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特表2022-531822水性ポリウレタン分散液およびそれを調製するための方法
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  • 特表-水性ポリウレタン分散液およびそれを調製するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】水性ポリウレタン分散液およびそれを調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/61 20060101AFI20220705BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20220705BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20220705BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20220705BHJP
   C08G 18/16 20060101ALI20220705BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
C08G18/61
C08G18/00 C
C08G18/65 005
C08G18/10
C08G18/16
D06N3/14 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551918
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-01
(86)【国際出願番号】 CN2019076936
(87)【国際公開番号】W WO2020177068
(87)【国際公開日】2020-09-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】フ、シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チャオ
(72)【発明者】
【氏名】タイ、シャンヤン
(72)【発明者】
【氏名】フォン、ヤンリー
(72)【発明者】
【氏名】シー、リーリー
(72)【発明者】
【氏名】ション、チーウェン
(72)【発明者】
【氏名】マー、ピャオ
【テーマコード(参考)】
4F055
4J034
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055AA03
4F055AA18
4F055AA21
4F055AA27
4F055BA13
4F055DA08
4F055EA01
4F055EA22
4F055EA30
4F055FA15
4F055FA27
4F055GA03
4F055GA11
4F055GA32
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC34
4J034CC45
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD04
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC02
4J034DC43
4J034DF01
4J034DG03
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4J034HA07
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4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA30
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC07
4J034KC13
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4J034KD25
4J034KE01
4J034KE02
4J034QB12
4J034QB14
4J034QB15
4J034QC05
4J034RA03
4J034RA05
(57)【要約】
【解決手段】 水性ポリウレタン分散液が提供される。水性ポリウレタン分散液は、親水性アミノシロキサン化合物の存在下で調製され、優れた機械的特性を維持しながら良好な粘着性を示す。該水性ポリウレタン分散液を用いて調製されたラミネート合成皮革製品、ならびに合成皮革製品を調製するための方法もまた提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に分散されたポリウレタン粒子を含む水性ポリウレタン分散液であって、
(A)少なくとも2つのイソシアネート基を有する1種以上の化合物を含むポリイソシアネート成分;
(B)少なくとも2つのイソシアネート反応基を有する1種以上の化合物を含むイソシアネート反応性成分;
(C)式I:
【化1】
(式中、各Rは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ビニル、アリルまたは-(OCHCH-O-CH-CH=CHを表し;
は、-(CHNHまたは-(CH-NH-(CHNHであり;
は、-CHCHCHO(CHCHO)Hであり;
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、シクロヘキシルおよびフェニルからなる群から選択され;
aは1~10の整数であり;xは20~500の整数であり;yは1~10の整数であり、zは1~10の整数であり、mは1~5の整数であり;sは1、2、3、4または5の整数であり;tは1、2、3、4または5の整数であり;nは5~20の整数であり;親水性アミノシロキサン化合物(C)の含有量は、イソシアネート成分(A)、イソシアネート反応性成分(B)、および触媒(D)の総重量を基準として2.0重量%~10重量%である)で表される親水性アミノシロキサン化合物;
(D)触媒;
(E)界面活性剤;
(F)鎖延長剤;ならびに
(G)水から誘導された水性ポリウレタン分散液。
【請求項2】
ポリウレタン粒子中のポリウレタンの主鎖に共有結合しているカチオン性またはアニオン性親水性ペンダント基に変換することができるカチオン性またはアニオン性親水性ペンダント基がなく、前記ポリウレタンが外部乳化される、請求項1に記載の水性ポリウレタン分散液。
【請求項3】
少なくとも2つのイソシアネート基を有する前記1種以上の化合物が、
a)少なくとも2つのイソシアネート基を含むC4-C12脂肪族ポリイソシアネート、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC6-C15脂環式または芳香族ポリイソシアネート、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC7-C15芳香脂肪族ポリイソシアネート、およびそれらの組み合わせと、
b)a)の1種以上のポリイソシアネートを、少なくとも2つのヒドロキシ基を含むC2-C16脂肪族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシ基を含むC6-C15脂環式または芳香族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシ基を含むC7-C15芳香脂肪族多価アルコール、500~5,000の分子量を有するポリエステルポリオール、200~5,000の分子量を有するポリカーボネートジオール、200~5,000の分子量を有するポリエーテルジオール、少なくとも2つのアミノ基を含むC2-C10ポリアミン、少なくとも2つのチオール基を含むC2-C10ポリチオール、少なくとも1つのヒドロキシル基および少なくとも1つのアミノ基を含むC2-C10アルカノールアミン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のイソシアネート反応性成分と反応させることによって調製されるイソシアネートプレポリマー(前記イソシアネートプレポリマーが少なくとも2つの遊離イソシアネート基を含むことを条件とする)とからなる群から選択される、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン分散液。
【請求項4】
前記イソシアネート成分(A)の含有量が、前記イソシアネート成分(A)、前記イソシアネート反応性成分(B)および前記触媒(D)の総重量を基準として5重量%~50重量%である、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン分散液。
【請求項5】
