(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】OX40に特異的な二環式ペプチドリガンド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/00 20060101AFI20220706BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20220706BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220706BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220706BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
C07K7/00 ZNA
C07K14/00
A61K47/64
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566259
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 GB2020051144
(87)【国際公開番号】W WO2020225577
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス キーン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン マクドネル
(72)【発明者】
【氏名】トム リ ステファン
(72)【発明者】
【氏名】リューホン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン ハリソン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター パーク
(72)【発明者】
【氏名】マイケル スカイナー
(72)【発明者】
【氏名】ハーベイ チェ
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4H045AA10
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA31
4H045BA51
4H045EA28
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、2以上のペプチドループがスキャフォールドへの取付点の間に内在するように、分子スキャフォールドに共有結合しているポリペプチドに関する。特に、本発明は、OX40に結合するペプチドを記載している。本発明はまた、2以上のペプチドループがスキャフォールドへの取付点の間に内在するように分子スキャフォールドに共有結合している、OX40の機能的アゴニストであるポリペプチドの多量体結合複合体に関する。本発明は、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、該ペプチド及び複合体を含む薬物コンジュゲート、該ペプチドリガンド、複合体、及び薬物コンジュゲートを含む医薬組成物、並びにOX40によって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療における該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートの使用も含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、OX40に特異的なペプチドリガンド。
【請求項2】
前記反応基がシステイン残基を含む、請求項1記載のペプチドリガンド。
【請求項3】
前記ループ配列が、2、3、4、5、6、7、又は8つのアミノ酸を含む、請求項1又は請求項2のペプチドリガンド。
【請求項4】
前記ループ配列が、その第一のものが2つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化1】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号12)-A(本明細書において、BCY10375と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項5】
前記ループ配列が、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化2】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号1)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10551と称される);
A-(配列番号1)-A(本明細書において、BCY10371と称される);
A-(配列番号13)-A(本明細書において、BCY10364と称される);
A-(配列番号14)-A(本明細書において、BCY10365と称される);
A-(配列番号15)-A(本明細書において、BCY10366と称される);
A-(配列番号16)-A(本明細書において、BCY10367と称される);
A-(配列番号17)-A(本明細書において、BCY10368と称される);
A-(配列番号18)-A(本明細書において、BCY10369と称される);
A-(配列番号19)-A(本明細書において、BCY10374と称される);
A-(配列番号20)-A(本明細書において、BCY10376と称される);
A-(配列番号21)-A(本明細書において、BCY10737と称される);
A-(配列番号22)-A(本明細書において、BCY10738と称される);
A-(配列番号23)-A(本明細書において、BCY10739と称される);
A-(配列番号24)-A(本明細書において、BCY10740と称される);
A-(配列番号25)-A(本明細書において、BCY10741と称される);
A-(配列番号26)-A(本明細書において、BCY10742と称される);
A-(配列番号27)-A(本明細書において、BCY10380と称される);
A-(配列番号28)-A(本明細書において、BCY10370と称される);
A-(配列番号29)-A(本明細書において、BCY10372と称される);
A-(配列番号30)-A(本明細書において、BCY10373と称される);及び
A-(配列番号31)-A(本明細書において、BCY10379と称される);
例えば:
A-(配列番号1)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10551と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項6】
前記ループ配列が、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが8つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化3】
例えば、
【化4】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号3)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10552と称される);
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号3)-A(本明細書において、BCY10479と称される);
A-(配列番号3)-A(本明細書において、BCY10378と称される);
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号4)-A(本明細書において、BCY11371と称される);
A-(配列番号4)-A(本明細書において、BCY10743と称される)、
A-(配列番号32)-A(本明細書において、BCY10377と称される);及び
A-(配列番号33)-A(本明細書において、BCY10744と称される)、特に:
A-(配列番号3)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10552と称される);
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号3)-A(本明細書において、BCY10479と称される);及び
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号4)-A(本明細書において、BCY11371と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項7】
前記ループ配列が、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化5】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号34)-A(本明細書において、BCY10343と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項8】
前記ループ配列が、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが6つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化6】
例えば、
【化7】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号6)-A(本明細書において、BCY10482と称される);
A-(配列番号6)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10549と称される);
A-(配列番号6)-A-K(Pya)(本明細書において、BCY11607と称される);
Ac-A-(配列番号6)-A-K(Pya)(以後、BCY12708と称される);
A-(配列番号6)-A(本明細書において、BCY10351と称される);
A-(配列番号7)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY11501と称される);及び
A-(配列番号7)-A(本明細書において、BCY10729と称される)
例えば:
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号6)-A(本明細書において、BCY10482と称される);
A-(配列番号6)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10549と称される);
A-(配列番号6)-A-K(Pya)(本明細書において、BCY11607と称される);
A-(配列番号7)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY11501と称される);
A-(配列番号35)-A(本明細書において、BCY10350と称される);
A-(配列番号36)-A(本明細書において、BCY10352と称される);
A-(配列番号37)-A(本明細書において、BCY10353と称される);
A-(配列番号38)-A(本明細書において、BCY10354と称される);
A-(配列番号39)-A(本明細書において、BCY10730と称される);及び
A-(配列番号40)-A(本明細書において、BCY10731と称される);
(ここで、Pyaは、4-ペンチノイル部分を表す)、特に:
A-(配列番号6)-A-K(Pya)(本明細書において、BCY11607と称される);及び
Ac-A-(配列番号6)-A-K(Pya)(以後、BCY12708と称される);
(ここで、Pyaは、4-ペンチノイル部分を表す)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項9】
前記ループ配列が、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが8つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化8】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号41)-A(本明細書において、BCY10339と称される);
A-(配列番号42)-A(本明細書において、BCY10340と称される);
A-(配列番号43)-A(本明細書において、BCY10342と称される);
A-(配列番号44)-A(本明細書において、BCY10345と称される);
A-(配列番号45)-A(本明細書において、BCY10347と称される);
A-(配列番号46)-A(本明細書において、BCY10348と称される);
A-(配列番号47)-A(本明細書において、BCY10720と称される);
A-(配列番号48)-A(本明細書において、BCY10721と称される);
A-(配列番号49)-A(本明細書において、BCY10722と称される);
A-(配列番号50)-A(本明細書において、BCY10723と称される);
A-(配列番号51)-A(本明細書において、BCY10724と称される);
A-(配列番号52)-A(本明細書において、BCY10725と称される);
A-(配列番号53)-A(本明細書において、BCY10726と称される);
A-(配列番号54)-A(本明細書において、BCY10727と称される);及び
A-(配列番号55)-A(本明細書において、BCY10728と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項10】
前記ループ配列が、その両方が5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列が、
【化9】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号8)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10550と称される);
A-(配列番号8)-A(本明細書において、BCY10361と称される);
A-(配列番号56)-A(本明細書において、BCY10360と称される);
A-(配列番号57)-A(本明細書において、BCY10363と称される);
A-(配列番号58)-A(本明細書において、BCY10732と称される);
A-(配列番号59)-A(本明細書において、BCY10733と称される);
A-(配列番号60)-A(本明細書において、BCY10734と称される);
A-(配列番号61)-A(本明細書において、BCY10735と称される);及び
A-(配列番号62)-A(本明細書において、BCY10736と称される)
例えば:
A-(配列番号8)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10550と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項11】
前記ループ配列が、その第一のものが5つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化10】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号63)-A(本明細書において、BCY10336と称される);
A-(配列番号64)-A(本明細書において、BCY10337と称される);及び
A-(配列番号65)-A(本明細書において、BCY10338と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項12】
前記ループ配列が、その第一のものが6つのアミノ酸を含み、その第二のものが5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化11】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号9)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10794と称される);
A-(配列番号9)-A(本明細書において、BCY10349と称される);
A-(配列番号66)-A(本明細書において、BCY10346と称される);及び
A-(配列番号67)-A(本明細書において、BCY10357と称される)
例えば:
A-(配列番号9)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10794と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項13】
前記ループ配列が、その両方が6つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化12】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号68)-A(本明細書において、BCY10362と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項14】
前記ループ配列が、その第一のものが8つのアミノ酸を含み、その第二のものが3つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化13】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号10)-A(本明細書において、BCY11369と称される);
A-(配列番号10)-A(本明細書において、BCY10331と称される);
A-(配列番号69)-A(本明細書において、BCY10332と称される);
A-(配列番号70)-A(本明細書において、BCY10717と称される);及び
