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特表2022-531750タンク断熱用スラブのポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを準備する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-11
(54)【発明の名称】タンク断熱用スラブのポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを準備する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20220704BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20220704BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20220704BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20220704BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20220704BHJP
【FI】
C08G18/00 J
B63B25/16 P
C08G18/00 H
C08L75/04
C08K7/02
C08G101:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541020
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2021-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2020050922
(87)【国際公開番号】W WO2020148339
(87)【国際公開日】2020-07-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】デ コンバリユ ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】キッツマン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】デウルフ レティティア
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002DA016
4J002DL006
4J002FA046
4J002GN00
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034HA01
4J034HA06
4J034HC12
4J034HC63
4J034HC67
4J034HC71
4J034MA01
4J034NA01
4J034NA02
4J034NA03
4J034NA06
4J034NA07
4J034QB16
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA12
4J034RA19
(57)【要約】
本発明は、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを準備する方法に関し、フォームの膨張はトンネルを形成するダブルベルトラミネータの壁によって制約され、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックは、低い熱伝導率を有利に有するガスを貯蔵するセルからなり、密度が50kg/m未満であり、繊維含有量Cが繊維強化フォームのブロックの少なくとも4重量%に相当し、繊維の含浸時間tが、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのクリームタイムt未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉断熱タンクの断熱スラブの繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを準備する方法であって、
前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックは、ガスを貯蔵するセルから構成され、密度が50kg/m未満であり、繊維含有量Cが前記繊維強化フォームのブロックの少なくとも4重量%に相当し、
前記準備する方法は、
ポリウレタン/ポリイソシアヌレートを得るための反応物と、オプションで少なくとも1つの反応触媒と、オプションで少なくとも1つの乳化剤と、少なくとも1つの発泡剤と、を含む、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームを得るために必要な化学成分を混合(12)する工程と、
前記化学成分の混合物(12)の重力による流れによって、繊維の織物及び繊維のマットから選択される複数の繊維強化材(10)への含浸を行う工程と、
前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームを形成する及び膨張させる工程と、を有し、
前記複数の繊維強化材(10)への含浸を行う工程において、
前記繊維は、長さが少なくとも5センチメートル(cm)であり、重ね合わされた層として配され、
前記複数の繊維強化材(10)は、前記重力による流れの方向に対して垂直な方向に沿って主に延在し、
前記複数の繊維強化材(10)は、前記化学成分の混合物(12)に対するmで表される浸透率Kが、K=(r ×p)/(k×τ×4×V )に等しく、式中、
=メートル(m)で表される前記繊維の半径、
p=0~1の値である、前記繊維(10)のポロシティ(無次元)、
k=前記繊維強化材(10)の性質に依存するフォームファクタ(無次元)、繊維の織物についてはk=1、繊維のマットについてはk=6、
τ=前記繊維の配置に依存する屈曲度(無次元)、
=0~1の値である、前記繊維の体積分率(前記繊維強化材の体積中の繊維の割合)であり、
前記化学成分の混合物(12)は、前記含浸を行う工程b)の間、前記繊維の含浸時間tが前記ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのクリームタイムt未満となるような粘度ηを示し、
前記繊維の含浸時間tは、t=(η×e )/(K×ΔP)に等しく、ここで、ΔP=(Msd×g×k)であり、式中、
η=パスカル×秒(Pa・s)で表される粘度、
=メートル(m)で表される前記繊維強化材(10)の平均厚さの合計であって、ここで、各繊維強化材の平均厚さは、当該繊維強化材の厚さの方向に沿って互いに間隔を置いて位置する、当該繊維強化材(10)における複数の対の局所極端間の距離の平均に対応し、
ΔP=パスカル毎メートル(Pa)で表される圧力勾配、
sd=単位面積当たりの重量(kg/m)で表される前記化学成分の混合物の表面密度、
=重力であり、9.8N/kgに等しいとする、
=0.5に等しい定数である平均圧力因子である、方法。
【請求項2】
前記含浸時間tは、前記ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのクリームタイムtに対して、0.50<(t/t)<0.91の式を満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの膨張は、トンネルを形成するダブルベルトラミネータの壁によって物理的に制約され、
前記トンネルは、有利には矩形の断面を有し、横方向に配置された前記壁間の距離がLに等しくかつ水平に配置された前記壁間の距離がEに等しく、これにより前記膨張している繊維強化フォームを包み込んで前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを得るように構成されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ダブルベルトラミネータの前記トンネルの前記壁の配置は、
前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの膨張に対する制約によって、前記ダブルベルトラミネータの出口における前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの体積が、このようなダブルベルトラミネータの壁の制約のない自由膨張の場合のこの同じ繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの膨張体積の85%~99%、好ましくは90%~99%となるように定められる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの膨張は、自由である、即ち閉じたセクションの体積によって制約されない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームを自由膨張させる工程の後に、前記繊維強化フォームを、前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを得るために切断する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化学成分の混合物(12)の前記粘度ηは、標準温度及び標準圧力条件下で、30mPa・s~3000mPa・s、好ましくは50mPa・s~1500mPa・sである、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
