(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な混合物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/10 20060101AFI20220629BHJP
C09D 5/18 20060101ALI20220629BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220629BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20220629BHJP
C09D 171/08 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C09D201/10
C09D5/18
C09D175/04
C09D163/00
C09D171/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512483
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 GB2020051039
(87)【国際公開番号】W WO2020225531
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521480824
【氏名又は名称】アドバンスド インナージー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン ローラ ルイーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ サイモン
(72)【発明者】
【氏名】シェパード サイモン ハリー
(72)【発明者】
【氏名】ナイク アニル
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038DF001
4J038DG321
4J038GA09
4J038GA14
4J038GA15
4J038HA026
4J038JC37
4J038KA03
4J038KA06
4J038LA06
4J038MA05
4J038NA03
4J038NA15
4J038PB05
4J038PB07
(57)【要約】
膨張性耐火コーティング材を提供する、硬化可能な混合物。混合物は、シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な混合物であって、前記混合物は、シラン末端ポリマー、前記シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む、混合物。
【請求項2】
シラン末端ポリマーとエポキシ樹脂の割合が、0.75~0.25:0.25~0.75である、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
シラン末端ポリマーとエポキシ樹脂の割合が、0.6~0.4:0.4~0.6である、請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項4】
シラン末端ポリマーとエポキシ樹脂の割合が、1:1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
膨張性耐火コーティング材を提供するために前記硬化可能な混合物が、二液性混合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
前記二液性混合物の第1の部分が、前記エポキシ樹脂及び前記膨張性耐火パッケージを含み、前記二液性混合物の第2の部分が、前記シラン末端ポリマー、前記シラン末端ポリマーを硬化させるための前記架橋剤、及び前記エポキシ樹脂を硬化させるための前記架橋剤を含む、請求項5に記載の混合物。
【請求項7】
前記シラン末端ポリマーが、シラン末端ポリエーテル又はシラン末端ポリウレタンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項8】
前記混合物が、10~30重量%の前記シラン末端ポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
前記混合物が、14~20重量%の前記シラン末端ポリマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項10】
前記混合物が、1~3重量%の前記シラン末端ポリマーを硬化させるための前記架橋剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項11】
前記混合物が、1.4~2重量%の前記シラン末端ポリマーを硬化させるための前記架橋剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項12】
前記混合物が、6~25重量%の前記エポキシ樹脂を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項13】
前記混合物が、12~17重量%の前記エポキシ樹脂を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項14】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、又はビスフェノールAエポキシ樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との組み合わせを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項15】
前記混合物が、5~15重量%の前記ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、又はビスフェノールAエポキシ樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との組み合わせを含む、請求項14に記載の混合物。
【請求項16】
前記混合物が、9~12重量%の前記ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、又はビスフェノールAエポキシ樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との組み合わせを含む、請求項14又は15に記載の混合物。
【請求項17】
前記エポキシ樹脂が、エポキシ官能化反応性希釈剤を更に含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項18】
