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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】モジュラーコア溶融塩原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21D 3/00 20060101AFI20220629BHJP
   G21C 1/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G21D3/00 S
G21C1/00 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022512478
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2020062205
(87)【国際公開番号】W WO2020225156
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】19172597.7
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521480798
【氏名又は名称】トリゾン・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サンデル・デ・フロート
(72)【発明者】
【氏名】ルカス・マリウス・ポール
(57)【要約】
本発明は、実質的に鉛直に配置されて上昇下降通路を提供するチャネル内に核燃料含有溶融塩を収容することができる原子炉回路に関する。これらの回路を用いて、除去可能な、個別の溶融塩原子回路からモジュラー炉を構築することができ、その一部(「チャネル」)は臨界構成に配置されており、チャネルは非臨界量の核物質を含むが、チャネルは一緒に炉心の臨界ゾーンを作り出す。本発明はさらに、モジュラー原子炉回路および原子炉を動作させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア領域およびシェル領域を含む原子炉であって、前記原子炉は、複数の別個の個別の原子炉回路またはモジュールで構成され、各回路は、
ループ(3)を含み、前記ループ(3)は、核燃料として親および/または核分裂性物質を含有し、任意選択で循環させる液体を収容することができ、
前記ループは、前記ループの一部でありかつ実質的な鉛直配置に配置されている、好ましくは実質的にまっすぐなチャネル(4)を含み、前記チャネルは、前記ループ内における前記液体のための上昇および下降通路(4a、4b)を提供し、前記複数の回路の前記チャネルのそれぞれが前記コア領域に配置され、
それぞれの別個の個別の原子炉回路が前記原子炉から独立して除去可能である、
原子炉。
【請求項2】
個別の回路が、前記原子炉の臨界ゾーンに未臨界量の核燃料を収容する、請求項1に記載の原子炉。
【請求項3】
前記複数の別個の個別の原子炉回路またはモジュールは、核反応を維持することができるように、前記原子炉において、好ましくは臨界ゾーンにおいて臨界量の燃料を提供する、請求項1に記載の原子炉。
【請求項4】
前記回路における前記チャネルは、単一のパイプ、パイプバンドル、パイプインパイプまたは(モノリシック)チャネル付きボディである、請求項1に記載の原子炉。
【請求項5】
前記チャネルは解放可能である、請求項1から4のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項6】
前記チャネルには任意選択で解放可能な格納容器(29)が設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項7】
前記チャネルは、前記液体の前記チャネルへの供給および前記チャネルからの排出が前記チャネルの同じ側であるように、両方とも前記ループの一部であるかつ/または前記ループに接続されている供給端および排出端を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項8】
前記チャネルの配置により、前記原子炉の臨界ゾーンが形成される、請求項5に記載の原子炉。
【請求項9】
各チャネルが、前記原子炉の臨界ゾーンに未臨界量の核燃料を収容する、請求項5または6に記載の原子炉。
【請求項10】
前記原子炉の臨界ゾーンは減速材をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項11】
前記チャネルは、前記コア内に、好ましくは1つまたは複数の円、好ましくは1つの同心円で配置されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項12】
前記チャネルは、前記減速材内に、好ましくは1つまたは複数の円、好ましくは1つの同心円で配置されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の原子炉。
【請求項13】
原子炉を動作させる方法であって、
複数の回路を含む請求項1から10のいずれか一項に定義された原子炉を提供するステップと、
親および/または核分裂性物質を含有する複数の核燃料を提供するステップと、
前記複数の核燃料を前記複数の回路に提供するステップと、
前記回路の前記チャネル内における前記核燃料を臨界構成にするステップと、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から5のいずれか一項に定義された原子炉回路のチャネルを、別の原子炉のコアの近くに、前記回路の前記チャネルが他の炉の中性子束に曝露されるように配置することによって、原子炉回路を動作させる方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に定義された原子炉回路を提供するステップと、
親および/または核分裂性物質を含有する核燃料を提供するステップと、
前記核燃料を前記回路に提供するステップと、
任意選択で、前記回路内において前記核燃料を循環させるステップと、
前記回路の臨界ゾーンにおける前記核燃料を他の炉の中性子束にさらし、
i.前記回路(の構成要素)、
ii.液体、
iii.材料サンプルの挙動、
iv.核燃料および/または
v.前記回路の性能、
のパラメータの1つまたは複数を監視および/またはモデル化するステップと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
臨界構成で前記原子炉を動作させるステップであって、前記回路の少なくとも一部が、減速ありまたはなしで臨界ゾーンに核分裂物質を提供して、核分裂反応を持続させる、ステップと、
前記臨界ゾーンにおける増殖燃焼モードで前記回路の一部を動作させるステップであって、前記核分裂反応からの過剰な中性子が、232Thから233U、または238Uから239Pu、好ましくは232Thから233Uのように、親物質から核分裂可能物質を生成し、生成された前記核分裂可能物質の少なくとも一部を分裂させることが可能になる、ステップと、
前記回路の1つまたは複数において増殖と燃焼との間の平衡を確立するステップと、
他の炉の回路の1つまたは複数における液体を交換し、これによって他の回路を燃焼から増殖モードへ変更するステップと、
前記回路が平衡を達成することを可能にし、これによって閉鎖増殖燃焼核燃料サイクルで動作する炉システムを提供するステップと、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
チャネル、チャネル格納容器、および/または液体タンクを原子炉回路から切り離し、前記チャネル、前記チャネル格納容器、および/または液体タンクを前記原子炉回路から除去および/または交換することによって、前記原子炉回路の構成要素を除去および/または交換するための方法。
【請求項18】
前記原子炉回路は、複数の原子炉回路を含む原子炉構成に配置され、原子炉回路の1つから、交換可能な接続チャネル、チャネル格納容器および液体タンクが、前記炉の前記シェル領域またはコア領域から除去および/または交換される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記除去または交換は、交換可能な接続チャネル、チャネル格納容器および/または液体タンクの実質的な鉛直移動によって実行される、請求項15または16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュラー原子炉回路、特にモジュラー溶融塩原子炉回路に関する。本発明はまた、モジュラー原子炉、特に原子炉回路で構成されたモジュラー溶融塩原子炉に関する。本発明はさらに、モジュラー原子炉回路を動作させる方法に関する。本発明はさらに、モジュラー原子炉を動作させる方法に、および原子炉を試験/認定する方法に関する。本発明はまた、原子炉回路の一部を交換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のエネルギー需要の増加に伴い、初期世代の原子力プラントに関連する不利点にもかかわらず、原子力エネルギーの必要性が残っている。安全でクリーンな豊富な量のエネルギーを供給すると同時に核物質の拡散および核廃棄物の生成に対して意識的なアプローチをとることを特に目的とする新世代の原子力プラント(第4世代および第5世代)が開発されている。
【0003】
これらの1つがいわゆる溶融塩炉である。
【0004】
溶融塩炉(MSR)は、一次冷却材、または燃料自体さえが溶融塩混合物である原子炉の一種である。この種の炉には多くの設計が提案され、いくつかのプロトタイプが建設されてきた。初期のコンセプトおよび多くの現在のコンセプトは、溶融フッ化物塩に溶解した核燃料に依存している。この流体は、グラファイトのような減速材が存在し得るコアへ流入することによって臨界に達するであろう。多くの既知のコンセプトは、溶融塩が低圧、高温の冷却を提供するグラファイトマトリクスにおけるチャネルを通って燃料が流れることに依存している。いくつかの新たに開発されたコンセプトは、特定の目的のため、たとえば核廃棄物の流れから長寿命アクチニドを燃焼させるため、減速材の使用を除外して高速中性子スペクトルシステム特性を作り出す、または特定の減速を採用して専用の中性子スペクトルを局所的に生成する。
【0005】
