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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】イオントフォレーシス投与装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/30 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
A61N1/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566251
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2020093888
(87)【国際公開番号】W WO2020224664
(87)【国際公開日】2020-11-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521486284
【氏名又は名称】上海▲フ▼泰科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI FUTAI TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room J2487,Building 4,Block B,No.925 Yecheng Road,Jiading Industrial Zone,Jiading District,Shanghai 201821,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 峰
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053HH02
4C053HH04
(57)【要約】
イオントフォレーシス投与装置(100、200、300、400、500、600、700)であって、当該イオントフォレーシス投与装置(100、200、300、400、500、600、700)は、生物の投与領域(122、322、422)に浸透される薬剤(130、230)を浸透するのに必要な電力を生成するための電源(110)と、投与領域(122、322、422)を覆い、ゲル(118)および極性を有する自由状態の浸透される薬剤(130、230)を含む統合型誘電体層(114、314、414、514、614、714)と、および電源(110)と統合型誘電体層(114、314、414、514、614、714)とをそれぞれ電気的に接続することにより、電源(110)によって生成された電気が、それぞれ投与領域(122、322、422)および統合型誘電体層(114、314、414、514、614、714)の少なくとも一部を流れるようにし、統合型誘電体層(114、314、414、514、614、714)の少なくとも一部は、所定の抵抗値を有する複数の電極(112、312、412、512、612、712)とを含む。当該イオントフォレーシス投与装置(100、200、300、400、500、600、700)は、経皮効率を向上させることができるだけでなく、皮膚損傷を容易に引き起こさない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオントフォレーシス投与装置であって、
生物の投与領域に浸透される薬剤を浸透するのに必要な電力を生成するための電源と、
前記投与領域を覆い、ゲルおよび極性を有する自由状態の前記浸透される薬剤を含む統合型誘電体層と、および
前記電源と前記統合型誘電体層とをそれぞれ電気的に接続することにより、前記電源によって生成された電気が、それぞれ前記投与領域および前記統合型誘電体層の少なくとも一部を流れるようにし、前記統合型誘電体層の少なくとも一部は、所定の抵抗値を有する複数の電極とを含むことを特徴とする、イオントフォレーシス投与装置。
【請求項2】
前記ゲルは、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ゼラチン、アルギン酸のうちの少なくとも一つの成分を含むことを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項3】
前記複数の電極は、所定の間隔で離隔される複数の可撓性導電性電極フィルムであることを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項4】
前記浸透される薬剤は、ビタミンCおよびアルブチンを含むことを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項5】
前記浸透される薬剤は、ビタミンCおよびトラネキサム酸を含むことを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項6】
前記浸透される薬剤の分子量は、10000ダルトン以下であることを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項7】
前記統合型誘電体層の厚さは、50mm以下であることを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項8】
前記電気は、交流であり、前記電気の電流強度は、5mA以下であることを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項9】
前記電気は、直流であり、前記電気の電流強度は、5mA以下であることを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項10】
前記電気の電流強度は、0.01mA以上であることを特徴とする
請求項8および9のいずれか1項に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項11】
前記電源は、少なくとも第1の電源を含み、前記複数の電極は、少なくとも第1の電極および第2の電極を含み、前記第1の電極は、前記第1の電源の第1の端部に電気的に接続され、前記第2の電極は、前記第1の電源の第2の端部に電気的に接続されることを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項12】
