(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】BCMAを標的とする操作された免疫細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220705BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220705BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220705BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220705BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220705BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220705BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220705BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61P35/00
A61K48/00
A61K35/17 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566227
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2020088836
(87)【国際公開番号】W WO2020224606
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】201910376652.8
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521194507
【氏名又は名称】グレイセル・バイオテクノロジーズ(シャンハイ)カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フア
(72)【発明者】
【氏名】シー,フアン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,リャンジュン
(72)【発明者】
【氏名】カオ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,リーピン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、BCMAを標的とする操作された免疫細胞及びその使用を提供する。特に、本発明は、BCMAを特異的に標的とするCARを提供し、該CARは、S由来のscFvである抗原結合ドメイン、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含む。本発明はまた、該CARを含むCAR-T細胞、S由来のscFvを含む二重CAR-及びCAR-T細胞、並びにその関連使用を提供する。他のscFvを使用して構築されたCAR-T細胞と比較して、本発明の構築CAR-T細胞は、より良好な死滅効果及び腫瘍除去能を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメイン(scFv)が、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記scFvが、下記式A又は式B:
V
H-V
L、(A); V
L-V
H、(B)
(式中、V
Hは、抗体重鎖可変領域であり;V
Lは、抗体軽鎖可変領域であり;「-」は、リンカーペプチド又はペプチド結合である)
で示される通りである、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
BCMA及び第1の標的を標的とする二重特異性CARであって、該二重特異性CARにおける該BCMAを標的とする抗原結合ドメイン(scFv)が、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含み、
該第1の標的が、
CD138、カッパ軽鎖、NKG2D-リガンド、TACI、GPRC5D、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44V6、CD47、CD52、CD56、CD57、CD58、CD79b、CD80、CD86、CD81、CD123、CD133、CD137、CD151、CD171、CD276、CLL1、B7H4、BCMA、VEGFR-2、EGFR、GPC3、PMSA、CEACAM6、c-Met、EGFRvIII、ErbB2/HER2、ErbB3、HER-2、HER3、ErbB4/HER-4、EphA2、IGF1R、GD2、O-アセチルGD2、O-アセチルGD3、GHRHR、GHR、Flt1、KDR、Flt4、Flt3、CEA、CA125、CTLA-4、GITR、BTLA、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR1、IL6R、gp130、Lewis、TNFR1、TNFR2、PD1、PD-L1、PD-L2、PSCA、HVEM、MAGE-A、MSLN、NY-ESO-1、PSMA、RANK、ROR1、TNFRSF4、TWEAK-R、LTPR、LIFRP、LRP5、MUC1、MUC16、TCRα、TCRβ、TLR7、TLR9、PTCH1、WT-1、Robol、Frizzled、OX40、Notch-1-4、APRIL、CS1、MAGE3、クローディン18.2、葉酸受容体α、葉酸受容体β、GPC2、CD70、BAFF-R、TROP-2、又はそれらの組合せ
からなる群から選択される、二重特異性CAR。
【請求項4】
前記第1の標的がCD19であり、前記二重特異性CARにおける該CD19を標的とする抗原結合ドメイン(scFv)が、配列番号11、及び配列番号21~配列番号30のいずれか1つに示される抗体重鎖可変領域並びに配列番号12、及び配列番号31~配列番号36のいずれか1つに示される抗体軽鎖可変領域を含む、請求項3に記載の二重特異性CAR。
【請求項5】
下記式II:
L-scFv1-I-scFv2-H-TM-C-CD3ζ (II)
(式中、
「-」は、それぞれ独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり;
Lは、不在であるか、又はシグナルペプチド配列であり;
Iは、可撓性リンカーであり;
Hは、不在であるか、又はヒンジ領域であり;
TMは、膜貫通ドメインであり;
Cは、共刺激シグナル分子であり、
CD3ζは、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列であり;
scFv1及びscFv2の一方は、前記第1の標的を標的とする抗原結合ドメインであり、他方は、前記BCMAを標的とする抗原結合ドメインである)
で示されるような構造を有する、請求項3に記載の二重特異性CAR。
【請求項6】
下記式III又はIII’:
L-V
L3-scFv3-V
H3-H-TM-C-CD3ζ (III)
L-V
H3-scFv3-V
L3-H1-TM-C-CD3ζ (III’)
(式中、
「-」は、それぞれ独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり;
要素L、H、TM、C及びCD3ζは、上述の通りであり;
scFv3は、前記BCMAを標的とする抗原結合ドメインであり、V
H3は、前記第1の標的に対する抗体重鎖可変領域であり、V
L3は、前記第1の標的に対する抗体軽鎖可変領域であるか;又は
scFv3は、前記第1の標的を標的とする抗原結合ドメインであり、V
H3は、前記BCMAに対する抗体重鎖可変領域であり、V
L3は、前記BCMAに対する抗体軽鎖可変領域である)
で示されるような構造を有する、請求項3に記載の二重特異性CAR。
【請求項7】
請求項1に記載のCAR又は請求項3に記載の二重特異性CARをコードする核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
染色体に外因的に組み込まれる請求項8に記載のベクター、若しくは請求項7に記載の核酸分子を含む、又は請求項1に記載のCAR若しくは請求項3に記載の二重特異性CARを発現する、操作された免疫細胞。
【請求項10】
免疫細胞が、外因性である第1の発現カセット及び第2の発現カセットを含み、
該第1の発現カセットが、第1の標的を標的とする第1のCARを発現するのに使用され、第2の発現カセットが、BCMAを標的とする第2のCARを発現するのに使用されるか;又は
免疫細胞が、該第1の標的を標的とする該第1のCAR及び該BCMAを標的とする該第2のCARを発現し、
該第2のCARにおける該BCMAを標的とする抗原結合ドメイン(scFv)が、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含み;
該第1の標的が、
CD138、カッパ軽鎖、NKG2D-リガンド、TACI、GPRC5D、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44V6、CD47、CD52、CD56、CD57、CD58、CD79b、CD80、CD86、CD81、CD123、CD133、CD137、CD151、CD171、CD276、CLL1、B7H4、BCMA、VEGFR-2、EGFR、GPC3、PMSA、CEACAM6、c-Met、EGFRvIII、ErbB2/HER2、ErbB3、HER-2、HER3、ErbB4/HER-4、EphA2、IGF1R、GD2、O-アセチルGD2、O-アセチルGD3、GHRHR、GHR、Flt1、KDR、Flt4、Flt3、CEA、CA125、CTLA-4、GITR、BTLA、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR1、IL6R、gp130、Lewis、TNFR1、TNFR2、PD1、PD-L1、PD-L2、PSCA、HVEM、MAGE-A、MSLN、NY-ESO-1、PSMA、RANK、ROR1、TNFRSF4、TWEAK-R、LTPR、LIFRP、LRP5、MUC1、MUC16、TCRα、TCRβ、TLR7、TLR9、PTCH1、WT-1、Robol、Frizzled、OX40、Notch-1-4、APRIL、CS1、MAGE3、クローディン18.2、葉酸受容体α、葉酸受容体β、GPC2、CD70、BAFF-R、TROP-2、又はそれらの組合せ
からなる群から選択される、
操作された免疫細胞。
【請求項11】
請求項1に記載のCAR、請求項3に記載の二重特異性CAR、又は請求項9若しくは請求項10に記載の操作された免疫細胞、及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む製剤。
【請求項12】
癌若しくは腫瘍を予防及び/又は処置するための薬物又は製剤の調製における、請求項1に記載のCAR、請求項3に記載の二重特異性CAR、又は請求項9若しくは請求項10に記載の操作された免疫細胞の使用。
【請求項13】
前記薬物又は前記製剤が、クローン増殖が可能な腫瘍細胞を死滅させることによって、前記癌又は前記腫瘍を処置する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記クローン増殖が可能な腫瘍細胞が、クローン形成細胞、腫瘍細胞前駆体細胞、及び腫瘍前駆細胞を含む、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、免疫療法の分野、より具体的には、BCMAを標的とする操作された免疫細胞及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]多発性骨髄腫(MM)は、悪性形質細胞腫瘍である。該腫瘍細胞は、骨髄中の形質細胞に由来し、形質細胞は、Bリンパ球の最終的な機能的段階に発達する細胞である。多発性骨髄腫は、高い罹患率及び高い死亡率の特徴を有する基本的に不治の疾患である。2017年の統計では、米国において、新たに診断された多発性骨髄腫患者が30,000人存在し、その中で、12,000人が死に直面し得る。目下、多発性骨髄腫のための一般的な治療法として、細胞傷害性薬物療法、プロテアーゼ阻害剤(ボルテゾミブ等)、レナリドミド、モノクローナル抗体、コルチコステロイド等が挙げられる。しかしながら、現行の治療法は全て、部分的に有効であり、持続的な軽減効果を有さず、高い再発リスクを有する。したがって、多発性骨髄腫の治療法の改善は、特に重要であると思われる。
【0003】
[0003]したがって、当該技術分野において、多発性骨髄腫のための有効で、再発率が低く、かつ安全な治療法の必要性に迫られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]本発明の目的は、BCMAを標的とする操作された免疫細胞及びその使用を提供することである。
[0005]本発明の別の目的は、CD19及びBCMAの両方を標的とする操作された免疫細胞並びにその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0006]本発明の第1の態様では、キメラ抗原受容体(CAR)又はTCRが提供され、CAR又はTCRの抗原結合ドメイン(scFv)は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含む。
【0006】
[0007]別の好ましい実施形態では、scFvは、重鎖可変領域と、軽鎖可変領域との間に位置するリンカーペプチドを更に含む。
[0008]別の好ましい実施形態では、scFvは、下記式A又は式B:
VH-VL、(A); VL-VH、(B)
(式中、VHは、抗体重鎖可変領域であり;VLは、抗体軽鎖可変領域であり;「-」は、リンカーペプチド又はペプチド結合である)
で示される通りである。
【0007】
[0009]別の好ましい実施形態では、VHと、VLとの間のリンカーペプチドは、1個~4個、好ましくは1個~4個、より好ましくは配列番号7(GGGGS)に示されるように3個~4個の連続配列である。
【0008】
[0010]別の好ましい実施形態では、CARは、下記式I:
L-scFv-H-TM-C-CD3ζ (I)
(式中、
「-」は、それぞれ独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり;
Lは、不在であるか、又はシグナルペプチド配列であり;
Hは、不在であるか、又はヒンジ領域であり;
TMは、膜貫通ドメインであり;
Cは、共刺激シグナル分子であり、
CD3ζは、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列である)
で示される構造を有する。
【0009】
[0011]本発明の第2の態様では、二重特異性CAR又はTCRが提供され、該二重特異性CAR又はTCRは、BCMA及び第1の標的を標的とし、
該二重特異性CARにおける該BCMAを標的とする抗原結合ドメイン(scFv)は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含み、
該第1の標的は、
CD138、カッパ軽鎖、NKG2D-リガンド、TACI、GPRC5D、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44V6、CD47、CD52、CD56、CD57、CD58、CD79b、CD80、CD86、CD81、CD123、CD133、CD137、CD151、CD171、CD276、CLL1、B7H4、BCMA、VEGFR-2、EGFR、GPC3、PMSA、CEACAM6、c-Met、EGFRvIII、ErbB2/HER2、ErbB3、HER-2、HER3、ErbB4/HER-4、EphA2、IGF1R、GD2、O-アセチルGD2、O-アセチルGD3、GHRHR、GHR、Flt1、KDR、Flt4、Flt3、CEA、CA125、CTLA-4、GITR、BTLA、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR1、IL6R、gp130、Lewis、TNFR1、TNFR2、PD1、PD-L1、PD-L2、PSCA、HVEM、MAGE-A、MSLN、NY-ESO-1、PSMA、RANK、ROR1、TNFRSF4、TWEAK-R、LTPR、LIFRP、LRP5、MUC1、MUC16、TCRα、TCRβ、TLR7、TLR9、PTCH1、WT-1、Robol、Frizzled、OX40、Notch-1-4、APRIL、CS1、MAGE3、クローディン18.2、葉酸受容体α、葉酸受容体β、GPC2、CD70、BAFF-R、TROP-2、又はそれらの組合せ
からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、該二重特異性CAR又はTCRは、CD19を標的とする抗原結合ドメインを含む。
【0010】
[0012]別の好ましい実施形態では、第1の標的はCD19であり、二重特異性CARにおける該CD19を標的とする抗原結合ドメイン(scFv)は、配列番号11に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号12に示される抗体軽鎖可変領域を含む。
【0011】