溶融塩炉は過去に設計、建設および運転に成功したが、この種の炉を再開発するために要求される知識および経験は限定されている。安全性、廃棄物の流れの最小化、および資源効率の最大化に関する溶融塩炉システムの主な利点は、過去5年間から10年間、多くの場合において頻繁に説明されてきた。放射性廃棄物の負担を最小化しながら、数千年にわたって安全なエネルギーを提供するための、特にトリウムを燃料とする溶融塩炉システムの大きな展望を、疑いの余地なく考慮することができる。しかしながら、米国において50年代および60年代において溶融塩炉の取り組みによって溶融塩炉の原理実証が成功裏に示されたが、技術的および経済的な実行可能性、および市場までの長い時間が、タイムリーな実装の、およびこれによって投資の大きな障害である。
【0006】
溶融塩炉は一般に、中性子吸収核分裂および活性化生成物から塩を頻繁に洗浄し、これによって中性子損失を最小化し、核燃料サイクルを閉鎖する機会を提供することによって、最適化された中性子の経済性を提供し、核燃料サイクルにおいて、核分裂に用いられる燃料が核分裂反応からの過剰中性子から生成され、232Thまたは238Uのような親元素の、233Uおよび239Puのような核分裂性元素への変換が可能になる。
【0007】
核燃料サイクルを閉鎖し、非常に高いレベルの(受動的)安全性と組み合わせて、資源使用の非常に高い効率を生み出し、特にトリウム閉鎖燃料サイクルの場合において、長寿命廃棄物の生成を最小化するという視点により、溶融塩炉は、責任ある将来のエネルギー源として非常に大きな有望株になる。
【0008】
MSRシステムにおいて燃料と冷却材とを組み合わせると、この技術には1つの重要な複雑さがある。すなわち、すべての物理学および工学の学問領域が一次システムに集まり、互いに大きく影響することである。溶融塩一次システム構成要素において、化学、中性子物理学、材料科学、熱水理学、熱機械学などがすべて集まる。溶融塩炉を確立するにはしたがって、学際的な分析および設計、ならびに学際的な実験的検証を伴う学際的なアプローチが要求される。
【0009】
溶融塩の展開のための学際的な設計ツール、コードおよびライセンシングフレームワークを開発および検証するには、多大な労力が必要になる。学際的な複雑さを考慮すると、単純な炉内実験または小規模なデモンストレーションでさえ、適切な実証済みの学際的な知識および経験のベースが不足していれば、安全性の観点から完全に予測および正当化することが困難になる。
【0010】
本発明は、完全な学際的な複雑さを包含する効率的な原子力認定アプローチを提案することによって、そして原子力認定戦略を最大限に活用するであろうMSR発電所設計原理を提案することによって、MSRベースの発電所のための最小化された市場投入時間のアプローチを説明する。これにより、コストと時間との両方がかかる複雑な中間ステップが大きく排除されるであろう。効果的な原子力認定ルートとその認定に厳密に一致する設計とのこの組み合わせにより、溶融塩ベースの原子力発電所が15年の時間枠以内に商業的に利用可能になる可能性があり、これは、現在現実的と見なされている20年から30年よりも大幅に短い。この見積もりはMSR技術の実行可能性を前提とし、これは、米国における50年代および60年代における運転の成功によって証明されたと見なすことができる。
【0011】
溶融塩原子炉は以前に、たとえば特許文献1~5に記載されている。
【0012】
溶融塩炉において、冷却材燃料組成を調整する、したがって運転中に調節することができる。これは、既知のMSRの一次システムにおける構造材料および構成要素に当てはまらない。冷却材燃料と一次システムの構成要素および材料との間の相互作用、ならびに一次材料および構成要素が曝露されることになる強力な放射場は、主要な課題である。原子力発電所について通常予測される40年~60年の寿命の間、これらの厳しい条件に耐えることができる材料が必要であり、または試験される必要がある。多くのMSRの以前の概念的設計は、この側面を無視する、またはある種の放射線シールドバッファまたは犠牲材料層を含み、放射線誘発性劣化および化学的な塩の相互作用から一次材料を保護する。
【0013】
これらのMSR設計の1つが特許文献6に記載されている。特許文献6において、ループベースの設計が完全な原子炉に用いられ、液体のいくつかの個別の流れが反応コア内へ供給され、そこから引き出され、循環し、コアまたは減速材内へフィードバックされる。この設計は、液体の流れが減速材の底部へ供給され、単一の流れにおいて頂部で出てくるいくつかのチャネルを減速材が含むようなものである。全体のセットアップは完全に固定された設計である。
【0014】
特許文献7も、二流体炉設計における溶融塩炉を開示している。この設計において、これは基本的に溶融塩で満たされた容器であり、個別のチューブが固定構成で存在し、これを通して溶融燃料塩も圧送される。チューブの寸法および核分裂性物質の含有量は、各チューブが未臨界であり、チューブが互いに近接しているときにのみ臨界が達成されるようなものである。設計は固定設計であり、塩が循環するチューブが固定構成に配置されている1つの大きな容器/格納容器からなり、コア内の構成要素の除去および交換の可能性はない。容器は単一の溶融塩入口および出口を有する。
【0015】
特許文献8は、熱交換器として溶融塩のブランケットに包み込んで溶融燃料塩を圧送することができる鉛直に配置された通路を有するグラファイト燃料電池が提供されている固定溶融塩燃料増殖炉を記載している。このシステムは単一の大きな炉圧力容器を有し、グラファイト燃料電池には単一の入口および出口を介して溶融塩が供給される。
【0016】
特許文献9は、溶融塩で満たされた単一の炉容器および格納容器を示しており、これを通して溶融燃料塩の配管が導かれている。これは、単一の入口および出口を備えた塩が提供される単一の格納容器である。
【0017】
すべてのこれらの構成は、セットアップ全体が固定されていることを共有している。溶融燃料塩を運ぶチューブまたは燃料電池は臨界構成に配置され、単一の塩入口および出口を備えた包括的な大きな炉容器/格納容器に配置され、炉容器容積またはチューブまたは燃料電池において中央で一次またはブランケット塩を循環させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0243376号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0117065号明細書
【特許文献3】国際公開第2017/098228号パンフレット
【特許文献4】英国特許第2508537号明細書
【特許文献5】国際公開第2017/070791号パンフレット
【特許文献6】米国特許第2999057号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2009/0279658号明細書
【特許文献8】米国特許第3403076号明細書
【特許文献9】英国特許第2073938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
一般に、先行技術において考案された液体燃料冷却材を採用する炉のコンセプトは、比較的大きくて分割されていない塩の量を使用および教示し、システムコアを満たし、配管および装置を支持する。これは、これらの種類のシステムの実現可能性についていくつかの問題を提起する。核物質格納容器を維持するには大きな包括的な容器が要求される。これらの大きな容器は、作製および取り扱いが複雑で、高価で、(容易に)交換可能でなく、使用後に(容易に)廃棄可能でない。「深層防御」のコンセプトは、原子力安全哲学の基礎であり、複数の障壁を用いて収容されている原子力ソースタームの放出を回避することを強調している。すべての燃料を含む1つの容器は、1つの格納容器においてソースタームを最大化し、放出に対する単一の第1の防衛線を形成する。使用後、大きな容器は汚染され、中性子活性化されている可能性があり、これはそれ自体が大きな廃棄物問題である。容器およびそれに接続されている構成要素が依然として非常に活性で有毒な燃料冷却材廃棄物で満たされていればさらにそうである。この量の取り扱い、貯蔵および廃棄は、サイズおよび潜在的な放射線被曝の危険性のために困難である。格納容器を形成する大きな容器は、開放および収容、ならびにコア構成要素の搬出および導入を可能にする必要があるため、この容器により構成要素の交換が複雑になる。燃料冷却材ベースのシステムにおけるコア構成要素および材料は一般に、極端な温度および化学的(腐食)条件下で放射線による損傷をひどく受ける。燃料冷却材ベースのシステムの臨界ゾーンにおける過酷な条件に長期間耐えることができる材料がまだ発見または開発されていないため、コア材料および構成要素を便利に交換することにより、これらのシステムの実装が大きく加速されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは今や、本質的に、溶融塩原子炉回路用の改良された設計を発見した。改良された設計により、たとえば完全な原子炉に組み立てる前に単一の回路を構築および試験することができるという点において、より柔軟になる。回路は、炉全体を分解することなく、または炉内の他の回路に影響を与える(分解、除去する)ことなく、回路を配置および炉または減速材から除去することができるように構築されている。
【0021】
本発明者らによってなされた基本的な選択は、溶融燃料冷却材を別個の個別の独立したモジュールへ区画化し、モジュールのコア部分からなるコア領域において安定した核分裂反応を維持することができる構成に配置することである。各モジュールは独立した機能性を有し、独自のポンプ、熱交換器および処理ユニットを有する。各モジュールは自己完結型のシステムであり、独自の(二重の)格納容器を備える。これらのモジュールは、二次非核冷却材システムまたは他の二次システムを介してのみ接続することができる。これらのモジュールはしたがって、溶融塩または核物質を共有せず、各モジュールにはその個別の量の溶融塩および核物質が提供される。各モジュールはそれ自体が別個の原子炉であるが、2つ以上のモジュールが互いに近接して配置されたときにのみ臨界を達成することができる。
【0022】
