(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】鉄道の線路分岐器を潤滑するための装置、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
B05B 17/00 20060101AFI20220706BHJP
B64D 1/16 20060101ALI20220706BHJP
E01B 31/00 20060101ALI20220706BHJP
B05B 12/12 20060101ALI20220706BHJP
B05B 12/04 20060101ALI20220706BHJP
B64C 27/04 20060101ALN20220706BHJP
【FI】
B05B17/00
B64D1/16
E01B31/00
B05B12/12
B05B12/04
B64C27/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021560691
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 NO2020050094
(87)【国際公開番号】W WO2020209726
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521446336
【氏名又は名称】レイルウェイ ロボティクス アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トルゲルセン ヨルゲン
【テーマコード(参考)】
2D057
4D074
4F035
【Fターム(参考)】
2D057BA01
2D057BA31
4D074AA01
4D074BB02
4D074CC05
4D074CC09
4D074CC32
4D074CC34
4D074CC55
4D074CC56
4F035AA04
4F035BA03
4F035BA22
4F035BB02
4F035BB32
(57)【要約】
本発明は、遠隔制御可能であり、線路上を移動するように構成された、線路分岐器を潤滑するための装置に関し、本装置は、潤滑剤用の容器と、潤滑剤を用いて線路分岐器を潤滑するように構成された少なくとも1つのノズルと、を備える。本発明は、さらに、その装置と、当該装置を遠隔制御するためのコントローラと、を備えるシステムに関する。本発明はまた、線路分岐器を潤滑するための方法に関し、本方法は、上記装置を線路分岐器に遠隔で方向付けるステップと、線路分岐器を潤滑するように装置に遠隔で指示するステップと、その線路分岐器を通過する列車の通行を妨げないように線路分岐器から離れるように装置を遠隔で方向付けるステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔制御可能であり、線路(21)上を移動するように構成された、鉄道の線路分岐器(31)を潤滑するための装置(1)であって、
潤滑剤用の容器(17)と、
前記潤滑剤を用いて前記線路分岐器(31)を潤滑するように構成された少なくとも1つのノズル(13)と、を備える、装置。
【請求項2】
複数のノズル(13)と、
各ノズル(13)を他のノズルから独立して制御するコントロールシステムと、を備え、
各ノズル(13)が、前記線路分岐器(31)の異なる部分を潤滑するように配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置(1)が飛行することを可能にするロータ(7)をさらに備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ロータ(7)を備える別個の機体(41)に取り付け可能に構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記線路(21)に対して前記装置(1)を正確に配置するためのLIDARシステム(10)を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記線路分岐器(31)を検出するためのステレオカメラ(15)を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置(1)が、データを処理するためのAIユニット(19)をさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置(1)の別々の部分同士を接続する少なくとも1本の丈夫で柔軟なストリングをさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項による前記装置(1)と、前記装置(1)を遠隔制御するためのコントローラ(45)と、を備えるシステム(43)。
【請求項10】
線路分岐器(31)を潤滑するための方法であって、
請求項1~8のいずれか1項に記載の前記装置(1)を前記線路分岐器(31)に遠隔で方向付けるステップと、
前記線路分岐器(31)を潤滑するように前記装置(1)に遠隔で指示するステップと、