[0013]別の好ましい実施形態では、第1の標的はCD19であり、二重特異性CARにおける該CD19を標的とする抗原結合ドメイン(scFv)は、配列番号21~配列番号30のいずれか1つに示される抗体重鎖可変領域及び配列番号31~配列番号36のいずれか1つに示される抗体軽鎖可変領域を含む。
【0012】
[0014]特定の配列は、以下に示される通りである:
配列番号21に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H9)
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTISKDTSKSQVSLKLSSVTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTLVTVSS;
配列番号22に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H1)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWIGVIWGSETTYYNSALKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARHYYYGGSYAMDYWGQGTTVTVSS;
配列番号23に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H8)
QVKLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWIGVIWGSETTYYNSALKSRVTISKDTSKSQVFLKLSSVTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTLVTVSS;
配列番号24に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H10)
QVKLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTISKDTSKSQVFLKLSSVTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTLVTVSS;
配列番号25に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H2)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWIGVIWGSETTYYNSALKSRVTISKDTSKNQVSLKLSSVTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTTVTVSS;
配列番号26に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H3)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWIGVIWGSETTYYNSALKSRLTISKDTSKNQVSLKLSSVTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTTVTVSS;
配列番号27に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H4)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTISKDTSKNQVSLKLSSVTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTTVTVSS;
配列番号28に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H5)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTISKDTSKNQVSLKLSSLTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTTVTVSS;
配列番号29に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H6)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWLGVIWGSETTYYNAALKSRLTISKDTSKNQVSLKLSSLTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTTVTVSS;
配列番号30に示されるCD19抗体重鎖可変領域(H7)
QVKLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPGKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTISKDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTLVTVSS;
配列番号31に示されるCD19抗体軽鎖可変領域(L5)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEIK;
配列番号32に示されるCD19抗体軽鎖可変領域(L1)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGNTLPYTFGGGTKLEIK;
配列番号33に示されるCD19抗体軽鎖可変領域(L6)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISKYLNWYQQKPGGAVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEIK;
配列番号34に示されるCD19抗体軽鎖可変領域(L2)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYYCQQGNTLPYTFGGGTKLEIK;
配列番号35に示されるCD19抗体軽鎖可変領域(L3)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDIATYYCQQGNTLPYTFGGGTKLEIK
配列番号36に示されるCD19抗体軽鎖可変領域(L4)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISKYLNWYQQKPGKAPKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDIATYYCQQANTLPYTFGGGTKLEIK
[0015]別の好ましい実施形態では、二重特異性CARは、第1の標的を標的とする抗原結合ドメイン及びBCMAを標的とする抗原結合ドメインの両方を含む。
【0013】
[0016]別の好ましい実施形態では、二重特異性CARは、下記式II:
L-scFv1-I-scFv2-H-TM-C-CD3ζ (II)
(式中、
「-」は、それぞれ独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり;
Lは、不在であるか、又はシグナルペプチド配列であり;
Iは、可撓性リンカーであり;
Hは、不在であるか、又はヒンジ領域であり;
TMは、膜貫通ドメインであり;
Cは、共刺激シグナル分子であり、
CD3ζは、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列であり;
scFv1及びscFv2の一方は、第1の標的を標的とする抗原結合ドメインであり、他方は、BCMAを標的とする抗原結合ドメインである)
で示されるような構造を有する。
【0014】
[0017]別の好ましい実施形態では、scFv1及びscFv2は、互いに独立して、タンデムであり得るか、又はリープ構造で存在し得る。
[0018]別の好ましい実施形態では、scFv1は、第1の標的を標的とする抗原結合ドメインであり、scFv2は、BCMAを標的とする抗原結合ドメインである。
【0015】
[0019]別の好ましい実施形態では、scFv1は、BCMAを標的とする抗原結合ドメインであり、scFv2は、第1の標的を標的とする抗原結合ドメインである。
[0020]別の好ましい実施形態では、可撓性リンカーIの配列は、1個~6個、好ましくは配列番号7(GGGGS)に示されるような3個~5個の連続配列である。
【0016】
[0021]別の好ましい実施形態では、可撓性リンカーIは、配列番号17、配列番号18又は配列番号19に示される配列を有する。
[0022]別の好ましい実施形態では、第1の標的を標的とする抗原結合ドメインは、下記式C又は式Dで示されるような構造を有する:
[0023]VL1-VH1 (C); VH1-VL1 (D)
[0024](式中、VL1は、第1の標的に対する抗体軽鎖可変領域であり;VH1は、第1の標的に対する抗体重鎖可変領域であり;「-」は、リンカーペプチド又はペプチド結合である)。
【0017】
[0025]別の好ましい実施形態では、CD19を標的とする抗原結合ドメインは、下記式C又は式Dで示されるような構造を有する:
[0026]VL1-VH1 (C); VH1-VL1 (D)
[0027](式中、VL1は、CD19に対する抗体軽鎖可変領域であり;VH1は、CD19に対する抗体重鎖可変領域であり;「-」は、リンカーペプチド又はペプチド結合である)。
【0018】
[0028]別の好ましい実施形態では、CD19を標的とする抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体FMC63の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。
[0029]別の好ましい実施形態では、抗CD19抗体の重鎖可変領域は、配列番号11に示されるアミノ酸配列を有する。
【0019】
[0030]別の好ましい実施形態では、抗CD19抗体の軽鎖可変領域は、配列番号12に示されるアミノ酸配列を有する。
[0031]別の好ましい実施形態では、BCMAを標的とする抗原結合ドメインは、下記式A又は式Bで示されるような構造を有する:
VH-VL、(A); VL-VH、(B)
(式中、VHは、抗体重鎖可変領域であり;VLは、抗体軽鎖可変領域であり;「-」は、リンカーペプチド又はペプチド結合である)。
【0020】
[0032]別の好ましい実施形態では、scFv1は、配列番号11に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号12に示される抗体軽鎖可変領域を含み、scFv2は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含む。
【0021】
[0033]別の好ましい実施形態では、scFv1は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含み、scFv2は、配列番号11に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号12に示される抗体軽鎖可変領域を含む。
【0022】
[0034]別の好ましい実施形態では、scFv1及び/又はscFvは、マウス由来、ヒト由来、ヒト及びマウス由来のキメラ、又は完全ヒト化単鎖抗体可変領域断片である。
[0035]別の好ましい実施形態では、二重特異性CARは、下記式III又はIII’:
L-VL3-scFv3-VH3-H-TM-C-CD3ζ (III)
L-VH3-scFv3-VL3-H1-TM-C-CD3ζ (III’)
(式中、
「-」は、それぞれ独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり;
要素L、H、TM、C及びCD3ζは、上述の通りであり;
scFv3は、BCMAを標的とする抗原結合ドメインであり、VH3は、第1の標的に対する抗体重鎖可変領域であり、VL3は、第1の標的に対する抗体軽鎖可変領域であるか;又は
scFv3は、第1の標的を標的とする抗原結合ドメインであり、VH3は、BCMAに対する抗体重鎖可変領域であり、VL3は、BCMAに対する抗体軽鎖可変領域である)
で示されるような構造を有する。
【0023】
[0036]別の好ましい実施形態では、scFv3は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含む。
[0037]別の好ましい実施形態では、VH3は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域を有し、VL3は、配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を有する。
【0024】
[0038]別の好ましい実施形態では、scFv3は、配列番号11に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号12に示される抗体軽鎖可変領域を含み、VH3は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域を有し、VL3は、配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を有する。
【0025】
[0039]別の好ましい実施形態では、scFv3は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含み、VH3は、配列番号11に示される抗体重鎖可変領域を有し、VL3は、配列番号12に示される抗体軽鎖可変領域を有する。
【0026】
[0040]別の好ましい実施形態では、CARは、
図1に示される構造を有する。
[0041]別の好ましい実施形態では、Lは、CD8、CD28、GM-CSF、CD4、CD137、又はそれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質のシグナルペプチドである。
【0027】
[0042]別の好ましい実施形態では、Lは、CD8に由来するシグナルペプチドである。
[0043]別の好ましい実施形態では、Lは、配列番号16又は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する。
【0028】
[0044]別の好ましい実施形態では、Hは、CD8、CD28、CD137、又はそれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質のヒンジ領域である。別の好ましい実施形態では、Hは、それぞれ独立して、CD8に由来するヒンジ領域である。
【0029】
[0045]別の好ましい実施形態では、Hは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する。
[0046]別の好ましい実施形態では、TMは、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、又はそれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質の膜貫通領域である。別の好ましい実施形態では、TMは、それぞれ独立して、CD8又はCD28に由来する膜貫通領域である。別の好ましい実施形態では、CD8由来の膜貫通領域は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する。
【0030】
[0047]別の好ましい実施形態では、CD28由来の膜貫通領域は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。
[0048]別の好ましい実施形態では、Cは、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD70、CD134、4-1BB(CD137)、PD1、Dap10、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、NKG2D、GITR、TLR2、又はそれらの組合せからなる群から選択されるタンパク質の共刺激シグナル分子である。別の好ましい実施形態では、Cは、CD28及び/又は4-1BBに由来する共刺激シグナル分子である。
【0031】
[0049]別の好ましい実施形態では、4-1BB由来の共刺激シグナル分子は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する。
[0050]別の好ましい実施形態では、CD28由来の共刺激シグナル分子は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する。
【0032】
[0051]別の好ましい実施形態では、CD3ζは、配列番号3に示されるアミノ酸配列を有する。
[0052]別の好ましい実施形態では、CAR(好ましくは、C末端又はN末端)は、細胞自殺(suicide)要素を更に含む。
【0033】
[0053]別の好ましい実施形態では、細胞自殺要素は、CAR若しくは二重特異性CARのL又はCD3ζに、T2Aを介して結合される。
[0054]本発明の第3の態様では、核酸分子が提供され、該核酸分子は、本発明の第1の態様によるCAR若しくはTCR又は本発明の第2の態様による二重特異性CAR若しくはTCRをコードする。
【0034】
[0055]本発明の第4の態様では、ベクターが提供され、該ベクターは、本発明の第3の態様による核酸分子を含む。
