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▶ クセリア ファーマシューティカルズ エーピーエスの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】ダプトマイシン水性製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20220706BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
A61K38/12
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/20
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564370
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2020062946
(87)【国際公開番号】W WO2020229369
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】62/846,038
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505371232
【氏名又は名称】クセリア ファーマシューティカルズ エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】Xellia Pharmaceuticals ApS
【住所又は居所原語表記】11 Dalslandsgade,DK-2300 Copenhagen S,DENMARK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョニ、ティナ
(72)【発明者】
【氏名】ストラジッチ-ノヴァコヴィッチ、ドゥブラフカ
(72)【発明者】
【氏名】ヤスプリカ、イヴォナ
(72)【発明者】
【氏名】トミッチ、スティピツァ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076CC32
4C076DD23Q
4C076DD38A
4C076DD41
4C076DD51
4C076DD55
4C076DD60
4C076DD67
4C076EE23A
4C076FF11
4C076FF12
4C076FF63
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA18
4C084BA24
4C084MA05
4C084MA17
4C084NA03
4C084ZB35
(57)【要約】
本開示は、不便で潜在的に問題のある凍結乾燥薬剤の調製および投与方法とは対照的に、安定したダプトマイシンの水性医薬製剤を提供することに関するものであり、ダプトマイシンの水性製剤は、患者の受容性およびコンプライアンスが高く、取り扱いが容易であるという利点を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダプトマイシン、カルシウム、および少なくとも1つの賦形剤を含む水性医薬製剤。
【請求項2】
前記少なくとも1つの賦形剤が緩衝剤を含まない、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項3】
前記製剤のpH範囲が5.5~7.5である、請求項1に記載の水性医薬製剤。
【請求項4】
前記カルシウムが塩化カルシウム(CaCl)、Ca-α-D-ヘプタグルコン酸塩、サッカリンカルシウム、乳酸カルシウムまたは酢酸カルシウムの形態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項5】
前記カルシウムが塩化カルシウムの形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項6】
前記カルシウムがサッカリンカルシウムの形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項7】
前記カルシウムがダプトマイシンに対して0.1:1~2:1のモル比で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項8】
前記カルシウムがダプトマイシンに対して0.1:1~1:1のモル比で存在する、請求項6に記載の水性医薬製剤。
【請求項9】
前記少なくとも1つの賦形剤は、有機溶媒、例えば、アルキルアルコール、エタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート80、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール200(PEG200)、ポリエチレングリコール300(PEG300)、ポリエチレングリコール400(PEG400)、ポリエチレングリコール600(PEG600)、ポリプロピレングリコール、ポビドンおよびポリブチレングリコール、および第一級アミド、例えば、ナイアシンアミド、から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項10】
前記少なくとも1つの有機溶媒が、ポリエチレングリコール(PEG)および/またはグリセロールのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項11】
少なくとも1つの有機溶媒がグリセロールである、請求項9~10のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項12】
少なくとも1つの有機溶媒がポリエチレングリコール400(PEG400)である、請求項9~11のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項13】
前記製剤がグリセロールおよびPEG400を含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項14】
前記製剤が2つ以上の有機溶媒を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項15】
前記製剤が20%V/V以下の量の各有機溶媒を含む、請求項9~14のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項16】
前記有機溶媒が、前記製剤中に10%V/V以下の量で含まれるグリセロールである、請求項9~15のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項17】
前記有機溶媒が、前記製剤中に10%V/V以下の量で含まれるPEG400である、請求項9~15のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項18】
前記ダプトマイシンは0.5mg/mL~500mg/mLの濃度である、請求項1~17のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項19】
前記ダプトマイシンが2mg/ml~20mg/mlの濃度である、請求項1~18のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項20】
前記ダプトマイシンが50mg/mlの濃度である、請求項1~19のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項21】
50mg/mlのダプトマイシンを含む水性医薬製剤であって、前記医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウムおよびPEG400を含み、カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、PEGは10%V/V以下の濃度で含まれ、前記製剤のpHは7である、水性医薬製剤。
【請求項22】
50mg/mlのダプトマイシンを含む水性医薬製剤であって、前記医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロールおよびPEG400を含み、カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、グリセロールは10%V/V以下の濃度で含まれ、PEG400は10%V/V以下の濃度で含まれ、製剤のpHは7である、水性医薬製剤。
【請求項23】
少なくとも1つの賦形剤が、アミノ酸、糖、糖誘導体、サッカリン、有機酸、有機溶媒、ベタイン、タウリン、ニコチンアミドまたはそれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体から選択される、請求項1~22のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項24】
前記水性医薬製剤が少なくとも50%V/Vの水を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項25】
前記水性医薬製剤が50%V/Vを超える水を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項26】
前記水性医薬製剤が少なくとも60%V/Vの水を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項27】
前記水性医薬製剤が、少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%V/Vの水を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項28】
患者に投与する前に希釈するために前記製剤がバイアルに包装される、請求項1~27のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項29】
前記水性医薬製剤が30℃の温度で少なくとも4日間安定である、請求項1~28のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項30】
グラム陽性菌によって引き起こされる微生物感染症の治療に使用することができる、請求項1~29のいずれか一項に記載の水性医薬製剤。
【請求項31】
皮膚および軟部組織感染症(cSSTI)または黄色ブドウ球菌血流感染症(菌血症)の治療に使用される、請求項30に記載の水性医薬製剤。
【請求項32】
ダプトマイシン、カルシウムおよび少なくとも1つの賦形剤を溶液に混合するステップと、そのような溶液のpHを適切なpH調整剤でpH5.5~7.5に調整するステップと、を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の水性医薬製剤を製造するためのプロセス。
【請求項33】
微生物感染症の患者を治療する方法であって、請求項1~32のいずれか一項に記載の水性医薬製剤を投与し、任意選択で、前記患者に投与する前に前記医薬製剤を希釈することを含む方法。
【請求項34】
前記医薬製剤が前記患者に投与する前に希釈される、請求項33に記載の患者を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダプトマイシンを含む水性医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
リポペプチド類は、多剤耐性菌に対する非常に効果的な抗菌作用ならびに抗真菌作用を示す強力な抗感染症薬の一種である。ダプトマイシンのようなリポペプチド薬剤は、侵襲的でしばしば生命を脅かすような感染症と戦うために、現在では多種多様な種類のものが市販されている。
