(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】サンドブラスト加工されたシリコーン製の義肢ライナ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/50 20060101AFI20220629BHJP
A61F 2/78 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61F2/50
A61F2/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566078
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 US2020031785
(87)【国際公開番号】W WO2020227478
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517027929
【氏名又は名称】アルプス・サウス・ユーロプ・スポレチノスト・ス・ルチェニーム・オメゼニーム
【氏名又は名称原語表記】ALPS SOUTH EUROPE S.R.O.
(71)【出願人】
【識別番号】518368261
【氏名又は名称】アルド・ラーギ
【氏名又は名称原語表記】Aldo LAGHI
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】ラーギ,アルド
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA02
4C097AA11
4C097BB02
4C097DD03
4C097EE13
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】切断者の残存肢とソケットアセンブリとの間のインターフェースとして機能する義肢アセンブリに使用するためのシリコーン義肢ライナである。この義肢ライナは、開いた近位端と、閉じた遠位端と、形成されたシリコーンの内層からなる側壁と、を備える。シリコーンは、マイクロクレータを形成し、静摩擦係数を低減するために、100psiで粒度#36を用いてサンドブラストされたマンドレルの上に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開いた上端と、
閉じた下端と、
厚さを有する布製の側壁と、
を備え、
前記側壁が、シリコーン厚さを有するシリコーンの内層をさらに含み、前記シリコーンが0.0100mm~0.0195mmの深さのマイクロクレータを有する、ライナ。
【請求項2】
前記側壁の前記厚さが1.5mm~3mmである、請求項1に記載のライナ。
【請求項3】
前記下端での前記シリコーン厚さが3mm~12mmである、請求項1に記載のライナ。
【請求項4】
2.4Nより小さい力の引っ張り抵抗をさらに有する、請求項1に記載のライナ。
【請求項5】
マンドレルを粒度#36であり、圧力100psiでサンドブラストする工程と、
前記マンドレルの上にシリコーンを形成する工程と、
前記シリコーンの上に布製の側壁を形成し、複合体を形成する工程と、
を含み、
前記複合体を形成する工程において、前記複合体は、開いた上端、閉じた下端、および厚さを有する布製の側壁をさらに含み、前記側壁は、シリコーン厚さを有するシリコーンの内層をさらに含み、前記シリコーンは、0.0100mm~0.0195mmの深さのマイクロクレータを有する、シリコーンライナの製造方法。
【請求項6】
前記側壁の前記厚さが1.5mm~3mmである、請求項5に記載のシリコーンライナの製造方法。
【請求項7】
前記下端での前記シリコーンの厚さが3mm~12mmである、請求項5に記載のシリコーンライナの製造方法。
【請求項8】
2.4Nより小さい引っ張り抵抗力をさらに有する、請求項5に記載のシリコーンライナの製造方法。
【請求項9】
マンドレルを粒度#320であり、圧力100psiでサンドブラストする工程と、
前記マンドレルの上にシリコーンを形成する工程と、
前記シリコーンの上に布製の側壁を形成し、複合体を形成する工程と、
を含み、
前記複合体を形成する工程において、前記複合体は、開いた上端、閉じた下端、および厚さを有する布製の側壁をさらに含み、前記側壁は、シリコーンの厚さを有するシリコーンの内層をさらに含み、前記シリコーンは、0.0100mm~0.0195mmの深さのマイクロクレータを有する、シリコーンライナの製造方法。
【請求項10】
前記側壁の前記厚さは、1.5mm~3mmである、請求項9に記載のシリコーンライナの製造方法。
【請求項11】
前記下端での前記シリコーンの厚さが3mm~12mmである、請求項9に記載のシリコーンライナの製造方法。
【請求項12】