前記線路分岐器を通過する列車の通行を妨げないように前記線路分岐器(31)から離れるように前記装置(1)を遠隔で方向付けるステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔制御可能であり、線路上を移動するように構成された、鉄道の線路分岐器を潤滑するための装置に関する。本発明は、さらに、その装置と、当該装置を遠隔制御するためのコントローラと、を備えるシステムに関する。本発明はまた、鉄道の線路分岐器を潤滑するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線路分岐器は、列車が線路を変更し、様々に異なる経路を取ることを可能にするため、鉄道事業において最も重要な資産の1つである。しかしながら、線路分岐器は、列車の遅延を最も多く引き起こす鉄道資産の1つでもあり、多くの保守を必要とする。実際に、鉄道の保守点検費用の合計の20~40%は分岐器に関連する。線路分岐器の潤滑、幾何学的測定、および点検は、列車の遅延を防ぐ基本的な保守業務である。これらの活動は肉体労働によって行われ、これには、安全規則により通常の列車の運行の中断が必要となる。これにより、貨物積載トン数、旅客収容能力、および鉄道網の重整備能力が低下し、鉄道網の運営コストが増加する。
【0003】
点検は、典型的には測定列車および/または仮想列車を使用して実行される。ただし、これらの列車を使用するには、鉄道網の収容能力が広範囲で利用されている場合、通常の列車の通行を中断する必要がある。測定列車は、典型的には1つの分岐器当たり年に2~4回使用され、分岐器の故障に対する最初の対応器として機能することはできない。測定列車は、主に鉄道網全体の分析を対象としている。また、測定列車の運転コストは高い。
【0004】
上述の不利な点のいくつかを回避するために、ドローンとして一般に知られているホバリング無人航空機(UAV)を鉄道の点検に使用することができる。しかしながら、UAVは、線路分岐器についてこのような点検を行う場合、エネルギー効率が悪く、作業時間が短い。さらに、鉄道網上でのナビゲーションはホバリングUAVにとっては困難であり、線路分岐器の点検を実行するホバリングUAVのための経路計画の複雑さが高くなる。
【0005】
本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを改善もしくは低減すること、または少なくとも先行技術の有用な代替物を提供することにある。この目的は、以下の説明および後に続く特許請求の範囲で特定される特徴を通じて達成される。本発明は、独立請求項によって定義される一方で、従属請求項は、本発明の好都合な実施形態を定義する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1の態様では、本発明は、より具体的には、遠隔制御可能であり、線路上を移動するように構成された、線路分岐器を潤滑するための装置に関し、本装置は、潤滑剤用の容器と、潤滑剤を用いて線路分岐器を潤滑するように構成された少なくとも1つのノズルと、を備える。本装置は、例えば、典型的には1435mmの距離を有する線路に適合する車輪と、本装置に推進力をもたらす1つまたは複数のモータと、を備え得る。本装置は、遠隔制御可能であるため、無人とすることができることにより、オペレータの安全性が問題になることはない。無人であるように構成された装置は、比較的小型かつ軽量にすることもできるので、移動に必要なエネルギーが少なくて済む。製造するのにも安価であり得る。本装置は、例えば、主に軽量炭素材料によって構築されたフレームを備え得る。本装置は、任意の近くの機器に干渉したり、線路の電流に干渉したり、またはその線路に短絡が発生するリスクを冒したりしないように構築することができる。本装置の表面の一部または全部は、例えば、絶縁材料でコーティングされてもよい。さらに、本装置が軽量であって、列車が高速で本装置に衝突した場合、その衝撃は列車にほとんど影響を与えず、乗客に害を及ぼすことはないであろう。無人で遠隔制御可能な装置はまた、線路を使用する列車のタイムスケジュールに適合する特定の時間および場所で自動的に動作するようにプログラム可能であってもよい。したがって、本装置が線路分岐器を潤滑するときに、通常の列車の通行を大幅に中断する必要はない。
【0007】
