(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】新規ガードネレラエンドリシンとその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/55 20060101AFI20220706BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220706BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220706BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20220706BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220706BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220706BHJP
A61P 15/02 20060101ALI20220706BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220706BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20220706BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220706BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220706BHJP
C07K 14/005 20060101ALI20220706BHJP
C12N 9/14 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
C12N15/55 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
A61K38/46
A61K48/00
A61P31/04
A61P15/02
G01N33/50 Z
C12N15/33
C12N15/62 Z
C07K19/00
C07K14/005
C12N9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566252
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2020062645
(87)【国際公開番号】W WO2020225335
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521486295
【氏名又は名称】バイオンテック エルウントデー(オーストリア) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツォ コルシニ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B050
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045CB01
2G045GC30
4B050CC04
4B050DD01
4B050LL01
4B050LL03
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084DC22
4C084MA56
4C084NA14
4C084ZB35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、新しい種選択性ファージエンドリシン及び細菌性腟症(BV)を治療するためのその利用に関する。本発明は、遺伝子組み換えエンドリシン、すなわち、ドメイン交換エンドリシンを提供する。本発明はまた、細菌感染、特にBV、などの疾患又は障害を治療する際に使用するための前記エンドリシンに関する。本発明はさらに、前記エンドリシンをコードするポリヌクレオチドに関する。前記ポリヌクレオチドはまた、斯かる疾患又は障害を治療するために使用される。斯かる疾患又は障害を治療する際に使用するための、本発明のエンドリシンを含む医薬組成物もまた、本発明によって提供される。前記エンドリシン、ポリヌクレオチド、及び医薬組成物は、局所的に、特に膣中に局所的に投与され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
(i) N末端の触媒ドメイン、又はその機能的変異体;
(ii) C末端の細胞壁結合領域、又はその機能的変異体、ここで、該C末端の細胞壁結合領域は1若しくは複数の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成り;及び
(iii) 該N末端の触媒ドメインとC末端の細胞壁結合領域との間のリンカー領域、
を含むか、或いはそれらから成る遺伝子組み換えエンドリシンであって、
ここで、該N末端の触媒ドメインは第一の天然型エンドリシンに由来し、該リンカー領域及びC末端の細胞壁結合領域は第二の天然型エンドリシンに由来し、及び
ここで、該第一及び第二の天然型エンドリシンは、異なるプロファージに由来する異なるゲノムによってコードされ、並びに
ここで、ガードネレラに対する属選択的殺活性を有する、遺伝子組み換えエンドリシン。
【請求項2】
前記N末端の触媒ドメインが、配列番号1~5、7、又は10~12のいずれか1つのアミノ酸配列、或いは配列番号1~5、7、又は10~12のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドであって、それにより、前記ポリペプチドが機能的であり、ここで、該機能がガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む、請求項1に記載の遺伝子組み換えエンドリシン。
【請求項3】
前記C末端の細胞壁結合領域が、1つ、2つ又は3つの細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成る、請求項1又は2に記載の遺伝子組み換えエンドリシン。
【請求項4】
前記1つ、2つ又は3つの細胞壁結合ドメインが独立に、それぞれ、配列番号15~24及び26~33のアミノ酸配列、並びにそれぞれ、配列番号15~24及び26~33のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る群から選択され、それにより、前記ポリペプチドが機能的であり、ここで、該機能がガードネレラの細胞壁に結合する能力を含む、請求項3に記載の遺伝子組み換えエンドリシン。
【請求項5】
前記C末端の細胞壁結合領域が、第一の細胞壁結合ドメインと第二の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成り、ここで、前記第一の細胞壁結合ドメインが、配列番号15、17、19、21、23、26、28、30及び32から成る群から選択され、及び前記第二の細胞壁結合ドメインが配列番号16、18、20、22、24、27、29、31及び33から成る群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の遺伝子組み換えエンドリシン。
【請求項6】
前記第一の細胞壁結合ドメインが、前記第二の細胞壁結合ドメインのN-末端に存在する、請求項5に記載の遺伝子組み換えエンドリシン。
【請求項7】
前記リンカー領域が、以下のアミノ酸配列:
(i) (XXX)n{式中、各Xは独立に、G、A又はSであり得る}、好ましくはここで、アミノ酸配列(XXX)nは(GGS)nであり、ここで、nは配列XXXの繰り返しの回数に対応し、好ましくはここで、nは2、3、4、5又は6であり、或いは
(ii) X
1X
2GLNGX
3X
4NGGS{式中、X
1はN又はKであり、X
2はA又はVであり、X
3はY又はCであり及びX
4はK又はQである}、
を含むか又はそれらから成るポリペプチドである、請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子組み換えエンドリシン。
【請求項8】
前記エンドリシンが、狭義のガードネレラ・バギナリス、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイ、或いはガードネレラ属の任意の他の種に対する殺活性を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の遺伝子組み換えエンドリシン。
【請求項9】
前記エンドリシンが、ラクトバチルスに対して殺活性を有していない、好ましくはここで、前記エンドリシンが、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ、及び/又はラクトバチルス・ジェンセニイに対して殺活性を有していない、請求項1~8のいずれか一項に記載の遺伝子組み換えエンドリシン。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子組み換えエンドリシンをコードするポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子組み換えエンドリシン又は請求項8に記載のポリヌクレオチドを含み、並びに医薬的に許容される担体及び/又は希釈剤をさらに含む医薬組成物。
【請求項12】
疾患又は障害を治療する際に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子組み換えエンドリシン、請求項10に記載のポリヌクレオチド又は請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記疾患又は障害が細菌感染である、請求項12に記載の使用のための遺伝子組み換えエンドリシン、請求項12に記載の使用のためのポリヌクレオチド又は請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記細菌感染が細菌性腟症である、請求項13に記載の使用のための遺伝子組み換えエンドリシン、請求項13に記載の使用のためのポリヌクレオチド又は請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記細菌性腟症が、狭義のガードネレラ・バギナリス、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ、及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイによって引き起こされる、請求項14に記載の使用のための遺伝子組み換えエンドリシン、請求項14に記載の使用のためのポリヌクレオチド又は請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記遺伝子組み換えエンドリシン、ポリヌクレオチド又は医薬組成物が局所的に投与されるべきであり、好ましくは、前記遺伝子組み換えエンドリシン、ポリヌクレオチド又は医薬組成物が、雌性対象の膣中に、及び/又は雄性対象の陰茎亀頭、包皮又は尿道入口の中若しくはその上に局所的に投与されるべきである、請求項13~15のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子組み換えエンドリシン、請求項13~15のいずれか一項に記載の使用のためのポリヌクレオチド又は請求項13~15のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記遺伝子組み換えエンドリシン、ポリヌクレオチド又は医薬組成物が、雌性対象の膣中に、及び/又は雄性対象の陰茎亀頭、包皮又は尿道入口の中若しくはその上に投与されるべきである、請求項13~15のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子組み換えエンドリシン、請求項13~15のいずれか一項に記載の使用のためのポリヌクレオチド又は請求項13~15のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
前記遺伝子組み換えエンドリシン、ポリヌクレオチド又は医薬組成物が、膣のpHを4.0~6.0に調整する化合物又は組成物と同時投与されるべきである、請求項13~17のいずれか一項に記載の使用のための遺伝子組み換えエンドリシン、請求項13~17のいずれか一項に記載の使用のためのポリヌクレオチド又は請求項13~17のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含むプラスミド。
【請求項20】
好ましくは前記細菌宿主細胞がE.コリ細胞である、請求項19に記載のプラスミドを含む細菌宿主細胞。
【請求項21】
請求項1~9のいずれか一項に記載のエンドリシンを用いて治療できる疾患又は状態の診断のためのインビトロにおける方法であって、以下のステップ:
(i) 対象から得られたサンプルを、請求項1~9のいずれか一項に記載のエンドリシンのC末端の細胞壁結合領域、及び任意選択で、請求項1~9のいずれか一項に記載のエンドリシンのN末端の触媒ドメイン、を含むか又はそれらから成るポリペプチドと接触させ、ここで、該サンプルは微生物細胞を含み、かつ、ここで、前記エンドリシンのC末端の細胞壁結合領域は、任意選択で標識され;
(ii) 該ポリペプチドが該サンプル中の微生物細胞に結合し、及び/又はそれを溶解するか否か試験し;そして
(iii) 該ポリペプチドが微生物細胞に結合し、及び/又はそれを溶解した場合に、疾患又は状態が請求項1~9のいずれか一項に記載のエンドリシンによって治療できるか判断すること、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい種選択性ファージエンドリシン及び細菌性腟症(BV)を治療するためのその利用に関する。本発明は、遺伝子組み換えエンドリシン、すなわち、ドメイン交換エンドリシンを提供する。本発明はまた、細菌感染、特にBV、などの疾患又は障害を治療する際に使用するための前記エンドリシンに関する。本発明はさらに、前記エンドリシンをコードするポリヌクレオチドに関する。前記ポリヌクレオチドはまた、斯かる疾患又は障害を治療するために使用される。斯かる疾患又は障害を治療する際に使用するための、本発明のエンドリシンを含む医薬組成物もまた、本発明によって提供される。前記エンドリシン、ポリヌクレオチド、及び医薬組成物は、局所的に、特に膣中に局所的に投与され得る。
【背景技術】
【0002】
文献では、細菌性腟症(BV)はまた、細菌性腟炎、非特異性膣症及び非特異性腟炎とも呼ばれ、世界中の最も一般的な腟感染症であり、並びに早期陣痛及び早期産、産後子宮内膜炎、及びHIV取得の高いリスクを含めた著しく不利な因果関係に関連する。それは、片利共生ラクトバチルス(Lactobacilli)が多菌性バイオフィルム、自然な3.5~4,5から5.5まで上昇したpH及び悪臭を放つ流体の形成によって置き換えられる膣の腸内毒素症である。報告された有病率は、試験した集団によって10~40%の範囲に及ぶ。しかしながら、次善の診断方法及び高率な無症状患者は、BVの本当の有病率を確認することを難しくする。ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)(G. バギナリス)は、BVに関連する細菌種である。
【0003】
BVの原因病理は、依然として十分に理解されていない。それは、正常な膣菌叢、特に、ラクトバチルスのH2O2産生種、の喪失、並びにG. バギナリス(G. vaginalis)、モビルンカス(Mobiluncus)種、及びマイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)を含めた嫌気性菌の同時異常増殖を特徴とする病理状態として最も一般的に定義される。しかしながら、最近のデータは、BVにおける特異的、かつ、性感染病因的病原菌としてのG. バギナリスの中心的な役割を示唆している(Muzny et al., 2016, J. of Infect. Dis. 214 Suppl. 1., S1)。
【0004】
1950年代に、大量の小さい多形性グラム不定性桿菌が、BVを患っている女性の生殖管で観察された。この生物体は、最初に、ヘモフィルス・バギナリス(Haemophilus vaginalis)と呼ばれ、その特徴に関する詳しい情報が利用可能になるたびに繰り返し改名されて、現在、2018年の時点で、ガードネレラ属の唯一のメンバーと考えられたG. バギナリスに分類されている。しかしながら、2019年前半には、ガードネレラ属が実際には少なくとも13種類の種を包含することが示され、そして、最も頻出なものが狭義のG. バギナリス、G. レオポルジイ、G. ピオチイ、及びG. スウィドシンスキイに改名された(Vaneechoutte et al., 2019 Int. J. Syst. Evol. Biol. 898661)。
【0005】
ガードネレラ属の細菌は、それらがグラム不定である、すなわち、それらがグラム陰性種を定義する外膜を形成しない点で特別である。細胞壁は一般的に、非常に薄く、10%以下のペプチドグリカン含有量しかなく、そしてそれが、グラム染色に使用されるクリスタルバイオレット染料が、グラム陽性種に典型的な濃い紫色を必ずしももたらすとは限らない理由である。むしろ、ガードネレラ細胞はグラム染色においてグラム陽性と陰性の両方に見えることがあり得る。16S rRNAに基づく系統発生分析では、ガードネレラはグラム陽性ファミリービフィドバクテリア (Bifidobacteriales)に判別された。
【0006】
BVの間、上皮表面は、治療に対して抵抗性であることが多いバイオフィルム中のG. バギナリスの厚い体積により覆われる。バイオフィルムは、多糖類、タンパク質及び/又は核酸で構成された高分子マトリックスによってまとめられた微生物の接着性集合体である。バイオフィルムの独特な遺伝子発現、並びに物理構造が、化学殺菌剤、極端なpH、宿主免疫の防御及び抗生物質を含めた多くの負の刺激に対する細菌の抵抗性を増強する。標準的なBV治療は、抗生物質メトロニダゾールとクリンダマイシンであるが、しかしながら、それは、バイオフィルムを完全に除去しないことが多く、6カ月以内に再発率は最大60%になる。さらに、抗生物質による治療は、残りの利用可能なバイオフィルムの相当な部分が放置されるにもかかわらず、腟の微生物叢を拭き取り、そしてそれは、他の病原菌、例えば、真菌、のためにこの生態的地位を開放する。そのため、よく見られるBV治療の効果はカンジダ症である。BVの治療はまた、プロバイオティクスを用いて、具体的には、膣の再コロニー化が予想される有益なラクトバチルスを用いて試みられる。しかしながら、いくつかの臨床試験では利益を示さなかった。
【0007】
そのため、好ましくは、有益なラクトバチルスに害を及ぼすことなく、さらに、それらが膣に再び生息するように、例えば、ガードネレラ属の細菌細胞を選択的に殺滅することによる、G. バギナリス感染症、特に、BVを治療するため新しい方法及び組成物が大いに必要とされている。よって、本発明の根底にある技術的問題は、BVの治療のための新規手段及び方法の提供である。
その技術的問題は、請求項で特徴づけした実施形態の提供によって解決されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、それらを、特にガードネレラに関係する、細菌感染及び障害を、特に治療、除染又は検出するための、特に様々な使用及び方法に好適にする、予想しなかった特性及び構造を有する新規遺伝子組み換えガードネレラプロファージエンドリシンの調製に基づく。
【0009】
本発明の第一の態様は、以下の:
(i) N末端の触媒ドメイン、又はその機能的変異体;
(ii) C末端の細胞壁結合領域、又はその機能的変異体、ここで、該C末端の細胞壁結合領域は少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成り;及び
(iii) 該N末端の触媒ドメインとC末端の細胞壁結合領域との間のリンカー領域、
を含むか、或いはそれらから成るエンドリシンを提供し、
ここで、該エンドリシンはガードネレラに対する殺活性を有する。
【0010】
本発明の一態様において、N末端の触媒ドメインは第一の天然型エンドリシンに由来し、リンカー領域及びC末端の細胞壁結合領域は第二の天然型エンドリシンに由来し、そして該第一のエンドリシンと第二の天然型エンドリシンは異なったプロファージに由来する異なったゲノムによってコードされる。よって、本発明は、以下の:
(i) N末端の触媒ドメイン、又はその機能的変異体;
(ii) C末端の細胞壁結合領域、又はその機能的変異体、ここで、該C末端の細胞壁結合領域は少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成り;及び
(iii) 該N末端の触媒ドメインとC末端の細胞壁結合領域との間のリンカー領域、
を含むか、或いはそれらから成る遺伝子組み換えエンドリシンを提供し、
ここで、該N末端の触媒ドメインは第一の天然型エンドリシンに由来し、該リンカー領域及びC末端の細胞壁結合領域は第二の天然型エンドリシンに由来し、そして、該第一及び第二の天然型エンドリシンは、異なったプロファージに由来する異なったゲノムによってコードされ、及び
ここで、前記遺伝子組み換えエンドリシンはガードネレラに対する殺活性を有する。
【0011】
ガードネレラはそれがグラム不定種であるという点で特別である:それは真のグラム陰性種を定義する外膜を形成しない。その細胞壁は一般的に、非常に薄く、10%以下のペプチドグリカン含有量しかない。このことは、エンドリシンタンパク質などのペプチドグリカン分解酵素がガードネレラの細菌細胞壁を効率的に溶解できないことを示す。しかしながら、本発明に関連して、効果的にガードネレラ種を殺滅する有利な特性を有し、これにより、BVの治療のための新規治療法として使用される可能性がある遺伝子組み換えエンドリシンが同定された。
【0012】
健常な膣には、3種類のラクトバチルス:L. クリスパタス(L. crispatus)、L. ガセリ(L. gasseri)及びL. ジェンセニイ(L. jensenii)が主に生息している。これらは、乳酸を産生することによって3.5~4,5の酸性pHを、及びH2O2を産生することによって保護的な酸化環境を維持している。BVからの回復は、これらのラクトバチルスによる膣での再増殖に関連する。しかしながら、 (BVの治療に慣習的に使用される)抗生物質は、ラクトバチルスの膣での再増殖のプロセスを妨げるという不利益を有する。対照的に、本発明の新規遺伝子組み換えエンドリシンは、有利なことに、ガードネレラに対する種選択的殺活性を有し、かつ、ラクトバチルスに害を及ぼさない。加えて、添付の実施例は、すべて試験ガードネレラ菌株がメトロニダゾール及びクリンダマイシンに対する低感受性を有することを示し、そしてそれがBVの治療に慣習的に使用される。これは、BVの高い再発率を説明できる。これはまた、本発明のエンドリシンがBVの治療において抗生物質より優れていることも裏付ける。従って、本発明のエンドリシンを用いてBVを治療することは、抗生物質メトロニダゾールやクリンダマイシンを用いた治療などの現在利用可能な治療に対してはるかに有利である。
【0013】
本明細書中、用語「第一の天然型エンドリシンに由来する」は、それぞれの部分(すなわち、N末端の触媒ドメイン)が第一の天然型エンドリシンと同一であるか又はその機能的変異体であることを意味する。本明細書中に定義されるように、機能的変異体は、第一の天然型エンドリシンのそれぞれの部分(すなわち、N末端の触媒ドメイン)のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するポリペプチドであり、機能的なエンドリシンをもたらし、ここで、該機能はガードネレラに対する殺活性を含む。いくつかの天然型エンドリシンのアミノ酸配列は、本明細書中に以下で提供され、表7にまとめられる。
