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特表2022-531627連続波ライダーセンサのシミュレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-07
(54)【発明の名称】連続波ライダーセンサのシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/34 20200101AFI20220630BHJP
【FI】
G01S17/34
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022500677
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019068388
(87)【国際公開番号】W WO2021004626
(87)【国際公開日】2021-01-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441319
【氏名又は名称】シーメンス インダストリー ソフトウェア ネザーランズ ベー.ヴェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,ミハエル
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA10
5J084CA07
5J084CA08
5J084CA31
5J084CA70
5J084FA01
(57)【要約】
本発明は、連続波光検出および測距(CWライダー)のセンサデータをシミュレートするための方法に関し、CW信号51に基づいて、少なくとも1つの光線を含む光線セットを生成する工程であって、光線セットにおけるそれぞれの光線は、放射開始時間(t_0)および放射持続期間(T)を有する、工程と、前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、少なくとも1つのオブジェクトを含むシミュレートされたシーン(6)を通して光線を伝搬させる工程と、前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記シミュレートされたシーン内の検出位置における前記伝搬された光線の信号寄与度71を計算する工程と、前記CW信号51を前記光線セットにおける前記光線の前記計算された信号寄与度と混合することに基づいて、出力信号73を生成する工程と、前記出力信号を、保存する工程および出力する工程のうちの少なくとも1つと、を含む方法に関する。本発明は、CWライダーセンサの全波形信号に対応するシミュレーションデータを提供する。提供されたセンサデータにより、物体の形状や物体クラス、物体の向き等の付加的な情報を決定することができる。さらに、センサデータは、実際のライダデータに存在するアーチファクトも含む。アーチファクトは、ライダセンサおよび環境の物理的特性に由来するものであり、ライダビームの多重反射のような点群タイプのデータには存在しない。そのため、アーチファクトも考慮したセンサ開発を行うことで、センサの性能を向上させることができる。本発明は、実際のCWライダーセンサがどのように動作するかを正確にシミュレートしているため、実際のCWライダーセンサーの出力を正確に再現することができる。また、提供される高品質なデータは、完全かつ実環境に正確であり、信号処理アルゴリズムの開発、ニューラルネットワークの学習、仮想検証等に高い価値を発揮することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続波光検出および測距(CWライダーセンサ)のセンサデータをシミュレートするための方法であって、
CW信号に基づいて、少なくとも1つの光線を含む光線セットを生成する工程であって、当該光線セットにおけるそれぞれの光線は、放射開始時間(t_0)と放射持続期間(T)とを有する、工程;
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、少なくとも1つのオブジェクトを含むシミュレートされたシーン(6)を通して前記光線を伝播させる工程;
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記シミュレートされたシーン(6)内の検出位置における、伝播された前記光線の信号寄与度を計算する工程;
前記CW信号を前記光線セットにおける前記光線の計算された前記信号寄与度と混合することに基づいて、出力信号を生成する工程;および、
前記出力信号の記憶および出力の少なくとも一方を実行する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記光線セットにおけるそれぞれの光線は、前記シミュレートされたシーン(6)における空間的起点と、前記シミュレートされたシーン(6)における放射方向と、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光線を伝播させる工程は、
前記光線の前記空間的起点、前記光線の前記放射方向、および、前記シミュレートされたシーン(6)における前記オブジェクト(61,62)上での前記光線の反射、に基づいて前記光線の光路を決定する工程と、
前記検出位置までの当該光路に沿って前記光線のスループットを計算する工程と、
を含み、
前記信号寄与度を計算する工程は、計算された前記スループットに基づいている、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記CW信号を計算された前記光線の前記信号寄与度との混合は、前記信号寄与度と前記CW信号との間の信号オフセットに基づいており、
前記信号オフセットは、前記光線の前記放射開始時間(t_0)および前記光線の前記光路に基づいて決定される、
請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記放射方向は、ランダムに選択されるか、または、均一に選択される、
請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記光線セットは、複数の光線を含み、
前記光線の前記放射開始時間(t0)は、ランダムに選択されるか、または、均一に選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記CW信号は、周波数変調連続波(FMCW)信号、または、振幅変調連続波(AMCW)信号である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
光線セットを生成する工程は、それぞれの光線に対して、前記CW信号の部分(51)を該光線に割り当てることを含み、
前記CW信号の前記部分は、前記放射開始時間(t0)で始まり、前記放射持続期間(T)に等しい長さを有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記出力信号を生成する工程は、
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記CW信号を前記光線の計算された前記信号寄与度と混合することによって混合信号寄与度を計算する工程、および、
前記光線セットにおける全ての光線の前記混合信号寄与度を加算することによって前記出力信号を生成する工程、
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
連続波光検出および測距(CWライダーセンサ)のセンサデータをシミュレートするための装置(1)であって、
CW信号に基づいて、少なくとも1つの光線を含む光線セットを生成する工程であって、当該光線セットにおけるそれぞれの光線は、放射開始時間(t_0)と放射持続期間(T)とを有する、工程と、
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、少なくとも1つのオブジェクトを含むシミュレートされたシーン(6)を通して前記光線を伝播させる工程;
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記シミュレートされたシーン(6)内の検出位置における、伝播された前記光線の信号寄与度を計算する工程;および、
前記CW信号を前記光線セットにおける前記光線の計算された前記信号寄与度と混合することに基づいて、出力信号を生成する工程;
に適合された処理部(2)と、
前記出力信号を記憶するように適合された記憶部(3)、および、前記出力信号を出力するように適合された出力部(4)、の少なくとも一方と、
を備える、装置。
【請求項11】
前記光線セットは、複数の光線を含み、
前記処理部は、前記光線の前記放射開始時間(t0)をランダムな方法または均一な方法で決定するように適合されている、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記処理部(2)は、それぞれの光線について、前記CW信号の部分を前記光線に割り当てることによって前記光線セットを生成するように適合されており、
前記CW信号の前記部分(51)は、前記放射開始時間(t_0)に開始し、前記放射持続期間(T)に等しい長さを有する、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記処理部(2)は、
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記CW信号を前記光線の計算された前記信号寄与度と混合することによって混合信号寄与度を計算すること、および
前記光線セットにおける全ての光線の前記混合信号寄与度を加算することによって前記出力信号を生成すること、
によって前記出力信号を生成するように適合されている、
請求項10~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
コンピュータデバイスによって実行されるときに、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている実行可能プログラムコード(PC)、を含むコンピュータプログラム製品(P)。
【請求項15】
コンピュータデバイスによって実行されるときに、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、実行可能プログラムコード(MC)を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体(M)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続波(continuous wave:CW)を用いた光検出と測距(light detection and ranging:LiDAR)によるセンサ(CWライダーセンサ)のセンサデータをシミュレートするための方法に関する。本発明は、さらに、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライダーは、レーザを基にしてターゲットまでの距離を測定するための技術であり、周囲の高解像度の三次元表現を得ることができる。また、ライダーシステムサービスアプリケーションは、自動運転支援システム(automatic driver assistance systems:ADAS)において、駐車支援、衝突警告、および自律走行アプリケーションに使用される、いわゆる環境モデルを提供する。ライダーシステムは、測地学、地震学、航空機レーザーマッピング(airborne laser swath mapping:ALSM)、およびレーザ高度計等の幅広い分野で広く利用されている。
【0003】
ライダーセンサには様々な種類が存在する。例えば、パルスライダーセンサは、短いレーザパルスを放射し、レーザパルスの放射からターゲットに反射してライダーセンサに帰還するまでの飛行時間を測定する。この測定された飛行時間を用いることで、反射ターゲットまでの距離を計算することができる。
【0004】
