(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンアーキテクチャにおける高オクタン価燃料の冷間始動
(51)【国際特許分類】
F02D 41/00 20060101AFI20220705BHJP
F02D 13/02 20060101ALI20220705BHJP
F02D 15/00 20060101ALI20220705BHJP
F02D 19/06 20060101ALI20220705BHJP
F02D 23/02 20060101ALI20220705BHJP
F02D 41/38 20060101ALI20220705BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20220705BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20220705BHJP
F02B 11/00 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
F02D41/00
F02D13/02 J
F02D15/00
F02D19/06
F02D23/02 J
F02D13/02 H
F02D41/38
F02D43/00 301C
F02D43/00 301A
F02D43/00 301N
F02D43/00 301W
F02D43/00 301Z
F02B37/00 301
F02B11/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565711
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 US2020032961
(87)【国際公開番号】W WO2020232287
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521479301
【氏名又は名称】クリアフレーム エンジンズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ブルムライター,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,バーナード
【テーマコード(参考)】
3G005
3G023
3G092
3G301
3G384
【Fターム(参考)】
3G005DA02
3G005DA07
3G005EA04
3G005EA16
3G005HA02
3G005HA07
3G005HA12
3G023AA08
3G023AB08
3G023AF03
3G023AG03
3G092AA02
3G092AA06
3G092AA11
3G092AA12
3G092AA17
3G092AA18
3G092AB03
3G092AC01
3G092BA08
3G092BB01
3G092BB08
3G092DA01
3G092DA02
3G092DA08
3G092DB03
3G092DC08
3G301HA02
3G301HA11
3G301HA13
3G301HA19
3G301KA01
3G301KA05
3G301LA07
3G301LB11
3G301MA28
3G301NE11
3G301NE12
3G384AA03
3G384AA06
3G384BA15
3G384BA22
3G384BA25
3G384BA27
3G384CA01
3G384CA03
3G384DA13
3G384EB03
3G384EB04
(57)【要約】
本明細書に開示される実施形態は、概して内燃(IC)エンジンを動作させるシステム及び方法に関し、より具体的には、周囲環境がエンジンの通常の動作温度よりも有意に寒冷であるときに圧縮着火(CI)エンジンを始動する(すなわち「冷間始動する」)システム及び方法に関する。いくつかの実施形態においては、CIエンジンは着火補助装置を含み得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動時にCIエンジンを動作させる方法は、ある量の空気を燃焼室内に吸い込むために吸気バルブを開弁することと、燃焼室内の下死点位置から上死点位置まで約15と約25との間の圧縮比でピストンを移動させることと、燃料が約30未満のセタン数を有するところ、ある量の燃料を噴射することと、吸気バルブを閉弁することと、ある量の燃料の実質的に全てを燃焼させることと、を含み得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮着火エンジンを動作させる方法であって、
前記圧縮着火エンジンは、エンジンシリンダであって、内面と、ヘッド面と、前記エンジンシリンダ内で移動するように配設及び構成されたピストンと、吸気バルブと、排気バルブと、着火補助装置と、を有する、エンジンシリンダを含み、前記エンジンシリンダの前記内面と、前記ピストンと、前記ヘッド面と、前記吸気バルブと、前記排気バルブと、は燃焼室を定義し、前記ピストンと前記ヘッド面とは、前記燃焼室のボール領域を定義し、
前記方法は、
ある量の空気を前記燃焼室内に吸い込むために前記吸気バルブを開弁するステップであって、前記ある量の空気は、前記ある量の空気が前記吸気バルブを通過する瞬間に、約150℃未満の質量平均温度を有するステップと、
前記ピストンを前記燃焼室内の下死点(BDC)位置から上死点(TDC)位置まで約15と約25との間の圧縮比で移動させるステップと、
ある量の燃料を0度と360度との間のエンジンクランク角度で噴射するステップであって、前記燃料は約30未満のセタン数を有し、前記ある量の燃料と前記ある量の空気とは空気燃料混合を形成するステップと、
前記吸気バルブを閉弁するステップと、
前記ある量の燃料の実質的に全てを燃焼させるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記着火補助装置は、グロープラグ、スパークプラグ、及び/又は、プラズマ点火装置を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記燃料は、第1の燃料であり、
第2の燃料が約30よりも大きいセタン数を有するところ、前記第2の燃料を燃焼室内に噴射することを更に含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記吸気バルブを閉弁することは、第1のエンジンサイクルにおいて第1のエンジンクランク角度で行われ、
前記方法は更に、第2のエンジンサイクルにおいて第2のエンジンクランク角度で前記吸気バルブを閉弁することを含み、
前記第2のエンジンクランク角度は、前記第1のエンジンクランク角度よりも、40度よりも大きいエンジンクランク角度だけ早いか又は40度よりも大きいエンジンクランク角度だけ遅く、
前記第2のエンジンサイクルは、前記第1のエンジンサイクルよりも後で発生する、請求項1の方法。
【請求項5】
前記吸気バルブ及び前記排気バルブのバルブタイミングがTDCについて非対称になるように前記排気バルブの閉弁を調整することを更に含む、請求項4の方法。
【請求項6】
前記空気燃料混合が330度のエンジンクランク角度で約400℃よりも高い質量平均温度を有するように、ある期間にわたって前記圧縮着火エンジンを動作させることを更に含む、請求項5の方法。
【請求項7】
前記排気バルブを閉弁することは、第1のエンジンサイクルにおいて第1のエンジンクランク角度で行われ、
前記方法は、第2のエンジンサイクルにおいて第2のエンジンクランク角度で前記排気バルブを閉弁することを更に含み、
前記第2のエンジンクランク角度は、前記第1のエンジンクランク角度より、40度よりも大きいエンジンクランク角度だけ早いか又は40度よりも大きいエンジンクランク角度だけ遅く、
前記第2のエンジンサイクルは、前記第1のエンジンサイクルよりも後で発生する、請求項6の方法。
【請求項8】
前記空気燃料混合が330度のエンジンクランク角度で約500℃よりも高い質量平均温度を有するように、ある期間にわたって前記内燃エンジンを動作させることを更に含む、請求項7の方法。
【請求項9】
175度と255度との間のエンジンクランク角度で前記吸気バルブを閉弁することを更に含む、請求項8の方法。
【請求項10】
前記排気バルブからの排気の一部を、前記吸気バルブを介して前記燃焼室に再循環させることを更に含む、請求項1の方法。
【請求項11】
前記着火補助装置は、前記燃焼室内に設置されている、請求項1の方法。
【請求項12】
前記着火補助装置は、前記燃焼室の前記ボール領域に設置されている、請求項11の方法。
【請求項13】
前記圧縮着火エンジンは、ターボチャージャ、スーパーチャージャ、及び/又はターボコンパウンディングデバイスを更に備える、請求項1の方法。
【請求項14】
前記ある量の空気を前記燃焼室内に吸い込む前に、前記ある量の空気に前記ターボチャージャ、前記スーパーチャージャ、及び/又は、前記ターボコンパウンディングデバイスを通過させることを更に含む、請求項13の方法。
【請求項15】
前記ある量の燃料を噴射することは、少なくとも約1,000バールの噴射圧力で行われる、請求項14の方法。
【請求項16】
ある量の排気のうち少なくとも一部が前記燃焼室を出ていくのを規制することを更に含む、請求項13の方法。
【請求項17】
前記空気燃料混合が330度のエンジンクランク角度で約500℃よりも高い質量平均温度を有するように、ある期間にわたって前記内燃エンジンを動作させることを更に含む、請求項1の方法。
【請求項18】
175度と255度との間のエンジンクランク角度で前記吸気バルブを閉弁することを更に含む、請求項17の方法。
【請求項19】
冷間始動時に圧縮着火エンジンを動作させる方法であって、
前記圧縮着火エンジンは、エンジンシリンダであって、内面と、ヘッド面と、前記エンジンシリンダ内で移動するように配設及び構成されたピストンと、吸気バルブと、排気バルブと、着火補助装置と、を有するエンジンシリンダを含み、前記エンジンシリンダの前記内面と、前記ピストンと、前記ヘッド面と、前記吸気バルブと、前記排気バルブと、は燃焼室を定義し、前記圧縮着火エンジンは、ターボチャージャ、スーパーチャージャ、及び/又は、ターボコンパウンディングデバイスを更に備え、
前記方法は、
ある量の空気に前記ターボチャージャ、前記スーパーチャージャ、及び/又は前記ターボコンパウンディングデバイスを通過させるステップと、
前記ある量の空気を前記燃焼室内に吸い込むために前記吸気バルブを開弁するステップと、
前記ピストンを前記燃焼室内の下死点(BDC)位置から上死点(TDC)位置まで約15と約25との間の圧縮比で移動させるステップと、
前記吸気バルブが開弁している間に前記燃焼室内にある量の燃料の約25%以下を噴射するステップであって、前記燃料は約30未満のセタン数を有するステップと、
前記吸気バルブを閉弁するステップと、
前記吸気バルブが閉弁している間に少なくとも約1,000バールの噴射圧力で前記燃焼室内に前記ある量の燃料の少なくとも約75%を噴射するステップであって、前記ある量の燃料と前記ある量の空気とは燃料空気混合を形成するステップと、
前記ある量の燃料の一部に着火するステップと、
前記ある量の燃料の実質的に全てを燃焼させるステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記ある量の空気は、前記ある量の空気が前記吸気バルブを通過する瞬間に、約150℃未満の質量平均温度を有する、請求項19の方法。
【請求項21】
前記着火補助装置は、グロープラグ及び/又はカートリッジヒータを含む、請求項19の方法。
【請求項22】
前記着火補助装置は、前記ある量の燃料の一部に接触する、請求項19の方法。
【請求項23】
前記着火補助装置は、グロープラグ、スパークプラグ、及び/又は、プラズマ点火装置を含む、請求項19の方法。
【請求項24】
前記着火補助装置は、前記燃焼室内に設置されている、請求項23の方法。
【請求項25】
前記着火補助装置は、前記燃焼室のボール領域に設置されている、請求項24の方法。
【請求項26】
第2の燃料を前記燃焼室内に噴射することを更に含み、
前記第2の燃料は、約30よりも大きいセタン数を有する、請求項19の方法。
【請求項27】
前記燃料は、約20未満のセタン数を有する、請求項19の方法。
【請求項28】
前記燃料は、約10未満のセタン数を有する、請求項27の方法。
【請求項29】
前記排気バルブからの排気の一部を、前記吸気バルブを介して前記燃焼室に再循環させることを更に含む、請求項19の方法。
【請求項30】
ある量の排気のうち少なくとも一部が前記燃焼室を出ていくのを規制することを更に含む、請求項19の方法。
【請求項31】
圧縮着火エンジンを動作させる方法であって、
前記圧縮着火エンジンは、エンジンシリンダであって、内面と、ヘッド面と、前記エンジンシリンダ内で移動するように配設及び構成されたピストンと、吸気バルブと、排気バルブと、着火補助装置と、を有するエンジンシリンダを含み、前記エンジンシリンダの前記内面と、前記ピストンと、前記ヘッド面と、前記吸気バルブと、前記排気バルブと、は燃焼室を定義し、
前記方法は、
第1の期間にある量の空気を前記燃焼室内に吸い込むために前記吸気バルブを開弁するステップであって、前記ある量の空気は、前記ある量の空気が前記吸気バルブを通過する前記瞬間に、約150℃未満の質量平均温度を有するステップと、
前記ピストンを前記燃焼室内の下死点(BDC)位置から上死点(TDC)位置まで約15と約25との間の圧縮比で移動させるステップと、
ある量の燃料を前記燃焼室内に噴射するステップであって、前記燃料は約20未満のセタン数を有し、前記ある量の燃料と前記ある量の空気とは空気燃料混合を形成するステップと、
前記吸気バルブを閉弁するステップと、
前記ある量の燃料の実質的に全てを燃焼させるステップと、を含み、
前記ある量の燃料の少なくとも20%は、着火の直前に前記ある量の空気と予混合される、方法。
【請求項32】
前記着火補助装置は、前記燃焼室のボール領域に設置されている、請求項31の方法。
【請求項33】
前記着火補助装置は、グロープラグ、スパークプラグ、プラズマ点火装置、及び/又は、カートリッジヒータを含む、請求項32の方法。
【請求項34】
前記燃料は、第1の燃料であり、
第2の燃料を前記燃焼室内に噴射することを更に含み、
前記第2の燃料は、約30よりも大きいセタン数を有する、請求項32の方法。
【請求項35】
前記ある量の燃料の少なくとも50%は、着火の直前に前記ある量の空気と予混合される、請求項31の方法。
【請求項36】
前記ある量の燃料の少なくとも75%は、着火の直前に前記ある量の空気と予混合される、請求項35の方法。
【請求項37】
前記第1の期間に前記吸気バルブを閉弁することは、175度と255度との間のエンジンクランク角度で行われ、
第2の期間に前記燃焼室内に空気を吸い込むために175度未満又は255度よりも大きいエンジンクランク角度で前記吸気バルブを閉弁することを更に含む、請求項31の方法。
【請求項38】
第3の期間に約175度と約255度との間のエンジンクランク角度で前記吸気バルブを閉弁することを更に含む、請求項37の方法。
【請求項39】
前記燃料は、約10未満のセタン数を有する、請求項31の方法。
【請求項40】
前記圧縮着火エンジンは、ターボチャージャ、スーパーチャージャ、及び/又は、ターボコンパウンディングデバイスを更に備える、請求項31の方法。
【請求項41】
前記ある量の空気を前記燃焼室内に吸い込む前に、前記ある量の空気に前記ターボチャージャ、前記スーパーチャージャ、及び/又は、ターボコンパウンディングデバイスを通過させることを更に含む、請求項40の方法。
【請求項42】
前記ある量の燃料を噴射することは、少なくとも約1,000バールの噴射圧力で行われる、請求項41の方法。
【請求項43】
ある量の排気のうち少なくとも一部が前記燃焼室を出ていくのを規制することを更に含む、請求項41の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2019年5月15日に提出され「Cold-Start for High-Octane Fuels in a Diesel Engine Architecture」と題された米国仮出願第62/848,087号の優先権及び利益を主張するものであり、同出願の全開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002] 混合制御圧縮着火(MCCI,又はCI)エンジンとしても知られるディーゼルエンジンは、従来のガソリン車両において用いられる火花点火(SI)エンジンに対していくつかの利点のある、エネルギ地形の重要な要素である。ディーゼルエンジンのCI設計は高い効率及び良好なトルク/パワー密度をもたらす。同時に、設計のロバスト性はこうしたエンジンの高信頼性と低保守を可能にし、路上用途において、多くの場合100万マイルを超えて駆動することができる。したがって、ディーゼルエンジンは長距離及び短休止時間のシナリオに最適である。もっとも、ディーゼルエンジンに欠点がない訳ではない。従来のSIエンジンよりも高い初期費用に加え、ディーゼルエンジンは、MCCI動作の熱的要件に起因して、特に低セタン価燃料では、寒冷な気候での始動が困難である。
【発明の概要】
【0003】