A-(配列番号71)-A(本明細書において、BCY10718と称される)
例えば:
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号10)-A(本明細書において、BCY11369と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項15】
前記ループ配列が、その第一のものが8つのアミノ酸を含み、その第二のものが4つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列が、
【化14】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩、例えば:
A-(配列番号72)-A(本明細書において、BCY10334と称される);及び
A-(配列番号73)-A(本明細書において、BCY10719と称される)
:を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項16】
前記ペプチドリガンドが、BCY10551、BCY10552、BCY10479、BCY11371、BCY10482、BCY10549、BCY11501、BCY10550、BCY10794、及びBCY11369、例えば、BCY10551、BCY11371、及びBCY10549、特に、BCY10549から選択される、請求項1~3のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項17】
前記分子スキャフォールドが、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)である、請求項1~16のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項18】
前記医薬として許容し得る塩が、遊離酸又はナトリウム、カリウム、カルシウム、もしくはアンモニウム塩から選択される、請求項1~17のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項19】
少なくとも2つのペプチドリガンドを含む多量体結合複合体であって、少なくとも1つのペプチドリガンドが請求項1~18のいずれか一項記載のOX40に特異的であり、かつ該ペプチドリガンドが同じであっても異なっていてもよく、これらの各々が、少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、前記多量体結合複合体。
【請求項20】
各々のペプチドリガンドがスペーサー基によって中心のヒンジ部分に接続されている、請求項19記載の多量体結合複合体。
【請求項21】
式の(I)化合物を含む、請求項19又は請求項20記載の多量体結合複合体:
【化15】
(式中、CHMは、中心のヒンジ部分を表し;
S
1は、スペーサー基を表し;
二環は、請求項1~18のいずれか一項記載のペプチドリガンドを表し;かつ
mは、2~10から選択される整数を表す)。
【請求項22】
前記ペプチドリガンドが同じ標的に特異的である、請求項19~21のいずれか一項記載の多量体結合複合体。
【請求項23】
前記多量体結合複合体が少なくとも2つの同一のペプチドリガンドを含む、請求項19~22のいずれか一項記載の多量体結合複合体。
【請求項24】
前記多量体結合複合体が、4つの同一のペプチドリガンド、例えば、4つのBCY10549ペプチドリガンドを含み、かつ四量体複合体BCY12019を含む、請求項23記載の多量体結合複合体。
【請求項25】
前記多量体結合複合体が少なくとも2つの異なるペプチドリガンドを含む、請求項19~22のいずれか一項記載の多量体結合複合体。
【請求項26】
前記ペプチドリガンドが異なる標的に特異的である、請求項19~21のいずれか一項記載の多量体結合複合体。
【請求項27】
前記ペプチドリガンドの少なくとも1つがOX40に特異的であり、かつ前記さらなるペプチドリガンドの少なくとも1つが免疫細胞上のさらなる構成要素に結合する、請求項19~26のいずれか一項記載の多量体結合複合体。
【請求項28】
前記免疫細胞上のさらなる構成要素がCD137である、請求項27記載の多量体結合複合体。
【請求項29】
前記免疫細胞上のさらなる構成要素に結合する少なくとも1つのさらなるペプチドリガンドがCD137結合ペプチドリガンドを含む、請求項27又は請求項28記載の多量体結合複合体。
【請求項30】
前記ペプチドリガンドの少なくとも1つがOX40に特異的であり、かつ前記さらなるペプチドリガンドの少なくとも1つが癌細胞上に存在する構成要素に結合し、かつ任意に、該ペプチドリガンドの少なくとも1つが免疫細胞上のさらなる構成要素に結合する、請求項19~29のいずれか一項記載の多量体結合複合体。
【請求項31】
(a)請求項1~18のいずれか一項記載の1以上のOX40結合ペプチドリガンド;がリンカーを介して、
(b)癌細胞上に存在する構成要素に結合する少なくとも1つの第二のペプチドリガンド;
に結合したもの
:を含み、ここで、該ペプチドリガンドの各々が、少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つのシステイン残基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドのシステイン残基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、ヘテロタンデムペプチド複合体である、請求項19記載の多量体結合複合体。
【請求項32】
第二のペプチドリガンドが、配列:
【化16】
(配列番号11;以後、BCY8116と称される)
(ここで、1Nalは、1-ナフチルアラニンを表し、HArgは、ホモアルギニンを表し、かつHyPは、ヒドロキシプロリンを表す)
を有するアミノ酸を含むEphA2、PD-L1、ネクチン-4、又はPSMA結合二環式ペプチドリガンド、例えば、ネクチン-4結合二環式ペプチドリガンド、例えば、BCY8116のPEG12誘導体、BCY8116のPEG5誘導体、及びBCY8116の三官能性PEG3誘導体を含む、請求項31記載の多量体結合複合体。
【請求項33】
BCY12141、BCY12721、及びBCY12697から選択される、請求項31又は請求項32記載の多量体結合複合体:
【化17】
。
【請求項34】
1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、請求項1~18のいずれか一項記載のペプチドリガンド又は請求項19~33のいずれか一項記載の多量体結合複合体を含む薬物コンジュゲート。
【請求項35】
請求項1~18のいずれか一項記載のペプチドリガンド、請求項19~33のいずれか一項記載の多量体結合複合体、又は請求項34記載の薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む、医薬組成物。
【請求項36】
OX40によって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療において使用するための、請求項1~18のいずれか一項記載のペプチドリガンド、請求項19~33のいずれか一項記載の多量体結合複合体、又は請求項34記載の薬物コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、2以上のペプチドループがスキャフォールドへの取付点の間に内在するように、分子スキャフォールドに共有結合しているポリペプチドに関する。特に、本発明は、OX40に結合するペプチドを記載している。本発明はまた、2以上のペプチドループがスキャフォールドへの取付点の間に内在するように分子スキャフォールドに共有結合している、OX40の機能的アゴニストであるポリペプチドの多量体結合複合体に関する。本発明は、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、該ペプチド及び複合体を含む薬物コンジュゲート、該ペプチドリガンド、複合体、及び薬物コンジュゲートを含む医薬組成物、並びにOX40によって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療における該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートの使用も含む。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
環状ペプチドは、高い親和性及び特異性でタンパク質標的に結合することができ、それゆえ、治療薬の開発のための魅力的な分子クラスである。実際、いくつかの環状ペプチドは、例えば、抗菌ペプチドのバンコマイシン、免疫抑制薬のシクロスポリン、又は抗癌薬のオクトレオチドのように、診療所で使用されるのに既に成功している(Driggersらの文献(2008), Nat Rev Drug Discov 7(7), 608-24)。優れた結合特性は、ペプチドと標的との間で形成される比較的大きな相互作用表面だけでなく、環状構造の立体構造可撓性の低下にも起因する。通常、大環状分子は、例えば環状ペプチドCXCR4アンタゴニストCVX15(400Å2; Wuらの文献(2007), Science 330, 1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフを有する環状ペプチド(355Å2)(Xiongらの文献(2002), Science 296(5565), 151-5)、又はウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子に結合する環状ペプチド阻害剤ウパイン-1(603Å2; Zhaoらの文献(2007), J Struct Biol 160(1), 1-10)のように、数百平方オングストロームの表面に結合する。
【0003】
その環状立体配置のために、ペプチド大環状分子は、直鎖状ペプチドよりも可撓性が低く、標的に結合したときのエントロピー損失がより小さくなり、結果的に、より高い結合親和性が生じる。可撓性の低下はまた、標的特異的立体構造の固定をもたらし、直鎖状ペプチドと比較して結合特異性を増加させる。この効果は、その環が開いたときに、他のMMPに対するその選択性を失うマトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP-8)の強力かつ選択的な阻害剤によって例証されている(Cherneyらの文献(1998), J Med Chem 41(11), 1749-51)。大環状化によって達成される有利な結合特性は、例えば、バンコマイシン、ナイシン、及びアクチノマイシンのような、複数のペプチド環を有する多環性ペプチドにおいてさらにより顕著である。
【0004】
様々な研究チームが、以前に、システイン残基を有するポリペプチドを合成分子構造に繋いでいる(Kemp及びMcNamaraの文献(1985), J. Org. Chem; Timmermanらの文献(2005), ChemBioChem)。Meloen及び共同研究者らは、トリス(ブロモメチル)ベンゼン及び関連分子をタンパク質表面の構造的模倣用の合成スキャフォールド上での複数のペプチドループの迅速かつ定量的な環化に使用した(Timmermanらの文献(2005), ChemBioChem)。候補薬物化合物(ここで、該化合物は、システイン含有ポリペプチドを、例えば、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)のような分子スキャフォールドに連結させることにより作製される)の作製方法(Heinisらの文献(2014) Angewandte Chemie, International Edition 53(6) 1602-1606)。
【0005】
対象となる標的に対する二環式ペプチドの大型ライブラリーを作製及びスクリーニングするためのファージディスプレイに基づくコンビナトリアルアプローチが開発されている(Heinisらの文献(2009), Nat Chem Biol 5(7), 502-7及びWO 2009/098450号)。簡潔に述べると、3つのシステイン残基及び2つのランダムな6アミノ酸領域を含有する直鎖状ペプチド(Cys-(Xaa)6-Cys-(Xaa)6-Cys)のコンビナトリアルライブラリをファージ上に提示させ、システイン側鎖を低分子スキャフォールドに共有結合させることにより環化させた。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明の第一の態様によれば、少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、OX40に特異的なペプチドリガンドが提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも2つのペプチドリガンドを含む多量体結合複合体であって、少なくとも1つのペプチドリガンドは、本明細書で定義されるOX40に特異的であり、該ペプチドリガンドは、同じであっても異なっていてもよく、これらの各々は、少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、多量体結合複合体が提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、本明細書で定義されるペプチドリガンド又は多量体結合複合体を含む薬物コンジュゲートが提供される。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンド、多量体結合複合体、又は薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、OX40によって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療において使用するための本明細書で定義されるペプチドリガンド、多量体結合複合体、薬物コンジュゲート、又は医薬組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1: PromegaのOX40レポーター細胞アッセイで試験されたOX40L、BCY10549(ビオチン化モノマー)、BCY10549+ストレプトアビジン、及びBCY12019(四量体)の結果。
【
図2】
図2: PBMC-腫瘍細胞共培養アッセイで試験されたBCY12141の結果。
【
図3】
図3: OX40L及び非結合対照ペプチドBCY12968と比較した腫瘍細胞との共培養下のPromegaのOX40細胞活性アッセイにおけるBCY12141、BCY12721、及びBCY12967の結果。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
(ペプチドリガンド)
本発明の第一の態様によれば、少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、OX40に特異的なペプチドリガンドが提供される。
【0013】
一実施態様において、該反応基は、システイン残基を含む。
【0014】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、2、3、4、5、6、7、又は8つのアミノ酸を含む。
【0015】
またさらなる実施態様において、該ループ配列は、3、4、5、6、7、又は8つのアミノ酸を含む。
【0016】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが2つのアミノ酸からなり、その第二のものが7つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0017】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸からなり、その第二のものが7つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0018】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸からなり、その第二のものが8つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0019】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸からなり、その第二のものが5つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0020】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸からなり、その第二のものが6つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0021】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸からなり、その第二のものが8つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0022】
一実施態様において、該ループ配列は、その両方が5つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0023】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが5つのアミノ酸からなり、その第二のものが7つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0024】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが6つのアミノ酸からなり、その第二のものが5つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0025】
