IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アフリカン レインボー ミネラルズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-金属含有原料の製錬のための方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】金属含有原料の製錬のための方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 5/12 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
C22B5/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021566148
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 IB2020054424
(87)【国際公開番号】W WO2020229994
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】2023109
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521221342
【氏名又は名称】アフリカン レインボー ミネラルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AFRICAN RAINBOW MINERALS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】バウアー ペトリュス ヘンドリック フェレイラ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA08
4K001AA10
4K001AA16
4K001BA02
4K001BA05
4K001CA28
4K001CA29
4K001GA01
4K001GA13
4K001HA09
(57)【要約】
本発明は、金属含有原料の製錬のための方法に関する。方法は、(i)微細金属含有原料及び微細還元体からなる集塊物を反応器に供給し、集塊物が反応器内で充填層を形成するステップと、(ii)高温還元ガス向流を充填層に通すことにより集塊物を製錬して、部分的に還元された金属含有構成成分、中間スラグ構成成分、及び同伴された未反応の還元体構成成分を含む溶融物質を形成するステップと、(iii)溶融物質を容器内に流入するように導いて金属生成物及びスラグ生成物を形成するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有原料の製錬のための方法であって、
(i)微細金属含有原料及び微細還元体からなる集塊物を反応器に供給し、前記集塊物が前記反応器内で充填層を形成するステップと、
(ii)高温還元ガス向流を前記充填層に通すことにより前記集塊物を製錬して、部分的に還元された金属含有構成成分、中間スラグ構成成分、及び同伴された未反応の還元体構成成分を含む溶融物質を形成するステップと、
(iii)前記溶融物質を容器内に流入するように導いて金属生成物及びスラグ生成物を形成するステップと
を含む、前記方法。
【請求項2】
容器が、反応器から分離され、かつ、前記反応器と流体流れ連通している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
容器内の溶融物質に電気エネルギーを追加して、部分的に還元された金属含有構成成分をさらに還元して最適化された液体金属生成物及び最終スラグ生成物を形成する追加的なステップであって、前記溶融物質中の同伴された未反応の還元体構成成分が、還元剤として機能する前記追加的なステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
溶融物質への電気エネルギーの追加が、最適化された液体金属生成物及び最終スラグ生成物を形成するために前記溶融物質の温度を調整するように制御され、前記最適化された液体金属生成物及び前記最終スラグ生成物が、容器からの注出に適している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
溶融物質中に存在する部分的に還元された金属含有構成成分を完全に還元するために、前記溶融物質に電気エネルギーが追加される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
集塊物の組成を操作して、充填層内の前記集塊物の溶融温度を下げ、それにより前記集塊物の溶融速度を高め、かつ微細金属含有原料の還元の度合いを低下させる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
集塊物の組成を操作して、前記集塊物の溶融温度を上げ、それにより前記集塊物の溶融速度を低下させ、かつ微細金属含有原料の還元の度合いを高める、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
高温還元ガスが、5よりも高いCO/CO比を有する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
