(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(54)【発明の名称】CD33標的免疫療法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220701BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220701BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220701BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220701BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20220701BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20220701BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20220701BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220701BHJP
C12N 15/863 20060101ALI20220701BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220701BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220701BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220701BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20220701BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20220701BHJP
C07K 14/085 20060101ALN20220701BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220701BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20220701BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20220701BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N5/10 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/869 Z
C12N15/867 Z
C12N15/863 Z
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P35/02
C07K14/705
C12N5/0783
C07K14/085
C07K16/28
C12P21/08
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566152
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2020031780
(87)【国際公開番号】W WO2020227474
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438515
【氏名又は名称】2セブンティ バイオ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518283218
【氏名又は名称】インヒブリックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャージョル, ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】ポグソン, マーク
(72)【発明者】
【氏名】レオン, ワイ-ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, カイル
(72)【発明者】
【氏名】クラゴ, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】サナブリア, アンジェリカ
(72)【発明者】
【氏名】ホランズ, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ガノ, ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】マ, ミルトン
(72)【発明者】
【氏名】ティマー, ジョン シー.
(72)【発明者】
【氏名】エクケルマン, ブレンダン ピー.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
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4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB65
4C087CA16
4C087NA14
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4C087ZB11
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4C087ZB27
4C087ZB33
4C087ZB35
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、癌、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患および免疫不全の少なくとも一つの症状、もしくはそれらと関連する状態を治療、予防または改善するための養子T細胞療法の改善されたCD33標的ポリペプチドおよび組成物を提供する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非天然細胞であって、
(a)FRB多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアント、CD8α膜貫通ドメインもしくはCD4膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、および/またはCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、第一のポリペプチドと、
(b)配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体、FKBP多量体形成ドメインポリペプチドまたはそのバリアント、およびCD4膜貫通ドメインまたはCD8α膜貫通ドメインを含む第二のポリペプチド、を含み、
架橋因子は、前記非天然細胞表面上のポリペプチド複合体の形成を促進し、前記架橋因子は、前記第一および第二のポリペプチドの多量体形成ドメインと関連付けられ、それらの間に配置される、非天然細胞。
【請求項2】
前記FKBP多量体形成ドメインが、FKBP12である、請求項1に記載の非天然細胞。
【請求項3】
前記FRBポリペプチドが、FRB T2098Lである、請求項1または請求項2に記載の非天然細胞。
【請求項4】
前記架橋因子が、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムスからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項5】
前記第一のポリペプチドが、シグナルペプチド、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項6】
前記第二のポリペプチドが、シグナルペプチドおよびCD4膜貫通ドメインを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項7】
前記第二のポリペプチドが、共刺激ドメインを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項8】
前記第二のポリペプチドの前記共刺激ドメインが、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)からなる群から選択される共刺激分子から選択される、請求項7に記載の非天然細胞。
【請求項9】
前記第二のポリペプチドの前記共刺激ドメインが、OX40またはTNFR2から単離された共刺激ドメインである、請求項7または請求項8に記載の非天然細胞。
【請求項10】
前記第二のポリペプチドが、配列番号22~31のいずれか一つに記載される配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項11】
非天然細胞であって、
(a)FRB多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアント、CD8α膜貫通ドメインもしくはCD4膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、および/またはCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、第一のポリペプチドと、
(b)配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体、FKBP多量体形成ドメインポリペプチドまたはそのバリアント、およびCD4膜貫通ドメインまたはCD8α膜貫通ドメインを含む、第二のポリペプチドと、
(c)前記第一および第二のポリペプチドの多量体形成ドメインと関連付けられ、それらの間に配置される架橋因子、を含むポリペプチド複合体を含む、非天然細胞。
【請求項12】
前記FKBP多量体形成ドメインが、FKBP12である、請求項11に記載の非天然細胞。
【請求項13】
前記FRBポリペプチドが、FRB T2098Lである、請求項11または請求項12に記載の非天然細胞。
【請求項14】
前記架橋因子が、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムスからなる群から選択される、請求項11~13のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項15】
前記第一のポリペプチドが、シグナルペプチド、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項16】
前記第二のポリペプチドが、シグナルペプチドおよびCD4膜貫通ドメインを含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項17】
前記第二のポリペプチドが、共刺激ドメインを含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項18】
前記第二のポリペプチドの前記共刺激ドメインが、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)からなる群から選択される共刺激分子から選択される、請求項17に記載の非天然細胞。
【請求項19】
前記第二のポリペプチドの前記共刺激ドメインが、OX40またはTNFR2から単離された共刺激ドメインである、請求項17または請求項18に記載の非天然細胞。
【請求項20】
前記第二のポリペプチドが、配列番号22~31のいずれか一つに記載される配列を含む、請求項11~19のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項21】
前記細胞が、造血細胞である、請求項1~20のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項22】
前記細胞が、T細胞、αβ T細胞、またはγδ T細胞である、請求項1~21のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項23】
前記細胞が、CD3
+、CD4
+および/またはCD8
+細胞である、請求項1~22のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項24】
前記細胞が、免疫エフェクター細胞である、請求項1~23のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項25】
前記細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である、請求項1~24のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項26】
前記細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、請求項1~25のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項27】
前記細胞の源は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織または腫瘍である、請求項1~26のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項28】
前記FRB多量体形成ドメインおよび前記FKBP多量体形成ドメインが、前記第一のポリペプチドおよび前記第二のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在する、請求項1~27のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項29】
融合ポリペプチドであって、
(a)FRB多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアント、CD8α膜貫通ドメインもしくはCD4膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、および/またはCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、第一のポリペプチドと、
(b)ポリペプチド切断シグナル、ならびに
(c)配列番号2~21のいずれか一項に記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体、FKBP多量体形成ドメインポリペプチドまたはそのバリアント、およびCD4膜貫通ドメインまたはCD8α膜貫通ドメインを含む、第二のポリペプチド、を含む、融合ポリペプチド。
【請求項30】
前記FKBP多量体形成ドメインが、FKBP12である、請求項29に記載の融合ポリペプチド。
【請求項31】
前記FRBポリペプチドが、FRB T2098Lである、請求項29または請求項30に記載の融合ポリペプチド。
【請求項32】
前記架橋因子が、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムスからなる群から選択される、請求項29~31のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項33】
前記第一のポリペプチドが、シグナルペプチド、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項29~32のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項34】
前記第二のポリペプチドが、シグナルペプチドおよびCD4膜貫通ドメインを含む、請求項29~33のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項35】
前記融合ポリペプチドが、配列番号32~41のいずれか一つに記載の配列を含む、請求項29~34のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項36】
前記第二のポリペプチドが、共刺激ドメインを含む、請求項29~35のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項37】
前記第二のポリペプチドの前記共刺激ドメインが、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)からなる群から選択される共刺激分子から選択される、請求項36に記載の融合ポリペプチド。
【請求項38】
前記第二のポリペプチドの前記共刺激ドメインが、OX40またはTNFR2から単離された共刺激ドメインである、請求項36または請求項37に記載の融合ポリペプチド。
【請求項39】
前記ポリペプチド切断シグナルが、ウイルス自己切断ポリペプチドである、請求項29~38のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項40】
前記ポリペプチド切断シグナルが、ウイルス自己切断2Aポリペプチドである、請求項29~39のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項41】
前記ポリペプチド切断シグナルは、口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである、請求項29~40のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項42】
前記融合ポリペプチドが、配列番号42~61のいずれか一つに記載の配列を含む、請求項29~41のいずれか一項に記載の非天然細胞。
【請求項43】
前記FRB多量体形成ドメインおよび前記FKBP多量体形成ドメインが、前記第一のポリペプチドおよび前記第二のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在する、請求項29~42のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項44】
ポリペプチド複合体であって、
(a)FRB多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアント、CD8α膜貫通ドメインもしくはCD4膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、および/またはCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、第一のポリペプチドと、
(b)配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体、FKBP多量体形成ドメインポリペプチドまたはそのバリアント、およびCD4膜貫通ドメインまたはCD8α膜貫通ドメインを含む、第二のポリペプチドと、
(c)前記第一および第二のポリペプチドの前記多量体形成ドメインと関連付けられ、それらの間に配置される架橋因子、を含む、ポリペプチド複合体。
【請求項45】
前記FKBP多量体形成ドメインが、FKBP12である、請求項44に記載のポリペプチド複合体。
【請求項46】
前記FRBポリペプチドが、FRB T2098Lである、請求項44または請求項45に記載のポリペプチド複合体。
【請求項47】
前記架橋因子が、AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムスからなる群から選択される、請求項44~46のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項48】
前記第一のポリペプチドが、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項44~47のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項49】
前記第二のポリペプチドが、CD4膜貫通ドメインを含む、請求項44~48のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項50】
前記第二のポリペプチドが、共刺激ドメインを含む、請求項44~49のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項51】
前記第二のポリペプチドの前記共刺激ドメインが、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)からなる群から選択される共刺激分子から選択される、請求項50に記載のポリペプチド複合体。
【請求項52】
前記第二のポリペプチドの前記共刺激ドメインが、OX40またはTNFR2から単離された共刺激ドメインである、請求項50または請求項51に記載のポリペプチド複合体。
【請求項53】
前記細胞が、造血細胞である、請求項44~52のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項54】
前記細胞が、T細胞、αβ T細胞、またはγδ T細胞である、請求項44から請求項53のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項55】
前記細胞が、CD3
+、CD4
+、および/またはCD8
+細胞である、請求項44~54のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項56】
前記細胞が、免疫エフェクター細胞である、請求項44~55のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項57】
前記細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である、請求項44~56のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項58】
前記細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、請求項44~57のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項59】
前記細胞の源が、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来組織、腹水、胸水、脾臓組織、または腫瘍である、請求項44~58のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項60】
前記FRB多量体形成ドメインおよび前記FKBP多量体形成ドメインが、前記第一のポリペプチドおよび前記第二のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在する、請求項44~59のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
【請求項61】
キメラ抗原受容体(CAR)であって、
a)配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体、
b)ヒンジドメイン、
c)膜貫通ドメイン、
d)一つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または
e)一次シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項62】
前記CARが、5’~3’に:
a)配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体、
b)ヒンジドメイン、
c)膜貫通ドメイン、
d)一つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または
e)一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項61に記載のCAR。
【請求項63】
前記ヒンジドメインおよび膜貫通ドメインが、CD8α、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1から単離される、請求項61または請求項62に記載のCAR。
【請求項64】
前記一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28、CD134、CD137、およびCD278からなる群から選択される共刺激分子から単離される、請求項61~63のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項65】
前記CARが、CD8αシグナルペプチド、CD8αヒンジおよび膜貫通ドメイン、CD134共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む、61~64のいずれか一つに記載のCAR。
【請求項66】
配列番号62~81のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むCAR。
【請求項67】
請求項1~28のいずれか一項に記載の第一または第二のポリペプチド、請求項29~43のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、または請求項61~66のいずれか一項に記載のCARをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項68】
請求項1~28のいずれか一項に記載の第一または第二のポリペプチド、請求項29~43のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、または請求項61~66のいずれか一項に記載のCARをコードする、cDNA。
【請求項69】
請求項1~28のいずれか一項に記載の第一または第二のポリペプチド、請求項29~43のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、または請求項61~66のいずれか一項に記載のCARをコードする、RNA。
【請求項70】
請求項67~69のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項71】
前記ベクターが、発現ベクターである、請求項70に記載のベクター。
【請求項72】
前記ベクターが、トランスポゾンである、請求項70に記載のベクター。
【請求項73】
前記ベクターが、piggyBACトランスポゾンまたはSleeping Beautyトランスポゾンである、請求項72に記載のベクター。
【請求項74】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項70に記載のベクター。
【請求項75】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである、請求項74に記載のベクター。
【請求項76】
前記レトロウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項75に記載のベクター。
【請求項77】
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ビスナ-マエディウイルス(VMV)ウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群から選択される、請求項76に記載のベクター。
【請求項78】
請求項1~28のいずれか一項に記載の第一または第二のポリペプチド、請求項29~43のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、または請求項61~66のいずれか一項に記載のCARを含む、細胞。
【請求項79】
前記細胞が造血細胞である、請求項78に記載の細胞。
【請求項80】
前記細胞が免疫エフェクター細胞である、請求項78または79に記載の細胞。
【請求項81】
前記細胞が、T細胞、αβ T細胞、またはγδ T細胞である、請求項78~80のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項82】
前記細胞が、CD3
+、CD4
+、CD8
+、またはその組み合わせを発現する、請求項78~81のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項83】
前記細胞が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である、請求項78~82のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項84】
前記細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、請求項78~83のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項85】
請求項1~28および78~84のいずれか一項に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項86】
生理学的に許容可能な担体および請求項1~28および78~84のいずれか一項に記載の細胞を含む、組成物。
【請求項87】
請求項85または請求項86に記載の組成物の有効量を対象に投与することを含む、その必要のある前記対象を治療する方法。
【請求項88】
癌、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患および免疫不全の少なくとも一つの症状、もしくはそれらと関連する状態を治療、予防または改善する方法であって、請求項85または請求項86に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項89】
請求項85または請求項86に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、固形癌を治療する方法。
【請求項90】
前記固形癌が、肺癌、扁平上皮癌、結腸直腸癌、膵癌、乳癌、甲状腺癌、膀胱癌、子宮頸癌、食道癌、卵巣癌、胃癌、子宮内膜癌、または脳癌からなる群から選択される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記固形癌が、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、結腸直腸癌、膵癌、乳癌、甲状腺癌、膀胱癌、子宮頸癌、食道癌、卵巣癌、胃癌、子宮内膜癌、神経膠腫、神経膠芽腫、または乏突起神経膠腫である、請求項89または請求項90に記載の方法。
【請求項92】
請求項85または請求項86に記載の組成物の有効量を前記対象に投与することを含む、悪性血液疾患を治療する方法。
【請求項93】
前記悪性血液疾患は、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記悪性血液疾患が、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項92に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)の定めのもと、2019年9月10日に出願された米国仮特許出願第62/898,392号明細書、および2019年5月8日に出願された米国仮特許出願第62/845,304号明細書の利益を主張するものであり、当該出願はそれぞれ、その全体で参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列リストに関する記載
本出願に関する配列表は紙媒体の代わりにテキストフォーマットで提出され、参照により本明細書に援用される。配列表を含むテキストファイルの名称は、BLBD_119_02WO_ST25.txtである。テキストファイルは302KBであり、2020年5月5日に作成され、本明細書の出願と同時にEFS-Webを介して電子的に提出される。
【0003】
本開示は、CD33に向けられた改善された養子細胞療法に関する。より詳細には、本開示は、抗CD33 VHH含有の化学的に制御されたシグナル伝達分子、抗CD33 VHH含有キメラ抗原受容体、細胞、およびそれを用いた関連する治療方法に関する。
【背景技術】
【0004】
関連分野に関する記載
世界中で癌は1975年~2000年の間に倍増した。世界における罹患と死亡の2番目の主因は癌であり、2012年にはおよそ1410万人が新たに発症し、820万人が癌関連で死亡している。最も多い癌は乳癌、肺および気管支の癌、前立腺癌、結腸および直腸の癌、膀胱癌、皮膚のメラノーマ、非ホジキンリンパ腫、甲状腺癌、腎臓および腎盂の癌、子宮内膜癌、白血病、ならびに膵臓癌である。新たな癌症例件数は、今後20年以内で2200万件に上昇すると予想される。
【0005】
