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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】T型ゼオライト分子篩膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/30 20060101AFI20220706BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20220706BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20220706BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20220706BHJP
   B01D 69/06 20060101ALI20220706BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20220706BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20220706BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20220706BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
C01B39/30
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/04
B01D69/06
B01D69/08
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565845
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2019128949
(87)【国際公開番号】W WO2020224275
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】201910368204.3
(32)【優先日】2019-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】楊 建華
(72)【発明者】
【氏名】路 穎
(72)【発明者】
【氏名】賀 高紅
(72)【発明者】
【氏名】魯 金明
(72)【発明者】
【氏名】張 艶
【テーマコード(参考)】
4D006
4G073
【Fターム(参考)】
4D006GA25
4D006HA77
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA40
4D006MB03
4D006MB04
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC03X
4D006NA49
4D006NA50
4D006NA64
4D006PB14
4D006PB32
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA80
4G073BD06
4G073BD15
4G073BD18
4G073CZ09
4G073DZ02
4G073DZ08
4G073FB11
4G073FB26
4G073FC12
4G073FC30
4G073GA01
4G073GA03
4G073GB02
4G073UA06
4G073UB60
(57)【要約】
本発明は、T型ゼオライト分子篩膜の製造方法、即ち、ゲル法を用いたT型ゼオライト分子篩膜の製造方法を提供する。担体に種晶をコートした後湿潤・乾燥させ、一定の配合比率のゲル合成液を担体表面に塗布して高温で結晶化させることで、優れた性能を有するT型ゼオライト分子篩膜を得ることができる。この膜は、イソプロパノール/水及びエタノール/水の分離に優れた分離性能を有し、良好な時間依存性を有する。本発明は、実験装置が簡単で操作しやすく、再現性が高く、原材料を節約できる等の利点があり、グリーンケミストリーを具現しており、重要な産業振興及び実用化の価値がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル変換法を用いたT型ゼオライト分子篩膜の製造方法であって、多孔質担体表面に順次、種晶液を塗布してシード層を得、ゲル液を塗布してゲル層を得た後、前記担体を結晶化させて前記T型ゼオライト分子篩膜を得、ここで、前記シード層がコートされた前記多孔質担体を、水又はゲル液に含浸させた後、ゲル液を塗布してゲル層を得る、ことを特徴とするT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【請求項2】
