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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】ソリッドエンドミル
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20220706BHJP
   B23C 5/12 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
B23C5/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566228
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2022-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2020059440
(87)【国際公開番号】W WO2020224881
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】19173610.7
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520333435
【氏名又は名称】エービー サンドビック コロマント
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ロイヤー, ラファエル
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK16
3C022KK28
3C022KK29
(57)【要約】
本発明は、中心回転軸(R)を中心に回転可能なソリッドエンドミル(1)に関し、ソリッドエンドミルは、切削部分(2)及びシャンク部分(3)を有する。切削部分(2)は、関連するすくい面(6)と逃げ面(7)との間に形成された周辺切れ刃(5)を備えた複数の溝(4)を含む。周辺切れ刃(5)は、中心回転軸に垂直かつすくい面(6)に向かって見て、切削部分(2)の軸方向前部に沿って配置された凸状に湾曲したローブ切れ刃部分(8)と、切削部分(2)の軸方向中間部に沿って配置された凸状に湾曲したローブ切れ刃部分(8)に接続された首切れ刃部分(9)と、切削部分(2)の軸方向後部に沿って配置された首切れ刃部分(9)に接続された肩切れ刃部分(10)とを形成している。周辺切れ刃(5)は、中心回転軸(R)に垂直で、逃げ面(7)に向かって見て、中心回転軸(R)に対して5°≦θ≦15°の範囲内で線形かつ一定の軸方向傾斜角θで延在し、中心回転軸(R)に対して垂直な断面で見られるように、すくい面(6)が、周辺切れ刃(5)の延長全体に沿って正の半径方向すくい角αL,N,Sを形成している。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心回転軸(R)を中心に回転可能なソリッドエンドミル(1)であって、前記ソリッドエンドミルは、切削部分(2)及びシャンク部分(3)を有し、前記切削部分(2)は、関連するすくい面(6)と逃げ面(7)との間に形成された周辺切れ刃(5)を備える複数の溝(4)を含み、各周辺切れ刃(5)は、前記中心回転軸に垂直かつ前記すくい面(6)に向かって見て、
前記切削部分(2)の軸方向前部に沿って配置された単一の凸状に湾曲したローブ切れ刃部分(8)と、
前記凸状に湾曲したローブ切れ刃部分(8)に接続された単一の首切れ刃部分(9)であって、前記首切れ刃部分(9)は、前記凸状に湾曲したローブ切れ刃部分(8)と比較して前記中心回転軸(R)に対してより短い半径方向距離(D)で延在し、前記切削部分(2)の軸方向中間部に沿って配置される、首切れ刃部分(9)と、
前記首切れ刃部分(9)に接続された肩切れ刃部分(10)であって、前記肩切れ刃部分は、前記首切れ刃部分(9)と比較して、前記中心回転軸(R)に対してより長い半径方向距離(D)で延在し、前記切削部分(2)の軸方向後部に沿って配置される、肩切れ刃部分(10)と、
を形成していて、
各周辺切れ刃(5)は、前記中心回転軸(R)に垂直かつ前記逃げ面(7)に向かって見て、前記中心回転軸(R)に対して、5°≦θ≦15°の範囲内で線形かつ一定の軸方向傾斜角θで延在し、前記中心回転軸(R)に垂直な断面で見られるように、前記すくい面(6)は、前記周辺切れ刃(5)の延長全体に沿って正の半径方向すくい角αL,N,Sを形成していることを特徴とする、ソリッドエンドミル(1)。
