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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】自走式無人軽量型船
(51)【国際特許分類】
   B63H 19/02 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
B63H19/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544373
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2020095728
(87)【国際公開番号】W WO2021243747
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】202010485827.1
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】姜 東岳
(72)【発明者】
【氏名】趙 佳飛
(72)【発明者】
【氏名】陳 貴軍
(72)【発明者】
【氏名】宋 永臣
(57)【要約】
本発明は、船体と、浮遊式エレクトレットと、摩擦発電電極対と、接続回路と、負極電極と、推進器電極とエレクトロウェッティング推進器とを備え、前記浮遊式エレクトレット、摩擦発電電極対及び接続回路が船体の内部に設置され、前記負極電極が船体の底部に配置される自走式無人軽量型船を開示する。該自走式無人軽量型船はシリカエアロゲル、充填されたヘリウムガス及びシールエレクトレットからなるので、浮遊式エレクトレットが空気密度にマッチングする特点を有することで、波力エネルギーハーベスティング中で、船体に大幅の揺動が発生されなくても摩擦発電電極対との接離動作が行われ、交流信号を生成することができ、また前記推進器電極及びエレクトロウェッティング推進器は厚さ約1μmのフィルム材料であり、軽量で、光透過性や耐久性に優れている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体(1)と、浮遊式エレクトレット(2)と、摩擦発電電極対(3)と、接続回路(4)と、負極電極(5)と、推進器電極(6)と、エレクトロウェッティング推進器(7)とを備え、前記浮遊式エレクトレット(2)、摩擦発電電極対(3)及び接続回路(4)が船体(1)の内部に設置され、前記負極電極(5)が船体(1)の底部に設けられ、
前記浮遊式エレクトレット(2)は第1浮遊式エレクトレット(2-1)と、第2浮遊式エレクトレット(2-2)と、第3浮遊式エレクトレット(2-3)とを備え、前記摩擦発電電極対(3)が第1摩擦発電電極対(3-1)と、第2摩擦発電電極対(3-2)と、第3摩擦発電電極対(3-3)とを備え、前記接続回路(4)が第1正極接続回路(4-1)と、第2正極接続回路(4-2)と、第3正極接続回路(4-3)と、第4負極接続回路(4-4)とを備え、前記推進器電極(6)が第1推進器電極(6-1)と、第2推進器電極(6-2)と、第3推進器電極(6-3)とを備え、前記エレクトロウェッティング推進器(7)が第1エレクトロウェッティング推進器(7-1)と、第2エレクトロウェッティング推進器(7-2)と、第3エレクトロウェッティング推進器(7-3)とを備え、
前記第1推進器電極(6-1)及び第1エレクトロウェッティング推進器(7-1)は船体(1)の尾部に配置され、前記第2推進器電極(6-2)及び第2エレクトロウェッティング推進器(7-2)は船体(1)の左側に配置され且つ船体とのなす角が45°であり、前記第3推進器電極(6-3)及び第3エレクトロウェッティング推進器(7-3)は船体(1)の右側に配置され且つ船体とのなす角が45°であり、前記第1浮遊式エレクトレット(2-1)は第1摩擦発電電極対(3-1)の間に配置され、第2浮遊式エレクトレット(2-2)は第2摩擦発電電極対(3-2)の間に配置され、第3浮遊式エレクトレット(2-3)は第3摩擦発電電極対(3-3)の間に配置され、
前記第1摩擦発電電極対(3-1)の上部電極板が第1正極接続回路(4-1)を介して第1推進器電極(6-1)に接続され、第2摩擦発電電極対(3-2)の上部電極板が第2正極接続回路(4-2)を介して第2推進器電極(6-2)に接続され、第3摩擦発電電極対(3-3)の上部電極板が第3正極接続回路(4-3)を介して第3推進器電極(6-3)に接続され、第1摩擦発電電極対(3-1)、第2摩擦発電電極対(3-2)及び第3摩擦発電電極対(3-3)の下部電極板が第4負極接続回路(4-4)を共用して負極電極(5)に接続される、ことを特徴とする自走式無人軽量型船。
