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特表2022-531473癌腫瘍に対するテーラード低免疫ナノ小胞送達系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】癌腫瘍に対するテーラード低免疫ナノ小胞送達系
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/51 20060101AFI20220629BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20220629BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K9/51
A61P35/00
A61P31/12
A61P35/02
A61K47/69
A61K45/00
A61K48/00
A61K31/7088
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566006
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2020031616
(87)【国際公開番号】W WO2020227369
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/843,713
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521483087
【氏名又は名称】マルコム,トーマス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコム,トーマス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC35
4C076EE41
4C076EE57
4C076EE59
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB33
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA38
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
(57)【要約】
抗体断片scFV領域を通じて又はウイルスエピトープ認識受容体(VERR)によって標的バイオマーカーを認識し得るテーラードキメラ抗原受容体(CAR)を含む、低免疫原性誘導多能性幹細胞(iPSC)由来の生体模倣型ナノ小胞(低bioNV)。低bioNVを作製する方法。個体に低bioNVを投与し、癌細胞を標的とし、癌を処置することによって、癌がある個体を処置する方法。個体に低bioNVを投与し、破壊又は処置しようとする細胞を標的とすることによって、個体において細胞を標的とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体断片scFV領域を通じて又はウイルスエピトープ認識受容体(VERR)によって標的バイオマーカーを認識し得る改変/テーラードキメラ抗原受容体(CAR)で表面コーティングされており、低分子、生体、核及び/又は遺伝子編集治療剤をあらゆる意図する細胞標的に送達可能である低免疫原性誘導多能性幹細胞(iPSC)由来の生体模倣型ナノ小胞(低bioNV)を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、治療用及び遺伝子編集化合物を送達するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.背景技術
疾患細胞への遺伝子編集治療剤の効果的な標的指向性インビボ送達は、現代のバイオテクノロジーでも依然として最大の課題の1つとなっている。最近の改善をもってしても、送達機序は、標的化が不定であり低頻度であること、標的化適応力が低いこと、非自己アプローチが欠如していること、免疫中和が高いこと、高製造コスト、規制に関する障壁(FDA臨床試験差し止め)、量的に低い産生/回収/拡大、パッケージングサイズの制約、パッケージングが非効率的であること、オーガンシンキング(organ sinking)(肝臓及び骨髄)、送達小胞の半減期が短いこと及びIPロックアップなどの抑制的な問題を一貫して有する。
【0003】
AAV(アデノ随伴ウイルス)は、遺伝子編集治療剤用のベクターとして一般に使用される一ベクターである。AAVのサイズはおよそ22nmである。AAVは、肝臓シンク(sink)が高く(新しい突然変異体ではより低いが)、投与の制限があり(新しい血清型ではより高いが)、およそ1100アミノ酸のサイズ制限を有し、殆どの血清型が拡張可能であり、標的化効率は血清型指向性により制限される。
【0004】
リポソームは送達機構としても使用され得る。リポソームのサイズは50~1000nmである。オーガンシンキング(organ sinking)及び中和効果は、RES(網内系)、EPR(透過性及び保持促進)、ABC(血液クリアランスの加速)、CARPA(補体活性化関連仮性アレルギー)及びオプソニン作用を含む。免疫中和は変動し、リガンド依存的である。サイズの制約はないが、高価な殆どの化合物でアクティブローディングが必要である。製造はリガンド付加又はPEG化も含み得る。リポソームはリガンド標的化され、腫瘍浸透性に乏しい。
【0005】
調節可能型デンドリマーは1.5~10nmである。これらは、血液タンパク質と相互作用性が高く、IgGマクロファージFcクリアランスが上昇している。パッケージングの制約は、外側に複合化される核酸であることを含む。調節可能型デンドリマーは、遺伝子編集での使用に対して広く試験されていない。
【0006】
高分子ミセルのサイズは10~100nmである。オーガンシンキング(organ sinking)又は中和効果又は免疫中和は知られていない。サイズ制約はない可能性があり、これらは遺伝子編集について広く試験されていない。これらはリガンドに標的化され、刺激誘導性/放出可能である。
【0007】
エクソソームのサイズは30~150nmである。それらのオーガンシンキング(organ sinking)及び中和効果は高いが、新しい突然変異体ではより低い可能性がある。これらは免疫原性が低いが、その度合いは各リガンドで変動する。サイズ制約はないが、これらは負荷の効率が非常に悪い。治療的な量の生産も困難である。これらは、平均的な腫瘍浸透でリガンド標的化される。
【0008】
CAR T細胞もまた、癌を処置するために標的細胞に対して使用されてきた。CAR T細胞療法は、患者の癌を処置するために患者自身の免疫細胞(T細胞)の回収を必要とする癌療法である。T細胞は普通、侵入微生物を攻撃するが、CAR T細胞療法では、癌細胞を攻撃するためにT細胞を再改変する。最初に、T細胞を患者の血液から分離し、T細胞が特異的な腫瘍抗原に連結することを可能にするキメラ抗原受容体(CAR)をその表面上で産生させるために遺伝子改変する。CARは天然には存在せず、合成抗体の断片から作製される。CARは、T細胞内部のシグナル伝達及び同時刺激ドメインに依存して機能する。
【0009】
CAR T細胞が作製されたら、それらを増殖させて、その後に患者に点滴し戻され得る細胞を大量に産生させる。一般に、患者に対して注入する前に、それらのリンパ球を枯渇させるために化学療法が行われている。CAR T細胞は、設計される癌細胞上の腫瘍抗原に誘引され、これらの抗原を有する癌細胞を死滅させる。
【0010】
CAR T細胞療法は、小児における急性リンパ芽球性白血病(ALL)及び成人における進行リンパ腫の処置に対して承認されている。例えば、CD-19を標的とするCAR T細胞(チサンゲンレクロイセル(tisangenlecleucel)、KYMRIAH(商標),Novartis)は、ALLを処置するために使用されてきた。YESCARTA(商標)(アキシカブタゲンシロルユーセル、Kite Pharmaceuticals)はリンパ腫に対して使用される。CD-19発現を喪失している細胞においてCD-22を標的とするための試験も行われてきた。白血病におけるCD-19及びCD-123の二重標的化も試験されている。多発性骨髄腫に対して、BCMAを標的とするCAR T細胞が開発されている。現在、固形腫瘍を取り巻く微小環境ゆえに、CAR T細胞が固形腫瘍を処置し得るか否かは不明であるが、膵臓癌及び肺癌上で発現されるメソテリン及び神経膠芽腫上で発現されるEGFRvIIIを標的として、試験が行われている。
【0011】
CAR T細胞療法にはいくつかの欠点がある。これは、高熱及び低血圧を引き起こす、サイトカイン放出症候群を引き起こし得る。これは、IL-6活性の遮断によるさらなる処置を必要とし得る。これはまた、B細胞の死滅(B細胞無形成)も引き起こし、抗体を提供するために免疫グロブリンでのさらなる処置を必要とし得る。他の副作用としては脳浮腫及び神経毒性が挙げられる。回収及び改変するのに十分なT細胞が患者にない可能性もある。特に腫瘍細胞が抗原発現を喪失している場合、処置の第2ラウンドが必要であり得る。
【0012】
別の送達ビヒクルは、生体模倣型ナノ小胞(BioNV)又は生体機能化された(biofunctionalized)リポソーム様ナノ小胞(BLN)であり、これはエクソソームに類似しているがより大きい生体由来のナノサイズ小胞である。BioNVは、最近では、受動的標的化(腫瘍組織での蓄積)Wu,etら(2018)、能動的標的化(機能性ナノ小胞が腫瘍細胞において受容体を認識する)により、癌細胞の処置のためにうまく使用されている-Zhangら(2018)、Gohら(2017)及びLunavatら(2016)。さらに、これらは、抗炎症特性(α4β7インテグリン-炎症性腸疾患において関連)Corboら(2017)及び初代肝細胞由来である場合は肝細胞増殖 Wuら(20108)を試験するためにうまく使用されてきた。Molinaroら(2018)は、微小流体に基づくプラットフォームを使用して生体模倣型ナノ小胞の二重層内に膜タンパク質を組み込み、これにより、使用期限が延長され、ドナー細胞の生物学的機能が保持された。Jangら(2013)は、全身投与後に化学療法薬を腫瘍組織に送達する生体から着想されたエクソソーム模倣型ナノ小胞を開発し、これは孔径が小さくなっていくフィルターを通じた連続押出成形を使用した単球又はマクロファージの破壊により作製された。ナノ小胞は、原形質膜タンパク質のトポロジーを維持することにより細胞の天然の標的指向能を有し、化学療法薬負荷ナノ小胞は腫瘍組織へ輸送され、腫瘍成長を低下させる。