[0003] 本明細書に開示される実施形態は、概して内燃(IC)エンジンを動作させるシステム及び方法に係り、より具体的には周囲環境がエンジンの通常の動作温度よりも有意に寒冷であるときに圧縮着火(CI)エンジンを始動する(すなわち「冷間始動する」)システム及び方法に関する。いくつかの実施形態においては、冷間始動の際にエンジンが自己着火の発生する温度に達するまで、グロープラグ、スパークプラグ、又はプラズマ点火装置(plasma ignition device)などの補助装置が用いられ得る。いくつかの実施形態においては、CIエンジンは、内面と、ヘッド面と、エンジンシリンダ内で移動するように配設及び構成されたピストンと、吸気バルブと、排気バルブと、着火補助装置とを有するエンジンシリンダを含む。いくつかの実施形態においては、エンジンシリンダの内面と、ピストンと、ヘッド面と、吸気バルブと、排気バルブとは、燃焼室を定義し得る。いくつかの実施形態においては、ピストンとヘッド面とは、燃焼室のボール領域を定義し得る。いくつかの実施形態においては、着火補助装置は、燃焼室のボール領域内に位置し得る。いくつかの実施形態においては、CIエンジンを動作させる方法は、ある量の空気を燃焼室内に吸い込むために吸気バルブを開弁することを含み得る。いくつかの実施形態においては、ある量の空気は、ある量の空気が吸気バルブを通過する瞬間に、約150℃未満の質量平均温度を有し得る。CIエンジンを動作させる方法は更に、ピストンを燃焼室内の下死点(BDC)位置から上死点(TDC)位置まで約15と約25との間の圧縮比で移動させて、ある量の燃料を0度と360度との間のエンジンクランク角度で噴射することを含み得る。いくつかの実施形態においては、燃料は約30未満のセタン数を有し得る。ある量の燃料及びある量の空気は空気燃料混合を形成し得る。CIエンジンを動作させる方法は更に、吸気バルブを閉弁すること及びある量の燃料の実質的に全てを燃焼させることを含み得る。いくつかの実施形態においては、ある量の燃料の少なくとも50%は、着火の直前に、ある量の空気と予混合され得る。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】[0004] 一実施形態による、圧縮着火アーキテクチャの概略図である。
【
図2】[0005] 一実施形態による、燃焼室におけるグロープラグ又はスパークプラグの配置の概略図である。
【
図3】[0006] 一実施形態による、燃焼室におけるグロープラグ又はスパークプラグの配置の概略図である。
【
図4】[0007] 一実施形態による、燃焼室におけるグロープラグ又はスパークプラグの配置の概略図である。
【
図5】[0008] 一実施形態による、SACIからHCCI及びHCCIからMCCIへの移行を示す図表である。
【
図6】[0009] 一実施形態による、SACIからHCCI及びHCCIからMCCIへの移行に対するバルブタイミングの影響を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
[0010] 化学燃料(石油、アルコール類、バイオディーゼルなど)は重荷重道路輸送にとって引き続き重要である。化学燃料の高いエネルギ密度は、長距離を移動し素早く燃料補給する必要のあるユーザにとって重要である。その結果として、化学燃料ディーゼルエンジンの需要は数十年にわたって持続するであろう。しかしながら、ディーゼル燃料価格は過去30年にわたって実質的に上昇しており、また、ディーゼル燃料は温室効果ガス排出の大きな一因である。更に、二酸化窒素及び一酸化窒素(まとめてNOxと称される)並びに煤の排出基準は益々厳しくなりつつある。
【0006】
[0011] メタノール、エタノール、ジメチルエーテル(DME)、及び天然ガスなどのよりクリーンな低炭素代替燃料の使用は、過去20年にわたり、合衆国のエネルギ地形において着実に普及してきた。2000年から2018年までの間、合衆国におけるエタノールの生産は16億ガロンから161億ガロンまで毎年上昇し、十倍の増加となっている。同じ期間に、合衆国における天然ガスの生産はおよそ30%増加しており、メタノールの生産も有意な増加を経験している。石油系燃料が依然として運輸部門における合衆国のエネルギ需要のおよそ85~90%を提供している一方で、代替燃料(例えばメタノール、エタノール、バイオディーゼル)及び天然ガスの市場シェアは、今後数十年にわたり一貫して成長することが期待されている。これらの代替燃料は、エネルギ需要を満たすべく石油産業の供給を補足する手段としてのみならず、運輸部門に関連する温室効果ガス、煤、及びNOxの排出を低減させる手法としても魅力的である。およそ80~85wt%のエタノールを有する燃料は、1マイル当たり従来の石油系燃料の40%未満の二酸化炭素を排出する。他の代替燃料は、従来の石油系燃料と比較すると、温室効果ガスの排出に関して同様の削減を経験する。また、一酸化炭素、揮発性有機化合物(VOC)、及びNOxの排出は、これらの代替燃料が用いられると、有意に削減され得る。
【0007】
[0012] CIアーキテクチャにおけるメタノール及びエタノールなどのクリーンな低炭素代替燃料の使用は、エネルギ需要の充足及び有害排出物質の削減における重要な革新的ステップであるが、これらの燃料は低セタン価特性を有しており、つまり、長鎖炭化水素(すなわち6個以上の炭素分子の鎖)と比較すると、自己着火を実現するのにより高い温度を必要とする。セタン数は、CIエンジンにおける燃料の着火性の指標であり、自己着火が発生するための温度閾値である。自己着火温度がより高いので、これらの燃料タイプは、低温度における着火に関して、従来のディーゼル燃料よりも更に大きな困難を有する。
【0008】
[0013] 本明細書に開示される実施形態は、概して内燃(IC)エンジンを動作させるシステム及び方法に係り、より具体的には周囲環境がエンジンの通常の動作温度よりも有意に寒冷であるときにICエンジンを始動する(すなわち「冷間始動する」)システム及び方法に関する。換言すれば、周囲の低い温度に起因してエンジンブロックが非常に冷たいとき、エンジンを始動させることは、最近(典型的には90分と2時間との間)駆動されていたエンジンを始動させることよりも困難である。冷間始動は、次の点を含む複数の理由で、より困難となる。(1)熱不足が燃料の着火をより困難にする、(2)低温がエンジンオイルを増粘させて、循環させるのをより困難にする、及び(3)空燃比が冷たい空気の影響を受け、ひいては混合物の燃焼性に影響を及ぼす。
【0009】
[0014] 車両において最も一般的に使用されるエンジンには2つのタイプがある。ガソリンエンジンに最も一般的に使用される火花点火(SI)と、ディーゼルエンジンに最も一般的に使用される圧縮着火(CI)と、である。標準的な4ストロークSIエンジンアーキテクチャでは、燃料(例えばガソリン)中の化学エネルギが燃焼室内での燃料の着火によって機械的エネルギに変換される。燃焼室の外部境界は、エンジンシリンダと、シリンダ内で移動するように構成されたピストンと、ヘッド面と、1つ(又は複数)の吸気バルブと、1つ(又は複数)の排気バルブと、によって画成されている。動作時、ピストンは、クランクシャフトを回転させながら4つの別個のストロークを完了する。まず、吸気又は吸入行程において、ピストンは燃焼室の頂部の位置(すなわち上死点(TDC))から燃焼室の底部の位置(すなわち下死点(BDC))まで移動する。クランクシャフトは燃焼室の下で中心軸回りに回転しているので、「死点」という用語は、横移動に関するクランクシャフトの相対位置を示す。吸気行程の際には、吸気バルブが開弁され、ガスが吸気バルブを通じて吸い込まれる。ガスは、空気燃料混合物であってもよいし、又は単純に空気であってもよく、その場合には混合のために燃料が室内に直接噴射される。吸気バルブはその後、第2のストロークの前に閉弁され、燃焼室内に密閉環境を作り出す。第2のストロークは圧縮行程であり、この行程ではピストンはBDCからTDCに戻る移動をする。この行程において、ピストンは、着火に備えて空気燃料混合物を圧縮する。この行程の終わりまでに、クランクシャフトは360度の丸一回転を完了している。第3のストロークは燃焼行程であり、この行程ではスパークプラグが圧縮された空気燃料混合物に点火する。点火された混合物は、膨張してピストンをBDCに押し戻し、クランクシャフトへの機械的作用を生み出す。第4のストロークにおいては、ピストンは、排気バルブが開弁された状態でBDCからTDCに戻る移動をし、排気ガス(すなわち燃焼生成物)を排出する。
【0010】
[0015] CIエンジンの動作はSIエンジンの動作によく似ている。標準的な4ストロークCIエンジンはSIエンジンと同じ4ストロークを採用しており、圧縮及び着火行程に重要な相違を有する。圧縮行程において、圧縮比(BDCにおける燃焼室容積とTDCにおける燃焼室容積との比)はSIエンジンのそれよりも実質的に高く、17:1又はそれよりも高い値に達する。この有意な圧縮が温度及び圧力の劇的な上昇を引き起こして、空気燃料混合を(予混合されていれば)自己着火温度にするか、又は(混合が限定的であれば)既に必要とされる自己着火温度を上回っている空気中に燃料を噴射するので、火花を採用することなく着火行程が発生する。このタイプのエンジンアーキテクチャは、概して、SIエンジンアーキテクチャよりも高いトルク出力を生み出すと共に堅牢になるように施工される。したがって、CIエンジン設計は、比較的長い時間枠で信頼性の高い性能をもたらす。
【0011】
[0016] クリーンな低炭素燃料の恩恵がしっかりと確立されている一方で、そうした燃料の欠点の1つは、ガソリンと比較すると相対的に低い蒸気圧及び自己着火能力を有するということである。寒冷時期には、E85燃料は、冬季の燃料揮発性要件を満たすために、温暖時期よりも大量の石油系ガソリンを補充されることが多い。夏のブレンドの83%に対し、冬のブレンドのE85は、典型的には70%しかエタノールを含まない。E85燃料が十分な揮発性を有する限り、SIエンジンの冷間始動システム及びプロセスは、純粋な石油系燃料に関するものと実質的に同一である。燃焼室内で適切な量の揮発性燃料が気化することで、着火は温度に関係なく発生する。しかしながら、CIアーキテクチャは着火の実現の困難性を増す。上述したように、クリーンな低炭素燃料は典型的には低いセタン価を有しており、これがディーゼルエンジンにおけるニートメタノール又はエタノールでの自己着火の実現をより困難にしている。これらのアルコール類は約1から15のセタン数を有するので、セタン数が約45の従来のディーゼル燃料と比較して、TDCにおける空気及びひいては空気燃料混合物の温度は、典型的には、いずれのアルコールの着火性要件を満たすにも不十分である。
【0012】
[0017] 低セタン価燃料でCIエンジンを動作させるシステム及び方法の例は、「化学量論的高温直接噴射式圧縮着火エンジン」と題され2015年4月6日に提出された米国特許第9,903,262号明細書(「‘262特許」)に記載されている。同特許の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの方法は、短い着火遅れと、これらの燃料に関しておよそ800℃の噴射前温度(噴射前温度)を必要とする混合制御燃焼とを含む。‘262特許に記載されているように、高温条件下で低炭素燃料で動作するエンジンには多くの恩恵がある。具体的には、煤の排出が従来のディーゼル燃料の使用によるよりも実質的に低い。
【0013】
[0018] 燃料タイプに関係なく、CIエンジンアーキテクチャは、SIエンジンにおいては一般的でないいくつかの問題を経験する。CIエンジンにおいては、自己着火が発生するためには十分な熱エネルギが必要であるが、火花補助着火の場合はそうではない。‘262特許には定常状態動作のための熱エネルギを提供するべく排気を保持することが記載されているが、排気は最初のエンジン始動には利用することができず、低いシリンダ壁温度が、吸気チャージがCI低セタン価燃料自己着火に適したおよそ800℃の空気温度に達するのを妨げる。また、寒冷な環境でCIエンジンを始動することは、燃焼室内で自己着火が発生するために利用可能な熱エネルギの相対的な欠如を踏まえると、一層困難であり得る。燃焼室の周囲環境が低温である場合には、その周囲環境が圧縮行程で生成された大量の熱エネルギを燃焼室から引き離し、自己着火を非常に難しくする。
【0014】
[0019] 低セタン価燃料はディーゼルよりも更に高い自己着火温度を有するため、低セタン価燃料(例えばメタノール、エタノール、又は天然ガス)による冷間始動は困難性を増す。低セタン価燃料を使用するCIエンジンは高い着火温度及び排気の利用に依存しているので、熱エネルギが不十分であるときに定常状態動作に達するために低セタン価燃料の着火を始める又は持続させることに関する冷間始動ストラテジの開発は挑戦的なことであり得る。とはいえ、ほとんどの低炭素燃料の高オクタン性は、エンジンの冷間始動のためのまたとない機会を提供する。
【0015】
[0020] 本明細書に開示される実施形態は、低セタン価燃料で駆動するCIエンジンを冷間始動するシステム及び方法に関する。
図1は、シリンダ110と、シリンダ110内で移動するように構成されたピストン120と、吸気バルブ130と、排気バルブ140とを含む圧縮着火(CI)エンジン100を示す。シリンダ110、ピストン120、ヘッドデッキ125、吸気バルブ130、及び排気バルブ140は、集合的に燃焼室150を定義する。吸気バルブ140及び排気バルブ150はいずれも、所望の吸気を実現するのに必要なタイミング及び距離に従って吸気バルブ140及び排気バルブ150を開弁及び閉弁するように回転するカムシャフト(図示しない)と接触し得る。ばねが吸気バルブ又は排気バルブを閉位置で保持する間、カムの長円形状がカムシャフトの中心軸に対して様々な長さでバルブに押し当たり、バルブの開位置及び閉位置を作り出す。別の言い方をすれば、長円形のカムの(カムシャフトの中心軸からの距離に関して)長い側がバルブに接触すると、バルブは開位置に押し込まれる。カムの短い側がバルブに接触すると、ばねがバルブを閉位置へと押す。場合によっては、エンジンは複数のカムシャフトを採用し、それによって、1つのカムシャフトが1つ又は複数の吸気バルブを制御するのと同時に別の1つのカムシャフトが1つ又は複数の排気バルブを制御する。カムシャフトは、可変バルブタイミング(VVT)スキームを介してバルブの開弁及び閉弁のタイミングをしばしば変更することができる。VVTの最も簡単な形はカム整相(cam-phasing)であり、それによってカムシャフトの位相角はクランクシャフトに対して前方又は後方に回転する。これはバルブの開弁のタイミングを変化させるが、カムシャフトによって提供されるリフトの量又は開弁期間は変化させない。リフト及び開弁期間が修正され得る及び/又は吸気バルブ130のタイミング調整が排気バルブ140のタイミング調整と異なり得る、より複雑又は「非対称的な」VVTも実装することができる。いくつかの実施形態においては、吸気バルブ130及び排気バルブ140は、カムシャフトを介してではなく、油圧作動、電子作動、又は他の手段を介して開弁及び閉弁する。
【0016】
[0021] CIエンジン100は、燃焼室150内に燃料を噴射する燃料噴射装置170に流体結合された燃料160の供給源も含む。燃料160は、ガソリンもしくはディーゼル燃料のような従来の燃料、又はメタノール、エタノール、もしくは天然ガスのような低炭素/低セタン価燃料、又は低炭素/高セタン価ジメチルエーテルを含み得る。
【0017】
[0022] いくつかの実施形態においては、CIエンジン100は、層状混合制御圧縮着火(MCCI)ストラテジに従って動作し得る。標準的なMCCI動作では、燃料噴射装置170は、一定量の微細霧化された燃料160を、ピストン120がTDCに到達する時点の付近(~15度のクランク角度以内)で燃焼室150内に噴霧する。燃料160は、均一にではないが、燃焼室150内で急速に気化して着火する。噴霧流の前方の燃料160は燃焼室内の熱及び酸素と最初に接触し、前方の燃料160は最初に着火する。これにより燃料160と圧縮空気との間の接触点で火炎前面が作り出される。この不均質炎及び燃料濃度勾配に関しては欠点及び利点がある。欠点の1つは、燃料160の不完全燃焼の可能性、並びに煤、一酸化炭素(CO)、及びNOxなどの望ましくない燃焼生成物の生成である。これらの有害排出物質を化学量論的な燃料供給の排気から削減するために、典型的には三元触媒165が用いられる。三元触媒165は、排気バルブ140の下流に配置されることが多く、ロジウム、白金、パラジウムなどの貴金属及びいくつかの金属酸化物を含む。三元触媒165は、COとNOxとの間の反応を促進してCO2及び窒素ガスを生成するので、化学量論的な燃料160の供給において最も有効である。燃料リッチ混合物はより多くのCOを触媒に接触させ、COは未反応のままである。空気過剰な燃料希薄混合物はより多くのNOxを触媒に接触させ、NOxは未反応のままである。
【0018】
[0023] 層状MCCIエンジン動作に関連する1つの利点は、エンジンノックを最小化するということである。エンジンノックは、時期外れの燃料燃焼に起因して、具体的には予混合された燃料空気チャージが所望のタイミングよりも前に圧縮により自己着火するときに発生する。MCCI動作では、圧縮行程において空気のみ(又は空気と少量の燃料及び/又は排気)が圧縮され、これにより燃料が欠乏した場合のノックの可能性が排除される。噴射の後、燃料噴射装置170を通じた燃料160の層状チャージが、適時に且つ短い着火遅れで燃焼することのできる燃料160の局所的にリッチな点を作り出し、ノックを回避する。換言すれば、燃料燃焼のタイミング及び割合は燃料噴射のタイミング及び割合によって限定される。燃焼室150内に噴射される際の燃料160の流れにおける乱流は、燃焼室内の利用可能な限り多くの酸素分子を燃料160の霧状化された液滴と接触させるのを援助する。これにより、燃料液滴の気化と燃焼との間の物理的遅延が低減される。燃焼室150内の空気燃料混合を遅延させること及び均質性を低減させることにより、結局はノックの可能性を低減させることができる。
【0019】
[0024] いくつかの実施形態においては、CIエンジン100は、均質チャージ圧縮着火(HCCI)ストラテジに従って動作し得る。HCCIがMCCIと異なるのは、HCCIは実質的に均質な空気燃料混合物を燃焼させることを伴うという点である。いくつかの実施形態においては、HCCI動作は、吸気行程においてピストン120がTDCからBDCへと移動している間に燃料噴射装置170を通じて燃料160を送出することによって実現される。いくつかの実施形態においては、燃料噴射装置は、燃焼室150への進入の前に燃料160と空気との予混合を更に促進して圧縮及び着火の際に実質的に均質な空気燃料混合物をもたらすために、燃焼室150のすぐ外側の、吸気バルブ130の付近に配置され得る。HCCI動作にはいくつかの利点がある。第一に、HCCI機構における燃料160の燃焼は、より完全且つ効率的になる傾向がある。これは、燃費を向上させるだけでなく、水及びCO2という予想される燃焼生成物をより選択的に生成する傾向もある。換言すれば、HCCI機構においてはNOx及びCO排出が低減される。しかしながら、HCCI動作は一般に、それが最適な燃焼ストラテジである動作範囲が狭い。燃焼室150内の温度が低すぎれば、燃焼室150全体で燃焼事象を作り出すのに適切な量の熱エネルギが供給され得ないため、着火性能が単純にサポートされない。MCCI動作とは対照的に、燃焼室150内の温度が高すぎるときには、燃料160の時期外れの(早い)燃焼事象に起因してノックが発生し得る。
