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特表2022-532075VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAを送達するために脂質ナノ粒子を使用する方法、及びこの脂質ナノ粒子を含む医薬組成物
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  • 特表-VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAを送達するために脂質ナノ粒子を使用する方法、及びこの脂質ナノ粒子を含む医薬組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAを送達するために脂質ナノ粒子を使用する方法、及びこの脂質ナノ粒子を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20220706BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20220706BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P17/02
A61K9/14
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/32
A61K47/18
A61K38/18
A61K9/127
A61P43/00 111
C12N15/88 Z ZNA
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565885
(86)(22)【出願日】2020-05-08
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 US2020032241
(87)【国際公開番号】W WO2020227690
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/845,184
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300022641
【氏名又は名称】アストラゼネカ アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【弁理士】
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン,ケニー・ミーケル
(72)【発明者】
【氏名】ボグベルグ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ベルゲンヘム,ニルス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC19
4C076DD09
4C076DD50
4C076DD59
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF16
4C076FF31
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF63
4C084AA13
4C084BA44
4C084DB57
4C084MA24
4C084MA41
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA05
4C084NA11
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZC021
4C084ZC022
(57)【要約】
本開示は、脂質成分とVEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子に関する。本開示の態様は、さらに、対象における創傷治癒を向上させるための、脂質成分とVEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子の使用に関する。本開示のいくつかの態様は、脂質成分と改変RNAとを含むナノ粒子の局所投与に関する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)を含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子。
【請求項2】
前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、請求項1又は2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記リン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びこれらの混合物からなる群から選択され;
前記構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びこれらの混合物からなる群から選択され;
並びに/又は
前記PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、DMG-PEG(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール)、DMG-PEG2000(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコ-ル-2000)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、
請求項2又は3に記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記脂質成分は、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はDMG-PEGであるPEG脂質をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記脂質中のイオン化可能な窒素原子と、前記RNA中のリン酸基の数との比(N:P比)は、約2:1~約30:1である、請求項1~5のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記N:P比は、約3:1である、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約5:1~約100:1である、請求項1~7のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約10:1である、請求項8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記ナノ粒子は、平均直径が約50nm~約100nmである、請求項1~9のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記ナノ粒子は、平均直径が約70nm~約90nmである、請求項1~9のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記ナノ粒子は、平均直径が約70nm~約85nmである、請求項11に記載のナノ粒子。
【請求項13】
(a)(i)ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)を含む脂質成分と、(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAとを含む少なくとも1種のナノ粒子、
及び
(b)薬学的に許容される賦形剤
を含む医薬組成物。
【請求項14】
前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、請求項13又は14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記リン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びこれらの混合物からなる群から選択され;
前記構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びこれらの混合物からなる群から選択され;
並びに/又は
前記PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、DMG-PEG(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール)、DMG-PEG2000(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコ-ル-2000)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、
請求項14又は15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記脂質成分は、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はDMG-PEGであるPEG脂質をさらに含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記脂質中のイオン化可能な窒素原子と、前記RNA中のリン酸基の数との比(N:P比)は、約2:1~約30:1である、請求項13~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記N:P比は、約3:1である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約5:1~約100:1である、請求項13~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約10:1である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記ナノ粒子は、平均直径が約50nm~約100nmである、請求項13~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ナノ粒子は、平均直径が約70nm~約90nmである、請求項13~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記ナノ粒子は、平均直径が約70nm~約85nmである、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びこれらの混合物から選択される、請求項13~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項13~25のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項27】
前記投与により、前記対象の血漿中か又は組織中において、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドが産生される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記VEGF-Aポリペプチドは、前記対象への前記ナノ粒子又は医薬組成物の投与後5又は6時間以内に、前記血漿中及び/又は組織中で検出される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記投与により、前記対象中において、約1pg/mg超の前記VEGF-Aポリペプチドが産生される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記ナノ粒子又は前記医薬組成物を皮内投与する、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノ粒子又は前記医薬組成物を、創傷に局所的に投与する、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ナノ粒子を、対象の体重当たり約0.01mg/kg~約10mg/kgの改変RNAを送達するのに十分な投薬量レベルで投与する、請求項26~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記投与により、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生が、前記対象へのクエン酸生理食塩水緩衝液中の前記改変RNAの投与と比較した場合に約1~約100倍増加する、請求項26~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象は、糖尿病に罹患している、請求項26~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記創傷は、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡、床ずれ、及びこれらの組み合わせである、請求項26~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
血管新生を誘導する方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項13~25のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項37】
血管形成を誘導する方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項13~25のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項38】
毛細血管及び/又は細動脈密度を増加させる方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載のナノ粒子又は請求項13~25のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項39】
創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法であって、
(i)脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子又はその医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象の創傷に局所的に投与することを含む方法。
【請求項40】
前記脂質成分は、下記の構造
【化1】
を有する化合物を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記脂質成分は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレートを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法であって、
(i)下記の構造
【化2】
を有する化合物を含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子又はその医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象の創傷に局所的に投与することを含む方法。
【請求項43】
創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法であって、
(i)ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレートを含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子又はその医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象の創傷に局所的に投与することを含む方法。
【請求項44】
前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、請求項39~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記脂質成分は、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はDMG-PEGであるPEG脂質をさらに含む、請求項39~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記脂質中のイオン化可能な窒素原子と、前記RNA中のリン酸基の数との比(N:P比)は、約3:1である、請求項39~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約10:1である、請求項39~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤であって、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びこれらの混合物から選択される賦形剤を含む、請求項39~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記投与により、前記対象の血漿中か又は組織中において、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドが産生される、請求項39~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記投与により、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生が、前記対象へのクエン酸生理食塩水緩衝液中の前記改変RNAの投与と比較した場合に増加する、請求項39~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象は、糖尿病に罹患している、請求項39~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記創傷は、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡、床ずれ、及びこれらの組み合わせである、請求項39~51のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されており、且つ全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含む。2019年5月8日に作成された前記ASCIIコピーの名称は、09963_6016-00000_SL.txtであり、そのサイズは11,396バイトである。
【0002】
2.分野
本開示は、脂質成分と、VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子に関する。本開示の態様は、さらに、対象における創傷治癒を向上させるための、脂質成分と、VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
3.背景
血管内皮増殖因子A(VEGF-A)経路は、創傷治癒過程(例えば、損傷を受けた組織の血行再建、血管透過性を向上させること、及び新しい血管の形成(血管形成))における中心的役割を果たす。対象における創傷治癒を向上させること等の治療効果の可能性のためにVEGF-A経路を増強するための薬剤を送達することは、難しいままである。
【0004】
標的組織におけるVEGF-Aタンパク質を増大させるための臨床的に扱いやすい手法を可能にするための、多くの多様な方法が試みられている。しかしながら、これらの手法はそれぞれ、重大な欠点を有する。例えば、全身的VEGF-Aタンパク質送達は、重大な低血圧をもたらす可能性があり、且つVEGF-Aは急速に分解される。ウイルスカプセル化及びネイキッドVEGF-A DNAプラスミドは、タンパク質発現の時間的制御が限定的であり、且つインビボ発現の効率は、非常に様々であり得、且つ非用量依存性であり得る。結果として、これらの制約が、治療薬としてVEGF-Aレベルを増強する適用可能性を制限している。
【0005】
別の最近の発展は、VEGF-Aタンパク質をコードする治療用RNAを送達することである。しかしながら、天然のRNAの細胞への送達は、そうしたRNA分子の相対的不安定性及び低細胞透過性に起因して、難しい可能性がある。また、天然のRNAは、免疫活性化を誘発する可能性があり(例えば、Kaczmarek et al.,“Advances in the delivery of RNA therapeutics:from concept to clinical reality,”Genome Med.,2017,9:60を参照されたい)、これにより、VEGF-Aタンパク質を標的組織に送達するための天然のRNAの使用が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、VEGF-Aタンパク質をコードするRNAの有効な且つ安全な送達を可能にする組成物の必要性が、依然として存在する。加えて、対象における創傷治癒を向上させること等の治療効果の可能性のためにVEGF-A経路を増強するための代替方法の必要性が、依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
4.概要
本開示は、脂質成分と、VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子に関する。本開示の態様は、さらに、対象における創傷治癒を向上させるための、脂質成分と、VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAとを含むナノ粒子の使用に関する。
【0008】
本開示のある種の実施形態を、下記の段落にまとめて示す。このリストは、例示的に過ぎず、この開示により提供される実施形態の全てを網羅しているわけではない。いくつかの態様では、本開示は、下記の実施形態に関する。
【0009】
1.
