(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(54)【発明の名称】石油コークスの製造における精製プロセス成分をアップグレードするための精製石炭の利用に関するプロセス
(51)【国際特許分類】
C10B 55/00 20060101AFI20220701BHJP
C10G 9/02 20060101ALI20220701BHJP
C10G 1/02 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C10B55/00
C10G9/02
C10G1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566219
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 US2020032050
(87)【国際公開番号】W WO2020227613
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518261401
【氏名又は名称】エイアールキュー・アイピー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ARQ IP LIMITED
【住所又は居所原語表記】64 NEW CAVENDISH STREET, LONDON W1G 8TB, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】アンスワース,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パスペク,ステファン
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA02
4H129BB03
4H129BC07
4H129BC08
4H129BC12
4H129BC35
4H129CA08
4H129CA21
4H129DA03
4H129FA04
4H129NA02
4H129NA05
4H129NA21
4H129NA45
(57)【要約】
コークスおよび1つ以上の揮発性生成物の生成のためのプロセスは、(i)精製石炭生成物(PCP)を提供する工程であって、PCPが、粒子形態にあり、粒子の少なくとも約90%vが、直径約100μm以下であり、PCPが、約10%m未満の灰分およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、提供する工程と、(ii)PCPを液体残油と組み合わせて、組み合わされた固液配合物を作成する工程であって、固液配合物が、少なくともおおよそ0.1%mかつ最大でおおよそ30%mのPCPを含む、作成する工程と、(iii)固液配合物を、375℃を超える温度に、PCP粒子の少なくとも1%の分解を誘発するのに十分な時間さらして、1つ以上の揮発性生成物を発生させる工程と、(iv)工程(iii)の生成物からコークスを生成する工程と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークスおよび1つ以上の揮発性生成物の生成のためのプロセスであって、
(i)精製石炭生成物(PCP)を提供する工程であって、前記PCPが、粒子形態にあり、前記粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約100μm以下であり、前記PCPが、約10%m未満の灰分およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、提供する工程と、
(ii)組み合わされた固液配合物を作成するために、前記PCPを液体残油と組み合わせる工程であって、前記固液配合物が、少なくともおおよそ0.1%mかつ最大でおおよそ30%mのPCPを含む、組み合わせる工程と、
(iii)前記固液配合物を、375℃を超える温度に、前記PCP粒子の少なくとも1%の分解を誘発するのに十分な時間さらして、1つ以上の前記揮発性生成物を発生させる工程と、
(iv)工程(iii)の前記生成物からコークスを生成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記PCP粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、任意選択的に、直径約50μm以下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記PCPが、約2%m未満、適切には、約1.5%m未満、任意選択的に、1%m以下の灰分を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記PCPが、おおよそ2%m未満の含水量を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記液体残油が、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、デカンテッド油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、原油、合成原油、ならびにバイオ燃料製造からの油、からなる群のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
(iii)の前記固液配合物が、工程(iv)において、遅延、流体、またはフレキシコーカーにおける原料として使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記原料が、遅延コーカーのドラムに導入される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記原料が、少なくとも450℃の温度に加熱される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記原料が、流動床コーカー反応器に導入される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
工程(iii)が、分別工程を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
か焼コークスを生成するために、工程(iv)の前記コークスをか焼する工程をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
遅延コーカーにおいて、請求項1に記載のプロセスを実行することを含む、遅延コーカーを動作させるためのプロセス。
【請求項13】
流体またはフレキシコーカーにおいて、請求項1に記載のプロセスを実行することを含む、流体またはフレキシコーカーを動作させるためのプロセス。
【請求項14】
請求項1に記載のプロセスによって取得可能な、コークス生成物。
【請求項15】
前記コークスが、少なくともおおよそ5%mかつ最大でおおよそ30%mのPCP、任意選択的に、少なくともおおよそ10%mかつ最大でおおよそ20%mのPCPを含む、固液配合物から調製される、請求項14に記載のコークス生成物。
【請求項16】
前記コークスが、残油を含む固液配合物から調製される、請求項14に記載のコークス生成物。
【請求項17】
前記コークスが、燃料グレードのコークス、アノードグレードのコークス、ニードルコークス、流体コークス、およびバッテリーコークスからなる群から選択される、請求項14~16のいずれか一項に記載のコークス生成物。
【請求項18】
請求項11に記載のプロセスによって取得可能な、か焼コークス生成物。
【請求項19】
請求項18に記載のか焼コークス生成物を含む、炭素アノード。
【請求項20】
請求項1に記載のプロセスによって取得可能な、蒸留物炭化水素液体生成物。
【請求項21】
液体油供給流に精製石炭生成物(PCP)を添加することを含む、遅延、流体、またはフレキシコーカープロセス内の液体揮発性留分の生成を増強するためのプロセスであって、前記PCPが、粒子形態にあり、前記粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、前記PCPが、約10%m未満の灰分、およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、プロセス。
【請求項22】
前記PCP粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、任意選択的に、直径約50μm以下である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記PCP粒子の少なくとも約80体積%(%v)が、直径約20μm以下である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記PCPが、約2%m未満、適切には、約1.5%m未満、任意選択的に、1%m未満の灰分を有する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記PCPが、約0.9%m未満の灰分を有する、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記PCPが、おおよそ2%m未満の含水量を有する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項26】
前記液体油が、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、デカンテッド油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、原油、合成原油、ならびにバイオ燃料製造からの油、からなる群のうちの1つ以上を含む、請求項21に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月9日に出願された英国特許出願第1906563.0号、および2019年5月24日に出願された英国特許出願第1907378.2号の優先権を主張し、これらは両方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、固体炭化水素、特に石炭の処理および利用の分野にある。具体的には、本発明は、採鉱および採掘活動に由来する廃石炭微粉の修復および利用、ならびにコークスの生成の分野にある。
【背景技術】
【0003】
石炭微粉、および超微粉を含む極微粉は、採掘および調製プロセス中により大きい石炭の塊から発生した石炭の小さい粒子である。石炭微粉は、石炭と同じエネルギーおよび資源ポテンシャルを保持しながら、それらは、概して、生成物の粒子状の性質により市場投入および輸送が困難になるため、廃棄物とみなされる。米国だけでも、鉱業によって、毎年7000万~9000万トンもの石炭微粉が、廃棄物の副産物として生成されており(Baruva,P.,Losses in the coal supply chain,IEA Clean Coal Centre Rep.CCC/212,p.26,December 2012,ISBN 978-92-9029-532-7)、その大部分は未使用のままである。したがって、石炭微粉は、概して、大きい廃石捨場を形成する炭鉱の近くの廃物として廃棄されるか、環境汚染を回避するために慎重な将来の管理を必要とする大きい池に含有される。
【0004】