【0013】
BioNVの使用に対してエクソソームを超えるいくつかの長所がある。BioNVは、エクソソームの回収よりも製造がかなり容易である(患者から回収される場合、限定される)。従ってBioNVは、製造がかなり拡大可能であり、かなり容易である。
【0014】
BioNVは、CRISPR Cas9系に対する送達ビヒクルの一選択肢である(米国特許出願公開第20160281111号、同第20170022507号、同第20180119123号、同第20180155789号、同第20180236103号及び同第20180251770号)。BioNVはCRISPRによっても改変され得る(米国特許出願公開第20190085284号)。Dooleyらに対する米国特許出願公開第20190060483号は、ナノ小胞の精製方法を開示し、この精製は、エクソソーム上の表面タンパク質に関連し得る。
【0015】
身体において遺伝子編集生成物及び他の治療剤を効率的に送達し得る送達系並びにCAR T細胞標的化を利用し得る送達系が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
本発明は、BioNVを作製するために超音波処理、界面活性剤による破裂、酵素による破裂又はエレクトロポレーションの方法により遺伝子編集iPSCの細胞膜を破壊し、次いで精密ろ過法、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル精製、遠心分離又はそれらの組み合わせの方法によりBioNVを精製することによって、遺伝子編集iPSCから生体模倣型ナノ小胞(BioNV)を作製する方法を提供する。
【0017】
本発明は、上記方法により作製されるBioNVを提供する。
【0018】
本発明は、疾患の処置のためのBioNV中にパッケージ化される治療剤の組成物を提供する。
【0019】
本発明は、超音波処理、界面活性剤による破裂、酵素による破裂又はエレクトロポレーションの方法によって標的指向性表面マーカーがある遺伝子編集されたiPSCの細胞膜を破壊することにより、標的指向能を有するBioNVを作製する方法を提供する。
【0020】
本発明は、標的指向能を有するBioNVを提供する。
【0021】
本発明は、標的指向能を有するBioNV中にパッケージ化される治療剤の組成物も提供する。
【0022】
本発明は、抗体断片scFV領域を通じて又はウイルスエピトープ認識受容体(VERR)によって標的バイオマーカーを認識し得るテーラードキメラ抗原受容体(CAR)を含む低免疫原性の誘導多能性幹細胞(iPSC)由来生体模倣型ナノ小胞(低bioNV)を提供する。VERRの例は、様々な癌細胞上のTEM8を標的とするSVVのvp1、vp2又はvp3であり得る。関心のある何れかの細胞をbioNVが標的とすることを可能にするためにCAR設計において何れかが使用され得る。bioNVはまた、何れかの生物学的選択薬も封入し、送達し得る。
【0023】
本発明は、低bioNVを作製する方法を提供する。
【0024】
本発明は、低bioNVを個体に投与し、癌細胞を標的とし、癌を処置することによって、癌を有する個体を処置する方法を提供する。
【0025】
本発明は、低bioNVを個体に投与し、破壊しようとするか又は処置しようとする細胞を標的とすることによって、個体において細胞を標的とする方法を提供する。
【0026】
図面の簡単な説明
本発明の他の長所は、添付の図面と関連付けて考えたときに次の詳細な説明を参照することにより、より詳細に理解されるであろうため、容易に認められる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の生体模倣型ナノ小胞の誘導の模式図である。
図2図2は、低免疫原性iPSC由来生体模倣型ナノ小胞(低bioNV)の例である。
図3図3は、遺伝子編集での使用のための低bioNVの例である。
図4図4は、低bioNVがどのように作製されるかを示す模式図である。
図5図5は、2つの異なるbioNVの模式図である。
図6図6は、bioNVの2つの経路の模式図である。
図7図7は、bioNVの2つの経路の模式図である。
図8図8は、製造工程の模式図である。
図9図9は、サイズ分布のグラフである。
図10図10は、低bioNVの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、抗体断片scFV領域を通じて又はウイルスエピトープ認識受容体(VERR)によって標的バイオマーカーを認識し得るテーラードキメラ抗原受容体(CAR)を含む低免疫原性の誘導多能性幹細胞(iPSC)由来生体模倣型ナノ小胞(低bioNV)を提供する。関心のある何れかの細胞をbioNVが標的とすることを可能にするためのCAR設計において何れかが使用され得る。bioNVはまた、何れかの低分子、生物学的、核及び/又は遺伝子編集の選択治療剤を封入し、何れかの意図する細胞標的に送達させ、疾患、特にウイルスにより起こる疾患を処置し得る。BioNVを作製する方法は図1で示し、低BioNVの例は図2で示す。
【0029】
「BioNV」は、本明細書中で使用される場合、設計された生物学的機能付与を有し得る生体由来のナノサイズ小胞を指す。
【0030】
「iPSC」は、本明細書中で使用される場合、誘導多能性幹細胞を指し、これは、成体細胞から直接作製され得る幹細胞である。iPSCは、無制限に増殖し得、身体において何れかの細胞型になり得る。
【0031】
「ベクター」という用語は、クローニング及び発現ベクター並びにウイルスベクター及び組み込み(又は非組み込み)ベクターを含む。「発現ベクター」は、調節領域を含むベクターである。ベクターをさらに以下でも説明する。
【0032】
「レンチウイルスベクター」という用語は、組み込み及び非組み込みレンチウイルスベクターの両方を含む。
【0033】
ウイルスは、2つのサイクルのうち1つ、溶菌サイクル又は溶原サイクルの何れかにより複製する。溶菌サイクルでは、最初にウイルスが宿主細胞に侵入し、それ自身の核酸を放出する。次に、宿主細胞の代謝機構は、ウイルス核酸を複製し、宿主細胞内でウイルスを蓄積させるために使用される。宿主細胞内で十分なビリオンが産生されたら、宿主細胞が破裂(溶解)して、ビリオンがさらなる細胞の感染に進む。溶菌性ウイルスは、ウイルスDNAを宿主ゲノムに組み込み得、並びに非組み込みであり得、この場合は細胞の感染期間にわたり溶解が起こらない。
【0034】
「溶原性ウイルス」は、本明細書中で使用される場合、溶原サイクルにより複製するウイルスを指す(即ち宿主細胞の破裂及び宿主細胞DNAへのウイルス核酸の組み込みを引き起こさない)。溶原性ウイルスは、主に溶原サイクルにより複製し得るが、溶菌サイクルにより複製することがある。溶原サイクルにおいて、ビリオンDNAが宿主細胞に組み込まれ、宿主細胞が再生するとき、ビリオンDNAが細胞分裂から生じる細胞へとコピーされる。溶原サイクルにおいて、宿主細胞は破裂しない。本発明の組成物及び方法で処理される溶原性ウイルスとしては、A型肝炎、B型肝炎、D型肝炎、HSV-1、HSV-2、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、HIV1、HIV2、HTLV1、HTLV2、ラウス肉腫ウイルス、HPVウイルス、黄熱病、ジカ、デング熱、ウエストナイル、日本脳炎、リッサウイルス、ベジクロウイルス、サイトハブドウイルス、ハンタンウイルス、リフトバレーウイルス、ブニヤムウイルス、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、サビアウイルス、タカリベウイルス、フレクサルウイルス、ホワイトウォーターアロヨウイルス、エボラ、マールグルブウイルス、JCウイルス及びBKウイルスが挙げられ得るが限定されない。
【0035】
「溶菌性ウイルス」は、本明細書中で使用される場合、溶菌サイクル(即ち細胞内でウイルスの蓄積後、宿主細胞の破裂を引き起こす)により複製するウイルスを指す。溶菌性ウイルスは、主に溶菌サイクルにより複製し得るが、溶原サイクルにより複製することがある。本発明の組成物及び方法により処置される溶菌性ウイルスとしては、A型肝炎、B型肝炎、D型肝炎、コクサッキーウイルス、HSV-1、HSV-2、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、HIV1、HIV2、HTLV1、HTLV2、ラウス肉腫ウイルス、ロタ、セアドーンウイルス(seadornvirus)、コルチウイルス、JCウイルス及びBKウイルスが挙げられ得るが限定されない。
【0036】
本発明の組成物は、活性又は潜伏ウイルスの何れかにより引き起こされる感染を処置するために使用され得る。本発明の組成物は、潜伏ウイルスが存在する個体を処置するために使用され得るが、この個体は、ウイルスの症状をまだ呈していない。本組成物は、CD4+リンパ球、マクロファージ、線維芽細胞、単球、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、例えばランゲルハンス細胞及び濾胞樹状細胞、造血幹細胞、内皮細胞、脳ミクログリア細胞及び胃腸上皮細胞などであるが限定されない、個体中のあらゆる細胞でウイルスを標的とし得る。
【0037】
「gRNA」は、本明細書中で使用される場合、ガイドRNAを指す。CAR T細胞を改変するためにCRISPR Cas系中のgRNA及び本明細書中の他のCRISPRヌクレアーゼを使用する。これは、突然変異などのシングルgRNAで見られる懸念を回避するために1つ以上の特異的に設計されるgRNAを使用することによって遂行される。gRNAは、コード又は非コード配列に相補的な配列であり得、標的にしようとする特定の配列に対して合わせられ得る。gRNAは、タンパク質コード配列、例えば1つ以上のウイルス構造タンパク質をコードする配列、に相補的な配列であり得る。gRNA配列はセンス又はアンチセンス配列であり得る。遺伝子編集組成物が本明細書中で投与される場合、好ましくは(以下に限定されないが、)これが2つ以上のgRNAを含むが;単一のgRNAも使用され得ることが理解されるべきである。
【0038】