【0003】
ダプトマイシンは、メチシリン耐性菌やバンコマイシン耐性菌を含むグラム病原体によって引き起こされる感染症の治療薬として、2003年に米国食品医薬品局(FDA)から承認された最初の環状リポペプチド系抗生物質である。ダプトマイシンは、市販されている他のすべての抗菌剤とは異なる独自の作用機序により、多くの耐性菌で生ずる耐性メカニズムを克服することができ、ダプトマイシンに対する臨床上の耐性の発生がまれにしか報告されていないことを考慮すると、現在の臨床現場では非常に重要な薬剤となっている。
【0004】
ダプトマイシン(構造1)は、13のアミノ酸ペプチドのN末端にデカノイル側鎖が結合して構成されたものであり、アミノ酸のうち10個が環状構造を形成し、3個のアミノ酸が鎖を形成している。
【0005】
分子の環状部分は、キヌレニンのC末端カルボキシル基と4番目の残基(スレオニン)との間のエステル結合を介して側鎖に結合されている。
【0006】
【化1】
【0007】
ダプトマイシンは、液体(特に水)にさらされると、3つの主要な分解産物に分解される。
第1の分解産物は、asp-9残基でのアスパルチルトランスペプチド化によって形成される無水ダプトマイシン(構造2)として同定されている。
【0008】
【化2】
【0009】
構造3に示すダプトマイシン分解の第2の望ましくない生成物は、無水ダプトマイシンの再水和で形成されるβ(β-アスパルチル)異性体である。
【0010】
【化3】
【0011】
Kirsch,L.E.、Molloy,R.M.、Debono,M.他の非特許文献1(以下、「Kirsch」と記載)、Muangsiri W、Kearney WR、Teesch L.Mm、Kirsch L.E.の非特許文献2およびMuangsiri W.、Kirsch L.E.の非特許文献3(以下、「Muangsiri」と記載)によれば、これらの2つの分解経路は、Asp9側鎖のカルボニル炭素の攻撃によって形成されるスクシンイミド中間体(無水ダプトマイシン)の形成と、その後の無水ダプトマイシンスクシンイミドの再水和によって形成される2つのアスパラギン酸異性体の可逆的な形成を伴う。
【0012】
ダプトマイシンが分解する別の望ましくない化合物は、ラクトン加水分解生成物である(構造4)。
【0013】
【化4】
【0014】
KirshおよびMuangsiriは、さらに、ダプトマイシン消失の未知の並行経路が観察されたこと、スクシンイミド中間体の形成、アスパルチルエステル加水分解および/またはペプチド結合の切断/異性化を含むトランスペプチド化分解機構が示唆されることを開示している。
【0015】
酸性、中性、アルカリ性条件下でのダプトマイシンの分解経路は、アルカリ性条件下で発生するエステル加水分解、pH3~6の範囲で優勢な経路であるアスパルチルトランスペプチド化、低pHで発生する未知の分解経路が知られている。不純物の形成がpHに依存することに加えて、不純物の形成は温度にも依存する。
【0016】
入手可能な文献によれば、ダプトマイシンは加水分解を受けやすく、弱酸性の溶液中ではasp-9残基でのアスパルチルトランスペプチド化により分解することが知られているため、溶液、特に水溶液中でダプトマイシンを安定化させることは極めて困難であるとされている。
【0017】
溶液中での不安定性を考慮して、ダプトマイシンは現在、静脈注射用の凍結乾燥粉末(キュビシン(登録商標)およびキュビシンRF(登録商標))の形でのみ市販されており、患者への投与前に再構成およびその後の希釈が必要である。
【0018】
ダプトマイシンは長期治療の間、毎日静脈内に投与され、再構成ステップにはしばしば30分以上かかることを考慮すると、凍結乾燥された粉末は、医療の専門家が扱うには便利で実用的な形態ではない。
【0019】
再構成して希釈した製剤の安定性が限られていることも、このような貴重な薬剤の欠点である。現在、市販されているダプトマイシンは、再構成された溶液(すなわち、水性状態のダプトマイシン)の形で、冷蔵条件で5日間、室温で2日間の最大安定性を有している。
【0020】
したがって、凍結乾燥および/または再構成を必要とせず、典型的な溶液の保存での物理化学的安定性を示すダプトマイシンの製剤が必要とされている。さらに、典型的な保存での物理化学的安定性を示し、特に非経口投与のための、薬学的に許容されるダプトマイシンの水性製剤が必要とされている。
【0021】
Kirschは、pH3~8の範囲のダプトマイシンの水溶液を記載しており、異なるpH条件でのダプトマイシンの分解産物(無水ダプトマイシンおよびβ異性体)の形成を調べている。
【0022】
ダプトマイシンの液体組成物は、特許文献1および特許文献2において報告されているが、それらの組成物は、最大25mg/mLというかなり低い濃度のダプトマイシンを含むものである。
【0023】
特許文献3は、ダプトマイシンを5%のブドウ糖で調製することを可能にする、異なる緩衝液中のダプトマイシンの液体製剤を提供しており、このように調製された液体製剤の使用時の分解は、25℃での24時間または5℃での7日間でわずか約1%~1.8%であり、これは、同じ期間および同じ条件下で15~20%の分解を示す、5%のブドウ糖を用いた既知のダプトマイシンの液体製剤の使用時の分解に比べて、著しく減少している。
【0024】
特許文献4および特許文献5は、ダプトマイシンの安定した、非水性の、即時使用可能な注射用組成物に関するものである。しかしながら、その記載によれば、ダプトマイシンが水溶液中で速い速度で分解することがよく知られているので、そのような製剤の水分含有量は2%未満である。
【0025】
特許文献6は、良好な保存安定性を有するダプトマイシンの凍結乾燥組成物に関するものであるが、この文献は、適当な時間、液状で安定しているダプトマイシンの液状組成物を提供することを言及していない。
【0026】
特許文献7は、ダプトマイシンが水溶液中で速い速度で分解されることがよく知られていることを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】国際公開第2011/062676号
【特許文献2】国際公開第2011/035108号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0386951号明細書
【特許文献4】国際公開第2016/059587号
【特許文献5】国際公開第2016/059592号
【特許文献6】国際公開第2019/043008号
【特許文献7】国際公開第2018/073269号
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Kirsch,L.E.、Molloy,R.M.、Debono,M.他、Pharm Res、(1989)6(5):387-393
【非特許文献2】Muangsiri W、Kearney WR、TeeschL. Mm、Kirsch L.E.,International Journal of Pharmaceutics.、(2005)289:133-50
【非特許文献3】Muangsiri W.、Kirsch L.E.、(2001)Journal of Pharmaceutical Sciences,90(8),pp.1066-1075
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
上記文献のいくつかは、液体/水性組成物におけるダプトマイシンの安定性の問題を解決しようとしているが、市場にはまだダプトマイシンの安定した水性組成物は存在していない。したがって、ダプトマイシンの安定な水性組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
現在の医療従事者のニーズと、安定したダプトマイシン液体製剤、特に水性医薬製剤を提供するという問題を念頭に置き、不便で潜在的に問題のある凍結乾燥薬剤の調製および投与方法とは対照的に、取り扱いが容易で患者の受容性およびコンプライアンスが高いという利点を有するダプトマイシンの水性製剤が開発された。
【0031】
ダプトマイシン、カルシウムおよび少なくとも1つの賦形剤からなる水性医薬製剤は、驚くほど向上した保存安定性を有することが明らかとなった。賦形剤としては、アミノ酸、糖類、糖誘導体、サッカリン、カルボン酸、有機溶媒、それらの薬学的に許容される塩および誘導体が挙げられる。ダプトマイシンを本開示による溶液で製剤化すると、分解生成物の形成を遅らせることができ、それに伴い、そのような溶液は、長期にわたる化学的および物理的安定性を示し、冷蔵条件下、すなわち2℃~8℃の温度で保存する場合に、より柔軟な保存条件および取り扱いを提供することが明らかとなった。さらに、本開示に従ったダプトマイシンの水性医薬製剤は、室温条件、すなわち温度25℃での安定性が改善されている。
【0032】
本開示は、ダプトマイシンの水性医薬製剤に関連する材料および方法を提供する。いくつかの実施形態において、水性医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、および少なくとも1つの賦形剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの賦形剤は、緩衝剤を含まない。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの賦形剤は、PEGおよび/またはグリセロールの少なくとも1つを含む。
【0033】
上記の製剤のいずれかにおいて、水性医薬製剤はさらに、pH5.5~pH7.5の範囲のpHを備えていてもよい。
上記の製剤のいずれかにおいて、カルシウムは、塩化カルシウム(CaCl)、Ca-α-D-ヘプタグルコン酸塩、サッカリンカルシウム、乳酸カルシウム、または酢酸カルシウムの形態で提供される。これらの実施形態のいくつかにおいて、カルシウムは、塩化カルシウムの形態である。他の実施形態において、カルシウムは、サッカリンカルシウムの形態である。いくつかの実施形態において、カルシウムは、0.1:1~2:1のダプトマイシンに対するモル比で存在する。いくつかの実施形態において、カルシウムは、0.1:1~1:1のダプトマイシンに対するモル比で存在する。
【0034】
上記の製剤のいずれかにおいて、少なくとも1つの賦形剤は、アミノ酸、糖、糖誘導体、サッカリン、有機酸、有機溶媒、ベタイン、タウリン、ニコチンアミド、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体から選択することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの賦形剤は、有機溶媒、例えば、アルキルアルコール、エタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート80、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール200(PEG200)、ポリエチレングリコール300(PEG300)、ポリエチレングリコール400(PEG400)、ポリエチレングリコール600(PEG600)、ポリプロピレングリコール、ポビドンおよびポリブチレングリコール、ならびに第一級アミド、例えば、ナイアシンアミド、から選択される。他の実施形態において、有機溶媒はグリセロールである。他の実施形態において、有機溶媒はポリエチレングリコール400(PEG400)である。いくつかの実施形態において、製剤は、2つ以上の有機溶媒を含む。そのような実施形態において、製剤は、グリセロールおよびPEG400を含む。製剤が有機溶媒を含んでいる様々な実施形態において、製剤中の各有機溶媒は、20%V/V以下の量である。有機溶媒がグリセロールであるいくつかの実施形態において、グリセロールは、10%V/V以下の量で製剤中に存在する。有機溶媒がPEG400であるいくつかの実施形態において、PEG400は、10%V/V以下の量で製剤中に存在する。