養子細胞療法は、複雑な生物シグナルを伝達して癌を治療する強力なパラダイムとして浮上した。低分子医薬や生物医薬とは対照的に、養子細胞療法は多種多様な感覚性および反応性のプログラム、そしてさらに明確化された遺伝子制御メカニズムによって、固有の治療タスクを発揮する可能性を有している。既存の方法は、主にscFvベースのキメラ抗原受容体(CAR)に焦点を当ててきた。CAR T細胞療法は、不十分なCAR発現、CAR T細胞のインビボでの増殖、注入後の細胞の急速な消失、期待外れの臨床活性、および抗原の逃避により、限られた成功しか達成されていない。
【0006】
局所的生理学的環境に関連する化学的および/または生物学的情報を感知および統合するための改善されたCARアーキテクチャ(CARchitectures)および/または改善された機構を有する免疫エフェクター細胞を改造する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、概して、部分的には、VHHベースの二量体化剤調節免疫受容体複合体(DARIC)およびCD33に向けられたVHHベースのキメラ抗原受容体(CAR)、それをコードするポリヌクレオチド、その組成物、ならびに癌治療のためのそれを作製および使用する方法に関する。
【0008】
特定の実施形態では、VHH DARICまたはVHH CARは、全長CD33に結合する。特定の実施形態では、VHH DARICまたはVHH CARは、CD33スプライスバリアントに結合する。特定の実施形態では、CD33スプライスバリアントは、ヒトCD33遺伝子のエクソン2によってコードされる124アミノ酸を欠く(CD33 C2バリアント)。特定の実施形態では、CD33スプライスバリアントは、エクソン7aに存在する早期翻訳停止シグナルのために54個のカルボキシ末端アミノ酸を欠く。特定の実施形態では、CD33スプライスバリアントは、エクソン7aに存在する早期翻訳停止シグナルのために、エクソン2および54個のカルボキシ末端アミノ酸によってコードされる124個のアミノ酸を欠く。
【0009】
特定の実施形態では、VHH DARICまたはVHH CARは、全長CD33およびCD33スプライスバリアントの両方に結合する。
【0010】
様々な実施形態において、非天然細胞は、FRB多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアント、CD8α膜貫通ドメインもしくはCD4膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、および/またはCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチドと、配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体を含む第二のポリペプチド、FKBP多量体形成ドメインポリペプチドまたはそのバリアント、ならびにCD4膜貫通ドメインもしくはCD8α膜貫通ドメインを含み、架橋因子が、非天然細胞の表面上でのポリペプチド複合体の形成を促進し、架橋因子は、第一および第二のポリペプチドの多量体形成ドメインに会合し、それらの間に配置される。
【0011】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0012】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0013】
特定の実施形態において、FKBP多量体形成ドメインは、FKBP12である。
【0014】
いくつかの実施形態において、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lである。
【0015】
ある実施形態では、架橋因子は、以下からなる群から選択される:AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムス。
【0016】
様々な実施形態において、第一のポリペプチドは、シグナルペプチド、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0017】
特定の実施形態において、第二のポリペプチドは、シグナルペプチドおよびCD4膜貫通ドメインを含む。
【0018】
さらなる実施形態において、第二のポリペプチドは、共刺激ドメインを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、第二のポリペプチドの共刺激ドメインは、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)からなる群から選択される共刺激分子から選択される。
【0020】
追加の実施形態において、第二のポリペプチドの共刺激ドメインは、OX40またはTNFR2から単離された共刺激ドメインである。
【0021】
さらなる実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号22~31のいずれか一つに記載される配列を含む。
【0022】
特定の実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号30に記載の配列を含む。
【0023】
好ましい実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
様々な実施形態において、非天然細胞は、FRB多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアント、CD8α膜貫通ドメインもしくはCD4膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、および/またはCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチドと、配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体を含む第二のポリペプチド、FKBP多量体形成ドメインポリペプチドまたはそのバリアント、ならびにCD4膜貫通ドメインもしくはCD8α膜貫通ドメイン、ならびに、第一および第二のポリペプチドの多量体形成ドメインに会合し、それらの間に配置される架橋因子を含むポリペプチド複合体を含む。
【0025】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0026】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0027】
特定の実施形態において、FKBP多量体形成ドメインは、FKBP12である。
【0028】
ある特定の実施形態において、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lである。
【0029】
いくつかの実施形態では、架橋因子は、以下からなる群から選択される:AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムス。
【0030】
追加の実施形態において、第一のポリペプチドは、シグナルペプチド、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0031】
特定の実施形態において、第二のポリペプチドは、シグナルペプチドおよびCD4膜貫通ドメインを含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、第二のポリペプチドは、共刺激ドメインを含む。
【0033】
様々な実施形態において、第二のポリペプチドの共刺激ドメインは、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)からなる群から選択される共刺激分子から選択される。
【0034】
追加の実施形態において、第二のポリペプチドの共刺激ドメインは、OX40またはTNFR2から単離された共刺激ドメインである。
【0035】
さらなる実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号22~31のいずれか一つに記載される配列を含む。
【0036】
特定の実施形態では、第二のポリペプチドは、配列番号30に記載の配列を含む。
【0037】
好ましい実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0038】
特定の実施形態では、細胞は、造血細胞である。
【0039】
特定の実施形態では、細胞は、T細胞、αβ T細胞、またはγδ T細胞である。
【0040】
さらなる実施形態において、細胞は、CD3+、CD4+、および/またはCD8+細胞である。
【0041】
いくつかの実施形態において、細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0042】
いくつかの実施形態において、細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である。
【0043】
追加の実施形態では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である。
【0044】
様々な実施形態では、細胞の源は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織または腫瘍である。
【0045】
特定の実施形態において、FRB多量体形成ドメインおよびFKBP多量体形成ドメインは、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在する。
【0046】
いくつかの実施形態において、融合ポリペプチドは、FRB多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアント、CD8α膜貫通ドメインもしくはCD4膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、および/またはCD3ζ一次シグナル伝達ドメイン、ポリペプチド切断シグナルを含む第一のポリペプチドと、配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体、FKBP多量体形成ドメインポリペプチドまたはそのバリアントを含む第二のポリペプチド、ならびにCD4膜貫通ドメインまたはCD8α膜貫通ドメインを含む。
【0047】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0048】
特定の実施形態において、FKBP多量体形成ドメインは、FKBP12である。
【0049】
ある特定の実施形態において、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lである。
【0050】
いくつかの実施形態では、架橋因子は、以下からなる群から選択される:AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムス。
【0051】
追加の実施形態において、第一のポリペプチドは、シグナルペプチド、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0052】
特定の実施形態において、第二のポリペプチドは、シグナルペプチドおよびCD4膜貫通ドメインを含む。
【0053】
特定の実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号32~41のいずれか一つに記載の配列を含む。
【0054】
特定の実施形態において、融合ポリペプチドは、配列番号40に記載の配列を含む。
【0055】
さらなる実施形態において、第二のポリペプチドは、共刺激ドメインを含む。
【0056】
様々な実施形態において、第二のポリペプチドの共刺激ドメインは、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)からなる群から選択される共刺激分子から選択される。
【0057】
追加の実施形態において、第二のポリペプチドの共刺激ドメインは、OX40またはTNFR2から単離された共刺激ドメインである。
【0058】
ある実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ポリペプチドである。
【0059】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断2Aポリペプチドである。
【0060】
様々な実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、以下からなる群から選択されるウイルス自己切断ポリペプチドである:口蹄疫ウイルス(FMDV)(F2A)ペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)(E2A)ペプチド、Thosea asignaウイルス(TaV)(T2A)ペプチド、ブタテッショウウイルス-1(PTV-1)(P2A)ペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチド。
【0061】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号42~61のいずれか一つに記載の配列を含む。
【0062】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号50または60のいずれか一つに記載の配列を含む。
【0063】
さらなる実施形態において、FRB多量体形成ドメインおよびFKBP多量体形成ドメインは、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在する。
【0064】
様々な実施形態において、ポリペプチド複合体は、FRB多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアント、CD8α膜貫通ドメインもしくはCD4膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、および/またはCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む第一のポリペプチドと、配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体を含む第二のポリペプチド、FKBP多量体形成ドメインポリペプチドまたはそのバリアント、ならびにCD4膜貫通ドメインもしくはCD8α膜貫通ドメイン、ならびに、第一および第二のポリペプチドの多量体形成ドメインに会合し、それらの間に配置される架橋因子を含む。
【0065】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0066】
特定の実施形態において、FKBP多量体形成ドメインは、FKBP12である。
【0067】
追加の実施形態において、FRBポリペプチドは、FRB T2098Lである。
【0068】
特定の実施形態では、架橋因子は、以下からなる群から選択される:AP21967、シロリムス、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムス。
【0069】
特定の実施形態において、第一のポリペプチドは、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0070】
様々な実施形態において、第二のポリペプチドは、CD4膜貫通ドメインを含む。
【0071】
さらなる実施形態において、第二のポリペプチドは、共刺激ドメインを含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、第二のポリペプチドの共刺激ドメインは、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNFRS14、TNFRS18、TNRFS25、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)からなる群から選択される共刺激分子から選択される。
【0073】
特定の実施形態において、第二のポリペプチドの共刺激ドメインは、OX40またはTNFR2から単離された共刺激ドメインである。
【0074】
特定の実施形態では、細胞は、造血細胞である。
【0075】
様々な実施形態では、細胞は、T細胞、αβ T細胞、またはγδ T細胞である。
【0076】
様々な実施形態では、細胞は、CD3+、CD4+、および/またはCD8+の細胞である。
【0077】
追加の実施形態において、細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0078】
いくつかの実施形態において、細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である。
【0079】
特定の実施形態では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である。
【0080】
追加的実施形態では、細胞の源は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織または腫瘍である。
【0081】
さらなる実施形態において、FRB多量体形成ドメインおよびFKBP多量体形成ドメインは、第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチドが発現されるとき、細胞外に局在する。
【0082】
好ましい実施形態では、第一のポリペプチドは、配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0083】
特定の実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)は、配列番号2~21のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、一つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0084】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0085】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0086】
様々な実施形態では、CARは、配列番号2~21のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を有する抗CD33 VHH抗体、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、一つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを5’から3’に含む。
【0087】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0088】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH抗体は、配列番号20に記載されるアミノ酸配列を有する。
【0089】
特定の実施形態では、ヒンジドメインおよび膜貫通ドメインは、CD8α、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD 134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPD1から単離される。
【0090】
追加的な実施形態では、一つ以上の共刺シグナル伝達ドメインは、以下からなる群から選択される共刺激分子から単離される:CD28、CD134、CD137、およびCD278。
【0091】
特定の実施形態では、CARは、CD8αシグナルペプチド、CD8αヒンジおよび膜貫通ドメイン、CD134共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0092】
さらなる実施形態では、CARは、配列番号62~81のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含む。
【0093】
さらなる実施形態では、CARは、配列番号70または80のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、第一または第二のポリペプチド、融合ポリペプチド、または本明細書に企図されるCARをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0095】
様々な実施形態では、第一または第二のポリペプチド、融合ポリペプチド、または本明細書に企図されるCARをコードするcDNAが提供される。
【0096】
様々な実施形態では、第一または第二のポリペプチド、融合ポリペプチド、または本明細書に企図されるCARをコードするRNAが提供される。
【0097】
様々な実施形態では、本明細書に企図されるポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
【0098】
特定の実施形態では、ベクターは、発現ベクターである。
【0099】
特定の実施形態では、ベクターは、トランスポゾンである。
【0100】
さらなる実施形態では、ベクターは、piggyBACトランスポゾン、またはSleeping Beautyトランスポゾンである。
【0101】
特定の実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0102】
特定の実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである。
【0103】
追加の実施形態では、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0104】
様々ン実施形態では、レンチウイルスベクターは、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス2(HIV-2)、ビスナ-マエディウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎-脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)からなる群から選択される。
【0105】
さらなる実施形態では、第一または第二のポリペプチド、融合ポリペプチド、または本明細書に企図されるCARを含む細胞が提供される。
【0106】
特定の実施形態において、細胞は、造血細胞である。
【0107】
特定の実施形態では、細胞は、免疫エフェクター細胞である。
【0108】
様々な実施形態では、細胞は、T細胞、αβ T細胞、またはγδ T細胞である。
【0109】
いくつかの実施形態では、細胞は、CD3+、CD4+、CD8+、またはそれらの組み合わせを発現する。
【0110】
一部の実施形態では、細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはヘルパーT細胞である。
【0111】
さらなる実施形態では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である。
【0112】
特定の実施形態では、組成物は、本明細書で企図される細胞を含む。
【0113】
特定の実施形態では、組成物は、生理学的に許容可能な担体と、本明細書で企図される細胞とを含む。
【0114】
追加の実施形態において、有効量の本明細書で企図される組成物を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象を治療する方法。
【0115】
特定の実施形態において、癌、感染性疾患、自己免疫性疾患、炎症性疾患、および免疫不全、またはそれらに関連する状態の少なくとも一つの症状を治療、予防、または緩和する方法は、有効量の本明細書で企図される組成物を対象に投与することを含む。
【0116】
いくつかの実施形態において、固形癌を治療する方法は、有効量の本明細書で企図される組成物を対象に投与することを含む。
【0117】
様々な実施形態において、固形癌は、肺癌、肝癌、胃癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、前立腺癌、子宮内膜癌、膵癌、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、皮膚癌およびメラノーマからなる群から選択される。
【0118】
特定の実施形態では、悪性血液疾患を治療する方法は、本明細書に予期される組成物の有効量を対象に投与することを含む。
【0119】
様々な実施形態では、悪性血液疾患は、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である。
【0120】
特定の実施形態において、悪性血液疾患は、急性骨髄性白血病(AML)である。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【
図1A】
図1Aは、VHH-DARICポリペプチド複合体の描図を示す。
【
図1B】
図1Bは、CD33 VHH DARICアーキテクチャの描図を示す。
【
図2A】
図2Aは、抗VHH染色(上段)およびCD33-Fc結合(下段)によって検出された導入されたT細胞におけるCD33 VHH1-5 DARICの発現を示す。
【
図2B】
図2Bは、CD33-Fc結合によって検出された導入されたT細胞におけるCD33 VHH9-10 DARICの発現を示す。
【
図3A】
図3Aは、CD33 VHH1-5 DARICまたは対照で導入されたT細胞の表現型を示す。
【
図3B】
図3Bは、CD33 VHH9-10 DARICまたは対照で導入されたT細胞の表現型を示す。
【
図4A】
図4Aは、24時間、AP21967の存在下または非存在下、1:1のE:T比で、CD33
+ THP-1細胞で培養されたCD33 VHH1-5 DARICまたは対照細胞からのIFNγ分泌を示す。
【
図4B】
図4Bは、24時間、AP21967の存在下または非存在下、1:1のE:T比で、CD33
+ THP-1細胞で培養されたCD33 VHH9-10 DARICまたは対照細胞からのIFNγ分泌を示す。
【
図4C】
図4Cは、24時間、AP21967の存在下または非存在下、1:1のE:T比で、全長CD33(CD33M)またはCD33スプライスバリアント(CD33m、C2)を発現する改変された293T細胞で培養されたCD33 VHH9-10 DARICまたは対照細胞からのIFNγ分泌を示す。
【
図5A】
図5Aは、CD33遺伝子をノックアウト(CD33-KO細胞)するように操作されたMV4-11細胞上のCD33発現、および未染色対照におけるCD33発現を示す。
【
図5B】
図5Bは、24時間、AP21967の存在下または非存在下、1:1のE:T比で、MV4-11細胞またはCD33-KO細胞で共培養された抗CD33 VHH9 DARIC T細胞またはUTD T細胞からのIFNγ分泌を示す。
【
図5C】
図5Cは、24時間、AP21967の存在下または非存在下、1:1のE:T比で、UTD T細胞、抗CD33 CAR T細胞、または抗CD33 VHH DARIC T細胞、CD33mスプライスバリアント(CD33-KO-C2細胞、右パネル)を発現するように操作されたMV4-11細胞(左パネル)またはCD33-KO細胞からのIFNγ分泌を示す。
【
図6】
図6は、24時間、可溶性CD33(CD33-Fc)およびAP21967の存在下または非存在下、1:1のE:T比で、CD33
+ THP-1細胞で共培養された抗CD33 VHH DARIC T細胞からのIFNγ分泌を示す。
【
図7】
図7は、24時間、AP21967の存在下または非存在下、1:1のE:T比で、異なる量のmRNAコードCD33コードでトランスフェクトされたCD33
neg 293T細胞と共培養された抗CD33 VHH DARIC T抗細胞からのIFNγ分泌を示す。
【
図8A】
図8Aは、ルシフェラーゼレポーターを発現するHL60 AML発現する腫瘍細胞を接種し、接種から10日後(0日目)、ラパマイシンの非存在下で、UTD T細胞または抗CD33 VHH DARIC T細胞で治療を受けた免疫不全のNSGマウスにおける発光を関数として測定された腫瘍増殖を示す。
【
図8B】
図8Bは、ルシフェラーゼレポーターを発現するHL60 AML発現する腫瘍細胞を接種し、接種から10日後(0日目)、UTD T細胞または抗CD33 VHH DARIC T細胞および1 mg/kgのラパマイシンで治療を受けた免疫不全のNSGマウスにおける発光を関数として測定された腫瘍増殖を示す。
【0122】
配列識別子の簡単な説明
配列番号1は、完全長ヒトCD33のアミノ酸配列を記載する。
配列番号2~21は、抗CD33 VHHドメインのアミノ酸配列を記載する。
配列番号22~31は、抗CD33 VHH DARIC結合構成要素のアミノ酸配列を記載する。
配列番号32~41は、抗CD33 VHH DARIC融合タンパク質のアミノ酸配列を記載する。
配列番号42~51は、抗CD33 VHH DARIC.OX40融合タンパク質のアミノ酸配列を記載する。
配列番号52~61は、抗CD33 VHH DARIC.TNFR2融合タンパク質のアミノ酸配列を記載する。
配列番号62~81は、抗CD33 VHH CARのアミノ酸配列を記載する。
配列番号82は、抗CD33 VHH DARICシグナル伝達構成要素のアミノ酸配列を記載する。
配列番号83は、Kozak配列のポリヌクレオチド配列を記載する。
配列番号84~94は、様々なリンカーのアミノ酸配列を記載する。
配列番号95~119は、プロテアーゼ切断部位および自己切断性ポリペプチドの切断部位のアミノ酸配列を記載する。
【0123】
前述の配列において、Xaaは存在する場合、任意のアミノ酸またはアミノ酸の非存在を指してもよい。好ましい実施形態では、XaaXaaはアミノ酸配列SSまたはKPを指す。
【発明を実施するための形態】
【0124】
A.概要
癌は、世界の主要な死因の一つである。がんの約10%は、白血病、リンパ腫、および骨髄腫を含む悪性血液疾患である。急性骨髄性白血病(AML)は、成人において最も一般的で致死的な悪性血液疾患である。過去40年間における大規模な科学的発見と新規の治療法にもかかわらず、特に成人患者集団におけるAMLの治療転帰は依然として陰鬱なものである。標準的な化学療法は、選択された患者に完全寛解を誘発することができるが、患者の大部分が最終的に再発し、疾患に屈する。2012年、AMLの世界的な発生率は約351,965人であり、約265,461人がAMLにより死亡した。
【0125】
CD33は、急性骨髄性白血病(AML)白血病芽球の大部分、およびおそらくは白血病幹細胞に発現する。CD33は、その低発現および遅い内部移行のため、困難な標的であり、これらの特徴は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および細胞内薬物蓄積、ならびに結果として非標識および毒素運搬抗体の活性を制限する。
【0126】
本開示は概して、CD33に結合する二量体形成剤調節免疫受容体複合体(DARIC)を使用して、養子細胞療法の空間的、時間制御を調節する改善された組成物および方法に関する。特定の学説のいずれにも拘束されることは望まないが、本明細書に予期されるDARIC組成物および方法は、当分野において既存のCAR T細胞療法に、限定されないが免疫エフェクター細胞のシグナル伝導性結合およびシグナル伝達活性に対する空間的および時間的の両方の制御をはじめとする多くの利益をもたらす。DARICの時間的制御は、DARIC結合構成要素とDARICシグナル伝達構成要素の架橋因子介在性会合を通じて、シグナル伝達のDARIC機構を誘発する。DARICの空間的制御は、DARIC結合構成要素のDARIC結合ドメインによるCD33の認識を通じて、シグナル伝達機構に従事する。このようにして、DARIC免疫エフェクター細胞は、CD33を発現する標的細胞と架橋因子の両方が存在する場合に活性化状態になる。
【0127】
本開示はまた、限定されないが、tonic signalingまたは抗原非依存性シグナル伝達、発現不良および/または治療量以下の活性を含む、既存のCAR T療法の潜在的な限界を克服する、改善された抗CD33 CARアーキテクチャに関する。
【0128】
様々な実施形態では、本開示は、例えばCD33、例えば、全長CD33および/またはCD33スプライスバリアントを発現する癌、例えばAMLに対して抗癌反応を生成する抗CD33 VHH DARICまたは抗CD33 VHH CARを企図する。
【0129】
特定の実施形態では、DARICは、多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアント、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを含むポリペプチド(DARICシグナル伝達構成要素)、ならびに抗CD33 VHH、多量体形成ドメインポリペプチドもしくはそのバリアントを含むポリペプチド(DARIC結合要素)、膜貫通ドメイン、ならびに任意に共刺激ドメインを含む。架橋因子の存在下で、DARIC結合構成要素およびDARICシグナル伝達構成要素は、架橋因子を通じて互いに会合して、CD33を発現する細胞を標的にする機能的に活性なDARICを形成する。