前記混合物が、1~10重量%の前記エポキシ官能化反応性希釈剤を含む、請求項17に記載の混合物。
【請求項19】
前記混合物が、3~5重量%の前記エポキシ官能化反応性希釈剤を含む、請求項17又は18に記載の混合物。
【請求項20】
前記混合物が、45~75重量%の前記膨張性耐火パッケージを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項21】
前記混合物が、50~65重量%の前記膨張性耐火パッケージを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項22】
前記膨張性耐火パッケージが、リン含有化合物、ガス源、及び炭素源を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項23】
前記混合物が、25~65重量%の前記リン含有化合物を含む、請求項22に記載の混合物。
【請求項24】
前記混合物が、30~45重量%の前記リン含有化合物を含む、請求項22又は23に記載の混合物。
【請求項25】
前記混合物が、5~30重量%の前記ガス源を含む、請求項22~24のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項26】
前記混合物が、10~20重量%の前記ガス源を含む、請求項22~25のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項27】
前記混合物が、0.1~15重量%の前記炭素源を含む、請求項22~26のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項28】
前記混合物が、1~5重量%の前記炭素源を含む、請求項22~27のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項29】
前記膨張性耐火パッケージが、赤外線遮断剤を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項30】
前記混合物が、1~15重量%の前記赤外線遮断剤を含む、請求項29に記載の混合物。
【請求項31】
前記混合物が、1.5~5重量%の前記赤外線遮断剤を含む、請求項29又は30に記載の混合物。
【請求項32】
前記混合物が強化繊維を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項33】
前記混合物が、1~6重量%の前記強化繊維を含む、請求項32に記載の混合物。
【請求項34】
前記混合物が、2~3重量%の前記強化繊維を含む、請求項32又は33に記載の混合物。
【請求項35】
前記混合物が強化繊維を含まない、請求項1~31のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項36】
前記混合物がレオロジー変性剤を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項37】
前記混合物が、0.1~4重量%の前記レオロジー変性剤を含む、請求項36に記載の混合物。
【請求項38】
前記混合物が、0.1~2重量%の前記レオロジー変性剤を含む、請求項36又は37に記載の混合物。
【請求項39】
前記混合物が水分スカベンジャーを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項40】
前記混合物が、0.01~4重量%の前記水分スカベンジャーを含む、請求項39に記載の混合物。
【請求項41】
前記混合物が、0.1~1重量%の前記水分スカベンジャーを含む、請求項39又は40に記載の混合物。
【請求項42】
前記混合物が反応性希釈剤を含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項43】
前記混合物が、0.1~5重量%の前記反応性希釈剤を含む、請求項42に記載の混合物。
【請求項44】
前記混合物が、0.1~1重量%の前記反応性希釈剤を含む、請求項42又は43に記載の混合物。
【請求項45】
前記混合物が溶媒を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項46】
前記混合物が、0.01~15重量%の前記溶媒を含む、請求項45に記載の混合物。
【請求項47】
前記混合物が、1~9重量%の前記溶媒を含む、請求項45又は46に記載の混合物。
【請求項48】
前記混合物が、湿潤助剤又は分散助剤を含む、請求項1~47のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項49】
前記混合物が、0.01~3重量%の前記湿潤助剤又は分散助剤を含む、請求項48に記載の混合物。
【請求項50】
前記混合物が、0.1~1.5重量%の前記湿潤助剤又は分散助剤を含む、請求項48又は49に記載の混合物。
【請求項51】
前記混合物がボロン含有化合物を含む、請求項1~50のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項52】
前記混合物が、1~10重量%の前記ボロン含有化合物を含む、請求項51に記載の混合物。
【請求項53】
前記混合物が、3~7重量%の前記ボロン含有化合物を含む、請求項51又は52に記載の混合物。
【請求項54】
シラン末端ポリマー、前記シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを混合することと、
膨張性耐火コーティング材を提供するために、前記混合物を硬化させることと、を含む方法。
【請求項55】
前記方法が、二液性混合物として前記混合物を提供することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記エポキシ樹脂及び前記膨張性耐火パッケージが、前記二液性混合物の第1の部分で提供され、前記シラン末端ポリマー、前記シラン末端ポリマーを硬化させるための前記架橋剤、及び前記エポキシ樹脂を硬化させるための前記架橋剤が、前記二液性混合物の第2の部分で提供され、前記方法は、前記第1の部分と前記第2の部分とを混合することと、膨張性耐火コーティング材を提供するために前記第1の部分と前記第2の部分との前記混合物を硬化させることとを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
シラン末端ポリマー、前記シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む混合物の前記硬化した反応生成物である、膨張性耐火コーティング材の物体。
【請求項58】