一実施態様において、該ループ配列は、その両方が6つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0026】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが8つのアミノ酸からなり、その第二のものが3つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0027】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが8つのアミノ酸からなり、その第二のものが4つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0028】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが2つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化1】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0029】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号12以外のものである。
【0030】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが2つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号12)-A(本明細書において、BCY10375と称される)
:を含む。
【0031】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化2】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0032】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号13~31のうちのいずれか1つ又は複数又は全て以外のものである。
【0033】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号13)-A(本明細書において、BCY10364と称される);
A-(配列番号14)-A(本明細書において、BCY10365と称される);
A-(配列番号15)-A(本明細書において、BCY10366と称される);
A-(配列番号16)-A(本明細書において、BCY10367と称される);
A-(配列番号17)-A(本明細書において、BCY10368と称される);
A-(配列番号18)-A(本明細書において、BCY10369と称される);
A-(配列番号19)-A(本明細書において、BCY10374と称される);
A-(配列番号20)-A(本明細書において、BCY10376と称される);
A-(配列番号21)-A(本明細書において、BCY10737と称される);
A-(配列番号22)-A(本明細書において、BCY10738と称される);
A-(配列番号23)-A(本明細書において、BCY10739と称される);
A-(配列番号24)-A(本明細書において、BCY10740と称される);
A-(配列番号25)-A(本明細書において、BCY10741と称される);
A-(配列番号26)-A(本明細書において、BCY10742と称される);
A-(配列番号27)-A(本明細書において、BCY10380と称される);
A-(配列番号28)-A(本明細書において、BCY10370と称される);
A-(配列番号29)-A(本明細書において、BCY10372と称される);
A-(配列番号30)-A(本明細書において、BCY10373と称される);及び
A-(配列番号31)-A(本明細書において、BCY10379と称される)
:を含む。
【0034】
代わりの実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化3】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0035】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号1)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10551と称される);及び
A-(配列番号1)-A(本明細書において、BCY10371と称される)
例えば:
A-(配列番号1)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10551と称される)
:を含む。
【0036】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが8つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化4】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0037】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号32~33のいずれか又は両方以外のものである。
【0038】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが8つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号32)-A(本明細書において、BCY10377と称される);及び
A-(配列番号33)-A(本明細書において、BCY10744と称される)
:を含む。
【0039】
代わりの実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが8つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化5】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0040】
さらなる実施態様において、
【化6】
のペプチドリガンドは、
【化7】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)
:から選択されるアミノ酸配列、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩を含む。
【0041】
またさらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが3つのアミノ酸を含み、その第二のものが8つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号3)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10552と称される);
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号3)-A(本明細書において、BCY10479と称される);
A-(配列番号3)-A(本明細書において、BCY10378と称される);
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号4)-A(本明細書において、BCY11371と称される);及び
A-(配列番号4)-A(本明細書において、BCY10743と称される)
例えば:
A-(配列番号3)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10552と称される);
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号3)-A(本明細書において、BCY10479と称される);及び
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号4)-A(本明細書において、BCY11371と称される)
:を含む。
【0042】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化8】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0043】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号34以外のものである。
【0044】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号34)-A(本明細書において、BCY10343と称される)
:を含む。
【0045】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが6つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化9】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0046】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号35~40のうちの1つ又は複数又は全て以外のものである。
【0047】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが6つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号35)-A(本明細書において、BCY10350と称される);
A-(配列番号36)-A(本明細書において、BCY10352と称される);
A-(配列番号37)-A(本明細書において、BCY10353と称される);
A-(配列番号38)-A(本明細書において、BCY10354と称される);
A-(配列番号39)-A(本明細書において、BCY10730と称される);及び
A-(配列番号40)-A(本明細書において、BCY10731と称される)
:を含む。
【0048】
代わりの実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが6つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化10】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0049】
さらなる実施態様において、
【化11】
のペプチドリガンドは、
【化12】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)
:から選択されるアミノ酸配列、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩を含む。
【0050】
またさらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが6つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号6)-A(本明細書において、BCY10482と称される);
A-(配列番号6)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10549と称される);
A-(配列番号6)-A-K(Pya)(本明細書において、BCY11607と称される);
Ac-A-(配列番号6)-A-K(Pya)(以後、BCY12708と称される);
A-(配列番号6)-A(本明細書において、BCY10351と称される);
A-(配列番号7)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY11501と称される);及び
A-(配列番号7)-A(本明細書において、BCY10729と称される)
例えば:
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号6)-A(本明細書において、BCY10482と称される);
A-(配列番号6)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10549と称される);
A-(配列番号6)-A-K(Pya)(本明細書において、BCY11607と称される);及び
A-(配列番号7)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY11501と称される)
(ここで、Pyaは、4-ペンチノイル部分を表す)
:を含む。
【0051】
またさらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが6つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号6)-A-K(Pya)(本明細書において、BCY11607と称される);及び
Ac-A-(配列番号6)-A-K(Pya)(以後、BCY12708と称される);
(ここで、Pyaは、4-ペンチノイル部分を表す)
:を含む。
【0052】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが8つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化13】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0053】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号41~55のうちの1つ又は複数又は全て以外のものである。
【0054】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが4つのアミノ酸を含み、その第二のものが8つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号41)-A(本明細書において、BCY10339と称される);
A-(配列番号42)-A(本明細書において、BCY10340と称される);
A-(配列番号43)-A(本明細書において、BCY10342と称される);
A-(配列番号44)-A(本明細書において、BCY10345と称される);
A-(配列番号45)-A(本明細書において、BCY10347と称される);
A-(配列番号46)-A(本明細書において、BCY10348と称される);
A-(配列番号47)-A(本明細書において、BCY10720と称される);
A-(配列番号48)-A(本明細書において、BCY10721と称される);
A-(配列番号49)-A(本明細書において、BCY10722と称される);
A-(配列番号50)-A(本明細書において、BCY10723と称される);
A-(配列番号51)-A(本明細書において、BCY10724と称される);
A-(配列番号52)-A(本明細書において、BCY10725と称される);
A-(配列番号53)-A(本明細書において、BCY10726と称される);
A-(配列番号54)-A(本明細書において、BCY10727と称される);及び
A-(配列番号55)-A(本明細書において、BCY10728と称される)
:を含む。
【0055】
一実施態様において、該ループ配列は、その両方が5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化14】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0056】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号56~62のうちの1つ又は複数又は全て以外のものである。
【0057】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その両方が5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号56)-A(本明細書において、BCY10360と称される);
A-(配列番号57)-A(本明細書において、BCY10363と称される);
A-(配列番号58)-A(本明細書において、BCY10732と称される);
A-(配列番号59)-A(本明細書において、BCY10733と称される);
A-(配列番号60)-A(本明細書において、BCY10734と称される);
A-(配列番号61)-A(本明細書において、BCY10735と称される);及び
A-(配列番号62)-A(本明細書において、BCY10736と称される)
:を含む。
【0058】
代わりの実施態様において、該ループ配列は、その両方が5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化15】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0059】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その両方が5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号8)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10550と称される);及び
A-(配列番号8)-A(本明細書において、BCY10361と称される)
例えば:
A-(配列番号8)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10550と称される)
:を含む。