(i)ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)を含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子。
【0010】
2.前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含む、実施形態1に記載のナノ粒子。
【0011】
3.前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、実施形態1又は2に記載のナノ粒子。
【0012】
4.前記リン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びこれらの混合物からなる群から選択され;
前記構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びこれらの混合物からなる群から選択され;
並びに/又は
前記PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、DMG-PEG(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール)、DMG-PEG2000(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコ-ル-2000)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、
実施形態2又は3に記載のナノ粒子。
【0013】
5.前記脂質成分は、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はDMG-PEGであるPEG脂質をさらに含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のナノ粒子。
【0014】
6.前記脂質中のイオン化可能な窒素原子と、前記RNA中のリン酸基の数との比(N:P比)は、約2:1~約30:1である、実施形態1~5のいずれか一つに記載のナノ粒子。
【0015】
7.前記N:P比は、約3:1である、実施形態6に記載のナノ粒子。
【0016】
8.前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約5:1~約100:1である、実施形態1~7のいずれか一つに記載のナノ粒子。
【0017】
9.前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約10:1である、実施形態8に記載のナノ粒子。
【0018】
10.前記ナノ粒子は、平均直径が約50nm~約100nmである、実施形態1~9のいずれか一つに記載のナノ粒子。
【0019】
11.前記ナノ粒子は、平均直径が約70nm~約90nmである、実施形態1~9のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【0020】
12.前記ナノ粒子は、平均直径が約70nm~約85nmである、実施形態11に記載のナノ粒子。
【0021】
13.
(a)(i)ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)を含む脂質成分と、(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAとを含む少なくとも1種のナノ粒子、
及び
(b)薬学的に許容される賦形剤
を含む医薬組成物。
【0022】
14.前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含む、実施形態13に記載の医薬組成物。
【0023】
15.前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、実施形態13又は14に記載の医薬組成物。
【0024】
16.前記リン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、スフィンゴミエリン、及びこれらの混合物からなる群から選択され;
前記構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びこれらの混合物からなる群から選択され;並びに/又は
前記PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、DMG-PEG(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール)、DMG-PEG2000(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコ-ル-2000)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態14又は15に記載の医薬組成物。
【0025】
17.前記脂質成分は、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はDMG-PEGであるPEG脂質をさらに含む、実施形態13~16のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0026】
18.前記脂質中のイオン化可能な窒素原子と、前記RNA中のリン酸基の数との比(N:P比)は、約2:1~約30:1である、実施形態13~17のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0027】
19.前記N:P比は、約3:1である、実施形態18に記載の医薬組成物。
【0028】
20.前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約5:1~約100:1である、実施形態13~19のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0029】
21.前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約10:1である、実施形態20に記載の医薬組成物。
【0030】
22.前記ナノ粒子は、平均直径が約50nm~約100nmである、実施形態13~21のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0031】
23.前記ナノ粒子は、平均直径が約70nm~約90nmである、実施形態13~21のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0032】
24.前記ナノ粒子は、平均直径が約70nm~約85nmである、実施形態23に記載の医薬組成物。
【0033】
25.前記薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びこれらの混合物から選択される、実施形態13~24のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0034】
26.創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法であって、実施形態1~12のいずれか一つに記載のナノ粒子又は実施形態13~25のいずれか一つに記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【0035】
27.前記投与により、前記対象の血漿中か又は組織中において、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドが産生される、実施形態26に記載の方法。
【0036】
28.前記VEGF-Aポリペプチドは、前記対象への前記ナノ粒子又は医薬組成物の投与後5又は6時間以内に、前記血漿中及び/又は組織中で検出される、実施形態27に記載の方法。
【0037】
29.前記投与により、前記対象中において、約1pg/mg超の前記VEGF-Aポリペプチドが産生される、実施形態27又は28に記載の方法。
【0038】
30.前記ナノ粒子又は前記医薬組成物を皮内投与する、実施形態26~29のいずれか一つに記載の方法。
【0039】
31.前記ナノ粒子又は前記医薬組成物を、創傷に局所的に投与する、実施形態26~29のいずれか一つに記載の方法。
【0040】
32.前記ナノ粒子を、対象の体重当たり約0.01mg/kg~約10mg/kgの改変RNAを送達するのに十分な投薬量レベルで投与する、実施形態26~31のいずれか一つに記載の方法。
【0041】
33.前記投与により、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生が、前記対象へのクエン酸生理食塩水緩衝液中の前記改変RNAの投与と比較した場合に約1~約100倍増加する、実施形態26~32のいずれか一つに記載の方法。
【0042】
34.前記対象は、糖尿病に罹患している、実施形態26~33のいずれか一つに記載の方法。
【0043】
35.前記創傷は、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷(例えば、外傷性損傷の創傷)、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、褥瘡、床ずれ、及びこれらの組み合わせである、実施形態26~34のいずれか一つに記載の方法。
【0044】
36.血管新生を誘導する方法であって、実施形態1~12のいずれか一つに記載のナノ粒子又は実施形態13~25のいずれか一つに記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【0045】
37.血管形成を誘導する方法であって、実施形態1~12のいずれか一つに記載のナノ粒子又は実施形態13~25のいずれか一つに記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【0046】
38.毛細血管及び/又は細動脈密度を増加させる方法であって、実施形態1~12のいずれか一つに記載のナノ粒子又は実施形態13~25のいずれか一つに記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法。
【0047】
39.創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法であって、
(i)脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子又はその医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象の創傷に局所的に投与することを含む方法。
【0048】
40.前記脂質成分は、下記の構造
【化1】
を有する化合物を含む、請求項39に記載の方法。
【0049】
41.前記脂質成分は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレートを含む、請求項39に記載の方法。
【0050】
42.創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法であって、
(i)下記の構造
【化2】
を有する化合物を含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子又はその医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象の創傷に局所的に投与することを含む方法。
【0051】
43.創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法であって、
(i)ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレートを含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含むナノ粒子又はその医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象の創傷に局所的に投与することを含む方法。
【0052】
44.前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、実施形態39~43のいずれか一つに記載の方法。
【0053】
45.前記脂質成分は、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はDMG-PEGであるPEG脂質をさらに含む、実施形態39~44のいずれか一つに記載の方法。
【0054】
46.前記脂質中のイオン化可能な窒素原子と、前記RNA中のリン酸基の数との比(N:P比)は、約3:1である、実施形態39~45のいずれか一つに記載の方法。
【0055】
47.前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約10:1である、実施形態39~46のいずれか一つに記載の方法。
【0056】
48.前記医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤であって、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びこれらの混合物から選択される賦形剤を含む、実施形態39~47のいずれか一つに記載の方法。