低い熱伝導率を有利に有するガスを貯蔵する前記セルのうち少なくとも60%が、前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックの厚さEの軸に平行な軸に沿って長細い又は引き延ばされた形状を有する、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
低い熱伝導率を有利に有するガスを貯蔵する前記セルのうち少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%が、前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックの厚さEの軸に平行な軸に沿って長細い又は引き延ばされた形状を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記長繊維から連続繊維は、ガラス繊維、炭素繊維又は任意の他の有機若しくは無機材料からなり、好ましくはガラス繊維からなる、請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維強化材(10)は全幅Lにわたって配置され、
前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームを得るための成分と発泡剤との前記混合物(12)の前記繊維への含浸を行う工程b)を、制御された液体ディスペンサ(15)を介して前記全幅Lにわたって同時に実行する、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記発泡剤は、物理膨張剤及び/又は化学膨張剤からなり、好ましくはこれら2つのタイプの組み合わせからなる、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記物理膨張剤は、少なくとも4つの炭素原子を有するアルカン及びシクロアルカン、1~8つの炭素原子を有するジアルキルエーテル、エステル、ケトン、アセタール、フルオロアルカン、フルオロオレフィン、アルキル鎖中に1~3つの炭素原子を有するテトラアルキルシラン、特にテトラメチルシラン、及びこれらの混合物から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学膨張剤は水からなる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記化学成分を混合(12)する工程a)の間、核形成ガスが、少なくとも1つのポリオール化合物中に、20~250バールの圧力下で好ましくはスタティック/ダイナミックミキサーを使用して組み込まれ、
前記核形成ガスは、ポリオールの体積の0体積%~50体積%、好ましくは前記ポリオールの体積の0.05体積%~20体積%である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記化学成分を混合(12)する工程a)の間、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートを得るための前記反応物質のそれぞれの温度は、10℃~40℃、好ましくは15℃~30℃である、請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記工程a)において、有機リン系難燃剤、有利にはリン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリス(2-クロロイソプロピル)(TCPP)、リン酸トリス(1,3-ジクロロイソプロピル)(TDCP)、リン酸トリス(2-クロロエチル)若しくはリン酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)、又はこれらの混合物、又は無機難燃剤、有利には赤リン、膨張性黒鉛、酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、酸化ヒ素、ポリリン酸アンモニウム、硫酸カルシウム若しくはシアヌル酸誘導体、又はこれらの混合物を、前記混合物に追加で添加する、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記繊維含有量Cは、前記繊維強化フォームのブロックの7~15重量%である、請求項1~17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18の何れか一項に記載の方法により直接得られた、密閉断熱タンクの断熱スラブ(30)の繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックであって、
前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックは、低い熱伝導率を有利に有するガスを貯蔵するセルで構成され、密度が50kg/m未満であり、繊維含有量Cが前記繊維強化フォームのブロックの少なくとも4重量%に相当し、
前記繊維は、前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロック中に均一に分布しており、前記繊維含有量Cが、前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックの全ゾーン又は一部で±35%、好ましくは±20%しかばらつかない、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロック。
【請求項20】
密閉断熱タンクを備えて支持構造に一体化されたタンクであって、コルゲーションを含むことができる複数の金属ストレーキ又は金属板からなる少なくとも1つの密閉金属メンブレンと、前記密閉金属メンブレンに隣接する少なくとも1つの断熱バリアを含む断熱スラブ(30)と、を備えるようなタンク、又は
少なくとも1つの断熱スラブ(30)を備えるIGCコードによって与えられた定義によるタイプB若しくはタイプCのタンクからなり、
前記断熱スラブ(30)が、請求項19に記載の繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを備える、密閉断熱タンク。
【請求項21】
少なくとも1つの船体(72)と、前記船体内に配置された請求項20に記載の密閉断熱タンク(71)と、を備える、冷たい液体製品を輸送するための船舶(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、少なくとも1つのポリイソシアネート及び少なくとも1つのポリオールから繊維化ポリウレタン(PUR)及び/又はポリイソシアヌレート(PIR)フォーム(長繊維から連続繊維を含有する)のブロックを準備する方法であって、このフォームのブロックは、特に液化天然ガス(LNG)又は液化石油ガス(LPG)などの極低温流体と呼ばれる非常に冷たい流体を収容する、タイプB又はタイプCの支持構造又は自立型構造に一体化されたタンクにおいて使用される。
【0002】
本発明はまた、繊維強化PUR及び/又はPIRフォームのブロックに関し、このブロックは、その特定の用途の観点から、かなり細かく特定された機械的及び熱的特徴を示しながら、製造において可能な限り経済的でなければならない。
【0003】
最後に、本発明は、より具体的には、この準備方法によって直接得られる上記したフォームを使用する密閉断熱タンク及び当該タンクを備える船舶に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリウレタンPURフォームは、低い熱伝導率を有し得るガスを貯蔵する微細セルから構成されるセル状断熱体である。PURフォームは、可撓性PURフォームとして自動車産業で又は硬質PURフォームとして断熱材に使用されるなど、非常に多くの用途に使用されている。ポリウレタンタイプのフォームの形成は当業者に知られている。ポリウレタンタイプのフォームの形成は、ポリオール(少なくとも2つのヒドロキシル基を担持する化合物)、ポリイソシアネート(少なくとも2つのイソシアネート-NCO官能基を担持する化合物)、及び「発泡剤」とも表現される膨張剤の間の多成分反応を必要とする。この縮合反応は、特に、第三アミン又はスズ若しくはビスマス塩などの金属-カルボン酸塩配位錯体などの塩基性及び/又は求核性の性質を有する化合物によって触媒される。PURフォームの製造に一般的に使用されるポリオールは、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールである。したがって、多数の化合物がPURフォームの形成に必要とされる。
【0005】
ポリイソシアヌレート(PIR)及びポリウレタン/ポリイソシアヌレート(PUR-PIR)フォームも建築産業(建設/改修)で使用され、PURよりも優れた耐火特性及び大きな圧縮強度をもたらすという利点がある。これらのフォームの形成の方法は、PURフォームの形成の方法と同様である。これは、PUR、PIR及びPUR-PIRフォームを得ることがイソシアネート/ポリオール比に依存するからである。
【0006】
従来技術として文献FR2882755及びKR20000010021が知られており、これらの文献には、繊維強化PUR又はPIRフォーム、及びそれらの準備について記載されている。これら2つの文献では、PUR又はPIRフォームは高密度を有する。
【0007】
PUR、PIR及びPUR-PIRフォームを得ることは当業者に知られているが、それにもかかわらず、繊維の添加については、特に長繊維から連続繊維、即ち少なくとも5センチメートルの長繊維、がフォーム体積中に均一に分散された繊維強化PUR、PIR又はPUR-PIRフォームを得ることが望ましい場合に、特定の技術的問題を伴う。
【0008】
