(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ガラス貫通ビアを有する高ケイ酸塩ガラス物品およびその製造方法と使用方法
(51)【国際特許分類】
C03C 3/085 20060101AFI20220629BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20220629BHJP
C03C 3/06 20060101ALI20220629BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C03C3/085
C03C3/097
C03C3/06
C03C3/093
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566206
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 US2020030905
(87)【国際公開番号】W WO2020231645
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シアオジュー
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,ティエン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ユィホイ
(72)【発明者】
【氏名】ペトリウスキー,タミー リン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リーイン
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA07
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4G062KK01
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4G062KK07
4G062KK10
(57)【要約】
RF、インターポーザ、および類似の用途のための再分配層に現在使用されているガラスおよび他の材料を上回るいくつかの利点を示す、シリカ含有量の多いガラス組成物が、ここに開示されている。ここに開示されたガラスは、ガラス貫通ビア(TGV)を作るために使用されるレーザ損傷およびエッチング過程に関して高い生産性を有する低コストの平板ガラスである。ここに記載されたケイ酸塩ガラスおよび過程を使用して作製されるTGVは、大きい腰部直径を有し、これは、インターポーザなどのガラス物品の製造に関して望ましい特徴である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のガラス貫通ビアを含むケイ酸塩ガラス物品において、
(a)前記ガラス貫通ビアは、第1の表面直径(D
S1)、第2の表面直径(D
S2)、および腰部直径(D
w)を有し、D
S1/D
wの比は1:1から2:1であり、D
S2/D
wの比は1:1から2:1であり、
(b)前記ケイ酸塩ガラス物品は、
(i)75モル%超のSiO
2と、
(ii)2モル%未満のP
2O
5および12モル%未満のAl
2O
3の少なくとも一方と、
を含む、ケイ酸塩ガラス物品。
【請求項2】
75モル%超から95モル%のSiO
2を含む、請求項1記載のケイ酸塩ガラス物品。
【請求項3】
0.5モル%から10モル%のAl
2O
3をさらに含む、請求項1記載のケイ酸塩ガラス物品。
【請求項4】
P
2O
5を含まない、請求項1から3いずれか1項記載のケイ酸塩ガラス物品。
【請求項5】
アルカリ金属酸化物を含まない、請求項1から3いずれか1項記載のケイ酸塩ガラス物品。
【請求項6】
75モル%超から95モル%のSiO
2、
1モル%から13モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、
1モル%から10モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物、
1モル%から10モル%のAl
2O
3、
0モル%から10モル%のB
2O
3、
0.01モル%から4モル%のZnO、および
0モル%から0.5モル%のSnO
2、
を含む、請求項1または2記載のケイ酸塩ガラス物品。
【請求項7】
75モル%超から85モル%のSiO
2、
1モル%から10モル%のAl
2O
3、
8モル%から13モル%のNa
2O、K
2O、またはその組合せ、
2モル%から8モル%のMgO、および
0.01モル%から0.5モル%のSnO
2、
を含む、請求項1または2記載のケイ酸塩ガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2019年5月10日に出願された米国仮特許出願第62/846102号に優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、ガラス貫通ビアの効率的な製造に有用なケイ酸塩ガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
今日、エレクトロニクス用途のための精密に形成された孔を有する薄いガラスに強い関心が持たれている。この孔は、導電性材料が充填され、電気信号をある部品から別の部品に伝導させて、中央処理装置、メモリチップ、図形処理装置、または他の電子部品の精密接続を与えるために使用される。そのような用途にとって、その中に金属化された孔を有する基板は、一般に、「インターポーザ」と呼ばれる。繊維強化高分子またはシリコンなどの現在使用されているインターポーザ材料と比べて、ガラスは、数多くの有利な性質を有する。ガラスは、研磨の必要なく、大型シートで薄く滑らかに成形することができ、有機代替物よりも高い剛性および卓越した寸法安定性を有し、シリコンよりもずっと良好な電気絶縁体であり、有機の選択肢よりも良好な寸法(熱的および剛性の)安定性を有し、集積化回路における積層体の撓みを制御するように異なる熱膨張係数に調整することができる。ガラスは絶縁体であるので、ガラス要素に関する電気損失は低い一方で、抵抗率は高い。
【0004】
ガラスの表面での孔(エッチング過程が完了したときに、「ガラス貫通ビア」またはTGVとも称される)の直径は幅広いが、ガラスの中心または最も狭い部分(「腰部(waist)」)での直径は、多くの場合、ずっと小さい。TGVの金属化の改善、それゆえ、電気性能の改善は、腰部の直径がより幅の広いTGVからもたらされるであろう。特に、より幅の広い腰部直径は、熱としての電磁エネルギーの消散(例えば、誘電損失、ジュール加熱)を減少させるのに役立つであろう;このことは、インターポーザ材料が低損失角または損失正接を有する場合に、達成できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
必要とされているものは、生産性の高いガラス製造を可能にし、腰部直径の大きいガラス貫通ビアの製造を可能にする新たなガラス組成物である。理想的には、そのガラス組成物は、積層集積回路および他のエレクトロニクス技術に使用するのに望ましい電気的性質も有するであろう。本開示の主題は、これらの必要性に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
RF、インターポーザ、および類似の用途のための再分配層に現在使用されているガラスおよび他の材料を上回るいくつかの利点を示す、シリカ含有量の多いガラス組成物が、ここに開示されている。ここに開示されたガラスは、ガラス貫通ビア(TGV)を作るために使用されるレーザ損傷およびエッチング過程に関して高い生産性を有する低コストの平板ガラスである。ここに記載されたケイ酸塩ガラスおよび過程を使用して作製されるTGVは、大きい腰部直径を有し、これは、インターポーザなどのガラス物品の製造に関して望ましい特徴である。
【0007】
第1の態様において、ケイ酸塩ガラス物品は、1つ以上のガラス貫通ビアを有する。このガラス貫通ビアは、第1の表面直径(DS1)、第2の表面直径(DS2)、および腰部直径(Dw)を有する。DS1/Dwの比は1:1から2:1であり、DS2/Dwの比は1:1から2:1である。このケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超のSiO2および2モル%未満のP2O5を含む。
【0008】
第2の態様において、ケイ酸塩ガラス物品は、1つ以上のガラス貫通ビアを有する。このガラス貫通ビアは、第1の表面直径(DS1)、第2の表面直径(DS2)、および腰部直径(Dw)を有する。DS1/Dwの比は1:1から2:1であり、DS2/Dwの比は1:1から2:1である。このケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超のSiO2および12モル%未満のAl2O3を含む。
【0009】
第3の態様において、第1の態様または第2の態様のケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超から95モル%のSiO2を含む。
【0010】
第4の態様において、第1の態様または第2の態様のケイ酸塩ガラス物品は、80モル%から95モル%のSiO2を含む。
【0011】
第5の態様において、第1の態様または第2の態様のケイ酸塩ガラス物品は、0.5モル%から10モル%のAl2O3を含む。
【0012】
第6の態様において、第1の態様または第2の態様のケイ酸塩ガラス物品は、P2O5を含まない。
【0013】
第7の態様において、第1の態様または第2の態様のケイ酸塩ガラス物品は、アルカリ金属酸化物を含まない。
【0014】
第8の態様において、第1の態様または第2の態様のケイ酸塩ガラス物品は、
75モル%超から95モル%のSiO2、
1モル%から13モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、
1モル%から10モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物、
1モル%から10モル%のAl2O3、
0モル%から10モル%のB2O3、
0.01モル%から4モル%のZnO、および
0モル%から0.5モル%のSnO2、
を含む。
【0015】
第9の態様において、第1の態様または第2の態様のケイ酸塩ガラス物品は、
75モル%超から85モル%のSiO2、
1モル%から10モル%のAl2O3、
8モル%から13モル%のNa2O、K2O、またはその組合せ、
2モル%から8モル%のMgO、および
0.01モル%から0.5モル%のSnO2、
を含む。
【0016】
第10の態様において、ガラス貫通ビアが、10μmから100μmの第1の表面直径および第2の表面直径を有する、先の態様のいずれかのケイ酸塩ガラス物品。
