(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-11
(54)【発明の名称】硫黄に対する耐久性に優れたSCR触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/48 20060101AFI20220704BHJP
B01J 29/16 20060101ALI20220704BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20220704BHJP
【FI】
B01J29/48 A ZAB
B01J29/16 A
B01D53/86 222
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566518
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 KR2020013233
(87)【国際公開番号】W WO2021066463
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0120527
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】519001383
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ アールアンドディービー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュン‐ウ
(72)【発明者】
【氏名】コ,ドン‐ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ビュン,ヨン‐チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ド‐ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ジョン‐テ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,イン‐ハク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ファン‐ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,セ‐ウォン
【テーマコード(参考)】
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
4D148AA06
4D148AB02
4D148BA07X
4D148BA11X
4D148BA13X
4D148BA23X
4D148BA41X
4D148BD01
4G169AA02
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC54A
4G169BC54B
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169CA02
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EC12X
4G169EC12Y
4G169EC13X
4G169EC13Y
4G169ED07
4G169FA01
4G169FC08
4G169ZA04A
4G169ZA04B
4G169ZA06A
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA19A
4G169ZC04
4G169ZC07
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
【課題】本発明は、SCR触媒を低温領域で運転する場合に生成されるアンモニウム硫黄化合物(AS、ABS)による触媒の非活性化に対して耐久性が強い触媒を提供する。
【解決手段】排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去するためのSCR触媒において、5Å以上の平均気孔大きさを有するゼオライト(Zeolite)0.01~70重量%、二酸化チタン(TiO
2)25~90重量%、及び五酸化バナジウム(V
2O
5)4~10重量%を含むことを特徴とする。本発明に係るSCR触媒は、従来のSCR触媒に比べて低温領域における脱窒性能に優れており、硫黄化合物に対する耐久性が向上し、再生率にも優れた効果を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去するためのSCR触媒において、
