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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(54)【発明の名称】治療活性細胞およびエクソソーム
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20220706BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20220706BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20220706BHJP
   A61K 35/33 20150101ALI20220706BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220706BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20220706BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20220706BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220706BHJP
【FI】
C12N5/10
A61L27/36 400
A61L27/38
A61K35/33
A61P43/00 105
A61P43/00 107
A61P21/00
A61P9/10
A61P9/00
A61P21/04
A61P29/00
A61P17/02
A61P19/08
C12N5/077
C12Q1/04
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566448
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2020031808
(87)【国際公開番号】W WO2020227489
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/845,228
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513268380
【氏名又は名称】シーダーズ―シナイ メディカル センター
(71)【出願人】
【識別番号】514309457
【氏名又は名称】カプリコール,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マーバン,エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム,アフマド
(72)【発明者】
【氏名】リ,チャン
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス-ボラド,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】モーズリー,ジェニファー,ジェー.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR77
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C081AB18
4C081BA12
4C081CD34
4C081EA02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA40
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB11
4C087ZB21
4C087ZB22
(57)【要約】
複数の実施形態は、治療効果を有する細胞を作製する方法に関する。複数の実施形態は、治療効果を有するエクソソームの供給源としての細胞を作製することに関する。治療効果を有する細胞およびエクソソームは、例えば傷害を受けたまたは罹患した組織を修復および/または再生するのに有用である。
【選択図】図7H
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態を処置するための高い効果の治療的細胞を調製する方法であって、
低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを過剰発現させること、
前記低い治療効果の細胞においてmest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御すること、
前記低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御すること、
前記低い治療効果の細胞をβ-カテニン発現のモジュレーターで処置すること、ならびに
前記低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断すること、
のうちの1つまたは複数により前記低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化し、それによりWnt/β-カテニンシグナル伝達が活性化されない前記低い治療効果の細胞に比べて増加した治療効果を有する高い効果の治療的細胞を作製すること、を含み、前記高い効果の治療的細胞が、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効である、方法。
【請求項2】
β-カテニン発現の前記モジュレーターが、チデグルシブまたは6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することが、前記低い治療効果の細胞におけるβ-カテニン発現を、Wnt/β-カテニンシグナル伝達が活性化されない前記低い治療効果の細胞に比べて約50%~約300%増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記低い治療効果の細胞が、線維芽細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記線維芽細胞が、gata4を過剰発現する遺伝子改変された線維芽細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子改変された線維芽細胞が、gata4を過剰発現しない線維芽細胞に比べて、log倍率が約0.2~約4高いgata4のmRNA発現を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
gata4を過剰発現する線維芽細胞を遺伝子改変することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記低い治療効果の細胞が、低い治療効果のカーディオスフェア由来細胞(CDC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記低い治療効果の細胞が、不死化CDCである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
CDCを不死化して、不死化CDCを作製することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記CDCが、不死化される前に高い治療効果を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞集団を低い治療効果を有すると決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
決定することが、前記細胞集団において、1つまたは複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの発現レベルを測定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターが、古典的なWnt/β-カテニンシグナル伝達に特異的である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターが、β-カテニン、LRP5/6、mest、およびEXTL1から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
決定することが、1つまたは複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターのmRNAレベルを測定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターが、ror2、nfatc2、axin2、rac2、およびapcdd1から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記低い治療効果の細胞が、前記組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象にとって同種異系である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記低い治療効果の細胞が、前記組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象にとって自己である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
高い効果の治療的細胞からエクソソームを単離することをさらに含み、前記エクソソームが、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記高い効果の治療的細胞が、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象に投与された場合に、心臓の瘢痕サイズを低減すること、心筋梗塞の壁厚を増加させること、駆出率を増加させること、心筋梗塞による死亡率を低減すること、運動能力を上昇させること、骨格筋線維化を低減すること、および筋線維のサイズを増加させることのうちの1つまたは複数に有効である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記増加した治療効果が、前記高い効果の治療的細胞と前記低い治療効果の細胞との間に約5%~約40%のパーセンテージ治療効果の差を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置するために高い治療効果のエクソソームを調製する方法であって、
活性化されたWnt/β-カテニンシグナル伝達を有する工学操作された高い効果の治療的細胞の集団を提供することであって、前記高い効果の治療的細胞が、低い治療効果の細胞の集団に比べて、
上方制御されたβ-カテニン発現;
下方制御されたレベルのmest発現;
上方制御されたレベルのLRP5/6発現;および
下方制御されたレベルのextl1発現、
のうちの1つまたは複数を呈することを含む、集団を提供すること、ならびに
前記集団からエクソソームを単離し、それにより前記活性化されたWnt/β-カテニンシグナル伝達を有さない前記低い治療効果の細胞から単離された低い治療効果のエクソソームに比べて増加した治療効果を有する高い治療効果のエクソソームを作製すること、を含み、前記高い治療効果のエクソソームが、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効である、方法。
【請求項24】
前記工学操作された高い効果の治療的細胞が、前記低い治療効果の細胞に比べて約50%~約300%高いβ-カテニン発現を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記工学操作された高い効果の治療的細胞が、工学操作された線維芽細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記工学操作された線維芽細胞が、gata4を過剰発現する遺伝子改変された線維芽細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記遺伝子改変された線維芽細胞が、gata4を過剰発現しない線維芽細胞に比べて、log倍率が約0.2~約4高いgata4発現を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記工学操作された高い効果の治療的細胞が、高い治療効果のカーディオスフェア由来細胞(CDC)である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記工学操作された高い効果の治療的細胞が、高い治療効果の不死化CDCである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記集団を提供することが、
低い治療効果の細胞を同定すること;ならびに
前記低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを過剰発現させること、
前記低い治療効果の細胞においてmest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御すること、
前記低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御すること、
前記低い治療効果の細胞をβ-カテニン発現のモジュレーターで処置すること、ならびに
前記低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断すること、
のうちの1つまたは複数により前記低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化し、それにより前記工学操作された高い効果の治療的細胞が豊富な細胞集団を作製すること、
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
β-カテニン発現の前記モジュレーターが、チデグルシブまたは6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記低い治療効果の細胞が、線維芽細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記線維芽細胞が、gata4を過剰発現する遺伝子改変された線維芽細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
gata4を過剰発現する線維芽細胞を遺伝子改変することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記低い治療効果の細胞が、不死化CDCである、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
CDCを不死化して、不死化CDCを作製することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記CDCが、不死化される前に高い治療効果を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞集団が、前記組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象にとって同種異系である、請求項21~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞集団が、前記組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象にとって異種である、請求項21~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記高い治療効果のエクソソームが、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象に投与された場合に、心臓の瘢痕サイズを低減すること、心筋梗塞の壁厚を増加させること、駆出率を増加させること、心筋梗塞による死亡率を低減すること、運動能力を上昇させること、骨格筋線維化を低減すること、および筋線維のサイズを増加させることのうちの1つまたは複数に有効である、請求項23~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記増加した治療効果が、前記高い効果の治療性エクソソームと低い治療効果の細胞から単離されたエクソソームとの間に約5%~約40%の、パーセンテージで測定した治療効果の差を含む、請求項23~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置するために高い効果の治療的細胞を調製する方法であって、低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することを含み、前記低い治療効果の細胞の治療効果が、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化前の治療効果に比べて、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化後に増加し、前記高い効果の治療的細胞が、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効である、方法。
【請求項43】
Wnt/β-カテニンの活性化が、前記低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを過剰発現させること、β-カテニン発現のモジュレーターで前記低い治療効果の細胞を処置すること、GSK3βを遮断すること、GSK3βの遺伝子除去、またはGSK3βのノックダウンを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
gata4を過剰発現させることをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
β-カテニン発現のモジュレーターで前記低い治療効果の細胞を処置することが、β-カテニン発現の上方制御を含む、請求項43~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
β-カテニン発現の前記モジュレーターが、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)またはチデグルシブである、請求項43~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化が、核酸および/またはタンパク質発現の変更を含む、請求項42~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
核酸および/またはタンパク質発現活性化の前記変更が、mestの下方制御、miR-335の下方制御、EXTL1の下方制御、CD90の下方制御、CD105の下方制御、LRP5/6の上方制御、miR-92aの上方制御、またはそれらの組み合わせを含む、請求項42~47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記低い治療効果の細胞が、カーディオスフェア由来細胞(CDC)または線維芽細胞である、請求項42~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記低い治療効果の細胞が、不死化CDCである、請求項42~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置するための高い治療効果のエクソソームを調製する方法であって、
(a)請求項42~50のいずれか1項に記載の方法により高い効果の治療的細胞を調製すること;および
(b)前記高い効果の治療的細胞からエクソソームを回収し、それにより高い治療効果のエクソソームを作製すること、
を含み、前記高い治療効果のエクソソームが、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効である方法。
【請求項52】
前記高い治療効果のエクソソームが、増加したレベルのmiR-92a、増加したレベルのmiR-146a、減少したレベルのmiR-199b、またはそれらの組み合わせを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記状態が、筋障害、心筋梗塞、心障害、心筋の変更、筋ジストロフィー、線維化疾患、炎症疾患、または創傷治癒を含む、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記組織成長が、骨成長を含む、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
請求項1~22または42~50のいずれか1項に記載の方法により調製された高い効果の細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置する方法。
【請求項56】
高い効果の細胞の投与が、遺伝子発現および/またはタンパク質発現を変更する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
遺伝子発現および/またはタンパク質発現の変更が、bmp-3の下方制御、bmp-4の下方制御、GDF6の下方制御、GDF10の下方制御、bmp-2の上方制御、bmp-2rの上方制御、bmp-6の上方制御、bmp-8aの上方制御、またはそれらの組み合わせを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
請求項23~41または51~54のいずれか1項に記載の方法により調製された高い効果のエクソソームを、それを必要とする対象に投与することを含む、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置する方法。
【請求項59】
高い治療効果のエクソソームの投与が、遺伝子発現を変更する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
遺伝子発現の変更が、bmp-3の下方制御、bmp-4の下方制御、GDF6の下方制御、GDF10の下方制御、bmp-2の上方制御、bmp-2rの上方制御、bmp-6の上方制御、bmp-8aの上方制御、またはそれらの組み合わせを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
傷害を受けたまたは罹患した組織の処置に使用するための、増強された効果のエクソソームの集団。
【請求項62】
傷害を受けたまたは罹患した組織の処置に使用するための複数のエクソソームを含む、増強された効果のエクソソームの集団であって、
前記エクソソームが、供給源細胞の集団から得られ、前記供給源細胞が、CDCまたは線維芽細胞を含み、
前記供給源細胞が、β-カテニン発現のモジュレーターに曝露されてβ-カテニン発現の上方制御をもたらし、
前記増強された効果のエクソソームが、β-カテニン発現の前記モジュレーターに曝露されていない供給源細胞から得たエクソソームに比較してより高いレベルで、miR-92aおよび/またはmiR-146aを発現する集団。
【請求項63】
低い治療効果の供給源細胞の集団に比べて、
(a)上方制御されたβ-カテニン発現;
(b)下方制御されたレベルのmest発現;
(c)上方制御されたレベルのLRP5/6発現;
(d)下方制御されたレベルのextl1発現;
(e)上方制御されたレベルのmiR-92a;
またはそれらの任意の組み合わせ、
を含む、傷害を受けたまたは罹患した組織の処置に使用するための増強された治療効果が得られるように工学操作された細胞の集団。
【請求項64】
低い治療効果の細胞の前記集団が、CDCまたは線維芽細胞を含む、請求項63に記載の増強された治療効果が得られるように工学操作された細胞の集団。
【請求項65】
前記集団の細胞が、β-カテニン発現を上方制御するため、mest発現のレベルを下方制御するため、LRP5/6発現のレベルを上方制御するため、extl1発現のレベルを下方制御するために遺伝子改変されている、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項63に記載の集団。
【請求項66】
低い治療効果の細胞の前記集団が、線維芽細胞を含む、請求項63に記載の集団。
【請求項67】
前記線維芽細胞が、gata4を過剰発現するように遺伝子改変されている、請求項66に記載の集団。
【請求項68】
低い治療効果の細胞の前記集団が、CDCを含む、請求項63に記載の集団。
【請求項69】
前記CDCが、不死化CDCである、請求項68に記載の集団。
【請求項70】
傷害を受けたまたは罹患した組織の処置に使用するための複数のエクソソームを含む、増強された効果のエクソソームの集団であって、
前記複数のエクソソームが、請求項63~69のいずれか1項に記載の増強された治療効果が得られるように工学操作された細胞の前記集団から得られる集団。
【請求項71】
前記複数のエクソソームが、低い治療効果のエクソソームに比べて増加したmiR-92aおよび/または増加したmiR-146aを含む、請求項70に記載の増強された効果のエクソソームの集団。
【請求項72】
前記複数のエクソソームが、低い治療効果のエクソソームに比べて低減されたmiR-199bを含む、請求項70または71に記載の増強された効果のエクソソームの集団。
【請求項73】
前記増強された効果のエクソソームが、ITGB1、CD9、およびCD63のうちの1つまたは複数の発現が豊富で、HSC70および/またはGAPDHの発現が欠如している、請求項61、62、または70~72のいずれか1項に記載の集団。
【請求項74】
前記増強された効果のエクソソームが、ITGB1、HSC70、およびGAPDHのうちの1つまたは複数の発現が豊富で、CD9発現が欠如している、請求項61、62、または70~72のいずれか1項に記載の集団。
【請求項75】
傷害を受けたまたは罹患した組織を処置するための、請求項63~69のいずれか1項に記載の増強された治療効果が得られるように工学操作された細胞集団の使用、または請求項70~74のいずれか1項に記載の増強された効果のエクソソームの集団の使用。
【請求項76】
傷害を受けたまたは罹患した組織の処置のための医薬の調製における、請求項63~69のいずれか1項に記載の増強された治療効果が得られるように工学操作された細胞集団の使用、または請求項70~74のいずれか1項に記載の増強された効果のエクソソームの集団の使用。
【請求項77】
前記傷害を受けたまたは罹患した組織が、筋組織を含む、請求項75または76に記載の使用。
【請求項78】
前記筋肉組織が、心臓の筋肉または骨格筋を含む、請求項77に記載の使用。
【請求項79】
細胞集団において、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの発現レベルを測定すること;ならびに
前記1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの前記測定レベルに基づいて、前記細胞集団が高いまたは低い治療効果を有すると決定すること、
を含む、細胞集団の治療効果を決定する方法。
【請求項80】
前記決定することが、前記1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの前記測定レベルを参照レベルまたは参照範囲に比較することを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記参照範囲が、低いまたは高い治療効果を有する細胞集団における前記1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターのレベルの範囲である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターが、β-カテニン、LRP5/6、mest、およびEXTL1のうちの1つまたは複数を含むが、これらに限定されない、請求項79~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターのmRNAレベルを測定することをさらに含む、請求項79~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの前記測定レベルと、前記1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターの前記測定レベルとに基づいて、前記細胞集団が高いまたは低い治療効果を有すると決定することを含む、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記細胞集団が、可変性の治療効果を有する細胞の供給源に由来する、請求項79~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記細胞集団が、線維芽細胞またはCDCを含む、請求項79~85のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、全体が参照により本明細書に組み入れられる2019年5月8日出願の米国特許仮出願第62/845,228号の優先権を主張するものである。
【0002】
連邦の後援によるR&Dに関する表明
本発明は、一部として、米国国立衛生研究所の助成金番号R01HL124074の下でのDr.Eduardo Marbanへの政府支援により成された。米国政府は、本発明において特定の権利を有し得る。
【0003】
背景