特に、低密度繊維強化PUR、PIR及びPUR-PIRフォーム、即ち、50kg/m未満の密度を有するフォームを得たい場合、繊維の組み込みは非常に困難であり、大抵の場合は繊維が均一に分布していないフォームが得られる。これは、このような低密度繊維強化フォームを得るためには、発泡剤を高い割合で使用しながら、繊維への迅速かつ均一な含浸を同時に行う必要があるからである。これにより、発泡剤がもはやポリオール中に完全に溶解されず、飽和ポリオール中に発泡剤のエマルジョンが形成されることとなり、これを安定化させてイソシアネートと効率的に混合させる必要がある。プレポリマー混合物を繊維上に(単純な重力の作用下で)注ぐという状況において、上記問題の1つの解決策として、ポリオール/イソシアネート混合中に核形成ガスの量を増加させることが挙げられるが、これにより粘度が高くなって、ブロックの上部が繊維を欠いているか、又は事実上欠いている状態となることから、繊維中へのポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの良好な浸透を得ること、したがって均一な繊維強化フォームのブロックを得ることが困難となるか、不可能になる。
【0009】
したがって、発泡剤の増加によって(繊維に関して)不均一な構造又は不均一な密度のフォームが得られることとなり、このようにして得られた繊維強化フォームは、熱的に非効率であり、機械的品質が低くなる。
【0010】
さらに、発泡剤の量を増加させることは、物理発泡剤の有意な蒸発に関連する吸熱現象を補償するためにより多くの反応性化学成分の使用を必要とし、これによりクリームタイムが減少し、制御下での膨張を目的とする繊維への良好な含浸が不可能となる。
【0011】
さらなる課題は、経済的なフォームブロック、即ち均一な繊維強化フォームブロックを得るための切断が不要なブロックの製造にあり、この切断に関連する材料損失は、従来は15%程度であり、実際には20%を超えるものであり、工業方法においては全く不十分である。
【0012】
したがって、特にブロック中の繊維含有量が不均一であることが原因で、現時点では、非常に良好な機械的特性を示すブロックを得ることを可能とする低密度(50kg/m未満)の繊維強化ポリウレタン及び/又はポリイソシアヌレートフォームのブロックを準備する方法は存在しない。
【発明の概要】
【0013】
これに関連して、本出願人の会社は、長繊維から連続繊維をかなりの量で含有するポリウレタン(PUR)及び/又はポリイソシアヌレート(PIR)フォームを製造する方法を開発することに成功し、これにより、軽量で、取扱いが容易で、優れた機械的特性を示し、同時にその優れた断熱性能品質を維持、実際には改善さえもする繊維強化フォームを得ることが同時に可能となった。有利には、好ましい実施形態によれば、繊維強化フォームの完全な均一性により、繊維強化フォームのための製造コストの大幅な削減が可能である(したがってフォームブロックからの材料の損失は最小限であり、実際には無視することさえできる)。
【0014】
本発明による「ブロック」という用語は、非限定的な用語であり、「ブロック」は、任意の形状を有することができ、切断されることは必須ではない。
【0015】
したがって、本発明は、最適な機械的特性を有する低密度繊維強化PUR/PIRフォームを工業的に得るための、実施が簡単かつ特に有効な解決策を提供することによって、従来技術の欠点を克服することを目的とする。
【0016】
本出願人の会社は、種々の研究及び分析の後、低密度フォームのブロックの最終用途に関係する特定の目的の観点から、現在の準備における技術的問題をまず解決することができる、長繊維から連続繊維を有する繊維強化ポリウレタン(PUR)及び/又はポリイソシアヌレート(PIR)フォームのブロックの準備方法を発見した。
【0017】
したがって、本発明は、密閉断熱タンクの断熱スラブの繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを準備する方法であって、前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックは、ガスを貯蔵するセルから構成され、密度が50kg/m未満であり、繊維含有量Cが前記繊維強化フォームのブロックの少なくとも4重量%に相当し、前記準備する方法は、
a)ポリウレタン/ポリイソシアヌレートを得るための反応物と、オプションで少なくとも1つの反応触媒と、オプションで少なくとも1つの乳化剤と、少なくとも1つの発泡剤と、を含む、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームを得るために必要な化学成分を混合する工程と、
b)前記化学成分の混合物の重力による流れによる複数の繊維強化材への含浸を行う工程と、
ここで、繊維は、重ね合わされた層として配された長繊維から連続繊維であり、前記複数の繊維強化材は前記重力による流れの方向に対して垂直な方向に沿って主に延在し、前記複数の繊維強化材は前記化学成分の混合物に対するmで表される浸透率Kが、K=(r ×p)/(k×τ×4×V )に等しく、式中、
=メートル(m)で表される前記繊維の半径、
p=0~1の値である、前記繊維のポロシティ(無次元)、
k=前記繊維強化材の性質に依存するフォームファクタ(無次元)、繊維の織物についてはk=1、繊維のマットについてはk=6、
τ=前記繊維の配置に依存する屈曲度(無次元)、
=0~1の値である、前記繊維の体積分率(前記繊維強化材の体積中の繊維の割合)であり、
c)前記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームを形成する及び膨張させる工程と、を有する。本発明に係る方法の特徴は、上記の化学成分の混合物が、含浸を行う工程b)の間、繊維の含浸時間tがポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのクリームタイムt未満となるような粘度(dynamic viscosity)ηを示し、繊維の含浸時間tは、t=(η×e )/(K×ΔP)に等しく、また、ΔP=(Msd×g×k)であり、式中、
η=パスカル×秒(Pa・s)で表される粘度、
=メートル(m)で表される繊維強化材の平均厚さの合計、
ΔP=パスカル(Pa)で表される水圧勾配又は圧力差、
sd=単位面積当たりの重量(kg/m)で表される前記化学成分の混合物(12)の表面密度、
=9.8N/kgに等しいとみなされる重力(force de gravitation terrestre)、
=0.5に等しい定数である平均水圧因子である。
【0018】
「ガスを貯蔵するセル」との用語は、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームが、反応混合物の核形成工程の間に注がれた、又は化学若しくは物理膨張剤から直接若しくは間接的に生じるガスに由来する、好ましくは低い熱伝導率を示すガスを包むクローズドセルを示すことを意味すると理解される。
【0019】
「繊維強化材」との用語は、繊維が以下の2つの別個の形態のうちの何れかで提供され得るという事実を意味すると理解される。
-少なくとも1つの繊維の織物の形態。この形態では、繊維が少なくとも1つの方向に沿って完全に整列している、換言すれば、繊維が、繊維の少なくとも1つの好ましい方向を示す。「繊維の織物」との用語は、それ自体当業者に知られている明確な技術的定義を指す。
-あるいは、少なくとも1つの繊維のマットの形態。この形態では、繊維は規定された配向を示さず、換言すれば、繊維は、マットの層の主面に主に沿って等方的に配向される。再度、「繊維のマット」との用語は、それ自体当業者に知られている明確な技術的定義を指す。
【0020】
一実施形態によれば、「低い熱伝導率を(有利に)有するガス」という表現は、発泡剤が「化学物質」である場合、即ち化学発泡剤が水からなる際には従来は二酸化炭素(CO)である場合に、発泡剤の化学反応によって発泡剤から生じるガスか、あるいは、例えば分子状窒素(N)、分子状酸素(O)、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン及びこれらの混合物などの物理発泡剤によって発泡剤から生じるガスを意味すると理解される。物理発泡剤、例えば分子体の窒素N、分子体の酸素O又はCOは、ガスの形態である。これらのガスは、例えばスタティックミキサーを使用して高圧下で、コポリマーの液体の塊の中に分散される。システムを減圧することにより、核形成及び気泡の成長によってセル状構造が生成される。
【0021】
「繊維強化材は、化学成分の混合物の重力による流れの方向に垂直な方向に主に沿って延在する」という表現は、この繊維強化材が、含浸を行う工程b)の間に、前記成分の混合物の流れの方向に垂直な面に沿って延在する小さい厚さの層の形態で提供されるという事実を意味すると理解される。したがって、図1に見られるように、幅Lを有し重ね合わせられた層として配された複数の繊維強化材は縦方向lに引き込まれ(entraine)、一方、化学成分の混合物は、化学成分の混合物の重力による流れを可能にする/作るディスペンサから繊維強化材上に堆積される。換言すれば、オプションで圧力下においてディスペンサから出る化学成分の混合物は、積み重ねられた繊維のマット上に少なくともそれ自体の重さにより落下し、これにより繊維強化材の上層から下層への含浸が行われる。
【0022】
メートル(m)で表される繊維の半径に関する「r」という記載は、強化材中の繊維の半径を意味する、あるいはより慣例的には、平均半径を示す凝集繊維を局所的に形成する繊維のセットの凝集体によって考慮される半径又は準半径(そしてこれはrに等しい)を意味すると理解される。この繊維の半径rに関するこのデータは、繊維強化材によって、その主な物理化学的特徴の1つとして定義され、オプションで、当業者に知られている線密度(g/km)又は糸及び紡糸糸のカウント(線密度)の測定値であるテックスによって特徴付けることができ、このデータから繊維の半径rが得られ、オプションで繊維の凝集を考慮した場合の平均半径rの半径が得られる。
【0023】