【0060】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが5つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化16】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0061】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号63~65のうちの1つ又は複数又は全て以外のものである。
【0062】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが5つのアミノ酸を含み、その第二のものが7つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号63)-A(本明細書において、BCY10336と称される);
A-(配列番号64)-A(本明細書において、BCY10337と称される);及び
A-(配列番号65)-A(本明細書において、BCY10338と称される)
:を含む。
【0063】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが6つのアミノ酸を含み、その第二のものが5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化17】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0064】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号66~67のいずれか又は両方以外のものである。
【0065】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが6つのアミノ酸を含み、その第二のものが5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号66)-A(本明細書において、BCY10346と称される);及び
A-(配列番号67)-A(本明細書において、BCY10357と称される)
:を含む。
【0066】
代わりの実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが6つのアミノ酸を含み、その第二のものが5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化18】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0067】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが6つのアミノ酸を含み、その第二のものが5つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号9)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10794と称される);及び
A-(配列番号9)-A(本明細書において、BCY10349と称される)
例えば:
A-(配列番号9)-A-[Sar6]-[KBiot](本明細書において、BCY10794と称される)
:を含む。
【0068】
一実施態様において、該ループ配列は、その両方が6つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化19】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0069】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号68以外のものである。
【0070】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その両方が6つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号68)-A(本明細書において、BCY10362と称される)
:を含む。
【0071】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが8つのアミノ酸を含み、その第二のものが3つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化20】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0072】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号69~71のうちの1つ又は複数又は全て以外のものである。
【0073】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが8つのアミノ酸を含み、その第二のものが3つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号69)-A(本明細書において、BCY10332と称される);
A-(配列番号70)-A(本明細書において、BCY10717と称される);及び
A-(配列番号71)-A(本明細書において、BCY10718と称される)
:を含む。
【0074】
代わりの実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが8つのアミノ酸を含み、その第二のものが3つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化21】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0075】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが8つのアミノ酸を含み、その第二のものが3つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号10)-A(本明細書において、BCY11369と称される);及び
A-(配列番号10)-A(本明細書において、BCY10331と称される)
例えば:
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号10)-A(本明細書において、BCY11369と称される)
:を含む。
【0076】
一実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが8つのアミノ酸を含み、その第二のものが4つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、かつ該アミノ酸配列は、
【化22】
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、もしくは修飾誘導体、又はこれらの医薬として許容し得る塩
:を含む。
【0077】
一実施態様において、本発明のペプチドは、配列番号72~73のいずれか又は両方以外のものである。
【0078】
さらなる実施態様において、該ループ配列は、その第一のものが8つのアミノ酸を含み、その第二のものが4つのアミノ酸を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含み、該アミノ酸配列は、N-及び/又はC-末端修飾を有し、かつ
A-(配列番号72)-A(本明細書において、BCY10334と称される);及び
A-(配列番号73)-A(本明細書において、BCY10719と称される)
:を含む。
【0079】
またさらなる実施態様において、アミノ酸配列は、BCY10551、BCY10552、BCY10479、BCY11371、BCY10482、BCY10549、BCY11501、BCY10550、BCY10794、及びBCY11369から選択される。この実施態様のペプチドは、OX40細胞ベースのアッセイで試験され、OX40の優れたアゴニズムを示した(表2を参照)。
【0080】
またさらなる実施態様において、アミノ酸配列は、BCY10551、BCY11371、及びBCY10549から選択される。そのようなペプチドは、OX40細胞ベースのアッセイで100nM未満のEC50値を示し、特に高レベルのアゴニズムを示した(表2を参照)。
【0081】
またさらなる実施態様において、アミノ酸配列は、BCY10549である。このペプチドは、四量体フォーマットでストレプトアビジンに結合したとき、OX40細胞ベースのアッセイで20nM未満のEC
50値を示し、高レベルのOX40アゴニズムを示した(
図1及び表2を参照)。
【0082】
代わりの実施態様において、アミノ酸配列は、BCY11607である。
【0083】
代わりの実施態様において、アミノ酸配列は、BCY12708である。
【0084】
さらなる実施態様において、医薬として許容し得る塩は、遊離酸又はナトリウム、カリウム、カルシウム、もしくはアンモニウム塩から選択される。
【0085】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は全て、当該分野、例えば、ペプチド化学、細胞培養、及びファージディスプレイ、核酸化学、並びに生化学の分野の専門家によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。標準的な技法が、分子生物学、遺伝学、及び生化学の方法に使用される(引用により本明細書中に組み込まれる、Sambrookらの文献、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第3版、2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubelらの文献、分子生物学のショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)(1999) 第4版、John Wiley & Sons社を参照)。
【0086】
(付番)
本発明のペプチド内のアミノ酸残基位置に言及する場合、システイン残基(Ci、Cii、及びCiii)は不変であるので、これらは付番から省略され、それゆえ、本発明のペプチド内のアミノ酸残基の付番は、以下のように言及される:
-Ci-I1-L2-W3-Cii-N4-P5-E6-P7-H8-D9-E10-Ciii-(配列番号1)
。
【0087】
この説明のために、全ての二環式ペプチドは、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)で環化され、三置換構造を生じると考えられる。TATAによる環化は、Ci、Cii、及びCiii上で生じる。
【0088】
(分子フォーマット)
二環コア配列へのN-又はC-末端伸長は、ハイフンによって隔てられた、配列の左側又は右側に付加される。例えば、N-末端ビオチン-G-Sar5テールは:
[Biot]-G-[Sar5]-A-(配列番号X)
と表される。
【0089】
(逆向きのペプチド配列)
Nairらの文献(2003) J Immunol 170(3), 1362-1373における開示を考慮して、本明細書に開示されるペプチド配列は、そのレトロ-インベルソ(retro-inverso)形態でも有用性を見出すことが想定される。例えば、配列が逆転し(すなわち、N-末端がC-末端になり、C-末端がN-末端になる)、その立体化学も同様に逆転する(すなわち、D-アミノ酸がL-アミノ酸になり、L-アミノ酸がD-アミノ酸になる)。
【0090】
(ペプチドリガンドの定義)
本明細書において言及されるペプチドリガンドは、分子スキャフォールドに共有結合したペプチド、ペプチジック、又はペプチドミメティックを指す。典型的には、そのようなペプチド、ペプチジック、又はペプチドミメティックは、天然又は非天然アミノ酸を有するペプチドと、スキャフォールドとの共有結合を形成することができる2以上の反応基(すなわち、システイン残基)と、ペプチド、ペプチジック、又はペプチドミメティックがスキャフォールドに結合するときにループを形成するのでループ配列と呼ばれる、該反応基間に内在する配列とを含む。この場合、ペプチド、ペプチジック、又はペプチドミメティックは、少なくとも3つのシステイン残基(本明細書において、Ci、Cii、及びCiiiと呼ばれる)を含み、かつスキャフォールド上に少なくとも2つのループを形成する。
【0091】
(ペプチドリガンドの利点)
本発明の特定の二環式ペプチドは、それを注射、吸入、経鼻、眼球、経口、又は局所投与のための好適な薬物様分子とみなすことができるいくつかの有利な特性を有する。そのような有利な特性としては、以下のもの挙げられる:
-種交差反応性。これは、前臨床的な薬力学及び薬物動態評価の典型的な必要条件である;
-プロテアーゼ安定性。二環式ペプチドリガンドは、ほとんどの状況で、血漿プロテアーゼ、上皮(「膜固定型」)プロテアーゼ、胃腸プロテアーゼ、肺表面プロテアーゼ、細胞内プロテアーゼなどに対する安定性を示すべきである。プロテアーゼ安定性は、二環式ペプチドリード候補を動物モデルで開発するだけでなく、自信を持ってヒトに投与することもできるように、異なる種の間で維持されるべきである;
-望ましい溶解度プロファイル。これは、製剤化及び吸収目的で重要である、荷電残基及び親水性残基と疎水性残基の比率並びに分子内/分子間H-結合の関数である;及び
-循環中での最適な血漿半減期。臨床的適応及び治療レジメンに応じて、慢性疾患状態又は急性疾患状態のいずれかの管理のための短期又は長期のインビボ曝露時間を有する二環式ペプチドを開発する必要があり得る。最適な曝露時間は、薬剤の持続的曝露に起因する毒性学的効果を最小化するための短い曝露時間の要求と比べた(最大の治療効率のための)持続的曝露の要求によって決定される。
【0092】
(医薬として許容し得る塩)
塩形態は本発明の範囲内であり、ペプチドリガンドへの言及が該リガンドの塩形態を含むことが理解されるであろう。
【0093】
本発明の塩は、従来の化学的方法、例えば、医薬塩:特性、選択、及び使用(Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)、P. Heinrich Stahl(編者)、Camille G. Wermuth(編者)、ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388頁、August 2002に記載されている方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。通常、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、適切な塩基又は酸と、水中もしくは有機溶媒中で、又はこれら2つの混合物中で反応させることにより調製することができる。
【0094】
酸付加塩(モノ塩又はジ塩)は、無機と有機の両方の多種多様な酸で形成することができる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、粘液酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸など)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸など)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸、並びにアシル化アミノ酸及び陽イオン交換樹脂からなる群から選択される酸で形成されるモノ塩又はジ塩が挙げられる。
【0095】
塩の1つの特定の群は、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸、及びラクトビオン酸から形成される塩からなる。1つの特定の塩は、塩酸塩である。別の特定の塩は、酢酸塩である。
【0096】
化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であり得る官能基を有する(例えば、-COOHが-COO-であり得る)場合、塩を有機又は無機塩基で形成させ、好適なカチオンを生成させることができる。好適な無機カチオンの例としては、Li+、Na+、及びK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+などのアルカリ土類金属カチオン、及びAl3+又はZn+などの他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4
+)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2
+、NHR3
+、NR4
+)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニンなどのアミノ酸:に由来するものが挙げられる。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4
+である。
【0097】
本発明のペプチドがアミン機能を含有する場合、これらは、例えば、当業者に周知の方法によるアルキル化剤との反応によって、第四級アンモニウム塩を形成し得る。そのような第四級アンモニウム化合物は、本発明のペプチドの範囲内である。
【0098】
(修飾誘導体)
