IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベヌビア・マニュファクチャリング・エル・エル・シーの特許一覧

特表2022-531807カンナビジオール又はカンナビジバリンの製造方法及びカンナビジオール又はカンナビジバリンの製造中間体
<>
  • 特表-カンナビジオール又はカンナビジバリンの製造方法及びカンナビジオール又はカンナビジバリンの製造中間体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-11
(54)【発明の名称】カンナビジオール又はカンナビジバリンの製造方法及びカンナビジオール又はカンナビジバリンの製造中間体
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/84 20060101AFI20220704BHJP
   C07C 39/23 20060101ALI20220704BHJP
   C07C 37/50 20060101ALI20220704BHJP
   C07C 37/11 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20220704BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20220704BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220704BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220704BHJP
【FI】
C07C37/84
C07C39/23 CSP
C07C37/50
C07C37/11
A61K31/045
A61K31/05
A61P43/00 111
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566988
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 IB2020000365
(87)【国際公開番号】W WO2020229891
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/846,279
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521491587
【氏名又は名称】ベヌビア・マニュファクチャリング・エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,ジェームズ・パトリック・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】プリンス,パトリック
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C206AA04
4C206CA19
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA20
4C206ZC41
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AC42
4H006AD11
4H006AD15
4H006BA53
4H006BB12
4H006BC10
4H006BC31
4H006BD70
4H006FC22
4H006FC50
4H006FC76
4H006FE13
4H039CA41
4H039CF10
4H039CG10
(57)【要約】
カンナビジオール(CBD)及びカンナビジバリン(CBDV)の製造方法;CBD及びCBDVの製造方法の中間体;並びに記載された方法により得られる結晶化CBD及びCBDV。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオール(CBD)を製造する方法であって、以下のステップ:
a)有機溶媒の存在下でp-メンタ-2,8-ジエン-1-オール(PMD)を6-カルボキシメチルオリベトール(CMO)及び触媒と反応させて、(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート(CMCBD)を生成するステップと、
b)前記CMCBDを蒸留して、蒸留CMCBDを得るステップと、
c)前記蒸留CMCBDを、水、メタノール及び水酸化ナトリウムと反応させて、CBDを生成するステップと、