「核酸」は、本明細書中で使用される場合、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA及び核酸類似体を含有するDNA(又はRNA)を含め、RNA及びDNAの両方を指し、これらの何れも本発明のポリペプチドをコードし得、それらの全てが本発明により包含される。ポリヌクレオチドは、基本的に何れかの三次元構造を有し得る。核酸は2本鎖又は1本鎖(即ちセンス鎖又はアンチセンス鎖)であり得る。ポリヌクレオチドの非限定例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)及びその一部、転移RNA、リボソームRNA、siRNA、ミクロRNA、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、干渉RNA(RNAi)、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、何れかの配列の単離DNA、何れかの配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマー並びに核酸類似体が挙げられる。本発明の観点で、核酸は、ウイルス(ウイルス感染細胞を除去するため)又はエピジェネティック調節エレメント(癌細胞を除去するため)により発現が調節される無害な表面マーカーをコードし得る。
【0039】
「単離」核酸は、例えば天然のDNA分子又はそれらの断片であり得るが、ただし、天然のゲノム中でそのDNA分子のすぐ近くにある通常見られるその核酸配列のうち少なくとも1つが除去されるか、又は存在しない。従って、単離核酸としては、他の配列から独立した、個別の分子として存在するDNA分子(例えばキメラ合成された核酸又はcDNA又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)若しくは制限エンドヌクレアーゼ処理により作製されるゲノムDNA断片)が挙げられるが限定されない。単離核酸はまた、ベクター、自律複製プラスミド、ウイルスに、又は原核若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれるDNA分子も指す。さらに、単離核酸は、ハイブリッド又は融合核酸の一部であるDNA分子などの改変核酸を含み得る。例えばcDNAライブラリ又はゲノムライブラリ又はゲノムDNA制限消化を含有するゲルスライス内の他の核酸の多く(例えば数十又は数百~数百万)の間に存在する核酸は単離核酸ではない。
【0040】
単離核酸分子は、標準的技術によって作製され得る。例えば、本明細書中に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、本明細書中に記載のヌクレオチド配列を含有する単離核酸を得るために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用し得る。トータルゲノムDNA又はトータル細胞RNAからの配列を含め、DNA並びにRNAから特異的な配列を増幅させるためにPCRを使用し得る。例えばPCR Primer:A Laboratory Manual,Dieffenbach and Dveksler,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995に様々なPCR方法が記載されている。一般に、関心のある領域の末端又はそれを超えるものからの配列情報を使用して、増幅しようとする鋳型の逆鎖と配列が同一であるか又は類似するオリゴヌクレオチドプライマーを設計する。部位特異的なヌクレオチド配列修飾が鋳型核酸に導入され得る様々なPCRストラテジーも利用可能である。
【0041】
単離核酸はまた、単一の核酸分子として(例えば、ホスホラミダイト技術を使用して3’から5’方向で自動DNA合成を使用)又は一連のオリゴヌクレオチドとしての何れかで、化学合成され得る。例えば所望の配列を含有する長いオリゴヌクレオチド(例えば>50~100ヌクレオチド)の1つ以上の対を合成し得、各対は、相補性の短いセグメント(例えば約15ヌクレオチド)を含有し、オリゴヌクレオチド対がアニーリングされるときに二重鎖が形成されるようになる。オリゴヌクレオチドを拡張するためにDNAポリメラーゼが使用され、その結果、オリゴヌクレオチド対あたり1つの2本鎖核酸分子が得られ、次にこれをベクターへとライゲーションし得る。本発明の単離核酸はまた、例えばCas9コードDNAの天然の部分の突然変異誘発によっても得られ得る(例えば上記の処方による)。
【0042】
より具体的には、本発明は、超音波処理、界面活性剤による細胞の破裂、酵素による細胞の破裂(トリプシン処理によるなど)によって、又はエレクトロポレーションを使用して、遺伝子編集iPSCの細胞膜を破壊することによって遺伝子編集iPSCからバイオナノ小胞(BioNV)を作製する方法を提供する。超音波処理にさらに下記で言及するが、細胞膜の破壊において上記方法の何れかを使用し得ることが理解されるべきである。BioNVは一般に、治療剤輸送のために使用され得る内部空間を取り囲む膜である。本方法は、振盪器、小胞を回収するための低速遠心分離及びCovaris超音波処理での穏やかな界面活性剤処理で小胞出芽を誘導することを含む(小胞のサイズ分類及び負荷)。Malvern Zetasizing及びフローサイトメトリーで分析を行い得る。本発明は、この方法により作製されるBioNVも提供する。BioNVは直径20~1000nmであり得る。
【0043】
最も好ましくは、遺伝子編集iPSCは、Deuse,et al.(Nature Biotechnology,Vol.37,March 2019,p.252-258)に記載のものなど、CRISPR修飾iPSC及び低免疫原性(低iPSC)である。これらのiPSCは、MHCクラスI及びII遺伝子を不活性化し、CD47を過剰発現するように修飾されており、得られるiPSCがアロジェニックとなり、それらが投与される患者において免疫反応を引き起こさなくなる。従って、このようなiPSC由来のBioNVは、全ての患者において有用である。CRISPR/Cas9の代わりに、iPSC細胞を作製するために、TALEN、ZFN、RNase P RNA、C2c1、C2c2、C2c3、Cas9、Cpf1、TevCas9、Archaea Cas9、CasY.1、CasY.2、CasY.3、CasY.4、CasY.5、CasY.6,又はCasXなどであるが限定されない、様々な遺伝子編集方法(以下でさらに説明)を使用し得る。図1で示されるように、何れかの疾患を処置するための標的指向ストラテジーにおいて使用され得る何れかの潜在的な表面リガンドを過剰発現する所望の低iPSC由来の安定細胞株を改変するために、CRISPR又は他の遺伝子編集方法を使用して低iPSCを修飾する。低iPSCは、CD4+細胞を標的とするためのHIV gp120/gp41、HBVを処置するための肝臓細胞に対するApoE又は様々な癌及び/又はウイルス感染細胞標的に対するCAR若しくはVERRなどであるが限定されない、所望の細胞又は組織を標的とする表面マーカー又はリガンドを含み得る。次に、細胞をせん断してBioNVを生成させるために低iPSCマーカー/リガンド陽性細胞を超音波処理し、精密ろ過法、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル精製、遠心分離又はそれらの組み合わせの方法によって精製し、1.治療剤(DNAベクターから発現されるgRNAを伴うCRISPR Casヌクレアーゼ、タンパク質、RNA及び/又は低分子などであるが限定されない)が負荷される、2.染色体に組み込まれ、安定な「遺伝子編集カセット」(テトラサイクリン-Tet On/Off系などの薬物により調節され得る)からCRISPR Casヌクレアーゼ及び/又はgRNAを発現させることにより予め負荷される。この結果は注射可能な治療剤である。
【0044】
従ってBioNVは、超音波処理過程を使用して拡大縮小可能であり、もはや個別化されない。(超音波処理FAF方法を使用して)BioNVを個々の患者由来のPBMCから誘導するという以前の方法は、BioNV製造及び開発の個別化アプローチを条件としており、この方法は、交差する患者集団(cross patient populations)で免疫応答が起こるため、個々の患者に限定され、従って市販不能である。本発明は、全患者集団で使用され得るBioNVを提供することによりこの問題を解決する。
【0045】
本発明は、先行技術を凌ぐいくつかの長所がある。BioNV誘導に対する供給源としてアロジェニックiPSCを使用することによって、所望の受容体を標的とし得る何れかのリガンドを負荷させるためにBioNVを改変し得る。次々にあらゆる受容体を認識し得る何れかのリガンドを過剰発現させるために、アロジェニックiPSCを改変し得る。リガンド負荷アロジェニックiPSCを改変したら、次にBioNVを細胞株から誘導し、妥当なベクター治療剤(CRISPR Casヌクレアーゼ及びDNAベクター上のgRNAなど)をパッケージ化し、次いで標的とされる細胞に送達させ得る。
【0046】
本発明は、ウイルスにより引き起こされる疾患及び癌など疾患の処置のためのBioNV中にパッケージ化される治療剤の組成物も提供する。治療剤は、DNA、プラスミドDNA、RNA、タンパク質又はそれらの組み合わせであり得るが限定されない。本組成物は、超音波処理、遺伝子移入又はエレクトロポレーション法により作製され得る。治療剤をあらゆる標的に送達可能であり、BioNVは表面マーカーがないiPSCから誘導されたので、BioNV送達は全身的であり得る。
【0047】
本発明は、標的指向能を有するBioNV及び標的指向能を有するBioNVを作製する方法も提供する。標準的な細胞株開発プロトコールを使用して、及びCRISPR(又は他の遺伝子エディター)修飾アロジェニックiPSCを使用して、CRISPR修飾アロジェニックiPSC内で(CMVなどの強力なプロモーターから)所望の標的臓器又は細胞型の表面マーカー(例えば肝臓細胞標的化のためのApoE)が構成的に発現される安定細胞株を開発し得る。所望の表面マーカーの発現によって、iPSCがその細胞膜上で表面マーカーを提示することが可能になる。CRISPR修飾アロジェニックiPSC(「標的指向可能な」iPSC細胞株)の細胞膜上で表面マーカーが発現されたら、次に上記のような超音波処理プロトコールを使用して細胞株からBioNVを生じさせる。ここで、BioNVは、それらの上でコートされる表面マーカー(例えば肝臓細胞標的化のためのApoE)を有し、それによりそれらに標的指向特性を与える。
【0048】
本発明は、標的指向能を有するBioNV中にパッケージ化される治療剤の組成物も提供する。治療剤は、上記のようにBioNV中にパッケージ化され得る。
【0049】
本明細書中の組成物は、溶原性又は溶菌性又はその両方の何れであれ、上記のウイルス(それらにより起こる疾患)の何れかを処置するために使用され得る。本組成物は、前癌状態の細胞、癌細胞又はウイルスにより生じる癌細胞などの様々な望ましくない細胞型を処置するためにも使用され得る。
