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特表2022-531728胆汁酸塩ヒドロラーゼを使用して消化管を調節するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(54)【発明の名称】胆汁酸塩ヒドロラーゼを使用して消化管を調節するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20220701BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20220701BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220701BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220701BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20220701BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20220701BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220701BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20220701BHJP
   C12N 9/14 20060101ALN20220701BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
A61P43/00 111
A61P9/00
A61P3/00
A61P1/16
A61P3/04
A61P35/00
A61P3/10
A61P1/04
A61P1/12
A61P31/04
A61K48/00
A61K38/46
A61K35/747
C12N15/31
C12N15/55
C12N9/14 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566273
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2020031777
(87)【国際公開番号】W WO2020227471
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/844,518
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517366013
【氏名又は名称】ノース カロライナ ステート ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTH CAROLINA STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バランゴウ,ロドルフ
(72)【発明者】
【氏名】セリオ,ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】オフラハーティ,サラ
(72)【発明者】
【氏名】フォーリー,マシュー
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD02
4B050LL01
4B065AA26X
4B065AA30Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA06
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA04
4C084CA53
4C084DC22
4C084MA16
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA721
4C084ZA722
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC411
4C084ZC412
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC56
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA66
4C087ZA70
4C087ZA72
4C087ZA75
4C087ZB26
4C087ZB35
4C087ZC21
4C087ZC35
4C087ZC41
(57)【要約】
本開示は、消化管を調節することに関する組成物及び方法を提供する。詳しくは、本開示は、特に、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、肝臓癌と結腸癌、及びClostridioides difficile感染症等の疾患の予防及び治療のために、胆汁酸ヒドロラーゼ(BSH)を使用して腸内細菌叢胆汁酸プールを選択的に調節するための新規治療戦略を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lactobacillusに由来する機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする異種遺伝子を含む工学的に操作された細菌細胞であって、前記胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする前記異種遺伝子が、少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす少なくとも1つの変異を含む、前記細菌細胞。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす前記少なくとも1つの変異が、前記機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼの胆汁酸基質特異性を変化させる、請求項1に記載の工学的操作細胞。
【請求項3】
前記胆汁酸塩基質が、GCDCA、GCA、TCA、TCDCA、TLCA、TDCA、TUDCA、GLCA、GDCA、GUDCA、FCA、FCDCA、FLCA、FDCA、FUDCA、LCA、LCDCA、LLCA、LDCA、LUDCA、YCA、YCDCA、YLCA、YDCA、YUDCA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の工学的操作細胞。
【請求項4】
前記胆汁酸基質が、GCA、TCA、またはTCDCAである、請求項1または請求項2に記載の工学的操作細胞。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアミノ酸置換が、GQD、IPA、及び/またはAMIのペプチドモチーフで存在する少なくとも1つの置換を含む、請求項1~4のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項6】
前記異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を含む、請求項1~5のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項7】
前記異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも95%の同一性を含む、請求項1~5のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項8】
前記異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、23、25、27、29、41、43、51、61、69、71、73、85、93、97、103、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を含む、請求項1~5のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項9】
前記異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、23、25、27、29、41、43、51、61、69、71、73、85、93、97、103、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも95%の同一性を含む、請求項1~5のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項10】
前記細胞が、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Brevibacteria、Clostridium、Enterococcus、Escherichia coli、Lactobacillus、Lactococcus、Saccharomyces、Staphylococcus及びStreptococcusという属のうちの1つから選択される、請求項1~9のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項11】
前記細胞が、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、Bacteroides fragilis、Bacteroides subtilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Clostridium butyricum、Enterococcus faecium、Escherichia coli、Escherichia coli Nissle、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius Lactobacillus fermentum、Lactobacillus delbrueckii、Lactococcus lactis、及びSaccharomyces boulardiiという種のうちの1つから選択される、請求項1~10のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項12】
前記細胞が、L.acidophilus NCFM、L.acidophilus La-14、L.casei Lc11、L.crispatus NCK1350、L.crispatus NCK1351、L.crispatus DNH-429、L.gasseri ATCC33323、L.gasseri NCK1338、L.gasseri NCK1340、L.gasseri NCK1341、L.gasseri NCK1342、L.gasseri NCK1343、L.gasseri Lg-36、L.gasseri NCK2140、L.gasseri NCK2141、L.gasseri JV V03、L.plantarum Lp-115、L.johnsonii NCK948、L.johnsonii NCK957、L.johnsonii NCK964、L.johnsonii NCK979、L.johnsonii NCK1370、L.johnsonii NCK2677、L.johnsonii NCC 533 L.plantarum Lpc-37、L.plantarum Lp115、L.rhamnosus HN001、L.rhamnosus GG、L.rhamnosus Lr-32、L.reuteri 1E1、L.salivarius Ls-33、L.salivarius NCK1352、L.salivarius NCK1355、B.lactis BL-04、B.lactis Bb-02、B.lactis Bl-04、B.lactis Bi-07、B.breve Bb-03、B.bifidum Bb-06、B.longum Bl-05、B.longum sp infantis Bi-26.という株、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つから選択される、請求項1~10のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項13】
前記細胞が、疾患または状態と関連する少なくとも1つの生理的パラメータを改善することを必要とする対象に治療用組成物の一部として投与された場合に、そのような改善をする、請求項1~12のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項14】
前記疾患または状態が、胆汁酸調節異常と関連する、請求項13に記載の工学的操作細胞。
【請求項15】
前記疾患または状態が、心血管疾患、代謝性疾患、肝疾患、肝硬変、がん、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、抗生物質関連下痢、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及びClostridioides difficile感染症からなる群から選択される、請求項13または請求項14に記載の工学的操作細胞。
【請求項16】
前記疾患または状態が、Clostridioides difficile感染症と関連し、前記治療用組成物を投与することにより前記Clostridioides difficile感染症が治療される、請求項13~15のいずれかに記載の工学的操作細胞。
【請求項17】
Lactobacillusに由来する機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする異種遺伝子を含む工学的に操作された細菌細胞であって、前記胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする前記異種遺伝子が、少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす少なくとも1つの変異を含む、前記細菌細胞と、
薬学的に許容される担体または添加剤とを含む、
医薬組成物であって、
前記組成物の投与により、対象における少なくとも1つの生理的パラメータが改善される、前記医薬組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす前記少なくとも1つの変異が前記機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼの胆汁酸基質特異性を変化させる、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記胆汁酸基質が、GCDCA、GCA、TCA、TCDCA、TLCA、TDCA、TUDCA、GLCA、GDCA、GUDCA、FCA、FCDCA、FLCA、FDCA、FUDCA、LCA、LCDCA、LLCA、LDCA、LUDCA、YCA、YCDCA、YLCA、YDCA、YUDCA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17または請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を含む、請求項17~19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記細胞が、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、Bacteroides fragilis、Bacteroides subtilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Clostridium butyricum、Enterococcus faecium、Escherichia coli、Escherichia coli Nissle、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius Lactobacillus fermentum、Lactobacillus delbrueckii、Lactococcus lactis、及びSaccharomyces boulardiiという種のうちの1つから選択される、請求項17~20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
前記対象への前記組成物の前記投与により、疾患または状態と関連する少なくとも1つの生理的パラメータが改善される、請求項17~21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
前記疾患または状態が、胆汁酸調節異常と関連する、請求項17~22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
前記疾患または状態が、心血管疾患、代謝性疾患、肝疾患、肝硬変、がん、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、抗生物質関連下痢、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及びClostridioides difficile感染症からなる群から選択される、請求項17~23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
前記疾患または状態が、Clostridioides difficile感染症と関連し、前記組成物を投与することにより前記Clostridioides difficile感染症が治療される、請求項17~23のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
少なくとも1つの胆汁酸を調節することを、それを必要とする対象において行う方法であって、
Lactobacillusに由来する機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする異種遺伝子を含む工学的に操作された細菌細胞であって、前記胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする前記異種遺伝子が、前記機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼの胆汁酸基質特異性を変化させる少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす少なくとも1つの変異を含む、前記細菌細胞と、薬学的に許容される担体または添加剤とを含む治療用組成物を投与することを含み、
前記組成物の投与により、前記少なくとも1つの胆汁酸を調節して対象における少なくとも1つの生理的パラメータが改善される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月7日に出願された米国仮出願第62/844,518号に対する優先権及び利益を主張するものであり、あらゆる目的のために参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
出願時に同時に提出された、2020年5月7日作成の「37733-601_ST25」という名前の1つの237キロバイトのASCII(テキスト)ファイルとして識別される、コンピュータで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸の配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、消化管を調節することに関する組成物及び方法を提供する。詳しくは、本開示は、特に、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、肝臓癌と結腸癌、及びClostridioides difficile感染症等の疾患の予防及び治療のために、胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)を使用して腸内細菌叢胆汁酸プールを選択的に調節するための新規治療戦略を提供する。
【0004】
〔背景技術〕
胆汁酸とも呼ばれる胆汁酸塩は、腸内全体の微生物組成の影響因子及び調節因子としてヒト消化管において重要な役割を果たす。場合によっては、様々な種類の胆汁酸塩(抱合、非抱合を問わない)が腸管の胆汁酸塩プールを構成し、この混合組成が、大腸マイクロバイオームの属、種、及び株の含量に影響を与える。結果として、腸の健康のいくつかの特性は、ヒト腸内の胆汁酸塩組成の影響を直接及び間接的に受ける。例えば、ある胆汁酸塩は、疾患(例えば、Clostridium difficile感染症)の発症を助長し得、また別の胆汁酸塩は、病原体の発症または残存性を予防し得る。したがって、インビボで胆汁酸プールを直接変化させて調節し、ヒトの健康を導いてさらに促進するよう能動的に腸内マイクロバイオームの組成をシフトさせる、機能的に重要で、影響力の大きい胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)を定義する必要がある。
【0005】
〔発明の概要〕