【0020】
[0025] いくつかの実施形態においては、排気は、流入する燃料160への伝熱を促進するために、流入する燃料160を搬送するラインを通過して流れてもよく、それによって着火前気化冷却に関連する燃料160からの熱エネルギ喪失が低減される。同様に、熱エネルギは、排気から吸入空気流へと伝達されて、自己着火のための温度を高め得る。また、EGRクーラ195に接触するガス流が、EGRクーラ195と接触しているクーラントの温度を高め得る。一般に、クーラントリザーバ(図示しない)がエンジン100全体に配設されて各シリンダ110を包囲し、燃焼による熱はそこでリザーバ内のクーラント液に伝わる。クーラントはその後ラジエータ(図示しない)へ流れ、そこでは送風機がクーラントから周囲空気への熱の伝達を援助する。いくつかの実施形態においては、エンジン100全体でのクーラントの循環は、燃焼室150内の温度が迅速に上昇するように低減又は制御され得る。各シリンダ110を通過して流れるクーラントの量を低減させると燃焼室150から出て伝達される熱エネルギの量が効果的に低減され、これにより燃焼室内の温度はクーラント流体の完全循環によるよりも速く高まり得る。
【0021】
[0026] いくつかの実施形態においては、上述の方法と連携して、エンジン100の吸気圧を下げることにより、ノックを軽減することができる。吸気圧を下げると、適切な空燃比を維持するのに必要な燃料の量を低減させることができると同時に、燃焼室150内の圧力が低減される。このより低い圧力は、自己着火の全体的な確率を効果的に下げる。
【0022】
[0027] いくつかの実施形態においては、CIエンジン100は、燃焼のための高い温度を維持するべく燃焼室150内の熱エネルギを保持するのに役立つ遮熱コーティング155を含み得る。‘262特許に記載されているように、遮熱コーティング155は、シリンダ110のライナ、ピストン120の面、吸気バルブ130及び排気バルブ150の表面、燃焼室150の内部、及びシリンダヘッド(図示しない)に施され得る。いくつかの実施形態においては、遮熱コーティング155は、再循環ポート190及びEGRクーラ195を含め、エンジン100の吸気及び排気システム全体に施され得る。
【0023】
[0028] いくつかの実施形態においては、冷間始動を援助するために、吸気予熱システムが用いられ得る。吸気ヒータカートリッジシステムが吸気バルブ130のすぐ上流に設置されてもよく、ヒータとエンジンとの間の伝熱喪失を低減させる。このシステム構成は、多くの商用ディーゼルエンジンにおいて利用されている冷間始動アシストに類似している。しかしながら、低セタン価燃料の高い自己着火耐性のために、更に高いレベルの予熱が必要とされる。けれどもその必要は、追加的な排気保持又は他の形態の燃焼補助を提供することによって減らすことができる。同様に、低い周囲温度での着火を援助するために、ブロックヒータ(図示しない)がエンジン100内又はエンジン100の外部に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態においては、ブロックヒータは、シリンダブロック内に取り付けられてシリンダ100を加熱し得る。いくつかの実施形態においては、ブロックヒータは、始動時のオイル粘度を低減させるために、クランクシャフト180の付近のオイルリザーバ(図示しない)を加熱し得る。いくつかの実施形態においては、複数のブロックヒータがエンジン100の中及び周囲に取り付けられ得る。いくつかの実施形態においては、1つのブロックヒータがエンジン100の中及び周囲に永久的に取り付けられ得る。いくつかの実施形態においては、ブロックヒータが、その使用を季節に合わせられるように、取り外し可能であってもよい。
【0024】
[0029] いくつかの実施形態においては、エンジン100は、冷間始動の際に燃焼室150内に高セタン価燃料を噴射するパイロット燃料噴射装置(図示しない)を含み得る。自己着火に対して低遮熱の燃料は、冷間始動の際にエンジンの着火を援助し得ると共に、定常状態MCCI動作への移行の際にゆっくりと段階的に停止され得る。いくつかの実施形態においては、高セタン価燃料は、燃料160とは別個のタンクに保管され得る。いくつかの実施形態においては、高セタン価燃料を保持するタンクは、燃料160を保持するタンクよりも実質的に小さくてもよい。いくつかの実施形態においては、高セタン価燃料はディーゼルであってもよい。いくつかの実施形態においては、高セタン価燃料はジメチルエーテルであってもよい。
【0025】
[0030] エンジン冷間始動の中心的な課題は安定したアイドリング回転数(およそ750RPM)に達することであるが、始動時の排気の排出を規制限度内に維持することも等しく重要である。三元触媒165は一般的に少なくともおよそ250℃の動作温度を有する。この高い温度は不完全燃焼生成物の発熱酸化の実現において重要な性質であり、その点で、反応の発熱性は、触媒ライトオフとして知られるプロセスにおいて触媒作用を持続させるために用いられ得る。ライトオフが実現される前に、未処理の未燃炭化水素、CO、及びNOxがエンジン100から排出され得る。エンジン100が規則遵守を維持するために満たさなければならない低い排出閾値を考えると、冷間始動期間は、有害な汚染物質が積極的に軽減されるべき重要な期間である。よって、触媒ライトオフが迅速に実現されることを保証し、且つ触媒ライトオフに達する前に排出される汚染物質が最小レベルになるのが重要である。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載される冷間始動方法は、60秒未満でライトオフ温度に達することにより、汚染物質の形成を最小化することができる。いくつかの実施形態においては、エンジン100の吸気ポート及び排気ポート全体での遮熱コーティング155の使用は、三元触媒165がライトオフ温度を実現するのを援助するべく可能な限り多くの熱エネルギを保持するのに重要なコンポーネントであり得る。いくつかの実施形態においては、ライトオフ温度を実現するのに必要な時間を短縮するために、三元触媒に加熱要素が追加され得る。いくつかの実施形態においては、前述の冷間始動方法の各々が触媒ライトオフの実現を援助する役に立ち得る。
【0026】
[0031] 安定したアイドル運転を実現することはどんな冷間始動ストラテジにとっても重要であるが、あるストラテジを元々の設備の製造業者によって採用するのに適したものにすることは必ずしも十分ではない。排出が規則を満たすために冷間始動時に十分に低い状態を保つべきであるのと同様に、燃焼は、信頼性並びに冷間始動時の騒音、振動、及びハーシュネス(NVH)に関するユーザの期待を満たすように十分に安定しているべきである。低い温度では、異なるサイクル間で燃焼に有意な変動が存在するかもしれない。本明細書に記載される方法を介する冷間始動のいくつかの実施形態においては、これらの変動を最小化することが、許容可能なレベルの燃焼安定性を実現するのに役立ち得る。具体的には、サイクル間の図示平均有効圧力(運転サイクルの際に燃焼室において生み出される正規化された仕事量(volume-normalized work))の変動係数は約5%未満であるべきである。
【0027】
[0032] いくつかの実施形態においては、エンジン100は、周囲空気を十分に加熱することによって又は表面着火のための熱面を提供することによって自己着火を実現するべく燃料160に所望の熱エネルギを提供するためのグロープラグ(図示しない)を含み得る。いくつかの実施形態においては、エンジン100は、火花補助圧縮着火を容易にするためのスパークプラグ(図示しない)を含み得る。いくつかの実施形態においては、エンジン100は、冷間始動を援助するために、スパークプラグに類似しているが高エネルギプラズマの境界に対する空間的制約の少ないプラズマ点火タイプの装置(図示しない)を含み得る。
【0028】
[0033] 前述の方法の実施形態の属性は、遮熱コーティング有りでは、遮熱コーティング無しの実施形態と比較して異なるであろう。遮熱コーティングは、冷間始動着火及び早期触媒ライトオフの両方と共に、SACI及びHCCIなどの移行ストラテジのCI態様も容易にする。
【0029】
[0034]
図2は、一実施形態によるCIエンジン200を示す。CIエンジン200は、シリンダ210と、シリンダ210内で移動するように構成されたピストン220と、ヘッドデッキ225と、吸気バルブ230と、排気バルブ240とを含む。シリンダ210、ピストン220、吸気バルブ230、及び排気バルブ240は、集合的に燃焼室250を定義する。CIエンジン200、シリンダ210、ピストン220、ヘッドデッキ225、吸気バルブ230、排気バルブ240、及び燃焼室250は、
図1を参照して上述したエンジン100、シリンダ110、ピストン120、ヘッドデッキ125、吸気バルブ130、排気バルブ140、及び燃焼室150と実質的に類似し得るか又は同じであり得る。したがって、CIエンジン200のコンポーネントの特定の態様の詳細は、本明細書においては更には詳述されず、記載が明確に異ならない限り、エンジン100に関して上述した対応するコンポーネントと形状又は機能が同一又は実質的に類似していると考えられるべきである。
【0030】
[0035]
図2に示されるように、燃料噴射装置270は、ピストン220がTDC位置にある間に又はピストン220がTDC位置に近づくにつれ、線Aに沿って補助装置275に向けて燃料を噴霧する。換言すれば、補助装置275は、燃焼室250のボール領域251に且つ燃料噴射装置270の直接噴霧経路内に位置している。いくつかの実施形態においては、補助装置275をボール領域251に配置することは、表面着火(すなわち補助装置275の表面上での燃料又は燃料空気混合の着火)の誘発を援助し得る。いくつかの実施形態においては、補助装置275はグロープラグであってもよい。典型的なディーゼル燃料運転では、グロープラグが燃焼室250内の空気を加熱して、冷間始動時の燃焼を可能にする。しかしながら、低セタン価燃料CIエンジン200のいくつかの実施形態においては、グロープラグを介して空気に提供される熱は、空気を自己着火が発生するのに適した温度にしないかもしれない。線Aに沿って燃料噴射装置270の直接噴霧経路内にグロープラグを配置することの利点は、燃料とグロープラグの表面との直接接触を容易にし得るということである。この直接接触は、グロープラグの表面における燃料の着火を可能にし得る。換言すれば、燃料噴射装置270は、グロープラグの熱固体表面上に、その熱固体表面上での燃焼を直接的に促進するための酸化性分子が付近にある状態で、燃料を噴霧することができる。付近の空気の熱容量と比べてグロープラグの熱固体表面の熱容量が高いことを考えると、より多量の熱エネルギがグロープラグから燃料に伝達し、それによって着火が容易になる。熱固体表面におけるこの初期着火事象は、グロープラグの熱固体表面から離れた後続の着火事象を容易にし得る。いくつかの実施形態においては、グロープラグは、遷移金属を含むが遷移金属に限られない、アルコール、天然ガス、及び/又はジメチルエーテル燃焼を触媒的に補助する材料で被覆されていてもよい。図示するように、燃料噴射装置270は燃焼室250内に燃料を噴射する。いくつかの実施形態においては、燃料噴射装置270は、燃料噴射装置270が燃料を燃焼室250の外部の吸気ポート(図示しない)内に噴射するように位置していてもよい。
【0031】
[0036] 上述の利点に加え、線Aに沿って燃料噴射装置270の直接噴霧経路内にグロープラグを配置することには、他の考えられる配置位置と比べ、追加的な固有の利点があり得る。グロープラグが燃料噴射装置270に近接していることを考えると、空気燃料がグロープラグと接触するとき、空気燃料混合物は実質的に不均質である。この高レベルの不均質性は、適時の燃焼の確率を高くすると共に、時期外れの燃焼及びノックの確率を低くする。しかしながら、燃料噴射におけるこのレベルの層状化は、最終的には排気流中のより多くの未燃燃料と望ましくないCO及びNOx排出とをもたらし得る。
【0032】
[0037] グロープラグを補助装置275として使用してCIエンジン200を動作させる場合、低セタン価燃料でのCIエンジンの冷間始動を容易にするときに考慮すべき2つの時間遅延がある。第1の時間遅延は、グロープラグの作動とCIエンジン200の最初の始動との間の時間の量である。第1の時間遅延は、熱が電源からグロープラグに、及び最終的には燃焼室250内に伝達される割合の関数である。第2の時間遅延は、CIエンジン200の最初の始動とCIエンジン200の定常状態MCCI動作への移行の完了との間の時間の量である。第2の時間遅延は、燃焼室250内での燃料の燃焼の発熱性の関数である。いくつかの実施形態においては、第1の時間遅延は、約1秒未満、約5秒未満、約10秒未満、約20秒未満、又は約30秒未満であり得る。いくつかの実施形態においては、第2の時間遅延は、約30秒未満、約45秒未満、約60秒未満、約90秒未満、又は約120秒未満であり得る。
【0033】
[0038] いくつかの実施形態においては、補助装置275はスパークプラグであってもよく、火花補助圧縮着火(SACI)又は火花補助MCCI燃焼と称されるプロセスを容易にする。換言すれば、燃焼室250における補助装置275としてのスパークプラグの使用は、熱エネルギが従来の圧縮着火に不十分であるときに燃焼を開始させるのに役立つ局所的な火花を提供し得る。線Aに沿って燃料噴射装置270の直接噴霧経路内にスパークプラグを配置することには、グロープラグで遭遇するものに似た、固有の利点及び欠点がある。燃料がスパークプラグに接触する際の燃料の不均質性の度合いは、適時の燃焼の確率を高くすると共に、時期外れの燃焼及びノックの確率を低くする。しかしながら、燃料噴射におけるこのレベルの層状化は、最終的には排気流中のより多くの未燃燃料と望ましくないCO及びNOx排出とをもたらし得る。
【0034】
[0039] 上述したように、典型的なSIエンジンにおけるアルコール系燃料の使用は、冷間始動にとっての課題を作り出し得る。しかしながら、CIアーキテクチャは有意に高い圧縮比(すなわち、およそ17:1)を利用し、これが火花補助冷間始動の障壁を低減させる。本明細書に記載される低セタン価燃料の高い気化性及び迅速な気化を考えると、空気と燃料とは、低い温度でも良好に混合され得ると共に着火可能となり得るであろう。
【0035】
[0040] いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されるエンジンの圧縮比は、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約17、少なくとも約18、少なくとも約19、少なくとも約20、少なくとも約21、少なくとも約22、少なくとも約23、又は少なくとも約24であり得る。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されるエンジンの圧縮比は、約25以下、約24以下、約23以下、約22以下、約21以下、約20以下、約19以下、約18以下、約17以下、又は約16以下であり得る。上記で参照した圧縮比範囲の組み合わせ(例えば少なくとも約15と約25以下又は少なくとも約15と約20以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載されるエンジンの圧縮比は、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、又は約25であり得る。
【0036】
[0041] いくつかの実施形態においては、本明細書に記載される低セタン価燃料は、少なくとも約1、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、又は少なくとも約25のセタン数を有し得る。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載される低セタン価燃料は、約30以下、約25以下、約20以下、約15以下、約10以下、又は約5以下のセタン数を有し得る。上記で参照したセタン数範囲の組み合わせ(例えば少なくとも約1と約30以下又は少なくとも約10と約20以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載される低セタン価燃料は、約1、約5、約10、約15、約20、約25、又は約30のセタン数を有し得る。
【0037】
[0042] いくつかの実施形態においては、燃料は、サイクルにおいて、MCCI動作で典型的であるよりも早い段階で噴射され得る。典型的なガソリンSIエンジンにおいては、燃料は、サイクルにおいて、CIエンジンにおけるよりも早く噴射される。この早い噴射は、より均質な空気燃料混合物をもたらす。スパークプラグが提供する高信頼性の点火源を考えると、空気燃料混合物は、標準的なMCCI動作の場合ほど不均質であることを要さない。更に、CIエンジンの高い圧縮比は、気化、混合、及び火花補助火炎伝播を促進し得る。しかしながら、完全に均質な空気燃料混合物は、冷間始動においては望ましくないかもしれない。本明細書に記載されるように、完全に均質な空気燃料混合物は、低い温度での着火に困難を有するであろう。これは、空気燃料混合物における燃料リッチな点の欠如及び/又は空気燃料混合物における熱エネルギの欠如に起因し得る。逆に、完全に均質な空気燃料混合物は、温度が急速に十分高くなる場合、ノックを経験し得る。
【0038】