基材を保護するための膨張性耐火コーティングであって、前記膨張性耐火コーティングが膨張性耐火コーティング材を含み、前記膨張性耐火コーティング材が、シラン末端ポリマー、前記シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む混合物の前記硬化した反応生成物である、膨張性耐火コーティング。
【請求項59】
前記膨張性耐火コーティングが、複数の層の前記膨張性耐火コーティング材を含む、請求項58に記載の膨張性耐火コーティング。
【請求項60】
前記膨張性耐火コーティングがメッシュを含む、請求項58又は59に記載の膨張性耐火コーティング。
【請求項61】
請求項60に記載の膨張性耐火コーティングであって、請求項59に従属する場合、前記メッシュが前記膨張性耐火コーティング材のそれぞれの層の間に設けられる、膨張性耐火コーティング。
【請求項62】
保護基材であって、前記基材が膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングを含み、前記膨張性耐火コーティング材が、シラン末端ポリマー、前記シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む混合物の前記硬化した反応生成物である、保護基材。
【請求項63】
前記基材が非金属コーティングを含み、前記非金属コーティング上に前記膨張性耐火コーティングが施される、請求項62に記載の保護基材。
【請求項64】
前記非金属コーティングが耐食コーティングである、請求項63に記載の保護基材。
【請求項65】
膨張性耐火コーティング材を前記基材に塗布することを含む、基材を保護する方法であって、前記膨張性耐火コーティング材が、シラン末端ポリマー、前記シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む混合物の硬化した反応生成物である、基材を保護する方法。
【請求項66】
前記方法が、前記基材を前記混合物でコーティングすることと、前記膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングを提供するために、前記混合物を硬化させることとを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記方法が、前記膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングを提供するために、膨張性耐火コーティング材の物体を前記基材に適用することを含み、膨張性耐火コーティング材の前記物体が、前記混合物の前記硬化した反応生成物である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記方法が、前記基材に複数の層の前記膨張性耐火コーティング材を提供することを含む、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記方法が、前記膨張性耐火コーティング材のそれぞれの層の間にメッシュを設けることを含む、請求項68に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例は、膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な混合物、膨張性耐火コーティング材を提供する方法、膨張性耐火コーティング材、基材を保護するための膨張性耐火コーティング、膨張性耐火コーティングによって基材を保護するための方法、及び保護基材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、陸上又は海上の炭化水素設備における配管、バルブ、Iビーム、及び他の加工部品並びに構造部材などの基材の周囲には、膨張性耐火コーティングを施すことが必要とされることが多い。また、輸送、例えば、自動車部品及び車両の構造部材に使用される基材の周囲にも、膨張性耐火コーティングを施すことが必要とされている。
【0003】
膨張性耐火コーティングは、火災事象が起きた際に膨張して保護チャーを形成する。保護チャーは、基材を断熱する物理的障壁としての機能を果たし、それによって火災の影響を遅らせ、コーティングされた基材の温度上昇速度を低下させる。従って、これによって障害から基材が潜在的に保護されたり、又は障害の発生が遅れたりするため、例えば炭化水素設備からの従業員の避難や、又は車両の搭乗者の避難、及び/又は消火活動を可能にするような更なる時間がもたらされることになる。
【0004】
向上した特性を有する膨張性耐火コーティングを提供することが求められている。
【0005】
本明細書において言及される全ての比率は、全組成物の重量%として示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
必ずしも全てではないが、様々な本開示の例によれば、混合物がシラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む、膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な混合物が提供される。
【0007】
シラン末端ポリマーとエポキシ樹脂の割合は、0.75~0.25:0.25~0.75であってよく、0.6~0.4:0.4~0.6であってよく、1:1であってよい。
【0008】
膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な混合物は、二液性混合物であってよい。場合により、二液性混合物の第1の部分は、エポキシ樹脂及び膨張性耐火パッケージを含み、二液性混合物の第2の部分は、シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、及びエポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤を含む。
【0009】
シラン末端ポリマーは、シラン末端ポリエーテル又はシラン末端ポリウレタンを含んでもよい。混合物は、10~30重量%のシラン末端ポリマーを含んでもよく、好ましくは14~20重量%のシラン末端ポリマーを含んでもよい。
【0010】
シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤は、アミノシランなどの多官能性シランを含んでもよい。混合物は、1~3重量%のシラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤を含んでもよく、好ましくは1.4~2重量%のシラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤を含んでもよい。