5Å以上の平均気孔大きさを有するゼオライト(Zeolite)0.01~70重量%;
二酸化チタン(TiO
2)25~90重量%;及び
五酸化バナジウム(V
2O
5)4~10重量%を含むSCR触媒。
【請求項2】
前記排ガスが30ppm以上の硫黄化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項3】
前記排ガスの温度が180℃~400℃であることを特徴とする請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項4】
三酸化タングステン(WO3)0.01~15重量%をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項5】
前記ゼオライトが金属成分を含有しないことを特徴とする請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項6】
前記ゼオライトのAl:Siの重量比が1:5~1:30であることを特徴とする請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項7】
ゼオライト-Y、ZSM-5ゼオライト、AELゼオライト、AFIゼオライト、AFOゼオライト、AFRゼオライト、BEAゼオライト、HEUゼオライト、MFIゼオライト、MORゼオライト、MELゼオライト及びMTWゼオライトのうち選択された1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項8】
200~250℃の温度範囲で排ガス内の窒素酸化物の転換率が40~96%であることを特徴とする請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項9】
前記SCR触媒は240℃以上の温度範囲で再生されることを特徴とする請求項1に記載のSCR触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄に対する耐久性に優れたSCR触媒に係り、より詳しくは、高濃度の硫黄化合物を含有する排ガス中の窒素酸化物を除去することができるSCR触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼プラント(combustion plant)、ガスタービン(gas turbine)、産業用プラント(industrial plant)または燃焼エンジン(combustion engine)など、石炭を原料として使用する燃焼設備又はボイラーは、原料を高温で燃焼させるため、多量のガスを発生させるが、このような排ガスには様々な有害性ガスが含まれている。排ガス組成としては、一般的な燃焼工程で生成される窒素、酸素、二酸化炭素及び水を含み、有害性物質として窒素酸化物、硫黄酸化物、炭化水素、一酸化炭素、ハロゲン化合物等を含む。最近、微細粉塵に対する環境問題が社会的に台頭する中、窒素酸化物と硫黄酸化物は、微細粉塵及び酸性雨の原因となることから注視されている。
【0003】
一方、選択触媒還元(SCR)技術は、還元剤としてアンモニアを利用する技術であり、SCR触媒上でのアンモニアと窒素酸化物との反応は、下記反応式1により行われる。[反応式1]
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O
【0004】
上記の反応において、窒素酸化物の還元に使用されなかったアンモニアは、排ガス内の硫黄酸化物と反応してアンモニウム塩を生成する。アンモニウム塩のうちABS(Ammonium Bi-Sulfate)は、SCR装置の運転温度である約280℃では液相として存在し、これが触媒の細孔を満たすため触媒の性能低下の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、SCR触媒を低温領域で運転する場合に生成されるアンモニウム硫黄化合物(AS、ABS)による触媒の非活性化に対して耐久性が強い触媒を提供することを目的とする。
また、本発明は、低温領域の運転時だけに局限されず、高温領域の運転時にアンモニウム硫黄化合物により発生する非活性化にも耐久性が強い触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去するためのSCR触媒において、5Å以上の平均気孔大きさを有するゼオライト(Zeolite)0.01~70重量%;二酸化チタン(TiO2)25~90重量%;及び五酸化バナジウム(V2O5)4~10重量%を含むSCR触媒が提供される。
