-EL@G802)は、被膜形成性結合剤として使用することができる。G802は、約66%のフッ素含有量及び1.81の比重を有する、過酸化物硬化性コポリマーである。アセトン中の10重量%溶液を、アセトン中のポリマーを約2時間にわたって加熱及び撹拌することによって調製し、溶液を原液として使用した。
【0084】
いくつかの所定量の結合粒子を、上記溶液と混合した。トルエン又はアセトンを添加して、混合物を、所望の割合及び濃度とした。混合物を音波浴内で、1時間にわたって超音波処理した。次いで、基材上へのスピンコーティング又は他のコーティング方法のいずれかによって混合物を直接使用して、基材上にコーティングされた被膜を作製した。
【0085】
いくつかの場合では、コーティングされた被膜の耐久性を改善するために、架橋を使用した。この場合、コーティングを塗布する直前に、約4%のトリアリルイソシアヌレート及び3%のジクミルペルオキシド(いずれも使用されるG802ポリマーの重量に対するパーセント)を、コーティング配合物に溶解させた。120℃にて1時間の加熱処理により、コーティングされた被膜中の結合剤分子どうしの間で、架橋反応を起こすことが可能であった。
結合剤系2:
【0086】
疎水性ポリウレタンは、被膜形成性結合剤として使用することができる。例えば、IROGRAN(登録商標)A 85 P 4394は、市販の押出成形及び射出成形用途に主に使用される、ポリエーテル系の疎水性熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。この製品は、Huntsman Corporation(テキサス州、Woodlands)によって製造される。適切な量のポリマーを、音波浴中で1時間にわたって超音波処理しながらジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解させることにより、DMF中の2.9重量%原液を調製し、この溶液を原液として使用した。
【0087】
いくつかの所定量の結合粒子を上記溶液に添加して、混合物を所望の比率とした。混合物を音波浴内で、1時間にわたって超音波処理した。次いで、基材上へのスピンコーティング又は他のコーティング方法のいずれかによって混合物を直接使用して、基材上にコーティングされた被膜を作製した。
【0088】
コーティング後、120℃での加熱処理によって、コーティングされた被膜の層がTPU中に均一に分布した粒子を有することが可能になる。
結合剤系3:
【0089】
ワックスエマルションは、被膜形成性結合剤として使用することができる。例えばAPI-WP30Cは、Advanced Polymer,Inc.(ニュージャージー州、Carlstadt)から入手した。これは、アニオン性界面活性剤によって安定化された、水性パラフィンワックスエマルションである。AW-703は、A&W Products,Inc.(ジョージア州、Bishop)から入手したが、アニオン性界面活性剤によって安定化された、水性ポリエチレンワックスコエマルションである。上記のエマルションは共に、木材又はコンクリートなどの多孔質基材上にコーティングされた被膜を作製するために使用することができる。
【0090】
水中でのワックスエマルション粒子と疎水性改質粒子とを良好に混合させるためには、まず、疎水性粒子を水に分散させる必要があることが見出された。この目的のために、190gの水中で、10gの粒子サンプルを、約0.42g(4.2重量%)のTriton X-100(Dow Chemical Company製)と、高剪断混合(Silverson mixerを、約6000rpmで用いた)で、約30分間にわたって混合した。これによって、水中に分散させた粒子をワックスエマルションと混合して、更に、混合液を水で希釈し、コーティングステップ前に所望の濃度を有する配合物を作製することができた。
結合剤系4:
【0091】
ポリマーエマルションはまた、被膜形成性結合剤としても使用することができる。例えば、ポリオレフィン(PO)エマルションであるCANVERARA(商標)1110は、Dow Chemical Company(ミシガン州、Midland)から入手した。これは、飲料スプレーコーティング用に設計された水性酸改質ポリオレフィン分散液である。
【0092】
水中でのPOエマルション粒子と疎水性改質粒子とを良好に混合させるためには、まず、疎水性粒子を水に分散させる必要があった。この目的のために、190gの水中で、10gの疎水化粒子を、約0.42g(4.2重量%)のTriton X-100(Dow Chemical Company製)と、高剪断混合(Silverson mixerを、約6000rpmで用いた)で、約30分間にわたって混合した。次いで、水中の分散粒子をワックスエマルションと混合して、コーティングステップ前に所望の濃度とした。
結合剤系5:
【0093】