前記ゲル液は、シリコン源、アルミニウム源、フッ化物塩、アルカリ溶液からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン源はシリカゾルであり、前記アルミニウム源はメタアルミン酸ナトリウムであり、前記フッ化物塩はフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムであり、前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである、ことを特徴とする請求項2に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【請求項4】
前記ゲル液は、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合アルカリ溶液に、アルミニウム源、フッ化物塩、シリコン源を加えて、10~50時間熟成させることで調製される、ことを特徴とする請求項2に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【請求項5】
前記ゲル液中の各成分のモル比は、SiO/Al=12~100、HO/SiO=4~25、(NaO+KO)/SiO=0.12~1.2、Na/K=0.6~10、MF/SiO=0~0.5である、ことを特徴とする請求項2に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【請求項6】
前記種晶液を塗布してシード層を得るプロセスは、二次可変温度含浸法により行われる、ことを特徴とする請求項1に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【請求項7】
前記多孔質担体は、管状、平板状、中空繊維状又は多孔質チャネル状の担体であり、好ましくは管状である、ことを特徴とする請求項1に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【請求項8】
前記多孔質担体の材料は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ムライト、ステンレス鋼又は金属メッシュであり、前記多孔質担体の細孔径は0.02~40μmであり、前記多孔質担体は、好ましくは酸化アルミニウムであり、前記多孔質担体の細孔径は、好ましくは0.1~5μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【請求項9】
前記T型ゼオライト分子篩膜のSi/Al比は3~3.8である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【請求項10】
前記T型ゼオライト分子篩膜は、75℃の温度で、90wt.%イソプロパノール/水に対して、フラックス>5.5kg・m-2・h-1、分離係数>10000の分離性能を有し、90wt.%エタノール/水に対して、フラックス>2.8kg・m-2・h-1、分離係数が10000に達する分離性能を有する、ことを特徴とする請求項9に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離材料の技術分野に属し、ゼオライト分子篩膜の製造方法及び使用に関し、特に気相転換を用いたT型ゼオライト分子篩膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒脱水のための浸透気化膜分離技術は、従来の蒸留、抽出、吸収などの分離方法の代わりに用いることができ、従来の方法では実現が困難又は実現不可能な分離要件を達成し、低エネルギー消耗で高品質の製品を得ることができ、特に共沸混合物、沸騰寸前の混合物、感熱性化合物又は低濃度成分の混合物の分離に大きな利点がある。従来の蒸留方法と比較して、浸透気化膜装置は、運転エネルギー消耗が低い、分離効率が高い、プロセスが簡単、設置面積が小さい、操作が便利、第3の成分を導入しない、製品の純度が高い、品質が安定、プロセスがグリーンで無公害である等の利点があり、産業経済的に大きな可能性を秘めている。
【0003】
浸透気化膜は、素材によって浸透気化有機膜と浸透気化無機膜とに分けられる。有機膜と比較して、無機膜は、熱化学的安定性が良い、耐用年数が長い、摩耗部品が少ない、維持費が安い、膜部品の交換が容易、膜フラックスが高い、分離係数が大きい、膨潤しない、耐溶剤性などの多くの利点があり、浸透気化用の膜材料として用いられている。浸透気化無機膜は、分子篩を膜材料(コア分離膜層)として使用し、その規則的な細孔構造を利用して、異なる成分間の分子寸法レベルでの分離を実現する。
【0004】
T型ゼオライトは、エリオナイトとオフレタイトとの相互成長により形成された連晶であり、エリオナイト及びオフレタイトの骨格構造は異なるが、密接な関係があり、2つのゼオライトの相互作用によって、T型ゼオライトの細孔径は、0.36nm×0.51nmになっている。T型ゼオライト膜は、中等のSi/Al比と優れた親水性及び耐酸性とを備え、水と有機溶液との分離において、優れた浸透気化性能を示している。
