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特表2022-532148処理対象となる被加工物を保持するための可動被加工物キャリア装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】処理対象となる被加工物を保持するための可動被加工物キャリア装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20220706BHJP
【FI】
C23C14/50 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566310
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2020062768
(87)【国際公開番号】W WO2020225385
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】102019111777.1
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051691
【氏名又は名称】エリコン・サーフェス・ソリューションズ・アクチェンゲゼルシャフト,プフェフィコーン
【氏名又は名称原語表記】OERLIKON SURFACE SOLUTIONS AG, PFAEFFIKON
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベーエンベルガー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】クラスニッツァー,ジークフリート
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA05
4K029JA03
(57)【要約】
真空処理システムの真空チャンバに導入されることとなる被加工物キャリア装置であって、-直径dXを有する1つのカルーセルXと、-カルーセルX上に設置可能である、直径dYm<dを有する1つまたは複数のカルーセルYと、-1つまたは複数のカルーセルY上に設置可能である、直径dZn≦dmを有する1つまたは複数の被加工物支持部Zと、-2つのアクチュエータA1およびA2と、を備える、被加工物キャリア装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理システムの真空チャンバに導入されることとなる処理可能な被加工物を保持するための被加工物キャリア装置であって、
-直径(d)を有する1つのカルーセル(X)と、
-カルーセル(X)上に設置可能である、直径(dYm<d)を有する1つまたは複数のカルーセル(Y)と、
-前記1つまたは複数のカルーセル(Y)上に設置可能である、直径(dZn≦dYm)を有する1つまたは複数の被加工物支持部Zと、
-第1のアクチュエータ(A1)および第2のアクチュエータ(A2)と、を備え、
前記アクチュエータ(A1),(A2)とカルーセル(X)および(Y)との間における強制接続が、前記システムの少なくとも2つの動作モードを可能とするように、ギア機構を用いて導入され、
-モード1、アクチュエータ(A1)は動力供給され、アクチュエータ(A2)は動力供給されず、カルーセル(X)のその中心回転軸(R)を中心とした回転をもたらす、
-モード2、アクチュエータ(A1)は動力供給されず、アクチュエータ(A2)は動力供給され、カルーセル(Y)のそれらの中心回転軸(RYm)を中心とした回転をもたらすとともに、カルーセル(X)が所定位置にとどまる
を特徴とする、被加工物キャリア装置。
【請求項2】
前記カルーセル(X)は、カルーセル(X)の表面の面積がA=π・(d/2)によって定義されるように、実質的に円形状であることを特徴とする、請求項1に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項3】
前記カルーセル(X)および前記少なくとも1つのカルーセル(Y)は、第3のギア機構を介して接続され、前記被加工物キャリア装置がモード1で動作されるとき、前記少なくとも1つのカルーセル(Y)が前記第3のギア機構を介して回転運動を開始することを特徴とする、請求項1または2に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項4】
前記第1のアクチュエータ(A1)は第1のギア機構を介して前記中央カルーセル(X)に接続され、前記第2のアクチュエータ(A2)は第2のギア機構を介して前記少なくとも1つの外縁カルーセル(Y)に接続されることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項5】
前記第1のアクチュエータ(A1)および/または前記第2のアクチュエータ(A2)は電気機械アクチュエータとして設計され、回転運動は、好ましくは、前記アクチュエータ(A1)および/または(A2)に制御電圧を印加することによって、前記軸(R)および/または(RYm)を中心として生成されることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項6】
前記装置は、1mbar未満、好ましくは0.1mbar未満、特には0.001mbar未満の圧力条件で使用可能であることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項7】
前記カルーセル(X)、および/または、前記1つまたは複数のカルーセル(Y)、および/または、前記1つまたは複数の被加工物支持部(Z)は、実質的に平面形状である、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項8】