本明細書で定義されるペプチドリガンドの修飾誘導体は、本発明の範囲内であることが理解されるであろう。そのような好適な修飾誘導体の例としては、N-末端及び/又はC-末端修飾; 1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換(例えば、1以上の極性アミノ酸残基の1以上の等配電子又は等電子アミノ酸による置換; 1以上の非極性アミノ酸残基の他の非天然等配電子又は等電子アミノ酸による置換);スペーサー基の付加; 1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換; 1以上のアミノ酸残基の1以上の置換アミノ酸、例えば、アラニンによる置換、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換;二環式ペプチドリガンド内の1以上のアミド結合のN-アルキル化; 1以上のペプチド結合の代用結合による置換;ペプチド骨格長の修飾; 1以上のアミノ酸残基のα-炭素上の水素の別の化学基による置換、システイン、リジン、グルタミン酸/アスパラギン酸、及びチロシンなどのアミノ酸を官能基化するような、該アミノ酸の好適なアミン、チオール、カルボン酸、及びフェノール反応性試薬による修飾、並びに官能基化に好適である直交反応性を導入するアミノ酸、例えば、それぞれ、アルキン又はアジドを有する部分による官能基化を可能にするアジド又はアルキン基を有するアミノ酸の導入又は置換:から選択される1以上の修飾が挙げられる。
【0099】
一実施態様において、修飾誘導体は、N-末端及び/又はC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、ここで、修飾誘導体は、好適なアミノ反応化学を用いるN-末端修飾、及び/又は好適なカルボキシ反応化学を用いるC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、該N-末端又はC-末端修飾は、限定されないが、細胞毒性剤、放射性キレート剤、又は発色団を含む、エフェクター基の付加を含む。
【0100】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、N-末端修飾は、N-末端アセチル基を含む。この実施態様において、N-末端残基は、ペプチド合成の間に無水酢酸又は他の適切な試薬でキャッピングされ、N-末端がアセチル化された分子をもたらす。この実施態様は、アミノペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドの分解の可能性を回避する。
【0101】
代わりの実施態様において、N-末端修飾は、エフェクター基のコンジュゲーション及びその標的に対する二環式ペプチドの効力の保持を促進する分子スペーサー基の付加を含む。
【0102】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、C-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、C-末端修飾は、アミド基を含む。この実施態様において、C-末端残基は、ペプチド合成の間にアミドとして合成され、C-末端がアミド化された分子をもたらす。この実施態様は、カルボキシペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドのタンパク質分解の可能性を低下させる。
【0103】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様においては、分解性プロテアーゼによって認識されることも、標的効力に何らかの有害作用を有することもない等配電子/等電子側鎖を有する非天然アミノ酸を選択してもよい。
【0104】
或いは、近くのペプチド結合のタンパク質分解性加水分解が立体構造的に及び立体的に妨害されるように、拘束されたアミノ酸側鎖を有する非天然アミノ酸を使用してもよい。特に、これらは、プロリン類似体、嵩高い側鎖、Cα-二置換誘導体(例えば、アミノイソ酪酸、Aib)、及びアミノ-シクロプロピルカルボン酸の単純な誘導体であるシクロアミノ酸に関する。
【0105】
一実施態様において、修飾誘導体は、スペーサー基の付加を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端システイン(Ci)及び/又はC-末端システイン(Ciii)へのスペーサー基の付加を含む。
【0106】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、トリプトファン残基のナフチルアラニン又はアラニン残基による置換を含む。この実施態様は、得られる二環式ペプチドリガンドに医薬安定性プロファイルを改善するという利点を提供する。
【0107】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の荷電アミノ酸残基の1以上の疎水性アミノ酸残基による置換を含む。代わりの実施態様において、修飾誘導体は、1以上の疎水性アミノ酸残基の1以上の荷電アミノ酸残基による置換を含む。荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しいバランスは、二環式ペプチドリガンドの重要な特徴である。例えば、疎水性アミノ酸残基は、血漿タンパク質結合の程度、したがって、血漿中の利用可能な遊離画分の濃度に影響を及ぼし、一方、荷電アミノ酸残基(特に、アルギニン)は、ペプチドと細胞表面のリン脂質膜との相互作用に影響を及ぼす可能性がある。この2つの組合せは、ペプチド薬の半減期、分布容積、及び曝露に影響を及ぼす可能性があり、臨床的なエンドポイントに応じて調整することができる。さらに、荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しい組合せ及び数は、注射部位(ペプチド薬が皮下投与された場合)での刺激を軽減することができる。
【0108】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様は、立体障害により及びβ-ターン立体構造を安定化させるD-アミノ酸の傾向により、タンパク質分解の安定性を高めると考えられる(Tugyiらの文献(2005) PNAS, 102(2), 413-418)。
【0109】
一実施態様において、修飾誘導体は、任意のアミノ酸残基の除去及びD-アラニンなどのアラニンによる置換を含む。この実施態様は、重要な結合残基を同定し、潜在的なタンパク質分解攻撃部位を除去するという利点を有する。
【0110】
上述の修飾の各々は、ペプチドの効力又は安定性を意図的に向上させる役割を果たすことに留意すべきである。修飾に基づくさらなる効力向上は、以下の機序によって達成することができる:
-より高い親和性が達成されるように、疎水性効果を利用し、より低い解離速度をもたらす疎水性部位を組み込むこと;
-長距離イオン相互作用を利用し、より速い会合速度をもたらし、より高い親和性をもたらす荷電基を組み込むこと(例えば、Schreiberらの文献、タンパク質の急速静電アシスト会合(Rapid, electrostatically assisted association of proteins)(1996)、Nature Struct. Biol. 3, 427-31を参照);並びに
-例えば、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、アミノ酸の側鎖を正しく拘束すること、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、骨格のねじれ角度を拘束すること、及び同一の理由で分子内にさらなる環化を導入することにより、さらなる拘束性をペプチドに組み込むこと
(総説については、Gentilucciらの文献、Curr. Pharmaceutical Design, (2010), 16, 3185-203、及びNestorらの文献、Curr. Medicinal Chem (2009), 16, 4399-418を参照)。
【0111】
(同位体バリエーション)
本発明は、1以上の原子が、同じ原子番号を有するが、天然に通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、本発明の医薬として許容し得る全ての(放射性)同位体標識ペプチドリガンド、並びに関連する(放射性)同位体を保持することができる金属キレート基が取り付けられている本発明のペプチドリガンド(「エフェクター」と呼ばれる)、並びに特定の官能基が関連する(放射性)同位体又は同位体標識された官能基で共有結合的に置き換えられている本発明のペプチドリガンドを含む。
【0112】
本発明のペプチドリガンドに含めるために好適な同位体の例は、水素の同位体、例えば、2H(D)及び3H(T)、炭素の同位体、例えば、11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I、125I、及び131I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O、及び18O、リンの同位体、例えば、32P、硫黄の同位体、例えば、35S、銅の同位体、例えば、64Cu、ガリウムの同位体、例えば、67Ga又は68Ga、イットリウムの同位体、例えば、90Y、並びにルテチウムの同位体、例えば、177Lu、並びにビスマスの同位体、例えば、213Biを含む。
【0113】
本発明の特定の同位体標識ペプチドリガンド、例えば、放射性同位体を組み込んでいるものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究において、並びに罹患組織上のDLL3標的の存在及び/又は不在を臨床的に評価するために有用である。本発明のペプチドリガンドは、標識化合物と他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、又は受容体との間の複合体の形成を検出又は同定するために使用することができるという点で、価値ある診断特性をさらに有することができる。検出又は同定方法は、例えば、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、イクオリン、及びルシフェラーゼ)などの標識剤で標識されている化合物を使用することができる。放射性同位体のトリチウム、すなわち、3H(T)及び炭素-14、すなわち、14Cは、その組込みの容易さ及び検出の手段が用意されていることを考慮して、この目的のために特に有用である。
【0114】
重水素、すなわち、2H(D)などのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性、例えば、増加したインビボ半減期又は低下した必要投薬量の結果として得られる、特定の治療的利点をもたらす場合があり、それゆえ、いくつかの状況では、好ましい場合がある。
【0115】
11C、18F、15O、及び13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、標的占有率を調べるための陽電子放出トポグラフィー(PET)試験において有用であり得る。
【0116】
本発明のペプチドリガンドの同位体標識化合物は、通常、当業者に公知の従来の技法によるか、又は以前に利用されていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する添付の実施例に記載されているものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0117】
(分子スキャフォールド)
一実施態様において、分子スキャフォールドは、非芳香族分子スキャフォールドを含む。「非芳香族分子スキャフォールド」への本明細書における言及は、芳香族(すなわち、不飽和)炭素環式又はヘテロ環式環系を含有しない本明細書で定義される任意の分子スキャフォールドを指す。
【0118】
非芳香族分子スキャフォールドの好適な例は、Heinisらの文献(2014) Angewandte Chemie, International Edition 53(6) 1602-1606に記載されている。
【0119】
前述の文書に記載されているように、分子スキャフォールドは、低有機分子などの低分子であってもよい。
【0120】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、高分子であってもよい。一実施態様において、分子スキャフォールドは、アミノ酸、ヌクレオチド、又は炭水化物から構成される高分子である。
【0121】
一実施態様において、分子スキャフォールドは、ポリペプチドの官能基と反応して、共有結合を形成することができる反応基を含む。
【0122】
分子スキャフォールドは、ペプチドとの結合を形成する化学基、例えば、アミン、チオール、アルコール、ケトン、アルデヒド、ニトリル、カルボン酸、エステル、アルケン、アルキン、アジド、無水物、スクシンイミド、マレイミド、ハロゲン化アルキル、及びハロゲン化アシルを含み得る。
【0123】
αβ不飽和カルボニル含有化合物の例は、1,1',1''-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)である(Angewandte Chemie, International Edition(2014), 53(6), 1602-1606)。
【0124】
(多量体結合複合体)
本発明の一態様によれば、少なくとも2つのペプチドリガンドを含む多量体結合複合体であって、少なくとも1つのペプチドリガンドが本明細書で定義されるOX40に特異的であり、該ペプチドリガンドが同じであっても異なっていてもよく、その各々が、少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つの反応基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドの反応基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、多量体結合複合体が提供される。
【0125】
本発明は、幅広い効力及び有効性を伴って、標的(例えば、OX40)に結合し、それを活性化する該二環式ペプチド内の異なる結合部位を用いた様々な長さ及び剛性の様々な化学的リンカー及びヒンジを有する一連の多量体化二環式ペプチドを記載している。
【0126】
本発明の概念は、多重配置(多量体)二環式ペプチドが、単一の二環式ペプチドを含有する対応する単量体結合複合体と比較して、該多量体結合複合体の結果として生じる性質によって相乗効果をもたらすという認識であることが当業者によって理解されるであろう。例えば、本発明の多量体結合複合体は、通常、その単量体対応物よりも大きいレベルの結合能力又は機能活性(本明細書においては、EC50値によって測定される)を有する。さらに、本発明の多量体結合複合体は、腎臓によって排除される程度に十分に小さいように設計される。
【0127】
本発明の複合体は、癌の治療において特定の有用性を見出す。したがって、一実施態様において、該ペプチドリガンドの少なくとも1つは、T細胞又は癌細胞上に存在するエピトープに特異的である。さらなる実施態様において、該ペプチドリガンドの各々は、T細胞又は癌細胞上に存在するエピトープに特異的である。
【0128】
特定の実施態様において、該ペプチドリガンドの少なくとも1つは、OX40に特異的であり、該さらなるペプチドリガンドの少なくとも1つは、免疫細胞上のさらなる構成要素に結合する。さらなる実施態様において、該免疫細胞上のさらなる構成要素は、CD137である。したがって、またさらなる実施態様において、該ペプチドリガンドの少なくとも1つは、CD137結合ペプチドリガンドを含む。
【0129】
さらなる実施態様において、該ペプチドリガンドの少なくとも1つは、OX40に特異的であり、該さらなるペプチドリガンドの少なくとも1つは、癌細胞上に存在する構成要素に結合する。したがって、ある実施態様において、本発明の多量体化ペプチドは、OX40に特異的な少なくとも1つのペプチドリガンド、癌細胞上に存在する構成要素に結合する少なくとも1つのペプチドリガンド、及び任意に、免疫細胞上の構成要素に結合する少なくとも1つのペプチドリガンドを含む。さらなる実施態様において、本発明の多量体化ペプチドは、OX40に特異的な少なくとも1つのペプチドリガンド、免疫細胞上のさらなる構成要素に結合する少なくとも1つのペプチドリガンド、及び任意に、癌細胞上に存在する構成要素に結合する少なくとも1つのペプチドリガンドを含む。
【0130】
さらなる実施態様において、免疫細胞は、白血球;リンパ球(例えば、Tリンパ球又はT細胞、B細胞、又はナチュラルキラー細胞); CD8又はCD4; CD4;樹状細胞、濾胞樹状細胞、及び顆粒球:から選択される。特定の実施態様において、該ペプチドリガンドの少なくとも1つは、OX40に特異的であり、免疫細胞は、CD4 T細胞である。さらなる実施態様において、免疫細胞は、CD4 T細胞及びCD8細胞から選択される。またさらなる実施態様において、免疫細胞は、CD4 T細胞及び別の免疫細胞から選択される。
【0131】
理論によって束縛されるものではないが、多量体化ペプチドは、複数の同じ受容体をホモ架橋することによって受容体を活性化することができると考えられている。したがって、一実施態様において、該ペプチドリガンドは、同じ標的に特異的である。さらなる実施態様において、多量体結合複合体は、少なくとも2つの同一のペプチドリガンドを含む。「同一の」により、ペプチドが同じアミノ酸配列を有することを意味し、最も厳密には、同じアミノ酸配列は、該ペプチドの結合部分を指す(例えば、配列は、結合位置が様々に異なり得る)。この実施態様において、多量体結合複合体内のペプチドの各々は、同じ標的上の全く同じエピトープに結合し-それゆえ、結果として生じる標的結合複合体は、ホモ二量体(多量体複合体が2つの同一のペプチドを含む場合)、ホモ三量体(多量体複合体が3つの同一のペプチドを含む場合)、又はホモ四量体(多量体複合体が4つの同一のペプチドを含む場合)などを生成する。
【0132】
代わりの実施態様において、多量体結合複合体は、少なくとも2つの異なるペプチドリガンドを含む。「異なる」により、ペプチドが異なるアミノ酸配列を有することを意味する。この実施態様において、多量体結合複合体内の異なるペプチドリガンドは、同じ標的上の異なるエピトープに結合し-それゆえ、結果として生じる標的結合複合体は、二重パラトピックのもの(多量体複合体が2つの異なるペプチドを含む場合)、三重パラトピックのもの(多量体複合体が3つの異なるペプチドを含む場合)、又は四重パラトピックのもの(多量体複合体が4つの異なるペプチドを含む場合)などを生成する。
