(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-07
(54)【発明の名称】PAR2調節及びその方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220630BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220630BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20220630BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20220630BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220630BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220630BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220630BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220630BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220630BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220630BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20220630BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/705
C12Q1/37
C12Q1/68
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
G01N33/574
C07K7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564917
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 IB2020054114
(87)【国際公開番号】W WO2020225677
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チャンルー
(72)【発明者】
【氏名】サン,シクアン
(72)【発明者】
【氏名】スティーマーズ‐リー,グレイス
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ベリンダ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ13
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4H045AA10
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4H045BA14
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法が提供される。また、単離された変異体PAR2ポリペプチド、変異体PAR2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド、単離されたポリヌクレオチドを含むベクター、及びベクターを含む宿主細胞も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法であって、
a.細胞の表面に前記PAR2を発現する前記細胞を提供することであって、前記PAR2がシグナルペプチド配列を含む、ことと、
b.前記細胞を薬剤と接触させることと、
c.前記細胞の表面上のPAR2のレベルを測定することであって、対照と比較しての前記細胞の表面上のPAR2の前記レベルの低下は、前記薬剤が細胞内でPAR2を活性化可能であることを示す、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
PAR2が内因的に又は外因的に発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PAR2が外因的に発現される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
内因性PAR2発現が実質的に排除される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が、CHO-K1細胞、COS-7細胞、及びHEK293細胞からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤が、小分子、ポリペプチド、抗体、脂質、多糖類、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対照が、変異体PAR2ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記変異体PAR2ポリペプチドが、配列番号55と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤が、前記PAR2の前記シグナルペプチド配列に細胞内で結合してシグナルペプチド機能を妨害する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤が、前記PAR2上のアロステリック部位に結合し、前記アロステリック部位への前記薬剤の結合が、シグナルペプチド機能を妨害する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法であって、
a.細胞の表面に前記PAR2を発現する前記細胞を提供することであって、前記PAR2がシグナルペプチド配列を含む、ことと、
b.前記細胞を薬剤と接触させることと、
c.前記細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンド若しくは小分子と接触させることと、
d.前記細胞を前記プロテアーゼ及び/又はペプチドリガンドと接触させたときのPAR2の活性化レベルを測定することであって、対照と比較してのPAR2の前記活性化レベルの低下は、前記薬剤がPAR2を細胞内で活性化可能であることを示す、ことと、を含む、方法。
【請求項12】
PAR2が内因的に又は外因的に発現される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
PAR2が外因的に発現される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
内因性PAR2発現が実質的に排除される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、CHO-K1細胞、COS-7細胞、及びHEK293細胞からなる群から選択される、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤が、小分子、ポリペプチド、抗体、脂質、多糖類、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対照が、変異体PAR2ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞である、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記変異体PAR2ポリペプチドが、配列番号55と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤が、前記PAR2の前記シグナルペプチド配列に細胞内で結合してシグナルペプチド機能を妨害する、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤が、前記PAR2上のアロステリック部位に結合し、前記アロステリック部位への前記薬剤の結合が、シグナルペプチド機能を妨害する、請求項11~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記プロテアーゼが、トリプシン、トリプターゼ、第Xa因子TF、第VIIa因子、マトリプターゼ/MT-セリンプロテアーゼ1、システインプロテイナーゼ(RgpB)、チリダニプロテイナーゼDer p3、チリダニプロテイナーゼDer p9、フリン、及びトロンビンからなる群から選択される、請求項11~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ペプチドリガンドが、SLIGKV(配列番号1)、SLIGRL-NH
2(配列番号58)、又は2-フロイル-LIGRL-NH
2(配列番号59)を含む、請求項11~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記小分子がGB110である、請求項11~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
配列番号45、配列番号51、配列番号53、及び配列番号55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離された変異体PAR2ポリペプチド。
【請求項25】
請求項24に記載の変異体PAR2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項25に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項27】
請求項26に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項28】
単離された変異体PAR2ポリペプチドを産生する方法であって、前記方法は、請求項27に記載の宿主細胞を前記変異体PAR2ポリペプチドの発現に好適な条件下で培養することと、前記細胞又は培養物から前記変異体PAR2ポリペプチドを回収することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年5月3日出願の米国特許仮出願第62/842,869号の優先権を主張し、参照によりその開示の全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法の特定に関する。本発明はまた、単離された変異体PAR2ポリペプチド、ペプチドをコードする核酸、核酸を含むベクター、及びベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0003】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願は、ファイル名「JBI6090WOPCT1SEQLIST.TXT」及び2020年4月15日の作成日で、57kbのサイズを有するASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出された、配列表を含む。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、7回膜貫通ドメイン細胞表面受容体の一種であり、哺乳動物及び他の有機体における最大の受容体ファミリーからなる。それらは、感覚(視覚、味覚、嗅覚)、代謝、内分泌腺、免疫、及び神経系を含む、ヒト生理学におけるほぼ全ての系のシグナル伝達に関与する。タンパク質を細胞表面に導くための古典的なシグナルペプチドを有する多くの他の細胞表面受容体とは異なり、GPCRの大部分(>90%)はシグナルペプチドを有しない(Schulein et al.,2011)。一般に、比較的大きなN末端細胞外ドメインを有する、セクレチン受容体(Tam et.2014)、CRH受容体(Schulein et al.,2017)、グルカゴン受容体(Zhang et al.,2017)、及びグルカゴン様ペプチド受容体(Huang et al.,2010)などのクラスB受容体、並びに代謝型グルタミン酸受容体(Choi et al,2011)、GABA受容体(White et al.,1998)、及び接着型GPCR(Liebscher et al.,2014)などのクラスC GPCRは、クラスA受容体よりもシグナルペプチドを有する可能性が高い(
図1A)。シグナルペプチドの存在は、大きな親水性N末端が形質膜を横切るのを助けると仮定される。ほとんどのクラスA GPCRは、古典的なシグナルペプチドを有しない。これらのクラスA GPCRの第1の膜貫通ドメインは、これらの受容体が、小胞体(ER)内での翻訳及び組み立て後に細胞膜に移動するのを助けるシグナルアンカー配列として機能すると考えられる(Rutz et al.,2015)。
【0005】
PAR1、PAR2、PAR3、及びPAR4を含むプロテアーゼ活性化受容体(PAR)は、クラスA GPCR受容体サブファミリーに属する(Macfarlane et al.,2001)。相同性に関して、それらは、システイニルロイコトリエン受容体(CYSLT)、ナイアシン受容体(GPR109)、乳酸受容体(GPR81)、及びコハク酸受容体(GPR91)に非常に密接に関連する。シグナルペプチドを保有しない、最も近い隣接群(
図1B)とは異なり、全てのPARは、そのN末端に予測シグナルペプチドを有する(
図1C)。ゲノム解析は、PARが、単一エクソン遺伝子によって全てコードされるそれらの最も近い隣接群とは対照的に、シグナルペプチドのみをコードする追加のエクソンを有することを示し(
図1C)、これらのシグナルペプチドがPARに特異的な役割を果たし得ることを示唆している。本明細書に開示されるように、PAR2を利用して、PAR受容体機能及び局在におけるシグナルペプチドの重要性を研究した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般的な一態様では、本発明は、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法の特定に関する。本発明はまた、単離された変異体PAR2ポリペプチド、ペプチドをコードする核酸、核酸を含むベクター、及びベクターを含む宿主細胞にも関する。
【0007】
本明細書では、プロテアーゼ活性化受容体を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法が提供される。この方法は、(a)細胞の表面にプロテアーゼ活性化受容体を発現する細胞を提供することであって、プロテアーゼ活性化受容体がシグナルペプチド配列を含む、ことと、(b)細胞を薬剤と接触させることと、(c)細胞の表面上のプロテアーゼ活性化受容体のレベルを測定することであって、対照と比較しての細胞の表面上のプロテアーゼ活性化受容体のレベルの低下は、薬剤が細胞内でプロテアーゼ活性化受容体を活性化可能であることを示す、ことと、を含む。
【0008】
特定の実施形態では、プロテアーゼ活性化受容体を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法は、(a)細胞の表面にプロテアーゼ活性化受容体を発現する細胞を提供することであって、プロテアーゼ活性化受容体がシグナルペプチド配列を含む、ことと、(b)細胞を薬剤と接触させることと、(c)細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンド若しくは小分子と接触させることと、(d)細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンドと接触させたときのプロテアーゼ活性化受容体の活性化レベルを測定することであって、対照と比較してのプロテアーゼ活性化受容体の活性化レベルの低下は、薬剤がプロテアーゼ活性化受容体を細胞内で活性化可能であることを示す、ことと、を含む。
【0009】
特定の実施形態では、プロテアーゼ活性化受容体は、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)、PAR2、PAR3、及びPAR4からなる群から選択される。
【0010】
本明細書では、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法が提供される。この方法は、(a)細胞の表面にPAR2を発現する細胞を提供することであって、PAR2がシグナルペプチド配列を含む、ことと、(b)細胞を薬剤と接触させることと、(c)細胞の表面上のPAR2のレベルを測定することであって、対照と比較しての細胞の表面上のPAR2のレベルの低下は、薬剤が細胞内でPAR2を活性化可能であることを示す、ことと、を含む。
【0011】