その自然な状態では、石炭微粉は、典型的には、顕著なレベルの灰形成成分および高い含水量を含有し、多くの従来の用途には不適であるとされる。従来の考え方では、直径<150μmである微粉の脱水および/または乾燥、ならびに脱灰のコストは、概して、得られる生成物の実際の価値を超えるとされてきた(Muzenda,E.,Potential uses of South African Coal Fines:A Review,3rd International Conference on Mechanical,Electronics and Mechatronics Engineering(ICMEME’2014,March 19-20,2014 Abu Dhabi(UAE),p.37)。得られる配合された燃料油の単位体積当たりのコストを低減させるために、高度に処理された石炭微粉を燃料油に添加することが知られている(例えば、米国特許第9,777,235号を参照)。追加的に、高度に処理された石炭微粉を原油に添加して、蒸留後の分別生成物に寄与することができる(WO2017/174973として公開された国際特許出願を参照)。どちらの場合も、石炭微粉は、液体炭化水素と配合されて、固体微粉のみの場合よりも増強した知覚商業価値を備えた混合物を生成する。
【0005】
コークスは、化石燃料に分類され、再生不可能なエネルギー源である。伝統的に、コークスは、コークス炉における石炭の分解蒸留によって生成されてきた。このプロセスでは、石炭は、石炭中のほとんどの揮発性成分が排出されるまで、無酸素雰囲気内で加熱される(すなわち、コークス化される)。残る材料は、コークスと呼ばれる固体の炭素塊である。石炭の人気が低下するにつれて、最近では、例えば、遅延または流動コークス化プロセスにおける分解蒸留(熱分解)によって、残油からコークスが、ますます得られるようになっている。これらのプロセスによって生成されるコークスは、典型的に、「ペットコークス」と呼ばれる。さらに、石油精製と同様に、遅延コークス化プロセスから得られる揮発性生成物は、常に、残留石油供給出発材料よりも顕著に価値がある。残留油原料をより安価な出発材料と配合して、炭化水素含有鉱物資源の有限の埋蔵量を拡大し、結果として得られる精製された蒸留物生成物を拡張することができる方法が、非常に望ましいであろう。
【0006】
遅延コーカーは、それらが、初期の原油蒸留/接触分解プロセスから得られた重質残渣留分を、蒸留留分と炭素に富む固体材料である石油コークスにアップグレードすることに寄与するという点で、石油精製プロセスの不可欠な部分である。回収された蒸留物は、製油所内で追加のナフサ、灯油、および軽油の流れを作るために利用される。ペットコークスは、燃料として、または硫黄および金属が少ない場合は、アルミニウムおよび酸化チタンの製造における、より価値の高いアノードグレードとして使用される。
【0007】
遅延コーカーの代替は、流動コーカーであり、原料は、高温の流動化されたコークス粒子の表面上で熱分解される。原料は、第1の容器内の流動化された高温の石油コークス粒子の床に噴霧される。揮発性物質が、放出され、コークス粒子から分離され、さらなる処理のために収集される。流動化されたコークス粒子は、熱分解された原料からの追加のコークス原料とともに、第2の容器に送られ、そこで温度を増加するために、部分的に燃焼される。これらの高温のコークス粒子の一部分は、サイクルを継続するために第1の容器に戻され、一方でコークス粒子の残部は、回収され、気体化装置への原料などの他の目的のために使用される。
【0008】
米国特許第4,259,178号は、炭素質コークスのプロセスに関する。炭素質コークスは、50°~65℃の混合温度において、比重が約1.006の状態で、約51%の芳香族、19.3%の飽和物、25.2%の極性化合物、および4.5%のアスファルテンの重量組成を有する約90~70重量%の石油処理残渣を有し、約32.7重量%の揮発性物質、7.2重量%の水分、44.8重量%の固定炭素、および15.3重量%の灰の近似分析を有する、約10~約30重量パーセントの粘結性または非粘結性石炭のスラリー混合物の遅延コークス化によって製造される。生成されたコークスは、非常に特殊な特性を有し、従来の冶金または鋳造コークスよりも柔らかく、より砕けやすく、より多孔質であると記載される。
【0009】
米国特許第4,427,532号は、コークス化石炭を生成するためのプロセスに関する。水素化処理された石油残油は、石炭の存在下でコークス化されて、液体コーカー生成物の収率および品質を改善する。石炭は、75重量パーセントを下回る炭素含有量で適切に低品位であり、亜瀝青炭で最良の結果が得られる。残油からの窒素および硫黄などのヘテロ原子の除去につながるのは石炭の酸素含有量であると提案されており、このため、石炭の酸素含有量は、記載されているプロセスにおける使用に適しているとみなされる、石炭のタイプの中から選択する際に顕著である。
【0010】
米国特許第4,943,367号は、20%を超過しない灰分に選鉱される石炭からの高純度コークスの生成のためのプロセスに関する。アルミニウム製錬用のアノードの生成に特に適した高純度コークスは、フラッシュ熱分解および遅延コークス化を含む統合プロセスによって生成される。統合プロセスでは、石炭、油シェール、またはタールサンドなどの炭素質材料のフラッシュ熱分解は、遅延コーカーにおける後続の使用に適した液体タールの生成を最大化する条件下で、実行される。
【0011】
米国特許第4,259,178号は、50℃を下回って配合された、約10~約30重量パーセントの粘結性または非粘結性石炭と、残りの石油残渣と、のスラリー混合物の遅延コークス化による炭素質コークスの製造のためのプロセスを記載している。粒度および分布などの使用される石炭のパラメータ、灰分および含水量は、詳細には開示されていない。
【0012】
中国特許出願第109504416号は、石炭油混合物を使用する石炭系ニードルコークスの生成技術に関する。この文書は、20~50mmのD50を有する石炭系ニードルコークスを記載する。
【0013】
英国特許第866,859号は、原子炉用のグラファイトへの変換に適した石油コークスの生成のためのプロセスに関し、175~400℃の範囲の温度で、物理的子処理および/または酸素との化学反応によって、石油蒸留物からなる炭化水素材料を処理することと、得られた生成物を、石油コークスが形成されるような条件下で、熱分解処理にかけることと、を含む。
【0014】
Burgess&Schobert(Energeia Vol.19,No.1,2008)では、配合された超清浄シーム炭およびデカント油の遅延コークス化からジェット燃料および高品質炭素を生成するプロセスが記載される。生成されたスポンジコークスは、過剰な鉄およびシリコーン含有量に起因して、アルミニウム製錬アノードに関する仕様を満たすのに十分な品質ではなかった。
【0015】
本発明は、特に、採炭産業の副産物としての廃棄物微粉のさらなる蓄積を低減することにおいて、および製油所の外部に代替的な原料を提供することによって遅延コーカーの処理量を改善することにおいて、先行技術に存在する問題に対処する。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、従来型および非従来型のコーカー原料への精製石炭生成物(PCP、超微粉石炭の形態)の添加に関し、これは、遅延コーカー(delayed coker)、流体コーカー(fluid coker)、またはフレキシコーカー(flexi-coker)における熱前処理の前に、炭化水素系液体成分と配合することによって導入することができる。かかる配合物は、予熱器およびコークスドラム内の分解温度で形成された蒸留物材料および石油コークス(ペットコークス)の石炭系原料からの生成を可能にする。これを行うことにより、遅延コーカー、流体またはフレキシコーカーの利用は、製油所の外部に代替原料を提供することによって実質的に増加させることができ、製油所の動作の柔軟性は、他の用途のための残渣を解放することによって増加する。
【0017】
本発明者らは、石炭尾鉱池(coal tailings ponds)、貯留池(impoundments)、または廃棄物および不合格品(tips and reject materials)、現在の石炭生成処理からの拒否材料(例えば、増粘剤のアンダーフローまたは尾鉱のアンダーフロー廃棄物の流れ)、ならびにこれまで経済的に利用できなかった高灰分の劣質層石炭からアップグレードされた、非常に高品質(低い灰分、硫黄、および含水量)の精製石炭生成物(PCP)の利用を提供するプロセス、または以下の例示的な非限定用途、遅延コークス化プロセスにおいてコークスおよび貴重な揮発性物質を得るために、遅延コーカーの熱前処理の前に、残油などの炭化水素系液体成分と配合することにおける炭鉱石炭の生成工程を開発した。
【0018】
本発明の第1の態様は、
(i)精製石炭生成物(PCP)を提供する工程であって、PCPが、粒子形態にあり、粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、PCPが、約10%m未満の灰分、およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、提供する工程と、
(ii)組み合わされた固液配合物を作成するために、PCPを油と組み合わせる工程であって、固液配合物が、少なくともおおよそ0.1%mかつ最大でおおよそ30%mのPCPを含む、組み合わせる工程と、
(iii)固液配合物を、375℃を超える温度に、PCP粒子の少なくとも1%の分解を誘発するのに十分な時間さらして、1つ以上の揮発性蒸留物生成物を発生させる工程と、
(iv)工程(iii)の生成物からコークスを生成する工程と、を含む、コークスの生成に関するプロセスを提供する。
【0019】
様々な従来のコークス化プロセスが、遅延コークス化、流体コークス化、およびフレキシコークス化を含む、本発明の態様および実施形態を実装するために使用され得る。本発明のいくつかの実施形態は、遅延コークス化プロセスに関して以下に記載されるが、同じ考慮事項が、概して、他に挙げられたコークス化プロセスにも適用される。
【0020】
本発明の特定の実施形態では、PCP粒子の少なくとも約90体積%(%v)は、直径が約50μm以下、任意選択的に、直径が約20μm以下である。典型的に、PCPは、約2%m未満、適切には、約1.5%m未満、任意選択的に、1%m以下の灰分を有する。適切には、PCPは、おおよそ2%m未満の含水量を有する。
【0021】
本発明の実施形態では、油は、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、石炭、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、流動接触分解(FCC)デカンテッド(デカント)油、原油、抜頭原油(topped crude oil)、合成原油(カナダで生成されたものなど)、原油の派生物、バイオ燃料製造からの低粘度油、からなる群のうちの1つ以上を含む。
【0022】
さらに別の実施形態によれば、(iii)の固液配合物は、工程(iv)において遅延コーカーの原料として使用される。任意選択的に、原料は、他の適切な流れとの熱交換を介して、コーカー燃焼ヒータへの導入の前に予熱され得る。適切には、原料は、遅延コーカーのドラムに導入される。典型的に、原料は、燃焼ヒータ内などで少なくとも450℃の温度に加熱される。任意選択的に、工程(iii)は、分別工程をさらに含む。特定の実施形態では、プロセスは、か焼コークスを生成するために、工程(iv)のコークスをか焼する工程をさらに含む。
【0023】
本発明の第2の態様は、遅延、流体、またはフレキシコーカーにおいて本明細書に記載されるようなプロセスを実行することを含む、遅延、流体、またはフレキシコーカーを動作させるためのプロセスを提供する。
【0024】
第3の態様は、本明細書に記載されるようなプロセスによって取得可能なコークス生成物を提供する。適切には、コークスは、少なくともおおよそ5%mかつ最大でおおよそ30%mのPCP、任意選択的に、少なくともおおよそ10%mかつ最大でおおよそ20%mのPCPを含む、固液配合物から調製される。一実施形態では、コークスは、真空残油または流動接触分解(FCC)デカンテッド油を含む、固液配合物から調製される。適切には、コークスは、燃料グレードのコークス(fuel grade coke)、アノードグレードのコークス(anode grade coke)、ニードルコークス(needle coke)、およびバッテリーコークス(battery coke)からなる群から選択される。