本出願は一般に、傷害を受けたまたは罹患した細胞または組織の修復または再生のための方法および組成物に関する。複数の実施形態は、エクソソームの投与、例えば傷害を受けたまたは罹患した組織を修復および/または再生するために、細胞または合成代用物から単離された、高い効果が得られるように工学操作されたエクソソーム(またはエクソソームからのタンパク質および/または核酸)の投与に関する。詳細には複数の実施形態は、例えば心臓幹細胞などの特定の細胞型、および線維芽細胞などの高い治療効果が得られるように工学操作された細胞に由来するエクソソームに関する。複数の実施形態は、例えば心組織の修復および/または再生における、創傷治癒および骨成長のためのエクソソームの使用に関する。
【0004】
カーディオスフェア由来細胞(CDC)は、心臓および骨格筋への傷害後の修復および機能的改善を惹起する。CDCの複数の初期臨床試験により、心不全の後天的または先天的形態における疾患進行の代用マーカーに及ぼす利益が示された。機序についての前臨床試験から、CDCが抗炎症性、抗線維化、血管新生性、および心筋形成性経路を刺激するエクソソームおよび他の細胞外小胞(EV)を分泌することにより、間接的にそれらの利益を発揮することが明らかとなっている。それでも、治療効果は依然として一貫性がなく、CDCおよび他の初代細胞型は、ドナーにおいて多様な効果を呈し、工程改善の努力を行っても、効果意に反して効果を損なうことがあり得る。効果を向上させるための機序に基づく戦略は存在しないが、非常に望ましい。
【0005】
細胞療法を心臓に応用する場合、ゴールドスタンダードの効果アッセイでは、げっ歯類において心筋梗塞(MI)後にインビボで機能的および/または構造的回復を測定する。この費用がかかるロースループットモデルになおも依存しているということは、効果の分子決定因子の機序があまり理解されていないことの表れである。本明細書では、高いおよび低い効果のヒトCDCを、トランスクリプトームレベル、翻訳レベル、および機能レベルで系統的に比較した。洞察は、効果これまで認識されていないCDC効果のマーカーだけでなく、CDCの、他の細胞型の、および分泌されたエクソソームの治療有効性を増強する戦略も含む。
【0006】
分野
幾つかの実施形態は、高い効果の治療的細胞またはエクソソームを作製する方法、ならびに組織修復および/または再生のためのそのような高い効果の細胞またはエクソソームの使用に関する。
【背景技術】
【0007】
関連技術の記載
多くの疾患、傷害および病気は、細胞および組織の損失または傷害を伴う。例としては、神経変性疾患、内分泌疾患、癌、および心血管疾患が挙げられるが、これらに限定されない。まさしくこれらの非限定的例は、実質的な医療コスト、生活の質の低減、職場での生産性損失、職員補填費用、そしてもちろん人命の損失の原因である。例えば冠動脈性心疾患は、年間で650,000人を超える生命を奪う米国の主たる死因の1つである。米国では、1年あたりおよそ130万人の人々が、心臓発作(または心筋梗塞、MI)に見舞われる(大体800,000人が初回心臓発作、そして大体500,000人が続発性心臓発作)。MI後に生存している人でも、多くは心機能の低減、関連する副作用、または進行性心臓疾患により1年以内に死亡することが多い。心疾患は、男性および女性の両方の主たる死因であり、心疾患の最も共通する型である冠動脈性心疾患は、2008年に米国でおよそ400,000人の死亡につながった。病因にかかわらず、冠動脈性心疾患または心不全に罹患した人のほとんどが、永続的な心組織傷害を受けており、これは生活の質の低減につながることが多い。
【0008】
創傷治癒は、皮膚および皮膚下の組織が傷害後に自ら修復する工程である。創傷治癒の段階は、止血(血液凝固)、炎症、新しい組織の増殖または成長、および成熟またはリモデリングを含む。創傷治癒の工程は、脆弱であり、妨害または機能不全を受けやすく、慢性創傷または治癒遷延につながる。別の例として、骨化または骨形成としても知られる骨の形成、および骨の成長が、例えば発達の間に起こる。例えば骨折または挫傷後の骨の治癒は、修復、骨の形成または骨化、およびリモデリングを必要とする。治癒時間は、例えば傷害または骨折の場所、および患者の年齢に応じて遅延する場合がある。
【発明の概要】
【0009】
概要
傷害、疾患、またはそれらの組み合わせにより傷害を受けている(または傷害を受け続けている)組織を修復および/または再生する方法および組成物が、必要とされている。薬理学的介入または装置に基づく介入または手術などの従来の治療は、好ましい効果を提供するが、傷害を受けたまたは罹患した組織の修復または再生において予想外に有益な効果を生じる方法および組成物を本明細書で提供する(しかし幾つかの実施形態では、これらの方法および組成物は、従来の治療を補助するために用いられる)。
【0010】
本明細書で提供されるのは、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態を処置するための高い効果の治療的細胞を調製する方法であって、低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを過剰発現させること、低い治療効果の細胞においてmest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御すること、低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御すること、低い治療効果の細胞をβ-カテニン発現のモジュレーターで処置すること、ならびに低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断すること、のうちの1つまたは複数により低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化し、それによりWnt/β-カテニンシグナル伝達が活性化されない低い治療効果の細胞に比べて増加された治療効果を有する高い効果の治療的細胞を作製することを含み、高い効果の治療的細胞が、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効である方法である。
【0011】
幾つかの実施形態において、β-カテニン発現のモジュレーターは、チデグルシブまたは6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)である。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞におけるβ-カテニン発現を、Wnt/β-カテニンシグナル伝達が活性化されない低い治療効果の細胞に比べて約50%~約300%増加させることを含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、線維芽細胞である。場合により線維芽細胞は、gata4を過剰発現する遺伝子改変された線維芽細胞である。場合により遺伝子改変された線維芽細胞は、gata4を過剰発現しない線維芽細胞に比べて、log倍率が約0.2~約4高いgata4のmRNA発現を有する。場合により方法は、gata4を過剰発現する線維芽細胞を遺伝子改変することをさらに含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、低い治療効果のカーディオスフェア由来細胞(CDC)である。場合により低い治療効果の細胞は、不死化CDCである。場合により方法は、CDCを不死化して、不死化CDCを作製することをさらに含む。場合によりCDCは、不死化される前に高い治療効果を有する。
【0014】
幾つかの実施形態において、方法は、細胞集団を低い治療効果を有すると決定することをさらに含む。場合により決定することは、細胞集団において、1つまたは複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの発現レベルを測定することを含む。幾つかの実施形態において、1つまたは複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターは、古典的なWnt/β-カテニンシグナル伝達に特異的である。幾つかの実施形態において、1つまたは複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターは、β-カテニン、LRP5/6、mest、およびEXTL1から選択される。幾つかの実施形態において、決定することは、1つまたは複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターのmRNAレベルを測定することを含む。幾つかの実施形態において、1つまたは複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターは、ror2、nfatc2、axin2、rac2、およびapcdd1から選択される。
【0015】
幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象にとって同種異系である。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象にとって自己である。
【0016】
幾つかの実施形態において、方法は、高い効果の治療的細胞からエクソソームを単離することをさらに含み、エクソソームは、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効である。
【0017】
幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞は、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象に投与した場合に、心臓の瘢痕サイズを低減すること、心筋梗塞の壁厚を増加させること、駆出率を増加させること、心筋梗塞による死亡率を低減すること、運動能力を上昇させること、骨格筋線維化を低減すること、および筋線維のサイズを増加させること、のうちの1つまたは複数に有効である。幾つかの実施形態において、増加した治療効果は、高い効果の治療的細胞と低い治療効果の細胞との間に約5%~約40%のパーセンテージ治療効果の差を含む。
【0018】
同じく本明細書されるのは、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置するために高い治療効果のエクソソームを調製する方法であって、活性化されたWnt/β-カテニンシグナル伝達を有する工学操作された高い効果の治療的細胞の集団を提供することであって、高い効果の治療的細胞が、低い治療効果の細胞の集団に比べて、上方制御されたβ-カテニン発現;下方制御されたレベルのmest発現;上方制御されたレベルのLRP5/6発現;および下方制御されたレベルのextl1発現のうちの1つまたは複数を呈すること、ならびに集団からエクソソームを単離し、それによりWnt/β-カテニンシグナル伝達が活性化されない低い治療効果の細胞から単離された低い治療効果のエクソソームに比べて増加した治療効果を有する高い治療効果のエクソソームを作製することであって、高い治療効果のエクソソームが、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効であることを含む方法である。場合により、工学操作された高い効果の治療的細胞は、低い治療効果の細胞に比べて約50%~約300%高いβ-カテニン発現を含む。
【0019】
幾つかの実施形態において、工学操作された高い効果の治療的細胞は、工学操作された線維芽細胞である。場合により工学操作された線維芽細胞は、gata4を過剰発現する遺伝子改変された線維芽細胞である。幾つかの実施形態において、遺伝子改変された線維芽細胞は、gata4を過剰発現しない線維芽細胞に比べて、log倍率が約0.2~約4高いgata4発現を有する。
【0020】
幾つかの実施形態において、工学操作された高い効果の治療的細胞は、高い治療効果のカーディオスフェア由来細胞(CDC)である。場合により遺伝子改変された高い効果の治療的細胞は、高い治療効果の不死化CDCである。
【0021】
幾つかの実施形態において、集団を提供することは、低い治療効果の細胞を同定すること;ならびに低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを過剰発現させること、低い治療効果の細胞においてmest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御すること、低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御すること、低い治療効果の細胞をβ-カテニン発現のモジュレータで処置すること、ならびに低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断することのうちの1つまたは複数により、低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化し、それにより工学操作された高い効果の治療的細胞が豊富な細胞集団を作製することを含む。場合によりβ-カテニン発現のモジュレーターは、チデグルシブまたは6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)である。
【0022】
幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、線維芽細胞である。幾つかの実施形態において、線維芽細胞は、gata4を過剰発現する。幾つかの実施形態において、方法は、gata4を過剰発現する線維芽細胞を遺伝子改変することをさらに含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、不死化CDCである。場合により方法は、CDCを不死化して、不死化CDCを作製することをさらに含む。場合によりCDCは、不死化される前に高い治療効果を有する。
【0024】
幾つかの実施形態において、細胞集団は、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象にとって同種異系である。幾つかの実施形態において、細胞集団は、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象にとって異種である。
【0025】
幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームは、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象に投与した場合に、心臓の瘢痕サイズを低減すること、心筋梗塞の壁厚を増加させること、駆出率を増加させること、心筋梗塞による死亡率を低減すること、運動能力を上昇させること、骨格筋線維化を低減すること、および筋線維のサイズを増加させること、のうちの1つまたは複数に有効である。幾つかの実施形態において、増加した治療効果は、高い効果の治療性エクソソームと低い治療効果の細胞から単離されたエクソソームとの間にパーセンテージで測定された治療効果の約5%~約40%の差を含む。
【0026】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、組織再生、組織修復、または組織成長を必要とする状態を処置するために高い効果の治療的細胞を調製する方法であって、低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することを含み、低い治療効果の細胞の治療効果が、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化前の治療効果に比べて、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化後に増加し、高い効果の治療的細胞が、組織再生、組織修復、または組織成長を容易にするのに有効であることを含む方法である。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンの活性化は、低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを過剰発現させること、β-カテニン発現のモジュレーターによって低い治療効果の細胞を処置すること、GSK3βを遮断すること、GSK3βの遺伝子除去、またはGSK3βのノックダウンを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された方法は、gata4を過剰発現させることをさらに含む。幾つかの実施形態において、β-カテニン発現のモジュレーターによる低い治療効果の細胞の処置は、β-カテニン発現の上方制御を含む。幾つかの実施形態において、β-カテニン発現のモジュレーターは、6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)またはチデグルシブである。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化は、核酸および/またはタンパク質発現の変更を含む。幾つかの実施形態において、核酸および/またはタンパク質発現活性化の変更は、mestの下方制御、miR-335の下方制御、EXTL1の下方制御、CD90の下方制御、CD105の下方制御、LRP5/6の上方制御、miR-92aの上方制御、またはそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、カーディオスフェア由来細胞または線維芽細胞である。幾つかの実施形態において、状態は、筋障害、心筋梗塞、心障害、心筋の変更、筋ジストロフィー、線維化疾患、炎症疾患、または創傷治癒を含む。幾つかの実施形態において、組織成長は、骨成長を含む。
【0027】
幾つかの実施形態において本明細書に記載されるのは、組織再生、組織修復、または組織成長を必要とする状態を処置するための高い治療効果のエクソソームを調製する方法であって、(a)本明細書に開示された方法のいずれかにより高い効果の治療的細胞を調製すること;(b)高い効果の治療的細胞からエクソソームを回収することであって高い効果の治療的細胞が、組織再生、組織修復、または組織成長を容易にするのに有効であることを含む方法である。幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームは、増加したレベルのmiR-92a、増加したレベルのmiR-146a、減少したレベルのmiR-199b、またはそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、状態は、筋障害、心筋梗塞、心障害、心筋の変更、筋ジストロフィー、線維化疾患、炎症疾患、または創傷治癒を含む。幾つかの実施形態において、組織成長は、骨成長を含む。
【0028】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、本明細書に開示された方法のいずれかにより調製された高い効果の細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む、組織再生、組織修復、または組織成長を必要とする状態を処置する方法である。幾つかの実施形態において、高い効果の細胞の投与は、遺伝子発現および/またはタンパク質発現を変更する。幾つかの実施形態において、遺伝子発現および/またはタンパク質発現の変更は、bmp-3の下方制御、bmp-4の下方制御、GDF6の下方制御、GDF10の下方制御、bmp-2の上方制御、bmp-2rの上方制御、bmp-6の上方制御、bmp-8aの上方制御、またはそれらの組み合わせを含む。
【0029】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、本明細書に開示された方法のいずれかにより調製された高い効果のエクソソームを、それを必要とする対象に投与することを含む、組織再生、組織修復、または組織成長を必要とする状態を処置する方法である。幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームの投与は、遺伝子発現を変更する。幾つかの実施形態において、遺伝子発現の変更は、bmp-3の下方制御、bmp-4の下方制御、GDF6の下方制御、GDF10の下方制御、bmp-2の上方制御、bmp-2rの上方制御、bmp-6の上方制御、bmp-8aの上方制御、またはそれらの組み合わせを含む。
【0030】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、傷害を受けたまたは罹患した組織の処置に使用するための複数のエクソソームを含む、増強された効果のエクソソームの集団であって、エクソソームが、供給源細胞の集団から得られ、供給源細胞が、CDCまたは線維芽細胞を含み、供給源細胞が、β-カテニン発現のモジュレーターに曝露されてβ-カテニン発現の上方制御をもたらし、増強された効果のエクソソームが、β-カテニン発現のモジュレーターに曝露されていない供給源細胞から得られたエクソソームに比較してより高いレベルで、miR-92aおよび/またはmiR-146aを発現するエクソソームの集団である。
【0031】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、低い治療効果の供給源細胞の集団に比べて、(a)上方制御されたβ-カテニン発現;(b)下方制御されたレベルのmest発現;(c)上方制御されたレベルのLRP5/6発現;(d)下方制御されたレベルのextl1発現;(e)上方制御されたレベルのmiR-92a;またはそれらの任意の組み合わせを含む、傷害を受けたまたは罹患した組織の処置に使用するための増強された治療効果が得られるように工学操作された細胞の集団である。幾つかの実施形態において、低い治療効果の供給源細胞の集団は、CDCまたは線維芽細胞を含む。
【0032】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるのは、傷害を受けたまたは罹患した組織の処置に使用するための複数のエクソソームを含む、増強された効果のエクソソームの集団であって、複数のエクソソームが、本明細書に開示された増強された治療効果が得られるように工学操作された細胞の集団から得られるエクソソームの集団である。幾つかの実施形態において、エクソソームの集団は、低い治療効果のエクソソームに比べて、上方制御されたmiR-92aおよび/または上方制御されたmiR-146aを含む。幾つかの実施形態において、増強された効果のエクソソームは、ITGB1、CD9、およびCD63のうちの1つまたは複数の発現が豊富で、HSC70および/またはGAPDHの発現が欠如している。幾つかの実施形態において、増強された効果のエクソソームは、ITGB1、HSC70、およびGAPDHのうちの1つまたは複数の発現が豊富で、CD9発現が欠如している。
【0033】
同じく本明細書で提供されるのは、傷害を受けたまたは罹患した組織を処置するための、本明細書に開示された増強された治療効果が得られるように工学操作された細胞集団の使用、または本明細書に開示された増強された効果のエクソソームの集団の使用である。同じく提供されるのは、傷害を受けたまたは罹患した組織の処置のための医薬の調製における、本明細書に開示された増強された治療効果が得られるように工学操作された細胞の集団の使用、または本明細書に開示された増強された効果のエクソソームの集団の使用である。幾つかの実施形態において、傷害を受けたまたは罹患した組織は、筋組織を含む。幾つかの実施形態において、筋組織は、心臓の筋肉または骨格筋を含む。
【0034】
同じく本明細書で提供されるのは、細胞集団の治療効果を決定する方法であって、細胞集団において、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの発現レベルを測定すること;ならびに1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの測定レベルに基づいて、細胞集団が高いまたは低い治療効果を有することを決定することを含む方法である。幾つかの実施形態において、決定することは、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの測定レベルを参照レベルまたは参照範囲に比較することを含む。幾つかの実施形態において、参照範囲は、低いまたは高い治療効果を有する細胞集団における1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターのレベルの範囲である。幾つかの実施形態において、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターは、β-カテニン、LRP5/6、mest、およびEXTL1のうちの1つまたは複数を含むが、これらに限定されない。
【0035】
幾つかの実施形態において、方法は、1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターのmRNAレベルを測定することをさらに含む。幾つかの実施形態において、方法は、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの測定レベルと、1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターの測定レベルとに基づいて、細胞集団が高いまたは低い治療効果を有すると決定することを含む。
【0036】
幾つかの実施形態において、細胞集団は、多様な治療効果を有する細胞の供給源に由来する。幾つかの実施形態において、細胞集団は、線維芽細胞またはCDCを含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A図1A~1Fは様々なヒトCDC細胞株の治療有効性を示す。図1Aは、ヒトCDC細胞株を投与した時の包括的な心機能の変化を示す。
図1B図1A~1Fは様々なヒトCDC細胞株の治療有効性を示す。図1Bは、HPおよびLP CDCのトランスクリプトームの比較を示す。
図1C図1A~1Fは様々なヒトCDC細胞株の治療有効性を示す。図1Cは、LP CDC中で非古典的Wnt経路メンバーが豊富であることを示す。
図1D図1A~1Fは様々なヒトCDC細胞株の治療有効性を示す。図1D、1E、および1Fは、古典的および非古典的Wntシグナル伝達経路(Frizzled受容体、Dishevelled)およびWntリガンドにより共有された分子中で差がほとんど明らかでなかったことを示す。
図1E図1A~1Fは様々なヒトCDC細胞株の治療有効性を示す。図1D、1E、および1Fは、古典的および非古典的Wntシグナル伝達経路(Frizzled受容体、Dishevelled)およびWntリガンドにより共有された分子中で差がほとんど明らかでなかったことを示す。
図1F図1A~1Fは様々なヒトCDC細胞株の治療有効性を示す。図1D、1E、および1Fは、古典的および非古典的Wntシグナル伝達経路(Frizzled受容体、Dishevelled)およびWntリガンドにより共有された分子中で差がほとんど明らかでなかったことを示す。
図2A図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2Aは、ドナーCDC(n=13)における総β-カテニンレベルとインビボでの治療成績(左心室駆出率の変化として表される)の相関を示す。
図2B図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2Bは、効果の低いCDCに比較して、効果の高いCDC(HP)におけるWnt共受容体LRP5/6のより高い発現を示す(LP;n=5/群)。
図2C図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2Cは、5μM BIOへのLP CDC曝露がβ-カテニンレベルを有意に増加させたことを示す。