【0017】
第11の態様において、先の態様のいずれかのケイ酸塩ガラス物品は、5μmから90μmの腰部直径を有する。
【0018】
第12の態様において、先の態様のいずれかのケイ酸塩ガラス物品は、50μmから500μmの厚さを有する。
【0019】
第13の態様において、ケイ酸塩ガラス物品にガラス貫通ビアを製造する方法は、
(1)そのケイ酸塩ガラス物品にレーザビームを照射して、損傷跡を形成する工程であって、そのケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超のSiO2および2モル%未満のP2O5を含む、工程、および(2)そのケイ酸塩ガラス物品を、酸を含むエッチング液でエッチングして、ガラス貫通ビアを製造する工程、
を有してなる。
【0020】
第14の態様において、ケイ酸塩ガラス物品にガラス貫通ビアを製造する方法は、
(1)そのケイ酸塩ガラス物品にレーザビームを照射して、損傷跡を形成する工程であって、そのケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超のSiO2および12モル%未満のAl2O3を含む、工程、および(2)そのケイ酸塩ガラス物品を、酸を含むエッチング液でエッチングして、ガラス貫通ビアを製造する工程、
を有してなる。
【0021】
第15の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のレーザビームは、ピコ秒レーザにより形成される。
【0022】
第16の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のレーザビームは、500nm超の波長を有する。
【0023】
第17の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のレーザビームは、535nm超の波長を有する。
【0024】
第18の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のレーザビームは、500nm超から1,100nmの波長および40μJから120μJの出力を有する。
【0025】
第19の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のレーザビームは、レーザバーストである。
【0026】
第20の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のエッチング液は、フッ化水素酸および水を含む。
【0027】
第21の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のフッ化水素酸は、1質量%から50質量%の濃度を有する。
【0028】
第22の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のエッチング液は、塩化水素酸、硫酸、硝酸、酢酸、またはその任意の組合せと組み合わされたフッ化水素酸を含む。
【0029】
第23の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のケイ酸塩ガラス物品は、0℃から50℃の温度でエッチングされる。
【0030】
第24の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のレーザビームは、ベッセルビームまたはガウスベッセルビームである。
【0031】
第25の態様において、第24の態様の方法の照射する工程は、ケイ酸塩ガラス物品内にベッセルビームまたはガウスベッセルビームで焦線を形成する工程を含む。
【0032】
第26の態様において、第13の態様または第14の態様の方法のエッチングする工程は、エッチングの副生成物を生じ、そのエッチングの副生成物は、エッチング液中の0.5g/L以上のエッチングの副生成物の溶解度を有する。
【0033】
第27の態様において、エッチング液が、水、0.1Mから3.0Mの濃度のHF、および0.1Mから3.0Mの濃度のHNO3を含む、第26の態様の方法。
【0034】
第28の態様において、第13から第27の態様のいずれか1つの方法において、損傷跡のエッチング速度(E1)は、レーザにより損傷を受けていない物品のエッチング速度(E2)より大きい。
【0035】
第29の態様において、第28の態様の方法からのE1/E2の比は、1から50である。
【0036】
第30の態様において、第28の態様の方法で、酸はフッ化水素酸であり、エッチング速度E2は、0.25μm/分から0.9μm/分である。
【0037】
第31の態様において、第13のから第30の態様のいずれか1つの方法は、ケイ酸塩ガラス物品を製造する。
【0038】
ここに記載された材料、方法、およびデバイスの利点は、一部は、以下の説明において述べられているか、または下記に記載された態様の実施により分かるであろう。下記に記載された利点は、付随の特許請求の範囲に具体的に指摘された要素およびその組合せの手段によって実現され、達成されるであろう。先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、例示と説明に過ぎず、制限するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本明細書に含まれ、その一部を構成する添付図面は、下記に記載されたいくつかの態様を示す。
【
図1】レーザ損傷およびエッチング戦略を使用してガラス貫通ビアを製造する過程の説明図
【
図2】A~Dは、112分間に亘り1.45MのHFおよび0.8MのHNO
3中において室温(20℃)でエッチングされたEXGおよびIRISの腰部直径の比較を示す図
【
図3】A~Dは、25mm/sの速度で垂直と水平に撹拌された、3MのHF中において12℃でエッチングされたEXGおよびIRISの腰部直径の比較を示す図
【
図4】1.45Mのフッ化水素酸中のEXG(丸)およびIRIS(菱形)のエッチング速度(E2)を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の材料、物品および/または方法を開示し、説明する前に、下記に記載される態様は、もちろん、様々であってよいので、特定の化合物、合成方法、または使用に限定されないことを理解すべきである。ここに使用される用語法は、特定の態様を説明する目的のためだけであり、限定することを意図していないことも理解すべきである。
【0041】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、以下の意味を有するように定義されるものとする多数の用語に言及しておく。
【0042】
本明細書および付随の特許請求の範囲に使用されているように、名詞は、文脈上明白に他の意味で解釈すべき場合を除いて、複数の対象を含むことに留意しなければならない。それゆえ、例えば、ガラス組成物中の「アルカリ土類金属酸化物」への言及は、2種類以上のアルカリ土類金属酸化物等の混合物を含む。
【0043】
「随意的な」または「必要に応じて」は、続いて記載された事象または環境が起こり得るまたは起こりえないこと、およびその記載は、その事象または環境が起こる例と、起こらない例を含むことを意味する。例えば、ここに記載されたガラス組成物は、必要に応じて、アルカリ土類金属酸化物を含有することがあり、ここで、このアルカリ土類金属酸化物は存在しても、存在しなくてもよい。
【0044】
ここに用いられているように、「約」という用語は、所定の数値が、所望の結果に影響せずに、端点より「わずかに上回る」または「わずかに下回る」ことがあることを前提とすることによって、数値の範囲の端点に柔軟性を与えるために使用される。本開示の目的について、「約」は、その数値より10%低い値からその数値より10%高い値までに及ぶ範囲を指す。例えば、数値が10である場合、「約10」は、端点の9および11を含む、9と11の間を意味する。
【0045】
本明細書を通じて、文脈上他の意味で解釈すべき場合を除いて、「含む」という単語または「含んでいる」などの変種は、規定された要素、整数、工程、もしくは要素、整数、または工程の群の包含の意味を含み、どの他の要素、整数、工程、もしくは要素、整数、または工程の群の除外の意味も含まないと理解されよう。
【0046】
ここに用いられているように、「ガラス貫通ビア(TGV)」は、ガラス物品を通る微視的孔である。いくつかの態様において、TGVは、銅などの導電性材料で充填または金属化されている。TGVは、単一のガラス貫通ビアを称する。
【0047】
TGVは、表面開口を有し、ガラス物品を端から端まで延在する。ここに用いられている「表面直径」は、ガラスの両方の表面(第一面と第二面)でのTGVの直径(通常は、μmで測定される)を称し、ここでは、第1の表面直径(DS1)および第2の表面直径(DS2)と称される。いくつかのTGVは、直径が第1の表面直径および第2の表面直径の両方より小さい内部(表面ではない)の領域を有する。そのようなTGVは、「腰部(waist)」を有すると称され、この腰部は、第一面と第二面との間のガラスの内部に位置するTGVの最も狭い地点である。ここに用いられている「腰部直径」は、腰部でのTGVの直径(これも、典型的に、μmで測定される)を称する。特に明記のない限り、TGVの長さは、ガラス物品の厚さ方向のTGVの線寸法を称し、TGVの直径は、ガラス物品の厚さ寸法を横断する方向のTGVの線寸法を称する。「直径」という用語は、TGVの断面形状が純粋な円形から外れる場合でさえ、TGVに関して使用される。そのような場合、直径は、TGVの断面形状の最長の線寸法(例えば、TGVが楕円断面形状を有する場合、長軸)を称する。ここに用いられているように、ガラス物品の厚さ方向は、ガラス物品の長さ、高さ、および幅寸法の最小のものである。TGVが、レーザで損傷跡を形成する工程を含む過程により形成される(下記参照)場合、ガラス物品の厚さ方向は、レーザビームの伝搬方向に対応する。
【0048】
「R2O」という用語は、個別でまたは総称でアルカリ金属酸化物を称し、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、およびCs2Oのいずれか、または2つ以上のいずれかの組合せを含む。
【0049】
「RO」という用語は、個別でまたは総称でアルカリ土類金属酸化物を称し、MgO、CaO、SrO、およびBaOのいずれか、または2つ以上のいずれかの組合せを含む。
【0050】
組成物または物品中の特定の元素の原子パーセントに対する明細書および特許請求の範囲における言及は、その元素または成分と、原子パーセントが表される、組成物または物品中の任意の他の元素または成分との間のモル濃度の関係を意味する。それゆえ、2原子パーセントの成分Xおよび5原子パーセントの成分Yを含有する組成物において、XおよびYは、2:5のモル比で存在し、追加の成分がその組成物中に使用されるか否かにかかわらず、そのような比で存在する。