[0056]別の好ましい実施形態では、ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、トランスポゾン、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0035】
[0057]別の好ましい実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。
[0058]本発明の第5の態様では、宿主細胞が提供され、該宿主細胞は、染色体に外因的に組み込まれる本発明の第4の態様によるベクター、若しくは本発明の第3の態様による核酸分子を含むか、或いは本発明の第1の態様によるCAR若しくはTCR又は本発明の第2の態様による二重特異性CAR若しくはTCRを発現する。
【0036】
[0059]本発明の第6の態様では、操作された免疫細胞が提供され、該免疫細胞は、染色体に外因的に組み込まれる本発明の第4の態様によるベクター、若しくは本発明の第3の態様による核酸分子を含むか、或いは本発明の第1の態様によるCAR若しくはTCR又は本発明の第2の態様による二重特異性CAR若しくはTCRを発現する。
【0037】
[0060]別の好ましい実施形態では、免疫細胞は、
(a)免疫細胞のPD-1遺伝子発現が、サイレンシングされていること;
(b)免疫細胞がT細胞であり、T細胞のTCR遺伝子発現が、サイレンシングされていること;
(c)免疫細胞が、外因性細胞自殺要素を発現すること;
(d)免疫細胞が、PD-1抗体、PD-L1抗体、CD47抗体、Tim3抗体、Lag3抗体、Tigit抗体、OX40抗体、ICOS抗体、IL7、CXCL19、IL21、IL15、IL2、IL18、若しくはそれらの組合せを発現又は分泌すること;及び
(e)免疫細胞のサイトカイン関連シグナル伝達経路が増強され、サイトカインが、IL7、CXCL19、IL21、IL15、IL2、IL18、又はそれらの組合せからなる群から選択されること
からなる群から選択される1つ又は複数の特徴を有する。
【0038】
[0061]別の好ましい実施形態では、操作された免疫細胞は、
(i)キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞);又は
(ii)キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)
からなる群から選択される。
【0039】
[0062]別の好ましい実施形態では、免疫細胞は、外因性細胞自殺要素を発現する。
[0063]別の好ましい実施形態では、CAR及び細胞自殺要素は、免疫細胞において同時発現される。
【0040】
[0064]別の好ましい実施形態では、CAR及び細胞自殺要素は、自己切断要素によって結合される。
[0065]別の好ましい実施形態では、細胞自殺要素は、CARのN末端又はC末端に位置する。
【0041】
[0066]別の好ましい実施形態では、自己切断要素は、2A配列又はIRES配列、好ましくは、P2A及びT2Aを含む。
[0067]別の好ましい実施形態では、細胞自殺要素は、HSV-TK、iCasp9、ΔCD20、mTMPK、ΔCD19、RQR8、EGFRt、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0042】
[0068]別の好ましい実施形態では、細胞自殺要素は、下記式IV:
L2-D-F (IV)
(式中、
「-」は、それぞれ独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり;
L2は、任意選択のシグナルペプチド配列であり;
Dは、自殺スイッチ要素であり;
Fは、膜貫通要素である)
で示されるような構造を有する。
【0043】
[0069]別の好ましい実施形態では、シグナルペプチドは、GM-CSFRに由来するシグナルペプチドである。
[0070]別の好ましい実施形態では、細胞自殺要素は、切断型上皮増殖因子(EGFRt)、切断型CD19(CD19t)遺伝子、誘導性カスパーゼ9遺伝子(iCasp9)、HSV-TK、ΔCD20、mTMPK、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0044】
[0071]別の好ましい実施形態では、細胞自殺要素は、EGFRtである。
[0072]別の好ましい実施形態では、操作された免疫細胞は、自己免疫療法及び/又は同種異系免疫療法に使用される。
【0045】
[0073]別の好ましい実施形態では、操作された免疫細胞は、クローン増殖が可能な腫瘍細胞を死滅させ得る。
[0074]別の好ましい実施形態では、本発明の第1の態様によるCARを発現する免疫細胞と比較して、第2の態様による二重特異性CARを発現する免疫細胞は、in vivoでより長く生存する。
【0046】
[0075]別の好ましい実施形態では、in vivoは、自己的なin vivo、又は同種異系的なin vivoを包含する。
[0076]本発明の第7の態様では、操作された免疫細胞が提供され、
該免疫細胞は、外因性である第1の発現カセット及び第2の発現カセットを含み、ここで、第1の発現カセットは、第1の標的を標的とする第1のCAR若しくは第1の外因性TCRを発現するのに使用され、第2の発現カセットは、BCMAを標的とする第2のCAR若しくは第2の外因性TCRを発現するのに使用されるか、又は
該免疫細胞は、第1の標的を標的とする第1のCAR若しくは第1の外因性TCR及びBCMAを標的とする第2のCAR若しくは第2の外因性TCRを発現し、
第2のCAR若しくは第2の外因性TCRにおけるBCMAを標的とする抗原結合ドメイン(scFv)は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含み;
該第1の標的は、
CD138、カッパ軽鎖、NKG2D-リガンド、TACI、GPRC5D、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44V6、CD47、CD52、CD56、CD57、CD58、CD79b、CD80、CD86、CD81、CD123、CD133、CD137、CD151、CD171、CD276、CLL1、B7H4、BCMA、VEGFR-2、EGFR、GPC3、PMSA、CEACAM6、c-Met、EGFRvIII、ErbB2/HER2、ErbB3、HER-2、HER3、ErbB4/HER-4、EphA2、IGF1R、GD2、O-アセチルGD2、O-アセチルGD3、GHRHR、GHR、Flt1、KDR、Flt4、Flt3、CEA、CA125、CTLA-4、GITR、BTLA、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR1、IL6R、gp130、Lewis、TNFR1、TNFR2、PD1、PD-L1、PD-L2、PSCA、HVEM、MAGE-A、MSLN、NY-ESO-1、PSMA、RANK、ROR1、TNFRSF4、TWEAK-R、LTPR、LIFRP、LRP5、MUC1、MUC16、TCRα、TCRβ、TLR7、TLR9、PTCH1、WT-1、Robol、Frizzled、OX40、Notch-1-4、APRIL、CS1、MAGE3、クローディン18.2、葉酸受容体α、葉酸受容体β、GPC2、CD70、BAFF-R、TROP-2、又はそれらの組合せ
からなる群から選択される。
【0047】
[0077]別の好ましい実施形態では、第1の標的はCD19であり、第1のCARにおけるCD19を標的とする抗原結合ドメイン(scFv)は、配列番号11に示される抗体重鎖可変領域、及び配列番号12に示される抗体軽鎖可変領域を含む。
【0048】
[0078]別の好ましい実施形態では、第2のCARは、本発明の第1の態様によるCARである。
[0079]別の好ましい実施形態では、第1のCAR及び第2のCARは、免疫細胞の細胞膜上に位置する。
【0049】
[0080]別の好ましい実施形態では、CD19を標的とする第1のCAR及びBCMAを標的とする第2のCARは、免疫細胞の細胞膜上で発現される。
[0081]別の好ましい実施形態では、第1の発現カセット及び第2の発現カセットは、同じベクター又は異なるベクター上に位置する。
【0050】
[0082]別の好ましい実施形態では、第1の発現カセット及び第2の発現カセットは、同じベクター上に位置する。
[0083]別の好ましい実施形態では、第1のCARは、下記式V:
L-scFv1’-H-TM-C-CD3ζ (V)
(式中、
「-」は、それぞれ独立して、リンカーペプチド又はペプチド結合であり;
要素L、H、TM、C及びCD3ζは、上述の通りであり;
scFv1’は、CD19を標的とする抗原結合ドメインである)
で示される構造を有する。
【0051】
[0084]別の好ましい実施形態では、第1のCAR及び第2のCARは、2Aペプチドを介して結合される。
[0085]別の好ましい実施形態では、2Aペプチドは、配列番号2に示される配列を有する。
【0052】
[0086]別の好ましい実施形態では、免疫細胞は、細胞自殺要素を更に含む。
[0087]別の好ましい実施形態では、細胞自殺要素及び二重特異性CARは、T2Aを介して結合される(か、又はタンデムで存在する)。
【0053】
[0088]別の好ましい実施形態では、細胞自殺要素は、第1のCAR及び/又は第2のCARに、T2Aを介して結合される。
[0089]別の好ましい実施形態では、免疫細胞のPD1遺伝子発現は、サイレンシングされている。
【0054】
[0090]別の好ましい実施形態では、「PD-1遺伝子発現が、サイレンシングされていること」は、PD-1遺伝子が、発現されないか、又は低発現である(under-expressed)ことを意味する。
【0055】
[0091]別の好ましい実施形態では、「低発現」は、免疫細胞のPD-1遺伝子の発現レベルG1の、正常な免疫細胞のPD-1遺伝子の発現レベルG0に対する比(即ち、G1/G0)が0.5以下、好ましくはG1/G0が0.3以下、より好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下、最も好ましくは0であることを指す。
【0056】
[0092]別の好ましい実施形態では、「低発現」は、CAR-T細胞のPD-1遺伝子の発現レベルG1の、正常なT細胞のPD-1遺伝子の発現レベルG0に対する比(即ち、G1/G0)が0.5以下、好ましくはG1/G0が0.3以下、より好ましくは0.2、より好ましくは0.1、最も好ましくは0であることを指す。
【0057】
[0093]本発明の第8の態様では、製剤が提供され、該製剤は、本発明の第1若しくは第2の態様によるCAR又はTCR、或いは本発明の第6若しくは第7の態様による操作された免疫細胞、及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む。
【0058】
[0094]別の好ましい実施形態では、製剤は、液体製剤である。
[0095]別の好ましい実施形態では、製剤の投薬形態は、注射である。
[0096]別の好ましい実施形態では、製剤中の操作された免疫細胞は、1×103個~1×108個の細胞/ml、好ましくは1×104個~1×107個の細胞/mlの濃度を有する。
【0059】
[0097]別の好ましい実施形態では、CARは、二重特異性CARを含む。
[0098]本発明の第9の態様では、癌若しくは腫瘍を予防及び/又は処置するための薬物又は製剤の調製における、本発明の第1若しくは第2の態様によるCAR又はTCR、或いは本発明の第6若しくは第7の態様による操作された免疫細胞の使用が提供される。
【0060】
[0099]別の好ましい実施形態では、腫瘍は、血液腫瘍である。
[00100]別の好ましい実施形態では、血液腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0061】
[00101]別の好ましい実施形態では、癌又は腫瘍は、多発性骨髄腫である。
[00102]別の好ましい実施形態では、癌又は腫瘍は、リンパ腫である。
[00103]別の好ましい実施形態では、リンパ腫は、ホジキンリンパ腫(HL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、慢性リンパ球性白血球(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、マントル細胞リンパ腫、(MCL)、バーキットリンパ腫(BL)及び複合性B細胞非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0062】
[00104]別の好ましい実施形態では、癌又は腫瘍は、再発性癌又は腫瘍である。
[00105]別の好ましい実施形態では、薬物又は製剤は、クローン増殖が可能な腫瘍細胞を死滅させることによって、癌又は腫瘍を処置する。
【0063】
[00106]別の好ましい実施形態では、クローン増殖が可能な腫瘍細胞は、クローン形成細胞、腫瘍細胞前駆体細胞、及び腫瘍前駆細胞を含む。
[00107]本発明の第10の態様では、下記工程:本発明の第3の態様による核酸分子又は本発明の第4の態様によるベクターを、免疫細胞へ形質導入して、それにより操作された免疫細胞を得る工程を含む、操作された免疫細胞を調製する方法が提供され、該操作された免疫細胞は、本発明の第1又は第2の態様によるCAR又はTCRを発現する。
【0064】
[00108]別の好ましい実施形態では、免疫細胞が、T細胞又はNK細胞である。
[00109]本発明の第11の態様では、下記工程:
(1)操作されるべき免疫細胞を提供する工程と、
(2)第1の標的を標的とする第1のCARを発現するための第1の発現カセットを、該免疫細胞へ導入する工程と、
(3)BCMAを標的とする第2のCARを発現するための第2の発現カセットを、該免疫細胞へ導入して、それにより、操作された免疫細胞を得る工程
とを含む、操作された免疫細胞を調製する方法が提供され、
ここで、第2のCARにおけるBCMAを標的とする抗原結合ドメイン(scFv)は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含み、
該第1の標的は、CD138、カッパ軽鎖、NKG2D-リガンド、TACI、GPRC5D、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44V6、CD47、CD52、CD56、CD57、CD58、CD79b、CD80、CD86、CD81、CD123、CD133、CD137、CD151、CD171、CD276、CLL1、B7H4、BCMA、VEGFR-2、EGFR、GPC3、PMSA、CEACAM6、c-Met、EGFRvIII、ErbB2/HER2、ErbB3、HER-2、HER3、ErbB4/HER-4、EphA2、IGF1R、GD2、O-アセチルGD2、O-アセチルGD3、GHRHR、GHR、Flt1、KDR、Flt4、Flt3、CEA、CA125、CTLA-4、GITR、BTLA、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR1、IL6R、gp130、Lewis、TNFR1、TNFR2、PD1、PD-L1、PD-L2、PSCA、HVEM、MAGE-A、MSLN、NY-ESO-1、PSMA、RANK、ROR1、TNFRSF4、TWEAK-R、LTPR、LIFRP、LRP5、MUC1、MUC16、TCRα、TCRβ、TLR7、TLR9、PTCH1、WT-1、Robol、Frizzled、OX40、Notch-1-4、APRIL、CS1、MAGE3、クローディン18.2、葉酸受容体α、葉酸受容体β、GPC2、CD70、BAFF-R、TROP-2、又はそれらの組合せ
からなる群から選択される。
【0065】
[00110]別の好ましい実施形態では、工程(2)は、工程(3)の前、工程(3)の後、工程(3)と同時に、又は工程(3)と交互に実施され得る。
[00111]別の好ましい実施形態では、工程(1)で操作される免疫細胞が、第1のCAR又は第2のCARを発現する場合、工程(2)又は工程(3)は省略され得る。
【0066】
[00112]本発明の第12の態様では、キットが提供され、該キットは、本発明の第6又は第7の態様による操作された免疫細胞を調製するのに使用され、該キットは、容器、及び該容器中に位置する本発明の第3の態様による核酸分子又は本発明の第4の態様によるベクターを含む。
【0067】
[00113]本発明の第13の態様では、キットが提供され、該キットは、本発明の第6又は第7の態様による操作された免疫細胞を調製するのに使用され、該キットは、容器、及び該容器中に位置する下記のもの:
(1)第1の核酸配列(該第1の核酸配列は、第1の発現カセットを含み、第1の発現カセットは、第1の標的を標的とする第1のCARを発現するのに使用される)と、
(2)第2の核酸配列(該第2の核酸配列は、第2の発現カセットを含み、第2の発現カセットは、BCMAを標的とする第2のCARを発現するのに使用される)
とを含み、
ここで、第2のCARにおけるBCMAを標的とする抗原結合ドメイン(scFv)は、配列番号9に示される抗体重鎖可変領域及び配列番号10に示される抗体軽鎖可変領域を含み、