【0014】
そういうわけで、「第二の天然型エンドリシンに由来する」という用語は、それぞれの部分(すなわち、リンカー領域及びC末端の細胞壁結合領域)が第二の天然型エンドリシンと同一であるか又はその機能的変異体、すなわち、第一の天然型エンドリシンと異なるエンドリシン、であることを意味する。本明細書中に定義されるように、機能的変異体は、第二の天然型エンドリシンのそれぞれの部分(すなわち、リンカー領域及びC末端の細胞壁結合領域) のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するポリペプチドであり、機能的なエンドリシンをもたらし、ここで、該機能はガードネレラに対する殺活性を含む。
【0015】
本明細書中、N末端の触媒ドメインはまた「H-ドメイン」とも称される。例えば、「H2」という用語は、天然型エンドリシン(EL)2のH-ドメインを指す。「C末端の細胞壁結合領域」は、1若しくは複数の細胞壁結合ドメインを指す。リンカーと細胞壁結合ドメインは、いわゆる「B領域」を一緒に表す。例えば、B10は、天然型EL10のB領域を指す。同様に、B11_Nは天然型EL11のN末端細胞壁結合ドメインを指し、B12_Cは天然型EL12のC末端の細胞壁結合ドメインを指すなど。
【0016】
本発明はさらに、以下の:
(i) 配列番号1~5、7、又は10~12のいずれか1つのアミノ酸配列、或いは配列番号1~5、7、又は10~12のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成るN末端の触媒ドメイン;
(ii) それぞれ、配列番号15~24及び26~33のいずれか1つのアミノ酸配列、並びにそれぞれ、配列番号15~24及び26~33のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る群から独立に選択される少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成るC末端の細胞壁結合領域;及び
(iii) N末端の触媒ドメインとC末端の細胞壁結合領域との間のリンカー領域、
を含むか、或いはそれらから成るエンドリシンを提供し、
ここで、前記エンドリシンはガードネレラに対する殺活性を有する。
【0017】
添付の実施例に示したとおり、最も活性なN末端の触媒ドメイン(「H-ドメイン」とも称される)は、H2(配列番号2)であり、続いてH7株(配列番号7)、H10(配列番号10)及びH5(配列番号5)である。
【0018】
よって、本発明の好ましい態様において、N末端の触媒ドメインは、配列番号2、7、10及び5のいずれか1つのアミノ酸配列、或いは配列番号2、7、10、及び5のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成り;
それにより、エンドリシンは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。
【0019】
従って、本発明の好ましい態様において、N末端の触媒ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列、或いは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか;或いはより好ましくは、配列番号10のアミノ酸配列、或いは配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか;或いはより一層好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列、或いは配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか;或いはより一層好ましくは、配列番号2のアミノ酸配列、或いは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成り;
それにより、エンドリシンは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。
【0020】
B領域B10(配列番号28と29の細胞壁結合ドメインを含む)は最も活性であり、続いてB11(配列番号30と31の細胞壁結合ドメインを含む)、B12(配列番号32と33の細胞壁結合ドメインを含む)、及びB3(配列番号19と20の細胞壁結合ドメインを含む)であることもまた添付の実施例に示されている。
【0021】
よって、本発明の好ましい態様において、(単数若しくは複数の)細胞壁結合ドメインは、配列番号19、20及び28~33のいずれか1つのアミノ酸配列、並びに配列番号19、20及び28~33のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る群から選択され;
それにより、エンドリシンは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。
【0022】
本発明のエンドリシンは、好ましくは2つの細胞壁結合ドメインを含む。本発明の一態様において、本発明のエンドリシンの細胞壁結合ドメイン(Bドメイン)は、配列番号19、20及び28~33のいずれか1つのアミノ酸配列、並びに配列番号19、20及び28~33のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成り;
それにより、該エンドリシンは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。
本発明の好ましい態様において、エンドリシンは、第一の細胞壁結合ドメインと第二の細胞壁結合ドメインを含み、ここで、前記第一の細胞壁結合ドメインは配列番号15、17、19、21、23、26、28、30及び32から成る群から選択され、及び前記第二の細胞壁結合ドメインは配列番号16、18、20、22、24、27、29、31及び33から成る群から選択される。好ましくは、前記第一の細胞壁結合ドメインは、前記第二の細胞壁結合ドメインのN-末端に存在する。
【0023】
本発明のより好ましい態様において、エンドリシンは、天然型エンドリシンEL10(配列番号28及び29)、天然型エンドリシンEL11(配列番号30及び31)、天然型エンドリシンEL12(配列番号32及び33)、又は天然型エンドリシンEL3(配列番号19及び20)、より一層好ましくは天然型エンドリシンEL10(配列番号28及び29)、の2つの細胞壁結合ドメイン(Bドメイン);又はその機能的変異体を含む。前記機能的変異体はまた、
天然型エンドリシンEL10(配列番号28及び29)、天然型エンドリシンEL11(配列番号30及び31)、天然型エンドリシンEL12(配列番号32及び33)、又は天然型エンドリシンEL3(配列番号19と20)、より一層好ましくは天然型エンドリシンEL10(配列番号28及び29)の2つのB-ドメインのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有する2つのB-ドメインのセットであってもよく;
それにより、該エンドリシンは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。
【0024】
本発明の一態様において、(単数若しくは複数の)細胞壁結合ドメイン(Bドメイン)は、配列番号19及び/又は20のアミノ酸配列、或いは配列番号19及び/又は20のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか;より好ましくは、配列番号32及び/又は33のアミノ酸配列、或いは配列番号32及び/又は33のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか;より一層好ましくは、配列番号30及び/又は31のアミノ酸配列、或いは配列番号30及び/又は31のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか;或いはより一層好ましくは、配列番号28及び/又は29のアミノ酸配列、或いは配列番号28及び/又は29のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成り;
それにより、エンドリシンは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。
【0025】
配列VNELL又はVNKLL、より好ましくはVNELLがB-ドメインのC末端に位置していることが好ましい。B領域内に複数のB-ドメインが存在している場合には、配列VNELL又はVNKLL、より好ましくはVNELLがそれぞれのB-ドメインのC末端に位置していることもまた好ましい。
【0026】
驚いたことに、かつ、意外なことに、いくつかの遺伝子組み換えエンドリシンが、特に、試験した4種類のガードネレラ菌株(すなわち、狭義のガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis sensu strict)、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ及びガードネレラ・スウィドシンスキイ)のすべて通して見たときに、天然型エンドリシンより強い活性を有することが、本発明との関連においてわかった。特にH2B10、H2B11、H2B12及びH7B3は、すべての試験した天然型エンドリシンに比べてそれぞれより活性である。よって、本発明による遺伝子組み換えエンドリシンは天然型エンドリシンより有意に高い活性を示す。
【0027】
そのため、本発明の遺伝子組み換えエンドリシンの「ガードネレラに対する殺活性」は、天然型エンドリシン、例えば、(表7に示すアミノ酸配列を有する)天然型エンドリシンEL1~EL12の殺活性と比較して、高められることが好ましい。
【0028】
エンドリシンH2B10、H2B11、H2B12及びH7B3の非常に高い活性と一致して、これらのエンドリシン(及びその機能的変異体)は本発明において好ましい。
よって、本発明のエンドリシンは、好ましくは、以下の:
(i) 配列番号2又は7のアミノ酸配列、或いは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成るN末端の触媒ドメイン;
(ii) それぞれ配列番号19、20及び28~33のいずれか1つのアミノ酸配列、或いはそれぞれ配列番号19、20及び28~33のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る群から独立に選択される少なくとも1つ(好ましくは2つ)の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成るC末端の細胞壁結合領域;及び
(iii) アミノ酸配列X1X2GLNGX3X4NGGS{式中、X1はN又はK、好ましくはNであり、X2はAであり、X3はYであり、及びX4はK又はQである}を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る、該N末端の触媒ドメインとC末端の細胞壁結合領域との間のリンカー領域、を有し、
ここで、前記エンドリシンはガードネレラに対する殺活性を有する。リンカー領域に関して、以下で触れたとおり、リンカー領域はまた、アミノ酸配列(XXX)n{式中、各Xは独立に、G、A又はSであり得る}を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成っていてもよいことが示され、好ましくはここで、アミノ酸配列(XXX)nは(GGS)n{式中、nは、配列XXXの繰り返しの回数に対応し、好ましくはここで、nは2、3、4、5又は6である}である。
【0029】
添付の実施例では、遺伝子組み換えエンドリシンH2B10が最も高い活性を有することが示された。そのため、本発明では、本発明のエンドリシンがH2B10(又はその機能的変異体)であることが最も好ましい。従って、本発明のエンドリシンは、好ましくは、以下の:
(i) 配列番号2のアミノ酸配列、或いは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成るN末端の触媒ドメイン;
(ii) 配列番号28又は19のアミノ酸配列、或いは配列番号28又は19のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその機能的変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成るC末端の細胞壁結合領域;及び
(iii) アミノ酸配列X1X2GLNGX3X4NGGS{式中、X1はNであり、X2はAであり、X3はYであり、及びX4はKである}を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る、該N末端の触媒ドメインとC末端の細胞壁結合領域との間のリンカー領域、を有し、
ここで、前記エンドリシンはガードネレラに対する殺活性を有する。先に触れたとおり、本発明の遺伝子組み換えエンドリシンの「ガードネレラに対する殺活性」は、天然型エンドリシン、例えば、(表7に示すアミノ酸配列を有する)天然型エンドリシンEL1~EL12の殺活性と比較して、高められることが好ましい。リンカー領域に関して、以下で触れたとおり、リンカー領域はまた、アミノ酸配列(XXX)n{式中、各Xは独立に、G、A又はSであり得る}を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成っていてもよいことが示され、好ましくはここで、アミノ酸配列(XXX)nは(GGS)n{式中、nは、配列XXXの繰り返しの回数に対応し、好ましくはここで、nは2、3、4、5又は6である}である。
【0030】
本発明の遺伝子組み換えエンドリシンにおいて、C末端の細胞壁結合領域は、1つ、2つ又は3つの細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成っていてもよい。前記1つ、2つ又は3つの細胞壁結合ドメインは、それぞれ配列番号15~24及び26~33のアミノ酸配列、並びにそれぞれ配列番号15~24及び26~33のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る群から独立に選択されてもよく、それにより、前記ポリペプチドは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁に結合する能力を含む。C末端の細胞壁結合領域が2つの細胞壁結合ドメインから成ることが好ましい。好ましいC末端の細胞壁結合領域は、先に及び以下に本明細書中で定義される。
【0031】
本発明のエンドリシンは、好ましくは天然型エンドリシンEL6のH-ドメイン又はB領域を含まない。天然型エンドリシンEL6のH-ドメイン及びB領域のアミノ酸配列は表7に示されている。
【0032】
リンカー領域は、6~18アミノ酸の長さ、好ましくは9~15アミノ酸の長さ、より一層好ましくは12アミノ酸の長さを有するポリペプチドから成ってもよい。好ましくは、リンカー領域は、アミノ酸配列(i) (XXX)n{式中、各Xは独立に、G、A又はSであり得る}、好ましくはここで、アミノ酸配列(XXX)nは(GGS)nであり、ここで、nは配列XXXの繰り返しの回数に対応し、好ましくはここで、nは2、3、4、5又は6であり、或いは(ii) X1X2GLNGX3X4NGGS{式中、X1はN又はKであり、X2はA又はVであり、X3はY又はCであり及びX4はK又はQである}を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成ってもよい。先に記載のとおり、本発明のエンドリシンの一態様において、N末端の触媒ドメインは、第一の天然型エンドリシンと同一であるか又はそれに由来し、リンカー領域及びC末端の細胞壁結合領域は、第二の天然型エンドリシンと同一であるか又はそれに由来し、そして該第一のエンドリシンと第二の天然型エンドリシンは異なるプロファージに由来する異なるゲノムによってコードされる。
【0033】
本発明の遺伝子組み換えエンドリシンは、ガードネレラに対する殺活性を有する。例えば、本発明のエンドリシンは、狭義のガードネレラ・バギナリス、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ、及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイに対する、好ましくはそれらのすべてに対する、殺活性を有してもよい。ガードネレラに対する先に記載した本発明のエンドリシンの殺活性は、好ましくは、ガードネレラに対する属選択的殺活性である。本明細書中の「ガードネレラに対する属選択的殺活性」とは、本発明のエンドリシンは通常、細菌に対して殺活性を有していないことを意味する。好ましくは、本発明のエンドリシンは、ガードネレラに対する殺活性を有するが、ラクトバチルスに対して有していない。特に、前記エンドリシンは、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacilli crispatus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacilli gasseri)、及び/又はラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacilli jensenii)に対して殺活性を有していないことが好ましい。より好ましくは、前記エンドリシンは、これらのラクトバチルスのすべて、すなわち、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ、及びラクトバチルス・ジェンセニイに対して殺活性を有していない。
【0034】
本発明はまた、先に記載したエンドリシンをコードするポリヌクレオチド分子に関する。核酸分子は、DNA、例えば、cDNA又はRNA、であってもよい。本明細書中、「ポリヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド分子」という用語は「核酸分子」という用語などと同義的に使用される。
【0035】
本発明はまた、前記の本発明のポリヌクレオチド分子を含むベクターに関する。一実施形態において、ベクターは発現ベクターである。pETシリーズのベクター及びT7ベースのベクターのすべてなどの、当該技術分野で知られている好適なベクターのいずれが使用されてもよい。例えば、ベクターはプラスミドであってもよい。よって、本発明の一態様は、本発明のポリヌクレオチドを含むプラスミドに関する。発現ベクターの選択が宿主細胞の選択によって決定され得ることは当業者によって理解される。
【0036】
本発明によるポリヌクレオチド分子又は本発明によるベクター/プラスミドを含む宿主細胞もまた、本発明によって提供される。一実施形態において、宿主細胞は、微生物細胞、例えば、細菌細胞である。好ましくは、宿主細胞は非病原性である。最も好ましくは、宿主細胞はE.コリ(E. coli)である。よって、本発明の一態様は、本発明のプラスミドを含む細菌宿主細胞に関し、好ましくはここで、該細菌宿主細胞はE.コリ細胞である。
【0037】
エンドリシンを発現する条件下、本発明によるポリヌクレオチド分子又は本発明によるベクター/プラスミドを含む宿主細胞の集団を培養し、そしてそこからエンドリシンを単離すること、を含む本発明のエンドリシンを産生する方法もまた、本発明によって包含される。
【0038】
本発明のさらなる態様は、以下の:
(a) 本発明によるエンドリシン;
(b) 本発明によるポリヌクレオチド分子;
(c) 本発明によるベクター/プラスミド;
(d) 本発明による宿主;及び/又は
(e) 本発明によるエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ、
並びに医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤、を含む医薬組成物を提供する。例えば、本発明の医薬組成物は、本発明のエンドリシン、本発明のポリヌクレオチド分子、及び医薬的に許容される担体及び/又は希釈剤を含んでもよい。
【0039】
本発明のさらなる態様は、疾患又は障害を治療する際に使用するための、以下の:
(a) 本発明によるエンドリシン;
(b) 本発明によるポリヌクレオチド分子;
(c) 本発明によるベクター/プラスミド;
(d) 本発明による宿主;
(e) 本発明によるエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ;及び/又は
(f) 本発明による医薬組成物、
に関する。例えば、本発明は、疾患又は障害を治療する際に使用するための、本発明によるエンドリシン、本発明によるポリヌクレオチド分子、又は本発明による医薬組成物を提供する。前記疾患又は障害は、細菌感染、好ましくは細菌性腟症であってもよい。例えば、細菌性腟症は、狭義のガードネレラ・バギナリス、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイによって引き起こされ得る。
【0040】
本発明の一態様において、本発明の遺伝子組み換えエンドリシン、本発明のポリヌクレオチド分子、又は本発明の医薬組成物は、局所的に、好ましくは対象の膣中に局所的に投与されるべきである。よって、本発明の一態様において、本発明の遺伝子組み換えエンドリシン、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明の医薬組成物は、対象の膣中に投与されるべきである。
【0041】
添付の実施例は、本発明の遺伝子組み換えエンドリシンの活性がpH5前後のpHにて特に高いことを示す。そのため、本発明の一態様は、本発明の遺伝子組み換えエンドリシン、本発明のポリヌクレオチド分子、又は本発明の医薬組成物に関し、ここで、前記遺伝子組み換えエンドリシン、ポリヌクレオチド又は医薬組成物は、膣のpHを4.0~6.0に、好ましくは4.5~5.5に、より好ましくは約5に調整する化合物又は組成物と同時投与されるべきである。膣のpHを調整する好適な化合物又は組成物としては、これだけに限定されるものではないが、ホスファート、乳酸(例えば、酸性環境を確立するためにラクトバチルスが分泌する天然型酸性化物質)又は他の有機酸、例えば、カルボキシ置換ポリマーが挙げられる。
【0042】
本発明のさらなる態様は、薬剤としての使用するための、以下の:
(a) 本発明のエンドリシン;
(b) 本発明のポリヌクレオチド分子;
(c) 本発明のベクター/プラスミド;
(d) 本発明の宿主;
(e) 本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ;及び/又は
(f) 本発明の医薬組成物、
に関する。
【0043】
本発明のさらなる態様は、細菌感染及び障害を治療するための薬剤の製造における、以下の:
(a) 本発明のエンドリシン;
(b) 本発明のポリヌクレオチド分子;
(c) 本発明のベクター/プラスミド;
(d) 本発明の宿主;
(e) 本発明のポリペプチドを発現することができるバクテリオファージ;及び/又は
(f) 本発明の医薬組成物、
の使用に関係する。
【0044】
本発明のさらなる態様は、BVなどの細菌感染及び障害を治療する方法であって、
それを必要としている対象に治療的有効量の、以下の:
(a) 本発明のエンドリシン;
(b) 本発明のポリヌクレオチド分子;
(c) 本発明のベクター/プラスミド;
