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特表2022-531929バイオフィルム関連肺状態を処置するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】バイオフィルム関連肺状態を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220705BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/545 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/7052 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/546 20060101ALI20220705BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20220705BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P11/00
A61P31/04
A61K47/26
A61P43/00 121
A61K31/545
A61K31/7056
A61K31/7048
A61K31/7052
A61K31/546
A61K31/43
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566455
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 US2020032039
(87)【国際公開番号】W WO2020231786
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/846,084
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519080908
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】アリベック ケン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076CC15
4C076CC32
4C076DD69F
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF68
4C084AA17
4C084MA05
4C084NA10
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB352
4C086AA01
4C086AA02
4C086CC04
4C086CC10
4C086CC12
4C086CC13
4C086CC14
4C086CC15
4C086EA02
4C086EA12
4C086EA13
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA10
4C086ZA59
4C086ZB35
(57)【要約】
主題発明は、特に、対象の呼吸器内における、バイオフィルム形成およびバイオフィルム感染症を予防、抑制、または軽減するための材料および方法を提供する。本発明は、バイオフィルムの処置、破壊、および/または予防における殺生物性物質の有効性を高めるために、有利な微生物の増殖副産物を利用する。有利なことに、主題発明は、MRSA、ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori)、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、緑膿菌(P. aeruginosa)、およびA.フミガーツス(A. fumigatus)のような、抗生物質耐性細菌株に対して有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要がある対象の肺内のバイオフィルム関連感染症を破壊および処置するための方法であって、1つまたは複数の生物学的両親媒性分子(BAM)と、任意で1つまたは複数の殺生物性物質とを含む組成物を、対象へ投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
1つまたは複数の殺生物性物質が、ペニシリン類、テトラサイクリン類、セファロスポリン類、キノロン類、リンコマイシン類、マクロライド類、スルホンアミド類、グリコペプチド類、アミノグリコシド類、およびカルバペネム類より選択される抗生物質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1つまたは複数の殺生物性物質が、セファレキシン、セファドロキシル、クリンダマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、セフジニル、セフポドキシム、アモキシシリン、アンピシリン、およびペニシリンより選択される抗生物質である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の殺生物性物質が、抗菌効果を有する精油、ボタニカルおよび/または植物抽出物である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
1つまたは複数のBAMが微生物生物界面活性剤および/またはサポニンである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
微生物生物界面活性剤が、
ラムノ脂質(RLP)、ソホロ脂質(SLP)、セロビオース脂質、トレハロース脂質(TL)、およびマンノシルエリスリトール脂質(MEL)より選択される、糖脂質、
サーファクチン、イツリン、アスロファクチン(athrofactin)、フェンギシン、およびリケニシンより選択される、リポペプチド、
カルジオリピン、ならびに/または
脂肪酸エステル化合物
である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記対象がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、嚢胞性線維症(CF);喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);肺高血圧症;肺がん;肺線維症;気管支拡張症;急性呼吸促迫症候群;気腫;塵肺症;結核;非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症;SARS;MERS;Covid-19;または肺炎と診断されている、請求項1記載の方法。
【請求項9】
バイオフィルムが微生物の抗生物質耐性株によって引き起こされる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
微生物が、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、緑膿菌(P. aeruginosa)、またはA.フミガーツス(A. fumigatus)である、請求項10記載の方法。
【請求項11】
1つまたは複数の生物学的両親媒性分子(BAM)および1つまたは複数の殺生物性物質を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
1つまたは複数の殺生物性物質が、ペニシリン類、テトラサイクリン類、セファロスポリン類、キノロン類、リンコマイシン類、マクロライド類、スルホンアミド類、グリコペプチド類、アミノグリコシド類、およびカルバペネム類より選択される抗生物質である、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
1つまたは複数のBAMが生物界面活性剤および/またはサポニンである、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項14】
生物界面活性剤が、
ラムノ脂質(RLP)、ソホロ脂質(SLP)、セロビオース脂質、トレハロース脂質(TL)、およびマンノシルエリスリトール脂質(MEL)より選択される、糖脂質、
サーファクチン、イツリン、アルスロファクチン、フェンギシン、およびリケニシンより選択される、リポペプチド、
カルジオリピン、ならびに/または
脂肪酸エステル化合物
である、請求項11記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月10日に出願された、米国仮特許出願第62/846,084号に対する優先権を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
感染症の処置における主なツールである抗生物質は、典型的に、単細胞として機能する、浮遊性(プランクトン性)状態で研究された微生物殺傷効率に基づく。抗生物質効能の定量化は、例えば、伝統的な最小発育阻止濃度(MIC)アッセイにおいて行われる。しかし、多くのヒト(および他の動物)感染症を含む、ある微生物増殖は、現在、バイオフィルム状態で共に働く微生物からしばしば構成される微生物コロニー全体によって、引き起こされるかまたは悪化することが理解されている。バイオフィルムは、コロニーを取り囲み、例えば抗生物質および免疫系による、環境的損傷からコロニーを守る、接着性細胞外成分を含む。
【0003】
バイオフィルムは、医学の多くの領域において幅広い臨床的関連性を有する。シュードモナス属(Pseudomonas)およびスタフィロコッカス属(Staphylococcus)と一般的に関連するもののような細菌バイオフィルムは、難治性の感染症ならびに慢性の軽度の炎症の原因であることが公知である。細菌バイオフィルム中の細菌コロニーは、宿主の自然防御ならびに抗生物質処置に対して非常に耐性であるようである。バイオフィルムは、これらのコロニーが接着できる実質的にいかなる表面にもコロニーを形成する。これは人体内または人体上の表面を含む。それらは、しばしば、尿路カテーテル、経皮静脈ライン、および人工心臓弁のような生体材料に、コロニーを形成する。
【0004】
バイオフィルムは、浮遊性、プランクトン性細菌が留置医療器具などの表面に固着する場合に開始される。付着した細菌は増殖し、進行してミクロコロニー、続いて臨界質量を形成し、ここで、細菌のクロストークが生じ、クオラムセンシングとして公知の現象を誘発する。クオラムセンシングはバイオフィルム表現型をもたらし、非固着性細菌では発現または産生されないバイオフィルム産生遺伝子を作動させる。細菌は集合的に反応して、バイオフィルム表現型に特有の因子を発現し、これは、個々の細胞を取り囲み連結するエキソポリサッカライド(EPS)マトリックスの分泌をもたらす。バイオフィルム表現型は、微生物の塔の形成によって形態的に特徴付けられ、この塔は、埋め込まれた生きた細菌の層と、その間にある水路で構成される。ある環境条件下で、バイオフィルムは、浮遊性細菌を放出して分散し、他の場所でまたは他の表面上においてこのサイクルを続ける。
【0005】
バイオフィルムは浮遊性形態の同じ細菌とは異なる挙動を示す。異なるゲノム発現に起因して、バイオフィルム関連感染症は、プランクトン型感染症とは異なる臨床経過および抗生物質反応を有する。さらに、バイオフィルム関連感染症をあたかもそれらがプランクトン性感染症であるかのように処置することは、抗生物質耐性細菌をもたらす。これは、コロニーによって生成されるEPSマトリックスが、プランクトン形態の微生物を通常は殺すであろう抗生物質に対して耐性を発現する能力をコロニーに与えるためである。
【0006】