該第1の標的は、CD138、カッパ軽鎖、NKG2D-リガンド、TACI、GPRC5D、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD44V6、CD47、CD52、CD56、CD57、CD58、CD79b、CD80、CD86、CD81、CD123、CD133、CD137、CD151、CD171、CD276、CLL1、B7H4、BCMA、VEGFR-2、EGFR、GPC3、PMSA、CEACAM6、c-Met、EGFRvIII、ErbB2/HER2、ErbB3、HER-2、HER3、ErbB4/HER-4、EphA2、IGF1R、GD2、O-アセチルGD2、O-アセチルGD3、GHRHR、GHR、Flt1、KDR、Flt4、Flt3、CEA、CA125、CTLA-4、GITR、BTLA、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR1、IL6R、gp130、Lewis、TNFR1、TNFR2、PD1、PD-L1、PD-L2、PSCA、HVEM、MAGE-A、MSLN、NY-ESO-1、PSMA、RANK、ROR1、TNFRSF4、TWEAK-R、LTPR、LIFRP、LRP5、MUC1、MUC16、TCRα、TCRβ、TLR7、TLR9、PTCH1、WT-1、Robol、Frizzled、OX40、Notch-1-4、APRIL、CS1、MAGE3、クローディン18.2、葉酸受容体α、葉酸受容体β、GPC2、CD70、BAFF-R、TROP-2、又はそれらの組合せ
からなる群から選択される。
【0068】
[00114]別の好ましい実施形態では、第1の核酸配列及び第2の核酸配列は、同じ容器又は異なる容器中に位置する。
[00115]別の好ましい実施形態では、第1の核酸配列及び第2の核酸配列は、同じ発現ベクター中に位置する。
【0069】
[00116]本発明の第14の態様では、癌若しくは腫瘍の予防及び/又は処置のための本発明の第6又は第7の態様による操作された免疫細胞の使用が提供される。
[00117]別の好ましい実施形態では、癌又は腫瘍は、多発性骨髄腫である。
【0070】
[00118]本発明の第15の態様では、疾患を処置する方法が提供され、該方法は、適切な量の、本発明の第6若しくは第7の態様による細胞、又は本発明の第5の態様による製剤を、処置を必要とする対象に投与する工程を含む。
【0071】
[00119]別の好ましい実施形態では、疾患は、癌又は腫瘍である。
[00120]本発明の第16の態様では、(a)免疫細胞において外因性である第1の発現カセット及び第2の発現カセットの両方を発現させる工程(ここで、該第1の発現カセットは、CD19を標的とする第1のCARを発現するのに使用され、該第2の発現カセットは、BCMAを標的とする第2のCARを発現するのに使用される)、又は(b)該免疫細胞において、第2の態様による二重特異性CARを発現させる工程を含む、免疫細胞のin vivoでの生存能を高めるか、又はクローン増殖が可能な腫瘍細胞に対する免疫細胞の死滅能を高める方法が提供される。
【0072】
[00121]別の好ましい実施形態では、上記方法によって構築される免疫細胞は、本発明の第6及び第7の態様に記載される通りである。
[00122]別の好ましい実施形態では、第1の発現カセット及び第2の発現カセットは、本発明の第7の態様における第1の発現カセット及び第2の発現カセットと同じ意味を有する。
【0073】
[00123]別の好ましい実施形態では、in vivoは、自己的なin vivo、又は同種異系的なin vivoを包含する。
[00124]本発明の第17の態様では、操作された免疫細胞において外因性の第1の発現カセットを発現させる工程(ここで、該第1の発現カセットは、CD19を標的とする第1のCARを発現するのに使用される)を含む、BCMAを標的とする操作された免疫細胞の、in vivoでの生存能又はクローン増殖が可能な腫瘍細胞に対する死滅能を高める方法が提供される。
【0074】
[00125]別の好ましい実施形態では、第1の発現カセットは、本発明の第7の態様における第1の発現カセット及び第2の発現カセットと同じ意味を有する。
[00126]別の好ましい実施形態では、BCMAを標的とする操作された免疫細胞は、本発明の第1の態様によるCARを発現する免疫細胞である。
【0075】
[00127]別の好ましい実施形態では、in vivoは、自己的なin vivo、又は同種異系的なin vivoを包含する。
[00128]本発明の第18の態様では、第1の発現カセットの使用が提供され、該第1の発現カセットは、CD19を標的とする第1のCARを発現するのに使用されるか、BCMAを標的とする操作された免疫細胞の、in vivoでの生存能若しくはクローン増殖が可能な腫瘍細胞に対する死滅能を高めるのに使用されるか、又はキットを調製するのに使用され、ここで、キットは、BCMAを標的とする操作された免疫細胞の、in vivoでの生存能又はクローン増殖が可能な腫瘍細胞に対する死滅能を高めるのに使用される。
【0076】
[00129]別の好ましい実施形態では、in vivoは、自己的なin vivo、又は同種異系的なin vivoを包含する。
[00130]本発明の範囲内で、本発明の上述の技術的特徴のそれぞれ及び下記(例えば、実施形態)において具体的に記載される各種技術的特徴のそれぞれが、新たな技術的解決法又は好ましい技術的解決法を形成するために互いに組み合わせられてもよいことが理解されるべきである。限られたスペースを考慮して、それらは、本明細書中で繰り返されない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】[00131]
図1は、本発明によるCAR及び細胞自殺要素を含有する構造の模式図を示す図であり、ここで、二重特異性CAR及び自殺スイッチ要素が、2Aを介して結合されている。
【
図2】[00132]
図2は、それぞれ本発明によるジャーカット細胞及び初代T細胞の表面におけるCAR-BB及びCAR-S1の発現をフローサイトメトリーにより分析した結果を示す図である。
【
図3】[00133]
図3は、それぞれ本発明による、Hela細胞及びBCMA過剰発現細胞(Hela-BCMA)のそれぞれに対するCAR-BB及びCAR-S1の死滅効果(RTCA法)並びにHela細胞及びBCMA過剰発現細胞(Hela-BCMA)それぞれに対するCAR-April及びCAR-S1の死滅効果(RTCA法)を示す図である。
【
図4】[00134]
図4は、本発明において使用される標的細胞のBCMA発現を示す図である。
【
図5】[00135]
図5は、それぞれ本発明による、MM.1s細胞及びRPMI-8226細胞に対するCAR-BB及びCAR-S1の種々のバッチのin vitroでの死滅実験(ルシフェラーゼ法)の結果を示す図である。
【
図6】[00136]
図6は、それぞれ本発明による、Hela細胞及びBCMA過剰発現細胞(Hela-BCMA)に対するCAR-BB及びCAR-S1の死滅プロセス中のサイトカインIFNrの放出を示す図である。
【
図7】[00137]
図7は、本発明によるRPMI-8226で皮下にモデル化したモデルである免疫不全マウスにおける静脈内再注入後のCAR-BB及びCAR-S1の腫瘍除去能を示す図である。
【
図8】[00138]
図8は、本発明による二重特異性CAR-T細胞におけるCD19-CAR及びBCMA-CARの発現を示す図である。
【
図9】[00139]
図9は、本発明による安全性スイッチが付加された二重特異性CAR-T細胞におけるCD19-CAR及びBCMA-CARの発現並びにEGFRtの発現の分析を示す図である。
【
図10】[00140]
図10は、本発明によるCAR-19、CAR-BCMA及び二重特異性CAR-Tの種々のバッチによる、Hela細胞並びに抗原過剰発現Hela細胞系統であるHela-BCMA、Hela-CD19及びHela-BCMA-CD19の死滅の比較の図である。
【
図11】[00141]
図11は、本発明による、MM.1s細胞、RPMI-8226細胞及びNalm6細胞に対するCAR-19、CAR-BCMA及び二重特異性CAR-Tの種々のバッチのin vitroでの死滅実験(ルシフェラーゼ法)の結果を示す図である。
【
図12】[00142]
図12は、本発明による、BCMA過剰発現Hela細胞(Hela-BCMA)に対するCAR-BCMA及び二重特異性CAR-T細胞の死滅プロセス中のサイトカイン放出を示す図である。
【
図13】[00143]
図13は、MM.1s又はRaji腫瘍標的細胞で共培養した後の二重CAR-T細胞の表面上でのCD107a分子の発現の分析を示す図である。
【
図14】[00144]
図14は、本発明による、RPMI-8226で皮下にモデル化したモデルである免疫不全マウスにおける静脈内再注入後のCAR-S1、二重特異性CAR-S2及びCAR-S4の腫瘍除去能を示す図である。
【
図15】[00145]
図15は、本発明による、MM.1s-lucで静脈内にモデル化したモデルである免疫不全マウスにおける静脈内再注入後の種々の用量の二重特異性CAR-S2及びCAR-S4細胞の腫瘍除去能を示す図である。
【
図16】[00146]
図16は、MM患者の骨髄におけるCD34陰性単球のクローン形成に関する種々のCAR-T細胞の阻害能を示す図である。
【
図17】[00147]
図17は、Nalm6-Luc細胞でモデル化したNOGマウスに対する種々のCAR-T細胞のin vivoでの腫瘍除去能を示す図である。
【
図18】[00148]
図18は、T細胞の表面上でのCAR-T細胞のCAR及び安全スイッチの発現を示す図である。
【
図19】[00149]
図19は、Nalm6又はRMPI8226細胞に対する種々のCAR-T細胞の死滅効果(ルシフェラーゼ法)を示す図である。単一CAR-T細胞と比較して、二重CAR対は、標的細胞を死滅させる、より強力な能力を有する。
【
図20】
図20は、種々のCAR-T細胞が、陰性標的細胞(K562、Raji-KO19、Nalm6-KO19、及びCCRF)に対して死滅能を有さないことを示す図である。
【
図21】[00150]
図21は、Raji-lucでモデル化したNOG細胞に対する種々のCAR-T細胞のin vivoでの腫瘍除去能を示す図である。単一CAR-T細胞と比較して、二重CAR対は、標的細胞を死滅させる、より強力な能力を有する。
【
図22】[00151]
図22は、Rajiリンパ腫細胞に対するCAR-S1のin vitroでの死滅実験(ルシフェラーゼ法)の結果を示す図であり、ここで、
図22Aは、Rajiリンパ腫標的細胞の表面上でのBCMA抗原の発現を示し、
図22Bは、種々のE:T比におけるCAR-S1細胞によるRajiリンパ腫標的細胞の死滅を示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
[00152]広範囲かつ綿密な研究後に、本発明者らは、BCMAを標的とする新規の操作された免疫細胞を初めて構築したが、その中に含有されるCARにおける抗原結合ドメインは、S由来のscFvである。実験により、BB scFv及びApril由来のBCMA結合ドメインの使用を用いて構築されたCAR-T細胞と比較して、本発明において構築されたCAR-T細胞は、より高い死滅効果及び腫瘍除去能を有することが示された。本発明はまた、BCMA陽性CAR-T細胞及びCD19陽性CAR-T細胞の両方を死滅させることができる二重CAR-T細胞を構築するためにS scFv及びCD19 scFvを使用する。
【0079】
[00153]具体的には、本発明のCAR-T細胞は、種々のBCMA抗体のscFvを用いて構築される。それらを比較することによって、予想外にも、S由来のscFvによって構築されたCAR-T細胞は、BB scFv及びApril由来のBCMA結合ドメインによって構築されたものよりも、BCMA過剰発現細胞及びBCMA陽性腫瘍標的細胞を死滅させる、より高い能力を有することが見出した。in vivoでのマウス動物モデルもまた、S由来のscFvによって構築されたCAR-T細胞が、BB由来CAR-Tよりも高い腫瘍除去能を有することを示している。当該技術分野で一般に使用されるBCMAを標的とする幾つか他のscFvを用いて構築されたCAR-T細胞は、理想的なin vitro及びin vivoでの機能を示さない。
【0080】
用語
[00154]本開示をより良好に理解するためには、或る特定の用語が、まず初めに定義される。本出願で使用される場合、本明細書中で明らかに別記されない限り、下記用語はそれぞれ、以下で付与される意味を有する。他の定義は、明細書全体にわたって記載される。
【0081】
[00155]「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値又は組成の許容可能な誤差範囲内の値又は組成を指す場合があり、それは、値又は組成が、どのように測定又は決定されるかにある程度依存する。
【0082】
[00156]「投与」という用語は、注射又は注入を介する等、静脈内、筋内、皮下、腹腔内、脊髄内又は他の非経口経路の投与を含め、本発明の生成物を対象に物理的に導入するための、当業者に既知の各種方法及び送達系のいずれかの使用を指す。
【0083】
[00157]「抗体」(Ab)という用語は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合によって相互結合される少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン、又はそれらの抗原結合部分を包含するが、これらに限定されない。H鎖はそれぞれ、重鎖可変領域(本明細書中ではVHと略記される)及び重鎖定常領域を含有する。重鎖定常領域は、3つの定常ドメインCH1、CH2及びCH3を含有する。軽鎖はそれぞれ、軽鎖可変領域(本明細書中ではVLと略記される)及び軽鎖定常領域を含有する。軽鎖定常領域は、定常ドメインCLを含有する。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分させることができ、それらには、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在されている。VH及びVLはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、下記の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRを含有する:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。
【0084】
[00158]本明細書中のアミノ酸名称は、国際的に認められている英語一文字によって同定され、アミノ酸名称の相当する三文字略号が、それぞれ、Ala(A)、Arg(R)、Asn(N)、Asp(D)、Cys(C)、Gln(Q)、Glu(E)、Gly(G)、His(H)、Ile(I)、Leu(L)、Lys(K)、Met(M)、Phe(F)、Pro(P)、Ser(S)、Thr(T)、Trp(W)、Tyr(Y)、Val(V)であることは理解されるべきである。
【0085】
B細胞成熟抗原(BCMA)
[00159]BCMAは、成熟Bリンパ球の表面、即ち形質芽球及び形質細胞の表面上で発現される膜貫通タンパク質である。多発性骨髄腫は、形質細胞の異常増殖及び骨髄への浸潤によって引き起こされる。研究により、BCMAは、多発性骨髄腫細胞上で発現することが示されている。BCMAを標的とするCar-T細胞は、骨髄腫細胞を特異的に死滅させることが示されている。しかしながら、一部の患者において、BCMAを標的とするCAR-T細胞療法を受けた後、再発の経過が見られる。これらの再発した患者に関して、処置を継続するためには、BCMAとは異なる別の標的を見つけ出す必要がある。
【0086】
CD19
[00160]CD19分子は、B細胞の表面上の膜貫通タンパク質であり、CD19分子は、B細胞活性化、シグナル伝達及び成長制御に密接に関連している。
図1に示されるように、CD19は、全てのB細胞表面上でほぼ発現され、CD19を標的とするCAR-T細胞は現在、白血病及びリンパ腫の処置において著しい有効性を有する。一般的に、形質細胞の99.95%が、表面上でCD19を発現せず、したがって、多発性骨髄腫の処置のためにCD19を使用する可能性が顧みられることはないと考えられる。
【0087】
キメラ抗原受容体(CAR)
[00161]本発明のキメラ抗原受容体(CAR)は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、標的特異的な結合要素(抗原結合ドメインとも称される)を含む。細胞内ドメインは、共刺激シグナル伝達領域及びζ鎖部分を含む。共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子を含む細胞内ドメインの一部を指す。共刺激分子は、リンパ球の、抗原に対する有効な応答に必要とされる細胞表面分子であり、抗原受容体又はそれらのリガンドではない。
【0088】
[00162]CARの細胞外ドメインと、膜貫通ドメインとの間に、又はCARの細胞質ドメインと、膜貫通ドメインとの間に、リンカーが取り込まれ得る。本明細書中で使用される場合、「リンカー」という用語は概して、ポリペプチド鎖の膜貫通ドメインを細胞外ドメイン又は細胞質ドメインに結合させる機能を果たす任意のオリゴペプチド又はポリペプチドを指す。リンカーは、0個~300個のアミノ酸、好ましくは2個~100個のアミノ酸、最も好ましくは3個~50個のアミノ酸を含み得る。
【0089】
