(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-12
(54)【発明の名称】オレフィン重合用活性化触媒成分
(51)【国際特許分類】
C08F 4/654 20060101AFI20220705BHJP
【FI】
C08F4/654
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566981
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 US2020031756
(87)【国際公開番号】W WO2020231716
(87)【国際公開日】2020-11-19
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】マリン、ウラジーミル
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC05
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC36B
4J128CA16A
4J128CB30A
4J128CB37A
4J128CB44A
4J128CB89A
4J128CB92A
4J128DA02
4J128EA01
4J128EB04
4J128EC01
4J128FA01
4J128FA04
4J128GA05
4J128GA09
4J128GA21
4J128GB02
(57)【要約】
【解決手段】 マグネシウム化合物、チタン化合物、有機ケイ素化合物、担持電子供与体、及び少なくとも1つの内部電子供与体から形成される活性化固体触媒成分が、開示されている。固体触媒成分は、アルミニウム化合物などの活性化剤との反応によってチタン及び炭素結合を含むよう、活性化される。一実施形態では、少量のポリマーが、活性化中に触媒成分と重合される。活性化触媒成分は安定であり、形成時、様々なポリオレフィンポリマーを生成するために後で使用することができる。触媒が初期重合中に過熱及び分解しないよう、活性化触媒成分の反応速度が制御されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合用の活性化非フタル酸固体触媒成分であって、
(a)ハロゲン化物含有マグネシウム化合物、
(b)少なくとも+3及び+2の酸化状態でチタンを含有するチタン化合物、
(c)Si-O基を含む有機ケイ素化合物、
(d)アルキルアルミニウム化合物、
(e)モノ安息香酸を含む担持電子供与体であって、前記担持電子供与体が、約0.01重量%~約5重量%の量で前記触媒成分中に存在する、担持電子供与体、
(f)少なくとも1つの内部電子供与体であって、前記少なくとも1つの内部電子供与体が、約1重量%~約15重量%の量で前記触媒成分中に存在する、少なくとも1つの内部電子供与体、の反応生成物、及び
式:CH
2=CHR
1のα-オレフィンから形成されるポリマーであって、式中、R
1は水素又はC1~C7アルキル基を含み、触媒成分1グラムあたり約0.3g~約200gの量で前記触媒成分中に存在する、ポリマー、を含む、活性化非フタル酸固体触媒成分。
【請求項2】
前記少なくとも1つの内部電子供与体がアリールジエステルを含む、請求項1に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項3】
前記α-オレフィンが、エチレン又はプロピレンを含む、請求項1又は2に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項4】
前記ハロゲン化物含有マグネシウム化合物が、塩化マグネシウムを含む、請求項1、2又は3に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項5】
前記オレフィンポリマーが、活性化固形触媒成分1グラムあたり約20g以下の量で存在する、請求項1、2、3又は4に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項6】
前記有機ケイ素化合物が、以下の化学構造:
RnSi(OR’)
4-n
式中、
各Rは、H、アルキル、又はアリールであり、
各R’は、H、アルキル、アリール、又はSiRn(OR’)3-nであり、
nは、0、1、2、又は3である、
を有するシラン、シロキサン又はポリシロキサンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項7】
前記内部電子供与体が、下式により表される、
【化1】
式中、
R
15~R
20の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、
qは、0~12の整数である、請求項1~6のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項8】
前記内部電子供与体が、下式の1つによって表され、
【化2】
式中、R1~R4は同一であるか、又は異なっており、R1~R4の各々は、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換又は非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、R1~R4の少なくとも1つは水素ではなく、E1及びE2は同一であるか、又は異なっており、E1及びE2の各々は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換又は非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、
式中、X
1とX
2はそれぞれ、O、S、アルキル基、又はNR
5であり、式中、R
5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素であり、又は
【化3】
式中、
R
1~R
6の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、又は
【化4】
R
7~R
14の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロアリール基、又はヘテロアリールアルキル基である、請求項1~7のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項9】
前記担持電子供与体は、下式を有し、
【化5】
式中、R’は、アルキル基、環状基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はこれらの組み合わせを含み、R’’は、1つ以上の置換基を含み、各置換基は、独立して、水素、アルキル基、環状基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項10】
前記チタン化合物が、+2~+4の酸化状態を有するチタンを含み、前記+3の酸化状態のチタンは、60%超、例えば65%超、例えば70%超の量で存在し、前記+4の酸化状態のチタンは、0.01%~20%の量で存在し、更に、前記+2の酸化状態のチタンは、1%~20%の量で存在している、請求項1~9のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項11】
前記触媒成分が、約5ミクロン~約300ミクロン、例えば約5ミクロン~約70ミクロンの平均粒径を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項12】
前記固体触媒成分が有機リン化合物を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項13】
前記有機リン化合物がリン酸エステルを含む、請求項12に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項14】
前記活性化固形触媒成分は触媒粒子を含み、前記α-オレフィンから形成される前記ポリマーは、前記触媒粒子上に少なくとも部分的なコーティングを形成する、請求項1~13のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項15】
活性制限剤を更に含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項16】
前記活性制限剤は、C4~C30脂肪族酸エステル、ジエーテル、又はC4~C30脂肪族酸のポリ(アルケングリコール)エステルを含む、請求項15に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項17】
前記担持電子供与体は、約0.01重量%~約3重量%の量で前記触媒成分中に存在し、前記少なくとも1つの内部電子供与体は、約3重量%~約10重量%の量で前記触媒成分中に存在する、請求項1~16のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項18】
前記固形触媒成分がチタン及び炭素結合を含有するという点で、前記固形触媒成分が活性化される、請求項1~17のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項19】
前記担持電子供与体が、安息香酸エチルを含む、請求項9に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項20】
前記活性化固形触媒成分が、約0.1~約200、例えば約0.1~約20のモル比でアルミニウム対チタンを含み、約0.05~約10、例えば約0.1~約10のモル比でシリコン対チタンを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項21】
固体触媒成分が形成され、その後、関連する前記ポリマーを有する前記活性化固形触媒を形成するために重合反応器に供給される、請求項1~20のいずれか一項に記載の活性化固体触媒成分。
【請求項22】
活性化固体触媒成分を生成するためのプロセスであって、
a.マグネシウムアルコキシドMg(OR)
nX
2-n、又はマグネシウムアルコラートMgX
2mROHとTi(OR’’)gX4-gとを反応させて、触媒前駆体成分を形成することであって、XはBr、Cl又はIであり、nは1、2であり、mは0.5~10であり、gは0、1、2、3又は4であり、更に、R、R’、R’’は、独立して、C1~C10アルキルであり、前記触媒前駆体は、担持電子供与体及び内部電子供与体を含有する、ことと、
b.下式R
2nSi(OR
3)4-nの有機ケイ素化合物の存在下で、(a)から得られた前記生成物を、トリアルキルアルミニウム化合物と反応させることであって、式中、R
2はH、アルキル、又はアリールであり、各
R
3は、H、アルキル又はアリールであり、nは、0、1、2、又は3である、ことと、
c.(b)で得られた前記生成物を、式CH2=CHR’のオレフィンと反応させることであって、式中、R’=H、又はC1-C7アルキル基であり、前記オレフィンを重合化して、前記固体触媒成分粒子上にポリマーコーティングを形成し、前記オレフィンポリマーは、前記活性化固体触媒成分1gあたり200g未満の量で存在する、ことと、
d.前記活性化固形触媒成分を単離することと、を含む、プロセス。
【請求項23】
前記活性制限剤は、ステップb)で添加され、前記活性制限剤は、C4~C30脂肪族酸エステル、ジエーテルを含むか、又はC4~C30脂肪族酸のポリ(アルケングリコール)エステルが添加される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記内部電子供与体は、下式の1つによって表され、
【化6】
式中、R1~R4、El、E2は同一であるか、又は異なっており、R1~R4、El、E2の各々は、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換又は非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、R1~R4の少なくとも1つは水素ではなく、E1及びE2は同一であるか、又は異なっており、E1及びE2の各々は、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換又は非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、
X
1とX
2はそれぞれ、O、S、アルキル基、又はNR
5であり、R
5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、あるいは水素であり、又は
【化7】
式中、
R
1~R
14の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、
qは、0~12の整数であり、
前記担持電子供与体は、下式を有し、
【化8】
式中、R’は、アルキル基、環状基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はこれらの組み合わせを含み、R’’は、1つ以上の置換基を含み、各置換基は、独立して、水素、アルキル基、環状基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はこれらの組み合わせを含む、請求項22又は23に記載のプロセス。
【請求項25】
オレフィンポリマーを生成するためのプロセスであって、
活性化固体触媒成分の存在下で、気相重合反応器中でオレフィンを重合することであって、前記活性化固形触媒成分は、
(a)ハロゲン化物含有マグネシウム化合物、
(b)少なくとも+3及び+2の酸化状態でチタンを有するチタン化合物、