高温還元ガスが、10よりも高いCO/CO比を有する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
充填層を通過した高温還元ガスが、1200℃を超える温度を有する、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
充填層を通過した高温還元ガスが、1600℃を超える温度を有する、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
充填層が、集塊物が反応器に供給される領域に対して作動可能な下流の位置に流体透過性界面を含み、前記流体透過性界面が、高温還元ガスが前記流体透過性界面及び前記集塊物の充填層を通過することを可能にする、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
充填層が、側壁の向きが変化する位置において反応器の前記側壁によって懸下される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
充填層が、反応器内に配置された閉塞物によって懸下され、前記閉塞物が、集塊物が前記反応器に供給される領域に対して作動可能な下流の位置に存在する、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
閉塞物が、耐火物の透過性層である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
閉塞物が、コークス粒子の透過性層である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
フラックスが、集塊物と共に反応器に供給される、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
集塊物が、フラックスを含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
集塊物が、結合剤を含む、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
容器内の溶融物質に追加の還元体を加える追加的なステップを含む、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
溶融物質中に沈められた電極を介して前記溶融物質に電気エネルギーを追加する、請求項3~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
最適化された液体金属生成物及び最終スラグ生成物が、溶融物質中の部分的に還元された金属含有構成成分と未反応の同伴された還元体構成成分との間の電気化学反応を介して形成され、中間スラグ構成成分が、電解質として機能する、請求項3~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
集塊物の充填層内での金属含有原料の滞留時間が、反応器内での金属含有原料の還元の度合いに影響するように制御される、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
反応器及び容器内の動作温度が、金属含有原料中の第1の標的金属を選択的に金属化するように制御され、それにより、前記金属化された第1の標的金属が最適化された液体金属生成物へ入ることを可能とし、かつ、非標的金属が最終スラグ生成物へ入ることを可能とする、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
最終スラグ生成物が、後続の方法において金属含有原料として提供され、前記後続の方法が、請求項1~24のいずれかに記載の方法であり、前記後続の方法における反応器及び容器内の動作温度が、金属含有原料中の第2の標的金属を選択的に金属化するように制御され、それにより、前記金属化された第2の標的金属が前記後続の方法の液体金属生成物へと現れることを可能とし、かつ、残りの非標的金属が前記後続の方法の最終スラグ生成物へと現れることを可能とする、請求項3~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
生成した最終スラグ生成物が、さらなる処理のために移送される、請求項3~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
高温還元ガスの温度が、目的とする温度に設定される、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
電気エネルギー入力が、標的とされた液体金属生成物及び最終スラグ生成物温度を達成するように制御される、請求項3~27のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有原料の製錬のための方法(process)に関する。
【背景技術】
【0002】
直接還元法は、近年ますます注目を集めている。直接還元とは、供給材料としての鉱石中の金属酸化物を鉱石がまだ固体状態にある間に還元する方法を指す。従来の方法では、還元金属酸化物が、直接還元方法から、還元金属酸化物が金属化される後続の製錬方法へ移送され、製錬は、供給物(feed)の還元及び溶融を意味する。
