(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-07
(54)【発明の名称】XPO1阻害剤の調製プロセス及びXPO1阻害剤の調製に用いられる中間体
(51)【国際特許分類】
C07D 249/08 20060101AFI20220630BHJP
C07D 403/12 20060101ALI20220630BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20220630BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C07D249/08 532
C07D403/12
A61K31/497
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564434
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 US2020031124
(87)【国際公開番号】W WO2020223678
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313015775
【氏名又は名称】カリオファーム セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】オースタッド,ブライアン クリントン
(72)【発明者】
【氏名】ロー,デービッド,ジー.
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB09
4C063CC41
4C063DD34
4C063EE01
4C086AA04
4C086BC48
4C086BC60
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、セリネクソル((Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-N’-(ピラジン-2-イル)アクリロヒドラジド)の合成に有用で重要な中間体である(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリル酸(構造式(III)の化合物と称される)の向上した調製プロセスを提供する。本プロセスは、触媒、有機塩基及びエーテル含有溶剤の存在下における、構造式(I)の化合物(本明細書に記載のとおり)と、構造式(II)の化合物(本明細書に記載のとおり)との反応を含む。形成された構造式(IIIa)の化合物(本明細書に記載のとおり)のその後の加水分解は、構造式(IIIa)の化合物を単離することなく行われ、これにより、構造式(III)の化合物が高い収率及び立体選択性でもたらされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式IIIにより表される化合物
【化1】
を形成するプロセスであって:
構造式(I)により表される化合物と、構造式(II)により表される化合物
【化2】
とを、触媒、有機塩基及びエーテル含有溶剤の存在下に、構造式(IIIa)により表される化合物
【化3】
の生成に好適な条件下で反応させるステップ;並びに
単離することなく、前記構造式(IIIa)により表される化合物と、無機塩基とを、イソプロピルアルコール(IPA)の存在下に、構造式(III)により表される化合物の生成に好適な条件下で反応させるステップ;並びに
前記構造式(III)により表される化合物を単離するステップを含み、
ここで、Rは、C
2~C
5アルキル、C
6~C
18アリール、5~18員ヘテロアリール、C
3~C
12シクロアルキル又は3~12員ヘテロシクロアルキルであり、その各々は、任意選択により、及び、独立して、ハロ、CN、OH、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3ハロアルキル、-NO
2、-NH
2、-NH(C
1~C
3アルキル)、-N(C
1~C
3アルキル)
2及びC
1~C
3アルコキシから選択される1つ以上の置換基で置換されている、プロセス。
【請求項2】
Rは、C
2~C
5アルキル又はC
6~C
18アリールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
RはC
2~C
5アルキルである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
Rはイソプロピルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
Rはフェニルである、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒及び前記有機塩基は、前記構造式IIにより表される化合物の1モル当量未満の合わせた総量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒は、前記構造式Iにより表される化合物の量に基づいて、0.05~0.2モル当量の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒は、前記構造式Iにより表される化合物の量に基づいて0.1モル当量の量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒は、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン及び7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒はDABCOである、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記有機塩基は、前記構造式Iにより表される化合物の量に基づいて0.5~2モル当量の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記有機塩基は、前記構造式Iにより表される化合物の前記量に基づいて1.0モル当量の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記有機塩基は、DIPEA、Et
3N、ピペリジン、ピリジン及び4-(ジメチルアミノ)ピリジンからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記有機塩基はDIPEAである、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記エーテル含有溶剤は、MeTHF、CPME及びMTBEからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記エーテル含有溶剤はMeTHFである、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記構造式IIの化合物の前記量は、構造式Iの化合物の量に基づいて1.0~1.5モル当量である、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記無機塩基は、LiOH、NaOH又はKOHである、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記無機塩基はKOH又はNaOHである、請求項1~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記無機塩基はKOHである、請求項1~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記構造式IIIaにより表される化合物の生成に好適な前記条件は、前記構造式Iにより表される化合物と、前記構造式IIにより表される化合物とを、5℃~55℃の温度で反応させるステップを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記構造式IIIaにより表される化合物の生成に好適な前記条件は、前記構造式Iにより表される化合物と、前記構造式IIにより表される化合物とを、5時間~30時間の期間反応させるステップを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記構造式IIIにより表される化合物の生成に好適な前記条件は、前記構造式IIIaにより表される化合物と、無機塩基とを、5℃~55℃の温度で反応させるステップを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記構造式IIIにより表される化合物の生成に好適な前記条件は、前記構造式IIIaにより表される化合物と、無機塩基とを、1時間~10時間の期間反応させるステップを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
反応混合物から前記構造式IIIにより表される化合物を単離するステップをさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記構造式IIIにより表される化合物を単離するステップは:
(i)水及びHClを、前記構造式IIIにより表される化合物を含む前記反応混合物に添加し、これにより、水性相及び有機相を生成するステップ;
(ii)前記有機相を分離し、任意選択により濃縮し、これにより、最終有機相を生成するステップ;
(iii)C
5~C
12炭化水素溶剤を前記最終有機相に添加し、これにより、前記構造式IIIにより表される化合物の沈殿物を生成するステップ;並びに
(iv)前記構造式IIIにより表される化合物の前記沈殿物を単離するステップ
を含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記C
5~C
12炭化水素溶剤はヘプタンである、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記C
5~C
12炭化水素溶剤はイソオクタンである、請求項26に記載のプロセス。
【請求項29】
構造式(IV)により表される化合物
【化4】
と、構造式(V)により表されるヒドラジン
H
2NNH
2(V)
とを、構造式(I)により表される化合物
【化5】
の生成に好適な前記条件下で反応させるステップ;及び
前記構造式(I)により表される化合物を単離するステップ
をさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記構造式(IV)により表される化合物と、構造式(V)により表される前記ヒドラジンとを反応させるステップは、有機酸の存在下で行われる、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記有機酸は、ギ酸、酢酸又はプロピオン酸である、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記有機酸は酢酸である、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記構造式(I)により表される化合物の生成に好適な前記条件は、前記構造式(IV)により表される化合物と、構造式(V)により表される前記ヒドラジンとを50℃~60℃の温度で反応させるステップを含む、請求項29~32のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項34】
構造式(III)により表される化合物
【化6】
と、構造式(VI)により表されるヒドラジン
【化7】
とを、極性溶剤、第2の有機塩基及びカップリング剤の存在下に、構造式(VII)により表される化合物
【化8】
の生成に好適な前記条件下で反応させるステップ;
前記極性溶剤をアセトニトリル(ACN)に交換するステップ;及び
前記構造式(VII)により表される化合物を前記ACNから、結晶形態Dとして結晶化させるステップ
をさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項35】
前記第2の有機塩基は、DIPEA、Et
3N、ピペリジン、ピリジン及び4-(ジメチルアミノ)ピリジンからなる群から選択される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記第2の有機塩基はDIPEAである、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記極性溶剤は、C
1~C
6アルコール、MeTHF、CPME及びMTBEからなる群から選択される、請求項34~36のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項38】
前記極性溶剤はMeTHFである、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記カップリング剤は、プロピルホスホン酸無水物(T3P)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)からなる群から選択される、請求項34~38のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項40】
前記カップリング剤は前記T3Pである、請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記構造式(VII)により表される化合物の生成に好適な前記条件は、前記構造式(III)により表される化合物と、構造式(VI)により表される前記ヒドラジンとを、-25℃~-15℃の温度で反応させるステップを含む、請求項34~40のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項42】
前記構造式(VII)により表される化合物の前記結晶形態Aの生成に好適な前記条件下で、前記構造式(VII)により表される化合物の形態Dを、水性イソプロピルアルコール(IPA)中において再結晶化するステップをさらに含む、請求項34~41のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項43】
前記構造式(VII)により表される化合物の形態Aの生成に好適な前記条件は:
形態Dを前記水性IPA中に溶解し、これにより、スラリーを生成するステップ;及び
前記スラリーを、38℃~42℃の温度で5時間~12時間の時間保持するステップ
を含む、請求項42に記載のプロセス。
【請求項44】
構造式(IV)により表される化合物
【化9】
と、構造式(V)により表されるヒドラジン
H
2NNH
2(V)
とを、構造式(I)により表される化合物
【化10】
の生成に好適な前記条件下で反応させるステップ;
前記構造式(I)により表される化合物を単離するステップ;
構造式(III)により表される化合物
【化11】
と、構造式(VI)により表されるヒドラジン
【化12】
とを、極性溶剤、第2の有機塩基及びカップリング剤の存在下に、構造式(VII)により表される化合物
【化13】
の生成に好適な前記条件下で反応させるステップ;
前記極性溶剤をアセトニトリル(ACN)に交換するステップ;
前記構造式(VII)により表される化合物を前記ACNから、結晶形態Dとして結晶化させるステップ;及び
前記構造式(VII)により表される化合物の前記結晶形態Aの生成に好適な前記条件下で、前記構造式(VII)により表される化合物の形態Dを、水性イソプロピルアルコール(IPA)中において再結晶化するステップ
をさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年5月1日に出願の米国仮特許出願第62/841,649号に基づく利益を主張する。上記出願に係る全教示は、参照により本明細書において援用されている。
【背景技術】
【0002】
セリネクソルは、CRM1/XPO1活性に関連する生理学的状態の処置及び/又は予防に用いられる核外輸送の選択的阻害剤である。セリネクソルは、以下の構造式:
【化1】
により表される。
【0003】
セリネクソルの合成は、Karyopharm Therapeutics Inc.による国際公開第2013019548A1号パンフレットにおいて初めて開示された。ここに報告されている合成方法は少量のセリネクソルの提供には成功したが、彼等は、所望される高いZ-異性体含有量を有するセリネクソルを提供するために複数の精製ステップ(クロマトグラフィ及び結晶化)が必要であることに苦労していた。この出願において開示されているプロセスは、彼等が意図した規模には十分に好適であったが、これらの精製ステップが原因となり、商業的な製造を目的とした場合には非効率的である。
【0004】
その最後から2番目の中間体(以下に構造式IIIにより表されている)からのセリネクソルの向上した合成が、同じくKaryopharm Therapeutics Inc.による国際公開第2016025904A1号パンフレットに開示されている。中間体IIIをセリネクソルに転換する最終合成ステージに関連する難題は解決されているが、中間体IIIの調製方法は提供されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商業的に適切な規模におけるセリネクソル及びその中間体の調製に好適な効率的な製造プロセスに対する要求が存在している。
【0006】
本発明は、セリネクソルの合成に有用である中間体(例えば、構造式IIIにより表される化合物)を調製するための新規で効率的なプロセスを提供することを目的とする。これらのプロセスは、セリネクソルの前合成に関連する難題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、構造式III
【化2】
により表される化合物を形成するプロセスであって:
構造式(I)により表される化合物と、構造式(II)により表される化合物
【化3】
とを、触媒、有機塩基及びエーテル含有溶剤の存在下に、構造式(IIIa)により表される化合物
【化4】
の生成に好適な条件下で反応させるステップ;並びに
単離することなく、構造式(IIIa)により表される化合物と、無機塩基とを、イソプロピルアルコール(IPA)の存在下に、構造式(III)により表される化合物の生成に好適な条件下で反応させるステップ;並びに
構造式(III)により表される化合物を単離するステップを含み、
ここで、Rは、C
2~C
5アルキル、C
6~C
18アリール、5~18員ヘテロアリール、C
3~C
12シクロアルキル又は3~12員ヘテロシクロアルキルであり、その各々は、任意選択により、及び、独立して、ハロ、CN、OH、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3ハロアルキル、-NO
2、-NH
2、-NH(C
1~C
3アルキル)、-N(C
1~C
3アルキル)
2及びC
1~C
3アルコキシから選択される1つ以上の置換基で置換されている、プロセスに関する。
【0008】
本明細書中以下の実施例に記載されているとおり、触媒、有機塩基、エーテル含有溶剤、無機塩基及び相間移動触媒の組み合わせを構造式IIIにより表される化合物の合成方法に採用することで、中間体を単離するステップを排除しながらも、有利に高い収率及び優れた立体選択性が予想外にも得られた。
【0009】
前述の事項は、添付の図面において図示されているとおり、本発明の例示的な実施形態の以下のより具体的な説明から明らかとされ、ここで、上記図面において、同様の符号は、異なる図を通して同一の構成要素を指すものである。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、本発明の実施形態の図示に際して強調がなされている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、米国特許第10,519,139号明細書に記載されているセリネクソル形態Aの粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【
図2】
図2は、米国特許第10,519,139号明細書に記載されているセリネクソルのアセトニトリル溶媒和物のXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る新規機構は、以下における本発明の発明を実施するための形態の考察により、当業者に明らかとなるであろう。しかしながら、提示されている本発明に係る発明を実施するための形態及び特定の実施例は、本発明の一定の実施形態を表している一方で、本発明の趣旨及び範囲内である種々の変更及び改変は以下の本発明に係る発明を実施するための形態及び特許請求の範囲から当業者に明らかとなるために、単なる例示を目的とするために提供されていることが理解されるべきである。
【0012】
定義
本発明の化合物は広く上記のものを含み、本明細書に開示のクラス、サブクラス及び種によってさらに例示される。本明細書において用いられるところ、別段の定めがある場合を除き、以下の定義が適用されることとなる。本発明の目的のために、化学的要素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed.に従って識別される。また、有機化学の一般原則が“Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、及び、“March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、その全内容が参照により本明細書に援用される。