[0043] いくつかの実施形態においては、燃焼室250内の温度が高まるにつれて、SACI実装のパラメータの微調整が効率的なエンジン性能の実現及びノックの軽減を援助し得る。SACIレジームの進行中に噴射タイミング及び空気燃料混合物の均質性の度合いを変更することは、この効果を実現するための潜在的なストラテジである。これらの変更は、時期外れの自己着火(すなわちノック)を制限するための層状化の度合いを様々に変化させることによって、(スパークプラグではなく圧縮によって燃焼が開始される)HCCIタイプの燃焼ストラテジへの移行も可能にし得る。また、燃料のより大きい均質性が、より効率的で完全な燃料燃焼をもたらし得る。いくつかの実施形態においては、スパークプラグのタイミングは、燃焼室250が閉じている間のみ点火するように構成されてもよく、それによって火花点火が発生し得る時刻が制御される。いくつかの実施形態においては、燃焼室250内又は空気/排気処理システム内の他のどこかの温度センサ(図示しない)がこのタイミングスキームを制御するために用いられ得る。いくつかの実施形態においては、燃焼室250内の空気燃料混合物は非化学量論的であり得る。
【0039】
[0044] いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に吸気行程全体にわたって噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に、部分的には吸気行程において及び部分的には圧縮行程において噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に、約0°と約360°との間のエンジンクランク角度で噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に、少なくとも約0°(すなわち吸気行程の開始後)、少なくとも約10°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約80°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、少なくとも約170°、少なくとも約180°(すなわち圧縮行程の開始後)、少なくとも約190°、少なくとも約200°、少なくとも約210°、少なくとも約220°、少なくとも約230°、少なくとも約240°、少なくとも約250°、少なくとも約260°、少なくとも約270°、少なくとも約280°、少なくとも約290°、少なくとも約300°、又は少なくとも約310°のエンジンクランク角度で噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に、約320°以下、約310°以下、約300°以下、約290°以下、約280°以下、約270°以下、約260°以下、約250°以下、約240°以下、約230°以下、約220°以下、約210°以下、約200°以下、約190°以下、約180°以下(すなわち圧縮行程の開始前)、約170°以下、約160°以下、約150°以下、約140°以下、約130°以下、約120°以下、約110°以下、約100°以下、約90°以下、約80°以下、約70°以下、約60°以下、約50°以下、約40°以下、約30°以下、約20°以下、又は約10°以下のエンジンクランク角度で噴射され得る。上記で参照した冷間始動時の燃料の噴射のクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約0°と約320°以下又は少なくとも約100°と約180°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に、約0°、約10°、約20°、約30°、約40°、約50°、約60°、約70°、約80°、約90°、約100°、約110°、約120°、約130°、約140°、約150°、約160°、約170°、約180°、約190°、約200°、約210°、約220°、約230°、約240°、約250°、約260°、約270°、約280°、約290°、約300°、約310°、又は約320°のエンジンクランク角度で噴射され得る。
【0040】
[0045] いくつかの実施形態においては、冷間始動時の燃料噴射は第1のエンジンクランク角度で開始してもよく、冷間始動時の燃料噴射は第2のエンジンクランク角度で終了してもよい。換言すれば、冷間始動時の燃料噴射事象は、その燃料噴射事象の間にエンジンクランク角度が有意に変化するように、十分に長く継続し得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動時の燃料噴射事象は、少なくとも約0°(すなわち吸気行程の開始後)、少なくとも約10°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約80°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、少なくとも約170°、少なくとも約180°(すなわち圧縮行程の開始後)、少なくとも約190°、少なくとも約200°、少なくとも約210°、少なくとも約220°、少なくとも約230°、少なくとも約240°、少なくとも約250°、少なくとも約260°、少なくとも約270°、少なくとも約280°、少なくとも約290°、又は少なくとも約300°のエンジンクランク角度で開始し得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動時の燃料噴射事象は、約310°以下、約300°以下、約290°以下、約280°以下、約270°以下、約260°以下、約250°以下、約240°以下、約230°以下、約220°以下、約210°以下、約200°以下、約190°以下、約180°以下(すなわち圧縮行程の開始前)、約170°以下、約160°以下、約150°以下、約140°以下、約130°以下、約120°以下、約110°以下、約100°以下、約90°以下、約80°以下、約70°以下、約60°以下、約50°以下、約40°以下、約30°以下、約20°以下、又は約10°以下のエンジンクランク角度で開始し得る。上記で参照した冷間始動時の燃料噴射事象の開始のクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約0°と約310°以下又は少なくとも約100°と約180°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、冷間始動時の燃料噴射事象は、約0°、約10°、約20°、約30°、約40°、約50°、約60°、約70°、約80°、約90°、約100°、約110°、約120°、約130°、約140°、約150°、約160°、約170°、約180°、約190°、約200°、約210°、約220°、約230°、約240°、約250°、約260°、約270°、約280°、約290°、約300°、又は約310°のエンジンクランク角度で開始し得る。
【0041】
[0046] いくつかの実施形態においては、冷間始動時の燃料噴射事象は、少なくとも約0°(すなわち吸気行程の開始後)、少なくとも約10°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約80°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、少なくとも約170°、少なくとも約180°(すなわち圧縮行程の開始後)、少なくとも約190°、少なくとも約200°、少なくとも約210°、少なくとも約220°、少なくとも約230°、少なくとも約240°、少なくとも約250°、少なくとも約260°、少なくとも約270°、少なくとも約280°、少なくとも約290°、少なくとも約300°、少なくとも約310°、少なくとも約320°、少なくとも約330°、少なくとも約340°、少なくとも約350°、少なくとも約360°、少なくとも約370°、又は少なくとも約380°のエンジンクランク角度で終了し得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動時の燃料噴射事象は、約390°以下、約380°以下、約370°以下、約360°以下、約350°以下、約340°以下、約330°以下、約320°以下、約310°以下、約300°以下、約290°以下、約280°以下、約270°以下、約260°以下、約250°以下、約240°以下、約230°以下、約220°以下、約210°以下、約200°以下、約190°以下、約180°以下(すなわち圧縮行程の開始前)、約170°以下、約160°以下、約150°以下、約140°以下、約130°以下、約120°以下、約110°以下、約100°以下、約90°以下、約80°以下、約70°以下、約60°以下、約50°以下、約40°以下、約30°以下、又は約20°以下のエンジンクランク角度で終了し得る。上記で参照した冷間始動時の燃料噴射事象の終了のクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約10°と約390°以下又は少なくとも約100°と約180°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、冷間始動時の燃料噴射事象は、約10°、約20°、約30°、約40°、約50°、約60°、約70°、約80°、約90°、約100°、約110°、約120°、約130°、約140°、約150°、約160°、約170°、約180°、約190°、約200°、約210°、約220°、約230°、約240°、約250°、約260°、約270°、約280°、約290°、約300°、約310°、約320°、約330°、約340°、約350°、約360°、約370°、約380°、又は約390°のエンジンクランク角度で終了し得る。
【0042】
[0047] いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に少なくとも約1,000バールの噴射圧力で噴射され得る。換言すれば、燃料が噴射されている間の燃料噴射装置270の圧力は少なくとも約1,000バールであり得る。いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に、少なくとも約1,000バール、少なくとも約1,100バール、少なくとも約1,200バール、少なくとも約1,300バール、少なくとも約1,400バール、少なくとも約1,500バール、少なくとも約1,600バール、少なくとも約1,700バール、少なくとも約1,800バール、少なくとも約1,900バール、少なくとも約2,000バール、少なくとも約2,100バール、少なくとも約2,200バール、少なくとも約2,300バール、少なくとも約2,400バール、少なくとも約2,500バール、少なくとも約2,600バール、少なくとも約2,700バール、少なくとも約2,800バール、又は少なくとも約2,900バールの噴射圧力で噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に、約3,000バール以下、約2,900バール以下、約2,800バール以下、約2,700バール以下、約2,600バール以下、約2,500バール以下、約2,400バール以下、約2,300バール以下、約2,200バール以下、約2,100バール以下、約2,000バール以下、約1,900バール以下、約1,800バール以下、約1,700バール以下、約1,600バール以下、約1,500バール以下、約1,400バール以下、約1,300バール以下、約1,200バール以下、又は約1,100バール以下の噴射圧力で噴射され得る。上記で参照した冷間始動時の噴射圧力の組み合わせ(例えば少なくとも約1,000バールと約3,000バール以下又は少なくとも約1,500バールと約2,000バール以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、燃料は冷間始動時に、約1,000バール、約1,100バール、約1,200バール、約1,300バール、約1,400バール、約1,500バール、約1,600バール、約1,700バール、約1,800バール、約1,900バール、約2,000バール、約2,100バール、約2,200バール、約2,300バール、約2,400バール、約2,500バール、約2,600バール、約2,700バール、約2,800バール、約2,900バール、約3,000バールの噴射圧力で噴射され得る。
【0043】
[0048] いくつかの実施形態においては、燃料噴射事象の際に噴射される燃料の一部は冷間始動時に吸気バルブ230が開弁されている間に噴射されてもよく、燃料噴射事象の際に噴射される燃料の一部は吸気バルブ230が閉弁されている間に噴射されてもよい。換言すれば、燃料噴射事象は、燃料噴射事象の際に噴射される燃料の一部が吸気バルブ閉弁(IVC)前に噴射され燃料噴射事象の際に噴射される燃料の一部がIVC後に噴射されるように、冷間始動時に十分な持続時間を有し得る。いくつかの実施形態においては、燃料の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%が、それらの間の全ての値及び範囲を含め、冷間始動時に吸気バルブ230が閉弁している間(すなわちIVC後)に噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料の約40%以下、約35%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、又は約15%以下が、それらの間の全ての値及び範囲を含め、冷間始動時に吸気バルブ230が開弁している間(すなわちIVC前)に噴射され得る。
【0044】
[0049] いくつかの実施形態においては、燃料噴射タイミングは、冷間始動動作からHCCI動作に変化し得る(すなわち、冷間始動と定常状態MCCI動作との間の移行期間)。いくつかの実施形態においては、燃料はHCCIの際に吸気行程全体にわたって噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料はHCCIの際に、部分的には吸気行程において及び部分的には圧縮行程において噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料はHCCIの際に、少なくとも約0°(すなわち吸気行程の開始後)、少なくとも約10°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約80°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、少なくとも約170°、少なくとも約180°(すなわち圧縮行程の開始後)、少なくとも約190°、少なくとも約200°、少なくとも約210°、少なくとも約220°、少なくとも約230°、少なくとも約240°、少なくとも約250°、少なくとも約260°、少なくとも約270°、少なくとも約280°、少なくとも約290°、少なくとも約300°、又は少なくとも約310°のエンジンクランク角度で噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料はHCCIの際に、約320°以下、約310°以下、約300°以下、約290°以下、約280°以下、約270°以下、約260°以下、約250°以下、約240°以下、約230°以下、約220°以下、約210°以下、約200°以下、約190°以下、約180°以下(すなわち圧縮行程の開始前)、約170°以下、約160°以下、約150°以下、約140°以下、約130°以下、約120°以下、約110°以下、約100°以下、約90°以下、約80°以下、約70°以下、約60°以下、約50°以下、約40°以下、約30°以下、約20°以下、又は約10°以下のエンジンクランク角度で噴射され得る。上記で参照したHCCIの際の燃料の噴射のクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約0°と約320°以下又は少なくとも約100°と約180°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、燃料はHCCIの際に、約0°、約10°、約20°、約30°、約40°、約50°、約60°、約70°、約80°、約90°、約100°、約110°、約120°、約130°、約140°、約150°、約160°、約170°、約180°、約190°、約200°、約210°、約220°、約230°、約240°、約250°、約260°、約270°、約280°、約290°、約300°、約310°、又は約320°のエンジンクランク角度で噴射され得る。
【0045】
[0050] いくつかの実施形態においては、HCCIの際の燃料噴射は第1のエンジンクランク角度で開始してもよく、HCCIの際の燃料噴射は第2のエンジンクランク角度で終了してもよい。換言すれば、HCCIの際の燃料噴射事象は、その燃料噴射事象の間にエンジンクランク角度が有意に変化するように、十分に長く継続し得る。いくつかの実施形態においては、HCCIの際の燃料噴射事象は、少なくとも約0°(すなわち吸気行程の開始後)、少なくとも約10°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約80°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、少なくとも約170°、少なくとも約180°(すなわち圧縮行程の開始後)、少なくとも約190°、少なくとも約200°、少なくとも約210°、少なくとも約220°、少なくとも約230°、少なくとも約240°、少なくとも約250°、少なくとも約260°、少なくとも約270°、少なくとも約280°、少なくとも約290°、又は少なくとも約300°のエンジンクランク角度で開始し得る。いくつかの実施形態においては、HCCIの際の燃料噴射事象は、約310°以下、約300°以下、約290°以下、約280°以下、約270°以下、約260°以下、約250°以下、約240°以下、約230°以下、約220°以下、約210°以下、約200°以下、約190°以下、約180°以下(すなわち圧縮行程の開始前)、約170°以下、約160°以下、約150°以下、約140°以下、約130°以下、約120°以下、約110°以下、約100°以下、約90°以下、約80°以下、約70°以下、約60°以下、約50°以下、約40°以下、約30°以下、約20°以下、又は約10°以下のエンジンクランク角度で開始し得る。上記で参照したHCCIの際の燃料噴射事象の開始のクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約0°と約310°以下又は少なくとも約100°と約180°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、HCCIの際の燃料噴射事象は、約0°、約10°、約20°、約30°、約40°、約50°、約60°、約70°、約80°、約90°、約100°、約110°、約120°、約130°、約140°、約150°、約160°、約170°、約180°、約190°、約200°、約210°、約220°、約230°、約240°、約250°、約260°、約270°、約280°、約290°、約300°、又は約310°のエンジンクランク角度で開始し得る。