【0003】
還元金属酸化物は、直接還元方法から製錬方法へ移送される間に著しく冷えることが、理解されるであろう。還元金属酸化物は、製錬方法中に再加熱されなければならないので、還元金属酸化物の上述の冷却は、著しいエネルギー損失をもたらす。
【0004】
従来の直接還元方法及び方法設備に関連するさらなる欠点は、直接還元された生成物は、それが固体状態のままである場合にのみ取り扱われ得るということである。
【0005】
“Process of reducing iron oxides”と題された米国特許第3,033,673号明細書は、集塊物中の金属酸化鉄(metal iron oxide)を固体状態において還元する直接還元方法を開示している。この固体状態還元方法は、その特許で開示されている高炉内で起こる。その特許は引き続き、部分的に還元された金属酸化物が電気炉内で製錬(つまり、溶融)されることを述べている。言い換えれば、集塊物も集塊物中の金属酸化物も、高炉内では溶融されない。
【0006】
金属酸化物の溶融は、とりわけ、設備の閉塞、エネルギー伝達の減少、及び方法(つまり、還元)効率の低下をもたらす。
【0007】
この欠点は、既知の商業規模の方法において例示される。第1の例は、最高で1400℃までの回転釜内でのクロム鉱石の直接還元のための、Showa Denko社によって開発された直接還元技術である。この方法における温度制限は、窯内での液相の発達が防止されることを保証するためのものであり、そうでない場合、方法は停止することになる。Showa Denko社の方法では、直接還元された生成物は、最終電気精錬炉への機械的な移送を可能にするために冷却されなければならず、生成物の温度は、典型的には移送中に600℃まで降下する。
【0008】
さらなる例として、Kobe Steel社及びMidrex社は、燃焼粉炭を使用する回転炉床炉において鉄鉱石の複合集塊物が直接還元され得る、FastSmelt方法を開発した。FastSmelt方法における集塊物もまた、回転炉床から除去され得るように、固体状態を維持する必要がある。
【0009】
Kobe Steel社及びMidrex社による次の開発は、より高い動作温度において集塊物内部に鉄ナゲットが形成させられるITMK3方法であったが、回転炉床からの除去を可能にするために集塊物が固体状態のままでいる必要があるという点において、同じ制限が存続する。次いで、ナゲットは、冷却されて回転炉床から移送された後、後続の方法において溶融されるが、著しいエネルギー損失をもたらす。この開発は、設備の課題のために、商業的に成功していない。
【0010】
上記の欠点に加えて、既知の方法におけるさらなる欠点は、金属酸化物を金属化させるのに必要とされる温度が効率的に制御され得ないことであることを理解されたい。これは、方法が機能するためには非常に高い温度帯が作り出される必要があることによる。そのような既知の商業規模の方法の例は、埋没アーク炉及び溶鉱炉であり、それらは、マンガン鉄やクロム鉄などの合金を商業的に生産するために現在まで使用されている、数少ない方法である。これらの方法において効率的に温度制御できないと、これらの高温度帯においてSi、Mn及びSなどの不純物が生成物合金に還元されることになり、そのような不純物は、最終生成物の品質を損なうように作用する。
【0011】
“Process for producing metal from metal oxide pellets in a cupola type vessel”と題された米国特許第3,832,158号明細書が、本出願人に知られている。この特許は、コークス床の燃焼中に生じさせられた熱を使用して金属酸化物を含む集塊物を製錬(すなわち、溶融)する方法を説明している。コークスは非常に高価であり、しばしば金属酸化物の大規模製錬の競争力を低下させることは、良く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,033,673号明細書
【特許文献2】米国特許第3,832,158号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、上述の欠点を少なくとも部分的に克服する、及び/又は溶融状態における還元生成物の取扱いを可能にすると同時に金属含有原料の製錬のための既存の方法の有用な代替案になる、金属含有原料の製錬のための新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、金属含有原料の製錬のための方法が提供され、この方法は、
(i)微細金属含有原料及び微細還元体からなる集塊物を反応器に供給し、集塊物が反応器内で充填層を形成する、供給ステップと、
(ii)高温還元ガス向流を充填層に通すことにより集塊物を製錬して、部分的に還元された金属含有構成成分、中間スラグ構成成分、及び同伴された未反応の還元体構成成分を含む溶融物質を形成するステップと、
(iii)溶融物質を容器内に流入するように導いて金属生成物及びスラグ生成物を形成するステップと
を含む。
【0015】