本開示の実施形態には、Lactobacillusに由来する機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする異種遺伝子を含む工学的に操作された細菌細胞が含まれる。これらの実施形態によれば、胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする異種遺伝子は、少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす少なくとも1つの変異を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす少なくとも1つの変異は、機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼの胆汁酸基質特異性を変化させる。いくつかの実施形態では、胆汁酸塩基質は、GCDCA、GCA、TCA、TCDCA、TLCA、TDCA、TUDCA、GLCA、GDCA、GUDCA、FCA、FCDCA、FLCA、FDCA、FUDCA、LCA、LCDCA、LLCA、LDCA、LUDCA、YCA、YCDCA、YLCA、YDCA、YUDCA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、胆汁酸基質は、GCA、TCA、またはTCDCAである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸置換は、GQD、IPA、及び/またはAMIのペプチドモチーフで存在する少なくとも1つの置換を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を含む。いくつかの実施形態では、異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも95%の同一性を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、23、25、27、29、41、43、51、61、69、71、73、85、93、97、103、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を含む。いくつかの実施形態では、異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、23、25、27、29、41、43、51、61、69、71、73、85、93、97、103、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも95%の同一性を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、細胞は、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Brevibacteria、Clostridium、Enterococcus、Escherichia coli、Lactobacillus、Lactococcus、Saccharomyces、Staphylococcus及びStreptococcusという属のうちの1つから選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、Bacteroides fragilis、Bacteroides subtilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Clostridium butyricum、Enterococcus faecium、Escherichia coli、Escherichia coli Nissle、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius Lactobacillus fermentum、Lactobacillus delbrueckii、Lactococcus lactis、及びSaccharomyces boulardiiという種のうちの1つから選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、細胞は、L.acidophilus NCFM、L.acidophilus La-14、L.casei Lc11、L.crispatus NCK1350、L.crispatus NCK1351、L.crispatus DNH-429、L.gasseri ATCC33323、L.gasseri NCK1338、L.gasseri NCK1340、L.gasseri NCK1341、L.gasseri NCK1342、L.gasseri NCK1343、L.gasseri Lg-36、L.gasseri NCK2140、L.gasseri NCK2141、L.gasseri JV V03、L.plantarum Lp-115、L.johnsonii NCK948、L.johnsonii NCK957、L.johnsonii NCK964、L.johnsonii NCK979、L.johnsonii NCK1370、L.johnsonii NCK2677、L.johnsonii NCC 533 L.plantarum Lpc-37、L.plantarum Lp115、L.rhamnosus HN001、L.rhamnosus GG、L.rhamnosus Lr-32、L.reuteri 1E1、L.salivarius Ls-33、L.salivarius NCK1352、L.salivarius NCK1355、B.lactis BL-04、B.lactis Bb-02、B.lactis Bl-04、B.lactis Bi-07、B.breve Bb-03、B.bifidum Bb-06、B.longum Bl-05、B.longum sp infantis Bi-26.という株、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つから選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、細胞は、疾患または状態と関連する少なくとも1つの生理的パラメータを改善することを必要とする対象に治療用組成物の一部として投与された場合に、そのような改善をする。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、胆汁酸調節異常と関連する。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、心血管疾患、代謝性疾患、肝疾患、肝硬変、がん、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、抗生物質関連下痢、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及びClostridioides difficile感染症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、Clostridioides difficile感染症と関連し、治療用組成物を投与することによりClostridioides difficile感染症が治療される。
【0012】
本開示の実施形態には、Lactobacillusに由来する機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする異種遺伝子を含む工学的に操作された細菌細胞であって、胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする異種遺伝子が、少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす少なくとも1つの変異を含む、細菌細胞と、薬学的に許容される担体または添加剤とを含む医薬組成物も含まれる。これらの実施形態によれば、組成物の投与により、対象における少なくとも1つの生理的パラメータが改善される。
【0013】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす少なくとも1つの変異は、機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼの胆汁酸基質特異性を変化させる。いくつかの実施形態では、胆汁酸基質は、GCDCA、GCA、TCA、TCDCA、TLCA、TDCA、TUDCA、GLCA、GDCA、GUDCA、FCA、FCDCA、FLCA、FDCA、FUDCA、LCA、LCDCA、LLCA、LDCA、LUDCA、YCA、YCDCA、YLCA、YDCA、YUDCA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、異種胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子によりコードされるポリペプチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113からなる群から選択される野生型胆汁酸塩ヒドロラーゼポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、Bacteroides fragilis、Bacteroides subtilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Clostridium butyricum、Enterococcus faecium、Escherichia coli、Escherichia coli Nissle、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius Lactobacillus fermentum、Lactobacillus delbrueckii、Lactococcus lactis、及びSaccharomyces boulardiiという種のうちの1つから選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、対象への組成物の投与により、疾患または状態と関連する少なくとも1つの生理的パラメータが改善される。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、胆汁酸調節異常と関連する。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、心血管疾患、代謝性疾患、肝疾患、肝硬変、がん、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、抗生物質関連下痢、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及びClostridioides difficile感染症からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、Clostridioides difficile感染症と関連し、組成物を投与することによりClostridioides difficile感染症が治療される。
【0015】
本開示の実施形態には、少なくとも1つの胆汁酸を調節することを、それを必要とする対象において行う方法も含まれる。これらの実施形態によれば、方法には、Lactobacillusに由来する機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする異種遺伝子を含む工学的に操作された細菌細胞であって、胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする異種遺伝子が、機能的胆汁酸塩ヒドロラーゼの胆汁酸基質特異性を変化させる少なくとも1つのアミノ酸置換をもたらす少なくとも1つの変異を含む、細菌細胞と、薬学的に許容される担体または添加剤とを含む治療用組成物を投与することが含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの胆汁酸を調節することによって対象における少なくとも1つの生理的パラメータを改善する。
【0016】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕胆汁酸塩ヒドロラーゼは腸肝軸において循環抱合胆汁酸に作用する。(A)肝臓で合成されて胆嚢に貯蔵された胆汁酸(BA)は、十二指腸を通って小腸に入り、そこではミリモル濃度に達する。BAの大部分(95%)は回腸で再吸収され、門脈を通って再び肝臓へ循環する。残りの集団は、引き続き再吸収されながら通過して結腸へ向かい、少量(<5%)が糞便を介して排出される。再循環BAは宿主組織に腸の外部で接近し、宿主生理に対する全身的作用を付与する。(B)BSHは、抱合BAのアミド結合を切断して胆汁酸プールを開放し、複雑さを増大させる。腸内細菌叢により脱抱合BAに対して追加の化学が作用して二次BAプールが生成され、これが、腸肝循環に入って肝臓で再び抱合され得る。(C)B.longum、E.faecalis、L.salivarius、及びC.perfringensからの単量体BSHのオーバーレイ。CpBSHの活性部位において加水分解されたタウロデオキシコール酸塩(TDCA)は、他の構造と比較してペプチド骨格の変異を最も含むいくつかのループにより配位している(Foley,et al.2019)。
【0017】
図2〕抱合胆汁酸の存在下でのLactobacillus株のハイスループットスクリーニング。Lactobacillus株をBSHプレート沈殿アッセイで使用し、(A)MRS培地、それに(B)0.2%TDCAを添加したもの、及び(C)0.2%GDCA添加したものに播種した。ハローは、活性BSHを有するlactobacilliを表す。株詳細は、各プレートの上段左隅から順に以下のとおりである:L.acidophilus NCFM、L.casei ATCC334、L.pentosus DSM20314、L.rhamnosus LGG、L.bucherni CD034、L.jenseni DSM20557、L.gasseri NCK99、L.gasseri ATCC33323、L.gasseri NCK335、L.gasseri NCK1338、L.gasseri NCK1339、L.gasseri NCK1340、L.gasseri NCK1341、L.gasseri NCK1342、L.gasseri NCK1343、L.gasseri NCK1344、L.gasseri NCK1345、L.gasseri NCK1346、L.gasseri NCK1347、L.gasseri NCK1348、L.gasseri NCK1349、L.gasseri NCK1557、L.gasseri NCK2140、L.gasseri NCK2141及びL.gasseri JV V03。
【0018】
図3〕170のLactobacillus種の系統樹へのBSHタンパク質マッピング(O’Flaherty et al.2018)。群の色は先に記載されているものに従う:Lactobacillus animalis群は紫色で示され、Lactobacillus vaginalis群は緑で、Lactobacillus buchneri群は赤で、Lactobacillus rhamnosus群は黄色で、Lactobacillus acidophilus群はえび茶色で、Lactobacillus gasseri群は青色で示されている。内側のメタデータレイヤーは、Duar et al.(2017)に記載のような生活習慣名称をマッピングしている。外側のメタデータレイヤーは、170のLactobacillus種のそれぞれについてのBSHタンパク質及びPVAタンパク質の有無をマッピングしている。
【0019】
図4〕bshの多様性及び特性解析のサンプリング。95%同一性閾値で490のBSHから濃縮した、57のCD-HITクラスターからのlactobacilli BSHの系統樹。2つの主なクレードが黒及び緑で示されている。複数のBSHが単一株によりコードされ得、いくつかのクラスターに属する複数のBSHをコードする種もある。L.acidophilus株は、異なるクラスターに属する2つのBSHをコードする(O’Flaherty et al.2018。
【0020】
図5A〕Lactobacilli BSHは、抱合胆汁酸に対する選択性のばらつきを示す。モデルのLactobacilli株からのBSH活性を評価するため、L.johnsoniiのbshA、bshB及びbshC(それぞれ、LjBSHa、LjBSHb、及びLjBSHc)を精製し、それらの具体的な活性と最適pHをニンヒドリンアッセイで決定した。試験した酵素は、グリコ抱合型及びタウロ抱合型の胆汁酸ならびに酸性条件に対する異なる選択性を示した。
【0021】
図5B〕Lactobacilli BSHは、抱合胆汁酸に対する選択性のばらつきを示す。BSHアミノ酸配列の保存分析。クラスター化したデータセットの57のクラスターからの代表的BSHタンパク質のアラインメントを、保存されたアミノ酸モチーフについて分析した。0.75以上の保存スコアは破線で示されている。モチーフ及び保存されたアミノ酸をWebLogoで示している。アスタリスクは、O’Flaherty et al.,2018からの、先に記載されている保存された活性部位残基を示す。
【0022】
図5C〕Lactobacilli BSHは、抱合胆汁酸に対する選択性のばらつきを示す。CpBSH活性部位及び加水分解されたTDCAのクローズアップ構造図。活性部位ポケット内での保存された触媒的に重要な残基の位置を示すために、それらを強調表示している。
【0023】
図6〕セフォペラゾンで処置したCDIマウスモデルでのLactobacillus定着。実験タイムラインの概要。簡単に言えば、マウスを、セフォペラゾン含有飲料水で5日間処置した。2日間の洗浄の後、マウス(n=16)に、10CFUのリファンピシン耐性Lactobacillusを強制経口投与した。記載されている日に100μg/mLのリファンピシン添加LBS寒天に糞便を播種してコロニー形成をモニターした。
【0024】
図7〕A~Fは、抗生物質処置したマウスモデルでのLactobacillus細菌量である。Lactobacillus種の経時的コロニー形成レベルがCFU/g糞便で示されている。破線は、検出限界を示す。常在Lactobacillusをリファンピシン欠如LBS寒天で計数した。
【0025】
図8A〕異なるLactobacillus株の投与により、7日後に別個の構造の腸内細菌叢がもたらされる。16S rRNA遺伝子のV4領域のシーケンシングを使用して、LAB定着マウスの便と盲腸の試料内の分類学的多様性を特徴付けした。Bray-Curtisの距離に基づく非計量多次元尺度構成法による序列化を使用して、マウスの細菌叢がセフォペラゾン処置から回復する際の、LAB処置群の細菌叢のβ-多様性を視覚化した。7日目における盲腸の群衆の相違は、LAB定着が、抗生物質による混乱後の腸内細菌叢の集合を変化させることを示唆している。
【0026】
図8B〕異なるLactobacillus株の投与により、7日後に別個の構造の腸内細菌叢がもたらされる。LAB定着マウス間の群衆構造の相違を、7日目の盲腸試料中の細菌の門の相対的存在量を評価することによって詳細に記載した。Firmicutes、Bacteroidetes、及びProteobacteriaがLAB処置をしないマウスの細菌叢で優勢であった。しかしながら、L.acidophilusの定着はBacteroidetesの復帰を抑制し、またL.gasseriは、Proteobacteriaの復帰を抑制した。
【0027】
図9〕E.coli由来組換えBSHの過剰発現及び精製。(A、B)L.acidophilus NCFM(LaBSHa及びLaBSHb)及び(C)L.gasseri ATCC33323の株のBSH活性をさらに評価するため、BSH(LgBSHa及びLgBSHb)をEscherichia coli株BL21(λDE3)に組換えにより発現させ、コバルトカラムでC末端Hisタグ精製を使用して精製した。精製BSHタンパク質は、タンパク質分子量、タンパク質ラダー標準、及びゲルを用いてSDS-PAGEで視覚化される。
【0028】
図10〕LactobacillusのBSHは、胆汁酸抱合に対し様々な選択性を示す。組換えにより発現させ精製した(A)LaBSHa、(B)LaBSHb、(C)LgBSHa、及び(D)LgBSHbの平均比活性を、抱合胆汁酸パネルでのニンヒドリンアッセイにより決定した。エラーバーは、独立した実験(n=3)からのs.d.を表す。
【0029】
図11〕精製BSH及びそれらの最適pH。(A)LaBSHa、(B)LaBSHb、(C)LgBSHa、及び(D)LgBSHbの、それぞれの好ましい基質とのpH条件範囲全体にわたる比活性。
【0030】
図12〕L.acidophilusのbshA及びbshBは、基質依存的に胆汁酸解毒に寄与する。胆汁酸存在下でのBSH変異体の増殖。L.acidophilus増殖中のBSH活性の役割を評価するため、BSHの単一変異体及び二重変異体を胆汁酸添加MRS培地で増殖させ、増殖をOD600nmで測定した。
【0031】
図13〕L.acidophilusのbshA及びbshBは、基質依存的及び濃度依存的に胆汁酸解毒に寄与する。胆汁酸存在下でのL.acidophilus bsh変異体の増殖は、(A)MRS培地単独ならびに胆汁酸(B)GCA、(C)TCA、(D)GCDCA、(E)TCDCA、(F)GDCA、及び(G)TDCAを添加した培地においてOD600nmで測定することにより評価した。各増殖の終点のCFUは図17Aに示されている。
【0032】
図14〕L.acidophilus及びL.gasseriの無菌C57BL/6マウスでの定着は、盲腸の脱抱合胆汁酸をわずかに増加させる。盲腸試料でターゲットメタボロミクスを実施して一次胆汁酸(A)CA、(B)CDCA、及び(C)α/βMCAを定量した。
【0033】
図15A〕胆汁酸の構造。胆汁酸の構造と本開示で使用される略語。
【0034】
図15B〕胆汁酸の臨界ミセル濃度(CMC)。本明細書で実験的に決定された胆汁酸の臨界ミセル濃度(CMC)。棒は、独立した実験(n=2)からの平均CMC±s.e.mを表す。
【0035】
図15C〕胆汁酸の臨界ミセル濃度(CMC)。Optimizer-BlueBALLSを使用してCMCを決定した。2つの独立した実験からの吸光度データを各分子の胆汁酸濃度に対してプロットした。Graphpad Prismを使用して標準的5パラメータロジスティック曲線適合を実施し、Log10EC50で表される各曲線の変曲点を計算することによりCMCを決定した。変曲点値は、平均±s.e.mを表す。
【0036】
図16〕脱抱合胆汁酸の野生型及びΔbshABの最小発育阻止濃度(MIC)。(A)BSHが欠失したL.acidophilus及びL.gasseriの(ΔbshAB)株を使用して、抱合及び脱抱合の胆汁酸のMICを決定した。(B)野生型及びΔbshABの脱抱合胆汁酸のみのMIC。棒は、独立した実験(n=3)からの平均MICを表す。
【0037】
図17〕BSHは、Lactobacillusの定着にBSH特異的及び胆汁酸特異的に影響を与える。(A)MRS、GCA、TCA、GCDCA、TCDCA、GDCA、またはTDCAで24時間増殖させたL.acidophilus及び(B)L.gasseriのBSH変異体。エラーバーは、独立した実験(n=4)からの標準偏差(s.d.)を表す。破線は、0時間における開始時のおよそのCFU/mLを示す。ΔbshAB株を機能的に補完するため、外因性の組換え型LaBSHaとLaBSHb(LaBSHab)またはLgBSHaとLgBSHb(LgBSHab)を、(A)L.acidophilus ΔbshABまたは(B)L.gasseri ΔbshABの増殖物と等モル量で培養物に添加した。
【0038】
図18〕BSH活性は、膜の統合性及び競合的動力学を胆汁酸特異的に変化させる。(A)(B)様々な胆汁酸に曝露されるかまたは熱殺菌された(HK)、対数中期まで増殖したLactobacillusの膜統合性を評価するためのヨウ化プロピジウム(PI)染色。正規化した蛍光は、バックグラウンドPIの蛍光を減算し、胆汁酸曝露開始時のOD600を基準として正規化することにより計算した。棒は、独立した実験(n=3)からの平均蛍光を表し、エラーバーは、s.d.を表す。(C)(D)様々な胆汁酸の存在下で嫌気的に24時間共培養したLactobacillusの競合指標。競合指標(CI)を以下のとおり計算した:CI=最終[Log10(ΔbshAB CFU)/Log10(野生型CFU)]/初期[Log10(ΔbshAB CFU)/Log10(野生型CFU)]。等モルのLaBSHaとLaBSHb(LaBSHab)またはLgBSHaとLgBSHb(LgBSHab)を培養0時間にて加えた。破線は、CI=0を示す。
【0039】
図19〕ノトバイオートマウスでの株定着は、株依存的にBSH活性により変化させられる。5~8週齢の無菌C57BL/6マウスの(A)L.acidophilus及び(B)L.gasseriの単独定着。0日目、1日目及び4日目に糞便を採取し、7日目にマウスを屠殺して、その盲腸を播種した(7c日目)。(C)野生型(RifR)株及びΔbshAB(StrR)株を使用したL.gasseriの共定着(co-colonization)。破線は、検出限界を示す。
【0040】
図20〕BSH特異性は、進化の関係を示す。(A)組換えにより発現させ精製したLAB BSHを、グリシン抱合胆汁酸及びタウリン抱合胆汁酸のパネルに対して脱抱合についてアッセイした。各BSHの比活性は、ニンヒドリンアッセイによってアミノ酸放出量を定量化することにより決定した。近隣結合法を使用して、各BSHの一次アミノ酸配列に基づいた系統樹を構築した。いくつかのBSHクレードは類似した基質特異性プロファイルを示し、これを使用して、BSHの活性を予測し、どの残基が基質特異性に寄与するのかを理解することができる。(B)各BSHの対応する配列番号(それぞれのアミノ酸同一性パーセントは>95%)。
【0041】
図21A〕BSH_1~21にCLUSTALW配列アラインメントを実施した。同一性には濃灰色で陰影を付け、類似性は黒枠で囲んでいる。抱合アミノ酸との推定的な相互作用領域は黒枠で囲んでいる。
【0042】
図21B〕(B)活性部位にGCA(濃灰色の球)があるLgBSHaの予測される構造。3つのアミノ酸を有する推定上の基質結合ループが濃灰色で強調表示されている。
【0043】
図21C〕推定上の基質結合ループにおけるLgBSHaの3つのキメラ変異体ならびにGCA及びTCAに対するそれらの相対的活性。
【0044】
図22〕BSH特異性を活用して、抱合胆汁酸基質依存的にClostridioides difficileを阻害することができる。(A)組換えにより発現させ精製したL.johnsonii BSHを、GCDCA及びTCDCAを用いて脱抱合についてアッセイした。各BSHの比活性は、ニンヒドリンアッセイによってアミノ酸放出量を定量化することにより決定した。(B)(C)GCDCA、TCDCA、またはCDCAと、精製したLjoBSHaもしくはLjoBSHcとの組み合わせを添加したBHIS培地におけるC.difficileの嫌気的増殖。
【0045】
図23〕セフォペラゾン処置マウスの盲腸のC.difficileエキソビボ増殖。BSH活性によりマウス盲腸内容物中で抑制性脱抱合胆汁酸が生成され、それがC.difficileの増殖を阻害した。
【0046】
〔発明を実施するための形態〕