被膜形成性結合剤はまた、コーティング後にその場で、重合又はゲル化によって形成できるが、これは、ゴム状の材料に特に当てはまるものである。例えば、シラノール末端PDMSである、CRTV942(粘度4000cP、Momentive Company(ニューヨーク州、Waterford)から入手可能)と、5重量%(PDMSの重量に対して)のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)と、2.5重量%(PDMSの重量に対して)のジブチル錫ジラウレート(DBTDL)とをトルエン中で混合し、次いで、いくつかの所望の量の疎水化粒子を添加した。混合物を10時間にわたり静置した後、音波浴で30分間にわたって超音波処理し、それに続いてコーティング手順を行って、コーティングされたシリコーンゴム被膜を形成した。
コーティング方法
スピンコート
【0094】
スピンコーティングは、例えばガラススライド、アルミニウム、若しくは高密度ポリエチレン(HDPE)などの非多孔質基材、又は例えば木材若しくはコンクリートなどの多孔質基材などの基材上に塗布することができる。典型的には、効果を実証する実験において、基材を3インチ×3インチのサイズで切断して、それらをコータに嵌合させた。コーティングには、Ni-L0 Scientific社(カナダ、Ottawa)製の、Ni-Lo 4 Spin Coater(真空ホルダ内蔵)を使用した。コーティング前に、基材を溶媒又は水で洗浄し、次いでブロー乾燥させた。木材については、サンドペーパーを使用して、表面を平坦化してよい。
【0095】
コーティング手順:基材サンプルを、真空を用いてコーティング上に配置した。先述のセクションからの配合物を約5~8mL、ピペットで基材上に移した。表面全体が配合物で覆われていることを確実にするように、注意を払った。次いでコーティングを、500rpm又は1000rpmで1分間にわたって実施した。このステップの後、溶媒を蒸発させて、次いで、コーティングされた基材を120℃の温度のオーブン内に、1時間にわたって置いた。
ドローダウン
【0096】
ドローダウンは、より大きい表面積の表面に適用することができる。40のワイヤサイズを有し、Gardner Company製である巻線付きラボロッドを使用して、ドローダウンが実施された。このサイズを用いると、湿潤フィルムの厚さは約100μmであった。各ドローダウンの手順は以下のとおりであった。
a.塵埃を含まないクリーンルームにて、平坦な基材を、真空ホルダに設置した。
b.ピペットを用い、約5~10mLの十分に混合されたコーティング組成物サンプルを、サンプルシート上及びサンプルシート近くに配置した。
c.ドローダウンロッドの端部を速やかに把持した。サンプルから離れてロッドが撓んだり屈曲したりしないように両手の親指を使用し、液体プールを介してドローダウンロッドを引き下ろし、サンプルシートの端から端まで流体を展着及び計測した。所与のドローダウンを行った後、ドローダウンロッドを使用後洗浄トレイに浸漬した。
d.ドローダウン後、溶媒を蒸発させるためにドローダウンサンプルを室温で放置し、次いで、コーティングされた基材を、120℃の温度のオーブン内に1時間にわたって置いた。
ディップコーティング
【0097】
例えば織物(例えば、布)又は紙などの可撓性を有する基材の場合には、材料の全体を配合物に浸漬した。次いで、基材を取り出し、溶媒を蒸発させた。次いで、サンプルを120℃の温度のオーブン内に1時間にわたって置いた。
スプレーコーティング
【0098】
コーティングを、塗料噴霧器を用いて基材上に塗布することもできた。PowRyte社(カリフォルニア州、La Puente)製の、0.8mmのノズルを有する2部品のHVLP Gravity Feed Air Spray Gut Kitを使用した。コーティング配合物をサンプル瓶に入れ、次いで、スプレーを30psiの空気流下で様々な表面に塗布した。
基材上にコーティングされた被膜の評価
コーティングされた被膜のローリング評点
【0099】
コーティングされた層に対するコーティング実施及び時には熱処理の実施後、表面の超疎水性を、脱イオン水の液滴によって、0、1、2、及び3のローリング評点範囲で評価した。
0:水滴が基材に付着している。
1:60°で傾斜したときに、液滴は、一部の部分でのみスライドする。
2:30°で傾斜したときに、液滴がスライドする。
3:5°で傾斜したときに、液滴は、全ての部分で完全にスライドする。
コーティングされた被膜の静的な水接触角:
【0100】
「ピニング」法を使用して、液滴を表面上に配置した。22ゲージの尖っていない先端の針から、プローブ液(蒸留水)の液滴を、2.5mmの距離だけ離れた位置から表面上に配置した。液滴を、4秒間にわたって、サンプル表面と接触させた状態で保持した。次いで、液体を、自立液滴が形成されるまで、表面からゆっくりと回収した。次いで、液滴を36倍のデジタルカメラで直ちに撮影した。典型的な液滴体積は3μLであった。少なくとも6つの異なる液滴を、各表面及び各液体について撮影した。次いで、デジタル画像処理ソフトウェアであるImageJを、接触角測定プラグインと共に用いて、液滴写真を処理した。角度は、最良の楕円形のフィッティング結果を使用して測定した。以下の表4は、水滴接触角測定値の結果と、上記の基準を用いて与えられた評点との対応を示す。