一実施形態では、本装置は、複数のノズルと、各ノズルを他のノズルから独立して制御するコントロールシステムと、を備えてもよく、各ノズルが、線路分岐器の異なる部分を潤滑するように配置されている。線路分岐器は、典型的には、基本レール(stock rail)として知られる分岐する外側レール間に配置される、分岐器レール(switch rail)、ポイント、またはポイントブレードとして知られる、連結された一対のテーパレールである。これらの分岐器レールは、通常は2つの端部位置間で横方向に移動して、分岐器レールから来る列車を2つの分岐経路のいずれかに方向付けることができる。分岐器レールの下には、典型的には複数のスライドプレートが存在し、それらの分岐器レールを支持し、分岐器レールが2つの位置間を確実に摺動できるようにする。分岐器レールは、自由端部において最大の横方向変位を有することになり、それらの自由端部から、線路の非可動レールにしっかりと接続されている分岐器レールの反対側端部に向かって、変位はどんどん小さくなる。したがって、分岐器レールの自由端部では、固定端部の方よりもより広い潤滑幅が必要になる。ノズル同士が互いに独立して制御可能である場合、線路の中心から異なる距離に配置された複数のノズルを有することによって、可変潤滑幅を得ることができる。このように、分岐器レールの自由端部ではより多数のノズルを開くことができるため、基本レール端部の方よりもより広い幅を潤滑することができる。したがって、分岐器レールの可動領域全体は、広い領域また分岐器レールの変位幅が狭く、潤滑対象領域が広い場所も潤滑することにより、潤滑剤を無駄にすることなく、本装置の1回の通過(drive-through)で潤滑することができる。本装置は潤滑剤を運搬する必要があるため、潤滑剤の使用量がより少ないということは、補充の頻度が少なくてすむことを意味し、これは時間の節約になる。複数のノズルの代替として、可変開口幅を有する幅広ノズルを使用することができ、これは、複数のノズルと同様の技術的効果をもたらす。さらなる代替として、その少なくとも1つのノズルは可動式とすることができ、レールの横方向の(すなわち、線路上の装置の運動方向に対して直交する)幅にわたって、潤滑剤を分配することができる。このようにして、本装置は線路分岐器の幅全体を潤滑することができる。
【0008】
一実施形態では、本装置は、本装置が飛行することを可能にするロータをさらに備えてもよい。これには、本装置が線路間で迅速に移動できるという利点があるため、非常に混雑した線路でも列車の通行を妨害する必要がない。本装置は、列車が分岐器を通過するのを線路の横で待つだけで、飛行して線路に着陸して分岐器を潤滑し、すぐにまた線路から飛び降りることができる。さらに、線路同士が本装置の場所の近くで接続されていない場合でも、本装置は、ある線路から別の線路に簡単かつ迅速に移動することができる。
【0009】
代替的実施形態では、本装置は、ロータを備える別個の機体(vessel)、例えば、脚のない市販のマルチロータUAVに取り付け可能であるように構成されてもよい。これには、例えばロータまたはロータモータの損傷が原因で動作が停止した場合に、その別個の機体を迅速に交換することができるという利点がある。通常、走行するよりも飛行する方がより多くのエネルギーを必要とするため、装置が飛行できる場合でも線路上を移動するように構成されていることは利点である。このように、本装置は、エネルギーの補充が必要になる前に、より多くの作業を行うことができる。本装置は、典型的には電気モータとバッテリを使用してエネルギーを供給することができるため、エネルギーの補充にはバッテリの再充電が必要になることがよくある。線路上を移動できることの別の利点は、潤滑がより正確になり、装置がずっと空中に浮かんでいる場合よりも、例えば風による影響を受けにくくなる。また、本装置がレールに着陸した後は、線路分岐器までのナビゲーションが重要でなくなるため、線路分岐器の保守および点検を実行する本装置のための経路計画の複雑さが低下することになる。
【0010】
本装置は、典型的には多数の分岐器と共に大規模な鉄道敷地の自動ドローンガレージに保管され得る。大きな鉄道駅または鉄道貨物ターミナルは、そのような敷地の例である。より小さな敷地では、本装置をバンで輸送し、保守および点検のためにバンから送り出してもよい。任意選択で、予期しないことが起こった場合には、オペレータが本装置を追跡して制御してもよい。
【0011】
本装置は、本装置が点検および保守を自動的に行うことができるようにする様々なセンサを含み得る。例えば、本装置は、離陸してから、線路に着陸している間、線路分岐器の保守点検中、および離陸地点に戻るときに、完全に自動で飛行し動作することができてもよい。本装置は、例えば、GPSシステム、コンパス、ステレオカメラ、サーモグラフィーカメラ、LIDARシステム、データを処理するためのAIユニット、および/またはデータ取得および送信ユニットを備えてもよい。
【0012】
例えば、本装置は、通常、離陸地点から線路上の入口点まで、いくつかの所定のGPS座標からなる飛行経路をたどることができる。本装置は、線路と可能な架空線との間の垂直方向の空間にまだある間に、上方から線路に入ることができる。この垂直方向の隔たりは、例えば約5mであり得る。着陸地点を示す最後のGPS座標は、レール間の中間点であってもよい。本装置がこのGPS座標に向かって降下を開始することになる一方で、LIDARシステムは、例えば線路に着陸するときに、その線路に対して本装置を正確に配置するために、本装置を左右のレールに対して等距離に保つことができる。これにより、本装置が線路に正確に着陸することが確実になり、GPS干渉および/または風の場合には特に好都合になる。画像またはビデオを3Dで記録できるステレオカメラによって、例えばGPS干渉およびコンパス干渉の場合に、レールに沿った正確な向きを確保することができる。この情報を処理してフライトコンピュータに送信するために、人工知能(AI)エンジンが含まれていてもよい。本装置がレールに着陸すると、空中推進モータがオフになり、本装置は、好適な速度、例えば走行速度以上で、レール推進モータおよび車輪によって線路分岐器に向かって線路上を前進し始めることができる。