これらのモジュールは、容易に除去することができるような方法で互いに近接して配置される。各モジュールまたは回路は原子炉から独立して除去可能である。一例を図6および図7に示す。モジュールの(例示的に:円筒形)設計により、並べて配置することが可能になる一方、列からの1つのモジュールを除去することはたとえば、関連するモジュールを上昇または下降させることによって行うことができる。
【0023】
本発明は概して、原子炉回路を含む原子炉、原子炉回路、ならびに原子炉および原子炉回路を動作させるための方法に関する。
【0024】
本発明の原子炉回路は、塩で満たされた従来のMSR炉容器ではなく、塩が個別の独立した回路内において循環するパイプ、パイプバンドルまたはチャネル付きブロック/シリンダの構成である。個別の原子炉回路およびその中の溶融塩回路は互いに結合されておらず、またブランケット塩回路によって互いに接続されていない。
【0025】
個別の原子炉回路は互いに独立しており、独立して動作することができる。
【0026】
これは、溶融塩回路が中央一次またはブランケット塩循環システムによって互いに接続された1つのシステムである先行技術のセットアップとの違いである。先行技術の溶融塩のセットアップは通常分割されていない。本発明の原子炉のコンセプトはしたがってモジュラーのコンセプトである。別個に構築され、モジュラーの塩ループがその他の近隣に配置されている個別化された原子炉回路またはモジュールは、配管、溶融塩または燃料を共有していない。各モジュールは独自の溶融塩、燃料および配管を含む。各モジュールは、原子炉の別個の区画である。
【0027】
特許文献6は、たとえば図6において導管が近接に収束してコアを形成し、次いで分岐するセットアップを示している。しかしながら、セットアップ全体は固定されたままであり、炉を完全に分解することなく炉から除去することはできない。
【0028】
本発明のモジュラーコアアプローチは次の利点を可能にする。
・各モジュールは少なくとも2つの格納容器(すなわち2つの防御線)を維持し、両方の完全性は、第1および第2の格納容器間を流れるガスにおいて、および第2の格納容器の外側の冷却材において核分裂生成物含有量を測定することによって、継続的に監視することができる。
・格納容器を監視することにより、切り離し可能な一次格納容器構成要素を用いることが可能になる。通常一次境界の完全性は、溶接またはろう付けによって確保され、一次境界を単一の構成要素にし、格納容器が閉じていることに疑いを残さない。格納容器の完全性を監視することによって、切り離し可能な構成要素を可能にすることができる。
・各モジュールは、燃料冷却材の総量の一部を含み、すなわち格納容器ごとのソースタームが削減されている。
・各モジュールは未臨界量の燃料冷却材を含み、これによりモジュールレベルで臨界を導入することができない。モジュールが特定の構成に配置され、複数のモジュールの燃料冷却材が組み合わされたときにのみ、核分裂反応を開始および維持することができる。
・モジュールが故障すると、そのモジュールにおける燃料冷却材が臨界コア領域から受動的に排出され、コア全体における臨界は減少または停止する一方、モジュールの機能性の残りは影響を受けない。
・大きな構成要素が回避され、コストが削減され、取り扱い、輸送(実行可能なコンテナサイズで)および交換が容易になる。たとえば大きな部分またはモジュール全体を抽出および交換することができ、交換によってシステムの寿命を延ばす機会を提供するが、性能が向上した、または他の燃料冷却材を備えた新たなモジュールを導入することも可能になる。
・燃料冷却材の総在庫がモジュールに細分されているため、燃料冷却材廃棄物量は、モジュールレベル、すなわち輸送可能である管理可能な量で処理され、別の場所でさらに処理することができる。
・炉内のモジュールを、炉全体の複雑な分解なく炉に配置および炉から取り出すことができる。モジュールの交換は、炉を構成するモジュールの列からモジュールを上昇または下降させることによって達成することができ、計装器、電源、二次熱交換器などのような二次接続の切り離しが要求されるのみである。
【0029】
モジュラーコアアプローチは、中性子物理学の観点から最適ではないコア構成につながるが、これはこの構成がモジュールレベルでの実際の設計の考慮事項、たとえば臨界コアゾーンにおけるモジュールごとの格納容器の交換可能性および導入によって決定されるためである。本発明者らは、燃料冷却材システムが実際に実現可能になるための前提条件であるため、原子力の安全を優先した。このアプローチはコア構成を最適化して中性子の経済性を最大化する可能性を限定するが、燃料冷却材を採用することは、選択されたモジュラーアプローチの中性子の経済性の欠点を補償する利点を提供する。燃料冷却材の使用は、特に燃料冷却材中の不要な中性子吸収核分裂生成物をオンラインで効果的に除去することができる場合に、固体燃料炉より高い中性子効率の可能性を提供する。燃料冷却材システムは低圧を有し、したがって、格納容器は主に低圧の液体および気体のバリアになるため、比較的薄く保つことができる。炉心領域における格納容器材料の中性子吸収による炉心性能への悪影響をしたがって最小化することができる一方、安全で比較的迅速な開発、認可、承認および実施期間が最適化される。
【0030】
本発明の原子炉回路のセットアップ(単一のパイプ、複数のパイプ、パイプバンドルまたはチャネル付きブロック/シリンダ)により、適切な原子力試験炉施設における単一の回路システムによる回路システムの原子力試験および認定が可能になる。
【0031】
一態様において、本発明の原子炉回路は、核燃料を収容するかつ/または循環させることができるループを含む。ループは、実質的な鉛直配置で、任意選択で実質的にまっすぐなチャネルを含む。チャネルは、ループにおける液体のための上昇および下降通路を提供する。
【0032】
個別の溶融塩原子回路、またはその代表的なバージョンは、既存の炉(たとえば適切な材料試験炉)の放射線場に配置することができ、したがって溶融塩原子炉回路用の材料および構成要素を設計、開発、試験および認証するために用いることができる。
【0033】
個別の溶融塩原子回路は溶融塩原子炉の構成要素として用いることができ、溶融塩原子炉はひいては複数のこのような個別の回路で構成される。
【0034】
他の一態様において、本発明は、本発明の回路の1つまたは複数を含む原子炉に関する。1つの回路を含む原子炉を用いて回路を検証および試験することができる。複数の回路を組み合わせて、個別の溶融塩回路に基づく原子炉を形成することができる。
【0035】
原子炉はコア領域およびシェル領域を含む。コア領域はシェル領域によって囲まれている。原子炉において、複数の原子炉回路が設けられている。原子炉の各原子炉回路は、1つまたは複数のチャネルを含むループを含む。
【0036】
ループは、親および/または核分裂性物質を含む液体を収容することができる。1つまたは複数の液体タンクが、ループに関連して配置され、任意選択で取り外し可能であり、親および/または核分裂性物質を含む液体を収容することができる。複数の回路のチャネルはコア領域に配置される。コアにチャネルを配置することにより、原子炉の臨界ゾーンが形成され、核分裂反応が持続する。
【0037】
複数の個別の回路のチャネルは、溶融塩原子炉を開発および運転する本質的に安全で効果的な構成において臨界構成に配置することができる。個別の回路はそれぞれ、臨界未満の量の核燃料を収容する。個別の回路構成のチャネルはそれぞれ、未臨界量の核燃料を収容することができる。
【0038】
個別の回路から構築された原子炉により、燃料サイクルの柔軟性が可能になり(回路は異なる燃料/塩の組み合わせを収容することができ、または燃料/塩の組み合わせは変更することができる)、回路のおよびしたがって原子炉の一次構成要素は交換可能である。一次構成要素が交換可能である回路および炉を有することによって、炉のライフサイクルを延長して確実に管理することができる。システムの構成要素を新たな改良された構成要素に交換することができるため、これらの原子炉回路およびこれらから構築された炉により、さらなる最適化も可能になる。回路の設計は、回路の要素を個別に試験および認定することができるようなものである。原子炉回路(またはループ)のおよびまたこれらのループから構築されている原子炉の設計は、この構成により、溶融塩原子回路の1つまたは複数がその所望される機能から逸脱しているときに原子炉が機能を停止する設計が可能になるため、改善された安全プロフィールを表す。
【0039】
本質的に、炉は、円形構成に配置することができる複数の個別の回路に基づいており、各回路の一部は小さな半径に配置され(「チャネル」または「ホットレグ」)、核反応を持続させる臨界構成を作りだし(「臨界ゾーン」)、回路の残りはより大きな半径に、主に臨界ゾーンの放射線場の外側で、非臨界構成に配置されている。回路チャネルまたは配管は塩と直接接触している。チャネルは塩を収容し、組み合わされたチャネルによって形成される臨界構成において十分な量の核分裂性物質を提供し、熱(外)中性子スペクトル炉が対象となる場合に減速材料を用いることによって、炉の臨界ゾーンを形成する。チャネルは高い放射線束に曝露される。パイプを用いることにより、放射線曝露および/または塩曝露に関して材料の限界に達するとすぐに交換することが可能になり、交換が比較的容易である。チャネルは単一のパイプでもパイプバンドルでもチャネルを備えたブロックでもよく、炉の臨界ゾーンにおける高放射線束への曝露と組み合わせて(腐食性の)塩および核分裂生成物との接触により比較的急速に劣化するが、同様に交換し、原子炉の寿命を増加させることができる比較的小さな構成要素である。一次配管およびチャネル交換には顕著な遠隔処理の開発が要求されるが、これは、数十年間MSR条件に耐えることができる材料を発見および認定しようとすることより実現可能であると見なされている。
【0040】
あるいは、回路は、図6および図7に例示するように、チャネルが回路の上半分にあり、他の構成要素が底部にある鉛直配置で作製することができる。鉛直に配置された回路を一緒に配置すると、チャネルは互いに近接し、モジュール間の中性子交換が可能になり、臨界コア構成が確立され、核分裂反応を持続させることができる。チャネルから下半分におけるタンク内へ溶融塩を排出することによって1つの回路を除去することまたは回路を非活性化することにより、炉の臨界が破壊される。
【0041】
複数の別個の個別の原子炉回路またはモジュールを含む原子炉において、各モジュールは、溶融塩の液体と、一次システムとしての非臨界量で核燃料としての親または核分裂性物質と、を収容し、