【0050】
低bioNVには、効率的及び修正的な遺伝子治療のための何れかのCRISPR-gRNA(又は遺伝子エディター)発現プラスミド治療剤も負荷され得る。例を図3で示す。
【0051】
ヒトCD34+臍帯血由来の低免疫原性hiPSC細胞株を作製するために、CRISPR Cas9遺伝子編集が使用されてきた。このCD34+臍帯血由来細胞株は、癌細胞の微小環境への遺伝性疾患に対する遺伝子編集治療剤及び抗癌治療剤の送達のためのbioNV開発、産生及び製造に対する基本的供給源となる。Deuseら (2019)は、HLA1/2の低発現及びCD47の過剰発現を確認するためにCD34+臍帯血由来の低免疫原性細胞株を大規模に試験した。確認した時点で、ヒト化マウス試験において、その細胞の低免疫性表現型について細胞をさらに試験した。INF-γ発現、IgM反応及びNK細胞活性化を引き起こす野生型細胞株と比較して、低免疫原性iPSCはこれらの応答の何れも誘発しない。iPSC株を心筋細胞及び上皮細胞に分化させた場合は、これらの各実験を2つ組で行った(結果は同様)。
【0052】
CAR T細胞は、CAR表面受容体を含有する生体模倣型ナノ小胞の優れた供給源であることが示されている。CARコーティングBioNVは、独立型のCAR T細胞療法を凌ぐいくつかの重要な長所を有することが示されている。Deuseらは、サイトカインストーム又は細胞傷害性の暴走を引き起こすことなく、それらが強力な抗癌特性を有することを報告した。これらは、機能喪失及び腫瘍浸潤を伴わず、腫瘍微小環境への近接性を有する。奇形腫形成につながり得る遺伝情報のゼロトランスファー(zero transfer)がある。単一の癌タイプ又は複数の癌に対する同時多重標的指向能がある。
【0053】
Fuら (2019)は、CAR T細胞が、腫瘍成長を抑制する高レベルの細胞傷害性分子を含有しながら、それらの表面上でCAR受容体の同等濃度を含有するエクソソーム(一般的にはBNVの10分の1未満)を排出することが示されていることを報告した。Fuらは、CAR T細胞が、抗原で刺激される際に、約7~8倍高い濃度のエクソソームを放出することを示した。免疫ブロット分析から、全細胞抽出物からのCAR T細胞の表面上のCAR及びCD28/CD3ビーズ又は癌細胞抗原刺激で刺激したCAR T細胞由来のエクソソームの濃度が示された。エクソソームのCARは、濃度依存的に癌抗原に結合し、この相互作用は、遮断抗体CTX(セツキシマブ)及びTTZ(トラスツズマブ)で破壊され得る。Fuらは、CARエクソソームが様々なタイプの癌において抗腫瘍活性を有することも示した。CAR-EXO-CTX(セツキシマブscFvを伴うCARエクソソーム)及びCAR-EXO-TTZ(トラスツズマブscFvを伴うCARエクソソーム)は、CAR-EXO濃度上昇依存的に、乳癌及び肺腺癌腫瘍を含有するマウス異種移植モデルにおいて顕著な腫瘍縮小を示す。HER2-陽性乳癌及び卵巣癌モデルにおいてかなりの腫瘍抑制を示すCAR-EXO-TTZの100μg用量で、皮下異種移植片として確立された患者由来腫瘍組織片を処理した。
【0054】
本発明で、CD34+臍帯血由来のHLA1/HLA2ヌル細胞株での低免疫原性iPSCにおいて重要な遺伝子のサブトラクション及び付加が作製され得る。
B2M-/-→HLA1低免疫
CIITA-/-→HLA2低免疫
CD47-/-→CD47ヌル(貪食作用回復)
PD1-/-→PDL1耐性排除
【0055】
遺伝子に対して改変を加えるためにCpf1によりガイドされるヌクレアーゼスワップアウト(swap out)系を伴う上流CRISPRa CAR発現カセットを使用し得る。
【0056】
次のように、及び図4のダイアグラムで示されるように、本発明の低bioNVが作製され得る。最初に、薬物により調節される(Tet調節など)CRISPRa+標的とされる3x転写因子に標的指向化されたgRNA系(Drm2、Fr5、Bxp2-抗体産生を上方制御することが示されている遺伝子)の安定な細胞組み込み(セーフハーバー(safe harbor)ゲノム位置)がある。3つの上流転写因子に対するCRISPR活性化系は、指定の遺伝子座で内在抗体ORFを置き換えたCARの産生を促進するシグナルカスケード事象を惹起する。次に、Cpf1に向けられた(又は何れかの他のCRISPR Cas/ZFN、TALEN)HDRを使用したCARカセットでのCDR及びH&L抗体領域の安定な置き換えがある。CARカセットが安定に組み込まれたら、Cpf1に向けられた(又は何れかの他のCRISPR Cas/ZFN、TALEN)HDRを使用して、カセットのscFV及びVERR領域(カセットの5’末端付近)を何れかの所望のscFV又はVERRへとスワップアウト(swap out)し得る。
【0057】
この方法は、低bioNVの表面上で第1世代対第2世代CARを発現させる方法を詳述する図5で示されるような様々な機能がある低bioNVを作製するために使用され得る。例えば、あるタイプの低bioNVは、CAR(scFV又はVERR)表面リガンドのみを発現する標的細胞株から専ら生じさせ得る。最終結果のbioNV中にパッケージ化され得る必須のテーラードタンパク質又は核酸を発現するように、これらの細胞株をさらに適応させ得る。別のタイプの低bioNVは、リンパ球顆粒及びサイトカイン応答の活性化に必要な細胞内CAR(scFV又はVERR)構成成分を含有する標的細胞株から生じさせ得る。さらにこの基礎的な細胞株をその多能状態から所望のリンパ球(T細胞、NK、マクロファージ)へと分化させ得、次にそこからbioNVを生じさせ得る。得られたbioNVは、第2世代のCAR(scFV又はVERR)リガンドで表面コーティングされ、これに腫瘍死滅を誘発する因子が負荷される。
【0058】
表1で示されるように抗癌又は抗ウイルス特性を有する何れかのタンパク質及び/又は核酸治療剤を発現するように細胞株を設計し得る。
【0059】
【表1】
【0060】
これにより、生物学的治療剤の過剰発現及びプレパッケージングが不要になり得る。この工程を使用して開発された細胞株は、リンパ球活性化に必要な第2世代CARリガンドを含有する。所望のCARリガンドが発現されたら、細胞株をCAR-リンパ球に分化させ、適切な抗原で活性化し、次いで「負荷され、標的が定められた」bioNVを作製するために処理する。細胞株は表2で列挙される修飾を有し得る。
【0061】
【表2】
【0062】
図6は、様々なタイプの薬物又はサイトカインの送達という状況において、bioNVの表面上の第1世代対第2世代CARという観点でbioNVを作製する方法を示す。1つの経路では、CAR及びタンパク質発現のみがあり、分化はない。一次CAR及び所望のタンパク質治療剤発現がある。iPSCからのbioNVプロセシングがある。BioNVは、一次表面CAR及び必須の(しかし限定される)リンパ球活性化タンパク質=パーフォリン及びグランザイムBを含有する。抗原活性化は必要なく、さらなる抗癌薬を添加し得る。
【0063】
図7での別の経路において、リンパ球細胞株へのiPSC分化があり、これはパッケージングを必要としない。第2世代CAR発現がある。リンパ球サイトカインレパートリーを発現させるためには抗原刺激が必要である。リンパ球からのbioNVプロセシングがある。リンパ球由来の得られるbioNVは、活性化及び標的指向能の特性を含有する。
【0064】
表3のように修飾をなし得る。CD34+臍帯血由来のHLA1/HLA2ヌル細胞株へと重要遺伝子サブトラクション及び付加を操作することによる、ベースiPSCの低免疫原性がある。
【0065】
【表3】
【0066】
図7は、遺伝子編集治療剤の送達のためにbioNVを作製するための2つの経路を示す。一方の経路において、CAR及びタンパク質発現があり、分化はない。一次(第1世代)CAR発現がある。iPSCからのbioNVプロセシングがある。ASA介在性プラスミド又はドギーバックボーン(doggy backbone)負荷がある。エレクトロポレーション又は超音波処理を介してbioNVに挿入される遺伝子エディター及びgRNAコードプラスミド又はドギーバックボーン(doggy backbone)DNAがある。
【0067】
図7での別の経路において、一次(第1世代)CAR及び遺伝子エディター/gRNA過剰発現があり、分化はない。一次CAR及び所望のエディター/gRNA治療剤発現がある。iPSCからのbioNVプロセシングがある。安定組み込み及び薬物誘導性の「遺伝子編集カセット」から発現される予め負荷された遺伝子エディター及びgRNAがある。
【0068】
図8は低bioNVに対する製造工程を示す。2つの確立された方法を使用して遂行される親iPSC細胞株からのBNV遊離がある-1)デオキシコール酸ナトリウム出芽(研究目的)又は2)穏やかな界面活性剤による破裂(製造)。この結果、HLA1/HLA2陰性(低免疫)であり、貪食作用を促進するためのCD47-/-、PDL1耐性排除のためのPD1-/-を伴う、サイズ範囲が1000~1200nmの低bioNVが得られる。
【0069】
図9は、強度によるサイズ分布を示す。Zetasizer Nano ZSは、レーザー光散乱によって溶液中で粒径を測定した。この試料は3個のピークを示す:1)約12nm=タンパク質凝集体、2)約50nm=細胞内の残屑、膜断片及び3)約1000nm=テーラードナノ小胞。図10はbioNVの例を示す。
【0070】
低bioNVは、TALEN、ZFN、RNase P RNA、C2c1、C2c2、C2c3、Cas9、Cpf1、TevCas9、Archaea Cas9、CasY.1、CasY.2、CasY.3、CasY.4、CasY.5、CasY.6又はCasXの遺伝子エディターなどの様々な治療剤を含有し得る。遺伝子エディターはgRNAも含み得、これは、本明細書中で使用される場合、ガイドRNAを指す。gRNAは、コード又は非コード配列に相補的な配列であり得、標的化しようとする特定の配列に対して調整され得る。gRNAは、タンパク質コード配列、例えば1つ以上のウイルス構造タンパク質をコードする配列(例えばgag、pol、env及びtat)に相補的な配列であり得る。gRNA配列は、センス又はアンチセンス配列であり得る。遺伝子エディター組成物が本明細書中で投与される場合、好ましくは(以下に限定されないが)これが2つ以上のgRNAを含むが;単一のgRNAも使用され得ることが理解されるべきである。
【0071】