【請求項2】
前記正の半径方向すくい角αL,N,Sが、前記周辺切れ刃(5)の延長全体に沿って2°≦αL,N,S≦15°の範囲内にあり、好ましくは、前記正の半径方向すくい角αL,N,Sは、前記周辺切れ刃(5)の延長全体に沿って4°≦αL,N,S≦15°の範囲内にある、請求項1に記載のソリッドエンドミル。
【請求項3】
前記凸状に湾曲したローブ切れ刃部分(8)及び前記肩切れ刃部分(10)に沿った前記すくい面(6)上の前記正の半径方向すくい角αL,Sが、前記首切れ刃部分(9)に沿った前記すくい面上の前記正の半径方向すくい角αよりも大きい、請求項1又は2に記載のソリッドエンドミル。
【請求項4】
前記凸状に湾曲したローブ切れ刃部分(8)、首切れ刃部分(9)及び肩切れ刃部分(10)に沿った前記すくい面(6)が、共通の平面に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載のソリッドエンドミル。
【請求項5】
前記中心回転軸(R)に垂直で、前記逃げ面(7)に向かって見て、各周辺切れ刃(5)が、前記中心回転軸(R)に対して8°≦θ≦12°の範囲内の軸方向傾斜角θで延在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のソリッドエンドミル。
【請求項6】
各溝(4)が、前記中心回転軸(R)に最も近く位置し前記軸方向傾斜角θで延在する底面(12)を含み、前記底面(12)と前記中心回転軸(R)との間の半径方向距離(D)は、前記切削部分(2)の前記軸方向前部から前記切削部分(2)の前記軸方向後部に向かう方向に連続的に増大する、請求項1から5のいずれか一項に記載のソリッドエンドミル。
【請求項7】
前記すくい面(6)に向かって見た場合に、前記底面(12)が、前記切削部分(2)の前記軸方向前部から、前記切削部分(2)の前記軸方向後部に向かって、好ましくは特定の曲率半径で、湾曲して軸方向に延在する、請求項6に記載のソリッドエンドミル。
【請求項8】
前記首切れ刃部分(9)と前記中心回転軸(R)との間の前記より短い半径方向距離(D)が前記凸状に湾曲したローブ切れ刃部分(8)と前記中心回転軸(R)との間の最長半径方向距離(D)の50%~70%である、請求項1から7のいずれか一項に記載のソリッドエンドミル。
【請求項9】
前記首切れ刃部分(9)と前記中心回転軸(R)との間の前記より短い半径方向距離(D)が、前記肩切れ刃部分(10)と前記中心回転軸(R)との間の前記より長い半径方向距離(D)の50%~70%である、請求項8に記載のソリッドエンドミル。
【請求項10】
前記首切れ刃部分(8)と前記中心回転軸(R)との間の前記より短い半径方向距離(D)が、1.5mm≦D≦8mmの範囲内にある、請求項8又は9に記載のソリッドエンドミル。
【請求項11】
前記切削部分(2)が、同一の周辺切れ刃(5)及び関連するすくい面(6)を有する少なくとも5つの溝(4)を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のソリッドエンドミル。
【請求項12】
1対の隣接する周辺切れ刃(5)が、別の対の隣接する周辺切れ刃(5)と比較して、円周方向に、より長い又はより短い距離(ε、γ)で離間し、その結果、前記周辺切れ刃(5)の間に差動ピッチが設けられる、請求項1から11のいずれか一項に記載のソリッドエンドミル。
【請求項13】
各周辺切れ刃(5)が、前記肩切れ刃部分(10)に接続された凹状に湾曲した面取り切れ刃部分(11)をさらに含み、前記凹状に湾曲した面取り切れ刃部分(11)が前記肩切れ刃部分(10)の端で半径方向外向きに延在する、請求項1から12のいずれか一項に記載のソリッドエンドミル。
【請求項14】
内部軸方向冷却剤チャネル(13)が前記ソリッドエンドミル内に設けられ、前記内部軸方向冷却剤チャネル(13)が、前記ソリッドエンドミルの前端に出口開口部(14)を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のソリッドエンドミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心回転軸を中心に回転可能なソリッドエンドミルに関し、ソリッドエンドミルは、切削部分及びシャンク部分を有する。切削部分は、関連するすくい面と逃げ面との間に形成された周辺切れ刃を備えた複数の溝を含む。