特定の実施形態では、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法は、(a)細胞の表面にPAR2を発現する細胞を提供することであって、PAR2がシグナルペプチド配列を含む、ことと、(b)細胞を薬剤と接触させることと、(c)細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンド若しくは小分子と接触させることと、(d)細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンドと接触させたときのPAR2の活性化レベルを測定することであって、対照と比較してのPAR2の活性化レベルの低下は、薬剤がPAR2を細胞内で活性化可能であることを示す、ことと、を含む。
【0012】
特定の実施形態では、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4は、内因的に又は外因的に発現される。特定の実施形態では、内因性のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4発現は実質的に排除される。
【0013】
特定の実施形態では、細胞は、CHO-K1細胞、COS-7細胞、及びHEK293細胞からなる群から選択される。
【0014】
特定の実施形態では、薬剤は、小分子、ポリペプチド、抗体、脂質、多糖類、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される。
【0015】
特定の実施形態では、対照は、変異体プロテアーゼ活性化受容体ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞であり、好ましくは、変異体プロテアーゼ活性化受容体ポリペプチドは変異体PAR2ポリペプチドである。変異体PAR2ポリペプチドは、例えば、配列番号55と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。
【0016】
特定の実施形態では、薬剤は、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のシグナルペプチド配列に細胞内で結合してシグナルペプチド機能を妨害する。特定の実施形態では、薬剤は、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4上のアロステリック部位に結合し、アロステリック部位への薬剤の結合は、シグナルペプチド機能を妨害する。
【0017】
特定の実施形態では、プロテアーゼは、トリプシン、トリプターゼ、第Xa因子、第VIIa因子、マトリプターゼ/MT-セリンプロテアーゼ1、システインプロテイナーゼ(RgpB)、チリダニプロテイナーゼDer p3、チリダニプロテイナーゼDer p9、フリン、及びトロンビンからなる群から選択される。
【0018】
特定の実施形態では、ペプチドリガンドは、SLIGKV(配列番号1)、SLIGRL-NH2(配列番号58)、又は2-フロイル-LIGRL-NH2(配列番号59)を含むことができる。
【0019】
特定の実施形態では、小分子は、GB110とすることができる。
【0020】
また、配列番号45、配列番号51、配列番号53、及び配列番号55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離された変異体PAR2ポリペプチドも提供される。
【0021】
また、本発明の変異体PAR2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドも提供される。また、本発明の単離されたポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。また、本発明のベクターを含む宿主細胞も提供される。
【0022】
また、単離された変異体PAR2ポリペプチドを産生する方法も提供される。この方法は、本発明の宿主細胞を変異体PAR2ポリペプチドの発現に好適な条件下で培養することと、細胞又は培養物から変異体PAR2ポリペプチドを回収することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
上記の概要、及び本出願の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むことでより良く理解されるであろう。しかしながら、本出願は、図面に示される実施形態そのものに限定されないことを理解するべきである。
【
図1A】PAR受容体がクラスAサブファミリー内の受容体の固有の群であることを示す。
図1Aは、GPCRサブファミリーメンバー及びシグナルペプチド保有の例を示す。クラスB及びCにおいてシグナルペプチド領域が示されている。
【
図1B】PAR受容体がクラスAサブファミリー内の受容体の固有の群であることを示す。
図1Bは、配列類似性によってグループ化された、PAR受容体及びそれらの最も近い隣接群を示す。
【
図1C】PAR受容体がクラスAサブファミリー内の受容体の固有の群であることを示す。
図1Cは、PAR1~4のN末端アミノ酸配列を示す。シグナルペプチドは太字で示されている。各PAR受容体は、2つのエクソンによってコードされる。第1のエクソンによってコード化されたタンパク質領域には、下線が引かれている。受容体の開裂及び活性化に関与するArg(R)残基は太字で示されている。
【
図2A】古典的なシグナルペプチドのように挙動するPAR2シグナルペプチドを示す。
図2Aは、IgG-Fc分泌を誘導する際のPAR2のシグナルペプチドの役割を試験するための発現コンストラクトを示す。シグナルペプチドを有するPAR2のN末端(PAR2)、シグナルペプチドを有しないPAR2のN末端(PAR2ΔSP)、インスリンのN末端(IN)、及びインスリン受容体のN末端(IR)は、それぞれヒトIgG-Fcフラグメントに融合されている。PAR2、インスリン、及びインスリン受容体のシグナルペプチド領域は強調され、下線が引かれている。ヒトIgG-Fcフラグメントは強調されている。
【
図2B】古典的なシグナルペプチドのように挙動するPAR2シグナルペプチドを示す。
図2Bは、免疫蛍光染色及びELISAによる、細胞におけるIgG-Fc発現の検出を示す。示されるように、様々なIgG-Fc融合タンパク質を発現するCOS7細胞を固定し、洗剤を用いて浸透させた後、FTIC標識蛍光抗体(
図2B)によって検出又は染色した。
【
図2C】古典的なシグナルペプチドのように挙動するPAR2シグナルペプチドを示す。
図2Cは、免疫蛍光染色及びELISAによる、細胞におけるIgG-Fc発現の検出を示す。示されるように、様々なIgG-Fc融合タンパク質を発現するCOS7細胞を固定し、洗剤を用いて浸透させた後、ELISA(
図2C)によって検出又は染色した。ELISAについては、実験を4連で実施し、結果は平均±標準偏差で示されている。統計分析(一元配置分散分析)は、対照(NC)と比較して、PAR2(
**p=0.0019)、PAR2ΔSP(
*p=0.0249)、IN(
**p=0.0024)、及びIR(
**p=0.0038)が有意なレベルで発現されたことを実証した。
【
図2D】古典的なシグナルペプチドのように挙動するPAR2シグナルペプチドを示す。
図2Dは、ELISAによる培地へのIgG-Fc分泌の検出を示す。PAR2 N末端(PAR2)、シグナルペプチドを有しないPAR2 N末端(PAR2ΔSP)、インスリンのN末端(IN)、及びインスリン受容体(IR)のN末端を含む、異なるN末端を有する様々なIgG-Fc融合タンパク質を発現するCOS7細胞由来の無血清馴化培地。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照(NC)として使用した。実験を4連で実施し、結果は平均±標準偏差で示されている。統計分析(一元配置分散分析)は、対照(NC)と比較して、PAR2、IN、及びIRが多量の分泌されたIgG-Fcタンパク質を示すことを示した(
***p<0.0001)。全ての実験は3回実施され、非常によく似た結果が観察された。
【
図3】PAR2成熟タンパク質のアミノ(N)末端配列の決定を示す。PAR2のN末端細胞外領域は、IgG-FcのN末端に融合されている。PAR2の予測シグナルペプチドが示され、下線が引かれている。IgG-Fc領域が示されている。潜在的なN-結合型グリコシル化部位、NRSには、下線が引かれている。タンパク質をCOS7細胞において発現させ、アフィニティー精製した。精製したタンパク質のN末端を、トリプシン消化後のMS配列決定によって決定した。2つの配列、すなわち、非グリコシル化及びグリコシル化PAR2 N末端を表すTIQGTNR(配列番号42)及びTIQGTDR(配列番号43)が観察された。
【
図4A】PAR1及びPAR2受容体を発現するCHO-K1、COS7、及びHEK293細胞を示す。
図4Aは、CHO-K1、COS7、及びHEK293細胞が、高レベルのPAR1及びPAR2 mRNAを自然発現するが、PAR3及びPAR4 mRNAをほとんど又は全く自然発現しないことを実証する。mRNA発現を定量化するために、qPCR分析を使用した。テンプレートとして各細胞株から作製されたcDNAを使用してそれぞれのmRNA発現を定量化するために、PAR1、PAR2、PAR3、及びPAR4のそれぞれの特異的プライマーを使用した。β-アクチンプライマーを使用して、β-アクチンmRNA発現を内部対照として定量化した。PAR1、PAR2、PAR3、及びPAR4の相対mRNA発現を、最初に、β-アクチン発現を用いて正規化し、次いで、100%として任意に設定される、CHO-K1細胞におけるPAR1発現レベルを用いて正規化した。他の遺伝子の相対発現は、CHO-K1細胞におけるPAR1 mRNAレベルの百分率として表した。示されている結果は、平均±標準偏差(n=3)である。統計分析(一元配置分散分析)は、これらの細胞において検出不可能である、PAR4のmRNA発現と比較して、CHO細胞が、PAR1(
**p=0.0037)、PAR2(
*p=0.023)、及びPAR3(
*p=0.035)に対して高レベルのmRNAを発現することを示した。COS7及びHEK293細胞は、検出可能なPAR3及びPAR4 mRNAを発現せずに、PAR1(それぞれ、
**p=0.0029、
*p=0.032)及びPAR2(それぞれ、
**p=0.0013、
**p=0.0027)に対して高レベルのmRNAを発現する。
【
図4B】PAR1及びPAR2受容体を発現するCHO-K1、COS7、及びHEK293細胞を示す。
図4B、
図4C、及び
図4Dは、CHO-K1、COS7、及びHEK293細胞が、PAR1及びPAR2受容体を自然発現し、トロンビン(PAR1リガンド)及びトリプシン(PAR2リガンド)刺激に反応することを実証した。FLIPRアッセイを使用して、細胞内Ca
2+動員によって示される受容体活性化を測定した。相対蛍光単位(RFU)は、Ca
2+動員シグナルに対する蛍光強度の読み出し情報であった。様々な濃度のトロンビン又はトリプシンをリガンドとして使用して受容体を活性化した。アッセイは各データ点において3連で実施され、平均±標準偏差が示されている。
【
図4C】PAR1及びPAR2受容体を発現するCHO-K1、COS7、及びHEK293細胞を示す。
図4B、
図4C、及び
図4Dは、CHO-K1、COS7、及びHEK293細胞が、PAR1及びPAR2受容体を自然発現し、トロンビン(PAR1リガンド)及びトリプシン(PAR2リガンド)刺激に反応することを実証した。FLIPRアッセイを使用して、細胞内Ca
2+動員によって示される受容体活性化を測定した。相対蛍光単位(RFU)は、Ca
2+動員シグナルに対する蛍光強度の読み出し情報であった。様々な濃度のトロンビン又はトリプシンをリガンドとして使用して受容体を活性化した。アッセイは各データ点において3連で実施され、平均±標準偏差が示されている。
【
図4D】PAR1及びPAR2受容体を発現するCHO-K1、COS7、及びHEK293細胞を示す。
図4B、
図4C、及び
図4Dは、CHO-K1、COS7、及びHEK293細胞が、PAR1及びPAR2受容体を自然発現し、トロンビン(PAR1リガンド)及びトリプシン(PAR2リガンド)刺激に反応することを実証した。FLIPRアッセイを使用して、細胞内Ca
2+動員によって示される受容体活性化を測定した。相対蛍光単位(RFU)は、Ca
2+動員シグナルに対する蛍光強度の読み出し情報であった。様々な濃度のトロンビン又はトリプシンをリガンドとして使用して受容体を活性化した。アッセイは各データ点において3連で実施され、平均±標準偏差が示されている。
【
図4E】PAR1及びPAR2受容体を発現するCHO-K1、COS7、及びHEK293細胞を示す。
図4Eは、par1及びpar2ノックアウトHEK293細胞からのゲノムDNAの配列解析を示す。結果は、par1遺伝子における270bp欠失及びpar2遺伝子における347bp欠失が達成されたことを示す。欠失は、PAR1及びPAR2タンパク質の両方について、TM2からTM3までのコード領域を除去した。垂直線は、欠失部位を示す。
【
図4F】PAR1及びPAR2受容体を発現するCHO-K1、COS7、及びHEK293細胞を示す。
図4Fは、par1及びpar2ノックアウトHEK293細胞の特性評価を示す。示されるように受容体活性化を特性評価するために、FLIPRアッセイを使用した。野生型HEK293細胞を陽性対照として使用した。アッセイは各データ点において3連で実施され、平均±標準偏差が示されている。
【
図5A】シグナルペプチドがPAR2の機能発現に重要であることを実証する。
図5Aは、PAR2受容体に対する修正を示す概略図を示す。様々なPAR2変異体のN末端細胞外配列が示されている。ヒトPAR2野生型(PAR2)(配列番号57)、シグナルペプチドが欠失しているPAR2(PAR2ΔSP)(配列番号45)、インスリンシグナルペプチドを有するPAR2(PAR2-INSP)(配列番号47)、及びインスリン受容体シグナルペプチドを有するPAR2(PAR2-IRSP)(配列番号49)。PAR2の天然シグナルペプチド、インスリンシグナルペプチド、及びインスリン受容体シグナルペプチドが示されている。PAR2のテザーリガンド配列(SLIGKV)(配列番号1)には、下線が引かれている。
【
図5B】シグナルペプチドがPAR2の機能発現に重要であることを実証する。
図5B及び
図5Cは、トリプシン又は合成PAR2アゴニストペプチド(PAR2-AP)(配列番号1)をリガンドとして使用したFLIPRアッセイにおけるPAR2変異体の特性評価を示す。PAR2野生型受容体及び様々な修正の発現コンストラクトをpcDNA3.1にクローニングし、par1及びpar2がノックアウトされているHEK293細胞で一過的に発現させた。様々な濃度のトリプシン(
図5B)又はPAR-AP(配列番号1)(
図5C)を添加して、細胞内Ca
2+動員を刺激した。相対蛍光強度単位(RFU)が示されている。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。par1及びpar2遺伝子がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2受容体の組換え発現のための宿主細胞として使用した。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照(NC)として使用した。
【
図5C】シグナルペプチドがPAR2の機能発現に重要であることを実証する。
図5B及び
図5Cは、トリプシン又は合成PAR2アゴニストペプチド(PAR2-AP)(配列番号1)をリガンドとして使用したFLIPRアッセイにおけるPAR2変異体の特性評価を示す。PAR2野生型受容体及び様々な修正の発現コンストラクトをpcDNA3.1にクローニングし、par1及びpar2がノックアウトされているHEK293細胞で一過的に発現させた。様々な濃度のトリプシン(
図5B)又はPAR-AP(配列番号1)(
図5C)を添加して、細胞内Ca
2+動員を刺激した。相対蛍光強度単位(RFU)が示されている。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。par1及びpar2遺伝子がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2受容体の組換え発現のための宿主細胞として使用した。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照(NC)として使用した。
【
図6A】テザーリガンドの更なる欠失が、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現をレスキューすることを示す。
図6Aは、PAR2受容体に対する修正を示す概略図を示す。様々なPAR2変異体のN末端細胞外配列が示されている。ヒトPAR2野生型(PAR2)(配列番号57)、シグナルペプチドが欠失しているPAR2(PAR2ΔSP)(配列番号45)、シグナルペプチドが欠失し、かつテザーリガンド領域に対する更なる欠失を有するPAR2(PAR2ΔSPΔL)(配列番号51)。PAR2のシグナルペプチドが示されている。PAR2のテザーリガンド配列(SLIGKV)(配列番号1)には、下線が引かれている。
【