(c)Si-0基を含む有機ケイ素化合物、
(d)アルキルアルミニウム化合物、
(e)モノ安息香酸を含む担持電子供与体であって、前記担持電子供与体が、約0.01重量%~約5重量%の量で前記触媒成分中に存在する、担持電子供与体、
(f)少なくとも1つの内部電子供与体であって、前記内部電子供与体は、アリールジエステルを含み、前記少なくとも1つの内部電子供与体は、約1重量%~約15重量%の量で前記触媒成分に存在する、少なくとも1つの内部電子供与体、及び
(g)式:CH
2=CHR
1のα-オレフィンから形成されるポリマーであって、式中、R
1は水素、又はC1~C7アルキル基を含み、前記αオレフィンポリマーは、前記触媒粒子にコーティングを形成し、触媒粒子1グラムあたり約0.3g~約200gの量で前記触媒成分中に存在する、ポリマー、を含み、
前記活性化固形触媒成分は、前記重合反応器の外側で調製され、前記反応器へと供給される、ことを含む、プロセス。
【請求項26】
前記オレフィンは流動床で重合される、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記オレフィンは撹拌ガス反応器内で重合される、請求項25に記載のプロセス。
【請求項28】
前記固形触媒成分は、オレフィンポリマーを生成するために前記オレフィンと組み合わせて前記反応器に供給される、請求項25、26又は27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記プロセスは、ポリプロピレンホモポリマー、又はポリプロピレンコポリマーを生成する、請求項25~28のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項30】
前記プロセスで生成される前記ポリマーは、約0.75超のB/L3を有し、約0.4g/cc超、例えば約0.45g/cc~約0.6g/ccの嵩密度を有する、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記プロセスによって生成される前記ポリマーは、出口直径8.0mmの漏斗で測定して、約3.5g/秒超、例えば約4g/秒の流動性を有する、請求項29又は30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記プロセスによって生成される前記ポリマーは、前記ゴム部の約30重量%超、例えば約40重量%~65重量%の量でゴム部にエチレンを含有する、プロピレンエチレンインパクトコポリマーである、請求項29、30又は31に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、参照により本明細書に組み込まれる2019年5月10日に出願された米国仮特許出願第62/846,130号に基づき、かつその優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンは、単純オレフィン由来のポリマーの一分類である。ポリオレフィンを製造する周知の方法は、チーグラー-ナッタ型重合触媒の使用を伴う。これらの触媒は、オレフィンモノマーを遷移金属ハロゲン化物を用いてを重合し、様々な種類の立体化学的配置を有するポリマーを提供する。
【0003】
チーグラー・ナッタ触媒系の1つの種類は、その上にチタン化合物及び内部電子供与体化合物が担持されているハロゲン化マグネシウムによって構成される、固体触媒構成成分を含む。アイソタクチックポリマー生成物に高い選択性を維持するためには、触媒合成中に、内部電子供与体化合物が追加される。内部供与体には種々の種類があり得る。従来、ポリマーに高い結晶化度が必要とされる場合には、外部の供与体化合物もまた重合反応中に追加される。
【0004】
過去30年間にわたって、オレフィン重合化反応においてはるかに高い活性を与え、その触媒により作られるポリマー中の結晶性アイソタクチック断片の含有量がはるかに高くなる、多くの担持型チーグラー・ナッタ触媒が開発されてきた。内部及び外部の電子供与体化合物が開発されることにより、ポリオレフィン触媒系は継続的に改新されている。
【0005】
新規開発されたチーグラー・ナッタ触媒、とりわけ、非フタル酸触媒で見られる問題の1つとして、触媒が重合プロセスの直後に著しく高い触媒活性をもたらすことがある。触媒活性が高いと、触媒粒子の中心で急速な温度上昇を招く場合がある。いくつかの用途では、触媒粒子の表面積は、熱を消散させて、粒子を破壊したり、分解させるのには不十分である。
【0006】
触媒の動力学を制御するために、一部の重合プロセス、すなわち、スラリー相重合プロセス、あるいはバルク相重合プロセスは、予備重合ライン又は反応器を備えている。これらのプロセスでは、触媒が主重合反応器に入る前に、ポリオレフィン予備重合工程が実施される。予備重合中、少量のオレフィンモノマーは、穏やかな条件下、及び低反応速度でポリオレフィンへと重合される。これにより、少量のポリオレフィンポリマーが生成され、触媒粒子を損傷することなく触媒粒子と合成される。次いで、通常の反応条件下でポリオレフィンポリマーを生成するために、予備重合済み触媒を主反応室へと供給する。予備重合工程により、触媒損傷を防止する初期触媒動態を制御することが分かっている。
【0007】
予備重合反応器を使用すれば、様々な利点が得られるが、ポリオレフィン重合プロセスの多くは、予備重合反応器を備えず、予備重合工程を含める変更を設計するのには適していない。例えば、気相ポリオレフィン反応器の多くは、予備重合反応器を含まず、予備重合反応器を含めるのに十分に適していない。これらのプロセスは、触媒粒子が高温流動床に直接注入されるという点において特に問題となる。かくして、気相反応器の多くで頻繁に発生する問題の1つは、とりわけ、重合プロセスの開始時において、触媒反応速度及び活性を制御する能力である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記を鑑みて、これまでに、触媒製造者は、重合プロセスで使用される触媒を顧客に出荷する前に、触媒を予備重合、又は活性化することを試みてきた。しかしながら、触媒を重合プロセス外で予備重合することには、殆ど成功していない。例えば、重合プロセスにおいて後で使用するために触媒を活性化すると、触媒が不安定になる場合がある。例えば、予備重合済み触媒を、後で使用する際、触媒活性が劣化したり、又は劇的に減少することがある。したがって、過去に、予備重合済み触媒を低温で保存、又は出荷したことで、配送や貯蔵がより複雑になり、触媒の使用コストが上昇した。
【0009】
上記を鑑みて、長期にわたって周囲温度で安定である予備重合済みチーグラー・ナッタ触媒が必要とされる。触媒の破壊や分解を阻止するために反応速度を最初に制御するが、総重合反応時間を増加させないように十分な活性が得られる、気相ポリオレフィン重合体プロセスで使用される改善された予備重合又は活性化触媒が必要とされる。
【0010】
本開示は、概して、反応速度論の制御を改善させるポリオレフィン生成用の非フタレート、高活性、活性化触媒成分を対象とする。活性化触媒成分から生成されるポリマーは、流動特性及び処理性を改善できる。こうした改善は、ポリマー形態の改善に起因し得る。本開示の活性化固体触媒成分は、触媒破壊を引き起こすだけの初期発熱を起こさずに、高い触媒活性が得られるだけでなく、触媒寿命が延長することも見出されたチーグラー・ナッタ触媒である。意外にも、本開示の活性固体触媒成分は、触媒活性を変化させることなく、数ヶ月間にわたり安定性を示すだけでなく、改善されたポリマー形態に変換する触媒形態の改善を示すことも見出された。
【0011】
例えば、一実施形態において、本開示は、オレフィン重合用の活性化固体触媒成分を対象とする。活性化固体触媒成分は、以下からなる反応生成物を含む:
(a)ハロゲン化物含有マグネシウム化合物;
(b)+3の酸化状態で触媒成分中に存在するチタン化合物;なお、+2及び/又は+4の酸化状態を有する他のチタン化合物も存在し得る;
(c)Si-O基を含む有機ケイ素化合物;
(d)アルキルアルミニウム化合物;及び
(e)適宜、担持供与体を含む少なくとも1つの内部電子供与体であって、上記少なくとも1つの内部電子供与体が、一態様において、約0.05重量%~約15重量%の量であり、別の態様では、約1重量%~約20重量%の量で上記触媒成分中に存在する、少なくとも1つの内部電子供与体。
【0012】
活性化固体触媒成分は、下式のα-オレフィンから形成されるポリマーも更に含む:
CH2=CHR1
式中、R1は、水素、又はC1~C7のアルキル基を含み、触媒成分1グラムあたり約0.3g~約200gのポリマーの量で触媒成分中に存在する。
【0013】
活性化固体触媒成分で形成されたポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンであってもよく、触媒粒子へ組み込める。例えば、一実施形態では、予備重合済みポリオレフィンポリマーは、触媒粒子を少なくとも部分的にコーティングすることができる。
【0014】
ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は、塩化マグネシウムを含められる。有機ケイ素化合物は、以下の化学構造を有するシラン、シロキサン又はポリシロキサンでよい:
RnSi(OR’)4-n
式中、
各Rは、H、アルキル、又はアリールであり、
各R’は、H、アルキル、アリール、又はSiRn(OR’)3-nであり、
nは、0、1、2、又は3である。
【0015】
担持電子供与体は、一実施形態では、安息香酸を含むことができる。安息香酸は、以下の式を有し得る:
【化1】
【0016】
式中、R’は、アルキル基、環状基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はこれらの組み合わせを含み、式中、R’’は、1つ以上の置換基を含み、各置換基は、個々に、水素、アルキル基、環状基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0017】
内部電子供与体は、以下の式を有し得る:
【化2】
式中、R1~R4は同一であるか、又は異なっており、R1~R4の各々は、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換又は非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、R1~R4の少なくとも1つは水素ではなく、式中、E1とE2は、同一であるか、又は異なっており、5~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有し、適宜、ヘテロ原子を含有する不活性官能基を含む、1~20個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、式中、X
1とX
2はそれぞれ、O、S、アルキル基、又はNR5であり、R
5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である;又は
【0018】
内部電子供与体は、一態様では、以下の式の1つを有することができる。
【化3】
式中、
R
15~R
20の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、
qは、0~12の整数である;又は
【化4】
式中、
R
1~R
14の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、
qは、0~12の整数である。
【0019】
一般に、触媒成分は、触媒成分を、トリエチルアルミニウムを含み得る、アルキル-アルミニウム化合物と組み合わせることによって活性化される。活性化後、固体触媒成分は、チタン及び炭素結合を含有する。一実施形態では、アルミニウムとチタンとの間のモル比が、約0.1~200、例えば、約0.5~20であり、シリコン対チタンのモル比が、約0.05~10、例えば、約0.1~6となるよう、活性化固体触媒成分は配合される。得られる活性化固体触媒は、平均粒径が約5ミクロン~約300ミクロン、例えば、約5ミクロン~約70ミクロンの粒子形態でよい。
【0020】
一実施形態では、活性化固体触媒成分は、有機リン化合物も更に含有することができる。有機リン化合物は、例えば、リン酸エステルを含められる。活性化固体触媒成分は、活性制限剤も含有することができる。この活性制限剤は、C4~C30脂肪族酸エステル、ジエーテル、又はC4~C30脂肪族酸のポリ(アルケングリコール)エステルを含められる。活性制限剤の例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ペンチルバレレート、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
本開示はまた、活性化固体触媒を生成するプロセスも対象とする。このプロセスは、一実施形態では、以下を含められる:
a.マグネシウムアルコキシド(Mg(OR)nX2-n)、又はマグネシウムアルコラート(MgX2mR’OH)とTi(OR)gX4-gとを反応させて、触媒前駆体を形成することであって、式中、XはBr、Cl又はIであり;nは1、2であり;mは、0.5~10であり、gは0、1、2、3又は4であり、更に、R、R’、R’’は、個々に、C1~C4アルキルなどのCl-CIOアルキルであり、上記触媒前駆体は、担持電子供与体及び内部電子供与体を含有する、ことと、
b.下式R2nSi(OR3’)4-nを有する有機ケイ素化合物の存在下で、(a)から得られた生成物を、トリアルキルアルミニウム化合物と反応させることであって、式中、R2はH、アルキル、又はアリールであり;各R3は、アルキル又はアリールであり;nは、0、1、2、又は3である、ことと;