中心回転軸に垂直かつソリッドエンドミルのすくい面に向かって見て、各周辺切れ刃は、切削部分の軸方向前部に沿って配置された単一の凸状に湾曲したローブ切れ刃部分とローブ切れ刃部分に接続された単一の首切れ刃部分を形成している。首切れ刃部分は、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分と比較して、中心回転軸に対してより短い半径方向距離で延在し、切削部分の軸方向中間部に沿って配置されている。周辺切れ刃は、首切れ刃部分に接続された肩切れ刃部分をさらに形成している。肩切れ刃部分は、首切れ刃部分と比較して、中心回転軸に対してより長い半径方向距離で延在し、切削部分の軸方向後部に沿って配置されている。
【背景技術】
【0002】
中心回転軸に垂直かつすくい面に向かって見て、周辺切れ刃を有し、ワークピースのダブテールスロットをフライス加工するため特定の輪郭を形成しているエンドミルが知られている。より正確には、特定の輪郭は、例えば、航空機エンジンにタービンブレードを取り付けるためのタービン・エンジン・ディスク構成部品のダブテールスロットのフライス加工で使用され、それにより、ダブテールスロットは、航空機エンジンに取り付けられたタービンブレードの根元部分の輪郭と一致する。ダブテールスロットはシングル・タング・ダブテール・スロットとしても知られ、通常、比較的軽量のタービンブレードを取り付けるために使用される。このタイプのエンドミルは、チューリップ又はタマネギカッターと呼ばれることもある。
【0003】
タービンブレードを取り付けるためのシングル・タング・ダブテール・スロットを機械加工するために、フライス加工動作の代替としてブローチ動作を使用することもできる。ただし、ブローチ盤は非常に大型であり、フライスツールに比べてダブテールスロットの加工が比較的効率的ではない。したがって、チューリップ(又はタマネギ)エンドミルは、生産性を高め、シングル・タング・ダブテール・スロットの製造を容易にするために開発された。
【0004】
これにより、チューリップ/タマネギタイプの既知のソリッドエンドミルは、回転軸に垂直であり、周辺切れ刃の逃げ面に向かって見た場合、真っ直ぐで傾斜していない周辺切れ刃(及び溝)を含む。さらに、既知のチューリップ/タマネギエンドミルは、回転軸に垂直な断面に見られるように、約0度で半径方向すくい角を形成するすくい面を備えた周辺切れ刃を含む。
【0005】
シングル・タング・ダブテール(チューリップ/タマネギ)の輪郭は、ソリッドエンドミルの製造/研削又は切削性能及び工具寿命のいずれかの問題に関連する。より正確には、それは、単一の凸状に湾曲したローブ切れ刃部分と単一の首切れ刃部分との間の直径の大きな違いのために、周辺切れ刃上に適切な半径方向すくい角を製造/研削する際の問題に関連している。エンドミルに真っ直ぐで傾斜していない軸方向溝を提供することにより、研削動作を容易にすることができ、それにより、所望の半径方向すくい角の研削が、周辺切れ刃に沿ってより容易に達成される。ただし、関連する周辺切れ刃を備えた真っ直ぐで傾斜していない溝は、切削性能、工具寿命、及び切りくず排出がかなり不十分になる可能性がある。ソリッドエンドミルに螺旋溝を提供することも一般的に知られているが、これはソリッドエンドミルの製造/研削動作を複雑にし、さらに大径ローブ切れ刃部分と小径首切れ刃部分との間の半径方向すくい角にかなり大きな変化を引き起こし得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、製造を簡素化し、ソリッドエンドミルの切削性能及び工具寿命を改善することである。これは、請求項1のソリッドエンドミルによって達成される。ソリッドエンドミルは、中心回転軸に垂直かつ逃げ面に向かって見て、各周辺切れ刃が、中心回転軸に対して5°≦θ≦15°の範囲内で線形かつ一定の軸方向傾斜角θで延在することを特徴とし、中心回転軸に垂直な断面で見られるように、すくい面は、周辺切れ刃の延長全体に沿って正の半径方向すくい角αL,N,Sを形成している。
【0007】
