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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】mRNA製剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20220706BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K9/127
A61K9/107
A61P43/00 121
A61P37/04
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021563262
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2020061477
(87)【国際公開番号】W WO2020216911
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】19171323.9
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520265930
【氏名又は名称】イーザアールエヌーエー イムノセラピーズ エンヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(71)【出願人】
【識別番号】502320611
【氏名又は名称】ヴリジェ ユニヴェルシテ ブリュッセル
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】デ コケル,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ビーバース,サンネ
(72)【発明者】
【氏名】トム,ピーター
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA19
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC06
4C076CC26
4C076CC27
4C084AA13
4C084MA02
4C084MA22
4C084MA24
4C084MA56
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA04
4C085BB01
4C085BB23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
(57)【要約】
本発明は、mRNA製剤の分野に関し、特に、機能性免疫賦活タンパク質CD40L、CD70及びcaTLR4をコードする1つ以上のmRNA分子と、抗原をコードする1つ以上のmRNA分子との組合せを提供する。本発明の組合せは、特に、mRNA分子が5'CAP-1構造を含み、シュードウリジン等の1つ以上の修飾ヌクレオシドを更に含み得ることを特徴とする。本発明はまた、上記の組合せを含む組成物、並びに特にワクチン接種及び細胞増殖性障害の治療におけるその使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性免疫賦活タンパク質CD40L、CD70及びcaTLR4をコードする1つ以上のmRNA分子と、
1つ以上の抗原又はエピトープをコードする1つ以上のmRNA分子と、
を含む組合せであって、
前記mRNA分子の少なくとも1つが5'CAP-1構造を有することを特徴とする、組合せ。
【請求項2】
前記mRNA分子の全てが5'CAP-1構造を有する、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
前記mRNA分子が少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを更に含む、請求項1又は2に記載の組合せ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオシドが、シュードウリジン、5-メトキシ-ウリジン、5-メチル-シチジン、2-チオ-ウリジン及びN6-メチルアデノシンを含むリストから選択される、請求項3に記載の組合せ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオシドが、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン及び4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、特にN1-メチル-シュードウリジンを含むリストから選択されるシュードウリジンである、請求項3又は4に記載の組合せ。
【請求項6】
前記mRNA分子中の約100%のウリジンがN1-メチル-シュードウリジンによって置き換えられている、請求項5に記載の組合せ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な作用物質とを含む医薬組成物。
【請求項8】
前記組合せが脂質ナノ粒子又はポリマーナノ粒子等のナノ粒子に配合される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物が静脈内製剤、節内製剤、腫瘍内製剤、皮下製剤、皮内製剤又は筋肉内製剤用に配合される、請求項7又は8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物がワクチンの形態である、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
人間医学又は獣医学で使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ワクチン接種で使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗原が癌抗原である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
細胞増殖性障害の治療に使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
治療を必要とする被験体に請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、細胞増殖性障害を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、mRNA製剤の分野に関し、特に、機能性免疫賦活タンパク質CD40L、CD70及びcaTLR4をコードする1つ以上のmRNA分子と、抗原をコードする1つ以上のmRNA分子との組合せを提供する。本発明の組合せは、特に、mRNA分子が5'CAP-1構造を含み、シュードウリジン等の1つ以上の修飾ヌクレオシドを更に含み得ることを特徴とする。本発明はまた、上記の組合せを含む組成物、並びに特にワクチン接種及び細胞増殖性障害の治療におけるその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