別のタイプのライダーセンサは、連続波(CW)信号を使用する。この場合、センサは光を連続的に放射する。そして、振幅変調連続波(amplitude modulated continuous wave:AMCW)で振幅を変調するか、あるいは、周波数変調連続波(frequency in frequency modulated continuous wave:FMCW)で周波数を変調するか、のいずれかによって光源を変調することができる。多くの応用では、その精度とロバスト性とから、パルスライダーセンサを用いる方法よりもCWを用いる方法の方が好ましいとされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A. Kim et al., "Simulating full-waveform lidar", Proc. SPIE 7684, Laser Radar Technology and Applications XV, 2010
【非特許文献2】A. Kim, "Simulating full-waveform LIDAR", Diss. Monterey, California. Naval Postgraduate School, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ライダーシステムによって得られるセンサデータには、多くの用途で、高い精度が求められる。そのため、ライダーアプリケーションの新規開発には、物理的なセンサを含むライダーセンサの大規模な試験が必要となることがある。したがって、このための製造コストを低減するために、開発中のライダーセンサの出力をできるだけ正確に再現することができるシミュレーションデータが求められる。また、ライダーシミュレーションデータは、信号処理アルゴリズムの開発、ニューラルネットワークの学習、仮想検証等を含む他の様々な分野でも必要とされる。
【0007】
パルスライダーセンサをモデル化するライダーセンサデータの提供については、非特許文献1および2において論じられている。
【0008】
ライダーセンサデータを提供する既知の方法に、単一のシミュレーション光線(レイ)を用いて理想的な点群をシミュレーションする手法がある。光線の伝搬は、レイ・トレーシング(光線追跡)法を用いて最も近い表面との交点まで計算され、その表面による鏡面反射のみが考慮される。したがって、1つの光線あたり1つの距離のみが計算される。さらに、複数の光線を含むビームを用いると、1つのビームごとに複数の点を提供することができる。このようなシミュレーションでは、出力として点データのみが提供され、結果として生じる信号に関する情報は生成されない。これに対し、実際のライダーセンサは、時間的に変化する電気信号を生成するため、この電気信号を処理してシミュレートされたシーン内に点を生成する必要がある。時間変化する信号は、オブジェクトの形状、オブジェクトのクラス、多重反射等を含む、シミュレートされたシーンに関する多くの付加的な情報を含む。このような情報は、点群のみが出力として提供されれば、必然的に失われてしまう。
【0009】
さらに、時間変化する信号は、ビーム形状、ビーム間のオブジェクトの動き、信号に対する天候の影響等の、ライダーセンサおよび環境の物理的特性に起因する特徴を含む。これらの特徴は、ライダーデータにアーチファクトをもたらすため、センサおよびその出力に基づくアルゴリズムを開発する際には考慮する必要がある。したがって、開発中のライダーセンサをシミュレートするには点群では不十分となり、より現実的なデータが必要となる可能性がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、現実的な連続波ライダーデータを提供するための方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本課題は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、請求項1に記載の連続波(CW)光検出および測距(ライダー)センサのセンサデータをシミュレーション(モデル化)する方法を提供する。第2の態様によれば、本発明は、請求項10に記載のCWライダーセンサのセンサデータをシミュレーションするための装置を提供する。第3の態様によれば、本発明は、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品を提供する。第4の態様によれば、本発明は、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0013】
第1の態様によれば、本発明は、連続波(CW)光検出および測距(ライダー)センサのセンサデータをシミュレートするための方法を提供し、ここで、CW信号に基づいて、少なくとも1つの光線を含む光線セットが生成される。光線セットにおけるそれぞれの光線は、放射開始時間と、放射持続期間と、を有する。光線セットにおけるそれぞれの光線について、光線は、少なくとも1つのオブジェクトを含むシミュレートされたシーンを通して伝播される。光線セットにおけるそれぞれの光線について、伝搬した光線の信号寄与度は、シミュレートされたシーン内の検出位置において計算される。出力信号は、CW信号と光線セット内の光線の計算された信号寄与度とを混合(mixing)することに基づいて生成される。この方法はさらに、出力信号を、記憶および/または出力することを提供する。
【0014】
第2の態様によれば、本発明は、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置を提供する。この装置は、処理部と、記憶部および出力部のうちの少なくとも1つと、を備える。処理部は、CW信号に基づいて、少なくとも1つの光線を含む光線セットを生成する。前記光線セットの光線はそれぞれ、放射開始時間と、放射持続期間と、を有する。処理部は、光線セットにおけるそれぞれの光線について、少なくとも1つのオブジェクトを含むシミュレートされたシーンを通して光線を伝搬させる。処理部は、光線セットにおけるそれぞれの光線について、シミュレートされたシーン内の検出位置において、伝搬された光線の信号寄与度を計算する。処理部はさらに、CW信号と光線セット内の光線の計算された信号寄与度とを混合することに基づいて、出力信号を生成する。記憶部は、前記出力信号を記憶するようになっており、出力部は、出力信号を出力するようになっている。
【0015】
第3の態様によれば、本発明は、コンピュータプログラム製品を提供する。このコンピュータプログラム製品は、コンピュータによって実行すると、連続波センサのセンサデータをシミュレートするための方法を実行する、ように構成された実行可能プログラムコードを含んでいる。
【0016】
第4の態様によれば、本発明は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供する。この非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行すると、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法を実行する、ように構成された実行可能プログラムコードを含んでいる。
【0017】
本発明は、CWライダーセンサの全波形信号に対応するシミュレーションデータを提供する。ここでは、シミュレートされたシーンの「完全な」点群タイプの表現のみを提供するのではなく、信号情報の全体が保持される。そのため、出力信号を含むセンサデータを提供することで、オブジェクトの形状およびオブジェクトのクラス、ならびにオブジェクトの向き等の、付加的な情報を決定することも可能となる。さらに、センサデータは、実際のライダーデータに存在するアーチファクトも含む。そのようなアーチファクトは、ライダービームの多重反射のように、ライダーセンサおよび環境の物理的特性に由来するものであって、点群タイプのデータには存在しない。そのため、このようなアーチファクトをも考慮に入れることによって、センサ開発を改善することができる。
【0018】
本発明は、実際のCWライダーセンサがどのように動作するかを正確にシミュレートするため、実際のCWライダーセンサの出力を正確に再現する。また、提供される高品質なデータは、現実世界に対して完全かつ精確であり、信号処理アルゴリズムの開発、ニューラルネットワークが学習、仮想検証等に高い価値を発揮することもできる。
【0019】
一実施形態に係る方法において、光線セットは、ただ1つの光線を含む。しかしながら、光線セットは一般に、複数の光線を含むことが好ましい。例えば、光線セットは、少なくとも2本、好ましくは少なくとも100本、より好ましくは少なくとも500本、最も好ましくは少なくとも1000本の光線を含むことができる。光線の上限数はまた制限されてもよい。例えば、光線セットは、多くとも100,000本、好ましくは多くとも10,000本、より好ましくは多くとも5000本、最も好ましくは多くとも2000本の光線を含むことができる。
【0020】
好ましい実施形態に係る方法によれば、光線セットにおけるそれぞれの光線は、シミュレートされたシーンにおける空間的起点と、シミュレートされたシーンにおける放射方向と、を含む。したがって、光線は、空間および時間の両方においてサンプリングされる。空間におけるサンプリングは、空間的な起源と発光方向を決定することを含み、時間的なサンプリングは、CW信号の部分を光線に割り当てる(アサインする)ことを含む。放射方向は、シミュレートされたシーンにおける1つのベクトルに対応し、光線がどの方向に放射されるかを示すことができる。
【0021】
好ましい実施形態に係る方法によれば、光線を伝搬する工程は、光線の放射方向に基づいて、また、シミュレートされたシーン内のオブジェクト上での光線の反射に基づいて、さらに光線の空間的起点に基づいて、光線の光路を決定することを含む。さらに、検出位置までの光路に沿った光線のスループットが計算される。信号寄与度の計算工程は、計算されたスループットに基づいて行われる。一実施形態によれば、単一の反射のみを考慮することができる。しかしながら、一般に、オブジェクトからの光線の多重反射も考慮することができる。反射の数は制限されていてもよく、すなわち、所定の閾値よりも少ない数の反射のみを考慮してもよい。
【0022】
好ましい実施形態に係る方法によれば、光線セット内のそれぞれの光線について、CW信号を光線の計算された信号寄与度との混合は、信号寄与度とCW信号との間の信号オフセットに基づいて行われる。信号オフセットは、光線の放射開始時間と光線の光路とに基づいて決定される。
【0023】
好ましい実施形態に係る方法によれば、放射方向は、それぞれの光線に対してランダムに選択される。また、光線の発光方向は、均一に選択されてもよい。一般に、放射方向は、ライダーセンサによって放射されるレーザビームの有限の範囲を考慮するように選択される。一般に、レーザビームは、ウエストw_0を有するガウシアンビームによって記述され得る。しかしながら、レーザビームはまた、任意の形状を有し得る。この場合、ビーム全体の放射方向は、ある立体角で記述することができる。さらに、ライダーセンサの放射方向は調整可能であってもよい。例えば、ライダーセンサは、放射されたレーザを偏向させ、それによって、ある空間領域を走査するように適合されたマイクロミラーを備えることができる。
【0024】
好ましい実施形態に係る方法によれば、光線セットは、複数の光線を含む。光線の放射開始時間はランダムに選択される。発光時間は、均一に選択されてもよい。一般に、光線の放出時間は、正確な出力信号を生成するために、時間内のすべての点が十分にサンプリングされるように選択される。異なる光線の寄与は、重要度サンプリング方法に従って重み付けされてもよい。例えば、光線の信号寄与度は、異なる重みで重み付けされてもよい。
【0025】
本方法の好ましい実施形態によれば、CW信号は、周波数変調連続波(FMCW)信号である。また、CW信号は、振幅変調連続波(AMCW)信号であってもよい。
【0026】
本方法の好ましい実施形態によれば、光線セットを生成することは、各光線について、CW信号の部分を光線に割り当てることを含む。光線は、放射開始時間で始まり、放射持続期間に等しい長さを有する無限時間CW信号の部分に対応する。言い換えれば、CW信号は無限時間信号、すなわちレーザが連続的に放射するものであり、各光線はある時間間隔でCW信号のセクションに相当する。光線の振幅の時間依存性は、CW信号の対応するセクションの時間依存性に等しい。
【0027】