前記1つまたは複数のカルーセル(Y)は完全に前記第1のカルーセル(X)の領域内に配置され、および/または、前記1つまたは複数の被加工物支持部(Z)は完全に前記1つまたは複数のカルーセル(Y)の領域内に配置され、前記カルーセル(Y)は、好ましくは、上方から見たときに前記カルーセル(Y)および(X)の縁が重なるように、カルーセル(X)の外縁に設置されることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項9】
前記第1のアクチュエータ(A1)および/または前記第2のアクチュエータ(A2)は、前記カルーセル(X)の下方、前記被加工物のための配置領域の反対側に配置されることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項10】
前記回転の軸(R)および(RYm)は、互いに平行に位置合わせされることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項11】
前記カルーセル(X),(Y)および(Z)は、互いに平行に位置合わせされ、好ましくは同時に前記回転の軸(R)および(RYm)に垂直に位置合わせされることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項12】
前記カルーセル(X)および前記1つまたは複数のカルーセル(Y)は、時計回りまたは反時計回りの方向のいずれかにその回転軸(R,RYm)を中心として回転可能であり、回転角度(φ,φ)は任意の値に設定可能であることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項13】
前記1つまたは複数のカルーセル(Y)は、直径dYm、好ましくは10%d≦dYm≦50%d、最も好ましくはdYm=50%dを示す、および/または、前記被加工物支持部(Z)の直径は10%dYm≦dZn≦50%dYmであることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項14】
前記カルーセル(X)はカルーセルスレッドとして構築され、前記カルーセル(X)はホイールでベースフレーム上に設置されることを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項15】
1つの前記カルーセル(Y)の隣または複数の前記カルーセル(Y)の間には壁が配置され、前記壁は、1つの前記カルーセル(Y)の隣または複数の前記カルーセル(Y)の間に垂直に、好ましくはカルーセルXの頂部上にほぼ直角に設置され、前記壁は、特に1つのカルーセル(Y)が設置される各セクションを隣接するセクションから完全に分離するのに十分である、高さおよび幅を示すことを特徴とする、先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置。
【請求項16】
-先行請求項の一項に記載の処理中に被加工物を運搬するための被加工物キャリア装置と、
-先行請求項の一項に記載の被加工物キャリア装置の導入のための、特に真空チャンバの形態の、チャンバと、
-前記被加工物キャリア装置内に配置可能である前記被加工物を処理するための少なくとも1つの処理装置と、を備える、被加工物を処理するための表面処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の文脈において、被加工物キャリア装置を説明するために、「プラットフォーム」という用語が用いられる。上記装置がカルーセルのシステムとして実施される被加工物キャリア装置を説明するために、「統合プラットフォーム」という用語が用いられる。
【0002】
本発明は、排気可能な処理チャンバにおける、特に、たとえばカソードアークまたはマグネトロンスパッタリングプロセスのために用いられるものなど、物理蒸着(physical vapor deposition:PVD)のためのコーティングチャンバにおける、被加工物の処理のために用いられることとなる統合プラットフォームに関する。本発明の統合プラットフォームは、たとえば、被加工物を1つの処理ステップから別の処理ステップへ動かすことによって、1つの真空チャンバにおいて被加工物のバッチ上で異なる前処理ステップ、コーティングステップおよび後処理ステップを実行することを可能にする。これは、加工されることとなるバッチサイズ、前処理ステップ、後処理ステップおよびコーティングステップに関して高い融通性を提供するとともに、様々な形状およびサイズの被加工物を処理することを可能にする。本発明のプラットフォームは、小型または大型の被加工物バッチに分配される異なる量の被加工物を同じシステムにおいて加工およびコーティングすることを可能にするものなど、新たに開発されたタイプのコーティング機に特に好適である。
【背景技術】
【0003】
先行技術から、加熱ステップおよび/または洗浄ステップなどの前処理ステップまたは後処理ステップを、様々な真空処理プロセスのために、真空コーティングの前および/または後において用いることが知られている。これらのステップは、たとえば、堆積されたコーティングの基板への良好な接着を保証するために必要とされる。良好な接着を保証する前処理ステップは、ドリル、ミル、成形工具、およびギア、射出成形金型、カムシャフトといった機械的荷重がかかる部品などの工具上における耐摩耗性硬質コーティングのために、ならびに動作中に高い機械荷重および摩耗荷重に耐える他の高速移動するとともに重度に荷重される部品のために、特に重要である。したがって、基板の表面とのコーティングの極めて良好な接着は、丈夫で経済的な使用のために必須である。これらの前処理プロセスの主な目標は、後に続くコーティングの基部への良好な接着を達成するために、被加工物を準備することである。基板へのコーティングの接着を増大させる前処理の証明された方法は、DE3330144から知られるような電子衝撃による加熱、DE2833876に記載されるような希ガスイオンによるスパッタエッチング、および反応化学による被加工物のエッチングを含む。
【0004】
