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▶ シンセティック・バイオロジクス・インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】アルカリリン酸塩に基づいた癌治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20220705BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220705BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20220705BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20220705BHJP
【FI】
A61K38/46
A61P39/02
A61P43/00 121
A61P1/00
A61K45/00
A61K31/513
A61P29/00
A61P25/00
C12N9/16 B
C12N15/55 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566449
(86)(22)【出願日】2020-05-05
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 US2020031430
(87)【国際公開番号】W WO2020227263
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/843,850
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516293727
【氏名又は名称】シンセティック・バイオロジクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フルラン フレギア、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】カレコ、ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4B050
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD11
4B050LL01
4C084AA02
4C084AA19
4C084CA18
4C084CA20
4C084DC22
4C084MA52
4C084NA06
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC371
4C084ZC372
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA06
4C086ZB11
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、胃腸(GI)副作用が含まれる化学療法薬治療媒介副作用を予防、治療、または低減するための方法及び組成物に関し、対象に腸アルカリホスファターゼ(IAP)を投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌクレオシド類似体による化学療法薬治療の少なくとも1つの副作用を対象において治療または予防する方法であって、腸アルカリホスファターゼ(IAP)を前記対象に投与することを含み、前記対象が前記化学療法薬治療を使用するがん治療を受けた、または受けている、方法。
【請求項2】
前記IAPが前記化学療法薬治療と順次に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IAPが前記化学療法薬治療の前に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記IAPが前記化学療法薬治療の後に投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記IAPが前記化学療法薬治療と同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記IAPが前記化学療法薬治療と断続的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化学療法薬治療の前記副作用が、下痢、大腸炎、粘膜炎、体重減、疼痛、悪心、嘔吐、便秘、貧血、栄養不良、脱毛症、骨髄抑制、腎毒性、脱毛、痺れ、味覚の変化、食欲不振、薄毛または脆弱毛、口内炎、記憶喪失、出血、心毒性、肝毒性、聴器毒性及び化学療法後認知障害を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記化学療法薬治療の副作用が、胃腸(GI)副作用を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記副作用が粘膜炎を含む、請求項1または8に記載の方法。
【請求項10】
前記副作用が下痢を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記IAPが、ヒトIAPまたは仔ウシ/ウシIAPから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記IAPが、配列番号1~11、17、18、または41のいずれか1つに少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%、または少なくとも約100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記IAPが、配列番号2、配列番号5、または配列番号41のいずれか1つに少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%、または少なくとも約100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記IAPが、配列番号2、配列番号5、または配列番号41に少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記IAPが経口投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記IAPが胃腸(GI)放出のために処方される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ヌクレオシド類似体が、プリンまたはそのピリミジン類縁体もしくは誘導体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ヌクレオシド類似体がピリミジン類似体である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ピリミジン類似体が、5-フルオロウラシル(5-FU)、5’-デオキシフルオロウリジン、5-フルオロ-2’-デオキシウリジントリホスフェート、フルオロウリジン、2’-デオキシフルオロウリジン、フルオロシトシン、トリフルオロ-メチル-2’-デオキシウリジン、シタラビン、シクロシチジン、アラビノシルシトシン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、アラビノシル-5-アザシトシン、6-アザシチジン、N-ホスホノアセチル-L-アスパラギン酸、ピラゾフリン、6-アザウリジン、アザリビン、チミジン、ファザラビン、3-デアザウリジン及びこれらの誘導体のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記ピリミジン類似体が5-フルオロウラシルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ヌクレオシド類似体が、フルオロピリミジン、5-フルオロウラシル、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、5-フルオロ-2’-デオキシウリジントリホスフェート、ゲムシタビン、トロキサシタビン、デシタビン、シタラビン、プソイドイソシチジン、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、アンシタビン、ファザラビン、6-アザシチジン、カペシタビン、N4-オクタデシル-シタラビン、エライジン酸-シタラビン、クラドリビン、アシクロビル、クロファラビン、ネララビン、フォロデシン、8-クロロアデノシン、サパシタビン、チアラビン及びこれらの誘導体のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、がんを有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記がんが、基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨癌;脳及び中枢神経系の癌;乳癌;腹膜癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸及び直腸の癌;結合組織癌;消化器系の癌;子宮内膜癌;食道癌;眼癌;頭頸部癌;胃癌(GI癌を含む);神経膠芽細胞腫;肝癌;肝細胞癌;上皮内新生物;腎癌;喉頭癌;白血病;肝癌;肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌及び肺扁平上皮癌);黒色腫;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔癌(唇、舌、口及び咽頭);卵巣癌;膵癌;前立腺癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系の癌;唾液腺癌;肉腫;皮膚癌;扁平上皮癌;胃の癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮または子宮内膜の癌;泌尿器系の癌;外陰癌;ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、ならびにB細胞リンパ腫を含むリンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症が含まれる);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ球性白血病(ALL);毛様細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;ならびに他の癌腫及び肉腫;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)またはメグズ症候群に関連する異常な血管増殖を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記IAPの投与が、前記ヌクレオシド類似体を投与する用量、期間及び/または頻度の低減を可能にする、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ヌクレオシド類似体の低減された用量が、前記ヌクレオシド類似体の治療量以下の用量である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
方法が、前記ヌクレオシド類似体の治療範囲を増大する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ヌクレオシド類似体の増大された治療範囲が、対象がヌクレオシド類似体維持療法を受ける可能性の増大、対象がヌクレオシド類似体の完全なレジメンを受ける可能性の増大、対象がヌクレオシド類似体の完全なレジメンを超えるものを受ける可能性の増大、ならびにヌクレオシド類似体治療の用量、期間及び/または頻度の増大のうちの1つ以上を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記IAPが、前記対象における前記がん治療を妨げない、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記IAPが、配列番号41に少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%、または少なくとも約100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記化学療法薬治療が5-FUであり、
前記化学療法薬治療の副作用が、胃腸(GI)副作用を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記胃腸(GI)副作用が下痢である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記胃腸(GI)副作用が粘膜炎である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記IAPが、配列番号41に少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%、または少なくとも約100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
前記化学療法薬治療が5-FUであり、
前記化学療法薬治療の副作用が、胃腸(GI)副作用を含む、
請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記胃腸(GI)副作用が下痢である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記胃腸(GI)副作用が粘膜炎である、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、化学療法媒介胃腸副作用を治療用腸アルカリホスファターゼの投与により予防及び/または低減する方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月6日に出願した米国特許仮出願第62/843,850号の利益を主張し、そのすべての内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、その全体が参照より本明細書に組み込まれる:配列表のコンピューター読み取り可能フォーマットコピー(ファイル名:「SYN-046PC_ST25.txt」;作成日:2020年5月4日;ファイルサイズ:84,284バイト)。
【背景技術】
【0004】
化学療法は、広く使用されてきた一般的ながん治療の手法であり、様々な化学療法剤が、がん治療のために開発されてきた。しかし、多くの化学療法剤は、中程度から重篤な副作用を含む副作用を有し、これには、例えば下痢及び/または大腸炎などの胃腸(GI)の機能不全が含まれ得る。一部の化学療法剤は、腸内マイクロバイオームのディスバイオシスに関連し、これは腸粘膜炎の主な原因の一つである。副作用は化学療法剤の適用を制限する。
【0005】
改善されたがん患者ケアを可能にする改善されたがん療法及び有害な副作用の軽減の必要性を考慮すると、様々な抗癌剤の投与に関連する副作用を予防及び/または低減する治療組成物の必要性が増大している。
【0006】
アルカリホスファターゼ(「AP」、EC3.1.3.1)は、ヌクレオチド及びタンパク質を含む様々な標的からリン酸基を除去することができるヒドロラーゼ酵素である。アルカリホスファターゼは、E.Coliから哺乳動物までの範囲において、原核生物はもとより真核生物にも見出される。特に、哺乳類APは、腸ホメオスタシス、粘膜バリア機能、共生細菌の促進、及び病原体に対する防御において重要な役割を果たすことが示されている。哺乳類APは、主にLPS(TLR4アゴニスト)、フラゲリン(TLR5アゴニスト)、及びCpG DNA(TLR9アゴニスト)を標的にする特性を発揮する。APは、腸管腔NTP(例えば、ATP、GTPなど)も分解し、このことは良好な細菌の増殖を促進し、ディスバイオシスを逆転する。したがってAPには、例えば、抗癌剤の投与に関連する副作用を予防及び/または低減することに臨床用途を見出すことができる。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明は、化学療法薬治療の副作用の治療及び/または予防のための、化学療法薬治療を伴った腸アルカリホスファターゼ(IAP)の使用方法を提供する。
【0008】
一部の態様において、本発明は、ヌクレオシド類似体を含む化学療法薬治療の治療有効性を、それを必要とする対象において高める方法であって、有効量のIAPを対象に投与することを含む方法を提供する。
【0009】
本発明の一部の態様では、ヌクレオシド類似体による化学療法薬治療の少なくとも1つの副作用を対象において治療または予防する方法であって、腸アルカリホスファターゼ(IAP)を対象に投与することを含み、対象が化学療法薬治療を使用するがん治療を受けた、または受けている方法が提供される。
【0010】
IAPは、順次に、同時に、または断続的にヌクレオシド類似体の投与とともに投与され得る。IAPは経口投与され得る。一部の実施形態において、ヌクレオシド類似体は、プリン類似体もしくはピリミジン類似体、またはこれらの誘導体であり得る。ヌクレオシド類似体の非限定例には、5-フルオロウラシル、5’-デオキシフルオロウリジン、5-フルオロ-2’-デオキシウリジントリホスフェート、フルオロウリジン、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、フルオロピリミジン(luoropyrimidine)、2’-デオキシフルオロウリジン、フルオロシトシン、トリフルオロ-メチル-2’-デオキシウリジン、シクロシチジン、アラビノシルシトシン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、アラビノシル-5-アザシトシン、アザシチジン、6-アザシチジン、N-ホスホノアセチル-L-アスパラギン酸、ピラゾフリン、6-アザウリジン、アザリビン(azaribine)、チミジン、ファザラビン(fazarabine)、3-デアザウリジン(deazauridine)、シタラビン、ゲムシタビン、トロキサシタビン、デシタビン、プソイドイソシチジン(pseudoisocytidine)、ゼブラリン、アンシタビン、カペシタビン、N4-オクタデシル-シタラビン、エライジン酸-シタラビン、クラドリビン、アシクロビル、クロファラビン、ネララビン、フォロデシン、8-クロロアデノシン、サパシタビン(sapacitabine)、チアラビン(thiarabine)及びこれらの誘導体が含まれる。実施形態において、ヌクレオシド類似体は5-フルオロウラシルである。
【0011】
IAPの投与は、本開示の実施形態によると、対象におけるがんの治療を妨げない。一部の態様において、IAPの投与は、ヌクレオシド類似体を投与する期間、用量、及び/または頻度の低減を可能にする。例えば、一部の実施形態において、IAPの使用はヌクレオシド類似体の治療量以下の用量の使用を可能にする。一部の態様において、本開示による方法は、ヌクレオシド類似体の治療範囲(therapeutic window)を増大する。
【0012】
一部の実施形態において、化学療法薬治療を伴ったIAPの投与は、化学療法薬治療に関連する副作用を予防、排除、または低減する。したがって一部の態様において、本開示は、化学療法薬治療の少なくとも1つの副作用を対象において治療または予防する方法を提供する。本方法は、IAPを対象に投与することを含み、対象は、化学療法薬治療を使用するがん治療を受けた、または受けている。化学療法薬治療の副作用には、下痢、大腸炎、粘膜炎、体重減、疼痛、悪心、嘔吐、便秘、貧血、栄養不良、脱毛症、骨髄抑制、腎毒性、脱毛、痺れ、味覚の変化、食欲不振、薄毛または脆弱毛(thinned or brittle hair)、口内炎(mouth sores)、記憶喪失、出血、心毒性、肝毒性、聴器毒性、及び化学療法後認知障害のうちの1つ以上が含まれ得る。化学療法薬治療の副作用は、胃腸(GI)副作用を含むこともあり、これは、例えばヌクレオシド類似体(例えば、5-フルオロウラシル)などの一部の化学療法薬治療により引き起こされることもある。本開示による方法は、粘膜炎及び下痢を含むGI副作用の治療または予防を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】IAPの投与が5-FUの副作用を低減することを説明する。日数に対する未治療(上側曲線)、ビヒクル+5-FU(中側曲線)、及びSYN BIAPPII+5-FU(下側曲線)マウスの体重変化の平均%±SEMによる体重変化の評価を示す。