図6B】テザーリガンドの更なる欠失が、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現をレスキューすることを示す。
図6B及び
図6Cは、FLIPRアッセイを用いた変異体PAR2受容体の特性評価を示す。様々なPAR2発現コンストラクトを、par1及びpar2がノックアウトされているHEK293において一過的に発現させた。トリプシン(
図6B)又は合成アゴニストペプチドPAR2リガンド(PAR2-AP)(配列番号1)(
図6C)をリガンドとして使用して、受容体活性化を刺激した。par1及びpar2遺伝子がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2受容体の組換え発現のための宿主細胞として使用した。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照(NC)として使用した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。
【
図6C】テザーリガンドの更なる欠失が、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現をレスキューすることを示す。
図6B及び
図6Cは、FLIPRアッセイを用いた変異体PAR2受容体の特性評価を示す。様々なPAR2発現コンストラクトを、par1及びpar2がノックアウトされているHEK293において一過的に発現させた。トリプシン(
図6B)又は合成アゴニストペプチドPAR2リガンド(PAR2-AP)(配列番号1)(
図6C)をリガンドとして使用して、受容体活性化を刺激した。par1及びpar2遺伝子がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2受容体の組換え発現のための宿主細胞として使用した。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照(NC)として使用した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。
【
図7A】Arg
36からAlaへの変異が、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を助けることを示す。
図7Aは、PAR2受容体に対する修正/変異を示す概略図を示す。様々なPAR2変異体のN末端細胞外配列が示されている。特性評価のために、PAR2野生型(PAR2)(配列番号57)、Arg36Ala変異を有するPAR2(PAR2(R36A))(配列番号55)、シグナルペプチドが欠失しているPAR2(PAR2ΔSP)(配列番号45)、シグナルペプチドが欠失し、かつArg36Ala変異を有するPAR2(PAR2ΔSP(R36A))(配列番号53)を使用した。PAR2のシグナルペプチドが示されている。PAR2のテザーリガンド配列(SLIGKV)(配列番号1)には、下線が引かれている。PAR2のトリプシン開裂/活性化に関与する、Arg36を置換したAla残基が強調されている。
【
図7B】Arg
36からAlaへの変異が、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を助けることを示す。変異体受容体を、トリプシン(
図7B)又はPAR2-AP(
図7C)のいずれかをリガンドとして使用したFLIPRアッセイで特性評価した。par1及びpar2遺伝子がノックアウトされているHEK293細胞を、組換え発現のための宿主細胞として使用した。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照(NC)として使用した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。
【
図7C】Arg
36からAlaへの変異が、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を助けることを示す。変異体受容体を、トリプシン(
図7B)又はPAR2-AP(
図7C)のいずれかをリガンドとして使用したFLIPRアッセイで特性評価した。par1及びpar2遺伝子がノックアウトされているHEK293細胞を、組換え発現のための宿主細胞として使用した。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照(NC)として使用した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。
【
図8A】セリンプロテアーゼ阻害剤カクテルが、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を増加させることを示す。par1及びpar2がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2タンパク質の一過性発現のために使用した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(PI)による処理は、全ての受容体について同様の程度でEmax値を低下させた。プロテアーゼ処理サンプルは、Emax値において未処理細胞のものと比較して約80%の反応を示した。プロテアーゼ阻害剤カクテルで処理されたサンプルと処理されていないサンプルとの間でEC
50値を比較するために、それらのEmax値を用いて結果を正規化し、データをEmaxの百分率として表した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。
【
図8B】セリンプロテアーゼ阻害剤カクテルが、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を増加させることを示す。par1及びpar2がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2タンパク質の一過性発現のために使用した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(PI)による処理は、全ての受容体について同様の程度でEmax値を低下させた。プロテアーゼ処理サンプルは、Emax値において未処理細胞のものと比較して約80%の反応を示した。プロテアーゼ阻害剤カクテルで処理されたサンプルと処理されていないサンプルとの間でEC
50値を比較するために、それらのEmax値を用いて結果を正規化し、データをEmaxの百分率として表した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。
【
図8C】セリンプロテアーゼ阻害剤カクテルが、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を増加させることを示す。par1及びpar2がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2タンパク質の一過性発現のために使用した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(PI)による処理は、全ての受容体について同様の程度でEmax値を低下させた。プロテアーゼ処理サンプルは、Emax値において未処理細胞のものと比較して約80%の反応を示した。プロテアーゼ阻害剤カクテルで処理されたサンプルと処理されていないサンプルとの間でEC
50値を比較するために、それらのEmax値を用いて結果を正規化し、データをEmaxの百分率として表した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。
【
図8D】セリンプロテアーゼ阻害剤カクテルが、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を増加させることを示す。par1及びpar2がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2タンパク質の一過性発現のために使用した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(PI)による処理は、全ての受容体について同様の程度でEmax値を低下させた。プロテアーゼ処理サンプルは、Emax値において未処理細胞のものと比較して約80%の反応を示した。プロテアーゼ阻害剤カクテルで処理されたサンプルと処理されていないサンプルとの間でEC
50値を比較するために、それらのEmax値を用いて結果を正規化し、データをEmaxの百分率として表した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。
【
図8E】セリンプロテアーゼ阻害剤カクテルが、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を増加させることを示す。par1及びpar2がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2タンパク質の一過性発現のために使用した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(PI)による処理は、全ての受容体について同様の程度でEmax値を低下させた。プロテアーゼ処理サンプルは、Emax値において未処理細胞のものと比較して約80%の反応を示した。プロテアーゼ阻害剤カクテルで処理されたサンプルと処理されていないサンプルとの間でEC
50値を比較するために、それらのEmax値を用いて結果を正規化し、データをEmaxの百分率として表した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。
【
図9】PAR2野生型及び変異体の細胞表面タンパク質発現及び総タンパク質発現を示す。par1及びpar2がノックアウトされているHEK293細胞を、様々なPAR2タンパク質の一過性発現のために使用した。PAR2ペプチドリガンド、PAR2-AP及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(PI)を処理に使用した。対照処理として培地を使用した。細胞浸透性試薬あり又はなしでELISAを使用して、総細胞表面タンパク質発現及び総タンパク質発現を測定した。実験は各データ点において3連で実施され、示されている結果は平均±標準偏差である。統計分析(一元配置分散分析)は、細胞表面タンパク質及び総タンパク質の両方について、PAR2ΔSP、PAR2ΔSP(R36A)、及びPAR2ΔSPΔLが、PAR2と比較してより低いタンパク質発現を有することを示した(
****p<0.0001)。PAR2ΔSPと比較して、PAR2ΔSP(R36A)は、はるかに高いタンパク質発現を有する($$$$p<0.0001)。PAR2ΔSPを除いて、PAR2-APは、他の全てに対してタンパク質発現を減少させた(####p<0.0001)。プロテアーゼ阻害剤カクテル(PI)は、PAR2ΔSPに対してタンパク質発現を増加させただけであり(++++p<0.0001)、他に対してはタンパク質発現に影響を与えなかった。実験は3回実施され、非常によく似た結果が観察された。
【
図10A】Arg36Ala変異及びプロテアーゼ阻害剤が、シグナルペプチドを有しないPAR2-GFPの細胞表面発現を増加させることを示す。
図10Aは、様々なPAR2-GFP融合タンパク質発現コンストラクトの概略表示を示す。
【
図10B】Arg36Ala変異及びプロテアーゼ阻害剤が、シグナルペプチドを有しないPAR2-GFPの細胞表面発現を増加させることを示す。
図10Bは、PAR2-AP又はプロテアーゼ阻害剤の処理を有する様々なPAR2-GFPタンパク質の発現レベルを示す。様々なPAR2-GFP発現コンストラクトを、par1及びpar2がノックアウトされているHEK293細胞において一過的に発現させた。トランスフェクトされた細胞を、培地(培地)、ペプチドアゴニスト(PAR2-AP)、又はプロテアーゼ阻害剤カクテル(PI)のいずれかで処理し、PAR2-GFP融合タンパク質を発現している細胞の蛍光強度を測定した。アッセイは各データ点において4連で実施され、示されている結果は平均+標準偏差である。統計分析(一元配置分散分析)は、PAR2と比較して、PAR2ΔSP及びPAR2ΔSP(R36A)が、より低いタンパク質発現を有することを示した(
****p<0.0001)。PAR2ΔSPと比較して、PAR2ΔSP(R36A)は、はるかに高いタンパク質発現を有する($$$$p<0.0001)。PAR2ΔSPを除いて、PAR2-APは、他の全てに対してタンパク質発現を減少させた(####p<0.0001)。プロテアーゼ阻害剤カクテル(PI)は、PAR2ΔSPに対してタンパク質発現を増加させただけであり(++++p<0.0001)、他に対してはタンパク質発現に影響を与えなかった。
【
図10C】Arg36Ala変異及びプロテアーゼ阻害剤が、シグナルペプチドを有しないPAR2-GFPの細胞表面発現を増加させることを示す。
図10Cは、PAR2-AP又はプロテアーゼ阻害剤の処理下での様々なPAR2-GFP融合タンパク質の細胞分布を示す共焦点顕微鏡からの蛍光画像を示す。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照(NC)として使用した。蛍光強度は、タンパク質細胞分布のより良好な観察のために自動的に調整されている。
【
図11】形質膜に到達する前のプロテアーゼ開裂からPAR2を保護する際のPAR2シグナルペプチドの提案された役割を示す概略図を示す。シグナルペプチドを有しない場合、PAR2のプロテアーゼ活性化部位は、ER及びゴルジ中でプロテアーゼ開裂を受けやすく、これは、細胞表面に到達する前のPAR2活性化、及びその後の分解のためのリソソームへの移動につながる。シグナルペプチドを有する場合、PAR2は、シグナルペプチド関連トランスロコン複合体によって結合され、ER/ゴルジプロテアーゼによる開裂から分離/保護され、これにより、受容体は、細胞外トリプシン活性化を感知するために、形質膜に到達することが可能になる。N末端におけるPAR2のシグナルペプチドが示されている。PAR2のN末端における星は、トリプシンによる開裂/活性化部位(Arg36)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
背景技術において、また、本明細書全体を通じて各種刊行物、論文及び特許を引用又は記載する。これら参照文献の各々はその全容が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれる文書、操作、材料、デバイス、物品などの考察は、本発明のコンテキストを与えるためのものである。かかる考察は、これらの事物のいずれか又は全てが、開示又は特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術の一部を構成することを容認するものではない。
【0025】
特に規定のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。そうでない場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に記載される意味を有するものである。
【0026】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、特に文脈上明らかでない限り、複数の指示対象物を含むことに留意する必要がある。
【0027】
特に明記しない限り、本明細書に記載される濃度又は濃度範囲などのあらゆる数値は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、数値は、典型的には、記載される値の±10%を含む。例えば、1mg/mLの濃度は0.9mg/mL~1.1mg/mLを含む。同様に、1%~10%(w/v)の濃度範囲は0.9%(w/v)~11%(w/v)を含む。本明細書で使用するとき、数値範囲の使用は、文脈上そうでない旨が明確に示されない限り、その範囲内の整数及び値の分数を含む、全ての可能な部分範囲、その範囲内の全ての個々の数値を明示的に含む。
【0028】
別途記載のない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者であれば、単なる通常の実験手順を使用するだけで、本明細書に記載した特定の実施形態に対して多くの同等物を認識するか、又は確認することができよう。このような等価物は、本発明によって包含されることが意図される。
【0029】
本明細書で使用するとき、用語「備える(comprises)、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains)」、又は「含有する(containing)」あるいはこれらの任意の他の変形形態は、述べられている整数又は整数群を含むことが意図されるが、これら以外の他の整数又は整数群を除外するものではなく、非排他的又は非制限的であることが意図されることが理解されよう。例えば、一連の要素を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない、又はそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、又は装置に本来存在しない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって充足される。
