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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】高密度再構成植物シート
(51)【国際特許分類】
   A24B 15/12 20060101AFI20220705BHJP
   A24B 15/16 20200101ALI20220705BHJP
   A24F 40/40 20200101ALI20220705BHJP
【FI】
A24B15/12
A24B15/16
A24F40/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566291
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2020062779
(87)【国際公開番号】W WO2020225388
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】1904782
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515237119
【氏名又は名称】エスウェーエム・ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】リゴーレイ,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4B043
4B162
【Fターム(参考)】
4B043BB01
4B043BB11
4B043BB19
4B043BB25
4B162AB12
(57)【要約】
本発明は、タバコを燃焼させることなくに加熱するための装置に適切な再構成植物シートに関し、前記再構成植物シートは高密度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再構成植物シートであって、
- 微細化植物繊維を含む繊維性支持体
- エアロゾル生成剤、及び
- 植物抽出物
を含み、前記再構成植物シートの密度は0.6g/cmより大きいか等しく、エアロゾル生成剤の固形分の全含量(重量による)は10%~29%である
ことを特徴とする再構成植物シート。
【請求項2】
再構成植物シートの密度が0.62g/cm~1.50g/cmである、請求項1に記載の再構成植物シート。
【請求項3】
植物がタバコ植物である、請求項1又は請求項2に記載の再構成植物シート。
【請求項4】
植物抽出物の固形分の全含量(重量による)が20%~45%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の再構成植物シート。
【請求項5】
植物抽出物の固形分の全含量(重量による)とエアロゾル生成剤の固形分の全含量(重量による)の合計が40%~70%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の再構成植物シート。
【請求項6】
再構成植物シートの厚さが100μm~450μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の再構成植物シート。
【請求項7】
再構成植物シートの坪量が60g/m~300g/mである、請求項1~6のいずれか1項に記載の再構成植物シート。
【請求項8】
エアロゾル生成剤が、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、乳酸、二酢酸グリセロール、三酢酸グリセリル、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、又はそれらの混合物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の再構成植物シート。
【請求項9】
請求項1~8に定義された再構成植物シートの製造法であって、下記工程:
a)微細化植物繊維を抄紙機に通して、繊維性支持体を構築する工程、
b)エアロゾル生成剤及び植物抽出物を前記繊維性支持体と接触させ、湿潤再構成植物シートを得る工程、そして
c)前記湿潤再構成植物シートを乾燥させる工程
を含む製造法。
【請求項10】
請求項1~8に定義された再構成植物シートの、加熱装置における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、タバコを燃焼させることなく加熱するための装置の分野に関し、その主題は、高密度抄造法によって得られる再構成植物シートである。
【背景技術】
【0002】