c.(b)で得られた生成物を、式CH2=CHR’を有するオレフィンと反応させることであって、式中、R’=H、又はC1~C7アルキル基であり、オレフィンを重合化して、固体触媒成分粒子上にポリマーコーティングを形成し、オレフィンポリマーは、活性化固体触媒成分1gあたり50g未満の量で存在する、ことと、
d.活性化触媒成分を単離することと、を含む。
【0022】
一実施形態では、触媒前駆体は、無水塩化マグネシウムのアルコール付加体である。無水塩化マグネシウム付加体は、一般に、MgCl2-nROHとして定義され、式中、nは、1.5~6.0、好ましくは、2.5~4.0、最も好ましくは、2.8~3.5モル範囲の総アルコールである。ROHは、C1~C4アルコール、直鎖若しくは分枝鎖、又はアルコールの混合物である。好ましくは、ROHはエタノール、又はエタノールと高級アルコールとの混合物である。ROHが混合物である場合、エタノールの高級アルコールに対するモル比は、少なくとも80:20、好ましくは90:10、最も好ましくは少なくとも95:5である。
【0023】
一実施形態では、実質的に球状のMgCl2-nEtOH付加体は、噴霧結晶化プロセスで形成可能である。一実施形態では、球状MgCl2前駆体は、約15~150ミクロン、好ましくは20~100ミクロン、最も好ましくは35~85ミクロンの平均粒径(Malvern d50)を有する。
【0024】
本開示は更に、オレフィンポリマーを生成するプロセスも対象とする。このプロセスは、ホモポリマ-とコポリマーの生成での気相重合反応器における活性化固体触媒成分の存在下で、オレフィンを重合化することを含む。活性化固体触媒成分は、上述のとおりで良い。このプロセスで生成されたポリマーは、形態の改善が得られる。具体的には、この活性化触媒で生成されたポリマーは、嵩密度が非常に高く(約0.45g/cc超、例えば、約0.50g/cc超)、流動特性に優れている。加えて、このポリマー粒子は、実質的に球状である。例えば、粒子は、B/L3が約0.65超、例えば、約0.7超、例えば、約0.77超であり得る。ポリオレフィン粒子は、ポリプロピレン粒子を含め得る。更に、ポリオレフィン粒子は、嵩密度が、約0.4g/cc超、例えば、約0.5g/cc超、かつ、概して約0.8g/cc未満であり得る。
【0025】
本開示の他の特性及び態様を以下でより詳細に考察する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の完全かつ有効な開示は、添付の図面を参照することを含めて、本明細書の残りの部分に、より具体的に記載される。
【0027】
【
図1】
図1は、実施例4で生成されたポリプロピレン粒子のSEM画像である。
【0028】
【
図2】
図2は、実施例10で生成された形態が丸い活性化触媒成分粒子のSEM画像である。
【0029】
【
図3】
図3は、実施例10による活性化触媒成分によるバルクプロピレン重合を生成したポリマー粒子のSEM画像である。
【0030】
【
図4】
図4は、実施例10による活性化触媒成分により生成されたポリマー粒子のSEM画像である。気相プロピレン重合である。
【0031】
【
図5】
図5は、活性化触媒成分中の予備重合量と活性化触媒成分の粒径との関係を示す図である。
【0032】
【
図6】
図6は、活性化触媒の時効効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
いくつかの代表的な実施形態を説明する前に、以下の説明において記載される構造又はプロセス工程の詳細部分に、本発明は限定されないということを理解すべきである。本発明はその他の実施形態において実施することが可能であり、種々の方法で実践又は実行されることが可能である。
【0034】
概して、本開示は、ポリオレフィンポリマー、特にポリプロピレンポリマーを生成するための触媒系を対象とする。本開示はまた、本触媒系を使用してオレフィンを重合及び共重合する方法を対象とする。一般に、本開示の触媒系は、活性化固体触媒成分の使用を対象とする。この固体触媒成分は、ポリオレフィンモノマーからのポリオレフィンポリマーの生成物を触媒する活性部位として機能可能な触媒成分内でチタン及び炭素結合を形成する、アルミニウム化合物等の活性剤に曝露されることによって、「活性化」される。一実施形態において、活性化固体触媒成分は、予備重合済み活性化固体触媒成分を形成する少量のα-オレフィンモノマーの存在下で活性化される。
【0035】
この活性化触媒成分は、チーグラー・ナッタ触媒を含んでおり、担持電子供与体及び少なくとも1つの内部電子供与体の存在下で、マグネシウム化合物、例えば、塩化マグネシウム又はマグネシウムアルコキシドとチタン化合物とを合成させることによって、調製される。担持電子供与体は、例えば、安息香酸アルキルであってもよく、内部電子供与体は、アリールジエステルでよい。次いで、固体触媒成分を活性化するために、有機ケイ素化合物の存在下で、形成された触媒担体をアルキルアルミニウム化合物と合成させる。重合化し、活性化固体触媒成分へと組み込まれるα-オレフィンも存在し得る。形成されたオレフィンポリマーは、例えば、触媒成分1グラムあたり約0.3g~約50gのポリマーの量で触媒成分中に存在し得る。
【0036】
本開示の予備重合済み活性化固体触媒成分は、様々な利点及び有益性を提供し得る。例えば、活性化固体触媒成分は、60g/kgを超えるような高い触媒活性を示すが、活性化触媒成分は、オレフィンモノマーの存在下、及び通常の運用条件下で重合反応器に供給されると過熱しない。例えば、本開示の活性化固体触媒は、熱伝達制御の欠如による破断を起こさずに、気相反応器においても、プロピレンモノマーを効率的に重合させることが見出されている。更に、想定外のこととして、この活性化固体触媒は、非常に安定であることも明らかとされている。この活性化触媒成分は、例えば、周囲条件で保存された際、何らかの重要な触媒活性を失うことなく、少なくとも3ヶ月、例えば、5ヶ月以上安定であり得る。したがって、触媒製造器は、固体触媒成分を活性化することができ、予備重合反応器やラインを備えていない重合反応器へと注入するために、活性化固体触媒成分をポリマー製造業者まで輸送することができる。この点に関して、本開示の活性化固体触媒は、気相反応器での使用にとりわけよく適しており、触媒成分は、ポリオレフィンポリマーを生成するために、高温流動床へと直接注入することができる。
【0037】
更に、本開示の活性化固体触媒は、想定外のこととして、その触媒形態により、形態が改善されたポリオレフィンポリマーを予想外に生成することも明らかとされた。触媒及びポリマーの形態特性としては、例えば、平均粒径、粒径分布、粒子形状、及び表面テクスチャが挙げられる。触媒の形態特性は、触媒から生成されるポリマー粒子の形態に直接作用し得る。活性化固体触媒から作られたポリオレフィンポリマーは、例えば、最適粒径、及び比較的狭い粒径分布を示す実質的に球状の粒子として生成可能である。ポリマー粒子は、改善され、嵩密度が比較的高くなり得る。ポリマー形態が改善されたことにより、ポリマー粒子は、取り扱いがはるかに容易である。ポリマー粒子は、流動性に優れ、処理が容易である。例えば、ポリマー粒子は、反応器から除去し易く、輸送が簡単であり、パッケージング及び輸送がより容易である。加えて、粒子特性の改善により、反応器装置内の汚染も防止される。
【0038】
例えば、本開示に従って作られるポリマー粒子は、約5ミクロン超、例えば約10ミクロン超、約20ミクロン超、約30ミクロン超、約40ミクロン超の平均粒径を有し得る。全般に、ポリマー粒子の平均粒径は、約300ミクロン未満、例えば約200ミクロン未満、例えば約120ミクロン未満、例えば約70ミクロン未満であり得る。上記のとおり、ポリマー粒子は、実質的に球状であり得る。例えば、ポリマー粒子は、約0.65超、例えば約0.7超、例えば約0.75超、例えば更に約0.77超、かつ一般に1未満のB/L3を有し得る。この粒子形態により、本開示に従って作られたポリマー樹脂は、嵩密度が増加し、ひいては、良好な流動特性が得られる。ポリマー粒子の嵩密度は、約0.4g/cc超、例えば約0.45g/cc超、例えば約0.5g/cc超であり得る。嵩密度は、概して約0.58g/cc未満である。
【0039】
本開示の活性化固体触媒成分の調製法は、概して、有機ケイ素化合物、適宜、活性制限剤を含められ得る選択性制御剤、又は外部電子供与体の存在下で、非フタル酸、チーグラー・ナッタ触媒成分を、アルミニウム化合物などの活性化剤で処理し、続いて、制御された量のオレフィンモノマー、例えば、プロピレンを添加するステップを含む。
【0040】
本開示に従って活性化される触媒プラットフォームは、特定実施形態、及び所望の結果に応じて変化し得る。一般に、触媒前駆体プラットフォーム又は触媒成分は、担持電子供与体及び少なくとも1つの内部電子供与体と合成させたマグネシウム化合物及びチタン化合物を含む。
【0041】
一実施形態では、触媒前駆体成分は、次式MgdTi(ORe)fXgを有し得る混合マグネシウム/チタン化合物であり、式中、Reは、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基又はCOR’であり、R’は、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基であり、各ORe基は、同じであるか又は異なり、Xは独立して、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり、dは、0.5~56、又は2~4であり、fは、2~116又は5~15であり、gは、0.5~116、又は1~3である。触媒前駆体成分は、アルコールを調製時に使用される反応混合物から除去することによる制御された沈殿によって調製される。一実施形態では、反応媒体は、芳香族液体、とりわけ、クロロベンゼンなどの塩素化芳香族化合物と、エタノールなどのアルカノールとの混合物を含む。適切なハロゲン化剤には、四臭化チタン、チタンアルコキシド、四塩化チタン又は三塩化チタンが含まれる。ハロゲン化で使用される溶液からアルカノールを除去すると、固体触媒前駆体成分が沈殿する。
【0042】
例えば、一実施形態では、触媒前駆体成分は、内部電子供与体の存在下でのo-クレゾール、チタンエトキシド、四塩化チタン、及びエタノールの混合物と共に、マグネシウムエチレンオキシドなどのマグネシウムアルコキシドからなる反応生成物を含む。一実施形態において、このプロセス中、担持電子供与体を副生成物として形成し、触媒へと組み込むことができる。担持電子供与体は、安息香酸エチルなどの安息香酸アルキルを含んでもよい。担持電子供与体は、約0.01重量%~約5重量%、例えば約0.5重量%~約5重量%、例えば約1重量%~約4重量%の量で不活化触媒成分に組み込むことができる。加えて、担持供与体は、反応混合物との内部供与体の反応によって、その場で副生成物として形成され得る。
【0043】
別の実施形態では、触媒前駆体成分は、マグネシウムアルコラート、ハロゲン化チタン、担持電子供与体、及び内部電子供与体から形成することができる。例えば、一実施形態では、固体マグネシウムアルコラートは、ハロゲン化チタンがアルコールを除去して処理される。内部及び担持供与体をプロセスの様々な工程において追加して、固体触媒成分の特性を変化させることができる。
【0044】
例えば、触媒前駆体は、無水塩化マグネシウムのアルコール付加体であり得る。無水塩化マグネシウム付加体は、一般に、MgCl2-nROHとして定義され、式中、nは、1.5~6.0、好ましくは、2.5~4.0、最も好ましくは、2.8~3.5モルの範囲の総アルコールである。ROHは、C1~C4アルコール、直鎖若しくは分枝鎖、又はアルコールの混合物である。好ましくは、ROHはエタノール、又はエタノールと高級アルコールとの混合物である。ROHが混合物である場合、エタノールの高級アルコールに対するモル比は、少なくとも80:20、好ましくは90:10、最も好ましくは少なくとも95:5である。
【0045】
一実施形態では、実質的に球状のMgCl2-nEtOH付加体は、噴霧結晶化プロセスで形成可能である。一実施形態では、球状MgCl2前駆体は、約15~150ミクロン、好ましくは20~100ミクロン、最も好ましくは35~85ミクロンの平均粒径(Malvern d50)を有する。
【0046】
別の実施形態では、触媒前駆体成分は、マグネシウム部分、チタン部分、エポキシ化合物、有機リン化合物、有機ケイ素化合物、担持電子供与体及び内部電子供与体から形成され得る。例えば、一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は、エポキシ化合物、有機リン化合物、及び炭化水素溶媒を含む混合物中に溶解させることができる。有機ケイ素化合物、担持電子供与体、及び内部電子供与体の存在下で、得られたアルコキシド溶液をチタン化合物により処理して、固体沈殿物を形成できる。次に、固体沈殿物を、更なる量のチタン化合物を用いて処理し得る。触媒を形成するために使用するチタン化合物は、以下の化学式を有することができ、
Ti(OR)gX4-g
各Rは、独立してC1~C4アルキルであり、Xは、Br、Cl、又はIであり、gは、0、1、2、3、又は4である。
【0047】
いくつかの実施形態では、有機ケイ素は、モノマー又はポリマー化合物である。有機ケイ素化合物は、1分子内部又はその他の分子間に-Si-O-Si-基を含有してもよい。有機ケイ素化合物のその他の実例としては、ポリジアルキルシロキサン及び/又はテトラアルコキシシランが挙げられる。このような化合物は、個々で使用しても、これらの組み合わせとして使用してもよい。有機ケイ素化合物は、担持電子供与体及び内部電子供与体と組み合わせて使用してもよい。
【0048】