【0030】
本明細書で使用するとき、複数の列挙された要素間の接続的な用語「及び/又は」は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、用語「及び/又は」の要件を満たすことが理解される。
【0031】
本明細書で使用するとき、用語「からなる(consists of)」又は「からなる(consist of)」若しくは「からなる(consisting of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用するとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含するが、追加の整数又は整数群が、指定の方法、構造、又は組成物に追加されることはないことを示す。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「から本質的になる(consists essentially of)」又は「から本質的になる(consist essentially of)」若しくは「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体にわたって使用するとき、任意の列挙された整数又は整数群を包含し、任意選択で、指定の方法、構造、又は組成物の基本的又は新規の特性を実質的に変化させない任意の列挙された整数又は整数群も包含することを示す。M.P.E.P.§2111.03を参照されたい。
【0033】
本明細書で使用される場合、「被験体/対象」は、任意の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。本明細書で使用するとき、用語「哺乳動物」は、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、これらに限定されるものではないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなど、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0034】
好ましい発明の構成要素の寸法又は特徴を指すときに本明細書で使用される用語「約」、「およそ」、「概ね」、「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるように、記載の寸法/特徴が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同じ又は類似する、それらからのわずかな相違を除外するものではないことを示すことも理解すべきである。最小値では、数値パラメータを含むこのような参照は、当該技術分野において受け入れられている数学的及び工業的原理(例えば、四捨五入、測定、又は他の系統的誤差、製造公差など)を使用すると、最小有効数字は変化しない変形形態を含むであろう。
【0035】
「同一」又は「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列(例えば、PAR2ポリペプチド及びそれをコードするPAR2ポリヌクレオチド)に関連して、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して又は目視検査によって測定したとき、一致が最大になるように比較及びアラインメントした場合に同じであるか、又は特定のパーセントの同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドを有する2つ以上の配列又はサブ配列を指す。
【0036】
配列比較のために、典型的には、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて、サブシーケンス座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0037】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith&Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman&Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson&Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似検索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)、又は目視検査(一般的に、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocols,a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)を参照されたい)によって行うことができる。
【0038】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの例は、それぞれ、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-3402にそれぞれ記載されているBLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を行うソフトウェアは、国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列における同じ長さのワードとアラインメントしたときに一致するか、又はいくつかの正の値の閾値スコアTを満たすかのいずれかの、クエリー配列における長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列対(HSP)を同定することを含む。Tは、隣接ワードスコア閾値(Altschul et al.、上記)と称される。これらの初期隣接ワードヒットは、それを含有するより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして機能する。次いで、累積アラインメントスコアを増加させることができる限り、各配列に沿ってワードヒットを両方向に延長する。
【0039】
ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致する残基の対についてのリワードスコア、常に>0)及びN(不一致の残基についてのペナルティスコア、常に<0)を使用して累積スコアを計算する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積アラインメントスコアがその最大獲得値から量Xだけ低下したとき、1つ以上の負のスコアリング残基のアラインメントの蓄積により、累積スコアがゼロ以下になったとき、又はいずれかの配列の末端に達したときに、各方向におけるワードヒットの延長を停止する。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、及びXが、アライメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値10、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用する(Henikoff&Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915(1989)を参照)。
【0040】
配列同一性パーセントを計算することに加えて、BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計解析も行う(例えば、Karlin&Altschul,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-5787(1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然に生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が、約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列に類似しているとみなされる。
【0041】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの更なる指標は、以下に記載されるように、第1の核酸によりコードされるポリペプチドが、第2の核酸によりコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。したがって、ポリペプチドは、典型的には、第2のポリペプチドと実質的に同一であり、例えば、2つのペプチドは保存的置換によってのみ異なる。2つの核酸配列が実質的に同一である別の指標は、2つの分子がストリンジェントな条件で互いにハイブリダイズすることである。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、又は「タンパク質」は、アミノ酸から構成される分子を指すことができ、当業者によってタンパク質として認識され得る。本明細書では、アミノ酸残基の従来の1文字又は3文字コードが使用される。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書において互換的に使用することができる。ポリマーは、直鎖又は分枝鎖であり得、修飾されたアミノ酸を含むことができ、非アミノ酸により中断され得る。本用語はまた、自然に修飾されているか、又は介入によって修飾されているアミノ酸ポリマーを包含する。例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識構成成分とのコンジュゲート。また、定義には、例えば、アミノ酸の1つ又は2つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、並びに当該技術分野において既知の他の修飾が含まれる。
【0043】
本明細書に記載のペプチド配列は、通常の慣習に従って記載され、ペプチドのN末端領域は左側にあり、C末端領域は右側にある。アミノ酸の異性体形態は既知であるが、別途明示的に示されない限り、示されるのはアミノ酸のL型である。
【0044】
本明細書で使用するとき、用語「PAR2」は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)である、プロテアーゼ活性化受容体2タンパク質を指す。PAR2は、ファミリーメンバーPAR1、PAR3、及びPAR4と共に、クラスA GPCR受容体サブファミリーのメンバーである。PAR1、PAR2、PAR3、及びPAR4タンパク質は、PAR1(F2R)、PAR2(F2RL1)、PAR3(F2RL2)、及びPAR4(F2RL3)をコードする遺伝子内の追加のエクソンによってコードされる、予測シグナルペプチドを有する。
【0045】
本明細書で使用するとき、用語「活性化」は、アゴニストが受容体(例えば、PAR2)に結合し、その結果、受容体の下流経路へのシグナルカスケードをもたらす。一例として、薬剤によるPAR2の活性化は、本明細書に記載のように、Ca2+細胞内流入を増加させ、GTPγS結合を増加させ(例えば、非加水分解性GTPアナログGTPγSへのGタンパク質の結合の増加において)、β-アレスチンリクルートメントを増加させ(例えば、GPCRへのβ-アレスチンのリクルートメントの増加)、サイクリックAMP阻害を増加させ、イノシトールリン酸-1(IP)産生を増加させる経路の活性化をもたらす。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「調節」は、受容体(例えば、PAR2)の活性化レベルの変化を指す。一例として、薬剤は、PAR2活性化のレベルを低下させること(例えば、Ca2+細胞内流入を低減すること、GTPγS結合を低減すること、β-アレスチンリクルートメントを低減すること、サイクリックAMP阻害を低減すること、及びIP産生を低減すること)によって活性化レベルを調節することができる。PAR2活性化のレベルを低下させる薬剤は、PAR2活性化の阻害剤(例えば、アンタゴニスト)である。別の例として、薬剤は、PAR2活性化のレベルを増加させること(例えば、Ca2+細胞内流入を増加させること、GTPγS結合を増加させること、β-アレスチンリクルートメントを増加させること、サイクリックAMP阻害を増加させること、及びIP産生を増加させること)によって活性化レベルを調節することができる。PAR2活性化のレベルを増加させる薬剤は、PAR2活性化のエンハンサ(例えば、アゴニスト)である。
【0047】
細胞内プロテアーゼ活性化受容体(例えば、PAR2)活性化を増加させる薬剤を同定する方法
本明細書では、プロテアーゼ活性化受容体を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法が提供される。この方法は、(a)細胞の表面にプロテアーゼ活性化受容体を発現する細胞を提供することであって、プロテアーゼ活性化受容体がシグナルペプチド配列を含む、ことと、(b)細胞を薬剤と接触させることと、(c)細胞の表面上のプロテアーゼ活性化受容体のレベルを測定することであって、対照と比較しての細胞の表面上のプロテアーゼ活性化受容体のレベルの低下は、薬剤が細胞内でプロテアーゼ活性化受容体を活性化可能であることを示す、ことと、を含む。
【0048】
特定の実施形態では、プロテアーゼ活性化受容体を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法は、(a)細胞の表面にプロテアーゼ活性化受容体を発現する細胞を提供することであって、プロテアーゼ活性化受容体がシグナルペプチド配列を含む、ことと、(b)細胞を薬剤と接触させることと、(c)細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンド若しくは小分子と接触させることと、(d)細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンドと接触させたときのプロテアーゼ活性化受容体の活性化レベルを測定することであって、対照と比較してのプロテアーゼ活性化受容体の活性化レベルの低下は、薬剤がプロテアーゼ活性化受容体を細胞内で活性化可能であることを示す、ことと、を含む。
【0049】
特定の実施形態では、プロテアーゼ活性化受容体は、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)、PAR2、PAR3、及びPAR4からなる群から選択される。
【0050】
本明細書では、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法が提供される。この方法は、(a)細胞の表面にPAR2を発現する細胞を提供することであって、PAR2がシグナルペプチド配列を含む、ことと、(b)細胞を薬剤と接触させることと、(c)細胞の表面上のPAR2のレベルを測定することであって、対照と比較しての細胞の表面上のPAR2のレベルの低下は、薬剤が細胞内でPAR2を活性化可能であることを示す、ことと、を含む。
【0051】
特定の実施形態では、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法は、(a)細胞の表面にPAR2を発現する細胞を提供することであって、PAR2がシグナルペプチド配列を含む、ことと、(b)細胞を薬剤と接触させることと、(c)細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンド若しくは小分子と接触させることと、(d)細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンドと接触させたときのPAR2の活性化レベルを測定することであって、対照と比較してのPAR2の活性化レベルの低下は、薬剤がPAR2を細胞内で活性化可能であることを示す、ことと、を含む。
【0052】