【0133】
理論によって束縛されるものではないが、多量体化ペプチドは、異なる標的、例えば、異なる標的受容体をヘテロ架橋することによって受容体を活性化することができると考えられている。したがって、一実施態様において、該ペプチドリガンドは、異なる標的に特異的である。この実施態様において、多量体結合複合体は、少なくとも2つの異なるペプチドリガンド(すなわち、異なるアミノ酸配列を有するペプチドリガンド)を含むことが理解されるであろう。この実施態様において、多量体結合複合体内のペプチドの各々は、異なる標的上の異なるエピトープに結合し-それゆえ、結果として生じる標的結合複合体は、二重特異性多量体結合複合体(多量体複合体が2つの異なるペプチドを含む場合)、三重特異性多量体結合複合体(多量体複合体が3つの異なるペプチドを含む場合)、又は四重特異性多量体結合複合体(多量体複合体が4つの異なるペプチドを含む場合)などを生成する。
【0134】
本発明の多量体結合複合体を、様々な異なる標的、例えば、受容体に結合することができるように設計することができることが理解されるであろう。好適な例としては、癌に関与する任意の標的(すなわち、受容体)、例えば、TNF受容体スーパーファミリーのメンバー(すなわち、CD137)、受容体チロシンキナーゼ(RTK)、Igドメイン受容体(免疫チェックポイント)などが挙げられる。先に言及された二重、三重、及び四重特異性多量体結合複合体について、ペプチドは、少なくとも2つの異なる細胞(例えば、T、NK、又は他の免疫細胞)上の標的に結合することができることが理解されるであろう。
【0135】
本発明の多量体結合複合体内のペプチドは、いくつかの異なる選択肢によって会合させることができる。例えば、その各々がペプチドを含有する該ヒンジ又は分岐点から放射状に伸びているスペーサー又はアーム要素を有する中心のヒンジ部分又は分岐部分が存在していてもよい。或いは、円形の支持部材が内部に又は外部に突き出ているいくつかのペプチドを保持し得ることを想定することができる。
【0136】
一実施態様において、各々のペプチドリガンドは、スペーサー基によって中心のヒンジ部分に接続される。
【0137】
スペーサー基は、直鎖状で、かつ単一のペプチドを中心のヒンジ部分と接続させることができることが理解されるであろう。したがって、一実施態様において、多量体結合複合体は、式(I)の化合物を含む:
【化23】
(式中、CHMは、中心のヒンジ部分を表し;
S
1は、スペーサー基を表し;
二環は、本明細書で定義されるペプチドリガンドを表し;かつ
mは、2~10から選択される整数を表す)。
【0138】
一実施態様において、mは、3~10から選択される整数を表す。さらなる実施態様において、mは、3又は4から選択される整数を表す。
【0139】
mが4を表すとき、中心のヒンジ部分は、4つの結合点を必要とすることが理解されるであろう。したがって、一実施態様において、mは4を表し、CHMは、式(A)のモチーフである:
【化24】
(式中、「-----」は、各々のS
1基への結合点を表す)。
【0140】
mが3を表すとき、中心のヒンジ部分は、3つの結合点を必要とすることが理解されるであろう。したがって、一実施態様において、mは3を表し、CHMは、式(B)のモチーフである:
【化25】
(式中、「-----」は、各々のS
1基への結合点を表す)。
【0141】
代わりの実施態様において、mは3を表し、CHMは、式(C)のモチーフである:
【化26】
(式中、「-----」は、各々のS
1基への結合点を表す)。
【0142】
代わりの実施態様において、mは3を表し、CHMは、式(D)のモチーフである:
【化27】
(式中、「-----」は、各々のS
1基への結合点を表す)。
【0143】
代わりの中心のヒンジ部分をmの値に応じてどのように構築することができるかということが当業者には容易に明らかであろう。
【0144】
スペーサー(S1)は、ペプチドの中心のヒンジ部分をペプチドに連結させる任意の好適な構築物であり得ることが理解されるであろう。一実施態様において、スペーサー(S1)は、トリアゾリル部分を含む。この実施態様の利点は、トリアゾリル部分を、一般に利用可能な「クリック」化学を用いる合成の範囲内で組み入れることができることである。好適なスペーサー(S1)基の例としては、1以上のPEG部分、ペプチド配列、炭水化物、脂質などが挙げられる。
【0145】
さらなる実施態様において、スペーサー(S1)は、1以上のPEG部分を含む。「PEG」への本明細書における言及は、一般構造:(CH2CH2O)n-(ここで、nは、1~30などの任意の数を表す)の規則的な反復単位を有する直鎖状ポリマーを指す。
【0146】
したがって、さらなる実施態様において、スペーサー(S
1)は、スペーサーS
1A、S
1B、S
1C、S
1D、S
1E、S
1F、S
1G、及びS
1Hのうちのいずれか1つから選択される:
【化28】
(式中、「-----」は、CHM基への結合点を表し;かつ
【化29】
は、二環式基への結合点を表す)。
【0147】
またさらなる実施態様において、スペーサー(S1)は、S1Aである。
【0148】
(四量体)
一実施態様において、多量体結合複合体は、以下の表1に記載されている四量体結合複合体を含む:
表1:本発明の例示的な四量体結合複合体
【表1】
【0149】
表1の四量体結合複合体が単量体OX40リガンドと比べてEC50の向上を示したことを示すデータが本明細書で提示されている(表2を参照)。
【0150】
さらなる実施態様において、多量体結合複合体は、C-末端Lys(PYA)部分を介して、スペーサー分子(S
1A)(ここで、nは23を表し、かつ(S
1A)は、本明細書で定義される(A)である中心のヒンジ部分に連結されている)に連結されている、その各々が本明細書で定義されるBCY11607である4つの二環式ペプチドを含む四量体を含む。この多量体結合複合体は、本明細書において、BCY12019と称される:
【化30】
(ここで、単量体1は、BCY11607を表す)。
【0151】
対応するビオチン化モノマー(BCY10549)と比較してほぼ10倍大きいアゴニズムを示すデータが本明細書中の表2で提示されている。
【0152】
代わりの配置において、スペーサー基は分岐していてもよく、したがって、単一のスペーサー基は、複数のペプチドを中心のヒンジ部分と接続させることができる。したがって、代わりの実施態様において、多量体結合複合体は、式(II)の化合物を含む:
【化31】
(式中、CHMは、中心のヒンジ部分を表し;
S
1は、スペーサー基を表し;
二環は、本明細書で定義されるペプチドリガンドを表し;かつ
mは、2~10から選択される整数を表す)。
【0153】
ペプチドリガンドをいくつかの手段によってスペーサーに結合させることができることが理解されるであろう。一実施態様において、ペプチドリガンドは、結合ペアの一方の半分にコンジュゲートされ、該結合ペアの該もう一方の半分は、ペプチドの各々をスペーサーに連結させる。
【0154】
一実施態様において、該結合ペアは、ビオチン及びストレプトアビジンを含む。したがって、各々のペプチドリガンドは、ビオチンにコンジュゲートされ、ストレプトアビジンを介して、スペーサーに連結される。
【0155】
(ヘテロタンデム)
一実施態様において、多量体結合複合体は、
(a)本明細書で定義される1以上のOX40結合ペプチドリガンド;がリンカーを介して、
(b)癌細胞上に存在する構成要素に結合する少なくとも1つの第二のペプチドリガンド;
に結合したもの
:を含み、ここで、該ペプチドリガンドの各々が少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つのシステイン残基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドのシステイン残基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体である。
【0156】
さらなる実施態様において、多量体結合複合体は、
(a)本明細書で定義されるOX40結合ペプチドリガンド;がリンカーを介して、
(b)癌細胞上に存在する構成要素に結合する第二のペプチドリガンド;
に結合したもの
:を含み、ここで、該ペプチドリガンドの各々が少なくとも2つのループ配列によって隔てられた少なくとも3つのシステイン残基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドのシステイン残基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、少なくとも2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成される、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体である。
【0157】
「癌細胞」という用語への本明細書における言及は、癌に関与することが知られている任意の細胞を含む。癌細胞は、細胞分裂の調節に関与する遺伝子が損傷を受けたときに生み出される。発癌は、増殖と細胞死との間の正常な均衡を壊す正常細胞の遺伝物質の突然変異及びエピ突然変異によって生じる。この結果として、制御されない細胞分裂及び体内での自然淘汰によるこれらの細胞の進化が起こる。制御されない、かつ多くの場合、急速な細胞増殖は、良性又は悪性腫瘍(癌)を生じさせ得る。良性腫瘍は、体の他の部分に拡大することも、他の組織に侵入することもない。悪性腫瘍は、他の器官に侵入し、遠隔部位に拡大し(転移)、生命を脅かすものとなり得る。
【0158】
一実施態様において、癌細胞は、HT1080、SC-OV-3、PC3、H1376、NCI-H292、LnCap、MC38、4T1-D02、及びRKO腫瘍細胞から選択される。
【0159】
一実施態様において、癌細胞上に存在する構成要素は、EphA2である。さらなる実施態様において、第二のペプチドリガンドは、EphA2結合二環式ペプチドリガンドを含む。
【0160】
代わりの実施態様において、癌細胞上に存在する構成要素は、PD-L1である。さらなる実施態様において、第二のペプチドリガンドは、PD-L1結合二環式ペプチドリガンドを含む。
【0161】
代わりの実施態様において、癌細胞上に存在する構成要素は、ネクチン-4である。さらなる実施態様において、第二のペプチドリガンドは、ネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドを含む。またさらなる実施態様において、ネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドは、配列:
【化32】
(配列番号11;以後、BCY8116と称される)
(ここで、1Nalは、1-ナフチルアラニンを表し、HArgは、ホモアルギニンを表し、かつHyPは、ヒドロキシプロリンを表す)
を有するアミノ酸を含む。
【0162】
なおまたさらなる実施態様において、ネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドは、BCY8116のPEG12誘導体、BCY8116のPEG5誘導体、及びBCY8116の三官能性PEG3誘導体から選択される。
【0163】
一実施態様において、ヘテロタンデムは、1つのOX40結合ペプチド及び癌細胞上に存在する構成要素に結合する1つの第二のペプチドリガンドを含む。代わりの実施態様において、ヘテロタンデムは、2つのOX40結合ペプチド及び癌細胞上に存在する構成要素に結合する1つの第二のペプチドリガンドを含む。ヘテロタンデムが複数のOX40結合ペプチドを含む場合、各々のOX40結合ペプチドは、同じ配列であっても、異なる配列であってもよいことが理解されるであろう。一実施態様において、ヘテロタンデムが複数のOX40結合ペプチドを含む場合、各々のOX40結合ペプチドは、同じ配列を含む。
【0164】
なおまたさらなる実施態様において、OX40結合ペプチドリガンドは、BCY11607であり、ネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドは、以下の構造:
【化33】
を有するBCY8116のPEG12誘導体であり、結果として得られるヘテロタンデム複合体は、以下の構造:
【化34】
を有する。
【0165】
代わりの実施態様において、OX40結合ペプチドリガンドは、BCY12708であり、ネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドは、以下の構造:
【化35】
を有するBCY8116のPEG5誘導体であり、結果として得られるヘテロタンデム複合体は、以下の構造:
【化36】
を有する。
【0166】
なおまたさらなる実施態様において、OX40結合ペプチドリガンドは、BCY11607であり、ネクチン-4結合二環式ペプチドリガンドは、以下の構造:
【化37】
を有するBCY8116の三官能性PEG3誘導体であり、結果として得られるヘテロタンデム複合体は、以下の構造:
【化38】
を有する。
【0167】
一実施態様において、ヘテロタンデム二環式ペプチド複合体は、BCY12141、BCY12721、及びBCY12967から選択される。データは、本明細書中の表3及び
図3に提示されている。ここで、これらのネクチン-4:OX40化合物は、ネクチン-4陽性4T1-D02細胞と共培養したとき、OX40L及び非結合対照ペプチドBCY12968と比較して、強力なOX40アゴニズムを示した。
【0168】
代わりの実施態様において、癌細胞上に存在する構成要素は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)である。さらなる実施態様において、第二のペプチドリガンドは、PSMA結合二環式ペプチドリガンドを含む。
【0169】
(リンカー)
OX40ペプチドリガンドは、任意の好適なリンカーを介して、第二のペプチドリガンドにコンジュゲートすることができることが理解されるであろう。典型的には、該リンカーの設計は、2つの二環式ペプチドが、単独で、又は両方の標的受容体に同時に結合しながら、そのそれぞれの標的に邪魔されずに結合することができるような形で提示されるようなものとする。さらに、リンカーは、両方の標的に同時に結合することを可能にする一方で、所望の機能的結果をもたらす標的細胞間の適切な距離を維持するべきである。リンカーの性質は、所望の機能的結果を最適化するために、長さ、剛性、又は可溶性を増大させるように調節することができる。リンカーは、同じ標的への複数の二環の結合を可能にするように設計することもできる。いずれかの結合ペプチドの価数を増大させることは、標的細胞に対するヘテロタンデムの親和性を増大させる役割を果たし得るか、又は標的受容体のうちの一方もしくは両方のオリゴマー化を誘導するのに役立ち得る。
【0170】
一実施態様において、リンカーは、以下の配列: -CH2-、-PEG5-、-PEG10-、-PEG12-、-PEG23-、-PEG24-、-PEG15-Sar5-、-PEG10-Sar10-、-PEG5-Sar15-、-PEG5-Sar5-、-B-Ala-Sar20-、-B-Ala-Sar10-PEG10-、-B-Ala-Sar5-PEG15-、及び-B-Ala-Sar5-PEG5-から選択される。
【0171】
好適なリンカーの構造的表示は、以下で詳述されている:
【化39】
。
【0172】
一実施態様において、リンカーは、一方の末端の1つの第一のペプチド及びもう一方の末端の2以上の第二のペプチドを可能にする分岐リンカーである。
【0173】
さらなる実施態様において、分岐リンカーは、
【化40】
:から選択される。
【0174】
さらなる実施態様において、リンカーは、N3-PEG5-COOH、N3-PEG12-COOH、及びN-(酸-PEG3)-N-ビス(PEG3-アジド)から選択される。
【0175】
(合成)
本発明のペプチドは、標準的な技法によって合成的に製造した後、インビトロで分子スキャフォールドと反応させることができる。これを実施する場合、標準的な化学を使用することができる。これにより、さらなる下流での実験又は検証のための可溶性材料の迅速な大規模調製が可能になる。そのような方法は、Timmermanらの文献(上記)に開示されているもののような従来の化学を用いて達成され得る。
【0176】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されているように選択されるポリペプチド又はコンジュゲートの製造に関するものであり、ここで、該製造は、以下に説明されるような任意のさらなる工程を含む。一実施態様において、これらの工程は、化学合成によって作られた最終生成物のポリペプチド/コンジュゲートに対して実施される。
【0177】
任意に、対象となるポリペプチド中のアミノ酸残基は、コンジュゲート又は複合体を製造するときに置換されてもよい。
【0178】
ペプチドを伸長させて、例えば、別のループを組み込み、それゆえ、複数の特異性を導入することもできる。
【0179】
ペプチドを伸長させるために、それは、単純に、標準的な固相又は液相化学を用いて、直交保護されたリジン(及び類似体)を用いて、そのN-末端もしくはC-末端で又はループ内で化学的に伸長されてもよい。標準的な(バイオ)コンジュゲーション技法を用いて、活性化された又は活性化可能なN-又はC-末端を導入してもよい。或いは、付加は、例えば、(Dawsonらの文献、1994、ネイティブケミカルライゲーションによるタンパク質の合成(Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation). Science 266:776-779)に記載されている断片縮合もしくはネイティブケミカルライゲーションによるか、又は例えば(Changらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Dec 20; 91(26):12544-8もしくはHikariらの文献、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第18巻、第22号、2008年11月15日、6000~6003頁)に記載されているサブチリガーゼを用いて、酵素により行われてもよい。