【0051】
ここに用いられているように、複数の項目、構造要素、組成元素、および/または材料は、便宜上、共通リストで示されることがある。しかしながら、これらのリストは、そのリストの各構成要素が、別個の固有の構成要素として個別に特定されるかのように解釈されるべきである。それゆえ、いずれのそのようなリストの個々の構成要素も、それとは反対であると示されていない限り、共通群での提示のみに基づく同じリストのどの他の構成要素の事実上の等価物と解釈されるべきではない。
【0052】
濃度、量、および他の数値データは、ここでは、範囲の形式で表現される、または示されることがある。そのような範囲の形式は、便宜と簡潔さのためだけで使用されており、それゆえ、その範囲の限度として明白に挙げられた数値を含むだけでなく、各数値および部分的範囲が明白に挙げられているかのように、その範囲内に包含される全ての個々の数値または部分的範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解すべきである。一例として、「約1」から「約5」の数値範囲は、約1から約5の明白に挙げられた値を含むだけでなく、その示された範囲内の個々の値および部分的範囲も含むと解釈されるべきである。それゆえ、この数値範囲に、2、3、および4などの個々の値、1~3、2~4、3~5、約1~約3、約1から3などの部分的範囲、並びに、1、2、3、4、および5が個別に含まれる。同じ原理が、最小値または最大値として1つだけ数値を挙げる範囲にも適用される。範囲は、端点を含むと解釈されるべきである(例えば、「約1から3」の範囲が挙げられている場合、その範囲は、端点の1と3の両方、並びにそれらの間の値を含む)。さらに、そのような解釈は、記載されている文字の幅または範囲にかかわらず、適用されるべきである。
【0053】
開示された組成物および方法に使用できる、それとともに使用できる、その調製に使用できる、またはその生成物である材料および成分が開示されている。これらと他の材料が、ここに開示されており、これらの材料の組合せ、部分集合、相互作用、群などが開示されている場合、これらの化合物の様々な個々の組合せおよび順序の各々に関する具体的な言及が明白に開示されていなくとも、各々が具体的に考えられ、ここに記載されていることを理解すべきである。例えば、アルカリ金属酸化物の添加剤が開示され、考えられ、多数の異なるアルカリ土類金属酸化物の添加剤が考えられる場合、そうではないと具体的に述べられていない限り、可能である、アルカリ金属酸化物の添加剤およびアルカリ土類金属酸化物の添加剤の各々と全ての組合せが具体的に考えられる。例えば、アルカリ金属酸化物のA、B、およびCの群、並びにアルカリ土類金属酸化物の添加剤のD、E、およびFの群が開示され、A+Dの例示の組合せが開示されている場合、ひいては、各々が個別に列挙されていない場合でさえも、各々が、個別的と集合的に考えられる。それゆえ、この例において、A+E、A+F、B+D、B+E、B+F、C+D、C+E、およびC+Fの組合せの各々が、具体的に考えられ、A、B、およびC;D、E、およびF;並びにA+Dの例示の組合せの開示から検討されるべきである。同様に、これらの任意の部分集合または組合せも、具体的に考えられ、開示されている。それゆえ、例えば、A+E、B+F、およびC+Eの部分群が、具体的に考えられ、A、B、およびC;D、E、およびF;並びにA+Dの例示の組合せの開示から認められるべきである。この概念は、以下に限られないが、開示された組成物を製造する方法および使用する方法の工程を含む、本開示の全て態様に適応される。それゆえ、開示された方法の任意の特定の実施の形態または実施の形態の組合せに行うことのできる様々な追加の工程がある場合、そのような組成物の各々が、具体的に考えられ、開示されていると認められるべきである。
【0054】
I.ケイ酸塩ガラス物品
1つ、いくつか、または複数のTGVを有するガラス物品を作るために、ここに記載されたレーザ損傷およびエッチング過程により加工できるケイ酸塩ガラス物品が、ここに開示されている。そのケイ酸塩ガラス物品は、形成されたTGVが、ガラスの各表面直径に近づく腰部直径を有するように配合されている。理論で束縛する意図はないが、ガラス物品中のSiO2の量を増加させることによって、エッチング過程中に形成される副生成物の溶解度を増加させることができる。そして、これにより、TGV中に不溶性の固体として副生成物が蓄積する可能性が減少する。TGV中の副生成物の蓄積は、腰部直径の減少をもたらすので、望ましくない。溶解度が増加した副生成物をエッチング中に生じるようにガラス組成物を設計することによって、TGV中に不溶性の固体が蓄積するのが少なくなり、腰部直径がより大きくなる。このことは、下記により詳しく述べられている。
【0055】
ここに使用されるガラス物品は、多量のSiO2を含有する。いくつかの態様において、そのガラス組成物は、75モル%超の量でSiO2を含む。いくつかの態様において、SiO2は、75、80、85、90、または95モル%超の量で存在し、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、75モル%超から95モル%、75モル%超から85モル%、80モル%超から90モル%、80モル%超から95モル%)であり得る。
【0056】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超のSiO2および2モル%未満のP2O5を含む。いくつかの態様において、P2O5は、約0、0.25、0.5、0.75、1、1.25、1.5、1.75、または2モル%で存在し、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、0.25から1.5モル%、1から1.75モル%)であり得る。いくつかの態様において、そのガラス物品は、P2O5を含まない。
【0057】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、Al2O3を含み得る。いくつかの態様において、そのケイ酸塩ガラス物品は、75モル%のSiO2および12モル%未満のAl2O3を含む。いくつかの態様において、Al2O3は、約0、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12モル%未満で存在し、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、0.5モル%から10モル%、1から10モル%、4から8モル%)であり得る。
【0058】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、B2O3を含み得る。いくつかの態様において、そのケイ酸塩ガラス物品は、0から15モル%のB2O3を含み、または約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15モル%のB2O3を含み、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、5から15モル%、0から5モル%、0から10モル%)であり得る。
【0059】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、ZnOを含む。いくつかの態様において、そのケイ酸塩ガラス物品は、0から10モル%のZnOを含み、または約0、0.01、0.05、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、または7モル%のZnOを含み、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、0から5モル%、0.01から1.5モル%、0.01から4モル%)であり得る。
【0060】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、1種類以上のアルカリ土類金属酸化物(RO)を含み、ここで、RO(MgO、BaO、CaO、およびSrO)の合計は、1から10モル%の量である。いくつかの態様において、そのアルカリ土類金属酸化物は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10モル%で存在し、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、1から10モル%、1から9モル%、2から8モル%)であり得る。いくつかの態様において、そのガラス物品は、アルカリ土類金属酸化物としてMgOのみを含む。いくつかの態様において、MgOは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10モル%で存在し、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、1から10モル%、1から9モル%、2から8モル%)であり得る。
【0061】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、またはその任意の組合せなど、1種類以上のアルカリ金属酸化物(R2O)を含む。いくつかの態様において、そのアルカリ金属酸化物は、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13モル%で存在し、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、1から13モル%、8から13モル%)であり得る。いくつかの態様において、そのガラス物品は、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13モル%で存在するNa2O、K2O、またはその組合せのみを含み、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、1から13モル%、8から13モル%)であり得る。いくつかの態様において、そのガラス物品は、アルカリ金属酸化物を含まない。
【0062】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、SnO2を含む。いくつかの態様において、SnO2は、約0、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5モル%でそのガラス物品中に存在し、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、0.01から0.2モル%、0から0.5モル%、0.01から0.5モル%)であり得る。