【0013】
本明細書において別段の特定がある場合を除き、本明細書において用いられている命名法は一般に、Nomenclature of Organic Chemistry,Sections A,B,C,D,E,F,and H,Pergamon Press,Oxford,1979(例示的な化学構造名及び化学構造の命名上のルールについては、参照により本明細書において援用されている)に記載されている例及びルールに従う。任意選択により、化合物の名称は、化学物質命名プログラム:ACD/ChemSketch,Version 5.09/September 2001,Advanced Chemistry Development,Inc.,Toronto,Canadaを用いて生成し得る。
【0014】
「アルキル」は、例えば、1~16個の炭素原子を有する飽和脂肪族分岐又は直鎖一価炭化水素基を意味する。例えば、「(C1~C6)アルキル」は、直鎖又は分岐鎖に配置された1~6個の炭素原子を有する基を意味する。「(C1~C6)アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルを含む。一態様において、アルキル基は2~5個の炭素原子を含有する。
【0015】
「アルカン」は、上記に定義されているとおり、水素に結合しているアルキル基からなる炭化水素分子を意味する。
【0016】
「シクロアルキル」は、例えば、3~12個の炭素原子を有する飽和脂肪族環式炭化水素基を意味する。これは、単環式又は多環式であることが可能である(例えば、縮合、架橋又はスピロ)。例えば、単環式(C3~C8)シクロアルキルは、単環式環に配置された3~8個の炭素原子を有する基を意味する。単環式(C3~C8)シクロアルキルとしては、特に限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクタンが挙げられる。
【0017】
「シクロアルカン」は、上記に定義されているとおり、水素に結合しているシクロアルキル基からなる炭化水素分子を意味する。
【0018】
「ヘテロシクロアルキル」は、例えば3~12員を有し、炭素原子及びN、O又はSから選択される同一であっても異なっていてもよい1~4個のヘテロ原子を含有し、並びに、任意選択により、1つ以上の二重結合を含有する飽和環を意味する。これは、単環式又は多環式であることが可能である(例えば、縮合、架橋又はスピロ)。
【0019】
「ハロアルキル」は、上記に定義されている直鎖又は分岐アルキル基を指し、ここで、水素原子は、その一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよく、並びに、モノ、ポリ及びペルハロアルキル基を含んでいてもよく、ここで、ハロゲンは、フッ素、塩素及び臭素から独立して選択される。
【0020】
「ヘテロアリール」は、一価の芳香族複素環式単環式又は多環式環基を意味する。ヘテロアリール環は、5~18員を有していることが可能であり、並びに、炭素原子とN、O及びSから独立して選択される1~4ヘテロ原子とを含有していることが可能である。これらは、単環式又は多環式であることが可能であると共に、これらに限定されないが、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール1-オキシド、1,2,5-チアジアゾール1,1-ジオキシド、1,3,4-チアジアゾール、ピリジン、ピリジン-N-オキシド、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、テトラゾール、インドリジン、インドール、イソインドール、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[b]チオフェン、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンズチアゾール、プリン、4H-キノリジン、キノリン、イソキノリン、シノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8-ナフチリジン及びプテリジンが挙げられる。
【0021】
「アルコキシ」は、酸素結合原子を介して結合している上記に定義されているアルキル基を意味する。「(C1~C3)-アルコキシ」としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びイソプロポキシが挙げられる。
【0022】
「アリール」は、例えば、6~18個の炭素員を含有する芳香族単環式又は多環式炭化水素環系を意味する。アリール系としては、特に限定されないが、フェニル、ナフタレニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル及びアントラセニルが挙げられる。
【0023】
「アレーン」は、水素に結合しているアリール基からなる炭化水素分子を意味する。
【0024】
上記に定義されている基の定義には、原子価によって許容される限りにおいて、炭素原子又は窒素原子で任意選択により置換されている基もまた包含される。好適な置換としては、これらに限定されないが、ハロ、CN、OH、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、-NO2、-NH2、-NH(C1~C3アルキル)、-N(C1~C3アルキル)2及びC1~C3アルコキシが挙げられる。
【0025】
本明細書において用いられるところ、「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0026】
本明細書において用いられるところ、「炭化水素溶剤」という用語は、5~12個の炭素原子を有するアルカン、シクロアルカン又はアレーンを意味する。
【0027】
「触媒」は、関与する化学反応の速度を特に高めることで変更可能であると共に、反応の終了時に再生成されるいずれかの化合物を意味する。本出願に好適な触媒の例としては、これらに限定されないが、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)及び7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)及びキヌクリジンが挙げられる。
【0028】
本明細書において用いられるところ、「有機塩基」は、プロトンを受容し、水溶液中においてヒドロキシルイオンを形成し、又は、電子対を供与することが可能である有機化合物を指す。有機塩基の例としては、これらに限定されないが、Et3N、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピペリジン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、N-メチル-モルホリン、ジメチルアニリン、イミダゾール、1-メチルピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、3,5-ジメチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン及び2,4,6-トリメチルピリジンなどの窒素含有化合物が挙げられる。
【0029】
本明細書において用いられるところ、「無機塩基」は、プロトンを受容し、水性媒体中においてヒドロキシル基を形成し、又は、電子対を供与することが可能である無機化合物を指す。無機塩基の例としては、これらに限定されないが、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、Ca(OH)2、Mg(OH)2及びBa(OH)2などの金属水酸化物が挙げられる。
【0030】
本明細書において用いられるところ、「エーテル含有溶剤」は、周囲条件下で液体であると共にR’-O-R”部分を含有する有機化合物を指し、ここで、R’及びR”は各々、直鎖又は分岐鎖アルキル又はシクロアルキルから独立して選択され、並びに、R’及びR”は、これら結合している酸素原子と一緒になって5員~6員環を形成可能である。エーテル含有溶剤の例としては、これらに限定されないが、2-メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、ジエチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン(DiMeTHF)、ジメトキシエタン(DME)及びシクロペンチルメチルエーテル(CPME)が挙げられる。
【0031】
本発明の化合物における置換基及び置換パターンは、化学的に安定であると共に、技術分野において公知である技術、並びに、以下に記載されている方法により容易に合成可能である化合物が提供されるよう、技術分野における当業者により選択可能であることが理解される。通常、「置換されている」という用語は、「任意選択により」という用語が先行しているか否かに関わらず、指定されている部分に係る1個以上の水素が好適な置換基で置き換えられていることを意味する。別段の定めがある場合を除き、「任意選択により置換された基」は、基における置換可能な位置の各々に好適な置換基を有していることが可能であり、いずれかの所与の構造における2つ以上の位置が、特定の群から選択される2個以上の置換基で置換され得る場合、置換基は、すべての位置において、同一であることも異なっていることも可能である。或いは、「任意選択により置換された基」は置換されていなくてもよい。
【0032】
本発明によって想定される置換基の組み合わせは、安定であるか、又は、化学的に実現可能である化合物の形成がもたらされるものであることが好ましい。置換基自体が2つ以上の基で置換されている場合、これらの複数の基は、安定であり、化学的に実現可能である構造がもたらされる限りにおいて、同一の炭素原子上にあることも、異なる炭素原子上にあることも可能であることが理解される。本明細書において用いられるところ、「安定」という用語は、本明細書に開示の目的の1つ以上に係る、生成、検出、並びに、一定の実施形態においては、その回収、精製及び使用を許容する条件に供された場合にも実質的に変化しない化合物を指す。
【0033】