バイオフィルムが人体内に存在する場合、細菌は抗生物質の影響を遥かに受けにくいため、肺炎のような、ある感染症が、処置困難となり、潜在的に致命的となる。さらに、抗生物質はこれらのEPS保護微生物群を根絶できないため、抗生物質の使用は問題を悪化させ得、何故ならば、抗生物質は、ますます抗生物質耐性細菌を選択し、永続させるためである。これらの細菌としては、院内感染の世界的な主要原因である、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、および現在、市中に広く蔓延した細菌が挙げられる。
【0007】
強力なバイオフィルム形成能力を有する別の病原体は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)であり、これは、特に、宿主の防御システムが損なわれている場合に、急性および慢性感染症を引き起こすグラム陰性菌である。緑膿菌(P. aeruginosa)は、エキソポリサッカライド、例えば、PelおよびPslを産生し、これらはバイオフィルムの構造的安定性ならびに表面および他の細胞への接着を提供する。緑膿菌感染症を伴う疾患としては、嚢胞性線維症(CF)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられる。多くの抗生物質が、部分的に、バイオフィルムを形成する能力に起因して、緑膿菌の処置について無効となった。
【0008】
嚢胞性線維症(CF)は、肺、膵臓、肝臓、および腸に深刻な影響を与える常染色体性劣性遺伝病である。CFは、呼吸器系、消化器系、および生殖器系に大きな影響を与える、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子の突然変異と関連付けられている。CF患者の最も深刻な症状は、粘液の蓄積および炎症による気道の詰まりに起因する呼吸困難である。黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、および緑膿菌は、CF患者において肺感染症を引き起こす3つの最も一般的な生物である。
【0009】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺組織の破壊および小気道の機能障害に起因する、持続的な空気の流れの悪さを特徴とする疾患である。COPDの一般的な症状は、痰の発生、息切れ、および湿性咳嗽である。気道の炎症もまたCOPDの発症に関与する。炎症はプロテアーゼ-アンチプロテアーゼの不均衡、酸化剤-抗酸化剤の不均衡を引き起こし、これは、次に、肺胞破壊および気管支粘液腺肥大を引き起こす。
【0010】
真菌バイオフィルムもまた様々な肺疾患において重要な役割を果たす。例えば、真菌であるアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)は、慢性肺アスペルギルス症(CPA)およびアスペルギルス腫を引き起こすことが可能である。A.フミガーツスのバイオフィルムから産生されるエキソポリサッカライドは、ガラクトマンナン、ガラクトサミノガラクタン(GAG)、およびα-1,3-グルカンを含み、これらはバイオフィルムの接着力を媒介し、マトリックスの完全性を維持する。
【0011】
いったん緑膿菌(P. aerugionosa)およびA.フミガーツスのような生物が呼吸器内でバイオフィルムを形成すると、肺環境および細菌耐性機構のため、成功裏に根絶することは不可能となる。結果として、そのような感染症はやがて慢性化し、その結果、持続的な炎症により肺機能が低下する。
【0012】
現在、抗生物質はバイオフィルム関連感染症の処置に繰り返し失敗している。さらに、周知のまたは立証された抗バイオフィルム処置自体がない。実際、バイオフィルム状態の細菌は抗生物質に対して強固な耐性を有するだけでなく、アルコール、酸、およびヨウ素溶液のような、他の抗菌剤および殺生物剤に対しても耐性を有する。
【0013】
病原性バイオフィルム感染症を処置する試みとしては、反復および長期抗生物質療法、バイオフィルムの物理的除去(例えば、手術またはデブリードマン)、およびアルコールベースのフォームまたはジェルのような、局所滅菌剤が挙げられる。しかし、残念なことに、これらの処置は正常な生理機能を回復させることができず、自然免疫のホメオスタシスを乱す。抗生物質は耐性菌をますます増やし;手術またはデブリードマンは、感染についての別の潜在的な部位を作る解剖学的な傷を生じさせ;また、局所消毒剤は、片利共生微生物を根絶することによって病原性バイオフィルムの発生および成長を促し得る。
【0014】
バイオフィルムは、治療が困難な様々な疾患および健康状態の原因であり得る。従って、特に対象の呼吸器内におけるバイオフィルム感染症に関する、バイオフィルム形成を処置および/または予防するための材料および方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、呼吸器内(特に肺内)のバイオフィルム形成を処置、破壊、および/または予防するための組成物および方法、ならびに対象におけるバイオフィルム関連感染症に関連する症状、併存症、および疾患を処置するおよび/またはそれらの発症を予防するための組成物および方法を提供する。有利なことに、ある態様において、本発明は、病原性細菌の抗生物質耐性株と戦うための現在のアプローチを強化する。
【0016】
本発明はまた、対象の呼吸器内のバイオフィルム関連感染症を予防および/または処置するための方法を提供する。具体的には、本発明は、そのような処置および/または予防の必要がある対象の肺内のバイオフィルム関連感染症を処置および/または予防するための方法を提供する。いくつかの態様において、感染症は、スタフィロコッカス属、ヘモフィルス属(Haemophilus)、シュードモナス属、バークホルデリア属(Burkholderia)、アスペルギルス属(Aspergillus)、スケドスポリウム属(Scedosporium)、カンジダ属(Candida)、エクソフィアラ属(Exophiala)、ペニシリウム属(Penicillium)、またはアクロフィアロフォラ属(Acrophialophora)によって引き起こされ得る。
【0017】
さらなる態様において、感染症は、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、アスペルギルス・フミガーツス、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、スケドスポリウム・アピオスペルムム(Scedosporium apiospermum)、スケドスポリウム・プロリフィカンス(Scedosporium prolificans)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、エクソフィアラ・デルマチチジス(Exophiala dermatitidis)、ペニシリウム・エメルソニイ(Penicillium emersonii)、またはアクロフィアロフォラ・フジスポラ(Acrophialophora fusispora)によって引き起こされ得る。
【0018】
ある態様において、本発明の方法は、例えば微生物によって産生される、1つまたは複数の生物学的両親媒性分子(BAM)を含む組成物を利用する。好ましくは、組成物は1つまたは複数の追加の殺生物性物質をさらに含む。有利なことに、抗バイオフィルム組成物は、MRSA、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、A.フミガーツス、および緑膿菌を含む、薬剤耐性を有するかまたは薬剤耐性に関連するバイオフィルムを排除するために有用である。さらに、微生物は主題発明の処置に対して容易に耐性を獲得しない。
【0019】
特定の態様において、1つまたは複数の殺生物性物質は、例えば、例えば、ペニシリン類、テトラサイクリン類、セファロスポリン類、キノロン類、リンコマイシン類、マクロライド類、スルホンアミド類、グリコペプチド類、アミノグリコシド類、およびカルバペネム類を含む、抗生物質である。
【0020】
いくつかの態様において、殺生物性物質は、殺菌および/または抗菌効果を有する精油、ボタニカル、または他の植物抽出物を含み得る。これらは、例えば、ティーツリー、グレープフルーツ、レモン、オレガノ、シナモン、ユーカリ、シトロネラ、タイム、および/またはラベンダーの、油/抽出物を含むことができる。
【0021】
好ましい態様において、組成物は1つまたは複数のBAMを含み、ここで、BAMは、例えば、糖脂質(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質、セロビオース脂質、およびトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチンおよびリケニシン)、フラボ脂質(flavolipid)、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、脂肪酸エステル化合物、脂肪酸エーテル化合物、ならびに高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、および多糖-タンパク質-脂肪酸複合体より選択される生物界面活性剤である。
【0022】
1つまたは複数の生物界面活性剤は、以下のいずれか1つまたは組み合わせをさらに含み得る:生物学的または合成的に修飾されている形態を含む、生物界面活性剤の修飾形態、誘導体、分画、アイソフォーム、異性体またはサブタイプ。
【0023】
一態様において、1つまたは複数の生物界面活性剤は、臨界ミセル濃度(CMC)で組成物中に存在する。ある態様において、1つまたは複数の生物界面活性剤は、単離および/または精製されている。
【0024】
組成物は、例えば、担体、pH調整剤、緩衝液、局所麻酔剤、創傷治癒を促進する薬剤、バイオフィルムの分解を助ける薬剤、出血を止めるかつ/または血餅形成を促進する薬剤、ならびに他の治療用および非治療用成分を含む、他の成分を有し得る。
【0025】
ある態様において、組成物は、細菌バイオフィルムマトリックスを攻撃し、溶かすかまたは他の方法で弱め、バイオフィルム形成細菌または真菌の個々の細胞への殺生物性物質の浸透を可能にする。
【0026】
好ましい態様において、主題発明は、バイオフィルムの部位へ、または潜在的なバイオフィルム形成の部位へ、直接または間接的に、組成物を投与することによって、バイオフィルム形成を処置、破壊、および/または予防するための方法を提供する。
【0027】
ある態様において、方法は、バイオフィルム感染症を有すると診断されたかつ/またはバイオフィルム感染症に罹患する危険性があると診断された対象を処置するために使用され、ここで、方法は、その上に、バイオフィルムを有するか、またはバイオフィルム形成の可能性を有する患者中の部位へ、1つまたは複数の微生物BAMを含む組成物の有効量を投与する工程を含む。好ましい態様において、組成物は1つまたは複数の殺生物性物質をさらに含む。
【0028】
一態様において、主題発明は、バイオフィルムもしくは抗生物質耐性微生物によって引き起こされる、またはこれらに関連する、疾患の予防および/または処置のための方法を提供する。
【0029】
一態様において、組成物は、バイオフィルムに冒されているかまたは冒される危険性がある組織へ直接、局所送達システム(例えば、皮膚軟膏剤、鼻腔用スプレー、坐剤、経口吸入器もしくはネブライザー、点眼薬、丸剤もしくはカプセル剤、または経口液剤)によって対象中の部位へ投与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、バイオフィルム形成を処置、破壊および/または予防するための組成物および方法を提供する。これは、対象の呼吸器系内のバイオフィルム形成を処置、破壊および/または予防すること、ならびに対象中におけるバイオフィルム関連感染症に関連する症状、併存症、および疾患を処置するおよび/またはそれらの発症を予防することを含む。具体的には、本発明は、肺内のバイオフィルム関連感染症を処置および/または予防するための組成物および方法を提供する。有利なことに、本発明は、病原性細菌の抗生物質耐性株と戦うための現在のアプローチを強化する。