【0063】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、
75モル%超から95モル%のSiO2、
0モル%から13モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、
1モル%から10モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物、
1モル%から10モル%のAl2O3、
0モル%から10モル%のB2O3、
0モル%から0.5モル%のSnO2、および
0モル%から2モル%未満のP2O5、
を含む。
【0064】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、
75モル%超から95モル%のSiO2、
0モル%から13モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、
1モル%から10モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物、
1モル%から10モル%のAl2O3、
0モル%から10モル%のB2O3、
0.01モル%から4モル%のZnO、および
0モル%から0.5モル%のSnO2、
を含む。
【0065】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、
75モル%超から85モル%のSiO2、
1モル%から10モル%のAl2O3、
8モル%から13モル%のNa2O、K2O、またはその組合せ、
2モル%から8モル%のMgO、
0.01モル%から0.5モル%のSnO2、および
0モル%から2モル%未満のP2O5、
を含む。
【0066】
いくつかの態様において、前記ケイ酸塩ガラス物品は、
75モル%超から85モル%のSiO2、
1モル%から10モル%のAl2O3、
8モル%から13モル%のNa2O、K2O、またはその組合せ、
2モル%から8モル%のMgO、および
0.01モル%から0.5モル%のSnO2、
を含む。
【0067】
いくつかの態様において、ここに記載された前記ガラス組成物は、生産性の高い過程を使用して、ガラスシートおよび/または他のガラス物品に製造することができる。いくつかの態様において、そのガラス組成物は、フュージョンドロー法、フロート法、または圧延過程によって加工することができる。
【0068】
「フュージョンドロー」法は、高性能の平板ガラスを成形する方法である。このフュージョンドロー法において、原材料が、1,000℃より高い温度で溶融槽に導入される。溶融されたガラスは、完全に混合され、次いで、均一な流れで、空中に放出され、ここで、そのガラスは、延伸設備に供給されながら、長くされ、冷却し始める。いくつかの態様において、この過程により成形されるガラスは、表面研磨を必要としない。いくつかの態様において、この過程により形成されるガラスは、均一な厚さを有し、多量の熱に耐えることができる。いくつかの態様において、ここに開示されたガラスは、フュージョンドロー法を使用してシートに成形することができる。
【0069】
ガラスを成形する「フロート」法は、平板ガラスを成形する別の方法である。原材料が溶融され、混合された後、溶融ガラスは、高温のスズの浴上に流れる。フロート成形されたガラスは、表面研磨および/または他の製造後加工がおそらく必要である。いくつかの態様において、ここに開示されたガラスは、フロート法を使用してシートに成形することができる。
【0070】
ここに用いられているように、ガラスを成形する「圧延」過程は、延伸過程に似ているが、ローラ上で水平に行われる。圧延過程を使用して製造されたガラスシートは、研削および研磨が必要である。いくつかの態様において、ここに開示されたガラスは、圧延過程を使用してシートに成形することができる。
【0071】
II.ガラス貫通ビアを製造するための過程
ケイ酸塩ガラス物品にガラス貫通ビアを製造する過程は、(1)ケイ酸塩ガラス物品にレーザビームを照射して、損傷跡を製造する工程、および(2)そのガラス物品を酸でエッチングして、そのガラス貫通ビアを製造する工程を有してなる。各工程が、下記に詳しく記載されている。
【0072】
a.損傷跡の形成
ここに記載された過程の第1の工程は、ケイ酸塩ガラス物品に1つ以上の損傷跡を生成する工程を含む。ここに用いられているように、「損傷跡」は、レーザの照射により構造的に変えられたガラスの区域である。その損傷跡は、レーザの損傷を受けたガラス1を通る点線として
図1に示されている。いくつかの態様において、損傷跡は、周りの損傷を受けていないガラスよりも低い屈折率を有する。いくつかの態様において、そのより低い屈折率は、レーザが照射された区域におけるガラスの体積膨張のためであることがある。いくつかの態様において、損傷跡におけるガラスは、周りの損傷を受けていないガラスよりも低い密度を有する。いくつかの態様において、その損傷跡は、ガラスの表面にある小さな窪みである。いくつかの態様において、損傷跡は、形状が円筒または円柱であり、ガラスを部分的にまたは完全に延在する。いくつかの態様において、損傷跡は、気泡、空所、または間隙を含む。
【0073】
前記損傷跡は、いくつかの異なる技術を使用して生成することができる。いくつかの態様において、パルスレーザビームが、ビームの伝搬方向に沿って配向されたレーザビーム焦線に集束させられ、ガラス物品に向けられ、そこで、レーザビーム焦線が、ガラス内に誘発吸収を生じる。この誘発吸収は、ガラス内でレーザビーム焦線に沿って損傷跡を生成する。ここに用いられているように、「誘発吸収」は、レーザビームの多光子吸収または非線形吸収を意味する。いくつかの態様において、ガラス物品は、レーザビームの波長に対して透明である。ここに用いられているように、透明とは、ガラス物品による、厚さ1mm当たりのレーザ波長の10%未満の線形吸収を意味する。ここに用いられているように、レーザビーム焦線は、損傷跡の方向に延在する中心軸および0.1mm超の長さを持つガラス物品中のほぼ円筒形の照射領域に対応する。レーザ光の強度は、レーザビーム焦線を通じてほぼ均一であり、誘発吸収を生じるのにレーザビーム焦線を通じて十分に高い。
【0074】
いくつかの態様において、専用光学送達システムおよびピコ秒パルスレーザをうまく利用することによって、損傷跡は、各損傷跡を形成するのに必要な程度の少ない単一レーザパルス(または単一のパルスバースト)で、ガラス物品中に形成することができる。いくつかの態様において、この過程により、切除的ナノ秒レーザ過程により達成できるであろうよりも、100倍以上速い損傷跡形成速度が可能である。
【0075】
いくつかの態様において、レーザビーム焦線は、ベッセルビーム、ガウスベッセルビーム、または他の非回折ビームを使用することによって作ることができる。ここに用いられているように、非回折レーザビームは、同じ波長で、同じパルス持続時間を有するガウスビームのレイリー範囲よりも2倍以上大きいレイリー範囲を有するレーザビームである。ガウスおよびガウスベッセルビームのさらなる定義が、以下に見つけられるであろう:「High Aspect Ratio Nanochannel Machining Using Single Shot Femtosecond Bessel Beams」、M.K.Bhuyanら、Appl.Phys.Lett.、97、081102(2010年);「M2 Factor of Bessel-Gauss Beams」、R.BorghiおよびM.Santasiero、Opt.Lett.、22、262(1997年);「Application of Femtosecond Bessel-Gauss Beam in Microstructuring of Transparent Materials」、A.Marcinkeviciusら、in Optical Pulse and Beam Propagation III、Y.B.Band,ed.、Proc.SPIE 4271巻、150-15(2001年)。
【0076】
さらに、いくつかの態様において、レーザビーム焦線は、アキシコンまたは球面収差を有する光学素子を使用して生成できる。いくつかの態様において、レーザビーム焦線は、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、または約9mmなど、約0.1mmと約10mmの間の範囲内の長さ、もしくは約0.1mmと約1mmの間の範囲内の長さ、および約0.1μmと約5μmの間の範囲、もしくは約0.1、0.25、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5μmの平均直径を有し得、ここで、任意の値が、上限および下限端点であり得る。
【0077】
いくつかの態様において、前記パルス持続時間は、約5ピコ秒超かつ約20ピコ秒未満など、約1ピコ秒超と約100ピコ秒未満の間の範囲内にあり得、もしくは1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100ピコ秒であり得、ここで、任意の値が、上限および下限端点であり得、繰り返し率は、約10kHzと650kHzの間の範囲内など、約1kHzと4MHzの間の範囲内にあり得、もしくは1、10、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、または950Hzもしくは1、1.5、2、2.5、3、3.5、または4MHzであり得、ここで、任意の値が、上限および下限端点であり得る。
【0078】
上述した繰り返し率での単一パルスに加え、いくつかの態様において、そのパルスは、バースト当たり少なくとも40μJ、または40から150μJ、または40から120μJ、もしくは約40、40、50、60、80、90、100、110、120、130、140、または150μJの(ここで任意の値は、上限および下限端点であり得る)エネルギーで、約1ナノ秒と約50ナノ秒の間の範囲、もしくは1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50ナノ秒の期間(ここで、任意の値は、例えば、約20ナノ秒±2ナノ秒などの10ナノ秒から30ナノ秒などの上限および下限端点であり得る)だけ隔てられた2パルス以上(3パルス、4パルス、5パルスまたはそれより多いなど)のバーストで生じることができ、バースト繰り返し周波数は、約1kHzと約200kHzの間、または約5kHzと約100kHzの間の範囲内であり得、もしくは1、5、10、50、100、150、または200kHzであり得、任意の値は、上限および下限端点であり得る。いくつかの態様において、そのバースト内の個々のパルスのエネルギーは、より小さくて差し支えなく、正確な個々のレーザパルスエネルギーは、バースト内のパルスの数および時間によるレーザパルスの減衰率(例えば、指数関数的減衰率)に依存する。例えば、一定エネルギー/バーストに関して、バーストが10の個々のレーザパルスを含有する場合、ひいては、各個々のレーザパルスは、同じバーストが個々のレーザパルスを2つしか有さない場合よりも小さいエネルギーを含有する。