【0035】
上記の製剤のいずれかにおいて、ダプトマイシンは0.5mg/mL~500mg/mLの濃度である。いくつかの実施形態において、ダプトマイシンは、2mg/ml~20mg/mlの濃度である。いくつかの実施形態において、ダプトマイシンは、50mg/mlの濃度である。
【0036】
水性医薬製剤が50mg/mlのダプトマイシンを含む一実施形態において、医薬製剤は、さらに、(1)ダプトマイシン、カルシウムおよびPEG400;(2)ダプトマイシンとカルシウムのモル比が1:1;(3)10%V/V以下の濃度のPEG400;および(4)製剤pHが7、を含んでいてもよい。
【0037】
水性医薬製剤が50mg/mlのダプトマイシンを含む一実施形態において、医薬製剤は、さらに、(1)ダプトマイシン、カルシウムおよびグリセロール;(2)ダプトマイシンとカルシウムのモル比が1:1;(3)10%V/V以下の濃度のグリセロール;および(4)製剤pHが7、を含んでいてもよい。
【0038】
水性医薬製剤が50mg/mlのダプトマイシンを含む一実施形態において、医薬製剤は、さらに、(1)ダプトマイシン、カルシウム、PEG400およびグリセロール;(2)ダプトマイシンとカルシウムとのモル比が1:1;(3)10%V/V以下の濃度のPEG400;(4)10%V/V以下の濃度のグリセロール;および(5)製剤pHが7、を含んでいてもよい。
【0039】
上記の製剤のいずれかにおいて、水性医薬製剤は、少なくとも50%V/Vの水を含む。いくつかの実施形態において、水性医薬製剤は、50%V/V超の水を含む。いくつかの実施形態では、水性医薬製剤は、少なくとも60%V/Vの水を含む。いくつかの実施形態において、水性医薬製剤は、少なくとも50%V/V、60%V/V、70%V/V、80%V/V、85%V/V、90%V/V、95%V/V、98%V/V、または99%V/Vの水を含む。
【0040】
本開示はまた、上記した医薬水性製剤のいずれかを包装することに関する。いくつかの実施形態において、水性医薬製剤は、患者への投与前に希釈するためにバイアルに包装されてもよい。いくつかの実施形態において、水性医薬製剤は、30℃の温度で少なくとも4日間安定である。
【0041】
本開示はまた、上記した医薬水性製剤のいずれかの使用に関する。いくつかの実施形態において、水性医薬製剤は、グラム陽性菌によって引き起こされる微生物感染症の治療に使用することができる。いくつかの実施形態において、水性医薬製剤は、皮膚および軟部組織感染症(cSSTI)または黄色ブドウ球菌血流感染症(菌血症)の治療に使用される。
【0042】
本開示は、上記の水性医薬製剤のいずれかを製造するためのプロセスも提供する。様々な実施形態において、このプロセスは、ダプトマイシン、カルシウムおよび少なくとも1つの賦形剤を溶液に混合するステップと、適切なpH調整剤を用いて当該溶液のpHを5.5~7.5に調整するステップとを含んでいてもよい。
【0043】
上記の水性医薬製剤のいずれかを使用して、水性医薬製剤を投与し、場合により患者に投与する前に医薬製剤を希釈することにより、微生物感染症の患者を治療することができる。いくつかの実施形態において、水性医薬製剤は、患者に投与する前に希釈される。
【0044】
前述の説明および以下のさらなる説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書では、ダプトマイシン、カルシウム、およびアミノ酸、糖類、糖誘導体、サッカリン、カルボン酸および有機溶媒、それらの薬学的に許容される塩および誘導体から選択される少なくとも1つの賦形剤、を含む水性医薬製剤が提供される。本開示による組成物は、2℃~8℃の温度、例えば、2℃、3℃以下、4℃以下、5℃以下、6℃以下、7℃以下または8℃以下の温度で保存した場合、合理的な期間にわたり、驚くべき安定性を示した。
【0046】
本明細書で使用される用語「安定(stable)」とは、ダプトマイシンを含む医薬製剤が、医薬製品としての実用性を有するのに十分な安定性を有すること、すなわち、水性医薬製剤が、許容される量のダプトマイシンが存在するか、または許容される量のダプトマイシンが一定期間の後に分解された状態を示すことを意味する。したがって、安定な溶液または製剤では、ダプトマイシンの許容できない分解が回避される一方で、許容できる色、透明性、および目に見える粒子がない(例えば、肉眼で見える粒子がない)など、薬学的に望ましい外観が保持される。
【0047】
医薬溶液または組成物の安定性に関しては、有効成分の劣化をできるだけ少なくすることが重要な要因である。
医薬溶液に関するもう一つの重要な要因は、有効成分の分解によって形成される可能性のある不純物の形成である。
【0048】
したがって、「安定性」は、適切な期間の後に生成される総不純物または特定の個々の不純物の量によって定義することもできる。特定の個々の不純物とは主に3つの主要なダプトマイシン分解生成物、すなわち、無水ダプトマイシン、β(β-アスパルチル)異性体不純物およびラクトン加水分解生成物不純物を意味する(構造2~4)。
【0049】
安定性は、開始時の特定の不純物量を基準にして、ある時点での総不純物または特定の不純物の増分(increase)として示すこともできる。
存在する不純物の量は、例えば、HPLCクロマトグラムのピーク面積パーセンテージのように、パーセンテージとして表すことができる。
【0050】
開示された製剤は、溶液剤形におけるダプトマイシンの有効性および効力の保持に関して許容できる安定性を示し、活性物質の望ましくない関連物質への許容できない分解を回避し、許容できる色、透明性および目に見える粒子がないなどの薬剤的に望ましい外観を保持する。
【0051】
本明細書で使用される場合、「安定な」とは、典型的な保存条件下で、HPLC分析によって決定される総不純物の形成の増分が10%以下であるか、またはHPLC分析によって決定される個々の不純物の形成の増分が5%以下であるものとして定義される。
【0052】
例えば、安定な溶液または安定化した溶液は、所定の期間の後に総不純物の形成の増分が1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%以下であるものであり得る。
【0053】
さらに、安定な溶液または安定化した溶液は、所定の期間の後にすべての個々の不純物の形成の増分が1%、2%、3%、4%、5%以下であるものであり得る。
本明細書に記載のダプトマイシンの水溶液は、2~8℃の温度で、7日(1週間)、14日(2週間)、30日(1か月)、60日(2か月)、3か月、4か月、180日(6か月)、9か月、12か月(1年)およびそれ以上の期間にわたって安定である。
【0054】
本明細書に記載のダプトマイシンの水溶液は、30℃の温度で少なくとも4日間安定である。
一態様において、安定な溶液または安定化した溶液は、2~8℃の温度で12か月以上にわたってすべての個々の不純物形成が5%以上増加していないものであり得る。
【0055】
一態様において、安定な溶液または安定化した溶液は、2~8℃の温度で12か月以上経過した後に、無水ダプトマイシンの不純物形成が5%以上増加していないものであり得る。
【0056】
一態様において、安定な溶液または安定化した溶液は、2~8℃の温度で6か月以上経過した後に、β(β-アスパルチル)異性体の形成が2%以上増加していないものであり得る。
【0057】
一態様において、安定な溶液または安定化した溶液は、2~8℃の温度で9か月以上経過した後に、β(β-アスパルチル)異性体の形成が4%以上増加していないものであり得る。
【0058】
一態様において、安定な溶液または安定化した溶液は、2~8℃の温度で12か月以上経過した後に、β(β-アスパルチル)異性体の形成が5%以上増加していないものであり得る。
【0059】
本明細書に記載の水性製剤の分析は、HPLCを含む当技術分野で知られている技術を使用して実施することができる。
本明細書で使用される「医薬組成物」または「薬学的に許容される組成物」という用語は、インビボでの使用、例えば患者または対象への投与に適し、かつ意図される任意の組成物を意味する。本明細書で使用される場合、「患者」および「対象」という用語は交換可能であり、本明細書に記載の組成物を受け取っている任意のヒトまたは動物の個体を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」、「医薬製剤」、「組成物」および「製剤」という用語は交換可能に使用される。
本明細書で使用される場合、「水性組成物(aqueous composition)」または「水溶液」は、水が主溶媒(50%V/V以上)である任意の溶液を意味する。水溶液には、限定されるものではないが、少なくとも50%V/V、60%V/V、70%V/V、80%V/V、85%V/V、90%V/V、95%V/V、98%V/Vまたは99%V/Vの水を含む溶液が含まれる。水溶液は、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG200、PEG300、PEG400、20PEG600、PEG4000など)のような薬学的に許容される有機溶媒を含むことができる。水溶液は、50%V/V以下の薬学的に許容される有機溶媒を含むことができる。
【0061】
ある態様において、製剤中のカルシウムは、塩化カルシウム(CaCl)、Ca-α-D-ヘプタグルコン酸塩、乳酸カルシウム、サッカリンカルシウム、酢酸カルシウム、またはそれらの組み合わせの形で添加される。ある態様において、カルシウムはサッカリンカルシウムの形で添加される。驚くべきことに、サッカリンカルシウムは、ダプトマイシンの水性医薬製剤に良好な安定性効果を与えることが明らかとなった。
【0062】
ある態様において、ダプトマイシンは、1:0.1~1:2のカルシウムに対するモル比で存在する。
ある態様において、ダプトマイシンは、1:0.1~1:1のカルシウムに対するモル比で存在する。
【0063】
特定の態様において、ダプトマイシンは、1:0.1、1:0.5、1:1、1:1.5および1:2のカルシウムに対するモル比で存在する。
ある態様において、製剤のpHは5.5~7.5である。特定の態様において、製剤のpHは6.0~7.2である。ある態様において、製剤のpHは7.0である。
【0064】
当該技術分野で知られているpH調整剤を用いて、pHを調整することができる。用語「pH調整剤」とは、製剤のpHを目標とするpH値またはpH範囲に変更するために使用される化合物または組成物を意味する。例えば、pH調整剤には、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムが含まれる。
【0065】
「pH緩衝剤」という用語は、製剤のpH値またはpH範囲を経時的に所望のパラメータ内に維持するために使用される化合物または組成物を意味する。pH調整剤は、pH値またはpH範囲を経時的に所望のパラメータ内に維持しない。pH緩衝剤には、弱酸とその共役塩基(または弱塩基とその共役酸)の混合物を含む水溶液が含まれる。緩衝液のpHは、そこに少量の酸や塩基を加えてもほとんど変化しない。pH緩衝剤の例としては、炭酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、および、ADA、ACES、MES、TRIS、PIPES、MOPS、HEPESなどのいわゆる「生物学的緩衝剤」が挙げられる。
【0066】