【0005】
ゼオライト分子篩膜の合成方法には、インサイチュ水熱合成法、二次成長法、マイクロ波合成法、ゲル変換法などがある。近年、特許及び文献により、T型ゼオライト分子篩膜の合成方法として二次成長法(非特許文献1)又はマイクロ波アシスト二次成長法(非特許文献2)が報告されているが、ゲル変換法(Gel Conversion Method)によるT型ゼオライト分子篩膜の合成方法については、国内外でいままでも報告されていない。二次成長法又はマイクロ波合成法は、水熱合成法に属し、使用する合成液の量が多く、結晶化して成膜した後、釜底材を廃棄するが、従来のゲル変換法は、担体表面にゲル層をコーティングしたもので、使用する合成液の量が少なく、それを有機テンプレート剤又は水がある反応釜に入れ、所定の温度に加熱して気化させると、蒸気の作用下でゲル層が結晶化されて、ゼオライト分子篩膜層が形成される。この方法は有機テンプレート剤の安定性を高めるが、発生した蒸気をゲル層の内部に浸入させる必要があり、これにより膜層にクラックが発生する可能性があるので、欠陥の少ないゼオライト分子篩膜を製造し難く、この方法は、有機テンプレート剤を添加しないT型ゼオライト分子篩膜の製造には適用されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Materials Chemistry A,2017,5(34):17828-17832
【非特許文献2】Microporous & Mesoporous Materials,2009,124(1):117-122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、T型ゼオライト分子篩膜の製造方法を提供する。この方法は、まず担体を湿潤プロセスにかけ、次いで乾燥した担体表面にゼオライト分子篩の合成原料からなるゲル層をコートし、結晶化させて膜を形成し、ゲル層は蒸気の作用下でゼオライト分子篩膜層を形成するものである。この方法では、安価なマクロ孔担体上にシード層をプレコートし、ゲル法により製造したT型ゼオライト分子篩膜は、優れた分離性能と一定の安定性とを備える。この方法は、再現性が高く、溶媒の節約にも有効で、高い膜性能を持っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るT型ゼオライト分子篩膜の製造方法は、ゲル変換法を用いたT型ゼオライト分子篩膜の製造方法であって、多孔質担体表面に順次、種晶液を塗布してシード層を得、ゲル液を塗布してゲル層を得た後、前記担体を結晶化させて前記T型ゼオライト分子篩膜を得、ここで、前記シード層がコートされた前記多孔質担体を、水又はゲル液(30倍以上に希釈する)に含浸させた後、ゲル液を塗布してゲル層を得る。
【0009】
さらに、前記ゲル液は、シリコン源、アルミニウム源、フッ化物塩、アルカリ溶液からなる。
【0010】
さらに、前記シリコン源はシリカゾルであり、前記アルミニウム源はメタアルミン酸ナトリウムであり、前記フッ化物塩はフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムであり、前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。
【0011】
さらに、前記ゲル液は、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合アルカリ溶液に、アルミニウム源、フッ化物塩、シリコン源を加えて、10~50時間熟成させることで調製される。
【0012】
さらに、前記ゲル液中の各成分のモル比は、SiO/Al=12~100、HO/SiO=4~25、(NaO+KO)/SiO=0.12~1.2、Na/K=0.6~10、MF/SiO=0~0.5である。
【0013】
さらに、前記種晶液を塗布してシード層を得るプロセスは、二次可変温度含浸法により行われる。
【0014】
前記多孔質担体は、管状、平板状、中空繊維状又は多孔質チャネル状の担体であり、好ましくは管状である。
【0015】
さらに、前記多孔質担体の材料は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ムライト、ステンレス鋼又は金属メッシュであり、前記多孔質担体の細孔径は0.02~40μmである。
【0016】
さらに、前記多孔質担体は、好ましくは酸化アルミニウムであり、前記多孔質担体の細孔径は、好ましくは0.1~5μmである。
【0017】
本発明の方法により製造されたT型ゼオライト分子篩膜のSi/Al比は低く、約3~3.8である。
【0018】