本方法の好ましい実施形態によれば、出力信号を生成することは、光線セット内の各光線に対して、CW信号を光線の計算された信号寄与度と混合することによって得られる混合信号寄与度を計算することを含む。さらに、出力信号は、光線セット内のすべての光線の混合信号寄与度を加算することによって生成される。したがって、出力信号は、全ての信号寄与度をCW信号とミキシングした後に生成される。
【0028】
装置の好ましい実施形態によれば、光線セットは、複数の光線を含み、処理部は、光線の放射開始時間をランダムまたは均一な方法で決定するようになっている。
【0029】
本装置の好ましい実施形態によれば、処理部は、CW信号の部分を光線に割り当てることによって光線セットを生成するようになっている。光線に割り当てられたCW信号の部分は、放射開始時間で始まり、放射持続期間にわたって延びる。
【0030】
本装置の好ましい実施形態によれば、処理部は、光線セット内の各光線に対して、CW信号と光線の計算された信号寄与度とを混合することによる混合信号寄与度と、光線セット内の全ての光線の混合信号寄与度を加算することによって出力信号を生成することにより、出力信号を生成するように構成される。
【0031】
コンピュータデバイスに加え、システムの一部または全ての構成要素は、ハードウェアコンポーネントおよびソフトウェアコンポーネントを含むことができる。ハードウェアコンポーネントは、マイクロ制御器、中央演算装置(CPU)、グラフィックス処理部(GPU)、メモリ、および記憶装置のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0032】
添付の図面に示される例示的な実施形態を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0033】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれるとともに、本明細書の一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示し、発明の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するものである。
【0034】
本発明の他の実施形態および本発明の意図される利点の多くは、以下の詳細な説明を参照することによって理解が深められるにつれ、容易に高く評価されるようになるであろう。方法における工程は、参照を容易にするために番号が付されているが、当該番号付けは、明示的または暗示的に別段の記載がない限り、必ずしもその順序で実行される工程を意味するものではないと理解すべきである。特に、工程は、それらの番号付けによって示される順とは異なる順で実行されてもよい。いくつかの工程は、同時に、または重複して実行されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置を示すブロック図を概略的に示す。
図2図2は、動作中のライダーセンサの様子を模式的に示す。
図3図3は、光線に割り当てられたセクションを有するCW信号を模式的に示す。
図4図4は、光線が送信機から受信機へ伝搬する様子を模式的に示す。
図5図5は、光線が受信機から送信機へ伝搬する様子を模式的に示す。
図6図6は、CW信号を光線の信号寄与度との混合に基づく出力信号の生成を概略的に示す。
図7図7は、本発明の一実施形態に係るCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法のフロー図を示す。
図8図8は、本発明の一実施形態に係るコンピュータプログラム製品を示すブロック図を概略的に示す。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る非一時的コンピュータ可読記憶媒体を示すブロック図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置1を概略的に示す。装置1の複数の構成要素をより詳細に説明する前に、図2を参照して、CWライダーセンサの動作原理を説明する。
【0037】
図2に示すように、ライダーセンサのレーザは、連続波(CW)信号101を生成する。レーザは、振幅が時間の関数として変化するように制御される。この場合、ライダーシステムは、振幅変調連続波(AMCW)法用に準備される。以下の図示された信号は振幅が変動しているが、しかしながら、ライダーシステムは、周波数変調連続波(FMCW)法での使用に適合させることもできる。この場合、CW信号の周波数は、時間の関数として変化する。ライダーシステムの送信機Txは、CW信号を放射する。CW信号は、シーン102内の1つまたは複数のオブジェクトによって反射され、少なくとも部分的に、ライダーシステムの受信機Rxによって受信される。受信信号は、ライダーシステムの混合部103によって、元のCW信号と混合される。このようにして得られた信号は、出力信号104として放射される。
【0038】
以下では、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置1の構成要素について、より詳細に説明する。
【0039】
装置1は、外部装置からデータを受信し、外部装置にデータを送信するように適合されたインターフェース4を備える。したがって、インターフェース4は入力部と出力部との両方として配置することができ、他のシステム(例えば、WLAN、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Profibus、ETHERNET等)またはユーザ(ディスプレイ、プリンタ、スピーカ等)に情報を通信することができる任意の種類のポートまたはリンクまたはインターフェースとすることができる。
【0040】
装置1はさらに、インターフェース4から受信したデータを処理するように構成された処理部2を有する。処理部2は、マイクロコントローラ(μC)、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、特定用途向け標準製品(ASSP)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)等のような、中央処理装置(CPU)またはグラフィックス処理部(GPU)とすることができる。
【0041】
処理部2は、インターフェース4と通信している光線セット生成部21と、光線セット生成部21と通信している光線伝搬部22と、光線伝搬部22と通信している信号寄与度算出部23と、信号寄与度算出部23と通信している出力信号生成部24と、を備えている。これらのモジュール21~24は、処理部2の一部であってもよいし、処理部2上に実装されていてもよいし、処理部2と通信可能に接続された別個のユニット上に実装されていてもよい。
【0042】
装置1はさらに、信号生成部24と通信している記憶部3を備える。記憶部3は、例えば、磁気コアメモリ、磁気テープ、磁気カード、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスク、またはリムーバブル記憶装置等の磁気記憶装置またはメモリ、のようなデータ記憶装置とすることができ、または、それらを備えることができる。記憶部3はまた、例えば、ホログラフィックメモリ,光テープ,レーザディスク,フェーズライタ,フェーズライタデュアル(PD),コンパクトディスク(CD),デジタルビデオディスク(DVD),高精細DVD(HD DVD),ブルーレイディスク(BD),またはウルトラデンシティオプティカル(UDO)等の光記憶装置またはメモリであってもよく、またはこれらを備えていてもよい。記憶部3はさらに、例えば、ミニディスクまたは光磁気ディスク(MO-Disk)等の光磁気記憶装置またはメモリ、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM),ダイナミックRAM(DRAM),またはスタティックRAM(SRAM)等の揮発性半導体またはソリッドステートメモリ、例えば、読出し専用メモリ(ROM),プログラマブルROM(PROM),イレーサブルPROM(EPROM),エレクトリカルEPROM(EEPROM),フラッシュEEPROMや、例えば、USBスティック、強誘電RAM(FRAM(登録商標))、磁気抵抗RAM(MRAM)、または相変化RAM等の不揮発性半導体/ソリッドステートメモリ、またはデータキャリア/媒体であってもよい。
【0043】
装置1は、インターフェース4を介して、例えば、時間依存CW信号の波形、またはCW信号を記述する他のパラメータ、例えば、CW信号の位相または振幅に関連するパラメータのような、ある入力パラメータを受信することができる。入力パラメータは、さらに、光線生成部21によって発生される光線の最大数または最小数を含むことができる。さらに、装置1は、シミュレートされたシーン内のオブジェクトの数、向き、およびプロパティなど、シミュレートされたシーンに関する情報を受信することができる。シミュレートされたシーンは、シミュレートされるライダーセンサの人工的な環境に対応する。ライダーセンサによって放射されたレーザビームは、シミュレートされたシーンに配置されたオブジェクトによって反射される。
【0044】
光線生成部21は、少なくとも1つ、好ましくは複数の光線を含む光線セットを生成するようになっている。
【0045】
以下では、複数の光線が生成される状況をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、原則として、1つの光線のみを含む光線セットにも適用可能である。
【0046】
光線生成部21は、光線セットにおけるそれぞれの光線について、放射開始時間、放射持続期間、シミュレートされたシーンにおける空間的起点、および放射方向を規定する。全ての光線は、同じ空間的起点から省略することができる。しかしながら、空間的起点は、異なる光線に対して異なっていてもよい。放射開始時間は、ランダムに選択されてもよい。したがって、光線生成部21は、(擬似)乱数生成器を備えることができる。しかしながら、光線生成部21は、決定論的に、あるいは予め定義された分布にしたがって、放射開始時間を選択することもできる。
【0047】
光線生成部21は、それぞれの光線にCW信号のある一定の区間を割り当る。その区間は、放射開始時間に開始し、放射持続期間にわたる。
【0048】
次に、光線伝搬部22は、シミュレートされたシーンを通して光線セットにおける全ての光線を伝搬させる。光線伝搬部22は、当該技術分野で知られているレイ・トレーシング法を使用することができるようになっている。レイ・トレーシングは、コンピュータグラフィックスで知られる仮想シーン内の幾何学的形状をサンプリングする方法である。コンピュータグラフィックスにおいて、レイ・トレーシングは、カメラから光線を放ち、瞬時にセンサ画素上に光を蓄積することによって、すなわち、有限の伝搬時間を考慮に入れずに、画像を作成するために使用される。これに対し、本発明に係る光線追跡は、有限の伝搬時間も考慮している。
【0049】
それぞれの光線は、現在の光線、すなわち、元の放射光線または既に散乱された光線と、シミュレートされたシーン内の最も近いオブジェクトと、の交点を計算することによってシミュレートされたシーンを通して伝播され、そして、適切な物理モデルを使用して、オブジェクトの特性に基づいて反射のパラメータを計算する。光線伝搬部22は、それぞれの光線に対する(おそらく複数の)反射を決定することによって、シミュレートされたシーンにおけるそれぞれの光線の光路を計算する。光線の反射は、検出位置においてエネルギーの一部のみが受け取られる、という付加的な効果を有し得る。したがって、光線伝搬部22は、光路そのものに加え、光路に沿った検出位置までの光線のスループットをも計算する。
【0050】
信号寄与度算出部23は、シミュレートされたシーン内の検出位置における、光線セットの各伝搬光線の信号寄与度を算出するようになっている。信号寄与度算出部23は、光線の空間的起点から検出位置までの光線の光路の全長を算出する。信号寄与度部23はさらに、それぞれの光線について、変換係数としての光速cに基づき、対応する光路の全長から、移動時間、すなわち伝播時間または飛行時間、を計算する。
【0051】