【0057】
49.前記投与により、前記対象の血漿中か又は組織中において、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドが産生される、実施形態39~48のいずれか一つに記載の方法。
【0058】
50.前記投与により、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生が、前記対象へのクエン酸生理食塩水緩衝液中の前記改変RNAの投与と比較した場合に増加する、実施形態請求項39~49のいずれか一つに記載の方法。
【0059】
51.前記対象は、糖尿病に罹患している、実施形態39~50のいずれか一つに記載の方法。
【0060】
52.前記創傷は、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷(例えば、外傷性損傷の創傷)、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、褥瘡、床ずれ、及びこれらの組み合わせである、実施形態39~51のいずれか一つに記載の方法。
【0061】
53.創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法での使用のための実施形態1~12のいずれか一つに記載のナノ粒子又は実施形態13~25のいずれか一つに記載の医薬組成物であって、前記方法は、前記ナノ粒子又は医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0062】
54.前記投与により、前記対象の血漿中か又は組織中において、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドが産生される、実施形態53に記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0063】
55.前記VEGF-Aポリペプチドは、前記対象への前記ナノ粒子又は医薬組成物の投与後5又は6時間以内に、前記血漿中及び/又は組織中で検出される、実施形態54に記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0064】
56.前記投与により、前記対象中において、約1pg/mg超の前記VEGF-Aポリペプチドが産生される、実施形態54又は55に記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0065】
57.前記ナノ粒子又は前記医薬組成物を皮内投与する、実施形態53~56のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0066】
58.前記ナノ粒子又は前記医薬組成物を、創傷に局所的に投与する、実施形態53~56のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0067】
59.前記ナノ粒子を、対象の体重当たり約0.01mg/kg~約10mg/kgの改変RNAを送達するのに十分な投薬量レベルで投与する、実施形態53~58のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0068】
60.前記投与により、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生が、前記対象へのクエン酸生理食塩水緩衝液中の前記改変RNAの投与と比較した場合に約1~約100倍増加する、実施形態53~59のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0069】
61.前記対象は、糖尿病に罹患している、実施形態53~60のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0070】
62.前記創傷は、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷(例えば、外傷性損傷の創傷)、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、褥瘡、床ずれ、及びこれらの組み合わせである、実施形態53~61のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0071】
63.血管新生を誘導する方法での使用のための実施形態1~12のいずれか一つに記載のナノ粒子又は実施形態13~25のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0072】
64.血管形成を誘導する方法での使用のための実施形態1~12のいずれか一つに記載のナノ粒子又は実施形態13~25のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0073】
65.毛細血管及び/又は細動脈密度を増加させる方法の使用のための実施形態1~12のいずれか一つに記載のナノ粒子又は実施形態13~25のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0074】
66.創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法での使用のためのナノ粒子又はその医薬組成物であって、前記方法は、前記ナノ粒子又は医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象の創傷に局所的に投与することを含み、前記ナノ粒子又はその医薬組成物は、
(i)脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含む、使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0075】
67.前記脂質成分は、下記の構造
【化3】
を有する化合物を含む、請求項66に記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0076】
68.前記脂質成分は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレートを含む、請求項66に記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0077】
69.創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法での使用のためのナノ粒子又はその医薬組成物であって、前記方法は、前記ナノ粒子又は医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象の創傷に局所的に投与することを含み、前記ナノ粒子又はその医薬組成物は、
(i)下記の構造
【化4】
を有する化合物を含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含む、使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0078】
70.創傷治癒を促進する及び/又は向上させる方法での使用のためのナノ粒子又はその医薬組成物であって、前記方法は、前記ナノ粒子又は医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象の創傷に局所的に投与することを含み、前記ナノ粒子又はその医薬組成物は、
(i)ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレートを含む脂質成分と、
(ii)配列番号2のVEGF-Aポリペプチドをコードする、配列番号1及び3~5のいずれか1つを含む改変RNAと
を含む、使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0079】
71.前記脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質をさらに含む、実施形態66~70のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0080】
72.前記脂質成分は、DSPCであるリン脂質、コレステロールである構造脂質、及び/又はDMG-PEGであるPEG脂質をさらに含む、実施形態66~71のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0081】
73.前記脂質中のイオン化可能な窒素原子と、前記RNA中のリン酸基の数との比(N:P比)は、約3:1である、実施形態66~72のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0082】
74.前記脂質成分と前記改変RNAとのwt/wt比は、約10:1である、実施形態66~73のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0083】
75.前記医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤であって、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びこれらの混合物から選択される賦形剤を含む、実施形態66~74のいずれか一つに記載の使用のための医薬組成物。
【0084】
76.前記投与により、前記対象の血漿中か又は組織中において、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドが産生される、実施形態66~75のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0085】
77.前記投与により、配列番号2のVEGF-Aポリペプチドの産生が、前記対象へのクエン酸生理食塩水緩衝液中の前記改変RNAの投与と比較した場合に増加する、実施形態請求項66~76のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0086】
78.前記対象は、糖尿病に罹患している、実施形態請求項66~77のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。
【0087】
79.前記創傷は、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷(例えば、外傷性損傷の創傷)、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、褥瘡、床ずれ、及びこれらの組み合わせである、実施形態66~78のいずれか一つに記載の使用のためのナノ粒子又は医薬組成物。

当業者は、下記で説明されている図面が例示目的にすぎないことを理解するであろう。これらの図面は、本教示の範囲を制限することが決して意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】実施例で使用される脂質化合物(化合物A)を示す。
図2】改変VEGF-A RNA構築物の構造の図(図2A)、及び代表的なVEGF-A改変RNAの配列(配列番号1、図2B)。
図3】脂質化合物ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)を示す。
図4】マウスにおける改変VEGF-A RNAの皮内注射後の創傷治癒の評価に関する試験タイムライン。
図5】創傷治癒への、MC3と配合された改変VEGF-A RNA(mRNA VEGF 3μg MC3)、MC3と配合された非翻訳性VEGF-A RNA(mRNA VEGF NT(3μg)MC3)、及び生理食塩水/クエン酸組成物の皮内投与(注射)の効果。
図6】マウスにおける改変VEGF-A RNAの局所投与後の創傷治癒の評価に関する試験タイムライン。
図7】創傷治癒への、MCと配合された改変VEGF-A RNA(mRNA VEGF(3μg)MC3)、及び生理食塩水/クエン酸組成物の局所投与の効果。
図8A】化合物Aと配合された改変VEGF-A RNAの局所投与、生理食塩水/クエン酸に配合された改変VEGF-A RNAの局所投与、MC3と配合された改変VEGF-A RNAの局所投与、及びMC3と配合された改変VEGF-Aの皮内(単回注射)投与の5~6時間後での、ブタ組織中でのヒトVEGF-A(hVEGF-A)タンパク質発現。
図8B】ブタ皮膚での創傷の写真であり、描かれている円形は、局所投与の部位を示す。
【発明を実施するための形態】
【0089】
6.詳細な説明
本開示で参照された全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
前述の説明及び付随する図面で示されている教示の利益を有する、本明細書に記述されている本開示の多くの改変及び他の実施形態は、この開示が属する分野の当業者に思い浮かぶであろう。従って、本開示は、開示されている具体的実施形態に限定されるべきではないこと、且つ改変及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されていることを理解しなければならない。本明細書では特定の用語が用いられるが、これらは、一般的な及び説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。