別段の定めがある場合を除き、本明細書において示されている構造はまた、この構造に係るすべての異性体形態(例えば、鏡像異性、ジアステレオ異性及び幾何異性(又は、配座異性)形態);例えば、不斉中心の各々に係るR及びS構成、Z及びE二重結合異性体を含むことが意図されている。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体、並びに、鏡像異性、ジアステレオ異性及び幾何異性(又は、配座異性)混合物が、本発明の範囲内である。別段の定めがある場合を除き、本発明の化合物のすべての互変異性形態が、本発明の範囲内である。
【0034】
また、別段の定めがある場合を除き、本明細書において示されている構造はまた、1個以上の同位体的に富化された原子の存在のみが異なる化合物を含むことも意味している。例えば、重水素若しくは三重水素による水素の置き換え、又は、13C-若しくは14C-富化炭素による炭素の置き換えにより生成される化合物は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、分析手段として、生物学的アッセイにおけるプローブとして、又は、本発明に係る治療薬として有用である。
【0035】
「立体異性体」という用語は、空間中における原子の配向のみが異なる個々の分子に係るすべての異性体に対する一般的な用語である。この用語は、鏡像異性体(エナンチオマー)、幾何(シス/トランス)異性体、及び、互いに鏡像ではないキラル中心を2つ以上有する化合物の異性体(ジアステレオマー)を含む。
【0036】
本明細書に開示の要素の導入に当り、冠詞「a」、「an」、「the」及び「said」は、1つ以上の要素が存在していることを意味することが意図されている。「を含む(comprising)」、「を有する(having)」及び「を含む(including)」という用語は、オープンエンド形式であることが意図されると共に、列挙されている要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0037】
略語
aq. 水性
CPME シクロペンチルメチルエーテル
DABCO 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DD 蒸留された、脱イオン
DIEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
EA又はEtOAc 酢酸エチル
Et2O ジエチルエーテル
EtOH エタノール
Et エチル
eq 当量
h 時間
HCl 塩酸
IPA 2-プロパノール
KOH 水酸化カリウム
LCMS 液体クロマトグラフィ/質量分光測定
LiOH 水酸化リチウム
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MTBE メチルt-ブチルエーテル
min 分間
Me メチル
MeTHF 2-メチルテトラヒドロフラン
NaOH 水酸化ナトリウム
NaCl 塩化ナトリウム
NMT 以下
NLT 以上
ND 検出せず
NMR 核磁気共嗚
org. 有機
RT, rt, r.t. 室温
THF テトラヒドロフラン
Temp 温度
UPLC又はUHPLC 高性能液体クロマトグラフィ
wts 重量当量
【0038】
本発明の方法
第1の実施形態において、本発明は、構造式IIIにより表される化合物
【化5】
を形成するためのプロセスに関し、
このプロセスは:
構造式(I)により表される化合物と、構造式(II)により表される化合物
【化6】
とを、触媒、有機塩基及びエーテル含有溶剤の存在下に、構造式(IIIa)により表される化合物
【化7】
の生成に好適な条件下で反応させるステップ;並びに
単離することなく、構造式(IIIa)により表される化合物と、無機塩基とを、イソプロピルアルコール(IPA)の存在下に、構造式(III)により表される化合物の生成に好適な条件下で反応させるステップ;並びに
構造式(III)により表される化合物を単離するステップを含み、
ここで、Rは、C
2~C
5アルキル、C
6~C
18アリール、5~18員ヘテロアリール、C
3~C
12シクロアルキル又は3~12員ヘテロシクロアルキルであり、その各々は、任意選択により、及び、独立して、ハロ、CN、OH、C
1~C
3アルキル、C
1~C
3ハロアルキル、-NO
2、-NH
2、-NH(C
1~C
3アルキル)、-N(C
1~C
3アルキル)
2及びC
1~C
3アルコキシから選択される1つ以上の置換基で置換されている。
【0039】
第1の実施形態の第1の態様において、Rは、C2~C5アルキル又はC6~C18アリールである。例えば、RはC2~C5アルキルであり、例えば、Rはイソプロピルである。或いは、Rはフェニルである。
【0040】
第1の実施形態の第2の態様において、触媒は、構造式Iにより表される化合物の量に基づいて0.05~0.2モル当量の量で存在する。例えば、触媒は、構造式Iにより表される化合物の量に基づいて0.1モル当量の量で存在する。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1の態様に関して上記したとおりである。
【0041】
第1の実施形態の第3の態様において、触媒は、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン及び7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンからなる群から選択される。例えば、触媒はDABCOである。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1及び第2の態様に関して上記したとおりである。
【0042】
第1の実施形態の第4の態様において、有機塩基は、構造式Iにより表される化合物の量に基づいて0.5~2モル当量の量で存在し、例えば、有機塩基は、構造式Iにより表される化合物の量に基づいて1.0モル当量の量で存在する。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第3の態様に関して上記したとおりである。
【0043】
第1の実施形態の第5の態様において、有機塩基は、DIPEA、Et3N、ピペリジン、ピリジン及び4-(ジメチルアミノ)ピリジンからなる群から選択され、例えば、有機塩基はDIPEAである。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第4の態様に関して上記したとおりである。
【0044】
第1の実施形態の第6の態様において、エーテル含有溶剤は、MeTHF、CPME及びMTBEからなる群から選択される。例えば、エーテル含有溶剤はMeTHFである。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第5の態様に関して上記したとおりである。
【0045】
第1の実施形態の第7の態様において、構造式IIの化合物は、構造式Iの化合物の量に基づいて1.0~1.5モル当量の量で存在する。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第6の態様に関して上記したとおりである。
【0046】
第1の実施形態の第8の態様において、無機塩基は、KOH又はNaOHである。例えば、無機塩基はKOHである。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第7の態様に関して上記したとおりである。
【0047】
第1の実施形態の第9の態様において、本発明は、構造式IIIaにより表される化合物の生成に好適な条件が、構造式Iにより表される化合物と、構造式IIにより表される化合物とを、約5℃~約55℃、約10℃~約40℃など、約10℃~約30℃など(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29及び30)の温度で反応させるステップを含むプロセスに関する。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第8の態様に関して上記したとおりである。
【0048】
第1の実施形態の第10の態様において、構造式IIIaにより表される化合物の生成に好適な条件は、構造式Iにより表される化合物と、構造式IIにより表される化合物とを、約5時間~約30時間、約10時間~約30時間など(10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29及び30など)の期間反応させるステップを含む。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第9の態様に関して上記したとおりである。
【0049】
第1の実施形態の第11の態様において、構造式IIIにより表される化合物の生成に好適な条件は、構造式IIIaにより表される化合物と、無機塩基とを、約5℃~約55℃、約10℃~約40℃など、約10℃~約30℃など(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29及び30)の温度で反応させるステップを含む。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第10の態様に関して上記したとおりである。
【0050】
第1の実施形態の第12の態様において、構造式IIIにより表される化合物の生成に好適な条件は、構造式IIIaにより表される化合物と、無機塩基とを、約1時間~約20時間、約1時間~約10時間など(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10)、約2時間~約4時間などの期間反応ステップを含む。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第11の態様に関して上記したとおりである。
【0051】
第1の実施形態の第13の態様において、本発明は、構造式IIIにより表される化合物を反応混合物から単離するステップをさらに含むプロセスに関する。例えば、本発明は、構造式IIIにより表される化合物を単離するステップが:
(i)水及びHClを、構造式IIIにより表される化合物を含む反応混合物に添加し、これにより、水性相及び有機相を生成するステップ;
(ii)有機相を分離し、任意選択により濃縮し、これにより、最終有機相を生成するステップ;
(iii)C5~C12炭化水素溶剤を最終有機相に添加し、これにより、構造式IIIにより表される化合物の沈殿物を生成するステップ;並びに
(iv)構造式IIIにより表される化合物の沈殿物を単離するステップ
を含むプロセスに関する。例えば、沈殿物は、遠心分離又はろ過により単離される。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第12の態様に関して上記したとおりである。