信号寄与度算出部23は、光線に割り当てられたCW信号の部分に基づいて、それぞれの光線の信号寄与度を算出する。ここで、光線に割り当てられたCW信号の部分は、元のCW信号に対して、光線に対応する光路の算出された移動時間に応じて位相シフトされる。位相シフトは、信号寄与度とCW信号との間に信号オフセットをもたらす。さらに、光線の信号寄与度の振幅は、計算されたスループットにしたがって調整され得る。
【0052】
出力信号生成部24は、光線セットにおけるそれぞれの光線について、元のCW信号を光線の算出された信号寄与度と混合することにより、混合信号寄与度を算出する。出力信号生成部24は、さらに、光線セットにおける全ての光線の混合信号寄与度を加算することによって、出力信号を生成する。
【0053】
出力信号生成部24は、インターフェース4を介してユーザに出力信号を提供するように構成することができる。付加的に、または代替的に、出力信号は、記憶部3に記憶するようにしてもよい。
【0054】
CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置1のいくつかの態様について、図3から図6を参照してより詳細に説明する。
【0055】
図3は、例示的なCW信号5を示しており、CW信号5は、光線セットを生成するために、また、CW信号5を光線の計算された信号寄与度と混合することによって、出力信号を生成するために、使用される。図3に示すように、CW信号の振幅は変調されており、すなわち、CW信号5は振幅変調連続波(AMCW)信号である。異なる実施形態によると、CW信号5はまた、周波数変調されていてもよく、すなわち、周波数変調連続波(FMCW)信号であってもよい。
【0056】
光線セットにおいて例示された光線について、放射開始時間t_0が設定され、例えば、所定の初期時間0nsに対して測定される46nsとされる。また、放射開始時間t_0から始まり、放射終了時間t_1で終了する、放射持続期間Tが設定される。CW信号5のうち放射開始時間t_0と放射終了時間t_1との間の対応するセクションまたは部分が、光線に割り当てられる。
【0057】
図4に示すように、光線は、シミュレートされたシーン6内でシミュレートされたライダーセンサの送信機Txから出発し、シミュレートされたシーンを通して伝搬することができる。このとき送信機Txは、シミュレートされたシーン6における光線の空間的起点に配置されている。光線は、第1のオブジェクト61から反射され、さらに第2のオブジェクト62から反射されて、シミュレートされたライダーセンサの受信機Rxに対応する検出位置に到達する。
【0058】
また、図5に示すように、光線の伝搬は、逆方向に行われることもある。すなわち、光線は、シミュレートされたライダーセンサの受信機Rxの位置に配置された光線の空間的起点から、最初に第2のオブジェクト62から反射され、次いで第1のオブジェクト61から反射され、光線がシミュレートされたシーンにおけるシミュレートされたライダーセンサの送信機Txの位置に対応する検出位置に到達するまで、トレースすることができる。
【0059】
図6を参照すると、光線セット生成部21は、図3を参照してより詳細に上記で説明したように、CW信号5の一部分を光線に割り当てる。そして光線伝搬部22がシミュレートされたシーンを通して光線を伝搬させた後、信号寄与度算出部23が、光線の対応する信号寄与度71を計算する。出力信号生成部24は、光線の信号寄与度71と、光線が検出位置において受信された時間t_2において開始するCW信号の部分51と、を混合する混合部72を備えている。時間t_2は、光線の放射開始時間と光線の移動時間との和に相当する。そしてCW信号5の部分51は、一般に、光線の移動時間に対応する位相シフトの分だけ、光線に割り当てられたCW信号の部分(放射開始時間において開始する)と異なっている。さらに、光線の実際の信号寄与度は、光路に沿った光線のスループットによっても影響を受ける可能性がある。
【0060】
出力信号生成部24は、CW信号を光線の計算された信号寄与度と混合することにより、混合信号寄与度73を生成する。出力信号生成部24は、光線セット内の複数の光線について、光線セット内の全ての光線の混合信号寄与度73を加算して出力信号を生成することとなる。
【0061】
図7は、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法のフロー図を示す。
【0062】
第1の方法ステップS1において、少なくとも1つの光線を、好ましくは複数の光線を含む光線セットが生成される。光線セット内の光線の数は固定されていてもよい。光線セット内の光線の数は、ランダムに選択されてもよい。光線セット内の光線の数は、予め定められた最小数よりも大きくなるように選択することができる。例えば、光線セットは、少なくとも2、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも500、最も好ましくは少なくとも1000の光線を含むことができる。また、光線セット内の光線の数は、予め定められた最大数よりも小さくなるように選択される。例えば、光線セットは、多くとも100,000、好ましくは多くとも10,000、より好ましくは多くとも5000、最も好ましくは多くとも2000の光線を含むことができる。
【0063】
それぞれの光線について、放射開始時間は、例えば0nsのような、ある所定の時間起点に対して決定される。さらに、光線の放射持続期間が決定される。放射持続期間は、全ての光線に対して等しくてもよいが、異なる光線に対して変化してもよい。光線の放射持続期間は、所定の分布に従うこともできる。また、それぞれの光線について、シミュレートされたシーンにおける空間的起点が決定される。空間的起点(光線の放出点に対応する)は、光線セットにおけるすべての光線に対して同一にすることができる。しかしながら、異なる光線は、異なる空間的起点を含むこともできる。また、それぞれの光線の発光方向が決定される。
【0064】
放射方向および/または放射開始時間および/または放射持続期間は、ランダムに選択されてもよく、あるいは、一様に選択またはサンプリングされてもよい。放射開始時間は、正確な出力信号が生成されるような方法でサンプリングされることが好ましい。特に、放射開始時間は、光線に割り当てられたCW信号の部分が、CW信号の少なくとも1つの位相の全体をカバーするように選択される。それぞれの光線の寄与度は、サンプリング理論、例えば重要度サンプリングを用いて調整することができる。
【0065】
方法ステップS2において、光線集合内のそれぞれの光線は、シミュレートされたシーンを通って伝播する。シミュレートされたシーンは、所定の幾何学的形状および物理的特性を有する複数のオブジェクトを含む。シミュレートされたシーンにおけるオブジェクトの位置および/または物理的特性は、固定されてもよいし、または時間的に変化してもよい。光線の伝搬は、当該技術分野で公知のレイトレーシングアルゴリズムを用いて行われる。それぞれの光線について、光線の光路は、光線の空間的起点、光線の放射方向、およびシミュレートされたシーン内のオブジェクト上での光線の反射、に基づいて決定される。さらに、検出位置までの光路に沿った光線のスループットが計算される。
【0066】
方法ステップS3では、光線セット内のそれぞれの光線について、シーン内の検出位置における伝搬された光線の信号寄与度が計算される。信号寄与度は、計算されたスループットに基づいて、および光線の移動時間に基づいて、計算される。光線の移動時間は、光線の光路の長さから計算することができる。光線の最終的な移動時間は、信号寄与度とCW信号との間の信号オフセットにつながる。信号オフセットは、光線の放射開始時間と、光線の光路に沿った移動時間と、に基づいて決定される。
【0067】
方法ステップS4において、それぞれの計算された信号寄与度は、CW信号と混合されて、対応する光線の混合信号寄与度を計算する。CW信号を計算された信号寄与度との混合は、信号オフセットに基づいている。すべての光線の混合信号寄与度を加算して、出力信号を生成する。
【0068】
方法ステップS5において、出力信号は、メモリ記憶部3に記憶される。これに加えて、または、これに代えて、出力信号は、出力部4、例えば、ディスプレイまたはプリンタ等に出力される。
【0069】
図8は、実行可能なプログラムコードPCを含むコンピュータプログラム製品Pを示すブロック図を概略的に示す。実行可能なプログラムコードPCは、(例えば、コンピュータデバイスによって)実行されると、本発明に係るCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法を実行するように構成されている。
【0070】
図9は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体Mを示すブロック図を概略的に示しており、非一時的コンピュータ可読記憶媒体Mは、(例えば、コンピュータデバイスによって)実行されたときに、本発明に係るCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法を実行するように構成された、実行可能プログラムコードMCを備えている。
【0071】
ここに記載された全ての有利な選択肢、改変における相違点、およびCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置の実施形態に関する前述の記載は、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法についての実施形態に同様に適用することができ、またその逆もまた同様である、ことが理解されるべきである。
【0072】
前述の詳細な説明において、様々な特徴は、開示を合理化する目的で、1つまたは複数の例にまとめられている。上記の説明は、例示的であり限定的ではないことが意図されていることを理解されたい。代替物、修正物、および均等物を包含することを意図している。上記の明細書を検討するとき、多くの他の例が当業者には明らかであろう。
【0073】
本明細書では特定の実施形態を図示し、説明したが、当業者であれば、様々な代替および/または同等の実装が存在することが理解されるであろう。例示的な一の実施形態または例示的な複数の実施形態は、例示に過ぎず、範囲、適用可能性、または構成を何らかの形で限定することを意図するものではないことを理解されたい。むしろ、前述の概要および詳細な説明は、当業者に、少なくとも1つの例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを提供するものであり、添付の特許請求の範囲およびその法的な等価物に記載される範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に記載される要素の機能および配置に様々な変更を行うことができることを理解されたい。一般に、本出願は、ここで論じられる特定の実施形態の任意の応用または変形を包含することが意図される。
【0074】
前述の明細書で使用される特定の専門用語は、本発明を完全に理解するために使用される。しかしながら、ここに提供される明細書に照らして、本発明を実施するために特定の詳細が必要とされないことは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の特定の実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示される。これらは、網羅的であること、または本発明を開示された厳密な形態に限定すること、を意図するものではなく、上記の教示に鑑みて多くの修正および変形が可能であることが明らかである。この実施形態は、本発明の原則およびその実際の応用を最も良く説明するために選択されて説明されたものであり、これにより、当該技術分野の当業者が、考えられる特定の用途に適するように様々の変形を付した本発明および様々な実施形態を最も良く利用することができるようになる。本明細書全体を通して、用語「含む(including)」および「その中で(in which)」は、単純英語の用語「含む(comprising)」および「ここで(wherein)」の平易な英語の等価表現としてそれぞれ使用される。さらに、用語「第1の(first)」、「第2の(second)」および「第3の(third)」などは、単にラベルとして使用され、それらの対象に数値的要件を課すこと、またはそれらの対象の重要性の特定のランク付けを確立すること、を意図するものではない。本明細書および特許請求の範囲の文脈において、接続詞「または(or)」は、包含的論理和(「および/または(and/or)」)であり、排他的論理和ではない(「…または のいずれか(either...or )」)と理解されるべきである。