前記電源は、第2の電源をさらに含み、前記複数の電極は、第3の電極および第4の電極をさらに含み、前記第3の電極は、前記第2の電源の第1の端部に電気的に接続され、前記第4の電極は、前記第2の電源の第2の端部に電気的に接続されることを特徴とする
請求項11に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項13】
前記電源は、第3の電源および第4の電源をさらに含み、前記複数の電極は、第5の電極をさらに含み、前記第3の電源の第1の端部は、前記第1の電源の第2の端部に電気的に接続され、前記第3の電源の第2の端部は、前記第5の電極に電気的に接続され、前記第4の電源の第1の端部は、前記第1の電源の第1の端部に電気的に接続され、前記第4の電源の第2の端部は、前記第3の電源の第2の端部に電気的に接続されることを特徴とする
請求項11に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項14】
前記複数の電極の上部を覆い、絶縁材料であるバッキング層と、および
前記電源および前記複数の電極をそれぞれ電気的に接続するための複数の接続部材とをさらに含み、前記複数の接続部材の各接続部材の少なくとも一部は、前記バッキング層に設置されることを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項15】
前記所定の抵抗値は、100Ωより大きく、100KΩ以下であることを特徴とする
請求項1に記載の投与装置。
【請求項16】
前記所定の抵抗値は、1KΩより大きく、12KΩ以下であることを特徴とする
請求項15に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【請求項17】
前記ゲルは、コラーゲンを含むことを特徴とする
請求項1に記載のイオントフォレーシス投与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投与装置に関し、具体的には、イオントフォレーシス投与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮投与とは、皮膚の表面に投与することにより、薬物が一定の速度で皮膚を通過し、体循環に入り、全身的または局所的な治療効果を生み出すことを可能にする投与方法を指す。経皮投与方法は、消化管内の食物等の要因に影響されることなく、投与速度を持続的に制御する等の利点を有し、幅広い応用の可能性がある。
【0003】
経皮投与の過程において、皮膚の角質層は、バリア機能を有し、当該バリア機能により、現在の皮膚の表面を介して投与される経皮速度および浸透量が予期する効果を達成することが困難になる。経皮速度および浸透量を向上させる従来の方法は、例えば、マイクロニードル経皮投与方法であり、即ち、投与担体上にマイクロニードルアレイを設定することにより、マイクロニードルが皮膚角質層を通過し、従って投与される経皮速度を向上させる。上記マイクロニードル経皮方法は、マイクロニードルの長さに対して比較的高い要件があり、十分に制御されないと、皮膚を損傷し、痛みを引き起こしやすい。
【0004】
経皮投与を向上させる従来の方法は、また例えば、イオントフォレーシス投与方法であり、即ち、帯電した電荷を使用して、起電力によって極性を有する活性薬剤を皮膚に押し込む非侵襲的方法である。従来のイオントフォレーシス投与方法において、一般に、電気駆動のシングルポイント電極または電極付きの複数の投与担体を設定して投与し、上記イオントフォレーシス投与方法は、経皮効果が明らかでないか、皮膚の火傷を引き起こしやすい。
従って、従来の経皮投与方法に存在する欠点は、経皮効果が明らかでないか、皮膚の火傷または痛み等の皮膚損傷を引き起こしやすいことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の例示的な実施例によれば、経皮効率を向上させるだけでなく、皮膚損傷を容易に引き起こさない、イオントフォレーシス投与装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、イオントフォレーシス投与装置を提供する。当該装置は、生物の投与領域に浸透される薬剤を浸透するのに必要な電力を生成するための電源と、投与領域を覆い、ゲルおよびゲル極性を有する自由状態の浸透される薬剤を含む統合型誘電体層と、および電源と統合型誘電体層とをそれぞれ電気的に接続することにより、電源によって生成された電気が、それぞれ投与領域および統合型誘電体層の少なくとも一部を流れるようにし、統合型誘電体層の少なくとも一部は、所定の抵抗値を有する複数の電極とを含む。
【0007】
いくつかの実施例において、ゲルは、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ゼラチン、アルギン酸ののうちの少なくとも一つ含む。
【0008】
いくつかの実施例において、複数の電極は、所定の間隔で離隔される複数の可撓性導電性電極フィルムである。
【0009】
いくつかの実施例において、浸透される薬剤は、ビタミンCおよびアルブチンを含む。
【0010】
いくつかの実施例において、浸透される薬剤は、ビタミンCおよびトラネキサム酸を含む。
【0011】
いくつかの実施例において、浸透される薬剤の分子量は、10000ダルトン以下である。
【0012】
いくつかの実施例において、統合型誘電体層の厚さは、50mm以下である。
【0013】
いくつかの実施例において、電源によって生成される電気は、交流であり、電気の電流強度は、5mA以下である。
【0014】
いくつかの実施例において、電源によって生成される電気は、直流であり、電気の電流強度は、5mA以下である。
【0015】
いくつかの実施例において、電源によって生成される電気の電流強度は、0.01mA以上である。
【0016】
いくつかの実施例において、電源は、少なくとも第1の電源を含み、複数の電極は、少なくとも第1の電極および第2の電極を含み、第1の電極は、第1の電源の第1の端部に電気的に接続され、第2の電極は、第1の電源の第2の端部に電気的に接続される。