d)ステップ(c)からの前記CBDを精製して、精製CBDを得るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記触媒が、三フッ化ホウ素(BF)-エーテレート、スカンジウムトリフレート、塩化スカンジウム、イッテルビウムトリフレート、塩化イッテルビウム、塩化スズ、塩化チタン・三塩化アルミニウム、臭化マグネシウム、及びこれらの部分的若しくは完全に置換されているアルキル、アルコキシ、フェニル又はフェノキシ誘導体から選択される化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(d)が結晶化を含み、前記精製CBDが結晶化CBDである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)におけるPMD対CMOのモル比が、1:1~10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PMDが、CMOと比較して少なくとも30%モル過剰である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、10℃~30℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)における前記有機溶媒が、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、メチルtert-ブチルエーテル、シクロヘキサン、トルエン、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、メチルtert-ブチルエーテル、シクロヘキサン、水及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)において得られる前記蒸留CBDが、少なくとも95%の純度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)が、10℃~30℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(b)が、薄膜蒸発プロセスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)におけるCMCBD対水のモル比が、1:1~1:100である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(c)におけるメタノール対水酸化ナトリウムのモル比が、1:1~1:100である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(d)が、結晶化溶媒としてヘキサン及び/又はペンタンを使用することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(d)において得られる結晶化CBDが、少なくとも99%の純度を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(d)において得られる結晶化CBDが、以下の結晶サイズ分布:250μm~1000μmを有し、結晶の平均サイズが500μmである、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
請求項3に記載の方法によって製造される、結晶化CBD。
【請求項17】
以下の構造:
【化1】
の化合物。
【請求項18】
カンナビジバリン(CBDV)を製造する方法であって、以下のステップ:
a)有機溶媒の存在下でp-メンタ-2,8-ジエン-1-オール(PMD)を6-カルボキシメチルジビナロール(CMD)及び触媒と反応させて、(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-プロピル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート(CMCBDV)を生成するステップと、
b)前記CMCBDVを蒸留して、蒸留CMCBDVを得るステップと、
c)前記蒸留CMCBDVを、水、メタノール及び水酸化ナトリウムと反応させて、CBDVを生成するステップと、
d)ステップ(c)からの前記CBDVを精製して、精製CBDVを得るステップと
を含む、方法。
【請求項19】
ステップ(d)が結晶化を含み、前記精製CBDVが結晶化CBDVである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法によって製造される、結晶化CBDV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年5月10日に出願された米国特許出願第62/846,279号(失効)に対する優先権を主張する。その全内容は、参照により全体として本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、一般に、カンナビジオール(CBD)又はカンナビジバリン(CBDV)の製造方法;本方法において使用される中間体;優れた純度の結晶化カンナビジオール又はカンナビジバリンに関する。
【背景技術】
【0003】
カンナビノイドは、主に大麻草の花によって産生される化学物質である。カンナビノイドは、ヒトの内在性化合物に似ている。
【0004】