mRNAワクチンによって惹起されるT細胞応答の大きさ及び機能的特徴は、投与経路と、送達担体と、mRNAの固有特性との間の複雑な相互作用によって左右される。投与経路により、臓器レベル及び細胞レベルでのmRNAの生体内分布が決められる。この点で、ナノキャリアへと複合体形成されたmRNAによる静脈内免疫化が、大きさの大きい/質の高いT細胞応答を惹起する特に強力なアプローチとして浮上しているが、免疫原性は送達担体の物理化学的特性に大きく依存する。最後に、mRNA形式自体が免疫原性に大きな影響を与える可能性が高い。その5'キャップ構造並びにssRNA配列モチーフ及びdsRNA配列モチーフの存在に応じて、in vitro転写(IVT)RNAは実際に様々なRNAセンサーによって認識され得る。これらのRNAセンサーをトリガーすると、T細胞の分化を支持するのに必要なサイトカイン応答が惹起されるが、mRNAの分解及び翻訳停止の中断を対象とする抗ウイルス性の固有の特徴も惹起される。したがって、mRNAワクチンの場合には、先天的な活性化のバランスを厳しく保って、mRNAにコードされた抗原の好適な発現を可能にする必要がある。
【0003】
本明細書において、本発明者らは、ワクチンに惹起されるT細胞応答の大きさ及び機能的特性に対する様々なmRNA形式の影響に取り組んでいる。この研究では、自然免疫系による認識の程度が異なる3つの異なるmRNA形式が扱われた:1)ARCAキャッピングされた非修飾mRNA、2)CleanCapでキャッピングされた非修飾mRNA、3)CleanCapでキャッピングされた修飾mRNA。ARCAキャッピングされたmRNAは、いわゆる5'Cap-0構造を有し、これはmRNAを安定化し、かつ翻訳開始を促すが、RNA分解及び翻訳停止を促す幾つかのRNAセンサーによって認識される。CleanCapでキャッピングされたmRNAは、代わりにCap-1構造を有することで、幾つかのRNAセンサー(MDA-5、RIG-I及びIFIT-1)からmRNAが検知されなくなる。真核生物のmRNAは典型的には、Toll様受容体(TLR)3、Toll様受容体7及びToll様受容体8との相互作用を低下させる様々なヌクレオシド修飾(例えば、シュードウリジン、5メチルシチジン、N1メチルシュードウリジン)を備えている。全ての3つのmRNA形式について、惹起されたT細胞応答の大きさ及び誘発された早期サイトカイン応答に対するTriMix(機能性免疫賦活タンパク質CD40L、CD70及びcaTLR4をコードするmRNA分子)の影響を評価した。
【0004】
本発明者らの研究により、T細胞応答及び早期炎症応答に関して、異なるmRNA形式の間の重要な違いが明らかになった。ARCAキャッピングされた非修飾mRNAは、静脈内注射時に最も顕著な炎症応答を惹起した。血清サイトカイン力価は、CleanCapでキャッピングされたmRNAに切り替えることによって大幅に減少し、同時にウリジンをN1メチルシュードウリジンにより置換することによって更に弱められた。試験されたmRNA形式のいずれについても、TriMixの添加は全身性サイトカイン応答を悪化させなかった。
【0005】
T細胞応答の大きさに関して、TriMixの不存在下(抗原のみ)では3つの異なるmRNA形式の間に有意差は認められなかった。それにもかかわらず、TriMixを添加するとmRNA形式の間でT細胞応答に大きな差が出た。TriMixは、ARCAキャッピングされた非修飾mRNAの場合にT細胞応答の大きさを改善しなかったが、TriMixは、CleanCapでキャッピングされた非修飾mRNA及びCleanCapでキャッピングされた修飾mRNAの場合にT細胞応答の大きさを大幅に高めた。全体として、T細胞応答は、5:5の比率のE7:TriMixで免疫化した場合に、CleanCapの非修飾mRNA及びCleanCapでキャッピングされた修飾mRNAの形式において最も上昇し、全ての循環CD8 T細胞の80%ほどの高さがE7に特異的であった。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様において、本発明は、機能性免疫賦活タンパク質CD40L、CD70及びcaTLR4をコードする1つ以上のmRNA分子と、
抗原をコードする1つ以上のmRNA分子と、
を含む組合せであって、
上記mRNA分子の少なくとも1つが5'CAP-1構造を有することを特徴とする、組合せを提供する。
【0007】
本発明の特定の実施の形態において、上記mRNA分子の少なくとも2つ、少なくとも3つ又は全てが5'CAP-1構造を有する。
【0008】
別の特定の実施の形態において、上記mRNA分子は、シュードウリジン、5-メトキシ-ウリジン、5-メチル-シチジン、2-チオ-ウリジン及びN6-メチルアデノシンを含むリストから選択されるような少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを更に含む。
【0009】
更なる特定の実施の形態において、上記の修飾ヌクレオシドは、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン及び4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジンを含むリストから選択されるシュードウリジンであり得る。非常に特定の実施の形態において、上記の少なくとも1つの修飾ヌクレオシドは、N1-メチル-シュードウリジンである。
【0010】
別の特定の実施の形態において、上記mRNA分子中の約100%のウリジンがN1-メチル-シュードウリジンによって置き換えられている。
【0011】
本発明は、本明細書で規定される組合せと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な作用物質とを含む医薬組成物を更に提供する。
【0012】
別の特定の実施の形態において、本明細書で規定される組合せは、脂質ナノ粒子又はポリマーナノ粒子等のナノ粒子に配合される。
【0013】
更なる実施の形態において、本明細書で規定される組成物は、静脈内製剤、節内製剤、腫瘍内製剤、皮下製剤、皮内製剤又は筋肉内製剤用に配合される。
【0014】
尚も更なる特定の実施の形態において、本発明による組成物は、ワクチンの形態であり得る。
【0015】
本発明の特定の実施の形態において、上記の抗原は、癌抗原である。
【0016】