【表4】
実施例
実施例1~17
【0101】
表5は、改質粒子が配合物中で使用され、配合された配合物がガラススライド上にコーティングされたときの、細孔直径の超疎水性性能評点に対する影響を主に示す、実施例1~17を列挙する。これらの実施例において、結合分子はC-18シランであり、使用した結合剤系はフルオロエラストマー系(上記配合物1)であった。これらの実施例では、5%の改質粒子及び5%の結合剤を使用した。表は、粒子の選択(粒径及び細孔直径)、その改質レベル(C18シランの使用量)及びコーティングされた被膜の超疎水性評点を示す。
【表5】
【0102】
実施例1~4では、低PD(PD<80Å)を有するシリカサンプルを、異なる処理レベルでC18シランによって処理して、改質粒子を、架橋を有する結合剤と配合した。配合物をスライドガラス上にスピンコーティングし、硬化させた後、これらのサンプルの超疎水性評点は0であった。
【0103】
実施例5では、約80ÅのPDを有するシリカサンプル(P-3)をC18シランで改質し、改質粒子を、架橋を有する結合剤と配合した。配合物をスライドガラス上にスピンコーティングして硬化させた後、超疎水性評点は1であった。
【0104】
実施例6~17では、100Åを超えるPDを有するシリカサンプルを、異なる処理レベルでC18シランによって処理して、改質粒子を、架橋を有する結合剤と配合した。配合物をスライドガラス上にスピンコーティングし、硬化させた後、これらのサンプルの超疎水性評点は、予想外に全て3であった。
実施例18~30
【0105】
表6は、粒子の選択、その改質、使用した粒子、結合剤及び配合物の疎水性、使用したコーティング方法、並びにコーティングされた被膜の超疎水性評点に関して、実施例18~30を列挙する。
【表6】
【0106】
表に示すように、実施例27を除き、全ての他の粒子は、配合物中で使用され、表面上にコーティングされたとき、2又は3の超疎水性評点を与えた。実施例27において、(焼成後、全ての表面有機物が除去された後に)粒子が未改質であったたため、コーティングされた被膜の超疎水性評点は0であった。
実施例18
【0107】
実施例18では、12μmメジアン径粒子(表2のP-17)を、上記の乾式結合手順を使用して、10重量%のPDMS(表3)と結合させた。次いで、5重量%の粒子を、アセトン中で5重量%のG-802結合剤と混合した。この配合物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点2を得たが、木材基材上では評点3を得た。
実施例19
【0108】
実施例19では、12mmメジアン径粒子(P-17)を、上述のミル粉砕及び結合手順を使用して、10重量%のPDMSと結合させた。結合プロセス後のメジアン粒径は、約8μmに低減された。次いで、5重量%の粒子(最初に、約4.6重量%のTriton X100界面活性剤を使用して水中に分散させた。ここで、界面活性剤のパーセント量はシリカの量に対してであった。以下同様。)をWP-30Cワックスエマルションと混合して、最終のシリカ量及びワックスの量をそれぞれ5重量%及び5重量%とした。この配合物のスピンコーティングされた層は、木材基材上で評点3を得た。
実施例20
【0109】
実施例20において、実施例19に記載の改質粒子を使用した。5重量%の粒子(最初に、約10重量%のTriton X100界面活性剤を使用して水中に分散させた。)をWP-30Cワックスエマルションと混合して、シリカ及びワックスの最終量をそれぞれ4重量%及び5重量%とした。この配合物のスピンコーティングされた層は、ガラススライド上で評点3を得た。
実施例21
【0110】
実施例21において、市販の疎水性粒子P-18(表2)を使用し、粒子を高剪断下で10重量%のTriton X-100を用いて分散させた後、CANVERA(商標)1110(PO水性エマルション結合剤)と前述のように混合し、最終濃度は粒子が2重量%、結合剤が2重量%であった。この配合物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点0を得たが、木材上では2であった。
実施例22
【0111】
実施例22において、実施例19に記載の改質粒子をもう一度使用した。5%の粒子(最初に約10重量%のTWEEN(登録商標)20界面活性剤を使用して水中に分散させた。)をWP-30Cワックスエマルションと混合して、最終のシリカ量及びワックス量をそれぞれ4重量%及び5重量%とした。この配合物のスピンコーティングされた層は、木材基材及び厚紙基材上ので評点3を得た。
実施例23
【0112】
実施例23において、市販の疎水性粒子P-18を使用した。2重量%のこれらの粒子を、0.2重量%のトリアリルイソシアヌレート及び0.15重量%のジクミルペルオキシドと共に、1重量%のG-802結合剤と、前述したようにアセトン中で混合した。この配合物のスピンコーティングされた層は、ガラス、木材、金属、及びHDPE基材上で評点3を得た。ドローダウンもまた、これらの基材を用いて実施され、超疎水性評点は同様であった。別の実験セットでは、同じ配合物を使用して、コーティング布及び紙を浸漬し、超疎水性評点は同様に3であった。