【0091】
単位、接頭辞、及び記号は、それらのSI承認形で表示され得る。別途示されない限り、それぞれ、核酸は、5’から3’の方向に左から右に書かれており;アミノ酸配列は、アミノからカルボキシの方向に左から右に書かれている。数値範囲は、この範囲を定義する数字を含む。本明細書の値の範囲の記述は、単に、この範囲内にあるそれぞれ別の値を個々に言及する簡便表記方法としての役割を果たすことが意図されているに過ぎない。別途本明細書で示されない限り、それぞれ個々の値は、あたかもそれが本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書では、アミノ酸は、一般に知られている3文字記号又はIUPAC-IUB生化学命名法委員会(Biochemical Nomenclature Commission)により推奨されている1文字記号のいずれかにより言及され得る。ヌクレオチドは、同様に、一般に受け入れられている1文字コードで言及され得る。
【0092】
6.1.定義
別途具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。別途言及しない限り、本明細書で用いられるか又は企図される技術は、当業者に公知の標準的方法論である。本開示の実施は、別途示されない限り、当技術分野の技術内である、微生物学、組織培養、分子生物学、化学、生化学、及び組換えDNA技術の従来の技術を用いることとなる。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定的ではない。下記のものは、例示の目的で示され、本開示の範囲を限定することは意図されていない。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書(これに、特許請求の範囲全体が組み込まれる)に記述されている数値パラメータは、概数であり、この概数は、特定の実施形態により得られることが求められる所望の特性に応じて変動し得る。いくつかの実施形態では、この数値パラメータは、報告された有効桁数に照らして且つ通常の丸め技術を適用することにより、解釈されるべきである。本開示の広範にわたるいくつかの実施形態を記述する数値範囲及びパラメータは概数であるにもかかわらず、具体的な例で記述される数値は、可能な限り正確に報告されている。本開示のいくつかの実施形態で示される数値は、それぞれの試験測定で見られる標準偏差に必然的に起因する、いくらかの誤差を含む場合がある。本明細書の値の範囲の記述は、単に、範囲内にあるそれぞれ別の値を個々に言及する簡便表記方法としての役割を果たすことが意図されているに過ぎない。別途本明細書で示されない限り、それぞれ個々の値は、あたかもそれが本明細書に個々に列挙されていたかのように本明細書に組み込まれる。
【0094】
便宜のために、本出願全体(明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲を含む)において用いられるある種の用語を、ここに集める。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、本開示のある種の実施形態を説明し且つ特許請求するために使用される成分、特性、例えば分子量、反応条件、及び結果等の量を表す数は、場合によっては、用語「約」によって修飾されるものと理解するべきである。当業者は、修飾する値に照らして、用語「約」の意味を理解するであろう。いくつかの実施形態では、用語「約」は、ある値が、その値を決定するために用いられている装置又は方法に関する平均値の標準偏差を含むことを示すために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書(これに、特許請求の範囲全体が組み込まれる)に記述されている数値パラメータは、概数であり、この概数は、特定の実施形態により得られることが求められる所望される特性に応じて変動し得る。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有効桁数に照らして且つ通常の丸め技術を適用することにより、解釈されるべきである。本開示の広範にわたるいくつかの実施形態を記述する数値範囲及びパラメータは概数であるにもかかわらず、具体的な例において記述される数値は、可能な限り正確に報告されている。本開示のいくつかの実施形態で示される数値は、それぞれの試験測定で見られる標準偏差に必然的に起因する、いくらかの誤差を含む場合がある。
【0096】
本明細書で使用される場合、用語「投与すること」は、所望される部位又は組織位置でのナノ粒子及び/又は組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路による、ナノ粒子、及び/又は少なくとも1種のナノ粒子を含む医薬組成物の、哺乳類組織又は対象への配置を指す。いくつかの実施形態では、脂質成分と改変RNAとを含むナノ粒子を、皮内経路(例えば、注射による皮内経路)を介して投与し得る。いくつかの実施形態では、改変RNAにより発現されるタンパク質の少なくとも一部は、皮内投与を介して、所望される標的組織又は標的細胞の位置に局在化されている。いくつかの実施形態では、脂質成分と改変RNAとを含むナノ粒子を、局所投与又は局所適用により投与し得る。いくつかの実施形態では、脂質成分と改変RNAとを含むナノ粒子を、創傷への局所投与又は局所適用により投与し得る。いくつかの実施形態では、改変RNAにより発現されるタンパク質の少なくとも一部は、局所投与を介して、所望される標的組織又は標的細胞の位置に局在化されている。いくつかの実施形態では、皮内投与を介して投与された改変RNAに起因するタンパク質発現により、この改変RNAを投与しなかった場合の治癒と比較して、創傷の治癒が改善される。いくつかの実施形態では、局所投与を介して投与された改変RNAに起因するタンパク質発現により、この改変RNAを投与しなかった場合の治癒と比較して、創傷の治癒が改善される。
【0097】
用語「医薬組成物」は、治療上活性な成分と、当技術分野で通常である薬学的に許容される担体又は賦形剤等の担体又は賦形剤とを含む混合物を指す。例えば、医薬組成物は、本明細書で使用される場合、通常は、脂質成分、本開示に係る改変RNA、及び適切な賦形剤を少なくとも含む。
【0098】
用語「化合物」には、表された構造の全ての同位体及び異性体が含まれる。「同位体」は、原子番号は同一であるが核内の異なる中性子数に起因して質量数が異なる原子を指す。例えば、水素の同位体として、トリチウム及び重水素が挙げられる。さらに、本開示の化合物、塩、又は複合体を、通例の方法により、溶媒又は水分子と組み合わせて調製して溶媒和物及び水和物を形成し得る。「異性体」は、化合物のあらゆる幾何異性体、互変異性体、双性イオン、立体異性体、鏡像異性体、又はジアステレオマーを意味する。化合物は、1つ又は複数のキラル中心及び/又は二重結合を含み得、そのため、二重結合異性体又はジアステレオマー等の立体異性体として存在し得る。本開示は、本明細書で説明されている化合物のありとあらゆる異性体(例えば、立体異性体的に(stereomerically)純粋な形態、並びに鏡像異性体及び立体異性体混合物(例えばラセミ体))を包含する。化合物の鏡像異性体及び立体異性体(stereomeric)混合物、並びにこれらをその構成要素の鏡像異性体又は立体異性体に分割する手段は、当技術分野で公知である。
【0099】
用語「含む(comprise)」、「有する(have)」、及び「含まれる(include)」は、制約のない連結動詞である。これらの動詞の内の1つ又は複数のあらゆる形態又は時制も制約がなく、例えば、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、「含まれる(includes)」、及び「~を含めて(including)」も制約がない。例えば、1つ又は複数のステップ「を含む(comprises)」、「を有する(has)」、又は「が含まれる(includes)」いずれかの方法は、これらの1つ又は複数のステップのみを有することに限定されず、他の列挙されていないステップも包含し得る。同様に、1つ又は複数の特徴「を含む(comprises)」、「を有する(has)」、又は「が含まれる(includes)」いずれかの組成物は、これらの1つ又は複数の特徴のみを有することに限定されず、他の列挙されていない特徴も包含し得る。ある種の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例、又は例示的な言葉(例えば「等」)の使用は、本明細書では、本開示をより明らかにすることが意図されているにすぎず、別途特許請求されている本開示の範囲に対する限定を与えるものではない。本明細書中の言葉は、本開示の実施に不可欠であるものとしてのいずれかの特許請求されてない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0100】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求されている発明の「基本の及び新規の特性に実質的に影響を及ぼさない」追加の材料又はステップの存在を可能にする。
【0101】
用語「からなる(consisting of)」は、実施形態の説明において列挙されていないあらゆる要素を除外する、本明細書で説明されている組成物、方法、及びこれらのそれぞれの構成要素を指す。
【0102】
用語「送達すること(delivering)」は、実体を目的部位に提供することを意味する。例えば、治療薬を対象に送達することは、改変RNAを含む少なくとも1種のナノ粒子を含む医薬組成物を、(例えば皮内経路又は局所経路により)対象に投与することを含み得る。少なくとも1種のナノ粒子を含む医薬組成物の哺乳類組織又は対象への投与は、皮内投与(例えば皮内注射)を介して、1つ又は複数の細胞と、この医薬組成物とを接触させることを含み得る。少なくとも1種のナノ粒子を含む医薬組成物の哺乳類組織又は対象への投与は、局所投与又は局所適用を介して、1つ又は複数の細胞と、この医薬組成物とを接触させることを含み得る。
【0103】
用語「疾患」又は「障害」は、本明細書では互換的に使用され、身体若しくはいくつかの器官の状態の任意の変化、機能の実行の中断若しくは妨害、及び/又は悩んでいる人若しくは人と接触するものに、不快、機能障害、苦痛、又はさらには死亡等の症状を引き起こすことを指す。疾患又は障害はまた、不健康(distemper)、病的状態(ailing)、慢性的な軽い病気(ailment)、慢性病(malady)、不調(sickness)、疾病(illness)、愁訴(complaint)、体調不良(indisposition)、又は病気(affection)に関連し得る。
【0104】
用語「有効量」は、本明細書で使用される場合、疾患若しくは障害の少なくとも1つ若しくは複数の症状を軽減させるのに十分か又は所望される効果を提供するのに十分な、治療薬(例えば改変RNA)又は医薬組成物の量を指す。例えば、有効量は、創傷治癒と関連する症状又は臨床マーカーの治療的に有意な低下を誘導する量であり得る。
【0105】
本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」は、下記の事象の内の1つ又は複数を指す:(1)(例えば転写による)DNA配列からのRNA鋳型の産生;(2)(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/又は3’末端プロセシングによる)RNA転写物のプロセシング;(3)RNAのポリペプチド又はタンパク質への翻訳;並びに(4)ポリペプチド又はタンパク質の翻訳後修飾。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「脂質成分」は、1種又は複数種の脂質を含むナノ粒子の構成成分である。例えば、脂質成分は、1種又は複数種のカチオン性の/イオン化可能な脂質、PEG化された脂質、構造脂質、又は他の脂質(例えばリン脂質)を含み得る。一実施形態では、脂質成分は、化合物Aを含む(図1)。一実施形態では、脂質成分は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)を含む。
【0107】
本明細書で使用される場合、用語「改変RNA」は、アデノシン(A)((2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-3,4-ジオール)、グアノシン(G)(2-アミノ-9-[3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]-3H-プリン-6-オン)、シチジン(C)(4-アミノ-1-[3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル]ピリミジン-2-オン)、及びウリジン(U)(1-[(3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)オキソラン-2-イル]ピリミジン-2,4-ジオン)と比較して、若しくはRNA分子内のAMP、GMP、CMP、及びUMPと比較して、1つ、2つ、若しくは2つよりも多いヌクレオシド改変を含むRNA分子、又はその一部を指す。ヌクレオシド改変の非限定的な例は、本明細書内の他の場所で提供される。特許請求されている特定のRNAのヌクレオチド配列が、天然に存在するRNA分子の配列と他の点で同一である場合には、改変RNAは、天然の対応物中に存在するものとは異なる少なくとも1つの改変を有するRNA分子であると理解される。この相違は、ヌクレオシド/ヌクレオチドに対する化学変化、又は配列内のこの変化の位置であり得る。一実施形態では、改変RNAは、改変メッセンジャーRNA(又は「改変mRNA」)である。いくつかの実施形態では、改変RNAには、改変されてN1-メチル-シュードUMPが形成される少なくとも1つのUMPが含まれる。いくつかの実施形態では、改変RNA中の全てのUMPは、N1-メチル-シュードUMPに置き換えられている。