本発明は、低bioNVを個体に投与し、癌細胞を標的とし、癌を処置することによって、癌を有する個体を処置する方法を提供する。CAR受容体(scFV又はVERR領域の何れかからなり得る)は、癌細胞上でその特異的なバイオマーカーを認識し得る。CARが癌細胞上のバイオマーカー(標的)と結合/相互作用すると、それはその負荷物(薬物、サイトカイン、ペプチド、遺伝子エディター/gRNA、プラスミドなど)を放出する。
【0072】
低bioNVは、腺様嚢胞癌腫、副腎腫瘍、アミロイドーシス、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調症、アテニュエーテッド(attenuated)家族性大腸腺腫症、ベックウィズ-ヴィーデマン症候群、胆管癌、バート-ホッグ-デュベ症候群、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、カルチノイド腫瘍、カーニー複合、中枢神経系腫瘍、子宮頸癌、結直腸癌、コーデン症候群、頭蓋咽頭腫、線維形成性乳児神経節膠腫、内分泌腫瘍、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、眼の癌、眼瞼の癌、卵管癌、家族性大腸腺腫症、家族性悪性メラノーマ、家族性非VHL明細胞腎臓細胞癌、胆嚢癌、ガードナー症候群、消化管間質腫瘍、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛性疾患、頭頸部癌、びまん性胃癌、平滑筋腫症及び腎臓細胞癌、混合ポリープ症候群、膵炎、乳頭状腎臓細胞癌、HIV及びAIDS関連癌、膵島細胞腫瘍、若年性ポリープ症候群、腎臓癌、涙腺腫瘍、喉頭及び下咽頭癌、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、ヘアリー細胞白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄白血病、慢性T細胞リンパ球性白血病、好酸球性白血病、リー-フラウメニ症候群、肝臓癌、肺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンチ症候群、肥満細胞症、髄芽腫、メラノーマ、髄膜腫、中皮腫、ミュア・トール症候群、多発性内分泌腺腫症1型、多発性内分泌腺腫症2型、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、MYH関連ポリポーシス、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、神経線維腫症1型、神経線維腫症2型、母斑性基底細胞癌症候群、口腔及び中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、ポイツ・ジェガース症候群、脳下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、胞巣状軟部及び心臓肉腫、カポジ肉腫、皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣腫瘍、胸腺腫、甲状腺癌、結節性硬化症候群、ターコット症候群、未知の原発性、子宮癌、膣癌、フォンヒッペル・リンドウ病、ウィルムス腫瘍又は色素性乾皮症に関連する癌細胞を標的とし得る。
【0073】
本発明は、個体に低bioNVを投与し、破壊又は処置しようとする細胞を標的とすることによって、個体において細胞を標的とする方法を提供する。(scFV又はVERR領域の何れかからなり得る)CAR受容体は、破壊又は処置しようとする細胞上でその特異的なバイオマーカーを認識し得る。CARが細胞上のバイオマーカー(標的)と結合し/相互作用したら、これがその負荷物(薬物、サイトカイン、ペプチド、遺伝子エディター/gRNA、プラスミドなど)を放出する。bioNVは、不活性化することなく、腫瘍微小環境に入り得、他の方法より高い効率でそれらの負荷物を送達し得る。
【0074】
低bioNVは、活性化T細胞の重要で強力な構成成分を封入する。腫瘍微小環境での有効性が限定されているCAR療法とは異なり、本発明の低bioNVは、現在のアプローチに付随する副作用なく、疾患細胞に対してリンパ球パンチ(lymphocyte punch)を負荷することによってこの問題を乗り越える。低bioNVはサイトカインストームの可能性を排除し、これらにより、あらゆる腫瘍微小環境に対する、安定であり、個々に合わせた、標的指向性の接近が可能となり、これらは腫瘍浸透の有効性が他の送達系よりも高い。低bioNVは、高頻度であり、個々に合わせた標的指向性という長所を有し、これらは非常に適応性が高く、これらは即時入手可能であり、これらは低免疫性であり、これらは、高品質な製造及び拡張可能性及び均一で標的指向性の生体内分布を可能にする。
【0075】
iPSCの改変の際に使用され得る遺伝子エディターは次のとおりである。iPSCが構築されたら、遺伝子エディター発現カセット(薬物調節されてもよいし又はそうでなくてもよい)も安定に組み込まれ得る。ここで、iPSC株は、オンにされ得る遺伝子エディター発現カセットを有する。オンになると、エディター(及びgRNA)は細胞において過剰発現される。次に、bioNVを作製するためにこの細胞を処理し、このbioNVは、その意図される細胞標的への治療剤としての送達のために、そこに所望のgRNAがパッケージ化されている遺伝子エディターを有する。以下で列挙される何れかの遺伝子エディターはこの立場で働く。
【0076】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、特異的なDNA位置で2本鎖破壊を生じさせる。ZFNは、2つの機能ドメイン、6bp DNA配列を認識するDNA結合ドメイン及びヌクレアーゼFokIのDNA切断ドメインを有する。
【0077】
TALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)は、DNAにおいて2本鎖破壊を生じさせるDNA切断ドメインに融合されたTALエフェクターDNA-結合ドメインを含む。
【0078】
ヒトWRNは、ウェルナー症候群遺伝子によりコードされるRecQヘリカーゼである。これは、複製、組み換え、切除修復及びDNA損傷応答を含め、ゲノム維持に関わる。これらの遺伝学的過程及びWRNの発現は、多くのタイプの癌において同時に上方制御される。従って、このヘリカーゼの標的化破壊が癌細胞の排除に有用であり得ることが提案されている。報告は、培養ヒト細胞株において効率的にWRN mRNAを切断するようにRNase P RNAを誘導する際に外部ガイド配列(EGS)アプローチを適用しており、従ってこの特有の3’-5’DNAヘリカーゼ-ヌクレアーゼの翻訳及び活性を消失させる。
【0079】
クラス2型VI-A CRISPR/Casエフェクター「C2c2」は、RNAによりガイドされるRNase機能を実証し、上記のようなカセットを通じてiPSCにおいて治療剤としてパッケージ化され、送達され得る。細菌レプトトリキア・シャヒイ(Leptotrichia shahii)からのC2c2は、RNAファージに対する干渉をもたらす。インビトロでの生化学分析から、C2c2が、単一のcrRNAによってガイドされ、相補的プロトスペーサーを保有するssRNA標的を切断するためにプログラムされ得ることが示される。細菌において、C2c2は、特異的なmRNAをノックダウンするためにプログラムされ得る。切断には、2個の保存的HEPNドメインにおける触媒性残基が介在し、この突然変異は、触媒的に不活性のRNA-結合タンパク質を生成させる。C2c2のRNAに焦点を合わせた作用は、細胞の同一性及び機能に対するゲノムブループリントであるDNAを標的とするCRISPR-Cas9系を補完する。RNAのみを標的とする能力は、ゲノムの指示の遂行を助け、ハイスループットな方式で特異的にRNAを操作する能力を提供し、遺伝子機能をより広範に操作する。これらの結果から、新しいRNA標的指向ツールとしてのC2c2の能力が実証される。
【0080】
別のクラス2型V-B CRISPR/Casエフェクター「C2c1」もDNAを編集するために本発明で使用され得る。C2c1は、Cpf1に遠く関連するRuvC様エンドヌクレアーゼドメインを含有する(下記)。C2c1は、標的DNAの両鎖を部位特異的に標的とし、切断し得る。Yang,et al.(PAM-Dependent Target DNA Recognition and Cleavage by C2c1 CRISPR-Cas Endonuclease,Cell,2016 Dec 15;167(7):1814-1828))によれば、結晶構造から、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)C2c1(AacC2c1)が、2成分複合体としてsgRNAに結合し、三元複合体としてDNAを標的とし、それにより、単一のRuvC触媒ポケット内に独立して位置する標的及び非標的DNA鎖の両方を持つAacC2c1の触媒的に適格である立体構造を捕捉することが確認される。Yangらは、C2c1介在切断の結果、標的DNAのねじれた7個のヌクレオチドの破壊が起こり、crRNAが、挿入されたトリプトファンの放出とともに、2成分複合体において予め並べられた5個のヌクレオチドA形態シード配列を導入し、三元複合体の形成において20bpガイドRNA:標的DNAヘテロ2本鎖のジッパーアップ(zippering up)を促進すること、及び三元複合体形成においてPAM相互作用間隙が「ロックされた」立体構造を導入することを確認している。
【0081】
C2c3は、C2c1と遠く関連し、RuvC様ヌクレアーゼドメインを含有するV-C型の遺伝子エディターエフェクターである。C2c3は、下記のCasY.1-CasY.6群とも類似している。
【0082】