[0002]タバコの燃焼中に有害成分が形成されるのを回避するために、タバコを燃焼させることなく加熱するための多数の装置が開発されている。例を挙げると、そのような装置について記載された、WO2016/026810及びWO2016/207407の番号で公開されている出願に言及することができる。これらの装置では、タバコを燃焼することなく燃焼温度未満の温度で加熱する結果、エアロゾルが形成される。タバコの加熱中に生成したエアロゾルはタバコの煙に代わるもので、喫煙者が吸入すると、好都合な官能特性を有する。これにより、喫煙者はニコチンやタバコの芳香を吸入できるが、同時に前記喫煙者が有害成分に暴露されるのを非常に著しく低減することができる。
【0003】
[0003]喫煙者がこれらの加熱装置を取り入れる(選ぶ)ためには、前記装置で得られる体験が従来の紙巻きタバコで得られる体験となるべく近いことが重要である。すなわち、各パフに従来の紙巻きタバコと同等のニコチン量及び満足のいく官能特性が求められる。
【0004】
[0004]従来のタバコは、喫煙者が満足のいく体験を得られず、特に好都合な官能特性を有する十分量のエアロゾルを容易に生成できないため、そのような装置には向かない。
[0005]再構成タバコは、好都合な官能特性を有する大量のエアロゾルを生成することができるので、これらの加熱装置により適している。
【0005】
[0006]しかしながら、再構成タバコは、満足のいく量のエアロゾルを生成させるために最小限量のエアロゾル生成剤を含む必要がある。例えば、米国特許第3,145,717号に開示されている再構成タバコは、3重量%のエアロゾル生成剤固形分しか含まない。この再構成タバコによって生成するエアロゾルの量も加熱装置でのこの再構成タバコのニコチン移動速度も低すぎて満足のいくものではない。
【0006】
[0007]そこで、加熱装置で得られる体験が従来の紙巻きタバコで得られる体験にさらに近くなるように、各パフで形成されるエアロゾルの官能特性を改良し、ニコチン移動速度をさらに増大することが勧められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許出願公開第2016/026810号
【特許文献2】国際特許出願公開第2016/207407号
【特許文献3】米国特許第3,145,717号
【発明の概要】
【0008】
[0008]かくして、再構成植物シートがこれらのニーズを満たせることを見出したのは本発明者らのおかげである。その再構成植物シートは、
- 微細化植物繊維を含む繊維性支持体、
- エアロゾル生成剤、及び
- 植物抽出物
を含み、前記再構成植物シートの密度は0.6g/cmより大きいか等しく、そして
前記エアロゾル生成剤の固形分の全含量(重量による)は10%~29%である
ことを特徴とする。
【0009】
[0009]好都合なことに、本発明による再構成植物シートは、低密度の再構成植物シートより大きいニコチン移動速度を有する。
[0010]さらに、本発明による再構成植物シートは、各パフで、都合よくエアロゾルを形成し、その官能特性は、低密度の再構成植物シートによって形成されるエアロゾルと比べて改良されている。
【0010】
[0011]本発明の第二の主題は、本発明による再構成植物シートの製造法であり、下記工程:すなわち
a)繊維を抄紙機に通して繊維性支持体を構築する工程、
b)エアロゾル生成剤と植物抽出物を前記繊維性支持体と接触させ、湿潤再構成植物シートを得る工程、そして
c)前記湿潤再構成植物シートを乾燥させる工程
を含む。
【0011】
[0012]本発明の第三の主題は、本発明による再構成植物シートの、加熱装置、特にタバコを燃焼させることなく加熱するための装置における使用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0013]第一の主題に従って、本発明は、
- 微細化植物繊維を含む繊維性支持体
- エアロゾル生成剤、及び
- 植物抽出物
を含む再構成植物シートに関し、前記再構成植物シートの密度は0.6g/cmより大きいか等しく、そして
エアロゾル生成剤の固形分の全含量(重量による)は10%~29%である
[0014]典型的には、再構成植物シートの密度は、0.62g/cm~1.50g/cm、特に0.65g/cm~1g/cm、さらに詳しくは0.66g/cm~0.70g/cmでありうる。
【0013】
[0015]典型的には、再構成植物シートの密度は、その坪量をその厚さで割ることによって計算される。
[0016]植物シートの坪量を決定するには以下の方法が使用できる。
分析される再構成植物シートの端から約15cmの位置でテンプレート(寸法:57.5×43.5cm)を用いて0.25mのサンプルを切り出す。次に、サンプルを四つ折りにしてホットプレートに載せ、エアロゾル生成剤を除去せずに水分を除去するためにその上で乾燥させる。
【0014】
次に、乾燥サンプルを秤量して植物シートの坪量を決定する。