【請求項2】
前記浮遊式エレクトレット(2)の内部にシリカエアロゲル(2-A)が設置され、前記シリカエアロゲル(2-A)の隙間にヘリウムガス(2-B)が充填され、前記シリカエアロゲル(2-A)の外面がシールエレクトレットフィルム(2-C)によりシールされている、ことを特徴とする請求項1に記載の自走式無人軽量型船。
【請求項3】
前記シールエレクトレット(2-C)はエレクトレットフィルム材料、パフルオロエチレンプロペンコポリマー及びポリテトラフルオロエチレンを含むがそれらに限られない、ことを特徴とする請求項2に記載の自走式無人軽量型船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無人軽量型船舶及びエネルギーハーベスティング分野に関し、特に自走式無人軽量型船に関する。
【背景技術】
【0002】
無人軽量型船舶は水環境監視や制限された水面空間探査や軍事捜査の分野で重要な役割を果たしている。無人軽量型船舶のパワーシステム及び推進システムは船舶の耐用寿命や作動距離を直接制限している。従来の無人軽量型船舶では、化石燃料や化学電池や太陽電池を利用してエンジンや、圧電式・電磁誘導式推進器を駆動して水面での推進を実現している。しかし、燃料、電池容量、太陽の昼と夜の交互、曇りや雨の天気の影響で、上記エネルギー供給システムは無人軽量型船の長時間、長距離の利用を確保することが難しくなっている。また、海、湖、川において豊富な波力エネルギーがある。研究者は振動水柱式(OWC)、振動ブイ式(Buoy)、振り子式(Pendulum)、エンテ式(Duck)、筏式(Raft)、Tapchan式、オイスター式(Clam)、摩擦発電機等の方式で水体のウェーブハーベスティングについて大量の研究を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの研究ではエネルギーハーベスティング装置を固定し、流れている水流を利用して波力エネルギーハーベスティングを行わなければならない。このような固定装置によって生成される電気エネルギーは無人軽量型船の駆動に対して搬送距離が短いという制限もある。従来技術における問題点に鑑みて、本発明は、自走式無人軽量型船を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一形態の自走式無人軽量型船は、船体と、浮遊式エレクトレットと、摩擦発電電極対と、接続回路と、負極電極と、推進器電極と、エレクトロウェッティング推進器とを備え、前記浮遊式エレクトレット、摩擦発電電極対及び接続回路が船体の内部に設置され、前記負極電極が船体の底部に配置され、
前記浮遊式エレクトレットは第1浮遊式エレクトレットと、第2浮遊式エレクトレットと、第3浮遊式エレクトレットとを備え、前記摩擦発電電極対が第1摩擦発電電極対と、第2摩擦発電電極対と、第3摩擦発電電極対とを備え、前記接続回路が第1正極接続回路と、第2正極接続回路と、第3正極接続回路と、第4負極接続回路とを備え、前記推進器電極が第1推進器電極と、第2推進器電極と、第3推進器電極とを備え、前記エレクトロウェッティング推進器が第1エレクトロウェッティング推進器と、第2エレクトロウェッティング推進器と、第3エレクトロウェッティング推進器とを備え、
前記第1推進器電極及び第1エレクトロウェッティング推進器は船体の尾部に配置され、前記第2推進器電極及び第2エレクトロウェッティング推進器は船体の左側に配置され且つ船体とのなす角が45°であり、前記第3推進器電極及び第3エレクトロウェッティング推進器は船体の右側に配置され且つ船体とのなす角が45°であり、前記第1浮遊式エレクトレットは第1摩擦発電電極対の間に配置され、第2浮遊式エレクトレットは第2摩擦発電電極対の間に配置され、第3浮遊式エレクトレットは第3摩擦発電電極対の間に配置され、
前記第1摩擦発電電極対の上部電極板が第1正極接続回路を介して第1推進器電極に接続され、第2摩擦発電電極対の上部電極板が第2正極接続回路を介して第2推進器電極に接続され、第3摩擦発電電極対の上部電極板が第3正極接続回路を介して第3推進器電極に接続され、第1摩擦発電電極対、第2摩擦発電電極対及び第3摩擦発電電極対の下部電極板が第4負極接続回路を共用して負極電極に接続される。
