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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】強磁性流体
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/44 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
H01F1/44 150
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566039
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 NL2020050293
(87)【国際公開番号】W WO2020226497
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】2023082
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521438722
【氏名又は名称】アーバン・マイニング・コーポレーション・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピョートル・ヤクブ・グラゼル
(72)【発明者】
【氏名】シュリヤ・レディ・パイダ
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・カルロ・レム
【テーマコード(参考)】
5E041
【Fターム(参考)】
5E041BD07
(57)【要約】
本発明は、強磁性流体を製造するための方法とシステムを対象としている。本方法は、Fe(II)とFe(III)の原液を提供することと、原液を塩基と混合して磁性ナノ粒子と使用済み溶液を形成することを備える。本方法は、磁石を適用してナノ粒子を静止させて、静止させたナノ粒子から上澄みとして使用済み溶液の少なくとも一部を除去することによって、ナノ粒子を使用済み溶液から分離する分離ステップを更に備える。他の態様では、本発明は結果物の強磁性流体を対象としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性流体、好ましくは水性強磁性流体を製造する方法であって、
Fe(II)とFe(III)の原液を提供することと、
前記原液と塩基を混合して、磁性ナノ粒子と使用済み溶液を形成することと、
磁石を適用して前記磁性ナノ粒子を静止させて、静止させた磁性ナノ粒子から上澄みとして前記使用済み溶液の少なくとも一部を除去することによって、前記磁性ナノ粒子を使用済み溶液から分離する分離ステップと、
前記分離ステップに続く一回以上の洗浄ステップであって、各洗浄ステップが、前記磁性ナノ粒子を磁気的静止から解放することと、解放された前記磁性ナノ粒子を、水を含む洗浄溶液と混合することと、前記磁性ナノ粒子を前記磁石で再び静止させることと、静止させた前記磁性ナノ粒子から上澄みとして使用済みの洗浄容器の少なくとも一部を除去して、前記磁性ナノ粒子を含むナノ懸濁液を形成することを備える、洗浄ステップと、
前記ナノ懸濁液中の前記磁性ナノ粒子を表面活性剤でコーティングするコーティングステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記混合することが、略5分間~略30分間にわたってpHを略7.5~略8.5の範囲内に維持することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記洗浄ステップを少なくとも二回、好ましくは少なくとも四回備える請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記洗浄ステップから得られたナノ懸濁液が1mS/cm未満の電気伝導率を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記磁石が、前記分離ステップと前記洗浄ステップにおいて上澄みの大部分を除去するように前記磁性ナノ粒子を断続的に引き寄せ又は静止させるように切り替え可能である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記磁石が電動ステージ上の永久磁石を備え、前記永久磁石が混合容器に隣接するように制御可能に配置される、又は、
