(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】セラミックマトリックス複合材料パーツの変形を測定するためのデバイスを作り出すための方法、および対応するパーツ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566209
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2020062721
(87)【国際公開番号】W WO2020225367
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クエンヌアン,リュシアン・アンリ・ジャック
(72)【発明者】
【氏名】トゥーション,クリストフ
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA04
2F063BB07
2F063BC05
2F063BD11
2F063CA29
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063EC05
2F063EC14
2F063EC15
2F063EC27
(57)【要約】
本発明は、セラミックマトリックス複合材料パーツの変形を測定するためのデバイスを作り出すための方法、および対応するパーツに関する。セラミックマトリックス複合材料パーツ(1)、特に航空学的パーツの変形を測定するためのデバイス(3)を作り出すための前記方法は、この方法に従って、電気絶縁性コーティング(2)が最初にパーツ(1)上に形成され、変形ゲージ(3)が次いでコーティング(2)上に置かれ、特に、コーティング(2)がレアアース酸化物を含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックマトリックス複合材料パーツ(1)、特に航空学的パーツの変形を測定するためのデバイス(3)を作り出すためのプロセスであり、このプロセスに従って、電気絶縁性コーティング(2)が最初に前記パーツ(1)上に作り出され、次いで、変形ゲージ(3)が前記コーティング(2)上に置かれるプロセスであって、前記コーティング(2)がレアアース酸化物を含むことを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記コーティング(2)がシリケートを含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記コーティング(2)が、プラズマプロセスによって作り出されることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記コーティング(2)が、ゾル・ゲル法によって作り出されることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記コーティング(2)が、数百分の1ミリメートルから数十分の1ミリメートルの間に含まれる厚さを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
電気絶縁性コーティング(2)が前記パーツ(1)上に置かれるステップの前に、シリコンサブレイヤが前記パーツ(1)上に堆積されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ゲージ(3)が、光増感または付加製造によって前記パーツ(1)上に置かれることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ゲージ(3)を前記コーティング(2)上に置いた後に、このゲージ(2)が、レアアース酸化物を含む追加のコーティング(4)でカバーされることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる少なくとも1つの変形測定デバイス(3)を担う、航空学的セラミックマトリックス複合材料パーツであって、レアアース酸化物を含むコーティング(2)が上に作り出される測定表面を備え、コーティング(2)上に前記変形測定デバイス(3)があることを特徴とする、航空学的セラミックマトリックス複合材料パーツ。
【請求項10】
前記コーティング(2)がシリケートを含むことを特徴とする、請求項9に記載のパーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックマトリックス複合材料パーツの変形を測定するためのデバイスの生産の分野にある。
【背景技術】
【0002】
航空学の分野では、特にタービンパーツの製造に関し、金属材料の代わりにセラミックマトリックス複合材料(CMC)を使用することがますます一般的になってきている。
【0003】
