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特表2022-532006フッ素含有置換イミダゾール塩系化合物、その製造方法、医薬組成物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】フッ素含有置換イミダゾール塩系化合物、その製造方法、医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/64 20060101AFI20220706BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
C07D233/64 102
C07D233/64 CSP
A61P43/00 111
A61P3/06
A61P3/10
A61P3/04
A61P35/00
A61P25/16
A61P25/28
A61K31/4164
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543173
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2020089128
(87)【国際公開番号】W WO2020228596
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】201910387619.5
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519291630
【氏名又は名称】厦門華綽生物医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲とん▼賢明
(72)【発明者】
【氏名】林聖彩
(72)【発明者】
【氏名】張宸▲松▼
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC38
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZA70
4C086ZB26
4C086ZC33
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
5’-アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化させる活性を有する化合物、その製造方法、該化合物を含む医薬組成物、及び、それらの脂肪酸合成を低減させる医薬品、トリグリセリド及びコレステロールの合成を抑制する医薬品、肥満及びII型糖尿病を予防及び/又は治療する医薬品、腫瘍を予防及び/又は治療する医薬品、パーキンソン病を予防及び/又は治療する医薬品、アルツハイマー病を予防及び/又は治療する医薬品、又は哺乳動物の寿命を延ばす医薬品の製造における使用を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式の化合物
[式中、
は1~15個のフッ素原子で置換されたC10~C20アルキル基から選択され、
好ましくは、Rは、1、3、5、7、9、11、13又は15個のフッ素原子で置換されたC14~C18アルキル基から選択され、
より好ましくは、RはC16FH32-、C1422-、C1522-、C161122-、C171322-から選択され、
は水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、
好ましくは、Rは、水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、
より好ましくは、Rは、水素、メチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基から選択され、

1)
(式中、Z、Z、Z、Z、Zは、それぞれ独立して、
(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシホルミル基、メトキシホルミル基、エトキシホルミル基、n-プロポキシホルミル基、イソプロポキシホルミル基、アミノホルミル基、N-メチルホルミル基、N-エチルホルミル基、N-n-プロピルホルミル基、N-イソプロピルホルミル基、N-シクロプロピルホルミル基、N-n-ブチルホルミル基、N-イソブチルホルミル基、N-t-ブチルホルミル基、N-シクロブチルホルミル基、N-n-ペンチルホルミル基、N-イソペンチルホルミル基、N-シクロペンチルホルミル基、N-n-ヘキシルホルミル基、N-イソヘキシルホルミル基、N-シクロヘキシルホルミル基、N,N-ジメチルホルミル基、N,N-ジエチルホルミル基、N,N-ジ-n-プロピルホルミル基、N,N-ジイソプロピルホルミル基、シクロプロピルアミノ基ホルミル基、シクロブチルアミノ基ホルミル基、シクロペンチルアミノホルミル基、シクロヘキシルアミノホルミル基、4-ヒドロキシピペリジニルホルミル基、ピペラジニルホルミル基、4-N-メチルピペラジニルホルミル基、4-N-エチルピペラジニルホルミル基、4-N-n-プロピルピペラジニルホルミル基、4-N-イソプロピルピペラジニルホルミル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、N-メチルスルホニル基、N-エチルスルホニル基、N-n-プロピルスルホニル基、N-イソプロピルスルホニル基、N-シクロプロピルスルホニル基、N-n-ブチルスルホニル基、N-イソブチルスルホニル基、N-t-ブチルスルホニル基、N-シクロブチルスルホニル基、N-n-ペンチルスルホニル基、N-イソペンチルスルホニル基、N-シクロペンチルスルホニル基、N-n-ヘキシルスルホニル基、N-イソヘキシルスルホニル基、N-シクロヘキシルスルホニル基、N,N-ジメチルスルホニル基、N,N-ジエチルスルホニル基、N,N-ジ-n-プロピルスルホニル基、N,N-ジイソプロピルスルホニル基、シクロプロピルアミノスルホニル基、シクロブチルアミノスルホニル基、シクロペンチルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、4-ヒドロキシピペリジニルスルホニル基、ピペラジニルスルホニル基、4-N-メチルピペラジニルスルホニル基、4-N-エチルピペラジニルスルホニル基、4-N-n-プロピルピペラジニルスルホニル基、4-N-イソプロピルピペラジニルスルホニル基、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、n-ブタナミド基、イソブタナミド基、シクロプロピルホルムアミド基、シクロブチルホルムアミド基、シクロペンチルホルムアミド基、シクロヘキシルホルムアミド基、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、n-プロパンスルホンアミド基、イソプロパンスルホンアミド基、n-ブタンスルホンアミド基、イソブタンスルホンアミド基;
(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシ基から選択され、
(3)Z及びZは酸素含有の置換又は非置換の5員環又は6員環を形成してもよく、置換基はZと同じ置換基から選択されてもよく、
(4)Z及びZは窒素含有の置換又は非置換の5員環又は6員環を形成してもよく、置換基はZと同じ置換基から選択されてもよく、Zは水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択される。);
2)
(式中、Z、Z、Z、Zは上記1)と同義である。);
3)
(式中、Z、Z、Z、Zは上記1)と同義である。);
4)
(式中、Z、Z、Z、Zは上記1)と同義である。)から選択され、
好ましくは、R
であり、ここで、Z、Z、Z、Z、Zのうちの2個は、それぞれ独立して、(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシホルミル基、アミノホルミル基、メタンスルホニル基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、ホルムアミド基、メタンスルホンアミド基;(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシから選択され、残りは水素であり、Zは、水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、好ましくは、Zは水素又はメチル基であり、より好ましくは、R
であり、ここで、Z、Z、Z、Zのうちの2個は、それぞれ独立して、(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシホルミル基、アミノホルミル基、メタンスルホニル基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、ホルムアミド基、メタンスルホンアミド基;(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシ基から選択され、残り及びZは水素であり、Zは水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、好ましくは、Zは水素又はメチル基であり、さらに好ましくは、R
であり、ここで、Z、Z、Z、Z、ZのうちのZ、Z、又はZ、Z、又はZ、Zは、それぞれ独立して、(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシホルミル基、アミノホルミル基、メタンスルホニル基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、ホルムアミド基、メタンスルホンアミド基;(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシから選択され、残りは水素であり、Zは水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、好ましくは、Z水素又はメチル基であり、