前記磁石が切り替え可能な電磁石を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記磁石がハルバッハ配列で配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングステップが、前記ナノ懸濁液を前記表面活性剤及び摩擦ボールと接触させ、混合物をミリングして前記磁性ナノ粒子を前記表面活性剤で分散及びコーティングすることによって、強磁性流体を製造することを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングステップが、前記ナノ懸濁液を前記表面活性剤及び摩擦ボールと接触させ、前記ナノ懸濁液に超音波を印加して前記磁性ナノ粒子を前記表面活性剤で分散及びコーティングすることによって、強磁性流体を製造することを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記摩擦ボールが超音波エネルギーを反射し、好ましくは金属ボール、好ましくは鋼ボールを備える、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記摩擦ボールが、最大5mm、好ましくは0.3mm~3mmの範囲内、より好ましくは1mm以下の直径を有する、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記表面活性剤がリグニン系表面活性剤、好ましくはリグノスルホン酸又はその塩を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
強磁性流体(Lf)を製造するためのシステム(200)であって、
原液(Ls)を供給するための第一供給チャンバ(21)と、
塩基(B)を供給するための第二供給チャンバ(22)と、
前記原液(Ls)と前記塩基(B)を受けて混合し、前記原液(Ls)が前記塩基(B)と反応してナノ粒子(Lp)の懸濁液を形成するように構成された混合容器(25)と、
洗浄溶液(DW)を前記混合容器(25)に供給するための第三供給チャンバ(23)と、
前記混合容器(25)から廃液を受けるための廃棄容器(24)と、
前記ナノ粒子を静止させるように構成された磁石(25m)と、
表面活性剤(SF)を供給するための第四供給チャンバ(26)と、を備えるシステム。
【請求項14】
前記ナノ粒子(Lp)と前記表面活性剤(SF)を受けて混合し、ナノ懸濁液(Ln)を形成するように構成された収集容器(27)と、
前記ナノ懸濁液(Ln)と前記表面活性剤(SF)を受けて、前記ナノ懸濁液(Ln)に超音波を印加し、前記ナノ粒子を前記表面活性剤で分散及びコーティングすることによって、強磁性流体(Lf)を製造するように構成された超音波ユニット(28)と、を更に備える請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記超音波ユニット(28)が、摩擦ボール、好ましくは請求項10に記載のボールを更に備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記混合容器が、ポンプ(P2s)に制御可能に接続されているpHセンサ(25s)を備え、動作中に前記混合容器中の反応混合物のpHを前記第二供給チャンバ(22)からの塩基の追加によって特定のpH範囲内に維持する、請求項13から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法又は請求項13から16のいずれか一項に記載のシステムによって得られる強磁性流体(Lf)、好ましくは水性強磁性流体であって、リグニン系表面活性剤を備える強磁性流体。
【請求項18】
6nm~12nmの範囲内の平均粒子サイズを有するナノ粒子を備える請求項17に記載の強磁性流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強磁性流体の製造に関する。特に、本発明は、工業的規模での強磁性流体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
強磁性流体は、磁場の存在下で強力に磁化される液体であり、磁気密度分離(MDS,magnetic density separation)等の分離技術において有用な応用を有するものである。MDSでは、磁性処理流体(強磁性流体とも称される)が、分離媒体として用いられる。このような処理の典型的な例は、その全体が参照として本願に組み込まれる特許文献1に記載されている。他の例は、全体が参照として本願に組み込まれる特許文献2や特許文献3に見受けられる。MDSは、原材料の処理において、混合流を、それぞれ異なる種類の物質の粒子流に分類するために用いられる。こうしたMDSの応用では、強磁性流体が典型的には必須である。
【0003】
一般的に、強磁性流体は、水や油等のキャリア流体に懸濁されている強磁性又はフェリ磁性のナノ粒子(本願において磁性ナノ粒子とも称する)のコロイド状流体である。典型的な実施において、磁性ナノ粒子は、磁鉄鉱(Fe2+Fe3+ 又は単純にFe)や磁赤鉄鉱(γ‐Fe)等の磁性酸化鉄に基づくものである。特に、磁鉄鉱が用いられる。
【0004】
強磁性流体は、典型的には、鉄含有粉末のボールミリングや粉砕によって調製される(トップダウン型の手法)。例えば、特許文献4には、界面活性剤の存在下で非磁性αF粉末を粉砕することが開示されている。
【0005】
他の手法(ボトムアップ型の手法)では、水酸化ナトリウム等の塩基を用いて鉄イオンを沈着させて、酸化鉄を形成し得る。その例は、特許文献5や特許文献6に記載されている。こうしたボトムアップ型の手法の欠点は、精製用の有機溶媒が必要となり、熱を使用することが多いことである。ボトムアップ型の手法は、典型的には工業的規模への拡張性が乏しい。また、有機溶媒の使用は、強磁性流体と共に生成される廃棄流の特別な浄化処理を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1800753号明細書