【0007】
上記排ガスは、30ppm以上の硫黄化合物を含むことができる。
上記排ガスの温度は180℃~400℃であることがよい。
上記SCR触媒は、三酸化タングステン(WO3)0.01~15重量%をさらに含むことができる。
【0008】
上記ゼオライトは、金属成分を含有しないことがよい。
上記ゼオライトのAl:Siの重量比が、1:5~1:50であることができる。
上記ゼオライトは、ゼオライト-Y、ZSM-5ゼオライト、AELゼオライト、AFIゼオライト、AFOゼオライト、AFRゼオライト、BEAゼオライト、HEUゼオライト、MFIゼオライト、MORゼオライト、MELゼオライト及びMTWゼオライトのうちから選択された1種以上であることができる。
【0009】
上記SCR触媒は、200~250℃の温度範囲で排ガス内の窒素酸化物の転換率が40~96%であることができる。
上記SCR触媒は、240℃以上の温度範囲で再生されることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、本発明のSCR触媒は、従来のSCR触媒に比べて低温領域における脱窒性能に優れており、硫黄化合物に対する耐久性が向上し、再生率にも優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例に係るSCR触媒を概略的に示したものである。
【
図2】製造例1~4及び比較製造例1に係るSCR触媒の窒素酸化物の転換率の実験結果を示したものである。
【
図3】実施例1、比較例1及び比較例2に係るSCR触媒の硫黄化合物に対する耐久性評価の実験結果を示したものである。
【
図4】実施例1、実施例2、比較例1及び比較例3に係るSCR触媒の硫黄化合物に対する耐久性評価の実験結果を示したものである。
【
図5】実施例3、実施例4、比較例4及び比較例5に係るSCR触媒の硫黄化合物に対する耐久性評価の実験結果を示したものである。
【
図6】実施例2に係るSCR触媒と常用SCR触媒の硫黄化合物に対する耐久性評価の実験結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、様々な実施例を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明は、硫黄に対する耐久性に優れたSCR(Selective catalytic reduction:選択触媒還元)触媒に関するものである。
【0013】
SCR技術を適用して、排ガス内の窒素酸化物を除去する場合、排ガス内の硫黄酸化物(SOx)と還元剤であるアンモニアの反応により生成されたアンモニウム塩であるAS(Ammonium Sulfate)及びABS(Ammonium Bi-Sulfate)が物理的に触媒を覆うか、細孔に充填されて活性点を喪失させる付着(Fouling)現象が発生する。AS及びABSは、それぞれ下記反応式2及び3によって生成される。
[反応式2]
SO2+1/2O2→SO3
SO3+H2O→H2SO4
2NH3+H2SO4→(NH4)2SO4
[反応式3]
NH3+SO3+H2O→(NH4)HSO4
(NH4)2SO4→(NH4)HSO4+NH3
【0014】
常温で固体形態を有するAS及びABSは、約147℃で溶融して相変化が起こり、SCR触媒の作動温度である270~280℃では液相として存在し、触媒細孔を満たすようになる。これにより、細孔内に位置した触媒活性点を失うことになって非活性化が起こる。しかし、ABSの場合、380℃以上の高温に曝されると分解する特徴がある。
【0015】
また、硫黄酸化物によって触媒の活性点が硫黄化する被毒現象が発生するが、より詳細に、排気ガス中に含まれた硫黄酸化物(SO2、SO3)が触媒の支持体や活性金属に吸着して金属硫化物(Metal Sulfide)や硫酸塩(Sulfate)の形態で存在して触媒寿命を減らす被毒現象を発生させる。このような付着(Fouling)及び被毒現象は、同時に起こることもあり、これによって特に硫黄酸化物の含有量が高い排ガスではSCR触媒の寿命が顕著に短縮される問題があった。また、ゼオライトを含む触媒を用いて排ガス中の窒素酸化物を除去する場合、硫黄化合物の含有量が高いほど、ゼオライトを含む触媒の働きが弱くなるという欠点があり、硫黄化合物の含有量が高い排ガス中の窒素酸化物の除去時にはゼオライトを含む触媒を用いることができなかった。