【0046】
[0051] いくつかの実施形態においては、HCCIの際の燃料噴射事象は、少なくとも約0°(すなわち吸気行程の開始後)、少なくとも約10°、少なくとも約20°、少なくとも約30°、少なくとも約40°、少なくとも約50°、少なくとも約60°、少なくとも約70°、少なくとも約80°、少なくとも約90°、少なくとも約100°、少なくとも約110°、少なくとも約120°、少なくとも約130°、少なくとも約140°、少なくとも約150°、少なくとも約160°、少なくとも約170°、少なくとも約180°(すなわち圧縮行程の開始後)、少なくとも約190°、少なくとも約200°、少なくとも約210°、少なくとも約220°、少なくとも約230°、少なくとも約240°、少なくとも約250°、少なくとも約260°、少なくとも約270°、少なくとも約280°、少なくとも約290°、少なくとも約300°、又は少なくとも約310°のエンジンクランク角度で終了し得る。いくつかの実施形態においては、HCCIの際の燃料噴射事象は、約320°以下、約310°以下、約300°以下、約290°以下、約280°以下、約270°以下、約260°以下、約250°以下、約240°以下、約230°以下、約220°以下、約210°以下、約200°以下、約190°以下、約180°以下(すなわち圧縮行程の開始前)、約170°以下、約160°以下、約150°以下、約140°以下、約130°以下、約120°以下、約110°以下、約100°以下、約90°以下、約80°以下、約70°以下、約60°以下、約50°以下、約40°以下、約30°以下、又は約20°以下のエンジンクランク角度で終了し得る。上記で参照したHCCIの際の燃料噴射事象の終了のクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約10°と約320°以下又は少なくとも約100°と約180°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、HCCIの際の燃料噴射事象は、約10°、約20°、約30°、約40°、約50°、約60°、約70°、約80°、約90°、約100°、約110°、約120°、約130°、約140°、約150°、約160°、約170°、約180°、約190°、約200°、約210°、約220°、約230°、約240°、約250°、約260°、約270°、約280°、約290°、約300°、約310°、又は約320°のエンジンクランク角度で終了し得る。
【0047】
[0052] いくつかの実施形態においては、HCCIの際の燃料噴射事象の一部は吸気行程において(すなわち0°と180°との間のエンジンクランク角度で)発生し得ると共に、HCCIの際の燃料噴射事象の一部は圧縮行程において320°のエンジンクランク角度の前に(すなわち180°と320°との間のエンジンクランク角度で)発生し得る。いくつかの実施形態においては、燃料噴射事象の際に噴射される燃料の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、又は少なくとも約60%が、それらの間の全ての値及び範囲を含め、HCCIでの動作中に吸気行程の際に噴射され得る。いくつかの実施形態においては、燃料噴射事象の際に噴射される燃料の約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、又は約40%以下が、それらの間の全ての値及び範囲を含め、HCCIでの動作中に圧縮行程の際に噴射され得る。
【0048】
[0053] いくつかの実施形態においては、燃料噴射タイミングは、HCCIから定常状態MCCI動作に変化し得る。いくつかの実施形態においては、定常状態MCCIにおける燃料噴射事象は、完全に又は実質的に圧縮行程の際に発生し得る。いくつかの実施形態においては、燃料噴射事象の際に噴射される燃料の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%が、エンジンクランク角度が310度に達した後で噴射され得る。いくつかの実施形態においては、定常状態MCCIにおいて、燃料噴射事象は燃焼行程の際に(すなわち360°よりも大きいエンジンクランク角度で)終了し得る。
【0049】
[0054] いくつかの実施形態においては、燃料は、第1の燃料と第2の燃料とが冷間始動時に噴射され得る。いくつかの実施形態においては、第2の燃料は第1の燃料とは異なる燃料である。いくつかの実施形態においては、第2の燃料はHCCI動作の際に噴射され得る。いくつかの実施形態においては、第2の燃料は定常状態MCCI動作の際に噴射され得る。いくつかの実施形態においては、第2の燃料は、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、又は少なくとも約55のセタン数を有し得る。いくつかの実施形態においては、第2の燃料は、約60以下、約55以下、約50以下、約45以下、約40以下、又は約35以下のセタン数を有し得る。上記で参照した第2の燃料のセタン数の値の組み合わせ(例えば少なくとも約30と約60以下又は少なくとも約40と約50以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、第2の燃料は、約30、約35、約40、約45、約50、約55、又は約60のセタン数を有し得る。
【0050】
[0055] いくつかの実施形態においては、ノックを軽減するために、燃焼室250内の有効圧縮比を下げるように吸気を絞ることが実装され得る。標準的なCIアーキテクチャの実圧縮比は固定されているが、有効圧縮比はエンジンの吸気を絞ることによって低減され得る。流入する空気が薄くなるようにスロットルプレート(図示しない)が気流を部分的に遮断して、より密度の低い圧縮状態をもたらしてもよい。また、吸気行程における吸気バルブ230のリフトの量を少なくすることによって、エンジンは結局のところ、より少ない空気を吸い込む。より少ない空気が燃焼室250内に移動すると、ピストンがTDCに戻る移動をするときに最終的に実現可能な圧力が低減され、それによって火花補助動作期間における自己着火の可能性が低減される。吸気バルブ230のリフトを調整することに加え、吸気バルブ230又は排気バルブ240のタイミングを調整することで、同様の結果を実現することができる。吸気バルブ230は、吸気行程の一部の間、閉弁したままであってもよく、それによって吸気の量が低減される。同様の結果を実現するために、吸気バルブ230は、圧縮行程の一部の間、開弁したままであってもよい。
【0051】
[0056] いくつかの実施形態においては、エンジン200はターボチャージャ(図示しない)を含み得る。いくつかの実施形態においては、エンジン200はスーパーチャージャ(図示しない)を含み得る。いくつかの実施形態においては、エンジン200はターボコンパウンディングデバイス(turbo-compounding device)を含み得る。いくつかの実施形態においては、空気は、燃焼室250に進入する前に、スーパーチャージャ、ターボチャージャ、及び/又はターボコンパウンディングデバイスを通過し得る。
【0052】
[0057] いくつかの実施形態においては、吸気バルブ230をより長く開弁しておくことが、ターボチャージャ又は他の排気規制装置(すなわちミラーサイクル機構)から提供される背圧と組み合わせて用いられ得る。いくつかの実施形態においては、EGRが燃焼室250内で燃料の混合物を希釈するのを援助し得る。EGRの使用は、燃焼室250内の温度の上昇を容易にすると共に最終的には燃焼室250を所望の定常状態温度にするという目的に適い得る。また、EGRは、吸気行程において吸い込まれた空気を移動させて燃料空気混合物の全体濃度を希釈することができ、時期外れの自己着火に対するエネルギーバリアを増加させる。
【0053】
[0058] CIエンジン200の温度が所望の定常状態動作温度に向けて更に高まるにつれて、空気燃料混合物の均質性はより望ましくないものになる。上述したように、HCCI動作は狭い温度範囲においてのみ最適となる。HCCI動作の際、燃料には燃焼室250において熱エネルギを吸収する時間がより多くあり、潜在的には、実質的にTDCの前に燃焼し得る。いくつかの実施形態においては、SACIレジームの末期及びHCCIを通じた移行におけるこの出来事は、空気燃料混合物の均質性を低減させるために燃料噴射装置270のタイミングを調整することによって軽減され得る。燃料のポスト噴射が同様の結果を実現することができる。燃料の追加的な噴射が更に、燃焼が適時に発生していることを保証するべく、燃料の局所的にリッチ(又はクール)な点を作り出すように燃料噴射に層状化(又はチャージ冷却)を導入し得る。いくつかの実施形態においては、スパークプラグのタイミングは、拡大する火花点火火炎前面によってノックが発生する可能性を低減させるために、遅延され得る。いくつかの実施形態においては、スパークプラグのタイミングは、拡大する火花点火火炎前面によってノックが発生する可能性を低減させるために、ピストン220がTDC位置を離れた後まで遅延され得る。本明細書に記載される排気希釈ベースのノック軽減対策は、高温でのエンジン負荷も低減させ得る。また、本明細書に記載される、噴射タイミング、ポスト噴射、及びEGRを伴うノック軽減方法の各々は、補助装置275がグロープラグであるときのノック緩和も援助し得る。
【0054】
[0059] CIエンジン200をスパークプラグで動作させるときには、CIエンジン200の最初の始動とCIエンジン200の定常状態MCCI動作への移行の完了との間に時間遅延が存在する。いくつかの実施形態においては、この時間遅延は、約30秒未満、約45秒未満、約60秒未満、約90秒未満、又は約120秒未満であり得る。
【0055】
[0060] いくつかの実施形態においては、補助装置275はプラズマ点火装置であり得る。プラズマ点火は、標準的なスパークプラグが点火を生み出すのに十分でない局所化された熱エネルギを生み出す場合、火花点火と同様に機能し得る。プラズマ点火システムにおいて遭遇する障害は、火花補助圧縮着火システムにおけるものと類似している。プラズマ点火は、所望の通りに点火とノックの防止との両方を容易にするために、混合物の層状化、点火タイミング、排ガス滞留(EGR)希釈、及びIVCタイミングに対する調整を潜在的に伴い得る。プラズマ点火装置を用いてCIエンジン200を動作させるときには、CIエンジン200の最初の始動とCIエンジン200の定常状態MCCI動作への移行の完了との間に時間遅延が存在する。いくつかの実施形態においては、この時間遅延は、約30秒未満、約45秒未満、約60秒未満、約90秒未満、又は約120秒未満であり得る。いくつかの実施形態においては、複数の領域における燃焼を同時に安定化させるために、複数の補助装置275がCIエンジン200全体に配置されてもよく、又は1つの装置がプラズマを複数の方向に噴射してもよい。
【0056】
[0061]
図3は、一実施形態によるCIエンジン300を示す。CIエンジン300は、シリンダ310と、シリンダ310内で移動するように構成されたピストン320と、ヘッドデッキ325と、吸気バルブ330と、排気バルブ340とを含む。シリンダ310、ピストン320、ヘッドデッキ325、吸気バルブ330、及び排気バルブ340は、集合的に燃焼室350を定義する。CIエンジン300、シリンダ310、ピストン320、吸気バルブ330、排気バルブ340、及び燃焼室350は、
図1及び2を参照して上述したエンジン100,200、シリンダ110,210、ピストン120,220、吸気バルブ130,230、排気バルブ140,240、及び燃焼室150,250と実質的に類似し得るか又は同じであり得る。したがって、CIエンジン300のコンポーネントの特定の態様の詳細は、本明細書においては更には詳述されず、記載が明確に異ならない限り、エンジン100,200に関して上述した対応するコンポーネントと形状又は機能が同一又は実質的に類似していると考えられるべきである。
【0057】
[0062]
図3に示されるように、燃料噴射装置370は、ピストン320がTDC位置にある間に又はピストン320がTDC位置に近づくにつれ、曲線Bに沿って補助装置375に向けて燃料を噴霧する。換言すれば、補助装置375は、燃焼室350のボール領域351の外縁部に位置している。いくつかの実施形態においては、ボール領域351の外縁部への補助装置375の配置は、表面着火を誘発し得る。ボールの形状は燃料噴射装置370の噴霧経路に影響するので、燃料は、流れBがピストンボールによって方向を変えられた後で、補助装置375と接触し得る。いくつかの実施形態においては、補助装置375は、グロープラグ、スパークプラグ、又はプラズマ点火装置であり得る。
図3に記載される実施形態の動作条件に関する一般的な考慮事項は、
図2のものと同様である。もっとも、補助装置375の配置に関してはいくつかの相違が存在するであろう。いくつかの実施形態においては、ボール領域351の外縁部への補助装置375の配置は、僅かに遅れた着火に繋がり得る。補助装置375の配置により長くなった燃料の流路によって、燃料粒子又は空気/燃料蒸気混合物が補助装置375と接触すると、この粒子がより細かくなり、より分散し、又はよりしっかりと空気と混合された状態がもたらされ得る。より高表面積の燃料粒子は単位表面積当たりより多くの酸化空気に接触するので、これはより完全な燃焼事象に繋がり得る。
【0058】
[0063]
図4は、一実施形態によるCIエンジン400を示す。CIエンジン400は、シリンダ410と、シリンダ310内で移動するように構成されたピストン420と、シリンダヘッドと、1つ又は複数の吸気バルブ430と、1つ又は複数の排気バルブ440とを含む。シリンダ410、ピストン420、ヘッドデッキ425、吸気バルブ430、排気バルブ440、及びシリンダヘッドは、集合的に燃焼室450を定義する。CIエンジン400、シリンダ410、ピストン420、ヘッドデッキ425、吸気バルブ430、排気バルブ440、及び燃焼室450は、
図1~3を参照して上述したエンジン100,200,300、シリンダ110,210,310、ピストン120,220,320、ヘッドデッキ125,225,325、吸気バルブ130,230,330、排気バルブ140,240,340、及び燃焼室150,250,350と実質的に類似し得るか又は同じであり得る。したがって、CIエンジン400のコンポーネントの特定の態様の詳細は、本明細書においては更には詳述されず、記載が明確に異ならない限り、エンジン100,200,300に関して上述した対応するコンポーネントと形状又は機能が同一又は実質的に類似していると考えられるべきである。
【0059】
[0064]
図4に示されるように、燃料噴射装置470は、ピストン420がTDC位置にある間に又はピストン420がTDC位置に近づくにつれ、曲線Cに沿って燃料を噴霧する。いくつかの実施形態においては、補助装置475は、スキッシュ領域453において燃焼室450のボール領域451の外側に位置している。ボールの形状は燃料噴射装置370の噴霧経路に影響する。いくつかの実施形態においては、補助装置475は、グロープラグ、スパークプラグ、又はプラズマ点火装置であり得る。
図4に記載される実施形態の動作条件に関する一般的な考慮事項は、
図2のものと同様である。もっとも、補助装置475の配置に関してはいくつかの相違が存在するであろう。いくつかの実施形態においては、補助装置475をスキッシュ領域453に配置することは、表面着火の可能性を低減させ得る。いくつかの実施形態においては、補助装置475をスキッシュ領域453に配置することは、燃焼室450における加熱効果を生み出し得る。スキッシュ領域453に補助装置475を配置することの全体的な熱効果及び点火の影響は、ボール領域451に配置することと比べて明確ではないであろう。いくつかの実施形態においては、燃焼室450のスキッシュ領域453に補助装置475を配置することは、僅かに遅れた点火に繋がり得る。補助装置475の配置により長くなった燃料の流路によって、補助装置475が着火の開始を援助すると、燃料粒子がより細かくなると共により分散した状態がもたらされ得る。より高表面積の燃料粒子は単位表面積当たりより多くの酸化空気に接触するので、これはより完全な燃焼事象に繋がり得る。
【0060】
[0065]
図5は、いくつかの実施形態に従って、冷間始動補助燃焼からHCCI動作まで、及び最終的には定常状態(すなわち補助無し)MCCI動作まで、着火タイミングがエンジン温度の高まりと共にどのように発展し得るかを示す。ここに提示される移行は、前述した冷間始動ストラテジのいずれにも当てはまり得る。燃料層状化のレベルは点火タイミングに影響し得る。SACI又は火花補助MCCIの場合は、火花タイミングは点火タイミングにも影響し得る。
図5に示されるように、曲線はエンジン圧力をエンジンクランク角度(すなわち、圧縮行程から燃焼行程までの時間又は移動)の関数として表す。この第1の例示的なモードにおいて、より低いx軸値の変曲点を有する曲線は、冷間始動及び定常状態MCCI動作を表す。より高いx軸値の変曲点を有する曲線はHCCI動作を表し、その一方でこれらの曲線に沿った変曲点は、着火事象が発生して圧力が増加し始める点を表す。着火事象は、自己着火又は火花補助着火事象であり得る。エンジンの温度が最初に上昇するにつれ、エンジン動作は燃焼補助冷間始動ストラテジで動作する。いくつかの実施形態においては、このストラテジはスパークプラグを用いて着火事象を制御し得る。エンジン温度が高まるにつれ、火花タイミングは、ノックの発生を回避するために遅延されなければならなくなり、着火事象は後の時刻(
