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特表2022-531757建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械の実際状態及び/又は残り耐用期間を検知するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-11
(54)【発明の名称】建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械の実際状態及び/又は残り耐用期間を検知するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20220704BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220704BHJP
   G01M 13/02 20190101ALI20220704BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
E02F9/26 B
G01M13/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556737
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2020057924
(87)【国際公開番号】W WO2020200863
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019108278.1
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】512197434
【氏名又は名称】リープヘル-コンポーネンツ ビーベラッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100110157
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 基司
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】ムペンド イヴォン イラカ
(72)【発明者】
【氏名】パーロウ ジャン
【テーマコード(参考)】
2D015
2G024
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015HA03
2D015HB01
2D015HB06
2D015HB07
2G024AD14
2G024AD16
2G024AD17
2G024BA12
2G024BA21
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA09
2G024CA11
2G024CA12
2G024CA17
2G024CA18
2G024CA30
2G024EA11
2G024FA01
(57)【要約】
本発明は、建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械の実際状態及び/又は残り耐用期間を検知するための装置であって、様々な状態情報を検出するための複数のセンサと、センサと接続された、検出された状態情報を収集するための検出ユニットと、検出ユニットと接続可能な、収集された状態情報を評価し、かつ収集された状態情報から実際状態及び/又は残り耐用期間を検知するための中央ユニットと、検知された実際状態及び/又は検知された残り耐用期間を表示するための表示装置とを備える装置に関し、センサが部品振動、潤滑剤特性、部品温度及び/又は潤滑剤温度、並びに駆動負荷を含む群からの少なくとも2つの異なった種類の情報を検出するための様々なタイプのセンサを含み、中央ユニットが、少なくとも2つの異なった種類の情報を用いて実際状態及び/又は残り耐用期間を決定するように形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)の実際状態及び/又は残り耐用期間を検知するための装置であって、前記建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)に設けられた、様々な状態情報を検出するための複数のセンサ(10~14)と、前記センサ(10~14)と接続された、前記検出された状態情報を収集するための検出ユニット(15)と、前記検出ユニット(15)と接続可能な、前記収集された状態情報を評価し、かつ前記収集された状態情報から前記実際状態及び/又は前記残り耐用期間を検知するための中央ユニット(16)と、前記検知された実際状態及び/又は前記検知された残り耐用期間を表示するための表示装置(18)と、を備える装置において、前記センサ(10~14)が部品振動、潤滑剤特性、部品温度及び/又は潤滑剤温度、並びに駆動負荷を含む群からの少なくとも2つの異なった種類の情報を検出するための様々なタイプのセンサを含むことと、前記中央ユニット(16)が、前記少なくとも2つの異なった種類の情報を用いて前記実際状態及び/又は前記残り耐用期間を決定するように形成されていることと、を特徴とする装置。
【請求項2】
前記センサが、以下のセンサ、すなわち振動センサ(11)、トルクセンサ(10)、回転数センサ、温度センサ(12)、オイル状態センサ(13)、オイル粒子センサ(14)、オイル粘度センサ、オイル導電率センサ、力センサ、オイルレベルセンサ、誘電性センサ、及び湿度センサの少なくとも2つを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記センサ(10~14)は、前記機械(1)の監視されるべき機械コンポーネント(2、3)に組み込まれ、特に、コンポーネントハウジングによって包囲される前記機械コンポーネントの内部空間に配置されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記検出ユニット(15)によって前記センサ(10~14)に一緒にエネルギーが供給される、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記中央ユニット(16)が、以下のセンサ、すなわちトルクセンサ(10)、回転数センサ、振動センサ(11)、オイル温度センサ(12)、オイル粒子センサ(14)、オイル粘度センサ、オイル導電率センサ、力センサ、オイルレベルセンサ、誘電性センサ、及び湿度センサの全状態情報を考慮するように形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記センサ(10~14)が、前記建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)の伝動装置(2、3)に割り当てられ、かつ以下のセンサ、すなわちトルクセンサ及び/又は回転数センサ(10)、バイブレーションセンサ(11)、オイル温度センサ(12)、オイル粒子センサ(14)、オイル粘度センサ、オイル導電率センサ、力センサ、オイルレベルセンサ、誘電性センサ、並びに湿度センサの少なくとも2つを含み、前記中央ユニット(16)は、伝動装置回転数及び/又はトルク、振動、伝動装置オイル温度、伝動装置オイル粒子、並びにオイル状態の群からの少なくとも2つの情報を用いて前記建設機械、材料取扱い機械、及び/若しくは運搬機械(1)並びに/又は伝動装置(2、3)の前記実際状態及び/又は前記残り耐用期間を決定するように形成されている、請求項1から5のいずれか1項、又は請求項1の前提部に記載の装置。