図2D図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2D、2E、2F、および2Gは、LP CDCを5μM BIOに曝露すると、治療有効性が回復したことを示す(n=6/群)。%瘢痕率を、マッソントリクローム染色切片からImage J定量を利用して決定した。BIO曝露が同じドナーからの強力なロットと類似のレベルまで効果を回復させたため、前述の結果をさらに、時おり強力なCDC供給源の低い効果のロット(LPL)からのCDCで確認した(n=5/群;図2Hおよび2I)。β-カテニンレベルの回復はまた、不死化されて(SV40-T+t)効果が減弱されたCDC(imCDC)において効果を奪回した(n=7/群;図2Jおよび2K)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図2E図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2D、2E、2F、および2Gは、LP CDCを5μM BIOに曝露すると、治療有効性が回復したことを示す(n=6/群)。%瘢痕率を、マッソントリクローム染色切片からImage J定量を利用して決定した。BIO曝露が同じドナーからの強力なロットと類似のレベルまで効果を回復させたため、前述の結果をさらに、時おり強力なCDC供給源の低い効果のロット(LPL)からのCDCで確認した(n=5/群;図2Hおよび2I)。β-カテニンレベルの回復はまた、不死化されて(SV40-T+t)効果が減弱されたCDC(imCDC)において効果を奪回した(n=7/群;図2Jおよび2K)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図2F図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2D、2E、2F、および2Gは、LP CDCを5μM BIOに曝露すると、治療有効性が回復したことを示す(n=6/群)。%瘢痕率を、マッソントリクローム染色切片からImage J定量を利用して決定した。BIO曝露が同じドナーからの強力なロットと類似のレベルまで効果を回復させたため、前述の結果をさらに、時おり強力なCDC供給源の低い効果のロット(LPL)からのCDCで確認した(n=5/群;図2Hおよび2I)。β-カテニンレベルの回復はまた、不死化されて(SV40-T+t)効果が減弱されたCDC(imCDC)において効果を奪回した(n=7/群;図2Jおよび2K)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図2G図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2D、2E、2F、および2Gは、LP CDCを5μM BIOに曝露すると、治療有効性が回復したことを示す(n=6/群)。%瘢痕率を、マッソントリクローム染色切片からImage J定量を利用して決定した。BIO曝露が同じドナーからの強力なロットと類似のレベルまで効果を回復させたため、前述の結果をさらに、時おり強力なCDC供給源の低い効果のロット(LPL)からのCDCで確認した(n=5/群;図2Hおよび2I)。β-カテニンレベルの回復はまた、不死化されて(SV40-T+t)効果が減弱されたCDC(imCDC)において効果を奪回した(n=7/群;図2Jおよび2K)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図2H図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2D、2E、2F、および2Gは、LP CDCを5μM BIOに曝露すると、治療有効性が回復したことを示す(n=6/群)。%瘢痕率を、マッソントリクローム染色切片からImage J定量を利用して決定した。BIO曝露が同じドナーからの強力なロットと類似のレベルまで効果を回復させたため、前述の結果をさらに、時おり強力なCDC供給源の低い効果のロット(LPL)からのCDCで確認した(n=5/群;図2Hおよび2I)。β-カテニンレベルの回復はまた、不死化されて(SV40-T+t)効果が減弱されたCDC(imCDC)において効果を奪回した(n=7/群;図2Jおよび2K)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図2I図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2D、2E、2F、および2Gは、LP CDCを5μM BIOに曝露すると、治療有効性が回復したことを示す(n=6/群)。%瘢痕率を、マッソントリクローム染色切片からImage J定量を利用して決定した。BIO曝露が同じドナーからの強力なロットと類似のレベルまで効果を回復させたため、前述の結果をさらに、時おり強力なCDC供給源の低い効果のロット(LPL)からのCDCで確認した(n=5/群;図2Hおよび2I)。β-カテニンレベルの回復はまた、不死化されて(SV40-T+t)効果が減弱されたCDC(imCDC)において効果を奪回した(n=7/群;図2Jおよび2K)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図2J図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2D、2E、2F、および2Gは、LP CDCを5μM BIOに曝露すると、治療有効性が回復したことを示す(n=6/群)。%瘢痕率を、マッソントリクローム染色切片からImage J定量を利用して決定した。BIO曝露が同じドナーからの強力なロットと類似のレベルまで効果を回復させたため、前述の結果をさらに、時おり強力なCDC供給源の低い効果のロット(LPL)からのCDCで確認した(n=5/群;図2Hおよび2I)。β-カテニンレベルの回復はまた、不死化されて(SV40-T+t)効果が減弱されたCDC(imCDC)において効果を奪回した(n=7/群;図2Jおよび2K)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図2K図2A~2Kは、β-カテニンがCDCの効果を増強することを示す。図2D、2E、2F、および2Gは、LP CDCを5μM BIOに曝露すると、治療有効性が回復したことを示す(n=6/群)。%瘢痕率を、マッソントリクローム染色切片からImage J定量を利用して決定した。BIO曝露が同じドナーからの強力なロットと類似のレベルまで効果を回復させたため、前述の結果をさらに、時おり強力なCDC供給源の低い効果のロット(LPL)からのCDCで確認した(n=5/群;図2Hおよび2I)。β-カテニンレベルの回復はまた、不死化されて(SV40-T+t)効果が減弱されたCDC(imCDC)において効果を奪回した(n=7/群;図2Jおよび2K)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図3A図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3Aは、実験の概略図を示す。3組の細胞、すなわち低い効果のドナーからのCDC(LP)、それ以外は強力なドナーの低い効果のロットからのCDC(LPL)、および不死化により効果を減弱されたCDC(imCDC)、からのRNAを配列決定した。示差的発現解析を各群内で行い(BIO曝露とビヒクル対照の対比)、結果(倍率変化として表す)を3群において平均した。
図3B図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3Bは、配列決定により、β-カテニンレギュレーターの中胚葉特異的転写物(mest)が同定され、その同族マイクロRNA(miR-335)が下方制御されることを示す。
図3C図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3Cは、mestおよびmiR-335における変化のqPCRによる検証を示す。
図3D図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3Dは、ビヒクル対照の同等物に比較した、BIOに曝露されたLP、LPL、およびimCDCから単離された細胞外小胞(EV)中のmiR-335の遺伝子発現の倍率変化を示す。
図3E図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3Eは、非常に強力なCDC EVからのEVが線維芽細胞中のmestを減少させることを示す。
図3F図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3F、3Gおよび3Hは、BIOに曝露されたLP、LPL、およびimCDCにおけるWntシグナル伝達共受容体、LRP5/6、およびエクソストシンファミリーグルコシルトランスフェラーゼのメンバーEXTL1のqPCR検証を示す。
図3G図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3F、3Gおよび3Hは、BIOに曝露されたLP、LPL、およびimCDCにおけるWntシグナル伝達共受容体、LRP5/6、およびエクソストシンファミリーグルコシルトランスフェラーゼのメンバーEXTL1のqPCR検証を示す。
図3H図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3F、3Gおよび3Hは、BIOに曝露されたLP、LPL、およびimCDCにおけるWntシグナル伝達共受容体、LRP5/6、およびエクソストシンファミリーグルコシルトランスフェラーゼのメンバーEXTL1のqPCR検証を示す。
図3I図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3Iは、BIOに曝露された後のLP細胞中でのEXTL1タンパク質下方制御の検証を示す。
図3J図3A~3Jは、CDCにおけるβ-カテニンのmest調節を示す。図3Jは、LPへのBIO曝露がLRP5/6レベルを増加させたことのフローサイトメトリーを示す。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図4A図4A~4Dは、不死化CDCにおけるmest阻害を示す。図4Aは、マウスMIモデルにおいてSV40 T+tトランスジーンのレンチウイルス形質導入が不死化だけでなく、β-カテニンELISAと同様にβ-カテニンレベルおよび治療有効性の減弱、ならびに左心室の機能的改善の変化(ΔEF)をもたらすことを示す。
図4B図4A~4Dは、不死化CDCにおけるmest阻害を示す。図4Bは、初代CDC(pCDC)および改変された不死化CDC(imCDCsh-mest)におけるEXTL1およびmestタンパク質レベルのウェスタンブロットおよびプールされたデータを示す。
図4C図4A~4Dは、不死化CDCにおけるmest阻害を示す。図4Cは、フローサイトメトリーによりpCDCに比較したimCDCsh-mestにおけるlrp5/6の増加を示す(n=二重測定/群)。
図4D図4A~4Dは、不死化CDCにおけるmest阻害を示す。図4Dは、不死化後の複数の継代にわたるβ-カテニンタンパク質レベルの有効な維持が、mestの低分子ヘアピン介在性ノックダウンと結び付くことを示す(n=三重測定/群)。40ng/μlでの点線は、非常に強力なドナーにおける平均β-カテニンレベルを表す。
図4E図4A~4Dは、不死化CDCにおけるmest阻害を示す。図4Eは、pCDCおよびimCDCsh-mestのEV中のmiR146aおよびmiR199bのqPCRを示す。構造的改善(図4F、4Gおよび4H)および機能的改善(図4I)を含む急性MIのマウスモデル(n=7/群)におけるimCDCsh-mestおよびpCDCの成績。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図4F図4A~4Dは、不死化CDCにおけるmest阻害を示す。図4Eは、pCDCおよびimCDCsh-mestのEV中のmiR146aおよびmiR199bのqPCRを示す。構造的改善(図4F、4Gおよび4H)および機能的改善(図4I)を含む急性MIのマウスモデル(n=7/群)におけるimCDCsh-mestおよびpCDCの成績。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図4G図4A~4Dは、不死化CDCにおけるmest阻害を示す。図4Eは、pCDCおよびimCDCsh-mestのEV中のmiR146aおよびmiR199bのqPCRを示す。構造的改善(図4F、4Gおよび4H)および機能的改善(図4I)を含む急性MIのマウスモデル(n=7/群)におけるimCDCsh-mestおよびpCDCの成績。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図4H図4A~4Dは、不死化CDCにおけるmest阻害を示す。図4Eは、pCDCおよびimCDCsh-mestのEV中のmiR146aおよびmiR199bのqPCRを示す。構造的改善(図4F、4Gおよび4H)および機能的改善(図4I)を含む急性MIのマウスモデル(n=7/群)におけるimCDCsh-mestおよびpCDCの成績。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図4I図4A~4Dは、不死化CDCにおけるmest阻害を示す。図4Eは、pCDCおよびimCDCsh-mestのEV中のmiR146aおよびmiR199bのqPCRを示す。構造的改善(図4F、4Gおよび4H)および機能的改善(図4I)を含む急性MIのマウスモデル(n=7/群)におけるimCDCsh-mestおよびpCDCの成績。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図5A図5A~5Iは、β-カテニンまたはβ-カテニン/gata4でのNHDF不死化を示す。図5Aは、形質導入細胞におけるβ-カテニンまたはβ-カテニン/gata4のqPCR検証を示す。
図5B図5A~5Iは、β-カテニンまたはβ-カテニン/gata4でのNHDF不死化を示す。図5Bは、形質導入後に変化した細胞形態を示す。NHDFβcatおよびNHDFβcat/gata4は、それぞれより内皮様に、そしてより上皮様になった。
図5C図5A~5Iは、β-カテニンまたはβ-カテニン/gata4でのNHDF不死化を示す。図5Cは、NHDF、NHDFβcatおよびNHDFβcat/gata4におけるCD90、CD105、およびlrp5/6のフローサイトメトリーを示す(n=三重測定/群)。
図5D図5A~5Iは、β-カテニンまたはβ-カテニン/gata4でのNHDF不死化を示す。図5Dは、形質導入後のβ-カテニンレベルのELISAを示す(n=三重測定/群)。
図5E図5A~5Iは、β-カテニンまたはβ-カテニン/gata4でのNHDF不死化を示す。図5Eは、形質導入細胞の細胞外小胞におけるマイクロRNAマーカーのqPCRを示す(n=三重測定/群;miR199bの三重測定のうち1回だけがCT値を検出することができた)。
図5F図5A~5Iは、β-カテニンまたはβ-カテニン/gata4でのNHDF不死化を示す。図5F、5G、5H、および5Iは、死亡率がNHDFを注射した心筋梗塞マウスにおいて増大したことを示す。しかしβ-カテニンまたはβ-カテニンとgata4を形質導入したNHDFを投与した動物は、CDCおよびCDC EVで観察されたものと同様の死亡率の改善、機能的改善およびリモデリングの減弱を示す。スケールバー:100μm。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図5G図5A~5Iは、β-カテニンまたはβ-カテニン/gata4でのNHDF不死化を示す。図5F、5G、5H、および5Iは、死亡率がNHDFを注射した心筋梗塞マウスにおいて増大したことを示す。しかしβ-カテニンまたはβ-カテニンとgata4を形質導入したNHDFを投与した動物は、CDCおよびCDC EVで観察されたものと同様の死亡率の改善、機能的改善およびリモデリングの減弱を示す。スケールバー:100μm。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図5H図5A~5Iは、β-カテニンまたはβ-カテニン/gata4でのNHDF不死化を示す。図5F、5G、5H、および5Iは、死亡率がNHDFを注射した心筋梗塞マウスにおいて増大したことを示す。しかしβ-カテニンまたはβ-カテニンとgata4を形質導入したNHDFを投与した動物は、CDCおよびCDC EVで観察されたものと同様の死亡率の改善、機能的改善およびリモデリングの減弱を示す。スケールバー:100μm。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図5I図5A~5Iは、β-カテニンまたはβ-カテニン/gata4でのNHDF不死化を示す。図5F、5G、5H、および5Iは、死亡率がNHDFを注射した心筋梗塞マウスにおいて増大したことを示す。しかしβ-カテニンまたはβ-カテニンとgata4を形質導入したNHDFを投与した動物は、CDCおよびCDC EVで観察されたものと同様の死亡率の改善、機能的改善およびリモデリングの減弱を示す。スケールバー:100μm。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図6A図6A~6Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおけるASTEXの生物活性を示す。図6Aは、実験計画の概略図を示す。マウスは、漸増運動負荷テストを受けた後に大腿静脈にASTEXまたはビヒクル対照(IMDM)を注射された。運動テストは、3週後に再度行った。
図6B図6A~6Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおけるASTEXの生物活性を示す。図6Bは、最大運動能が3週後のASTEX注射mdxマウスにおいて有意に改善したことを示す(n=5~6/群)。
図6C図6A~6Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおけるASTEXの生物活性を示す。図6Cは、ビヒクルおよびASTEXを注射したmdx TA筋肉の代表的なマッソントリクローム染色顕微鏡像を示す。cからプールされたデータは、ASTEX注射の3週後にmdx TA筋肉における筋線維化がより少ないことを示す(n=5/群)。スケールバー:100μm。
図6D図6A~6Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおけるASTEXの生物活性を示す。図6Dは、筋肉あたり1,000個の分析した筋線維からのプールデータを示し、図6Eは、ASTEXが筋線維サイズ分布をより大きな直径にシフトさせたことを示す(n=5/群)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図6E図6A~6Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおけるASTEXの生物活性を示す。図6Dは、筋肉あたり1,000個の分析した筋線維からのプールデータを示し、図6Eは、ASTEXが筋線維サイズ分布をより大きな直径にシフトさせたことを示す(n=5/群)。統計解析:スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図7A図7A~7Hは、β-カテニン活性化がmiR-92aを介して標的細胞中のbmp2の下流の活性化をもたらすことを示す。図7Aは、対照と比較した、HP EVに曝露された新生仔ラット心室筋細胞における示差的発現遺伝子のヒートマップを示す。
図7B図7A~7Hは、β-カテニン活性化がmiR-92aを介して標的細胞中のbmp2の下流の活性化をもたらすことを示す。図7Bは、HP EV曝露の筋細胞中のbmpファミリーメンバーの抗線維化メンバーの上方制御および線維化促進メンバーの下方制御を示す。
図7C図7A~7Hは、β-カテニン活性化がmiR-92aを介して標的細胞中のbmp2の下流の活性化をもたらすことを示す。図7Cは、LP EVと比較して、HP-EVにおけるmiR-92aが豊富であることを示す(n=ドナー3名EV/群)。
図7D図7A~7Hは、β-カテニン活性化がmiR-92aを介して標的細胞中のbmp2の下流の活性化をもたらすことを示す。図7Dは、HP細胞からのEVに線維芽細胞を曝露すると、bmp2発現の増加をもたらすことを示す(n=三重測定/群)。
図7E図7A~7Hは、β-カテニン活性化がmiR-92aを介して標的細胞中のbmp2の下流の活性化をもたらすことを示す。図7Eおよび7Fは、imCDCshmestおよびASTEXから単離されたEVが、効果と一致して、それぞれ初代CDC EVおよび線維芽細胞EVに比較してmiR-92aが豊富であることを示す。
図7F図7A~7Hは、β-カテニン活性化がmiR-92aを介して標的細胞中のbmp2の下流の活性化をもたらすことを示す。図7Eおよび7Fは、imCDCshmestおよびASTEXから単離されたEVが、効果と一致して、それぞれ初代CDC EVおよび線維芽細胞EVに比較してmiR-92aが豊富であることを示す。
図7G図7A~7Hは、β-カテニン活性化がmiR-92aを介して標的細胞中のbmp2の下流の活性化をもたらすことを示す。図7Gは、mestが非古典的Wntシグナル伝達経路と古典的Wntシグナル伝達経路の間のターニングポイントであり、治療的細胞の効果の決定因子であることを示す。
図7H図7A~7Hは、β-カテニン活性化がmiR-92aを介して標的細胞中のbmp2の下流の活性化をもたらすことを示す。図7Hは、幾つかの実施形態による作用機序の概略図を示す。CDCにおけるβ-カテニン活性化は、分泌されたEVにおいてmiR-92aが豊富であることにつながる。分泌されたEVは、標的細胞により取り込まれ、bmp2シグナル伝達を活性化し、治癒および修復をもたらす。スチューデントの独立したt検定を用いた、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図8A図8A~8Eは、HP-CDCおよびLP-CDC細胞におけるβ-カテニンレベルを示す。図8Aは、CDCをEDCから作製した場合のカーディオスフェア工程のβ-カテニンプロファイルを示す(n=三重測定/群)。
図8B図8A~8Eは、HP-CDCおよびLP-CDC細胞におけるβ-カテニンレベルを示す。図8Bは、増加濃度のBIOに曝露したCDCのベータカテニンELISAを示す。
図8C図8A~8Eは、HP-CDCおよびLP-CDC細胞におけるβ-カテニンレベルを示す。図8Cは、BIOに曝露したLP細胞中のCD90、CD105およびDDR2のフローサイトメトリーを示す。
図8D図8A~8Eは、HP-CDCおよびLP-CDC細胞におけるβ-カテニンレベルを示す。図8Dおよび8Eは、GSK3βの可逆的阻害剤(およびβ-カテニンの活性剤)であるBIOが不可逆的阻害剤チデグルシブよりも急速な効果減衰を示したことを示す(n=三重測定/群)。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図8E図8A~8Eは、HP-CDCおよびLP-CDC細胞におけるβ-カテニンレベルを示す。図8Dおよび8Eは、GSK3βの可逆的阻害剤(およびβ-カテニンの活性剤)であるBIOが不可逆的阻害剤チデグルシブよりも急速な効果減衰を示したことを示す(n=三重測定/群)。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図9A図9A~9Fは、効果増強におけるβ-カテニンの役割を示す。図9Aは、梗塞マウスにおいて注射の3週後のビヒクル曝露細胞に比較した、BIOに曝露したLP CDCの細胞持続性(cell persistence)を示す(n=4~5動物/群)。心組織1mgあたりの既知数のCDC(ここでは用いられた同じLPドナーからの)のうちのmage a1(ヒト特異的X染色体マーカー)のコピー数を示す標準曲線(左図)。BIOで処置したCDCは、注射の3週後までに宿主組織から完全に除去された(右図)。ビヒクル曝露の同等物に比較した、BIOに曝露したCDC中のmRNA(図9Bおよび9C)およびマイクロRNA(図9Dおよび9E)の示差的発現。データは、3種のBIOに曝露した対全体における平均減少(図9Bおよび9D)および増加(図9Cおよび9E)を表す。図9Fは、線維芽細胞中のβ-カテニンの活性化がCDCにおけるβ-カテニン活性化と対照的にmestを減少させないことを示す(n=三重測定/群)。スケールバー:100μm。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図9B図9A~9Fは、効果増強におけるβ-カテニンの役割を示す。図9Aは、梗塞マウスにおいて注射の3週後のビヒクル曝露細胞に比較した、BIOに曝露したLP CDCの細胞持続性(cell persistence)を示す(n=4~5動物/群)。心組織1mgあたりの既知数のCDC(ここでは用いられた同じLPドナーからの)のうちのmage a1(ヒト特異的X染色体マーカー)のコピー数を示す標準曲線(左図)。BIOで処置したCDCは、注射の3週後までに宿主組織から完全に除去された(右図)。ビヒクル曝露の同等物に比較した、BIOに曝露したCDC中のmRNA(図9Bおよび9C)およびマイクロRNA(図9Dおよび9E)の示差的発現。データは、3種のBIOに曝露した対全体における平均減少(図9Bおよび9D)および増加(図9Cおよび9E)を表す。図9Fは、線維芽細胞中のβ-カテニンの活性化がCDCにおけるβ-カテニン活性化と対照的にmestを減少させないことを示す(n=三重測定/群)。スケールバー:100μm。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図9C図9A~9Fは、効果増強におけるβ-カテニンの役割を示す。図9Aは、梗塞マウスにおいて注射の3週後のビヒクル曝露細胞に比較した、BIOに曝露したLP CDCの細胞持続性(cell persistence)を示す(n=4~5動物/群)。心組織1mgあたりの既知数のCDC(ここでは用いられた同じLPドナーからの)のうちのmage a1(ヒト特異的X染色体マーカー)のコピー数を示す標準曲線(左図)。BIOで処置したCDCは、注射の3週後までに宿主組織から完全に除去された(右図)。ビヒクル曝露の同等物に比較した、BIOに曝露したCDC中のmRNA(図9Bおよび9C)およびマイクロRNA(図9Dおよび9E)の示差的発現。データは、3種のBIOに曝露した対全体における平均減少(図9Bおよび9D)および増加(図9Cおよび9E)を表す。図9Fは、線維芽細胞中のβ-カテニンの活性化がCDCにおけるβ-カテニン活性化と対照的にmestを減少させないことを示す(n=三重測定/群)。スケールバー:100μm。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図9D図9A~9Fは、効果増強におけるβ-カテニンの役割を示す。図9Aは、梗塞マウスにおいて注射の3週後のビヒクル曝露細胞に比較した、BIOに曝露したLP CDCの細胞持続性(cell persistence)を示す(n=4~5動物/群)。心組織1mgあたりの既知数のCDC(ここでは用いられた同じLPドナーからの)のうちのmage a1(ヒト特異的X染色体マーカー)のコピー数を示す標準曲線(左図)。BIOで処置したCDCは、注射の3週後までに宿主組織から完全に除去された(右図)。ビヒクル曝露の同等物に比較した、BIOに曝露したCDC中のmRNA(図9Bおよび9C)およびマイクロRNA(図9Dおよび9E)の示差的発現。データは、3種のBIOに曝露した対全体における平均減少(図9Bおよび9D)および増加(図9Cおよび9E)を表す。図9Fは、線維芽細胞中のβ-カテニンの活性化がCDCにおけるβ-カテニン活性化と対照的にmestを減少させないことを示す(n=三重測定/群)。スケールバー:100μm。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図9E図9A~9Fは、効果増強におけるβ-カテニンの役割を示す。図9Aは、梗塞マウスにおいて注射の3週後のビヒクル曝露細胞に比較した、BIOに曝露したLP CDCの細胞持続性(cell persistence)を示す(n=4~5動物/群)。心組織1mgあたりの既知数のCDC(ここでは用いられた同じLPドナーからの)のうちのmage a1(ヒト特異的X染色体マーカー)のコピー数を示す標準曲線(左図)。BIOで処置したCDCは、注射の3週後までに宿主組織から完全に除去された(右図)。ビヒクル曝露の同等物に比較した、BIOに曝露したCDC中のmRNA(図9Bおよび9C)およびマイクロRNA(図9Dおよび9E)の示差的発現。データは、3種のBIOに曝露した対全体における平均減少(図9Bおよび9D)および増加(図9Cおよび9E)を表す。図9Fは、線維芽細胞中のβ-カテニンの活性化がCDCにおけるβ-カテニン活性化と対照的にmestを減少させないことを示す(n=三重測定/群)。スケールバー:100μm。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図9F図9A~9Fは、効果増強におけるβ-カテニンの役割を示す。図9Aは、梗塞マウスにおいて注射の3週後のビヒクル曝露細胞に比較した、BIOに曝露したLP CDCの細胞持続性(cell persistence)を示す(n=4~5動物/群)。心組織1mgあたりの既知数のCDC(ここでは用いられた同じLPドナーからの)のうちのmage a1(ヒト特異的X染色体マーカー)のコピー数を示す標準曲線(左図)。BIOで処置したCDCは、注射の3週後までに宿主組織から完全に除去された(右図)。ビヒクル曝露の同等物に比較した、BIOに曝露したCDC中のmRNA(図9Bおよび9C)およびマイクロRNA(図9Dおよび9E)の示差的発現。データは、3種のBIOに曝露した対全体における平均減少(図9Bおよび9D)および増加(図9Cおよび9E)を表す。図9Fは、線維芽細胞中のβ-カテニンの活性化がCDCにおけるβ-カテニン活性化と対照的にmestを減少させないことを示す(n=三重測定/群)。スケールバー:100μm。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図10A図10Aおよび10Bは、BIOまたはビヒクル対照によって処置したCDCからのエクソソーム濃度および分布を示す。図10Aは、無血清でコンディショニングする前にビヒクル対照(DMSO)または5μM BIOのどちらかに曝露されたLP、LPL、およびimCDCに由来する細胞外小胞(EV)のNanoSightトラッキング解析のプロットを示す。
図10B図10Aおよび10Bは、BIOまたはビヒクル対照によって処置したCDCからのエクソソーム濃度および分布を示す。図10Bは、ビヒクル曝露の同等物に比較した、BIO曝露のLP CDCのEV中の治療的miRの発現を示す。
図11A図11A~11Fは従来の不死化CDCを示す。図11Aは、シミアンウイルス40ラージおよびスモールT抗原ノックイン(第7継代)を用いた不死化後のCDCの形態を示す。
図11B図11A~11Fは従来の不死化CDCを示す。図11Bは、負の効果のマーカーCD90を例外として、マーカー発現の大部分が保存されたことを示す。
図11C図11A~11Fは従来の不死化CDCを示す。図11Cは、不死化後に、EVサイズ分布が保存されるが、EV産出量は増加することを示す。