コーティング厚さの分布および可能な限り均一な品質を達成するためには、処理源およびエッチング源を通過する被加工物の動きを制御することが重要である。前処理、コーティングおよび/または後処理されることとなる部品は、しばしばシステム軸を中心として対称的に配置される個々の被加工物保持部に固定される、またはカルーセル状の被加工物支持部上に回転可能に設置される。既知の工業機材は、通常、真空チャンバ、典型的には真空チャンバの底部と回転可能に接続される、被加工物保持部またはカルーセル状の被加工物支持部を用いる。
【0005】
それぞれ1997年9月25日、1998年8月25日の以前には非公開であったスイス特許出願第2278/97号および第1736/98号には、惑星系被加工物保持部が記載されている。そこでは、駆動する導入側に連結され得るとともに導入に関する軸を中心として回転可能である第1のシステムが提供される。第1の回転システムは、太陽系として以下に示される。太陽系に関して、第2の回転システムが後者に設けられ、第2の回転システムは、太陽系の回転軸に対して平行にオフセットされた回転軸を有し、以下惑星系と呼ばれ、その運動はチャンバの導入によって形成される参照系上に取外し可能な係合を介して生成される。惑星系上には第3の回転システムが提供され、第3の回転システムは以下月系と呼ばれ、これは惑星系および太陽系に平行な回転軸を有して回転可能に支持される。
【0006】
3部からなる回転運動を有するこのタイプの被加工物支持部は、特に、比較的小さい被加工物の場合において、それらをコーティング源などの設備上に据え付けられる処理源を通過して案内するために、およびすべての側から均質に被加工物を処理するために用いられる。上述の被加工物支持部構成において、月系は、断続的に回転運動を開始する。これは、被加工物の部分的に不規則な多重の運動、ひいては被加工物の処理の均一性に対して良くない結果をもたらす。断続的な回転は、いくつかの薄層でできたコーティングシステムについて特に不利であり、コーティング品質を低下させる。
【0007】
US6620254/EP1153155B1において、ZaechおよびKurzは、上述の被加工物支持部の改良を開示している。これにより、太陽系と月系との間における駆動接続は中断しないように確立され、連続的な月系の回転運動が実現される。駆動接続は、好ましくは、強制駆動接続として実現される。太陽系は、装置側の駆動部に連結される。太陽系上に支持される少なくとも1つの惑星系は、惑星軸を中心として回転可能であり、装置に対する駆動連結を備える。少なくとも1つの月系は惑星系上に支持され、太陽系への駆動接続を有して月軸を中心として回転可能である。少なくとも1つの被加工物のための受容部は、月系上に設けられる。この駆動接続は、少なくとも装置の動作中に、中断されずに、太陽系と月系との間において確立される。
【0008】
EP2048263B1において、EsserおよびZaechは、容易にギア伝達率を変化させる可能性を提供する、単純化された構造を有する被加工物キャリア装置を開示している。開示された被加工物キャリアの主な利点は、容易な作動機構と同時に、ギア伝達率を変化させる能力である。ベースフレームは、主軸を中心として回転可能であり、1つの電気モータによって動力供給される。作動は、中央アクチュエータを用いることによってはなされない。その代わりに、枢動取付部上にトルクプルーフギアホイールが固定され、カルーセル外縁上に別のギアホイールが設置される。2つのラックホイールが互いに噛み合う。モータはカルーセル外縁上のギアホイールに動力供給するため、被加工物キャリアが回転される。被加工物保持部は、被加工物保持部の強制回転をもたらすように、ラックホイールを介して中央軸に接続される。このタイプの構成は、被加工物の連続的な回転をもたらし、これは薄い多層コーティングの堆積のために特に重要である。ギア伝達率は、サイズ、それぞれギアホイール上の歯の数を変化させることによって調節可能である。
【0009】
別の選択肢は、被加工物保持部がカルーセルである、被加工物保持部を有する真空処理システムを用いることである。上記のような種類のシステムは、被加工物保持部の搭載および除荷を単純化するために、真空チャンバから完全に取り外すことが可能であるカルーセルをしばしば用いる。このようなカルーセルの取外しは、たとえばフォークリフトを用いてなされ得る。
【0010】
別の手法において、カルーセルは、ホイールでベースフレーム上に設置される。その後、真空処理システムに移送され、真空チャンバ内へカルーセルを押すことによってチャンバ内へ挿入され得る。上記のような種類の被加工物保持部は、カルーセルスレッドと呼ばれる。カルーセルスレッドがチャンバ内部の最終位置にあると、ベースフレームはロックされ、中央作動部がカルーセルの軸に連結される。この構成の欠点は複雑な連結機構である。これは、スレッドの挿入の間にはカルーセルスレッドとして作動してはならないが、それと同時に、カルーセルを作動させるために連結機構がカルーセルの中心軸に接続されなければならないため、必要である。ホイール機構は、動作中に起こる極限条件に耐えることができるように構築される必要があり、たとえば、真空条件で動くことが可能でなければならない。
【0011】
EP2758562B1において、Gwehenbergerは、被加工物保持部を有する真空処理システムであって、被加工物保持部がカルーセルとして実施され、カルーセルをその軸を中心として回転させることによって、処理源の前において、処理されることとなる被加工物を回避することを可能とする、真空処理システムを開示している。被加工物は、一回転、二回転または多数回転を可能にするように、上記カルーセル上に設置され得る。カルーセルは、1つの外縁のアクチュエータによって動力供給される。アクチュエータは、カルーセルを挿入可能である開口部とは反対側の真空チャンバの側壁に位置するまたは近接する。上記アクチュエータは、カルーセルの外側に設置される、別のラックホイールに噛み合う、カルーセル外縁に設置されるラックホイールに結合される。カルーセル上には多数の被加工物保持部を設置することができるが、すべての被加工物保持部は、被加工物保持部の回転を可能にするために、その外側に設置されるラックホイールを有する。カルーセルは、好ましくは、搭載および除荷プロセスを単純化するために、カルーセルルレッドとして実現される。好ましくは、カルーセルスレッドの挿入プロセスを単純化するために、真空チャンバ内部にトラックが設置される。