【符号の説明】
【0075】
1: 装置
2: 処理部
21: 光線生成部(光線セット生成部)
22: 光線伝搬部
23: 信号寄与度算出部
24: 出力信号生成部
3: 記憶部
4: 出力部(インターフェース)
5: CW信号
51: 部分
6: シーン
61: オブジェクト
62: オブジェクト
71: 信号寄与度
72: 混合部
73: 混合信号寄与度
101:信号
102:シーン
103:混合部
104:出力信号
M: コンピュータ可読記憶媒体
MC: 実行可能プログラムコード
P: コンピュータプログラム製品
PC: プログラムコード
Rx: 受信機
Tx: 送信機
T: 放射持続期間
t_0: 放射開始時間
t_1: 放射終了時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続波光検出および測距(CWライダーセンサ)のセンサデータをシミュレートするための方法であって、
CW信号(5)に基づいて、少なくとも1つの光線を含む光線セットを生成する工程、ここで当該光線セットにおけるそれぞれの光線は、放射開始時間t_0と放射持続期間とを有している
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、少なくとも1つのオブジェクトを含むシミュレートされたシーン(6)を通して前記光線を伝播させる工程;
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記シミュレートされたシーン(6)内の検出位置における、伝播された前記光線の信号寄与度(71)を計算する工程;
前記CW信号を前記光線セットにおける前記光線の計算された前記信号寄与度と混合することに基づいて、出力信号(104)を生成する工程、ここで前記CW信号は通常、前記光線セットにおける前記光線の計算された前記信号寄与度(71)と比較して、前記光線の移動する時間に対応した位相の分だけシフトしている;および、
前記出力信号(104)の記憶および出力の少なくとも一方を実行する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記光線セットにおけるそれぞれの光線は、前記シミュレートされたシーン(6)における空間的起点と、前記シミュレートされたシーン(6)における放射方向と、を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光線を伝播させる工程は、
前記光線の前記空間的起点、前記光線の前記放射方向、および、前記シミュレートされたシーン(6)における前記オブジェクト(61,62)上での前記光線の反射、に基づいて前記光線の光路を決定する工程と、
前記検出位置までの当該光路に沿って前記光線のスループットを計算する工程と、
を含み、
前記信号寄与度(71)を計算する工程は、計算された前記スループットに基づいており、
前記光線の前記スループットは、前記検出位置において受けとられた、前記光路に沿う前記光線の反射によるエネルギーの一部に関連する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記CW信号(5)を計算された前記光線の前記信号寄与度(71)との混合は、前記信号寄与度(71)と前記CW信号(5)との間の信号オフセットに基づいており、
前記信号オフセットは、前記光線の前記放射開始時間t_0および前記光線の
に基づいて決定される、
請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記放射方向は、ランダムに選択されるか、または、均一に選択される、
請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記光線セットは、複数の光線を含み、
前記光線の前記放射開始時間t_0は、ランダムに選択されるか、または、均一に選択される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記CW信号(5)は、周波数変調連続波(FMCW)信号、または、振幅変調連続波(AMCW)信号である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
光線セットを生成する工程は、それぞれの光線に対して、前記CW信号の部分(51)を該光線に割り当てることを含み、
前記CW信号の前記部分(51)は、前記放射開始時間t_0で始まり、前記放射持続期間に等しい長さを有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記出力信号(104)を生成する工程は、
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記CW信号(5)を前記光線の計算された前記信号寄与度(71)と混合することによって混合信号寄与度(73)を計算する工程、および、
前記光線セットにおける全ての光線の前記混合信号寄与度(73)を加算することによって前記出力信号(104)を生成する工程、
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
連続波光検出および測距(CWライダーセンサ)のセンサデータをシミュレートするための装置(1)であって、
CW信号(5)に基づいて、少なくとも1つの光線を含む光線セットを生成する工程、ここで当該光線セットにおけるそれぞれの光線は、放射開始時間t_0と放射持続期間とを有している;
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、少なくとも1つのオブジェクトを含むシミュレートされたシーン(6)を通して前記光線を伝播させる工程;
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記シミュレートされたシーン(6)内の検出位置における、伝播された前記光線の信号寄与度(71)を計算する工程;および、
前記CW信号(5)を前記光線セットにおける前記光線の計算された前記信号寄与度(71)と混合することに基づいて、出力信号(104)を生成する工程、ここで前記CW信号は通常、前記光線セットにおける前記光線の計算された前記信号寄与度(71)と比較して、前記光線の移動する時間に対応した位相の分だけシフトしている
に適合された処理部(2)と、
前記出力信号(104)を記憶するように適合された記憶部(3)、および、前記出力信号(104)を出力するように適合された出力部(4)、の少なくとも一方と、
を備える、装置。
【請求項11】
前記光線セットは、複数の光線を含み、
前記処理部(2)は、前記光線の前記放射開始時間t_0をランダムな方法または均一な方法で決定するように適合されている、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記処理部(2)は、それぞれの光線について、前記CW信号の部分(51)を前記光線に割り当てることによって前記光線セットを生成するように適合されており、
前記CW信号の前記部分(51)は、前記放射開始時間t_0に開始し、前記放射持続期間に等しい長さを有する、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記処理部(2)は、
前記光線セットにおけるそれぞれの光線について、前記CW信号(5)を前記光線の計算された前記信号寄与度(71)と混合することによって混合信号寄与度(73)を計算すること、および
前記光線セットにおける全ての光線の前記混合信号寄与度(73)を加算することによって前記出力信号(104)を生成すること、
によって前記出力信号(104)を生成するように適合されている、
請求項10~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
コンピュータデバイス(1)によって実行されるときに、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている実行可能プログラムコード(PC)、を含むコンピュータプログラム製品(P)。
【請求項15】
コンピュータデバイス(1)によって実行されるときに、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、実行可能プログラムコード(MC)を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体(M)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続波(continuous wave:CW)を用いた光検出と測距(light detection and ranging:LiDAR)によるセンサ(CWライダーセンサ)のセンサデータをシミュレートするための方法に関する。本発明は、さらに、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライダーは、レーザを基にしてターゲットまでの距離を測定するための技術であり、周囲の高解像度の三次元表現を得ることができる。また、ライダーシステムサービスアプリケーションは、自動運転支援システム(automatic driver assistance systems:ADAS)において、駐車支援、衝突警告、および自律走行アプリケーションに使用される、いわゆる環境モデルを提供する。ライダーシステムは、測地学、地震学、航空機レーザーマッピング(airborne laser swath mapping:ALSM)、およびレーザ高度計等の幅広い分野で広く利用されている。
【0003】
ライダーセンサには様々な種類が存在する。例えば、パルスライダーセンサは、短いレーザパルスを放射し、レーザパルスの放射からターゲットに反射してライダーセンサに帰還するまでの飛行時間を測定する。この測定された飛行時間を用いることで、反射ターゲットまでの距離を計算することができる。
【0004】
別のタイプのライダーセンサは、連続波(CW)信号を使用する。この場合、センサは光を連続的に放射する。そして、振幅変調連続波(amplitude modulated continuous wave:AMCW)で振幅を変調するか、あるいは、周波数変調連続波(frequency in frequency modulated continuous wave:FMCW)で周波数を変調するか、のいずれかによって光源を変調することができる。多くの応用では、その精度とロバスト性とから、パルスライダーセンサを用いる方法よりもCWを用いる方法の方が好ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2016 100416号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3260875号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/005209号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A. Kim et al., "Simulating full-waveform lidar", Proc. SPIE 7684, Laser Radar Technology and Applications XV, 2010
【非特許文献2】A. Kim, "Simulating full-waveform LIDAR", Diss. Monterey, California. Naval Postgraduate School, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ライダーシステムによって得られるセンサデータには、多くの用途で、高い精度が求められる。そのため、ライダーアプリケーションの新規開発には、物理的なセンサを含むライダーセンサの大規模な試験が必要となることがある。したがって、このための製造コストを低減するために、開発中のライダーセンサの出力をできるだけ正確に再現することができるシミュレーションデータが求められる。また、ライダーシミュレーションデータは、信号処理アルゴリズムの開発、ニューラルネットワークの学習、仮想検証等を含む他の様々な分野でも必要とされる。