各モジュールは炉の二次システムに接続され、
各モジュールは、他のモジュールとの構成で原子炉に配置され、
各モジュールは、1つまたは複数の他のモジュールの中性子束内に配置され、
複数のモジュールは、組み合わされて上記構成で1つまたは複数の他のモジュールの中性子束内に配置されたとき、臨界量の親および/または核分裂性物質を収容し、
各モジュールは、炉内の他のモジュールの構成を維持しながら二次システムからそのモジュール(の一部)を取り外すことによって炉システムから個別に除去可能であり、
モジュールの一次システムは、ポンプ、一次熱交換器、および回路において別個のまたは統合された、排水タンクのような一次処理手段を含み、
二次システムは、モジュールの一次熱交換器と熱を交換することができる二次制御手段および二次非核熱交換器を含む。
【0042】
実施形態において、モジュールは、鉛直方向に細長い多角形または円筒形を有することができる。実施形態において、一次システムは、モジュールにおける鉛直構成の(閉)ループである。実施形態において、溶融塩ループを含むモジュールは、鉛直方向に細長い多角形または円筒形の上半分に主に配置され、ポンプ、一次熱交換器、および排水タンクのような一次処理手段のような一次システムのさらなる要素は、下半分に配置される。モジュールが構成されると、その構成は、1つのモジュールの溶融塩ループを他のモジュールの中性子束に配置して、核反応を維持してエネルギーを生成する臨界構成を達成する。
【0043】
さらなる態様において、本発明は、原子炉回路のチャネル、または原子炉回路の代表的なバージョンを、回路のチャネルが原子炉の中性子束に曝露されるように他の原子炉のコアの近くに配置することによって、原子炉回路を動作させる方法に関する。これは、MSRの学際的な複雑さを含む代表的な試験環境において、回路材料、回路流体、および回路構成要素の試験、特性評価および認定という目的で、多数の炉回路で構成される原子炉における回路動作をシミュレートする。
【0044】
さらなる態様において本発明は、本発明の原子炉回路およびあるいは(中性子)減速材を含む原子炉を提供するステップを含む原子炉を動作させる方法に関する。この方法は、親および/または核分裂性物質を含む複数の核燃料を提供するステップと、複数の核燃料を複数の回路に提供するステップと、をさらに含む。チャネルの一部またはすべての核燃料、および減速材料および/またはチャネルの構成により臨界ゾーンが作り出され、核分裂反応を持続させることができる。本発明の方法により、本発明の回路がさまざまな目的のために原子炉で用いられ得ることが可能になり、そのいくつかは、エネルギーを生成すること、中性子/中性子吸収を用いて親元素を核分裂性元素に変換することによって増殖施設として用い、これによって核燃料を生成すること、および/または他の用途およびそれらの組み合わせのために同位体および材料を生成することである。本発明の原子回路を備えた原子炉のモジュール構造により、原子炉の運転を用いて、炉の構成を大きく変更することなく、しかし個別の回路の変更、および/または回路に収容される液体の変更、および/または減速材料の変更によって、さまざまなニーズを同時にまたは続けて満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】チャネルが炉のコアに配置されている原子炉の上面図の概略図である。
図1A】パイのような図のポイントにチャネルが配置された4つの個別の回路(概略の点線によって分離されている)の上面図の概略図である。炉に配置されたとき、チャネル(4)は、その個別の(未臨界)中性子の寄与を通して中性子の結合された臨界バランスを生成することによって、原子炉コアを共に形成する他の別個の原子炉回路に最も近接した原子炉回路のセクションである。
図2】原子炉回路の概略図である。
図3A】チャネルが戻り線から離れて実質的な鉛直位置に配置されている原子炉回路の概略図(側面図)である。チャネルは、Uベンドチューブによって確立された二方向流を含む。
図3B】チャネルが戻り線から離れて実質的な鉛直位置に配置されている原子炉回路の概略図(側面図)である。チャネルは、チューブインチューブによって確立された二方向流を含む。
図3C】チャネルが戻り線から離れて実質的な鉛直位置に配置されている原子炉回路の概略図(側面図)である。チャネルは、チャネル付きブロック構成によって確立された二方向流を含む。
図4】原子炉回路の構成要素および出入り流の概略図である。
図5】1つの原子炉回路の側面図の概略図である。
図6】円筒形の配置における原子炉回路の側面図(左)および上面図(右)における概略図である。上部においてチャネルは鉛直の上昇および下降チャネルを円形に配置して配置されている。ポンプ、熱交換器、膨張タンクおよび核分裂生成物抽出部、貯蔵ユニットおよび計装器が、中性子束場の外側、チャネルの下方の下部に配置されている。上面図は、上昇および下降チャネルの好ましい配置を示す。
図7A】本発明の一実施形態における原子炉回路(ここでは円形構成の7つの回路)の個別の配置を示す図である。個別の回路が互いに近接して配置されると、各個別の回路のチャネルも互いに近接して配置され、チャネルにおける燃料の適切な量および濃度を選択することによって臨界を達成することができる。回路は構成から除去可能である。
図7B】正方形配列での炉における回路の配置を示す図である。
図7C】炉の円形コア領域の周りに、コア領域での核分裂反応に寄与するか、または増殖もしくは中性子活性化による燃料生成のような他の機能を有し、コアゾーンから放射状に出てくる中性子を利用することができるいくつかの代替回路が配置される一実施形態を示す図である。中性子が主に吸収され、円周状の回路によって生成されない場合、これらは炉のいわゆるシェル(またはブランケット)領域を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
一態様における本発明は、ループ(3)を含む原子炉回路に関し、ループ(3)は、核燃料として親および/または核分裂性物質を含み、任意選択で循環させる液体を収容することができ、
ループ(3)は、ループの一部でありかつ実質的な鉛直配置に配置されている、好ましくは実質的にまっすぐなチャネル(4)を含み、チャネル(4)は、ループにおける液体のための上昇および下降通路(4a、4b)を提供する。
【0047】
本発明による原子炉回路は、チャネル(4)を含みかつ液体タンク(5)に接続することができるループ(3)を含むことができる。ループは、供給ライン(6)、チャネル(4)、出口ライン(7)、戻りライン(8)を含むことができる。ループにおいて、供給ライン、チャネル、出口ラインおよび戻りラインが接続され、液体を収容することができるループを形成するように配置される。液体は、親および/または核分裂性物質を含むことができる。液体タンクはループに接続され、液体を収容することができるように配置されている。各ループのチャネルは、実質的な鉛直配置で独立して配置することができる。
【0048】
本発明の有利な特徴は、実質的な鉛直配置に配置されているときのチャネルにおける上昇流、流れ反転および下降流の個別の回路における収容である。この構成により、一端、好ましくは頂部で閉じ、チャネルも接続されている場所で回路に接続することができる格納容器内でチャネルを包囲することが可能になる。これにより、炉の格納容器の上部反射体および/または放射線シールドを通して、格納容器およびチャネルを鉛直方向に便利に切り離し、除去および交換することが可能になる。MSRシステムでは、コアの構成要素が高温、高放射線束、ならびに溶融塩およびその成分との潜在的に有害な化学的相互作用の組み合わせに曝露され、コアの材料および構成要素の便利な定期交換は、炉の寿命および経済性にとって重要な側面である。
【0049】
チャネルは解放可能に接続することができる(すなわち、解放することができるように、任意選択で格納容器(29)と一緒に接続する)。チャネルを上昇および下降通路として提供することによって、供給部および出口は回路の同じ側(頂部または底部)に配置される。これにより、回路(および/またはチャネル)がその環境から、回路が照射されるようにまたは原子炉からの放射線と相互作用するように配置された近くの炉心、または回路のチャネルが炉の減速材に配置された場合には減速材から、除去され得ることが可能になる。次いで、(解放された)チャネルおよび/または回路全体を炉から持ち上げるまたは下ろすことによって、炉を分解する必要なしに除去を達成することができる。これにより、炉(の大部分)を分解する必要なく炉の一部を交換、修理または他の方法で操作することが可能になるため、従来の(溶融塩)炉に対して膨大な利点が得られる。
【0050】
チャネルは、また除去可能および/または交換可能である格納容器に包含または封入することができる。格納容器とチャネルとの間に不活性ガスが存在することができ、これは断熱材として作用することができ、塩漏れを検出するために(オンラインで)監視することができ、一次構成要素の(予)加熱に用いることができる。
【0051】
回路の残りも、適切な防御層による深層防御設計を尊重して、格納容器または閉じ込め容器による放射性物質の放出を回避する。チャネル格納機能と同様にガスギャップは回路システム加熱および/または漏洩監視/検出機能を含むことができる。
【0052】
別個の(収容された)チャネル間に減速材料を配置または回避して、システムによって想定される燃料サイクル(たとえば簡単なウラン燃焼サイクル、またはトリウム-ウランまたはウラン-プルトニウム増殖サイクル)に合わせた中性子スペクトルを調整および最適化することができる。熱炉設計では、個別の炉の回路を採用することにより、減速材を塩との接触から分離することが可能になる。既知のまたは開発中であることが既知の他の熱MSRシステム設計とは異なり、減速機能性および溶融塩格納または溶融塩流案内機能性は分離されている。
【0053】
したがって、本発明の他の一態様において、チャネル、チャネル格納容器、および/または液体タンクを回路から切り離し、チャネル、チャネル格納容器、および/または液体タンクを回路から除去することによって、または回路全体を炉から除去することによって、炉の回路の構成要素が除去される方法が提供される。回路が炉の構成に配置されている場合、交換可能な接続チャネル、チャネル格納容器および液体タンクは、炉のシェルまたはコア領域から除去および/または交換することができる。いくつかの実施形態において、チャネル、チャネル格納容器、および/または液体タンクを回路から除去することは、チャネル、チャネル格納容器、および/または液体タンクを回路から除去する前に、原子炉回路全体を炉から除去することを含む。他の実施形態において、回路からのチャネル、チャネル格納容器、および/または液体タンクは、原子炉回路の残りが原子炉内に留まっていても原子炉から除去することができる。