「CRISPR Cas9」は、本明細書中で使用される場合、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連エンドヌクレアーゼCas9を指す。細菌において、CRISPR/Cas遺伝子座は、可動遺伝因子(ウイルス、転位性エレメント及び接合伝達プラスミド)に対するRNAによりガイドされる適応免疫系をコードする。CRISPR系の3つのタイプ(I~III)が同定された。CRISPRクラスターは、スペーサー、先行の可動因子に対して相補的な配列を含有する。CRISPRクラスターが転写され、プロセシングされて成熟CRISPR(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート)RNA(crRNA)になる。CRISPR関連エンドヌクレアーゼ、Cas9は、II型CRISPR/Cas系に属し、標的DNAを切断するための強いエンドヌクレアーゼ活性を有する。Cas9は、(スペーサーと呼ばれる)ユニークな標的配列の約20塩基対(bp)及びプレcrRNAのリボヌクレアーゼIIIにより支援されるプロセシングに対してガイドとして働くトランス活性化低分子RNA(tracrRNA)を含有する成熟crRNAによりガイドされる。crRNA:tracrRNA2本鎖は、crRNA上のスペーサーと標的DNA上の相補配列(プロトスペーサーと呼ばれる)との間での相補的塩基対形成を介してCas9を標的DNAに誘導する。Cas9は、トリヌクレオチド(NGG)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識して、切断部位を特定する(PAMから3番目のヌクレオチド)。crRNA及びtracrRNAを個別に発現させ得るか、又は天然crRNA/tracrRNA2本鎖を模倣するために合成ステムループ(AGAAAU)を介して人工融合低分子ガイドRNA(sgRNA)へと改変され得る。shRNAのような、このようなsgRNAを合成し得るか、又は直接的なRNA遺伝子移入のためにインビトロで転写し得るか、又はU6又はH1で促進されるRNA発現ベクターから発現させ得るが、人工sgRNAの切断効率は、crRNA及びtracrRNAが個別に発現される系の場合よりも低い。
【0083】
CRISPR/Cpf1は、Broad Institute及びMITからのFeng Zhangのグループにより2015年に特徴が調べられたCRISPR/Cas9系と類似のDNA編集技術である。Cpf1は、クラスII CRISPR/Cas系のRNAによりガイドされるエンドヌクレアーゼである。この獲得免疫機序は、プレボテラ(Prevotella)及びフランキセラ(Francisella)細菌で見られる。これは、ウイルスからの遺伝子損傷を防ぐ。Cpf1遺伝子は、ウイルスDNAを発見し、切断するためにガイドRNAを使用するエンドヌクレアーゼをコードするCRISPR遺伝子座に付随する。Cpf1は、Cas9よりも小さく、単純なエンドヌクレアーゼであり、CRISPR/Cas9系の制約の一部を克服している。CRISPR/Cpf1は、遺伝子疾患及び変性状態の処置を含め、複数の適用を有し得る。
【0084】
CRISPR/TevCas9系も使用し得る。一部のケースでは、CRISPR/Cas9が1スポットでDNAを切断したら、生物の細胞におけるDNA修復系が切断部位を修復するであろうことが示されている。細胞のDNA修復系にとって切断を修復することがより困難になるように、標的の2つの部位でDNAを切断するために、TevCas9酵素を開発した(Wolfs,et al.,Biasing genome-editing events toward precise length deletions with an RNA-guided TevCas9 dual nuclease,PNAS,doi:10.1073)。TevCas9ヌクレアーゼは、Cas9に対するI-Teviヌクレアーゼドメインの融合物である。
【0085】
Cas9ヌクレアーゼは、野生型ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyrogenes)配列と同一であるヌクレオチド配列を有し得る。いくつかの実施形態では、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、他の種、例えば他の連鎖球菌(Streptococcus)種、例えばサーモフィルス(thermophilus);シュードモナ・アエルギノーサ(Psuedomona aeruginosa)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)又は他のシーケンシングされた細菌ゲノム及び古細菌又は他の原核微生物からの配列であり得る。或いは、野生型ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyrogenes)Cas9配列が修飾され得る。核酸配列は、哺乳動物細胞での効率的な発現のために最適化された、即ち「ヒト化」、コドンであり得る。ヒト化Cas9ヌクレアーゼ配列は、例えば、Genbank受入番号KM099231.1 GI:669193757;KM099232.1 GI:669193761;又はKM099233.1 GI:669193765で列挙される発現ベクターの何れかによりコードされるCas9ヌクレアーゼ配列であり得る。或いは、Cas9ヌクレアーゼ配列は、例えば、Addgene(Cambridge,MA)からのPX330又はPX260などの市販のベクター内に含有される配列であり得る。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼは、Genbank受入番号KM099231.1 GI:669193757;KM099232.1 GI:669193761;又はKM099233.1 GI:669193765のCas9エンドヌクレアーゼ配列の何れかの変異体又は断片であるアミノ酸配列又はPX330若しくはPX260(Addgene,Cambridge,MA)のCas9アミノ酸配列を有し得る。Cas9の生物学的に活性のある変異体をコードするためにCas9ヌクレオチド配列を修飾し得、これらの変異体は、例えば1つ以上の突然変異(例えば、付加、欠失若しくは置換突然変異又はこのような突然変異の組み合わせ)を含有することにより、野生型Cas9とは異なるアミノ酸配列を有し得るか又は含み得る。置換突然変異のうち1つ以上は、置換(例えば保存的アミノ酸置換)であり得る。例えば、Cas9ポリペプチドの生物学的に活性である変異体は、野生型Cas9ポリペプチドに対して少なくとも又は約50%の配列同一性(例えば少なくとも又は約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%又は99%配列同一性)があるアミノ酸配列を有し得る。保存的アミノ酸置換は一般的に、次の群内の置換を含む:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン及びロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリン及びスレオニン;リジン、ヒスチジン及びアルギニン;及びフェニルアラニン及びチロシン。Cas9アミノ酸配列中のアミノ酸残基は、非天然アミノ酸残基であり得る。天然アミノ酸残基は、遺伝子コードにより天然にコードされるもの並びに非標準的アミノ酸(例えばL-立体配置の代わりにD-立体配置を有するアミノ酸)を含む。本ペプチドは、標準的残基の修飾バージョンであるアミノ酸残基も含み得る(例えばリジンの代わりにピロリジンが使用され得、システインの代わりにセレノシステインが使用され得る)。非天然アミノ酸残基は、天然では見つかっていないものであるが、アミノ酸の基本的な式に適合し、ペプチドに組み込まれ得るものである。これらには、D-アロイソロイシン(2R,3S)-2-アミノ-3-メチルペンタン酸及びL-シクロペンチルグリシン(S)-2-アミノ-2-シクロペンチル酢酸が含まれる。他の例については、教科書又はワールドワイドウェブ(サイトは現在、California Institute of Technologyにより維持されており、機能的タンパク質にうまく組み込まれている非天然アミノ酸の構造を示す)を参考にし得る。Cas-9は以下の表4で示される何れかでもあり得る。
【0086】
【表4】
【0087】
RNAによりガイドされるエンドヌクレアーゼCas9は多用途のゲノム編集プラットフォームとして出現したが、一部の研究者は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来の一般的に使用されるCas9(SpCas9)のサイズにより、非常に多用途のアデノ随伴ウイルス(AAV)送達ビヒクルを使用する基礎研究及び治療適用に対してその有用性が制限されることを報告している。従って、6個のより小さいCas9オルソログが使用されており、報告は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)からのCas9(SaCas9)が、1キロベース超短い一方で、SpCas9と同等の効率でゲノムを編集し得ることを示している。SaCas9は1053bpであり、一方でSpCas9は1358bpである。
【0088】
Cas9ヌクレアーゼ配列又は本明細書中に記載の遺伝子エディターエフェクター配列の何れかは突然変異配列であり得る。例えば、Cas9ヌクレアーゼは、鎖特異的な切断に関与する保存的なHNH及びRuvCドメインにおいて突然変異させられ得る。例えば、RuvC触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの(D10A)突然変異は、Cas9ニッカーゼ突然変異体(Cas9n)が、1本鎖破壊を生じさせるためにDNAを切断するのではなく、切れ目を入れることを可能にし、HDRを通じた続く優先的な修正によって、オフターゲット2本鎖破壊からの不要なインデル突然変異の頻度が低下する可能性があり得る。一般に、遺伝子編集エフェクター配列の突然変異は、オフターゲティングを最小にするか又は防ぎ得る。
【0089】
遺伝子エディターエフェクターは、古細菌Cas9でもあり得る。古細菌Cas9のサイズは、950aa ARMAN 1及び967aa ARMAN 4である。古細菌Cas9は、ARMAN-1(カンジダツス・ミクラルカエウム・アシディフィルム(Candidatus Micrarchaeum acidiphilum)ARMAN-1)又はARMAN-4(カンジダツス・パルバルカエウム・アシディフィルム(Candidatus Parvarchaeum acidiphilum)ARMAN-4)由来であり得る。
【0090】
Tev又は何れかの他の適切なホーミングタンパク質ドメインを用いて、本明細書中の遺伝子エディターエフェクターの何れかにまたタグ付加し得る。Wolfs,et al.(Proc Natl Acad Sci USA.2016 Dec 27;113(52):14988-14993.doi:10.1073/pnas.1616343114.Epub 2016 Dec 12)によれば、Tevは、標的部位の殆どを効果的に欠失させ、それが再生し得ないようにする、標的部位で2つの非適合性DNA破壊を生じさせるRNAによりガイドされる二重活性部位ヌクレアーゼである。
【0091】