は薬学的に許容される無機酸塩又は有機酸塩のアニオンであり、好ましくは、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、パルミチン酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンである。]、
又は上記化合物の立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項2】
[式中、
は1~15個のフッ素原子で置換されたC10~C20アルキル基から選択され、
好ましくは、Rは、1、3、5、7、9、11、13又は15個のフッ素原子で置換されたC14~C18アルキル基から選択され、
より好ましくは、Rは、C16FH32-、C1422-、C1522-、C161122-、C171322-から選択され、
最も好ましくは、Rは、n-C16FH32-、n-C1422-、n-C1522-、n-C161122-、n-C171322-から選択され、
は、水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、
好ましくは、Rは、水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、
より好ましくは、Rは、水素、メチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基から選択され、
は、1’-ハロゲン、1’-C~Cアルコキシ基(好ましくは、1’-C~Cアルコキシ基)から選択され、
は、4’-ハロゲン、5’-ハロゲンから選択され、
好ましくは、S、Sは、それぞれ、1’-ハロゲン、5’-ハロゲン、又は1’-C~Cアルコキシ基(好ましくは、1’-C~Cアルコキシ基)、4’-ハロゲンであり、
は、薬学的に許容される無機酸及び有機酸のアニオンであり、好ましくは、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、パルミチン酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンである。]である、
請求項1に記載の化合物、又は、上記化合物の立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項3】
から選択される、請求項1又は2に記載の化合物、又は上記化合物の立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物。
【請求項4】
化合物IA-1~IA-3の製造方法は、
であり、
化合物IB-1~IB-58の製造方法は、
であり、
反応条件:(a)アルカリ性条件下(例えば、水素化ナトリウム、ナトリウムtert-ブトキシドなど)の臭素化炭化水素系の置換反応;(b)臭素化炭化水素系の置換反応;
化合物IB-59及びIB-60の製造方法は、
であり、
化合物IB-33をエタノールに溶解して冷却し、好ましくは、0℃に冷却し、水酸化カリウムを加えて、該反応系を0~5℃で撹拌し続け、
反応終了後、上記反応系をろ過して、澄明なろ液を得て、条件Aとして、ろ液を0℃に冷却し、次に、98%濃硫酸を滴下し、該反応系を0~5℃で撹拌し続け、反応終了後、反応系を濃縮させ、好ましくはメチルt-ブチルエーテルで再結晶させ、化合物IB-59を得て、条件Bとして、ろ液を好ましくは0℃に冷却し、次に、98%濃硫酸を滴下し、該反応系を0~5℃で撹拌し続け、反応終了後、反応系を濃縮させ、好ましくはメチルt-ブチルエーテルで再結晶させ、化合物IB-60を得る、請求項3に記載の化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物又はその立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物と、薬学的に許容される任意の賦形剤とを含有する、医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物又はその立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物又は請求項5に記載の医薬組成物の、5’-アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)活性を活性化させる医薬品の製造における使用。
【請求項7】
脂肪酸合成を低減させる医薬品、トリグリセリド及びコレステロールの合成を抑制する医薬品、肥満及びII型糖尿病を予防及び/又は治療する医薬品、腫瘍を予防及び/又は治療する医薬品、パーキンソン病を予防及び/又は治療する医薬品、アルツハイマー病を予防及び/又は治療する医薬品又は哺乳動物の寿命を延ばす医薬品の製造における、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物又はその立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物又は請求項5に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品化学の分野に関し、具体的には、5’-アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化させる活性を有する化合物、その製造方法、該化合物を含む医薬組成物、及び、脂肪酸合成を低減させる医薬品、トリグリセリド及びコレステロールの合成を抑制する医薬品、肥満及びII型糖尿病を予防及び/又は治療する医薬品、腫瘍を予防及び/又は治療する医薬品、パーキンソン病を予防及び/又は治療する医薬品、アルツハイマー病を予防及び/又は治療する医薬品又は哺乳動物の寿命を延ばす医薬品の製造における、これらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
5’-アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMP-activated protein kinase,AMPK)は、生体と細胞内でエネルギーレベルを感知し、代謝恒常性を調節する最も重要な分子である。AMPKは、α、β、及びγの3つのサブユニットからなるヘテロ三量体であり、生理学的条件で細胞内のエネルギーが不足しているときに、その上流キナーゼによってリン酸化されて活性化され、脂肪細胞内のトリグリセリドの加水分解促進、肝臓による血液中の脂肪酸の摂取、酸化の促進、脂肪酸やコレステロールの生成やトリグリセリド形成の抑制、筋肉中の脂質酸化やブドウ糖の取り込みや分解の促進、膵島β細胞からのインスリン分泌やグリコーゲン合成の抑制、タンパク質合成の抑制、オートファジーやケトン体生成作用の促進など、一連の下流反応を開始させる(Hardie DG,Ross FA,Hawley SA.Nat Rev Mol Cell Biol.2012 13(4):251-62)。これらの作用の結果、生体内のエネルギー産生代謝を増加し、生体内のエネルギー消費代謝を減少し、それによってエネルギー定常状態を維持する役割を達成し、細胞の正常な生命活動を保証する。そのため、AMPKの活性化は健康に有益な多くの効果を発揮することができる。例えば、多種の腫瘍組織、例えば黒色腫、乳癌、結腸癌や肺癌組織において、AMPKの発現又は活性は強く阻害され、これらの組織における本来の同化代謝と異化代謝のバランスを更に破り、腫瘍の発展を促進する(Shackelford DB,Shaw RJ.Nat Rev Cancer.2009(8):563-75)。細胞レベルでは、AMPKの活性化はmTORC1複合体を抑制することにより腫瘍細胞の合成代謝を抑制し、その増殖を阻止し(Inoki K,Kim J,Guan KL.Annu Rev Pharmacol Toxicol.2012 52:381-400)、また、p53の活性を促進することにより腫瘍細胞の増殖ブロックとアポトーシスを引き起こし、腫瘍細胞の増殖を抑制することが多くの研究により示されている(Jones RG et al.,Mol Cell.2005 18(3):283-93)。そのため、AMPK活性化剤は腫瘍の予防と治療に重要な役割を持っている。
【0003】
AMPKは、腫瘍に加えて、糖尿病とも密接に関係している。肥満マウスやII型糖尿病患者の末梢組織ではAMPKの活性が有意に阻害されることが見出されている(Viollet B.et al.,Crit Rev Biochem Mol Biol.2010 45(4):276-95)。AMPKの活性化は筋肉中のグルコーストランスポーターGLUT4の細胞膜への転移を促進し、筋肉による血液中のブドウ糖の吸収と異化代謝を増加し、それによって血糖を低下させることができる(Huang S,Czech MP.Cell Metab.2007 5(4):237-52)。肝臓においては、AMPKはCRTC2をリン酸化することにより後者の核外輸送を促進し、あるいは脱アセチル化酵素HDAC4/5/7をリン酸化することによりFOXO1の核外輸送を促進することができ、この2種類の方法のいずれも、肝臓の糖新生経路を抑制し、血糖を低下させる(Altarejos JY,Montminy M.Nat Rev Mol Cell Biol.2011 12(3):141-51)。また、AMPKの活性化は肥満マウスの脂肪加水分解と脂肪酸の酸化を促進することで、肝臓の脂肪含有量を下げて、脂肪肝を治療したり、脂肪組織の体積を減らしたりして、ダイエットの効果を達成することができる(Garcia D et al.,Cell Rep.2019 26(1):192-208;Pollard A et al.,Nature Metab.20191:340-349)。そのため、AMPK活性化剤は脂肪酸合成を低下させる医薬品、トリグリセリド及びコレステロール合成を抑制する医薬品、肥満及びII型糖尿病を予防及び/又は治療する医薬品の製造に重要な作用がある。
【0004】
また、AMPKは炭水化物、脂肪及びコレステロールの代謝及び生合成に対して多機能的な作用を有するため、これらの作用はパーキンソン病及びアルツハイマー病(Nat.Rev.Mol.Cell Biol.2014,15,634-646.)、及び生体の寿命延長(Curr.Biol.2007,17,1646-1656,Cell Metab.2013,17,101-112,Cell Metab.2014 20,10-25,and Nat.Commun.2013,4,2192.)などと密接に関連していることから、AMPK活性化剤はパーキンソン症を予防及び/又は治療する医薬品、アルツハイマー症を予防及び/又は治療する医薬品、又は哺乳動物の寿命を延ばす医薬品の製造において重要な役割を果たしている。