(d) 本発明の宿主;
(e) 本発明のポリペプチドを発現することができるバクテリオファージ;及び/又は
(f) 本発明の医薬組成物、
を投与することを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態において、治療的有効量は、任意選択で1日数回投与される、10~100μgのエンドリシンの用量である。
【0045】
本発明のさらなる態様は、特に疾患又は障害、好ましくは先に定義されるようなBV、を治療するための、本明細書中に記載したエンドリシン及び使用の取扱説明書を含むキットを提供する。前記キットはまた、膣のpHを4.0~6.0、好ましくは4.5~5.5、より好ましくは約5に調整する化合物又は組成物を含んでもよい。また、本発明のエンドリシンに関して先に及び以下に本明細書中で定義された定義及び好ましい態様はまた、必要な変更を加えて、本発明のポリヌクレオチド分子、ベクター/プラスミド、宿主細胞、医薬組成物、治療法及びキットに関しても適用される。
本発明のさらなる態様は、本発明によるエンドリシンを用いて治療できる疾患又は状態の診断のためのインビトロにおける方法であって、以下のステップ:
(i) 対象から得られたサンプルを、本発明によるエンドリシンのC末端の細胞壁結合領域、及び任意選択で、本発明によるエンドリシンのN末端の触媒ドメイン、を含むか又はそれらから成るポリペプチドと接触させ、ここで、該サンプルは微生物細胞を含み、かつ、ここで、前記エンドリシンのC末端の細胞壁結合領域は、任意選択で標識され;
(ii) 該ポリペプチドが該サンプル中の微生物細胞に結合し、及び/又はそれを溶解するか否か試験し;そして
(iii) 該ポリペプチドが微生物細胞に結合し、及び/又はそれを溶解した場合に、疾患又は状態が本発明によるエンドリシンによって治療できるか判断すること、
を含む方法を提供する。
微生物細胞は、ガードネレラ細胞、好ましくは狭義のG. バギナリス、G. レオポルジイ、G. ピオチイ、G. スウィドシンスキイ又はガードネレラ属の他の種の細胞であってもよい。
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、本開示の天然型ガードネレラプロファージエンドリシンの配列アラインメント(CLUSTAL O(1.2.4)多重配列アラインメント)を示す。251残基を有する2つを除いて、エンドリシンの大部分は306残基を有する。
【0047】
【
図2】
図2は、本開示の天然型ガードネレラプロファージエンドリシンの系統樹を示す。それらは高度に相同であるが、エンドリシンの中に相同対は存在しない。
【0048】
【
図3】
図3は、InterPro(Mitchell et al., 2019, Nucleic Acids Res. 47, D351-D360)を用いて決定される、本開示のガードネレラプロファージエンドリシンのドメイン構造を示す。エンドリシンの196残基のN‐末端部は、グリコシドヒドロラーゼ、ファミリー25に対するその相同性により、触媒ドメインとして同定される。触媒ドメインには、リンカー領域及びリゾチームCpl-7のC末端ドメイン(CW_7ドメイン)に対するそれらの相同性のため、2つの細胞結合ドメインと同定される2つのドメイン、がその後に続いている。本願の命名法によると、触媒ドメインはヒドロラーゼ又は「H-ドメイン」を表すが、リンカー領域及び細胞壁結合ドメインは、結合又は「B領域」を一緒に表す。
【0049】
【
図4】
図4A~4Cは、本開示の天然型ガードネレラプロファージエンドリシンの酵素活性がガードネレラ細胞の懸濁液の濁度の変化を検出することによって計測される3種類の酵素活性アッセイを示す。
図4Aでは、エンドリシンの酵素活性が、pH6.0におけるG. レオポルジイ菌株Gv_10懸濁液の濁度変化を検出することによって計測される。
図4Bでは、エンドリシンの酵素活性が、pH7.0におけるG. ピオチイ菌株Gv_17懸濁液の濁度変化を検出することによって計測される。
図4Cでは、エンドリシンの酵素活性が、pH7.4におけるG. スウィドシンスキイ菌株Gv_23懸濁液の濁度変化を検出することによって計測される。処置は、バッファーに対して光度測定用キュベット内で適切なpHに調整された培地中で実施された。次に、濁度の変化が、600nmにて吸光度(OD)を計測することによって評価された。結果として、バッファーよりもエンドリシン処置群に関して濁度の低下がより明白であり、そして酵素活性を示した。
【0050】
【
図5】
図5は、様々なpH値にてイミダゾールを含む又は含まない培地中でインキュベートされた狭義のG. バギナリス菌株Gv_9と無処理の細胞を比較する生存可能コロニー形成単位(CFU)アッセイにおいて量的減少を示す。5×10
7CFU/mlの細胞が、嫌気性条件下で37℃にて5時間にわたり、グラフ下に示した条件下でインキュベートされ、その後、生き残ったCFU/mlが定量的な平板培養によって測定された。結果は、G. バギナリスGv_9の生存が試験条件下でのイミダゾールの不存在と低pHに大きく依存していることを示す。
【0051】
【
図6】
図6は、様々なpH値にて遺伝子組み換えエンドリシンH10B1及び250mMのイミダゾールを含有する溶出液溶液を用いて、又は様々なpH値にて250mMのイミダゾールを含有する対照を用いて、処理された狭義のG. バギナリス菌株Gv_9からの細胞を比較する生存可能コロニー形成単位(CFU)アッセイにおいて量的減少を示す。5×10
7CFU/mlの細胞が、嫌気性条件下で37℃にて5時間にわたり、グラフ下に示した条件下でインキュベートされ、その後、生き残ったCFU/mlが定量的な平板培養によって測定された。イミダゾール対照と標識した縦棒は、
図5のものと同じデータを示す。結果は、本発明のすべてのエンドリシンの例としての、H10B1の酵素活性は低pH値にてより高く、そしてpH5.5及びpH5.0で最も強い活性を示すことを示す。
【0052】
【
図7】
図7A~7Dは、4種類の主なガードネレラ種に対する、本開示の天然型及び遺伝子組み換えガードネレラプロファージエンドリシンの殺活性を計測する生存可能コロニー形成単位(CFU)アッセイにおいて、4種類は量的減少を示す。
図7A、7B、7C及び7Dでは、エンドリシンの殺活性は、それぞれ狭義のG. バギナリス菌株Gv_9、G. レオポルジイ菌株Gv_11、G. ピオチイ菌株Gv_17、G. スウィドシンスキイ菌株Gv_23の懸濁液の生存可能CFUを検出することによって計測される。90μlの5e7CFU/mlの示した菌株は、10μlのエンドリシン溶液と共に嫌気性条件下でpH5.0にて5時間インキュベートされた(可能であれば、濃度を0.2mg/mlに調整した、表4を参照のこと)。対数的Y軸は生存細胞の総数を示す。点線は、2μlの反応混合物の平板培養によってもたらされる検出限界(LOD)を示す(500CFU/ml)。結果は、本発明のエンドリシンが4種類の主なガードネレラ種を溶解する能力を有することを示す。結果はまた、本発明の遺伝子組み換えエンドリシンのいくつかが本発明の天然型エンドリシンより高い殺活性を有することを指摘する。
【0053】
【
図8】
図8は、Clustal Omega(Sievers et al., 2011 Mol. Syst. Biol. 7, 539)を用いて作成したH-ドメインの系統関係樹(アミノ酸レベル)を示す。
【0054】
【
図9】
図9は、Clustal Omega(ジーフェルスら、2011MoL Syst. Biol7、539)を用いて作成したB領域の系統関係樹(アミノ酸レベル)を示す。
【
図10】
図10は、Clustal Omega(ジーフェルスら、2011MoL Syst. Biol7、539)を用いて作成したB領域の系統関係樹(アミノ酸レベル)を示す。
【0055】
【
図11】
図11は、Clustal Omega(Sievers et al., 2011 Mol. Syst. Biol. 7, 539)を用いた本発明の天然型エンドリシンのB領域内の細胞壁結合ドメイン(B-ドメインとも称される)の配列アラインメントを示す。各B領域に関して、N末端の細胞壁結合ドメインは_Nの添え字(Bx_N)で示され、及びC末端の細胞壁結合ドメインは_Cの添え字(Bx_C)で示される。一例として、B3_CはB3の第二の(C末端)Bドメインを示す。
【0056】
【
図12】
図12は、Clustal Omega(Sievers et al., 2011 Mol. Syst. Biol. 7, 539)を用いた個々のB-ドメインの系統関係樹を示す。
【0057】
【
図13】
図13は、嫌気性条件下でpH5.0において、最も頻出する3種類の有益なラクトバチルス種に対する、本開示の遺伝子組み換えガードネレラプロファージエンドリシンの殺活性を計測する生存可能コロニー形成単位(CFU)アッセイにおいて、3種類は量的減少を示す。結果は、本発明のエンドリシンが有益なラクトバチルス菌株に対して効力がないことを示す。
【0058】
【
図14】
図14は、4種類の主なガードネレラ種の懸濁液における増殖に対する、メトロニダゾール及びクリンダマイシン(注射用の溶液としてRatiopharmから入手、300mg/2ml)の効果を計測するMIC微量液体希釈活性分析を示す。2.5×10
7CFU/mlのガードネレラ懸濁液は、それぞれのグラフのX軸に示した濃度の抗生物質と共にインキュベートされ、そして嫌気性条件下で37℃にて48時間インキュベートされた。細胞増殖は、インキュベーション前後に610nmでの吸光度計測(OD(610))によって評価されて、最小阻害濃度(MIC)が決定された。結果は、すべてのガードネレラ菌株が、それぞれ64~<128μg/ml及び16μg/mlの最小阻害濃度を示して、メトロニダゾール及びクリンダマイシン(注射用の溶液としてRatiopharmから入手、300mg/2ml)の両方に対して抵抗性であることを示す(
図14)。
【
図15】
図15は、1×10
5~1×10
6CFU/mlのガードネレラ懸濁液に対する、メトロニダゾール及びクリンダマイシン塩酸塩(Sigma Aldrichから入手)の効果を計測するMIC微量液体希釈活性分析を示す。今回、結果は、メトロニダゾールが、試験したガードネレラ菌株のすべてに対して、8~128μg/mlのMICを有し、及びクリンダマイシン塩酸塩粉末(Sigma Aldrichから入手(C5269-10MG))が0.25~5μg/mlの最小阻害濃度を示したことを示す。
【
図16】
図16は、3種類の主なガードネレラ種の増殖に対する、本明細書中に主張したドメイン交換エンドリシンの代表例であるH2B10の効果を計測するMIC微量液体希釈活性分析を示す。1×10
5~1×10
6CFU/mlのガードネレラ懸濁液は、それぞれのグラフのX軸で示した濃度のH2B10と共にインキュベートされ、そして嫌気性条件下で37℃にて48時間インキュベートされた。細胞増殖は、インキュベーション前後のOD(610)測定値によって評価されて、最小阻害濃度(MIC)が決定された。1~4μg/mlのMIC値が得られ、すべてのガードネレラ菌株がドメイン交換エンドリシンH2B10に対して高度に感受性であることが示された。
【発明を実施するための形態】
【0059】
詳細な説明
定義
「リシン」という用語は、外因的に添加されたときに標的細菌の細胞壁を加水分解する能力(外因的な溶解)を有する、バクテリオファージ(エンドリシン)又は細菌(自己溶解素)によってコードされる細胞壁溶解酵素を指す。この新規クラスの抗菌剤は、古典的な抗生物質を超える重要な利点、例えば、新しい作用機序;狭い範囲の感受性細菌;定常的及び指数関数的に増殖する細菌の両方の急速な死滅;粘膜及び細菌性バイオフィルムに対する活性;抵抗性を発現する可能性が低い;及び正常な微生物叢に対する低い影響、がある。これらの独特な特徴は、リシンの生物工学的及び薬理学的開発、並びに抗生物質耐性と戦うための最良の10の選択肢の中に最近それらが含まれたことで関心が高まった。グラム陽性細菌及びそれらのファージに由来するリシンは通常、少なくとも1つの触媒ドメインと1若しくは複数の細胞壁結合ドメインを含む。対照的に、グラム陰性種又はそれらのファージによって産生される多くのリシンは、モジュラーエンドリシンもまた報告されたが、触媒ドメインだけを含有する。触媒ユニットは、切断されるペプチドグリカン(PG)結合のタイプを決定するが、その一方で、(単数若しくは複数の)細胞壁結合ドメインは、属又は種/菌株に特異的な様式で区分される細胞壁要素の特異的認識によって溶解スペクトルを主に決定している。
【0060】
本開示との関連において、「天然型エンドリシン」という用語は、細菌ゲノム内、特にガードネレラ細胞のゲノム内のプロファージ配列によってコードされたエンドリシンを指す。本開示との関連において、「天然型エンドリシン」という用語は、そのため、ドメイン交換されなかったエンドリシンを指す。天然型エンドリシンが変更されている可能性がなく、そのエンドリシンのアミノ酸配列が天然配列に対応していることを意味する。或いは、天然型エンドリシンが変更されている可能性があり、そして天然配列と比較して、そのエンドリシンのアミノ酸配列が少なくとも1つの突然変異を含むことを意味する。天然型エンドリシンE1~E14のアミノ酸配列は以下の表7に示されている。既知の1,4-β-N-アセチルムラミダーゼ(天然型エンドリシンEL1)配列の例はまたNCBI登録番号WP_014554482(2013年5月27日のバージョンWP_014554482.1)によっても提供される。
【0061】
本開示との関連において、「遺伝子組み換えエンドリシン」という用語は、ドメイン交換されたエンドリシンを指す。本開示との関連において、「ドメインと交換されたエンドリシン」という用語は、第一の天然型エンドリシンに由来するN末端の触媒ドメイン、及び第二の天然型エンドリシンに由来する少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを所有しているエンドリシンを指し、ここで、該第一のエンドリシンと第二の天然型エンドリシンは異なるプロファージに由来する異なるゲノムによってコードされる。本発明の遺伝子組み換えエンドリシンは、第一の天然型エンドリシンに由来するN末端の触媒ドメイン、及び第二の天然型エンドリシンに由来する2つの細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成ってもよく、ここで、該第一のエンドリシンと第二の天然型エンドリシンは異なるプロファージに由来する異なるゲノムによってコードされる。或いは、本発明の遺伝子組み換えエンドリシンは、第一の天然型エンドリシンに由来するN末端の触媒ドメイン、第二の天然型エンドリシンに由来する第一の(N末端)細胞壁結合ドメイン、及び第三の天然型エンドリシンに由来する第二の(C末端)細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成ってもよく、ここで、該第一と第二の天然型エンドリシンは異なるプロファージに由来する異なるゲノムによってコードされ、かつ、ここで、該第三の天然型エンドリシンは、任意選択で、第一及び第二の天然型エンドリシンと異なるプロファージに由来するゲノムによってコードされる。遺伝子組み換えエンドリシンは変更されている可能性がなく、該エンドリシンのアミノ酸配列が、そのエンドリシンを構成するそれぞれのドメインの天然配列に対応することを意味する。或いは、遺伝子組み換えエンドリシンは変更されている可能性があり、該エンドリシンのアミノ酸配列が、そのエンドリシンを構成するそれぞれのドメイン天然配列と比較して少なくとも1つの突然変異を含むことを意味する。この定義に一致して、当業者は、本明細書中に記載した「ドメイン交換」又は「遺伝子組み換え」エンドリシンが、天然に存在しないエンドリシンであることを容易に理解する。すなわち、本発明の遺伝子組み換えエンドリシンは、ヒトの手によって変更されているので、天然型エンドリシンは、すなわち、それは自然の中で当然見られるので、定義上除外される。添付の実施例は、本発明の人工的なエンドリシンをどのように作り出すか(単数若しくは複数の)適切な方法を提供する。
【0062】
「触媒ドメイン」又は「酵素ドメイン」という用語は、触媒された化学反応が起こる領域を含むタンパク質鎖の部分を指す。
本開示との関連において、「H-ドメイン」という用語は、触媒ドメインを含む本発明のエンドリシンの一部を指す。
【0063】
本開示との関連において、「B領域」という用語は、細胞壁結合活性を有するポリペプチドを含むか又はそれらから成る本発明のエンドリシンの一部を指す。好ましい実施形態において、B領域は、リンカー領域及び1つ、2つ又は3つの細胞壁結合ドメイン又は「Bドメイン」を含むか又はそれらから成る。
【0064】
本発明との関連において、「Bドメイン」という用語は、B-領域内に包含された細胞壁結合ドメインを指す。
【0065】
本開示との関連において、「CW_7ドメイン」という用語は、タンパク質Cpl-7、すなわち、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)バクテリオファージセルロプラスミン-7によってコードされたエンドリシン、の細胞壁結合ドメインを指す(Bustamante et al., 2010 J. Biol. Chem. 285, 33184-33196, 2012 PLoS One 7, e46654を参照のこと)。簡単に言えば、Cpl-7タンパク質は、3つの連続したCW_7ドメインから構成されるC末端の細胞壁結合領域を有する。それぞれのCW_7ドメインは、
「CW_7モチーフ」と呼ばれ、かつ、アミノ酸配列TVANEVIQGLWGNGQERYDSLANAGYDPQAVQDKVNEXL(ここで、XはCW_7モチーフ番号1(アミノ酸207~245)及び番号2(アミノ酸255~293)においてIであり、及びここで、XはCW_7モチーフ番号3(アミノ酸303~341)においてLである)から成るとInterpro(Mitchell et al., 2019, Nucleic Acids Res. 47, D351-D360)によって定義される、38アミノ酸の長さの類似したアミノ酸配列で構成される。Cpl-7タンパク質では、CW_7モチーフ番号1と番号2の間、及びCW_モチーフ番号2と番号3の間に短い、9残基のリンカーが存在し、そのため、合計反復は47残基の長さになる。比較すると、本発明の天然型エンドリシンの反復は49残基の長さになる。
【0066】
「最小阻害濃度」又は「MIC」という用語は、細菌の目に見える増殖を妨げる化学物質、通常、薬物、の最低濃度を指す。MICは、OD計測によって48時間後に検出可能である増殖がない抗生物質の最小濃度と本願で定義された。
【0067】
「最小殺菌濃度」又は「MBC」という用語は、特定の細菌を殺滅するのに必要とされる抗菌物質の最低濃度を指す。通常、MBC90、すなわち、規定の時間内に90%の細胞を殺滅する抗生物質濃度、が計測されるが、それに対し、MBCは、2.5×107CFU/mlの懸濁液を完全に根絶する最小濃度と本願で定義された。MICは目に見える増殖を阻害するのに必要な抗菌物質の最低濃度であるが、それに対して、MBCは懸濁液中のすべての細胞の細菌死滅をもたらす抗菌物質の最小限の濃度である。
【0068】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」という用語、及びこれらの用語の変化形は、例えば、等配電子体ペプチドの場合などの、通常又は修飾ペプチド結合により互いに結合された少なくとも2つのアミノ酸を含む、それぞれ、融合タンパク質を含めた、ペプチド、オリゴペプチド、オリゴマー又はタンパク質を指す。これらの用語はまた、これと共に、非ペプチド性構造要素を包含するペプチド類似体と定義される「ペプチド模倣体」を含み、そしてそれは、天然の親ペプチドの(単数若しくは複数の)生物作用を模倣するか又はそれと拮抗することができるペプチドである。ペプチド模倣体は、酵素的に一様に切断可能なペプチド結合などの古典的なペプチドの特徴を欠いている。ペプチド又はポリペプチドは、遺伝コードによって定義された20種類のアミノ酸以外のアミノ酸で構成されていてもよい。それはL-アミノ酸及び/又はD-アミノ酸で構成されていてもよい。ペプチド又はポリペプチドは同様に、当業者にとって周知である、翻訳後成熟プロセスなどの天然のプロセスによって、又は化学的プロセスによって、修飾されたアミノ酸で構成されていてもよい。斯かる修飾は文献で十分に詳述されている。これらの修飾はポリペプチド内のどこでも:ペプチド骨格内、アミノ酸鎖内、又はカルボキシ若しくはアミノ末端においてさえも、起こり得る。ペプチド又はポリペプチドは、ユビキチン化に続いて分岐するか、又は分岐の有無に関わらず環状であってもよい。このタイプの修飾は、当業者にとって周知である天然型又は合成の翻訳後プロセスの結果であってもよい。例えば、ペプチド又はポリペプチドの修飾としては、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合的固定化、脂質又は脂質誘導体の共有結合的固定化、ホスファチジルイノシトールの共有結合的固定化、共有結合的又は非共有結合的架橋、環化、ジスルフィド結合形成、デメチル化、ペグ化を含むグリコシル化、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセス、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セネロイル化(seneloylation)、硫酸化(sulfatation)、アルギニン化又はユビキチン化などのアミノ酸付加、が挙げられ得る。斯かる修飾は、文献で十分に詳述されているので、当業者によって周知のことである。
【0069】
これと共に使用される場合、「細菌感染及び障害」は、細菌によって引き起こされた感染症及び障害、特に、狭義のガードネレラ・バギナリス、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ及びガードネレラ・スウィドシンスキイ、並びに他のガードネレラ属から成る群から選択されるガードネレラ種の少なくとも1つの菌株によって引き起こされる感染症及び障害を指す。細菌感染及び障害としては、これだけに限定されるものではないが、細菌性膣症(BV)が挙げられる。
【0070】
これと共に定義される場合、特定の細菌に対するエンドリシンの「殺活性」という用語は、前記エンドリシンの溶解活性によって引き起こされる生存可能な細菌細胞数の低減を表す。前記細菌に対するエンドリシンの殺活性は、細菌細胞の100%を溶解したことを意味する完全であっても、又は細菌細胞の少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、若しくは少なくとも約99.9%を溶解したことを意味する部分的であってもよい。殺活性は、試験されるエンドリシンへの曝露後の、細菌細胞懸濁液の610~620nmの吸光度の減少、及び/又は細菌細胞懸濁液の1ミリリットルあたりのコロニー形成単位(CFU)の減少、を計測することによって測定され得る。
【0071】
これと共に定義される場合、特定の細菌の細胞壁に対するエンドリシンの「結合能」という用語は、前記細菌の細胞壁と特異的に相互作用し、接着する前記エンドリシンの能力を指す。細菌の細胞壁に対するエンドリシンの結合能力は、当該技術分野で知られている方法によって測定され得る。
【0072】