【0052】
第1の実施形態の第14の態様において、C5~C12炭化水素溶剤はヘプタンである。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第13の態様に関して上記したとおりである。
【0053】
第1の実施形態の第15の態様において、C5~C12炭化水素溶剤はイソオクタンである。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第13の態様に関して上記したとおりである。
【0054】
第1の実施形態の第16の態様において、触媒及び有機塩基は、構造式IIにより表される化合物の1モル当量未満の合わせた総量で存在する。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第15の態様に関して上記したとおりである。
【0055】
第2の例示的実施形態において、本発明は、第1の例示的実施形態及びその第1~第16の態様に関して本明細書に上記のプロセスであって、構造式(IV)により表される化合物
【化8】
と、構造式(V)により表されるヒドラジン
H
2NNH
2(V)
とを、構造式(I)により表される化合物
【化9】
の生成に好適な条件下で反応させるステップ;及び
構造式(I)により表される化合物を単離するステップ
をさらに含むプロセスである。
【0056】
第2の例示的実施形態の第1の態様において、構造式(IV)により表される化合物と、構造式(V)により表されるヒドラジンとを反応させるステップは、有機酸、例えばギ酸、酢酸又はプロピオン酸の存在下で行われる。一例において、有機酸は酢酸である。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様に関して上記したとおりである。
【0057】
第2の例示的実施形態の第2の態様において、構造式(I)により表される化合物の生成に好適な条件は、構造式(IV)により表される化合物と、構造式(V)により表されるヒドラジンとを50℃~60℃の温度で反応させるステップを含む。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様、及び、第2の例示的実施形態の第1の態様に関して上記したとおりである。
【0058】
第3の例示的実施形態において、本発明は、第1の例示的実施形態及びその第1~第16の態様に関して本明細書に上記のプロセスであって、構造式(III)により表される化合物
【化10】
と、構造式(VI)により表されるヒドラジン
【化11】
とを、極性溶剤、第2の有機塩基及びカップリング剤の存在下に、構造式(VII)により表される化合物
【化12】
の生成に好適な条件下で反応させるステップ;
極性溶剤をアセトニトリル(ACN)に交換するステップ;及び
構造式(VII)により表される化合物をACNから結晶形態Dとして結晶化させるステップ
をさらに含むプロセスである。
【0059】
第3の例示的実施形態の第1の態様において、第2の有機塩基は、DIPEA、Et3N、ピペリジン、ピリジン及び4-(ジメチルアミノ)ピリジンからなる群から選択される。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様、並びに、第2の例示的実施形態の第1及び第2の態様に関して上記したとおりである。
【0060】
第3の例示的実施形態の第2の態様において、第2の有機塩基はDIPEAである。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様、第2の例示的実施形態の第1及び第2の態様、並びに、第3の例示的実施形態の第1の態様に関して上記したとおりである。
【0061】
第3の例示的実施形態の第3の態様において、極性溶剤は、C1~C6アルコール、MeTHF、CPME及びMTBE、例えば、MeTHFからなる群から選択される。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様、第2の例示的実施形態の第1及び第2の態様、並びに、第3の例示的実施形態の第1~第2の態様に関して上記したとおりである。
【0062】
第3の例示的実施形態の第4の態様において、カップリング剤は、プロピルホスホン酸無水物(T3P)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)からなる群から選択される。例えば、カップリング剤はT3Pである。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様、第2の例示的実施形態の第1及び第2の態様、並びに、第3の例示的実施形態の第1~第3の態様に関して上記したとおりである。
【0063】
第3の例示的実施形態の第5の態様において、構造式(VII)により表される化合物の生成に好適な条件は、構造式(III)により表される化合物と、構造式(VI)により表されるヒドラジンとを、-25℃~-15℃の温度で反応させるステップを含む。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様、第2の例示的実施形態の第1及び第2の態様、並びに、第3の例示的実施形態の第1~第4の態様に関して上記したとおりである。
【0064】
第3の例示的実施形態の第6の態様において、このプロセスは、構造式(VII)により表される化合物の結晶形態Aの生成に好適な条件下で、構造式(VII)により表される化合物の形態Dを、水性イソプロピルアルコール(IPA)中において再結晶化するステップをさらに含む。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様、第2の例示的実施形態の第1及び第2の態様、並びに、第3の例示的実施形態の第1~第5の態様に関して上記したとおりである。
【0065】
第3の例示的実施形態の第7の態様において、構造式(VII)により表される化合物の形態Aの生成に好適な条件は:形態Dを水性IPA中に溶解し、これにより、スラリーを生成するステップ;及び、スラリーを、38℃~42℃の温度で5時間~12時間の時間保持するステップを含む。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様、第2の例示的実施形態の第1及び第2の態様、並びに、第3の例示的実施形態の第1~第6の態様に関して上記したとおりである。
【0066】
第4の例示的実施形態において、本発明は、第1の例示的実施形態及びその第1~第16の態様に関して本明細書に上記のプロセスであって:構造式(IV)により表される化合物
【化13】
と、構造式(V)により表されるヒドラジン
H
2NNH
2(V)
とを、構造式(I)により表される化合物
【化14】
の生成に好適な条件下で反応させるステップ;
構造式(I)により表される化合物を単離するステップ;
本明細書に記載のプロセス(第1の実施形態及びそのすべての態様)に従って式(III)の化合物を調製するステップ、並びに、構造式(III)により表される化合物
【化15】
と、構造式(VI)により表されるヒドラジン
【化16】
とを、極性溶剤、第2の有機塩基及びカップリング剤の存在下に、構造式(VII)により表される化合物
【化17】
の生成に好適な条件下で反応させるステップ;
極性溶剤をアセトニトリル(ACN)に交換するステップ;
構造式(VII)により表される化合物をACNから結晶形態Dとして結晶化させるステップ;並びに、構造式(VII)により表される化合物の結晶形態Aの生成に好適な条件下で、構造式(VII)により表される化合物の形態Dを、水性イソプロピルアルコール(IPA)中において再結晶化するステップをさらに含むステップである。プロセスの可変要素に係る値及び値の例の残りは、第1の実施形態の第1~第16の態様、第2の例示的実施形態の第1及び第2の態様、並びに、第3の例示的実施形態の第1~第7の態様に関して上記したとおりである。
【実施例】
【0067】
以下の実施例に記載の化合物は、標準的な基準化合物に対するUHPLCを用いて同定及び分析した。異形体結晶形態の同定は、XRPDを用いて確認及び分析した。
【0068】
実施例1.構造式IIIにより表される化合物の合成のためのテレスコーピングプロセスの開発。
構造式Iの化合物からの構造式IIIにより表される化合物の合成のためのテレスコーピングプロセスを、スキーム1に示すとおり開発した。
【0069】
スキーム1
【化18】
構造式IIIaにより表される化合物の単離の必要性を排除することによる構造式IIIにより表される化合物の合成のテレスコーピングステージI及びII(スキーム1)が非常に望ましい。テレスコーピングステージI及びIIにより、より高い全収率、より短いプロセス時間、並びに、溶剤及び試薬のより少ない操作のために、より効率的なプロセスが可能となる。以下に記載のとおり、複数の反応パラメータの意図されず、且つ、意外な組み合わせが見出され、これにより、新規で高度に有利なテレスコーピングプロセスの発見が可能となった。
【0070】
以下に記載のとおり、触媒、有機塩基及びエーテル含有溶剤の組み合わせにより、スキーム1のステージI(構造式IIIaにより表される化合物の合成)に係る高い転換速度及び立体選択性が意外なことにもたらされた。構造式IIIaにより表される化合物を、単離又は精製することなく加水分解に供した(ステージII、スキーム1)。スキーム1のステージIIにおいて、無機塩基(例えば、KOH)を加水分解試薬として採用し、及び、IPAを共溶剤として採用することで、構造式IIIにより表される化合物が、予想外に高い収率及び立体選択性でもたらされた。
【0071】
開示のプロセスでは、構造式IIIaにより表される中間体化合物を単離する必要性が排除されている。
【0072】
以下に示す実験は、スキーム1に示すテレスコーピングプロセスの開発を示す。R=Ph中の構造式IIにより表される化合物(化合物II-Ph)を、この実験のために選択した。合成スキームをスキーム2に示す。スキーム2は、構造式IIIaにより表される化合物(R=Ph)の2つの異性体を示す。スキーム2に示すとおり、構造式Iにより表される化合物と構造式II-Phにより表される化合物との反応は、構造式IIIaにより表される化合物のシス-異性体及びトランス-異性体であり、Rがフェニルである、構造式Z-IIIa-Phにより表される化合物及び構造式E-IIIa-Phにより表される化合物の混合物の形成をもたらす。所望の異性体はZ-異性体(構造式Z-IIIa-Phにより表される化合物)であるため、同時にステージIにおける反応の全体的な転換率を高めながら、Z/E異性体比を高めるための取り組みに集中した。
【0073】
スキーム2.