[00163]本発明の好ましい実施形態では、本発明によって提供されるCARの細胞外ドメインは、BCMA(又はBCMA及びCD19)を標的とする抗原結合ドメインを含む。本発明のCARが、T細胞で発現されると、本発明のCARは、抗原結合特異性に基づいて抗原認識を実施し得る。本発明のCARが、その結合された抗原に結合すると、本発明のCARは、腫瘍細胞に影響を及ぼし、腫瘍細胞が成長するのを停止させるか、死滅するのを促進させるか、又は他の場合では、影響を受けさせるかして、患者における腫瘍負荷を低減又は排除させる。抗原結合ドメインは、好ましくは、共刺激分子及びζ鎖の1つ又は複数由来の細胞内ドメインに融合される。好ましくは、抗原結合ドメインは、4-1BBシグナル伝達ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインと組み合わせた細胞内ドメインに融合される。
【0090】
[00164]本明細書中で使用される場合、「抗原結合ドメイン」及び「単鎖抗体断片」はともに、抗原結合活性を有する、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、又は単一Fv断片を指す。Fv抗体は、抗体重鎖可変領域及び抗体軽鎖可変領域を含有するが、定常領域を有さず、抗原結合部位全てを有する最小の抗体断片である。概して、Fv抗体はまた、VHドメインと、VLドメインとの間にポリペプチドリンカーを含有し、抗原結合に必要とされる構造を形成し得る。抗原結合ドメインは、通常、scFv(単鎖可変断片)である。scFvのサイズは概して、完全抗体のサイズの1/6である。単鎖抗体は好ましくは、ヌクレオチド鎖によってコードされるアミノ酸鎖配列である。本発明の好ましい実施形態として、抗原結合ドメインは、BCMAを特異的に認識する抗体を含み、任意選択で、抗原結合ドメインは、CD19を特異的に認識する抗体(好ましくは、単鎖抗体)を更に含む。
【0091】
[00165]ヒンジ領域及び膜貫通領域(膜貫通ドメイン)に関して、CARは、CARの細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含むように設計され得る。一実施形態では、CARにおけるドメインの1つと天然で結合される膜貫通ドメインが使用される。数例では、膜貫通ドメインは、選択されるか、又はアミノ酸置換によって修飾させて、かかるドメインを、同じか、又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合させるのを回避することができ、それにより、受容体複合体の他の成員との相互作用を最低限に抑える。
【0092】
[00166]本発明のCARにおける細胞内ドメインは、4-1BBのシグナル伝達ドメイン及びCD3ζのシグナル伝達ドメインを含む。
[00167]好ましくは、本発明のCARはまた、細胞自殺要素を含む。
【0093】
[00168]好ましくは、本発明のBCMAを標的とするscFvは、S scFvであり、実施例におけるBB scFv及びApril鎖は、対照として使用される。BB scFv及びApril鎖はともに、BCMAを標的とするための、当該技術分野において一般に使用される結合配列であり、BB scFvは、PCT出願公開第2010104949 A3号に記載されており、April鎖は、中国特許第105658671A号に記載されている。
【0094】
CD19及びBCMAを標的とする二重特異性CAR
[00169]多発性骨髄腫(MM)は、悪性の形質細胞腫瘍である。腫瘍細胞は、骨髄中の形質細胞から生じ、形質細胞は、最終的な機能的段階においてBリンパ球によって発生する細胞である。多発性骨髄腫は、高い罹患率及び高い死亡率の特徴を有する基本的に不治の疾患である。2017年の統計では、米国において、新たに診断された多発性骨髄腫患者が30,000人存在し、その中で、12,000人が死に直面し得る。目下、多発性骨髄腫のための一般的な治療法として、細胞毒性薬療法、プロテアーゼ阻害剤(ボルテゾミブ等)、レナリドミド、モノクローナル抗体、コルチコステロイド等が挙げられる。しかしながら、現行の治療法は全て、部分的に有効であり、持続的な軽減効果を有さず、高い再発リスクを有する。したがって、多発性骨髄腫の治療法の改善は、特に重要であると思われる。
【0095】
[00170]CD19は、プレB細胞及び成熟B細胞の膜表面上に発現される分子量95kDaを有する糖タンパク質であり、B細胞Ca++の膜貫通シグナル伝達経路と密接に関連されており、B細胞の増殖及び分化に対して制御効果を有する。CD19は、主に、高い組織発現特異性を伴って正常なB細胞及び癌性B細胞において発現され、抗体又はCAR-T免疫療法に関する良好な標的である。しかしながら、免疫療法の過程では、B細胞のCD19エピトープは、多くの場合失われており、患者における免疫療法への不応答又は再発を引き起こす。
【0096】
[00171]二重特異性は、同じCARが、2つの異なる抗原に特異的に結合して、2つの異なる抗原を免疫学的に認識することができ、CARが、抗原のいずれか1つと組み合わせられた場合に免疫応答を生じることができることを意味する。
【0097】
[00172]別の好ましい実施形態では、CD19及びBCMAを標的とする二重特異性CARは、本発明の第2の態様において記載されている。
[00173]本発明の好ましい実施形態では、本発明によって提供されるCARの細胞外ドメインは、抗CD19 scFv及び抗BCMA scFvを含む、CD19及びBCMAを標的とする抗原結合ドメインを含む。
【0098】
[00174]別の好ましい実施形態では、本発明は、CD19抗原及びBCMA抗原に対する二重特異性キメラ抗原受容体を提供する。CD19及びBCMAの両方を標的とするCAR構造構成成分は、シグナルペプチド、抗CD19 scFv、抗BCMA scFv、ヒンジ領域、膜貫通領域、及び細胞内T細胞シグナル伝達領域を含むことができ、ここで、CD19 scFv及びBCMA scFvは、短ペプチドセグメント(G4S)×Nを通じて結合される。CD19及びBCMAの両方を標的とするCAR構造は、本発明の第2の態様に記載されている。
【0099】
[00175]別の好ましい実施形態では、本発明のCD19及びBCMA二重特異性CARは、単一構造を有し、CD19及びBCMAに対するscFvを含有し、ここで、CARは、CD19 scFv及びBCMA scFvを含有し、CD19 scFv及びBCMA scFv及びヒンジの順序付けは、その機能の主な影響要因である。
【0100】
[00176]別の好ましい実施形態では、本発明は、BCMA scFvの配列を最適化する。BCMA scFv(S scFv)は、BCMAと高い親和性及び良好な特異性を有し、BCMAの完全長抗原及び細胞外領域を特異的に標的とし得る。
【0101】
[00177]本発明の好ましい実施形態では、(G4S)×3が、CD19 scFv及びBCMA ScFvを結合するのに使用される。このCARは、最良の活性及び死滅能を有する。
【0102】
[00178]CD19及びBCMAを標的とする二重特異性CARは、本発明で使用される。単一抗原を標的とするCARと比較して、その親和性は、著しく高められ、免疫細胞の活性は、著しく増加し、相乗効果が得られる。更に、腫瘍細胞におけるCD19及びBCMAの不均等な発現レベルに起因して、二重標的とするCAR-Tは、より広い治療範囲を有する。CD19及びBCMAの両方を標的とするCAR免疫細胞は、単一表面抗原のダウンレギュレート又は欠乏によって引き起こされる抗原エスケープの可能性を低減することができる。更に、CD19及びBCMAの二重特異性CAR-Tは、単一CAR-Tの能力よりも著しく良好な、骨髄腫を有する患者の骨髄におけるCD34陰性単球のin vitroでのクローン形成を阻害する能力を有し、これは、CD19及びBCMAの二重特異性CAR-Tが、単一CAR-Tの能力よりも著しく良好な腫瘍前駆細胞を阻害する能力を有することを示している。最終的に、CD19抗原の付加は、CD19及びBCMAの二重特異性CAR-Tの連続的な生存能を増加し得る。
【0103】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)
[00179]本明細書中で使用される場合、「CAR-T細胞」、「CAR-T」及び「本発明のCAR-T細胞」は、本発明の第3の態様に包含されるCAR-T細胞を含む。
【0104】
[00180]CAR-T細胞は、他のT細胞ベースの治療法を上回る下記の利点を有する:(1)CAR-T細胞の作用プロセスは、MHCによって拘束されないこと;(2)多くの腫瘍細胞が同じ腫瘍抗原を発現するという事実を考慮して、或る特定の抗原に向けたCAR遺伝子の構築が完了すると、それが広く使用され得ること;(3)CARは、腫瘍タンパク質抗原及び糖脂質非タンパク質抗原の両方を使用することができ、腫瘍抗原標的の範囲を拡張すること;(4)患者の自己細胞を使用することによって、拒絶のリスクが低減され得ること、及び(5)CAR-T細胞は、免疫学的な記憶機能を有し、長期間にわたって体内で生存することができること。
【0105】
キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)
[00181]本明細書中で使用される場合、「CAR-NK細胞」、「CAR-NK」及び「本発明のCAR-NK細胞」は全て、本発明の第3の態様に包含されるCAR-NK細胞を指す。本発明のCAR-NK細胞は、多発性骨髄腫等の高いBCMA発現を有する腫瘍を処置するのに使用され得る。
【0106】
[00182]ナチュラルキラー(NK)細胞は、非抗原特異的な経路を通じて、ウイルス感染及び腫瘍細胞浸潤から身体を防御する免疫エフェクター細胞の主要なタイプである。操作された(遺伝子修飾された)NK細胞は、腫瘍抗原を特異的に認識する能力及び高められた抗腫瘍細胞傷害性を含む、新たな機能を獲得し得る。
【0107】
[00183]自己CAR-T細胞と比較して、CAR-NK細胞は、例えば、下記の利点を更に有する:(1)体内の正常細胞に対して死滅効果を有さずに、パーフォリン及びグランザイムを放出することによって、腫瘍細胞を直接死滅させること;(2)少量のサイトカインを放出させる、それによって、サイトカインストームのリスクを低減させること;及び(3)in vitroで「既製の(off-the-shelf)」製品へと非常に容易に拡張及び発達すること。更に、CAR-NK細胞は、CAR-T細胞療法に類似している。
【0108】
自殺遺伝子スイッチ
[00184]非腫瘍標的化及びサイトカイン放出症候群等のCAR-T細胞の有害反応を更に制御するために、本発明におけるCAR-T細胞は全て、外因性薬物の作用下で、身体におけるCAR-T細胞を効果的に排除することができる自殺遺伝子スイッチを有し、それにより、未知の、又は制御できない長期にわたる傷害性を阻止して、患者の安全性を保証する。
【0109】
[00185]本発明で使用される自殺スイッチは、単純ヘルペスウイルスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-TK)、誘導性カスパーゼ9(iCasp9)、CD20、突然変異ヒトチミジル酸キナーゼ(mTMPK)等であり得る。比較すると、HSV-TK、iCasp9及びCD20は、CAR細胞に対して同じ除去能を有するが、iCasp9及びCD20は、より速い除去速度を有し、HSV-TKは、より遅い除去速度を有する。
【0110】
[00186]iCasp9自殺スイッチは、FKBP12-F36Vドメインを含み、FKBP12-F36Vドメインは、可撓性リンカーを介して、補充ドメインを含有しないカスパーゼ9に結合され得る。FKBP12-F36Vは、36位のアミノ酸残基の位置でバリンに代わって置換されたフェニルアラニンを有するFKBPドメインを含む。FKBP12-F36Vは、高い選択性及びnM以下の親和性を有し、他の不活性小分子AP1903等の二量体化リガンドを結合し得る。小分子は、付加されると、その二量体化を促進することができ、それにより、細胞アポトーシスを誘導するが、小分子は、自殺スイッチを保有しない正常な細胞にとっては有効でない。
【0111】
[00187]誘導性安全性スイッチカスパーゼ9(iCasp9)は、FK506結合タンパク質(FKBP)に融合されたヒトカスパーゼ9を使用し、これは、化学誘導物質(AP1903/Rimiducid、Bellicum Pharmaceutical社)で二量体を形成するように誘導されることができ、融合タンパク質を発現する細胞のアポトーシスを引き起こす。
【0112】
[00188]CD19及びBCMAは、腫瘍細胞において高度に発現されるが、CD19及びBCMAは、正常なB細胞でも発現される。したがって、本発明の操作された免疫細胞は、in vivoで正常なB細胞を攻撃し得る。
【0113】
[00189]どのようにして、CAR細胞の安全性を制御するかは、常に解決されるべき緊急課題となっている。安全性スイッチをCAR細胞に付加することは、CAR細胞の活性を終結させる最も安全な方法である。CAR細胞が、重度の毒性(CRS/神経毒性)をもたらした後、又は患者が長期にわたる持続的寛解に達した後、誘導性iCasp9安全性スイッチは、CAR細胞の排除を制御する。
【0114】
ベクター
[00190]所望の分子をコードする核酸配列は、例えば、遺伝子を発現する細胞からライブラリーをスクリーニングすることによる、遺伝子を含むことが知られているベクターから遺伝子を得ることによる、又は遺伝子を含む細胞及び組織から直接分離するための標準的な技術を使用することによる等の、当該技術分野で既知の組換え方法を使用して得ることができる。任意選択で、目的の遺伝子は、合成的に産生することができる。
【0115】
[00191]本発明はまた、本発明の発現カセットが挿入されるベクターを提供する。レンチウイルス等のレトロウイルスに由来されるベクターは、それが、導入遺伝子の長期にわたる安定な組込み及び娘細胞における導入遺伝子の伝播を可能にするので、長期にわたる遺伝子導入を達成するのに適したツールである。レンチウイルスベクターは、それらが肝細胞等の非増殖性細胞を形質導入することができるため、マウス白血病ウイルス等の発癌性レトロウイルスに由来されるベクターを上回る利点を有する。レンチウイルスベクターはまた、低い免疫原性の利点も有する。
【0116】
[00192]概して、本発明の発現カセット又は核酸配列は通常、プロモーターに作動可能に結合されて、発現ベクターに組み込まれる。このベクターは、真核生物における複製及び組込みに適している。典型的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現を調節するのに使用され得る転写及び翻訳終結因子、開始配列及びプロモーターを含有する。
【0117】
[00193]本発明の発現構築物はまた、核酸免疫化及び遺伝子療法に関する標準的な遺伝子送達プロトコールを利用することができる。遺伝子送達の方法は、当該技術分野で既知である。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,399,346号、同第5,580,859号及び同第5,589,466号を参照のこと。別の実施形態では、本発明は、遺伝子療法ベクターを提供する。
【0118】
[00194]核酸は、多くのタイプのベクターにクローニングされ得る。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドを包含するが、これらに限定されないかかるベクターにクローニングさせることができる。目的の特定のベクターとして、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及びシーケンシングベクターが挙げられる。
【0119】
[00195]更に、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で既知であり、例えば、Sambrookら(2001年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory社、ニューヨーク)並びにウイルス学及び分子生物学の他のハンドブックに記載されている。ベクターとして使用され得るウイルスとして、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。概して、適切なベクターは、少なくとも1種の生物において機能する複製起点、プロモーター配列、利便性の高い制限部位及び1つ又は複数の選択可能マーカーを含有する(例えば、国際公開第01/96584号、同第01/29058号、及び米国特許第6,326,193号を参照)。
【0120】
[00196]哺乳動物細胞への遺伝子導入のために多くのウイルスベースの系が開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達系のための利便性の高いプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当該技術分野で既知の技法を使用して、ベクターに挿入されて、レトロウイルス粒子へとパッケージングされ得る。続いて、組換えウイルスは、in vivo又はex vivoで、単離されて、標的細胞に送達され得る。多くのレトロウイルス系が当該技術分野で既知である。一部の実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターが当該技術分野で既知である。一実施形態では、レンチウイルスベクターが使用される。
【0121】
[00197]エンハンサー等の更なるプロモーター要素は、転写が始まる頻度を調節することができる。概して、これらの要素は、開始部位の上流30bp~110bpの領域に位置するが、多くのプロモーターはまた、開始部位の下流に機能的要素を含むことが最近示されている。要素が、反転されるか、又は互いに対して移動される場合に、プロモーターの機能を維持するために、プロモーター要素間のスペーシングは、多くの場合柔軟に対応し得る。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーター要素間のスペーシングは、活性が減少し始める前に、50bp増加し得る。プロモーターに応じて、個々の要素は、協同的に、又は独立して作用して転写を開始させることができる。