【0130】
特定の実施形態では、DARIC結合構成要素およびDARICシグナル伝達構成要素の多量体形成ドメインは、細胞外に配置される。多量体形成ドメインの細胞外配置によって、限定されないが、抗CD33 VHHドメインのより効率的な配置、架橋因子制御に対するより高い時間的感受性、および特定の架橋因子の非免疫抑制性用量を使用することによるより低い毒性を含む、細胞内配置を超える多くの利点が提供される。
【0131】
DARIC、DARIC結合構成要素、およびDARICシグナル伝達構成要素をコードするポリヌクレオチド;DARIC結合構成要素、DARICシグナル伝達構成要素、DARICタンパク質複合体、DARIC融合タンパク質;DARIC、DARIC結合構成要素、およびDARICシグナル伝達構成要素をコードするポリヌクレオチドを含み、かつ/またはそれらを発現する細胞;ならびに免疫障害を治療するためのそれらの使用方法が本明細書で企図される。
【0132】
組み換え(すなわち、操作された)DNA、ペプチドおよびオリゴヌクレオチド合成、免疫アッセイ、組織培養、形質変換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)、酵素反応、精製ならびに関連する技術および手法は、本明細書を通じて引用され、考察される、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学および免疫学における様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されるように一般的に行われてもよい。例えば、Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、3d ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons、updated July 2008);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover、DNA Cloning:A Practical Approach、vol.I & II(IRL Press,Oxford Univ.Press USA,1985);Current Protocols in Immunology(Edited by:John E.Coligan,Ada M.Kruisbeek,David H.Margulies,Ethan M.Shevach,Warren Strober 2001 John Wiley & Sons,NY,NY);Real-Time PCR:Current Technology and Applications,Edited by Julie Logan,Kirstin Edwards and Nick Saunders,2009,Caister Academic Press,Norfolk,UK;Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes,(Academic Press,New York,1992);Guthrie and Fink,Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology(Academic Press,New York,1991);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait,Ed.,1984);Nucleic Acid The Hybridization(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames & S.Higgins,Eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,Ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Next-Generation Genome Sequencing(Janitz,2008 Wiley-VCH);PCR Protocols(Methods in Molecular Biology)(Park,Ed.,3rd Edition,2010 Humana Press);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow and Lane,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I-IV(D.M.Weir and CC Blackwell,eds.,1986);Roitt,Essential Immunology,6th Edition,(Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988);Current Protocols in Immunology(Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991);Annual Review of Immunology;ならびに例えばAdvances in Immunologyなどの雑誌の研究論文を参照のこと。
【0133】
B.定義
本開示をより詳細に記載する前に、本明細書で使用されるべきある特定の用語の定義を提供することは、その理解に役立ち得る。
【0134】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した、または均等の方法および材料を、特定の実施形態の実施または検証に使用することができるが、本明細書においては好ましい組成物、方法および材料の実施形態を開示している。本開示の目的に対し、以下の用語を、以下に規定する。
【0135】
「a」、「an」および「the」といった冠詞は、本明細書において、当該冠詞の文法上の対象の一つまたは複数(すなわち少なくとも一つ、または一つもしくは複数)を指すために使用される。例示として、「an element」とは、一つの要素、または一つもしくは複数の要素を意味する。
【0136】
選択肢(例えば「または」)の使用は、いずれか一つ、両方、またはその選択肢の任意の組み合わせを意味すると理解されたい。
【0137】
「および/または」という用語は、いずれか一つ、またはその選択肢の両方を意味すると理解されたい。
【0138】
本明細書において使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さに対し、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%までも変化する数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さを指す。一つの実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さに関し、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%または±1%の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さの範囲を指す。
【0139】
一つの実施形態では、例えば1~5、約1~5、または約1~約5といった範囲は、当該範囲に包含される各数値を指す。例えば一つの非限定的で、単なる例示的な実施形態において、「1~5」という範囲は、1、2、3、4、5;または1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、もしくは5.0;または1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、もしくは5.0という表現と同等である。
【0140】
本明細書において使用される場合、「実質的に」という用語は、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さと比較して、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さを指す。一つの実施形態において、「実質的に同一」とは、基準の数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さとおよそ同じである、例えば生理学的効果などの効果を生じさせる数量、レベル、値、数、頻度、百分率、寸法、大きさ、量、重さ、または長さを指す。
【0141】
本明細書全体を通じて、別段であることが要求されない限り、「含む」および「含むこと」という文言は、記載される工程、または要素、または工程もしくは要素の群の含有を示唆するが、任意の他の工程、または要素、または工程もしくは要素の群の除外は示唆しないことを理解されたい。「~からなる」とは、「~からなる」という文言に続くものを含むが、それらに限定されることを意味する。ゆえに、「~からなる」という文言は、列記される要素が必要または義務であり、他の要素は存在し得ないことを示す。「本質的に~からなる」とは、当該文言の後に列記される任意の要素、および列記される要素に関して本開示中に特定される活性もしくは作用に干渉しない、または寄与しない他の要素に限定される任意の要素を含むことを意味する。ゆえに、「本質的に~からなる」という文言は、列記される要素が必須または義務であり、しかし列記される要素の活性または作用に実質的に影響を与える他の要素は存在しないことを示す。
【0142】
本明細書全体を通じて「一つの実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加的な実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」、またはそれらの組み合わせに対する参照は、当該実施形態と関連付けて記載される特定の性質、構造または特徴が、少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに本明細書全体の様々な箇所での前述の文言の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに特定の性質、構造または特徴は、一つ以上の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされ得る。さらに、一つの実施形態でのある性質の肯定的な列挙は、特定の実施形態では当該性質の除外の根拠として機能することを理解されたい。
【0143】
「抗原(Ag)」とは、動物へ注射される、または動物に吸収される組成物(例えば癌特異的タンパク質を含む組成物など)を含む、動物において抗体産生またはT細胞反応を刺激し得る化合物、組成物または物質を指す。抗原の例としては限定されないが、脂質、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ペプチドまたは核酸が挙げられる。抗原は、例えば本開示抗原などの異種抗原により誘導される産物を含む、特異的な液性免疫または細胞性免疫の産物と反応する。
【0144】
「標的抗原」または「目的の標的抗原」は、本明細書で企図される結合ドメインが結合するように設計される、CD33の一部を指す。特定の実施形態では、標的抗原は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列のエピトープである。
【0145】
「CD33」は、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン3(SIGLEC-3)またはGP67としても知られる細胞表面受容体を指す。CD33遺伝子は、染色体19上に位置し、約67kDのグリコシル化タンパク質を産生する。CD33は、二つのIg様ドメイン、一つのVセットドメインと一つのC2セットドメインを有する。CD33は、細胞間相互作用を媒介し、免疫細胞を静止状態に維持する役割を担う。CD33は、アルファ-2,3、およびより熱心にアルファ-2,6結合シアル酸担持グリカンを認識し結合する。C1qまたはシアル酸付加糖タンパク質等のリガンドの結合において、CD33細胞質側末端に位置する二つの免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)が、LCK等のSrc様キナーゼによってリン酸化される。これらのリン酸化は、タンパク質-チロシンホスファターゼPTPN6/SHP-1およびPTPN11/SHP-2の動員および活性化のためのドッキング部位を提供する。CD33はまた、少なくとも三つの識別されたスプライスバリアントを有する。CD33ΔE2スプライスバリアントは、ヒトCD33遺伝子のエクソン2(全長CD33のアミノ酸13~139、例えば、NP_001076087.1、C2)によってコードされるアミノ酸配列を欠く。CD337aスプライスバリアントは、エクソン7a(例えば、NP_001171079.1)に存在する早期翻訳停止シグナルにより、54個のカルボキシ末端アミノ酸を欠く。CD33ΔE2/7aは、エクソン2および54カルボキシ末端アミノ酸によってコードされるアミノ酸を欠く。CD33は通常、正常なB細胞および活性化されたT細胞およびナチュラルキラー細胞のサブセット上で発現されるが、造血幹細胞上または造血系外では発現されない。全長CD33および/またはCD33スプライスバリアントの両方は、大多数のAML患者において急性骨髄性白血病(AML)芽球細胞でも発現する。
【0146】
「抗体」とは、抗原のエピトープを特異的に認識し、結合する少なくとも軽鎖または重鎖の免疫グロブリン可変領域を含有するポリペプチドである結合物質を指し、そうした抗原としては例えば免疫細胞により認識される抗原決定基を含有する、脂質、炭水化物、多糖、糖タンパク質、ペプチドまたは核酸が挙げられる。
【0147】
「VH」または「VH」への言及は、免疫グロブリン重鎖またはその抗原結合断片の可変領域を指す。
【0148】
「重鎖抗体」は、二つのVHドメインを含み、軽鎖を含まない抗体を指す(Riechmann L.et al、J.Immunol.方法231:25-38(1999);WO94/04678;WO94/25591;米国特許第6,005,079号)。「カメリド抗体」は、二つのVHドメインを含み、軽鎖を含まない、ラクダ、アルパカ、またはリャマから単離された抗体を指す。「ヒト化VHH」または「ヒト化ラクダ様抗体」は、ヒトレシピエントにおける抗体の潜在的免疫原性を低減するためにヒト化を受けた非ヒトVHHまたはラクダ様抗体を指す。
【0149】
本明細書で使用される場合、「VHH」、「VHH抗体」または「VHHドメイン」は、重鎖抗体の可変領域の最も小さい既知の抗原結合単位を含む抗体断片を指す(Koch-Nolte,et al、FASEB J.,21:3490-3498(2007))。
【0150】
「リンカー」とは、様々なポリペプチドドメイン間の複数のアミノ酸残基を指し、分子の適切な間隔および立体構造のために付加される。特定の実施形態において、リンカーは、一つ以上のVHHドメイン、ヒンジドメイン、多量体形成ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを分離する。
【0151】
本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適したリンカーの例示としては、限定されないが、以下のアミノ酸配列が挙げられる:GGG;DGGGS(配列番号84);TGEKP(配列番号85)(例えば、Liu et al.,PNAS 5525-5530(1997)を参照のこと);GGRR(配列番号86)(Pomerantz et al.1995,supra);(GGGGS)n 、式中、n=1、2、3、4または5(配列番号87)(Kim et al.,PNAS 93,1156-1160(1996.);EGKSSGSGSESKVD(配列番号88)(Chaudhary et al.,1990、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1066-1070);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号89)(Bird et al.,1988、Science 242:423-426)、GGRRGGGS(配列番号90);LRQRDGERP(配列番号91);LRQKDGGGSERP(配列番号92);LRQKD(GGGS)2 ERP(配列番号93)。あるいは、可塑性リンカーを、DNA結合部位とペプチド自体の両方をモデル化することができるコンピュータープログラム(Desjarlais & Berg,PNAS 90:2256-2260(1993),PNAS 91:11099-11103(1994)を使用して、またはファージディスプレイ法により合理的に設計することができる。一つの実施形態では、リンカーは、以下のアミノ酸配列を含む:GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号94)(Cooper et al.,Blood、101(4):1637-1644(2003))。
【0152】
「スペーサードメイン」とは、二つのドメインを分離させるポリペプチドを指す。一実施形態では、スペーサードメインは、エフェクター細胞の表面からVHHドメインを離れさせ、適切な細胞/細胞の接触、抗原結合、および活性化を可能にする(Patel et al.,Gene Therapy、1999;6:412-419)。特定の実施形態では、スペーサードメインは、一つ以上のVHHドメイン、多量体形成ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを分離させる。スペーサードメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。ある実施形態では、スペーサードメインは、一つ以上の重鎖定常領域、例えばCH2およびCH3などを含む免疫グロブリン部分である。スペーサードメインは、天然免疫グロブリンヒンジ領域、または改変免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0153】
「ヒンジドメイン」とは、エフェクター細胞の表面から抗原結合ドメインを離れて配置させ、適切に細胞/細胞を接触させる、抗原結合させる、および活性化させることに重要な役割を果たすポリペプチドを指す。特定の実施形態では、ポリペプチドは、結合ドメインと多量体形成ドメインの間、結合ドメインと膜貫通ドメイン(TM)の間、または多量体形成ドメインと膜貫通ドメインの間に一つ以上のヒンジドメインを含んでもよい。ヒンジドメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。ヒンジドメインは、天然免疫グロブリンヒンジ領域、または改変免疫グロブリンヒンジ領域のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0154】
本明細書において使用される場合、「多量体形成ドメイン」とは、別の異なるポリペプチドと直接、または例えば化学誘導性二量体形成剤などの架橋分子を介して優先的に相互作用する、または会合するポリペプチドを指し、この場合において異なる多量体形成ドメインの相互作用は、多量体形成に大きく貢献し、または多量体形成を効率的に促進する(すなわち、二量体、三量体または多分節複合体の形成であり、それらはホモ二量体、ヘテロ二量体、ホモ三量体、ヘテロ三量体、ホモ多量体、ヘテロ多量体であり得る)。多量体形成ドメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。
【0155】
本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適した多量体形成ドメインの例示としては、FK506結合タンパク質(FKBP)ポリペプチドもしくはそのバリアント、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)ポリペプチドもしくはそのバリアント、カルシニューリンポリペプチドもしくはそのバリアント、シクロフィリンポリペプチドもしくはそのバリアント、細菌ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)ポリペプチドもしくはそのバリアント、PYR1-like 1(PYL1)ポリペプチドもしくはそのバリアント、abscisic acid insensitive 1(ABI1)ポリペプチドもしくはそのバリアント、GIB1ポリペプチドもしくはそのバリアント、またはGAIポリペプチドもしくはそのバリアントが挙げられる。
【0156】
本明細書において使用される場合、「FKBP-ラパマイシン結合ポリペプチド」という用語は、FRBポリペプチドを指す。特定の実施形態では、FRBポリペプチドは、FKBP12-ラパマイシン結合ポリペプチドである。本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適したFRBポリペプチドは概して少なくとも約85~約100アミノ酸残基を含有する。ある実施形態では、FRBポリペプチドは、GenBank寄託番号L34075.1に関して、Ile-2021~Lys-2113の93アミノ酸配列を含み、およびT2098Lの変異を含む。本明細書において予期されるFRBポリペプチドは、架橋因子を介してFKBPポリペプチドに結合し、それにより三重複合体を形成する。
【0157】
本明細書において使用される場合、「FK506結合タンパク質」という用語は、FKBPポリペプチドを指す。特定の実施形態では、FKBPポリペプチドは、FKBP12ポリペプチド、またはF36V変異を含むFKBP12ポリペプチドである。ある実施形態では、FKBPドメインは、「ラパマイシン結合ドメイン」とも呼称される場合がある。様々なFKBP種のヌクレオチド配列、クローニング、および他の態様に関する情報は、当分野に公知である(例えば、Staendart et al.,Nature 346:671,1990(human FKBP12);Kay,Biochem.J.314:361,1996を参照のこと)。本明細書において予期されるFKBPポリペプチドは、架橋因子を介してFRBポリペプチドに結合し、それにより三重複合体を形成する。
【0158】
「架橋因子」とは、二つ以上の多量体形成ドメインと会合し、それらの間に配置される分子を指す。特定の実施形態では、多量体形成ドメインは架橋因子の存在下でのみ、ポリペプチド複合体の形成に大きく貢献し、または効率的に促進する。特定の実施形態では、多量体形成ドメインは、架橋因子の非存在下では、ポリペプチド複合体の形成に貢献せず、または効率的に促進しない。本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適した架橋因子の例としては限定されないが、AP21967、ラパマイシン(シロリムス)もしくはそのラパログ(rapalog)、クーママイシン(coumermycin)もしくはその誘導体、ジベレリンもしくはその誘導体、アブシジン酸(ABA:abscisic acid)もしくはその誘導体、メトトレキサートもしくはその誘導体、シクロスポリンAもしくはその誘導体、FKCsAもしくはその誘導体、トリメトプリム(Tmp)-FKBPの合成リガンド(SLF:synthetic ligand for FKBP)もしくはその誘導体、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0159】
ラパマイシン類似体(ラパログ)としては限定されないが、米国特許第6,649,595号に記載されるものが挙げられる。ラパログ構造は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。ある実施形態では、架橋因子は、ラパマイシンと比較して免疫抑制性効果が大きく減少したラパログである。好ましい実施形態では、ラパログは、AP21967(C-16-(S)-7-メチルインドールラパマイシンとしても知られている、IC50=10nM、化学的に改変された非免疫抑制性ラパマイシンアナログ)である。本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適したラパログの他の例としては限定されないが、エベロリムス(everolimus)、ノボリムス(novolimus)、ピメクロリムス(pimecrolimus)、リダフォロリムス(ridaforolimus)、タクロリムス(tacrolimus)、テムシロリムス(temsirolimus)、ウミロリムス(umirolimus)およびゾタロリムス(zotarolimus)が挙げられる。
【0160】
「免疫抑制性効果が大きく減少した」とは、臨床的に測定される、もしくはインビトロで適切に測定される(例えばT細胞増殖の阻害など)、またはヒト免疫抑制活性のインビボサロゲートで測定される、同じ投与量に対して観察される、または予測される免疫抑制性効果の少なくとも0.1~0.005倍未満を指す。
【0161】
「膜貫通ドメイン」または「TMドメイン」は、ポリペプチドを細胞膜に固定させるドメインである。TMドメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。
【0162】
「エフェクター機能」または「エフェクター細胞機能」という用語は、免疫エフェクター細胞の専門的な機能を指す。エフェクター機能としては限定されないが、活性化、サイトカイン産生、増殖、および細胞傷害性因子の放出を含む細胞障害活性、または免疫エフェクター細胞上に発現される受容体への抗原結合で惹起される他の細胞反応が挙げられる。
【0163】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」または「エンドドメイン(endodomain)」とは、エフェクター機能性シグナルを伝達するタンパク質部分を指し、細胞に専門的機能を実行するよう指示を出す。通常は細胞内シグナル伝達ドメインの全体が採用され得るが、多くの場合、ドメイン全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される範囲について、エフェクター機能シグナルが伝達される限りにおいて、ドメイン全体に代わり、そうした切断部分が使用されてもよい。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能性シグナルの伝達に必要な、または充分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことが意図される。
【0164】
TCRによって生成されたシグナル単独ではT細胞の完全な活性化に不十分であり、二次的すなわち共刺激性のシグナルも必要であることが知られている。したがって、T細胞活性化は、二つの明確に異なるクラスの細胞内シグナル伝達ドメイン、すなわち、TCR(例えば、TCR/CD3複合体)によって抗原依存性一次活性化を開始する一次シグナル伝達ドメインと、抗原依存様式で作用して二次的すなわち共刺激性のシグナルを提供する共刺激シグナル伝達ドメインとによって媒介されると言うことができる。
【0165】
「一次シグナル伝達ドメイン」とは、刺激性または阻害性のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を制御する細胞内シグナル伝達ドメインを指す。刺激性に作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motifs)またはITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含有してもよい。特定の実施形態での使用に適したITAM含有一次シグナル伝達ドメインの例としては限定されないが、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。
【0166】
本明細書で使用される場合、「共刺激シグナル伝達ドメイン」または「共刺激ドメイン」という用語は、共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。共刺激分子は、抗原に結合するとTリンパ球の効率的な活性化および機能に必要とされる第二のシグナルを提供する、抗原受容体またはFc受容体以外の細胞表面分子である。共刺激ドメインが単離され得るかかる共刺激分子の例示的な例としては、Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNF受容体スーパーファミリーメンバー14(TNFRS14;HVEM)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー18(TNFRS18;GITR)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー25(TNFRS25;DR3)、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)。
【0167】
「免疫障害」とは、免疫系からの反応を引き起こす疾患を指す。特定の実施形態では、「免疫障害」という用語は、癌、自己免疫性疾患、または免疫不全を指す。
【0168】
本明細書において使用される場合、「癌」という用語は概して、異常な細胞が制御されずに分裂し、近傍組織へと浸潤し得る、ある種の疾患または状態に関連する。
【0169】
本明細書において使用される場合、「悪性」という用語は、腫瘍細胞群が制御不能な増殖(すなわち正常限界を超える分裂)、浸潤(すなわち隣接組織への侵入と破壊)、および転移(すなわちリンパまたは血液を介して身体の他の場所へ拡散)のうちの一つ以上を呈する癌を指す。本明細書において使用される場合、「転移する」という用語は、身体の一部分から、別の部分へと癌が拡散することを指す。拡散された細胞により形成された腫瘍は、「転移腫瘍」または「転移癌」と呼ばれる。転移腫瘍は、元の腫瘍(原発腫瘍)の細胞と似た細胞を含有する。
【0170】
本明細書において使用される場合、「良性」または「非悪性」という用語は、大きく成長し得るが、身体の他の部分に拡散しない腫瘍を指す。良性腫瘍は自己限定的であり、多くの場合、浸潤せず、または転移しない。
【0171】
「癌細胞」とは、癌性増殖または癌性組織の個々の細胞を指す。癌細胞には、固形癌と液性癌の両方が含まれる。「腫瘍」または「腫瘍細胞」とは概して、細胞の異常な増殖による膨張、または細胞の異常な増殖により形成された病変を指し、良性、前癌性、または悪性であり得る。殆どの癌は腫瘍を形成するが、例えば白血病などの液性癌は必ずしも腫瘍を形成するわけではない。腫瘍を形成する癌について、癌(細胞)という用語、および腫瘍(細胞)という用語は相互交換可能に使用される。個体中の腫瘍の量は、「全身腫瘍組織量(tumor burden)」であり、腫瘍の数、体積または重量として測定することができる。
【0172】
「再発」という用語は、ある期間の改善または寛解の後に、癌の復活の診断、または癌の復活の徴候および症状の診断がされたことを指す。
【0173】
「寛解」とは、「臨床的寛解」とも呼称され、部分寛解と完全寛解の両方を含む。部分寛解では、すべてではなく一部の癌の徴候および症状が消失する。完全寛解では、すべての癌の徴候および症状が消失するが、癌はまだ体内に存在する場合がある。
【0174】
「難治性」とは、特定の治療剤を用いた療法に抵抗性である、または非反応性である癌を指す。癌は、治療の開始時から難治性である場合(すなわち治療剤の初回暴露に非反応性)、または最初の治療期間、もしくはその後の治療期間のいずれかのうちに治療剤に対して抵抗性を発現した結果として難治性となる場合がある。
【0175】
本明細書において使用される場合、「個体」および「対象」という用語はしばしば相互交換可能に使用され、本明細書において別段に予期される組成物および方法で治療され得る癌の症状または他の免疫性障害の症状を呈する任意の動物を指す。適切な対象(例えば、患者)としては、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはモルモット)、家畜(farm animal、domestic animal)、またはペット(例えば、ネコまたはイヌ)が挙げられる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者も含まれる。典型的な対象としては、癌もしくは別の免疫性障害を有する、またはそのリスクのある、または診断されたヒト患者が挙げられる。
【0176】
本明細書において使用される場合、「患者」という用語は、本明細書の別段に開示される組成物および方法で治療され得る癌または別の免疫障害と診断された対象を指す。
【0177】
本明細書で使用される「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」には、疾患または病態の症状もしくは病理に対する、あらゆる有益な作用または望ましい作用を含み、治療される疾患または状態の一つ以上の測定可能なマーカーの最小の低減さえも含み得る。治療には、任意で、疾患もしくは状態の減少、または疾患もしくは状態の進行の遅延、例えば腫瘍増生の遅延が含まれてもよい。「治療」は必ずしも、疾患もしくは状態、またはその関連症状の完全な排除または治癒を示すものではない。