【0108】
本明細書で使用される場合、「ナノ粒子」は、1種又は複数種の脂質と、1種又は複数種の治療薬とを含む粒子である。ナノ粒子は、典型的には、およそ数マイクロメートル又はそれよりも小さいサイズであり、脂質二重層を含み得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、動的光散乱により測定された場合には、平均直径(例えば流体力学的直径)が約50nm~約100nmであり、例えば、約60nm~約90nm、約70nm~約90nm、又は約70nm~約85nmである(NIST Special Publication 1200-6,“Measuring the Size of Nanoparticles in Aqueous Media Using Batch Mode Dynamic Light Scattering”を参照されたい)。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、平均流体力学的直径が約71nm、72nm、73nm、74nm、75nm、76nm、77nm、78nm、79nm、80nm、81nm、82nm、83nm、84nm、85nm、86nm、87nm、88nm、89nm、又は90nmである。いくつかの実施形態では、治療薬は、改変RNAである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、図1に示す化合物Aと、改変RNAとを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)と、改変RNAとを含む。
【0109】
本明細書で使用される場合、「多分散指数(polydispersion index)(pDI)」は、ナノ粒子状試料中のナノ粒子径の分布の尺度である(NIST Special Publication 1200-6,“Measuring the Size of Nanoparticles in Aqueous Media Using Batch Mode Dynamic Light Scattering”を参照されたい)。いくつかの実施形態では、多分散性指数は、約0.01~約0.20であり、例えば、約0.03~約0.10、約0.04~約0.08、例えば、約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、又は0.20である。
【0110】
本明細書で使用される場合、「N:P比」は、例えば、脂質成分と改変RNAとを含むナノ粒子における、脂質中の(生理学的pH範囲で)イオン化可能な窒素原子と、RNA中のリン酸基とのモル比である。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「核酸」には、その最も広い意味では、ホスホジエステル結合を介して連結されたヌクレオチドのポリマーを含むあらゆる化合物及び/又は物質が含まれる。これらのポリマーは、サイズに応じてオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドと称されることが多い。用語「ポリヌクレオチド配列」及び「ヌクレオチド配列」はまた、本明細書では互換的に使用される。
【0112】
本明細書で使用される場合、「PEG脂質」又は「PEG化脂質」は、ポリエチレングリコール成分を含む脂質を指す。
【0113】
語句「薬学的に許容される」は、本明細書では、妥当なベネフィット/リスク比で、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴うことなくヒト及び動物の組織との接触での使用に適した、適切な医学的判断の範囲内である化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために用いられる。薬物承認機関(例えば、EMA、US-FDA)は指針を提供しており、薬学的に許容される化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を承認する。例は、薬局方に列挙されている。
【0114】
語句「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書では、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びこれらの混合物から選択される、薬学的に許容される材料を指すために用いられる。いくつかの実施形態では、溶媒は、水性溶媒である。
【0115】
本明細書で使用される場合、「リン脂質」は、リン酸部分と、不飽和脂肪酸鎖等の1本又は複数本の炭素鎖とを含む脂質である。リン脂質は、1つ又は複数の多重(例えば、二重又は三重)結合(例えば、1つ又は複数の不飽和)を含み得る。特定のリン脂質は、膜への融合を容易にし得る。例えば、カチオン性のリン脂質は、膜(例えば、細胞膜又は細胞内膜)の負の電荷を持つ1つ又は複数のリン脂質と相互作用し得る。膜へのリン脂質の融合は、脂質含有組成物の1種又は複数種の要素を膜に通過させて、例えば、1種又は複数種の要素の細胞への送達を可能にし得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ほとんどの場合にはペプチド結合により共に連結されているアミノ酸残基(天然又は非天然)のポリマーを意味する。この用語は、本明細書で使用される場合、あらゆるサイズ、構造、又は機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。ポリペプチドは、単一分子であってもよいし、二量体、三量体、又は四量体等の多分子複合体でもあってもよい。これらはまた、抗体又はインスリン等の単鎖又は多連鎖のポリペプチドも含み得、且つ会合され得るか又は連結され得る。最も一般的には、多連鎖ポリペプチド中にはジスルフィド結合が見られる。用語ポリペプチドはまた、1つ又は複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的類似体である、アミノ酸ポリマーにも当てはまり得る。
【0117】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」は、20種のアミノ酸の内のいずれかから本質的になるポリマーである。「ポリペプチド」は、比較的大きいポリペプチドに関して使用されることが多いが、「ペプチド」は、小さいポリペプチドに関して使用されることが多く、これらの用語の使用法は、当技術分野で重なり合っており、且つ多様である。用語「ペプチド」、「タンパク質」、及び「ポリペプチド」は、本明細書では互換的に使用されることがある。
【0118】
用語「対象」は、本明細書で説明されている方法及び組成物による処置(例えば予防的処置)が提供される動物(例えばヒト)を指す。ヒト対象等の特定の動物に対して特異的である状態又は病状の処置の場合には、用語「対象」は、この特定の動物を指す。
【0119】
用語「組織」は、ある種の特別な機能を共に実施する、同様に特化された細胞の群又は層を指す。
【0120】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」、又は「処置すること」は、疾患若しくは障害又はその少なくとも1種の認識可能な症状の回復又は消失を指す。いくつかの実施形態では、「治療」又は「治療すること」は、必ずしも患者によって認識可能とは限らない少なくとも1種の測定可能な物理的パラメータの回復又は消失を指す。
本開示は、本明細書で説明されている特定の方法論、プロトコル、及び試薬等に限定されず、従って変わり得ることを理解するべきである。
本明細書で使用されている用語法は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、本開示の範囲を限定することは意図されておらず、本開示は、もっぱら特許請求の範囲により定義される。
【0121】
6.2.脂質成分
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、化合物Aを含む脂質成分を含む(図1)。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)を含む脂質成分を含む。追加の化合物は、全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2017/049245 A2号パンフレットに開示されている(例えば、国際公開第2017/049245 A2号パンフレット中の化合物1-147を参照されたい)。脂質成分は、リン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質等の様々な他の脂質も含み得る。
【0122】
リン脂質
ナノ粒子の脂質成分は、1種又は複数種のリン脂質(例えば、1種又は複数種の(ポリ)不飽和脂質)を含み得る。リン脂質は、1つ又は複数の脂質二重層へと組み立てられ得る。一般に、リン脂質は、リン脂質部分と1つ又は複数の脂肪酸部分とを含み得る。
【0123】
これらの組成物及び方法で有用なリン脂質は、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、l,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジウンデカノイル-sn-グリセロ-ホスホコリン(DUPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 Diether PC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミサクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(ME 16.0 PE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジリノレノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジアラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジドコサヘキサエノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)、及びスフィンゴミエリンからなる非限定的な群から選択され得る。いくつかの実施形態では、脂質成分は、DSPCを含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、DOPEを含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、DSPCとDOPEとの両方を含む。
【0124】
構造脂質
ナノ粒子の脂質成分は、1種又は複数種の構造脂質を含み得る。構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンプエステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びこれらの混合物から選択され得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、構造脂質は、コレステロールである。いくつかの実施形態では、構造脂質は、コレステロール及び副腎皮質ステロイド(例えば、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びヒドロコルチゾン)、又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、コレステロールを含む。
【0125】
PEG脂質
ナノ粒子の脂質成分は、1種又は複数種のPEG又はPEG修飾脂質を含み得る。そのような脂質は、代わりにPEG化脂質と称され得る。PEG脂質は、ポリエチレングリコールで修飾された脂質である。PEG脂質は、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール、及びこれらの混合物からなる非限定的な群から選択され得る。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、DMG-PEG(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングルコール)、Avanti Polar Lipids,Alabaster,ALから入手可能)、DMG-PEG2000(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000)、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC、又はPEG-DSPE脂質であり得る。いくつかの実施形態では、脂質成分は、DMG-PEGを含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、DMG-PEG2000を含む。