本発明は更に、人間医学又は獣医学に使用され、より特にはワクチン接種で使用される及び/又は細胞増殖性障害の治療で使用される、本明細書で規定される組合せ又は組成物を提供する。
【0017】
本発明はまた、治療を必要とする被験体に本明細書に規定される組合せ又は組成物を投与することを含む、細胞増殖性障害を治療する方法を提供する。
【0018】
これより図面を具体的に参照するが、示される記述は例示であり、本発明の種々の実施形態の説明的な論考のみを目的とすることが強調される。これらの図面は、本発明の原理及び概念的態様の最も有用かつ簡単な説明であると考えられるものを提供するために提示される。この点で、本発明の基礎的理解に必要とされるよりも詳細な本発明の構造細部を示そうとはしていない。この説明は、図面と共に本発明の幾つかの形態を実際に具体化し得る方法を当業者に明らかとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】全身性炎症応答に対するmRNA形式及びTriMixの影響を示す図である。示されるmRNALNPをマウスに静脈内注射してから6時間後に測定された血清サイトカイン力価。E7/TriMix mRNAを、比率10:0、7.5:2.5、5:5でLNP(50/10/39.5/0.5)中にカプセル化した。mRNAは、ヌクレオシド修飾を伴わずにARCAキャッピング(ARCA/non-mod)されたか、ヌクレオシド修飾を伴わずにCleanCapでキャッピング(CleanCap/non-mod)されたか、又はN1メチルシュードウリジンを含んでCleanCapでキャッピング(CleanCap/mod)されたかのいずれかであった。n=6;2元配置分散分析。ns=非有意;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001 ****p<0.0001。
図2】CleanCap/修飾mRNA LNPに対する炎症応答の動態を示す図である。E7及びTriMixのmRNAを、示された比率でLNP中にカプセル化し、10 μgの総mRNA用量で静脈内投与した。全てのmRNAは、CleanCapと、100%のウリジンのN1メチルシュードウリジンによる置換とを含んでいた。血清サイトカインを注射の6時間後及び24時間後に測定した。
図3】A)10:0(TriMixなし)及び5:5のE7/TriMix比でのE7/TriMix mRNA LNPによる免疫化時のE7特異的T細胞応答の大きさに対するmRNA形式の影響を示す図である。B)示されるE7対TriMix比でのARCA/non-mod mRNA及びCleanCap mod mRNAによる免疫化の場合のE7特異的T細胞応答の大きさに対するTriMixの影響を示す図である。2元配置分散分析に続いてのテューキーの多重比較検定。ns=非有意;*p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001。
図4】10:0(TriMixなし)及び5:5のE7/TriMix比でのE7/TriMix mRNA LNPによる3回目の免疫化後にELISPOTによって評価されたIFN-γ T細胞応答の大きさを示す図である。mRNAは、ヌクレオシド修飾を伴わずにARCAキャッピング(ARCA/non-mod)されたか、ヌクレオシド修飾を伴わずにCleanCapでキャッピング(CleanCap/non-mod)されたか、又はN1メチルシュードウリジンを含んでCleanCapでキャッピング(CleanCap/mod)されたかのいずれかであった。n=6;2元配置分散分析。ns=非有意;*p<0.05;**p<0.01。
図5】A)示されるmRNA形式を有するE7 mRNA LNPをマウスに注射した際の初期体重の%として表されたマウスの体重を示す図である。LNPを0日目、7日目、及び14日目に静脈内注射した。B)それぞれARCA, non-mod mRNA、CleanCap, non-mod mRNA及びCleanCap, mod mRNAについて、示されるE7/TriMix mRNA LNPでマウスにLNPを注射した際の初期体重の%として表されるマウスの体重を示す図である。
図6】PBS又は示されるmRNA LNPでの3回目の注射後のマウスの血清中のALT/ASTレベルを示す図である。2元配置分散分析に続いてのテューキーの多重比較検定。ns=非有意;*p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書の上記で既に詳述したように、本発明は、
機能性免疫賦活タンパク質CD40L、CD70及びcaTLR4をコードする1つ以上のmRNA分子と、
抗原をコードする1つ以上のmRNA分子と、
を含む組合せであって、
上記mRNA分子の少なくとも1つが5'CAP-1構造を有することを特徴とする、組合せを提供する。
【0021】
本発明全体を通して、「TriMix」という用語は、CD40L、CD70及びcaTLR4免疫賦活タンパク質をコードするmRNA分子の混合物を意味する。CD40LとcaTLR4との組合せの使用は、可溶性CD40L及びLPSの付加によるCD40及びTLR4のライゲーションについて示されているように、成熟したサイトカイン/ケモカイン分泌性DCを生じる。DCへのCD70の導入は、活性化T細胞アポトーシスを阻害し、T細胞増殖を支持することによってCD27+ナイーブT細胞に対する共刺激シグナルをもたらす。caTLR4の代替として、他のToll様受容体(TLR)が使用され得る。それぞれのTLRについて構成的活性型が知られ、宿主免疫応答を惹起するためにDCに導入され得る可能性がある。しかしながら、本発明者らの見解では、caTLR4が最も強力な活性化分子であり、したがって好ましい。
【0022】
本明細書において使用又は言及されるmRNA又はDNAは、裸のmRNA若しくはDNAであっても又は保護されたmRNA若しくはDNAであってもよい。DNA又はmRNAの保護は、その安定性を増大させた上で、mRNA又はDNAをワクチン接種目的で使用する能力を維持する。mRNA及びDNAの両方の保護の非限定的な例は、リポソームカプセル化、プロタミン保護、(カチオン性)脂質リポプレックス化(Lipoplexation)、脂質のカチオン性又はポリカチオン性組成物、マンノシル化リポプレックス化、バブルリポソーム化(Bubble Liposomation)、ポリエチレンイミン(PEI)保護、リポソーム負荷マイクロバブル保護等であり得る。
【0023】
本発明は、腫瘍特異的抗原に関連して使用するのに特に適しているが、他の種類の標的特異的抗原に関連して適切に使用することもできる。
【0024】