この範囲内の線形かつ一定の軸方向傾斜角は、すくい面の製造/研削動作、特に周辺切れ刃(凸状に湾曲したローブ切れ刃部分、首切れ刃部分、肩切れ刃部分)の延長全体に沿って正の半径方向すくい角を提供する研削動作を容易にする。このようにして、研削ホイールは5°≦θ≦15°の範囲内で線形かつ一定の軸方向傾斜角に位置合わせされ、1回の単一の通過で周辺切れ刃の延長全体に沿って正の半径方向すくい角を研削するためにさらに傾斜され得る。これにより、研削ホイールがエンドミルの周囲の任意の螺旋に従うとき、振れ角を含むより複雑な螺旋経路に従うことはなく、ローブ、首、及び肩切れ刃部分の間の半径方向すくい角に大きな変化を引き起こす可能性がある。5°未満の軸方向傾斜角は、傾斜していない溝を有する既知のチューリップエンドミルに近づき、それにより、例えば、切削性能及び切りくず排出が不十分になる。しかし、チューリップ/タマネギエンドミルの周辺切れ刃の軸方向延長を考えると、15°を超える軸方向傾斜角は、ソリッドエンドミルの周囲に螺旋状に延在する周辺切れ刃につながる可能性があり、それにより、半径方向すくい角の望ましくない変化を含め、研削動作はより複雑になる。したがって、請求された範囲内の線形かつ一定の軸方向傾斜角は、研削を容易にし、周辺切れ刃全体に沿った(正の)半径方向すくい角の改善された制御を提供する。言い換えれば、半径方向すくい角は、ローブ、首、及び肩切れ刃部分の間でより穏やかな変化を示すと同時に、特に首切れ刃部分が正の半径方向すくい角を確実に示すようにする。
【0008】
首切れ刃部分に沿った正の半径方向すくい角は、比較的弱い首へのひずみを低減し、それによって工具寿命が改善される。切削抵抗は、周辺切れ刃全体に沿った正の半径方向すくい角によっても低減され、これにより、切削性能が向上するだけでなく、フライス加工中振動が発生する傾向も低減する。このことは、工具寿命の向上にさらに貢献する。切削性能と工具寿命は、正の半径方向すくい角だけでなく、周辺切れ刃及び関連する溝上の線形かつ一定の軸方向傾斜角によっても向上する。これにより、真っ直ぐで傾斜していない周辺切れ刃/溝を有するソリッドエンドミルと比較して切りくず排出が改善される。線形かつ一定の軸方向傾斜角により、真っ直ぐで傾斜していない溝と比較して切削部分上の溝と周辺切れ刃の数を増やすことができ、これにより、より安定した切削動作(振動の低減)と切削性能/工具寿命の向上を実現する。
【0009】
ソリッドエンドミルの一実施形態によれば、正の半径方向すくい角αL,N,Sは、周辺切れ刃の延長全体に沿って2°≦αL,N,S≦15°の範囲内にある。正のすくい角は、中心回転軸までの半径方向距離と軸方向傾斜角の差により、ローブ、首、及び肩切れ刃部分の間で変化する。これにより、首切れ刃部分は、通常、ローブ及び肩切れ刃部分に対して最小の正の半径方向すくい角を示す。それでも、本実施形態による首切れ刃部分の最小の正の半径方向すくい角は、正の切削動作/首切れ刃部分のひずみの低減を確実にして、工具寿命を有利に延ばすために少なくとも2°である。好ましくは、範囲の下端は、正の半径方向すくい角αL,N,Sが周辺切れ刃の延長全体に沿って4°≦αL,N,S≦15°の範囲内にあるようにさらに上昇される。
【0010】
ソリッドエンドミルの一実施形態によれば、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分及び肩切れ刃部分に沿ったすくい面上の正の半径方向すくい角αL,Sは、首切れ刃部分に沿ったすくい面上の正の半径方向すくい角αよりも大きい。これにより、中心回転軸に対して最長半径方向距離に配置されたローブと肩切れ刃部分との切削性能が向上し、フライス加工中、切削抵抗と振動とがさらに低減される。これにより、加工精度が改善されるだけでなく、工具寿命もさらに向上する。
【0011】
ソリッドエンドミルのさらなる実施形態によれば、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分、首切れ刃部分、及び肩切れ刃部分に沿ったすくい面は、共通の平面に位置する。これにより、軸方向傾斜角及びローブ、首、及び肩切れ刃部分の所望の正の半径方向すくい角に対応する適切な傾斜角で研削ホイールを挿入することにより、1回の通過ですくい面全体の平面研削動作が可能になるため、すくい面の研削が容易になる。これにより、ソリッドエンドミルの製造がさらに容易になる。
【0012】
ソリッドエンドミルのさらに一実施形態によれば、各周辺切れ刃は、中心回転軸に垂直かつ逃げ面に向かって見て、中心回転軸に対して8°≦θ≦12°の範囲内の軸方向傾斜角θで延在する。このサブ範囲内の線形かつ一定の軸方向傾斜角は、正の半径方向すくい角の製造/研削動作をさらに容易にすると同時に、軸方向傾斜角も十分な切削性能/切りくず排出を確実にする。これにより、正の半径方向すくい角の変化の最適化された制御、ならびに向上した切削性能及び工具寿命が、本実施形態の範囲内の線形かつ一定の軸方向傾斜角によって達成される。
【0013】