【0016】
図1は、本発明の一実施例に係るSCR触媒を概略的に示したものである。以下、
図1を参照して本発明をより詳細に説明する。
本発明の一側面によると、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を除去するためのSCR触媒において、5Å以上の平均気孔大きさを有するゼオライト(Zeolite)0.01~70重量%、二酸化チタン(TiO
2)25~90重量%、及び五酸化バナジウム(V
2O
5)4~10重量%を含むSCR触媒が提供される。
【0017】
図1に示したとおり、本発明に係るSCR触媒は、V
2O
5を含むTiO
2(V
2O
5/TiO
2)及びゼオライトが混合されている。V
2O
5/TiO
2は、SCR反応により窒素酸化物を還元させ、ゼオライトは酸点と細孔を利用して、SOxに起因する硫黄化合物(AS、ABSなど)を優先的に吸蔵する。V
2O
5/TiO
2は硫黄化合物(AS、ABSなど)による非活性化が比較的少なく、SCR性能を維持することができる。また、ゼオライトは、硫黄化合物を捕集する役割だけでなく、高温で触媒の再生に関与して初期の活性にまで再生させる役割を果たす。
【0018】
本発明に係るSCR触媒は、SCR触媒の総重量を基に、二酸化チタン(TiO2)25~90重量%を含むことができ、40~70重量%を含むことが好ましい。25重量%未満の場合、活性成分であるV2O5を含浸する支持体の量が少なくなって、性能低下の問題があり、90重量%超過の場合、ゼオライト量が減って硫黄化合物に対する耐久性の低下の問題がある。
また、本発明に係るSCR触媒は、SCR触媒の総重量を基に、五酸化バナジウム(V2O5)4~10重量%を含むことができ、4~7重量%を含むことが好ましい。4重量%未満の場合、活性成分であるV2O5量が少なく、脱窒(De-NOx)性能低下の問題があり、10重量%超過の場合、過剰のV2O5により活性金属の分散度が低くなって性能低下の問題がある。
【0019】
一方、本発明に係るSCR触媒は、SCR触媒の総重量を基に、ゼオライト(Zeolite)0.01~70重量%を含むことができるが、20~40重量%を含むことが好ましい。0.01重量%未満の場合、硫黄化合物の耐久性低下の問題があり、70重量%超過の場合、V2O5/TiO2のSCR活性成分の総量減少による性能低下の問題がある。
上記ゼオライトの平均気孔大きさは5Å以上であることが好ましく、より詳細には、5Å~20Åであることが好ましい。ゼオライトの平均気孔大きさが5Å未満の場合、気孔の大きさが過度に小さく、触媒の非活性化を引き起こすAS、ABSなどが通過できず、硫黄に対する耐久性を確保することができない。
【0020】
また、硫黄に対する耐久性を確保することができるゼオライトのAl:Si重量比は、ゼオライトの種類ごとに異なることができるが、1:5~1:50であることが好ましく、1:5~1:30であることがより好ましい。上記範囲から外れる場合、SO2、AS及びABSなどの吸着サイトが減少または酸点の減少によって硫黄に対する耐久性が低くなる。
本発明の一実施例によると、上記ゼオライトは金属成分を含有しないゼオライトであることが好ましい。本発明において上記金属成分とは、鉄、コバルト、ニッケル、銅、クロム、亜鉛、マンガンなどを含む。金属成分を含むゼオライトでは、活性点である金属がSO2などと反応して、硫酸塩(sulfate)に非常に簡単に切り換えられる。一方、本発明では、金属成分が添加されていないゼオライトを使用することで、勤続硫酸塩(metal sulfate)生成を防止し、ゼオライト性能が低くなる現象を防止し、また、SO2に起因した硫黄化合物(AS、ABSなど)を優先的に吸着してV2O5/TiO2が脱窒性能を維持するようにすることができる。
【0021】
本発明に適用されることができるゼオライトとしては、特に限定するものではないが、例えば、ゼオライト-Y、ZSM-5ゼオライト、AELゼオライト、AFIゼオライト、AFOゼオライト、AFRゼオライト、BEAゼオライト、HEUゼオライト、MFIゼオライト、MORゼオライト、MELゼオライト及びMTWゼオライトのうち選択された1種以上であることができ、ゼオライト-Yを使用することが好ましい。
【0022】