【0079】
いくつかの態様において、前記損傷跡は、パルスの単一バーストがガラス物品上の実質的に同じ位置に衝突したときに、ガラス内に形成される。すなわち、単一バースト内の多数のレーザパルスが、ガラス内の単一の損傷跡に対応する。いくつかの態様において、ガラスは平行移動される(例えば、一定に動くステージにより)またはビームはガラスに対して動かされるので、バースト内の個々のパルスは、ガラス上の正確に同じ空間的位置にあり得ない。しかしながら、それらのパルスは、実質的に同じ位置でガラスと衝突するように十分、互いに1μm以内にある。例えば、それらのパルスは、互いに0<sp≦500nmの間隔(sp)で、ガラスと衝突することがある。例えば、ガラス上のある位置に20パルスのバーストが当てられる場合、そのバースト内の個々のパルスは、互いに250nm内でガラスと衝突する。それゆえ、いくつかの態様において、間隔spは、約1nmから約250nmまたは約1nmから約100nmの範囲内、もしくは1、5、10、25、50、75、100、125、150、175、200、225、または約250nmであり、任意の値は、上限および下限端点であり得る。
【0080】
レーザにより作られる損傷跡は、一般に、約0.1μmから2μm、例えば、0.1~1.5μmの範囲内、もしくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2μmである(ここで任意の値は、上限および下限端点であり得る)内部寸法(例えば、レーザビームの伝搬方向に対して横方向に最長の寸法(直径など))を有する構造的に変えられた区域(ことによると、レーザビーム集線内のガラスの損傷から生じた破片を含有する)の形態をとる。いくつかの態様において、レーザにより形成された損傷跡は、寸法が小さい(一桁μm以下)。いくつかの態様において、損傷跡は、直径が0.2μmから0.7μm、または直径が0.3から0.6μmである。いくつかの態様において、その損傷跡は、直径が0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または1μmであり、ここで任意の値は、上限または下限端点であり得る。いくつかの態様において、損傷跡は、連続した孔または通路ではない。いくつかの態様において、損傷跡の直径は、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、または1μm以下であり得、ここで、直径は、レーザビームの伝搬方向に対して横方向にある線寸法を称する。いくつかの態様において、損傷跡の直径は、100nm超から2μm未満、または100nm超から0.5μm未満の範囲内にあり得、もしくは100、200、300、400、500、600、700、800、または900nmであり得、もしくは1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2μmであり、ここで任意の値は、上限および下限端点であり得る。いくつかの態様において、この段階で、これらの損傷跡は、エッチングされていない(すなわち、それらはまだ、エッチングにより広げられていない)。
【0081】
いくつかの態様において、前記損傷跡は、ガラス物品の全厚を穿孔し得、ガラスの深さの端から端まで連続した開口または通路を形成してもしなくてもよい。いくつかの態様において、損傷跡は、ガラスの全厚を通じて延在しない。いくつかの態様において、多くの場合、損傷跡を塞ぐまたは占めるガラスの破片の領域があるが、それらは、一般に、サイズが小さい、例えば、μm程度である。
【0082】
いくつかの態様において、前記ガラスは複数の損傷跡を有し、その損傷跡の各々は、5μm未満、または1から5μm、または2から3μmの直径を有し、もしくは1、2、3、4,または5μmの直径を有し、ここで任意の値は、上限または下限端点であり得、少なくとも20μm、もしくは20、25、30、35、または40μmの(ここで任意の値は、上限および下限端点であり得る)隣接する損傷跡の間の間隔、もしくは20~25μm、25~35μm、または35から40μmの間隔、および20:1以上のアスペクト比、もしくは25:1、または30:1、または35:1、または40:1の(ここで任意の値は、上限および下限端点であり得る(例えば、25:1から40:1、または20:1から30:1))アスペクト比を有する。その損傷跡の直径は、1μm未満であり得る。
【0083】
いくつかの態様において、ガラス物品は、ガラス基板の積層体を含み、その積層体を通じて、複数の損傷跡が形成されており、その損傷跡は、ガラス基板の各々を通じて延在し、損傷跡は、直径が約1μmと約100μmの間であり、隣接する損傷跡の間の約25μmから約1000μmの間隔を有する。いくつかの態様において、そのガラス物品は、10μmを超える空気(または気体)間隙だけ隔てられた少なくとも二枚のガラス基板を含み得る。いくつかの態様において、この場合、焦線長さは、積層体の高さより長い必要がある。いくつかの態様において、基板の積層体は、その積層体の全体を通じて異なるガラス組成の基板を含有することがある。
【0084】
いくつかの態様において、レーザビームの下にガラス物品を平行移動させることに加え、以下に限られないが、レーザビームを送達する光学ヘッドを移動させること、検流計およびf-θレンズ、音響光学偏向器、空間光変調器などを使用することなど、複数の損傷跡を形成するために、ガラス物品の表面を横切ってレーザを高速移動させるための他の方法を使用することも可能である。
【0085】
いくつかの態様において、損傷跡の所望のパターンに応じて、その跡は、約50損傷跡/秒超、約100損傷跡/秒超、約500損傷跡/秒超、約1,000損傷跡/秒超、約2,000損傷跡/秒超、約3,000損傷跡/秒超、約4,000損傷跡/秒超、約5,000損傷跡/秒超、約6,000損傷跡/秒超、約7,000損傷跡/秒超、約8,000損傷跡/秒超、約9,000損傷跡/秒超、約10,000損傷跡/秒超、約25,000損傷跡/秒超、約50,000損傷跡/秒超、約75,000損傷跡/秒超、または約100,000損傷跡/秒超の速度で作ることができ、ここで任意の値は、ある範囲の上限および下限端点(例えば、50損傷跡/秒から3000損傷跡/秒、または1000損傷跡/秒から7000損傷跡/秒)であり得る。
【0086】
いくつかの態様において、前記ガラス物品にピコ秒(ps)レーザが照射される。いくつかの態様において、照射線の波長は、500nm以上、または535nm以上であり、もしくは500nmから1100nmであり、もしくは500nm、535nm、550nm、600nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、900nm、950nm、1000nm、1050nm、または1100nmであり、ここで、任意の値は、ある範囲の下限および上限端点である。
【0087】
ここに記載されたガラス組成物に損傷跡を生成するための例示の設定およびパラメータが、実施例に与えられている。
【0088】
b.エッチング
ガラス物品に損傷跡を形成した後、そのガラス物品に酸から作られたエッチング液でエッチングして、損傷跡からガラス貫通ビアを生成する。酸エッチングにより、金属化または他の化学コーティングに有用である寸法を有するガラス貫通ビアを形成することができる。ここで、全ての損傷跡は、並行過程で標的直径に平行に拡大されており、この並行過程は、損傷跡を拡大して、大きい直径を有するビアを形成するために、レーザパルスの繰り返し施用を使用するよりもずっと速い。いくつかの態様において、酸エッチングにより、レーザによってTGVの側壁に典型的に生じる微小亀裂または他の損傷の形成を避けることによって、TGVを形成するためにレーザだけを使用するのと比べて、より強力な部品が作られる。
【0089】
いくつかの態様において、前記エッチング液は、1種類以上の酸および水から作られている。いくつかの態様において、そのエッチング液は、1種類以上の酸および有機溶媒から作られている。有機溶媒の例としては、以下に限られないが、エタノールなどのアルコールが挙げられる。
【0090】
前記ガラス物品とのエッチング液の反応による生成物は、ここで、「エッチングの副生成物」と称される。このエッチングの副生成物は、可溶性および/または不溶性化合物を含み得る。ここに用いられているように、「エッチングの副生成物の溶解度」は、エッチング液中のエッチングの副生成物の飽和濃度を称する。いくつかの態様において、「エッチングの副生成物の溶解度」は、エッチングの副生成物が飽和濃度であるときの、1Lのエッチング液中に溶けたエッチングの副生成物の量と定量化される。
【0091】
いくつかの態様において、損傷跡を有するガラス物品が、フッ化水素酸(HF)でエッチングされる。いくつかの態様において、前記エッチング液はHF水溶液であり、ここでこのHFは、水中で1質量%から50質量%の濃度を有し、または水中で、約1質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、または50質量%の濃度を有し、ここで、任意の値が、ある範囲の下限および上限端点(例えば、5質量%から20質量%)であり得る。いくつかの態様において、そのエッチング液は、0.1M、0.5M、0.75M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.45M、1.5M、1.55M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2M、4M、6M、8M、10M、12M、14M、16M、18M、20M、22M、24M、26M、28M、または30Mの濃度を有するHF水溶液を含み、ここで、任意の値が、ある範囲の下限および上限端点(例えば、1.3Mから1.5M)であり得、「M」は、モル濃度(モル/リットル)の単位の濃度を称する。いくつかの態様において、エッチング液は、0.5Mから2.0M、0.75Mから1.8M、1.0Mから1.6M、または1.3Mから1.5Mの濃度を有するHF水溶液である。
【0092】