【化19】
1.ステージIの成果に対するDABCOの量の影響
DIPEAなどの有機塩基の存在下における触媒量のDABCOは、Rがフェニルである構造式IIIaにより表される化合物を高い転換率及び立体選択性でもたらすことが以下に説明した実験で実証された。
【0074】
DABCO化学量論を低減させることの影響を調べた。溶剤としてDMFを用い、構造式II-Phにより表される化合物対構造式Iにより表される化合物の2:1化学量論を用い、及び、構造式Iにより表される化合物を基準としてDABCO化学量論を2から、先ずは1.1、次いで、0.1に減らすことで、ステージIに係る選択性が向上した(表1、項目1~3)。特に、DABCO化学量論を0.1に低減することで、Z-IIIa-Ph対E-IIIa-Phの約99:1比がもたらされた。
【0075】
さらに、試薬の化学量論を、構造式II-Phにより表される化合物の1当量、構造式Iにより表される化合物の1.5当量、及び、1.1当量のDABCOに変更し、温度を先ずは0℃~5℃に、次いで、-25~-20℃に下げることで、2つの注目すべき影響が見られた。先ず、温度の低下に伴ってステージIに係る選択性が増加した(0~5℃では、構造式Z-IIIa-Phにより表される化合物対構造式E-IIIa-Phにより表される化合物の83:17比が観察され、-20~-25℃では、構造式Z-IIIa-Phにより表される化合物対構造式E-IIIa-Phにより表される化合物の95:5比が観察された;表1、項目4~5)。第2に、経時的に異性化の発生が観察された(表1、項目4~6)。
【0076】
構造式II-Phにより表される化合物及び構造式Iにより表される化合物の両方に対してDABCOの量を0.95当量に減らした場合、良好な選択性が見られると共に、経時的な異性化は見られなかった。これは、二重結合の異性化が過剰量の遊離DABCOに関連する影響であり得ることを示唆しており、ここで、遊離DABCOは、プロトン化されておらず、過剰量のヨードアクリレートを含まないと定義される。実験のさらなるレビューでは(例えば、表1中、項目3及び7と比して項目4及び5)、構造式II-Phにより表される化合物と比して、DABCOの当量の総量が1未満である場合には、Rがフェニルである構造式IIIaにより表される化合物の異性化はより遅くなるか、又は、停止させすることが分かった。この知見は、DABCOが不活性化(ヨードアクリレートの二重結合に結合するか、又は、ヨウ化水素酸塩とされることで)されており、且つ、遊離塩基として利用可能ではない場合、反応はより影響されにくくなる可能性があることを示唆していた。
【0077】
触媒(例えば、DABCO)及び有機塩基(例えばDIPEA)を反応混合物に添加した場合、並びに、触媒及び有機塩基の当量の総量が構造式II-Phにより表される化合物の1当量未満である場合には、ステージIにおける反応に係る収率及び選択性は特に有利に高いことも実証されていた。
【0078】
さらなる利点として、触媒量のDABCOが存在する反応条件では、反応を完了に導くために2当量の構造式II-Phにより表される化合物を用いる必要性がなかった。わずか1.2当量が、94%の転換率をもたらすために有効であることが見出された(表1、項目8)。
【0079】
【0080】
上記の実験は、一定の条件下では、DIPEAなどの有機塩基の存在下における触媒量のDABCOは、高い転換率及び立体選択性で、Rがフェニルである構造式IIIaにより表される化合物をもたらすことを実証する。
【0081】
2.ステージIの成果に対する溶剤の影響。
研究を実施して、ステージIの転換速度及び立体選択性、並びに、テレスコーピングステージI及びIIに対する溶剤の影響を判定した。
【0082】
DMFはステージIIにおける加水分解条件に望ましい溶剤ではないため、他の溶剤をステージIについて調べた。以下に説明した実験は、MeTHFが、高い転換率及び選択性をもたらす、ステージIに有利な溶剤であることを示していた。
【0083】
ステージIの反応における溶剤の極性の影響を試験した。溶剤の極性の低下(DMFからトルエン又はMeTHFへ)は、構造式Z-IIIa-Phにより表される化合物対構造式E-IIIa-Phにより表される化合物の比の改善をもたらした(DMFの場合におけるおよそ80:20から、表1の項目8に示すとおり、MeTHFの場合における95:5の高さまで改善(表2を参照のこと))。溶剤の極性が下がると、所望の反応速度及び異性化速度の両方が低下した。トルエンと比して、MeTHFは、より高い選択性及び匹敵する活性をもたらした(表2、項目2~4)。MeTHFを用いると共にこの反応を室温で実施することによるステージIのプロセスの高い転換率及び選択性のため、テレスコーピングプロセスにおいてこの溶剤をキャリアとして用いて、ステージIにおけるプロセスをステージIIにおけるその後の加水分解ステップとリンクさせることの可能性が提示された。
【0084】
【0085】
ステージIにおいてMeTHFを溶剤として用いることで、構造式IIIaにより表される化合物の高い転換率及び選択性がもたらされる。結果として、ステージI及びステージIIのテレスコーピングの機会が提供され、それ故、構造式IIIaにより表される化合物を単離するステップ、及び、関連する材料の損失が回避される。
【0086】
3.ステージIIにおける金属水酸化物及び共溶剤の影響。
スキーム3、ステージIIを参照して、異なる組み合わせの無機塩基及び溶剤を判定するための実験を実施した。加水分解試薬として用いた場合、NaOH及びKOHなどの無機塩基、並びに、MeTHF及び水と共に共溶剤として用いた場合、IPAは、有利な収率及び立体選択性を伴って構造式IIIの化合物をもたらすことが判明した。
【0087】
スキーム3.
【化20】
加水分解試薬として水酸化リチウムを当初選択したが、これは、水酸化リチウムはもたらす反応動態学が好ましく、エステル加水分解プロセスに頻繁に用いられるためである。MeTHF中における水酸化リチウム(5当量)による構造式IIIa-iPrにより表される化合物の加水分解は、IPA又は他の相間移動剤が不在の場合比較的遅い(表3、項目1~4)。このプロセスは顕著な異性化をも伴うものであり、これにより、構造式E-IIIにより表される望ましくない化合物が結果として生成されてしまっていた。
【0088】
また、LiOHは薬学用途には好ましい試薬ではない。Li塩はそれ自体が薬学的に有効な化合物であるため、LiOHを用いて生成される薬学中間体及び最終生成物では、Liレベルを綿密に監視しなければならない。従って、LiOHに対する代替としてNaOH及びKOHを試験した(表3、項目5~12、17~24)。
【0089】
部分混和性を付与することにより有機相と水性相との間の反応を促進させる能力のために、IPAを共溶剤として試験した。共溶剤としてIPAが存在することで、加水分解プロセスの成果が顕著に向上した(表3、項目13~24)。
【0090】
【0091】
この実験において、ステージIの反応は以下の条件下で実施した:
・構造式Iにより表される化合物(12g)及びDABCO(0.1当量、0.48g)をMeTHF中に溶解し、続いて、構造式II-iPrにより表される化合物(1.2当量、12.3g)及びDIPEA(1.0当量、7.4mL)を添加した。
・反応混合物を20時間撹拌し、次いで、5体積当量の水で洗浄した(構造式Iにより表される化合物の体積に対して)。
・アリコートをとり(反応混合物の1/6)、表3中の加水分解条件に従って試薬で処理した。
【0092】
表3中のデータは、LiOHと比して、NaOH及びKOHは共に、Z/E異性化レベルを低く維持しながら、構造式IIIa-iPrにより表される化合物の加水分解速度を向上させたことを示す。また、表3中のデータは、IPAが、スキーム3のステージIIに係る転換率及び立体選択性の両方を向上させたことを示す。
【0093】
実施例2.構造式IIIにより表される化合物の合成。
以下の実施例は、1.0kg規模での構造式IIIにより表される化合物の合成を開示する。構造式IIIにより表される化合物は、99%超の純度(UPLC)を伴って、72~75%の収率で合成される。