本明細書で使用する場合、「治療」及び「治療する」並びにそれに類する語は、所望の薬理学的及び生理学的効果を得ることを一般に意味する。その効果は、疾患、その症状又は状態を予防するか又は部分的に予防するという観点から、予防的なものであってもよく、及び/又は、疾患、状態、症状、又はその疾患に起因する有害作用の部分的な治癒又は完全な治癒という観点から、治療的なものであってもよい。「治療」という用語は、本明細書で使用する場合、哺乳類(特にヒト)における疾患の任意の治療を含み、かつ、(a) 疾患に罹患しやすいがまだ罹患していると診断されていない対象において、疾患を発症しないように予防すること(例えば、予防的早期無症候性介入);(b) 疾患を抑制すること、すなわち、その進行を止めること;或いは、疾患を軽減すること、すなわち、疾患及び/又はその症状若しくは状態を退縮させること(例えば、損傷の改善又は治療)を含む。特に、細菌感染の治療は、例えば、細菌を殺滅することによって、感染症を予防するか、軽減するか、又はさらに言えば根絶させることを含み、これにより、細菌増殖を制御するか、削減するか又は阻害し、並びに生存可能細菌細胞の数を削減する。本明細書中、疾患、例えばBVは、疾患又は症状の部分的又は完全な治癒の観点から治療的に処置されることが好ましい。
【0073】
「対象」という用語は、本明細書で使用する場合、哺乳類を指す。例えば、本発明で意図する哺乳類には、ヒト、霊長類、家畜動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、実験用げっ歯類などが含まれる。対象がヒトであることが好ましい。
【0074】
「有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、探求対象の組織、系、動物又はヒトにおいて生物学的応答若しくは医薬品応答を誘発する、少なくとも1つの本発明によるエンドリシン、それらの組成物又は医薬製剤の量を指す。一実施形態において、有効量は、治療を受ける疾患又は状態の症状を緩和するための「治療有効量」である。別の実施形態において、有効量は、予防を受ける疾患又は状態の症状を予防するための「予防的有効量」である。この用語には、本明細書では、疾患の進行を減速少させるために、特に、障害又は感染を減少若しくは阻害するために、十分な活性ポリペプチドの量(すなわち、「阻害有効量」)も含まれる。
【0075】
本発明による治療の「有効性」という用語は、本発明による使用又は方法に応答して生じる、疾患の経過における変化に基づいて測定され得る。感染症予防の有効性は、ヒト個体群における疫学調査によって最終的に評価され、これは、血清中の中和抗体力価及び病原体特異的な多機能T細胞応答の誘導とよく相関する。前臨床評価は、感染性病原体に曝露後の感染への耐性を含んでもよい。感染症の治療は、病原体特異的な抗体及び/又はT細胞免疫応答と相関する、病原体増殖の抑制又は病原体の排除(したがって、病原体の不検出)によって測定され得る。
【0076】
「生体物質」という用語は、対象の身体から得られるあらゆる物質又はサンプルを指す。これは、例えば全血、血清、血漿、尿、痰、唾液、腟スワブ、又は脊髄液のサンプルを含む。
【0077】
「無生物材料又は表面」という用語は、溶液、培地、デバイス、物体、床、台の表面を含む。
【0078】
「培地」という用語は、水、空気又は食餌を含む。
【0079】
「医薬製剤」又は「医薬組成物」という用語は、活性成分の生物活性が明白に有効になるような形態であり、かつ、前記製剤が投与される対象にとって有毒である追加成分を含まない、調製物を指す。
【0080】
「医薬的に許容される」という用語は、生物学的ではないか又はその他の点で好ましくない材料から成る担体を指す。
【0081】
「担体」という用語は、活性物質以外の医薬製剤内に存在するあらゆる成分を指し、したがって、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、増量剤、着色剤、湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤、保存料などが挙げられる。
【0082】
「変異体」という用語は、天然アミノ酸配列に対して非保存性又は好ましくは保存性のいずれかの、挿入、欠失、及び/又は置換を含むポリペプチドを指す。例えば、ポリペプチドは、天然アミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性、好ましくは前記アミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。同一性のパーセンテージは、好適なコンピュータプログラム、例えばMatGAT2.0(Myers and Miller, CABIOS (1989))を使用して、当該技術分野で周知の方法によって測定される。好ましくは、%同一性は、比較される配列の全長にわたって同定される。当然のことながら、同一性パーセントは、その配列が最適にアラインメントされているポリペプチドに関して計算される。アミノ酸配列のフラグメント及び変異体は、当技術分野で周知のタンパク質工学、指向進化、及び/又は部位特異的変異誘発の方法を用いて作製されてもよい(例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 3rd edition, Sambrook & Russell, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと)。当業者には当然のことながら、本発明によるポリペプチド、又はそのフラグメント、変異体若しくは融合体は、天然のアミノ酸配列の誘導体、又はそのフラグメント若しくは変異体を含み又はそれから成ることができる。1つ又はそれ以上のアミノ酸の化学誘導体は、官能性側鎖基との反応により得ることができる。当該誘導体化分子は、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、アミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基又はホルミル基を形成するそれらの分子を含む。遊離カルボキシル基は、誘導体化して塩、メチル及びエチルエステル又は他のタイプのエステル及びヒドラジドを形成してもよい。遊離のヒドロキシル基は、誘導体化してO-アシル又はO-アルキル誘導体を形成してもよい。化学誘導体としては、20の標準アミノ酸の天然アミノ酸誘導体を含むそれらのペプチドも含まれる。例えば:4-ヒドロキシプロリンは、プロリンと置換してもよい;5-ヒドロキシリジンは、リジンと置換してもよい;3-メチルヒスチジンは、ヒスチジンと置換してもよい;ホモセリンはセリンと、そしてオルニチンはリジンと置換してもよい。誘導体は、また、必要活性が維持される限り、1つ又はそれ以上の付加又は欠失を含むペプチドをも含む。含まれる他の修飾は、アミド化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化又はチオグリコール酸アミド化)、末端カルボキシアミド化(例えば、アンモニア又はメチルアミンによる)、などの末端修飾である。当業者には更に当然のことながら、ペプチド模倣的化合物も有用であり得る。したがって、「ポリペプチド」により、エンドリシン活性を呈するペプチド模倣的化合物を含む。用語「ペプチド模倣的」は、治療薬として特定のポリペプチドの立体配座及び所望の特徴を模倣した化合物を指す。
本発明によるエンドリシン
【0083】
本発明のエンドリシンはガードネレラ菌株に対して抗菌性を有する。本発明によるエンドリシンが抗菌性を発揮する最適pHは、約4~6の間に含まれ、好ましくは約5のpHである。
本発明のエンドリシンは、以下の:
(i) N末端の触媒ドメイン、又はその機能的変異体;
(ii) C末端の細胞壁結合領域、又はその機能的変異体、ここで、該C末端の細胞壁結合領域は少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成り;及び
(iii) 該N末端の触媒ドメインとC末端の細胞壁結合領域ととの間のリンカー領域、
を含むか、或いはそれらから成り、かつ、
ガードネレラ細胞に対する殺活性を有する。
いくつかの実施形態において、N末端の触媒ドメインは第一の天然型エンドリシンに由来し、リンカー領域及びC末端の細胞壁結合領域は第二の天然型エンドリシンに由来し、そして該第一のエンドリシンと第二の天然型エンドリシンは異なったプロファージに由来する異なったゲノムによってコードされる。
ガードネレラに対する本発明のエンドリシンの殺活性は、ガードネレラに対する種選択的殺活性であることが想定される。
【0084】
N末端の触媒ドメインは機能性ポリペプチドであり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁を溶解することができる能力を含む。N末端の触媒ドメインは、N-アセチルムラミダーゼ、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ、L-アラノイル-D-グルタミン酸エンドペプチダーゼ、ペプチド間架橋エンドペプチダーゼ又はN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼであってもよい。好ましくは、N末端の触媒ドメインは、N-アセチルムラミダーゼ、最も好ましくは1,4-β-N-アセチルムラミダーゼである。例えば、N末端の触媒ドメインは、配列番号1~5、7又は10~12のいずれか1つのアミノ酸、或いは配列番号1~5、7又は10~12のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成り、それにより、前記ポリペプチドは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。好ましくは、N末端の触媒ドメインは、配列番号2又は7のアミノ酸、或いは配列番号2又は7のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその変異体のいずれか、を含むポリペプチドから成り、それにより、前記ポリペプチドは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。
【0085】
本発明によると、C末端の細胞壁結合領域は機能性ポリペプチドであり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁に結合することができる能力を含む。C末端の細胞壁結合領域は、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらから成っていてもよい。例えば、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の細胞結合ドメインは、それぞれ配列番号15~24及び26~33のアミノ酸配列、並びにそれぞれ配列番号15~24及び26~33のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその変異体のいずれか、を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る群から独立に選択されてもよく、それにより、前記ポリペプチドは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁に結合する能力を含む。好ましくは、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の細胞壁結合ドメインは、配列番号19、20及び28~33のいずれか1つのアミノ酸配列、或いは配列番号19、20及び28~33のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、そして最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその変異体のいずれか、を含むポリペプチドから成る群から独立に選択され、それにより、前記ポリペプチドは機能的であり、ここで、該機能はガードネレラの細胞壁に結合する能力を含む。
最も好ましくは、C末端の細胞壁結合領域は、第一の細胞壁結合ドメイン及び第二の細胞壁結合ドメインを含み、ここで、前記第一の細胞壁結合ドメインは、配列番号15、17、19、21、23、26、28、30及び32から成る群から選択され、及び前記第二の細胞壁結合ドメインは、配列番号16、18、20、22、24、27、29、31及び33から成る群から選択される。好ましい実施形態において、前記第一の細胞壁結合ドメインは、第二の前記細胞壁結合ドメインのN-末端にある。
【0086】
本発明の一態様において、リンカー領域は、6~18アミノ酸の長さ、好ましくは9~15アミノ酸の長さ、より一層好ましくは12アミノ酸の長さを有するポリペプチドから成ってもよい。好ましくは、リンカー領域は、アミノ酸配列(i) (XXX)n{式中、各Xは独立に、G、A又はSであり得る}、好ましくはここで、アミノ酸配列(XXX)nは(GGS)nであり、ここで、nは配列XXXの繰り返しの回数に対応し、好ましくはここで、nは2、3、4、5又は6であり、或いは(ii) X1X2GLNGX3X4NGGS{式中、X1はN又はKであり、X2はA又はVであり、X3はY又はCであり及びX4はK又はQである}を含むか又はそれらから成るポリペプチドから成る。リンカーを含むフラグメントは存在しなくてもよい。リンカーを含むフラグメントはまた、存在していてもよく、かつ、本発明のポリペプチドの細胞壁結合及び/又は溶解作用を促進してもよい。
【0087】
本発明はさらに、疾患又は障害を治療する際に使用するのための、先に記載したガードネレラに対する殺活性を有するエンドリシンを提供する。治療される疾患又は障害は、細菌感染、好ましくは細菌性腟症であってもよい。細菌性腟症は、狭義のG. バギナリス、G. レオポルジイ、G. ピオチイ、及び/又はG. スウィドシンスキイ、或いはガードネレラ属の他の種によって引き起こされ得る。
【0088】
本発明のエンドリシンは、好ましくは、BVなどのガードネレラ感染症を治療する方法に使用するために、ガードネレラ細胞に特異的に結合する、及び/又はそれを溶解することができる。
【0089】
先に述べたように、多くのバクテリオファージエンドリシンが2つの異なるドメインから成ることは十分に立証されている(例えば、Sheehan et al., 1996, FEMS Microbiology Letters 140:23-28を参照のこと)。1つは細胞壁分解に関与する触媒ドメインであり、これらはいくつかの形態で存在することが知られている。他のドメインは、細胞表面モチーフを認識し、その標的細胞へのエンドリシンの付着を可能にする細胞壁結合ドメインである。後者に関与する正確なパターン認識は、特異性を提供するものである。酵素ドメインは、同じタイプの溶解作用を共有する溶解酵素の他の類似領域に対するそのアミノ酸相同性によって同定され得る。本発明者らによって新たに発見された天然型ガードネレラプロファージエンドリシンの場合、ドメイン配置は、196残基のN末端ドメインと、それに続く、12残基のリンカー領域及び43残基の1つの不完全ドメインしかないEL6とEL9を除いて、それぞれ49残基の2つの反復ドメインから成ることが同定された。これらの新たに発見されたエンドリシンの天然アミノ酸配列は、表7にまとめられている。発明者らは、グリコシドヒドロラーゼ、ファミリー25に対するその相同性のため、N末端ドメインが触媒ドメインであること、及びリゾチームCpl-7のC末端ドメインに対するそれらの相同性のため、2つの反復ドメインが2つの細胞壁結合ドメインであることを同定した(実施例2及び
図3を参照のこと)。
【0090】
いくつかの実施形態において、酵素ドメインを含むフラグメントは修飾されていない、すなわち、天然アミノ酸配列と一致する。代替の実施形態において、酵素ドメインを含むフラグメントは、アミノ酸の置換、欠失、挿入などの変更、又はその変更の任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、酵素ドメインを含むフラグメントは、配列番号1~5、7、又は10~12のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.7%の同一性、そして最も好ましくは100%の同一性を有する変異体フラグメントである。
【0091】
いくつかの実施形態において、細胞壁結合ドメインを含むフラグメントは修飾されていない、すなわち、天然アミノ酸配列と一致する。代替の実施形態において、細胞壁結合ドメインを含むフラグメントは、アミノ酸の置換、欠失、挿入などの変更、又はその変更の任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、酵素ドメインを含むフラグメントは、配列番号15~24及び26~33のうちのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より一層好ましくは少なくとも95%の同一性、より一層好ましくは少なくとも96%の同一性、より一層好ましくは少なくとも97%の同一性、より一層好ましくは少なくとも98%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.5%の同一性、より一層好ましくは少なくとも99.7%の同一性、そして最も好ましくは100%の同一性を有する変異体フラグメントである。
【0092】
ポリペプチドの「融合体」は、その他のポリペプチドに融合したポリペプチドを含む。例えば、ポリペプチドは、本発明によるエンドリシンのアミノ酸配列の内部に及び/又はN-及び/又はC-末端に挿入された1つ又はそれ以上の更なるアミノ酸、又はそのフラグメント、変異体若しくは誘導体を含んでもよい。
したがって、上記のように、1つの実施形態において、本発明の第1の態様のエンドリシンは、異なる起源の酵素ドメインがそれに融合した、ぞれどれ配列番号15~24及び26~33のいずれか1つのアミノ酸配列(又はその細胞壁結合活性を保持するようなドメイン配列の変異体)を含むか又はそれらから成る1若しくは複数の細胞壁結合ドメインから成るフラグメントを含む。他の好適な酵素ドメインの例としては、これだけに限定されるものではないが:L-アラノイル-D-グルタミン酸エンドペプチダーゼ;D-グルタミル-m-DAPエンドペプチダーゼ;ペプチド間架橋特異的エンドペプチダーゼ;N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(ムラモイルヒドロラーゼ);N-アセチル-β-D-ムラミダーゼ(リゾチーム)又は溶菌性トランスグリコシラーゼが挙げられる。また、他の起源からのN-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼも利用可能である。
【0093】
本発明の一態様において、エンドリシンは、前記エンドリシンの精製を容易にするために、ポリペプチド又はタンパク質に融合されてもよい。当該融合体の例は当業者に周知である。同様に、エンドリシンは、His6などのオリゴヒスチジンタグに、又は周知のMycタグエピトープなどの抗体によって認識されるエピトープに融合してもよい。本発明によるエンドリシンのいずれかのフラグメント、変異体又は誘導体に対する融合体も、本発明の範囲内に含まれる。当然のことながら、所望の特性、即ち、エンドリシン活性を保持する融合体(又はその変異体若しくは誘導体)が好ましい。融合体が本明細書に記載の方法に使用するのに好適なものであれば、それも特に好ましい。例えば、融合体は、本発明のエンドリシンに所望の特性を賦与する更なる部分を含んでもよい;例えば、その部分はエンドリシンを検出又は単離し、エンドリシンの細胞内取り込みを促進し、又は細胞からのタンパク質の分泌を導くのに有用と考えられる。その部分は、当業者に周知の、例えば、ビオチン部分構造、放射性部分構造、蛍光部分構造、例えば、小分子蛍光プローブ又は緑色蛍光タンパク質(GFP)蛍光プローブであってもよい。その部分構造は、当業者に周知の免疫原性タグ、例えば、Mycタグであってもよく、又は当業者に周知の、エンドリシンの細胞内取り込みを促進することができる親油性分子若しくはポリペプチドドメインであってもよい。
【0094】
本発明のエンドリシンの最も重要な特徴は、ガードネレラ属の細胞を溶解する能力である。好ましくは、エンドリシンは、ガードネレラの複数株の細胞を溶解することができる。最も好ましくは、エンドリシンは、狭義のG. バギナリス、G. レオポルジイ、G. ピオチイ及びG. スウィドシンスキイを含めたガードネレラ属の全ての株を溶解することができる(Vaneechoutte et al., 2019 Int. J. Syst. Evol. Biol. 898661)。一実施形態において、本発明のエンドリシンは、健常な膣の微生物叢の片利共生メンバーである細菌を実質的に又は完全に溶解することができない(そして、宿主に対して有害な影響を引き起こすことが知られていない)。例えば、エンドリシンがラクトバチルス属の細胞を溶解しない場合、それは有利である。最も好ましくは、本発明のエンドリシンは、L. クリスパタス、L. ガセリ及びL. ジェンセニイの細胞を実質的に又は完全に溶解することができない。任意選択で、本発明のエンドリシンは、L. イネルス(L. iners)の細胞を溶解しない。有利なことには、エンドリシンは、選択的に、すなわち、非病原性細菌の細胞とは大きく異なる程度まで、病原性細菌の細胞を溶解することができる。
【0095】
特定の微生物に対する、本発明によるエンドリシンの殺活性は、Andrews, 2001, J Antimicrobial Chemotherapy, 48, Suppl. SI, 5-16又は“Document M7-A7, Methods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically; Approved standards, 7th Edition, January 2006, vol. 26, No. 2” published by Clinical and Laboratory Standards Instituteに記載されているとおり一晩インキュベーションの後に微生物の目に見える増殖を阻害する前記抗菌剤の最低濃度と定義される抗微生物剤の最小阻害濃度(MIC)の測定に基づくものを含めた、その分野で標準的な手順によって測定され得る。本発明によるエンドリシンの殺活性を測定するための別の適切な方法は、本願の実施例の項に記載されており、及び本発明による精製されたエンドリシンの存在下で実施されたインビトロ濁度アッセイにおいてその感受性が試験される、細菌の懸濁液の610~620nmにて計測される吸光度の減少を測定することにある。別の実施形態によると、これと共に記載したインビトロ濁度試験では、本発明によるエンドリシンはガードネレラ細菌の少なくとも1つの菌株の懸濁液のOD(610~620nm)を20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、又は95%超減少させる。
【0096】