【請求項7】
前記センサ(10~14)が、前記伝動装置(2、3)の内部に配置されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記伝動装置(2)が、前記建設機械、材料取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)の回転デッキ(4)を車台(5)に対して回動させるための回転機構伝動装置であるか、又はクローラ若しくはホイール駆動装置を駆動するための走行駆動伝動装置(3)である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記検出ユニット(15)は、前記センサ(10~14)の前記収集された状態情報を事前圧縮及び/又は分類するためのデータ処理モジュールを備え、かつ前記事前圧縮及び/又は分類された状態情報を前記中央ユニット(16)に伝送するように形成されている、請求項1から8のいずれか1項、又は請求項1の前提部に記載の装置。
【請求項10】
前記検出ユニット(15)は、振動センサ(11)の前記状態情報を分析するための、並びに振動スペクトル及び/又は特徴的な振動特性値を決定するための振動分析モジュールを有し、前記中央ユニット(16)は、前記検出ユニット(15)によって伝送された前記振動スペクトル及び/又は伝送された前記特徴的な振動特性値を用いて前記実際状態及び/又は前記残り耐用期間を決定するように形成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記検出ユニット(15)が、前記センサ(10~11)から受信した収集された状態情報を結合及び/又は計算するための結合及び/又は計算モジュールを有し、前記結合及び/又は計算モジュールが、
-温度センサ(12)の収集された温度値から温度差を決定する、並びに/又は
-回転数センサ/トルクセンサ(10)の回転数値及び/若しくはトルク値から伝動装置動力及び/若しくは駆動装置動力を算出する、並びに/又は
-伝動装置変速比情報及び効率特性マップを使用して、トルクセンサ(10)のトルク値から出力トルク若しくは入力トルクを算出する、
ように構成されている、請求項1から10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記検出ユニット(10)が、前記建設機械、材料取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)に接続されたエネルギー供給入口を有し、かつ前記センサ(10~14)に接続されたエネルギー供給出口を具備する請求項1から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記中央ユニット(16)は、前記検出ユニット(15)によって収集された前記状態情報を分析する、及び前記検出ユニット(15)によって伝送された、前処理された前記状態情報を分析するための分析モジュール(20)を有する、請求項1から12のいずれか1項、又は請求項1の前提部に記載の装置。
【請求項14】
前記分析モジュール(20)が、前記検出ユニット(15)によって伝送された振動スペクトル及び/若しくは特徴的な振動特性値、並びに/又は前記検出ユニット(15)によって伝送された温度差、並びに/又は前記検出ユニット(15)によって決定された動力値、並びに/又は前記検出ユニット(15)によって検知された出力トルク及び/若しくは入力トルクを用いて、前記建設機械、材料取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)の伝動装置(2、3)の前記実際状態及び/又は前記残り耐用期間を決定するように構成されている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記中央ユニット(16)は、前記収集された状態情報及び/又はそこから導出された情報の変化の推移を特徴付け、かつ将来の推移を予測するトレンドを検知するためのトレンド検知モジュール(21)を有し、前記中央ユニット(16)は、前記検知されたトレンドにもとづいて前記実際状態及び/又は前記残り耐用期間を決定するように形成されている、請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
前記トレンド検知モジュール(21)は、前記収集された状態情報及び/又は前記そこから導出された情報の変化の推移を近似する関数を外挿し、前記外挿された関数の推移から前記将来のトレンドを決定するように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記中央ユニット(16)は、前記収集された状態情報及び/又はそこから導出された情報を限界値及び/又は予め定められた範囲と比較するための比較装置(22)を有し、前記中央ユニット(16)は、前記収集された状態情報及び/又は前記そこから導出された情報の実際値と、前記限界値及び/又は前記限界範囲との差異から前記建設機械、材料取扱い機械、及び/又は運搬機械の前記残り耐用期間を決定するように形成されている、請求項1から16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記中央ユニット(16)は、収集された種々の状態情報及び/又はそこから導出された種々の情報に異なった重み付けをするための重み付け装置(23)を有し、前記中央ユニット(16)は、前記様々な情報の前記様々な重み付けを考慮して前記実際情報及び/又は前記残り耐用期間を決定するように形成されている、請求項1から17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記重み付け装置(23)は、バイブレーションセンサ(11)のバイブレーション信号及び/若しくはそこから導出されたバイブレーション特性値に、温度センサ(12)の温度値及び/若しくはそこから導出された温度特性値とは違う重みを付与するように形成されている、かつ/又は回転数センサ及び/若しくはトルクセンサ(10)の回転数情報及び/若しくはトルク情報、並びに/又はそこから導出されたトルク及び/若しくは回転数特性値に、オイル状態センサ及び/若しくはオイル粒子センサ(13、14)のオイル状態情報とは違う重みを付与するように形成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記重み付け装置(23)は、前記状態情報及び/又はそこから導出された情報について決定されたトレンドにもとづいて、種々のセンサ(10~14)の種々の状態情報、及び/又はそこから導出された種々の情報に異なった重みを付与するように形成されている、請求項18又は19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記中央ユニット(16)は、前記状態情報の関連する限界値及び/又は履歴推移からの前記収集された状態情報の偏差を動的に判定するための動的判定装置を有し、前記動的判定装置(24)は、特に、状態情報の数及び/又はそこから導出された、閾値からの偏差を有する情報に依存して偏