【0011】
混合物は、6~25重量%のエポキシ樹脂を含んでもよく、好ましくは12~17重量%のエポキシ樹脂を含んでもよい。
【0012】
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、又はビスフェノールAエポキシ樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との組み合わせを含んでもよい。エポキシ樹脂は、エポキシ官能化反応性希釈剤、又は複数の異なるエポキシ官能化反応性希釈剤を更に含んでもよい。エポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、又はビスフェノールAエポキシ樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との組み合わせ、及びエポキシ官能化反応性希釈剤を含んでもよい。エポキシ樹脂は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、又はビスフェノールAエポキシ樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との組み合わせ、及び複数の異なるエポキシ官能化反応性希釈剤を含んでもよい。
【0013】
混合物は、5~15重量%のビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、又はビスフェノールAエポキシ樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との組み合わせを含んでもよい。好ましくは、混合物は、9~12重量%のビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、又はビスフェノールAエポキシ樹脂とビスフェノールFエポキシ樹脂との組み合わせを含んでもよい。混合物は、1~10重量%のエポキシ官能化反応性希釈剤又は複数の異なるエポキシ官能化反応性希釈剤を含んでもよく、好ましくは3~5重量%のエポキシ官能化反応性希釈剤又は複数の異なるエポキシ官能化反応性希釈剤を含んでもよい。
【0014】
エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤は、単量体アミン、重合体アミン、又は無水物硬化剤を含んでもよい。エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤は、イソホロンジアミンであってよい。混合物は、1.5~6重量%のエポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤を含んでもよく、好ましくは2~4重量%のエポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤を含んでもよい。
【0015】
混合物は、45~75重量%の膨張性耐火パッケージを含んでもよく、好ましくは50~65重量%の膨張性耐火パッケージを含んでもよい。
【0016】
膨張性耐火パッケージは、リン含有化合物、ガス源、及び炭素源を含んでもよい。膨張性耐火パッケージは、リン含有化合物及びガス源を含んでもよい。場合により、膨張性耐火パッケージは炭素源を含まない。膨張性耐火パッケージは、赤外線遮断剤を含んでもよい。場合により、本開示のいくつかの例では、膨張性耐火パッケージは、ホウ酸又はホウ酸塩を含まない。本開示の別の例では、膨張性耐火パッケージは、ホウ酸又はホウ酸塩を含んでもよい。
【0017】
混合物は、25~65重量%のリン含有化合物を含んでもよく、好ましくは30~45重量%のリン含有化合物を含んでもよい。リン含有化合物は、リン酸基、亜リン酸基、又はホスホン酸基を含有する難燃剤を含んでもよい。場合により、リン酸基を含む難燃剤は、ポリリン酸アンモニウム、リン酸トリフェニル、又はポリリン酸メラミンである。リン含有化合物は、ポリリン酸アンモニウムを含んでもよい。
【0018】
混合物は、5~30重量%のガス源を含んでもよく、好ましくは10~20重量%のガス源を含んでもよい。ガス源は、メラミン、イソシアヌル酸トリス-(2-ヒドロキシエチル)(THEIC)、又はホウ酸を含んでもよい。ガス源は、メラミンを含んでもよい。
【0019】
混合物は、0.1~15重量%の炭素源を含んでもよく、好ましくは1~5重量%の炭素源を含んでもよい。炭素源は、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールを含んでもよい。
【0020】
混合物は、1~15重量%の赤外線遮断剤を含んでもよく、好ましくは1.5~5重量%の赤外線遮断剤を含んでもよい。赤外線遮断剤は、二酸化チタンを含んでもよい。
【0021】
混合物は、強化繊維を含んでもよい。混合物は、1~6重量%の強化繊維を含んでもよく、好ましくは2~3重量%の強化繊維を含んでもよい。強化繊維は、玄武岩繊維、セラミック繊維、炭素繊維、鉱物繊維又はガラス繊維を含んでもよく、50μm~15mmの間の任意の長さであってよい。セラミック繊維は、エンフィルセラミック繊維又はラピナス繊維を含んでもよい。
【0022】
別の例では、混合物は、強化繊維を含まない。
【0023】
混合物は、レオロジー変性剤を含んでもよい。混合物は、0.1~4重量%のレオロジー変性剤を含んでもよく、好ましくは0.1~2重量%のレオロジー変性剤を含んでもよい。レオロジー変性剤は、有機粘土、ヒュームドシリカ、繊維、液体レオロジー添加剤、又は中空ガラス微小球を含んでもよい。有機粘土は、ガラマイトを含んでもよい。
【0024】
混合物は、水分スカベンジャーを含んでもよい。水分スカベンジャーは、モレキュラーシーブ又はビニルシランを含んでもよい。モレキュラーシーブは、合成ゼオライト又は天然ゼオライトであってよい。混合物は、0.01~4重量%の水分スカベンジャーを含んでもよく、好ましくは0.1~1重量%の水分スカベンジャーを含んでもよい。
【0025】
混合物は、反応性希釈剤を含んでもよい。反応性希釈剤は、植物油を含んでもよい。植物油は、ヒマシ油を含んでもよい。混合物は、0.1~5重量%の反応性希釈剤を含んでもよく、好ましくは0.1~1重量%の反応性希釈剤を含んでもよい。
【0026】
混合物は、溶媒を含んでもよい。溶媒は、キシレン、炭酸ジメチル、又はベンジルアルコールを含んでもよい。混合物は、0.01~15重量%の溶媒を含んでもよく、好ましくは1~9重量%の溶媒を含んでもよい。
【0027】
混合物は、湿潤助剤又は分散助剤を含んでもよい。湿潤助剤又は分散助剤は、オルガノシラン又はアルコキシシロキサンを含んでもよい。混合物は、0.01~3重量%の湿潤助剤又は分散助剤を含んでもよく、好ましくは0.1~1.5重量%の湿潤助剤又は分散助剤を含んでもよい。