本明細書全体を通して使用される「標的」という用語は、本明細書に記載され得る具体的な例に限定されない。ウイルス、細菌又は真菌等の任意の感染因子を標的とすることができる。加えて、任意の腫瘍又は癌細胞を標的とすることができる。本明細書全体を通して使用される「標的特異的抗原」という用語は、本明細書に記載され得る具体的な例に限定されない。本発明が、提示される標的特異的抗原にかかわらず、APCにおける免疫賦活の誘導に関することが当業者には明らかである。提示される抗原は、被験体において免疫応答を惹起することを意図する標的の種類によって決まる。標的特異的抗原の典型的な例は、腫瘍、細菌及び真菌細胞、又は特定のウイルスタンパク質若しくはウイルス構造に特異的な発現又は分泌されたマーカーである。本発明の保護範囲を限定することを望むものではないが、考え得るマーカーの幾つかの例を下に挙げる。
【0025】
本明細書全体を通して使用される「新生物」、「癌」及び/又は「腫瘍」という用語は、例示され得る種類の癌又は腫瘍に限定されることを意図するものではない。それゆえ、この用語は、全ての増殖性障害、例えば、新生物、形成不全症、前悪性又は前癌性の病変、異常細胞増殖、良性腫瘍、悪性腫瘍、癌又は転移を包含し、癌は白血病、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、CNS癌、黒色腫、卵巣癌、腎癌、前立腺癌、乳癌、神経膠腫、結腸癌、膀胱癌、肉腫、膵癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、肝癌、骨癌、骨髄癌、胃癌、十二指腸癌、食道癌、甲状腺癌、血液癌、及びリンパ腫の群から選択され得る。癌に特異的な抗原は、例えば、MelanA/MART1、癌-生殖細胞抗原、gp100、チロシナーゼ、CEA、PSA、Her-2/neu、サバイビン、テロメラーゼであり得る。
【0026】
本発明のワクチンの好ましい実施形態において、mRNA又はDNA分子(複数の場合もある)が、CD40L及びCD70免疫賦活タンパク質をコードする。本発明のワクチンの特に好ましい実施形態において、mRNA又はDNA分子(複数の場合もある)は、CD40L、CD70及びcaTLR4免疫賦活タンパク質をコードする。
【0027】
免疫賦活タンパク質をコードする上記のmRNA又はDNA分子は、単一mRNA又はDNA分子の一部であってもよい。好ましくは、上記の単一mRNA又はDNA分子は、2つ以上のタンパク質を同時に発現することが可能である。一実施形態において、免疫賦活タンパク質をコードするmRNA又はDNA分子は、単一mRNA又はDNA分子において内部リボソーム侵入部位(IRES)又は自己切断性2aペプチドをコードする配列によって隔てられる。
【0028】
幾つかの好ましい実施形態において、本発明の方法で使用されるmRNAは、いわゆるCAP-1構造(CleanCap)を有する5'キャップ構造を有し、これは、以下に図解されるように、キャップヌクレオチドに対して末位から2番目のヌクレオチド中のリボースの2'ヒドロキシルがメチル化されていることを意味する:
【化1】
【0029】
別の特定の実施形態において、本発明の使用されるmRNA分子の2つ、3つ、4つ…又は全ては、いわゆるCAP-1構造を有する5'キャップ構造を有する。
【0030】
更なる実施形態において、本発明のmRNA分子の1つ以上は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを更に含み得る。別の特定の実施形態において、本発明の使用されるmRNA分子の2つ、3つ、4つ…又は全ては、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを有する。
【0031】
本発明の別の特定の実施形態において、上記mRNA分子は、シュードウリジン、5-メトキシ-ウリジン、5-メチル-シチジン、2-チオ-ウリジン及びN6-メチルアデノシンを含むリストから選択されるような少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを更に含む。
【0032】
本発明の更なる特定の実施形態において、上記少なくとも1つの修飾ヌクレオシドは、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン及び4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジンのリストから選択されるようなシュードウリジンであり得る。非常に特定の実施形態において、上記の少なくとも1つの修飾ヌクレオシドは、N1-メチル-シュードウリジンである。
【0033】
本発明の文脈内で使用するのに適した代替的なヌクレオシド修飾には、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチル-ウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン及び4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジンが挙げられる。幾つかの実施形態において、mRNAは、5-アザ-シチジン、シュードイソシチジン、3-メチル-シチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチル-シュードイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-シュードイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-シュードイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-シュードイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-シュードイソシチジン及び4-メトキシ-1-メチル-シュードイソシチジンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。幾つかの実施形態において、mRNAは、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン、7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン及び2-メトキシ-アデニンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。幾つかの実施形態において、mRNAは、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン及びN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。
【0034】