図5の右側)にシフトされる。やがて、温度は長い着火遅れを伴って圧縮着火事象を可能にする程度にまで高まり、その時点でエンジンは、追加的な燃焼補助なしに、HCCIモードで動作するようになる。更なる温度上昇は、必要とされる着火遅れを、やがてMCCI動作に到達する時点まで短縮する(燃焼をシフトさせて
図5の左側に戻す)。冷間始動からHCCI又はHCCIから定常状態MCCIへの移行をマークする燃焼室内の特定の温度又は事象はない。その代わり、燃焼は、
図5に示されるように、連続的なスペクトルに沿って発展する。エンジンが低負荷又はアイドリングを長期間持続させなければならない場合には、エンジンは補助燃焼モードに戻る移行をしてもよく、着火タイミングが適切に調整されてもよい。しかしながら、そのような場合には、長期動作によって実現される高められたエンジン温度が、負荷需要が高まるにつれて、より迅速なMCCI動作に戻る移行を可能にするであろう。
【0061】
[0066] いくつかの実施形態においては、動作モードは、IVCの時点における燃焼室の内部の内容物(例えば空気又は空気と燃料)の質量平均温度(簡潔にするため、この温度は本明細書においてはIVC温度と称される)に基づいて変化し得る。いくつかの実施形態においては、動作モードは、空気が吸気バルブを通過するときの空気の質量平均温度に基づいて変化し得る(簡潔にするため、この温度は本明細書においては吸気温度と称される)。いくつかの実施形態においては、エンジンは、IVC温度及び/又は吸気温度が、間の全ての値及び範囲を含め、約200℃未満、約190℃未満、約180℃未満、約170℃未満、約160℃未満、約150℃未満、約140℃未満、約130℃未満、約120℃未満、約110℃未満、約100℃未満、約90℃未満、約80℃未満、約70℃未満、約60℃未満、約50℃未満、約40℃未満、約30℃未満、約20℃未満であるとき、冷間始動モードで動作し得る。
【0062】
[0067] いくつかの実施形態においては、エンジンは、IVC温度及び/又は吸気温度が少なくとも約50℃、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃、少なくとも約200℃、少なくとも約250℃、少なくとも約300℃、少なくとも約350℃、少なくとも約400℃、又は少なくとも約450℃に達すると、HCCIに移行し得る。いくつかの実施形態においては、エンジンは、IVC温度及び/又は吸気温度が約500℃以下、約450℃以下、約400℃以下、約350℃以下、約300℃以下、約250℃以下、約200℃以下、約150℃以下、又は約100℃以下の値に達すると、HCCIで動作し得る。上記で参照したHCCIへの移行のIVC温度及び/又は吸気温度の組み合わせ(例えば少なくとも約50℃と約500℃以下又は少なくとも約100℃と約400℃以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、エンジンは、IVC温度及び/又は吸気温度が約50℃、約100℃、約150℃、約200℃、約250℃、約300℃、約350℃、約400℃、約450℃、又は約500℃に達すると、HCCIに移行し得る。
【0063】
[0068] いくつかの実施形態においては、エンジンは、少なくとも約500℃、少なくとも約520℃、少なくとも約540℃、少なくとも約560℃、少なくとも約580℃、少なくとも約600℃、少なくとも約620℃、少なくとも約640℃、少なくとも約660℃、少なくとも約680℃、少なくとも約700℃、少なくとも約780℃、少なくとも約800℃、少なくとも約820℃、少なくとも約840℃、少なくとも約860℃、少なくとも約880℃、少なくとも約900℃、少なくとも約920℃、少なくとも約940℃、少なくとも約960℃、又は少なくとも約980℃のIVC温度及び/又は吸気温度で定常状態MCCI動作に移行し得る。いくつかの実施形態においては、エンジンは、約1,000℃以下、約980℃以下、約960℃以下、約940℃以下、約920℃以下、約900℃以下、約880℃以下、約860℃以下、約840℃以下、約820℃以下、約800℃以下、約780℃以下、約760℃以下、約740℃以下、約720℃以下、約700℃以下、約680℃以下、約660℃以下、約640℃以下、約620℃以下、約600℃以下、約580℃以下、約540℃以下、又は約520℃以下のIVC温度及び/又は吸気温度で定常状態MCCI動作に移行し得る。
【0064】
[0069] 上記で参照した定常状態MCCIへの移行のIVC温度及び/又は吸気温度の組み合わせ(例えば少なくとも約500℃と約1,000℃以下又は少なくとも約600℃と約800℃以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、エンジンは、約500℃、約520℃、約540℃、約560℃、約580℃、約600℃、約620℃、約640℃、約660℃、約680℃、約700℃、約720℃、約740℃、約760℃、約780℃、約800℃、約820℃、約840℃、約860℃、約880℃、約900℃、約920℃、約940℃、約960℃、約980℃、又は約1,000℃のIVC温度及び/又は吸気温度で定常状態MCCI動作に移行し得る。
【0065】
[0070] いくつかの実施形態においては、エンジンは冷間始動からHCCIへ、及びその後HCCIから定常状態MCCIへ移行し得る。いくつかの実施形態においては、エンジンは冷間始動から定常状態MCCIに直接移行し得る。
【0066】
[0071]
図6は、いくつかの実施形態に従って、冷間始動動作からHCCI動作へ、及び最終的には定常状態MCCI動作へのエンジン動作の移行に関連し得るVVTスキームを表す。前述の冷間始動ストラテジの各々においては、ノックを軽減しつつ可能な限り迅速且つ効率的に冷間始動動作から定常状態動作に切り替える様々な方法がある。冷間始動燃焼モードから定常状態MCCI燃焼に移動するときには、VVTがその移行を容易にし得る。
図6は、VVTを実装するためのカム整相アプローチの一例であり、開弁及び閉弁のカムタイミングのみが変化している。いくつかの実施形態においては、バルブの開弁期間及びバルブリフト(すなわちバルブプロファイル)は一定のままである。いくつかの実施形態においては、カムタイミングはエンジン位置に対して調整されてもよく、吸気バルブプロファイル及び排気バルブプロファイルの両方が等しい時間の量、同じ方向に効果的にシフトされる。いくつかの実施形態においては、基本排気タイミングプロファイル601は最初の冷間始動動作の際及び定常状態MCCI動作の際の排気バルブのバルブプロファイルであり得、その一方で基本吸気タイミングプロファイル602は最初の冷間始動動作の際及び定常状態MCCI動作の際の吸気バルブのバルブプロファイルであり得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブのタイミングは、冷間始動からHCCI又は火花補助動作への移行の際に、基本排気タイミングプロファイル601から中間排気タイミングプロファイル603へ進角排気タイミングプロファイル605へ調整され得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブのタイミングは、火花補助又はHCCI動作から定常状態MCCI動作への移行の際に、進角排気タイミングプロファイル605から中間排気タイミングプロファイル603へ、及び基本排気タイミングプロファイル601へ調整され得る。いくつかの実施形態においては、吸気バルブのタイミングは、冷間始動から点火補助又はHCCI動作への移行の際に、基本吸気タイミングプロファイル602から中間吸気タイミングプロファイル604へ、及び進角吸気タイミングプロファイル606へ調整され得る。いくつかの実施形態においては、吸気バルブのタイミングは、点火補助からHCCI動作へ定常状態MCCI動作への移行の際に、進角吸気タイミングプロファイル606から中間吸気タイミングプロファイル604へ、及び基本吸気タイミングプロファイル602へ調整され得る。
【0067】
[0072] 冷間始動からHCCIへの移行のいくつかの恩恵は、バルブのタイミングが進角状態に変化するときに実現され得る。まず、吸気行程の際に吸気バルブがより早く閉弁するので、有効圧縮比が変化する。これはシリンダ内に吸い込まれる空気の量を制限し、それによって、圧縮に利用可能なピストンストロークの量が低減される。これにより、時期外れの自己着火事象を容易にするために利用可能なエネルギの量が低減され得るか、又は燃焼がMCCIモードに戻る移行をするときの着火遅れを短くするために利用可能なエネルギが増大され得る。この同じ効果は、バルブタイミングを遅らせることによって(すなわち吸気バルブを遅く閉弁することによって)可能であり、その場合、圧縮は、バルブが閉弁する前には開始し得ないので、限定される。
【0068】
[0073] グロープラグ補助モード、SACIモード、火花補助MCCIモード、及びプラズマ着火冷間始動モードでは、バルブタイミングプロファイルを介して高い当初有効圧縮比(およそ17:1、ベースライン比)を有することに関連する利点がある。エンジンが周囲温度を上回る温度まで温まってはいるが依然として定常状態動作に望ましい温度を下回っているときには、前述の冷間始動方法が依然として実用的である。しかしながら、17:1に近い圧縮比では、(実質的な燃料空気混合及び均質性がある場合には)グロープラグ又は火花補助によってノックの可能性がより有意になる。この可能性を軽減するために、バルブタイミングは、進角排気タイミングプロファイル605及び進角吸気タイミングプロファイル606に対応して、(より高オクタンの燃料はより高い圧縮比を利用するところ、この燃料のオクタン価に基づいて)有効圧縮比をおよそ12:1の値まで低減させるために進角し得る。エンジンが温まり続けるにつれ、燃焼は、バルブタイミングを基本値に向かって遅らせることにより、定常状態MCCI燃焼モードに向かって移行し得る。しかしながら、定常状態MCCI燃焼に到達する前に、エンジンはまず、バルブタイミングが基本値に戻る移行をしているときに、約13:1から約15:1の圧縮比でHCCI燃焼ストラテジを利用し得る。この時間ウィンドウの間にHCCIを用いることは、ノックを軽減するため及びHCCIの効率的な動作が最も実用的である小さな温度ウィンドウを活かすためには有利である。最終的に、エンジンが定常状態MCCIの動作に十分な温度に達すると、バルブプロファイルは基本タイミングスキームに到達して、定常状態MCCI動作にとって重要なおよそ17:1の圧縮比を実現し得る。この時点で、冷間始動補助方法は停止し得る。
【0069】
[0074] いくつかの実施形態においては、冷間始動時にプラズマ点火もしくはSACI装置又は方法が採用されるとき、IVCは進角され得る(すなわち早くなり得る)。いくつかの実施形態においては、冷間始動時にプラズマ点火もしくはSACI装置又は方法が採用されるとき、IVCは遅角され得る(すなわち遅くなり得る)。いくつかの実施形態においては、冷間始動時に表面着火を誘起するためにグロープラグが用いられるとき、基本バルブタイミング(例えば、基本吸気タイミングプロファイル602及び基本排気タイミングプロファイル601)が用いられ得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動時に表面着火を誘起するためにグロープラグが用いられるとき、排気バルブの閉弁は進角され得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動時に加熱効果を生み出すためにグロープラグが用いられるとき、基本バルブタイミング(例えば、基本吸気タイミングプロファイル602及び基本排気タイミングプロファイル601)が用いられ得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動時に加熱効果を生み出すためにグロープラグが用いられるとき、排気バルブの閉弁は進角され得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動時に加熱効果を生み出すために内部又は外部カートリッジヒータが用いられるとき、基本バルブタイミング(例えば、基本吸気タイミングプロファイル602及び基本排気タイミングプロファイル601)が用いられ得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動時に加熱効果を生み出すために内部又は外部カートリッジヒータが用いられるとき、排気バルブの閉弁は進角され得る。
【0070】
[0075] VVTストラテジは低エンジン負荷(すなわち低吸気及び燃焼)の持続期間にわたって燃焼を安定化させるためにも用いられ得るが、熱エネルギはMCCI動作の持続には不十分であるかもしれない。いくつかの実施形態においては、より複雑な、又は非対称的なVVTスキームが、特定のエンジンの所望の性能特性を実現するのを援助し得る。こうしたVVTスキームストラテジは、スパークプラグ、グロープラグ、プラズマ点火、吸気ヒータ、パイロット噴射と共同して、又は前述のストラテジの任意の組み合わせと一致協力して、機能し得る。
【0071】
[0076] また、VVTストラテジの採用は、排気中に残っているエネルギと保持及び吸気バルブへの再導入のために利用可能な排気の量とを潜在的に調節し得る。排気バルブの開弁タイミングが進角されるにつれて、排気バルブを通じた排気の排除は膨張行程の早い段階で、したがって(燃焼ガスが膨張行程でより少ない膨張を経験しているため)より高い温度で発生する。このより高い温度の排気は、排気ポートにおいて、燃焼室内への再導入のために利用可能なままであろう。排気バルブ開弁の進角と排気バルブ閉弁の遅角(すなわち、より長い開弁期間、非対称的なVVT)との両方を適用することは、排気バルブの開弁と吸気バルブの開弁との間に重複が存在するように再導入を援助し得る。逆に、導入を可能にするように排気バルブの閉弁を遅角させる代わりに排気バルブの閉弁が進角されると、排気は、シリンダ内に閉じ込められ得るか、又は吸気バルブの開弁も進角されるのであれば吸気ポートに伝達され得る。後者は吸気の逆流(閉じ込められた排気が吸気ポートに戻るように流入すること)を可能にし、その場合、この排気エネルギは主要な誘発事象まで吸気内に留まるであろう。別の言い方をすれば、高温排気によって提供される追加的な熱エネルギを利用して後続のエンジンサイクルの着火を補助するように、修正されたバルブタイミングが用いられ得る。この熱エネルギは、HCCI燃焼モードにとって、並びに定常状態動作を容易にする高い温度を持続させるために排気熱エネルギが必要とされる適度な負荷でのMCCI燃焼動作にとって、重要であり得る。いくつかの実施形態においては、HCCIの際、排気バルブを早く閉弁すると共に吸気バルブを遅く開弁するように、非対称的なVVTが採用され得る。
【0072】
[0077] 更なる例示的な動作モードが燃焼位相(combustion phasing)及びバルブタイミングのために用いられ得る。いくつかの実施形態においては、冷間始動ストラテジは、燃焼室内の低エネルギに起因して、非常に遅い燃焼位相で開始し得る。この遅い燃焼位相は、燃焼の反応速度を低減させ得る。また、SI燃焼の場合、遅い燃焼位相は、(ノックを回避するべく)大口径エンジン全体に火炎伝播するための時間を削減し得る。これは、スパークプラグを用いて着火することのできる空気と燃料との予混合された着火可能混合物を作り出すための(直接の又はポートでの)燃料の非常に早い噴射によって実現され得る。
【0073】
[0078] エンジンが温まるにつれ、HCCIのような自己着火燃焼モードへの移行がより早い燃焼位相をもたらし、より早くより急速なTDC付近での圧力上昇がもたらされ得る。空気燃料混合物の均質性又は半均質性は、シリンダ全体でのより迅速な同時燃焼を可能にする。より迅速な燃焼は、(冷間始動時であり得るため遅い位相をもたらすことの多い、経時的なより大きな広がりとは対照的に)より短い期間にわたるより高速の圧力増加をもたらす。このより高速の圧力増加は、空気と燃料との着火可能混合物を作るための早い噴射タイミングを介して実現され得る。圧力上昇速度は、直接噴射装置の噴射タイミングを圧縮行程の遅い段階に徐々にシフトさせることによって和らげられ得る。非常に高速の圧力上昇(クランク角度毎に15バールよりも大きい)は望ましくないエンジン騒音につながり得るため、噴射タイミングのこのシフトは、層状化及びより均質でない混合物を作り出し、燃焼プロセスの経時的により大きな広がりをもたらし得る。
【0074】
[0079] エンジンが温まり続けるにつれ、自己着火燃焼はシリンダ全体であまりに急速又はあまりに早くなり得、不良燃焼位相(早すぎる)又は許容できないほど高速の圧力増加をもたらす。高速の圧力増加はエンジンからのNVHを引き起こし得ると共に、エンジン損傷を引き起こすおそれがある。エンジンが十分に温まったところで、これらの潜在的な問題は、噴射タイミングを圧縮行程の更に遅い段階にシフトさせることによって軽減され得る。このシフトは、自己着火前の予混合の量を低減させ得ると共に、燃料がシリンダ内に噴射されるにつれて燃焼が進行することを可能にし得る。やがて、予混合された留分は十分に低くなり得、噴射タイミングは、燃焼が混合制御され、定常状態MCCIを持続できる噴射タイミング及びエンジン温度に達するように、十分に遅くなり得る。いくつかの実施形態においては、定常状態MCCIの際、基本バルブタイミングプロファイルが用いられ得る。いくつかの実施形態においては、MCCIの際に低負荷点においては早い排気バルブ閉弁が用いられ得る。
【0075】
[0080] いくつかの実施形態においては、着火の直前の燃料と空気との予混合のレベルは、エンジンが冷間始動モードで動作しているか、HCCIで動作しているか、又は定常状態MCCIで動作しているかに応じて変化し得る。いくつかの実施形態においては、着火の直前の燃料と空気との予混合のレベルは、どのタイプの着火補助装置又は方法が用いられるかに応じて、冷間始動時に変化し得る。
【0076】