換言すると、繊維の半径rは、繊維が凝集繊維の一部を形成しない場合には強化材中の繊維の半径に等しく、あるいは数本の繊維が凝集している場合には凝集繊維の半径に等しい。
【0024】
「繊維が長繊維から連続繊維である」(あるいは「長繊維から連続繊維」)という表現は、繊維、又は適切な場合には凝集繊維(互いに結合又は固定された繊維)が、単独で又は単一繊維の同等物を形成する凝集状態で考えた場合に、繊維の総質量について、全て又は繊維の少なくとも90%が、少なくとも5センチメートル(cm)の長さであるということを意味すると理解される。
【0025】
同様に、繊維のポロシティp及び屈曲度(tortuosite)τは、考慮中の繊維強化材に特徴的な量であり、即ちこれらの量の値は繊維強化材を定義するものとして知られている。したがって、これらの値は従来、繊維強化材を定義するものとして与えられているが、もちろん、ダルシーの法則を適用することによって、定められたガラス強化材のスタックを通るキャリブレートされた流体(例えば空気、シリコーンオイル)の一方向又は半径方向の非乱流静止流の測定のような従来の技術によって測定することができる。
【0026】
本発明の状況下で使用される繊維のポロシティを測定するために、繊維が繊維の織物の形で提供されるか繊維のマットの形で提供されるかを問わず、例えば、スライディングキャリパー、理想的には、例えば、10程度の繊維の織物又は繊維のマットからなるスタックのサンプルの厚さを測定するデジタルキャリパーを使用することができる。繊維の織物/繊維のマットのサンプルの幅/長さ寸法を考慮し、さらに考慮中の繊維の(ガラス、玄武岩、炭素、麻などの)密度を知った上で、繊維の織物又は繊維のマットのスタックにおける厚さ極端をなすいくつかの点/位置で厚さ(又は高さ)が測定され、これにより、考慮中の繊維強化材(織物又はマット)の平均厚さが決定され、したがってこの繊維の織物又は繊維のマットにおける繊維によって占められる体積(この場合、空気の密度はゼロとみなされる)がわかる。先に述べたように、このポロシティは、0~1であり無次元である、即ちポロシティは考慮中の繊維強化材(織物又はマット)中の空隙のパーセンテージ又は比率を表し、「繊維ポロシティ」と言い換えることができる。
【0027】
繊維の密度は、当業者に知られているか又はアクセス可能な特性であることに留意されたい。通常、本発明の主題は、アクセス可能又は市場で入手可能な材料/製品を使用することは明らかに理解され、考慮中の材料/製品に関する仕様においてそれらの特性、特にそれらの密度又は(ダイナミック)粘度に関連するものが入手可能である。
【0028】
繊維強化材の屈曲度τは、繊維強化材を構成する繊維の平均屈曲度に対応し、繊維の屈曲度は比Le/Lに等しく、ここで、Leは、有効経路長、即ち繊維によって形成される曲線の長さであり、Lは、繊維が湾曲している表面距離、即ち繊維の2つの端部間の距離である。
【0029】
繊維の屈曲度又は繊維の凝集体(上で「凝集繊維」と称される)の屈曲度を決定するための方法は、特に、R.Pomeroyによる論文「樹脂トランスファー成形のための連続フィラメントマットの浸透性特性」(2009)(特にSemantic Scholarデータベースで入手可能)である。
【0030】
また、フォームファクタkは、考慮中の繊維強化材の性質によって定義される定数である。したがって、上記したように本発明の状況下では繊維強化材は繊維の織物又は繊維のマットからなることができ、このフォームファクタkの値は、これらの2つの場合のそれぞれにおいて与えられ、例えば炭素繊維のような繊維の織物についてはk=1であり、例えば連続ガラス繊維のマットのような繊維のマットについてはk=6である。
【0031】
分率Vに関して、この分率は繊維の体積分率(強化材のバルク体積中の繊維の構成材料の体積割合)であり、即ち0~1の値であり、換言すれば、強化材中の繊維の割合(体積パーセント)(強化材の縁部/端部によって閉じた体積が画定される)を表す。この値Vは考慮中の繊維強化材の固有の特徴として知られており、値Vは、例えば、当業者に知られている表面密度(g/m)の測定によって測定することができ、そこから繊維の体積分率Vを得ることができる。オプションで、国際規格ISO 14127:2008を使用してこの繊維の体積分率Vを測定することができる。
【0032】
という用語は、メートル(m)で表される繊維強化材の平均厚さの合計を表し、換言すれば、各繊維強化材の平均厚さが測定され、繊維強化材のそれぞれの平均厚さを加算することによってこの用語eの値が得られる。「平均厚さ」という表現は、強化材における2つの局所極端の間の距離の平均、即ち、繊維強化材における繊維強化材の延長面に対して実質的に対向して位置する最も離れた2つの点の間の距離を意味すると理解され、できるだけ正確な繊維強化材の平均厚さを決定するために、この2つの点の間のこの距離の測定は強化材の複数のゾーンにおいて繰り返される。換言すれば、繊維強化材の平均厚さは、繊維強化材の厚さ方向に沿って互いに離間して配置された繊維強化材における複数の対の局所極端の間の距離の平均に相当する。
【0033】
ΔPとの用語は、パスカル(Pa)で表される水圧勾配、即ち、化学成分の混合物によって含浸される(複数の)繊維強化材の(複数の)上層と、化学成分の混合物によってまだ含浸されていない(複数の)繊維強化材の(複数の)下層と、の間の圧力差、したがって大気圧に実質的に等しい圧力におけるものを表す。第3の式からわかるように、このΔPとの用語は、上記の化学成分の混合物の表面密度Msd、即ち単位面積当たりの上記混合物により形成される物質の量(この場合、kg/mで表される)の関数である。
【0034】
したがって、本発明による準備方法を規定するために使用される全ての用語や記載及びそのそれぞれの値、より具体的には含浸時間tは、それ自体既知のデータであるか、又は当業者に知られている技術で決定/測定することができる。
【0035】
「クリームタイム」との表現は、化学成分の混合から数えて、化学成分が重合反応を開始し、成分の混合物が膨張及び架橋工程c)(=繊維強化PUR/PIRフォームの形成)を開始するのに必要な時間を意味すると理解される。このクリームタイムは当業者に知られているデータである。換言すれば、クリームタイムは、気泡(ガスを貯蔵するセル)の核形成及び周囲温度での化学成分の混合後のフォームの膨張の作用下で混合物が白色に変わるまでの時間である。クリームタイムは、視覚的に、又はフォームの形成を反映する厚さの変化を検出する超音波センサを使用して、決定することができる。
【0036】
繊維強化材の特徴及び化学成分の混合物の粘度の特定の選択により、繊維に関して完全な均一性を示す低密度繊維強化PUR/PIRフォームのブロックが得られ、換言すれば、繊維含有量Cは、フォームブロックの全ての部分において、同じあるいは±35%の範囲内であり、実際には有利には同じあるいは±20%の範囲内である。この重要な特徴により、出願人会社によって実施される試験によって後に実証されるように、軽くかつ寸法及び形状に関して均整がとれたものとすることが容易に可能であり、優れた機械的特性を示す繊維強化フォームのブロックを得ることができる。
【0037】
したがって、本発明により得られる繊維強化フォームのブロックは、その制御された均一な構造及びその機械的特性により特徴付けられ、特に疲労強度と、膨張に対し垂直な面におけるその引張強度(規格ISO 1926にしたがって測定される)と、この同じ面におけるその低い熱収縮係数(規格ASTM E 228にしたがって測定される)と、によって特徴付けられ、これらは支持構造に一体化されたタンクでの使用に適合するが、有利にはIGC規則(IMO)にしたがうタイプB又はタイプCのタンクにも適合し、即ちLNG又はLPGのような非常に冷たい液体の貯蔵及び/又は輸送のための自立型タンクに関連する外部断熱材として適合する。
【0038】
最後に、繊維強化フォームのブロックの熱特性は、従来技術の低密度非繊維強化フォームのブロックの熱特性に少なくとも等しく、より正確には、フォームのブロックは、厚さEにおいて、20℃で測定したときの熱伝導率が30mW/(m・K)(ミリワット毎メートル毎ケルビン)未満、即ち0.03W/(m・K)であり、好ましくは25mW/(m・K)未満であり、さらに好ましくは23mW/(m・K)未満である。
【0039】
本発明による組成物において、化学発泡剤の使用を物理膨張剤の使用と組み合わせることができる。この場合、物理膨張剤は、好ましくは、発泡性(コ)ポリマー組成物と液体又は超臨界形態で混合され、次いでPUR/PIRフォームの膨張工程中に気相に変換される。
【0040】
化学発泡剤及び物理発泡剤は当業者に知られており、当業者は得たいPUR/PIRフォームに応じてこれらの両方を適切な量で選択する。
【0041】
「ポリオール」との用語は、少なくとも2つのOH基を有する任意の炭素ベースの構造を意味すると理解される。
【0042】
PUR、PIR及びPUR-PIRフォームはイソシアネート/ポリオール比に応じて得られるので、この比にしたがってPUR、PIR又はPUR-PIRフォームが得られる。ポリオール成分とイソシアネート成分との比率が、1:1~1:1.3の場合にはポリウレタンPURフォームが得られ、1:1.3~1:1.8の場合にはポリウレタンPUR-PIRフォームが得られ、1:1.8~1:2.8の場合にはポリウレタンPIRフォームが得られる。
【0043】
PUR、PIR及びPUR-PIRフォームの形成に適切なポリイソシアネートは当業者に知られており、例えば、芳香族、脂肪族、脂環式及びアリール脂肪族ポリイソシアネート及びこれらの混合物を含み、有利には芳香族ポリイソシアネートを含む。
【0044】