少なくとも2つのイソシアネート反応基を有する前記1種以上の化合物が、少なくとも2つのヒドロキシ基を含むC2-C16脂肪族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシ基を含むC6-C15脂環式または芳香族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシ基を含むC7-C15芳香脂肪族多価アルコール、500~5,000の分子量を有するポリエステルポリオール、200~5,000の分子量を有するポリカーボネートジオール、200~5,000の分子量を有するポリエーテルジオール、少なくとも2つのアミノ基を含むC2-C10ポリアミン、少なくとも2つのチオール基を含むC2-C10ポリチオール、少なくとも1つのヒドロキシル基および少なくとも1つのアミノ基を含むC2-C10アルカノールアミン、少なくとも2つのヒドロキシ基を有する植物油、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン分散液。
【請求項6】
前記イソシアネート反応性成分(B)の含有量が、前記イソシアネート成分(A)、前記イソシアネート反応性成分(B)および前記触媒(D)の総重量を基準として50重量%~95重量%である、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン分散液。
【請求項7】
前記触媒(D)が、有機スズ化合物、有機ディスマス化合物、三級アミン、モルホリン誘導体、ピペラジン誘導体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;
前記触媒(D)の含有量は、前記イソシアネート成分(A)、前記イソシアネート反応性成分(B)、および前記触媒(D)の総重量を基準として1.0重量%以下である、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン分散液。
【請求項8】
前記界面活性剤(E)が、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)α-スルホ-ω(ノニルフェノキシ)塩、アルカリ金属オレエートおよびステアレート、アルカリ金属C12-C16アルキルサルフェート、アミンC12-C16アルキルサルフェート、アルカリ金属C12-C16アルキルベンゼンススルホネート、アミンC12-C16アルキルベンゼンスルホネート、フッ素化C-C16アルキルエステル、アルカリ金属C-C16ペルフルオロアルキルスルホネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記界面活性剤(E)の含有量は、前記イソシアネート成分(A)、前記イソシアネート反応性成分(B)および前記触媒(D)の総重量を基準として10重量%以下である、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン分散液。
【請求項9】
前記鎖延長剤(F)が、少なくとも2つのアミン基を含むC-C16脂肪族ポリアミン、少なくとも2つのアミン基を含むC-C15脂環式または芳香族ポリアミン、少なくとも2つのアミン基を含むC-C15芳香脂肪族ポリアミン、からなる群から選択され、
前記鎖延長剤(F)の含有量は、前記イソシアネート成分(A)、前記イソシアネート反応性成分(B)および前記触媒(D)の総重量を基準として、1.0重量%~15重量%である。請求項1または2に記載の水性ポリウレタン分散液。
【請求項10】
前記水性ポリウレタン分散液が、前記水性ポリウレタン分散液の総重量を基準として5重量%~50重量%の固形分を有し、
前記ポリウレタン粒子が、20nm~5μmの体積平均粒子サイズを有する、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン分散液。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散液を調製するための方法であって、
(i)前記触媒(D)の存在下で前記イソシアネート成分(A)を前記イソシアネート反応性成分(B)と反応させて、プレポリマーを形成することと;
(ii)前記界面活性剤(E)および水(G)の存在下で前記プレポリマーを前記親水性アミノシロキサン化合物(C)および前記鎖延長剤(F)と反応させて、前記水性ポリウレタン分散液を形成することと、を含む方法。
【請求項12】
上から下に、
請求項1~10のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散液から誘導されたポリウレタンスキンフィルムと;
2kPU複合組成物から誘導されたベース層と;
任意選択のバッキング基板と、を備える合成皮革製品であって、前記ポリウレタンスキンフィルムは、前記ベース層と直接接触し、前記バッキング基板は、存在する場合、前記ベース層と直接接触する合成皮革製品。
【請求項13】
請求項12に記載の合成皮革製品を調製するための方法であって、
a)請求項1~11のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散液を提供することと;
b)前記水性ポリウレタン分散液で前記ポリウレタンスキンフィルムを形成することと;
c)前記ポリウレタンスキンフィルムの片面に前記2kPU複合組成物を塗布して、前記ベース層を形成することと;
d)任意選択で、前記ポリウレタンスキンフィルムの反対側の前記ベース層の片側に前記バッキング基板を適用することと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水性ポリウレタン分散液およびそれを調製するための方法、水性ポリウレタン分散液から誘導されたスキンフィルムを含むラミネート合成皮革製品およびそれを調製するための方法に関する。該水性ポリウレタン分散液によって調製されたラミネート合成皮革製品は、優れた抗粘着性および機械的特性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
序論
合成皮革は、衣類、履物、鞄、および荷物、家の室内装飾から自動車の座席まで、人々の日常生活で人気のある用途になる。それは、費用面での優位性が大幅に良くなった、天然皮革と同様の性能および手触りを提供する。合成皮革は、ポリマーを布地上にコーティングするか、またはポリマーを布地に含浸させることによって製作され、最も一般的に使用されるポリマーは、ポリウレタンである。慣習的なプロセスは、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、およびトルエン等の揮発性有機溶媒にポリウレタン樹脂を溶解して実行される。PUの多孔質構造は、コーティングまたは含浸された布地を水浴に導くことにより、制御された方式でPUポリマー鎖を沈殿させることによって作り出される。そのような多孔質構造は、合成皮革に天然皮革と同様の手触りを与えるために非常に重要で不可欠である。しかしながら、揮発性有機溶媒は、プラントのオペレーター、消費者、および環境にとって非常に危険である。したがって、合成皮革産業は、PU合成皮革の製造における揮発性有機溶媒の使用を最小限に抑えるために、溶媒フリーの製作プロセスに追いやられている。
【0003】
水性ポリウレタン分散液(PUD)は、DMF等の揮発性有機溶媒中のPU溶液の環境に優しい代替品である。現在、ほとんどの水性PUDは、良好な機械的特性(引張強度および弾性率等)により、ポリエステルポリオールおよび脂肪族イソシアネートをベースにしている。しかしながら、ポリエステルポリオールベースのPUDには、低い耐加水分解性、高コスト、およびポリエステルプレポリマーの高い粘度に起因する低い水分散性等、多くの問題がある。ポリエーテルポリオールベースのPUDにはそのような問題はないが、ポリエーテルポリオールの本質的な柔らかさのために、機械的特性および粘着防止性能が劣る。合成皮革を製造するために新たに開発された技術は、ポリウレタン分散液から誘導された外部乳化スキン層を非溶媒2kPUフォーム層とラミネートすることであるが、ラミネート合成皮革のスキン層は、スキンフィルムのわずかなべたつきでも顧客に受け入れられないため、合成皮革用途の要件を満たすことができない好ましくない粘着防止性能を示す。
【0004】
継続的な調査の結果、驚くべきことに、親水性基およびアミン基の両方を備えたシロキサン化合物を該PUDの調製に使用することができ、引張り強度、伸びおよび弾性率等の優れたPUDフィルムの機械的特性を維持しながら、得られた合成皮革製品に大幅に改善された粘着防止性能を付与できることが判明した。
【0005】
本開示は、独特の水性ポリウレタン分散液およびそれを使用することにより調製されたラミネート合成皮革製品を提供する。
【0006】
本開示の第1の態様において、本開示は、水に分散されたポリウレタン粒子を含む水性ポリウレタン分散液を提供し、水性ポリウレタン分散液は、
(A)少なくとも2つのイソシアネート基を有する1種以上の化合物を含むポリイソシアネート成分;
(B)少なくとも2つのイソシアネート反応基を有する1種以上の化合物を含むイソシアネート反応性成分;
(C)式I:
【化1】