本発明による使用のためのエンドリシン、或いはそのフラグメント、変異体、融合体、又は誘導体の製造のための方法は、当該技術分野で周知である。好都合なことに、エンドリシン、或いはそのフラグメント、変異体、融合体又は誘導体は、遺伝子組み換えエンドリシンであるか又はそれを含む。本発明によるエンドリシンは、これと共に記載されたエンドリシンをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子組み換えベクターの使用を含めた遺伝子工学の標準的な技術によって製造され得る。細菌プラスミド及び派生ベクター、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入因子、酵母染色体要素、ウイルス、例えばバキュロウイルス、パピローマウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、キツネポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス、コスミド又はファージミド誘導体などの多数の発現系が使用され得る。ヌクレオチド配列は、当業者に周知の方法、例えばMOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Sambrook et al., 4th Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 2001に記載の方法によって、遺伝子組み換え発現ベクターに挿入され得る。遺伝子組み換えベクターは、エンドリシンをコードするポリヌクレオチドの調節、発現、転写、及び/又は翻訳を制御するヌクレオチド配列を含んでもよく、これらの配列は、使用される宿主細胞に従い選択される。遺伝子組み換えベクターは、精製ステップを容易にするためにHisタグをコードするものなどのヌクレオチド配列をさらに含む。それに続いて、斯かる遺伝子組み換えベクターは、当業者に周知の方法、例えばBASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, Davis et al., 2nd ed., McGraw-Hill Professional Publishing, 1995, and MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL(前出)に記載の方法、例えばリン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストランによるトランスフェクション、トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入又は感染によって宿主細胞に導入される。宿主細胞は、例えば、E. コリのような細菌細胞、酵母細胞及びアスペルギルス(Aspergillus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)の細胞のような真菌の細胞、昆虫細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、C127マウス細胞株、シリアンハムスター細胞のBHK細胞株、ヒト胎児由来腎臓293(HEK293)細胞であってもよい。好ましくは、宿主細胞はE.コリである。次に、前記宿主細胞は、これと共に記載したエンドリシンを産生するように適切な条件下で培養され、次に、それはさらに、Immobilized-Metal Affinity Chromatography(IMAC)を含めた任意の標準的な精製方法によって培養培地から又は宿主細胞溶解物から(精製され得る(Block et al. 2008, Protein Expr. Purif. 27, 244-254)。
本発明による組成物
【0097】
本発明のさらなる態様において、本発明の第一の態様によるエンドリシン、本発明の第二の態様による核酸、本発明の第三の態様によるベクター/プラスミド、本発明の第四の態様による宿主細胞又は本発明の第一の態様によるエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ、を含む抗菌組成物、特に医薬組成物を提供する。
【0098】
本明細書で使用される「医薬組成物」は、本発明の方法に使用するための治療上有効な製剤を意味する。本明細書で使用される「治療的有効量」、又は「有効量」、又は「治療的に有効な」は、所定の状態及び投与レジメンに対し治療的効果を与える量を指す。これは、所要の添加剤及び賦形剤、即ち、担体又は投与賦形剤と併せて、所望の治療的効果をもたらすように算出される活性物質の所定量である。更に、宿主の活動性、機能及び反応性の臨床的に重大な欠如を減少させ、そして最も好ましくはそれを予防するのに十分な量を意味することを意図している。或いはまた、治療的有効量は、宿主の臨床的に重大な状態の改善をもたらすのに十分な量である。当業者には当然のことながら、化合物の量はその比活性度によって変動してもよい。好適な用量は、所要の賦形剤と併せて所望の治療効果をもたらすように算出される活性組成物の所定量を含むことができる。本発明の組成物を製造するための方法及び使用では、活性成分の治療的有効量が供給される。治療的有効量は、当技術分野で周知のように、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患など、患者の特性を基準にして通常の技量の医療又は獣医従事者により決定することができる。本発明の1つの実施形態において、医薬組成物は、本発明の第一の態様によるエンドリシンを含む。よって、この医薬製剤は、当該細胞により感染し又は感染を起こし易い患者において、ガードネレラ属の細胞増殖を少なくとも部分的に阻害するのに十分な量のエンドリシン、又はそのフラグメント、変異体、融合体若しくは誘導体を含むことができる。好ましくは、医薬製剤は、患者においてガードネレラ属の細胞を死滅させるのに十分な量のエンドリシン、又はそのフラグメント、変異体、融合体若しくは誘導体を含む。当業者には当然のことながら、本発明のポリペプチドは、一般的に、所定の投与経路及び標準的薬剤治療(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995, Ed. Alfonso Gennaro, Mack Publishing Company, Pennsylvania, USAを参照のこと)に関して選択される好適な医薬品添加剤、賦形剤又は担体との混合物で投与される。例えば、エンドリシンは、局所的に、すなわち、雌性対象(female subject)の膣中に局所的に、及び/又は雄性対象(male subject)では、陰茎亀頭、包皮又は尿道入口の中又はその上に投与され得る。本明細書中では、「陰茎亀頭の中又はその上への(投与)」という用語はまた「陰茎亀頭の中及びその上への(投与)」も包含する。そういうわけで、「雄性対象の陰茎亀頭、包皮又は尿道入口の中又はその上への(投与)」という用語は「雄性対象の陰茎亀頭の中及びその上、及び包皮の上及び尿道入口の上への(投与)」もまた包含する。別の実施形態において、エンドリシンは、膣のpHを調整する化合物又は組成物と同時投与されてもよい。いくつかの実施形態において、化合物又は組成物は膣のpHをpH4.0~6.0、好ましくはpH5.0に調整する。
本発明の代替の実施形態において、医薬組成物は、エンドリシンそのものを含まないが、代わりに該エンドリシンを発現することができる核酸分子を含む。好適な核酸分子、発現ベクター、及び宿主は詳細に上述されている。例えば、組み換えプロバイオティックを使用してもよい(LAB株、例えば、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)又はラクトバチルス(Lactobacillus)種)。本発明の更なる実施形態において、医薬組成物は、本発明の第1の態様のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージを含む。当該バクテリオファージに基づく治療を実施する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Watanabe et al., 2007, Antimicrobial Agents & Chemotherapy 51:446-452を参照のこと)。このように、本明細書に記載の細菌感染の処置では、本発明のエンドリシンは、同種の(cognate)タンパク質として、核酸構築物、ベクター又は同種のタンパク質を発現する宿主細胞として、同種のタンパク質(バクテリオファージを含む)を発現する生物の一部として、又はその細菌標的とエンドリシンの接触を達成するために、それがG. バギナリスのような病原性細菌であれ、又は本明細書に更に記載される別の病原体若しくは潜在的病原体であれ、当技術分野で公知のその他簡便な方法によって投与してもよい。
【0099】
本発明の組成物は、1若しくは複数のエンドリシンポリペプチドを包含し得る。この実施形態において、エンドリシンポリペプチドは、独立したポリペプチドとして存在するか、又は前記エンドリシンポリペプチド又はそのフラグメントを含む融合体タンパク質として存在するかのいずれかであり得る。
【0100】
本願発明の医薬組成物はさらに、ミョウバン、安定化剤、抗微生物剤、緩衝剤、着色剤、香味料、アジュバントなどの1若しくは複数の医薬的に許容される追加の構成要素を含んでもよい。本発明の医薬組成物はイミダゾールを含まないことが好ましい。
【0101】
本発明のエンドリシンは、通常使用されるアジュバント、担体、希釈剤又は賦形剤と共に、医薬組成物及びその単位用量の形態中に収められ得、そしてそのような形態で、固体、例えば錠剤若しくは充填カプセル剤、又は液体、例えば溶液、懸濁液、エアゾール、乳濁液、エリキシル剤、若しくはそれらを充填したカプセル剤(すべて経口用)として使用され得るか、或いは非経口(皮下を含む)用の滅菌注射用溶液の形態で使用され得る。斯かる医薬組成物及びその単位用量形態は、追加の活性化合物又は成分の有無にかかわらず、成分を従来の比率で含み得、斯かる単位用量形態は、使用される目的の1日用量範囲に相応する任意の適切な有効量の活性成分を含み得る。本願発明の組成物はまた、これだけに限定されるものではないが、水性又は油性懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、及びエリキシル剤などの液体製剤であってもよい。これらの組成物はまた、使用前に水又は他の適切なビヒクルを用いて再構成される乾燥製品として製剤化されてもよい。斯かる液体調製物は、これだけに限定されるものではないが、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル及び保存料などの添加物を含み得る。懸濁化剤としては、これだけに限定されるものではないが、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、及び硬化食用脂が挙げられる。乳化剤としては、これだけに限定されるものではないが、レシチン、ソルビタンモノオレエート、及びアラビアゴムが挙げられる。非水性ビヒクルとしては、これだけに限定されるものではないが、食用油、アーモンドオイル、ココナッツオイル、油性エステル、プロピレングリコール、及びエチルアルコールが挙げられる。保存料としては、これだけに限定されるものではないが、p-ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル及びソルビン酸が挙げられる。さらなる材料、並びに加工技術などが、Part 5 of Part 5 of Remington’s “The Science and Practice of Pharmacy”, 22nd Edition, 2012, University of the Sciences in Philadelphia, Lippincott Williams & Wilkinsにおいて試みられている。
【0102】
本願発明の固体組成物は、従来の様式で処方された錠剤又はロゼンジの形態であってもよい。錠剤は、当該技術分野で周知の方法によって被覆されてもよい。注射可能な組成物は、典型的には、注射可能な滅菌生理的食塩水若しくはリン酸緩衝生理的食塩水、又は当該技術分野で知られている注射可能な担体に基づく。
【0103】
本願発明の組成物はまた坐剤として処方されてもよく、そしてそれは、これだけに限定されるものではないが、ココアバター又はグリセリドを含めた坐剤基材を包含し得る。本願発明の組成物はまた、これだけに限定されるものではないが、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ペースト剤、薬用硬膏、パッチ、又は膜を含めた、水性又は非水性ビヒクルを含む経皮製剤が処方されてもよい。
【0104】
本願発明の組成物はまた、これだけに限定されるものではないが、注射又は連続点滴を含めた非経口適用のために処方されてもよい。注射用の製剤は、オイル又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又は乳濁液の形態であってもよくて、そして、これだけに限定されるものではないが、懸濁剤、安定化剤、及び分散剤を含めた処方剤を含んでもよい。その組成物はまた、これだけに限定されるものではないが、無菌の発熱性物質不含水を含めた好適なビヒクルを用いた再構成のための粉末形態で提供されてもよい。
【0105】
本願発明の組成物はまた、デポー製剤として処方されてもよく、そしてそれは、移植又は筋肉内注射によって投与されてもよい。その組成物は、好適な高分子若しくは疎水性材料(例えば、許容されるオイル中の乳濁液として)、イオン交換樹脂、又は難溶性誘導体(例えば、難溶性塩として)として処方されてもよい。
【0106】
本願発明の化合物はまた、徐放性形態又は徐放性薬物送達システムから投与され得る。
代表的な徐放性材料の説明はまた、Remington’s “The Science and Practice of Pharmacy”においても見ることができる。
投与方法
【0107】
本願発明の組成物は、好ましくは、雌性対象の膣中に、及び/又は雄性対象の陰茎亀頭、包皮又は尿道入口の中若しくはその上に局所的に投与される。しかしながら、これらの組成物はまた、静脈内注射、動脈内、腹腔内注射、皮下注射、筋肉内、くも膜下腔内、舌下を含めた又は口腔内投与による経口経路、局所、皮膚投与、外科手術中の直接的な組織潅流、或いはその組み合わせを含めた任意の方法でも投与されてもよい。
【0108】
好ましい実施形態において、本明細書中に記載の本発明のエンドリシン、ポリヌクレオチド又は医薬組成物は、局所的に投与されるべきである。さらに好ましい実施形態において、本明細書中に記載の本発明のエンドリシン、ポリヌクレオチド又は医薬組成物は、雌性対象の膣中に、雄性対象の陰茎亀頭、包皮又は尿道入口の中若しくはその上に投与されるべきである。本明細書中に記載のさらに好ましい実施形態において、本発明のエンドリシン、ポリヌクレオチド又は医薬組成物は対象の膣中に局所的に投与されるべきである。
【0109】
単回投与又は複数回投与として個体に投与される投薬量は、薬物動態学的特性、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康状態、サイズ)、症状の程度、併用治療、治療の頻度ならびに所望の効果などを含む、様々な要因によって変化する。
【0110】
一態様によると、本発明の組成物は、性的関係の前に患者に予防様式で投与されてもよい。
組み合わせ
【0111】
本発明によると、エンドリシンは、単独で、或いは狭義のガードネレラ・バギナリス、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ、ガードネレラ・スウィドシンスキイ、及び/又はガードネレラ属の他の種によって引き起こされるものを含めたガードネレラ感染症又は障害の治療及び/又は予防の際に有用な補助薬剤(co-agent)と組み合わせて投与され得る。
【0112】
本発明によるエンドリシンは、以下の:
(a) 1若しくは複数の従来の抗生物質治療。斯かる抗生物質はクリンダマイシン、メトロニダゾール又は当該技術分野で当業者によって知られているあらゆる他の好適な抗生物質を含み得る;
(b) 1若しくは複数の追加のエンドリシン、又はそれを発現できる核酸分子、ベクター、宿主細胞若しくはバクテリオファージ;
(c) 膣のpHを調整する化合物又は組成物。いくつかの実施形態において、その化合物又は組成物は、膣のpHをpH4.0~6.0、好ましくはpH5.0に調整する。好適なpH調整化合物は、ホスファート、乳酸(例えば、酸性環境を確立するためにラクトバチルスが分泌する天然の酸性化物質)又は他の有機酸、例えばカルボキシ置換ポリマーを含んでもよく;
(d) 膣内のガードネレラ細胞の細菌性溶解時に放出される毒素を中和する治療法。好適な中和治療法は、抗体(Babcock et al., 2006, Infect. Immun. 74:6339-6347を参照のこと)及びトレバマー(tolevamer)などの毒素吸着剤(Barker et al., 2006, Aliment. Pharmacol. Ther. 24:1525-1534を参照のこと)を含んでもよく;
(e) プロバイオティクス、
と組み合わせて投与され得る。
本発明による使用と方法
【0113】
本発明のさらなる態様は、薬剤に使用するための、本発明によるエンドリシン、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞、本発明によるエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ、又は本発明による薬理学的な組成物を提供する。したがって、本発明のエンドリシンは、ヒト又は動物の身体に対してを実行される外科手術又は治療法及び/又は診断法によるヒト又は動物の身体の治療のための使用するためのものであってもよい。特に、本発明は、疾患又は障害を治療する際に使用するための、本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞、本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ、又は本発明の薬理学的な組成物を提供する。
【0114】
本発明のさらなる態様は、薬剤としての使用するための、本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞、本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ、又は本発明による薬理学的な組成物を提供する。
【0115】
本発明のさらなる態様は、患者の微生物細胞を殺滅する、及び/又はその増殖を阻害又は予防するための薬剤の調製における、本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞、本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ、又は本発明の薬理学的な組成物の使用を提供し、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び前記エンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される。特に、本発明は、細菌感染及び障害を治療するための薬剤の製造における、本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞、本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ、又は本発明の薬理学的な組成物の使用を提供する。
【0116】
本発明のさらなる態様は、患者の微生物細胞を殺滅する、及び/又はその増殖を阻害又は予防する際に使用するための、本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞又は本発明の薬理学的な組成物を提供し、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び前記エンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される。
【0117】
本発明のさらなる態様は、患者の微生物細胞を殺滅するか、及び/又はその増殖を阻害又は予防する方法であって、該患者に本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞、本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ又は本発明の薬理学的な組成物を投与することを含む方法を提供し、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び前記エンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される。
【0118】
本発明のさらなる態様は、患者の微生物細胞に関連する疾患又は状態の治療又は予防のための治療薬の調製における、本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞、本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ又は本発明の薬理学的な組成物の使用を提供し、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び前記エンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される。
【0119】
本発明のさらなる態様は、患者の微生物細胞に関連する疾患又は状態の治療又は予防において使用するための、本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞、本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ又は本発明の薬理学的な組成物を提供し、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び本発明のエンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される。
【0120】
本発明のさらなる態様は、斯かる治療を必要としている患者の微生物細胞に関連する疾患又は状態の治療又は予防のための方法であって、該患者に本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞、本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ又は本発明の薬理学的な組成物を投与することを含む方法を提供し、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び本発明のエンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される。
【0121】
「患者の微生物細胞に関連する疾患又は状態」としては、ガードネレラへの患者の感染症によって引き起こされる又はそれに拮抗する病気及び状態が挙げられる。斯かる疾患及び状態としてはBVが挙げられる。
【0122】
「治療」には、我々は、対象(又は患者)の治療的及び予防的治療の両方を含む。一実施形態において、本発明のエンドリシン、本発明の核酸、本発明のベクター/プラスミド、本発明の宿主細胞、本発明のエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ又は本発明の薬理学的な組成物、本発明の使用及び方法は、既存の疾患又は状態の治療のためのものである。これに代えて又はこれに加えて、本発明の使用及び方法は、予防のためのものであってもよい。「予防薬」又は「予防」という用語は、患者又は対象におけるガードネレラへの感染の見込みを予防又は軽減する、本明細書中に記載したエンドリシン又は組成物の使用を包含するのに使用される。予防は、一次予防(すなわち、疾患の発生を予防するため)であっても又は(疾患が既に発症し、そして患者がこのプロセスの悪化に対して保護されている)続発予防であってもよい。本明細書中に提供された手段及び方法が、既存の疾患又は状態の治療のためのもの、特に既存のBVの治療のためのものであることが好ましい。
【0123】