【0126】
6.3.VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNA
インビトロ、インビボ、インサイチュ、又はエクスビボにかかわらず、核酸(例えばリボ核酸(RNA))を細胞内に送達し得ること、例えば、核酸の細胞内翻訳及びコードされた目的のポリペプチドの産生を引き起こし得ることは、治療法、診断法、試薬の分野において及び生物学的アッセイにとって非常に興味深い。
【0127】
天然に存在するRNAは、下記の4種の基本的なリボヌクレオチド:ATP、CTP、UTP、及びGTPから合成されているが、転写後に改変されたヌクレオチドを含み得る。さらに、RNAでは、約100種の異なるヌクレオシド改変が特定されている(Rozenski,J,Crain,P,and McCloskey,J.,The RNA Modification Database:1999 update,Nucl Acids Res,(1999)27:196-197)。
【0128】
本開示によれば、これらのRNAは、当技術分野の他のRNA分子の欠点(例えば、投与時の自然免疫応答及び急速分解を活性化する)を回避するためのものとして改変されることが好ましい。従って、これらのポリヌクレオチドは、改変RNAと呼ばれる。いくつかの実施形態では、改変RNAは、対象への投与時の自然免疫応答を回避する。いくつかの実施形態では、改変RNAの半減期は、非改変RNAと比較して延長されている。
【0129】
好ましい実施形態では、RNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)である。本明細書で使用される場合、用語「メッセンジャーRNA」(mRNA)は、目的のポリペプチドをコードしており且つインビトロ、インビボ、インサイチュ、又はエクスビボで翻訳されて、このコードされた目的のポリペプチドを産生する能力があるあらゆるポリヌクレオチドを指す。
【0130】
図2Aに示すように、従来、mRNA分子の基本構成要素として、コード領域、5’非翻訳領域(UTR)、3’非翻訳領域(UTR)、5’キャップ、及びポリAテールが少なくとも挙げられる。この野生型モジュール構造の構築に関して、本開示は、モジュールの組織化を維持するがポリヌクレオチドに有用な特性(例えば、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドが導入される細胞の自然免疫応答の実質的誘発の欠如)を付与する1つ又は複数の構造的な及び/又は化学的な改変又は変更を含むポリヌクレオチド又は一次RNA構築物を提供することにより、従来のmRNA分子の機能性の範囲を拡大する。
【0131】
改変RNAとして、標準的なRNAヌクレオチド鎖に対する任意の有用な改変が挙げられ得、例えば、糖、核酸塩基(例えば、ピリミジン核酸塩基の原子を、任意選択的に置換されたアミノ、任意選択的に置換されたチオール、任意選択的に置換されたアルキル(例えば、メチル若しくはエチル)、又はハロ(例えば、クロロ若しくはフルオロ)と置き換えるか又は置換することによる、核酸塩基の1つ又は複数の改変)、又はヌクレオシド間結合(例えば、ホスホジエステル骨格に対する1つ若しくは複数の改変)が挙げられ得る。
【0132】
非限定的な例として、いくつかの実施形態では、改変RNAとして、例えば、改変されてN1-メチル-シュード-UMPが形成される少なくとも1つのウリジン一リン酸(UMP)が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、N1-メチル-シュード-UMPは、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99.9%、及び100%という、配列中のUMPの割合で、UMPの代わりに存在する。いくつかの実施形態では、全てのUMPが、N1-メチル-シュード-UMPに置き換えられている。
【0133】
いくつかの実施形態では、改変RNAは、5’ジグアノシンキャップ等の5’キャップに対する改変を含む。いくつかの実施形態では、改変RNAは、コード領域に対する改変を含む。いくつかの実施形態では、改変RNAは、5’UTRに対する改変を含む。いくつかの実施形態では、改変RNAは、3’UTRに対する改変を含む。いくつかの実施形態では、改変RNAは、ポリ(A)テールに対する改変を含む。いくつかの実施形態では、改変RNAは、コード領域、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、又はポリ(A)テールに対する改変の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、改変RNAは、アルカリホスファターゼで任意選択的に処理され得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、改変RNAは、一般に創傷治癒の調節において中心的役割を果たす血管内皮増殖因子(VEGF)ポリペプチド(VEGFタンパク質の大きなファミリーのいずれか1つ)をコードする。VEGFの役割として、一酸化窒素(NO)シグナル伝達、発生上での及び出生後の血管形成、腫瘍血管形成、動脈形成、内皮複製、並びに多能性心血管前駆細胞のための細胞運命スイッチの活性化も挙げられる。
【0135】
ある特定のVEGF遺伝子に関して1種又は複数種のバリアント又はアイソフォームが存在し得ることが、当業者により理解されるだろう。本開示に係るVEGF-Aポリペプチドの非限定的な例を、表1に列挙する。表1で開示されている配列が隣接領域の可能性を含むことが、当業者により理解されるだろう。これらは、オープンリーディングフレームの5’(上流)又は3’(下流)のいずれかに対して各ヌクレオチド配列中にコードされている。オープンリーディングフレームは、ヌクレオチド参照配列を教示することにより、明確に及び具体的に開示されている。1種又は複数種の利用可能なデータベース又はアルゴリズムを利用することにより、5’隣接領域及び3’隣接領域をさらに特徴付けることも可能である。データベースは、NCBI配列の隣接領域に含まれる特徴に注釈を施しており、これらは当技術分野で利用可能である。
【0136】
【表1-1】
【0137】
【表1-2】
【0138】
【表1-3】
【0139】
VEGF-Aポリペプチド(例えばヒトVEGF-Aポリペプチド)をコードするRNA分子を、表1に列挙されたVEGF-A mRNAアイソフォームに従って設計し得ることが、当業者に理解されるだろう。当業者は、一般に、残りのVEGFファミリーメンバーの複数のアイソフォームを熟知している。
【0140】
一実施形態では、本開示は、VEGF-Aポリペプチド(例えば配列番号2)をコードする改変RNAを提供する。いくつかの実施形態では、改変RNAは、VEGF-Aポリペプチドをコードし、この改変RNAは、配列番号1及び3~5の内のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、改変RNAは、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)テール、又はこれらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)テール、又はこれらの任意の組み合わせは、1つ又は複数の改変ヌクレオチドを含み得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAは、図2Bに示される構造を有し得、この構造は、配列番号1である。いくつかの実施形態では、VEGF-Aポリペプチドをコードする改変RNAは、配列番号3~5の内のいずれか1つの配列を有し得る。
【0142】
6.4.脂質成分と改変RNAとを含む組成物
いくつかの実施形態は、脂質成分と改変RNAとを含むナノ粒子に関する。
【0143】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、化合物A(図1)を含み得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、本明細書で開示されているリン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、DSPC、コレステロール、DMG-PEG、及びこれらの混合物を含み得る。脂質成分の要素は、特定の比率で提供され得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、化合物A、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、総モル%が100%を超えないという条件で、約30モル%~約60モル%の化合物A、約0モル%~約30モル%のリン脂質、約18.5モル%~約48.5モル%の構造脂質、及び約0モル%~約10モル%のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、約35モル%~約55モル%の化合物A、約5モル%~約25モル%のリン脂質、約30モル%~約40モル%の構造脂質、及び約0モル%~約10モル%のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、約50モル%の化合物A、約10モル%のリン脂質、約38.5モル%の構造脂質、及び約1.5モル%のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、DOPEであり得る。いくつかの実施形態では、リン脂質は、DSPCであり得る。いくつかの実施形態では、構造脂質は、コレステロールであり得る。いくつかの実施形態では、PEG脂質は、DMG-PEGであり得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)(図3)を含み得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、本明細書で開示されているリン脂質、構造脂質、及び/又はPEG脂質をさらに含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、DSPC、コレステロール、DMG-PEG(例えばDMG-PEG2000)、及びこれらの混合物を含み得る。
【0145】
脂質成分の要素は、特定の比率で提供され得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、ジリノレイルメチル-4-ジメチルアミノブチレート(DLin-MC3-DMA)、リン脂質、構造脂質、及びPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、総モル%が100%を超えないという条件で、約30モル%~約60モル%のDLin-MC3-DMA、約0モル%~約30モル%のリン脂質、約18.5モル%~約48.5モル%の構造脂質、及び約0モル%~約10モル%のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の脂質成分は、約35モル%~約55モル%のDLin-MC3-DMA、約5モル%~約25モル%のリン脂質、約30モル%~約40モル%の構造脂質、及び約0モル%~約10モル%のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質成分は、約50モル%のDLin-MC3-DMA、約10モル%のリン脂質、約38.5モル%の構造脂質、及び約1.5モル%のPEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、DSPCであり得る。いくつかの実施形態では、構造脂質は、コレステロールであり得る。いくつかの実施形態では、PEG脂質は、DMG-PEG(例えばDMG-PEG2000)であり得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子の改変RNA成分は、本明細書で開示されているVEGF-Aポリペプチド(例えば配列番号2)をコードする改変RNAを含み得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の改変RNA成分は、配列番号1及び3~5の内のいずれか1つを含む改変RNAを含み得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の改変RNA成分は、配列番号3を含む改変RNAを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の改変RNA成分は、配列番号4を含む改変RNAを含む。いくつかの実施形態では、改変RNAは、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)テール、又はこれらの任意の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)テール、又はこれらの任意の組み合わせは、1つ又は複数の改変ヌクレオチドを含み得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子中の脂質成分と改変RNAとの相対量は、変動し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子中の脂質成分と改変RNAとのwt/wt比は、約5:1~約100:1であり得、例えば、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、及び100:1であり得る。例えば、脂質成分と改変RNAとのwt/wt比は、約5:1~約40:1であり得る。いくつかの実施形態では、wt/wt比は、約10:1~約20:1である。いくつかの実施形態では、wt/wt比は、約20:1である。いくつかの実施形態では、wt/wt比は、約10:1である。いくつかの実施形態では、wt/wt比は、約10.25:1である。