【0017】
いくつかの実施例において、電源は、第2の電源をさらに含み、複数の電極は、第3の電極および第4の電極をさらに含み、第3の電極は、第2の電源の第1の端部に電気的に接続され、第4の電極は、第2の電源の第2の端部に電気的に接続される。
【0018】
いくつかの実施例において、電源は、第3の電源および第4の電源をさらに含み、複数の電極は、第5の電極をさらに含み、第3の電源の第1の端部は、第1の電源の第2の端部に電気的に接続され、第3の電源の第2の端部は、第5の電極に電気的に接続され、第4の電源の第1の端部は、第1の電源の第1の端部に電気的に接続され、第4の電源の第2の端部は、第3の電源の第2の端部に電気的に接続される。
【0019】
いくつかの実施例において、イオントフォレーシス投与装置は、複数の電極の上部を覆い、絶縁材料であるバッキング層と、および電源および複数の電極をそれぞれ電気的に接続するための複数の接続部材とをさらに含み、複数の接続部材の各接続部材の少なくとも一部は、バッキング層に設置される。
【0020】
いくつかの実施例において、所定の抵抗値は、100Ωより大きく、100KΩ以下である。
【0021】
いくつかの実施例において、所定の抵抗値は、1KΩより大きく、12KΩ以下である。
【0022】
いくつかの実施例において、ゲルは、コラーゲンを含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の内容部分に記載される内容は、本開示の実施例の核心的なまたは重要な特徴を限定することを意図するものではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものでもないことを理解されたい。本開示の他の特徴は、以下の説明によって容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示の各実施例の上記および他の特徴、利点および態様は、添付の図面を参照し、かつ以下の詳細な説明を参照することによってより明らかになるであろう。図面において、同じまたは類似な符号は、同じまたは類似の構成要素を表し、ここで、
図1】本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置100のモード図を示す。
図2】本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置200の局所的構造のモード図を示す。
図3】本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置300のモード図を示す。
図4】本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置400のモード図を示す。
図5】本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置500のモード図を示す。
図6】本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置600のモード図を示す。
図7】本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置700のモード図を示す。 各図面において、同じまたは対応する参照番号は、同じまたは対応する部品を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本開示の実施例をより詳細に説明する。図面には本開示のいくつかの実施例が示されているが、本開示は、様々な形態で実施することができ、本明細書に記載される実施例に限定されると解釈されるべきではなく、逆に、これらの実施例の提供は、本開示をより徹底的かつ完全に理解するためのものであることを理解すべきである。本開示の図面および実施例は、例示的な目的のためにのみ使用され、本開示の保護範囲を限定することを意図していないことを理解すべきである。
【0026】
本開示の実施例の説明において、「含む」およびその類似な用語は、「含むがこれらに限定されない」の開放型包含として理解されるべきである。「に基づいて」という用語は、「少なくとも部分的に基づいて」として理解されるべきである。「一実施例」または「当該実施例」という用語は、「少なくとも一つの実施例」として理解されるべきである。「第1」、「第2」等の用語は、異なるまたは同じ対象を代わりに指すことができる。以下は、他の明示的および暗黙の定義を含むことができる。
【0027】
上述のように、従来のイオントフォレーシス投与方法は、例えば、単一電極またはそれぞれ電極を有する複数の投与担体を設置し、電源は電極に、電気的に接続されるものである。投与する前に、投与する生物の皮膚抵抗を測定し、測定した抵抗に応じて安全な電源電圧、電流を設定するか、または皮膚抵抗の一般的な経験値に応じて、安全な電源電圧、電流を設定して、投与する生物の皮膚が損傷しないように保障する。
【0028】
上記従来のイオントフォレーシス投与方法において、一方、投与過程が進むにつれて、投与される領域の皮膚状態(例えば、水分含有量、皮膚に蓄積された薬物量)には変化が生じる。同時に投与される領域の皮膚抵抗も、皮膚状態の変化に応じて変化する。従って、投与前に設置された電源電圧、電流値は、投与中の皮膚抵抗の変化量を考慮せず、投与過程中の変化した皮膚抵抗と会わないことがある。例えば、投与過程が進むにつれて、皮膚の水分含有量または薬物含有量は、それに応じて増加し、皮膚の抵抗はそれに応じて減少し、予め設定された電源電圧が変化しない場合、皮膚に流れる電流強度が増加し、これは、皮膚に刺激や火傷を引き起こすことができる。
【0029】
上記問題のうちの少なくとも一つおよび他の潜在的な問題のうちの一つまたは複数を解決するために、本開示の例示的な実施例は、イオントフォレーシス投与装置を提供する。当該装置は、生物の投与領域に浸透される薬剤を浸透するのに必要な電力を生成するための電源と、投与領域を覆い、ゲルおよび極性を有する自由状態の浸透される薬剤を含む統合型誘電体層と、および電源と統合型誘電体層とをそれぞれ電気的に接続することにより、電源によって生成された電気が、それぞれ投与領域および統合型誘電体層の少なくとも一部を流れるようにし、統合型誘電体層の少なくとも一部は、所定の抵抗値を有する複数の電極とを含む。