【0031】
選択した定義
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、バイオフィルム形成病原体に感染した、またはそれに感染する危険性がある、哺乳動物のような動物を指す。動物は、例えば、ブタ、ウマ、ヤギ、ネコ、マウス、ラット、イヌ、霊長動物、例えばサル、チンパンジーおよびオランウータン、モルモット、ハムスター、ウシ、ヒツジ、トリ、例えばニワトリ、爬虫類、魚、ならびに任意の他の脊椎動物または無脊椎動物であり得る。本発明の文脈における好ましい対象は、任意の性別のヒトである。対象は、乳児、幼児、思春期、ティーンエイジャー、成人、中高年および高齢者を含む、任意の年齢または発達段階の対象であり得る。
【0032】
バイオフィルム関連肺状態の「危険性がある」対象は、例えば、遺伝的または既存の呼吸状態、例えば、酸素補給、人工呼吸または挿管を必要とする状態を有する;喫煙歴または化学物質の吸入歴を有する;年齢または、例えばがんに起因して免疫力が低下している;かつ/または、呼吸器系に影響を及ぼす特定のウイルス、細菌、または真菌の伝染病が一般的である世界のある地域に住んでいる、対象である。
【0033】
本明細書において使用される場合、「感染症」は、疾患を引き起こすかまたは病原性の生物の、別の生物、組織、または細胞中への導入および/または別の生物、組織、または細胞中での存在を指す。
【0034】
本明細書において使用される場合、「バイオフィルム」は、細菌または真菌のような、微生物の複合凝集体であり、ここで、細胞は互いにおよび/または表面へ接着している。バイオフィルム中の細胞は、液体媒体の中で浮いたり泳いだりすることができる単細胞である、同じ生物のプランクトン性細胞とは生理学的に異なる。
【0035】
本明細書において使用される場合、疾患、状態、または障害の「予防(preventing)」または「予防(prevention)」は、その特定の徴候または症状の発症または進行を遅らせる、阻止する、抑制する、未然に防ぐ、および/または最小化することを意味する。予防は、対象の生涯を通じた無期限の、絶対的なまたは完全な予防を含み得るが、それは必須ではなく、徴候または症状が後になって依然として発症し得ることを意味する。予防は、そのような疾患、状態または障害の発症の重症度を軽減すること、および/または、より重症の状態または障害への状態または障害の進行を抑制することを含み得る。
【0036】
本明細書において使用される場合、疾患、状態、または障害の「処置(treating)」または「処置(treatment)」は、疾患、状態、または障害(例えば、感染症)の少なくとも1つの徴候または症状の根絶、好転、軽減、改善、または逆転を意味する。処置は、疾患、状態、または障害の完治を含み得るが、それは必須ではなく、処置はまた、部分的な根絶、好転、軽減、改善、または逆転を含み得ることを意味する。
【0037】
本明細書において使用される場合、「呼吸器」は、呼吸において機能する細胞および器官の系を意味し、特に、呼吸器の器官、組織、および細胞には、肺、鼻、鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、喉頭、気管、気管支、細気管支、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、肺胞、肺細胞(1型および2型)、繊毛粘膜上皮、粘膜上皮、扁平上皮細胞、肥満細胞、杯細胞、および上皮内樹状細胞が含まれる。
【0038】
本明細書において使用される場合、微生物の文脈における「制御」は、微生物を殺しかつ/または根絶すること、またはそうでなければ、特定の部位における微生物の個体数を減少させかつ/または病原性もしくはさらなる増殖を抑制することを指す。一態様において、微生物および/またはバイオフィルムが感染症を引き起こした場合、微生物および/またはバイオフィルムの制御は処置の一形態であり得る。
【0039】
用語「有効量」および「有効用量」は、部位へ投与されると、その部位で所望の効果(例えば、微生物の制御または感染症の処置)を提供することができる、化合物または組成物の量を指すために本開示において使用される。化合物または組成物の実際の量は、処置される特定の微生物、部位に存在する微生物の数、ならびに、例えばバイオフィルム感染症について、対象が処置される場合は、感染症の重症度、対象のサイズおよび健康状態、および化合物または組成物の投与経路を含むが、これらに限定されない、多数の因子に依存して変動するだろう。
【0040】
植物「抽出物」は、本明細書において使用される場合、植物の一部を溶媒にさらして溶媒を除去することから、または、沈殿、水蒸気蒸留、遠心分離、濾過、カラムクロマトグラフィー、界面活性剤溶解、およびコールドプレッシング(または圧搾)を含むが、これらに限定されない、当業者に公知の様々な化学的、免疫学的、生化学的、または物理的な手順を用いることから得られる材料を指す。植物抽出物は、例えば、精油を含み得る。植物材料は、根、茎、葉、花、またはそれらの部分を含み得る。
【0041】
用語「単離された」または「精製された」は、核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、低分子などの有機化合物、微生物細胞/株、または宿主細胞などの生物学的または天然の材料に関して使用される場合、材料が、それが自然界で関連する他の化合物(細胞材料など)を実質的に含まないことを意味する。即ち、材料は、これらの他の化合物無しでは天然に生じず、かつ/または、天然材料において見られるものと比較して異なるまたは独特の特徴を有する。
【0042】
ある態様において、精製された化合物は、少なくとも60重量%が関心対象の化合物である。好ましくは、調製物は、重量で少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%または100% (w/w)が所望の化合物である。純度は、任意の適切な標準法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって、測定される。
【0043】
「包含する」または「含有する」と同義である、「含む」という移行語は、包含的またはオープンエンドであり、追加の未記載の要素または方法ステップを除外しない。対照的に、「からなる」という移行句は、特許請求の範囲において特定されていないいかなる要素、ステップ、または成分も除外する。「から本質的になる」という移行句は、特定された材料またはステップ「および特許請求される発明の基本的かつ新規の特徴(複数可)に実質的に影響を与えないもの」に請求項の範囲を限定する。用語「含む」の使用は、記載される成分(複数可)「からなる」または「から本質的になる」他の態様を企図する。
【0044】
特に指定されていないかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される場合、用語「または」は包含的であると理解される。特に指定されていないかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される場合、用語「1つの(a)」、「および(and)」および「その(the)」は、単数または複数であると理解される。
【0045】
特に指定されていないかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書において使用される場合、用語「約」は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差内と理解される。約は、記載される値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解され得る。
【0046】
本明細書の変数の定義における化学基のリストの記載は、任意の単一の基またはリストされた基の組み合わせとしてのその変数の定義を含む。本明細書中の変数または局面についての態様の記載は、その態様を、任意の単一の態様として、または任意の他の態様もしくはその一部と組み合わせて含む。本明細書において援用される全ての参考文献は参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0047】
治療用組成物
ある態様において、本発明は、例えば微生物によって産生される、1つまたは複数の生物学的両親媒性分子(BAM)と、好ましくは1つまたは複数の殺生物性物質とを含む、組成物を利用する。有利なことに、いくつかの態様において、抗バイオフィルム組成物は、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)、緑膿菌、およびA.フミガーツスによって形成されるものを含む、薬剤耐性を有するかまたは薬剤耐性に関連するバイオフィルムを排除するために有用である。さらに、微生物は主題発明の処置に対して容易に耐性を獲得しない。
【0048】
一態様において、1つまたは複数のBAMおよび1つまたは複数の殺生物性物質は、バイオフィルムを破壊および処置することにおいて互いの機能を促進し得る。従って、1つまたは複数のBAMおよび1つまたは複数の殺生物性物質の組み合わせは、例えば、任意のBAMまたは殺生物性物質単独と比較した場合、バイオフィルムを破壊および処置することにおいて有利な特性を示す。
【0049】
好ましい態様において、部位への本発明の消毒組成物の投与は、未処置部位と比較した場合、部位での微生物の数および/またはバイオフィルムの形成を減少させる。有利なことに、好ましい態様において、対象中の部位へ投与されると、本発明に従う消毒組成物は、組織損傷を引き起こすことなく、バイオフィルム関連感染症の有効な制御および/または予防をもたらすことができる。
【0050】
有利なことに、好ましい態様において、本発明の組成物の成分は、病原性バイオフィルムの消散の促進ならびに正常な局所自然免疫反応の改善によって、関連する慢性炎症状態を改善しつつ、バイオフィルム形成およびバイオフィルム関連感染症を破壊および/または阻害するために一緒に機能する。
【0051】
特定の態様において、1つまたは複数の殺生物性物質は、例えば、例えば、ペニシリン類(例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、メチシリン、ピペラシリンなど)、テトラサイクリン類(例えば、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)、セファロスポリン類(例えば、セファドロキシル、セファレキシン、セフラジン、セファロチン、セファピリン、セファゾリン、セファクロル、セファマンドール、セフォニシド、セフォキシチン、セフォテタン、セフロキシム、セフロキシムアキセチル、セフィネタゾール(cefinetazole)、セフプロジル、ロラカルベフ、セフォラニド、セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフタジジム、セフィキシム、セフポドキシム、セフチブテンなど)、フルオロキノロン類(例えば、レボフロキサシン)、キノロン類(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、シプロフロキサシンおよびノルフロキサシンなど)、リンコマイシン類(例えば、クリンダマイシン)、マクロライド類(例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン)、スルホン類(例えば、ダプソン)、スルホンアミド類(例えば、スルファニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファセタミド、バクトリム)、リポペプチド類(例えば、ダプトマイシン)、ポリペプチド類(例えば、バシトラシン)、グリコペプチド類(例えば、バンコマイシン)、アミノグリコシド類(例えば、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、カナマイシンなど)、ニトイミダゾール類(nitoimidazoles)(例えば、メトロニダゾール)および/またはカルバペネム類(例えば、チエナマイシン)を含む、抗生物質である。