差閾値を動的に適合させるように形成されている、請求項1から20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記中央ユニット(16)は、前記実際状態及び/又は前記残り耐用期間を決定するために、前記収集された状態情報及び/又はそこから導出された情報の前記履歴を考慮するように形成されている、請求項1から21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記考慮された履歴が、以下の履歴、すなわち収集された温度値の履歴、収集された振動特性値の履歴、収集されたトルク値及び/又は回転数値の履歴、並びに収集されたオイル状態値及び/又はオイル粒子値の履歴の少なくとも1つを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記表示装置(18)が、前記建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)に少なくとも1つのディスプレイ(26)を有する、請求項1から23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記表示装置(18)は、機械製造業者のもとに少なくとも1つのディスプレイ、及び/又は機械操作者のもとに少なくとも1つのディスプレイを有する、請求項1から24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
前記表示装置(18)が少なくとも1つのディスプレイ(26)を有し、前記ディスプレイ上に2つの別個の表示フィールド(27、28)が示され、前記一方の表示フィールド(27)が、監視される前記建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)、並びに前記センサ(10~14)によって監視される前記建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械の機械コンポーネントの表示を含み、前記他方の表示フィールド(28)が、前記もう一方の表示フィールド(27)に示された前記機械コンポーネント(2、3)の前記実際状態及び前記残り耐用期間のグラフィック表示を含む、請求項1から25のいずれか1項に記載の装置。
【請求項27】
少なくとも前記建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)並びに前記センサにより監視される前記機械コンポーネント(2、3)を表示するための前記表示フィールド(27)が、タッチセンシティブに、特にタッチスクリーンとして形成され、前記表示装置(18)が制御装置を有し、前記制御装置は、前記建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械(1)の特定の機械コンポーネントが示される前記表示フィールド(27)の領域に触れた場合に、前記他方の表示フィールド(28)を再構成するように、並びに/又は前記タッチされた表示フィールドに示される前記機械コンポーネントの前記実際状態及び前記残り耐用期間が前記もう一方の表示フィールド(28)に表示されるように制御するよう構成されている、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記中央ユニット(16)は、予め定められた期間を下回る残り耐用期間を決定した場合、又は決定した後に警告信号及び/又は保守信号を提供するように構成されている、請求項1から27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記中央ユニット(16)が、前記検出ユニット(15)と恒久的に又は期限付きで有線接続されるか又はワイヤレス接続により接続される、請求項1から28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記中央ユニット(16)が、前記建設機械、資材取扱い機械、及び/若しくは運搬機械に直接設けられているか、又は中央サーバ若しくはクラウドの形式の場所に設置されている、請求項1から29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記データの処理又は部分処理、特に残り耐用期間の計算、トレンド形成、及び/又は限界値の監視が、前記検出ユニット(15)又は前記中央ユニット(16)で既に行われる、請求項1から30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
前記中央ユニット(16)及び記憶ユニット(17)が、視覚化ユニットと恒久的に又は期限付きで有線又はワイヤレスで接続されている、請求項1から31のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械の実際状態及び/又は残り耐用期間を検知するための装置であって、建設機械、資材取扱い機械、及び/又は運搬機械に設けられた、様々な状態情報を検出するための複数のセンサと、センサと接続された、検出された状態情報を収集するための検出ユニットと、検出ユニットと接続可能な、収集された状態情報から実際状態及び/又は残り耐用期間を検知するために収集された状態情報を評価するための中央ユニットと、検知された実際状態及び/又は検知された残り耐用期間を表示するための表示装置と、を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーショベル、クレーン、ダンプトラック、地ならしキャタピラ、ブルドーザ、又はクローラクレーンなどの建設機械、あるいはフォークリフトやローダなどの資材取扱い機又は運搬装置、あるいは他の大型の、表面切削機又は船舶クレーンなどの作業機械では、残り耐用期間又は建設機械コンポーネントの必要な交換までの残り時間を予測することが重要であるとともに困難である。例えば駆動伝動装置が故障するなど、建設現場で建設機械が使用できなくなった場合、代わりのふさわしい機械をすぐに調達して建設現場に届けることができないことが多く、修理に必要な修理時間の間、建設現場に遅れが生じ、その際、故障した建設機械自体に課せられた仕事が放置されるだけでなく、様々な建設機械が相互に関連し合うことから、他の進行にも遅れが生じることが多い。建設機械のこのような故障状況を回避するため、それぞれの建設機械が建設現場の作業サイクルにもちこたえるかどうか、又は前もって保守される必要があるのかどうかを判断できるようにするために、配備計画には、それぞれの機械の実際状態又は残っている残り耐用期間の信頼できる決定が必要である。
【0003】
しかし、建設現場によって負荷や使用条件が大きく異なるため、建設機械の場合、実際状態又は残っている残り耐用期間の信頼できる評価が非常に困難である。例えば、土木機械は、建設現場で硬い岩石を動かす必要がある場合にはるかに大きな負荷にさらされる。同様に、ダンプトラックやブルドーザなどの建設機械は、傾斜地では平坦な建設現場とは違った負荷がかかる。一般に、建設現場が異なれば負荷も大きく異なり、そのことは、建設機械の残り耐用期間が特定の建設現場に十分であるのかどうか判断することを難しくする。それに加えて、建設機械の負荷履歴もまちまちである。例えば、建設機械が偶然、いつも高負荷の建設現場で使用された場合、稼働時間をもとにした通常の残り稼働期間の評価では、残り耐用期間を確実に予測できない。