【0030】
本開示で提供される上記イオントフォレーシス投与装置において、電源によって生成された電気が、それぞれ投与領域および所定の抵抗値を有する統合型誘電体層の少なくとも一部を流れるようにするため、即ち、所定の抵抗値を有する統合型誘電体層および投与領域の皮膚抵抗を並列に連結し、投与領域を流れる電流をシャント(shunt)し、過度の電流強度による皮膚の刺激または火傷を防止する。さらに、並列回路の原理によれば、誘電体層によってシャントされる電流の比率は、誘電体層の所定の抵抗値と投与領域の皮膚抵抗との間の比率に関係しており、従って、誘電体層の抵抗値が一定の場合、それによってシャントされる電流も、投与される領域の皮膚抵抗の変化に伴って変化する。異なる個体の皮膚状態の変化が異なり、従って、本開示のイオントフォレーシス投与装置は、一種の簡単な方法で投与過程中の皮膚抵抗の低下により引き起こされる電流強度の増加によって、引き起こされる皮膚の刺激または火傷の技術問題を解決するだけでなく、異なる個人差の皮膚の状態にも応じて、皮膚を流れる電流の大きさを適応的に調整することができる。また、上記イオントフォレーシス投与装置において、電流の一部は、電極間の遊離動物のゲルを含む所定の抵抗値を有する統合型誘電体層を通って流れるため、投与される領域の表面を覆う統合された誘電体層およびそのゲルは、熱を発生させる。表皮は、外側から内側への角質層、顆粒層、有棘層、基底層である。表皮層での経皮吸収の鍵は、「皮膚バリア」である。皮膚バリアは、角質層と皮質膜を含む。一般に、皮膚温度の適切な上昇は、「皮膚バリア」を通過する浸透される薬剤の効率を向上させるのに役立つ。従って、統合型誘電体層を流れる電流によって生成される熱は、「皮膚バリア」を通過する浸透される薬剤の効率を改善するのに有益である。
【0031】
図1は、本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置100のモード図を示す。当該例示的なイオントフォレーシス投与装置100において、電源110、複数の電極112-1および112-2、ならびに統合型誘電体層114を含む。ここで、統合型誘電体層114は、ゲル118および極性を有する自由状態の浸透される薬剤130をさらに含む。統合型誘電体層114は、生物120の投与領域122を覆い、投与領域122の輪郭に一致する。いくつかの実施例において、投与領域122は、例えば、顔の皮膚などであるがこれに限定されない、人体の部分的な皮膚である。統合型誘電体層114は、例えば、顔面マスクの輪郭に設定される。いくつかの実施例において、統合型誘電体層114は、メッシュ構造(図示せず)をさらに含む。いくつかの実施例において、極性を有する自由状態の浸透される薬剤130は、ゲル118によって架橋されるメッシュ構造に分散される。いくつかの実施例において、極性を有する自由状態の浸透される薬剤130は、ゲル118の表面に分布される。いくつかの実施例において、ゲル118は、コラーゲンを含むか、またはゲル118は、コラーゲンゲルである。
【0032】
電源110に関しては、投与領域に浸透される薬剤を浸透させるために必要な電力を発生させるために使用される。いくつかの実施例において、イオントフォレーシス投与装置100は、一つの電源を含む。いくつかの実施例において、イオントフォレーシス投与装置100は、複数の電源を含む。当該複数の電源は、直列および/または並列に接続して、投与領域に浸透される薬剤を浸透させるための適切な電圧、電流を提供することができる。電源110によって生成される電気は、一定または可変であり得る。いくつかの実施例において、電源の電力供給時間、電力供給電圧、電流強度の設定は、浸透される薬剤量に関連される。いくつかの実施例において、投与量の大きさ、投与モードの違い(例えば、即時投与モード、一定投与モード、パルス投与モード等)に応じて、電源の電力供給電圧振幅、電流強度、電力供給時間、周波数、チューティサイクル等を調整する。
【0033】
いくつかの実施例において、電源110によって提供される電力は、交流である。これは、一方で、直流は、皮膚に局所麻酔を引き起こす可能性があり、投与される人が気付きにくい皮膚への損傷を引き起こしやすく、もう一方で、直流は、皮膚層に電荷を蓄積させることができて、時間の経過とともに送達される浸透される薬剤130の速度および総量を減少させる。電源110によって提供される交流の電流方向の交換変換は、皮膚層における容量性電荷の蓄積を解決することができ、薬剤の経皮効率および総量を向上させるのに役立つ。いくつかの実施例において、当該交流の電流強度は、5mA以下である。いくつかの実施例において、交流の電流強度は、0.01mA以上5mA未満であり、上記電流強度の設定範囲は、皮膚の損傷を回避するだけでなく、浸透される薬剤を投与領域に浸透させるのに必要な十分な電気ポテンシャルエネルギーを確保することもできる。
【0034】
電極112に関しては、それは、イオン透過性電極として構成される。複数の電極112は、電源110の二つの輸出端をそれぞれ統合型誘電体層114に接続することにより、電源によって生成される電気が、それぞれ投与領域および統合型誘電体層の少なくとも一部を流れる。例えば、図1に示されるように、電極112は、第1の電極112-1と第2の電極112-2とを含み、ここで、第1の電極112-1は、接続部材111-1および導線113-1を介して電源110の第1の端部に電気的に接続され、第2の電極112-2は、接続部材111-2および導線113-2を介して電源110の第2の端部に電気的に接続される。電源110によって生成される電気は、それぞれ投与領域122および統合型誘電体層の少なくとも一部(例えば、第1の電極112-1と統合型誘電体層114との電気的接触点から、第2の電極112-2と統合型誘電体層との電気的接触点までの間の統合型誘電体層の部分)を流れる。当該電流が流れる統合型誘電体層114の部分は、所定の抵抗値を有する。
【0035】