本発明で使用されるmRNA分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含んでもよく、特定の実施形態においては、特定の種類のヌクレオチドの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%は、修飾されたものにより置き換えられてもよい。同じmRNA分子内に異なるヌクレオチド修飾が含まれることも除外されない。本発明の非常に特定の実施形態において、上記mRNA分子中の約100%のウリジンが、N1-メチル-シュードウリジンによって置き換えられている。
【0035】
本発明は、本明細書で規定される組合せと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な作用物質とを含む医薬組成物を更に提供する。
【0036】
特定の実施形態において、上記の本発明のmRNA分子の1つ以上が翻訳エンハンサー及び/又は核内係留要素(nuclear retention element)を更に含有し得る。好適な翻訳エンハンサー及び核内係留要素は、国際公開第2015071295号に記載されているものである。
【0037】
本発明の更なる実施形態において、上記の1つ以上のmRNA分子は、非経口投与用に、より特には静脈内製剤、結節内製剤、腫瘍内製剤、皮下製剤、皮内製剤又は筋肉内製剤用に配合される。
【0038】
尚も更なる特定の実施形態において、上記mRNA分子は、結節内又は腫瘍内投与用に配合され、かつリンガー乳酸バッファー(Ringer Lactate buffer)等の好適な注射用バッファー中の裸のmRNA分子の形態である。
【0039】
本発明は、本明細書で規定される組合せ又は組成物も提供し、上記mRNA分子の1つ以上がナノ粒子に包まれる。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「ナノ粒子」は、粒子を特に核酸の全身投与、特に静脈内投与に適したものにする直径を有し、通例1000ナノメートル(nm)未満の直径を有する任意の粒子を指す。
【0041】
本発明の特定の実施形態において、ナノ粒子は、脂質ナノ粒子及びポリマーナノ粒子を含むリストから選択される。
【0042】
脂質ナノ粒子(LNP)は、異なる脂質の組合せで構成されるナノサイズ粒子として一般に知られている。多くの異なる種類の脂質がかかるLNPに含まれ得るが、本発明のLNPは例えば、イオン性脂質、リン脂質、ステロール及びPEG脂質の組合せで構成され得る。
【0043】
ポリマーナノ粒子は、典型的には、ナノスフェア又はナノカプセルであり得る。ポリマーナノ粒子の調製には2つの主要な戦略、すなわち「トップダウン」アプローチ及び「ボトムアップ」アプローチが使用される。トップダウンアプローチでは、事前に形成されたポリマーの分散によりポリマーナノ粒子が生成されるが、ボトムアップアプローチでは、モノマーの重合がポリマーナノ粒子の形成をもたらす。トップダウン法及びボトムアップ法はいずれも、ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(シアノアクリル酸エチル)、ポリ(シアノアクリル酸ブチル)、ポリ(シアノアクリル酸イソブチル)、及びポリ(シアノアクリル酸イソヘキシル)のような合成ポリマー/モノマー;ポリ(ビニルアルコール)及び臭化ジデシルジメチルアンモニウムのような安定剤;並びにジクロロメタン及び酢酸エチル、ベンジルアルコール、シクロヘキサン、アセトニトリル、アセトンのような有機溶媒等を使用する。最近、科学界は、天然高分子及び毒性の少ない溶媒を用いる合成方法を使用して、合成高分子の代替品を見つけようとしている。
【0044】
本発明はまた、人間医学又は獣医学に使用され、特に細胞増殖性障害の治療に使用され、より特には被験体において腫瘍に対する免疫応答を惹起するのに使用される、本明細書で規定される組合せ及びワクチンを提供する。
【0045】
最後に、本発明は、治療を必要とする被験体に本発明の組合せ又はワクチンを投与する工程を含む、細胞増殖性障害を治療する方法を提供する。
【0046】
上記組成物は獣医学分野においても価値がある可能性があり、本明細書における目的では、動物における疾患の予防及び/又は治療だけでなく、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、魚等の経済的に重要な動物の場合には、動物の成長及び/又は体重、及び/又は動物から得られる肉又は他の製品の量及び/又は品質を高めることも含む。
【0047】
ここで、本発明を以下の合成実施例及び生物学的実施例によって説明し、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例
【0048】
材料及び方法
マウス
雌のC57BL/6マウスは、Charles River Laboratories(フランス)から購入され、標準的な床敷材及びケージエンリッチメントを備える個別に換気されたケージ内に収容された。動物実験のための機関(ブリュッセル自由大学)ガイドライン及び欧州連合ガイドラインに従って動物は維持及び処置された。マウスは食物及び水を自由に摂取することができた。マウスが8週齢のときに実験を開始した。マウス(n=6/群)は、LNP(200 μLの容量)中の10 μgのmRNAを、尾静脈を介して0日目、7日目及び14日目に3回静脈内注射された。コントロールマウスは、200 μlのPBSを同じ時間間隔で注射された。マウスの体重は2日ごとに監視された。
【0049】
mRNA合成及び精製
E7 mRNAは、eTheRNAによってin vitro転写(IVT)によりeTheRNAプラスミドpEtherna-v2から調製された。HPV16-E7タンパク質をコードする配列は、ヒトDC-LAMPのシグナル配列と膜貫通領域及び細胞質領域との間にインフレームでクローニングされた。このキメラ遺伝子は、5'末端の翻訳エンハンサー及び3'末端のRNA安定化配列で強化されたpEtherna-v2プラスミド(国際公開第2015071295号)中にクローニングされた。CD40L、caTLR4及びCD70のmRNA(TriMixの構成要素)は、pEtherna-v2プラスミド中にクローニングされた。IVT後に、セルロース精製によってdsRNAを除去した。セルロース粉末はSigmaから購入され、16%のエタノールを有する1×STE(塩化ナトリウム-Tris-EDTA)バッファー中で洗浄された。IVT mRNA(16%のエタノールを有する1×STEバッファー中)は、洗浄されたセルロースペレットに添加され、そして室温で20分間振盪された。次いで、この溶液は、真空濾過機(Corning)に通された。溶出液は、ssRNA画分を含有しており、これを全ての実験に使用された。mRNA品質は、キャピラリーゲル電気泳動(Agilent、ベルギー)によって監視された。