【0122】
[00198]適切なプロモーターの例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベル発現を駆動することが可能な強力な構成的プロモーター配列である。適切なプロモーターの別の例は、伸長増殖因子-1α(EF-1α)である。しかしながら、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLvプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、並びに例えばアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘムプロモーター及びクレアチンキナーゼプロモーターであるが、これらに限定されないヒト遺伝子プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない他の構成的プロモーター配列も使用することができる。更に、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも、本発明の一部として意図される。誘導性プロモーターの使用は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現を、かかる発現が望ましい場合にオンにし得るか、又は発現が望ましくない場合に、発現をオフにし得る分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例として、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
[00199]CARポリペプチド又はその一部の発現を評価するために、細胞に導入された発現ベクターはまた、発現中の細胞の、ウイルスベクターによってトランスフェクト又は感染されることを求められている細胞集団からの同定及び選択を容易にするように、選択可能マーカー遺伝子及びレポーター遺伝子の一方又は両方を含み得る。他の態様では、選択可能マーカーは、DNAの単一断片上に保有されて、同時トランスフェクション手順において使用され得る。選択可能マーカー及びレポーター遺伝子はともに、適切な制御配列に隣接させることができ、その結果、選択可能マーカー及びレポーター遺伝子は、宿主細胞において発現され得る。有用な選択可能マーカーとして、例えば、neo等の抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。
【0124】
[00200]レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクトされた細胞を同定するのに、また制御配列の機能性を評価するのに使用される。概して、レポーター遺伝子は、レシピエント生物若しくは組織中に存在しないか、又はレシピエント生物若しくは組織によって発現されない遺伝子であり、レポーター遺伝子は、その発現が、酵素活性等の幾つかの容易に検出可能な特性によって明らかに示され得るポリペプチドをコードし得る。DNAがレシピエント細胞に導入された後、レポーター遺伝子の発現は、適切な時間で測定される。適切なレポーター遺伝子として、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌されたアルカリホスファターゼ又は緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられ得る(例えば、Ui-Teiら、2000年 FEBS Letters 479:79~82頁)。適切な発現系は周知であり、既知の技法を使用して調製され得るか、又は市販されている。概して、最も高いレベルのレポーター遺伝子発現を示す最低5つのフランキング領域を有する構築物が、プロモーターとして同定される。かかるプロモーター領域は、レポーター遺伝子に結合されて、試薬の、プロモーター駆動型転写を調節する能力を評価するのに使用され得る。
【0125】
[00201]遺伝子を細胞に導入して、遺伝子を細胞に発現させる方法は、当該技術分野で既知である。発現ベクターの状況では、ベクターは、当該技術分野における任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞又は昆虫細胞に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的又は生物学的手段によって、宿主細胞に移入され得る。
【0126】
[00202]ポリヌクレオチドを、宿主細胞に導入する物理的方法として、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、パーティクルガン(particle bombardment)、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等が挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当該技術分野で周知されている。例えば、Sambrookら(2001年、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory社、ニューヨーク)を参照のこと。ポリヌクレオチドを、宿主細胞に導入する好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0127】
[00203]目的のポリヌクレオチドを、宿主細胞に導入する生物学的方法は、DNAベクター及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、遺伝子を、ヒト細胞等の哺乳動物細胞に挿入する最も広く使用されている方法になっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス等に由来され得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び同第5,585,362号を参照のこと。
【0128】
[00204]ポリヌクレオチドを、宿主細胞に導入するための化学的手段は、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ等のコロイド分散系;並びに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む脂質ベースの系を含む。in vitro及びin vivoで送達ビヒクルとして使用される例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0129】
[00205]非ウイルス送達系を使用する場合、例示的な送達ツールはリポソームである。脂質製剤の使用は、核酸を宿主細胞に導入する(in vitroで、ex vivoで、又はin vivoで)と考えられる。他方で、この核酸は、脂質と結合させることができる。脂質に結合された核酸は、リポソームの水性内部中に封入され得るか、リポソームの脂質二重層に分散され得るか、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方に結合される連結分子を介してリポソームに結合され得るか、リポソームに捕捉され得るか、リポソームと複合体形成され得るか、脂質を含有する溶液中に分散され得るか、脂質と混合され得るか、脂質と組み合わせられ得るか、懸濁液として脂質中に含有され得るか、ミセル中に含有され得るか、若しくはミセルと複合体形成され得るか、又は他の場合で脂質と結合され得る。組成物に関連する脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクターは、溶液中で任意の特定の構造に限定されない。例えば、それらは、二重層構造で存在し得るか、ミセルとして存在し得るか、又は「崩壊された」構造を有し得る。それらはまた、単に溶液中に分散されてもよく、場合によっては、不均等なサイズ又は形状の凝集体を形成する。脂質は、天然に存在する脂質又は合成脂質であり得る脂肪物質である。例えば、脂質は、細胞質中に、並びに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール及びアルデヒド等の長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含有するかかる化合物中に天然に存在する脂肪滴を含む。
【0130】
[00206]本発明の好ましい実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。
製剤
[00207]本発明は、本発明の第1の態様によるCAR-T細胞、及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む組成物を提供する。一実施形態では、製剤は、脂質製剤である。好ましくは、製剤は、注射である。好ましくは、製剤中のCAR-T細胞の濃度は、1×103~1×108個の細胞/ml、より好ましくは1×104個~1×107個の細胞/mlである。
【0131】
[00208]一実施形態では、製剤は、中性緩衝液生理食塩水、硫酸緩衝液生理食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール等の炭水化物;タンパク質;ポリペプチド又はグリシン等のアミノ酸;抗酸化剤;EDTA又はグルタチオ等のキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び防腐剤を含み得る。本発明の製剤は、好ましくは静脈内投与用に配合される。
【0132】
治療用途
[00209]本発明は、本発明の発現カセットをコードするレンチウイルスベクター(LV)で形質導入された細胞(例えば、T細胞)を用いた治療用途を含む。形質導入されたT細胞は、腫瘍細胞のマーカーBCMA及び/又はCD19を標的として、T細胞を相乗的に活性化させることができ、T細胞免疫応答を引き起こして、それにより腫瘍細胞に対するそれらの死滅効率を著しく改善する。
【0133】
[00210]したがって、本発明はまた、哺乳動物における標的細胞集団又は組織に対するT細胞媒介性免疫応答を刺激する方法を提供し、該方法は、下記工程:本発明のCAR-T細胞を哺乳動物に投与する工程を含む。
【0134】
[00211]一実施形態では、本発明は、患者の自己T細胞(又は同種異系ドナー由来)が単離されて、活性化されて、CAR-T細胞を産生するように遺伝子修飾された後、同じ患者に注射される細胞療法のタイプを含む。この方法においては、移植片対宿主病を患う蓋然性は極めて低く、抗原は、非MHC拘束様式で、T細胞によって認識されてる。更に、1つのCAR-Tが、抗原を発現する癌全てを処置することができる。抗体療法とは異なり、CAR-T細胞は、in vivoで複製することができ、持続的な腫瘍制御につながり得る長期持続性を生み出す。
【0135】
[00212]一実施形態では、本発明のCAR-T細胞は、安定なin vivoでのT細胞拡張を受けて、長期間にわたって存続し得る。更に、CAR媒介性免疫応答は、養子免疫療法手順の一部である可能性があり、そこでは、CAR修飾T細胞は、CARにおける抗原結合ドメインに特異的な免疫応答を誘導する。例えば、BCMA及び/又はCD19に対するCAR-T細胞は、BCMA及び/又はCD19を発現する細胞に対して特異的な免疫応答を誘発する。
【0136】
[00213]本明細書中に開示されるデータは、具体的に、抗BCMA及び/又はCD19 scFv、ヒンジ及び膜貫通領域、並びに4-1BB/CD28及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含むレンチウイルスベクターを開示するが、本発明は、構築物構成成分それぞれの数における任意の変化を含むと解釈されるべきである。
【0137】
[00214]処置可能な癌として、血管形成されていないか、又は実質的に血管形成されていない腫瘍、並びに血管形成された腫瘍が挙げられる。癌は、非固形腫瘍(血液腫瘍等、例えば、白血病及びリンパ腫)を含み得るか、又は固形腫瘍を含み得る。本発明のCARで処置される癌のタイプとして、細胞腫、芽細胞腫及び肉腫、或る特定の白血病又はリンパ系悪性疾患、良性及び悪性腫瘍、並びに肉腫、細胞腫及び黒色腫等の悪性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。成体腫瘍/癌及び小児腫瘍/癌もまた含まれる。
【0138】
[00215]血液癌は、血液又は骨髄の癌である。血液(又は造血性)癌の例として、急性白血病(球性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病及び骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、顆粒単球性(granulomonocytic)白血病、単球性白血病及び赤白血病等)、慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病及び慢性リンパ性白血病等)を含む白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無痛性及び進行型)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病及び脊椎異形成が挙げられる。
【0139】
[00216]固形腫瘍は、通常は嚢胞又は液体領域を含まない組織の異常塊である。固形腫瘍は、良性又は悪性であり得る。固形腫瘍の種々の型は、それらの細胞型が形成された後に指定され得る(例えば、肉腫、細胞腫、及びリンパ腫)。肉腫及び細胞腫等の固形腫瘍の例として、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、中皮肉腫、リンパ系悪性疾患、膵癌、及び卵巣癌が挙げられる。
【0140】
[00217]本発明のCAR修飾T細胞はまた、哺乳動物のex vivoでの免疫化及び/又はin vivoでの治療法のためのワクチンのタイプとして使用することができる。好ましくは、該哺乳動物はヒトである。
【0141】
[00218]ex vivoでの免疫化に関して、下記の少なくとも1つが、細胞を哺乳動物に投与する前にin vitroで行われる:1)細胞を拡張させること;ii)CARをコードする核酸を細胞に導入すること;及び/又はiii)細胞を凍結保存すること。
【0142】
[00219]ex vivoでの手順は、当該技術分野で周知されており、以下でより十分に論述される。簡潔に述べると、細胞は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)から単離されて、本明細書中で開示されるCARを発現するベクターで、遺伝子修飾される(即ち、in vitroで形質導入又はトランスフェクトされる)。CAR修飾細胞は、治療効果を提供するように哺乳動物レシピエントに投与され得る。哺乳動物レシピエントは、ヒトであってもよく、CAR修飾細胞は、レシピエントに対して自己であり得る。或いは、細胞は、レシピエントに対して、同種異系、同系又は異種であり得る。
【0143】
[00220]ex vivoでの免疫化用の細胞ベースのワクチンを使用することに加えて、本発明はまた、患者において抗原に対する免疫応答を誘発するためのin vivoでの免疫化のための組成物及び方法を提供する。
【0144】
[00221]本発明は、腫瘍を処置する方法を提供し、該方法は、治療上有効な量の本発明のCAR修飾T細胞を、処置を必要とする患者に投与する工程を含む。
[00222]本発明のCAR修飾T細胞は、単独で、或いは希釈剤及び/又はIL-2、IL-17若しくは他のサイトカイン若しくは細胞集団等の他の構成成分と組み合わせて医薬組成物として投与され得る。簡潔に述べると、本発明の医薬組成物は、本明細書中に記載されるような標的細胞集団を含み、1つ若しくは複数の薬学的に又は生理学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせられ得る。かかる組成物は、中性緩衝生理食塩水、硫酸緩衝生理食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール等の炭水化物;タンパク質;ポリペプチド又はグリシン等のアミノ酸;抗酸化剤;EDTA又はグルタチオ等のキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、及び防腐剤を含み得る。本発明の製剤は、好ましくは静脈内投与用に配合される。
【0145】
[00223]本発明の医薬組成物は、処置されるべき(又は予防されるべき)疾患に適した方法で投与され得る。投与の量及び頻度は、患者の障害、並びに患者の疾患のタイプ及び重篤性等の要因によって決定され得るが、適切な投与量は、臨床試験によって決定され得る。
【0146】