[0017]植物シートの厚さを決定するには、再構成植物シートに適切な、標準NF EN ISO 534(2011年12月)に記載されている方法が使用できる。
【0015】
- 再構成植物シートの厚さの測定に使用される基準硫酸紙の平均厚を測定する(一枚の紙上の正確に特定された位置で最低6回測定)、
- 再構成植物シートのサンプルを2枚重ねの硫酸紙の間に挟む、
- マイクロメーターのプローブが所定の位置に配置され次第、測定を行う前に30秒間の待機時間を取る(厚さ測定のためにサンプルの安定化)、
- 硫酸紙上の正確に特定された位置で最低6回の測定を行う、
- 再構成植物シートの計算厚は、測定された全厚(再構成植物シート+2枚の硫酸紙)の平均から硫酸紙の平均厚の2倍を引いたものである。
【0016】
[0018]典型的には、再構成植物シートは、60g/m~300g/m、特に80g/m~250g/m、最も特定的には90g/m~200g/m、なおさらに特定的には140g/m~190g/mの坪量を有しうる。
【0017】
[0019]典型的には、再構成植物シートは、100μm~450μm、特に120μm~375μm、最も特定的には140μm~325μmの厚さを有しうる。
[0020]一つの特別な態様によれば、再構成植物シートは、0.65g/cm~1g/cmの密度、90g/m~200g/mの坪量、及び140μm~325μmの厚さを有しうる。
【0018】
[0021]当業者であれば、所望の高密度を達成するために、再構成植物シートの坪量と厚さを調整する方法は承知しているであろう。
[0022]本願の目的のために、用語“繊維性支持体”は、植物の微細化繊維を含むベースウェブを表し、該ベースウェブは典型的には抄造法によって得られる。
【0019】
[0023]本願の目的のために、用語“植物の微細化繊維”は、植物の繊維のフィブリル化及び/又は切断を可能にする微細化(refining, 叩解)工程を受けた植物の繊維を表す。微細化工程は従来、再構成抄紙タバコ(reconstituted papermaking tobacco)を製造するような抄造法で実施されている。他方、微細化工程は、EP 0 565 360及びWO2012/164009に開示されているようなキャストリーフ再構成タバコ(cast leaf reconstituted tobacco)の製造法では実施されない。
【0020】
[0024]例えば、植物の微細化繊維は、ショッパー・リーグラー度(°SR)15°SR~75°SR、特に20°SR~65°SR、さらに特定的には25°SR~55°SRを有しうる。
【0021】
[0025]典型的には、繊維性支持体は、一種類の同じ植物又は数種類の植物の微細化繊維を含みうる。
[0026]本願の目的のために、用語“エアロゾル生成剤”は、加熱された場合、例えば熱風と接触した場合にエアロゾルの形成を可能にする化合物を表す。
【0022】
[0027]本発明の再構成植物シートに含まれるエアロゾル生成剤の固形分の全含量(重量による)をSAGとする。典型的には、SAGは14%~27%、さらに特定的には16%~25%でありうる。
【0023】
[0028]上記範囲より大きいSAGを有する再構成植物シートから生成するエアロゾルは、口腔及び/又は喉の望まざる火傷(burning)(“ホットパフ(hot puff)”として知られる現象)を引き起こす。
【0024】
[0029]典型的には、エアロゾル生成剤は、ポリオール、非ポリオール又はそれらの混合物でありうる。典型的には、ポリオールである生成剤は、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、又はそれらの混合物でありうる。典型的には、非ポリオールである生成剤は、乳酸、二酢酸グリセリル、三酢酸グリセリル、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、又はそれらの混合物でありうる。
【0025】
[0030]一態様によれば、エアロゾル生成剤は、グリセロール、プロピレングリコール、又はグリセロールとプロピレングリコールの混合物であり、グリセロールが好適である。
[0031]エアロゾルは、本発明の再構成植物シートの加熱中に生成する。好都合なことに、芳香族化合物を含む植物抽出物は、植物からこのエアロゾルに芳香を付与する。再構成植物シートを交換するだけで、喫煙者は、前記再構成植物シートの加熱によって生成するエアロゾルの芳香を容易に変更することができる。
【0026】
[0032]本願の目的のために、用語“植物抽出物”は、植物のあらゆる水溶性生成物を表す。好都合なことに、植物抽出物は、ニコチンと、エアロゾルに官能特性及び/又は治療特性を付与する化合物を含む。
【0027】
[0033]前記再構成植物シートの加熱によって形成されるエアロゾルの官能特性及び治療特性は、本発明の再構成植物シートに含まれる植物抽出物の固形分の含量(重量による)に依存しうる。