図1B】IAPの投与が5-FUの副作用を低減することを説明する。x軸のベースラインに示されている未治療マウスデータと比べた、ビヒクル+5-FU及びSYN BIAPPII+5-FUマウスの日数に対する平均便硬度スコア±SEMによる便硬度の評価を示す。示されているように、5-FUの投与は軟便/下痢を引き起こし、すべての治療動物において体重減に関連し、これは6日目にピークに達し、9日目に回復した。IAPの投与は、軟便/下痢の症状からの有意に早い回復を示す(p<0.03)。
図2A】IAPの投与が5-FUの副作用を低減することを更に説明する。50%群生存率の平均1日体重が、0日目の体重+SEMと比較して経時的な変化率として示されていることを描写する。
図2B】IAPの投与が5-FUの副作用を低減することを更に説明する。0~12日目までの毎日の便硬度スコアの結果を示し、平均スコア+SEMが示されている。
図2C】IAPの投与が5-FUの副作用を低減することを更に説明する。治療群による動物の下痢を有した延日数の百分率のグラフ表示を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、とりわけ、腸アルカリホスファターゼ(IAP)が限定されることなく含まれるアルカリホスファターゼ(AP)に基づいた薬剤が、例えばヌクレオシド類似体などの様々な化学療法薬治療を含む抗がん治療と一緒に実質的に使用され得るという発見に基づいている。本発明者たちは、IAPが化学療法などのがん治療の副作用を軽減するという発見に基づいて、順次に、同時に、もしくは断続的に1つ以上の化学療法薬治療とともに投与され得る、またはこれらのレジメンの1つと組み合わせて投与され得るIAPの使用が、化学療法剤の作用を干渉しないこと、ましてや化学療法への対象の全体的な応答を高めることを発見した。
【0015】
化学療法薬への曝露は、例えば、ディスバイオシス、下痢、粘膜炎、腸漏れ(leaky gut)、内毒素血症、変質腸管通過(altered intestinal transit)、吸収不良、及び運動不全が限定されることなく含まれる胃腸(GI)管破損をもたらし得る。IAPが限定されることなく含まれ、任意選択で経口投与される本発明のAPに基づいた薬剤は、これらの副作用及び他の副作用を低減または予防し得る。したがって本発明は、様々な実施形態において、経口投与され得る、IAPが限定されることなく含まれる本発明のAPに基づいた薬剤を用いた化学療法の作用の治療または予防に関する。本発明者たちは、IAPには、患者における、下痢及び/または粘膜炎大腸炎などの化学療法媒介GI副作用の予防、低減、または排除に使用が見出されることを発見した。上記に記述されたようなIAPの使用は、化学療法が用量及びレジメン制限的なGI及び他の副作用によって制限されないので、より有効ながん治療を可能にする。
【0016】
化学療法薬治療は、血液癌及び固形腫瘍を含む様々な悪性腫瘍の治療に広く使用されている代謝拮抗薬のクラスである、ヌクレオシド類似体を限定されることなく含む様々な薬剤の使用を伴う。ヌクレオシド類似体は、生理学的ヌクレオシドを模倣し、新たに合成されたDNAに組み込まれ、合成阻害及び連鎖停止を生じる。一部のヌクレオシド類似体は、プリン及びピリミジンヌクレオチドの生成、ならびにRNA合成に関与する主要酵素を阻害し、カスパーゼカスケードを直接活性化させる。ヌクレオシド類似体作用の効果は、細胞死をもたらし得る。ヌクレオシド類似体の非限定例には、5-フルオロウラシル、5’-デオキシフルオロウリジン、5-フルオロ-2’-デオキシウリジントリホスフェート、フルオロウリジン、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、フルオロピリミジン、2’-デオキシフルオロウリジン、フルオロシトシン、トリフルオロ-メチル-2’-デオキシウリジン、シクロシチジン、アラビノシルシトシン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、アラビノシル-5-アザシトシン、アザシチジン、6-アザシチジン、N-ホスホノアセチル-L-アスパラギン酸、ピラゾフリン、6-アザウリジン、アザリビン、チミジン、ファザラビン、3-デアザウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、トロキサシタビン、デシタビン、プソイドイソシチジン、ゼブラリン、アンシタビン、カペシタビン、N4-オクタデシル-シタラビン、エライジン酸-シタラビン、クラドリビン、アシクロビル、クロファラビン、ネララビン、フォロデシン、8-クロロアデノシン、サパシタビン、チアラビン及びこれらの誘導体が含まれる。
【0017】
大部分のヌクレオシド類似体は、下痢及び/または粘膜炎が含まれるが、これらに限定されない潜在的な副作用を引き起こし得る。1つ以上のヌクレオシド類似体による化学療法薬治療の副作用の他の例には、下痢、大腸炎、粘膜炎、体重減、疼痛、悪心、嘔吐、便秘、貧血、栄養不良、脱毛症、骨髄抑制、腎毒性、脱毛、痺れ、味覚の変化、食欲不振、薄毛または脆弱毛、口内炎、記憶喪失、出血、心毒性、肝毒性、聴器毒性、及び化学療法後認知障害が含まれる。
【0018】
IAPは、炎症性メディエーターを解毒することによりGIホメオスタシスを促進する腸上皮により発現される内因性タンパク質であり、炎症の軽減、腸バリアの密接、及び健康なマイクロバイオームを促進することによる腸ホメオスタシスの維持に使用され得る。例えば、IAP発現または機能の損失は、腸炎症、ディスバイオシス、細菌移行、及び全身性炎症の増加に関連する。とりわけ腸ホメオスタシスを維持するための主な機能は、重炭酸塩分泌及び十二指腸表面pHの制御、長鎖脂肪酸の吸収、病原体関連分子パターンの解毒を介した腸炎症の軽減、ならびに腸マイクロバイオームの制御として一般に認識されている。IAPのホスファターゼ機能によって作用するいくつかの基質には、理論に束縛されることなく、リポ多糖(LPS)、フラゲリン、CpG DNA、ならびにヌクレオチド二リン酸及び三リン酸が含まれる。具体的には、IAPは、炎症を下方制御する、マイクロバイオームを制御する、クローディン及びオクルーディンの発現増強を介して腸バリアを密接にする、ならびにアデノシン三リン酸及び二リン酸(ATP及びADP)の代謝に影響を与える能力によって治療薬の標的である。本発明は、患者のがん治療を妨げない、IAPを含む組成物を考慮する。事実、本発明によると本明細書に記載されている方法は、ヌクレオシド類似体による化学療法薬治療への対象の全体的な応答を高める。
【0019】
したがって本発明は、部分的には、ヌクレオシド類似体による化学療法薬治療の少なくとも1つの副作用を、必要性のある対象において治療または予防する方法であって、IAPを対象に投与することを含み、対象が化学療法薬治療を使用するがん治療を受けた、または受けている方法を対象とする。
【0020】
アルカリホスファターゼ(AP)
本開示は、部分的には、医薬組成物、製剤、及び1つ以上のアルカリホスファターゼに基づいた薬剤(APに基づいた薬剤)の使用を対象とする。アルカリホスファターゼは、リン酸エステルの加水分解を触媒する、ならびに様々な標的基質を生理学的pH及びより高いpHで脱リン酸化する二量体金属酵素である。本発明に利用され得る例示的なAPには、IAP(例えば、仔ウシIAPまたはウシIAP、ニワトリIAP、ヤギIAP)、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、胎盤様アルカリホスファターゼ、生殖細胞アルカリホスファターゼ(GCAP)、組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP;主に肝臓、腎臓、及び骨に見出される)、骨アルカリホスファターゼ、肝臓アルカリホスファターゼ、腎臓アルカリホスファターゼ、細菌性アルカリホスファターゼ、真菌性アルカリホスファターゼ、エビアルカリホスファターゼ、修飾IAP、組み換えIAP、またはアルカリホスファターゼ活性を含む任意のポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
様々な実施形態において、本発明は、IAP、胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)、生殖細胞アルカリホスファターゼ(GCAP)、及び組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)が含まれるが、これらに限定されない哺乳類アルカリホスファターゼの使用を考慮する。
【0022】
一部の実施形態において、APに基づいた薬剤はIAPである。IAPは、近位小腸で産生され、GPIアンカーを介して腸細胞に結合される。一部のIAPは、細胞により脱粒された小胞と一緒に、ホスホリパーゼを介して細胞から剥奪された可溶性タンパク質として腸管腔内に放出される。次いで酵素は小腸及び大腸を縦断し、それにより一部の活性酵素が便中から検出され得る。ある実施形態において、IAPはヒトIAP(hIAP)である。ある実施形態において、IAPは、仔ウシ(cIAP)であり、ウシIAP(bIAP)としても知られている。bIAPの複数のアイソザイムが存在し、例えば、bIAP II及びIVは、bIAP Iより高い比活性を有する。ある実施形態において、IAPは、cIAPまたはbIAPアイソザイム(例えば、bIAP I、II、及びIV)のうちのいずれか1つである。ある実施形態において、IAPはbIAP IIである。別の実施形態において、IAPはbIAP IVである。
【0023】
またIAPの定義内に含まれるものは、IAPバリアントである。IAPバリアントは、親野生型配列と比較して、少なくとも1つ以上のアミノ酸修飾、一般にアミノ酸置換を有する。一部の実施形態において、本発明のIAPは、本明細書に開示される配列のいずれかと少なくとも約60%(例えば、約60%、または約61%、または約62%、または約63%、または約64%、または約65%、または約66%、または約67%、または約68%、または約69%、または約70%、または約71%、または約72%、または約73%、または約74%、または約75%、または約76%、または約77%、または約78%、または約79%、または約80%、または約81%、または約82%、または約83%、または約84%、または約85%、または約86%、または約87%、または約88%、または約89%、または約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。加えて、IAPバリアントは、本明細書に記載されているように測定すると、大部分またはすべての生化学活性を保持する。
【0024】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤は、hIAPまたはそのバリアントである。一部の実施形態において、APに基づいた薬剤は、下記に記載されている配列番号1のアミノ酸配列を含むhIAPである。
hIAP-配列番号1
1 mqgpwvllll glrlqlslgv ipaeeenpaf wnrqaaeald aakklqpiqk vaknlilflg
61 dglgvptvta trilkgqkng klgpetplam drfpylalsk tynvdrqvpd saatataylc
121 gvkanfqtig lsaaarfnqc nttrgnevis vmnrakqagk svgvvtttrv qhaspagtya
181 htvnrnwysd admpasarqe gcqdiatqli snmdidvilg ggrkymfpmg tpdpeypada
241 sqngirldgk nlvqewlakh qgawyvwnrt elmqasldqs vthlmglfep gdtkyeihrd
301 ptldpslmem teaalrllsr nprgfylfve ggridhghhe gvayqaltea vmfddaiera
361 gqltseedtl tlvtadhshv fsfggytlrg ssifglapsk aqdskaytsi lygngpgyvf
421 nsgvrpdvne sesgspdyqq qaavplsset hggedvavfa rgpqahlvhg vqeqsfvahv
481 mafaaclepy tacdlappac ttdaahpvaa slpllagtll llgasaap
【0025】
理論に束縛されることなく、APに基づいた薬剤のカルボキシ末端(例えば、配列番号1の位置500)のシステインは、タンパク質フォールディングを干渉し得ることが考えられる。したがって、一部の実施形態において、APに基づいた薬剤は、システイン(配列番号1の位置500)の変異を含む。一部の実施形態において、システインはグリシンに置き換えられている。
【0026】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤は、bIAP IIまたはそのバリアントである。ある実施形態において、bIAP IIは、bIAP Iのシグナルペプチド及びカルボキシ末端を含む。ある実施形態において、bIAP IIは、アスパラギン酸及び位置248を含む(bIAP IVに類似している)。ある実施形態において、bIAP IIは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
248D割当を有するbIAP II-配列番号2。シグナルペプチド及び480より後ろの配列は、bIAP I由来である。
1 mqgacvllll glhlqlslgl ipaeeenpaf wnrqaaqald vakklqpiqt aaknvilflg
61 dgmgvptvta trilkgqmng klgpetplam dqfpyvalsk tynvdrqvpd sagtataylc
121 gvkgnyrtig vsaaarynqc nttrgnevts vinrakkagk avgvvtttrv qhaspagaya
181 htvnrnwysd adlpadaqkn gcqdiaaqlv ynmdidvilg ggrmymfpeg tpdpeypdda
241 svngvrkdkq nlvqewqakh qgaqyvwnrt allqaaddss vthlmglfep admkynvqqd
301 htkdptlaem teaalqvlsr nprgfylfve ggridhghhd gkaymaltea imfdnaiaka
361 neltseldtl ilvtadhshv fsfggytlrg tsifglapgk aldsksytsi lygngpgyal
421 gggsrpdvng stseepsyrq qaavplaset hggedvavfa rgpqahlvhg vqeetfvahi
481 mafagcvepy tdcnlpapat atsipdaahl aasppplall agamllllap tly
【0027】
様々な実施形態において、bIAP IIは、配列番号41のアミノ酸配列を含む。
停止コドンを有し、リーダー配列を有さないbIAP II(SYN-020)(配列番号41):
LIPAEEENPAFWNRQAAQALDVAKKLQPIQTAAKNVILFLGDGMGVPTVTATRILKGQMNGKLGPETPLAMDQFPYVALSKTYNVDRQVPDSAGTATAYLCGVKGNYRTIGVSAAARYNQCNTTRGNEVTSVINRAKKAGKAVGVVTTTRVQHASPAGAYAHTVNRNWYSDADLPADAQKNGCQDIAAQLVYNMDIDVILGGGRMYMFPEGTPDPEYPDDASVNGVRKDKQNLVQEWQAKHQGAQYVWNRTALLQAADDSSVTHLMGLFEPADMKYNVQQDHTKDPTLAEMTEAALQVLSRNPRGFYLFVEGGRIDHGHHDGKAYMALTEAIMFDNAIAKANELTSELDTLILVTADHSHVFSFGGYTLRGTSIFGLAPGKALDSKSYTSILYGNGPGYALGGGSRPDVNGSTSEEPSYRQQAAVPLASETHGGEDVAVFARGPQAHLVHGVQEETFVAHIMAFAGCVEPYTDCNLPAPATATSIPD
【0028】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤は、bIAP IVまたはそのバリアントである。ある実施形態において、bIAP IVは、配列番号3のアミノ酸配列を含む。
bIAP IV-配列番号3
1 mqwacvllll glwlqlsltf ipaeeedpaf wnrqaaqald vakklqpiqt aaknvilflg
61 dgmgvptvta trilkgqmng klgpetplam dqfpyvalsk tynvdrqvpd sagtataylc
121 gvkgnyktig vsaaarynqc nttsgnevts vmnrakkagk svgvvttsrv qhaspagaya
181 htvnrnwysd adlpadaqty gcqdiatqlv nnmdidvilg ggrmymfpeg tpdpeypydv
241 nqtgvrkdkr nlvqewqakh qgaqyvwnrt ellqaandps vthlmglfep admkynvqqd
301 ptkdptleem teaalqvlsr npqgfylfve ggridhghhe gkaymaltdt vmfdnaiaka
361 neltseldtl ilatadhshv fsfggytlrg tsifglapsk asdnksytsi lygngpgyvl
421 ggglrpdvnd sisedpsyrq qaavplsses hggedvavfa rgpqahlvhg vqeetfvahv
481 mafagcvepy tdcnlpapsg lsdaahlaas ppslallaga mllllapaly
【0029】
哺乳類アルカリホスファターゼは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカードタンパク質である。シグナルペプチドを有し、分泌経路に翻訳される。小胞体(ER)の中に入ると、タンパク質はグリコシル化され、フォールドされる。2個のジスルフィド結合、ならびに明らかに表面から利用可能ではない単一の遊離システインが存在する。後期のERにおいて、カルボキシ末端は除去され、GPIアンカーが吊り下げられる。したがってGPIアンカリングは、アルカリホスファターゼのカルボキシ末端に発生するプロセスである。アンカー部位に停止コドンを含めることは、生物学的に活性なタンパク質(おそらく、ホモ二量体)の分泌を可能にする。コンセンサス配列はないが、カルボキシ末端は、オメガ、オメガ+1、オメガ+2と称される3個のアミノ酸を含み、これらの後ろに親水性アミノ酸の短い伸展、次いで疎水性アミノ酸の伸展が続く。理論に束縛されることなく、疎水性は、カルボキシ末端をER膜に包埋するために重要であると考えられる。次いで、酵素反応はカルボキシ末端をGPIアンカーに置き換える。
【0030】
hPLAP内では、GPIアンカーは、配列DAAHのアスパラギン酸に結合する。同様に、hIAP、bIAP II、及びbIAP IVも、GPIアンカー部位として潜在的に機能するこのDAAH保存配列を有する。hPLAの突然変異研究は、GPIアンカリングの防止が細胞内保持を生じることを示している。加えて、アンカー部位の周囲または疎水性ドメインにおける変異は、1)アンカー結合を防止して細胞内保持をもたらす、または2)アンカー結合を阻止しない。理論に束縛されることなく、疎水性ドメインはGPIアンカー結合のシグナルとして機能すると考えられる。疎水性ドメインの切断または排除は、分泌をもたらす。最後に、疎水性ドメインにおける単一の変異は、hPLAPにおいて、インタクトな疎水性ドメインを有するタンパク質の分泌を可能にする。
【0031】
様々な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、宿主細胞にGPIアンカーされる。例えば、APに基づいた薬剤は、宿主細胞の細胞膜にGPIアンカーされ得る。他の実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、アンカードタンパク質ではなく分泌タンパク質である。一部の実施形態において、APに基づいた薬剤はGPIアンカーされない。一部の実施形態において、APに基づいた薬剤はGPIアンカー部位を欠いている。一部の実施形態において、APに基づいた薬剤は、GPIアンカー部位の直後に挿入されている停止コドンを含む。ある実施形態において、APに基づいた薬剤は、DAAHコンセンサス部位のアンカーの後ろ(例えば、hIAP及びbIAP IVのアミノ酸503、またはbIAP IIのアミノ酸506)に停止コドンを含む。