前記T型ゼオライト分子篩膜は、75℃の温度で、90wt.%イソプロパノール/水に対して、フラックス>5.5kg・m-2・h-1、分離係数>10000の分離性能を有し、90wt.%エタノール/水に対しては、フラックス>2.8kg・m-2・h-1、分離係数が10000に達する分離性能を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下のような利点を備える。
本発明で用いた方法と従来のゲル法との違いは、水又は希釈されたゲル液の導入方法が異なることである。本発明では、担体を湿潤させる方法を採用しており、これにより膜層の内側から蒸気を発生させ、クラックの発生を効果的に回避し、連続した緻密なゼオライト膜層を得ることができる。
【0020】
(1)本発明の方法は、製造プロセスが簡単で再現性が高く、担体表面にゲル液の層を塗布するだけなので、反応釜の底に廃液が残ることがなく、ゲル液の大量の廃棄を回避し、効果的に溶媒を節約し、環境汚染を軽減し、グリーンケミストリーの概念を具現し、重要な産業上の展望及び実用的な意義を持っている。
(2)ゲル変換法により製造されたT型ゼオライト分子篩膜のSi/Al比は約3.8と低いため、膜の親水性が向上し、有機物/水の分離において親水性膜のフラックスを効果的に高めることができる。
(3)担体を湿潤させる方法を採用して水又は希釈合成液を導入することで、結晶化の際にゲル層内に蒸気が発生し、合成されたT型ゼオライト分子篩膜は連続的且つ均一に分布し、膜層にクラック及びピンホールが発生しないため、膜の製造コストを大幅に削減することが可能となる。
(4)合成されたT型ゼオライト分子篩膜は、イソプロパノール/水及びエタノール/水に対して優れた分離性能を有している:75℃の温度で、90wt.%イソプロパノール/水に対して、フラックス>5.5 kg・m-2・h-1、分離係数>10000の分離性能を有し、90wt.%エタノール/水に対して、フラックス>2.8kg・m-2・h-1、分離係数が10000に達する分離性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明には5つの図面が添付されている。
図1】実施例1で製造したT型ゼオライト分子篩膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図2】実施例1で製造したT型ゼオライト分子篩膜断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図3】X線回折(XRD)図であり、aはT型ゼオライト分子篩、bは実施例1で製造したT型ゼオライト分子篩膜、cは空の担体である。
図4】浸透気化(PV)装置の概略図である。
図5】実施例4で製造したT型ゼオライト分子篩膜の90wt.%イソプロパノール/水に対して行ったPV試験安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1)シード層の塗布:T型ゼオライト分子篩の種晶を脱イオン水に分散させてT型ゼオライト分子篩の種晶液を得、この種晶液を多孔質担体の表面に塗布して、均一で緻密な無欠陥のシード層を得る。
(2)ゲル液の調製:本発明は、ゲル塗布液として水の含有量が少ない合成液を用いる。前記合成液は、シリカゾルをシリコン源とし、メタアルミン酸ナトリウムをアルミニウム源とし、フッ化ナトリウムとフッ化カリウムとを混合フッ化物塩とする。アルミニウム源、フッ化物塩、シリコン源を水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合アルカリ溶液に加え、10~50時間攪拌しながら熟成を続けることで、安定したSiO-NaO-KO-Al-MF(NaF+KF)-HO系を形成する。ここで、各成分のモル比は、SiO/Al=12~100、HO/SiO=4~25、(NaO+KO)/SiO=0.12~1.2、Na/K=0.6~10、MF/SiO=0~0.5である。
(3)担体の湿潤化:種晶を塗布した担体を硬化させた後、担体を液体で湿潤させ、担体表面に明らかな液体の痕跡が見えなくなるまで室温で乾燥させる。
(4)ゲル層の塗布:ステップ(2)で得られたゲル液を塗布液として担体の表面に均一に塗布する。
(5)結晶化:担体をオートクレーブに置き、80~200℃で1~50時間結晶化させる。
【0023】
ステップ(1)において、T型ゼオライト分子篩の種晶液中のT型ゼオライト分子篩の含有量は0.01~5wt.%であり、種晶液中のT型ゼオライト分子篩結晶粒径は0.02~7μmである。
【0024】
ステップ(1)において、T型ゼオライト分子篩の種晶液を用いて多孔質担体表面にシード層を導入する方法として、含浸法、熱含浸法、可変温度熱含浸法、真空結晶化法、スプレー塗布法、ラビング塗布法又はスピン塗布法を用い、好ましくは可変温度含浸法を用いる。
【0025】
ステップ(2)において、20~50℃で10~50時間、好ましくは20~40℃で12~48時間撹拌することでゲル液を調製する。
【0026】
ステップ(3)において、湿潤溶液としては、脱イオン水を用いてもよいし、所定の希釈濃度のゲル液を用いてもよく、好ましくは脱イオン水を湿潤溶液として用いる。