【0005】
前記浮遊式エレクトレットの内部にシリカエアロゲルが設置され、前記シリカエアロゲルの隙間にヘリウムガスが充填され、前記シリカエアロゲルの外面がシールエレクトレットフィルムによりシールされている。
【0006】
前記シールエレクトレットはエレクトレットフィルム材料、パフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むがそれらに限られない。
【0007】
前記エレクトロウェッティング推進器はテフロンフィルムであり、負極電極が水に接触し、エレクトロウェッティング推進器が水の中に半浸漬すると、負極電極と推進器電極に、周波数5~20ヘルツ、150ボルトの交流信号が印加され、エレクトロウェッティング推進器の表面に表面張力波が生じ、軽量型船に逆推力がかかることができる。
【発明の効果】
【0008】
上記の技術的手段によれば、本発明に係る自走式無人軽量型船は、以下のメリットを有する。
【0009】
水体の波力エネルギーハーベスティングとエレクトロウェッティング推進器を組み合わせることで、エネルギーハーベスティングしながらそのエネルギーを推力に転換することを実現でき、水面にウェーブがある限り、無人軽量型船は絶えずに推力を発生でき、作動距離がかなり向上する。また本発明に係るエレクトロウェッティング推進器では、回動部材が設けられず、熱が発生せず、軽量であり、騒音がなく、ステルスが必要な状況での適用に有利である。本発明は、(a)シリカエアロゲルと充填されたヘリウムガスとシールエレクトレットとからなる浮遊式エレクトレットが空気密度にマッチングする特性を有することで、波力エネルギーハーベスティング中で、船体には大幅の揺動が発生することなく、摩擦発電電極対との接離動作が行われ、AC信号が生成することができることと、(b)前記推進器電極及びエレクトロウェッティング推進器が厚さ約1μmのフィルム材料であり、軽量で、光透過性や耐久性に優れていることとを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の実施例又は従来技術における技術的手段をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の記述に必要な図面を簡単に紹介するが、下述における図面は本発明の一部の実施例に過ぎなく、当業者であれば、創造的な作業を行わずに、これらの図面に基づいてその他の図面を得ることができるのは明らかである。
【0011】
図1】自走式無人軽量型船の正面図である。
図2図1の上面図及びA-A断面図である。
図3図1の前面図及びB-B断面図である。
図4】浮遊式エレクトレットの正面図及びC-C断面図である。
図5】船体が静かな水面にある際の電荷分布及び水波状態図である。
図6】船体が水波の作用で上へ動く際の電荷分布及び水波状態図である。
図7】船体が水波の作用で下へ動く際の電荷分布及び水波状態図である。
図8】船体が水波の作用で連続して上下動する際の水波状態の重畳図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の技術的手段及び利点をより明確にするために、以下、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術的手段について明確かつ完全に説明する。
【0013】
図1に示す自走式無人軽量型船は、船体1と、浮遊式エレクトレット2と、摩擦発電電極対3と、接続回路4と、負極電極5と、推進器電極6と、エレクトロウェッティング推進器7とを備える。前記浮遊式エレクトレット2、摩擦発電電極対3及び接続回路4が船体1の内部に設置され、前記負極電極5が船体1の底部に配置され、水と接触する。
【0014】
前記浮遊式エレクトレット2は第1浮遊式エレクトレット2-1と、第2浮遊式エレクトレット2-2と、第3浮遊式エレクトレット2-3とを備える。前記摩擦発電電極対3は第1摩擦発電電極対3-1と、第2摩擦発電電極対3-2と、第3摩擦発電電極対3-3とを備え、前記接続回路4は第1正極接続回路4-1と、第2正極接続回路4-2と、第3正極接続回路4-3と、第4負極接続回路4-4とを備え、前記推進器電極6は第1推進器電極6-1と、第2推進器電極6-2と、第3推進器電極6-3とを備え、前記エレクトロウェッティング推進器7は第1エレクトロウェッティング推進器7-1と、第2エレクトロウェッティング推進器7-2と、第3エレクトロウェッティング推進器7-3とを備える。