【0012】
PVDを用いて処理および/またはコーティングされることとなる被加工物の量は、特定の顧客要求に依存する。被加工物保持部が導入されるコーティングチャンバは、特定のサイズおよび形状のある数の被加工物を搭載するために設計される。被加工物のバッチサイズならびに被加工物のサイズおよび形状は、コーティングチャンバの直径および高さを規定する。より具体的には、昨今用いられる1つの機材群の機械は、同じ直径を示すコーティングチャンバを主に使用し、異なる搭載容量を有する機材を提供するために、ある高さの規模にされる。このとき、被加工物保持部は、真空チャンバの要求、特に高さおよび直径に適合するために設計される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
被加工物のサイズおよび形状の多様性、ならびに加工およびコーティングされることとなる被加工物の量は、顧客の要求に大いに依存する。小さな被加工物バッチを加工およびコーティングするためには、小さなコーティングチャンバが用いられる。
【0014】
大きな被加工物バッチを加工およびコーティングするためには、大きなコーティングチャンバが提供される必要がある。1つの大型機械に異なる搭載量を挿入することは、今のところ経済的に実行可能ではない。これは、小さなバッチのみを有する大型機械を搭載するとき、売上原価(Cost of Goods Sold:COGS)の減価償却費が総保有コスト(Total Cost of Ownership:TCO)に悪影響を及ぼし得るためである。稼働率は被加工物の数に依存する。これは、COGSがより小さな搭載量に適合されなければならない理由となる。
【0015】
異なる搭載容量を有する機材を提供するための様々な異なるチャンバ設計が必要とされることによって、様々なチャンバ設計に投資される膨大な時間の損失および努力につながる。機材群のすべての機械のためにチャンバを再設計することによって費用が高くなることに加えて、コーティング開発は、異なる高さ、ターゲットの数およびさらなる理由に起因して、すべての機械のために適合される必要がある。1つの機械から異なる寸法を有する別の機械への1つの特定のコーティングの移送は困難であり、時間がかかる。さらに、様々な機材製品の実施は時間がかかる。これは、様々な製品をすべて同時に実施することができないためである。これはまた、コストを増加させる。これは、増大された開発コストにつながる。
【0016】
本発明の目的
本発明は、真空システムにおける被加工物の処理のために用いられることとなる、プラットフォームであって、上記真空システムの真空チャンバに異なる被加工物バッチサイズを搭載可能とすることにより、先行技術の真空システムについて現在起こっている問題を克服する、プラットフォームを提供することを目指す。本発明は、PVDコーティング機についての先行技術の問題を克服する解決策を提供することを特に目指す。主な目標は、上記真空システムのTCOの減価償却率をより低くするためにCOGSを減少させるとともに、被加工物ごとに異なる処理方法を考慮した高い融通性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による課題の解決-本発明の説明
これらの目標は本発明によって達成され、本発明においては、異なる被加工物バッチサイズ上において様々な処理のために用いられることができるとともに、経済的に実行可能な方法で作動する統合プラットフォームが、真空システムの排気可能な処理チャンバに設置される。上記統合プラットフォームは、異なる直径を有する少なくとも2つのカルーセルからなり、より小さい直径を示す少なくとも1つのカルーセルは、より大きい直径を示す1つのカルーセル上に回転可能に設置される。より小さい直径を示すただ1つのカルーセルを設置する代わりに、この種のいくつかのカルーセルがより大きい直径を示す1つのカルーセル上に設置されてもよい。
【0018】
本発明の統合プラットフォームの設計は、被加工物の長さおよび搭載容量を考慮した高い融通性、ならびに、すべて同じチャンバにおいて様々な前処理、コーティングおよび後処理を被加工物に施す機会など、幅広い利用を提供する。数ある利点の中でとりわけ、これは、前処理およびクールダウンタイムの省略につながる。これにより、上記プラットフォームは、先行技術のシステムと比較して、TCOに好影響を与えることが可能となり、生産費用の減少につながる。さらに、それは、利点は他にも多数あるが、先行技術の解決策と比較して、上記機械のチャンバにおいてコーティングされることとなる基板の量に関してより高い融通性を提供する。
【0019】
本発明の第1の局面において、真空処理システムの真空チャンバに導入されることとなる処理可能な被加工物を保持するための被加工物キャリア装置であって、直径(d)を有する1つのカルーセル(X)と、カルーセル(X)上に設置可能である、直径(dYm<d)を有する1つまたは複数のカルーセル(Y)と、1つまたは複数のカルーセル(Y)上に設置可能である、直径(dZn≦dYm)を有する1つまたは複数の被加工物支持部(Zn)と、第1のアクチュエータ(A1)および第2のアクチュエータ(A2)とを備え、アクチュエータ(A1),(A2)とカルーセル(X)および(Y)との間における強制連結が、システムの少なくとも2つの動作モードを可能にするように、ギア機構を用いて導入され、モード1において、アクチュエータ(A1)は動力供給され、アクチュエータ(A2)は動力供給されず、カルーセル(X)のその中心回転軸(R)を中心とした回転をもたらし、モード2において、アクチュエータ(A1)は動力供給されず、アクチュエータ(A2)は動力供給され、カルーセル(Y)のそれらの中心回転軸(RYm)を中心とした回転をもたらすとともに、カルーセル(X)は所定位置にとどまる、被加工物キャリア装置が開示される。本発明に係る被加工物キャリア装置は、真空条件下における使用に限定されず、大気圧または加圧下などでコーティングシステムにおいて用いられることもできると理解される。