【0013】
各線路分岐器は典型的には正面に少なくとも1つのGPS座標を有するため、その座標に到達することは、本装置の速度が低下し、保守および点検ルーチンが開始され得ることを意味する。これは、典型的には歩行速度以上で起こり得る。LIDARは、典型的には、分岐器の位置と、分岐器レールと基本レールとの間の隔たりの幅と、を検出するための主センサとなる。このセンサが、分岐器においてスプレー潤滑を行うためにどのノズルを開けるべきかを潤滑システムに指示する。LIDARおよびステレオカメラは、分岐器のスライドプレートの開始位置と終了位置を検出することができる。これにより、ノズルがいつスプレーすべきかを制御する。LIDARは、同時に、幾何ゲージ測定のための幾何ゲージデータを取得することができ、ステレオカメラは目視点検用の写真を撮影することができ、サーモグラフィーカメラは熱点検用の写真を撮影することができる。これらのカメラは、例えば、分岐器の正面のGPS座標において動作を開始し、分岐器の隅から隅まで写真を撮影するようにプログラムすることができる。AIエンジンは、データを処理し、潤滑システムを制御することができる。データ取得および送信ユニットは、データを保存し、そのデータを分岐器分析プラットフォームおよび/または資産管理システムに送信することができる。保守および点検が終了すると、本装置は速度を上げ、ルーチンを繰り返すために次の分岐器まで走行してもよいし、または離陸地点に飛行して戻ってもよい。本装置は、例えば、いくつかの所定のGPS座標からなる飛行経路をたどることができる。
【0014】
本装置は、線路分岐器が作動しない場合に、列車操車係および技術者に第1次サポートを提供することもできる。
【0015】
本装置の用途の1つは、鉄道事業者が典型的にはWi-Fi、4G、または5Gを介して使用する分岐器分析プラットフォームに、本装置を接続することであり得る。分岐器分析プラットフォームは、分岐器からのセンサデータを収集および分析することができ、作業指示を本装置に直接送信することができる。作業指示書には、GPS座標、好適な飛行および鉄道経路、好適なタイムスロット、分岐器のタイプなどの追加情報を伴うことができる。これにより、線路分岐器の自動保守および点検が可能になり得る。本装置は、線路分岐器の保守および点検を行っているときに、情報を、点検画像、熱画像、幾何学ゲージデータ、および実行された整備タイプの形式で分岐器分析プラットフォームに送り返すことができる。次に、分析プラットフォームが、保守および点検の結果を分析し、許容可能な状態の分岐器を通過するか、または現地保守要員に作業指示を送信して、モータまたはブレードの交換などの重整備を実行する。
【0016】
本装置の別の用途は、本装置を資産管理システムに接続し、カウンタまたはカレンダーに基づいて、保守専門家を介して資産管理システムに本装置への作業指示を送信させることであり得る。本装置は、資産管理システムから作業指示を受け取ることがあり、これにより、分岐器の半自動保守および点検が可能になる。本装置は、線路分岐器の保守および点検を行っているときに、情報を、点検画像、熱画像、幾何学ゲージデータ、および実行された整備タイプの形式で資産管理システムに送り返すことができる。保守専門家が、保守および点検の結果を分析し、許容可能な状態の分岐器を通過するか、または現地保守要員に作業指示を送信して重整備を実行する。
【0017】
本装置は、例えばステレオカメラおよび/またはサーモグラフィーカメラを使用することによって、鉄道内の全てのタイプのインフラストラクチャの点検に使用することができる。本装置は、ロータを有する場合、列車の乱気流ゾーンおよび任意の架空線の上方を飛行し、通常の列車の通行を妨げることなく鉄道を検査することもできる。本装置の使用例は、レール、枕木、排水カルバート、および/もしくはバラストの写真点検、ならびに/またはレール温度、架空線システム、牽引戻り電流システム、接地および固定システム、線路分岐器加熱システム、絶縁レールジョイント、線路上または線路の近くの人もしくは動物、および/もしくは列車の遅延や列車のキャンセルを引き起こす可能性のある障害の写真およびサーモグラフィー点検である。
【0018】