・窒素雰囲気下に、50Lのガラス製反応器に、1,000kgの構造式Iにより表される化合物(1当量)、40gのDABCO(0.1当量)及び2,559kgのMeTHFを仕込み、混合物を撹拌して溶解させた。
・この混合物に、1,040kgの構造式IIの化合物によって表される化合物(ここで、Rはイソプロピル基(1.2当量)である)を添加し、漏斗を0.853kgのMeTHFですすいだ。
・この混合物に、滴下漏斗で460gのDIPEA(1.0当量)を添加し、漏斗を0.853kgのMeTHFですすいだ。
・混合物を20~25℃で16時間撹拌し、次いで、反応の完了を確認するためにサンプリングした。
・この容器に、穏やかに撹拌すると共に温度を20~25℃に維持しながら、5.0kgのDD水を添加し、得られた混合物を20分間撹拌した。
・撹拌を停止し、層を分離させた。下部の水性層を除去し廃棄した。
・上部の有機層に、穏やかに撹拌すると共に温度を20~25℃に維持しながら、30g 37%HClの2,975kgの水中の溶液、続いて、1.18kgの塩水を添加した。
・混合物を20~25℃で20分間撹拌し、次いで、撹拌を停止し、層を分離させた。下部の水性相を除去し廃棄した。
・この容器に、20~25℃で穏やかに撹拌しながら、1.57kgのIPAを添加した。
・この反応混合物に、穏やかに撹拌すると共に温度を20~25℃に維持しながら、KOH1,174kg(5当量)のDD水5.0kg中の溶液を添加した。
・混合物を20~25℃で3時間撹拌し、次いで、反応の完了を確認するためにサンプリングした。
・反応が完了したら、穏やかに撹拌しながら、この混合物に5,935kgの塩水を添加した。
・このバッチを、20~25℃で20分間激しく撹拌した。次いで、撹拌を停止し、層を分離させた。下部の水性層を分離し、廃棄した。
・有機層に、激しく撹拌しながら、1,998kgのDD水を添加し、続いて、20分間撹拌した。
・激しく撹拌しながら、0.934kgの5M HCl溶液(aq.)で、混合物(下部の相)のpHを0~2を目標として調節した。
・穏やかに撹拌しながら、バッチの温度を50~55℃に昇温し、撹拌を20分間維持した。温度を50~55℃に維持しながら、下部の水性層を分離し、廃棄した。
・保持した有機相を0~5℃に冷却し、次いで、3Lの目標体積まで蒸留した。
・蒸留が完了したら、バッチ温度を50~55℃に昇温し、その温度で1時間保持した。
・温度を50~55℃に維持すると共に穏やかに撹拌しながら、5,645kgのイソオクタンを、最短でも30分間かけて容器に添加した。
・イソオクタンの添加に続いて、温度を最短でも60分間かけて20~25℃に調節し、次いで、最短でも1時間20~25℃に保持した。
・バッチを最短でも1時間かけて0~5℃に冷却し、次いで、その温度で少なくとも1時間保持した。
・バッチをろ過し、フィルタケーキを2,145kgのイソオクタンにより、0~5℃で洗浄した。
・ろ過した生成物を、乾燥するまで、フィルタ上において窒素流下に乾燥させた。
・構造式IIIにより表される化合物の収率は72~75%、純度は99%超(UPLC)であった。
【0094】
実施例3.構造式IIIにより表される化合物の合成。
以下の実施例は、100kg規模での構造式IIIにより表される化合物の合成を開示する。構造式IIIにより表される化合物は、99.7%超の純度(UPLC)を伴って、75±10%の収率で合成される。構造式IIIにより表される化合物の固形分はイソオクタンで析出する実施例2とは対照的に、この実施例において、構造式IIIにより表される化合物の固形分は、ヘプタンで析出する。
・4000Lの清浄な不活性ガラス内張反応器に、構造式Iの化合物(1当量)、DABCO(0.1当量)及びMeTHFを仕込み、窒素雰囲気下で、得られた混合物を15/20℃で、少なくとも15分間撹拌して溶解させた。
・混合物の温度を10/20℃に調節し、構造式IIの化合物により表される化合物(ここで、Rはイソプロピル基(1.2当量)である)を添加した。
・次いで、混合物にMeTHFリンスを仕込んだ。DIPEA(1.0当量)をこの混合物に10/20℃(10℃の目標温度)で添加し、続いて、10/20℃でMeTHFリンスを添加した。
・混合物の激しい撹拌を維持するために必要な撹拌速度に調節しながら、得られた反応混合物を、15℃で、反応の完了が確認されるまで(少なくとも12時間)撹拌した。
・反応混合物を、15℃で、少なくとも2時間、撹拌しながら保持した。
・10/25℃の混合物温度を維持しながら、水を反応混合物に添加した。混合物を15/20℃で少なくとも15分間撹拌し、分離させ、下部の第1の水性相を除去した。
・残った有機相を新たな乾燥した不活性6000Lガラス内張反応器に移し、続いて、MeTHFリンスを移した。
・清浄な不活性ガラス内張反応器中において、水、塩化ナトリウム及び塩酸を仕込むことにより失活溶液を調製し、少なくとも30分間、15/25℃で溶解するまで混合した。
・調製した失活溶液を有機相を含む第2の反応器(6000L反応器)に添加し、少なくとも15分間、15/20℃の混合物温度(発熱はほとんど若しくはまったくない)で混合した。
・混合物を少なくともさらに15分間、15/20℃で静置して、水性層及び有機層を分離させた。水性相を除去して、存在する場合界面相を有機相と共に残した。
・反応器を水ですすぎ、乾燥させ、その後、水及びKOHを仕込み、少なくとも30分間、15/25℃で混合した。
・6000Lの反応器中の有機相にIPAを添加し、混合物を5~10分間、15/25℃で撹拌した。
・15℃で、第3の反応器からの水/KOH溶液を、第2の反応器の温度を15/25℃(添加は、発熱性であった)に保持しながら、有機相に添加し、これにより、反応混合物を生成した。
・次いで、6000Lのガラス内張反応器中の反応混合物を少なくとも2時間、窒素雰囲気下に、20/25℃で撹拌し、次いで、サンプリングした。不適格な場合、反応器を少なくともさらに2時間、窒素雰囲気下に、20/25℃で撹拌し続けて、構造式IIIにより表される化合物を形成した。適格な場合、反応を失活させた。
・別の反応器に、水及び塩化ナトリウムを添加し、少なくとも30分間、15/25℃で溶解するまで撹拌した。
・塩化ナトリウム溶液を反応混合物に仕込み、少なくとも15分間、15/25℃で激しく撹拌し、次いで、少なくとも15分間静置した。
・水性相を除去して、存在する場合界面相及び有機相を残した。
・反応器を水ですすぎ、乾燥させ、その後、水及びHClを仕込み、少なくとも10分間、20/25℃で混合した。
・6000Lの反応器中の有機相に、水を15/25℃で添加し、撹拌せずに5~10分間保持し、総体積を記録した。
・撹拌を再開し、必要な量のHCl溶液を添加して、0.5~2.0の目標pHを達成し、少なくとも10分間、15/25℃で混合した。
・混合物を、構造式IIIにより表される化合物が可溶化するまで50/55℃で加熱し、10分間撹拌し、次いで、少なくとも15分間静置した(バルク温度50/55℃)。
・水性相を除去し、界面相を有機層と共に残し、廃棄した。
・有機相を減圧下で30/40℃に冷却し、およそ3体積当量に濃縮した。濃縮プロセスが完了したら、最終有機相を50/55℃に加熱した。
・1時間以上かけて、99%ヘプタンを、内部温度が50/55℃である第2の反応器中の最終有機相に添加した。
・混合物を少なくとも3時間かけて0/5℃に冷却し、前記温度で少なくとも1.5時間撹拌した。
・MeTHF及び99%ヘプタンを組み合わせることによりケーキリンスを調製した。
・スラリーを遠心分離して一連の同等のケーキとし、ケーキの各々をMeTHF/ヘプタン混合物で洗浄した。
・構造式IIIにより表される化合物を撹拌ドライヤに移し、生成物が乾燥して均質な外観を呈するまで減圧下で乾燥させた。
・構造式IIIにより表される化合物を、75±10%収率、>99:1 Z/E比、及び、>99.7%純度で得た。
【0095】
実施例4:構造式(I)により表される化合物の合成
合成スキーム3
【化21】