2.4Nより小さい引っ張り抵抗力をさらに有する、請求項9に記載のシリコーンライナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義肢組立体に使用するライナに関するものである。具体的には、記載された発明は、ライナを作成するために使用される鋳型をサンドブラストすることを利用することによって、手触りが滑らかなシリコーンライニングを有するライナに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンライナは、1980年代から義肢装具業界で使用されており、例えばKlasson氏とKristinsson氏との米国特許第4,923,474号に記載されているようなものがある。そのようなライナの他の例としては、Laghi氏と他1名との米国特許第5,728,168号、Kania氏の米国特許第5,830,237号、Laghi氏と他1名との米国特許第5,507,834号、Laghi氏と他1名との米国特許第5,443,525号、及びLaghi氏と他1名との米国特許第5,728,168号がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、シリコーンライナは、シリコーンの高い静摩擦係数のために、これまで着脱が困難でした。そのため、シリコーンライナは残存肢体の皮膚に密着しやすい。このため、皮膚とライナの界面での相対的な動きが妨げられ、歩行時の地面からの反力がシリコーンの界面と皮膚とを介して骨に伝達されることで、残存肢体の局所的な部分の皮膚に高い剪断力がかかることになる。このような剪断力は、特に敏感肌の患者が皮膚に水ぶくれを起こす可能性を高める。そこで、義肢ライナの着脱を容易にするために、摩擦効果を低減したシリコーンライナの開発が望まれている。
【0004】
さらに、ほとんどの切断者は、外傷性の理由ではなく、血管性の理由で切断されている。つまり、血行不良が原因で切断されたということである。また、切断者の多くは高齢者である。そのため、ほとんどの切断者は、皮膚が薄くデリケートで傷つきやすく、四肢への血流が低下しているため、傷や痛みを治す能力が低下している。高齢の切断者の中には、残存する手足の皮膚が傷ついたり、感染したりして、何度も切断を繰り返す人もいる。
【0005】
これらの問題を阻止するために開発された1つの方法は、シリコーンマトリックスから滲出し、ライナと皮膚との間で潤滑剤として作用する添加物を含むことである。この解決策の問題点は、滲出液がライナの内側の表面に汚れを集め、皮膚の損傷を悪化させることである。また、滲出液はより徹底した洗浄を必要とし、ライナを滑りやすくする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、新規のサンドブラスト技術を用いて、形成された義肢ライナのシリコーンに「マイクロクレータ」を形成することで、ライナの着脱を容易にし、肌に優しいものとしている。シリコーンは液体状態では表面張力が低いため、小さな穴や亀裂に入り込みやすく、それゆえマイクロクレータを作り得るため、本明細書で説明される方法は、シリコーンライナに特に効果的である。また、シリコーンの粘度は温度に反比例するため、高温の鋳型の表面に近づけば近づくほど、シリコーンは流れやすくなる。その結果、シリコーンはクレータ状になった鋳型表面の鏡像を忠実に再現することができる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、先行技術の装置の上述の不備を解消し、ライナ技術の進歩に大きく貢献する改良を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、より快適な内側シリコーンライニングを有するシリコーンライナを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、摩擦特性が低減されたシリコーンライナの製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、マイクロクレータを有するライナを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、サンドブラスト加工された鋳型のマンドレルを用いてライナを形成することにより、シリコーンライナを製造する方法を説明することである。
【0012】
以上、本発明の関連する目的のいくつかを概説した。これらの目的は、意図する本発明のより顕著な特徴および応用のいくつかを単に例示するものと解釈されるべきである。他の多くの有益な結果は、開示された発明を異なる方法で適用する、または開示の範囲内で発明を変更することによって達成することができる。したがって、本発明の他の目的および完全な理解は、添付の図面と併せて取られる特許請求の範囲によって定義される発明の範囲に加えて、発明の概要および好ましい実施形態の詳細な説明を参照することによって得ることができる。
【0013】
本発明は、一般に、100psiで粒度#36を使用してシリコーンマンドレルをサンドブラストすることによりマイクロクレータを含むシリコーン内部を有する義肢アセンブリに使用するライナに関するものである。サンドブラストされたモールドマンドレルを用いて、改善された摩擦特性を有するシリコーンライナを製造することができる。本発明のライナは、任意に、外面に接着された布カバーを含んでもよい。
【0014】