製剤は追加のpH制御を必要とせず、したがって緩衝剤は必要ないことが発見された。したがって、いくつかの実施形態において、製剤は、炭酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、または例えばADA、ACES、MES、TRIS、PIPES、MOPS、またはHEPESなどのいわゆる「生物学的緩衝液」を含むpH緩衝液を含まない。
【0067】
ある態様において、さらなる賦形剤としては、有機酸(既述のカルボン酸以外)、トリメチルグリシン(以下「ベタイン」)、タウリン、ニコチンアミド、スペルミン、スペルミジン、それらの薬学的に許容される塩およびそれらの誘導体が含まれる。
【0068】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」とは、それらが一般的に非毒性であり、生物学的にも、そうでなければ望ましくないものでもない医薬組成物を調製するのに有用であり、さらに問題の薬物の薬理学的活性の許容できない損失を引き起こさず、ヒトおよび/または動物の治療に使用するのに許容されることを意味する。
【0069】
ある態様において、ダプトマイシン、カルシウムおよび少なくとも1つのアミノ酸を含む水性医薬製剤が本明細書で提供される。
この態様によれば、アミノ酸は、非天然および天然に存在するアミノ酸を含み、L-およびD-配向の両方、タンパク質生成性および非タンパク質生成性のアミノ酸を含み、それらの塩および例えばアセチル化またはホルミル化によって化学的に修飾されたアミノ酸を含む。
【0070】
ある態様において、アミノ酸はL-配向型である。
例示的なアミノ酸には、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ロイシン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トリプトファン、チロシン、バリン、およびそれらの薬学的に許容される塩または誘導体、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。アミノ酸の誘導体には、N-ホルミル-グリシン、N-アセチル-D-アラニン、N-アセチル-L-アラニン、およびそれらの薬学的に許容される塩、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0071】
一態様において、アミノ酸は、アラニン、グルタミン酸、グリシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、およびそれらの組み合わせを含む。
一態様において、少なくとも1つのアミノ酸は、セリンおよびロイシンなどの極性および/または脂肪族アミノ酸からなる。
【0072】
別の態様において、少なくとも1つのアミノ酸は、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびプロリンなどの芳香族および/または環状アミノ酸からなる。
ある態様において、アミノ酸は、プロリン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、セリン、フェニルアラニン、またはそれらの組み合わせからなる。
【0073】
ある態様において、アミノ酸は、L-プロリン、L-チロシン、L-トリプトファン、L-ロイシン、L-セリン、L-フェニルアラニン、またはそれらの組み合わせからなる。
【0074】
一態様において、少なくとも1つのアミノ酸は、L-チロシンである。
一態様において、少なくとも1つのアミノ酸は、L-プロリンである。
一態様によれば、製剤は、2つ以上のアミノ酸またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含んでいてもよい。
【0075】
第2または任意のさらなるアミノ酸は、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ロイシン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トリプトファン、チロシン、バリン、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体を含む。アミノ酸誘導体としては、N-ホルミル-グリシン、N-アセチル-D-アラニン、N-アセチル-L-アラニン、およびそれらの薬剤的に許容される塩が挙げられる。
【0076】
一態様において、第2または任意のさらなるアミノ酸は、プロリン、チロシン、トリプトファン、ロイシン、セリンおよびフェニルアラニンから選択される。
別の態様において、第2のアミノ酸は、L-プロリン、L-チロシン、L-ロイシン、L-トリプトファン、L-セリンおよびL-フェニルアラニンから選択される。
【0077】
一態様において、製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、および2つのアミノ酸を含む。
一態様において、第2のアミノ酸は、L-プロリンまたはL-チロシンである。
【0078】
一態様において、第2のアミノ酸はL-チロシンである。
ある態様において、製剤は、ダプトマイシン、カルシウムおよび2つのアミノ酸を含み、第1のアミノ酸はL-プロリンであり、第2のアミノ酸はL-チロシンである。
【0079】
ダプトマイシンと各アミノ酸のモル比は、1:0.01~1:10である。
ある態様において、ダプトマイシンのアミノ酸の各々に対するモル比は、1:0.02~1:1である。
【0080】
本発明者らは驚くべきことに、カルシウムとの組み合わせで、特に低量のアミノ酸が、同じアミノ酸の高量を有するダプトマイシンの水性製剤に対して、より優れた安定化効果を提供することを発見した。これは、アミノ酸のモル比が高いほど製剤の安定性に関してより良好な結果が得られるというダプトマイシンの凍結乾燥製剤の安定化に関する先行技術の教示とは対照的である。
【0081】
アミノ酸の「低量(low amount)」とは、各アミノ酸の量であってダプトマイシンに対するモル比が0.5:1よりも低いアミノ酸の量、を意味する。
したがって、ある態様において、ダプトマイシンと各アミノ酸のモル比は、1:0.02~1:0.4である。したがって、本開示による製剤は、アミノ酸のそれぞれに対するダプトマイシンのモル比が、1:0.02、1.0.03、1:0.04、1:0.05、1:0.06、1:0.07、1:0.08、1:0.09、1:0.1、1:0.2、1:0.3、1:0.4であることを含む。
【0082】
ある態様にしたがって、製剤は、ダプトマイシン、カルシウムおよび少なくとも1つの有機溶媒(例えば、アルキルアルコール、エタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、グリセロール、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート80、ポリアルキレングリコール類、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール200(PEG200)、ポリエチレングリコール300(PEG300)、ポリエチレングリコール400(PEG400)、ポリエチレングリコール600(PEG600)、ポリプロピレングリコール、ポビドン、ポリブチレングリコール、ナイアシンアミドなどの第一級アミド類、およびこれらの組み合わせなど)、を含む。
【0083】
ある態様において、少なくとも1つの有機溶媒は、ポビドン、グリセロール、ポリエチレングリコール、およびそれらの組み合わせを含む。ある態様において、医薬組成物は、少なくとも1つの有機溶媒を含み、6.0~7.2のpHを有するものである。ある態様において、医薬組成物は少なくとも1つの有機溶媒を含み、pHが6.0~7.2であり、少なくとも80%V/Vの水を有するものである。
【0084】
ある態様において、ポリエチレングリコールはPEG400である。
ある態様において、少なくとも1つの有機溶媒がグリセロールである。
ある態様において、医薬組成物は、2つ以上の有機溶媒を含む。ある態様において、医薬組成物は、ダプトマイシン、カルシウム、ならびにグリセロールおよびPEG400である2つの有機溶媒を含む。
【0085】
ある態様において、医薬製剤は、グリセロールおよびPEG400を含み、6.0~7.2のpHを有するものである。ある態様において、医薬製剤は、グリセロールおよびPEG400を含み、7.0のpHを有するものである。
【0086】
ある態様において、製剤は、合計で50%V/V未満の有機溶媒を含むであろう。具体的には、ある態様において、製剤は、各有機溶媒の20%V/V未満、を含むであろう。
ある態様において、医薬製剤はグリセロールおよびPEG400を含み、グリセロールおよびPEG400がそれぞれ20%V/V以下の濃度で製剤中に含まれ、製剤が6.0~7.2のpHを有する。
【0087】
ある態様において、医薬製剤はグリセロールおよびPEG400を含み、グリセロールおよびPEG400がそれぞれ20%V/V以下の濃度で製剤中に含まれ、製剤が7のpHを有する。
【0088】
ある態様において、医薬製剤はグリセロールおよびPEG400を含み、グリセロールおよびPEG400が合計で20%V/V以下の濃度で製剤中に含まれ、製剤が7のpHを有する。
【0089】
ある態様において、水性製剤は、13%V/V以下のPEG400を含む。ある態様において、水性製剤は、10%V/V以下のPEG400を含む。ある態様において、PEG400は、9.5%V/V以下の量で製剤中に含まれる。さらなる態様において、PEG400は、8%V/V、7%V/V、6%V/V、5%V/V、4%V/V、3%V/V、2%V/V、1.5%V/Vまたは1%V/V以下の量で製剤中に含まれる。
【0090】
ある態様において、医薬組成物は、5%V/V以下のPEG400を含み、6.0~7.2のpHを有し、少なくとも80%V/Vの水を有する。
ある態様において、医薬組成物は、5%V/V以下のPEG400を含み、7のpHを有し、少なくとも90%V/Vの水を有する。
【0091】
ある態様において、グリセロールは、20%V/V、19%V/V、18%V/V、17%V/V、16%V/V、15%V/V、14%V/V、13%V/V、12%V/V、10%V/V、11%V/V、10%V/V、9%V/V、8%V/V、7%V/V、6%V/V、5%V/V、4%V/V、3%V/V、2%V/V、1.5%V/Vまたは1%V/V以下で製剤中に含まれる。
【0092】
ある態様において、水性製剤は、10%V/V以下のグリセロールを含む。ある態様において、グリセロールは、8%V/V以下の量で製剤中に含まれる。ある態様において、グリセロールは、5%V/V以下の量で製剤中に含まれる。
【0093】
ある態様において、医薬組成物は、5%V/V以下のグリセロールを含み、6.0~7.2のpHを有し、少なくとも80%V/Vの水を有する。
ある態様において、医薬組成物は、5%V/V以下のグリセロールを含み、7のpHを有し、少なくとも90%V/Vの水を有する。
【0094】
ある態様において、医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロールおよびPEG400を含み、グリセロールの濃度が16%V/V以下であり、PEG400の濃度が15%V/V以下である。
【0095】
ある態様において、医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロールおよびPEG400を含み、グリセロールの濃度が5%V/V以下であり、PEG400の濃度が5%V/V以下である。
【0096】