【0004】
このため、測定されたセンサデータを用いて建設機械の実際状態の決定を客観化するという建設機械のセンサによる監視システムが既に提案されている。その場合、例えば、建設機械の特定の動作パラメータを監視し、測定された動作パラメータの不規則性又は異常な値が発生した場合にエラーコードを出力することが知られている。例えば特開平第8-144312号公報を参照。ただし、例えば建設現場に乗り入れる際に下り坂を運転する場合に生じ得る許容回転数の一時的な超過が、それによって引き起こされたエンジン損傷に関して信頼できる情報の提供をまだ可能にしないことから、このようなエラーコードは、それ自体としてあまり説得力がないか、又は信頼するに足りない。
【0005】
出願人Komatsuによる独国特許出願公開第10145571号明細書は、さらに、損傷又は異常の程度をより細分化して予測しようとする建設機械の監視システムを提案する。このために、一方では建設機械ディーゼルの排気ガス圧力と排気ガス温度がセンサによって監視され、他方で潤滑油が特殊な分析装置によって、鉄粒子などの特定の成分について分析される。しかし上記の文献は、これらのセンサによる監視量に加えて、さらに建設機械の実際状態の自動判定に経験豊富な保守作業員が行う目視検査の結果を含める必要があると考える。建設機械のこの公知の監視システムには、一方では状態情報の信頼性が限られるという欠点がある。排気ガス量、排気ガス温度、及び排気ガス圧力を監視することによって、主にディーゼルの問題しか検知することができない。それにも関わらず、他方で、保守作業員による目視検査が行われる必要があるため、監視システムが比較的複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平第8-144312号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第10145571号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、先行技術の欠点を回避し、有利な方法で先行技術をさらに発展させる、建設機械の実際状態及び/又は残り耐用期間を決定するための改良された装置を提供するという課題にもとづいている。特に、移動式建設機械に簡単に実現できる、訓練されていない保守作業員でも十分な準備運転時間で保守措置又は修理措置を適時に導入及び計画することができる、信頼できる実際状態の決定及び/又は残り耐用期間の決定が達成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記課題は、請求項1に記載の装置によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
本発明の一態様によれば、実際状態又は残り耐用期間の複雑な評価を担うために、それぞれの建設機械のセンサによる監視を様々なタイプのセンサによって十分に広範囲にすることが提案される。この場合、建設機械に設けられるセンサは、部品振動、潤滑剤の特性、部品の温度及び/又は潤滑剤の温度、並びに駆動装置の負荷の群から選択される少なくとも2つの異なった種類の情報を検出するための様々なタイプのセンサを含み、装置の中央ユニットは、少なくとも2つの異なった種類の情報を用いて実際状態及び/又は残り耐用期間を決定するように形成されている。その場合、上記の種類の情報は、残り耐用期間に関連する実際状態を的確に反映する。部品振動は、部品摩耗、摩滅、又は不適切な使用を示唆することができ、機械が摩耗を示す場合にいつも目標振動パターンから逸脱する駆動装置のむらのある動作に特徴的である。潤滑剤特性も同様に、負荷履歴と残っている残り耐用期間とについての説得力のある指標である。部品温度又は潤滑剤温度は、過度の負荷によって、及び潤滑された部品コンポーネントの過度の摩耗により著しく上昇し、それによって同様に実際状態及び残っている残り耐用期間について信頼できる指標となる。回転数やトルクセンサなどの上記の駆動負荷は、機械に作用する負荷サイクルを特徴付け、したがって同様に残り耐用期間の予測を可能にする。
【0010】
上記のすべての種類の情報のうち検出された情報が残り耐用期間の予測のために使用できることが有利である。
【0011】
本発明の発展形態では、上記のセンサ系は、様々な部品及び/又は部品部分、特に駆動装置ハウジング及び/又は伝動装置ハウジング及び/又はドライブトレインの他の要素における振動センサを含むことができる。この場合、上記の振動センサは、圧電的に動作するように形成することができ、及び/又は電気機械式振動センサを含むことができる。
【0012】
上記の潤滑剤特性を検出するために、有利には、様々なセンサを設けることができ、本発明の発展形態では、まず、駆動コンポーネントの潤滑剤サンプ、特に伝動装置における潤滑剤レベルを検出するためにオイルレベルセンサを設けることができる。そのような潤滑剤センサは、フロートを備えることができ、及び/又は触覚的若しくは機械的に充填レベルを検知することができる。これに代えて、又はこれに加えて、容量式潤滑剤レベルセンサを設けることもできる。
【0013】
さらに、潤滑剤検出は、有利には、潤滑剤の湿度を検出する、及び/又は潤滑剤空間の湿度を検出するために、建設機械の潤滑剤空間内に湿度センサを備えることができる。
【0014】
これに代えて、又はこれに加えて、潤滑剤センサは、潤滑剤空間及び/又は潤滑剤内に配置することができる導電率センサを含むことができる。
【0015】
さらに、これに代えて、又はこれに加えて、潤滑剤センサとして、潤滑剤温度を検出するための温度センサを設けることもでき、この種の潤滑剤温度センサは潤滑剤サンプに配置することができる。これに代えて、又はこれに加えて、潤滑剤温度を、例えば潤滑剤サンプを区切るハウジング部分の壁の温度が検出されることにより間接的に検出することもできる。
【0016】
有利にも、センサ系は潤滑剤の温度を検出するだけでなく、他の熱負荷される部品の温度、例えば軸受の温度を検出するために用いられる他の温度センサを含むこともできる。
【0017】
駆動負荷の検出は、ドライブトレインのシャフト、特に伝動装置インプットシャフト及び/若しくは他の伝動装置シャフトの回転数を検出するため、並びに/又はドライブトレインのシャフトに生じるトルクを決定するために、回転数センサ及び/又はトルクセンサによって行うことができる。例えば、伝動装置のインプットシャフト又は別の伝動装置シャフトは、インプットシャフト若しくは他の伝動装置シャフトに生じるトルクを決定するためにトルクセンサによって監視することができる。この種のトルクセンサを様々に形成することができ、例えば変形を検出するためのひずみゲージ及び/若しくは距離センサ並びに/又は逆磁歪効果を決定するセンサを含むことができる。
【0018】
本発明の有利な発展形態では、少なくとも1つのセンサ又はすべてのセンサを、監視されるべき建設機械のコンポーネントに組み込むことができ、特に内部空間に収容することができる。しかしながら、これに代えて、又はこれに加えて、1つ又は複数のセンサを、部品コンポーネントの外側並びに/又は建設機械コンポーネント及び/若しくは建設機械の近辺に設けることもできる。
【0019】