【0028】
混合物は、ボロン含有化合物を含んでもよい。ボロン含有化合物は、ホウ酸亜鉛、ホウ酸、又は酸化ホウ素を含んでもよい。混合物は、1~10重量%のボロン含有化合物を含んでもよく、好ましくは3~7重量%のボロン含有化合物を含んでもよい。
【0029】
場合により、混合物は、可塑剤を含まない。
【0030】
必ずしも全てではないが、様々な本開示の例によれば、方法が提供され、方法は、
シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを混合することと、
膨張性耐火コーティング材を提供するために、混合物を硬化させることと、を含む。
【0031】
場合により、方法は、二液性混合物として混合物を提供することを含む。
【0032】
場合により、二液性混合物の第1の部分ではエポキシ樹脂及び膨張性耐火パッケージを提供し、二液性混合物の第2の部分ではシラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、及びエポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤を提供し、方法は、第1の部分と第2の部分とを混合することと、膨張性耐火コーティング材を提供するために第1の部分と第2の部分との混合物を硬化させることとを含む。
【0033】
混合物は、水分を含む大気に晒すことによって硬化させてもよい。混合物は、混合物中に既に存在する水分に晒すことによって硬化させてもよく、この水分は、膨張性耐火パッケージに既に存在していてもよい。混合物は、周囲温度、即ち5℃~50℃の間の任意の温度で硬化させてもよい。硬化時間を短縮するために、混合物を高温、即ち50℃超で硬化させてもよい。
【0034】
必ずしも全てではないが、様々な本開示の例によれば、膨張性耐火コーティング材が提供され、膨張性耐火コーティング材は、シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む混合物の硬化した反応生成物である。
【0035】
必ずしも全てではないが、様々な本開示の例によれば、膨張性耐火コーティング材の物体が提供され、膨張性耐火コーティング材の物体は、シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む混合物の硬化した反応生成物である。
【0036】
必ずしも全てではないが、様々な本開示の例によれば、基材を保護するための膨張性耐火コーティング、膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングが提供され、膨張性耐火コーティング材が、シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む混合物の硬化した反応生成物である。
【0037】
膨張性耐火コーティングは、複数の層の膨張性耐火コーティング材を含んでもよい。
【0038】
膨張性耐火コーティングは、メッシュを含んでもよい。膨張性耐火コーティング材のそれぞれの層の間に、メッシュを設けてもよい。メッシュは、ステンレス鋼、玄武岩、シリカ、炭素、又はガラス繊維を含んでもよい。
【0039】
或いは、膨張性耐火コーティングは、メッシュを含まなくてもよい。
【0040】
基材は、金属又は非金属であってよい。基材は非金属コーティングを含んでもよく、この非金属コーティング上に膨張性耐火コーティングが施される。非金属コーティングは、耐食コーティングであってよい。
【0041】
必ずしも全てではないが、様々な本開示の例によれば、基材を保護する方法が提供され、方法は、
膨張性耐火コーティング材を基材に塗布することであって、膨張性耐火コーティング材が、シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む混合物の硬化した反応生成物である、塗布することを含む。
【0042】
基材は、金属又は非金属であってよい。
【0043】
いくつかの例では、方法は、基材を混合物でコーティングすることと、膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングを提供するために、この混合物を硬化させることとを含んでもよい。
【0044】
膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な混合物を、基材上の非金属コーティングに塗布してもよい。非金属コーティングは、耐食コーティングであってよい。
【0045】
別の例では、方法は、膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングを提供するために、膨張性耐火コーティング材の物体を基材に適用することを含んでもよく、膨張性耐火コーティング材の物体は、混合物の硬化した反応生成物である。膨張性耐火コーティング材の物体は、膨張性耐火コーティング材のシートであってよい。
【0046】
膨張性耐火コーティング材の物体を、基材上の非金属コーティングに適用してもよい。非金属コーティングは、耐食コーティングであってよい。
【0047】
方法は、基材に複数の層の膨張性耐火コーティング材を提供することを含んでもよい。方法は、膨張性耐火コーティング材のそれぞれの層の間にメッシュを設けることを含んでもよい。メッシュは、ステンレス鋼、玄武岩、シリカ、炭素、又はガラス繊維を含んでもよい。
【0048】
方法は、膨張性耐火コーティングにトップシールを適用することを含んでもよい。トップシールにより、雨よけ及び/又は装飾性をもたらすことができる。
【0049】
必ずしも全てではないが、様々な本開示の例によれば、保護基材が提供され、基材は、膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングを含み、膨張性耐火コーティング材は、シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む混合物の硬化した反応生成物である。
【0050】
基材は、金属又は非金属であってよい。基材は非金属コーティングを含んでもよく、この非金属コーティング上に膨張性耐火コーティングが施される。非金属コーティングは、耐食コーティングであってよい。
【0051】
必ずしも全てではないが、様々な本開示の例によれば、添付の特許請求の範囲で請求されるような例を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