停止コドンを有するhIAP(配列番号4)
1 mqgpwvllll glrlqlslgv ipaeeenpaf wnrqaaeald aakklqpiqk vaknlilflg
61 dglgvptvta trilkgqkng klgpetplam drfpylalsk tynvdrqvpd saatataylc
121 gvkanfqtig lsaaarfnqc nttrgnevis vmnrakqagk svgvvtttrv qhaspagtya
181 htvnrnwysd admpasarqe gcqdiatqli snmdidvilg ggrkymfpmg tpdpeypada
241 sqngirldgk nlvqewlakh qgawyvwnrt elmqasldqs vthlmglfep gdtkyeihrd
301 ptldpslmem teaalrllsr nprgfylfve ggridhghhe gvayqaltea vmfddaiera
361 gqltseedtl tlvtadhshv fsfggytlrg ssifglapsk aqdskaytsi lygngpgyvf
421 nsgvrpdvne sesgspdyqq qaavplsset hggedvavfa rgpqahlvhg vqeqsfvahv
481 mafaaclepy tacdlappag ttd
停止コドンを有するbIAP II(配列番号5)
1 mqgacvllll glhlqlslgl ipaeeenpaf wnrqaaqald vakklqpiqt aaknvilflg
61 dgmgvptvta trilkgqmng klgpetplam dqfpyvalsk tynvdrqvpd sagtataylc
121 gvkgnyrtig vsaaarynqc nttrgnevts vinrakkagk avgvvtttrv qhaspagaya
181 htvnrnwysd adlpadaqkn gcqdiaaqlv ynmdidvilg ggrmymfpeg tpdpeypdda
241 svngvrkdkq nlvqewqakh qgaqyvwnrt allqaaddss vthlmglfep admkynvqqd
301 htkdptlaem teaalqvlsr nprgfylfve ggridhghhd gkaymaltea imfdnaiaka
361 neltseldtl ilvtadhshv fsfggytlrg tsifglapgk aldsksytsi lygngpgyal
421 gggsrpdvng stseepsyrq qaavplaset hggedvavfa rgpqahlvhg vqeetfvahi
481 mafagcvepy tdcnlpapat atsipd
停止コドンを有するbIAP IV(配列番号6)
1 mqwacvllll glwlqlsltf ipaeeedpaf wnrqaaqald vakklqpiqt aaknvilflg
61 dgmgvptvta trilkgqmng klgpetplam dqfpyvalsk tynvdrqvpd sagtataylc
121 gvkgnyktig vsaaarynqc nttsgnevts vmnrakkagk svgvvttsrv qhaspagaya
181 htvnrnwysd adlpadaqty gcqdiatqlv nnmdidvilg ggrmymfpeg tpdpeypydv
241 nqtgvrkdkr nlvqewqakh qgaqyvwnrt ellqaandps vthlmglfep admkynvqqd
301 ptkdptleem teaalqvlsr npqgfylfve ggridhghhe gkaymaltdt vmfdnaiaka
361 neltseldtl ilatadhshv fsfggytlrg tsifglapsk asdnksytsi lygngpgyvl
421 ggglrpdvnd sisedpsyrq qaavplsses hggedvavfa rgpqahlvhg vqeetfvahv
481 mafagcvepy tdcnlpapsg lsd
【0032】
ある実施形態において、APに基づいた薬剤は、bIAP IVであり、アミノ酸508の後ろに停止コドンを含んで、下記に描写される分泌PLAP構築物を模倣する。
アミノ酸508の後ろに停止コドンを有するbIAP IV(配列番号7)
1 mqwacvllll glwlqlsltf ipaeeedpaf wnrqaaqald vakklqpiqt aaknvilflg
61 dgmgvptvta trilkgqmng klgpetplam dqfpyvalsk tynvdrqvpd sagtataylc
121 gvkgnyktig vsaaarynqc nttsgnevts vmnrakkagk svgvvttsrv qhaspagaya
181 htvnrnwysd adlpadaqty gcqdiatqlv nnmdidvilg ggrmymfpeg tpdpeypydv
241 nqtgvrkdkr nlvqewqakh qgaqyvwnrt ellqaandps vthlmglfep admkynvqqd
301 ptkdptleem teaalqvlsr npqgfylfve ggridhghhe gkaymaltdt vmfdnaiaka
361 neltseldtl ilatadhshv fsfggytlrg tsifglapsk asdnksytsi lygngpgyvl
421 ggglrpdvnd sisedpsyrq qaavplsses hggedvavfa rgpqahlvhg vqeetfvahv
481 mafagcvepy tdcnlpapsg lsdaahla
【0033】
様々な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は融合タンパク質である。一部の実施形態において、APに基づいた薬剤は、GPIアンカー配列を置き換えるタンパク質ドメインに融合されたアルカリホスファターゼを含む。一部の実施形態において、アルカリホスファターゼは、タンパク質フォールディング、及び/またはタンパク質精製、及び/またはタンパク質二量体化、及び/またはタンパク質安定性を促進するタンパク質ドメインに融合する。様々な実施形態において、APに基づいた薬剤融合タンパク質は、延長された血清半減期を有する。
【0034】
ある実施形態において、アルカリホスファターゼは、免疫グロブリンFcドメイン及び/またはヒンジ領域に融合する。様々な実施形態において、免疫グロブリンFcドメイン及び/またはヒンジ領域は、抗体(例えば、サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、ならびにIgA1及びIgA2)を含む、IgG、IgA、IgD、及びIgE)のFcドメイン及び/またはヒンジ領域に由来する。ある実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、IgGのヒンジ領域及び/またはFcドメインに融合したアルカリホスファターゼを含む。
【0035】
様々な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、1つ以上の変異を含むIgGのFcドメインに融合する。一部の実施形態において、IgGのFcドメインの1つ以上の変異は、血清半減期及び寿命を増加するように機能する。一部の実施形態において、IgGのFcドメインは、Kabat(Kabat et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Public Health Service,National Institutes of Health,Washington,DCを参照すること)のようなEU指標に従って番号付けすると、アミノ酸残基251~256、285~290、308~314、385~389、及び428~436に1つ以上の変異を含む。一部の実施形態において、アミノ酸置換の少なくとも1つは、アミノ酸残基252、254、256、309、311、433、または434のものである。ある実施形態において、アミノ酸残基252のアミノ酸置換は、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはトレオニンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基254のアミノ酸置換は、トレオニンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基256のアミノ酸置換は、セリン、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはトレオニンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基309のアミノ酸置換は、プロリンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基311のアミノ酸置換は、セリンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基385のアミノ酸置換は、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、トレオニン、ヒスチジン、リジン、アラニン、またはグリシンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基386のアミノ酸置換は、トレオニン、プロリン、アスパラギン酸、セリン、リジン、アルギニン、イソロイシン、またはメチオニンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基387のアミノ酸置換は、アルギニン、プロリン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、またはアラニンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基389のアミノ酸置換は、プロリン、セリン、またはアスパラギンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基433のアミノ酸置換は、アルギニン、セリン、イソロイシン、プロリン、またはグルタミンによる置換である。ある実施形態において、アミノ酸残基434のアミノ酸置換は、ヒスチジン、フェニルアラニン、またはチロシンによる置換である。
【0036】
一部の実施形態において、IgGのFcドメインは、アミノ酸残基252、254、256、433、434、または436に1つ以上の変異を含む。ある実施形態において、IgGのFcドメインは、三重M252Y/S254T/T256E変異またはYTE変異を含む。別の実施形態において、IgGのFcドメインは、三重H433K/N434F/Y436H変異またはKFH変異を含む。更なる実施形態において、IgGのFcドメインは、YTE及びKFH変異の組み合わせを含む。
【0037】
一部の実施形態において、IgGのFcドメインは、アミノ酸残基250、253、307、310、380、428、433、434、及び435に1つ以上の変異を含む。例示的な変異には、T250Q、M428L、T307A、E380A、I253A、H310A、M428L、H433K、N434A、N434F、N434S、及びH435Aが含まれる。ある実施形態において、IgGのFcドメインは、M428L/N434S変異またはLS変異を含む。別の実施形態において、IgGのFcドメインは、T250Q/M428L変異またはQL変異を含む。別の実施形態において、IgGのFcドメインはN434A変異を含む。別の実施形態において、IgGのFcドメインは、T307A/E380A/N434A変異またはAAA変異を含む。別の実施形態において、IgGのFcドメインは、I253A/H310A/H435A変異またはIHH変異を含む。別の実施形態において、IgGのFcドメインはH433K/N434F変異を含む。別の実施形態において、IgG領域のFcドメインは、M252Y/S254T/T256E及びH433K/N434F変異の組み合わせを含む。
【0038】
IgGのFcドメインにおける例示的な変異は、例えば、Robbie,et al.,Antimicrobial Agents and Chemotherapy(2013),57(12):6147-6153、Dall’Acqua et al.,JBC(2006),281(33):23514-24、Dall’Acqua et al.,Journal of Immunology(2002),169:5171-80、Ko et al.Nature(2014)514:642-645、Grevys et al Journal of Immunology.(2015),194(11):5497-508、及び米国特許第7,083,784号に記載され、これらの内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
様々な実施形態において、IgGのFcドメインにおける1つ以上の変異は、新生児Fc受容体(FcRn)への親和性を増加する。一部の実施形態において、IgGのFcドメインにおける1つ以上の変異は、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、または約6.5のpHでFcRnへの親和性を増加する。
【0040】
様々な実施形態において、アルカリホスファターゼは、PEG、XTENylation(例えば、rPEG)、ポリシアル酸(POLYXEN)、アルブミン、エラスチン様タンパク質、エラスチン様タンパク質(ELP)、PAS、HAP、GLK、CTP、及びトランスフェリンの1つ以上に縮合する。様々な実施形態において、アルカリホスファターゼは、BioDrugs(2015)29:215-239に記載されている1つ以上の薬剤に融合し、この内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
ある実施形態において、アルカリホスファターゼは、GPIアンカー部位へのリンカーを介してタンパク質ドメイン(例えば、免疫グロブリンFcドメイン)に融合する。例えば、アルカリホスファターゼは、GPIアンカー配列番号のアスパラギン酸を介してタンパク質ドメインに融合し得る。本発明は、様々なリンカー配列の使用を考慮する。様々な実施形態において、リンカーは、天然に生じる多ドメインタンパク質に由来しうる、または例えばChichili et al.,(2013),Protein Sci.22(2):153-167、Chen et al.,(2013),Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369に記載されている実証的リンカーであり、これらの内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態において、リンカーは、リンカー設計データベース及びコンピュータープログラム、例えば、Chen et al.,(2013),Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369及びCrasto et al.,(2000),Protein Eng.13(5):309-312に記載されているものを使用して設計されてもよく、これらの内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。様々な実施形態において、リンカーは機能性であり得る。例えば、限定されることなく、リンカーは、フォールディング及び/または安定性を改善する、発現を改善する、薬物動態を改善する、及び/または本発明のAPに基づいた薬剤の生物活性を改善するように機能し得る。別の例において、リンカーは、APに基づいた薬剤が特定の細胞型または位置を標的にするように機能し得る。
【0042】
一部の実施形態において、リンカーはポリペプチドである。一部の実施形態において、リンカーは、約100個未満のアミノ酸の長さである。例えば、リンカーは、約100個未満、約95個未満、約90個未満、約85個未満、約80個未満、約75個未満、約70個未満、約65個未満、約60個未満、約55個未満、約50個未満、約45個未満、約40個未満、約35個未満、約30個未満、約25個未満、約20個未満、約19個未満、約18個未満、約17個未満、約16個未満、約15個未満、約14個未満、約13個未満、約12個未満、約11個未満、約10個未満、約9個未満、約8個未満、約7個未満、約6個未満、約5個未満、約4個未満、約3個未満、または約2個未満のアミノ酸の長さであり得る。一部の実施形態において、リンカーは可動性である。別の実施形態において、リンカーは剛性である。
【0043】
様々な実施形態において、リンカーは、グリシン及びセリン残基(例えば、約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約90%、または約95%、または約97%のグリシン及びセリン)から実質的に構成される。ある実施形態において、リンカー配列は、GGSGGSGGGGSGGGGS(配列番号19)である。追加の例示的なリンカーには、配列LE、GGGGS(配列番号20)、(GGGGS)(n=2~4)(配列番号21~23)、(Gly)(配列番号24)、(Gly)(配列番号25)、(EAAAK)(n=1~3)(配列番号26~28)、A(EAAAK)A(n=2~5)(配列番号29~32)、AEAAAKEAAAKA(配列番号30)、A(EAAAK)ALEA(EAAAK)A(配列番号33)、PAPAP(配列番号34)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号35)、EGKSSGSGSESKST(配列番号36)、GSAGSAAGSGEF(配列番号37)、及び(XP)を有するリンカーが含まれるが、これらに限定されず、ここでXは、任意のアミノ酸、例えば、Ala、Lys、またはGluを示す。様々な実施形態において、リンカーはGGSである。
【0044】
一部の実施形態において、リンカーは、抗体(例えば、サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、ならびにIgA1及びIgA2)を含む、IgG、IgA、IgD、及びIgE)のヒンジ領域である様々な実施形態において、リンカーは、抗体(例えば、サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、ならびにIgA1及びIgA2)を含む、IgG、IgA、IgD、及びIgE)のヒンジ領域である。IgG、IgA、IgD、及びIgEクラスの抗体に見出されるヒンジ領域は、可動性スペーサーとして作用して、Fab部分が空間で自由に動くことを可能にする。定常領域と対照的に、ヒンジドメインは、構造的に多様であり、免疫グロブリンのクラス及びサブクラスの間で配列及び長さの両方にばらつきがある。例えば、ヒンジ領域の長さ及び可動性は、IgGサブクラスの間でさまざまである。IgG1のヒンジ領域は、アミノ酸216~231を包含し、自由に可動するので、Fab断片は、対称軸の周りを回転することができ、最初の2つの重鎖間ジスルフィド架橋を中心とした球面範囲内で動くことができる。IgG2は、IgG1より短いヒンジを有し、12個のアミノ酸残基及び4つのジスルフィド架橋を有する。IgG2のヒンジ領域は、グリシン残基を欠いており、比較的短く、他の重鎖間ジスルフィド架橋によって安定化された剛性のポリプロリン二重らせんを含有する。これらの特性は、IgG2分子の可動性を制限する。IgG3は、62個のアミノ酸(21個のプロリン及び11個のシステインを含む)を含有して非可動性ポリプロリン二重らせんを形成する、独自の延長ヒンジ領域(IgG1ヒンジより約4倍長い)によって他のサブクラスと異なる。IgG3において、Fab断片は、Fc断片から比較的離れており、より大きな可動性を分子に与える。IgG3の伸長されたヒンジは、他のサブクラスと比較して高い分子量の原因でもある。IgG4のヒンジ領域はIgG1よりも短く、可動性はIgG1とIgG2の中間である。ヒンジ領域の可動性は、IgG3>IgG1>IgG4>IgG2の順番で減少することが報告されている。