本開示の実施形態では、消化管を調節することに関する組成物及び方法を提供する。詳しくは、本開示は、特に、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、肝臓癌と結腸癌、及びClostridioides difficile感染症等の疾患の予防及び治療のために、胆汁酸ヒドロラーゼ(BSH)を使用して腸内細菌叢胆汁酸プールを選択的に調節するための新規治療戦略を提供する。本開示の実施形態は、インビボでの胆汁組成を調節することができる重要な胆汁酸塩ヒドロラーゼの遺伝的及び機能的特徴の同定を容易にする。いくつかの実施形態では、Lactobacillus由来の有益なBSHは、健康を促進して感染を回避するために、工学的に操作されて他の腸管微生物へ送達される。
【0047】
消化管(GIT)常在細菌叢はヒトの健康にとって重要である。この微生物群集に対する変化は胆汁酸代謝に影響を与え、また肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、肝臓癌と結腸癌、及びClostridioides difficile感染症(CDI)を含む他のGI疾患の発症と関連する。これらの疾患の米国医療制度に対する負担は天文学的であり、2017年には肥満単独で$2370億ドルを上回っている。腸内細菌叢-胆汁酸プールを選択的に調整することができる新たな治療法は、上記疾患の予防及び治療のための新規戦略となる。
【0048】
胆汁酸は肝臓でコレステロールから合成され、リポタンパク質、グルコース、薬物、及びエネルギーの代謝に必須である。胆汁酸は、核内受容体ファルネソイドX受容体(FXR)及びGタンパク質共役受容体TGR5へのシグナル伝達分子として作用することを含めた様々な方法で、宿主生理機能を直接形成し得る。腸内細菌叢は、FXRを介した胆汁酸の代謝と合成の両方を調節することができる。一次胆汁酸は主にコール酸(CA)及びケノデオキシコール酸(chendeoxycholate)(CDCA)であり、宿主により作られ、グリシンまたはタウリンに抱合され得る。これらが小腸を通って進む際、胆汁酸の95%は腸肝系を介して回腸終末部で吸収され、大部分が抱合胆汁酸である(図1A)。大腸まで達する残りの胆汁酸は、腸内細菌叢構成菌によってさらに生体内変換を受け、脱水酸化されてデオキシコール酸塩(DCA)及びリトコール酸(LCA)等の二次胆汁酸になる。腸内細菌叢構成菌は、GIT全体にわたる胆汁酸代謝で必須の役割を果たす。
【0049】
二次胆汁酸は、再吸収されてグリシンまたはタウリンに抱合され得(例えば、GDCA、TDCA等)、これが胆汁酸プールの複雑さをさらに増大させる。GITにおいて最も多い抱合胆汁酸としては、タウロコール酸塩(TCA)、グリココール酸塩(GCA)、タウロケノデオキシコール酸塩(taurochendeoxycholate)(TCDCA)、グリコケノデオキシコール酸塩(glycochendeoxycholate)(GCDCA)、タウロデオキシコール酸塩(TDCA)及びグリコデオキシコール酸塩(GDCA)が挙げられる。胆汁酸塩ヒドロラーゼ(bsh)遺伝子をコードする腸内微生物は、抱合胆汁酸を脱抱合するかまたはそれからグリシン及びタウリンを切断して非抱合胆汁酸を生成することができる(例えば、タウロコール酸→タウリンとコール酸)。これは、微生物の胆汁酸代謝における重要な第一段階であり、これにより以降のすべての生体内変換がもたらされる(図1B)。抱合胆汁酸には両親媒特性があるため界面活性剤としてより効率的であり、これにより、胆汁酸代謝細菌の増殖を促進し、胆汁感受性細菌の増殖を低下させることによって腸内細菌叢をさらに形成することができる。したがって、これらの酵素を活用して胆汁酸プールを合理的に設計し、腸内細菌叢及び宿主代謝を変化させ、最終的に宿主の健康を形成することができる。胆汁酸を変化させる酵素が、疾患との関連においてどのようにして腸内細菌叢と宿主の両方を変化させることができるのかを検討した研究は少ない。
【0050】
Lactobacilliはプロバイオティクス製剤で広く使用されており、多くの場合、正常な常在腸内細菌叢を修復するために抗生物質と協調して用いられるが、それらがどのようにして宿主の健康を改善し、どのように腸内細菌叢を形成するのかの機序は、十分に解明されていない。最近の研究では、一部のプロバイオティクスは有害であり、抗生物質治療後の腸内細菌叢の回復を長期化させることが示されている。これについては引き続き議論があり、基礎にある機序を検討するにはさらなる研究が必要である。一部のLactobacillus株は、一次抱合胆汁酸及び二次抱合胆汁酸を脱抱合するBSH酵素をコードするbsh遺伝子を複数持っている。これらの酵素が胆汁酸を認識して、それに対して作用する分子基盤、及びこの活性がどのようにLactobacillusの定着とGIT環境に影響を与えるのかは現在のところ不明である。
【0051】
lactobacilli、Bifidobacterium、Clostridium、及びBacteroidesを含め、多くの腸内細菌はBSHをコードし、33を超える酵素が生化学的に特徴付けられている。しかしながら、これらの研究からは、BSH酵素学及び基質の特異性と認識の基礎にある、構造及び生化学の重要な情報が得られない。このことは、明らかにされている結晶構造が、Lactobacillus salivarius、Bifidobacterium longum、Enteroccocus faecalis、及びClostridium perfringensからの4つしかなく、それが唯一の酵素であり、基質がTDCAであるという事実によってさらに説明される(図1C)。いくつかのLactobacillus bsh変異株には抱合胆汁酸存在下での増殖上の欠陥があり、それらが、GITの胆汁耐性と定着に重要であることを示唆している。しかし、lactobacilliでの胆汁耐性試験は通常Oxgall存在下のインビトロで行われ、GIT中に存在する胆汁酸の組成または複雑さを模倣するものではない。さらに、以前の研究では、宿主の体重増加、脂質代謝、及び胆汁耐性の調節における腸内lactobacilliのBSH活性の重要性が強調されているが、これがどのようにして腸内細菌叢を変化させるのかは検討されておらず、その活性は、腸内細菌叢の組成を形成する変数であることが知られている。
【0052】
本明細書で記載されるように、現在のところ、宿主のGIの健康を修復するために、抗生物質治療後にプロバイオティクス栄養補助食品または生きた培養菌を含有するヨーグルトを摂取するというのが現状であるが、これがどのように宿主の健康を改善するのかを定義するメカニズム研究はない。一方、様々な疾患の予防及び治療のための前臨床試験及び臨床試験の異なる段階において、複数のプロバイオティクス製剤、すなわち、肥満のためのOptiBiotix Health製Lactobacillus plantarum、IBDのためのIntrexon製Lactococcus lactis、及びC.difficile感染症(CDI)患者を治療するためのBioK Plus製Lactobacillus株3種カクテルがある。
【0053】
マイクロバイオームの分野は前進していることから、肥満及び糖尿病ならびにCDIのような他のGI疾患を含む代謝性疾患を治療するために、定義された細菌カクテルまたは工学的に操作されたプロバイオティクス株を使用することができるであろうと期待される。しかしながら、これが現実の治療法となるまでに、プロバイオティクスの効果を評価するための十分に特徴付けされた頑健な系において基礎的メカニズム研究を行う必要がある。本開示の組成物及び方法は、微生物のBSHを、生理学的に関連する抱合胆汁酸に対する酵素活性増強のために確実に工学的操作をするための新規プラットフォームを使用することにより、現在利用可能な手法とは対照をなす。これらの新規合成コンストラクトを、十分に特徴付けされた系においてインビトロ及びインビボの両方で試験した。本明細書に詳述される結果は、この手法が、腸内の胆汁酸組成を変化させるために有効であり得、結果として、GI疾患及び代謝性疾患を調節するための治療上の基盤を提供することができることを示している。
【0054】
本項及び本明細書の開示全体で使用される項目見出しは構成のみを目的としており、限定することを意図しない。
【0055】
〔1.定義〕
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾がある場合は、定義を含め、本書類が優先する。好ましい方法及び材料を以下に記載するが、本開示の実施または試験においては本明細書に記載される方法及び材料と類似するかまたは均等のものを使用することができる。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、及び例は例示的なものに過ぎず、限定されることを意図しない。
【0056】
用語「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「有している(having)」、「有する(has)」、「することができる(can)」、「含有する(contain(s))」、及びそれらの変形は、本明細書で使用される場合、追加の行為または構造の可能性を除外しない、非限定的な移行句、用語、または語句であることが意図される。単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈で特に明確に指示されない限り、複数の指示対象が含まれる。本開示はまた、明示的な記載の有無を問わず、本明細書で提示される実施形態または要素「を含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」他の実施形態も意図する。
【0057】
本明細書の数値範囲の記述では、それらの間に介在する、同程度に正確な数値各々が明示的に意図される。例えば、6~9という範囲の場合、数値6及び9に加えて7及び8が意図され、6.0~7.0という範囲の場合、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が明示的に意図される。
【0058】
本明細書の数値範囲の記述では、それらの間に介在する、同程度に正確な数値各々が明示的に意図される。例えば、6~9という範囲の場合、数値6及び9に加えて7及び8が意図され、6.0~7.0という範囲の場合、数値6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、及び7.0が明示的に意図される。
【0059】
本明細書で使用される「と相関する」とは、「と比較して」ということを指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「動物」とは、任意の動物(例えば、哺乳類)を指し、これにはヒト、非ヒト霊長類、ブタ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット等)、ハエ等が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「非ヒト動物」とは、げっ歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、トリ等の脊椎動物等が含まれるが、これらに限定されない、あらゆる非ヒト動物を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合の用語「導入遺伝子」とは、(例えば、新たな受精卵または初期胚内に遺伝子を導入することにより)生物内に置かれた外来、異種、もしくは自己の遺伝子及び/またはその断片を指す。用語「外来遺伝子」とは、実験操作によって動物のゲノム内に導入された任意の核酸(例えば、遺伝子配列)を指し、これには、導入された遺伝子が、その天然に存在する遺伝子のある位置と同じ位置に存在しないのであれば、その動物に見出される遺伝子配列が含まれてよい。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「トランスジェニック動物」とは、導入遺伝子を含有している任意の動物を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「微生物」とは、典型的には単一細胞からなる、顕微鏡的、超顕微鏡的(submicroscopic)、または超顕微鏡的(ultramicroscopic)な大きさの生物または微生物を指す。微生物の例としては、細菌、酵母、ウイルス、寄生虫、真菌、特定の藻、及び原虫が挙げられる。いくつかの態様では、微生物は、1つ以上の治療用の目的分子またはタンパク質を産生するよう工学的に操作される(「工学的操作微生物」)。特定の態様では、微生物は、その環境から特定の代謝物または他の化合物を取り込んで異化するよう工学的に操作される。特定の態様では、微生物は、特定の有益な代謝物または他の化合物(合成または天然に存在する)を合成し、それらをその微生物の環境に放出するよう工学的に操作される。特定の実施形態では、工学的操作微生物は、工学的に操作された細菌である。特定の実施形態では、工学的操作微生物は、工学的に操作されたウイルスである。
【0065】
本明細書で使用される場合、「非病原性細菌」とは、宿主において疾患または有害な反応を引き起こす能力がない細菌を指す。いくつかの実施形態では、非病原性細菌は、グラム陰性菌である。いくつかの実施形態では、非病原性細菌は、グラム陽性菌である。いくつかの実施形態では、非病原性細菌は、リポ多糖(LPS)を含有していない。いくつかの実施形態では、非病原性細菌は、腸内常在細菌叢に存在する共生細菌である。非病原性細菌の例としては、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Brevibacteria、Clostridium、Enterococcus、Escherichia coli、Lactobacillus、Lactococcus、Saccharomyces、Streptococcus及びStaphylococcusの属に属する特定の株、例えば、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、Bacteroides fragilis、Bacteroides subtilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Clostridium butyricum、Enterococcus faecium、Escherichia coli、Escherichia coli Nissle、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius Lactobacillus fermentum、Lactobacillus delbrueckii、Lactococcus lactis、及びSaccharomyces boulardiiが挙げられるが、これらに限定されない。天然で病原性の細菌は、病原性を低下または消失させるよう遺伝子工学的に操作され得る。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「プロバイオティクス」は、生きている非病原性微生物、例えば、細菌であって、適切な量の微生物を含有する宿主生物に健康上の利益を付与することができるものを指して使用される。いくつかの実施形態では、宿主生物は、哺乳類である。いくつかの実施形態では、宿主生物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、プロバイオティクス細菌は、グラム陰性菌である。いくつかの実施形態では、プロバイオティクス細菌は、グラム陽性菌である。非病原性細菌のいくつかの種、株、及び/またはサブタイプが、現在プロバイオティクス細菌として認識されている。プロバイオティクス細菌の例としては、Bifidobacteria、Escherichia、Lactobacillus、Streptococcus及びSaccharomycesの属に属する特定の株、例えば、Bifidobacterium bifidum、Enterococcus faecium、Escherichia coli、Escherichia coli株Nissle、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus delbrueckii及びSaccharomyces boulardiiが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、株の例として、L.acidophilus NCFM、L.acidophilus La-14、L.casei Lc11、L.crispatus NCK1350、L.crispatus NCK1351、L.crispatus DNH-429、L.gasseri ATCC33323、L.gasseri NCK1338、L.gasseri NCK1340、L.gasseri NCK1341、L.gasseri NCK1342、L.gasseri NCK1343、L.gasseri Lg-36、L.gasseri NCK2140、L.gasseri NCK2141、L.gasseri JV V03、L.plantarum Lp-115、L.johnsonii NCK948、L.johnsonii NCK957、L.johnsonii NCK964、L.johnsonii NCK979、L.johnsonii NCK1370、L.johnsonii NCK2677、L.johnsonii NCC 533 L.plantarum Lpc-37、L.plantarum Lp115、L.rhamnosus HN001、L.rhamnosus GG、L.rhamnosus Lr-32、L.reuteri 1E1、L.salivarius Ls-33、L.salivarius NCK1352、L.salivarius NCK1355、B.lactis BL-04、B.lactis Bb-02、B.lactis Bl-04、B.lactis Bi-07、B.breve Bb-03、B.bifidum Bb-06、B.longum Bl-05、B.longum sp infantis Bi-26.、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
プロバイオティクスは、細菌の変異型または変異株であり得る。非病原性細菌は、所望の生物学的特性、例えば、生存性を、増強させるかまたは改善するよう遺伝子工学的に操作され得る。非病原性細菌は、プロバイオティクス特性を提供するよう遺伝子工学的に操作され得る。プロバイオティクス細菌は、プロバイオティクス特性を増強させるかまたは改善するよう遺伝子工学的に操作またはプログラムされ得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「組換え細菌細胞」または「組換え細菌」とは、細菌細胞または細菌で、それらの天然状態から遺伝的に修飾されているものを指す。例えば、組換え細菌細胞は、それらのDNA内に導入されている、ヌクレオチド挿入、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド再構成、及びヌクレオチド修飾を有し得る。これらの遺伝的修飾は、細菌もしくは細菌細胞の染色体内、または細菌もしくは細菌細胞のプラスミド上に存在し得る。本明細書に開示される組換え細菌細胞は、プラスミドに外来ヌクレオチド配列を含み得る。別法として、組換え細菌細胞は、それらの染色体内に安定して組み込まれた外来ヌクレオチド配列を含み得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子導入系」とは、核酸配列を含む組成物を細胞または組織に送達する任意の手段を指す。例えば、遺伝子導入系としては、ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び他の核酸を用いた送達系)、裸核酸のマイクロインジェクション、ポリマーを用いた送達系(例えば、リポソームを用いた系及び金属粒子を用いた系)、遺伝子銃によるインジェクション等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、用語「ウイルス遺伝子導入系」とは、所望の細胞または組織への試料の送達を容易にする、ウイルスエレメント(例えば、無傷ウイルス、改変ウイルス及びウイルス構成成分、例えば、核酸またはタンパク質)を含む遺伝子導入系を指す。本明細書で使用される場合、用語「アデノウイルス遺伝子導入系」とは、Adenoviridae科に属する無傷または改変されたウイルスを含む遺伝子導入系を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「核酸分子」とは、DNAまたはRNAが含まれるが、これらに限定されない、任意の核酸含有分子を指す。この用語には、4-アセチルシトシン、8-ヒドロキシ-N6-メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、シュードイソシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルアデニン、1-メチルシュードウラシル、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルケウオシン、5’-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、オキシブトキソシン、プソイドウラシル、ケウオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、プソイドウラシル、ケウオシン、2-チオシトシン、及び2,6-ジアミノプリン等、これらに限定されないDNA及びRNAの既知の塩基類似体のいずれかが含まれている配列が包含される。
【0071】
用語「遺伝子」とは、ポリペプチド、前駆体、またはRNA(例えば、rRNA、tRNA)の生成に必要なコード配列を含む核酸(例えば、DNA)配列を指す。ポリペプチドは、全長配列または断片の所望の活性または機能特性(例えば、酵素活性、リガンド結合性、シグナル伝達、免疫原性等)が保持される限りにおいては、全長コード配列によるか、またはコード配列の任意の部分によりコードされ得る。用語はまた、構造遺伝子のコード領域、及びかかるコード領域に5’末端と3’末端の両方で隣接して位置し、遺伝子が完全長mRNAの長さに相当するよういずれの末端でも約1kb以上の距離にわたる配列をも包含する。コード領域の5’に位置し、mRNA上に存在する配列は、5’非翻訳配列と呼ばれる。コード領域の3’または下流に位置し、mRNA上に存在する配列は、3’非翻訳配列と呼ばれる。用語「遺伝子」には、cDNA及びゲノムの両方の遺伝子形態が包含される。遺伝子のゲノム形態またはクローンは、「イントロン」または「介在領域」または「介在配列」と呼ばれる非コード配列で中断されているコード領域を含有する。イントロンは、核内RNA(hnRNA)へと転写される遺伝子のセグメントであり、イントロンは、エンハンサー等の調節エレメントを含有し得る。イントロンは、核内または一次転写産物から除去または「切り出」され、したがって、メッセンジャーRNA(mRNA)転写産物にはイントロンは存在しない。mRNAは、翻訳中、新生ポリペプチドにおける配列またはアミノ酸の順序を指定する機能を果たす。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「異種遺伝子」とは、その天然環境に置かれていない遺伝子を指す。例えば、異種遺伝子には、ある種から別の種へ導入された遺伝子が含まれる。異種遺伝子にはまた、何らかの方法で改変されている、生物にとって天然である遺伝子(例えば、変異、複数コピーでの付加、非天然制御配列への連結等が行われているもの)も含まれる。異種遺伝子は内在性遺伝子とは区別され、異種遺伝子配列は典型的には、天然では、染色体においてその遺伝子配列と関連して見出されることがないかまたは天然では見出されない染色体部分と関連しているDNA配列に連結されている(例えば、その遺伝子が通常は発現されない遺伝子座で発現されている)。
【0073】