【0008】
パルスライダーセンサをモデル化するライダーセンサデータの提供については、非特許文献1および2において論じられている。
【0009】
また特許文献1は、仮想環境における仮想センサの試験を取り扱っている。これは、ライダーを含む様々なセンサタイプを含むことができる。
【0010】
特許文献2は、自動車試験方法について開示している。この方法は、レーダ励起信号に応答するレーダセンサデータを取得するステップを含む。
【0011】
特許文献3は、照明設計に焦点を当てた、フォトリアリスティックなイメージングと画像の生成とを取り扱っている。
【0012】
ライダーセンサデータを提供する既知の方法に、単一のシミュレーション光線(レイ)を用いて理想的な点群をシミュレーションする手法がある。光線の伝搬は、レイ・トレーシング(光線追跡)法を用いて最も近い表面との交点まで計算され、その表面による鏡面反射のみが考慮される。したがって、1つの光線あたり1つの距離のみが計算される。さらに、複数の光線を含むビームを用いると、1つのビームごとに複数の点を提供することができる。このようなシミュレーションでは、出力として点データのみが提供され、結果として生じる信号に関する情報は生成されない。これに対し、実際のライダーセンサは、時間的に変化する電気信号を生成するため、この電気信号を処理してシミュレートされたシーン内に点を生成する必要がある。時間変化する信号は、オブジェクトの形状、オブジェクトのクラス、多重反射等を含む、シミュレートされたシーンに関する多くの付加的な情報を含む。このような情報は、点群のみが出力として提供されれば、必然的に失われてしまう。
【0013】
さらに、時間変化する信号は、ビーム形状、ビーム間のオブジェクトの動き、信号に対する天候の影響等の、ライダーセンサおよび環境の物理的特性に起因する特徴を含む。これらの特徴は、ライダーデータにアーチファクトをもたらすため、センサおよびその出力に基づくアルゴリズムを開発する際には考慮する必要がある。したがって、開発中のライダーセンサをシミュレートするには点群では不十分となり、より現実的なデータが必要となる可能性がある。
【0014】
したがって、本発明の目的は、現実的な連続波ライダーデータを提供するための方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本課題は、独立請求項の主題によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0016】
第1の態様によれば、本発明は、請求項1に記載の連続波(CW)光検出および測距(ライダー)センサのセンサデータをシミュレーション(モデル化)する方法を提供する。第2の態様によれば、本発明は、請求項10に記載のCWライダーセンサのセンサデータをシミュレーションするための装置を提供する。第3の態様によれば、本発明は、請求項14に記載のコンピュータプログラム製品を提供する。第4の態様によれば、本発明は、請求項15に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0017】
第1の態様によれば、本発明は、連続波(CW)光検出および測距(ライダー)センサのセンサデータをシミュレートするための方法を提供し、ここで、CW信号に基づいて、少なくとも1つの光線を含む光線セットが生成される。光線セットにおけるそれぞれの光線は、放射開始時間と、放射持続期間と、を有する。光線セットにおけるそれぞれの光線について、光線は、少なくとも1つのオブジェクトを含むシミュレートされたシーンを通して伝播される。光線セットにおけるそれぞれの光線について、伝搬した光線の信号寄与度は、シミュレートされたシーン内の検出位置において計算される。出力信号は、CW信号と光線セット内の光線の計算された信号寄与度とを混合(mixing)することに基づいて生成される。この方法はさらに、出力信号を、記憶および/または出力することを提供する。
【0018】
第2の態様によれば、本発明は、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置を提供する。この装置は、処理部と、記憶部および出力部のうちの少なくとも1つと、を備える。処理部は、CW信号に基づいて、少なくとも1つの光線を含む光線セットを生成する。前記光線セットの光線はそれぞれ、放射開始時間と、放射持続期間と、を有する。処理部は、光線セットにおけるそれぞれの光線について、少なくとも1つのオブジェクトを含むシミュレートされたシーンを通して光線を伝搬させる。処理部は、光線セットにおけるそれぞれの光線について、シミュレートされたシーン内の検出位置において、伝搬された光線の信号寄与度を計算する。処理部はさらに、CW信号と光線セット内の光線の計算された信号寄与度とを混合することに基づいて、出力信号を生成する。記憶部は、前記出力信号を記憶するようになっており、出力部は、出力信号を出力するようになっている。
【0019】
第3の態様によれば、本発明は、コンピュータプログラム製品を提供する。このコンピュータプログラム製品は、コンピュータによって実行すると、連続波センサのセンサデータをシミュレートするための方法を実行する、ように構成された実行可能プログラムコードを含んでいる。
【0020】
第4の態様によれば、本発明は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を提供する。この非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行すると、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法を実行する、ように構成された実行可能プログラムコードを含んでいる。
【0021】
本発明は、CWライダーセンサの全波形信号に対応するシミュレーションデータを提供する。ここでは、シミュレートされたシーンの「完全な」点群タイプの表現のみを提供するのではなく、信号情報の全体が保持される。そのため、出力信号を含むセンサデータを提供することで、オブジェクトの形状およびオブジェクトのクラス、ならびにオブジェクトの向き等の、付加的な情報を決定することも可能となる。さらに、センサデータは、実際のライダーデータに存在するアーチファクトも含む。そのようなアーチファクトは、ライダービームの多重反射のように、ライダーセンサおよび環境の物理的特性に由来するものであって、点群タイプのデータには存在しない。そのため、このようなアーチファクトをも考慮に入れることによって、センサ開発を改善することができる。
【0022】
本発明は、実際のCWライダーセンサがどのように動作するかを正確にシミュレートするため、実際のCWライダーセンサの出力を正確に再現する。また、提供される高品質なデータは、現実世界に対して完全かつ精確であり、信号処理アルゴリズムの開発、ニューラルネットワークが学習、仮想検証等に高い価値を発揮することもできる。
【0023】
一実施形態に係る方法において、光線セットは、ただ1つの光線を含む。しかしながら、光線セットは一般に、複数の光線を含むことが好ましい。例えば、光線セットは、少なくとも2本、好ましくは少なくとも100本、より好ましくは少なくとも500本、最も好ましくは少なくとも1000本の光線を含むことができる。光線の上限数はまた制限されてもよい。例えば、光線セットは、多くとも100,000本、好ましくは多くとも10,000本、より好ましくは多くとも5000本、最も好ましくは多くとも2000本の光線を含むことができる。
【0024】
好ましい実施形態に係る方法によれば、光線セットにおけるそれぞれの光線は、シミュレートされたシーンにおける空間的起点と、シミュレートされたシーンにおける放射方向と、を含む。したがって、光線は、空間および時間の両方においてサンプリングされる。空間におけるサンプリングは、空間的な起源と発光方向を決定することを含み、時間的なサンプリングは、CW信号の部分を光線に割り当てる(アサインする)ことを含む。放射方向は、シミュレートされたシーンにおける1つのベクトルに対応し、光線がどの方向に放射されるかを示すことができる。
【0025】
好ましい実施形態に係る方法によれば、光線を伝搬する工程は、光線の放射方向に基づいて、また、シミュレートされたシーン内のオブジェクト上での光線の反射に基づいて、さらに光線の空間的起点に基づいて、光線の光路を決定することを含む。さらに、検出位置までの光路に沿った光線のスループットが計算される。信号寄与度の計算工程は、計算されたスループットに基づいて行われる。一実施形態によれば、単一の反射のみを考慮することができる。しかしながら、一般に、オブジェクトからの光線の多重反射も考慮することができる。反射の数は制限されていてもよく、すなわち、所定の閾値よりも少ない数の反射のみを考慮してもよい。
【0026】
好ましい実施形態に係る方法によれば、光線セット内のそれぞれの光線について、CW信号を光線の計算された信号寄与度との混合は、信号寄与度とCW信号との間の信号オフセットに基づいて行われる。信号オフセットは、光線の放射開始時間と光線の光路とに基づいて決定される。
【0027】
好ましい実施形態に係る方法によれば、放射方向は、それぞれの光線に対してランダムに選択される。また、光線の発光方向は、均一に選択されてもよい。一般に、放射方向は、ライダーセンサによって放射されるレーザビームの有限の範囲を考慮するように選択される。一般に、レーザビームは、ウエストw_0を有するガウシアンビームによって記述され得る。しかしながら、レーザビームはまた、任意の形状を有し得る。この場合、ビーム全体の放射方向は、ある立体角で記述することができる。さらに、ライダーセンサの放射方向は調整可能であってもよい。例えば、ライダーセンサは、放射されたレーザを偏向させ、それによって、ある空間領域を走査するように適合されたマイクロミラーを備えることができる。
【0028】
好ましい実施形態に係る方法によれば、光線セットは、複数の光線を含む。光線の放射開始時間はランダムに選択される。発光時間は、均一に選択されてもよい。一般に、光線の放出時間は、正確な出力信号を生成するために、時間内のすべての点が十分にサンプリングされるように選択される。異なる光線の寄与は、重要度サンプリング方法に従って重み付けされてもよい。例えば、光線の信号寄与度は、異なる重みで重み付けされてもよい。
【0029】
本方法の好ましい実施形態によれば、CW信号は、周波数変調連続波(FMCW)信号である。また、CW信号は、振幅変調連続波(AMCW)信号であってもよい。
【0030】
本方法の好ましい実施形態によれば、光線セットを生成することは、各光線について、CW信号の部分を光線に割り当てることを含む。光線は、放射開始時間で始まり、放射持続期間に等しい長さを有する無限時間CW信号の部分に対応する。言い換えれば、CW信号は無限時間信号、すなわちレーザが連続的に放射するものであり、各光線はある時間間隔でCW信号のセクションに相当する。光線の振幅の時間依存性は、CW信号の対応するセクションの時間依存性に等しい。
【0031】
本方法の好ましい実施形態によれば、出力信号を生成することは、光線セット内の各光線に対して、CW信号を光線の計算された信号寄与度と混合することによって得られる混合信号寄与度を計算することを含む。さらに、出力信号は、光線セット内のすべての光線の混合信号寄与度を加算することによって生成される。したがって、出力信号は、全ての信号寄与度をCW信号とミキシングした後に生成される。
【0032】
装置の好ましい実施形態によれば、光線セットは、複数の光線を含み、処理部は、光線の放射開始時間をランダムまたは均一な方法で決定するようになっている。
【0033】
本装置の好ましい実施形態によれば、処理部は、CW信号の部分を光線に割り当てることによって光線セットを生成するようになっている。光線に割り当てられたCW信号の部分は、放射開始時間で始まり、放射持続期間にわたって延びる。
【0034】