【0045】
結晶学的研究によると、免疫グロブリンヒンジ領域を3つの領域に機能的に更に細分化することができ、上側ヒンジ領域、コア領域、及び下側ヒンジ領域である。Shin et al.,1992 Immunological Reviews 130:87を参照すること。上側ヒンジ領域はCH1のカルボキシ末端から、ヒンジにおいて動きを制限する最初の残基まで、一般には、2つの重鎖の間に鎖間ジスルフィド結合を形成する最初のシステイン残基までのアミノ酸を含む。上側ヒンジ領域の長さは、抗体のセグメント可動性に相関する。コアヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド架橋を含有し、下側ヒンジ領域は、CH2ドメインのアミノ末端に連結して、CH2の残基を含む。野生型ヒトIgG1のコアヒンジ領域は、配列Cys-Pro-Pro-Cysを含有し、これは、ジスルフィド結合形成により二量体化されると、回転軸として作用し、それによって可動性を付与すると考えられる環状オクタペプチドを生じる。様々な実施形態において、本発明のリンカーは、任意の抗体(例えば、サブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、ならびにIgA1及びIgA2)を含む、IgG、IgA、IgD、及びIgE)の上側ヒンジ領域、コア領域、及び下側ヒンジ領域の1つ、または2つ、または3つを含む。ヒンジ領域は、1つ以上のグリコシル化部位も含有することができ、グリコシル化部位は、炭水化物結合のために多数の構造的に特有なタイプの部位を含む。例えば、IgA1は、ヒンジ領域の17アミノ酸セグメント内に5つのグリコシル化部位を含有し、分泌性免疫グロブリンにとって有利な特性と考慮される、腸プロテアーゼに対する抵抗性をヒンジ領域ポリペプチドに付与する。様々な実施形態において、本発明のリンカーは1つ以上のグリコシル化部位を含む。
【0046】
一部の実施形態において、リンカーはPEGなどの合成リンカーである。
【0047】
本発明の例示的なFC融合構築物には以下が含まれる。
【0048】
Fc融合を有するbIAP II(配列番号8)-Fcドメインに下線が引かれている
【0049】
【表1】
【0050】
Fc融合を有するbIAP IV(配列番号9)-Fcドメインに下線が引かれている
【0051】
【表2】
【0052】
Fc融合を有するhIAP-Fcドメインに下線が引かれている:配列番号18
【0053】
【表3】
【0054】
様々な実施形態において、リンカーは、本明細書に開示されている任意の他のリンカーにより置換され得る。
【0055】
SaccharomycesアルカリホスファターゼPho8は、不活性酵素前駆体として産生される。GPIアンカーされていないが、アミノ末端がリソソームから細胞質の中に伸びている膜貫通タンパク質である。リソソーム内では、酵素PEP4がカルボキシ末端を切断して、酵素を活性化する。理論に束縛されることなく、哺乳類アルカリホスファターゼは、不活性酵素前駆体としても生成され得ると考えられる。これは、アルカリホスファターゼがATPを脱リン酸化する可能性があり、それによってER内の活性がERの主なエネルギー源を枯渇し得るからである。理論に束縛されることなく、阻害機能は、GPIアンカーの付加により解放されるカルボキシ末端に位置すると考えられる。あるいは、他の活性、例えばフォールディングまたは金属(ZnもしくはMg)介在物が活性を制御し得る。
【0056】
様々な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は酵素前駆体である。ある実施形態において、酵素前駆体の活性はカルボキシ末端により抑制される。ある実施形態において、カルボキシ末端のプロテアーゼ除去は、アルカリホスファターゼの酵素活性を再活性化する。ある特定の実施形態において、酵素前駆体は、カルボキシ末端を有さない酵素より効率的に分泌される。
【0057】
一部の実施形態において、酵素前駆体の生成では、アルカリホスファターゼの未変性カルボキシ末端がhPLAPの類似の配列に置き換えられる。一部の実施形態において、変異は、疎水性カルボキシ尾部に行われて、カルボキシ末端を切断することなくタンパク質分泌を促進する。例示的な実施形態において、例えばアルギニンによるロイシンの置換などの単一点変異を疎水性カルボキシ末端に発生させて(例えば、allpllagtlを例えばallplragtlに変えて)、カルボキシ末端を除去することなく酵素の分泌を生じる。
【0058】
ある実施形態において、APに基づいた薬剤は、カルボキシ末端の後除去を可能にする特異的な酵素切断部位を含むように変更される。ある実施形態において、APに基づいた薬剤はプロテアーゼ切断部位を含む。例示的なプロテアーゼ切断部位には、フューリン、ライノウイルス16 3Cプロテアーゼ、第Xa因子プロテアーゼ、トリプシン(trpysin)、キモトリプシン、エラスターゼ、ペプシン、パパインスブチリシン、サーモリシン、V-8プロテアーゼ、顎下腺プロテアーゼ(submaxillaris protease)、クロストリパイン、トロンビン、コラゲナーゼ、及び任意の他のエンドプロテアーゼにより認識されている切断部位が含まれるが、これらに限定されない。代替的な実施形態において、APに基づいた薬剤は、GI管に存在する消化酵素により認識される切断部位を含む。そのような実施形態において、APに基づいた薬剤は、後にGI管において活性化されるプロドラッグとして投与され得る。
【0059】
例示的な実施形態において、酵素前駆体は、以下の配列を有するbIAP IVの酵素前駆体である。
【0060】
hPLAPカルボキシ末端を有し、非プロセス型分泌の変異を有し、RV3C切断部位(…LEVLFQGP…)を有するbIAP IV:配列番号10
【0061】
【表4】
【0062】
hPLAPカルボキシ末端を有し、非プロセス型分泌の変異を有し、FXa切断部位(…IEGR…)を有するbIAP IV:配列番号11
【0063】
【表5】
【0064】
様々な実施形態では、本発明のAPに基づいた薬剤は、宿主細胞において効率的に発現及び分泌される。ある実施形態では、本発明のAPに基づいた薬剤は、宿主細胞において効率的に転写される。別の実施形態では、APに基づいた薬剤は、宿主細胞において高められたRNA安定性及び/または輸送を示す。別の実施形態では、APに基づいた薬剤は、宿主細胞において効率的に翻訳される。更なる実施形態において、APに基づいた薬剤は、ER、pre-golgi、及びgolgiを介して効率的にフォールドされる、及び/または移行する。別の実施形態において、APに基づいた薬剤は、高められたタンパク質安定性を示す。
【0065】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤は、宿主細胞の細胞膜にGPIアンカーされる。他の実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、宿主細胞から分泌される。そのような実施形態において、APに基づいた薬剤は、GPIアンカー部位の直ぐ上流にプロテアーゼ切断部位を含むことができる。例示的なプロテアーゼ切断部位は、すでに記載されている。ある実施形態において、プロテアーゼ切断部位は、フューリン切断部位である。別の実施形態において、APに基づいた薬剤は、GIアンカー部位の直ぐ上流に、GI管の消化酵素により認識される切断部位を含むことができる。これらの実施形態において、APに基づいた薬剤は、ERにアンカーされ、遅発golgiに放出され、分泌される。
【0066】
様々な実施形態では、APに基づいた薬剤は、宿主細胞において効率的に発現される。ある実施形態では、APに基づいた薬剤をコードするDNA構築物のKozak配列が最適化される。Kozak配列は、翻訳を開始するようにリポソームに指示を出すATG開始コドンがフランキングしているヌクレオチド配列である。Kozak配列の設計には柔軟性があるが、1つのカノニカル(canonical)配列は、GCCGCCACCATGG(配列番号38)である。-3位のプリン及び+4位のGは、翻訳開始にとって最も重要な塩基である。hIAP、bIAP II、及びbIAP IVでは、第2のアミノ酸、すなわちイニシエーターメチオニンの直後のアミノ酸は、グルタミンである。グルタミンのすべてのコドンは、第1位にCを有する。ゆえに、Kozak配列は、すべてATGC(配列番号39)配列を有する。したがって、様々な実施形態において、ATGC(配列番号39)配列はATGG(配列番号40)に変えられる。これは、第2のアミノ酸をグリシン、アラニン、バリン、アスパラギン酸、またはグルタミン酸に変えることによって達成され、これらのコドンはすべて第1位にGを有する。これらのアミノ酸は、シグナルペプチド機能に適合し得る。代替的な実施形態において、全シグナルペプチドは、カノニカルKozak配列を有するペプチドに置換され、免疫グロブリンなどの高度に発現されているタンパク質に由来する。
【0067】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤のシグナルペプチドは、欠失及び/または置換され得る。例えば、シグナルペプチドは、(例えば、別のシグナルペプチドによって)欠失、変異、及び/または置換されて、タンパク質発現を確実にし得る。
【0068】
一部の実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤をコードするDNA構築物は、非翻訳DNA配列を含む。そのような配列はイントロンを含み、イントロンは、IAPタンパク質に対して異種であり得る、あるいは未変性の第1及び/もしくは第2のイントロン、ならびに/または未変性3’UTRを含むIAPタンパク質に対して未変性であり得る。理論に束縛されることなく、これらの配列を含めることは、mRNAを安定化してタンパク質発現を高めると考えられる。したがって、様々な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤をコードするDNA構築物は、5’UTR及び/または3’UTRを含む。
【0069】
下記に提示されるものは、第1のイントロン及び3’UTRを有する例示的なIAPのDNA配列である。
【0070】
未変性の第1のイントロン(太字及び下線付きで示されている)を有するhIAP-配列番号12
【0071】
【表6】
【0072】
未変性の3’UTR(太字及び下線付きで示されている)を有するhIAP-配列番号13
【0073】
【表7】
【0074】
bIAP Iの第1のイントロン(太字及び下線付きで示されている)を有するhIAP IV-配列番号14
【0075】
【表8】
【0076】
bIAP Iの3’UTR(太字及び下線付きで示されている)を有するhIAP IV-配列番号15
【0077】
【表9】
【0078】
様々な実施形態において、本発明は、細菌性アルカリホスファターゼの使用を考慮する。一部の実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤はBacillus subtilisに由来する。Bacillus subtilisは、土壌及びヒトの胃腸管に見出されるグラム陽性菌である。Bacillus subtilisは、正確にフォールドされている高レベルのタンパク質を環境及びヒトのGI管に分泌する。理論に束縛されることなく、GI管にタンパク質を分泌するBacillus subtilisは、一般的な胃腸プロテアーゼによる消化に対して抵抗性であり得ると考えられる。Bacillus subtilisは、高レベルのアルカリホスファターゼ多重遺伝子族を発現する。これらのアイソザイムのうちでは、アルカリホスファターゼIVが、B.subtilisにおける全アルカリホスファターゼ発現及び活性の大部分の原因である。一部の実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤はBacillus licheniformisに由来する。一部の実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤はEscherichia coliに由来する。
【0079】
したがって、例示的な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤はBacillus subtilisのアルカリホスファターゼIVに由来する。ある特定の実施形態において、細胞性アルカリホスファターゼは、以下のヌクレオチド及びアミノ酸配列を有し得る。
【0080】
Bacillus subtilis JH642アルカリホスファターゼIV成熟タンパク質ヌクレオチド配列-配列番号16
【0081】
【表10】
【0082】
Bacillus subtilis JH642アルカリホスファターゼIV成熟タンパク質アミノ酸-配列番号17
【0083】
【表11】
【0084】
一部の実施形態において、APに基づいた薬剤は、触媒活性を変更する1つ以上の変異を有する細菌性アルカリホスファターゼを含む。一部の実施形態において、細菌性アルカリホスファターゼは、触媒活性が哺乳類アルカリホスファターゼに類似する、またはより高くなるような1つ以上の変異を含む。一部の実施形態において、細菌性アルカリホスファターゼは、脱リン酸化プロファイルを変更する1つ以上の変異を含む。ある特定の実施形態において、本発明の細菌性アルカリホスファターゼは、哺乳類アルカリホスファターゼに類似した脱リン酸化プロファイルを示す。一部の実施形態において、細菌性アルカリホスファターゼは、活性を高いpHで変更する1つ以上の変異を含む。ある特定の実施形態において、本発明の細菌性アルカリホスファターゼは、哺乳類アルカリホスファターゼに類似した活性を高いpHで示す。一部の実施形態において、細菌性アルカリホスファターゼは、金属要件を変更する1つ以上の変異を含む。ある特定の実施形態において、本発明の細菌性アルカリホスファターゼは、哺乳類アルカリホスファターゼと同様の金属(例えば、Mg)要件を示す。
【0085】
例えば、ある特定の実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、Bacillus subtilis JH642アルカリホスファターゼIVに由来し、101、328、A330、及び374の位置に1つ以上の変異を有する。例えば、APに基づいた薬剤は、以下の変異:D101A、W328H、A330N、及びG374Cの1つ以上を含むことができる。
【0086】
様々な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、本明細書に開示される配列のいずれかと少なくとも約60%(例えば、約60%、または約61%、または約62%、または約63%、または約64%、または約65%、または約66%、または約67%、または約68%、または約69%、または約70%、または約71%、または約72%、または約73%、または約74%、または約75%、または約76%、または約77%、または約78%、または約79%、または約80%、または約81%、または約82%、または約83%、または約84%、または約85%、または約86%、または約87%、または約88%、または約89%、または約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%)の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0087】
一部の実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、本明細書に開示される配列のいずれかと少なくとも約60%(例えば、約60%、または約61%、または約62%、または約63%、または約64%、または約65%、または約66%、または約67%、または約68%、または約69%、または約70%、または約71%、または約72%、または約73%、または約74%、または約75%、または約76%、または約77%、または約78%、または約79%、または約80%、または約81%、または約82%、または約83%、または約84%、または約85%、または約86%、または約87%、または約88%、または約89%、または約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0088】
様々な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、本明細書に記載されているタンパク質配列のいずれかに対して1つ以上のアミノ酸変異を有するアミノ酸配列を含むことができる。一部の実施形態において、1つ以上のアミノ酸変異は、置換、挿入、欠失、及び切断から独立して選択され得る。
【0089】
一部の実施形態において、アミノ酸変異はアミノ酸置換であり、保存的及び/または非保存的置換が含まれ得る。
【0090】
「保存的置換」は、例えば、関与するアミノ酸残基の極性、電荷、サイズ、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性における類似性に基づいて行うことができる。20個の天然に生じるアミノ酸は、以下の6つの標準アミノ酸群に分類することができる。(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0091】
本明細書で使用されるとき、「保存的置換」は、上記に示された6つの標準アミノ酸群の同じ群内に列挙された別のアミノ酸によるアミノ酸の交換と定義される。例えば、GluによるAspの交換は、そのように修飾されたポリペプチドに1個の陰性電荷を保持させる。加えて、グリシン及びプロリンは、αヘリックスを破損する能力に基づいて互いに置換され得る。
【0092】
本明細書で使用されるとき、「非保存的置換」は、上記に示された6つの標準アミノ酸群(1)~(6)の異なる群に列挙された別のアミノ酸によるアミノ酸の交換と定義される。
【0093】
様々な実施形態において、置換は、非古典的なアミノ酸(例えば、セレノシステイン、ピロールリジン(pyrrolysine)、N-ホルミルメチオニンβ-アラニン、GABA及びδ-アミノレブリン酸、4-アミノ安息香酸(PABA)、一般的なアミノ酸のD体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコスメ(sarcosme)、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、βメチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸、及び一般的なアミノ酸類似体)を含むこともできる。
【0094】
変異は、コドン縮重が含まれることを考慮しながら、遺伝子コードを参照してアルカリホスファターゼのヌクレオチド配列に行うこともできる。様々な実施形態では、APに基づいた薬剤をコードするDNA構築物は、宿主細胞においてタンパク質発現を最適化するためのコドンである。
【0095】
変異を本発明のAPに基づいた薬剤に行って、所望の特性を有する薬剤を選択することができる。例えば、変異を行って、高められた酵素活性またはタンパク質安定性を有するAPに基づいた薬剤を生成することができる。様々な実施形態では、定向進化を利用して本発明のAPに基づいた薬剤を生成することができる。例えば、エラープローンPCR及びDNAシャフリングを使用して、高められた活性を付与する細菌性アルカリホスファターゼにおいて変異を確認することができる。
【0096】
様々な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、例えば高い比活性を含む所望の特性を有する。様々な実施形態において、本発明のアルカリホスファターゼは、少なくとも約100U/mg~約20,000U/mgの比活性を有する。様々な実施形態において、本発明アルカリホスファターゼは、少なくとも約100U/mg、約200U/mg、約300U/mg、約400U/mg、約500U/mg、約600U/mg、約700U/mg、約800U/mg、約900U/mg、約1,000U/mg、約2,000U/mg、約3,000U/mg、約4,000U/mg、約5,000U/mg、約6,000U/mg、約7,000U/mg、約8,000U/mg、約9,000U/mg、約10,000U/mg、約11,000U/mg、約12,000U/mg、約13,000U/mg、約14,000U/mg、約15,000U/mg、約16,000U/mg、約17,000U/mg、約18,000U/mg、約19,000U/mg、または約20,000U/mgの比活性を有する。