【0025】
本発明の第4の態様は、本明細書に記載されるようなプロセスによって取得可能なか焼コークス生成物を提供する。
【0026】
本発明の第5の態様は、本明細書に記載されるようなか焼コークス生成物を備える、炭素アノードを提供する。
【0027】
本発明の第6の態様は、本明細書に記載されるようなプロセスによって取得可能な蒸留物炭化水素液体生成物を提供する。
【0028】
本発明の第7の態様は、液体油供給流に精製石炭生成物(PCP)を添加することを含む、遅延コーカープロセス内の液体揮発性留分の生成を増強するためのプロセスを提供し、PCPは、粒子形態にあり、粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、PCPが、約10%m未満の灰分、およびおおよそ5%m未満の含水量を有する。
【0029】
本発明の第8の態様は、精製石炭生成物(PCP)の使用を提供し、PCPは、粒子形態にあり、粒子の少なくとも約90体積%(%v)は、直径約75μm以下であり、PCPは、プロセスによって生成される液体揮発性生成物の割合を増加させるための遅延コーカープロセスにおける添加剤として、約10%m未満の灰分、およびおおよそ5%m未満の含水量を有する。本発明の一実施形態では、使用は、遅延コーカープロセスからの気体状揮発性生成物の割合における低減をもたらす。さらなる実施形態では、使用は、遅延コーカープロセスからの気体状揮発性生成物の液体揮発性生成物への変換をもたらす。
【0030】
本発明は、本明細書において開示されているが、上記で明示的には規定されていない、特徴のさらなる組み合わせに供され得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明は、添付の図面を参照することによってさらに例示される。
【0032】
【
図3】3つの原料(a)米国ケンタッキー州の石炭(石炭7)に由来するPCPのみ、(b)真空残油(RF-D)のみ、および(c)80%のRF-D、および20%の石炭7PCPの配合物、を使用する遅延コークス化中に発生したコークスの写真を示す。
【
図4】マイクロコーカーリグ内の温度範囲における石炭4PCPの揮発性物質への変換のグラフを示す。
【
図5】マイクロコーカーリグ内の温度範囲における残留燃料油と組み合わせた石炭4PCPの揮発性物質への変換のグラフを示す。
【
図6】マイクロコーカーリグ内での460℃の温度におけるデカント油と組み合わせた、石炭4PCPの揮発性物質への変換のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0034】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明の理解を助けるいくつかの定義が提供される。
【0035】
本明細書で使用される「含む」という用語は、規定される要素のうちのいずれかが必ず含まれ、他の要素も同様に任意選択的に含まれ得ることを意味する。「から本質的になる」は、任意の規定される要素が必ず含まれ、列挙される要素の基本的および新規の特性に実質的に影響を及ぼす要素が除外され、他の要素が任意選択的に含まれ得ることを意味する。「からなる」は、列挙される要素以外のすべての要素が除外されることを意味する。これらの用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0036】
「石炭」という用語は、本明細書では、これらに限定されないが、無煙炭などの硬い石炭、歴青炭、亜歴青炭、および亜炭を含む褐炭(ISO 11760:2005で定義)を含む、容易に可燃性の堆積鉱物由来の固体炭化水素系材料を示すために使用される。「天然」または「原料」石炭とは、大規模な処理が行われておらず、抽出の時点から実質的に変化しない物理的組成(例えば、マセラル含量)を含む石炭を指す。対照的に、「精製石炭生成物(PCP)」、「石炭由来生成物」、「石炭代替生成物」および「精製石炭組成物」という用語は、本明細書では、石炭の物理的および/または化学的組成における変化をもたらす、1つ以上のプロセスに供する様々な石炭を指すために使用され、その結果、石炭は、抽出の時点、すなわち、自然の状態から実質的に変化する。
【0037】
石油コークス(ペットコークスまたはペット-コークス)は、石油精製プロセスの固形副産物である。典型的に、遅延コークスプロセスを使用して形成され、燃料グレードのペットコークスまたはアノードグレードのペットコークスのいずれかに分類される。世界の生産量の4分の3以上を占め、燃料グレードのペットコークスは、発電所、セメントキルン、および鉄鋼業界においてよりクリーンな燃焼燃料として利用されている。アノードグレードのペットコークス(生ペットコークス(RPC)、グリーンペットコークス(GPC)、または非か焼ペットコークス)は、か焼石油コークス(CPC)を生成するための、か焼用原料として使用される。CPCは、アルミニウム、グラファイト電極(例えば、リチウム電池の製造に使用される)、鉄鋼、二酸化チタンの業界で使用される。慣例的に、ペットコークスの特性は、それを生成するために使用される石油原料の化学組成に応じて、大幅に変化する可能性がある。したがって、ペットコークスは、硬い場合もあり、または比較的柔らかい場合もあり、物理的には、ペットコークスは、非常に多孔質の岩に似ている場合もあり、または砂粒から大きい小石までのサイズの範囲の、小さいビー玉に似ている場合もある。本発明の実施形態は、ある割合の油原料を高度に精製された精製石炭生成物と置き換えることにより、ペットコークス特性の変動を有利に低減する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「灰」という用語は、ほとんどのタイプの化石燃料、特に石炭に見られる無機(例えば、非炭化水素)鉱物成分を指す。灰は、石炭の燃焼後に残る固形残渣内に含まれ、フライアッシュと称されることもある。石炭の供給源およびタイプは非常に多様であるため、灰の組成と化学的性質も様々非常に多様である。しかしながら、典型的な灰分は、二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化鉄(III)、酸化アルミニウムなどのいくつかの酸化物を含む。石炭は、その供給源に応じて、ヒ素、ベリリウム、ホウ素、カドミウム、クロム、コバルト、鉛、マンガン、水銀、モリブデン、セレン、ストロンチウム、タリウム、およびバナジウムなど、後続の灰に含まれる可能性のある1つ以上の物質が微量にさらに含まれ得る。
【0039】
本明細書で使用される際、「低灰分石炭」という用語は、他の業界標準の石炭と比較したときに低い灰形成成分の割合を有する、天然炭を指す。典型的には、低灰分天然石炭または原料石炭は、おおよそ12%m以下の灰分を含むはずである。「脱灰石炭」という用語、または関連する用語「脱塩石炭」は、本明細書では、その自然の天然状態と比較して無機鉱物の割合が少ない石炭を指すために使用される。灰分は、ASTM D3174-12 Standard Test Method for Ash in the Analysis Sample of Coal and Coke from Coalに記載されているように、石炭組成物の近似分析によって判定され得る。非常に低灰の石炭は、まれであり、それに応じて高価であり、典型的に、灰の8%m未満の灰分を有する。
【0040】
本明細書で使用される場合、「石炭微粉」という用語は、最大粒子サイズが通常1.0mm未満である粒子形態の石炭を指す。「石炭極微粉」または「極微粉石炭」または「極微粉」という用語は、最大粒子サイズが典型的には0.5mm(500ミクロン(μm)、約0.02インチ)未満の石炭を指す。「石炭超微粉」または「超微粉石炭」または「超微粉」という用語は、最大粒子サイズが典型的には20μm未満の石炭を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「含水量」という用語は、試料内の水の総量を指し、濃度または質量パーセント(%m)として表される。この用語が石炭試料の含水量を指す場合、それは石炭の固有または残留含水量、および環境から吸収された水または水分を含む。本明細書で使用される場合、「脱水石炭」という用語は、その自然状態よりも低い水の絶対比率を有する石炭を指す。「脱水石炭」という用語は、天然に存在する水の割合が低い石炭を指すためにも使用され得る。含水量は、ASTM D3302/D3302M-17 Standard Test Method for Total Moisture in Coalに記載されるような、天然または精製石炭組成の分析によって判定され得る。脱水されたとみなされる石炭は、典型的には10%m以下の水、典型的には5%m以下の水、および任意選択的に、2%m未満の水を含む。
【0042】
本明細書で使用される「炭化水素系材料」という用語は、炭化水素を含有する材料を指し、炭化水素は、実質的に水素および炭素の元素からなる有機化合物である。炭化水素系材料は、脂肪族、ならびに芳香族炭化水素を含み得る。鉱物起源の炭化水素質材料は、窒素、酸素、または硫黄などの1つ以上のヘテロ原子をさらに含み得る。
【0043】
「分別」という用語は、本明細書では、混合物を異なる部分に分離することを指すために使用される。「分別」という用語は、相転移中に特定の量の混合物(気体、固体、液体、または懸濁液)が、いくつかの少量(留分)に分割され、組成が勾配に従って変化する、分離プロセスを包含する。分別は、沸点の違いに基づいて、混合物をその構成要素または留分に分離する、「分別蒸留」を含む。分別技術からの任意の蒸留された出力生成物は、「分別生成物」と呼ばれ得る。大気分別蒸留からの粘稠な残渣は、真空蒸留を介してさらにアップグレードするための原料として、燃料成分として、または瀝青留分に寄与するために使用され得る。分別、または分別された生成物は、より少ない成分を有するか、またはそれらが由来する未精製の生成物よりも純粋である。典型的に、原油の大気蒸留は、大気圧またはその近くで、おおよそ300~おおよそ350℃の範囲の温度で完了する。次いで、大気中の残渣は、おおよそ40mmHg(約53ミリバール)の真空で、おおよそ350℃において動作する真空蒸留装置に通され得る。
【0044】
炭鉱、特に多層露天掘鉱床および関連する石炭処理および調製プラントは、コークス化および粉砕石炭噴射(PCI)石炭に関する高い仕様を満たすために必要な、高品質の層の入手可能性によって、生産量および市場価格において制限される。これらの制限は、急速に減少している世界的な資源基盤からのこの重要な化学原料のより低く効率の悪い生産につながっている。国際的に取引されている燃料炭の生成物の仕様が厳しくなると、石炭産業の生産量も低下し、効率が低下する。より厳しい環境基準の結果として、石炭処理プラントはまた、尾鉱池、貯留池または廃棄物に廃石炭生成物を貯蔵する能力においてますます制限されている。
【0045】
発電のために国際的に販売および取引されている燃料炭は、典型的には、高灰分(少なくとも15~20%m乾燥ベース)、高硫黄含量(1~2%m乾燥ベース)、適度に高い含水量(10~15%m以上)、および比較的粗い粒度分布(<50mm)である。石炭電力プラントのボイラーは、粉砕されたPCI燃料(すなわち、典型的には20~120ミクロンのサイズ範囲の乾燥石炭粒子)を利用し、燃料炭の粉砕、乾燥、微粉砕に顕著な量のエネルギーを消費する。燃焼中に発生する灰は、スラグ灰またはフライアッシュのいずれかとして除去する必要がある。どちらの場合も、灰は運用効率を低下させ、廃棄のための環境コストと商業コストを負担する。電力ステーションは、排煙脱硫技術を利用して、大気への硫黄酸化物の排出を最小限に抑え、このような脱硫技術の運用コストは、石炭原料の硫黄含量に比例する。
【0046】
灰分が多い炭層は、多くの地質学的な埋蔵鉱量から世界中に豊富にあり、時には厚い層が広い地理的領域にわたって持続するが、上記の問題のために多くは経済的に利用可能ではない。