上記のセンサは、検出された状態情報を収集する上記の検出装置と有利にはケーブルを介して接続することができる。しかしながら、これに代えて、又はこれに加えて、センサが、検出装置とワイヤレスで通信することもでき、特に検出された情報を、例えばWLAN接続、ZigBee接続、Bluetooth接続又は他の無線接続を介して伝達することができる。
【0020】
有利には、上記のセンサの少なくとも1つに上記の検出装置から電流又はエネルギーを供給することができる。これは、特にセンサがケーブルを介して検出ユニットと接続されている場合に簡単に実現できる。
【0021】
基本的に、上記のセンサ系を用いて、様々な建設機械コンポーネントを相応に監視することができ、かつ建設機械コンポーネントの実際状態又は残り耐用期間を決定することができる。建設機械全体の実際状態又は故障可能性を確実に決定できるようにするために、これに関して説得力のある関連する建設機械コンポーネントを監視することが役に立つ。本発明のさらなる態様によれば、上記のセンサ系は、駆動力が駆動装置から駆動されるべき建設機械コンポーネントに伝達される建設機械の伝動装置を監視する。特に、少なくとも1つ又はすべてのセンサを上記の伝動装置に組み込むことができ、伝動装置の内部で上記の状態情報を検出するために、特に伝動装置内部空間に配置することができる。
【0022】
すなわち、伝動装置で上記の状態情報が検出される場合、伝動装置振動及び/又は伝動装置潤滑剤特性及び/又は伝動装置温度及び/又は伝動装置負荷が検出され、かつ中央ユニットによって実際状態及び/又は残り耐用期間が上記の伝動装置情報の少なくとも1つを用いて決定されることが企図されている。その場合、上記の特性は、建設機械の1つ又は複数の伝動装置で監視され、実際状態及び/又は残り耐用期間の決定のために考慮に入れられ得る。伝動装置はドライブトレインの中心的な構成要素であり、伝動装置には摩耗及び損傷の影響が特徴的に現れ、それにより建設機械の伝動装置の監視には実際状態及び/又は残り耐用期間を決定するために説得力がある。
【0023】
建設機械に応じて、この種の伝動装置を様々な場所で使用することができる。例えば、これはクローラ又はシャシホイールなどの建設機械の走行駆動装置を駆動する走行駆動伝動装置であり得る。これに代えて、又はこれに加えて、建設機械の上部シャシを直立軸を中心に装置の車台又は支持ベースに対して回動させることができる回転機構伝動装置を上記のように監視することができる。例えば、これは油圧ショベル又は伸縮式の移動式クレーン又はデリッククレーンの上部シャシであり得る。しかしながら、これに代えて、又はこれに加えて、上部旋回装置の場合はタワーを回動させることができ、下部旋回装置の場合はタワーを回動させることができるタワークレーンの回転機構も監視することができる。
【0024】
これに代えて、又はこれに加えて、例えば、ホイストのホイスト伝動装置など、建設機械の他の伝動装置も上記のように監視することができる。
【0025】
センサと接続され、センサの情報を収集する上記の検出ユニットに建設機械によって電気又はエネルギーを供給できることが有利である。このために、上記の検出ユニットは、建設機械のエネルギーネットワークに適合したエネルギー接続部を有することができる。
【0026】
有利には、上記の検出ユニットが建設機械に直接配置され得、例えば建設機械の電子制御装置の一部を形成し、及び/又は別個の電子建設機械コンポーネントを形成することができる。上記の検出ユニットは、記憶装置に格納されたプログラムモジュールを処理することができるように、及び/又は収集されたデータを記憶装置に中間記憶するために、例えばマイクロプロセッサ及び記憶装置を有することができる。
【0027】
有利には、上記検出ユニットは、センサにエネルギー又は電流を提供するために、エネルギー供給装置又は電流供給装置を有することができる。
【0028】
しかしこのようなエネルギー供給装置に関係なく、上記の検出ユニットを、建設機械とは別に形成することもでき、特に、建設現場などの建設機械周辺に設置することもでき、このように別個に形成した場合、センサとのケーブル接続もケーブルなしの接続も考えられる。
【0029】
有利には、上記の検出ユニットは、少なくとも1つのデジタル通信インターフェースを具備し、この種のデジタルインターフェースは、例えばCANインターフェース、イーサネットインターフェース、Modbusインターフェース、シリアルインターフェース、移動無線インターフェース、WLANインターフェース及び/又はBluetoothインターフェースを含み得る。上記のデジタルインターフェースを介して、検出ユニットを有利には冒頭で述べた中央ユニットに結合することができ、及び/又は中央ユニットと通信することができる。場合によっては、上記のデジタルインターフェースを1つ又は複数のセンサとの通信にも使用することができる。
【0030】
有利には、上記の検出ユニットは、検出ユニットが結合されている建設機械を識別する一意の識別子を有する。そのような識別子は、読取り可能及び/又は電子的に呼出し可能及び/又は電子的に読取り可能に形成することができ、検出ユニットは、上記の識別子を、他のデータと一緒に、特に収集された状態情報と一緒に中央ユニットに伝達することもできる。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、上記の検出ユニットは、純粋なデータ収集器又は情報収集器ではなく、収集された、センサによって提供される情報を前処理及び/又は分類するように形成されている。特に、検出ユニットは、事前圧縮及び/又は分類された状態情報を中央ユニットに伝送できるようにするために、データの事前圧縮及び/又は収集されたデータを分類するためのモジュールを有することができる。
【0032】
特に、検出ユニットは、収集された振動情報から振動スペクトル及び/若しくは特徴的な振動特性値を導出するように、並びに/又は周波数選択的特性値を形成するように形成され得る。
【0033】
これに代えて、又はこれに加えて、検出ユニットは、検出されたトルク情報及び/又は回転数情報を分類する、特に、例えば負荷時間分布に関して段階的に分類する装置を有することができる。
【0034】
これに代えて、又はこれに加えて、検出ユニットは、センサデータを互いに計算するために、結合ユニット及び/又は計算ユニットを有することができる。例えば、収集された温度値を相互に比較する、及び/又は温度差を決定することができる。これに代えて、又はこれに加えて、回転数及びトルクから動力を算出することができ、そのようにして、比較及び/又は算出された、収集されたセンサデータから取得された情報を中央ユニットに転送することができる。
【0035】
これに代えて、又はこれに加えて、検出ユニットを、収集されたセンサデータからさらなる特性値を導出及び検知するように形成することができ、例えば入力トルクから、厳密には効率特性マップを取り入れて、伝動装置の変速比を用いて駆動トルクを算出することができる。
【0036】
本発明の有利な発展形態では、検出ユニットは、構成記憶装置にアクセスすることができ、及び/又は、建設機械コンポーネントに関する中心的なデータ、例えば稼働時間、シリアル番号、ステージ数、効率特性マップ、熱伝達係数、限界値などが記憶されている構成記憶装置を含むことができる。
【0037】
本発明の有利な発展形態では、上記の検出ユニットは、検出ユニットの自己の動作ステータス、例えば、装置のオン/オフ状態、及び/又は結合されたセンサの作動若しくは作動停止若しくは欠陥状態を決定する自己診断装置を有する。