ある態様において、医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロールおよびPEG400を含み、グリセロールの濃度が13%V/V以下であり、PEG400の濃度が5%V/V以下である。
【0097】
ある態様において、医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロールおよびPEG400を含み、グリセロールの濃度が5%V/V以下であり、PEG400の濃度が13%V/V以下である。
【0098】
ある態様において、医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロール、PEG400および少なくとも80%V/Vの水を含む。ある態様において、医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロール、PEG400および少なくとも90%V/Vの水を含む。
【0099】
ある態様において、医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、PEG400および少なくとも90%V/Vの水を含む。
ある態様において、製剤は、ダプトマイシン、カルシウムおよびグリセロールを含み、製剤は、50mg/mlのダプトマイシンを含み;カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、グリセロールは10%V/V以下の濃度で含まれ、製剤のpHは7.0である。
【0100】
ある態様において、製剤は、ダプトマイシン、カルシウムおよびPEGを含み、製剤は、50mg/mlのダプトマイシンを含み;カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、PEGは10%V/V以下の濃度で含まれ、製剤のpHは7.0である。いくつかの実施形態において、PEGはPEG400である。
【0101】
ある態様において、製剤は、ダプトマイシン、カルシウムおよびPEGを含み、製剤は、50mg/mlのダプトマイシンを含み;カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、PEGは5%V/V以下の濃度で含まれ、製剤のpHは7.0である。いくつかの実施形態において、PEGはPEG400である。
【0102】
ある態様において、製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロールおよびPEGを含み、製剤は、50mg/mlのダプトマイシンを含み;カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、PEGは10%V/V以下の濃度で含まれ、グリセロールは10%V/V以下の濃度で含まれ、製剤のpHは7.0である。いくつかの実施形態において、PEGはPEG400である。
【0103】
ある態様において、製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロールおよびPEGを含み、製剤は、50mg/mlのダプトマイシンを含み;カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、PEGは5%V/V以下の濃度で含まれ、グリセロールは5%V/V以下の濃度で含まれ、製剤のpHは7.0である。いくつかの実施形態において、PEGはPEG400である。
【0104】
いくつかの実施形態において、水溶液には、限定されるものではないが、少なくとも50%V/V、60%V/V、70%V/V、80%V/V、85%V/V、90%V/V、95%V/V、98%V/Vまたは99%V/Vの水を含む溶液が含まれる。いくつかの実施形態において、製剤は、60%V/V以上の水を含む。
【0105】
ある態様において、水性製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、少なくとも1つのアミノ酸、および少なくとも1つの有機溶媒を含む。
ある態様において、水性製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、1つまたは2つのアミノ酸、および1つまたは2つの有機溶媒を含む。
【0106】
本開示によれば、水性製剤は、サッカリンおよび/またはその1つまたは複数の薬学的に許容されるその塩もしくは誘導体を含み得る。
本明細書で使用される場合、「サッカリン」という用語は、サッカリン、その薬学的に許容される塩およびその誘導体を意味する。
【0107】
ある態様において、サッカリンの薬学的に許容される塩には、一価または二価のカチオンなどの正に帯電したイオンが含まれる。ある態様において、サッカリンの薬学的に許容される塩の正に帯電したイオンには、Ca、Na、Mg、またはKカチオンが含まれる。
【0108】
ある態様において、ダプトマイシンとサッカリンのモル比は1:0.1~1:3である。ある態様において、ダプトマイシンとサッカリンのモル比が1:0.2~1:1である。ある態様において、ダプトマイシンとサッカリンのモル比が1:0.5である。
【0109】
ある態様において、水性製剤は、少なくとも1つのカルボン酸、その薬学的に許容される塩またはその誘導体を含む。カルボン酸には、乳酸、クエン酸、コハク酸、およびグルコン酸が含まれる。カルボン酸の塩には、カルシウム塩、マグネシウム塩、およびナトリウム塩が含まれる。
【0110】
ある態様において、カルボン酸の塩は、Na-L-乳酸塩およびNa-グルコン酸塩から選択される。
ある態様において、各カルボン酸に対するダプトマイシンのモル比は1:0.05~1:1である。
【0111】
ある態様において、水性製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、少なくとも1つのアミノ酸、少なくとも1つの有機溶媒、および少なくとも1つのカルボン酸、その塩またはその誘導体を含む。
【0112】
ある態様において、水性製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、1つまたは2つのアミノ酸および1つまたは2つの有機溶媒、ならびに1つまたは2つのカルボン酸、それらの塩またはそれらの誘導体を含む。
【0113】
別の態様において、水性製剤は糖誘導体を含む。いくつかの実施形態において、糖誘導体は、ハロゲン化糖誘導体である。いくつかの実施形態において、ハロゲン化糖誘導体はスクラロースである。
【0114】
ある態様において、ダプトマイシンの糖誘導体に対するモル比は、1:0.05~1:10である。
ある態様において、ダプトマイシンのスクラロースに対するモル比は、1:0.05~1:5である。別の態様において、ダプトマイシンのスクラロースに対するモル比は、1:0.05~1:10である。
【0115】
さらに、別の態様において、水性製剤はさらに糖を含む。ある態様において、糖は、スクロース、トレハロース、ラフィノース、デキストラン、およびそれらの組み合わせなどの非還元糖である。
【0116】
ある態様において、少なくとも1つの糖は、スクロースまたはトレハロースである。
ある態様において、少なくとも1つの糖は、スクロースである。
ある態様において、少なくとも1つの糖は、トレハロースである。
【0117】
ある態様において、水性製剤は2つの糖を含み、第1の糖はスクロースであり、第2の糖はトレハロースである。
ある態様において、ダプトマイシンの選択した糖のそれぞれに対するモル比は、1:0.5~1:20である。
【0118】
ある態様において、ダプトマイシンの選択した糖のそれぞれに対するモル比は、1:1~1:10である。
ある態様において、ダプトマイシンのスクロースまたはトレハロースに対するモル比は、1:4~1:10である。
【0119】
ある態様において、ダプトマイシンのラフィノースに対するモル比は、1:1~1:10である。
ある態様において、水性製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、少なくとも1つのアミノ酸、少なくとも1つの有機溶媒、および少なくとも1つの糖を含む。
【0120】
ある態様において、水性製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、1つまたは2つのアミノ酸、および1つまたは2つの有機溶媒、ならびに1つまたは2つの糖を含む。
ある態様において、水性製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、少なくとも1つのアミノ酸、少なくとも1つの有機溶媒、少なくとも1つの糖、および少なくとも1つのカルボン酸その塩またはその誘導体を含む。
【0121】
ある態様において、水性製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、1つまたは2つのアミノ酸および1つまたは2つの有機溶媒、1つまたは2つの糖、ならびに1つまたは2つのカルボン酸それらの塩またはそれらの誘導体を含む。
【0122】
ある態様において、ダプトマイシンと、有機酸、ベタイン、スペルミン、スペルミジン、タウリンおよびニコチンアミドから選択される賦形剤とのモル比は、1:0.05~1:20である。
【0123】
ある態様において、水性医薬製剤は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のサッカリンカルシウムのようなカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.1:1のアミノ酸L-プロリンと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が9.5:1のスクロースと、を含み、組成物は6.3のpHを有する。
【0124】
ある態様において、水性医薬製剤は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のサッカリンカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-プロリンと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸チロシンと、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のスクロースと、を含み、組成物は7.2のpHを有する。
【0125】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1の塩化カルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-プロリンと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のスクロースと、を含み、組成物は7.2のpHを有する。
【0126】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のサッカリンカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のスクロースと、を含み、組成物は7.2のpHを有する。