【0097】
様々な実施形態では、本発明のAPに基づいた薬剤は、GI管において、例えば、口、食道、胃、十二指腸、小腸、十二指腸、空腸、回腸、大腸、横行結腸、下行結腸、上行結腸、S状結腸(colon sigmoidenum)、盲腸、及び直腸の1つ以上において安定している、及び/または活性である。特定の実施形態では、アルカリホスファターゼは、横行結腸、下行結腸、上行結腸、S状結腸、及び盲腸の1つ以上から任意選択で選択される大腸において安定している。特定の実施形態では、アルカリホスファターゼは、十二指腸、空腸、及び回腸の1つ以上から任意選択で選択される小腸において安定している。一部の実施形態において、アルカリホスファターゼは、例えば小腸を含むGI管のプロテアーゼに対して抵抗性がある。一部の実施形態において、アルカリホスファターゼは、約5.0以上のpHで実質的に活性である。例えば、アルカリホスファターゼは、約6.0~約12、例えば、約6.0、または約6.1、または約6.2、または約6.3、または約6.4、または約6.5、または約6.6、または約6.7、または約6.8、または約6.9、または約7.0、または約7.1、または約7.2、または約7.3、または約7.4、または約7.5、または約8.0、または約8.5、または約9.0、または約9.5、または約10.0、または約10.5、または約11.0、または約11.5、または約12.0のPHで実施的に活性であり得る(例えば、本明細書に記載される製剤を介したものを含む)。一部の実施形態において、安定とは、十分に長い半減期を有し、かつ治療有効性にとって十分な活性を維持する酵素を指す。
【0098】
様々な実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は糜粥中で安定している。
【0099】
一部の実施形態において、本明細書に記載されているAPに基づいた薬剤には、修飾されている、すなわち、共有結合が酵素の活性を防止しないように任意のタイプの分子がアルカリホスファターゼに共有結合している誘導体が含まれる。例えば、制限されることなく、誘導体には、とりわけ、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などにより修飾されたアルカリホスファターゼが含まれる。特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などが含まれるが、これらに限定されない多数の化学修飾のいずれかを実施することができる。加えて、誘導体は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含有することができる。様々な実施形態において、APに基づいた薬剤はグリコシル化されて、正確なタンパク質フォールディングを確実にする。
【0100】
なお他の実施形態において、本発明のAPに基づいた薬剤は、エフェクター部分、例えば化学リンカー、検出可能部分、例えば蛍光色素、酵素、基質、生物発光物質、放射性物質、及び化学発光部分、または機能性部分、例えばストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、細胞毒、細胞障害剤、及び放射性物質を付加することによって修飾され得る。
【0101】
本明細書に記載されているAPに基づいた薬剤は、薬学的に許容される塩を形成するために、無機もしくは有機酸と反応することができる十分に塩基性の官能基、または無機塩基もしくは有機塩基と反応することができるカルボキシル基を有することができる。薬学的に許容される酸付加塩は、薬学的に許容される酸から形成され、当該技術においてよく知られている。そのような塩には、例えば、Journal of Pharmaceutical Science,66,2-19(1977)及びThe Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties,Selection,and Use. P.H.Stahl and C.G.Wermuth(eds.),Verlag,Zurich(Switzerland)2002に列挙されており、これらは全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
薬学的に許容される塩には、非限定例として、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩(glucaronate)、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、パモ酸塩、酢酸フェニル、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン-2-安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、α-ヒドロキシ酪酸塩、ブチン-1,4-ジカルボン酸塩、ヘキシン-1,4-ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、ニコチン酸塩、フタル酸塩、テトラフタル酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、セバシン酸塩、スベリン酸塩、p-ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ナフタレン-1,5-スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、及び酒石酸塩が含まれる。
【0103】
用語「薬学的に許容される塩」は、カルボン酸官能基などの酸性官能基、及び塩基を有するアルカリホスファターゼの塩も指す。適切な塩基には、アルカリ金属の水酸化物、例えば、ナトリウム、カリウム、及びリチウム;アルカリ土類金属の水酸化物、例えば、カルシウム及びマグネシウム;他の金属の水酸化物、例えば、アルミニウム及び亜鉛;アンモニア及び有機アミン、例えば、非置換またはヒドロキシ置換のモノ、ジ、またはトリアルキルアミン、ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル,N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ、ビス、またはトリス-(2-OH-低級アルキルアミン)、例えば、モノ、ビス、もしくはトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン、またはトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキル-低級アルキル)-アミン、例えば、N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン、もしくはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-メチル-D-グルカミン;及びアミノ酸、例えば、アルギニン、リジンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
一部の実施形態において、本明細書に記載されている組成物は、薬学的に許容される塩の形態である。
【0105】
更に、本明細書に記載されている任意のAPに基づいた薬剤は、薬学的に許容される担体またはビヒクルを含む組成物の構成成分として対象に投与され得る。そのような組成物は、正確な投与の形態を提供するため、任意選択で適切な量の薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。
【0106】
薬学的賦形剤は、液体、例えば水及び油であってもよく、石油、動物、植物、または合成由来のものが含まれ、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などである。薬学的賦形剤は、例えば、食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素などであり得る。加えて、助剤、安定剤、増粘剤、滑沢剤、及び着色剤を使用することができる。一実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、対象に投与されるときに滅菌されている。水は、本明細書に記載されている任意の薬剤が静脈内投与される場合に有用な賦形剤である。食塩溶液、ならびにデキストロース及びグリセロール水溶液を、注射用液剤の液体賦形剤として特定的に用いることもできる。適切な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、セルロース、ヒプロメロース、ラクトース、スクロース、バクガ、コメ、コムギ粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、ポビドン、クロスポビドン、水、エタノールなども含まれる。本明細書に記載されている任意の薬剤は、望ましい場合、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。適切な薬学的賦形剤の他の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 1447-1676(Alfonso R.Gennaro eds.,19th ed.1995)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
必要であれば、APに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、可溶化剤を含むことができる。また、薬剤を適切なビヒクルまたは送達デバイスにより送達することができる。投与用組成物は、例えばリグノカインなどの局所麻酔薬を任意選択で含んで、注射部位の疼痛を和らげることができる。本明細書に概説される併用療法を、単一送達ビヒクルまたは送達デバイスで同時送達することができる。
【0108】
IAPの作製方法
本発明のIAPは、標準的な分子生物学技術を使用して作製される。例えば、本発明のIAPをコードする核酸組成物も提供され、ならびに核酸と、核酸及び/または発現ベクター組成物により形質転換された宿主細胞とを含有する発現ベクターも提供される。当業者に理解されるように、本明細書に描写されているタンパク質配列は、遺伝コードの縮重に起因して、幾つもの可能な核酸配列によってコードされ得る。
【0109】
当該技術において知られているように、本発明の構成成分をコードする核酸は、発現ベクターに組み込まれ、このことは当該技術において知られており、宿主細胞に応じて本発明のIAP組成物の産生に使用され得る。一般に、核酸は幾つもの調節エレメント(プロモーター、転写起点、選択的マーカー、リボソーム結合部位、インデューサーなど)に作動可能に連結している。発現ベクターは、染色体外ベクターまたは組み込み型ベクターであり得る。
【0110】
次いで、本発明の核酸及び/または発現ベクターは、当該技術においてよく知られているように、哺乳類細胞、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び/または真菌細胞が含まれる幾つもの異なる種類の宿主細胞に形質転換され、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞)とともに多くの実施形態に使用が見出される。
【0111】
本発明のIAPは、発現ベクターを含む宿主細胞を培養することによって作製され、このことは当該技術においてよく知られている。産生されると、伝統的な精製ステップが行われる。
【0112】
APに基づいた薬剤を含む製剤
本発明は、記載されているAPに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)を様々な製剤で提供する。本明細書に記載されている任意のAPに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、錠剤、丸剤、ペレット剤、カプセル剤、液体を含有するカプセル剤、多粒子を含有するカプセル剤、散剤、液剤、乳剤、点滴薬、坐剤、乳剤、エアロゾル剤、スプレー剤、懸濁剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、制御放出製剤、または使用に適した任意の他の形態を取ることができる。
【0113】
APに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)を含む製剤は、単位剤形で都合よく提示され得る。例えば、剤形は、治療剤を、1つ以上の補助成分を構成する担体と関連付けるステップを含む方法によって調製され得る。例えば、製剤は、治療剤を、液体担体、微粉固体担体、またはその両方に均一及び密接に関連付けること、次いで、必要であれば生成物を所望の製剤の剤形に造形すること(例えば、湿式または乾式造粒、粉末ブレンドなど、続く圧縮成形)によって調製される。
【0114】
一実施形態において、本明細書に記載されているIAP(及び/または追加の治療剤)は、本明細書に記載される投与様式に適合した組成物として処方される。
【0115】
一部の実施形態において、IAP及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)の投与は、経口、静脈内、及び非経口うちのいずれか1つである。例えば、投与経路には、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸内、吸入、または局所(例えば、耳、鼻、目、もしくは皮膚)が含まれるが、これらに限定されない。
【0116】
一部の実施形態において、本明細書に記載されているIAP及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、経口投与に適合した組成物として処方される。経口送達用の組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁剤、粒剤、散剤、スプリンクル剤(sprinkle)、乳剤、カプセル剤、シロップ剤、またはエリキシル剤の形態であり得る。経口投与組成物は、1つ以上の薬剤、例えば、フルクトース、アスパルテーム、またはサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリーなどの香味剤;着色剤;及び防腐剤を含んで、医薬的に口に合う調合剤を提供することができる。更に、錠剤または丸剤の形態では、組成物をコーティングして崩壊を遅延させ、長時間にわたる持続的作用を提供することができる。本明細書に記載されている任意のアルカリホスファターゼ(及び/または追加の治療剤)を誘導する浸透圧活性剤を囲んでいる選択的透過性膜も、経口投与組成物に適している。後者のプラットフォームでは、カプセル剤の周囲環境からの流体が誘導化合物により吸収され、膨脹して、開口部から薬剤または薬剤組成物を押し出す。これらの送達プラットフォームは、即時放出製剤のスパイクプロファイル(spiked profile)と異なり、本質的にゼロ次送達プロファイルを提供することができる。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの時間遅延物質も有用であり得る。経口組成物は、標準的な賦形剤、例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、メタクリル酸(ethacrylic acid )及びその誘導体ポリマー、ならびに炭酸マグネシウムを含むことができる。一実施形態において、賦形剤は医薬グレードのものである。懸濁剤は、活性化合物に加えて、懸濁化剤を、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカントなど、ならびにこれらの混合物を含有してもよい。
【0117】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、固体剤形として、例えば、錠剤、分散性散剤、粒剤、及びカプセル剤として処方される。一実施形態において、APに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、カプセル剤として処方される。別の実施形態において、APに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、錠剤として処方される。なお別の実施形態において、APに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、ソフトゲルカプセル剤として処方される。更なる実施形態において、APに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、ゼラチンカプセル剤として処方される。
【0118】
非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、及び動脈内の注射及び注入)に適した剤形には、例えば、液剤、懸濁剤、分散剤、乳剤などが含まれる。滅菌固体組成物(例えば、凍結乾燥組成物)の形態で製造することもでき、これらを使用の直前に滅菌注射用媒体に溶解または懸濁することができる。例えば、懸濁化剤または分散剤を含有してもよい。
【0119】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤、例えばIAPの製剤は、薬学的に許容される担体または賦形剤を追加的に含むことができる。当業者に認識されるように、製剤は、所望の使用及び投与経路に適した任意の適切な形態であり得る。
【0120】
いくつかの剤形において、本明細書に記載されている薬剤は、少なくとも1つの不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウムなどと混合され、及び/またはa)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ケイ酸、微結晶性セルロース、及びBakers Special Sugarなど、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、アカシア、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びヒドロキシメチルセルロースなど、c)保湿剤、例えばグリセロールなど、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリマー、例えばクロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、クロスカルメロースナトリウム(架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、デンプングリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)など、e)溶解遅延剤、例えばパラフィンなど、f)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物など、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなど、h)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイトクレイなど、及びi)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリルなど、及びこのような賦形剤の混合物と混合される。当業者は、特定の賦形剤が2つ以上の機能を経口剤形に有し得ることを認識する。経口剤形、例えばカプセル剤または錠剤の場合、剤形は緩衝剤を含むこともできる。
【0121】