【0028】
[0034]植物抽出物の固形分の全含量(重量による)は、使用される植物、さらに詳しくは使用される植物の芳香族化合物の含量又は治療特性を有する化合物の含量に依存する。
[0035]本発明の再構成植物シートに含まれる植物抽出物の固形分の全含量(重量による)をSとする。典型的には、Sは20%~45%、特に25%~40%、さらに特定的には27%~36%でありうる。
【0029】
[0036]Sを決定するには下記の方法が使用できる。
分析される再構成植物シートを粉砕して1mm以下の粒径にする。次に、再構成植物シートを沸騰水と45分間混合し、すべての植物抽出物を抽出する。Sは、分析される再構成植物シートのサンプルの乾燥重量と抽出後の繊維性残渣の乾燥重量との差から計算される。
【0030】
[0037]一態様によれば、植物抽出物の固形分の全含量(重量による)と、エアロゾル生成剤の固形分の全含量(重量による)の合計、S+SAGは、40%~70%、特に45%~65%、さらに特定的には50%~60%でありうる。
【0031】
[0038]一態様によれば、植物抽出物の固形分の全含量(重量による)と、エアロゾル生成剤の固形分の全含量(重量による)との間の比、S/SAGは、1.0~2.0、特に1.10~1.80、さらに特定的には1.15~1.70である。
【0032】
[0039]好都合なことに、本発明による再構成植物シートが上記範囲内のS/SAG比を有する場合、ニコチン移動速度は改良され、形成されるエアロゾルの官能特性もさらに満足のいくものとなる。
【0033】
[0040]一つの特別な態様によれば、再構成植物シートは、16%~25%のSAG、27%~35%のS、及び50%~60%のS+SAGを有しうる。
[0041]一つの特別な態様によれば、再構成植物シートは、0.65g/cm~1g/cmの密度、90g/m~200g/mの坪量、及び140μm~325μmの厚さ、16%~25%のSAG、27%~35%のS、及び50%~60%のS+SAGを有しうる。
【0034】
[0042]植物繊維及び植物抽出物は、胞子生成植物、種子生成植物又はそれらの混合物から選ばれる植物から独立に得ることができる。特に、植物は、タバコ植物、食用植物、芳香植物(aromatic plant)、香りの良い植物(fragrant plant)、薬用植物、アサ科の植物(family Cannabaceae)、又はそれらの混合物から選ばれる植物でありうる。
【0035】
[0043]一つの特別な態様によれば、植物はタバコ植物である。
[0044]植物が薬用植物の場合、再構成植物シートの加熱によって生成するエアロゾルは治療特性も有するので、再構成商物シートは治療に使用することもできる。
【0036】
[0045]好都合なことに、植物混合物から得られる植物抽出物は、幅広いパネルの官能特性及び/又は治療特性を提供することを可能にする。また、植物混合物は、混合物の一植物、例えば薬用植物の不快な官能特性を、混合物の別の植物、例えばタバコ植物、芳香植物又は香りの良い植物の心地良い官能特性で和らげることも可能にする。
【0037】
[0046]典型的には、植物繊維は第一の植物から、植物抽出物は第二の植物から得てもよい。実際、ある植物の繊維が繊維性支持体の形成を可能にする機械的特性を持たなくても、この植物の抽出物は所望の官能特性及び/又は治療特性をエアロゾルに付与できることもあるからである。反対に、ある植物の繊維が繊維性支持体の形成を可能にする機械的特性を有していても、この植物の抽出物は所望の官能特性及び/又は治療特性をエアロゾルに付与できないこともある。
【0038】
[0047]好都合なことに、植物を混合して植物繊維を得ることは、再構成植物シートの機械的特性及び/又はエアロゾルの官能特性又は化学特性を調整することを可能にする。
[0048]植物がタバコ植物の場合、タバコ繊維及びタバコ抽出物は、任意のタバコ植物又はタバコタイプの植物、例えば、バージニアタバコ(Virginia tobacco)、バーレイタバコ(Burley tobacco)、空気乾燥タバコ(air-cured tobacco)、暗色空気乾燥タバコ(dark air-cured tobacco)、オリエントタバコ(Orient tobacco)、日干し乾燥タバコ(sun-cured tobacco)、火力乾燥タバコ(fire-cured tobacco)、又はそれらの混合物から得ることができる。
【0039】
[0049]典型的には、食用植物は、ニンニク、コーヒー、生姜、甘草、ルイボス、ステビア(Stevia rebaudiana)、茶、カカオツリー、カモミール、マテ、トウシキミ、ウイキョウ、シトロネラである。
【0040】