細胞内のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のレベルを決定することは、当該技術分野において既知である、以下に記載される方法を使用して行うことができる。薬剤がPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4を細胞内で活性化することができるかどうかを判定するときに、細胞の表面上のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のレベルを決定することができる。薬剤と接触した細胞の表面上のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のレベルは、対照細胞の表面上のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のレベルと比較することができる。特定の実施形態では、対照細胞は、薬剤と接触しない。特定の実施形態では、対照細胞は、変異体プロテアーゼ活性化受容体ポリペプチドを発現するよう遺伝子操作され、好ましくは、変異体プロテアーゼ活性化受容体は、変異体PAR2ポリペプチド(例えば、配列番号55に記載されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するPAR2ポリペプチドを発現する細胞)である。
【0053】
細胞内のプロテアーゼ活性化受容体(例えば、PAR2)の活性化レベルを決定することは、当該技術分野において既知である、以下に記載される方法を使用して行うことができる。プロテアーゼ活性化受容体(例えば、PAR2)の活性化レベルを決定することは、細胞内Ca2+動員、サイクリックAMP阻害、β-アレスチンリクルートメント、GTPγS結合、及び/又はIP産生の変化を決定することによって達成することができる。薬剤がプロテアーゼ活性化受容体(例えば、PAR2)を細胞内で活性化することができるかどうかを判定するときに、プロテアーゼ活性化受容体(例えば、PAR2)活性化のレベルを決定することができる。薬剤と接触した細胞内でのプロテアーゼ活性化受容体(例えば、PAR2)活性化のレベルは、対照細胞のプロテアーゼ活性化受容体(例えば、PAR2)活性化のレベルと比較することができる。特定の実施形態では、対照細胞は、薬剤と接触しない。特定の実施形態では、対照細胞は、変異体プロテアーゼ活性化受容体(例えば、PAR2)ポリペプチドを発現するよう遺伝子操作される(例えば、配列番号55に記載されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するPAR2ポリペプチドを発現する細胞)。
【0054】
PAR2の活性化レベルを決定することは、細胞内Ca2+流入、サイクリックAMP阻害、β-アレスチンリクルートメント、GTPγS結合、及び/又はイノシトールリン酸-1(IP)産生の変化を決定することによって達成することができる。細胞内PAR2活性化の増加は、細胞内Ca2+流入の増加、サイクリックAMP阻害の増加、β-アレスチンリクルートメントの増加、GTPγS結合の増加、及びIP産生の増加につながり得る。細胞内PAR2活性化の減少は、細胞内Ca2+流入の減少、サイクリックAMP阻害の減少、β-アレスチンリクルートメントの減少、GTPγS結合の減少、及びIP産生の減少につながり得る。細胞内Ca2+流入、サイクリックAMP阻害、β-アレスチンリクルートメント、GTPγS結合、及びIP産生の変化を決定するアッセイは、当該技術分野において既知であり、例えば、Liu et al.,Mol.Pharmacol.88:911-25(2015)、Liu et al.,J.Biol.Chem.284:2811-22(2009)、Liu et al.,Nature 475(7357):519-23(2011)、及びTrinquet et al.,Expert Opin.Drug.Discov.6:981-94(2011)を参照されたい。
【0055】
特定の実施形態では、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4は、内因的に発現される。PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4を内因的に発現する細胞は、当該技術分野において既知であり、CHO-K1細胞、COS-7細胞、及びHEK293細胞を含むことができるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、内因性のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4発現は実質的に排除される。内因性のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4発現は、ヌクレオチド配列をノックアウトするための当該技術分野において既知の方法(例えば、相同組換え、標的欠失など)を用いて、細胞内のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4をコードするヌクレオチド配列をノックアウトすることによって排除することができる。内因性のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4発現は、RNAi技術を用いてPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のmRNA発現をノックダウンすることにより、排除することができる(例えば、PAR1、PAR2、PAR3、若しくはPAR4 mRNA発現をノックダウンすることができる短干渉RNA、及び/又はそれができるmiRNA若しくは短干渉RNAを産生するように設計されたコンストラクトの安定発現)。
【0056】
特定の実施形態では、薬剤は、小分子、ポリペプチド、抗体、脂質、多糖類、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される。薬剤は、化学ライブラリ、天然物ライブラリ、抗体ライブラリ、ペプチドライブラリ、多糖類ライブラリ、及びポリヌクレオチドライブラリから同定することができる。
【0057】
特定の実施形態では、薬剤は、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のシグナルペプチド配列に細胞内で結合してシグナルペプチド機能を妨害する。シグナルペプチド機能の妨害は、細胞内でのPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4の発現の低下につながり得る。細胞内でのPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4の発現の低下は、例えば、細胞内プロテアーゼ(例えば、トリプシン)によるPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4の開裂に起因し得る。したがって、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のシグナルペプチド配列への薬剤の結合は、シグナルペプチド機能の妨害につながり得、これは、細胞の表面上のPAR1、PAR2、PAR3、若しくはPAR4のレベルの低下、及び/又は細胞内のPAR1、PAR2、PAR3、若しくはPAR4活性化のレベルの低下をもたらし得る。
【0058】
特定の実施形態では、薬剤は、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4上のアロステリック部位に結合し、アロステリック部位への薬剤の結合は、シグナルペプチド機能を妨害する。PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4上のアロステリック部位への薬剤の結合は、例えば、シグナルペプチド機能の妨害につながり得るPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4の構造の変化につながり得る。シグナルペプチド機能の妨害は、細胞内でのPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4の発現の低下につながり得る。あるいは、シグナルペプチド機能の妨害は、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4の構造の変化が、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4を活性化するプロテアーゼによるアクセシビリティの低下につながり得るので、細胞内でのPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4の活性化の低下につながり得る。したがって、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4上のアロステリック部位への薬剤の結合は、細胞の表面上のPAR1、PAR2、PAR3、若しくはPAR4のレベルの低下、及び/又は細胞内のPAR1、PAR2、PAR3、若しくはPAR4活性化のレベルの低下をもたらし得る。
【0059】
特定の実施形態では、プロテアーゼは、トリプシン、トリプターゼ、第Xa因子TF、第VIIa因子、マトリプターゼ/MT-セリンプロテアーゼ1、システインプロテイナーゼ(RgpB)、チリダニプロテイナーゼDer p3、チリダニプロテイナーゼDer p9、フリン、及びトロンビンからなる群から選択される。トリプシンとしては、例えば、トリプシン-2、トリプシン-3、トリプシンIV、及びトリプシン(T1426)aを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
特定の実施形態では、ペプチドリガンドは、SLIGKV(配列番号1)、SLIGRL-NH2(配列番号58)、又は2-フロイル-LIGRL-NH2(配列番号59)を含む。PAR2のペプチドリガンドは、当該技術分野において既知であり、例えば、Kanke et al.,Br.J.Pharmacol.145:255-263(2005)を参照されたい。
【0061】
特定の実施形態では、小分子はGB110である。PAR2の小分子アゴニストは、当該技術分野において既知であり、例えば、Barry et al.,J.Med.Chem.53:7428-40(2010)を参照されたい。
【0062】
変異体PAR2ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及びそれを含む細胞
一般的な態様では、本発明は、単離された変異体PAR2ポリペプチドに関する。単離された変異体ポリペプチドは、例えば、シグナルペプチドの欠失、テザーリガンドの欠失、シグナルペプチド及びテザーリガンドの欠失、プロテアーゼ開裂部位(例えば、配列番号57のArg36)の置換を含むことができる。特定の実施形態では、単離された変異体PAR2ポリペプチドは、配列番号45、配列番号51、配列番号53、及び配列番号55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0063】
特定の実施形態では、単離された変異体PAR2ポリペプチドは、配列番号57に記載されるアミノ酸配列と少なくとも85%の同一性、より好ましくは配列番号57に記載されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性、更により好ましくは配列番号57に記載されるアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性、更により好ましくは配列番号57に記載されるアミノ酸配列と少なくとも98%の同一性、最も好ましくは配列番号57に記載されるアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、単離された変異体PAR2ポリペプチドは、配列番号57に記載されるアミノ酸配列と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0064】
別の一般的な態様では、本発明は、本発明の変異体PAR2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく、タンパク質のコード配列を変える(例えば置換する、欠失する、挿入するなど)ことができることが、当業者には理解されよう。したがって、本発明の変異体PAR2ポリペプチドをコードする核酸配列を、タンパク質のアミノ酸配列を変えずに変化させることができる点は当業者には理解されるであろう。
【0065】
別の一般的な態様では、本発明は、本発明の変異体PAR2をコードする単離されたポリヌクレオチドを含むベクターに関する。プラスミド、コスミド、ファージベクター、又はウイルスベクターなどの、本開示の観点から当業者に公知の任意のベクターも使用することができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドなどの組換え発現ベクターである。ベクターは、例えば、プロモータ、リボソーム結合エレメント、ターミネータ、エンハンサ、選択マーカー、及び複製起点という、発現ベクターの従来の機能を確立するための任意のエレメントを含むことができる。プロモータは、常時発現型、誘導型、又は再形成可能なプロモータであり得る。細胞に核酸を送達することができる多数の発現ベクターが当該技術分野において既知であり、細胞内で融合ペプチドを生成するために、本明細書で使用することができる。従来のクローニング技術、又は人工遺伝子合成を使用して、本発明の実施形態に従った組換え発現ベクターを生成することができる。
【0066】
別の一般的態様では、本発明は、本発明の変異体PAR2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞、又は本発明の変異体PAR2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを含むベクターに関する。本開示の観点から、当業者に既知の任意の宿主細胞を、本発明の変異体ポリペプチドの組換え発現に使用することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、大腸菌TG1又はBL21細胞、CHO-DG44若しくはCHO-K1細胞、又はHEK293細胞である。特定の実施形態によれば、組換え発現ベクターは、組換え核酸が効果的に発現するように宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれる、化学的トランスフェクション、熱ショック、又はエレクトロポレーションなどの従来の方法によって宿主細胞に形質転換される。
【0067】
別の一般的な態様では、本発明は、本発明の変異体PAR2ポリペプチドを産生する方法に関する。この方法は、本発明の変異体PAR2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、変異体PAR2ポリペプチドの発現に好適な条件下で培養することと、細胞又は培養物から(例えば、上清から)変異体PAR2ポリペプチドを回収することと、を含む。発現された変異体PAR2ポリペプチドは、当該技術分野において既知の従来技術に従って、また、本明細書に記載されるように、細胞から採取し、精製することができる。
【0068】
実施形態
本発明は、以下の非限定的な実施形態を提供する。
【0069】
実施形態1は、プロテアーゼ活性化受容体を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法であって、
a.細胞の表面にプロテアーゼ活性化受容体を発現する細胞を提供することであって、プロテアーゼ活性化受容体がシグナルペプチド配列を含む、ことと、
b.細胞を薬剤と接触させることと、
c.細胞の表面上のプロテアーゼ活性化受容体のレベルを測定することであって、対照と比較しての細胞の表面上のプロテアーゼ活性化受容体のレベルの低下は、薬剤が細胞内でプロテアーゼ活性化受容体を活性化可能であることを示す、ことと、を含む、方法である。
【0070】
実施形態2は、プロテアーゼ活性化受容体が、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)、PAR2、PAR3、及びPAR4からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法である。
【0071】
実施形態3は、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4が、内因的に又は外因的に発現される、実施形態2又は3に記載の方法である。
【0072】
実施形態4は、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4が外因的に発現される、実施形態3に記載の方法である。
【0073】
実施形態5は、内因性のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4発現が実質的に排除される、実施形態4に記載の方法である。
【0074】
実施形態6は、細胞が、CHO-K1細胞、COS-7細胞、及びHEK293細胞からなる群から選択される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0075】
実施形態7は、薬剤が、小分子、ポリペプチド、抗体、脂質、多糖類、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法である。
【0076】