【特許文献2】国際公開第2014/158016号
【特許文献3】国際公開第2015/050451号
【特許文献4】米国特許第5958282号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第106673072号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0859379号明細書
【特許文献7】蘭国特許出願公開第2022821号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Baumgartner et al. Nature Materials 12 (2013) 310-314
【非特許文献2】Gnanaprakash et al. Materials Chemistry and Physics 103 (2007) 168-175
【非特許文献3】Tortora et al., Biomacromolecules 15 (2014) 1634-1643
【非特許文献4】Schilling et al., Attritors and Ball Mills How They Work, Presented at the Philadelphia Society For Coatings Technology Inc. Eastern Training Conference and Show May 9, 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の態様は、拡張性があり、工業的規模での強磁性流体の製造を可能にし、上述の欠点のうち少なくとも一つを有さない効率的なプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の態様に関する強磁性流体を製造する方法は、Fe(II)とFe(III)の原液を提供することと、原液を塩基と混合して、磁性ナノ粒子と使用済み溶液を形成することを備える。本方法は、磁石を用いてナノ粒子を静止させて、静止させたナノ粒子から上澄みとして使用済み溶液の少なくとも一部を除去することによって、ナノ粒子を使用済み溶液から分離する分離ステップを更に備えることを特に利点としている。
【0010】
本発明者は、ナノ粒子の磁性が強磁性流体の製造において有利に利用可能であることを見出したものである。これが、強磁性流体の半連続的で良好に拡張可能な製造方法を可能にする。
【0011】
更なる態様において、本発明は、強磁性流体を製造するためのシステムを対象としていて、そのシステムは以下のものを備える:
‐ 原液を供給するための第一供給チャンバ、
‐ 塩基を供給するための第二供給チャンバ、
‐ 原液と塩基を受けて混合し、原液が塩基と反応してナノ粒子の懸濁液を形成するように構成された混合容器、
‐ 脱塩水を混合容器に供給するための第三供給チャンバ、
‐ 混合溶液から廃水を受けるための廃棄容器、
‐ ナノ粒子を静止させるように構成された磁石、
‐ 界面活性剤を供給するための第四供給チャンバ。
【0012】
本開示の装置、システム及び方法の上記及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、添付図面からより良く理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】強磁性流体(Lf)を製造するためのシステム(200)を示す。
図2】強磁性流体(Lf)を製造するためのシステム(200)を示す。
図3】水と鋼の界面における超音波反射とその振幅に対する影響を示す。
図4】強磁性流体(Lf)を製造するためのシステム(200)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を示す添付図面を参照して、本発明をより完全に説明する。図面においてシステム、部品、層、領域の絶対的なサイズと相対的なサイズは、明確にするために誇張されたものであり得る。実施形態は、理想的なものとなり得る実施形態と本発明の中間構造の概略図及び/又は断面図を参照して説明され得る。明細書及び図面全体にわたって同様の番号は同様の要素を指称する。相対的な用語は、検討されている図面に開示されている向きを称しているものとして解される。こうした相対的な用語は、説明の便宜上のものであり、特に断らない限り、システムが特定の向きで構成され動作することは要さない。
【0015】
本発明が対象とする強磁性流体を製造する方法は、Fe(II)とFe(III)の原液を提供することと、原液を塩基と混合して磁性ナノ粒子と使用済み溶液を形成することとを備え、本方法は、磁石を適用して、ナノ粒子を静止させ(動かなくして)、静止させたナノ粒子から上澄みとして使用済み溶液の少なくとも一部を除去することによってナノ粒子を使用済み溶液から分離する分離ステップを更に備える。
【0016】