【0178】
本明細書において使用される場合、「予防する」、および例えば「予防される」、「予防すること」といった類似の文言は、疾患もしくは状態の予防、阻害、または発生もしくは再発の可能性の低下を目的としたアプローチを示す。さらに、疾患もしくは状態の発生または再発の遅延、または疾患もしくは状態の症状の発生または再発の遅延も指す。本明細書において使用される場合、「予防」およびその類似文言も、疾患もしくは症状の発生または再発の前の、疾患もしくは状態の強度、作用、症状、および/または負荷量の低下を含む。
【0179】
本明細書において使用される場合、「~の少なくとも一つの症状の改善」とは、対象が治療される疾患もしくは状態の一つ以上の症状の減少を指す。特定の実施形態では、治療される疾患または状態は、癌であり、この場合において改善される一つ以上の症状としては限定されないが、脱力、疲労、息切れ、あざができやすい、および出血しやすい、頻発する感染、リンパ節の拡張、腹部膨張または腹部疼痛(膨張した腹部臓器が原因)、骨または関節の疼痛、骨折、予期せぬ体重減少、食欲低下、寝汗、持続性の微熱、および排尿減少(腎機能の障害が原因)が挙げられる。
【0180】
「強化する」、または「促進する」、または「増加する」、または「拡張する」とは概して、本明細書において予期される組成物が、ビヒクルまたは対照の分子/組成物による反応と比較して、大きな生理学的反応(すなわち下流効果)をもたらす、惹起させる、または発生させる能力を指す。測定可能な生理学的反応としては特にT細胞の拡張、活性化、持続性、サイトカイン分泌、および/または癌細胞殺傷能力の増加が挙げられ、当分野および本明細書の記載の理解から明白である。「増加した」または「強化された」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクルまたは対照組成物によりもたらされる反応の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30またはそれ以上(例えば500倍、1000倍)(その間および1を超えるすべての整数および小数点を含む、例えば1.5、1.6、1.7、1.8など)である増加を含む場合がある。
【0181】
「減少する」、または「下げる」、または「低める」、または「低下する」、または「弱める」とは概して、本明細書において予期される組成物が、ビヒクルまたは対照の分子/組成物による反応と比較して、小さな生理学的反応(すなわち下流効果)をもたらす、惹起させる、または発生させる能力を指す。「減少」または「低下した」量は、典型的には「統計的に有意な」量であり、ビヒクル、対照組成物によりもたらされる反応、または特定の細胞株での反応の1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30またはそれ以上(例えば500倍、1000倍)(その間および1を超えるすべての整数および小数点を含む、例えば1.5、1.6、1.7、1.8など)である減少を含む場合がある。
【0182】
「維持する」、または「保存する」、または「維持」、または「変化がない」、または「実質的な変化がない」、または「実質的な減少が無い」とは概して、本明細書において予期される組成物が、ビヒクル、対照の分子/組成物により生じた反応、または特定の細胞株での反応と比較して、細胞において実質的に類似した、または同等の生理学的反応(すなわち、下流効果)をもたらす、惹起させる、または生じさせる能力を指す。同等の反応は、基準反応と実質的に違わない、または測定可能な程度に違わない反応である。
【0183】
追加の定義は、本開示全体を通じて記載されている。
【0184】
C.CD33 VHH DARIC
特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞の細胞傷害性をCD33を発現する癌細胞に向ける抗CD33 VHHドメインを含むDARIC受容体が企図される。本明細書で使用される場合、用語「CD33 VHH DARIC受容体」、「抗CD33 VHH DARIC受容体」「CD33 VHH DARIC」、または「抗CD33 VHH DARIC」は互換的に使用され、全長CD33またはCD33スプライスバリアントを発現する標的細胞および多量体形成剤または架橋因子への曝露時に、免疫エフェクター細胞において免疫刺激シグナルを形質導入する一つ以上の非天然由来のポリペプチドを指し、例えば、免疫エフェクター細胞の活性および機能を刺激すること、炎症促進性サイトカインの産生および/または分泌を増加させる。好ましい実施形態では、CD33 VHH DARICは、DARICシグナル伝達構成要素、および全長CD33および/またはCD33スプライスバリアントを認識するVHHドメインを含むDARIC結合伝達構成要素を含む、多重鎖キメラ受容体である。
【0185】
一実施形態では、DARICシグナル伝達構成要素およびDARIC結合構成要素は、同じ細胞から発現される。別の実施形態において、DARICシグナル伝達構成要素およびDARIC結合構成要素は、異なる細胞から発現される。特定の実施形態において、DARICシグナル伝達構成要素は、細胞から発現され、DARIC結合構成要素は、ポリペプチドとして外因的に供給される。一実施形態において、架橋因子を前負荷されたDARIC結合構成要素は、DARICシグナル伝達構成要素を発現する細胞に外因的に供給される。
【0186】
1.CD33 DARICシグナル伝達構成要素
「DARICシグナル伝達構成要素」、「CD33 DARICシグナル伝達構成要素」、「DARICシグナル伝達ポリペプチド」、または「DARICシグナル伝達ポリペプチド」は、同義に使用され、一つ以上の多量体形成ドメイン、膜貫通ドメイン、および一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドを指す。特定の実施形態において、DARICシグナル伝達構成要素は、多量体形成ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態において、DARICシグナル伝達構成要素は、第一の多量体形成ドメイン、第一の膜貫通ドメイン、第一の共刺激ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0187】
特定の実施形態では、DARICシグナル伝達構成要素は、一つ以上の多量体形成ドメインを含む。
【0188】
本明細書において企図される特定のCD33 DARICシグナル伝達構成要素での使用に適した多量体形成ドメインの例としては限定されないが、FK506結合タンパク質(FKBP)ポリペプチドまたはそのバリアント、FKBP-ラパマイシン結合(FRB)ポリペプチドまたはそのバリアント、カルシニューリンポリペプチドまたはそのバリアント、シクロフィリンポリペプチドまたはそのバリアント、細菌ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)ポリペプチドまたはそのバリアント、PYR1様1(PYL1)ポリペプチドまたはそのバリアント、およびabscisic acid insensitive 1(ABI1)ポリペプチドまたはそのバリアントが挙げられる。
【0189】
特定の実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、FRBポリペプチドを含む。
【0190】
特に好ましい実施形態において、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、T2098L変異またはそのバリアントを含むFRBポリペプチドを含む。ある特定の好ましい実施形態において、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、FKBP12ポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、CD33 VHH DARICシグナル伝達構成要素はヒンジドメインを含む。
【0192】
本明細書に記載されるCD33 VHH DARICシグナル伝達構成要素における使用に適したヒンジドメインの例示としては、CD28、CD8αおよびCD4等の1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が挙げられ、これら分子の野生型ヒンジ領域であってもよく、または改変されてもよい。
【0193】
特定の実施形態では、DARICシグナル伝達構成要素は、膜貫通ドメインを含む。
【0194】
特定の実施形態では、DARICシグナル伝達構成要素は、ヒンジドメインおよび膜貫通ドメインを含む。
【0195】
本明細書で企図される特定のCD33 DARICシグナル伝達構成要素において使用するのに好適な膜貫通ドメインの例示的な例としては、T細胞受容体のアルファ、ベータ、ガンマ、またはデルタ鎖の膜貫通領域、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、アムニオンレス(AMN)、およびプログラム細胞死1(PDCD1)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、CD4膜貫通ドメインを含む。好ましい実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、CD8α膜貫通ドメインを含む。
【0196】
特定の実施形態では、DARICシグナル伝達構成要素は、膜貫通ドメインのC末端と、細胞内シグナル伝達ドメインのN末端を連結するリンカーを含む。様々な好ましい実施形態では、短オリゴペプチドリンカー、またはポリペプチドリンカー、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸の長さのリンカーが、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを連結する。グリシン-セリンを基にしたリンカーが、特に適切なリンカーを提供する。
【0197】
本明細書の特定の実施形態において予期されるDARICシグナル伝達構成要素は、一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。一実施形態において、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含む。一つの実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM:immunoreceptor tyrosine activation motif)を含有する。
【0198】
本明細書において企図される特定のCD33 DARICシグナル伝達構成要素での使用に適したITAM含有一次シグナル伝達ドメインの例示としては限定されないが、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。好ましい実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成構成要素は、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインおよび一つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。主要シグナル伝達および共刺激シグナル伝達ドメインは、任意の順序でタンデムに膜貫通ドメインのカルボキシル末端に連結され得る。
【0199】
本明細書に予期される特定のCD33 DARICシグナル伝達構成要素での使用に適した共刺激ドメインの例としては限定されないが、以下の共刺激性分子から単離されたドメインが挙げられる:Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNF受容体スーパーファミリーメンバー14(TNFRS14;HVEM)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー18(TNFRS18;GITR)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー25(TNFRS25;DR3)、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)。
【0200】
特定の実施形態では、本明細書で企図されるCD33 DARICシグナル伝達構成要素は、シグナルペプチドを含む。特定のCD33 DARICシグナル伝達構成要素での使用に適したシグナルペプチドの例示としては限定されないが、IgG1重鎖シグナルポリペプチド、Igκ軽鎖シグナルポリペプチド、CD8αシグナルポリペプチド、またはヒトGM-CSF受容体アルファシグナルポリペプチドが挙げられる。様々な好ましい実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、CD8αシグナルポリペプチドを含む。
【0201】
特定の実施形態において、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、CD28、CD137、およびCD134からなる群から選択される一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態において、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、CD28、CD137、およびCD134からなる群から選択される一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインと、を含む。特定の実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、CD137共刺激ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0202】
好ましい実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、FRB T2098L多量体形成ドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含有する。
【0203】
好ましい実施形態では、CD33 VHH DARICシグナル伝達構成要素は、配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0204】
2.CD33 DARIC結合構成要素
「DARIC結合構成要素」、「DARIC結合ポリペプチド」、「CD33 VHH DARIC結合構成要素」、または「CD33 VHH DARIC結合ポリペプチド」は互換的に使用され、抗CD33 VHHドメイン、および一つ以上の多量体形成ドメインを含むポリペプチドを指す。特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、抗CD33 VHHドメイン、多量体形成ドメイン、および膜貫通ドメインを含む。特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、抗CD33 VHHドメイン、第二の多量体形成ドメイン、および第二の膜貫通ドメインを含む。他の特定の実施形態において、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、抗CD33 VHHドメイン、多量体形成ドメイン、膜貫通ドメイン、および一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、抗CD33 VHHドメイン、第二の多量体形成ドメイン、および第二の膜貫通ドメイン、および第二の共刺激ドメインを含む。
【0205】
特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、一つ以上の抗CD33 VHHドメインを含む。
【0206】
特定の実施形態では、抗CD33 VHHドメインは、ヒト化ラクダVHHである。特定の実施形態では、抗CD33 VHドメインは、完全長CD33(例えば、配列番号1)の一つ以上のエピトープ、またはCD33スプライスバリアントの一つ以上のエピトープに結合するヒト化ラクダ様VHHである。特定の実施形態では、抗CD33 VHHドメインは、完全長CD33とCD33スプライスバリアントの両方に示される同じ一つ以上のエピトープに結合するヒト化ラクダ様VHHである。
【0207】
特に好ましい実施形態では、抗CD33 VHHドメインは、配列番号3~6、10~11、13~16、および20~21のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むヒト化ラクダ様VHHである。特に好ましい実施形態では、抗CD33 VHHドメインは、10に記載されるアミノ酸配列を含むヒト化ラクダ様VHHである。特に好ましい実施形態では、抗CD33 VHHドメインは、20に記載されるアミノ酸配列を含むヒト化ラクダ様VHHである。
【0208】
特定の実施形態において、DARIC結合構成要素は、一つ以上の多量体形成ドメインを含む。
【0209】
本明細書において企図される特定のCD33 VHH DARIC結合構成要素での使用に適した多量体形成ドメインの例としては限定されないが、FKBPポリペプチドまたはそのバリアント、FRBポリペプチドまたはそのバリアント、カルシニューリンポリペプチドまたはそのバリアント、シクロフィリンポリペプチドまたはそのバリアント、DHFRポリペプチドまたはそのバリアント、PYL1ポリペプチドまたはそのバリアント、およびABI1ポリペプチドまたはそのバリアントが挙げられる。
【0210】
特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含み、DARICシグナル伝達構成要素は、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含む。好ましい実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、T2098L変異を含むFRBポリペプチドまたはそのバリアントを含み、DARICシグナル伝達構成要素は、FKBP12ポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0211】
特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、FKBPポリペプチドまたはそのバリアントを含み、DARICシグナル伝達構成要素は、FRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む。好ましい実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、FKBP12ポリペプチドまたはそのバリアントを含み、DARICシグナル伝達構成要素は、T2098L変異を含むFRBポリペプチドまたはそのバリアントを含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、CD33 VHH DARIC結合伝達構成要素はヒンジドメインを含む。
【0213】
本明細書に記載されるCD33 VHH DARICシグナル結合構成要素における使用に適したヒンジドメインの例示としては、CD28、CD8αおよびCD4等の1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が挙げられ、これら分子の野生型ヒンジ領域であってもよく、または改変されてもよい。
【0214】
特定の実施形態では、DARIC結合構成要素は、膜貫通ドメインを含む。特定の実施形態では、DARIC結合伝達構成要素は、ヒンジドメインおよび膜貫通ドメインを含む。一つの実施形態では、膜貫通ドメインは、DARICシグナル伝達構成要素で使用される膜貫通ドメインと同じであってもよい。一つの実施形態では、膜貫通ドメインは、DARICシグナル伝達構成要素で使用される膜貫通ドメインとは異なってもよい。
【0215】
本明細書で企図される特定のCD33 VHH DARIC結合構成要素において使用するのに好適な膜貫通ドメインの例示的な例としては、T細胞受容体のアルファ、ベータ、ガンマ、またはデルタ鎖の膜貫通領域、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、アムニオンレス(AMN)、およびプログラム細胞死1(PDCD1)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、CD33 DARIC結合構成要素は、CD8α膜貫通ドメインを含む。好ましい実施形態では、CD33 DARIC結合構成要素は、CD4膜貫通ドメインを含む。
【0216】
様々な好ましい実施形態では、短オリゴペプチドリンカー、またはポリペプチドリンカー、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸の長さのリンカーが、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを結合する。グリシン-セリンを基にしたリンカーが、特に適切なリンカーを提供する。
【0217】
本明細書の特定の実施形態で企図されるDARIC結合構成要素は、一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0218】
他の特定の実施形態において、本明細書で企図されるCD33 VHH DARIC結合構成要素は、一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。CD33 VHH DARIC結合構成要素が一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む好ましい実施形態において、これらのドメインは、同種のCD33 DARICシグナル伝達構成要素に存在する細胞内シグナル伝達ドメインとは異なる。一実施形態において、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0219】
本明細書に予期される特定のCD33 VHH DARIC結合伝達構成要素での使用に適した共刺激ドメインの例としては限定されないが、以下の共刺激性分子から単離されたドメインが挙げられる:Toll様受容体1(TLR1)、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、カスパーゼ動員ドメインファミリーメンバー11(CARD11)、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DNAX活性化タンパク質10(DAP10)、T細胞ファミリーメンバー1の活性化のためのリンカー(LAT)、76kDのSH2ドメイン含有白血球タンパク質(SLP76)、T細胞受容体関連膜貫通アダプター1(TRAT1)、TNFR2、TNF受容体スーパーファミリーメンバー14(TNFRS14;HVEM)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー18(TNFRS18;GITR)、TNF受容体スーパーファミリーメンバー25(TNFRS25;DR3)、およびT細胞受容体関連タンパク質キナーゼ70のゼータ鎖(ZAP70)。好ましい実施形態では、共刺激ドメインは、TNFR2またはOX40に由来し、それらから取得され、または単離される。
【0220】
特定の実施形態では、本明細書で企図されるDARIC結合構成要素は、シグナルペプチドを含む。特定のCD33 VHH DARIC結合構成要素での使用に適したシグナルペプチドの例示としては限定されないが、IgG1重鎖シグナルポリペプチド、Igκ軽鎖シグナルポリペプチド、CD8αシグナルポリペプチド、またはヒトGM-CSF受容体アルファシグナルポリペプチドが挙げられる。様々な好ましい実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、CD8αシグナルポリペプチドを含有する。
【0221】
特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、CD33に結合するVHHドメイン、FKBP12多量体形成ドメイン、CD4膜貫通ドメイン、および任意に共刺激ドメインを含有する。
【0222】
特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、CD33に結合するVHH、およびFKBP12多量体形成ドメインを含む。
【0223】
いくつかの実施形態において、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、配列番号2~21に記載のアミノ酸配列を含むVHHドメイン、FKBP12多量体形成ドメイン、およびCD4膜貫通ドメイン、ならびに任意選択で、共刺激ドメインを含む。
【0224】
いくつかの実施形態において、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、配列番号10または配列番号20に記載のアミノ酸配列を含むVHHドメイン、FKBP12多量体形成ドメイン、およびCD4膜貫通ドメイン、ならびに任意選択で、共刺激ドメインを含む。
【0225】
いくつかの実施形態において、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、配列番号2~21のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を含むVHHドメイン、およびFKBP12多量体形成ドメインを含む。
【0226】
特定の実施形態において、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、配列番号10または配列番号20に記載のアミノ酸配列を含むVHHドメイン、およびFKBP12多量体形成ドメインを含む。
【0227】
いくつかの実施形態において、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、配列番号22~31のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含む。
【0228】
いくつかの実施形態において、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、配列番号30に記載のアミノ酸配列を含む。
【0229】
3.架橋因子
本明細書の特定の実施形態において企図される架橋因子は、各構成要素中の多量体形成ドメインを通じて、CD33 DARICシグナル伝達構成要素をCD33 VHH DARIC結合構成要素に会合することを介在または促進する。架橋因子は、多量体形成ドメインと関連付けられ、およびその間に配置されて、CD33 DARICシグナル伝達構成要素をCD33 VHH DARIC結合構成要素に会合することを促進する。架橋因子の存在下で、CD33 VHH DARIC結合構成要素とCD33 DARICシグナル伝達構成要素は会合し、CD33 VHH DARIC結合構成要素が標的細胞に発現されたCD33に結合したときに、標的細胞に対する免疫エフェクター細胞活性を開始する。架橋因子の非存在下では、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、CD33 DARICシグナル伝達構成要素と会合せず、CD33 VHH DARICは不活性である。
【0230】
特定の実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成要素およびCD33 VHH DARIC結合構成要素は、FKBPおよびFKBP12-ラパマイシン結合(FRB)、FKBPおよびカルシニューリン、FKBPおよびシクロフィリン、FKBPおよび細菌ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、カルシニューリンおよびシクロフィリン、ならびにPYR1様1(PYL1)およびアブシジン酸非感受性1(ABI 1)からなる群から選択される多量体形成ドメインの同種対を含む。
【0231】
ある実施形態では、CD33 VHH DARICシグナル伝達構成要素とDARIC結合構成要素の多量体形成ドメインは、以下からなる群から選択される架橋因子と会合する:ラパマイシンまたはそのラパログ、クーママイシンまたはその誘導体、ジベレリンまたはその誘導体、アブシジン酸(ABA)またはその誘導体、メトトレキサートまたはその誘導体、シクロスポリンAまたはその誘導体、FK506/シクロスポリンA(FKCsA)またはその誘導体、およびトリメトプリム(Tmp)-FK506結合タンパク質(FKBP)の合成リガンド(SLF)またはその誘導体。
【0232】
特定の実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成要素およびCD33 VHH DARIC結合構成要素は、一つ以上のFRBおよび/またはFKBP多量体形成ドメイン、またはそのバリアントを含む。ある実施形態では、CD33 DARIC DARICシグナル伝達構成要素は、FRB多量体形成ドメインまたはそのバリアントを含有し、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、FKBP多量体形成ドメインまたはそのバリアントを含む。特定の好ましい実施形態では、CD33 DARICシグナル伝達構成要素は、FRB T2098L多量体形成ドメインまたはそのバリアントを含み、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、FKBP12もしくはFKBP12 F36V多量体形成ドメインまたはそのバリアントを含む。
【0233】
本明細書において予期される特定の実施形態での使用に適した架橋因子の例示としては限定されないが、AP1903、AP20187、AP21967(C-16-(S)-7-メチルインドールラパマイシンとしても知られている)、エベロリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス、タクロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、およびゾタロリムスが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、架橋因子は、AP21967である。ある好ましい実施形態では、架橋因子は、非免疫抑制用量のシロリムス(ラパマイシン)である。
【0234】
D.抗CD33キメラ抗原受容体
特定の実施形態において、本明細書で企図される免疫エフェクター細胞は、抗CD33 VHH CARを含む。キメラ抗原受容体(CAR)は、標的抗原(例えば腫瘍抗原)に対する抗体系の特異性と、T細胞受容体活性化細胞内ドメインを組み合わせて、特異的な抗腫瘍細胞性免疫活性を呈するキメラタンパク質を生成する分子である。本明細書において使用される場合、「キメラ」という用語は、異なる起源に由来する異なるタンパク質部分またはDNA部分から構成されるものを表す。
【0235】
特定の実施形態では、T細胞は、抗CD33 VHH CARをコードするポリヌクレオチドを導入することによって操作される。
【0236】
特定の実施形態では、T細胞は、抗CD33 VHH CARをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを導入することによって操作される。
【0237】
様々な実施形態では、抗CD33 CARは、CD33、膜貫通ドメイン、および一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインに結合するVHHドメインを含む。CARの主な特徴は、免疫エフェクター細胞の特異性を再指向化させる能力であり、この能力によって、増殖、サイトカイン産生、ファゴサイトーシス、または標的抗原発現細胞の細胞死を、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)非依存性の様式で介在し得る分子の産生が誘発され、モノクローナル抗体、可溶性リガンドまたは細胞特異的コレセプターの細胞特異的標的化能力が引き出される。
【0238】
いくつかの実施形態では、抗CD33 VHH CARは、スペーサードメインを含む。特定の実施形態では、スペーサードメインは、IgG1、IgG4またはIgDのCH2およびCH3を含む。
【0239】
本明細書に記載される抗CD33 VHH CARにおける使用に適したヒンジドメインの例示としては、CD28、CD8α、およびCD4といった1型膜タンパク質の細胞外領域に由来するヒンジ領域が挙げられ、これら分子の野生型ヒンジ領域であってもよく、または改変されてもよい。別の実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αヒンジ領域を含有する。
【0240】