【0148】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子中の脂質成分と改変RNAとの相対量は、特定のN:P比により提供され得る。組成物のN:P比は、1又は複数の脂質中の窒素原子と、RNA中のリン酸基の数とのモル比を指す。一般に、より小さいN:P比が好ましい。いくつかの実施形態では、N:P比は、約2:1~約30:1であり得、例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、12:1、14:1、16:1、18:1、20:1、22:1、24:1、26:1、28:1、又は30:1であり得る。いくつかの実施形態では、N:P比は、約2:1~約8:1であり得る。例えば、N:P比は、約3.0:1、約3.5:1、約4.0:1、約4.5:1、約5.0:1、約5.5:1、約5.67:1、約6.0:1、約6.5:1、又は約7.0:1であり得る。いくつかの実施形態において、N:P比は、約2:1~約4:1であり得る。いくつかの実施形態において、N:P比は、約3:1であり得る。
【0149】
脂質ナノ粒子を、当技術分野で公知の方法を使用して調製し得る(例えば、Belliveau et al.,“Microfluidic synthesis of highly potent limit-size lipid nanoparticles for in vivo delivery of siRNA,”Mol.Ther.Nucleic Acids,2012,1(8):e37;Zhigaltsev et al.,Bottom-up design and synthesis of limit size lipid nanoparticle systems with aqueous and triglyceride cores using millisecond microfluidic mixing,”Langmuir,2012,28(7):3633-3640を参照されたい)。
【0150】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得、本明細書で使用される場合、この賦形剤として下記が挙げられるが、これらに限定されない:所望される特定の剤形に適合された、ありとあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、及び同類のもの。賦形剤として下記も挙げられ得るが、これらに限定されない:ポリマー、コア-シェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣物、及びこれらの組み合わせ。医薬組成物を形成するための様々な賦形剤、及びこの組成物を調製するための技術は、当技術分野で既知である(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22ndEdition,Edited by Allen,Loyd V.,Jr,Pharmaceutical Press(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。従来の賦形剤媒体の使用は、任意の従来の賦形剤媒体が、例えば、任意の望ましくない生物学的影響をもたらすか又は別の方式で医薬組成物の任意の他の成分と有害な方式で相互作用することにより、物質又はその誘導体と適合しない可能性がある場合を除いて、本開示の範囲内であると考えることができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、薬学的に有効な量の脂質成分及び改変RNAを含み得、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、コア-シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びこれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、溶媒は、水性溶媒である。いくつかの実施形態では、溶媒は、非水性溶媒である。
【0152】
本開示はまた、本明細書で開示されている脂質成分及び改変RNAを含む1種又は複数種の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書で開示されている複数種の脂質ナノ粒子と、薬学的に許容される賦形剤とを含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、溶媒、分散媒、希釈剤、分散、懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、コア-シェルナノ粒子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、細胞、ヒアルロニダーゼ、及びこれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、溶媒は、水性溶媒である。いくつかの実施形態では、溶媒は、非水性溶媒である。
【0153】
6.5.対象における創傷治癒の向上
VEGF-A経路は、損傷を受けた組織の血行再建、血管透過性の向上、及び新しい血管の形成を含む創傷治癒過程における中心的役割を果たす。不完全な創傷治癒過程に起因する疾患に罹患している対象を治療することが、本開示の目標である。
【0154】
いくつかの実施形態では、本開示に係るナノ粒子を、血管構造に影響を及ぼす疾患に罹患している対象に投与する。血管構造は、最も一般的には、穿通性の外傷、熱傷、又は手術により損傷される。糖尿病は、創傷治癒の多数の要素を損ない、糖尿病性の創傷治癒を有する患者は一般に、血管機能障害が原因で、血流が変化している。従って、糖尿病性潰瘍等の皮膚潰瘍を有する患者は、通常、創傷治癒が低下しているか、又は遅延している。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子を、糖尿病に罹患している対象に投与する。本開示の文脈では、創傷は、例えば、手術創、熱傷、擦過傷、皮膚生検部位、慢性創傷、損傷(例えば、外傷性損傷の創傷)、移植創、糖尿病性創傷、糖尿病性潰瘍(例えば、糖尿病性足部潰瘍)、褥瘡、床ずれ、及びこれらの組み合わせであり得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、脂質成分と改変RNA(例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号4、又は配列番号5)とを含むナノ粒子を使用して、哺乳類組織又は対象における創傷治癒を向上させ得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子を使用して、哺乳類組織又は対象における血管新生を誘導し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子を使用して、哺乳類組織又は対象における血管形成を誘導し得る。
【0157】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子を使用して、外傷又は手術による血管損傷を処置し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子を使用して、皮膚移植及び組織移植を必要とする疾患を処置し得る。
【0158】
本開示の他の態様は、それを必要とする対象へのナノ粒子の投与に関する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子を、哺乳類組織又は対象の創傷治癒を向上させるために、皮内経路を介して投与される。
【0159】
ある種の実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子を、所望される治療効果を得るために、1日当たり対象の体重当たり約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.001mg/kg~約0.05mg/kg、約0.005mg/kg~約0.05mg/kg、約0.001mg/kg~約0.005mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、又は約1mg/kg~約25mg/kgの改変RNAを送達するのに十分な投薬量レベルで、1日1回又は複数回投与し得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子を、単回投与で対象に投与する。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されているナノ粒子を、固定投薬量での複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20回以上)の投与で、対象に投与する。この段落内のそれぞれの実施形態では、「複数回投与」を、互いに、短い(1~5分)、中程度の(6~30分)、又は長い(30分超、数時間、さらには数日)時間間隔だけ離し得る。
【0161】
ナノ粒子を、疾患、障害、及び/又は状態を処置するのに有効な任意の投薬量の投与を使用して、対象に投与し得る。必要とされる正確な投薬量は、対象の人種、年齢、及び全身状態、疾患の重症度、個別の製剤、その投与様式、その活性様式、及び同類のものに応じて、対象毎に変わり得る。しかしながら、組成物の1日当たりの総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定され得ることが理解されよう。任意の特定の患者にとっての具体的な薬学的に有効な用量レベルは、疾患の重症度、用いられる具体的な組成物、患者の年齢、体重、全身の健康、性別、及び食事、投与時刻、投与経路(例えば、皮内又は局所)、治療の期間、並びに医療分野で公知の同様の因子等の様々な要因に応じて決まるだろう。
【0162】
請求項リスト中の請求項は全て、追加の実施形態として、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0163】
7.実施例
実施例1
ナノ粒子及びクエン酸生理食塩水組成物の調製
化合物A脂質ナノ粒子(化合物A-LNP):化合物A、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、Avanti Polar Lipids)、コレステロール(Sigma)、及び1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(NOF CorporationのDMG-PEG2000)から、エタノール中の脂質のストック溶液を調製した。この脂質を、12.5mMの総脂質濃度までエタノール99.5%に混合した。この組成は、50:10:38.5:1.5%モルの比の化合物A、DSPC、コレステロール、DMG-PEG2000であった。VEGF-A改変RNA(例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号4、又は配列番号5)を解凍し、最終配合物における11:1の総脂質:mRNA重量比(電荷比 窒素:リン酸塩(N:P)=3)に相当する濃度にて、酢酸ナトリウム緩衝液及びHyClone水で6.25mMまで希釈した。希釈後の最終配合物は、下記の通りであった。
【0164】
【表2】
【0165】
脂質を含むエタノール溶液と、改変VEGF-A RNAの水溶液とをマイクロ流体デバイスで素早く混合し、それに続いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中での透析を行うことにより、化合物A-LNP組成物を調製した。簡潔に説明すると、改変VEGF-A RNA溶液と脂質溶液とを、シリンジポンプにより制御される2つのシリンジを使用して、水とエタノール3:1の体積比及び12~14mL/分の流速で、マイクロ流体混合デバイス(NanoAssemblr(商標)(Precision Nanosystems))に注入した。化合物A-LNP組成物を、10KDカットオフを有する膜を使用してPBS緩衝液に対して一晩透析することにより、エタノールを除去した。化合物A-LNP組成物を、粒径(63nm)、多分散性指数(0.10)、及び封入(96%)により特徴付けた。化合物A-LNP組成物を、PBS及び濾過滅菌により、0.06mg/mLの最終濃度まで希釈した。化合物A-LNP組成物を、冷蔵保存した。Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd)を使用する動的光散乱により、化合物A-LNPのサイズ及び多分散性を決定し、RiboGreenアッセイを使用して、化合物A-LNP製剤中のmRNAの封入及び濃度を決定した。