実施形態8は、対照が、変異体プロテアーゼ活性化受容体ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞であり、好ましくは、変異体プロテアーゼ活性化受容体ポリペプチドが変異体PAR2ポリペプチドである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0077】
実施形態9は、変異体PAR2ポリペプチドが、配列番号55と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態8に記載の方法である。
【0078】
実施形態10は、薬剤が、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のシグナルペプチド配列に細胞内で結合してシグナルペプチド機能を妨害する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0079】
実施形態11は、薬剤が、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4上のアロステリック部位に結合し、アロステリック部位への薬剤の結合が、シグナルペプチド機能を妨害する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0080】
実施形態12は、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法であって、
a.細胞の表面にPAR2を発現する細胞を提供することであって、PAR2がシグナルペプチド配列を含む、ことと、
b.細胞を薬剤と接触させることと、
c.細胞の表面上のPAR2のレベルを測定することであって、対照と比較しての細胞の表面上のPAR2のレベルの低下は、薬剤が細胞内でPAR2を活性化可能であることを示す、ことと、を含む、方法である。
【0081】
実施形態13は、PAR2が内因的に又は外因的に発現される、実施形態12に記載の方法である。
【0082】
実施形態14は、PAR2が外因的に発現される、実施形態13に記載の方法である。
【0083】
実施形態15は、内因性PAR2発現が実質的に排除される、実施形態14に記載の方法である。
【0084】
実施形態16は、細胞が、CHO-K1細胞、COS-7細胞、及びHEK293細胞からなる群から選択される、実施形態12~15のいずれか1つに記載の方法である。
【0085】
実施形態17は、薬剤が、小分子、ポリペプチド、抗体、脂質、多糖類、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される、実施形態12~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0086】
実施形態18は、対照が、変異体PAR2ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞である、実施形態12~17のいずれか1つに記載の方法である。
【0087】
実施形態19は、変異体PAR2ポリペプチドが、配列番号55と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態18に記載の方法である。
【0088】
実施形態20は、薬剤が、PAR2のシグナルペプチド配列に細胞内で結合してシグナルペプチド機能を妨害する、実施形態12~19のいずれか1つに記載の方法である。
【0089】
実施形態21は、薬剤が、PAR2上のアロステリック部位に結合し、アロステリック部位への薬剤の結合が、シグナルペプチド機能を妨害する、実施形態12~20のいずれか1つに記載の方法である。
【0090】
実施形態22は、プロテアーゼ活性化受容体2(PAR2)を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法であって、
a.細胞の表面にPAR2を発現する細胞を提供することであって、PAR2がシグナルペプチド配列を含む、ことと、
b.細胞を薬剤と接触させることと、
c.細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンド若しくは小分子と接触させることと、
d.細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンドと接触させたときのPAR2の活性化レベルを測定することであって、対照と比較してのPAR2の活性化レベルの低下は、薬剤がPAR2を細胞内で活性化可能であることを示す、ことと、を含む、方法である。
【0091】
実施形態23は、PAR2が内因的に又は外因的に発現される、実施形態22に記載の方法である。
【0092】
実施形態24は、PAR2が外因的に発現される、実施形態23に記載の方法である。
【0093】
実施形態25は、内因性PAR2発現が実質的に排除される、実施形態24に記載の方法である。
【0094】
実施形態26は、細胞が、CHO-K1細胞、COS-7細胞、及びHEK293細胞からなる群から選択される、実施形態22~25のいずれか1つに記載の方法である。
【0095】
実施形態27は、薬剤が、小分子、ポリペプチド、抗体、脂質、多糖類、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される、実施形態22~26のいずれか1つに記載の方法である。
【0096】
実施形態28は、対照が、変異体PAR2ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞である、実施形態22~27のいずれか1つに記載の方法である。
【0097】
実施形態29は、変異体PAR2ポリペプチドが、配列番号55と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態28に記載の方法である。
【0098】
実施形態30は、薬剤が、PAR2のシグナルペプチド配列に細胞内で結合してシグナルペプチド機能を妨害する、実施形態22~29のいずれか1つに記載の方法である。
【0099】
実施形態31は、薬剤が、PAR2上のアロステリック部位に結合し、アロステリック部位への薬剤の結合が、シグナルペプチド機能を妨害する、実施形態22~30のいずれか1つに記載の方法である。
【0100】
実施形態32は、プロテアーゼが、トリプシン、トリプターゼ、第Xa因子TF、第VIIa因子、マトリプターゼ/MT-セリンプロテアーゼ1、システインプロテイナーゼ(RgpB)、チリダニプロテイナーゼDer p3、チリダニプロテイナーゼDer p9、フリン、及びトロンビンからなる群から選択される、実施形態22~31のいずれか1つに記載の方法である。
【0101】
実施形態33は、ペプチドリガンドが、SLIGKV(配列番号1)、SLIGRL-NH2(配列番号58)、又は2-フロイル-LIGRL-NH2(配列番号59)を含む、実施形態22~32のいずれか1つに記載の方法である。
【0102】
実施形態34は、小分子がGB110である、実施形態22~33のいずれか1つに記載の方法である。
【0103】
実施形態35は、プロテアーゼ活性化受容体を細胞内で活性化する薬剤を同定する方法であって、
a.細胞の表面にプロテアーゼ活性化受容体を発現する細胞を提供することであって、プロテアーゼ活性化受容体がシグナルペプチド配列を含む、ことと、
b.細胞を薬剤と接触させることと、
c.細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンド若しくは小分子と接触させることと、
d.細胞をプロテアーゼ及び/又はペプチドリガンドと接触させたときのプロテアーゼ活性化受容体の活性化レベルを測定することであって、対照と比較してのプロテアーゼ活性化受容体の活性化レベルの低下は、薬剤がプロテアーゼ活性化受容体を細胞内で活性化可能であることを示す、ことと、を含む、方法である。
【0104】
実施形態36は、プロテアーゼ活性化受容体が、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)、PAR2、PAR3、及びPAR4からなる群から選択される、実施形態35に記載の方法である。
【0105】
実施形態37は、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4が、内因的に又は外因的に発現される、実施形態35又は36に記載の方法である。
【0106】
実施形態38は、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4が外因的に発現される、実施形態37に記載の方法である。
【0107】
実施形態39は、内因性のPAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4発現が実質的に排除される、実施形態38に記載の方法である。
【0108】
実施形態40は、細胞が、CHO-K1細胞、COS-7細胞、及びHEK293細胞からなる群から選択される、実施形態35~39のいずれか1つに記載の方法である。
【0109】
実施形態41は、薬剤が、小分子、ポリペプチド、抗体、脂質、多糖類、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される、実施形態35~40のいずれか1つに記載の方法である。
【0110】
実施形態42は、対照が、変異体プロテアーゼ活性化受容体ポリペプチドを発現するように遺伝子操作された細胞であり、好ましくは、変異体プロテアーゼ活性化受容体ポリペプチドが変異体PAR2ポリペプチドである、実施形態35~41のいずれか1つに記載の方法である。
【0111】
実施形態43は、変異体PAR2ポリペプチドが、配列番号55と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態42に記載の方法である。
【0112】
実施形態44は、薬剤が、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4のシグナルペプチド配列に細胞内で結合してシグナルペプチド機能を妨害する、実施形態35~43のいずれか1つに記載の方法である。
【0113】
実施形態45は、薬剤が、PAR1、PAR2、PAR3、又はPAR4上のアロステリック部位に結合し、アロステリック部位への薬剤の結合が、シグナルペプチド機能を妨害する、実施形態35~44のいずれか1つに記載の方法である。
【0114】
実施形態46は、プロテアーゼが、トリプシン、トリプターゼ、第Xa因子TF、第VIIa因子、マトリプターゼ/MT-セリンプロテアーゼ1、システインプロテイナーゼ(RgpB)、チリダニプロテイナーゼDer p3、チリダニプロテイナーゼDer p9、フリン、及びトロンビンからなる群から選択される、実施形態35~45のいずれか1つに記載の方法である。
【0115】
実施形態47は、ペプチドリガンドが、SLIGKV(配列番号1)、SLIGRL-NH2(配列番号58)、又は2-フロイル-LIGRL-NH2(配列番号59)を含む、実施形態35~46のいずれか1つに記載の方法である。
【0116】
実施形態48は、小分子がGB110である、実施形態35~47のいずれか1つに記載の方法である。
【0117】
実施形態49は、配列番号45、配列番号51、配列番号53、及び配列番号55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離された変異体PAR2ポリペプチドである。
【0118】
実施形態50は、実施形態49に記載の変異体PAR2ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドである。
【0119】
実施形態51は、実施形態50に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0120】
実施形態52は、実施形態51に記載のベクターを含む宿主細胞である。
【0121】
実施形態53は、単離された変異体PAR2ポリペプチドを産生する方法であって、方法は、実施形態52に記載の宿主細胞を変異体PAR2ポリペプチドの発現に好適な条件下で培養することと、細胞又は培養物から変異体PAR2ポリペプチドを回収することと、を含む、方法である。
【実施例】
【0122】
材料及び方法
試薬
PAR2アゴニストペプチドリガンド、SLIGKV(配列番号1)は、Innopep,Inc.(San Diego,CA)によって合成された。トリプシン(シークエンシンググレード)、トロンビン、及びプロテアーゼ阻害剤は、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。
【0123】
PARのmRNA発現レベルの定量PCR分析
Qiagen(Hilden,Germany)のRNA単離キット(RNeasy Mini Kit)を使用して、COS7、HEK293、及びCHO-K1細胞から全RNAをそれぞれ単離した。Clontech(Mountain View,CA)のcDNA合成キット(Advantage RT-PCRキット)を使用して、単離したRNAからcDNAを合成した。ヒト、サル、及びハムスターのPAR1、PAR2、PAR3、及びPAR4に従って設計された特異的プライマーを使用して、記載されるようにqPCR機(QuantStudio,ABI)を使用して各mRNA発現を定量化した(Liu et al.,Nature 475:519-23(2011))。並行して、β-アクチン用のプライマーを使用して、β-アクチンcDNAを内部対照として増幅した。β-アクチンの発現レベルを使用して、異なるPAR mRNAの相対発現を正規化した。qPCRプライマーは、公開されたcDNA配列に基づいて設計したものであり、プライマー配列を表1に示す。
【0124】
【0125】
PAR1、PAR2ノックアウト細胞株の生成。
PAR1、PAR2ノックアウトHEK293細胞株は、Applied StemCells(Milpitas,CA)によって、CRISPR/Cas9アプローチを用いて作製された。簡潔に述べると、PAR1のタンパク質領域の膜貫通領域2(TM2)から膜貫通領域3(TM3)までをコードする、PAR1のコード領域(ヌクレオチド374~643)を欠失させた。同様に、PAR2のタンパク質領域TM2からTM3までをコードする、PAR2のコード領域(281~627)を欠失させた。単一細胞クローンを単離した。DNAフラグメントの欠失を確認するために、ゲノムDNAのPCR分析、続いてDNA配列決定を使用した。
【0126】
PAR2コンストラクトの分子クローニング。
PAR2コード領域を、公開されたPAR2コード配列(Genbankアクセッション番号NM_005242.5)に基づいて設計されたプライマー(5’ atg tct GAA TTC GCC ACC atg cgg agc ccc agc gcg gcg tgg ctg ctg-3’(配列番号32)、リバースプライマー:5’-atg tct GCG GCC GCt caa tag gag gtc tta aca gtg gtt gaa ct-3’(配列番号33))を使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。Clontech(Palo Alto,CA)から購入したヒト結腸cDNAをテンプレートとして使用した。エキスパンドハイファイPCRシステム(Roche Life Science,Indianapolis,IN)を使用して、全長PAR2 cDNAコード領域を増幅した。得られたDNAを、EcoR1及びNot1制限酵素(Promega,Madison,WI)を使用して消化し、次いでpcDNA3.1(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングした。次いで、挿入領域がEton Biosciences(San Diego,CA)によって配列決定され、コード領域全体の同一性を確認した。
【0127】
Arg36Ala変異を有するPAR2(PAR2(R36A))(配列番号55)、シグナルペプチドを有しないPAR2(PAR2ΔSP)(配列番号45)、Arg36Ala変異を有するPAR2ΔSP(PAR2ΔSP(R36A))(配列番号53)、並びにシグナルペプチド及びテザーリガンドを有しないPAR2(PAR2ΔSPΔL)(配列番号51)の発現コンストラクトを、オーバーラッピングPCRアプローチを使用した部位特異的変異導入によって生成した(Maher et al.,Pharmacol.Exp.Ther.357:394-414(2016))。
【0128】
インスリンシグナルペプチド、又はインスリン受容体シグナルペプチドで置換されたシグナルペプチドコード領域を有するPAR2の遺伝子が、Eton Biosciences(San Diego,CA)によって合成された。同様に、C末端のヒトIgG-Fcコード領域に融合されたGFPを有する、PAR2シグナルペプチドコード領域を有する若しくは有しない、インスリンを有する、又はインスリン受容体シグナルペプチドコード領域を有する様々なPAR2多様体の発現コンストラクトが合成された。遺伝子をpcDNA3.1にクローニングし、コード領域全体を配列決定して同一性を確認した。