【0047】
遅延コーカーをフル稼働させるのに十分な残渣が製油所で利用できないときに、追加の成分を取り込んで、処理量および動作効率を改善させることができる。本発明は、従来型および非従来型のコーカー原料への超微粉石炭の添加に関し、これは、遅延コーカー、またはフレキシコーカーにおける熱前処理の前に、炭化水素系液体成分と配合することによって導入することができる。かかる配合物は、予熱器およびコークスドラム内の分解温度で形成された蒸留物材料および石油コークスの石炭系原料からの生成を可能にする。これを行うことにより、遅延コーカー、またはフレキシコーカーの処理量は、製油所の外部に代替原料を提供することによって増加させることができ、製油所の動作の柔軟性は、他の用途のために残渣を解放することによって増加する。
【0048】
本出願の文脈における残油は、原油原料の製油所大気蒸留および真空蒸留からの残渣など、石油精製の少なくとも1つの段階の後に得られる残渣、接触分解装置からのスラリー油および/またはナフサ分解装置からの底部留分(bottoms from naphtha crackers)(カーボンブラック原料)などの、他の精製プロセスからの残渣、スロップ油、デカンテッド油、石炭(例えば、石炭-タールピッチ)、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油およびタール、黒液、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの廃棄物、製油所からの低粘度油(例えば、サイクル油、軽油など)を指すと理解される。残油はまた、上記の炭化水素性液体材料のうちの任意の1つと配合される前に、超微粉石炭をペーストに予備混合するために使用されるバイオ燃料製造からの低粘度油(例えば、脂肪酸メチルエステル)であり得る。
【0049】
残油などの重質炭化水素系液体を、特にマイクロスケールおよびナノスケールの石炭粒子を含む、石炭微粉とともに共蒸留すると、おおよそ450℃またはそれ以上の温度で顕著な量の高品質グレードのコークスを提供することは、これまで知られていなかった。これらの量は、炭化水素系液体成分のみの蒸留に起因する量に追加され、したがって、固体材料の存在に起因する。
【0050】
理論に拘束されることを望まないが、残油との配合物として石炭微粉を蒸留するとき、熱分解中に発生した任意の石炭タールおよび液体は、残油からの従来の蒸留物留分とともに凝縮されることが理解される。追加的に、石炭ポリマー構造の破壊を促進するための水素供与体として作用する可能性のある様々な炭化水素種の残油中の存在は、凝縮性炭化水素留分の発生を増強する可能性がある。既存のプロセス機器を利用することで、主要な新しい製造施設およびプラントへの大規模な投資を回避する。これは、本発明の経済的観点からの顕著な利点を表す。
【0051】
本発明の実施形態によれば、任意の仕様の石炭微粉と配合された残油を熱分解および蒸留して、蒸留物生成物およびコークスを生成するためのプロセスが提供される。本発明の特定の実施形態は、石炭微粉と配合された残油の熱分解および蒸留に関し、石炭微粉は、特に、蒸留後に、適切な生成物および環境排出基準を満たす蒸留物生成物を提供する、含水量および灰分の仕様を有する。生成物タイプに対する必要な仕様を満たすか、または必要な仕様を超える蒸留物生成物は、より価値が高く、したがって、本明細書に記載されるように、プロセス全体を非常に採算の合うものにする。
【0052】
石炭微粉の最近の開発処理により、低含水量(<15%m、典型的には<7%m、適切には<3%m)、および低灰分(<10%m、典型的には<5%m、適切には<2%)の超微粉石炭生成物、PCPが利用可能になった。PCPの脱塩のプロセスはまた、黄鉄鉱の除去を介して、硫黄含有量にも有益な効果を有する。石炭微粉の脱塩および脱水は、典型的には、極微粉および超微粉粒子用に特別に設計されたフロス浮選分離と、機械的および熱的脱水技術との組み合わせを介して達成され得る。脱水石炭極微粉の生成のための典型的なプロセスは、振動支援真空脱水プロセスを記載する、US-2015/0184099内で提供される。しかしながら、例えば、水が1つ以上の親水性溶媒の使用を通して除去されている状態の、炭化水素担体中の石炭微粒子を含むケーキとして石炭を提供することなど、他のいくつかの適切な脱水プロセスがまた、当技術分野内に存在することが理解されよう。
【0053】
残油を用いた蒸留に適した任意の粒子サイズの石炭微粉が、本発明に包含されるとみなされる。適切には、石炭微粉の粒子サイズは、極微粉範囲にある。最も適切には、石炭微粉の粒子サイズは、超微粉範囲にある。具体的には、最大平均粒子サイズは、最大で500μmであり得る。より適切には、最大平均粒子サイズは、最大で300μm、250μm、200μm、150μm、または100μmであり得る。最も適切には、最大平均粒子サイズは、最大で75μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、または5μmであり得る。最小平均粒子サイズは、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、または5μmであり得る。したがって、特定の実施形態では、本発明は、サブミクロン範囲の平均粒子サイズを有するナノスケールの石炭微粉の利用を含む。
【0054】
粒子サイズの代替的な寸法は、最大粒子サイズ、およびその粒子サイズを下回る試料内の粒子の体積比率に関するパーセンテージ値または「d」値を引用する。本発明では、原油を用いた蒸留に適した任意の粒子サイズの石炭微粉が、本発明に包含されるとみなされる。適切には、石炭微粉の粒子サイズは、極微粉範囲にある。最も適切には、石炭微粉の粒子サイズは、超微粉範囲にある。具体的には、最大平均粒子サイズは、最大で500μmであり得る。より適切には、最大粒子サイズは、多くとも300μm、250μm、200μm、150μm、または100μmであり得る。最も適切には、最大粒子サイズは、最大で75μm、50μm、40μm、30μm、20μm、10μm、または5μmであり得る。最小粒子サイズは、0.01μm、0.1μm、0.5μm、1μm、2μm、または5μmであり得る。任意の「d」値は、これらの粒子サイズのいずれかに関連付けられ得る。適切には、上記の最大粒子サイズのいずれかと関連付けられる「d」値は、d99、d98、d95、d90、d80、d70、d60、またはd50であり得る。遅延コーカープロセスにおける石炭の反応を最大化するために、石炭の粒子サイズは、小さな粒子が残油相内に十分に分散されることを可能にするために、比較的均一かつ小さいことの両方であることが望ましい。例えば、本発明の特定の実施形態では、超微粉石炭は、<100μm、<90μm、<70μm、<50μm、任意選択的に<20μmのd90を有する。適切には、超微粉石炭は、<70μm、<60μm、<50μm、<40μm、任意選択的に、<20μmのd99を有する。
【0055】
本発明の特定の実施形態によれば、熱分解および分別の前に、脱水され、脱塩された超微粉石炭の固体粒子状物質を残油中に配合する(すなわち、懸濁する)プロセスが提供される。減圧下で分別すると、顕著な量のコークスが、生成されるが、これは、残油成分だけの熱分解および蒸留によるとは考えることができない。したがって、このコークス生成物は、超微粉石炭および/または極微粉石炭の存在に由来する。
【0056】
残油は、原油原料の製油所大気蒸留および真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油および/またはナフサ分解装置からの底部留分(カーボンブラック原料)などの、他の精製プロセスからの残渣、石炭(例えば、石炭-タールピッチ)、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油およびタール、黒液、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの廃棄物、製油所からの低粘度油(例えば、サイクル油、軽油など)からなる群から選択され得る。残油はまた、バイオ燃料製造業者からのものを含む、低粘度油(例えば、脂肪酸メチルエステル)であり得る。上記の炭化水素系材料のいずれかは、上記の炭化水素系液体材料のうちの任意の1つと配合する前に、超微粉石炭をペーストに予備混合するために使用することができる。
【0057】
したがって、本発明の特定の実施形態によれば、真空残渣および他のプロセス残渣などの上記の残油の原料は、熱精留塔(例えば、蒸留塔)に運ばれ、そこで貴重なより軽い留分が、蒸留される。かかるより軽い留分は、重質軽油、軽油、灯油、コーカーナフサ、ディーゼル、ガソリン、および気体からなる群のうちの1つ以上を含み得る。
【0058】
そこから、熱精留塔からの重質底部残渣は、炉内の蒸気の存在下で450℃を超える(適切には、おおよそ480℃)その分解温度に加熱され、次いで1つ以上のコークスドラムに送られる。理論に拘束されることを望まないが、熱分解は、炉と1つ以上のコークスドラムとの間の供給パイプ内ですでに始まり、ドラムで終わると考えられる。蒸気の追加は、供給パイプ内のコークスの堆積を防止することを支援する。コークスドラム内でさらに熱分解が発生し、追加の蒸留物および気体が、追い出されて、コークスドラム内に堆積した固体コークスが残り、これが、再利用され得、かつ、例えば、アルミニウム、鋼、および他の金属生成物の冶金における「クリーンカーボン」熱燃料としての価値を有する。蒸留物および気体は、精留塔または別の精製プロセスに戻される。典型的には、コーカー装置は、少なくとも第1および第2のコークスドラムを備え、その結果、第1のドラムがコークスで充填されながら、第2のドラムは、コークスの炭化水素含有量をさらに低減するために蒸気処理され、次いで冷却のために水で急冷される。第1のドラムが充填された後、プロセスは、第2のドラムに切り替えられ、その結果、炉からの高温混合物が、第2のドラムに到達して、連続生成プロセスが可能になる。高圧デコーキングデリックは、1つ以上のコークスドラムの上部に位置決めされ得、多くの場合ドラムの底部から収集されるコークスの除去を容易にするために、コーカードラムに高圧水を運搬するために使用され得る。これはまた、油圧デコーキング(Petroleum Processing、Vo.5,No.2,1950)(
図1を参照)として称され得る。
【0059】
本発明の実施形態では、脱塩された超微粉石炭(例えば、PCP)は、典型的には、炉による熱処理の前に、残油供給物と組み合わされる。超微粉石炭は、粉末として遅延コークス化システムに添加され得るが、残油原料と適切に混合される。得られた油スラリー中のPCPは、ポンプ輸送可能である。流動床またはフレキシコーカーのセットアップを使用するときにも、同様の工程が発生し得る。
【0060】
残油と配合され得る超微粉石炭の量は、少なくとも1%m(1質量パーセント)、適切には少なくとも5%m、典型的にはおおよそ最大20%m、任意選択的におおよそ最大30%、かつ最大で70%m、適切には最大で60%m、任意選択的に最大50%mである。したがって、超微粉石炭成分は、質量により、得られた残油または残渣底部配合物の大部分を含み得る。これにより、液体成分の顕著な割合をより安価な固体材料と置き換えることによって、かなりの生成における経済性を可能にする。組み合わされた配合物はまた、従来の機器を大幅に再設計することなく、既存の装置およびプロセスに導入され得る。
【0061】
本発明のさらなる実施形態では、流体コーカーまたはフレキシコーカーを動作させるためのプロセスもまた提供される。流動床コーカーは、典型的に、反応器、またはコークス化容器、およびヒータ容器を備える。残留原料は、液体としてコークス化反応器に直接噴霧され、そこで液体供給物は、高温の流動コークス粒子上に薄い油膜として分配される。油膜が分解する際、油膜は、気化し、コークス化ゾーンから迅速に除去されるため、二次反応を回避する。プロセス中、除去されたコークスの一部分は、空気で燃焼されて、反応器に対する加熱を提供する。したがって、流体コークス化プロセスは、単一の反応器および単一のヒータのみで連続的に動作させることができる。本発明によれば、流体コーカープロセスは、以下の工程のうちの1つ以上を含むように適合され得る。