実施例24
【0113】
実施例24において、市販の疎水性粒子P-18を使用した。2%の粒子を、0.2%のトリアリルイソシアヌレート及び0.15%のジクミルペルオキシドと共に、1%のG-802結合剤と、前述したようにアセトン中で混合した。この配合物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点3を得た。
実施例25
【0114】
実施例25において、市販の疎水性粒子P-20(表2)を使用し、1.9重量%のこれらの粒子を2.86重量%のIROGRAN(登録商標)A 85 P 4394(TPU結合剤)と、DMF中で混合した(粒子対結合剤比66.6%)。この配合物のスピンコーティングされた層は、1つのコーティングを有する木材上で評点2を得て、2つのコーティングを有する木材上では評点3を得た(なお、それぞれのコーティング後、1時間にわたる120℃での熱処理を行った)。
実施例26
【0115】
実施例26において、市販の疎水性粒子P-21(表2)を使用した。5%の粒子を、0.2重量%のトリアリルイソシアヌレート及び0.15%のジクミルペルオキシドと共に、5重量%のG-802結合剤と、前述したようにアセトン中で混合した。この配合物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点3を得た。
実施例27
【0116】
実施例27において、粒子P-19(焼成P-18粒子、表2)を使用し、前述したように、5重量%の焼成粒子(焼成後、粒子上に有機基は残らず、粒子は親水性となった。)を、0.2重量%のトリアリルイソシアヌレート及び0.15重量%のジクミルペルオキシドと共に、5%のG-802結合剤と、前述のようにアセトン中で混合した。この配合物のスピンコーティングされた層は、ガラス上で評点0を得た。この実施例は、疎水性粒子を含有するコーティングされた被膜が超疎水性特性を呈するためには、粒子の疎水性改質が必要であることを示している。
実施例28
【0117】
実施例28において、粒子P-19を、乾燥結合手順によって10重量%のCRTV944と結合させた。改質後、粒子は再び疎水性となった。次いで、改質粒子をアセトン中のG-802結合剤と混合した。配合物は、2重量%の最終濃度の粒子と、4重量%の最終濃度の結合剤とを含有した。混合物をガラス及び木材基材上にコーティングして、評点3を得た。
実施例29
【0118】
実施例29において、粒子P-19を、溶液結合手順によって10重量%のC18シランと結合させた。改質後、粒子は再び疎水性となった。次いで、改質粒子をアセトン中のG-802結合剤と混合した。配合物は、2重量%の最終濃度の粒子と、4重量%の最終濃度の結合剤とを含有した。混合物をガラス及び木材基材上にコーティングして、評点3を得た。
実施例30
【0119】
実施例30において、粒子P-19を、溶液結合手順によって10重量%のF13シランと結合させた。改質後、粒子は再び疎水性となった。次いで、改質粒子をアセトン中のG-802結合剤と混合した。配合物は、2重量%の最終濃度の粒子と、4重量%の最終濃度の結合剤とを含有した。混合物をガラス及び木材基材上にコーティングして、評点3を得た。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物であって、
疎水化シリカ粒子と、被膜形成性結合剤と、
溶媒とを含む、コーティング組成物であって、
前記疎水化シリカ粒子が、約80Å以上の細孔直径を有する多孔質シリカ粒子であって、処理されてその表面上に疎水性コーティングが形成された、多孔質シリカ粒子を含む、コーティング組成物。
【請求項2】
前記コーティング組成物中の、前記疎水化シリカ粒子の、前記被膜形成性結合剤に対する重量比が、少なくとも約1:2.5である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記溶媒が、1種以上の有機溶媒又は水を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記多孔質シリカ粒子のBET表面が、約800m
2/g未満、好ましくは約750 m
2/g未満である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記多孔質シリカ粒子のメジアン粒径が、約0.5μm~約50μm、好ましくは約1μm~約15μmの範囲である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記多孔質シリカ粒子の前記表面上の前記疎水性コーティングが、前記多孔質シリカ粒子の表面シラノール基と化学反応する少なくとも1つの反応性官能基を含有する疎水性シラン又はシロキサンと、前記多孔質シリカ粒子を接触させることによって形成され、
a)前記疎水性シラン若しくはシロキサンが、好ましくは少なくとも200ダルトンの重量平均分子量を有し、又は