【0050】
mRNAの脂質ベースのナノ粒子の作製
リンゴ酸バッファー(20 mMのリンゴ酸(Sigma)、30 mMのNaCl(Sigma)、pH3)中のmRNA溶液と脂質溶液とを2:1の容量比で9 mL/分の速度にてNanoAssemblr Benchtop(Precision Nanosystems)を使用してマイクロ流体混合することによって、脂質ベースのナノ粒子が生成される。脂質溶液は、それぞれ50/10/39.5/0.5のモル比のCoatsome-EC(NOF corporation)と、DOPE(Avanti)と、コレステロール(Sigma)と、DMG-PEG2000(Sunbright GM-020、NOF corporation)との混合物を含有していた。LNPは、slide-a-lyzer透析カセット(20K MWCO、3 mL、ThermoFisher)を使用してPBS(PBSの容量はLNPの容量よりも100倍多い)に対して透析された。Zetasizer Nano(Malvern)を用いた動的光散乱によって、サイズ及び多分散度が測定された。
【0051】
サイトカイン力価の評価
1回目のmRNA LNP投与の6時間後及び24時間後に、処置されたマウス及びコントロールマウスからの50 μLの血液は、凝固活性化剤の入ったチューブ(照会番号41.1500.005、Sarstedt)中に採取された。採取チューブは、遠心分離(5分、10000 g)され、血清はエッペンドルフチューブに移され、使用するまで-20℃で貯蔵された。サイトカインIFN-a、IFN-g、MCP-1、IL-6、IL-12、RANTES、G-CSF及びIP-10の力価を評価するために、血清は氷上で解凍され、ProcartaPlexイムノアッセイ(ThermoFisher Scientific)で使用された。アッセイはプロトコルに従って実施された。血清試料は、ユニバーサルアッセイバッファー(ProcartaPlexキットに含まれる)中で3倍に希釈され、蛍光標識されたビーズとともに120分間インキュベートされた。Procartaplexアッセイの読み取りは、MagPix機器(Luminex)で行われた。
【0052】
ALT/AST ELISA
3回目のmRNA LNP投与の24時間後に、処置されたマウス及びコントロールマウスからの50 μLの血液は、凝固活性化剤の入ったチューブ(照会41.1500.005、Sarstedt)中に採取された。採取チューブは、遠心分離(5分、10000 g)され、血清は、エッペンドルフチューブに移され、使用するまで-20℃で貯蔵された。アラニントランスアミナーゼ1(ALT)及びアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の血清力価を評価するために、血清は、氷上で解凍され、ALT1 ELISA(Abbexa照会番号abx570182)及びAST ELISA(Abbexa照会番号abx255199)で使用された。キットのプロトコルに従うが、この種類の試料の限定的な性質のため指定容量の半分の血清だけはプレートに加えるという1つの違いだけを伴って、アッセイが実施された。血清試料は、キットに含まれる試料希釈バッファー中で5倍に希釈された。ELISAの読み取りは、SpectraMax M3プレートリーダー(Molecular Devices)で行われた。
【0053】
フローサイトメトリー
E7特異的T細胞の数
6日目、13日目及び19日目に、処置されたマウス及びコントロールマウスから血液が採取された。赤血球は溶解され、残りの白血球は、製造元の指示書(MBL International)に従ってAPC標識されたE7(RAHYNIVTF)-四量体(配列番号1)で染色された。過剰な四量体は洗い流され、表面分子用の抗体混合物(表1に列記)は細胞に加えられ、4℃で30分間インキュベートされた。データはLSR Fortessaサイトメーターで取得され、そしてFlow Joソフトウェアで分析された。
【0054】
【表1】
表1:E7特異的T細胞の数のフローサイトメトリー分析に使用される抗体のリスト
【0055】
IFN-γ ELISpotの評価
マウスIFN-γ ELISpotキット(Diaclone、米国)が使用された。マイクロタイタープレート(96ウェル、Diaclone、米国)は、製造元の指示書に従って抗IFN-γ捕捉抗体で一晩コーティングされ、非特異的結合は、RPMI細胞系統培養培地を含む10%のFBSで37℃にて2時間ブロッキングされた。20日目にマウスは安楽死させられ、それらの脾臓が摘出された。脾細胞の単一細胞懸濁液が調製され、そして10000個の細胞/ウェルでマイクロタイタープレートに播種され、ペプチド刺激を行った又は行わなかった。5 μg/mLのE7ペプチドは、専用のウェルでの刺激に使用された。ポジティブコントロールとして、T細胞は抗CD3/抗CD28ビーズで刺激された。細胞は24時間インキュベートされた。その後、細胞は洗浄され、スポットは製造元の指示書(Diaclone)に従って現像された。スポットは、AID ELISpotリーダー(Autoimmun Diagnostika GmbH、ドイツ、シュトラースベルク)を使用して計数された。
【0056】
結果及び考察
LNP製剤及び物理化学的特性
全てのmRNA LNPは、NanoAssemblr(PNI)でのマイクロ流体混合によって作製された。簡潔には、材料及び方法のセクションで詳細に説明されるように、SS-EC、DOPE、コレステロール及びDMG-PEG2000から構成されるエタノール性脂質混合物は目的のmRNAの酸性溶液と混合された。構成脂質についてのモル%比は、50%のCoatsomeSS-EC、10%のDOPE、39.5%のコレステロール及び0.5%のDMG-PEG2000である。引き続き、mRNA LNPはPBSに対して透析され、そして全てのmRNA LNPのサイズ及び多分散度(PDI)は動的光散乱(DLS)によって測定された。表2に示されるように、全てのmRNA LNPは、mRNA形式及びE7:TriMix比にかかわらず、同様のサイズ及びPDIを有していた。
【0057】
【表2】
表2:静脈内免疫化に使用される脂質ベースのナノ粒子のサイズ及びPDI(多分散度)
【0058】
mRNA形式はE7/TriMix mRNA LNPに対する炎症応答を決定する