CARの膜貫通(TM)ドメインは、細胞外結合部分と細胞内シグナル伝達ドメインを結合させ、CARを、免疫エフェクター細胞の細胞膜に固定する。TMドメインは、天然源、合成源、半合成源、または組み換え源のいずれかから誘導されてもよい。
【0241】
例示的なTMドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータ、ガンマ、またはデルタ鎖の少なくとも膜貫通領域、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD27、CD28、CD33、CD37、CD45、CD64、CD71、CD80、CD86、CD134、CD137、CD152、CD154、AMN、およびPDCD1に由来し得る(すなわち、それらを含む。
【0242】
一実施形態では、抗CD33 VHH CARは、CD8α由来のTMドメインを含む。別の実施形態では、本明細書において予期されるCARは、CD8α由来のTMドメインと、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸の長さの短オリゴリンカーまたはポリペプチドリンカーを含有し、当該リンカーは、CARのTMドメインと細胞内シグナル伝達ドメインを連結させる。グリシン-セリンリンカーが、特に適切なリンカーを提供する。
【0243】
好ましい実施形態において、抗CD33 VHH CARは、一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0244】
刺激性に作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motifs)またはITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含有してもよい。
【0245】
特定の実施形態で企図される抗CD33 VHH CARにおける使用に適したITAM含有一次シグナル伝達ドメインの例示としては、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するものが挙げられる。特に好ましい実施形態において、CARは、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインと一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインとを含む。細胞内一次シグナル伝達ドメインおよび共刺激シグナル伝達ドメインは、任意の順序でタンデムに膜貫通ドメインのカルボキシル末端と連結され得る。
【0246】
特定の実施形態において、抗CD33 VHH CARは、CAR受容体を発現するT細胞の有効性および拡大を強化するための一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0247】
特定の実施形態において企図される抗CD33 VHH CARにおいて使用するのに好適なかかる共刺激分子の例示的な例としては、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、CARD11、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD54(ICAM)、CD83、CD94、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD278(ICOS)、DAP10、LAT、SLP76、TRAT1、TNFR2、およびZAP70が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、CARは、CD28、CD137、およびCD134からなる群から選択される一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインと、CD3ζ一次シグナル伝達ドメインとを含む。
【0248】
様々な実施形態において、抗CD33 VHH CARは、CD33に結合するVHH、CD4、CD8α、CD154、およびPD-1からなる群から選択されるポリペプチドから単離された膜貫通ドメイン、CD28、CD134、およびCD137からなる群から選択されるポリペプチドから単離された一つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ならびに FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dからなる群から選択されるポリペプチドから単離されるシグナル伝達ドメインを含む。
【0249】
様々な実施形態において、抗CD33 VHH CARは、CD33に結合するVHH、CD4、CD8α、CD154、およびPD-1からなる群から選択されるポリペプチドから単離された膜貫通ドメイン、CD28、CD134、およびCD137からなる群から選択されるポリペプチドから単離された一つ以上の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、ならびに FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dからなる群から選択されるポリペプチドから単離されるシグナル伝達ドメインを含む。
【0250】
好ましい実施形態では、抗CD33 VHH CARは、配列番号2~21のうちのいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含むVHH、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0251】
好ましい実施形態では、抗CD33 VHH CARは、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含むVHH、CD8αヒンジドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0252】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH CARは、配列番号62~81のいずれか一つに記載される配列を含む。
【0253】
特定の実施形態では、抗CD33 VHH CARは、配列番号70又は配列番号80に記載の配列を含む。
【0254】
E.ポリペプチド
CD33 VHH DARIC、CD33 VHH DARIC結合構成要素、CD33 VHH DARICシグナル伝達構成要素、抗CD33 VHH CAR、およびそれらの断片を含むがこれに限定されない様々なポリペプチドが本明細書に企図される。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、配列番号2~82のいずれか一つに記載されるアミノ酸配列を含む。「ポリペプチド」「ペプチド」、および「タンパク質」は、相互交換可能に使用され、反対であることが明記されない限り、従来的な意味に従う。すなわちアミノ酸配列として使用される。一つの実施形態では、「ポリペプチド」は、融合ポリペプチドおよび他のバリアントを含む。ポリペプチドは、様々な公知の組み換え技術および/または合成技術のいずれかを使用して調製され得る。ポリペプチドは特定の長さに限定されない。例えばポリペプチドは、全長タンパク質配列、全長タンパク質の断片、または融合タンパク質を含有してもよい。ポリペプチドは、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などのポリペプチドの翻訳後修飾を含んでもよく、ならびに当分野に公知の天然および非天然の他の修飾を含んでもよい。特定の好ましい実施形態では、融合ポリペプチド、ポリペプチド、断片、およびそれらの他のバリアントは、一つ以上のヒトポリペプチドから調製され、取得され、または単離される。
【0255】
本明細書において使用される場合、「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」などは、細胞環境からの、および細胞の他の構成要素との会合からの、ペプチド分子またはポリペプチド分子のインビトロでの単離および/または精製を指す。すなわち、インビボでの物質と実質的に関連づけられていない。特定の実施形態では、単離ポリペプチドは、合成ポリペプチド、半合成ポリペプチド、もしくは組み換え源から取得された、または誘導されたポリペプチドである。
【0256】
ポリペプチドは、「ポリペプチドバリアント」を含む。ポリペプチドバリアントは、一つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入により、天然ポリペプチドとは異なっている場合がある。そうしたバリアントは、例えば、スプライスバリアントといった天然であってもよく、または例えば上述のポリペプチド配列の一つ以上を改変することにより合成的に生成されてもよい。例えば特定の実施形態では、一つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入をポリペプチドに導入することにより、ポリペプチドの結合アフィニティおよび/または他の生物学的性質を改善することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、ポリペプチドは、本明細書において予期される参照配列のいずれかに対し、少なくとも約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドを含み、典型的には、当該バリアントは、参照配列の少なくとも一つの生物学的活性を維持している。特定の実施形態では、生物学的活性は、結合アフィニティである。特定の実施形態では、生物学的活性は、細胞溶解活性である。
【0257】
ポリペプチドバリアントには、生物学的に活性な「ポリペプチド断片」が含まれる。生物学的に活性なポリペプチド断片の例としては、抗CD33 VHHドメイン、細胞内シグナル伝達ドメインなどが挙げられる。本明細書において使用される場合、「生物学的に活性な断片」または「最小の生物学的に活性な断片」という用語は、天然ポリペプチドの少なくとも100%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、少なくとも10%、または少なくとも5%の活性を保持するポリペプチド断片を指す。ある実施形態では、ポリペプチド断片は、少なくとも5~約1700アミノ酸の長さのアミノ酸鎖を含有し得る。ある実施形態では、断片は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、またはそれ以上のアミノ酸の長さである。
【0258】
特定の実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、「X」または「Xaa」と表される一つ以上のアミノ酸を含んでもよく、同義に使用される。アミノ酸の配列番号に存在する場合、「X」は、任意の一つ以上のアミノ酸を指す。特定の実施形態では、融合タンパク質を示す配列番号は、任意のアミノ酸配列を累積的に表す、連続するX残基の配列を含有する。特定の実施形態では、「XX」は、任意の二つのアミノ酸の組み合わせを表す。特定の実施形態では、「XX」は、二つのセリン、SSを表す。特定の実施形態では、「XX」は、免疫原性を減少させる任意の二つのアミノ酸の組み合わせを表す。
【0259】
好ましい実施形態では、「XX」はアミノ酸KPを表す。
【0260】
上述のように、ポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断および挿入を含む、様々な方法で改変されてもよい。そうした操作のための方法は、当分野において一般的に公知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNA中の変異により作製され得る。変異誘導およびヌクレオチド配列改変のための方法は、当分野に公知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488-492),Kunkel et al.,(1987,Methods in Enzymol,154:367-382)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.et al.、(Molecular Biology of the Gene,Fourth Edition,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)、およびそれらにおいて引用される参照文献を参照のこと。対象となるタンパク質の生物活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルに見出され得る。
【0261】
ある実施形態では、ポリペプチドバリアントは、一つ以上の保存的置換を含有する。「保存的置換」は、アミノ酸が、類似した性能を有する別のアミノ酸に置換される置換であり、ペプチド化学分野の当業者であれば、そうした置換によって、当該ポリペプチドの二次構造および疎水親水的性質が実質的に変化しないと予測するであろう。特定の実施形態において予期されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造に改変を行ってもよく、それでも所望の特徴を有するバリアントポリペプチドまたは誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子が取得される。ポリペプチドのアミノ酸配列を変更し、同等な、または改善されたバリアントポリペプチドを生成することが望ましい場合、当業者は、例えば表1に従い、コードDNA配列のコドンのうちの一つ以上を変えることができる。
【表1】
【0262】
どのアミノ酸残基が、生物活性を無効化することなく置換、挿入または欠失させ得るかを決定するガイダンスは、当分野に公知のコンピュータープログラム、例えばDNASTAR、DNA Strider、Geneious、Mac Vector、またはVector NTIソフトウェアなどを使用して見出すことができる。本明細書に開示されるタンパク質バリアント中のアミノ酸の変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち類似した荷電アミノ酸、または非荷電アミノ酸の置換であることが好ましい。保存的アミノ酸変化には、その側鎖で関連付けられているアミノ酸ファミリーの一つの置換を含む。天然アミノ酸は一般的に以下の四つのファミリーに分けられる:酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性アミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性アミノ酸(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン)。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、合わせて芳香族アミノ酸として分類される場合もある。ペプチドまたはタンパク質において、アミノ酸の適切な保存的置換は当業者に公知であり、一般的に得られる分子の生物活性を変化させることなく行うことができる。当業者であれば、ポリペプチドの非必須領域中の一アミノ酸置換は概して、生物活性を大きくは変化させないと認識している(例えば、Watson et al.Molecular Biology of the Gene,4th Edition,1987,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224を参照のこと)。
【0263】
一つの実施形態では、二つ以上のポリペプチドの発現が望ましい場合、それらをコードするポリヌクレオチド配列は、本明細書において別段に開示されるようにIRES配列またはポリヌクレオチド配列により分離されてもよい。
【0264】
特定の実施形態において予期されるポリペプチドは、融合ポリペプチドを含む。特定の実施形態では、融合ポリペプチド、および融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。融合ポリペプチドおよび融合タンパク質とは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個以上のポリペプチドセグメントを有するポリペプチドを指す。好ましい実施形態では、融合ポリペプチドは、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素を含む。他の好ましい実施形態では、融合ポリペプチドは、一つ以上のCD33 VHH DARICを含む。
【0265】
別の実施形態において、二つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素および/またはポリペプチドは、本明細書の他の箇所で開示されるポリペプチド間に一つ以上の自己切断ペプチド配列を含む融合タンパク質として発現され得る。
【0266】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、CD33 DARICシグナル伝達構成要素、自己切断ポリペプチド配列またはリボソームスキップ配列、およびCD33 VHH DARIC結合構成要素を含む。
【0267】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、CD33 DARICシグナル伝達構成要素、自己切断ポリペプチド配列またはリボソームスキップ配列、CD33 VHH DARIC結合構成要素、別の自己切断ポリペプチド配列またはリボソームスキップ配列、および別の標的抗原に対して向けられる別のDARIC結合構成要素を含む。
【0268】
融合ポリペプチドは、限定されないが、シグナルペプチド、細胞透過性ペプチドドメイン(CPP:cell permeable peptide)、結合ドメイン、シグナル伝達ドメインなど、エピトープタグ(例えば、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、HIS6、MYC、FLAG、V5、VSV-G、およびHA)、ポリペプチドリンカー、およびポリペプチド切断シグナルをはじめとする一つ以上のポリペプチドドメインまたはポリペプチドセグメントを含有してもよい。融合ポリペプチドは、典型的にはC末端~N末端で連結されるが、C末端~C末端、N末端~N末端、またはM末端~C末端で連結されることもできる。特定の実施形態では、融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序であってもよい。融合ポリペプチドまたは融合タンパク質は、保存的に改変されたバリアント、多型バリアント、アレル、変異体、下位配列、および種間ホモログを含み得るが、ただし融合ポリペプチドの望ましい活性は保存されるものとする。融合ポリペプチドは、化学合成法により、または二つの部分の間の化学的結合により作製されてもよく、または他の標準的な方法を使用して一般的に調製されてもよい。融合ポリペプチドを含むライゲーションされたDNA配列は、本明細書において別段に開示されるように適切な転写制御因子または翻訳制御因子に操作可能に連結される。
【0269】
融合ポリペプチドは任意で、一つ以上のリンカーを含んでもよく、それらリンカーを使用して、一つ以上のポリペプチド、またはポリペプチド内のドメインを連結することができる。ペプチドリンカー配列を採用して任意の二つ以上のポリペプチド構成要素を、各ポリペプチドが適切な二次構造および三次構造へとフォールディングされるために充分な距離をとって分離させてもよく、それによりポリペプチドドメインが、その望ましい機能を発揮することが可能となる。そうしたペプチドリンカー配列は、当分野において標準的な技術を使用して融合ポリペプチドへと組み込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の因子に基づき選択されてもよい:(1)柔軟な拡張立体構造をとる能力、(2)第一のポリペプチドおよび第二のポリペプチド上の機能性エピトープと相互作用し得る二次構造をとらない能力、および(3)ポリペプチドの機能性エピトープと反応する可能性がある疎水性または荷電性の残基の欠落。特定の実施形態では、好ましいペプチドリンカー配列は、Gly残基、Asn残基およびSer残基を含有する。他の近しい中性アミノ酸、例えばThrやAlaなどもリンカー配列に使用され得る。リンカーとして有用に採用され得るアミノ酸配列は、Maratea et al.,Gene 40:39-46,1985;Murphy et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258-8262,1986、米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に記載されるものが挙げられる。特定の融合ポリペプチドセグメントが非必須N末端アミノ酸領域を含有し、当該領域を使用して機能性ドメインを分離させ、立体干渉を防ぐことができる場合には、リンカー配列は必要ない。特定の実施形態では、好ましいリンカーは、典型的には、柔軟性のあるアミノ酸下位配列であり、当該配列は組み換え融合タンパク質の一部として合成される。リンカーポリペプチドは、1~200アミノ酸の長さ、1~100アミノ酸の長さ、または1~50アミノ酸の長さであってもよく、当該数値の間のすべての整数値が含まれる。
【0270】
ポリペプチド切断シグナルの例としては、例えばプロテアーゼ切断部位、ヌクレアーゼ切断部位(例えば、稀な制限酵素認識部位、自己切断リボザイム認識部位)、および自己切断ウイルスオリゴペプチド(deFelipe and Ryan,2004.Traffic,5(8);616-26を参照のこと)といったポリペプチド切断認識部位が挙げられる。
【0271】
適切なプロテアーゼ切断部位および自己切断ペプチドは、当業者に公知である(例えば、Ryan et al.,1997.J.Gener.Virol.78,699-722;Scymczak et al.(2004) Nature Biotech.5,589-594を参照のこと)。プロテアーゼ切断部位の例としては限定されないが、ポチウイルスNIaプロテアーゼ(例えばタバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ)、ポチウイルスHCプロテアーゼ、ポチウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルス(byovirus)NIaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA-2-コードプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(ワイカウイルス)3C様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子、およびエンテロキナーゼの切断部位が挙げられる。切断ストリンジェンシーが高いために、一つの実施形態ではTEV(タバコエッチ病ウイルス)プロテアーゼ切断部位、例えばEXXYXQ(G/S)(配列番号95)、例えばENLYFQG(配列番号96)およびENLYFQS(配列番号97)が好ましく、式中、Xは、任意のアミノ酸を表している(TEVによる切断は、QとGの間、またはQとSの間で発生する)。
【0272】
特定の実施形態では、ポリペプチド切断シグナルは、ウイルス自己切断ペプチドまたはリボソームスキッピング配列である。
【0273】
リボソームスキッピング配列の実例には、2Aもしくは2A様部位、配列またはドメインが挙げられるが、これらに限定されない(Donnellyら、2001年、J.Gen.Virol.82:1027~1041を参照)。特定の実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、アフトウイルス2Aペプチド、ポチウイルス2Aペプチド、またはカルジオウイルス2Aペプチドである。
【0274】
一実施形態では、ウイルス2Aペプチドは、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aペプチド、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2Aペプチド、ゾセアアシグナウイルス(TaV)2Aペプチド、ブタテスコウイルス-1(PTV-1)2Aペプチド、タイロウイルス2Aペプチド、および脳心筋炎ウイルス2Aペプチドからなる群から選択される。
【0275】
【0276】
好ましい実施形態において、ポリペプチドまたは融合ポリペプチドは、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素、CD33 VHH DARICまたは抗CD33 VHH CARを含む。
【0277】
好ましい実施形態では、融合ポリペプチドは、CD33 DARICシグナル伝達構成要素、および自己切断ポリペプチド配列によって分離されたCD33 VHH DARIC結合構成要素を含む。
【0278】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号32~61のいずれか1つに記載の配列を含む。特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号40、50または60のいずれか一つに記載の配列を含む。
【0279】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、FRB T2098L多量体形成ドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメインおよびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含むCD33 DARICシグナル伝達構成要素、ウイルス自己切断2Aポリペプチド、ならびに抗CD33を含むCD33 VHH DARIC結合構成要素、FKBP12多量体形成ドメインポリペプチド、ならびにCD4膜貫通ドメインを含む。
【0280】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号32~41のいずれか一つに記載の配列を含む。特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号40に記載の配列を含む。
【0281】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、FRB T2098L多量体形成ドメイン、CD8α膜貫通ドメイン、CD137共刺激ドメインおよびCD3ζ一次シグナル伝達ドメインを含むCD33 DARICシグナル伝達構成要素、ウイルス自己切断2Aポリペプチド、ならびに抗CD33 VHH、CD4膜貫通ドメイン、ならびに任意にCD27、CD28、TNFRS14、TNFRS18、TNFRS25、OX40またはTNFR2共刺激ドメインを含む。
【0282】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号42~51のいずれか一つに記載の配列を含む。特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号50に記載の配列を含む。
【0283】
特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号52~61のいずれか一つに記載の配列を含む。特定の実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号60に記載の配列を含む。
【0284】
F.ポリヌクレオチド
特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC、CD33 VHH DARIC結合構成要素、CD33 DARICシグナル伝達構成要素、抗CD33 VHH CAR、およびそれらの断片をコードするポリヌクレオチドが提供される。本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、およびDNA/RNAハイブリッドを指す。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であってもよく、および組み換え、合成または単離されていてもよい。ポリヌクレオチドとして、限定されるものではないが、プレメッセンジャーRNA(プレmRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、RNA、合成RNA、合成mRNA、ゲノムDNA(gDNA)、PCR増幅DNA、相補的DNA(cDNA)、合成DNA、または組み換えDNAが挙げられる。ポリヌクレオチドとは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも5000、少なくとも10000、または少なくとも15000以上のヌクレオチドの長さのヌクレオチドの多量体型を指し、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチド、またはいずれかタイプのヌクレオチドの改変型、ならびにすべての中間の長さのものを指す。本文脈において、「中間の長さ」とは、例えば6、7、8、9など、101、102、103など、151、152、153など、201、202、203などの引用されている値の間の任意の長さを意味すると容易に理解されるであろう。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはバリアントは、参照配列に対し、少なくとも、もしくは約50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%,76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。
【0285】
本明細書において使用される場合、「単離ポリヌクレオチド」とは、自然状態で隣接する配列から精製されたポリヌクレオチドを指し、例えば、通常では当該断片と隣接する配列から取り出されたDNA断片を指す。特定の実施形態において、「単離されたポリヌクレオチド」はまた、自然界には存在せず、人為的に作製された、相補的DNA(cDNA)、組換えDNA、または他のポリヌクレオチドも指す。特定の実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、合成ポリヌクレオチド、半合成ポリヌクレオチド、または組み換え源から取得された、もしくは誘導されたポリヌクレオチドである。
【0286】
様々な実施形態では、ポリヌクレオチドは、本明細書において予期されるポリペプチドをコードするmRNAを含有する。ある実施形態では、mRNAは、キャップ、一つ以上のヌクレオチド、そしてポリ(A)尾部を含有する。
【0287】
特定の実施形態では、一つ以上のCD33 VHH DARIC抗をコードするポリヌクレオチドは、コドン最適化されてもよい。本明細書において使用される場合、「コドン最適化された」という用語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド中のコドンを置換して、当該ポリペプチドの発現、安定性および/または活性を向上させることを指す。コドン最適化に影響を与える要因には、(i)二つ以上の生物または遺伝子間のコドンバイアスの変動、または合成的に構築されたバイアステーブル、(ii)生物、遺伝子、または遺伝子セット内のコドンバイアスの程度の変動、(iii)文脈を含むコドンの系統的変動、(iv)それらの解読tRNAによるコドンの変動、(v)全体的または三重項のいずれか一つの位置での、GC%によるコドンの変動、(vi)参照配列、例えば、天然に存在する配列との類似性の程度の変動、(vii)コドン頻度カットオフの変動、(viii)DNA配列から転写されたmRNAの構造特性、(ix)コドン置換セットの設計が基づくべき、DNA配列の機能に関する先行知識、(x)各アミノ酸に対するコドンセットの系統的変動、および/または(xi)スプリアス翻訳開始部位の単離除去の一つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。
【0288】
本明細書で使用される、用語「ヌクレオチド」は、リン酸化糖とN-グリコシド結合した複素環式窒素塩基を指す。ヌクレオチドは、天然塩基、および当分野に認識される広範な改変塩基を含むと理解される。そうした塩基は一般的に、ヌクレオチド糖部分の1’位に配置される。ヌクレオチドは一般的に、塩基、糖およびリン酸基を含有する。リボ核酸(RNA)では、糖はリボースであり、デオキシリボ核酸(DNA)では、糖はデオキシリボースである。すなわち、デオキシリボースは、リボース中に存在するヒドロキシル基を欠いた糖である。
【0289】
ポリヌクレオチドの例示としては限定されないが、配列番号2~82に記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
【0290】