一実施形態では、本装置は、本装置の別々の部分同士を接続する少なくとも1本の丈夫で柔軟なストリングをさらに含んでもよい。これには、例えば電車との衝突で本装置が破損した場合に、丈夫で柔軟なストリングが本装置の別々の部分を一緒に保つことになるため、本装置がより少数の断片に割れることになるという利点がある。これにより、本装置の断片が、例えば人、動物、または近くの機器に衝突して損害を与えるリスクが小さくなる。ストリングは、好ましくは、材料の内部に配置されることができ、材料内では、本装置は、そのストリングが外部の障害物の周りに確実に引っ掛からないように構築される。ストリングは、例えばフレームの内部に配置されることができ、フレームは、例えば、車輪を互いに接続してセンサを含む中央ユニットに接続する。ストリング用に可能な材料は、HMPE(高弾性ポリエチレン)またはHPPE(高性能ポリエチレン)としても知られているUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)である。UHMWPEは、非常に高分子量のポリオレフィン樹脂であり、通常は200万~600万g/molで、非常に長いポリマー鎖を有する。長鎖は、分子間相互作用を強化することにより、より効果的に負荷をポリマー骨格に伝達するのに役立つ。これにより、現在入手可能な熱可塑性プラスチックの中でおそらく最高の衝撃強度を備えた非常に頑丈な材料が得られる。
【0019】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による装置と、その装置を遠隔制御するためのコントローラと、を備えるシステムに関する。
【0020】
第3の態様では、本発明は、線路分岐器を潤滑するための方法に関し、本方法は、本発明の第1の態様による装置を線路分岐器に遠隔で方向付けるステップと、線路分岐器を潤滑するように装置に遠隔で指示するステップと、その線路分岐器を通過する列車の通行を妨げないように線路分岐器から離れるように装置を遠隔で方向付けるステップと、を含む。
【0021】
以下に、添付の図面に示される好適な実施形態の例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】上方から見た、本発明による装置の一実施形態を示す図である。
【
図1B】正面から見た、本発明による装置の一実施形態を示す図である。
【
図2A】上方から見た、線路分岐器に沿った2つの異なる位置で線路上に配置された
図1の装置を示す図である。
【
図2B】上方から見た、線路分岐器に沿った2つの異なる位置で線路上に配置された
図1の装置を示す図である。
【
図3A】正面から見た
図1および
図2の装置であって、別個の機体が上部に取り付けられている装置を示す図である。
【
図3B】上方から見た
図1および
図2の装置であって、別個の機体が上部に取り付けられている装置を示す図である。
【
図4A】ロータが装置に一体化されている、本発明による装置の別の実施形態を示す図である。
【
図4B】ロータが装置に一体化されている、本発明による装置の別の実施形態を示す図である。
【
図5】
図4の装置とその装置を遠隔制御するためのコントローラとを備える、本発明によるシステムを示す図である。
【
図6】本発明による装置に使用することができる潤滑システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面において、参照番号1は、本発明による装置を示す。
図面は概略であり、その中の特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。
同一の参照番号は、同一または類似の特徴を示す。
【0024】
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、上方からおよび正面から見た本発明による装置1を示す。装置1は、線路21(
図2に図示される)のレール23(
図1Aには図示せず)上を移動するように構成された車輪3と、装置1に推進力をもたらすためのモータ5とを備える。図面は、装置1の後部の車輪3のモータ5のみを示しているが、装置1は、前部の車輪3のモータ5を含むこともできる。車輪3同士はフレーム11を介して接続されており、フレーム11は中央ユニット9も運搬する。フレーム11、および場合によっては中央ユニット9もまた、少なくとも1本の丈夫で柔軟なストリング(図では見えない)を備えることができ、このストリングが、そのフレーム11と場合によっては中央ユニット9の材料内に組み込まれることによって、列車との衝突の場合に、装置1がより少数の断片に破壊されることになる。中央ユニット9は、ステレオ・サーモグラフィーカメラを備えたカメラユニット15、距離を測定するためのLIDAR10、収集したデータを処理するためのAIユニット19、バッテリ21、および潤滑剤用の容器17を備える。装置1は、線路分岐器31(
図2に図示される)を潤滑するための複数のノズル13を備え、ノズル13は、装置1の前部の各側に配置される。容器17には、適切な管49(
図6に図示される)を介してノズル13に潤滑剤をポンプ輸送するためのポンプ18が付随している。各ノズル13は、個別に制御され、装置1がレール23上で使用される位置にあるときに、そのレール23に対して異なる距離を有するように配置される。このように、ノズル13は、分岐器レール27がその上で移動するスライドプレート25の幅全体を実質的に潤滑することができる。
【0025】
図2Aおよび