【0052】
主題発明に従う抗生物質または抗感染症薬のある具体例としては、アンピシリン、ドキシサイクリン、セファレキシン、シプロフロキサシン、スルファセタミド、クリンダマイシン、メトロニダゾール、エリスロマイシン、アジスロマイシン、スルファメトキサゾール、アモキシシリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、ダプソン、メチシリン、ペニシリン、バンコマイシン、バシトラシン、ダプトマイシン、バクトリム、トブラマイシン、p-アミノ安息香酸、ジアミノピリミジン、β-ラクタム、β-ラクタマーゼ阻害剤、グリコペプチド、クロラフェニコール(chloraphenicol)、マクロライド、コルチコステロイド、プロスタグランジン、シプロフロキサシン、リノマイシン(linomycin)、クリンダマイシン、スペクチノマイシン、ポリミキシンB、コリスチン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、エチオナミド、アミノサリチル酸、サイクロセリン、カプレオマイシン、スルホン、クロファジミン、サリドマイド、ポリエン系抗真菌薬、フルシトシン、イミダゾール、トリアゾール、グリセオフルビン、テルコナゾール、ブトコナゾール シクロピラクス(ciclopirax)、シクロピロクスオラミン、ハロプロジン、トルナフタート、ナフチフィン、テルビナフィン、レボフロキサシン、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
いくつかの態様において、殺生物性物質は、殺菌および/または抗菌効果を有する精油、ボタニカル、または他の植物抽出物を含むことができる。これらは、1~10%体積/体積(抽出物/発明)の濃度で油/抽出物、オオグルマ(イヌラ・ヘレニウム, L.(Inula helenium, L.)、キク科(Asteraceae)、エレキャンペーン)、バラ(ローザ・ダーマシーナL.(Rosa damascena L.)、バラ科(Rosaceae))、ラベンダー(ラバンデュラ・アングスティフォリアL.(Lavandula angustifolia L.)、シソ科(Labiatae))、カモミール(マトリカリア・レクティカL.(Matricaria recutica L.)、キク科)、オレンジ(ミカン科(Rutaceae))、グレープフルーツ(シトラス・パラディシ(Citrus paradisi))、ユーカリ(ユーカリプタス・グロブルスL.(Eucalyptus globulus L.)、フトモモ科(Myrtaceae))、ゼラニウム(ゼラニウム・ロベルティアナムL.(Geranium robertianum L.)、フウロソウ科(Geraniaceae))、ジュニパー(ジュニペルス・コムニスL.(Juniperus communis L.)、ヒノキ科(Cupressaceae))、シトラス(シトラス・シネンシスL.(Citrus sinensis L.)、ミカン科)、ティーツリー(メラセウカ・アルテルニフォリア(Melaceuca alternifolia))、マヌカブッシュ(レプトスペルマム・スコパリウム(Leptospermum scoparium))、ニーム樹(アザディラクタ・インディカ, A. ジュス(Azadirachta indica, A. Juss))、茶樹(カメリア・シネンシス(Camellia sinensis))、ローズマリー(ローズマリヌス・オフィキナリスL.(Rosmarinus officinalis L.)、シソ科(Lamiaceae))、レモン、オレガノ、シナモン、ユーカリ、シトロネラ、およびタイム油を含み得る。
【0054】
非治療用殺生物剤を含む、他の公知の殺生物剤、例えば、アルコール、アルデヒド、塩素、および塩素放出剤(例えば、 次亜塩素酸ナトリウム、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン)、ヨウ素、過酸素化合物(peroxygen compound)(例えば、過酸化水素、過酢酸)、フェノール型化合物、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム)、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム)、および酸(例えば、鉱酸および有機酸)もまた利用することができる。
【0055】
好ましい態様において、組成物は1つまたは複数のBAMをさらに含み、ここで、BAMは、例えば、低分子量糖脂質(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質、セロビオース脂質、およびトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチン、およびリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、脂肪酸エステル化合物、脂肪酸エーテル化合物、ならびに高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、および多糖-タンパク質-脂肪酸複合体より選択される生物界面活性剤である。
【0056】
1つまたは複数の生物界面活性剤は、以下のいずれか1つまたは組み合わせをさらに含み得る:生物学的または合成的に修飾されている形態を含む、生物界面活性剤の修飾形態、誘導体、分画、アイソフォーム、異性体またはサブタイプ。
【0057】
一態様において、1つまたは複数の生物界面活性剤は、臨界ミセル濃度(CMC)で組成物中に存在する。ある態様において、1つまたは複数の生物界面活性剤は、単離および/または精製されている。
【0058】
ある態様において、BAMの濃度は、約5%以下、好ましくは約0.5%~約2.5%、より好ましくは約0.7~1.5%である。
【0059】
特定の態様において、BAMは、界面活性剤、好ましくは生物界面活性剤である。生物界面活性剤は、それぞれの表面および界面での個々の分子間の表面張力および界面張力を低下させる表面活性化合物である。他の能力の中でも、生物界面活性剤は、ウイルス感染症に対する追加の免疫サポートを提供し、他の活性成分のバイオアベイラビリティーを高める。
【0060】
生物界面活性剤は、生分解性であり、再生可能な基質において選択生物を用いて産生され得る。大抵の生物界面活性剤産生生物は、生育培地中の炭化水素源(例えば、油、糖、グリセロールなど)の存在に反応して生物界面活性剤を産生する。鉄の濃度などの他の培地成分も生物界面活性剤の産生に大きく影響を与え得る。
【0061】
微生物生物界面活性剤は、例えば、シュードモナス種(緑膿菌、P.プチダ(P. putida)、P.フルオレッセンス(P. florescens)、P.フラギ(P. fragi)、P.シリンゲ(P. syringae));フラボバクテリウム種(Flavobacterium spp.);バチルス種(Bacillus spp.)(B.サブティリス(B. subtilis)、B.プミルス(B. pumillus)、B.リケニフォルミス(B. licheniformis)、B.アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、B.セレウス(B. cereus));ウィッカーハモマイセス種(Wickerhamomyces spp.)(例えば、W.アノマルス(W. anomalus))、カンジダ種(Candida spp.)(例えば、C.アルビカンス(C. albicans)、C.ルゴサ(C. rugosa)、C.トロピカリス(C. tropicalis)、C.リポリチカ(C. lipolytica)、C.トルロプシス(C. torulopsis));ロドコッカス種(Rhodococcus spp.);アルスロバクター種(Arthrobacter spp.);カンピロバクター種(Campylobacter spp.);コルニバクテリウム種(Cornybacterium spp.);ピキア種(Pichia spp.)(例えば、P.アノマラ(P. anomala)、P.ギリエルモンジィ(P. guilliermondii)、P.オクシデンタリス(P. occidentalis));スターメレラ種(Starmerella spp.)(例えば、S.ボンビコーラ(S. bombicola))などのような、様々な微生物によって産生される。
【0062】
全ての生物界面活性剤が両親媒性物質である。それらは2つの部分:極性(親水性)部分および無極性(疎水性)基からなる。脂肪酸の炭化水素鎖は、生物界面活性剤分子の共通の親油性部分として作用し、一方、親水性部分は、中性脂質のエステル基またはアルコール基によって、脂肪酸またはアミノ酸(もしくはペプチド)のカルボン酸基によって、フラボ脂質の場合は有機酸、または、糖脂質の場合は炭水化物によって、形成される。
【0063】
それらの両親媒性構造に起因して、生物界面活性剤は、疎水性非水溶性物質の表面積を増加させ、そのような物質の水バイオアベイラビリティーを高め、細菌の細胞表面の特性を変える。生物界面活性剤は、界面に蓄積し、従って、界面張力を低下させ、溶液中で凝集したミセル構造が形成される。生物界面活性剤の両親媒性構造は、自己会合および生体膜との相互作用を可能にする。生体膜に孔を形成して不安定にする生物界面活性剤の能力は、抗細菌剤、抗真菌剤、および溶血剤としてのそれらの使用を可能にする。低毒性および生分解性という特徴と合わせて、生物界面活性剤は、ヒトの健康を含む様々な適用における使用に有利である。
【0064】
一態様において、本発明に従う生物界面活性剤は、例えば、ラムノ脂質、ラムノース-d-リン脂質、トレハロース脂質、トレハロースジミコレート、トレハロースモノミコレート、マンノシルエリスリトール脂質、セロビオース脂質、ウスチラギン酸および/またはソホロ脂質(ラクトンおよび/または酸形態を含む)のような、糖脂質である。
【0065】
一態様において、生物界面活性剤は、例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチン、ビスコシン、アンフィシン、シリンゴマイシン、および/またはリケニシンのような、1つまたは複数のリポペプチドを含み得る。
【0066】
一態様において、生物界面活性剤は、例えば、カルジオリピン、エマルサン(emulsan)、リポマナン(lipomanan)、アラサン(alasan)、および/またはリポサン(liposan)のような、1つまたは複数の他のタイプの生物界面活性剤を含み得る。
【0067】
好ましい態様において、組成物は糖脂質生物界面活性剤を含む。特定の態様において、糖脂質は精製SLPである。SLPは、スターメレラ・ボンビコーラ(Starmerella bombicola)およびウィッカーハモマイセス・アノマルス(Wickerhamomyces anomalus)などの、酵母から得ることができる。SLPは、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、モラクセラ種(Moraxella sp.)、 ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、ロドコッカス・エリスポリス(Rhodococcus erythropolis)、およびサルモネラ・コレレスイス(Salmonella choleraesuis)に対して抗菌活性を有する。さらに、SLPは、微生物のクオラムセンシングを阻害し、バイオフィルムを破壊し、かつ/またはその形成を阻害することができる。これは特に感染症の処置に有用であり、何故ならば、ウイルスおよび細菌によるバイオフィルム形成は、それらが薬剤に対する耐性を獲得し、病原性を高めるためである。