原理的には、原液は、あらゆる適切な方法で入手可能であり、例えば、塩化第一鉄と塩化第二鉄の溶液を混合し、例えば、磁鉄鉱ナノ粒子が望まれる場合には可能な限り1:2に近い相対的なモル比で混合する。しかしながら、開始材としての磁鉄鉱石の使用も想定され、磁性ナノ粒子を有する強磁性流体を後に形成するための所望の相対的な量を自動的に満たすこともできる。これは手順を単純にして廃材を減らし得る。この原理はあらゆる種類の強磁性流体に適用可能である。そこで、好ましい実施形態では、原液は、特許文献7(その全体が参照として本願に組み込まれる)に記載のようにして生成される。
【0017】
塩基は、アルカリ、アンモニア、水酸化マグネシウム、これらの組み合わせ等のあらゆる適切な塩基を含み得て、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、又はこれらの組み合わせからなる群から選択されるアルカリである。塩基は、典型的には水等の水溶液に溶解される。
【0018】
原液と塩基の混合は、典型的には、懸濁液を攪拌するように構成された混合器を備える混合容器中で行われる。適切な混合器の例として、アンカー式インペラ、攪拌ロッドが挙げられる。こうした機器は典型的にはモータによって動力が与えられる。
【0019】
塩基は、原液のFe(II)とFe(III)と反応して、ナノ粒子を形成し、ナノ粒子の成長を刺激する。本発明者は、ナノ粒子の成長中に特定のpHを維持することが、ナノ粒子の粒子サイズに影響を与えることを見出したものである。また、その期間も影響要因である。非特許文献1も参照。
【0020】
一実施形態では、過剰な塩基を原液に素早く追加して、11を超える、又は好ましくは略10のpHを得る。その略5~10分後に、分離ステップを行う。本実施形態は、略7nmの平均サイズを有するナノ粒子をもたらす。
【0021】
他の実施形態では、塩基を原液に注意深く加えて、略7.5~8.5、好ましくは略8のpHを得る。好ましくは、粒子の成長が新たな粒子の核生成と競合することで抑制される可能性がある閾値をpHが超えないように注意する。塩化鉄及び/又は硫酸鉄に基づいた原液の場合、この閾値は典型的には略10のpHである。次に、反応混合物(つまり、原液と塩基)のpHを略10~20分間にわたって略8.5に維持し(例えば、pHセンサに制御可能に接続された小型塩基注入ポンプを用いて)、その後、分離ステップを行う。本実施形態は、略9.5nmの平均サイズを有するナノ粒子をもたらす。
【0022】
更に他の実施形態では、塩基を原液に加えて、5未満、好ましくは4未満のpHを得る。この低pHは、好ましくは5~15分間、例えば略10分間維持される。この初期の低pHは、第二鉄イオンの水酸化を促進することができる(非特許文献2も参照)。次いで、追加の塩基を反応混合物に追加して、略7.5~8.5、好ましくは略8のpHを得る。この場合も、粒子の成長が新たな粒子の核生成と競合することで抑制される可能性がある閾値をpHが超えないように注意する。塩化鉄及び/又は硫酸鉄に基づいた原液の場合、この閾値は典型的には略10のpHである。次に、反応混合物(つまり、原液と塩基)のpHを略5~30分間にわたって、好ましくは10~20分間にわたって略8.5に維持し、その後、分離ステップを行う。本実施形態は、略11nmの平均サイズを有するナノ粒子をもたらす。
【0023】
従って、本発明に係る方法は、好ましくは、略5~30分間、好ましくは10~20分間にわたって略7.5~略8.5の範囲内にpHを制御することを備え、これに先立ち、pHを5未満し、又は、7.5~10の範囲内、好ましくは略8のpHにする。
【0024】
ナノ粒子の平均サイズは、典型的には、ナノ粒子が応用可能となる方法に影響を与える。平均粒子サイズの制御は、磁化の値に直接相関しているので、多くの工業的応用にとって非常に重要である。
【0025】
本方法は、磁石を適用して、ナノ粒子を静止させて、静止させたナノ粒子から上澄みとして使用済み溶液の少なくとも一部を除去することによって使用済み溶液からナノ粒子を分離する分離ステップを備える。この分離ステップには、好ましくは、一回以上の洗浄ステップが続き、各洗浄ステップは、磁気的な静止からナノ粒子を解放することと、解放されたナノ粒子を洗浄溶液(好ましくは水を含む)と混合することと、磁石でナノ粒子を再び静止させることと、静止させたナノ粒子から上澄みとして使用済みの洗浄溶液の少なくとも一部を除去することを備える。この繰り返しの洗浄が、生成されるナノ粒子の効率的な精製を可能にする。洗浄溶液は、好ましくは水を含み、より好ましくは脱塩水を含む。結果として洗浄されたナノ粒子は典型的には水性懸濁液中にある(本願において水性ナノ懸濁液とも称される)。
【0026】
例えば、洗浄プロセスは以下の連続的なステップを備え得る:混合器をオフに切り替えることと、磁石を混合容器の下に移動させることと、粒子が沈降するのを待つことと、廃液を除去するためにポンプを作動させることと、磁石を退かすことと、水を入れるためにポンプを作動させることと、混合器をオンに切り替えることと、混合器をオフに切り替えることと、磁石を反応器の下方に移動させることと、粒子が沈降するのを待つことと、廃水を除去するためにポンプを作動させることと、全ステップを繰り返すこと(好ましくは一回以上、例えば、四回)を備える。好ましくは、全ステップを少なくとも一回繰り返す。洗浄溶液は、原液と塩基の反応後に残留している過剰なイオンを除去するように混合容器に有利に供給され、イオンを有する上澄みの廃液が廃棄容器に入れられる。有利には、洗浄サイクルが、溶液中のイオン濃度を低下させ、ナノ粒子のゼータ電位を上昇させ、分散とコーティング層形成を容易にする。