製剤は、表面活性剤を追加的に含むことができる。本発明における使用に適した表面活性剤には、任意の薬学的に許容される非毒性の界面活性剤が含まれるが、これに限定されない。本発明の組成物における使用に適した界面活性剤のクラスには、ポリエトキシル化脂肪酸、PEG-脂肪酸ジエステル、PEG-脂肪酸モノ及びジエステル混合物、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、アルコール-油エステル交換生成物、ポリグリセリン化(polyglycerized)脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールエステル-グリセロールエステルの混合物、モノ及びジグリセリド、ステロール及びステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖エステル、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン(olyoxypropylene)ブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、低級アルコール脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本発明の組成物は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、及びクエン酸トリエチルが含まれるが、これらに限定されない1つ以上の界面活性剤を含むことができる。
【0122】
製剤は、薬学的に許容される可塑剤を含有して、所望の機械的特性、例えば柔軟性及び硬度を得ることができる。そのような可塑剤には、トリアセチン、クエン酸エステル、クエン酸トリエチル、フタル酸エステル、セバシン酸ジブチル、セチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、または他の可塑剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
製剤は、1つ以上の塗布用溶媒を含むこともできる。塗布に使用され得るより一般的な溶媒、例えば遅延放出コーティング組成物には、イソプロピルアルコール、アセトン、塩化メチレンなどが含まれる。
【0124】
製剤は、1つ以上のアルカリ物質を含むこともできる。本発明の組成物における使用に適したアルカリ物質には、リン酸、炭酸、クエン酸、及び他のアルミニウム/マグネシウム化合物などの酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。加えて、アルカリ物質は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び酸化マグネシウムなどの制酸物質から選択され得る。
【0125】
様々な実施形態において、製剤は、マグネシウム及び/または亜鉛を追加的に含むことができる。マグネシウム及び/または亜鉛を製剤に含めることは、タンパク質フォールディング(例えば、二量体形成)及びAPに基づいた薬剤の生物活性を促進することができる。一部の実施形態において、製剤は、約1μM~500mM超(例えば、約1μM~5mM超)(これらの間のすべての範囲及び値を含む)の濃度でマグネシウムを含むことができる。一部の実施形態において、製剤は、約1μM~100mM超(例えば、約1μM~1mM超)(これらの間のすべての範囲及び値を含む)の濃度で亜鉛を含むことができる。様々な実施形態において、本発明の製剤は、金属キレート剤を実質的に含まない。
【0126】
様々な実施形態において、製剤のpHは、APに基づいた薬剤が正確にフォールドされ(例えば、二量体を形成する)、生物活性であることを確実にするものである。一部の実施形態において、製剤は、APに基づいた薬剤内のマグネシウム及び/または亜鉛の結合を配位するアミノ酸がプロトン化されないようなpHに維持される。そのような配位アミノ酸のプロトン化は、金属イオン及び生物活性の損失、ならびに二量体分離をもたらし得る。様々な実施形態において、製剤のpHは、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、または約12を超えるものである。
【0127】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、甘味剤、香味剤、及び芳香剤などの佐剤を含むこともできる。
【0128】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、全身または局所送達用に処方される。ある実施形態において、投与は全身的である。別の実施形態では、治療の必要な領域に局所的に投与することが望ましいこともある。
【0129】
様々な方法を使用して、本明細書に記載されている薬剤を処方すること、及び/または目的の場所に送達することができる。例えば、本明細書に記載されている腸アルカリホスファターゼ及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、胃腸管への送達用に処方され得る。胃腸管は、口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、及び直腸などの消化器系の臓器を含み、これらの下位区分をすべて含む(例えば、小腸は十二指腸、空腸及び回腸を含んでもよく、大腸は横行結腸、下行結腸、上行結腸、S状結腸、及び盲腸を含んでもよい)。例えば、本明細書に記載されているアルカリホスファターゼ及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、胃、小腸、大腸、及び直腸の1つ以上への送達用に処方されてもよく、これらの下位区分(例えば、十二指腸、空腸及び回腸、横行結腸、下行結腸、上行結腸、S状結腸、及び盲腸)をすべて含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されている組成物は、上部または下部GI管に送達するように処方され得る。ある実施形態において、アルカリホスファターゼ及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)は、例えば、胃腸管の粘膜組織に直接的または間接的に接触することによって、対象に投与され得る。
【0130】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤及び/または医薬組成物(及び/または追加の治療剤)の投与は、例えば、経口送達、経鼻胃管(nasogastral tube)、腸挿管(例えば、経腸管もしくは胃管、例えば、空腸管もしくは胃空腸管など)、直接注入(例えば、十二指腸注入)、内視鏡検査、結腸内視鏡検査、または注腸を介してGI管の中に入れるものである。
【0131】
投与及び投与量
当業者は理解するように、本発明に従って投与されるIAPの実際の用量は、特定の化合物、特定の剤形、及び投与様式によって変わる。IAPの作用を修飾し得る多くの要因(例えば、体重、性別、食事、投与時間、投与経路、排出速度、対象の状態、薬物の組み合わせ、遺伝的傾向、及び反応感受性)が当業者によって考慮され得る。投与は、連続的に実施され得る、または最大許容用量内で1つ以上の別個の用量で実施され得る。所定の条件での投与率は、従来の投与量投与検査を使用して当業者により確認され得る。
【0132】
APに基づいた薬剤、例えばIAPの個別の用量は、例えば、単位投与量当り約0.01mg~約1,000mg、約0.01mg~約900mg、約0.01mg~約800mg、約0.01mg~約700mg、約0.01mg~約600mg、約0.01mg~約500mg、約0.01mg~約400mg、約0.01mg~約300mg、約0.01mg~約200mg、約0.1mg~約100mg、約0.1mg~約90mg、約0.1mg~約80mg、約0.1mg~約70mg、約0.1mg~約60mg、約0.1mg~約50mg、約0.1mg~約40mg、約0.1mg~約30mg、約0.1mg~約20mg、約0.1mg~約10mg、約0.1mg~約5mg、約0.1mg~約3mg、または約0.1mg~約1mgの活性成分を含有する単位剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)で投与され得る。例えば、単位剤形は、約0.01mg、約0.02mg、約0.03mg、約0.04mg、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、約25mg、約26mg、約27mg、約28mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、約40mg、約41mg、約42mg、約43mg、約44mg、約45mg、約46mg、約47mg、約48mg、約49mg、約50mg、約51mg、約52mg、約53mg、約54mg、約55mg、約56mg、約57mg、約58mg、約59mg、約60mg、約61mg、約62mg、約63mg、約64mg、約65mg、約66mg、約67mg、約68mg、約69mg、約70mg、約71mg、約72mg、約73mg、約74mg、約75mg、約76mg、約77mg、約78mg、約79mg、約80mg、約81mg、約82mg、約83mg、約84mg、約85mg、約86mg、約87mg、約88mg、約89mg、約90mg、約91mg、約92mg、約93mg、約94mg、約95mg、約96mg、約97mg、約98mg、約99mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または約1,000mg(これらの間のすべての値及び範囲を含む)のAPに基づいた薬剤であり得る。
【0133】
一実施形態において、APに基づいた薬剤、例えばIAPは、1日に約0.01mg~約1,000mg、1日に約0.01mg~約900mg、1日に約0.01mg~約800mg、1日に約0.01mg~約700mg、1日に約0.01mg~約600mg、1日に約0.01mg~約500mg、1日に約0.01mg~約400mg、1日に約0.01mg~約300mg、1日に約0.01mg~約200mg、1日に約0.01mg~約100mgの量、1日に約0.1mg~約100mg、1日に約0.1mg~約95mg、1日に約0.1mg~約90mg、1日に約0.1mg~約85mg、1日に約0.1mg~約80mg、1日に約0.1mg~約75mg、1日に約0.1mg~約70mg、1日に約0.1mg~約65mg、1日に約0.1mg~約60mg、1日に約0.1mg~約55mg、1日に約0.1mg~約50mg、1日に約0.1mg~約45mg、1日に約0.1mg~約40mg、1日に約0.1mg~約35mg、1日に約0.1mg~約30mg、1日に約0.1mg~約25mg、1日に約0.1mg~約20mg、1日に約0.1mg~約15mg、1日に約0.1mg~約10mg、1日に約0.1mg~約5mg、1日に約0.1mg~約3mg、1日に約0.1mg~約1mg、または1日に約5mg~約80mgの量で投与される。様々な実施形態において、APに基づいた薬剤は、約0.01mg、約0.02mg、約0.03mg、約0.04mg、約0.05mg、約0.06mg、約0.07mg、約0.08mg、約0.09mg、約0.1mg、約0.2mg、約0.3mg、約0.4mg、約0.5mg、約0.6mg、約0.7mg、約0.8mg、約0.9mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、約25mg、約26mg、約27mg、約28mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、約40mg、約41mg、約42mg、約43mg、約44mg、約45mg、約46mg、約47mg、約48mg、約49mg、約50mg、約51mg、約52mg、約53mg、約54mg、約55mg、約56mg、約57mg、約58mg、約59mg、約60mg、約61mg、約62mg、約63mg、約64mg、約65mg、約66mg、約67mg、約68mg、約69mg、約70mg、約71mg、約72mg、約73mg、約74mg、約75mg、約76mg、約77mg、約78mg、約79mg、約80mg、約81mg、約82mg、約83mg、約84mg、約85mg、約86mg、約87mg、約88mg、約89mg、約90mg、約91mg、約92mg、約93mg、約94mg、約95mg、約96mg、約97mg、約98mg、約99mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、または約1,000mg(これらの間のすべての値及び範囲を含む)の1日用量で投与される。
【0134】
一部の実施形態において、APに基づいた薬剤の適切な投与量は、対象の体重の約0.01mg/kg~約100mg/kg、対象の体重の約0.01mg/kg~約90mg/kg、対象の体重の約0.01mg/kg~約80mg/kg、対象の体重の約0.01mg/kg~約70mg/kg、対象の体重の約0.01mg/kg~約60mg/kg、対象の体重の約0.01mg/kg~約50mg/kg、対象の体重の約0.01mg/kg~約40mg/kg、対象の体重の約0.01mg/kg~約30mg/kg、対象の体重の約0.01mg/kg~約20mg/kg、対象の体重の約0.01mg/kg~約10mg/kgの範囲、例えば、約0.01mg/kg、約0.02mg/kg、約0.03mg/kg、約0.04mg/kg、約0.05mg/kg、約0.06mg/kg、約0.07mg/kg、約0.08mg/kg、約0.09mg/kg、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、約1.6mg/kg、約1.7mg/kg、約1.8mg/kg、1.9mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg体重、約20mg/kg体重、約30mg/kg体重、約40mg/kg体重、約50mg/kg体重、約60mg/kg体重、約70mg/kg体重、約80mg/kg体重、約90mg/kg体重、または約100mg/kg体重(これらの間のすべての値及び範囲を含む)である。他の実施形態において、APに基づいた薬剤の適切な投与量は、体重の約0.01mg/kg~約10mg/kgの範囲、体重の約0.01mg/kg~約9mg/kgの範囲、体重の約0.01mg/kg~約8mg/kgの範囲、体重の約0.01mg/kg~約7mg/kgの範囲、体重の0.01mg/kg~約6mg/kgの範囲、体重の約0.05mg/kg~約5mg/kgの範囲、体重の約0.05mg/kg~約4mg/kgの範囲、体重の約0.05mg/kg~約3mg/kgの範囲、体重の約0.05mg/kg~約2mg/kgの範囲、体重の約0.05mg/kg~約1.5mg/kgの範囲、または体重の約0.05mg/kg~約1mg/kgの範囲である。
【0135】
本発明のある特定の実施形態によると、APに基づいた薬剤は、例えば、1日に1回を超えて(例えば、1日当り約2回、約3回、約4回、約5回、約6回、約7回、約8回、約9回、もしくは約10回)、1日当り約1回、約1日置きに、約3日毎に、1週間に約1回、2週間に約1回、3か月に約1回、2か月に約1回、3か月に約1回、6か月に約1回、または1年に約1回投与され得る。
【0136】
化学療法薬治療の副作用の治療、予防、または低減の方法
一部の態様では、ヌクレオシド類似体による化学療法薬治療の少なくとも1つの副作用を対象において治療または予防する方法であって、IAPを対象に投与することを含み、対象が化学療法薬治療を使用するがん治療を受けた、または受けている方法が提供される。IAPは、ヌクレオシド類似体による化学療法薬治療に関して、同時に、断続的に、またはこれらの任意の組み合わせで投与される。
【0137】
様々な実施形態において、本発明はがん患者の化学療法薬治療の副作用を治療、予防、軽減、または排除する方法であって、IAPを患者に投与することを含む方法を提供する。非限定例において、IAPは、配列番号41に少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。更なる非限定例において、化学療法薬治療は、ヌクレオシド類似体、任意選択で5-FUを含む。別の非限定例において、化学療法薬治療の副作用は下痢である。
【0138】
様々な実施形態では、ヌクレオシド類似体による化学療法薬治療の少なくとも1つの副作用を対象において治療または予防する方法であって、IAPを対象に投与することを含み、対象が化学療法薬治療を使用するがん治療を受けた、または受けている方法が提供される。一部の実施形態では、IAPを投与する効果が、化学療法薬治療を受けているがIAPを受けていない対象の副作用プロファイルと比較される。非限定例において、IAPは、配列番号41に少なくとも約90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。更なる非限定例において、化学療法薬治療は、ヌクレオシド類似体、任意選択で5-FUを含む。別の非限定例において、化学療法薬治療の副作用は下痢である。
【0139】
一部の実施形態において、IAPは、ヌクレオシド類似体の投与と順次に投与され、このことは、ヌクレオシド類似体の投与前またはヌクレオシド類似体の投与後であり得る。一部の場合において、IAPの投与は、ヌクレオシド類似体の投与と少なくとも部分的に重複し得る。一部の実施形態において、IAPは、ヌクレオシド類似体の投与と同時に投与される。例えば、一部の実施形態において、IAPの投与は、ヌクレオシド類似体治療の前に(例えば、ヌクレオシド類似体の投与を始める1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日前に、または10日を超えて)始めることができ、ヌクレオシド類似体治療の全体にわたって続けることができる。一部の実施形態において、IAPの投与(ヌクレオシド類似体投与の開始前または後に始めることができる)は、ヌクレオシド類似体の投与が完了した後でも続けることができる。例えば、IAPの投与は、対象へのヌクレオシド類似体の投与が完了した1、2、3、4、5、6、7、8、9、10日後まで、または10日を超えて続けることができる。他の実施形態において、IAPは、ヌクレオシド類似体の投与と断続的に投与される。
【0140】
一部の場合において、化学療法剤、例えば5-FUの胃腸(GI)副作用を含む副作用は、重症であり、生命を脅かすものであり得る。GI副作用には、例えば、下痢、食欲不振、悪心、嘔吐、口内炎、及び食道咽頭炎(esophagopharyngitis)、ならびに様々な他の副作用が含まれる。例えば、粘膜炎及び下痢は、用量制限性の一般的なGI副作用である。ヌクレオシド類似体を使用するがん治療に関連する様々な副作用も、化学療法の頻度及び持続期間を制限することがあり、それによってがん治療の成功を妨げている。
【0141】
したがって、本開示の一部の実施形態による方法は、GI副作用を含む、化学療法薬治療に関連する1つ以上の副作用を予防、低減、または排除することができる。化学療法薬治療の副作用の非限定例には、下痢、大腸炎、粘膜炎、体重減、疼痛、悪心、嘔吐、便秘、貧血、栄養不良、脱毛症、骨髄抑制、腎毒性、脱毛、痺れ、味覚の変化、食欲不振、薄毛または脆弱毛、口内炎、記憶喪失、出血、心毒性、肝毒性、聴器毒性、及び化学療法後認知障害が含まれる。
【0142】
本開示の実施形態による方法は、有効用量のIAPの投与を含み、副作用が発症する可能性を低減すること、ならびにその期間及び/または重症度を低減することを可能にする。また、患者が副作用の症状から回復する速度が加速され得る。
【0143】
経口投与され得るIAPは、ヒトIAPまたは仔ウシ/ウシIAPから選択され得る。一部の実施形態において、IAPは、配列番号1~11、17、18、または41のいずれか1つに少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%、または少なくとも約100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、IAPは、配列番号2に少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%、または少なくとも約100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、IAPは、配列番号2、または配列番号5、または配列番号41に少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0144】
例えば、一部の実施形態において、本開示の一部の実施形態による方法は、下痢を含む化学療法薬治療の副作用を予防、低減、または排除することができる。一部の実施形態において、Bristol便スケールを使用して、IAPが投与された対象の便が下痢(例えば、スコア6または7)から正常(例えば、スコア3または4)に戻る傾向があるかを決定する。様々な実施形態において、化学療法薬治療を受けている対象の便は、Bristol便スケールによるとスコア6または7である。一部の実施形態において、化学療法薬治療を受けており、IAPが投与された対象は、Bristol便スケールによるとスコアが3または4または5である。