投与対象の場合、個体の皮膚の違い(例えば、油水比率、乾燥程度、毛穴の状況等の態様に存在する違い)にため、個体の皮膚の抵抗値には一定の違いがある。皮膚を流れる電流は、皮膚の抵抗値によって発生する熱量により皮膚が火傷する可能性があり、従って、従来のイオントフォレーシス投与方法は、投与対象の皮膚への損傷を回避するために、通常、極端な条件下での皮膚の抵抗値に基づいて出力電流強度を厳密に制限し、これは、経皮投与効率の低下という副作用につながる可能性がある。本開示の上記方法において、統合型の、所定の抵抗値を有する自由状態を含む、極性を有する浸透される薬剤130の誘電体層で互いに独立した複数の電極112の下を覆うことにより、統合型の誘電体層を投与領域122の皮膚抵抗に並列して、投与領域122の皮膚を流れる電流をシャントして、従って所与の電源電圧の場合に、皮膚を流れる電流強度を減少して、皮膚に対する刺激または火傷を効果的に回避する。
【0036】
統合型誘電体層114の所定の抵抗値に関しては、電流が流れる統合型誘電体層の抵抗をR1とし、投与領域122の皮膚抵抗をR2と仮定する。並列抵抗の原理によれば、R1>R2の場合、電源によって提供される電流のほとんどは、皮膚内の活性物質を活性化するために使用され、R1<R2の場合、電源によって提供される電流のほとんどは、ゲル内に分散した活性物質を皮膚に押し込むために使用される。いくつかの実施例において、R1は、R2の10%~90%であるように設定される。いくつかの実施例において、R1は、100Ωより大きく、100KΩ以下であるように設定する。いくつかの実施例において、R1は、1KΩより大きく、12KΩ以下、例えば、10KΩであるように設定される。
【0037】
電極112の形状に関しては、それは、板状電極、点状電極、層状電極であってもよく、他の形状であってもよい。いくつかの実施例において、複数の電極112は、所定の間隔で離隔される複数の可撓性導電性電極フィルムである。当該導電性電極フィルムは、例えば、低抵抗導電性膜、導電性炭素膜、炭素系導電性膜である。当該可撓性導電性電極フィルムは、例えば、高分子超電導性ナノカーボンブラック、硬化剤、補助剤等の混合ポリエチレンにより製造される。可撓性導電性電極フィルムの形態でイオン透過性電極を設定すると、抵抗値が均一で安定的であり、屈曲性能および柔軟性能が良好な利点を有し、統合型誘電体層114および電極が投与領域の違いがある外部輪郭によくフィットし、電気的に腐食しないようにするのに有利する。従って、従来のチップイオン透過性電極に比べて明らかな利点がある。いくつかの実施例において、複数の可撓性導電性電極フィルムの形態の電極は、接着剤によってバッキング層116上に取り付けられることができ、複数の可撓性導電性電極フィルムの形態の電極は、所定の間隔によってバッキング層116上で互いに離隔される。当該所定の間隔は、例えば、0.1~10mmであり、好ましくは、1~2mmである。このような設定は、イオン透過性電極の被覆面積を制御することにより、経皮効率を向上させることができる。
【0038】
ゲル118に関しては、それは、例えば、基質、活性薬剤および添加剤を含むが、これらに限定されない。当該ゲル118は、架橋、薬剤分散および硬化等のプロセスを通じて形成される。ここで、活性薬剤は、極性を有する自由状態の浸透される薬剤130である。添加剤は、例えば、経皮浸透促進剤、医薬溶媒等を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、ゲル118は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ゼラチン、アルギン酸のうちの少なくとも一つまたは複数の成分を含む。実験結果、上記成分からなるゲルは、一定の強度を有する高分子架橋メッシュ構造を形成するだけでなく、ゲル内に浸透される薬剤130を自由状態で分散させることができることを示す。このような設定は、投与領域122の皮膚を流れる電流をシャントするのに有益であるだけでなく、浸透される薬剤130の制御放出効果を有意に向上させるのに有益である。実験結果、本開示によって提供されるゲルの経皮投与後、薬剤130の投与濃度を安定化することができ、生物学的利用率が理想的であることを示す。
【0039】
浸透される薬剤130に関しては、それは、例えば、疼痛緩和、関節炎または喘息治療、ホルモン調節、美容等を目的とするが、これらに限定されない。いくつかの実施例において、浸透される薬剤130の分子量は、10000ダルトン以下である。これは、分子量が10000ダルトン以下である浸透される薬剤130が細胞間隔を通じて皮膚に容易に浸透して、経皮投与効率を向上させるのに有利であるという研究結果があるためである。例えば、分子量が10000ダルトン以下である極性を有する自由状態の浸透される薬剤130は、ゲル118に均等に分散され、電極112によって提供される電荷の作用下で、ゲル118から放出され、皮膚の角質層に拡散され、次に表皮を介して真皮まで拡散し、さらに皮膚の毛細血管に入る。
【0040】
いくつかの実施例において、浸透される薬剤130は、ビタミンCおよびアルブチンを含む。浸透される薬剤130中のアルブチンは、皮膚中のチロシナーゼを阻害し、メラニンの形成を阻害し、メラニンの分解および排泄を促進し、同時に抗炎症効果を有する。浸透される薬剤130中のビタミンCは、抗酸化効果があり、色素斑の形成を阻害し、色素斑の退行を促進するのに有益である。実験結果、浸透される薬剤130は、ビタミンCおよびアルブチン成分を同時に含み、極性を有する、自由状態で統合型誘電体層114のゲル118に均等に分散され、イオントフォレーシス投与装置100の電極を通じて電流を印加して、極性を有する自由状態の浸透される薬剤130が投与領域122に導入され、投与領域122およびその周辺領域が急速に白く変化することができようにし、当該白化効果は、長期間持続することができる。いくつかの実施例において、顔面マスクの形状に設置された統合型誘電体層114のゲル118には、ビタミンCおよびアルブチンを含む浸透される薬剤130が均等に分布され、イオントフォレーシス投与方法で人体の顔面の美白を実行する。
【0041】