(式中、各Rは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ビニル、アリルまたは-(OCHCH-O-CH-CH=CHを表し;
は、-(CHNHまたは-(CH-NH-(CHNHであり;
は、-CHCHCHO(CHCHO)Hであり;
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、シクロヘキシルおよびフェニルからなる群から選択され;
aは1~10の整数であり;xは20~500の整数であり;yは1~10の整数であり、zは1~10の整数であり、mは1~5の整数であり;sは1、2、3、4または5の整数であり;tは1、2、3、4または5の整数であり;nは5~20の整数である)で表される親水性アミノシロキサン化合物;
(D)触媒;
(E)界面活性剤;
(F)鎖延長剤;ならびに
(G)水から誘導される。
【0007】
本開示の好ましい実施形態によれば、水性ポリウレタン分散液は、カチオン性もしくはアニオン性親水性ペンダント基、またはポリウレタンの主鎖に共有結合したカチオン性もしくはアニオン性親水性ペンダント基に変換され得る基を含まない、外部乳化ポリウレタンである。
【0008】
本開示の第2の態様において、本開示は、第1の態様の水性ポリウレタン分散液を生成するための方法であって、(i)触媒(D)の存在下でイソシアネート成分(A)をイソシアネート反応性成分(B)と反応させて、遊離イソシアネート基を含むプレポリマーを形成することと;(ii)界面活性剤(E)および水(G)の存在下でプレポリマーを親水性アミノシロキサン化合物(C)および鎖延長剤(F)と反応させて、水性ポリウレタン分散液を形成することと、を含む方法を提供する。
【0009】
本開示の第3の態様において、本開示は、上から下に、
第1の態様の水性ポリウレタン分散液から誘導されたポリウレタンスキンフィルムと;
2kPU複合組成物から誘導されたベース層と;
任意選択のバッキング基板と、を備える合成皮革製品を提供する。
本開示の第4の態様において、本開示は、第3の態様の合成皮革製品を調製するための方法であって、
a)第1の態様の水性ポリウレタン分散液を提供することと;
b)水性ポリウレタン分散液でポリウレタンスキンフィルムを形成することと;
c)ポリウレタンスキンフィルムの片面に2kPU複合組成物を塗布して、ベース層を形成することと;
d)任意選択で、ポリウレタンスキンフィルムの反対側のベース層の片側にバッキング基板を適用することと、を含む方法を提供する。
【0010】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求されるように、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本明細書に記載される合成皮革製品の一実施形態の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0013】
本明細書に開示されるように、「組成物」、「配合物」、または「混合物」という用語は、物理的な方法によって異なる成分を単に混合することによって得られる、異なる成分の物理的なブレンドを指す。
【0014】
本明細書で開示されるように、「および/または」は、「および、または代替として」を意味する。特に記載がない限り、すべての範囲は端点を含む。
【0015】
イソシアネート成分
様々な実施形態において、イソシアネート成分(A)は、少なくとも約2.0、好ましくは約2~10、より好ましくは約2~約8、最も好ましくは約2~約6の平均官能基を有する。いくつかの実施形態において、イソシアネート成分は、少なくとも2つのイソシアネート基を含むポリイソシアネート化合物を含む。好適なポリイソシアネート化合物には、2つ以上のイソシアネート基を有する芳香族、脂肪族、脂環式およびアラリファティックポリイソシアネートが含まれる。好ましい実施形態において、ポリイソシアネート成分は、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC-C12脂肪族ポリイソシアネート、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC-C15脂環式または芳香族ポリイソシアネート、少なくとも2つのイソシアネート基を含むC-C15芳香脂肪族ポリイソシアネート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリイソシアネート化合物を含む。別の好ましい実施形態において、好適なポリイソシアネート化合物は、m-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートおよび/もしくは2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の様々な異性体、カルボジイミド修飾MDI生成物、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、テトラメチレン-1,4-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、水素化MDI、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、またはそれらの混合物を含む。
【0016】
代替的または追加的に、ポリイソシアネート成分はまた、2~10、好ましくは2~8、より好ましくは2~6の範囲のイソシアネート官能基を有するイソシアネートプレポリマーも含み得る。イソシアネートプレポリマーは、上記のモノマーイソシアネート成分を、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,4-ブチンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシ-メチル)シクロヘキサン、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、およびポリブチレングリコールからなる群から選択される1種以上のイソシアネート反応性化合物と反応させることによって得ることができる。ポリイソシアネート成分として使用するために好適なプレポリマーは、2~40重量パーセント、より好ましくは4~30重量パーセントのNCO基含有量を有するプレポリマーである。これらのプレポリマーは、好ましくは、ジおよび/またはポリイソシアネートと、より低分子量のジオールおよびトリオールを含む材料との反応によって調製される。個々の例には、好ましくは、ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートと、例えば、約800以下の分子量を有する低分子量のジオール、トリオール、オキシアルキレングリコール、ジオキシアルキレングリコール、またはポリオキシアルキレングリコールとの反応によって得られる、好ましくは、5~40重量%、より好ましくは20~35重量パーセントのNCO含量を有するウレタン基を含む芳香族ポリイソシアネートが含まれる。これらのポリオールは、ジ-および/またはポリオキシアルキレングリコールとして、個別にまたは混合物として使用することができる。例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールおよびポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレングリコールを使用することができる。ポリエステルポリオール、ならびにブタンジオール等のアルキルジオールもまた使用することができる。また有用な他のジオールとしては、ビスヒドロキシエチル-またはビスヒドロキシプロピル-ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、およびビスヒドロキシエチルヒドロキノンが含まれる。
【0017】
イソシアネート成分にも有利に使用されるものは、いわゆる修飾多官能性イソシアネート、すなわち、上記のイソシアネート化合物の化学反応によって得られる生成物である。例示的なものは、エステル、尿素、ビウレット、アロファン酸、好ましくはカルボジイミドおよび/またはウレトネイミンを含むポリイソシアネートである。カルボジイミド基、ウレトネイミン基および/またはイソシアヌレート環を含み、12~40重量パーセント、より好ましくは20~35重量パーセントのイソシアネート基(NCO)含有量を有する液体ポリイソシアネートも使用することができる。これらには、例えば、4,4’-2,4’-および/または2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートに基づくポリイソシアネートおよび対応する異性体混合物、2,4-および/または2,6-トルエンジイソシアネートおよび対応する異性体混合物;ジフェニルメタンジイソシアネートとPMDIの混合物;ならびにトルエンジイソシアネートとPMDIおよび/またはジフェニルメタンジイソシアネートの混合物が含まれる。