一方、本発明に係るSCR触媒は助触媒であって、SCR触媒の総重量を基に、三酸化タングステン(WO3)0.01~15重量%を含むことができ、1~10重量%を含むことが好ましい。0.01重量%未満の場合、低温SCR性能が低くなるという問題があり、15重量%超過の場合、タングステン分散度が低くなって酸化性能が低下するという問題がある。
タングステンは酸化性能に優れて低温での触媒性能が向上するが、タングステンがSO2をSO3に酸化させるため、常用触媒の場合、タングステンの使用が多くない理由となる。すなわち、SCR触媒の非活性化に最も重要な被毒物質であるABSはSO3に起因するが、本発明では、生成されたABSがゼオライトに優先的に吸着されるため、V2O5/TiO2に被毒されず、性能が維持され、タングステンを含んでもSO2酸化の影響を受けず、低温性能の向上のみに寄与できるようにした。
【0023】
本発明に係るSCR触媒は、30ppm以上の硫黄化合物を含む排ガス中の窒素酸化物を除去するために使用することができる。上述したように、硫黄含有量が通常10ppm以下であるディーゼルエンジン排ガス中の窒素酸化物の除去にはゼオライトが使用されることがあるが、30ppm以上の硫黄を含有する排ガス中の窒素酸化物の除去時には、ゼオライトが使用されなかった。しかし、本発明は、金属成分を含まないゼオライト、二酸化チタン及び五酸化バナジウムの最適含有量を導出し、ゼオライトの平均気孔大きさ及びAl:Siの最適重量比の導出により、30ppm以上の硫黄を含有する排ガス中の窒素酸化物を削除することができるSCR触媒を提供することができる。
【0024】
一方、30ppm以上の硫黄化合物を含む排ガスとしては、特に限定するものではないが、例えば、製鉄所の焼結工程中に発生した排ガス、火力発電所の排ガス、焼却炉の排ガス及び船舶エンジン用の排ガスなどを例示することができ、本発明のSCR触媒は、上記排ガスに適合して使用される。
上記排ガスの温度は180℃~400℃であることができる。言い換えると、本発明の触媒の作動温度が180℃~400℃である。一般的に、V2O5/TiO2系SCR触媒の作動温度は310~340℃や製鉄所の焼結工場や船舶などの排ガス後処理設備の場合などは、低温領域(200~250℃)で優れた性能が必要である。上述したとおり、本発明はABSなどが液状の形態で存在する180~280℃の領域で上記ABSなどがゼオライトの細孔に優先的に吸蔵されるため、SCR触媒活性を維持することができる。
【0025】
一方、本発明に係るSCR触媒は、200~250℃の温度範囲で排ガス内の窒素酸化物の転換率が40~96%に達する優れた効果を奏する。また、240℃以上の温度範囲では、ゼオライト細孔内に吸着されたABSは、ゼオライトの酸点を介してABSが徐々に分解され、触媒活性が再生される特徴を有する。
【実施例】
【0026】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。しかしながら、下記実施例は、本発明を理解するための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
(実施例)
1.V2O5含有量による窒素酸化物の転換率の評価
【0027】
製造例1
TiO2を支持体として使用し、シュウ酸(Oxalic acid)にメタバナジン酸アンモニウム(Ammonium metavanadate)を溶解した溶液を含浸させ、乾燥後、500℃で4時間焼成して、V2O54重量%及びTiO296重量%を含む触媒を製造した。
【0028】
製造例2
V2O5含有量を5重量%に制御したことを除いては、製造例1と同様の方法で触媒を製造した。
【0029】
製造例3
V2O5含有量を7重量%に制御したことを除いては、製造例1と同様の方法で触媒を製造した。
【0030】
製造例4
V2O5含有量を10重量%に制御したことを除いては、製造例1と同様の方法で触媒を製造した。
【0031】
比較製造例
V2O5含有量を3重量%に制御したことを除いては、製造例1と同様の方法で触媒を製造した。
【0032】
上記製造例1~4及び比較製造例1の触媒を、空間速度は100,000h
-1であり、NH
3500ppm、NO500ppm、O
210%、CO
25%、H
2O10%及び残部N
2の組成を有する排ガスに適用し、窒素酸化物の転換率を測定して
図2に示した。
図2に示したとおり、3%V
2O
5を含有する比較製造例に係る触媒は、200~250℃の領域で20~70%の低い窒素酸化物の転換率を示すのに対し、V
2O
5含有量を上げると、200~250℃での窒素酸化物の転換率が増加し、製造例3の触媒では、200℃で75%、250℃で96%の高い窒素酸化物の転換率を示した。V