mRNAは、ARCAキャップ又はCleanCapのいずれかで共転写的にキャッピングされた。ARCAキャップのmRNA(ARCA, non-mod mRNA)には、ヌクレオシド修飾は組み込まれていなかった。CleanCap mRNAは、修飾ヌクレオシドを含まないか(CleanCap, non-mod mRNA)、又はウリジンのN1メチルシュードウリジンによる100%の置換を示すか(CleanCap, mod mRNA)のいずれかであった。炎症応答に対するmRNA形式及びTriMixの影響を扱うために、E7 mRNAは指定された比率でTriMixと混合され、LNP中にカプセル化された。C57BL/6マウスは、10 μgの総用量のmRNAを尾静脈によって投与された。血清試料は注射の6時間後及び24時間後に採取され、IFN-a、IFN-g、IL-6、MCP-1、G-CSF及びRANTESについて分析された。
【0059】
図1から理解され得るように、N1メチルシュードウリジンを組み込まずにARCAをCleanCapにより置き換えるだけで、幾つかのサイトカイン(IFN-a、IFN-g、RANTES及びMCP-1)の有意な減少が引き起こされたが、扱われた全てのサイトカインに有意な減少が引き起こされたわけではなかった(IL-6、G-CSF)。同時にウリジンをN1メチルシュードウリジンにより置き換えると(CleanCap, mod)、炎症応答が更に抑えられ、ここでは全てのサイトカインがARCA, non-mod mRNAと比較して有意に減少した。これらのデータは、細胞質ゾルRNAセンサーによるARCAキャッピングされたmRNA対CleanCapでキャッピングされたmRNAの検知の差、及びエンドソームTLRによるN1メチルシュードウリジンmRNAの認識の低下と一致している。驚くべきことに、E7 mRNAをTriMix mRNAにより部分的に置き換えても、炎症性サイトカインの血清力価は上昇しなかった。
【0060】
次に、本発明者らは、CleanCapでキャッピングされたN1メチルシュードウリジン修飾されたmRNAを含む静脈内注射されたmRNA LNPの炎症応答の動態に取り組んだ(図2)。全てのサイトカインは注射の6時間後に有意な上昇を示したが、サイトカイン力価は注射の24時間後にほぼベースラインに戻ったことから、これはCleanCap/mod mRNA LNPに対するサイトカイン応答が一過性であり、サイトカイン放出症候群を激化させないことを明確に示している。
【0061】
mRNA形式は抗原特異的T細胞応答の大きさ及び機能性に影響を与える
T細胞応答の大きさ及び機能的特徴に対するmRNA形式の影響を扱うために、E7 mRNAは、種々のmRNA形式について指定された比率でTriMix mRNAと混合された。0日目、7日目及び14日目に、それぞれのmRNA LNPにより10 μgの総mRNA用量でマウスは免疫化された。6日目、13日目及び19日目に、PBMCが採取され、フローサイトメトリーにより染色されて、E7特異的CD8 T細胞のパーセンテージを評価された。
【0062】
図3から理解され得るように、mRNA LNPによる静脈内免疫化は、頑健なE7特異的T細胞応答を惹起し、ここで、CleanCap/non-mod mRNA LNP処置群及びCleanCap/mod mRNA LNP処置群においてE7:TriMix比5:5で、最高のパーセンテージのE7特異的T細胞が惹起される。
【0063】
TriMix mRNAの不存在下(E7:TriMix 10:0)では、3つのmRNA形式の間で惹起されたT細胞応答の大きさに有意差は認められなかった。それにもかかわらず、E7 mRNAの半分がTriMixにより置換された場合(比率5:5)に、CleanCap/non-mod mRNAで免疫化されたマウス及びCleanCap/mod mRNAで免疫化されたマウスは、ARCA/non-mod mRNAで免疫化されたマウスと比較して有意に高いレベルのE7特異的T細胞を示した(図3A)。したがって、TriMixの影響はmRNA形式に明らかに依存しており、TriMixはARCA/non-mod mRNAの場合には利益を示さないが、CleanCap/mod mRNAの場合には高度に有意な利益を示す。
【0064】
CleanCap/mod mRNAの場合に、5:5の比率のE7/TriMixは、7.5:2.5の比率と比較してより強いT細胞応答を引き起こすようであったことから、抗原mRNAとTriMix mRNAとの比率を更に最適化するのに追加の研究が必要とされる。
【0065】
E7特異的T細胞応答の大きさ及び機能性は、3回目の免疫化後に得られた脾細胞に対するIFN-γ ELISPOTによって更に分析された。血液中を循環するE7特異的CD8 T細胞に関して観察されたように、TriMixはARCA, non-mod mRNAの場合にIFN-γ産生脾細胞の数を増加させなかったが、TriMixはCleanCap/non-mod mRNA及びCleanCap/mod mRNAの場合には応答を増大させた(図4)。
【0066】
TriMixは体重減少にも肝障害にも影響を与えない
毒性及び肝障害についての代理マーカーとして、体重減少及びALT/ASTレベルが測定された。図5から理解され得るように、全てのLNPはマウスの一過性の体重減少を誘発し(注射の24時間後に最も顕著)、その後急速に回復した。mRNA形式自体は体重減少の程度にほとんど影響を与えないようであったが、ARCAキャッピングされたmRNAは、PBSが注射されたマウスと比較して最高の体重減少を引き起こす傾向があった。扱われたmRNA形式のいずれについても、TriMixは体重減少を悪化させなかった。
【0067】
最後に、肝障害についての代理マーカーとして使用される肝臓酵素AST/ALTの血清力価に対する静脈内mRNA LNPワクチン接種の影響を評価した。3回目の免疫化の1週間後にAST/ALTレベルをELISAによって評価した。いずれの処置群についても、ALT/ASTレベルは大幅に上昇しなかった。E7/TriMix mRNA LNPで処置されたマウスでは、mRNA形式にかかわらず、PBSマウスと比較してALTレベルにもASTレベルにも統計的に有意な増加は測定されなかった。驚くべきことに、E7のみのmRNA LNPで処置されたマウスは、PBSに対して低いが有意なASTレベルの上方調節を示した(図6)。
【0068】
結論
この研究において、本発明者らは、以前に最適化されたLNP製剤を使用して、抗原/TriMix mRNAワクチン接種の免疫原性及び炎症性安全性に対するmRNA形式の影響に取り組んだ。
【0069】