【0015】
前記第1推進器電極6-1及び第1エレクトロウェッティング推進器7-1は船体1の尾部に配置され、前記第2推進器電極6-2及び第2エレクトロウェッティング推進器7-2は船体1の左側に船体とのなす角が45°になるように配置され、前記第3推進器電極6-3及び第3エレクトロウェッティング推進器7-3は船体1の右側に船体とのなす角が45°になるように配置され、前記第1浮遊式エレクトレット2-1は第1摩擦発電電極対3-1の間に配置され、第2浮遊式エレクトレット2-2は第2摩擦発電電極対3-2の間に配置され、第3浮遊式エレクトレット2-3は第3摩擦発電電極対3-3の間に配置される。
【0016】
前記第1摩擦発電電極対3-1の上部電極板が第1正極接続回路4-1を介して第1推進器電極6-1に接続され、第2摩擦発電電極対3-2の上部電極板が第2正極接続回路4-2を介して第2推進器電極6-2に接続され、第3摩擦発電電極対3-3の上部電極板が第3正極接続回路4-3を介して第3推進器電極6-3に接続され、第1摩擦発電電極対3-1、第2摩擦発電電極対3-2及び第3摩擦発電電極対3-3の下部電極板が第4負極接続回路4-4を共用して負極電極5に接続される。
【0017】
初期状態において、船体1が水中に静置され、第1浮遊式エレクトレット2-1、第2浮遊式エレクトレット2-2及び第3浮遊式エレクトレット2-3がそれぞれ摩擦発電電極対の間に配置されて摩擦発電電極対の上部、下部電極板のいずれにも接触せず、浮遊式エレクトレット2に存在する過剰な負電荷が移動せず、第1摩擦発電電極対3-1、第2摩擦発電電極対3-2及び第3摩擦発電電極対3-3の上部、下部電極板が電気的に中性である。第1エレクトロウェッティング推進器7-1、第2エレクトロウェッティング推進器7-2及び第3エレクトロウェッティング推進器7-3はテフロンフィルムであるので、電荷作用がない場合、疎水状態であることで、第1エレクトロウェッティング推進器7-1、第2エレクトロウェッティング推進器7-2及び第3エレクトロウェッティング推進器7-3と接触する水接触角が約110°である。
【0018】
作動状態について、水体にウェーブが存在すると、船体1がウェーブに従って上下にスロッシングする。船体1が上へスロッシングすると、浮遊式エレクトレット2が摩擦発電電極対3の下部電極板に接触し、エレクトレット表面に大量の負電荷があるので、静電反発力の作用で、摩擦発電電極対3の下部電極板における自由電子が第4負極接続回路4-4を介して負極電極5に反発され、負極電極5の表面には大量の自由電子が得られるとともに、摩擦発電電極対3の上部電極板には変化が発生しないので、摩擦発電電極対3の上部電極板に接続されている推進器電極6には電荷分布が均一であることで、負極電極5と推進器電極6との間に電位差が生じ、エレクトロウェッティングの作用下で、この電位差によりエレクトロウェッティング推進器7の表面エネルギーが変化され、元の疎水状態から親水状態に変わり、水体への摂動が発生する。船体が水波に従って下へスロッシングすると、浮遊式エレクトレット2が摩擦発電電極対3から分離し、負極電極5における過剰な自由電子が摩擦発電電極対3の下部電極板に戻ることで、負極電極5と推進器電極6との間における電位差がなくなり、エレクトロウェッティング推進器7の表面エネルギーが低減され、水体が重力及び表面張力の作用で、疎水状態に回復することで、二回目の水体への摂動が発生し、水波が引き続き働くと、船体が引き続き下へ動くことで、浮遊式エレクトレット2が摩擦発電電極対3の上部電極板に接触し、上部電極板における自由電子が反発されて第1正極接続回路4-1、第2正極接続回路4-2及び第3正極接続回路4-3を経て第1推進器電極6-1、第2推進器電極6-2、第3推進器電極6-3に至るが、この時に浮遊式エレクトレット2がすでに摩擦発電電極対3の下部電極板から分離して、負極電極5には余分な自由電子がなくなったので、負極電極5と推進器電極6との間に逆電位差が生じ、エレクトロウェッティングの作用で、エレクトロウェッティング推進器7の表面エネルギーが再度増大することで、水体が疎水状態から親水状態に再度変わり、三回目の水体への摂動が発生する。船体が水波の作用で絶えずに上下にスロッシングする過程において、浮遊式エレクトレット2と摩擦発電電極対3の上部、下部電極板との間に周期的接離動作が行われ、さらに推進器電極6と負極電極5との間に周期的電位差が生じ、これにより、エレクトロウェッティングの作用下で、エレクトロウェッティング推進器7と接触する水接触角が60°~110°の間で周期的に変化して表面張力波を生じさせ、船体1への逆推力が実現される。