【0038】
上記の中央ユニットを、例えば建設機械が運転される建設現場に設置することができる。例えば、中央ユニットは、建設現場中央計算機と統合され得るか、又はこの中央計算機によってなり得る。しかしながら、本発明の代替の発展形態では、上記の中央ユニットを、建設現場から場所的に切り離して、例えば建設機械製造業者又は建設機械操作者のもとに設置することもできる。しかし上記の中央ユニットをクラウドに実現することもでき、例えば機械プロバイダも商用クラウドのサブエリアをもつか、又は自己のクラウドソリューションを使用することができる。しかし他方で、本発明の有利な発展形態では、中央ユニットを建設機械自体に設置することができる。
【0039】
1つ又は様々な建設機械に割り当てることができる上記の検出ユニット又は複数の検出ユニット及び表示装置と通信できるようにするために、上記の中央ユニットは、1つ又は複数の通信インターフェース、殊に1つ又は複数のデジタルインターフェースを、例えばCANインターフェース、イーサネットインターフェース、Modbusインターフェース、シリアルインターフェース、移動無線インターフェース、WLANインターフェース又はBluetoothインターフェースの形式で備えることができる。
【0040】
有利には、中央ユニットは、プログラミング及び/若しくは保守のために、並びに/又は特定の識別データ及び/若しくステータスデータ及び/若しくは残り耐用期間データを読み取るために、上記のように形成され得るインターフェースを備えることもできる。
【0041】
本発明の発展形態では、上記の中央ユニットは、検出ユニットによって収集された状態情報を分析するための、並びに/又は検出ユニットによって伝送された前処理された、例えば上述した事前圧縮及び/若しくは分類された情報を含み得る状態情報を分析するための分析モジュールを備える。特に、中央ユニットの上記の分析モジュールは、例えば振動スペクトル及び/又は特徴的な振動特性値及び/又は周波数選択的特性値の形式の前処理された状態情報を分析するように形成することもできる。これに代えて、又はこれに加えて、分析モジュールは、例えば検出ユニットによって決定された温度差、回転数及びトルクから決定された動力値、並びに/又は検出ユニットによって検知された出力トルク及び/若しくは入力トルクなどの検出ユニットによって導出された情報をさらに処理することができる。
【0042】
すなわち本発明の有利な発展形態では、分析プロセスを2段階で形成することができ、前処理及び/又は前分析が検出ユニットで行われ、次いで第2の分析工程が中央ユニットで行われる。
【0043】
その場合、本発明の発展形態では、中央ユニットの分析モジュールは、検出ユニットによって上記のように前処理された前処理済みの状態情報と、検出ユニットによってさらには処理されなかった収集されたセンサデータとを互いに結び付け、並びに/又は2つのタイプのデータにもとづいて建設機械及び/若しくは建設機械コンポーネントの実際状態及び/若しくは残り耐用期間を決定することができる。
【0044】
修理計画のための十分な準備時間で保守の必要性を適時に決定できるようにするために、中央ユニットは、有利にはトレンド検知モジュールを備えることができ、トレンド検知モジュールは、上記の状態情報及び/又はそこから導出された情報を用いて、上記の状態情報及び/又はそこから導出された情報の変化がたどるトレンドを決定し、このトレンドから実際状態及び/又は残り耐用期間の予測される変化をより正確に評価できるようになる。
【0045】
そのようなトレンド検知モジュールに代えて、又はこれに加えて、中央ユニットは、有利には比較装置を備え、比較装置は、伝送された状態情報及び/又はそこから導出された情報を限界値及び/又は予め定められた範囲と比較し、限界値及び/若しく限界範囲からの上記のデータの実際値の隔たり、並びに/又は上記の限界値の超過から、上記の建設機械又は上記の建設機械部品の実際状態及び/又は残り耐用期間を検知する。
【0046】
その場合、本発明の有利な発展形態では、中央ユニットは、個々の状態情報及び/若しくはそこから導出された情報、並びに/又は関連する限界値及び/若しくは関連する限界範囲からのそのような情報のそれぞれの隔たりに個別の重み又は個別の重み付けを与え、それにより例えば残り耐用期間の決定に関して、バイブレーション特性値が、オイルサンプハウジングの温度値よりも多く考慮される。
【0047】
上記の重み付け装置は、トレンド決定装置によって決定された状態情報の変化のトレンドにも異なった重み付けを与えることができ、そのような重み付けは、特に、トレンドの大きさをもとにして付与又は決定され得る。例えば、振動特性値のトレンドが非常に大きい変化を示し、温度値のトレンドが僅かな変化しか示さない場合、バイブレーション特性値のトレンドをより大きく重み付けすることができ、それにより残り耐用期間のより大幅な短縮が決定される。このような強力で説得力のあるトレンドは、それぞれの状態情報と結び付いた部品がより激しく摩耗し、まもなく故障することの前兆と評価することができる。
【0048】
本発明の発展形態では、中央ユニットが動的判定装置を備えることもでき、この動的判定装置によって、実際状態及び/又は残り耐用期間の決定時に、限界値及び/又は1つ若しくは複数のトレンドとの1つ又は複数の状態情報の近似がいつも同じにではなく、動的に考慮される。例えば、検出された状態情報が、予め定められた閾値をごく僅かに、例えば5%だけ上回り、他のすべての状態情報がまだそれぞれの閾値の有効な側にある場合、1つの閾値の上記の5%の超過はまだ問題なしと評価され得る。ただし、検出された3つの状態情報がそれぞれ関連する閾値を例えば4%、3%、及び1.5%超える場合、個別の超過について上記の5%の超過許容範囲に関係がないとしても、このことは警告信号をトリガすることができる。
【0049】
残り耐用期間の決定又は耐用期間予想を上記の中央ユニットによって計算モデルにもとづいて算出することができ、有利には、現在収集されている状態情報と建設機械及び/又は建設機械コンポーネントの動作履歴も、特にパラメータ化された形式で考慮に入れることもできる。
【0050】
特に、例えば、上記の計算モデルに動作履歴からのデータを供給することができ、それにより動作履歴における1つの状態情報又は複数の状態情報が示した偏差の大きさが検知される。これにより、許容される閾値を段階付けることができる。例えば、動作履歴が、収集された振動特性値が、データが収集された期間に平均値から40%上方及び/又は下方に逸脱したことを示す場合、例えば50%又は60%の偏差を重大であるとみなすことができる。対応する状態情報の現在収集されているデータセットが計算モデルに投入された場合、段階付けされた偏差を超えた場合に重大な状態とみなすことができる。
【0051】
本発明の発展形態では、機械的建設機械コンポーネントの中央ユニットは、予め定められた決定規則により損傷を検知、特に算出することができ、文献にもとづく使用される材料の強度値及び/又は標準値を基礎とすることができる。
【0052】
監視される潤滑剤について、中央ユニットは熱損傷モデルを基礎とすることができ、この熱損傷モデルにもとづいて収集された潤滑剤の温度履歴を潤滑剤の熱損傷に換算することができる。オイルの交換が行われた場合、温度履歴又は達した潤滑剤の損傷をリセットできる。
【0053】