【0068】
いくつかの態様において、組成物はリポペプチド生物界面活性剤を含む。特定の態様において、リポペプチド生物界面活性剤はサーファクチンである。リポペプチドは、例えば、納豆菌(Bacillus natto)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、乳酸菌などのような、様々なプロバイオティクスおよび非病原性細菌によって産生される。
【0069】
サーファクチンは、特に、最も強力なリポペプチド生物界面活性剤の1つである。サーファクチンは、様々なバチルス・サブティリス株によって産生され、抗菌性、抗腫瘍性、抗ウイルス性、および抗接着性を有することが示されている。それは、フィブリン血栓形成を阻害し、脂質二重層膜中のイオンチャネルの形成を誘導し、環状アデノシン一リン酸(cAMP)を阻害することができる。
【0070】
一態様において、界面活性剤は、生物界面活性剤のものと同様の物理的性質および/または挙動を有するが、生物界面活性剤として一般的に知られていない、1つまたは複数の微生物産生脂肪酸エステル化合物および/または脂肪酸エーテル化合物を含み得る。
【0071】
ある態様において、脂肪酸エステル化合物は、例えば、高度にエステル化されたオレイン酸脂肪酸、例えば、オレイン酸脂肪酸エチルエステルおよび/またはオレイン酸脂肪酸メチルエステル(FAME)を含み得る。
【0072】
一態様において、BAMはサポニンである。サポニンは、多くの植物中に見られ、微生物生物界面活性剤と同様の特徴、例えば、自己会合、および生体膜との相互作用を示す、界面活性剤である。トリテルペノイドサポニン、ステロイドサポニン、ステロイドグリコアルカロイドを含む、サポニンの3つの基本カテゴリーがある。
【0073】
いくつかの周知のトリテルペノイドサポニン蓄積植物の科としては、数多くの中でも、マメ科(Leguminosae)、ヒユ科(Amaranthaceae)、セリ科(Apiaceae)、ナデシコ科(Caryophyllaceae)、モチノキ科(Aquifoliaceae)、ウコギ科(Araliaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、メギ科(Berberidaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、ヤブコウジ科(Myrsinaceae)およびハマビシ科(Zygophyllaceae)が挙げられる。大豆、豆、およびエンドウ豆のようなマメ科植物は、トリテルペノイドサポニンの豊富な供給源である。ステロイドサポニンは、典型的に、リュウゼツラン科(Agavaceae)、ネギ科(Alliaceae)、キジカクシ科(Asparagaceae)、ヤマノイモ科(Dioscoreaceae)、ユリ科(Liliaceae)、ヒガンバナ科(Amaryllidaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、ヤシ科(Palmae)およびゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)のメンバーにおいて見られ、ヤムイモ、アリウム、アスパラガス、フェヌグリーク、ユッカ、および高麗人参などの作物に豊富に蓄積される。ステロイドグリコアルカロイドは、トマト、ジャガイモ、ナス、およびトウガラシを含むナス科(Solanaceae)のメンバーに一般的に見られる。
【0074】
多くのサポニンおよび他の生物界面活性剤の一つの顕著な特徴は、P-糖タンパク質(P-gp)を阻害するそれらの能力である。P-gpは、ATP依存性膜輸送タンパク質のメンバーであり、ATP依存性機構で基質を細胞外に排出することが公知である。腫瘍細胞中のP-gpの過剰発現は細胞内薬物濃度を低下させ、これは広範囲の抗腫瘍薬の効能を低下させる。従って、P-gpを阻害することは、これらの化合物の一部の細胞内バイオアベイラビリティーを潜在的に高める。
【0075】
従って、いくつかの態様において、サポニンなどの、生物界面活性剤は、例えば、組成物中に存在する他の化合物のバイオアベイラビリティーを高めることによって、組成物の有効性に寄与する。
【0076】
ある態様において、組成物は、細菌バイオフィルムマトリックスを攻撃し、溶かすかまたは他の方法で弱め、バイオフィルム形成細菌の個々の細胞への殺生物性物質の浸透を可能にする。本発明はまた、抗生物質がより少ない量で使用されることを可能にし、それによって毒性および治療費を減らす。
【0077】
組成物は、例えば、担体、pH調整剤、緩衝液、局所麻酔剤、創傷治癒を促進する薬剤、バイオフィルムの分解を助ける薬剤、出血を止めるかつ/または血餅形成を促進する薬剤、ならびに他の治療用および非治療用成分、例えば、抗ウイルス剤、殺真菌剤、化学療法剤、局所消毒薬、麻酔剤、酸素化流体および/または薬剤、診断用薬剤、ホメオパシー薬、ならびに市販薬/薬剤を含む、他の成分を有し得る。
【0078】
一態様において、組成物は、クエン酸、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の二、三および四ナトリウム塩、EDTAのカルシウム塩、エチレングリコール-ビス-(b-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA);1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N’,N’-四酢酸(BAPTA);エチレン-N,N’ジグリシン(EDDA);2,2’-(エチレンジイミノ)-二酪酸(EBDA);ラウロイルEDTA;ジラウロイルEDTA、トリエチレンテトラミンジヒドロクロリド(dihydrochioride)(TRIEN)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTG)、デフェロキサミン(DFO)、デフェラシロクス(DSX)、ジメルカプロール、クエン酸亜鉛、ペニシラミン、サクシマー、エジトロネート(editronate)、ヘキサメタリン酸ナトリウム(sodium hexmetaphosphate)、エデト酸カルシウム二ナトリウム、D-ペニシラミン、ポリフェノール、ガロール(gallol)、カテコール、ジメルカプロール、テトラチオモリブデート、ラクトフェリン、およびクリオキノール、ならびにそれらの組み合わせより好ましくは選択される、1つまたは複数のキレート剤を含み得る。
【0079】
組成物の製剤化および送達
主題発明の組成物は、直接適用によって、罹患組織、例えば、肺へ送達され、効能を著しく高めることができる。ある態様において、消毒組成物は、例えば、経口的に、注射によって(例えば、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、腹腔内、髄腔内または皮下)、経皮、直腸、泌尿生殖器(例えば、膣)、眼、耳、鼻、吸入、および皮膚経路を含む、任意の投与経路によって対象へ投与するために製剤化され得る。
【0080】
組成物は、ヒトの粘膜ならびに角質化した上皮および角質化していない上皮などの表面を含む、バイオフィルムによって冒された領域へ直接適用することができる。そのような局所療法の例としては、皮膚薬、鼻腔用スプレーおよび洗浄液、点耳薬、直腸投与薬、経口吸入器およびネブライザー、点眼薬、コンタクトレンズ、コンタクトレンズ液、口腔トローチ、歯磨剤、例えば、マウスウォッシュ、歯磨き粉、フロス、および歯周治療薬が挙げられる。各場合において、本発明の組成物は、その組成が投与部位に基づいて生理学的に適切であるビヒクルを介して投与される。
【0081】
一態様において、消毒組成物の成分は、例えば、1つまたは複数の担体(例えば、薬学的に許容される担体)および/または賦形剤のような、任意選択の追加の成分を含む、混合物として製剤化される。
【0082】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書において使用される場合、薬学的組成物の他の成分と適合し、その受容者に有害でないことを意味する。
【0083】
担体および/または賦形剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、ゲル、ローション、液剤、坐剤、点滴薬、パッチ、注射剤、吸入剤、およびエアロゾルのような、例えば、固体、半固体、液体、または気体の形態の調製物へ製剤化され得る。
【0084】
本発明に従う担体および/または賦形剤は、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、緩衝剤(例えば、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水、または任意でTris-HCl、酢酸もしくはリン酸緩衝液)、水中油型または油中水型エマルジョン、例えばIV使用に適した有機共溶媒を含むまたは含まない水性組成物、可溶化剤(例えば、Tween 80、Polysorbate 80)、コロイド、分散媒、ビヒクル、充填剤、キレート剤(例えば、EDTAもしくはグルタチオン)、アミノ酸(例えば、グリシン)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味剤、芳香剤、増粘剤、コーティング、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、張度調節剤、吸収遅延剤、アジュバント、増量剤(例えば、ラクトース、マンニトール)などを含むことができる。
【0085】
いくつかの場合において、担体は、例えば、滅菌または非滅菌の水性または非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液であり得る。非水性溶媒の例としては、非限定的に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および有機酸エステルが挙げられる。水性担体としては、非限定的に、水、アルコール、食塩水、および緩衝液が挙げられる。許容される担体はまた、生理学的に許容される水性ビヒクル(例えば、生理食塩水)または特定の投与経路に適している他の公知の担体を含み得る。薬物およびサプリメントの分野における担体および/または賦形剤の使用は周知である。サプリメント組成物と不適合である従来の媒体または薬剤を除き、本組成物中におけるその使用が企図され得る。
【0086】
一態様において、サプリメント組成物は、対象へ経口送達され得るように製剤化されている。特に、組成物は経口消費可能な製品として製剤化されている。
【0087】
本発明に従う経口消費可能な製品は、消費、栄養補給、口腔衛生または娯楽に適した任意の調製物または組成物であり、ヒトまたは動物の口腔内に導入され、一定期間そこに留まり、その後飲み込まれるか(例えば、消費の準備ができている食品)、または再び口腔内から取り出される(例えば、チューインガムもしくは口腔衛生製品もしくは医療用マウスウォッシュ)ように意図された製品である。これらの製品は、加工された状態、半加工された状態、または未加工の状態でヒトまたは動物によって摂取されるように意図された全ての物質または製品を含む。これはまた、経口消費可能な製品(例えば、抽出物、栄養素、サプリメント、または医薬品のような活性成分)へそれらの製造、処理または加工時に添加され、ヒトまたは動物の口腔内に導入されるように意図される物質を含む。
【0088】