【0145】
ヌクレオシド類似体は、任意の適切なヌクレオシド類似体であってもよく、限定されることなく、5-フルオロウラシル(5-FU)、5’-デオキシフルオロウリジン、5-フルオロ-2’-デオキシウリジントリホスフェート、フルオロウリジン、2’-デオキシフルオロウリジン、フルオロシトシン、トリフルオロ-メチル-2’-デオキシウリジン、シタラビン、シクロシチジン、アラビノシルシトシン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、アラビノシル-5-アザシトシン、6-アザシチジン、N-ホスホノアセチル-L-アスパラギン酸、ピラゾフリン、6-アザウリジン、アザリビン、チミジン、ファザラビン(Fazarabine)及び3-デアザウリジンが含まれる。一部の実施形態において、ヌクレオシド類似体は、フルオロピリミジン、5-フルオロウラシル、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、5-フルオロ-2’-デオキシウリジントリホスフェート、ゲムシタビン、トロキサシタビン、デシタビン、シタラビン、プソイドイソシチジン(pseudoisocytidine)、アザシチジン、デシタビン、ゼブラリン、アンシタビン、ファザラビン、6-アザシチジン、カペシタビン、N4-オクタデシル-シタラビン、エライジン酸-シタラビン、クラドリビン、アシクロビル、クロファラビン、ネララビン、フォロデシン、8-クロロアデノシン、サパシタビン、チアラビン(thiarabine)、及びこれらの誘導体のうちの少なくとも1つを含む。少なくとも一部の実施形態において、ヌクレオシド類似体は、5-FUなどのピリジン類似体である。
【0146】
一部の実施形態において、ヌクレオシド類似体は5-フルオロウラシル(5-FU)である。一部の実施形態において、標準的な5-FU治療レジメンは、約12mg/kgを1日に1回で4日間連続して投与すること、任意選択で、毒性が発生しない限り約6mg/kgを6、8、10、及び12日目に投与することを含む。様々な実施形態において、IAPの投与は、副作用のために治療を止めることなく、完全なレジメンを対象に投与することを可能にし得る。一部の実施形態において、IAPの投与は、患者に増加した投与量(例えば、約20mg/kg超を1日に1回、もしくは約18mg/kgを1日に1回、もしくは約16mg/kgを1日に1回、もしくは約14mg/kgを1日に1回、もしくは約12mg/kgを1日に1回)を、4日間を超えて(例えば、約10、約9、約8、約7、約6、もしくは約5日間)連続して投与すること、約15mg/kg超を1日に1回、もしくは約12mg/kgを1日に1回、もしくは約10mg/kgを1日に1回、もしくは約8mg/kgを1日に1回、もしくは約6mg/kgを1日に1回で、6、8、10、及び12日目に投与すること、及び/または投与期間(例えば、12日間を超えて、例えば約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24日間、約4週間もしくは約1か月間が含まれる)で投与することを可能にする。
【0147】
一部の実施形態において、IAPの投与は、1日に約200m、1日に約300mg、1日に約400mg、1日に約500mg、1日に約600mg、1日に約700mg、または1日に約800mg、または1日に約900mg、または1日に約1000mgを超える5-FUの用量を患者に投与することを可能にし得る。
【0148】
ヌクレオシド類似体による化学療法薬治療の少なくとも1つの副作用を対象において治療または予防する方法を、結腸直腸癌、乳癌、腸癌、胃癌、結腸癌、肛門癌、頭頸部癌、皮膚癌、食道(喉)癌、及び膵癌が含まれる様々ながんの治療に使用することができる。ヌクレオシド類似体を、他のヌクレオシド類似体または他の治療剤の1つ以上と組み合わせて(同時)投与することができる。例えば、一部の実施形態において、方法は、1つ以上のコルチコステロイドを投与することを更に含む。
【0149】
一部の態様において、IAPの投与は、ヌクレオシド類似体を投与する用量、期間、及び/または頻度の低減を可能にする。一部の実施形態において、ヌクレオシド類似体の低減された用量は、ヌクレオシド類似体の治療量以下の用量であり得る。一部の実施形態において、IPの使用は、ヌクレオシド類似体の治療範囲の増大を可能にする。ヌクレオシド類似体の増大された治療範囲は、対象がヌクレオシド類似体維持療法を受ける可能性の増大、対象がヌクレオシド類似体の完全なレジメンを受ける可能性の増大、対象がヌクレオシド類似体の完全なレジメンを超えるものを受ける可能性の増大、ならびにヌクレオシド類似体治療の用量、期間、及び/または頻度の増大のうちの1つ以上を含み得る。
【0150】
一部の実施形態において、有効量のIAPの投与は、がん患者が5-FUとの併用療法の完全なレジメンを受け、例えば下記により詳細に考察される副作用のために治療を止める必要がなくなる力を増大させる。一部の実施形態において、有効量のIAPの投与は、患者が、より大きな用量またはより長い期間にわたって5-FUとの併用療法を受ける力を増大させる。例えば、5-フルオロウラシル/ロイコボリンの併用療法レジメンは、以下であり得る。(a)注入用5-フルオロウラシル/ロイコボリンによる6週間サイクル:30~90分間にわたる180mg/mのIV注入を1日に1回で、1、15、及び29日目にIV(30~90分間かけて注入)、続いてロイコボリン及び5-フルオロウラシルの注入;次のサイクルを43日目に開始、または(b)ボーラス5-フルオロウラシル/ロイコボリンによる6週間サイクル:125mg/mを1、8、15,及び22日目に(90分間かけて注入)、続いてボーラス用量のロイコボリン及び5-フルオロウラシル。様々な実施形態において、有効量のIAPの投与は、このレジメンの用量及び/または頻度を増大させる。例えば、このレジメンは、6週間を超えて約45日間、または約50日間、または約55日間、または約60日間、または約65日間、または約70日間、または約75日間、または約100日間(約7週間、または約8週間、または約9週間、または約10週間、または約11週間、または約12週間を含む)まで延長され得る。
【0151】
一部の実施形態において、有効量のIAPの投与は、がん患者が、FOLFOX、FOLFIRI、IFL、FL(Mayo)、QUASAR、Machoverスケジュール、CAF、CMF、ECF、及びFECレジメンのいずれか1つの完全なレジメンを受け、副作用のために治療を止める必要がなくなる力を増大させる。一部の実施形態において、有効量のIAPの投与は、がん患者が、FOLFOX、FOLFIRI、IFL、FL(Mayo)、QUASAR、Machoverスケジュール、CAF、CMF、ECF、及びFECレジメンによる療法のより大きな用量または長い期間を受ける力を増大させる。
【0152】
一部の実施形態において、本方法は、化学療法薬治療の副作用または結果であり得る腸マイクロバイオームの多様性の低減を、予防または減らすことを考慮する。一部の実施形態において、本方法は、化学療法薬治療後の対象における腸マイクロバイオームを修復及び/または再増殖することに関する。
【0153】
様々な実施形態において、本方法は、急性副作用、長期副作用、または蓄積副作用を含む化学療法薬治療の副作用を予防、低減、または排除する。様々な実施形態において、本方法は、化学療法薬治療の局所性または全身性副作用を低減または排除する。様々な実施形態において、化学療法薬治療の副作用は、下痢、大腸炎、粘膜炎、体重減、疼痛、悪心、嘔吐、便秘、貧血、栄養不良、脱毛症、骨髄抑制、腎毒性、脱毛、痺れ、味覚の変化、食欲不振、薄毛または脆弱毛、口内炎、記憶喪失、出血、心毒性、肝毒性、聴器毒性、及び化学療法後認知障害のうちの1つ以上である。副作用には、疲労、上皮表面の損傷不妊症、線維症、脱毛、乾燥(例えば、限定されることなく、ドライマウス(口内乾燥)及びドライアイ(眼球乾燥)、及び腋窩及び膣粘膜の乾燥)、リンパ浮腫、心疾患、認知機能低下、ならびにビタミンB12吸収不良も含まれ得る。
【0154】
一部の実施形態において、IAPは追加の薬剤と組み合わせて投与され、追加の薬剤は、本明細書に記載されている薬剤のいずれか、またはコルチコステロイド、抗酸化剤(例えば、アミホスチン及びビタミンE)、サイトカイン(例えば、幹細胞因子)などが含まれるが、これらに限定されない別の薬剤であり得る。
【0155】
様々な実施形態において、APに基づいた薬剤の投与は、幹細胞を刺激及び保護する。例えば、本発明及び組成物は、造血幹細胞を刺激及び保護することができ、様々な造血前駆細胞が含まれる。別の例において、本方法及び組成物は胃腸幹細胞を刺激及び保護することができ、例えば、上皮細胞(例えば、杯細胞)及び腸陰窩幹細胞である。一部の実施形態において、本方法及び組成物は、杯細胞などの小腸細胞を形成不全及び損失(例えば、アポトーシスまたは壊死)から保護する。様々な実施形態において、本発明の方法及び組成物は、化学療法薬治療からのGI系の回復を有意に高める。
【0156】
様々な実施形態において、対象は、がん患者である。がんには、結腸及び直腸の癌;基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨癌;脳及び中枢神経系の癌;乳癌;腹膜癌;子宮頸癌;絨毛癌;結合組織癌;消化器系の癌;子宮内膜癌;食道癌;眼癌;頭頸部癌;胃癌(GI癌を含む);神経膠芽細胞腫;肝癌;肝細胞癌;上皮内新生物;腎癌;喉頭癌;白血病;肝癌;肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌);黒色腫;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔癌(唇、舌、口、及び咽頭);卵巣癌;膵癌;前立腺癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系の癌;唾液腺癌;肉腫;皮膚癌;扁平上皮癌;胃の癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮または子宮内膜の癌;泌尿器系の癌;外陰癌;ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、ならびにB細胞リンパ腫を含むリンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;及びワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症が含まれる);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ球性白血病(ALL);毛様細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;ならびに他の癌腫及び肉腫;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)またはメグズ症候群に関連する異常な血管増殖が含まれる。
【0157】
追加の治療剤及び併用療法
APに基づいた薬剤を含む本組成物及び製剤の投与は、追加の薬剤と組み合わせることができる。追加の薬剤と、本組成物/製剤との同時投与は、同時、順次、またはこれらの組み合わせであり得る。更に、本組成物/製剤は、追加の薬剤を(例えば、共処方を介して)含むことができる。例えば、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤を、単一製剤に組み合わせることができる。あるいは、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤を、別々に処方することができる。
【0158】
一実施形態において、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤は、対象に同時に投与される。用語「同時」は、本明細書で使用されるとき、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤は、約60分以下、例えば、約30分以下、約20分以下、約10分以下、約5分以下、または約1分以下の時間間隔で投与されることを意味する。追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤の投与は、単一製剤(例えば、追加の薬剤とアルカリホスファターゼとを含む製剤)による同時投与、または別々の製剤(例えば、追加の薬剤を含む第1の製剤、及びAPに基づいた薬剤を含む第2の製剤)による同時投与であり得る。
【0159】
更なる実施形態において、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤は、対象に同時に投与されるが、対応する剤形(または、共処方されている場合は単一単位剤形)からの追加の薬剤及びアルカリホスファターゼの放出は、順次に発生し得る。
【0160】
同時投与は、投与のタイミングが、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤の薬物動態活性がいずれ重複するようなものである場合、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤が同時に投与されることを必要としない。例えば、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤は、順次に投与され得る。用語「順次」は、本明細書で使用されるとき、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤が約60分を超えた時間間隔で投与されることを意味する。例えば、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤の順次投与の間の時間は、約60分を超える、約2時間を超える、約5時間を超える、約10時間を超える、約1日を超える、約2日間を超える、約3日間を超える、または約1週間を超えるものであり得る。投与時間は、代謝速度、排出、及び/または投与される追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤の薬力学的活性によって左右される。追加の薬剤またはAPに基づいた薬剤のいずれかを、最初に投与することができる。
【0161】
同時投与は、また、追加の薬剤及びAPに基づいた薬剤が同じ投与経路で対象に投与されることを必要としない。むしろ、それぞれの治療剤は任意の適切な経路によって、例えば、非経口的または非-非経口的に投与され得る。
【0162】
様々な実施形態において、追加の薬剤には、血液製剤、コロニー刺激因子、サイトカイン及び/または増殖因子、抗生物質、希釈及び/または遮断剤、動員またはキレート剤、幹細胞移植、ならびに抗酸化剤またはフリーラジカルうちの1つ以上が含まれる。また、化学療法が放射線療法と組み合わせて使用される実施形態において、追加の薬剤には様々な放射線保護剤が含まれる。
【0163】
一部の実施形態において、血液製剤は、造血増殖因子、例えば、フィルグラスチム(例えば、NEUPOGEN)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、この任意選択でペグ化され得るもの(例えば、NEULASTA)、サルグラモスチム(LEUKINE)、ならびに顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及びKSFのうちの1つ以上である。
【0164】
一部の実施形態において、追加の薬剤は、幹細胞個体群を補充及び/または保護することによって細胞保護を付与し得る、サイトカイン及び/または増殖因子の1つ以上である。一部の場合では、幹細胞因子(SCF、c-kitリガンド)、Flt-3リガンド、及び/またはインターロイキン1フラグメントIL-1b-rdを使用することができる。幾つかの因子は、性質的にサイトカインではないが、免疫細胞の増殖を刺激し、APに基づいた薬剤と組み合わせて使用することができる。例えば、5-AED(5-アンドロステンジオール)は、サイトカインの発現を刺激して、細菌及びウイルス感染に対する抵抗性を増加させるステロイドである。合成化合物、例えば、アンモニウムトリクロロ(ジオキソエチレン-O,O’-)テルラート(AS-101)は、また、多数のサイトカインの分泌を誘導すること、及びAPに基づいた薬剤との組み合わせに使用され得る。増殖因子及びサイトカインを使用して、胃腸管症候群に対して保護を提供することもできる。ケラチノサイト増殖因子(KGF)は、腸粘膜における増殖及び分化を促進し、腸陰窩における照射後の細胞生存を増加させる。造血サイトカインSCFは、腸幹細胞の生存及び関連する短期の生物生存も増加させ得る。
【0165】
ある特定の実施形態では、APに基づいた薬剤をサイトカインのレジメン(例えば、FILGRASTIM(G-CSF)では2.5~5μg/kg/日の1日1回、皮下(100~200μg/m/日)、SARGRAMOSTIM(GM-CSF)では、5~10μg/kg/日の1日1回、皮下(200~400μg/m/日)、及び/またはPEGFILGRASTIM(pegG-CSF)では、6mgを1回、皮下)に加えることができる。
【0166】
一部の実施形態において、追加の薬剤は、インターロイキン、例えばIL-12(例えば、HEMAMAX(NEUMEDICINES,INC))である。
【0167】
一部の実施形態において、抗生物質は、抗細菌(抗グラム陽性剤及び抗グラム陰性剤)、及び/または抗真菌剤、及び/または抗ウイルス剤のうちの1つ以上である。非限定例として、一部の実施形態において、抗生物質は、キノロン系、例えば、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、シュードモナス性範囲を有する第3もしくは第4世代のセファロスポリン系、例えば、セフェピム、セフタジジム、またはアミノグリコシド系、例えば、ゲンタマイシン、アミカシン、ペニシリンもしくはアモキシシリン、アシクロビル、バンコマイシン(vanomycin)であり得る。様々な実施形態において、抗生物質は、Pseudomonas aeruginosaを標的にする。
【0168】
一部の実施形態において、追加の薬剤は、幹細胞移植(例えば、骨髄移植、PBSCT、MSCT)である。一部の実施形態において、幹細胞移植は、CTL-008(Cellerant)のRemestemcel-L(Osiris)である。
【0169】
一部の実施形態において、追加の薬剤は抗酸化剤またはフリーラジカルである。本発明の実施に使用され得る抗酸化剤及びフリーラジカルスカベンジャーには、システイン、システアミン、グルタチオン、及びビリルビンなどのチオール;アミホスチン(WR-2721);ビタミンA;ビタミンC;ビタミンE;ならびにインドホーリーバジル(Indian holy basil)(Ocimum sanctum)、オリエンチン(orientin)、及びビセニン(vicenin)などのフラボノイドが含まれるが、これらに限定されない。
【0170】
一部の実施形態において、追加の薬剤は、ステロイド(例えば、5-アンドロステンジオール)、抗酸化剤(例えば、アミホスチン、ビタミンE、ガンマトコトリエノール(ビタミンE部分)及びゲニステイン(大豆副産物))、サイトカイン(例えば、幹細胞因子)、増殖因子(例えば、ケラチノサイト増殖因子)、アンモニウムトリクロロ(ジオキソエチレン-O,O’)テルラート、鎮嘔吐剤、下痢止め剤、制吐薬((例えば、経口予防的制吐薬)、例えば、グラニセトロン(KYTRIL)、オンダンセトロン(ZOFRAN)、及びデキサメタゾンを有する、または有さない5-HT3遮断薬)、鎮痛薬、抗不安薬、鎮静薬、サイトカイン療法、及び抗生物質であり得る。
【0171】