カンナビノイド(本発明の目的では、カンナビノイドは、カンナビノイド受容体において活性である任意の化合物として定義される。)としては、カンナビノール、カンナビジオール、カンナビゲロール、カンナビクロメン、カンナビシクロル、ドロナビノール(デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール)、デルタ-8-テトラヒドロカンナビノール、11-ヒドロキシ-テトラヒドロカンナビノール、11-ヒドロキシ-デルタ9-テトラヒドロカンナビノール、レボナントラドール、デルタ-11-テトラヒドロカンナビノール、テトラヒドロカンナビノール、テトラヒドロカンナビノール酸、カンナビバリン、カンナビジバリン、カンナビクロメバリン、カンナビゲロバリン、カンナビゲロールモノメチルエーテル、カンナビエルソイン、カンナビシトラン、カンナビジオール酸、テトラヒドロカンナビバリン、アナンダミド、ナビロン、並びにこれらの酸及び類似体が挙げられる。現在、研究室で多くのカンナビノイドを合成することが可能となっており、そのことによって、化合物の抽出のために大麻草を育てる必要はなくなっている。
【0005】
1種のカンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)、(-)-トランス-2-p-メンタ-1,8-ジエン-3-イル-5-ペンチルレゾルシノールは、精神過程に影響せず、多くの疾患及び障害の治療に有望であることが示されている。合成カンナビジオールは、天然起源のカンナビジオールと同じ構造を有する。CBDの構造を以下に再現する。
【0006】
【化1】
【0007】
CBDを製造するための主要な方法の1つが、影響力のある論文、Petrzilka,T.,W.Haefliger及びC.Sikemeier、Synthese von Haschisch-Inhaltsstoffen.4.Mitteilung.Helvetica Chimica Acta、1969年、52(4)号、1102~1134頁に記載されている。
【0008】
【化2】
【0009】
しかしながら、この方法を使用することにはいくつかの欠点がある。出発化合物であるPMD(リモネンに由来する天然物)及びオリベトール(オリーブ又は地衣類に由来し得る別の天然物)はどちらも非常に反応性の高い化合物である。したがって、この方法では通常、工業生産のために、これらの化合物を多く使用する必要がある。加えて、複数のアルキル化中心があるため、反応により、異常なCBD及びいわゆる「ビス付加物」などの副生成物を生成する。さらに、この方法はCBDの手間のかかるクロマトグラフィー精製を必要とするため、全収率が低くなり、時間のかかる方法となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Petrzilka,T.,W.Haefliger及びC.Sikemeier、Synthese von Haschisch-Inhaltsstoffen.4.Mitteilung.Helvetica Chimica Acta、1969年、52(4)号、1102~1134頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、当技術分野において、CBD及びCBDVなどのカンナビノイド製造の改善された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
一実施形態において、本発明は、カンナビジオール(CBD)を製造する方法であって、以下のステップ:
a)有機溶媒の存在下でp-メンタ-2,8-ジエン-1-オール(PMD)を6-カルボキシメチルオリベトール(CMO)及び触媒(好ましくは三フッ化ホウ素(BF)-エーテレート)と反応させて、(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート(CMCBD)を生成するステップと、
b)前記CMCBDを蒸留して、薄膜蒸発により精製するステップと、
c)前記蒸留CMCBDを、水、メタノール及び水酸化ナトリウムと反応させて、CBDを生成するステップと、
d)ステップ(c)からの前記CBDを精製して、精製CBDを得るステップと
を含む、方法を提供する。
【0013】
好ましい実施形態において、ステップ(d)におけるCBDの精製は、結晶化を介して行われ、結晶化CBDが得られる。
【0014】
好ましい実施形態において、ステップ(a)におけるPMD対CMOのモル比は、1:1~10:1である。
【0015】
好ましくは、PMDは、CMOと比較して少なくとも30%モル過剰である。
【0016】
別の好ましい実施形態において、ステップ(a)は、10℃~30℃の温度で実施される。
【0017】
一実施形態において、ステップ1の有機溶媒は、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、メチルtert-ブチルエーテル、シクロヘキサン、トルエン、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、メチルtert-ブチルエーテル、シクロヘキサン、水及びこれらの混合物から選択される。
【0018】
別の実施形態において、ステップ(b)において得られた前記蒸留CMCBDは、少なくとも95%の純度を有する。
【0019】
別の実施形態において、ステップ(b)は、70℃~170℃の温度にて実施される。
【0020】