[0050]典型的には、芳香植物は、バジル、ターメリック、クローブ、ローレル、オレガノ、ミント、ローズマリー、セージ、タイムである。
[0051]典型的には、香りの良い植物は、ラベンダー、バラ、ユーカリである。
【0041】
[0052]典型的には、薬用植物は、伝統的に使用されている薬用植物のリストA(フランス薬局方 2016年1月、Agence Nationale de Securite du Medicament(ANSM)[French National Agency for Drug and Health Product Safety(フランス国立医薬品・医療製品安全庁)]出版)の文書に示されている植物、又は治療特性を有する化合物を含むことが知られている植物である。典型的には、リストアップされている薬用植物は、イチョウ、朝鮮人参、サワーチェリー、ペパーミント、ヤナギ、及びレッドバインである。
【0042】
[0053]典型的には、ユーカリは、薬用植物の中でも、治療特性を有する化合物を含むことが知られている。
[0054]典型的には、本発明の再構成植物シートの植物繊維及び植物抽出物は、様々な植物部分から誘導でき、その植物部分は植物自体の一部分であるか又は様々な植物の一部分を処理した結果である。典型的には、植物部分は、植物の全部分であるか又は植物の一部分を脱穀又は混合及び細かく刻むことから生ずる破片(デブリ)でありうる。
【0043】
[0055]典型的には、植物部分は、エアロゾルに官能特性を付与する芳香族化合物に最も富む植物部分から選ぶことができる。典型的には、これらの部分は、植物全体、植物の気生部分、例えば、花芽、枝の樹皮、幹の樹皮、葉、花、果実及びその花柄、種子、花弁、頭状花、又は地下部分、例えば、球根、根、根皮、根茎、又はそれらの混合物でありうる。植物部分は、一つ又は複数の植物部分を機械的、化学的又は機械化学的に処理した結果でもよい。例えばカカオ豆を保護しているサヤがこれに当たるが、これは豆のサヤ剥き処理をした結果である。
【0044】
[0056]典型的には、タバコ植物の部分は、エアロゾルに官能特性を付与する芳香族化合物に最も富む部分でありうる。典型的には、タバコ植物の部分は柔組織(葉身)でありうるが、任意にタバコ植物の茎を加えてもよい。典型的には、タバコ植物の部分は、タバコ植物の葉であるか又はタバコ植物の葉及び葉脈を脱穀又は混合及び細かく刻んでスカフェルラティ(刻みタバコ)にすることから生ずる破片(デブリ)でありうる。
【0045】
[0057]食用植物の中では、例えば、ニンニクの球根、コーヒーチェリー(コーヒーの木の果実)、トウシキミの果実(八角)、生姜の根茎、甘草の根及びルイボスの葉、ステビア又は茶が、部分として選ばれうる。
【0046】
[0058]芳香植物の中では、例えば、クローブの花芽(the cloves)、バジル、ローレル及びセージの葉、ミント、オレガノ、ローズマリー及びタイムの葉及び頭状花、又はターメリックの根茎が部分として選ばれうる。
【0047】
[0059]典型的には、香りの良い植物の中では、ラベンダーの花及び頭状花、又はバラの花芽及び花弁が選ばれうる。
[0060]フランス薬局方にリストアップされている薬用植物の中では、例えば、イチョウの葉、朝鮮人参の地下部分、サワーチェリーの果実の花柄(チェリーストーク)、ペパーミントの葉及び頭状花、ヤナギの幹の樹皮及び葉、又はレッドバインの葉が選ばれうる。
【0048】
[0061]一つの特別な態様によれば、再構成植物シートは、0.65g/cm~1g/cmの密度、90g/m~200g/mの坪量及び140μm~325μmの厚さ、16%~25%のSAG、27%~35%のS、及び50%~60%のS+SAGを有することができ、植物はタバコ植物である。
【0049】
[0062]典型的には、再構成植物シートに含まれる微細化植物繊維の固形分の含量(重量による)は、15%~70%、特に30%~61%、さらに特定的には40%~57%でありうる。
【0050】
[0063]典型的には、再構成植物シートの繊維性支持体は、セルロース系植物繊維も含みうる。
[0064]セルロース系植物繊維は、化学的又は機械的又は熱機械的蒸解(クッキング)工程によって得られた繊維、例えば、木材パルプ、麻、又は例えば亜麻のような一年生植物である。これらのセルロース系植物繊維の混合物も使用できる。
【0051】
[0065]好都合なことに、これらのセルロース系植物繊維は、再構成植物シートの機械的強度特性を改良できる。
[0066]典型的には、セルロース系植物繊維は、再構成植物シートの固形分の0.5%~20%、特に3%~17.5%、さらに特定的には5%~15重量%を占めることができる。
【0052】
[0067]第二の主題に従って、本発明は、上に定義された再構成植物シートの製造法に関し、該方法は、
a)微細化植物繊維を抄紙機に通し、繊維性支持体を構築する工程、