組み合わせ用薬剤の更なる例には、チオテパ及びCYTOXANシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン(piposulfan)などのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)及びウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(例えば、ブラタシン及びブラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(cally statin);CC-1065(このアドゼレシン、カルゼレシン(carzelesin)及びビセレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(例えば、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、などのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン(ranimnustine)などのニトロソウレア(nitrosurea);エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシンガンマII(gammall)及びカリケアマイシンオメガII(omegall)(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994)を参照すること)などの抗生物質;ジネマイシン(dynemicin)Aを含むジネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCINドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン(dideoxyuridine)、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド(minoglutethimide)、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎(anti-adrenals);フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド(aldophosphamide glycoside);アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトレキセート(edatraxate);デフオブアミン(def of amine);デメコルチン;ジアジクオン(diaziquone);エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);マイタンシン及びアンサマイトシン(ansamitocin)などのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);ポドフィリニック酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム(spirogermanium);テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(例えば、T-2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridin)A、及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosin);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOLパクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE パクリタキセルのCremophor無含有アルブミン改変ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,111.)、及びTAXOTEREドセタキセル(docetaxel)(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル(chloranbucil);GEMZARゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE.ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;イリノテカン(Camptosar、CPT-11)(5-FU及びロイコボリンを伴うイリノテカンの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)含むオキサリプラチン;ラパチニブ(Tykerb);細胞増殖を低減する、PKC-α、Raf、H-Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(Tarceva))及びVEGF-Aの阻害剤、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が含まれるが、これらに限定されない。加えて、治療方法は放射線の使用を更に含むことができる。加えて、治療方法は光線力学的療法の使用を更に含むことができる。
【0172】
定義
本明細書で使用されるとき、「a」、「an」、または「the」は、1つ、または1つを超えることを意味することができる。
【0173】
更に、用語「約」は、参照数値表示に関連して使用される場合、参照数値表示の10%までプラスまたはマイナスされた参照数値表示を意味する。例えば、「約50%」という言葉は45%~55%の範囲を網羅する。
【0174】
「有効量」は、医学的使用に関連して使用される場合、目的の障害の病理発生に測定可能な治療、予防、または速度の低減を提供するのに有効な量である。
【0175】
本明細書で使用されるとき、活性及び/または効果の読み取り値が、薬剤または刺激の存在下で、そのような調節の不存在下と比べて有意な量によって、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、またはそれ以上、最大で少なくとも約100%まで低減される場合、あるものが「減少」される。当業者に理解されるように、一部の実施形態において、活性は減少し、いくつかの下流読み取り値は減少するが、他のものは増加し得る。
【0176】
逆に、活性及び/または効果の読み取り値が、薬剤または刺激の存在下で、そのような薬剤または刺激の不存在下と比べて有意な量によって、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、またはそれ以上、最大で少なくとも約100%まで、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍増加される場合、活性は「増加」される。
【0177】
本明細書で参照されるとき、すべての組成的百分率は、特定されない限り組成物全体の重量に基づくものである。本明細書で使用されるとき、語「含む」及びその変形は、リストの項目の列挙が、本技術の組成物及び方法に有用でもあり得る他の同様の項目を排除しない非限定的なものであることが意図される。同様に、用語「できる(can)」及び「してもよい(may)」、ならびにこれらの変形は、実施形態がある特定の要素または特徴を含むことができる、または含んでもよい列挙が、これらの要素または特徴を含有しない本技術の他の実施形態を排除しない非限定的なものであることが意図される。
【0178】
含まれる(including)、含有する(containing)、または有する(having)などの用語と同義である開放型用語「含む(comprising)」が、本発明を記載及び主張するために本明細書に使用されるが、本発明またはその実施形態は、「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」などの代替的用語を使用して代替的に記載され得る。
【0179】
本明細書で使用されるとき、語「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」は、ある特定の条件下である特定の利益をもたらす技術の実施形態を指す。しかし、同じまたは他の状況下で他の実施形態が好ましいこともある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本技術の範囲から除外することを意図しない。
【0180】
一部の実施形態において、用語「患者」及び「対象」は交換可能に使用される。一部の実施形態において、対象及び/または動物は哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ウサギ、ヤギ、または非ヒト霊長類、例えば、サル、チンパンジー、もしくはヒヒである。他の実施形態において、対象及び/または動物は非哺乳動物、例えば、ゼブラフィッシュである。
【0181】
様々な実施形態において、本発明の方法は、ヒト対象の治療に有用である。一部の実施形態において、ヒトは小児である。一部の実施形態において、ヒトはで成人ある。他の実施形態において、ヒトは老人である。他の実施形態において、ヒトは、患者と呼ばれることもある。一部の実施形態において、ヒトは女性である。一部の実施形態において、ヒトは男性である。
【0182】
ある特定の実施形態において、ヒトは、約1~約18か月齢、約18~約36か月齢、約1~約5歳、約5~約10歳、約10~約15歳、約15~約20歳、約20~約25歳、約25~約30歳、約30~約35歳、約35~約40歳、約40~約45歳、約45~約50歳、約50~約55歳、約55~約60歳、約60~約65歳、約65~約70歳、約70~約75歳、約75~約80歳、約80~約85歳、約85~約90歳、約90~約95歳、または約95~約100歳の範囲の年齢を有する。
【0183】
治療効果を達成するために必要な本明細書に記載される組成物の量は、特定の目的に都合の良い手順に従って経験的に決定され得る。一般に、治療剤(例えば、マイクロバイオーム調節剤及び/または本明細書に記載されている追加の治療剤)の治療目的のための投与では、治療剤は薬理学的に有効な用量で与えられる。「薬理学的有効量」、「薬理学的有効用量」、「治療有効量」、または「有効量」は、所望の生理学的効果を生じるのに十分な量、または所望の結果を達成する、特に障害もしくは疾患を治療することができる量を指す。有効量は、本明細書で使用されるとき、例えば、障害または疾患の症状の発生を遅延する、障害または疾患の症状の経過を変更する(例えば、疾患の症状の進行を緩徐する)、障害または疾患の1つ以上の症状または徴候を低減または排除する、及び障害または疾患の症状を逆転するのに十分な量を含む。治療利益には、改善が実現しているかにかかわらず、基礎疾患または障害の進行を停止または緩徐することも含まれる。
【0184】
有効量、毒性、及び治療有効性は、例えば、LD50(個体群の約50%に対して致死的な用量)及びED50(個体群の約50%において治療有効的な用量)を決定するために、細胞培養物、組織試料、組織ホモジネート、または実験動物において標準的な薬学的手順により決定され得る。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて変わり得る。毒性と治療効果の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50の比で表すことができる。一部の実施形態では、大きな治療指数を示す組成物及び方法が好ましい。治療有効用量は、最初に、例えば、細胞培養アッセイもしくは測定、または便試料中のメタン生成を含むインビトロアッセイにおいて推定され得る。また用量は、細胞培養または適切な動物モデルで決定されたIC50を含む循環血漿濃度範囲を達成する動物モデルによって処方され得る。血漿中の本記載の組成物のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。任意の特定の投与量の効果は、適切なバイオアッセイによってモニターされ得る。投与量は、医師によって決定され、必要であれば、治療の観察効果に合わせるように調整され得る。
【0185】
ある特定の実施形態において、効果は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、または少なくとも約90%の定量的変化を生じるものである。一部の実施形態において、効果は、約10%、約20%、約30%、約50%、約70%、もしくはさらには約90%、またはそれ以上の定量的変化を生じるものである。治療利益には、改善が実現しているかにかかわらず、基礎疾患または障害の進行を停止または緩徐することも含まれる。
【0186】
本明細書で使用されるとき、「治療の方法」は、本明細書に記載されている疾患もしくは障害を治療するための組成物の使用、及び/または使用するための組成物、及び/または本明細書に記載されている疾患もしくは障害を治療するための医薬の製造における使用に等しく適用される。
【0187】
実施例
実施例1:IAPは5-FUの副作用を低減する
実験は、がん治療用にヌクレオシド類似体を含む化学療法剤を使用した下痢及び体重変化の副作用に対するIAP治療の効果を評価するために実施した。
【0188】
行った研究は、ネズミモデルにおける、5-フルオロウラシル(5-FU)による化学療法薬治療を伴ったIAP(「SYN-020」は、IAP及びSYN BIAPIIと同義である)の投与の効果の評価から構成された。まとめると、図1A~1B及び2A~2Cは、マウスの体重変化及び便硬度の評価に基づいて、IAPの投与が5-FUの副作用を低減することを例示している。便硬度を以下のようにスコア付けした。スコア0=正常(下痢なし)、スコア2=軟らかく、形のある便、及びスコア4=下痢。
【0189】
実験の第1のセットは、CT26ネズミ結腸直腸癌細胞が右側腹部に接種された3群のBALB/cマウスから構成された。(1)18匹のマウスの非治療対照群(「未治療」)、(2)腹腔内(IP)QD(1日に1回)用量の30mg/kgの5-FUを5連続日(0~4日目)受け、ビヒクルがPO(経口)BID(1日に2回)で、研究の全体を通して(-3~+26日目)投与された18匹の雄マウ群(「ビヒクル+5-FU」)、及び(3)IP QD用量の30mg/kgの5-FUを5連続日(0~4日目)受け、IAP(SYN-020)が0.5mg/kgの用量で、研究の全体を通して(-3~+26日目まで)PO BIDで投与された18匹の雄マウス群(「SYN BIAPII+5-FU」)。
【0190】
図1Aは、研究日数に対する未治療(上側曲線)、ビヒクル+5-FU(中側曲線)、及びSYN BIAPPII+5-FU(下側曲線)マウスの体重変化の平均率±SEMを示す。図1Bは、x軸のベースラインに示されている未治療マウスデータと比べた、ビヒクル+5-FU及びSYN BIAPPII+5-FUマウスの日数に対する平均便硬度スコア±SEMによる便硬度の評価を示す。示されているように、5-FUの投与は、軟便/下痢、ならびに関連する体重減をすべての治療動物において引き起こした。これらの症状は、ビヒクル+5-FUマウス群とSYN BIAPII+5-FUマウス群の両方において6日目にピークに達し、9日目までに回復した。SYN BIAPII+5-FU群におけるIAPの投与は、軟便/下痢の症状及び関連する体重減からの有意に早い回復を示す(p<0.03)。
【0191】
実験の第2のセットは、CT26ネズミ結腸直腸癌細胞が右側腹部に接種された4群のBALB/cマウスから構成された。(1)30匹の雄マウスのビヒクル対照群(「ビヒクル」)、(2)1日治療用量の100U/用量、0.5mg/kgのSYN BIAPIIのみ(「SYN BIAPII」)を受けた30匹の雄マウス群、(3)IP QD用量の30mg/kgの5-FUを5連続日(0~4日目)及びビヒクル治療を受けた30匹の雄マウス群(「ビヒクル+5-FU」)、ならびに(4)IP QD用量の30mg/kgの5-FUを5連続日(0~4日目)受け、IAP(SYN-020)が100U/用量、0.5mg/kgの用量で、研究の全体を通して(-3~+26日目)PO BIDで投与された30匹の雄マウス群(「SYN BIAPII+5-FU」)。
【0192】
図2Aは、50%群生存率の平均1日体重を描写し、0日目の体重+SEMと比較して経時的な変化率として示されている。ビヒクル+5-FUが、0~4日目まで投与された動物は、化学療法誘導性体重減を示し、7日目に約(-20%)でピークに達し、その後、動物は失った体重を薬20日目までに回復した。SYN BIAPII+5-FUが投与された動物の体重変化の平均百分率は、ビヒクル+5-FUが投与された動物と有意に異なっていない。50%の一般的な群生存率における治療群間の体重変化の累積((-3)~16日目)の差を、台形変換(trapezoidal transformation)を使用して、各動物で曲線下面積(AUC)を計算することによって評価した。
【0193】
図2Bは、0~12日目までの毎日の便硬度スコアの結果を示し、平均スコア+SEMが示されている。矢印は、5-FUの投与日を示す。ビヒクルまたはSYN BIAPII単独で治療された動物は、一般に、分析の全体にわたって正常な便硬度を示した。ビヒクル+5-FU、またはSYN BIAPII+5-FUが投与された動物では、軟便または下痢の発生が5日目に最初に観察された。ビヒクル+5-FUが投与された動物では、軟便の発生が一般に12日目までに解消され、SYN BIAPII+5-FUが投与された動物では、軟便の発生が一般に11日目までに解消された。ビヒクル+5-FUによる治療と比較すると、全体的な便スコアの改善がSYN BIAPPII+5-FUで治療された動物において5~11日目にわたって観察された。一日便スコアにおける統計的に有意な群差を、マン・ホイットニー順位和分析により毎日評価した。ビヒクル+5-FUによる治療と比較すると、SYN BIAPPII+5-FUで治療された動物は全体的な便スコアに統計的に有意な改善を5日目に示した(p=0.006)。
【0194】
下記の表1は、動物に総数に対する下痢(スコア=4)を有した日数の百分率を計算することによって、5-FU誘導性下痢の持続期間を比較する。群をカイ二乗検定により比較した。未治療動物と比較すると、動物が下痢を有した日数の統計的に有意な累積増加が、ビヒクル+5-FUで治療された動物(p≦0.0001)及びSYN BIAPPII+5-FUで治療された動物(p≦0.0001)の両方に観察された。ビヒクル+5-FUによる治療と比較すると、SYN BIAPPII+5-FUで治療された動物は全体的な下痢持続期間に統計的に有意な改善を示した(p=0.0006)。
【0195】
【表12】
【0196】
最後に図2Cは、治療群による動物の下痢を有した延日数の百分率のグラフ表示を描写する。
【0197】
したがって本研究は、IAPの投与が、例えば下痢及び粘膜炎などの5-FUに関連する副作用を改善することを実証している。したがって、IAPをがん治療関連副作用の治療、予防、及び軽減に使用される治療剤として、ならびに化学療法剤の全体的な応答を高めるために利用することができる。
【0198】
等価物
本発明は特定の実施形態に関連して記載されているが、更なる変更が可能であること、ならびに、一般に本発明の原則に従っている、かつ本発明が関連する技術の範囲内で既知または慣用の実施であるような、本明細書上記に記載されている本質的な特徴に適用され得るような、及び添付の特許請求の範囲に従っているような本開示からの逸脱を含んでいる本発明の任意の変形、使用、または適合を、本出願が網羅することが意図されることが理解される。
【0199】
当業者は、単に日常的な実験を使用するだけで、本明細書に特定的に記載されている特定の実施形態に対する多数の等価物を認識する、または確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲の範囲を包含することが意図される。
【0200】
参照として組み込まれる
本明細書に引用されているすべての特許及び出版物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0201】
本明細書において考察される出版物は、単に、本出願の出願日に先行した開示として提供される。本発明が、先行発明によって、そのような公開に先立つ権利を受けないことを承認すると解釈されるべきことは、本明細書において何もない。
【0202】
本明細書で使用されるとき、すべての見出しは、単に編成のためであり、本開示をいかようにも制限することが意図されない。任意の個別のセクションの内容は、すべてのセクションに等しく適用可能であり得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
【配列表】
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【国際調査報告】