先に述べたように、「有効量」という用語は、治療する疾患又は状態の好ましい変化をもたらすのに使用することができる、本発明のエンドリシンの濃度又は量を記載するために本明細書で用いられるが、その変化が寛解、好ましい生理的結果、治療する病状又は状態の好転又は減弱、惹起している状態又は病状の可能性の予防又は低減であるかは、治療する疾患又は状態によって決まる。一実施形態において、本発明の第一の態様によるエンドリシン、本発明の第二の態様による核酸、本発明の第三の態様によるベクター、本発明の第四の態様による宿主細胞、本発明の第一の態様によるエンドリシンを発現することができるバクテリオファージ又は本発明の第六の態様による薬理学的な組成物は、単回投与で投与される。或いは、エンドリシン、核酸、ベクター/プラスミド、宿主細胞、バクテリオファージ又は薬理学的な組成物は、複数回の投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30又はそれ以上の投与)として投与される。エンドリシン、核酸、ベクター/プラスミド、宿主細胞、バクテリオファージ又は薬理学的な組成物は、好ましくは、対象の膣中における本発明の第一の態様によるエンドリシンの常駐を維持するのに十分な頻度で投与される。好ましくは、投与頻度及び投薬量は、対象の微生物細胞(例えば、ガードネレラ)に関連する疾患又は状態の出現又は再発を予防するために十分である。好ましくは、投与頻度及び投薬量は、対象の微生物細胞(例えば、ガードネレラ)に関連する増殖インピーダンスの出現又は再発を予防するために十分である。
【0124】
一実施形態において、本発明の使用及び方法、宿主細胞又は宿主細胞を含む薬理学的な組成物は、本発明の第一の態様のエンドリシンを送達するのに使用される(好ましくは宿主細胞)。
【0125】
当然のことながら、本明細書中に記載した薬剤は、1若しくは複数の追加の治療薬と組み合わせて対象に投与されてもよい。例えば、本明細書中に記載した薬剤は、以下の:
(a) 1若しくは複数の従来の抗生物質治療。斯かる抗生物質はクリンダマイシン、メトロニダゾール又は当該技術分野で当業者によって知られているあらゆる他の好適な抗生物質を含み得る;
(b) 1若しくは複数の追加のエンドリシン、又はそれを発現できる核酸分子、ベクター、宿主細胞若しくはバクテリオファージ;
(c) 膣のpHを、好ましくはpH4.0~6.0、より好ましくは約pH5.0に調整する化合物又は組成物。斯かるpH調整化合物は、ホスファート、乳酸(例えば、酸性環境を確立するためにラクトバチルスが分泌する天然の酸性化物質)又は他の有機酸、例えばカルボキシ置換ポリマーを含んでもよく;
(d) 膣内のG. バジナリス細胞の細菌性溶解時に放出される毒素を中和する治療法。好適な中和治療法は、抗体(Babcock et al., 2006, Infect. Immun. 74:6339-6347を参照のこと)及びトレバマーなどの毒素吸着剤(Barker et al., 2006, Aliment. Pharmacol. Ther. 24:1525-1534を参照のこと)を含んでもよく;
(e) プロバイオティクス、
と組み合わせて対象に投与されてもよい。
【0126】
本発明の更なる態様は、インビトロ及び/又はエクスビボで微生物細胞を殺滅する、及び/又はその増殖を阻害/予防するための、ガードネレラに対して細胞溶解活性を有するエンドリシン、又はそれを発現することができる核酸分子、ベクター、宿主細胞若しくはバクテリオファージの使用を提供し、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び本発明のエンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される。例えば、前記活性を有する該エンドリシンは、そのような細菌細胞で汚染され易い病院、キッチンなどの表面を清浄化するのに使用することができる。好ましくは、微生物細胞は、狭義のガードネレラ・バジナリス、G. レオポルジイ、G. ピオチイ、G. スウィドシンスキイ、又はガードネレラ属の他の種の細胞を含むか又はそれらから成る。
【0127】
本発明のさらなる態様は、キットを提供する。前記キットは、特に疾患又は障害、好ましくはBV、を治療するための、本明細書中に記載したエンドリシン及び使用の取扱説明書を含む。前記キットは、治療又は予防目的に使用されてもよく、膣のpHを4.0~6.0、好ましくは4.5~5.5、より好ましくは約5に調整する化合物又は組成物をさらに含んでもよい。しかしながら、本発明のキットはまた、サンプル中の微生物細胞の存在を検出するためのキットであって、本発明によるエンドリシンの細胞溶解活性及び/又は細胞結合特異性を有するポリペプチド、又はそれを発現することができる核酸分子、ベクター/プラスミド、宿主細胞若しくはバクテリオファージを含むキットも提供し、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び前記エンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される。
【0128】
本発明の関連する態様は、以下の:
(a) ガードネレラ細胞及び前記エンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される、微生物細胞に関連する疾患又は状態の診断薬の製造における、本発明によるエンドリシンの細胞壁結合活性及び/又は細胞溶解活性を有するポリペプチド、又はそれを発現することができる核酸分子、ベクター/プラスミド、宿主細胞若しくはバクテリオファージの使用;
(b) ガードネレラ細胞及び前記エンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される、微生物細胞に関連する疾患又は状態を診断するための、本発明によるエンドリシンの細胞壁結合活性及び/又は細胞溶解活性を有するポリペプチド、又はそれを発現することができる核酸分子、ベクター/プラスミド、宿主細胞若しくはバクテリオファージの使用;
(c) インビトロ及び/又はエクスビボでサンプル中の微生物細胞の存在を検出するための、本発明によるエンドリシンの細胞壁結合活性及び/又は細胞溶解活性を有するポリペプチド、又はそれを発現することができる核酸分子、ベクター、宿主細胞若しくはバクテリオファージの使用、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び前記エンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択され;及び
(d) 本発明によるエンドリシンを用いて治療できる疾患又は状態の診断のためのインビトロにおける方法であって、以下のステップ:(i) 対象から得られたサンプルを、本発明によるエンドリシンのC末端の細胞壁結合領域、及び任意選択で、本発明によるエンドリシンのN末端の触媒ドメイン、を含むか又はそれらから成るポリペプチドと接触させ、ここで、該サンプルは微生物細胞を含み、かつ、ここで、前記エンドリシンのC末端の細胞壁結合領域は、任意選択で標識され;(ii) 該ポリペプチドが該サンプル中の微生物細胞に結合し、及び/又はそれを溶解するか否か試験し;そして(iii) 該ポリペプチドが微生物細胞に結合し、及び/又はそれを溶解した場合に、疾患又は状態が本発明によるエンドリシンによって治療できるか判断すること、を含む方法、を提供する。よって、本発明は、患者において本発明のエンドリシンを用いて治療できる疾患又は状態を診断するためのインビトロにおける方法であって、対象から得られたの細胞サンプルを本発明によるエンドリシンの細胞壁結合活性及び/又は細胞溶解活性を有するポリペプチド、又はそれを発現することができる核酸分子、ベクター/プラスミド、宿主細胞若しくはプロファージと接触させ、そしてサンプル中の細胞がそれにより溶解されるかどうかを測定することを含む方法であって、ここで、該微生物細胞は、ガードネレラ細胞及び前記エンドリシンによる溶解を起こしやすい他の細菌細胞から成る群から選択される。好ましくは、該微生物細胞は、狭義のガードネレラ・バジナリス、G. レオポルジイ、G. ピオチイ、G. スウィドシンスキイ又はガードネレラ属の他の種の細胞を含むか又はそれらから成る。斯かる診断のための使用及び方法では、細胞の溶解は当技術分野で周知の方法を用いて検出し得る。例えば、ATPのレベルは、細胞溶解の指標として計測され得る。
【0129】
本発明の上記の使用及び方法の代替の実施形態において、ポリペプチドは、本発明によるエンドリシンの細胞壁結合ドメインを含み又はそれから成る。検出を可能にするために、このようなポリペプチドは、磁気ビーズに融合され又は好適なレポーター又は標識(例えば、緑色蛍光タンパク質又はHRPのような発色酵素)を含む融合タンパク質として使用してもよい。当該診断方法は、リステリアエンドリシンなど他の系由来のエンドリシンにて十分確立されている(例えば、Loessner et al., 2002, Mol Microbiol 44, 335-49; Kretzer etai, 2007, Applied Environ. Microbiol. 73:1992-2000を参照のこと)。
【0130】
本発明の実例的な実施形態は、以下の図面を参照しながら、以下の非限定的な実施例により説明される。
【実施例】
【0131】
実施例1 - ガードネレラゲノムの天然型エンドリシンの同定
【0132】
エンドリシンは、溶解サイクルの最終段階の間、宿主の細胞壁を切断するためにバクテリオファージによって産生される加水分解酵素である。それらは、ペプチドグリカン(ムレイン)、細菌細胞壁の主成分の5つの結合のうちの1つを標的化する能力を有し、そしてそれは、溶解細胞からの子孫ウイルス粒子の放出を可能にする。これまで、ガードネレラに対するバクテリオファージ溶解因子は単離されていない。そのため、バクテリオファージ起源からの、かつ、ガードネレラに対する溶解作用を有するエンドリシンが首尾よく同定され得るかどうかも知られていない。発明者らは、プロファージ配列によってコードされるエンドリシンが、様々なガードネレラゲノムにおいて同定されるかどうか調査した。プロファージは、環状細菌DNA染色体に挿入され、一体化されるか、又は染色体外プラスミドとして存在するバクテリオファージゲノムである。これはファージの潜伏型であり、その状態で、ウイルス遺伝子は細菌細胞の破壊を引き起こすことなく細菌内に存在する。細菌ゲノム及びプラスミド内のプロファージ配列の同定は、当業者によって知られているウェブベースのツールを使用することで実施できる。例えば、斯かるツールとしては、これだけに限定されるものではないが、PHASTER(Arndt et al., 2016 Nucleic Acids Res. 44, W16-W21)、PROPHINDER(Lima-Mendez et al., 2008 Bioinformatics 24, 863-865)又は同様のものが挙げられる。発明者らは、完全な若しくは部分的なプロファージを構成すると予測される14個のガードネレラゲノムの配列を同定することに成功した。配列は、そのクラスタ遺伝子がウイルス起源のものであると予測されるDNA領域を同定することによって見つけられた。完全なプロファージと対照的に部分的なプロファージだけであると予測されたウイルス遺伝子クラスタもまた含まれた。
【0133】
次に、推定プロファージ配列は、発破の予測されたコード配列をブラスティング(blasting)することによって注釈づけし、推定エンドリシンを同定した。具体的には、
ペプチドグリカンを構成する主要な化学結合のいずれかを切断することができる酵素に対して相同なタンパク質配列を捜索した。特に、N-アセチルムラミダーゼ(actylmuramidases)、N-アセチルムラモイル(actylmuramoy)-L-アラニンアミダーゼ、L-アラノイル-D-グルタミン酸エンドペプチダーゼ、ペプチド間架橋エンドペプチダーゼ、又はN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼに対する相同なタンパク質配列を捜索した。分析したあらゆる個々のプロファージ又は部分的なプロファージにおいて、発明者らは、1,4-β-N-アセチルムラミダーゼに対して相同なタンパク質のコード配列を発見し、それらをEL1~EL14と命名した。起源ゲノムに対する名称の割り当てを表1に示す。
【表1】
それぞれのケースで、1プロファージあたり1コピーだけ見つかり、細菌細胞壁を溶解することができる酵素であると予測た他のコード配列は見つからなかった。推定1,4-β-N-アセチルムラミダーゼをアラインして、相同性とドメイン構造を理解した(
図1を参照のこと)。
図1に見られるとおり、エンドリシンの大部分は、異なるゲノム上の異なるプロファージからであっても、正確に306残基を有する。2つの例外がEL6とEL9である。EL6はフレームシフトによってC末端にて先端が切り取られている。しかしながら、EL6と全く同じ位置のEL9末端は、この場合、コンティグ末端全体であった。
図2で見られるように、それらが高度に相同であるにもかかわらず、エンドリシンの中に同一対は存在しなかった。
【0134】
実施例2 - 天然型ガードネレラプロファージエンドリシンのドメイン構造の決定
【0135】
新たに発見したエンドリシンのドメイン構造をInterPro(Mitchell et al., 2019 Nucleic Acids Res. 47, D351-D360)を用いて決定した。簡単に言えば、InterProは、既知タンパク質で見られる同定可能特徴が、それらを機能的に特徴づけるために新しいタンパク質配列に適用できる、タンパク質ファミリー、ドメイン及び機能部位に関するデータベースである。InterProの内容は、それらが有意に一致する診断上の特徴的な特性とタンパク質から成る。特徴的な特性は、モデル、例えば、正期の発現などの単純なタイプ、又はタンパク質がファミリー、ドメイン又は部位を説明するHidden Markovモデルなどのより複雑なものなど、から成る。
図3で見られるように、306残基を有するすべてのエンドリシンが同じドメイン配置を有する。196残基のN末端ドメインは、グリコシドヒドロラーゼ、ファミリー25に対するその相同性のため、触媒ドメインと同定された。前記触媒ドメインには、CW_7ドメインとも称される、リゾチームCpl-7のC末端ドメインに対して相同な、リンカー領域及び2つの細胞結合ドメインがそのあとに続いた(Garcia et al., 1990 Gene 86, 81-88; Lopez and Garcia, 2004 FEMS Microbiol. Rev. 28, 553-580; Bustamante et al., 2010 J. Biol. Chem. 285, 33184-33196, 2012 PLoS One 7, e46654)。以下の実施例では、先に同定した触媒ドメインを、「N末端の触媒ドメイン」又は「H-ドメイン」と表し、そこでは、例えば、「H2」は天然型EL2のH-ドメインを指す。以下の実施例では、「リンカー領域」と「C末端の細胞壁結合領域」、後者は1若しくは複数の細胞壁結合ドメイン又は「Bドメイン」を含むか若しくはそれらから成る、は一緒に「B領域」を表し、そこでは、例えばB10は天然型EL10のB領域を指す。同様に、B11_Nは天然型EL11のN末端細胞壁結合ドメインを指し、B12_Cは天然型EL12のC末端の細胞壁結合ドメインを指す、など。
【0136】
実施例3 - ガードネレラ細胞に対する天然型ガードネレラプロファージエンドリシンの酵素活性の測定
【0137】
発明者らは、新たに発見したエンドリシンのガードネレラに対する酵素活性を調査した。1,4-β-N-アセチルムラミダーゼに対して相同な同定配列が活性であるかどうか、コンピュータを利用しても予測できなかった。当該技術分野でよく知られるように、細菌はそれらのプロファージ配列を変異させ得るので、そのため、対応するプロファージは増殖する活性を失うかもしれない。そのうえ、新たに発見したファージがコードするペプチドグリカンヒドロラーゼが実際に活性なタンパク質であったとしても、前記タンパク質がガードネレラの特定のペプチドグリカン層を酵素的に分解することができることはまだ実証されない。実際に、ガードネレラは、それがグラム不定種:それが真のグラム陰性種を定義する外膜を形成しない、という点で特別である。その細胞壁は、一般的に非常に薄く、かつ、10%以下のペプチドグリカン含有量しかない。よって、当業者は、エンドリシンタンパク質などのペプチドグリカン分解酵素が、ガードネレラの細菌細胞壁を効率的に溶解するできないと考えたであろう。
【0138】
14種類の同定エンドリシンEL1~EL14を、His-タグと共にクローン化し、E.コリで発現させ、そして参考例1に記載の方法を使用したシングルステップNi-NTAカラムによって精製した。起源ゲノムに対するエンドリシン名の割り当てを表1に示す。使用したガードネレラ菌株を表2に示す。
【表2】
精製エンドリシンの活性を試験するために、ガードネレラ懸濁液(表2を見る)の濁度変化を610-620nmで参考例2に記載の方法(そこでは、示したpHのHardy Broth中の95μlの細菌懸濁液を、好気性条件下、室温にて光度測定用キュベット内で5μlのエンドリシン溶液と混合した)を原則的に使用して計測した。濁度低減アッセイでは、生きた細胞の懸濁液の光散乱の減少(すなわち、濁度低減)を、分光光度計によりペプチドグリカンヒドロラーゼの活性をアッセイするのに使用できる。経時的な(数分)吸光度の低減を、加水分解反応速度を計算するのに使用できる。結果を、同じ期間にわたり同様に処理した「酵素未添加、バッファーのみ」対照調製物と比較する。このように、酵素調製物の比活性をΔOD/時間/μlリシンタンパク質として報告できる。
図4A~4Cに見られるように、濁度の低下は、バッファーに関するものよりエンドリシン処置群に関してはるかに顕著であり、そして酵素活性を示した。驚いたことに、その結果として、発明者らは、新たに発見したエンドリシンEL1、EL2、EL3、EL4、EL5、EL7、EL10、EL11及びEL12がガードネレラ細胞壁を溶解する能力を有する活性タンパク質であることを発見した。先に説明したとおり、細胞壁内の低いペプチドグリカン含有量のため、同定したエンドリシンなどのペプチドグリカン分解酵素が細菌細胞壁を効率的に溶解するできるという事実は、予測不可能な驚くべき発見であった。
【0139】
実施例4 - 人工的なドメイン交換エンドリシンを用いた最高活性ドメインの同定
【0140】
次に、異なるN末端酵素ドメインが異なる溶解作用を有し得るかどうか、及びB領域(リンカーと細胞壁結合ドメインを含む)が様々な菌株に対する特異性を媒介し得るかどうか場合を有するかどうか、を発明者らによって評価した。そのために、ドメイン交換エンドリシンを人工的に作り出した。
【0141】
4.1 - エンドリシン構築物
【0142】
ドメイン交換エンドリシンを人工的に作り出すために、触媒ドメインを含む、第一の天然型エンドリシンのN末端196残基を、リンカー領域及び2つの細胞壁結合ドメインを含む第二の天然型エンドリシンの110残基の完全なC末端領域に対して、ブロックとして交換した。ドメイン交換タンパク質を、以下の方法を実施することによって調製した。原型構築物EL1-14を、E.コリにコドン最適化した合成遺伝子としてGeneWizから注文した。これらの構築物を、NcoI及びNotI酵素の認識部位を使用した制限/連結アプローチにより、pETM14_ccdBベクター内にGeneWizによってクローン化した。
以下の表3に、使用したプライマーをまとめた。選択した10個の構築物のドメイン交換に関して、T7プロモーターを伴った各H-ドメインは、PhusionFlashポリメラーゼ(Thermo, F-548L)を使用して、一般的なフォワードプライマー(2番)と構築物特異的なリバースプライマー(3~12番)によって増幅した。同様に、各B領域を、構築物特異的な内部プライマー(13~21番)と、T7ターミネータを包含する一般的なリバースプライマー(1番)によって増幅した。すべてのプライマーがBsaI認識部位を担持する延長部を包含し、そして外側の末端をpETM14由来ベクター骨格pETMdestに適合させた。ドメイン間のオーバーハングを、リンカー配列の2つのアミノ酸GL内に配列「GGCT」を有するように設計した。その結果として、これらの2つのアミノ酸がこの実験の目的のためにドメイン間の正確な境界を表した。
よって、次に、増幅及びゲル精製されたドメイン(GeneJet Gel精製キット、Thermo, K0692)を、BsaI制限(BsaI-HFv2, NEB, R3733S)/連結(T4DNA Ligase, Thermo, EL0011)サイクル反応によってGoldenGateクローニングストラテジーを使用して90個の新しい発現構築物に組み合わせた。
形質転換目的のために、NEB10β E.コリ菌株を使用し(NEB, C3019)、そしてプラスミドをGeneGet Plasmid Miniprep Kit(Thermo, K0502)を使用して精製した。
【表3】
参照を容易にするために、人工的なエンドリシンのドメイン組み合わせは、N末端の触媒ドメインに関してはH-コード(以降、H-ドメインと称した)を用いて、及びC末端の細胞壁結合領域とリンカー領域を含む部分に関してB-コード(以降、B領域と称した)を用いて表した。例として、H2B10は天然型エンドリシンEL2からのN末端ドメインと、天然型エンドリシンEL10からのリンカー領域及びC末端の細胞壁結合領域とを有するドメイン交換エンドリシンを指す。言い換えれば、H2B10は、天然型エンドリシンEL2(配列番号2)の196個のN末端残基と、天然型エンドリシンEL10の110個のC末端残基から成るドメイン交換エンドリシンを指す。この例において、天然型エンドリシンEL10の110個のC末端残基に対応するB領域B10は、C末端からN末端の順に、C末端の細胞壁結合ドメイン「B10_C」(配列番号29)、N末端の細胞壁結合ドメイン「B10」(配列番号28)及びリンカー領域「L10」(NAGLNGYKNGGS)を含む。命名法と対応するアミノ酸配列を表7に詳細に示す。
その結果として、上記命名法に従って、天然型エンドリシン、例えばEL3は、互換的に、H3B3又はH3-L3-(B3_N)(B3_C)のいずれかで定義できる。同様に、遺伝子組み換えエンドリシン、例えばH2B10はまた、互換的に、H2-L10-(B10_N)(B10_C)とも定義できる。
当業者は、構成要素「Lx」、「(Bx_N)」及び「(Bx_C)」がまた他の実施形態で独立して交換されることもあるであろうことを理解するであろう。命名法を以下の表7にさらに示す。
【0143】
4.2 - アッセイパラメーターの最適化
【0144】
3つの潜在的に重要なパラメーター、すなわち、pH、嫌気性/微好気性/好気性条件、イミダゾールの有/無、に対する活性の依存を分析した。
評価に対する3つの基準を以下の理由に関して選択した。
- pH:本発明のエンドリシンの殺活性を、約7のpH値にて実施した実験を用いて首尾よく実証した。しかしながら、健常な膣のpHが約3.5であり、その一方で、BVの膣では、pHが約5.5及びさらに高値まで上昇する。そのため、エンドリシン活性のpH依存性を調査した。
- 酸素:文献では、ガードネレラは嫌気性又は微好気性として記載されている。そのため、実験のインキュベーション期間(通常5時間)にわたる嫌気性、微好気性又は好気性条件下で、より多くの無処理細胞が生き残ったかどうか調査した。
- イミダゾール:参考例1に記載の方法に従って、本発明のエンドリシンをワンステップNi-NTAカラムによって精製したが、そこでは、Ni-NTAマトリックスからエンドリシンを溶出するのに使用したバッファーはイミダゾールを含んでいた。そのため、サンプルを透析するさらなるステップがないとき、得られた溶出溶液は250mMのイミダゾールを含んでいる。その点で、ガードネレラに対するイミダゾールの影響を調査した。
第一に、異なるpH値にてイミダゾールを含む又は含まない培地中でのインキュベーションに対するG. バギナリスGv_9の生存の感受性を評価した(