【0019】
前記第1エレクトロウェッティング推進器7-1は船体1の前への推進動作を担い、第2エレクトロウェッティング推進器7-2は船体の右前45°への推進動作を担い、第3エレクトロウェッティング推進器7-3は船体の左前45°への推進動作を担い、第1エレクトロウェッティング推進器7-1、第2エレクトロウェッティング推進器7-2及び第3エレクトロウェッティング推進器7-3は同時に作動すると、船体が前へ移動し、推進器7-2が作動すると、船体がライトターン動作を行い、推進器7-3が作動すると、船体がレフトターン動作を行う。
【0020】
図4は浮遊式エレクトレット2の外観及び内部構造図を示し、浮遊式エレクトレット2の内部にはシリカエアロゲル2-Aが設けられ、シリカエアロゲル2-Aの隙間にヘリウムガス2-Bが充填され、シリカエアロゲル2-Aの外面がシールエレクトレットフィルム2-Cによりシールされており、シールエレクトレット2-Cがエレクトレットフィルム材料、パフルオロエチレンプロペンコポリマーFEP及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むがそれらに限られない。エレクトレットフィルム2-Cでシリカエアロゲル2-Aをシールし、シリカエアロゲル2-Aの隙間に空気より低密度のヘリウムガス2-Bを充填することで、浮遊式エレクトレット2が空気の中で浮遊することができる。
【0021】
さらに、エレクトレット2の支持構造については、シールエレクトレットフィルム2-Cによりシリカエアロゲル2-Aを被覆してシールした後で、ヘリウムガス2-Bをシリカエアロゲル2-Aの隙間に充填する。ヘリウムガス2-Bが空気より低密度であり、そしてシリカエアロゲルそのものが低密度であり、エレクトレットフィルム2-Cの占める体積が小さいので、これらが相まって、浮遊式エレクトレット2が空気の中で浮遊することができる。
【0022】
図5は無人軽量型船舶が静かな水面にある際の初期状態を示し、この状態において、浮遊式エレクトレット2が摩擦発電電極対3の間に配置され、摩擦発電電極対3の上部、下部電極板のいずれにも接触しないことで、推進器電極6における電荷分布が均一であるとともに、推進器電極6と負極電極5との間に電位差がなく、エレクトロウェッティング推進器7の疎水特性により、船尾及び船側におけるエレクトロウェッティング推進器と隣接する水接触角が約110°である。
【0023】
図6は水面にウェーブが働いている無人軽量型船舶の作動状態を示し、この状態において、第1浮遊式エレクトレット2-1、第2浮遊式エレクトレット2-2及び第3浮遊式エレクトレット2-3は第1摩擦発電電極対3-1、第2摩擦発電電極対3-2及び第3摩擦発電電極対3-3の下部電極板に接触し、浮遊式エレクトレットOPEClongjing(欧佩克龍淨)環保体材料の表面に大量の負電荷があり、これらの負電荷が摩擦発電電極対3の下部電極板における自由電子を負極電極5に動かすが、摩擦発電電極対3の上部電極板が浮遊式エレクトレット2に接触しないため、表面電荷密度が変化していないことで、推進器電極6と負極電極5との間に電位差が生じ、電位差の作用で、エレクトロウェッティング推進器を構成するテフロンフィルムの表面エネルギーが増大し、それと接触する水体が元の疎水状態から親水状態に変わり、接触角が60°に減少される。
【0024】
図7は水面にウェーブの作用がある際の無人軽量型船舶の作動状態を示し、この状態において、第1浮遊式エレクトレット2-1、第2浮遊式エレクトレット2-2及び第3浮遊式エレクトレット2-3が第1摩擦発電電極対3-1、第2摩擦発電電極対3-2及び第3摩擦発電電極対3-3の上部電極板に接触し、浮遊式エレクトレット材料の表面に大量の負電荷があり、これらの負電荷が摩擦発電電極対3の上部電極板における自由電子を推進器電極6に動かすが、摩擦発電電極対3の下部電極板が浮遊式エレクトレット2に接触されていないため、表面電荷密度が変化していないことで、推進器電極6と負極電極5との間に逆電位差が生じ、電位差の作用で、エレクトロウェッティング推進器を構成するテフロンフィルムの表面エネルギーが増大し、それと接触する水体が元の疎水状態から親水状態に変わり、接触角が60°に減少される。
【0025】