いくつかの態様において、前記ガラス物品は、以下に限られないが、塩化水素酸、硫酸、硝酸、酢酸、またはその任意の組合せまたは水溶液のバリエーションを含む、1種類以上の追加の酸と組み合わされたHFでエッチングされる。いくつかの態様において、前記エッチング液は、0.2M、0.4M、0.6M、0.8M、1.0M、1.2M、1.4M、1.6M、1.8M、2.0M、3M、4M、5M、または6Mの濃度(ここで、任意の値が、ある範囲の下限および上限端点(例えば、0.6Mから1.0M、0.4から0.8M)であり得)を有するHNO3と組み合わされた、0.1M、0.5M、0.75M、1.0M、1.1M、1.2M、1.3M、1.4M、1.45M、1.5M、1.55M、1.6M、1.7M、1.8M、1.9M、2M、4M、6M、8M、10M、12M、14M、16M、18M、20M、22M、24M、26M、28M、または30Mの濃度(ここで、任意の値が、ある範囲の下限および上限端点(例えば、1.3Mから1.5M、1.45Mから1.5M)であり得る)を有するHF水溶液を含む。いくつかの態様において、そのエッチング液は、約1.45Mの濃度を有するHFおよび約0.8Mの濃度を有するHNO3の水溶液を含む。
【0093】
いくつかの態様において、エッチングの副生成物の溶解度は、エッチングが行われる温度に依存することがある。いくつかの態様において、前記ガラス物品は、0℃から50℃の温度でエッチングすることができ、または0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、または50℃でエッチングすることができ、ここで、任意の値が、ある範囲の下限および上限端点(例えば、10℃から30℃、15℃から25℃)であり得る。いくつかの態様において、そのガラス物品は、20℃でエッチングすることができる。
【0094】
いくつかの態様において、使用される酸は、10体積%のHF/15体積%のHNO3である。さらに、いくつかの態様において、前記ガラス物品は、ガラス物品の厚さ方向から約100μmの材料を除去するのに十分な時間に亘り、約25℃でエッチングすることができる。いくつかの態様において、そのガラス物品は、30分から2時間、または40分から1.5時間、または50分から1時間、もしくは30分、40分、50分、1時間、1.25時間、1.5時間、1.75時間、または2時間に亘りエッチングされ、ここで任意の値は、ある範囲の上限および下限端点であり得る。
【0095】
いくつかの態様において、エッチングすべきガラス物品は、酸の槽に加えられ、物理的に撹拌され得る。いくつかの態様において、その撹拌は、機械的撹拌、超音波撹拌、槽内の泡立てなどの形態を取ることができる。いくつかの態様において、そのガラス物品は、酸浴中に浸漬することができ、40kHzおよび80kHzの周波数の組合せでの超音波撹拌を使用して、流体(例えば、エッチング液)の浸透および損傷跡中の流体交換を促進することができる。それに加え、超音波音場内のガラス物品の手動撹拌(例えば、機械的撹拌)を行って、超音波音場からの定常波パターンが、ガラス物品上に「ホットスポット」またはキャビテーション関連損傷を生じるのを防ぎ、またガラス物品に亘り巨視的流体流を提供することができる。
【0096】
ここに記載されたガラス組成物および他の工程条件を使用することにより、ガラス物品中のガラス貫通ビア内に集まる、エッチングの副生成物の蓄積を最小にすることが可能になる。ガラス貫通ビア内に集まる、エッチングの副生成物の蓄積により、ガラス貫通ビアの表面直径D
s(
図1の3に示されるように、D
s1またはD
s2の小さい方である)に対して腰部直径D
wが減少してしまう。ここに用いられているように、腰部直径D
wは、上部直径D
s1および底部直径D
s2の間に位置するビアの最も狭い部分を称する。ガラス貫通ビア内のエッチングの副生成物の蓄積により、腰部直径D
wが減少し、このことは望ましくない。
【0097】
エッチングの副生成物が不溶性化合物(すなわち、エッチング液中に不溶性である、エッチングの副生成物の部分)を含む場合に、エッチングの副生成物の蓄積が生じる。この不溶性化合物は、TGV中に捕捉されるようになり、TGVの腰部直径Dwを減少させる働きをする。このエッチングの副生成物は、典型的に、ガラス組成物中に存在する金属とエッチング液の対イオン(酸)の塩を含む。例えば、エッチング液がHFである場合、ガラス組成物中に存在する金属のフッ化物塩が、エッチングの副生成物として形成される。一般的なガラス組成物のエッチングの副生成物として生じるフッ化物塩として、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、フッ化アルミニウム、金属フルオロケイ酸塩、金属フルオロアルミン酸塩、および金属フルオロホウ酸塩が挙げられる。
【0098】
いくつかの態様において、エッチングの副生成物は、ここに記載された過程および方法により生じる。いくつかの態様において、エッチングの副生成物は、エッチング液中に可溶性またはわずかに可溶性であり、このエッチングの副生成物は、所定の濃度のエッチングの副生成物が、ここに記載された過程および方法により生じるまで、エッチング液中に沈殿しない。いくつかの態様において、エッチングの副生成物は、エッチング液中の0.5g/L以上のエッチングの副生成物の溶解度を有する。いくつかの態様において、エッチングの副生成物は、エッチング液の0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5g/Lのエッチングの副生成物の溶解度を有し、ここで、任意の値が、範囲の下限および上限端点(例えば、1から5g/L、2から4g/L)であり得る。
【0099】
いくつかの態様において、エッチングの副生成物の溶解度を決定するために使用されるエッチング液は、水、HF、およびHNO3を含む。いくつかの態様において、エッチングの副生成物の溶解度を決定するために使用されるエッチング液は、水、0.1Mから3M、0.5Mから1.8M、1Mから1.6M、または1.3Mから1.5Mの濃度のHF、および0.1Mから3M、0.2Mから1.5M、0.5Mから1M、または0.6Mから0.9Mの濃度のHNO3からなる。いくつかの態様において、エッチングの副生成物の溶解度を決定するために使用されるエッチング液は、水、0.1Mから2M、0.5Mから1.8M、1Mから1.6M、または1.3Mから1.5Mの濃度のHF、および0.1Mから2M、0.2Mから1.5M、0.5Mから1M、または0.6Mから0.9Mの濃度のHNO3からなり、エッチングの副生成物の溶解度は、20℃で決定される。いくつかの態様において、エッチングの副生成物の溶解度を決定するために使用されるエッチング液は、水、1.45Mの濃度のHF、および0.8Mの濃度のHNO3からなり、エッチングの副生成物の溶解度は、20℃で決定される。特に明記のない限り、エッチングの副生成物の溶解度は、特定の過程について、その過程中にエッチングが行われる最低温度を使用して決定される。
【0100】
いくつかの態様において、エッチングの副生成物を生じるガラス物品のエッチング速度(すなわち、エッチング液が、ガラス物品の損傷跡内のガラスを溶かすのにかかる時間(E1)またはガラスの表面のエッチング速度(すなわち、ここに、E2と称される損傷を受けていないガラス)は、ガラス貫通ビアの腰部直径に影響を与え得る。いくつかの態様において、E1(ビアエッチング速度)は、ビア開放時間により決定できる。例えば、ビアがガラスの両面を通じて形成される(すなわち、貫通してエッチングされる)時間(t1)が記録される。ガラスの元の厚さは(T0)と記録され、エッチング速度は、式E1=T0/(2×t1)を使用して計算される。いくつかの態様において、E2(バルクエッチング速度)は、エッチング前後のガラスの厚さの変化をモニタすることによって、測定できる。次に、E2は、(2×エッチング時間)で割ったガラスの厚さの変化により計算される。
【0101】
1つの態様において、前記ガラス物品のエッチング速度は、ガラス貫通ビアの腰部直径に影響を与え得る。
図1を参照すると、ガラス物品は、損傷を受けていないガラス(レーザ処理が行われていないガラスの部分)により取り囲まれた損傷跡(点線により示され、レーザ処理が行われたガラスの部分に対応する)を含む。
図1の2に示されるように、その損傷跡は、エッチング速度E
1を有し、損傷を受けていないガラスは、エッチング速度E
2を有する。損傷を受けていないガラスに対する損傷跡の物理的または化学的状態の差のために、エッチング速度E
1およびE
2は異なる(例えば、
図1の3を参照のこと)。典型的に、損傷跡は、エッチング液(例えば、酸溶液)の反応性を向上させる構造欠陥を高濃度で含むので、E
1>E
2である。エッチングの副生成物が損傷跡内に蓄積すると、エッチング速度E
1が減少する。エッチング速度E
1をエッチング速度E
2に対して変えることによって、ビアの腰部直径D
wを調節する(すなわち、増減させる)ことができる。
【0102】
いくつかの態様において、エッチング速度比E1:E2を使用して、TGVの腰部直径Dwを調節することができる。いくつかの態様において、エッチング速度比E1:E2は、1から50であり、または約1、2.5、5、10、20、30、40、または50であり、ここで、任意の値が、範囲の下限および上限端点(例えば、5から50、10から40、または15から30)であり得る。いくつかの態様において、エッチング速度比E1:E2は、10超、20超、30超、または40超である。
【0103】
いくつかの態様において、例えば、約2μm/分未満のエッチング速度E2により、特に、未使用のエッチング液と交換し、溶けた材料(例えば、エッチングの副生成物の可溶性化合物)を、レーザにより最初に形成されたときに典型的に非常に狭い、損傷跡から除去するために撹拌と組み合わされた場合、エッチング液(例えば、酸溶液)が、損傷跡に十分に浸透することができる。いくつかの態様において、損傷跡は、ガラス物品の厚さの端から端まで(すなわち、深さ方向または損傷跡の長さの端から端まで)、ほぼ同じ速度でエッチング中に広がる。いくつかの態様において、エッチング速度E2は、約5μm/分未満の速度、または約2μm/分未満の速度など、約10μm/分未満の速度であり得る。1つの態様において、エッチング速度E2は、0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10μm/分であり得、ここで任意の値は、ある範囲の上限または下限端点であり得る(例えば、0.1から5μm/分、0.25から0.9μm/分、0.4から0.8μm/分)。1つの態様において、酸はフッ化水素酸であり、エッチング速度E2は0.25μm/分から0.9μm/分である。
【0104】