ソリッドエンドミルのさらなる実施形態では、各溝は、中心回転軸に最も近く位置し、軸方向傾斜角で延在する底面を含み、底面と中心回転軸との間の半径方向距離は、切削部分の軸方向前部から切削部分の軸方向後部に向かう方向に連続的に増大する。これにより、すくい面に向かって見た場合、底面は、切削部分の軸方向前部から切削部分の軸方向後部に向かって、好ましくは特定の曲率半径で、湾曲して軸方向に延在することができる。このようにして、溝の底面は、底面として対応する半径を有する研削ホイールを収容するように有利に適合され、研削ホイールは溝に挿入することができ、研削ホイールの平坦な研削面は、すくい面を研削するために使用される。
【0014】
ソリッドエンドミルのさらに一実施形態では、首切れ刃部分と中心回転軸との間のより短い半径方向距離は、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分と中心回転軸との間の最長半径方向距離の50%~70%である。好ましくは、前述のより短い半径方向距離は、前述の最長半径方向距離の50%~60%である。したがって、首切れ刃部分は、ローブ切れ刃部分と比較して著しく短い半径方向距離で延在する。言い換えれば、首切れ刃部分は、ソリッドエンドミル上で比較的細く、本発明は、そのような比較的細い首切れ刃部分が、より大きなサイズの首切れ刃部分ほど明らかに強く/丈夫ではないものとして有利に使用される。首切れ刃部分と中心回転軸との間のより短い半径方向距離もまた、肩切れ刃部分と中心回転軸との間のより長い半径方向距離の50%~70%であり得る。肩切れ刃部分は、ローブ切れ刃部分の最長半径方向距離と比較して(わずかに)短い半径方向距離で延在することができ、首切れ刃部分は、切削部分の細い中間部分を形成する。言い換えれば、シングル・タング・ダブテール(チューリップ/タマネギ)タイプのエンドミルは、肩切れ刃部分と比較してわずかに大きい直径を示すローブ切れ刃部分を有する比較的細い首切れ刃部分を有する。これにより、本発明は、製造を容易にし、切削性能を改善し、工具寿命を向上するのに特に有益である。さらに、首切れ刃部分と中心回転軸との間のより短い半径方向距離は、1.5mm≦D≦8mmの範囲内であり得る。したがって、本実施形態のソリッドエンドミルは、小さなサイズのダブテールスロットをフライス加工するように構成され、非常に細い首切れ刃部分を有する。
【0015】
ソリッドエンドミルのさらなる実施形態では、切削部分は、同一の周辺切れ刃及び関連するすくい面を有する少なくとも5つの溝を有する。これにより、フライス加工時の安定性(振動の低減)がさらに増加し、工具寿命が向上する。追加で、前述のように、本発明の線形かつ一定の軸方向傾斜角はまた、同一の周辺切れ刃を有する通常3つ又は多くても4つの溝を示す真っ直ぐで傾斜していない溝と比較して、切削部分の溝及び周辺切れ刃の数を増やすことを可能にする。
【0016】
ソリッドエンドミルのさらなる実施形態では、1対の隣接する周辺切れ刃は、別の対の隣接する周辺切れ刃と比較して、円周方向により長い又はより短い距離(又はより大きいもしくはより小さい角度)で離間され、その結果、差動ピッチが周辺の切れ刃の間に設けられる。したがって、いくつかの対の隣接する周辺切れ刃又はすべての対の周辺切れ刃は、互いに比較して均質でない/差動ピッチで設けられ得る。これにより、フライス加工中、安定性がさらに向上するか、振動が減少し、工具寿命が長くなる。
【0017】
ソリッドエンドミルの実施形態では、各周辺切れ刃は、肩切れ刃部分に接続された凹状に湾曲した面取り切れ刃部分をさらに含み、凹状に湾曲した面取り切れ刃部分は、肩切れ刃部分の端で半径方向外向きに延在する。このようにして、タービンブレードの根元部分を挿入するように適合されたダブテールスロットの上端で、丸みを帯びた面取りをフライス加工することができる。
【0018】
さらに一実施形態によれば、ソリッドエンドミルは、ソリッドエンドミルの前端に出口開口部を有する内部軸方向冷却剤チャネルを備えている。このようにして、ソリッドエンドミルに供給された液体冷却剤はダブテールスロットの底から入り、溝を介してダブテールスロットからチップを洗い流すことによって切りくず排出を支援することができる。エンドミルは、インコネル(登録商標)などの耐熱超合金製の構成部品のフライス加工にも使用され、これにより、液体冷却剤は、溝を介してチップを洗い流すときに、ソリッドエンドミルの周辺切れ刃を有利に冷却する。
【0019】