本発明の範囲内において適切なポリイソシアネートの例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の4,4´-、2,4´-及び2,2´-異性体などの芳香族イソシアネート、これらの異性体の重合から生じる任意の化合物、トルエン2,4-及び2,6-ジイソシアネート(TDI)、m-及びp-フェニレンジイソシアネート、ナフタレン1,5-ジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI,DDI)及びテトラメチキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの脂肪族、脂環式又はアリール脂肪族イソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネートの任意の混合物を使用することも可能である。有利には、ポリイソシアネートは、4,4´-、2,4´-及び2,2´-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の異性体である。
【0045】
一般に、PUR、PIR又はPUR-PIRフォームの形成中に、ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤を含む混合物に、例えばN,N-ジメチルシクロヘキシルアミン若しくはN,N-ジメチルベンジルアミンなどの第三級アミンから、又はビスマス、カリウム若しくはスズに基づく有機金属化合物から選択することができる反応触媒を添加することが知られている。
【0046】
本発明の他の有利な特徴を以下に簡単に示す。
【0047】
有利には、含浸時間tは、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのクリームタイムtに関して式t+0.1t<t<2tを満たす。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの膨張は、トンネルを形成するダブルベルトラミネータ(DBL)の壁によって物理的に制約され、このトンネルは有利には長方形の断面を有し、そして横方向に配置された壁間の距離はLに等しくかつ水平に配置された壁間の距離はEに等しく、したがって膨張性繊維強化フォームを包み込み、これにより上記の繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックが得られる。
【0049】
したがって、DBLを用いたこの実施形態では、本発明による方法により、かなりの節約ができ、繊維強化フォームのブロックは、均一となり、特に厚さEの軸に垂直な面に沿って所望の優れた機械的特性を本質的に示し、そして、この同じ方向に沿ってこのブロックを後に切断して、繊維が存在しない及び/又は卵形の細胞が軸Eに沿って配向していない端部を除去する理由がなくなる。したがって、本発明による準備の方法における材料損失の量は0%~10%であり、より大抵の場合5%未満である。
【0050】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、有利には、ダブルベルトラミネータのトンネルの壁の位置決めは、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの膨張に対する制約によってダブルベルトラミネータの出口における繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの体積が、このようなダブルベルトラミネータの壁の制約のない自由膨張の場合のこの同じ繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの膨張体積の85%~99%、好ましくは90%~99%となるように定められる。この場合、得られるフォームは、そのフォームの卵形状のセルが軸Eに沿って優先的に配向され、その結果、この軸Eに垂直な面の既に記載されている特性と合わせて、この方向Eに沿う破砕に対する抵抗性(規格ISO 844にしたがって測定される)といった有利な特性が得られる。上記の広くかつ好ましい範囲を決定するために試験及び実験が出願人会社によって行われたが、ここには明瞭さ及び簡潔さのために提示はしていない。
【0051】
一方で、DBLでの繊維強化PUR/PIRフォームの膨張に対する制約の上記の具体的なパラメータ化により、得られる低密度繊維強化PUR/PIRフォームのブロックは、低い熱伝導率を有するガスを貯蔵するセルのうち少なくとも60%、より大抵の場合は80%、実際にはさらに90%が、フォームのブロックの厚さEの軸に平行な軸に沿って縦方向に延び、このことは、繊維強化材の特徴及び化学成分の混合物の粘度に関連する特定の選択の他、繊維強化フォームのブロックの完全な均一性に貢献する。これらの2つの特徴(セルの配向及びブロック中の繊維含有量Cの均一性)により、厚さE(圧縮強度)に沿って、かつ厚さの方向に垂直な面(引張強度及び低い熱収縮係数)において優れた機械的特性を示す繊維強化フォームのブロックを得ることが可能となる。
【0052】
本発明の別の実施形態によると、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの膨張は、自由である、即ち、閉じたセクションの体積による制約がない。
【0053】
この場合、DBLを使用する本発明による準備の実施形態とは異なり、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの準備は「自由膨張」によるものといえ、つまり、有限体積を画定する型とは異なり、繊維強化フォームの膨張が膨張の少なくとも1つの側又は少なくとも1つの面の上に拘束されず繊維強化フォームの膨張がこの側又はこの面の上で自由である限り、「自由膨張」といえる。従来、自由膨張は、(トップ)カバーを省略し、側壁によりフォームが側部を越えて溢れるのを防止してフォームが自然に上方に、恐らくはこれらの側壁の上端を越えて膨張するようにすることで、行われる。
【0054】
有利には、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの自由膨張の工程に続いて、上記繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを得るために前記繊維強化フォームが切断される。
【0055】
本発明により提供される添付の図面には示していない可能性の1つによれば、繊維強化材への含浸を行う工程の直後に、繊維に含浸される(繊維内に浸透させる)成分及び少なくとも発泡剤の混合物に対して、上記の混合物と繊維とからなるアセンブリの上面に圧力を加えるよう構成された圧力を加えるためのシステム(例えば、専用の「ニップロール」のタイプのローラーのシステムであり得る)が適用される。この圧力システムは、一方ではこのアセンブリの上面を作ることを可能とし、そして、アセンブリに加えられる圧力によって上記混合物中の繊維への含浸を促進することに貢献する。この圧力システムは単一又は二重ローラーからなることができ、これらの相対位置は、液体アセンブリの上方及び場合によってはフォーム支持体の下方で、液体アセンブリが完全に均一に広がるように調整される。したがって、これを行うと、2つのローラー間の間隔又は上部ローラーとコンベアベルトとの間の間隔で画定される断面の任意の点において同等量の液体アセンブリが得られる。換言すれば、この圧力システムの主な目的は、液体アセンブリの膨張のメイン部分の前に、液体アセンブリを厚さ/幅で均一にすることに貢献するという点で液体ディスペンサを補完することにある。
【0056】
好ましくは、上記の成分の混合物の粘度ηは、標準温度及び圧力条件(STPC)(25℃の温度及び1015mPaの圧力に対応)下で、30mPa・s~3000mPa・s(又は0.03Pa・s~3Pa・s)であり、好ましくは50mPa・s~1500mPa・s(又は0.05Pa・s~1.5Pa・s)である。
【0057】
成分の混合物の粘度は、例えばBrookfield型の粘度計又は例えば規格ISO 2555を使用するレオメーターを使用して決定することができる。
【0058】
有利には、上記の低い熱伝導率を有利に有するガスを貯蔵するセルのうち少なくとも60%は、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックの厚さEの軸に平行な軸に沿って細長い又は引き延ばされた形状を示す。
【0059】
より有利には、上記の低い熱伝導率を有利に有するガスを貯蔵するセルのうち少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%は、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックの厚さEの軸に平行な軸に沿って細長い又は引き延ばされた形状を示す。
【0060】
細長い又は引き延ばされた形状とは、長さが延長された形状によって定義することができ、即ちそのような形状は、1つの寸法(その長さ)が他の寸法(その幅及び厚さ)よりも大きい形状である。
【0061】
ここで、低い熱伝導率を有利に有するガスを貯蔵するセルの細長い形状に関する特徴、及び本発明に係るブロック中のこれらの含有量/割合は、DBLを用いる準備方法を実行するという状況に特に向けられているが、本シナリオに絶対的に限定されるものでないことはすぐに理解される。なぜなら、自由膨張の場合、より具体的には繊維強化フォームの膨張を制限する上壁/カバーがない場合にも、低い熱伝導率を有利に有するガスを貯蔵するセルの上記のような優先的な配向が得られるからである。
【0062】
本発明の一実施形態では、長繊維から連続繊維は、ガラス繊維、炭素繊維又は任意の他の有機若しくは無機材料からなり、好ましくは、典型的にはポリマー、金属、セラミックのガラス繊維や、ガラス状の無機若しくは有機の性質を有するガラス繊維、例えば好ましくはガラス繊維からなる天然繊維、例えば麻又は亜麻からなる。
【0063】