ハロゲン化物含有マグネシウム化合物の例としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及びフッ化マグネシウムが挙げられる。一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は、塩化マグネシウムである。
【0049】
例示的なエポキシ化合物としては、限定されないが、以下の式のグリシジル含有化合物が挙げられ、
【化5】
【0050】
式中、「a」は、1、2、3、4、又は5であり、Xは、F、Cl、Br、I、又はメチルであり、Raは、H、アルキル、アリール、又はシクリルである。一実施形態では、アルキルエポキシドは、エピクロロヒドリンである。いくつかの実施形態では、エポキシ化合物は、ハロアルキルエポキシド又は非ハロアルキルエポキシドである。
【0051】
いくつかの実施形態に従い、エポキシ化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカン、7,8-エポキシ-2-メチルオクタデカン、2-ビニルオキシラン、2-メチル-2-ビニルオキシラン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、l,2-エポキシ-7-オクテン、1-フェニル-2,3-エポキシプロパン、1-(1-ナフチル)-2,3-エポキシプロパン、1-シクロヘキシル-3,4-エポキシブタン、1,3-ブタジエンジオキシド、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、シクロペンテンオキシド、シクロオクテンオキシド、α-ピネンオキシド、2,3-エポキシノルボルナン、リモネンオキシド、シクロデカンエポキシド、2,3,5,6-ジエポキシノルボマン、スチレンオキシド、3-メチルスチレンオキシド、1,2-エポキシブチルベンゼン、1,2-エポキシオクチルベンゼン、スチルベンオキシド、3-ビニルスチレンオキシド、1-(1-メチル-1,2-エポキシエチル)-3-(1-メチルビニルベンゼン)、1,4-ビス(l,2-エポキシプロピル)ベンゼン、1,3-ビス(1,2-エポキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(l,2-エポキシ-1-メチルエチル)ベンゼン、エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド、1,2-エポキシ-4-フルオロブタン、1-(2,3-エポキシプロピル)-4-フルオロベンゼン、1-(3,4-エポキシブチル)-2-フルオロベンゼン、1-(2,3-エポキシプロピル)-4-クロロベンゼン、1-(3,4-エポキシブチル)-3-クロロベンゼン、4-フルオロ-1,2-シクロヘキセンオキシド、6-クロロ-2,3-エポキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン、4-フルオロスチレンオキシド、1-(l,2-エポキシプロピル)-3-トリフルオロベンゼン、3-アセチル-1,2-エポキシプロパン、4-ベンゾイル-1,2-エポキシブタン、4-(4-ベンゾイル)フェニル-1,2-エポキシブタン、4,4’-ビス(3,4-エポキシブチル)ベンゾフェノン、3,4-エポキシ-1-シクロヘキサノン、2,3-エポキシ-5-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3-アセチルスチレンオキシド、4-(1,2-エポキシプロピル)ベンゾフェノン、グリシジルメチルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルへキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、エチル3,4-エポキシブチルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジル4-tert-ブチルフェニルエーテル、グリシジル4-クロロフェニルエーテル、グリシジル4-メトキシフェニルエーテル、グリシジル2-フェニルフェニルエーテル、グリシジル1-ナフチルエーテル、グリシジル2-フェニルフェニルエーテル、グリシジル1-ナフチルエーテル、グリシジル4-インドリルエーテル、グリシジルN-メチル-a-キノロン-4-イルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-ジグリシジルオキシベンゼン、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリス(4-グリシジルオキシフェニル)メタン、ポリ(オキシプロピレン)トリオールトリグリシジルエーテル、フェノールノボラックのグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-メトキシシクロヘキサン、2,3-エポキシ-5,6-ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン、4-mエトキシスチレンオキシド、1-(1,2-エポキシブチル)-2-フェノキシベンゼン、ギ酸グリシジル、酢酸グリシジル、2,3-エポキシブチルアセテート、酪酸グリシジル、安息香酸グリシジル、ジグリシジルテレフタレート、ポリ(アクリル酸グリシジル)、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、アクリル酸グリシジルと別のモノマーとのコポリマー、メタクリル酸グリシジルと別のモノマーとのコポリマー、1,2-エポキシ-4-メトキシカルボニルシクロヘキサン、2,3-エポキシ-5-ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、4-(1,2-エポキシエチル)安息香酸エチル、3-(1,2-エポキシブチル)安息香酸メチル、3-(1,2-エポキシブチル)-5-フェニル安息香酸メチル、N,N-グリシジル-メチルアセトアミド、N,N-エチルグリシジルプロピオンアミド、N,N-グリシジルメチルベンズアミド、N-(4,5-エポキシペンチル)-N-メチル-ベンズアミド、N,N-ジグリシルアニリン、ビス(4-ジグリシジルアミノフェニル)メタン、ポリ(N,N-グリシジルメチルアクリルアミド)、1,2-エポキシ-3-(ジフェニルカルバモイル)シクロヘキサン、2,3-エポキシ-6-(ジメチルカルバモイル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(ジメチルカルバモイル)スチレンオキシド、4-(1,2-エポキシブチル)-4’-(ジメチルカルバモイル)ビフェニル、4-シアノ-1,2-エポキシブタン、1-(3-シアノフェニル)-2,3-エポキシブタン、2-シアノスチレンオキシド、及び6-シアノ-1-(1,2-エポキシ-2-フェニルエチル)ナフタレン、からなる群から選択される。
【0052】
有機リン化合物の一例として、トリアルキルリン酸エステルなどのリン酸エステルを使用してもよい。このような化合物は、式によって表すことができ、
【化6】
式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、メチル、エチル、及び直鎖又は分岐鎖(C
3~C
10)アルキル基からなる群から選択される。一実施形態では、トリアルキルリン酸エステルは、トリブチルリン酸エステルである。
【0053】
触媒成分をハロゲン化によって固体触媒に変換してもよい。ハロゲン化には、担持電子供与体、及び/又は内部電子供与体の存在下で、触媒成分をハロゲン化剤と接触させることが含まれる。ハロゲン化により、触媒成分に存在するマグネシウム部分がハロゲン化マグネシウム担体に変換され、ここにチタン部分(ハロゲン化チタンなど)が堆積する。いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、ハロゲン化中に、内部電子供与体が、(1)マグネシウム系担体上のチタンの位置を調節し、(2)マグネシウム部分及びチタン部分のそれぞれのハロゲン化物への変換を促進し、(3)変換中にハロゲン化マグネシウム担体の結晶サイズを調節すると考えられる。
【0054】
上記のとおり、触媒担体の合成中に、少なくとも1つの内部電子供与体が存在する。内部電子供与体は、少なくとも1つの電子対を最終的に生成される触媒担体中に存在する1つ以上の金属に供与する、触媒組成物の形成中に添加されるか、本来であれば、形成される化合物である。一実施形態では、触媒担体の合成中に、少なくとも2つの内部電子供与体が存在する。担持供与体も存在してもよい。担持供与体は、担体合成中に添加され、及び/又は、マグネシウム表面に結合して、内部電子供与体と同様に触媒担体中に残留する触媒を構成するプロセス中に形成される試薬である。担持供与体は、通常、より小さく(嵩高でない)、内部電子供与体よりも触媒担体との配位がより弱い。この点に関して、定かではないが、担持供与体は、アルミニウム化合物などの活性化剤と接触した際、触媒担体から部分的に除去されると考えられる。触媒組成物内で他の内部電子供与体がより多く残るよう、担持供与体は活性化中に触媒担体から優先的に除去されると考えられる。例えば、担持供与体を使用して、内部電子供与体をより多く残すことができる、この電子供与体はアリールジエステルで良い。担持供与体が存在することにより、アリールジエステルが触媒担体に結合したままであるため、活性化及び予備重合された際の触媒は、しばらく高いレベルの触媒活性を維持し、最終的に得られるプレポリマー触媒を使用前に保存することができると考えられる。したがって、担持供与体は、内部電子供与体のように作用するが、内部電子供与体と比較して触媒の活性化中に触媒担体からより多く除去される。これにより、担持供与体は、一次内部電子供与体を保護する二次内部電子供与体である。更に、担持供与体は、合成中に触媒担体に組み込まれ、触媒担体に含まれる金属に影響を一切与えずに、触媒担体から部分的に除去されると考えられる。触媒成分をアルキルアルミニウムで活性化する間、担持電子供与体は、RnSi(OR’)4-nなどの外部電子供与体によって少なくとも部分的に置換され、長期間にわたって安定した活性触媒成分をもたらすものと考えられる。
【0055】
触媒構成成分の形態及び触媒性能は、担持電子供与体(又は供与体)の追加によって十分に制御される。担持電子供与体は、酸素原子を含有する有機化合物であり、「油相液滴」中のマグネシウムのマグネシウム原子に配位することができ、固体触媒成分の沈殿プロセスを所望の形態で制御することを可能にする。
【0056】
一実施形態では、担持電子供与体は、沈殿プロセス及び触媒構成成分の形態を制御するだけであり、触媒構成成分には組み込まれない。
【0057】
その他の実施形態では、担持電子供与体は、沈殿プロセス及び触媒構成成分の形態を制御し、触媒構成成分に組み込まれる。したがって、担持電子供与体及び電子供与体は両方とも、重合プロセスにおける触媒性能を定義する。担持電子供与体は、通常、電子供与体よりも弱い。
【0058】
固体触媒中間体の沈殿中の有機ケイ素化合物と担持電子供与体との組み合わせにより、触媒構成成分を所望の粒状又は球形の形態で作製することが可能である。
【0059】
粒状触媒構成成分の形態は、有機ケイ素化合物の変形形態、担持電子供与体、及び固体触媒中間体の沈殿の条件によって、ラズベリー形状、丸みを帯びたラズベリー形状、丸みを帯びた形状及び実質的に球形にて調製することができる。触媒構成成分の粒径は、約5ミクロン~約70ミクロン(体積基準で50%)であり、沈殿条件(温度、撹拌速度、溶媒など)並びに担持供与体の種類及び量で決まる。
【0060】
ある実施形態では、ハロゲン化剤は、式Ti(ORe)fXhのハロゲン化チタンであり、式中、Re及びXは上で定義したとおりであり、fは0~3の整数であり、hは1~4の整数であり、f+hは4である。ある実施形態では、ハロゲン化剤はTiCl4である。更なる実施形態では、ハロゲン化は、ジクロロベンゼン、o-クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの塩素化又は非塩素化芳香族液体の存在下で行う。更に別の実施形態では、ハロゲン化は、40~60体積パーセントのハロゲン化剤、例えばTiCl4を含む、ハロゲン化剤と塩素化芳香族液体との混合物を使用することにより行う。
【0061】
反応混合物をハロゲン化中に加熱することができる。触媒成分とハロゲン化剤とを、まず、約10℃未満、例えば約0℃未満、例えば約-10℃未満、例えば約-20℃未満、例えば約-30℃未満の温度で接触させる。初期温度は、概して、約-50℃超、例えば約-40℃超である。次に、混合物を、速度0.1~10.0℃/分、又は1.0~5.0℃/分で加熱する。内部電子供与体を、ハロゲン化剤と触媒成分との間の初期接触期間後に追って添加してもよい。ハロゲン化の温度は20℃~150℃、(又は、その間の任意の値や一部の範囲)、あるいは0℃~120℃である。ハロゲン化は、5~60分、又は10~50分の期間、内部電子供与体が実質的に存在しない状態で継続してもよい。
【0062】
触媒成分、ハロゲン化剤、担持電子供与体、及び内部電子供与体を接触させる方法は、触媒前駆体の合成中、又はアルキルアルミニウムによる活性化プロセス中に変化させることができる。ある実施形態では、触媒成分を、まず、ハロゲン化剤及び塩素化芳香族化合物を含有する混合物と接触させる。得られた混合物を撹拌し、所望であれば加熱してもよい。次に、前駆体を単離又は回収せずに、内部電子供与体を同じ反応混合物に添加する。前述のプロセスは、自動化プロセス制御によって制御される様々な成分を添加した単一の反応器内で行ってもよい。
【0063】
一実施形態では、触媒成分は、ハロゲン化剤と反応させる前に、内部電子供与体と接触させる。
【0064】