実施形態は、ここで、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態によるソリッドエンドミルの斜視図を示す。
図2】ソリッドエンドミルの中心回転軸に垂直な3つの異なる断面線IV-IV、V-V及びVI-VIを含む、実施形態のソリッドエンドミルの側面図を示す。
図3】実施形態のソリッドエンドミルの軸方向正面図を示す。
図4図2の断面IV-IVを示す。
図5図2の断面V-Vを示す。
図6図2の断面VI-VIを示す。
図7】中心回転軸に垂直かつ周辺切れ刃の1つの逃げ面に向かった拡大側面図を示す。
図8】ソリッドエンドミルの拡大軸方向正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図8は、本発明の一実施形態によるソリッドエンドミルを開示する。ソリッドエンドミル1は、中心回転軸Rを中心に回転可能であり、ソリッドエンドミルは、切削部分2及びシャンク部分3を有する。切削部分2は、関連するすくい面6と逃げ面7との間に形成された周辺切れ刃5を備えた複数の溝4を含む。各周辺切れ刃5は、中心回転軸に垂直かつすくい面6に向かって見て、切削部分2の軸方向前部に沿って配置された単一の凸状に湾曲したローブ切れ刃部分8を形成している。単一の首切れ刃部分9は、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分8に接続され、首切れ刃部分9は、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分8と比較して、中心回転軸Rに対してより短い半径方向距離Dで延在し、切削部分2の軸方向中間部に沿って配置される。肩切れ刃部分10は、首切れ刃部分9に接続され、肩切れ刃部分10は、首切れ刃部分9と比較して、中心回転軸Rに対してより長い半径方向距離Dで延在し、切削部分2の軸方向後部に沿って配置される。肩切れ刃部分10は、タービンブレードの根元部分を取り付けるためのダブテールスロットの上端部分に肩面を機械加工するために、中心回転軸Rと本質的に平行に延在している。
【0022】
各周辺切れ刃5は、肩切れ刃部分10に接続された凹状に湾曲した面取り切れ刃部分11をさらに含み、凹状に湾曲した面取り切れ刃部分11は、肩切れ刃部分10の端で半径方向外向きに延在する。これにより、ダブテールスロットの上端に丸みを帯びた面取りができる。したがって、凹状に湾曲した面取り切れ刃部分11は、丸みを帯びた角を生成し、フライス加工されるシングル・タング・ダブテール・スロットの深さ、すなわち、言い換えれば、ソリッドエンドミルでフライス加工をするときに使用される最大切り込み深さを定める。
【0023】
図7に見られるように、中心回転軸Rに垂直で、逃げ面7に向かって見て周辺切れ刃5は、中心回転軸Rに対して、5°≦θ≦15°の範囲内で、好ましくは、8°≦θ≦12°の範囲内で線形かつ一定の軸方向傾斜角θで延在する。図示の実施形態では、軸方向傾斜角θは、中心回転軸Rに対して10°である。さらに、図4図6に見られるように、すくい面6は、図2にも示されているように、中心回転軸Rに垂直な断面IV-IV、V-V、及びVI-VIに見られるように、周辺切れ刃5の延長全体に沿って正の半径方向すくい角αL,N,Sを形成している。正の半径方向すくい角αL,N,Sは、周辺切れ刃5の延長全体に沿って、2°≦αL,N,S≦15°の範囲内、好ましくは4°≦αL,N,S≦15°の範囲内にある。さらに、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分8及び肩切れ刃部分10に沿ったすくい面6上の正の半径方向すくい角αL,Sは、首切れ刃部分9に沿ったすくい面上の正の半径方向すくい角αよりも大きい。図示の実施形態では、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分8の半径方向すくい角αは約10°であり、首切れ刃部分9の半径方向すくい角αは約7°である。追加で、図示の実施形態における肩切れ刃部分10の半径方向すくい角αは約12°である。
【0024】
凸状に湾曲したローブ切れ刃部分8、首切れ刃部分9及び肩切れ刃部分10に沿ったすくい面6は、共通の平面に位置する。したがって、半径方向すくい角は、単一の平坦な研削動作ですくい面を研削することによって達成される。半径方向すくい角αL,N,Sの差は、軸方向傾斜角θと、中心回転軸Rに対するローブ、首、及び肩切れ刃部分の半径方向距離DL,N,Sの違いによるものである。
【0025】