・本明細書に記載されるような残油とPCPの組み合わせを含む予熱された供給物は、熱分解に必要な熱を提供する第1の容器内に含まれる、高温流動化石油コークス粒子の床に噴霧される。
・分解された生成物は、コークス粒子から分離され、第1の反応容器から精留塔に除去される。
・第2の反応容器では、コークス粒子の一部分は、燃焼して、熱を発生させ、コークス粒子の一部分は、コークス生成物として回収される。
・フレキシコークス化の場合、これらの高温コークス粒子は、次いで第3の反応容器における気体化に供される。
【0062】
原料として均質で、安定した混合物を生成するための、固体材料の、かかる炭化水素系液体との事前配合は、おおよそ20ミクロンを下回る粒子サイズ、およびおおよそ5%mを下回る含水量を有する超微粉石炭の使用によって増強される。
【0063】
非常に低い灰分(<2%m)、低硫黄(<1%m)を有する超微粉石炭(d90<50ミクロン)を使用することで、得られるコークスを、アノードコークスなどの高価値生成物のための仕様に適合させることを可能にする。アノードコークスは、鋼およびアルミニウム産業で原料を溶かすために使用される。このような超微粉石炭が、任意の地質年代または起源からの亜炭、亜歴青炭、および瀝青炭から由来し得ることは、かなりの利益である。追加的に、特定の実施形態では、脱塩前は、アノードグレードのペットコークスの成分としてアップグレードできることはもちろんのこと、商業的価値はほとんど考慮されていなかったであろう低グレードの石炭に由来し得る。
【0064】
本発明は、超微粉石炭の使用およびより価値の高い揮発性生成物、例えば、蒸留物留分へのアップグレード、ならびにペットコークスの生成を容易にする。さらに、追加の修正をほとんどまたはまったく必要としない従来の機器を、使用することができる。かかる蒸留物留分は、元の石炭源の化学組成に応じて、高い酸素含有量を含有することができるという点で、専用の残油原料を使用する遅延、流体、またはフレキシコーカーに由来する典型的な揮発性生成物と区別され得る。以下の例で実証されるように、高い揮発性物質含有量を有する石炭からのPCPは、液体蒸留物留分に向けて実質的に寄与することができる。本発明者らは、驚くべきことに、PCPが、多くの場合、残留油のコークス化プロセス中に生成される、より価値の低い気体状生成物から離れて、より価値の高い液体留分へのシフトに寄与することができることを見出した。したがって、PCPは、液体留分の生成を促進および/または増強し、それに応じて気体留分(例えば、二酸化炭素、燃料気体、LPG)の生成を低減するために、従来のコーカープロセスへの添加剤(おそらくより低い%m濃度で)として利用され得る。
【0065】
超微粉石炭の粒子サイズおよびサイズ分布の選択により、炭化水素系液体内での石炭の安定した分散が可能になり、単純な供給チェーンを介して混合物をコークス化施設に配送することを可能にする。
【0066】
超微粉石炭と残留油原料/精留塔の残渣との間の相乗的相互作用は、回収された高価値留分の組成において予想外に有益な変化をもたらす。さらに、超微粉石炭粒子によって発生した高い表面積は、残渣燃料との均一な反応性を助け、改善された形態を有する均質な生成物をもたらす。
【0067】
超微粉石炭は、過剰なコーカープラント容量の利用を増加させることによって、製油所コーカーの経済的成果を増加させる。さらに、生成されるペットコークスは、硫黄、ニッケル、およびバナジウムが非常に低いため、鋼、アルミニウム、他の金属合金の高いグレードの製造のための成分として、ペットコークスの商業的価値を増加させる。
【0068】
本発明の実施形態では、記載された方法に従って調製されたコークスは、か焼コークス生成物を生成するために、1つ以上の追加のか焼工程に供され得る。か焼コークスは、様々な産業または用途において使用され、具体的には、炭素アノードの生成、ならびに二酸化チタンの製造において貴重な材料である。記載された方法によって生成されたコークスは、ロータリーキルン内でか焼され得、そこでコークスは、1200~1350℃(2192~2460゜F)の温度に加熱される。高度な熱処理は、任意の過剰な水分を除去し、残っているすべての炭化水素を抽出し、コークスの結晶構造を修正して、緻密な導電性生成物をもたらす。
【0069】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例解される。
【実施例】
【0070】
石炭微粉の脱塩および脱水は、超微粉および極微粉粒子用に特別に設計されたフロス浮選分離と、機械的および熱的脱水技術の組み合わせによって達成され得る。
【0071】
すべての実施例において、脱塩および脱水された超微粉石炭を含む、精製石炭生成物が、石炭代替生成物として使用される。精製石炭生成物(PCP)は、以下に設定されるように、多工程プロセスによって調製され得る。
【0072】
・貯留池、尾鉱池、または生産尾鉱のアンダーフローに由来する、石炭廃棄物スラリー、例えば、クイーンズランド中揮発性歴青炭Aの代表的な試料が採取される。
【0073】
・サンプリングされた材料は、d80=30~50ミクロン(またはいくつかの石炭ではより細かい)の粒子サイズに低減されて、5~8%の目標灰分への効率的な分離を達成する。これを達成するために、原料を水で希釈して固形分を20~40%の範囲にし、原料の上部サイズに応じてボールミルまたはビーズミルで粉砕する。生成物は約100ミクロンのサイズ範囲でスクリーニングされる。状況によっては、エネルギー使用を最適化するために、分散剤添加剤(例えば、Borregaard,1701 Sarpsborg,Norwayによって製造されたBorresperse、UltrazineおよびVanisperseなどのリグニンベースの分散剤)が含まれる。適切な機器は、Metso Corporation,Fabianinkatu 9 A,PO Box 1220,FI-00130 Helsinki,FIN-00101,Finland、Glencore Technology Pty.Ltd.,Level 10,160 Ann St,Brisbane QLD 4000,Australia、およびFLSmidth,Vigerslev Alle 77,2500 Valby,Denmarkによって製造される。
【0074】
・典型的には、灰分を目標レベルまで下げるために、浮選の1つの段階(1つの粗い工程およびいくつかのより細かい工程)が実施される。鉱物が主にサブ10ミクロンサイズの領域内に拡散する一部の石炭では、さらに粉砕した後、2つ以上の浮選段階が必要になり得る。
【0075】
石炭スラリーは、典型的には5~20%mの範囲の固体に水でさらに希釈され、次いでタンク内に収集され、泡立て剤(例えば、メチルイソブチルカルビノールおよびパイン油)および捕集材(例えば、ディーゼル燃料または他の炭化水素油、およびNasaco International Co.,Petite Rue 3,1304 Cossonay,SwitzerlandからのNasmin AP7)として知られるフロス浮選剤が、制御された線量率を使用して添加される。プロセス水が充填され、および密閉された空気圧縮機からの空気をろ過した微粒子セパレータ(例えば、FLSmidth,Vigerslev Alle 77,2500 Valby,Denmark、Metso Corporation,Fabianinkatu 9 A,PO Box 1220,FI-00130 Helsinki,Finland、およびGTEK Mineral Technologies Co.Ltd.によって製造された浮選試験機)を使用して、親水性鉱物材料から疎水性炭素材料を選別する。炭化水素粒子を含むフロスがタンクから溢れ出し、このフロスは開いた上部の側溝に集められる。鉱物パルプは排出されるまで分離タンクに保持されるが、脱塩された石炭スラリーは、ペレット化工程にポンプで送られる前に脱気される。
【0076】
次いで、フロス浮選からの濃縮物は、圧力または真空下で、時にはエアブローを使用して、フィルタプレスまたはチューブプレスで実際の粒子サイズに応じて20~50%mの目標範囲まで脱水されて、押出機用の原料を発生させるために、機械的手段によって水を除去する。適切なフィルタプレス機器は、Metso,FI-00130 Helsinki,Finland,FLSmidth,Valby,Denmark、およびOutotec.Rauhalanpuisto 9,02230 Espoo,Finlandによって製造される。
【0077】
○いくつかの場合では、凝集剤(または増粘剤、例えば、Nalco Champion,1 Ecolab Place,St. Paul,MN 55102-2233,USAによって製造されたアニオンポリアクリルアミド添加剤)が添加されて、沈降特性およびアンダーフロー密度を最適化する。手順を最適化するために、沈降試験を実施して沈降速度を測定し、沈降曲線を生成して、アンダーフロー密度を時間とともに追跡する。
【0078】
○ろ過速度および結果として生じるケーキの水分に応じて、ろ過もまた必要になり得る。手順を最適化するために、原料の固形分%(増粘/非増粘)、原料の粘度、pH、ろ過圧力を測定する。ケーキの排出およびブラインド性能を評価した後、ろ布を選択する。適切なろ布は、Clear Edge Filtration,11607 E 43rd Street North,Tulsa,Oklahoma 74116 USAによって製造される。
【0079】
○いくつかの状況では、デカンター遠心分離機を、プロセス設計に組み込んで、フィルタプレスの前に固形分を濃縮することができる。適切な機器は、Alfa Laval Corporate AB,Rudeboksvagen 1,SE-226 55 Lund,Swedenによって製造される。
【0080】
・必要に応じて、押出機またはペレタイザまたはブリケッタが、超微粉石炭のウェットケーキをペレットに圧縮して、機械的完全性を提供し、輸送を可能にするために使用されてもよい。しかしながら、PCPは、典型的に、以下の実施例に記載されるように、ペットコークスの生成のために微粉化された形態で使用される。
【0081】
実施例1.-PCP配合特性の石油コークス仕様との互換性
表1は、配合成分としてPCPを含めることによって影響を受ける3つの異なるグレードの石油コークスの仕様を示す。2つのタイプのPCP(「Arq Fuel A」および「Arq Fuel B」と指定)に関する各特性の値、およびいずれかのPCPの10%の各特性への寄与もまた示される。
【0082】
表1は、計算ではすべてのヘテロ原子(O、N、SO)ならびにすべての無機物がコークス留分に現れると想定しているため、PCPがコークスの特性に及ぼす最大の悪影響を示す。現実には、これらの要素の各々は、固体生成物と揮発性(気体および液体)生成物との間で分配され、生成物コークスにおける正味量を低減させる。最後に、残油、またはPCP、またはこれらの原料の配合物に由来するかどうかにかかわらず、追加のヘテロ原子の除去が、コークスのか焼中に期待される。
【0083】
窒素含有量は、か焼ニードルコークスに対して非常に低くする必要がある。PCPの熱分解中に窒素は主に液体および気体生成物(アンモニアなど)へ不均衡になるが、1%のArq Fuel Aのみを含有する配合物は、特定のニードルコークス用途に関して、おそらくなお受け入れ不可能である可能性がある。しかしながら、窒素は、コークス生成物の流れと液体生成物の流れとの間で分配されるヘテロ原子のうちの1つである。いくつかの窒素は、アンモニアのような気体状生成物の流れにさえ現れる。これらの分配はすべて、コークス中の窒素値を低減させるのに役立つ。窒素含有量が17,000ppm,wの状態で、最大45%のw Arq Fuel A濃度は、燃料コークスの使用に容易に対応することができる。窒素含有量は、アノードコークスに関する仕様パラメータではない。