【0127】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1の塩化カルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のスクロースと、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0128】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のサッカリンカルシウムのようなカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のNa-L-乳酸塩と、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のスクロースと、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0129】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のサッカリンカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のNa-L-乳酸塩と、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0130】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、ダプトマイシンに対するモル比が1:1のサッカリンカルシウムのようなカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のNa-L-乳酸塩と、8%V/Vの量のグリセロールと、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のスクロースと、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0131】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、ダプトマイシンに対するモル比が1:1のサッカリンカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のグルコン酸ナトリウムと、8%V/Vの量のグリセロールと、を含み、組成物は7.2のpHを有する。
【0132】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1の塩化カルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、ダプトマイシンに対するモル比が0.1:1のNa-L-乳酸塩と、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のスクロースと、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0133】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のサッカリンカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、ダプトマイシンに対するモル比が0.1:1のNa-L-乳酸塩と、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のスクロースと、を含み、組成物は7.2のpHを有する。
【0134】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1の塩化カルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のD(+)トレハロースと、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0135】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のサッカリンカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-チロシンと、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のD(+)トレハロースと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のNa-L-乳酸塩とを含み、組成物は7のpHを有する。
【0136】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1の塩化カルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のアミノ酸L-プロリンと、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のトレハロースと、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0137】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1の少なくとも1つのアミノ酸と、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1の糖と、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0138】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1の少なくとも1つのアミノ酸と、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1の糖と、0.05のダプトマイシンに対するモル比のカルボン酸と、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0139】
ある態様において、水性医薬組成物は、ダプトマイシンと、カルシウムとダプトマイシンとのモル比が1:1のサッカリンカルシウムと、ダプトマイシンに対するモル比が0.05:1のL-プロリンおよびL-チロシンから選択される少なくとも1つのアミノ酸と、8%V/Vの量のグリセロールと、10%V/Vの量のPEG400と、ダプトマイシンに対するモル比が5:1のスクロースおよびトレハロースから選択される糖と、を含み、組成物は7のpHを有する。
【0140】
本明細書で使用されているすべての数は、「約」という用語で修飾される。つまり、各数値には、問題の数値または範囲の±10%で定義されるような小さな変動が含まれる。
本明細書で使用される場合、「pH」という用語は、問題の数値または範囲の±0.3として定義される。
【0141】
さらに、本明細書に記載の組成物は、酸化防止剤、界面活性剤、錯化剤、防腐剤、安定剤、増量剤、緩衝剤、希釈剤、ビヒクル、可溶化剤、結合剤、およびこれらの組み合わせなどの1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、組成物は緩衝剤を含んでいない。
【0142】
他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明および例から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および実施例は、特定の実施形態を示しているものの、例示のためにのみ与えられており、いかなる方法でも概念の幅または範囲を限定することを意図していないことを理解すべきである。
【0143】
本明細書に記載されているダプトマイシンの安定した医薬組成物は、2℃~8℃のような都合の良い温度で合理的な期間、保存することを可能にする十分な安定性を有する。
本明細書に開示されているダプトマイシンの薬学的に許容される製剤は、2~8℃の温度で、7日(1週間)、14日(2週間)、30日(1か月)、60日(2か月)、3か月、4か月、180日(6か月)、12か月(1年)、およびそれ以上の期間を含む、典型的な保存条件にわたって安定している。
【0144】
さらに、本明細書に記載のダプトマイシンの水性医薬製剤は、室温条件、すなわち温度25℃での安定性が改善されている。本明細書に記載のダプトマイシンの水性医薬製剤は、温度30℃での3日、4日、5日、7日(1週間)、14日(2週間)、およびそれ以上の期間を含む典型的な保存条件にわたって安定しており、これはそれぞれの期間の室温、すなわち25℃での安定性を明確に示している。
【0145】
製剤は、治療上有効な量のダプトマイシンを含み、治療上有効な量は、0.5mg/mL~500mg/mL、2mg/mL~20mg/mL、20mg/mL~400mg/mL、50mg/mL~300mg/mLの範囲の濃度を含み、例えば、0.5mg/mL、1mg/mL、3mg/mL、5mg/mL、8mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL,130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、220mg/mL、240mg/mL、260mg/mL、280mg/mL、300mg/mL、350mg/mL、400mg/mL、450mg/mL、500mg/mL、を含む。
【0146】
本明細書で使用されるダプトマイシン化合物の「治療上有効な量」または「治療上有効な濃度」という用語は、治療される疾患の症状の1つ以上に対して治療反応をもたらすのに十分な量のダプトマイシンを患者に投与することを意味する。投与前の希釈は、治療上有効な量または治療上有効濃度を提供することができる。本明細書に記載の製剤は、患者に投与する前に希釈することができる。
【0147】
本明細書に記載の製剤は、より低い治療有効濃度を達成するために、希釈剤(複数可)でさらに希釈することができ、本明細書で関心のある「希釈剤(複数可)」は、薬学的に許容され、ヒトへの投与に対して安全かつ非毒性であり、希釈製剤の調製に適合するものである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製剤は、患者に投与する前に希釈するためにバイアルに包装されてもよい。
【0148】
例示的な希釈剤には、注射用滅菌水、滅菌生理食塩水、および乳酸リンゲル注射液が含まれる。
例えば、希釈製剤の典型的な調製法では、必要な治療有効量に必要な適切な量の水性製剤を無菌的に抜き取り、0.225%、0.45%、0.9%の塩化ナトリウム、注射用滅菌水、乳酸リンゲル注射液などの適切な希釈剤の入った輸液バッグに移し、適切な投与経路で患者に投与することができる。
【0149】
本明細書に記載されたダプトマイシンの水性製剤は、例えば、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内(intrasynovially)、胸骨内(intrasternally)、髄腔内、病巣内、頭蓋内、または静脈内注入などの注射によって投与されることが意図されている。
【0150】
また、本明細書に開示されているように、右心系感染性心内膜炎(RIE)を伴うものを含む、複雑性皮膚および軟部組織感染症(cSSTI)、黄色ブドウ球菌血流感染症(菌血症)などのグラム陽性細菌によって引き起こされる感染症または疾患を治療するためのダプトマイシンの医薬製剤の使用も、その範囲内にある。
【0151】
これらの使用は、治療上有効な量の製剤を患者に投与すること、または医薬製剤から調製された治療上有効な量の製剤を患者に投与することを含む。
いくつかの実施形態において、水性医薬製剤は、極性プロトン性溶媒として、芳香族基を有するアルコール、1つ以上の第一級ヒドロキシル基のみを含有する脂肪族アルコール、または炭素原子よりも少ないヒドロキシル基を含有するアルコールを含んでいない。
【0152】