各溝4は、中心回転軸Rに最も近く位置し、軸方向傾斜角θで延在する底面12を含み、底面12と中心回転軸Rとの間の半径方向距離Dは、切削部分2の軸方向前部から切削部分2の軸方向後部に向かう方向に連続的に増大する。より正確には、すくい面6に向かって見た場合、底面12は、切削部分2の軸方向前部から切削部分2の軸方向後部に向かって、曲率半径でわずかに湾曲して軸方向に延在している。これにより、研削ホイールを溝に挿入し、すくい面の研削に研削ホイールの平坦な研削面を使用するとき、対応する半径を底面とする研削ホイールを用いての研削動作が容易になる。
【0026】
首切れ刃部分9と中心回転軸Rとの間のより短い半径方向距離Dは、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分8と中心回転軸Rとの間の最長半径方向距離Dの50%~70%であり得る。より正確には、図示の実施形態は、首切れ刃部分9と中心回転軸Rとの間の半径方向距離Dを示し、これは、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分8と中心回転軸Rとの間の最長半径方向距離Dの約58%である。さらに、首切れ刃部分9と中心回転軸Rとの間のより短い半径方向距離Dはまた、肩切れ刃部分10と中心回転軸Rとの間のより長い半径方向距離Dの50%~70%であり得る。より正確には、図示の実施形態は、首切れ刃部分9と中心回転軸Rとの間のより短い半径方向距離Dを示し、これは、肩切れ刃部分10と中心回転軸Rとの間のより長い半径方向距離Dの62%である。首切れ刃部分8と中心回転軸Rとの間のより短い半径方向距離Dは、1.5mm≦D≦8mmの範囲内であり得る。言い換えれば、単一首切れ刃部分は比較的細い。本実施形態では、首切れ刃部分のより短い半径方向距離Dは約3.11mmであり、凸状に湾曲したローブ切れ刃部分8と中心回転軸Rとの間の最長半径方向距離Dは5.4mmである。追加で、肩切れ刃部分10と中心回転軸Rとの間の半径方向距離Dは、図示の実施形態では5mmである。
【0027】
図3及び図8に見られるように、切削部分2は、同一の周辺切れ刃5及び関連するすくい面6を有する5つの溝4を備えている。さらに、1対の隣接する周辺切れ刃5は、別の対の隣接する周辺切れ刃5と比較して、円周方向により長い又はより短い距離ε、γで離間され、その結果、周辺切れ刃5の間に差動ピッチが設けられる。
【0028】
さらに、ソリッドエンドミルは、中心回転軸Rに沿って延在する内部軸方向冷却剤チャネル13を含み、内部軸方向冷却剤チャネル13は、ソリッドエンドミルの前端に出口開口部14を有する。したがって、液体冷却剤は、シャンク部分3の後端の入口開口部を介して供給され、内部軸方向冷却剤チャネル13を通って、ソリッドエンドミルの前端の出口開口部14に導かれる。これにより、冷却剤はフライス加工動作中にダブテールスロットの底部に入り、ソリッドエンドミルの溝を介してチップをスロットから洗い流す。さらに、ソリッドエンドミルは、超合金製の構成部品のスロットをフライス加工するために使用し、これは、非常に耐熱性が高いため、フライス加工中に生成される熱のほとんどは、周辺切れ刃5で吸収される。したがって、本実施形態では、内部軸方向冷却剤チャネル13を介して供給され、出口開口部14を介して排出される液体冷却剤は、周辺切れ刃5を冷却する。
【0029】
もちろん、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で変更及び修正することができる。ソリッドエンドミルは、例えば、同一の周辺切れ刃及び関連するすくい面を有する5つではなく4つの溝を含んでもよい。さらに、切削部分に凹状に湾曲した面取り切れ刃部分を設ける必要はない。代わりに、ダブテールスロットの上端に丸みを帯びたエッジ又は面取りされたエッジを別の機械加工動作で作成してもよい。ソリッドエンドミルは、内部軸方向冷却剤チャネルと前端の出口開口部なしで形成することもできる。内部軸方向冷却剤チャネルは、ソリッドエンドミルのサイズと内部軸方向冷却剤チャネルに応じて、工具寿命が長くなるのではなく減少する程度まで、ソリッドエンドミルのコアを弱める恐れがある。追加で、周辺切れ刃は、いわゆるマイクロ幾何学的刃処理を受けることができ、断面の周辺切れ刃は、周辺切れ刃の強度を高めるために、刃部の丸み(ER)又は補強ランド/ベベルを備える。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】