本明細書中に記載のものなどの核酸を含有するベクターも提供される。「ベクター」は、挿入セグメントの複製を行うために別のDNAセグメントが挿入され得るレプリコン、例えばプラスミド、ファージ又はコスミドなど、である。一般に、適性である制御エレメントと連結される場合、ベクターは複製可能である。適切なベクター骨格としては、例えば、プラスミド、ウイルス、人工染色体、BAC、YAC又はPACなどの当技術分野で通常使用されるものが挙げられる。「ベクター」という用語は、クローニング及び発現ベクター並びにウイルスベクター及び組み込みベクターを含む。「発現ベクター」は、調節領域を含むベクターである。多くのベクター及び発現系は、Novagen(Madison,WI)、Clontech(Palo Alto,CA)、Stratagene(La Jolla,CA)及びInvitrogen/Life Technologies(Carlsbad,CA)などの会社から市販されている。
【0092】
本明細書中で提供されるベクターは、例えば複製起点、足場結合領域(SAR)及び/又はマーカーも含み得る。マーカー遺伝子は、宿主細胞上で選択可能な表現型を付与し得る。例えば、マーカーは、殺生物剤耐性、例えば抗生物質(例えばカナマイシン、G418、ブレオマイシン又はハイグロマイシン)に対する耐性など、を付与し得る。上記のように、発現ベクターは、発現されたポリペプチドの操作又は検出(例えば精製又は局在)を促進するために設計されたタグ配列を含み得る。緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン又はFlag(商標)タグ(Kodak,New Haven,CT)配列などのタグ配列は一般的に、コードされたポリペプチドとの融合物として発現される。このようなタグは、カルボキシル又はアミノ末端の何れかを含め、ポリペプチド内のどこにでも挿入され得る。
【0093】
さらなる発現ベクターは、例えば染色体、非染色体及び合成DNA配列のセグメントも含み得る。適切なベクターとしては、SV40及び既知の細菌プラスミドの誘導体、例えばE.コリ(E.coli)プラスミドcol E1、pCR1、pBR322、pMal-C2、pET、pGEX、pMB9及びそれらの誘導体など、RP4などのプラスミド;ファージDNA、例えばファージ1の多くの誘導体、例えばNM989、及び他のファージDNA、例えばM13及び糸状1本鎖ファージDNA;酵母プラスミド、例えば2μプラスミド又はその誘導体など、真核細胞において有用なベクター、例えば昆虫又は哺乳動物細胞において有用なベクター;プラスミド及びファージDNAの組み合わせ由来のベクター、例えばファージDNA又は他の発現制御配列を使用するために修飾されているプラスミドなどが挙げられる。
【0094】
ベクターは調節領域も含み得る。「調節領域」という用語は、転写又は翻訳開始及び速度及び転写又は翻訳産物の安定性及び/又は可動性に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節領域としては、プロモーター配列、エンハンサー配列、反応エレメント、タンパク質認識部位、誘導性エレメント、タンパク質結合配列、5’及び3’非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、核局在化シグナル及びイントロンが挙げられるが限定されない。
【0095】
本明細書中で使用される場合、「操作可能に連結される」という用語は、このような配列の転写又は翻訳に影響を与えるための核酸における調節領域及び翻訳されるべき配列の配置を指す。例えば、プロモーター制御下にコード配列を置くために、ポリペプチドの翻訳読み枠の翻訳開始部位は、一般的にはプロモーターの1~約50ヌクレオチド下流に配置される。しかし、プロモーターは、翻訳開始部位の約5,000ヌクレオチド上流又は翻訳開始部位の約2,000ヌクレオチド上流のように大幅に上流である配置され得る。プロモーターは一般的には、少なくともコア(規定)プロモーターを含む。プロモーターは、少なくとも1つの制御エレメント、例えばエンハンサー配列、上流エレメント又は上流活性化領域(UAR)も含み得る。含めようとするプロモーターの選択は、効率、選択可能性、誘導性、所望の発現レベル及び細胞又は組織優先的発現を含むが限定されない、いくつかの因子に依存する。コード配列に対してプロモーター及び他の調節領域を適切に選択し、配置することによってコード配列の発現を調整することは、当業者にとって通常の事柄である。
【0096】
ベクターとしては、例えばウイルスベクター(アデノウイルス(「Ad」)、アデノ随伴ウイルス(AAV)及び水疱性口内炎ウイルス(VSV)及びレトロウイルスなど)、リポソーム及び宿主細胞へのポリヌクレオチドの送達に介在可能な他の脂質含有複合体及び他の巨大分子複合体が挙げられる。ベクターは、遺伝子送達及び/又は遺伝子発現をさらに調整する、又はそうでなければ標的とされる細胞に有益な特性を提供する他の構成成分又は官能基も含み得る。以下でより詳細に記載し、例示するように、このような他の構成成分としては、例えば細胞に対する結合又は標的化に影響を与える構成成分(細胞型又は組織特異的な結合に介在する構成成分を含む);細胞によるベクター核酸の取り込みに影響を与える構成成分;取り込み後、細胞内でのポリヌクレオチドの局在に影響を与える構成成分(核局在に介在する物質など);及びポリヌクレオチドの発現に影響を与える構成成分が挙げられる。このような構成成分としては、マーカー、例えばベクターにより送達される核酸を取り込み、発現している細胞に対して検出又は選択するために使用され得る検出可能及び/又は選択可能マーカーなども挙げられ得る。このような構成成分は、ベクターの天然の特性として提供され得る(結合及び取り込みに介在する構成成分又は官能基を有するある種のウイルスベクターの使用など)か、又はこのような官能基を提供するようにベクターを修飾し得る。他のベクターとしては、Chen et al;BioTechniques,34:167-171(2003)により記載されるものが挙げられる。多岐にわたるこのようなベクターが当技術分野で公知であり、一般的に利用可能である。
【0097】
「組み換えウイルスベクター」は、1つ以上の異種遺伝子産物又は配列を含むウイルスベクターを指す。多くのウイルスベクターは、パッケージングに付随するサイズ制限を示すので、異種遺伝子産物又は配列は、一般的にはウイルスゲノムの1つ以上の部分を複製することにより導入される。このようなウイルスは複製欠損性になり得、ウイルス複製及びキャプシド形成中に欠失した機能がトランスで提供されることを必要とする(例えば複製及び/又はキャプシド形成に必要な遺伝子産物を保有するヘルパーウイルス又はパッケージング細胞株を使用することによる)。送達しようとするポリヌクレオチドがウイルス粒子の外側に持ち出される修飾ウイルスベクターも記載されている(例えばCuriel,D T,et al.,PNAS 88:8850-8854,1991を参照)。
【0098】
適切な核酸送達系としては、組み換えウイルスベクター、一般的にはアデノウイルス、アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)、ヘルパー依存型アデノウイルス、レトロウイルス又はセンダイウイルス(hemagglutinating virus of Japan-liposome)(HVJ)複合体のうち少なくとも1つからの配列が挙げられる。このような場合、ウイルスベクターは、ポリヌクレオチドに操作可能に連結される強力な真核プロモーター、例えばサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む。組み換えウイルスベクターは、その中のポリヌクレオチドの1つ以上、好ましくは約1個のポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用されるウイルスベクターは、約10~約5x1010pfuのpfu(プラーク形成単位)を有する。ポリヌクレオチドを非ウイルスベクターで投与しようとする実施形態では、約0.1ナノグラム~約4000マイクログラム、例えば約1ナノグラム~約100マイクログラムの使用が有用であることが多いであろう。
【0099】
さらなるベクターとしては、ウイルスベクター、融合タンパク質及び化学複合体が挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルス及びHIVベースのウイルスが挙げられる。あるHIVベースのウイルスベクターは少なくとも2つのベクターを含み、ここでgag及びpol遺伝子はHIVゲノム由来であり、env遺伝子は別のウイルス由来である。DNAウイルスベクターとしては、ポックスベクター、例えばオルトポックス又はアビポックスベクターなど、ヘルペスウイルスベクター、例えば単純ヘルペスI型ウイルス(HSV)ベクターなど[Geller,A.I.et al.,J.Neurochem,64:487(1995);Lim,F.,et al.,in DNA Cloning:Mammalian Systems,D.Glover,Ed.(Oxford Univ.Press,Oxford England)(1995);Geller,A.I.et al.,Proc Natl.Acad.Sci.:U.S.A.:90 7603(1993);Geller,A.I.,et al.,Proc Natl.Acad.Sci USA:87:1149(1990)]、アデノウイルスベクター[LeGal LaSalle et al.,Science,259:988(1993);Davidson,et al.,Nat.Genet.3:219(1993);Yang,et al.,J.Virol.69:2004(1995)]及びアデノ随伴ウイルスベクター[Kaplitt,M.G.,et al.,Nat.Genet.8:148(1994)]が挙げられる。
【0100】