本文脈において、粒径に関する微細(fine)への言及は、6mm以下、しかし好ましくは75μm未満の粒径である。
【0016】
容器は、反応器から分離され、かつ、反応器と流体流れ連通(fluid flow communication)し得る。
【0017】
本方法は、容器内の溶融物質に電気エネルギーを追加して、
部分的に還元された金属含有構成成分をさらに還元して最適化された液体金属生成物(optimised liquid metal product)及び最終スラグ生成物(final slag product)を形成する追加的なステップを含むことができ、溶融物質中の同伴された未反応の還元体構成成分は、還元剤として機能する。このようにして、部分的に還元された金属含有構成成分の高度の金属化が達成され得る。本方法における金属含有原料の金属化の度合いは、最高で98%であり得る。スラグ中の同伴された未反応の還元体構成成分は、従来の製錬方法と比較して、金属含有構成成分の遙かに高度な還元を可能にする。
【0018】
溶融物質への電気エネルギーの追加を制御して溶融物質の温度を調整し、最適化された液体金属生成物及び最終スラグ生成物を形成してもよく、最適化された液体金属生成物及び最終スラグ生成物は、容器からの注出に適している。
【0019】
溶融物質中の同伴された未反応の還元体構成成分は、溶融物質中に存在する部分的に還元された金属含有構成成分の完全な還元を可能にし得る。
【0020】
集塊物の組成は、充填層内の集塊物の溶融温度を下げることにより集塊物の溶融速度を高め、かつ微細金属含有原料の還元の度合いを低下させるように操作され得る。
【0021】
集塊物の組成は、充填層内の集塊物の溶融温度を上げることにより集塊物の溶融速度を低下させ、かつ微細金属含有原料の還元の度合いを高めるように操作され得る。
【0022】
高温ガスは、金属含有構成成分の再酸化を回避するために、5を超える、また好ましくは10を超えるCO/CO比を有する還元ガスであるべきである。
【0023】
高温還元ガスは、1200℃を超える、好ましくは1350℃を超える、最も好ましくは1600℃を超える温度で充填層に通されてよく、この温度は、生成される金属生成物に依存する。
【0024】
充填層は、集塊物が反応器に供給される領域に対して作動可能な下流の位置(operatively downstream position)に流体透過性界面を含むことができ、流体透過性界面は、高温還元ガスが流体透過性界面及び集塊物の充填層を通過することを可能にする。流体透過性界面は、反応器内の充填層の作動可能な基底領域(operatively base region)であり得る。
【0025】
充填層は、側壁の向きが変化する位置において反応器の側壁によって懸下され得る。
【0026】
或いは、充填層は、反応器内に配置された閉塞物によって懸下されてもよく、閉塞物は、集塊物が反応器に供給される領域に対して作動可能な下流の位置に存在する。閉塞物は、耐火物の透過性層であってよい。或いは、閉塞物は、コークス粒子の透過性層であってよい。
【0027】
集塊物は、フラックスを含み得る。フラックスが、集塊物と共に、しかし集塊物とは別々に、反応器内に供給され得る。
【0028】
集塊物は、結合剤を含み得る。
【0029】
容器内の溶融物質に追加の還元体を加える追加的なステップを方法が含むことが、提供される。
【0030】
溶融物質中に沈められた容器内の電極を介して溶融物質に電気エネルギーが加えられることが、提供される。
【0031】
最適化された液体金属生成物及び最終スラグ生成物は、溶融物質中の部分的に還元された金属含有構成成分と未反応の同伴された還元体構成成分との間の電気化学反応を介して形成されてよく、中間スラグ構成成分は、電解質として機能する。このようにして、既知の従来技術の方法と比較して、金属酸化物などの金属含有原料の非常に高い度合いの金属化を達成することができ、本発明の方法を通じて達成される金属化の度合いは、最大で98%であり得る。
【0032】
集塊物の充填層内での金属含有原料の滞留時間は、反応器内での金属含有原料の還元の度合いに影響するように制御され得る。
【0033】
反応器及び容器内の動作温度は、金属含有原料中の第1の標的金属を選択的に金属化するように制御されてよく、それにより、金属化された第1の標的金属が最適化された液体金属生成物へ入る(report to)ことが可能とされ、また、非標的金属が最終スラグ生成物へ入ることが可能とされる。
【0034】
最終スラグ生成物が後続の方法における金属含有原料として提供されることが提供され、後続の方法は、本発明による方法であり、後続の方法における反応器及び容器内の動作温度は、金属含有原料中の第2の標的金属を選択的に金属化するように制御され、それにより、金属化された第2の標的金属が後続の方法の液体金属生成物へ入ることが可能とされ、また、残りの非標的金属が後続の方法の最終スラグ生成物へ入ることが可能とされる。
【0035】
生じさせられた最終スラグ生成物は、さらなる処理のために移送され得る。
【0036】
高温還元ガスの温度は、目的とする温度(targeted temperature)に設定され得る。
【0037】