「セラミックマトリックス複合材料」との表現は、同じタイプの混合物で作られたマトリックス内に埋め込まれた、カーボン繊維および/または炭化ケイ素繊維で構成された複合材料、ときにはムライト(3Al2O3、2SiO2)で構成された複合材料を意味するものと理解される。このCMCは、もっぱら、同じ性質のマトリックス内に埋め込まれたSiC繊維で構成されることができる。
【0004】
そのような材料の使用は、特に、高温に対するそれらの高い耐性によって説明される。
【0005】
当然、そのようなパーツに器具を取り付けること、すなわち、テスト中にそれらパーツが曝される応力を分析することを可能にするために、変形測定デバイス(換言すると、ゲージ)をそれらパーツに装備させることが必要である。
【0006】
しかしながら、現在の航空学的パーツで発達した科学技術は、いくつかの理由のために、改良される必要がある。
【0007】
ゲージの設置のために、航空学的パーツ上にゲージを良好に接着することを促進するため、そしてひいては、ゲージの高品質の測定を保証するために、ゲージを受けるための金属パーツにアルミナサブレイヤを使用することが一般的である。
【0008】
しかしながら、航空学的パーツとサブレイヤとが大きく異なる膨張率を有する場合、このことは、航空学的パーツの実際の応力ではなく、サブレイヤの応力を測定することになる。
【0009】
さらに、金属/サブレイヤの界面に非常に高い応力を生じるリスク、そしてひいては、ゲージを分離させるリスクが存在する。
【0010】
CMCの航空学的パーツが考慮される限り、これらパーツは、1300℃を超える温度に曝され、このことは、これら温度に耐えることも可能である材料の使用を必要とする。
【0011】
さらに、CMCは金属よりも膨張せず、それにより、現在まで使用されているゲージ接合方法は、直接適用可能ではなくなっている。
【0012】
最後に、CMCは導電性材料である。ゲージの動作の原理が、その電気抵抗であることから、ゲージは、電気伝導性材料と直接接触することができない。
【0013】
したがって、変形測定デバイスにより、特にCMCの航空学的パーツの変形の測定を改良する必要がある。
【0014】
同じ意味で、EP1990633およびFR2915493は、変形測定デバイスの生産のためのプロセス、および対応する測定デバイスを説明している。
【0015】
これら既知のプロセスは、一般に、これらプロセスがCMCパーツ上にアルミナコーティングを堆積させるステップを含み、これに続き、このコーティング上に変形ゲージを適用するという事実を有する。
【0016】
このため、アルミナコーティングは、CMCパーツとゲージとの間の絶縁物として作用する。
【0017】
概して、この技術は満足のいくものである。しかしながら、取られるすべての予防措置に関わらず、いくつかのケースでは、コーティングの抵抗、および、より詳細には、コーティング/CMCの界面における層間剥離を伴う問題が観測されている。
【0018】
この現象は、おそらく、一方ではアルミナと、他方ではCMCとの、高温における熱膨張率の顕著な差異に起因している。
【0019】
行われている変形の測定、特に、変形測定デバイスを介してのCMCの航空学的パーツの変形の測定を改良するために、既知のプロセスを改良する必要性もある。
【0020】
さらに、国際公開第2018/127664号パンフレットは、基板表面の近くにシリコンを含む材料の一部分を少なくとも有する基板と、レアアース混合物を含む、基板表面上に形成された環境バリアとを備えているパーツを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1990633号明細書
【特許文献2】仏国特許出願公開第2915493号明細書
【特許文献3】国際公開第2018/127664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
このため、本発明の目的は、上述の必要性に対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
このため、本発明は、セラミックマトリックス複合材料パーツ、特に航空学的パーツの変形を測定するためのデバイスを作り出すためのプロセスに関し、このプロセスに従って、電気絶縁性コーティングが最初に前記パーツ上に作り出され、次いで、変形ゲージが前記コーティング上に置かれる。
【0024】
本発明によれば、前記コーティングは、レアアース酸化物を含んでいる。
【0025】
本発明の特徴のおかげで、ゲージは、上述の層間剥離の問題を生じることなく、経時的に優れた耐性を有することが観測される。
【0026】