【0005】
しかし、AMPKは代謝調節ないしヒトの健康とこのように重要な関連があるにもかかわらず、臨床で使用できるAMPK活性化剤は非常に少なく、現在、II型糖尿病の第一選択薬として臨床で応用されているのはメトホルミンしかない。メトホルミンが作用する標的器官は非常に限られており、肝臓と腎臓にしか作用せず、一方、代謝調節作用と密接に関連する脂肪、筋肉などの組織のAMPKに対しては調節作用がない。そのため、より広範なAMPK活性化剤を探すことは従来から学術界及び産業界において焦点となる課題であり、新しい構想を通じて構造が新規で、安全性が高く、高い活性を持つAMPK活性化剤を設計して探す必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者らは新規なAMPKの活性化剤を探すために、広範かつ徹底的な検討をした結果、構造が新規で、安全性が高く、高い活性を持つ多置換フッ素含有イミダゾール塩系誘導体を設計して合成し、しかも、このような新規誘導体によるAMPKシグナル経路への影響を検討した。
【0007】
本発明は以下の一般式の化合物、
又は上記化合物の立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物を提供する。
式中、置換基及び符号の定義については、以下詳細に説明する。
【0008】
本発明の1つの目的は5’-アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化させる活性を有する化合物及びその立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は上記化合物の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は上記化合物を含む医薬組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、上記化合物及び前記化合物を含む医薬組成物の、5’-アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)活性を活性化させる医薬品の製造における使用を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、脂肪酸合成を低減させる医薬品、トリグリセリド及びコレステロールの合成を抑制する医薬品、肥満及びII型糖尿病を予防及び/又は治療する医薬品、腫瘍を予防及び/又は治療する医薬品、パーキンソン病を予防及び/又は治療する医薬品、アルツハイマー病を予防及び/又は治療する医薬品又は哺乳動物の寿命を延ばす医薬品の製造における、上記化合物及び前記化合物を含む医薬組成物の使用を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】代表的な化合物のMEF細胞におけるAMPK活性化レベルである。図1は、化合物がマウス胚性線維芽細胞(mouse embryonic fibroblasts,MEFs)においてAMPKを活性化できることを示す。結果から明らかなように、試験化合物は10nMではAMPKを効果的に活性化させ、AMPKのリン酸化(p-AMPK)及びその下流基質ACC1/ACC2のリン酸化(p-ACC)を促進できる。
図2】LXY-Clのヒト肝細胞インキュベーションシステムにおける可能な代謝経路を示す。結果から明らかなように、LXY-Clはヒト肝細胞において代謝されて複数の異なる代謝物となり、120分間インキュベート後、残留原薬の相対含有量が21%である。
図3】IB-33のヒト肝細胞インキュベーションシステムにおける可能な代謝経路を示す。結果から明らかなように、IB-33、即ちLXY-Clに対応するフッ素含有置換化合物はヒト肝細胞において比較的安定であり、120分間インキュベート後、残留原薬の相対含有量が79%であった。IB-33とLXY-Clの肝細胞中の代謝物のデータを比較した結果、フッ素含有化合物の代謝安定性が明らかに向上した。
図4】IB-33が高脂肪食で飼育した肥満マウスモデルにおいて体重を効果的に低下させることを示す。
図5】IB-33が高脂肪食で飼育した肥満マウスモデルにおいて肝臓での脂肪蓄積を効果的に低減できることを示す。
図6】マウスのブドウ糖負荷試験ではIB-33が血糖を効果的に下げることを示す。
図7】マウスのブドウ糖負荷試験における化合物IB-33の血糖を効果的に下げる性能である。図7は、化合物(IB-33)がip-GTTでは血糖を効果的に下げることを示す。
【0014】
発明の詳述
本明細書では、各種の特定実施態様、形態及び実施例が説明されており、保護を要求する本発明を理解するために使用される例示的な実施形態及び定義が含まれる。以下、具体的な好適な実施態様を詳細に説明するが、当業者にとって明らかなように、これらの実施形態は例示的なものに過ぎず、本発明は他の形態で実施してもよい。侵害を特定する目的のため、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のうちのいずれか1つ又は複数にかかわるものであり、これらの同等物、及び前記のものと等価の要素や制限を含む。
【0015】
本発明は以下の技術態様を通じて実現される。
【0016】
第1の態様では、本発明は、以下の一般式の化合物
[式中、
は1~15個のフッ素原子で置換されたC10~C20アルキル基から選択され、
は水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、
は、
1)
(式中、Z、Z、Z、Z、Zは、それぞれ独立して、
(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシホルミル基、メトキシホルミル基、エトキシホルミル基、n-プロポキシホルミル基、イソプロポキシホルミル基、アミノホルミル基、N-メチルホルミル基、N-エチルホルミル基、N-n-プロピルホルミル基、N-イソプロピルホルミル基、N-シクロプロピルホルミル基、N-n-ブチルホルミル基、N-イソブチルホルミル基、N-t-ブチルホルミル基、N-シクロブチルホルミル基、N-n-ペンチルホルミル基、N-イソペンチルホルミル基、N-シクロペンチルホルミル基、N-n-ヘキシルホルミル基、N-イソヘキシルホルミル基、N-シクロヘキシルホルミル基、N,N-ジメチルホルミル基、N,N-ジエチルホルミル基、N,N-ジ-n-プロピルホルミル基、N,N-ジイソプロピルホルミル基、シクロプロピルアミノ基ホルミル基、シクロブチルアミノ基ホルミル基、シクロペンチルアミノホルミル基、シクロヘキシルアミノホルミル基、4-ヒドロキシピペリジニルホルミル基、ピペラジニルホルミル基、4-N-メチルピペラジニルホルミル基、4-N-エチルピペラジニルホルミル基、4-N-n-プロピルピペラジニルホルミル基、4-N-イソプロピルピペラジニルホルミル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、N-メチルスルホニル基、N-エチルスルホニル基、N-n-プロピルスルホニル基、N-イソプロピルスルホニル基、N-シクロプロピルスルホニル基、N-n-ブチルスルホニル基、N-イソブチルスルホニル基、N-t-ブチルスルホニル基、N-シクロブチルスルホニル基、N-n-ペンチルスルホニル基、N-イソペンチルスルホニル基、N-シクロペンチルスルホニル基、N-n-ヘキシルスルホニル基、N-イソヘキシルスルホニル基、N-シクロヘキシルスルホニル基、N,N-ジメチルスルホニル基、N,N-ジエチルスルホニル基、N,N-ジ-n-プロピルスルホニル基、N,N-ジイソプロピルスルホニル基、シクロプロピルアミノスルホニル基、シクロブチルアミノスルホニル基、シクロペンチルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、4-ヒドロキシピペリジニルスルホニル基、ピペラジニルスルホニル基、4-N-メチルピペラジニルスルホニル基、4-N-エチルピペラジニルスルホニル基、4-N-n-プロピルピペラジニルスルホニル基、4-N-イソプロピルピペラジニルスルホニル基、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、n-ブタナミド基、イソブタナミド基、シクロプロピルホルムアミド基、シクロブチルホルムアミド基、シクロペンチルホルムアミド基、シクロヘキシルホルムアミド基、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、n-プロパンスルホンアミド基、イソプロパンスルホンアミド基、n-ブタンスルホンアミド基、イソブタンスルホンアミド基;
(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシ基から選択され、
(3)Z及びZは酸素含有の置換又は非置換の5員環又は6員環を形成してもよく、置換基はZと同じ置換基から選択されてもよく、
(4)Z及びZは窒素含有の置換又は非置換の5員環又は6員環を形成してもよく、置換基はZと同じ置換基から選択されてもよく、
は水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択される。);
2)
(式中、Z、Z、Z、Zは上記1)と同義である。);
3)
(式中、Z、Z、Z、Zは上記1)と同義である。);
4)
(式中、Z、Z、Z、Zは上記1)と同義である。)から選択され、
は薬学的に許容される無機酸塩又は有機酸塩のアニオンである。] 、又は上記化合物の立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物を提供する。
【0017】
いくつかの実施態様では、Rは、1、3、5、7、9、11、13又は15個のフッ素原子で置換されたC14~C18アルキル基から選択される。
【0018】
いくつかの実施態様では、Rは、C16FH32-、C1422-、C1522-、C161122-、C171322-から選択される。