本明細書で使用される場合、「非天然」核酸配列とは、通常は細菌に存在しない核酸配列、例えば、過剰コピーの内在性配列、あるいは異なる種、株、もしくは亜株の細菌からの配列であるかまたは同じサブタイプの細菌からの未修飾配列と比較して修飾及び/または変異が行われている配列等の異種配列を指す。いくつかの実施形態では、非天然核酸配列は、合成された天然には存在しない配列である。非天然核酸配列は、調節領域、プロモーター、遺伝子、及び/または遺伝子カセットにした1つ以上の遺伝子であり得る。いくつかの実施形態では、「非天然」とは、2つ以上の核酸配列で、互いに天然では同じ関係では見出されることのないものを指す。非天然核酸配列は、プラスミドまたは染色体に存在し得る。さらに、任意の調節領域、プロモーター、遺伝子、及び/または遺伝子カセットの複数コピーが細菌内に存在してよく、かかる調節領域、プロモーター、遺伝子、及び/または遺伝子カセットの1つ以上のコピーを、本明細書に記載のように変異させるか、そうでなければ変化させてよい。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、コピー数を増大させるため、または複数の異なる機能を実行する遺伝子カセットの複数の異なる構成成分を含めるために、同じ調節領域、プロモーター、遺伝子、及び/または遺伝子カセットの複数コピーを含むよう工学的に操作される。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子工学的操作細菌は、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子であって、天然では前記遺伝子と関連していない誘導性プロモーター、例えば、胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする遺伝子に機能的に連結されているFNRプロモーターに、直接または間接的に機能的に連結されている、遺伝子を含む。
【0074】
本明細書で使用される場合、「機能的に連結されている」とは、核酸配列、例えば、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子であって、その核酸配列の発現を可能にするよう、例えば、シスで作用するように、調節領域配列に連結されているものを指す。調節領域は、目的遺伝子の転写を導くことができる核酸であり、これは、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答配列、タンパク質認識部位、誘導性エレメント、プロモーター制御エレメント、タンパク質結合配列、5’及び3’の非翻訳領域、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、ならびにイントロンを含み得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」とは、コード配列またはコード遺伝子の発現を制御する能力があるヌクレオチド配列を指す。プロモーターは一般に、それらが制御する配列の5’に位置する。プロモーターは、その全体が天然遺伝子由来であり得る、もしくは天然に見出されるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成され得る、及び/または合成ヌクレオチドセグメントを含み得る。当業者は、特定の刺激に、例えば、細胞または組織に特異的に応答するか、異なる環境もしくは生理的な条件に応答するか、または特定の化合物に応答して、異なるプロモーターがコード配列またはコード遺伝子の発現を制御し得ることを容易に確認するであろう。原核生物のプロモーターは典型的には、誘導性プロモーター及び構成的プロモーターという2つのクラスに分類される。
【0076】
「単離されたオリゴヌクレオチド」または「単離されたポリヌクレオチド」のように、核酸と関連して使用される「単離された」という用語は、核酸配列であって、その天然の供給源において通常は会合している少なくとも1つの構成成分または混入汚染物質から同定され、分離された核酸配列を指す。単離された核酸は、それが天然において見出される場合とは異なる形態または状況で存在する。対照的に、非単離核酸は、DNA及びRNA等の核酸で、天然においてそれらが存在している状態で見出されるものである。例えば、所与のDNA配列(例えば、遺伝子)は、宿主細胞染色体上で隣接遺伝子に近接して見出され、特定のタンパク質をコードする特定のmRNA配列等のRNA配列は、多数のタンパク質をコードする他の多数のmRNAとの混合物として細胞内に見出される。しかしながら、所与のタンパク質をコードする単離された核酸には、例として、通常はその所与のタンパク質を発現している細胞における核酸であって、天然細胞の染色体上の位置とは異なる位置にあるか、そうでなければ、天然に見出される場合とは異なる核酸配列が隣接しているような核酸が含まれる。単離された核酸、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の形態で存在し得る。あるタンパク質を発現させるために単離された核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを使用しようとする場合、かかるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドには最低限センス鎖またはコード鎖が含有される(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは一本鎖であり得る)が、センス鎖とアンチセンス鎖の両方が含有される(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは二本鎖であり得る)場合がある。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「精製された」または「精製すること」とは、試料からの構成成分(例えば、汚染物質)の除去を指す。例えば、抗体は、免疫グロブリンではない汚染タンパク質の除去によって精製され、また、標的分子に結合しない免疫グロブリンの除去によっても精製される。免疫グロブリンではないタンパク質の除去及び/または標的分子に結合しない免疫グロブリンの除去により、試料中の標的反応性免疫グロブリンの割合増加がもたらされる。別の例では、組換えポリペプチドは細菌宿主細胞で発現され、宿主細胞タンパク質の除去によってそのポリペプチドが精製され、それにより、試料中の組換えポリペプチドの割合が増加する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は本明細書では同じ意味で使用され、哺乳類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、及びマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル、チンパンジー等のようなサル)ならびにヒト)が含まれるが、これらに限定されない任意の脊椎動物を指す。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトでも非ヒトでもあり得る。一実施形態では、対象は、ヒトである。対象または患者は、様々な形態の治療を受け得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療すること」または「治療」はそれぞれ本明細書では同じ意味で使用され、そのような用語が適用される疾患及び/または損傷あるいはそのような疾患の1つ以上の症状の進行を、回復させること、軽減すること、または阻害することを表す。用語はまた、対象の状態に応じ、疾患を予防することも指し、疾患の発症を予防すること、または疾患と関連する症状を予防することが含まれる。治療は、急性的にも慢性的にも実施され得る。用語はまた、疾患の重症度またはそのような疾患と関連する症状を、その疾患に罹患する前に低減することも指す。罹患前の疾患の重症度についてのそのような予防または低減とは、治療実施の時点ではその疾患に罹患していない対象に治療を行うことを指す。「予防すること」はまた、疾患またはそのような疾患と関連する1つ以上の症状の再発を予防することも指す。
【0080】
本明細書で別段定義されない限り、本開示との関連で使用される科学用語及び技術用語は当業者が共通して理解する意味を持つものとする。例えば、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質及び核酸の化学及びハイブリダイゼーションとの関連で使用される任意の術語及びそれらに関する技術は、当該技術分野で周知の一般的に使用されるものである。用語の意味及び範囲は明確であるはずであるが、潜在的に曖昧性がある場合は、いかなる辞書または外的定義よりも本明細書で提供される定義が先行する。さらに、文脈で他の意味に解釈すべき場合を除き、単数形の用語には複数形が含まれるものとし、複数形の用語には単数形が含まれるものとする。
【0081】
〔2.組成物及び方法〕
本開示の実施形態には、遺伝子工学的操作微生物、その医薬組成物、ならびに胆汁酸塩及び/または胆汁酸と関連する障害を治療する方法が含まれる。具体的には、本明細書に開示される組換え細菌は、対象の細菌叢を調節するよう工学的に操作されている。これらの組換え細菌は、安全かつ忍容性が高く、対象のマイクロバイオームの先天的活性を増強させて治療効果を達成する。
【0082】
本開示の実施形態には、BSH酵素で、天然に存在する酵素及び天然には存在しない酵素のいずれも含まれる。天然には存在しないBSH酵素としては、組換え体、変異体、キメラ、融合タンパク質、タグ付きのペプチド/ポリペプチド等、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本開示の天然には存在しないBSH酵素には、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113のいずれかのアミノ酸配列と、少なくとも1つのアミノ酸置換とを有するポリペプチドが含まれ得る。本開示の天然には存在しないBSH酵素には、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113のいずれかのアミノ酸配列と、少なくとも1つの追加のペプチドまたはポリペプチドの断片とを有する、キメラポリペプチドまたは融合タンパク質も含まれ得る。いくつかの実施形態では、組換えBSH酵素は、活性部位内の選択アミノ酸の特定の変異、またはインデル、及び一緒に融合されている異なるBSHの様々なセクションのペプチドもしくはポリペプチドの断片を含有する。
【0083】
本明細書で詳しく開示されているように、組換えBSH酵素は、医薬組成物中に含まれ得る。例えば、組換えBSH酵素は、細菌(例えば、Lactobacillus)の株内部にプラスミドもしくはゲノムの組み込みとして含めること、及び/または外因性のペプチド、ポリペプチド、もしくはポリヌクレオチドとして細菌の株と共に含めることができ、これらが共に医薬組成物を構成する。これらの実施形態によれば、本開示は、これらの医薬組成物を使用して胆汁酸塩及び/または胆汁酸と関連する障害を治療する方法を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるような細菌細胞は、胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)酵素をコードする異種遺伝子を含むよう遺伝子工学的に操作されている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される細菌細胞は、胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)酵素をコードする少なくとも1つの異種遺伝子(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、及び114)及び/またはBSH酵素ではない第2の遺伝子を含むよう遺伝子工学的に操作されている。いくつかの実施形態では、工学的に操作された細菌は、胆汁酸塩及び/または胆汁酸の濃度を調節する能力がある。いくつかの実施形態では、工学的に操作された細菌は、低酸素環境(例えば、腸)において胆汁酸塩及び/または胆汁酸をプロセシングし、その濃度を低下させる能力がある。したがって、本明細書に開示される遺伝子工学的に操作された細菌細胞及びかかる細菌細胞を含む医薬組成物は、心血管疾患、代謝性疾患、肝疾患、肝硬変、がん、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、抗生物質関連下痢、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及びClostridioides difficile感染症等(ただし、これらに限定されない)の胆汁酸塩と関連する障害を治療及び/または予防するため、過剰胆汁酸塩を無毒性分子に変換するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝子工学的に操作された細菌細胞及びかかる細菌細胞を含む医薬組成物は、心血管疾患、代謝性疾患、肝疾患、肝硬変、がん、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、抗生物質関連下痢、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及びClostridioides difficile感染症等の、胆汁酸塩及び胆汁酸塩代謝物(例えば、胆汁酸)と関連する障害を治療及び/または予防するため、過剰胆汁酸を無毒性分子に変換するために使用され得る。
【0085】
開示の遺伝子工学的操作細菌等の、遺伝子工学的に操作された微生物またはプログラム微生物は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素の産生能がある。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、偏性嫌気性菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、通性嫌気性菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、好気性菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、グラム陽性菌であり、LPSを欠く。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、グラム陰性菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、グラム陽性の偏性嫌気性菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、グラム陽性の通性嫌気性菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、非病原性細菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、共生細菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、プロバイオティクス細菌である。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、病原性を低下または消失させるよう修飾または変異が行われている、天然で病原性の細菌である。例示的細菌としては、Bacillus、Bacteroides、Bifidobacterium、Brevibacteria、Caulobacter、Clostridium、Enterococcus、Escherichia coli、Lactobacillus、Lactococcus、Listeria、Mycobacterium、Saccharomyces、Salmonella、Staphylococcus、Streptococcus、Vibrio、Bacillus coagulans、Bacillus subtilis、Bacteroides fragilis、Bacteroides subtilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve UCC2003、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Clostridium acetobutylicum、Clostridium butyricum、Clostridium butyricum M-55、Clostridium cochlearum、Clostridium felsineum、Clostridium histolyticum、Clostridium multifermentans、Clostridium novyi-NT、Clostridium paraputrificum、Clostridium pasteureanum、Clostridium pectinovorum、Clostridium perfringens、Clostridium roseum、Clostridium sporogenes、Clostridium tertium、Clostridium tetani、Clostridium tyrobutyricum、Corynebacterium parvum、Escherichia coli MG1655、Escherichia coli Nissle1917、Listeria monocytogenes、Mycobacterium bovis、Salmonella choleraesuis、Salmonella typhimurium、及びVibriocholeraが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、Enterococcus faecium、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus crispatus Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactococcus lactis、Streptococcus thermophilus及びSaccharomyces boulardiiからなる群から選択される。特定の実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、Enterococcus faecium、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus crispatus Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus delbrueckii Lactococcus lactis、Streptococcus thermophilus及びSaccharomyces boulardiiからなる群から選択される。特定の実施形態では、遺伝子工学的操作細菌は、Bacteroides fragilis、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides subtilis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactis、Clostridium butyricum、Escherichia coli Nissle、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus delbrueckii、及びLactococcus lactisからなる群から選択される。一実施形態では、細菌細胞は、グラム陽性菌細胞である。
【0086】
別の実施形態では、細菌細胞は、グラム陰性菌細胞である。特定の実施形態では、細胞は、L.acidophilus NCFM、L.acidophilus La-14、L.casei Lc11、L.crispatus NCK1350、L.crispatus NCK1351、L.crispatus DNH-429、L.gasseri ATCC33323、L.gasseri NCK1338、L.gasseri NCK1340、L.gasseri NCK1341、L.gasseri NCK1342、L.gasseri NCK1343、L.gasseri Lg-36、L.gasseri NCK2140、L.gasseri NCK2141、L.gasseri JV V03、L.plantarum Lp-115、L.johnsonii NCK948、L.johnsonii NCK957、L.johnsonii NCK964、L.johnsonii NCK979、L.johnsonii NCK1370、L.johnsonii NCK2677、L.johnsonii NCC 533 L.plantarum Lpc-37、L.plantarum Lp115、L.rhamnosus HN001、L.rhamnosus GG、L.rhamnosus Lr-32、L.reuteri 1E1、L.salivarius Ls-33、L.salivarius NCK1352、L.salivarius NCK1355、B.lactis BL-04、B.lactis Bb-02、B.lactis Bl-04、B.lactis Bi-07、B.breve Bb-03、B.bifidum Bb-06、B.longum Bl-05、B.longum sp infantis Bi-26.という株、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つから選択される。
【0087】
上記の遺伝子工学的に操作された細菌のいくつかの実施形態では、細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子配列を含む。上記の遺伝子工学的に操作された細菌のいくつかの実施形態では、細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子配列及び1つ以上の他の外来遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする遺伝子は、細菌のプラスミド上に存在する。いくつかの実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする遺伝子は、細菌のプラスミド上に存在し、プラスミド上で非天然プロモーターに機能的に連結されている。他の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする遺伝子は、細菌染色体内に存在する。他の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする遺伝子は、細菌染色体内に存在し、染色体内でプロモーターに機能的に連結されている。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「胆汁酸塩ヒドロラーゼ」酵素とは、グリコール-抱合胆汁酸またはタウロ-抱合胆汁酸のアミノ酸側鎖の切断に関与して、非抱合胆汁酸を生成させる酵素を指す(図1)。胆汁酸塩ヒドロラーゼ(BSH)酵素は、当業者に周知である。例えば、胆汁酸塩ヒドロラーゼ活性は、Lactobacillus spp.、Bifidobacterium spp.、Enterococcus spp.、Clostridum spp.、Bacteroides spp.、Methanobrevibacter spp.、及びListeria spp.において検出されている。本明細書に記載される細菌細胞は、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする異種遺伝子配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌細胞は、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子配列を含み、胆汁酸塩を非抱合胆汁酸に脱抱合する能力がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌細胞は、対象または細胞における胆汁酸塩濃度を調節する(増加または減少させる)能力がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌細胞は、対象または細胞における胆汁酸濃度を高める能力がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌細胞は、対象または細胞におけるTCA濃度を低下させる能力がある。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌細胞は、GCDCA、GCA、TCA、TCDCA、TLCA、TDCA、TUDCA、GLCA、GDCA、GUDCA、FCA、FCDCA、FLCA、FDCA、FUDCA、LCA、LCDCA、LLCA、LDCA、LUDCA、YCA、YCDCA、YLCA、YDCA、YUDCA、及び/またはそれらの組み合わせの濃度を低下させる能力がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌細胞は、対象または細胞における一次胆汁酸濃度を高める能力がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌細胞は、対象または細胞におけるCA濃度を高める能力がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌細胞は、対象または細胞におけるCDCA濃度を高める能力がある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される細菌細胞は、対象または細胞におけるCA濃度及びCDCA濃度を高める能力がある。一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素は、細胞での胆汁酸塩異化率を増大させる。一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素は、細胞内または対象での胆汁酸塩濃度を低下させる。一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素は、細胞内または対象でのタウロコール酸(TCA)濃度を低下させる。一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素は、細胞内または対象でのグリコケノデオキシコール酸(GCDCA)濃度を低下させる。胆汁酸塩異化率及び胆汁酸塩と胆汁酸の濃度を測定する方法は当業者に周知である。例えば、胆汁酸塩及び胆汁酸は試料から抽出され得、胆汁酸塩異化率及び/または胆汁酸塩と胆汁酸の濃度を決定するために標準的LC/MS方法が使用され得る。