電気エネルギー入力は、標的とされた液体金属生成物及び最終スラグ生成物温度を達成するように制御され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下、単に非限定的な例として、また、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1】本発明の方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
同様の番号が同様の特徴を示す添付の図面を参照すると、本発明による金属含有原料の製錬のための方法が、参照番号10により全体的に示される。
【0040】
金属含有原料の製錬のための方法10は、
(i)微細金属含有原料(図示せず)及び微細還元体(図示せず)からなる集塊物(図示せず)を反応器12に供給するステップであって、集塊物が反応器12内で充填層14を形成する、ステップと、
(ii)高温還元ガス向流を充填層に通すことにより集塊物(図示せず)を製錬して、部分的に還元された金属含有構成成分(図示せず)、中間スラグ構成成分(図示せず)、及び同伴された未反応の還元体構成成分(図示せず)を含む溶融物質(図示せず)を形成するステップと、
(iii)溶融物質を容器26内に流入するように導いて液体金属生成物16及び最終スラグ生成物18を形成するステップと、
を含む。
【0041】
典型的には、金属含有原料は、採掘された金属酸化物である。しかし、金属含有原料は、金属酸化物を含む任意の材料であってよい。
【0042】
集塊物は、集塊物の流体透過性充填層14を形成するために、重力により反応器12に供給される。集塊物の充填層14は、反応器12内で2~3メートルの間の高さに積み重ねられる。理想的には、集塊物は、10mm~20mmの間の直径を有するが、方法10は、2mm~80mmの間、さらにはそれ以上のどのような直径を有する集塊物にも適応し得る。とりわけ、反応器12内の充填層14の低い高さのおかげで、強度が限られた集塊物、したがってバインダ含有量が限られているか又は無である集塊物が利用され得ることが、方法10の利点である。金属含有原料は、集塊物内で分散され、また好ましくは、75μm未満の粒径を有する微細物質である。集塊物はバインダ又は結合剤を含むことができ、また、バインダ又は結合剤の使用若しくは不使用は、方法10で使用される集塊物のサイズ及び/又は集塊物の充填層14が反応器12内で積み重ねられる高さに依存することが、理解されるであろう。さらに、集塊物は、フラックス又は融剤を含み得る。
【0043】
この例では、充填層14内の集塊物は、高温還元ガス(図示せず)を向流の様式でそこに通すことによって製錬される。高温還元ガスは、集塊物が反応器12に供給される方向に対して集塊物の充填層14及び向流の作動可能な下流の位置20において、反応器12に供給される。高温還元ガスは、集塊物の充填層14中に浸透するように、3~4m/sの間の速度で反応器12に供給される。高温還元ガスの温度は、集塊物中の金属含有原料のタイプ、及び集塊物の充填層14において所望される金属含有原料の還元の程度に応じて、1300℃超~最高で1700℃までに制御される。
【0044】
例として、高温還元ガスは、金属含有原料が酸化鉄である場合、金属含有原料が酸化クロムである場合よりも低い温度で反応器12に供給される。重要なことには、酸化鉄の製錬のための高温還元ガスの温度は、シリカ酸化物及び硫化物が還元される温度よりも低く設定することができ、これは、高純度銑鉄が生産されることを確実にする。高温還元ガスは、典型的には合成ガスであり、また好ましくは、10を超える、好ましくは15の、一酸化炭素対二酸化炭素(CO/CO,carbon monoxide to carbon dioxide)比を有する。高温還元ガスが集塊物の充填層14中に充満するにつれて、金属含有原料は、その金属形態に向かって部分的に還元される。ここで、合成ガスのCO/CO比は、集塊物の充填層14及び反応器12内の還元された金属含有原料の再酸化を防ぐように制御される。
【0045】
集塊物中の金属含有原料を部分的に還元することに加えて、高温還元ガスは、集塊物を溶融させ、それにより、部分的に還元された金属含有構成成分、中間スラグ構成成分、及び同伴された未反応の還元体構成成分からなる溶融物質を形成する。同伴された未反応の還元体構成成分は、集塊物から発する。本発明の方法の利点は、集塊物の溶融温度を制御できることである。集塊物の溶融温度の制御は、反応器12内での金属含有原料の滞留時間の制御をもたらす。つまり、形成された溶融物質が充填層14から流出する速度が制御される。同様に、反応器12内での金属含有原料の滞留時間の制御は、反応器内で起こる金属含有原料の還元の度合いの制御をもたらす。
【0046】
本発明のさらなる重要な利点は、集塊物の組成を制御又は操作することにより集塊物の溶融温度を制御又は操作できることである。したがって、集塊物の製錬の速度、及び反応器12内での微細金属含有原料の還元の度合いを制御することができる。例えば、集塊物の溶融温度を下げることにより、集塊物の製錬の速度は高められ、反応器12内での金属含有原料の還元の度合いは低下される。同様に、集塊物の溶融温度を上げることにより、集塊物の製錬の速度は低下され、反応器12内での金属含有原料の還元の度合いは高められる。前述のステップは反応器12内での集塊物及び金属酸化物を含む金属含有原料の滞留時間を決定することが、理解されるであろう。したがって、集塊物中に存在する金属酸化物が還元される度合いを制御することができ、これは、採算性を最適化するのに有用である。