経口消費可能な製品はまた、修飾されていない状態、調製された状態または加工された状態でヒトまたは動物によって飲み込まれ次いで消化されるように意図された物質を含み得る。これらは、製品と一緒に飲み込まれることが意図されている、あるいは飲み込むことが予想される、ケーシング、コーティング、または他のカプセル化を含む。
【0089】
本発明の組成物はまた、カプセル剤、錠剤(コーティングされていない錠剤およびコーティングされた錠剤、例えば、胃耐性コーティング)、コーティングされた錠剤、顆粒剤、ペレット剤、固体-物質混合物、液相中の分散物、エマルジョン、粉末、溶液、ペースト、またはその他の嚥下可能または咀嚼可能な調製物の形態で、あるいは栄養補助食品として、存在することができる。
【0090】
経口投与について、錠剤またはカプセル剤は、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、または湿潤剤などの許容される賦形剤を用いて従来の手段によって調製することができる。必要に応じて、錠剤をコーティングすることができる。経口投与用の調製物はまた、活性成分の制御放出を与えるために適切に製剤化することができる。経口投与用の液体調製物は、例えば、溶液、シロップ、または懸濁液の形態をとることができ、また、使用前に食塩水または他の好適な液体ビヒクルで構成するための乾燥製品として提示することもできる。
【0091】
本明細書に記載される製剤はまた、経口送達の特定の形態に依存して、当業者によって理解されるように、許容される添加剤を含有することができる。そのような添加剤の非限定的な例としては、必要に応じて、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル、保存剤、緩衝塩、香味剤、着色剤、および甘味剤が挙げられる。具体的な添加剤の非限定的な例としては、ゼラチン、グリセリン、水、蜜蝋、レシチン、ココア、キャラメル、二酸化チタン、およびカルミンが挙げられる。
【0092】
一態様において、組成物は、例えば液剤または懸濁剤としての、注射による投与のために製剤化され得る。液剤または懸濁剤は、好適な非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液もしくは等張塩化ナトリウム溶液、または、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤、例えば、無菌の、口当たりのいい、固定油、例えば、合成モノもしくはジグリセリド、および脂肪酸、例えば、オレイン酸を含むことができる。静脈内使用のための担体の一つの例示的な例としては、10% USPエタノール、40% USPプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール600、および残りのUSP注射用水(WFI)の混合物が挙げられる。静脈内使用のための他の例示的な担体としては、10% USPエタノールおよびUSP WFI;USP WFI中0.01~0.1%トリエタノールアミン;またはUSP WFI中0.01~0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリン;ならびに水中1~10%スクアレンまたは非経口植物油型エマルジョンが挙げられる。水または食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、好ましくは、担体として、特に注射液について、用いられ得る。皮下または筋肉内使用のための担体の例示的な例としては、リン酸緩衝食塩(PBS)溶液、WFI中5%デキストロース、およびUSP WFI中5%デキストロースもしくは0.9%塩化ナトリウム中0.01~0.1%トリエタノールアミン、または10% USPエタノール、40%プロピレングリコールおよび残りの許容される等張液(例えば、5%デキストロースもしくは0.9%塩化ナトリウム)の1対2または1対4混合物;またはUSP WFI中0.01~0.2%ジパルミトイルジホスファチジルコリン、ならびに水中1~10%スクアレンまたは非経口植物油型エマルジョンが挙げられる。
【0093】
他の製剤としてはまた、点眼薬、ゲル、軟膏剤、クリーム、または適用の領域に適している組成物の他の送達ビヒクル、眼周囲ローション、鼻腔内水性もしくは非水性スプレー、鼻食塩水リンス、皮膚石鹸、ローション、クリーム、軟化剤、ならびにコンタクトレンズ洗浄およびメンテナンス用の溶液、またはスプレーが挙げられる。
【0094】
一態様において、サプリメント組成物は自己形成送達システムへ製剤化され、ここで、BAMは、リポソーム、またはマイクロもしくはナノカプセルを形成し、殺生物性成分(複数可)がその中に封入されている。一態様において、封入のためのさらなる構造を提供するために、追加の生物学的ポリマーを含むことができる。
【0095】
BAM封入は、そうでなければ化合物へ結合しそれが標的部位へ浸透するのを妨げ得る、タンパク質および他の分子などの血液中の成分から、殺生物性成分を保護することによって、殺生物性成分(複数可)のバイオアベイラビリティーを高めることができる。さらに、封入送達システムは、それが酸または酵素に対するバリアーを作るため、GI管内の酸または酵素によってそうでなければ分解され得る化合物を経口投与することを可能にし得る。さらに、BAM封入送達システム製剤はその中の化合物(複数可)の徐放を可能にし、それによって対象における潜在的な毒性または潜在的な負の副作用を軽減する。
【0096】
例えば、緩衝液、担体、粘度調整剤、保存剤、香味剤、色素、および使用目的に応じた他の成分のような、当業者によって決定されるようなさらなる成分を、組成物へ添加することができる。当業者は、上記の説明は網羅的ではなく例示的であることを認識するだろう。実際に、特定の投与様式に適した多くの追加の製剤技術ならびに薬学的に許容される賦形剤および担体溶液が、当業者に周知である。
【0097】
一態様において、製剤のpHは、約5.5~8.0、約6.0~8.0、および約6.5~8.0、より好ましくは約6.5~7.5、最も好ましくは約7~7.4である。好ましいpHは、製剤に対する細菌耐性を回避するのに役立つ。
【0098】
方法
本発明は、対象の呼吸器内のバイオフィルム関連感染症を予防および/または処置するための方法を提供する。具体的には、本発明は、対象の肺内のバイオフィルム関連感染症を処置および/または予防するための方法を提供する。いくつかの態様において、感染症は、大腸菌(E. coli)、スタフィロコッカス属、ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)、ヘモフィルス属、クレブシエラ種(Klebsiella spp)、シュードモナス属、バークホルデリア属、アスペルギルス属、スケドスポリウム属、クラミジア属(Chlamydia)、カンジダ属、エクソフィアラ属、ペニシリウム属またはアクロフィアロフォラ属によって引き起こされ得る。
【0099】
さらなる態様において、感染症は、肺炎連鎖球菌 黄色ブドウ球菌、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、インフルエンザ菌、緑膿菌、マイコプラズマ・ニューモニア(Mycoplasma pneumonia)、バークホルデリア・セパシア、アスペルギルス・フミガーツス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・ニデュランス、アスペルギルス・テレウス、スケドスポリウム・アピオスペルムム、スケドスポリウム・プロリフィカンス、カンジダ・アルビカンス、エクソフィアラ・デルマチチジス、ペニシリウム・エメルソニイ、またはアクロフィアロフォラ・フジスポラによって引き起こされ得る。
【0100】
好ましい態様において、主題発明は、1つまたは複数の生物学的両親媒性分子を含む組成物を投与することによって対象の呼吸器内のバイオフィルム形成を処置、破壊および/または予防するための方法を提供する。好ましい態様において、組成物は1つまたは複数の殺生物性化合物をさらに含む。一態様において、方法は、バイオフィルムもしくは抗生物質耐性微生物によって引き起こされる、またはこれらに関連する、疾患の予防および/または処置のために使用され得る。
【0101】
特定の態様において、1つまたは複数の殺生物性物質は、例えば、前に挙げられたもの、例えば、ペニシリン類、テトラサイクリン類、セファロスポリン類、キノロン類、リンコマイシン類、マクロライド類、スルホンアミド類、グリコペプチド類、アミノグリコシド類、およびカルバペネム類を含む、抗生物質である。
【0102】
いくつかの態様において、殺生物性物質は、殺菌および/または抗菌効果を有する精油、ボタニカル、または他の植物抽出物を含むことができる。いくつかの態様において、殺生物性物質は、アルコール、クロルヘキシジン(例えば、CHG)、または過酸化水素などの、治療用または非治療用殺生物剤を含むことができる。
【0103】
好ましい態様において、組成物は1つまたは複数のBAMをさらに含み、ここで、BAMは、例えば、量糖脂質(weight glycolipid)(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、マンノシルエリスリトール脂質、セロビオース脂質、およびトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチンおよびリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、脂肪酸エステル化合物、脂肪酸エーテル化合物、ならびに高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、および多糖-タンパク質-脂肪酸複合体より選択される生物界面活性剤である。一態様において、BAMはサポニンである。
【0104】
ある態様において、抗バイオフィルム組成物の適用部位は、その上にバイオフィルを有するか、またはバイオフィルム形成についての潜在的な部位である。一態様において、主題発明は、新しく形成されたバイオフィルムおよび古いかつ/または慢性的なバイオフィルム、例えば、少なくとも1日間、2日間、5日間、1週間、2週間、3週間、または1ヶ月間またはそれ以上形成されたものを消散および排除することにおいて有効である。
【0105】
ある態様において、消毒処置は、バイオフィルム感染症を有すると診断されたかつ/またはバイオフィルム感染症に罹患する危険性があると診断された対象を処置するために使用され、ここで、方法は、患者中の部位へ、1つまたは複数の殺生物性物質および1つまたは複数の微生物BAMを含む組成物の有効量を投与する工程を含む。
【0106】
方法は、対象の体内の様々な部位のバイオフィルム関連感染症を予防および/または処置するために使用することができる。例えば、組成物は、バイオフィルムに冒されているかまたは冒される危険性がある組織へ直接、局所送達システム(例えば、皮膚軟膏剤、鼻腔用スプレー、経口吸入器もしくはネブライザー、点眼薬、または経口液剤)によって投与することができる。
【0107】
一態様において、部位は、バイオフィルム関連感染症を発症する危険性があるか、またはバイオフィルムの形成に関連する既存の感染症を有する、対象の体内の任意の部位であり得る。ある態様において、部位は、口腔、鼻腔、呼吸器、消化管(腸、胃、および結腸を含む)、尿生殖路、眼、副鼻腔、手術部位、インプラントおよび皮膚上より選択される。いくつかの態様において、組成物は部位へ直接または間接的に適用される。
【0108】
特定の態様において、バイオフィルム関連感染症を有するかまたはバイオフィルム関連感染症を発症する危険性を有する部位は、肺、鼻、鼻腔、副鼻腔、気管、気管支、細気管支、呼吸細気管支、肺胞管および手術部位より選択される。
【0109】