【0090】
別の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素は、細胞内または対象での胆汁酸塩の濃度と比較して、細胞内または対象での胆汁酸の濃度を高める。別の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素は、細胞でのコール酸(CA)濃度を高める。別の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素は、細胞でのケノデオキシコール酸(CDCA)濃度を高める。
【0091】
いくつかの実施形態では、組換え細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含み、かかる細菌は、CDCAを産生する。いくつかの実施形態では、組換え細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含み、かかる細菌は、CDCAを産生して腸管内の炎症を軽減し、組換え細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含み、かかる細菌は、CDCAを産生してアテローム性動脈硬化を軽減し、組換え細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含み、かかる細菌は、CDCAを産生してCNSの炎症及び/または自己免疫疾患を軽減する。いくつかの実施形態では、組換え細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含み、かかる細菌は、CDCAを産生して肝臓の脂肪及び線維症を軽減する。いくつかの実施形態では、組換え細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含み、かかる細菌は、CDCAを産生して耐糖性及びインスリン耐性を高める。いくつかの実施形態では、組換え細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含み、かかる細菌は、CDCAを産生して脂肪性肝炎を低下させる。組換え細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含み、かかる細菌は、CDCAを産生して、脂肪酸合成に関与する遺伝子の肝臓での発現を減少させる、及び/またはTNF-aを低下させる、及び/またはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アルファの発現上昇を抑制し、それによりNASH表現型を改善する。いくつかの実施形態では、組換え細菌は、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含み、かかる細菌は、CDCAを産生して、線維症の進行を予防する、及び/または線維症を減少させる、及び/または肝硬変発症を低減する、及び/または門脈圧亢進を低下させる。
【0092】
本開示の実施形態には、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、及び114)を含む核酸も含まれる。いくつかの実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるアミノ酸配列と実質的に同じアミノ酸をその配列中に含む1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素(複数可)をコードする遺伝子配列を含む。本明細書に記載される配列と実質的に同じアミノ酸配列には、保存的アミノ酸置換、ならびにアミノ酸の欠失及び/または挿入を含む配列が含まれる。保存的アミノ酸置換とは、第1のアミノ酸を、化学的及び/または物理的特性(例えば、電荷、構造、極性、疎水性/親水性)が第1のアミノ酸と類似している第2のアミノ酸によって置き換えることを指す。保存的置換には、1つのアミノ酸を、以下の群内の別のアミノ酸によって置き換えることが含まれる:リジン(K)、アルギニン(R)及びヒスチジン(H);アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸塩(E);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、トレオニン(T)、チロシン(Y)、K、R、H、D及びE;アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、メチオニン(M)、システイン(C)及びグリシン(G);F、W及びY;C、S及びT。同様に、塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸で置き換えること(例えば、Lys、Arg、His同士での置き換え)、酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸で置き換えること(例えば、Asp及びGlu間での置き換え)、中性アミノ酸を別の中性アミノ酸で置き換えること(例えば、Ala、Gly、Ser、Met、Thr、Leu、He、Asn、Gin、Phe、Cys、Pro、Trp、Tyr、Val同士での置き換え)が意図される。
【0093】
いくつかの実施形態では、BSH酵素をコードする遺伝子を変異誘発し、活性増大を示す変異体を選択し、BSH酵素をコードする変異誘発された遺伝子を単離して本開示の細菌細胞内へ挿入する。本明細書に記載される修飾を含む遺伝子は、プラスミドまたは染色体に存在し得る。いくつかの実施形態では、開示は、1つ以上のBSH酵素をコードする遺伝子配列を含む核酸を提供し、ここで、かかるBSH酵素は変異誘発され、その対応するペプチドまたはポリペプチド内に合成される。いくつかの実施形態では、BSH酵素は、本明細書で詳述されるように、もう1つの異なる胆汁酸に対する基質特異性を付与する異なるペプチドモチーフを含むキメラタンパク質である。一実施形態では、BSH酵素には、GQD、IPA、及び/またはAMIのペプチドモチーフのうちの1つで存在する少なくとも1つのアミノ酸置換が含まれる。
【0094】
いくつかの実施形態では、変異誘発されたBSH酵素は、いかなる細菌細胞とも無関係に、医薬組成物の一部として対象に投与される。医薬組成物には、本明細書で詳述されるように、1つ以上の変異誘発されたBSH酵素が含まれ得る。これらの実施形態によれば、本開示は、これらの医薬組成物を使用して胆汁酸塩及び/または胆汁酸と関連する障害を治療する方法を提供する。
【0095】
いくつかの実施形態では、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子配列を含む核酸は、様々な異なる種の細菌からの胆汁酸塩ヒドロラーゼをコードする遺伝子配列を含み得る。例えば、一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子は、Lactobacillus spp.からのものである。一実施形態では、Lactobacillus spp.は、Lactobacillus plantarum WCFS1、Lactobacillus plantarum 80、Lactobacillus johnsonii NCC533、Lactobacillus johnsonii 100-100、Lactobacillus acidophilus NCFM ATCC700396、Lactobacillus brevis ATCC367、またはLactobacillus gasseri ATCC33323である。別の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子は、Bifidobacterium spp.からのものである。一実施形態では、Bifidobacterium spp.は、Bifidobacterium longum NCC2705、Bifidobacterium longum DJO10A、Bifidobacterium longum BB536、Bifidobacterium longum SBT2928、Bifidobacterium bifidum ATCC11863、またはBifidobacterium adolescentisである。別の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子は、Bacteroides spp.からのものである。一実施形態では、Bacteroides spp.は、Bacteroides fragilisまたはBacteroides vulgatusである。別の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子は、Clostridium spp.からのものである。一実施形態では、Clostridium spp.は、Clostridium perfringens MCV185またはClostridium perfringens 13である。別の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子は、Listeria spp.からのものである。一実施形態では、Listeria spp.は、Listeria monocytogenesである。一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする遺伝子は、Methanobrevibacter spp.からのものである。一実施形態では、Methanobrevibacter spp.は、Methanobrevibacter smithiiである。胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする他の遺伝子は当業者に周知である。
【0096】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113のいずれかから選択される、1つ以上の胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素をコードする配列、またはその任意の変異型、変異体、キメラ、もしくは融合体を含む。一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113のいずれかの配列との同一性が少なくとも約80%である。別の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113のいずれかとの同一性が少なくとも約85%である。一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113のいずれかとの同一性が少なくとも約90%である。一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113のいずれかとの同一性が少なくとも約95%である。別の実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、及び113のいずれかとの同一性が少なくとも約96%、97%、98%、または99%である。したがって、一実施形態では、胆汁酸塩ヒドロラーゼ遺伝子は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、及び114のいずれかとの同一性が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。
【0097】
本明細書ではさらに、胆汁酸塩と関連する疾患または障害を治療する方法が開示される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるのは、これらの疾患または障害と関連する1つ以上の症状(複数可)を軽減、改善、または消失させるための方法である。いくつかの実施形態では、胆汁酸塩と関連する疾患または障害は、心血管疾患、代謝性疾患、肝硬変もしくはNASH等の肝疾患、多発性硬化症及び実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)等の炎症性疾患と自己免疫疾患、消化管癌、及び/またはC.difficile感染症である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、心血管疾患、代謝性疾患、肝疾患、肝硬変、がん、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)、抗生物質関連下痢、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)及びClostridioides difficile感染症からなる群から選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、開示は、これらの疾患と関連する、胸痛、心不全、もしくは体重増加が含まれるがこれらに限定されない、1つ以上の症状(複数可)を軽減、改善、または消失させるための方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患は、他の状態、例えば、心血管疾患または肝疾患に続発する。特定の実施形態では、細菌細胞は、胆汁酸塩と関連する障害を治療するために、対象において胆汁酸塩を脱抱合する能力がある。これらの実施形態では、胆汁酸塩と関連する障害、例えば、肥満を患う患者は、実質的通常食、または制限の緩和された食事を再開できる場合がある。
【0099】
特定の実施形態では、細菌細胞は、C.difficile感染症等の胆汁酸塩及び/または胆汁酸と関連する障害を治療または予防するために、対象において一次胆汁酸を二次胆汁酸に代謝する能力がある。これらの実施形態では、C.difficile感染症を患うリスクのある対象は感染に対する抵抗性が増強され、C.difficile感染症の対象は抵抗性が増強されて、より速やかに回復する。例えば、治療中の入院患者は、C.difficileに感染する可能性が低くなる。
【0100】
方法は、本明細書に記載される少なくとも1つの遺伝子工学的に操作された種、株、またはサブタイプの細菌を用いて医薬組成物を調製すること、及びかかる医薬組成物を治療的有効量で対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載される少なくとも1つの遺伝子工学的に操作された種、株、またはサブタイプの細菌を、BSH酵素の配列を含む組換え型のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと共に用いて医薬組成物を調製すること、及びかかる医薬組成物を治療的有効量で対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、例えば、液体懸濁液で経口投与される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、凍結乾燥してゲルキャップに入れ、経口投与される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、栄養管または胃シャントを介して投与される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、直腸内に、例えば、浣腸で投与される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、局所、腸管内、空腸内、十二指腸内、回腸内、及び/または結腸内(intracolically)に投与される。
【0101】
方法は、本明細書に記載される少なくとも1つの遺伝子工学的に操作された種、株、もしくはサブタイプの細菌及び/または少なくとも1つの組換えBSH酵素を用いて医薬組成物を調製すること、ならびにかかる医薬組成物を治療的有効量で対象に投与することを含み得る。遺伝子工学的に操作された微生物及び/または組換えBSH酵素は、局所的に、例えば、組織内に直接注射するかもしくは血管に供給して投与され得るか、あるいは全身性に、例えば、注入もしくは注射により静脈内投与され得る。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、経口投与、または局所投与される。いくつかの実施形態では、遺伝子工学的に操作された微生物及び/または組換えBSH酵素は、静脈内投与、すなわち、全身投与される。
【0102】
本発明の遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素を含む医薬組成物は、胆汁酸塩と関連する疾患または胆汁酸塩と関連する疾患もしくは障害と関連する症状(複数可)を、治療、管理、改善、及び/または予防するために使用され得る。医薬組成物にはまた、1つ以上の遺伝子工学的に操作された細菌、及び/または1つ以上の組換えBSH酵素が、単独か、あるいは予防薬、治療剤、及び/または薬学的に許容される担体と組み合わせて含まれる。
【0103】
特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素を発現させるため等、本明細書に記載される遺伝的修飾を含むよう工学的に操作されている1つの種、株、またはサブタイプの細菌を含む。代替実施形態では、医薬組成物は、例えば、胆汁酸塩ヒドロラーゼ酵素を発現させるため等、本明細書に記載される遺伝的修飾を含むようそれぞれが工学的に操作されている、2つ以上の種、株、及び/またはサブタイプの細菌を含む。
【0104】
本明細書に記載される医薬組成物は、活性成分を医薬用組成物に加工することを容易にする、添加剤及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の方法で製剤化され得る。医薬組成物を製剤化する方法は当該技術分野で公知である(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,PAを参照のこと)。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、腸溶でも非腸溶でもあり得る、錠剤、顆粒、ナノ粒子、ナノカプセル、マイクロカプセル、ミクロ錠剤、ペレット、または粉末を形成するために、打錠、凍結乾燥、直接打錠、従来の混合、溶解、造粒、微粉化、乳化、封入、捕捉、または噴霧乾燥に供される。適切な製剤は、投与経路に応じて異なる。
【0105】
本明細書に記載される遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、任意の好適な剤形(例えば、液剤、カプセル、小袋、硬カプセル、軟カプセル剤、錠剤、腸溶錠、懸濁用散、顆粒、または経口投与用マトリックス徐放性製剤)の、任意の好適な種類の投与(例えば、経口、局所、注射、即放性、パルス放出性、遅延放出性、または徐放性)のための医薬組成物に製剤化され得る。遺伝子工学的に操作された細菌の好適な投与量は、約10~1012の範囲の細菌、例えば、約10細菌、約10細菌、約10細菌、約10細菌、約10細菌、約1010細菌、約1011細菌、もしくは約1012細菌、またはそれ以上であり得る。本明細書に記載される遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換え酵素の任意の組み合わせを含み得る組成物は、1日1回以上、週1回以上、または月1回以上投与することができる。これらの組成物は、食前、食事中、または食後に投与され得る。いくつかの実施形態では、これらの医薬組成物は、対象が食事を食べる前に投与することができる。いくつかの実施形態では、これらの医薬組成物は、食事進行中に投与することができる。いくつかの実施形態では、これらの医薬組成物は、対象が食事を食べた後に投与することができる。
【0106】
遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、1つ以上の薬学的に許容される担体、粘稠剤、希釈剤、緩衝剤(buffer)、緩衝剤(buffering agent)、表面活性剤、中性もしくはカチオン性脂質、脂質複合体、リポソーム、膜透過性促進剤、担体化合物、及び他の薬学的に許容される担体または薬剤を含む医薬組成物に製剤化され得る。例えば、医薬組成物には、カルシウム重炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、様々な糖と種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物性油、ポリエチレングリコール、及び界面活性剤(例えば、ポリソルベート20を含む)の追加が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の遺伝子工学的操作細菌は、炭酸水素ナトリウム溶液、例えば、炭酸水素ナトリウム1モル溶液に(例えば、胃等の細胞内酸性環境を緩衝するため)製剤化され得る。遺伝子工学的操作細菌は、中性または塩の形態で投与及び製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来する陰イオン等の陰イオンで形成される塩、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来する陽イオン等の陽イオンで形成される塩が挙げられる。
【0107】
本明細書に開示される遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、局所投与され得、軟膏、クリーム、経皮吸収パッチ、化粧水、ゲル、シャンプー、スプレー、エアロゾル、溶液、エマルジョンの形態、または当業者に周知の他の形態で製剤化され得る。一実施形態では、スプレー可能ではない局所適用製剤の場合、局所適用と適合性のある担体または1つ以上の添加剤を含み、かつ動的粘度が水より大きい、粘性から半固形または固形の形態が使用される。好適な製剤としては、溶液、懸濁液、エマルジョン、クリーム、軟膏(ointment)、粉末、塗布剤、軟膏(salve)等が挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、これらは滅菌されるか、または様々な特性、例えば、浸透圧に影響を与えるための助剤(例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤、緩衝剤、または塩)と混合される。他の好適な局所適用製剤としては、スプレー可能なエアロゾル調製物が挙げられ、固形または液体の不活性担体と組み合わせた活性成分が、加圧揮発性物質(例えば、フレオン等の気体状噴射剤)との混合物で包装されるか、または絞り出しボトルに包装される。医薬組成物及び剤形に保湿剤または保潤剤を加えることもできる。そのような追加成分の例は当該技術分野において周知である。一実施形態では、本発明の組換え細菌を含む医薬組成物は、衛生用品として製剤化され得る。例えば、衛生用品は、抗菌性製剤、または発酵ブロス等の発酵製品であり得る。衛生用品は、例えば、シャンプー、コンディショナー、クリーム、ペースト、ローション、及びリップバームであり得る。