いくつかの態様において、エッチング速度E1およびE2は、エッチング液中の酸濃度を調節することによって、制御できる。他の態様において、エッチング槽中のガラス物品の向き、機械的撹拌、および/またはエッチング液への界面活性剤の添加を変更して、エッチング速度E1およびE2並びに損傷跡を拡大することによって形成されるTGVの属性を調節することができる。いくつかの態様において、エッチング液は超音波撹拌され、ガラス物品は、損傷跡の均一なエッチングを促進するために、損傷跡の上部と底部の開口が、超音波に実質的に均一に曝露されるように、エッチング槽内で方向付けられ、エッチング液中に位置付けられる。例えば、超音波振動子がエッチング槽の底部に配置されている場合、ガラス物品は、損傷跡を有するガラス物品の表面が、エッチング槽の底部と平行でいるよりも、エッチング槽の底部と垂直であるように、エッチング槽内に方向付けることができる。いくつかの態様において、エッチング槽は、損傷跡のエッチングの均一性を改善するために、x、y、およびz方向に機械的に撹拌することができる。いくつかの態様において、x、y、およびz方向の機械的撹拌は、連続的であり得る。
【0105】
ここに記載されたガラス組成物および加工条件を使用すると、腰部直径D
wが表面直径D
sの直径に近づき、
図1に示されるように、D
sがD
s1およびD
s2の小さい方に対応する、TGVをガラス物品中に生じることができる。いくつかの態様において、D
s1とD
s2の比は、0.9:1、0.95:1、0.99:1、または1:1である。いくつかの態様において、表面直径(D
s1およびD
s2)と腰部直径(D
w)の比は、1:1から2:1、または1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、または2:1であり、ここで、任意の値が、範囲の下限および上限端点(例えば、1.2:1から1.8:1)であり得る。
【0106】
いくつかの態様において、腰部直径Dwは、ビアの表面直径Dsの約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%であり、ここで、DsはDs1およびDs2の小さい方に対応する。いくつかの態様において、孔の腰部直径Dwは、ビアの表面直径Dsの50%から100%、50%から95%、50%から90%、50%から85%、50%から80%、50%から75%、50%から70%、55%から100%、55%から95%、55%から90%、55%から85%、55%から80%、55%から75%、55%から70%、60%から100%、60%から95%、60%から60%、60%から85%、60%から80%、60%から75%、60%から70%、65%から100%、65%から95%、65%から90%、65%から85%、65%から80%、65%から75%、65%から70%、70%から100%、70%から95%、70%から90%、70%から85%、70%から80%、70%から75%、75%から100%、75%から95%、75%から90%、75%から85%、75%から80%、80%から100%、80%から95%、80%から90%、80%から85%、85%から100%、85%から95%、85%から90%、90%から100%、90%から95%、または95%から100%であり、ここで、任意の値が、範囲の下限および上限端点であり得、DsがDs1およびDs2の小さい方に対応する。
【0107】
いくつかの態様において、損傷跡の湿潤性を高めるために、エッチング液に界面活性剤を添加することができる。理論で束縛する意図はないが、界面活性剤により湿潤性を高めると、損傷跡中へのエッチング液の拡散時間が減少し、TGVの表面直径Dsに対するTGVの腰部直径Dwの比を増加させることができる。いくつかの態様において、界面活性剤は、エッチング液中に溶け込み、エッチング液中の酸と反応しない、どの適切な界面活性剤であっても差し支えない。いくつかの実施の形態において、界面活性剤は、Capstone(登録商標)FS-50または「Capstone」FS-54である。いくつかの態様において、界面活性剤のmL/エッチング液のLを単位とする界面活性剤の濃度は、約1、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2、またはそれより大きい、もしくは任意の値が、上限または下限端点である範囲(例えば、約1から2、約1.2から1.8、約1.3から1.5)であり得る。
【0108】
ガラス貫通ビアの各表面直径Ds(すなわち、Ds1およびDs2)は、加工条件に応じて、異なり得る。いくつかの態様において、TGVの各表面直径Dsは、10μmから100μmである。いくつかの態様において、TGVの各表面直径Dsは、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、90μm、95μm、または100μmであり、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、20μmから80μm)であり得る。いくつかの態様において、TGVの表面直径Dsは、10μmから100μmである。いくつかの態様において、TGVの腰部直径Dwは、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、55μm、60μm、65μm、70μm、75μm、80μm、85μm、または90μmであり、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、5μmから90μm、10μmから90μm、または20から80μmまたは3μmから70μm)であり得る。
【0109】
前記ガラス物品は、複数のガラス貫通ビアを有し得る。いくつかの態様において、隣接するビアの間の間隔(中心間距離)は、約10μm以上、または約20μm以上、または約30μm以上、または約40μm以上、または約50μm以上であり、ここで任意の値は、上限および下限端点であり得る(例えば、10μmから100μmの範囲、または20μmから90μmの範囲)。
【0110】
いくつかの態様において、前記ガラス物品は、ここに開示されたガラス組成物からなる単一ガラスシートである。いくつかの態様において、このガラスシートは、50μmから500μmの厚さを有し、または約50、100、150、200、250、300、350、400、450、または500μmの厚さを有し、ここで、任意の値が、下限および上限端点(例えば、100μmから300μm)であり得る。他の態様において、そのガラス物品は、二枚以上のガラスシートからなり得、そのシートの内の1つ以上は、ここに開示された厚さを有する、ここに開示されたガラス組成物からなる。
【0111】
いくつかのの態様において、前記ガラス貫通ビアは、約1:1以上、約2:1以上、約3:1以上、約4:1以上、約5:1以上、約6:1以上、約7:1以上、約8:1以上、約9:1以上、約10:1以上、約11:1以上、約12:1以上、約13:1以上、約14:1以上、約15:1以上、約16:1以上、約17:1以上、約18:1以上、約19:1以上、約20:1以上、約25:1以上、約30:1以上、または約35:1以上のアスペクト比(長さ対直径の比)を有する。いくつかのの態様において、このガラス貫通ビアのアスペクト比は、約1:1から2:1、5:1から約10:1、約5:1から約20:1、約5:1から約30:1、または約10:1から20:1、または約10:1から30:1の範囲にあり得、ここで任意の値は、上限および下限端点であり得る。
【0112】
損傷跡を拡大して、直径DwおよびDsを有するTGVを形成する、ガラス物品の酸エッチングには、多数の利益があり得る:1)酸エッチングは、TGVを、実用的に金属化し、インターポーザに使用するのには小さすぎるサイズ(例えば、初期損傷跡について、約1μm)から、より都合よいサイズ(例えば、5μm以上)に変える;2)エッチングは、ガラスを通る不連続な損傷跡として始まることのある形態をとり、それをエッチングして、連続ガラス貫通ビアを形成することができる;3)エッチングは、部品内の損傷跡の全てが同時に拡大されて、TGVを形成する高度に並行な過程であり、これは、より多くの材料を連続的に除去して、損傷跡を拡大するために、レーザが損傷跡を何回も再訪しなければならない場合にかかるであろうよりもずっと速い;および4)エッチングは、特に、繰り返しのまたは長期のレーザ施用により生じるであろうTGVの側壁における、ガラス物品内のどのエッジまたは小さい割れ目も丸くするのに役立ち、材料の全体的な強度および信頼性を増す。
【0113】
III.TGVを有するガラス物品の用途
いくつかの態様において、TGVを有するガラス物品は、一旦形成されたら、次に、ガラス物品から製造されたインターポーザを作るために、例えば、金属化により、導電性材料で被覆および/または導電性材料が充填されることがある。ここに用いられているように、「金属化」は、物体の表面上に金属または他の導電性材料を被覆する、もしくはTGVに金属または導電性材料を充填する技術を称する。金属化およびTGVを通るその後の導電性は、表面直径:腰部直径の比(Ds:Dw)が1に近づき、TGVの形状がより円筒になり、TGV内の金属または導電性材料の断面積が均一になる場合に改善される。
【0114】
いくつかの態様において、金属または導電性材料の例としては、銅、アルミニウム、金、銀、鉛、スズ、インジウムスズ酸化物、もしくはその組合せまたは合金が挙げられる。いくつかの態様において、TGVの内部を金属化するのに使用される過程は、例えば、電気メッキ、化学メッキ、物理的気相成長法、化学的気相成長法、または蒸発被覆が挙げられる。いくつかの態様において、TGVは、白金、パラジウム、二酸化チタンなどの触媒材料、またはTGV内の化学反応を促進させて、金属化を促進させる他の材料で被覆される、または裏打ちされることもある。いくつかの態様において、TGVは、表面湿潤特性を変えるように、もしくは生体分子の付着および生化学分析への使用を可能にするように、化学的官能化で被覆または裏打ちされることがある。いくつかの態様において、そのような化学的官能化は、TGVのガラス表面のシラン化、および/または所望の用途のためにTGVの表面への生体分子の付着を促進するように設計された、特定のタンパク質、抗体、または他の生物学的に特異的な分子の追加の付着であり得る。
【実施例】
【0115】
以下の実施例は、ここに記載され、請求項に挙げられた化合物、組成物、および方法がどのように作られ、評価されるかの完全な開示および記載を当業者に与えるように述べられており、純粋に例示であることが意図され、ここに開示された発見の範囲を限定する意図はない。数(例えば、量、温度など)に関する精度を確実にする努力を行ってきたが、ある程度の誤差および偏差を考慮すべきである。特に明記のない限り、部は、質量部であり、温度は、℃で表されるか、周囲温度であり、圧力は、大気圧または大気圧に近い。反応条件(例えば、成分の濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、および他の反応範囲と条件)の多数のバリエーションおよび組合せを使用して、記載された過程から得られる生成物の純度および収量を最大にすることができる。そのような工程条件を最適化するために、妥当な所定の実験しか必要ないであろう。
【0116】
実施例1:レーザ損傷試験