【0027】
ステップ(4)において、ゲル層の塗布方法として、含浸法、熱含浸法、真空法、スプレー塗布法、ラビング塗布法又はスピン塗布法を用い、好ましくは含浸法を用いる。
【0028】
ステップ(5)において、結晶化温度は80~200℃、結晶化時間は1~50hであり、好ましくは結晶化温度が100~180℃、結晶化時間が2~30hである。
【0029】
本発明をさらに説明するために、いくつかの具体的な実施例を以下に示すが、本発明の保護範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
(1)α-Al担体管の前処理:管外径は12mm、管内径は8mm、平均細孔径は2~3μm、気孔率は約30~40%である。800メッシュ及び1500メッシュのサンドペーパーで担体管の外面を順次それぞれ一回ずつ研磨し、脱イオン水による超音波洗浄で担体管に残っている砂粒子を除去し、担体管の洗浄に使用した水が濁らなくなるまで数回繰り返し、次いで、酸とアルカリとで順次超音波洗浄して担体の細孔内の残留物を除去し、脱イオン水で中性になるまで洗浄する。最後に、担体管をオーブンで乾燥させた後、マッフル炉において550℃で6時間焼成を行い、両端をシールして置く。
(2)ステップ(1)で得られた担体管を120℃で3~4時間予熱した後、1wt.%濃度の大粒の種晶(2μm)懸濁液Iに急速に含浸させ、室温で一晩乾燥させた後、120℃で3~4時間硬化させて、シード層担持担体Iを得る。
(3)担体表面の種晶を脱脂綿で拭き取り、シード層担持担体Iを100℃で2~4時間予熱した後、0.6wt.%濃度の小粒の種晶(600nm)懸濁液IIに含浸させ、一晩乾燥させた後、100℃で2~3時間硬化させて、シード層担持担体IIを得る。
(4)SiO:0.05Al:0.26NaO:0.09KO:0.25MF(3NaF:1KF):25HOのモル比で合成液を調製し、室温で12~48時間撹拌しながら熟成させる。
(5)シード層担持担体IIを脱イオン水で湿潤させて、シード層担持担体IIの表面に明らかな水の痕跡が見えなくなるまで室温で乾燥させて、担体IIIを得る。
(6)担体管IIIを合成液に約20~60秒間含浸させた後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ライニングを施したステンレス鋼製の結晶化釜に入れ、150℃のオーブンで4時間結晶化させる。
(7)合成されたT型ゼオライト分子篩膜を中性になるまで脱イオン水で洗浄し、50℃のオーブンで乾燥させる。
【0031】
T型ゼオライト分子篩膜の結晶構造を、添付図面の解析により確認した。本実施例で製造した膜は厚さが4μmと薄く、これは結晶化の際に担体壁に担持された栄養溶液の量が限られているためと考えられ、これにより優れた浸透気化性能が得られたと思料される。実施例1で製造したT型ゼオライト分子篩膜に対して浸透気化試験を行ったところ、75℃の温度で、90wt.%エタノール/水に対して3.35kg・m-2・h-1のフラックス、分離係数>10000の分離性能を示し、90wt.%イソプロパノール/水に対しては6.02kg・m-2・h-1のフラックス、分離係数>10000と、より高い分離性能を示した。XPSで測定したこの膜のSi/Al比は3.8であった。
【0032】
(対比例1)
T型ゼオライト分子篩膜の製造は、ほとんどが二次成長法で行われている。実施例1中のステップ(1)、(2)、(3)及び(7)は変更せず、ステップ(4)の合成液の配合比率をSiO:0.05Al:0.26NaO:0.09KO:0.25MF(3NaF:1KF):35HOとし、ステップ(5)を削除し、ステップ(6)において熟成後の合成液を釜のライニング壁に沿ってゆっくりと反応釜に導入し、高温で結晶化させた。75℃の温度で、90wt.%エタノール/水の場合、フラックスは2.26kg・m-2・h-1で、分離係数は1142であったが、90wt.%イソプロパノール/水の場合、フラックスが3.65kg・m-2・h-1で、分離係数が6063と、より高い分離性能を示した。XPSで測定したこの膜のSi/Al比は4.4であった。
【0033】
(対比例2)
ステップ(5)と(6)とを除き、すべてのステップは実施例1と同じにした。
ステップ(5)を省略して直接ステップ(6)を行い、合成液をすべて分子篩の細孔チャンネル内部に吸着させて、T型ゼオライト分子篩膜を製造した。75℃の温度で、90wt.%エタノール/水に対しての浸透気化試験を行った結果、膜の分離性能として、フラックスと分離係数とはそれぞれ2.68kg・m-2・h-1、1004であった。
【0034】
(実施例2)
ステップ(4)を除き、すべてのステップは実施例1と同じにした。