発明を実施するための形態を理解するのに有用な様々な例を、より良く理解するために、ここでは単なる例によって言及する。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本開示による混合物の例(E1~E4)を、比較例(C1)と共に下記表1に示す。
【0054】
【0055】
表1で例示したように、本開示の例は、膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な混合物を提供するものである。混合物は、シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを含む。膨張性耐火パッケージは、通常では膨張性耐火成分として知られていることもある。
【0056】
本開示のいくつかの例は、可塑剤を含まない。可塑剤は非反応性希釈剤である。
【0057】
本開示のいくつかの例では、膨張性耐火パッケージは、リン含有化合物、ガス源、及び炭素源を含む。膨張性耐火パッケージはまた、赤外線遮断剤を含んでもよい。いくつかの例では、膨張性耐火パッケージの炭素は、本ポリマー系の炭素分より提供することができる。
【0058】
例1(E1)、例3(E3)及び例4(E4)では、シラン末端ポリマーとエポキシ樹脂の割合は、1:1である。例2(E2)では、シラン末端ポリマーとエポキシ樹脂の割合は、0.6対0.4である。割合は重量%を基準にして算出する。従って、例2では、硬化性混合物は19.58重量%のシラン末端ポリマー及び13.04重量%のエポキシ樹脂を含み、その割合は0.6対0.4である。別の例では、シラン末端ポリマーとエポキシ樹脂の割合は、0.75~0.25対0.25~0.75であってよい。
【0059】
混合物は、1.5~6重量%のエポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び1~3重量%のシラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤を含んでもよい。しかしながら、混合物は、エポキシ樹脂及びシラン末端ポリマーを硬化させるのに十分な量を含んでもよい。
【0060】
また、本開示の例では、方法が提供される。方法は、シラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤、及び膨張性耐火パッケージを混合することを含む。方法は、膨張性耐火コーティング材を提供するために混合物を硬化させることを含む。従って、本開示の例はまた、膨張性耐火コーティング材、即ち、硬化性混合物を硬化させることによって得られた反応生成物を提供するものである。硬化性混合物を硬化させることによって得られた反応生成物は、硬化型膨張性耐火コーティング材と称することもある。硬化型膨張性耐火コーティング材は、2種の異なる材料、即ち、シラン末端ポリマー及びエポキシ樹脂の硬化したポリマー反応生成物を含むという点で、ハイブリッドポリマー系である。
【0061】
いくつかの例では、硬化性混合物、例えば上記表1のE1、E2、及びE3はまた、強化繊維を含んでもよい。
【0062】
強化繊維は、火災事象が起きた際に、膨張性耐火コーティング材が膨張すると形成されるチャーを支持する。チャーは、膨張性耐火コーティングの厚さの何倍もの厚さを有してもよい。保護チャーは、基材を断熱する物理的障壁としての機能を果たし、それによって火災の影響を遅らせ、コーティングされた基材の温度上昇速度を低下させる。従って、これによって障害から基材が保護されたり、又は障害の発生が遅れたりすることとなる。
【0063】
例E1、E2、及びE3の硬化性混合物は、一度硬化すると、例えば配管、バルブ、Iビーム、及び他の加工部品並びに構造部材の周囲に施した場合に、炭化水素設備内の基材を保護するのに好適な膨張性耐火コーティング材を提供する。このような用途では、膨張性耐火コーティングの厚さは4~18mmであってよく、より具体的には8~12mmであってよい。このような例では、強化繊維は、火災事象が起きた際に、膨張性耐火コーティング材が膨張すると形成される、比較的厚みのあるチャーの構造的一体性を支持することが必要となる。更に、強化繊維が混合物中に存在することによって、混合物の粘度が増大するため、比較的厚みのあるコーティングをより迅速に塗布することが可能となる。
【0064】
いくつかの例では、硬化性混合物は、強化繊維、例えば上記表1の例4(E4)を含まない。E4の硬化性混合物は、一度硬化すると、輸送、例えば、自動車部品及び車両の構造部材に使用される基材に好適な膨張性耐火コーティング材を提供する。このような用途では、膨張性耐火コーティングの厚さは0.1~2mmであってよく、より具体的には0.3~1mmであってよい。このような用途では、膨張性耐火コーティングの厚さ(及び結果として得られるチャーの厚さ)は、より短時間の間に火災の影響を遅らせる必要があるため、炭化水素設備の用途に対してより小さいものとなり得る。従って、このような例では、強化繊維が比較的薄いチャーの構造的一体性を支持する必要がなくてもよい。
【0065】
自動車用途では、比較的薄い膨張性耐火コーティングによって重量が削減され、それによって燃費が向上する。強化繊維がなければ、膨張性耐火コーティングの重量は更に削減される。
【0066】
更に、自動車用途においては基材周囲の空間が制限されている場合があり、従って比較的薄い膨張性耐火コーティングが必要となる。
【0067】
混合物の粘度を増大させる強化繊維の存在により、例えば吹き付けによる比較的薄い膨張性耐火コーティングの塗布が妨げられる可能性があり、混合物を基材上に吹き付けて均一な厚さをもたらすことがより困難になる。
【0068】
混合物の吹き付けを容易にし、均一の厚さでの塗布が可能となるように、例示の混合物は、溶媒、湿潤助剤若しくは分散助剤、及び/又は反応性希釈剤を含んでもよい。これらの添加剤は、比較的薄い膨張性耐火コーティングが必要となる場合、特に有益である。このような添加剤によって、例えば粘度が低下する。本開示の例では、可塑剤がなくても粘度の低下が達成される。
【0069】
いくつかの例では、硬化性混合物はまた、混合物、例えば上記表1のE2、E3、及びE4の流動特性を最大化するために、レオロジー変性剤を含んでもよい。
【0070】
いくつかの例、例えば上記表1のE3では、チャーの強度を更に向上させるために、混合物にはボロン含有化合物が含まれている。
【0071】
本開示のいくつかの例では、膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な混合物は、二液性混合物である。いくつかの例では、第1の部分はエポキシ樹脂及び膨張性耐火パッケージを含み、第2の部分はシラン末端ポリマー、シラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤、及びエポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤を含む。第1の部分及び/又は第2の部分に追加の添加剤を提供してもよい。