【0018】
一般に、イソシアネート成分の量は、合成皮革製品の実際の要件に基づいて変動し得る。例えば、1つの例示的な実施形態として、イソシアネート成分の含有量は、第1段階でプレポリマーを調製するためのすべての成分、すなわちイソシアネート成分(A)、イソシアネート反応性成分(B)および触媒(D)の総重量を基準として約5重量%から約50重量%、好ましくは約10重量%から約40重量%、好ましくは約15重量%から約30重量%であってもよい。
【0019】
イソシアネート反応性成分
本開示の様々な実施形態において、イソシアネート反応性成分は、少なくとも2つのヒドロキシ基を含む脂肪族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシ基を含む脂環式または芳香族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシ基を含む芳香脂肪族多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、少なくとも2つのヒドロキシ基を有する植物油およびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上のポリオールを含む。好ましくは、ポリオールは、少なくとも2つのヒドロキシ基を含むC2-C16脂肪族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシ基を含むC6-C15脂環式または芳香族多価アルコール、少なくとも2つのヒドロキシ基を含むC7-C15芳香脂肪族多価アルコール、100~5,000の分子量を有するポリエステルポリオール、1,500~12,000の分子量を有するポリエーテルポリオール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい実施形態によれば、ポリオールは、ポリエーテルポリオール(例えば上記のポリエーテルポリオール)、ヒマシ油、またはそれらの混合物を含む。
【0020】
好ましい実施形態において、イソシアネート反応性成分は、2種以上のポリエーテルポリオールの混合物、2種以上のポリエステルポリオールの混合物、少なくとも1種のポリエーテルポリオールと少なくとも1種のポリエステルポリオールとの混合物、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する2種以上の植物油の混合物、またはポリエーテルポリオールとヒマシ油との混合物等の2種以上の異なるポリオールの混合物を含む。
【0021】
代替の実施形態において、イソシアネート反応性成分は、1.0~3.0の官能基(ポリオール分子中のイソシアネート反応基、特にヒドロキシル基の平均数)および1,500~12,000g/mol、好ましくは2,000~8,000g/mol、より好ましくは2,000~6,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有するポリエーテルポリオールである。
【0022】
ポリエーテルポリオールは、一般に、触媒の存在下で、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランおよびそれらの混合物から選択される1種以上のアルキレンオキシドと適切な出発分子との重合によって調製される。典型的なスタータ分子には、分子内に少なくとも2つ、好ましくは4~8のヒドロキシル基を有するか、または2つ以上の一級アミン基を有する化合物が含まれる。好適なスタータ分子は、例えば、アニリン、EDA、TDA、MDAおよびPMDAを含む群から、より好ましくはTDAおよびPMDAを含む群から、最も好ましくはTDAから選択される。TDAを使用する場合、すべての異性体が、単独で、または任意の所望の混合物において使用することができる。例えば、2,4-TDA、2,6-TDA、2,4-TDAと2,6-TDAの混合物、2,3-TDA、3,4-TDA、3,4-TDAと2,3-TDAの混合物、および上記のすべての異性体の混合物も使用することができる。分子中に少なくとも2つ、好ましくは2~8のヒドロキシル基を有するスタータ分子として、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ヒマシ油、糖化合物、例えば、グルコース、ソルビトール、マンニトールおよびスクロース、多価フェノール、フェノールとホルムアルデヒドのオリゴマー縮合生成物等のレゾール、ならびによびフェノール、ホルムアルデヒドおよびジアルカノールアミンのマンニッヒ縮合物、ならびにまたメラミンを使用することが好ましい。ポリエーテルポリオールを調製するための触媒には、アニオン重合用の水酸化カリウム等のアルカリ触媒、またはカチオン重合用の三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒が含まれ得る。好適な重合触媒には、水酸化カリウム、水酸化セシウム、三フッ化ホウ素、またはヘキサシアノコバルト酸亜鉛または第四ホスファゼニウム化合物等の二重シアン化物錯体(DMC)触媒が含まれ得る。本開示の好ましい実施形態において、ポリエーテルポリオールは、(メトキシ)ポリエチレングリコール(MPEG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)、または一級ヒドロキシル末端基および二級ヒドロキシル末端基を有するエチレンエポキシドおよびプロピレンエポキシドのコポリマーを含む。
【0023】
一般に、本明細書で使用されるイソシアネート反応性成分の含有量は、第1段階でプレポリマーを調製するためのすべての成分の総重量を基準として、すなわちイソシアネート成分(A)、イソシアネート反応性成分(B)および触媒(D)の総重量を基準として、約50重量%~約95重量%、好ましくは約60重量%~約85重量%の範囲であってもよい。
【0024】
触媒
触媒は、イソシアネート基とイソシアネート反応基との間の反応を促進することができる任意の物質を含み得る。理論に束縛されないが、触媒は、例えば、グリシン塩;三級アミン;トリアルキルホスフィンおよびジアルキルベンジルホスフィン等の三級ホスフィン;モルホリン誘導体;ピペラジン誘導体;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、アセト酢酸エチル等とBe、Mg、Zn、Cd、Pd、Ti、Zr、Sn、As、Bi、Cr、Mo、Mn、Fe、CoおよびNi等の金属とから得られるもの等の様々な金属のキレート;塩化第二鉄および塩化第二スズ等の強酸の酸性金属塩;有機酸とアルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Pb、Mn、Co、NiおよびCu等の様々な金属との塩;有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば、二酢酸スズ(II)、ジオクタン酸スズ(II)、ジエチルヘキサノエートスズ(II)、およびジラウリン酸スズ(II)等の有機スズ化合物、ならびに有機カルボン酸ジアルキルスズ(IV)塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレートおよびジオクチルスズジアセテート;有機カルボン酸のビスマス塩、例えばオクタン酸ビスマス;3価および5価のAs、SbおよびBiの有機金属誘導体、ならびに鉄およびコバルトの金属カルボニル;またはそれらの混合物を含み得る。
【0025】
三級アミン触媒は、少なくとも1つの三級窒素原子を含有し、ヒドロキシル/イソシアネート反応を触媒することができる有機化合物を含む。三級アミン、モルホリン誘導体およびピペラジン誘導体触媒は、例として、これらに限定されないが、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチル-ジエチレントリアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、ピリジン、キノリン、ジメチルピペラジン、ピペラジン、N-エチルモルホリン、2-メチルプロパンジアミン、メチルトリエチレンジアミン、2,4,6-トリジメチルアミノ-メチル)フェノール、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノ-プロピル)sym-ヘキサヒドロトリアジン、またはそれらの混合物を含み得る。
【0026】
一般に、本明細書で使用される触媒の含有量はゼロより大きく、第1段階でプレポリマーを調製するためのすべての成分の総重量を基準として、すなわちイソシアネート成分(A)、イソシアネート反応性成分(B)および触媒(D)の総重量を基準として、最大1.0重量%、好ましくは最大0.5重量%、より好ましくは最大0.05重量%である。
【0027】
親水性アミノシロキサン化合物
親水性アミノシロキサン化合物は、窒素含有側鎖および親水性側鎖が結合したケイ素-酸素主鎖を含む化合物である。親水性アミノシロキサン化合物の分子構造は、式I:
【化2】
(式中、各Rは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ビニル、アリルまたは-(OCHCH-O-CH-CH=CHを表し;
は、-(CHNHまたは-(CH-NH-(CHNHであり;
は、-CHCHCHO(CHCHO)Hであり;
、R、R、RおよびRのそれぞれは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、シクロヘキシルおよびフェニルからなる群から独立して選択され;
aは1~10の整数であり;xは20~200の整数であり;yは1~10の整数であり、zは1~10の整数であり、mは1~5の整数であり;sは1、2、3、4または5の整数であり;tは1、2、3、4または5の整数であり;nは5~20の整数である)で表すことができる。
【0028】
理論に限定されないが、Rのアミン基およびRのヒドロキシル基は、プレポリマーの残りのイソシアネート基と反応して、ポリウレタン主鎖に上記のシロキサン構造を含むポリウレタンを生成し、したがって得られたPUスキンフィルムの抗粘着性を大幅に改善し得る。
【0029】
本開示の1つの好ましい実施形態によれば、親水性アミノシロキサン化合物は、式II:
【化3】
(式中、R、R、R、x、yおよびzは上記の通りである)によって提示される構造を有する。
【0030】
一般に、本明細書で使用される親水性アミノシロキサン化合物の含有量は、第1段階でプレポリマーを調製するためのすべての成分の総重量、すなわちイソシアネート成分(A)、イソシアネート反応性成分(B)および触媒(D)の総重量を基準として、2重量%~10重量%、好ましくは2重量%~8重量%、より好ましくは2重量%~5重量%である。プレポリマーの総量を100重量%として、親水性アミノシロキサン化合物の含有量が追加量として算出されることがわかる。
【0031】
親水性アミノシロキサン化合物は、最初に混合によって水に溶解/分散させて水溶液を得てから脱気すべきであることが留意される。本発明において、アミノシリコーン油は、分散段階中に添加され、プレポリマー合成中にポリマー主鎖に添加されなかった。その理由は、プレポリマー合成段階中にシロキサンを添加すると、ある程度のポリマーゲルが形成されるためである。
【0032】
界面活性剤
好ましい実施形態によれば、水性ポリウレタン分散液は、外部乳化分散液であり、すなわち、水性ポリウレタン分散液は、好ましくは、「外部界面活性剤/乳化剤」のみを使用して調製され、「内部界面活性剤/乳化剤」を実質的に含まない。
【0033】
本明細書に記載の「外部乳化ポリウレタン分散液」という表現は、限られた量の内部乳化イオン成分を含み、したがって主に「外部界面活性剤/乳化剤」(すなわち、特にイソシアネート基とイソシアネート反応基(ヒドロキシル基等)との間の反応により誘導されるウレタン結合を介して、液体媒体に分散したポリウレタン粒子内の主鎖に共有結合していないイオン性または非イオン性乳化剤)の乳化機能に依存してポリウレタン分散液を安定化するポリウレタン分散液を指す。
【0034】
本開示の一実施形態によれば、外部乳化ポリウレタン分散液は、(i)1種以上のモノマーまたはプレポリマーポリイソシアネートを、上記のような少なくとも2つのイソシアネート反応基を有する1種以上の化合物と反応させて、ウレタンプレポリマー鎖および分子当たり少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの遊離イソシアネート基を含むプレポリマーを形成することと、(ii)ステップ(i)で得られたプレポリマーを、外部乳化剤の存在下で水性溶媒(例えば水)に分散させてエマルジョンを形成することと、任意選択で、鎖延長剤および親水性アミノシロキサン化合物をエマルジョンにさらに添加して、ステップ(i)で得られたプレポリマーと反応させ、外部乳化ポリウレタン分散液を形成することと、によって調製される。本開示の一実施形態によれば、ステップ(i)で調製されたプレポリマーは、ウレタンプレポリマー鎖に共有結合したいかなるイオン性内部乳化剤またはイオン性内部乳化剤の残留部分も含まない。本開示の別の実施形態によれば、ステップ(i)で調製されたプレポリマー中のポリウレタン鎖は、いかなるカチオン性またはアニオン性のペンダント基も含まない。
【0035】
内部界面活性剤/乳化剤を使用して調製されたPUDは、「内部乳化PUD」として知られる。先行技術の知識によれば、内部乳化PUDを調製するための典型的なプロセスは、(i)モノマーイソシアネートまたはモノマーイソシアネートのプレポリマーを、ポリオール、および少なくとも1つのイソシアネート反応基を有するカチオン性またはアニオン性前駆体(すなわちイオン性内部乳化剤)と反応させ、PU鎖に結合したペンダントカチオン性またはアニオン性親水性基を含むPUDプレポリマーを形成するステップと;(ii)主乳化剤としてPU鎖に結合したカチオン性またはアニオン性親水性基を用い、任意選択でこのステップで追加の外部乳化剤を使用して、PUDプレポリマーを水性溶媒(例えば、水)に分散させるステップと;任意選択で、(iii)エマルジョンを追加の鎖延長剤と反応させて、イオン性内部乳化ポリウレタン分散液を形成するステップとを含む。本開示で使用される外部乳化PUDは、調製プロセスおよび得られるポリウレタン粒子の組成の両方において、先行技術のイオン性内部乳化PUDとは完全に異なることがはっきりと分かる。本出願により調製されるポリウレタン粒子は、鎖延長剤の残留基およびポリウレタン主鎖に結合した親水性アミノシロキサン化合物を含むが、これらの残留基は、少なくとも電荷中性において上記のイオン性内部乳化官能基とは異なり、したがってイオン性内部乳化官能基の定義から除外されるべきであることが明確化されるべきである。さらに、好ましい実施形態において、ポリウレタンの乳化は、主にまたは単独で外部乳化剤を使用して行われ、鎖延長剤および親水性アミノシロキサン化合物は、PUのエマルジョンが形成されるまで添加されない。そのため、本開示のPU分散液は、外部乳化システムとして識別されている。
【0036】
本開示の一実施形態では、上記のイオン性内部乳化成分(乳化剤)は、外部乳化PUDの調製中に添加されない。本開示の好ましい実施形態では、外部乳化ポリウレタン分散液は、外部乳化PUD中に分散されたポリウレタンプレポリマー粒子の主鎖にアニオン性またはカチオン性塩基を含まない。
【0037】
本開示の水性ポリウレタン分散液は、任意のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を使用することによって調製することができる。界面活性剤の好適なクラスは、これらに限定されないが、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)α-スルホ-ω(ノニルフェノキシ)塩等のエトキシル化フェノールの硫酸塩、アルカリ金属オレイン酸塩およびステアリン酸塩等のアルカリ金属脂肪酸塩;アルカリ金属ラウリル硫酸塩等のアルカリ金属C12-C16アルキル硫酸塩;アミンラウリル硫酸塩、より好ましくはトリエタノールアミンラウリル硫酸塩等のアミンC12-C16アルキル硫酸塩;分岐状および直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属C12-C16アルキルベンゼンスルホン酸塩;トリエタノールアミンドデシルベンゼンスルホン酸塩等のアミンC12-C16アルキルベンゼンスルホン酸塩、フッ素化C-C16アルキルエステルおよびアルカリ金属C-C16パーフルオロアルキルスルホネート等のアニオン性および非イオン性フルオロカーボン乳化剤;修飾ポリジメチルシロキサン等の有機ケイ素乳化剤を含む。好ましくは、界面活性剤は、中性塩中に存在する多価カチオンと反応して、有機酸の不溶性多価カチオン水不溶性塩を形成し得るものである。例示的な好ましい界面活性剤は、オクタデシルスルホコハク酸二ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、およびステアリン酸アンモニウムを含む。
【0038】
本開示の一実施形態によれば、界面活性剤の含有量は、第1段階でプレポリマーを調製するためのすべての成分の総重量を基準として、すなわちイソシアネート成分(A)、イソシアネート反応性成分(B)および触媒(D)の総重量を基準としてゼロより大きく、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3.5重量%以下である。プレポリマーの総量を100重量%として、界面活性剤の含有量が追加量として算出されることがわかる。
【0039】
鎖延長剤