一実施形態において、ステップ(c)におけるCMCBD対水のモル比は、1:1~1:100である。
【0021】
別の実施形態において、ステップ(c)におけるメタノール対水酸化ナトリウムのモル比は、1:1~1:100である。
【0022】
好ましい実施形態において、ステップ(d)はクロマトグラフィー精製を含まず、したがって、クロマトグラフィーによらないプロセスである。
【0023】
一実施形態において、ステップ(d)は、結晶化溶媒としてヘキサン及び/又はペンタンを使用することを含む。
【0024】
別の実施形態において、ステップ(d)にて得られた結晶化CBDは、少なくとも99%の純度を有する。
【0025】
一実施形態において、ステップ(d)にて得られた結晶化CBDは、以下の結晶サイズ分布:250μm~1000μmの間を有し、平均サイズは500μmである。
【0026】
本発明はまた、請求項1に記載の方法によって製造される結晶化CBDを提供する。
【0027】
一実施形態において、本発明は、カンナビジバリン(CBDV)を製造する方法であって、以下のステップ:
a)有機溶媒の存在下でp-メンタ-2,8-ジエン-1-オール(PMD)を6-カルボキシメチルジビナロール(CMD)及び触媒と反応させて、(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-プロピル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート(CMCBDV)を生成するステップと、
b)前記CMCBDVを蒸留して、蒸留CMCBDVを得るステップと、
c)前記蒸留CMCBDVを、水、メタノール及び水酸化ナトリウムと反応させて、CBDVを生成するステップと、
d)ステップ(c)からの前記CBDVを精製して、精製CBDVを得るステップと
を含む、方法を提供する。
【0028】
一実施形態において、ステップ(d)におけるCBDVの精製は、結晶化を介して行われ、結晶化CBDVが得られる。
【0029】
本発明はまた、以下の構造の化合物を提供する。
【0030】
【化3】
【0031】
化合物は、(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート及び(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-プロピル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレートであり、本願全体を通して、それぞれCMCBD及びCMCBDVと称されることがある。
【0032】
本発明は、精製CBD又はCBDVを優れた収率で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の概略的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
本明細書で使用される用語は、一般に、当技術分野において、本発明の文脈において及び各用語が使用される特定の文脈において、それらの通常の意味を有する。本発明を説明するために使用される特定の用語は、本発明の説明に関して実施者に追加の指示を提供するために、以下又は本明細書の他の箇所で説明される。特定の用語については同義語が提供されている。1つ以上の同義語の記述によって、他の同義語の使用が排除されることはない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む、本明細書の任意の箇所での例の使用は、例示にすぎず、本発明又は例示された任意の用語の範囲及び意味を何ら限定するものではない。本発明は、本明細書に記載されている様々な実施形態に限定されない。
【0035】
別段の定義がない限り、本明細書において用いる技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、定義を含めて、本文書が優先する。
【0036】
「おおよそ」、「約」又は「大まかに」は、一般に、10パーセント以内、所与の値又は範囲の10パーセント以内を意味するものとする。記載された数量は近似的なものであり、明示されていない場合でも、「おおよそ」、「約」又は「大まかに」という用語があると推定できることを意味する。
【0037】
「カンナビジオール」又は「CBD」は、次の構造:
【0038】
【化4】
の化合物を指す。
【0039】
「カンナビジバリン」又は「CBDV」は、次の構造:
【0040】
【化5】
の化合物を指す。
【0041】
CMCBDは、次の構造:
【0042】
【化6】
の化合物を指す。
【0043】
CMCBDVは、次の構造:
【0044】
【化7】
の化合物を指す。
【0045】
PMDは、次の構造:
【0046】
【化8】
の化合物を指す。
【0047】
カルボキシメチルオリベトール(CMO)は、次の構造:
【0048】
【化9】
の化合物を指す。
【0049】
カルボキシメチルジビナロール(CMD)は、次の構造:
【0050】
【化10】
の化合物を指す。
【0051】
発明の実施形態
一実施形態において、本発明は、カンナビジオール(CBD)を製造する方法であって、以下のステップ:
a)有機溶媒の存在下でp-メンタ-2,8-ジエン-1-オール(PMD)を6-カルボキシメチルオリベトール(CMO)及び触媒(好ましくは三フッ化ホウ素(BF)-エーテレート)と反応させて、(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート(CMCBD)を生成するステップと、
b)前記CMCBDを蒸留して、薄膜蒸発により、蒸留CMCBDを得るステップと、
c)前記蒸留CMCBDを、水、メタノール及び水酸化ナトリウムと反応させて、CBDを生成するステップと、
d)ステップ(c)からの前記CBDを精製して、精製CBDを得るステップと
を含む、方法を提供する。
【0052】
好ましい実施形態において、ステップ(d)におけるCBDの精製は、結晶化を介して行われ、結晶化CBDが得られる。
【0053】
別の実施形態において、本発明は、カンナビジバリン(CBDV)を製造する方法であって、以下のステップ:
a)有機溶媒の存在下でp-メンタ-2,8-ジエン-1-オール(PMD)を6-カルボキシメチルジビナロール(CMD)及び触媒(好ましくは三フッ化ホウ素(BF)-エーテレート)と反応させて、(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-プロピル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレート(CMCBDV)を生成するステップと、
b)前記CMCBDVを蒸留して、薄膜蒸発により、蒸留CMCBDVを得るステップと、
c)前記蒸留CMCBDVを、水、メタノール及び水酸化ナトリウムと反応させて、CBDVを生成するステップと、
d)ステップ(c)からの前記CBDVを精製して、精製CBDVを得るステップ
を含む、方法を提供する。
【0054】
好ましい実施形態において、ステップ(d)におけるCBDVの精製は、結晶化を介して行われ、結晶化CBDVが得られる。
【0055】
ステップ(a):「カップリング反応」
ステップ(a)の反応、いわゆる「カップリング反応」は、次のように表すことができる。
【0056】
【化11】
【0057】
BF-エーテレートが好ましい触媒であるが、他の適切な触媒をカップリング反応に使用することもできる。そのような適切な触媒としては、スカンジウムトリフレート、塩化スカンジウム、イッテルビウムトリフレート、塩化イッテルビウム、塩化スズ、塩化チタン・三塩化アルミニウム、臭化マグネシウム、及びこれらの部分的若しくは完全に置換されているアルキル又はアルコキシ、フェニル又はフェノキシ誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
好ましくは、反応は、CMCBD又はCMCBDVの少なくとも80%の全収率をもたらす。未反応のCMO、CMD及びcis-CBDなどの主な不純物は、当業者に公知の方法によって容易に除去することができる。
【0059】
好ましい実施形態において、ステップ(a)におけるPMD対CMO又はCMDのモル比は、1:1~10:1である。
【0060】
好ましくは、PMDは、CMO又はCMDと比較して少なくとも30%モル過剰で使用される。
【0061】
別の好ましい実施形態において、ステップ(a)は、10℃~30℃の温度で実施される。
【0062】
一実施形態において、ステップ(a)における有機溶媒は、ジクロロメタン、酢酸エチル、クロロホルム、メチルtert-ブチルエーテル、シクロヘキサン、トルエン、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、メチルtert-ブチルエーテル、シクロヘキサン、水及びこれらの混合物から選択される。
【0063】
一実施形態において、本発明はまた、以下の構造:
【0064】
【化12】
の化合物を提供する。
【0065】
この化合物は、(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-ペンチル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレートであり、本願全体を通してCMCBDと称される。
【0066】
別の実施形態において、本発明はまた、以下の構造:
【0067】
【化13】
の化合物を提供する。
【0068】
この化合物は、(1’R,2’R)-メチル2,6-ジヒドロキシ-5’-メチル-4-プロピル-2’-(プロパ-1-エン-2-イル)-1’,2’,3’,4’-テトラヒドロ-[1,1’-ビフェニル]-3-カルボキシレートであり、本願全体を通してCMCBDVと称される。
【0069】
ステップ(b):蒸留
ステップ(b)では、薄膜蒸発により、CMCBD又はCMCBDVが蒸留される。
【0070】
一実施形態において、ステップ(b)において得られる蒸留CBD又はCBDVは、少なくとも90%の純度を有する。
【0071】
別の実施形態において、ステップ(b)は、70℃~170℃の温度にて実施される。
【0072】
簡潔に言うと、蒸留プロセスは、次のように実行することができる。