【0020】
第1の局面の別の実施例において、本発明に係る被加工物キャリア装置のカルーセル(X)は、表面カルーセル(X)の面積がA=π・(d/2)によって定義されるように、実質的に円形状である。カルーセル(X)の実質的に円形状の設計は、特に、カルーセル(X)の外側に配置された処理装置に対する正確な位置決めを約束する。1つまたは複数のカルーセル(Y)、および/または、1つまたは複数の被加工物支持部(Z)は、融通性のある製造プロセスの文脈において、一方では、好ましくは、三角形、または四角形、たとえば矩形、正方形、台形、またはさらには五角形、六角形、部分的もしくは完全に楕円などでもあり得る。カルーセル(X)、カルーセル(Y)およびZの面積に関して、好ましい選択肢は、A≦A<Aである。
【0021】
第1の局面の別の実施例において、本発明に係る被加工物キャリア装置の中央カルーセル(X)および少なくとも1つのカルーセル(Y)は、被加工物キャリア装置がモード1で動作するとき、少なくとも1つのカルーセル(Y)が第3のギア機構を介して回転運動を開始するように、第3のギア機構を介して接続される。このような設計は、特に、個々の被加工物のさらにより融通性の高い加工を可能にする。
【0022】
第1の局面の別の実施例において、本発明に係る被加工物キャリア装置の第1のアクチュエータ(A1)は第1のギア機構を介して中央カルーセル(X)に接続され、第2のアクチュエータ(A2)は第2のギア機構を介して少なくとも1つの外縁カルーセル(Y)に接続される。このような設計は、特に、個々の被加工物の正確に制御可能な機械加工を可能にする。
【0023】
第1の局面の別の実施例において、本発明に係る被加工物キャリア装置の第1のアクチュエータ(A1)および/または第2のアクチュエータ(A2)は、電気機械アクチュエータとして設計され、回転運動は、好ましくは、アクチュエータ(A1)および/または(A2)に制御電圧を印加することによって、軸(R)および/または(RYm)を中心として生成される。たとえば機械的に制御されるシステムとは対象的に、機械アクチュエータまたは電気機械アクチュエータの使用は、被加工物キャリア装置における被加工物の位置決めに対するターゲットとなる制御を可能とするのに必要とされる設計努力を最小化することを可能とする。
【0024】
第1の局面の別の実施例において、本発明に係る被加工物キャリア装置は、1mbar未満、好ましくは0.1mbar未満、特には0.001mbar未満の圧力条件で使用可能である。このような設計は、特にPVDコーティングプロセスなどのための真空用途における使用を可能にする。
【0025】
被加工物キャリア装置内に配置される基板の精密かつ容易に制御可能なコーティングを保証するために、本発明は、第1の局面の別の実施例において、カルーセル(X)、および/または、1つまたは複数のカルーセル(Y)、および/または、1つまたは複数の被加工物支持部(Z)が実質的に平面形状であることを提供する。本発明の範囲内において、平面とは、特に、平均外面からの偏差が対応するカルーセルの総厚の5%未満、好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満である表面を意味すると理解される。
【0026】
省スペースでコンパクトな配置の範囲内で、本発明は、第1の局面の別の実施例において、1つまたは複数のカルーセル(Y)が完全に第1のカルーセル(X)の領域内に配置され、および/または、1つまたは複数の被加工物支持部(Z)が完全に1つまたは複数のカルーセル(Y)の領域内に配置され、カルーセル(Y)が、好ましくは、上方から見たときにカルーセル(Y)および(X)の縁が重なるように、カルーセル(X)の外縁に設置されることをさらに提供する。対応するカルーセルの領域内における配置は、好ましくは、たとえば対応するカルーセルの表面から(対応する回転軸の方向に垂直ではない)対応する回転軸の方向に対してある距離で延長された領域における配置も意味すると理解される。
【0027】
省スペースでコンパクトな配置の範囲内で、第1の局面の別の実施例において、本発明は、第1のアクチュエータ(A1)および/または第2のアクチュエータ(A2)が、カルーセル(X)の下方、被加工物のための配置領域の反対側に配置されることをさらに提供する。このような配置の範囲内において、アクチュエータは、たとえば、本発明の被加工物キャリア装置が挿入され得る真空チャンバの底部に配置され得る。
【0028】
被加工物キャリア装置内に配置される基板の精密かつ容易に制御可能なコーティングを保証するために、第1の局面の別の実施例において、本発明は、特に、回転の軸(R)および(RYm)が互いに平行に位置合わせされることを提供する。
【0029】
被加工物キャリア装置内に配置される基板の精密かつ容易に制御可能なコーティングを保証するために、第1の局面の別の実施例において、本発明は、特に、カルーセル(X),(Y)および(Z)が互いに平行に位置合わせされ、好ましくは同時に回転の軸(R)および(RYm)に垂直に位置合わせされることを提供する。
【0030】
特に、被加工物の特に融通性の高い位置決めを可能にする、第1の局面の別の実施例において、カルーセル(X)および1つまたは複数のカルーセル(Y)は、時計回りまたは反時計回りの方向のいずれかにその回転軸(R,RYm)を中心として回転可能であり、回転角度(φ,φ)は任意の値に設定可能である。
【0031】
同時に、処理されることとなる被加工物の配置のために十分な空間を提供する、コンパクトで省スペースな配置に関して、第1の局面の別の実施例において、1つまたは複数のカルーセル(Y)は、直径dYm、好ましくは10%d≦dYm≦50%d、最も好ましくはdYm=50%dを示し、および/または、被加工物支持部(Z)の直径は、10%dYm≦dZn≦50%dYmである。