いくつかの実施形態において、製剤は、以下の少なくとも1つを含まない:(a)極性プロトン性溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEA)、N-エチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-エチルホルムアミド、酢酸エチルなど);(b)極性プロトン性溶媒として、芳香族基を有するアルコール、1つ以上の第一級ヒドロキシル基のみを含有する脂肪族アルコール、または炭素原子よりも少ないヒドロキシル基を含有するアルコール(ベンジルアルコール、エタノール、イソブタノール、テルブチルアルコールなど);(c)可溶化剤(Kolliphor EL(商標)(ポリエトキシル化ヒマシ油)、大豆油、ポリソルベート20、ポリソルベート80など);および/または(d)エチレングリコールまたはプロピレングリコール。
【0153】
いくつかの実施形態において、製剤は、アルキルアルコール、エタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、およびポリソルベート80)、シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル-(l-シクロデキストリン)など)、ポリプロピレングリコール、およびポリブチレングリコール、ならびにナイアシンアミドなどの第一級アミドから選択される極性プロトン性溶媒を含まない。
【0154】
いくつかの実施形態において、製剤は、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、第二級アミドおよび第三級アミドから選択される極性非プロトン溶媒を含まず、ここで第二級アミドは、N-エチルアセトアミド、N-エチルホルムアミドから選択され、かつ第三級アミドは、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルアセトアミド(DEA)、N,N-ジイソプロピルホルムアミド、およびN,N-ジメチルホルムアミドから選択される。
【0155】
材料および方法
組成物は、ダプトマイシンの即時使用できる水溶液を提供することによって調製された。
【0156】
予め定義された量のカルシウム塩(例:塩化物、サッカリン)および異なる賦形剤(複数可)を分注する。あらかじめ定義された添加順序に従って物質をWFIを含む容器に添加し、原材料が溶解するまで溶液を混合する。次にダプトマイシンを溶液に添加し、ダプトマイシンが溶解するまで混合する。酸または塩基からなるpH調整剤(具体的には、所望されるpH調整の方向性に応じて希塩酸または水酸化ナトリウム水溶液)を用いて、溶液のpHを所定のpH値に調整する。製剤の有機溶媒部を添加して均質に混合し、バッチボリュームメイク(batch volume make up)を行う。
【0157】
その後、溶液は均質性を確保するために混合し、0.2μmのフィルターで濾過し、バイアルに移す。
その後、溶液をタイプIガラスバイアルに充填し、タイプIゴム栓で栓をし、オーバーシールで密封した。
【0158】
すべての製剤は許容できる色、透明性を有し、目に見える粒子は残っていなかった。
【実施例
【0159】
以下に示す実施例と表では、次の略語を使用した:
AHD…無水ダプトマイシン不純物
ベータ…β(β-アスパルチル)異性体
LHD…ラクトン加水分解生成物
Ca2+…カルシウム
DAP…ダプトマイシン
NADA…N-アセチル-D-アラニン
NALA…N-アセチル-L-アラニン
Ala…アラニン
Asn…アスパラギン
Gln…グルタミン
Glu…グルタミン酸
Gly…グリシン
Leu…ロイシン
Met…メチオニン
Orn…オルニチン
Phe…フェニルアラニン
Pro…プロリン
Ser…セリン
Trp…トリプトファン
Tyr…チロシン
Val…バリン
M…月(Month(s))
水性組成物が調製され、バイアルに充填された後、開始の時点での不純物のレベルがHPLCによって決定され、その後バイアルを、5℃、15℃、30℃のような異なる保存条件の安定チャンバ(stability chambers)に投入した。
【0160】
不純物の形成および製剤中のダプトマイシンの安定性を決定するために、4日、2週間、1か月、2か月、4か月、6か月、9か月、12か月、14か月などの種々の時点で安定チャンバからバイアルを取り出し、HPLCで分析した。
【0161】
紫外線(UV)検出器を備えたAgilent(登録商標)1290超高速液体クロマトグラフィー装置を用いて、ダプトマイシンを含有する溶液中の総不純物および3つの構造的に関連する化合物、ラクトン加水分解物、ダプトマイシンのβ異性体および無水ダプトマイシンの量をUHPLC分析により決定した。すべてのサンプルは、逆相C18カラムを用いて、波長225nmの吸光度(曲線下面積)を測定することによって分析した。構造的に関連のある3つの化合物(不純物)の含有量は、以下の式で算出した総面積に対する面積%で示した。
【0162】
【数1】
【0163】
式中:
面積%=個々のピークの面積%
=個々のピークのピーク面積
tot=サンプルの総ピーク面積
総不純物のパーセントは、メインのピーク(すなわちダプトマイシン)以外のすべてのピークの面積%の合計が報告基準値(reporting threshold)(0.05%)以上である場合に報告される。
【0164】
総不純物の計算
TP-開始時(initial)とは異なる時点(TP)(例えば、4日、1か月、2か月など)で、かつ異なる保存条件(例えば、30℃、2~8℃など)での総不純物の値であり、HPLCによって測定された値。
【0165】
Δ-総不純物の増分計算値
Δ総不純物の増分(%)=TPでの総不純物の値(%)-総不純物の開始時の値(%)
特定の不純物(即ち、無水ダプトマイシン、β異性体不純物およびラクトン加水分解生成物不純物)の計算
TP-開始時(initial)とは異なる時点(TP)(例えば、4日、1か月、2か月など)で、かつ異なる保存条件(例えば、30℃、2~8℃など)での特定の不純物の値であり、HPLCによって測定された値。
【0166】
Δ-特定の不純物の増分計算値:(%)
Δ特定の不純物の増分(%)=TPでの特定の不純物の値(%)-特定の不純物の開始時の値(%)
【0167】
【表1】
【0168】
【表2-1】
【0169】
【表2-2】
【0170】
【表3】
【0171】
【表4】
【0172】
【表5-1】
【0173】
【表5-2】
【0174】
【表6】
【0175】
【表7-1】
【0176】
【表7-2】
【0177】
【表8-1】
【0178】
【表8-2】
【0179】
【表9】
【0180】
【表10】
【0181】
実施例9
以下の番号付けされた項目は、ダプトマイシンを含む水性医薬製剤の実施形態を表す。
項目1.ダプトマイシン、カルシウム、および少なくとも1つの賦形剤を含む水性医薬製剤。
【0182】
項目2.少なくとも1つの賦形剤が、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ADA、ACES、MES、TRIS、PIPES、MOPS、HEPESから選択される緩衝剤を含まない、項目1の水性医薬製剤。
【0183】
項目3.少なくとも1つの賦形剤が、PEGおよび/またはグリセロールのうちの少なくとも1つを含む、1~2の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目4.製剤のpH範囲が5.5~7.5である、項目1に記載の水性医薬製剤。
【0184】
項目5.カルシウムが塩化カルシウム(CaCl)、Ca-α-D-ヘプタグルコン酸塩、サッカリンカルシウム、乳酸カルシウム、または酢酸カルシウムの形態である、1~4の項目いずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0185】
項目6.カルシウムが塩化カルシウムの形態である、1~5の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目7.カルシウムがサッカリンカルシウムの形態である、1~5の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0186】
項目8.カルシウムがダプトマイシンに対して0.1:1~2:1のモル比で存在する、1~6の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目9.カルシウムがダプトマイシンに対して0.1:1~1:1のモル比で存在する、項目6に記載の水性医薬製剤。
【0187】
項目10.製剤は、極性プロトン性溶媒として、芳香族基を有するアルコール、1つ以上の第一級ヒドロキシル基のみを含有する脂肪族アルコール、または炭素原子よりも少ないヒドロキシル基を含有するアルコールを含んでいない、1~9の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0188】
項目11.製剤が、以下の少なくとも1つを含まない:
a)極性プロトン性溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEA)、N-エチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-エチルホルムアミド、酢酸エチルなど);
b)極性プロトン性溶媒として、芳香族基を有するアルコール、1つ以上の第一級ヒドロキシル基のみを含有する脂肪族アルコール、または炭素原子よりも少ないヒドロキシル基を含有するアルコール(ベンジルアルコール、エタノール、イソブタノール、テルブチルアルコールなど);
c)可溶化剤(Kolliphor EL(商標)(ポリエトキシル化ヒマシ油)、大豆油、ポリソルベート20、ポリソルベート80など);および/または
d)エチレングリコールまたはプロピレングリコール、
1~10の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0189】
項目12.製剤は、アルキルアルコール、エタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、およびポリソルベート80)、シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル-(l-シクロデキストリン)など)、ポリプロピレングリコール、およびポリブチレングリコール、ならびにナイアシンアミドなどの第一級アミドから選択される極性プロトン性溶媒を含まない、1~11の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0190】
項目13.製剤は、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、第二級アミドおよび第三級アミドから選択される極性非プロトン性溶媒を含まず、ここで第二級アミドは、N-エチルアセトアミド、N-エチルホルムアミドから選択され、かつ第三級アミドは、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルアセトアミド(DEA)、N,N-ジイソプロピルホルムアミドおよびN,N-ジメチルホルムアミドから選択される、1~12の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0191】
項目14.少なくとも1つの賦形剤は、アミノ酸、糖、糖誘導体、サッカリン、有機酸、有機溶媒、ベタイン、タウリン、ニコチンアミド、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体から選択される、1~13の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0192】