【0019】
いくつかの実施態様では、Rは、水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択される。
【0020】
いくつかの実施態様では、Rは、水素、メチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基から選択される。
【0021】
いくつかの実施態様では、R
であり、ここで、Z、Z、Z、Z、Zのうちの2個は、それぞれ独立して、
(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシホルミル基、アミノホルミル基、メタンスルホニル基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、ホルムアミド基、メタンスルホンアミド基;
(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシ基から選択され、
残りは水素であり、
は、水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、好ましくは、Zは水素又はメチル基である。
【0022】
いくつかの実施態様では、R
であり、ここで、Z、Z、Z、Zのうちの2個は、それぞれ独立して、
(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシホルミル基、アミノホルミル基、メタンスルホニル基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、ホルムアミド基、メタンスルホンアミド基;
(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシ基から選択され、
残り及びZは水素であり、
は水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、好ましくは、Zは水素又はメチル基である。
【0023】
いくつかの実施態様では、R
であり、ここで、Z、Z、Z、Z、ZのうちのZ、Z、又はZ、Z、又はZ、Zは、それぞれ独立して、
(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシホルミル基、アミノホルミル基、メタンスルホニル基、ヒドロキシスルホニル基、アミノスルホニル基、ホルムアミド基、メタンスルホンアミド基;
(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシ基から選択され、
残りは水素であり、
は水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、好ましくは、Zは水素又はメチル基である。
【0024】
いくつかの実施態様では、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、パルミチン酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンである。
【0025】
いくつかの実施態様では、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、パルミチン酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンである。
【0026】
第2の態様では、本発明は、以下の化合物
(式中、Rは、1~15個のフッ素原子で置換されたC10~C20アルキル基から選択され、
は、水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択され、
は、1’-ハロゲン、1’-C~Cアルコキシ基(好ましくは、1’-C~Cアルコキシ)から選択され、
は、4’-ハロゲン、5’-ハロゲンから選択され、
は薬学的に許容される無機酸、及び有機酸のアニオンである。)、又はその立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物を提供する。
【0027】
いくつかの実施態様では、Rは1、3、5、7、9、11、13又は15個のフッ素原子で置換されたC14~C18アルキル基から選択される。
【0028】
いくつかの実施態様では、Rは、C16FH32-、C1422-、C1522-、C161122-、C171322-から選択される。
【0029】
いくつかの実施態様では、Rは、n-C16FH32-、n-C1422-、n-C1522-、n-C161122-、n-C171322-から選択される。
【0030】
いくつかの実施態様では、好ましくは、Rは、水素、C~Cアルキル基、C~Cシクロアルキル基から選択される。
【0031】
いくつかの実施態様では、Rは、水素、メチル基、イソプロピル基、シクロプロピル基から選択される。
【0032】
いくつかの実施態様では、S、Sは、それぞれ、1’-ハロゲン、5’-ハロゲン、又は1’-C~Cアルコキシ(好ましくは、1’-C~Cアルコキシ)、4’-ハロゲンである。
【0033】
いくつかの実施態様では、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、パルミチン酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンである。
【0034】
いくつかの実施態様では、Xは塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、マレイン酸イオン、フマル酸イオン、酒石酸イオン、パルミチン酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、メタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンである。
【0035】
第3の態様では、本発明は、以下の化合物
(式中、R、R、R及びXの定義は以下のとおりであり、n=9~19である。)、又は上記化合物の立体異性体、そのプロドラッグ、その薬学的に許容される塩又はその薬学的に許容される溶媒和物を提供する。
【0036】
特に断らない限り、上記基及び置換基は医薬品化学分野における一般的な意味を有する。
【0037】
「C10~C20アルキル基」は、炭素数10~20の任意の2つの整数を端点とする範囲の直鎖又は分岐状基を含む。例えば、「C10~C20アルキル基」は、C14~C18アルキル基、C10~C18アルキル基、C10~C16アルキル基、C~Cアルキル基、C~C20アルキル基、C~C16アルキル基、C~C20アルキル基、C~C16アルキル基などを含み、以上は例示的なものに過ぎず、前記範囲を限定するものではない。
【0038】
「1~15個のフッ素原子で置換されたC10~C20アルキル基」という用語は、上記「C10~C20アルキル基」が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個のフッ素原子で置換されることを指す。
【0039】
「C~Cアルキル基」という用語は、1~6個の炭素原子を含有する任意の直鎖又は分岐状基を指し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、s-ブチル基、n-ペンチル基、t-ペンチル基、n-ヘキシル基などである。
【0040】
「C~Cアルキル基」という用語は、1~4個の炭素原子を含有する任意の直鎖又は分岐状基を指し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、s-ブチルなどである。
【0041】
「C~Cアルキル基」という用語は、1~3個の炭素原子を含有する任意の直鎖又は分岐状基を指し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基などである。
【0042】
「C~Cシクロアルキル基」という用語は、3員~6員全炭素単環を指し、0個、1個又は複数の二重結合を含むことができるが、完全に共役するπ-電子系を有さない。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニルであるが、これらに限定されない。
【0043】
「C~Cシクロアルキル基」という用語は、3員~4員全炭素単環を指し、その例は、シクロプロピル、シクロブチルであるが、これらに限定されない。
【0044】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を指す。
【0045】
「シアノ基」という用語は-CN残基を指す。
【0046】
「ニトロ基」という用語は-NO基を指す。
【0047】
「アルコキシ基」、「シクロオキシ基」及びその誘導体という用語は、任意の上記アルキル基(例えばC~C24アルキル基、C~Cアルキル基など)、シクロアルキル基(例えばC~Cシクロアルキル基)が、酸素原子(-O-)を介して分子の残りの部分に連結されたものを指す。
【0048】
上記説明を通じて、当業者にとって自明であるように、名称が複合名称である任意の基、例えば「フッ素含有、酸素含有アルキル基」とは、一般的に誘導部分、例えばフッ素基で置換された酸素含有アルキル基から作成されるものを指し、ここで、アルキル基は前述した定義と同様である。
【0049】
「酸素含有の置換又は非置換の5員環又は6員環」又は「窒素含有の置換又は非置換の5員環又は6員環」という用語は、5員又は6員飽和又は部分不飽和炭素環を指し、この1つ又は複数の炭素原子が酸素又は窒素で置換される。非限定的な例は、例えば、ピラン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピロリル基などである。
【0050】