[0081] いくつかの実施形態においては、燃料の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、又は少なくとも約60%が、それらの間の全ての値及び範囲を含め、着火の直前に空気と予混合され得る。
【0077】
[0082] いくつかの実施形態においては、冷間始動時にプラズマ点火もしくは火花補助圧縮着火装置又は方法が用いられる場合、燃料の少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約85%が、それらの間の全ての値及び範囲を含め、着火の直前に空気と予混合され得る。いくつかの実施形態においては、グロープラグが冷間始動時に用いられると共に表面着火を誘発するような場所に位置している場合、燃料の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、又は少なくとも約60%が、それらの間の全ての値及び範囲を含め、着火の直前に空気と予混合され得る。いくつかの実施形態においては、グロープラグ又はシリンダ内カートリッジヒータが冷間始動時に加熱効果を生み出すために用いられる場合、燃料の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、又は少なくとも約30%が、それらの間の全ての値及び範囲を含め、着火の直前に空気と予混合され得る。
【0078】
[0083] いくつかの実施形態においては、HCCIの際、燃料の少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、又は少なくとも約60%が、それらの間の全ての値及び範囲を含め、着火の直前に空気と予混合され得る。いくつかの実施形態においては、定常状態MCCIの際、燃料の約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、又は約40%以下が、着火の直前に空気と予混合され得る。
【0079】
[0084] バルブタイミングに関して、この追加の例示的なモードは、
図6を用いて理解することもできる。この場合、燃焼は図の右に向かって(遅い燃焼位相で)始まり、自己着火が開始するにつれ、図の左に向かって急速にシフトする。自己着火が始まった後、位相は図の左付近に留まり(効率のために最も望ましい位相)、着火遅れを調節するように噴射タイミング及び層状化を変化させることによって維持される。こうした噴射の修正は、次第に急速になる燃焼動態をより少ない予混合によって相殺し得る。
【0080】
[0085] 冷間始動、移行、及び十分に展開されたMCCIモードまでの全体を通じて、抑制又は再循環される排気の量、エンジン背圧、又はエンジン絞りのレベルは、前述したように、始動後の許容できる短い時間フレームで触媒ライトオフを実現しつつ、安定性及び圧力上昇の許容可能なレベルに適合するように燃焼を安定化させるべく調整され得る。
【0081】
[0086] いくつかの実施形態においては、吸気バルブは冷間始動時に、少なくとも約660°、少なくとも約665°、少なくとも約670°、少なくとも約675°、少なくとも約680°、少なくとも約685°、少なくとも約690°、少なくとも約695°、又は少なくとも約700°のエンジンクランク角度で開弁され得る。いくつかの実施形態においては、吸気バルブは冷間始動時に、約705°以下、約700°以下、約695°以下、約690°以下、約685°以下、約680°以下、約675°以下、約670°以下、又は約665°以下のエンジンクランク角度で開弁され得る。上記で参照した冷間始動時の吸気バルブの開弁のエンジンクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約660°と約705°以下又は少なくとも約665°と約700°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、吸気バルブは冷間始動時に、約660°、約665°、約670°、約675°、約680°、約685°、約690°、約695°、約700°、又は約705°のエンジンクランク角度で開弁され得る。
【0082】
[0087] いくつかの実施形態においては、吸気バルブはHCCI動作の際に、少なくとも約680°、少なくとも約685°、少なくとも約690°、少なくとも約695°、少なくとも約700°、少なくとも約705°、少なくとも約710°、少なくとも約715°、少なくとも約720°(0°、すなわち吸気行程の開始後)、少なくとも約5°、少なくとも約10°、少なくとも約15°、少なくとも約20°、少なくとも約25°、少なくとも約30°、少なくとも約35°、少なくとも約40°、少なくとも約45°、少なくとも約50°、又は少なくとも約55°のエンジンクランク角度で開弁され得る。いくつかの実施形態においては、吸気バルブはHCCI動作の際に、約60°以下、約55°以下、約50°以下、約45°以下、約40°以下、約35°以下、約30°以下、約25°以下、約20°以下、約15°以下、約10°以下、約5°以下、約720°以下、約715°以下、約710°以下、約705°以下、約700°以下、約695°以下、約690°以下、約685°以下、約680°以下、又は約675°以下のエンジンクランク角度で開弁され得る。上記で参照したHCCI動作の際の吸気バルブの開弁のエンジンクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約680°及び/又は約60°以下又は少なくとも約685°と約700°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、吸気バルブはHCCI動作の際に、約680°、約685°、約690°、約695°、約700°、約705°、約710°、約715°、約720°、約5°、約10°、約15°、約20°、約30°、約40°、約45°、約50°、約55°、又は約60°のエンジンクランク角度で開弁され得る。
【0083】
[0088] いくつかの実施形態においては、吸気バルブは冷間始動時に、少なくとも約160°、少なくとも約165°、少なくとも約170°、少なくとも約175°、少なくとも約180°、少なくとも約185°、少なくとも約190°、少なくとも約195°、少なくとも約200°、少なくとも約205°、少なくとも約210°、少なくとも約215°、少なくとも約220°、少なくとも約225°、少なくとも約230°、少なくとも約235°、少なくとも約240°、少なくとも約245°、少なくとも約250°、又は少なくとも約255°のエンジンクランク角度で閉弁され得る。いくつかの実施形態においては、吸気バルブは冷間始動時に、約260°以下、約255°以下、約250°以下、約245°以下、約240°以下、約235°以下、約230°以下、約225°以下、約220°以下、約215°以下、約210°以下、約205°以下、約200°以下、約195°以下、約190°以下、約185°以下、約180°以下、約175°以下、約170°以下、又は約165°以下のエンジンクランク角度で閉弁され得る。上記で参照した冷間始動時の吸気バルブの閉弁のエンジンクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約160°と約260°以下又は少なくとも約180°と約200°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、吸気バルブは冷間始動時に、約160°、約165°、約170°、約175°、約180°、約185°、約190°、約195°、約200°、約205°、約210°、約215°、約220°、約225°、約230°、約235°、約240°、約245°、約250°、約255°、又は約260°のエンジンクランク角度で閉弁され得る。
【0084】
[0089] いくつかの実施形態においては、吸気バルブはHCCI動作の際に、少なくとも約140°、少なくとも約145°、少なくとも約150°、少なくとも約155°、少なくとも約160°、少なくとも約165°、少なくとも約170°、少なくとも約175°、少なくとも約180°、少なくとも約185°、少なくとも約190°、少なくとも約195°、少なくとも約200°、少なくとも約205°、少なくとも約210°、少なくとも約215°、少なくとも約220°、少なくとも約225°、少なくとも約230°、少なくとも約235°、少なくとも約240°、少なくとも約245°、少なくとも約250°、少なくとも約255°、少なくとも約260°、少なくとも約265°、少なくとも約270°、又は少なくとも約275°のエンジンクランク角度で閉弁され得る。いくつかの実施形態においては、吸気バルブはHCCI動作の際に、約280°以下、約275°以下、約270°以下、約265°以下、約260°以下、約255°以下、約250°以下、約245°以下、約240°以下、約235°以下、約230°以下、約225°以下、約220°以下、約215°以下、約210°以下、約205°以下、約200°以下、約195°以下、約190°以下、約185°以下、約180°以下、約175°以下、約170°以下、約165°以下、約160°以下、約155°以下、約150°以下、約145°以下のエンジンクランク角度で閉弁され得る。上記で参照したHCCI動作の際の吸気バルブの閉弁のエンジンクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約140°と約280°以下又は少なくとも約200°と約220°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、吸気バルブはHCCI動作の際に、約140°、約145°、約150°、約155°、約160°、約165°、約170°、約175°、約180°、約185°、約190°、約195°、約200°、約205°、約210°、約215°、約220°、約225°、約230°、約235°、約240°、約245°、約250°、約255°、約260°、約265°、約270°、約275°、又は約280°のエンジンクランク角度で閉弁され得る。
【0085】
[0090] いくつかの実施形態においては、排気バルブは冷間始動時に、少なくとも約460°、少なくとも約465°、少なくとも約470°、少なくとも約475°、少なくとも約480°、少なくとも約485°、少なくとも約490°、少なくとも約495°、少なくとも約500°、又は少なくとも約505°のエンジンクランク角度で開弁され得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブは冷間始動時に、約510°以下、約505°以下、約500°以下、約495°以下、約490°以下、約485°以下、約480°以下、約475°以下、約470°以下、又は約465°以下のエンジンクランク角度で開弁され得る。上記で参照した冷間始動時の排気バルブの開弁のエンジンクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約460°と約510°以下又は少なくとも約470°と約490°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、排気バルブは冷間始動時に、約460°、約465°、約470°、約475°、約480°、約485°、約490°、約495°、約500°、約505°、又は約510°のエンジンクランク角度で開弁され得る。
【0086】
[0091] いくつかの実施形態においては、排気バルブはHCCI動作の際に、少なくとも約470°、少なくとも約475°、少なくとも約480°、少なくとも約485°、少なくとも約490°、少なくとも約495°、少なくとも約500°、少なくとも約505°、少なくとも約510°、又は少なくとも約515°のエンジンクランク角度で開弁され得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブはHCCI動作の際、約520°以下、約515°以下、約510°以下、約505°以下、約500°以下、約495°以下、約490°以下、約485°以下、約480°以下、又は約475°以下のエンジンクランク角度で開弁され得る。上記で参照したHCCI動作の際の排気バルブの開弁のエンジンクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約470°と約520°以下又は少なくとも約490°と約510°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、排気バルブはHCCI動作の際に、約470°、約475°、約480°、約485°、約490°、約495°、約500°、約505°、約510°、約515°、又は約520°のエンジンクランク角度で開弁され得る。
【0087】
[0092] いくつかの実施形態においては、排気バルブは冷間始動時に、少なくとも約700°、少なくとも約705°、少なくとも約710°、少なくとも約715°、少なくとも約0°、少なくとも約5°、又は少なくとも約10°のエンジンクランク角度で閉弁され得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブは冷間始動時に、約15°以下、約10°以下、約5°以下、約720°以下、約715°以下、約710°以下、又は約705°以下のエンジンクランク角度で閉弁され得る。上記で参照した冷間始動時の排気バルブの閉弁のエンジンクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約700°及び/又は約15°以下又は少なくとも約700°と約710°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、排気バルブは冷間始動時に、約700°、約705°、約710°、約715°、約720°、約5°、約10°、約15°、約20°、約25°、約30°、又は約35°のエンジンクランク角度で閉弁され得る。
【0088】
[0093] いくつかの実施形態においては、排気バルブは冷間始動時に、少なくとも約600°、少なくとも約605°、少なくとも約610°、少なくとも約615°、少なくとも約620°、少なくとも約625°、少なくとも約630°、少なくとも約635°、少なくとも約640°、少なくとも約645°、少なくとも約650°、少なくとも約655°、少なくとも約660°、少なくとも約665°、少なくとも約670°、少なくとも約675°、少なくとも約680°、少なくとも約685°、少なくとも約690°、少なくとも約695°、少なくとも約700°、少なくとも約705°、少なくとも約710°、少なくとも約715°、少なくとも約0°(720°)、少なくとも約5°、少なくとも約10°、少なくとも約15°、少なくとも約20°、少なくとも約25°、少なくとも約30°、少なくとも約35°、少なくとも約40°、少なくとも約45°、少なくとも約50°、少なくとも約55°、少なくとも約60°、少なくとも約65°、少なくとも約70°、少なくとも約75°、少なくとも約80°、少なくとも約85°、少なくとも約90°、少なくとも約95°、少なくとも約100°、少なくとも約105°、又は少なくとも約110°のエンジンクランク角度で閉弁され得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブは冷間始動時に、約115°以下、約110°以下、約105°以下、約100°以下、約95°以下、約90°以下、約85°以下、約80°以下、約75°以下、約70°以下、約65°以下、約60°以下、約55°以下、約50°以下、約45°以下、約40°以下、約35°以下、約30°以下、約25°以下、約20°以下、約15°以下、約10°以下、約5°以下、約720°以下、約715°以下、約710°以下、約705°以下、約700°以下、約695°以下、約690°以下、約685°以下、約680°以下、約675°以下、約670°以下、約665°以下、約660°以下、約655°以下、約650°以下、約645°以下、約640°以下、約635°以下、約630°以下、約625°以下、約620°以下、約615°以下、約610°以下、又は約605°以下のエンジンクランク角度で閉弁され得る。上記で参照した冷間始動時の排気バルブの閉弁のエンジンクランク角度の組み合わせ(例えば少なくとも約600°及び/又は約115°以下又は少なくとも約0°と約10°以下)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、排気バルブは冷間始動時に、約700°、約705°、約710°、約715°、約720°、約725°、約730°、約735°、約740°、約745°、約750°、約755°、約760°、約765°、約770°、約775°、約780°、約785°、約790°、約795°、約705°、約710°、約715°、約0°、約5°、約10°、約15°、約20°、約25°、約30°、約35°、約40°、約45°、約50°、約55°、約60°、約65°、約70°、約75°、約80°、約85°、約90°、約95°、約100°、約105°、約110°、又は約115°のエンジンクランク角度で閉弁され得る。
【0089】
[0094] 動作時の排気バルブ閉弁、又は吸気バルブ開弁に対する排気バルブ閉弁のタイミングをシフトさせることは、排気を燃焼室に閉じ込めること、又は排気を燃焼室内に再吸入することを援助し得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻はエンジンが始動した少し後にシフトし得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻は冷間始動の際にシフトし得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻は冷間始動からHCCI動作への移行の際にシフトし得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻はHCCI動作の際にシフトし得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻はHCCI動作から定常状態MCCI動作への移行の際にシフトし得る。