図11D図11A~11Fは従来の不死化CDCを示す。図11Dでは、EV濃度が初代親CDCに比較して不死化CDCで増加している。
図11E図11A~11Fは従来の不死化CDCを示す。図11Eは、miR-146aおよびmiR-210を含む治療的に強力なEVカーゴの下方制御を示す。
図11F図11A~11Fは従来の不死化CDCを示す。図11Fは、ビヒクルに比較してBIOに曝露された不死化CDCの成長および生存率の限界を示す。スケールバー:100μm。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図12A図12A~12Dは、治療効果を工学操作する試みを示す。図12Aは、不死化されてGSK3βノックダウンと連結されたCDC(imCDCsh-gsk3b;n=三重測定/群)のGSK3βおよびβ-カテニンの遺伝子発現を示す。
図12B図12A~12Dは、治療効果を工学操作する試みを示す。図11Bは、pCDCとimCDCsh-gsk3bとの間のβ-カテニンELISAの比較を示す(n=三重測定/群)。
図12C図12A~12Dは、治療効果を工学操作する試みを示す。図11Cは、初代CDC、およびmestの追加的ノックダウインで不死化されたCDC(imCDCsh-mest)の位相差像を示す。imCDCは、突起およびフィロポディアの増加を呈した。
図12D図12A~12Dは、治療効果を工学操作する試みを示す。図11Dは、pCDCおよびimCDCsh-mestがマーカープロファイルにおいて有意差を示すことを示す。図11Eは、imCDCsh-mest形質導入におけるmest、ext1およびextl1のqPCR検証を示す(n=三重測定/群)。スケールバー:100μm。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図13A図13Aおよび13Bは、imCDCsh-mestによるEVの生成を示す。図13Aは、初代CDCおよびimCDCsh-mestのNanoSightトラッキング解析のサイズ分布を示す。
図13B図13Aおよび13Bは、imCDCsh-mestによるEVの生成を示す。図13Bは、初代CDCおよびimCDCsh-mestのEV産出量を示す。スケールバー:100μm。
図14A図14Aは、NHDF、NHDFβcat、およびNHDFβcat/gata4におけるテロメラーゼ発現のqPCR比較を示す(n=三重測定/群)。
図14B図14Bは、NHDFにおけるβ-カテニン-etv2形質導入後に細胞形態が平滑筋細胞様に変化したことを示す。
図14C図14Cは、NHDF、NHDFβcat、およびNHDFβcat/gata4に由来するEVのNanoSightトラッキング解析のプロットを示す(n=三重測定/群)。スケールバー:100μm。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図15A図15Aは、急性心筋梗塞のマウスモデルにおける古典的Wntシグナル伝達活性化(BIO)、阻害(JW67)、または対照の効果を示す。β-カテニンの上方制御(BIO)または阻害(JW67)は、マウスMIモデルにおいて機能的改善に対して控えめな効果を有する(n=6~8動物/群)。
図15B図15Bおよび15Cは、CDC EVがインビトロで心筋細胞増殖を惹起することを示す。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図15C図15Bおよび15Cは、CDC EVがインビトロで心筋細胞増殖を惹起することを示す。スチューデントの独立したt検定を用いて、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、95%CI。
図16】本開示の実施形態による、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置するための高い効果の治療的細胞を調製する方法の略図を示す。
図17】本開示の実施形態による、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置するための高い治療効果のエクソソームを調製する方法の略図を示す。
図18A図18A~18Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のモデルにおける不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームの治療効果を示す。図18Aは、不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームの治療効果のためのmdxトランスジェニックマウス試験の試験計画を示す。
図18B図18A~18Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のモデルにおける不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームの治療効果を示す。図18B、18C、18Dおよび18Eは、不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームまたはビヒクルの静脈内注射後の表記の週数でのmdxマウスにおける筋力測定を示す。
図18C図18A~18Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のモデルにおける不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームの治療効果を示す。図18B、18C、18Dおよび18Eは、不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームまたはビヒクルの静脈内注射後の表記の週数でのmdxマウスにおける筋力測定を示す。
図18D図18A~18Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のモデルにおける不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームの治療効果を示す。図18B、18C、18Dおよび18Eは、不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームまたはビヒクルの静脈内注射後の表記の週数でのmdxマウスにおける筋力測定を示す。
図18E図18A~18Eは、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のモデルにおける不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームの治療効果を示す。図18B、18C、18Dおよび18Eは、不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソームまたはビヒクルの静脈内注射後の表記の週数でのmdxマウスにおける筋力測定を示す。
図19】不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソーム(IMEX)およびASTEXの表面マーカー(特定の選択されたマーカーについて)の特徴づけを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
詳細な説明
組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置するために高い効果の治療的細胞および/または高い治療効果のエクソソームを調製する方法が、提供される。大まかに言えば、本開示の高い効果の治療的細胞は、低い効果の治療的細胞に比較して、より高レベルの古典的Wntシグナル伝達(例えば、Wnt/β-カテニンシグナル伝達)と一致した遺伝子および/またはタンパク質発現レベルのパターンを呈する。幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞は、低い効果の治療的細胞に比較して、低減されたレベルの非古典的Wntシグナル伝達と一貫する遺伝子および/またはタンパク質発現レベルのパターンを呈する。幾つかの実施形態において、本開示の高い効果の治療的細胞は、非古典的Wntシグナル伝達に比較して古典的Wntシグナル伝達の優先的活性化と一貫する遺伝子および/またはタンパク質発現レベルのパターンを呈する。本開示の高い効果の治療的細胞は、低い治療効果の細胞に比べて増加した治療効果を有し得る。幾つかの実施形態において、方法は、高い効果の治療的細胞からエクソソームを単離し、それにより高い治療効果のエクソソームを作製することを含む。幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞から単離された高い治療効果のエクソソームは、低い治療効果の細胞から単離された低い治療効果のエクソソームに比べて増加した治療効果を有する。高い効果の治療的細胞および/または高い治療効果のエクソソームは、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効になり得る。
【0039】
本明細書に開示された方法および組成物の複数の実施形態は、疾患(複数可)により傷害を受けたた、または有害作用を受けた組織の処置に有用である。非常に多くの疾患が、細胞または組織の機能の少なくとも若干の不全をもたらす(急性であっても)。本明細書に開示された方法および組成物の複数の実施形態は、疾患の結果、傷害を受けた、機能性を制限された、さもなければ不全となった細胞および/または組織の修復および/または再生を可能にする。複数の実施形態において、本明細書に開示された方法および組成物はまた、細胞または組織に負の影響を及ぼす疾患処置の有害な副作用を改善する補助療法として用いてもよい。本明細書で用いられる「処置する」または「処置」は、状態または疾患を治癒すること、その発生を予防すること、改善すること、その増悪を予防すること、および/またはその進行を遅らせることを指す。
【0040】
Wntシグナル伝達経路
Wntシグナル伝達経路は、細胞表面の受容体を通してシグナルを細胞に伝達するタンパク質により開始するシグナル伝達経路の群である。古典的および非古典的Wntシグナル伝達経路は、公知である。古典的および非古典的の両方のWntシグナル伝達経路は、Wntタンパク質リガンドがFrizzledファミリー受容体に結合し、生物学的シグナルをと細胞内部のDishevelledタンパク質に伝達することにより活性化される。古典的Wnt経路は、遺伝子転写の調節をもたらすが、非古典的経路は、例えば細胞骨格および細胞内カルシウムを調節する。古典的Wntシグナル伝達経路は、β-カテニンを伴う。対照的に非古典的Wntシグナル伝達は、β-カテニンと独立して動作する。
【0041】
骨形成タンパク質(BMP)
骨形成タンパク質(BMP)は、TGF-ベータスーパーファミリーのメンバーである増殖因子またはサイトカインの群を含む。BMPは、例えば、骨および軟骨の形成、身体全ての組織構造の編成、創傷治癒、ならびに癌、食道炎、バレット食道および消化管の腺癌などの病的状態を含む様々な生理学的工程において役割を担う。BMPサブファミリーは、bmp-1、bmp-2、bmp-3、bmp-4、bmp-5、bmp-6、bmp-7、bmp-8a、bmp-8b、bmp-10、およびbmp-15を含む少なくとも20のメンバーを含む。BMP受容体(BMPR)は、I型受容体BMPR1AおよびBMPR1B、ならびにII型受容体BMPR2を含む膜貫通型セリン/トレオニンキナーゼである。シグナル伝達は、I型受容体とII型受容体のヘテロマー複合体の形成を通して行われる。BMPシグナル伝達は、例えば、TAK1およびTAB1/2を介したNF-kB、p38、およびJNKを通して、MADタンパク質を通して、そして/またはPKAを通して起こり得る。
【0042】
方法
図16を参照して、組織修復、組織再生、または組織成長を必要とする状態を処置するための高い効果の治療的細胞を調製する方法の実施形態を、記載する。方法1600は、低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを過剰発現させること、低い治療効果の細胞においてmest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御すること、低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御すること、低い治療効果の細胞をβ-カテニン発現のモジュレーターで処置すること、低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断すること、低い治療効果の細胞においてGSK3βを遺伝子除去すること、ならびに低い治療効果の細胞においてGSK3β発現をノックダウンすること、のうちの1つまたは複数により低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化すること1610を含み得る。低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達が活性化されない低い治療効果の細胞に比べて増加した治療効果を有する高い効果の治療的細胞を作製することができ、高い効果の治療的細胞は、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効である。幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞は、高い治療効果のエクソソームを作製するために有用である。幾つかの実施形態において、方法は、高い効果の治療的細胞からエクソソーム(例えば、高い治療効果のエクソソーム)を単離すること1620を含み、エクソソームは、組織修復、組織再生、または組織成長を容易にするのに有効である。
【0043】
低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、任意の適切な選択肢による活性化を含み得る。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞において遺伝子および/もしくはタンパク質発現を変更すること、ならびに/または低い治療効果の細胞をWnt/β-カテニンシグナル伝達のモジュレーターで処置することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞において非古典的Wntシグナル伝達よりも古典的Wntシグナル伝達を優先的に活性化することを含む。低い治療効果の細胞において遺伝子および/もしくはタンパク質発現を変更することは、任意の適切な選択肢を利用して実行され得る。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞を遺伝子改変して、遺伝子および/またはタンパク質発現を変更することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞を、古典的Wntシグナル伝達のメディエーターまたはモジュレーターをコードする1種または複数の核酸で遺伝子改変し、それにより1種または複数の古典的Wntシグナル伝達経路の成分、例えばβ-カテニンの遺伝子および/またはタンパク質発現を変更することを含む。核酸を低い治療効果の細胞に導入するための任意の適切な選択肢が、用いられ得る。低い治療効果の細胞を核酸で遺伝子改変するための適切な選択肢としては、トランスフェクション、形質転換、ウイルスの形質導入(例えば、レンチウイルス形質導入)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてβ-カテニン発現、例えばβ-カテニンタンパク質発現のレベルを、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約120%、約140%、約160%、約180%、約200%、約220%、約240%、約260%、約280%、約300%もしくはより多く、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のパーセント値だけ増加させる。
【0045】
幾つかの実施形態において、方法は、低い治療効果の細胞において遺伝子および/またはタンパク質発現を変更することによりWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞において1種または複数の古典的Wntシグナル伝達のメディエーターまたはレギュレーターの遺伝子および/またはタンパク質発現を増加させることを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞において古典的Wntシグナル伝達経路に特異的な1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの遺伝子および/またはタンパク質発現を増加させることを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、古典的Wntシグナル伝達経路を活性化するが非古典的Wntシグナル伝達経路を活性化しない、1種または複数の古典的Wntシグナル伝達メディエーターの遺伝子および/またはタンパク質発現を増加させることを含む。
【0046】
幾つかの実施形態において、方法は、低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを過剰発現させて、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することを含む。β-カテニンは、任意の適切な選択肢を利用して過剰発現させることができる。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞を、β-カテニンをコードする核酸で遺伝子改変することを含み、核酸は、低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを発現、例えば過剰発現するように構成されている。幾つかの実施形態において、β-カテニンは、ヒトβ-カテニンである(Gene ID:1499)。
【0047】
幾つかの実施形態において、β-カテニンの過剰発現は、高い効果の治療的細胞において、参照細胞集団、例えば低い治療効果の細胞に比べて、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約120%、約140%、約160%、約180%、約200%、約220%、約240%、約260%、約280%、約300%高いもしくはより高い、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のパーセント値だけ高い、β-カテニンタンパク質の平均発現レベルを実現する。高い効果の治療的細胞におけるβ-カテニンの発現レベルを、高い効果の治療的細胞が由来するがWnt/β-カテニンシグナル伝達が活性化されていない低い治療効果の細胞などの適切な参照細胞集団、または高い効果の治療的細胞が由来する低い治療効果の細胞と同じ型の別の細胞集団に比較することができる。
【0048】
幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてmest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてmest、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数のmRNAおよび/またはタンパク質発現を下方制御することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてmestのmRNAおよび/またはタンパク質発現を下方制御することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてEXTL1のmRNAおよび/またはタンパク質発現を下方制御することを含む。mest、miR-335、EXTL1、CD90、またはCD105の発現は、任意の適切な選択肢を利用して下方制御され得る。幾つかの実施形態において、mest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御することは、それぞれmest、miR-335、EXTL1、CD90、またはCD105のうちの1つまたは複数を標的とする阻害性核酸、例えばshRNAなどの阻害性RNAを用いることを含む。幾つかの実施形態において、mest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御することは、低い治療効果の細胞を、それぞれmest、miR-335、EXTL1、CD90、またはCD105のうちの1つまたは複数を標的とする阻害性核酸、例えばshRNAなどの阻害性RNAをコードしていて、低い治療効果の細胞において阻害性核酸を発現するように構成された核酸で遺伝子改変することを含む。幾つかの実施形態において、mest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御することは、低い治療効果の細胞を、それぞれmest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を低減する薬剤で処置することを含む。mest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を低減する薬剤は、任意の適切な化合物であり得る。幾つかの実施形態において、mest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を低減する薬剤は、チデグルシブまたは6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)であるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、mest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御することは、低い治療効果の細胞を遺伝子改変して、β-カテニンおよび/またはgata4を過剰発現させることを含む。
【0049】
幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてmest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約8倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍もしくはより多く、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内の倍率量だけ下方制御することを含む。
【0050】
幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてLRP5/6のタンパク質発現を上方制御することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてLRP5/6のタンパク質発現を上方制御することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてLRP5/6の細胞表面発現を上方制御することを含む。幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてlrp5またはlrp6のmRNA発現を上方制御することを含まない。低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御することは、任意の適切な選択肢を使用して達成され得る。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御することは、低い治療効果の細胞をLRP5/6の発現を増加させる薬剤で処置することを含む。幾つかの実施形態において、LRP5/6の発現を増加させる薬剤は、チデグルシブまたは6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)であるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、LRP5/6の発現を上方制御することは、低い治療効果の細胞を遺伝子改変して、β-カテニンおよび/またはgata4を過剰発現させることを含む。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御することは、mestを標的とする阻害性核酸、例えばshRNAなどの阻害性RNAを用いることを含む。
【0051】
幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、LRP5/6を発現する細胞の画分が、例えばフローサイトメトリーによって決定した場合、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%もしくはより多く、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のパーセント値だけ増加するように、低い治療効果の細胞においてLRP5/6の細胞表面発現を上方制御することを含む。
【0052】
幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞をβ-カテニン発現のモジュレーターで処置することを含む。β-カテニン発現のモジュレーターは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化する任意の適切な薬剤であり得る。幾つかの実施形態において、β-カテニン発現のモジュレーターは、β-カテニン発現、例えばβ-カテニンタンパク質の発現を増加させる。幾つかの実施形態において、β-カテニン発現のモジュレーターは、チデグルシブまたは6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)であるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、方法は、低い治療効果の細胞をβ-カテニン発現のモジュレーターと接触させて、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することを含む。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、β-カテニン発現のモジュレーターの有効量で、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約28時間、約32時間、約36時間、約40時間、約44時間、約48時間、約54時間、約60時間、約66時間、約72時間もしくはより長く、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内の期間、処置される。
【0053】
幾つかの実施形態において、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化することは、低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断することを含む。任意の適切な選択肢を用いて、低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断することができる。幾つかの実施形態において、方法は、低い治療効果の細胞を、β-カテニン発現のモジュレーター、例えばチデグルシブまたは6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)で処置し、それにより低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断することを含む。幾つかの実施形態において、方法は、本明細書に記載された通り、低い治療効果の細胞においてmestの発現を下方制御し、それによりGSK3βを遮断することを含む。幾つかの実施形態において、mestの発現を下方制御することは、低い治療効果の細胞を、mestを標的とする阻害性核酸、例えばshRNAなどの阻害性RNAで遺伝子改変し、それにより低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断することを含む。幾つかの実施形態において、mestの発現を下方制御することは、低い治療効果の細胞をβ-カテニン発現のモジュレーター、例えばチデグルシブまたは6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)で処置し、それにより低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断することを含む。
【0054】
幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、約0.1μM、約0.2μM、約0.5μM、約1μM、約1.5μM、約2μM、約2.5μM、約3μM、約3.5μM、約4μM、約4.5μM、約5μM、約5.5μM、約6μM、約6.5μM、約7μM、約8μM、約9μM、約10μM、約11μM、約12μM、約13μM、約14μM、約15μMもしくはより多い、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内の濃度のBIOで処置されて、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化する。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、約0.1μM、約0.2μM、約0.5μM、約1μM、約1.5μM、約2μM、約2.5μM、約3μM、約3.5μM、約4μM、約4.5μM、約5μM、約5.5μM、約6μM、約6.5μM、約7μM、約8μM、約9μM、約10μM、約11μM、約12μM、約13μM、約14μM、約15μMもしくはより多い、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内の濃度のチデグルシブで処置されて、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化する。