【0054】
チャネルのための供給ラインはチャネルの一端に配置される。出口ラインはチャネルの他端に配置される。チャネルは、チャネルへの液体の供給およびチャネルからの排出がチャネルの同じ側になるように、共にループの一部であるかつ/またはループに接続されている供給端(供給ライン)および排出端(出口ライン)を有する。
【0055】
回路は液体を収容して循環させることができる。回路は、チャネル(4)を含むループを含む。
【0056】
チャネル(ホットレグとして特定されることもある)は、本明細書で用いられるとき、チャネル内部および/またはチャネル外部(外部中性子放射に曝露されるとき)での核分裂反応によって中性子放射に最も曝露される回路の一部であり、チャネルおよびチャネル内の流体が核分裂反応および/または核加熱(放射線吸収によってチャネル材料および流体に蓄積されたエネルギー)によって加熱される場所である。回路流体は、二方向(上から下または下から上)でチャネルを通って流れる。チャネルは、上および下に向かう単一のパイプ、パイプバンドル、パイプインパイプまたはチャネル付きブロック/シリンダの中から選択することができる。チャネルは、一方向または二方向の塩の流れを可能にし得る。チャネルは、供給ライン(6)および戻りライン(8)に接続され、チャネルへ液体を供給し、チャネルから液体を回収することができる。パイプバンドル、パイプインパイプまたはチャネル付きブロック/シリンダのような二方向流を可能にするチャネルが好ましい。
【0057】
チャネルの実質的にまっすぐな位置は好ましくは、回路のチャネルの外部配置に適用される。チャネルは、代替の一実施形態において、チャネルの外周上でらせんとして上(または下)に、そしてらせんのループを通って下(または上)に旋回して通路を完成させる上昇および下降通路を有することができる。
【0058】
チャネルは一端で供給ラインに接続することができる。チャネルは他端で出口ライン(7)に接続する。出口ラインは一端でチャネルに接続する。出口ラインは他端で戻りラインに接続する。戻りラインは一端で出口ラインに接続する。戻りラインは他端で供給ラインに接続する。供給ライン、チャネル、出口ラインおよび戻りラインのこのセットアップにより、本発明において用いられるような閉回路またはループが提供される。
【0059】
通常、チャネルは、チャネルが液体を収容して循環させることができる閉ループの一部であるように、チャネルの両端(入口および出口)で接続される。これらの端部の1つで、供給ラインがチャネルの上流に存在することができ、出口ラインをチャネルの下流に設けることができる。戻りラインは出口ラインから下流および供給ラインの上流に配置することができ、チャネルを含むループを設けることができるようになっている。
【0060】
回路に1つまたは複数の液体タンク(5)を接続することができる。回路は液体を収容することができる。液体は、親および/または核分裂性物質を含むことができる。本発明の原子回路は、動作中、チャネルを既存の原子炉(すなわち適切な材料試験炉)の線束内に配置することができるような方法で、チャネルを回路の残りから距離を置いて配置することができるループを形成する。チャネル自体およびチャネルの内容物は、既存の(試験)原子炉の放射線を受けることができる。原子炉回路の他の要素は、既存の炉の線束のさらに外側に配置することができる。
【0061】
これにより、原子炉回路自体の材料および構成を試験および認定することができるセットアップが提供される。原子炉回路はしたがって、試験原子炉の線束内に配置することによって一般的な試験、新たな原子炉のコンセプトのモデルの検証および認定に用いることができる。回路に接続された1つまたは複数の液体タンクは、原子炉回路を充填するために用いることができ、液体内容物を貯蔵するために用いることができる。
【0062】
一実施形態において、好ましくは、チャネルは臨界量の核物質を収容せず、すなわちチャネルは未臨界である。
【0063】
いくつかの実施形態において、回路は液体を収容することができる。液体は、親および/または核分裂性元素を含むことができる。液体は溶融塩とすることができる。液体は、回路に統合された、たとえば対流および/またはポンプによって、回路を通って循環することができる。
【0064】
通常、溶融塩は高い熱膨張係数を有する。したがって、溶融塩を用いると、ループ内で自然循環が発生し得る。核分裂反応によって加熱されたチャネル内の塩は、チャネルの上部へ上昇するか、またはさらに押し出され、たとえば任意選択の熱交換器を介して、溶融塩から熱を抽出することができる。溶融塩は、高い熱膨張係数を有し、より密になり、ループの出口ラインおよび戻りラインを介して戻る傾向で移動し、活性領域内で加熱された塩で置換される。冷却された塩が回路を通って移動すると、これはチャネルにおける「臨界ゾーン」、すなわち外部放射を受け得る場所を通過する。臨界ゾーンを通過することにより溶融塩に熱が生成され、その密度が少なくなり、容器チャネルの頂部へ循環してプロセスを繰り返す。したがって、自然な流れが、回路および熱を抽出することができる任意選択の熱交換器を通して熱い塩を循環させ、より冷たい塩をそれが加熱される臨界ゾーン領域を通して戻す。この自然循環により、回路内側の流れの主要な推進力を形成することができる。
【0065】
回路における自然循環効果により、コア反応容器を通して材料を循環させるためにループまたは回路にポンプを含む必要性を減らすことができる。この自然循環効果を補うためにポンプを設けることができ、かつ/または循環のための主要な力としてポンプが要求されることがある。たとえば、回路において大量のエネルギーが生成されるとき、熱をチャネルから回路セクションへ能動的に移動させ、そこで熱が除去されるように、ポンプが好ましい。
【0066】
いくつかの実施形態において、チャネルは実質的な鉛直配置に配置される。
【0067】
この文脈における実質的な鉛直とは、チャネル内の液体が対流および/または重力を介してチャネルを通って移動することができるということを意味する。チャネルは、鉛直方向と最大約45度の角度をなすことができ、約20、15度または10度以下が好ましい。角度が約5度未満であることがさらに好ましい。ループおよび回路の要素は、回路が流体の液体タンク内への重力による受動的排出を可能にするまたは促進するような方法で構成および配置されることが好ましい。
【0068】
原子炉回路が、親および/または核分裂性物質を収容することができる溶融塩炉である一実施形態において、液体タンクは、能動的または受動的に作動するバルブまたはパススルーを介して回路に接続することができる。
【0069】
受動的に作動するパススルーの一例は、回路と液体タンクとの間の接続部における塩プラグ(または凍結プラグ)(11)であり、通常、溶融塩が固化するようにセクションを能動的に冷却することによって達成される。このセクションは通常ループとタンクとの間に配置される。冷却が停止または除去され、または温度が上昇すると、プラグが溶けることになり、回路の内容物がタンクに排出される。塩プラグは通常、原子炉回路が過熱した場合に有用であり、塩プラグを介した受動的排出によって核分裂性物質がコアから除去され、核分裂反応を効果的に低減または停止する。液体タンクは好ましくは、原子炉回路の最低点の近くに配置される。少なくともチャネルの実質的な鉛直配置と塩プラグおよび回路の最低点近くの液体タンクの配置との組み合わせにより、緊急時(すなわち暴走または過熱)にタンク内に回路の内容物を空にし、したがって回路からのおよび炉の臨界コア領域の核分裂性物質を除去し、炉システムがもはや臨界でなくなるように回路において核分裂反応を停止または低減することが可能になる。好ましくは、タンクは炉の線束の外側、または少なくとも炉の線束が回路において核反応を維持することができない位置に配置される。液体タンクは、液体の回路を排出するため(終了シナリオ)、および/または回路を液体で満たすため(起動シナリオ)に用いることができる。液体タンクは液体貯蔵用に適合させることができ、塩の調節という目的のために温度制御能力を有する。液体タンクは除去および交換することができる。除去可能で交換可能な液体タンクを有することにより、回路に新たな溶融塩組成物を導入すること、または他の場所で溶融塩の精製または変更を管理することが可能になる。あるいは、除去および交換することができる輸送タンクまたはコンテナに個別のタンクを排出することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、回路は、たとえば熱膨張による圧力変動および塩量変化を処理する膨張容器のような他の構成要素をさらに含むことができる。回路は、回路内において液体を輸送するためのポンプと、回路内において流体を加熱する、または熱を回路内における流体から、その熱をエネルギー生成ユニットへ輸送するために用いられる二次媒体へ除去する熱交換器と、をさらに含むことができる。回路は、たとえば不純物、不要な副産物、中性子吸収活性化または核分裂生成物、または腐食もしくは堆積によるシステム劣化を助長する塩において生成される元素の除去のための化学処理のための手段をさらに含む、またはこれに接続することができる。材料抽出に伴う潜在的な不拡散の問題は、設計によって管理すべきあり、そうすることができる。回路は、親物質、核分裂性物質、核分裂生成物、中性子活性化のための原料、および中性子活性化材料、および溶融塩のような液体の1つまたは複数を追加および/または除去するための手段をさらに含む、またはこれに接続することができる。
【0071】
一実施形態において、液体タンクは複数の液体タンクである。回路内におけるおよび/またはチャネル内における核物質の量は臨界量より少なくすることができる(すなわち回路のチャネルは未臨界の量の核物質を収容する)。この実施形態において、好ましくは、チャネルは臨界量の核物質を収容せず、すなわちチャネルは未臨界である。したがっていくつかの実施形態において、1つの液体タンクが回路に収容された液体の一部、したがって未臨界量の核燃料のみを収容することができるように、複数の液体タンクを設けることができる。