2O
5含有量をさらに増加して10%を超えると、却って、性能は低くなることが確認できる。
【0033】
2.硫黄化合物に対する耐久性評価
上記製造例3の触媒を用いて、耐硫黄性評価を行った。具体的には、ここで上記製造例3の触媒にWO37重量%を混合した触媒を比較例1、製造例3の触媒にWO37重量%及びZSM-5ゼオライトを総重量に対して30%混合して製造した触媒を実施例1、製造例3の触媒にWO37重量%及びシリカを総重量に対して30%混合して製造した触媒を比較例2と表示する。硫黄化合物に対する耐久性評価のための過程は、以下のとおりである。
【0034】
まず、200℃で脱窒性能を評価し、触媒の非活性化のために同一温度でNH
3量を増やし、SO
2を追加して硫黄化合物を生成した。24時間の間、非活性化を行い、同一温度で脱窒性能を評価し、様々な温度で触媒を暴露させて再生有無を評価することにより、硫黄化合物に対する耐久性を評価した。各再生温度は焼結工程において、通常運転する温度である270℃と、最大昇温可能温度である310℃、最後にABSが分解される380℃に区分して再生した。下記表1は、硫黄化合物に対する耐久性評価のための工程条件を整えて示したものであり、表2及び
図3は、上記実施例1、比較例1及び比較例2の硫黄化合物に対する耐久性の実験結果を示したものである。
【0035】
【0036】
【0037】
表2及び
図3に示したとおり、比較例1の触媒の最初の性能は約90%の窒素酸化物の転換率を示すが、非活性化が行われるほど、性能が減少して約75%まで低くなった。この後、各温度で再生し、270℃では性能が2%回復したが、温度が上がるほど性能が回復して380℃では100%再生するが、310℃では比較的低い再生率を示すことが確認できた。一方、実施例1の触媒は、初期性能は約95%の性能を示し、非活性化段階において性能低下は約5%だけ起こった。これは、上記のとおりAS、ABSをゼオライトが先に吸着してV
2O
5/TiO
2の性能を維持することができるようになるものと考えられる。この後、各温度で再生を行い、310℃でも高い再生率を示し、380℃でほぼ100%再生したことが分かった。
比較例2の触媒は、比較例1の触媒と類似して非活性化の区間で性能低下があり、380℃再生後に性能が多少増加した。
【0038】
3.ゼオライトの平均気孔大きさによる硫黄化合物に対する耐久性の評価
上記硫黄化合物に対する耐久性評価に使用された比較例1(ゼオライトは含まず)及び実施例1(5Åの平均気孔大きさを有するゼオライトZSM-5を含む)の触媒以外に、製造例3の触媒に7Åの平均気孔大きさを有するゼオライトYを総重量に対して30%混合して製造した触媒を実施例2、製造例3の触媒に3.5Åの平均気孔大きさを有するCHAゼオライトを総重量に対して30%混合して製造した触媒を比較例3と表示し、上記と同様の方法でゼオライト平均気孔大きさによる硫黄化合物に対する耐久性の評価を行い、その結果を
図4に示した。
【0039】
図4に示したとおり、7Åの平均気孔大きさを有するYゼオライトを含む実施例2>5Åの平均気孔大きさを有するゼオライトZSM-5を含む実施例1>ゼオライトを含まない比較例1>3.5Åの平均気孔大きさを有するCHAゼオライトを含む比較例3の順に耐久性に優れることが確認された。CHAゼオライトの場合、非常に小さな細孔により非活性化物質であるAS、ABSが通過できないものと判断される。
【0040】
4.ゼオライトSi/Alの含有量による硫黄化合物に対する耐久性の評価
様々なSi/Al含有量を有するYゼオライトを用いて、触媒を製造し、上記と同様の方法でゼオライトSi/Alの含有量による硫黄化合物に対する耐久性評価を行い、その結果を
図5に示した。実施例3、4、及び比較例3、4の組成及びSi/Alの重量比は、以下のとおりである(実施例3:V
2O
55重量%、WO
37重量%、TiO
259.5重量%、Yゼオライト30重量%、Si/Al=5、実施例4:V
2O
55重量%、WO
37重量%、TiO
259.5重量%、Yゼオライト30重量%、Si/Al=12、比較例4:V
2O
55重量%、WO
37重量%、TiO
259.5重量%、シリカ30重量%、比較例5:V
2O
55重量%、WO
37重量%、TiO
259.5重量%、Yゼオライト30重量%、Si/Al=60)。
【0041】
図5に示したとおり、Si:Alの含有量が実施例3及び実施例4の場合、硫黄化合物に対する耐久性に優れており、60と高いSi/Al比率は、耐久性が低くなる傾向を示した。これにより、Al量が減ってSO