【0055】
低い治療効果の細胞は、低い治療効果を有する任意の適切な型の細胞であり得る。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、哺乳動物細胞である。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、ヒト細胞である。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、初代細胞である。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、細胞株である。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、不死化細胞である。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、遺伝子改変された細胞、例えばgata4を過剰発現するように遺伝子改変された細胞である。
【0056】
幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、線維芽細胞、例えば正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)である。幾つかの実施形態において、線維芽細胞は、gata4を過剰発現するように遺伝子改変されている。幾つかの実施形態において、線維芽細胞は、gata4を過剰発現しない線維芽細胞における発現レベルよりもlog倍率が約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.7、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4高いもしくはより高いレベル、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のlog倍率だけ高いレベルでgata4 mRNAを発現する。幾つかの実施形態において、方法は、線維芽細胞を遺伝子改変して、gata4を過剰発現させることを含む。線維芽細胞は、任意の適切な選択肢を使用して遺伝子改変され得る。幾つかの実施形態において、線維芽細胞を遺伝子改変することは、形質導入、例えばレンチウイルス形質導入などのウイルス形質導入により、gata4をコードする核酸を線維芽細胞に導入することを含む。
【0057】
幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、低い治療効果のカーディオスフェア由来細胞(CDC)である。幾つかの実施形態において、低い治療効果のCDCは、低い治療効果のCDCを生成するCDC株、例えば同じドナーからのCDC株のものである。幾つかの実施形態において、低い治療効果のCDCは、治療効果のロット間変動を有するCDCを生成するCDC株、例えば同じドナーからのCDC株のものである。幾つかの実施形態において、低い治療効果のCDCは、不死化CDCである。
【0058】
幾つかの実施形態において、方法は、CDCを不死化して、不死化CDCを作製することを含む。CDCは、任意の適切な選択肢を利用して不死化され得る。幾つかの実施形態において、CDCは、シミアンウイルス40ラージおよびスモール抗原(SV40 T+t)を用いて不死化される。幾つかの実施形態において、CDCは、HPV E6およびE7、エプスタイン・バー・ウイルス、hTERT、または不死化細胞株との融合物を用いて不死化される。幾つかの実施形態において、CDCは、不死化前は高い治療効果のCDCである。幾つかの実施形態において、CDCは、多様な治療効果を有し、例えば不死化前に、CDCの幾つかのロットは、高い治療効果を有し、同じドナーから得られたその他のロットは、低い治療効果を有する。
【0059】
幾つかの実施形態において、方法は、細胞集団を、低い治療効果を有すると決定することを含む。幾つかの実施形態において、決定することは、細胞集団における1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの発現レベル、例えばタンパク質またはmRNAレベルを測定することを含む。幾つかの実施形態において、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターは、古典的Wnt/β-カテニンシグナル伝達に特異的である。幾つかの実施形態において、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターは、β-カテニン、LRP5/6、mest、およびEXTL1から選択される。幾つかの実施形態において、細胞は、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの測定された発現レベルと、参照レベルまたは参照範囲、例えば高いおよび/または低い治療効果の細胞における対応するWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターまたはレギュレーターの発現レベルまたは範囲との比較に基づいて、低い治療効果を有すると決定される。幾つかの実施形態において、β-カテニンおよび/またはLRP5/6の測定された発現レベルが、参照レベル未満、例えば高い効果の治療的細胞における1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターまたはレギュレーターの対応する発現レベル未満であれば、細胞は、低い治療効果を有すると決定される。幾つかの実施形態において、mestおよび/またはEXTL1の測定された発現レベルが、参照レベル、例えば高い効果の治療的細胞における1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターまたはレギュレーターの対応する発現レベルを超えていれば、細胞は、低い治療効果を有すると決定される。
【0060】
幾つかの実施形態において、決定することは、1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターのmRNAレベルを測定することを含む。幾つかの実施形態において、細胞の治療効果は、細胞集団において、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの測定された発現レベルと、1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターの測定されたmRNAレベルとに基づいて決定される。1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターの測定されたmRNAレベルは、適切な参照mRNAレベルまたは範囲、例えば高いおよび/または低い治療効果の細胞におけるmRNAレベルまたは範囲に比較することができる。幾つかの実施形態において、1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターは、ror2、nfatc2、axin2、rac2、およびapcdd1から選択される。
【0061】
同じく本明細書で提供されるのは、細胞集団において、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの発現レベルを測定すること;ならびに1種または複数のWntシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの測定されたレベルに基づいて細胞集団を高い治療効果または低い治療効果を有すると決定することによる、細胞集団が高い治療効果を有するか、または低い治療効果を有するかを決定する方法である。幾つかの実施形態において、方法は、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの測定レベルを、参照レベルまたは参照範囲に比較することを含む。幾つかの実施形態において、参照レベルは、低い治療効果を有する細胞集団における、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターのレベルに基づく。幾つかの実施形態において、参照レベルは、高い治療効果を有する細胞集団における、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターのレベルに基づく。幾つかの実施形態において、参照範囲は、低いまたは高い治療効果を有する細胞集団における、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターのレベルの範囲である。幾つかの実施形態において、細胞集団は、可変性の治療効果を有する細胞の供給源に由来する。幾つかの実施形態において、細胞集団は、線維芽細胞またはCDCを含む。幾つかの実施形態において、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターは、β-カテニン、LRP5/6、mest、およびEXTL1のうちの1種または複数を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、細胞集団は、β-カテニンおよび/またはLRP5/6の測定レベルが参照レベル(例えば、低い治療効果の細胞の参照レベル)を超えること、および/または参照範囲(例えば、高い効果の治療的細胞の参照範囲)内であることを決定することにより、高い治療効果を有すると決定される。幾つかの実施形態において、方法は、1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターのmRNAレベルを測定することを含む。幾つかの実施形態において、方法は、細胞集団を、1種または複数のWnt/β-カテニンシグナル伝達メディエーターおよびレギュレーターの測定レベルと、1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターの測定レベルとに基づいて高い治療効果または低い治療効果を有すると決定することを含む。1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターの測定されたmRNAレベルは、適切な参照mRNAレベルまたは範囲、例えば高いおよび/または低い治療効果の細胞におけるmRNAレベルまたは範囲に比較され得る。幾つかの実施形態において、1種または複数の非古典的Wntシグナル伝達メディエーターは、ror2、nfatc2、axin2、rac2、およびapcdd1から選択される。
【0062】
図17を参照して、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態を処置するための高い治療効果のエクソソームを調製する方法の実施形態を記載する。方法1700は、活性化されたWnt/β-カテニンシグナル伝達を有する工学操作された高い効果の治療的細胞の集団を提供すること1710を含み得、高い効果の治療的細胞は、低い治療効果の細胞の集団に比べて、上方制御されたβ-カテニン発現、下方制御されたレベルのmest発現、上方制御されたレベルのLRP5/6発現、および下方制御されたレベルのextl1発現のうちの1種または複数を呈する。方法は、集団からエクソソームを単離すること1720を含み得る。エクソソームは、本明細書に記載された通り、任意の適切な選択肢を使用して工学操作された高い効果の治療的細胞の集団から単離され得る。単離されたエクソソームは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達が活性化されない低い治療効果の細胞から単離された低い治療効果のエクソソームに比べて増加した治療効果を有し得、高い治療効果のエクソソームは、組織修復、組織再生または組織成長を容易にするのに有効である。
【0063】
幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞は、上方制御されたβ-カテニン発現を呈する。幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞は、低い治療効果の細胞より、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約120%、約140%、約160%、約180%、約200%、約220%、約240%、約260%、約280%、約300%高いもしくはより高い、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のパーセント値だけ高いβ-カテニン発現、例えばβ-カテニンタンパク質発現のレベルを有する。幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞は、上方制御されたLRP5/6発現を呈する。幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞は、低い治療効果の細胞より、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%高いもしくはより高い、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のパーセント値だけ高いLRP5/6発現、例えばLRP5/6細胞表面発現のレベルを有する。
【0064】
幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞は、下方制御されたレベルのmest発現を呈する。幾つかの実施形態において、高い効果の治療細胞は、低い治療効果の細胞より、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約8倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍もしくはより多く、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内の倍率量だけ低いmest発現のレベルを有する。幾つかの実施形態において、高い効果の治療的細胞は、下方制御されたレベルのextl1発現を呈する。幾つかの実施形態において、高い効果の治療細胞は、低い治療効果の細胞より、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約8倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍もしくはより多く、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内の倍率量だけ低いextl1発現のレベルを有する。
【0065】
幾つかの実施形態において、工学操作された高い効果の治療的細胞の集団を提供することは、本明細書に開示された任意の方法により、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態を処置するために高い効果の治療的細胞を調製することを含む。幾つかの実施形態において、工学操作された高い効果の治療的細胞の集団を提供することは、低い治療効果の細胞を同定すること;ならびに低い治療効果の細胞においてβ-カテニンを過剰発現させること、低い治療効果の細胞においてmest、miR-335、EXTL1、CD90、およびCD105のうちの1つまたは複数の発現を下方制御すること、低い治療効果の細胞においてLRP5/6の発現を上方制御すること、低い治療効果の細胞をβ-カテニン発現のモジュレーターで処置すること、および低い治療効果の細胞においてGSK3βを遮断することのうちの1つまたは複数により低い治療効果の細胞においてWnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化し、それにより工学操作された高い効果の治療的細胞が豊富な細胞集団を作製することを含む。
【0066】
幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームは、増加したレベルのmiR-92a、増加したレベルのmiR-146a、減少したレベルのmiR-199b、またはそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームは、適切な参照レベルもしくは参照範囲に比べて増加したレベルのmiR-92a、適切な参照レベルもしくは参照範囲に比べて増加したレベルのmiR-146a、および/または適切な参照レベルもしくは参照範囲に比べて減少したレベルのmiR-199bを含む。参照レベルまたは参照範囲は、幾つかの実施形態において、低い治療効果のエクソソームにおける対応するmiRNAのレベルまたは範囲であり得る。
【0067】
幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームは、低い治療効果のエクソソームに比べて増加したレベルのmiR-92aを含む。幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームにおけるmiR-92aの量は、低い治療効果のエクソソームにおける量よりも、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.2、約4.5、約5高いもしくはより高い、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のlog倍率だけ高い。幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームは、低い治療効果のエクソソームに比べて増加したレベルのmiR-146aを含む。幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームにおけるmiR-146aの量は、低い治療効果のエクソソームにおける量よりも、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.2、約4.5、約5もしくはより多く、約5.2、約5.5、約6、約6.2、約6.5、約7、約7.2、約7.5、約8、約8.2、約8.5、約9、約9.2、約9.5、約10高いもしくはより高い、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のlog倍率だけ高い。幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームは、低い治療効果のエクソソームに比べて減少したレベルのmiR-92aを含む。幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームにおけるmiR-92aの量は、低い治療効果のエクソソームにおける量よりも、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.2、約4.5、約5低いもしくはより低い、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のlog倍率だけ低い。
【0068】
幾つかの実施形態において、高い治療効果のエクソソームは、1種または複数のエクソソーム表面マーカーを含む。幾つかの実施形態において、エクソソーム表面マーカーは、ITGB1、HSC70、CD9、CD63、およびGAPDHのうちの1つまたは複数から選択される。幾つかの実施形態において、CDC、例えば不死化CDCに由来する高い治療効果のエクソソームは、ITGB1、HSC70、CD63、およびGAPDHのうちの1つまたは複数の発現について豊富である(例えば、低い効果のエクソソームに比較して)。幾つかの実施形態において、CDC、例えば不死化CDCに由来する高い治療効果のエクソソームは、ITGB1、HSC70、およびGAPDHのうちの1つまたは複数の発現について豊富である。幾つかの実施形態において、CDC、例えば不死化CDCに由来する高い治療効果のエクソソームは、CD9を発現しない。幾つかの実施形態において、CDC、例えば不死化CDCに由来する高い治療効果のエクソソームは、CD9の発現が欠如する(例えば、低い効果のエクソソームに比較して)。幾つかの実施形態において、CDC、例えば不死化CDCに由来する高い治療効果のエクソソームは、ITGB1、HSC70、およびGAPDHのうちの1つまたは複数の発現が豊富で、CD9発現が欠如する。幾つかの実施形態において、遺伝子改変された線維芽細胞に由来する高い治療効果のエクソソームは、ITGB1、CD9、およびCD63のうちの1つまたは複数の発現については豊富である。幾つかの実施形態において、遺伝子改変された線維芽細胞に由来する高い治療効果のエクソソームは、HSC70発現および/またはGAPDH発現が欠如する。幾つかの実施形態において、遺伝子改変された線維芽細胞に由来する高い治療効果のエクソソームは、ITGB1、CD9、およびCD63のうちの1つまたは複数の発現が豊富で、HSC70発現および/またはGAPDH発現が欠如する。
【0069】
高い効果の治療的細胞および/または高い治療効果のエクソソームは、任意の適切な細胞供給源から調製され得る。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態の処置(例えば、高い効果の治療的細胞および/または高い治療効果のエクソソームの有効量を対象に投与することによる)を必要とする対象にとって同種異系である。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態を処置すること(例えば、高い効果の治療的細胞および/または高い治療効果のエクソソームの有効量を対象に投与することによる)を必要とする対象にとって自己である。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態の処置(例えば、高い効果の治療的細胞および/または高い治療効果のエクソソームの有効量を対象に投与することによる)を必要とする対象にとって異種である。
【0070】
幾つかの実施形態において、高い効果の治療性エクソソームは、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態の処置(例えば、高い治療効果のエクソソームの有効量を対象に投与することによる)を必要とする対象にとって同種異系である低い治療効果の細胞から調製される。幾つかの実施形態において、高い効果の治療性エクソソームは、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態の処置(例えば、高い治療効果のエクソソームの有効量を対象に投与することによる)を必要とする対象にとって自己である低い治療効果の細胞から調製される。幾つかの実施形態において、高い効果の治療性エクソソームは、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態の処置(例えば、高い治療効果のエクソソームの有効量を対象に投与することによる)を必要とする対象にとって異種である低い治療効果の細胞から調製される。
【0071】
組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態は、様々であり得る。幾つかの実施形態において、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態としては、筋障害、心筋梗塞、心障害、心筋の変更、筋ジストロフィー、線維化疾患、炎症性疾患、および創傷治癒のうちの1つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態による細胞および/またはエクソソームの治療効果は、状態の処置を必要とする対象を処置することに望まれる種々の治療効果を包含し得る。一般に、治療的細胞および/またはエクソソームにより処置され得る状態としては、筋障害、心筋梗塞、心障害、心筋の変更、筋ジストロフィー、線維化疾患、炎症疾患、および創傷治癒のうちの1つまたは複数が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、状態は、筋障害、例えば筋ジストロフィーである。幾つかの実施形態において、状態は、心筋梗塞である。
【0072】
幾つかの実施形態において、本開示の高い効果の治療細胞および/または高い治療効果のエクソソームは、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象に投与された場合、心臓の瘢痕サイズを低減すること、心筋梗塞の壁厚を増加させること、駆出率を増加させること、心筋梗塞による死亡率を低減すること、運動能力を上昇させること、骨格筋線維化を低減すること、および筋線維のサイズを増加させることのうちの1つまたは複数に有効である。幾つかの実施形態において、増加した治療効果は、高い効果の治療的細胞と低い効果の治療的細胞の間に約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%もしくはより大きなパーセンテージ治療効果の差、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のパーセント値の差を含む。幾つかの実施形態において、増加した治療効果は、高い治療効果のエクソソームと低い治療効果の細胞から調製されたエクソソーム、例えば低い治療効果のエクソソームの間に約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%もしくはより大きなパーセンテージ治療効果の差、または前記値の任意の2つによって定義される範囲内のパーセント値の差を含む。
【0073】
幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、治療効果を実質的に有さない。幾つかの実施形態において、低い治療効果の細胞は、組織修復、組織再生または組織成長を必要とする状態の処置を必要とする対象に投与された場合、心臓の瘢痕サイズを低減すること、心筋梗塞の壁厚を増加させること、駆出率を増加させること、心筋梗塞による死亡率を低減すること、運動能力を上昇させること、骨格筋線維化を低減すること、および筋線維のサイズを増加させることに対して実質的に効果を有さない。
【0074】
傷害を受けたまたは罹患した組織のための処置モダリティ
一般に、1種または複数の相対的に共通する治療モダリティの使用が、疾患の進行を停止させること、既に起こっている傷害を回復に向かわせること、追加的な傷害を予防すること、および患者の安寧を概ね改善することに対する取り組みの中で傷害を受けたまたは罹患した組織を処置するために用いられる。例えば多くの状態が、総体的な方法論または生活様式の変化(例えば、心臓血管疾患、糖尿病、および同様のもののリスクを低減するための改善された食事)で即座に処置され得る。多くの場合、より重篤な状態は、より先進の医療的介入を必要とする。薬物療法または薬学的治療が、特有の疾患を有する患者を処置するために日常的に投与される。例えば、高血圧を有する患者は、血管の緊張および血液量を低減し、それにより高血圧を処置するために、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤を処方される場合がある。さらに、癌患者は多くの場合、伝播を限定し、そして/または癌性腫瘍を根絶する試みで抗癌化合物のパネルを処方される。外科的方法が、特定の疾患または傷害を処置するために用いられる場合もある。幾つかの例では、埋め込まれた装置が、医薬または外科的治療に加えて、またはその代わりに用いられる(例えば、心臓ペースメーカー)。近年になり、例えば遺伝子療法、タンパク質療法、および細胞療法などの追加的治療タイプが、非常に有望になっている。
【0075】
細胞療法は概して、損傷、疾患もしくはそれらの組み合わせのどれかにより傷害を受けた細胞を投与された細胞で機能的または物理的に置換することを目的とした、対象への細胞集団の投与を伴う。種々の異なる細胞型が、細胞療法で投与され得るが、幹細胞は複数の細胞型への分化能を有し、これにより処置に用いられ得る疾患または傷害の種類に柔軟性を提供する能力があることから、特に好適である(特定の例では)。
【0076】
タンパク質療法は、疾患または傷害を有する対象において欠損タンパク質を機能的に置換する外因性タンパク質の投与を伴う。例えば合成された酸性アルファグルコシダーゼが、糖原病II型を有する患者に投与される。
【0077】
加えて、核酸療法が、特定の疾患または状態の可能な処置として調査されている。核酸療法は、標的遺伝子産物が決して発現されないように、例えば標的遺伝子の翻訳抑制、標的遺伝子の切断などの種々の機序を通して遺伝子発現経路を変更するために、対象への外因性核酸またはその短い断片の投与を伴う。
【0078】
特定の細胞療法が甚大な再生効果を提供するという知識により、本明細書に開示された複数の実施形態は、対象に細胞を投与する必要なく(特定の実施形態では、細胞が場合により投与され得るが)、それらの再生効果を生じる方法および組成物を伴う。本明細書に開示された複数の実施形態は、高い治療効果の細胞およびエクソソームの作製を提供する。
【0079】
エクソソームおよび小胞に結合した核酸およびタンパク質産物