【0027】
磁石は、混合容器から出てくる出口管に隣接して設けられ得て(例えば、ナノ粒子を下方に引き寄せるように混合容器の下)、典型的には、ナノ粒子を断続的に引き寄せ又は静止させるように切り替え可能である。磁石を出口から離して配置してもよく、ナノ粒子が出口から偶発的に出ていくことを制限する。切り替え可能な磁石は多様な方法で実現可能である。例えば、磁石は、電動ステージ上の永久磁石を備え、永久磁石を出口管に隣接して制御可能に位置決めし得る。代替的に又は追加的に、磁石は切り替え可能な電磁石を備える。
【0028】
混合容器は、好ましくは平坦な底を備え、その下に磁石が配置される。好ましい実施形態では、磁石は、溶液から10mm以内、例えば5mm以内の距離に在る。磁石は、好ましくはハルバッハ配列で配置されて、反応器内への磁場の侵入深さを最大にする。好ましい実施形態では、ナノ粒子の静止は、10分未満、好ましくは2分~6分で達成される。後半の洗浄ステップでのナノ粒子の静止は、前半の洗浄ステップよりも一般的には時間がかからない。
【0029】
有利には、本発明に係る分離ステップと洗浄ステップは、結果物のナノ粒子(本願においては、ナノ懸濁液(Ln)とも称される)の電気伝導率を低下させる。電気伝導率は、ナノ懸濁液中の残留イオン数を表すものである。電気伝導率の低下は、磁鉄鉱粒子のゼータ電位を上昇させ、驚くべきことに界面活性剤での分散とコーティングを容易にすることが分かった。本発明に係る分離ステップは、60mS/cm以上から1mS/cm以下への電気伝導率の低下を可能にする。この低電気伝導率は、従来のプロセスで一般的に用いられているような有機溶媒での追加の洗浄ステップ及び/又はコーティング中の加熱等の熱プロセスの必要性を限定し又は排除する。
【0030】
最も好ましい実施形態では、全ての方法ステップが45℃未満、例えば30℃未満の温度で行われる。本方法は、複数の方法ステップのうちの一つ以上のみが上記温度閾値未満で行われるようにも行われ得る。好ましくは、少なくとも、上記一回以上の洗浄ステップ及び/又はコーティングステップが、45℃未満、例えば30℃未満の温度で行われる。こうした低いプロセス温度は、コーティングを行う前の効率的な洗浄ステップと静止ステップによって可能となる。
【0031】
磁石、混合容器、これらの体積の最適な組み合わせが、分離ステップと洗浄ステップの自動化を可能にし、これは、本方法の良好な再現性と拡張性にとって有益である。
【0032】
好ましい実施形態では、混合容器は、洗浄溶液容器から洗浄溶液を供給するように接続され、また、好ましくは、廃液(つまり、分離された使用済み溶液)を保有するように廃棄容器に接続される。
【0033】
分離ステップと洗浄ステップの後に、次のステップであるコーティングステップにおいて結果物のナノ粒子(本願においてナノ懸濁液(Ln)とも称される)が界面活性剤でコーティングされ得る。このコーティングは、好ましくは、別の容器(例えば、超音波ユニット)又は複数の容器からなるシステムで行われ、超音波の印加、摩擦ボールでのミリング、又はこれらの組み合わせをナノ懸濁液に適用して、表面活性剤でナノ粒子を分散及びコーティングすることによって、強磁性流体を製造する。代替的には、洗浄とコーティングを一つの反応器で行ってもよいが、これはあまり好ましくない。何故ならば、界面活性剤は典型的には鉄(イオンも含む)に対する強い親和性を有するので、バッチ式での合成毎に大掛かりな反応器の洗浄が必要となるからである。
【0034】
表面活性剤は、好ましくはリグニン系表面活性剤であり、より好ましくはリグノスルホン酸又はその塩である。驚くべきことに、本発明者は、この表面活性剤が特に安定な強磁性流体を生成することを見出したものである。理論に縛られるものではないが、リグニン系表面活性剤の超音波処理が、ヒドロキシラジカル種とフェノキシラジカル種の形成をもたらし、これらラジカル種が、リグニン鎖の架橋を含み得る多様な反応を経るものとなり得る。この架橋は、音響キャビテーションプロセス中に発生し得るヒドロキシル(・OH)ラジカルとスーパーオキシド(HO・)ラジカルによって誘導されるものと考えられる。過渡的キャビテーションがヒドロキシルラジカルを発生させ、これが、リグニンのフェノール基と反応して、リグニン骨格の酸化を誘導し、これが、リグニンの更なる重合化又は架橋を可能にし得る。本発明の強磁性流体の製造の場合、超音波処理は、超音波処理プロセス中にナノ粒子を分散させるだけでなく、ナノ粒子周辺のリグニンを重合化させて、ソリッドで籠状の構造を生じさせる。これが、立体反発を増やし、粒子を凝集し難くする。この立体反発が、ポリマー骨格上のイオン化基と共に、非常に安定な強磁性流体をもたらす。この架橋効果は、リグニン系表面活性剤の全く異なる応用でも観測されているものである(例えば、非特許文献3を参照)。
【0035】