【0129】
細胞内Ca2+動員アッセイ
FLIPR-Tetra(Molecular Device,San Jose,CA)を使用して、HEK293細胞、PAR1及びPAR2がノックアウトされているHEK293細胞、並びに様々なPAR2発現コンストラクトで一過的にトランスフェクトされた細胞における細胞内Ca2+動員をモニターした。細胞を、96ウェルのポリD-リジンコート黒色FLIPRプレート(Corning)において、10%FCS、1mMピルビン酸、20mM HEPESを補充したDMEM中で、5%CO2の37℃にて増殖させた。一過性トランスフェクションのために、細胞を、96ウェルのポリD-リジンコート黒色FLIPRプレートにおいて増殖させ、製造元の指示に従ってトランスフェクション試薬としてFuGENE HD(Promega,Madison,WI)を使用してトランスフェクトした。プロテアーゼ阻害剤で処理したサンプルについては、トランスフェクションの1日後にプロテアーゼカクテルを細胞培養物に添加し、一晩インキュベートした。トランスフェクションの2日後、細胞培養培地を除去し、20mM HEPESを加えたHBSS緩衝液を使用して細胞を洗浄した。20mM HEPESを加えたHBSS緩衝液中に希釈されたCa2+染料(Flura 3)を使用して、Ca2+が細胞に入り込めるように細胞をRTで40分間インキュベートした。様々な濃度のリガンド(トリプシン、又はペプチドリガンド)によって刺激された細胞内Ca2+動員を、記載されるようにFLIPR-Tetraによってモニターした(Liu et al.,Mol.Pharmacol.88:911-25(2015))。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照として使用した。
【0130】
IgG-FC分泌の測定のための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
COS7細胞を、6ウェルプレートにおいて、10%FCS、1mMピルビン酸、20mM HEPESを補充したDMEMに、5%CO2の37℃で増殖させ、製造元の指示に従ってトランスフェクション試薬としてLipofectAmine(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して様々なシグナルペプチドコード領域を有するヒトIgG-Fcの異なる発現コンストラクトによってトランスフェクトした。トランスフェクトされていない細胞を陰性対照として使用した。
【0131】
培地中の分泌されたヒトIgG-FCを測定するために、トランスフェクションの1日後、細胞を、PBSを使用して3回洗浄し、次いで、1mMピルビン酸及び20mM HEPESを加えた無血清DMEMに培養した。トランスフェクションの3日後、トランスフェクトされた細胞からの馴化培地を採取し、4℃にて20分間、10,000gで遠心分離して、細胞残屑を除去した。各トランスフェクションからの50μLの馴化培地を、96ウェルELISAプレート(UltraCruz(登録商標)ELISA Plate、高結合、96ウェル、平底、Santa Cruz Biotechnology;Dallas,TX)の1つのウェル内で、37℃で1時間インキュベートして、培地中のタンパク質をプレートに吸着させた。プレートを、PBS+0.1%Tween-20(PBST)を使用して3回洗浄し、PBST中の3%無脂肪乳を使用してRTで30分間ブロッキングし、次いで、PBST中の3%無脂肪乳中に希釈されたHRP共役ヤギ抗ヒトIg-GF抗体(50ng/mL)を使用して4℃で一晩インキュベートした。プレートを、PBSTを使用して3回洗浄し、次いで、ELISA構築キット(BD Biosciences;San Jose,CA)を使用して構築した。450nmにおける光学密度を、ELISAプレートリーダー(Molecular Devices;San Jose,CA)を使用して読み取った。
【0132】
細胞内IgG-Fcタンパク質を測定するために、トランスフェクションの1日後、細胞を、トリプシン処理し、96ウェル培養プレートに播種し(30,000細胞/ウェル)、10%FCS、1mMピルビン酸、20mM HEPESを補充したDMEMに増殖させた。トランスフェクションの3日後、培地を除去し、細胞を、PBSを使用して洗浄し、次いで、PBS中の10%ホルムアルデヒドによってRTで15分間固定した。細胞を、1%Triton-X-100を使用してRTで10分間浸透させ、PBST中の3%無脂肪乳を使用してRTで30分間ブロッキングした。次いで、細胞を、HRP共役ヤギ抗ヒトIgG-Fc抗体を使用してインキュベートし、プレートを、上記のように構築して読み取った。
【0133】
細胞内IgG-Fcの免疫蛍光染色
COS7細胞を、様々なIgG-Fc発現コンストラクトでトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、細胞をトリプシン処理し、4ウェル細胞培養チャンバースライド(Stellar Scientific,Baltimore,MD)に播種した(60,000細胞/ウェル)。トランスフェクションの3日後、培地を除去し、細胞を、PBSを使用して洗浄し、次いで、PBS中の10%ホルムアルデヒドによってRTで15分間固定した。細胞を、1%Triton-X-100を使用してRTで10分間浸透させ、PBST中の3%無脂肪乳を使用してRTで30分間ブロッキングした。次いで、細胞を、PBST中の3%無脂肪乳中に希釈されたFITC標識ヤギ抗ヒトIgG-FC抗体(ThermoFisher Scientific;Waltham,MA)(200ng/μL)を使用して4℃で一晩インキュベートした。次いで、スライドを、PBSTを使用して3回洗浄し、冷気を使用して乾燥させ、蛍光顕微鏡下で観察した。
【0134】
PAR2のシグナルペプチド開裂部位の同定
COS7細胞を、15cmディッシュにおいて、10%FCS、1mMピルビン酸、20mM HEPESを補充したDMEMに、5%CO2の37℃で増殖させた。細胞を、LipofecAmineを使用して、PAR2のN末端を有するヒトIgG-FCの発現コンストラクトでトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、細胞を、PBSを使用して3回洗浄し、次いで、Pen/Strepを加えた無血清Opti-MEM(Life Technology)に培養した。トランスフェクションの3日後、培地を回収し、遠心分離して、細胞残屑を除去した。上清をプロテインA(Sigma)アフィニティーカラムに通した。カラムをPBSで洗浄し、0.1Mグリシン/HCl(pH2.8)を使用して溶出し、次いで、1mM Tris-HCl(pH8.0)を使用して中和した。溶出したタンパク質を、最初にPNGase-F(Promega)で処理してN-結合型グリコシル化を除去し、次いで、質量分析により分析してN末端配列を決定した。タンパク質配列決定を、一般的な溶液中タンパク質消化及びLC-MS/MS法を使用して実施した。簡潔に述べると、50mM重炭酸アンモニア緩衝液(pH7.8)中の10μLのタンパク質サンプルを、11.3mMジチオスレイトールによって60℃で30分間還元し(尿素なし)、37.4mMヨードアセトアミドでアルキル化し(RT、45分)、次いで、0.2μgのトリプシンで消化した(37℃、一晩)。LC/MS分析を、MassHunterソフトウェアバージョン4.0の制御下で、6550qTOF質量分析計に連結されたAgilent 1290 UHPLC上で行った。クロマトグラフィーを、水/アセトニトリル/0.1%ギ酸を移動相としたAgilent AdvanceBio Peptide Mapカラム(2.1×100mm、2.7μm)でランし、質量分析データを、MSモード及びMSMSモードの両方において取得した。
【0135】
PAR2受容体を組換え発現する細胞のプロテアーゼ阻害剤処理
野生型及び様々な変異体PAR2多様体発現コンストラクトを、par1及びpar2遺伝子がノックアウトされているHEK293細胞に一過的にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩(AEBSF、500μM)、ロイペプチン(50μM)、アプロチニン(50μM)を含むプロテアーゼ阻害剤カクテルで12時間処理した。
【0136】
ELISAによるPAR2の総及び細胞表面発現の測定
ELISAを使用して、総及び細胞表面PAR2タンパク質発現を測定した。野生型及び異なる変異体PAR2多様体を、内因性PAR1及びPAR2がノックアウトされているHEK293細胞において一過的に発現させた。細胞を、10cm細胞培養ディッシュにおいてトランスフェクトし、トランスフェクションの24時間後、96ウェルポリD-リジンコートプレートに分割した。トランスフェクションの48時間後、細胞を上記のように固定した。総PAR2発現を測定するために、固定した細胞を、1%トリトン-X-100を使用して浸透させ、3%無脂肪乳でブロッキングし、次いで、ヒトPAR2のN末端領域(アミノ酸残基37~62)を認識するモノクローナル抗体(3μg/mL、マウス抗ヒトPAR2(BioLegand,San Diego,CA))と共に、4℃で一晩インキュベートした。プレートを、冷PBSで3回洗浄し、次いで、HRP共役ヤギ抗マウスIgG二次抗体(30ng/mL、Pierce)を使用してRTで1時間インキュベートした。プレートを、PBSを使用して再度洗浄し、上記のようにELISA構築キットを使用して構築した。細胞表面PAR2発現を測定するために、ELISAアッセイを、細胞浸透剤としてトリトン-X-100を使用せずに総PAR2測定と同じ方法で実施した。
【0137】
PAR2-GFP融合タンパク質の総発現及び細胞局在の測定
PAR2野生型及び様々な変異体のGFP融合タンパク質を、細胞内Ca2+動員アッセイの方法で上述したように、96ウェルポリ-D-リジンプレートにおいて、内因性PAR1及びPAR2がノックアウトされているHEK293細胞に一過的に発現させた。トランスフェクションの48時間後、培地を吸引し、細胞を、PBS中の4%パラホルムアルデヒド(Sigma;St.Louis,MO)を使用して固定した。細胞の蛍光強度を、Envisionプレートリーダー(PerkinElmer;Waltham,MA)を使用して読み取った。次いで、固定した細胞を、PAR2細胞局在のための共焦点顕微鏡法を使用して分析した。
【0138】
結果と考察
PAR2シグナルペプチドは古典的なシグナルペプチドのように挙動する
PAR2シグナルペプチドは、培地へのIgG-Fcフラグメント分泌をもたらす。
古典的なシグナルペプチドは、典型的には、分泌されたタンパク質(インスリンなど)又は細胞表面タンパク質(インスリン受容体など)のいずれかのN末端に見出される。これは、典型的には、20~30個の疎水性アミノ酸残基のストレッチからなる。その既知の機能は、分泌されたタンパク質又は細胞表面タンパク質が、タンパク質翻訳中にERを標的とし、形質膜を横切るのを助けることである。PAR2は、そのN末端に予測シグナルペプチド配列を有しており、これは、古典的なシグナルペプチドとして機能すると仮定された。これに対処するために、PAR2のシグナルペプチドがシグナルペプチドを欠くヒトIgG-Fcフラグメントの細胞培養培地への分泌を可能にするかどうかを試験する、いくつかの発現コンストラクトが考案された(
図2A)。IgG-Fcは、ELISAアッセイ又は免疫染色で検出が容易であることから、対照として使用した。哺乳類細胞に組換え発現されるとき、シグナルペプチドなしでは、IgG-Fcは細胞内でのみ発現する。対照的に、シグナルペプチドありでは、IgG-Fcは細胞培養培地に分泌され得る。1つのIgG-Fcコンストラクトは、PAR2のN末端をそのシグナルペプチドと共に含有し(配列番号34(DNA)、配列番号35(タンパク質))、別のIgG-Fcコンストラクトは、シグナルペプチドが欠失したPAR2 N末端を含有していた(配列番号36(DNA)、配列番号37(タンパク質))。ヒトIgG-Fcに融合されたインスリンシグナルペプチド(分泌されたタンパク質シグナルペプチド)又はインスリン受容体シグナルペプチド(細胞表面受容体シグナルペプチド)(それぞれ、配列番号38(DNA)、配列番号39(タンパク質)及び配列番号40(DNA)、配列番号41(タンパク質))を有するコンストラクトもまた、実験における陽性対照として使用した。免疫染色(
図2B)及びELISA(
図2C)を使用して、トランスフェクトされた細胞におけるIgG-Fc発現を検出及び測定し、様々なIgG-Fc発現コンストラクトでトランスフェクトされた全ての細胞が、細胞内でIgG-Fcを発現することを実証した。PAR2シグナルペプチドを有するPAR2のN末端をヒトIgG-Fcに融合させることが、培地へのIgG-Fcの分泌を効果的にもたらし、したがって、インスリンシグナルペプチド又はインスリン受容体シグナルペプチドと同様に機能することが実証された(
図2D)。対照的に、PAR2シグナルペプチドを有しないPAR2 N末端を融合させることは、培地へのIgG-Fcの分泌をもたらすことに失敗した。
【0139】
PAR2シグナルペプチドは成熟タンパク質から開裂される
CRF2(a)受容体について、シグナルペプチドが膜挿入後に成熟タンパク質から開裂されない場合があることが報告されている(Teichmann et al.,JBC 287:27265-74(2012))。これがPAR2シグナルペプチドにも当てはまるかどうかを判定するために、PAR2のシグナルペプチドが、分泌後に、PAR2 N末端を有する成熟IgG-Fcタンパク質から開裂されるかどうかを調べた。IgG-Fcに融合したPAR2 N末端の発現コンストラクトでトランスフェクトされたCOS7細胞からの馴化培地を回収した(
図2A)。分泌されたPAR2-IgG-Fc融合タンパク質をアフィニティー精製し、グリコシル化部分を除去し、次いで、質量分析(MS)タンパク質配列決定により分析した。結果は、PAR2配列と一致する最大のN末端配列がTIQGTNR(配列番号42)(
図3)であることを実証し、このことは、シグナルペプチドがタンパク質分泌後に開裂され、開裂部位が残基Gly24とThr25との間にあることを示唆している。興味深いことに、多様体配列TIQGTDR(配列番号43)も観察された。この配列は、TIQGTNRとは1つの残基(NからD)で異なる。残基Asn30はNRS配列(N-結合型グリコシル化部位、
図3)の一部であり、グリコシル化Asn残基は、PNGase-Fによる脱グリコシル後にAspに変換されるので、結果は、発現されたタンパク質の少なくとも一部がこのN-結合型グリコシル化部位でグリコシル化されることを示唆した。
【0140】
PAR2シグナルペプチドは、PAR2受容体機能発現及びそのリガンドによる活性化に重要である。
PAR2受容体の組換え発現及び特性評価のためのPAR1及びPAR2ノックアウトHEK293細胞株の生成。
組換えPAR2の受容体局在及び機能を評価するために、内在性PAR2も他のPAR受容体も発現しない宿主哺乳類細胞株を有することが必須であった。HEK293、CHO-K1、及びCOS7細胞を含む、哺乳類細胞を、組換え発現について試験し、3つ全ての細胞株が、比較的高いPAR1及びPAR2 mRNAを発現することが見出された(
図4A)。加えて、機能アッセイでは、細胞株は全て、PAR1及びPAR2リガンド(それぞれ、トロンビン及びトリプシン)に反応した(
図4B~
図4D)。これらの宿主細胞内の自然発現したPAR1及びPAR2の存在は、組換え発現したPAR2の特性評価を複雑にすることがあるので、PAR3及びPAR4を発現しない、par1及びpar2遺伝子の両方がCRISPR/cas9によってノックアウトされている、HEK293細胞株を作成した(
図4E)。この細胞株の薬理学的特性評価は、par1及びpar2の両方の欠損が、PAR1リガンド、すなわちトロンビン、又はPAR2リガンド、すなわちトリプシンに対する反応の欠如をもたらすことを実証した(
図4F)。次いで、これらの細胞を使用して、組換えPAR2の発現及び局在を研究した。
【0141】
シグナルペプチドの欠失はPAR2の機能発現を低下させたが、これは、置換シグナルペプチドによってレスキューすることができる。
PAR2シグナルペプチドの機能的役割を評価するために、シグナルペプチドを除去するためのN末端欠失(PAR2ΔSP)(配列番号45)、及びインスリンシグナルペプチド(PAR2-INSP)(配列番号47)、又はインスリン受容体シグナルペプチド(PAR2-IRSP)(配列番号49)によるPAR2シグナルペプチドの置換を含む、いくつかの修正をPAR2 N末端に対して行った(
図5A)。FLIPRアッセイを使用した修正された受容体の薬理学的特性評価は、組換え発現したPAR2が、HEK293細胞内の内因的に発現したPAR2(トリプシンの場合はEC
50=10nM、PAR2-APの場合はEC
50=1.5μM)と比較してはるかに高い感度で、トリプシン(EC