様々な実施形態において、本明細書において企図されるポリヌクレオチドとしては限定されないが、一つ以上の CD33 VHH DARIC構成要素をコードするポリヌクレオチド、CD33 VHH DARIC受容体、抗CD33 VHH CAR、融合ポリペプチド、発現ベクター、ウイルスベクター、および本明細書に企図されるポリヌクレオチドを含むトランスファープラスミドが挙げられる。
【0291】
本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」などの用語は、参照ポリヌクレオチド配列と相当の配列同一性を呈するポリヌクレオチド、または本明細書において規定されるストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。これらの用語には、少なくとも一つのヌクレオチドの付加、欠失、置換または改変によって参照ポリヌクレオチドと識別されるポリヌクレオチドも包含される。従って、「ポリヌクレオチドバリアント」および「バリアント」という用語には、一つ以上のヌクレオチドが付加もしくは欠失もしくは改変され、または別のヌクレオチドと置換されたポリヌクレオチドが含まれる。この点に関し、当分野において、参照ポリヌクレオチドに対し、変異、付加、欠失および置換を含むある変更が為され、変更されたポリヌクレオチドは、参照ポリヌクレオチドの生物学的機能または生物活性を保持し得ると理解されている。
【0292】
「配列同一性」、または例えば「~に対して50%同一の配列」を含む、という文章は、本明細書において使用される場合、比較ウインドウ上で配列が、ヌクレオチド毎で同一である、またはアミノ酸ごとで同一である程度を指す。ゆえに「配列同一性の百分率」は、比較ウインドウ上の二つの最適アライメント配列を比較する工程、同一核酸塩基(例えばA、T、C、G、I)または同一アミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が、両方の配列中に存在する位置の数を決定して、合致位置数を算出する工程、合致位置数を、比較ウインドウ中の総位置数(すなわちウインドウサイズ)で割る工程、および結果に100を掛けて、配列同一性の百分率を算出する工程、により計算されてもよい。本明細書に記載の参照配列のいずれかに対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、86%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチドおよびポリペプチドが含まれる。
【0293】
本明細書において想定されるポリヌクレオチドは、コード配列自体の長さにかかわらず、本明細書の他の箇所に開示されるか当該技術分野で知られている、プロモーターおよび/またはエンハンサー、非翻訳領域(UTR)、シグナル配列、コザック配列、ポリアデニル化シグナル、付加的な制限酵素部位、多重クローニング部位、内部リボソーム侵入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRT、およびAtt部位)、終止コドン、転写終結シグナル、および自己切断型ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグなどの他のDNA配列と組み合わされてもよく、その結果、それらの全体的な長さが大幅に変動してもよい。ゆえに、ほとんどすべての長さのポリヌクレオチド断片が採用され得ること、好ましくは全体の長さは調製の容易さ、および意図される組み換えDNAプロトコールでの用途により制限されることが予期される。
【0294】
ポリヌクレオチドは、当分野で公知および利用可能な様々な確立された技術のいずれかを使用して調製され、操作され、発現され、および/または送達されてもよい。所望のポリペプチドを発現するために、当該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、適切なベクターに挿入されてもよい。
【0295】
ベクターの例示としては限定されないが、プラスミド、自己複製配列、および転移性因子、例えばSleeping Beauty、PiggyBacなどが挙げられる。
【0296】
ベクターの追加的な例示としては限定されないが、プラスミド、ファージミド、コスミド、例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、またはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、例えばラムダファージまたはM13ファージなどのバクテリオファージ、および動物ウイルスが挙げられる。
【0297】
ベクターとして有用なウイルスの例示としては限定されないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴型ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、およびパポバウイルス(例えばSV40)が挙げられる。
【0298】
発現ベクターの例示としては限定されないが、哺乳動物細胞での発現用のpClneoベクター(Promega社)、哺乳動物細胞でのレンチウイルス介在型遺伝子移送および発現用のpLenti4/V5-DEST(商標)、pLenti6/V5-DEST(商標)、およびpLenti6.2/V5-GW/lacZ(Invitrogen社)が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドのコード配列は、哺乳動物細胞でのポリペプチドの発現のために、そうした発現ベクター内にライゲートされてもよい。
【0299】
特定の実施形態では、ベクターは、エピソーム性ベクター、または染色体外で維持されるベクターである。本明細書において使用される場合、「エピソーム性」という用語は、宿主の染色体DNAに統合されることなく複製することができるベクターであり、宿主細胞の分裂により徐々に減少することがないということは、当該ベクターが染色体外で、またはエピソーム性に複製することも意味している。
【0300】
発現ベクター中に存在する「発現制御配列」、「制御因子」、または「制御性配列」は、ベクターの非翻訳領域であり、複製起源、選択カセット、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル(Shine Dalgarno配列またはKozak配列)、イントロン、ポリアデニル化配列、5’および3’の非翻訳領域が挙げられ、それらはすべて宿主の細胞タンパク質と相互作用して、転写と翻訳を実行する。そうした因子は、その強度および特異性を変化させてもよい。利用するベクターシステムおよび宿主に応じて、ユビキタスプロモーターおよび誘導性プロモーターをはじめとする任意の数の適切な転写因子および翻訳因子を使用してもよい。
【0301】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、限定されないが、発現ベクターおよびウイルスベクターをはじめとするベクターを含有する。ベクターは、一つ以上の外因性、内因性、または異種の制御配列、例えばプロモーターおよび/またはエンハンサーを含有してもよい。「内因性制御配列」は、ゲノム中で所与の遺伝子と本来連結される配列である。「外因性制御配列」は、遺伝子操作手段(すなわち分子生物学的技術)により、遺伝子に並置して置かれる配列であり、当該遺伝子の転写は、その連結したエンハンサー/プロモーターにより誘導される。「異種制御配列」は、遺伝子操作される細胞とは異なる種に由来する外因性配列である。「合成」制御配列は、特定の療法に対し最適なプロモーター活性および/またはエンハンサー活性を提供する、一つ以上の内因性および/または外因性の配列の因子、ならびに/またはインビトロもしくはインシリコで決定された配列の因子を含有してもよい。
【0302】
本明細書において使用される場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)の認識部位を指す。RNAポリメラーゼは、プロモーターに操作可能に連結されたポリヌクレオチドの転写を開始させる。特定の実施形態では、哺乳動物細胞で動作するプロモーターは、転写が開始される部位からおよそ25~30塩基上流に位置するAT-リッチ領域、および/または転写開始部位から70~80塩基上流に存在する別の配列であるCNCAAT領域を含有し、式中、Nは任意のヌクレオチドであり得る。
【0303】
「エンハンサー」という用語は、転写の強化を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指し、一部の場合では、別の制御配列に対する方向性に関係なく機能することができる。エンハンサーは、プロモーター因子および/または他のエンハンサー因子と協働して、または相加的に機能することができる。「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーター機能とエンハンサー機能の両方を提供することができる配列を含むDNAセグメントを指す。
【0304】
「操作可能に連結した」という用語は、記載される構成要素が、それらが意図された様式で機能することができるような関係にある並置を意味する。一つの実施形態では、当該用語は、核酸発現制御配列(例えばプロモーター、および/またはエンハンサー)と、第二のポリヌクレオチド配列、例えば対象となるポリヌクレオチドとの間の機能的連結を指し、この場合において当該発現制御配列は、第二の配列に対応する核酸の転写を誘導する。
【0305】
本明細書において使用される場合、「構造的発現制御配列」という用語は、操作可能に連結された配列の継続的な、または連続的な転写を可能にするプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーを指す。構造的発現制御配列は、様々な細胞型と組織型での発現を可能にする「ユビキタス」なプロモーター、エンハンサー、プロモーター/エンハンサーであってもよく、または限定的な細胞型および組織型での発現を可能にする、それぞれ「細胞特異的」、「細胞型特異的」、「細胞株特異的」、または「組織特異的」なプロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーであってもよい。
【0306】
特定の実施形態における使用に適したユビキタス発現制御配列の例示としては限定されないが、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、ウイルス性シミアンウイルス40(SV40)(例えば初期または後期)、モロニ-マウス白血病ウイルス(MoMLV)LTRプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーター、ワクシニアウイルス由来のH5、P7.5およびP11プロモーター、伸長因子1α(EF1a)プロモーター、初期増殖応答タンパク質1(EGR1:early growth response 1)、フェリチンH(FerH)、フェリチンL(FerL)、グリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(GAPDH)、真核細胞翻訳開始因子4A1(EIF4A1)、ヒートショック70kDaタンパク質5(HSPA5)、ヒートショックタンパク質90kDa ベータ、メンバー1(HSP90B1)、ヒートショックタンパク質70kDa(HSP70)、β-キネシン(β-KIN)、ヒトROSA 26座位(Irions et al.,Nature Biotechnology 25,1477-1482(2007))、ユビキチンCプロモーター(UBC)、ホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター、β-アクチンプロモーターおよび骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサー、ネガティブ制御領域欠失型、dl587revプライマー結合部位置換(MND)U3プロモーター(Haas et al.Journal of Virology.2003;77(17):9439-9450)が挙げられる。
【0307】
一つの実施形態では、ベクターは、MNDU3プロモーターを含有する。
【0308】
一つの実施形態では、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第一イントロンを含むEF1aプロモーターを含有する。
【0309】
一つの実施形態では、ベクターは、ヒトEF1a遺伝子の第一イントロンを欠くEF1aプロモーターを含有する。
【0310】
特定の実施形態では、細胞、細胞型、細胞株、または組織に特異的な発現制御配列を使用して、所望のポリヌクレオチド配列の細胞型特異的、細胞株特異的、または組織特異的な発現を実現することが望ましい場合もある(例えば特定のポリペプチドをコードする核酸を、細胞型、細胞株、または組織のサブセットにおいてのみ、または発生の特定のステージでのみ発現させる)。
【0311】
特定の実施形態では、T細胞特異的プロモーターであるポリヌクレオチドを発現させることが望ましい場合がある。
【0312】
本明細書において使用される場合、「条件付き発現」とは、限定されないが、誘導性発現、抑制性発現、特定の生理学的状態、生物学的状態もしくは疾患状態にある細胞または組織での発現をはじめとする条件付き発現の任意の型を指す場合がある。この定義は、細胞型または組織に特異的な発現を除外することは意図されない。ある実施形態は、対象となるポリヌクレオチドの条件付き発現を提供するものであり、例えば発現は、細胞、組織、生物体を、ポリヌクレオチドが発現される処理または条件、または対象となるポリヌクレオチドにコードされるポリヌクレオチドの発現が増加もしくは減少する処理または条件に曝すことにより制御される。
【0313】
誘導性プロモーター/システムの例示としては限定されないが、ステロイド誘導性プロモーター、例えばグルココルチコイド受容体またはエストロゲン受容体をコードする遺伝子のプロモーター(対応するホルモンの処理で誘導可能)、メタロチオネインプロモーター(様々な重金属の処理で誘導可能)、MX-1プロモーター(インターフェロンで誘導可能)、「GeneSwitch」ミフェプリストン制御性システム(Sirin et al.,2003,Gene,323:67)、クミン酸塩(cumate)誘導性遺伝子スイッチ(WO2002/088346)、テトラサイクリン依存性制御システムなどが挙げられる。誘導物質としては限定されないが、グルココルチコイド、エストロゲン、ミフェプリストン(RU486)、金属、インターフェロン、低分子、クミン酸塩、テトラサイクリン、ドキシサイクリンおよびそれらのバリアントが挙げられる。
【0314】
本明細書において使用される場合、「内部リボソーム侵入部位」または「IRES」とは、シストロン(タンパク質コード領域)の例えばATGなどの開始コドンに内部リボソームが直接侵入することを促進し、キャップ非依存性の遺伝子翻訳を生じさせる因子を指す。例えば、Jackson et al.,1990.Trends Biochem Sci 15(12):477-83)およびJackson and Kaminski.1995.RNA 1(10):985-1000を参照のこと。当業者により一般的に採用されるIRESの例としては、米国特許第 第6,692,736号に記載されるものが挙げられる。当分野に公知の「IRES」のさらなる例としては限定されないが、ピコルナウイルスから取得可能なIRES(Jackson et al.,1990)、および例えば免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、血管内皮増殖因子(VEGF)などのウイルスmRNAまたは細胞mRNAを源として取得可能なIRES(Huez et al.1998.Mol.Cell.Biol.18(11):6178-6190)、線維芽細胞増殖因子2(FGF-2)、およびインスリン様増殖因子(IGFII)、翻訳開始因子のeIF4G、ならびに酵母転写因子のTFIIDおよびHAP4、Novagen社から販売されている脳心筋炎ウイルス(EMCV)(Duke et al.,1992.J.Virol 66(3):1602-9)およびVEGF IRES(Huez et al.,1998.Mol Cell Biol 18(11):6178-90)が挙げられる。IRESは、ピコルナウイルス科、ジシストロウイルス科、およびフラビウイルス科の種のウイルスゲノム、ならびにHCV、フレンドマウス白血病ウイルス(FrMLV)、およびモロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)においても報告されている。
【0315】
一つの実施形態では、本明細書において予期されるポリヌクレオチドに使用されるIRESは、EMCV IRESである。
【0316】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、コンセンサスKozak配列。本明細書において使用される場合、「Kozak配列」という用語は、リボソーム小サブユニットへのmRNAの初期結合を大きく促進し、翻訳を増加させる短いヌクレオチド配列を指す。コンセンサスKozak配列は、(GCC)RCCATGG(配列番号83)であり、、Rはプリン(AまたはG)である(Kozak,1986.Cell.44(2):283-92、およびKozak,1987.Nucleic Acids Res.15(20):8125-48)。
【0317】
異種核酸転写物の効率的な終止とポリアデニル化を誘導する因子は、異種遺伝子の発現を増加させる。転写終止シグナルは、一般的にポリアデニル化シグナルの下流に存在する。特定の実施形態では、ベクターは、発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの3’側にポリアデニル化配列を含有する。本明細書において使用される場合、「ポリA部位」または「ポリA配列」という用語は、RNAポリメラーゼIIによる初期RNA転写物の終止とポリアデニル化の両方を誘導するDNA配列を示す。ポリアデニル化配列は、ポリA尾部をコード配列の3’末端に付加することでmRNAの安定性を促進し、それにより翻訳効率の増強に寄与することができる。切断およびポリアデニル化は、RNA中のポリ(A)配列により誘導される。哺乳動物のプレmRNAのコアポリ(A)配列は、切断-ポリアデニル化部位に隣接する二つの認識因子を有する。典型的には、ほぼ不変のAAUAAA六量体が、U残基またはGU残基が豊富な、より可変性の高い因子の上流20~50ヌクレオチドに存在する。初期転写物の切断はこれら二つの因子の間で発生し、5’切断産物に最大で250個のアデノシンが付加される。特定の実施形態では、コアポリ(A)配列は、最良のポリA配列(例えば、AATAAA、ATTAAA、AGTAAA)である。特定の実施形態では、ポリ(A)配列は、SV40のポリA配列、ウシ成長ホルモンポリA配列(BGHpA)、ウサギβ-グロビンポリA配列(rβgpA)、それらのバリアント、または当分野に公知の別の適切な異種または内因性ポリA配列である。特定の実施形態では、ポリ(A)配列は、合成である。
【0318】
特定の実施形態では、一つ以上のポリペプチドまたは融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞に、非ウイルス法およびウイルス法の両方により導入されてもよい。特定の実施形態では、一つ以上のポリヌクレオチドの送達は、同じ方法もしくは異なる方法で提供されてもよく、および/または同じベクターもしくは異なるベクターで提供されてもよい。
【0319】
「ベクター」という用語は、本明細書において、もう一つの核酸分子を移送または輸送することができる核酸分子を指すために使用される。伝達された核酸は、一般的に、例えば、ベクター核酸分子に挿入される。ベクターは、細胞内で自己複製を指示する配列を含んでもよく、または宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。特定の実施形態では、非ウイルスベクターを使用して、本明細書で意図される一つまたは複数のポリヌクレオチドをT細胞に送達する。
【0320】
非ウイルス性ベクターの例示としては限定されないが、プラスミド(例えばDNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、および細菌人工染色体が挙げられる。
【0321】
特定の実施形態で予期されるポリヌクレオチドの非ウイルス性の送達法の例示としては限定されないが、エレクトロポレーション法、ソノポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、バイオリステック法、ウイロゾーム法、リポソーム法、免疫リポソーム法、ナノ粒子法、ポリカチオンまたは脂質:核酸複合体、ネイキッドDNA法、人工ビリオン、DEAE-デキストラン介在移送、遺伝子銃、およびヒートショックが挙げられる。
【0322】
特定の実施形態において予期される特定の実施形態での使用に適したポリヌクレオチド送達システムの例示としては限定されないが、Amaxa Biosystems,Maxcyte,Inc.、BTX Molecular Delivery Systems、およびCopernicus Therapeutics Inc.により提供されるシステムが挙げられる。リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体-認識リポフェクションに適したカチオン性脂質および中性脂質は、文献に記載されている。例えば、Liu et al.(2003)Gene Therapy.10:180-187;およびBalazs et al.(2011)Journal of Drug Delivery. 2011:1-12を参照のこと。抗体標的化送達、細菌誘導送達、非生物ナノセル系送達も特定の実施形態において予期される。
【0323】
特定の実施形態において予期されるポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターは、個々の患者に投与することにより、典型的には以下に記載されるように全身投与(例えば静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または頭蓋内点滴)または局所適用することによりインビボで送達され得る。あるいはベクターは、例えば個々の患者から外植された細胞(例えば動員(mobilized)された末梢血、リンパ球、骨髄吸引液、組織生検等)またはユニバーサルドナーの造血幹細胞などの細胞に生体外で送達されてもよく、その後、患者に当該細胞を再移植してもよい。
【0324】
一つの実施形態では、本明細書において予期されるポリヌクレオチドを含むウイルスベクターは生物体に直接投与され、インビボで細胞に形質導入される。あるいはネイキッドDNAが投与されてもよい。投与は、分子を導入して血液または組織細胞と最終的に接触させるために通常に使用される経路のいずれかによるものであり、限定されないが、注射、点滴、局所適用およびエレクトロポレーションが挙げられる。そうした核酸の適切な投与方法は当業者に利用可能および公知であるが、複数の経路を使用して特定の組成物を投与してもよく、特定の経路はしばしば、別の経路よりも即時性で高い効果的反応を提供することができる。
【0325】
特定の実施形態において予期される特定の実施形態での使用に適したウイルスベクター系の例示としては限定されないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、およびワクシニアウイルスのベクターが挙げられる。
【0326】
様々な実施形態では、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素および/または本明細書において予期される他のポリペプチドをコードする一つ以上のポリヌクレオチドが、当該一つ以上のポリヌクレオチドを含有する組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)とともに細胞に形質導入されることで、例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞に導入される。
【0327】
AAVは、小さな(約26nm)の複製能力を欠いた、主にエピソーム性の非エンベロープウイルスである。AAVは、分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み込む場合がある。組み換えAAV(rAAV)は典型的には、最小で導入遺伝子とその制御配列、ならびに5’および3’のAAV逆位末端反復(ITR)から構成される。ITR配列は約145bpの長さである。特定の実施形態では、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9またはAAV10から単離されたITRとカプシド配列を含有する。
【0328】
一部の実施形態では、キメラrAAVが使用される。ITR配列は、一つのAAV血清型から単離され、カプシド配列は別のAAV血清型から単離される。例えばAAV2由来のITR配列と、AAV6由来のカプシド配列を含むrAAVは、AAV2/AAV6と呼ばれる。特定の実施形態では、rAAVベクターは、AAV2由来のITRと、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9またはAAV10のいずれか一つに由来するカプシドタンパク質を含有してもよい。好ましい実施形態では、rAAVは、AAV2由来のITR配列と、AAV6由来のカプシド配列を含有する。好ましい実施形態では、rAAVは、AAV2由来のITR配列と、AAV2由来のカプシド配列を含有する。
【0329】
一部の実施形態では、操作と選択の方法をAAVカプシドに行って、それらが対象となる細胞に形質導入される確率を高くしてもよい。
【0330】
rAAVベクターの構築、産生、および精製は、例えば米国特許第9,169,494号、第9,169,492号、第9,012,224号、第8,889,641号、第8,809,058号、および第8,784,799号に開示されている。それら文献はその全体で参照により本明細書に援用される。
【0331】
様々な実施形態では、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素および/または本明細書において予期される他のポリペプチドをコードする一つ以上のポリヌクレオチドは、当該一つ以上のポリヌクレオチドを含有する例えばレンチウイルスなどのレトロウイルスとともに細胞に形質導入されることで、例えばT細胞などの免疫エフェクター細胞に導入される。
【0332】
本明細書において使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、自身のゲノムRNAを直線的二本鎖DNAコピーへと逆転写し、次いで自身のゲノムDNAを宿主ゲノムへと共有結合的に統合させるRNAウイルスを指す。特定の実施形態における使用に適したレトロウイルスの例示としては限定されないが、以下が挙げられる:モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)、およびレンチウイルス。
【0333】
本明細書において使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合的なレトロウイルスの群(または属)を指す。レンチウイルスの例としては限定されないが、HIV(ヒト免疫不全ウイルス、HIV1型およびHIV2型を含む)、ビスナ-マエディウイルス(VMV)、ヤギ関節炎-脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。一つの実施形態では、HIVをベースとしたベクター骨格(すなわちHIVシス作用性配列因子)が好ましい。
【0334】
様々な実施形態では、本明細書に予期されるレンチウイルスベクターは、一つ以上のLTR、および以下のアクセサリー因子のうちの一つ以上またはすべてを含有する:cPPT/FLAP、Psi(Ψ)パッケージシグナル、輸出因子(export element)、ポリ(A)配列。および任意で、本明細書において別段に検討されるように、WPREまたはHPRE、インシュレーター因子、選択マーカー、および細胞自殺遺伝子を含有してもよい。
【0335】
特定の実施形態では、本明細書において予期されるレンチウイルスベクターは、統合的、または非統合的、または統合能力を欠くレンチウイルスであってもよい。本明細書において使用される場合、「統合能力を欠くレンチウイルス」または「IDLV」という用語は、ウイルスゲノムを宿主細胞ゲノムに統合させる能力を欠くインテグラーゼを有するレンチウイルスを指す。統合能力のないウイルスベクターは、特許出願WO2006/010834に記載されており、当該出願はその全体で参照により本明細書に援用される。
【0336】
インテグラーゼ活性の低下に適したHIV-1 pol遺伝子中の変異の例としては限定されないが、以下が挙げられる:H12N、H12C、H16C、H16V、S81 R、D41A、K42A、H51A、Q53C、D55V、D64E、D64V、E69A、K71A、E85A、E87A、D116N、D1161、D116A、N120G、N1201、N120E、E152G、E152A、D35E、K156E、K156A、E157A、K159E、K159A、K160A、R166A、D167A、E170A、H171A、K173A、K186Q、K186T、K188T、E198A、R199c、R199T、R199A、D202A、K211A、Q214L、Q216L、Q221 L、W235F、W235E、K236S、K236A、K246A、G247W、D253A、R262A、R263AおよびK264H。
【0337】
「長末端反復(LTR:long terminal repeat)」という用語は、レトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指し、本来の配列ではLTRはダイレクトリピートであり、U3、RおよびU5領域を含有する。
【0338】
本明細書において使用される場合、「FLAP因子」、または「cPPT/FLAP」という用語は、その配列が、例えばHIV-1およびHIV-2などのレトロウイルスの中心ポリプリン帯(central polypurine tract)と中心末端配列(central termination sequences)(cPPTおよびCTS)を含む核酸を指す。適切なFLAP因子は、米国特許第6,682,907号およびZennou,et al.,2000,Cell,101:173に記載されている。
【0339】
本明細書において使用される場合、「パッケージシグナル」または「パッケージ配列」という用語は、レトロウイルスゲノム内に位置するpsi[Ψ]配列を指し、ウイルスカプシドまたはウイルス粒子内にウイルスRNAを挿入するために必要とされる。例えば、Clever et al.,1995.J.of Virology,Vol.69,No.4;pp.2101-2109を参照のこと。
【0340】
「輸出因子」という用語は、シス作用性の転写後制御因子を指し、細胞の核から細胞質へのRNA転写物の輸送を制御する。RNA輸出因子の例としては限定されないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のrev反応性因子(RRE)(例えば、Cullen et al.,1991.J.Virol.65:1053;およびCullen et al.,1991.Cell 58:423を参照のこと)およびB型肝炎ウイルスの転写後制御因子(HPRE)が挙げられる。
【0341】
特定の実施形態では、ウイルスベクター中の異種配列の発現は、転写後制御因子、効率的ポリアデニル化部位、および任意で転写終止シグナルをベクターに組み込むことで増加する。様々な転写後制御因子が、タンパク質での異種核酸の発現を増加させることができる。例えばウッドチャック肝炎ウイルスの転写後制御因子(WPRE;Zufferey et al.,1999,J.Virol.,73:2886);B型肝炎ウイルス中に存在する転写後制御因子(HPRE)(Huang et al.,Mol.Cell.Biol.,5:3864);など(Liu et al.,1995,Genes Dev.,9:1766)が挙げられる。
【0342】
レンチウイルスベクターは、LTR改変の結果として、いくつかの安全性強化因子を含有することが好ましい。「自己不活化」(SIN:self-inactivating)ベクターとは、複製能力を欠いたベクターを指し、例えば右(3’)LTRエンハンサー-プロモーター領域はU3領域として知られているが、この領域が(例えば欠失または置換により)改変されて、ウイルス複製の最初のラウンドを超えたウイルス転写が阻害される、レトロウイルスまたはレンチウイルスのベクターなどがある。自己不活化は、ベクターDNA、すなわちベクターRNAを生成するために使用されるDNAの3’LTRのU3領域に欠失を導入することで実現されることが好ましい。そうすることで、逆転写の間にこの欠失がプロウイルスDNAの5’LTRに移送される。特定の実施形態では、U3配列を充分に除去して、LTRの転写活性を大きく減少させる、または完全に無効化させることが望ましく、それにより形質導入された細胞において全長ベクターRNAの産生が大きく減少または無効化される。HIVをベースにしたレンチベクターの場合、そうしたベクターは、LTR TATA boxの除去(例えば-418~-18の欠失)を含む大幅なU3欠失に耐用性があり、ベクター力価の大きな低下は伴わないことが判明している。