本開示の一実施形態によれば、鎖延長剤は、ジアミンまたは別のイソシアネート反応基を有するアミン化合物であってもよいが、好ましくは、アミノ化ポリエーテルジオール;ピペラジン;アミノエチルエタノールアミン;少なくとも2つのアミン基を含むC-C16脂肪族ポリアミン、例えばエチレンジアミン;少なくとも2つのアミン基を含むC-C15脂環式または芳香族ポリアミン、例えばシクロヘキサンジアミンおよびp-キシレンジアミン;少なくとも2つのアミン基を含むC-C15芳香脂肪族ポリアミン;アミノ化C-Cアルコール、例えばエタノールアミン;およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態によれば、鎖延長剤は、2の官能基を有し、一級アミン基または二級アミン基を含むポリアミンである。好ましくは、アミン鎖延長剤は、PU分散液を作製するために使用される水に溶解される。
【0040】
本開示の一実施形態によれば、鎖延長剤の含有量は、第1段階でプレポリマーを調製するためのすべての成分の総重量を基準として、すなわちイソシアネート成分(A)、イソシアネート反応性成分(B)および触媒(D)の総重量を基準として、1.0重量%~15重量%、好ましくは2重量%~10重量%、より好ましくは3重量%~9重量%である。プレポリマーの総量を100重量%として、鎖延長剤の含有量を追加量として算出されることがわかる。
【0041】
水性ポリウレタン分散液
本出願の一実施形態によれば、水性ポリウレタン分散液は、2段階反応によって調製される。第1段階では、プレポリマーは、触媒(D)の存在下で、イソシアネート成分(A)のイソシアネート基をイソシアネート反応性成分(B)のイソシアネート反応基と反応させることによって調製される。上記の反応により、プレポリマー中にポリウレタン主鎖を形成することができる。第2段階では、プレポリマーが界面活性剤(E)と混合され、鎖延長剤(F)および親水性アミノシロキサン化合物(C)と反応する。鎖延長剤(F)および親水性アミノシロキサン化合物(C)は、プレポリマーに残っている遊離イソシアネート基と反応するイソシアネート反応基、例えばアミン基を含み、したがってそれらの構造部分もまた、得られるポリウレタン骨格鎖に導入される。第2段階では、プレポリマーの鎖は、鎖延長剤(F)および親水性アミノシロキサン化合物(C)によってさらに延長されて、水中に分散されたポリウレタン粒子を含む水性ポリウレタン分散液を形成する。水性ポリウレタン分散液を加熱および乾燥して、良好なPUDフィルムの機械的特性を維持しながら、優れた改善された粘着防止性能を示すスキンフィルムを形成することができる。
【0042】
水性ポリウレタン分散液は、ポリウレタン粒子の任意の好適な固形分負荷を有し得るが、一般に、固形分負荷は、総分散重量の約1重量%~約70重量%の固形分、好ましくは少なくとも約2%、より好ましくは少なくとも約4%、より好ましくは少なくとも約6%、より好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約35%、最も好ましくは少なくとも約40%から、最大約70%、好ましくは最大68%、より好ましくは最大約65重量%、より好ましくは最大約60重量%、最も好ましくは最大約50重量%である。
【0043】
水性ポリウレタン分散液はまた、分散液の分散性および安定性を高める増粘剤等のレオロジー調整剤を含有し得る。当技術分野で既知のもの等の任意の好適なレオロジー調整剤を使用し得る。好ましくは、レオロジー調整剤は、分散液を不安定にさせないものである。より好ましくは、レオロジー調整剤は、イオン化されていない水溶性増粘剤である。有用なレオロジー調整剤の例には、メチルセルロースエーテル、アルカリ膨潤性増粘剤(例えば、ナトリウムまたはアンモニウム中和アクリル酸ポリマー)、疎水性変性アルカリ膨潤性増粘剤(例えば、疎水性変性アクリル酸コポリマー)、および会合性増粘剤(例えば、疎水性変性エチレンオキシド系ウレタンブロックコポリマー)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、レオロジー調整剤は、メチルセルロースエーテルである。増粘剤の量は、水性ポリウレタン分散液の総重量の少なくとも約0.2重量%~約5重量%、好ましくは約0.5重量%~約2重量%である。
【0044】
一般に、水性ポリウレタン分散液は、少なくとも約10cp~最大約10,000cp、好ましくは少なくとも約20cp~最大約5000cp、より好ましくは少なくとも約30cp~最大約3000cpの粘度を有する。
【0045】
本開示の実施形態において、水性ポリウレタン分散液中のPU粒子の分散は、界面活性剤および高剪断撹拌作用によって促進することができ、剪断力および撹拌速度は、特定の要件に基づいて適切に調節することができる。
【0046】
本開示の一実施形態によれば、水性ポリウレタン分散液は、1種以上の顔料、染料および/または着色剤をさらに含み得、これらはすべて、本開示において一般に「カラーマスターバッチ」と呼ばれる。例えば、透明または半透明のフィルムに所望の色を付与するために、カラーマスターバッチが添加され得る。顔料、染料および/または着色剤の例には、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック、およびそれらの混合物が含まれ得る。顔料、染料、および/または着色剤の量は、水性ポリウレタン分散液の総重量を基準として、0.1重量%~15重量%、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1重量%~5重量%であってもよい。本発明において有用な好適な市販の黒色顔料には、例えば、Lanxess Deutschland GmbHから入手可能なEUDERM(商標)黒色B-Nカーボンブラック分散液が含まれ得る。
【0047】
ラミネート合成皮革製品
図1は、本明細書に記載の合成皮革製品の一実施形態の断面の概略図である。本開示の一実施形態において、合成皮革製品は、上から下に、水性ポリウレタン分散液によって形成された上部スキンフィルム、2KPUフォームベース層、およびバッキング基材(例えば織物布)を含む。皮革製品は、必ずしも実際の比率で示されているわけではなく、1つ以上の層の寸法は、その構成を明確に示すために誇張され得ることに留意されたい。
【0048】
本開示において使用される2KPUフォームは、好ましくは非溶媒PUフォームであり、その中に複数の細孔および/または気泡を画定する連続PUマトリックスを含む。本明細書に開示されるように、「溶媒フリー」、「無溶媒」、または「非溶媒」という用語は、PUフォームまたは任意の他の分散液、混合物等を説明するために交換可能に使用することができ、PUフォームまたはPU分散液を調製するために使用されるすべての原料の混合物は、原料の混合物の総重量を基準として、有機または無機溶媒の重量で3重量%未満、好ましくは2重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは100重量ppm未満、より好ましくは50重量ppm未満、より好ましくは10重量ppm未満、より好ましくは1重量ppm未満の任意の有機または無機溶媒を含むと解釈されるものとする。本明細書に開示されるように、「溶媒」という用語は、いかなる化学反応も引き起こすことなく、1つ以上の固体、液体、または気体の材料を単に溶解する機能を有する有機および無機液体を指す。言い換えれば、重合技術で一般に「溶媒」と見なされるいくつかの有機化合物、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコール、ならびに水は、2kPUフォームの調製に使用されるが、それらは、化学反応を起こすことにより、イソシアネート反応性機能性物質、鎖延長剤、または発泡剤等として主に機能するため、それらのいずれも「溶媒」に属さない。
【0049】
本開示の一実施形態によれば、2kPUフォーム層は、0.01μm~2000μmの範囲内、好ましくは0.05μm~1,000μmの範囲内、より好ましくは0.1μm~750μmの範囲内、より好ましくは0.2μm~600μmの範囲内の厚さを有する。
【0050】
本開示の一実施形態によれば、ポリウレタンフォーム層中の発泡ポリウレタンは、(i)1種以上の第2のイソシアネート成分と、(ii)1種以上の第2のイソシアネート反応性成分と、(iii)1種以上の発泡剤、第2の触媒、および任意の他の添加剤とを含む溶媒フリーポリウレタン系で調製される。第2のイソシアネート成分(i)は、イソシアネート成分(A)に使用される1つまたは複数のポリイソシアネートおよび/またはイソシアネートプレポリマーを含む。第2のイソシアネート反応性成分(ii)は、OH基、SH基、NH基、NH基および炭素酸基、例えばβ-ジケト基から選択される2つ以上のイソシアネート反応基を有する化合物を含む。本出願の一実施形態によれば、イソシアネート反応性成分(ii)は、(B)に使用されるものを含む。本開示の1つの好ましい実施形態において、第2のイソシアネート成分(i)および第2のイソシアネート反応性成分(ii)は、発泡剤/ブロー剤の存在下で互いに反応し、発泡剤は、イソシアネート反応性成分と組み合わせて使用される。有用な発泡剤には、一般的に既知である化学的または物理的に反応性の化合物が含まれる。物理的なブロー剤は、二酸化炭素、窒素、貴ガス、4~8個の炭素原子を有する(シクロ)脂肪族炭化水素、1~8個の炭素原子を有するジアルキルエーテル、エステル、ケトン、アセタール、およびフルオロアルカンからなる群のうちの1つ以上から選択され得る。化学反応性ブロー剤は、好ましくは水を含み、これは、好ましくは、イソシアネート反応性成分(ii)とのブレンドの構成成分として含有される。発泡剤の量は、2kPUフォーム層を調製するために使用されるすべての原料の全体的重量を基準として、0.05~10重量%の範囲内、好ましくは0.1~5重量%の範囲内、より好ましくは0.1~2重量%の範囲内、最も好ましくは0.1~0.5重量%の範囲内である。2KPU層は、典型的には、0.3~1.1kg/リットルの密度を有し、好ましくは、0.4~0.9kg/リットルの密度を有する。