b)前記疎水性シラン若しくはシロキサンが、好ましくは(ペルフルオロ)アルキルシラン、(ペルフルオロ)アルキルシロキサン、若しくはこれらの混合物であり、又は
c)前記疎水性シラン若しくはシロキサンが、オクタデシルトリメトキシシラン、ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、ポリジメトキシシラン、若しくはシラノール末端ポリジメチルシロキサンであり、より好ましくはポリジメトキシシランであり、又は
d)多孔質シリカ粒子が、好ましくは溶液による改質プロセス、乾燥による改質プロセス、若しくはミル粉砕及び改質プロセスによって、前記疎水性シラン若しくはシロキサンと接触させられ、前記ミル粉砕及び改質プロセスにおいて、前記多孔質シリカ粒子が、好ましくは、螺旋ジェットミル内でミル粉砕され、前記疎水性シラン若しくはシロキサンにより改質されて、前記疎水化シリカ粒子を得ると、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記疎水化粒子が、約0.5~約50μm、好ましくは約1μm~約15μmの範囲のメジアン粒径を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記被膜形成性結合剤が、C
2~C
6ポリオレフィン、C
8~C
36アルキル基を含有するエチレン性不飽和モノマーのホモポリマー、及びC
4~C
36アルキル基と、C
1~C
36アルキルビニルエーテルと、C
1~C
36カルボン酸のビニルエステルと、それらと共重合可能なエチレン性不飽和コモノマーとを含有するエチレン性不飽和モノマーのコポリマー、天然ワックス、及び合成ワックスからなる群から選択される1つ以上を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記被膜形成性結合剤が、フッ素含有ポリマーを含み、前記溶媒が1種以上の有機溶媒を含み、
a)前記フッ素含有ポリマーが好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとのコポリマー、アルコキシフルオロエチレンのコポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー、若しくはこれらの組み合わせたものであり、又は
b)好ましくは前記被膜形成性結合剤を架橋するための架橋剤を更に含み、前記コーティング組成物が、より好ましくは開始剤を更に含み、前記架橋剤が2つ以上の炭素-炭素二重結合を含み、又は
c)前記被膜形成性結合剤が好ましくは、ゲル化剤を更に含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記被膜形成性結合剤が、水性ワックスエマルション又は疎水性ポリマーの水性エマルションを含み、前記溶媒が水を含み、好ましくは、前記コーティング組成物が、前記疎水化シリカ粒子を界面活性剤の存在下で水中に分散させて、前記疎水化シリカ粒子の懸濁液を形成し、次いで、前記ワックスエマルション又は前記疎水性ポリマーの前記エマルションを前記疎水化シリカ粒子の前記懸濁液と混合することによって調製される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記被膜形成性結合剤が、前記コーティング組成物の重量に基づいて、約1~約30重量%の量で存在する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記コーティング組成物が、少なくとも1種の噴射剤を更に含むエアゾールの形態である、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の前記コーティング組成物から形成される疎水性被膜であって、室温で脱イオン水に対して約140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点とを示す、疎水性被膜。
【請求項14】
前記疎水性被膜が、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ドローダウン、ブラシコーティング、及びこれらの混合したものからなる群から選択される方法によって製造される、請求項13に記載の疎水性被膜。
【請求項15】
コーティング組成物から本質的になる、少なくとも1つのぬれにくい表面を備える物品であって、前記コーティング組成物が、
疎水化シリカ粒子と、
被膜形成性結合剤と、
溶媒と、を含み、
前記疎水化シリカ粒子が、約80Å以上の細孔直径を有する多孔質シリカ粒子であって、処理されてその表面上に疎水性コーティングが形成された、多孔質シリカ粒子を含む、物品。
【請求項16】
前記ぬれにくい表面が、室温にて脱イオン水に対して約140°以上の静的接触角と、0~3のスケールで少なくとも1のローリング評点とを示し、前記物品が、好ましくはガラス、金属、プラスチック、木材、コンクリート、布地、セルロース系材料、及び紙からなる群から選択される材料を含む、請求項15に記載の物品。
【国際調査報告】