2またはAS、ABSの吸着サイトが減少して、耐久性が低くなることが確認できた。
【0042】
5.常用触媒との硫黄化合物に対する耐久性の比較評価
実施例2による触媒と常用触媒(V
2O
55重量%、TiO
295重量%)を実際の製鉄焼結炉の排ガスを利用して耐久性を評価した。使用された触媒の大きさは150×150×600(横×縦×高さ)と、一般的に常用触媒単位のモジュール大きさで製作して評価した。焼結炉の運転環境によって排ガスの組成は異なる可能性があるが、一般的にNO160~250ppm、NH
3250ppm、SO
250~100ppm、O
215%、CO
26%、H
2O10%及び様々な不純物が一部含まれている。触媒評価に使用された流量は、平均100Nm
3/hであり、空間速度5500~6,000h
-1の条件である。本発明の実施例2による触媒と常用触媒を利用して、下記表3のような条件で耐久性の評価を行い、その結果を
図6に示した。
【0043】
【0044】
図6に示したとおり、実施例2による触媒と常用触媒のすべてが220℃において、初期性能は約90%と類似した性能を示したが、非活性化を加速するためにAS、ABSがよく生成される180℃で非活性化を120時間行い、非活性化のうち30~50時間ごとに220℃の性能を評価した。180℃の暴露非活性化の加速評価において約50時間暴露後の性能低下は、各触媒の開始性能90%から常用触媒は50%低減した40%の触媒性能を示し、実施例2による触媒は90%から約35%低減した55%の性能を示した。130時間暴露した後の常用触媒は20%以下、実施例2による触媒は30%水準の性能を示した。また、非活性化のうち220℃での性能を評価した時、排出規制を満たす70%の性能を維持する耐久性時間を比較すると、常用触媒は約70時間であり、実施例2による触媒は約100時間と、実施例2による触媒が30%の耐久性に優れることが確認できる。一方、再生性能は該当触媒を引入ガス条件を同様にして280℃に暴露させ、該当温度での常用触媒は95%、実施例2による触媒は92%の脱窒性能を示した。72時間の触媒再生後、220℃での各触媒は100%再生され、72時間の間、性能が維持されることが分かった。先の実験評価では380℃でのみ100%再生されたが、実際の排気ガスの暴露条件では280℃でも再生された。
【0045】
再生区間を経てABSが除去された触媒を220℃で約50時間評価を行い、2つの触媒のいずれも90%の性能を維持した。この後、180℃非活性化の加速評価を再び行った。常用触媒は180℃非活性化が非常に速く起こったが、実施例2による触媒は、2倍以上の耐久性を示した。また、220℃での性能は実施例2による触媒が70%以上を継続的に維持した。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の窒素酸化物(NO
x)を除去するためのSCR触媒において、
5Å以上の平均気孔大きさを有するゼオライト(Zeolite)0.01~70重量%
、二酸化チタン(TiO
2)25~90重量%
、及び五酸化バナジウム(V
2O
5)4~10重量%を含む
ことを特徴とするSCR触媒。
【請求項2】
前記排ガスが30ppm以上の硫黄化合物を含むことを特徴とす
る請求項1に記載のSCR触媒。
【請求項3】
前記排ガスの温度が180℃~400℃であることを特徴とす
る請求項1
又は2に記載のSCR触媒。
【請求項4】
三酸化タングステン(WO
3)0.01~15重量%をさらに含むことを特徴とす
る請求項1
乃至3に記載のSCR触媒。
【請求項5】
前記ゼオライトが金属成分を含有しないことを特徴とす
る請求項1
乃至4に記載のSCR触媒。
【請求項6】
前記ゼオライトのAl:Siの重量比が1:5~1:30であることを特徴とす
る請求項1
乃至5に記載のSCR触媒。
【請求項7】
ゼオライト-Y、ZSM-5ゼオライト、AELゼオライト、AFIゼオライト、AFOゼオライト、AFRゼオライト、BEAゼオライト、HEUゼオライト、MFIゼオライト、MORゼオライト、MELゼオライト及びMTWゼオライトのうち選択された1種以上であることを特徴とす
る請求項1
乃至6に記載のSCR触媒。
【請求項8】
200~250℃の温度範囲で排ガス内の窒素酸化物の転換率が40~96%であることを特徴とす
る請求項1
乃至7に記載のSCR触媒。
【請求項9】
前記SCR触媒は240℃以上の温度範囲で再生されることを特徴とす
る請求項1
乃至8に記載のSCR触媒。
【国際調査報告】