触媒成分を担持電子供与体、及び/又は内部電子供与体と接触させる時間は、少なくとも-30℃、又は少なくとも-20℃、又は少なくとも10℃の温度から、最大150℃、又は最大120℃、又は最大115℃、又は最大110℃までの温度で、少なくとも10分、又は少なくとも15分、又は少なくとも20分、又は少なくとも1時間である。
【0065】
一実施形態では、触媒成分、担持電子供与体、内部電子供与体、及びハロゲン化剤は、同時に、又は実質的に同時に添加する。ハロゲン化手順は、所望に応じて、1回、2回、3回、又はそれ以上繰り返してもよい。
【0066】
前述のハロゲン化手順の後、得られた固体触媒組成物を、例えば濾過することにより最終プロセスで用いた反応媒体から分離させて、湿性濾過ケーキを生成する。次に、湿性濾過ケーキを希釈液ですすぐか又は洗浄して、未反応のTiCl4を除去してもよく、また所望の場合、乾燥させて残留液を除去してもよい。典型的には、得られた固体触媒組成物を、液体炭化水素、例えば、イソペンタン、イソオクタン、イソヘキサン、ヘキサン、ペンタン、又はオクタンなどの脂肪族炭化水素である「洗浄液」で1回以上洗浄する。固体触媒組成物は、その後、更なる貯蔵又は使用のために、炭化水素、特に鉱油などの比較的重質な炭化水素中で、分離させて乾燥させるか又はスラリー化することができる。
【0067】
様々な異なる種類の担持電子供与体及び内部電子供与体は、本開示の固体触媒成分へと組み込まれてもよい。担持電子供与体の例としては、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、吉草酸エチル、ステアリン酸エチル、クロロ酢酸メチルジクロロ酢酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、マレイン酸ジブチル、ブチルマロン酸ジエチル、ジブチルマロン酸ジエチル、シクロヘキサンカルボニルエチル、ジエチル1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、ジ-2-エチルヘキシル1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、エトキシ安息香酸エチル、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、クマリン、フタリド、エチレンカーボネート、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジエチル1,2-シクロヘキサンカルボン酸、ジイソブチル1,2-シクロヘキサンカルボン酸、ジエチルテトラヒドロフタレート及びナディン酸、ジエチルエステル、ジエチルナフタレンジカルボン酸、ジブチルナフタレンジカルボン酸、トリエチルトリメリット酸及びジブチルトリメリット酸、3,4-フランジカルボン酸エステル、1,2-ジアセトキシベンゼン、1-メチル-2,3-ジアセトキシベンゼン、2-メチル-2,3-ジアセトキシベンゼン、2,8-ジアセトキシナフタレン、エチレングリコールジピバレート、ブタンジオールピバレート、ベンゾイルエチルサリチル酸、アセチルイソブチルサリチル酸、アセチルサリチル酸、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-n-ブチル、セバシン酸ジ-n-オクチル、又はセバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、が挙げられる。いくつかの実施形態では、第1の非フタル酸供与体は、ギ酸メチル、ギ酸ブチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸イソブチル、吉草酸エチル、ステアリン酸エチル、クロロ酢酸メチル、ジクロロ酢酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン酸エチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、安息香酸ベンジル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-メチル安息香酸メチル、p-t-ブチル安息香酸エチル、ナフトエ酸エチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸アミル、エチル安息香酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、又はエトキシ安息香酸エチル、である。
【0068】
一実施形態では、担持電子供与体は、下式を有し、
【化7】
式中、R’は、アルキル基、環状基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はこれらの組み合わせを含み、式中、R’’は、水素、又は1つ以上の置換基を含み、各置換基は、独立して、アルキル基、環状基、1~20個の炭素原子を有するアリール基、ヘテロ原子、又はこれらの組み合わせを含むことができる。例えば、一実施形態では、担持電子供与体は、安息香酸エチルを含んでもよい。
【0069】
様々な異なる種類の内部電子供与体を固体触媒成分に組み込むことができる。一実施形態では、内部電子供与体は、フェニレン置換ジエステルなどのアリールジエステルである。一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造を有してもよく、
【化8】
式中、
R15~R20の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、
qは、0~12の整数である。
【0070】
一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造の1つを有してもよく、
【化9】
【化10】
式中、
R
1~R
14の各々が、独立して、H、F、Cl、Br、I、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロアリールアルキルであり、
qは、0~12の整数である。
【0071】
一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造を有してもよく、
【化11】
【0072】
式中、R1~R4は同一であるか、又は異なっており、R1~R4の各々は、水素、1~20個の炭素原子を有する置換ヒドロカルボイル基、1~20個の炭素原子を有する非置換ヒドロカロビル、6~20個の炭素を有する置換又は非置換アリール基、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基、ヘテロ原子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、R1~R4の少なくとも1つは水素ではなく、E1とE2は、同一であるか、又は異なっており、5~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、1~20個の炭素原子を有する置換アルキル、6~20個の炭素原子を有するアリール、6~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有し、適宜、ヘテロ原子を含有する不活性官能基を含む、1~20個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択され、式中、X1とX2はそれぞれ、O、S、アルキル基、又はNR5であり、R5は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であるか、又は水素である。
【0073】
本明細書で使用する場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」という用語は、分岐状又は非分岐状、飽和又は不飽和、環式、多環式、縮合、又は非環式種、及びこれらの組み合わせを含む、水素原子及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0074】
本明細書で使用する場合、「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1つ以上の非ヒドロカルビル置換基で置換されているヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用する場合、「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期表のIV、V、VI、及びVII族に属する非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基は、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基も含む。本明細書で使用する場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1つ以上のハロゲン原子で置換されているヒドロカルビル基を指す。本明細書で使用する場合、「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1つ以上のケイ素原子で置換されているヒドロカルビル基である。ケイ素原子(複数可)は、炭素鎖中にある場合もない場合もある。
【0075】
本開示の固体触媒成分を形成する際、有機ケイ素化合物を様々な方法で使用しても良い。例えば、有機ケイ素化合物を、触媒担体の沈殿中に使用したり、本来であれば、触媒担体へと組み込むことができる。加えて、有機ケイ素化合物を、活性化剤と共に触媒に接触させることができる。
【0076】
一実施形態では、触媒担体を形成する際、有機ケイ素化合物を使用し、マグネシウム化合物、チタン化合物、担持電子供与体、及び少なくとも1つの内部電子供与体と組み合わせることができる。一実施形態では、有機ケイ素化合物は、ケイ素とチタンとのモル比が約0.05~約10、例えば約0.1~約6となるような量で、触媒成分に組み込まれる。
【0077】
一実施形態では、有機ケイ素化合物は、下式で表され、
RnSi(OR’)4-n
式中、R及びR1はそれぞれ、個々に炭化水素基を表し、nは0≦n<4を満たす。
【0078】
有機ケイ素化合物の具体例としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビス-o-トリジメトキシシラン、ビス-m-トリジメトキシシラン、ビス-p-トリジメトキシシラン、ビス-p-トリジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフェノキシシラン及びメチルトリアリルオキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
別の実施形態では、有機ケイ素化合物は、以下の式によって表される。
SiRR’m(OR’’)3-m
式中、0≦m<3であり、例えば、0≦m<2であり、Rは独立して、環式炭化水素基又は置換環式炭化水素基を表す。R基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、2-メチルシクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2-エチルシクロペンチル、3-プロピルシクロペンチル、3-イソプロピルシクロペンチル、3-ブチルシクロペンチル、3-第三級ブチルシクロペンチル、2,2-ジメチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、2,5-ジメチルシクロペンチル、2,2,5-トリメチルシクロペンチル、2,3,4,5-テトラメチルシクロペンチル、2,2,5,5-テトラメチルシクロペンチル、1-シクロペンチルプロピル、1-メチル-1-シクロペンチルエチル、シクロペンテニル、2-シクロペンテニル、3-シクロペンテニル、2-メチル-1-シクロペンテニル、2-メチル-3-シクロペンテニル、3-メチル-3-シクロペンテニル、2-エチル-3-シクロペンテニル、2,2-ジメチル-3-シクロペンテニル、2,5-ジメチル-3-シクロペンテニル、2,3,4,5-テトラメチル-3-シクロペンテニル、2,2,5,5-テトラメチル-3-シクロペンテニル、1,3-シクロペンタジエニル、2,4-シクロペンタジエニル、1,4-シクロペンタジエニル、2-メチル-1,3-シクロペンタジエニル、2-メチル-2,4-シクロペンタジエニル、3-メチル-2,4-シクロペンタジエニル、2-エチル-2,4-シクロペンタジエニル、2,2-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル、2,3-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル、2,5-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル、2,3,4,5-テトラメチル-2,4-シクロペンタジエニル、インデニル、2-メチルインデニル、2-エチルインデニル、2-インデニル、1-メチル-2-インデニル、1,3-ジメチル-2-インデニル、インダニル、2-メチルインダニル、2-インダニル、1,3-ジメチル-2-インダニル、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-2-インデニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1-メチル-2-インデニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ジメチル-2-インデニル、フルオレニル基、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、プロピルシクロヘキシル、イソプロピルシクロヘキシル、n-ブチルシクロヘキシル、第三級ブチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、及びトリメチルシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