【0072】
未硬化の混合物の安定性を向上させるために、第1の部分及び/又は第2の部分に水分スカベンジャーを提供してもよい。
【0073】
第1の部分と第2の部分とを共に混合して硬化を開始し、続いて硬化した反応生成物として膨張性耐火コーティング材が提供される。第1の部分は高速分散機内で混合することによって調製してもよい。第2の部分は高速分散機内で混合することによって調製してもよい。いくつかの例では、続いて第1の部分と第2の部分とを混合し、周囲温度、即ち5℃~50℃の間の任意の温度で、大気水分の存在下で硬化させる。可使時間は約20~30分である。12時間後に完全硬化が達成される。
【0074】
可使時間は、例えば、特定の割合のα-シラン末端ポリエーテル及びγ-シラン末端ポリエーテルを選択することによって調節することができる。γ-シラン含有量が高いほど、材料の可使時間が遅くなる。
【0075】
シラン末端ポリエーテルのシリル基が、一般的にはアルキレン単位及びウレタン基を介してポリエーテル骨格の末端に結合する。アルキレン単位は、α-シラン末端ポリエーテルである場合はメチレン基、又はγ-シラン末端ポリエーテルである場合はプロピレン基のいずれかとなり得る。
【0076】
従って、いくつかの例では、シラン末端ポリエーテルは、α-シラン末端ポリエーテルとγ-シラン末端ポリエーテルとの混合物である。別の例では、シラン末端ポリエーテルはα-シラン末端ポリエーテルであるか、或いはγ-シラン末端ポリエーテルである
【0077】
或いは又は更に、所望の可使時間を与えるエポキシ硬化剤を選択することによって、更に可使時間を調整することができる。
【0078】
いくつかの例では、既に混合物中に存在する水分(内部水分)に晒すことによって混合物を硬化させる。水分は、膨張性耐火パッケージ、即ち膨張性耐火パッケージの粉末中に既に存在している場合がある。これにより、それほど湿潤していない環境でも混合物を硬化させることができる。いくつかの例では、大気水分及び既に混合物中に存在する水分に晒すことによって混合物を硬化させる。
【0079】
シラン末端ポリマー及びシラン末端ポリマーを硬化させるための架橋剤は、水分が存在しないという条件では、同一の部分で提供することができる。エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤は、個々の部分で提供される。そうしないとエポキシ樹脂が硬化してしまうためである。驚くべきことに、エポキシ樹脂を硬化させるための架橋剤は、シラン末端ポリマーを硬化させないことが見出されており、従って、これらの材料を同一の部分で提供することができる。混合物が強化繊維及びレオロジー変性剤を含む例では、これらの材料は第2の部分で提供されてもよい。そうしないと、第1の部分の粘度が高くなりすぎてしまう可能性があるためである。
【0080】
また、本開示の例によって、基材を保護するための膨張性耐火コーティングが提供される。膨張性耐火コーティングは、上記で説明したような膨張性耐火コーティング材を含む。また、本開示の例によって、基材を保護する方法が提供される。
【0081】
いくつかの例では、方法は、上記で説明したような膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な、上記で説明したような混合物で基材をコーティングすることを含む。方法はまた、膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングを提供するために、混合物を硬化させることも含む。
【0082】
実際には、例えば吹き付け、刷毛塗り、ローラー塗り、こて塗り、又はモールディングによって、上記で説明した混合物を基材に塗布する。いくつかの例では、膨張性耐火コーティングは、複数の層の膨張性耐火コーティング材を含んでもよい。従って、このような例では、膨張性耐火コーティング材の第1の層を基材に塗布し、混合物を硬化させるか、又は少なくとも部分的に硬化させ、次に膨張性耐火コーティング材の第2の層を第1の層の上部に塗布する。後続の追加の層を塗布してもよい。いくつかの例では、膨張性耐火コーティングはメッシュを含む。膨張性耐火コーティング材のそれぞれの層の間にメッシュが設けられる。メッシュは、ステンレス鋼、玄武岩、シリカ、炭素、又はガラス繊維を含んでもよい。
【0083】
いくつかの例では、基材は金属製基材、例えば構造用鋼又はアルミニウムである。金属製基材は、耐食コーティングなどの非金属コーティングを含んでもよい。従って、本開示の例では、硬化性混合物を金属製基材に直接塗布するか、又は金属製基材の非金属コーティングに塗布するかのいずれかである。
【0084】
別の例では、基材は非金属であってよい。例示的な非金属製基材としては、プラスチック、ポリマー、ポリマー材料、複合材料、発泡体、繊維状断熱材、他の受動的断熱材、コンクリート及び他の建設資材、又は輸送、例えば自動車部品及び車両の構造部材に使用される材料が挙げられる。
【0085】
基板を硬化性混合物でコーティングすることに代替するものとして、いくつかの例では、方法は、膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングを提供するために、混合物の硬化した反応生成物である膨張性耐火コーティング材の物体を基材に適用することを含んでもよい。膨張性耐火コーティング材の物体は、膨張性耐火コーティング材のシート、フィルム又はパネル、即ち、予備硬化させたフィルム、シート又はパネルであってよい。複数の層の膨張性耐火コーティング材を含む膨張性耐火コーティングを提供するために、複数の膨張性耐火コーティング材の物体(シート、フィルム又はパネル)を基材に適用してもよい。
【0086】
いくつかの例では、膨張性耐火コーティング材の物体を、2つ以上の個々の基材をまたぐ領域に適用してもよい。例えば、膨張性耐火コーティング材の物体を、2つの個々の基材の間の接合部を含む領域に適用してもよい。
【0087】
いくつかの例では、方法はまた、膨張性耐火コーティングにトップシールを適用することを含む。トップシールにより、雨よけ及び/又は装飾性をもたらすことができる。
【0088】
また、本開示の例によって、保護基材が提供される。基材は膨張性耐火コーティングを含む。膨張性耐火コーティングは、上記で説明した混合物の硬化した反応生成物である膨張性耐火コーティング材を含む。いくつかの例では、保護基材は、耐食層であってもよい膨張性耐火コーティングの下層にある非金属層、及び/又は雨よけ及び/又は装飾性をもたらし得る膨張性耐火コーティングの上層にあるトップシールを含む。