[00224]「免疫学的に有効な量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍抑制有効量」又は「治療量」について言及する場合、投与されるべき本発明の組成物の正確な量は、医師によって決定されてよく、医師は、患者の(対象の)年齢、体重、腫瘍サイズ、感染又は転移の度合い、及び障害における個々の差を考慮する。概して、本明細書中に記載されるT細胞を含む医薬組成物は、104個~109個の細胞/kg(体重)の用量で、好ましくは105個~106個の細胞/kg(体重)の用量で(それらの範囲内の整数値全てを含む)投与され得ると指摘され得る。T細胞組成物はまた、これらの用量で、複数回投与され得る。細胞は、免疫療法における周知の注射技法を使用することによって投与され得る(例えば、Rosenbergら、New Eng.J.of Med.319:1676、1988年を参照)。特定の患者に関する最適な投与量及び治療レジメンは、医療分野の当業者によって、患者の疾患の兆候をモニタリングすること、及びそれに応じて治療法を調節することにより、容易に決定され得る。
【0147】
[00225]組成物の、対象への投与は、噴霧、注射、嚥下、注入、インプラント術又は移植によることを含む、任意の利便性の高い方法で実行され得る。本明細書中に記載される組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、節内、脊髄内、筋内、静脈内(i.v.)注射によって、又は腹腔内的に、患者に投与され得る。一実施形態では、本発明のT細胞組成物は、皮内又は皮下注射によって、患者に投与される。別の実施形態では、本発明のT細胞組成物は、好ましくは、静脈内注射によって投与される。T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節又は感染部位へ直接注射することができる。
【0148】
[00226]本発明の或る特定の実施形態では、T細胞を治療レベルに拡張させるために本明細書中に記載される方法又は当該技術分野で既知の他の方法を使用して活性化及び拡張させた細胞は、任意の数の関連治療形態と組み合わせて(例えば、それらに先立って、それらと同時に、又はそれらの後で)患者に投与され、治療形態としては、下記の試薬を用いた治療法が挙げられるが、これらに限定されない:抗ウイルス療法であるシドフォビル及びインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとしても既知)、又はMS患者用のナタリズマブ療法、又は乾癬患者用のエファリズマブ療法、又はPML患者用の他の療法等の試薬。更なる実施形態では、本発明のT細胞は、下記を組み合わせて使用され得る:化学療法、放射線、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル及びFK506等の免疫抑制剤、抗体又は他の免疫療法剤。更なる実施形態では、本発明の細胞組成物は、フルダラビン等の化学療法剤、外照射療法(XRT)、及びシクロホスファミドを使用して、骨髄移植と組み合わせて(例えば、それに先立って、それと同時に、又はその後で)患者に投与される。例えば、一実施形態では、対象は、高用量化学療法、続く末梢血幹細胞移植の標準的な処置を受けることができる。幾つかの実施形態では、移植後、対象は、本発明の拡張された免疫細胞の注入を受容する。更なる実施形態では、拡張された細胞は、手術の後又は前に投与される。
【0149】
[00227]患者に投与される上記処置の投与量は、処置される障害の正確な性質及び処置されるレシピエントによって変化する。ヒトに投与される投与量比は、当該技術分野で受け入れられている実践に従って遂行され得る。概して、処置1回又は一連の処置につき1×106個~1×1010個の本発明による修飾されたT細胞(例えば、CAR-T20細胞)が、例えば、静脈内再注入によって患者に投与され得る。
【0150】
[00228]本発明の主な利点として、下記が挙げられる:
[00229](a)本発明に従って構築されたS scFvを含むCAR-T細胞は、BB及びApril CAR-Tよりも高い、in vivo及びin vitroでの腫瘍死滅及び機能活性を有すること。
【0151】
[00230](b)本発明に従って構築された二重特異性CAR-Tは、BCMAを含む、2つ又はそれよりも多い標的を認識し得ること。
[00231]本発明は、以下の特定の実施例と併せて更に記載される。これらの実施例は、単に本発明について記載するのに使用されるものであり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。下記の実施例において特定の条件を示していない実験方法は、通常、従来の条件に従うか、又は製造業者によって推奨される条件に従う。別記されない限り、パーセント及び部は、重量に基づいて算出される。
【実施例】
【0152】
実施例1 ドナー血液からのPBMCの単離及びT細胞の拡張
[00232]単核細胞を、ドナー血液から単離した後、Histopaque-1077(Sigma-Aldrich社)を用いて、密度勾配遠心分離を実施して、T細胞(EasySep Human T Cell Enrichment Kit、Stemcell Technologies社)を富化した。T細胞を、カップリングされた抗CD3/抗CD28磁気ビーズを使用して、活性化して、培養して、拡張して、X-vivo15(300IU/mlのrhIL2)を培地として使用して、続いて、細胞は全て、定温インキュベーター中で、37℃、5%CO2で培養した。
【0153】
実施例2 細胞培養及び構築
[00233]BCMA発現細胞系統MM.1s及びRPMI8226、MM.1s-ffluc細胞、RPMI8226-ffluc細胞、及びBCMA、CD19又はBCMA及びCD19の両方を発現するHela細胞は全て、RPMI 1640培地中で培養し、293T(ヒト腎上皮細胞系統細胞、ATCC(登録商標)CRL-3216)は、DMEM培地を用いて培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎児血清、100U/mlのペニシリン及びストレプトマイシン、2mM L-グルタミン及び1mM ピルビン酸ナトリウムを補充した。
【0154】
[00234]それらの中でも、BCMA、CD19又はBCMA及びCD19の両方を発現するHela細胞は、レンチウイルスベクターを通じて、BCMA及び/又はCD19抗原を移入することによって得られた、安定にトランスフェクトされた細胞系統であり、BCMA及び/又はCD19タンパク質分子を特異的に発現することができる。MM.1s-ffluc細胞及びRPMI8226-ffluc細胞は、ホタルルシフェラーゼレンチウイルスによる感染後にスクリーニングすることによって得られた、安定にトランスフェクトされた細胞系統であった。
【0155】
実施例3 CARの構造設計及び形質導入
[00235]BCMAを標的とする単一CAR並びにBCMA及びCD19の両方を標的とする二重CARを設計及び構築して、構造的模式図を
図1に示した。それらの中でも、CAR、CD19 CAR及び自殺スイッチ-EGFRt要素は、2Aペプチドを介して結合された。具体的には、本発明に関与するCAR構造を
図1に示し、命名及び組成を表1に示した。
【0156】
[00236]
【0157】
【0158】
[00237]
図1及び表1に記載されるCARに関与する各要素の特定の配列は、下記の通りである:
S scFv(S scFv)重鎖
QVQLVQSGAEVKKPGASVKLSCKASGYTFTDYYIHWVRQAPGQGLEWIGYINPNSGYTNYAQKFQGRATMTADKSINTAYVELSRLRSDDTAVYFCTRYMWERVTGFFDFWGQGTMVTVSS(配列番号9)
S scFv(S scFv)軽鎖
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCLASEDISDDLAWYQQKPGKAPKVLVYTTSSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYFCQQTYKFPPTFGGGTKVEIKR(配列番号10)
BB scFv重鎖
DIVLTQSPPSLAMSLGKRATISCRASESVTILGSHLIHWYQQKPGQPPTLLIQLASNVQTGVPARFSGSGSRTDFTLTIDPVEEDDVAVYYCLQSRTIPRTFGGGTKLEIK(配列番号13)
BB scFv軽鎖
QIQLVQSGPELKKPGETVKISCKASGYTFTDYSINWVKRAPGKGLKWMGWINTETREPAYAYDFRGRFAFSLETSASTAYLQINNLKYEDTATYFCALDYSYAMDYWGQGTSVTVSSAAA(配列番号14)
April鎖
SVLHLVPINATSKDDSDVTEVMWQPALRRGRGLQAQGYGVRIQDAGVYLLYSQVLFQDVTFTMGQVVSREGQGRQETLFRCIRSMPSHPDRAYNSCYSAGVFHLHQGDILSVIIPRARAKLNLSPHGTFLGFVKLSGGGSDP(配列番号15)
CD8シグナルペプチド
MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号16)
(G4S)3リンカーペプチド
GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号17)
(G4S)5リンカーペプチド
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号18)
218リンカーペプチド
GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号19)
CD8ヒンジ領域
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号8)
又はKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDFASDKP(配列番号37)
又はSGTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号38)
CD8膜貫通領域
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC(配列番号7)
CD28膜貫通領域
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号6)
41BBシグナル伝達領域
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号5)
CD28シグナル伝達領域
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号4)
CD3zシグナル伝達領域
RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号3)
又は
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号39)
2Aペプチド
GSGATNFSLLKQAGDVEENP(配列番号2)
FMC63 scFv(CD19 scFv)重鎖
EVKLQESGPGLVAPSQSLSVTCTVSGVSLPDYGVSWIRQPPRKGLEWLGVIWGSETTYYNSALKSRLTIIKDNSKSQVFLKMNSLQTDDTAIYYCAKHYYYGGSYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号11)
FMC63 scFv(CD19 scFv)軽鎖
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISKYLNWYQQKPDGTVKLLIYHTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQGNTLPYTFGGGTKLEIT(配列番号12)
GM-CSFシグナルペプチド
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号1)
EGFRt配列
RKVCNGIGIGEFKDSLSINATNIKHFKNCTSISGDLHILPVAFRGDSFTHTPPLDPQELDILKTVKEITGFLLIQAWPENRTDLHAFENLEIIRGRTKQHGQFSLAVVSLNITSLGLRSLKEISDGDVIISGNKNLCYANTINWKKLFGTSGQKTKIISNRGENSCKATGQVCHALCSPEGCWGPEPRDCVSCRNVSRGRECVDKCNLLEGEPREFVENSECIQCHPECLPQAMNITCTGRGPDNCIQCAHYIDGPHCVKTCPAGVMGENNTLVWKYADAGHVCHLCHPNCTYGCTGPGLEGCPTNGPKIPSIATGMVGALLLLLVVALGIGLFM(配列番号20)
[00238]表1のCAR遺伝子を、FUWレンチウイルスベクター骨格へクローニングして、T細胞を感染させるのに使用することができる完全レンチウイルス発現ベクターを構築した。具体的に、詳細な説明のための例としてBCMA CAR遺伝子を取り上げて、BCMA CAR遺伝子を、EF1α(EF-1α)プロモーターの作用下に配置させて、Fuw-EF1α-BCMA CARを形成し、3つのプラスミド、即ち、Fuw-EF1α-BCMA CAR、レンチウイルス外被プラスミドpMD2.G(Addgene社、プラスミド#12259)及びレンチウイルスパッケージングプラスミドpsPAX2(Addgene社、プラスミド#12260)を、リポフェクタミン3000を使用して、293Tへ移入して、完全レンチウイルス発現ベクターを調製して、ウイルス上清を、48時間及び72時間で収集して、超遠心分離により濃縮して、濃縮されたウイルスを、T細胞を感染させるのに使用することができる。
【0159】
[00239]フローサイトメトリー分析の結果により、BCMA CARを発現するレンチウイルスベクターは、構築されたCAR遺伝子から調製することができることが示された。
【0160】
実施例4 CAR-T細胞の調製
[00240]実験方法は以下の通りである:
[00241]4.1 レンチウイルス感染
[00242]単離及び精製した初代T細胞を活性化した2日後、それらを、実施例3で構築されたレンチウイルスを使用してレンチウイルスベクターで感染させ、続いて、細胞培養フラスコに移して、定温インキュベーター中で、37℃、5%CO2で培養した。
【0161】
[00243]4.2 細胞の増殖及びCAR陽性率の検出
[00244]感染の3日後、凍結保存前に、BCMA抗原を使用して、BCMA陽性細胞の細胞数及びパーセントを検出するために、即ち、T細胞のCAR陽性率を検出するために、試料を採取した。培地の半分を、2日~3日毎に交換した。
【0162】
[00245]結果により、実施例3で構築されたレンチウイルスベクターを使用して、CAR-T細胞がそれぞれ、首尾よく構築されることが示され、それらの命名を表1に示す。
[00246]具体的に、BCMA CAR-T細胞の構築結果を
図2に示す。BCMA CARの発現は、ウイルストランスフェクションの後、CAR-BB及びCAR-S1 CAR-T細胞の両方で検出することができ、CAR発現は、50%超に到達し得る。
【0163】
実施例5 細胞のin vitroでの死滅
[00247]in vitroでの死滅実験を、実施例4で得られたCAR-S1 CAR-T細胞、CAR-BB CAR-T細胞及びCAR-April CAR-T細胞を用いて実施した。RTCA法を使用して、標的細胞であるBCMAを過剰発現するHela細胞系統に対するCAR-T細胞の死滅を検査した。
【0164】
[00248]結果を
図3に示し(RTCA法を使用して検査した)、NT対照(トランスフェクトされていないT細胞対照)及び培地対照(ブランク対照)は、Hela-BCMA細胞に対して死滅を有さなかったのに対して、CAR-S1細胞は、BCMAに特異的な死滅機能を遂行することができ、CAR-S1細胞は、BCMA陽性Hela-BCMA細胞を死滅させるのに、CAR-BB細胞よりも良好な結果を示した。
【0165】
[00249]ルシフェラーゼで標識した腫瘍標的細胞を、死滅能の検出に使用した。ルシフェラーゼ遺伝子を、標的細胞に移入することによって、クローンスクリーニング後に、安定にトランスフェクトされた細胞株MM.1s-Luc及びRPMI8226-Lucを得た。実験中、ルシフェリン基質を添加することによって、ルシフェラーゼは、ルシフェリンと反応して、蛍光を生じ、蛍光の強度を検出することによって、ルシフェラーゼの活性を測定することができ、続いて、細胞の生存比を検出することができ、CAR-T細胞の死滅効果を得ることができる。
【0166】
[00250]
図4は、標的細胞の表面上での抗原発現を示す。
図5は、同じE:T比下で、NT細胞が、死滅機能を有さず、CAR-S1細胞は、MM.1s-Luc細胞(ルシフェラーゼ遺伝子を移入したMM.1S細胞)及びRPMI8226-Luc細胞(ルシフェラーゼ遺伝子を移入したRPMI8226細胞)に対して用量依存的死滅効果を有すること、またCAR-S1細胞が、CAR-BB及びCAR-Aprilよりも良好な死滅能を示したことを示す。
【0167】
[00251]更に、本出願人はまた、当該技術分野で一般に見られる様々な標的BCMA scFvを使用して、CAR-T細胞を構築して、試験した場合、これらのCAR-T細胞はいずれも、理想的な死滅機能を示さなかった。
【0168】
[00252]要約すると、CAR-T細胞は、標的細胞(BCMA過剰発現細胞、及びBCMA陽性腫瘍細胞、MM.1s-Luc及びRPMI8226細胞)と共培養した後、標的細胞を、BCMAを標的とするCAR-T細胞によって溶解させることができ、CAR-S1は、CAR-BBよりも高い死滅能を示した。当該技術分野で一般に見られるBCMAを標的とするscFvによって構築された幾つか他のCAR-T細胞は、理想的な死滅機能を示さなかった。