図2Bは、上方から見た、線路分岐器31に沿った2つの異なる位置で線路21上に配置された
図1の装置を示す。線路21は、枕木29によって支持されたレール23を含み、線路分岐器31は、スライドプレート25上で可動である分岐器レール27を含む。分岐器レール27は、一端部33において固定されており、この固定端部33の周りを実質的に枢動可能である。したがって、反対側の自由端部35は、スライドプレート25を横切る最大の横方向移動を有する。
図2Aでは、装置1は、線路分岐器31に入ったばかりであるため、線路分岐器31を潤滑するためのノズル13は、最初のスライドプレート25の上方にある。カメラユニット15および/またはLIDARシステム10は、最初のスライドプレート25の位置を検出することができる。この位置では、分岐器レール27が最大量の横方向移動を有するので、全てのノズル13が開いて、スライドプレート25の対応する広い領域を潤滑する。装置1が線路分岐器31に沿って移動するにつれて、分岐器レール27の移動範囲は減少する。例えば、
図2Bに示される装置1の位置では、ノズル13は、実質的に、分岐器レール27の固定端部33の上方にある。分岐器レール27はこの位置では大きく移動しないので、狭い領域の潤滑のみが必要であり、分岐器レール27の真上のノズル13のみが開く。カメラユニット15および/またはLIDARシステム10は、どのノズル13を開けるべきかを検出することができる。あるいは、分岐器31の任意の所与の位置において開けるべきノズル13は、分岐器31の形状によって事前に決定されてもよい。このようにして、分岐器レールがそれ以上存在しないために潤滑が必要ではない線路分岐器31の部分の上方に潤滑剤を噴霧することによって潤滑剤が無駄になることはない。これにより、装置1は、補充しなければならなくなる前に、より多くの分岐器レール31を潤滑することができる。
【0026】
図3Aおよび
図3Bは、それぞれ正面および上方から見た
図1および
図2の装置1を示しており、ロータ7を備える別個の機体41が上部に取り付けられている。ロータ7は、モータ8によって駆動される。このようにして、装置1は飛行が可能であってもよい。別個の機体41は、例えば、市販の機体であってもよいため、損傷または誤動作した場合に容易に交換することができる。
【0027】
図4Aおよび
図4Bは、
図1~
図3に示した装置1と同様の装置1を示すが、ロータ7および対応するモータ8が装置1のフレーム11に一体化されている。この一体化には、
図4に示される装置1を、
図3に示されるように取り付けた別個の機体41を備えた装置1よりも軽量に作製できるという利点がある。特に飛行時には、使用するエネルギーができるだけ少なくなるように、装置1の重量が重要である。
【0028】
図5は、本発明によるシステム43を示し、システム43は、
図4の装置1と、その装置1を遠隔制御するためのコントローラ45と、を備える。コントローラ45を使用して、例えば、装置1をリアルタイムで直接操縦する、装置1のカメラユニット15からのライブ記録を見る、および/または特定のタスクを実行するように装置1をプログラムすることができる。コントローラ45は、特定の装置ための専用のコントローラであってもよいし、または、例えば、コンピュータ、タブレット、もしくは携帯電話にインストールすることができるコンピュータプログラムであってもよい。
【0029】
図6は、本発明による装置1に使用することができる潤滑システム47を示す。潤滑システム47は、潤滑剤用の容器17と、互いに独立して制御され得る弁51をそれぞれが有する複数のノズル13と、適切な管49を介して容器17からノズル13に潤滑剤をポンプ輸送するためのポンプ18とを備える。ポンプ18は、開いているノズル13の数に応じて異なるポンプ速度を有することができる。空気弁57は、潤滑剤がポンプで送出されるときに空気が容器17に入ることを可能にする。このシステムはまた、容器17とポンプ18との間に主弁53を備えることによって、その容器17とポンプ18との間の流体接続を遮断することができる。これは、例えば、ポンプ18を洗浄するときに有益となり得る。
スクリューキャップ55が、容器17の開口部を閉じる。スクリューキャップ55は、容器17に潤滑剤を補充する前にねじって取り外すことができる。容器17は、例えば、10リットルの量の潤滑剤を収容することができてもよい。
【0030】
上述の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示しており、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの代替実施形態を設計することができるであろうことに留意されたい。特許請求の範囲では、括弧の間に配置された参照記号は、請求項を制限するものと解釈されないものとする。動詞「備える(comprise)」とその活用形の使用は、請求項に記載されていない要素またはステップの存在を排除するものではない。要素に先行する冠詞「a」または「an」は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。