【0084】
灰分:灰分がちょうど1.0%mの状態で、30~40%の濃度のArq Fuel Aが、燃料コークスおよびか焼アノードコークスの両方に対応することができ、同様に、60~80%程のArq Fuel Bが対応することができる。これは、遅延コーカープロセスにおいて、残油原料の顕著な割合がPCPに置き換わる可能性を表す。
【0085】
硫黄含有量:硫黄含有量が0.8%mの状態で、Arq Fuel A中の硫黄の濃度は、燃料コークスおよびアノードコークスに関して指定された濃度を下回り、そのため硫黄含有量は、これらのコークスグレードのいずれにおいてもArq Fuelの配合濃度を制限しない。ニードルコークスの硫黄含有量は、低いが、それでもなお、Arq Fuel Aの25%~60%m(またはArq Fuel Bの50%~100%)の範囲は、正確な硫黄仕様の制限に応じて、対応することができる。繰り返しになるが、これは、遅延コーカープロセスにおいて、残油原料の顕著な割合がPCPに置き換わる可能性を表す。
【0086】
ニッケルおよびバナジウムの含有量:Arq Fuel A中のニッケルおよびバナジウムの濃度は、指定されたレベルを下回っているため、どちらの要素も、Arq Fuelの濃度を制限せず、3つのコークス仕様のいずれかを満たすために配合することができる。
【0087】
Arq Fuel配合特性は、少なくとも燃料コークスおよびアノードコークスに関する石油コークス仕様を満たす。動作上の制約を無視すると、Arq Fuel Bの最大70%mおよび最大80%mの濃度は、仕様の制限を超えることなく、それぞれ燃料コークスおよびアノードコークス内で対応することができる。
【表1】
【0088】
実施例2.-残留油と廃棄物由来のPCPの配合。
良好な分散を達成するために、PCPは、最初に細かく粉砕されなければならない。約5ミクロンの平均(D50)粒子サイズおよび約10ミクロン(d99)の最大粒子サイズが、優れた性能を示す。
【0089】
このような粉末を真空残渣または残留燃料油に分散させるために、高せん断混合を必要とする。SilversonまたはKADY Internationalによって製造されたものなどのロータ/ステータデバイスに見出されるタイプの混合は、他のタイプの機械的および静的ミキサーも用いられ得るが、均一で、十分に分散したスラリーを達成するのに特に有用である。石炭および油の両方の物理的および化学的特性に応じて、良好な分散は、かかるデバイスを1回通過するだけでよい場合もあれば、再循環を繰り返す必要がある場合もある。
【0090】
高せん断混合は、油相の粘度が、500cSt未満、適切には100cSt未満である温度で良好に実施される。かかる粘度は、石炭粒子が油内に包まれ、油が石炭粒子内の細孔の少なくともいくつかに浸透するのに十分な流動性を確実とする。それゆえ、石炭粒子の「外部」および「内部」表面積の両方が、油相と接触する。
【0091】
一度調製されると、コーカーに導入する前に、スラリーは、十分に分散した状態に維持されるはずである。保管温度における油の粘度に応じて、これには、一定の攪拌、断続的な混合、または混合なしを必要とし得る。
【0092】
実施例3.-PCP配合特性の遅延コーカー原料仕様との互換性。
表2は、一組の米国の製油所の典型的なコーカー原料仕様を示す。PCP(Arq Fuel A)、4つの残留燃料(RF-A、B、C、およびE、さらに1つの真空残渣(RF-D)のみ、および各残留燃料中のArq Fuelの10%m配合に関する各特性の値が示される。
【表2】
【0093】
驚くべきことに、硫黄含有量(5つすべてのRF-A~E)、引火点(RF-A、B、C、およびE)、バナジウム含有量(より典型的な高バナジウムRFO試料、RF-C、D、およびE)ならびにTAN(RF-E)は、Arq Fuelと配合することによって、実際に改善される。
【0094】
50℃における粘度、および流動点は、PCPの添加によって増加するが、RF-A、B、C、およびDの10%配合物において、両方のパラメータは、それぞれ1160cStおよび110°F(43.3℃)の仕様限界をはるかに下回ったままである。
【0095】
灰分および含水量は、Arq Fuelの添加により増加するが、顕著ではなく、両方とも、示されているすべての10%配合物において、それぞれ0.24%mおよび0.5%mの仕様限界をはるかに下回ったままである。これは、配合物が定義された制限を超えることなく追加のArq Fuelに対応できることを示唆する。追加的に、油およびArq Fuelの混合温度が約100℃を上回る場合、混合物中の水の少なくとも一部分は、蒸気として放出される。
【0096】
コンラドソン炭素残渣/アスファルテン比および総窒素含有量もまた、Arq Fuelの添加により増加するが、それぞれ仕様限界の1.8(10%RF-C配合物)および10,000ppm,w(10%RF-A配合物)をはるかに下回ったままである。
【0097】
実施例4.-遅延コークス化温度-時間条件下での様々なタイプの超微粉石炭からの揮発性物質の生成。
最適な時間-温度プロファイル(460℃まで20℃/分の温度上昇率、その後460℃で等温)を、標準的な熱重量分析装置(TGA)を使用したPCPの3mg試料を使用して、遅延コーカー条件を最もよく表すために開発した。失われた揮発性物質の量および残っている残渣を、ランクが大きく異なる13の石炭(亜瀝青炭から中揮発性瀝青炭)、マセラル組成、および地理的/地質学的起源について判定した。
【表3】
【0098】
高いランクの石炭のうちの1つに対する12%m~最も低いランクの石炭に対するほぼ50%mの範囲の揮発性成分(液体および気体の組み合わせ)の収率が得られ、顕著な量の揮発性物質が、遅延コーカー条件のもと、PCP(例えば、Arq Fuel)から発生し得ることを実証した。
【0099】
実施例5.真空残渣と超微粉石炭を有する残留燃料油との配合物からの揮発性物質の生成。
3つの異なるタイプの残留燃料油(RF-C、FおよびG、表2)ならびに1つの真空残渣(RF-D)ilを、石炭7から調製したPCP(Arq Fuel)と組み合わせて、20%Arq Fuelと80%油との配合物を形成した。表4は、列2の各油に関する模擬蒸留(SIMDIS、ASTM D2887)によって判定された、580℃を上回って沸騰する揮発性物質の量を示す。上記のTGAコークス化条件下でこれらの油のみから発生した揮発性物質は、列3に示される。これらの試験を、最低5回繰り返して、標準偏差が1%未満のデータセットを作成した。提示されるデータは、そのデータセットから計算された平均である。Arq Fuelおよび20%/80%Arq Fuel/RF配合物から遅延コーカーTGA下で発生した揮発性物質は、それぞれ列5および列7に、後者の判定の標準偏差は列9に、ともに示される。
【表4】
【0100】
石油のみのTGAデータ(列4)および石炭のみのTGAデータ(列6)を比例配分することにより、個々の成分からの揮発性物質の加重平均に基づいて、20%/80%配合(列8)の予想揮発性物質収率を計算することができる。驚いたことに、4つのケースのうち3つにおいて、実際の揮発性物質の収率は、予測よりも高かった。判定された値と計算された値との差は、列10に示される。増分揮発性物質の収率が石炭の存在に起因すると考える場合、列11に示されるように、石炭の揮発性物質への変換が、計算され得る。
【0101】
実施例6.-特注のミニコーカーリグにおける残留燃料油およびPCP(Arq Fuel)との残留燃料油の配合物からの液体の生成。
【0102】
製油所の遅延コーカーにおけるARQ Fuelと油スラリーの反応をさらにモデル化するために、
図2に示されるように、ラボスケールバージョンのコークスドラムを構築した。
【0103】
コークスドラムを、外部から電気的に加熱し、窒素スイープを、コークスドラムから分解された炭化水素生成物を除去するのに役立てるために、提供し(市販のコーカーにおいて見出される蒸気スイープをシミュレートし)、一連のコールドトラップを、液体生成物を凝縮および捕捉するために用いた。TGA実験とは異なり、ミニコーカーは、石油コークスの収率とともに、揮発性物質だけでなく、気体および液体の収率の判定を可能にする。追加的に、生成物の品質に関する分析を可能にするために、十分な生成物が発生する。
【0104】
実験は、油のみ、および80重量%の油と20重量%の石炭の配合物を使用して実施された。標準偏差が1%未満になるように、各実験を、少なくとも3回繰り返した。
【表5】
【0105】
20%PCP(Arq Fuel、石炭7)を燃料残渣RF-Dと配合すると、コークスの収率が21.3%mから32.4%mに増加し、液体の収率が62.5%から53.8%mに低減する(表6)。2つの配合成分からの相対的な寄与を計算すると、石炭7が反応して、77%のコークス、19%の液体、4%の気体を与えることを示す。PCPを残油と配合すると、最も価値のある成分である液体の収率が11%から19%に増加し、以前の収率のほぼ2倍となった。
【0106】
石炭は、残渣燃料と比較して酸素が比較的多く、その酸素の顕著な部分が、石炭7のみからの液体中で見出され、これはまたRF-Dよりも芳香族性が高い(低H/C)。驚くべきことに、RF-Dと石炭7を組み合わせた生成物は、RF-Dのみの生成物と非常によく似ており、配合物からの蒸留物留分中の酸素の増加はわずかである。
・酸素は、0.3重量%増加するのみであり、
・窒素は、0.1重量%増加するのみであり、
・H/Cは、1.68~1.64のわずかな低下を有する。
【0107】
石炭7およびRF-Dの20%配合物からのコークスは、RF-Dのみからのコークスと比較して以下の差を有する。
・硫黄含有量の改善。硫黄は、RF-Dの4.13%mから配合の2.88%mに顕著に低減した。
・ニッケル含有量の改善。ニッケルは、配合物において295ppm,wから168ppm,wに顕著に低減した。
・バナジウム含有量の改善。バナジウムは、配合物において749ppm,wから424ppm,wに顕著に低減した。
・配合物からのコークスの灰分は、予想通り増加した、この場合、燃料コークスとアノードコークスの仕様限界を上回るレベル(0.8%m)である。灰分0.35%mを有するRF-Dのみからのコークスは、これらのペットコークス灰の制限内にわずかに収まっている。配合パラメータのわずかな変更は、灰分が0.2%mを下回るコークスの生成を可能にすることが明らかである。例えば、RF-Dにおいて配合を10%の石炭7に変更することにより、必要な灰分制限を満たす可能性がある。代替的に、固有の灰分が少ない燃料残油の選択は、配合物中のPCPのより高い含有量を可能にするであろう。
【0108】
ミニコーカーの実行からのコークス生成物の目視検査は、形態の驚くべき差を示した(
図3に示されるように)。
・PCP(Arq Fuel、石炭7)のみで作製されたコークスは、ふわふわの黒い粉であり、塊に集約できなかった。
・RF-Dのみで作製されたコークスは、光沢のあるフレークの状態で硬く、かつ脆く、触ると崩れ、ミニコーカー容器の壁に形成されたように見えた。
・RF-Dおよび石炭7の80/20配合物から作製されたコークスは、高強度を有する多孔質固体塊であった。すべての超微粉石炭粒子が、塊に「組み込まれ」、コーカー容器の底部にいくつかの「小塊」として形成されたように見えた。
【0109】
実施例7.-高揮発性物質含有量の北米石炭(Arq Fuel)からのPCPとの燃料残渣の配合物からの液体揮発性物質の増強生成。
PCPは、前述のプロセスを使用して、ウェストバージニア州の高揮発性物質含有量の北米の石炭(上記の表3内の石炭2)から由来した。石炭2 PCPは、実施例5(上記を参照)のように、80:20の液固配合物においてRF-D真空残渣と組み合わされた。TGAの結果(約30%)に基づいて、高い揮発性物質の収率が、期待された。驚いたことに、ミニコーカー試験の結果は、これらの予想を顕著に超え、液体揮発性物質の収率が約48%であった。データは、この液固配合物で実行した3回の重複実行の平均から得られたものであり、標準偏差はわずか約1%を示したことに留意すべきである。