【0108】
本明細書に開示される遺伝子工学的に操作された細菌及び/または組換えBSH酵素は、経口投与され得、また錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として製剤化され得る。経口用の薬理学的組成物は、固形添加剤を使用し、任意選択で、得られた混合物を粉砕し、所望に応じて好適な助剤を加えた後に顆粒混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得て製造することができる。好適な添加剤としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトール等の糖;トウモロコシデンプン、小麦デンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース組成物;及び/またはポルビニルピロリドン(PVP)もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の生理学的に許容されるポリマー等の賦形剤が挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤、例えば、架橋ポルビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムを加えてもよい。
【0109】
〔3.実施例〕
本明細書に記載される本開示の方法の他の好適な変更及び適応は、容易に適用及び認識することができ、それらは、本開示または本明細書に開示される態様及び実施形態の範囲から逸脱することなく好適な均等物を使用して行われ得ることは、当業者に容易に明らかとなるであろう。ここまで本開示を詳細に記載してきたが、同記載は以下の実施例を参照にすることによってより明確に理解され、それらは、開示の態様及び実施形態の一部を説明することのみを意図しているに過ぎず、開示の範囲を限定するものと見なされるべきではない。本明細書で言及される学術誌参考文献、米国特許、及び刊行物のすべての開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
本開示は、以下の非限定的な実施例によって示される複数の態様を有する。
【0111】
実施例1
L.acidophilus NCFM株、L.gasseri株、及び他の株を一晩増殖させ、MRSプレート、TDCA、及びGDCAを添加したMRS(GITに存在する抱合胆汁酸、図2A~2C)にスポッティングした。lactobacilli株が活性BSHを有するかどうかを最初に決定するため、プレート沈殿アッセイを使用した。簡単に言えば、胆汁酸塩を寒天培地に添加し、培地の加水分解及び酸性化による遊離胆汁酸の沈殿であるハローがコロニーを囲んでいることによりBSH陽性株を同定する。Lactobacillus株は、予想通り、MRS培地単独ではハローを示さず、培地にTDCA及びGDCAを添加した場合に差別的なハローを生成した。これらのデータは、これらのLactobacillus株がBSH活性を有していることを示しており、基質特異性の相違を示唆している。
【0112】
本明細書で提供される実施形態と併せて使用することができる株としては、L.acidophilus NCFM、L.casei ATCC334、L.pentosus DSM20314、L.rhamnosus LGG、L.bucherni CD034、L.jenseni DSM20557、L.gasseri NCK99、L.gasseri ATCC33323、L.gasseri NCK335、L.gasseri NCK1338、L.gasseri NCK1339、L.gasseri NCK1340、L.gasseri NCK1341、L.gasseri NCK1342、L.gasseri NCK1343、L.gasseri NCK1344、L.gasseri NCK1345、L.gasseri NCK1346、L.gasseri NCK1347、L.gasseri NCK1348、L.gasseri NCK1349、L.gasseri NCK1557、L.gasseri NCK2140、L.gasseri NCK2141及びL.gasseri JV V03が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
図2の株のBSH活性をさらに評価するため、L.acidophilus NCFMのbshA及びbshB(それぞれLaBSHa及びLaBSHb)、ならびにL.gasseri ATCC33323のbshA及びbshB(それぞれLgBSHa及びLgBSHb)をEscherichia coli株BL21(λDE3)に組換えにより発現させて精製し(図9)、関連する抱合胆汁酸のパネルに対して酵素測定法で試験した(図10)。LaBSHa、LaBSHb、及びLgBSHbは、タウロ-抱合胆汁酸と比較してグリコ-抱合胆汁酸に対し、より活性であった。LgBSHaは、試験したタウロ-抱合胆汁酸に対して高活性を示した。ニンヒドリンアッセイでBSH比活性を決定した。既知濃度のグリシン及びタウリンの標準曲線を使用して遊離したアミノ酸の量を算出した。これらのデータは、E.coliで過剰発現された組換えLactobacillusのBSHが抱合胆汁酸に対する異なる比活性を有することを示している。
【0114】
BSH酵素は、グリシン及び/またはタウリンが抱合した胆汁酸塩からアミノ酸残基と非抱合胆汁酸への加水分解を触媒する。ヒトGITから分離された、活性BSH(コリルグリシンヒドロラーゼ)酵素をコードするLactobacillus株の特徴付けをした(例えば、図3図4を参照のこと)。特定のセットの基準に基づいてL.acidophilus NCFM株及びL.gasseri ATCC33323株を選択した。どちらの株も、完全に配列決定されたゲノム、利用可能な遺伝的手段、活性かつ注釈付きBSHを有し、またヒトでの研究において健康への正の効果と関連する。以前の研究では、両株のbsh遺伝子座がタンパク質レベルで33%及び65%の同一性を共有することが詳細に報告されている。現在までのところ、L.acidophilus NCFMのBSH酵素は、プレートでの沈殿アッセイでのみ特徴付けられており、両方のbsh遺伝子(bshA及びbshB)の遺伝子ノックアウトが構築されている。L.gasseri ATCC33323は2つの異なるbsh遺伝子をコードするが、それにもかかわらず、それらは十分に明らかにされておらず、また他に臨床上関連するL.gasseri株もそれらのBSHもない。
【0115】
抱合胆汁酸の存在下で増殖し、プレートアッセイでハローまたは沈殿を示すことができるLactobacillus株を、BSH酵素アッセイに供した。簡単に言えば、Lactobacillus株を15mlの還元MRSブロスで37℃にて一晩、嫌気的に培養する。BSH活性は、先に記載のように、変形2段階法により決定する。第1のステップでは、100μlの全細胞抽出物、90μlの反応緩衝液(0.1Mのリン酸ナトリウム、pH6.0)、及び10μlの特定の抱合胆汁酸(100mM)を穏やかに混合し、37℃で30分間インキュベートする。反応混合物の50μlの分注に50μlの15%トリクロロ酢酸を加えて反応を停止させる。この混合物を室温で5分間、12,000×gで遠心分離にかけ、沈殿物をすべて除去する。第2のステップでは、前のステップから得られた上清の50μlを950μlのニンヒドリン試薬に加える。反応混合物を沸騰水浴で14分間インキュベートし、氷上で3分間冷却する。570nmでの吸光度(A570)を測定する。各アッセイについてタウリンまたはグリシンを使用した標準曲線を作成し、分子吸光係数を決定する。アッセイはすべて、2つの生物学的反復を用いて三連で行われる。BSH活性は、粗抽出物1mgにつき1分間に基質から遊離したタウリンまたはグリシンのμmolとして記述される。
【0116】
BSHはコロイルグリシンヒドロラーゼファミリーに属し、bsh遺伝子をコードする腸内細菌叢構成菌は多数あるが、それらの機能はいまだ不明である。それらは保存されたアミノ酸活性部位(Cys2、Arg18、Asp21、Asn175、及びArg228)を共有しているが、BSHは、酵素動態特性、基質特異性、最適pH、及び制御において異なる。Cys2はN-アシルアミド結合の求核攻撃に必要とされ、すべての活性BSHで保存されている。活性部位アミノ酸が保存されている一方で、基質結合ポケットを構成する残基は保存されていない。LactobacillusのBSHの酵素動態特性の詳細を記した研究はない。BSH酵素動態をより良く理解するため、lactobacilliのbsh遺伝子を発現ベクターpET-21bにクローニングし、染色体上にコードされるT7-RNAポリメラーゼのイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)誘導性発現を有するE.coli BL21(λDE3)細胞に形質転換した。組換えLactobacillusのBSHの大規模タンパク質発現及び精製は、ニッケルカラムを用いたhisタグアフィニティクロマトグラフィーにより行われた。すべての画分は、12.5%SDS-ポリアクリルアミドゲルに視覚化され、各精製ステップの間、酵素アッセイが実施された。
【0117】
実施例2
Brandt及びBarrangouにより最近報告された方法を使用して、ピルビン酸キナーゼ酵素配列基づきlactobacilliの170の種について系統樹を作成した(図3)。Duar et al.により最近報告されたように、生活習慣が不明、自由生活型、昆虫適応型、遊牧型(nomadic)、または脊椎動物適応型というメタデータレイヤーを加えた。BSHタンパク質の存在と非存在を170のLactobacillus種に対応付けた(図3)。BSHタンパク質をコードする種の大部分(84.62%)は脊椎動物適応型の生活習慣に対応付けられた(少数が不明[12.82%]及び遊牧型(nomadic)[2.56%]の生活習慣に対応付けられた)。BSHを含有していない種は昆虫適応型の生活習慣に対応付けられた。この分布パターンは、BSHタンパク質を選択的にコードするための、脊椎動物関連種に対する進化的圧力を反映すると考えられる。
【0118】
図5A~5Cに示すように、LactobacilliのBSHは、抱合胆汁酸に対する選択性のばらつきを示す。モデルのLactobacilli株からのBSH活性を評価するため、L.johnsoniiのbshA、bshB及びbshC(それぞれ、LjBSHa、LjBSHb、及びLjBSHc)を精製し、それらの具体的な活性と最適pHをニンヒドリンアッセイで決定した。試験した酵素は、グリコ抱合型及びタウロ抱合型の胆汁酸ならびに酸性条件に対する異なる選択性を示した(図5A)。BSHアミノ酸配列の保存分析も実施した(図5C)。クラスター化したデータセットの57のクラスターからの代表的BSHタンパク質のアラインメントを、保存されたアミノ酸モチーフについて分析した。0.75以上の保存スコアは破線で示されている。モチーフ及び保存されたアミノ酸をWebLogoで示している。アスタリスクは、O’Flaherty et al.,2018からの、先に記載されている保存された活性部位残基を示す(図5C)。
【0119】
実施例3
無菌(germ free)マウスは、タウリン抱合胆汁酸を非抱合胆汁酸へと脱抱合する腸内細菌叢または細菌を欠く。GFマウスの胆汁酸ターゲットメタボロミクスにより、GIT(回腸、盲腸、及び結腸)が、タウリン抱合一次胆汁酸であるTαMCA、TβMCA、TCA、TCDCA、及びTHDCA/TUDCAのみで構成されることが明らかになった(図15)。GFマウスは、それが腸内細菌叢を欠いており、GIT内にタウリン抱合一次胆汁酸が存在していることから、頑健なモデル系とされる。予備試験では、GFマウスに、10CFUのL.acidophilusもしくはL.gasseriのWTまたは両BSH欠如株(ΔbshAB)を0日目に単独定着させた。1週間を通して糞便を採取し、盲腸内容物を7日目に採取し、細菌計数用に播種した。
【0120】
7日目までには、WT L.gasseri株のCFUは二重変異株よりも顕著に少なく、これは、一部のBSHがマウスGITでの定着に有害であることを示唆している(図19A)。同じ時間枠にわたり、L.acidophilusの定着はΔbshAB欠失による影響を受けなかった(図19B)。
【0121】
以前の研究では、セフォペラゾン、クリンダマイシン、バンコマイシン、メトロニダゾール、及びカナマイシンを含めた様々な抗生物質治療の後、回腸及び盲腸のマイクロバイオームが定義されている。腸内細菌叢構成菌と胆汁酸との関係を調べるため、回腸と盲腸の両方からの全マウス処置群にわたるデータを使用して、すべての操作上分類単位(OTU)の胆汁酸対についてSpearmanの順位相関係数を計算した(図7)。これらの相関を視覚化するため、全処置群からのOTU及び胆汁酸の目的変数なしのクラスタリングを実施し、これにより、3つの別個のOTUクラスター(O1~O3)及び2つの胆汁酸クラスター(B1、B2)が明らかになった。相関の組織化により、異なる群において、OTUと胆汁酸との特徴的な関係が明らかになった。第1のOTUクラスター(O1)のOTUは、タウリン抱合胆汁酸(水溶液)で構成された第1の胆汁酸クラスターB1において胆汁酸と正の相関を示し、クラスターB2のほとんどの胆汁酸と負の相関を示した。クラスターO1のOTUには、Proteobacteria門及びFirmicutes門からのメンバー、より具体的には、Enterobacteriaceae科及びLactobacillaceae科からのメンバーが多く含まれる。クラスターO1は、二次胆汁(黒色)のすべてを含有するクラスターB2とは反対の関係にある。これは、正の相関を示すクラスターO2とB2との関係とは対照的である。O2は、Firmicutes門からのメンバーで構成され、具体的には、これらのLachnospiraceae科及びRuminococcaceae科メンバーは、すべての二次胆汁酸と正の相関を示す。クラスターO3は、Bacteroidetes門からのPorphyromonadaceae科からのメンバーで構成され、クラスターB1及びB2からのすべての胆汁酸と正の相関を示す。場合によっては、本開示に基づいて当業者により認識されるように、qRT-PCR使用実験を行って、図7からの組織試料対と図6で見られるGFマウスにおいてFXRシグナル伝達関連遺伝子の発現を定義することができる。
【0122】
GITにおけるC.difficileの定着と病因は、腸内細菌叢の変化(change)及び胆汁酸プールの変化(alteration)に対して極めて敏感に反応する。以前の研究では、ヒトのCDIに近いマウスモデルが作製された。抗生物質処置後、マウスはCDIに易罹患性であり、これらのマウスの腸内は、宿主関連一次胆汁酸、具体的にはTCDCA及びTCAで構成されている。TCDCA単独ではC.difficileに影響を与えないが、脱抱合CDCAは、C.difficile胞子発芽を阻害し、栄養細胞を殺傷する。再発性CDI患者では、FMT前の糞便で高濃度のTCDCAが観察されている。また、FMT後の便試料では、FMT前試料と比較した場合にTCDCAの顕著な減少あることも報告されている。ヒト及びマウスにおけるこれらのデータから、TCDCAは、CDIマウスモデルにおけるBSH酵素に対する有効な標的とされる。
【0123】
実施例4
図9~11に示すように、組換えBSHを過剰発現させて均一になるまで精製し、それらの活性を評価するため実験を行った。2つの組換えBSH酵素をこのアッセイに使用した。LjoBSHcは、タウリン抱合胆汁酸(TCDCA)に対して特異的なBSHであり、放出されるCDCAに対してC.difficileが感受性であることからこれを選択した。LjoBSHaは、グリシン抱合胆汁酸(GCDCA)に対して特異的である。増殖アッセイに使用する抱合胆汁酸としては、BSH活性により放出されるCDCAに対してC.difficileが感受性であることからTCDCAを選択した。TCDCAを添加したBHIS培地で増殖させたC.difficileは、増殖阻害を示さないがCDCA添加では完全な阻害を示す(図9)。C.difficileをLjoBSHaと共に培養した場合、恐らくTCDCAを効率的に切断することができないために(最も活性なのはGDCAに対してである)増殖がある。その触媒としての不足を克服するためには高用量のLjoBSHaが必要である(図9)。これらのデータはまた、C.difficileがTCDCA及びLjoBSHcを添加された場合にのみ、TCDCAが切断されてCDCAになることによる効率的増殖阻害があることを示している。
【0124】
図10に示されるように、組換えにより発現させ精製した(A)LaBSHa、(B)LaBSHb、(C)LgBSHa、及び(D)LgBSHbの平均比活性を、抱合胆汁酸パネルでのニンヒドリンアッセイにより決定した。エラーバーは、独立した実験(n=3)からのs.d.を表す。これらは、先の図の株によりコードされるBSHからの様々な抱合胆汁酸に対する酵素活性である。Lactobacillus acidophilus/gasseriのBSHは、胆汁酸抱合に対し様々な選択性を示す。
【0125】
さらに、図11に記載の結果から、精製された組換えBSHが異なるpH領域に対して最適活性を示すことを示している。それぞれ好ましい基質を用いた場合に示されたLaBSHa(図11A)、LaBSHb(図11B)、LgBSHa(図11C)、及びLgBSHb(図11D)のpH領域全体の相対的比活性を記載している。
【0126】
実施例5
図12~14には、L.acidophilus増殖中のBSH活性の役割を評価するために行った実験の代表的結果が記載されている。L.acidophilusからのbshA及びbshB遺伝子のインフレーム完全欠失を構築し、染色体内にプラスミドを持たず、そのため増殖培地に抗生物質を必要としない株を得た。bshA、bshB、及びbshABが欠失したL.acidophilus株をプレートアッセイで試験し、増殖曲線を求めた。胆汁酸解毒に対するBSHの寄与を試験するため、ΔbshA、ΔbshB、及びΔbshABのL.acidophilus株及びL.gasseri株を抱合胆汁酸の存在下で増殖させた。様々な胆汁酸濃度で増殖させたL.acidophilus変異体の増殖曲線を図12に示す。示されているように、BSHの単一及び二重の変異体(ΔbshA及びΔbshB)を胆汁酸添加MRS培地で増殖させた。結果は、増殖曲線表現型が、存在する胆汁酸の種類と濃度の両方に依存することを示している。二重欠失L.acidophilus変異体ΔbshABは、2.5mMのGCDCA、2.5mMのGDCA、及び5mMのTDCAによって顕著に阻害された。しかしながら、この株の増殖は、5mMのGCA及び5mMのTCDCAによる阻害は小さかった。二重欠失L.gasseri変異体ΔbshABは、2.5mMのGCDCA及び1.25mMのGDCAによって顕著に阻害された。しかしながら、この株の増殖は、5mMのGCA及び5mMのTCAによる阻害はかなり小さかった(図18B)。これらのデータは、動的GITにおいてlactobacilli定着に影響を与えるようBSH活性を工学的に操作することの潜在的役割を強調している。
【0127】
さらに、図13に示される代表的結果は、L.acidophilusのbshA及びbshBが基質依存的に胆汁酸解毒に寄与することを示している。単一濃度の様々な胆汁酸の存在下におけるBSH変異体の増殖曲線を示す。L.acidophilus増殖中のBSH活性の役割を評価するため、BSHの単一変異体及び二重変異体をMRS培地単独(図13A)または胆汁酸のGCA(図13B)、TCA(図13C)、GCDCA(図13D)、TCDCA(図13E)、GDCA(図13F)、及びTDCA(図13G)を添加したMRS培地で増殖させた。24時間後にOD600で増殖を決定した。結果は、図12の場合と一致しており、増殖曲線表現型は、存在する胆汁酸の種類と濃度に依存することを示している。
【0128】
野生型またはΔbshABのいずれかのL.acidophilusを単独定着させた無菌マウスからの抱合一次胆汁酸のターゲットメタボロミクスを調べることによりインビボでの組換えBSHの効果を評価するための実験も行った。完全な腸肝再循環を包含する、血清、回腸、または盲腸における、顕著なマウス抱合一次胆汁酸(TCA、TCDCA、及びTMCA)の濃度を評価するため、L.acidophilus単独定着マウスのターゲットメタボロミクスを実施した。野生型L.acidophilusは、試験した胆汁酸濃度においてΔbshAB変異体と比べて顕著な変化を誘導せず、このことは、BSHをコードするL.acidophilusをマウスに定着させても、高レベルの脱抱合が引き起こされないことを示している。したがって、BSHは、インビボで効果的に投与することはできるが、インビボでの効率的な脱抱合のためには様々なプロバイオティクス株及び/または送達BSHを改変し、最適化する必要があり得る。
【0129】
実施例6
界面活性剤が膜損傷を誘導する能力の指標となる、本明細書に記載される様々な胆汁酸の臨界ミセル濃度(CMC)を評価するため、実験を行った。図15には、胆汁酸の代表的な構造(図15A)及び実験的に決定したそれらの臨界ミセル濃度(CMC)(図15B及び15C)が記載されている。棒は、独立した実験(n=2)からの平均CMC±s.e.mを表す。Optimizer-BlueBALLSを使用してCMCを決定した。2つの独立した実験からの吸光度データを各分子の胆汁酸濃度に対してプロットした。Graphpad Prismを使用して標準的5パラメータロジスティック曲線適合を実施し、Log10EC50で表される各曲線の変曲点を計算することによりCMCを決定した。変曲点値は、平均±s.e.mを表す。
【0130】
L.acidophilus及びL.gasseriの野生株及び変異株に対する様々な胆汁酸の最小発育阻止濃度(MIC)を評価するための実験も行った。図16A及び16Bに示すように、BSHが欠失したL.acidophilus及びL.gasseriの(ΔbshAB)株を使用して、抱合及び脱抱合の胆汁酸のMICを決定した。野生型及びΔbshABの脱抱合胆汁酸のみのMICを図16Bに示す。棒は、独立した実験(n=3)からの平均MICを表す。これらのデータは、胆汁酸脱抱合が、BSHをコードするLactobacillusに対してあらゆる場合に正の効果を発揮するわけではなく、したがって、胆汁酸プールの調節は、特に、疾患または状態との関連においては、以前に認識されていたよりも複雑であるという予期しなかった知見を示している。
【0131】
さらに、図17での代表的結果は、BSHが、Lactobacillusの定着にBSH特異的及び胆汁酸特異的に影響を与えることを示している。L.acidophilus(図17A)及びL.gasseri(図17B)のBSH変異体を、MRS、GCA、TCA、GCDCA、TCDCA、GDCA、またはTDCAで24時間増殖させた。エラーバーは、独立した実験(n=4)からのs.d.を表す。破線は、0時間における開始時のおよそのCFU/mLを示す。ΔbshAB株を機能的に補完するため、外因性の組換え型LaBSHaとLaBSHb(LaBSHab)またはLgBSHaとLgBSHb(LgBSHab)を、L.acidophilus ΔbshABまたはL.gasseri ΔbshABの増殖物と等モル量で培養物に添加した。これらのデータは、様々な胆汁酸及び各種bsh変異株間の増殖表現型についての包括的な概要を表す。示されているように、BSHが、Lactobacillusの胆汁酸ストレスへの適応を補助する場合もあれば、BSHが、胆汁酸毒性及び増殖抑制を悪化させる場合もある。さらに、精製された組換えBSHをΔbshAB変異体に加えたところ、BSHが細胞外でも外因的に機能して変異体を機能的に補完することができることが示された。