のうちのZ、Z、Z、Z、Zの上記定義では、「ここで、Z、Z、Z、Z、ZのうちのZ、Z、又はZ、Z、又はZ、Zは、それぞれ独立して、(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基;(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシから選択され、残りは水素である」とは、「Z、Zは、それぞれ独立して、以下から選択され」は、Z、Zは、それぞれ独立して、挙げられる「(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基;(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシ基」から選択されるいずれかの基からなる任意の組み合わせである場合を含み、「Z、Zは、それぞれ独立して、以下から選択され」は、Z、Zは、それぞれ独立して、挙げられる「(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基;(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシ」から選択されるいずれかの基からなる任意の組み合わせを含み、「Z、Zは、それぞれ独立して、以下から選択され」は、Z、Zはそれぞれ独立して、挙げられる「(1)水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ基、シアノ基;(2)C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C酸素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルキル基、C~Cフッ素含有アルコキシ基」から選択されるいずれかの基からなる任意の組みあわせを含むことを意味する。
【0051】
本明細書で使用される場合、特に断らない限り、「プロドラッグ」という用語は、生物学的条件(生体外又は生体内)で加水分解、酸化又は他の反応を行って本発明の化合物を提供する誘導体を指す。プロドラッグは、生物学的条件のみで該反応を行って活性化合物となるか、又は非反応の形態で活性を有する。通常、プロドラッグは、公知の方法、例えばBurger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery(1995)172-178,949-982(Manfred E.Wolff著,第5版)に記載の方法で製造され得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「式(I)化合物の薬学的に許容される塩」という用語の例は、薬学的に許容されるアニオンを形成する有機酸で形成される有機酸付加塩を指し、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、α-グリセロリン酸塩、アルキルスルホン酸塩又はアリールスルホン酸塩を含むが、これらに限定されるものではなく、好ましくは、前記アルキルスルホン酸塩はメチルスルホン酸塩又はエチルスルホン酸塩であり、前記アリールスルホン酸塩はベンゼンスルホン酸塩又はp-トルエンスルホン酸塩である。適切な無機塩を形成してもよく、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、重炭酸塩と炭酸塩、硫酸水素塩、硫酸塩又はリン酸塩などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0053】
薬学的に許容される塩は、例えば、十分量のアルカリ性化合物と薬学的に許容されるアニオンを提供する適切な酸とを反応させることなど、本分野に公知の標準手順で入手してもよい。
【0054】
本明細書で使用される用語「治療」とは、一般には、所望の薬理及び/又は生理学的効果を得ることを指す。この効果は、疾患又はその症状を完全又は部分的に予防することによって予防的なものであってもよく、及び/又は、疾患及び/又は疾患により引き起こされる副作用を部分又は完全に安定化又は治癒することによって治療的なものであってもよい。本明細書で使用される「治療」は、患者の疾患に対する任意の治療をカバーし、(a)疾患又は症状に感染しやすいものの、疾患に罹患していると診断されていない患者で疾患又は症状を予防すること、(b)疾患の症状を抑制し、即ちその進行を阻止すること、又は(c)疾患の症状を緩和させ、即ち、疾患又は症状の緩解をもたらすことを含む。
【0055】
本発明の一具体的な態様によれば、前記化合物、その立体異性体、そのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩又は薬学的に許容される溶媒和物であり、ここで、前記化合物は以下の実施例の前記化合物の1つである。
【0056】
別の態様では、本発明は、上記のいずれかの態様に記載された化合物、その立体異性体、そのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩又は薬学的に許容される溶媒和物と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含有する医薬組成物を提供する。
【0057】
所定量の活性成分を含有する各種の医薬組成物の製造方法は既知のものであるか、又は本発明の開示内容に基づいて当業者にとって自明なことである。例えばREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Martin,E.W.,ed.,Mack Publishing Company,19th ed.(1995)に記載のとおり、前記医薬組成物の製造方法は、適切な薬用賦形剤、担体、希釈剤などを添加することを含む。
【0058】
本発明の医薬品製剤は一般的な混合、溶解又は凍結乾燥方法を含む既知の方法で製造される。本発明の化合物は、医薬組成物として、選択された投与形態に適した様々な経路、例えば、経口又は非経口(静脈内、筋肉内、局所又は皮下経路)で患者に投与することができる。
【0059】
したがって、本発明の化合物は、薬学的に許容される担体(例えば、不活性希釈剤又は同化可能な可食担体)と組み合わせると全身的に、例えば、経口に投与してもよい。これらは、ハード又はソフトシェルを有するゼラチンカプセルにカプセル化してもよいし、錠剤に打錠してもよい。経口投与の場合、活性化合物は1種又は複数の賦形剤と組み合わせてもよく、且つ、飲み込み可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、タブレットなどの形態で使用される。このような組成物及び製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含む。このような組成物及び製剤の割合はもちろん変化可能であり、所定の単位剤形の重量の約1%~約99%を占めてもよい。このような治療に有用な組成物中、活性化合物の量は有効用量のレベルを得ることを可能とする。
【0060】
錠剤、トローチ剤、丸薬、カプセル剤などは、バインダ、例えばトラガカントガム、アラビアガム、コーンスターチ又はゼラチン;賦形剤、例えばリン酸水素二カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモスターチ、アルギン酸など;滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばショ糖、果糖、乳糖やアスパルタン;又は矯味剤、例えばペパーミント、冬青油、チェリーフレーバーなどを含んでもよい。単位剤形がカプセルである場合、上記の材料に加えて、植物油やポリエチレングリコールなどの液体担体を含んでもよい。様々な他の材料は、コーティングとして、又は固体単位剤形の物理的形態を他の方式で変化させるものとして存在することができる。例えば、錠剤、丸薬又はカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、シェラックや砂糖などでコーティングされていてもよい。シロップ又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのショ糖又は果糖、防腐剤としてのパラオキシ安息香酸メチル又はパラオキシ安息香酸プロピル、染料や矯味剤(チェリーフレーバー又はオレンジフレーバーなど)を含んでいてもよい。もちろん、任意の単位剤形を製造するために使用される任意の材料は、薬学的に許容され、適用される量で実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放製剤及び徐放装置に組み込むことができる。
【0061】
活性化合物は、注入又は注射によって静脈内又は腹膜内投与することもできる。活性化合物又はその塩の水溶液を製造することができ、必要に応じて非毒性の界面活性剤を配合することができる。グリセリン、液体ポリエチレングリコール、トリグリセリド及びその混合物並びに油中の分散剤を製造することもできる。通常の保存及び使用条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために防腐剤を含む。
【0062】
注射又は注入に適した薬剤の剤形は、無菌に適した注射又は注入可能な溶液又は分散剤を含む即時製剤の活性成分(必要に応じてリポソームに封入される)の無菌水溶液又は分散剤又は無菌粉末を含むことができる。すべての場合、最終的な剤形は、生産や貯蔵の条件下で無菌、液体、安定でなければならない。液体担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリド及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は液体分散媒であってもよい。例えば、リポソームの形成、分散剤の場合には所望の粒子サイズの維持、界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。各種の抗細菌剤と抗真菌剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)によって微生物を予防する作用を果たすことができる。多くの場合、糖、緩衝剤や塩化ナトリウムなどの等張剤が含まれることが好ましい。注射可能な組成物の吸収遅延は、吸収を遅延する組成物(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を使用することによって実現できる。
【0063】