遊離核酸は、ヌクレアーゼにより急速に分解されるため、核酸は一般に、体内では遊離核酸として存在しない。特定の型の核酸は、膜結合粒子と会合している。そのような膜結合粒子は、ほとんどの細胞型から脱落し、形質膜の断片からなり、DNA、RNA、mRNA、マイクロRNA、およびタンパク質を含有する。これらの粒子は多くの場合、脱落した細胞の組成を反映する。エクソソームは、そのような膜結合粒子の1つの型であり、典型的には約15nm~約20nm、20nm~約30nm、約30nm~約40nm、約40nm~約50nm、約50nm~約60nm、約60nm~約70nm、約70nm~約80nm、約80nm~約90nm、約90nm~約95nm、およびその重複範囲を含む約15nm~約95nm径という径の範囲である。複数の実施形態において、エクソソームは、より大きい(例えば、約140nm~約150nm、150nm~約160nm、160nm~約170nm、170nm~約180nm、180nm~約190nm、190nm~約200nm、200nm~約210nm、およびその重複範囲を含む約140~約210nmの範囲内のもの)。幾つかの実施形態において、本来の細胞体から作製されたエクソソームは、少なくとも1つの寸法(例えば、直径)が本来の細胞体より100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、5000、10,000倍小さい。
【0080】
代わりの命名法も、エクソソームを指すために用いられることが多い。このため本明細書で用いられる用語「エクソソーム」は、通常の意味を与えられ、微小胞、エピジモソーム(epididimosomes)、アルゴソーム、エクソソーム様小胞、微粒子、プロミノソーム、プロスタソーム、デキソソーム、テキソソーム、dex、tex、アルケオソーム(archeosomes)およびオンコソームを含む用語も含み得る。本明細書で他に断りがなければ、前述の用語のそれぞれは、エクソソームの各タイプの工学操作された高い効果の種類も含むと理解されたい。エクソソームは、広範囲の哺乳動物細胞により分泌され、正常および病的状態の両方において分泌される。エクソソームは、幾つかの実施形態において、mRNA、miRNAまたは他の内容物を第1の細胞から別の細胞(または複数の細胞)に運ぶための細胞内メッセンジャーとして機能する。複数の実施形態において、エクソソームは、血液凝固、免疫モジュレーション、代謝制御、細胞分裂および他の細胞過程に関与する。エクソソームを分泌する細胞が非常に様々であるため、複数の実施形態において、エクソソーム調製物は、診断ツールとして使用され得る(例えば、エクソソームを、特有の組織から単離し、それらの核酸またはタンパク質内容物を評価することができ、その後、疾患状態または疾患発症のリスクと相関させることができる)。
【0081】
エクソソームは、複数の実施形態において、濾過、遠心分離、抗原に基づく捕捉などのうちの1つまたは複数を含む方法により、細胞調製物から単離される。例えば、複数の実施形態において、培養で成長させた細胞集団を回収およびプールする。複数の実施形態において、単層の細胞が使用され、この場合、細胞は場合により、細胞収率を改善するためにプールの前に処置される(例えば、皿を掻き取る、および/またはトリプシンなどの酵素により酵素的に処置して細胞を遊離させる)。幾つかの実施形態において、標準の細胞培養条件下で培養により成長させた細胞を、低酸素条件下で無血清培地に一晩曝露し、エクソソームを含有する条件培地を回収する。幾つかの実施形態において、低酸素条件は、約15%、約12%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%、約1%のOもしくはより少ない、または前記値の任意の2つにより定義された範囲内のOのパーセント値を含む。幾つかの実施形態において、低酸素条件は、37℃で2%O/5%COを含む。幾つかの実施形態において、低酸素条件に曝露した細胞を、標準の培養条件下での完全な血清中で約24、約36、約48、約60、約72時間もしくはより長く、または前記値の任意の2つにより定義される範囲内の期間、回復し、その後、低酸素条件に再曝露して、条件培地を作製する。幾つかの実施形態において、細胞を、低酸素と標準の細胞培養条件の間で1、2、3、4、5、6回またはより多くサイクルする。複数の実施形態において、懸濁液中で成長させた細胞を用いる。プールした集団を次に、1回または複数回の遠心分離(幾つかの実施形態において、超遠心分離および/または密度遠心分離が用いられる)に供し、エクソソーム画分を残りの細胞内容物から分離し、細胞残屑を細胞集団から分離する。複数の実施形態において、エクソソームの回収のために遠心分離を実施する必要はない。複数の実施形態において、細胞の前処置は、エクソソーム捕捉の効率を改善するために用いられる。例えば、複数の実施形態において、細胞からのエクソソーム分泌速度を上昇させる薬剤が、エクソソームの全収率を改善するために用いられる。幾つかの実施形態において、エクソソーム分泌の増大は、実施されない。幾つかの実施形態において、特定のサイズ(例えば、直径)のエクソソームを回収するために、サイズ排除濾過を、遠心分離と併せて、またはその代わりに用いる。複数の実施形態において、濾過を用いる必要はない。さらなる追加的実施形態において、エクソソーム(またはエクソソームの亜集団)は、エクソソーム上またはその中の一意的マーカー(例えば、膜貫通型タンパク質)の選択的同定により捕捉される。そのような実施形態において、一意的マーカーは、特定のエクソソーム集団を選択的に豊富にするために用いられ得る。幾つかの実施形態において、エクソソームの特定のマーカーまたは特徴に基づく濃化、選択または濾過は、実施されない。
【0082】
投与(以下により詳細に考察する)の際、エクソソームは、標的組織の細胞と融合し得る。本明細書で用いられる用語「融合」は、その通常の意味を与えられ、エクソソームと標的細胞との完全または部分的な接合、合併、統合または同化も指す。複数の実施形態において、エクソソームは、標的組織の健常細胞と融合する。幾つかの実施形態において、健常細胞との融合は、健常細胞に変更(例えば、傷害を受けたまたは罹患した細胞の周りの細胞または細胞間環境の変更)をもたらし、傷害を受けたまたは罹患した細胞に対して有益な効果をもたらす。幾つかの実施形態において、エクソソームは、傷害を受けたまたは罹患した細胞と融合する。幾つかのそのような実施形態において、傷害を受けたまたは罹患した細胞の活性、代謝、生存率または機能に対する直接的効果が存在し、組織に対して全体的な有益効果をもたらす。複数の実施形態において、エクソソームと、健常細胞または傷害を受けた細胞のどちらかとの融合は、全体として、組織に対する有益効果に必須ではない(例えば、幾つかの実施形態において、エクソソームは、標的組織の細胞周辺の細胞間環境に影響する)。したがって複数の実施形態において、エクソソームと別の細胞との融合は、起こらない。複数の実施形態において、細胞-エクソソームの接触はないが、それでもエクソソームはレシピエント細胞に影響を及ぼす。
【0083】
投与および治療
本明細書において、細胞または組織が損傷、傷害、疾患、または機能および/もしくは生存率の喪失につながる幾つかの他の事象を受けた後の細胞または組織の修復または再生において使用するための方法および組成物が、提供される。組織傷害が存在するかどうかにかかわらず、傷害の予防および/または細胞間の核酸(またはタンパク質)のシャトリングのための方法および組成物もまた、存在する。
【0084】
加えて、エクソソーム、詳細には高い効果が得られるように工学操作されたエクソソームの作製を容易にするための方法が、提供される。幾つかのそのような実施形態において、細胞からのエクソソーム遊離(例えば分泌)を容易にするために、ヒドロラーゼを用いる。特定の実施形態において、エステル結合、糖(例えば、DNA)、エーテル結合、ペプチド結合、炭素-窒素結合、酸無水物、炭素-炭素結合、ハロゲン化物結合、リン-窒素結合、硫黄-窒素結合、炭素-リン結合、硫黄-硫黄結合、および/または炭素-硫黄結合のうちの1つまたは複数を切断するヒドロラーゼを用いる。幾つかの実施形態において、ヒドロラーゼは、DNAse(例えば、糖を切断する)である。特定の実施形態は、例えば、リソソーム酸性スフィンゴミエリナーゼ、分泌型亜鉛依存性酸性スフィンゴミエリナーゼ、中性スフィンゴミエリナーゼおよびアルカリ性スフィンゴミエリナーゼのうちの1つまたは複数などの特異的ヒドロラーゼを用いる。
【0085】
複数の実施形態において、エクソソームは、細胞または組織の修復または再生を開始するために、対象に投与される。複数の実施形態において、エクソソームは、幹細胞に由来する。複数の実施形態において、幹細胞は、非胚性幹細胞である。幾つかの実施形態において、非胚性幹細胞は、成体幹細胞である。しかし、特定の実施形態において、胚性幹細胞は、場合によりエクソソームの供給源として用いられる。幾つかの実施形態において、体細胞(非限定的例として、線維芽細胞)が、エクソソームの供給源として用いられる。さらなる追加的実施形態において、生殖細胞が、エクソソームの供給源として用いられる。
【0086】
幾つかの実施形態において、高い治療効果を有する細胞は、本明細書に記載された通り作製される。幾つかの実施形態において、細胞は、高い治療効果のエクソソームを生成するように工学操作される。任意の細胞型を用いて、高い治療効果を有する細胞、および/または高い治療効果のエクソソームを生成する細胞を作製することができる。例えばカーディオスフェア由来細胞(CDC)または線維芽細胞が用いられ得る。
【0087】
エクソソーム供給源として幹細胞を使用する複数の実施形態において、幹細胞由来のエクソソームの核酸および/またはタンパク質内容物は、傷害を受けたまたは罹患した細胞の修復または再生を実行するのに特に適する。複数の実施形態において、エクソソームは、処置される組織に由来する幹細胞から単離される。例えば、心組織が修復される幾つかの実施形態において、エクソソームは、心臓幹細胞に由来する。心臓幹細胞は、複数の実施形態において、非限定的に心房、中隔、心室、心耳およびこれらの組み合わせを含む心臓の様々な領域から得られる(例えば、幾つかの実施形態において心臓の部分または全体を用いて、心臓幹細胞を得てもよい)。複数の実施形態において、エクソソームは、心臓幹細胞を含む細胞(または細胞の群)、または培養中で操作して心臓幹細胞を生じることが可能な細胞(または細胞の群)(例えば、カーディオスフェアおよび/またはカーディオスフェア由来細胞(CDC))に由来する。カーディオスフェアの単離に関するさらなる情報は、全体として参照により本明細書に組み入れられる2012年9月18日発行の米国特許第8,268,619号に見出され得る。複数の実施形態において、心臓幹細胞は、カーディオスフェア由来細胞(CDC)である。CDC単離の方法に関するさらなる情報は、2008年4月21日出願の米国特許出願第11/666,685号、および2012年3月5日出願の米国特許出願第13/412,051号に見出され得、両者とも全体として参照により本明細書に組み入れられる。非限定的に骨髄幹細胞、幹細胞由来脂肪組織、間葉幹細胞、人工多能性幹細胞、造血幹細胞およびニューロン幹細胞を含む幹細胞の他の種もまた、実施形態に応じて使用され得る。
【0088】
複数の実施形態において、エクソソームの投与は、レシピエントの免疫拒絶による合併症が低減されることから、特に有利である。特定の型の細胞または遺伝子療法は、治療のレシピエントの起こり得る免疫応答により阻止される。臓器移植片または組織移植片と同様に、特定の型の外来細胞(例えば、レシピエント由来でない)は、レシピエントの免疫機能により攻撃および排除される(または部分的もしくは完全に非機能的となる)。これを克服するための1つのアプローチが、免疫抑制療法の同時投与であるが、これは費用がかかる可能性があり、患者が他の感染性物質にさらされることにつながる。したがって、エクソソーム療法は、免疫応答が限定されるため特に有益である。複数の実施形態において、これによって、同種異系細胞供給源に由来するエクソソームの使用が可能となる(複数の実施形態において、自己由来供給源が使用されるが)。その上、起こり得る免疫応答が低減されることにより、エクソソーム療法を、免疫無防備状態の患者および活動亢進性の免疫系を有する患者を含むより広範囲の患者集団に用いることができる。その上、複数の実施形態において、エクソソームは、遺伝子材料の完全な相補体を運ばないため、投与後の望まない細胞成長(例えば、奇形腫の形成)のリスクが低減される。複数の実施形態において、レシピエントの免疫応答および/または奇形腫形成のリスクをさらに低減するために、エクソソーム(例えば、高い効果が得られるように工学操作されたエクソソーム)を、例えば遺伝子編集を通して、例えばCRISPR-Cas、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、および/またはTALENを使用してさらに操作して、潜在的免疫原性を低減し得る。有利にはエクソソームは、実施形態に応じて、エクソソームの最終的なレシピエントにとって同種異系、自己由来、異種または同系である供給源から得られた細胞に由来し得る。その上、特定のmiRNAおよび/またはタンパク質のエクソソームの発現に関して特徴づけられているエクソソームのマスターバンクを作製することができ、後の使用で定義された対象において「オフ・ザ・シェルフ」で長期間貯蔵することができる。しかし複数の実施形態において、エクソソームは単離され、その後、長期または短期の貯蔵を行わずに使用される(例えば、それらは作製後、実行可能な限り即座に使用される)。
【0089】
複数の実施形態において、エクソソームは、投与される必要はなく、むしろエクソソームにより運ばれる核酸および/またはタンパク質が、組織修復を必要とする対象に投与され得る。そのような実施形態において、エクソソームは、本明細書に記載された通り採取され、それらのタンパク質および/または核酸内容物を遊離させて回収する方法に供される。例えば、複数の実施形態において、エクソソーム膜を崩壊させ、エクソソームからタンパク質の回収を可能にするために、エクソソームを、洗浄剤(または非洗浄剤)系溶液により溶解する。先に考察した通り、次に場合により、特定の方法を用いて、選択された特に所望のタンパク質を同定することができる。複数の実施形態において、核酸は、エクソソームのカオトロピック崩壊およびその後の核酸単離を使用して単離される。核酸単離のための他の確立された方法もまた、カオトロピック崩壊に加えて、またはその代わりに使用しててもよい。単離される核酸としては、DNA、DNA断片およびDNAプラスミド、総RNA、mRNA、tRNA、snRNA、saRNA、miRNA、rRNA,制御RNA、非コードおよびコードRNAなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。RNAが単離される複数の実施形態において、RNAを、RT-PCRに基づく(または他の増幅の)方法において鋳型として使用して、目的のRNAの多くのコピー数を(DNA形態で)作製することができる。そのような例では、特定のRNAまたは断片が、特定の目的のRNAまたは断片である場合、エクソソーム単離およびRNA調製は、場合によりその所望の配列のインビトロ合成および同時投与により補足され得る。
【0090】
複数の実施形態において、細胞由来のエクソソーム(例えば、高い効果が得られるように工学操作されたエクソソーム)は、1種または複数の追加的薬剤と組み合わせて投与される。例えば複数の実施形態において、エクソソームは、エクソソーム由来の1種または複数のタンパク質または核酸と組み合わせて投与される(例えば、エクソソーム内容物を補足するため)。複数の実施形態において、そこからエクソソームが単離される細胞を、エクソソームと共に投与する。複数の実施形態において、そのようなアプローチは、有利には緊急およびより長期間のエクソソーム送達を提供する(例えば、細胞は送達後に、実際のエクソソーム送達に基づき緊急に、そして細胞送達に基づき長期間、エクソソームを分泌し続ける)。
【0091】
複数の実施形態において、エクソソーム(例えば、高い効果が得られるように工学操作されたエクソソーム)は、より従来の治療、例えば外科的治療または医薬療法と共に送達される。複数の実施形態において、アプローチのそのような組み合わせは、標的組織の生存率および/または機能において相乗的改善をもたらす。幾つかの実施形態において、エクソソームは、遺伝子療法ベクター(または複数のベクター)、核酸(例えば、siRNAとして使用される核酸またはRNA干渉を成就する核酸)、および/または他の細胞型に由来するエクソソームの組み合わせと共に送達され得る。
【0092】
本明細書に開示された組成物は、実施形態に応じて、多くの経路のうちの1つにより投与され得る。例えば、エクソソーム投与は、局所または全身投与であってもよい。局所投与は、処置される組織に応じて、幾つかの実施形態において、組織への直接投与(例えば、心筋内注射などの直接注射)により実現されてもよい。局所投与はまた、例えば特有の組織の洗浄(例えば、腸内または腹膜洗浄)により実現されてもよい。複数の実施形態において、全身投与が使用され、例えば、静脈内および/または動脈内送達により、実現されてもよい。特定の実施形態において、冠動脈内送達が使用される。複数の実施形態において、エクソソームは、傷害を受けたまたは罹患した組織に特異的に標的化される。幾つかのそのような実施形態において、エクソソームは、特異的標的部位を指向するように改変される(例えば、遺伝子的または他の方法で)。例えば改変は、幾つかの実施形態において、エクソソーム上の特異的細胞表面マーカーの発現を誘導して、所望の標的組織上の受容体との特異的相互作用をもたらすことを含み得る。一実施形態において、エクソソームの本来の内容物は、除去され、所望の外因性タンパク質または核酸と置換される。一実施形態において、エクソソームの本来の内容物は、所望の外因性タンパク質または核酸により補足される。しかし幾つかの実施形態において、エクソソームの標的化は、実施されない。複数の実施形態において、エクソソームは、特異的な核酸またはタンパク質を発現するように改変され、これは、とりわけ標的化、精製、トラッキングなどのために用いられ得る。しかし複数の実施形態において、エクソソームの改変は、実施されない。幾つかの実施形態において、エクソソームは、キメラ分子を含まない。
【0093】
幾つかの実施形態において、皮下または経皮送達法が、用いられる。エクソソームは、相対的に小さなサイズのため、微細血管のサイズまで血管の中を通過することができ、それにより組織内への有意な浸透を可能にすることから、エクソソームは、特定の型の治療に特に有利である。幾つかの実施形態において、これによって、傷害を受けたまたは罹患した組織の中心部分(例えば、腫瘍の中心部分または梗塞した心組織の領域)へのエクソソームの直接送達が可能となる。加えて複数の実施形態において、エクソソームは、これまで多くの中枢神経系療法に対する障害となってきた血液脳関門を越えてペイロード(例えば、常在核酸および/またはタンパク質)を送達することができるため、エクソソームの使用は、特に有利である。しかし特定の実施形態において、エクソソームは、血管脳関門を通した注射により中枢神経系に送達してもよい。複数の実施形態において、エクソソームは、投与のためのより低いプロファイルの送達装置(例えば、より小さいサイズのカテーテルおよび/または針)を許容するため、エクソソームは、投与にとって特に有益である。複数の実施形態において、エクソソームのサイズがより小さいことにより、脈管構造のより小さい、そして/またはより回旋した部分をエクソソームが通行することができ、それによってエクソソームをほとんどの標的組織のより大きな部分に送達することができる。
【0094】
実施形態に応じて、投与されるエクソソームの用量は、約1.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約5.0×10、約5.0×10~約1.0×10、約1.0×10~約2.0×10、約2.0×10~約3.5×10、約3.5×10~約5.0×10、約5.0×10~約7.5×10、約7.5×10~約1.0×10、およびそれらの重複範囲内を含む、約1.0×10~約1.0×10エクソソームの範囲内である。特定の実施形態において、エクソソーム用量は、キログラムあたりに基づき、例えば約1.0×10エクソソーム/kg~約1.0×10エクソソーム/kgで投与される。追加的実施形態において、エクソソームは、標的組織の質量に基づく量で、例えば約1.0×10エクソソーム/標的組織グラム~約1.0×10エクソソーム/標的組織グラムで送達される。複数の実施形態において、エクソソームは、特定の標的組織中の細胞数に対するエクソソーム数の比率に基づいて、例えばエクソソーム:標的細胞の比率が、約10:1、約10:1、約10:1、約10:1、約10:1、約10:1、約10:1、約10:1、およびこれらの比率の間の比率を含む約10:1~約1:1の範囲内で投与される。追加的実施形態において、エクソソームは、標的組織中の細胞数の約50倍、約100倍、約500倍、約1000倍、約10,000倍、約100,000倍、約500,000倍、約750,000倍およびこれらの量の間の量を含む約10倍の量~約1,000,000倍の量で投与される。エキソソームが、併用治療(例えば、エキソソームがさらに脱落可能な細胞、薬物療法、核酸療法および同様のもの)と共に投与される場合、投与されるエキソソームの用量は、それに応じて調整され得る(例えば、所望の治療効果を実現するために必要に応じて増加または減少される)。有利には、本明細書に開示された工学操作された高い効果のエクソソームは、複数の実施形態において、低減された用量のエクソソームを、より低い用量であるにもかかわらず増強された治療効果で用いることができる。
【0095】
複数の実施形態において、エクソソームは、単回のボーラス用量で送達される。しかし、幾つかの実施形態において、複数回用量のエクソソームが、送達されてもよい。特定の実施形態において、エクソソームは、経時的に指定された速度で輸注(または他の方法で送達)され得る。複数の実施形態において、エクソソームが、有害事象(例えば、損傷もしくは傷害を与える事象、またはMIなどの有害な生理的事象)の後、相対的に短い時間枠内で投与される場合、それらの投与は、標的組織の傷害の発生または進行を予防する。例えば、エクソソームが、有害事象後約20~約30分以内、約30~約40分以内、約40~約50分以内、約50~約60分以内に投与される場合、組織に対する傷害または有害な影響は、低減される(そのような早期時点で治療されなかった組織に比較して)。幾つかの実施形態において、投与は、有害事象後にできる限り即座である。幾つかの実施形態において、投与は、有害事象後に実施可能な限り即座である(例えば、対象が他の点で安定している場合)。複数の実施形態において、投与は、約1~約2時間以内、約2~約3時間以内、約3~約4時間以内、約4~約5時間以内、約5~約6時間以内、約6~約8時間以内、約8~約10時間以内、約10~約12時間以内、およびこれらの重複範囲内である。特定の追加的実施形態において、有害事象後により長時間経た時点での投与は、組織への傷害の予防に有効である。
【0096】
先に考察した通り、エクソソームは、少なくとも部分的に、特定の細胞療法の結果として認められる間接的組織再生効果の一部を提供する。したがって、幾つかの実施形態において、エクソソームの送達(単独または核酸などの補助剤と組み合わせて)は、組織の修復、機能改善、生存率増加またはそれらの組み合わせを促進するのに役立つ特定の効果(例えば、パラクリン効果)を提供する。幾つかの実施形態において、送達されるエクソソームのタンパク質内容物は、標的組織の修復または再生の少なくとも一部を担う。例えば、エクソソームにより送達されるタンパク質は、標的組織中の傷害を受けた、切断された、突然変異または他の方法で機能を損なったもしくは非機能性タンパク質と置き換わるように機能し得る。幾つかの実施形態において、エクソソームにより送達されるタンパク質は、シグナル伝達カスケードを開始して組織の修復または再生をもたらす。複数の実施形態において、エクソソームによるmiRNAの送達は、傷害を受けた組織の修復および/または再生の全体または一部を担う。先に考察した通り、miRNAの送達は、特定のメッセンジャーRNA(例えば、プログラム細胞死に関与するもの)の翻訳を抑制するように動作することができ、またはメッセンジャーRNAの切断をもたらし得る。いずれの場合も、そして幾つかの実施形態において、組み合わせることで、これらの効果は、標的組織において細胞シグナル伝達経路を変更し、本明細書で開示されたデータにより実証された通り、細胞の生存率の改善、細胞複製の増加、有益な解剖学的効果および/または細胞機能の改善をもたらすことができ、次にこれらはそれぞれ、傷害を受けたまたは罹患した組織の修復、再生および/または機能的改善に全体として寄与する。
【0097】
傷害または疾患の原因
本明細書に開示された方法および組成物は、非常に様々なタイプの傷害または疾患に罹患した細胞または組織の修復または再生に使用され得る。本明細書に開示された組成物および方法は、遺伝性疾患、細胞または身体の機能障害を処置するため、正常または異常な細胞の老化に打ち勝つため、忍容性を誘導するため、免疫機能をモジュレートするために用いられ得る。加えて細胞または組織は、外傷、例えば鈍的衝撃、裂傷、血流の喪失等により傷害を受け得る。細胞または組織は、傷害後の炎症、感染、自己消化(例えば、損傷または外傷の結果として遊離されたプロテアーゼによる)などの二次的効果により傷害を受け得る。本明細書に開示された方法および組成物はまた、特定の実施形態において、非限定的に心筋梗塞、脊髄損傷、卒中および外傷性脳損傷を含む急性事象を処置するために用いられ得る。複数の実施形態において、本明細書に開示された方法および組成物は、非限定的に神経学的障害または神経変性障害(例えば、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、熱中症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ドーパミン作動神経障害、AIDSなどの他の原因により生じる認知症、局所脳虚血を含む脳虚血、脳、脊髄、神経または網膜の挫滅または圧迫傷害を含むCNSにおける挫滅または圧迫傷害などの物理的外傷、ならびに神経変性を生じる任意の他の急性の損傷または傷害)、免疫不全、骨髄の再増殖の促進(例えば、骨髄の除去または移植の後)、関節炎、自己免疫障害、炎症性腸疾患、癌、糖尿病、筋力低下(例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症および同様のもの)、進行性失明(例えば、黄斑変性)および進行性聴力喪失を含む慢性疾患を処置するために用いられ得る。
【0098】
複数の実施形態において、傷害を受けた組織は、ニューロンのおよび/または神経の組織、上皮組織、骨格筋組織、内分泌組織、血管組織、平滑筋組織、肝臓組織、膵臓組織、肺組織、腸組織、骨組織、結合組織またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。複数の実施形態において、傷害を受けた組織は、急性事象により、修復、再生または機能改善を必要とする。急性事象としては、裂傷、挫滅または衝突傷害などの外傷、ショック、血流または酸素流の喪失、感染、化学物質または熱への曝露、毒物または毒液曝露、薬物の過剰使用または過剰曝露、および同様のものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば複数の実施形態において、傷害を受けた組織は、心組織であり、急性事象は、心筋梗塞を含む。幾つかの実施形態において、エクソソームの投与は、梗塞を受けた領域における心壁厚の増加をもたらす。追加的実施形態において、組織は、慢性疾患または進行中の損傷により傷害を受ける。例えば進行性変性疾患は、時間と共に広がる組織傷害をもたらし得る(時として、試行的治療によっても)。しかし、慢性疾患が、傷害組織を生成し続けるほど変性的である必要はない。複数の実施形態において、慢性疾患/損傷としては、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ドーパミン作動系障害、認知症、局所脳虚血を含む虚血、物理的外傷(例えば、CNSにおける挫滅または圧迫傷害)による続発作用、神経変性、免疫の活動亢進または欠損、骨髄の置換または機能補充、関節炎、自己免疫障害、炎症性腸疾患、癌、糖尿病、筋力低下(例えば、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症および同様のもの)、失明および聴力喪失が挙げられるが、これらに限定されない。心組織は、複数の実施形態において、慢性疾患、例えばうっ血性心不全、虚血性心疾患、糖尿病、心臓弁膜症、拡張型心筋症、感染症等によっても傷害を受ける。傷害の他の原因としては、損傷、加齢に伴う変性、癌および感染が挙げられるが、これらに限定されない。複数の実施形態において、再生細胞は、修復または再生を必要とする同じ組織型に由来する。複数の他の実施形態において、再生細胞は、修復または再生を必要とする組織以外の組織型に由来する。複数の実施形態において、再生細胞は、体細胞を含むが、追加的実施形態において、再生細胞は、生殖細胞を含む。さらなる追加的実施形態において、1つまたは複数の細胞型の組み合わせが、エクソソーム(またはエクソソームの内容物)を得るために用いられる。
【0099】