化合物(IV)及び酢酸99%(4.2wts)を、清浄な不活性ガラス内張反応器に、窒素雰囲気の頭隙で仕込み、25/35℃又はそれ未満で、化合物(IV)が溶解するまで撹拌しながら保持した。
【0096】
バルク温度を20/25℃に調節し、次いで、1.4モル当量のヒドラジン一水和物(化合物(V))原液(0.225wts)を、20/30℃の温度を維持しながら、90分間NMTで容器に(発熱)仕込んだ。
【0097】
添加が完了したら、バッチ温度を55℃に昇温し、反応が完了するまで(UHPLCにより判定)、少なくとも5~16時間撹拌した(80rpm)。
【0098】
反応が完了したことが確認されたら、撹拌を伴って内部温度を55℃に維持しながら、脱塩水又は精製水(以下の説明においては「水」と称する)(5wts)を、混合物に、最短で2.5時間の時間をかけて、ゆっくりと均一に添加することにより、結晶化を生起させた。
【0099】
追加の5wtsの水を、最短で1時間の時間をかけて、55℃の温度範囲設定点で、混合物に添加した。
【0100】
混合物を55℃で少なくとも30分間撹拌した。核形成を確認した後、結晶化を、最短で3時間の時間をかけて20/25℃にゆっくりと冷却し、ここでは、少なくとも1時間、20/25℃で撹拌する。
【0101】
化合物(I)生成物を遠心分離により単離し、水(12wts)で洗浄し、撹拌ドライヤに移し、乾燥及び均質となるまで減圧下で乾燥させた。乾燥は、含水量及び溶剤含有量が仕様を満たすまで継続した。
【0102】
乾燥させた生成物は≦30℃に冷却され、梱包される。
【0103】
実施例5:構造式(VII)により表される化合物形態Dの合成
合成スキーム5
【化22】
化合物(III)、化合物(VI)(0.335wts±2%)及びMeTHF(5.8wts)を4000Lの乾燥させた不活性ガラス内張反応器に仕込み、混合物を、15分間NLT、15/20℃で、窒素雰囲気下に撹拌した。
【0104】
混合物を-20/-25℃に冷却した。次いで、DIPEA(0.846wts±2%)を、温度を-20/-25℃の間に維持しながら(発熱)、MeTHFリンス(0.26wts)との混合物に添加した。
【0105】
市販の50%プロピルホスホン酸無水物(T3P(登録商標))溶液(T3P(登録商標)原液基準で1.22wts±2%)を、-20℃NMTの温度で6時間NLTかけてこの混合物にゆっくりと添加し、続いて、MeTHF(0.86wts)ですすいだ。混合物を30分間NLT、-20/-25℃の間で、窒素雰囲気下に撹拌した後、急速に撹拌しながら混合物の温度を10/15℃に調節した。温度が到達したら、反応を監視するためにサンプルを取った(既知の基準を用いたUHPLC)。
【0106】
UHPLCにより反応が適合である場合、これをMeTHF(0.43wts)で希釈し、撹拌しながら、10/15℃で、精製水(5体積)で失活させた。
【0107】
二相混合物を15分間NLT、15/25℃で撹拌し、次いで、これらの層を少なくとも30分間、15/25℃で静置し、その後、水性層(底)を除去した。
【0108】
25分間NLT、15/25℃で激しく撹拌しながら、存在する場合には保持した界面相及び有機層を水(4.7体積)及び塩化ナトリウム(0.3wts)で洗浄した。
【0109】
混合物を30分間NLT、15/25℃で静置した後、水性層(底)及び存在する場合界面相を除去した。残った有機相を5分間NMT、15/25℃でゆっくりと撹拌し、15分間NLT静置し、いずれかの追加の沈降した水性相を除去した。
【0110】
有機層を減圧下とし、混合物を、55℃NMTのジャケット温度で35/45℃に加熱した。5体積の残存体積に達するまで、混合物を20/45℃で濃縮した。
【0111】
濃縮プロセスが完了したら、混合物の温度を20/25℃に冷却した。
【0112】
有機混合物をろ過し、MeTHFリンス(0.43wts)と共に濃縮容器に移した。
【0113】
MeTHF溶液を55℃NMTのジャケット温度で35/45℃に加熱し、ろ過したACN(7.8wts)を添加した。濃縮中、混合物の温度を、およそ10体積に達するまで、55℃NMTのジャケット温度で20/45℃に維持しながら、蒸留を介して溶剤交代を行った。
【0114】
ろ過したACN(3.9wts)を有機濃縮物に添加し、20/45℃で15分間NLT保持した。およそ10体積に達するまで、混合物を、20/45℃で、減圧下に、55℃NMTのジャケット温度で濃縮した。
【0115】
ろ過したACNの仕込み(3.9wts)を繰り返し、混合物を10体積に濃縮し、その後、ろ過したACN(3.9wts)を添加し、15分間NLT、20/45℃で撹拌した。
【0116】
MeTHF含有量が仕様を満たしたら(GCにより判定)、有機混合物を、75℃NMTのジャケット温度で65±2℃に加熱し、15/30分間で保持した。
【0117】
有機混合物を、ACN(16kg)リンスと共に結晶化容器に移した。混合物の温度を必要であれば65±2℃に調節し、15/30分間保持した。
【0118】
混合物を3時間NLTかけて20/25℃に冷却し、1~2時間、20/25℃で撹拌し、次いで、混合物を、撹拌しながら3時間NLTかけて0/5℃にさらに冷却した。混合物を0/5℃で1時間NLT保持した。
【0119】
結晶化混合物を遠心分離して一連の同等のケーキとし(30kgのウェットケーキの最大ケーキサイズ)、ケーキの各々を、冷やしたろ過したACN(141kg/180L)で洗浄した。141kg/180Lのケーキ洗浄液は、10体積NLTのACNと同等であった(ケーキが30kg以下であれば)。
【0120】
母液及び洗浄液を除去した。大気圧及び周囲温度で4~6時間穏やかに撹拌した後、フィルタケーキを、生成物が乾燥して均質な外観を呈するまで、減圧下で(45℃NMTのジャケット温度)乾燥させた。乾燥減量に係る判断基準が満たされた場合にプロセスの完了とする。
【0121】
実施例6:構造式(VII)により表される化合物の結晶性異形体形態の転換;形態Aの調製
本明細書において言及されている形態D及び形態Aは、その全内容が参照におけるより本明細書に援用されている米国特許第10,519,139号明細書において記載されている形態A及び形態Dである。
【0122】
合成スキーム6
【化23】
化合物(VII)形態Dを、4000Lの乾燥した不活性ガラス内張反応器に、ろ過したIPA(2.4wts)と共に仕込み、撹拌した。精製水(3wts)を混合物に添加した。
【0123】
温度を昇温し、次いで、40±2℃で少なくとも5時間、且つ、12時間以下保持して、形態Dから形態Aへの異形体転換を行った。
【0124】
次いで、スラリーを少なくとも1時間かけて15/20℃に冷却し、精製水(10wts)を15/20℃で撹拌しながら添加した。
【0125】
混合物続いて水リンス(200L)を、6000Lの乾燥した不活性ガラス内張反応器に移し、温度を、少なくとも1時間の間混合しながら15/20℃に保持した。
【0126】
別の反応器において、ろ過したIPA(0.79wts)及び水(4wts)を添加し、最短でも10分間撹拌し、次いで、溶剤混合物を、ケーキ洗浄用の清浄な専用の容器に移した。
【0127】
最少個数の遠心分離ケーキを算出し、個々のケーキのサイズが40kgのウェットケーキ以下であることを確実とし、このスラリーを、各々が40kg以下であるおよそ同等のケーキに遠心分離した。
【0128】
遠心分離ケーキの各々を一定体積のIPA/水溶液(150L)で洗浄し、その後、遠心分離機から取り出した。
【0129】
母液及び洗浄液を回収した。母液の一部を、必要に応じて遠心分離機の残存リンスに使用可能であった。フィルタケーキをプールし、生成物が乾燥して均質な外観を呈するまで減圧下で(45℃の最高ジャケット温度)乾燥させた。
【0130】
すべての特許、公開された出願及び本明細書において引用された文献に係る関連する教示は、参照によりそれらの全体が援用される。
【0131】
本発明を、その例示的実施形態を参照して特定的に示すと共に説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細に種々の変更を行い得ることを当業者は理解するであろう。
【国際調査報告】