注射可能な無菌溶液は、適当な溶媒中の必要な量の活性化合物を、上記の必要な他の様々な成分と組み合わせた後、濾過、滅菌することによって調製される。無菌注射溶液の無菌粉末を調製するための場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これによって、活性成分に加えて、従来の無菌濾過溶液中に存在する任意の追加的に必要な成分を加えた粉末を生成する。
【0064】
有用な固体担体には、粉砕された固体(例えば、タルク、粘土、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなど)が含まれる。有用な液体担体には、水、エタノール、エチレングリコール、又は水-エタノール/エチレングリコール混合物が含まれ、本発明の化合物は、任意に、非毒性の界面活性剤を利用して、有効な含有量で上記担体に溶解又は分散させることができる。所定の用途に対する特性を最適化するために、アジュバント(例えばフレーバー)及び追加の抗菌剤を添加してもよい。
【0065】
増粘剤(例えば、合成されたポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及びエステル、脂肪アルコール、変性セルロース又は変性無機材料)は、液体担体とともに塗布可能なペースト、ゲル、軟膏、石鹸等を形成して、使用者の皮膚に直接使用してもよい。
【0066】
化合物又はその活性塩又は誘導体の治療必要量は、選択した特定の塩に依存するだけでなく、施薬方式、治療対象疾患の本質や患者の年齢と状態に依存し、最終的に現場医師又は臨床医師の決定に依存する。
【0067】
上記製剤は、単位用量を含む物理的分散単位であり、人体及び他の哺乳動物体への投与に適した単位剤形で存在することができる。単位剤形は、カプセル又は錠剤であってもよく、又は多くのカプセル又は錠剤であってもよい。活性成分の単位用量の量は、関連する特定の治療に応じて、約0.1~約1000mg又はそれ以上の間で変化又は調整することが可能である。
【0068】
さらに、医薬品の各種新しい剤形、例えば乳リポソーム、ミクロスフェア及びナノスフェアの応用を含み、例えばポリマーミセル(polymeri cmicelles)、ナノエマルジョン(nanoemulsion)、サブマイクロエマルジョン(submicroemulsマイクロカプセル(microcapsule)、ミクロスフェア(microsphere)、リポソーム(liposomes)、及びニオソーム(niosomes)(非イオン界面活性剤小胞とも呼ばれる)などを含む、微粒子分散系を用いて調製した薬剤が挙げられる。
【0069】
別の態様では、本発明は、以下のステップを含む、上記のいずれかの技術態様の前記化合物の製造方法をさらに提供する。
スキーム1:
反応条件:(a)臭素化炭化水素系の置換反応;(b)臭素化炭化水素系の置換反応。
スキーム2:
反応条件:(a)アルカリ性条件下(例えば水素化ナトリウム、ナトリウムtert-ブトキシド等)の臭素化炭化水素系の置換反応;(b)臭素化炭化水素系の置換反応。
【0070】
別の態様では、本発明は、コレステロール合成を抑制する医薬品、脂肪酸合成を低減させる医薬品、糖尿病を予防及び/又は治療する医薬品、腫瘍を予防及び/又は治療する医薬品、パーキンソン病を予防及び/又は治療する医薬品、アルツハイマー病を予防及び/又は治療する医薬品又は哺乳動物の寿命を延ばす医薬品の製造における、上記のいずれかの技術態様の前記化合物、その立体異性体、そのプロドラッグ、又はその薬学的に許容される塩又は薬学的に許容される溶媒和物及び該化合物を含む医薬組成物の使用をさらに提供する。
【0071】
実験部分
下記実施例では、本明細書に記載の方法又は本分野に公知の他の方法を用いて本発明の化合物を合成する。
【0072】
一般的な純化及び分析方法
シリカゲルGF254プレコートプレート(青島海洋化工廠)にて薄層クロマトグラフィーを行う。中圧下でシリカゲル(300~400メッシュ、煙台芝黄務珪膠開発試剤廠)を通じてカラムクロマトグラフィー分離を行うか、又はISCO Combiflash Rf200高速純化システムを用いて、予め充填されたシリカゲルカートリッジ(ISCO又はWelch)によってカラムクロマトグラフィー分離を行う。成分をUV光(λ:254nm)とヨウ素蒸気で現像させる。必要な場合、分取型HPLCによって化合物を分取して、Waters Symmetry C18(19×50mm,5μm)カラム又はWaters X Terra RP 18(30×150mm,5μm)カラムで純化し、996Waters PDA検出器が装備されたWaters分取型HPLC 600とMicromass mod.ZMDシングル四重極質量分析計(エレクトロスプレーイオン化、カチオンモード)を用いる。方法1:相A:0.1%TFA/MeOH 95/5;相B:MeOH/HO 95/5。勾配:10~90%Bで8分、90%B 2分、保持;流速20mL/分。方法2:相A:0.05%NHOH/MeOH 95/5;相B:MeOH/HO 95/5。勾配:10~100%Bで8分、100%B 2分、保持。流速20mL/分。
【0073】
DMSO-d6又はCDCl3にて600MHzで操作されたBruker Avance 600分光計(Hの場合)によりH-NMRスペクトルを記録する。残留溶媒シグナルを参照(=2.50又は7.27ppm)とする。化学シフト()を百万分率(ppm)で報告し、結合定数(J)をHzで示す。以下の略語はピークスプリットに用いる:s=シングル;br.s.=ブロードシグナル;d=ダブル;t=トリプル;m=多重;dd=ダブルダブル。
【0074】
エレクトロスプレー(ESI)質量分析はFinnigan LCQイオントラップにより得られる。
【0075】
別に断らない限り、全ての最終的な化合物は均質なものであり(純度95%以上)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定されるとおりである。化合物の純度を評価するためのHPLC-UV-MS分析は、イオントラップMS設備とHPLCシステムSSP4000(Thermo Separation Products)の組み合わせによって行われ、前記HPLCシステムには、オートサンプラLC Pal(CTC Analytics)及びUV6000LPダイオードアレイ検出器(UV検出215-400nm)が装備されている。Xcalibur 1.2ソフトウェア(Finnigan)で設備制御、データ収集及び処理を行う。HPLCクロマトグラフィー法は、室温、1mL/分の流速で行われ、Waters X Terra RP 18カラム(4.6×50mm;3.5μm)を用いる。移動相Aは酢酸アンモニウム5mMバッファ(酢酸でpH5.5):アセトニトリル90:10であり、移動相Bは、酢酸アンモニウム5mMバッファ(酢酸でpH5.5):アセトニトリル10:90であり、勾配は0~100%Bで7分間行った後、さらに平衡化前、100%Bを2分間保持する。
【0076】
試薬の純化は、Purification of Laboratory Chemicals(Perrin,D.D.,Armarego,W.L.F.and Perrins Eds,D.R.;Pergamon Press:Oxford,1980)を参照して行われる。石油エーテルは60~90℃留分であり、酢酸エチル、メタノール、ジクロロメタンは全て分析グレードなものである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、具体的な実施例にて本発明の実施形態を詳細に説明するが、これらの実施例はいずれの場合にも本発明を制限するものとして解釈できる。
【0078】
上記一般式の化合物は2種類に分けて合成され製造される。
化合物IAの合成スキーム1の一般式
三フッ化ジエチルアミノ硫黄DAST(2eq)を反応フラスコに秤量し、化合物A(1eq)をジクロロメタンに溶解して、常温で反応フラスコに加え、シールして窒素ガスで置換した後、40℃の油浴に入れて8h撹拌し、反応系を室温に冷却した後、氷水に注入し、ジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和NaHCO溶液、飽和塩化ナトリウム溶液の順で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、有機相を濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン溶出)を行い、化合物Bを得た。
化合物B(1eq)とC(1eq)をTHFに溶解し、氷浴で撹拌下、t-ブトキシドナトリウム(2eq)を加え、さらに20分間、撹拌後、40℃の油浴に入れて撹拌し、TLCにより監視したところ、反応が終了した後、系を室温に冷却し、飽和塩化アンモニウム溶液と酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を水、飽和塩化ナトリウムで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、有機相を濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)を行い、化合物Dを得た。
化合物D(1eq)とR-X(1.2eq)をアセトニトリルに溶解し、存在してもよいヨウ化カリウム(6eq)を加えてシールした後、70℃の油浴に入れて12h撹拌し、系を室温に冷却して濃縮させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)を行い、化合物IAを得た。
【0079】
以下、化合物Iの合成スキーム1の具体的な実施方法を説明する。
1.化合物IA-1:
16-ブロモ-1-ヘキサデカノール(1606mg、5mmol)(CAS:59101-28-9,江蘇艾康(江蘇))をジクロロメタン4mLに溶解し、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(1612mg、10mmol)(CAS:38078-09-0、ENERGY社(上海))を入れたマイクロ波管に滴下してシールし、窒素ガスで置換した後、40℃の油浴に入れて8h撹拌し、反応系を室温に冷却した後、氷水に注入し、ジクロロメタンで抽出し、有機相を飽和NaHCO溶液、飽和塩化ナトリウム溶液の順で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、有機相を濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン溶出)を行い、得た生成物を原料A(添付の表1)のうちの2-メチルイミダゾール(410mg、5mmol)とともにTHF 30mLに直接溶解し、氷浴撹拌下、t-ブトキシドナトリウム(960mg、10mmol)(CAS:865-48-5、ENERGY社(上海))を加え、さらに20分間、撹拌後、40℃の油浴に入れて撹拌し、TLCにより監視したところ、反応が終了した後、系を室温に冷却し、飽和塩化アンモニウム溶液と酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を水、飽和塩化ナトリウムで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、有機相を濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)を行い、中間体int-1(106mg、0.326mmol)を得た。
中間体int-1(35.4mg、0.11mmol)と原料B(添付の表1)のうちの2,6-ジクロロベンジルクロリド(22.5mg、0.12mmol)をアセトニトリルに溶解し、シールした後、70℃の油浴に入れて12h撹拌し、系を室温に冷却し、濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)を行い、化合物IA-1(21.6mg)を得た。
【0080】
2.化合物IA-2~IA-3は類似した方法を用いて合成され、対応する原料は添付の表1に示される。
化合物Iの合成スキーム2の一般式
化合物A(1eq)、化合物B(1.2eq)及びAIBN(0.1eq)をマイクロ波管に入れてシールし、窒素ガスで3回置換し、60℃又は100℃の油浴に入れて24h反応させ、室温に冷却して、系に氷酢酸と亜鉛粉(20eq)を加え、常温で12h撹拌した後反応を停止し、系をろ過して濃縮させ、適量の水を注入し、2N水酸化ナトリウム溶液でpHを中性に調整し、石油エーテルで水相を抽出し、有機相を濃縮させて、化合物Cを得た。
化合物C(1eq)とトリエチルアミン(3eq)をジクロロメタンに溶解し、以上の溶液を氷浴に入れて撹拌し、メタンスルホニルクロリド(2eq)を緩やかに滴下し、投入終了後、さらに氷浴にて10分間、撹拌し、常温で10h反応させ、水を加えてクエンチングし、ジクロロメタン/水で抽出し、有機相を水、飽和塩化ナトリウムの順で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル)を行い、化合物Dを得た。
化合物D(1eq)と臭化リチウム(3eq)をアセトンに溶解し、系を60℃で還流して12h反応させ、ろ過し、濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル溶出)を行い、化合物Eを得た。
化合物F(1eq)とE(1.2eq)をTHFに溶解し、氷浴で撹拌下、t-ブトキシドナトリウム(2eq)を加え、さらに20分間、撹拌後、40℃の油浴に入れて撹拌し、TLCにより監視したところ、反応が終了した後、系を室温に冷却し、飽和塩化アンモニウム溶液と酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を水、飽和塩化ナトリウムで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、有機相を濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)を行い、化合物Gを得た。
化合物G(1eq)とR-X(1.2eq)をアセトニトリルに溶解し、存在してもよいヨウ化カリウム(6eq)を加えてシールした後、70℃の油浴に入れて12h撹拌し、系を室温に冷却し、濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)を行い、化合物IBを得た。
【0081】
以下、化合物IBの合成スキーム1の具体的な実施方法を説明する。
1.化合物IB-1:
10-ウンデセン-1-オール(3406mg、20mmol)(CAS:112-43-6,江蘇艾康社(江蘇))、原料C(添付の表1)のうちのヘプタフルオロプロピルヨージド(7102mg、24mmol)及びAIBN(328.4mg、2mmol)(CAS:78-67-1、探索社(上海))をマイクロ波管に入れてシールし、窒素ガスで3回置換し、60℃の油浴に入れて24h反応させ、室温に冷却して、系に氷酢酸70mlと亜鉛粉(26g、400mmol)(CAS:7440-66-6、緑茵社(福建厦門))を加え、常温で12h撹拌した後反応を停止し、系をろ過して濃縮させ、適量の水を注入し、2N水酸化ナトリウム溶液でpHを中性に調整し、石油エーテルで水相を抽出し、有機相を濃縮させて、中間体int-2(3820mg、11.25mmol)を得た。
int-2(3820mg、11.25mmol)とトリエチルアミン(3408mg、33.75mmol)(CAS:121-44-8、ENERGY社(上海))をジクロロメタン100mLに溶解し、以上の溶液を氷浴に入れて撹拌し、メタンスルホニルクロリド(7735mg、67.5mmol)(CAS:124-63-0、ENERGY社(上海))を緩やかに滴下し、投入終了後、さらに氷浴にて10分間、撹拌し、常温で10h反応させ、水を加えてクエンチングし、ジクロロメタン/水で抽出し、有機相を水、飽和塩化ナトリウムの順で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル)を行い、中間体int-3(4354mg、10.4mmol)を得た。
int-3(4354mg、10.4mmol)と臭化リチウム(2709mg、31.2mmol)(CAS:7550-35-8、ENERGY社(上海))をアセトン50mLに溶解し、系を60℃で還流して12h反応させ、ろ過し、濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル溶出)を行い、中間体int-4(3715mg、9.2mmol)を得た。
int-4(403.2mg、1mmol)と原料A(添付の表1)のうちのイミダゾール(81.7mg、1.2mmol)をTHF 30mLに溶解し、氷浴で撹拌下、t-ブトキシドナトリウム(192mg、2mmol)を加え、さらに20分間、撹拌後、40℃の油浴に入れて撹拌し、TLCにより監視したところ、反応が終了した後、系を室温に冷却し、飽和塩化アンモニウム溶液と酢酸エチルを加えて抽出し、有機相を水、飽和塩化ナトリウムで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、有機相を濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)を行い、中間体int-5(295mg、0.75mmol)を得た。
int-5(39mg、0.1mmol)と原料B(添付の表1)のうちの2,6-ジクロロベンジルクロリド(23.4mg、0.12mmol)をアセトニトリル1.5mLに溶解し、シールした後、70℃の油浴に入れて12h撹拌し、系を室温に冷却し、濃縮させて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール)を行い、化合物IB-1(20.5mg)を得た。
【0082】
2.他の化合物IB-1~IB-58は全て類似した方法で合成することができ、対応する原料は添付の表1に示される。
化合物IB-59及びIB-60の合成
化合物IB-33(10g、14.3mmol)をエタノール50mLに溶解し、0℃に冷却し、水酸化カリウム(0.96g、17.2mmol)を加え、該反応系を0~5℃で8時間撹拌し続けた。反応終了後、上記反応系をろ過し、澄明なろ液を得た。
条件A:ろ液を0℃に冷却し、次に、98%濃硫酸(17.2mmol、1.2eq.)を滴下し、該反応系を0~5℃で2時間撹拌し続けた。反応終了後、反応系を濃縮させて、メチルt-ブチルエーテルで再結晶させ、化合物IB-59 6.6gを得て、収率は60.66%であった。ここで、硫酸水素イオンの含有量は、滴定法で測定したところ、12.7%であった(理論値12.61%)。
条件B:ろ液を0℃に冷却し、次に、98%濃硫酸(8.6mmol、0.6eq.)を滴下し、該反応系を0~5℃で2時間撹拌し続けた。反応終了後、反応系を濃縮させて、メチルt-ブチルエーテルで再結晶させ、化合物IB-60 6.2gを得て、収率は60.85%であった。ここで、硫酸イオンの含有量は、イオンクロマトグラフィーで測定したところ、6.7%であった(理論値6.74%)。
【0083】
添付の表1.合成の例の化合物に使用される一部の商用原料
【表1】
【0084】
【0085】
試験例
生物学的活性のテスト
一.細胞レベルでのAMPK活性のテスト
化合物のマウス胚性線維芽細胞(mouse embryonic fibroblasts,MEFs)におけるAMPK活性化能力のテストは、具体的に、ウエスタンブロット(western blot)方法によって、AMPKの172番目のスレオニンのリン酸化レベル(p-AMPKα)及びAMPKの基質ACC1/ACC2の79番目のセリンのリン酸化レベル(p-ACC)を検出することによって行われた(図1及び表1)。
具体的な方法は以下のとおりである。
(1)loxP挿入配列を有する又は野生型のMEFsを6ウェルプレートに接種し、10%血清を含有するDMEMにて培養した。このときにある遺伝子をノックアウトする必要がある場合、loxP挿入配列を有する対応するMEFsの密度が約30%に達したときに培養ウェルにcreを発現し得るアデノウイルスを加え、さらに24時間以上培養した。
(2)細胞密度が90%に近くなると、細胞へ新鮮なDMEMを交換するとともに、細胞に化合物(最終濃度10nM)を加えて2時間培養し、等体積のDMSOを陰性対照として、AICAR(3mM)を添加して処理した細胞を陽性対照とした。
(3)培養液を吸い取って捨てて、細胞溶解液(配合は後述)200μLで細胞を溶解し、細胞をシャーレから掻き取り、超音波破砕し、20000gを低温で10分間遠心分離した。