【0089】
従って、膨張性耐火コーティング材を提供するために硬化可能な混合物、膨張性耐火コーティング材を提供する方法、膨張性耐火コーティング材、基材を保護するための膨張性耐火コーティング、基材を保護する方法、及び上記及び以下の通り詳述するような多数の利点を有する保護基材が記載される。
【0090】
本開示の例では、シラン末端ポリマーとエポキシ樹脂との組み合わせは、一度硬化すると、例えば陸上又は海上の炭化水素設備における配管、バルブ、Iビーム及び他の加工部品、構造部材などの基材の周囲の膨張性耐火コーティングとして(又は膨張性耐火コーティングの一部として)使用されるような、受動的耐火性、柔軟性、靱性、及び接着性の最適なバランスを有する膨張性耐火コーティング材を提供する。
【0091】
本開示の例では、シラン末端ポリマーとエポキシ樹脂との組み合わせはまた、一度硬化すると、輸送、例えば自動車部品及び車両の構造部材に使用される基材の周囲の膨張性耐火コーティングとして(又は膨張性耐火コーティングの一部として)使用されるような、受動的耐火性、柔軟性、靱性、及び接着性の最適なバランスを有する膨張性耐火コーティング材を提供する。火災の危険性が存在する可能性のある車両の部品、例えばバッテリーを収容するために使用される領域をカバーする基材に、膨張性耐火コーティングを施してもよい。
【0092】
このような自動車用途では、膨張性耐火コーティングが比較的薄い場合であっても、膨張性耐火コーティングは、なお上記で説明したような望ましい特性を提供する。
【0093】
理論に束縛されるものではないが、その後に硬化したシラン末端ポリマーは、膨張性耐火コーティング材の柔軟性、特に低温柔軟性に大きく寄与するものである。例えば、エポキシベースの膨張性耐火コーティング材(硬化したシラン末端ポリマーを含まない)では、基材、例えば寒冷気候(例えば、北極圏で直面するような-50℃以下)でのリグの動きに持ちこたえることができない。従って、このような既知の材料では、クラック及び/又は剥離が生じる傾向がある。本開示の例による膨張性耐火コーティング材は、硬化したシラン末端ポリマーが存在することによって、向上した柔軟性を示す。従って、本開示の例による膨張性耐火コーティング材は、より良好に基材と共に動くことが可能であり、従って、基材にクラック及び/又は剥離が生じない。
【0094】
シラン末端ポリマーをベースとしているが、エポキシ樹脂を含まず、その代わりに可塑剤を含み得る既知の材料では、靱性が比較的劣るため、例えばこのような材料が衝撃を受ける場合、使用中に容易に損傷を受ける可能性がある。本開示の例による膨張性耐火コーティング材は、硬化エポキシ樹脂の存在によって靱性が著しく増大するために、使用中に損傷を受ける可能性が低くなる。
【0095】
また、本開示による膨張性耐火コーティング材に硬化エポキシ樹脂が存在することで、他の材料、例えば、耐食コーティング及び存在する場合はトップシールに対する膨張性耐火コーティング材の接着性が向上する。
【0096】
更に、本開示による混合物中にエポキシ樹脂が存在することで、混合物に相当量の膨張性耐火パッケージを提供することが可能となり、これによって、その後に硬化した膨張性耐火コーティング材の耐火特性を向上させることとなる。
【0097】
更に、本開示の例による膨張性耐火コーティング材は、優れた環境安定性を示す。
【0098】
更に、可塑剤の代わりに硬化性反応混合物中でエポキシ樹脂(即ち反応性エポキシ)を使用することによって、耐久性が大幅に向上し、結果として得られた硬化した膨張性耐火材料の吸水量が減少する。
【0099】
本開示の例による膨張性耐火コーティングは、火災事象が起きた際に膨張して保護チャーを形成する。保護チャーは、基材を断熱する物理的障壁としての機能を果たし、それによって火災の影響を遅らせ、コーティングされた基材の温度上昇速度を低下させる。従って、これによって障害から基材が保護されたり、又は障害の発生が遅れたりするため、例えば炭化水素設備からの従業員の避難や、又は車両の搭乗者の避難、及び/又は消火活動を可能にするような更なる時間がもたらされることになる。
【0100】
様々な例を参照しながら本発明の実施形態を前述の段落で説明してきたが、特許請求される通りに本発明の範囲を逸脱することなく所与の例に対する修正を行うことができるということが理解されよう。
【0101】
前述の説明で説明した特徴は、明示的に説明された組み合わせ以外の組み合わせにおいて使用されてもよい。
【0102】
特定の特徴を参照しながら機能を説明してきたが、説明されたか否かに関わらず、これらの機能は他の特徴によって実行可能であってよい。
【0103】
特定の実施形態を参照しながら特徴を説明してきたが、説明されたか否かに関わらず、これらの特徴もまた、他の実施形態に存在してもよい。
【0104】
「含む(comprise)」という用語は、本明細書では排他的な意味ではなく包含的な意味で使用される。即ち、XがYを含むというあらゆる言及は、Xがただ1つのYを含んでもよく、又は2つ以上のYを含んでもよいことを示す。「含む」を排他的な意味で使用することが意図される場合には、「ただ1つの…を含む(comprising only one…)」と言及することによって、又は「からなる(consisting)」を使用することによって、文脈中で明らかとなるであろう。
【0105】
図面の簡単な説明では、様々な例について言及している。例に関する特徴又は機能の説明は、これらの特徴又は機能がその例に存在することを示している。文章中、「例(example)」又は「例えば(for example)」又は「してもよい(may)」という用語の使用は、明示的に述べられるか否かに関わらず、このような特徴又は機能が、一例として説明されているか否かに関わらず、少なくともその説明された例においては存在すること、及びそれらが他の例の一部又は全てにおいて必ずではないが存在し得ることを表す。従って、「例」、「例えば」、又は「してもよい」は、例の集合の中の特定の事例に言及するものである。事例の特性は、その事例のみの特性、又は集合の特性、又は集合内の全部ではないが一部の事例を含む集合の部分集合の特性であってよい。従って、1つの例を参照して説明されているが別の例を参照して説明されていない特徴を、可能であればその別の例で使用することができるが、必ずしもこの他の例で使用する必要はないということが黙示的に開示される。
【0106】
前述の明細書において、特に重要であると考えられるそれらの本発明の特徴に注目を集めるように努めてはいるが、そこに特に強調されているか否かに関わらず、言及された及び/又は図面に示されたあらゆる特許性のある特徴又は上文の特徴の組み合わせに関して、本出願人が保護を主張することを理解すべきである。
【国際調査報告】