項目15.少なくとも1つの賦形剤がアミノ酸から選択される、1~14の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目16.少なくとも1つのアミノ酸は、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ロイシン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トリプトファン、チロシン、バリン、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくは誘導体から選択される、1~15の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0193】
項目17.製剤が2つ以上のアミノ酸またはそれらの薬学的に許容される塩または誘導体を含む、1~16の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目18.ダプトマイシンと各アミノ酸とのモル比が1:0.01~1:10である、15~17の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0194】
項目19.少なくとも1つの賦形剤は、有機溶媒、例えば、アルキルアルコール、エタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート80)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコール200(PEG200)、ポリエチレングリコール300(PEG300)、ポリエチレングリコール400(PEG400)、ポリエチレングリコール600(PEG600)、ポリプロピレングリコール、ポビドンおよびポリブチレングリコール)、および第一級アミド(例えば、ナイアシンアミド)、から選択される、先行する項目のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【0195】
項目20.有機溶媒がグリセロールである、項目19に記載の水性医薬製剤。
項目21.有機溶媒がポリエチレングリコール400(PEG400)である、項目19に記載の水性医薬製剤。
【0196】
項目22.製剤が2つ以上の有機溶媒を含む、19~21の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目23.製剤がグリセロールおよびPEG400を含む、19~22の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0197】
項目24.製剤が20%V/V以下の量の各有機溶媒を含む、19~23の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目25.有機溶媒が、製剤中に10%V/V以下の量で含まれるグリセロールである、19~24の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0198】
項目26.有機溶媒が、製剤中に5%V/V以下の量で含まれるグリセロールである、19~24の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目27.有機溶媒が10%V/V以下の量で製剤に含まれるPEG400である、19~24の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0199】
項目28.有機溶媒が5%V/V以下の量で製剤に含まれるPEG400である、19~24の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目29.少なくとも1つの賦形剤がサッカリン、その薬学的に許容される塩または誘導体から選択される、先行する項目のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【0200】
項目30.ダプトマイシンのサッカリンに対するモル比が1:0.1~1:3である、項目27に記載の水性医薬製剤。
項目31.少なくとも1つの賦形剤が、カルボン酸、それらの塩またはそれらの誘導体から選択される、先行する項目のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【0201】
項目32.カルボン酸が乳酸、クエン酸、コハク酸およびグルコン酸から選択される、項目29に記載の水性医薬製剤。
項目33.ダプトマイシンの選択したカルボン酸のそれぞれに対するモル比が1:0.05~1:1である、項目29または項目30に記載の水性医薬製剤。
【0202】
項目34.少なくとも1つの賦形剤が糖誘導体から選択される、先行する項目のいずれかに記載の水性医薬製剤。
項目35.糖誘導体がスクラロースである、項目32に記載の水性医薬製剤。
【0203】
項目36.ダプトマイシンのスクラロースに対するモル比が1:0.05~1:10である、項目33に記載の水性医薬製剤。
項目37.ダプトマイシンは0.5mg/mL~500mg/mLの濃度である、先行する項目のいずれかに記載の水性医薬製剤。
【0204】
項目38.ダプトマイシンが2mg/ml~20mg/mlの濃度である、項目1~35のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目39.ダプトマイシンが50mg/mlの濃度である、項目1~36のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0205】
項目40.pHが7である、4~39の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目41.50mg/mlのダプトマイシンを含む水性医薬製剤であって、同水性医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウムおよびPEG400を含み、カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、PEG400は10%V/V以下の濃度で含まれ、製剤のpHは7である、水性医薬製剤。
【0206】
項目42.50mg/mlのダプトマイシンを含む水性医薬製剤であって、同水性医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウムおよびPEG400を含み、カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、PEG400は5%V/V以下の濃度で含まれ、製剤のpHは7である、水性医薬製剤。
【0207】
項目43.50mg/mlのダプトマイシンを含む水性医薬製剤であって、同水性医薬製剤は、ダプトマイシン、カルシウム、グリセロールおよびPEG400を含み、カルシウムに対するダプトマイシンのモル比は1:1であり、グリセロールは5%V/V以下の濃度で含まれ、PEG400は5%V/V以下の濃度で含まれ、製剤のpHは7である、水性医薬製剤。
【0208】
項目44.水性医薬製剤が少なくとも50%V/Vの水を含む、項目1~38のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目45.水性医薬製剤が50%V/Vを超える水を含む、項目1~39のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0209】
項目46.水性医薬製剤が少なくとも60%V/Vの水を含む、項目1~40のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目47.水性医薬製剤が少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%V/Vの水を含む、項目1~41のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0210】
項目48.患者に投与する前に希釈するために製剤がバイアルに包装されている、1~42の項目のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
項目49.水性医薬製剤が30℃の温度で少なくとも4日間安定である、項目1~42のいずれか1つに記載の水性医薬製剤。
【0211】
項目50.グラム陽性菌によって引き起こされる微生物感染症の治療に使用することができる、前述の項目のいずれかによる水性医薬製剤。
項目51.皮膚および軟部組織感染症(cSSTI)または黄色ブドウ球菌血流感染症(菌血症)の治療に使用される、項目46に記載の水性医薬製剤。
【0212】
項目52.ダプトマイシン、カルシウムおよび少なくとも1つの賦形剤を溶液に混合するステップと、そのような溶液のpHを適切なpH調整剤でpH5.5~7.5に調整するステップと、を含む、前述の項目のいずれかによる水性医薬製剤を製造するためのプロセス。
【0213】
項目53.微生物感染症の患者を治療する方法であって、項目1~47のいずれか1つに記載の水性医薬製剤を投与し、任意選択で、患者に投与する前に製剤を希釈することを含む方法。
【0214】
項目54.医薬製剤は、患者に投与する前に希釈される、項目48に記載の患者を治療する方法。
「用語「a」および「an」および「the」の使用ならびに同様の参照(特に次の特許請求の範囲の文脈において)は、本明細書中に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。本明細書で使用される第1の、第2のなどの用語は、特定の順序を示すことを意味するのではなく、単に便宜上、複数の、例えば、層を示すことを意味する。「からなる(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むがこれに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内にある個々の値を個別に参照するための簡潔な方法として機能することのみを意図しており、個々の値は本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。全ての範囲の端点は、範囲内に含まれ、独立して組み合わせることができる。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、適切な順序で実行することができる。ありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、など(such as))の使用は、単によりよく説明することを意図しており、別段の請求がない限り範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる文言も、本明細書中で使用される実施に必須であるクレームされていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0215】
例示的な実施形態が提供されるが、当業者は、範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに同等物を使用できることが理解されるであろう。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、特許請求の範囲は、本発明を実施するために企図される最良のモードとして開示された特定の実施形態に限定されないが、請求項は、それらの範囲の請求項に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。そのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、包含される。
【国際調査報告】