式SiRR’m(OR’’)3-m中、R’及びR’’は、同一又は異なっており、それぞれが、炭化水素を表す。R’及びR’’の例は、3個以上の炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキル、アリール、及びアラルキル基である。更に、R及びR’は、アルキル基などによって架橋されてもよい。有機ケイ素化合物の一般的な例としては、Rがシクロペンチル基であり、R’がメチル基又はシクロペンチル基などのアルキル基であり、R’’がアルキル基、特にメチル基又はエチル基である、有機ケイ素化合物が挙げられる。
【0081】
式SiRR’m(OR’’)3-mの有機ケイ素化合物の具体的な例としては、シクロプロピルトリメトキシシラン、シクロブチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2-メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,3-ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、2,5-ジメチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンテニルトリメトキシシラン、3-シクロペンテニルトリメトキシシラン、2,4-シクロペンタジエニルトリメトキシシラン、インデニルトリメトキシシラン、及びフルオレニルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ビス(2-メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(3-第三級ブチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,3-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,5-ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロブチルジエトキシシラン、シクロプロピルシクロブチルジエトキシシラン、ジシクロペンテニルジメトキシシラン、ジ(3-シクロペンテニル)ジメトキシシラン、ビス(2,5-ジメチル-3-シクロペンテニル)ジメトキシシラン、ジ-2,4-シクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、ビス(2,5-ジメチル-2,4-シクロペンタジエニル)ジメトキシシラン、ビス(1-メチル-1-シクロペンチルエチル)ジメトキシシラン、シクロペンチルシクロペンテニルジメトキシシラン、シクロペンチルシクロペンタジエニルジメトキシシラン、ジインデニルジメトキシシラン、ビス(1,3-ジメチル-2-インデニル)ジメトキシシラン、シクロペンタジエニルインデニルジメトキシシラン、ジフルオレニルジメトキシシラン、シクロペンチルフルオレニルジメトキシシラン及びインデニルフルオレニルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン、トリシクロペンチルメトキシシラン、トリシクロペンテニルメトキシシラン、トリシクロペンタジエニルメトキシシラン、トリシクロペンチルエトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルエトキシシラン、シクロペンチルジメチルメトキシシラン、シクロペンチルジエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシラン、ビス(2,5-ジメチルシクロペンチル)シクロペンチルメトキシシラン、ジシクロペンチルシクロペンテニルメトキシシラン、ジシクロペンチルシクロペンテナジエニルメトキシシラン及びジインデニルシクロペンチルメトキシシランなどのモノアルコキシシラン、並びにエチレンビス-シクロペンチルジメトキシシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本開示によれば、触媒前駆体成分が形成されると、触媒成分は、活性化固体触媒成分を生成する活性化剤と接触する。活性化剤は、例えば、チタン及び塩化物結合などのチタン結合をチタン及び炭素結合へと変換することができる。次に、チタン及び炭素結合は、オレフィンモノマーを使用する重合プロセスを始動させる活性部位として機能することができる。一実施形態では、活性化剤は、式R3Alで表されるヒドロカルビルアルミニウム化合物であり、式中、各Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヒドリドラジカルであり、少なくとも1つのRは、ヒドロカルビルラジカルであり、2つ又は3つのRラジカルは、複素環構造を形成する環式ラジカルに結合することができ、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロカルビルラジカルである各Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、各アルキルラジカルは直鎖であっても分岐鎖であってもよく、このようなヒドロカルビルラジカルは、混合ラジカルであってもよく、すなわち、ラジカルは、アルキル基、アリール基、及び/又はシクロアルキル基を含有し得る。好適なラジカルの非限定的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、5,5-ジメチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、n-ドデシルである。
【0083】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例は、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ヘキシルアルミニウムヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、n-ヘキシルアルミニウムジヒドリド、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム、トリ-n-ドデシルアルミニウムである。
【0084】
一実施形態では、トリエチルアルミニウムを使用する。アルミニウムとチタンとのモル比は、約0.1~約200、又は約0.5~約20である。
【0085】
上記のとおり、有機ケイ素化合物を触媒担体に組み込むことができ、更に、活性化剤と併用することもできる。例えば、上記のようなアルミニウム化合物は、有機ケイ素化合物と共に触媒成分に添加されてもよく、又は有機ケイ素化合物が添加された後に触媒成分へと添加することができる。有機ケイ素化合物は、上記の有機ケイ素化合物のいずれかで良い。
【0086】
本開示によれば、活性化固体触媒成分はまた、比較的少量のポリマーが形成され、触媒粒子へと組み込まれる予備重合工程を受ける。この点に関して、活性化固体触媒成分は、オレフィンモノマーと合成される。例えば、オレフィンモノマーは、下式のα-オレフィンで良く、
CH2=CHR1
式中、R1は、水素、又はC1~C7アルキル基を含む。
【0087】
一実施形態では、オレフィンモノマーは、プロピレンを含む。予備重合プロセスは、概して約-20℃超、例えば約-10℃超、例えば約0℃超の温度、更に、概して約60℃未満、例えば概して約50℃未満、例えば概して約40℃未満、例えば概して約30℃未満の温度で実施可能である。
【0088】
一実施形態では、予備重合プロセスは懸濁液中で実施される。例えば、一実施形態では、活性化固体触媒を、不活性炭化水素媒体と合成することができる。液相は、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及び/又はケロシンなどの脂肪族炭化水素でよい。シクロペンタン、シクロヘキサン、及びメチルシクロペンタンをはじめとする脂環式炭化水素も使用され得る。芳香族炭化水素も、スラリー重合で使用可能である。芳香族炭化水素には、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びこれらの混合物がある。一実施形態では、例えば、炭化水素液体はヘキサンである。
【0089】
活性化固体触媒成分を炭化水素液体と合成して、温度を調整しながら、管理された量のオレフィンモノマーと接触させる。予備重合の反応温度は、例えば、得られる予備ポリマーが炭化水素媒体中で溶解しないのに十分であるのと同時に、重合反応が起こるのにも十分な温度である。温度は、約0℃~約20℃で良い。有機ケイ素化合物を活性化中に使用する場合、活性化剤の存在下、又は活性化剤が添加された後で、有機ケイ素化合物を添加することができる。いずれの場合も、オレフィンモノマーと接触する前に、有機ケイ素化合物を添加する。あるいは、活性化中に有機ケイ素化合物を使用しない。
【0090】
必要に応じて、予備重合において、水素などの分子量調節剤も懸濁液へと添加可能である。
【0091】
本開示によれば、形成されるポリマーの量は、触媒成分1gあたり約50g未満、例えば触媒成分1gあたり約40g未満、例えば触媒成分1gあたり約30g未満、例えば触媒成分1gあたり約20g未満となるよう、予備重合反応条件を制御する。形成されるポリマーの量は、概して触媒成分1gあたり約1g超、例えば触媒成分1gあたり約5g超、例えば触媒成分1gあたり約10g超である。
【0092】
最終的に得られる活性化及び予備重合された固体触媒は、炭化水素で洗浄され、乾燥形態又は炭化水素や鉱油中の懸濁液中で単離可能である。
【0093】
最終的に得られる活性化及び予備重合された固体触媒粒子は、実質的に球状であり、ポリオレフィンポリマーの生成で使用される際、ポリマー形態の改善につなげられる。
【0094】
本開示の予備重合及び活性化された固体触媒成分は、上述の触媒粒子を生成するために使用される様々な成分に起因すると考えられる様々な利点及び有益性をもたらすことが見出されている。例えば、定かではないが、触媒成分に組み込まれる内部電子供与体の量を最大化することにより、担持電子供与体が固体触媒成分の形成を促進すると考えられる。例えば、担持電子供与体の少なくとも一部が、触媒成分から除去され、触媒形成中に内部電子供与体によって優先的に置換されると考えられる。加えて、アルミニウム化合物による処理中に担持電子供与体を除去した後で形成されたマグネシウム化合物表面上の空孔に有機ケイ素化合物が挿入されることで、ポリマー形態が改善されたポリマーを生成可能とする非常に安定、かつ活性的な触媒成分をもたらすと考えられる。
【0095】
上記のとおり、本開示の予備重合済み活性化固体触媒成分は、極めて安定しており、触媒活性を失うことなく周囲条件で数ヶ月にわたり保管することができる。定かではないが、安定性は、担持電子供与体、内部電子供与体、及び有機ケイ素化合物を活性化固体触媒成分へと組み込むことに関連すると考えられる。更に、触媒粒子上に形成されたポリマーは、後の重合プロセスでの使用に極めて適した安定した活性化重合中心を生成すると考えられる。
【0096】
成分の相対量は、触媒活性及び安定性に関する有益性ももたらし得る。例えば、アルミニウム化合物の量を増やすと、触媒成分に組み込まれる内部電子供与体の量が減少し、触媒活性の低下のみならず、立体選択性の低下にもつながり得る。一方、有機ケイ素化合物は、触媒成分に組み込まれた内部電子供与体を保護し、求引を防止することができる。一般に、活性化触媒成分上の内部電子供与体の濃度を増加させることにより、より高い活性が得られる。担持電子供与体及び有機ケイ素化合物は共に、内部電子供与体を高濃度に維持するように働くことができる。
【0097】
本開示の活性化固体触媒を調製すると、触媒を保存し、その後ポリオレフィン重合プロセスにおいて使用することができる。例えば、本開示の活性化固体触媒成分を他の成分と合成して、ポリプロピレンポリマーなどのポリオレフィンポリマー用の触媒系を生成できる。ポリオレフィンポリマーを生成するのに使用される触媒系は、上記のより多量のアルミニウム化合物、及び/又は上記のより多量の有機ケイ素化合物と組み合わせて、本開示の活性化固形触媒成分を含められる。また、本触媒系は、活性制限剤(ALA)を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「活性制限剤」(「ALA」)は、高温(すなわち、約85℃を超える温度)で触媒活性を低下させる材料である。ALAは、重合反応器の不調を抑制又はさもなければ阻止し、重合プロセスの継続を確実にする。典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器の温度が上昇するにつれて増大する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの融点に近い温度で高い活性を維持する。発熱重合反応によって生じた熱は、ポリマー粒子凝集体を形成させる場合があり、最終的にはポリマー生成プロセスを中断させ得る。ALAは、昇温で触媒活性を低下させ、それにより反応器の不調を阻止し、粒子の凝集を低減(又は阻止)し、重合プロセスの継続を確実にする。ALAは、アルキルアルミニウム化合物による活性化中に触媒成分へと添加することもできる。
【0098】