本装置の好ましい実施形態によれば、処理部は、光線セット内の各光線に対して、CW信号と光線の計算された信号寄与度とを混合することによる混合信号寄与度と、光線セット内の全ての光線の混合信号寄与度を加算することによって出力信号を生成することにより、出力信号を生成するように構成される。
【0035】
コンピュータデバイスに加え、システムの一部または全ての構成要素は、ハードウェアコンポーネントおよびソフトウェアコンポーネントを含むことができる。ハードウェアコンポーネントは、マイクロ制御器、中央演算装置(CPU)、グラフィックス処理部(GPU)、メモリ、および記憶装置のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0036】
添付の図面に示される例示的な実施形態を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0037】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれるとともに、本明細書の一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示し、発明の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するものである。
【0038】
本発明の他の実施形態および本発明の意図される利点の多くは、以下の詳細な説明を参照することによって理解が深められるにつれ、容易に高く評価されるようになるであろう。方法における工程は、参照を容易にするために番号が付されているが、当該番号付けは、明示的または暗示的に別段の記載がない限り、必ずしもその順序で実行される工程を意味するものではないと理解すべきである。特に、工程は、それらの番号付けによって示される順とは異なる順で実行されてもよい。いくつかの工程は、同時に、または重複して実行されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置を示すブロック図を概略的に示す。
図2図2は、動作中のライダーセンサの様子を模式的に示す。
図3図3は、光線に割り当てられたセクションを有するCW信号を模式的に示す。
図4図4は、光線が送信機から受信機へ伝搬する様子を模式的に示す。
図5図5は、光線が受信機から送信機へ伝搬する様子を模式的に示す。
図6図6は、CW信号を光線の信号寄与度との混合に基づく出力信号の生成を概略的に示す。
図7図7は、本発明の一実施形態に係るCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法のフロー図を示す。
図8図8は、本発明の一実施形態に係るコンピュータプログラム製品を示すブロック図を概略的に示す。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る非一時的コンピュータ可読記憶媒体を示すブロック図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置1を概略的に示す。装置1の複数の構成要素をより詳細に説明する前に、図2を参照して、CWライダーセンサの動作原理を説明する。
【0041】
図2に示すように、ライダーセンサのレーザは、連続波(CW)信号101を生成する。レーザは、振幅が時間の関数として変化するように制御される。この場合、ライダーシステムは、振幅変調連続波(AMCW)法用に準備される。以下の図示された信号は振幅が変動しているが、しかしながら、ライダーシステムは、周波数変調連続波(FMCW)法での使用に適合させることもできる。この場合、CW信号の周波数は、時間の関数として変化する。ライダーシステムの送信機Txは、CW信号を放射する。CW信号は、シーン102内の1つまたは複数のオブジェクトによって反射され、少なくとも部分的に、ライダーシステムの受信機Rxによって受信される。受信信号は、ライダーシステムの混合部103によって、元のCW信号と混合される。このようにして得られた信号は、出力信号104として放射される。
【0042】
以下では、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置1の構成要素について、より詳細に説明する。
【0043】
装置1は、外部装置からデータを受信し、外部装置にデータを送信するように適合されたインターフェース4を備える。したがって、インターフェース4は入力部と出力部との両方として配置することができ、他のシステム(例えば、WLAN、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Profibus、ETHERNET等)またはユーザ(ディスプレイ、プリンタ、スピーカ等)に情報を通信することができる任意の種類のポートまたはリンクまたはインターフェースとすることができる。
【0044】
装置1はさらに、インターフェース4から受信したデータを処理するように構成された処理部2を有する。処理部2は、マイクロコントローラ(μC)、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、特定用途向け標準製品(ASSP)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)等のような、中央処理装置(CPU)またはグラフィックス処理部(GPU)とすることができる。
【0045】
処理部2は、インターフェース4と通信している光線セット生成部21と、光線セット生成部21と通信している光線伝搬部22と、光線伝搬部22と通信している信号寄与度算出部23と、信号寄与度算出部23と通信している出力信号生成部24と、を備えている。これらのモジュール21~24は、処理部2の一部であってもよいし、処理部2上に実装されていてもよいし、処理部2と通信可能に接続された別個のユニット上に実装されていてもよい。
【0046】
装置1はさらに、信号生成部24と通信している記憶部3を備える。記憶部3は、例えば、磁気コアメモリ、磁気テープ、磁気カード、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスク、またはリムーバブル記憶装置等の磁気記憶装置またはメモリ、のようなデータ記憶装置とすることができ、または、それらを備えることができる。記憶部3はまた、例えば、ホログラフィックメモリ,光テープ,レーザディスク,フェーズライタ,フェーズライタデュアル(PD),コンパクトディスク(CD),デジタルビデオディスク(DVD),高精細DVD(HD DVD),ブルーレイディスク(BD),またはウルトラデンシティオプティカル(UDO)等の光記憶装置またはメモリであってもよく、またはこれらを備えていてもよい。記憶部3はさらに、例えば、ミニディスクまたは光磁気ディスク(MO-Disk)等の光磁気記憶装置またはメモリ、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM),ダイナミックRAM(DRAM),またはスタティックRAM(SRAM)等の揮発性半導体またはソリッドステートメモリ、例えば、読出し専用メモリ(ROM),プログラマブルROM(PROM),イレーサブルPROM(EPROM),エレクトリカルEPROM(EEPROM),フラッシュEEPROMや、例えば、USBスティック、強誘電RAM(FRAM(登録商標))、磁気抵抗RAM(MRAM)、または相変化RAM等の不揮発性半導体/ソリッドステートメモリ、またはデータキャリア/媒体であってもよい。
【0047】
装置1は、インターフェース4を介して、例えば、時間依存CW信号の波形、またはCW信号を記述する他のパラメータ、例えば、CW信号の位相または振幅に関連するパラメータのような、ある入力パラメータを受信することができる。入力パラメータは、さらに、光線生成部21によって発生される光線の最大数または最小数を含むことができる。さらに、装置1は、シミュレートされたシーン内のオブジェクトの数、向き、およびプロパティなど、シミュレートされたシーンに関する情報を受信することができる。シミュレートされたシーンは、シミュレートされるライダーセンサの人工的な環境に対応する。ライダーセンサによって放射されたレーザビームは、シミュレートされたシーンに配置されたオブジェクトによって反射される。
【0048】
光線生成部21は、少なくとも1つ、好ましくは複数の光線を含む光線セットを生成するようになっている。
【0049】
以下では、複数の光線が生成される状況をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は、原則として、1つの光線のみを含む光線セットにも適用可能である。
【0050】
光線生成部21は、光線セットにおけるそれぞれの光線について、放射開始時間、放射持続期間、シミュレートされたシーンにおける空間的起点、および放射方向を規定する。全ての光線は、同じ空間的起点から省略することができる。しかしながら、空間的起点は、異なる光線に対して異なっていてもよい。放射開始時間は、ランダムに選択されてもよい。したがって、光線生成部21は、(擬似)乱数生成器を備えることができる。しかしながら、光線生成部21は、決定論的に、あるいは予め定義された分布にしたがって、放射開始時間を選択することもできる。
【0051】
光線生成部21は、それぞれの光線にCW信号のある一定の区間を割り当る。その区間は、放射開始時間に開始し、放射持続期間にわたる。
【0052】
次に、光線伝搬部22は、シミュレートされたシーンを通して光線セットにおける全ての光線を伝搬させる。光線伝搬部22は、当該技術分野で知られているレイ・トレーシング法を使用することができるようになっている。レイ・トレーシングは、コンピュータグラフィックスで知られる仮想シーン内の幾何学的形状をサンプリングする方法である。コンピュータグラフィックスにおいて、レイ・トレーシングは、カメラから光線を放ち、瞬時にセンサ画素上に光を蓄積することによって、すなわち、有限の伝搬時間を考慮に入れずに、画像を作成するために使用される。これに対し、本発明に係る光線追跡は、有限の伝搬時間も考慮している。
【0053】
それぞれの光線は、現在の光線、すなわち、元の放射光線または既に散乱された光線と、シミュレートされたシーン内の最も近いオブジェクトと、の交点を計算することによってシミュレートされたシーンを通して伝播され、そして、適切な物理モデルを使用して、オブジェクトの特性に基づいて反射のパラメータを計算する。光線伝搬部22は、それぞれの光線に対する(おそらく複数の)反射を決定することによって、シミュレートされたシーンにおけるそれぞれの光線の光路を計算する。光線の反射は、検出位置においてエネルギーの一部のみが受け取られる、という付加的な効果を有し得る。したがって、光線伝搬部22は、光路そのものに加え、光路に沿った検出位置までの光線のスループットをも計算する。
【0054】
信号寄与度算出部23は、シミュレートされたシーン内の検出位置における、光線セットの各伝搬光線の信号寄与度を算出するようになっている。信号寄与度算出部23は、光線の空間的起点から検出位置までの光線の光路の全長を算出する。信号寄与度部23はさらに、それぞれの光線について、変換係数としての光速cに基づき、対応する光路の全長から、移動時間、すなわち伝播時間または飛行時間、を計算する。
【0055】
信号寄与度算出部23は、光線に割り当てられたCW信号の部分に基づいて、それぞれの光線の信号寄与度を算出する。ここで、光線に割り当てられたCW信号の部分は、元のCW信号に対して、光線に対応する光路の算出された移動時間に応じて位相シフトされる。位相シフトは、信号寄与度とCW信号との間に信号オフセットをもたらす。さらに、光線の信号寄与度の振幅は、計算されたスループットにしたがって調整され得る。
【0056】
出力信号生成部24は、光線セットにおけるそれぞれの光線について、元のCW信号を光線の算出された信号寄与度と混合することにより、混合信号寄与度を算出する。出力信号生成部24は、さらに、光線セットにおける全ての光線の混合信号寄与度を加算することによって、出力信号を生成する。
【0057】
出力信号生成部24は、インターフェース4を介してユーザに出力信号を提供するように構成することができる。付加的に、または代替的に、出力信号は、記憶部3に記憶するようにしてもよい。
【0058】
CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置1のいくつかの態様について、図3から図6を参照してより詳細に説明する。
【0059】
図3は、例示的なCW信号5を示しており、CW信号5は、光線セットを生成するために、また、CW信号5を光線の計算された信号寄与度と混合することによって、出力信号を生成するために、使用される。図3に示すように、CW信号の振幅は変調されており、すなわち、CW信号5は振幅変調連続波(AMCW)信号である。異なる実施形態によると、CW信号5はまた、周波数変調されていてもよく、すなわち、周波数変調連続波(FMCW)信号であってもよい。
【0060】
光線セットにおいて例示された光線について、放射開始時間t_0が設定され、例えば、所定の初期時間0nsに対して測定される46nsとされる。また、放射開始時間t_0から始まり、放射終了時間t_1で終了する、放射持続期間Tが設定される。CW信号5のうち放射開始時間t_0と放射終了時間t_1との間の対応するセクションまたは部分が、光線に割り当てられる。
【0061】
図4に示すように、光線は、シミュレートされたシーン6内でシミュレートされたライダーセンサの送信機Txから出発し、シミュレートされたシーンを通して伝搬することができる。このとき送信機Txは、シミュレートされたシーン6における光線の空間的起点に配置されている。光線は、第1のオブジェクト61から反射され、さらに第2のオブジェクト62から反射されて、シミュレートされたライダーセンサの受信機Rxに対応する検出位置に到達する。
【0062】
また、図5に示すように、光線の伝搬は、逆方向に行われることもある。すなわち、光線は、シミュレートされたライダーセンサの受信機Rxの位置に配置された光線の空間的起点から、最初に第2のオブジェクト62から反射され、次いで第1のオブジェクト61から反射され、光線がシミュレートされたシーンにおけるシミュレートされたライダーセンサの送信機Txの位置に対応する検出位置に到達するまで、トレースすることができる。
【0063】
図6を参照すると、光線セット生成部21は、図3を参照してより詳細に上記で説明したように、CW信号5の一部分を光線に割り当てる。そして光線伝搬部22がシミュレートされたシーンを通して光線を伝搬させた後、信号寄与度算出部23が、光線の対応する信号寄与度71を計算する。出力信号生成部24は、光線の信号寄与度71と、光線が検出位置において受信された時間t_2において開始するCW信号の部分51と、を混合する混合部72を備えている。時間t_2は、光線の放射開始時間と光線の移動時間との和に相当する。そしてCW信号5の部分51は、一般に、光線の移動時間に対応する位相シフトの分だけ、光線に割り当てられたCW信号の部分(放射開始時間において開始する)と異なっている。さらに、光線の実際の信号寄与度は、光路に沿った光線のスループットによっても影響を受ける可能性がある。
【0064】
出力信号生成部24は、CW信号を光線の計算された信号寄与度と混合することにより、混合信号寄与度73を生成する。出力信号生成部24は、光線セット内の複数の光線について、光線セット内の全ての光線の混合信号寄与度73を加算して出力信号を生成することとなる。
【0065】
図7は、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法のフロー図を示す。
【0066】
第1の方法ステップS1において、少なくとも1つの光線を、好ましくは複数の光線を含む光線セットが生成される。光線セット内の光線の数は固定されていてもよい。光線セット内の光線の数は、ランダムに選択されてもよい。光線セット内の光線の数は、予め定められた最小数よりも大きくなるように選択することができる。例えば、光線セットは、少なくとも2、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも500、最も好ましくは少なくとも1000の光線を含むことができる。また、光線セット内の光線の数は、予め定められた最大数よりも小さくなるように選択される。例えば、光線セットは、多くとも100,000、好ましくは多くとも10,000、より好ましくは多くとも5000、最も好ましくは多くとも2000の光線を含むことができる。
【0067】
それぞれの光線について、放射開始時間は、例えば0nsのような、ある所定の時間起点に対して決定される。さらに、光線の放射持続期間が決定される。放射持続期間は、全ての光線に対して等しくてもよいが、異なる光線に対して変化してもよい。光線の放射持続期間は、所定の分布に従うこともできる。また、それぞれの光線について、シミュレートされたシーンにおける空間的起点が決定される。空間的起点(光線の放出点に対応する)は、光線セットにおけるすべての光線に対して同一にすることができる。しかしながら、異なる光線は、異なる空間的起点を含むこともできる。また、それぞれの光線の発光方向が決定される。
【0068】
放射方向および/または放射開始時間および/または放射持続期間は、ランダムに選択されてもよく、あるいは、一様に選択またはサンプリングされてもよい。放射開始時間は、正確な出力信号が生成されるような方法でサンプリングされることが好ましい。特に、放射開始時間は、光線に割り当てられたCW信号の部分が、CW信号の少なくとも1つの位相の全体をカバーするように選択される。それぞれの光線の寄与度は、サンプリング理論、例えば重要度サンプリングを用いて調整することができる。
【0069】
方法ステップS2において、光線集合内のそれぞれの光線は、シミュレートされたシーンを通って伝播する。シミュレートされたシーンは、所定の幾何学的形状および物理的特性を有する複数のオブジェクトを含む。シミュレートされたシーンにおけるオブジェクトの位置および/または物理的特性は、固定されてもよいし、または時間的に変化してもよい。光線の伝搬は、当該技術分野で公知のレイトレーシングアルゴリズムを用いて行われる。それぞれの光線について、光線の光路は、光線の空間的起点、光線の放射方向、およびシミュレートされたシーン内のオブジェクト上での光線の反射、に基づいて決定される。さらに、検出位置までの光路に沿った光線のスループットが計算される。
【0070】
方法ステップS3では、光線セット内のそれぞれの光線について、シーン内の検出位置における伝搬された光線の信号寄与度が計算される。信号寄与度は、計算されたスループットに基づいて、および光線の移動時間に基づいて、計算される。光線の移動時間は、光線の光路の長さから計算することができる。光線の最終的な移動時間は、信号寄与度とCW信号との間の信号オフセットにつながる。信号オフセットは、光線の放射開始時間と、光線の光路に沿った移動時間と、に基づいて決定される。
【0071】
方法ステップS4において、それぞれの計算された信号寄与度は、CW信号と混合されて、対応する光線の混合信号寄与度を計算する。CW信号を計算された信号寄与度との混合は、信号オフセットに基づいている。すべての光線の混合信号寄与度を加算して、出力信号を生成する。
【0072】
方法ステップS5において、出力信号は、メモリ記憶部3に記憶される。これに加えて、または、これに代えて、出力信号は、出力部4、例えば、ディスプレイまたはプリンタ等に出力される。
【0073】
図8は、実行可能なプログラムコードPCを含むコンピュータプログラム製品Pを示すブロック図を概略的に示す。実行可能なプログラムコードPCは、(例えば、コンピュータデバイスによって)実行されると、本発明に係るCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法を実行するように構成されている。
【0074】
図9は、非一時的コンピュータ可読記憶媒体Mを示すブロック図を概略的に示しており、非一時的コンピュータ可読記憶媒体Mは、(例えば、コンピュータデバイスによって)実行されたときに、本発明に係るCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法を実行するように構成された、実行可能プログラムコードMCを備えている。
【0075】
ここに記載された全ての有利な選択肢、改変における相違点、およびCWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための装置の実施形態に関する前述の記載は、CWライダーセンサのセンサデータをシミュレートするための方法についての実施形態に同様に適用することができ、またその逆もまた同様である、ことが理解されるべきである。
【0076】
前述の詳細な説明において、様々な特徴は、開示を合理化する目的で、1つまたは複数の例にまとめられている。上記の説明は、例示的であり限定的ではないことが意図されていることを理解されたい。代替物、修正物、および均等物を包含することを意図している。上記の明細書を検討するとき、多くの他の例が当業者には明らかであろう。
【0077】
本明細書では特定の実施形態を図示し、説明したが、当業者であれば、様々な代替および/または同等の実装が存在することが理解されるであろう。例示的な一の実施形態または例示的な複数の実施形態は、例示に過ぎず、範囲、適用可能性、または構成を何らかの形で限定することを意図するものではないことを理解されたい。むしろ、前述の概要および詳細な説明は、当業者に、少なくとも1つの例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを提供するものであり、添付の特許請求の範囲およびその法的な等価物に記載される範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に記載される要素の機能および配置に様々な変更を行うことができることを理解されたい。一般に、本出願は、ここで論じられる特定の実施形態の任意の応用または変形を包含することが意図される。
【0078】
前述の明細書で使用される特定の専門用語は、本発明を完全に理解するために使用される。しかしながら、ここに提供される明細書に照らして、本発明を実施するために特定の詳細が必要とされないことは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明の特定の実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示される。これらは、網羅的であること、または本発明を開示された厳密な形態に限定すること、を意図するものではなく、上記の教示に鑑みて多くの修正および変形が可能であることが明らかである。この実施形態は、本発明の原則およびその実際の応用を最も良く説明するために選択されて説明されたものであり、これにより、当該技術分野の当業者が、考えられる特定の用途に適するように様々の変形を付した本発明および様々な実施形態を最も良く利用することができるようになる。本明細書全体を通して、用語「含む(including)」および「その中で(in which)」は、単純英語の用語「含む(comprising)」および「ここで(wherein)」の平易な英語の等価表現としてそれぞれ使用される。さらに、用語「第1の(first)」、「第2の(second)」および「第3の(third)」などは、単にラベルとして使用され、それらの対象に数値的要件を課すこと、またはそれらの対象の重要性の特定のランク付けを確立すること、を意図するものではない。本明細書および特許請求の範囲の文脈において、接続詞「または(or)」は、包含的論理和(「および/または(and/or)」)であり、排他的論理和ではない(「…または のいずれか(either...or )」)と理解されるべきである。
【符号の説明】
【0079】
1: 装置
2: 処理部
21: 光線生成部(光線セット生成部)
22: 光線伝搬部
23: 信号寄与度算出部
24: 出力信号生成部
3: 記憶部
4: 出力部(インターフェース)
5: CW信号
51: 部分
6: シーン
61: オブジェクト
62: オブジェクト
71: 信号寄与度
72: 混合部
73: 混合信号寄与度
101:信号
102:シーン
103:混合部
104:出力信号
M: コンピュータ可読記憶媒体
MC: 実行可能プログラムコード
P: コンピュータプログラム製品
PC: プログラムコード
Rx: 受信機
Tx: 送信機
T: 放射持続期間
t_0: 放射開始時間
t_1: 放射終了時間
【国際調査報告】