(4)上清と等体積の2*SDS溶液(配合は後述)とを混合し、濃度8%のSDS-PAGEにロードし、次に、タンパク質をPVDF膜上に移し、各PVDF膜を脱脂ミルク25mLで1時間ブロックし、その後、TBSTバッファ(配合は後述)で1回あたり10分間3回リンスした。
(5)AMPKαサブユニット一次抗体(Cell Signaling Technology,#2532)、AMPKの172番目のスレオニンリン酸化一次抗体(Cell Signaling Technology,#2535)、ACC一次抗体(Cell Signaling Technology,#3662)、ACCの79番目のセリンリン酸化一次抗体(Cell Signaling Technology,#3661)を、1:1000で一次抗体希釈液(配合は後述)に希釈し、PVDF膜とともに室温で12時間反応させ、TBSTバッファで3回リンスした。
(6)1:1000で希釈したHRP結合ヤギ抗ウサギ二次抗体(Jackson ImmunoResearch,111-035-003)を加えて、室温で1時間反応させ、TBSTバッファで3回リンスした。
(7)PVDF膜を拭いて乾かし、ECL混合液(WesternBright ECL HRP substrate,Advansta)にて反応させ、医療用X線フィルムを用いて露光、発色し、最後にすすいでベークし、次に走査して、AMPK活性化の関連データを得た。
使用される試薬の配合:
細胞溶解液:20mM Tris-base,pH 7.5、150mM NaCl,1mM EDTA、1mM EGTA,2.5mMピロリン酸ナトリウム(Sodium pyrophosphate)、1mMβ-グリセロリン酸(β-glycerolphosphate)、1%Triton X-100(v/v);
2*SDS溶液:20%グリセリン(Glycerol)(v/v)、4%SDS(m/v)、10%β-メルカプトエタノール(β-mecaptoethanol)(v/v),0.01%ブロモフェノールブルー(Bromophenol blue)(m/v);
TBSTバッファ:4.84%Tris-base(m/v)、8%NaCl(m/v),0.1%Tween-20(v/v);
一次抗体希釈液:5%BSA(v/v)含有TBSTバッファ
【0086】
【0087】
a化合物のMEF細胞におけるAMPK活性化の程度は、陽性対照AICAR(3mM)で処置したp-AMPKα/AMPKαとp-ACC/ACCに対する化合物(10nM)の比の倍数で表され(Image Jにおいてバンドに対する対応する明るさで定量的に分析)、具体的には、図1に示される。
【0088】
二.肝ミクロソーム安定性のテスト
実験ステップ:
1.作動液の調製
1.1中間液:10mMサンプル又は対照品の母液を5μL取り、メタノール495μLを加えて希釈した(Conc.:100μM,99%MeOH)。
1.2作動液:以上の中間液を50μL取り、100mMリン酸カリウムバッファ450μLを加えて希釈した(Conc.:10μM,9.9%MeOH)。
2.NADPH補因子の調製
適量のNADPH粉末を秤量して、MgCl(10mM)溶液で溶解した。
3.肝ミクロソーム
3.1肝ミクロソームの情報
3.2調製:100mMのリン酸カリウムバッファを用いて、濃度が適切なミクロソーム作動液を調製した。
4.ストップ液
氷アセトニトリルであって、100ng/mLトルブタミド(Tolbutamide)と100ng/mLラベタロール(Labetalol)を内部標準として含有する。
5.実験過程
5.1ブランク群以外、全てのプレート(T0、T5、T10、T20、T30、T60、NCF60)にサンプル又は対照品作動液10μL/ウェルを加えた。
5.2全てのプレートにミクロソーム作動液80μL/ウェルをさらに加え、37℃で10分間、インキュベートした。
5.3 NCF60に100mMリン酸カリウムバッファ10μL/ウェルを加え、37℃でインキュベートし、timer 1を起動させた。
5.4 予熱後、プレートごとにNADPH 10μL/ウェルを加えて反応を開始させた。
インキュベート培地中の各成分の最終濃度:
5.5 37℃でインキュベートし、timer 1を起動させた。
5.6 300μL/ウェルでストップ液を加えて反応を停止した。
5.7 系を約10分間、振とうさせた。
5.8 サンプルを4℃で20分間(4000rpm)遠心分離した。
5.9 8個の新しい96ウェルプレートにHPLC水300μL/ウェルを加え、つぎに、上澄み液100μLを加えて混合し、LC/MS/MSを行った。
上表中、HLM 0.5T1/2(min)とは、人肝ミクロソームにおける化合物の半減期(分間)を指し、DLM 0.5T1/2(min)とは、ビーグル肝ミクロソームにおける化合物の半減期(分間)を指す。
【0089】
三.肝細胞代謝のテスト
実験操作:測定対象試料(濃度10μM)又は陽性対照(濃度30μM)と、各種属の肝細胞(細胞密度1.0×10cells/mL)を37℃/5%CO/飽和湿度の条件下で120分間、共にインキュベートした。1:2の比率で0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液を用いて、サンプルからタンパク質を沈殿させた後遠心分離し、上澄み液を窒素ガスでブローして乾燥させた。乾燥後、10%アセトニトリル/水(0.1%ギ酸含有)溶液200μLで再溶解した。毎回LC-MS器具システムに15μL注入して分析した。
上記肝ミクロソームの安定性及び肝細胞代謝の結果から明らかなように、フッ素で置換された化合物は、代謝安定性が顕著に向上した。
【0090】
四.化合物IB-33の生体内薬効の評価
皮下注射(s.c.)によって化合物IB-33を投与したところ、高脂肪食で飼育した肥満マウスモデルにおいては、体重を効果的に低下させ、肝臓の脂肪蓄積レベルを改善できる。投与後のマウスの体重(図4)、肝切片の形態(図5)を検出した結果、IB-33は体重減少及び脂肪肝治療の効果が高いことが明らかになる。ウエスタンブロット(western blot)方法によって、AMPKの172番目のスレオニンのリン酸化レベル及びAMPKの基質ACC1/ACC2の79番目のセリンのリン酸化レベルを検出した結果、IB-33は、マウスの体内でAMPKを効果的に活性化できることが明らかになる(図6)。
具体的な方法は以下のとおりである。
(1)6週齢の野生型C57BL/6J雄マウスを60%脂肪の高脂肪食で飼育し、10週後体重が約50gに達すると、投与し始め、投与期間に高脂肪食を続けた。
(2)毎日の午後5時にマウスの体重を秤量し、0.05、0.15、0.3mg/kgの濃度でマウスへIB-33を2日に1回皮下注射(s.c.)投与し、同じ比率でvehicleを皮下注射投与した。
(3)90日間連続して飼育し、毎日重量を秤量して記録し、90日目にマウスの一部を安楽死させ、肝臓を採取して固定し切片し、HE染色をして、その組織学的特徴を直接観察した。
(4)90日間投与後、一部のマウスを頸椎脱臼して殺し、マウスの肝臓を素早く摘出して1.5mLチュッブに入れ、液体窒素を入れてクエンチングした。
(5)約50mgの肝臓を切り、1mg/μLの比率で細胞溶解液(配合は後述)を加え、ホモジネートして超音波破砕し、20000gを低温で10分間遠心分離した。
(6)上澄みと等体積の2*SDS溶液(配合は後述)とを混合し、濃度8%のSDS-PAGEにロードし、次に、タンパク質をPVDF膜上に移し、各PVDF膜を脱脂ミルク25mLで1時間ブロックし、次に、TBSTバッファ(配合は後述)で1回に10分間、3回リンスした。
(7)AMPKαサブユニット一次抗体(Cell Signaling Technology,#2532)、AMPKの172番目のスレオニンリン酸化一次抗体(Cell Signaling Technology,#2535)、ACC一次抗体(Cell Signaling Technology,#3662)、ACCの79番目のセリンリン酸化一次抗体(Cell Signaling Technology,#3661)を、1:1000で一次抗体希釈液(配合は後述)に希釈し、PVDF膜とともに室温で12時間反応させ、TBSTバッファで3回リンスした。
(8)1:1000で希釈したHRP結合ヤギ抗ウサギ二次抗体(Jackson ImmunoResearch,111-035-003)を加え、室温で1時間反応させ、TBSTバッファで3回リンスした。
(9)PVDFを拭いて乾かし、ECL混合液(WesternBright ECL HRP substrate,Advansta)にて反応させ、医療用X線フィルムを用いて露光、発色し、最後にすすいでベークし、次に、走査してAMPK活性化の関連データを得た。
使用される試薬の配合:
細胞溶解液:20mM Tris-base,pH 7.5、150mM NaCl,1mM EDTA、1mM EGTA,2.5mM Sodium pyrophosphate、1mMβ-glycerolphosphate、1%Triton X-100(v/v);
2*SDS溶液:20%Glycerol(v/v)、4%SDS(m/v)、10%β-mecaptoethanol(v/v)、0.01%Bromophenol blue(m/v);
TBSTバッファ:4.84%Tris-base(m/v)、8%NaCl(m/v),0.1%Tween-20(v/v);
一次抗体希釈液:5%BSA(v/v)含有TBSTバッファ
化合物IB-33は、マウスのブドウ糖負荷試験では、血糖を効果的に下げることができ、図7は、化合物(IB-33)がip-GTTにおいて血糖を効果的に下げることを示す。
(14)6週齢の野生型C57BL/6J雄マウスについて、朝の6:00から給餌を停止して4時間断食させ、血糖(-120分)を測定して体重を称量し、0.2、2mg/kgの用量でIB-33を胃内投与し、同じ比率でvehicleを胃内投与した。
(15)2時間後、血糖(0分)を測定し、1g/kgの濃度でマウスに20%(v/v)ブドウ糖溶液を腹腔内注射し、注射20、40、60、90分後に、マウスの血糖をそれぞれ測定した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】