典型的には、コーティング用の超音波は、1kHz~50kHz、好ましくは10kHz~30kHz、例えば略20kHz等の周波数を有する。バッチ体積に依存して、超音波処理は略10分間から最大略2時間にわたって行われ得る。
【0036】
超音波処理の代わりに、ナノ懸濁液(Ln)のコーティングと、安定な強磁性流体の調製は、摩擦ミリング(attrition milling)を用いて行われ得る。従来では、ボールミリング、又はその改良版である摩擦ミリング(非特許文献4を参照)を用いて、分散媒体とコーティング剤の存在下において典型的に数百マイクロメートルの粒子を数十ナノメートル程度に粉砕し得る(特許文献4を参照)。本発明のナノ懸濁液は既に所望のサイズ(ナノメートル程度)のナノ粒子を備えているので、粉砕が必要とされない。しかしながら、本発明者は、摩擦ミリングと同様にボール(例えば、鋼ボール)の使用が、ナノ懸濁液中の粒子を表面活性剤で分散及びコーティングするのに有利であることを見出したものである。
【0037】
本発明の方法において、摩擦ボールは、磁性ナノ粒子を分散させ、その粒子を表面活性剤でコーティングすることを促進するのに使用され得る。従って、コーティングステップは、好ましくは、摩擦ミリング用のボールとナノ懸濁液を混合して、典型的には1500rpmを超える速度で典型的には30分間~略5時間にわたってミリングすることを備える。簡単のため、本発明に係る摩擦ボールの使用を本願では摩擦ミリングと称し、実際に粉砕(従来のミリングにおいて一般的なサイズ減少を伴うもの)が必要とされない又は本発明において実際には生じていない場合であってもそのように称する。本発明に係るミリング用のボールは、典型的には10mm未満、好ましくは5mm未満の範囲、より好ましくは0.5~3mmの範囲内、最も好ましくは略1mm以下の直径を有する。
【0038】
本発明者は、驚くべきことに、超音波とボール(摩擦ミリング用に使用されるようなもの)の組み合わせを採用することによるナノ懸濁液中の粒子のコーティングが、比較的短時間で非常に安定な強磁性流体の調製を可能にすることを見出したものである。従って、特に好ましい実施形態では、粒子のコーティングは、ナノ懸濁液を表面活性剤及びボール(好ましくは金属ボール、例えば鋼ボール等)と接触させ、ナノ懸濁液に超音波を印加してナノ粒子を表面活性剤でコーティングすることによって、行われる。
【0039】
使用されるボールは、摩擦ミリングで使用されるものと同じものとなり得て、又は、より小型となり得て、好ましくは直径1mm以下のものである。好ましくは、ボールが直径1mm以下のものであると(この場合ビードとも称される)、超音波で急速に転がり回り及び/又は振動することができる。
【0040】
理論に縛られるものではないが、本発明者は、超音波とボールの組み合わせによる超音波のコーティングの改善は、ボールやビードの細かな機械的動きの結果であると考えていて(小さいボールの方が好ましいという知見に基づく)、その理由は、ボールやビードが転げ回ることが非常に効率的な凝集の分散を生じさせるからである(ビードは理想的には略20kHzで振動し、衝突が市販の最速の摩擦ミリング機器よりもはるかに素早く生じる)。また、鋼ボールが超音波を反射して、超音波媒体(例えば、流体、空間等)中のはるかに均一なパワー分散を生じさせると考えられる。本発明者は、鋼容器中の超音波処理中に(ボールが存在しない場合も同様)、超音波エネルギーの略98~99%が水と鋼の界面で反射されることを見出したものである。図3は、このような反射とその振幅に対する影響を示す。反射波振幅(p)は入射振幅(p)とほぼ同じであり、透過(応力)振幅(p)は入射振幅のほぼ二倍である。本発明者は、この原理を鋼ボールによるパワー分散に効果的に使用することができることを見出したものである。従って、本発明の実施形態について、ミリングは必須ではないものの使用可能なものである。
【0041】
ナノ懸濁液中の粒子を機械的にコーティングすることについて(摩擦ミリング及び/又はボール存在下での超音波処理)、ボールは硬質材製であり、超音波エネルギーを反射できることが好ましい。そのため、金属又はセラミックのボールが好ましい。鋼ボールが最も好ましいが、その理由は、超音波処理中の超音波のパワー分散を特に可能にするからである。ボールは、好ましくは最大5mm、好ましくは0.3mm~3mmの範囲内、より好ましくは1mm以下の直径を有する。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明の流体は、蠕動ポンプを用いてポンピングされ、そのポンピングメカニズムは、ポンピングされている流体との接触を要さない。そのため、このようなポンプの適用は、メカニズム及び/又は懸濁粒子を腐食させメカニズムを詰まらせ得る酸性溶液での作動時に特に有利となり得る。
【0043】
更なる態様では、本発明は、強磁性流体を製造するためのシステムを対象として、そのシステムは以下のものを備える:
‐ 原液を供給するための第一供給チャンバ、
‐ 塩基を供給するための第二供給チャンバ、
‐ 原液と塩基を受けて混合し、原液が塩基と反応してナノ粒子の懸濁液を形成するように構成された混合容器、
‐ 洗浄溶液を混合容器に供給するための第三供給チャンバ、