【0132】
実施例7
図18に示されるように、BSH活性がどのようにして胆汁酸特異的に膜の統合性及び競合的動力学を変化させることができるのかを評価するため、実験を行った。様々な胆汁酸に曝露されるかまたは熱殺菌された(HK)、対数中期まで増殖したLactobacillusの膜統合性を評価するため、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用した。正規化した蛍光は、バックグラウンドPIの蛍光を減算し、胆汁酸曝露開始時のOD600を基準として正規化することにより計算した(図18A及び18B)。棒は、独立した実験(n=3)からの平均蛍光を表し、エラーバーは、標準偏差(s.d.)を表す。様々な胆汁酸の存在下で嫌気的に24時間共培養したLactobacillusの競合指標(図18C及び18D)。競合指標(CI)を以下のとおり計算した:CI=最終[Log10(ΔbshAB CFU)/Log10(野生型CFU)]/初期[Log10(ΔbshAB CFU)/Log10(野生型CFU)]。等モルのLaBSHaとLaBSHb(LaBSHab)またはLgBSHaとLgBSHb(LgBSHab)を培養0時間にて加えた。破線は、CI=0を示す。
【0133】
これらのデータは、BSHに関連する増殖表現型の機序基盤を示す。意外にも、BSH活性は、細菌を毒性のある胆汁酸から保護する、またはそれに対して曝露することにより、細菌中で有益な効果も有害な効果も示し得る(図18A及び18B)。さらに、これらのデータは、共培養の際の細菌競合に対してBSHが有する効果の性質が予測不可能であることを示している(図18C及び18D)。
【0134】
実施例8
次いで、本明細書で使用される様々なBSHの活性を進化論的観点から評価した。図20に示されるように、BSH特異性は進化の関係を示すことが示された。組換えにより発現させ精製したLAB BSHを、グリシン抱合胆汁酸及びタウリン抱合胆汁酸のパネルに対して脱抱合についてアッセイした。各BSHの比活性は、ニンヒドリンアッセイによってアミノ酸放出量を定量化することにより決定した。近隣結合法を使用して、各BSHの一次アミノ酸配列に基づいた系統樹を構築した(図20A)。いくつかのBSHクレードは類似した基質特異性プロファイルを示し、これを使用して、BSHの活性を予測し、どの残基が基質特異性に寄与するのかを理解することができる。各BSHの対応する配列番号(それぞれのアミノ酸同一性パーセントは>95%)を図20Bに示す。
【0135】
全体として、これらの分析により、本明細書で試験されたBSHの酵素活性、ならびにアミノ酸配列に基づくそれらの進化距離についての概要が得られる。すべてのBSHが、グリシン抱合胆汁酸またはタウリン抱合胆汁酸のいずれかに対する選択性を示した。
【0136】
実施例9
配列アラインメント及び構造予測(図21)により、基質特異性を決定するBSH活性部位の推定領域が容易に同定された。基質特異性に対する影響を試験するため、3つのキメラ変異体を作製した。詳しくは、図21Bで強調表示されているL.salivariusのBSHに基づいて、LgBSHaの3つの領域(GQD、IPA、及びAMI)が、GCAの抱合グリシンを活性部位内に配位させる役割を果たすとして予測された。基質選択性の決定における各領域の重要性を理解するため、LgBSHa(タウリン抱合胆汁酸選択性)からのモチーフをグリシン抱合胆汁酸選択性の相同BSHからの類似モチーフで置き換えることによって、キメラ変異体を作製した。図21Cに示されるように、その後、キメラ変異体を、基質のGCA及びTCAに対するBSH活性についてアッセイした。GQD23 EFS変異は、基質選択性に対して影響を与えなかったが、IPA222 DSE変異は両基質に対する活性を顕著に減弱させた。さらに、AMI258 EQQ変異は、TCAに対する活性を顕著に低下させたが、GCAでは低下させず、このことは、このモチーフが、タウリン抱合胆汁酸を配位させるために重要であることを示唆している。キメラAMI変異体は、それが新たな基質特異性を有する変異BSHを生成したことから新規であると決定された。
【0137】
図22に示されるように、2つの組換えBSH酵素をこのアッセイに使用した。LjoBSHcは、タウリン抱合胆汁酸(図22AのTCDCA)に対して特異的なBSHであり、放出されるCDCAに対してC.difficileが感受性であることからこれを選択した。LjoBSHaは、グリシン抱合胆汁酸(図22AのGCDCA)に対して特異的である。この増殖(図22B及び22C)アッセイに使用する抱合胆汁酸としては、BSH活性により放出されるCDCAに対してC.difficileが感受性であることからTCDCAを選択した。TCDCAを添加したBHIS培地で増殖させたC.difficileは増殖阻害を示さないが、CDCA添加では完全な阻害を示す。C.difficileを図22BのLjoBSHaと共に培養した場合、恐らくTCDCAを効率的に切断することができないために(最も活性なのはGDCAに対してである)増殖がある。その触媒としての不足を克服するためには高用量のLjoBSHaが必要である。図22Cでは、データは、C.difficileがTCDCA及びLjoBSHcを添加された場合にのみ、TCDCAが切断されてCDCAになることによる効率的増殖阻害があることを示している。したがって、これらのデータは、胆汁酸選択性が異なる2つのBSHを、それらにとって好ましい基質の存在に基づいてC.diff増殖を阻害するために使用することができること、及びBSH酵素の特異性がC.difficileの阻害にとって重要であることを示している。
【0138】
図23に示されるように、C.difficileの栄養細胞を、対照盲腸内容物、及び10μMのLgBSHaと共にプレインキュベートした盲腸内容物の両方に希釈した。どちらの条件でもC.difficileの増殖を支持することができたが、LgBSHaの添加によりC.difficileの複製が顕著に制限された。このことは、TCDCA等のタウリン抱合胆汁酸に特異的であるBSHが盲腸内容物中で活性であり、脱抱合胆汁酸が生成されてC.difficileを阻害したことを示唆する。これらのデータは、BSH活性により、マウス盲腸内容物中で抑制性脱抱合胆汁酸が生成され、それがC.diffの増殖を阻害することができることを示している。
配列.
本明細書に記載される本開示の様々な実施形態には、以下で参照される配列のうち1つ以上が含まれ得、それらは、対応する配列表に見出すことができる。
【0139】
WP_003546965.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus acidophilus](配列番号1)。
【0140】
NC_006814.3 869317-870294(-)Lactobacillus acidophilus NCFM染色体、完全ゲノム(配列番号2)。
【0141】
WP_003547395.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus acidophilus](配列番号3)。
【0142】
NC_006814.3 1058279-1059256(+)Lactobacillus acidophilus NCFM染色体、完全ゲノム(配列番号4)。
【0143】
WP_056976419.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus agilis](配列番号5)。
【0144】
NZ_AYYP01000019.1 39634-40608(-)Lactobacillus agilis DSM20509、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号6)。
【0145】
WP_056939313.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus amylovorus](配列番号7)。
【0146】
NZ_CP017706.1 1987830-1988807(-)Lactobacillus amylovorus DSM20531、完全ゲノム(配列番号8)。
【0147】
WP_013641959.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus amylovorus](配列番号9)。
【0148】
NC_015214.1 1143487-1144464(+)Lactobacillus amylovorus株30SC、完全ゲノム(配列番号10)。
【0149】
WP_010690294.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus animalis](配列番号11)。
【0150】
NZ_JMHU01000001.1 90494-91468(+)Lactobacillus animalis株381-IL-28、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号12)。
【0151】
WP_007123019.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus antri](配列番号13)。
【0152】
NZ_AZDK01000017.1 3962-4939(+)Lactobacillus antri DSM16041、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号14)。
【0153】
KRK55307.1 コロイルグリシンヒドロラーゼ[Lactobacillus antri DSM16041](配列番号15)。
【0154】
AZDK01000040.1 10995-11966(-)Lactobacillus antri DSM16041、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号16)。
【0155】
WP_025087276.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus apodemi](配列番号17)。
【0156】
NZ_AZFT01000006.1 27647-28621(+)Lactobacillus apodemi DSM16634、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号18)。
【0157】
WP_025087062.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus apodemi](配列番号19)。
【0158】
NZ_AZFT01000053.1 337991-338968(+)Lactobacillus apodemi DSM16634=JCM16172、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号20)。
【0159】
KRM52756.1 コロイルグリシンヒドロラーゼ[Lactobacillus aviarius subsp.araffinosus DSM20653](配列番号21)。
【0160】
AYYZ01000015.1 32728-33693(-)Lactobacillus aviarius subsp.araffinosus DSM20653、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号22)。
【0161】
KRM51566.1 コロイルグリシンヒドロラーゼ[Lactobacillus aviarius subsp.araffinosus DSM20653](配列番号23)。
【0162】
AYYZ01000030.1 84720-85673(+)Lactobacillus aviarius subsp.araffinosus DSM20653、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号24)。
【0163】
WP_006917586.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus coleohominis](配列番号25)。
【0164】
NZ_GG698807.1 84982-85968(-)Lactobacillus coleohominis101-4-CHN、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号26)。
【0165】
WP_005718943.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus crispatus](配列番号27)。
【0166】
NZ_GG669816.1 298652-299629(-)Lactobacillus crispatus JV-V01、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号28)。
【0167】
WP_023488404.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus crispatus](配列番号29)。
【0168】
NZ_AXLM01000021.1 27967-28944(-)Lactobacillus crispatus EM-LC1、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号30)。
【0169】
WP_068813776.1 鎖状アミドC-Nヒドロラーゼ[Lactobacillus crispatus](配列番号31)。
【0170】
NZ_PKIW01000023.1 17541-18491(+)Lactobacillus crispatus株UMB0085、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号32)。
【0171】
WP_013439461.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus delbrueckii](配列番号33)。
【0172】
NC_014727.1 878842-879816(-)Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus ND02、完全ゲノム(配列番号34)。
【0173】
WP_008460025.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus equicursoris](配列番号35)。
【0174】
NZ_CALZ01000132.1 4316-5290(+)Lactobacillus equicursoris 66c、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号36)。
【0175】
WP_057750462.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus frumenti](配列番号37)。
【0176】
NZ_AZER01000016.1 90337-91314(+)Lactobacillus frumenti DSM13145、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号38)。
【0177】
WP_056945645.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus gallinarum](配列番号39)。
【0178】
NZ_AZEL01000083.1 23986-24963(-)Lactobacillus gallinarum DSM10532=JCM2011株DSM10532 NODE_173、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号40)。
【0179】
WP_003648098.1 鎖状アミドC-Nヒドロラーゼ[Lactobacillus gasseri](配列番号41)。
【0180】
NC_008530.1 69430-70380(-)Lactobacillus gasseri ATCC33323、完全ゲノム(配列番号42)。
【0181】
WP_003647335.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus gasseri](配列番号43)。
【0182】
NC_008530.1 960746-961723(+)Lactobacillus gasseri ATCC33323、完全ゲノム(配列番号44)。
【0183】
WP_003649005.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus paragasseri](配列番号45)。
【0184】
NZ_CP040500.1 823547-824527(+)Lactobacillus paragasseri JV-V03、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号46)。
【0185】
WP_048686801.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus gasseri](配列番号47)。
【0186】
NZ_MUJA01000002.1 362407-363387(+)Lactobacillus gasseri株AL5、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号48)。
【0187】
WP_049159599.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus gasseri](配列番号49)。
【0188】
NZ_MTZT01000001.1 791430-792410(-)Lactobacillus gasseri株AL3、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号50)。
【0189】
WP_008474271.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus gigeriorum](配列番号51)。
【0190】
NZ_CAKC01000094.1 5388-6368(+)Lactobacillus gigeriorum CRBIP24.85、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号52)。
【0191】
WP_093625227.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus gorillae](配列番号53)。
【0192】
NZ_BCAH01000018.1 62312-63292(-)Lactobacillus gorillae株KZ01、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号54)。
【0193】
WP_025081289.1 胆汁酸塩ヒドロラーゼ[Lactobacillus hamsteri](配列番号55)。
【0194】
NZ_AZGI01000062.1 8492-9469(-)Lactobacillus hamsteri DSM5661=JCM6256株DSM5661 NODE_93、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号56)。
【0195】
KRO15311.1 仮説タンパク質 IV62_GL000337[Lactobacillus helveticus](配列番号57)。
【0196】
JQCJ01000014.1 7605-8582(-)Lactobacillus helveticus株LMG22464、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号58)。
【0197】
WP_008470790.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus hominis](配列番号59)。
【0198】
NZ_CAKE01000010.1 103437-104414(+)Lactobacillus hominis CRBIP24.179 全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号60)。
【0199】
WP_056955493.1 コロイルグリシンヒドロラーゼタンパク質ファミリー[Lactobacillus ingluviei](配列番号61)。
【0200】
NZ_AZFK01000085.1 846-1829(-)Lactobacillus ingluviei DSM15946、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号62)。
【0201】
WP_057810467.1 コロイルグリシンヒドロラーゼタンパク質ファミリー[Lactobacillus intestinalis](配列番号63)。
【0202】
NZ_AZGN01000044.1 42134-43111(-)Lactobacillus intestinalis DSM6629、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号64)。
【0203】
WP_057810964.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus intestinalis](配列番号65)。
【0204】
NZ_AZGN01000048.1 20014-20994(-)Lactobacillus intestinalis DSM6629、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号66)。
【0205】
WP_057811657.1 抱合胆汁酸塩ヒドロラーゼ[Lactobacillus intestinalis](配列番号67)。
【0206】
NZ_AZGN01000055.1 59158-60108(+)Lactobacillus intestinalis DSM6629、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号68)。
【0207】
WP_004898444.1 抱合胆汁酸塩ヒドロラーゼ[Lactobacillus johnsonii](配列番号69)。
【0208】
NC_005362.1 77465-78415(-)Lactobacillus johnsonii NCC533、完全ゲノム(配列番号70)。
【0209】
WP_011161986.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus johnsonii](配列番号71)。
【0210】
NC_005362.1 1065946-1066923(+)Lactobacillus johnsonii NCC533、完全ゲノム(配列番号72)。
【0211】
WP_011162170.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus johnsonii](配列番号73)。
【0212】
NC_005362.1 1286673-1287653(-)Lactobacillus johnsonii NCC533、完全ゲノム(配列番号74)。
【0213】
WP_004897162.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus johnsonii](配列番号75)。
【0214】
AFQJ01000004.1 720-1700(+)Lactobacillus johnsonii pf01、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号76)。