活性制限剤は、カルボン酸エステルであってもよい。脂肪族カルボン酸エステルは、C4~C30脂肪族酸エステルであってもよく、モノ-又はポリ-(2つ以上の)エステルであってもよく、直鎖又は分岐状であってもよく、飽和又は不飽和であってもよく、これらの任意の組み合わせであってもよい。C4~C30脂肪族酸エステルはまた、1つ以上の第14族、第15族、又は第16族のヘテロ原子を含有する置換基で置換されてもよい。適切なC4-C30脂肪族酸エステルの非限定的な例としては、脂肪族C4-30モノカルボン酸のC1-20アルキルエステル、脂肪族C8-20モノカルボン酸のC1-20アルキルエステル、脂肪族C4-20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1-4アリルモノ及びジエステル、脂肪族C8-20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1-4アルキルエステル、並びにC2-100(ポリ)グリコール又はC2-100(ポリ)グリコールエーテルC4-20のモノ又はポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。更なる実施形態では、C4~C30脂肪族酸エステルは、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、セバシン酸塩、モノ又はジ酢酸(ポリ)(アルキレングリコール)、モノ又はジミリスチン酸(ポリ)(アルキレングリコール)、モノ又はジラウリン酸(ポリ)(アルキレングリコール)、モノ又はジオレイン酸(ポリ)(アルキレングリコール)、トリ(酢酸)グリセリル、C2-40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステル、及びこれらの混合物であってもよい。更なる実施形態では、C4~C30脂肪族エステルは、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジ-n-ブチル、及び/又は酢酸オクチルである。
【0099】
本開示の触媒系は、ありとあらゆる種類の重合プロセスで使用できる。例えば、触媒系は、塊状重合プロセス及び気相プロセスで使用することができる。各プロセスにおいて、重合条件下で、1つ以上のオレフィンモノマーを触媒系と接触させる。
【0100】
1つ以上のオレフィンモノマーを重合反応器内に導入して、触媒系と反応させ、ポリマー粒子の流動床などのポリマーを形成させることができる。適切なオレフィンモノマーの非限定的な例としては、エチレン、プロピレン、C4-20α-オレフィン、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなど;C4-20ジオレフィン、例えば、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、及びジシクロペンタジエン;スチレン、o-、m-、及びp-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレンを含むC8-40ビニル芳香族化合物;並びにハロゲン置換C8-40ビニル芳香族化合物、例えば、クロロスチレン及びフルオロスチレンが挙げられる。
【0101】
本明細書で使用する場合、「重合条件」は、触媒組成物とオレフィンとの間の重合を促進して所望のポリマーを形成するのに好適な、重合反応器内の温度及び圧力パラメータである。重合プロセスは、1つの又は1つより多い反応器内で動作する、気相重合プロセス、スラリー重合プロセス、又はバルク重合プロセスであってもよい。
【0102】
一実施形態では、重合は、気相重合によって生じる。本明細書で使用する場合、「気相重合」は、1つ以上のモノマーを含有する上行する流動化媒体が、触媒の存在下で、流動化媒体によって流動状態で維持されるポリマー粒子の流動床を通過することである。「流動化」、「流動化された」、又は「流動化する」とは、微粉化ポリマー粒子の床が上昇ガス流によって持ち上げられ、撹拌される、ガス-固体接触方法である。流動化は、粒子の床の隙間を通る流体の上方流が粒子重量を超える圧力差及び摩擦抵抗増分に達したときに、粒子の床で生じる。このため、「流動床」は、流動化媒体流によって流動状態で浮遊した複数のポリマー粒子である。「流動化媒体」は、1つ以上のオレフィンガス、任意選択でキャリアガス(H2又はN2など)、及び任意選択で液体(炭化水素など)であり、これは気相反応器を通って上行するものである。
【0103】
典型的な気相重合反応器(又は気相反応器)は、容器(すなわち、反応器)、流動床、分配器プレート、入口及び出口パイプ、圧縮器、循環ガス冷却器又は熱交換器、並びに生成物排出系を含む。容器は、反応域及び速度減少域を含み、これらは各々、分配器プレートの上に位置する。床は反応域内に位置する。ある実施形態では、流動化媒体は、プロピレンガスと、少なくとも1つのオレフィンなどの他のガス及び/又は水素若しくは窒素などのキャリアガスとを含む。
【0104】
一実施形態では、接触は、触媒組成物を重合反応器に供給し、オレフィンを重合反応器に導入することによって生じさせる。
【0105】
様々な異なる種類のポリマーを、本開示の触媒系を使用して生成することができる。例えば、本触媒系を使用して、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、及びポリプロピレンターポリマーを生成することができる。本触媒系はまた、エラストマー特性を有する耐衝撃性ポリマーを生成するために使用することができる。
【0106】
ゴム様又はエラストマー特性を有する耐衝撃性ポリマーは、典型的には、触媒が高い活性レベルを維持することが望ましい2つの反応器系で作製される。一実施形態では、例えば、重合は、直列に接続した2つの反応器内で実施する。プロピレンホモポリマー又はプロピレンコポリマーを、活性プロピレン系ポリマーを形成するために、第1の反応器内に形成させ得る。その後、第1の重合反応器からの活性プロピレン系ポリマーを第2の重合反応器内に導入し、第2の重合条件下で、少なくとも1つの第2のコモノマーと第2の反応器内で接触させて、プロピレンインパクトコポリマーを形成させる。一実施形態では、本プロセスには、活性プロピレン系ポリマーを、重合条件下の第2の重合反応器内でプロピレン及びエチレンと接触させ、プロピレン/エチレンコポリマーの不連続相を形成させることが含まれる。
【0107】
上記のように、第1相ポリマーは、ポリプロピレンホモポリマーを含み得る。しかしながら、代替的な実施形態では、第1相ポリマーは、ポリプロピレンのランダムコポリマーを含んでもよい。
【0108】
ランダムコポリマーは、例えば、プロピレンと、エチレンなどのアルファ-オレフィンとのコポリマーであり得る。ポリプロピレンランダムコポリマーは、ポリプロピレン組成物中にマトリックスポリマーを形成し、アルファオレフィンを、約12重量%未満の量、例えば約5重量%未満の量、例えば約4重量%未満の量、及び概して、約0.5重量%超の量、例えば約1重量%超の量、例えば約1.5重量%超の量、例えば約2重量%超の量で含有し得る。
【0109】
第2相ポリマーは、プロピレンとアルファ-オレフィンとのコポリマーである。しかしながら、第2相ポリマーは、エラストマー又はゴム様の特性を有する。このため、第2相ポリマーは、ポリマーの耐衝撃性を飛躍的に改善することができる。
【0110】
ポリマー組成物中に分散相を形成する第2相ポリマーは、α-オレフィン又はエチレンを、第2相ポリマーの重量に基づいて、概して、(ゴム部の)約10重量%超の量、例えば約20重量%超の量、例えば約40重量%超の量、かつ、概して、約65重量%未満、例えば約45重量%未満で含む。
【0111】
上記のとおり、本開示の触媒系は、形態が改善されたポリマーを生成することに加えて、球状粒子及び比較的高い嵩密度を有する様々な異なるポリマーを生成することができ、更に、本開示の触媒系は、触媒活性が高いだけでなく、触媒寿命が長いことにより、この触媒系を反応器システムで使用する上でとりわけ適していることも見出されている。
【0112】
本開示は、以下の実施例を参照してよりよく理解され得る。
【実施例】
【0113】
定義
【0114】
以下のパラメータは、以下のように定義される。
【0115】
触媒粒子の形態は、それから生成されるポリマー粒子の形態を示す。ポリマー粒子形態の3つのパラメータ(球形度、対称性、及びアスペクト比)は、カムサイザー器具を使用して決定され得る。カムサイザー特性:
【数1】
式中、
Pは、粒子投影図の、周辺の長さ/円周の実測値である。また
Aは、粒子投影図によりカバーされる面積の実測値である。
Pは、粒子投影図の、周辺の長さ/円周の実測値である。また
Aは、粒子投影図によりカバーされる面積の実測値である。
【0116】
理想的な球体の場合には、SPHTが1になると定義される。そうでなければ、値は1未満である。
【0117】
対称性は、以下のように定義される。
【数2】
r1及びr2は、領域の中心から、測定方向にある境界線までの距離として定義される。非対称な粒子の場合、Symmは1未満である。領域の中心が粒子の外側にある場合、即ち、
【数3】
である場合には、Symmは0.5未満である。
【0118】
XMa=r1+r2、又は「Symm」は、異なる方向から測定した対称性の値の組の最小値である。
【0119】
アスペクト比:
【数4】
式中、x
c min及びx
Fe maxは、x
cとx
Feの値を実測した組から得られる。
【0120】
アスペクト比(「B/L3」)などの触媒形態特徴は、ポリマー形態の特徴評価に使用することができる。
【0121】
「D10」は、粒子のうちの10%がそのサイズ未満である粒子のサイズ(直径)を表し、「D50」は、粒子のうちの50%がそのサイズ未満である粒子のサイズを表し、「D90」は、粒子のうちの90%がそのサイズ未満である粒子のサイズを表す。「スパン」は、粒子の粒径の分布を表す。値は、以下の式に従って計算することができる。
スパン=(D90-D10)/D50
いずれのD又はスパン値よりも前の「PP」は、示された触媒で調製されたポリプロピレンのD値又はスパン値を示す。
【0122】
BDは、嵩密度の略語であり、g/mLの単位で報告される。
【0123】
CEは、触媒効率の略語であり、1時間の重合中の触媒1グラムあたりのKgポリマーの単位(Kg/g)で報告される。
【0124】
MFRは、メルトフローレートの略語であり、g/10分の単位で報告される。MFRは、ASTM試験D1238 Tに従って測定される。
【0125】
Malvern Mastersizer 3000機器によるレーザ光散乱法を使用して、触媒構成成分粒径分析を実施した。溶媒としてトルエンを使用した。
【0126】
IEDは、内部電子供与体の略称である。
【0127】
EBは安息香酸エチルの略語である。
【0128】
TBPは、リン酸トリブチルの略語である。
【0129】
ECHは、エピクロロヒドリンの略語である。
【0130】
TEOSは、オルトケイ酸テトラエチルの略語である。
【0131】
Ti、Mg、及びDは、組成物中のチタン、マグネシウム、及び内部供与体それぞれごとに対する重量パーセント(重量%)である。
【0132】
XSはキシレン可溶性の略語であり、重量%単位で報告される。
【0133】
バルクプロピレン重合
【0134】
実施例の触媒をプロピレン重合法で使用した。以下の方法を使用した。反応器を、100℃で、窒素を流しながら、30分間にわたり、重合化の実行に先立って焼成した。反応器を、30~35℃まで冷却し、助触媒(25重量%のトリエチルアルミニウム(TEAl)を1.5mL)、炭素供与体[シクロヘキシルメチルジメトキシシラン](1mL)、水素(3.5psi)、及び液体プロピレン(1500mL)をこの順で、反応器の中に追加した。鉱物油スラリーとして充填された触媒(5~10mg)を、高圧窒素を使用して、反応器の中に押し込んだ。70℃で1時間にわたり、重合化を実行した。重合化の後で、反応器を22℃に冷却し、大気圧になるまで脱気して、ポリマーを回収した。
【0135】
実施例の触媒を、気相プロピレン重合法で使用した。以下の方法を使用した。反応器を、100℃で、窒素を流しながら、30分間にわたり、重合化の実行に先立って焼成した。反応器を30℃まで冷却し、助触媒(0.27mlの25重量%トリエチルアルミニウム(TEAl))、炭素供与体(シクロヘキシルメチルジメトキシシラン)(0.38ml)、及び水素(0.5g)と共にプロピレン(150g)を充填した。反応器を35℃まで加熱し、触媒成分(0.5~0.7mg)をプロピレン(150g)と共に反応器へと投入した。70℃で1時間にわたり、重合化を実行した。重合化の後で、反応器を22℃に冷却し、大気圧になるまで脱気して、ポリマーを回収した。活性化触媒成分の触媒活性は、一次触媒成分の含有量に基づいて算出した。
【0136】
実施例1
【0137】
MgCl2(13.2g)、Al(OCH(CH3)2)3(1.0g)、トルエン(59.5g)、リン酸トリ-n-ブチル(36.3g)、及びエピクロロヒドリン(14.25g)を組み合わせ、600rpmで8時間撹拌しながら窒素雰囲気下で60℃まで加熱させた。室温まで冷却した際に、トルエン(140g)を、安息香酸エチル(3.5g)及びオルトケイ酸テトラエチル(6g)と共に追加した。次いで、混合物を-25℃まで冷却し、温度を-25℃に維持しながら、TiCl4(261g)を600rpmの撹拌下でゆっくりと添加した。添加完了後、温度を1時間保ってから、30分かけて35℃まで加温し、その温度を30分間保持して、次に、温度を30分かけて85℃まで上昇させて、30分間保持してから、濾過によって固体沈殿物を回収した。固体沈殿物をトルエン(200mL、各洗浄)で3回洗浄した。次いで、最終的に得られた沈殿物を、トルエン(264ml)中で合成した。本混合物を撹拌下で105℃まで加熱し、続いてトルエン(10g)中に内部電子供与体(2.0g)を追加した。内部電子供与体は、以下の式である:
【化12】
【0138】
式中、R1~R4は水素、又はアルキル基から選択され、R3、R4、R5、R6は、1~20個の炭素原子を有する同一又は異なるアルキル若しくはシクロアルキル、ヘテロ原子、又はそれらの組み合わせである。この実施例では、R基の1つはメチルであり、別のR基はtert-ブチル(3-メチル-5-t-ブチルカテコールジ安息香酸)(CDB-1)であった。
【0139】
105℃での加熱を1時間継続してから、濾過により固体を回収した。このプロセスには、トルエン中のTiCl4と合成し、105℃で加熱し、再び110℃で加熱した後、最終製品をヘキサンで4回洗浄し(洗浄ごとに200ml)、更に、各洗浄で60~65℃で10分間撹拌することが含まれた。次に、触媒構成成分をヘキサンスラリーとして排出した。
【0140】
実施例2~4は、プレポリマーなしで調製された活性化触媒成分の組成及び触媒挙動を示す。実施例1の触媒成分を表1に従って処理した。触媒成分の活性化は、様々な量の外部供与体D(実施例2及び3)で実施した。実施例4は、第2電子供与体であるジエーテル(3,3-ビス(メトキシメチル)-2,6-ジメチルヘプタン)(DEMH)の存在下で実施した。実施例2~4は、活性化プロセス中の内部電子供与体及びEBの相対的に異なる回収量及び異なる触媒挙動を示している。
【0141】
図1で見られるように、実施例4の活性化触媒からは、丸みを帯びた固体形状のポリマー粒子を含有するBD(0.46g/cc)の高いポリマーが生成された。
【0142】
【0143】
【0144】
実施例1の非フタル酸触媒成分の活性化によって、実施例5~7のポリプロピレンを含有する活性化触媒成分を調製した。
【0145】
実施例5.実施例1の触媒(5.0gの乾燥ベースで27.0gのヘキサン懸濁液)を反応器へと添加した。250mlのヘキサンを添加した。2.1gのD供与体(ジシクロペンチルジメトキシシラン)(2gのヘキサン中)を加えた。反応器温度を10℃に設定した。ヘプタン中で10%のTEALを21g反応器に加えた。反応器を30℃まで加熱し、250rpmで120分間保った。反応器を5℃まで冷却し、TEAL(ヘプタン中で10%のTEAL 7g)を加えた。数分後、プロピレン(10g)を40分かけて加えた。反応器温度を30℃まで上昇させた。固体をヘキサンで洗浄してから、乾燥させた。
【0146】
実施例6.実施例5を繰り返したが、ただし、AlEt3を一度に加えている。
【0147】
実施例7.実施例6を繰り返したが、ただし、表3に従って、AlEt3の量を減らしている。
【0148】
実施例8.実施例7を繰り返したが、ただし、表3に従って、AlEt3、及び外部供与体の量を減らしている。外部供与体は炭素供与体であった。
【0149】
実施例9は、時間を変えた以外は実施例1と同様にして調製した非フタル酸触媒成分の組成と触媒特性を示す。
【0150】
実施例10は、活性化触媒成分の調製、活性化触媒成分の組成及び触媒特性を示す。実施例8を繰り返したが、ただし、実施例9の非フタル酸エステル系触媒成分を使用し、AlEt3と炭素供与体の量を表3で記録したとおりに使用している。
【0151】
実施例5~8及び10による活性化触媒成分の特性を表3で示している。活性化触媒成分は、触媒成分1グラムあたり約2gの量のプレポリマーを含有する。活性化触媒成分の粒径は、触媒成分の粒径と比較して数ミクロンまで増加した。
【0152】
実施例5~9及び10による活性化触媒成分は、嵩密度が高く、ポリマー形態が改善されたポリマーを生成した。ポリマー粒子の形状は、実質的に球状であることが見出された。実施例10による活性化触媒成分を、バルク及び気相プロピレン重合において試験した。活性化触媒成分は、高い触媒活性を示し、嵩密度が非常に高い(BD=0.50g/ccのバルクプロピレン重合、及び気相反応器中0.45g/cc)ポリマーを生成した。ポリマー粒子のSEM画像を
図2及び
図3に示す。
【0153】
活性化触媒成分中の内部電子供与体(「IED」)及びEBの量は、活性化条件で異なる。担持電子供与体は、活性化プロセス中に略除去されることが見出された。同時に、IEDの量の大部分は、依然として活性化触媒成分中に存在している。活性化触媒成分の触媒活性が、活性化触媒成分中の残留量に関連することも見出された。
【表3】
PDは重合度であり、PD=C3/触媒(重量)
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
記載と同じ重合プロセスを使用することで、実施例5~9及び10による活性化触媒成分から、嵩密度が高く、ポリマー形態が改善されたポリマーが生成された。ポリマー粒子の形状は、実質的に球状であることが見出された。実施例10の活性化触媒成分を、バルク及び気相プロピレン重合において試験した。活性化触媒成分は、高い触媒活性を示し、嵩密度が非常に高い(BD=0.50g/ccのバルクプロピレン重合、及び気相反応器中0.45g/cc)ポリマーを生成した。ポリマー粒子のSEM画像を
図3及び
図4に示す。
【0158】
実施例12~24では、異なる触媒プラットフォームに基づいて調製された活性化触媒成分の性能を示している。実施例11(比較例)は、最初に活性化しない触媒成分(CONSICONSIST601)の重合挙動を示す。
【0159】
実施例12~24。
【0160】
W.R.から入手可能な、CONSISTA(登録商標)触媒成分のMo懸濁液。Grace Company(固体17.1%で41.0g)を反応器に添加した。固体をヘキサンで洗浄し、ヘキサン(約200ml)を反応器に添加した。混合物を400rpmで撹拌し、反応器の温度を0℃まで冷却した。AlEt3(25%溶液で6.90g)を加えた。直ちに炭素供与体(10%炭素供与体で3.44g)を添加した。数分間撹拌した後、プロピレンを30~60分間ゆっくりと添加した。反応器の温度を30℃まで上昇させ、数分間保った。反応器を0℃まで冷却した。ガスプロピレンを60~90分間反応器に添加した。反応器の温度を0℃から30℃まで上昇させ、1時間30℃に保った。溶媒を除去したら、固体をヘキサンで洗浄し、乾燥させて、活性化触媒成分を形成した。活性化触媒成分の懸濁液の一部をCO2で処理し(条件1)、懸濁液の別の部分については、この処理をせずに放置した(条件2)。いくつかの実施例では、活性化触媒成分をTiCl4で洗浄した(条件3)。実施例におけるプロピレンの量は、可変であり、以下の表に列挙されている。
【0161】
【0162】
時効効果に関して、この活性化触媒成分を評価した。活性化触媒成分を20~22℃の鉱油中に保持し、重合について試験した。この触媒成分は、触媒活性を損なうことなく数ヶ月間安定であることが見出された。
【0163】
【0164】
1時間及び2時間にわたりプロピレン重合を使用して、活性化触媒成分の触媒安定性(寿命)を決定した。実施例より、この活性化触媒成分を使用すると、触媒寿命が改善することが実証された。
【0165】
【0166】
この活性化触媒成分は、触媒活性が高く、生成されたポリマーのBDの改善を示している。この触媒成分は、触媒活性を損なうことなく数ヶ月間安定である。より安定した活性化触媒成分は、予備重合比率が低かった。
【0167】
この活性化触媒成分は、比較対照と比較して、動力学の改善を示した。
【0168】
実施例28~33
【0169】
実施例28~33は、別の内部供与体で調製された活性化触媒成分組成物について述べている。担持供与体としてのCDB-2内部供与体及びEBを、高活性活性化触媒成分の調製で使用した(表11)。CDB-2は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許公開第2013/0261273号の52項に記載されているカテコールジ安息香酸である。活性化触媒成分を、実施例5~7に記載の一般的な手順で作製した。実施例27(比較例)は、実施例1で記載の一般手順の下で、内部電子供与体としてのCDB-2で調製された非活性化触媒成分を提示する。
【表11】
実施例35~40は、バルクプロピレン重合において、CDB-2内部供与体で作製された活性化触媒成分の重合挙動を示す。実施例34は、非活性化触媒の重合挙動を示す比較例である。表10から分かるように、この活性化触媒成分は、バルクプロピレン重合において高い触媒活性を示している。加えて、活性化触媒は、形態が改善されたポリマーを使用する。この活性化触媒成分で生成されたポリマーの嵩密度(BD)は、非活性化触媒(0.41g/cc)の嵩密度よりも高い(0.47g/cc)(表12)。
この活性化触媒は、非活性化触媒と比較して触媒寿命の劇的な改善を示した(重合の1時間目と2時間目の触媒活性の分割を参照)。
【表12】
【0170】
実施例42~44
【0171】
実施例42~44は、CDB-2内部供与体を含有する活性化触媒成分とのプロピレン気相重合に関するデータを示す。実施例41は、気相反応器内で非活性化触媒を試験する比較例である(表11)。
実施例42~44は、異なる重合条件下での気相プロピレン重合において活性化触媒成分の触媒活性が高いことを示す(表13)。
【表13】
表14は、活性化触媒成分による気相試験実験におけるポリマー形態データを要約している。産業用気相プロセスにおけるポリマー生成にとって重要な形態特性が2点存在する。つまり、それらは、ポリマーの嵩密度、及び流動性である。
高さ114mm、出口直径8.0mm、入口直径93mm、円錐角20°である標準化漏斗を、ポリマー流動性測定で使用した。漏斗を流れる試料流の速度は、g/秒で決定される。各ポリマー試料を3回試験し、平均データを分析した。
活性化触媒成分を含む気相反応器で生成されたポリプロピレン粉末の嵩密度及び流動性は、非活性化触媒で生成されたポリマー粉末よりも-40%高くなる。
【表14】
活性化触媒成分は、インパクトコポリマー、具体的には、エチレン-プロピレンインパクトコポリマー(ICP)において大きな利点がある。ICPの製造において、嵩密度や流動性などの形態特性は、コモノマー組み込みの高さと合わせて重要である。コモノマー含有量が高いポリマーには、流動性に制約があることにより、多くの産業用気相プロセスは、ゴム含有量の高いインパクトコポリマーを生成することは困難である。この活性化触媒成分は、重合プロセス中及び重合プロセス後のポリマー流動性を良好に維持しながら、ゴム含有量の高いコポリマーの生成を可能にする。
【0172】
実施例45~49
【0173】
実施例46~49は、活性化触媒成分によるエチレンプロピレンインパクトコポリマー(ICP)の生成、並びにこれらの触媒で生成されたポリマーの特性を示している。
インパクトコポリマーを、2工程で気相反応器内で生成した。第1工程は、上記のようなホモPP生成である。反応器をプロピレン重合30分後に排気してから、エチレン-プロピレン混合物を充填し、生成を60分間続行した。炭素供与体(シクロヘキシルメチルジメトキシシラン)、D供与体(ジシクロペンチルジメトキシシラン)、ALA-活性制限剤を外部供与体として使用した(表15)。
エチレンプロピレンコモノマーの組成をFTIR法で分析した。Et%-ポリマー中の総エチレン含量(重量%)、Ec%-ゴム型ポリマー中のエチレン含有量(重量%)、Fc%-ポリマー中のゴム含有量(重量%)(表16)。
【表15】
【表16】
実施例46~49(表15)は、調整可能な重合条件下でのインパクトコポリマー生成における活性化触媒成分の活性の高さを示す。触媒活性は、非活性化触媒を用いた実験(実施例45、比較例)よりも高い。
表16は、生成されたICPのポリマー特性を示す。指摘すべき重要な点として、この活性化触媒成分が、エチレン含有量が高く、しかも、嵩密度及び流動性の高い優れたポリマー形態を有するICPを生成するということである。活性化触媒成分で生成されたICPの嵩密度及び流動性は、非活性化触媒で生成されたポリマーよりも30%~35%高い。
【0174】
実施例50~53
【0175】
実施例50~53は、CDB-1及びCDB-2内部供与体を使用して、実施例5~8に記載の一般手順で調製した活性化触媒成分中のチタン原子の酸化状態を示す。TEA1による触媒処理中、チタン原子は、TiCl
4由来のTi
4+からTi
3+及びTi
2+へと還元された。Ti(+3)種は、活性化触媒成分中で主であり、Ti(+3)の相対量は、活性化条件によって変化する(表17)。チタンチウム種の減少量は、J.Mol.Cata.A-Chem、2001年、172,89~95に記載されている滴定法により測定した。
【表17】
上記結果から、プロピレンの重合と共重合における高い触媒活性、触媒の安定性(時効効果、触媒貯蔵)、高いコモノマーの取り込みと、触媒の破損や微粉形成のない優れたポリマー形態、バルクプロピレンと気相重合反応器におけるすべての重合プロセスを通じて得られる高い嵩密度と高い流動性のポリマー粉末という、他には見られない性能が実証された。実証された触媒性能は、+4、+3及び+2の酸化状態のチタン原子の存在、高濃度の内部供与体、並びに、活性化触媒成分中の少量の支持ドナーに関連する、特別な触媒組成と触媒機能に起因する。活性化触媒成分の調製中、担持供与体は、記載の特性を有するポリマーの生成に関与する非常に活性的で安定した活性重合中心を提供する外部供与体で置換された。
【0176】
本発明に対するこれら及び他の修正及び変形は、添付の特許請求の範囲においてより具体的に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者によって実施されてもよい。加えて、様々な実施形態の態様は、全体的に又は部分的にの両方に交換され得ることを理解されたい。更に、当業者であれば、前述の説明はあくまで例示としてであり、かかる添付の特許請求の範囲で更に記載されるように本発明を限定することを意図するものではないことを理解するであろう。
【国際調査報告】