【0166】
DLin-MC3-DMA脂質ナノ粒子(MC3-LNP):DLin-MC3-DMA(Jayaraman,M.,et al.,Angew Chem Int Ed Engl,2012,51(34),p.8529-33で説明されているように合成した)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC、Avanti Polar Lipids)、コレステロール(Sigma)、及び1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(NOF CorporationのDMG-PEG2000)から、エタノール中の脂質のストック溶液を調製した。この脂質を、12.5mMの総脂質濃度までエタノール99.5%に混合した。この組成は、50:10:38.5:1.5%モルの比のDLin-MC3-DMA、DSPC、コレステロール、DMG-PEG2000であった。VEGF-A改変RNA(例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号4、又は配列番号5)を解凍し、最終配合物における10.25:1の総脂質:mRNA重量比(電荷比 窒素:リン酸塩(N:P)=3)に相当する濃度にて、酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)及びHyClone水で6.25mMまで希釈した。希釈後の最終配合物は、下記の通りであった。
【0167】
【表3】
【0168】
MC3-脂質ナノ粒子(LNP)組成物:脂質を含むエタノール溶液と、VEGF-A改変RNAの水溶液とをマイクロ流体デバイスで素早く混合し、それに続いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中での透析を行うことにより、LNP組成物を調製した。簡潔に説明すると、VEGF-A改変RNA溶液と脂質溶液とを、シリンジポンプにより制御される2つのシリンジを使用して、水とエタノール3:1の体積比及び12~14mL/分の流速で、マイクロ流体混合デバイス(NanoAssemblr(商標)(Precision Nanosystems))に注入した。マイクロ流体混合後、MC3-LNPを、10kの分子量カットオフを有するSlide-A-Lyzer(商標)G2透析カセット(Thermo Scientific)を使用してリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に対して一晩透析した。
【0169】
MC3-LNP組成物を、粒径(77~85nm)、VEGF-A改変RNA濃度(0.076~0.1mg/mL)、多分散性指数(0.04~0.08)、及び封入(96~98%)により特徴付けた。MC3-LNP組成物を、PBS及び濾過滅菌により、0.075mg/mLの最終濃度まで希釈した。MC3-LNP組成物を、冷蔵保存した。Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd)を使用する動的光散乱により、MC3-LNPのサイズ及び多分散性を決定し、RiboGreenアッセイを使用して、MC3-LNP製剤中のmRNAの封入及び濃度を決定した。
【0170】
クエン酸生理食塩水組成物:解凍した改変VEGF-A RNA溶液を、HyClone水及び濃縮された緩衝液で、10mMのクエン酸ナトリウム及び130mMの塩化ナトリウムの最終濃度(pH6.5)まで希釈することにより、クエン酸生理食塩水組成物を調製した。
【0171】
実施例2
マウスにおけるヒトVEGF-A改変RNAの皮内注射後の創傷治癒の評価
改変VEGF-A RNAとDLin-MC3-DMAとを含むMC3脂質ナノ粒子組成物を、配列番号4の配列を有するVEGF-A改変RNAにより、実施例1と同様に調製した。
【0172】
非翻訳性(NT)改変VEGF-A RNAとDLin-MC3-DMAとを含む別のMC3脂質ナノ粒子組成物を、配列番号6の配列を有するVEGF-A改変RNAにより、実施例1と同様に調製した。
【0173】
雄のdb/dbマウスを使用した。このマウスは、II型糖尿病の樹立されたモデルであり、野生型マウスと比較した場合に創傷治癒障害を有する。
【0174】
図4は、本試験の手術手順、処置、及び観察時点のタイムラインを示す。グルコース及び体重を、試験開始前1週間及び終了時に測定した。マウスを、手術1週間前に測定した空腹時(4時間)血糖値に従って無作為化した。マウスを、手術を施す前にイソフルランで麻酔した。バリカン及び除毛クリームを使用してマウスの背中の毛を除去することにより、手術手順を開始した。10mm生検パンチにより印を作り、次いでこれを切り取ることにより、各マウスの背中に1つの創傷を作った。この創傷をテガダーム(Tegaderm)透明包帯材で覆って、この創傷を保護した。このマウスに自己接着性の弾性包帯を巻いて創傷領域を覆い、鎮痛剤(0.08mg/mlのTamgesic)を、このマウスの体重に従って0.05~0.1mg/kgの投薬量で注射した。
【0175】
マウスを、下記の3つの処置群に分離した:(a)クエン酸/生理食塩水溶液(10mMのクエン酸ナトリウム、及び130mMの塩化ナトリウム(pH6.5))(n=7)、(b)mRNA VEGF NT 3μg MC3(MC3 LNPと配合された非翻訳性VEGF-A改変RNA)(n=7)、並びに(c)mRNA VEGF 3μg MC3(MC3 LNPと配合された改変VEGF-A RNA)(n=7)。処置溶液を、3日目に、単回用量として創傷の周りに4回(各10μl)皮内注射した(合計40μl)(図4)。
【0176】
最大17日にわたり、全ての創傷が治癒されるまで3日毎又は4日毎に創傷を調べた。検査後に、テガダームを取り外して交換した。創傷から一定距離で、Canonカメラで創傷を撮影した。創傷面積を、画像解析ソフトウェアImage Jを使用して創傷の縁をなぞることにより決定し、次いで、ベースライン面積のパーセント面積として算出した。対応のない両側t検定で統計学的評価を行い、p値<0.05は有意であるとみなした。
【0177】
表4及び図5の結果で示されるように、MC3と配合された改変VEGF-A RNA 3μgを含む脂質ナノ粒子組成物の皮内注射により、開放創面積のパーセントの減少により実証されるように、MC3と配合された非翻訳性VEGF-A 3μgを含む脂質ナノ粒子組成物、又はクエン酸生理食塩水と比較した場合に創傷治癒が有意に向上した。
【0178】
【表4】
【0179】
実施例3
マウスにおけるヒトVEGF-A改変RNAの局所適用後の創傷治癒の評価
改変VEGF-A RNAとDLin-MC3-DMAとを含むMC3脂質ナノ粒子組成物を、配列番号4の配列を有するVEGF-A改変RNAにより、実施例1と同様に調製した。
雄のdb/dbマウスを使用した。このマウスは、II型糖尿病の樹立されたモデルであり、野生型マウスと比較した場合に創傷治癒障害を有する。
【0180】
図6は、本試験の手術手順、処置、及び観察時点のタイムラインを示す。グルコース及び体重を、試験開始前1週間及び終了時に測定した。マウスを、手術1週間前に測定した空腹時(4時間)血糖値に従って無作為化した。マウスを、手術を施す前にイソフルランで麻酔した。バリカン及び除毛クリームを使用してマウスの背中の毛を除去することにより、手術手順を開始した。10mm生検パンチにより印を作り、次いでこれを切り取ることにより、各マウスの背中に1つの創傷を作った。この創傷をテガダーム透明包帯材で覆って、この創傷を保護した。このマウスに自己接着性の弾性包帯を巻いて創傷領域を覆い、鎮痛剤(0.08mg/mlのTamgesic)を、このマウスの体重に従って0.05~0.1mg/kgの投薬量で注射した。
【0181】
マウスを、下記の2つの処置群に分離した:(a)クエン酸/生理食塩水溶液(10mMのクエン酸ナトリウム、及び130mMの塩化ナトリウム(pH6.5))(n=5)、(b)mRNA VEGF 3μg MC3(n=5)。処置溶液を、0日目及び3日目に、テガダームを通して挿入した針を介した局所適用により投与した(図6)。
【0182】
最大17日にわたり、全ての創傷が治癒されるまで3日毎又は4日毎に創傷を調べた。検査後に、テガダームを取り外して交換した。創傷から一定距離で、Canonカメラで創傷を撮影した。創傷面積を、画像解析ソフトウェアImage Jを使用して創傷の縁をなぞることにより決定し、次いで、ベースライン面積のパーセント面積として算出した。対応のない両側t検定で統計学的評価を行い、p値<0.05は有意であるとみなした。
【0183】
表5及び図7の結果で示されるように、MC3と配合された改変VEGF-A RNA 3μgを含む脂質ナノ粒子組成物の局所適用により、開放創面積のパーセントの減少により実証されるように、生理食塩水クエン酸の適用と比較した場合に創傷治癒が有意に向上した。
【0184】
【表5】
【0185】
実施例4
ブタ皮膚におけるヒトVEGF-A(hVEGF-A)タンパク質の定量
クエン酸生理食塩水組成物、及びVEGF-F改変RNAと、化合物A又はDLin-MC3-DMA(MC3)のいずれかとを含むナノ粒子組成物を、実施例1と同様に調製した。クエン酸生理食塩水組成物、化合物Aナノ粒子組成物、及びMC3ナノ粒子組成物を全て、配列番号4の配列を有するVEGF-A改変RNAと共に調製した。
【0186】
創傷調製:Goettingenミニブタの皮膚の角質層を、メスの刃で取り出し、表皮の残りを、Cotechミニグラインダを使用して取り出した。
【0187】
改変VEGF-A RNAとMC3とを含むナノ粒子組成物の局所投与:MC3ナノ粒子製剤中のmRNA 3μgを含む40μlを、ブタの皮膚から取り出した表皮の3箇所に塗布した。この組織を、塗布後5~6時間で取り出し、液体窒素中でスナップ凍結し、分析を実施するまで-80℃で保存した。この手順を、4匹のブタで繰り返した。
【0188】
改変VEGF-A RNAとMC3とを含むナノ粒子組成物の皮内注射:MC3ナノ粒子製剤中のmRNA 3μgを含む40μlを、ブタの皮膚から取り出した表皮の3箇所への(インスリンシリンジを使用する)皮内注射により投与した。この組織を、適用後5~6時間で取り出し、液体窒素中でスナップ凍結し、分析を実施するまで-80℃で保存した。この手順を、4匹のブタで繰り返した。
【0189】
VEGF-A RNAと化合物Aとを含むナノ粒子組成物の局所投与: 化合物Aナノ粒子製剤中のmRNA 3μgを含む50μlを、ブタの皮膚から取り出した表皮の3箇所に塗布した。この組織を、塗布後5時間で取り出し、液体窒素中でスナップ凍結し、分析を実施するまで-80℃で保存した。この手順を、5匹のブタで繰り返した。
【0190】
クエン酸/生理食塩水(コントロール)の局所投与:クエン酸/生理食塩水製剤中のmRNA 100μgを含む50μlを、ブタの皮膚から取り出した表皮の3箇所に塗布した。この組織を、塗布後5時間で取り出し、液体窒素中でスナップ凍結し、分析を実施するまで-80℃で保存した。この手順を、3匹のブタで繰り返した。
【0191】
各組織サンプルを、ELISAを使用して、ヒトVEGF-Aタンパク質の発現に関して分析し、結果を表6にまとめた(図8A~B)。
【0192】
【表6】
【0193】
図8Aは、MC3 LNPに配合された改変VEGF-A RNAによる局所適用処置及び単回注射処置の5~6時間後のブタ組織におけるヒトVEGF-Aタンパク質(hVEGF-A)の産生と、化合物A LNPと配合された改変VEGF-A RNAによる局所適用処置の5時間後のブタ組織におけるhVEGF-Aタンパク質の産生とを示す。クエン酸生理食塩水組成物による処置では、hVEGF-Aタンパク質は産生されなかった。図8Bは、ブタ皮膚での創傷を示し、描かれている円形は、MC3に配合された改変VEGF-A RNAによる局所処置部位を示す。
【0194】
8.配列表
8.1.配列番号1:VEGF-Aをコードする改変RNA
【化5】
ここで:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
Me=メチル
p=無機リン酸塩
【0195】
8.2.配列番号2:ヒトVEGF-AアイソフォームVEGF-165のアミノ酸配列
【化6】
【0196】
8.3.配列番号3:VEGF-Aをコードする改変RNA
【化7】
ここで:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
Me=メチル
p=無機リン酸塩
【0197】
8.4.配列番号4:VEGF-A(VEGF-01-012)をコードする改変RNA
【化8】
ここで:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
p=無機リン酸塩
【0198】
8.5.配列番号5:VEGF-Aをコードする改変RNA
【化9】
ここで:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
p=無機リン酸塩
【0199】
8.6.配列番号6:非翻訳性VEGF-A改変RNA
【化10】
ここで:
A、C、G、及びU=それぞれAMP、CMP、GMP、及びN1-メチル-シュードUMP
p=無機リン酸塩
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
【配列表】
2022532075000001.app
【国際調査報告】