‐ 混合容器から廃液を受けるための廃棄容器、
‐ ナノ粒子を静止させるように構成された磁石、
‐ 表面活性剤を供給するための第四供給チャンバ。
【0044】
好ましい実施形態では、本システムは、ナノ粒子と表面活性剤を受け混合して、ナノ懸濁液を形成するように構成された収集容器と、ナノ懸濁液を受けて、超音波をナノ懸濁液に印加し、粒子を表面活性剤で分散及びコーティングすることによって、強磁性流体を製造するように構成された超音波ユニットを更に備える。
【0045】
図1は、強磁性流体Lfを製造するための特に好ましいシステム200を示す。この例示的なシステムは、原液Lsを供給するための第一供給チャンバ21と、塩基Bを供給するための第二供給チャンバ22と、原液Lsと塩基Bを受けて混合し、原液Lsが塩基Bと反応してナノ粒子Lpの懸濁液を形成するように構成された混合容器25を備える。脱塩水DWを混合容器25に供給するための第三供給チャンバ23と、混合容器25から廃水を受けるための廃棄容器24も設けられる。磁石25mがナノ粒子を静止させるように構成される。システム200は、表面活性剤SFを供給するための第四供給チャンバ26と、ナノ粒子Lpと表面活性剤SFを受けて混合し、ナノ混濁液Lnを形成するように構成されたバッチ収集容器27と、ナノ懸濁液Lnを受けて超音波を印加し、粒子を表面活性剤で分散及びコーティングさせることによって、強磁性流体Lfを製造するように構成された超音波ユニット28を更に備える。
【0046】
好ましい実施形態では、超音波ユニット28は、コーティングステップで使用されるボールを備える。
【0047】
システムはポンプP1~P9と弁V1を更に含み得る。システムの洗浄サイクルは以下のように行われ得る:
‐ 混合器25tをオフに切り替える、
‐ 磁石25mを混合容器25の下に移動させる、
‐ 粒子が沈降するのを待つ、
‐ 廃水WWを除去するようにポンプP4を作動させる、
‐ 磁石25mを退かす、
‐ 脱塩水DWを入れるようにポンプP3を作動させる、
‐ 混合器25tをオンに切り替える、
‐ 混合器25tをオフに切り替える、
‐ 磁石25mを反応器の下に移動させる、
‐ 粒子が沈降するのを待つ、
‐ 廃水WWを除去するようにポンプP4を作動させる、
‐ 洗浄サイクルを繰り返す、例えば四回。
【0048】
ナノ懸濁液Lpのコーティングは以下のようにして行われ得る:
‐ ナノ懸濁液Lpを収集容器27に供給するようにポンプP5を作動させる、
‐ 表面活性剤SFを収集容器27に供給するようにポンプP6を作動させる、
‐ ナノ懸濁液Lnを超音波ユニット28に供給するようにポンプP8を作動させる、
‐ ナノ懸濁液Lnを収集容器に戻して循環させるように任意のポンプP7を作動させる、
‐ 強磁性流体Lfを製品容器31に供給するように弁V1を開いてポンプP9を作動させる。
【0049】
ポンプP7は任意で存在する。特定の一実施形態では、超音波ユニット28は、容器27に接続された流入口と流出口を有するフローセルを備える。このようにして、ナノ懸濁液を、ポンプP8のみを作動させることによって、超音波ユニット28に通すことができる。
【0050】
上記実施形態の代替実施形態では、収集容器27並びにそれぞれ収集容器27に接続されている超音波ユニット28とポンプP7及びP8と表面活性剤SFを供給するための第四供給チャンバ26を備えるループの設定が、超音波ユニット28が混合容器25と第四供給チャンバ26と製品容器31に接続される設定に置換され得る。この特定の実施形態が図2に示されている。この実施形態では、ボールを充填した大型の工業用超音波バスを用いることで、超音波ユニット28が特に好ましいものになっている。そして、ナノ懸濁液Lpのコーティングが以下のように行われ得る:
‐ ナノ懸濁液Lpを超音波ユニット28に供給するようにポンプP5を作動させる、
‐ 表面活性剤SFを超音波ユニット28に供給するようにポンプP6を作動させる、
‐ 超音波ユニット28をオンに切り替えて、ナノ懸濁液Lnに超音波を与える、
‐ 強磁性流体Lfを製品容器31に供給するようにポンプP9を作動させる。
【0051】
混合容器に加えられる塩基の量とpHを制御するため、好ましくは、システムは、ポンプP2s(例えば、小型蠕動ポンプ)に制御可能に接続されたpHセンサ25sを更に備える。その一実施形態が図4に示されていて、その設定を図2のものと比較すると、pHセンサとポンプP2sが図1に示される実施形態において使用されているものであることが見て取れる。pHセンサ(25s)とポンプP2sは、第二供給容器(22)から塩基を追加することによって、動作中に混合容器内の反応混合物のpHが特定のpH範囲内で維持可能なように構成され接続される。上述のように、塩基と原液の混合中の正確なpH制御が、ナノ粒子の平均粒子サイズに対する良好な制御を可能にする。
【0052】