【0032】
第1の局面の別の実施例において、カルーセル(X)はカルーセルスレッドとして構築され、カルーセル(X)はホイールでベースフレーム上に設置される。このような設計は、特に、被加工物キャリア装置の容易な移送、および真空チャンバ内にカルーセルを押すことによってそれを挿入可能である、真空処理システム内への容易な導入を可能にする。
【0033】
個々の被加工物の確実な空間的分離を可能にする、第1の局面の別の実施例において、1つのカルーセル(Y)の隣または複数のカルーセル(Y)の間には壁が配置され、壁は、カルーセル(Y)の隣またはカルーセル(Y)の間に垂直に、好ましくはカルーセルXの頂部上にほぼ直角に設置され、壁は、特に1つのカルーセル(Y)が設置される各セクションを隣接するセクションから完全に分離するのに十分である、高さおよび幅を示す。
【0034】
本発明の第2の局面において、処理中に被加工物を運搬するための先述の被加工物キャリア装置と、被加工物キャリア装置の導入のための、特に真空チャンバの形態の、チャンバと、被加工物キャリア装置内に配置される被加工物を処理するための少なくとも1つの処理装置とを備える、被加工物を処理するための表面処理システムが開示される。したがって、本発明に係る表面処理システムは、本発明に係る被加工物キャリア装置に関して既に詳述されたものと同じ利点を有する。
【0035】
被加工物キャリア装置の構造的に単純かつ確実な固定の文脈内において、第2の局面の別の実施例において、表面処理システムの被加工物キャリア装置は、チャンバの壁または底部に配置され、好ましくは、チャンバの壁または底部に取外し可能に固定されるアクチュエータ(A1)および(A2)によってチャンバに接続される。取外し可能な固定は、たとえば、磁石ホルダ、またはねじ、またはプラグ接続などを介して達成可能である。
【0036】
被加工物の均一かつ高品質の処理を保証するために、第2の局面の別の実施例において、表面処理システムの被加工物キャリア装置は、処理システムのチャンバの中央に配置され、被加工物を処理するための1つ以上の処理装置は、被加工物キャリア装置の周りに配置される。処理装置または複数の処理装置は、好ましくはチャンバの壁に固定され、有利には本発明に係る表面処理システムにおいて中央に配置される被加工物キャリア装置の周りに対称的に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】カルーセル(X)上に分散的に設置されたm=8のカルーセル(Y)の概略図。この図において被加工物支持部は示されていない。
図2】カルーセル(X)上に分散的に設置されたm=1のカルーセル(Y)の概略図。カルーセル(Y)にはn=4の被加工物保持部(Z)が備えられる。
図3】一実施形態における統合プラットフォームの垂直断面の概略図。
図4】統合プラットフォームの垂直断面および「カルーセルモード」と呼ばれる動作モードの概略図。アクチュエータA1はオン(回転中)であり、アクチュエータA2はオフ(保留)である。
図5】統合プラットフォームの垂直断面および「スピンドルモード」と呼ばれる動作モードの概略図。アクチュエータA1はオフ(保留)であり、アクチュエータA2はオン(回転中)である。
図6】(Y)が前処理モジュールTの前に配置される、本発明の一実施形態の概略図。
図7】カルーセル(X)が時計回りの方向に角度φ=45°回転される、本発明の一実施形態の概略図。これによりカルーセル(Y)は処理モジュールTk+1に動かされる。
図8】カルーセル(X)が反時計回りの方向に角度φ=90°回転される、本発明の一実施形態の概略図。これによりカルーセル(Y)は処理モジュールTk-1に動かされる。
図9】m=3のカルーセル(Y)がカルーセル(X)上に分散的に設置され、垂直壁によって分離される、一実施形態の概略図。この図においては、カルーセル(Y),(Y),(Y)上にn=4の被加工物支持部(Z)が設置される。カルーセル(Y)は反時計回りの方向にφ=120°動かされ、処理源Tの前に配置される。
図10】カルーセル(X)上に直接設置されるn=8の被加工物支持部の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、搭載容量だけでなく処理方法に関しても高い融通性を提供することにより、TCOを減少させる、統合プラトッフォームを開示する。上記統合プラットフォームは、直径d=100%を有するカルーセル(X)を含み、カルーセル(X)は、アクチュエータ(A1)によって動力供給され、いずれかの側に、時計回りまたは反時計回りのいずれかに回転可能である。回転角度(φ)は任意の値に設定され得る。カルーセル(X)上には、直径dYm<dを示す1つまたは複数のいずれかのカルーセル(Y)が設置される。カルーセル(X)上に設置されるカルーセル(Y)の数はmと呼ばれる。1つまたは複数のカルーセル(Y)は、時計回りまたは反時計回りの方向のいずれかに、そのm個の回転軸(RYm)を中心として回転され得る。カルーセル(Y)の回転は、強制接続を用いることによってカルーセル(Y)を1つの自己充足型のアクチュエータ(A2)に結合することによって生成される。カルーセル(Y)の各々には、数nの被加工物支持部Zが備えられてもよい。被加工物支持部はカルーセル(Y)上に回転可能に設置され、それらの回転軸(RZp)(1≦p≦n)を中心として回転され得る。被加工物支持部(Z)は直径dZn≦dYmを示す。被加工物支持部は強制接続を用いて強制的に回転される。
【0039】
本発明の実施形態は例として説明されるものであり、単に例示的であり、したがって非限定的であるとされる。
【0040】
本文において参照される図は縮尺に合致する図面ではなく、したがって非限定的である。たとえば、カルーセルのサイズまたは数は異なるように選択されてもよい。
【0041】