以上、本技術への貢献をより完全に理解するために、以下の発明の詳細な説明をよりよく理解するために、本発明のより適切で重要な特徴を大まかに概説した。以下、本発明の特許請求の範囲の対象となる本発明の追加の特徴を説明する。開示された概念および特定の実施形態は、本発明の同じ目的を遂行するために他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用できることが、当業者には理解されるべきである。また、そのような同等の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の意図および範囲から逸脱しないことも、当業者には理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示とその利点をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の説明を参照することとする。
【
図1】
図1は、改良されたシリコーンライナの前面図である。
【
図2】
図2は、サンドブラスト加工が施されていないマンドレルを用いて形成されたシリコーンシートの断面図である。
【
図3】
図3は、粒度#36を用いて100psiでサンドブラストしたマンドレルを用いて形成したシリコーンシートの断面図である。
【
図4】
図4は、粒度#320を用いて100psiでサンドブラストしたマンドレルを用いて形成したシリコーンシートの断面図である。
【
図5】
図5は、スチール基板からシリコーンシートを除去するために必要な引っ張り力に対するサンドブラストの効果を示すグラフであり、静摩擦係数への影響を示している。
【0016】
同様の参照符号は、図面の複数の図を通して同様の部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明は、本発明を実施するために現在考えられている最良の態様に関するものである。この説明は、限定的な意味で捉えられるべきではなく、単に本発明の1つ以上の好ましい実施形態を説明する目的でなされている。本発明の範囲は、特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0018】
本発明は、義肢具と共に使用するためのライナ100に関する。
図1に示すように、義肢アセンブリと共に使用するためのライナ100は、図示されていない残肢を受け入れるための開いた上端12と、閉じた下端14と、所定の厚さの側壁16と、を備えている。ライナは、残余の肢体の上に着装したときに気密性を有する。側壁16の好ましい厚さは、約1.5mm~3.0mmである。厚さは側壁よりも下端の方が大きく、前記下端14におけるシリコーンの好ましい厚さは約3.0mm~12.0mmであることに留意されたい。側壁16は、本明細書に記載の改良されたシリコーンの内層18を有している。側壁16は、布地や、より耐久性が高く、より摩擦の大きいシリコーンの別の層であってもよい。
【0019】
シリコーンを形成する前に、マンドレルを粒度#36、100psiでサンドブラストする。使用した特定の粒度と圧力により、本発明の有益な特性が得られる。他の粒度と圧力では、摩擦保持力の低減と皮膚刺激の可能性の低減という利点が得られなかった。マンドレルをサンドブラストした後、その上にシリコーンを形成し、サンドブラストによって形成されたマイクロクレータにシリコーンを染み込ませる。
図2~
図4に示すように、サンドブラストの際に使用する粒の大きさが大きく影響する。
【0020】
図2は、サンドブラスト処理されていないシリコーンのシート20を示している。断面2-2から分かるように、マンドレルをサンドブラストしないことで、シリコーンの高摩擦特性を維持する滑らかな外面22が得られる。一方、
図3および
図4は、マンドレルをサンドブラスト加工した後の外面22の微視的な図である。
図3は、粒度#36を100psiで使用して、外面22にマイクロクレータ加工を施した様子を示している。ライン3-3に沿って、作成されたマイクロクレータは、一般的に約0.0195mmの深さを有する。
図4は、粒度#320を100psiで使用して、外面22をマイクロクレータ化したものである。ライン4-4に沿って、作成されたマイクロクレータは、一般的に約0.0100mmの深さを有する。より深いマイクロクレータは、
図3のシートと
図4のシートを比較するとわかるように、外面22が接触する表面積が少なくなるため、シリコーンの静止摩擦係数が低くなる。
【0021】
本発明の有益な特性を示すために3つのテストを行い、その結果を
図5に示した。1つ目のテストでは、100psiで粒度#36を使用して鋳型をサンドブラストし、引っ張り抵抗で1.6Nの力がかかった。2回目のテストでは、粒度#320を用いて鋳型をサンドブラストした。その結果、引っ張り抵抗で2.33Nの力が必要だった。最後のテストでは、鋳型にサンドブラストを全くかけず、9.33Nの力を必要とした。テストは、幅1インチ、長さ7インチのシリコーンストリップを用いて、滑らかなステンレススチールに100グラムの重さをかけて行われた。
【0022】
本開示は、前述の説明のものだけでなく、添付の請求項に含まれるものも含む。本発明をその好ましい形態である程度特定して説明してきたが、好ましい形態の本開示は例示のためになされたものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、構造の詳細ならびに部品の組み合わせおよび配置の多数の変更に頼ることができることを理解されたい。
【0023】
以上、本発明について説明した。
【国際調査報告】