【0047】
集塊物の溶融温度は、集塊物及びその構成成分の幾つかの物理的及び化学的な特性によって制御される。例えば、集塊物の溶融温度は、フラックス又は融剤をそれに加えることによって高められ得る。金属含有原料の性質又はタイプもまた、集塊物の溶融温度に影響する。つまり、他の全ての条件が同じならば、酸化鉄を含む集塊物は、酸化クロムを含む集塊物よりも低い温度で溶融するはずである。
【0048】
結果的に、反応器内での集塊物の滞留時間、したがって金属含有原料の還元の度合いは、
- 金属含有原料及び/又は集塊物の溶融温度、
- 高温還元ガスが集塊物の充填層14に供給されるときの温度、並びに
- 集塊物のサイズ
のうちのいずれか1つ又はそれらの組合せに応じて制御することができ、金属含有原料及び/又は集塊物の溶融温度は、
i.集塊物に加えられるフラックス又は融剤の量及び性質、
ii.集塊物に加えられるバインダ又は結合剤の量及び性質、並びに
iii.鉱石タイプの選択
によって制御される。
【0049】
流体透過性界面が、充填層14の作動可能な下方領域に形成される。流体透過性界面は、(i)高温還元ガスが流体透過性界面を通過して集塊物の充填層14に入ること、及び(ii)溶融物質が集塊物の充填層14から流出して離れて行くことを可能にする。図1に示された実施形態では、流体透過性界面は、反応器12内に配置された閉塞物22に隣接して形成される。図1の閉塞物22は、耐火物の多孔層の形態を取る。しかし、閉塞物22は、コークス粒子の多孔層の形態を取ることもできる。
【0050】
流体透過性界面及び集塊物の充填層14にわたる高温還元ガスの圧力降下は、最小限に抑えられ、典型的には5~10kPa程度である。集塊物の充填層14を通過した後の高温還元ガスの温度は、典型的には300℃未満である。
【0051】
集塊物の充填層14から容器26へと流体透過性界面を通過すると、溶融物質に電気エネルギーが追加される。溶融物質に電気エネルギーを追加することにより、溶融物質中の部分的に還元された金属含有構成成分が金属化され、最適化された液体金属生成物16及び最終濃縮スラグ生成物18が形成される。電気エネルギーは、溶融物質中に沈められた電極24を介して溶融物質に追加される。
【0052】
最適化された液体金属及び最終スラグ生成物は、本発明の一実施形態では、部分的に還元された金属含有構成成分と同伴された未反応の還元体構成成分との間の電気化学反応を介して形成され、中間スラグは、電解質として機能する。これは、当技術分野において知られている従来の製錬と比較して遙かに高いレベルに金属化が進むことを可能にする。
【0053】
有利には、容器26は、反応器12と流体流れ連通し、それにより、部分的還元反応及び溶融から電気化学反応への溶融物質の移行中の熱損失を最小限に抑える。さらに、電気化学反応に先立って、又は溶融物質を電気化学反応にさらしている間に、追加的な還元体(図示せず)が、溶融物質に加えられ得る。
【0054】
本発明の方法10において達成される大きな躍進は、本発明の方法10により、高温合成ガスによる鉱石の処理が可能になるとともに、生成物が溶融することがさらに可能になり、また、液体金属生成物及び最終スラグ生成物を生成するためのさらなる容器に溶融物質を移送することができる方法設計を有することである。したがって、本発明の方法10は、クロムやマンガンのような鉱石は商業的に生成された高温ガスでは製錬され得ないという当業者の見識に反して、本発明の方法10を用いるとそれらの鉱石がそのようなガスの使用を通じて実際に製錬され得ることを示す。
【0055】
本発明の方法10は、方法反応温度を要求温度に制御することができるという大きな利点をさらに提供し、このことは、存在する不純物の還元を回避すると同時に、還元されるべき金属構成成分が、選択された温度において標的とされることを可能にする。
【0056】
本発明は本明細書において説明された正確な詳細に限定されるものではないこと、及び、本発明の範囲から逸脱することなしに多くの変形が可能であることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本発明は、本発明の範囲に含まれる、機能的に等価なあらゆる処理設備、構造、方法、及び使用に及ぶ。具体的には、提供される方法のステップは、必ずしも連続的に実行される必要はない。さらに、提供される方法のステップは必ずしも本明細書に記載された順序で実行される必要はないことが、想定されている。
【0057】
説明は、本発明の原理及び概念的態様に関する最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために、単なる例として提示された。この点について、本発明及び/又は本発明において利用される設備の構造上の詳細を本発明の基礎的理解に必要である以上に詳しく示す試みは、なされない。本明細書において使用された用語は、限定の用語ではなく、説明及び例示の用語である。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-02-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有原料の製錬のための方法であって、