Corning EAGLE XG(登録商標)(EXG)およびCorning IRIS(IRIS)(各々0.4mm厚)にレーザ処理過程を行って、損傷跡を形成した。532nmの波長で作動するCoherent Hyper-Rapid-50ピコ秒レーザを備えたシステムを使用して、ガラス試料にレーザ処理を施して、損傷跡を形成した。ビーム送達光学素子は、ガウスベッセルレーザビーム焦線を作るように構成した。ビーム伝搬軸に沿った光学強度分布は、0.7mmの半値全幅であり、スポットサイズは、ガウスベッセルレーザビームの断面プロファイルにおける最初のヌルまたは最小強度の直径により測定して、1.2μmの直径であった。各損傷跡は、基板を、100μJのバーストエネルギーを有する20のレーザパルスを含む単一レーザバースト(バースト数=20)に曝露することによって形成した。各損傷跡の間の間隔は150μmであった。
【0117】
実施例2:ガラスのエッチング
レーザ処理後、ガラス試料を、以下のようにエッチングした。
【0118】
EXGを、112分間に亘り1.45MのHFおよび0.8MのHNO
3中において室温(20℃)で静的にエッチングした。最終的な上部直径は約70μmであり、腰部直径は約11.5μmであった(
図2A~2B)。第2の実験において、EXGを、25mm/sの速度で垂直と水平に撹拌しながら、3MのHF中において12℃でエッチングした。最終的な上部直径は約75μmであり、腰部直径は約25μmであった(
図3A~3B)。
【0119】
IRISを、240分間に亘り1.45MのHFおよび0.8MのHNO
3中において室温(20℃)で静的にエッチングした。最終的な上部直径は約70μmであり、腰部直径は約45μmであった(
図2C~2D)。第2の実験において、IRISを、25mm/sの速度で垂直と水平に撹拌しながら、3MのHF中において12℃でエッチングした。最終的な上部直径は約75μmであり、腰部直径は約57μmであった(
図3C~3D)。
【0120】
図4は、1.45Mのフッ化水素酸中のEXG(丸)およびIRIS(菱形)のエッチング速度(E
2)を与えている。両方のガラスについて、エッチング速度は、ガラス中のO/Siモル比と良好に相関しており、ここで、エッチング速度は、IRISにおけるより高いO/Si比と比べると、EXGにおけるより低いO/Si比では、より遅い。このことは、同じ条件下でエッチングした場合、IRISガラスの腰部直径は、EXGの腰部直径よりも大きいという、先の結果と一致している。
【0121】
この公報を通じて、様々な刊行物が引用されている。これらの刊行物の全体としての開示は、ここでの方法、組成物、および化合物をより十分に記載するために、本明細書により引用により含まれる。
【0122】
ここに記載された材料、方法、および物品に様々な改変および変更を行うことができる。ここに記載された材料、方法、および物品の他の態様が、明細書の検討、並びにここに開示された材料、方法、および物品の実施から明白であろう。明細書および実施例は、例示であると考えることが意図されている。
【0123】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0124】
実施形態1
1つ以上のガラス貫通ビアを含むケイ酸塩ガラス物品において、
(a)前記ガラス貫通ビアは、第1の表面直径(DS1)、第2の表面直径(DS2)、および腰部直径(Dw)を有し、DS1/Dwの比は1:1から2:1であり、DS2/Dwの比は1:1から2:1であり、
(b)前記ケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超のSiO2および2モル%未満のP2O5を含む、
ケイ酸塩ガラス物品。
【0125】
実施形態2
1つ以上のガラス貫通ビアを含むケイ酸塩ガラス物品において、
(a)前記ガラス貫通ビアは、第1の表面直径(DS1)、第2の表面直径(DS2)、および腰部直径(Dw)を有し、DS1/Dwの比は1:1から2:1であり、DS2/Dwの比は1:1から2:1であり、
(b)前記ケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超のSiO2および12モル%未満のAl2O3を含む、
ケイ酸塩ガラス物品。
【0126】
実施形態3
75モル%超から95モル%のSiO2を含む、実施形態1または2に記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0127】
実施形態4
80モル%から95モル%のSiO2を含む、実施形態1または2に記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0128】
実施形態5
0.5モル%から10モル%のAl2O3をさらに含む、実施形態1または2に記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0129】
実施形態6
P2O5を含まない、実施形態1または2に記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0130】
実施形態7
アルカリ金属酸化物を含まない、実施形態1または2に記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0131】
実施形態8
75モル%超から95モル%のSiO2、
1モル%から13モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、
1モル%から10モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物、
1モル%から10モル%のAl2O3、
0モル%から10モル%のB2O3、
0.01モル%から4モル%のZnO、および
0モル%から0.5モル%のSnO2、
を含む、実施形態1または2に記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0132】
実施形態9
75モル%超から85モル%のSiO2、
1モル%から10モル%のAl2O3、
8モル%から13モル%のNa2O、K2O、またはその組合せ、
2モル%から8モル%のMgO、および
0.01モル%から0.5モル%のSnO2、
を含む、実施形態1または2に記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0133】
実施形態10
前記第1の表面直径および前記第2の表面直径が、10μmから100μmである、実施形態1から9のいずれか1つに記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0134】
実施形態11
前記腰部直径が5μmから90μmである、実施形態1から10のいずれか1つに記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0135】
実施形態12
50μmから500μmの厚さを有する、実施形態1から11のいずれか1つに記載のケイ酸塩ガラス物品。
【0136】
実施形態13
ケイ酸塩ガラス物品にガラス貫通ビアを製造する方法において、
(1)前記ケイ酸塩ガラス物品にレーザビームを照射して、損傷跡を形成する工程であって、該ケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超のSiO2および2モル%未満のP2O5を含む、工程、および
(2)前記ケイ酸塩ガラス物品を、酸を含むエッチング液でエッチングして、前記ガラス貫通ビアを製造する工程、
を有してなる方法。
【0137】
実施形態14
ケイ酸塩ガラス物品にガラス貫通ビアを製造する方法において、
(1)前記ケイ酸塩ガラス物品にレーザビームを照射して、損傷跡を形成する工程であって、該ケイ酸塩ガラス物品は、75モル%超のSiO2および12モル%未満のAl2O3を含む、工程、および
(2)前記ケイ酸塩ガラス物品を、酸を含むエッチング液でエッチングして、前記ガラス貫通ビアを製造する工程、
を有してなる方法。
【0138】
実施形態15
前記レーザビームが、ピコ秒レーザにより形成される、実施形態13または14に記載の方法。
【0139】
実施形態16
前記レーザビームが、500nm超の波長を有する、実施形態13または14に記載の方法。
【0140】
実施形態17
前記レーザビームが、535nm超の波長を有する、実施形態13または14に記載の方法。
【0141】
実施形態18
前記レーザビームが、500nm超から1,100nmの波長および40μJから120μJの出力を有する、実施形態13または14に記載の方法。
【0142】
実施形態19
前記レーザビームが、レーザバーストである、実施形態13または14に記載の方法。
【0143】
実施形態20
前記エッチング液が、フッ化水素酸および水を含む、実施形態13または14に記載の方法。
【0144】
実施形態21
前記フッ化水素酸が、1質量%から50質量%の濃度を有する、実施形態20に記載の方法。
【0145】
実施形態22
前記エッチング液が、塩化水素酸、硫酸、硝酸、酢酸、またはその任意の組合せと組み合わされたフッ化水素酸を含む、実施形態20に記載の方法。
【0146】
実施形態23
前記ケイ酸塩ガラス物品が、0℃から50℃の温度でエッチングされる、実施形態13または14に記載の方法。
【0147】
実施形態24
前記レーザビームが、ベッセルビームまたはガウスベッセルビームである、実施形態13または14に記載の方法。
【0148】
実施形態25
前記照射する工程が、前記ケイ酸塩ガラス物品内に前記ベッセルビームまたはガウスベッセルビームで焦線を形成する工程を含む、実施形態24に記載の方法。
【0149】
実施形態26
前記エッチングする工程が、エッチングの副生成物を生じ、該エッチングの副生成物は、前記エッチング液中の0.5g/L以上のエッチングの副生成物の溶解度を有する、実施形態13または14に記載の方法。
【0150】
実施形態27
前記エッチング液が、水、0.1Mから3.0Mの濃度のHF、および0.1Mから3.0Mの濃度のHNO3を含む、実施形態26に記載の方法。
【0151】
実施形態28
前記損傷跡のエッチング速度(E1)が、レーザにより損傷を受けていない前記物品のエッチング速度(E2)より大きい、実施形態13から27のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
実施形態29
E1/E2の比が、1から50である、実施形態28に記載の方法。
【0153】
実施形態30
前記酸がフッ化水素酸であり、前記エッチング速度E2は、0.25μm/分から0.9μm/分である、実施形態28に記載の方法。
【0154】
実施形態31
実施形態13から30のいずれか1つに記載の方法により製造されるケイ酸塩ガラス物品。
【国際調査報告】