合成液中のフッ素含有量を変更し、MF/SiOモル比を0に変更し、即ち、フッ化物塩を添加せずにT型ゼオライト分子篩膜を製造した。75℃の温度で、90wt.%エタノール/水に対しての浸透気化試験を行った結果、膜の分離性能として、フラックスと分離係数とはそれぞれ1.57kg・m-2・h-1、112であった。
【0035】
(実施例3)
実施例1で製造したT型ゼオライト分子篩膜の、90wt.%エタノール/水系に対する時間依存性試験を行い、試験結果を図4に示した。10時間の試験後、総フラックスは最初の3.35kg・m-2・h-1から約2.77kg・m-2・h-1にまで減少し、透過側の水の含有量はほとんど変化しなかった。
【0036】
(付記)
(付記1)
ゲル変換法を用いたT型ゼオライト分子篩膜の製造方法であって、多孔質担体表面に順次、種晶液を塗布してシード層を得、ゲル液を塗布してゲル層を得た後、前記担体を結晶化させて前記T型ゼオライト分子篩膜を得、ここで、前記シード層がコートされた前記多孔質担体を、水又はゲル液に含浸させた後、ゲル液を塗布してゲル層を得る、ことを特徴とするT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【0037】
(付記2)
前記ゲル液は、シリコン源、アルミニウム源、フッ化物塩、アルカリ溶液からなる、ことを特徴とする付記1に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【0038】
(付記3)
前記シリコン源はシリカゾルであり、前記アルミニウム源はメタアルミン酸ナトリウムであり、前記フッ化物塩はフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムであり、前記アルカリ溶液は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである、ことを特徴とする付記2に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【0039】
(付記4)
前記ゲル液は、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合アルカリ溶液に、アルミニウム源、フッ化物塩、シリコン源を加えて、10~50時間熟成させることで調製される、ことを特徴とする付記2に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【0040】
(付記5)
前記ゲル液中の各成分のモル比は、SiO/Al=12~100、HO/SiO=4~25、(NaO+KO)/SiO=0.12~1.2、Na/K=0.6~10、MF/SiO=0~0.5である、ことを特徴とする付記2に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【0041】
(付記6)
前記種晶液を塗布してシード層を得るプロセスは、二次可変温度含浸法により行われる、ことを特徴とする付記1に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【0042】
(付記7)
前記多孔質担体は、管状、平板状、中空繊維状又は多孔質チャネル状の担体であり、好ましくは管状である、ことを特徴とする付記1に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【0043】
(付記8)
前記多孔質担体の材料は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ムライト、ステンレス鋼又は金属メッシュであり、前記多孔質担体の細孔径は0.02~40μmであり、前記多孔質担体は、好ましくは酸化アルミニウムであり、前記多孔質担体の細孔径は、好ましくは0.1~5μmである、ことを特徴とする付記1に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【0044】
(付記9)
前記T型ゼオライト分子篩膜のSi/Al比は3~3.8である、ことを特徴とする付記1~8のいずれか1つに記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【0045】
(付記10)
前記T型ゼオライト分子篩膜は、75℃の温度で、90wt.%イソプロパノール/水に対して、フラックス>5.5kg・m-2・h-1、分離係数>10000の分離性能を有し、90wt.%エタノール/水に対して、フラックス>2.8kg・m-2・h-1、分離係数が10000に達する分離性能を有する、ことを特徴とする付記9に記載のT型ゼオライト分子篩膜の製造方法。
【符号の説明】
【0046】
(a)マグネチックスターラー
(b)ウォーターバス
(c)膜チューブ
(d)膜ユニット
(e)原料貯蔵タンク
(f)コールドトラップ
(g)液体窒素
(h)バッファボトル
(i)真空計
(j)真空ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】