図8は水面にウェーブが連続して作用している際に船体1が水中で上下に浮動する場合を示し、浮遊式エレクトレット2が摩擦発電電極対3の上部、下部電極板に対して交互の接離動作を行い、浮遊式エレクトレット2の表面に存在する過剰な負電荷で、摩擦発電電極対3の上部、下部電極板における自由電子を負極電極5及び推進器電極6に交互に動かし、さらに負極電極5と推進器電極6との間に交互に電位差が生じ、この電位差の作用で、エレクトロウェッティング推進器7の表面エネルギーが交互に高くなったり、低くなったりすることで、それと接触する水接触角が60°~110°の間で変化して、水波を生じ、この水波が船体を推し進める。
【0026】
上記は、本発明の好適な具体的な実施態様に過ぎないが、本発明の保護範囲を制限せず、如何なる当業者により、本発明に開示された技術範囲内で、本発明の技術的手段及びその発明構想に基づいて行った同等置換や変更は、いずれも本発明の保護範囲内含まれるものとする。
【0027】
(付記)
(付記1)
船体(1)と、浮遊式エレクトレット(2)と、摩擦発電電極対(3)と、接続回路(4)と、負極電極(5)と、推進器電極(6)と、エレクトロウェッティング推進器(7)とを備え、前記浮遊式エレクトレット(2)、摩擦発電電極対(3)及び接続回路(4)が船体(1)の内部に設置され、前記負極電極(5)が船体(1)の底部に設けられ、
前記浮遊式エレクトレット(2)は第1浮遊式エレクトレット(2-1)と、第2浮遊式エレクトレット(2-2)と、第3浮遊式エレクトレット(2-3)とを備え、前記摩擦発電電極対(3)が第1摩擦発電電極対(3-1)と、第2摩擦発電電極対(3-2)と、第3摩擦発電電極対(3-3)とを備え、前記接続回路(4)が第1正極接続回路(4-1)と、第2正極接続回路(4-2)と、第3正極接続回路(4-3)と、第4負極接続回路(4-4)とを備え、前記推進器電極(6)が第1推進器電極(6-1)と、第2推進器電極(6-2)と、第3推進器電極(6-3)とを備え、前記エレクトロウェッティング推進器(7)が第1エレクトロウェッティング推進器(7-1)と、第2エレクトロウェッティング推進器(7-2)と、第3エレクトロウェッティング推進器(7-3)とを備え、
前記第1推進器電極(6-1)及び第1エレクトロウェッティング推進器(7-1)は船体(1)の尾部に配置され、前記第2推進器電極(6-2)及び第2エレクトロウェッティング推進器(7-2)は船体(1)の左側に配置され且つ船体とのなす角が45°であり、前記第3推進器電極(6-3)及び第3エレクトロウェッティング推進器(7-3)は船体(1)の右側に配置され且つ船体とのなす角が45°であり、前記第1浮遊式エレクトレット(2-1)は第1摩擦発電電極対(3-1)の間に配置され、第2浮遊式エレクトレット(2-2)は第2摩擦発電電極対(3-2)の間に配置され、第3浮遊式エレクトレット(2-3)は第3摩擦発電電極対(3-3)の間に配置され、
前記第1摩擦発電電極対(3-1)の上部電極板が第1正極接続回路(4-1)を介して第1推進器電極(6-1)に接続され、第2摩擦発電電極対(3-2)の上部電極板が第2正極接続回路(4-2)を介して第2推進器電極(6-2)に接続され、第3摩擦発電電極対(3-3)の上部電極板が第3正極接続回路(4-3)を介して第3推進器電極(6-3)に接続され、第1摩擦発電電極対(3-1)、第2摩擦発電電極対(3-2)及び第3摩擦発電電極対(3-3)の下部電極板が第4負極接続回路(4-4)を共用して負極電極(5)に接続される、ことを特徴とする自走式無人軽量型船。
【0028】
(付記2)
前記浮遊式エレクトレット(2)の内部にシリカエアロゲル(2-A)が設置され、前記シリカエアロゲル(2-A)の隙間にヘリウムガス(2-B)が充填され、前記シリカエアロゲル(2-A)の外面がシールエレクトレットフィルム(2-C)によりシールされている、ことを特徴とする付記1に記載の自走式無人軽量型船。
【0029】
(付記3)
前記シールエレクトレット(2-C)はエレクトレットフィルム材料、パフルオロエチレンプロペンコポリマー及びポリテトラフルオロエチレンを含むがそれらに限られない、ことを特徴とする付記2に記載の自走式無人軽量型船。
【符号の説明】
【0030】
1、船体
2、浮遊式エレクトレット
2-1、第1浮遊式エレクトレット
2-2、第2浮遊式エレクトレット
2-3、第3浮遊式エレクトレット
2-A、シリカエアロゲル
2-B、ヘリウムガス
2-C、シールエレクトレットフィルム
3、摩擦発電電極対
3-1、第1摩擦発電電極対
3-2、第2摩擦発電電極対
3-3、第3摩擦発電電極対