複数の実施形態において、エクソソームは、非限定的に、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、カポシ肉腫、リンパ腫、胃腸癌、虫垂癌、中枢神経系癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍(非限定的に、星状細胞腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣芽腫、上衣腫、髄芽種、髄上皮腫を含む、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、子宮頸癌、結腸癌、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、腺管癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、腎細胞癌、白血病、口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、眼癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、下垂体癌、子宮癌および膣癌のうちの1つに罹患した組織を含む種々の癌様標的組織を処置するために投与され得る。
【0100】
あるいは複数の実施形態において、エクソソームは、1種または複数の細菌、ウイルス、真菌および/または寄生虫に感染した標的組織などの感染した標的組織に送達される。幾つかの実施形態において、エクソソームは、細菌起源の感染を有する組織を処置するために用いられる(例えば、感染性細菌は、ボルデテラ、ボレリア、ブルセラ、カンピロバクター、クラミジアおよびクラミドフィラ、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エンテロコッカス、エシェリヒア、フランシセラ、ヘモフィルス、ヘリコバクター、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、ナイセリア、シュードモナス、リケッチア、サルモネラ、シゲラ、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、トレポネーマ、ビブリオおよびエルシニア、ならびにこれらの突然変異体または組み合わせからなる属の群から選択される)。複数の実施形態において、エクソソームは、1つまたは複数の細菌機能を阻害または予防し、それにより感染の重症度および/または期間を低減する。複数の実施形態において、エクソソームの投与は、細菌(または他の病原体)をアジュバント療法(例えば、抗生物質)に感作させる。
【0101】
幾つかの実施形態において、感染は、起源がウイルスであり、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、サイトメガロウイルス、エボラウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型、HIV、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、ヒトパピローマウイルス、パラインフルエンザウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、RSウイルス、風疹ウイルスおよび水痘帯状疱疹ウイルスからなる群から選択される1種または複数のウイルスの結果である。エクソソームは、非限定的に、血管細胞、上皮細胞、間質細胞、筋系(骨格筋、平滑筋および/また心筋)、骨格細胞(例えば、骨、軟骨および結合組織)、神経細胞(例えば、ニューロン、グリア細胞、星状膠細胞、シュワン細胞)、肝細胞、腎細胞、腸細胞、肺細胞、皮膚細胞または体内の任意の他の細胞を含む非常に様々な細胞型を処置するために用いられ得る。
【0102】
治療組成物
複数の実施形態において、傷害または疾患により有害な影響を受けている組織の修復または再生への使用のための細胞を含む組成物が、提供される。複数の実施形態において、傷害または疾患により有害な影響を受けた組織の修復または再生への使用のためのエクソソーム(例えば、高い効果が得られるように工学操作されたエクソソーム)を含む組成物が、提供される。複数の実施形態において、組成物は、エクソソームを含む、それからなる、またはそれから本質的になる。複数の実施形態において、エクソソームは、核酸、タンパク質またはそれらの組み合わせを含む。複数の実施形態において、エクソソーム内の核酸は、RNAの1つまたは複数の型を含む(特定の実施形態はDNAを含むエクソソームを伴うが)。RNAは、複数の実施形態において、メッセンジャーRNA、snRNA、saRNA、miRNAおよびそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。複数の実施形態において、miRNAは、miR-92a、miR-26a、miR27-a、let-7e、mir-19b、miR-125b、mir-27b、let-7a、miR-19a、let-7c、miR-140-3p、miR-125a-5p、miR-150、miR-155、mir-210、let-7b、miR-24、miR-423-5p、miR-22、let-7f、miR-146aおよびそれらの組み合わせのうちのうちの1つまたは複数を含む。複数の実施形態において、組成物は、合成マイクロRNAおよび薬学的に許容される担体を含む、それからなる、またはそれから本質的になる。幾つかのそのような実施形態において、合成マイクロRNAは、miR146aを含む。複数の実施形態において、miRNAは、pre-miRNA(例えば、成熟していない)であるが、幾つかの実施形態において、miRNAは、成熟しており、さらなる追加的実施形態において、pre-miRNAと成熟miRNAの組み合わせが、用いられる。
【0103】
複数の実施形態において、組成物は、細胞集団に由来するエクソソーム(例えば、高い効果が得られるように工学操作されたエクソソーム)および集団に由来する1種または複数の細胞(例えば、エクソソームと、それらの「親細胞」との組み合わせ)を含む。複数の実施形態において、組成物は、種々の細胞型に由来する複数のエクソソーム(例えば、第1および第2の型の「親細胞」に由来するエクソソームの集団)を含む。先に考察した通り、複数の実施形態において、本明細書に開示された組成物は、単独で、または1つもしくは複数の補助療法モダリティ(例えば、医薬的、細胞療法、遺伝子療法、タンパク質療法、手術など)と併せて用いられ得る。
【0104】
複数の実施形態において、エクソソームは、約15nm~約20nm、約20nm~約25nm、約25nm~約30nm、約30nm~約35nm、約35nm~約40nm、約40nm~約50nm、約50nm~約60nm、約60nm~約70nm、約70nm~約80nm、約80nm~約90nm、約90nm~約95nmおよびそれらの重複範囲を含む約15nm~約95nmの直径である。特定の実施形態において、直径がより大きい(例えば、約140~約210nmの範囲のもの)より大きなエクソソームが得られる。有利には、複数の実施形態において、エクソソームは、合成の膜結合粒子(例えば、エクソソーム代用物)を含み、これらは、実施形態に応じて、特定の直径範囲となるように構成される。そのような実施形態において、エクソソーム代用物の直径は、特定の用途(例えば、標的部位または送達経路)に適合される。さらなる追加的実施形態において、エクソソーム代用物は、投与後の特有の部位または領域へのトラフィッキングを増強するように標識または改変される。
【0105】
複数の実施形態において、エクソソームは、再生細胞の遠心分離を介して得られる。複数の実施形態において、超遠心分離が使用される。しかし複数の実施形態において、超遠心分離は使用されない。複数の実施形態において、エクソソームは、再生細胞のサイズ排除濾過を介して得られる。先に考察した通り、幾つかの実施形態において、合成エクソソームが作製され、上記と類似の機序により単離され得る。
【0106】
複数の実施形態において、エクソソームは、例えば翻訳を抑制すること、および/またはmRNAを切断することにより変更された遺伝子発現を誘導する。幾つかの実施形態において、遺伝子発現の変更は、細胞死経路に関与するもの、または周辺細胞にさらなる傷害を誘導するするもの(例えば、フリーラジカル)などの、望ましくないタンパク質または他の分子の阻害をもたらす。複数の実施形態において、遺伝子発現の変更は、直接または間接的に、所望のタンパク質または分子(例えば、有益な効果を有するもの)の作出をもたらす。タンパク質または分子そのものは、それ自体が望ましくある必要はない(例えば、タンパク質または分子が、組織に対する傷害の状況では全体的に有益な効果を有し得るが、他の状況では有益な効果をもたらさないこともあろう)。幾つかの実施形態において、遺伝子発現の変更は、望ましくないタンパク質、分子または経路の抑制(例えば、有害な経路の阻害)を引き起こす。複数の実施形態において、遺伝子発現の変更は、1種もしくは複数の炎症性物質の発現および/またはそのような物質に対する感受性を低減する。有利には、エクソソームまたはmiRNAの投与は、複数の実施形態において、特定の炎症性分子および/または炎症経路に関与する分子の下方制御をもたらす。そのため複数の実施形態において、エクソソームまたはmiRNAと接触した細胞は、損傷後の炎症または疾患による炎症の事象であっても、生存率の増強を受ける。
【0107】
複数の実施形態において、エクソソームは、傷害を受けた組織の1種または複数のレシピエント細胞と融合する。複数の実施形態において、エクソソームは、傷害を受けた組織の1種または複数のレシピエント細胞内にマイクロRNAを放出し、それにより傷害を受けた組織の1種または複数の細胞において少なくとも1つの経路を変更する。幾つかの実施形態において、エクソソームは、傷害を受けた組織の細胞周辺の環境を変更することにより、傷害を受けた組織の細胞に影響を及ぼす。幾つかの実施形態において、エクソソームにより生成されたシグナル、またはエクソソームの内容物もしくは特徴の結果としてのシグナルは、特定の細胞経路の増加または減少をもたらす。例えばエクソソーム(またはその内容物/特徴)は、タンパク質および/または脂質プロファイルを変化させることにより細胞環境を変更することができ、次にこれがこの環境内の細胞挙動の変更をもたらし得る。追加として複数の実施形態において、エクソソームのmiRNAは、レシピエント細胞における遺伝子発現を変更することができ、それによってその遺伝子が関係する経路を変更し、その後、細胞環境をさらに変更し得る。複数の実施形態において、エクソソームの影響は、血管新生を直接的または間接的に刺激する。複数の実施形態において、エクソソームの影響は、細胞複製に直接的または間接的に影響する。複数の実施形態において、エクソソームの影響は、細胞アポトーシスを直接的または間接的に阻害する。
【0108】
エクソソーム(またはその内容物)の有益な効果は、直接傷害または損傷を受けた細胞に対してだけである必要はない。幾つかの実施形態において、例えば開示された方法により影響を受ける傷害を受けた組織の細胞は、健常細胞である。しかし複数の実施形態において、開示された方法により影響を受ける傷害を受けた組織の細胞は、傷害を受けた細胞である。
【0109】
複数の実施形態において、再生は、組織の機能を改善することを含む。例えば、心組織が傷害を受けた特定の実施形態において、機能的改善は、心拍出量、収縮性、心室機能の増進および/または不整脈の低減(他の機能的改善の中でも)を含み得る。他の組織では、神経傷害の処置に応答した認知の増強、肺の傷害の処置に応答した血液-酸素移動の改善、傷害を受けた免疫関連組織の処置に応答した免疫機能の改善などの機能の改善も同様に実現され得る。
【0110】
複数の実施形態において、再生細胞および/またはエクソソームは、起源が哺乳動物である。複数の実施形態において、再生細胞および/またはエクソソームは、起源がヒトである。幾つかの実施形態において、細胞および/またはエクソソームは、非胚性ヒト再生細胞および/またはエクソソームである。複数の実施形態において、再生細胞および/またはエクソソームは、個体とって自己であるが、複数の他の実施形態において、再生細胞および/またはエクソソームは、個体にとって同種異系である。異種または同系の細胞および/またはエクソソームが、特定の他の実施形態で用いられる。
【0111】
実施例1~10の材料および方法
細胞および試薬
心室中隔の右心室側からの心内膜心筋生検を、死亡した組織ドナーの健常心臓から得た。CDCは、過去に記載された通りに得た。手短に述べると、心臓生検を小さな1mm断片に刻み、コラゲナーゼで短時間消化した。外植片をその後、20μg/mlフィブロネクチン(VWR)をコートしたフラスコで培養した。間質様の平坦な細胞およびブライトコントラストで丸い細胞が、組織断片から自然に成長し、2~3週間までにコンフルエントに達した。これらの細胞をその後、0.25%トリプシン(GIBCO)を用いて採取し、20μg/mlポリ-D-リシン(BD Biosciences)で懸濁培養して、自己凝集カーディオスフェアを形成させた。フィブロネクチンコーティングディッシュにカーディオスフェアを播種することによりCDCを得て、継代した。全ての培養物を、10%FBS(Hyclone)、1%ゲンタマイシン、および0.1ml 2-メルカプトエタノールを補充したIMDM基本培地(GIBCO)を用いて5%O/COおよび37℃で保持した。そこからCDCが成長したヒト心臓生検標本は、ヒト対象研究のための施設内審査委員会により認可されたプロトコルの下で得られた。
【0112】
細胞外小胞の調製および単離
細胞外小胞を、過去に利用された低酸素周期法を利用して第5継代の初代CDCから、またはより古い継代の形質導入細胞から採取した。手短に述べると、細胞を20%O/5%COおよび37℃でコンフルエントまで成長させ、その後、細胞を1回洗浄した後に2%O/5%COおよび37℃で一晩、無血清にした。条件培地を回収し、0.45μmフィルターで濾過して、アポトーシス体および細胞残屑を除去して、後の使用のために-80℃で凍結した。EVを、1000kDa分子量カットオフフィルター(Sartorius)で限外濾過を使用して精製した。EV調製物を、以下の獲得パラメータ:カメラレベル15、検出レベル5以下、撮影ビデオ数4およびビデオの長さ30秒、によりMalvern Nanosight NS300 Instrument(Malvern Instruments)を通して分析した。
【0113】
レンチウイルス形質導入
CDCまたはNHDFを、T25フラスコに播種して、完全培地中のレンチウイルス粒子(MOI:20)を形質導入した。形質導入の24時間後に、ウイルスを除去し、新鮮な完全培地を細胞回収のためにさらに24時間添加した。
【0114】
細胞をその後、選択培地におよそ1週間供した。選択後、完全培地を交換した。
【0115】
RNA単離およびqRNA-PCR
細胞RNAを、miRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて単離した。エクソソームRNAを、Urine Exosome RNA Isolation Kit(Norgen Biotek Corp.)を用いて単離した。逆転写を、それぞれRNAおよびマイクロRNAのために、High Capacity RNA to cDNA(Thermo Fisher Scientific)またはTaqMan(登録商標) microRNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)を用いて実施した。リアルタイムPCRを、TaqMan Fast Advanced Master Mixおよび適当なTaqMan(登録商標) Gene Expression Assay(Thermo Fisher Scientific)を用いて実施した。試料を処理し、QuantStudio(商標) 12K Flex Real-Time PCRシステムを用いて分析し、各反応は三重測定の試料で実施した(mRNAではハウスキーピング遺伝子hprt1、およびマイクロRNAではmiR23a)。この試験に用いられた遺伝子発現アッセイ/マイクロRNAは、以下の通りであった(Thermo Fisher Scientific):
【表1】
【0116】
RNA配列決定
細胞およびエクソソームRNA試料を、Cedars Sinai Genomics Coreで配列決定した。総RNAおよび低分子RNAを、それぞれ細胞およびエクソソーム試料のためにIllumina NextSeq 500プラットフォームで分析した。
【0117】
細胞溶解物およびタンパク質のアッセイ
細胞溶解物を、ELISAおよびウェスタンブロットのために回収した。ELISAでは、4×10細胞を回収し、4℃および1,000rpmで5分間、ペレット化した。細胞ペレットを1×溶解緩衝液(Affymetrix eBioscience InstantOne ELISAキット)に溶解し、定期的に撹拌しながら室温で10分間インキュベートした。ウェスタンブロットでは、細胞をペレット化し、1×RIPA緩衝液(Alfa Aesar)中でプロテアーゼ阻害剤と共に氷上で30分間、再懸濁させた。タンパク質溶解物を、14,000rpmおよび4℃で15分間の遠心分離により単離した。タンパク質濃度を、DC(商標) Protein Assayキット(Bio-Rad)を用いて測定した。
【0118】
細胞の薬物曝露
細胞を、完全培地中で5μMの6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO、Sigma-Aldrich)または4-ベンジル-2-(ナフタレン-1-イル)-[1,2,4]チアジアゾリジン-3,5-ジオン(チデグルシブ、Sigma-Aldrich)に48~72時間曝露した。
【0119】
ELISA
総β-カテニンのELISAを、最終試料濃度0.01mg/mlおよび陽性対照(Affymetrix eBioscience InstantOne(商標) ELISA)0.1mg/mlと共に記載されたプロトコルに従って実施した。
【0120】
フローサイトメトリー
細胞を採取して、カウントした(2×10細胞/条件)。細胞を、1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)で洗浄し、適当な抗体(BD Pharmingen)により4℃で1時間染色した。細胞をその後、再度洗浄して、1×PBS中の1%BSAに再懸濁させた。BD Cytofix/Cytoperm(商標)キットを、染色前の細胞透過処理に用いた。フロー分析を、BD FACS Canto(商標)II装置を用いて実施した。
【0121】
ウェスタンブロット
膜移動を、ゲル電気泳動後にTurbo(登録商標) Transfer System(BIO-RAD)を用いて実施した。その後、以下の抗体染色を適用して、SuperSignal(商標) West Pico PLUS Chemiluminescent Substrate(Thermo Fisher Scientific)により検出した。
【表2】
【0122】
動物試験
全ての動物試験を、Institutional Animal Care and Use Committeeプロトコルから得られた認可済みのプロトコルの下で実行した。
【0123】
マウス急性MIモデル
急性心筋梗塞を、3か月齢の雄性重症複合免疫不全症(SCID)/ベージュマウス(n=5~7動物/群)に誘導した。冠動脈結紮の10分以内に、1×10細胞、EV、薬物(またはビヒクル)を心筋内に注射した。
【0124】
心エコー検査。心エコー試験を、SCID/べージュにおいて、記載された通りVevo3100または770Imaging System(Visual Sonics)を用いて、手術後24時間目(ベースライン)および3週間目に実施した。左心室駆出率の平均を、複数の左室拡張末期および左室収縮末期測定から分析した。
【0125】
CDC生着。ヒトのCDC持続性を評定するために、梗塞を受けた動物に、注射の72時間前に5μM BIOまたは同容量のDMSOに予め曝露されたLP CDCを投与した。標準曲線を、ヒトX染色体特異性遺伝子mage a1のコピー数を利用して作成した。マウス心臓組織1mg由来のDNA中のこのCDCドナーの既知数から得られたDNAを、標準曲線を作成するのに用いた。注射の3週間後に動物を殺処分して、ゲノムDNAを左心室組織から抽出した。ゲノムDNA中のmage a1コピー数のQPCRを、Taqman Copy Number Assay(Thermo Fisher Scientific)を用いて実施した。
【0126】
組織学検査
動物を、MI誘導の3週間後に殺処分した。心臓を採取して、MI縫合のわずかに上で横に切断した。その後、心尖部をベースモールド/包埋リングブロック(Tissue Tek)内の最適な切断温度の溶液に包埋した。ブロックを直ちに冷2-メチルブタンへの浸漬により凍結した。心臓を5μm厚で切片にした。
【0127】
マッソントリクローム染色
心臓あたりに合計4枚の切片を含む2つのスライドを、マッソントリクローム染色を利用して染色した。手短に述べると、切片をブアン液で一晩処置した。スライドをその後、水道水で10分間すすぎ、ワイゲルドヘマトキシリンで5分間染色した。スライドをその後すすいで、スカーレット・酸性フクシンで5分間染色し、再度すすいだ。スライドをその後、リンタングステン/リンモリブデン酸、アニリンブルー、および2%酢酸でそれぞれ5分間染色した。その後、スライドをすすぎ、乾燥させて、DPX封入剤を用いて封入した。
【0128】
デュシェンヌ型筋ジストロフィーマウスモデル
トレッドミル運動テスト
10か月齢の雌性mdxマウスを、5度上昇したショックグリッドを備え付けたExer-3/6げっ歯類用トレッドミル(Columbus Instruments)の内部に置いた。馴化期間では、マウスを30分間放置した後ベルトを取り付けた。ベルトを取り付けた後、マウスを促して、トレッドミルで10m/分のペースでさらに20分間歩行させながら慣れさせた。馴化期間の後、運動プロトコルに従った(1ショック/秒の頻度で0.15mAでショックグリッドを活性化した)。このプロトコルは、ベルト速度を毎分1m/分ずつ加速することにより、自発的消耗(volitional exhaustion)を誘導するものである。ナッジング(nudging)でショックグリッド上に10秒より長く静止するマウスは、最大運動能力に達したと判断し(累積移動距離を記録し)、運動テストを終了した。動物をベースラインでテストし、その後、その日のうちにエクソソームまたは生理食塩水ビヒクルの静脈内(大腿静脈)輸注100μlを受けた。動物を、輸注の3週後にもう1回テストした。
【0129】
組織学的検査
マウス前脛骨(TA)筋を、麻酔されたマウスからおおまかに解剖して、OCT化合物中に包埋し、液体窒素内で予め冷却した2-メチルブタンで凍結し、その後、切片作製まで-80℃で貯蔵した。連続切片を、横断面の中腹で切断した。全ての切片を、クリオスタット(Leica)を用いて8μmで切り出し、Superfrost Plus(商標)顕微鏡スライド(Fisherbrand)に接着させた。低温切片を10%中性緩衝ホルマリンで固定した後、マッソントリクローム染色(Sigma-Aldrich)を行った。組織スライドを、Aperio AT Turboスライドスキャナー(Leica)を用いて40倍で撮像した。線維化の定量を、Tissue IA(Leica Biosystems)を用いて、組織切片全体の赤色染色に比較した青色染色の面積により決定した。フェレ径を、ImageJが統合されたQuPathソフトウエアを用いて、切片あたりの1,000の筋線維で測定した。
【0130】
統計解析
統計学的比較を、95%CIでの独立した片側または両側の独立スチューデントt検定を用いて実行した。単変量回帰分析を、図2Aで利用した。
【0131】
実施例1
この非限定的実施例は、CDC治療効果におけるWnt/β-カテニンシグナル伝達の関係を記載する。
【0132】
多様な治療効果が、MI後にインビボテストを受けた様々なヒトCDC株の間で明白である。図1Aは、4種の高い効果の(HP)ヒトCDC株、4種の低い効果の(LP)細胞株(配列決定用に選択)、またはビヒクルのみ(生理食塩水)のそれぞれを注射されたマウスから、心エコー検査で駆出率(EF)として定量された包括的心機能の変化を示す。HPおよびLP CDCのトランスクリプトーム比較から、Wntシグナル伝達メディエーターが示差的に発現され、HP CDC中でのβ-カテニンシグナル伝達が活性化されることが明らかとなった(図1B)。対照的に、非古典的Wnt経路のメンバーであるror2、nfatc2、axin2、rac2、およびapcdd1は、LP CDC中に豊富であったが(図1C)、古典的Wntシグナル伝達経路と非古典的Wntシグナル伝達経路を共有する複数の分子では、差がほとんど見られなかった(Frizzled受容体(図1D)、Dishevelled(図1E)およびWntリガンド(図1F))。
【0133】
RNA配列決定の結果に基づき、Wnt/β-カテニンシグナル伝達とCDCの効果との関連性を調べた。CDCにおけるドナー特異的総β-カテニンタンパク質レベルについてプールされたデータから、インビボでの同じ細胞の治療有効性との強い相関が明らかとなった(図2A)。全てのCDCは、ヒト移植の標準的最小基準(感染性疾患のためのスクリーニングなど)を満たした推定的に健常のドナー心臓のものであったが、技術的理由で用いられたことがなく(例えば、心臓サイズ、血液型)、したがって研究用に寄付された。ドナーの臨床的特徴(即ち、年齢、性別、民族、または死因)と観察されたCDCの効果の間に、識別可能な相関は見出されなかった。HP CDCは、LP CDCに比較して、平均で約2倍高いβ-カテニンレベルを呈した。低比重リポタンパク質受容体5/6(LRP5/6)を含むWnt受容体発現は、細胞質β-カテニンの安定化を促進し、そのユビキチン化を予防した。Wnt受容体LRP5/6は、HP CDC中で上昇した(図2B)。
【0134】
その上、CDCの調製の中核であるスフェア形成転換は、後のCDC中のβ-カテニンレベルの劇的な減少と、その後の急激な上昇を伴う(ドナー間の変動が観察されたが)(図8A)。
【0135】
これらの結果は、CDC治療効果におけるWnt/β-カテニンシグナル伝達の役割を示す。幾つかの実施形態において、β-カテニンレベルは、HP CDCにおいて上方制御または増加される。幾つかの実施形態において、β-カテニンレベルの上方制御は、CDCの治療効果を増強する。幾つかの実施形態において、Wnt受容体LRP5/6は、HP CDCにおいて上方制御される。幾つかの実施形態において、Wnt受容体LRP5/6の上方制御は、CDCの治療効果を増強する。
【0136】
実施例2
この非限定的例は、β-カテニンの増幅が治療効果を増強することを示す。
【0137】
β-カテニンレベルの増幅がLP CDCにおける治療有効性を改善するかどうかをテストするために、CDC中で5μMで最大に有効であるグリコーゲンシンターゼキナーゼ-3ベータ(GSK3β)の可逆的阻害剤である6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO)を用いた(図8B)。GSK3βの抑制効果を解除することにより、BIOが、β-カテニンレベルを増加させることができ、実際にそれが、BIOに曝露されたLP株(Lp-BIO)で観察された(図2C)。BIOは、効果と反比例する抗原であるCD90の発現を減少させ、陽性CDC同一性マーカーであるCD105または陰性同一性マーカーであるDDR2に影響を及ぼさなかった(図8C)。GSK3βの可逆的阻害剤であるチデグルシブは、方向性が類似していたが、より長期持続性の効果を有した(図8Dおよび8E)。LP-BIO CDCは、曝露していないLP CDCに比較して増強された機能的および構造的利益を示した(LP-ビヒクル)(図2D~2G)。β-カテニンの増強は、宿主心臓組織における移植CDCの維持に影響しなかった(図9A)。
【0138】
幾つかの例において、効果にはドナー間変動が存在し、時には同じマスター細胞バンクの異なるロットで、効果が異なり得る。複数の実施形態によれば、同じマスター細胞バンクからのロット間の効果変動は、極わずかである。図2Hは、LPロット(LPL)がBIOに曝露されると(LP-BIO)、β-カテニンレベルが増加し、同一ドナーからのHPロット(HPL)に匹敵するレベルまで増加することを示す。そのような「補正された」ロットはまた、インビボで治療有効性を取り戻す(図2I)。最後に、シミアンウイルス40ラージおよびスモールT抗原(SV40 T+t)を用いて不死化されたCDCは、強力でなく、低レベルのβ-カテニンを呈するが、BIOへの曝露によりβ-カテニン増大後に効果を取り戻す(図2J、2K)。したがって、3つの異なるシナリオ、つまりドナー間変動、ロット間変動、および不死化において、CDC β-カテニンレベルを押し上げることは、細胞効果を増加させる。
【0139】
幾つかの実施形態において、GSK3βの阻害は、CDCの効果を増強する。幾つかの実施形態において、GSK3βの阻害は、β-カテニンレベルを増強する。幾つかの実施形態において、GSK3βの阻害は、β-カテニンレベルを増強し、それによりCDCの効果を増強する。
【0140】
実施例3
この非限定的実施例は、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化によりmest発現の阻害およびLRP5/6受容体表面発現の増加を記載する。
【0141】