【0169】
実施例6 サイトカイン放出の検出
[00253]実施例4で得られたBCMAを標的とするCAR T細胞(CAR-S1 CAR-T細胞及びCAR-BB CAR-T細胞)を、腫瘍細胞(Hela、Hela-BCMA、Hela-CD19、又はHela-BCMA-CD19)と混合して、RPMI培地中に置いた。各細胞密度の密度を、1×104個の細胞/mlに調製した。CAR-T細胞及び腫瘍細胞それぞれ100μlを、96ウェルプレートに入れ、一晩共培養した。上清を収集して、遠心分離後、上清を採取して、サイトカインIFN-γ等の放出レベルを検出した。Elisaキットを、検出に使用した。
【0170】
[00254]結果を
図6に示す。Hela-BCMA標的細胞によって同時刺激した後、CAR-S1のサイトカインINF-γの分泌は、CAR-BBのサイトカインINF-γの分泌よりも著しく高かったのに対して、NT及び培地群では、著しい分泌は見られなかった。
【0171】
実施例7 in vivoでの薬物有効性に関する研究
[00255]6週齢~12週齢のNOGマウスを選択して、1×107個のRPMI8226細胞を皮下注射した。2日後、腫瘍移植片負荷を測定した。10日後、群分けを実施して、CAR-S1 CAR-T細胞及びCAR-BB CAR-T細胞を、群分けの1日後に注射した。CAR-T処置後、マウスの腫瘍体積負荷を、週に2回評価した。
【0172】
[00256]結果を
図7に示す。対照と比較して、CAR-S1細胞を注射したマウスの腫瘍負荷は、著しく抑制された。CAR-S1細胞は、CAR-BBよりもわずかに高い抗腫瘍効果を有した。
【0173】
実施例8 二重CAR-T細胞の調製
[00257]実験法は、下記の通りである:
[00258]この実施例は、BCMA及びCD19の両方を標的とするCAR-T細胞に関与し、CARの構造を
図1に示した(CAR S2、CAR S3、CAR S4、CAR S5、CAR S6及びCAR S7)。それらの中でも、BCMA CAR、CD19 CAR及び自殺スイッチ-EGFRt要素は、2Aペプチドを介して結合された。それらの中でも、BCMA CAR構造におけるscFvは、S及びBBのscFv重鎖並びに軽鎖で構成されていた。ここで、S scFvは、配列番号9及び配列番号10で構成され、BB scFvは、配列番号13及び配列番号14で構成され、CD19 scFvは、配列番号11及び配列番号12で構成され、更に、scFvを、April配列(配列番号15)の一部で構成されるBCMA結合領域で置き換えて、新たなCAR構造を形成することができる。
【0174】
[00259]BCMA-CD19 CAR遺伝子を、ベクター骨格へクローニングして、EF1α(EF-1α)プロモーターの作用下に配置させて、EF1α-BCMA-CD19-EGFRt CARを形成し、EF1α-BCMA-CD19-EGFRt CAR及びレンチウイルス外被プラスミドを、リポフェクタミン3000を使用して、293Tへ移入して、完全レンチウイルスベクターを調製して、ウイルス上清を、48時間及び72時間で収集して、超遠心分離を介して濃縮して、濃縮されたウイルスを、T細胞を感染させるのに使用することができる。
【0175】
[00260]レンチウイルス感染:単離及び精製した初代T細胞を活性化した2日後、それらを、MOI(1~10)で上記のように構築されたレンチウイルスを使用してレンチウイルスベクターで感染させ、続いて、細胞培養フラスコに移して、定温インキュベーター中で、37℃、5%CO2で培養した。
【0176】
[00261]細胞の増殖及びCAR陽性率の検出:感染の3日後、凍結保存前に、細胞数及びBCMA/CD19二重陽性細胞を検出するために、即ち、T細胞のCAR陽性率を検出するために、試料を採取した。培地の半分を、2日~3日毎に交換した。
【0177】
[00262]結果により、
図1及び表1に具体的に示されるように、BCMA-CD19 CARレンチウイルスベクターを使用して、BCMA-CD19 CAR-T細胞は、首尾よく構築されることが示された。
【0178】
[00263]結果を
図8に示す。BCMA CAR及びCD19 CARの発現は、BCMA抗原及びCD19抗原の両方を使用して、ウイルス感染されたT細胞の表面上で検出することができる。
【0179】
[00264]
図9は、BCMA CAR、CD19 CAR及びEGFRtの発現は全て、CAR-S6及びCAR-S7細胞の表面上で検出することができることを示す。
実施例9 細胞のin vitroでの死滅
[00265]in vitroでの死滅実験を、実施例8で得られたCAR-T細胞を用いて実施した。BCMA及びCD19を過剰発現する過剰発現Hela細胞系統を、RTCAに使用したか、又はルシフェラーゼで標識した腫瘍標的細胞を、検出に使用した。ルシフェラーゼ遺伝子を、標的細胞に移入することによって、クローンスクリーニング後に、安定にトランスフェクトされた細胞株(RPMI8226、MM.1s及びNalm6)を得た。実験中、ルシフェリン基質を添加することによって、ルシフェラーゼは、ルシフェリンと反応して、蛍光を生じ、蛍光の強度を検出することによって、ルシフェラーゼの活性を測定することができ、続いて、細胞の生存比を検出することができ、CAR-T細胞の死滅効果を得ることができる。
【0180】
[00266]結果により、CAR-T細胞は、標的細胞(CD19/BCMA二重陽性、CD19単一陽性、及びBCMA単一陽性細胞)と共培養した後、標的細胞は全て、溶解することが示され、BCMA-CD19 CAR-Tは、CD19/BCMA二重陽性、CD19単一陽性、及びBCMA単一陽性細胞の全てに対して死滅効果を有することを示した。
【0181】
[00267]特定の結果を
図10に示す。二重特異性CAR-Tは、単一陽性CD19陽性標的細胞(Hela-CD19)又は単一陽性BCMA陽性標的細胞(Hela-BCMA)を著しく死滅させることができ、二重特異性CAR-Tはまた、CD19/BCMA二重陽性標的細胞Hela-BCMA-CD19を著しく死滅させることができる。BCMA及びCD19の組合せを有する二重特異性CAR-T細胞は、単一標的及び二重標的細胞の両方に対して死滅効果を有することが示された。単一CAR-T(CAR-19又はCAR-S1)は、1つの標的抗原に対してのみ、死滅効果を有するに過ぎなかった。
【0182】
[00268]
図11は、二重CAR-Tが、BCMA単一陽性腫瘍標的細胞MM.1s及びRPMI8226を著しく死滅させることができることを示す。二重CAR-Tはまた、CD19陽性腫瘍標的細胞Raji及びNalm6を著しく死滅させた。BCMA及びCD19の組合せを有する二重CARは、BCMA陽性腫瘍標的細胞及びCD19陽性腫瘍標的細胞の両方に対して死滅効果を有することが示された。
【0183】
実施例10 サイトカイン放出の検出
[00269]BCMA-CD19 CAR-T細胞(実施例8で得られた)を、腫瘍細胞(Hela-BCMA)と混合して、RPMI培地中に置いた。各細胞の密度を、1×104個の細胞/mlに調製した。CAR-T細胞及び腫瘍細胞それぞれ100μlを、96ウェルプレートに入れて、一晩共培養した。上清を収集して、遠心分離後、上清を採取して、サイトカインの放出レベルを検出した。CBA法を検出に使用した。
【0184】
[00270]結果を
図12に示す。BCM陽性標的細胞によって刺激した後、BCMA-CD19 CAR-Tは、大量のサイトカインを分泌することができ、NTは、ごく少量のサイトカインを分泌した。BCMA-CD19 CAR-Tは、BCMAによって活性され得ることが示された。
【0185】
実施例11 刺激された後のCD107のアップレギュレーション
[00271]実施例8で得られたCAR-T細胞を活性化して、続いて、C107a発現の変化に関して、フローサイトメトリー分析に付し、CD19又はBCMAを発現する腫瘍細胞系統を、共インキュベーション活性化実験に使用した。共インキュベーション後、細胞を、CD3、CD8及びCD107aに関する抗体で標識して、続いて、フローサイトメトリー分析に付した。
【0186】
[00272]結果を表13に示す。二重CAR-T細胞を、BCMA陽性腫瘍標的細胞MM.1s及びCD19陽性Rajiと共培養した後、CAR-T細胞の表面上のCD107a分子は、著しくアップレギュレートされた。
【0187】
実施例12 in vivoでの薬物有効性に関する研究
[00273]6週齢~12週齢のNOGマウスを選択して、1×107個のRPMI8226細胞を皮下注射した。2日後、腫瘍移植片量を測定した。10日後、それらを、類似した腫瘍負荷を有する群に分けて、CAR-T細胞を、それぞれ、群分けの1日後にそれらに注射した。CAR-T処置後、マウスの腫瘍体積負荷を、週に2回評価した。
【0188】
[00274]
図14の結果により、CAR-S2及びCAR-S4は、RPMI8226細胞で皮下的にモデル化したマウスにおいて、腫瘍を排除することができることが示され、それらの著しい抗腫瘍有効性を示す。
【0189】
[00275]同時に、6週齢~12週齢のNOGマウスを選択して、1×107個のMM.1s細胞を静脈内注射した。腫瘍移植片負荷を検出して、腫瘍負荷に従って、マウスを群に均等に分けた。CAR-T細胞を、群分けの1日後に注射した。CAR-T処置後、マウスの腫瘍体積負荷を評価した。各マウスに、d-ルシフェリン(Perkin Elmer Life Sciences社)3mgを腹腔内注射して、続いて、Xenogen IVIS画像システム(Perkin Elmer Life Sciences社)を用いて、4分後に露光時間30秒で撮影した。放出された光子の量に従って、生物発光シグナルを算出し、光子の量は、露光時間及び表面積を用いて正規化して、最終的に、光子/s/cm2/ステラジアン(p/s/cm2/sr)の量を得た。
【0190】
[00276]
図15の結果により、対照と比較して、二重CAR-T細胞を注射したマウスの腫瘍負荷は、消失するまで著しく低減されたことが示され、BCMA-CD19 CAR-T細胞が著しい抗腫瘍効果を有していたことを示す。
【0191】
実施例13 腫瘍形成細胞の死滅に関する研究
[00277]骨髄腫(MM)を有する患者の再発は、一般的な臨床現象であり、臨床所見は概して、腫瘍細胞の大部分を排除することができるが、腫瘍の再発を招くクローン増殖が可能な腫瘍細胞は、比較的高い薬物耐性を有する傾向にあるということである。クローン増殖が可能な腫瘍細胞に対するCAR-T細胞の死滅能を研究するために、また二重特異性CAR-T細胞及び単一CAR-T細胞の利点を比較するために、この研究は、骨髄腫クローン形成実験の方法を確立し、CAR-Tの、クローン形成に対する阻害能を研究した。
【0192】
[00278]増殖が可能なMM腫瘍細胞は、クローン増殖培地中で成長し得るが、実験中、実験を妨害し得る増殖が可能なCD34+造血幹細胞は、除去される必要がある。収集された細胞が、腫瘍増殖細胞によって占められるべきであることは、この実験に関して制御される必要がある重要課題である。
【0193】
[00279]特定の実験方法は、下記の通りである:
[00280]第1の工程では、骨髄単核細胞を、Ficollを使用して単離及び抽出し、フローサイトメトリーによって表現型に関して分析した。第2の工程では、CD34+細胞選別キットを使用して、CD34+細胞を除去した。第3の工程では、種々の群のCAR-T細胞(二重CAR-T、及び単一CAR-T)を使用して、得られた細胞に関して、死滅実験を実施した。死滅の完了後、CAR-T細胞は、T細胞除去選別キットを使用して除去された。第4の工程では、半固形クローニング増殖培地が、クローン成長に使用され、統計、計数、及び結果のまとめを、1週~2週後に行った。
【0194】
[00281]結果を
図16に示す。CAR-S2及びCAR-S4は、CAR-19及びCAR-S1よりも著しく、クローン形成細胞又は腫瘍細胞前駆体細胞を死滅させるのに利点を有し、CAR-S2及びCAR-S4が、単一CARよりも骨髄腫細胞のクローン形成を阻害する、より高い能力を有することを示した。
【0195】
実施例14 Nalm6のin vivoでの静脈モデル化実験
[00282]6週齢~12週齢のNOGマウスを選択して、1×107個のNalm6細胞を静脈内注射した。6日後、腫瘍移植片負荷を検出して、腫瘍負荷に従って、マウスを群に均等に分けた。CAR-T細胞を、群分けの1日後に注射した。CAR-T処置後、マウスの腫瘍負荷を評価した。各マウスに、d-ルシフェリン(Perkin Elmer Life Sciences社)3mgを腹腔内注射して、続いて、Xenogen IVIS画像システム(Perkin Elmer Life Sciences社)を用いて、4分後に露光時間30秒で撮影した。放出された光子の量に従って、生物発光シグナルを算出し、光子の量は、露光時間及び表面積を用いて正規化して、最終的に、光子/s/cm2/ステラジアン(p/s/cm2/sr)の量を得た。
【0196】
[00283]結果を
図17に示す。CAR-S2及びCAR-S4を注射したマウスの腫瘍量は、消失するまで著しく低減されたことが示され、BCMA-CD19 CAR-T細胞は、CAR-19よりも著しい抗CD19陽性腫瘍効果を有していた。
【0197】
実施例15 CAR-T細胞の安全性スイッチ実験
[00284]EGFRt要素を含有するCAR-Tを、EGFR抗体で染色して、フローサイトメトリーによって分析し、CAR発現を同時に分析した。
【0198】
[00285]結果を
図18に示す。安全性スイッチの発現は、CAR-T細胞で検出された。
実施例16 ヒト化CAR-T細胞の調製及び死滅効果の検出
[00286]実施例3及び実施例4の方法を使用して、ヒト化CAR-T細胞(CAR-h19)及びヒト化二重CAR-T細胞(CAR-hS2、及びCAR-hS4)を構築した。ヒト化CAR-T細胞の構造は、CAR-19の構造に類似していた。ヒト化二重CAR-T細胞CAR-hS2の構造は、CAR-S2の構造に類似し、CAR-hS4の構造は、CAR-S4の構造に類似しており、唯一の違いは、ヒト化CD19 scFvを使用して、元の構造におけるマウス由来のscFvを置き換えることができることにある。ヒト化CD19 scFvは、配列番号21~配列番号30のいずれか1つに示される抗体重鎖可変領域及び配列番号31~配列番号36のいずれか1つに示される抗体軽鎖可変領域を含む。
【0199】
[00287]実施例9の方法を使用して、ヒト化二重CRA-T細胞のin vitroでの死滅効果を検出した。
[00288]in vitroでの死滅効果を
図19及び
図20に示す。ヒト化CAR-T細胞及びヒト化二重CAR-T細胞は、非標的細胞を死滅させずに、標的細胞に対して著しい死滅効果を示した。
【0200】
実施例17 ヒト化CAR-T細胞のin vivoでの薬物有効性に関する研究
[00289]6週齢~12週齢のNOGマウスを選択して、3×105個のRaji細胞を皮下注射した。6日後、腫瘍移植片負荷を測定して、それらを、類似した腫瘍負荷を有する群に分けて、上記のように調製した二重CAR-T細胞を、それぞれ、群分けの1日後にそれらに注射した。CAR-T処置後、マウスの腫瘍体積負荷を評価した。各マウスに、d-ルシフェリン(Perkin Elmer Life Sciences社)3mgを腹腔内注射して、続いて、Xenogen IVIS画像システム(Perkin Elmer Life Sciences社)を用いて、4分後に露光時間30秒で撮影した。放出された光子の量に従って、生物発光シグナルを算出し、光子の量は、露光時間及び表面積を用いて正規化して、最終的に、光子/s/cm2/ステラジアン(p/s/cm2/sr)の量を得た。
【0201】
[00290]結果を
図21に示す。ヒト化CAR-hS2細胞は、CAR-S2よりも、Raji細胞でモデル化したマウスにおいて、腫瘍を除去する、より強力な能力を有しており、それらの著しい抗腫瘍有効性を示した。
【0202】
実施例18 CAR-T細胞によるRajiリンパ腫細胞の死滅
[00291]ルシフェラーゼで標識したRajiリンパ腫標的細胞を、死滅能の検出に使用した。ルシフェラーゼ遺伝子を、Raji標的細胞に移入することによって、クローンスクリーニング後に、安定にトランスフェクトされた細胞株Raji-Lucを得た。実験中、ルシフェリン基質を添加することによって、ルシフェラーゼは、ルシフェリンと反応して、蛍光を生じ、蛍光の強度を検出することによって、ルシフェラーゼの活性を測定することができ、続いて、細胞の生存比を検出することができ、CAR-T細胞の死滅効果を得ることができる。
【0203】
[00292]結果を
図22に示す。NT細胞は、死滅機能を有さず、CAR-S1細胞は、Raji-Luc細胞(ルシフェラーゼ遺伝子を移入したRaji細胞)に対して用量依存的死滅効果を有し、リンパ腫等の適応症に関するそれらの潜在用途の価値を示した。
【0204】
[00293]本発明で言及した文書は全て、文書それぞれがまさに、個々に参考文献として組み込まれているかのように、本出願における参考文献として引用される。更に、本発明の上記教示内容を読み取った後、当業者は、本発明に対して様々な変更又は修正を行うことができ、これらの等価形態はまた、本出願の併記の特許請求の範囲によって規定される範囲内に収まることが理解されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】