【0073】
蒸留は、三段階システム又は複数パスの単一段階システムを介して達成することができる。第一段階において、溶媒が除去される。DCMの場合、ジャケット温度は140℃であり、真空度は100torr、外部凝縮器は-15℃に設定される。第二段階は、テルペンが除去される脱テルペニル化(deterpenylation)段階である。第二段階のジャケット温度は170℃であり、真空度は3~5torrである。十分に脱溶媒和され、揮発性テルペンがなくなると、次に分子蒸留は、ジャケット温度170℃、真空度100mtorrとして、第三段階を経由して進行できる。蒸留プロセスの最も重要な部分は、第二段階におけるテルペンの除去である。
【0074】
ステップ(c):「クリッピング反応」
ステップ(c)の反応、いわゆる「クリッピング反応」は、次のように表すことができる。
【0075】
【化14】
【0076】
一実施形態において、ステップ(c)におけるCMCBD又はCMCBDV対水のモル比は、1:1~1:100である。
【0077】
別の実施形態において、ステップ(c)におけるメタノール対水酸化ナトリウムのモル比は、1:1~1:100である。
【0078】
クリッピング反応は、高圧によって上昇する温度を含む、溶媒又は溶媒混合物の還流温度で、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、20、24、28、30、32、36、48若しくは約120時間の持続時間にわたって、又は所望の終点(ここで、所望の終点は、例えば、出発材料又は中間材料の転化率によって決定することができる。)に到達するために必要な任意の時間にわたって、実施することができる。これらの値により、約10~約30時間などの範囲を確定することができる。一実施形態において、還元反応は、メタノール-水混合物中で、約16時間~約24時間又は約20~約28時間の持続時間にわたって、還流下で実施することができる。
【0079】
還流温度は、20℃、室温(RT)、30℃、40℃、50℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、110℃又は約120℃であってよい。これらの値を使用して、約20℃~約100℃又はほぼRT~約50℃又は約60℃~約85℃又は約72℃~約76℃などの範囲を確定することができる。
【0080】
ステップ(d):精製(好ましくは結晶化による)
ステップ(c)の「クリッピング反応」の後、得られたCBD又はCBDVは、好ましくは結晶化によって、精製される。CBD又はCBDVを精製する他の方法としては、クロマトグラフィー(順相又は逆相のいずれか)、蒸留又は昇華が挙げられる。
【0081】
一実施形態において、脱色に続いて、ステップ(c)からの固体CBD又はCBDVは、高温にて溶媒中に溶解させられる。溶液が冷えるにつれて、溶媒中の溶質の溶解度は徐々に小さくなる。得られた溶液は、過飽和である、つまり、その温度における溶質の溶解度によって予測され得るよりも多くの溶質が溶液中に溶解している、と記述することができる。次に、高純度の小さな結晶種の塊を播種し、得られた純粋な結晶を、減圧濾過及び遠心分離機を含むがこれらに限定されない当業者に公知の方法により除去することで、上記の過飽和溶液から、結晶化を誘導することができる。結晶が濾過された後の残留溶液は、母液として知られ、元の溶質の一部及び溶液中に残留した不純物も含有する。
【0082】
したがって、本発明の一実施形態において、母液から第2及び第3の結晶回収物を採取することが可能である。
【0083】
一実施形態において、ステップ(d)は、ヘキサン及び/若しくはペンタン並びに/又は別の適切な溶媒を結晶化溶媒として使用することを含む。
【0084】
一実施形態において、CBD又はCBDVは、50℃にて質量1:1でヘキサンに溶解される。次に、溶液を徐々に20℃まで徐々に冷却させ、その時点で、1重量%のCBD又はCBDV種の塊(純度>95%)が、撹拌用密閉容器に投入される。次に、24時間かけて-17℃まで溶液を冷却させる。この方法で採取された結晶は、純度が評価される。純度が不十分で仕様を満たせない場合は、同じ方法によりもう一度結晶化する。結晶が純度仕様を満たしたら、それらをペンタン中で最後にもう一度結晶化する。
【0085】
別の実施形態において、ステップ(d)において得られる結晶化CBD又はCBDVは、少なくとも99%の純度を有する。
【0086】
好ましい実施形態において、ステップ(d)はクロマトグラフィー精製を含まず、したがって、クロマトグラフィーによらないプロセスである。
【0087】
一実施形態において、ステップ(d)で得られる結晶化CBD又はCBDVは、以下の結晶サイズ分布:250μm~1000μmの間を有し、平均サイズは500μmである。
【0088】
本発明はまた、本明細書に記載の製造方法によって製造される結晶化CBD又はCBDVを提供する。
【0089】
開示された実施形態は、本明細書に開示された本発明の概念の単なる例示的な実施形態であり、特許請求の範囲において明示的な別段の記載がない限り、限定的なものと考えられるべきではない。
【0090】