b)エアロゾル生成剤及び植物抽出物を前記繊維性支持体と接触させ、湿潤再構成植物シートを得る工程、そして
c)前記湿潤再構成植物シートを乾燥させる工程
を含む。
【0053】
[0068]本発明によれば、繊維性支持体は抄造法を用いて製造される。一つの好適な態様によれば、本発明による再構成植物シートは、抄造法によって得られる再構成植物シートである。
【0054】
[0069]典型的には、工程a)で構築される繊維性支持体は、25g/m~150g/mの坪量を有しうる。特に、坪量の最小値は、55g/m、60g/m、65g/m、70g/m、75g/mでありうる。
【0055】
[0070]好都合なことに、坪量が上記範囲に含まれる繊維性支持体は、所望の高密度を得ることを可能にする。
[0071]典型的には、工程a)で構築される繊維性支持体は、70μm~430μm、特に100μm~350μm、最も特定的には120μm~300μmの厚さを有しうる。
【0056】
[0072]繊維性支持体の坪量及び厚さは、典型的には上記再構成植物シートの坪量及び厚さと同じ方法によって測定される。
[0073]一態様によれば、繊維性支持体の植物繊維及び植物抽出物は、下記工程に従って得られる。
【0057】
d)一つ又は複数の植物部分を溶媒と混合して、植物繊維から植物抽出物を抽出し、
e)前記植物抽出物を植物繊維から分離する。
[0074]従って、植物抽出物と植物繊維は解離法によって得られる。工程d)で、一つ又は複数の植物部分を、例えば蒸解釜の中で溶媒と混合し、植物繊維から植物抽出物を抽出する。工程e)では、植物抽出物を植物繊維から、例えばスクリュープレスに通すことによって分離し、一方では植物繊維を、他方では植物抽出物を単離及び獲得する。
【0058】
[0075]典型的には、溶媒は、非極性溶媒、非プロトン性極性溶媒、プロトン性極性溶媒、又はそれらの混合物でありうる。特に、溶媒は、メタノール、ジクロロメタン、エタノール、アセトン、ブタノール、水又はそれらの混合物でありうる。さらに特定的には、溶媒は、エタノール、アセトン、水又はそれらの混合物である。
【0059】
[0076]一つの特別な態様によれば、溶媒は水性溶媒であり、最も特定的には溶媒は水である。
[0077]当業者であれば、工程d)での溶媒温度を、植物、植物部分及び処理される植物部分に適合させる方法は承知しているであろう。典型的には、根又は樹皮の処理中の溶媒温度は、葉又は花弁の処理中の溶媒温度より高い。
【0060】
[0078]典型的には、工程d)での温度は、10℃~100℃、特に30℃~90℃、さらに特定的には50℃~80℃でありうる。
[0079]溶媒が水であり、植物がタバコである態様によれば、水の温度は典型的には30℃~80℃でありうる。典型的には、タバコ植物の茎を処理する場合、水の温度は50℃~80℃でありうる。典型的には、タバコ植物の柔組織を処理する場合、水の温度は30℃~70℃でありうる。
【0061】
[0080]典型的には、植物繊維は叩解機(リファイナー)で微細化された後、抄紙機に通されて繊維性支持体を構成する。
[0081]典型的には、微細化植物繊維は様々な植物に由来しうる。
【0062】
[0082]各植物の繊維は、上記解離法に従って別々に得ることができる。それらはその後混合され、この様々な植物由来の繊維の混合物を抄紙機に通し、繊維性支持体が構築されるようにすることができる。また、様々な植物の一つ又は複数の部分を一緒にした後、それらを上記解離法に付すことによって様々な植物由来の繊維を得ることも可能である。次に、水の温度は、処理される植物、特にその植物の抽出物を抽出するために最も高い水温を必要とする植物に合わせる。この代替の態様は、様々な植物の繊維を、いくつかの解離法を並行して実施することなしに得ることを可能にするので非常に好都合である。
【0063】
[0083]典型的には、植物抽出物は様々な植物の抽出物でありうる。
[0084]様々な植物の抽出物は、上記解離法に従って別々に得られた様々な植物抽出物を混合することによって得ることができる。また、様々な植物の一つ又は複数の部分を一緒にした後、それらを上記解離法に付すことによって様々な植物の抽出物を得ることも可能である。次に、水の温度は、処理される植物、特にその水溶性植物の抽出物を抽出するために最も高い水温を必要とする植物に合わせる。この代替の態様は、様々な植物の抽出物を、いくつかの方法を並行して実施することなしに得ることを可能にするので非常に好都合である。これら二つの場合とも、様々な植物の抽出物は、工程b)において繊維性支持体と接触させる。
【0064】
[0085]典型的には、上記解離法に従って得られた様々な植物抽出物は、工程b)において繊維性支持体と別々に接触させることもできる。
[0086]典型的には、植物抽出物は、工程b)で繊維性支持体と接触させる前に濃縮することもできる。植物抽出物の濃縮には真空蒸発装置のような装置が使用できる。