【0072】
液体タンクは構造から除去して輸送コンテナに入れ、塩浄化、塩組成最適化、または廃棄物の貯蔵および処分のための調節を含む、他の塩処理目的のための場所に液体を移動させることができる。
【0073】
本発明による原子炉回路内における(したがって炉内における)液体は、好ましくは232Th、238Pu、238U、240Pu、242Puおよび他のアクチニド同位体の1つまたは複数の中から選択される親物質を含有することができる。
【0074】
本発明による原子炉回路内における(したがって炉内における)液体は、好ましくは233U、235U、239Pu、241Puおよび他のアクチニド同位体の1つまたは複数の中から選択される核分裂性物質を含有することができる。
【0075】
この点において、親物質という用語は、中性子変換および後続の核崩壊によって核分裂性物質に変換することができる物質である。この点において、核分裂性物質という用語は、中性子照射によって核分裂を受けるように作製され(すなわち、核分裂可能であり)る物質であって、正しい設定において核反応を持続させることができる中性子をこのような核分裂から製造することもできる、物質である。中性子の吸収による親物質の核分裂性物質への変換のプロセスは、燃料増殖と呼ばれる。
【0076】
本発明による原子炉回路内における(したがって炉内における)液体は、好ましくは233U、235U、239Pu、241Puおよび他のアクチニド同位体の1つまたは複数の中から選択される核分裂性物質を含有することができる。
【0077】
本発明による原子炉回路内における(したがって炉内における)液体は、たとえば核廃棄物の寿命短縮という目的のために、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウムおよび他のアクチニドからの同位体のような核廃棄物から抽出される長寿命同位体を含有することができる。
【0078】
本発明による原子炉回路内における(したがって炉内における)液体は、とりわけ、176Yb(177Luを生成する)、160Gd(161Tbを生成する)のような濃縮安定同位体から、235U/233U/239Pu(核分裂によって99Mo、90Srおよび131Iを生成する)、237Np(238Puを生成する)および226Ra(227Ac、228Th、229Th、225Acなどを生成する)のような選択された半安定または不安定同位体まで異なる、医学的または工業的用途を有する活性化または核分裂生成物を生成するように特に意図された同位体を含有することができる。
【0079】
本発明による原子炉回路内における液体は溶融塩とすることができる。好ましい一実施形態において、溶融塩は、フッ化物および/または塩化物から選択され、好ましくは、LiF、NaF、KF、RbF、BeF、ZrF、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、BeCl、ZrClおよびこれらの混合物の1つまたは複数である。
【0080】
本発明のチャネルは、回路内における溶融塩による腐食に十分に耐えることができる材料から作製され、中性子束および放射線による劣化を最小化しながら、中性子吸収を最小化して中性子の経済性の最適化を可能にする。溶融塩の腐食作用に対して高い耐性を有する材料は、放射線による損傷に比較的よく耐えることができ、低い中性子吸収度を有する。適切な材料は、モリブデン合金、グラファイト、シリコンおよび他の炭化物とすることができる。
【0081】
本発明のチャネルは、その最も簡単な形態で単一のチューブ(パイプ)またはチャネルである。一実施形態において、チャネル(4)は、頂部でまたは底部で互いに接続されている上昇チューブ(4a)および下降チューブ(4b)を含む。これは、頂部でまたは底部で、好ましくは頂部で曲がっているU形状チューブ(単一パイプ)として想定することもできる。
【0082】
したがって、好ましくは、チャネルはU形状チューブであり、供給ラインおよび出口ラインはそれぞれ、チャネルの下端またはその近くで(下半分に)独立して配置される(図3A)。
【0083】
一実施形態において、チャネルはパイプインパイプである(図3B)。パイプインパイプ(二重パイプ、二方向)は、外側チューブ(15)の内側に配置された内側チューブ(14)を含み、内側チューブは、外側チューブの内径より小さな外径を有し、内側チューブの一端(好ましくは底端)は供給ラインに接続され、外側チューブの一端(好ましくは底端)は出口ラインに接続され、外側チューブは、(好ましくは頂部で)出口ラインに接続された端部から遠位に閉じた端部を有し、または
内側チューブの一端は出口ラインに接続され、外側チューブの一端は供給ラインに接続され、外側チューブは、供給ラインに接続された端部から遠位に閉じた端部を有し、内側チューブの他端は開口を有し、外側チューブの閉じた頂部の近くに配置され、外側チューブ内の内側チューブの長さは外側チューブより短い。これにより、液体流が逆方向になるセクションが作り出される。
【0084】
チャネルのさらなる実施形態において、内側またはライザーチューブは、戻りまたは外側チューブに対して同軸に配置され、逆もまた同様である。
【0085】
他の一実施形態において、チャネルは、液体が上(または下)に流れる1つのチューブと、液体が下(または上)に流れる複数のチューブと、を含むことができる。これを収容するためにチューブを異なる直径にすることができる。この点において図3Cを参照されたい。
【0086】
さらに他の一実施形態において、チャネルは中実のブロックまたはシリンダとして設けることができ、このブロックまたはシリンダを通してチャネルが設けられて、統合された上昇流、流れ反転および下降流を収容する(図3C)。ブロック設計は最適な燃料分配のために最適化することができ、減速要素を収容することもでき、かつ/またはそれ自体が減速材料で構成される。
【0087】
チャネルは上昇および下降流を収容することが好ましく、流れ方向反転セクションは、それが回路の残り、好ましくは下端に接続されている終了場所でチャネル全体を切り離すことを可能にし得るため重要である。同じことがチャネルを包囲する格納容器に当てはまり、これも同じ端部、好ましくは下端で接続されて、格納容器を切り離し、炉の格納容器の上部中性子反射体および/または放射線シールドを通して原子炉から格納容器を鉛直に移動させることによって交換することができる筐体を形成することができる。
【0088】
チャネルを収容するループを含む原子炉回路は、熱交換器、ポンプ、本質的に本明細書の他の場所で説明したような化学処理手段のような他の要素および/または機能性を収容して、またはそれらに接続されて、個別の独立した回路を形成することができる。
【0089】
他の一態様における本発明は、コア領域およびシェル領域を含む原子炉に関し、炉は複数の別個の個別の原子炉回路またはモジュールで構成され、各回路は、
ループ(3)を含み、ループ(3)は、核燃料として親および/または核分裂性物質を含み、任意選択で循環させる液体を収容することができ、
ループは、ループの一部でありかつ実質的な鉛直配置に配置されている、好ましくは実質的にまっすぐなチャネル(4)を含み、チャネルは、ループ内における液体のための上昇および下降通路(4a、4b)を提供し、複数の回路のチャネルのそれぞれがコア領域に配置され、各回路が原子炉から独立して除去可能である。
【0090】
このように、原子炉はコア領域(1)およびシェル領域(2)を含む。コア領域はシェル領域によって囲まれている。シェル領域は、中性子活性化によって材料および同位体を生成する中性子反射体、放射線シールドまたは中性子吸収ブランケットとしての機能性、またはこれらの機能性の組み合わせを有することができる。シェルのブランケット機能性は、中性子活性化のための標的物質を収容するシェルに対して流体を供給および回収する回路によって達成することができる。原子炉において複数の原子炉回路が設けられている。チャネルは、炉の臨界ゾーンに配置された回路の一部であり、すなわち中性子束を受ける。
【0091】
原子炉は、一群(複数)の個別の原子炉回路から構成されている。回路は別個の回路またはモジュールであり、他のモジュールと干渉することなく炉から除去可能である。回路のチャネルは互いの近傍に配置されている。複数の回路は、円形、長方形または他の構成のような、炉を形成する構成に配置することができる。円形構成が好ましい。回路のチャネルは、回路を構成する他の要素より互いに小さな距離で(すなわち互いにより近接して)配置することができる。効果的な視覚化は、上面図においてパイ形状を有する炉で、個別の回路がパイの断片を形成し、それぞれがパイの中心に向かって回路のチャネルを備えているものである。これにより、回路の他の要素が炉の臨界ゾーンの外側またはここからより離れて効果的に配置される。回路は複数のチャネルを含むことができる。円形構成であれば、チャネルは他の要素より炉の中心から小さな半径にある。チャネルは一緒になって臨界ゾーンを形成し、炉心になる。いくつかの実施形態において、チャネルを複数の円に配置して、臨界ゾーンを形成することができる。チャネル(9)の他の円が臨界ゾーンを囲むことができる。臨界ゾーンは、中性子反射体、中性子減速材、放射線シールディングまたはブランケット機能性を提供することができるシェル領域によって囲まれている。ブランケット機能性は、臨界ゾーンを囲むシェル領域に配置されているチャネル(9)にブランケット標的物質を提供する追加の回路によって達成することができる。ブランケットを用いて親物質から核分裂性物質を生成すること(増殖)、またはさまざまな目的のために同位体を作製することができる。ブランケット機能性は、コアにおいて用いられるチャネル(4)と同じまたは異なる形状(断面)を有するチャネルによって提供することができる。回路のチャネルは、シェル内において、コア内において(4)とコアの外側(9)との両方とも、円形である(図1に示すように)形状(断面)を有することができるが、独立して、卵形および/または楕円形とすることもできる。シェル領域におけるチャネルは、炉の臨界ゾーンから中性子を吸収するように意図することができ、その目的に応じて、その機能に専用で最適化されたコア回路チャネルとは非常に異なる構成を有することができる。チャネルはそれぞれ独立して、シェル領域において中性子束によって活性化されるべき親および/もしくは核分裂性物質または他の標的物質を含むことができる液体を収容することができる。