【0215】
WP_057797848.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus kalixensis](配列番号77)。
【0216】
NZ_AZFM01000007.1 62-1039(-)Lactobacillus kalixensis DSM16043、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号78)。
【0217】
WP_057798736.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus kalixensis](配列番号79)。
【0218】
NZ_AZFM01000016.1 8000-8977(+)Lactobacillus kalixensis DSM16043、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号80)。
【0219】
WP_056941310.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus kefiranofaciens](配列番号81)。
【0220】
AZEM01000127.1 117315-118265(+)Lactobacillus kefiranofaciens subsp.kefirgranum DSM10550=JCM8572、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号82)。
【0221】
WP_006499363.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus mucosae](配列番号83)。
【0222】
NZ_AZEQ01000014.1 64201-65181(-)Lactobacillus mucosae DSM13345、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号84)。
【0223】
WP_056959219.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus murinus](配列番号85)。
【0224】
NZ_BCVJ01000114.1 203-1180(+)Lactobacillus murinus DSM20452=NBRC14221、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号86)。
【0225】
WP_003711849.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus oris](配列番号87)。
【0226】
NZ_AEKL01000025.1 102912-103889(-)Lactobacillus oris PB013-T2-3、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号88)。
【0227】
WP_003715241.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus oris](配列番号89)。
【0228】
NZ_AZGE01000001.1 271904-272881(-)Lactobacillus oris DSM4864、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号90)。
【0229】
KRM25060.1 コロイルグリシンヒドロラーゼ[Lactobacillus panis](配列番号91)。
【0230】
NZ_AZGM01000138.1 91-1068(-)Lactobacillus panis DSM6035、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号92)。
【0231】
WP_003642898.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus plantarum](配列番号93)。
【0232】
NZ_AZEJ01000005.1 141793-142767(-)Lactobacillus plantarum subsp.plantarum ATCC14917=JCM1149=CGMCC1.2437、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号94)。
【0233】
SFE54619.1 コロイルグリシンヒドロラーゼ[Lactobacillus rogosae](配列番号95)。
【0234】
FONU01000010.1 85472-86449(-)Lactobacillus rogosae株ATCC27753、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号96)。
【0235】
SFE73109.1 コロイルグリシンヒドロラーゼ[Lactobacillus rogosae](配列番号97)。
【0236】
FONU01000017.1 2131-3120(-)Lactobacillus rogosae株ATCC27753、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号98)。
【0237】
WP_003697845.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus ruminis](配列番号99)。
【0238】
NZ_AFYE01000056.1 37484-38458(+)Lactobacillus ruminis ATCC25644、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号100)。
【0239】
WP_034983830.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus salivarius](配列番号101)。
【0240】
NZ_CP007646.1 789241-790218(+)Lactobacillus salivarius株JCM1046、完全ゲノム(配列番号102)。
【0241】
WP_003706767.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus salivarius](配列番号103)。
【0242】
NZ_AFMN01000003.1 7914-8888(+)Lactobacillus salivarius NIAS840、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号104)。
【0243】
WP_057742369.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus secaliphilus](配列番号105)。
【0244】
NZ_JQBW01000010.1 627328-628302(-)Lactobacillus secaliphilus株DSM17896、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号106)。
【0245】
WP_007125470.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus ultunensis](配列番号107)。
【0246】
NZ_GG693253.1 508807-509784(-)Lactobacillus ultunensis DSM16047、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号108)。
【0247】
WP_076461871.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus sp.Marseille-P3519](配列番号109)。
【0248】
NZ_FTOY01000011.1 692188-693165(-)Lactobacillus sp.Marseille-P3519、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号110)。
【0249】
WP_056974571.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus vaginalis](配列番号111)。
【0250】
NZ_AZGL01000010.1 39469-40446(-)Lactobacillus vaginalis DSM5837 ATCC49540株DSM5837、全ゲノムショットガンシーケンス(配列番号112)。
【0251】
WP_003668136.1 コロイルグリシンヒドロラーゼファミリータンパク質[Lactobacillus reuteri](配列番号113)。
【0252】
NC_009513.1 799117-800094(+)Lactobacillus reuteri DSM20016、完全ゲノム(配列番号114)。
【図面の簡単な説明】
【0253】
図1】胆汁酸塩ヒドロラーゼは腸肝軸において循環抱合胆汁酸に作用する。(A)肝臓で合成されて胆嚢に貯蔵された胆汁酸(BA)は、十二指腸を通って小腸に入り、そこではミリモル濃度に達する。BAの大部分(95%)は回腸で再吸収され、門脈を通って再び肝臓へ循環する。残りの集団は、引き続き再吸収されながら通過して結腸へ向かい、少量(<5%)が糞便を介して排出される。再循環BAは宿主組織に腸の外部で接近し、宿主生理に対する全身的作用を付与する。(B)BSHは、抱合BAのアミド結合を切断して胆汁酸プールを開放し、複雑さを増大させる。腸内細菌叢により脱抱合BAに対して追加の化学が作用して二次BAプールが生成され、これが、腸肝循環に入って肝臓で再び抱合され得る。(C)B.longum、E.faecalis、L.salivarius、及びC.perfringensからの単量体BSHのオーバーレイ。CpBSHの活性部位において加水分解されたタウロデオキシコール酸塩(TDCA)は、他の構造と比較してペプチド骨格の変異を最も含むいくつかのループにより配位している(Foley,et al.2019)。
図2】抱合胆汁酸の存在下でのLactobacillus株のハイスループットスクリーニング。Lactobacillus株をBSHプレート沈殿アッセイで使用し、(A)MRS培地、それに(B)0.2%TDCAを添加したもの、及び(C)0.2%GDCA添加したものに播種した。ハローは、活性BSHを有するlactobacilliを表す。株詳細は、各プレートの上段左隅から順に以下のとおりである:L.acidophilus NCFM、L.casei ATCC334、L.pentosus DSM20314、L.rhamnosus LGG、L.bucherni CD034、L.jenseni DSM20557、L.gasseri NCK99、L.gasseri ATCC33323、L.gasseri NCK335、L.gasseri NCK1338、L.gasseri NCK1339、L.gasseri NCK1340、L.gasseri NCK1341、L.gasseri NCK1342、L.gasseri NCK1343、L.gasseri NCK1344、L.gasseri NCK1345、L.gasseri NCK1346、L.gasseri NCK1347、L.gasseri NCK1348、L.gasseri NCK1349、L.gasseri NCK1557、L.gasseri NCK2140、L.gasseri NCK2141及びL.gasseri JV V03。
図3】170のLactobacillus種の系統樹へのBSHタンパク質マッピング(O’Flaherty et al.2018)。群の色は先に記載されているものに従う:Lactobacillus animalis群は紫色で示され、Lactobacillus vaginalis群は緑で、Lactobacillus buchneri群は赤で、Lactobacillus rhamnosus群は黄色で、Lactobacillus acidophilus群はえび茶色で、Lactobacillus gasseri群は青色で示されている。内側のメタデータレイヤーは、Duar et al.(2017)に記載のような生活習慣名称をマッピングしている。外側のメタデータレイヤーは、170のLactobacillus種のそれぞれについてのBSHタンパク質及びPVAタンパク質の有無をマッピングしている。
図4】bshの多様性及び特性解析のサンプリング。95%同一性閾値で490のBSHから濃縮した、57のCD-HITクラスターからのlactobacilli BSHの系統樹。2つの主なクレードが黒及び緑で示されている。複数のBSHが単一株によりコードされ得、いくつかのクラスターに属する複数のBSHをコードする種もある。L.acidophilus株は、異なるクラスターに属する2つのBSHをコードする(O’Flaherty et al.2018。
図5A】Lactobacilli BSHは、抱合胆汁酸に対する選択性のばらつきを示す。モデルのLactobacilli株からのBSH活性を評価するため、L.johnsoniiのbshA、bshB及びbshC(それぞれ、LjBSHa、LjBSHb、及びLjBSHc)を精製し、それらの具体的な活性と最適pHをニンヒドリンアッセイで決定した。試験した酵素は、グリコ抱合型及びタウロ抱合型の胆汁酸ならびに酸性条件に対する異なる選択性を示した。
図5B】Lactobacilli BSHは、抱合胆汁酸に対する選択性のばらつきを示す。BSHアミノ酸配列の保存分析。クラスター化したデータセットの57のクラスターからの代表的BSHタンパク質のアラインメントを、保存されたアミノ酸モチーフについて分析した。0.75以上の保存スコアは破線で示されている。モチーフ及び保存されたアミノ酸をWebLogoで示している。アスタリスクは、O’Flaherty et al.,2018からの、先に記載されている保存された活性部位残基を示す。
図5C】Lactobacilli BSHは、抱合胆汁酸に対する選択性のばらつきを示す。CpBSH活性部位及び加水分解されたTDCAのクローズアップ構造図。活性部位ポケット内での保存された触媒的に重要な残基の位置を示すために、それらを強調表示している。
図6】セフォペラゾンで処置したCDIマウスモデルでのLactobacillus定着。実験タイムラインの概要。簡単に言えば、マウスを、セフォペラゾン含有飲料水で5日間処置した。2日間の洗浄の後、マウス(n=16)に、10CFUのリファンピシン耐性Lactobacillusを強制経口投与した。記載されている日に100μg/mLのリファンピシン添加LBS寒天に糞便を播種してコロニー形成をモニターした。
図7】A~Fは、抗生物質処置したマウスモデルでのLactobacillus細菌量である。Lactobacillus種の経時的コロニー形成レベルがCFU/g糞便で示されている。破線は、検出限界を示す。常在Lactobacillusをリファンピシン欠如LBS寒天で計数した。
図8A】異なるLactobacillus株の投与により、7日後に別個の構造の腸内細菌叢がもたらされる。16S rRNA遺伝子のV4領域のシーケンシングを使用して、LAB定着マウスの便と盲腸の試料内の分類学的多様性を特徴付けした。Bray-Curtisの距離に基づく非計量多次元尺度構成法による序列化を使用して、マウスの細菌叢がセフォペラゾン処置から回復する際の、LAB処置群の細菌叢のβ-多様性を視覚化した。7日目における盲腸の群衆の相違は、LAB定着が、抗生物質による混乱後の腸内細菌叢の集合を変化させることを示唆している。
図8B】異なるLactobacillus株の投与により、7日後に別個の構造の腸内細菌叢がもたらされる。LAB定着マウス間の群衆構造の相違を、7日目の盲腸試料中の細菌の門の相対的存在量を評価することによって詳細に記載した。Firmicutes、Bacteroidetes、及びProteobacteriaがLAB処置をしないマウスの細菌叢で優勢であった。しかしながら、L.acidophilusの定着はBacteroidetesの復帰を抑制し、またL.gasseriは、Proteobacteriaの復帰を抑制した。
図9】E.coli由来組換えBSHの過剰発現及び精製。(A、B)L.acidophilus NCFM(LaBSHa及びLaBSHb)及び(C)L.gasseri ATCC33323の株のBSH活性をさらに評価するため、BSH(LgBSHa及びLgBSHb)をEscherichia coli株BL21(λDE3)に組換えにより発現させ、コバルトカラムでC末端Hisタグ精製を使用して精製した。精製BSHタンパク質は、タンパク質分子量、タンパク質ラダー標準、及びゲルを用いてSDS-PAGEで視覚化される。
図10】LactobacillusのBSHは、胆汁酸抱合に対し様々な選択性を示す。組換えにより発現させ精製した(A)LaBSHa、(B)LaBSHb、(C)LgBSHa、及び(D)LgBSHbの平均比活性を、抱合胆汁酸パネルでのニンヒドリンアッセイにより決定した。エラーバーは、独立した実験(n=3)からのs.d.を表す。
図11】精製BSH及びそれらの最適pH。(A)LaBSHa、(B)LaBSHb、(C)LgBSHa、及び(D)LgBSHbの、それぞれの好ましい基質とのpH条件範囲全体にわたる比活性。
図12】L.acidophilusのbshA及びbshBは、基質依存的に胆汁酸解毒に寄与する。胆汁酸存在下でのBSH変異体の増殖。L.acidophilus増殖中のBSH活性の役割を評価するため、BSHの単一変異体及び二重変異体を胆汁酸添加MRS培地で増殖させ、増殖をOD600nmで測定した。
図13】L.acidophilusのbshA及びbshBは、基質依存的及び濃度依存的に胆汁酸解毒に寄与する。胆汁酸存在下でのL.acidophilus bsh変異体の増殖は、(A)MRS培地単独ならびに胆汁酸(B)GCA、(C)TCA、(D)GCDCA、(E)TCDCA、(F)GDCA、及び(G)TDCAを添加した培地においてOD600nmで測定することにより評価した。各増殖の終点のCFUは図17Aに示されている。
図14】L.acidophilus及びL.gasseriの無菌C57BL/6マウスでの定着は、盲腸の脱抱合胆汁酸をわずかに増加させる。盲腸試料でターゲットメタボロミクスを実施して一次胆汁酸(A)CA、(B)CDCA、及び(C)α/βMCAを定量した。
図15A】胆汁酸の構造。胆汁酸の構造と本開示で使用される略語。
図15B】胆汁酸の臨界ミセル濃度(CMC)。本明細書で実験的に決定された胆汁酸の臨界ミセル濃度(CMC)。棒は、独立した実験(n=2)からの平均CMC±s.e.mを表す。
図15C】胆汁酸の臨界ミセル濃度(CMC)。Optimizer-BlueBALLSを使用してCMCを決定した。2つの独立した実験からの吸光度データを各分子の胆汁酸濃度に対してプロットした。Graphpad Prismを使用して標準的5パラメータロジスティック曲線適合を実施し、Log10EC50で表される各曲線の変曲点を計算することによりCMCを決定した。変曲点値は、平均±s.e.mを表す。
図16】脱抱合胆汁酸の野生型及びΔbshABの最小発育阻止濃度(MIC)。(A)BSHが欠失したL.acidophilus及びL.gasseriの(ΔbshAB)株を使用して、抱合及び脱抱合の胆汁酸のMICを決定した。(B)野生型及びΔbshABの脱抱合胆汁酸のみのMIC。棒は、独立した実験(n=3)からの平均MICを表す。
図17】BSHは、Lactobacillusの定着にBSH特異的及び胆汁酸特異的に影響を与える。(A)MRS、GCA、TCA、GCDCA、TCDCA、GDCA、またはTDCAで24時間増殖させたL.acidophilus及び(B)L.gasseriのBSH変異体。エラーバーは、独立した実験(n=4)からの標準偏差(s.d.)を表す。破線は、0時間における開始時のおよそのCFU/mLを示す。ΔbshAB株を機能的に補完するため、外因性の組換え型LaBSHaとLaBSHb(LaBSHab)またはLgBSHaとLgBSHb(LgBSHab)を、(A)L.acidophilus ΔbshABまたは(B)L.gasseri ΔbshABの増殖物と等モル量で培養物に添加した。
図18】BSH活性は、膜の統合性及び競合的動力学を胆汁酸特異的に変化させる。(A)(B)様々な胆汁酸に曝露されるかまたは熱殺菌された(HK)、対数中期まで増殖したLactobacillusの膜統合性を評価するためのヨウ化プロピジウム(PI)染色。正規化した蛍光は、バックグラウンドPIの蛍光を減算し、胆汁酸曝露開始時のOD600を基準として正規化することにより計算した。棒は、独立した実験(n=3)からの平均蛍光を表し、エラーバーは、s.d.を表す。(C)(D)様々な胆汁酸の存在下で嫌気的に24時間共培養したLactobacillusの競合指標。競合指標(CI)を以下のとおり計算した:CI=最終[Log10(ΔbshAB CFU)/Log10(野生型CFU)]/初期[Log10(ΔbshAB CFU)/Log10(野生型CFU)]。等モルのLaBSHaとLaBSHb(LaBSHab)またはLgBSHaとLgBSHb(LgBSHab)を培養0時間にて加えた。破線は、CI=0を示す。
図19】ノトバイオートマウスでの株定着は、株依存的にBSH活性により変化させられる。5~8週齢の無菌C57BL/6マウスの(A)L.acidophilus及び(B)L.gasseriの単独定着。0日目、1日目及び4日目に糞便を採取し、7日目にマウスを屠殺して、その盲腸を播種した(7c日目)。(C)野生型(RifR)株及びΔbshAB(StrR)株を使用したL.gasseriの共定着(co-colonization)。破線は、検出限界を示す。
図20】BSH特異性は、進化の関係を示す。(A)組換えにより発現させ精製したLAB BSHを、グリシン抱合胆汁酸及びタウリン抱合胆汁酸のパネルに対して脱抱合についてアッセイした。各BSHの比活性は、ニンヒドリンアッセイによってアミノ酸放出量を定量化することにより決定した。近隣結合法を使用して、各BSHの一次アミノ酸配列に基づいた系統樹を構築した。いくつかのBSHクレードは類似した基質特異性プロファイルを示し、これを使用して、BSHの活性を予測し、どの残基が基質特異性に寄与するのかを理解することができる。(B)各BSHの対応する配列番号(それぞれのアミノ酸同一性パーセントは>95%)。
図21A】BSH_1~21にCLUSTALW配列アラインメントを実施した。同一性には濃灰色で陰影を付け、類似性は黒枠で囲んでいる。抱合アミノ酸との推定的な相互作用領域は黒枠で囲んでいる。
図21B】(B)活性部位にGCA(濃灰色の球)があるLgBSHaの予測される構造。3つのアミノ酸を有する推定上の基質結合ループが濃灰色で強調表示されている。
図21C】推定上の基質結合ループにおけるLgBSHaの3つのキメラ変異体ならびにGCA及びTCAに対するそれらの相対的活性。
図22】BSH特異性を活用して、抱合胆汁酸基質依存的にClostridioides difficileを阻害することができる。(A)組換えにより発現させ精製したL.johnsonii BSHを、GCDCA及びTCDCAを用いて脱抱合についてアッセイした。各BSHの比活性は、ニンヒドリンアッセイによってアミノ酸放出量を定量化することにより決定した。(B)(C)GCDCA、TCDCA、またはCDCAと、精製したLjoBSHaもしくはLjoBSHcとの組み合わせを添加したBHIS培地におけるC.difficileの嫌気的増殖。
図23】セフォペラゾン処置マウスの盲腸のC.difficileエキソビボ増殖。BSH活性によりマウス盲腸内容物中で抑制性脱抱合胆汁酸が生成され、それがC.difficileの増殖を阻害した。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16A-16B】
図17A-17B】
図18
図19
図20
図21A-1】
図21A-2】
図21B
図21C
図22
図23
【配列表】
2022531728000001.app
【国際調査報告】