図6を参照のこと)。5×10
7CFU/mlの細胞を、嫌気性条件下、37℃にて5時間にわたり、グラフ下に示した条件下でインキュベートした。次に、生存CFU/mlを定量的な平板培養によって測定した。
図6に示したとおり、pH6.0にて、中央値1×10
7及び1×10
6個の細胞が、それぞれイミダゾールなし及びイミダゾールありのインキュベーションで生き残った。pH7.0にて、中央値2×10
6及び3×10
4個の細胞だけが、それぞれイミダゾールなし及びイミダゾールありで生き残った。pH5.0における無処理対照では、1e7個の細胞がその手順を生き残ったが、その一方で、pH7におけるイミダゾール処理に関する生存の中央は3e4であり、すなわち、前者を3log下回った。そのため、G. バギナリスGv_9の生存は、特にpH>6.0でのイミダゾールの不存在、及び低pHのものに高度に依存している。
第二に、様々なpH値にてイミダゾールを含む対照に対する遺伝子組み換えエンドリシンH10B1を用いた処理に対するG. バギナリスGv_9の感受性を評価した(
図7を参照のこと)。5×10
7CFU/mlの細胞を、嫌気性条件下、37℃にて5時間にわたり、グラフ下に示した条件下でインキュベートした。次に、生存CFU/mlを定量的な平板培養によって測定した。イミダゾール対照を標識したカラムは、
図5のものと同じデータを示す。
図7で示したように、エンドリシンはpH5.0に至るまで高度に活性であり、そして、対照に対する相対的な減少さえも、2.5logの生存可能CFUの減少があり、この低pHにて非常に顕著であった。pH7.0にて、H10B1処理細胞と無処理細胞との間に1log10未満の生存の差があったが、その差はpH5.0において2log10ユニットであった。H10B1で処理していない細胞の生存は、イミダゾールの存在下、6.0より低いpH値にて増強されなかった。そのため、エンドリシンH10B1の活性は、高度にpHに依存している。好気性条件下で類似の実験を実施したとき、対照細胞の生存は、嫌気性条件と比較して、数log10ユニットまで低減した(データ未掲載)。
そのため、本発明のエンドリシンを用いた実験を実施するための最適化パラメーターが、pH5.0にて、嫌気性条件下であり、かつ、エンドリシン溶出液からイミダゾールを除去するステップを伴うものであると結論づけた。
【0145】
4.3 - 発現レベル
【0146】
表4は、すべてのエンドリシン構築物の濃度の概要を示す。イミダゾール除去後に0.2mg/mlを上回る濃度を有する各構築物を、希釈によって0.2mg/mlの濃度に調整した。低い濃度を有する構築物は現状のままとし、それらの活性を試験した。天然型エンドリシンEL6(表4に未掲載)は0.2mg/ml未満の濃度を有した。ほとんどの構築物が0.2mg/mlの閾値に入るので、H4、H11及びH12は低い溶解性及び発現レベルを与えると思われる。H1に関してもまた、いくつかの構築物が低濃度を有した。
【表4】
【0147】
4.4 - 最適化条件下における懸濁液中のエンドリシン活性によるガードネレラの4つの主な種の溶解に関する定量的評価
【0148】
91種類の構築物(天然型及びドメイン交換エンドリシン)に関するガードネレラの4つの主な種に対する溶解活性を、参考例2に記載の方法を使用して量的に評価した。簡単に言えば、90μlの5e7CFU/mlの示した菌株を、10μlのエンドリシンと共に嫌気性条件下、pH5.0にて5時間インキュベートした(可能であれば、濃度を0.2mg/mlに調整した、表4を参照のこと)。
結果を表5A~5Cと一緒に
図8A~8Dに示す。
図8A~8Dでは、対数的なY軸は生存細胞のカウントを示す。点線は、2μlの反応混合物の平板培養によって与えられる検出限界(LOD)を示す(500CFU/ml)。天然型エンドリシン(H1B1、H2B2、H3B3など)とH6B6を含めた、天然型10H-ドメインと天然型9B領域の各組み合わせを評価した。OD計測によって測定した場合、B6がそれに融合したすべてのH-ドメインを不活性にしたので、B-ドメインB6を有する他の構築物を試験しなかった(データ未掲載)。各構築物の活性を、4種類の主なガードネレラ種である狭義のG. バギナリス、G. レオポルジイ、G. ピオチイ、及びG. スウィドシンスキイ(swidsinkii)のそれぞれについて計測した。H-ドメインとB-領域によって構成された表5は、得られたCFUのlog10減少をまとめている。全条件を三連で計測した。エンドリシン対バッファーと共に嫌気性条件下、pH5.0にて5時間のインキュベーション後の生存を、定量的な平板培養によって計測した。値は、処理対無処置細胞に関して生き残っているCFUの比のlog10を示す。三連の測定値の平均を使用する。表5A及び5Bでは、高い負のlog10値、例えば、-6.7、-5.5、-4.8などが高い酵素活性に関連しており、それに対して、ゼロに近いlog10値又は正のlog10値であっても、低い酵素活性又は無酵素活性に関連している。例を挙げると、Gv_9に対する3つの対照処理測定値の平均CFUが1.0×10
7CFU/mlであり、及びH2B10を用いて処理した3つのサンプルの平均が2.5×10
3CFU/mlであった場合、そのとき、H2B10によるGv_9のCFU低減のlog10値は、log10(2×10
3/10
7)=-3.7であろう。逆に、-3.7の低減値は、処理サンプル対無処理対照における生存可能CFUの10
3.7倍(=5012倍)減少を意味する。不活性なエンドリシン、例えば、Gv_9に対するH4B3の場合、処理後のGv_9のCFUは、対照処理サンプルで計測したCFUと同一になるであろうし、2つのCFU値の比は1に等しくなるであろう。その結果、Gv_9に対するH4B3の低減値はlog10(1)=0.0になる。
【表5】
以下の表5Bは、表5Aと同じデータを示すが、しかし、4つのガードネレラ菌株にわたる各構築物のlog10活性の平均として表した。右側と最下部に、すべての天然型B領域(B6を除く)にわたるそれぞれの天然型H-ドメイン、及びそれぞれ、すべての天然型H-ドメインにわたる各天然型B領域(B6を除く)の平均値を、それぞれの天然型H-ドメインと天然型B-領域の活性ランクと共に示す。
【表6】
表5Cは、表5Bのデータに基づいて、すべてのエンドリシンに関する活性ランクを示す。
【表7】
表5Dは、使用した各ガードネレラ菌株の平均log10溶解を示す。試験したすべての構築物にわたるlog10活性に関して、平均値を計算した。
【表8】
表5A~5Cは、エンドリシンの活性がH-ドメイン/B領域の組み合わせ及びそれが試験される菌株に依存して高度に特異的であることを示す。各構築物を、4種類のガードネレラ菌株に対してアッセイした(表5Aを参照のこと)。平均すると、最も活性なH-ドメインは、B領域(B6を除く)にわたりCFUの3.1log10ユニットの平均低減を有するH2であり、H7、H10及びH5が続いた(表5Bを参照のこと)。B領域に関して、2.7log10ユニットの平均CFU低減で、B10が最も活性であり、B11、B12及びB3が続いた。
驚いたことに、かつ、意外なことに、発明者らは、いくつかの遺伝子組み換えエンドリシンが、特に試験した4種類のガードネレラ菌株のすべてにわたって見たときに、天然型エンドリシン(H1B1~H12B12)のいずれよりも強い活性を有することを発見した(
図8A~8Dを参照のこと)。特にH2B10、H2B11、及びH2B12はそれぞれ、活性ランク1、2、及び3を有し、それぞれが天然型エンドリシンのいずれよりも活性である(表5Cを参照のこと)。H7B3は全体的に見て、ランク4を有し(表5Cを参照のこと)、それはまた、実験に組み入れたいかなる他の天然型エンドリシンより活性である。実際には、10以内の天然型エンドリシンランキングに限ると、最高の活性はH10B10(ランク6)であり、次の最も活性な天然型エンドリシンはH3B3(ランク13)である。要約すれば、本開示による遺伝子組み換えエンドリシンは、天然型エンドリシンより有意に高い活性を示すであろう。
特定の理論に制限されるものではないが、本発明によるエンドリシンのドメイン交換によって観察されるガードネレラに対する殺活性の予想されなかった増加は、次のように説明できる。プロファージ上の天然型エンドリシンはダーウィン的進化プロセスを受け、そこで、プロファージ全体の増殖が最適化されている。しかしながら、エンドリシンの触媒能を同時に改善し、かつ、同時にガードネレラに限った範囲内の種にわたるその宿主範囲を広げることによるそれぞれのプロファージのより高い増殖につながる突然変異の確率は非常に低い。反対に、いくつかのガードネレラプロファージは、エンドリシンのN末端の触媒ドメインは最も高い活性に進化させなければならず、さらに、一部の他のプロファージは、ガードネレラ種にわたる最も広い活性のためにエンドリシンのC末端領域を最適化しなければならなかった。そのため、本発明のエンドリシンのうちの1つの高度に進化したN末端の触媒ドメインを、異なるプロファージに由来する異なるゲノムによってコードされた本発明の別のエンドリシンの高度に進化したC末端領域と組み合わせることによって、本発明の天然型エンドリシンよりもガードネレラ種に対してより高度に最適化された殺活性を有する遺伝子組み換えエンドリシンが達成できる。これは、例えば、
本発明の遺伝子組み換えエンドリシンH2B10、H2B11、H2B12、及びH7B3によって実現され、そしてそれはすべてが、天然型エンドリシンEL2又はいかなる他の天然型エンドリシンよりも高い殺活性を有し、かつ、すべてのガードネレラ種にわたる(
図8A~8D及び表5Aを参照のこと)。
そのうえ、ほとんどの構築物が、試験した他の3つの菌株よりGv_23(G. スウィドシンスキイ)に対してはるかに活性である(表5Aを参照のこと)。それぞれのガードネレラ菌株に対する(表5Dを参照のこと)すべての構築物にわたる平均活性は、Gv_23がエンドリシンに対して最も感受性が高く、Gv_9とGv_11がそれに続き、これに対して、Gv_17(G. ピオチイ)が最も低い感受性であることを確認する。感受性に関するこの順番は、エンドリシン構築物にわたってほとんどがこうした状況である。数log10ユニットの差で、多くの構築物に関して、Gv_23が最も高い感受性の菌株であるが、Gv_17がGv_9又はGv_11より感受性が高いときもある(例えば、H2B10に関して、全体的に見て最も活性なエンドリシン)。特定の理論によって縛られるものではないが、感受性の違いは、Gv_23のより弱い/より薄い/より接触しやすい細胞壁のような構造的欠損、又は試験したエンドリシンのGv_23に対するより強い酵素活性のいずれかによって説明できる。
さらに、溶液中のエンドリシンの濃度がアッセイにおけるそれらの活性に重要であると結論づけることができる。一般的に、表4で示した低濃度を有する構築物- 特にH-ドメインH4、H11及びH12(B領域にわたり難溶解性を与える)を有するもの、はまた、活性アッセイにおいて低い活性を有する。非常に低い発現レベルを有するにもかかわらず、比較的高い活性を有するH12B11のように、わずかに驚いた。
【0149】
4.5 - 活性パターン分析
【0150】
天然型H-ドメインの配列をアラインし、そして
図9の樹状図で示したように、活性パターンに関連するように比較した。最も活性なH-ドメインもまた、最も密接に互いに関連していると予想した。しかしながら、驚いたことに、最も活性なN末端ドメインであるH2は、最も活性が低いH6に対してほとんど相同である。次に最も活性が高いH-ドメインであるH7とH10もまた、互いに関して及びH2に関して予想以上に離れていた。4つの最も活性が高いH-ドメインであるH5は、最も密接にH7に関連する。遺伝子組み換えエンドリシンを最も活性にするB領域との組み合わせもまた、予測可能なパターンにつながらない。H2はB10、B11及びB12と組み合わせて最も活性である。しかしながら、二番目に最も活性なH-ドメインであるH7は、その最も近い相同体であるH5に関する場合のように、B3と組み合わせて最も活性になる。
また、
図10の樹状図で示したように、活性パターンに対して相同性を一致させるために、B領域をアラインした。表5A~5Cの分析の時点で最も活性が高いB領域は、B10、B11、B12、続いてB3であり、そしてそのすべてが、2log10ユニットを上回る平均CFU減少を有する。H-ドメインに見られたパターンとは対照的に、これらの4つの最も活性が高いB領域は、試験したB-領域の群内で4つの最も近い相同体である。興味深いことに、B5とB7領域は同一である(
図10を参照のこと)。
図8A~8Dに見られるように、最良の総合的な結果をH2B10、H2B11及びH2B12に関して得た。
実施例2で説明されるとおり、各天然型B領域は、2つのB-ドメイン、すなわち、N末端の細胞壁ドメインとC末端の細胞壁ドメイン、を含む。B領域内のそれぞれの天然型B-ドメインの配列もまた、
図11及び12で示したように、アラインし、そして比較した。B-ドメインの境界を、Interpro(Mitchell et al., 2019 Nucleic Acids Res. 47, D351-D360)を用いて配列を分析することによって、及び各B-領域内の2つの反復モチーフをアラインすることによって、同定できる。すべてのB-ドメインのC末端は保存配列(VNELL又はVNKLL)であり、それに対する相同体はタンパク質Cpl-7のCW_7モチーフのC末端(VNELL又はVNEIL)にも見ることができ、それによって、各B-領域の2つのB-ドメインの境界を定義する。例外として、B6には1つの短縮B-ドメインしかなく、そしてそれは、EL6の完全に不活性な理由である可能性が高い。
結論づけると、H-ドメインとB領域の特定の組み合わせが、重要であることが示され、そして、それぞれのH/B組み合わせが天然型エンドリシンと比較してより高い殺活性を有するエンドリシンにつながっていることは、驚くべき、かつ、予想外の発見であった。
【0151】
実施例5 - 有益なラクトバチルスに対する活性アッセイ
【0152】
健常な膣には主に3種のラクトバチルス:L. クリスパタス、L. ガセリ、及びL. ジェンセニイ、が生息している。これらは、乳酸を産生することによって、3.5~4,5の酸性pHを維持し、及びH
2O
2を産生することによって酸化環境を保護している。BVからの回復は、これらのラクトバチルスの膣での再増殖に関連するので、BVに対する医薬品は有利なことに、このプロセスを妨げてはならない。抗生物質は明らかに作用し、そしてそれは、ガードネレラ感染症及びBVを治療するための改良法及び組成物のための強い医療上の必要性が依然として存在する理由である。ガードネレラに対する本発明のエンドリシンの高度な活性を首尾よく実証した後に、発明者らは、それらのエンドリシンが、健常な膣中で3種類の最も頻出するラクトバチルス種の菌株を溶解できるかどうか調査した。実験を、嫌気性条件下、pH5.0にて参考例2に記載の方法を使用して実施した。
図13で示されているとおり、試験した遺伝子組み換えエンドリシンは、使用した3種の有益なラクトバチルス、すなわち、L. クリスパタスと、L. ガセリ及びL. ジェンセニイ、に対して少しの殺活性も示さない。本発明のエンドリシンは、ガードネレラに対して高い殺活性を示すが、最も頻出する有益なラクトバチルスに対して効果がない。これらの結果は、そのため、本発明のエンドリシンの属選択的活性、及びBVに対する革新的な医薬品としてのそれらの薬物候補の地位、を確認する。その点で、本発明のエンドリシンを用いてBVを治療することは、抗生物質のメトロニダゾールやクリンダマイシンを用いた治療などの現在利用可能な治療に対してはるかに有利である。
【0153】
実施例6 - ガードネレラ菌株の懸濁液における増殖に対する標準的なケア抗生物質メトロニダゾールやクリンダマイシンに関する活性分析
【0154】
BVの治療における主な欠陥の1つは、多くの女性における高い再発率であり、そしてそれは、抗生物質の反復投与と微生物叢の不安定化及び他の副作用につながる。次に、エンドリシン活性分析にも使用した菌株のガードネレラ細胞に対する最小増殖阻害濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)を、参考例6及び7に記載の方法を使用して計測した。簡単に言えば、計測プロトコルは、国際規格から大きく編集されなければならなかったが、それは、ガードネレラに関するMIC及びMBC計測に合っていない。変更させる主なパラメーターは、増殖培地(ガードネレラは、MIC計測に通常使用されるMueller-Hinton Broth中で増殖しない)、嫌気性条件、インキュベーション時間、及び実験の第一ラウンドにおける細菌の開始濃度、であった。主に、BV患者の膣中でもまた細胞が非常に濃縮されており、かつ、抗生物質の効果がエンドリシン活性分析に使用したものにより匹敵する細胞密度にて計測されなければならないという理由で、開始濃度を、標準の5×10
5CFU/mlから2.5×10
7CFU/mlに変更した。ガードネレラ菌株の懸濁液における増殖に対するメトロニダゾール(Gatt-Kollerから入手)とクリンダマイシン(Ratiopharmから入手)の効果は評価した。原則的に、2.5×10
7CFU/mlのガードネレラ懸濁液を、示した濃度の抗生物質と共にインキュベートし、そして、嫌気性条件下で37℃にて48時間インキュベートした。MICを、OD計測によって48時間後に増殖が検出できない抗生物質の最小濃度と定義した。OD(610)を実験の開始と終了の時点で計測した。実験の終了時に、2μlのそれぞれの反応混合物を、寒天培地上にスポットして、MBCを測定した。表6Aは、
図14に記載の実験の結果をまとめている。抵抗性(R)を、メトロニダゾールに関して>=32μg/ml及びクリンダマイシンに関して>8mg/mlと定義した。感受性(S)を、国際規格に従って、メトロニダゾールに関して<=8μg/ml及びクリンダマイシンに関して<=2μg/mlと定義した。
【表9】
【表10】
図14に示した結果によると、すべてのガードネレラ菌株がメトロニダゾール及びクリンダマイシンの両方に対して低い感受性を有する。MIC及びMBCを計測した条件は標準より厳しい。例えば、通常、MBC
90、すなわち、定義した時間内に90%の細胞を殺滅する抗生物質濃度、を計測するが、それに対して、MBCを、2.5×10
7CFU/mlの懸濁液を根絶する最小濃度として本願において定義した。それにもかかわらず、これらの条件は、BV患者の膣中で見られるものに、より近い。これらの条件下で計測した高いMIC及びMBC値は、BVの高い再発率を説明することができる。対照的に、アッセイしたエンドリシンは、それらが細菌細胞の完全な破壊に至るので、定義上殺菌性である。そのため、これらの結果は、本発明のエンドリシンがBVの治療において抗生物質より優れていることを裏づけている。
いくつかの実験パラメーター(i) 1×10
5~1×10
6の開始細胞数はここでは、CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)の基準に従い、(ii)塩酸クリンダマイシン粉末(Sigma Aldrich, cat. no. C5269)を使用し、(iii) Hardyブロスの代わりにNYC-IIIブロス、及び(iv) 384ウェルプレートの代わりに96ウェルプレート、を変更した、MIC及びMBC実験の第二のラウンドを実施した。
図15に示し、かつ、表6Bにまとめたように、すべてのガードネレラ菌株が、依然としてメトロニダゾールに対して非常に低いMICを有しているが(8~128μg/ml)、その一方で、-
図14及び表6Aに示したクリンダマイシンとは対照的に - クリンダマイシン塩酸塩はここでは、低濃度(MIC≦1μg/ml)にて阻害性及び殺菌性であった。
実施例7 - 様々なガードネレラ菌株の懸濁液中の増殖に対するドメイン交換エンドリシンの代表(H2B10)に関する活性アッセイ
1×10
5~1×10
6個のエンドリシンH2B10細胞懸濁液を用いたMIC及びMBCの分析を使用した。H2B10は、ガードネレラ細胞がエンドリシンに対して高感受性であることを示す低いμg/ml範囲(0.5~4 μg/ml)のMICを示した(
図16、表7)。MBCを計測する条件は標準より厳しい。例えば、通常、MBC
90、すなわち、定義した時間内に90%の細胞を殺滅する抗生物質濃度、を計測するが、それに対して、MBCを、少なくとも99.5%まで開始細胞数を削減する用量と本願において定義した。本明細書中で主張したエンドリシンの代表としてのH2B10は、標準ケア抗生物質であるメトロニダゾールを上回る非常に優れたMIC及びMBCを示すが、メトロニダゾールは、抵抗性形成により多くのガードネレラ菌株に対して効果がない。しかしながら、クリンダマイシンは矛盾した結果をもたらした。国際規格によると、4種類のガードネレラ菌株すべてがクリンダマイシン(Ratiopharmから入手した(
図14))に対して抵抗性であることが想定されたが(MIC>8μg/ml)、その一方で、クリンダマイシン塩酸塩(Sigma Aldrich)は、濃度≦1μg/mlにて既に殺菌効果により非常に効果的であった(
図16)。一般に、抗生物質が、BVの顕著な特徴であるガードネレラバイオフィルムを不十分にしか根絶しないことが知られており、そしてそれが、報告されたBVの非常に高い再発率の疑わしい理由の1つである。残りの生存可能バイオフィルムを放置するにもかかわらず、抗生物質は、腟の微生物叢の有益な生物体の一部を一掃し、その後、他の病原菌、例えば、真菌、に生態的地位を開放する。よって、ガードネレラ属の細菌細胞を選択的に根絶し、かつ、有益なラクトバチルスに害を及ぼすことなくバイオフィルムを恐らく根絶すると思われる、エンドリシンベースの治療がBVの標準的な抗生物質治療法より優れていることが推定される。
【表11】
【0155】
参考例1 - エンドリシンのクローニング、発現及び精製
材料:
・96ウェルMultiscreen HTS Durapore 96ウェルFilterplatten、PS(Labshop cat. no.44.MSGVS22)
・Sephadex G‐25を用いたPD MiniTrap脱塩カラム(GE Lifescience, cat. no.28918007)
・Slide-A-Lyzer(商標)MINI Dialysis Device、10K MWCO、2mL(Thermo Scientific, cat. no.88404)
・Fastbreak試薬(Promega, cat. no.V8571)
・溶解バッファー:50mMのホスファートpH6、150mMのNaCl、20mMのイミダゾール、1mMのTCEP、1x FastBreak, Benzonase
・洗浄バッファーI:50mMのホスファートpH6、150mMのNaCl、20mMのイミダゾール、1mMのTCEP(1.5ml)
・洗浄バッファーII:50mMのホスファートpH6、150mMのNaCl、40mMのイミダゾール、1mMのTCEP(1.5ml)
・溶出バッファー:50mMのホスファートpH6、150mMのNaCl、250mMのイミダゾール、1mMのTCEP(1.1ml)
方法:
発現構築物をE.コリ菌株Bl21(DE3)に形質転換し、そして、適切な抗生物質を使用して選択した。2mlの培養物(TB+乳糖、25℃、O/N)からの細胞を、1.5mlの溶解バッファーで再懸濁し、そしてFastBreak試薬(Promega)によって溶解した。細胞内の可溶性画分を4℃、15000gにて30分間の遠心分離によって単離した。可溶性タンパク質画分を、100μLのNickel親和性マトリックス上に添加し、それぞれ15カラム体積(CV)の洗浄バッファーI及びIIで洗浄し、そして10CVの溶出バッファーで溶出した。次に、脱塩カラムを使用して、イミダゾールを取り除くために、溶出液バッファーを20mMのホスファートpH6.0、150mMのNaClと交換するであろう。溶出(又は適宜バッファー交換)後に、精製タンパク質の濃度を0.2mg/mlに調整し、次に、その溶液を、96ウェルフィルタープレートを使用して滅菌濾過した。