【0092】
炉のコアを適切に臨界状態にするため、選択されたまたはすべての回路が、炉の臨界ゾーンに未臨界量の核燃料を個別に提供することができる。コアにおける組み合わされたチャネル(ならびにチャネルにおけるおよび/またはチャネル間における任意選択の減速材料)が次いで、炉のコアにおいて臨界が達成されるように十分な臨界質量および減速を提供する。臨界は強く温度に依存し、温度が上昇する場合およびその逆の場合にチャネル内における核分裂物質密度が減少することにつながり、したがって核分裂反応に安全制御が受動的に追加される。核分裂反応をさらに制御または停止するため、チャネル間またはその近くにおける、チャネル間に存在すれば減速材における、またはシェル領域における移動によってコア領域から制御棒が中性子吸収材料を導入または除去することができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、コアは、2以上、4以上、6以上、10以上または25以上、好ましくは6と20との間のチャネルを含む。いくつかの実施形態において、炉は、2以上、4以上、6以上、8以上または10以上の回路を含む。
【0094】
典型的な一実施形態において、炉は、ループを含む複数の個別の回路に基づいており、これらは円形配置に配置することができ、各回路の一部が小さな半径で配置され(「チャネル」または「ホットレグ」)、核反応を持続させる臨界構成(「臨界ゾーン」)を作り出し、回路の残り(他の要素、機能性)は、主に臨界ゾーンの放射線場の外側に、非臨界構成において、より大きな距離または半径で配置される。
【0095】
チャネルは別個の分離可能な構成要素であり、これは切り離し、除去および交換することができる。チャネル格納容器(29)は別個の構成要素であり、これは切り離し、除去および交換することができる。チャネル格納容器は複数の包囲格納容器を含むことができる。チャネル格納容器とチャネルとの間において、断熱を提供することができ、核分裂生成物または他の塩(揮発性)成分を監視して漏れを検出することができ、チャネル格納容器とチャネルとの間のスペースに熱いガスを押し流すことによってチャネル(予)加熱に採用することもできる不活性ガスが存在することができる。チャネルおよび/または格納容器は、個別に切り離し、除去および交換することができる個別の構成要素である。チャネルは、1つまたは複数の個別の格納容器によって(部分的に)包むことができる。あるいは、回路全体を交換のためにコア領域から除去することもできる。
【0096】
複数の回路の、好ましくは格納容器を備えたチャネルのそれぞれが、コア領域に配置される。いくつかの実施形態において、コア領域は減速材(10)を収容することができる。減速材(10)は、チャネル間においてまたはこれらを囲んで配置することができる。このように、チャネル(および減速材)は一緒になって炉のコアの臨界ゾーンを形成する。適切な減速材は、炭素ベースの材料を含む、中性子吸収度が低い任意の低原子量固体材料とすることができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、減速材なしの原子炉、高速中性子スペクトルを提供する、いわゆる高速炉を提供することが可能である。これらのタイプの炉は、材料の急速な劣化のようないくつかの技術的問題を有するが、本発明の回路を用いるコンセプトであれば、回路からのチャネルおよびチャネル格納容器のような回路を形成する一次材料、または回路全体の比較的迅速かつ容易な交換が可能になる。
【0098】
より多くの熱外スペクトル(トリウムサイクルのような、高速中性子より熱的)、または熱スペクトルを必要とする多くの用途において、炉に減速材を含めることが好ましい。
【0099】
減速は、チャネルおよびチャネル格納容器の材料選択によって、ならびに回路チャネル間において減速材料を追加することによってさらに追加することができ、また、回路において非減速材料を採用し、回路チャネル間におけるスペースを非減速媒体または材料で埋めることによって最小化することができる。
【0100】
この点における臨界とは原子炉の通常の運転状態を指し、核燃料は核分裂反応を持続させる。各核分裂事象が十分な数の中性子を放出して進行中の一連の核分裂反応を持続させるときに炉が臨界を達成する(そして臨界になると言われる)。
【0101】
炉のチャネルは、チャネルのそれぞれ(およびその中の液体)が同様の中性子束および中性子スペクトルを経験するような方法で配置することができる。あるいは、臨界ゾーンは、臨界ゾーン内における各チャネルが異なる線束および/または異なる中性子スペクトルを経験することができるように配置することができる。このような配置は、特定の臨界ゾーン、たとえば、中性子活性化によって、または中性子/中性子吸収を用いて親元素を核分裂性元素に変換することによって、特定の同位体の生成に専念する回路の一部であるチャネルが配置されているゾーンに特定の中性子束が必要とされる場合に有用であり得る。
【0102】
従来の原子炉とは対照的に、炉内におけるすべての回路に干渉してコア全体を非臨界の状態にすることが要求される代わりに、回路の1つまたは複数に干渉することによって、臨界およびしたがって核分裂連鎖反応をすでに適切に停止または下方制御することができる。このようにすべての回路を「オフライン」にまたは下方制御する必要がない。これは、メンテナンスおよび安全性の観点から非常に便利である。例示のため、コアについて臨界が達成されるようにそれぞれが核物質の臨界量の10%をコアに寄与する10の回路を含む炉を考える。緊急の場合、1つの回路のみをオフラインにする(その内容物を液体タンク内へ排出する)必要があり、炉全体が非臨界になるが、他の9の回路は影響を受けない。
【0103】
さらなる一態様において、本発明は、本発明の複数の個別の原子炉回路を含む原子炉を動作させる方法を提供する。この方法は、複数の原子炉回路を含む原子炉が提供することができる柔軟性を利用している。
【0104】
この方法は、中性子束によって活性化されるべき親物質および/または核分裂性物質および/または他の物質を含有する複数の核燃料または標的物質を提供すること、ならびに複数の核燃料および/または標的物質を複数の回路に提供することをさらに含む。この方法は、親および/または核分裂性物質を含有する複数の核燃料を回路に、好ましくは回路のそれぞれに提供することをさらに含む。回路のチャネルにおける核燃料は臨界構成になる。
【0105】
回路のチャネルによって臨界炉心が形成され、炉心領域において適切な量で適切な構成で核分裂性物質を導入することができる。炉のスペクトルは、塩、チャネル材料、格納容器材料、および/または回路チャネル間またはその周りにおける専用減速材によって減速することができる。
【0106】
減速は、高速中性子スペクトル炉心(最小化された減速)もしくは熱(外)中性子スペクトル炉心のいずれかの所望の中性子スペクトル、または異なる場所における異なる回路において核分裂、増殖または活性化を最適化するためのコア領域における別個のセクションにおける異なる専用の中性子スペクトルに調整することができる。
【0107】
モジュラーコア炉システムにより、個別の回路を増殖から増殖燃焼機能へ、そして燃焼から増殖機能へと、段階的に変更することも可能になる。回路の大部分が、たとえば235Uの核分裂(「燃焼」)によってコア領域において核分裂反応を持続させるのに十分な臨界を供給する場合、回路において増殖と燃焼との平衡が確立されるまで、たとえば親の232Thから核分裂性の233Uを変換/変更する(「増殖」)ために1つまたは複数の回路がコアにおける核分裂反応から過剰な中性子を用いる可能性があり、この場合、核分裂反応によって消費されるのと同じ量の233Uが232Thから生成される。炉および回路の中性子の経済性は、中性子の多すぎる損失を回避するように十分に最適化する必要がある。以前は主に燃焼に採用されていた回路を、塩を変更すること、または塩にトリウムを追加することによって、通常の燃焼機能から増殖機能へ次いで変更することができる。時間が経てば、この回路は次いで増殖から増殖燃焼回路に変化し、最終的に増殖と燃焼との平衡を達成することになる。このように原子炉は、232Thが233U燃料に変換される閉鎖トリウムサイクルでの運転に向かって段階的に変換され、核分裂反応を持続させるために核分裂性物質を原子炉回路に追加することが全くまたはほとんど要求されない。
【0108】
本発明は、プルトニウム核分裂によって最終的に臨界炉ゾーンにおける核分裂反応を持続させることができ、親の238Uを適切な量で核分裂性の239Puに変換するために過剰な中性子が用いられる、ウランプルトニウムサイクルを閉じるための方法を提供することができる。
【0109】
本発明は、核廃棄物から回収された長寿命同位体を燃焼させて核廃棄物の寿命を短縮するために用いることができる方法を提供することができる。この場合、炉は臨界であるが、臨界ゾーン/コア領域またはシェル領域のいずれかにおける1つまたは複数の回路が、核廃棄物から抽出されたこれらの長寿命同位体を短寿命から中寿命の同位体および核分裂生成物に変換するかつ/または核分裂させることができる特定の塩組成を有する。
【0110】
本発明は、特定の元素の中性子活性化によって特定の同位体を製造するための方法を提供することができる。この場合、炉は臨界であるが、臨界ゾーン/コア領域またはシェル領域のいずれかにおける1つまたは複数の回路が、これらの標的物質が含まれる特定の塩組成を有し、見越される用途のために用いられるべき回路から所望の活性化生成物が抽出される。
【0111】
本発明の(閉鎖)核燃料サイクルの観点からのアプローチの利点は、回路においてと炉においてとの両方で、以下の組み合わせであり、すなわち、
・溶融塩の採用、これによりオンラインでの塩の洗浄および調節が可能になり、中性子吸収核分裂または活性化生成物の除去により、中性子吸収損失を最小化することによって中性子の経済性が最適化される。材料抽出に伴う潜在的な不拡散の問題を設計によって管理すべきであり、することができる。
・臨界ゾーンを一緒に形成する回路の個別のチャネルの採用、これにより原則として各回路が異なる塩混合物と親および核分裂性物質の内容物とを収容することが可能になり、これは塩の調整または交換によって変更することができる。