【0065】
[0087]典型的には、工程b)において、植物抽出物とエアロゾル生成剤は、順に繊維性支持体と接触させることも、又は混合して一緒に繊維性支持体と接触させることもできる。
【0066】
[0088]典型的には、植物抽出物を接触させる工程b)は、含浸又は噴霧、特に含浸によって実施できる。典型的には、含浸はサイズプレスによって実施できる。
[0089]例えば、所望の高密度を得るために、工程b)中にサイズプレスによって印加されるライン圧を下げることが可能である。典型的には、工程b)中のこのライン圧は、FR 15 59081及びFR 17 57991の出願に記載されているような、再構成植物シートを製造するための従来の抄造法で使用されるサイズプレスによって印加されるライン圧よりもはるかに低い。
【0067】
[0090]所望の高密度を得るために、工程b)で使用される植物抽出物とエアロゾル生成剤の全量を繊維性支持体の坪量に適合させることも勧められる。
[0091]再構成植物シートを製造するための従来の抄造法、すなわち0.6g/cm未満の密度を有する再構成植物シートを製造する抄造法とは反対に、何らかの理論に拘束されることは望まないが、発明者らは、本発明の方法の工程b)が、繊維性支持体への植物抽出物とエアロゾル生成剤の含浸を可能にすることによって、所望の高密度を得ることを可能にしていると考えている。この特有の含浸により、繊維性支持体への植物抽出物とエアロゾル生成剤の均一分布を得ること及びニコチン移動速度を増大させることが可能になる。
【0068】
[0092]典型的には、当業者であれば、乾燥工程c)を実施するための運転条件の適応法は承知しているであろう。
[0093]典型的には、乾燥工程c)は、赤外線ランプ(infrared ramp)、アメリカンバッテリー乾燥ドラム(American battery drying drums)、トンネル乾燥機での熱風乾燥、縦型乾燥機、流動床乾燥機、空気乾燥機(pneumatic drier)によって、特にトンネル乾燥機で実施できる。
【0069】
[0094]本発明の再構成植物シートは、次に、シートやタバコのストリップに類似した一葉に切断されうるか又は巻いてロールにされうる。シートの混合物を形成するために数枚のシートを集成することもできる。
【0070】
[0095]本発明の再構成植物シートは、タバコを燃焼させることなく加熱するための装置に使用することができる。
[0096]そこで、第三の主題に従って、本発明は、上に定義された再構成植物シートの、加熱装置、特にタバコを燃焼させることなく加熱するための装置における使用に関する。
【0071】
[0097]本発明の目的のために、用語“タバコを燃焼させることなく加熱するための装置”は、喫煙者によって吸入されることを意図されたエアロゾルの形成を可能にする任意の装置を表す。エアロゾルは煙に代わるものであるので、喫煙者は植物の芳香を吸入することができるが、同時に有害成分への喫煙者の暴露が非常に著しく低減される。
【0072】
[0098]典型的には、加熱装置は、気流の方向に、吸気口、加熱体、生成剤を含む本発明の再構成植物シートを配置及び保持するためのロッジング、及び喫煙者が口にくわえるための空気出口を含む。吸気口、加熱体、ロッジング及び空気出口は、典型的には、互いに少なくとも流体的に接続されている。
【0073】
[0099]典型的には、加熱装置が使用される場合、喫煙者によって吸気口から空気が加熱装置に吸い込まれ;次に吸い込まれた空気は加熱部分を通過して熱風となり;ロッジングに保持されている、生成剤を含む本発明の再構成植物シートと接触すると、熱風によってエアロゾルが形成され、次いで喫煙者によって吸入される。植物が薬用植物であれば、形成されるエアロゾルは治療特性を有する。
【0074】
[0100]さらに、加熱装置のおかげでシートの燃焼はない。従って、喫煙者は、植物、任意にタバコの官能特性を利用できるが、同時に有害成分への彼らの暴露は非常に著しく低減される。
【実施例
【0075】
[0101]本発明による再構成タバコシート1
[0102]バージニアタイプのタバコのスクラップと茎の混合物を45分間撹拌しながら65℃の水と接触させる。タバコ抽出物を機械的加圧によって繊維性部分から分離する。タバコ抽出物を固形分濃度54%になるまで真空下で濃縮する。グリセロールをエアロゾル生成剤として濃縮タバコ抽出物に加える。
【0076】
タバコ繊維を55°SRのショッパー・リーグラー度を持つように微細化した後、実験室の抄紙機に通し、繊維性支持体を構築する。これは約77g/mの坪量を有する。
グリセロールを含む濃縮タバコ抽出物をサイズプレスでの含浸により繊維性支持体と接触させて再構成タバコシートを製造し、製造された再構成タバコシートにおけるS:27.3%、SAG:23.7%、及び合計SAG+S:51%を得る。