ポックスウイルスベクターは、遺伝子を細胞の細胞質に導入する。アビポックスウイルスベクターにより起こるのは、短期間の核酸発現のみである。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター及び単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、一部の本発明の実施形態に対する適応であり得る。アデノウイルスベクターにより起こる発現は、アデノ随伴ウイルスよりも短期間(例えば約1カ月未満)であり、いくつかの実施形態では、大幅により長い発現を示し得る。選択される特定のベクターは、標的細胞及び処置が行われている状態に依存する。適切なプロモーターの選択は容易に行われ得る。適切なプロモーターの例は、763塩基対のサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。遺伝子発現のために使用され得る他の適切なプロモーターとしては、ラウス肉腫ウイルス(RSV)(Davis,et al.,Hum Gene Ther 4:151(1993))、SV40初期プロモーター領域、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター、メタロチオネイン(MMT)遺伝子の制御配列、原核生物発現ベクター、例えばβ-ラクタマーゼプロモーター、tacプロモーター、酵母及び他の真菌からのプロモーターエレメント、例えばGAL4プロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターなど;及び組織特異性を示し、トランスジェニック動物において利用されている動物転写調節領域:膵臓腺房細胞において活性であるエラスターゼI遺伝子調節領域、膵ベータ細胞において活性であるインスリン遺伝子調節領域、リンパ細胞において活性である免疫グロブリン遺伝子調節領域、精巣、乳房、リンパ及び肥満細胞において活性であるマウス乳癌ウイルス調節領域、肝臓において活性であるアルブミン遺伝子調節領域、肝臓において活性であるアルファ-フェトプロテイン遺伝子調節領域、肝臓において活性であるアルファ1-アンチトリプシン遺伝子調節領域、骨髄細胞において活性であるベータ-グロブリン遺伝子調節領域、脳のオリゴデンドロサイト細胞において活性であるミエリン塩基性タンパク質遺伝子調節領域、骨格筋において活性であるミオシン軽鎖-2遺伝子調節領域及び視床下部において活性である性腺刺激放出ホルモン遺伝子調節領域が挙げられるが限定されない。ある種のタンパク質は、それらのネイティブプロモーターを使用して発現され得る。発現を促進し得る他のエレメントは、エンハンサー又は、tat遺伝子及びtarエレメントなどの発現レベルを高くする系なども含まれ得る。次に、ベクター、例えば、pUC19、pUC118、pBR322又は例えばE.コリ(E.coli)複製起点を含む他の既知のプラスミドベクターなどのプラスミドベクターにこのカセットを挿入し得る。Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory press,(1989)を参照。プラスミドベクターは、アンピシリン耐性に対するβ-ラクタマーゼ遺伝子などの選択可能マーカーも含み得るが、ただしこのマーカーポリペプチドは処理されている生物の代謝に悪影響を及ぼさないものとする。カセットは、国際公開第95/22618号で開示される系など、合成送達系における核酸結合部分にも結合させられ得る。
【0101】
必要に応じて、本発明のポリヌクレオチドは、陽イオン性リポソーム及びアデノウイルスベクターなどのマイクロデリバリービヒクルとともにも使用され得る。リポソーム調製、標的化及び内容物の送達のための手順のまとめとして、Mannino and Gould-Fogerite,BioTechniques,6:682(1988)を参照のこと。またFelgner and Holm,Bethesda Res.Lab.Focus,11(2):21(1989)及びMaurer,R.A.,Bethesda Res.Lab.Focus,11(2):25(1989)も参照されたい。
【0102】
複製欠損組み換えアデノウイルスベクターは、公知の技術に従い作製され得る。Quantin,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:2581-2584(1992);Stratford-Perricadet,et al.,J.Clin.Invest.,90:626-630(1992);及びRosenfeld,et al.,Cell,68:143-155(1992)を参照。
【0103】
別の送達方法は、細胞内で発現産物を産生し得る単一の標準的なDNA産生ベクターを使用することである。例えばその全体において参照により本明細書中に組み込まれるChen et al,BioTechniques,34:167-171(2003)を参照。
【0104】
上記のように、本発明の組成物は、当業者にとって公知の様々な方法において調製され得る。それらの元来の起源又はそれらが得られる方法に関わらず、本発明の組成物は、それらの使用に従い処方され得る。例えば、上記の核酸及びベクターは、組織培養中の細胞への適用のために又は患者若しくは対象への投与のために組成物内で処方され得る。本発明の医薬組成物は何れも、薬剤の調製における使用のために処方され得、処置、例えばウイルスを有するか又はウイルスに接触するリスクがある対象の処置の観点で、以下に特定の使用を示す。医薬品として使用される場合、核酸及びベクターの何れも医薬組成物の形態で投与され得る。これらの組成物は、薬学の技術分野で周知のように調製され得、局所又は全身処置の何れが所望されるか、及び処置しようとする領域に依存して、様々な経路により投与され得る。投与は、局所(眼へ、及び鼻腔内、膣及び直腸送達を含む粘膜への送達を含む)、肺(例えば、ネブライザーによることを含め、粉末又はエアゾール剤の吸入又は吹送による;気管内、鼻腔内、上皮及び経皮)、眼、経口又は非経口であり得る。眼への送達のための方法は、局所投与(点眼剤)、結膜下、眼周囲若しくは硝子体内注射又はバルーンカテーテルによる導入又は結膜嚢に外科手術により留置される眼への挿入物を含み得る。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内注射若しくは点滴;又は頭蓋内、例えばくも膜下腔内又は脳室内投与が挙げられる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態であり得るか、又は例えば連続輸注ポンプによるものであり得る。局所投与のための医薬組成物及び処方物は、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴薬、坐薬、スプレー、液剤、粉末などを含み得る。従来の医薬担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤などが必要であり得るか又は所望され得る。
【0105】
本発明は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体と組み合わせて本明細書中に記載の核酸及びベクターを有効成分として含有する医薬組成物も含む。「薬学的に許容可能な」(又は「薬学的に許容可能である」)という用語は、必要に応じて、動物又はヒトに投与される場合、有害なアレルギー性又は他の望ましくない反応を生じさせない分子部分及び組成物を指す。本明細書中で開示される方法及び組成物は、多岐にわたる種、例えばヒト、非ヒト霊長類(例えばサル)、ウマ又は他の家畜、イヌ、ネコ、フェレット又はペットとして維持される他の哺乳動物、ラット、マウス又は他の実験動物に適用され得る。「薬学的に許容可能な担体」という用語は、本明細書中で使用される場合、薬学的に許容可能な物質に対する媒体として使用され得る、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、等張及び吸収遅延剤、緩衝剤、賦形剤、結合剤、滑沢剤、ゲル、界面活性剤などを含む。本発明の組成物の作製において、有効成分は一般的に、賦形剤と混合されるか、賦形剤により希釈されるか、又は例えばカプセル、錠剤、サシェ、紙又は他の容器の形態でこのような担体内に封入される。賦形剤が希釈剤として作用する場合、これは、固体、半固体又は液体物質(例えば通常の食塩水)であり得、これは有効成分に対するビヒクル、担体又は媒体として作用する。従って、本組成物は、錠剤、丸剤、粉末、薬用キャンディー、サシェ、カシェー、エリキシル、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エアゾール剤(固体として又は液体媒体中)、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、軟及び硬ゼラチンカプセル、坐薬、無菌の注射用の溶液及び無菌の封入粉末の形態であり得る。当技術分野で公知のように、希釈剤のタイプは、意図される投与経路に依存して変動し得る。得られる組成物は、さらなる物質、例えば保存剤などを含み得る。いくつかの実施形態では、担体は、脂質ベース又はポリマーベースのコロイドであり得るか又はそれらを含み得る。いくつかの実施形態では、担体材料は、リポソーム、ハイドロゲル、微粒子、ナノ粒子又はブロックコポリマーミセルとして処方されたコロイドであり得る。述べられるとおり、担体材料はカプセルを形成し得、その材料はポリマーベースのコロイドであり得る。
【0106】
bioNVは、装置(例えばカテーテル)の表面にも適用され得るか、又はポンプ、パッチ又は他の薬物送達装置内に含有され得る。本発明の核酸及びベクターは、単独で又は、混合物中で、薬学的に許容可能な賦形剤又は担体(例えば生理食塩水)の存在下で、投与され得る。賦形剤又は担体は、投与方式又は経路に基づき選択される。適切な医薬担体並びに医薬処方物中での使用のための薬学的必要性は、この分野の周知の参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciences(E.W.Martin)及びUSP/NF(United States Pharmacopeia及びthe National Formulary)に記載されている。
【0107】
本願を通じて、著者及び年及び特許番号により米国特許を含む様々な刊行物が参照される。刊行物に対する完全な引用部を以下で列挙する。それらの全体でのこれらの刊行物及び特許の開示は、本発明が属する技術分野の状況をより詳細に記載するために参照により本明細書によって本明細書に組み込まれる。
【0108】
例示的に本発明を記載しており、使用してきた技術用語は、限定するものではなく、説明の言葉の性質であるものとすることを理解されたい。
【0109】
上記の教示に照らせば本発明の多くの改変及びバリエーションが明らかに可能である。従って、添付の特許請求の範囲内で、具体的に記載される以外に、本発明が実施され得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
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図8
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【国際調査報告】