【0112】
従来の炉システムは、ほとんどが固体燃料タイプで動作し、核分裂生成物は燃料に含まれ、別個の場所での精巧な固体燃料再処理によってのみ除去することができるため、これらの除去によって活性化および核分裂生成物の中性子吸収を最小化する可能性を有さず、コア内容物を都合よく(部分的に)変更、最適化または調整する柔軟性を有さない。本発明の回路および炉により、核分裂生成物の除去が可能になる。
【0113】
従来の溶融塩炉システムはほとんどが1つの塩量で動作し、これにより段階的な塩組成調整が複雑になるが、これはこの変更が塩量全体に影響し、塩が非最適化および非局所化増殖および燃焼機能を有するためである。本発明の炉および回路により、さまざまな塩での動作が可能になり、比較的容易かつ便利な段階的な塩組成調整が可能になる。
【0114】
他の溶融塩炉設計と比較したモジュラーコア炉システムの上の利点は、交換が困難で溶融塩炉環境において急速に劣化する、大きな構成要素のような大きな塩量を取り扱うこと、燃料がどこに配置されているかの洞察が限定されていること、小スケールの試験をフルスケールの運転に容易に推定することができない、問題のある認定および認可ルート、および最適化された構成要素の交換によって炉の性能を最適化する柔軟性が限定されていることという欠点の上をいくものであり、これらのすべてが本発明のモジュラーコア炉システムを採用することによって回避される。
【0115】
個別の原子炉回路で構成される原子炉では、原子炉回路に関連して説明してきた要素および実施形態が原子炉の要素および実施形態も形成し、原子炉回路の一部であるまたはこれに関連する原子炉の要素および実施形態が原子炉回路の要素および実施形態でもあることが明らかであろう。
【0116】
本発明はさらに、原子炉回路を提供すること、回路のチャネルの臨界ゾーンが他の炉の放射線束に曝露されるように他の(試験)原子炉のコアの近くに原子炉回路のチャネルを配置することによって、本明細書の他の場所で説明したような原子炉回路を動作させる方法に関する。この方法は、回路に液体を提供すること、回路を通して液体を循環させること、およびチャネル内において試験原子炉の線束に液体をさらすことをさらに詳述する。この方法は、回路(の要素)および/または液体(これは溶融塩とすることができ、核分裂性および/または親物質または他の化学要素を含むことができる)の性能を監視することをさらに含む。この方法は、核分裂性および/または親物質を含有する核燃料を提供することをさらに含むことができる。核燃料は回路に提供することができる。核燃料は回路において循環することができ、好ましくは臨界ゾーンにおいて、他の炉の放射線束にさらすことができる。
【0117】
原子炉回路、および特に回路のチャネルを別の原子炉の中性子束内に配置することによって、セットアップ、回路が構成されている材料、および/または核燃料における液体(溶融塩)および/または親および核分裂性物質を、組み合わせてまたは単独で、試験および認定することができる。たとえば、一実施形態において、この方法は、本明細書の他の場所で説明したような回路を提供すること、液体(好ましくは溶融塩)を提供すること、ならびに回路および液体を既存の原子炉の線束に曝露して、回路の材料の挙動、液体、および回路の性能を全体として監視、試験および実験することを含むことができる。このように得られたデータは、回路自体、回路において用いられる液体の組成を改善することに、そして、最終的に、本発明の原子炉のさらなる設計および最適化に有用である。
【0118】
したがって本発明のいくつかの実施形態において、回路(の構成要素)についてのパラメータは、とりわけ、溶融塩との接触、高温および(中性子)放射のような、溶融塩炉条件下での劣化メカニズムに曝露される材料の挙動、通常、耐食性、強度、脆化、クリープ、破壊靭性、熱膨張、熱伝導性などの挙動の側面である。
【0119】
したがって本発明のいくつかの実施形態において、液体の性能についてのパラメータは、とりわけ、化学組成、核分裂生成物の溶解または堆積、活性化生成物の挙動、放射線下での劣化/分解、塩中の元素の凝固、熱的および電気的伝導性、腐食性、蛍光/塩化物の可能性、粘度である。
【0120】
したがって本発明のいくつかの実施形態において、核燃料についてのパラメータは、とりわけ、溶融塩中での溶解、堆積の可能性、塩中の他の元素との凝固である。
【0121】
したがって本発明のいくつかの実施形態において、回路の性能についてのパラメータは、とりわけ、熱生成、動作の安全性、熱生成および熱輸送効率、回路構成要素の試験および認定である。
【0122】
このように回路を動作させることによって、本明細書の他の場所で議論することになる多数の用途、たとえば、親物質からの核分裂性物質の、中性子活性化による特定の同位体の生成などに本発明の回路を用いることも可能である。
【0123】
特定の一実施形態において、この方法は、たとえば医療、診断、または画像化の用途のための同位体生成のステップをさらに含むことができる。この実施形態は、回路に特定の元素を提供するステップと、炉の中性子束にこれらの元素をさらすステップと、これらの元素を他の元素に変換し、結果の元素を液体から隔離するステップと、を含む。この隔離はオンラインでもオフラインでもできる(すなわち液体を回路から除去して、他の場所で隔離を実行することができる)。同様の方法で、たとえば医療、診断、または画像化の用途のために、核分裂反応が起こる回路から核分裂生成物を回収することができる。
【0124】
本発明の回路および本発明の回路を含む原子炉の設計は、以下のようないくつかの利点を有するが、これらに限定されない。すなわち、
・改良された回路および回路チャネル設計と回路を交換することによって交換戦略および炉の性能の最適化を可能にする。
・複数の炉の回路が一緒に炉の臨界ゾーンを形成する。臨界ゾーンにおける臨界質量はしたがって、個別の格納容器に分割される。回路が空になった場合、臨界ゾーンにおける臨界質量が効果的に減少し、これによって核反応が減少または停止する。
・個別のチャネル(または回路)が、異なる親、核分裂性または他の物質を備えた異なる塩組成を収容することができる。
・炉のコア構成は、性能を最適化するため、個別の回路チャネルが臨界ゾーンにおける異なる場所に配置されて、核分裂、増殖および中性子活性化のような異なる目的に役立つように選択することができる。
・コア構成は、個別の回路チャネルが臨界ゾーンにおける異なる場所に配置されて中性子束スペクトル束および分布を生成し、炉における各場所で各チャネルについて性能を最適化するように選択することができる。
・チャネル内における塩を他の塩組成物によって交換して、炉の臨界ゾーンまたはシェルゾーンにおいてチャネルの目的を変更することができる。
・多くの比較的小さな構成要素の製造は、いくつかの非常に大きな構成要素の製造より費用効果があり得る。数による経済性は規模の経済性を上回ることができる。
・比較的小さな構成要素により、代表的な規模での便利な試験が可能になり、これにより構成要素のコストおよび期間と炉の開発および認定とが容易になり削減される。
・他の(熱)溶融塩炉の設計とは異なり、グラファイトのような特定の減速材料を、核燃料入り塩と直接接触させる代わりに、チャネルの外側およびそれらの間に配置することができる。減速機能はしたがって、溶融塩流案内または封じ込め機能から分離することができる。これは、非常に適切な減速材であるが、原子炉環境において非常に複雑な挙動を示すグラファイトにとって特に好都合である。メンテナンスおよび寿命延長対策として、チャネル周辺の別個の減速材を温度上昇させて、動作サイクル中またはサイクル間のいずれかに、照射損傷をアニールすることができ、これによって元の材料特性を復元することができる。グラファイトではこれは非常に効果的であり、炉の寿命中に減速材料の交換がもはや要求されない程度まで(繰り返し)アニーリングすることによって減速材の適切な特性を確保することができる。
【0125】
チャネル間における減速材からチャネル内における塩を物理的に分離することにより、チャネルおよび塩の温度からほぼ独立して、減速材の熱的最適化も可能になる。たとえば、塩またはチャネル温度以外の温度に減速材料を持って行き、これを維持して、動作中の照射損傷の影響を最小化し、寿命を最大化することができる。グラファイト減速材であればたとえば、通常の塩温度より冷たい温度に保つことができ、これによって照射損傷の影響が減少し、寿命が最大化される。
【0126】
モジュラーコア炉は、別個の、個別の独立した炉回路のアセンブリによって形成されるため、システムおよび各個別の回路は、低圧下で動作する比較的小さな構成要素で構成される。小さな構成要素から構築されているシステムによりたとえば、回路からチャネルを切り離すこと、そしてそれを回路からシールドコンテナ内へ除去して、調節、廃棄、または、該当すればリサイクルのための場所へ輸送することが可能になる。その後、新たなチャネル(または他の要素)を導入することができる。これはたとえば、炉の頂部の放射線シールドを通して鉛直に行うこともできる。同じアプローチを、回路の、または回路全体の他の部分および構成要素に採用することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 コア領域
2 シェル領域
3 ループ
4 チャネル
4a 上昇チャネル
4b 下降チャネル
5 液体タンク
6 供給ライン
7 出口ライン
8 戻りライン
9 シェルチャネル
10 減速材または非減速媒体
11 液体タンクへの能動または受動バルブ
12 上昇チューブ
13 下降チューブ
14 内側チューブ
15 外側チューブ
16 膨張タンク
17 熱交換器
18 ポンプ
19 処理
20 材料供給部
21 二次熱システム
22 核分裂および活性化生成物
23 核分裂および活性化生成物
24 親、核分裂性および標的物質
25 シールド
26 臨界ゾーン
27 単一の上昇チューブ
28 複数の下降チューブ
29 チャネル格納容器
30 チャネル格納容器とループの接続部
31 チャネルおよびチャネル格納容器を除去/交換するための中性子反射体および/または放射線シールドを通る通路
32 液体タンクの除去/交換のための中性子反射体および/または放射線シールドを通る通路
図1
図1A
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
【国際調査報告】