好ましくは、繊維強化材は全幅Lにわたって配置され、そして、工程b)の、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームを得るための成分と発泡剤との混合物による繊維への含浸が、制御された液体ディスペンサを介して、全幅Lにわたって同時に実行される。
【0064】
「同時に」との用語は、液体混合物(反応物及び少なくとも発泡剤)が、幅Lのセクションにわたって、このセクションに沿って全て同時に繊維に到達し、これにより、異なる繊維強化材への含浸が、フォームのブロックの厚さ(又は高さ)に沿って、1つの及び幅の同じセクションについて、同時に又は同じ速度で開始されるか又は実行される、という事実を意味すると理解される。
【0065】
有利には、発泡剤は、物理膨張剤及び/又は化学膨張剤からなり、好ましくはこれら2つのタイプの組み合わせからなる。
【0066】
優先的には、物理膨張剤は、少なくとも4つの炭素原子を有するアルカン及びシクロアルカン、1~8つの炭素原子を有するジアルキルエーテル、エステル、ケトン、アセタール、フルオロアルカン、フルオロオレフィン、アルキル鎖中に1~3つの炭素原子を有するテトラアルキルシラン、特にテトラメチルシラン、及びこれらの混合物から選択される。
【0067】
この仮定の下では、化合物の例として、プロパン、n-ブタン、イソブタン、シクロブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルブチルエーテル、ギ酸メチル、アセトン及びフルオロアルカンの物質であってもよく、選択されるフルオロアルカンは、オゾン層を分解しないもの、例えば、トリフルオロプロパン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン及びヘプタフルオロプロパンである。フルオロオレフィンの例としては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン又は1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン(例えば、HFO FEA1100、DuPontから販売)が挙げられる。
【0068】
本発明の好ましい実施形態によれば、選択される物理膨張剤は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン又はHFC-245fa(Honeywellから販売)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン又は365mfc(例えばSolkane(登録商標)365mfc、Solvay社から販売)、2,3,3,3-テトラフルオロプロプ-1-エン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(国際的にはHFC-227eaとも呼ばれ、例えばDuPontから販売)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン(例えばHFO FEA1100、DuPontから販売)、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(ソルスティスLBA-Honeywell)又はこれらの混合物である。
【0069】
有利には、化学膨張剤は水からなる。
【0070】
有利には、化学成分を混合する工程a)の間、核形成ガスが、少なくとも1つのポリオール化合物中に、好ましくは20~250バールの圧力下でスタティック/ダイナミックミキサーを使用して組み込まれ、核形成ガスは、ポリオールの体積の0体積%~50体積%、好ましくはポリオールの体積の0.05体積%~20体積%である。
【0071】
好ましくは、化学成分を混合する工程a)の間、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートを得るための反応物質のそれぞれの温度は、10℃~40℃、好ましくは15℃~30℃である。
【0072】
好ましくは、本発明の好ましい実施形態によれば、ポリオール、イソシアネート及び/又は発泡剤の流れの最終混合は、ダイナミック又はスタティックミキサーを使用して、低圧(20バール未満)又は高圧(50バール超)にて混合ヘッド内で行われる。
【0073】
本発明によって提供される1つの可能性によれば、工程a)において、混合物に、有機リン系難燃剤、有利にはリン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリス(2-クロロイソプロピル)、リン酸トリス(1,3-ジクロロイソプロピル)(TDCP)、リン酸トリス(2-クロロエチル)若しくはリン酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)、又はこれらの混合物、又は無機難燃剤、有利には赤リン、膨張性黒鉛、酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、酸化ヒ素、ポリリン酸アンモニウム、硫酸カルシウム若しくはシアヌル酸誘導体、又はこれらの混合物を、追加で添加する。
【0074】
難燃剤は、ジエチルエタンホスホネート(DEEP)、トリエチルホスフェート(TEP)、ジメチルプロピルホスホネート(DMPP)又はジフェニルクレシルホスフェート(DPC)を使用することを想定することも可能である。
【0075】
この難燃剤は、本発明による組成物中に存在する場合、PUR/PIRフォームの0.01重量%~25重量%の量で存在する。
【0076】
好ましくは、繊維含有量Cは繊維強化フォームのブロックの7重量%~15重量%である。好ましくは、繊維含有量Cは繊維強化フォームのブロックの最大30質量%である。
【0077】
また、本発明は、上に簡単に示した方法により直接得られる、密閉断熱タンクの断熱スラブの繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックに関し、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックは、低い熱伝導率を有利に有するガスを貯蔵するセルからなるとともに、密度が50kg/m未満であり、繊維含有量Cが繊維強化フォームのブロックの少なくとも4重量%である。
【0078】
このフォームのブロックは、繊維が繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックに均一に分布し、この繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックの全ゾーン又は一部において、含有量Cが±35%だけばらつく、好ましくは実際にはさらにより制限された範囲、即ち±20%のオーダーでばらつくよう構成されることを特徴とする。
【0079】
したがって、例えば、ブロック中の繊維含有量Cが4%に等しい場合、即ちブロック中の平均でそうである場合、これは、繊維含有量が、ブロックのゾーンに応じて、2.8%~5.2%(及び優先的には3.2%~4.8%)で変動することができることを意味し、もしこの平均繊維含有量Cが15%の値である場合、繊維含有量は、ブロックのゾーンに応じて、10.5%~19.5%(及び優先的には12%~18%)でばらつくことができる。
【0080】
このようなフォームのブロックは、従来の準備手法にしたがって準備されたものとは、異なる特徴を本質的に示す。繊維強化フォームのブロックの準備の方法に関連して上記された種々の要素の性質又は量に関する特徴は、必要であれば、本発明による繊維強化PUR/PIRフォームのブロックをより正確に規定することができることに留意されたい。
【0081】
有利には、上記フォームのブロックの密度は、20~50kg/mであり、好ましくは30~45kg/mである。
【0082】
また、本発明は、支持構造に一体化された密閉断熱タンクに関し、前記タンクは、
-支持構造内に一体化されたタンクであって、密閉断熱タンクを含み、密閉断熱タンクは、少なくともコルゲーション及び断熱スラブを含むことができる複数の金属ストレーキ又は金属プレートから構成される少なくとも1つの密閉金属メンブレンと、前記メンブレンに隣接する少なくとも1つの断熱バリアを含む断熱スラブと、を備えるタンクであるか、又は、
-少なくとも1つの断熱スラブを含むIGCコードによる定義によるタイプB又はタイプCのタンクである。
【0083】
本発明によるタンクは、断熱スラブが、上で概説した繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックを含むことを特徴とする。
【0084】
「IGCコード」との記載は、タンクのタイプB及びタイプCが挙げられている、当業者に知られた「液化ガスのばら積み運送のための船舶の構造及び設備に関する国際規則」を意味すると理解される。
【0085】
なお、特にIGCコードでは、「一体化されたタンク」という表現の代わりに「メンブレンタンク」という表現を用いて1つ及び同じカテゴリーのタンクを示すことが可能であり、このタンクは少なくとも部分的に液化されたガスを輸送及び/又は貯蔵する特定のタンカーに備わるものである。「メンブレンタンク」は支持構造に一体化されているのに対して、タイプB又はタイプCのタンクは自立型であると言われている。
【0086】
このタンクは、上述の準備方法によって直接得られる繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの複数のブロックを含む。
【0087】
最後に、本発明はまた、少なくとも1つの船体と、船体内に配置された上記の密閉断熱タンクと、を備える冷たい液体製品の輸送のための船舶に関する。
【0088】