【0090】
[0095] 動作の際の吸気バルブ閉弁のタイミングをシフトさせること(すなわち、第2のエンジンサイクルは第1のエンジンサイクルよりも後で発生するところ、吸気バルブ閉弁時刻を第1のエンジンサイクルと第2のエンジンサイクルとの間にシフトさせること)は、燃焼室内にもたらされる空気の量及び吸気バルブ閉弁後にガスが経験する圧縮のレベルに影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態においては、吸気バルブ閉弁時刻のシフトは進角であり得る(すなわち、より早い閉弁)。いくつかの実施形態においては、進角は、少なくとも約20度のクランク角度、少なくとも約25度のクランク角度、少なくとも約30度のクランク角度、少なくとも約35度のクランク角度、少なくとも約40度のクランク角度、少なくとも約45度のクランク角度、少なくとも約50度のクランク角度、又は少なくとも約55度のクランク角度であり得る。いくつかの実施形態においては、進角は、約60度以下のクランク角度、約55度以下のクランク角度、約50度以下のクランク角度、約45度以下のクランク角度、約40度以下のクランク角度、約35度以下のクランク角度、約30度以下のクランク角度、又は約25度以下のクランク角度であり得る。上記で参照した吸気バルブ閉弁進角の組み合わせ(例えば少なくとも約20度のクランク角度と約60度以下のクランク角度又は少なくとも約30度のクランク角度と約50度以下のクランク角度)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、吸気バルブ進角は、約20度のクランク角度、約25度のクランク角度、約30度のクランク角度、約35度のクランク角度、約40度のクランク角度、約45度のクランク角度、約50度のクランク角度、約55度のクランク角度、又は約60度のクランク角度であり得る。
【0091】
[0096] いくつかの実施形態においては、吸気バルブ閉弁時刻のシフトは遅角であり得る(すなわち、より遅い閉弁)。いくつかの実施形態においては、遅角は、少なくとも約20度のクランク角度、少なくとも約25度のクランク角度、少なくとも約30度のクランク角度、少なくとも約35度のクランク角度、少なくとも約40度のクランク角度、少なくとも約45度のクランク角度、少なくとも約50度のクランク角度、又は少なくとも約55度のクランク角度であり得る。いくつかの実施形態においては、遅角は、約60度以下のクランク角度、約55度以下のクランク角度、約50度以下のクランク角度、約45度以下のクランク角度、約40度以下のクランク角度、約35度以下のクランク角度、約30度以下のクランク角度、又は約25度以下のクランク角度であり得る。上記で参照した吸気バルブ閉弁遅角の組み合わせ(例えば少なくとも約20度のクランク角度と約60度以下のクランク角度又は少なくとも約30度のクランク角度と約50度以下のクランク角度)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、吸気バルブ遅角は、約20度のクランク角度、約25度のクランク角度、約30度のクランク角度、約35度のクランク角度、約40度のクランク角度、約45度のクランク角度、約50度のクランク角度、約55度のクランク角度、又は約60度のクランク角度であり得る。
【0092】
[0097] いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻はエンジンが始動した少し後にシフトし得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻は冷間始動の際にシフトし得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻は冷間始動からHCCI動作への移行の際にシフトし得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻はHCCI動作の際にシフトし得る。いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻はHCCI動作から定常状態MCCI動作への移行の際にシフトし得る。
【0093】
[0098] いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻のシフトは進角であり得る(すなわち、より早い閉弁)。いくつかの実施形態においては、進角は、少なくとも約20度のクランク角度、少なくとも約25度のクランク角度、少なくとも約30度のクランク角度、少なくとも約35度のクランク角度、少なくとも約40度のクランク角度、少なくとも約45度のクランク角度、少なくとも約50度のクランク角度、又は少なくとも約55度のクランク角度であり得る。いくつかの実施形態においては、進角は、約60度以下のクランク角度、約55度以下のクランク角度、約50度以下のクランク角度、約45度以下のクランク角度、約40度以下のクランク角度、約35度以下のクランク角度、約30度以下のクランク角度、又は約25度以下のクランク角度であり得る。上記で参照した排気バルブ閉弁進角の組み合わせ(例えば少なくとも約20度のクランク角度と約60度以下のクランク角度又は少なくとも約30度のクランク角度と約50度以下のクランク角度)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、排気バルブ進角は、約20度のクランク角度、約25度のクランク角度、約30度のクランク角度、約35度のクランク角度、約40度のクランク角度、約45度のクランク角度、約50度のクランク角度、約55度のクランク角度、又は約60度のクランク角度であり得る。
【0094】
[0099] いくつかの実施形態においては、排気バルブ閉弁時刻のシフトは遅角であり得る(すなわち、より遅い閉弁)。いくつかの実施形態においては、遅角は、少なくとも約20度のクランク角度、少なくとも約25度のクランク角度、少なくとも約30度のクランク角度、少なくとも約35度のクランク角度、少なくとも約40度のクランク角度、少なくとも約45度のクランク角度、少なくとも約50度のクランク角度、又は少なくとも約55度のクランク角度であり得る。いくつかの実施形態においては、遅角は、約60度以下のクランク角度、約55度以下のクランク角度、約50度以下のクランク角度、約45度以下のクランク角度、約40度以下のクランク角度、約35度以下のクランク角度、約30度以下のクランク角度、又は約25度以下のクランク角度であり得る。上記で参照した排気バルブ閉弁遅角の組み合わせ(例えば少なくとも約20度のクランク角度と約60度以下のクランク角度又は少なくとも約30度のクランク角度と約50度以下のクランク角度)も、それらの間の全ての値及び範囲を含めて可能である。いくつかの実施形態においては、排気バルブ遅角は、約20度のクランク角度、約25度のクランク角度、約30度のクランク角度、約35度のクランク角度、約40度のクランク角度、約45度のクランク角度、約50度のクランク角度、約55度のクランク角度、又は約60度のクランク角度であり得る。
【0095】
[0100] いくつかの実施形態においては、エンジンは本明細書に記載されたストラテジを並行して採用し得る。これらの方法の各々の独立した使用が可能である一方で、それらの組み合わせも本開示の範囲内にある。
【0096】
[0101] 様々な概念が1つ以上の方法として具現化されてもよく、そのうちの少なくとも一例が提供されている。方法の一部として実施される行為は、任意の適当な順序に並べられてもよい。したがって、実施形態は、例示されたものとは異なる順序で行為が実施されるように構築されてもよく、これは、いくつかの行為を、たとえ例示された実施形態においては連続した行為として示されていても、同時に実施することを含み得る。異なる言い方をすれば、そのような特徴は必ずしも特定の実行順序に限定されなくてもよく、むしろ任意の数のスレッド、プロセス、サービス、サーバ、及び/又は同様のものが、連続的に、非同期的に、同時的に、並行に、同時に、同期的に、及び/又は同様に本開示と整合したやり方で実行してもよい。よって、これらの特徴のうちいくつかは、単一の実施形態に同時には存在し得ないという点で、互いに矛盾するであろう。同様に、いくつかの特徴は、ある態様の革新には適用可能であり、他の態様には適用可能でない。
【0097】
[0102] また、本開示は、現在記載されていない他の革新を含み得る。出願人は、そのような革新を具現化し、その追加出願、継続出願、部分継続出願、分割出願、及び/又は同様のものを提出する権利を含め、そのような革新に関するすべての権利を保有する。よって、本開示の利点、実施形態、例、機能的特徴、論理的、操作的、組織的、構造的、位相幾何学的、及び/又は他の態様は、実施形態によって定義される本開示に対する限定又は実施形態の均等物に対する限定と考えられるべきではない。個人及び/又は企業ユーザの所望及び/又は特徴、データベース構成及び/又は関係モデル、データタイプ、データ伝送及び/又はネットワークフレームワーク、構文構造、及び/又は同様のものに応じて、本明細書に開示される技術の様々な実施形態は、本明細書に記載される多くの柔軟性及びカスタム化を可能にするように実装され得る。
【0098】
[0103] 本明細書において定義及び使用されるすべての定義は、辞書的定義、参照により組み込まれた文献における定義、及び/又は定義される用語の通常の意味を支配するものとして理解されるべきである。
【0099】
[0104] 本明細書において、特に実施形態において用いられる場合、「約」又は「およそ」という用語は、数値の前にあるとき、その値プラス又はマイナス10%の範囲を示す。ある範囲の値が提示される場合には、文脈がそうではないと明らかに規定しない限り、その範囲の上限と下限との間に介在する、下限の単位の10分の1に至るまでの各値、及びその定められた範囲にある任意の他の定められた値又は介在する値は、本開示に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限がそのより小さな範囲に独立的に含まれ得ることも、本開示に包含され、定められた範囲において特に除外された任意の限度に従属する。定められた範囲が限度のうち一方又は両方を含む場合には、それらの含まれる限度のうちいずれか又は両方を除く範囲も本開示に含まれる。
【0100】
[0105] 本明細書及び実施形態で使用される「及び/又は」という句は、それによって結合された要素、すなわち場合によっては接続的に存在し場合によっては非接続的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものとして理解されるべきである。「及び/又は」を用いて列挙された複数の要素も同様に、すなわちそれによって結合された要素のうちの「1つ以上」と理解されるべきである。「及び/又は」の節によって具体的に特定される要素以外に、それらの具体的に特定される要素と関連するか又は関連しないかを問わず、他の要素が任意選択的に存在してもよい。したがって、非制限的な一例として、「備える(comprising)」などのオープンエンドの(open-ended)文言と関連して用いられる場合、「A及び/又はB」というときには、ある実施形態ではAのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を、別のある実施形態ではBのみ(任意選択的にA以外の要素を含む)を、更に別のある実施形態ではA及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を参照し得る。
【0101】
[0106] 本明細書及び実施形態において用いられる場合、「又は」は、上記で定義したように「及び/又は」と同じ意味を有するものとして理解されるべきである。例えば、列挙されている項目を分ける場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的なものとして、すなわち、いくつかの又は列挙された要素のうち少なくとも1つであるが1つより多くも、及び任意選択的には更に列挙されていない項目も含むものとして、解釈されるべきである。「~のうち1つのみ」もしくは「~のうちただ1つのみ」、又は実施形態において用いられる場合、「~からなる(consisting of)」など、そうではないと明示されている用語のみが、いくつかの又は列挙された要素のうちただ1つの要素を含むことを参照する。概して、本明細書において用いられる「又は」という用語は、前に「いずれか」、「~のうち1つ」、「~のうち1つのみ」、又は「~のうちただ1つ」のような排他性の用語がある場合、排他的な代替案(すなわち「一方又は他方であるが両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈されるべきである。実施形態において用いられる場合、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、特許法の分野において用いられる通常の意味を有するべきである。
【0102】
[0107] 本明細書及び実施形態において用いられる場合、1つ以上の要素の列挙を参照する「少なくとも1つ」という句は、その要素の列挙の中の要素のうち任意の1つ以上から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしもその要素の列挙の中に具体的に列挙された1つ1つの要素のうち少なくとも1つを含まず、その要素の列挙の中の要素の任意の組み合わせを排除しないものとして理解されるべきである。この定義は、具体的に特定される要素と関連するか又は関連しないかを問わず、「少なくとも1つ」という句が参照する要素の列挙において具体的に特定される要素以外に要素が任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非制限的な一例として、「A及びBのうち少なくとも1つ」(又は同様に「A又はBのうち少なくとも1つ」、又は同様に「A及び/又はBのうち少なくとも1つ」)は、ある実施形態においては、Bは無しで(及び任意選択的にはB以外の要素を含む)、少なくとも1つの、任意選択的には1つよりも多くのAを、別のある実施形態においては、Aは無しで(及び任意選択的にはA以外の要素を含む)、少なくとも1つの、任意選択的には1つよりも多くのBを、更に別のある実施形態においては、少なくとも1つの、任意選択的には1つよりも多くのAと、少なくとも1つの、任意選択的には1つよりも多くのBと(及び任意選択的には他の要素を含む)を参照し得る、という具合である。
【0103】
[0108] 本明細書において用いられる場合、「クランク角度」又は「エンジンクランク角度」の数値的な定義は、(
図6に図示される)排気行程と吸気行程との間でのTDC位置に対するクランク角度として理解されるべきである。換言すれば、エンジンクランク角度は、排気行程と吸気行程との間でピストンがTDC位置にあるときには、0°(又は720°)である。エンジンクランク角度は、圧縮行程と膨張行程との間でピストンがTDC位置にあるときには、360°である。エンジンクランク角度は、膨張行程と排気行程との間でピストンがBDC位置にあるときには、540°である。エンジンクランク角度は、吸気行程と圧縮行程との間でピストンがBDC位置にあるときには、180°である。
【0104】
[0109] いくつかの実施形態においては、「着火の直前」という用語は、エンジンクランク角度が、間の全ての値及び範囲を含め、約300°、約305°、約310°、約315°、約320°、約325°、約330°、約335°、約340°、約345°、約350°、約355°、約360°、約365°、約370°、約375°、又は約380°である時点を指し得る。
【0105】
[0110] いくつかの実施形態においては、「着火の直前」という用語は、燃料発熱性の5%が起こったことが観察される時刻よりも前の時点を参照し得る。換言すれば、圧力の測定可能な偏差が検出されて発熱性燃料酸化が発生していることを示すとき、燃料は着火されたものと考えられ得る。
【0106】
[0111] いくつかの実施形態においては、「閉弁」(例えば「吸気バルブ閉弁」又は「排気バルブ閉弁」)という用語は、バルブが完全に着座する(すなわち、0mmのバルブリフト)時点を参照し得る。いくつかの実施形態においては、「開弁」(例えば「吸気バルブ開弁」又は「排気バルブ開弁」)という用語は、バルブが離座する(すなわち、>0mmのリフト)時点を参照し得る。
【0107】
[0112] 実施形態において、並びに上述の明細書において、「備える(comprising)」、「含む(including)」、「担持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」、「~で構成される(composed of)」などのような全ての移行句は、オープンエンドのもの、すなわち含むが限定されないことを意味するものとして理解されるべきである。合衆国特許審査便覧2111.03に記載されているように、「~からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という移行句のみが、それぞれクローズ(closed)又はセミクローズ(semi-closed)の移行句とされる。
【0108】
[0113] 本開示の具体的な実施形態を上記で概説してきたが、当業者には多くの代替案、修正、及びバリエーションが明らかであろう。したがって、本明細書に記載される実施形態は、例示を意図するものであって、限定を意図するものではない。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得る。上述した方法及びステップが特定の順序で発生する特定の事象を示す場合、本開示の恩恵を受ける当業者は、特定のステップの順序付けが修正されてもよく、そのような修正は本発明のバリエーションに従ったものであることを認識するであろう。また、ステップのうち特定のものは、可能な場合には並列プロセスにおいて同時的に実施されてもよいし、上述したように連続して実施されてもよい。実施形態を個々に詳しく示すと共に記載してきたが、形態及び詳細の様々な変更がなされ得ることは理解されよう。
【国際調査報告】