【0343】
追加的な安全性の強化は、5’LTRのU3領域を、ウイルス粒子の産生中にウイルスゲノムの転写を誘導する異種プロモーターと置き換えることで提供される。使用され得る異種プロモーターの例としては例えば、シミアンウイルス40(SV40)(例えば初期または後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば前初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、および単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)のプロモーターが挙げられる。
【0344】
本明細書において使用される場合、「偽型」または「偽型の」という用語は、そのウイルスエンベロープタンパク質が、好ましい特性を有する別のウイルスのエンベロープと置き換えられたウイルスを指す。例えば、HIVエンベロープタンパク質(env遺伝子にコードされる)は通常、CD4+提示細胞に対してウイルスを標的化するが、水泡性口炎ウイルスのG-タンパク質(VSV-G)エンベロープタンパク質でHIVを偽型化することで、広範な細胞にHIVが感染できるようになる。
【0345】
ある実施形態では、レンチウイルスベクターは、公知の方法により産生される。例えば、Kutner et al.,BMC Biotechnol.2009;9:10.doi:10.1186/1472-6750-9-10;Kutner et al.Nat.Protoc.2009;4(4):495-505.doi:10.1038/nprot.2009.22を参照のこと。
【0346】
本明細書に予期されるある特定の実施形態によると、ほとんど、またはすべてのウイルスベクターの骨格配列は、例えばHIV-1などのレンチウイルスに由来する。しかしながら、レトロウイルスおよび/もしくはレンチウイルス配列の多くの異なる源を使用することができるか、またはある特定のレンチウイルス配列の組み合わせられた多数の置換および改変が、移入ベクターの本明細書に記載される機能を行う能力を損なうことなく適応され得ることが理解されるべきである。さらに、様々なレンチウイルスベクターが当分野に公知である。Naldini et al.,(1996a,1996b,and 1998);Zufferey et al.,(1997);Dull et al.,1998、米国特許第 6,013,516号および第5,994,136号を参照のこと。それらの多くが、本明細書に予期されるウイルスベクターまたはトランスファープラスミドの産生に適合され得る。
【0347】
様々な実施形態では、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素および/または本明細書において予期される他のポリペプチドをコードする一つ以上のポリヌクレオチドが、当該一つ以上のポリヌクレオチドを含有するアデノウイルスとともに細胞に形質導入されることで、免疫エフェクター細胞に導入される。
【0348】
アデノウイルス系のベクターは、多くの細胞型で非常に高い効率で形質導入を行うことができ、そして細胞分裂を必要としない。そうしたベクターを用いることで、高い力価と、高レベルの発現が得られる。このベクターは、比較的シンプルなシステムで大量に作製することができる。ほとんどのアデノウイルスベクターが、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換するよう操作されている。その結果、複製能力を欠くベクターはヒト293細胞中で増幅され、当該細胞が失われた遺伝子機能をトランスで供給する。Adベクターは、例えば肝臓、腎臓および筋肉中に存在する細胞などの非分裂細胞、分化細胞を含む、複数のタイプの組織にインビボで形質導入することができる。従来的なAdベクターは、大きな運搬能力を有している。
【0349】
複製能力を欠く現在のアデノウイルスベクターの作製と増幅は、293と呼ばれるユニークなヘルパー細胞株を利用する場合がある。この細胞株は、ヒト胚腎臓細胞からAd5 DNA断片により形質転換されたものであり、E1タンパク質を構造的に発現している(Graham et al.,1977)。アデノウイルスゲノムのE3領域は必須ではないため(Jones & Shenk,1978)、現在のアデノウイルスベクターは、293細胞の補助を得て、E1、D3またはその両方の領域に外来性DNAを担持している(Graham & Prevec,1991)。アデノウイルスベクターは、真核細胞遺伝子の発現(Levrero et al.,1991;Gomez-Foix et al.,1992)およびワクチン開発(Grunhaus & Horwitz,1992;Graham & Prevec,1992)に使用されている。組み換えアデノウイルスを様々な組織に投与する実験としては、気管滴下(Rosenfeld et al.,1991;Rosenfeld et al.,1992)、筋肉注射(Ragot et al.,1993)、末梢静脈注射(Herz & Gerard,1993)、および脳内への定位性接種(Le Gal La Salle et al.,1993)が挙げられる。臨床試験におけるAdベクターの使用例には、筋肉内注射を用いた抗腫瘍免疫を目的としたポリヌクレオチド療法が含まれる(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083-9(1998))。
【0350】
様々な実施形態では、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素および/または本明細書において予期される他のポリペプチドをコードする一つ以上のポリヌクレオチドが、当該一つ以上のポリヌクレオチドを含有する例えばHSV-1、HSV-2といった単純ヘルペスウイルスとともに細胞に形質導入されることで、免疫エフェクター細胞に導入される。
【0351】
成熟HSVビリオンは、152kbの直線型二本鎖DNA分子からなるウイルスゲノムを含む、エンベロープ型正20面体カプシドからなる。一つの実施形態では、HSVをベースとしたウイルスベクターは、一つ以上の必須または非必須のHSV遺伝子が欠落している。一つの実施形態では、HSVをベースとしたウイルスベクターは、複製能力を欠く。殆どの複製能力を欠くHSVベクターは、一つ以上の中間-初期、初期、または後期のHSV遺伝子を除去するための欠失を含有し、複製が阻害されている。例えばHSVベクターは、以下からなる群から選択される前初期遺伝子が欠落していてもよい:ICP4、ICP22、ICP27、ICP47、およびそれらの組み合わせ。HSVベクターの利点は、後期ステージに入り、長期的にDNA発現を生じさせることができる能力と、最大25kbもの外因性DNAインサートを収容できる、その巨大なウイルスDNAゲノムである。HSV系のベクターは、例えば米国特許第5,837,532号、第5,846,782号および第5,804,413号、ならびに国際特許出願WO91/02788、WO96/04394、WO98/15637およびWO99/06583に記載されており、それらはその全体で参照により本明細書に援用される。
【0352】
G.遺伝子改変細胞
様々な実施形態では、細胞は、癌治療における使用を目的として、本明細書において企図されるCD33 VHH DARIC、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素、抗CD33 VHH CAR、および/または融合タンパク質を発現するよう改変される。細胞は、本明細書において予期されるポリペプチドのうちの一つ以上を発現するよう非遺伝的に改変されてもよく、または特定の好ましい実施形態では、細胞は、本明細書において予期されるポリペプチドの一つ以上を発現するよう遺伝的に改変されてもよい。本明細書において使用される場合、「遺伝子操作された」または「遺伝的に改変された」という用語は、DNAまたはRNAの形態の追加的な遺伝物質を、細胞中の総遺伝物質に加えることを指す。「遺伝的に改変された細胞」、「改変細胞」、および「再指向化細胞」という用語は、特定の実施形態において相互交換可能に使用される。
【0353】
特定の実施形態では、本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARは、免疫エフェクター細胞に導入および発現され、免疫エフェクター細胞の有効性を改善する。
【0354】
「免疫エフェクター細胞」は、一つ以上のエフェクター機能(例えば細胞傷害性の細胞殺傷活性、サイトカイン分泌、ADCCおよび/またはCDCの誘導など)を有する免疫系の任意の細胞である。本明細書において予期される免疫エフェクター細胞の例示は、Tリンパ球であり、限定されないが細胞傷害性T細胞(CTL;CD8+T細胞)、TIL、およびヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)が挙げられる。特定の実施形態では、細胞は、αβT細胞を含む。特定の実施形態では、細胞は、γδT細胞を含む。一つの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞を含む。一つの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞を含む。免疫エフェクター細胞は、自己(self)または非自己(non-self、例えば同種、同系または異種)であってもよい。
【0355】
本明細書において使用される場合、「自己」とは、同じ対象に由来する細胞を指す。本明細書において使用される場合、「同種」とは、比較した細胞と遺伝的に異なる同じ種の細胞を指す。本明細書において使用される場合、「同系」とは、比較した細胞と遺伝的に同一である、異なる対象の細胞を指す。本明細書において使用される場合、「異種」とは、比較した細胞と異なる種の細胞を指す。好ましい実施形態では、細胞は、ヒトの自己免疫エフェクター細胞である。
【0356】
本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARの導入に適した免疫エフェクター細胞の例としては、Tリンパ球が挙げられる。「T細胞」または「Tリンパ球」という用語は、当分野において認識されており、胸腺細胞、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、静止Tリンパ球、または活性化Tリンパ球を含むことが意図される。T細胞は、例えばTヘルパー1(Th1)細胞またはTヘルパー2(Th2)細胞などのTヘルパー(Th)細胞であってもよい。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL;CD4+T細胞)、細胞傷害性T細胞(CTL:CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、CD4-CD8-T細胞、またはT細胞の任意の他のサブセットであってもよい。特定の実施形態において、T細胞は、T細胞受容体を発現する。T細胞受容体は、二つのサブユニット、つまりアルファ鎖とベータ鎖のサブユニット(αβTCR)、またはガンマ鎖とデルタ鎖のサブユニット(γδTCR)を含有し、それら各々が、各T細胞ゲノムの組み換え事象により生成される固有タンパク質である。特定の実施形態では、T細胞は、αβTCR T細胞(αβ T細胞)である。特定の実施形態では、T細胞は、γδTCR T細胞(γδ T細胞)である。特定の実施形態における使用に適したT細胞群の他の例としては、ナイーブT細胞およびメモリーT細胞が挙げられる。
【0357】
当業者に理解されるように、他の細胞も、本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARを含む免疫エフェクター細胞として使用され得る。特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、NK細胞、NKT細胞、好中球およびマクロファージも含む。免疫エフェクター細胞は、エフェクター細胞の前駆体も含み、この場合においてそうした前駆細胞は、インビボまたはインビトロで免疫エフェクター細胞に分化するように誘導されてもよい。したがって特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、例えば臍帯血、骨髄または動員末梢血に由来する細胞のCD34+集団内に含有される造血幹細胞(HSC)などの免疫エフェクター細胞の前駆体を含み、それらは対象に投与されたときに成熟免疫エフェクター細胞へと分化し、またはインビトロで誘導されて成熟免疫エフェクター細胞へと分化してもよい。
【0358】
本明細書において使用される場合、「CD34+細胞」という用語は、その細胞表面上にCD34タンパク質を発現する細胞を指す。本明細書において使用される場合、「CD34」とは、細胞-細胞接着因子として作用することが多く、リンパ節へのT細胞の侵入に関与する細胞表面糖タンパク質(例えばシアロムチンタンパク質)を指す。CD34+細胞集団は、造血幹細胞(HSC)を含有し、HSCは患者に投与されたときに分化し、T細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、および単球/マクロファージ系統の細胞を含むすべての造血系の元となる。
【0359】
本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARを発現する免疫エフェクター細胞を作成する方法は、特定の実施形態に提示される。一つの実施形態では、方法は個体から単離された免疫エフェクター細胞をトランスフェクトまたは形質導入することを含み、一つ以上の核酸および/またはベクター、例えばレンチウイルスベクターを有する免疫エフェクター細胞は、本明細書に企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARをコードする核酸を含む。一つの実施形態では、方法は、個体から単離された免疫エフェクター細胞をトランスフェクトまたは形質導入することを含み、免疫エフェクター細胞は、本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARを発現する。ある実施形態では、免疫エフェクター細胞は、インビトロでのさらなる操作を伴わずに個体から単離され、および遺伝子改変される。次いでそうした細胞を当該個体に直接再投与してもよい。さらなる実施形態では、免疫エフェクター細胞は最初にインビトロで活性化され、そして刺激されて増殖し、その後、遺伝子改変される。これに関し、免疫エフェクター細胞は、遺伝子改変される前、および/または遺伝子改変された後に培養され得る。
【0360】
特定の実施形態では、本明細書に記載される免疫エフェクター細胞のインビトロ操作または遺伝子改変の前に、対象から細胞源が取得される。特定の実施形態では、改変免疫エフェクター細胞は、T細胞を含有する。
【0361】
T細胞は、限定されないが、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍を含む多くの源から取得されることができる。ある実施形態では、T細胞は、例えばFICOLL(商標)分離などの沈殿作用といった当業者に公知の技術を任意の回数使用して対象から採取された血液ユニットから取得されることができる。
【0362】
他の実施形態では、単離された、または精製されたT細胞群が使用される。一部の実施形態では、PBMCの単離後、細胞傷害性Tリンパ球とヘルパーTリンパ球の両方を、活性化、拡張および/もしくは遺伝子改変の前または後に、ナイーブT細胞亜群、メモリーT細胞亜群およびエフェクターT細胞亜群へとソーティングしてもよい。
【0363】
一実施形態において、単離または精製されたT細胞集団は、CD3+、CD4+、CD8+、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない、マーカーのうちの一つ以上を発現する。
【0364】
ある実施形態では、T細胞は個体から単離され、インビトロで最初に活性化および刺激されて増殖した後に改変されて、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARを発現する。
【0365】
T細胞組成物の充分な治療投与量を獲得するために、しばしばT細胞に、一ラウンド以上の刺激、活性化および/または拡張が行われる。特定の実施形態では、T細胞は一般的に、例えば米国特許第6,352,694号、第6,534,055号、第6,905,680号、第6,692,964号、第5,858,358号、第6,887,466号、第6,905,681号、第7,144,575号、第7,067,318号、第7,172,869号、第7,232,566号、第7,175,843号、第5,883,223号、第6,905,874号、第6,797,514号、および第6,867,041号に記載される方法を使用して活性化および拡張され得る。それら特許はその全体で参照により本明細書に援用される。特定の実施形態では、T細胞は、約6時間、約12時間、約18時間、または約24時間、活性化および拡張され、その後、本明細書に企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARをコードするベクターまたはポリヌクレオチドを導入する。
【0366】
H.組成物および製剤
本明細書で企図される組成物は、一つ以上のCD33 VH DARIC構成要素、または抗CD33 VHH CAR、一つ以上のCD33 VH DARIC構成または抗CD33 VHH CARをコードするポリヌクレオチド、上記を含むベクター、遺伝子改変免疫エフェクター細胞、架橋因子などを含み得る。組成物としては限定されないが、医薬組成物が挙げられる。「医薬組成物」とは、細胞または動物への投与に対し、薬学的に許容可能な溶液または生理学的に許容可能な溶液中で、単独で、または一つ以上の他の治療モダリティと併用されて製剤化される組成物を指す。所望の場合には、組成物は、例えばサイトカイン、増殖因子、ホルモン、低分子、化学療法剤、プロドラッグ、薬剤、抗体、または他の様々な薬学的に活性な剤などの他の剤も同様に併用されて投与され得ることも理解されたい。事実上、組成物に含有され得る他の構成要素に制限はないが、追加される剤は、意図される療法を送達する組成物の能力に有害な影響を与えないものとする。
【0367】
本明細書において、「薬学的に許容可能」という文言は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/リスク比に見合った、それら化合物、物質、組成物および/または剤型を指すために採用される。
【0368】
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、架橋因子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、それらを含むベクター、または遺伝子改変された免疫エフェクター細胞と一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルを指す。薬学的な担体の例示は、例えば細胞培養培地、水および油などの滅菌された液体であってもよく、石油、動物、植物または合成を起源とするものが挙げられ、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ごま油などがある。生理食塩水およびブドウ糖液およびグリセロール溶液も、特に注射用溶液に関して液性担体として採用され得る。特定の実施形態における適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、白墨、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。任意の従来的な媒または剤が、活性成分と不適合である場合を除き、治療組成物中でのその使用が予期される。補足的な活性成分も、組成物内に組み込まれ得る。
【0369】
一つの実施形態では、薬学的に許容可能な担体を含む組成物が、対象への投与に適している。特定の実施形態では、担体を含む組成物は、例えば血管内(静脈内または動脈内)投与、腹腔内投与または筋肉内投与などの非経口投与に適している。特定の実施形態では、薬学的に許容可能な担体を含む組成物は、脳室内投与、髄腔内投与またはくも膜腔内投与に適している。薬学的に許容可能な担体としては、滅菌水溶液、細胞培養培地または分散液が挙げられる。薬学的に活性な物質に対する、そのような媒および剤の使用は、当分野に公知である。任意の従来的な媒または剤が、架橋因子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、それらを含むベクター、または遺伝子改変された免疫エフェクター細胞と不適合である場合を除き、医薬組成物におけるそれらの使用が予期される。
【0370】
特定の実施形態において、本明細書で企図される組成物は、遺伝子修飾されたT細胞および薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書において予期される細胞をベースとした組成物を含有する組成物は、腸内投与または非経口投与により別個に投与されてもよく、または所望の治療目的を果たすための他の適切な化合物と併用して投与されてもよい。
【0371】
特定の実施形態では、本明細書において予期される組成物は、架橋因子と、薬学的に許容可能な担体を含む。
【0372】
薬学的に許容可能な担体は、充分に高い純度のものでなくてはならず、そして治療されるヒト対象への投与に適するよう、充分に毒性が低いものでなければならない。さらに組成物の安定性を維持または増加させなければならない。薬学的に許容可能な担体は、液体または固体であってもよく、予定される投与様式を踏まえ、組成物の他の構成要素と混合されたときに、望ましい体積、濃度を提供するよう選択される。例えば薬学的に許容可能な担体は、限定されないが、結合剤(例えば前ゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えばラクトースおよび他の糖類、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレート、リン酸水素カルシウムなど)、潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、滑石、シリカ、コロイド状二酸化シリコン、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、水素化植物油、トウモロコシデンプン、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、崩壊剤(例えば、デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプンなど)、または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)であってもよい。本明細書において予期される組成物に適切な他の薬学的に許容可能な担体としては限定されないが、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、滑石、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0373】
そうした担体溶液は、緩衝剤、希釈剤および他の適切な添加剤を含んでもよい。本明細書において使用される場合、「緩衝剤」という用語は、その化学組成が、pHに大きな変化を与えることなく酸または塩基を中和する溶液または液体を指す。本明細書において予期される緩衝剤の例としては限定されないが、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、リンゲル溶液、5%ブドウ糖溶液(D5W)、正常/生理学的生理食塩水(0.9% NaCl)が挙げられる。
【0374】
薬学的に許容可能な担体は、組成物のpHを約7に維持するために充分な量で存在してもよい。あるいは組成物は、約6.8~約7.4の範囲のpH、例えば6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3および7.4のpHを有する。さらに別の実施形態では、組成物は約7.4のpHを有する。
【0375】
本明細書において予期される組成物は、非毒性の薬学的に許容可能な培地を含有してもよい。組成物は、懸濁液であってもよい。本明細書において使用される場合、「懸濁液」という用語は、細胞が固形支持体に結合しない非接着性の状態を指す。例えば懸濁液として維持される細胞は、攪拌またはかき混ぜられてもよく、例えば培養皿などの支持体に接着しない。
【0376】
特定の実施形態において、本明細書で企図される組成物は、懸濁液中で製剤化され、ここで、修飾されたT細胞が静脈注射用(IV)袋などの中で、許容される液体培地または溶液、例えば、生理食塩水または血清不含培地中に分散される。受容可能な希釈剤としては限定されないが、水、PlasmaLyte、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム溶液(生理食塩水)、無血清細胞培養培地、および極低温保存に適した培地、例えばCryostor(登録商標)培地が挙げられる。
【0377】
ある実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、ヒトまたは動物を起源とする天然タンパク質を実質的に含まず、改変T細胞群を含む組成物の保存に適している。治療用組成物は、ヒト患者への投与が意図されており、そのため例えばウシ血清アルブミン、ウマ血清およびウシ胎児血清などの細胞培養成分を実質的に含まない。
【0378】
一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容可能な細胞培養培地中で製剤化される。そうした組成物は、ヒト対象への投与に適している。特定の実施形態では、薬学的に許容可能な細胞培養培地は、無血清培地である。
【0379】
無血清培地は、血清含有培地を超える利点をいくつか有しており、シンプルでより明白な組成、汚染物質量の低下、感染性実体の源となる可能性の排除、およびコスト低下が挙げられる。様々な実施形態では、無血清培地は、動物質を含まず、任意で無タンパク質であってもよい。任意で培地はバイオ医薬品的に受容可能な組み換えタンパク質を含有してもよい。「動物質を含まない」培地とは、構成要素が非動物源に由来する培地を指す。組み換えタンパク質は、動物質を含まない培地中で天然動物性タンパク質を置き換え、その栄養素は合成、植物または微生物の源から取得される。「タンパク質を含まない」培地は、対照的に、実質的にタンパク質を含まないと規定される。
【0380】
特定の組成物において使用される無血清培地の例示としては限定されないが、QBSF-60(Quality Biological,Inc.)、StemPro-34(Life Technologies社)、およびX-VIVO 10が挙げられる。
【0381】
一つの実施形態では、改変T細胞を含む組成物は、PlasmaLyte中で製剤化される。
【0382】
様々な実施形態では、改変T細胞を含む組成物は、凍結保存培地中で製剤化される。例えば凍結保存剤を含む凍結保存培地を使用して、融解後の高い細胞活性成績を維持してもよい。特定の組成物において使用される凍結保存培地の例示としては限定されないが、CryoStor CS10、CryoStor CS5、およびCryoStor CS2が挙げられる。
【0383】
一つの実施形態では、組成物は、50:50のPlasmaLyte AとCryoStor CS10を含む溶液中で製剤化される。
【0384】
特定の実施形態では、組成物は、マイコプラズマ、エンドトキシンおよび微生物汚染を実質的に含まない。エンドトキシンに関して「実質的に含まない」とは、生物製剤に関してFDAにより許可されるよりも低い細胞投与量当たりのエンドトキシンであることを意味し、1日当たり、5EU/体重kgの総エンドトキシンであり、平均70kgのヒトに対し、細胞総投与量当たり350EUである。特定の実施形態では、本明細書において予期される組成物は、約0.5EU/ml~約5.0EU/ml、または約0.5EU/ml、1.0EU/ml、1.5EU/ml、2.0EU/ml、2.5EU/ml、3.0EU/ml、3.5EU/ml、4.0EU/ml、4.5EU/ml、もしくは5.0EU/mlを含有する。
【0385】
特定の実施形態では、薬学的に許容可能な担体溶液の製剤は、当分野に公知であり、例えば腸内および非経口、例えば血管内、静脈内、動脈内、骨内、脳室内、大脳内、頭蓋内、髄腔内、クモ膜下腔内、および髄内の投与ならびに製剤を含む様々な治療レジメンにおける、本明細書に記載の特定の組成物の使用に関する適切な投薬レジメンおよび治療レジメンの開発も同様である。当業者であれば、本明細書において予期される特定の実施形態は、例えば薬学分野で公知であり、そして例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,volume I and volume II. 22nd Edition.Edited by Loyd V.Allen Jr.Philadelphia,PA:Pharmaceutical Press;2012に記載される製剤などの他の製剤を含んでもよいことを理解するであろう。当該文献はその全体で参照により本明細書に援用される。
【0386】
特定の実施形態において、組成物は、本明細書で企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARをコードするポリヌクレオチドを含む免疫エフェクター細胞の量を含む。特定の実施形態では、組成物は、本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARを発現する免疫エフェクター細胞の量を含む。本明細書において使用される場合、「量」という用語は、架橋因子の存在下で、臨床結果を含む有益な、もしくは所望の予防的結果または治療的結果を実現する、本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARを含む細胞の「有効な量」または「有効量」を指す。
【0387】
「予防有効量」とは、架橋因子の存在下で、所望の予防的結果を達成するのに有効な、本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARを含む細胞の量を指す。必ずではないが典型的には、予防的投与量は、疾患の早期ステージの前、または早期ステージの対象において使用されるため、予防的有効量は、治療的有効量よりも少ない。
【0388】
「治療有効量」とは、架橋因子の存在下で対象(例えば患者)を「治療する」のに有効な、本明細書においてキロされる一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARを含む細胞の量を指す。治療的な量が示されている場合、投与される組成物、細胞、架橋因子などの正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度、および状態における個々の差を考慮し、医師により決定され得る。
【0389】
一般的に、本明細書に記載される免疫エフェクター細胞を含む医薬組成物は、102~1010細胞/体重kg、好ましくは105~106細胞/体重kgの用量で、当該範囲内のすべての整数値を含み、投与され得ると言える。細胞数は、組成物の意図される最終用途、組成物中に含有される細胞のタイプに依存する。本明細書において提示される用途に関し、細胞は一般的に、リットル以下の量であり、500ml以下、さらには250mlまたは100ml以下であり得る。ゆえに所望される細胞の密度は、多くの場合、106細胞/ml超であり、一般的には、107細胞/ml超、一般的には108細胞/ml以上である。臨床的に関連する免疫細胞数は、複数回の点滴に分けられてもよく、累積的には105、106、107、108、109、1010、1011または1012細胞以上となる。一部の実施形態では、具体的には注入される全細胞は特定の標的抗原へと再指向化されるため、106/キログラム(患者当たり106-1011)の範囲の少ない数の細胞が投与される場合がある。
【0390】
望ましい場合、治療は、本明細書に記載されるようにマイトージェン(例えばPHA)またはリンホカイン、サイトカインおよび/もしくはケモカイン(例えば、IFN-γ、IL-2、IL-12、TNF-アルファ、IL-18、およびTNF-ベータ、GM-CSF、IL-4、IL-13、Flt3-L、RANTES、MIP1αなど)の投与も含み、免疫反応の誘導を強化してもよい。
【0391】