いくつかの実施例において、浸透される薬剤130は、ビタミンCおよびトラネキサム酸を含む。浸透される薬剤130中のトラネキサム酸は、チロシナーゼの活性を阻害することにより、メラニンの形成を阻害する。実験結果、浸透される薬剤130は、ビタミンCおよびトラネキサム酸の成分をともに含んで、極性を有する、自由状態で統合型誘電体層114のゲル118中に均等に分散され、イオントフォレーシス投与装置100の電極を通じて電流を印加して、極性を有する自由状態の浸透される薬剤130が投与領域122に導入され、投与領域122の斑点を効果的に除去することができる。いくつかの実施例において、顔面マスクの形状に設置された統合型誘電体層114のゲル118には、ビタミンCおよびトラネキサム酸を含む浸透される薬剤130が均等に分布され、イオントフォレーシス投与方法で人体の顔面の斑点を除去する。
【0042】
いくつかの実施例において、イオントフォレーシス投与装置100は、複数の電極112の上部を覆い、絶縁材料であるバッキング層116をさらに含む。複数の接続部材111-1および111-2は、対応する電極をそれぞれ電源に電気的に接続し、前記複数の接続部材111-1および111-2の各接続部材の少なくとも一部は、バッキング層116に設置される。
【0043】
図2は、本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置200の局所的構造のモード図を示す。当該例示的なイオントフォレーシス投与装置200は、積層構造を含む。バッキング層216は、積層構造の表面層に位置する。バッキング層216の下に位置するのは、バッキング層216および可撓性導電性電極フィルム212-1および212-2を接着するための接着層232であり、接着層232の下には、可撓性導電性電極フィルム212-1および212-2であり、可撓性導電性電極フィルム212-1および212-2の下には、浸透される薬剤230を含むゲル層218であり、ゲル層218の下には、ゲル層218中の的活性成分が汚染されるのを防ぐための剥離層234である。イオントフォレーシス投与装置200を使用する場合、剥離層234は、ゲル層218が投与領域の皮膚の上を覆うように、剥離される。接着層232は、導電性を有する接着剤を含み、例えば、炭素または金属等の導電性充填剤を含む感圧接着剤、油性接着剤、水性接着剤、ホットメルト接着剤等であるが、これらに限定されない。
【0044】
バッキング層216には、導電性材料によって製造された接続部材211-1および211-2が設置され、各接続部材の少なくとも一部は、バッキング層216に設置されて、電源からの電気を対応する可撓性導電性電極フィルム212-1および212-2に接続する。当該接続部材と電源または電源に接続される導線との間の接続方式は、様々な方式であり得、例えば、バックル接続等の機械結合式接続、磁石による接続、接着または溶接であるが、これらに限定されない。ここで、バックル接続および磁石による接続方式は、電源と電極との接続方式を調整するが便利である。例えば、各接続部材211は、バックルカップリングが可能な一対の接続アセンブリ(具体的に図示せず)であり、一つの接続アセンブリは、電源に接続される導線に接続され、もう一つの接続アセンブリは、可撓性導電性電極フィルムに接続される。二つの接続アセンブリのバックルカップリングを介して、電源に接続される導線と可撓性導電性電極フィルムとの間の電気的に接続を実施する。例えば、各接続部材211は、互いに吸引可能な一対の磁石接続要素(具体的に図示せず)であり、一つの磁石接続要素は、電源に接続された導線に接続され、もう一つの磁石接続要素は、可撓性導電性電極フィルムに接続される。二つの磁石接続要素の磁石作用によって互いに結合されることにより、電源に接続された導線と可撓性導電性電極フィルムとの間の電気的に接続を実施する。
【0045】
図3は、本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置300のモード図を示す。当該例示的なイオントフォレーシス投与装置300は、第1の電源310-1、第2の電源310-2、複数の電極312(例えば、第1の電極312-1、第2の電極312-2、第3の電極312-3、第4の電極312-4)、統合型誘電体層314を含む。ここで、統合型誘電体層314は、ゲルおよび極性を有する自由状態の浸透される薬剤を含む。統合型誘電体層314は、生物の投与領域322を覆う。例えば、第1の電極312-1と第2の電極312-2と、第3の電極312-3と第4の電極312-4とは、投与領域322の異なるサブ領域によって対応するように覆われる。
【0046】
図3に示されるように、ここで、第1の電極312-1は、第1の接続部材311-1および第1の導線313-1を介して第1の電源310-1の第1の端部に電気的に接続され、第2の電極312-2は、第2の接続部材311-2および第2の導線313-2を介して第1の電源310-1の第2の端部に電気的に接続される。さらに、第3の電極312-3は、第3の接続部材311-3および第3の導線313-3を介して第2の電源310-2の第1の端部に電気的に接続され、第4の電極312-4は、第4の接続部材311-4および第4の導線313-4を介して第2の電源310-2の第2の端部に電気的に接続される。上記解決手段において、第1の電源および第2の電源を設置して、第1の電極と第2の電極とを第1の電源に電気的に接続し、第3の電極と第4の電極とを第2の電源に電気的に接続する。投与領域322の異なるサブ領域のイオントフォレーシス投与を互いに独立して制御することができる。例えば、第1の電源310-1が電源を供給する場合、第2の電源310-2は、電源を停止する。例えば、第1の電源310-1の電源電圧振幅、電流強度、周波数、チューティサイクルおよび/または電力供給時間は、第2の電源310-2の電源電圧振幅、電流強度、周波数、チューティサイクルおよび/または電力供給時間とは異なり、投与領域322の異なるサブ領域の差異性特性に応じて別々に投与するのを容易にする。例えば、複合型皮膚を有する個体の顔面では、T字型領域には脂性皮膚を示し、U字型領域には乾燥性皮膚を示す。例えば、眼部領域の皮膚と頬領域の皮膚との感度は、一般的に異なる。同じイオントフォレーシス投与装置300に互いに独立した電源を設定して、異なる皮膚サブ領域に対応する異なる位置の電極に電気を供給することにより、異なる皮膚サブ領域の異なる皮膚タイプに対して、経皮投与のための一致した電気供給パラメータを設定することができる。