50=1.5nM)及びPAR2アゴニストペプチド(PAR2-AP)(EC
50=50nM)に反応することを示した(
図5B及び
図5C)。これは、組換え受容体の過剰発現が超薬理現象を引き起こしたことによるものである(Kenakin,Trends Pharmacol.Sci.18:456-64(1997))。この場合、EC
50値は、細胞表面での受容体の相対数の良好な指標であった。野生型PAR2を発現する細胞と比較して、シグナルペプチドを有しないPAR2を発現する細胞は、トリプシン及びPAR2-APに対する感度の劇的な低下を示し(トリプシンの場合のEC
50:50nM、PAR2-APの場合のEC
50:5.8μM)、シグナルペプチドがPAR2機能性細胞表面発現の重要な構成要素であることを示唆した。この仮説を支持すると、インスリンから又はインスリン受容体からのいずれかのシグナルペプチドによるPAR2シグナルペプチドの置換は、受容体リガンド感度を完全に回復させた(
図5)。
【0142】
テザーリガンドはPAR2シグナルペプチドを必要とする。
テザーリガンド領域の更なる欠失は、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現をレスキューする。
PARは、プロテアーゼによって活性化され、このプロテアーゼは、新しいN末端を生成し、受容体のN末端細胞外領域に存在するテザーペプチドリガンドを露出させる。この独特な受容体活性化機構は、シグナルペプチドのないPAR2がリガンド刺激に対して反応が乏しいという事実と組み合わさって、PAR2のシグナルペプチドの必要性がテザーリガンドの存在に関連し得るという推測をもたらした。テザーリガンドの領域に更なる欠失を有するシグナルペプチドのないPAR2変異体(PAR2ΔSPΔL)(配列番号51)を構築した(
図6A)。この変異体受容体は、シグナルペプチド及びテザーリガンド配列(SLIGKV)(配列番号1)を欠いており、トリプシンによって活性化されなかったが、FLIPRアッセイにおける野生型PAR2受容体と同様に合成アゴニストペプチドPAR2-AP(配列番号1)によって完全に活性化することができた(
図6B)。これは、テザーリガンド配列(SLIGKV)の更なる欠失が、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能性細胞表面発現を回復させたことを示唆している。結果はまた、シグナルペプチドなしでは、PAR2が意図されていない細胞内プロテアーゼ活性化を受けやすく、機能性細胞表面発現が乏しくなる可能性があることも示唆する。
【0143】
トリプシン活性化部位をブロッキングする、Arg36からAlaへの変異は、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を増加させた。
トリプシンは、残基Arg36後の開裂によってPAR2を活性化する。これは、受容体を活性化するためのテザーリガンドとして機能する、新しいN末端(配列SLIGKV---を有する)を生成する。Arg36をAlaに変異させることは、この位置でのトリプシン開裂を防止し、したがってトリプシン媒介性受容体活性化をブロッキングする。シグナルペプチドを有しないPAR2上のArg36位置における変異(PAR2ΔSP(R36A))(配列番号53)を作製し、このコンストラクトを試験して、この変異が機能性受容体発現のレベルを変化させたかどうかを判定した。並行して、全長PAR2受容体上の同じ変異(PAR2(R36A))(配列番号55)を作製し、これらの受容体を、トリプシン及びPAR2-APによる刺激後のFLIPRアッセイで特性評価した。結果は、Arg36Ala変異が、予想されるように、シグナルペプチドを有しないPAR2のトリプシン活性化をブロッキングすることを実証した(
図7A)。しかしながら、PAR2-APをリガンドとして使用した場合、変異体受容体(PAR2ΔSP(R36A))(配列番号55)は、PAR2ΔSP(配列番号45)の感度と比較してPAR2-APに対する感度がはるかに高いことを示した(
図7B)。対照として、全長PAR2受容体での同じ変異(PAR2(R36A))(配列番号55)は、トリプシン刺激への反応が非常に乏しかったが(
図7B)、PAR2-AP刺激には、全長PAR2受容体とほぼ同一に反応した(
図7C)。トリプシンによるPAR2(R36A)(配列番号55)の小さいが検出可能な活性化(
図7B)は、Arg
31又はLys
34位置でのトリプシンによるPAR2の開裂に起因する可能性があり、受容体活性化のために活性が不十分なテザーリガンドをもたらし得る。
【0144】
プロテアーゼ阻害剤処理は、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を増加させた。
セリンプロテアーゼ阻害剤は、早期の細胞内プロテアーゼ媒介性活性化をブロッキングすることによって、シグナルペプチドを有しないPAR2の機能発現を助けると仮定した。AEBSF、ロイペプチン、及びアプロチニンを含むプロテアーゼカクテルを使用して、ER及びゴルジプロテアーゼを阻害した(Okada,et al.,J.Biol.Chem.278:31024-32(2003);Wise et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9378-82(1990))。野生型PAR2及びPAR2の様々な変異体形態を発現する細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテルで処理し、次いで、PAR2-AP刺激に対するそれらの反応について試験した。トリプシンは、プロテアーゼ阻害剤カクテルによって阻害されるため、このアッセイでは使用しなかった。結果により、プロテアーゼ阻害剤は、PAR2野生型(配列番号57)、PAR2(R36A)(配列番号55)、PAR2ΔSP(R36A)(配列番号53)、及びPAR2ΔSPΔL(配列番号51)に対するPAR2-AP刺激反応のEC
50値に影響していないが、プロテアーゼカクテルは、EC
50値を(5.8μMから0.7μMに)減少させていることにより、PAR2ΔSP(配列番号45)の機能発現を明確に増加させていることが実証された(
図8)。
【0145】
Arg36Ala変異及びプロテアーゼ阻害剤処理は、シグナルペプチドのないPAR2の細胞表面発現を増加させる。
シグナルペプチドのないPAR2のリガンド刺激に対する反応の低下が、総受容体タンパク質発現の欠如、及び/又は細胞表面発現の欠如に起因するかどうかを確認するために、PAR2のアミノ酸残基37~62に対するモノクローナル抗体をELISAアッセイで使用して、PAR2の様々な形態の総及び細胞表面発現を測定し、プロテアーゼ阻害剤処理の効果を決定した。PAR2野生型(配列番号57)及びPAR2(R36A)(配列番号55)変異体は、ELISAにより測定したときに最も高い総及び細胞表面タンパク質発現を有することが観察された。PAR2ΔSPΔL(配列番号51)は、総発現及び細胞表面発現の両方において、PAR2野生型(配列番号57)の発現と比較してわずかに低い発現を有した。PAR2のこの多様体はアミノ酸残基1~42を失っているので、タンパク質発現の検出の減少は、不十分な抗体認識に起因する可能性がある。PAR2ΔSP(R36A)(配列番号53)は、より低い総及び細胞表面発現を有し、PAR2ΔSP(配列番号45)は、最低の総及び細胞表面発現レベルを有した(
図9)。データは、PAR2ΔSP(配列番号45)タンパク質の大部分が細胞内に位置し、このタンパク質のごくわずかな部分のみが細胞表面上に存在することを示した。PAR2野生型(配列番号57)、PAR2(R36A)(配列番号55)、及びPAR2ΔSPΔL(配列番号51)については、タンパク質の90%超が細胞表面上に存在した。機能アッセイを補強すると、プロテアーゼ阻害剤処理は、PAR2タンパク質の他の形態のタンパク質発現にほとんど又は全く影響を及ぼさずに、PAR2ΔSP(配列番号45)の総レベル、及び特に細胞表面発現レベルを増加させた(
図9)。PAR2ペプチドリガンド(PAR2-AP)(配列番号1)を使用しての受容体の刺激は、PAR2ΔSP(配列番号45)を除く全てのPAR2の多様体に対して細胞表面タンパク質発現レベル及び総タンパク質発現レベルを低下させた。これは、PAR2ΔSP(配列番号45)の大部分が細胞内であり、刺激された受容体のその後の内部移行及び分解を引き起こす、細胞表面受容体のリガンド刺激が、PAR2ΔSP(配列番号45)にあまり適用されないことに起因する可能性が高かった。
【0146】
並行して、タンパク質発現の測定及びタンパク質細胞局在の可視化を更に容易にするために、PAR2野生型タンパク質及び様々なPAR2変異体のC末端にGFPタグを融合することによって、様々なPAR2発現ベクターを構築した(
図10A)。続いて、PAR2発現ベクターを、par1及びpar2 null HEK293細胞株内で発現させた。様々なGFP融合タンパク質のGFP蛍光強度を測定することによって、PAR2及び変異タンパク質の総発現レベルを測定した。一般に、結果は、PAR2ΔSPΔL(配列番号51)を除けば、抗PAR2抗体を使用してELISAによって示された結果と同様であった。PAR2ΔSPΔLは、ELISAアッセイではPAR2野生型(配列番号57)の結果と比較して低いレベルを示したが、GFP強度ではPAR2野生型(配列番号57)の結果と同様の発現レベルを示した(
図10B)。この結果は、PAR2ΔSPΔL(配列番号51)発現の検出の減少が、抗体によるPAR2ΔSPΔLの認識が不十分である(認識部位のアミノ酸残基37~42が見つからなかった)ことに起因する可能性が高いという前述の推測を裏付けた。
【0147】
PAR2タンパク質及びその多様体の細胞局在を調査するために、共焦点顕微鏡法を利用して、様々なPAR2タンパク質を発現する細胞を、PAR2リガンド又はプロテアーゼ阻害剤による処理を含む様々な条件において分析した。PAR2野生型(配列番号57)、PAR2(R36A)(配列番号55)、及びPAR2ΔSPΔL(配列番号51)タンパク質は、形質膜上に局在化した(
図10C)。PAR2ΔSP(配列番号45)は細胞内でのみ見出され、形質膜上に位置するものはほとんど又は全くなかった。これは、ペプチドリガンドによって刺激されたPAR2野生型(配列番号57)受容体(PAR2+PAR2-AP、
図10C)と類似していた。PAR2ΔSP(R36A)(配列番号53)については、タンパク質の一部が形質膜上に発現し、また有意な量のタンパク質が細胞内でも見出された。興味深いことに、プロテアーゼ阻害剤処理は、PAR2ΔSP(配列番号45)の形質膜発現を可能にした(PAR2ΔSP+PI、
図10C)。
【0148】
全体として、観察されたGFPタグ付きタンパク質細胞分布は、ELISAデータ(
図9)と一致した。興味深いことに、PAR2ΔSP(R36A)(配列番号53)を発現する細胞及びPAR2ΔSP(配列番号45)を発現するプロテアーゼ阻害剤処理細胞は、2つのサブカテゴリに属するように見えた。細胞の1つの集団は、良好なPAR2形質膜局在を有し、野生型PAR2を模倣しており、細胞の別の集団は、細胞内PAR2のみを有し、これは、プロテアーゼ阻害剤処理なしのPAR2ΔSP(配列番号45)のものと同様であった。Arg36Ala変異及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(アッセイで使用された)は、セリンプロテアーゼによるPAR2開裂/活性化をブロッキングした。しかしながら、PAR2ΔSPを細胞内で開裂及び活性化することができるが、変異又はプロテアーゼ阻害剤処理によりブロッキングされない他のプロテアーゼを、細胞は発現することができる。細胞は、異なる細胞周期段階などの異なる条件下で異なるプロテアーゼを発現することが可能である(McGrath et al.,2006;Kelly et al.,1998;Goulet et al.,2004;Taylor et al.,2002;Di Bacco et al.,2006;Ly et al.,2014;Yamanaka et al.,2000;Petersen et al.,2000)。
【0149】
GPCRは、小胞体(ER)で合成され、ゴルジ装置に輸送され、次いで形質膜に輸送される。小胞体及びゴルジ装置には、タンパク質合成及び輸送プロセス中にArg36位置においてプロテアーゼ感受性PAR2活性化部位を開裂し得る多くのプロテアーゼが存在する(Okada et al.,J.Biol.Chem.278:31024-32(2003);Otsu et al.,J.Biol.Chem.270:14958-61(1995);Szabo and Bugge,Annu.Rev.Cell.Dev.Biol.27:213-35(2011);Gregory et al.,PLoS One 9:387675(2014);Loo et al.,J.Biol.Chem.273:32373-6(1998))。これは、意図されていない又は早期の受容体活性化を引き起こすことがあり、それにより、その後の受容体の内部移行及び分解をもたらし得る。PAR2のシグナルペプチドは、その機能発現に重要である。しかしながら、テザーリガンドの除去又はプロテアーゼによる受容体活性化のブロッキングは、シグナルペプチドの必要性をなくしたが、これは、シグナルペプチドが、タンパク質合成及び/又は輸送プロセス中の活性化部位におけるPAR2のこの意図されていない開裂を防止する助けとなり得ることを示唆している。シグナルペプチドを使用する細胞表面タンパク質の場合、それらのERへの、最終的には形質膜への移動は、ERトランスロコンによって媒介され(Johnson,et al,Cell Dev.Biol.15:799-842(1999);Nikonov et al.,Biochem.Soc.Trans.31:1253-6(2003))、これは、タンパク質の区画化(Scheele et al.,J.Cell.Biol.87:611-28(1980);Levine et al.,Mol.Biol.Cell 16:279-91(2005);Schnell et al.,Cell 112:491-505(2003);Shaffer et al.,Dev.Cell 9:545-54(2005);Katerina et al.,Mol.Biol.Cell 14:4427-36(2003))及び隔離(Nikonov et al.,Biochem.Soc.Trans.31:1253-6(2003);Lu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 115:9557-62(2018);Moller et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:13425-430(1998))において役割を果たす。機構は不明なままであるが、ERトランスロコンは、PAR2をプロテアーゼ開裂から保護する役割を果たし得る(
図11)。
【0150】
古典的なシグナルペプチドは、分泌されたタンパク質及び細胞表面タンパク質が細胞膜を横切る又はそれに埋め込まれた状態になるのを助けることが知られている。上記のように、PAR2のシグナルペプチドを研究することにより、シグナルペプチドの機能は、細胞内プロテアーゼ活性化からのPAR2の保護剤として機能することが観察された。細胞内プロテアーゼによるPAR2の開裂は、受容体の意図されていない活性化、及び細胞外シグナルを検知する機能の喪失をもたらし得る。したがって、プロテアーゼ保護機能により、シグナルペプチドは、PAR2受容体の機能にとって重要であり得る。
【0151】
要約すると、PAR2のシグナルペプチドの欠失は、PAR2細胞表面発現を減少させ、ほとんどの受容体が細胞内に蓄積することが観察された。しかしながら、トリプシンによるPAR2の活性化を無効にした、PAR2のテザーリガンドの更なる欠失は、受容体細胞表面発現を回復させたが、これは、PAR2のシグナルペプチドの必要性が、テザーリガンド配列の存在及びプロテアーゼ活性化機構に関連することを示唆している。PAR2のシグナルペプチドは、細胞内プロテアーゼ開裂及び活性化からPAR2を保護すると仮定される。シグナルペプチドを有しない場合、PAR2は、小胞体又はゴルジ装置において細胞内プロテアーゼによって開裂及び活性化され、これにより、意図されていない、早期の受容体活性化がもたらされ、その結果、細胞内に蓄積し得る。この仮説を支持すると、トリプシン活性化部位におけるArg36Ala変異、及びプロテアーゼ阻害剤処理は、両方とも、シグナルペプチドのないPAR2の細胞表面発現及びリガンド刺激に対する機能的反応を増加させた。これらの結果は、PAR2発現/機能の知識を拡大し、細胞表面タンパク質を、及び恐らくは分泌されたタンパク質も、細胞内プロテアーゼ開裂から保護する際のシグナルペプチドの新たな役割を明らかにした。
【0152】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、本説明によって定義されるように本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【配列表】
【国際調査報告】