【0110】
理論に拘束されることを望まないが、PCPと油との間で化学的相互作用が発生しているようであり、これは、固体PCPおよび残留油の独立したTGA分析に基づく予測と比較して、観察された液体収率の増加に寄与する可能性がある。これは、石炭由来の成分が、油からの気体状生成物と相互作用しており、低価値の気体生成物から顕著に高い価値の液体生成物への優先的な変換をもたらしていることを示唆し得る。この観察により、本発明の利点を、高揮発性物質含有量を有する一連の同様の石炭(廃棄体および廃棄物を含む)に拡張することが可能であり、これは、大規模な市販の原料源を表すことができる。
【0111】
実施例8.-特注のマイクロコーカーリグにおける残留燃料油およびPCP(Arq Fuel)との残留燃料油の配合物からの揮発性物質の生成。
前述のTGA試験を、ミニコーカーリグにおいてミリグラムレベルで実施した。マイクロコーカーリグ(micro-coker rig)は、試料サイズをグラム範囲まで増加させる。ある量の石炭のみ(表3の石炭4)、油のみ、または20重量%の石炭と80重量%の油との配合物を、圧入蓋を装備した特注の15mlニッケル合金容器に充填した。蓋に、実験中に発生した揮発性物質を逃がすことを可能にするために、1mmの孔を穿孔した。容器を、様々な温度で、様々な時間、予熱された炉に設置した。発生した揮発性物質のパーセントを、試料の初期重量と最終重量との差から計算した。油のみのデータと配合物データを使用することによって、配合物内の石炭の転換を計算することができる。
【0112】
各データポイントは、少なくとも5回複製され、各組のデータの標準偏差は、典型的に1パーセントポイント未満であった。
【0113】
ある範囲の温度における石炭4のみの変換は、
図4に示される。真空残渣(表2のRF-E)と混合したときのある範囲の温度での変換が、
図5に示される。結果は、
図5に示されるように、石炭の揮発性物質への変換が顕著に増加したことを実証する。
【0114】
同様の組の実験を、20重量%の石炭4と80重量%のデカンテッド油-米国のガルフコースト触媒分解装置からの重質スラリー油との配合物で実施した。
図6に要約されたデータは、石油の存在下でコークス化されたときの、石炭の揮発性物質への変換における顕著な増加を再び示す。
【0115】
実施例9.-高揮発性物質含有量の北米石炭(Arq Fuel)からのPCPとの燃料残渣の配合物からの液体揮発性物質のさらに改善された生成。
石炭4および同じ真空残渣(RF-D)を有する同様の組のミニコーカー実験は、石炭の液体生成物へのさらに高い変換を含む、驚くべき結果を示す。結果は、表7に要約される。
【表6】
【0116】
このデータから、配合物中の石炭の様々な生成物への変換を計算することができる。データは、石炭/石油配合物において、配合物の石炭部分が、58%の液体生成物、49%の固体生成物、および-7%の気体生成物を生成したことを示す。最初は、気体状生成物への負の変換は、ありそうにないように思われた。しかしながら、これが示すのは、通常は気相に報告されるであろう油からの分解生成物のいくつかが、石炭からの分解生成物と反応し、液相に報告されるわずかに重い種を形成したということである。気体から液体生成物へのこのレベルの変換は、燃料油の事前の水素化処理がない場合、まったく予想外であり、液体生成物は、典型的に、気体生成物よりも高く評価されるため、非常に顕著である。
【0117】
本発明は、以下の非限定的な番号の付いた条項でさらに例解される。
1.コークスおよび1つ以上の揮発性生成物の生成のためのプロセスであって、
(i)精製石炭生成物(PCP)を提供する工程であって、PCPが、粒子形態にあり、粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約100μm以下であり、PCPが、約10%m未満の灰分およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、提供する工程と、
(ii)組み合わされた固液配合物を作成するために、PCPを液体残油と組み合わせる工程であって、固液配合物が、少なくともおおよそ0.1%mかつ最大でおおよそ30%mのPCPを含む、組み合わせる工程と、
(iii)固液配合物を、375℃を超える温度に、PCP粒子の少なくとも1%の分解を誘発するのに十分な時間さらして、1つ以上の揮発性蒸留物生成物を発生させる工程と、
(iv)工程(iii)の生成物からコークスを生成する工程と、を含む、プロセスである。
【0118】
2.PCP粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、任意選択的に、直径約50μm以下である、条項1に記載のプロセス。
【0119】
3.PCPが、約2%m未満、適切には、約1.5%m未満、任意選択的に、1%m以下の灰分を有する、条項1または2に記載のプロセス。
【0120】
4.PCPが、おおよそ2%m未満の含水量を有する、条項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【0121】
5.残油が、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、デカンテッド油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、原油、合成原油、ならびにバイオ燃料製造からの油、からなる群のうちの1つ以上を含む、条項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【0122】
6.(iii)の固液配合物が、工程(iv)において、遅延、流体、またはフレキシコーカーにおける原料として使用される、条項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【0123】
7.原料が、遅延コーカーのドラムに導入される、条項6に記載のプロセス。
【0124】
8.原料が、少なくとも450℃の温度に加熱される、条項6または7のいずれか一項に記載のプロセス。
【0125】
9.原料が、流動床コーカー反応器に導入される、条項6に記載のプロセス。
【0126】
10.工程(iii)が、分別工程を含む、条項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【0127】
11.か焼コークスを生成するために、工程(iv)のコークスをか焼する工程をさらに含む、条項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【0128】
12.遅延コーカーにおいて、条項1~8のうちのいずれか一項に記載のプロセスを実行することを含む、遅延コーカーを動作させるためのプロセス。
【0129】
13.流体またはフレキシコーカーにおいて、条項1~6、または条項9のうちのいずれか一項に記載のプロセスを実行することを含む、流体またはフレキシコーカーを動作させるためのプロセス。
【0130】
14.条項1~10のいずれか一項に記載のプロセスによって取得可能なコークス生成物。
【0131】
15.コークスが、少なくともおおよそ5%mかつ最大でおおよそ30%mのPCP、任意選択的に、少なくともおおよそ10%mかつ最大でおおよそ20%mのPCPを含む、固液配合物から調製される、条項14に記載のコークス生成物。
【0132】
16.コークスが、残油を含む固液配合物から調製される、条項14または15に記載のコークス生成物。
【0133】
17.コークスが、燃料グレードのコークス、アノードグレードのコークス、ニードルコークス、流体コークス、およびバッテリーコークスからなる群から選択される、条項14~16のいずれか一項に記載のコークス生成物。
【0134】
18.条項11に記載のプロセスによって取得可能なか焼コークス生成物。
【0135】
19.条項18に記載のか焼コークス生成物を含む、炭素アノード。
【0136】
20.条項1~10のいずれか一項に記載のプロセスによって取得可能な蒸留物炭化水素液体生成物。
【0137】
21.液体油供給流に精製石炭生成物(PCP)を添加することを含む、遅延、流体、またはフレキシコーカープロセス内の液体揮発性留分の生成を増強するためのプロセスであって、PCPが、粒子形態にあり、粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、PCPが、約10%m未満の灰分、およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、プロセス。
【0138】
22.PCP粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、任意選択的に、直径約50μm以下である、条項21に記載のプロセス。
【0139】
23.PCP粒子の少なくとも約80体積%(%v)が、直径約20μm以下である、条項21に記載のプロセス。
【0140】
23.PCPが、約2%m未満、適切には、約1.5%m未満、任意選択的に、1%m未満の灰分を有する、条項21または22に記載のプロセス。
【0141】
24.PCPが、約0.9%m未満の灰分を有する、条項23に記載のプロセス。
【0142】
25.PCPが、おおよそ2%m未満の含水量を有する、条項21~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【0143】
26.液体油が、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、デカンテッド油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、原油、合成原油、ならびにバイオ燃料製造からの油、からなる群のうちの1つ以上を含む、条項21~25のいずれか一項に記載のプロセス。
【0144】
27.精製石炭生成物(PCP)の使用であって、PCPが、粒子形態にあり、粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、PCPが、プロセスによって生成される液体揮発性生成物の割合を増加させるために、遅延、流体、またはフレキシコーカープロセスにおける添加剤として、約10%m未満の灰分、およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、使用。
【0145】
28.PCPが、残油に添加されて、遅延、流体、またはフレキシコーカープロセスのための原料を作成する、条項27に記載の使用。
【0146】
29.残渣が、水素化されていない、条項28に記載の使用。
【0147】
30.残油が、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、デカンテッド油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、原油、合成原油、ならびにバイオ燃料製造からの油、からなる群のうちの1つ以上を含む、条項28~29のいずれか一項に記載の使用。
【0148】
31.使用が、遅延コーカープロセスからの気体状揮発性生成物の割合における低減をもたらす、条項27~30のいずれか一項に記載の使用。
【0149】
32.使用が、遅延コーカープロセスからの気体状揮発性生成物の液体揮発性生成物への変換をもたらす、条項27~30のいずれか一項に記載の使用。
【0150】