上記の中央ユニットは、電子コンピューティング装置又は電子データ処理装置であり得、これは、例えば、予め定められたプログラムモジュールを処理できるようにするために、1つ若しくは複数のプロセッサ、プログラム記憶装置及び/又はデータ記憶装置を有することができる。例えば、上記の中央ユニットをサーバの形式で形成することができる。
【0054】
本発明の発展形態では記憶ユニットが設けられ、記憶ユニットは、例えば中央ユニットに記憶ユニットへのアクセスを許可する、例えばCANインターフェース、イーサネットインターフェース、Modbusインターフェース、シリアルインターフェース、移動無線インターフェース、WLANインターフェース又はBluetoothインターフェースの形式の対応する通信インターフェースを介して、上記の中央ユニットと恒久的に又は期限付きでケーブルによって又はケーブルなしで接続され得る。
【0055】
上記の記憶ユニットは、中央ユニットから場所的に切り離して配置することができ、又は中央ユニットに直接組み込むこともできる。
【0056】
有利には、上記の記憶ユニットは、現在収集されているデータ、このデータ、又は他のデータの履歴を記憶するように構成されている。記憶ユニットは、実際データ用とデータ履歴用に別々の記憶領域を備えることができる。
【0057】
その場合、実際データ及び/又はデータの履歴として、検出ユニット及び中央ユニットによって未処理のままであるセンサ生データのみならず、検出ユニット及び/又は中央ユニットによって算出された、若しくは別の仕方で決定された処理済データも記憶することができる。特に、上記のトレンドデータ及び/又は残り耐用期間データ及び/又は実際状態データも中央ユニットに記憶することができる。
【0058】
上記の記憶ユニットは、中央ユニットを含む、例えばサーバなどのローカルにインストールされた計算機に実装することができる。これに代えて、又はこれに加えて、上記の記憶ユニットをクラウドに実装することもできる。
【0059】
検知された実際状態及び/又は検知された残り耐用期間を表示するための上記の表示装置は、基本的に様々な性質をもつことができる。
【0060】
有利には、上記の表示装置は、中央ユニットによって検知されたデータ、特に検知された残り耐用期間及び/若しくは検知された実際状態を表示するために、並びに/又は記憶ユニットに記憶されたデータ、特にそこに記憶された実際状態及び/若しく記憶された残り耐用期間を表示するために、上記の中央ユニット及び/又は上記の記憶ユニットと通信するための通信インターフェースを具備する。
【0061】
表示装置の上記のインターフェースは、先に説明したように、例えばCANインターフェース、イーサネットインターフェース、Modbusインターフェース、シリアルインターフェース、移動無線インターフェース、WLANインターフェース又はBluetoothインターフェースなどのデジタルインターフェースを含むことができる。
【0062】
上記の表示装置は、有利には、対応するデータ、特に検知された実際状態及び/又は検知された残り耐用期間を建設機械の機械オペレータに表示するために、建設機械に設けることができる。これに代えて、又はこれに加えて、対応するデータを機械操作者及び/又は機械製造業者に表示するために、上記の表示装置を機械操作者及び/又は機械製造業者の指令センターに設けることができる。
【0063】
特に、上記の表示装置は、上記のデータ、特に検知された実際状態及び/又は検知された残り耐用期間及び/又は状態履歴及び/又はトレンドデータ及び/又は予想データを表示することができる少なくとも1つのディスプレイを備えることができる。
【0064】
この種のディスプレイは、有利には、建設機械、特に機械運転台に設けられている。これに代えて、又はこれに加えて、ディスプレイは、機械操作者及び/又は機械製造業者の中央指令センターに設けることもできる。
【0065】
本発明の有利な発展形態では、上記の表示装置は、建設機械及び/又は少なくとも1つの建設機械コンポーネントがその動作仕様から外れて動作され、並びに/又は限界値を上回る、及び/若しくは下回る、並びに/又は耐用期間予想が特定の残り時間を下回ると直ちに警告メッセージを生成するように構成することができる。
【0066】
有利には、表示装置は、データ表示の仕方を構成する、及び/又は特定のデータにアクセス権を定義することを可能にするユーザ管理部を具備することができる。
【0067】
有利には、表示装置は、フリート管理を可能にするために、複数の中央ユニット及び/又は複数の記憶ユニットからの概要及び個々のデータを表示するように構成することもできる。
【0068】
以下、本発明を好ましい実施例及び関連する図面をもとにして詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明の有利な実施形態による装置によって、2つの伝動装置のセンサによる監視によって実際状態及び残り耐用期間が決定される回転機構伝動装置及び走行駆動伝動装置を有するクローラショベルの形式の建設機械の模式図である。
図2】走行駆動伝動装置に組み込まれた、特定の状態情報を検出するためのセンサの模式図である。
図3】データを評価するための中央ユニットが結合され、かつ記憶ユニット及び視覚化ユニットも接続された検出ユニットへの伝動装置センサの結合が示される、図1による建設機械の実際状態及び残り耐用期間を決定するための装置、並びに装置の回転機構伝動装置及び走行駆動伝動装置の全体構造の模式図である。
図4】建設機械伝動装置におけるセンサによる検出から、ディスプレイ上での実際状態及び残り耐用期間の表示までの、データフロー及び検出された状態情報の処理を示す模式的データフロー図である。
図5】分散データ処理と集中処理とが示されている、検知された残り耐用期間を表示するまでの、伝動装置でセンサにより検出された状態データに関する処理工程の模式図である。
図6】検知された実際状態、検知された残り耐用期間、及びサービスが必要になるまでの検知された期間の建設機械の表示装置上の表示の模式図である。
図7】前の図からの建設機械のオイル及び伝動装置の現在検出されている状態情報及び検知された実際状態及び検知された残り耐用期間の表示の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1が示すように、例えばクローラショベルの形式の建設機械1を監視することができ、特に1つ又は複数の伝動装置をセンサによって監視することができる。例えば、走行駆動伝動装置3及び回転機構伝動装置2を監視することができる。図1が示すように、走行駆動伝動装置3は、例えばクローラシャシのタンブラを駆動することができ、回転機構伝動装置2は、回転デッキ4を回転調節することができ、この回転デッキ4は、走行駆動装置を有する車台5に直立軸を中心に回転可能に支承されている。回転デッキ4には、それ自体公知のように、運転台6、関節式ブーム7、及びさらなる駆動装置、並びにカウンターウエイト、並びに他の建設機械コンポーネントを収容することができる。
【0071】
図1が示すように、上記の伝動装置2、3に代えて、又はそれに加えて、建設機械1の、耐用期間に関連する他のコンポーネント、例えば回転機構の駆動モータ8、及び/又は例えば圧力媒体シリンダの形態の、ブーム7の上下動のための上下動アクチュエータ9なども、センサにより監視することができる。
【0072】