【0047】
図4は、本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置400のモード図を示す。当該例示的なイオントフォレーシス投与装置400は、第1の電源410-1、第3の電源410-3、第4の電源410-4、複数の電極412(例えば、第1の電極412-1、第2の電極412-2、第5の電極412-5)および統合型誘電体層414を含む。ここで、統合型誘電体層414は、ゲルおよび極性を有する自由状態の浸透される薬剤を含む。統合型誘電体層414は、生物の投与領域422を覆う。
【0048】
図4に示されるように、ここで、第1の電極412-1は、第1の接続部材411-1および導線を介して第1の電源410-1の第1の端部に電気的に接続され、第2の電極412-2は、第2の接続部材411-2および導線を介して第1の電源410-1の第2の端部に電気的に接続される。さらに、第3の電源410-3の第1の端部は、前記第1の電源410の第2の端部に電気的に接続され、第3の電源410-3の第2の端部は、第5の接続部材411-5の第5の電極412-5に電気的に接続される。さらに、第4の電源410-4の第1の端部は、第1の電源410-1の第1の端部に電気的に接続され、第4の電源410-4の第2の端部は、第3の電源410-3の第2の端部に電気的に接続される。上記解決手段において、第1の電源410-1および第3の電源410-3は、直列化された後、再び第4の電源410-4と並列して、第1の電極412-1、第2の電極412-2および第5の電極412-5に電気を共有することにより、電気がそれぞれ一部の統合型誘電体層414および投与領域422の皮膚を流れるようにする。ゲルの骨格構造に分散された、極性を有する自由状態の浸透される薬剤は、電荷作用下で投与領域422の皮膚に導入される。
【0049】
上記解決手段において、二つまたはそれ以上の電源を直列して、イオントフォレーシス投与に必要な電圧振幅を調整することができ、二つまたはそれ以上の電源を並列して、イオントフォレーシス投与に必要な電流強度を調整することができる。第1の電極412-1、第2の電極412-2、第5の電極412-5を互いに直列および並列に接続された電源の異なる出力端にそれぞれ接続して、第1の電極412-1と第2の電極412-2との間のイオントフォレーシス投与電気パラメータが、第2の電極412-2と第5の電極412-5との間のイオントフォレーシス投与電気パラメータから、比較的に独立し、かつ制御可能であり、特定の相関関係がある。従って、経皮投与の個別化制御を実施する。
【0050】
図5は、本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置500のモード図を示す。当該例示的なイオントフォレーシス投与装置500は、少なくとも第1の電源510-1、第5の電源510-5、第1のスイッチ540、第2のスイッチ542、複数の電極512(例えば、第1の電極512-1、第2の電極512-2)、統合型誘電体層514およびコントローラ(図示せず)を含む。ここで、統合型誘電体層514は、図1~4に示される統合型誘電体層構造と同じであるため、ここではこれ以上繰り返さない。第1の電源510-1および第5の電源510-5は、直流電源である。いくつかの実施例において、直流電気の電流強度は、5mA以下である。いくつかの実施例において、直流電気の電流強度は、0.01mA以上である。例えば、電流強度は、0.1mA以上であり、かつ皮膚の安全電流閾値未満である。第1のスイッチ540および第2のスイッチ542は、例えば、コントローラ(図示せず)によってターンオンまたはターンオフするように制御されるリレーであるが、これらに限定されない。
【0051】
図5に示されるように、第1の電極512-1は、少なくとも第1の接続部材511-1および第1のスイッチ540を介して第1の電源510-1の陽極に電気的に接続され、第2の電極512-2は、少なくとも第2の接続部材511-2を介して第1の電源510-1の陰極に電気的に接続される。第1の電極512-1は、第2のスイッチ542を介して第5の電源510-5の陰極にさらに電気的に接続され、第2の電極512-2は、第5の電源510-5の陽極にさらに電気的に接続される。即ち、第1の電源510-1と第1のスイッチ540とを直列接続した後、再び第5の電源510-5と第2のスイッチ542との直列回路に逆位相並列に接続した後、再びそれぞれ第1の電極512-1および第2の電極512-2に電気的に接続される。
【0052】
例えば、第1の期間中、コントローラは、ハイレベルの第1の信号を出力して第1のスイッチ540をターンオンさせるとともに、ローレベルの第2の信号を出力して第2のスイッチ542をターンオフさせることにより、第1の電源510-1の陽極が第1の電極512-1に電気的に接続されるようにし、第1の電源510-1の陰極が第2の電極512-2に電気的に接続されるようにし、即ち、第1の期間中、第1の方向の電流で浸透される薬剤の導入を実施する。第2の期間中、コントローラは、ローレベルの第1の信号を出力して第1のスイッチ540をターンオフさせるとともに、ハイレベルの第2の信号を出力して第2のスイッチ542をターンオンさせることにより、第2の期間中、第5の電源510-5の陰極が第1の電極512-1に電気的に接続されるようにし、第5の電源510-5の陽極が第2の電極512-2に電気的に接続されるようにし、即ち、第2の期間中、第2の方向の電流で浸透される薬剤の導入を実施する。上記解決手段を使用し、複数の直流電源にスイッチを組み合わせて皮膚層に容量性電荷が蓄積される問題を解決することにより、薬剤の経皮効率および総量を向上させる。
【0053】