本発明に係るプロセスは、従来の調製プロセスの場合のような有機溶媒、高いプロセス温度、長いプロセス時間の必要性を有利に回避する。本プロセスの総プロセス時間は、1000~8000A/mの範囲内の強磁性流体の飽和磁化で、略1Lのバッチ当たり30~50分間の範囲内と有利になり得る。また、本プロセスは、水溶液のみを用いて行うことができるものである。そのため、ナノ粒子がプロセス全体にわたって水相に留まることができる。これも、水性強磁性流体の効率的な調製を可能にし、特別な浄化プロセスを要する廃棄物を制限又は回避する。例えば、本発明に係るプロセスは、海水と同様の組成の廃棄流のみを生成することができ、これは、通常の廃水流として廃棄可能であり、通常の廃水(例えば、家庭用排水)と共に浄化可能である。
【0053】
明確で簡潔な説明とするため、複数の特徴が同じ又は別々の実施形態の一部として本願で説明されているが、本発明の範囲は、これら特徴の全部又は一部の組み合わせを有する実施形態を含み得ることを理解されたい。
【0054】
特定の実施形態を説明するために用いられている用語は、本発明を限定するものではない。本願において、単数形での表記は、特に断らない限りは、複数形の場合も含むものである。「及び/又は」との用語は、関連して列挙されている事項のうち一つ以上のあらゆる組み合わせを含むものである。「備える」や「含む」といった用語は、言及されている特徴の存在を特定しているものであるが、一つ以上の他の特徴の存在や追加を除外するものではない。また、方法の特定のステップが、他のステップに続いて言及されている場合、これは、特に断らない限り、その他のステップの直後に続くもの、又は、一つ以上の中間ステップがその特定のステップを行う前に行われ得るものであることを理解されたい。同様に、構造同士や部品同士の接続について言及されている場合、その接続は、特に断らない限り、直接的な接続、又は中間の構造や部品を介した接続となり得ることを理解されたい。
【0055】
以下の例を用いて本発明を例示する。
【0056】
例1‐超音波処理
洗浄された未コーティングの磁鉄鉱ナノ懸濁液(850mL)を収集容器に移して、それに10%界面活性剤水溶液を150mL加えた。その混合物を超音波ユニットフローセルに通して循環させ、ナノ懸濁液に超音波を印加して、ナ粒子を表面活性剤で分散及びコーティングした。略30分後に安定な強磁性流体が製造された。
【0057】
例2‐実験用摩擦ミリング設定
飛沫防護機能を有する鋼インペラとモータと容器を有する設定において、ナノ懸濁液と粉砕媒体と表面活性剤(リグノスルホン酸)を加えた。鋼ボール(直径略5mmのものと直径1mmのもの)を分散媒体として用いた。
【0058】
特許文献7に記載の原液から磁鉄鉱ナノ粒子を提供することによってナノ懸濁液を調製した。その原液は、アルカリ性塩基を用いた磁鉄鉱ナノ懸濁液の沈降反応と形成に用いられ、続いて、粒子を沈降させた。次いで、表面活性剤を除去して、残留している磁鉄鉱凝集体を検査に用いた。
【0059】
数時間にわたる攪拌で、安定な懸濁液が形成された。
【0060】
例3‐ビードアシスト超音波処理
ガラス容器に未コーティングの磁鉄鉱ナノ懸濁液(50mL)と、鋼ボール(50mL、直径1mm)と表面活性剤(リグノスルホン酸0.9g)を加えて、低パワーの実験用超音波バスに入れた。2時間の低パワー超音波処理の後に、サンプルを取り出し磁石の上に置いたが、24時間にわたって安定で、視認可能な沈殿物は形成されなかった。
【0061】
例4‐平均粒子サイズ9.5nmのナノ粒子を備える水性強磁性流体の製造
FeClとFeClを備える水性原液に、pHが8になるまで、NaOHの水溶液を加えた。次いで、反応混合物のpHを、略10~20分間にわたって略8.5に維持した。結果物のナノ粒子を使用済みの原液から分離して、ナノ懸濁液の電気伝導率が1mS/cm未満になるまで、脱塩水で洗浄した。次いで、例1に従ってナノ粒子をリグノスルホン酸でコーティングした。略9.5nmの平均粒子サイズのナノ粒子を備える水性強磁性流体が得られた。
【0062】
例5‐平均粒子サイズ11nmのナノ粒子を備える水性強磁性流体の製造
例4と同様のプロセスでナノ粒子を製造した。しかしながら、第一ステップにおいて、ちょうど4弱のpHを有する反応混合物が得られるように、FeClとFeClを備える水性原液にNaOHの水溶液を加えた。このpHを略10分間にわたって維持した。次いで、追加の塩基を加え、例4のように混合物のpHを略10~20分間にわたって略8.5に維持した。結果物のナノ粒子を更に例4に記載のように処理した。略11nmの平均粒子サイズのナノ粒子を備える水性強磁性流体が得られた。
【0063】
例6‐平均粒子サイズ7nmのナノ粒子を備える水性強磁性流体の製造
FeClとFeClを備える水性原液に、12未満、好ましくは11のpHの溶液が得られるまで、NaOHの水溶液を加えた。略5~10分後に、結果物のナノ粒子を使用済みの原液から分離して、1mS/cmの電気伝導率のナノ懸濁液が得られるまで、脱塩水で洗浄した。次いで、例1に従ってナノ粒子をリグノスルホン酸でコーティングした。略7nmの平均粒子サイズのナノ粒子を備える水性強磁性流体が得られた。
【符号の説明】
【0064】
200 システム
21 第一供給チャンバ
22 第二供給チャンバ
23 第三供給チャンバ
24 廃棄容器
25 混合容器
26 第四供給チャンバ
27 収集容器
28 超音波ユニット
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】