【0156】
参考例2 - 細菌懸濁液における活性アッセイ
材料:
1. Hardyブロス、121℃にて20分間オートクレーブ処理:
・12.0gのカゼインの膵臓消化物(SigmaAldrich, cat. no.70172-100G)
・10.0gのプロテオースペプトン(SigmaAldrich, cat. no.82450-100G)
・5.0gの動物組織のペプシン消化物(SigmaAldrich, cat. no.70174-100G)
・5.0gの塩化ナトリウム(CarlRoth, cat. no.3957.1)
・3.0gの牛肉エキス(SigmaAldrich, cat. no.B4888-50G)
・3.0gの酵母エキス(SigmaAldrich, cat. no.Y1625-250G)
・1.0gの可溶性デンプン(Sigma Aldrich, cat. no.S9765-250G)
・1リットルまでの脱イオンH2O(Millipore RiOs Essential16を備えたPhagoMed Labで製造)
2. Hardyブロス寒天培地、121℃にて20分間オートクレーブ処理:Hardyブロスと同じであるが、15gのAgar Bacteriogical(OXOID Cat#LP0011)を含む
3. Hardyブロス上層寒天培地、121℃にて20分間オートクレーブ処理:Hardyブロスと同じであるが、7gのAgar Bacteriogical(OXOID Cat#LP0011)を含む
4. NYC-III 培地、pH5.0、121℃にて20分間オートクレーブ処理し、その後、ウマ血清を添加(NYC-III-HS-5.0)
・12gのHEPES(Sigma Life Science, cat. no.H4034-100G)
・7.5gのプロテオースペプトンNo.3(BD, cat. no.211693)
・1.9gの酵母エキス(Sigma Aldrich, cat. no.Y1625-250G)
・2.5gの塩化ナトリウム(Sigma Aldrich, cat. no.S9888-1kg-M)
・2.5gのグルコース(MW180.16g/mol)(Sigma Aldrich, cat. no.G6152-1KG)
・450mlの総量までの脱イオン水
・50mlのウマ血清(HS)、熱不活化済100ml(Thermo Fisher Scientific, cat. no.26050070)、オートクレーブ後に添加
5. 一般的な材料:
・ガードネレラ用のBD Chocolate寒天プレート(BD, cat. no.254060)
・ラクトバチルス用のBD Schaedler/ 5%ヒツジ血プレート(BD, cat. no.254042)
・Isovitalex(BD, cat. no.211876)
・Hardyブロス+Isovitalex(上記を参照)、示したpHに調整
・Hardy寒天培地+Isovitalex(上記を参照)
・Hardy上層寒天培地+Isovitalex(上記を参照)
・96-U-ウェルプレート(Sigma Aldrich, cat. no.M2311-100EA)
・蓋付96平底プレート(Labshop, cat. no.44.781662)
・Greiner CELLSTAR(登録商標)384ウェルプレート(Sigma-Aldrich, cat. no.M1937-32EA)
・Anaerogenサシェ剤(Sigma-Aldrich, cat. no.68061-10SACHETS-F)
・嫌気性生物インジケータ試験(Sigma-Aldrich, cat. no.59886-1PAK-F)
・嫌気瓶(Sigma-Aldrich, cat. no.28029-1EA F)又はゴムガスケットで密封可能なプラスチック製ランチボックス、現地の家電量販店で購入
6. 菌株:
ガードネレラ菌株:
・Gv_1:UGent09.07
・Gv_8:UGent25.49
・Gv_9:ATCC14018
・Gv_10:UGent06.41
・Gv_11:UGent09.48
・Gv_17:UGent18.01
・Gv_23:GS10234(FC2)
ラクトバチルス菌株:
・L. ジェンセニイPB2003-013-T2-2
・L. ガセリ020566
・L. クリスパタスLAB117
方法:
ガードネレラ細胞を、Chocolate寒天プレート(Beckton Dickinson)上で平板培養し、そして嫌気性条件下で37℃にて48時間インキュベートすることによって、冷凍ストックから回復した。ラクトバチルスに関しては、BD Schaedler/5%ヒツジ血寒天プレートを代わりに使用した。コロニーをプレートから掻き取り、示したpHのHardyブロス又はNYC-III-HS-5.0で再懸濁し、そして該懸濁液を、0.1のOD(示したとおり610nm又は620nm)に調整した。それぞれ610nm又は620nmフィルターを備えた2台のTecan Microplateリーダーを実験で互換的に使用したことに注意しなければならない。実験に関してまったく違いがなかったが、使用した適確な波長を各例で指定した。別段の記述がない限り、384ウェルプレート内で、様々な種/エンドリシン組み合わせに関して、90μlの細胞懸濁液を10μlのエンドリシン溶液と混合した。OD(示したとおり610~620nm)を、Tecan F200 Microplateリーダーにより、2つの測定点として又は連続運動として、反応の開始時点と終了時点で計測した。反応物を、示した嫌気性、微好気性又は好気性条件下、37℃にて5時間(又は示した他の時間)インキュベートした。嫌気性条件は、その中で嫌気性サシェ剤を用いて細菌をインキュベートしたコンテナ(Sigma-Aldrich嫌気瓶又は密封可能なランチボックス)から酸素を完全に抜き取ることを意図し、そして、酸素の欠乏を該コンテナ内の嫌気度指示薬を用いて確認した。微好気性状態を示した場合、キャンドル-イン-ア-ジャー法を使用した(適切な密封可能コンテナ内でティーキャンドルに火をつけ、そしてそれが、炎が消えるまでコンテナ内の酸素濃度を低下させた)。次に、96-U-ウェルボトムプレートを使用して5ステップで(10-1から10-5まで)それぞれのウェルを希釈し、そして、生き残っているCFUを検出及び定量化するために、それぞれの反応混合物の2μlのそれぞれの希釈物を、それぞれガードネレラ及びラクトバチルスに関してBD Chocolate寒天プレート又はBD Schaedler/5%ヒツジ血寒天プレート上で平板培養する。検出プレートを嫌気性条件下で37℃にて48時間インキュベートした。
【0157】
参考例6及び7 - MIC及びMBC計測
材料:
一般的な材料:
・メトロニダゾール(Gatt-Koller, Metronidazolum mikronisiert, 10g, 606293914)
・クリンダマイシン(Ratiopharm、300mg/2ml ampulles 5x)
・クリンダマイシン塩酸塩(Sigma Aldrich、10mg, cat. no.C5269)
・MESバッファー(50mMのMES、100mMのNaCl、8mMのMgSO
4、pH=5.5)中のエンドリシンH2B10 [530μg/ml]
・ガードネレラ用のBD Chocolate寒天プレート(BD, cat. no.254060)
・ラクトバチルス用のBD Schaedler/ 5%ヒツジ血プレート(BD, cat. no.254042)
・Isovitalex(BD, cat. no.211876)
・Hardyブロス+Isovitalex(上記を参照)、示したpHに調整
・NYC III+HSブロス、pH5.5 NYC-III-HS寒天プレート:先に記載したNYC-III+HS培地であるが、オートクレーブ前に1.5%の寒天を添加
・Hardy寒天培地+Isovitalex(上記を参照)
・Hardy上層寒天培地+Isovitalex(上記を参照)
・96-U-ウェルプレート(Sigma Aldrich, cat. no.M2311-100EA)
・蓋付96平底プレート(Labshop, cat. no.44.781662)
・Greiner CELLSTAR(登録商標)384ウェルプレート(Sigma-Aldrich, cat. no.M1937-32EA)
・Anaerogenサシェ剤(Sigma-Aldrich, cat. no.68061-10SACHETS-F)
・嫌気性生物インジケータ試験(Sigma-Aldrich, cat. no.59886-1PAK-F)
・嫌気瓶(Sigma-Aldrich, cat. no.28029-1EA F)又はゴムガスケットで密封可能なプラスチック製ランチボックス、現地の家電量販店で購入
方法:
細菌を、冷凍ストックからBD Choc寒天プレート(ガードネレラ)上で平板培養し、そして嫌気性条件下で37℃にて48時間インキュベートした。コロニーをプレートから掻き取り、Hardyブロス又はNYC-III-HS-pH5.0で再懸濁し、そして該懸濁液を、0.05のOD(示したとおり610nm又は620nm)に調整した。それぞれ610nm又は620nmフィルターを備えた2台のTecan Microplateリーダーを実験で互換的に使用したことに注意しなければならない。実験に関してまったく違いがなかったが、使用した適確な波長を各例で指定した。抗生物質を、それぞれ必要な終濃度の20×原液として調製した。95μlの細胞懸濁液を、384ウェルプレート内で5μlの抗生物質希釈物と混合した。反応の開始時点でOD(示したとおり610~620)を計測し、次に、プレートを嫌気性条件下で37℃にて48時間インキュベートした。その後、MIC測定のためにOD(示したとおり610~620)を再び計測し、そこでは、MICを、OD (示したとおり610~620)が実験の開始時点で計測したレベルを上回らない抗生物質の最低濃度と定義した。ODを計測した後に、2μlのそれぞれのウェルをNYC-III+HS寒天プレート上にスポットした。次に、プレートを嫌気性条件下で37℃にてさらに48時間インキュベートした。インキュベーション後に、各スポットにおける細胞増殖を評価した、そして、MBCを、細菌がプレート上でまったく増殖しない抗生物質の最低濃度と定義した。実験を、各条件について三連で実施した。
抗生物質を用いたMIC及びMBC実験の第二のラウンドでは、ガードネレラ細胞懸濁液を、McFarland基準0.5(約OD(610)0.07)に調整し、次に、CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)基準に従って1:75希釈した。抗生物質をCLSI基準に従って調製し、そして、50μlの細胞懸濁液を96ウェルプレート内で50μlの抗生物質と混合した。さもなければ、MIC及びMBCを先に記載したように測定した。
ドメイン交換エンドリシンH2B10のMIC及びMBC測定のために、50μlのガードネレラ細胞懸濁液を96ウェルプレート内で50μlのH2B10含有溶液(1:1に連続希釈した)と混合した。反応の開始時点でOD610を計測し、次に、プレートを嫌気性条件下で37℃にて48時間インキュベートした。その後、MIC測定のためにOD610を再び計測し、そこでは、MICを、ODが実験の開始時点で計測したレベルを上回らないか又はわずかしか上回らないH2B10の最低濃度と定義した。
【表12】
【0158】
配列表
配列番号1
>H1
>196 aa
MSKKGIDVSEWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGCKDKWFEQNYRKAKTAGLDVGAYWYSYANSGFEAAEEAQSLMNMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRAFCDSLITSFCNKLEACGYYAGFYTSLSTANNLVSAHVRNRYALWIAQWNTHCNYQGSYGLWQYSSNGSVPGVAGRVDMDYAYVDYPSIIK
配列番号2
>H2
>196 aa
MSKRGIDVSEWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGCKDKWFEQNYRKAKTCGLDVGAYWYSYANSGFEAAEEAQSCVNMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRAFCDSLITGFCNKLESCGYYAGFYTSLSTANNLVSAHVRNRYALWIAQWNTHCSYQGSYGLWQYSSSGSVPGVAGRVDMDYAYVDYPSIIK
配列番号3
>H3
>196aa
MSKKGIDVSVWQGDIDFNSVKASGVEFVIIRAGYGIGHKDKWFEENYRKAKTAGLDVGSYWYSYASSAGEASEEAQSCVNILSGKSFEYPIYFDLEEKSQLNRGRDFCDSLITSFCNKLEACGYYAGFYTSLSVANNLVSSHVRDRYALWIAQWNTHCSYQGSYGLWQYSSSGSVNGIAGRVDMDYAYVDYPSVIK
配列番号4
>H4
>196aa
MSKKGIDVSEWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGCKDKWFEQNYRKAKTCGLDVGAYWYSYANSGFEAAEEAQSCVNMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRAFCDSLITSFCSKLETYGYYAGFYTSLSVVNNLVSAHVRDRYALWIAQWNTHCSYQGSYGLWQYSSSGSVPGVAGRVDMDYAYVDYPSIIK
配列番号5
>H5
>196 aa
MSKKGIDVSEWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGCKDKWFEQNYRKAKTAGLDVGAYWYSYANSSSEAAEEAQSCANMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRAFCDSLITGFCSKLEACGYYAGFYTSLSTANNLVSAHVRNRYALWIAQWNTHCSYQGSYGLWQYSSNGSVPGVAGRVDMDYAYKDYPSIIK
配列番号6
>H6
>196 aa
MSKKGIDVSVWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGCKDKWFEQNYRKAKTCGLDVGAYWYSYANSGFEAAEEAQSCVNMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRAFCDSLITSFCSKLESCGYYAGFYTSLSTANNLVSAHVRNRYALWIAQWNTHCDYQGSYGLWQYSSSGSVPGVAGRVDMDYAYKNYPSIIK
配列番号7
>H7
>196aa
MSKKGIDVSEWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGCKDKWFEQNYRKAKTAGLDVGAYWYSYANSASEAAEEAQSCANMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRAFCDSLITSFCSKLETYGYYAGFYTSLSTANNLVSSHVRNRYALWIAQWNTHCSYQGSYGLWQYSSSGSVPGVAGRVDMDYAYKDYPSIIK
配列番号8
>EL8
>306 aa
MSKKGIDVSEWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGCKDKWFEQNYRKAKTAGLDVGAYWYSYANSSSEAAEEAQSCVNMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRAFCDSLITSFCSKLETYGYYAGFYTSLSTANNLVSSHVRNRYALWIAQWNTHCSYQGSYGLWQYSSNGSVPGVAGRVDMDYAYVDYPSIIKNAGLNGYKNGGSYTAPQTSSIDDVAREVINGAWGNGNERKQRLTQAGYDYTSVQNKVNKLLGVKACRKSVDELAREVIRGTWGNGNERKNRLTQAGYDYDTVQKRVNELL
配列番号9
>EL9
>251 aa
MSKKGIDVSEWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGCKDKWFEQNYRKAKTCGLDVGAYWYSYANSGFEAAEEAQSCVNMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRVFCDSLITSFCNKLEACGYYAGFYTSLSTANNLVSSHVRNRYALWIAQWNTHCDYQGSYGLWQYSSSGSVPGVAGRVDMDYAYVDYPSIIKNAGLNGCKNGGSDQAARTSSIDEVAREVINGAWGNGSTRKQRLTSAGYDYASVAK
配列番号10
>H10
>196aa
MSKRGIDVSVWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGHKDKWFEENYRKAKTVGLDVGAYWYSYASSAGEASEEAQSCVNILSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRDFCDSLITSFCNKLEACGYYAGFYTSLSVANNLVSSHVRDRYALWIAQWNTHCSYQGSYGLWQYSSSGSVNGIAGRVDMDYAYVDYPSVIK
配列番号11
>H11
>196aa
MSKRGIDVSVWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGHKDKWFEQNYRKAKTTGLDVGAYWYSYASSAGEAAEEAQSCVNILSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRDFCDSLITSFCNKLETYGYYAGFYTSLSVANNLVSSHVRDRYALWIAQWNTHCDYQGSYGLWQYSSSGSVDGIAGRVDMDYTYVDYPSVIK
配列番号12
>H12
>196 aa
MSKKGIDVSVWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGHKDKWFEENYRKAKTAGLDVGSYWYSYASSAGEVALEAQSCVNILSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRDFCDSLITSFCNKLEACGYYAGFYTSLSVANNLVSSHVRDRYALWIAQWNTHCSYQGSYGLWQYSSSGSVNGIAGRVDMDYAYVDYPSVIK
配列番号13
>EL13
>306 aa
MSKKGIDVSVWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIECKDKWFEQNYRKAKTAGLDVGAYWYSYANSGFEAAEEAQSCVNMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRAFCDSLITSFCNKLESCGYYAGFYTSLSTANNLVPAHVRNRYALWIAQWNTHCDYQGSYGLWQYSSSGSVPGVAGRVDMDYAYVDYPSIIKNAGLNGYKNGESHQATRTTSIDEVAREVINGAWGNGNERKQRLTQAGYDYASVQNKVNELLGVKACRKSVDELAREVIRGTWGNGNERKNRLTSAGYDYDTVQKRVNELL
配列番号14
>EL14
>306 aa
MSKKGIDVSVWQGDIDFNAVKASGVEFVIIRAGYGIGCKDKWFEQNYRKAKTCGLDVGAYWYSYANSGFEAAEEAQSCVNMLSGKSFEYPVYFDLEEKSQLNRGRAFCDSLITSFCNKLEACGYYAGFYTSLSTANNLVSAHVRNRYALWIAQWNTHCSYQGSYGLWQYSSSGSVPGVAGRVDMDYAYVDYPSIIKNAGLNGYKNGESHQATRTTSIDEVAREVINGAWGNGNERKQRLTSAGYDYASVQNKVNELLGVKACRKSVDELAREVIRGAWGNGSTRKQRLTSAGYDYDTVQKRVNELL
配列番号15
>B1_N
>49 aa
DQAARTSSIDEVAREVINGAWGNGSTRKQRLTSAGYDYASVQNKVNELL
配列番号16
>B1_C
>49 aa
GVKACRKSVDELAREVIRGAWGNGSTRKQRLAQAGYDYDTVQKRVNELL
配列番号17
>B2_N
>49 aa
DQAARTSSIDEVAREVINGAWGNGNERKQRLTSAGYDYASVQNKVNELL
配列番号18
>B2_C
>49 aa
GVKACRKSVDEIAREVIRGTWGNGSTRKQRLTQAGYDYDTVQKRVNELL
配列番号19
>B3_N
>49 aa
YTAPQTSSIDEVAREVINGDWGNGNDRKNRLISAGYDYASVQNKVNELL
配列番号20
>B3_C
>49 aa
GVKAYRKSVDELAREVIRGTWGNGSMRKHRLTQAGYDYDAVQKRVNELL
配列番号21
>B4_N
>49 aa
DQATRTSSIDEVAREVINGAWGNGNERKQRLTSAGYDYASVQNKVNKLL
配列番号22
>B4_C
>49 aa
GVKAYRKSVDELAREVIRGTWGNGNERKQRLAQAGYDYDTVQKRVNELL
配列番号23
>B5_N
>49 aa
DQAARTSSIDEVAREVINGAWGNGNERKQRLTQAGYDYTSVQNKVNKLL
配列番号24
>B5_C
>49 aa
GVKACRKSVDELAREVIRGTWGNGNERKNRLTQAGYDYDTVQKRVNELL
配列番号25
>B6_N
>43 aa
NQAARTSSIDDVAREVINGAWGNGNERKQRLTQAGYDYASVAK
配列番号26
>B7_N
>49 aa
DQAARTSSIDEVAREVINGAWGNGNERKQRLTQAGYDYTSVQNKVNKLL
配列番号27
>B7_C
>49 aa
GVKACRKSVDELAREVIRGTWGNGNERKNRLTQAGYDYDTVQKRVNELL
配列番号28
>B10_N
>49 aa
YTAPQISSIDEVAREVINGDWGNGNERKQRLTSAGYDYASVQNKVNELL
配列番号29
>B10_C
>49 aa
GVKAYRKSVDELAREVIRGTWGNGSTRKQRLTQAGYDYNAVQKRVNELL
配列番号30
>B11_N
>49 aa
YTAPQTSSIDEVAREVINGDWGNGNERKNRLTSAGYDYTSVQNKVNELL
配列番号31
>B11_C
>49 aa
GVKAYRKSVDELAREVIRGTWGNGSTRKQRLTQAGYDYDAVQKRVNELL
配列番号32
>B12_N
>49 aa
YTAPQTSSIDEVAREVINGDWGNGIERKNRLTSAGYDYTSVQNKVNELL
配列番号33
>B12_C
>49 aa
GVKAYRKSVDELAREVIRGTWGNGKTRKQRLTQAGYDYNAVQKRVNELL
【配列表】
【国際調査報告】