【0180】
或いは、ペプチドは、ジスルフィド結合を介するさらなるコンジュゲーションによって伸長又は修飾されてもよい。これは、第一及び第二のペプチドが細胞の還元環境内で互いに解離することを可能にするという追加の利点を有する。この場合、分子スキャフォールド(例えば、TATA)は、3つのシステイン基と反応するように第一のペプチドの化学合成の間に付加されることができ;その後、さらなるシステイン又はチオールが第一のペプチドのN又はC-末端に付加されることができ、その結果、このシステイン又はチオールが第二のペプチドの遊離のシステイン又はチオールとのみ反応して、ジスルフィド結合した二環式ペプチド-ペプチドコンジュゲートを形成した。
【0181】
同様の技法は、四重特異性分子を潜在的に生じさせる、2つの二環式二重特異性大環状分子の合成/カップリングに同等に適用される。
【0182】
さらに、他の官能基又はエフェクター基の付加は、適切な化学を用いて、N-もしくはC-末端で、又は側鎖を介してカップリングさせて、同じ方法で達成されてもよい。一実施態様において、カップリングは、いずれかの実体の活性を遮断しないような方法で実行される。
【0183】
(薬物コンジュゲート)
本発明のさらなる態様によれば、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた本明細書で定義されるペプチドリガンド又は多量体結合複合体を含む薬物コンジュゲートが提供される。
【0184】
エフェクター及び/又は官能基は、例えば、ポリペプチドのN及び/もしくはC末端に、ポリペプチド内のアミノ酸に、又は分子スキャフォールドに取り付けることができる。
【0185】
適切なエフェクター基は、抗体及びその部分又は断片を含む。例えば、エフェクター基は、1以上の定常領域ドメインの他に、抗体軽鎖定常領域(CL)、抗体CH1重鎖ドメイン、抗体CH2重鎖ドメイン、抗体CH3重鎖ドメイン、又はこれらの任意の組合せを含むことができる。エフェクター基は、抗体のヒンジ領域(IgG分子のCH1ドメインとCH2ドメインの間に通常見られるそのような領域)を含み得る。
【0186】
本発明のこの態様のさらなる実施態様において、本発明によるエフェクター基は、IgG分子のFc領域である。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基は、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、もしくは7日以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合体を含むか、又はそれからなるものである。最も有利には、本発明によるペプチドリガンドは、1日以上の半減期を有するペプチドリガンドFc融合体を含むか、又はそれからなる。
【0187】
官能基としては、一般に、結合基、薬物、他の実体の取付けのための反応基、大環状ペプチドの細胞への取込みを補助する官能基などが挙げられる。
【0188】
ペプチドが細胞内に透過する能力は、細胞内標的に対するペプチドが効果的になることを可能にする。細胞内に透過する能力を有するペプチドによりアクセスされ得る標的としては、転写因子、チロシンキナーゼなどの細胞内シグナル伝達分子、及びアポトーシス経路に関与する分子が挙げられる。細胞の透過を可能にする官能基としては、ペプチド又はペプチドもしくは分子スキャフォールドのいずれかに付加された化学基が挙げられる。例えば、Chen及びHarrisonの文献、Biochemical Society Transactions(2007)、第35巻、第4部、821頁; Guptaらの文献、Advanced Drug Discovery Reviews(2004)、第57巻、9637に記載されている、例えば、VP22、HIV-Tat、ショウジョウバエのホメオボックスタンパク(アンテナペディア)などに由来するものなどのペプチド。細胞膜を通る移動に効率が良いことが示されている短いペプチドの例としては、ショウジョウバエのアンテナペディアタンパク質由来の16アミノ酸のペネトラチンペプチド(Derossiらの文献(1994) J Biol. Chem. 第269巻、10444頁)、18アミノ酸の「モデル両親媒性ペプチド」(Oehlkeらの文献(1998) Biochim Biophys Acts、第1414巻、127頁)、HIV TATタンパク質のアルギニンリッチ領域が挙げられる。非ペプチド性アプローチとしては、生体分子に容易に取り付けることができる低分子模倣物又はSMOCの使用が挙げられる(Okuyamaらの文献(2007) Nature Methods、第4巻、153頁)。分子にグアニジニウム基を付加する他の化学的戦略も、細胞透過を増強する(Elson-Scwabらの文献(2007) J Biol Chem、第282巻、13585頁)。ステロイドなどの低分子量の分子を分子スキャフォールドに付加して、細胞への取込みを増強することができる。
【0189】
ペプチドリガンドに取り付けることができる官能基の1つのクラスとしては、抗体及びその結合断片、例えば、Fab、Fv、又は単一ドメイン断片が挙げられる。特に、ペプチドリガンドの半減期をインビボで増加させることができるタンパク質に結合する抗体を使用することができる。
【0190】
一実施態様において、本発明によるペプチドリガンドエフェクター基は: 12時間以上、24時間以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、11日以上、12日以上、13日以上、14日以上、15日以上、又は20日以上からなる群から選択されるtβ半減期を有する。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基又は組成物は、12時間~60時間の範囲のtβ半減期を有する。さらなる実施態様において、それは、1日以上のtβ半減期を有する。なおさらなる実施態様において、それは、12~26時間の範囲である。
【0191】
本発明の1つの特定の実施態様において、官能基は、医薬関連の金属放射性同位体を錯化させるのに好適である金属キレート剤から選択される。
【0192】
可能なエフェクター基としては、例えば、ペプチドリガンドがADEPTにおいて抗体の代わりになる酵素/プロドラッグ療法において使用するためのカルボキシペプチダーゼG2などの酵素も挙げられる。
【0193】
一実施態様において、本発明の多量体結合複合体は、ジスルフィド結合又はプロテアーゼ感受性結合などの切断可能な結合を含有する。理論によって束縛されるものではないが、そのような切断可能な部分は、それが腫瘍微小環境に達するまで、該複合体を失活させると考えられる。この実施態様の利益は、標的への結合後にサイズが低下することになる複合体をもたらす。さらなる実施態様において、ジスルフィド結合に隣接する基は、ジスルフィド結合の障害、並びにこれにより、結合剤の切断及びそれに付随する放出の速度を制御するように修飾される。
【0194】
発表された研究により、ジスルフィド結合のどちらかの側に立体障害を導入することにより、還元に対するジスルフィド結合の感受性を修飾する可能性が確立された(Kelloggらの文献(2011) Bioconjugate Chemistry, 22, 717)。より大きい程度の立体障害は、細胞内グルタチオン、そしてまた細胞外(全身)還元剤による還元の速度を低下させ、結果的に、細胞の内側と外側の両方において、毒素が放出される容易さを低下させる。したがって、細胞内環境における効率的な放出(これは、治療効果を最大化する)の最適化と対比した循環中のジスルフィド安定性(これは、毒素の望ましくない副作用を最小化する)における最適条件の選択は、ジスルフィド結合のどちらかの側における障害の程度の注意深い選択によって達成することができる。
【0195】
ジスルフィド結合のどちらかの側における障害は、標的化実体(ここでは、二環式ペプチド)に1以上のメチル基を導入することにより調節される。
【0196】
(医薬組成物)
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンド、多量体結合複合体、又は薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0197】
通常、本ペプチドリガンドは、薬理学的に適切な賦形剤又は担体と一緒に精製された形態で利用される。典型的には、これらの賦形剤又は担体は、生理食塩水及び/又は緩衝化媒体を含む、水性もしくはアルコール/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、並びに乳酸加リンガーが挙げられる。生理的に許容し得る好適なアジュバントは、ポリペプチド複合体を懸濁状態に保つために必要な場合、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、及びアルギネートなどの増粘剤から選択されてもよい。
【0198】
静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充液及び電解質補充液、例えば、リンガーデキストロースに基づくものが挙げられる。また、防腐剤並びに他の添加物、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスが存在してもよい(Mackの文献(1982)、レミントンの医薬品化学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版)。
【0199】
本発明のペプチドリガンドは、別々に投与される組成物として、又は他の薬剤と併せて使用されてもよい。これらとしては、抗体、抗体断片、並びに様々な免疫療法薬、例えば、シクロスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシン、又はシスプラチン、及び免疫毒素を挙げることができる。医薬組成物は、本発明のタンパク質リガンドと併せた様々な細胞毒性剤もしくは他の薬剤の「カクテル」、又は投与前にプールされているか、プールされていないかを問わず、異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなどの、異なる特異性を有する本発明による選択されたポリペプチドの組合せさえも含むことができる。
【0200】
本発明による医薬組成物の投与の経路は、当業者に一般的に公知の任意のものであってもよい。療法のために、本発明のペプチドリガンドは、標準的な技法に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、肺経路を介するもの、又は同じく適切に、カテーテルを用いる直接注入によるものを含め、任意の適切な様式によるものであることができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、吸入によって投与される。投薬量及び投与の頻度は、患者の年齢、性別、及び状態、他の薬物の同時的な投与、禁忌、並びに臨床医によって考慮される他のパラメーターによって決まる。
【0201】
本発明のペプチドリガンドは、保存用に凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。この技法は、効果的であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥及び再構成技法を利用することができる。凍結乾燥及び再構成は様々な程度の活性損失をもたらし得ること、及び補償するために、レベルを上方に調整する必要があり得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0202】
本発明のペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。特定の治療用途において、選択される細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅化、又は何らかの他の測定可能なパラメーターを達成するために十分な量は、「治療有効用量」として定義される。この投薬量を達成するために必要とされる量は、疾患の重症度及び患者自身の免疫系の全般的な状態によって決まるが、概ね、体重1キログラム当たり0.005~5.0mgの選択されるペプチドリガンドの範囲であり、0.05~2.0mg/kg/の用量がより一般的に使用される。予防用途のために、本ペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物はまた、同様の又はわずかに少ない投薬量で投与されてもよい。
【0203】
本発明によるペプチドリガンドを含有する組成物を予防的及び治療的な設定で利用して、哺乳動物における選択標的細胞集団の変化、不活性化、死滅化、又は除去を助けることができる。さらに、本明細書に記載されるペプチドリガンドを体外で又はインビトロで選択的に用いて、細胞の異成分集合体から標的細胞集団を死滅させるか、枯渇させるか、又は他の形で効果的に除去することができる。哺乳動物由来の血液を選択されたペプチドリガンドと体外で組み合わせることができ、それにより、標準的な技法に従って哺乳動物に戻すために、望ましくない細胞を死滅させるか、又は別の形で血液から除去する。
【0204】
(治療的使用)
本発明の二環式ペプチドは、OX40結合剤としての具体的な有用性を有する。本発明のさらなる態様によれば、OX40によって媒介される疾患又は障害を予防、抑制、又は治療する際に使用するための本明細書で定義されるペプチドリガンド、多量体結合複合体、薬物コンジュゲート、又は医薬組成物が提供される。
【0205】
OX40受容体(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー4(TNFRSF4)としても知られ、CD134受容体としても知られる)は、CD28とは異なり、休止期のナイーブT細胞上で構成的には発現されないTNFRスーパーファミリーの受容体のメンバーである。OX40は、活性化から24~72時間後に発現される二次的な共刺激免疫チェックポイント分子であり;そのリガンドOX40Lも、休止期の抗原提示細胞上で発現されるのではなく、その活性化後に発現される。OX40の発現は、T細胞の完全な活性化に依存し; CD28がなければ、OX40の発現は遅延し、4倍低いレベルとなる。
【0206】
OX40は、最初の3日間はCD4+細胞の増殖能力に対して効果がないが、この時間の後、増殖が遅延し始め、高レベルのPKB活性とBcl-2、Bcl-XL、及びサバイビンの発現とを維持することができないために、細胞は、大きい割合で死滅する。OX40Lは、T-細胞上のOX40受容体に結合し、T-細胞が死滅するのを妨げ、その後、サイトカイン産生を増大させる。OX40は、生存を増強するその能力により、最初の数日を過ぎて、メモリー応答に向かう免疫応答の維持において極めて重要な役割を有する。OX40は、インビボでのTh1媒介性反応とTh2媒介性反応の両方においても極めて重要な役割を有する。
【0207】
OX40は、未知の機能によってTRAF2、3、及び5並びにPI3Kに結合する。TRAF2は、NF-κBを介する生存及びメモリー細胞発生に必要とされるが、TRAF5は、ノックアウト体がより高いレベルのサイトカインを有し、Th2媒介性炎症により罹患しやすいので、よりマイナスの又は調節的な役割を有するように思われる。TRAF3 は、OX40媒介性シグナル伝達において極めて重要な役割を有し得る。CTLA-4は、インビボでのOX40エンゲージメント後に下方調節され、OX40特異的TRAF3 DN欠損は、インビボでのCTLA-4遮断によって部分的に克服された。TRAF3は、OX40媒介性メモリーT細胞拡大及び生存と関連し、CTLA-4の下方調節がOX40シグナル伝達を介して初期T細胞拡大を増強するための考えられる制御エレメントとなることを提示し得る。
【0208】
一実施態様において、OX40は、哺乳動物OX40である。さらなる実施態様において、哺乳動物OX40は、ヒトOX40(hOX40)である。
【0209】
OX40ペプチドは、OX40、及び結果的に、免疫細胞を作動性に活性化して、癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含む乳癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、尿路上皮癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、黒色腫、膵臓癌、及び免疫抑制が抗腫瘍免疫を遮断する他の進行性固形腫瘍などの固形腫瘍を含む、初期又は末期のヒト悪性腫瘍を予防、抑制、又は治療するために、主に(しかし、排他的にではなく)使用される。OX40ペプチドが治療剤として使用される他の固形及び非固形悪性腫瘍としては、低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫を含むB-細胞リンパ腫及び急性骨髄性白血病(AML)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