特定の態様において、患者は、先ず、本発明の組成物での処置前にバイオフィルム感染症と診断される。対象はまた、処置の効能にアクセスするために処置後および/または処置中にモニタリングされ得る。
【0110】
バイオフィルム感染症の場所は、例えばX線およびCTスキャンのような、イメージング技術によって決定することができる。一態様において、バイオフィルム感染症は、対象から生体試料を得ること;および、浮遊性(プランクトン性)状態ではなく、バイオフィルム状態の微生物に関連しかつ/またはこれによって選択的に発現される1つまたは複数のバイオマーカー(例えば、エキソポリサッカライド、タンパク質、mRNA)の存在を測定することによって、検出することができる。
【0111】
別の態様において、バイオフィルム感染症は、細菌細胞外多糖類(EPS)マトリックス、またはEPS中に含まれる化学物質の存在によって検出することができる。
【0112】
さらに、バイオフィルムを形成する薬剤耐性微生物および/または病原性微生物の種は、例えば、病原性微生物の存在に関連する抗原またはペプチドを認識する抗体を使用することによって、または病原性微生物の核酸分子を認識するプローブを使用することによって、決定することができる。
【0113】
用語「生体試料」は、本明細書において使用される場合、対象から単離された組織、細胞および/または生体液を含有する試料を含むが、これに限定されない。生体試料の例としては、組織、細胞、バイオプシー、血液、リンパ液、血清、血漿、尿、脳脊髄液、唾液、および涙液が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の態様において、生体試料は、血液、涙液、鼻腔液、および唾液を含む。
【0114】
主題発明に従って有用なバイオマーカーの存在および/またはレベルは、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、免疫学的アッセイ、免疫蛍光法、および核酸ハイブリダイゼーション技術のような、当技術分野において公知の技術によって決定することができる。
【0115】
一態様において、バイオフィルム感染症は抗生物質に耐性があると決定された。有利なことに、主題発明の抗バイオフィルム組成物は、薬剤耐性細菌株においてさえ、バイオフィルムを排除するかまたはバイオフィルムの形成を減少させるために有用である。さらに、主題発明は、細菌薬剤耐性を減少させることにおいて有用である。
【0116】
一態様において、抗バイオフィルム組成物は、化学療法剤および/または他の癌治療と併用して投与することができる。
【0117】
本発明の組成物を含む、組成物の抗バイオフィルム効能は、MBEC(最小バイオフィルム撲滅濃度)手順を実行するためのバイオフィルム接種用のFDAクラスI承認装置、Calgary Biofilm Device(参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,599,714号)、または抗バイオフィルム効能の他の評価手段を使用して評価され得る。用いることができる他の抗微生物試験としては、寒天もしくはディスク拡散法、Kirby-Bauer試験、および最小発育阻止濃度(MIC)が挙げられる。これらの技術は当業者に周知であり、本明細書において詳細に説明しない。プロトコルは、“Techniques in Microbiology”, John Lammert, Pearson Education, 2007、および“Microbiology Laboratory Fundamentals and Applications”, George A. Wistreich, Pearson Education, 2003において見られ得、これらは参照によりそれらの全体が組み入れられる。
【0118】
抗バイオフィルム効能(バイオフィルム阻害濃度またはBIC)は、試験される同じ抗微生物化合物および微生物について最小発育阻止濃度(MIC)試験を行うことによって、プランクトン性効能と直接比較することができる。さらに、抗バイオフィルム効能は、マヌカファクター(参照により本明細書に組み入れられる、Molan, Peter, “Method for the assay of antibacterial activity of honey”, 2005)と同様の分類システムを使用して測定することができ、但し、この場合、測定されるものは、ハチミツなどの化合物の抗微生物物質の殺傷直径(「阻害領域」)ではなく、完全なバイオフィルム成長阻害のサイズ(バイオフィルム阻害濃度またはBIC)である。この手順は、様々な細菌ならびに細菌群、例えば、グラム陰性細菌、メチシリン感受性およびメチシリン耐性ブドウ球菌などに対する組成物のBIC標準を開発するために使用される。
【0119】
本発明の態様において、抗バイオフィルム組成物の投与は、数日間またはそれ以上の間、毎日行われる。投与は、本明細書に記載されるように、経口、鼻腔、皮膚、静脈内投与などを含むが、これらに限定されない、任意の公知の薬物投与方法を含み得る。一態様において、サプリメント組成物は、熟練した医師によって対象ごとに判断して、1日当たり1回、2回、または3回、部位へ適用される。投与する用量の数を決定する際に考慮される因子としては、処置を受ける個人の年齢および対象の症状の重症度が挙げられる。
【0120】
一態様において、方法は、感染症が処置されたかどうかおよび/またはどの程度処置されたかを決定するために、対象に対して追跡検査を行うことをさらに含む。感染症の状況、および組成物が有効に感染症を処置しているかどうかを決定するために、治療期間中、例えば、毎日または1日おきに、対象をモニタリングすることができる。これは、例えば、感染症を診断するために使用される検査のような検査を行うこと、ならびに健康改善の兆しについて対象を観察することを含み得る。追跡検査が健康状態の改善率が所望のものよりも低いことを示す場合、熟練した実行者によって決定されるように組成物の投薬量を調整することができる。
【0121】
主題発明の抗バイオフィルム組成物は、広範囲の現在利用可能な送達デバイス、システム、および方法を使用して、多くの経路によって部位へ送達することができる。これらの経路としては、例えば、皮膚、腹腔内、頭蓋内、病巣内、胸腔内(手術中)、鼻、外耳道内、経口腸管前処置(oral bowel prep)として、胃洗浄、洗眼薬として、歯周、直腸、軟部組織、皮下、および膣経路が挙げられる。
【0122】
送達は、呼吸器感染症、尿路感染症、血流感染症、頭蓋内感染症、および関節感染症を含むが、これらに限定されない、様々な病原性バイオフィルムまたは潜在的病原性バイオフィルムによって引き起こされる感染症を処置するためにカテーテルを介して行うことができる。
【0123】
一態様において、組成物は、例えば、対象の呼吸器(例えば、肺)内の感染症を処置するために、吸入によって投与することができる。一態様において、感染症は、以下の肺状態によって引き起こされるか、これらを引き起こすか、またはこれらに関連する:嚢胞性線維症(CF);喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);肺高血圧症;肺がん;肺線維症;気管支拡張症;急性呼吸促迫症候群;気腫;塵肺症;結核;非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症;コロナウイルス、例えば、SARS-CoV、MERS-CoV、およびSARS-CoV-2;または、人工呼吸器関連肺炎、市中感染性肺炎、気管支肺炎、および大葉性肺炎を含むが、これらに限定されない肺炎。
【0124】
一態様において、対象は、挿管されたもしくは人工呼吸器が付けられた患者、肺移植のレシピエント、CF、COPD、気管支炎(例えば、慢性気管支炎および急性気管支炎)、百日咳(pertussis)(百日咳(whooping cough))、SARS、MERS、Covid-19、内耳感染症、連鎖球菌性咽頭炎、吸入炭疽、野兎病、肺高血圧症、肺がん、肺線維症、気管支拡張症、急性呼吸促迫症候群、気腫、塵肺症、結核、非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症、肺炎または副鼻腔炎と診断された患者であり得る。一態様において、患者はCFまたはCOPDを有する。一態様において、患者はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症を有する。
【0125】
特定の態様において、組成物は、バイオフィルムに関連する肺感染症を発症したか、またはそのような感染症を発症する危険性がある、CFまたはCOPD患者による吸入用に製剤化されている。特定の態様において、対象はCFまたはCOPDと診断された。
【0126】
一態様において、組成物は、感染症によって引き起こされる炎症を減少させることにおいて有効である。減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または炎症もしくは感染症の本質的に完全な減少、または前述の数値のいずれかの付近、または前述の数値のいずれか2つによって囲まれる範囲であり得る。
【0127】
一態様において、主題発明は、対象中におけるバイオフィルム関連感染症によって引き起こされる炎症を予防、軽減、および処置するための方法を提供し、ここで、該方法は、1つまたは複数の生物学的両親媒性分子(BAM)と、任意で1つまたは複数の殺生物性物質とを含む組成物を、対象へ投与する工程を含む。好ましくは、炎症は、呼吸器感染症、尿路感染症、血流感染症、頭蓋内感染症、および関節感染症によって引き起こされる。より好ましくは、炎症は、バイオフィルムの形成によって引き起こされる肺感染症である。
【0128】
一態様において、BAMおよび/または抗生物質を含む組成物は、感染症の処置が強制呼気量(FEV)の増加をもたらすように、一定期間にわたって対象中へ投与される。増加は、少なくとも2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、または前述の数値のいずれかの付近、または前述の数値のいずれか2つによって囲まれる範囲であり得る。
【0129】
一態様において、組成物は、例えば、髄膜炎を含むが、これに限定されない、脊髄感染症を処置および/または予防するために注射器を介して投与することができる。
【0130】
一態様において、組成物は、慢性創傷および火傷などの適切な部位を処置するために、または鼻腔投与のために、スプレーまたはミストを介して、または、例えば生物兵器になどに関連する病的な作用物質にさらされた、またはそれが疑われる対象を消毒するために、全身または局所のシャワーとして、投与することができる。
【0131】
一態様において、組成物は、治癒過程にある組織の部位へ投与することができる。本発明の目的について、治癒過程にある組織部位は、創傷または疾患を患いそして該創傷または疾患についての処置後に回復しつつある組織の領域である。治癒過程にある組織部位は、呼吸器または肺の表面にあり得る。
【0132】
一態様において、組成物は、経口服用される錠剤、マイクロカプセル送達球、ナノ粒子、標的ナノ粒子(例えば、受容体介在性の標的ナノ粒子)、時間制御送達システム、滅菌した消毒組成物の凍結ブロック、活性剤の単純な水溶液、活性剤の等張液、または埋め込み型の徐放性送達システムを介して投与することができる。
【0133】
ある態様において、組成物は、部位へ投与された後、該部位に残る。さらなる態様において、該部位または該組織は、例えば活性剤を含まない滅菌した溶液でリンスされる。活性剤を含まない溶液の例としては、活性剤を含まない淡水、食塩水、および等張液が挙げられるが、これらに限定されない。リンスは、活性剤を含まない溶液を該部位に投与し、例えば吸引によって、結果として生じた該溶液を該部位または該組織から取り除くことによって実施され得る。ある態様において、リンスは、対象中の部位へ組成物を投与した時点から約1分~約10分、約2分~約5分、または約3分以内で実施される。他の態様において、リンスの有無にかかわらず吸引が実施される。