以下の実施例は、本発明を説明し、本発明の調合物を使用する方法を当業者に教示することを意図している。これらの実施例は、いかなる意味でも限定を意図したものではない。
【0091】
本発明の全ての特許請求の範囲、態様及び実施形態、並びにこれらの特定の例は、これらの同等物を包含することを意図している。
【実施例
【0092】
実施例1
CMCBDの調製(「カップリング反応」)
CMCBDを以下のように調製した。
【0093】
下の脱水DCM3980mLに、CMOを添加して溶解させた。次に、BFを添加し、CMOと一緒に20分間撹拌した。次に、DCM(1:1)中のPMDを、添加漏斗を介して素早く添加した。反応を断続的にモニターし、最終的に等容量の飽和重炭酸塩でクエンチして、次にHPLCにより分析した。
【0094】
反応により、781.65gのCMCBD(MW372.5)を、80%の典型的な純度で生成した。
【0095】
実施例2
CBDの調製(「クリッピング反応」)
CBDを以下のように調製した。
【0096】
撹拌しながらN下で、100L反応器内の冷水15Lに、3kgのNaOHを添加した。発熱が生じ、温度を記録した。温度が65℃を下回ったら、15LのMeOHを添加した。次に、15Lの、MeOH中8kgのCMCBD又はCMCBDVを添加した。MeOHを50Lの標線まで反応器に継ぎ足した。次に、凝縮器を稼働させた状態で、熱を95℃まで上昇させた。反応を定期的にチェックした(リン酸緩衝液中でクエンチし、HPLCによって分析した)。反応が完了するまで約24時間かかった。完了したら、蒸留(減圧)によりMeOHを除去し、反応物を冷却させた。除去されたMeOHを、同容量(35L)の70:30のヘキサン:HO溶液で代替した。緩やかに攪拌しながら、水層が中性になるまでCOをバブリングした。有機層を除去し、水層を1倍量のヘキサンで洗浄し、脱水し、脱色し、溶媒を除去し、CBD。
【0097】
実施例3
CBDの結晶化
CBDを50℃にて質量1:1でヘキサン中に溶解させた。次に、溶液を20℃まで徐々に冷却させ、その時点で1重量%のCBD種の塊(純度>95%)を撹拌用密閉容器に投入した。次に、24時間かけて-17℃まで溶液を冷却させた。この手順を、上記のようにもう一度ヘキサンを使用して繰り返し、最後にペンタンを使用して(50℃の代わりに35℃のペンタンに溶解させて)繰り返した。次に、結晶を濾過し、Nブローダウン若しくは減圧又はその両方によって溶媒を除去した。
【0098】
実施例4
CMCBDVの調製(「カップリング反応」)
CMCBDVを以下のように調製した。
【0099】
下の脱水DCM4320mLに、CMDを添加して溶解させた。次に、BFを添加し、CMDと一緒に20分間撹拌した。次に、DCM(1:1)中のPMDを、添加漏斗を介して素早く添加した。反応を断続的にモニターし、最終的に等容量の飽和重炭酸塩でクエンチして、次にHPLCにより分析した。
【0100】
反応により、819.23gのCMCBDV(MW344.5)を、80%の典型的な純度で生成した。
【0101】
実施例5
CBDVの調製(「クリッピング反応」)
CBDVを以下のように調製した。
【0102】
撹拌しながらN下で、丸底フラスコ内の冷水1Lに、200gのNaOHを添加した。発熱が生じた。温度が65℃を下回ったら、2.3LのMeOHを添加した。次に、500mLの、MeOH中500gのCMCBDVを添加した。MeOHを5Lの標線までフラスコに継ぎ足した。次に、凝縮器を稼働させ、窒素を穏やかにバブリングさせながら、反応物を95℃にした。反応の進行を定期的にチェックした(リン酸緩衝液中でクエンチし、HPLCによって分析した)。反応が完了するまで約18時間かかった。完了したら、減圧蒸留によりMeOHを除去し、反応物を冷却させた。除去されたMeOHを、同量(約2L)の70:30のヘキサン:HO溶液で代替した。緩やかに攪拌しながら、水層が中性になるまでCOをバブリングした。有機層を除去し、水層を1倍量のヘキサンで洗浄し、脱水し、溶媒を除去し、CBDVを結晶化した。このステップで通常生じる収率は、おおよそ90%である。
【0103】
実施例6
CBDVの結晶化
上記の反応からの粗CBDVを、50℃で質量1:1のヘキサンに溶解させた。次に、溶液を20℃まで徐々に冷却させ、その時点で穏やかなN2流下において1重量%のCBDV種の塊(純度>95%)を撹拌用密閉容器に投入した。次に、24時間かけて-17℃まで溶液を冷却させた。この手順を、上記のようにもう一度ヘキサンを使用して繰り返し、最後にペンタンを使用して(50℃の代わりに35℃のペンタンに溶解させて)繰り返した。次に、結晶を濾過し、Nブローダウン若しくは減圧又はその両方によって溶媒を除去した。上記の結晶化スキームの総質量回収率は約65%であり、CBDVの純度は99.5%を超える。上記による母液は、追加の採取のためにさらに再加工、播種及び結晶化することができる。これらは、クリッピング反応からの異なる粗CBDVに添加して、さらに結晶化することができ、又は、CBDVの力価が結晶化を起こさないほど十分に低い場合は、クロマトグラフィー精製のために保持することもできる。
図1
【国際調査報告】