図1において示される、本発明の1つの局面によれば、1つのカルーセル(X)上には、m個のカルーセル(Y)が分散的に設置される。図1に示される実施例において、mはm=8になるように選択されているが、異なる数になるように選択されてもよい。カルーセル(X)は回転角度(φ)で回転され得る。カルーセル(Y)はそれらのm個の回転角度(ψ)で回転され得る。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、カルーセル(Y)は、上方から見たときにカルーセル(Y)および(X)の縁が重なるように、カルーセル(X)の外縁に設置される。この好ましい実施形態の実施例は、図6図9に示される。
【0043】
図2に示される、本発明の一実施形態によれば、カルーセル(X)上には、直径dYm、好ましくは10%d≦dYm≦50%d、最も好ましくはdYm=50%dを示す、m=1のカルーセル(Y)が回転可能に設置される。この実施形態における統合プラットフォームの構成の垂直断面が図3に示される。カルーセル(X)は、一元化されたアクチュエータ(A1)によって動力供給され、アクチュエータ(A1)は、回転軸(R)として機能する、ほぼ垂直な軸を介してカルーセル(X)に結合される。カルーセル(X)は時計回りおよび反時計回りに回転可能であり、回転角度(φ)は任意の値に設定され得る。カルーセル(Y)はカルーセル(X)上に分散的に設置され、第2の自己充足型アクチュエータ(A2)によって動力供給される。カルーセル(Y)は、角度(ψ)でその回転軸(RYm)を中心として回転可能である。アクチュエータ(A2)は、強制接続を形成するギアのシステムに動力供給する。カルーセル(Y)は、回転軸(RYm)として機能する、ほぼ垂直な軸を介してカルーセル(X)上に回転可能に設置されるため、第2の回転運動が発揮され得る。アクチュエータ(A2)はカルーセル(Y)を時計回りまたは反時計回りに回転可能にし、回転角度(ψ)は任意の値に設定され得る。2つの自己充足型アクチュエータの組み合わせは、異なる動作モードをもたらす。カルーセル(Y)にはn=4の被加工物支持部(Z)が備えられる。被加工物支持部(Z)の直径は、10%dYm≦dZn≦50%dYmになるように選択される。この実施形態において、直径dZpは、n個すべての被加工物支持部(Z)(1≦p≦n)について同じである。n個の被加工物支持部(Z)の回転は、カルーセル(X)を保留にする、たとえばアクチュエータ(A1)が停止されることによって達成される。被加工物支持部の各々は回転軸(RZn)を中心として時計回りまたは反時計回りの方向に回転可能であり、回転角度は(ω)として示される。
【0044】
カルーセル(Y)上に設置される被加工物支持部の数nは、様々なmに変化可能である。カルーセル(Y)には、好ましくは、数nの被加工物支持部(Z)(1≦n≦10)が備えられる。
【0045】
本発明のプラットフォームは、2つの異なるモードで動作可能である。第1のモードは、図4に示されており、本文中で「カルーセルモード」と呼ばれる。この動作モードにおいて、アクチュエータ(A1)は動力供給されるため、時計回りまたは反時計回りのいずれかで回る。アクチュエータ(A2)は固定され、動力供給されない。このように、カルーセル(X)のカルーセル板はその回転軸(R)を中心として時計回りまたは反時計回りの方向のいずれかに回転される。これは、ギアスピンドル、したがってカルーセル(Y)のカルーセル板、より厳密には、基板が設置されるスピンドル(Z)の(RZp)を中心とした強制回転をもたらす。
【0046】
第2のモードは図5に示されており、本文中で「スピンドルモード」と呼ばれる。この動作モードにおいて、アクチュエータ(A1)は動力供給されないため、同じ位置にとどまる。これは、カルーセル(X)のカルーセル板も固定され、回転軸(R)を中心とした回転を示さないことを意味する。回転角度(φ)は固定値に設定され、この動作モードの間、変化しない。アクチュエータ(A2)は動力供給され、時計回りまたは反時計回りの方向のいずれかにおいて、回転軸(RYm)を中心としたカルーセル(Y)のカルーセル板の回転をもたらし、回転角度(ψ)は時間に応じて変化することとなる。このように、ギア、ギア固定子、ギアスピンドル、および基板が設置されるスピンドル(Z)は、回転軸RZpを中心として回転角度(ω)で回転する。
【0047】
しかしながら、ただ1つのカルーセル(Y)を用いる変形例は非限定的であり、ただ1つのカルーセル(Y)を有する変形例について記載されたのと同様に、カルーセルXにm個のカルーセル(Y)(m≠1)を設置することも可能である。カルーセルXに設置されるカルーセルYの量は、好ましくは、1≦m≦3になるように選択される。
【0048】
カルーセル(Y)上に設置される被加工物支持部の数nは、様々なmに変化可能である。本発明の一実施形態によれば、カルーセル(Y)には数nの被加工物支持部(Z)(1≦n≦10)が備えられる。
【0049】
好ましい実施形態によれば、カルーセル(Y)はすべて同じ直径dYmを示し、dYi=dYj(1≦i,j≦m)となる。しかしながら、本発明の別の局面によれば、カルーセル(Y)の直径は互いに異なり、たとえばdYi≠dYj(1≦i,j≦m)であってもよい。
【0050】
m=1のカルーセル(Y)がカルーセル(X)上に設置されるとともに、n=4の被加工物保持部(Z)が(Y)上に設置される実施形態について考えると、記載されたプラットフォームは、たとえば異なる処理(前処理および後処理)を実行し、基板に異なるコーティング層を施すために用いられ得る。図6に示される一実施形態によれば、カルーセル(Y)は、たとえば、第1の場所において基板を前処理する(たとえば、加熱、エッチングなど)ためにモジュールTの前に置かれることができ、その後、角度(φ)で移動され得る。図7に見られるように、カルーセル(X)は、たとえば第1のコーティング層を施すために、別のモジュールTk+1へ、回転軸(R)を中心として角度φ=45°時計回りの方向に回転される。その後、図8に示されるように、処理源Tk-1の前において基板を処理して、たとえば第2のコーティング層を堆積するために、たとえばφ=90°反時計回りの方向にさらに動かされ得る。これは、カルーセル(Y)がカルーセル(X)上で自立的に回転可能に設置されるため、可能となる。したがって、カルーセル(Y)上における基板は、プロセスステップの1つが完了するまで1つのモジュールの前に置かれ得る。カルーセル(Y)は、その後、すべての基板の均一な処理またはコーティングを達成するために、一定の角速度で(ψ)だけ回転され得る。プロセスステップの後、カルーセル(Y)は、ある角度(φ)でカルーセル(X)を回転させることによって、別のモジュール、したがってプロセスステップに動かされ得る。