β-カテニンがどのようにして効果を駆動するかを理解するために、BIOへの曝露後の同じ細胞バッチのトランスクリプトームに、LP CDCのトランスクリプトームを比較した。先に言及された通り、低い効果に関連する3つのシナリオ、つまり所与のドナーからの全てのロットが効果を欠くというドナー関連;強力なロットもあればそうでないロットもあるというロット依存的;および不死化CDC(imCDC)が、同定された。RNA配列決定を利用して、各シナリオからのLP細胞を、ビヒクルのみに対比させてBIOへの曝露後に比較した。その後、倍率変化をプールして、BIOにより上方制御または下方制御された遺伝子を同定した(図3A)。上方制御された古典的Wntシグナル伝達の多くのプロモータに加えて、Wntシグナル伝達の基本的な負の調節因子の1つである中胚葉特異的転写物(mest)は、驚くほど下方制御された(約30倍;図3B、3C;図9Bおよび9C)。2群の間のマイクロRNA(miR)の示差的発現によりさらに、mestで同時調節された同族miRを同定した(miR-335;図3C図9Dおよび9E)。線維芽細胞ではβ-カテニンを過剰発現するとmest発現を増加させ、β-カテニン介在性mest阻害が細胞自律的であることが示唆された(図9F)。mestは、間接的に、lrp5/6受容体成熟を予防するグリコシルトランスフェラーゼを通して、Wnt/β-カテニンシグナル伝達をモジュレートする。グルコシルトランスフェラーゼのエクソストシン(EXT)ファミリーの膜における突然変異は、発達の際のWnt受容体パターン発現に影響を及ぼす。この場合、LRP5/6転写物は、エクソストシングリコシルトランスフェラーゼEXTL1の下方制御により変化せず、mestおよびEXTL1がLRP5/6を転写後に阻害することが確認された(図3F~3H)。機序が関連することのさらなる裏づけとして、BIOへのCDCの曝露は、EXTL1タンパク質レベルを減少させ(図3I)、そのグリコシル化の標的であるLRP5/6を上方制御した(その差は、統計学的に有意でなかったが;図3J)。
【0142】
エクソソームおよび可能性がある他のEVの、CDCの治療的利益のメディエーターとしての重要性を考慮して、EVの特性および効果を調査した。プラス/マイナスBIO細胞ペアにより生成されたEVの過去に同定された正および負の治療的miR(それぞれ146aおよび199b)のレベルが類似であり、ならびにサイズ分布プロファイルが類似であるにもかかわらず(図10Aおよび10B)、miR-335のEVレベルは、有意に減少しており、β-カテニン活性化による非コード化RNAペイロードのモジュレーションを実証した(図3D)。HP CDC EVに曝露された線維芽細胞は、線維芽細胞EVまたはLP CDC EVに曝露されたものに比較して、下方制御されたmestレベルを示した(図3E)。それゆえ、β-カテニン活性化は、強力なCDC中のmest/miR-335抑制をもたらし、分泌されたEV中のmiR-335を減少させる。
【0143】
これらの結果から、β-カテニンのmest阻害は、LRP5/6受容体発現のモジュレーションを通して起こることが示される。幾つかの実施形態において、LRP5/6受容体の発現および/または機能は、β-カテニンの効果が誘導する効果をさらに増強するようにモジュレートされ得る。例えば幾つかの実施形態において、LRP5/6受容体の発現は、上方制御される。幾つかの実施形態において、mestは、下方制御される。幾つかの実施形態において、LRP5/6受容体の発現および/または機能は、mest下方制御の結果として上方制御される。
【0144】
実施例4
この非限定的実施例は、不死化CDC中のmestの遺伝子抑制により治療効果を回復させることを記載する。
【0145】
不死化CDCでの最初の試みは、シミアンウイルス40ラージおよびスモールT抗原形質導入に依存した。予測されたように、SV40ラージおよびスモール(T+t)抗原の使用は、紡錘様形態への形態変化と、スフェア形成後に約8継代と予測される継代を超えるロバストな成長をもたらした(図11A)。表面マーカー発現は、CDC中で過去に同定された効果の陰性マーカーであるCD90の急速な上昇以外は、ほとんど類似していた(図11B)。EVサイズは類似していたが(図11C)、EV産出量は増加しており、このことは初代細胞不死化の共通する結果であり得る(図11D)。最後に、既知の治療的CDC EVカーゴ成分、特にmiR-146aおよびmiR-210のレベルは、初代CDC EVに比較して低下した(図11E)。それゆえこの戦略は、CDCの不死化という点では成功したが、効果の喪失(図2J、2K)およびβ-カテニンレベルの減弱(図4A)をもたらした。BIOは、不死化CDCの効果を回復させたが(図2J、2K)、細胞成長および生存率は、はっきりしなかった(図11F)。不死化CDCの効果を回復させる別の試みでは、GSK3βのノックダウンが、β-カテニンの転写抑制(図12A)および逆説的下方制御をもたらした(図12B)。GSK3βの薬理学的阻害で観察された通り、GSK3βの転写抑制は、mestの下方制御ももたらした(図12B)。β-カテニン発現の抑制は、既知のホメオスタシス機序と一致した。gsk3aおよびgsk3bは、機能の重複を有するため、gsk3bの遮断は、gsk3bが媒介する効果の阻害をもたらし、gsk3bの遺伝子欠失は、gsk3αの補完的活性化によりそれらの効果を排除した。短ヘアピン(sh)RNAを用いたmestの遺伝子抑制は、EXTL1タンパク質レベルの低下およびLRP5/6の表面発現の増加(図4B、4C)という、より良好な結果を生じ、imCDCsh-mest細胞は、少なくとも20継代の間、高いβ-カテニンレベルを維持した(強力なCDCのレベルと同等)(図4D)。imCDCsh-mestは、治療的に強力であるが、形態および同一性マーカーが初代CDCと異なっていた(図12Cおよび12D)。EVは、imCDCsh-mestにより生成され(図13Aおよび13B)、それらのEVは、初代CDC EVよりも高いmiR-146aおよび低いmiR-199bレベルを含有していた(図4E)。最後に、imCDCsh-mestは、インビボで構造(組織学的な瘢痕サイズの低減による;図4F~4H)および機能(図4I)の両方で高い効果を呈した。
【0146】
これらの結果から、mestの抑制が高い効果のCDCおよびEVをもたらすことが示される。幾つかの実施形態において、mestの抑制は、EXTL1タンパク質レベルの減少と相関する。幾つかの実施形態において、mestの抑制は、LRP5/6の表面発現の増加と相関する。幾つかの実施形態において、mestの抑制は、EXTL1タンパク質レベルの減少およびLRP5/6の表面発現の増加と相関する。幾つかの実施形態において、EXTL1タンパク質レベルの減少、LRP5/6の表面発現の増加、またはその両方はさらに、CDCの効果を増強する。
【0147】
実施例5
この非限定的実施例は、非強力の非心細胞型に治療効果を工学操作することを例証する。
【0148】
β-カテニンの過剰発現が治療的に無効の細胞型内で効果を誘導し得るかどうかにかかわらず、β-カテニンがCDCの効果の根底にあることが示されたため、正常なヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を調査した。心臓発達の間にWnt/β-カテニンの下流でシグナル伝達して間葉系幹細胞の心臓保護能力を増強する転写因子gata4の同時発現を伴う、および伴わないβ-カテニン増強を、試験した(図5A)。NHDFと、β-カテニンのみを形質導入されたNHDF(NHDFβcat)と、β-カテニンおよびgata4の両方を形質導入されたNHDF(NHDFβcat/gata4)との比較から、明確な形態学的差異が明らかとなり、NHDFβcatおよびNHDFβcat/gata4細胞がそれぞれ、内皮様および上皮様形態を有した(図5B)。NHDFβcat/gata4では、不死化と類似の老化の欠如が、さらに観察された。実際に、テロメラーゼ発現は、これらの細胞で著しく増加しており、細胞成長におけるβ-カテニンとgata4の相乗効果の可能性が指摘された(図14)。転写因子のうち、gata4は、その効果が少なくとも幾らか特異的であり、gata4を内皮細胞運命転写因子etv2に置換すると、不死化表現型を再現しなかった(図14B)。非改変NHDFに比べて抗原性プロファイリングは、NHDFβcatにおけるCD90およびCD105の減少、ならびにNHDFβcat/gata4におけるこれらのマーカーのほぼ完全な喪失を明らかにした(図5C)。β-カテニンレベルは、おそらく細胞運命特定の間のβ-カテニンのサイレンシングにより、非改変NHDFに比べてNHDFβcatおよびNHDFβcat/gata4の両方で増加した(図5D)。NHDFβcatおよびNHDFβcat/gata4に由来するEVは、増加したレベルのmiR-146aを発現したが、NHDFβcat/gata4のみでは、miR-199bの低減を示した(図14C図5E)。治療有効性を評定するために、MI後の死亡率および心機能を定量した。図5Fは、NHDFが移植後に不活性ではなく有害になり得ることを示しており、MIの3週後までにNHDF注射動物の50%より多くが死亡したことから、NHDFは生存を妨害する。NHDFβcatまたはNHDFβcat/gata4を注射されたマウスでは、より低い死亡率が観察され、事実、後者の群と、NHDFβcat/gata4由来のEVを注射された群でも、全ての動物が生存した(図5F)。類似のパターンにより、細胞がMI後のEFを改善する能力が特徴付けられた(図5G~5I)。これらの知見を前提とし、工学操作された細胞およびそれらのEV/エクソソームは、それぞれ活性化された特異的組織エフェクター細胞(Activated-Specialized Tissue Effector Cells)(ASTEC)またはASTEXと称した。
【0149】
工学操作された線維芽細胞(またはそれらのEV)、ASTEC(またはASTEX)は、心臓以外に治療有用性を有し得る。生物活性をより全般的に探索するために、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのネズミモデルにおいて、3×10個の粒子(またはビヒクルのみ)をmdxマウスに静脈内注射することにより、ASTEXをテストした(図6A)。3週間後、ASTEX注射マウス(対照ではない)は、ベースラインより有意に長い距離を走った(図6B)。模範的な速筋の骨格筋であるmdxマウス前脛骨の組織学的検査から、対照に比べてASTEXで大きく低減された筋線維化が明らかとなった(図6C、6D)。一方で、ASTEXは、筋線維のサイズ分布をより大きな直径にシフトさせ(図6E)、このモデルにおけるCDC由来エクソソームの効果を模倣した。全体として、これらのデータから、ASTEXが虚血性心不全のみならず(図5G)ジストロフィー性骨格筋でも生物活性であることが示される。
【0150】
これらの結果から、β-カテニンの過剰発現により、治療効果を、非強力な非心臓細胞型へと工学操作することができることが示される。幾つかの実施形態において、工学操作された線維芽細胞(またはそれらのEV)、ASTEC(またはASTEX)は、gata4の同時発現を伴わないβ-カテニンの増強により作製される。幾つかの実施形態において、工学操作された線維芽細胞(またはそれらのEV)、ASTEC(またはASTEX)は、gata4の同時発現を伴うβ-カテニンの増強により作製される。
【0151】
実施例6
この非限定的実施例は、miR-92a-bmp2シグナル伝達軸がβ-カテニン活性化の治療効果の根底にあることを示す。
【0152】
理論に束縛されるのを望むものではないが、1つの理論的機序では、β-カテニンで活性化されたCDCが単に、注射した場合に損傷を受けた心筋におけるβ-カテニンレベルを増加させたと仮定されよう。β-カテニンの心筋活性化が心保護性であるかどうかをテストするために、MIを有するマウスにおいて、CDCとは無関係に、包括的な古典的Wntシグナル伝達を変更する薬物を全身に投与した。BIOまたは古典的Wnt阻害剤JW67はどちらも、対照に比べて心筋機能を有意に変更せず(図15A)、CDCの効果によるWntシグナル伝達における包括的な心筋の変更を解消しなかった。代わりに、還元論的なインビトロモデルでのトランスクリプトーム分析(新生仔ラット心室筋細胞を使用;図15Bおよび15C)から、HP CDC EVへの曝露後に骨形成ペプチド(BMP)遺伝子ファミリーに大きな変化が明らかとなった。BMP遺伝子は、心線維化の中心的調節因子であり;その上、bmp2は、β-カテニンの標的であり、筋細胞の収縮性および創傷治癒を促進する。示差的に発現されるBMPファミリーメンバーは、抗線維化bmp-2、その受容体(2r)、-6および8aを含み、それらは全て上方制御されたが、bmp-3、-4、GDF6、および10を含む線維化促進性のメンバーは抑制された(図7A、7B)。さらに、HP EVに曝露された線維芽細胞は、自身のEVまたはLP-EVに曝露された線維芽細胞に比較してbmp2を上方制御する(図7C)。bmp2と同時制御されたマイクロRNAのmiR-92aは、bmp2シグナル伝達を促進する。事実、miR-92aは、LP EVに比較してHP EV中に豊富である(図7D)。一貫してmiR-92aは、imCDCshmestだけでなくASTEXのEV中にも豊富である(図7E、7F)。
【0153】
幾つかの実施形態において、HP CDC EVへの曝露は、骨形成ペプチド(BMP)遺伝子ファミリーの発現をモジュレートする。幾つかの実施形態において、bmp-2、その受容体(2r)、-6、8a、またはそれらの任意の組み合わせは、HP CDC EVへの曝露により上方制御される。幾つかの実施形態において、bmp-3、-4、GDF6、GDF10、またはそれらの任意の組み合わせは、HP CDC EVへの曝露により抑制される。幾つかの実施形態において、bmp-2、その受容体(2r)、-6、8a、またはそれらの任意の組み合わせは、HP CDC EVへの曝露により上方制御され、bmp-3、-4、GDF6、GDF10、またはそれらの任意の組み合わせは、抑制される。幾つかの実施形態において、miR-92aは、LP EVに比較してHP EV中に豊富である。幾つかの実施形態において、miR-92aは、LP EVに比較してHP EV中に豊富であり、HP EVに曝露された細胞におけるbmp-2の上方制御と相関する。幾つかの実施形態において、bmp-2、その受容体(2r)、-6、8a、またはそれらの任意の組み合わせの上方制御は、創傷治癒および/または組織修復を促進する。幾つかの実施形態において、bmp-3、-4、GDF6、GDF10、またはそれらの任意の組み合わせの下方制御は、創傷治癒および/または組織修復を促進する。幾つかの実施形態において、bmp-2、その受容体(2r)、-6、8a、またはそれらの任意の組み合わせの上方制御、およびbmp-3、-4、GDF6、GDF10、またはそれらの任意の組み合わせの下方制御は、創傷治癒および/または組織修復を促進する。
【0154】
実施例7
この非限定的実施例は、高い効果の次世代無細胞療法候補の工学操作を示す。
【0155】
カーディオスフェア由来細胞(CDC)は、疾患修飾性生物活性(disease-modifying-bioactivity)を有する治療候補であるが、全ての初代細胞と同様に、多様なの効果により臨床開発は複雑となる。様々なヒトドナーからの高いまたは低い効果のCDCのトランスクリプトーム比較により、高い効果のCDCにおけるWnt/β-カテニンシグナル伝達の活性化、および低い効果のCDC内の非古典的Wntシグナル伝達標的の富化が明らかとなった。β-カテニンタンパク質レベルは、治療効果と強く相関したが、低い効果のCDCにおいてβ-カテニンを再構成すると、治療有効性を回復した。中胚葉特異的転写物のmestは、β-カテニンを過剰発現したCDCにおいて下方制御され、その他の不活性な不死化CDCにおいては、mestの抑制により、β-カテニンレベルが増幅され、効果を回復した。疾患修飾性生物活性の決定因子としてのβ-カテニンの汎用性を探索するために、皮膚線維芽細胞を試験した。そのような細胞は、本来は効果を欠くが、β-カテニン(および転写因子gata4)を過剰発現するように改変すると、不死化して、治療的に強力となった。工学操作された線維芽細胞そのもの、およびそれらに分泌されたエクソソームの両方が、心筋梗塞のマウスにおいて死亡率を低下させて、心機能を改善した。デュシェンヌ型筋ジストロフィーのmdxマウスモデルにおいて、工学操作された線維芽細胞により分泌されたエクソソームは、運動能力を改善して、骨格筋線維化を低減した。高い効果のCDCからのエクソソームは、Wnt/β-カテニンの既知の増強剤であるmiR-92aの増強されたレベルを呈し、標的心筋細胞における心臓保護性bmpシグナル伝達を活性化する。したがって、理論により限定されるわけではないが、古典的Wntシグナル伝達は、複数の哺乳動物細胞型における治療効果の操作可能な決定因子である。
【0156】
これらのデータから、高い効果が得られるように工学操作された新規な不死化細胞株からのエクソソームが、次世代無細胞療法候補になることが示される。幾つかの実施形態において、高い効果が得られるように工学操作された細胞株は、β-カテニンを過剰発現する。幾つかの実施形態において、高い効果が得られるように工学操作された細胞株は、gata4を過剰発現する。幾つかの実施形態において、高い効果が得られるように工学操作された細胞株は、β-カテニンおよびgata4を過剰発現する。
【0157】
実施例8
この非限定的実施例は、β-カテニンを工学操作することにより治療的に有益な遺伝子改変された新規な細胞体(ASTEC)の作製におけるWntシグナル伝達の役割を示す。
【0158】
Wntシグナル伝達は、3つの高度に進化的に保存された経路、つまり転写を調節する1つの古典的経路と、細胞構造およびカルシウム処理を調節する2つの非古典的経路とを含む。本明細書に開示された通り、古典的Wntシグナル伝達は、強力なCDC中に豊富であるが、非古典的Wntシグナル伝達は、非強力なCDC中に豊富である。古典的Wntシグナル伝達の節点であるβ-カテニンは、子宮内膜再生に関与することが知られている。治癒相の間、β-カテニンは低下し、CD90レベルは間質組織内で増加する。β-カテニンシグナル伝達は、修復促進性マクロファージの極性、線維化の減少、心筋形成、および血管形成を含む多数の関連する病理生理学的経路において顕著に異彩を放つ。さらに心臓プレコンディショニングは、β-カテニンの蓄積およびその下流のカスケードに関連する。β-カテニンの過剰発現は、心筋細胞および心臓線維芽細胞への効果を通してMIのサイズを低減する。理論により限定されるものではないが、β-カテニンは、効果のマーカーであるだけでなく、治療有効性において機序的役割を担う。理論により限定されるわけではないが、mestは、LRP5/6発現の調節およびEXTL1の活性化を通した非古典的Wntシグナル伝達への重要な転換点である(図7G)。β-カテニンは、おそらく下流の遺伝子標的の活性を通して、mestおよびextl1を転写的に阻害するが、厳密な機序は、依然として知られていない。
【0159】
複数の実施形態によれば、CDC中のβ-カテニンの活性化は、同時調節されたmiRであるmiR-92aの濃化をもたらし、次に標的組織における改善された収縮性および線維化の減弱をもたらす(図7h)。本発明の知見は、β-カテニンがmest-extl1軸をどのようにして抑制するかの解明を含むさらなる機序の解明への動機付けとなる。本明細書に開示された通り、古典的Wntシグナル伝達の役割は、CDCを超えて拡大され得る。非限定的例として、本明細書に開示された通り、β-カテニンを工学操作することにより、有害な線維芽細胞を治療上有益な工学操作された新規細胞体(ASTEC)へと変換することに成功した。CDCの効果についての機序的知見は、ASTEC、つまり疾患修飾性生物活性を有するように工学操作された規定の不死化細胞を作出する試みに情報を与えた。理論により限定されるものではないが、製品開発の観点から、ASTECは、そのような細胞がそれ自体、生存する治療候補であり得るからだけでなく、それらが高い効果のエクソソームおよび他のEVを製造するための明確な不死化供給源を構成することからも注目に値する。レビューされた通り、EVは、細胞療法の重大な制限を克服する潜在性を提示する。細胞は、製造条件の微細な変化に対しても易損性の敏感で不安定な生存体である。このことが、細胞の製造およびスケーラビリティを高コストにし、そして物流を面倒にする。EVは、非生存で安定していて耐久性がある。それらは、小さな二層小胞として、凍結乾燥、繰り返しの凍結-解凍サイクル、および他の過酷な取り扱い方法にも生物活性を維持しながら耐えることができる。それらのサイズの別の利点は、微小血管閉塞または生存率低下の問題を起こすことのない、より高い用量閾値の安全性および組織へのより広範囲な透過性(例えば、血液-脳関門を通過する)である。さらにEVは、親細胞と異なり、免疫学的汎用性を示し、異種の状況であっても治療効果を発揮する。ヒトエクソソームは、マウス、ラットおよびブタにおいて治療的利益を誘導することが示されている。ASTEXは、全てのこれらの理論的利点を有する。不死化細胞からEVを誘導する過去の取り組みと異なり、ASTEXはさらに、その治療有効性を増強するために親細胞の機序に関する情報に基づく遺伝子操作により作出されたという特質を有する。
【0160】
これらのデータは、β-カテニンの工学操作が、高い効果のエクソソームおよび他のEV(ASTEX)の供給源としての治療上有益な工学操作された新規細胞体(ASTEC)の作製をもたらすことを示している。幾つかの実施形態において、高い効果のエクソソームおよび他のEV(ASTEX)の供給源としての工学操作された新規な細胞体(ASTEC)は、上方制御または過剰発現されたβ-カテニンを示す。幾つかの実施形態において、高い効果のエクソソームおよび他のEV(ASTEX)の供給源としての工学操作された新規細胞体(ASTEC)における上方制御または過剰発現されたβ-カテニンは、mestを阻害する、LRP5/6発現を上方制御する、extl1を阻害する、miR-92aを上方制御する、またはそれらの任意の組み合わせである。幾つかの実施形態において、mestの阻害、LRP5/6の上方制御、extl1の阻害、miR-92aの上方制御、またはそれらの任意の組み合わせは、例えばCISPR-Cas、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、および/またはTALENを用いた遺伝子編集により実現される。幾つかの実施形態において、ASTECまたはASTEXでの標的細胞または標的組織の処置は、骨形成ペプチド(BMP)遺伝子ファミリーの遺伝子発現をモジュレートする。幾つかの実施形態において、bmp-2、その受容体(2r)、-6、および8aは、ASTECまたはASTEXへの曝露により上方制御される。幾つかの実施形態において、bmp-3、-4、GDF6、およびGDF10は、ASTECまたはASTEXへの曝露により抑制される。幾つかの実施形態において、bmp-2、その受容体(2r)、-6、および8aは、ASTECまたはASTEXへの曝露により上方制御され、bmp-3、-4、GDF6、およびGDF10は、抑制される。
【0161】
実施例9
この非限定的実施例は、不死化CDC(imCDCsh-mest)からのエクソソームの治療効果を示す。
【0162】
imCDCsh-mestに由来するエクソソームの治療効果を、mdxマウスにおいて4×10個の粒子エクソソーム(IMEX)またはビヒクルのみを静脈内注射することによりテストした(図18A)。前脛骨の筋力を、投与の1週間後(図18B)、2週間後(図18C)、3週間後(図18D)、および4週間後(図18E)にテストした。単収縮および強縮トルクの両方が、最大3週間、ビヒクル対照に比較してエクソソームを投与した動物(EXO)において改善した(図18B~18D)。4週間目では、エクソソーム処置とビヒクル処置動物における単収縮トルクは、類似していたが、エクソソーム処置動物における強縮トルクは、ビヒクル処置動物に比較して高い傾向を示した(図18E)。
【0163】
幾つかの実施形態において、高い治療効果の不死化CDCに由来する高い効果のエクソソームを投与すると、筋ジストロフィー(または他の骨格筋障害)における骨格筋機能を回復する。幾つかの実施形態において、高い治療効果の不死化CDCに由来する高い効果のエクソソームの単回用量は、筋ジストロフィー(または他の骨格筋障害)における骨格筋機能を回復する。
【0164】
実施例10
この非限定的実施例は、不死化CDC(imCDCsh-mest)由来エクソソーム(IMEX)およびASTEXにおけるエクソソーム表面マーカー発現を示す。
【0165】
エクソソーム表面マーカーの発現を、ウェスタンブロットを利用して、先に記載された通り得られた不死化CDC(imCDCsh-mest)および調製されたASTEXで試験した。ASTEXは、表面マーカーITGB1、CD9、およびCD63を発現したが、HSC70およびGAPDHの発現はほとんどなかった(図19)。IMEXは、上昇されたレベルのITGB1、HSC70、GAPDHを発現し、中等度レベルのCD63を発現したが、CD9は発現しなかった(図19)。
【0166】
幾つかの実施形態において、不死化CDC由来エクソソーム、例えば増強された治療効果を有する不死化CDC由来エクソソームは、HSC70、ITGB1およびGAPDHを発現する。幾つかの実施形態において、不死化CDC由来エクソソーム、例えば増強された治療効果を有する不死化CDC由来エクソソームは、HSC70、ITGB1、GAPDHおよびCD63を発現する。幾つかの実施形態において、不死化CDC由来エクソソーム、例えば増強された治療効果を有する不死化CDC由来エクソソームは、CD9を発現しない。幾つかの実施形態において、ASTEXは、ITGB1、CD9およびCD63を発現する。幾つかの実施形態において、ASTEXは、HSC70およびGAPDHが欠如している。
【0167】
前述の事柄は、明瞭さおよび理解を目的として図および実施例により幾らか詳細に記載されているが、本開示の主旨を逸脱することなく修正が施され得ることは、当業者に理解されよう。それゆえ、本明細書に開示された形態は、例示に過ぎず、本開示の範囲を限定するものではなく、むしろ本発明(複数可)の実施形態の真の範囲および主旨に付随する全ての修正および代替例を含むことが、明白に理解されなければならない。
【0168】
先に開示された実施形態の具体的特色および態様の様々な組み合わせおよび部分的組み合わせを行い得ることが企図されるが、それでもそれは、本発明の1つまたは複数に含まれる。さらに、実施形態に結びつけられた任意の特定の特色、態様、方法、特性、特徴、品質、属性、要素、または同様のものの本明細書における開示は、本明細書に表された全ての他の実施形態で用いられ得る。したがって、開示された実施形態の様々な特色および態様が、開示された発明の種々の様式を形成するために、互いに組み合わせられ得ること、または置き換えられ得ることが、理解されなければならない。したがって、本明細書に開示された本発明の範囲は、先に記載された特定の開示された実施形態により限定されてはならないものとする。その上、本発明は、様々な修正および代わりの形態を受け易く、その具体的実施例を図面に示し、本明細書に詳細に記載した。しかし、本発明は開示された特有の形態または方法に限定されず、反対に本発明は、記載された様々な実施形態および添付の特許請求の範囲の主旨および範囲に含まれる全ての修正、均等物および代替例を含むはずであることが、理解されなければならない。本明細書に開示されたいずれの方法も、列挙された順序で実施される必要はない。本明細書に開示された方法は、実践者がとる特定の活動を含むが、それらは、明示的または暗示的のどちらかで、それらの活動の任意の第三者の指導も含み得る。例えば、「抗原結合タンパク質を投与すること」などの活動は、「抗原結合タンパク質の投与を指導すること」を含む。加えて、本開示の特色または態様は、マーカッシュ群に関係して記載されているが、本開示がそれによりマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されることは、当業者に認識されよう。
【0169】
本明細書に開示された範囲は、あらゆる重複、部分的範囲およびそれらの組み合わせを包含する。「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」「の間」および同様のものなどの言語は、列挙された数字を含む。「約」または「およそ」などの用語が前置された数字は、列挙された数字を含む。例えば「約90%」は、「90%」を含む。幾つかの実施形態において、少なくとも95%相同性は、参照配列に対して96%、97%、98%、99%、および100%相同性を含む。加えて、配列が、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列を「含む」として開示される場合、そのような言及は、他に断りがなければ、配列が、列挙された配列を「含むこと」、「配列からなること」、または「配列から本質的になること」を含むことになる。
【0170】
本出願およびその変形例、特に添付の特許請求の範囲で用いられる用語および語句は、他に明確な断りがなければ、限定と対照的に制限がないことと解釈されなければならない。前述の例として、用語「含むこと」は、「限定なく含むこと」、「含むが限定されないこと」、または同様のことを意味すると読まれなければならない。
【0171】
不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。例えば分子量の値および範囲を定義するために本明細書で用いられる用語「約」は、示された値および/または範囲の限界が、±20%以内で、例えば±10%以内で変動し得ることを意味する。数字の前の「約」の使用は、その数字そのものを含む。例えば「約5」は、「5」という明白な土台を提供している。範囲で提供された数字は、重複する範囲および間にある整数を含み、例えば1~4および5~7の範囲は、例えば、1~7、1~6、1~5、2~5、2~7、4~7、1、2、3、4、5、6および7を含む。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4I
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19
【国際調査報告】