【0031】
特定の方策が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【手続補正書】
【提出日】2021-03-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔制御可能であり、線路(21)上を移動するように構成された、鉄道の線路分岐器(31)を潤滑するための装置(1)であって、
潤滑剤用の容器(17)と、
前記潤滑剤を用いて前記線路分岐器(31)を潤滑するように構成された少なくとも1つのノズル(13)と、を備
え、
前記少なくとも1つのノズル(13)が、可変潤滑幅を提供するようにさらに構成される、装置。
【請求項2】
複数のノズル(13)と、
各ノズル(13)を他のノズルから独立して制御するコントロールシステムと、を備え、
各ノズル(13)が、前記線路分岐器(31)の異なる部分を潤滑するように配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置(1)が飛行することを可能にするロータ(7)をさらに備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ロータ(7)を備える別個の機体(41)に取り付け可能に構成される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記線路(21)に対して前記装置(1)を正確に配置するためのLIDARシステム(10)を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記線路分岐器(31)を検出するためのステレオカメラ(15)を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置(1)が、データを処理するためのAIユニット(19)をさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置(1)の別々の部分同士を接続する少なくとも1本の丈夫で柔軟なストリングをさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのノズル(13)が、可変開口部を有する幅広ノズルである、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのノズル(13)が、前記線路(21)のレールの横方向の幅にわたって潤滑剤を分配することができるように可動式である、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
請求項
1~10のいずれか1項による前記装置(1)と、前記装置(1)を遠隔制御するためのコントローラ(45)と、を備えるシステム(43)。
【請求項12】
線路分岐器(31)を潤滑するための方法であって、
請求項
1~10のいずれか1項に記載の前記装置(1)を前記線路分岐器(31)に遠隔で方向付けるステップと、
前記線路分岐器(31)を潤滑するように前記装置(1)に遠隔で指示するステップと、
前記線路分岐器を通過する列車の通行を妨げないように前記線路分岐器(31)から離れるように前記装置(1)を遠隔で方向付けるステップと、を含む方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
第1の態様では、本発明は、より具体的には、遠隔制御可能であり、線路上を移動するように構成された、線路分岐器を潤滑するための装置に関し、本装置は、潤滑剤用の容器と、潤滑剤を用いて線路分岐器を潤滑するように構成された少なくとも1つのノズルと、を備え、少なくとも1つのノズルが可変開口幅を提供するようさらに構成されている。本装置は、例えば、典型的には1435mmの距離を有する線路に適合する車輪と、本装置に推進力をもたらす1つまたは複数のモータと、を備え得る。本装置は、遠隔制御可能であるため、無人とすることができることにより、オペレータの安全性が問題になることはない。無人であるように構成された装置は、比較的小型かつ軽量にすることもできるので、移動に必要なエネルギーが少なくて済む。製造するのにも安価であり得る。本装置は、例えば、主に軽量炭素材料によって構築されたフレームを備え得る。本装置は、任意の近くの機器に干渉したり、線路の電流に干渉したり、またはその線路に短絡が発生するリスクを冒したりしないように構築することができる。本装置の表面の一部または全部は、例えば、絶縁材料でコーティングされてもよい。さらに、本装置が軽量であって、列車が高速で本装置に衝突した場合、その衝撃は列車にほとんど影響を与えず、乗客に害を及ぼすことはないであろう。無人で遠隔制御可能な装置はまた、線路を使用する列車のタイムスケジュールに適合する特定の時間および場所で自動的に動作するようにプログラム可能であってもよい。したがって、本装置が線路分岐器を潤滑するときに、通常の列車の通行を大幅に中断する必要はない。
【国際調査報告】