【0051】
本発明の1つの局面によれば、自己充足型のアクチュエータは分散的に設置される。それらは、たとえば被加工物がチャンバ内へ挿入される開口部とは反対側の壁にまたはその近傍などにおいて、真空チャンバの壁に設置され得る。各アクチュエータは、その後、カルーセル外縁に設置されるラックホイールに結合され、カルーセル外縁は統合プラットフォーム上に設置される別のラックホイールに噛み合う。
【0052】
本発明の1つの局面によれば、カルーセルはカルーセルとして構築される。したがって、カルーセルはホイールでベースフレーム上に設置される。その後、真空処理システムに移送され、真空チャンバ内へカルーセルを押すことによってチャンバ内へ挿入され得る。
【0053】
本発明の別の局面によれば、本発明のプラットフォームは、一次元に関して様々な厚さのコーティングで平面基板をコーティングするために用いられる。これは、たとえばm=1のみのカルーセル(Y)を用いることでなされ得る。したがって、カルーセル(Y)はコーティング源の前で停止され、したがって(φ)は固定されたままとなる。カルーセル(Y)はコーティング源、たとえばアークまたはスパッタターゲットの前で推力を失う。たとえば(ψ)は制御されるように時間に応じて変化してもよい。この方法を用いて、凸状のコーティングが施され得る。さらに、たとえば装飾用途のために、この方法を用いて染料分布が生成され得る。
【0054】
本発明の1つの局面によれば、本発明の統合プラットフォームは、より小さい高さの真空チャンバにおいては処理できなかった、広く伸張したロッド形状の被加工物をコーティングするために、大きい高さを示す真空チャンバ内へ挿入される。
【0055】
図9に示される、本発明の一実施形態によれば、カルーセルX上には、m=3のカルーセルYが分散的に設置される。m個のカルーセルYi(1≦i≦m)間に垂直に、かつカルーセルXの頂部上にほぼ直角に、3つの壁が設置される。これらの壁は、1つのカルーセルYが設置される各セクションを隣接するセクションから完全に分離するのに十分な高さおよび幅を示す。上記統合プラットフォームは、異なるカルーセルY上に設置される基板上において異なる処理を可能にするために選択される、数kの処理源Tを有して真空チャンバに設置される。処理源の数は、たとえばk=3となるように選択され得る。これは、異なる方法および順番で処理され得る、3つの異なる基板バッチを挿入することを可能にする。なぜなら、それらが隣接するセクション、したがって基板のバッチに施される処理から遮蔽されるためである。本発明の1つの局面によれば、基板は同じ処理源Tを用いて処理されるが、カルーセルY上における基板バッチに施されるエッチング手順は、処理時間を変えることによって、カルーセルYおよびY上における基板バッチに施されるエッチング手順とは異なる。
【0056】
図10に示される、1つの実施形態によれば、h=400mmのコーティング高さを示すコーティングチャンバを有する機械には、本発明の統合プラットフォームが備えられる。上記統合プラットフォームは、カルーセル(X)を備え、カルーセル(X)上には、m個のさらなるカルーセル(Y)(たとえばm=8)が設置される。プラットフォームが「カルーセルモード」で動作される場合、n個の被加工物支持部(Z)(1≦p≦n)がカルーセル(Y)上に、n≦m、好ましくはn=m、この例においてはn=8となるように設置される。回転軸(RZm)および(RZp)は重複している。これにより、カルーセルが「スピンドルモード」で動作される場合、被加工物支持部は、カルーセル(Y)が設置される軸上に設置される。図10に示される実施形態において、dYm=dZnが適用される。カルーセル(X)は、d=1000mmの直径を示す。被加工物支持部(Z)は、カルーセル(X)の外縁に位置する。この構成を用いて、この実施形態における記載される機械の搭載容量は100%となる。上記「カルーセルモード」で動作される場合、真空チャンバには4つの処理源が備えられる。h=400mmの高さを有する同じ機械には、本発明の統合プラットフォームが備えられてもよく、カルーセル(X)は直径d=1000mmを有する同じカルーセルである。100%の搭載容量を有する場合とは対照的に、カルーセル(X)上にはm=1のカルーセル(Y)が設置される。このカルーセル(Y)上には、n=4の被加工物支持部Zが設置される。これは50%の搭載容量をもたらす。処理源の数は、50%の搭載容量のために用いられる2つの処理源に適切に変えられる。2つの状況を比較すると、配置先は同じままであり、カルーセル(X)も変化しない。搭載容量によって、カルーセル(Y)の数m、被加工物支持部(Z)の数n、およびターゲットTの数kが変えられる。カルーセル(Y)は、ターゲットと基板との間に要求される距離を保ち、回転軸(RYm)を中心として一定の角速度で回る。ギア伝達率は、施されるコーティングに適合される。カルーセル(X)は、カルーセル(Y)(0≦i≦m)を1つの位置(1つのプロセスステップ)から次の位置(第2のプロセスステップ)へ動かし、別のカルーセル(Y)(0≦j≦m、j≠I)を、その前にカルーセル(Y)によって占領されていた位置へ動かすために、ある角度(φ)で回転され得る。
【0057】
図面の符号付け
【0058】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】