【0051】
本開示の実施形態において、第2イソシアネート成分(i)は、2kPUフォーム層を調製するために使用されるすべての原料の重量全体を基準として、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~4重量%、より好ましくは0.05重量%~3重量%の量の二酢酸スズ、ジオクト酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ等の有機スズ化合物、および/またはジアザビシクロオクタン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、もしくはビス(N,N-ジメチルアミノエチル)エーテル等の強塩基性アミンから選択される触媒の存在下で、第2のイソシアネート反応性成分(ii)と反応する。
【0052】
本開示の実施形態において、第2のイソシアネート成分(i)および第2のイソシアネート反応性成分(Bii)のカテゴリーおよびモル含有量は、NCO基とNCO反応性水素原子(例えばヒドロキシル基中の水素原子)との当量比全体が、0.9:1~1.8:1の範囲内、好ましくは0.92:1~1.6:1の範囲内、好ましくは0.95:1~1.5:1の範囲内、より好ましくは1:1~1.45:1の範囲内、より好ましくは1.05:1~1.4:1の範囲内、より好ましくは1.10:1~1.35:1の範囲内であるように特に選択される。
【0053】
剥離層
好適な剥離層は、典型的には、先行技術では「剥離紙」として既知である。好適な剥離層の例には、金属、プラスチック、または紙の箔が含まれる。本開示の1つの好ましい実施形態では、剥離層は、任意選択でプラスチック膜でコーティングされた紙層である。好ましくは、本明細書に開示される紙層は、ポリオレフィン、より好ましくはポリプロピレンでコーティングされる。あるいは、紙層は、好ましくはシリコーンでコーティングされる。代替の実施形態では、本明細書で使用される剥離層は、任意選択で、プラスチック膜でコーティングされたPET層である。好ましくは、PET層は、ポリオレフィン、より好ましくはポリプロピレンでコーティングすることができる。あるいは、PET層は、好ましくはシリコーンでコーティングされる。好適な剥離層の例は、市販されている。本開示で使用される剥離層は、対応するまたは補完的な表面プロファイルが合成皮革製品の最外面上に形成され得るように、平坦な、エンボス加工された、またはパターン化された表面を有し得る。好ましくは、剥離層は、合成皮革製品に高級天然皮革に匹敵する良好な触覚特性を付与するように、皮革粒子の様式でテクスチャー加工される。剥離層は、一般に、0.001mm~10mm、好ましくは0.01mm~5mm、より好ましくは0.1mm~2mmの厚さを有する。
【0054】
剥離層が製造手順中に経験した化学反応、機械的加工、および熱処理に耐えることができ、かつスキンフィルムと2kPUフォームベース層との間の層間剥離を引き起こすことなく、得られた合成皮革から容易に剥離することができる限り、剥離層の材料および厚さは適切に調節され得る。
【0055】
補助剤および添加剤
PUスキンフィルムおよび2KPUフォームベース層は、独立して、および任意選択で、特定の目的のための任意の追加の補助剤および/または添加剤を含み得る。
【0056】
本開示の一実施形態では、補助剤および/または添加剤のうちの1つ以上は、充填剤、セルレギュレーター、離型剤、着色剤/顔料、界面活性化合物、手触り剤、ダラー、増粘剤、架橋剤、および安定剤からなる群から選択され得る。
【0057】
好適な充填剤の例は、ガラス繊維、鉱物繊維、亜麻、ジュート、またはサイザル麻等の天然繊維、例えば、ガラスフレーク、雲母またはグリマー等のシリケート、炭酸カルシウム、チョーク、または石膏等の塩を含む。充填剤は、典型的には、スキンフィルムまたは2KPUフォームベース層の乾燥重量全体を基準として、0.5重量%~60重量%、好ましくは3重量%~30重量%、より好ましくは3重量%~10重量%の量で使用される。
【0058】
バッキング基材
本開示の実施形態では、バッキング基材は、0.01mm~50mmの範囲、好ましくは0.05mm~10mmの範囲、より詳細には0.1mm~5mmの範囲の厚さを有する。バッキング基材は、布、好ましくは織布もしくは不織布、含浸布、ニット布、編組布、またはマイクロファイバー、金属もしくはプラスチックの箔、例えばゴム、PVC、またはポリアミド、および革、好ましくはスプリットレザーからなる群から選択される1つ以上を含み得る。
【0059】
バッキング基材は、織テキスタイルまたは不織テキスタイルで作製することができる。好ましくは、テキスタイルは、不織テキスタイルである。テキスタイルは、当技術分野で既知のもの等の任意の好適な方法によって作製され得る。テキスタイルは、任意の好適な繊維材料から調製され得る。好適な繊維材料には、合成繊維材料、および天然または半合成繊維材料、ならびにそれらの混合物またはブレンドが含まれるが、これらに限定されない。合成繊維材料の例には、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、およびそれらのブレンドまたは混合物が含まれる。天然の半合成繊維材料の例には、綿、羊毛、および麻が含まれる。
【0060】
製造技術
水性ポリウレタン分散液は、スプレーコーティング、ブレードコーティング、ダイコーティング、キャストコーティング等の従来のコーティング技術によって適用され得る。
【0061】
スキンフィルムは、次の層を適用する前に、部分的または完全に乾燥させることができる。好ましくは、スキンフィルムは、その中に閉じ込められた水分を最小限に抑えるように完全に乾燥され、次いで、次の層がその上に適用される。本出願の代替の実施形態において、水分の一部のみが剥離層のスキンフィルムから除去され、次いでスキンフィルムは、その上に適用された2KPUフォーム層と共に完全に乾燥される。
【0062】
一実施形態によれば、2K非溶媒PUフォームのための第2のイソシアネート成分(i)および第2のイソシアネート反応性成分(ii)は、一緒に混合され、スキンフィルムに適用され、例えば70℃~120℃、好ましくは75℃~110℃の温度で、10秒~5分、好ましくは30秒~2分、より好ましくは45~90秒の短時間オーブン内で加熱されることによって予備硬化される。次いで、バッキング基材(例えば、織物)は、押圧ローラーを使用して予備硬化2KPUフォーム層に適用され、続いて100℃~160℃、好ましくは110℃~150℃のより高い温度で、3~20分、好ましくは3~15分、より好ましくは4~10分のより長い持続時間後硬化される。上記の二段階硬化プロセスは、予備硬化した2kPUフォームとバッキング基材との間の高い接着強度を確保することを目的としている。
【0063】
本開示の好ましい実施形態によれば、剥離層は、2kPUフォームが完全に硬化された後に取り除かれる。剥離層は、任意の通常の技術を介して剥離することができる。
【0064】
本開示の好ましい実施形態によれば、剥離層の除去後、上部仕上げ層を合成皮革の表面上(すなわちスキンフィルムの最外面上)に適用し、乾燥させて保護フィルム層を形成することができる。仕上げ層の存在は、多層合成皮革の耐摩耗性をさらに高めることができる。保護フィルム層は、任意の好適な原料および技術を使用することによって形成され得る。仕上げ層は、任意選択で、湿潤剤、架橋剤、結合剤、艶消し剤、手触り調整剤、顔料および/もしくは着色剤、増粘剤、またはスキンフィルムに使用される他の添加剤等の添加剤を含んでもよい。本明細書に開示される合成皮革は、スキンフィルムと仕上げ層との間のカラー層等の1つまたは2つ以上の任意選択の追加の層をさらに含むことができる。他の好適な任意選択の追加の層は、撥水層、UV保護層、および触覚(タッチ/フィール)変性層から選択することができる。本発明のプロセスは、連続的またはバッチ式で実施され得る。
【0065】