図1がさらに示すように、収集されたセンサデータを、後述するように、送信モジュールを介して中央ユニットにワイヤレスで伝送することができる。
【0073】
図2が示すように、関連する状態情報を検出するために、監視されるべき建設機械コンポーネント、特に伝動装置3の1つに様々なセンサを組み込むことができ、特にコンポーネントハウジングによって包囲される内部空間に配置することができる。
【0074】
特に、伝動装置3に、トルクセンサ10、回転数センサ11、伝動装置オイル温度及び/又は他の伝動装置コンポーネントの温度を検出するための温度センサ12、特にオイル中又はオイル空間内の湿度を検出するためのオイル状態センサ13、並びにオイル中の金属屑などの粒子を検出するためのオイル粒子センサ14が割り当てられ得る。
【0075】
図3が示すように、種々のセンサ10~14によって検出された状態情報を検出ユニット15に伝送ことができ、冒頭で説明したように、これはワイヤレス又は有線で行うことができる。有利にも、センサ10~14には、上記の検出ユニット15によって電流を供給することができる。上記の検出ユニット15自体には、建設機械1によって電流を供給することができる。
【0076】
図3が示すように、検出ユニット15は、収集されたセンサデータ若しくはセンサによって検出された状態情報及び/又はそこから導出されたデータ、特性量、特性値などを、冒頭で説明したように中央ユニット16に伝送し、中央ユニットは、伝送された状態情報及び/又は他の、検出ユニット15によって伝送された量にもとづいて建設機械1、特に監視される伝動装置2、3の残り耐用期間及び建設機械1の実際状態を検知する。
【0077】
中央ユニットに接続された記憶ユニット17は、有利にも、検出ユニット15から中央ユニット16に伝送された状態情報、並びに/又は場合によっては前処理された、特性量などのデータのみならず、中央ユニット16によって決定された残り耐用期間及び特定の実際状態も記憶する。有利には、上記の記憶ユニット17は、対応するデータ履歴も記憶する。
【0078】
図3が示すように、視覚化ユニット19を備える表示装置18は、中央ユニット16によって検知された情報、及び記憶ユニット17に記憶された情報を表示又は視覚化するために、上記の記憶ユニット17のみならず中央ユニット16にも接続されている。
【0079】
有利には、センサによって検出された状態情報の処理及び評価を2段階で行うことができる。一方では、図4が示すように、情報を圧縮及び/又は縮小及び/又は前処理して中央ユニット16に伝送するために、センサによって検出された状態情報の前処理及び/又は縮小を検出ユニット15によって行うことができる。場合によっては、上記の検出ユニット15は、冒頭で説明したように、他の分析工程及び/又は評価工程を既に実行することができる。
【0080】
その限りで、上記の検出ユニット15は、1つ又は複数のプロセッサと、1つ又は複数の記憶装置とを備えることができるデータ処理装置を形成することができ、記憶装置には、プロセッサによって処理されるプログラムモジュールが格納されている。
【0081】
サーバとして形成され得る、及び/又は対応する方法でプログラムモジュールを処理するために1つ若しくは複数のプロセッサと1つ若しくは複数の記憶装置とを備えることができる中央ユニット16は、検出ユニット15によって伝送される、収集された状態情報、並びに/又は、検出ユニット15によって伝送される前処理された、圧縮された、及び/若しくは縮小されたデータを、建設機械1又はその伝動装置2、3の実際状態及び残り耐用期間を検知するためにさらに分析及び評価することができる。
【0082】
このために、中央ユニット16は、分析モジュール20を有することができ、この分析モジュールは、検出ユニット15によって伝送された情報を、場合によっては、記憶ユニット17から中央ユニット16及び中央ユニットの分析モジュール20に伝送される他の情報と一緒に分析することができる。
【0083】
特に、中央ユニット16は、冒頭で説明したように、上記の情報からトレンドを検知するためにトレンド検知モジュール21を有することができる。図4を参照。
【0084】
上記のトレンド決定に加えて、中央ユニット16に実装される比較装置22が、既に説明したように、伝送されたデータ又は情報を閾値及び/又は限界範囲と比較することができる。重み付け装置23は、異なる状態情報及び/又は異なるトレンド及び/又は異なる閾値偏差を種々に重み付けし、実際状態及び残り耐用期間の決定のために考慮される様々な関連性を付与することができる。
【0085】
動的決定装置24は、冒頭で既に説明したように、計算係数及び/又は閾値及び/又は重み付けを動的に変化させることができる。
【0086】
次に、中央ユニット16の残り耐用期間計算ユニット25が、計算モデルにもとづいて、情報、情報から導出されたデータ、トレンド、及び重み付けを用いて、監視されるコンポーネントの残っている残り耐用期間を算出する。
【0087】
図4がさらに示すように、実際状態及び残り耐用期間の検知された量、並びに現在の状態情報又は導出された中間評価などの他の関係する情報が、表示装置18によって、運転台6に設けられ得るディスプレイ26上に表示されるが、機械製造業者又は機械操作者のもとに、他のディスプレイ26を設けることもできる。
【0088】
図5が示すように、建設機械1におけるセンサによって検出された状態情報は、分散処理するか、又は集中処理することができる。
【0089】
集中処理では、例えば伝動装置3などのセンサにより監視されるコンポーネントで、単にデータ検出、及び場合によってはデータ量が大量の場合には事前圧縮が行われ、建設機械1では、単に、データ収集が、特に検出ユニット15において行われるのに対して、分散処理では、さらに、例えば伝動装置3の形式のコンポーネント、及び/又は建設機械1で、さらにセンサデータの前評価及び/又は評価、例えば特性値の形成及びトレンド形成を、特に建設機械に設けられた検出ユニット15及び/又は建設機械若しくは建設現場に設けられた中央ユニット16によって行うことができる。
【0090】
集中処理の場合、次いで、例えば中央ユニット16が実装されている中央サーバによってデータ圧縮及び評価、特性値形成及びトレンド形成、視覚化の準備、並びに例えばウェブサービスによるグローバルアクセスの提供が初めに集中的に行われる。これとは対照的に、分散処理の場合、処理は既に分散的に行われているため、視覚化の準備のみが集中的に実行され、グローバルアクセスが提供される。
【0091】
図6が示すように、検出及び/又は検知された情報を示すディスプレイ26は、有利には、スプリットスクリーンに類似の分割された画面表示を含むことができ、それにより表示フィールド27に、検出及び/又は検知された情報の説明が関連する建設機械1及びコンポーネント、特に伝動装置2、3が示される。他の表示フィールド28には検知された情報、特に検知された実際状態、検知された残り耐用期間、及び次に必要なサービスまでの残りインターバルが、有利には階段グラフ若しくは棒グラフ及び/又は帯グラフの形式で示される。これに代えて、又はこれに加えて、検知された情報が、表示フィールド28に信号機表示で、例えば直感的に把握できる信号機色表現「緑=正常」、「黄色=条件付きで正常/危険トレンド」及び「赤=危険/問題」によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】