(i)微細金属含有原料及び微細還元体からなる集塊物を反応器に供給し、前記集塊物が前記反応器内で充填層を形成するステップと、
(ii)高温還元ガス向流を前記充填層に通すことにより前記集塊物を製錬して、部分的に還元された金属含有構成成分、中間スラグ構成成分、及び同伴された未反応の還元体構成成分を含む溶融物質を形成するステップと、
(iii)前記溶融物質を容器内に流入するように導いて金属生成物及びスラグ生成物を形成するステップであって、前記容器が、前記反応器から分離され、かつ、前記反応器と流体流れ連通している、ステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
容器内の溶融物質に電気エネルギーを追加して、部分的に還元された金属含有構成成分をさらに還元して最適化された液体金属生成物及び最終スラグ生成物を形成する追加的なステップであって、前記溶融物質中の同伴された未反応の還元体構成成分が、還元剤として機能する前記追加的なステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶融物質への電気エネルギーの追加が、最適化された液体金属生成物及び最終スラグ生成物を形成するために前記溶融物質の温度を調整するように制御され、前記最適化された液体金属生成物及び前記最終スラグ生成物が、容器からの注出に適している、請求項に記載の方法。
【請求項4】
溶融物質中に存在する部分的に還元された金属含有構成成分を完全に還元するために、前記溶融物質に電気エネルギーが追加される、請求項又はに記載の方法。
【請求項5】
集塊物の組成を操作して、充填層内の前記集塊物の溶融温度を下げ、それにより前記集塊物の溶融速度を高め、かつ微細金属含有原料の還元の度合いを低下させる、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
集塊物の組成を操作して、前記集塊物の溶融温度を上げ、それにより前記集塊物の溶融速度を低下させ、かつ微細金属含有原料の還元の度合いを高める、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
高温還元ガスが、部分的に還元された金属含有構成成分の再酸化を回避するために、5よりも高い、好ましくは10よりも高いCO/CO比を有する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
充填層を通過した高温還元ガスが、1200℃を超える、好ましくは1350℃を超える、最も好ましくは1600℃を超える温度を有し、前記温度が、生成される金属生成物に依存する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
充填層が、集塊物が反応器に供給される領域に対して作動可能な下流の位置に流体透過性界面を含み、前記流体透過性界面が、高温還元ガスが前記流体透過性界面及び前記集塊物の充填層を通過することを可能にする、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
容器内の溶融物質に追加の還元体を加える追加的なステップを含む、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
溶融物質中に沈められた電極を介して前記溶融物質に電気エネルギーを追加する、請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
最適化された液体金属生成物及び最終スラグ生成物が、溶融物質中の部分的に還元された金属含有構成成分と未反応の同伴された還元体構成成分との間の電気化学反応を介して形成され、中間スラグ構成成分が、電解質として機能する、請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
集塊物の充填層内での金属含有原料の滞留時間が、反応器内での金属含有原料の還元の度合いに影響するように制御される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
反応器及び容器内の動作温度が、金属含有原料中の第1の標的金属を選択的に金属化するように制御され、それにより、前記金属化された第1の標的金属が最適化された液体金属生成物へ入ることを可能とし、かつ、非標的金属が最終スラグ生成物へ入ることを可能とする、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
最終スラグ生成物が、後続の方法における金属含有原料として提供され、前記後続の方法が、請求項1~14のいずれかに記載の方法であり、前記後続の方法における反応器及び容器内の動作温度が、金属含有原料中の第2の標的金属を選択的に金属化するように制御され、それにより、前記金属化された第2の標的金属が前記後続の方法の液体金属生成物へ入ることを可能とし、かつ、残りの非標的金属が前記後続の方法の最終スラグ生成物へ入ることを可能とする、請求項14のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】