本明細書に開示される多層構造合成皮革は、靴の製造等の任意の所望の目的に好適な形状を有するように切断または他の方法で成形することができる。目的の用途に応じて、合成皮革は、天然皮革と同様に、例えばブラッシング、フィリング、ミリング、またはアイロンがけによってさらに処理または後処理することができる。必要に応じて、合成皮革は、(天然皮革のように)通常の仕上げ組成で仕上げられてもよい。これは、それらの性質を制御するためのさらなる可能性を提供する。本明細書に開示される多層構造は、合成皮革としての使用に特に好適な様々な用途、例えば、履物、ハンドバッグ、ベルト、財布、衣服、家具の室内装飾、自動車の室内装飾、および手袋に使用され得る。多層構造は、自動車用途での使用に特に好適である。
【実施例
【0066】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例においてここに記載され、すべての部およびパーセンテージは、他に特定されない限り、重量による。
【0067】
実施例で使用された原料の情報を以下の表1に示す:
【表1】
【0068】
2K非溶媒PUフォームを、表1に示すイソシアネートプレポリマー(Voralast(商標)GE 143 ISO)と、表2に列挙した原料とを組み合わせることにより調製する。
【表2】
【0069】
以下の発明実施例および比較例において、水性ポリウレタン分散液から誘導されるスキンフィルムおよび2kPUフォームベース層を含む合成皮革製品は、以下のステップ1)~4)によって調製された。
【0070】
1)水性ポリウレタン分散液用の2種のプレポリマーの調製
A.プレポリマーH1
ボラノール222-056(317.5g)、ヒマシ油(27.5g)、MPEG1000(10g)を1000mlの3つ口フラスコに入れ、115℃、76mmHgの圧力で1時間脱水した後、約72℃の温度まで自然冷却した。窒素(N)流の保護および機械的攪拌下で約72℃でIPDI(145g)を脱水ポリオール混合物に注ぎ、次いで触媒T12(0.03g)をフラスコに加えた。反応は約72℃で1時間続き、次いで約82℃の温度に加熱し、さらに2.5時間継続した。生成物(プレポリマーH1)をプラスチックボトルに封入し、窒素保護下で密閉保管した。プレポリマーH1のNCO%は7.3%であると測定された。
【0071】
B.プレポリマーH2
ボラノール4000LMポリオール(130g)、ボラノール4240ポリオール(207.5g)、ヒマシ油(27.5g)およびMPEG1000(10g)を1000mlの3つ口フラスコに入れ、115℃、76mmHgの圧力で1時間脱水した後、約72℃の温度まで自然冷却した。窒素(N)流の保護および機械的攪拌下で約72℃でIPDI(125g)を脱水ポリオール混合物に注ぎ、次いで触媒T12(0.03g)をフラスコに加えた。反応は約72℃で1時間続き、次いで約82℃の温度に加熱し、さらに2.5時間継続した。生成物(プレポリマーH2)をプラスチックボトルに封入し、窒素保護下で密閉保管した。プレポリマーH2のNCO%は7.1%であると測定された。
【0072】
2)水性ポリウレタン分散液の調製
100グラムのプレポリマーH1またはH2を500mlのプラスチックカップに注ぎ、カウル(cowles)ミキサーで攪拌した。13gの23重量%SDBS水溶液を、約4000rpmの混合速度下でプレポリマーに徐々に加えた。さらに数分間撹拌した後、氷水を約4000rpmの混合速度でプレポリマーに滴下して加えた。氷水を加えると相反転が生じ、水中油型エマルジョンが形成された。次いで、混合速度を約1500rpmまで下げた。アミノシロキサン化合物(親水性OFX-7700または疎水性OFX-8209)およびピペラジンの水溶液を、エマルジョンに滴下して加えた。すべての溶液を加えたら、機械的攪拌をさらに12分間継続した。最後に、固形分が約40%のポリウレタン分散液が得られ、これをカバー付きのプラスチック容器内に保管した。
【0073】
3)PUDスキンフィルムの調製
2)で調製したポリウレタン分散液22.5グラムを秤量し、等量の脱イオン水で希釈した。希釈したPUDを真空オーブンに移し、約10分間脱気した。次いで、脱気したPUDをプラスチック表面ペトリ皿に注いだ。PUDを満たした皿をオーブン内に移し、48℃で24時間加熱した後、フィルムを皿から剥がし、裏返し、さらに24時間連続乾燥させた。引張試験および引裂試験のために、フィルムを室温まで冷却した。
【0074】
4)合成皮革製品の製造
2)で調製された水性ポリウレタン分散液を、表3に示すようにカラーマスターバッチ、増粘剤、滑り剤および速乾剤と高速(1000~3000rpm)で数分間混合した。配合されたPUDを150μmの湿潤フィルム厚まで剥離紙にコーティングした。コーティングされた剥離紙をオーブン内で100℃で3分間、次いで130℃で2分間乾燥させた。乾燥したPUスキン層を備えた剥離紙をオーブンから取り出し、周囲温度まで冷却した。配合された2kPU複合材を、剥離紙上の乾燥したPUスキンフィルム上に300μmの湿潤フィルム厚さまでコーティングした。PUスキンフィルムおよびコーティングされた2kPU複合材を含む剥離紙を100℃のオーブン内に移し、75秒間予備硬化させた。次いで、バッキング基板(織物布)を2kPUフォーム層に慎重に適用し、3.5kgローラーで2回プレスした。試験片を140℃のオーブン内に入れ、5分間後硬化させた後、取り出して冷却した。
【表3】
【0075】
製品を特性評価するための技術
(a)ステップ3)で形成されたPUDスキンフィルムの機械的特性
ステップ3)で得られたPUDスキンフィルムの引張強度、破断点伸び、100%伸びでの弾性率、および引裂き強度を、標準ASTM D412-15aに従って特性評価した。
【0076】
(b)工程4)で作製された合成皮革製品の粘着防止性能
上記のステップ4)で作製された合成皮革製品の粘着防止性を、標準GB/T8948-2008に従って特性評価した。特に、合成皮革製品の2つの90mm×60mm試料を、1kgの圧力下で向かい合わせに貼り付け、85℃のオーブン内で3時間加熱した。粘着防止性は、室温で2つの試料を分離する際の2つの試料間の粘着性の程度に従って、以下の1から5にランク付けされた:
ランク1:完全に粘着性がない。
ランク2:わずかな力で分離することができる。
ランク3:ある特定の力で分離することができ、表面は破壊されない。
ランク4:大きな力で分離することができ、表面に不完全な損傷が発生する。
ランク5:分離できない。
【0077】
比較例1~2および発明実施例1~2の配合および特性評価の結果を表4に要約した。プレポリマーH1は、2,000のMwを有するポリエーテルポリオールで調製され、発明実施例1および比較例1で使用された。プレポリマーH2は、4000のMwを有するポリエーテルポリオールで調製され、発明実施例2および比較例2で使用された。発明実施例と比較例との違いは、親水性アミノシロキサン化合物(OFX-7700)が発明実施例で使用されたことである。具体的には、発明実施例では、プレポリマー重量の2.5重量%である少量のOFX-7700がPUD調製中に添加されたが、比較例は該親水性アミノシロキサン化合物を含まない。親水性アミノシロキサン(3700g/mol)の等価分子量はピペラジン(43g/mol)よりも著しく高いため、鎖延長係数に対する親水性アミノシロキサンの影響は無視でき、したがって発明実施例および比較例はほぼ同じ鎖延長係数(約88%)を有していた。
【0078】
比較例1~2および発明実施例1~2の配合および特性評価の結果
【表4】
【0079】
発明実施例1と比較実施例1との比較は、2.5重量%の親水性アミノシロキサン化合物の組み込みが、2000のMwを有するポリエーテルポリオールから誘導されたPUD合成皮革の抗粘着性能をランク3からランク1に著しく改善し得ることを明確に示している。合成皮革メーカーは、ランク1の粘着防止性能のみを様々な用途に使用可能とすることができる。大幅に改善された粘着防止性能は、合成皮革のはるかに優れた触覚をもたらす。さらに、引張強度、伸び(合成皮革の用途には>500%が必要)および100%伸びでの弾性率(合成皮革の用途には>2.5MPaが必要)等のPUDフィルムの優れた機械的特性が維持され得ることがわかる。
【0080】
4,000のMwを有するポリエーテルポリオールを使用することにより行われた発明実施例2と比較例2との比較に基づいて、同じ結論を引き出すことができる。
【0081】
比較例3および発明実施例3~4。
比較実施例3、発明実施例3および発明実施例4は、親水性アミノシロキサン化合物(OFX-7700)の含有量をそれぞれ1.25重量%、3.75重量%および5.0重量%に調節したことを除いて、発明実施例1の手順を繰り返すことにより行われ、また粘着防止性ランクは次の通りであった。
【表5】
【0082】
比較例4
比較例4は、OFX-7700が疎水性アミノシロキサン化合物(OFX-8209)で置き換えられたことを除いて、発明実施例1の手順に従って行われた。PUDフィルムには多くの膨らみがあることがわかったが、これはPUDの形成中にいくつかのゲルが形成されたことを意味する。この疎水性アミノシロキサンでは均質で透明なPUDフィルムを得ることができないため、このPUDを使用して合成皮革を作製してさらに評価することはしなかった。
図1
【国際調査報告】