さらに、コーティング層は、セラミックマトリックス複合材料に対して差異が小さい膨張を有する材料(レアアース酸化物)で作られている。これら状況下では、したがって、ゲージによって行われる測定は、このゲージがセラミックマトリックス複合材料に対するコーティングの膨張の差異によって妨害されないことから、信頼性のあるものである。
【0027】
最後に、コーティング材料は絶縁性であり、それにより、ゲージがセラミックマトリックス複合材料の導電性の性質によって妨害されないようになっている。
【0028】
単独で、または組み合わせて取られる、このプロセスの他の有利かつ非限定的な特徴によれば:
前記コーティングがシリケートを含んでいる;
前記コーティングがプラズマプロセスによって作り出される;
前記コーティングがゾル・ゲル法によって作り出される;
前記コーティングが、数百分の1ミリメートルから数十分の1ミリメートルの間に含まれる厚さを有する;
電気絶縁性コーティングが前記パーツ上に置かれるステップの前に、シリコンサブレイヤが前記パーツ上に堆積される;
前記ゲージが、光増感(photosensitization)または付加製造(additive manufacturing)によって前記パーツ上に置かれる;
前記ゲージを前記コーティング上に置いた後に、このゲージが、レアアース酸化物を含む追加のコーティングでカバーされる。
【0029】
本発明は、航空学的パーツなどのセラミックマトリックス複合材料パーツにも関し、このセラミックマトリックス複合材料パーツは、上述のプロセスを実施することによって得られる少なくとも1つの変形測定デバイスを担い、また、このセラミックマトリックス複合材料パーツが、その表面上にレアアース酸化物を含むコーティングを有し、このコーティング上に前記変形測定デバイスがあることを特徴とする。
【0030】
一実施形態によれば、前記コーティングはシリケートを含んでいる。
【0031】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照してここで与えられることになる記載から明らかとなり、添付図面は、非限定的な説明として、様々な可能性のある実施形態を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係るプロセスの第1のステップを示す図である。
【
図2】本発明に係るプロセスの別のステップを示す図である。
【
図3】本発明に係るプロセスのさらに別のステップを示す図である。
【
図4】CMCパーツ上の所定の位置にある、変形ゲージを示す簡略化された斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
変形ゲージが、パーツ上に置かれるフラットな抵抗器であることが想起されるべきである。
【0034】
本発明に係るプロセスの第1のステップは、CMCパーツ上で、電気絶縁性のレアアース酸化物コーティングを作り出すことにある。
【0035】
このステップは、添付の
図1に概略的に示されており、
図1では、参照符号1が処理されるCMCパーツを示しており、一方、参照符号2がレアアース酸化物コーティングを示している。
【0036】
他の図でも同様であるが、特にこの図において、図示の要素の寸法、厚さ、および形状は、もっぱら説明の目的のためのものであり、実際のものには対応していない。
【0037】
レアアースは、57から71の間の原子番号を有する化学元素であり、このレアアースには、原子番号21のスカンジウムと、原子番号39のイットリウムとが追加される。
【0038】
したがって、これらレアアースの完全なリストは、以下の通りである:ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、およびイットリウム。
【0039】
有利には、このレアアースの酸化物はシリケートである。さらに、単一のレアアースのシリケート、または、2つの異なるレアアースのシリケート、すなわちケイ素原子および酸素原子が2つの異なるレアアースと結合されたものを使用することが可能である。
【0040】
上述のように、CMCは電気伝導性である。しかしながら、ゲージの動作原理がゲージの電気抵抗であることから、ゲージは、電気を通す材料上に直接あるべきではない。
【0041】
レアアース酸化物が電気伝導性ではないことから、コーティング2によって担われたゲージは、CMCの導電性の性質によっては妨害されない。
【0042】
さらに、コーティングを形成するレアアース酸化物は、「ゾル・ゲル」法または「プラズマ」プロセスなどの技術により、パーツ1の表面上に堆積されることができる。
【0043】
「ゾル・ゲル」法は、レアアース酸化物の非常に薄い層(すなわち、数百分の1ミリメートルのオーダー)の堆積を可能にし、非常に薄い層は、したがって、ゲージによって行われる測定の品質に影響しないか、ほとんど影響しない。「プラズマ」プロセスを使用することにより、堆積は(数十分の1ミリメートルのオーダーに)より薄くなり、それにより、機械加工が必要になる。