有利には、タンクが支持構造(メンブレンタンク)内に一体化されたタンクからなる場合、そのような船舶は少なくとも1つの上記の密閉断熱タンクを備え、このタンクは2つの連続する密閉バリアを含み、そのうちの一方は、タンク内に収容される製品と接触する1次密閉バリアであり、他方は、1次バリアと、好ましくは船舶の壁の少なくとも一部によって形成された支持構造と、の間に配置された2次密閉バリアであり、これら2つの密閉バリアは、2つの断熱バリアと、又は1次バリアと支持構造との間に配置された1つの断熱バリアと交互になっている。
【0089】
このようなタンクは国際海事機関(IMO)の規則により一体型タンクとして従来指定されており、例えば、NO96(登録商標)、NO96L03(登録商標)、NO96L03+(登録商標)若しくはNO96Max(登録商標)を含むタイプNOのタンク、又は好ましくはタイプNOのタンクであるMarkIII(登録商標)である。
【0090】
好ましくは、メンブレンタイプ又はタイプB若しくはタイプCとされるタンクは、液化天然ガス(LNG)又は液化ガス(LG)を収容する。
【0091】
以下の説明は、添付の図を参照して単に一例として限定をせずに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】本発明に係る準備方法の異なる工程を示す概略図である。
図2】本発明に係る制御された液体ディスペンサの実施形態の概略図である。
図3】互いに固定された2組の断熱パネルの図であり、各々がタンク用の1次断熱空間及び2次断熱空間をそれぞれ形成し、これらのパネルは、本発明に係る繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの複数のブロックによって形成されている。
図4】LNGタンカーのタンクとこのタンク用の積み降ろしターミナルとを示す切り取り図であり、タンクには、図3に示す種類の断熱パネルが2組設置されている。
【発明を実施するための形態】
【0093】
好ましくは、本発明に係る繊維強化PUR/PIRの準備は、イソシアネート/ポリオール反応を促進することを可能にする触媒の存在下で実行される。このような化合物は、例えば、カールハンサー(第3版,1993年,第3.4.1章)により刊行された、「Kunststoffhandbuch、Volume 7、Polyurethane」と称される先行技術文献に記載されている。これらの化合物は、アミン系触媒及び有機化合物に基づく触媒を含む。
【0094】
好ましくは、本発明による繊維強化PUR/PIRの準備は、フォームの形成中に規則的なセル状構造の形成を促進することを意図した1つ以上の安定剤の存在下で行われる。これらの化合物は当業者に知られており、例えば、シロキサン-オキシアルキレンコポリマー及び他のオルガノポリシロキサンなどのシリコーンを含むフォーム安定剤を挙げることができる。
【0095】
当業者であれば、想定される反応物に応じて使用されるべき安定剤の量、PUR/PIRフォームの0.5重量%~4重量%、を知っている。
【0096】
本発明によって提供される1つの可能性によれば、工程a)において、化学成分の混合物は、一価アルコールを有するカルボン酸の可塑剤、例えば多塩基エステル、好ましくは二塩基エステルを含むことができ、あるいはアジピン酸、セバシン酸及び/又はフタル酸のポリエステルなどのポリマー可塑剤からなることができる。当業者であれば、使用される反応物に応じて、可塑剤の想定される量を知っており、その量は慣例的にポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームの0.05重量%~7.5重量%である。
【0097】
有機及び/又は無機充填剤、特に補強充填剤もまた化学成分の混合物中に想定することができ、これは例えばケイ質鉱物、金属酸化物(例えば、カオリン、チタン又は鉄酸化物)及び/又は金属塩などである。この充填剤の量は、これが混合物中に存在する場合、慣例的にはPUR/PIRフォームの0.5重量%~15重量%である。
【0098】
なお、本発明は、必須化学成分の性質及びオプションの機能剤の性質とこれらのそれぞれの量との両方に関して、PUR/PIRフォームの形成に技術的教示を追加することを意図しない。当業者であれば、異なるタイプの繊維強化PUR/PIRフォームを得る方法を知っており、本発明に係る準備は、繊維強化材の浸透性特徴の具体的な選択から、及び前記強化材への含浸中におけるフォームの粘度の具体的な選択から、さらには長繊維から連続繊維までの含有量が比較的高い又は高いことを考慮して、含浸時間tが、考慮中のポリマーフォームのクリームタイムtよりもわずかに少ないか、又はほんのわずかだけ少なくなるように行うことに関する。
【0099】
したがって、本発明は、本明細書に記載するように、繊維強化PUR/PIRフォームを新しく作り上げることをターゲットとしているのではなく、むしろ繊維強化PUR/PIRフォームのブロックを新しく作り上げることであって、繊維強化材の浸透性及びPUR/PIRフォームの粘度/クリームタイムの特定の特徴が、t<tというルール、好ましくは0.50<(t/t)<0.91のルール、換言すればt+0.1t<t<2tのルールに従うように定められるよう、フォームによる繊維への含浸が注ぐことにより行われるように、作り上げることをターゲットとしている。
【0100】
したがって、図1からわかるように、複数の繊維強化材10は、巻き出され、これら強化材10及びPUR/PIRフォームを形成する構成要素を運ぶよう構成されたコンベヤベルト11の上又は上方に、互いに平行に整列するよう移動される。これは、繊維強化材10への含浸が、本発明の状況下では、重力によって行われるからであり、即ちPUR/PIRフォームを得るために使用される化学成分と(複数の)発泡剤とオプションの他の機能剤との混合物12が繊維強化材10の上方に位置する液体ディスペンサから繊維10上に直接注がれるからである。
【0101】
したがって、繊維強化材10が1つ以上のマットであろうと1つ以上の織物であろうと、PUR/PIRフォームの膨張の開始が、混合物12の繊維強化材10への完全な含浸が行われた(即ち繊維強化材10内に混合物12が完全に浸透した)瞬間の直後又はその後の早い時に行われるように、クリームタイムt中に非常に均一に混合物12の繊維強化材10全てへの含浸がなされなければならない。これを行う際に、本発明にしたがって定められる繊維強化材及びPUR/PIRフォームについての特徴をまもることによって、PUR/PIRフォームのブロックの体積中の繊維10の完全な均一性を維持しながらPUR/PIRフォームの膨張が行われる。
【0102】
本発明の状況下において、PUR/PIRフォームを形成するための混合物12の成分のクリームタイムは、当業者に知られているとともに、フォームの膨張がちょうど開始したばかりの時に、コンベヤベルト11によって、成分の混合物12と、発泡剤と、繊維10とから形成されたアセンブリが、例えば添付の図面には示されていないダブルベルトラミネータまで移動されるよう、換言すればPUR/PIRフォームの膨張がダブルベルトラミネータで終了するように、上記クリームタイムが選択される。
【0103】
ダブルベルトラミネータ(DBL)を有するこのような実施形態では、1つ又は2つのローラーを使用する圧力システムは、ダブルベルトラミネータの前、即ち繊維上における混合物による含浸のためのゾーンとダブルベルトラミネータとの間に、オプションで配置される。DBLを使用する場合、フォームの体積の膨張は、このフォームの膨張体積が、膨張が自由のままである場合(即ち何の制約もない場合)、この同じフォームの膨張体積の30%~60%に達したときに、ラミネータにて行われる。これを行う際に、ダブルベルトラミネータは、PUR/PIRフォームがその最大膨張に近いか比較的近いときに、即ち、その膨張によってダブルベルトラミネータの長方形又は正方形断面のトンネルを形成する全ての壁にフォームが近づいた場合に、PUR/PIRフォームの膨張をその第二膨張フェーズに制約することができる。本発明による準備の特定の選択を提示する異なるやり方によれば、成分の混合物のゲル点、即ち成分の混合物の重合の少なくとも60%が達成される瞬間、換言すれば混合物の最大体積膨張が70%~80%となることが、ダブルベルトラミネータにおいて、場合によってはダブルベルトラミネータの長さの後半部分(即ち、ラミネータの入口よりもラミネータの出口に近い部分)において、強制的に起こる。
【0104】
繊維強化材10の全幅Lへの化学成分と発泡剤の混合物12の同時分注の機能に関しては、図2に示す制御された液体ディスペンサ15によってもたらされる。このようなディスペンサ15は、反応物ミキサーを形成するリザーバ(非図示)からの化学成分と少なくとも発泡剤との混合物12から形成されるアセンブリのための供給チャネル16を含み、一方では、全ての化学成分と発泡剤とが混合され、他方では、そのような混合物の特に核形成が生じ、実際には加熱が起こる。次いで、化学成分と発泡剤の混合物12から形成されたこの液体アセンブリは、加圧下で、幅Lに沿って延びる2つの同一の分注プレート18(各々がL/2に実質的に等しい長さを有する)で終わるよう横方向に延びる2つのチャネル17内に分注され、分注プレート18は、繊維強化材10上に混合物12を流すための複数のノズル19を含む。これらのフローノズル19は、所定の長さを示す較正された断面を有するオリフィスからなる。したがって、これらのフローノズル19の長さは、液体が全てのノズル19間で等しい流量で出るように予め決定されており、これにより、繊維強化材10への含浸が繊維強化材10の幅Lのセクションにわたって同じ時に即ち同時に起こるように、及び各ノズルと直角に堆積された液体の表面密度が等しくなるように、構成されている。これを行う際に、繊維10の幅Lのセクションを考慮する場合、混合物12の繊維10の層への含浸がこのセクションの全ての点で同じように行われるように繊維10への含浸が同時に行われ、このことが、ダブルベルトラミネータの出口で完全に均一な繊維強化フォームのブロックを得ることに貢献する。
【0105】