一般的に、本明細書に記載されるように活性化および拡張された細胞を含む組成物は、免疫不全状態の個体で生じる疾患の治療および予防に活用されてもよい。特に本明細書において予期される組成物は、癌の治療に使用される。特定の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、単独で投与されてもよく、または担体、希釈剤、賦形剤を併用した医薬組成物として、および/または例えばIL-2もしくは他のサイトカインもしくは他の細胞群などの他の構成要素を併用した医薬組成物として投与されてもよい。
【0392】
特定の実施形態では、医薬組成物は、遺伝子改変されたT細胞の量を、一つ以上の薬学的もしくは生理学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と併用して含有する。
【0393】
特定の実施形態では、医薬組成物は、架橋因子の量を、一つ以上の薬学的もしくは生理学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤と併用して含有する。
【0394】
特定の実施形態では、組成物は、本明細書において予期される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARを含む免疫エフェクター細胞の有効量を、単独で、または架橋因子、および/または一つ以上の治療剤、例えば放射線療法、化学療法、移植、免疫療法、ホルモン療法、光線力学的療法などと併用して含有する。組成物は、抗生物質と併用して投与されてもよい。そうした治療剤は、例えば特定の癌などの本明細書に記載の特定の疾患状態に対する標準治療として当分野において承認されている場合がある。予期される治療剤の例としては、サイトカイン、成長因子、ステロイド、NSAIDs、DMARDs、抗炎症剤、化学療法剤、放射線療法、治療用抗体、または他の活性で補助的な剤が挙げられる。
【0395】
特定の実施形態では、本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARをコードするポリヌクレオチド含む免疫エフェクター細胞の有効量を含む組成物が対象に投与され、および細胞組成物の前に、細胞組成物の間に、細胞組成物と併用されて、または細胞組成物に続いて、架橋因子の有効量を含む組成物が対象に投与され、任意で対象に反復投与される。
【0396】
ある実施形態では、本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARをコードするポリヌクレオチドを含む免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の数の抗炎症剤、化学療法剤または治療用抗生物質等と併せて投与されてもよい。
【0397】
I.治療方法
本明細書において企図される一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARをコードするポリヌクレオチドを発現するよう改変された免疫エフェクター細胞は、免疫不全、例えば、癌、に関連する少なくとも一つの症状の予防、治療および改善に使用するための養子免疫療法の改善された方法、または予防、治療もしくは改善する方法を提供する。
【0398】
CD33 DARICシグナル伝達構成要素、CD33 VHH DARIC結合構成要素、または抗CD33 VHH CARを含む免疫エフェクター細胞は、免疫不全、例えば、癌、に関連する少なくとも一つの症状の予防、治療および改善に使用するための養子免疫療法の改善された方法、または予防、治療もしくは改善する方法を提供する。
【0399】
特定の実施形態では、CD33 VHH DARICを発現するよう改変された免疫エフェクター細胞は、標的抗原を発現する例えば腫瘍細胞などの標的細胞に対する細胞傷害性反応の安全性および有効性を安定させながら、オンターゲット抗原、オフターゲット細胞障害活性のリスク(正常な非標的細胞上の標的抗原を認識する)を減少させるための養子免疫療法の改善を提供する。
【0400】
特定の実施形態では、癌の少なくとも一つの症状を予防、治療または改善する方法は、対象に、治療有効量のCD33 VHH DARICまたは抗CD33 VHH CARの一つ以上の構成要素を含む改変された免疫エフェクター細胞またはT細胞を投与して、細胞を標的細胞に再指向することを含む。遺伝子改変された細胞は、化学的に制御可能な免疫刺激性シグナルを伝達するという点で、有効性および安全性の高い細胞免疫療法である。
【0401】
特定の実施形態では、例えばT細胞などの一つ以上の免疫エフェクター細胞は、CD33 VHH DARIC結合構成要素とCD33 DARICシグナル伝達構成要素の両方を発現するように改変される。この場合、改変された細胞は、その必要のある対象に投与され、免疫エフェクター細胞上に発現されたCD33 VHH結合構成要素と、標的細胞上に発現されたCD33の相互作用を介して、標的細胞に誘導される。架橋因子は、改変細胞の前に、改変細胞とほぼ同じときに、または改変細胞が対象に投与された後に、対象に投与される。架橋因子の存在下では、CD33 VHH DARIC結合構成要素、架橋因子、およびCD33 DARICシグナル伝達構成要素の間に三重複合体が形成される。三重複合体が形成されると、CD33 VHH DARICは、免疫刺激性シグナルを免疫エフェクター細胞に伝達し、次いで、当該免疫エフェクター細胞から標的細胞に対して細胞傷害性反応が惹起される。
【0402】
特定の実施形態において、一つ以上の免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞は、CD33 DARICシグナル伝達構成要素を発現するように修飾される。この場合、改変された細胞は、それを必要とする対象に投与される。CD33 VHH DARIC結合構成要素は、修飾された細胞が対象に投与される前に、修飾された細胞が対象に投与されるのとほぼ同時に、または修飾された細胞が対象に投与された後に対象に投与され得る。加えて、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、架橋因子との予め形成された複合体において、架橋因子と同時だが別個の組成物において、または架橋因子とは異なる時間に対象に投与することができる。CD33 VHH結合構成要素は、架橋因子の存在下または不在下のいずれかで、標的細胞上に発現されるCD33に結合する。架橋因子の存在下では、CD33 VHH DARIC結合構成要素、架橋因子、およびCD33 DARICシグナル伝達構成要素の間に三重複合体が形成される。三重複合体が形成されると、CD33 VHH DARICは、免疫刺激性シグナルを免疫エフェクター細胞に伝達し、次いで、当該免疫エフェクター細胞から標的細胞に対して細胞傷害性反応が惹起される。
【0403】
特定の実施形態において、一つ以上の免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞は、CD33 DARICシグナル伝達構成要素を発現するように修飾される。この場合、改変された細胞は、それを必要とする対象に投与される。CD33 VHH DARIC結合構成要素は、修飾された細胞が対象に投与される前に、修飾された細胞が対象に投与されるのとほぼ同時に、または修飾された細胞が対象に投与された後に対象に投与され得る。加えて、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、架橋因子との予め形成された複合体において、架橋因子と同時だが別個の組成物において、または架橋因子とは異なる時間に対象に投与することができる。CD33結合構成要素は、架橋因子の存在下または不在下のいずれかで、標的細胞上に発現される標的抗原に結合する。架橋因子の存在下では、CD33 VHH DARIC結合構成要素、架橋因子、およびCD33 DARICシグナル伝達構成要素の間に三重複合体が形成される。三重複合体が形成されると、CD33 VHH DARICは、免疫刺激性シグナルを免疫エフェクター細胞に伝達し、次いで、当該免疫エフェクター細胞から標的細胞に対して細胞傷害性反応が惹起される。特定の実施形態では、CD33 VHH DARIC活性化は、寛解または退縮が不完全であり、状態が再発または治療に対し難治性となる場合に誘導され得る。
【0404】
特定の好ましい実施形態では、一次T細胞の特異性は、一つ以上のCD33 VHH 構成要素を用いて、T細胞、例えば一次T細胞を遺伝子改変することにより、CD33を発現する腫瘍または癌細胞に対して再指向される。
【0405】
特定の好ましい実施形態では、一次T細胞の特異性は、T細胞、例えば、一次T細胞を、標的抗原および一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素に再指向するように操作された抗原受容体で遺伝子改変することによって、CD33を発現する腫瘍または癌細胞に再指向される。
【0406】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、固形腫瘍または癌の治療に使用される。
【0407】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、限定されないが、副腎癌、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、非定型奇形腫様腫瘍/非定型横紋筋様腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳/CNS癌、乳癌、気管支腫瘍、心臓腫瘍、子宮頸癌、胆管癌、軟骨肉腫、脊索腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、非浸潤性乳管癌(DCIS)、子宮内膜癌、上位腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、卵管癌、線維性組織肉腫、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、神経膠腫、グリア芽腫、頭頚部癌、血管芽細胞腫、肝細胞癌、下咽頭癌、眼内黒色腫、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、舌癌、脂肪肉腫、肝癌、肺癌、非小細胞肺癌、胚カルチノイド腫瘍、悪性中皮腫、髄様癌、髄芽腫、髄膜腫、黒色腫、メルケル細胞癌、正中線癌、口腔癌(mouth cancer)、粘液肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性新生物、鼻腔および副鼻腔の癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、乏突起神経膠腫、口腔癌(oral cancer、oral cavity cancer)、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵島細胞腫瘍、乳頭癌、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性胸膜腫、前立腺癌、直腸癌、網膜芽腫、腎細胞癌、腎盂および尿管の癌、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮脂腺癌、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、小腸癌、胃癌、汗腺癌、滑液腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、血管癌、外陰癌、およびウィルムス腫瘍を含む固形腫瘍または癌の治療に使用される
【0408】
特定の実施形態において、本明細書で企図される修飾された免疫エフェクター細胞は、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、結腸直腸癌、膵癌、乳癌、甲状腺癌、膀胱癌、子宮頸癌、食道癌、卵巣癌、胃癌 子宮内膜癌、神経膠腫、神経膠芽腫、および乏突起神経膠腫を含むが、これらに限定されない、固形腫瘍または癌の治療において使用される。
【0409】
特定の実施形態において、本明細書で企図される修飾された免疫エフェクター細胞は、非小細胞肺癌、転移性結腸直腸癌、神経膠芽腫、頭頸部癌、膵癌、および乳癌を含むが、これらに限定されない、固形腫瘍または癌の治療において使用される。
【0410】
特定の実施形態において、本明細書で企図される修飾された免疫エフェクター細胞は、神経膠芽腫の治療において使用される。。
【0411】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、液状の癌または血液の癌の治療に使用される。
【0412】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、限定されないが、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫を含むB細胞悪性腫瘍の治療に使用される。
【0413】
特定の実施形態では、本明細書において予期される改変免疫エフェクター細胞は、限定されないが、白血病、リンパ腫および多発性骨髄腫:急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、有毛細胞白血病(HCL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、および真性多血症、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、菌状息肉症、未分化大細胞リンパ腫、セザリー症候群、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、多発性骨髄腫、顕性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、形質細胞白血病、非分泌性骨髄腫、IgD骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、孤立性骨形質細胞腫、および髄外形質細胞腫を含む液状の癌の治療に使用される。
【0414】
特定の実施形態において、本明細書で企図される修飾された免疫エフェクター細胞は、急性骨髄性白血病(AML)の治療に使用される。
【0415】
本明細書において予期される方法における使用に好ましい細胞としては、自己(self)細胞、好ましくは造血細胞、より好ましくはT細胞、そしてより好ましくは免疫エフェクター細胞が挙げられる。
【0416】
特定の実施形態では、方法は、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素を発現する改変された免疫エフェクター細胞の治療有効量を、その必要のある患者に投与すること、および架橋因子を対象に投与することも含む。ある特定の実施形態において、細胞は、免疫障害を発症するリスクがある患者の治療に使用される。したがって、特定の実施形態は、治療有効量の本明細書で企図される修飾された免疫エフェクター細胞および架橋因子を、治療または予防または緩和を必要とする対象に投与することを含む、免疫障害、例えば癌の少なくとも一つの症状の治療または予防または緩和を含む。
【0417】
特定の実施形態では、方法は、抗CD33 VHH CARを発現する治療有効量の改変された免疫エフェクター細胞を、それを必要とする患者に投与することを含む。ある特定の実施形態において、細胞は、免疫障害を発症するリスクがある患者の治療に使用される。したがって、特定の実施形態は、治療有効量の本明細書で企図される修飾された免疫エフェクター細胞および架橋因子を、治療または予防または緩和を必要とする対象に投与することを含む、免疫障害、例えば癌の少なくとも一つの症状の治療または予防または緩和を含む。
【0418】
特定の実施形態では、方法は、CD33 DARICシグナル伝達構成要素を発現する改変された免疫エフェクター細胞、またはそれらを含む組成物の治療有効量を、その必要のある患者に投与することを含み、CD33 VHH DARIC結合構成要素および架橋因子も投与することを含み、CD33 VHH DARIC結合構成要素は、対象への投与の前に架橋因子に結合される。ある特定の実施形態において、細胞は、免疫障害を発症するリスクがある患者の治療に使用される。したがって、特定の実施形態は、免疫障害、例えば癌の少なくとも一つの症状の治療または予防または緩和を含み、CD33 DARICシグナル伝達構成要素、および任意に操作された抗原受容体または別のDARIC結合構成要素、CD33 VHH DARIC結合構成要素、および架橋因子を発現する治療有効量の改変された免疫エフェクター細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0419】
改変された免疫エフェクター細胞、CD33 DARIC VHH結合構成要素、および/または架橋因子の投与の量ならびに頻度は、患者の状態、患者の疾患のタイプおよび重大度といった因子により決定されるが、適切な用量および投与スケジュールは、臨床試験により決定されてもよい。
【0420】
一つの例示的な実施形態では、対象に提供される改変免疫エフェクター細胞の有効量は、少なくとも2x106細胞/kg、少なくとも3x106細胞/kg、少なくとも4x106細胞/kg、少なくとも5x106細胞/kg、少なくとも6x106細胞/kg、少なくとも7x106細胞/kg、少なくとも8x106細胞/kg、少なくとも9x106細胞/kg、または少なくとも10x106細胞/kg、またはそれ以上であり、すべてのその間の細胞投与量を含む。
【0421】
別の例示的な実施形態では、対象に提供される改変免疫エフェクター細胞の有効量は、約2x106細胞/kg、約3x106細胞/kg、約4x106細胞/kg、約5x106細胞/kg、約6x106細胞/kg、約7x106細胞/kg、約8x106細胞/kg、約9x106細胞/kg、または約10x106細胞/kg、またはそれ以上であり、すべてのその間の細胞投与量を含む。
【0422】
別の例示的な実施形態では、対象に提供される改変免疫エフェクター細胞の有効量は、約2x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、約3x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、約4x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、約5x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、2x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、2x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、2x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、3x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、3x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、3x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、4x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、4x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、4x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、5x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、5x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、5x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、または6x106細胞/kg~約8x106細胞/kgであり、すべてのその間の細胞投与量を含む。
【0423】
当業者であれば、所望の治療効果を発揮させるために、特定の実施形態において予期される組成物の複数回の投与が必要とされる場合があることを認識するであろう。例えば組成物は、1週、2週、3週、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、1年、2年、5年、10年またはそれ以上の期間にわたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回以上投与される場合がある。改変された免疫エフェクター細胞、CD33 VHH DARIC構成要素、および架橋因子は、同じ組成物もしくは異なる組成物中で、同時に一つ以上の組成物中で、または別の時に複数の組成物中で投与されてもよい。改変された免疫エフェクター細胞、CD33 VHH DARIC構成要素、および架橋因子は、同じ投与経路または異なる投与経路を介して投与されてもよい。
【0424】
ある実施形態では、対象に活性化T細胞が投与され、次いで対象から採血して(またはアフェレーシス療法を実施し)、それに由来するT細胞を活性化し、そしてこれら活性化および拡張されたT細胞を患者に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週ごとに複数回実施されてもよい。ある実施形態では、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化されてもよい。ある実施形態では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、100cc、150cc、200cc、250cc、300cc、350cc、または400cc以上の採血から活性化される。学説には拘束されないが、複数回の採血/複数回の再注入のプロトコールを使用することで、T細胞のある群の選択に役立つ場合がある。
【0425】
一つの実施形態では、癌と診断された対象を治療する方法は、対象から免疫エフェクター細胞を採取すること、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素をコードする一つ以上のベクターを当該細胞に導入することにより免疫エフェクター細胞を改変すること、および改変された免疫エフェクター細胞群を生成すること、ならびに対象に、改変された免疫エフェクター細胞群を投与することを含む。好ましい実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞を含有する。
【0426】
一つの実施形態では、癌と診断された対象を治療する方法は、対象から免疫エフェクター細胞を採取すること、一つ以上の抗CD33 VHH CARをコードする一つ以上のベクターを細胞に導入することにより免疫エフェクター細胞を改変すること、および改変された免疫エフェクター細胞群を生成すること、ならびに対象に、改変された免疫エフェクター細胞群を投与することを含む。好ましい実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞を含有する。
【0427】
特定の実施形態において予期される細胞組成物を投与する方法は、生体外で改変された免疫エフェクター細胞の再導入を生じさせるために有効である任意の方法、または対象への導入時に成熟免疫エフェクター細胞へと分化する免疫エフェクター細胞の改変前駆体の再導入を生じさせるために有効である任意の方法を含む。一つの方法は、一つ以上のCD33 VHH DARIC構成要素または抗CD33 VHH CARをコードする一つ以上のベクターを細胞に導入し、形質導入された細胞を対象に戻すことによって、末梢血T細胞をex vivoに改変することを含む。
【0428】
本明細書において引用される全ての刊行物、特許出願、および登録された特許は、あたかも個々の刊行物、特許出願、または登録された特許が、参照により組み込まれることを具体的かつ個別に示したかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
前述の実施形態は、明確性および理解を目的として、図および実施例により詳細に記載されているが、本明細書に予期される教示に照らし、特定の変化および改変が、添付の請求の範囲の主旨または範囲から逸脱することなく実施され得ることが当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、解説のみを目的として提供されるものであり、限定ではない。当業者であれば、本質的に類似した結果を得るために特定の実施形態において変えられ得る、または改変され得る重要ではない様々なパラメーターが容易に認識されるであろう。
【実施例】
【0429】
実施例1
CD33 VHH DARIC T細胞が抗腫瘍応答を示す
抗CD33 VHH DARIC結合構成要素およびシグナル伝達構成要素を設計、構築し、実証した。CD33 特異的VHH DARICレンチウイルスベクターは、以下をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたMNDU3プロモーターを含んで構築された:DARICシグナル伝達構成要素(CD8α-シグナルペプチド、FRBバリアント(T82L)、CD8α膜貫通ドメイン、細胞内4-1BB共刺激ドメイン、およびCD3ゼータシグナル伝達ドメイン);P2A配列;およびDARIC結合構成要素(Igκ-シグナルペプチド、CD33特異的VHH結合ドメイン(ラクダ様またはヒト化)、G4Sリンカー、FKBP12ドメイン、切断された細胞内ドメインを有するCD4膜貫通ドメイン(
図1B)。例えば、配列番号32~41を参照されたい。抗CD33 DARICレンチウイルスベクターで形質導入されたT細胞は、
図1Aに示す膜結合ポリペプチドを発現する。抗CD33 scFv CARまたはDARIC設計を対照として使用した。
【0430】
3名のドナーからのT細胞をそれぞれ、異なるCD33特異的VHH DARIC、抗CD33scFv DARIC、または抗CD33scFv CARをコードするLVVで形質導入し、10日間増殖させた。非形質導入T細胞、抗CD33scFv対照構築物で形質導入されたT細胞、または抗CD33 VHH DARIC T細胞を、組換えCD33-Fc試薬で染色した。対照CARおよびDARIC T細胞のみが、CD33-Fc染色で陽性に染色された(
図2A、底部パネル、
図2B)。しかしながら、抗CD33 VHH DARIC T細胞の大部分は、VHHドメインに特異的なモノクローナル抗体で分析された場合、陽性に染色されたが、対照CARまたはDARIC T細胞は染色されなかった(
図2A、上側パネル)。対照CARおよびDARIC T細胞ならびに抗CD33 VHH DARIC T細胞の両方は、部分的にCD62LおよびCD45RA染色によって決定された類似のT細胞表現型を有した(
図3Aおよび
図3B)。
【0431】
非形質導入T細胞、抗CD33scFv対照構築物で形質導入されたT細胞、または抗CD33 VHH DARIC T細胞をAP21967の存在下または非存在下で1:1のE:T比で24時間、CD33
+THP-1細胞と共培養した。抗CD33scFv CAR対照細胞は、ラパログの存在下または非存在下の両方で強力なサイトカイン産生を有した。抗CD33scFv DARIC T細胞および抗CD33 VHH DARIC T細胞は、AP21967の存在下でTHP-1細胞で培養した時のみ、強固なサイトカイン応答を示した(
図4Aおよび
図4B)。最小限のサイトカイン産生が、非形質導入対照で検出された。
【0432】
さらに、VHH9およびVHH10 DARICの特異性を、全長CD33(CD33M)ならびにより短く切断されたCD33(CD33m)を発現するスプライスバリアントに対して評価した。ヒト293T細胞を、全長CD33MまたはスプライスバリアントCD33mのいずれかをコードするmRNAで電気穿孔した(
図4C)。DARIC T細胞を、改変293T細胞と、AP21967の存在下または非存在下で1:1のE:T比を24時間共培養し、サイトカイン分泌によって測定される活性化について評価した(
図4C)。VHH9 DARIC T細胞は、CD33MまたはCD33m 293T細胞のいずれかに対して、強いサイトカイン応答を示したが、VHH10 DARIC T細胞は、CD33Mの存在下でのみ活性化された。
【0433】
実施例2
CD33 VHH DARIC T細胞はCD33抗原に特異的に応答する
抗CD33 VHH DARIC T細胞は、実施例1に記載されるように生成された。3名のドナーからのT細胞をそれぞれ、異なる抗CD33特異的VHH DARICをコードするLVVで形質導入し、10日間増殖させた。対照には、非形質導入(UTD)T細胞およびCD33 CARで形質導入されたT細胞が含まれた。AML細胞株MV4-11は、CD33を正常に発現する。MV4-11細胞を操作して、CD33遺伝子をノックアウトした(CD33-KO細胞)。結果として得られたCD33-KO細胞株は、細胞表面上にCD33発現を欠いていた。
図5A。抗CD33 VHH DARIC T細胞を、二量体形成剤の存在下または非存在下で、1:1のE:T比で24時間、MV4-11細胞またはCD33-KO細胞と共培養した。抗CD33 VHH DARIC T細胞は、MV4-11標的細胞の存在下でサイトカインを産生したが、CD33-KO細胞の存在下では産生しなかった。
図5B。
【0434】
CD33-KO細胞株を改変して、CD33mスプライスバリアント(CD33-KO-C2)を発現させた。MV4-11細胞およびCD33-KO-C2細胞を、二量体形成剤の存在または非存在下で、UTD細胞、抗CD33 CAR T細胞、または抗CD33 VHH DARIC T細胞と共培養し、24時間後にサイトカインの産生を分析した。抗CD33 VHH9 DARICは、正常なCD33およびCD33mスプライスバリアントの両方を認識し、MV4-11細胞またはCD33-KO-C2細胞と共培養したときにサイトカインを産生した(
図5C)。抗CD33CAR T細胞または抗CD33VHH2 DARIC対照T細胞は、MV4-11標的細胞に対してのみ活性であった。
【0435】
実施例3
CD33 VHH DARIC T細胞は可溶性CD33タンパク質によって阻害されない
抗CD33 VHH DARIC T細胞は、実施例1に記載されるように生成された。3名のドナーからのT細胞をそれぞれ、異なる抗CD33特異的VHH DARICをコードするLVVで形質導入し、10日間増殖させた。抗CD33 VHH DARIC T細胞を、ラパマイシンの存在下または非存在下で、1:1のE:T比でCD33
+THP-1細胞と24時間共培養した。共培養期間中、様々な量の組換えCD33-Fcタンパク質を添加した。抗CD33 VHH DARIC T細胞は、組換え可溶性CD33タンパク質の存在下および非存在下で、ラパマイシンの存在下で強固なサイトカイン応答を示した。
図6。
【0436】
実施例4
CD33 VHH DARIC T細胞は低いレベルのCD33抗原に応答する
抗CD33 VHH DARIC T細胞は、実施例1に記載されるように生成された。3名のドナーからのT細胞をそれぞれ、異なる抗CD33特異的VHH DARICをコードするLVVで形質導入し、10日間増殖させた。抗CD33 VHH DARIC T細胞をAP21967二量体形成剤、およびCD33をコードする異なる量のmRNAでトランスフェクトしたCD33
neg 293T細胞と共培養した。上清を24時間後に収集し、サイトカイン産生を分析した。抗CD33 VHH DARIC T細胞は、非常に低いmRNA濃度でも、CD33トランスフェクトされた標的細胞との共培養後に、IFNγ産生の用量依存的な増加を示した(
図7)。
【0437】
実施例5
CD33 VHH DARIC T細胞は、インビボでの腫瘍増殖を制御する
抗CD33 VHH DARIC T細胞は、実施例1に記載されるように生成された。CD33発現腫瘍は、ルシフェラーゼレポーターを発現するHL60 AML腫瘍細胞をマウスに接種することによって、免疫不全NSGマウスに定着した。腫瘍増殖を発光によって監視した。10日後、マウスに、10×10
6の抗CD33 VHH DARIC T細胞をビヒクルまたはラパマイシンと併用投与した。対照には、ラパマイシン単独または非形質導入(UTD)T細胞を受けたマウスが含まれた。腫瘍増殖は、処置群と対照群の両方で同等であった。
図8A。抗CD33 VHH DARIC T細胞およびラパマイシンで処置されたマウスは、UTD T細胞およびラパマイシンで処置されたマウスと比較して、腫瘍対照の増加を示した。
図8B。
【0438】
全般に、以下の特許請求の範囲において、使用された用語は、特許請求の範囲を、本明細書および特許請求の範囲に開示されている特定の実施形態に限定させるものと解釈されるべきではないが、かかる特許請求の範囲が権利を与える等価物の完全な範囲と共に全ての可能な実施形態を含むものと解釈されるべきである。したがって、請求の範囲は、本開示により限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】