この実施態様における固形腫瘍という用語への本明細書における言及は、その中に多くの液体塊を有さない組織の異常増殖と定義されるが、非固形腫瘍は、何らかの又は顕著な固体塊を有さない全身に分散される癌である。固形腫瘍の例は、癌腫、肉腫、及びリンパ腫である。急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性(又はリンパ芽球性)白血病(ALL)などの血液癌(白血病)は、非固形腫瘍である。OX40ペプチドは、CD4、CD8 T細胞、及びNK細胞媒介性抗腫瘍免疫並びに腫瘍細胞の免疫細胞媒介性死滅化を亢進させるために、前述の癌適応で単独療法剤として使用される。さらに、癌における単独療法剤として使用するために、OX40ペプチド及び腫瘍標的化ヘテロタンデムなどのそのコンジュゲートは、限定されないが、例えば抗PD-1及び抗CTLA4を含む、他の免疫療法剤と組み合わせて使用される。OX40ペプチドのさらなる治療適用としては、単独免疫療法又は放射線癌治療を伴う併用免疫療法、及び癌ワクチンが挙げられるが、これらに限定されない。単独療法としてか又は抗PD-1などの他の免疫調節薬と組み合わせてかのいずれかのOX40ペプチドの非癌性治療適用としては、限定されないが、HIV及びHPVなどのウイルス感染症が挙げられる。
【0211】
癌細胞上に存在する構成要素に結合する少なくとも1つのペプチドリガンドを含む本明細書で定義される多量体結合複合体は癌の治療において有用であることが理解されるであろう。
【0212】
「予防」という用語への本明細書における言及は、疾患の誘導前の防御的な組成物の投与を含む。「抑制」は、誘導性事象の後であるが、疾患の臨床的出現の前の組成物の投与を指す。「治療」は、疾患症状が顕在化した後の防御的な組成物の投与を含む。
【0213】
疾患からの防御又は疾患の治療におけるペプチドリガンドの有効性をスクリーニングするために使用することができる動物モデル系が利用可能である。動物モデル系の使用は、ヒト及び動物の標的と交差反応することができるポリペプチドリガンドの開発を可能にする本発明によって促進され、動物モデルの使用が可能になる。
【0214】
本発明を、以下の実施例を参照して、以下でさらに説明する。
【実施例】
【0215】
(実施例)
(材料及び方法)
(単量体ペプチド合成)
単量体ペプチド合成は、Peptide Instrumentsにより製造されたSymphonyペプチド合成装置及びMultiSynTech製のSyro II合成装置を用いるFmoc化学に基づいた。標準的なFmoc-アミノ酸(Sigma, Merck)を適切な側鎖保護基とともに利用し:適用可能な場合、標準的なカップリング条件を各々の場合に使用し、その後、標準的な方法論を用いて、脱保護を行った。HPLCを用いてペプチドを精製し、単離後、これを1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン(TATA、Sigma)で修飾した。このために、直鎖状ペプチドを50:50のMeCN:H2Oで約35mLまで希釈し、アセトニトリル中の約500μLの100mM TATAを添加し、H2O中の5mLの1M NH4HCO3で反応を開始させた。反応をRTで約30分から60分間進行させておき、(MALDI-MSにより判断して)反応が終了したら、凍結乾燥させた。終了したら、H2O中の1mlの1M L-システイン塩酸塩一水和物(Sigma)を反応液にRTで約60分間添加して、余分なTATAをクエンチした。
【0216】
凍結乾燥後、修飾されたペプチドを上記のように精製し、一方、Luna C8をGemini C18カラム(Phenomenex)と交換し、酸を0.1%トリフルオロ酢酸に変更した。正しいTATA修飾材料を含有する純粋な画分をプールし、凍結乾燥させ、保存のために-20℃で保持した。
【0217】
別途特記しない限り、アミノ酸は全て、L-立体配置で使用した。
【0218】
(多量体結合複合体合成)
本明細書に記載される多量体結合複合体は、国際特許出願番号PCT/GB2019/050485号(WO 2019/162682号)に記載されている方法と類似の方法で調製することができる。
【0219】
(BCY12019の調製)
【化41】
化合物1(PCT/GB2019/050485号(WO 2019/162682号)に記載されている; 10mg、2.11μmol、1.0当量)、BCY11607(18.5mg、8.63μmol、4.1当量)、及びTHPTA(3.7mg、8.42μmol、4.0当量)の混合物をt-BuOH/H
2O(1:1、2mL、予め脱気し、N
2で3回パージした)に溶解させた。CuSO
4(21.0μL、0.4M、4.0当量)及びアスコルビン酸ナトリウム(42.0μL、0.4M、8.0当量)をN
2下で添加した。0.2M NH
4HCO
3(1:1 t-BuOH/H
2O中)の滴加により、この溶液のpHを8に調整した。反応混合物を40℃で4時間撹拌し、この時、LC-MSにより、化合物1が完全に消費されたことが示され、所望のm/z(計算MW: 13347.41、観測m/z: 1213.83([M/11+H]
+)を有する1つの主ピークが検出された。反応混合物を減圧下で濃縮して、溶媒を除去し、分取HPLC(TFA条件)により精製すると、BCY12019(8.2mg、0.54μmol、25.9%収率、88.8%純度)が白色の固体として得られた。
【0220】
(ヘテロタンデム結合複合体合成)
本明細書に記載されるヘテロタンデム結合複合体は、国際特許出願番号PCT/GB2019/050951号(WO2019/193328号)に記載されている方法と類似の方法で調製することができる。
【0221】
(BCY12141の調製)
(BCY8116-PEG12-N
3の調製の手順)
【化42】
BCY8116(20.0mg、9.21μmol、1.0当量)及び化合物1(11.0mg、14.85μmol、1.6当量)をDMF(1mL)に溶解させ、DIEAを添加し(2.97mg、22.96μmol、4.0μl、2.5当量)、混合物をrtで2時間撹拌した。LC-MSにより、BCY8116が完全に消費されたことが示され、所望のm/z(計算MW: 2798.19、観測m/z: 1399.1([M/2+H]
+))を有する1つの主ピークが検出された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製し、化合物2(18.0mg、6.09μmol、66.13%収率、94.64%純度)が白色の固体として得られた。
スペクトル:
【0222】
(BCY12141の調製の手順)
【化43】
化合物2(10.0mg、3.57μmol、1.0当量)及びBCY11607(8.0mg、3.72μmol、1.0当量)を2mLのt-BuOH/H
2O(1:1)に溶解させ、CuSO
4(0.4M、9.0μL、1.0当量)、アスコルビン酸ナトリウム(1.0mg、5.04μmol、1.4当量)、及びTHPTA(1.4mg、3.22μmol、1.0当量)を添加し、1M NH
4HCO
3を添加して、pHを8に調整した。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、所望のm/z(計算MW: 4947.65、観測m/z: 1237.78([M/4+H]
+))を有する1つの主ピークが示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製し、BCY12141(8.8mg、1.65μmol、46.18%収率、92.78%純度)が白色の固体として得られた。
【0223】
(BCY12967の調製)
【化44】
【化45】
化合物1(BCY8116の3官能性PEG3誘導体; 20.0mg、7.20μmol、1.0当量)及びBCY11607(32.0mg、14.9μmol、2.1当量)を2mLのt-BuOH/H
2O(1:1)に最初に溶解させ、その後、CuSO
4(0.4M、36.0μL、2.0当量)、VcNa(6.0mg、30.3μmol、4.2当量)、及びTHPTA(6.4mg、14.7μmol、2.0当量)を添加した。最後に、1M NH
4HCO
3を添加して、pHを8に調整した。全ての溶媒を脱気し、N
2で3回パージした。反応混合物を、N
2雰囲気下、40℃で16時間撹拌した。LC-MSにより、化合物2が完全に消費されたことが示され、所望のm/z(計算MW: 7077.7、観測m/z: 1416.3([M/5+H]
+)、1180.4([M/6+H]
+)、1011.9([M/7+H]
+))を有する1つの主ピークが示された。反応混合物を分取HPLC(TFA条件)により精製し、BCY12967(20.6mg、2.82μmol、39.17%収率、96.82%純度)が白色の固体として得られた。
【0224】
(BCY12721の調製)
BCY12721は、BCY12141、BCY12967、及びBCY12968について本明細書に記載された手順と類似の手順に従って調製することができる。
【0225】
(生物学的データ)
(Promega OX40細胞活性アッセイ)
Promegaは、NF-κBルシフェラーゼ発光をJurkat細胞におけるOX40活性化の読み出しとして使用するOX40細胞活性アッセイを開発した(Promega CS197704)。実験当日、FBSを解凍し、5%FBSをRPMI-1640に添加することにより、培地を調製する。OX40 Jurkat細胞を水浴中で解凍し、その後、500μlの細胞を11.5mlの予め温めた5%FBS RPMI-1640培地に添加する。60μl細胞/ウェルを白色の細胞培養プレートに添加する。次に、最大倍率の誘導を与える濃度でアゴニストを希釈し、その後、滅菌96ウェルプレート中で量を漸減させる。ストレプトアビジン結合四量体についての提案された出発濃度は、4×1μM(1μMビオチン-ペプチド: 0.25μMストレプトアビジン)又は合成多量体などの強いアゴニストについての4×100nMである。2連の試料に十分な試薬を調製し、その後、1/3希釈系列又は1/10希釈系列を実施する。陽性対照のOX40L三量体(R&D systems # 1054-OX-010)及び陰性対照の単量体ペプチドを含める。2連の試料としての20μlのアゴニスト又はバックグラウンド対照としての5%FBS RPMI-1640のみを追加する。
【0226】
細胞をアゴニストと一緒に、37℃、5%CO2で5時間、共インキュベートする。5時間後、Bio-Glo(商標)を解凍し、アッセイを室温で展開させる。ウェル当たり80μlのBio-Glo(商標)を添加し、5~10分間インキュベートする。ルシフェラーゼシグナルを、MARSプログラムを用いてCLARIOStarプレートリーダーで読み取り、バックグラウンド(培地のみ)に対する誘導倍率を正規化する。データをx=log(X)に変換することにより、データを分析し、その後、log(アゴニスト)対応答変数勾配(4パラメータ)をプロットして、EC50値を計算する。
【0227】
このアッセイの結果は、表2に示されており、ここで、全ての被験化合物がOX40の良好なアゴニズムを示し、特に、BCY10551、BCY11371、及びBCY10549が、四量体フォーマットでストレプトアビジンに結合したときに、特に高いレベルのアゴニズムを示したことを理解することができる。さらに、合成多量体四価化合物BCY12019は、四量体フォーマットでストレプトアビジンに結合している対応する単量体(BCY10549)よりもほぼ10倍大きいアゴニズムを示した。
表2: Promega OX40細胞活性アッセイから得たEC
50値
【表2】
【0228】
図1にも、PromegaのOX40レポーター細胞アッセイのデータが示されている。このアッセイにおけるBCY10549は、ストレプトアビジンへの結合によって四価アゴニストへと会合するビオチン化モノマーである。OX40Lは、OX40アゴニスト活性の陽性対照として使用される。合成OX40四量体BCY12019は、強力なOX40アゴニズムを示し、EC
50は、Promegaレポーター細胞アッセイで低ナノモル濃度の範囲であった。ストレプトアビジンによるビオチン化BCY10549ペプチドの架橋は、生物学的に活性のある複合体を生成させたが、ストレプトアビジンに結合していない単量体ペプチドは、不活性であった。
【0229】
(腫瘍細胞との共培養下のPromega OX40細胞活性アッセイ)
Promegaは、NF-κBルシフェラーゼ発光をJurkat細胞におけるOX40活性化の読み出しとして使用するOX40細胞活性アッセイを開発した(Promega CS197704)。実験当日、FBSを解凍し、5%FBSをRPMI-1640に添加することにより、培地を調製する。OX40 Jurkat細胞を水浴中で解凍し、その後、500μlの細胞を11.5mlの予め温めた5%FBS RPMI-1640培地に添加する。55μl細胞/ウェルを白色の細胞培養プレートに添加する。腫瘍細胞を培養物から回収する。4T1は、ネクチン-4陰性マウス乳腺上皮癌細胞である。これを、細胞表面でマウスネクチン-4を発現するように遺伝子改変した(4T1ネクチン-4陽性;クローン4T1-D02)。腫瘍細胞を、10%熱非働化FBS、1×ペニシリン/ストレプトマイシン、1×L-グルタミン、20mM HEPES、及び1×NEAAが補充されたRPMI1640培地(RPMI作業培地)中、80%コンフルエンシーまでインビトロで培養した。腫瘍細胞をトリプシン処理し、予め37℃に温めたRPMI1640作業培地中、1500rpmで5分間、2回洗浄した。細胞をカウントし、(10,000細胞/ウェルにするため)2,000,000細胞/mLでR5培地に再懸濁させる。ウェル当たり5μLの腫瘍細胞を添加する。
【0230】
次に、最大倍率の誘導を与える濃度でアゴニストを希釈し、その後、滅菌96ウェルプレート中で量を漸減させる。2連の試料に十分な試薬を調製し、その後、1/3希釈系列又は1/10希釈系列を実施する。陽性対照のOX40L三量体(AcroBiosystems, R&D systems)及び陰性対照の単量体又は非結合ペプチドを含める。2連の試料としての20μlのアゴニスト又はバックグラウンド対照としての5%FBS RPMI-1640のみを追加する。
【0231】
細胞をアゴニストと一緒に、37℃、5%CO2で6時間、共インキュベートする。6時間後、Bio-Glo(商標)を解凍し、アッセイを室温で展開させる。ウェル当たり80μlのBio-Glo(商標)を添加し、5~10分間インキュベートする。ルシフェラーゼシグナルを、MARSプログラムを用いてCLAIROStarプレートリーダーで読み取り、バックグラウンド(培地のみ)に対する誘導倍率を正規化する。データをx=log(X)に変換することにより、データを分析し、その後、log(アゴニスト)対応答変数勾配(4パラメータ)をプロットして、EC50値を計算する。
【0232】
このアッセイの結果は、表3及び
図3に示されており、ここで、BCY12141、BCY12721、及びBCY12967ネクチン-4:OX40化合物が、ネクチン-4陽性4T1-D02細胞と共培養したとき、OX40L及び非結合対照ペプチドBCY12968と比較して、強力なOX40アゴニズムを示したことを理解することができる。
表3:腫瘍細胞との共培養下のPromega OX40細胞活性アッセイから得たEC
50値
【表3】
【0233】
(インビトロでネクチン-4-OX40ヘテロタンデムを試験するためのヒトPBMC-腫瘍細胞共培養アッセイ)
ネクチン-4陰性マウス乳腺上皮癌細胞の4T1(4T1ネクチン-4陰性; 4T1-親)及び細胞表面でマウスネクチン-4を発現するその遺伝子改変バージョン(4T1ネクチン-4陽性;クローン4T1-D02)を、10%熱非働化FBS、1×ペニシリン/ストレプトマイシン、1×L-グルタミン、20mM HEPES、及び1×NEAAが補充されたRPMI1640培地(RPMI作業培地)中、80%コンフルエンシーまでインビトロで培養した。腫瘍細胞をトリプシン処理し、予め37℃に温めたRPMI1640作業培地中、1500rpmで5分間、2回洗浄した。25μl中の4000個の腫瘍細胞を滅菌384ウェル細胞培養プレート中のウェル毎にプレーティングした。凍結ヒトPBMCを解凍し、予め温めたRPMI1640作業培地中、1250rpmで5分間、1回洗浄した。250ng/ml(2×濃度)のヒト抗CD3(クローンOKT3)及び500ng/ml(2×濃度)のヒト抗CD28(クローンCD28.2)が補充された50μlのRPMI1640作業培地中の20000個の生きたPBMCを、25μlの培地中に腫瘍細胞を含有するそれぞれのウェル毎に添加して、腫瘍細胞及びPBMCに対して1:10の比を得た。DMSO中の試験化合物をRPMI1640作業培地に希釈した。等量のDMSOをアッセイ対照に添加した。試験化合物を、最終100μlの容量になるように、125ng/mlの抗CD3、250ng/mlの抗CD28、4000個の腫瘍細胞、及び20000個のPBMCとともに、75μl中の細胞に添加した。アッセイプレートの外側のウェルを試験から除外し、RPM1640作業培地を充填した。アッセイ対照には、抗CD3及び抗CD28のみで処理した細胞又は試験化合物及びヒトPBMCと共培養したネクチン-4陰性腫瘍細胞が含まれる。アッセイプレートを湿潤チャンバーの内部で最大72時間インキュベートした。処理から48時間後に培養上清を回収し、HTRFアッセイ(CIS Bio)を用いて、IL-2の濃度を測定した。GraphPad Prismを用いて、データを分析した。
【0234】
PBMC-腫瘍細胞共培養アッセイの結果は、
図2に示されている。マウスネクチン4を発現しない又は安定に発現するマウス4T1腫瘍細胞を、BCY12141あり又はなしで、ヒトPBMC並びに抗CD3及び抗CD28刺激とともに、48時間共培養した。その後、HTRFを用いて、サイトカインIL-2の濃度をアッセイした。OX40-ネクチン-4二重特異性ヘテロタンデムBCY12141は、ネクチン-4を発現する4T1細胞の存在下で、ヒトPBMCによるサイトカインIL-2の産生を誘導した。4T1細胞でのネクチン-4発現が存在しないとき、IL-2レベルは、対照ベースラインCD3+CD28刺激と同程度であった。これは、OX40-ネクチン-4二重特異性分子BCY12141が、ネクチン-4を発現する細胞の存在下でのみ、ヒトPBMCで免疫応答を誘導することができることを示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】