4、接続回路
4-1、第1正極接続回路
4-2、第2正極接続回路
4-3、第3正極接続回路
4-4、第4負極接続回路
5、負極電極
6、推進器電極
6-1、第1推進器電極
6-2、第2推進器電極
6-3、第3推進器電極
7、エレクトロウェッティング推進器
7-1、第1エレクトロウェッティング推進器
7-2、第2エレクトロウェッティング推進器
7-3、第3エレクトロウェッティング推進器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2021-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記シールエレクトレットフィルム(2-C)はエレクトレットフィルム材料、パフルオロエチレンプロペンコポリマー及びポリテトラフルオロエチレンを含むがそれらに限られない、ことを特徴とする請求項2に記載の自走式無人軽量型船。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記シールエレクトレットフィルム(2-C)はエレクトレットフィルム材料、パフルオロエチレンプロペンコポリマー及びポリテトラフルオロエチレンを含む、ことを特徴とする請求項2に記載の自走式無人軽量型船。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
前記シールエレクトレットフィルムはエレクトレットフィルム材料、パフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
水体の波力エネルギーハーベスティングとエレクトロウェッティング推進器を組み合わせることで、エネルギーハーベスティングしながらそのエネルギーを推力に転換することを実現でき、水面にウェーブがある限り、無人軽量型船は絶えずに推力を発生でき、作動距離がかなり向上する。また本発明に係るエレクトロウェッティング推進器では、回動部材が設けられず、熱が発生せず、軽量であり、騒音がなく、ステルスが必要な状況での適用に有利である。本発明は、(a)シリカエアロゲルと充填されたヘリウムガスとシールエレクトレットフィルムとからなる浮遊式エレクトレットが空気密度にマッチングする特性を有することで、波力エネルギーハーベスティング中で、船体には大幅の揺動が発生することなく、摩擦発電電極対との接離動作が行われ、AC信号が生成することができることと、(b)前記推進器電極及びエレクトロウェッティング推進器が厚さ約1μmのフィルム材料であり、軽量で、光透過性や耐久性に優れていることとを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図4は浮遊式エレクトレット2の外観及び内部構造図を示し、浮遊式エレクトレット2の内部にはシリカエアロゲル2-Aが設けられ、シリカエアロゲル2-Aの隙間にヘリウムガス2-Bが充填され、シリカエアロゲル2-Aの外面がシールエレクトレットフィルム2-Cによりシールされており、シールエレクトレットフィルム2-Cがエレクトレットフィルム材料、パフルオロエチレンプロペンコポリマーFEP及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むがそれらに限られない。シールエレクトレットフィルム2-Cでシリカエアロゲル2-Aをシールし、シリカエアロゲル2-Aの隙間に空気より低密度のヘリウムガス2-Bを充填することで、浮遊式エレクトレット2が空気の中で浮遊することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
さらに、エレクトレット2の支持構造については、シールエレクトレットフィルム2-Cによりシリカエアロゲル2-Aを被覆してシールした後で、ヘリウムガス2-Bをシリカエアロゲル2-Aの隙間に充填する。ヘリウムガス2-Bが空気より低密度であり、そしてシリカエアロゲルそのものが低密度であり、シールエレクトレットフィルム2-Cの占める体積が小さいので、これらが相まって、浮遊式エレクトレット2が空気の中で浮遊することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
(付記3)
前記シールエレクトレットフィルム(2-C)はエレクトレットフィルム材料、パフルオロエチレンプロペンコポリマー及びポリテトラフルオロエチレンを含む、ことを特徴とする付記2に記載の自走式無人軽量型船。
【国際調査報告】