【0044】
これら技術はそれ自体が知られており、本発明のコアを形成しない。
【0045】
したがって、「ゾル・ゲル」の技術が、材料の溶解に頼る必要なく、多孔性である必要があれば焼結(また、場合によっては熱による再処理)により、ガラス質の材料を作り出すことを可能にすることを想起することが十分である。
【0046】
レアアース酸化物の温度耐性は1300℃を超え、このことは、パーツ1が航空学的パーツであるときにパーツ1が曝される温度に適合する。
【0047】
特定の実施形態によれば、添付図面には図示されていないが、シリコンサブレイヤがコーティング2の前にパーツ1上に堆積されている。これは、追加のインターカレーションされた厚さを作成し、パーツ1上のコーティング2の良好な接着を保証する。
【0048】
プロセスの次のステップは、前記コーティング2上に変形ゲージ3を形成することにある。このゲージは、
図2に非常に象徴的に示されており、
図4ではやはりゲージが説明的表示であるが、よりよく見られる。
【0049】
このゲージは、フリーフィラメントゲージ3である。そのようなゲージは当業者には既知であり、その概略的な構造のみがここで想起される。ゲージ3は、以下のようなアコーディオンに類似の形状であるフィラメント30を備えている:フィラメントは、フィラメント自体の上に戻るように1回目の折り曲げがされて、所与の高さを有する「U」を形成し、次いで、フィラメントは、フィラメント自体の上に戻るように2回目の折り曲げがされて、第1の「U」と同じ平面上に位置し、その枝部が同じ高さを有するが、逆さになっている第2の「U」を形成する。
【0050】
フィラメントはこうして、「U」の各枝部が接触することなく、フィラメント自体の上に戻るように、同じプロセスで何回も折り曲げがされ、それにより、1つの平面内にグリッド31を形成するようになっている。
【0051】
グリッド31は、概して矩形形状を有し、また、フィラメントの2つの端部32により、一方側で延ばされており、フィラメントの2つの端部32は、それぞれ、グリッド31の第1の「U」の第1の枝部と、最後の「U」の最後の枝部とを延ばしている。端部32は実質的に平行であり、グリッド31と同じ平面内に位置している。
【0052】
フィラメントの端部32は、フィラメントの電気抵抗率の変化をリアルタイムで測定し、ひいては、フィラメントが固定されているパーツの変形を測定するために、フィラメントに電流を通す電気装置に接続されている。
【0053】
当然、ゲージ3を取得チャンネルへ、すなわち、前記電気装置へ接続するためのケーブルの通路に注目する必要がある。
【0054】
有利には、このゲージはシリコンで作られている。この材料を使用することは、この材料が1400℃を超える融点を有することから、特に実用的であり、この温度は、このパーツの最大動作温度から十分に離れている。さらに、CMCは、部分的にシリコンで作られたそのマトリックスを有しており、これにより、材料の調達が容易になる。
【0055】
可能性のある実施形態では、ゲージが製造されると、このゲージは、レアアース酸化物の新たな層4でカバーされる。この方法で、ゲージは、レアアース酸化物の2つの厚さの間に「封じ込められ」ており、こうして、ゲージがそのサポートから分離されることになる可能性に対抗している。変形実施形態では、この新たな層4は、アルミナで作られることができる。
【0056】
ゲージは、いくつかの方法で製造されることができる。これら方法の内、光増感および付加製造が好ましい。
【0057】
光増感に関し、ドープされたシリコンが最初にコーティング上に堆積される。ゲージのパターンは、次いで、フォトプリントのために投影される。ドープされたシリコンによってカバーされていないエリアは、次いでマスクされ、ドープされたシリコンがエッチングされる。ゲージのみが残り、残りのシリコンは除去される。
【0058】
付加製造では、ゲージは、レーザーを使用する(「レーザーメタルデポジション」として知られる技術を使用する)か、または電気アークを使用して、メッシュによってプリントされることができる。
【0059】
付加製造を使用することは、既知のゲージに比べて低減した表面積、ひいてはより小さい設置面積を有するゲージを得ることを可能にすることに留意されたい。
【0060】
そのようなゲージでコーティングされることができる航空学的セクター内のCMCパーツの中で、本発明によれば、例として、タービンリング、より詳細には、ベーン(vein)の外のエリア全体、タービンノズル、より詳細には、ブレードおよびプラットフォーム、ベーンの外側のエンジンノズルフラップ、燃料注入チューブカウリングなどに言及される場合がある。
【国際調査報告】