この図2に示す制御された液体ディスペンサ15は2つの同一の分注プレート18が使用される例示的な実施形態であるが、繊維10の幅セクションにわたる液体の同時分注の機能が達成される限り、異なる設計を想定することが可能である。もちろん、この場合に使用される主な技術特徴はフローノズル19の異なる長さにあり、この長さは、ディスペンサ15の供給ダクト16から考慮中のフローノズル19までの液体混合物12のルート又は経路に応じて、より長いか又はより短い。
【0106】
PUR/PIRフォームのクリームタイムt直前に繊維強化材10への良好な含浸を達成するための重要な側面の1つは、繊維強化材の特定の特徴とリンクされる(化学成分と発泡剤の混合物12からなる)液体の特定の粘度の選択にある。選択される粘度範囲及び繊維強化材の浸透性特徴は、繊維10の第1の層への液体の良好な浸透を可能にして、直後に続く液体が最終層(繊維10の下層、即ち繊維強化材のスタックの中で最も低い層)まで到達するようにするものでなければならず、その結果、繊維10の含浸時間tは、クリームタイムtに実質的に対応する(しかし常にそれ未満の)、化学成分によって与えられる時間内である。成分の混合物12の粘度は、例えば、可塑剤の添加物の加熱によって、及び/又はより大きい若しくはより小さい核形成によって選択され、その結果、幅Lのセクションにわたる化学成分と発泡剤の混合物12の全繊維10への含浸は、クリームタイムの直前、即ちPUR/PIRフォームの膨張の開始の直前又はわずかに直前に得られる。
【0107】
繊維強化フォームのブロックはかなり特定の環境で使用されることが意図され、したがって、特定の機械的及び熱的特徴を保証しなければならない。したがって、本発明による準備によって得られる繊維強化フォームのブロックは、断熱スラブ30の一部を慣例的に形成し、即ち、図3に使用される例では、LNG又はLPGなどの極低温液体を収容するよう構成されたタンク71の断熱スラブ30の上部パネル若しくは1次パネル31及び/又は下部パネル又は2次パネル32において断熱スラブ30の一部を形成する。このようなタンク71は、例えば地上タンク、浮体バージなど(FSRU「浮体式貯蔵再ガス化ユニット」又はFLNG「浮体式液化天然ガス」など)を備えてもよく、あるいは、例えばLNGタンカーなどのこの高エネルギー液体を2つの港間で輸送する船舶を備えてもよい。
【0108】
図4を参照すると、LNGタンカー70の切り取り図は、船舶の二重船体72に装着されたプリズム状の全体的形状を有する密閉断熱タンク71を示す。タンク71の壁は、タンク内に収容されるLNGと接触するように構成された1次密閉バリアと、1次密閉バリアと船の二重船体72との間に配置される2次密閉バリアと、1次密閉バリアと2次密閉バリアとの間及び2次密閉バリアと二重船体72との間にそれぞれ配置された二つの断熱バリアと、を含む。
【0109】
船舶の上甲板上に配置される積み降ろしパイプ73を、それ自体知られている方法で適切なコネクタによって輸送又は港湾ターミナルに接続して、タンク71から又はタンク71にLNGの貨物を移送することができる。
【0110】
図4は、積み降ろしステーション75と、水中パイプライン76と、陸上設備77とを備える出荷ターミナルの一例を表す。積み降ろしステーション75は、可動アーム74と、可動アーム74を支持するタワー78と、を備える固定洋上設備である。可動アーム74は、積み降ろしパイプ73に接続することができる断熱ホース79の束を保持する。旋回可動アーム74は全サイズのLNGタンカーに適合する。連結パイプライン(非図示)はタワー78の内部に延在する。積み降ろしステーション75は、陸上設備77からLNGタンカー70に又はLNGタンカー70から陸上設備77に積み降ろしできるようにする。この設備は、液化ガス貯蔵タンク80と、水中パイプライン76を介して積み降ろしステーション75に接続される連結パイプライン81と、を備える。水中パイプライン76は、積み降ろしステーション75と陸上設備77との間の液化ガスの長距離、例えば5kmにわたる移送を可能にし、これにより、積み降ろし作業の間、LNGタンカー70を沿岸から遠く離れた距離に保つことが可能となる。
【0111】
液化ガスの移送に必要な圧力を発生させるために、船舶70内の搭載ポンプ、及び/又は陸上設備77を備えるポンプ、及び/又は積み降ろしステーション75を備えるポンプが使用される。
【0112】
上記したように、本発明の主題の使用又は適用、即ち、繊維強化ポリウレタン/ポリイソシアヌレートフォームのブロックの好適例の使用又は適用は、支持構造内の一体型タンクに限定されることは意図しておらず、本特許出願の出願日に有効なIGCコードのタイプB及びタイプCのタンク用にも提供されるが、本コードの将来のバージョンにも提供され(これらかなりの修正がタイプB及びタイプCのタンクに適用されない限り)、さらに、他のタイプのタンクが、IGCコードが修正されるという仮定の下で、本発明による繊維強化PUR/PIRフォームのブロックについて想定され得る用途となり得ることが理解される。
【0113】
続いて、発明の主題及びその範囲を評価することを可能にするための、本出願人の会社によって実施された実験及び試験の一部が記載されるが、必要に応じて/要求に応じて他の試験/実験が実施され後に提供されることが考えられる。
【0114】
マットの形態の繊維を組み込んだポリウレタンフォーム組成物が、本発明を実証するために使用され、これらの繊維は、長繊維から連続繊維として常に提供され、より正確には、これらの繊維の長さは本発明による組成物及び従来技術によるものと正確に同じである。本出願人の会社は、特に、織物の形態で提供される繊維を用いて本発明の主題を試験し、得られた結果は、以下に示すように、繊維のマットを用いて得られた結果と同じ又は実質的に同じである。
【0115】
これらのPURフォームの各々について、繊維強化材は、本発明を満たすものと定められる特徴(以下に示す結果の表の太字)又は本発明の定義を満たさない特徴のいずれかを有する。より正確には、後者の場合、繊維の含浸時間tは、PUフォームのクリームタイムtよりも大きい。ここで注目すべきは、繊維の含浸時間tがクリームタイムtよりもはるかに短い場合、換言すればクリームタイムtが、繊維の含浸時間tの2倍より長い場合(t>2t)は、除外されるということである。何故ならばこの場合、準備方法は明らかにいかなる工業的現実性も有し得ないからである。
【0116】
したがって、繊維強化材の不浸透性の特定の特徴とPURフォームの選択との組み合わせによってのみ特定のクリームタイム又は前記繊維強化材の特性に適したものが示されることを確かにするために、PURフォームのブロックの準備の他のパラメータは本発明による準備と従来技術による準備との間で変更されていない又は違いがない。非網羅的な例として、核形成、発泡剤の量、反応温度、化学成分の混合物の性質及び量、注ぐ方法、化学成分の混合物が注がれる場所とDBLとの間の距離、又は適切な場合には自由膨張を可能にするデバイスが、本発明による場合と従来技術による場合とで厳密に同じであるという事実に言及することができる。
【0117】
もちろん、明確さ及び簡潔さのためにPIRフォームを使用して本発明を説明することがこの場合に選択されているが、PURフォーム及びPUR/PIR混合物において同じ又は実質的に同じ結果が得られている。
【0118】
同様に、繊維強化フォームの準備(以下にその結果を示している)は自由膨張手法を使用するものの、本出願人の会社は、DBLを使用しても、本発明による繊維強化フォーム及び従来技術による繊維強化フォームの観点から、同じ又は実質的に同じ結果が得られたことを示した。
【0119】
さらに、連続で試験された全ての組成物は、同一密度という条件下であると考慮されることが理解され、この密度のパラメータは圧縮強度に関する性能品質の評価に関与することが理解される。
【0120】
従来技術による組成物について、繊維強化材の浸透性及びPIRフォームのクリームタイムtの特徴は以下の通りである。
【0121】
【表1】
【0122】
本発明による組成物について、繊維強化材の浸透性及びPIRフォームのクリームタイムtの特徴は以下の通りである。
【0123】
【表2】
【0124】
使用されるPIRフォームのクリームタイムtは論理的に同じであることに留意されたい。これは、使用されるフォームは従来技術によるものと本発明によるものとでどのような場合であっても同じだからである。
【0125】
試験を行った後に、一部の結果を簡略化したかたちで以下に示すことで、繊維強化材がガラス繊維の少なくとも1つのマットの形態で提供される場合の本出願人の会社による発見を例示する。
【0126】
【表3】
【0127】
上の表に示す結果からわかるように、得られた繊維強化フォームを比較するために考慮された3つの基準に関して、本発明によるものは、従来技術による繊維強化フォームのものよりも非常に優れた結果を示す。
【0128】
さらに、本発明による繊維強化PUR/PIRフォームは、(非常に低い)熱伝導率に関連する特性の有意な低下を全く示さないことに留意されたい。したがって、例えば、本発明による10重量%の繊維を有する繊維強化フォームによって、以下の熱伝導率の値が得られる。
【0129】
【表4】
【0130】
本発明についていくつかの特定の実施形態に関連して説明したが、本発明はそれらに決して限定されるものではなく、記載された手段の全ての技術的同等物及びこれらの組み合わせを、これらが本発明の範囲内であるならば、含むことは明らかである。
【0131】
「含む」又は「備える」との動詞及びその活用形の使用は、特許請求の範囲に記載されるもの以外の他の要素又は他の工程の存在を排除するものではない。
【0132】
特許請求の範囲において、括弧内の引用符号は特許請求の範囲の限定と解釈してはならない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】