図6は、本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置600のモード図を示す。当該例示的なイオントフォレーシス投与装置600は、少なくとも第1の電源610-1、第1のスイッチ640、第2のスイッチ642、第3のスイッチ644、第4のスイッチ646、複数の電極612(例えば、第1の電極612-1、第2の電極612-2)、統合型誘電体層614およびコントローラ(図示せず)を含む。ここで、統合型誘電体層614は、図1~5に示される統合型誘電体層構造と同じであり、ここではこれ以上繰り返さない。第1の電源610-1は、直流電源である。第1のスイッチ640、第2のスイッチ642、第3のスイッチ644、第4のスイッチ646は、例えばコントローラ(図示せず)によってターンオンまたはターンオフするように制御されるリレーであるが、これらに限定されない。
【0054】
図6に示されるように、第1の電極612-1は、少なくとも第1のスイッチ640を介して第1の電源610-1の陽極に電気的に接続され、第1の電極612-1は、少なくとも第3のスイッチ644を介して第1の電源610-1の陰極に電気的に接続される。第2の電極612-2は、少なくとも第2のスイッチ642を介して第1の電源610-1の陰極に電気的に接続され、第2の電極612-2は、第4のスイッチ646を介して第1の電源610-1の陽極に電気的に接続される。
【0055】
例えば、第3の期間中、コントローラは、第1のスイッチ640および第2のスイッチ642を同時にターンオンし、第3のスイッチ644および第4のスイッチ646を同時にターンオフすることにより、第1の電源610-1の陽極が第1の電極612-1に電気的に接続されるようにし、第1の電源610-1の陰極が第2の電極612-2に電気的に接続されるようにし、即ち、第3の期間中、第1の方向の電流で浸透される薬剤の導入を実施する。第4の期間中、コントローラは、第1のスイッチ640および第2のスイッチ642を同時にターンオフし、第3のスイッチ644および第4のスイッチ646を同時にターンオンすることにより、第1の電源610-1の陰極が第1の電極612-1に電気的に接続されるようにし、第1の電源610-1の陽極が第2の電極612-2に電気的に接続されるようにし、即ち、第4の期間中、第2の方向の電流で浸透される薬剤の導入を実施する。上記解決手段を使用して、一つの直流電源に複数のスイッチを組み合わせて皮膚層に容量性電荷が蓄積される問題を解決することにより、薬剤経皮効率および総量を向上させる。
【0056】
図7は、本開示のいくつかの実施例によるイオントフォレーシス投与装置700のモード図を示す。当該例示的なイオントフォレーシス投与装置700は、少なくとも第1の電源710-1、第2の電源710-2、複数の電極712(例えば、第1の電極712-1、第2の電極712-2、第3の電極712-3、第4の電極712-4)、複数の接続部材(例えば、第1の接続部材711-1、第2の接続部材711-2、第3の接続部材711-3、第4の接続部材711-4を含む)、統合型誘電体層714およびコントローラ(図示せず)を含む。ここで、統合型誘電体層714は、図1~6に示される統合型誘電体層構造と同じであるため、ここではこれ以上繰り返さない。第1の電源710-1および第2の電源710-2は、すべて直流電源である。いくつかの実施例において、イオントフォレーシス投与装置700に含まれる電源は、すべて直流電源である。
【0057】
図7に示されるように、第1の電極712-1は、少なくとも第1の接続部材711-1を介して第1の電源710-1の一端に電気的に接続され、第1の電源710-1の他端は、第4の接続部材711-4を介して第4の電極712-4に接続される。第2の電極712-2は、少なくとも第2の接続部材711-2を介して第2の電源710-2の一端に電気的に接続され、第2の電源710-2の他端は、第3の接続部材711-3を介して第3の電極712-3に接続される。
【0058】
例えば、第1の期間中、コントローラ(図示せず)の制御により、第1の電源710-1がターンオフにされ(即ち、「OFF」状態で動作し、電流を出力しない)、同時に第2の電源710-2がターンオンにされ(即ち、「ON」状態で動作する)、出力される電流は、少なくとも部分的に、第2の接続部材711-2、第2の電極712-2、統合型誘電体層714の少なくとも一部、第3の電極712-3および第3の接続部材711-3を順番に流れる。(この時、第2の電源710-2の陽極は、第2の接続部材711-2に接続される。第2の電源710-2が逆に接続される場合、電流の流れの順序は異なる)。第1の期間中、統合型誘電体層714を流れる直流電流の方向は、図7の上半部の矢印に示されるようであり、即ち、第1の期間中、第1の方向の直流電流に浸透される薬剤の導入を実施することが分かる。
【0059】
例えば、第2の期間中、コントローラ(図示せず)の制御により、第2の電源710-2がターンオフにされ(即ち、「OFF」状態で動作し、電流を出力しない)、同時に第1の電源710-1がターンオンにされ(即ち、「ON」状態で動作する)、出力される電流は、少なくとも部分的に、第4の接続部材711-4、第4の電極712-4、統合型誘電体層714の少なくとも一部、第1の電極712-1および第1の接続部材711-1を順番に流れる。第2の期間中、統合型誘電体層714を流れる直流電流の方向は、図7の下半部の矢印に示されるようであり、即ち、第2の期間中、第2の方向の直流電流に浸透される薬剤の導入を実施することが分かる。
上記解決手段を使用して、直流電源のみを使用すると、皮膚層に容量性電荷が蓄積される問題を解決することにより、薬剤経皮効率および総量を向上させる。
【0060】
上記で本開示の各実施例について説明したが、上記の説明は、例示的なものであって、非限定的なものではなく、また、開示された各実施例にも限定されない。説明された各実施例の範囲および精神から逸脱することなく、当業者にとって、多くの修正および変更は明らかである。本明細書で使用される用語の選択は、各実施例の原理、実際の用途、または市場における技術の改善をよりよく解釈するか、または他の当業者が本明細書に開示される各実施例をよりよく理解できるようにするためのものである。
【0061】
以上の説明は、本開示の選択可能な実施例にすぎず、本開示を限定するために使用されず、当業者にとって、本開示は、様々な修正および変更を有することができる。本開示の精神および減速の範囲内で行われた修正、同等の交換、改善等は、すべて本開示の保護範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】