【0077】
[0103]このシートは、密度0.68g/cm、坪量145g/m及び厚さ212μmを有する。
[0104]本発明による再構成タバコシート2
[0105]別の再構成タバコシートを上記方法に従って製造する。違いは次の通りである。バージニアタイプのタバコのストリップと茎の混合物を使用し、ショッパー・リーグラー度は25°SRであり、繊維性支持体の坪量は約78g/mであり、SAGは20.7%であり、Sは30.8%であり、合計SAG+Sは51.5%に等しい。
【0078】
[0106]このシートは、0.69g/cmの密度、156g/mの坪量及び226μmの厚さを有する。
[0107]本発明による再構成タバコシート3
[0108]別の再構成タバコシートを上記方法に従って製造する。違いは次の通りである。バージニアタイプのタバコのストリップと茎の混合物を使用し、ショッパー・リーグラー度は25°SRであり、繊維性支持体の坪量は約63g/mであり、SAGは21.1%であり、Sは35.4%であり、合計SAG+Sは56.5%に等しい。
【0079】
[0109]このシートは、0.61g/cmの密度、129g/mの坪量及び186μmの厚さを有する。
[0110]本発明によらない再構成タバコシート
[0111]本発明によらない再構成タバコシートを上記と類似の手順に従って製造する。違いは、繊維性支持体の坪量が57g/mであること、Sが34.1%であり、SAGが14.9%であり、合計SAG+Sが43%であることである。
【0080】
[0112]この再構成タバコシートは、0.6g/cm未満の密度、95g/mの坪量及び166μmの厚さを有する。
[0113]ニコチン移動速度
[0114]本発明による再構成タバコシート1と本発明によらない再構成タバコシートのニコチン移動速度をgloTMタイプの加熱システムを用い、下記のプロトコルに従って決定する。
【0081】
[0115]再構成タバコシートにおけるニコチン移動速度は、前記再構成タバコシートを加熱することによって生じるエアロゾル中のニコチン含量を、前記再構成タバコシート中のニコチン含量で割ることによって計算される。
【0082】
[0116]再構成タバコシートを加熱することによって生じるエアロゾル中のニコチン含量は以下のようにして決定される。
2018年8月にイタリアで購入したgloTM用チューブの市販のダンヒルスティックからタバコを空にし、前記チューブに試験されるシートのスカフェルラティ(刻みタバコ)をタバコ重量260mg/スティック及び引抜抵抗(drawing resistance)70±3mm水柱で充填する。
【0083】
エアロゾルは充填スティックが搭載されたBorgwaldt RM04喫煙装置から生成させる(gloTM加熱システムに同梱されている使用手順を適用することにより)。
【0084】
エアロゾル物質を40mmケンブリッジフィルターに収集する。それを次にメタノールに溶解する。
エアロゾル中のニコチン含量は、ガスクロマトグラフィーによる分離後、FIDによりn-ヘプタデカン(標準として使用)に対してアッセイされる。エアロゾルのニコチン含量は標準ISO10315:2013に従って測定されるが、標準に記載されているイソプロパノールの代わりにメタノールを使用する。使用されるクロマトグラフィー材料は試験シートのニコチンの分析に使用されるものと同じである。6回同じことを実施して、エアロゾル中のニコチン含量を決定する。
【0085】
[0117]再構成タバコシート中のニコチン含量は以下のようにして決定される。
シート中のニコチン含量は、ガスクロマトグラフィー・FID検出分析により、Innowaxガスクロマトグラフィーカラム(カラム寸法:長さ30m;内径:0.53mm;フィルム厚1μm)を用いて決定される。
【0086】
[0118]試験されたシートの結果を以下の[表1]に示す。
[0119]これらの結果から、本発明による再構成タバコシート1のニコチン移動速度は、密度が0.6g/cm未満のタバコシートのニコチン移動速度より著しく高いことが分かる。
【0087】
[0120][表1]
【0088】
【表1】
【0089】
[0121]官能特性
[0122]本発明によるタバコシートと本発明によらないタバコシートをスカフェルラティ(刻みタバコ)に切断した後、独立専門家により、gloTM加熱システムで交互に喫煙される。
【0090】
[0123]独立専門家によれば、本発明によるタバコシートの喫煙中に形成されるすべてのエアロゾルは非常に満足のいく官能特性を有しており、特に、エアロゾルは、苦すぎず、刺激が強すぎず、攻撃的すぎず、まろやかでバランスの取れた良好な味を有しており、本発明によらないタバコシートの喫煙中に形成されるエアロゾルよりも優れている。
【国際調査報告】