【0134】
主題発明に従う方法において使用するための用量は、処置が治療的であるかまたは予防的であるか、症状の発症、進行、重症度、頻度、期間、確率もしくは感受性、処置が向けられるタイプ病因、望まれる臨床的エンドポイント、前、同時または後処置、対象の全体的な健康、年齢、性別または人種、バイオアベイラビリティー、潜在的な有害な全身性、局部性または局所性の副作用、対象中における他の障害または疾患の存在、および当業者によって認識されるであろう他の要因(例えば、病歴または家族歴)に依存して変動し得る。
【0135】
投与量、頻度または期間は、望まれる臨床結果、感染症、症状もしくは病理の状況、処置もしくは療法の有害な副作用によって示されるように、増減することができる。当業者は、予防または治療効果または利益を提供するために十分なまたは有効な量を提供するために必要とされる投薬量、頻度およびタイミングに影響を与え得る要因を認識するだろう。正確な投薬量は、処置を必要とする対象に関連する要因に照らして実行者によって決定されるだろう。活性剤(複数可)の十分なレベルを提供するためにまたは所望の効果を維持するために、投薬量および投与が調節される。本明細書に記載される処置は、疾患の予防、症状の改善、疾患進行の遅延、損傷の逆転、または疾患の治癒を含むことが認識されるだろう。
【0136】
バイオフィルム関連感染症を処置するための組成物は、1つまたは複数の抗生物質を、約0.01 mg/用量~3000 mg/用量、約0.1 mg/用量~2000 mg/用量、約1 mg/用量~1500 mg/用量、約10 mg/用量~1000 mg/用量、約20 mg/用量~800 mg/用量、約50 mg/用量~500 mg/用量、約100 mg/用量~300 mg/用量、または約100 mg/用量~200 mg/用量含み得る。好ましくは、抗生物質は、約10 mg/用量、20 mg/用量、30 mg/用量、50 mg/用量、100 mg/用量、150 mg/用量、200 mg/用量、250 mg/用量、200 mg/用量または300mg/用量で吸入可能組成物において提供される。
【0137】
1日当たりの抗生物質の総量は、約0.01 mg/日~6,000 mg/日、約0.1 mg/日~5,500 mg/日、約1 mg/日~5,000 mg/日、約10 mg/日~4,500 mg/日、約20 mg/日~4,000 mg/日、約30 mg/日~3,000 mg/日、約50 mg/日~2,000 mg/日、約100 mg/日~2,000 mg/日、約150 mg/日~2,000 mg/日、約200 mg/日~2,000 mg/日、約250mg/日~2,000mg/日、約300 mg/日~1,500 mg/日、約500 mg/日~1,000 mg/日、または約800 mg/日~1,000 mg/日であり得る。好ましくは、抗生物質は、約200 mg/日、300 mg/日、500 mg/日、1,000 mg/日または1,250 mg/日で吸入可能組成物において提供される。
【0138】
バイオフィルム関連感染症を処置するための組成物は、1つまたは複数のBAMを約0.01 mg/用量~3000 mg/用量、約0.1 mg/用量~2000 mg/用量、約0.5 mg/用量~1000 mg/用量、約1 mg/用量~1000 mg/用量、約10 mg/用量~1000 mg/用量、約20 mg/用量~800 mg/用量、約50 mg/用量~500 mg/用量、約100 mg/用量~300 mg/用量、約100 mg/用量~200 mg/用量、約0.1 mg/用量~100 mg/用量、約0.5 mg/用量~100 mg/用量、約1 mg/用量~100 mg/用量、約5 mg/用量~100 mg/用量、約10 mg/用量~100 mg/用量または約0.1 mg/用量~10 mg/用量含む。好ましくは、BAMは、約0.1 mg/用量、0.5 mg/用量、1 mg/用量、5 mg/用量、10 mg/用量、20 mg/用量、30 mg/用量、50 mg/用量、100 mg/用量、150 mg/用量、200 mg/用量、250 mg/用量、200 mg/用量または300mg/用量で吸入可能組成物において提供される。
【0139】
活性スペクトル
主題発明の組成物および方法は、好気的におよび/または嫌気的に増殖するバイオフィルムに適している。バイオフィルムの制御は、生物学的または非生物学的表面へのバイオフィルムまたは病原性微生物の沈着、接着、および/または固定を防止、阻害、および/または妨害すること;エキソポリサッカライド(EPS)マトリックスのような細胞外因子の分泌および/または放出を防止、阻害、および/または妨害すること;ならびに/または、クオラムセンシング機構を防止、阻害、および/または妨害することを含む、様々な機構によって達成することができる。これらの病原体としては、好気性および嫌気性のグラム陽性およびグラム陰性細菌が挙げられる。
【0140】
バイオフィルムの形成の排除、予防または阻害に加えて、主題発明の組成物はまた、あるバイオフィルム形成細菌を「脱病原体化(depathogenize)」し、これらの細菌の感染力を弱めることができる。有利なことに、主題発明に従う消毒組成物の投与は、組織損傷を引き起こすことなく、バイオフィルム関連感染症の有効な制御をもたらすことができる。
【0141】
微生物は、ストレプトコッカス種(Streptococcus spp.)(例えば、S.アガラクチア(S. agalactiae)、肺炎連鎖球菌、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)、S.サリバリウス(S. salivarius)、およびS.サンギス(S. sanguis));スタフィロコッカス種(例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、溶血性連鎖球菌(S. haemolyticus)、S.ホミニス(S. hominis)、およびS.シミュランス(S. simulans)、ならびにオキサシリン耐性(ORSA)およびオキサシリン感受性ブドウ球菌(メチシリン耐性[MRSA]またはメチシリン感受性ブドウ球菌としても公知));アシネトバクター種(Acinetobacter spp.)(例えば、A.フミガーツス、A.フラバス);アクロフィアロフォラ種(例えば、A.フジスポラ);アスペルギルス種(例えば、A.ニデュランス、A.テレウス);バクテロイデス種(Bacteroides spp.)(例えば、B.フラギリス(B. fragilis));バークホルデリア種(例えば、B.セパシア);カンジダ種(例えば、C.アルビカンス);クラミジア種;クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile);エンテロバクター種(Enterobacter spp.);エンテロコッカス種(Enterococcus spp.)(例えば、E.フェカリス(E. faecalis)およびE.フェシウム(E. faecium)、バンコマイシン感受性およびバンコマイシン耐性株);大腸菌;エクソフィアラ種(例えば、E.デルマチチジス);フランシセラ種(Francisella spp.);ヘモフィルス種(例えば、インフルエンザ菌(H. influenzae));ヘリコバクター種(Helicobater spp.)(例えば、H.ビリス(H. bilis)、H.ビゾゼロニイ(H. bizzozeronii)、H.カナデンシス(H. canadensis)、H.カニス(H. canis)、H.シネディ(H. cinaedi)、H.フェンネリア(H. fennelliae)、H.ハイルマニ(H. heilmannii)、H.ヘパティカス(H. hepaticus)、H.プロルム(H. pullorum)、H.ピロリ(H. pylori)、H.ラピニ(H. rappini)、H.サルモニス(H. salmonis)、およびH.スイス(H. suis));クレブシエラ種(例えば、K.アエロゲネス(K. aerogenes)、K.ニューモニア(K. pneumonia));マイコプラズマ・ニューモニア;ペニシリウム・エメルソニイ;プロピオニバクテリウム種(Propionibacterium spp.);プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis);シュードモナス種(例えば、緑膿菌);サルモネラ種(Salmonella spp.);スケドスポリウム種(例えば、S.アピオスペルムム、S.プロリフィカンス);セレノモナス種(Selenomonas spp.);ステノトロホモナス種(Stenotrophomonas spp.)(例えば、S.マルトフィリア(S. maltophilia));ベイロネラ種(Veillonella spp.);およびエルシニア・ペスチス(Yersinia pestis)より選択され得るが、これらに限定されない。
【0142】
バイオフィルム感染症に関連する状態
有利なことに、本発明は、バイオフィルム感染症によって引き起こされる疾患、障害、および状態の同時改善、バイオフィルム感染症の発症の減少、ならびに抗生物質耐性細菌株の出現の減少をもたらすことができる。
【0143】
ある態様において、主題発明は、バイオフィルムによって引き起こされるかまたはバイオフィルムに関連する疾患を予防、処置、または改善するために使用することができる。これらとしては、セプシス、敗血症、アレルギー、喘息、アスペルギルス症、「スイマー耳」、外耳炎、中耳炎、慢性耳炎、アトピー性皮膚炎、慢性鼻副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、慢性気管支炎、嚢胞性線維症、鼻感染症、副鼻腔感染症、伝染性結膜炎、眼感染症、ドライアイ症候群、偏頭痛、不安、うつ病、慢性歯肉炎、慢性歯周炎、胃痛、悪心、嘔吐、消化性潰瘍、胃がん、胃炎、GI出血、下痢、便秘、ガス、鼓脹、食物過敏症、胸焼け、呑酸、GERD、消化不良、IBS、がん(例えば、結腸がん)、湿疹皮膚炎、ざ瘡、慢性非治癒性創傷、慢性膀胱炎、慢性眼瞼炎(bchronic blepharitis)、マイボーム腺炎、酒さ、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、急性虚血発作、心筋梗塞、肝細胞がん、肝硬変および肝性脳症、非アルコール性脂肪性肝疾患および線維症、急性および慢性膵炎発病、自己免疫性膵炎、糖尿病およびメタボリックシンドローム、慢性扁桃炎、ならびにアデノイド咽頭炎が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0144】
ある態様において、主題発明は、バイオフィルムによって引き起こされるかまたはバイオフィルムに関連する肺疾患を、予防、処置、または改善するために使用することができる。これらの肺疾患としては、嚢胞性線維症(CF);喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);肺高血圧症;肺がん;肺線維症;気管支拡張症;急性呼吸促迫症候群;気腫;塵肺症;結核;非結核性抗酸菌(NTM)肺感染症;SARS、MERS、Covid-19、もしくは他のコロナウイルス;または、人工呼吸器関連肺炎、市中感染性肺炎、気管支肺炎、および大葉性肺炎を含むが、これらに限定されない肺炎が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0145】
一態様において、本発明は、無生物、例えば、人工呼吸器、気管内チューブ、酸素マスク、外科用インプラント、ステント、カテーテル、および他の留置医療機器中または上におけるバイオフィルムの形成を防止または低減するために使用される。
【国際調査報告】