本発明の特定の実施形態を本明細書において詳細に開示してきたが、これは例として、かつ例示のみを目的として行われたものである。前述の実施形態は、本発明の範囲に関して限定することを意図するものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な置換、変更、および修正を行うことができることが本発明者によって企図される。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークスおよび1つ以上の揮発性生成物の生成のためのプロセスであって、
(i)精製石炭生成物(PCP)を提供する工程であって、前記PCPが、粒子形態にあり、前記粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約100μm以下であり、前記PCPが、約10%m未満の灰分およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、提供する工程と、
(ii)組み合わされた固液配合物を作成するために、前記PCPを液体残油と組み合わせる工程であって、前記固液配合物が、少なくともおおよそ0.1%mかつ最大でおおよそ30%mのPCPを含む、組み合わせる工程と、
(iii)前記固液配合物を、375℃を超える温度に、前記PCP粒子の少なくとも1%の分解を誘発するのに十分な時間さらして、1つ以上の前記揮発性生成物を発生させる工程と、
(iv)工程(iii)の前記生成物からコークスを生成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記PCP粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、任意選択的に、直径約50μm以下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記PCPが、約2%m未満、適切には、約1.5%m未満、任意選択的に、1%m以下の灰分を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記PCPが、おおよそ2%m未満の含水量を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記液体残油が、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、デカンテッド油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、原油、合成原油、ならびにバイオ燃料製造からの油、からなる群のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
(iii)の前記固液配合物が、工程(iv)において、遅延、流体、またはフレキシコーカーにおける原料として使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記原料が、遅延コーカーのドラムに導入される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記原料が、少なくとも450℃の温度に加熱される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記原料が、流動床コーカー反応器に導入される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
工程(iii)が、分別工程を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
か焼コークスを生成するために、工程(iv)の前記コークスをか焼する工程をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
遅延コーカーにおいて、請求項1に記載のプロセスを実行することを含む、遅延コーカーを動作させるためのプロセス。
【請求項13】
流体またはフレキシコーカーにおいて、請求項1に記載のプロセスを実行することを含む、流体またはフレキシコーカーを動作させるためのプロセス。
【請求項14】
請求項1に記載のプロセスによって取得可能な、コークス生成物。
【請求項15】
前記コークスが、少なくともおおよそ5%mかつ最大でおおよそ30%mのPCP、任意選択的に、少なくともおおよそ10%mかつ最大でおおよそ20%mのPCPを含む、固液配合物から調製される、請求項14に記載のコークス生成物。
【請求項16】
前記コークスが、残油を含む固液配合物から調製される、請求項14に記載のコークス生成物。
【請求項17】
前記コークスが、燃料グレードのコークス、アノードグレードのコークス、ニードルコークス、流体コークス、およびバッテリーコークスからなる群から選択される、請求項14~16のいずれか一項に記載のコークス生成物。
【請求項18】
請求項11に記載のプロセスによって取得可能な、か焼コークス生成物。
【請求項19】
請求項18に記載のか焼コークス生成物を含む、炭素アノード。
【請求項20】
請求項1に記載のプロセスによって取得可能な、蒸留物炭化水素液体生成物。
【請求項21】
液体油供給流に精製石炭生成物(PCP)を添加することを含む、遅延、流体、またはフレキシコーカープロセス内の液体揮発性留分の生成を増強するためのプロセスであって、前記PCPが、粒子形態にあり、前記粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、前記PCPが、約10%m未満の灰分、およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、プロセス。
【請求項22】
前記PCP粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、任意選択的に、直径約50μm以下である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記PCP粒子の少なくとも約80体積%(%v)が、直径約20μm以下である、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記PCPが、約2%m未満、適切には、約1.5%m未満、任意選択的に、1%m未満の灰分を有する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項25】
前記PCPが、約0.9%m未満の灰分を有する、請求項
24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記PCPが、おおよそ2%m未満の含水量を有する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項27】
前記液体油が、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、デカンテッド油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、原油、合成原油、ならびにバイオ燃料製造からの油、からなる群のうちの1つ以上を含む、請求項21に記載のプロセス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0140
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0140】
24.PCPが、約2%m未満、適切には、約1.5%m未満、任意選択的に、1%m未満の灰分を有する、条項21から23のいずれか一項に記載のプロセス。
。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0141
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0141】
25.PCPが、約0.9%m未満の灰分を有する、条項24に記載のプロセス。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0142
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0142】
26.PCPが、おおよそ2%m未満の含水量を有する、条項21~25のいずれか一項に記載のプロセス。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0143
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0143】
27.液体油が、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、デカンテッド油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、原油、合成原油、ならびにバイオ燃料製造からの油、からなる群のうちの1つ以上を含む、条項21~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0144
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0144】
28.精製石炭生成物(PCP)の使用であって、PCPが、粒子形態にあり、粒子の少なくとも約90体積%(%v)が、直径約75μm以下であり、PCPが、プロセスによって生成される液体揮発性生成物の割合を増加させるために、遅延、流体、またはフレキシコーカープロセスにおける添加剤として、約10%m未満の灰分、およびおおよそ5%m未満の含水量を有する、使用。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0145
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0145】
29.PCPが、残油に添加されて、遅延、流体、またはフレキシコーカープロセスのための原料を作成する、条項28に記載の使用。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0146
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0146】
30.残渣が、水素化されていない、条項29に記載の使用。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0147
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0147】
31.残油が、原油原料の製油所大気蒸留からの残渣、原油原料の真空蒸留からの残渣、接触分解装置からのスラリー油、ナフサ分解装置からの底部留分、プラスチック、木材、およびバイオマスの熱分解によって生成された油、木材パルプ製造のクラフトプロセスからの黒液、軽質および重質サイクル油、軽油および重質軽油、ディーゼル燃料、燃料油、バンカー油、ボイラー燃料油、デカンテッド油、船舶用燃料油、船舶用ディーゼル油、バイオディーゼル、スロップ油、タールサンド由来の油、原油、合成原油、ならびにバイオ燃料製造からの油、からなる群のうちの1つ以上を含む、条項29または30に記載の使用。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0148
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0148】
32.使用が、遅延コーカープロセスからの気体状揮発性生成物の割合における低減をもたらす、条項28~31のいずれか一項に記載の使用。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0149
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0149】
33.使用が、遅延コーカープロセスからの気体状揮発性生成物の液体揮発性生成物への変換をもたらす、条項28~31のいずれか一項に記載の使用。
【国際調査報告】