ARCAをCleanCapによって置き換えると、全身性炎症応答に有意な減少が引き起こされた。ARCAによる共転写的なキャッピングの効率はおよそ70%であり、作製されたmRNAの30%には5'三リン酸末端が残り、これはRIG-Iによって検知される。さらに、ARCAは、天然のメチル化されたCap1構造の代わりに、メチル化されていない「Cap-0」構造を導入することから、炎症を促す様々なRNAセンサーが再びトリガーされる。CleanCap(Cap-1)は、より高い効率(90%超)で組み込まれ、天然のCap1構造を導入するため、先天的な認識及び炎症が低減される。N1メチルシュードウリジン置換がTLR7及びRIG-Iの活性化を低下させることを示す以前の報告と一致して、N1メチルウリジンによるウリジンの置換はIFN-a、IFN-g及びIL-6の血清力価を更に低下させた。重要なことには、E7/TriMixのmRNA比及び扱われたmRNA形式のいずれについても、TriMixは全身性炎症応答を悪化させなかった。
【0070】
T細胞応答の大きさ及び動態に関して、TriMixの不存在下ではmRNA形式の間に有意差は認められなかった。ところが、TriMixを添加するとmRNA形式の間に大きな差が出た。高炎症性のARCA, non-mod mRNA形式の場合に、TriMixはT細胞応答の大きさを更に増大させることができなかった。それにもかかわらず、低炎症性のmRNA形式であるCleanCap, non-mod及びCleanCap, modの場合に、TriMixはその免疫賦活機能を発揮し、E7特異的CD8 T細胞応答の大きさに大幅な増加を引き起こした。同様に、TriMix mRNAはまた、CleanCap, non-mod及びCleanCap, mod mRNAで免疫化した場合に、IFN-γ分泌性T細胞の数を増加させたが、ARCA, non-mod mRNA LNPで免疫化した場合には増加させなかった。
【0071】
TriMix mRNAによる抗原mRNAの部分的置換を伴うCleanCap/mod mRNA LNPは、最高レベルのT細胞応答を駆り立てたが、炎症応答は最も低かったため、このmRNA LNP形式で最良の治療指数を示すと思われる。
【符号の説明】
【0072】
図1
Concentration 濃度

図2
Concentration 濃度
Time after immunization 免疫化後の時間

図3A
% E7-specific CD8+ T cells E7特異的CD8+T細胞の%
time (days) 時間(日)

図3B
% E7-specific CD8+ T cells E7特異的CD8+T細胞の%
1st immunization 1回目の免疫化
2nd immunization 2回目の免疫化
3th immunization 3回目の免疫化

図4
SFU/10^6 splenocyte 106個の脾細胞に対するSFU

図5A
E7 only E7のみ
% of initial body weight 初期体重の%
Day 日

図5B
% of initial body weight 初期体重の%
Day 日

図6
ARCA, non-modified ARCA、非修飾
CleanCap, non-modified CleanCap、非修飾
CleanCap, modified CleanCap、修飾
Titer 力価
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2022532038000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性免疫賦活タンパク質CD40L、CD70及びcaTLR4の全てをコードする1つ以上のmRNA分子と、
1つ以上の抗原又はエピトープをコードする1つ以上のmRNA分子と、
を含む組合せであって、
前記mRNA分子の少なくとも1つが5'CAP-1構造を有することを特徴とする、組合せ。
【請求項2】
前記mRNA分子の全てが5'CAP-1構造を有する、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
前記mRNA分子が少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを更に含む、請求項1又は2に記載の組合せ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオシドが、シュードウリジン、5-メトキシ-ウリジン、5-メチル-シチジン、2-チオ-ウリジン及びN6-メチルアデノシンを含むリストから選択される、請求項3に記載の組合せ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオシドが、4-チオ-シュードウリジン、2-チオ-シュードウリジン、1-カルボキシメチル-シュードウリジン、1-プロピニル-シュードウリジン、1-タウリノメチル-シュードウリジン、N1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン及び4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、特にN1-メチル-シュードウリジンを含むリストから選択されるシュードウリジンである、請求項3又は4に記載の組合せ。
【請求項6】
前記mRNA分子中の約100%のウリジンがN1-メチル-シュードウリジンによって置き換えられている、請求項5に記載の組合せ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せと、少なくとも1つの薬学的に許容可能な作用物質とを含む医薬組成物。
【請求項8】
前記組合せが脂質ナノ粒子又はポリマーナノ粒子等のナノ粒子に配合される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物が静脈内製剤、節内製剤、腫瘍内製剤、皮下製剤、皮内製剤又は筋肉内製剤用に配合される、請求項7又は8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物がワクチンの形態である、請求項7~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
人間医学又は獣医学で使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ワクチン接種で使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗原が癌抗原である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
細胞増殖性障害の治療に使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
治療を必要とする被験体に請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ又は請求項7~10のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、細胞増殖性障害を治療する方法。
【国際調査報告】